【結論】
評価:★★★★★(5/5) シリーズ内での立ち位置:全巻のあらすじ・ネタバレ・戦況の推移を詳細に整理し、帝国の栄光と衰退の軌跡を完全網羅した「総合解説ロードマップ(インデックス)」です。 最大の見どころ:現代日本のエリートサラリーマンが「合理主義」の建前を貫き通した結果、周囲に「冷酷無比な戦争狂」と誤解されながらも大出世していく致命的な「すれ違いコント」と、血の通った世界大戦のリアルな歴史・軍事描写。 注意点:著者の知的好奇心が詰まった「極めて難解でくどい文章(重厚な文体)」に加え、膨大なミリタリー・歴史・政治の専門用語が飛び交います。ライトノベル特有の軽さを期待すると確実に挫折します。
【読むべき人】
・架空戦記や世界大戦の歴史、ミリタリー、戦略・戦術の駆け引きが三度の飯より好きな人 ・主人公の「本音(安全に後方勤務したい)」と周囲の「建前(前線で大活躍の英雄だ!)」が180度すれ違っていくブラックユーモアを楽しみたい人 ・難解な政治劇や、国家レベルの外交交渉をじっくり読み解くのが好きな「骨太ファンタジー」を求める人
【合わない人】
・一般的なライトノベルに多い、サクサク読めるテンポ感や、甘いラブコメ要素を求めている人 ・「幼女」というワードから、可愛らしい萌え要素やソフトな無双系異世界ファンタジーを期待している人(中身はガチの歴史・軍事・合理主義の塊です)
【この記事の価値】
この記事を読むことで、『幼女戦記』各巻の複雑な戦況や政治的駆け引き、ターニャの出世と受難のあらすじがスッキリと理解できます。初心者には「原作小説の難易度を測るガイド」として、既存の読者には「あの激戦や、すれ違いのコント展開を見返すログ」として役立つ情報を詰め込んでいます。
幼女戦記
どんな物語?
『幼女戦記』は、近代的な合理主義を極限まで信奉する現代日本のエリートサラリーマンが、不条理な創造主(存在X)によって、近代魔導と近代兵器が混在する第一次世界大戦期に酷似した異世界の孤児の少女「ターニャ・フォン・デグレチャフ」として転生させられるところから始まる。
ターニャは安全な後方勤務で平穏な生涯を送り、天寿を全うすることを熱望するが、サラマンダー戦闘団などの超法規的な部隊の指揮を命じられるなど、彼女の卓越した魔導適性とサラリーマン時代の組織マネジメント能力、冷徹な合理的判断ゆえに、周囲からは「愛国心に満ちた狂気の天才軍人」と誤解され、苛烈を極める最前線へ投入され続ける。
世界全体の「勢力均衡の論理(バランス・オブ・パワー)」によって帝国が四面楚歌に陥り、泥沼の総力戦へと突き進む中、彼女と国家がどのような結末へ向かうのかを描いた架空歴史戦記である。
主人公
ターニャ・フォン・デグレチャフ
対象巻終了時点での立場:中佐。東部での連邦軍大攻勢に対し、独断で「防衛計画第四号」を偽造発動して全滅の危機から野戦軍を救い、三個師団規模の航空魔導師を率いて敵後方への兵站破壊(航空阻止攻撃)を指揮した。ゼートゥーア大将の「政治的・歴史的詐欺」の片棒を担ぐ共犯者となる。
立場:帝国軍魔導将校。第二〇三航空魔導大隊大隊長、レルゲン戦闘団(サラマンダー戦闘団)指揮官。のちに東部戦線の崩壊を阻止するため、独断で三個師団規模の航空魔導師を率いる臨時航空魔導師団長として指揮を執る。
物語開始時の状況:孤児院出身の幼女でありながら、高い魔導適性を測定されて士官学校へ入学。統一暦一九一四年、幼少の身でノルデン国境の砲撃観測任務に従事する。
主な能力・特徴:卓越した魔導適性と高い戦闘能力。エレニウム九十五式演算宝珠を使用し、四重の爆裂術式による単独での面制圧をもこなす。サラリーマン時代のマネジメント知識に基づき、部下を「人的資本」として効率的・徹底的に訓練・教育する能力に長ける。
本人の自己認識:徹底した合理主義者であり、自己保身と「安全な後方での平穏な生活、将来の不労所得(印税生活)による引退」を第一に望む一労働者。戦争や狂気を嫌悪しており、自身の行動はすべて組織人としての「義務の遂行」や、保身のための「客観的評価の向上(アピール)」に過ぎないと考えている。
周囲からの評価:軍上層部(ゼートゥーアやルーデルドルフ、レルゲンなど)からは「愛国心に満ちた狂気の天才軍人」「比類なき不屈の敢闘精神を持つエース」と見なされている。部下からは「えげつないが仕事のできる、畏怖すべき上官」として、また敵側(連合王国や協商連合、連邦)からは「ラインの悪魔」「錆銀の悪魔」と恐れられている。
主要キャラクター
ハンス・フォン・ゼートゥーア
- 所属・立場:帝国軍中将(のちに大将)。参謀本部戦務参謀次長、東部方面B集団査閲担当などを経て参謀総長として軍の実権を掌握。
- 主人公との関係:ターニャの軍事・組織能力を高く評価し、超法規的な諸兵科連合部隊(サラマンダー戦闘団)の指揮を任せるなど、彼女を重用すると同時に、過酷な「囮」任務や政治介入の共犯者として巻き込む上官。
- 初登場時の状況:参謀本部の作戦・戦務の中心に位置する冷徹な戦略家。
- シリーズ内での主な役割:兵站と作戦を熟知し、合理的な戦線整理や攻勢防御によって連邦軍を翻弄する。のちに帝国が「勝利依存症」に陥り自壊することを悟り、国家滅亡を防ぐための「予防的な外科的措置(クーデター・政変)」や、自らと帝室に悪役のアイコンを集中させる「歴史的詐欺」へと突き進む。
- 現時点での状況:大将。敗戦不可避の帝国において、故郷(ハイマート)を残すために自ら「世界の敵」を引き受け、政治的・歴史的詐欺を演じている。
マックス・フォン・ルーデルドルフ
- 所属・立場:帝国軍中将(のちに大将)。参謀本部作戦参謀次長。ゼートゥーアの盟友。
- 主人公との関係:ターニャを「ラインの悪魔」として前線で酷使するが、その実力を極めて高く評価している。
- 初登場時の状況:参謀本部の作戦畑を握る剛毅な将官。
- シリーズ内での主な役割:勝利に固執し、東部戦線の「アンドロメダ作戦」などに執念を燃やす。しかし「勝利による全問題解決」という非合理な戦争継続(勝利依存症)を主張し続け、敗戦処理を見据えるゼートゥーアと決定的に対立する。
- 現時点での状況:ゼートゥーアの主導する「予備計画」の発動(クーデター)に際し、ゼートゥーアの策略による暗殺、および暗号解読していた連合王国による撃墜によって戦死した。
エーリッヒ・フォン・レルゲン
- 所属・立場:帝国軍大佐。参謀本部の要職。
- 主人公との関係:かつてターニャの幼年学校時代に「その本質は狂信的な危険人物」と誤解し、彼女を警戒していた。のちに彼女と協力し、外交交渉やイルドア侵攻を共に戦う。
- 初登場時の状況:参謀本部の良識派。
- シリーズ内での主な役割:ターニャ率いる「サラマンダー戦闘団」を一時的に「レルゲン戦闘団」として名目上の指揮官を偽装する(幽霊部隊)など、政治的・外交的調整を担う。講和交渉が破綻した後は、イルドア侵攻作戦において急遽、前線で第八機甲師団の指揮を引き継ぎ、狂気的な猛進撃を展開した。
