物語の概要
■ 作品概要
本作は、大人気ファンタジー小説『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のスピンオフシリーズ「ファミリアクロニクル」の第5弾である。ジャンルは異世界ファンタジーであり、迷宮都市オラリオの最強派閥【フレイヤ・ファミリア】に所属する治療師、ヘイズ・ベルベットに焦点を当てた物語である。 物語は、本編開始の半年前の日常から始まる。異常なまでの自己中心的な強者たちが集う派閥内で、凄惨な殺し合いの事後処理に奔走するヘイズの過酷な日々が描かれる。ある日、街娘の一言をきっかけに、ライバル派閥の「戦場の聖女」アミッド・テアサナーレと急造パーティを組むことになり、ダンジョン深層で発生した怪事件の解決に挑む。また、本編第21巻以降の時系列となる「豊穣大作戦」などの短編も収録されており、女神フレイヤとその眷族たちの歴史の一端を紐解く構成となっている。
■ 主要キャラクター
- ヘイズ・ベルベット: 本作の主人公。【フレイヤ・ファミリア】の治療師部隊「満たす煤者達(アンドフリームニル)」の筆頭を務める。二つ名は「黄金の魔女」。幼少期に竜災で全てを失い、女神フレイヤの光に魅了されて入団した。かつては戦士を目指したが才能の限界を知り、現在は圧倒的な回復魔法「ゼオ・グルヴェイグ」を駆使して派閥の狂気的な日常を支える苦労人である。
- アミッド・テアサナーレ: 【ディアンケヒト・ファミリア】所属。オラリオ最高の治療師として「戦場の聖女」と称される少女。ヘイズとは正反対の「献身と慈愛」の象徴であり、治療師としての在り方を巡ってヘイズとしばしば衝突するが、ダンジョン深層での探索では卓越した連携を見せる。
- ヘルン: 女神フレイヤの側仕え。ヘイズとは同室で過ごす仲であるが、女神への忠誠心が強すぎるあまり、ヘイズからは「頭でっかち」と疎まれることもある。物語の後半では、一人の少女「シル」としての側面や、ヘイズとの複雑な絆が深く描かれる。
- ベル・クラネル: 【ヘスティア・ファミリア】の主神。本作ではヘイズの過去や日常に間接的に関わるほか、後日談ではヘイズたちが企てた「豊穣大作戦」の標的として拉致されるなど、騒動の中心人物となる。
■ 物語の特徴
本作の最大の特徴は、これまでの「ダンまち」シリーズでは語られなかった【フレイヤ・ファミリア】の内部事情や、最強派閥がなぜ最強であり続けられるのかという「狂気のシステム」を治療師の視点から描いている点である。 団員同士が殺し合い、それを治療師が蘇生させるという異常な循環は、本作ならではの差別化要素であり、読者に強い衝撃を与える。また、シリアスな深層探索だけでなく、ベルを巡るコミカルかつ暴走気味な「豊穣大作戦」のように、眷族たちの女神への「重すぎる愛」が多角的に描写されている点も興味深い。
書籍情報
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeヘイズ
著者:大森藤ノ 氏/西島ふみかる 氏
イラスト: ニリツ 氏
キャラクター原案: ヤスダスズヒト
出版社:SBクリエイティブ(GA文庫)
発売日:2026年5月15日
ISBN:978-4-8156-4067-5
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
彼女は如何にして、女神の黄金へと至ったのかーー
それは神の眷族が紡ぐ歴史の欠片――。
強過ぎてウルトラ自己中の勇士達に振り回される毎日を送るヘイズ。その日は珍しく休暇を満喫できる筈だったが――。
「わぁー! 魔女様と聖女様の夢の共演、見てみたいな~!」
「――行きましょう!!」
街娘の一言でまさかの聖女とパーティを組むことに! 全ての鍵を握る賞金首『血濡れのトロール』を巡り、オッタル達強靭な勇士も動き出す!
「いつか、本物の黄金に」
挫折と再生を繰り返す黄金の昔日、白兎の繁殖を目論む豊穣大作戦も収録されたクロニクル・シリーズ第五弾!
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeヘイズ
感想
最強派閥【フレイヤ・ファミリア】を支える有能な治療師、ヘイズ・ベルベットの光と影を鮮烈に描き出した一冊である。ベルが冒険者になる半年前の日常から始まり、本編第21巻以降の後日談までを網羅した本作は、彼女の凄絶な生き様を通じて派閥の異常な強さの源泉を解き明かしていた。
まず強く印象に残ったのは、ヘイズが送る「地獄」とも形容すべき日常の過酷さだ。血生臭い戦場の後始末に始まり、厄介な団員たちが引き起こす諍いの仲裁に追われる彼女の一日は、まさに終わりのない消耗戦である。しかし、文句を言いながらも全ての業務を完璧に完遂する彼女の姿には、高い実務能力を備えた苦労人としての魅力が溢れていた。一日の終わりに、敬愛する女神の世話ができなかったことを嘆きながら眠りにつく様子からは、彼女の忠誠心の深さがひしひしと伝わってくる。
彼女が率いる「満たす煤者達」も、単なる後方支援部隊の枠に収まらないプロフェッショナル集団であった。戦場での蘇生と晩餐の提供という極限の激務を支える彼女たちの存在こそが、最強派閥の狂気的な活動を可能にしている事実は驚きを禁じ得ない。
また、本作の白眉といえるのが「戦場の聖女」アミッドとの共闘シーンである。「動き出した死体」という不気味な事件に端を発した「水雷の丘」の探索では、相反する特性を持つ二人の治療師が、深層の過酷な環境下で絶妙な連携を見せる。ヘイズの卓越した洞察力と、二人の圧倒的な治癒能力が重なり合い、迷宮の悪意を打ち破る展開には、胸が熱くなるような興奮を覚えた。
ヘイズ自身の過去についても、その壮絶さに圧倒された。竜災ですべてを失った絶望から始まり、才能のなさを突きつけられ続けた「戦いの野」での挫折。そこから嫉妬や絶望を経て、自らを癒しながら戦うというクレイジーな戦闘スタイルを確立し、「黄金の魔法」へと至るプロセスは、まさに執念の産物である。届かぬ「黄金」への渇望を抱えたまま、自身の価値を「勇士を支える土壌」に見出すまでの苦闘は、彼女を唯一無二のキャラクターへと押し上げていた。
物語の終盤、本編21巻後のエピソードでは、ベルを巡る「豊穣大作戦」の暴走ぶりに呆れつつも笑わされた。倫理観を投げ捨てたその発想には戦慄したが、そこに制裁役のはずのヘルンまでが参加してしまう展開は、彼女たちの「重すぎる愛」を象徴しているようで非常に興味深い。
ヘイズやヘルンといった「最高位の狂信者」たちは、深い愛と激しい愛憎を抱える鏡合わせのような存在だ。しかし最後には、女神への盲信という軛から解き放たれ、一人の少女となったシルと対等な立場で想いをぶつけ合う。涙ながらに「私だけが、貴方の黄金です」と笑い合う結末は、狂信を超えた純粋な絆の誕生を感じさせ、読後に爽やかな感動を残してくれた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
考察・解説
ヘイズの一日
『ファミリアクロニクル episodeヘイズ』で描かれるヘイズ・ベルベットの一日は、フレイヤ・ファミリアの本拠地「戦いの野(フォールクヴァング)」における過酷な日常そのものである。凄惨な戦場での治療業務から深夜の事務作業、さらには団員の教育までをこなす彼女の多忙なサイクルを、時系列に沿って整理する。
朝:無防備な目覚めと治療師への変貌
ヘイズの一日は、夜明け前の薄暗い自室から始まる。その起床風景は私生活でのだらしなさと、仕事への完璧な切り替えが対照的である。
・フリフリの寝衣を纏い、下半身は下着一枚という極めて無防備な姿で目覚める。
・女神の側仕えであるヘルンの小言に不満を漏らしつつ、重い腰を上げる。
・しかし、身支度を終えて扉を開く瞬間には、隙のない美しい治療師へと変貌を遂げる。
・赤と白の看護衣に身を包んだ「満たす煤者達」の筆頭として、プロフェッショナルな姿で出撃する。
日中:戦場の狂気と蘇生魔法による酷使
日中の主戦場は、団員たちが日々容赦のない殺し合いを演じる「戦いの野」である。
・四肢切断や骨折が日常茶飯事の凄惨な現場で、絶え間なく治療業務を行う。
・巨大な黄金の魔法円「ゼオ・グルヴェイグ」を展開し、瀕死の戦士を次々と蘇生させる。
・単身で戦場全体の負傷者を担う負担は凄まじく、精神は常に限界に近い状態にある。
・あまりの疲弊から治療放棄の殺意を漏らしたり、副官のロナに背後から覆い被さって甘えたりする場面も見られる。
夜:混乱を極める晩餐の運営
日没後、殺し合いが終わると同時に、本拠「銀の屋敷」での第二の戦いである晩餐が幕を開ける。
・戦士たちの英気を養うため、膨大な量の料理を用意し、配膳を巡る闘争に対処する。
・激務に耐えかねたヘイズは「その辺の草でもまぶしておけ」とサボろうとするが、ヘルンに制止される。
・最終的にはヘルンが手配した侍女や、レミリア、ラスクといった良識派幹部の手助けを得て、大宴会を完遂する。
深夜:山積する雑務と都市最強への制裁
晩餐が終わっても、彼女の仕事が途切れることはない。時計の針が天辺を越えても、終わらない業務が彼女を待ち受けている。
・治療報告の集計、予備武器の補充、殺気立つ団員同士の諍いの仲裁などに追われる。
・紛争の鎮圧には、黄金杖で相手の尾骶骨を全力殴打するという物理的な手段を用いることもある。
・深夜、団長オッタルが予備の武器を勝手に持ち出し、鍛錬で全て壊した事実を突き止める。
・都市最強の冒険者を氷点下の眼光で威圧して床に正座させ、日頃の鬱憤を込めた説教を容赦なく浴びせる。
まとめ:過酷な循環を支える有能さと敬愛
ヘイズの一日は、血生臭い戦場の後始末と、厄介な団員たちが引き起こす問題の対応に追われる過酷な循環で構成されている。文句を垂れながらも全ての業務を完遂する彼女の姿は、高い実務能力を備えた苦労人の象徴である。一日の終わりに、女神フレイヤの世話ができなかったことを嘆きつつ眠りにつく様子からは、彼女の女神に対する深い忠誠心と敬愛が読み取れる。
満たす煤者達
『ファミリアクロニクル episodeヘイズ』において描かれる「満たす煤者達(みたすすすものたち)」は、【フレイヤ・ファミリア】に所属する女性の治療師および薬師によって構成された専門部隊である。筆頭は「黄金の魔女」の二つ名を持つヘイズ・ベルベットが務めており、派閥の維持に不可欠な役割を果たしている。
過酷な治療任務と強靭な勇士のサポート
彼女たちの主要な任務は、本拠地「戦いの野(フォールクヴァング)」において日々繰り返される凄惨な殺し合いの事後処理である。
・四肢の切断や内臓損傷が常態化している現場において、命を現世に繋ぎ止める高度な治療を施す。
・その治療術は「冥界の神が舌打ちするほどの効力」と評され、戦士たちを再び戦場へと送り出す。
・筆頭のヘイズは、たった一人で戦場全体の治療を完遂できるほどの圧倒的な回復魔法「ゼオ・グルヴェイグ」を駆使する。
晩餐の運営と名称の由来
日中の治療業務が終了した後も、彼女たちには休息の時間は与えられない。
・夜の特大広間で開催される晩餐の運営も、彼女たちの重要な職務である。
・戦士たちの英気を養うための大量の食事や、滋養強壮に優れた料理を準備し、激しい配膳争いに対応する。
・部隊名の「満たす煤者達」は、この飽食の宴を準備する際、後頭部や背中を煤けさせるほどの勢いで立ち働く姿に由来している。
部隊の構成メンバー
部隊は女性のみで構成されており、筆頭であるヘイズを中心に固い結束を誇っている。
・ヘイズを心から尊敬しながらも、その不穏な言動や激務に振り回される苦労人の副官コンビが脇を固める。
・生真面目な長身エルフのイルデと、背伸びしたがりな後輩気質のヒューマンであるロナなどが主なメンバーである。
・限界ギリギリの精神状態で任務に当たるヘイズを周囲が必死に宥めるなど、日常的に高い緊張感の中で活動している。
強靭な勇士との関係
戦闘部隊である「強靭な勇士」とは、互いに支え合う関係であると同時に、複雑な対抗意識も存在している。
・ヘイズの言葉によれば、両部隊は「女神貢献得点(死後にフレイヤから受けられる寵愛の度合い)」を奪い合う敵同士であるとされる。
・ただし、これは外部の者(ベルなど)を牽制するための口実という側面も強い。
・特定の目的(ベルを強制的に豊穣させる計画など)においては、両部隊の女性団員が結託し、見事な連携を見せることもある。
筆頭ヘイズの転向と過去
部隊を率いるヘイズ自身、最初から治療師を目指していたわけではない。
・かつては「強靭な勇士」を目指し、血反吐を吐きながら戦い続けた武人であった。
・アレンやオッタルといった第一級冒険者との絶望的な才能の差に直面し、一度は挫折を経験している。
・主神フレイヤの言葉を受け、勇士たちを支える「大地」としての役割に己の価値を見出し、現在の治療師へと転向した経緯を持つ。
まとめ
「満たす煤者達」は、単なる後方支援部隊ではない。彼女たちは女神フレイヤへの深い敬愛を原動力に、戦場での蘇生と晩餐の提供という極限の激務を完遂するプロフェッショナル集団である。文句を言い合いながらもファミリアの日常を支え続ける彼女たちの存在こそが、最強派閥の狂気的な活動を可能にしているのである。
フレイヤ・ファミリア
『ファミリアクロニクル episodeヘイズ』において描かれる【フレイヤ・ファミリア】は、美の女神フレイヤへの異常なまでの愛と狂信によって結ばれた、迷宮都市オラリオで最も恐れられる最強の戦闘集団である。その組織的な特徴や内部の実態について、以下に記述する。
異常な忠誠心と狂信
団員たちの行動原理は、すべて女神の寵愛と栄光に根ざしている。
・団員はフレイヤが見初めた「魂の輝き」を持つ者たちで構成され、女神の寵愛を得ることを唯一の至上命題としている。
・天界での寵愛を巡る「女神貢献得点」を互いに競い合うほど、その信仰心は過熱している。
・忠誠心はしばしば常軌を逸し、ベル・クラネルを拉致して強制的に子を成させようとする極秘計画「伴侶の種子で豊穣豊穣大作戦」を企てるなど、倫理や常識を度外視した危うさを秘めている。
狂気の修練場「戦いの野」と二つの部隊
