物語の概要
本作はライトノベルであり、SF・魔法ファンタジーを主軸とする物語である。司波達也が率いる一般社団法人「メイジアン・カンパニー」を通じ、魔法師の地位向上と人権保護を図る国際的活動が描かれる。今巻では、四葉本家への襲撃、新ソ連および大亜連合からの攻撃が重なる中、恒星炉プラント誘致を巡る国家間の駆け引きが展開される。さらなる敵は、達也への復讐を誓う大亜連合軍であり、その次なる標的は新たな“使徒”である一条将輝である──
主要キャラクター
- 司波達也:メイジアン・カンパニー専務理事で、本シリーズの主人公。魔法師の社会的地位向上を目指し、政治・外交・軍事面でも中心人物である。
- 一条将輝:本巻で標的とされる“使徒”。四葉本家を狙う敵の作戦の鍵を握る重要人物である。
物語の特徴
本作の魅力は、国際政治・軍事というリアルな駆け引きと、魔法師としての超常能力が高度に融合している点である。SF設定の中で「魔法師=人間」の在り方を問う社会的テーマも盛り込まれ、単なるバトル譚にとどまらず、魔法による社会改革の展望が描かれる。十師族や各国魔法組織との絡みも深く、シリーズ他作との差別化が図られている。
書籍情報
続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー(10)
著者 佐島 勤 氏
イラスト 石田 可奈 氏
出版社:KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2025年6月10
ISBN:9784049163995
現在、本作を原作とするアニメ第三期「魔法科高校の劣等生 第3シーズン」は2024年4月~6月に放映済み
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あらすじ・内容
達也への復讐に燃える大亜連合軍の、次なる狙いは一条将輝!?
四葉本家への襲撃と、大亜連合、新ソ連それぞれからの攻撃を対処して、つかの間の平穏を過ごす達也たち。
国内外から恒星炉プラント誘致の申し込みがあったりと、達也の目指す世界、魔法師が兵器ではなく、人間として生活できる世界の実現に向けて、着実に歩みを進めていた。
しかし、次なる脅威はすぐそこまで迫っている。
達也に何度も苦汁を飲まされ、復讐に燃える大亜連合軍の次の狙いは、日本の新たな『使徒』一条将輝で、どうやら作戦の鍵は劉麗蕾らしく……。
感想
高校編より世界情勢が混沌として来た。
この世界は戦争しているんだな。
新ソ連の攻撃のどさくさに、大亜連合による執念深い潜入と暗殺の連鎖、恒星炉をめぐる国際的な利害の交錯、そして日常。
この巻では、激動する世界情勢と静かに抗う日本勢力の姿が印象的であった。
特に注目すべきは、大亜連合がかつて自国に属していた戦略級魔法師・レイラ(劉麗蕾)を暗殺兵器として再利用しようとした点であった。
その前に若手将校を利用した自爆攻撃は、人を使い捨てる第亜連合の悍ましさを感じ、レイラ(劉麗蕾)が工作員として過去に受けた洗脳により日本の「戦略級」一条将輝を狙う策略は、蠱毒的で計算された作戦であったが、最終的には妹・茜の機転によって未遂に終わった。
この一件により、単なる戦闘力の応酬ではなく、精神干渉や暗示といった非物理的な攻撃が物語に深みと緊迫感を与えていた。
また、国内の一部勢力の策謀により本拠地を失った達也(四葉)が北部に送り出されそうになる場面では、国防の名のもとに彼を動かそうとする日本政府や元老院の意図が明確となった。
恒星炉を巡る各国の誘致合戦と合わせ、達也の存在がすでに個人ではなく、世界のパワーバランスに影響する象徴的存在になりつつあることが強く示された。
達也自身もそのことを理解しつつ、なお自らの理想――魔法師が人間として生きられる社会の実現――に向けて行動を続ける姿勢が貫かれており、相変わらずこの青年は強いと感じる10巻だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
【1】潜伏
大亜連合工作員の潜入作戦
西暦2100年10月15日、大陸から侵攻してきた艦艇を日本国防軍と一条家が迎撃した直後、能登半島に一艘の小型ボートが上陸した。そのボートには、女性工作員・陳静娜と部下八名が乗っており、大亜連合の潜入作戦の一環として日本への密入国を敢行したものであった。当初は複数のドローンとミサイル艇による陽動作戦で警戒を逸らし上陸する計画だったが、日本軍の防衛により失敗し、潜入は決死の強行となった。
