どんな本?
『薬屋のひとりごと』は、日向夏 氏による日本のライトノベル作品。
中世の後宮を舞台に、薬学の専門知識で事件の謎を解く少女・猫猫(マオマオ)の物語。
小説家になろうで連載されているほか、ヒーロー文庫からライトノベル版が刊行されている。
また、月刊ビッグガンガンと月刊サンデーGXでコミカライズ版が連載されており、2023年にはテレビアニメ化も決定している。
月刊サンデーGXの方が、中華の雰囲気が強く、文化の小さい部分にも気をつけているように感じている。
概要
西都から一年ぶりに都へ戻った医官付官女の猫猫は、懐かしい都での穏やかな日常の再開を望んでいた。しかし、羅漢の執務室で発見された武官の首吊り他殺事件の解明に奔走することとなった。
さらに阿多妃から壬氏の重大な出生の秘密を直接打ち明けられた。その後、猫猫は彼から夜伽を思わせる寝所への呼び出しを受ける。玉葉后の敵にならない覚悟を秘め、避妊の薬草を持参して壬氏の宮を訪れた。
最終的に壬氏は彼女の決死の覚悟を知り、手を触れずに優しく帰宅させた。彼は猫猫を守るために皇族の地位を捨てる覚悟を本気で固めたのである。二人は不確かな未来と向き合いながら、新たな一歩を踏み出すこととなった。
主要登場人物
猫猫
- 立場・所属:宮廷の医局で勤務する医官付官女。
- 主人公との関係:主人公。
- この巻での主な役割:羅漢の執務室で起きた武官の首吊り事件を解決した。また、女華の形見の玉牌を調べ、王芳の企みを看破する。
- この巻で起きた重要な変化や行動:阿多妃から壬氏の出自の真実を告げられた。そして、不退転の覚悟で避妊の薬草を用意し、壬氏の宮を訪問した。
壬氏(華瑞月)
- 立場・所属:茘の宮廷に所属する皇弟(月の君)。
- 主人公との関係:猫猫を深く愛し、生涯の伴侶として求婚している。
- この巻での主な役割:西都遠征の報告を主上に終え、中央での公務に復帰する。
- この巻で起きた重要な変化や行動:猫猫が命懸けの覚悟で自らの寝室にやってきた事実を知る。彼女に重荷を背負わせている自身の未熟さを猛省した。その後、皇族離脱を本気で決意する。
阿多
- 立場・所属:離宮で暮らす元上級妃。
- 主人公との関係:壬氏の実の母親。
- この巻での主な役割:子の一族の子供たちや翠苓を離宮に匿っている。
- この巻で起きた重要な変化や行動:猫猫を離宮に呼び寄せ、壬氏の出生の秘密を完全に打ち明けた。猫猫に逃げ出す選択肢を示したが、彼女の覚悟を認めて宝物を贈る。
羅半
- 立場・所属:宮廷の戸部に勤務する有能な文官。
- 主人公との関係:猫猫のいとこ(親戚)。
- この巻での主な役割:羅漢の執務室で発生した王芳殺害事件の調査を差配した。
- この巻で起きた重要な変化や行動:猫猫の検死能力を信頼し、彼女を執務室に招いて犯人特定の証拠固めを行う。
羅半兄
- 立場・所属:西都の蝗害対策に貢献した農業指導員。
- 主人公との関係:猫猫の親戚。
- この巻での主な役割:西都に一人置き去りにされたが、無事に都へと帰還した。
- この巻で起きた重要な変化や行動:羅半邸に自力で帰り、その実直な人柄から、姚たちに「理想の旦那さま」と密かに尊敬される。
姚(魯姚)
- 立場・所属:宮廷の医局で働く医官付官女。
- 主人公との関係:猫猫の良きライバルであり友人。
- この巻での主な役割:猫猫が不在の間、医療技術を熱心に習得した。
- この巻で起きた重要な変化や行動:羅半に対して反発しつつも引き寄せられる。その後、新しく帰還した羅半兄の人柄に強い安心感を得る。
燕燕
- 立場・所属:姚に仕える、優秀な医官付官女。
- 主人公との関係:猫猫の同僚。
- この巻での主な役割:羅半から姚を遠ざけようと必死に画策した。
- この巻で起きた重要な変化や行動:三番からの引っ越し提案を警戒する。また、姚の結婚相手として、誠実な羅半兄が最もふさわしいのではないかと思案した。
雀
- 立場・所属:阿多に仕える隠密であり、壬氏の侍女。
- 主人公との関係:猫猫を「ムスメさん」と呼ぶ友人。
- この巻での主な役割:西都の戦いで右腕が不自由になったが、今も諜報活動を行う。
- この巻で起きた重要な変化や行動:真の主人である阿多の密命を受け、阿多からの重要な手紙を猫猫に手渡した。
読んだ本のタイトル
(英語: The Apothecary Diaries、中国語: 药屋少女的呢喃)
著者: #日向夏 氏
イラスト: #しのとうこ 氏
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あらすじ・内容
西都に残る人たちと別れ、一年ぶりに中央に帰ってきた猫猫たちは、また以前の仕事に戻る。
薬屋のひとりごと 13
蝗害、西都のお家騒動からようやく離れることができて、平穏な日々が戻ってくるかに思えたが――。
猫猫が帰って来てもまだその友人たちに居候されて困る羅半。
上司のげんこつを食らいながら、毎日面白そうなものを探す天祐。
面倒くさい客の相手をしながら、どのように技女を引退するか考える女華。
弟の恋についてあれこれ画策する麻美。
お嬢さまの心境に不安しかない燕燕。
言動と心境にずれが生じ、ちぐはぐな行動ばかりしてしまう姚。
蝗害の災禍にたった一人立ち向かい、生きて西都に戻った羅半兄。
西都でも中央でもそれぞれ違う人生があり、皆が皆、自分なりの悩みを抱えて生きていた。
猫猫といえば、壬氏の思いに対して素直になる道を選ぶ。
ただ、そこに大きな問題が存在することも理解していた。
官僚の中には玉葉后の息子が東宮にふさわしくないからと、他の皇族を立てようと考える者たちがいた。
壬氏はもとより、梨花妃の皇子や、数代前の皇族の血筋までたどろうとしている様子。
国の頂きに近い者には平穏な日々など望むべくもない。
今巻は猫猫のゆかりの人々の視点からも、人生を見ていく。
彼ら、彼女らはどう考え、どう生きていくのか。
また、猫猫は壬氏をどう受け止めていくのか。
都の人々のそれぞれの思いが大きく動いていく。
感想
シリーズ累計2100万部。
漫画版も小学館版とスクエニ版が同時発売。
さらにアニメ化のお知らせ。
凄いな、『薬屋のひとりごと』。
順風満帆というより、さらに飛躍していきそうな勢いである。
……何だろう。
大量に増えていく数字を見ていると、蝗害を思い出してしまった。
そんな13巻は、西都編を終えて約一年ぶりに都へ帰還。
大きな戦いや蝗害はひとまず終わり、猫猫、壬氏、羅漢、馬閃、姚、燕燕、緑青館の妓女たちなど、それぞれの現在が描かれる巻だった。
そして12巻で置き去りにされた、
羅半兄。
13巻でも扱いが酷い。
でも、その日記を読むと分かる。
この人、
メチャクチャ凄い人じゃないか。
なのに最後まで報われない。
羅半兄〜〜!!!(涙)
羅半兄の日記で9巻から12巻を振り返る。やっぱりこの人、凄い農業人だった
今回面白かったのが羅半兄の日記。
西都へ行くことになった経緯から、芋を持って各地を回り、蝗害に遭い、食糧不足の中でも作物を育て続けた日々までが本人目線で描かれる。
猫猫たちから見ると、
農業に詳しい便利な羅半兄。
くらいの扱いだった。
でも本人はかなり真面目に西都の農業を見ている。
土が痩せている。
水が足りない。
麦踏みが足りない。
馬鈴薯はこちらの気候に合う。
識字率が低い農村では、書物を渡すだけでは農法が伝わらない。
だったら短期間でどう教えるか。
さらに飛蝗に襲われながらも、丈が低く倒れにくい小麦の種まで持ち帰っている。
派手ではない。
でも何万人、何十万人という人間の食事につながる仕事である。
やっぱり凄い人だよ、羅半兄。
しかも、その記録は後に農業書として編集される。
歴史に残った!