本拠地「戦いの野(フォールクヴァング)」では、凄惨な殺し合いが日夜繰り返されている。この特殊な環境は、役割の異なる二つの部隊の連携によって成立している。
・強靱な勇士(エインヘリヤル):女神のために強さを渇望する戦闘員たちである。隣に立つ仲間であろうと容赦なく斬り合い、生き残り勝ち抜いた者だけが真の勇士として認められる。
・満たす煤者達(アンドフリームニル):ヘイズを筆頭とする女性中心の治療師・薬師部隊である。致命傷を負った勇士たちを圧倒的な治療魔法で強引に蘇生させ、終わりなき戦いの循環を再演させている。
圧倒的な「個」の武力と排他性
集団戦において組織力を重視する他派閥とは対照的に、徹底して「個」の武力を突き詰めている。
・ダンジョンでの乱戦においても連携を否定し、単独での各個撃破を優先する。
・オッタル、アレン、ヘディン、ヘグニ、ガリバー四兄弟といった幹部陣は常に険悪な関係にあるが、その実力は絶対的である。
・上級冒険者を何人も殺害するほどの強力なモンスターであっても、一方的に蹂躙するほどの武力を有している。
・女神が関わる事案に他派閥が介入することを極端に嫌う、強い排他主義的な一面も特徴である。
まとめ
【フレイヤ・ファミリア】は、構成員の多くが女神への愛憎と執着という重い感情を抱える最高位の狂信者集団である。日々の極限の殺し合いとそれを支える異常な治療体制、そして個人の圧倒的な武力主義によって、オラリオの頂点に君臨する特異な派閥として機能している。
動き出した死体
『ファミリアクロニクル episodeヘイズ』における「動き出した死体」の騒動は、ヘイズ・ベルベットとアミッド・テアサナーレという二大治療師が共闘する契機となった重要な事件である。この不気味な事件の経緯と、その裏側に隠されていた驚くべき真相を以下に整理する。
事件の発端:中央広場での惨劇とアミッドの救出
事件は、ダンジョン深層から回収された冒険者の遺体が地上へ運び出された際に発生した。
・ダンジョン38階層で行方不明となっていた「メンヒト・ファミリア」の遺体がバベル門前に安置される。
・「戦場の聖女」アミッドが祈りを捧げる中、安置されていた死体が突如として動き出し、彼女に襲いかかる。
・偶然居合わせたヘイズが長杖で死体を粉砕し、事なきを得るが、広場は大きな混乱に包まれる。
不可解な死体と残された「殻」の謎
アミッドによる検分により、この現象が通常の生命活動やアンデッド化とは異なる異常事態であることが示唆された。
・襲ってきたのは、脈拍も呼吸も完全に停止したはずの「死体」であった。
・調査の結果、死体の体内から、触れると灰になるほど脆い未知の「殻」が発見される。
・アミッドはこの事態を重く見て、原因究明のためにヘイズを伴いダンジョン深層への探索を開始する。
「動き出した死体」の真相:寄生型モンスターの生態
深層探索の結果、死体が動いた原因は新種の寄生型モンスター「パッチワーク・グランドマザー」であることが判明した。
・38階層の天井部に潜伏するこの茸型モンスターは、自身の胞子を魔石に擬態させてばらまく特性を持つ。
・擬態した魔石を摂取したモンスターは、体内に菌糸を張り巡らされ、肉体を完全に乗っ取られる。
・「血濡れのトロール」などの強化種は、この寄生によって生まれた個体であった。
地上での発症と騒動のメカニズム
なぜ死んだはずの人間が地上で動き出したのか、その背景には寄生モンスターによる効率的な宿主の再利用があった。
・寄生されたモンスターは、殺害した冒険者の遺体に擬態魔石である肉片を植え付ける習性を持つ。
・人体への寄生速度はモンスターに比べて遅いため、菌糸が全身を支配しきる前に遺体として地上へ回収された。
・地上に到達した後、不完全ながらも菌糸が活動を開始したことが、死体が動くという怪現象の正体であった。
・アミッドが発見した殻は、ヘイズの強力な打撃によって粉砕された擬態魔石の残骸である。
まとめ
「動き出した死体」騒動は、未知の寄生型モンスターによる迷宮の侵略行為の一端であった。この事件をきっかけに、相反する特性を持つヘイズとアミッドの二人が深層探索で絶妙な連携を見せ、オラリオに迫る新たな脅威を解決に導くこととなった。
水雷の丘の探索
『ファミリアクロニクル episodeヘイズ』における「水雷の丘」の探索は、地上で起きた「動き出した死体」事件の真相を解明するため、ヘイズ・ベルベットやアミッド・テアサナーレを中心としたパーティがダンジョン深層へ挑む過酷なエピソードである。その探索の経緯と結末について、以下に記述する。
「水雷の丘」の特異性と脅威
33階層から広がる深層域「水雷の丘」は、巨大な湿地帯や泥炭地が続く極めて視界の悪い層域である。
・天井から稲光のような閃光とともに瀑布のごとき水流が降り注ぐ「水雷」という陥穽が存在する。
・この水雷は大地を抉り、地形を劇的に変化させることで冒険者の地の利を奪い去る。
・氾濫した沼からは水棲モンスターが襲いかかってくるため、死体や行方不明者の捜索は困難を極める。
異形モンスターの出現と調査結果
水雷によって痕跡が消失しやすい環境の中、一行は特殊な索敵魔法を駆使して探索を継続した。その過程で、従来の生態系ではあり得ない異形と遭遇する。
・ロックウッドの体に馬鷲の脚が融合しているなど、複数のモンスターの部位を繋ぎ合わせた「合成獣」が出現する。
・解剖の結果、それらの体内には異常発達した菌糸が張り巡らされていることが判明する。
・この菌糸が宿主の肉体を乗っ取り、異なる生物同士を強引に結合させている事実が発覚する。
38階層での分断と冒険者型合成獣との激闘
38階層に到達した一行は、無数の合成獣による強襲を受け、さらに巨大な水雷の発生によってパーティが分断される。
・ヘイズは仲間の保護を優先しながらも、自身の広域回復魔法である「ゼオ・グルヴェイグ」の識別能力を応用して仲間との再合流を果たす。
・しかし、その場には上級冒険者の遺体と大型モンスターを融合させた「冒険者型合成獣」が立ちふさがった。
・冒険者の技術と怪物の膂力を併せ持つ敵に苦戦を強いられるが、アミッドとヘイズは互いの回復魔法を重ね合わせる戦術を採る。
・「飽和回復」という過剰な治癒力による力業で怪物の肉体を内部から崩壊させ、撃破に成功する。
元凶「パッチワーク・グランドマザー」の討伐
ヘイズは寄生モンスターの出現が水雷の発生と連動している点に注目し、天井部にある巨大空間「屋根裏部屋」に事件の元凶が潜んでいると推理する。
・彼女は自ら仮死状態となって死体を装い、水雷の発射口を通じて天井部の空間へ単独潜入を果たす。
・元凶の正体は、擬態した魔石である胞子をばらまいて肉体を縫い合わせていた新種の茸モンスター「パッチワーク・グランドマザー」であった。
・合流した仲間たちに対し、怪物は無数の「継ぎ接ぎ人形」を差し向けて包囲する。
・ヘイズは「ゼオ・グルヴェイグ」を最大展開し、味方を無限に蘇生させる「不死の戦場」を構築して対抗する。
・倒れても即座に蘇る戦士たちの猛攻により敵軍勢は殲滅され、最後はヘイズの一撃により本体を撃破し、事件は終結した。
まとめ
「水雷の丘」での探索は、深層の過酷な環境と未知の寄生型モンスターという二重の脅威に晒された戦いであった。しかし、ヘイズとアミッドという二大治療師の絶妙な連携と、ヘイズの卓越した洞察力、そして最強派閥を支える圧倒的な治癒能力によって、迷宮の悪意による侵略事件は完全に解決へと導かれたのである。
ヘイズの凄惨な過去
『ファミリアクロニクル episodeヘイズ』で明かされるヘイズ・ベルベットの過去は、すべてを失った絶望から始まり、美神フレイヤへの狂信と挫折の連続である。彼女がいかにして「黄金の魔女」と呼ばれるに至ったのか、その壮絶な経緯を以下に記述する。
竜災による故郷の滅亡と黄金への憧憬
ヘイズが3歳の時、彼女の人生を根底から覆す悲劇が起きた。
・大陸北方の故郷が、黒竜討伐失敗の影響である「竜災」に見舞われ壊滅し、両親も命を落とした。
・絶望的な状況の中、竜を討伐したフレイヤの姿を目撃し、その神々しい後光を「世界を祝福する黄金」として強烈に憧れるようになった。
・幼い身で眷族入りを直訴したが、フレイヤからは才能のなさを理由に「貴方の魂は道端の小石に過ぎない」と冷酷に拒絶された。
死を懸けた入団と戦いの野での地獄
拒絶されてもなお、彼女のフレイヤに対する執着は消えなかった。
・馬車に密航してオラリオへ向かい、侍女見習いとして働きながら入団の機会を窺い続けた。
・6歳の時、自らの首にナイフを突き立て「眷族になれないなら死ぬ」と命を懸けて懇願し、ついに恩恵を授かった。
・しかし、翌日から始まったのは本拠地「戦いの野(フォールクヴァング)」での凄惨な日々であった。
・才能に恵まれない彼女は、オッタルやアレンといった第一級冒険者たちに、毎日全身の骨を折られ、肉を裂かれる地獄のような洗礼を受け続けた。
ヘルンの覚醒と歪んだ嫉妬
さらに彼女の精神を追い詰めたのは、後からフレイヤに拾われた少女ヘルンの存在であった。
・自分より無価値だと思い込んでいたヘルンの世話を焼いていたが、ある日ヘルンが「神々の娘」として覚醒した。
・自分が見下していた相手こそが真に選ばれた存在であると知り、ヘイズの自尊心は完全に崩壊した。
・嫉妬と絶望から、夜中に眠るヘルンの首を絞めて殺そうとするほど、その精神は病んでいった。
不死の治療師への覚醒と転向
生ける屍のように戦い続けるヘイズに対し、フレイヤは恩恵を返上して苦しみから逃れるよう慈悲をかけた。
・ヘイズはその手を拒み、「貴方のような黄金になりたい」と泣き叫び、フレイヤから初めて憐憫の眼差しを向けられた。
・完全に退路を断った彼女は、死への怯えすら捨てて魂を苛み続け、炎に呑まれる死の淵でついに自身の魔法を発現させた。
・自らを修復し続ける異常な魔法「アース・グルヴェイグ」と「ゼオ・グルヴェイグ」によって不死の戦士となる。
・その後Lv.2に至るが、幹部たちから「治療師に回れ」と宣告され、戦士としての夢は断たれた。
・しかしフレイヤから「貴方の魔法こそが、私がかつて見せた黄金である」と諭されたことで、彼女は戦場を支える治療師としての道を受け入れることとなった。
まとめ
ヘイズ・ベルベットの物語は、届かぬ「黄金」への渇望と、凄惨な挫折を乗り越えて己の価値を見出すまでの苦闘の記録である。彼女は現在、女神への深い愛と複雑な愛憎を抱えながら、最強派閥の維持に欠かせない有能な治療師としてその役割を全うしている。
女神への狂信的な愛
迷宮都市オラリオの最強派閥である【フレイヤ・ファミリア】において、主神フレイヤへの愛は単なる忠誠を超えた狂信として描かれる。スピンオフ作品『ファミリアクロニクル episodeヘイズ』では、治療師ヘイズ・ベルベットや侍従ヘルンらの姿を通じ、その重すぎる情念の実態が明らかにされている。
女神の寵愛を奪い合う狂気の日常
ファミリアの構成員は、すべて女神フレイヤに見初められた魂を持つ者たちであり、その行動原理は女神の寵愛を得ることに特化している。
・本拠地「戦いの野(フォールクヴァング)」では、団員同士が日々容赦のない殺し合いを演じている。
・彼らは死後に天界でフレイヤに褒め称えられることを至上の名誉としており、その指標となる「女神貢献得点」を互いに奪い合っている。
・この異常な信仰心こそが、ファミリアをオラリオ最強の戦闘集団たらしめる原動力となっている。
ヘイズの執念と嫉妬の背景
部隊「満たす煤者達」を率いるヘイズの忠誠は、幼少期の壮絶な体験に根ざしている。
・3歳の時に竜災で全てを失った際、フレイヤの神々しい姿に魅了され、その光(黄金)になることを誓った。
・6歳で自らの命を懸けて眷族入りを懇願し、才能のなさを突きつけられながらも、第一級冒険者たちに打ちのめされる地獄のような日々を耐え抜いた。
・自身より無価値だと思い込んでいた同室の少女ヘルンが、フレイヤと五感を共有する特別な存在として覚醒した際には、激しい嫉妬から彼女の首を絞め殺そうとするほどの狂気を見せた。
女神を傷つける者への絶対的な殺意
ヘイズにとって、女神を汚す存在は決して許容できない排除対象である。
・ダンジョン深層での探索中、ヘイズを庇ってシル(ヘルン)が負傷した際、彼女の理性の枷は完全に崩壊した。
・「女神を汚したな」という激昂とともに狂戦士へと変貌し、自身の肉体を自動治癒で無理矢理つなぎ合わせながら、モンスターの大群を肉片も残さぬほど徹底的に破壊し尽くした。
・この行動は、彼女の愛が慈愛ではなく、盲目的で苛烈な破壊衝動を孕んでいることを示している。
狂信の極致「豊穣豊穣大作戦」
女神への歪んだ愛が最も顕著に現れたのが、ベル・クラネルを拉致した極秘計画である。
・派閥大戦で恋に破れた主神を慰めるため、「孫の顔を見せる」という名目でベルを大浴場へ連れ込み、強制的に子を成させようとする暴挙に出た。
・ヘイズはベルに対し、女神の寵愛を一身に受ける彼への複雑な愛憎を交え、「殺したいほど、愛してる」という常軌を逸した感情を吐露している。
・倫理や常識を完全に排除してでも主の幸福を優先するその姿は、狂信者の行き着く一つの極致といえる。
まとめ
ヘイズやヘルンといった「最高位の狂信者」たちは、深い敬愛と同時に激しい憎悪や嫉妬を抱える鏡合わせのような存在である。しかし物語の終盤、ヘイズは女神を盲信するだけの軛から逃れ、一人の少女となったシルと対等な立場で想いを分かち合うに至った。「私だけが、貴方の黄金です」と語り、涙ながらに笑い合う姿は、狂信を超えた先にある純粋な絆の誕生を象徴している。
登場キャラクター
フレイヤ・ファミリア
フレイヤ
美の神であり、派閥の主神である。気まぐれな性格で、魂の輝きを持つ者を眷族として迎え入れる。ヘイズからは絶対的な忠誠と崇拝の対象とされている。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの主神。
・物語内での具体的な行動や成果
かつて幼いヘイズの眷族入りを拒絶したが、後に彼女を治療師として受け入れた。ウラノスからの極秘依頼を受け、アレンたちに討伐任務を指示する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
都市最強の派閥を率いる存在として、オラリオ全体に絶大な影響力を有する。