陳静娜一行は、現地協力者である胡思斉の案内により金沢市へ向かい、分乗した車両で別々の隠れ家に移動した。胡思斉のバーはその拠点の一つであり、陳静娜と呂偉辰はそこで短期間の潜伏を開始した。当初予定していた人員は揃わなかったが、陳静娜は作戦遂行に支障は無いと判断し、慎重に行動を進める方針を固めた。
アメリカ大陸でのFAIRとFEHRの対立
一方、サンフランシスコでは、魔法師過激派FAIRの首領ロッキー・ディーンが先史魔法「ギャラルホルン」を使用して暴動を引き起こした。彼はUSNA当局からテロリストとして追われ、共犯者であるローラ・シモンと共に国外逃亡を図ったが、空港でFEHRの遠上遼介に襲撃され、ローラは逮捕された。ディーンは朱元允の支援により潜水艇で脱出し、一時アラスカ基地に匿われた後、USNAを脱出してカムチャッカ半島へと身を移した。
潜伏と新たな身分の獲得
カムチャッカのホテルで目覚めたディーンは、朱元允の指示で派遣されたジロー・リーから、魔法的追跡を回避するための特殊なメイクを施されていた。彼は「フェイスメーカー」という自動化粧機器の使用方法を教わり、今後の潜伏生活に備える体制を整えた。数時間後、三合会の元文正と名乗る男と接触し、新たな偽造パスポートと「ロデリック・丁」という新しい名前を受け取った。
元文正は、新ソ連への軍事的煽動工作を終えており、極東地域に混乱をもたらすという使命を果たした後、ディーンと共に新たな潜入先である日本への移動を開始した。こうしてディーンは新しい身分とともに、元文正と共にフィリピンへ飛び立ち、日本潜入に向けた最終段階に入った。
【2】甘い誘い
米国上院議員による恒星炉プラント誘致の提案
巳焼島に達也を訪ねてやって来たのは、カーティス上院議員とその秘書であるJJであった。彼らは恒星炉プラントをハワイ・カウアイ島のミサイル試射場跡地に建設するという提案を持ち込んだ。これはUSNA連邦政府による補助付きの国家規模プロジェクトであり、ステラジェネレーター社を通じた四葉家の影響力と達也自身の行動力を見込んだ勧誘であった。達也はその背後に外交的な思惑を察しながらも、恒星炉の世界展開に有利と判断し、月内に返答を約束した。
上陸の痕跡と一条家の警戒
大亜連合軍の侵攻が鎮静化した後、一条将輝は東京に戻る予定であったが、父・剛毅の判断により滞在を延長することとなった。能登半島の観光地近くで小型ボートが沈められていた事実から、密入国の可能性が浮上し、警戒態勢が再構築された。将輝は妹たちの状況にも配慮し、現地に残る決意を固めた。
門馬俊一との接触と陽動の準備
陳静娜は協力者の学生・門馬俊一と接触し、金沢市内での地理確認と称する街歩きを開始した。彼は嵩山少林寺拳法の使い手として劉麗蕾に不信感を抱かれていたが、それがかえって囮として適していると陳静娜は判断した。門馬自身は任務への不安を抱いていたが、指示には逆らえず行動を共にした。街歩きの最中、陳静娜は巧みに彼をホテルへ誘導し、そこで盗聴や監視の確認を行うとともに、[瘟血散]という魔法を彼に仕込んだ。この魔法により門馬は「爆弾」としての役割を担うこととなった。
ディーンの動機と日本への敵意
一方、ディーンはフィリピンのホテルで出発を待たされていた。彼は使命に忠実というよりも、支援者である朱元允から逃れられぬ立場にあったため、消極的に任務を進めていた。元文正との会話で、自身の指名手配に日本政府と四葉家が関与していたとの情報を得ると、ディーンは激しい憎悪を抱き、復讐の意思を明確にした。これは朱元允がディーンを駆り立てるために用意した情報操作の成果であった。
複数国家からのプラント誘致交渉
USNAからの提案から二日後、巳焼島にはインド・ペルシア連邦と東南アジア同盟からも恒星炉プラント誘致の使者が相次いで訪れた。これにより、四葉家を自国に取り込もうとする国際的な動きが表面化した。日本政府はこの急展開に動揺し、官僚たちは恒星炉の価値を理解しつつも、苛立ちを隠せなかった。特に関東州庁では、財政への影響を危惧して深夜まで議論が続いた。かくして達也とステラジェネレーターは外交的にも重要な位置に立たされることとなった。
【3】爆弾
門馬俊一に関する密告と一条家の対応
加賀大学に所属する門馬俊一が密入国者を匿っているという密告が寄せられ、一条家当主・剛毅はこれを重く見て公安と情報を共有し、監視体制を敷いた。剛毅は十師族の立場から私的な制裁を否定し、公安による法的手続きの尊重を将輝に説いた。将輝は父の意向に従い、状況の推移を見守る姿勢を取った。
門馬への監視と接触者の発見