……と思ったら、
作者不明。
何でだよ!!!
本人が日記に自分の名前を書いていなかったため、誰の日記なのか分からなくなったらしい。
羅半兄〜〜!!!
12巻では船に置いていかれる。
13巻では功績が書物になっても名前が残らない。
ここまで不遇だと逆に才能だろww
本名も俊杰らしいところまでは見えてくるのだが、本人が結局、
「俺のことは羅半兄と呼んでくれ」
と名乗ってしまう。
もう本人まで諦めてるじゃないか。
帰って早々、羅漢の部屋に首吊り死体。俊杰少年が普通の反応で安心する
都へ戻った羅漢は船酔いで完全にダウン。
帰朝報告どころではなく、そのまま屋敷へ帰ってしまう。
そして翌日。
仕事場へ行ってみれば、
首吊り死体。
帰って早々これかよ。
死んでいたのは、羅漢の元部下で別派閥へ鞍替えした武官・王芳。
ここで羅漢が怖い。
野次馬を見ただけで、
犯人はこの中にいる。
と分かってしまう。
でも羅漢本人には、
なぜそう判断したのか。
どう殺したのか。
証拠は何なのか。
を普通の人へ説明できない。
答えだけ分かって途中式がない。
仕方なく羅半が猫猫、劉医官、天祐たちを呼び、他殺であることを証明していく。
最終的に浮かび上がるのが三人の官女。
王芳、
三股してたのか……。
しかも相手同士が友人。
そりゃ最悪だ。
三人なら、縄と梁を使って屈強な武官でも吊り上げられる。猫猫と羅半が砂袋を使って実演するところまで含め、殺害方法がきっちり証明されていく。
その横で俊杰少年だけが首吊り死体を見て本気で怯えている。
良かった。
普通の人がいた。
人間を駒として見る羅漢。
何でも数字で考える羅半。
死体に興味津々の天祐。
この辺に囲まれていると、
俊杰少年の反応に安心するわ。
猫猫、壬氏の気持ちに応える覚悟を決める。でも政治的に重すぎるんだよな
13巻で最も大きく動いたのは、やはり猫猫と壬氏だと思う。
中央へ戻った壬氏を待っていたのは、
相変わらずの人気。
部屋には呪具や髪の毛を使った怪しい物まで仕込まれている。
水蓮と麻美が大掃除。
本当にこの男も大変だな。
そして政治状況も面倒くさい。
皇帝には玉葉后との東宮がいる。
しかし赤い髪と碧い目を嫌う人間もいる。
梨花妃の息子を推す勢力もいる。
さらに傍系の男性皇族を担ごうとする動きまである。
そこに皇弟・壬氏。
しかも実際には、
皇帝と阿多の息子。
猫猫も薄々分かっていたが、今回は阿多本人から真実を聞かされる。
つまり猫猫が壬氏と結ばれ、子どもが生まれれば、
また新しい皇位争いの材料になりかねない。
そこで猫猫は壬氏から夜に呼ばれ、
本気で応える覚悟をする。
ただし花街育ちの猫猫。
準備がガチすぎる。
避妊のための知識と道具を揃え、万が一のことまで考えている。
猫猫にとって壬氏を受け入れることは、
好きだから一緒になる。
だけでは済まない。
下手をすれば玉葉后とその子どもの敵になる。
壬氏もそこで初めて、
自分は浮かれていた。
と気づく。
そして猫猫には手を出さず、
二人が何の懸念もなく夫婦になれる状況を作ろうとする。
猫猫もついに年貢の納め時かと思ったけれど、
この二人、
結婚するだけで国家問題になるんだよな。
面倒くさすぎる。
馬閃と里樹、姚と羅半兄、そして緑青館。それぞれの人生が次へ進み始めた
13巻は大事件より、
周囲の人物がこれからどう生きるのか。
という話も印象に残った。
馬閃は、
家鴨の舒まで都へ連れて帰ってきた。
麻美に怒られる。
そりゃ怒られるわw
でも舒は馬閃と里樹をつなぐものでもある。
麻美も弟の様子から、
相手って元妃じゃないでしょうね?
と気づいてしまう。
里樹は家の都合で何度も振り回され、現在は出家中。
馬の一族から見ても政治的な利点は薄い。
それでも馬閃は里樹を大切に思っている。
この二人は本当に薔薇の道だな。
馬閃、気張れ。
一方、羅家に居候している姚と燕燕。
姚は帰ってきた羅半兄と出会い、
この人、理想の旦那様に近いのでは?
と思い始める。
おお?
ガイ・ミーツ・ガール?
年齢差を考えると、
武官さーーーん!!
案件になりそうな気もするけどw
そして緑青館では梅梅が身請けされ、棋聖の弟子として新しい人生へ。
白鈴は相変わらず。
今回は女華にも焦点が当たる。
学問を身につけ、身体ではなく芸を売る妓女として生きてきた女華。
それでも年齢を重ねれば将来への不安はある。
同じ妓女の娘として生まれた猫猫は、薬師となり、西都まで行き、宮廷の仕事までしている。
だからといって女華の人生が間違っているわけではない。
皆、生まれも才能も立場も違う。
13巻は西都編で大きく動いた物語をいったん整理しながら、それぞれが次へ進む準備をしている巻だったように感じた。
そして何より、
羅半兄。
西都を救うほど働く。
貴重な小麦を見つける。
記録も残す。
後世では農業書にまでなる。
作者不明。
……あんまりだろww
さて、西都編も完全に終わった。
猫猫と壬氏もいよいよ逃げられないところまで来た。
次は何が起きるのか。
早く続きが読みたい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察
都への帰還と壬氏の出自・覚悟を巡る全貌
西都での過酷な遠征を終えた猫猫たちは、一年ぶりに中央の都へと帰還した。
平穏な日常の再開を望む中で、執務室での首吊り殺人事件の解決や、阿多妃から明かされた壬氏の重大な出自の真実、そして壬氏との関係における命がけの覚悟の交錯が描かれた。
全体のストーリープロット、主要な転換点、人物関係の推移、自己認識と周囲の評価、クライマックスの展開、そして巻末の状況について解説する。
全体のストーリープロット
都への帰還から始まり、殺人事件の解明、翡翠玉牌の謎、離宮での真実告白、そして壬氏との決死の対峙に至るまでの物語の流れは以下の通りである。
・第1幕(中央への帰還と羅半兄の不遇な帰宅):西都での長期任務を終え、一行は中央の港へ帰還した。船酔いした羅漢が自邸へ引き上げる一方、西都に取り残されたはずの羅半兄も徒歩で無事に羅漢邸へ辿り着いた。羅半兄は門前で騒ぎを起こしながらも、実直な人柄により姚や屋敷の使用人たちに温かく迎え入れられた。
・第2幕(羅漢の執務室での首吊り死体と他殺の証明):羅漢の執務室の梁から、過去に羅漢が引き立てた武官・王芳の首吊り遺体が発見された。猫猫と天祐が検死を行い、首の爪痕や遺体を梁に吊り上げる偽装トリックの実演を通じて、複数人による共犯の他殺である事実を証明した。
・第3幕(三人の新人官女の自白と翡翠の玉牌):容疑者として浮上した三人の新人官女が、王芳の不誠実な女性関係への怨恨から共謀して殺害した事実を自白した。事件後、猫猫は緑青館の女華が所持する割れた翡翠の玉牌に削り跡を発見し、皇族や貴族が刺客から身を守るために身分を隠した痕跡であると推測した。
・第4幕(離宮での邂逅と阿多妃の真実):雀の手引きで離宮を訪れた猫猫は、阿多妃と対面した。阿多妃から、壬氏が現帝の実子であり皇弟と入れ替えられた真実を告げられた。宮廷を去る逃げ道の提示を辞退した猫猫に対し、阿多妃は深い信頼を寄せ、妃時代の宝物を託した。
・第5幕(避妊薬草の調合と決死の夜伽):壬氏からの呼び出しを受け、猫猫は夜伽の準備が施された宮を訪れた。猫猫は数日間の断食と断水で体を整え、玉葉后の敵とならぬよう避妊薬草や道具を持参し、万一妊娠した際は自ら処置する凄絶な覚悟を抱いて臨んだ。
・第6幕(覚悟の交錯と壬氏の決意):差し出された避妊薬草と猫猫の不退転の覚悟を前に、壬氏は自らの好意が彼女に命がけの重荷を強いていた事実を悟った。壬氏は劣情を抑えて彼女に手を触れずに帰宅させ、彼女と対等に結ばれるために皇族の地位を正式に放棄する決意を固めた。
物語を動かした主要な転換点
怪事件の検証から陰謀の察知、出生の秘密の開示、そして将来を左右する重大な決断に至る重要局面が展開された。
・羅漢の執務室での首吊り事件の発生:首吊り遺体の偽装を暴き、三人の官女による共謀殺人を解明したことで、被害者の王芳が生前に狙っていた翡翠玉牌の存在へと調査が繋がった。
・女華の翡翠玉牌と王芳の関与の露呈:削られた翡翠玉牌の痕跡から身分隠蔽の意図を読み解き、王芳の背後に宮廷の皇位継承を揺るがす謀略が潜んでいる可能性を捉えた。
