薬屋 11巻レビュー
西都編まとめ
全巻まとめ
薬屋 13巻レビュー
どんな本?
『薬屋のひとりごと』は、日向夏 氏による日本のライトノベル作品。
中世の後宮を舞台に、薬学の専門知識で事件の謎を解く少女・猫猫(マオマオ)の物語。
小説家になろうで連載されているほか、ヒーロー文庫からライトノベル版が刊行されている。
また、月刊ビッグガンガンと月刊サンデーGXでコミカライズ版が連載されており、2023年にはテレビアニメ化も決定している。
月刊サンデーGXの方が、中華の雰囲気が強く、文化の小さい部分にも気をつけているように感じている。
■ 作品概要
玉鶯の死から十日が経過し、西都は戦後処理と次代の統治権を巡る政治的混迷の渦中にある。医官手伝いの猫猫は、負傷者や病人の治療にあたっていたが、皇弟・壬氏が拠点を本邸へと移したことで、玉家の内部事情に関与することとなる。
本邸での温室確保、葡萄酒醸造所での毒茸混入事件、理人国の第四王子の抜歯治療などを経た後、毒矢で襲撃された長男・鴟梟の治療を機に、猫猫は雀によって小紅や玉隼と共に南の宿場町、さらには盗賊に支配された信仰の町へと巻き込まれていく。
猫猫は薬学の知識を用いて盗賊たちを無力化し、突入した鴟梟らと共に町を制圧するが、脱出時に雀が重傷を負い、猫猫が緊急手術を執刀することとなった。
西都の後継者問題は鴟梟を象徴に据えることで決着し、猫猫たちは中央への帰還を果たした。
■ 主要キャラクター
猫猫: 医官手伝い。本邸の温室で生薬栽培を開始。卓越した医療知見により、特殊な茸中毒の特定や緊急手術を完遂する。自身の血筋(漢一族)に対する嫌悪感が強く、周囲の敬称による評価に違和感を抱いている。
壬氏(月の君): 皇弟。玉鶯亡き後の西都で政治的調整と遺産相続問題の調停に奔走するが、過労状態にある。猫猫を「替えのきかない腹心」として信頼している。
雀: 壬氏に仕える侍女。情報収集と隠密行動に長け、独自の目的意識で動く。終盤、脇梟と猫猫を本邸から連れ出し、西都の闇を知る協力者として機能する。
鴟梟: 玉袁の孫であり、故・玉鶯の長男。放蕩者(ばさら者)を装い相続を拒否しているが、その実、毒部位を自ら削ぎ落とす等、極めて高い武官としての資質と判断力を有する。
飛龍・楊虎狼: 玉鶯の次男と三男。それぞれ陸孫と壬氏の副官として実務にあたる。三男の虎狼(フーラン)は母親の商家姓「楊」を名乗っており、腰の低い有能な補佐官として振る舞う。
玉隼(ギョクジュン): 脇梟の息子。父が西都を継ぐという特権意識から傲慢に振る舞い、やぶ医者等へ暴行を働く。
李白: 壬氏の命で派遣された武官。猫猫の護衛として、醸造所の調査や開墾作業に同行する。
俊杰: 元服前の誠実な小姓。ありふれた「漢」という姓を持ち、長男であるため「伯雲」とも呼ばれていたことから、羅半兄に強烈な動揺と哀愁を与えた。
書籍情報
(英語: The Apothecary Diaries、中国語: 药屋少女的呢喃)
著者: #日向夏 氏
イラスト: #しのとうこ 氏
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あらすじ・内容
玉鶯は、蝗害は異民族のせいで起きたと憤る民を鎮める名目で、
薬屋のひとりごと 11
砂欧に戦争を仕掛けようとしていた。
壬氏は戦を避けようと頭を悩ませていたが、
玉鶯の暗殺という思わぬ形で戦を回避することになる。
しかし、領主代行を失った西都の舵を取る者がいない。
壬氏は、いやいやながら西都の政務を執ることになった。
猫猫は、心身ともに疲弊する壬氏を気遣いながら、
怪我人や病人を診る日々を送っていた。
そんなある日、壬氏は、領主代行だった玉鶯の息子たちを、
西都のために後継者として政治を教え、育成してほしいと頼まれる。
しかし、玉鶯の長男・鴟梟はどうしようもない無頼漢であった。
他の二人も後継者教育を受けたことなどないことがわかり、
猫猫は頭を抱えてしまう。
だが、猫猫たちは否応なしに西都のお家騒動に巻き込まれてしまう。
玉鶯の三人の息子たちを後継者として育成してほしいと頼まれたうえ、
鴟梟の息子・玉隼は中央から来た猫猫たちを目の敵として邪魔をしてくる。
誰が西都を継ぐのか……多くの思いが交錯する中、猫猫の元に事件が舞い込む。
玉鶯の孫たちの不仲。
醸造所で起きた食中毒。
謎の病を訴える異国の娘。
そしていつも以上に不可解な行動をする雀。
彼女の本当の目的とは一体何なのだろうか。
そして、雀の本当の顔も明かされることになるのだが—。
猫猫は無事、中央へと帰ることができるのだろうか。
そして、壬氏との関係をはっきりさせる時が来るのだろうか。
感想
西都編、ついに完結。
前巻で玉鶯が死亡し、砂欧との戦争は回避された。
ちなみに玉鶯を直接殺したのは陸孫ではなく、恨みを持っていた農民である。陸孫が戌の一族の生き残りだったことで、仇討ちのようにも見える展開だったのが印象に残っていた。
ただ、領主代行が突然いなくなったので、
誰が西都を治めるんだ?
という問題が残る。
そこで出てくる玉鶯の子どもたち。
グレた長男・鴟梟。
しっかり者だが頭の硬い次男・飛龍。
腰が低くて何を考えているのか分からない三男・虎狼。
しかも西都には皇弟・壬氏という鬼札までいる。
そりゃ話がややこしくなるわ。
そして猫猫はまたしても誘拐に近い状況へ。
前にもこんなことあったな。
本人が妙に慣れているのが笑える。
ただ今回、一番印象に残った人物を挙げろと言われたら、
羅半兄!!!!
何で!?