- 現時点での状況:イルドア侵攻後に昇格し、戦後も生き残って回想録を残すことが確定している。
ドレイク
- 所属・立場:連合王国軍海兵魔導士官。中佐(のちに大佐)。
- 主人公との関係:ターニャ(ラインの悪魔)を東部戦線、洋上戦、海峡戦で直接相手取る、好敵手・ライバル。
- 初登場時の状況:現実的で冷徹な判断力を持つ、経験豊富なベテラン士官。
- シリーズ内での主な役割:連邦領内の多国籍軍(義勇軍)部隊を率いて戦い、過酷な戦場で組織的・規律ある撤退戦を指揮する。メアリー・スーの暴走に苦悩しつつ、連邦軍の崩壊を防ぐため奮闘する。
- 現時点での状況:大戦後は将軍。戦後、アンドリュー記者からの当時の状況に関する取材を、口を閉ざしながらも受けている。
メアリー・スー
- 所属・立場:合州国の義勇魔導師。中尉。
- 主人公との関係:ターニャによって父(アンソン・スー)を殺されたことへの憎悪を抱き、ターニャを「悪魔」として激しく敵視する。
- 初登場時の状況:合州国アーカンソー州で祖母と穏やかに暮らしていたが、父の死亡通知を受けて義勇軍へ志願。
- シリーズ内での主な役割:強烈な正義感と信仰心を持つ。しかし、感情と正義感に駆られて軍事命令を無視した独断専行・暴走を繰り返し、ドレイクなどの同盟国指揮官を困惑させる。
- 現時点での状況:イルドア戦線などで独断での追撃や戦闘を繰り返している。
ロリヤ
現時点での状況:ヨセフグラード失陥などを軍部への恐怖政治によって統制しつつ、ターニャの追跡を続けている。
所属・立場:連邦内務人民委員(内務人民委員部委員)。
主人公との関係:モスコー奇襲をかけた「ラインの悪魔」(ターニャ)に異常な関心と執着、倒錯した情愛を寄せる。
初登場時の状況:防諜の専門家であり、冷酷非情な「悪魔」として恐れられる連邦幹部。
シリーズ内での主な役割:北部戦線や東部での「ラインの悪魔」の動向を追跡させ、彼女を捕らえるための特任部隊設立を軍に提案するなど、独自の動きを見せる。
ストーリー全体の流れ
国境紛争から世界大戦へ
対象:第1巻〜第3巻 帝国と協商連合の国境問題によるノルデン紛争が勃発し、帝国の強大さに恐怖した共和国が介入したことで戦火が拡大する。ターニャは第二〇五強襲魔導中隊、そして新たに創設された第二〇三航空魔導大隊を率いて各地を転戦し、V-1を用いた奇襲作戦で共和国首都パリースィイを陥落させる。しかし、共和国国防次官ド・ルーゴが海外植民地へ逃亡し「自由共和国」を樹立したため、連合王国も介入し戦争は終わりのない泥沼へと突入する。
東部戦線の開戦と首都奇襲
対象:第4巻〜第5巻 ルーシー連邦が突然帝国へ宣戦布告し、東部国境を越えて侵入する。連邦軍の圧倒的な物量に対抗するため、ターニャ率いる大隊は政治的衝撃を狙って連邦首都モスコーへの超低空奇襲を敢行する。一時的な戦線崩壊を防ぐため、諸兵科連合部隊「サラマンダー戦闘団」が結成され東部へ投入されるが、凄惨なゲリラ戦と消耗戦に直面し、帝国軍は「解放者」として現地に自治評議会を設立する政治戦略へ移行し始める。
冬将軍の苦境と講和の模索
対象:第6巻 過酷な連邦の冬(冬将軍)が到来し、サラマンダー戦闘団は劣悪な補給と極寒により崩壊寸前の損耗を被る。ターニャは鹵獲兵器の利用などの「現地調達」で戦力を維持する。同盟国イルドアが「ガスマン提案」を掲げて講和を仲介し、ターニャも「無併合・無賠償の原状回復」による即時講和を提案するが、犠牲への執着(コンコルド効果)と世論の熱狂の前に、本国は合理的な損切りによる講和をすべて拒絶する。
鉄槌作戦の大勝と「勝利依存症」の絶望
対象:第7巻 連邦軍の大攻勢に対し、帝国軍は「レルゲン戦闘団」(幽霊部隊。実質はサラマンダー戦闘団)を投入し、大反攻「鉄槌作戦」を発動する。ターニャらはタンクデサントを駆使して高速進撃を成し遂げ、連邦軍司令部を撃滅する大戦果を挙げる。しかし、参謀本部が進撃路確保の欲から橋の無傷確保を命じたため、包囲網を絞りきれず敵主力を取り逃がす。さらに、戦勝に狂奔する本国の「勝利への慢性的中毒(勝利依存症)」により、講和の機は完全に失われる。
ソルディム528陣地の死守とアンドロメダ作戦の頓挫
対象:第8巻 参謀本部が南部へ機甲戦力を集中させる「アンドロメダ作戦」を発動し、手薄になった北方・中央(B戦線)を守るゼートゥーア中将は、レルゲン戦闘団を鉄道上の要衝「ソルディム528陣地」に「囮」として配置、事実上の死守命令を下す。ターニャらは完全包囲下で粘り抜き、ゼートゥーアの救援機甲師団と合流して敵包囲網を粉砕するが、南部の大攻勢は頓挫し資源地帯奪取に失敗。国家資源の枯渇が決定的となり、ゼートゥーアは「予防的な外科的措置(クーデター)」をターニャに仄めかす。
帝都の現実逃避と海峡戦・イルドア侵攻
対象:第9巻〜第11巻 帝都に一時帰還したターニャらは、銃後の空虚な勝利の熱狂、十代半ばの少年兵が駆り出される「人的枯渇」を目の当たりにする。ターニャはV-2を駆使した奇襲で連合王国艦隊を撃破して南方撤退を支援し、さらに海峡戦でドレイク旅団を圧倒するが、外交は破綻。ゼートゥーアは無謀な戦争継続を望む盟友ルーデルドルフ大将を排除し、一元的指導体制「予備計画」を発動、中立国イルドアが合州国と結ぼうとしたことを機に、予防的な「イルドア侵攻」を強行して電撃的に防衛線を突破する。
黎明攻勢と防衛計画第四号
対象:第12巻〜第14巻 連邦軍が帝国の息の根を止める冬季全面攻勢「黎明」を発動し、司令部機能はパルチザンの襲撃(ラウドン大将の戦死)と通信混乱で麻痺する。ターニャは野戦軍全滅を避けるため、銃殺刑を覚悟でゼートゥーア名義の偽造命令「防衛計画第四号」を全軍に発動、既存の死守を捨てた戦略的後退と航空魔導師の集結を強行する。ゼートゥーアがこれを追認し、三個師団規模の航空魔導師による敵後方チョークポイントへの決死の兵站阻止(輸送機片道使い捨て)を敢行して、連邦軍の進撃を停止させた。
幼女戦記 1 Deus lo vult
- 開始時:現代日本のエリートサラリーマンが、信仰心の欠如を理由に創造主(存在X)によって、近代魔導と近代兵器が混在する異世界の孤児の少女、ターニャ・フォン・デグレチャフとして転生させられる。
- 主な出来事:安全な後方勤務を目指すターニャだったが、高い魔導適性を測定されて士官学校へ。統一暦一九一四年、幼少の身でノルデン国境の砲撃観測任務へ投入される。協商連合軍の大隊規模の越境に対し、独断での敵前逃亡を避けて「義務」を果たすための遅滞戦闘を展開。その後、ライン戦線の第二〇五強襲魔導中隊に配属され、過酷な塹壕戦を戦い抜く中で、後に副官となる部下のセレブリャコーフ(ヴィーシャ)と出会う。
- クライマックス:ノルデンにおける協商連合軍との過酷な空中遅滞戦闘。ターニャは死を覚悟した「狂気の中の最善」の格闘戦を展開し、協商連合のアンソン・スー中佐らを翻弄して生き残る。
- 巻末:ライン戦線での赫々たる戦功から、ターニャは帝国軍で「銀翼突撃章」を授与され、その名と実力を軍中枢へ知らしめることになる。