・阿多妃による壬氏の出自の真実の告白:壬氏が現帝の実子であるという入れ替えの事実が確定し、猫猫は彼との関係が持つ政治的危険性を深く認識した。
・避妊薬草を持参した猫猫の宮の訪問:妊娠による宮廷派閥の火種化を絶対に防ぐという猫猫の決死の覚悟が示され、壬氏が自らの立場を見つめ直し、皇族離脱を本気で決意する直接の転換点となった。
主人公を中心とした人物関係の推移
都への帰還と過酷な真実の共有を通じ、周囲の人物との関係性はより強固なものとなった。
・壬氏:出自の真実を知った上で夜伽の場に臨み、互いの立場と覚悟を突きつけ合った。手を出さずに帰されたことで深い配慮を実感し、将来を共にするための絆をより確固たるものとした。
・阿多妃:離宮での対話を経て宮廷に踏みとどまる覚悟を示し、柔軟でしぶとい生き方を認められた。妃時代の宝物を託されるなど、確固たる信頼関係を築いた。
・姚・燕燕:羅漢邸の離れに身を寄せる二人と日常を共有した。姚の医療助手としての成長を見守りつつ、同僚以上の親密な友情関係を深めた。
主人公の認識と周囲の評価
自身を平凡な官女とみなす猫猫の自己評価と、類稀な才女として一目置く周囲との間には明確な対比が存在した。
・主人公自身の認識:薬や毒への好奇心を持つ平凡な見習い官女に過ぎないと自認し、宮廷の権力闘争や派閥争いからは一貫して距離を置きたがっていた。
・周囲からの評価:壬氏や高順からは卓越した洞察力を持つ不可欠な存在と信頼され、羅半や音操からは正確な検死技術を高く評価された。
阿多妃や雀からは逆境に適応して生き抜く賢女として認められていた。
・認識の差が現れた場面:王芳の遺体から服を脱がせて淡々と検死を進めた際、周囲が凄惨な死体に動揺や異様な執着を感じる中、猫猫自身は義務感に基づく通常の実務として平然と処置にあたっていた。
クライマックスにおける覚悟の交錯と皇族離脱の誓約
夜伽の場における互いの覚悟の激突と、未来へ向けた決断が描かれた。
・宮への来訪と夜伽の設え:水蓮らが準備した香油や薔薇が漂う寝室へ、猫猫は断食と断水で体を整えて足を踏み入れた。
・避妊薬草の提示と決死の宣告:猫猫は持参した避妊薬草や道具を開き、玉葉后の東宮を脅かす火種とならぬよう、万一の際は自ら腹を処置する覚悟を告げた。
・壬氏の葛藤と自制:彼女の凄絶な覚悟に衝撃を受けた壬氏は自らの未熟さを猛省し、欲望を押し殺して彼女を抱かずに帰宅させた。
・皇族離脱への決意:壬氏は猫猫を傷つけずに生涯を共にするため、皇弟の地位を捨てて臣下へ下る政治工作を開始する誓いを立てた。
巻末時点の状況と今後の展望
事件は解決を迎えたものの、宮廷の情勢と二人の将来には新たな課題が提示された。
・解決した問題:羅漢の執務室で起きた王芳殺害事件の解決、羅半兄の無事な帰還と定着、および緑青館の梅梅の円滑な身請け引退が完了した。
・主人公の所在と立場:都の女子宿舎に戻り医官手伝いの実務を継続しつつ、壬氏の重大な秘密を共有する存在として将来を見据える立場となった。
・継続している問題と布石:東宮の血統を巡る宮廷内の不穏な動き、割れた翡翠玉牌にまつわる出自の謎、そして壬氏の皇族離脱に向けた交渉が今後の重大な焦点となっている。
プロット構造の整理
全体の因果関係は以下のように整理される。
・開始地点:西都遠征を終えた一行の都への帰還と、羅半兄の自力帰宅。
・発端:羅漢の執務室における武官・王芳の首吊り遺体の発見。
・展開:猫猫による他殺トリックの解明と新人官女たちの自白、および女華の翡翠玉牌の発見。
・中盤の転換:阿多妃による壬氏の出生の秘密の開示と、猫猫の宮廷残留の決意。
・クライマックスへの導線:壬氏からの寝所への呼び出しと、猫猫による周到な避妊薬草の準備。
・クライマックス:夜伽の場における猫猫の凄絶な覚悟の提示、および壬氏の自制と皇族離脱の決意。
・到達地点:手を出さずに帰された猫猫の安堵と、皇族離脱に向けて動き出す壬氏の覚悟。
まとめ
都への帰還と壬氏の出自・覚悟を巡る一連の全貌は、執務室での首吊り他殺事件の検証から始まり、女華の翡翠玉牌の謎、阿多妃から明かされた皇統の真実、避妊薬草を携えた決死の夜伽、そして壬氏による皇族離脱の誓約に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
宮廷の暗闘と自らの立場を冷徹に見定めながら、互いを深く尊重し合って未来への新たな一歩を踏み出した記録である。
羅漢邸の日常
変人軍師・羅漢(ラカン)とその養子である羅半(ラハン)が暮らす羅漢邸(羅半の屋敷)の、個性的で騒がしい日常について解説する。羅漢邸は、家主である羅漢の奇抜な性格を反映したかのように、様々な事情を抱えた居候や使用人が集まる、非常に賑やかで混沌とした空間となっている。
多様で賑やかな居候たち
羅漢邸には、羅漢や羅半以外にも、複雑な事情を抱えた人々が居候として滞在している。
・姚(ヤオ)と燕燕(エンエン):姚が叔父からの強引な結婚話を避けるための避難所として、羅漢邸の離れを借りて滞在している。
・漢俊杰(シュンケツ):西都遠征の際、羅半の兄と間違えられて中央へ連れてこられた孤児の少年である。羅漢の養子のような扱いとなり、実質的に羅半が世話を焼いている。
・羅半兄:西都での過酷な農業指導から久しぶりに帰還したが、屋敷の者から不審者扱いされてしまうという不遇な扱いを受けている。
使用人の二重構造と三番
燕燕の観察によれば、羅漢邸の使用人には明確な二重構造が存在する。
・普通の使用人:屋敷を実質的に管理している羅半が雇ってきた、一般的な業務をこなす者たちである。
・特別な使用人:変人軍師である羅漢が気まぐれに拾ってきた者たちである。
・三番:特別な使用人の代表格であり、結婚を嫌って家を飛び出したところを羅漢に拾われた男装の少女である。
・三番の役割:羅半の副業を手伝いながら羅漢の借金返済に奔走している。羅半に対して狂信的な愛情を抱いており、周囲を困惑させている。
物騒な事件とマイペースな家主
この屋敷では、日常的に騒動が絶えない。ある日、羅漢の執務室の中で武官の遺体が発見されるという物騒な事件が発生した。
・羅半や駆けつけた猫猫(マオマオ)たちが偽装トリックを実演し、真剣に犯人探しを行っている緊迫した状況であった。
・しかし、家主である羅漢は、その傍らで菓子を食べながら昼寝をするという、状況の重さを全く感じさせないマイペースな態度をとっていた。
燕燕の気苦労
こうした環境下で、姚の従者である燕燕は日々気苦労を絶やさない。
・羅漢の細かいスケジュールを把握しつつ、羅半を警戒して姚を彼から遠ざけようと必死である。
・三番から別の物件への引っ越しを提案されたり、三番の姚に対する不遜な態度に頭を悩ませたりするなど、休日であっても心休まらない日常を送っている。
まとめ
羅漢邸の日常は、羅半や燕燕といった常識人が苦労しながら、奇人変人たちが巻き起こす騒動や複雑な人間関係に対処し続けるという、非常に個性的で慌ただしいものである。この独特な活気こそが、羅漢邸という場所の最大の特徴といえるのである。
連続首吊り事件
変人軍師(羅漢)の執務室で発生した武官・王芳(オウホウ)の殺害事件について、その全容を解説する。当初は自殺と思われたこの事件は、猫猫(マオマオ)の検死によって巧妙な他殺の偽装が暴かれることとなった。
事件の発端と死体の発見
西都からの帰還後、羅漢の執務室で一つの首吊り死体が発見された。
・第一発見者は羅半(ラハン)と、羅漢に拾われた少年の俊杰(シュンケツ)であった
・亡くなっていたのは、羅漢がかつて引き上げた香車と呼ばれる武官の王芳であった
・王芳は生前、非常に女癖の悪い人物として知られていた
猫猫の検死と他殺の偽装の証明
事態の収拾に動いた羅半は、事件解決のために義妹である猫猫や医官たちを呼び寄せた。
・遺体を観察した猫猫は、自殺ではなく他殺の可能性が高いと即座に見抜いた
・特定の技術を用いることで、腕力のない女性であっても重い死体を吊り上げる偽装工作が可能であることを実演した
・この実演により、犯人が必ずしも屈強な男である必要がないことが証明された
容疑者の浮上と動機