何でそこまで不遇なんだよ!!www
玉鶯の死後は後継者争い。なのに長男はグレていて、孫はクソガキだった
本来なら玉鶯の跡を継ぐのは長男の鴟梟。
ところがこの長男、成人して妻子までいるのにグレて家を飛び出している。
密造酒。
親族との決闘。
盗賊との関係。
政治にもまともに関わっていない。
その息子の玉隼も、祖父の権威をそのまま自分の力だと思っているクソガキである。
壬氏たちが西都を乗っ取ろうとしていると思い込み、
一番弱そうなヤブ医者を木剣で殴る。
おい。
そこ狙うのかよ。
おかげでヤブ医者は歩行困難となり、猫猫が代わりに往診することになる。
ただ、実際に鴟梟が登場すると意外だった。
見た目は完全に無頼漢。
息子への土産は鹿の生首。
でも玉隼がヤブ医者へ暴力を振るったと知れば、息子を庇わず謝罪する。
グレてはいるけど、単純な駄目親父でもない。
一方、三男の虎狼は礼儀正しくて実務能力もある。
壬氏を尊敬し、素直に働いているように見える。
……見えるんだよな。
この「良い人すぎる感じ」が後になって効いてくる。
猫猫、また囚われる。でも盗賊村でも飯を作って毒を仕込むあたり通常運転
ある日、小紅が猫猫を呼びに来る。
連れていかれた先では鴟梟が毒矢を受けて瀕死。
猫猫が治療すると、今度は雀が介入。
事情も分からないまま猫猫、小紅、玉隼たちは本邸から離される。
猫猫の感想は、
前にもこんなことあったな。
……慣れるなよ。
その後、移動中に盗賊の襲撃を受け、玉隼は護衛に連れていかれるものの、猫猫と小紅は取り残される。
そして盗賊が支配する村へ。
猫猫はそこで飯炊きや治療をしながら機会を待つ。
普通なら絶望的なのに、
毒になる材料はないか。
どう使えるか。
を考えているのが猫猫である。
馬鈴薯の芽や皮も使える。
食糧不足対策で散々育ててきた馬鈴薯が、今度は盗賊を倒す側へ回るとは思わなかった。
さらに雀が残した暗号を読み取り、夕食で盗賊たちを無力化。
鴟梟たちも突入して救出へ。
猫猫、
囚われても結局やることやってるな。
薬師を閉じ込めるなら毒になる物を置いてはいけない。
4巻から全く学習されてないぞw
ただの面白い侍女じゃなかった雀。猫猫を守るために身体を張りすぎだろ
今回大きく印象が変わったのが雀だった。
これまでも、
この人、普通の侍女じゃないよな?
とは思っていた。
情報を持ちすぎ。
動きもおかしい。
何か裏の仕事をしている。
でも今回、その正体がかなり見えてくる。
雀は《巳の一族》に属する人間。
幼少期からの人生もなかなか過酷で、母親から「価値があるかどうか」で見られながら育ってきた。
普段の、
「猫猫さーん」
とお菓子を食べている姿からは想像しづらい。
そして盗賊から猫猫を守る場面。
ここは普通に怖かった。
雀は自分の身体を使って猫猫を守り、重傷を負う。
折れた肋骨が内臓を傷つけている可能性まである。
そこで今度は猫猫が雀を助ける。
天祐の手術を横で見ていた経験も含め、自分で腹を開いて処置する。
猫猫が医官付官女になって経験を積んできたことが、ここで雀の命を救うのにつながったのは良かった。
雀は助かった。
ただし右腕には大きな後遺症が残る。
それでも馬良は離れない。
雀自身も、夫のところへ戻れる。
代償は大きかったけれど、
生きて帰れた。
そこは本当に良かったと思う。
西都編完結……と思ったら羅半兄を置いて帰るな!!本名すら誰も知らないのかよww
事件の裏で動いていたのは虎狼。
鴟梟を後継者から外し、壬氏を西都に残そうとした。
あれだけ腰が低くて真面目だった男が、
そっちかよ。
最終的には鴟梟を表向きの長にすることで決着。
身なりを整えると父・玉鶯によく似ており、民衆にも受けが良い。
中身を次男や三男たちが支える。
意外と現実的な落としどころだった。
そして長かった西都生活も終了。
猫猫たちは船で中央へ帰る。
ここで綺麗に終わる。
……はずだった。
猫猫が船上で気づく。
「あれ?羅半兄は?」
農業関係者も船に乗ることになっている。
でも羅半兄は数日前から農村へ行っている。
名簿を確認すればいい。
そう思った壬氏が聞く。
羅半兄の名前は?
……。
誰も知らない。
いや待て待て待てww
この巻の途中でも、俊杰という小姓から名前を聞かれた羅半兄が、何とも言えない顔をした末に、
自分の名前は羅半兄だ!
と名乗ってしまっている。
ずっと、
「羅半兄じゃねえ!」
と怒ってたじゃないか!!
そして最後。
船はすでに出港。
羅半兄が乗っていないことが判明。
しかもこの時になって、ようやく本名まで分かる。
でも本人はまだ、
自分が置いていかれたことすら知らない。
羅半兄!!!!
何で!?
飛蝗の中を走り回った。
農村を回った。
甘藷や馬鈴薯を育てた。
食糧不足対策にも貢献した。
虎狼が危険な状況になれば助けにも入った。
西都編でメチャクチャ働いた人だぞ!?
なのに最後の扱いが、
置き去り。
あまりにも酷いww
西都の後継者争い。
猫猫の誘拐。
雀の過去。
盗賊との戦い。
虎狼の企み。
色々あった12巻なのに、
最後は全部、
羅半兄!!!!