発売日:2013年10月31日
幼女戦記 2 Plus Ultra
- 開始時:ライン戦線などで戦い、実戦エースとしての名声を高めたターニャに対し、参謀本部のレルゲンが持ち込んだ新たな封緘命令が下される。
- 主な出来事:帝国に対してダキア大公国が六十万の兵力で国境を越えて侵入し、ダキア戦役が勃発する。ターニャは「国境防衛に最適な行動」を期待され、ダキア軍を「訓練不足の前近代的兵農混成軍」と分析して徹底的な蹂躙(実弾演習)を敢行。さらにその足でダキアの首都に侵入し、カルベリウス兵器工廠を夜間首都空襲で一撃で破壊する大戦果を挙げる。また、ターニャはアルペン山脈での過酷なサバイバル訓練を経て、参謀本部直属の精鋭「第二〇三航空魔導大隊」を創設する。
- クライマックス:航空戦力の概念すら持たないダキア軍司令部への無傷の急襲(斬首戦術)と、世界初の夜間首都空襲の成功。
- 巻末:ダキア戦役で圧倒的勝利を収めるが、それは平穏な後方勤務を望むターニャの意図に反し、さらなる過酷な多方面作戦の渦中へ引きずり込まれる契機となる。

発売日:2014年5月31日
幼女戦記 3 The Finest Hour
- 開始時:北方協商連合との戦いが終盤を迎える中、西方ライン戦線では共和国軍による大規模な攻勢と包囲網が帝国を苦しめていた。
- 主な出来事:帝国軍参謀本部は、ライン戦線の手詰まりを打開すべく、V-1(追加加速装置)を駆使した敵背後への前代未聞の奇襲作戦(海を越える電撃作戦)を発動。ターニャ率いる第二〇三航空魔導大隊が先鋒として敵の喉元を切り裂き、共和国軍主力を包囲撃滅して共和国首都パリースィイを陥落させる。
- クライマックス:共和国首都パリースィイの陥落。しかし、降伏を拒絶した共和国国防次官のド・ルーゴ将軍が、残存艦隊と精鋭を海外植民地へ逃がす「大陸撤退(箱舟作戦)」を決断。ターニャは「ここで息の根を止めねば戦争が終わらない」と独断でのブレスト強襲を試みるが、参謀本部からの停戦命令により阻まれる。
- 巻末:逃げ延びた共和国残党が「自由共和国」を樹立。連合王国も対帝国包囲網へ本格的に参入し、合州国からはアンソン・スーの娘であるメアリー・スーが復讐のために義勇軍へ志願する。

発売日:2014年11月29日
幼女戦記 (4) Dabit deus his quoque finem
- 開始時:統一暦一九二六年三月十五日、帝国東部国境上空。ターニャ中佐は、休暇を装った参謀本部のすり替え命令により、極秘の越境長距離浸透偵察任務を引き受けていた。
- 主な出来事:突如としてルーシー連邦軍が帝国へ宣戦布告し、東部戦線が開戦。連邦軍の圧倒的な物量の前に帝国防衛線は押し下げられる。これに対し、ターニャ率いる第二〇三航空魔導大隊は、政治的・心理的衝撃を狙って連邦首都モスコーへの超低空奇襲を断行。赤の広場を爆撃し国歌を合唱する大戦果を挙げる。その後、ターニャには魔導大隊、歩兵、機甲、砲兵を組み合わせた超法規的な諸兵科連合部隊「サラマンダー戦闘団」の編成と指揮が命じられる。
- クライマックス:連邦首都モスコーへの大胆不敵な奇襲作戦と、心理的な大打撃。
- 巻末:連邦軍の狂気的な物量の抵抗と、新たに編成されたサラマンダー戦闘団の東部戦線への本格投入という、過酷な消耗戦の始まり。