現場にいた美しい新人官女3人が容疑者として浮上した。彼女たちには王芳から声をかけられていたという目撃情報が存在した。
・被害者の王芳は、この3人の官女全員と同時に交際する三股の状態にあった
・不誠実な裏切りが露見したことで、彼女たちの愛は深い憎悪へと変わった
・官女たちの共有された恨みが、計画的な殺害へと繋がったことが事件の動機であった
3人の共犯関係の立証と自白
官女たちは当初関与を否定したが、羅半と猫猫は物理的な検証を用いて彼女たちを追い詰めた。
・重い砂袋を用いた実演により、大人の男の遺体を吊り上げるには3人の協力が不可欠であることを突きつけた
・逃れられないと悟った3人は共犯であることを認め、計画を実行したことを自白した
・同じ整髪料を使うほど仲が良かった彼女たちは、その結束を殺害という目的のために利用していた
事件の余波と隠された王芳の謎
事件は痴情のもつれとして一応の解決を見たが、その後に新たな謎が浮上した。
・猫猫が花街の緑青館に帰還した際、妓女の女華(ジョカ)からある不審な武官の話を聞かされた
・王芳と思われる人物が亡くなる1か月前、母の形見である割れた翡翠の玉牌を強引に買い取ろうとしていたことが判明した
・玉牌は皇族や貴族が身分を隠す際に使用する品であると推測される
・単なる女たらしと思われていた王芳の背後に、さらなる宮廷の秘密や陰謀が隠されていた可能性が示唆された
まとめ
武官・王芳の殺害事件は、3人の官女による共犯として幕を閉じた。しかし、彼が生前に求めていた玉牌の存在は、この事件が単なる個人的な恨み以上の広がりを持っていることを示している。解決したかに見えた事件の裏側には、いまだ解明されていない巨大な陰謀の影が潜んでいるのである。
西都からの帰還
二度目の西都遠征を終えた一行の帰還と、その後の様子について解説する。長きにわたる滞在を経て、物語は再び中央(都)へと舞台を移すこととなる。
帰還の決定と西都のその後
玉鶯(ギョクオウ)の死後に起きた後継者問題や様々な混乱は、一応の収束を見た。
・玉鶯の甥である鴟梟(シキョウ)が西都の政治に加わり、象徴的な役割を果たすことで陰謀論が払拭された
・食糧問題などの不安要素が落ち着きを見せたことで、皇弟である壬氏(ジンシ)の中央帰還が決定した
・猫猫(マオマオ)も一連の騒動の終わりを実感し、安堵の息を吐くこととなった
帰りの船旅と同行者たちの様子
戌西州を後にし、一行は大型の船で中央へと向かった。海賊対策として交易船が同行する中、航海は穏やかに進んだ。
・変人軍師(羅漢)は、往路と同様に激しい船酔いに苦しみ続けていた
・玉鶯の三男である虎狼(フーラン)は、猫猫に対して異様な忠誠心を見せながら雑務をこなした
・羅半(ラハン)兄は中央へ帰還するはずであったが、実際に船に乗っているか疑問視されるなど、相変わらず不遇な扱いであった
見張り台での壬氏と猫猫
帰還の船旅の中で、猫猫と壬氏の関係には確実な進展が見られた。
・見張り台にいた壬氏のもとへ猫猫が上がり、二人は手をつなぎながら静かな時間を過ごした
・壬氏から猫猫に対して軽い接吻が交わされ、二人の絆が深まっている様子が描かれた
・互いの立場や心情を不器用に探り合いながら、中央へ戻ることへの期待と不安が交錯する時間となった
都への到着と日常への復帰
船が中央の港に到着すると、皇弟の帰還を歓迎する大勢の人だかりができていた。
・羅半やその仲間である三番らが出迎えに現れ、船酔いで限界の羅漢を馬車で連れ帰った
・壬氏は到着後すぐに主上(皇帝)へ西都での出来事を報告し、再び宮廷の複雑な政治の中へと戻っていった
・猫猫は西都での過酷な経験を経て医療技術が大きく成長したが、表向きは官女のまま医務室での日常業務に復帰した
まとめ
西都での過酷な経験は、猫猫の医官としての成長と壬氏との絆をより強固なものにした。中央に戻った彼らを待ち受けるのは、再び繰り返される宮廷の日常と新たな政治的火種である。しかし、西都での試練を乗り越えた二人は、確かな変化を抱えながら次なる一歩を踏み出しているのである。
壬氏と猫猫
猫猫(マオマオ)と壬氏(ジンシ)の出会いから、数々の事件や困難を経て深まっていく二人の関係性について解説する。
出会いと有能な駒としての始まり
二人の関係は、後宮の下女であった猫猫が、帝の御子の連続死の原因が毒おしろいであることを匿名で警告したことから始まった。その知識と聡明さに気づいた美貌の宦官である壬氏は、彼女を玉葉妃(ギョクヨウヒ)の侍女および毒見役として引き抜いた。
・当初、猫猫にとって壬氏は美貌を鼻にかける面倒な雇い主であり、壬氏も猫猫を事件調査に便利な有能な駒として扱っていた
・他の女性と違って自分の美貌に全く興味を示さない猫猫に対し、壬氏は次第に強い関心を抱くようになった
命懸けの救出と重大な秘密の共有
数々の事件を解決していく中で、二人の間には強い信頼関係が芽生えていった。
・中祀(祭事)の際、猫猫は祭壇の柱が落下する事故から壬氏を身を挺して守り、足に怪我を負った
・壬氏はこの一件で猫猫を深く心配し、彼女が渇望していた高価な秘薬である牛黄(ごおう)を後に贈った
・避暑地での狩りの最中、壬氏が最新式の武器である飛発で狙われた際、壬氏は猫猫を抱えて滝壺へと飛び込んだ
・この洞窟での避難中、猫猫は彼が本物の宦官ではないという重大な秘密に気づいたが、あえて核心には触れず秘密を共有する関係となった
焼き印の覚悟とプロポーズによる葛藤
二人の関係において最大の転機となったのは、壬氏が自らの脇腹に焼き印を押した事件である。
・これは彼が皇族を離れ、人として玉葉后の敵にならないことを証明するための苛烈な決断であった
・猫猫はこの重度な火傷の処置を任されたが、自身の外科技術の自信のなさを痛感することとなった
・猫猫は医療技術を向上させるため、養父の羅門(ルォメン)に教えを請い、禁書である華佗の書を探し求めるなど、医官として本格的に成長していく決意を固めた
・壬氏は猫猫に対し明確な恋愛感情を抱くようになり、直接結婚を申し込んだが、猫猫は壬氏の出生の秘密や立場の違いを懸念し、その提案に激しく戸惑った
・猫猫は壬氏の宮を訪れる際に避妊のための薬草を持参し、玉葉后の敵にはならないという自らの強い決意を示したが、壬氏は自身の立場と彼女との関係について深く思い悩むようになった
西都での過酷な日々がもたらした安らぎ
二度目の西都(戌西州)遠征において、二人の絆は単なる主従関係を超えたものへと昇華した。
・船旅の最中から猫猫は専属で壬氏の火傷の治療を続け、物理的および精神的な距離を縮めていった
・西都で壬氏が自身の無力さに思い悩んだ際には、猫猫が彼の頬を叩いて活を入れるなど、対等に意見をぶつけ合える深い関係を築いた
・西都での過酷な事件が重なり、疲労の絶頂に達した猫猫は、無意識のうちに壬氏の執務室へと足を運び、壬氏の体温と安心感に包まれながら深い安眠を得た
・壬氏もまた猫猫の寝息に安心感を覚え、互いが精神的に深く寄り添い、安らぎを与え合う不可欠な存在となっていることが描かれた
まとめ
西都から中央へ戻る帰路の船上で、二人は手をつなぎながら静かな時を過ごし、壬氏から猫猫へ軽い接吻が交わされた。互いの立場や心情を不器用に探り合いながらも、二人の絆は確実な前進を見せているのである。
羅半兄の農業
羅半兄(ラハンあに)の農業に対する並々ならぬ情熱と、西都における実践的な農業指導の全容について解説する。
農業の専門家としての背景
羅半兄は都の文官ではなく、本質的に農家であり、農業に対して深い知識と技術を持つ人物である。
・実父は田舎で農夫として生活し、痩せた土地でも育つ甘藷(芋)の栽培に成功している
・羅半兄自身も日々農作業に従事しており、土に触れ作物を育てることに情熱を注いでいる
・彼にとって農業は単なる仕事ではなく、生活そのものであるといえる
西都での過酷な任務と実践的指導
蝗害(飛蝗の大量発生)の危機が迫る西都において、壬氏(ジンシ)は羅半兄の農業知識を見込み、極めて過酷な任務を命じた。
・わずか2ヶ月の間に戌西州の全農村地区を回り、秋耕を教え、甘藷の栽培を開始させるという命令であった
・秋耕は地中に産み付けられた飛蝗の卵を掘り起こして駆除するために不可欠な作業である