翌日、公安と北陸道警が門馬のアパートを監視していたところ、正体不明の長身の男が訪問し、門馬と接触した。この男は大学関係者や既知の交友関係に該当せず、異常な動作から訓練を受けた人物と判断された。現場では超小型ロボットによる室内盗聴に成功し、門馬が十師族の一条家当主と接触する必要性を語る音声が確認された。これを受け、道警は門馬のアパートへの接近と確保を決行した。
門馬の逮捕と監禁時の異常
道警の刑事二名が門馬のアパートを訪れた際、同行していた呂偉辰が突如逃走し、抵抗の末に一人の刑事を打ち倒した。門馬も逃走を試みたが取り押さえられ、公務執行妨害の現行犯として逮捕された。これにより、一条家と公安の懸念が現実のものとなり、剛毅は門馬の取り調べに向けて体制を整えた。
門馬に仕込まれた魔法と取調室での発動
翌日の取り調べにおいて、門馬は突如態度を硬化させ、一条家当主との面会を要求した。これに応じて将輝が隣室から取調室へと入室した瞬間、門馬の身体で毒性魔法が発動した。門馬は大量の血を吐き、取調室内に猛毒を放出。将輝の迅速な魔法障壁により被害は局限されたが、室内の刑事一名が死亡し、門馬自身も死亡した。
爆弾魔法の意図と裏にある暗示
呂偉辰の報告により、門馬には陳静娜によって[瘟血散]という魔法と、取調べで一条家当主に情報を伝えたいと主張する暗示が施されていたことが判明した。この一連の工作は、あくまで一条家への牽制と攪乱を目的としたものであり、陳静娜は門馬を囮とする計画が成功したと見なしていた。
陳静娜の意図と作戦の評価
門馬を暗殺兵器として利用することに失敗したにもかかわらず、陳静娜は当初から失敗を織り込み済みであったと語った。彼女は日本側の対応能力を高く評価しており、標的が一条家当主、使徒の息子、劉麗蕾のいずれかであるかを迷わせること自体が目的であったと明かした。呂偉辰もその戦術に納得し、門馬は攪乱のための捨て駒であったことが明らかとなった。
【4】不安の産物
恒星炉プラント移転提案と巳焼島本部での報告
同日、司波達也の元に関東州庁から地域振興課の小山椿芽課長が訪れ、三宅島への恒星炉プラント移転提案を持ちかけた。提示された条件は達也にとっても好条件であり、住民の移住も州庁が全面的に対応するという内容であった。達也は一存では決められないとして回答を保留し、ステラジェネレーターでの仕事を切り上げて巳焼島の四葉家本部に向かい、真夜に経緯を報告した。真夜は達也に恒星炉事業の全権を委任し、以後は報告不要とする旨を伝えた。
東道の意向確認と八雲訪問
その後、達也は東京の九重寺を訪れ、恒星炉移転に関する東道の意向を確認するよう八雲に依頼した。八雲は通常であれば関わらないが、今回は特例として引き受けた。達也は、八雲と東道の間で情報が共有されている可能性に警戒を抱きつつも、意向確認を進める必要があると判断した。
達也に対する噂と魔法大学での対応
一方、達也に対する不穏な噂が魔法大学内で囁かれ始めていた。内容は、達也が暴君となって日本を支配し、魔法師が貴族階級化するというものであった。達也は恐れられること自体は避けがたいと冷静に受け止め、対策として噂の発信源の調査を指示した。深雪とリーナ、亜夜子らも協力体制を取り、工作員の存在を前提とした情報収集に乗り出した。
海外勢力の宣伝工作と不安の拡散
フィリピンに潜伏していたディーンは、自らの無力に苛立ちながらも、元文正の手配による支援を受けていた。元文正は、日本国内で司波達也に対する不安を煽るFUD(恐怖・不安・疑念)宣伝工作を展開しており、人間は不安を共有する性質を持つと語った。さらに、日本の霊的弱点に詳しい人物をディーンに紹介する計画も進められた。
閣議での国後島貸与案とその背後の動き
関東州庁による提案を受け、中央官庁では達也の影響力拡大に危機感が強まり、翌日の閣議で国後島を恒星炉プラントの用地として貸与する案が国土省の花山大臣から提出された。対象は国後島全島であり、立ち退きの必要もなく、防衛上も有効とされたが、四葉家への優遇が過ぎるとして即決には至らなかった。提案の立案と根回しは、元老院の姉小路が主導していた。
情報漏洩と新ソ連の激昂
この案は秘匿されていたにもかかわらず、新ソ連の諜報機関に漏洩し、局長ソコロフの元へ届けられた。彼は、国後島の支配を四葉家に委ねるという報に激昂し、対抗手段として暗殺を決意した。かつての失敗を繰り返さぬよう慎重を期し、東京に潜入している部下に暗号話法を用いて暗殺指令を出した。標的は司波達也ではなく、国後島貸与の中心人物である姉小路政務官であった。
【5】押し寄せる思惑
八雲からの招待と東道・姉小路の意図