発売日:2015年6月29日
幼女戦記 5 Abyssus abyssum invocat
- 開始時:サラマンダー戦闘団は東部戦線へ実戦投入され、連邦軍の底知れない物量とゲリラ戦の泥沼に足を踏み入れる。
- 主な出来事:広大な東部において、サラマンダー戦闘団は戦闘だけでなく、非合法なパルチザンやゲリラ活動の掃討治安戦という、精鋭の無駄遣いとも言える非効率な泥沼戦を強いられる。ターニャは敵の「戦意の本質」を冷徹に分析し、帝国軍参謀本部に対し、力による抑圧ではなく、帝国を「解放者」としてアピールする政治戦略を提言。これにより、東部における親帝国派の現地人による「自治評議会」が樹立され、戦力の穴埋めとする試みが始まる。
- クライマックス:親帝国派の「自治評議会」設立と、現地住民の治安部隊化(解放者戦略)への転換。
- 巻末:合州国の基地で訓練・再編を行うメアリー・スー中尉の動向が描かれ、彼女が復讐のために帝国への憎悪を滾らせる姿が示される。

発売日:2016年1月30日
幼女戦記 6 Nil admirari
- 開始時:統一暦一九二六年十一月末、極寒の東部前線。サラマンダー戦闘団の駐屯地は、敵ではなく「寒さ(冬将軍)」という自然の暴威に直面していた。
- 主な出来事:本国仕様の薄い防寒具や、寒冷地に対応できないガラパゴス化した帝国製兵器により、部隊は崩壊寸前の損耗を被る。ターニャは戦力を維持するため、連邦製鹵獲兵器の積極利用や、パルチザンから物資を奪い取る「現地調達」を断行。一方、中立の同盟国イルドア王国のガスマン提案(講和仲介)が提示され、カランドロ大佐がレルゲン大佐に接触。ターニャはウーガ中佐に対し、破滅を防ぐための「無併合・無賠償の原状回復による即時講和」を提案する。
- クライマックス:ターニャの提案した極めて合理的な「即時講和案」に対し、これまでの犠牲(サンクコスト)に執着するウーガ中佐らが「降伏も同然だ」と感情的に拒絶し、さらに「世論という化け物」の熱狂の前に講和が不可能である現実が突きつけられる。
- 巻末:イルドア王国の仲介案もゼートゥーア中将によって「世論の前には冷徹な合理性など機能しない」と看破され、帝国は自ら戦争を終わらせられない泥沼の総力戦へと完全に囚われる。

発売日:2016年7月30日
幼女戦記 7 Ut sementem feceris, ita metes
- 開始時:統一暦一九二七年四月二十日。東部戦線は雪解けの泥濘に沈み、連邦軍の大規模な反攻によって前線が崩壊する混乱が起きていた。
- 主な出来事:帝国軍参謀本部は、極秘講和工作の隠れ蓑としてレルゲン大佐の名義を借りた「レルゲン戦闘団」(実質はサラマンダー戦闘団)を編成。乾坤一擲の大反攻「鉄槌作戦」において、ターニャらは「タンクデサント」を駆使して高速進撃を敢行、友軍の降下猟兵(空挺部隊)と合流する。さらにゼートゥーア中将の厳命により、包囲下の連邦軍集団司令部への直撃(斬首戦術)に成功する。
- クライマックス:連邦軍司令部の撃滅に成功したが、参謀本部が「進撃路確保」という欲から渡河地点の橋の無傷確保を命じたため、包囲網を絞りきれず連邦軍主力の完全撃滅を取りこぼす。
- 巻末:大勝利に沸く宮中や大蔵官僚などの本国は「賠償金なしでの講和など不可能」と勝利への慢性的中毒(勝利依存症)を露呈し、講和の好機を自ら完全に潰してしまう。これを目にしたゼートゥーア中将は、祖国の精神的崩壊を悟り絶望する。

発売日:2016年12月28日
幼女戦記 8 In omnia paratus
- 開始時:連邦軍の「トード攻勢」に対し、帝国軍参謀本部は南部での一発逆転を狙い、機甲戦力を集中させた「アンドロメダ作戦」を立案・発動する。
- 主な出来事:戦力が南部(A戦線)に偏る中、B戦線を預かるゼートゥーア中将は、攻勢防御による敵の包囲殲滅を企図。そのための「囮」として、レルゲン戦闘団を鉄道上の「ソルディム528陣地」へ配置し、事実上の死守命令を下す。陣地は連邦軍の4〜5個師団に完全包囲され、ターニャは無駄な消耗を避ける遅滞・温存戦術を展開。多国籍部隊(ドレイク中佐やメアリー・スー中尉ら)の包囲攻撃に耐え抜く。
- クライマックス:包囲下のソルディム528陣地からターニャが機動。ゼートゥーア大将率いる救援機甲師団と合流し、さらに突撃を仕掛けてきた多国籍部隊に対し、グランツ中尉らの地上部隊と連携した見事な挟撃で包囲網を内側から粉砕する。
- 巻末:戦術的には大勝したものの、肝心の南部「アンドロメダ作戦」は頓挫(ヨセフグラード失陥、資源地帯の奪取失敗)。帝国の物的・人的資源は完全に枯渇する。ゼートゥーア中将は「このままではダメだ」と、帝国の「勝利依存症」を外科的に取り除くための内政介入(政変・クーデター)をターニャに仄めかす。

発売日:2017年6月30日
幼女戦記 9 Omnes una manet nox
- 開始時:統一暦一九二七年六月二十九日。東部での死闘を終え、レルゲン戦闘団は療養と再装備のために本国(帝都ベルン)へ帰還する。
- 主な出来事:ターニャは帝都で、死に慣れた銃後の異常な日常と「勝利」への飢餓感、さらに儀仗兵すら少年兵や傷病兵で構成されるほどの致命的な「人的枯渇」を目の当たりにし、慄然とする。ルーデルドルフ中将からは「最高統帥会議に国家目標が策定されていない」事実を告げられる。そんな中、ターニャに下された任務は、潜水艦(U-091)に乗り込み、シューゲル手製の誘導魚雷「V-2」(人間魚雷)を駆使して、南方大陸(ロメール軍団)の敵前撤退を支援するための過酷な洋上戦であった。
- クライマックス:V-2による奇襲。ターニャらは連合王国の空母アーク・ロイヤルや巡洋戦艦フッドを撃破。さらに、追撃するドレイク旅団を避けるため、あえて敵艦を中破状態に留めて「漂流する要救助者(新兵)」を海上に作り出し、彼らを盾にして追撃を諦めさせる人道的欺瞞戦術で全員が生還する。
- 巻末:ターニャに「同盟国イルドアへの観光旅行(表敬訪問)」という極妙な極秘任務が下る。一方で、帝都の政治中枢では、国家破滅を避けるための「クーデターの火」がゼートゥーアを中心に胎動を始める。