シル・フローヴァ
酒場「豊穣の女主人」の看板娘である。その正体は街娘の姿をとったフレイヤである。ヘイズやヘルンから狂信的な愛を向けられている。
・所属組織、地位や役職
豊穣の女主人の店員。
・物語内での具体的な行動や成果
広場でヘイズを煽り、彼女がアミッドの依頼を受けるきっかけを作った。その後、暴走したヘイズたちの前に現れ、豊穣大作戦を阻止する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヘイズの精神的支柱となっており、彼女の暴走を止めるほどの強い影響力を持つ。
ヘイズ・ベルベット
本作の主人公である。かつては勇士を目指したが挫折し、治療師の道を選んだ。普段は飄々としているが、女神への狂信的な愛を抱える。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの治療師。満たす煤者達の筆頭。LV.4。
・物語内での具体的な行動や成果
アミッドと共にダンジョン深層へ赴き、新種モンスターであるパッチワーク・グランドマザーを討伐した。また、ベルを標的とした極秘作戦を主導する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
広域回復魔法と近接戦闘能力を併せ持ち、黄金の魔女として都市最高峰の治療師に名を連ねる。
ヘルン
フレイヤの側仕えである。生真面目で視野が狭く、ヘイズと同じく最高位の狂信者である。変神魔法を用いてシルの姿をとることができる。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。女神の付き人。LV.2。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘイズの探索に同行し、シルの姿で魅了の力を行使して戦闘を支援した。豊穣大作戦の際には激怒して乗り込むが、最終的にヘイズの誘惑に乗ってしまう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フレイヤと五感や思考を共有できる特別な存在として扱われている。
イルデ
ヘイズの副官である。長身のエルフで、生真面目な性格である。ヘイズを深く尊敬しながらも、彼女の突飛な行動に振り回される苦労人となっている。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの満たす煤者達に所属。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘイズの深層探索に同行し、モンスターの解剖で体内構造を分析した。戦闘ではロナを連れて囮役に回る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヘイズの右腕として、治療部隊のまとめ役を担う。
ロナ
ヘイズのもう一人の副官である。小柄なヒューマンで、背伸びした後輩気質を持つ。イルデと同様にヘイズを支える立場にある。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの満たす煤者達に所属。
・物語内での具体的な行動や成果
深層探索に同行したが、魔石を回収した際に擬態魔石に触れ、寄生状態に陥った。その後、アミッドの魔法によって救出される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヘイズ不在の際には、イルデと共に治療部隊を指揮する。
レミリア
柔らかい雰囲気を持つヒューマンの魔導士である。派閥の中では数少ない良識派であり、ヘイズの仲裁役を務めることが多い。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの強靱な勇士。LV.4。
・物語内での具体的な行動や成果
深層探索に参加し、風撃魔法と短剣を用いた一撃離脱の戦法で合成獣の群れを迎撃した。豊穣大作戦では下着姿でベルに迫る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
良識派でありながらも作戦に参加し、ベルを罠にはめる役割を担った。
ラスク
黒髪の長身を持つヒューマンの魔導士である。レミリアと共に良心枠として扱われる。冷静に状況を判断する誠実な性格である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの強靱な勇士。LV.4。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘイズの探索に同行し、氷の魔法で敵を殲滅した。ロックウッドの死骸を解剖する際には自ら切り開く役割を担う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
派閥内の調整役として、ヘイズから信頼を置かれている。
ヴァン
半小人の幹部候補である。気性が荒く、他派閥の介入を極端に嫌う排他主義者である。メルーナと頻繁に口論を繰り広げる。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの強靱な勇士。LV.4。
・物語内での具体的な行動や成果
深層で遭遇した異形ロックウッドを、超高速の連撃で瞬殺した。シルの姿をしたヘルンの脅迫に屈し、探索への同行を承諾する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
石火の二つ名を持ち、黒服の着用を許された実力者として前衛を担う。
ノーガ
狼人の団員である。喧嘩っ早い性格で、ヴァンと頻繁に衝突する。ヘイズに仲裁される立場にある。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。斥候部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
本拠内でヴァンと争っていたところを、ヘイズに黄金杖で殴打されて鎮圧された。巨人の墓場では索敵から帰還し、ヘディンに報告を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
斥候として第一級冒険者の探索を支援する役割を担う。
メルーナ・スレア
エルフの魔法剣士である。知識を重んじ、ヴァンを見下す発言を繰り返す。冷静かつ冷酷な思考の持ち主である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの強靱な勇士。LV.4。
・物語内での具体的な行動や成果
光の本を操る索敵魔法を使用し、水雷の丘での探索を支援した。合成獣との戦闘では光の砲撃で敵を殲滅する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
黒服の着用を許されており、探索における情報収集の要として機能する。
オッタル
猪人の大巨漢である。派閥の団長であり、圧倒的な武力を誇る。口数が少なく、黙々と鍛錬に打ち込む性格である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団長。LV.7。
・物語内での具体的な行動や成果
武器の予備を壊したことでヘイズに正座を命じられ、説教を受けた。巨人の墓場では大剣を構え、異形モンスターとの戦闘に備える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
都市最強の冒険者として広く認知されており、派閥内で絶対的な力を持つ。
アレン
猫人の第一級冒険者である。常に苛立ちを隠さず、他者へ暴言を吐く攻撃的な性格である。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
巨人の墓場で血濡れのトロールを発見し、槍の一撃で瞬殺した。その後出現した擬態魔石を完全に破壊する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
最速の足を持ち、幹部の中でも突出した機動力を発揮する。
ヘディン・セルランド
白妖精の第一級冒険者である。効率を重視し、論理的な思考で状況を分析する。他者を見下す態度をとることが多い。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘグニの言葉を翻訳し、血濡れのトロール討伐の目的を説明した。擬態魔石の構造を見抜き、寄生の仕組みを解明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつてヘイズに治療師への転向を勧め、彼女の運命を決定づける助言を与えた。
ヘグニ
黒妖精の第一級冒険者である。難解な言葉使いで語る癖があり、周囲から理解されないことが多い。挙動不審な態度を見せる。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
巨人の墓場で血濡れのトロールに関する情報を独特な表現で語り、四兄弟から翻訳を求められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
幹部陣の一角として探索に参加し、高い戦闘力を背景に行動する。
アルフリッグ
小人族のガリバー四兄弟の長男である。弟たちをたしなめる役割を担い、比較的冷静に状況を観察する。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
巨人の墓場で異形トロールの出現に疑問を抱き、擬態魔石による強化の仕組みを理解した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
四兄弟のリーダー格として、戦闘や状況判断の指揮をとる。
ドヴァリン
ガリバー四兄弟の一人である。アレンやヘグニに対して煽るような発言を繰り返す。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
巨人の墓場でアレンの態度に不満を漏らし、軽口を叩きながら戦闘に備えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
兄弟たちと共に第一級冒険者として派閥の主力となる。
ベーリング
ガリバー四兄弟の一人である。他の兄弟と共に、幹部陣の険悪なやり取りに参加する。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
アレンの苛立ちを適当に聞き流し、異形トロールとの戦闘態勢に入った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
連携戦闘を得意とし、派閥の戦闘力の中核を担う。
グレール
ガリバー四兄弟の一人である。兄弟と足並みを揃え、他者に対して攻撃的な態度をとる。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
巨人の墓場での探索に参加し、出現した異形モンスター群を前に兜を被り直した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
第一級冒険者として、他の兄弟と共に高い戦闘能力を示す。
メリーヴ
冒険者依頼で出払っている団員として名前が挙げられる。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
直接の登場はないが、彼女の不在が戦いの野の運営に影響を与えていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
レスタン
エルフの団員である。過去の回想に登場する。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
かつて幼いヘイズを戦いの野で圧倒した人物の一人として言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヘイズに力の差を突きつけた存在として描かれている。
ターナ
エルフの団員である。過去の回想に登場する。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
かつてヘイズを叩き潰した勇士の一人として名前が挙げられている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カヤラ
女戦士の団員である。過去の回想に登場する。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
幼少期のヘイズに圧倒的な力の差を見せつけた団員の一人である。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブラッガ
ドワーフの団員である。過去の回想に登場する。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
他の団員と共にヘイズを徹底的に破壊した存在として言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ガリバー四兄弟
アルフリッグ、ドヴァリン、ベーリング、グレールの四人からなる小人族の兄弟である。他者を見下す態度を崩さない。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
巨人の墓場で血濡れのトロールの討伐任務に参加し、擬態魔石による無限寄生の仕組みを理解した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
四人での連携戦闘により、規格外の戦闘能力を発揮する。
強靱な勇士(エインヘリヤル)