に持っていかれた。
これにて西都編完結。
……羅半兄だけ西都編、まだ終わってないけどなw
最後までお読み頂きありがとうございます。
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薬屋 11巻レビュー
西都編まとめ
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考察
ストーリー・ストーリー・プロット
第1幕:本邸への移転と温室の確保
- 状況: 壬氏が効率的な政務遂行と安全確保のため、拠点を本邸へ移動。猫猫も同行。
- 内容: 猫猫は生薬栽培のため本邸の温室使用を要求するが、高級食材である胡瓜の栽培を優先する庭師と対立。
- 結果: 最終的に温室の一部を確保するが、同時に脇梟の息子・玉隼によるやぶ医者への暴行事件が発生。玉家の直系卑属による傲慢さと、家庭内の不和を猫猫が認識する契機となる。
第2幕:玉家の親族構成と「ばさら者」の仮面
- 状況: 雀により、西都の統治権を巡る玉家の家系図と内情が明かされる。
- 内容: 優秀な次男・三男に対し、長男の脇梟が放蕩を尽くして廃嫡危機にあること、その背景に母親(奥方)の過去の失踪と異国滞在が関係していることが示唆される。
- 結果: 西都の権力構造の不安定さと、後継者問題を巡る親族間の「時間稼ぎ」に壬氏が利用されている構図が浮き彫りになる。
第3幕:葡萄酒醸造所での集団食中毒事件
- 状況: 壬氏の依頼を受け、猫猫は虎狼とともに彼の叔母が経営する醸造所の調査へ向かう。
- 内容: 職人の嘔吐の原因が、特定の茸に含まれる「アルコール分解機能を阻害する成分」による悪酔いであると特定。猫猫は自ら茸と酒を摂取してこれを証明する。
- 結果: 支援物資に意図的に茸が混入されていた事実から、西都の基幹産業を狙った政治的妨害工作の存在が判明する。
第4幕:異国の王子の抜歯治療
- 状況: 虎狼の依頼で、宿場町に滞在する「良家の令嬢」を往診。
- 内容: 令嬢は重度のむし歯を隠し頭痛を訴えていたが、猫猫がこれを見抜き抜歯を断行。馬良の言語学的分析により、令嬢の正体が北亜連・理人国の王子であることが示唆される。
- 結果: 国際的な政治背景を持つ重要人物の滞在が判明し、西都の地政学的リスクが顕在化する。
第5幕:農業改革と羅半兄の哀愁
- 状況: 食糧不足対策として、羅半兄が馬鈴薯や甘藷の栽培を指導。
- 内容: 新たな小姓・俊杰が、羅半兄が最も嫌悪する「漢(羅)」の姓を持つことが判明。
- 結果: 羅半兄はアイデンティティの危機に陥りながらも、飢饉回避のための地道な農業指導を継続する。
第6幕:隠し通路での襲撃と緊急手術
- 状況: 玉袁の孫・小紅に導かれ、猫猫は本邸の隠し通路内へ。
- 内容: 毒矢を受けた鴟梟を発見。鴟梟は毒の拡散を防ぐため、自ら迅速に肉を削ぎ落としていた。猫猫はその場で血管の縫合を行う。
- 結果: 鴟梟が高い身体能力と判断力を有する武官であることを猫猫が認識。現場に雀が現れ、事態を掌握する。
第7幕:雀による「私的共犯関係」への連れ出し
- 状況: 脇梟の救護中に雀が介入し、公的な場からの隔離を決定。
- 内容: 雀は猫猫、負傷した脇梟、その子供たちを目隠し状態で馬車に乗せ、本邸から連れ出す。
- 結果: 猫猫は南の宿場町の隠れ家に保護兼監禁され、雀と脇梟が「西都の平和」という目的で繋がっている共犯関係であることを知る。
主要な転換点
転換点,変化前,出来事,変化,影響
本邸への移転,外部での医療活動,壬氏の決定による拠点移動,玉家の内部紛争に直接触れる環境へ,隠し通路の存在や親族間の対立を直接目撃することになる。
茸混入の解明,単なる体調不良,醸造所での原因特定,産業妨害を狙った悪意ある混入の判明,西都の治安を揺さぶる「組織的な悪意」が明確化する。
鴟梟の襲撃,遺産相続拒否による膠着,隠し通路での毒矢襲撃,後継者候補の物理的排除の発生,犯人が身内である可能性が高まり、秘密裏の保護が必要となる。
雀による拉致,壬氏の公的庇護下,雀による宿場町への移動,「公」から「私的な闇の共犯関係」へ,猫猫が壬氏の任務を離れ、西都を維持するための裏工作に組み込まれる。
主人公を中心とした人物関係の変化
- 猫猫 ⇔ 壬氏: 信頼関係は盤石だが、雀の介入により物理的に分断される。壬氏が関知しない領域で猫猫が行動を開始する。
- 猫猫 ⇔ 雀: 単なる「仕事熱心な侍女」から、独自の判断で要人を隠匿する「底知れない協力者」へと認識が変化。
- 猫猫 ⇔ 鴟梟: 噂上の「どら息子」から、命を救った「患者」かつ、あえて無能を演じて西都のパワーバランスを保とうとする「共犯者」へと変化。
主人公の認識と周囲の評価
- 猫猫自身の認識: 自身を単なる「医官手伝い」と定義。変人軍師(漢羅漢)の娘と見なされることを極端に嫌悪し、それが周囲の敬称(猫猫さま)に対する強い違和感に繋がっている。
- 周囲からの評価: 壬氏からは高度な判断を任せられる「替えのきかない腹心」、虎狼からは「尊敬に値する専門家」として扱われている。
- 認識の差が現れた場面: 虎狼から敬称で呼ばれた際に「値踏みされている」と感じる場面や、雀から事務仕事を押し付けられた際の拒否反応。
クライマックス
脇梟の襲撃から宿場町への隠匿までが今巻の構造的頂点である。
- 発生: 鴟梟が邸内の隠し通路で毒吹矢による狙撃を受ける。
- 猫猫の行動: 小紅の導きで現場に急行。暗闇の中、自ら肉を削ぎ毒を食い止めた鴟梟の止血と縫合を完遂する。
- 予定外の出来事: 処置中に雀が現れ、状況を即座に掌握。猫猫の意向を問わず、全員を外部へ連れ出す。
- 決着: 猫猫は目隠しをされ南の宿場町の一室に収容される。壬氏の庇護下から一時的に消失する。
巻末時点の状況
- 主人公の居場所: 南の宿場町、窓のない二間続きの部屋。
- 主人公の立場: 鴟梟の治療継続を名目に、雀の監視下に置かれた「私的共犯者」の状態。
- 解決済み問題: 鴟梟の致命的出血の阻止。理人国王子のむし歯。醸造所の悪酔い原因特定。
- 継続中の問題: 玉家の遺産相続問題の未解決。鴟梟を狙った犯人の特定。