発売日:2018年1月12日
幼女戦記 10 Viribus Unitis
- 開始時:統一暦一九二七年七月二十五日、帝都。「一致団結(Viribus Unitis)」のスローガンが叫ばれる中、帝国の国家機構は「多頭のキメラ」と化して内側から崩壊しつつあった。
- 主な出来事:ターニャは公用使として東部のゼートゥーア中将のもとへ赴き、彼の「意図的に美しい戦線後退を繰り返して敵を誘導する」巨大な戦略的詐欺を看破する。転職を決意したターニャは「算数の話だ、敵が多すぎる」と敗北主義をレルゲン大佐らに明言。しかし、帝国陸海軍の連合王国本土への奇襲上陸作戦が計画され、その欺瞞工作「腐った卵」として、ターニャの第二〇三航空魔導大隊が海峡のハラスメント夜間空襲を命じられる。
- クライマックス:海峡哨戒部隊との夜間航空撃滅戦。ターニャを東部で目撃して「ラインの悪魔が東部にいる」と確信していたドレイク中佐率いる海兵魔導旅団と激突。ターニャは高度一万四千の高高度から逆落としを仕掛け、最後はエレニウム九十五式の全力展開(四核出力)によってドレイクを一騎打ちで圧倒・撃退する。
- 巻末:戦術的勝利を挙げるが、ターニャはヴィーシャに「最後に決定するのは政治だ」と語り、いよいよ沈む船からの転職活動を本格化させる決意をする。

発売日:2018年9月29日
幼女戦記 11 Alea iacta est
- 開始時:物的・人的資源が完全に破綻し、イルドアを介した講和工作も敵国の帝国滅亡への欲望により完全に頓挫する。
- 主な出来事:ゼートゥーア大将は、無謀な戦争継続を強硬に主張する盟友ルーデルドルフ大将を「世界の敵」として排除(戦死・暗殺?)し、軍の一元的指導体制「予備計画」を発動、実権を握る。さらに、イルドア王国が合州国と「武装中立同盟」を結ぼうとしたため、南方の縦深確保と敗戦処理の時間稼ぎのために予防的な「イルドアへの軍事侵攻」を決断。徹底的な航空集中奇襲を仕掛ける。レルゲン大佐は、不審な情報リークや外交破綻を味わいつつも、戦死した将校に代わって前線の第八機甲師団の指揮を急遽引き継ぎ、イルドアへ向けて狂気的な猛進撃を展開。ターニャのサラマンダー戦闘団もこれを空から電撃的に支援する。
- クライマックス:イルドアの防衛線を電撃的に打通し、ターニャがV(V-2など)で戦艦に突撃して大戦果を挙げる圧倒的な奇襲侵攻の成功。
- 巻末:イルドア侵攻によって敗戦処理の時間稼ぎには成功するが、帝国は「全世界の敵」としての孤立を決定的なものにする。レルゲンが戦後生き残って回想録を執筆することが確定する。

発売日:2019年2月20日
幼女戦記12 Mundus vult decipi, ergo decipiatur
- 開始時:イルドア侵攻作戦が継続される中、ゼートゥーア大将は次の「歴史的詐欺」のための盤面を整える。
- 主な出来事:ゼートゥーアは徹底した航空集中と、あえて中立国の「避難民(難民)」の移動によってイルドアの兵站線を塞ぐ過酷な兵站攻撃を強行。さらに、戦略的意図から「あえて王都ローマ(?)を無防備に放棄」することで、占領後の対立構図(連邦・連合王国対合州国などの勢力圏争い)を意図的に構築し、帝国の戦後の生存縦深を確保する。ターニャ率いるサラマンダー戦闘団はこの過酷な機動戦を前線で支え続ける。
- クライマックス:メアリー・スー中尉ら合州国の多国籍義勇軍の暴走と、ドレイク大佐の制止を無視した帝国軍との激突。
- 巻末:イルドアの完全制圧により一時的な防衛体制を築くが、帝国の根本的な国力枯渇は覆せず、連邦軍が最後の止めを刺すべく大規模な冬季攻勢の準備を進めていることが暗示される。

発売日:2020年2月20日
幼女戦記 13 Dum spiro,spero ―上―
- 開始時:統一暦一九二八年一月十五日、参謀本部。連邦軍が帝国の息の根を止めるための冬季全面攻勢「黎明(コードネーム)」を発動し、東部戦線へ怒涛の物量が押し寄せる。
- 主な出来事:連邦軍の圧倒的な全縦深同時攻撃、完璧な奇襲、そして徹底的な通信妨害により、東部方面軍司令部は各所からの報告の濁流で麻痺状態に陥る。さらに、前線司令官であるラウドン大将が、着任直後の前線視察中にパルチザンの爆破攻撃により戦死。次席指揮官も列車砲攻撃で消息不明となり、東部方面軍の指揮系統は完全に瓦解し崩壊寸前に追い込まれる。
- クライマックス:野戦軍全滅の危機を悟ったターニャが、既存の「陣地死守」ドクトリンでは軍が包囲殲滅されると判断し、銃殺刑を覚悟の上で、ゼートゥーア大将の名前と使い捨て暗号を騙って「防衛計画第四号」という偽造命令を全軍へ送信する暴挙に及ぶ。
- 巻末:偽造命令は通信部門 of クレーマー大佐らによって正規命令として処理され、既存の陣地死守を捨てた戦略的後退と、サラマンダー戦闘団への航空魔導師集中が動き出す。