十月二十二日金曜の夜、達也は八雲に招かれて九重寺を訪れた。遅い時間にもかかわらず、八雲は達也に対し、東道と姉小路の意向を伝えた。彼らは達也を国家防衛における重要な戦力と見なしており、その能力を国のために利用する意志を示していた。八雲は、かつて大名が地方を治めていたように、達也が一部地域を支配することも否定されないであろうと語り、その背景には達也に対する期待と戦略的意図があった。
四葉家による三宅島移転の正式決定
翌日土曜の午前、葉山執事が四葉家の代理として関東州庁を訪問し、三宅島への恒星炉プラント移転を受け入れる旨を副知事に伝えた。副知事は議会を経ずに契約を進めると即答し、その積極性は異例であった。葉山の帰宅後、州庁内の関係部署は突如として対応に追われ、混乱に陥った。
北山家での面談と雫・ほのかの進路
午後、達也は北山潮の招待で北山邸を訪問した。そこにはフォーマルな装いの雫とほのかが出迎え、二人は現在マナーの研修を行っている最中であった。雫は父の事業を継ぐことを決意しており、ほのかはその補佐役としてビジネスの道を共に歩む意志を見せた。達也はその意外な進路に驚きつつも、二人の意思の強さに理解を示した。
恒星炉事業の今後と投資計画
北山潮との面談で、達也は恒星炉プラントの三宅島移転は新規投資であり、本社機能は引き続き巳焼島に留める方針を説明した。これは外部からの干渉に備え、中枢機能を四葉家の管理下に置くための措置であった。潮は水素燃料市場の成長を見越し、拡大投資の必要性を強く訴えた。達也はそれに応じ、迅速な対応を約束した。
カウアイ島提案と役員会開催の決意
潮は達也に、USNAからハワイ・カウアイ島への恒星炉プラント誘致提案があったことを確認し、それも受けるべきだと進言した。軍事施設の再編を含む提案内容に、潮は高度な情報網を用いて即座に反応し、外交的圧力を避ける意義を説いた。これを受け、達也は来週金曜日に役員会を開き、三宅島移転およびカウアイ島進出の正式決定を行うことを決めた。潮も協力を約束し、案件は彼の主導のもと進行することとなった。
【6】間諜退治
工作員掃討の捜査と警察の苦戦
門馬俊一の自爆直後、警察は関係が疑われる胡思斉のバーを捜査したが、すでに店はもぬけの殻であった。陳静娜と呂偉辰は既に移動しており、胡思斉も行方をくらませていた。また、街路カメラを用いた呂偉辰の追跡も失敗し、警察は手詰まりに近い状況に陥っていた。
将輝の外出と囮作戦の開始
十月二十四日、将輝は妹・茜とレイラに外出したいと告げられ、その意図が工作員を誘き出す囮であることを知った。当初は反対した将輝も、父・剛毅の許可によって同行を決めた。三人は金沢の繁華街に出掛け、レイラは将輝への想いを抑えきれずに明るく振る舞っていた。
陳静娜の接近とレイラへの暗示発動
その背後では、陳静娜と呂偉辰が密かに尾行していた。呂偉辰は罠の可能性を警告したが、陳静娜はチャンスと見て行動を継続した。陳静娜はレイラの元に接近し、スーツ姿の女性を装って会話を仕掛け、指輪に仕込んだ術式でレイラに旧国家命令を思い出させた。その結果、レイラは将輝に対して戦略級魔法[霹靂塔]を発動しかけるが、茜が魔法[神経攪乱]で彼女を制止し、発動を阻止した。
陳静娜の正体露見と通行人の反応
騒動の中、陳静娜は逃走を図るが、将輝の魔法により無力化された。彼女の正体を将輝が公言すると、通行人の間にも彼女を敵視する声が広がり、地元の英雄である将輝に対する支持が強まった。その混乱の隙を突き、呂偉辰が暗器で奇襲を試みたが、将輝に阻止された。
陳静娜への処置と[生体脱水]の発動
呂偉辰の妨害により一時的に注意を逸らされたが、陳静娜は再び逃走を試みた。しかし将輝の魔法により制圧された。その際、陳静娜の体内で自動的に[瘟血散]が発動しようとする。これは彼女の上官・陳祥山が仕込んだ暗示によるものであった。将輝は毒血の拡散を防ぐため、魔法[生体脱水]を発動し、彼女の身体を干からびさせて死亡させた。この処置は必要な対応であったが、周囲には非人道的な行為として映った。
呂偉辰の動向と剛毅の参戦
陳静娜が倒れた直後、呂偉辰は救援に向かおうとするが、一条剛毅によって阻止される。剛毅は体液に干渉する魔法を駆使して呂偉辰の動きを封じ、激しい接近戦の末に呂偉辰を[爆裂]で仕留めた。体内の血液を気化させるこの魔法により、呂偉辰は即死した。
一連の戦闘の終結と陳祥山への疑念
陳静娜は最期に自らの行動が上官の策略であったことに気付き、陳祥山への激しい憎悪を抱きながら命を落とした。呂偉辰もまた忠誠心を貫き、剛毅との戦闘で命を落とした。これにより、日本国内に潜伏していた大亜連合の工作員は一掃された形となり、事態は終息を迎えた。