女神のために強さを渇望し、日々殺し合いを行う戦闘員たちの総称である。ヘイズの治療に依存している。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの戦闘部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
戦いの野で四肢が切断されるほどの戦闘を繰り広げ、豊穣大作戦ではベルを包囲して襲撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
派閥の武力を支える存在として、都市中で恐れられている。
満たす煤者達(アンドフリームニル)
ヘイズを筆頭とする女性中心の治療師および薬師の部隊である。過酷な労働環境に置かれている。
・所属組織、地位や役職
フレイヤ・ファミリアの治療部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
戦いで傷ついた勇士たちを治療し、晩餐の準備や配膳などの雑務もこなす。豊穣大作戦の立案と実行を主導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
派閥の戦闘継続に不可欠な存在として、組織の基盤を支えている。
ディアンケヒト・ファミリア
アミッド・テアサナーレ
銀の長髪を持つ小柄な少女である。戦場の聖女と呼ばれ、死者への冒涜を許さない強い使命感を持つ。
・所属組織、地位や役職
ディアンケヒト・ファミリアの治療師。
・物語内での具体的な行動や成果
動く死体事件の真相を解明するため、ヘイズを強引に深層探索へ巻き込んだ。戦闘では魔法でヘイズを回復させ、勝利に貢献する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヘイズと並ぶ都市最高峰の治療師として、冒険者たちから深く尊敬されている。
ブロニア・ラツール
アマゾネスの少女団員である。アミッドを慕い、彼女を護衛する役割を自ら買って出た。
・所属組織、地位や役職
ディアンケヒト・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
探索に同行したが、飛来した肉片によって寄生状態に陥る。アミッドの聖滅魔法によって治療され、生還を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ロキ・ファミリア
フィン
小人族の冒険者である。ロキ・ファミリアの団長として知られる。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリアの団長。勇者。
・物語内での具体的な行動や成果
直接の登場はないが、ヘイズがオッタルに説教する際、理想の上司の例として彼の名前を挙げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
他派閥からも優秀な指揮官として認知されている。
リヴェリア・リヨス・アールヴ
エルフの魔導士である。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリアの幹部。九魔姫。
・物語内での具体的な行動や成果
アミッドがヘイズを勧誘する際、彼女が不在であることを理由にヘイズを頼ったと言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヘイズの魔法と同等の広域展開が可能であると推測されている。
ヘルメス・ファミリア
アスフィ・アル・アンドロメダ
几帳面な性格の冒険者である。
・所属組織、地位や役職
ヘルメス・ファミリアの団長。万能者。
・物語内での具体的な行動や成果
直接の登場はないが、過労の度合いでヘイズとよく比較される人物として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
有能ゆえに雑務を押し付けられる苦労人として知られている。
メンヒト・ファミリア
ガイウス
死亡した冒険者である。
・所属組織、地位や役職
メンヒト・ファミリアの冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョン深層で死亡し、遺体として地上に回収された。その後、突然動き出して周囲を混乱させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼の遺体が動いたことが、今回の深層探索のきっかけとなった。
ヘスティア・ファミリア
ヘスティア
ベルの主神である。嘘が下手でそそっかしい性格として描かれる。
・所属組織、地位や役職
ヘスティア・ファミリアの主神。
・物語内での具体的な行動や成果
直接の登場はないが、ヘイズが大掃除の件を隠すための理由として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ベル・クラネル
白髪の少年冒険者である。底抜けにお人好しであり、シルに対して特別な思いを抱いている。
・所属組織、地位や役職
ヘスティア・ファミリアの団長。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘイズに騙されて豊穣大作戦の標的となり、女性団員たちから追跡された。最終的にシルの介入によって難を逃れる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
多くの女性を無自覚に惹きつける存在として、ヘイズから愛憎の念を向けられている。
豊穣の女主人
アーニャ・フローメル
猫人の店員である。アレンの妹として知られる。
・所属組織、地位や役職
豊穣の女主人の店員。元フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
直接の登場はないが、かつてヘイズを圧倒した才能の持ち主として回想される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼女の存在があるため、シルは酒場でフレイヤ・ファミリアとの接触を避けていた。
ルノア
ヒューマンの店員である。冷静に状況を観察する。
・所属組織、地位や役職
豊穣の女主人の店員。
・物語内での具体的な行動や成果
中央広場でヘイズを煽るシルを見て呆れ、その行動に疑問を抱いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クロエ
猫人の店員である。調子の良い性格である。
・所属組織、地位や役職
豊穣の女主人の店員。
・物語内での具体的な行動や成果
広場でのシルの発言に驚き、本当にそんな約束をしていいのかと尋ねた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ギルド・その他の神々・人物
ウラノス
地下神殿に座す老神である。オラリオの管理者として機能する。
・所属組織、地位や役職
ギルドの創設者。
・物語内での具体的な行動や成果
異常事態の解決をフレイヤに秘密裏に依頼し、事件終結後に彼女の報告を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
都市の平穏を維持するため、上位派閥を裏から動かしている。
フェルズ
黒衣の魔術師である。ウラノスの腹心として行動する。
・所属組織、地位や役職
ウラノスの配下。
・物語内での具体的な行動や成果
異端児たちを撤退させ、冒険者に討伐任務を切り替える判断を下した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ダンジョンの異常事態に対し、慎重な対応を心がけるようになった。
ロイマン
エルフの男性である。
・所属組織、地位や役職
ギルド長。
・物語内での具体的な行動や成果
血濡れのトロールの被害拡大を受け、フレイヤに討伐依頼を持ち込んだと言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ハトホル
豊穣の神である。
・所属組織、地位や役職
ハトホル・ファミリアの主神。
・物語内での具体的な行動や成果
メンヒト・ファミリアの説明の中で、ゼウスやヘラの時代から存在する神として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ボールス・エルダー
リヴィラの街を取り仕切る冒険者である。
・所属組織、地位や役職
リヴィラの大頭。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘイズたちの異色なパーティ編成を見て、羨望の入り混じった表情を浮かべた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
モルド
リヴィラの街にいる冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
フレイヤ・ファミリアの接近に恐れをなし、仲間を置いて逃げようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
その他のファミリア
アポロン・ファミリア
都市戦を引き起こした派閥である。
・所属組織、地位や役職
アポロン・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
ベルが逃走の達人となった過去の経験として、彼らとの抗争が言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イシュタル・ファミリア
歓楽街を拠点としていた派閥である。
・所属組織、地位や役職
イシュタル・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
ベルが過去に歓楽街で起こした騒動の相手として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ガネーシャ・ファミリア
都市の治安維持を担う派閥である。
・所属組織、地位や役職
ガネーシャ・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
血濡れのトロールによって犠牲者を出したことが語られている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
トート・ファミリア
モンスターに関する知識をまとめる派閥である。
・所属組織、地位や役職
トート・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
彼らが作成したモンスター図鑑に、今回の異形に関する記載がないとイルデが指摘した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
モンスター・異端児(ゼノス)
リド
蜥蜴人の異端児である。
・所属組織、地位や役職
異端児のリーダー格。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョンの異常事態に対応していたが、被害の拡大を受けてフェルズに報告を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
異端児(ゼノス)達
理知を持つモンスターの集団である。
・所属組織、地位や役職
異端児。
・物語内での具体的な行動や成果
血濡れのトロールに対処しようとしたが、胞子に感染した同胞を処分する結果となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フェルズの指示により、調査から撤退した。
黒竜
災厄の象徴たる存在である。
・所属組織、地位や役職
三大冒険者依頼の標的。
・物語内での具体的な行動や成果
かつてヘイズの故郷を滅ぼし、彼女がフレイヤと出会う原因を作った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
パッチワーク・グランドマザー
複数のモンスターや死体を縫い合わせた巨大な怪物の本体である。新種の茸型モンスターである。
・所属組織、地位や役職
事件の元凶。
・物語内での具体的な行動や成果
擬態魔石を散布し、継ぎ接ぎ人形の軍団を形成してヘイズたちを襲撃した。最終的にヘイズの杖で粉砕される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ギルドによってダンジョンにおける最悪の茸と認定された。
血濡れのトロール
同胞の魔石を喰らい続けた強化種である。
・所属組織、地位や役職
賞金首モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
多くの上級冒険者を殺害したが、アレンによって瞬殺された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
グランドマザーの胞子によって寄生され、事件を拡大させる要因となった。
ロックウッド
樹木の胴体と岩の四肢を持つモンスターである。
・所属組織、地位や役職
大型モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
馬鷲の腕を持つ異形として出現し、メルーナの光の本を破壊したが、ヴァンに切断された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
デモンズ・ピラーニャ
肉食魚のモンスターである。
・所属組織、地位や役職
水棲モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
水雷で氾濫した濁流から跳ね飛び、ヘイズたちに迫った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
泥炭蛭
沼に潜むモンスターである。
・所属組織、地位や役職
水棲モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