- 今後につながる要素: 雀が語った教典の一節「神よ、私たちを見ていますか?」という言葉。これが雀の行動原理や西都の地下組織・信仰に深く関わっていることが示唆されている。
玉鶯一家の相関
西都の仮の領主であった玉鶯(ギョクオウ)の直系家族である妻、息子、娘、孫の相関関係と、彼を取り巻く一族内の複雑な状況について解説する。玉鶯の死後、莫大な遺産と西都の後継者問題を巡り、子どもたちの性格の違いや家庭内の軋轢が浮き彫りとなった。
玉鶯の三人の息子たち
玉鶯には四人の子どもがいるが、息子たちは野心家で強引だった父親の玉鶯とは似ていない。
・長男:放蕩ぶりが問題視されており、玉鶯の後継者としては不適切と見なされている。遺産の受け取りを拒否する姿勢を見せており、息子の玉隼が引き起こした問題に対して不器用ながらも謝罪を行うなど、父親としての責任を果たそうとはしているが、その方法は疑問視されている。
・次男(飛龍):父親に似ず、文官のような振る舞いをしており、主に公所に勤めている。遺産問題では三男と意見を異にしている。
・三男(虎狼):非常に謙虚で礼儀正しく、仕事も丁寧な青年である。しかし、悪役向きの名前が示すように裏では後継者争いに深く関与していた。実兄である鴟梟を後継者にふさわしくないと考えて排除を企てたり、西都の未来のために壬氏に自らの首を差し出して指導を乞うなど、過激で計算高い一面を持っている。
玉鶯の妻と長女
・妻(奥方):かつては商売上手な女性であったが、ある事件をきっかけに異国に滞在し、帰国後は本邸を離れて目立たない存在となっている。孫の玉隼が問題を起こしても軽く叱るにとどめるなど、家庭内の軋轢に介入しきれていない。
・長女(虎姉):現在は母親と共に滞在している。玉鶯の遺産を欲しがっているという一面が語られており、甥である玉隼の悪態に対して母親に抗議するなど、家族内の問題に意見を述べている。
孫世代の軋轢
・孫(玉隼):長男・鴟梟の息子であり、祖父の権威を笠に着た傲慢な性格である。やぶ医者に怪我をさせたり、小紅にいじめを行ったりしていた。後に事件に巻き込まれ、猫猫たちと共に逃避行に出るが、森の中で護衛に背負われて西都へ連れ戻された。
親族との断絶と対立
玉鶯は自身の一家以外の親族とも深い対立を抱えていた。
・兄弟たちとの対立:玉袁の息子たち(大海など)は、玉鶯が企てた砂欧への戦争計画に強く反対していた。玉鶯は会議の場で壬氏に関する疑惑を持ち出して兄弟たちを試すなど、身内内でも孤立を深めていた。
・異母妹(玉葉后)への偏見:玉鶯は玉葉后を異民族の妾の娘として蔑み、激しく嫌悪していた。しかし彼女が皇后になると、自身の娘を入内させようと身勝手な手紙を送り、玉葉后に明確に拒絶されている。
まとめ
玉鶯一家は強大な権力を持っていたものの、玉鶯自身の野心や独断専行が周囲との軋轢を生んでいた。彼の死後は残された家族たちの間に、遺産や後継者を巡る複雑な問題が残されることになったのである。
雀の過去と正体
雀(チュエ)の過酷な過去、その真の正体、および彼女が担う役割について解説する。雀は物語において飄々とした明るい侍女として振る舞っているが、その裏には深い悲しみと冷徹な実力が隠されている。
雀の真の正体:巳の一族の諜報員
雀は表向き、壬氏(ジンシ)の側近である馬良(バリョウ)の妻として生活している。しかし、その実態は以下の通りである。
・真の正体は、裏から皇族を守る諜報活動を専門とする巳(ミ)の一族の優秀な一員である
・夫の馬良は表の護衛を担う馬の一族であり、二人の結婚は政略的な側面を持っていた
・雀は馬良の好みに合わせた饅頭を作るなど、生活の細部にわたって献身的に尽くしており、二人の間には確かな愛情と深い絆が築かれている
過酷な生い立ちと母親からの拒絶
雀の明るい性格の背景には、凄惨な過去が存在する。
・幼少期に母が失踪し、父も母を探しに行ったまま帰らぬ人となり、財産を奪われ孤児となった
・生き残るために教会へ身を寄せ、異国での過酷な生活を経験した
・12歳の時に実の母親を探し出すが、不要な存在であると非情に突き放された
・その場にいた礼部の次官である魯侍郎に能力を見出され、巳の一族へと引き込まれた経緯を持つ
西都での暗躍と女鏢師としての活躍
二度目の西都遠征において、雀はその卓越した諜報能力と戦闘能力を遺憾なく発揮した。
・西都で複雑な陰謀が渦巻く中、猫猫や子どもたちを安全な場所へ避難させるため、女鏢師(ひょうし・用心棒)に変装して護衛を完遂した
・盗賊に支配された村に潜入した際には、猫猫と協力して毒を用いた巧妙な計画を立案し、盗賊たちを制圧して村を解放した
命懸けの護衛と深い傷
盗賊村からの脱出後、岩砂漠での野営中に火災に乗じて逃亡した熊男が猫猫を襲撃する事件が発生した。雀は身を挺して猫猫を救い出したが、激しい戦闘の代償として右腕が砕けて機能不全となるだけでなく、腹部にも重傷を負った。猫猫による緊急開腹手術によって一命を取り留めたものの、右腕には重い後遺症が残ることとなった。
まとめ
雀が巳の一族として働き続ける動機の一つには、自分を捨てた母親への復讐心が含まれている。自分が母親よりも価値の高い存在であることを証明しようとする彼女の姿勢は、冷徹な実力を支える源泉となっている。
重傷によって右手が不自由になる可能性があっても、彼女の高い通訳能力や諜報スキルは魯侍郎から引き続き高く評価されている。また、夫である馬良は彼女の正体や怪我の事実を知りながらも、その存在を尊重し共に生きていくことを選んでいる。過酷な運命に翻弄されながらも、周囲の人々を守り抜く雀は、物語における極めて重要な存在であるといえる。
盗賊村の蜂起
猫猫(マオマオ)たちが巻き込まれた盗賊村の蜂起、すなわち盗賊に支配された町での反乱と制圧の経緯、およびその結末について解説する。
盗賊村(信仰の町)の悲惨な状況
猫猫と小紅(シャオホン)は移動中、護衛とはぐれて追手から逃れる過程である信仰の町に辿り着いた。しかし、その地は独眼竜と呼ばれる頭領が率いる盗賊たちの根城と化していた。
・町では女や子どもたちが集会所に集められ、人質同然の状態で強制労働に従事させられていた
・独眼竜は異教徒と見なした者を容赦なく処分し、逆らう者には厳しい虐待を加えるなど過酷な支配を強いていた