発売日:2023年8月30日
幼女戦記14 Dum spiro,spero ‐下‐
- 開始時:統一暦一九二八年一月十四日、東部方面。連邦軍の「黎明」攻勢による全縦深同時攻撃の衝撃と、司令部の極限状態。
- 主な出来事:ゼートゥーア大将は、ターニャの書類偽造(最大の軍律違反)を冷徹に追認し、自らの「防衛計画第四号」として軍全体に徹底させる。ターニャ率いる臨時航空魔導師団(三個師団規模)は、他戦線の防空すら犠牲にし、連邦軍の後方チョークポイント(第二方面軍司令部、バルク大橋、ノルク駅)へ強襲(航空阻止・兵站攻撃)を断行。貴重な大型輸送機を片道で全損・使い捨てにするという常識外れのコスト(エアランド・バトル)を払い、連邦軍の進撃を停止させる。
- クライマックス:ゼートゥーア大将は、薄氷を踏むこの窮余の策を「余裕綽々の大勝利」として宮中に上奏する壮大な「政治的・歴史的詐欺」を完遂。連邦の無停止進撃を頓挫させ、帝国野戦軍主力を間一髪で救い出す。
- 巻末:ゼートゥーアは「世界の敵(悪役)」のアイコンを自らと帝室に集中させ、故郷(ハイマート)を存続させて帝国(ライヒ)を終わらせるハードランディングへ進む。ターニャらはこの狂気的な勝利により「帝国航空魔導師は無敵である」という虚栄(神話)を歴史に刻んだ。