合成獣の口の部分として組み込まれた姿で出現した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
沼沢鰐
沼に潜むモンスターである。
・所属組織、地位や役職
水棲モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
水雷の丘の環境変化に伴い、姿を現した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
竜蜥蜴(ドラゴン・アノール)
牛ほどの体躯を持つモンスターである。
・所属組織、地位や役職
小型種。
・物語内での具体的な行動や成果
紅鷲の脚を備えた合成獣の胴体部分として登場した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
紅鼬(ジャガール)
長躯を持つモンスターである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
水雷の丘の湿地帯に生息している個体が確認された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
黒影豹
俊敏なモンスターである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
階層一の俊敏性を誇る存在として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
光輝河馬(ブリリアント・ヒポポタマス)
猛牛に似た大型モンスターである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
岩樹鬼の腕を持つ合成獣として出現し、後にヘルンに魅了されて同族と戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
紅鷲(クリムゾン・イーグル)
有翼のモンスターである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
水辺から飛び立ち、強靱な勇士たちに迎撃された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
馬鷲(ヒッポグリフ)
有翼の稀少モンスターである。
・所属組織、地位や役職
稀少モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
ロックウッドの異常な腕として接合された状態で発見された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
岩樹鬼
石の腕を持つモンスターである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
光輝河馬に接合された腕の部分として出現した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
沼の磯巾着(マーシュ・モネ)
触手を持つモンスターである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
冒険者型合成獣の背中から射出され、ヘイズに痛烈な一撃を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ゴライアス
階層主のモンスターである。
・所属組織、地位や役職
階層主。
・物語内での具体的な行動や成果
アミッドが過去に単独で戦線を維持した相手として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アンフィス・バエナ
下層の階層主である。
・所属組織、地位や役職
階層主。
・物語内での具体的な行動や成果
アミッドが解炎回復剤を開発するために観察した相手として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
シルバーバック
猿型のモンスターである。
・所属組織、地位や役職
モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
ベルが過去の怪物祭で戦った相手として回想された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
人魚
魅了の力を持つモンスターである。
・所属組織、地位や役職
水棲モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
ヘルンの魅了能力と比較される形で、歌声を媒介にする存在として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
継ぎ接ぎ人形
グランドマザーが生み出した合成モンスター群である。
・所属組織、地位や役職
グランドマザーの手下。
・物語内での具体的な行動や成果
屋根裏部屋で津波のようにヘイズたちに襲いかかったが、無限に蘇る勇士たちによって全滅した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
冒険者型合成獣
冒険者の遺体にモンスターの部位を継ぎ接ぎした怪物である。生前の能力と怪物の膂力を併せ持つ。
・所属組織、地位や役職
合成獣。
・物語内での具体的な行動や成果
LV.5級の力でヘイズを圧倒したが、アミッドの支援を受けたヘイズの飽和回復に屈して粉砕された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
トロール型合成獣
トロールを素体にした合成怪物である。
・所属組織、地位や役職
合成獣。
・物語内での具体的な行動や成果
40階層で群れとなって出現したが、第一級冒険者たちによって難なく殲滅された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
展開まとめ
黄金の魔女~The Golden Witch~(本編開始半年前)
1
ヘイズ・ベルベットの朝
【フレイヤ・ファミリア】本拠『戦いの野』で暮らすヘイズ・ベルベットは、夜明け前の薄暗い自室で目を覚ました。室内には医療書や女神へ奉ずる服飾資料が並び、几帳面さと無頓着さが同居する生活感が漂っていた。
ヘイズは眠気混じりに起床し、だらしない姿で支度を始めたが、身支度を終える頃には隙のない治療師の姿へ変わっていた。赤い看護衣と白い上衣を纏った彼女は、『満たす煤者達』筆頭として戦場へ向かった。
戦いの野で繰り広げられる殺し合い
『戦いの野』では、【フレイヤ・ファミリア】の団員達が日々熾烈な殺し合いを繰り広げていた。剣戟による四肢切断、徒手空拳による骨折、戦鎚による肉体破壊など、容赦のない戦闘が続いていたが、団員達は誰一人として手加減を求めなかった。
彼等は女神フレイヤの寵愛と栄光を求め、仲間同士であっても容赦なく戦い続けていた。生き残り続けた者だけが真の『強靭な勇士』となれるため、この戦場は迷宮都市中から恐れられていた。
ヘイズによる蘇生級治療
戦場で瀕死となった団員達は、ヘイズが展開する黄金の魔法円【ゼオ・グルヴェイグ】によって蘇生同然の治療を受けていた。切断された腕や損壊した内臓までも修復され、戦士達は何事もなかったかのように再び戦場へ戻っていった。
この治療能力は『満たす煤者達』の中でもヘイズだけが扱える特別な力であり、彼女一人で『戦いの野』全体の治療を支えられるほどだった。その結果、膨大な負担が彼女へ集中し、精神的疲労も極限に達していた。
ヘイズは治療の連続に耐えかね、戦場へ殴り込みたい衝動を漏らしたが、副官のイルデやロナに必死に止められていた。
副官達とのやり取り
イルデは生真面目な長身エルフであり、ヘイズを深く尊敬していた。一方のロナは小柄なヒューマンで、背伸びした後輩のような性格だった。二人は日々ヘイズに振り回されながらも支え続けていた。
疲労困憊したヘイズは、ロナへ抱きつきながら甘えることで現実逃避していた。そんな最中でも戦場からは治療要請が飛び交っていたが、彼女は聞こえない振りをしていた。
晩餐の戦争
日暮れになると、『戦いの野』の殺し合いは終わりを迎えた。しかし、勇士達を待っていたのは『銀の屋敷』で行われる第二の戦い――大量の食事を巡る晩餐だった。
勇士達は一日中戦い続けた疲労を癒やすため、大量の肉や酒を求めていた。治療師や薬師達も、それが彼等の活力維持に不可欠だと理解しており、毎晩戦場のような大宴会を開いていた。
ヘイズは料理運搬や厨房支援に奔走しながらも、疲労のあまり適当な対応を始めようとしていた。しかし、フレイヤの側仕えであるヘルンに止められた。
ヘルンと奉仕者達の支援
ヘルンはフレイヤ直属の側仕えであり、厳格かつ生真面目な少女だった。彼女は混乱する『特大広間』を見かね、侍女達を率いて支援へ現れた。
奉仕者達の増援により不足していた食材や薬草も補充され、厨房は立て直されていった。ヘルンはヘイズへ厳しい小言を浴びせ続けたが、ヘイズは軽口を返しながら作業を続けていた。
その後、レミリアやラスクといった良識派の団員達も手伝いへ加わり、晩餐はようやく収束へ向かった。
深夜まで続く仕事
晩餐後も、ヘイズの仕事は終わらなかった。治療報告の確認、武器の受け取りと倉庫整理、団員同士の諍いの仲裁など、多数の雑務を抱えていた。
狼人ノーガと半小人ヴァンの喧嘩を目撃した際には、背後から黄金杖で尾骶骨を殴打し、強引に鎮圧した。幹部候補相手であっても遠慮なく制裁する姿勢を見せていた。
オッタルへの正座命令
仕事を終えかけた頃、ヘイズは【フレイヤ・ファミリア】団長オッタルへ詰問を行った。彼が倉庫にあった武器の予備を無断で持ち出し、鍛練中に全て破壊していたためである。
オッタルは不器用に事情説明を試みたが、ヘイズは一切容赦せず、彼へ正座を命じた。都市最強と呼ばれるLV.7冒険者が正座させられる異様な光景に、周囲の団員達は戦慄していた。
ヘイズは日頃の鬱憤を込めるように、団長としての自覚不足や報連相の欠如を徹底的に責め立てた。そこへ現れたアレン、ヘディン、ヘグニ、ガリバー四兄弟にも冷ややかな視線を向け、幹部達全体へ呆れを示していた。
冒険者依頼の気配
幹部達はギルドからの冒険者依頼について話していた。それはフレイヤの神意によるものでもあり、普段は依頼を嫌う幹部達も従わざるを得なかった。
ヘイズはその会話を聞きながら、自分だけは絶対に巻き込まれたくないと心の中で祈っていた。その後、彼女は疲労を抱えたまま私室へ戻っていった。
こうして、ヘイズ・ベルベットの『いつもの一日』は終わりを迎えた。しかし、その平穏な日常は、一週間後に訪れる変化の前触れに過ぎなかった。
フレイヤから与えられた休暇
翌日、ヘイズはロナとイルデを伴い、街へ出ていた。本来なら『戦いの野』で治療を担当しているはずだったが、フレイヤから直々に休暇を命じられていたためである。
自分の疲労を見抜き、休みを与えてくれたフレイヤへ、ヘイズは心の底から幸福を感じていた。街中で軽やかに舞いながら喜びを表現する姿に、ロナは苦笑し、イルデは周囲の視線を気にしていた。
休暇中でも抜けない仕事癖
ヘイズは休暇でありながら、フレイヤへ献上する夜食用デザートの材料や、食堂用の食材、探索に必要な物資の買い出しを始めていた。
見た目は適当でも実際は責任感が強く、フレイヤに関わることとなると休めない性格であるため、結局働いてしまっていた。ロナ達はそんな彼女へ苦笑を浮かべていた。
一方、本拠『戦いの野』では、ヘイズ不在を理由に本日の殺し合いが中止となっていた。幹部候補達は、現在の人員状況では万全な治療体制が整わないと判断したのである。しかし血気盛んな団員達は納得しておらず、不満をぶつけていた。
中央広場で発生した異変
買い物を続けていたヘイズ達は、中央広場『バベル』門前に大きな人だかりができていることに気付いた。
近付いたヘイズは、そこに濃厚な血と死の匂いを感じ取った。広場には多数の遺体袋が運び込まれ、【メンヒト・ファミリア】の団員達が泣き崩れていた。遺体捜索依頼によって回収された冒険者達だった。
その場には【ディアンケヒト・ファミリア】所属の治療師、アミッド・テアサナーレもいた。彼女は遺体を前に、救えなかった命への無念を抱きながら祈りを捧げていた。
死体の異常な復活
アミッドが祈りを捧げていた最中、一つの遺体袋が突然動き出した。
誰もが凍り付く中、袋の中の死体は咆哮を上げながら腐敗した腕を突き出し、最も近くにいたアミッドへ襲いかかった。
しかし、その瞬間にヘイズが即座に反応した。ロナ達へ荷物を押し付け、近くの治療師から長杖を奪い取ると、遺体袋ごと強烈に叩き伏せたのである。
石畳を砕くほどの一撃によって、アミッドは間一髪救出された。
死体調査と広場の混乱
アミッドはすぐさま遺体袋を開き、中身を確認した。そこには凄惨な損傷を負った【メンヒト・ファミリア】の冒険者の亡骸が収められていた。
完全に死亡しているはずの死体だったが、先程確かに動き、襲撃を行ったのである。その事実に、ギルド職員や冒険者達は動揺を隠せなかった。
他の遺体も次々と確認されたが、再び動き出す者は存在しなかった。それでも「死体が動いた」という現象そのものが、中央広場を大混乱へ陥れていた。
アミッドからの同行依頼
面倒事を避けたいヘイズは、その場から立ち去ろうとした。しかし、アミッドに手首を掴まれ、呼び止められる。
アミッドは、死者が動いた原因がダンジョン深層にある可能性を指摘し、自身と共に迷宮攻略へ参加してほしいと懇願した。
【ディアンケヒト・ファミリア】だけでは深層到達が困難であり、さらに他流派の治療師の知見が必要だと考えたのである。そして、その相手として『都市二大治療師』の一人であるヘイズを指名した。
ヘイズの拒絶とアミッドの執念
ヘイズは、疲労と労働への嫌悪を露骨に示しながら、徹底的に同行を拒否した。
アミッドは付与魔法まで用いてヘイズを逃がさず、正式な冒険者依頼として高額報酬も提示したが、それでもヘイズは拒み続けた。