・羅半兄は自ら畑の土の状態を確かめ、農民たちに麦踏みの重要性を力説するなど、実践的な指導を行った
食糧危機を見据えた独自の工夫と対策
西都が蝗害による食糧不足に陥る中、羅半兄は将来を見据えた独自の対策を実行した。
・収量が増える可能性のある特別な小麦の種を見つけ出し、持ち帰った
・栄養不足からくる疾患を防ぐため、物置を改造して苜蓿(うまごやし)のもやしを栽培し始めた
・飛蝗退治の際に作成した地図を基に、どの地域でどの作物を育てるべきかという詳細な作付計画を猫猫(マオマオ)たちと検討した
農業への飽くなき情熱と阿兄正伝
羅半兄を主人公とした記録である阿兄正伝には、彼の農業への熱い思いが詳細に描かれている。
・乾燥した戌西州の土地を潤すための灌漑施設の構想を練った
・食糧不足や盗賊の襲撃といった困難に直面しながらも、農業を通じて人々の生活を支えようと奮闘した
・政治的な騒動に関わらず、ひたすら農業に専念し続ける決意を固めていた
まとめ
羅半兄は単なる技術指導者にとどまらず、土と作物を愛し、自らの足と手を使って西都の食糧危機を救った真の農業専門家である。彼の献身的な活動は、困難な状況下にある人々に希望を与え、西都の再建に向けた大きな力となったのである。
キャラクター紹介
皇族・宮廷
壬氏(華瑞月)
美しい容姿を持つ宮廷の若き指導者である。彼は西都から一年ぶりに都へ戻った。猫猫に対して生涯の伴侶として求婚する。
・所属組織、地位や役職 茘の宮廷。皇弟(月の君)。
・物語内での具体的な行動や成果 主上への拝謁を終えて中央の公務に復帰した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 猫猫を守るために皇族の地位を捨てる覚悟を本気で固める。
玉葉后(玉葉)
東宮と公主の生母であり、後宮で高い地位を築く皇后である。西都から帰還した壬氏と対面した。異国の血を引く自らの容姿や、東宮の安全を深く案じている。
・所属組織、地位や役職 茘の後宮。皇后。
・物語内での具体的な行動や成果 姪を行儀見習いとして侍女に迎え入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 自身の立場を脅かす不穏な勢力に対抗する決意を新たにする。
水蓮
皇弟である壬氏の乳母として、彼の生活を長年支える侍女頭である。壬氏の部屋を大掃除した。壬氏と猫猫の仲を深く心配し、進展を陰から画策する。
・所属組織、地位や役職 皇弟の邸。侍女頭兼乳母。
・物語内での具体的な行動や成果 猫猫のために酒精の強い蒸留酒を仕込んだ部屋を用意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 主君の安全と将来を、誰よりも熱心に見守り続けている。
高順
壬氏を長年にわたり陰から支える、極めて実直な補佐役である。西都遠征を終えて主上付きの護衛へと復帰した。猫猫が宮に呼び出される可能性を事前に予期する。
・所属組織、地位や役職 茘の宮廷。皇帝直属の護衛官。
・物語内での具体的な行動や成果 息子の馬良に対して猫猫への配慮をあらかじめ注意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 宮廷の実務において、変わらぬ絶対的な信頼を得ている。
雅琴
皇后である玉葉后の姪に当たる、美しい髪色を持つ少女である。叔母の指導のもとで宮廷に入った。現在は、玉葉后の宮で行儀見習いとして修業を重ねている。
・所属組織、地位や役職 皇后の宮。侍女の見習い。
・物語内での具体的な行動や成果 お色直しの席や茶会の場で、他の侍女たちと静かに過ごした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 将来の妃候補としての高い教養と、慎み深さを備えている。
主上
茘の国を統治する、絶対的な権力を持つ皇帝である。西都から戻った壬氏から簡潔な帰朝報告を受け取った。自らの髪に交ざった白髪を染めずにそのままにしている。
・所属組織、地位や役職 茘の宮廷。皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果 冗談交じりに壬氏を後宮へ誘い、彼の反応を楽しく観察した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 皇族の男子が少ない現状に、強い危機感を抱いている。
先帝
茘の国をかつて統治していた、故人である前皇帝である。後宮において数多くの妃を娶った。彼の隠された血筋や、子孫の存在が今なお宮廷に影響を与える。
・所属組織、地位や役職 茘の皇室。先代の皇帝(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 孫である翠苓の出生を、公には認めず闇に葬った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 彼の残した血脈は、現在の皇位継承問題の大きな火種となる。
阿多
離宮で静かに暮らす、壬氏の実の母親である。男装がよく似合う、非常に聡明な女性である。子の一族の子供たちや翠苓を陰から密かに守り続けている。
・所属組織、地位や役職 茘の離宮。元四夫人(上級妃)。
・物語内での具体的な行動や成果 猫猫を離宮に呼び寄せ、壬氏の出生の秘密を完全に打ち明けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 猫猫の覚悟を認め、妃時代の高価な宝物(珊瑚や真珠)を提供する。
翠苓
元は後宮の官女であり、優れた薬学の知識を持つ女性である。かつて死を偽装して後宮を脱出した。現在は阿多のいる離宮に隠れ住んでいる。
・所属組織、地位や役職 阿多の離宮。元内通の官女。
・物語内での具体的な行動や成果 猫猫に協力するため、麻酔薬などの情報や資料を提供する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 先帝の孫であるという、不穏な出生の秘密を抱え続ける。
羅の一族
猫猫
花街で育った、薬学と毒に対する強い好奇心を持つ少女である。西都から一年ぶりに懐かしい中央へと無事に帰還した。羅漢の執務室で起きた、他殺の首吊り事件を解決に導く。
・所属組織、地位や役職 宮廷の医局。医官付官女(見習い)。
・物語内での具体的な行動や成果 避妊の薬草を持参し、不退転の覚悟で壬氏の寝室を訪問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 将来の不毛な派閥争いを避けるため、自ら厳しい制限を課す。
羅門(おやじ)
猫猫の養父であり、優れた医術と深い知恵を持つ老宦官である。猫猫に死体の検死に関する厳しい教育を施した。現在は、宮廷の医局で上級医官として活動している。
・所属組織、地位や役職 宮廷の医局。上級医官。
・物語内での具体的な行動や成果 猫猫が他人の死体に触れて検死を行うことを事前に許可した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 その非凡な医療技術は、若い医官たちからも深く尊敬されている。
羅半
羅漢の養子であり、極めて高い実務能力を持つ青年である。西都から帰還した羅漢を港で出迎えた。数字に強く、物事を常に合理的に判断する性質を持つ。
・所属組織、地位や役職 宮廷の戸部。文官。
・物語内での具体的な行動や成果 執務室で起きた首吊り事件の調査を、猫猫たちを招集して主動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 変人である羅漢の、多額の借金返済のために日々奔走する。
羅漢
軍部を統率する太尉であり、奇行の多さから変人軍師と呼ばれる。往路と同様に帰路の船旅でも激しい船酔いに苦しんだ。実の娘である猫猫に対して、異様な執着を見せている。
・所属組織、地位や役職 茘の軍部。太尉。