発売日:2023年9月29日
幼女戦記15
予想発売日:不明
その他フィクション

考察・解説
物語の重要な転換点
ダキア戦役における兵器工廠の夜間爆撃
- 該当巻:第2巻
- 航空戦力の概念すら持たないダキア大公国への電撃侵攻において、世界初の「夜間首都空襲」と斬首戦術を完遂。第二〇三航空魔導大隊の圧倒的な機動戦能力が証明され、帝国軍のドクトリンに新たな一ページを刻んだ。
共和国軍「大陸撤退」の許容と「自由共和国」の樹立
- 該当巻:第3巻
- 帝国軍がパリースィイ陥落という大勝利の多幸感から停戦命令を下したため、ド・ルーゴ将軍ら共和国精鋭が海外植民地へ逃亡。これにより「勝ったのに戦争を終わらせられない」という、終わりのない多方面戦(総力戦)の泥沼が決定づけられた。
ルーシー連邦の参戦とモスコー奇襲
- 該当巻:第4巻
- 連邦の突然の参戦により、帝国は自国内での「内線戦略」に耐えがたい多方面の兵站負荷(外征)を負うことになる。これに対抗したターニャらのモスコー奇襲は、局地的な心理的大打撃を与えたが、同時に東部での凄惨な物量消耗戦の幕開けとなった。
イルドア王国の講和仲介拒絶(世論という化け物の誕生)
- 該当巻:第6巻
- イルドアからの合理的な講和仲介案や、ターニャの「無併合・無賠償」の原状回復案に対し、本国の感情的な反発と「世論という怪物」の熱狂により、合理的な「損切り」による講和が不可能な国家構造であることが浮き彫りとなった。
アンドロメダ作戦の頓挫と「予防的・外科的措置」の決意
- 該当巻:第8巻
- 南部資源地帯奪取を狙った「アンドロメダ作戦」が頓挫し、帝国の物的・人的資源の枯渇が決定的となった。これを受け、ゼートゥーア中将は「勝利依存症」から祖国を救うため、非合法な内政介入(政変・クーデター)への道を歩む決意をした。
連合王国艦隊強襲(V-2による強襲)と「人道的欺瞞」の成功
- 該当巻:第9巻
- 海中からの誘導魚雷V-2を用いた奇襲で敵一個戦隊を壊滅させ、さらに「漂流する新兵」をあえて生かすことで敵に救助を強要して追撃を阻む。この「人道主義を盾にした欺瞞」により、最精鋭を無傷で離脱させる冷徹な合理主義が極まった。
盟友ルーデルドルフ大将の排除と「予備計画」の発動
- 該当巻:第11巻
- 無謀な戦争継続を主張する盟友ルーデルドルフ大将をゼートゥーアが策略により排除し、軍の一元的指導体制「予備計画」を発動。中立国イルドアへの予防侵攻を強行し、敗戦処理を見据えた「世界の敵」としての最終戦略(歴史的詐欺)へと舵を切った。
偽造命令「防衛計画第四号」の発動と追認
連邦軍の「黎明」攻勢による野戦軍全滅の危機に対し、ターニャがゼートゥーアの名を騙って「既存の陣地死守のドクトリンを捨てた戦略的撤退」を全軍に命令。これをゼートゥーア大将が正規命令として追認し、帝国野戦軍を壊滅から救うという超法規的「大逆転劇」が成し遂げられた。
該当巻:第13巻〜第14巻
ターニャ を取り巻く人物関係
ハンス・フォン・ゼートゥーア
- 関係:戦略的上官と、それに応える最精鋭の駒(のちに共犯者)
- 主な出来事:ゼートゥーアは早くからターニャの総力戦論文や魔導技術を評価し、彼女のために第二〇三航空魔導大隊や超法規的なサラマンダー戦闘団を編成して過酷な戦場へ投入し続けた。第8巻では、ソルディム528陣地での過酷な「囮」任務を押し付けるが、同時にターニャに「勝利依存症の祖国を救うための外科的措置(クーデター)」の決意を明かす。第14巻では、ターニャが犯した「防衛計画第四号」の書類偽造を冷徹に追認し、それを自身の公式命令へと昇華させた。
- 現在:ゼートゥーアが「世界の敵(悪役)」となって帝国をハードランディングさせるための歴史的詐欺の片棒を、ターニャは共犯者として担いでいる。
エーリッヒ・フォン・レルゲン
- 関係:名目上の上官・同僚と、実質的な最前線の突撃者
- 主な出来事:かつてレルゲンは、ターニャの幼年学校時代に「その本質は狂信的な危険人物」と誤解し、彼女を激しく警戒していた。第7巻では、講和交渉の隠れ蓑として「レルゲン戦闘団」の偽装名称が使われ、レルゲンが名目上の指揮官(幽霊部隊)となり、ターニャが実質的な指揮を執って戦功をレルゲン名義で立てた。第11巻のイルドア侵攻では、急遽前線で第八機甲師団の指揮を引き継いだレルゲンの狂気的な猛進撃を、ターニャのサラマンダー戦闘団が側背から支援し共闘した。
- 現在:レルゲンは外交破綻や戦場の狂気を経て、ターニャの実力を心から認める良き理解者となり、戦後も彼女について手記を残している。
メアリー・スー
- 関係:宿敵(殺された父の復讐を誓う義勇兵と、彼女から「悪魔」と敵視される戦闘官)
- 主な出来事:ターニャはノルデンなどでメアリーの父アンソン・スー中佐と死闘を繰り広げ、結果として彼を撃墜・殺害した。これを知ったメアリーは合州国で義勇軍に志願し、東部戦線やイルドア戦線などで、ターニャ率いる魔導部隊(ラインの悪魔)への強い憎悪を滾らせ、命令を無視してでも執拗に追撃する。
- 現在:メアリーは「正義」の名のもとに暴走を繰り返し、ターニャへの執拗な復讐を誓って各戦線で激突し続けている。
ターニャの立場・評価の変化
1巻時点
- 本人の認識:安全な後方勤務でエリートコースを歩み、平穏な生涯を終えることを熱望する一人の合理的労働者。
- 所属:帝国軍第二〇五強襲魔導中隊(少尉)。
- 周囲からの評価:ノルデンでの凄惨な遅滞戦闘を生き抜いたことから、帝国軍中枢から「比類なき不屈の敢闘精神を持つエース」と見なされ、「銀翼突撃章」を授与される。
4巻時点
- 本人の認識:精鋭としての実績ゆえに、便利な駒として過酷な前線(東部戦線)へ酷使され続ける不条理を呪っている。
- 所属:参謀本部直属・第二〇三航空魔導大隊(少佐)、および新編された諸兵科連合「サラマンダー戦闘団」指揮官。
- 周囲からの評価:連邦首都モスコー奇襲を成し遂げたことから、本国ではさらなる熱狂を呼び、敵(連邦軍内務人民委員ロリヤなど)からは「モスコーに悪戯をした、かわいい私の妖精(ラインの悪魔)」として、異様な執着を向けられる。
8巻時点
- 本人の認識:帝国一国で世界を相手に完全勝利することは「算数の話として不可能」であり、もはや沈む船から逃げ出すための「転職活動(生き残り戦略)」が必要だと痛感する。
- 所属:レルゲン戦闘団(サラマンダー戦闘団)指揮官(中佐)。
- 周囲からの評価:ソルディム528陣地での絶望的な包囲戦を、驚異的な遅滞戦術と司令部強襲によって乗り切ったことから、敵のドレイク中佐ら多国籍部隊から「知恵ある怪物」として警戒を深められる。ゼートゥーア中将からは「予防的な外科的措置(クーデター・政変)」の重大な共犯者として目される。
14巻時点
- 本人の認識:書類偽造という最大の軍律違反を犯してでも軍の全滅を防ぎ、生き残るために極限の合理性を絞り出した末の結末。
- 所属:臨時航空魔導師団長(中佐)。
- 周囲からの評価:ゼートゥーア大将の「政治的・歴史的詐欺」の片棒を担ぎ、三個師団規模の航空魔導師を率いて連邦軍の進撃を停止させたことから、世界に「帝国軍航空魔導師は無敵である」という神話(虚栄)を不滅のものとして刻み込ませた。
主な敵・対立相手
自由共和国(ド・ルーゴ将軍)
- 初登場巻:第3巻
- 目的・立場:帝国に本土を占領された後、植民地に樹立された「自由共和国」の精鋭を率い、祖国解放のために徹底抗戦を続ける。
- 主人公側との対立理由:帝国軍の覇権確立に対する地政学上の防衛、および祖国の奪還。
- 主な事件:ブレスト軍港からの「大陸撤退(箱舟作戦)」。南方大陸の砂漠戦において、帝国軍(ロメール軍団)を包囲殲滅するための「各個撃破の逆用」を画策し、ターニャらの司令部強襲を招く。
- 現在の状況:連合王国や連邦、合州国義勇軍などと提携し、帝国を包囲する世界大戦の主要陣営として抗戦を継続中。
連合王国(ドレイク中佐)
- 初登場巻:第7巻