【7】暗躍
文弥の深夜訪問と政府の動向報告
一条家が事件を収めたその夜、巳焼島から戻った達也と深雪の元に文弥が訪問した。彼は政府が恒星炉プラントの誘致を進めている件について報告した。政府内での情報管理は杜撰であり、漏洩を前提にした意図すら感じられるほどであった。文弥は、関東州庁に先を越されたことに対する焦燥が背景にあると分析し、政府内部でも一部の政治家は危機感を抱き始めていることを伝えた。
花山大臣と国後島貸与案の衝撃
花山国土大臣は国後島全島をステラジェネレーターに無償貸与する案を提出していた。達也はこの計画の背後に元老院の姉小路政務官が関与していると見抜き、四葉家を新ソ連の防壁に用いようとする思惑を読み取った。深雪は、国後島を拠点にメイジアンのための自治領を築くという構想に感銘を受けたが、達也は冷静に実利を見据えていた。
情報漏洩と新ソ連による暗殺計画
文弥は、国後島貸与案が新ソ連に漏れていることを報告した。特に姉小路政務官が狙われており、暗殺の兆候が確認されていた。達也はこの情報の重大性を認識し、姉小路が現時点で重要な協力者である以上、暗殺は阻止すべきと判断した。彼は協力を約束し、暗殺計画の阻止に向けて動く意思を示した。
達也の出社と姉小路政務官との接触
翌日、達也はメイジアン・カンパニー本部で業務をこなした後、姉小路政務官からの電話を受けた。彼女は水曜日の夜に帝国ホテルでの会談を申し入れ、達也はそれを了承した。姉小路の堂々とした態度は、彼女が元老院の一員として相応の人物であることを感じさせた。
深雪と亜夜子による情報分析
大学では、深雪・リーナ・亜夜子の三人がサークル室で昼食を共にし、深雪が達也に関する中傷の出所について亜夜子に尋ねた。出所は香港であるとされ、香港マフィアの関与が示唆された。亜夜子は責任感を持ち、出所の特定に執念を燃やしていた。
真夜と葉山の認識と危機感
四葉家本家では、真夜が国後島貸与の報告書を読んだ後、葉山と意見を交わした。東道と姉小路が計画の中心であり、達也と深雪を日本の国防における「保険」として期待していると葉山は述べた。ディオーネー計画による過去の裏切りを踏まえ、政府は達也の離反を恐れていた。葉山は、深雪がいる限り達也はその地を見捨てないと確信していた。
暗殺準備を進めるスミルノフの焦燥
新ソ連の工作員スミルノフは、上官ソコロフの圧力のもと、準備不足のまま暗殺決行を決意した。姉小路政務官の行動は予測可能であり、彼は部下十人を動員し、誘拐や狙撃など多重の手段での襲撃を企図した。
達也の迎撃体制と家族の対応
達也は姉小路との会談が予定されていることを文弥に伝え、迎撃体制への移行を指示した。彼自身も作戦に参加し、映像を通じた情報支援を行うと決めた。深雪とリーナはその朝、大学を自主休講し、達也の側に残ることを選んだ。
達也の狙いとリーナの理解
達也は国後島の実利を説きつつも、政府の真の意図が自衛戦力としての自身の利用であることを理解していた。リーナもすぐにその意図に気付き、暗殺計画の背景に迫った。彼女は達也が「眼」で戦況を支配する戦法に驚きを示しつつも納得していた。
姉小路政務官の監視と変装した文弥
政務官・姉小路の住む厳重な警備のマンションで、文弥は変装して張り込みを行っていた。彼は女性として変装し、見知らぬ女性の部屋を一時的に借りて監視を行った。文弥の姉である亜夜子も訪れ、変装の調整を経て協力体制を整えた。
姉小路の生活環境と暗殺者の接近
姉小路は専属運転手を持ち、強化された防弾車輛で出勤していた。その出発時、スミルノフの部下である暗殺者が爆弾を仕掛けようとしたが、黒羽家の女性戦闘員によって妨害された。暗殺者は運転手に気づかれず接近していたが、不自然な介入により失敗した。
暗殺計画の失敗とスミルノフの動揺
暗殺者ジャンの信号が突如途切れたことで、スミルノフは任務の失敗を認識した。彼は通信傍受を警戒しコードネームや言語を偽装していたが、次々と部下との通信が途絶え始めた。彼は計画を続行し、次なる狙撃を命じたが、思考には焦りが滲んでいた。
文弥と亜夜子の後続監視と準備
姉小路の行動を確認した後、文弥と亜夜子は自車に戻って監視を継続した。既に黒羽家の戦闘員によって一人目の暗殺者は確保されており、文弥は更なる襲撃を想定して休息を取った。亜夜子は車内で変装を整え、映像による追跡支援も進行していた。
達也によるエレメンタル・サイトの発動