周囲の神々や民衆は面白半分に煽り立て、『聖女と魔女の共闘』などと勝手に盛り上がっていたが、ヘイズは断固として屈しようとしなかった。
シルの一言による翻意
そんな中、人垣の一角にいた『豊穣の女主人』の看板娘シル・フローヴァが、聖女と魔女の冒険を見てみたいと無邪気に口にした。
さらに、もしヘイズの方が凄ければ、色々なサービスをしてあげると微笑みながら告げたことで、ヘイズの態度は一変する。
彼女は即座に踵を返し、アミッドへの協力を宣言した。表向きは自分の実力証明を理由にしつつ、死者が動いた謎も解決すると請け負ったのである。
こうして中央広場は大歓声に包まれ、ヘイズとアミッドによる『都市二大治療師』の共闘が決定した。
シルによる無責任な煽動
中央広場では、ヘイズとアミッドの共闘決定による熱狂が続いていた。その中で、『豊穣の女主人』の店員ルノアは、シルが部外者でありながら二人を煽ったことへ呆れた様子を見せた。
猫人のクロエもまた、あの程度の言葉でヘイズが乗せられたことに驚きつつ、シルへ本当にあんな発言をして問題ないのかと尋ねた。
アーニャへの配慮
シルは、アーニャがその場にいないため問題ないだろうと軽く答えた。
ルノアは一度その意味を理解しかけたが、すぐに納得した。【フレイヤ・ファミリア】と深い因縁を持つアーニャの前では、シルは『強靭な勇士』や『満たす煤者達』と関わらないようにしていたのである。
それは、過去に傷付いた『捨て猫』であるアーニャへの配慮からだった。
シルの人懐こさ
一方で、アーニャに関係しない場面では、シルは冒険者や神々ともすぐに親しくなる性格だった。
そのためルノアとクロエは、ヘイズとも自分達の知らないところで親しくなっていたのだろうと勝手に納得していた。
シルの新たな決意
騒がしくなる広場を後にしようとする中、シルだけはその場に残っていた。
彼女は何か気になることがあるように思案し、しばらく考え込んだ後、「もう少しお節介をする」と小さく呟いた。
しかし、その言葉に気付く者は誰もおらず、群衆も神々も彼女の真意を知らぬままだった。
2
二大治療師の来訪による騒然
ヘイズ達一行は、18階層の安全階層に存在する『リヴィラの街』へ到着した。
そこは冒険者達にとって休息地である一方、禁制品取引も横行する無法地帯でもあった。そんな街へ、【女神の黄金】ヘイズと【戦場の聖女】アミッドという二大治療師が揃って現れたことで、街中は騒然としていた。
アミッドは白い法衣姿へ着替えており、戦場へ赴く聖女としての装いを整えていた。一方のヘイズも黄金の長杖を携え、二人が並ぶ光景は異様な存在感を放っていた。
急造されたフレイヤ・ファミリアの小隊
今回の探索には、【フレイヤ・ファミリア】からも複数の幹部候補が参加していた。
前衛には半小人のヴァン、中衛には魔法剣士メルーナ、後衛にはレミリアとラスクが配置され、いずれもLV.4の精鋭だった。さらにロナとイルデも同行しており、第一級冒険者不在ながらも非常に強力な小隊となっていた。
しかし、ヴァンはフレイヤの名を利用して強引に招集されたことへ不満を抱いており、ヘイズへ激しく食ってかかっていた。
ヴァンとメルーナの険悪な対立
ヴァンとメルーナは、顔を合わせるたびに殺気混じりの応酬を繰り返していた。
ヴァンはメルーナを知識欲に取り憑かれた引きこもりと罵倒し、メルーナはヴァンを野犬呼ばわりして見下した。双方とも本気寸前の空気を漂わせており、アミッドは【ロキ・ファミリア】との違いに戸惑いを隠せなかった。
そんな二人を、比較的常識人であるレミリアとラスクが必死に仲裁していた。
治療師偏重の異様なパーティ
ヘイズ達の小隊は、戦闘職以上に治療師戦力が充実していた。
ヘイズとアミッドという都市最高峰の治療師が同時に存在し、さらに補助要員まで揃っているため、周囲の冒険者達から見れば異常なほど安定した構成だった。
リヴィラの大頭ボールスでさえ、戦闘力以上に「こんな治療体制のパーティへ入りたい」と羨望するほどだった。
また、ヘイズはアミッドが単独で階層主戦線を維持した逸話について問いかけ、アミッドは『ゴライアス』や『アンフィス・バエナ』戦でも実際に戦線維持を行ったと認めた。
それを聞いたヘイズは、アミッドの異常な治療能力を改めて実感していた。
ヘルンの同行理由
さらにこの探索には、フレイヤの側仕えであるヘルンも同行していた。
彼女はフレイヤと五感を共有可能であり、自身の見聞を通して女神へ状況を伝達する役割を担っていた。つまり、今回の探索はフレイヤ自身も強い関心を抱いている案件だった。
しかし、フレイヤと繋がっているヘルンへ、ヘイズは強烈な嫉妬心を抱いていた。特に、ヘルンがフレイヤのお忍び衣装に似た格好をしていたことで苛立ちを募らせ、腰をつねり続けるという幼稚な制裁を加えていた。
ヴァンの排他主義
探索直前、ヴァンは再び不満を爆発させた。
彼は、【戦場の聖女】達の協力を受ける必要はなく、【フレイヤ・ファミリア】だけで全て解決すべきだと主張したのである。
これは、フレイヤへの忠誠心が極端な形で表れたものであり、ヘイズ自身も完全には否定できなかった。
ヘルンによる『シル』への変身
そこでヘイズは、ヘルンへ協力を求めた。
ヘルンは細い路地へ移動すると、秘法【ヴァナ・セイズ】を発動した。すると彼女の姿は、『豊穣の女主人』の看板娘シル・フローヴァへ変化した。
この秘法は『ある神物』を象る特殊魔法であり、発動中は対象と五感や思考を共有できる能力だった。つまり、その場に現れた『シル』は単なる演技ではなく、本物のシルの意思そのものだった。
シルの脅迫によるヴァンの陥落
『シル』は笑顔でヴァンへ同行をお願いした。
しかし、ヴァンがなおも抵抗しようとすると、『シル』は神々の禁止ワードを連発したり、フレイヤにも同じ発言をさせたりすると脅し始めた。
敬愛する女神像を破壊されかねない危機に、ヴァンは完全に動揺した。そして最終的に、全員まとめて出発すると叫び、二度と異を唱えなくなった。
周囲の面々は呆然としつつも、どこか頬を赤らめながらその光景を見守っていた。
ヘイズの確認
騒動の後、ヘイズは『シル』へ近付き、本当に本人の意思なのかを確認した。
するとヘルンは一瞬で無表情へ戻り、冷淡な口調で「当然だ」と返した。
ヘイズは納得しつつも、『氷点下シル』のような態度はやはり解釈違いだと考えながら、先行するヴァン達の後を追っていった。
第一級冒険者達による討伐依頼
40階層『巨人の墓場』では、【フレイヤ・ファミリア】第一級冒険者達が、賞金首モンスター『血濡れのトロール』の討伐任務に就いていた。
この階層は巨大な峡谷と不毛の灰色地帯で構成され、大型モンスターが多数出現する危険地帯だった。【ロキ・ファミリア】が『巨人殺し』の異名を得た場所でもあり、多くの派閥が巨人型モンスターに蹂躙されてきた歴史を持っていた。
そんな中でも、アレンやガリバー四兄弟、ヘディン、ヘグニ、オッタルらは、いつも通り険悪な言い争いを繰り返していた。
血濡れのトロールの危険性
今回の標的である『血濡れのトロール』は、同胞の魔石を喰らい続けて異常強化された『強化種』だった。
既にLV.4以上の上級冒険者を殺害しており、【ガネーシャ・ファミリア】にも犠牲者を出していたため、ギルドは通常依頼ではなく強制任務として討伐を命じていた。
しかし、【フレイヤ・ファミリア】の幹部達はその危険性すら大して問題視しておらず、むしろ誰が先に討伐して経験値を得るかという競争感覚で動いていた。
血濡れのトロールとの遭遇
斥候部隊の索敵によって、『血濡れのトロール』の発見と交戦が報告された。
オッタル達は即座に現場へ駆け付け、そこに血塗れの怪物を発見した。異様に肥大化した肉体と狂気に満ちた双眸を持つそのトロールは、通常個体とは明らかに異なっていた。
アレン達は一切怯むことなく、即座に攻撃を開始した。
33階層『水雷の丘』到達
一方、ヘイズ達は18階層から三日かけて33階層『水雷の丘』へ到達していた。
そこは巨大な湿地帯が広がる特殊階層であり、腐臭漂う泥炭地や多種多様なモンスターが存在していた。さらに、天候と地形が突発的に変化する危険な階層でもあった。
到着直後からモンスターの群れが襲来したが、ヴァン達【フレイヤ・ファミリア】の戦闘職は圧倒的な戦闘力で瞬く間に蹂躙していた。
水雷現象の発生
その直後、ヘイズは『水雷』の兆候を察知した。
彼女はアミッド達を連れて即座に退避を開始し、ヴァン達へ警告を飛ばした。そして次の瞬間、天井から凄まじい水流が轟音とともに降り注いだ。
この『水雷』は、天井から滝のような水流が複数落下し、大地を削り、地形そのものを変化させる迷宮現象だった。
湿地は急速に氾濫し、水棲モンスター達が一斉に活動を始めたことで、周囲は一気に危険地帯へ変貌した。
水雷の丘の特異性
ヘイズ達は隣接する大空間へ避難しながら、『水雷の丘』の構造を説明した。
この階層は九つの巨大広間で構成されており、『水雷』によって各広間ごとに天候や地形が激変する。そのため、通常の地形把握や痕跡追跡がほとんど役に立たなかった。
さらに、水没した遺体は水棲モンスターに食い荒らされる可能性が高く、行方不明者や死体の捜索が極めて困難な階層でもあった。
アミッドは、ヘイズがこの階層を嫌がっていた理由をようやく理解した。
メルーナの索敵魔法
捜索を効率化するため、メルーナは索敵魔法【イェルタス・リベル】を発動した。
それは翅を持つ『光の本』を生み出し、遠隔索敵を可能にする特殊魔法だった。広範囲の視覚情報を同時収集できるため、水雷で痕跡が流されるこの階層では極めて有効な能力だった。
ヘイズも、この任務においてメルーナが最適任だと高く評価していた。
異変の接近
探索を続ける中、再び『水雷』が発生した。
激しい風雨の中、メルーナが突然動きを止める。彼女の放っていた『光の本』の一つが破壊されたのである。
それは、通常モンスターでは対処できない強力な存在が現れたことを意味していた。
直後、森の奥から『奇妙な部位』を持つ巨人が姿を現した。異常事態を前にしても、【フレイヤ・ファミリア】の団員達は一切怯むことなく迎撃態勢を整えていた。
異形化したロックウッドの出現
ヘイズ達の前へ現れた巨人の正体は、『ロックウッド』だった。
本来は樹木の胴体と岩の四肢を持つ大型モンスターだが、今回現れた個体は明らかに異常だった。右腕が岩ではなく『馬鷲』の肢へ変質していたのである。
その腕は不自然なほど細長く、無理矢理継ぎ接ぎされたような異様な形状をしていた。肩口からは血が噴き出し続け、拒絶反応を起こしているようにも見えた。
さらに、全身には他モンスターの肉片や血液が付着しており、『強化種』であることも判明した。
異形ロックウッドへの困惑
ブロニア達は、このような異形モンスターを見たことがなく動揺していた。
ラスク達【フレイヤ・ファミリア】側も冷静さを保ってはいたが、明らかに通常事態ではないと認識していた。
特に異様だったのは、その双眸だった。極端に充血した目には、赤い糸で縫い合わせたような奇怪な模様が浮かび上がっていた。
ヘイズはその姿に強い嫌悪感を覚え、ヘルンを通じてシルへ見せたくないと本気で思っていた。
ヴァンによる瞬殺
異形ロックウッドが突進を開始した直後、ヴァンが動いた。
彼は誰よりも速く敵の背後へ回り込み、双剣による超高速連撃で首を刎ね飛ばしたのである。
さらに胴体、岩の手足、馬鷲の肢まで全て切断され、ロックウッドは一瞬で絶命した。
アミッドやブロニアはその圧倒的戦闘力へ驚愕していたが、ヴァン本人は当然のように振る舞い、異常事態だからこそ即殺すべきだと怒鳴っていた。
死骸の解剖調査
ヴァンは、異形モンスターと『動く死体』の関連性を疑い、即座に死骸の調査を命じた。
アミッド達は解剖を開始し、ラスクが死体を切り開き、アミッド自身も躊躇なく内臓調査へ加わった。
調査の結果、ロックウッドの体内には黒ずんだ『糸』のような組織が全身へ張り巡らされていることが判明した。
イルデはそれを異常発達した神経のようだと推測し、アミッドは『継ぎ接ぎ』のような構造だと分析していた。
さらに、『馬鷲の肢』側にも同じ糸状組織が存在しており、完全に別個体の肉体が接続されているような状態だった。
残された異様なドロップアイテム
ロナが魔石を摘出すると、ロックウッドの肉体は大量の灰となって崩壊した。
しかし通常とは異なり、『馬鷲の前肢』だけはドロップアイテムとして残留していた。
ラスクは、この異常な残り方へ強い違和感を覚えていた。
動く死体との共通点
ヘイズは、地上で発生した『動き出した死体』についてアミッドへ確認した。
アミッドによれば、遺体内部には触れれば灰になるほど脆い『殻』のような異物が残っていたという。
しかし、今回のロックウッドとの明確な共通点はまだ見つかっていなかった。
ヘイズは、両者とも「死んだ存在を冒涜している」という点だけは共通しているように感じていた。
ヘルンへの異常な衝動
調査の最中、ヘイズは突然ヘルンへ近付き、無意識に首へ手を伸ばした。
しかしヘルンは即座にそれを察知し、手を掴んで制止した。
ヘイズは誤魔化そうとしたが、ヘルンは彼女が首をへし折ろうとしていたことを見抜いていた。
それでも二人は平然と会話を続けており、周囲から見れば異常な関係性だった。
ヘイズは、ヘルン越しに伝わる『あの方』――フレイヤの反応を尋ねた。
ヘルンによれば、フレイヤはまだ断定には至っていないものの、ほぼ真相へ辿り着いているようだった。
血濡れのトロールの正体
その後、ヘイズはアミッドへ『動き出した死体』の死因を確認した。
するとアミッドは、彼等を殺した存在こそ『血濡れのトロール』だと明かした。
その頃40階層では、アレンが『血濡れのトロール』を圧倒的な実力で討伐していた。
しかし戦闘後、新たな異形トロール達が次々と姿を現す。
それらの個体もまた、体の各所が異常変異しており、双眼には赤い糸状の模様が浮かんでいた。
ヘディン達は、この異形モンスター群に何らかの『絡繰り』が存在すると確信していた。
そしてオッタルは、これほど多くの上級冒険者が死亡した理由が、単独個体ではなく群体化した異形達にあると理解していた。
直後、異形トロール達は一斉に襲いかかり、【フレイヤ・ファミリア】第一級冒険者達との戦闘が始まった。
異形モンスターの大群出現