・猫猫は自身が薬師であることを明かし、集会所での炊事や怪我人の治療を手伝いながら、生き延びる機会を窺うこととなった
隠されたメッセージと反撃の準備
ある時、猫猫は自分たちに返された服の袖に、雀(チュエ)の刺繍と異国語による隠しメッセージを発見した。
・メッセージの内容は、夕食時の酌を利用して独眼竜に行動を起こす機会を窺えという指示であった
・これにより、外部あるいは内部に協力者が存在し、盗賊制圧の計画が進行していることが示唆された
・猫猫は指示を受け、独眼竜への具体的な対抗策を講じるための準備を開始した
夕餉の酌を利用した毒の罠
作戦の決行日、猫猫は盗賊たちの夕餉(夕食)として、馬鈴薯(じゃがいも)を主材料にした料理を提案し調理を行った。
・盗賊たちに悟られないよう、馬鈴薯の皮や芽に加えて特別に用意した食材を用い、微量の毒を混入させた
・夕餉が進む中、料理を食べた盗賊たちは次々と食中毒のような症状を起こして倒れ、会場内は混乱に陥った
・標的である独眼竜には、蛇毒を混入させた馬乳酒を提供した
・独眼竜は口内に傷を負っていたため、そこから直接毒が体内に回り、致命的な重症を負わせることに成功した
外部部隊の突入と村の解放
盗賊たちが毒によって無力化される中、小紅の叔父である鴟梟(シキョウ)が率いる鏢師(用心棒)たちが教会へ突入した。
・外部部隊の攻撃によって残存する盗賊たちは一掃された
・猫猫と小紅は無事に救出され、町は長きにわたる盗賊の支配から解放されることとなった
まとめ
事件後、猫猫はこの制圧劇の真相を知ることとなった。道中を護衛していた女鏢師の正体は、壬氏(ジンシ)の侍女である雀であり、彼女が裏で毒を用いた緻密な制圧計画を立案していたのである。鴟梟と雀の連携、そして猫猫の機転と薬師としての専門知識が組み合わさったことで、凶悪な盗賊集団を壊滅させるに至ったのである。
壬氏と猫猫の絆
猫猫(マオマオ)と壬氏(ジンシ)の出会いから、数々の困難を経て深まっていく二人の絆の軌跡について解説する。
出会いと有能な駒としての始まり
二人の関係は、後宮の下女であった猫猫が、帝の御子の連続死の原因が毒おしろいであることを匿名で警告したことから始まった。その知識と聡明さに気づいた壬氏は、彼女を玉葉妃(ギョクヨウヒ)の侍女および毒見役として引き抜いた。
・当初、猫猫にとって壬氏は美貌を鼻にかける面倒な雇い主であり、壬氏も猫猫を事件調査に便利な有能な駒として扱っていた
・他の女性と違い、壬氏の美貌に全く興味を示さない猫猫に対し、壬氏は次第に強い関心を抱くようになった
命懸けの救出と秘密の共有
数々の事件を解決していく中で、二人の間には強い信頼関係が芽生えていった。
・中祀(祭事)の際、猫猫は祭壇が落下する事故から壬氏を身を挺して守り、足に怪我を負った
・壬氏はこの一件で猫猫を深く心配し、彼女が渇望していた高価な秘薬である牛黄(ごおう)を贈った
・避暑地での狩りの最中、壬氏は猫猫を抱えて滝壺へと飛び込み、洞窟で避難する中で互いに暗黙の秘密を共有する関係となった
・猫猫は壬氏が本物の宦官ではないという重大な事実に気づいたが、あえて核心には触れず、主従を超えた信頼を築いていった
焼き印と猫猫の医療への決意
二人の関係において最大の転機となったのは、壬氏が自らの脇腹に焼き印を押した事件である。これは彼が皇籍を離れ、玉葉后の敵にならないことを証明するための苛烈な決断であった。
・猫猫はこの重度な火傷の治療を任されたが、自身の外科技術の未熟さを痛感することとなった
・この経験が大きな動機となり、彼女は壬氏を救う技術を身につけるため、羅門(ルォメン)に教えを請い、医学書である華佗の書を探し求めるなど、医官として成長する決意を固めた
プロポーズと立場の葛藤
壬氏は猫猫に対し、明確な恋愛感情と執着を抱くようになり、直接の求婚に至った。
・猫猫は壬氏の真の身分である皇弟という立場の重さや、周囲への影響を懸念して提案に激しく戸惑った
・自分の感情と社会的な立場の間で葛藤し、二人の関係は一時的に曖昧なものとなった
西都での過酷な日々がもたらした安らぎ
二度目の西都(戌西州)遠征において、二人の絆は単なる主従や恋愛感情を超えたものへと昇華した。
・長期の船旅や西都での滞在中、猫猫は専属で壬氏の火傷の治療を続け、物理的および精神的な距離を縮めた
・複雑な政治状況に疲弊する壬氏に対し、猫猫は頬を叩いて活を入れるなど、対等に意見をぶつけ合える深い関係を築いた
・過酷な事件が重なり疲労の絶頂に達した猫猫は、無意識のうちに壬氏の執務室へと足を運び、彼の傍らで深い安らぎを得た
・互いが精神的に寄り添い、不可欠な存在となっていることが改めて示された
まとめ
西都から中央へ戻る帰路の船上で、二人は手をつなぎ軽い接吻を交わした。互いの立場や心情を不器用に探り合いながらも、その絆は確実な前進を見せているのである。二人の歩みは、今後も国家の動乱や個人の成長と共に、より強固なものへと変化していくことが期待される。
キャラクター紹介
猫猫
薬草や毒に精通した官女である。鋭い観察眼と知識を用いて病や事件の原因を特定する。周囲の人間を医療技術で支えながら、西都の諸問題に対処する立場にある。
・所属組織、地位や役職
医官付官女。
・物語内での具体的な行動や成果
玉鶯の孫娘に対し、腸閉塞を取り除く手術を行い成功させた。葡萄酒醸造所での不調が特定の茸によるものであると解明した。盗賊に支配された村で馬鈴薯の芽を用いた毒を使い、賊を無力化する。重傷を負った雀の応急処置を行い、彼女の命を救った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
物語の終盤で21歳へと成長する。西都での長期任務を終え、壬氏らと共に中央へと帰還した。
壬氏
皇族の地位にあり、西都の統治や事後処理を担う青年である。過労により衰弱しながらも、領民や国家のために公務をこなす。猫猫に対して深い信頼を寄せ、彼女の安全を常に案じている。
・所属組織、地位や役職
皇弟。
・物語内での具体的な行動や成果
玉鶯の死後、西都の管理や理人国との外交交渉を主導した。行方不明になった猫猫を救出するために羅漢らと協力して行動する。西都の未来を見据え、鴟梟を象徴的な指導者に据える折衷案を検討した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