リアルタイム映像を受け取った達也は、[エレメンタル・サイト]を用いて姉小路に接触しようとする視線の情報から、暗殺者の存在を探知した。量子観測の理論に基づく魔法の特性により、観測者と対象との情報のつながりを辿って状況を掌握していた。
暗殺計画の破綻とスミルノフの疑念
スナイパーのアンドレも連絡を絶ち、スミルノフは次々と失敗する暗殺計画に動揺を深めた。日本政府の裏組織や非公的勢力による対応とすら思えない速さと正確さに恐怖を覚え、未確認勢力の存在を疑い始めた。彼は四葉家を軽視していたが、その信念が揺らぎ始めていた。
新たな襲撃の察知と迎撃行動
達也は次なる襲撃計画として、自走車による銃撃が行われることを予測し、車種と時間を文弥に通知した。文弥は専用CADで[ダイレクト・ペイン]を発動し、敵車内の全員を無力化した。その車は安全に停止し、文弥は偽装救急車による確保を指示した。
暗殺者半数の沈黙とスミルノフの敗北感
日が傾く中、スミルノフの部隊はすでに半数が行動不能となっていた。彼は敵の動きを把握できず、すべてが見透かされているかのような状況に恐怖を抱いた。最終的には作戦中止や組織からの逃亡すら考え始めていた。
達也の行動方針と俯瞰的観測
深雪とリーナは、達也が直接介入せず支援に徹していることに疑問を抱いた。達也は政府内の防諜機関が動いていないことを前提に、敢えて俯瞰的立場から全体像を把握しようとしていた。姉小路政務官の暗殺を巡る一連の騒動は、表面化していない政治的力学の動きであると見なしていた。
襲撃作戦の激化と姉小路の護衛強化
夕方、姉小路政務官が帝国ホテルに到着した。ホテル内には既に達也が魔法で設置した結界が張られており、ホテルの要人警護も含めた複合的な防衛体制が整っていた。姉小路の移動を確認した敵の狙撃手グリゴーリは、最上階の窓辺から狙撃を試みるが、外部からの攻撃を想定していた達也によって視界を遮断された。加えて、ビルの壁面に設置された遠隔操作式火器の存在も明らかとなった。
グリゴーリの狙撃失敗と再配置
グリゴーリは視界を封じられた後、無人の狙撃ポイントに戻って火器を回収した。しかし、そこには黒羽家の戦闘員が待ち伏せており、彼の動きは全て監視下にあった。戦闘員はグリゴーリの背後を取り、静かに拘束した。この時点で暗殺班のうち六人が行動不能となっていた。
スミルノフの逃亡と絶望
部下の失踪と通信の沈黙を受け、スミルノフは完全に敗北を認識した。彼は自身の任務の異常な失敗に疑念を抱き、未確認勢力の存在を確信するに至った。任務失敗が明らかな以上、彼は既に“処分対象”となっていると悟り、組織からの逃亡を決意した。彼は監視カメラに映らぬよう逃走ルートを選んだが、ホテル近くの駐車場で静かに失神させられ、車に収容された。
最後の暗殺者確保と文弥の報告
スミルノフが車中で目を覚ますと、そこには文弥がいた。文弥は彼に向かって「勝ち目がなかった」ことを淡々と伝え、自身が彼の行動の一部始終を監視していたことを示唆した。スミルノフは、情報の差こそが勝敗を決したと痛感し、完全な敗北を受け入れた。
達也と姉小路政務官の面談
帝国ホテルの一室で、達也と姉小路はついに対面した。姉小路は達也の実力と行動力に感謝の意を示し、政務官としての本音を語った。彼女は、旧来の日本政府の限界と、四葉家のような超常的な実力者の力を今後の国家運営に組み込む必要性を述べた。達也はその意図を理解しつつ、あくまで民間企業としての立場から協力する姿勢を貫いた。
深雪とリーナの観察と安堵
同じホテルの別室で控えていた深雪とリーナは、すべての暗殺者が制圧されたという情報を受け、緊張を解いた。深雪は達也の無事を何よりも喜び、リーナもまた達也の能力に驚きと敬意を抱いた。彼女たちは、これが新たな政治局面の幕開けであることを直感していた。
このようにして、姉小路政務官を巡る暗殺未遂事件は達也とその仲間たちの徹底した迎撃体制によって阻止された。裏で蠢く国際的な工作活動と、日本政府内の対立構造が浮き彫りとなり、物語は新たな段階へと進んでいくこととなった。
【8】分岐点
姉小路との会談
十月二十七日、司波達也は巳焼島から戻り、スーツに着替えて都心の帝国ホテルに向かい、姉小路政務官と会食を行った。姉小路は一対一の会談のために宴会場を貸し切り、料理も最高級の人材が用意した。形式に不慣れな達也だったが、記憶力と肉体制御能力によって完璧なマナーを実践し、姉小路を驚かせた。表向きは世間話に終始した会話も、食後には政府からの提案へと移った。提案は、恒星炉事業の拠点として国後島全島を五十年間無償で貸与するという内容であった。表向きには産業支援としつつも、防衛拠点としての意図が込められており、天災や戦乱での事業停止時には返還義務が課されていた。達也は既にその条件の裏を理解していたが、提案を即時に拒否せず受ける意志を示し、翌日には正式な返答をすることとした。