新たな『水雷』の轟音が響く中、ヘイズ達は異変を察知した。
直後、森の各所から大量のモンスターが姿を現した。しかし、それらは通常のモンスターではなかった。
『ロックウッド』の腕を持つ怪物、『紅鷲』の脚を備えた『竜蜥蜴』、『泥炭蛭』の口を持つ『沼沢鰐』など、全てが複数種のモンスター部位を継ぎ接ぎした異形だった。
その双眸は例外なく赤く充血し、糸で縫い付けたような紋様が浮かび上がっていた。
アミッドは、その存在を『合成獣』と形容した。
フレイヤ・ファミリアの迎撃
異常な光景にもかかわらず、ヴァン達【フレイヤ・ファミリア】は即座に迎撃へ移った。
ヴァンは単独で敵陣へ突撃し、超高速連撃によって合成獣を次々と切断した。レミリアも風撃魔法と短剣戦を組み合わせた一撃離脱戦法で敵を翻弄していた。
さらにメルーナとラスクが強力な光と氷の砲撃を放ち、大量の怪物をまとめて吹き飛ばした。
【フレイヤ・ファミリア】特有の、個々の戦闘能力へ極端に依存した戦い方だった。
肉片による寄生攻撃
合成獣の群れを撃退したかに見えた直後、新たな『水雷』の兆候が現れた。
その一瞬の隙を突き、吹き飛ばされたモンスターの肉片が自律的に動き出した。そして、一つの片腕がブロニアの顔へ飛び付き、強引に口内へ侵入したのである。
ヘイズは即座に長杖を振り抜き、ブロニアごと正確に叩き飛ばして肉片だけを粉砕した。
しかし、ブロニアは体内へ『何か』を飲み込まされていた。
直後、彼女の肉体内部で異物が蠢き始め、片目が赤く充血していく。
それは『寄生状態』だった。
アミッドによる聖滅魔法
アミッドは即座に『領域魔法』の詠唱を開始した。
それは、眷族の体内へ侵入した異物を聖滅できる特殊魔法だった。しかし、その間アミッド自身は完全に無防備となる。
ヘイズは悪態を吐きながらも、飛来する大量の肉片を長杖で叩き潰し続け、アミッドを護衛した。
周囲では『肉の宴』とも呼ぶべき異常事態が発生していた。腕、脚、生首までもが独立して動き、生者へ襲いかかっていたのである。
ロナへの感染
さらに、接触していないはずのロナにも異変が発生した。
彼女は突然苦しみ始め、目が真っ赤に充血していった。ブロニアと同じ寄生症状だった。
感染経路不明という状況に、ヘイズは即座に判断を下した。
彼女はロナとイルデを『捨て石』として切り捨て、ヘルンの保護を最優先したのである。
フレイヤへ繋がる『神々の娘』であるヘルンだけは、絶対に汚染させられなかった。
イルデもその判断を理解し、ロナを連れて囮役へ回った。
水雷による分断
その直後、巨大な『水雷』が降り注いだ。
森は破壊され、地形そのものが吹き飛ばされる中、ヘイズはヘルンの手を引いて全力で逃走した。
アミッドもブロニアを抱えながら辛うじて回避したが、轟音の中で互いの声は届かず、パーティは完全に分断された。
ヘイズは、嵐のような『水雷』を避けながら、ヘルンだけは決して手放さず走り続けた。
ヘルンとの避難
ようやく安全地帯へ辿り着いた後、ヘイズは疲弊したヘルンを支えた。
彼女は軽口を叩きながらも、即座に広域回復魔法【ゼオ・グルヴェイグ】を発動し、ヘルンの疲労を一瞬で回復させた。
この魔法には『味方とモンスターの識別』という副次効果も存在しており、ヘイズはそれを利用して仲間の捜索を始めた。
その結果、アミッドとブロニアの位置を発見する。
孤立状態の確認
ヘイズ達は再合流を果たしたが、現在戦えるのはヘイズだけだった。
アミッドは回復役、ヘルンは非戦闘員、ブロニアは昏睡状態であり、完全に戦力不足だった。
ヘイズは、無闇な移動を避け、ヴァン達の側から気付いてもらう方針を選択した。
しかし、その広域魔法はモンスターまで引き寄せてしまっていた。
ヘイズ単独での迎撃
大群のモンスターが接近すると、ヘイズは前へ出た。
彼女は長杖による高速近接戦闘を展開し、モンスター達を次々と粉砕していった。
頭部破壊、魔石破壊、関節破壊を正確に狙い、圧倒的な力と敏捷性で怪物を屠っていく。
その戦い方は、もはや治療師とは思えないほど洗練されていた。
アミッドは、その異常な実力へ戦慄しながら、ヘイズが常に自分達を護る位置取りをしていることにも気付いていた。
アミッドが知ったヘイズの実力
ヘイズの戦いを目撃したアミッドは、彼女が単なる治療師ではないことを痛感していた。
ヘイズは常に戦線を押し上げ、後方にいるアミッド達へ絶対に敵が届かないよう立ち回っていたのである。
都市で『二大治療師』と称されるアミッドとヘイズだったが、両者には大きな違いが存在していた。
アミッドが純粋な治療能力に優れる一方、ヘイズは広範囲回復、持久力、そして圧倒的な白兵戦能力を兼ね備えていた。
それは、彼女がかつて【戦いの野】で『強靭な勇士』として鍛えられていた過去によるものだった。
戦士から治療師への転身
ヘイズは元々、戦士として女神へ仕えていた。
しかし、幾度もの死闘を経て、自らの限界を理解したことで戦士としての道を断念した。その後もフレイヤへの忠誠を捨てることなく、治療師へ転身したのである。
そして、戦場で培った技術と執念を活かし、『黄金の魔女』として大成していた。
現在のヘイズはLV.4であり、その異名【女神の黄金】は、黄金の魔力光と不屈の生命力を讃えたものだった。
ヘイズの独学戦闘術
ヘイズは戦闘中も弱音を吐き続けていた。
治療師が深層で前衛を務める異常事態へ悲鳴を上げながら、それでも戦闘を止めなかった。
彼女の戦い方は、【戦いの野】で独学によって積み上げたものだった。
他者の戦法を盗み、体術や杖術を独自に習得し続けた結果、並の冒険者を遥かに超える戦闘技術を身につけていたのである。
その戦闘技術は、第二級冒険者上位層に匹敵する水準へ達していた。
シルからの応援
戦闘中、ヘルンは『シル』からの応援をヘイズへ伝えた。
シルは、ヘイズの積み重ねてきた努力と、理論を積み上げた戦い方を称賛していた。
その言葉を聞いた途端、ヘイズの戦意は露骨に上昇した。
アミッドは、ヘイズの感情変化の激しさへ呆れながらも、その異常な戦闘力へ圧倒されていた。
ヘルンの魅了能力
一方、ヘルンも戦闘へ加わった。
彼女は『魅了』の力を用い、モンスターを支配下へ置いたのである。
それは通常の『調教』とは異なり、視線と仕草だけで怪物を従わせる、ほとんど神の権能に近い力だった。
アミッドは即座にそれが『魅了』だと見抜き、モンスターすら虜にする異常性へ戦慄した。
さらにヘルンは、アミッドへ『今見たことを疑問に思うな』『他言無用』という制約を魅了によって直接植え付けた。
アミッドは何が起きたか理解できぬまま、疑念そのものを封じられてしまった。
魅了された強化種達
ヘルンはさらに複数のモンスターを魅了し、同族同士で戦わせ始めた。
支配された怪物達は、倒したモンスターの魔石を喰らい、自ら『強化種』へ変貌していった。
通常なら制御不能となる危険行為だったが、ヘルンの魅了はそれすら強制的に支配下へ置いていた。
ヘイズは、そのあまりにも危険な光景に呆れながらも、戦力としては非常に頼もしいと感じていた。
合成獣第二波の襲来
戦況が混沌化する中、新たな『合成獣』の大群が現れた。
ヘイズは大型モンスターの死骸を打撃で吹き飛ばし、散弾のように利用することで敵集団を崩し始めた。
さらに、敵の肉体を徹底的に粉砕し、『肉片の嵐』を再発生させないよう注意しながら戦っていた。
しかし、その中でヘイズは一つの疑問を抱いていた。
『合成獣』の感染源と感染経路が、未だ完全に解明できていなかったのである。
冒険者の死体による合成獣
やがて現れたのは、冒険者の亡骸を取り込んだ異形だった。
人間の肉体に巨大モンスターの腕や触手を接合したその姿は、死者への冒涜そのものだった。
アミッドは強い怒りを露わにし、ヘイズも常軌を逸した状況へ強い危機感を抱いていた。
さらにヘイズは、『合成獣』が冒険者の死体にも感染することを理解した。
魅了対象への感染
その直後、ヘルンが魅了していたモンスター達にも異変が発生した。
彼等の眼球が裏返り、赤い糸状の模様が浮かび上がったのである。
つまり、魅了状態すら上書きする形で、『寄生主』による支配が始まっていた。
ヘイズは、第二波の合成獣出現以前に、既に感染済み個体が混ざっていたことを悟った。
そして暴走した魅了対象達は、一斉にアミッドへ襲いかかった。
ヘルンの負傷
アミッドは背後に気絶中のブロニアを抱えていたため、回避できなかった。
ヘイズも距離が離れており、間に合わなかった。
その瞬間、ヘルンがアミッドを突き飛ばした。
代わりに、ヘルン自身が怪物の爪を胸へ受けたのである。
鮮血を撒き散らしながら倒れる『シル』の姿を目撃した瞬間、ヘイズの理性は完全に崩壊した。
激怒したヘイズの暴走
ヘイズは絶叫しながら怪物へ襲いかかった。
モンスターの肉体を原形も残らぬほど破壊し続け、怒りのまま杖を叩き込み続けた。
怪物達の攻撃によって何度も肉体を傷付けられながらも、【アース・グルヴェイグ】による自動治癒が全てを即座に修復していく。
血塗れとなったヘイズは、もはや治療師ではなく、暴力そのものの化身と化していた。
彼女は『シル』を傷付けたことを許せず、モンスター達を徹底的に殺し続けていた。
しかし、その怒りが本当に『シル』だけに向けられたものなのか、ヘイズ自身にも判別できなくなっていた。
冒険者型合成獣の猛攻
暴走状態のヘイズへ、『冒険者型合成獣』が襲いかかった。
背中から伸びた『沼の磯巾着』の触手が脇腹へ叩き込まれ、続けざまに無数の触手が突き刺さろうと迫る。しかしヘイズは、怒りのまま長杖でそれらを引き千切った。
その怪物は、人間の冒険者とモンスターを無理矢理継ぎ接ぎした存在だった。
左腕には大型級モンスターの怪腕、右手には冒険者時代の鎚矛を握り、さらに異様な膂力と速度を兼ね備えていた。
ヘイズの劣勢
ヘイズは激怒したまま正面から打ち合いを続けた。
しかし、『技と駆け引き』を捨てた現在の彼女は、本来の戦闘技術を活かせていなかった。
怪物の鎚矛が頭部へ直撃し、額が割れ、骨が砕ける。致命傷級の損傷だったが、【アース・グルヴェイグ】の黄金光が即座に肉体を修復した。
それでも敵の猛攻は止まらなかった。
回復が完了するより先に新たな攻撃が叩き込まれ、ヘイズの肉体は絶えず破壊され続けていた。
上級冒険者級の脅威
ヘイズは、自らの推測が正しかったことを理解した。
この『冒険者型合成獣』には、生前の上級冒険者としての肉体性能が反映されていたのである。
さらにモンスター部位との融合によって、本来以上の膂力まで獲得していた。
その戦闘能力は、LV.5級に匹敵していた。
数値上では、LV.4であるヘイズが単独で勝てる相手ではなかった。
戦いの野の記憶
劣勢へ追い込まれながら、ヘイズの脳裏には『戦いの野』の日々が蘇っていた。
幾度も敗北し、骨を折られ、槍に貫かれ、血反吐を吐きながら、それでも戦い続けた日々だった。
彼女は何度も『強靭な勇士』を目指した。しかし結局、自分は戦士ではなく『癒やす者』でしかないと理解してしまった。
その挫折感が、現在の敗北感と重なっていた。
アミッドによる支援
ついに怪物の必殺級の鎚矛が振り下ろされる。
回復も間に合わず、ヘイズ自身も死を覚悟した瞬間、アミッドの回復魔法【ディア・フラーテル】が放たれた。
白銀の魔法光が黄金の回復光へ重なり、ヘイズの肉体を瞬時に再生したのである。
アミッドは叫んだ。
治療師である自分達なら、この怪物を押し切れると。
飽和回復による逆転
ヘイズは再び怪物へ正面からぶつかった。
今度は【黄金の魔女】ヘイズの回復力だけではなく、【銀の聖女】アミッドの回復まで重なっていた。
怪物の攻撃がヘイズを破壊する。
しかし、それを上回る速度で肉体が修復される。
それは『飽和攻撃』に対し、『飽和回復』で対抗するという、常識外れの戦法だった。
ヘイズは破壊されるたびに再生し、そのまま反撃を叩き込み続けた。
その異常な耐久戦に、『冒険者型合成獣』側が動揺を見せ始める。
冒険者型合成獣の撃破
やがて、『冒険者型合成獣』は押し負けた。
ヘイズとアミッドは同時に攻撃を叩き込み、その異形を完全粉砕したのである。
人型の頭部すら破壊された怪物は、灰となって崩れ落ちた。
戦場に立っていたのは、金と銀の回復光を纏ったヘイズだけだった。
その姿は、神々が見れば『戦乙女』と称したであろう異様な存在感を放っていた。
ヘイズの暴走継続
しかし、戦いは終わらなかった。
周囲から通常種モンスターの群れが次々と現れ、ヘイズはなお暴走状態のまま戦闘を継続した。
もはや彼女は、狂戦士のようにモンスターを虐殺し続けていた。
ヘルンによる制止
そんなヘイズを止めたのは、背後から抱き締めたヘルンだった。
血塗れの体でしがみついた彼女は、自分は無事であり、もう誰も傷つけさせないと訴えた。
その言葉によって、ようやくヘイズの怒りは鎮まり始める。
気付けば、周囲のモンスターは既に全滅していた。
ヘイズは力を失い、杖を落とした。
崩れ落ちそうになるヘルンを優しく抱き留めると、今度は他者を癒やすための回復魔法【ゼオ・グルヴェイグ】を発動した。
ヘルンとの会話
ヘイズは、自分を止めてくれたことへ礼を述べた。
ヘルンは呆れながらも、彼女の暴走を本気で心配していた。
さらにヘイズは、戦闘中に聞いた『シル』の言葉が、本当に女神自身の意思なのかを尋ねた。
ヘルンは当然だと返したが、ヘイズはその答えへどこか複雑な感情を抱いていた。
しかし、彼女はそれ以上追及しなかった。
仲間達との再合流
その後、ヴァン達もようやく合流した。
寄生状態だったロナも無事回収され、アミッドの領域魔法によって治療が始まる。
ヘイズは、自ら切り捨てる判断をした部下達が生還したことへ安堵していた。
寄生の正体
合流後、ヴァン達は『合成獣』の感染経路について説明を求めた。
ヘイズはしばらく考えた後、『冒険者型合成獣』の灰へ近付き、遺体から紫紺色の魔石を取り出した。
そして、敵の寄生方法は『魔石』だと断言する。
その直後、魔石から無数の糸が伸び始めた。
それは、彼女の推測が正しかったことを証明する光景だった。
擬態魔石の正体
40階層では、ヘディンが『トロール型合成獣』を解剖しながら、寄生の正体を明かした。
それは本物の魔石ではなく、『魔石を模した肉片』だった。怪物の体内で脈動する擬態魔石へ雷の魔力を向けると、黒い糸状の繊維が触手のように伸び始める。