・物語内での具体的な行動や成果 執務室で見つかった遺体の犯人を、野次馬の中から即座に特定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 西都から孤児の漢俊杰を連れ帰り、小姓として手元に置く。
羅半兄
羅半の実兄であり、西都の飢饉を救った農業の天才である。中央への帰還の船に乗せてもらえず徒歩で都まで帰宅した。その極めて誠実で温厚な人柄から、姚たちに深く信頼される。
・所属組織、地位や役職 西都の政庁。農業指導員。
・物語内での具体的な行動や成果 屋敷の門前で、不審者と間違えられて門番と揉め事を起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 彼の優れた農作業の記録は、のちに不朽の農業書として編集される。
羅半父
羅半の実父であり、田舎で静かに農作業を営む実直な農夫である。痩せた土地でも育つ甘藷の栽培に成功した。羅半の活動を陰から支え、彼に定期的な連絡を送る。
・所属組織、地位や役職 市井の農村。農夫。
・物語内での具体的な行動や成果 西都に滞在する羅半兄に対し、芋の植え付けを確認する手紙を送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 不便な環境を愚痴りつつも、誠実に大地の開墾に専念する。
羅半母
羅半の実母であり、田舎の農家で家族の生活を支える女性である。夫の農作業を長年手際よく手伝った。一族の奇抜な行動に振り回されつつも、健気に家庭を守る。
・所属組織、地位や役職 市井の農村。主婦。
・物語内での具体的な行動や成果 羅半兄の都への旅立ちの準備を、涙を浮かべて見送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 高いプライドを持ちながらも、家族の健康を常に案じている。
羅半祖父
羅半の祖父であり、かつて一族の長を務めていた頑固な老人である。羅漢と羅半の手によって屋敷を追い出された。現在は、田舎で長男夫婦とともに静かに暮らしている。
・所属組織、地位や役職 市井の農村。元一族の長。
・物語内での具体的な行動や成果 自らの優れた弟である羅門への、複雑な劣等感を隠さなかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 過去の栄光にすがりつつ、孫の羅半兄の活躍を遠くから見守る。
馬の一族
雀(チュエ)
馬良の妻であり、阿多に仕える非常に優秀な隠密である。西都での激しい死闘により右腕が不自由になった。明るく飄々とした態度を崩さず、周囲に手品を披露する。
・所属組織、地位や役職 皇弟の邸。侍女(本質は阿多の密偵)。
・物語内での具体的な行動や成果 阿多からの重要な手紙を、猫猫へ確実に手渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 夫の馬良との間で、夫婦の確固たる深い絆を実感している。
馬良
高順の息子であり、馬閃の兄に当たる真面目な青年である。西都の公務を終えて無事に中央へ帰還した。極度の人嫌いであり、人前に出ることを極端に嫌う。
・所属組織、地位や役職 宮廷の文書管理。進士。
・物語内での具体的な行動や成果 妻の雀が負った大きな傷を、深く気遣いながら優しく寄り添った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 その文官としての高い実務能力は、宮廷でも重宝されている。
馬閃
高順の息子であり、壬氏の護衛を務める実直な武官である。西都から家鴨の「舒鳧」を大切に肩に乗せて持ち帰った。出家した里樹妃に対し、密かに特別な感情を寄せている。
・所属組織、地位や役職 宮廷の衛兵隊。衛兵の武官。
・物語内での具体的な行動や成果 姉の麻美から、家鴨の臭さや不器用な恋路について厳しく叱責された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 家鴨を通じて里樹妃との絆を深め、彼女を陰から守り続ける。
桃美
高順の妻であり、麻美や馬良たちの母親である隻眼の女性である。西都からの長旅を終えて無事に屋敷へ戻った。末っ子の馬閃が、家鴨を屋敷に連れ込むことに強く反対する。
・所属組織、地位や役職 皇弟の邸。上級侍女。
・物語内での具体的な行動や成果 一年ぶりに再会した幼い孫たちの成長を、優しく撫でて喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 一族の頭脳明晰な女性として、家庭の秩序を厳格に維持している。
外廷・宮廷・西都関係者
陸孫
かつて羅漢の優秀な副官を務めていた、有能な文官である。一度見た他人の顔を絶対に忘れないという、特異な才能を持っていた。現在は、西都の実務を現地で強力に統率している。
・所属組織、地位や役職 西都の政庁。筆頭官僚。
・物語内での具体的な行動や成果 壬氏からの依頼を受け、西都の石炭採掘に関する極秘調査を支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 一族の仇を討ち果たし、西都の新たな指導者としての地位を確立する。
玉鶯
西都を実質的に統括していた、武将のような体格の男性である。他国との戦争を企てて民衆を激しく扇動した。しかし、復讐に燃える陸孫の手によって極秘裏に暗殺される。
・所属組織、地位や役職 西都の政庁。元領主代行(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 出生の秘密が書かれた古い戸籍表を、拓跋を殺して奪い取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 彼の死後、西都の後継者争いは泥沼化することとなる。
音操
変人軍師である羅漢を、実務面で支える苦労人の武官である。激しい船酔いで倒れた羅漢を港で手際よく介抱した。執務室で発生した武官の他殺事件の、現場保存に尽力する。
・所属組織、地位や役職 茘の軍部。副官。
・物語内での具体的な行動や成果 事件の証拠固めのため、猫猫たちの実演に必要な砂袋や縄を用意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 羅漢の不規則な行動に、常に胃痛を抱えながらも職務を全うする。
天祐
宮廷の医局に所属する、少しお調子者の若い医官である。元猟師としての経歴を持ち、動物の解体技術に長けていた。死体の内臓を取り出すことに、異様なまでの知的好奇心を示す。
・所属組織、地位や役職 宮廷の医局。下級医官。
・物語内での具体的な行動や成果 王芳の新鮮な遺体から、手際よく服を剥ぎ取る検死の手伝いを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 その猟奇的な執着を、劉医官からげんこつを落とされて厳しく制止される。
やぶ医者(虞淵)
かつて後宮の医療を担当していた、小太りで気が弱い宦官である。西都では羅門の身代わりに仕立て上げられて苦労した。現在は、元の大人しい宮廷の医局へと無事に戻っている。
・所属組織、地位や役職 宮廷の医局。上級医官。
・物語内での具体的な行動や成果 羅漢を茶会に招き、お茶菓子を振る舞って優しくもてなした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 羅漢の扱いが非常に上手く、医局の和やかな雰囲気作りに貢献する。
劉医官
宮廷の医局を取り仕切る、非常に気難しい性質の上級医官である。羅門とは同期であり、彼の高い知恵を深く尊敬していた。不真面目な見習い医官に対して、常に厳しい態度で臨んでいる。
・所属組織、地位や役職 宮廷の医局。医官長。
・物語内での具体的な行動や成果 王芳の首吊り死体の現場に同行し、天祐のお調子者な行動を厳しく諫めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 猫猫の確かな検死能力を認め、その活動を陰から静かに容認する。
楊医官
西都での医療活動において、医官たちを率いていた上級医官である。非常に気が強くて、豪快な性格をしていた。西都の過酷な環境で、部下に多くの無茶ぶりを命じる。