非合法工作員の訊問と新事実の発覚
同日、文弥と亜夜子は黒羽家の監獄施設で、新ソ連の工作員スミルノフらの訊問結果を確認していた。彼らは末端ではなく、ソコロフ情報局長の直轄であることが明らかとなり、さらに香港三合会の元文正という人物が新ソ連と大亜連合の連携を仲介していたことが判明した。大亜連合の北海道侵攻にも関与があったとされ、日本国内で達也に対するFUD工作にも三合会が関係しているとの証言が得られた。ただし新ソ連自体はFUD工作には関与していないという。亜夜子は三合会への報復を提案するが、文弥は真夜の意向と公安の対応を確認する必要性を説いて抑止した。
四葉家での協議と深雪の決断
翌朝、達也は深雪を伴い再び巳焼島を訪れ、真夜に姉小路からの提案を報告した。提案内容の本質を理解した真夜は、判断を達也に一任すると告げた。達也はさらにその決断を深雪に委ね、次期当主である彼女が国家級の判断を下す場を与えた。深雪は躊躇いながらも提案を受け入れる決意を示し、真夜もこれを了承した。この決断は形式上の借地であっても、象徴的には一つの「国」を持つことに等しいものであり、深雪が女王として歩む第一歩とされた。
再会談と契約草案の受領
達也は直ちに姉小路に連絡し、南青山の料亭にて再度会談を行った。前日の提案を受け入れる旨を伝えると、姉小路は契約草案のファイルを提示した。文言の確認を求めた上で、達也はその場で別の話題に切り替え、アメリカ・USNAからの恒星炉誘致提案について触れた。姉小路は事前に情報を得ていたものの、あえて了承の姿勢を示し、外交的配慮と関係深化を重視する立場を取った。達也と姉小路は互いに笑顔を交えながら会席料理を共にし、円満に会談を終えた。
取締役会の開催と全会一致での決議
翌日、巳焼島では急遽ステラジェネレーターの取締役会が開催された。議題はアメリカ進出に加え、国後島貸与も含まれた。取締役の多くは急な招集にもかかわらず集まり、両案件とも全会一致で可決された。実施の詳細についてはすべて達也に一任された。
USNAとの連絡と今後の展望
取締役会終了後、達也はUSNA国防省のJJことジェフリー・ジェームズにメールを送り、すぐに電話での応答を受けた。達也は国内優先の方針からカウアイ島へのプラント建設は二年後になると説明したが、JJはむしろ歓迎の意を示した。選挙期間中のJJとスペンサー国防長官の多忙を配慮し、契約の本格化は新政権発足後とすることで合意された。こうして、恒星炉事業と新四葉本家に伴う国際的展開は、国後島とカウアイ島の両面で着実に動き出した。
【9】災い来る
警察省による日立市の警戒強化
巳焼島で取締役会が開かれていた同時刻、霞ヶ関では公安の外事第四部が会議を実施し、香港三合会の構成員と見られる亜連人が日立市に集結していることが報告された。インフラ破壊等の行動は確認されず、意図は不明であった。逮捕や自白剤の使用も検討されたが、明確な根拠がなく実行には至らなかった。警部・三矢元章が司波達也への中傷活動との関連性を指摘し、部長の石塚警視正はその可能性を否定せず、元章に関連施設の再調査を命じた。
ディーンの入国と計画の背景
同時期、ディーンはマクタン・セブ空港から関空へ向かい、日本へ入国していた。彼はローラの安否を案じながらも、張公明から得た情報をもとに日立市を目指していた。張公明はかつて修験者だったが、禁忌を犯して追放され、東南アジアで道士として活動していた人物である。彼は日立市に日本神話の星神・天津甕星を封印した霊的要所が存在すると語り、三合会はそこを霊的弱点と捉えて儀式による封印破壊を目論んでいた。ディーンはその後、汚染兵器《ギャラルホルン》を用いた混乱の拡大を担当する予定であった。
ディーンの日本潜入と藤林の報告
夕刻、藤林がステラジェネレーター社長室を訪れ、ディーンの偽装入国を報告した。彼は魔法的変装で「ロデリック・丁」としてフィリピン経由で日本に入国し、協力者の車で移動していた。パスポート情報を得たが、追跡は困難であった。達也は藤林に対し、各情報機関への匿名通報を指示し、藤林は公安・内情・軍情報部への報告を約束した。
三矢元章による父との対話と情報収集
元章は帰宅後、父・三矢元に相談し、天津甕星に関する知識を得た。元は天津甕星が日本神話で最後まで太陽神に従わなかった星神であり、大陸の星辰信仰との親和性を持つと説明した。日立市南部の大甕神社がその封印地とされ、三合会がそこを狙う可能性が示唆された。