- 目的・立場:大陸における唯一絶対の超大国(帝国)の誕生を阻止する「勢力均衡(バランス・オブ・パワー)」の国是のもと、他国を巻き込んで帝国を徹底的に疲弊させる。
- 主人公側との対立理由:帝国の覇権確立阻止のための直接的な地政学的戦闘。
- 主な事件:ソルディム528陣地におけるレルゲン戦闘団の包囲。南方撤退を企図する帝国軍に対する洋上追撃戦。海峡における航空撃滅戦(ドレイクとターニャの一騎打ち)。
- 現在の状況:連邦や合州国と同盟を組み、暗号解読などの情報戦や多国籍義勇軍を駆使して帝国を締め上げている。
ルーシー連邦(ロリヤ)
- 初登場巻:第4巻
- 目的・立場:共産主義とナショナリズムの混合物を背景に、帝国を圧倒的な物量(全縦深同時攻撃)で圧殺し、大陸東部の覇権を握る。内務人民委員ロリヤは、モスコーを奇襲した「ラインの悪魔(ターニャ)」の鹵獲に異様な倒錯的執念を燃やす。
- 主人公側との対立理由:帝国による東部侵攻、および首都モスコー奇襲に対する報復。
- 主な事件:モスコー奇襲。ソルディム528陣地の包囲戦。冬季全面攻勢「黎明」の発動による東部戦線の打通。
- 現在の状況:圧倒的な物量とパルチザン工作を維持し、冬季大攻勢「黎明」によって帝国の息の根を止めるべく猛攻を続けている。
主な事件・戦闘
モスコー奇襲
- 該当巻:第4巻
- 発生原因:ルーシー連邦による帝国への宣戦布告と東部侵攻に対抗し、帝国軍参謀本部が政治的・心理的な大打撃を与えるために立案。
- 参加人物:ターニャ・フォン・デグレチャフ、第二〇三航空魔導大隊
- 経過:国籍標識すら曖昧にした輸送機で越境したターニャらは、連邦首都モスコーの上空へ超低空から奇襲突入。赤の広場や中枢施設を爆撃し、さらに全員で帝国国歌を合唱するプロパガンダを完遂。
- 決着:帝国側の損害は皆無のまま、奇襲は大成功に終わる。
- その後への影響:連邦の指導部(同志書記長ら)に計り知れない心理的衝撃を与え、内務人民委員ロリヤが「ラインの悪魔」へ異常な執着を燃やすきっかけとなった。
ソルディム528陣地攻防戦
- 該当巻:第8巻
- 発生原因:帝国軍参謀本部の南部「アンドロメダ作戦」発動に伴い、手薄になった北方・中央(B戦線)を守るゼートゥーア中将が、連邦軍を包囲殲滅するための「囮」としてレルゲン戦闘団を鉄道上の要衝に配置したこと。
- 参加人物:ターニャ・フォン・デグレチャフ、レルゲン戦闘団(サラマンダー戦闘団)、ゼートゥーア中将、ドレイク中佐、メアリー・スー中尉
- 経過:戦闘団は4〜5個師団の連邦軍に完全包囲される。ターニャは遅滞戦術と、トスパン中尉ら歩兵部隊への「死守命令」によって時間を稼ぎ、機甲部隊(アーレンス大尉)を温存。ゼートゥーア大将が救援の機甲師団を率いて到着した瞬間、ターニャらは逆襲へ転じ、追撃してきた多国籍部隊をグランツ中尉らの地上部隊と連携して挟撃・粉砕した。
- 決着:囮としての役割を完遂し、包囲を打ち破る戦術的大勝利。
- その後への影響:戦術的には大勝したものの、肝心の南部「アンドロメダ作戦」は頓挫(資源地帯奪取失敗)し、帝国の物的・人的枯渇が決定的となったことで、ゼートゥーアが「予防的な外科的措置(クーデター)」を決意する契機となった。
連合王国艦隊強襲(洋上戦)
- 該当巻:第9巻
- 発生原因:南方大陸派遣軍(ロメール軍団)の敵前撤退を支援するため、追撃してくる連合王国艦隊を洋上で阻止・撃滅する必要が生じたため。
- 参加人物:ターニャ・フォン・デグレチャフ、第二〇三航空魔導大隊、U-091(エルム少佐)、ドレイク中佐
- 経過:ターニャらは潜水艦から発艦し、シューゲル主任技師手製の誘導魚雷「V-2(人間魚雷)」を駆使して連合王国艦隊を奇襲。空母アーク・ロイヤルや巡洋戦艦フッドを撃破する大戦果を挙げる。その後、旅団規模の敵魔導師(ドレイク旅団)の追撃を受けるが、ターニャはあえて中破させた敵艦の「海上の漂流者(新兵)」を盾にする人道的欺瞞により敵の足を鈍らせ、無傷で撤退。
- 決着:南方派遣軍の無事な敵前撤退の支援に完全成功。
- その後への影響:V-2という新兵器は大戦果を挙げたが、本国(帝都)の「勝利への依存」をますます強めてしまう。また、ターニャらにはこの後、イルドア王国への「観光旅行(極秘の外交牽制任務)」が下る。
兵站阻止攻撃(防衛計画第四号)
- 該当巻:第13巻〜第14巻
- 発生原因:連邦軍の冬季全面攻勢「黎明」により、東部方面軍司令部が麻痺・崩壊寸前となり、帝国野戦軍が包囲殲滅の危機に瀕したため。
- 参加人物:ターニャ・フォン・デグレチャフ、臨時航空魔導師団(三個師団規模)、ゼートゥーア大将、クレーマー大佐
- 経過:ターニャは野戦軍を救うため、銃殺刑を覚悟でゼートゥーア名義の偽造命令「防衛計画第四号」を送信、全軍に戦略的撤退を命じる。ゼートゥーア大将はこれを事後追認。ターニャ率いる臨時航空魔導師団は、他戦線の防空を犠牲にし、貴重な大型輸送機を片道使い捨てにする常識外れのコストを払って、連邦軍後方のチョークポイント(第二方面軍司令部、バルク大橋、ノルク駅)へ電撃空挺襲撃を敢行。
- 決着:連邦軍の兵站を寸断し、その無停止進撃を土壇場で停止させた。
- その後への影響:東部野戦軍主力を壊滅から救い出し、帝国の命脈を辛うじて繋ぐことに成功。ゼートゥーア大将は、この「大勝利の幻想」を利用して宮中や独立を望む自治評議会を引き込む「歴史的・政治的詐欺(ハードランディング)」へ歩みを進める。
継続中の問題・未解決事項
帝国の「勝利依存症」と国家目標の欠如
- 発生した巻:第6巻・第7巻・第9巻
- 現在までに判明していること:本国の宮中や官僚、世論は、莫大な戦費と犠牲(サンクコスト)を払ったがゆえに、完全な「勝利」による賠償金獲得以外の講和条件を感情的に拒絶している。しかし、帝国一国で世界(連邦・連合王国・合州国など)を相手に完全勝利することは物理的・算数的に不可能である。最高統帥会議には「どのような条件で戦争を終わらせるか」という国家目標(戦略目標)が欠如しており、戦争を終わらせる方法(コクピットのパイロット)が存在しない。
- 現時点の状況:ゼートゥーア大将は軍の実権を掌握したのち、この「終わらない勝利への依存」を打ち砕き、故郷(ハイマート)を残して帝国(ライヒ)を終わらせるための「歴史的・政治的詐欺」と「ハードランディング戦略」を水面下で進めている。
帝国の物的・人的資源の致命的枯渇
- 発生した巻:第6巻・第8巻・第9巻
- 現在までに判明していること:長引く多方面戦と「アンドロメダ作戦」の頓挫により、帝国は物資、資金、人的資源のすべてが物理的に枯渇している。帝都では一糸乱れぬ儀仗兵すら編成できず、十代半ばの少年兵や傷病兵が駆り出される惨状となっている。前線では、最精鋭である第二〇三航空魔導大隊ですら「これ以上の補充は期待できない」と言われるほど、補充魔導師の質と量が完全に底を突いている。
- 現時点の状況:冬季全面攻勢「黎明」において、三個師団規模の航空魔導師をかき集めた「臨時航空魔導師団」を結成して兵站攻撃を敢行したが、これは残された僅かな資源と人材をさらに限界まで「すり潰す」ことで得た一時的な時間稼ぎに過ぎず、根本的な枯渇問題は何も解決していない。
メアリー・スーの復讐と暴走
- 発生した巻:第3巻
- 現在までに判明していること:合州国の義勇魔導師となったメアリー・スーは、父アンソン・スーを殺した「ラインの悪魔(ターニャ)」への強い憎悪と「正義」に囚われている。ドレイク大佐ら連合王国側の指揮官の命令や戦略的判断を完全に無視し、感情的に帝国軍を追撃・暴走を繰り返すことで、多国籍部隊の統制を攪乱している。
- 現時点の状況:イルドア戦線などでも独断で戦闘に突入しており、その存在と正義の暴走が、戦場の予期せぬ混乱要素(あるいは多国籍軍の殿軍を助ける要因など)として燻り続けている。
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