西都での滞在を終えて中央への帰還を果たす。猫猫との距離が近づき、船上では彼女と静かな時間を過ごした。
雀
壬氏に仕える侍女であり、隠密や諜報を担う「巳の一族」の者である。明るく振る舞う裏で、極めて高い戦闘能力と冷徹な判断力を備えている。猫猫を「ムスメさん」と呼び、護衛や指南役として行動を共にする。
・所属組織、地位や役職
壬氏付の侍女、巳の一族の諜報員。
・物語内での具体的な行動や成果
猫猫を伴い南の宿場町や盗賊の根城へと潜入する。女鏢師に変装して猫猫と子供たちを護衛した。逃亡した熊男との戦いで、自身の右腕を犠牲にしながらも猫猫を守り抜く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦いによる負傷で右腕が機能不全となる。自身の過去を「不要な存在」と自嘲しながらも、夫である馬良との絆を深めた。
虎狼
玉鶯の三男であり、一族の中では謙虚で礼儀正しい態度を示す。西都の発展を第一に考え、自らの命を懸けた政治的な立ち回りを行う。猫猫や医官たちを丁重に扱い、実務面での支援を行う。
・所属組織、地位や役職
玉鶯の三男。
・物語内での具体的な行動や成果
鴟梟が襲撃された際、小紅に命じて猫猫を呼びに行かせた。理人国の使者と壬氏との会談を仲介する。西都に壬氏を留めるため、自らの首を差し出す覚悟で交渉に臨んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後継者争いにおける自身の役割を自覚し、長兄の鴟梟を立てる選択をする。壬氏の中央帰還後は、事務方として船に乗り込んだ。
鴟梟
玉鶯の長男であり、かつては放蕩息子と見なされていた。武術に長け、鏢局を経営して実戦的な能力を発揮する。外見が亡き父の玉鶯に酷似しており、民衆を惹きつける資質を持つ。
・所属組織、地位や役職
玉鶯の長男、鏢局の経営者。
・物語内での具体的な行動や成果
毒矢による重傷を負いながらも、猫猫の治療を受けて回復した。盗賊に支配された村へ駆けつけ、猫猫と小紅を救出した。熊男との戦いでは雀と連携して敵を討ち取る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
西都を統治するための「象徴」としての役割を受け入れる。身なりを整えたことで、玉鶯の再来として民衆の支持を得ることに成功する。
馬良
雀の夫であり、事務能力に長けた文官である。極度の対人恐怖症だが、妻である雀に対しては深い愛情と理解を示している。
・所属組織、地位や役職
文官。
・物語内での具体的な行動や成果
執務室で壬氏の書類仕事を支え、理人国の情勢を分析した。重傷を負った雀を献身的に看病し、彼女が「巳の一族」であることを受け入れる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
雀の右腕が使えなくなった後も、彼女と共に生きる決意を新たにした。
羅半兄
農業の知識に秀でた青年である。西都の食糧問題を解決するために、各地で畑の指導や作物の研究を行っている。
・所属組織、地位や役職
農業指導員。
・物語内での具体的な行動や成果
収穫量の多い特別な小麦の種を持ち帰った。物置を改造して苜蓿(もやし)を育て、新たな栄養源を確保する。火事の際に虎狼を救出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
農業面での多大な貢献が認められている。中央への帰還が話題となるが、実際に行動を共にしたかは不明瞭である。
天祐
猫猫と共に働く若き医官である。解剖や手術に異常な興味を示し、高い外科技術を持っている。
・所属組織、地位や役職
医官。
・物語内での具体的な行動や成果
猫猫の助手として玉鶯の孫娘の手術を支えた。勉強のために事故で切断された腕を持ち帰るなどの奇行を見せる。
飛龍
玉鶯の次男であり、文官としての振る舞いを得意とする。公所において実務を担当し、理人国の使者との連絡役を務めた。
・所属組織、地位や役職
玉鶯の次男。
玉隼
玉鶯の長男(鴟梟)の息子である。従妹の小紅に対していじめを行うなどの問題行動が目立つ。
・所属組織、地位や役職
玉鶯の曾孫。
・物語内での具体的な行動や成果
小紅を「取り替え子」と呼び、泥団子を投げつけるなどの嫌がらせを繰り返した。猫猫と共に南の宿場町へ連れ去られるが、最終的に小紅から反撃を受ける。
小紅
玉鶯の孫娘であり、以前猫猫に手術を受けた少女である。周囲からの偏見やいじめに耐えながら、強く成長していく。
・所属組織、地位や役職
玉鶯の孫娘。
・物語内での具体的な行動や成果
危篤となった叔父の鴟梟を助けるため、隠し通路を通って猫猫に助けを求めた。盗賊の村では猫猫の指示に従い、毅然と振る舞う。物語の終盤では、自分をいじめていた玉隼に立ち向かった。
魯侍郎
礼部の次官であり、雀を「巳の一族」へと導いた人物である。
・所属組織、地位や役職
礼部次官。
・物語内での具体的な行動や成果
負傷した雀を見舞い、彼女の今後の役割について話し合った。雀の通訳能力を高く評価し、引き続き任務に就くことを望んでいる。
薬屋 11巻レビュー
西都編まとめ
全巻まとめ
薬屋 13巻レビュー
備忘録
序話
失われた居場所
その人物は、父にとって宝物だったように、誰かにとって特別な存在になりたいと願っていた。しかし母が消え、母にとって家族は道具に過ぎなかったと知り、さらに父も失ったことで自分の価値を見失った。それでも母を求め、自分に何ができるのかを探しながら、居場所と存在意義を証明しようとしていた。
一話 本邸の我が儘坊
玉鶯亡き後の本邸
玉鶯の死後も業務は続いていたが、壬氏は過労で衰弱していた。後継者候補として陸孫や壬氏の名も挙がる一方、玉鶯の長男は放蕩ぶりから不適格と見られていた。
玉隼の謝罪
長男の息子である玉隼はやぶ医者を襲い、謝罪に訪れたものの反省していなかった。長男の廃嫡もあり得る中、その家族は不安定な立場に置かれ、猫猫も本邸で彼らと関わることを警戒した。
二話 温室と礼拝堂
温室の確保
本邸へ移った猫猫は温室を見つけて喜び、庭師と胡瓜の扱いを巡って衝突した。話し合いの末、温室の三分の一を使わせてもらうことになった。