警察省内の緊急情報と元章の推論
翌朝、警察省ではUSNAの指名手配テロリストが三合会の支援で入国したとの情報が共有されていた。元章はディーンと三合会の動きに大甕神社が関係すると断定し、石塚警視正に進言して了承を得た。
達也の対処と行動制限
達也はステラジェネレーターの社内で恒星炉事業の契約条文を精査していたが、藤林から日立市南部に三合会工作員が集結しているとの報告を受けた。自身の出動を検討するも、藤林の説得により行動を控え、監視態勢の強化と四葉家戦闘員の待機を指示した。
達也宅での情報共有と警戒
達也は深雪やリーナにディーンの入国と三合会の活動について説明し、日立市にある霊的アキレス腱への攻撃の可能性に言及した。達也は現地へ赴く意思を抑えつつも、緊迫した状況に対して深雪とリーナが寄り添い、彼の決断を支えた。
ディーンらの動きと儀式の準備
深夜、ディーン一行は日立市に入り、儀式の実施地点を海岸沿いの古房地公園付近に定めた。警察の警戒が山手に集中していたため、日中に儀式を行う方針が確認され、彼らは宿へ向かった。
四葉家とリーナの対応方針
翌朝、日曜日。文弥と亜夜子が達也邸を訪れ、警察の警戒により行動が困難であることを報告した。達也は三合会の作戦が単純すぎると懸念を示し、別の攻撃対象が存在する可能性を指摘した。文弥は大甕神社周辺以外の探索を提案し、リーナが同行を申し出た。彼女は公安へのカモフラージュ役としても有用であり、一行は改めて行動を開始した。
ディーンの儀式開始と偽装された祭壇
ディーンは日立市南部の古房地公園で、三合会の工作員と共に行動していた。彼は偽名「ロッド」として動き、変装を重ねて潜伏していた。一見普通の観光用バスは、内部が完全に道教の儀式空間として改装されており、五人の道士が「玉斗祭」と呼ばれる儀式を開始した。公園全体が星神・天津甕星の封印の一部であり、大甕神社はその要でしかなかった。道士たちは術の効果を拡散させるため、あらかじめ工作員を地域全体に配置していた。
空澤刑事の直感と単独行動
公安の魔法師警官・空澤兆佐巡査部長は、大甕神社裏参道の監視にあたっていた。感知能力を持たぬ彼は「直感」により異変を察知し、上官の三矢元章に海岸方面の確認を申し出た。元章は彼の判断を否定せず、限定的な離脱を許可した。空澤は車輛並の速度で海岸線へ向かい、誰よりも早く異常の兆しを捉えた。
星神解放と広範囲への影響
五人の道士による術式が完成し、天津甕星の封印が揺らいだ。儀式によって放たれた混沌とした魔力は公園から市街地と海域へ波及し、道士たちは一斉に倒れた。術の影響は広範囲に及び、参道にいた三矢元章も立っていられなくなり、自走車にすがって異常をやり過ごした。同様に通行人や他の警官も影響を受け、地上の秩序が混沌に陥った。
魔力の混乱に襲われる文弥とリーナ
異変は現地に向かっていた文弥とリーナの車輛にも到達した。サイキックエネルギーの干渉で五感が錯乱する中、リーナは咄嗟に思考操作型CADによる防御魔法[パレード]を発動し、感覚の暴走を抑制した。運転をAI制御に切り替えることで事故を回避し、二人は辛くも正気を保った。
調布から観測された霊的波動
調布にいた達也と深雪も、発生した霊的なエネルギー波に気づいた。達也はそれを定義なき事象干渉と分析し、極めて原始的な呪術の形式に類似していると判断した。東京には大きな被害は無かったものの、情報次元における視界が遮断されるほどの魔力濁流が確認され、現地の惨状を達也は内心で予測していた。
狂気に堕ちたディーンの決断
ディーンは全ての道士が力尽き倒れる中、一人立ち尽くしていた。ラ・ロの人工情報体と幻の会話を続けながら、彼は自己の命と精神を代償として、汚染魔法《ギャラルホルン》を全力で発動した。その魔法は星神の封印解放に乗じ、神話的破滅を象徴する魔笛のように周囲に鳴り響いた。ディーンの精神は発動とともに崩壊し、その代償によって儀式は完遂された。
同シリーズ
続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー










新魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち







魔法科高校の劣等生




























漫画版
四葉継承編



師族会議編



エスケープ編

その他フィクション

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