・所属組織、地位や役職 西都の簡易診療所。上級医官。
・物語内での具体的な行動や成果 李医官に対して、体力をつけるために山羊の乳を飲むよう指導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 その指導力により、多くの怪我人を迅速に治療する。
李医官
宮廷の医局に所属する、天祐の真面目な先輩医官である。かつてはほっそりとした、大人しい文学青年風の見た目であった。西都の乾燥した気候と過酷な勤務で、体がやたら筋肉質に成長する。
・所属組織、地位や役職 宮廷の医局。中級医官(昇進予定)。
・物語内での具体的な行動や成果 医務室で騒ぐ天祐の首根っこを、子猫のようにつかみ上げて制止した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 西都での多大な貢献が認められ、上級医官への昇進が決定している。
林大人(将棋の棋聖)
茘の国内で、最も高い実力を持つとされる最高位の棋士である。羅漢とは古くからの友人関係を築いていた。緑青館の教養ある姫、梅梅を自らの弟子にする約束を交わす。
・所属組織、地位や役職 茘の棋士。最高棋士(棋聖)。
・物語内での具体的な行動や成果 梅梅を大枚の銭で正式に身請けし、緑青館から穏やかに引退させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 妻を亡くして身寄りがないため、彼女を生涯の弟子として温かく迎える。
李白
宮廷の軍部に所属する、非常に気風が良く筋肉質な若手武官である。西都では、壬氏の身辺警護を厳重に担当した。緑青館の最上級の妓女である白鈴を、深く一途に愛している。
・所属組織、地位や役職 宮廷の軍部。武官。
・物語内での具体的な行動や成果 本邸の畑仕事を手伝い、羅半兄のために重い土を耕す作業をこなした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 白鈴を身請けするため、日々精力的に武勲を立てる努力を続ける。
玉袁
西都の重鎮であり、かつて一族を支えていた厳格な老人である。皇帝を補佐する主要な大臣を務めた。現在は、玉座の脇に立ち、宮廷の重厚な政治に関わっている。
・所属組織、地位や役職 茘の朝廷。最高重臣(大臣)。
・物語内での具体的な行動や成果 西都での玉鶯の急死の知らせを受け、今後の身辺整理を迅速に行わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 自らの血脈を守るため、玉葉后の地位を強固にする手段を講じる。
礼部の侍郎(姚の叔父)
姚の叔父であり、礼部において高い地位を占める高官である。姚に対して、強引なお見合いや結婚の圧力をかけた。自身の権威をかざして、姪の進路を自らの都合で決定しようとする。
・所属組織、地位や役職 茘の宮廷。礼部の大臣(侍郎)。
・物語内での具体的な行動や成果 西都の戦後処理の役目を任され、都を離れて長期遠征に向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 その不在の隙に、姚が羅半の屋敷へと避難する契機を与える。
王芳
羅漢の力添えによって引き立てられた、非常に欲深く女癖の悪い武官である。宮廷内で美しい三人の新人官女全員と同時に交際する不誠実な行為を働いていた。最後は、裏切りを知った彼女たちに梁から吊るされて殺害される。
・所属組織、地位や役職 茘の軍部。武官(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 生前、女華の持つ「翡翠の玉牌」を強引に売るよう一か月にわたり執拗に迫った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 その不可解な遺産への執着が、彼自身の悲惨な最期と事件を引き起こす原因となる。
市井・その他の人物
姚(ヨウ)
最優秀の成績で官女試験に合格した、プライドの高い少女である。猫猫が西都に行っている間、医療関連の技術に磨きをかけた。羅半に対して、不器用で複雑な関心を抱き始めている。
・所属組織、地位や役職 宮廷の医局。医官付官女(見習い)。
・物語内での具体的な行動や成果 羅半兄の不遇な境遇に同情し、彼の誠実さに強い安心感を得た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 宿舎が満室であるため、そのまま羅半の屋敷の離れに留まり続ける。
燕燕(エンエン)
姚に絶対的な忠誠を誓う、非常に気の利く有能な官女である。姚を羅半の手から救い出すために様々な策を講じた。三番から提案された、新しい住居の物件情報を詳細に検討する。
・所属組織、地位や役職 宮廷の医局。医官付官女。
・物語内での具体的な行動や成果 姚の結婚相手として、非常に誠実な羅半兄が最適ではないかと思案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 離れに留まる姚の身の安全を、誰よりも手厚く守り続けている。
玉鶯の孫娘(小紅)
西都の領主であった玉鶯の孫に当たる、幼い少女である。かつて、極度の腸閉塞の病気を猫猫の手術によって乗り越えた。従兄弟である玉隼から意地悪をされ、いじめられている。
・所属組織、地位や役職 西都の本邸。領主の孫娘(小紅)。
・物語内での具体的な行動や成果 いじめられても泣き寝入りせず、玉隼の頬を叩いて唾を吐きかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 お嬢さまの傲慢さを改めさせ、自身の強い立場を取り戻しつつある。
俊杰(俊杰少年)
西都から間違えられて羅漢の屋敷へと連れてこられた、幼い孤児である。羅半兄と同姓同名であったために誤認された。現在は、実直で聞き分けの良い子供として屋敷で保護されている。
・所属組織、地位や役職 羅漢の邸。小姓(居候)。
・物語内での具体的な行動や成果 羅漢邸の使用人たちから親しまれ、新しい都の環境に徐々に適応している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 実家を失った不遇な身の上ながら、羅漢の気まぐれな庇護の下で平穏に暮らす。
三番
羅半が好む「黄金比」に極めて近い、均整の取れた体格を持つ男装の少女である。羅漢の屋敷の使用人として働いている。姚や燕燕に対して、都の新しい引っ越し先物件の情報を提供した。
・所属組織、地位や役職 羅漢の邸。使用人(男装の少女)。
・物語内での具体的な行動や成果 羅半の買い出しや身の回りの世話を、手際よく補佐する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 姚を羅半の手から遠ざけようとする燕燕に対して、親切に物件を案内した。
登場集団
暴徒たち(民衆)
大蝗害による食糧不足から、急激に暴徒化した西都の民衆である。飢えから食糧庫を襲撃して備蓄をすべて奪い去った。壬氏の滞在する別邸を取り囲み、激しい不満をぶつける。
・所属組織、地位や役職 西都の各農村。暴徒化した民衆。
・物語内での具体的な行動や成果 異民族への怒りを煽る玉鶯の茶番の演説を、真に受けて同調した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 隣国への激しい復讐心を誓い、西都の治安を大きく揺るがしている。
異国の商団(異民族の盗賊)
西都の周辺を根城にして、略奪を繰り返す凶悪な盗賊たちである。西都に滞在していた羅半兄を襲撃し、干し芋を強奪した。その正体は、隣国との国境を越えて密かに侵入した商人の一団である。
・所属組織、地位や役職 戌西州の国境付近。異国の盗賊団。
・物語内での具体的な行動や成果 西都の不穏な空気を察知し、食糧や物資の略奪を激化させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 玉鶯の戦争の口実として利用され、軍事的な対立を引き起こす。