異教の礼拝堂
猫猫は雀と礼拝堂を訪れ、異教の祈り方を教えられた。やぶ医者の療養生活も続いており、李白が身の回りの世話をしていた。
三話 玉鶯の子どもたち
虎狼の謝罪
医務室に玉鶯の三男・楊虎狼が現れ、月の君の下で働くことになったと告げた。虎狼は甥がやぶ医者を傷つけたことを礼儀正しく謝罪し、菓子と葡萄酒を差し出した。
玉鶯の家族
やぶ医者から、玉鶯には四人の子がおり、虎狼が末子であると聞かされた。また、玉鶯の妻はかつて商才を発揮していたものの、異国での出来事を境に目立たなくなっていた。
四話 深窓の奥方
小紅への嫌がらせ
猫猫は玉鶯の孫娘を診察するため、虎狼やその家族のもとを訪れた。そこで玉隼が小紅の髪を引っ張り、泥をつけ、異国人の取り替え子だと罵っていた。
玉鶯を慕う小紅
周囲が玉隼への対応を巡って揉める中、小紅は猫猫に祖父である玉鶯の悪口を言わないでほしいと頼んだ。猫猫はその願いを受け入れ、謝罪した。
五話 三男次男 長男
三兄弟の違い
三男の虎狼は丁寧で慎重な人物で、次男の飛龍も文官然としており、いずれも父の玉鶯とは印象が異なっていた。
長男と玉隼
長男は玉隼の非礼を詫びるため、鹿の頭を土産に李白のもとへ現れた。父親として息子を正そうとしていたものの、そのやり方には問題が残っていた。
六話 葡萄酒醸造所
職人たちの悪酔い
猫猫は外出許可を得て、虎狼と李白とともに葡萄酒醸造所へ向かった。そこで複数の職人が激しく悪酔いしており、猫猫は食事や飲酒内容を調べた。
下戸にする茸
原因は汁物に入っていた茸であり、それを食べて酒を飲むと強い悪酔いを起こすことが分かった。猫猫は自ら試して作用を確かめ、感染症や通常の毒ではないと結論づけた。
七話 遺産問題
玉鶯の遺産
猫猫が本邸へ戻ると、玉鶯の遺産を巡って家族が揉めていた。長男は受け取りを拒み、長女は欲しがり、次男と三男もそれぞれ異なる意見を持っていた。
壬氏との夕餉
遺産の話を聞いた後、猫猫は壬氏と夕餉を取った。その席では猫猫の酒好きも問題にされ、壬氏とのやり取りが続いた。
八話 俊杰
小姓の俊杰
西都滞在が半年を越え、猫猫たちには決まった使用人がつくようになった。その中には元服前の小姓・俊杰がおり、控えめで真面目な働きぶりから信頼されていた。
小さな芋
羅半兄は畑で収穫した芋を持ち込み、小ぶりな出来に不満を漏らした。緑色になった部分には毒があるため注意が必要だと話す一方、俊杰の名を巡る会話から羅半兄の複雑な反応も見られた。
九話 異国娘
治らない頭痛
虎狼から頼まれた猫猫は、頭痛に苦しむ良家の娘を往診した。患者は身体に触れさせなかったが、猫猫は聞き取りから原因がむし歯だと見抜き、抵抗する娘から歯を抜いて治療した。
理人国の王族
白金の髪と青い目を持つ少女について、馬良は理人国の第四王子である可能性を指摘した。なぜ理人国の王族が西都にいるのかは分からなかった。
十話 急患と緊急事態
鴟梟の毒矢
小紅が猫猫のもとへ駆け込み、叔父の鴟梟を助けてほしいと頼んだ。猫猫は隠し通路を通って鴟梟のもとへ行き、自らえぐり取っていた毒矢の傷を処置した。
雀への疑念
鴟梟が正式に医者へかからなかった理由や、小紅だけが猫猫を呼んだ事情には不自然さが残った。さらに雀の曖昧な反応から、猫猫は内輪で何かが起きていると疑った。
十一話 南の宿場町
突然の連行
猫猫は小紅、玉隼、負傷した鴟梟とともに見知らぬ場所へ連れてこられていた。異国語の話し声と潮の匂いから、南の宿場町にいると推測した。
雀と鴟梟の関係
鴟梟は雀と利害関係で結ばれており、その行動は戌西州の平和に関係していると話した。しかし猫猫が連れてこられた理由については、雀から直接聞くよう求めた。
十二話 理人国
第四王子の捜索
少し前、理人国の使者が壬氏との面会を求めていた。理人国では食糧危機や後継者争いが疑われ、行方不明となった第四王子の捜索協力を茘に求めていた。
鴟梟の侵入
会談の後、鴟梟が本邸へ強引に入ろうとして争いとなり、逃走後に猫猫が治療したとの報告が壬氏へ届いた。壬氏は理人国の問題と鴟梟の行動が重なったことに頭を抱えた。
十三話 鏢師
鴟梟との生活
猫猫は鴟梟の看病をしながら、小紅の世話と玉隼の相手をしていた。鴟梟は二人の子どもに優しく接し、とりわけ小紅から懐かれていた。
女鏢師との移動
解放されるはずだった猫猫たちは、女鏢師によって別の場所へ移されることになった。上質な服に着替えさせられた猫猫は、曲刀を携える女鏢師に命を預け、未知の道へ進んだ。
十四話 変装
母子への変装
猫猫、小紅、玉隼は次の村を通るため、女鏢師の化粧で母子に見えるよう変装した。玉隼は反発したが、女鏢師に押し切られた。
虎狼の指示
小紅は、隠し通路を教え、鴟梟を救うため猫猫を呼ばせたのが虎狼だったと明かした。猫猫は虎狼が事件に深く関与していたと知った。
十五話 優先順位
西へ続く逃避行
猫猫たちは女鏢師と西へ移動し、食料や防寒具、生薬を集めながら危険な交易路を避けた。西都へ戻すにはまだ危険があるとして、女鏢師は護衛を続けた。
命を優先する指示
女鏢師は猫猫に神経毒と針を渡し、危機の際には自分の命を最優先するよう命じた。猫猫は子どもたちを守りつつ、自身も生き残る必要に迫られた。
十六話 嘘つき
虎狼の裏切り
猫猫が鴟梟と接触してから十日が過ぎ、壬氏は理人国の第四王子との関係を疑いながら猫猫の安全を案じていた。調査の末、虎狼が鴟梟を後継者から排除しようとしていたことが判明した。
猫猫救出への決断
猫猫の不在について周囲には港町への買い付けと説明されていたが、虎狼がそれを嘘だと知っていたことを羅漢に看破された。追及を受けた虎狼は鴟梟が後継者にふさわしくないため排除しようとしたことを認め、燃える書類の中へ自ら飛び込んだが、駆けつけた羅半兄らによって救出された。
十七話 信仰の町
森での襲撃
猫猫たちは信仰の町を目指したが、先行した女鏢師の代わりに怪しい使者が現れた。護衛が使者を斬ったことで危険を察し、一行は森へ逃げた。
異教の教典
追手が多いため、玉隼は護衛と離脱し、猫猫と小紅は森に残された。追い詰められた猫猫は異国の教典の一節を使って男を説得し、その信仰を利用して殺されることを免れた。
十八話 盗賊の根城
独眼竜との対面
信仰の町は盗賊の根城となっていた。猫猫と小紅は信者である中年男に教会へ連れて行かれ、盗賊の頭領である独眼竜と対面した。
信者としての保護
独眼竜は小紅を手配中の異国人と疑ったが、目的の人物ではないと分かると興味を失った。中年男は同じ信仰を持つ者として猫猫たちを見逃し、女性に預けた。
十九話 盜賊村前編
集会所の女たち
猫猫と小紅は女性や子どもが集められた場所へ送られ、炊事を手伝うことになった。猫猫は薬師だと明かし、持っていた薬草を手元に残すことを許された。
盗賊に支配された町
町では独眼竜の支配に逆らえず、異教徒とされた者が処分されていた。猫猫は生き残るため周囲を観察しながら、女鏢師たちの行方も気にかけていた。
二十話 盜賊村後編
傷ついた少年
猫猫は独眼竜から虐待を受けた少年を治療した。薬草と応急処置で容態を安定させたものの、栄養不足や環境の悪さから十分な治療には限界があった。
袖の隠し文
返された衣服の袖に、雀の刺繍と異国語の指示が隠されているのを猫猫は発見した。夕餉の酌を利用して独眼竜に対抗する機会を作るよう示されており、猫猫は準備を始めた。
二十一話 酌
馬鈴薯の罠
猫猫は馬鈴薯を使った料理を用意し、盗賊たちに振る舞った。皮や芽などを利用して微量の毒を仕込み、食中毒のような症状を起こさせる計画だった。
独眼竜の失墜
盗賊たちが次々と体調を崩す中、独眼竜には蛇毒を仕込んだ馬乳酒も作用した。混乱が広がったところへ鴟梟と鏢師たちが突入し、猫猫と小紅は救出された。
二十二話 事の顛末
鴟梟の事情
盗賊が制圧された後、鴟梟は鏢局を継いだことや、盗賊との関係が誤解だったことを猫猫へ説明した。異国の要人を護送する任務が、今回の騒動につながっていた。
女鏢師の正体
猫猫たちを護衛していた女鏢師は雀だった。雀は二人を安全な場所へ逃がしながら盗賊を無力化する計画を進めており、鴟梟と協力して任務と救出を成功させていた。
二十三話 帰路
四兄弟への疑問
西都へ戻る途中、猫猫は玉鶯の息子たちについて考えた。とりわけ虎狼の行動が今回の混乱を招いたことから、西都へ戻ったら殴ろうと決めた。
残る危険
雀は猫猫の護衛を続け、道を変更した理由やまだ不安要素が残っていることを説明した。一行は山脈沿いを進み、野営しながら西都を目指した。
二十四話 手負いの獣
熊男の襲撃
岩砂漠で野営中に火事が起こり、その混乱に乗じて熊男が逃げ、猫猫へ襲いかかった。雀が割って入り、鴟梟と協力して熊男を倒した。
雀の重傷
戦いで雀は右腕と腹部に重傷を負った。猫猫は過去の傷跡が残る雀の身体を見ながら、右腕が使えなくなる可能性を知りつつも、命を救うため治療に全力を注いだ。
二十五話 醜い雀の子
母を求めた少女
雀は幸せな家庭で育ったが、母が姿を消し、母を探した父も戻らず、財産まで奪われた。生きるため教会へ入り、異国を経て十二歳で西都へ向かった。
不要な存在
雀は母を探し当てたものの、自分が母に必要とされていないと知った。しかしその場にいた男へ能力を示したことで評価され、後継者となる機会を得た。
二十六話 夫婦
巳の一族との縁
馬良は十六歳の頃、母の桃美から、皇族を表から守る馬の一族と、裏で諜報を担う巳の一族について聞かされた。その後、明るい性格の雀と見合いをして結婚した。
雀との生活
雀は馬良の勉強を助け、好物を作るなど自然に生活へ溶け込んだ。任務で重傷を負い右手が使えなくなる可能性が生じても、馬良は巳の一族である雀を受け入れ、共にいることを選んだ。
二十七話 師弟
魯侍郎との対話
雀のもとへ、彼女を巳の一族へ引き入れた魯侍郎が訪れた。右手が使えなくなる可能性があっても、高い通訳能力を持つ雀を今後も活用する意向を示した。
雀の価値
雀は母より価値のある存在になり、自分の価値を証明したいと願っていた。それは父を忘れないための復讐でもあった。また、月の君を幸せにするという命令の意味を考えながら、猫猫を守った選択は間違っていなかったと感じていた。
二十八話 安眠
壬氏の傍ら
雀の治療で疲れ果てた猫猫は、なぜか壬氏の執務室へ向かった。二人は疲労や心配事を話した末、そのまま床へ横になった。
久しぶりの眠り
猫猫は壬氏の体温に安心し、頬へ触れながら何日ぶりかの深い眠りについた。壬氏もそのまま猫猫とともに眠った。
二十九話 折衷案
虎狼の覚悟
壬氏が休息を取って回復した後、虎狼は西都の将来について、自分の命を差し出すことも辞さない覚悟で意見を述べた。鴟梟が統治者に適していると認めながらも、壬氏が西都に残ることを望んでいた。
西都の象徴
雀は壬氏を西都へ縛りつける案には反対し、折衷案として鴟梟を西都の象徴となる存在に据えることを提案した。壬氏は眠る猫猫の傍らで、その案を検討した。
三十話 成長
二十一歳の猫猫
西都での生活は落ち着きを取り戻し、猫猫は二十一歳になった。医務室や温室での日常を続ける中、鴟梟は本邸で政治に関わり始め、玉鶯に似た容姿もあって民衆から受け入れられつつあった。
帰還の目途
雀も徐々に回復し、西都の食糧問題にも一定の目途が立ったことで、壬氏たちは中央へ戻れることになった。猫猫は安堵し、畑で働く羅半兄にも知らせようとした。
小紅の成長
小紅は玉隼に自ら立ち向かうようになっていた。その姿を見た羅半兄は猫猫が何を教えたのか尋ねたが、猫猫は何もしていないと答えた。
終話
中央への船旅
猫猫たちは戌西州を離れ、中央へ向かう船に乗っていた。西都では鴟梟が政治に加わって支持を得ており、壬氏も中央へ帰還することになった。
船上の人々
変人軍師は船酔いに苦しみ、虎狼は雑務をこなしながら猫猫へ過剰な忠誠を示していた。猫猫はその態度に困惑しつつ、それぞれの変化を見守った。
壬氏と猫猫
見張り台にいた壬氏のもとへ猫猫が上がり、二人は手をつないで静かな時間を過ごした。壬氏は猫猫へ軽く口づけし、互いの気持ちを探るようなやり取りを交わしながら中央への航海を続けた。
出港後、猫猫は農村へ指導に出ていた羅半兄が船に乗っていないことに気づいた。名簿を確認しようとするも誰も彼の本名を知らず、多大な功績を上げた羅半兄は西都へ置き去りにされたまま、船は中央へと向かった。
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