三人の新人官女
宮廷の執務室において、王芳を殺害した結束の強い共犯者たちである。王芳が全員と同時に交際する裏切りを働き、それぞれに同じ愛を囁いていた。猫猫たちの実演により、犯行の真実を暴かれる。
・所属組織、地位や役職 茘の宮廷。新人官女三人(官女壱、官女弐、官女参)。
・物語内での具体的な行動や成果 三人で力を合わせ、王芳を梁から定滑車の仕組みを用いて吊るし上げて殺害した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 猫猫が用意した実演の砂袋の重さに驚愕し、最後は涙を流して罪を自白する。
備忘録
一話 羅半と三番
港での帰還
皇弟の帰還を迎える人々が港に集まる中、羅半と三番も出迎えていた。商家を出て羅漢に拾われた三番は男装し、羅半とともに副業で羅漢の借金返済を続けていた。羅漢が船酔いしていたため、羅半は馬車で連れ帰ることにしたが、猫猫とは会えなかった。
羅漢邸の客人
羅漢邸には猫猫の友人たちも滞在していたが、羅半は彼女たちの出迎えから逃げるように立ち去った。
二話 羅半と首吊り死体 前編
新たな居候
西都から戻った羅漢のもとには、兄と間違えられて連れてこられた漢俊杰も加わった。羅半は事情を把握し、少年の面倒を見ることになった。
執務室の首吊り死体
羅漢の執務室で首吊り死体が発見され、羅半と俊杰が現場に遭遇した。死んでいたのは羅漢が以前引き上げた香車と呼ばれる武官だった。羅漢は関係者の中に犯人がいると見抜き、検死には医官見習いたちを利用することを提案した。羅半は猫猫を呼び寄せることにした。
三話 羅半と首吊り死体 中編
偽装された首吊り
猫猫、劉医官、天祐らが遺体を調べ、自殺ではなく他殺の可能性を探った。猫猫は人を殺した後に首吊りへ見せかける方法を実演し、犯人が女性である可能性を示した。
女性たちの呼び出し
羅半も猫猫の推理に同意し、事件現場にいた女性たちを集めて調べることにした。一方の羅漢は、菓子を食べて昼寝をするなど普段通りの態度を崩さなかった。
四話 羅半と首吊り死体後編
三人の官女
新人官女三人が容疑者として呼び出された。死んだ王芳は彼女たち全員に声をかけており、羅半と猫猫は複数人なら遺体を吊り上げられることを実演した。
三股への報復
三人は共犯を認め、王芳が三人と同時に付き合っていたことを知ったため、協力して殺害したと告白した。羅半は痴情のもつれだけでなく、三人の経歴にも共通点がある可能性を感じ、さらに調査することにした。
五話 壬氏と報告
皇帝への帰朝報告
壬氏は皇帝へ西都からの帰還を報告した。軽口を交わした後、皇太后、東宮、玉葉后への挨拶を予定し、自分の立場や猫猫への気持ちについて考えた。
玉葉后との再会
玉葉后とは玉鶯の後継や互いの立場について話し、後宮時代から続く関係を確認した。その後、麻美から中央の情勢を聞き、皇族の男児が少ないことから壬氏へ近づこうとする女性や、別の男系皇族に関する噂を知らされた。
六話 天祐の医務室日誌
医務室の日常
天祐は新鮮な首吊り死体を解剖したがったが、周囲に止められた。西都から戻った猫猫や李医官とともに、比較的落ち着いた医務室で細かな仕事をこなしていた。
姚と燕燕の住まい
姚と燕燕も医務室を訪れ、遺体の処置について話した。女子宿舎が満員となったため二人は別の住居を探す必要があり、天祐は興味を示したものの、李医官に仕事へ戻された。
七話 麻美と不器用な弟
変わった弟たち
麻美は約一年ぶりに弟たちと再会し、馬良の妻である雀が右腕を使えなくなり、多数の傷を負っていることに驚いた。一方の馬閃は家鴨の舒鳧を肩に乗せ、家族として大切にしていた。
馬閃の想い
麻美が問い詰める中、馬閃が出家した元上級妃を気にかけていることが分かった。麻美は複雑な相手ではあるものの、弟が異性に関心を持ったことを応援しようと考えた。
八話 阿兄正伝
西都での農業
農業に情熱を注ぐ男は羅半の依頼で西都へ渡り、猫猫から羅半兄と呼ばれるようになった。芋の栽培や灌漑の構想を進めながら、蝗害や食糧不足にも立ち向かった。
作者不明の農業書
盗賊や政治的な騒動に巻き込まれても農業を続け、西都の人々の食糧を支えるため知識を広めた。その記録は後に持ち主が特定できないまま、作者不明の農業書として編集された。
九話 燕燕の休日
羅半への警戒
休日の燕燕は猫猫を羅漢邸の離れへ呼び、羅半から姚を守ってほしいと頼んだ。燕燕は羅半の性格を信用せず、姚との距離を置かせたいと考えていた。
三番からの呼び出し
猫猫は燕燕の心配を大げさだと受け流していたが、そこへ三番が燕燕に会いたがっているとの知らせが届いた。燕燕は猫猫も連れて三番に会いに行くことにした。
十話 燕燕と恋話
新居の提案
三番は姚と燕燕に、羅漢邸を出て市場や職場に近い安全な住居へ移るよう提案した。燕燕は条件自体には魅力を感じたが、三番の姚を軽く見る態度には反発した。
三番の羅半への想い
三番は羅半を愛しており、二番目の女でも構わないと明言した。将来の妻には自分が支えたいと思える人物を望んでおり、燕燕と猫猫はその強い執着に驚いた。
十一話 女華という花
才女の妓女
緑青館の三姫である女華は四書五経を暗記するほどの知識を持ち、科挙受験生や学者たちから人気を集めていた。訪れた老師の教え子についても、まだ準備不足だと厳しく評価した。
割れた翡翠の牌
若手官僚の柳野郎と芳は、女華の出自や皇族の血筋に興味を示した。芳は女華が持つ割れた翡翠の牌を譲ってほしいと頼んだが、女華は母の形見だからと拒否した。
十二話 女華と妹分
猫猫の帰還
約一年ぶりに緑青館へ戻った猫猫は、西都での蝗害や盗賊との出来事を女華たちへ話した。その中で三股をかけた末に殺された武官、王芳の事件にも触れた。
王芳と玉牌
女華は以前、自分の翡翠の牌を欲しがった客が芳と名乗っていたことを思い出した。猫猫は牌が身分を隠すために使われるものではないかと考えたが、残り半分の所在は分からなかった。女華も秘密を追わず、謎めいた自分を保つことを選んだ。
十三話 姚と、羅半兄の帰還
姚の成長
猫猫が西都にいた間、姚も医療補助の技術を磨いていた。一方、猫猫も施術を任されるほど成長したが、官女という立場ではその技術が公に評価されることはなかった。
羅半兄との初対面
姚が羅漢邸に滞在する理由を考えていた頃、西都から羅半兄が戻った。蝗害対策で大きな功績を上げた彼は当初不審者扱いされたが、すぐに人柄を認められた。姚は彼を見て、燕燕が語る理想の旦那に近いと感じた。
十四話 阿多の真実
月の出生
阿多は猫猫を宮へ呼び、雀を通じて連絡していたことを明かした。さらに月が自分の実の息子であり、本物の皇弟と入れ替えられていた真実を猫猫へ伝えた。
猫猫の覚悟
猫猫はすでにある程度事情を察しており、月との関係に伴う現実も受け入れる覚悟を示した。阿多は逃げる選択肢も与えたが、猫猫は拒んだ。
阿多の宝物
阿多は猫猫の強さを認め、妃時代の宝物を譲ると申し出た。猫猫は治療に使える真珠や珊瑚を求め、阿多は笑って了承した。
十五話 壬氏の動揺、猫猫の決意
猫猫の訪問
壬氏の宮では、水蓮が豪華な夕餉や香、薔薇の花びらまで用意していた。猫猫から会いたいとの文を受け取っていた壬氏は、その意図を察して動揺した。
玉葉后の敵にならない覚悟
猫猫は避妊のための薬草や道具を持参し、必要なら自ら処置する覚悟まで示した。それは玉葉后の敵になるつもりがないという意思表示だった。
壬氏の拒絶
壬氏は猫猫にそこまで覚悟させたことを謝り、その日は帰るよう告げた。猫猫を帰した後、自分の立場や皇族を離れる可能性を含め、二人の将来について考え込んだ。
十六話 猫猫の遅い夕餉
持ち帰った夕餉
猫猫は宿舎へ戻り、壬氏の宮から持ち帰った料理を温めた。予想とは違う結末に拍子抜けしながらも安堵し、滋養のある料理を布団の中で味わった。
壬氏との距離
猫猫は壬氏が自分を拒んだ理由を考え、その遠慮を理解した。しばらく会わないことを選び、酒を飲みながら羅半兄や梅梅、皇族にまつわる人々のことを思い浮かべ、眠りについた。
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