ヘディンは、この『元凶』が自らの肉体片を魔石へ擬態させ、他モンスターへ摂取させることで寄生を成立させていると推測した。
モンスターは本能的に魔石を喰らうため、強化種ほど容易に感染してしまうのである。
強化種を利用した寄生連鎖
さらに、『擬態魔石』を取り込んだ強化種が別の強力なモンスターへ敗北した場合でも、次の宿主へ再び寄生できることが判明した。
つまり、『元凶』は無数の強化種を渡り歩きながら、延々と強化を繰り返していたのである。
アレンやヘグニ達は、その無限寄生構造へ強い嫌悪感を示していた。
ヘイズによる解析
一方38階層でも、ヘイズは同様の結論へ辿り着いていた。
彼女は『冒険者型合成獣』から回収した擬態魔石を取り出し、ロナが寄生された理由を説明した。
ロナは『ロックウッド』討伐時に魔石を回収した際、擬態魔石へ触れてしまっていたのである。その際に伸びた菌糸が、彼女の体内へ侵入していた。
ヘイズは、モンスターにも冒険者にも関わりの深い『魔石』へ擬態するという生存戦略へ、心底嫌悪感を抱いていた。
動く死体事件の真相
さらにヘイズは、地上で発生した『動く死体』事件の真相も説明した。
寄生された強化種が冒険者を殺害した際、擬態魔石を遺体へ植え付けることで、その死体自体を新たな宿主へ変えていたのである。
アミッドを襲った死体は、菌糸が全身へ広がる前に地上へ運ばれたため、不完全な状態で動き出していた。
ヘイズが強打で擬態魔石を破壊したことで、残骸だけが残ったのである。
人体寄生の特徴
ヘイズは、ロナやブロニアの症状から、人体への寄生速度はモンスターより遅いと分析した。
高レベル冒険者ほど完全支配まで時間がかかる一方、死体であれば即座に利用可能となる。
そのため、この怪物は大量の死体を作り出し、永遠に感染を拡大し続ける構造を築いていた。
水雷との関連性
続いてヘイズは、『寄生モンスター』出現時には必ず『水雷』が発生していた事実を指摘した。
最初のロックウッド出現時も、パーティ分断時も、全て水雷現象と同時だったのである。
彼女は、寄生モンスターの発生源が38階層に存在すると推測した。
レミリアやラスク達も、その推理から今回の事件がギルド級の重大案件であると理解していた。
シルからの神託
そこでヘルンへ降りた『シル』が、ヘイズ達の推理を肯定した。
彼女は、ヘイズ達が既に真相へ辿り着いていると称賛し、『元凶』へ到達する方法を教えると告げた。
その方法とは、ヘイズ自身が危険な役割を担う代わりに、短時間で元凶へ辿り着ける策だった。
ヘイズは即座にその役目を引き受けた。
仮死状態による潜入
その後、『水雷』の発射口では、一体の死体が水中へ引き込まれていく。
しかし、その正体は本物の死体ではなかった。
ヘイズはヴァン達によって仮死状態へ追い込まれ、死体を装っていたのである。
寄生体に回収されることで、自ら『元凶』の巣へ潜入する作戦だった。
屋根裏部屋への到達
ヘイズが運び込まれた先は、38階層天井部に存在する巨大空間だった。
そこには大量の死体、肉塊、灰、腐臭漂う赤い水場が広がっていた。
そして、その奥には巨大な怪物の影が存在していた。
ヘイズは即座に【アース・グルヴェイグ】を発動し、死体の偽装を解除する。
この空間こそ、『元凶』の住処だった。
仲間達の突入
さらにヘイズの胸元から現れた『光の本』が合図となり、天井が爆発した。
ヴァン達が33階層側から地面を破壊し、この『屋根裏部屋』へ突入してきたのである。
ヘイズ達は、38階層と33階層の構造を利用し、真上から元凶へ奇襲を成功させた。
元凶『パッチワーク・グランドマザー』
その怪物の正体は、無数のモンスターや死体を縫い合わせた巨大な継ぎ接ぎの怪物だった。
巨人の腕、蛇の目、獣の脚、蜥蜴の尾など、様々な部位が不自然に接合されていた。
ヘイズは、その怪物を『パッチワーク・グランドマザー』と命名した。
この怪物こそ、擬態魔石を撒き散らし、無数の『継ぎ接ぎ人形』を作り出していた元凶だった。
不死の戦場の開幕
『グランドマザー』は無数の『継ぎ接ぎ人形』を生み出し、津波のように襲いかからせた。
ヴァン達は奮戦したが、圧倒的な数によって次第に押し潰されていく。
しかし、その瞬間、ヘイズが超広域回復魔法【ゼオ・グルヴェイグ】を展開した。
黄金の領域によって、傷付いた勇士達は即座に蘇生同然の回復を受け、再び立ち上がった。
さらにアミッド達の回復支援も重なり、その空間は『死の概念を取り払われた戦場』へ変貌する。
『グランドマザー』は、決して死なない勇士達を前に、初めて恐怖を抱いていた。
そしてヘイズは、ここを『戦いの野』だと宣言し、怪物達へ不死の戦場を叩きつけた。
3
グランドマザー本体の正体
無限に蘇る勇士達との戦いの末、『屋根裏部屋の戦い』は決着した。
無数の『継ぎ接ぎ人形』は全滅し、最後に残された『グランドマザー』本体もまた、極めて脆弱な存在だった。
その正体は、『茸』だった。
胞子を『魔石』へ擬態させ、菌糸を糸のように伸ばして死体やモンスターを縫い合わせていたのである。
ヘイズは、露わとなった本体へ容赦なく杖を叩き込み、グランドマザーを完全粉砕した。
こうして、『動き出す死体』と『血濡れのトロール』事件は終結した。
事件の真相
今回の事件は、38階層『屋根裏部屋』から散布された胞子によって引き起こされていた。
擬態魔石を取り込んだ強化種が、他の強化種を捕食しながら上下階層を移動し、結果として40階層ではLV.5級の『血濡れのトロール』が誕生していたのである。
ギルドは報告を受け、この『パッチワーク・グランドマザー』を『ダンジョンにおける最悪の茸』と認定した。
さらに今後は、同様の『継ぎ接ぎ人形』を発見した場合、階層間の狭間に存在する『屋根裏部屋』を即時捜索し、元凶を殲滅する方針を決定した。
ヘイズ達の勝利
一方ヘイズは、自分が『パッチワーク・グランドマザー』の命名者となったことへ全く興味を示さなかった。
それよりも、元凶を見つけられなかったヘディン達第一級冒険者が、自分達より後に真相へ辿り着いたことを面白がっていた。
ヴァン達も必死に笑いを堪えており、ヘイズだけは堂々と笑い飛ばしていた。
フレイヤとウラノスの裏事情
地下神殿では、フレイヤがウラノスへ事件解決を報告していた。
実は今回の『血濡れのトロール』討伐やヘイズ達の深層派遣は、ウラノスからフレイヤへ極秘依頼されていた案件だったのである。
さらにフレイヤは、中央広場で『動く死体』を見た時点で、両事件の関連性を見抜いていた。
しかし彼女は、すぐに答えを眷族達へ与えなかった。
それは、神託へ依存し過ぎた眷族達が、自ら考え成長するためでもあった。
もっとも、ヘルンが危険な目に遭った際には、流石に焦っていた。
異端児達の被害
ウラノスとフェルズは、本来なら異端児達へ調査を任せる予定だった。
しかし、『血濡れのトロール』との戦闘で異端児側にも感染被害が発生していた。
胞子へ触れた異端児達は肉体を乗っ取られ、仲間達によって処分せざるを得なかったのである。
そのためフェルズは、異端児達を撤退させ、正式に冒険者側へ討伐任務を切り替えていた。
シルとの甘い時間
後日、【フレイヤ・ファミリア】本拠『銀の屋敷』では、ヘイズがシルへ甘えていた。
シルは、アミッドとの共闘やヘイズの戦いを称賛し、ヘイズは完全に蕩け切っていた。
さらにフレイヤは、『戦いの野』すら休ませてくれており、ヘイズにとってまさに至福の時間だった。
アミッドからの謝礼
そこへ、【ディアンケヒト・ファミリア】のアミッド達が訪問してきた。
彼女達は大量の回復薬や万能薬、報酬金を持参し、命懸けの依頼へ応じてくれたことへ深く感謝した。
アミッドは、自分達を守ってくれたことへ改めて礼を述べたが、ヘイズは軽く流しながら受け取っていた。
アミッドへの追及
しかし、ヘイズには別の目的があった。
彼女は屋敷外でアミッドを呼び止め、『魅了』が効いていなかったことを見抜いていたと告げる。
アミッドは、ヘルンが『シル』へ変化したことも、『魅了』の存在も、全て理解した上で沈黙していたのである。
ヘイズは、それを放置すればヴァン達がアミッドを始末していたかもしれないと警告した。
アミッドの誓約
それでもアミッドは、自分は何も見ておらず、今回知った全てを誰にも漏らさないと誓った。
ヘルンやヘイズの秘密、【自動治癒】など、今回目撃した異常な力についても一切口外しないと約束したのである。
ヘイズはその誠意を認め、脅迫をやめてアミッドを解放した。
彼女は、アミッドもまた『英雄の都』に生きる食わせ者なのだと感じていた。
ヘルンからの感謝
本拠へ戻ったヘイズを、今度はヘルンが待っていた。
ヘルンは照れながら、自分を助けてくれたことへの礼を改めて伝えた。
それは『シル』としてではなく、ヘルン自身の言葉だった。
ヘイズは、その面倒臭い不器用さへ苦笑しながらも、穏やかに受け止めていた。
二人の変化
その後、ヘルンはヘイズへ問いかけた。
かつて抱えていた『強靭な勇士』への執着、自分への嫉妬、フレイヤの寵愛への劣等感は、もう大丈夫なのかと。
ヘイズは、何一つ解決していないと答えた。
自分もヘルンも、相変わらず面倒で拗らせたままだと。
それでも今は、そんな関係も含めて楽しいと感じていた。
二人は並んで空を見上げる。
その様子を、窓辺からフレイヤが静かに見守っていた。
Gullveigの産声(本編開始15年前)
1
竜災による故郷の滅亡
ヘイズ・ベルベットは、大陸北方の町で生まれた。
しかし幼少期、世界は『黒竜』討伐失敗後の混迷期にあり、各地で『訪竜問題』による災厄が発生していた。ヘイズの故郷も竜災に襲われ、町は壊滅する。
両親は屋敷の崩落へ巻き込まれて死亡し、三歳のヘイズは瓦礫の中へ取り残された。
そんな絶望の中、暴れ回っていた竜は勇士達によって討伐される。
幼いヘイズの脳裏へ焼き付いたのは、竜の死骸でも血塗れの勇士でもなく、黄昏を背負って立つ美の女神フレイヤの姿だった。
彼女には、その後光が『黄金の光』に見えた。
その瞬間から、ヘイズは「フレイヤのようになりたい」と願うようになった。
フレイヤへの懇願
フレイヤは生存者達へ礼を不要だと告げ、気まぐれな旅を続けようとしていた。
しかしヘイズは、周囲の制止を振り切って彼女へ直談判する。
自分を眷族へ加えてほしいと願ったのである。
だがフレイヤは、ヘイズには勇士となる才能がないと断言した。
彼女の魂は、まだ未熟な『種』に過ぎず、道端の小石同然だと評された。
その代わりフレイヤは、魂を磨き、芽吹き、花開いたなら迎え入れてやると告げた。
この言葉が、ヘイズにとって生きる目標となった。
迷宮都市への密航
帰る家もなくなったヘイズは、フレイヤ達の馬車へ無断で潜り込んだ。
フレイヤ自身は当然それに気付いていたが、罰することなく迷宮都市オラリオまで同行を許した。
到着後、ヘイズは侍女見習いとして【フレイヤ・ファミリア】本拠へ置かれる。
当時のオラリオは『暗黒期』であり、闇派閥が暴れ回る最悪の時代だった。
それでもヘイズは必死に働き、陰では勇士達の真似をして剣の素振りを繰り返していた。
彼女は、フレイヤの『黄金』になるには、『強靭な勇士』になる必要があると直感していたのである。
何度も拒絶された眷族入り
ヘイズは年を重ねるごとに、何度もフレイヤへ眷族入りを願い出た。
しかし返答は毎回同じだった。
「貴方には才能がない」
フレイヤは、ヘイズが『戦いの野』へ出れば死ぬと断言し続けた。
その無慈悲な拒絶に、ヘイズは絶望し続けていた。
六歳の懇願
ついに六歳となったヘイズは、フレイヤの神室へ押しかけた。
彼女は自らの首へナイフを突き付け、眷族へ迎え入れないなら死ぬと訴えたのである。
それは忠誠であり、同時に子供なりの脅迫でもあった。
しかしフレイヤは、同じ方法で眷族入りを願った者が他にも二十七人いたと淡々と語る。
唯一の違いは、ヘイズが誰より幼かったことだけだった。
そして翌日、ヘイズはついに恩恵を授かる。
その代償として、『地獄』が始まった。
戦いの野の地獄
ヘイズには、本当に才能がなかった。
【戦いの野】では毎日のように骨を折られ、内臓を破壊され、何度も死にかけた。
当時の【フレイヤ・ファミリア】は、ゼウスとヘラ敗北後の焦燥感に取り憑かれており、誰もが狂気的に強さを求めていた。
オッタル、ヘディン、ヘグニ、アレン、ガリバー四兄弟など、後の怪物級冒険者達は、幼いヘイズから見れば隔絶した化物だった。
レミリアやアーニャですら、自分より遥かに才能がある。
ヴァンやメルーナ達も含め、全員がヘイズを叩き潰していった。
彼女は毎日絶望し続けていた。
ヘルンとの出会い
そんな中、フレイヤは一人の少女を連れてくる。
それがヘルンだった。
貧民街出身の、みすぼらしい灰色髪の少女である。
ヘイズは、こんな自分より更に価値のない存在だと思い込み、世話を焼き始めた。
髪を梳き、礼儀を教え、自分より下の存在として扱うことで、かろうじて心を保っていたのである。
神々の娘の覚醒
しかし、その認識は完全に覆される。
ある日、『瞑想室』でヘルンは『神々の娘』として覚醒したのである。
『変神魔法』を解いたヘルンは、フレイヤそのものと見紛うほどの存在へ変貌していた。
眷族達は全員絶句した。
ヘイズもまた、自分が見下していた少女こそ、真に選ばれた存在だったと理解してしまう。
その瞬間、ヘイズの心は完全に壊れた。
ヘルン殺害未遂
その夜、ヘイズはヘルンの寝台へ近付いた。
彼女は無意識のまま、眠るヘルンへ跨がり、その首を締め上げる。
あと少しで殺せるところまで追い込んだ。
しかし、ヘルンの涙と、自分が梳いた灰色の髪を見た瞬間、ヘイズは我に返る。
彼女は泣き崩れながら部屋を飛び出し、その日から二度とヘルンの部屋へ戻らなくなった。
死人のような日々
以降のヘイズは、生ける屍のように戦い続けた。
能力値は伸びず、才能の差ばかりを突き付けられ、希望は欠片も見出せなかった。
そしてある日、ヘイズはフレイヤへ尋ねる。
自分以外に、眷族入りを願った二十七人はどうなったのかと。
フレイヤは「全員死んだ」と答えた。
その言葉と同時に、フレイヤはヘイズへ手を差し伸べる。
恩恵を返上し、もう苦しまなくていいと慈悲を示したのである。
ヘイズの拒絶
ヘイズは涙を流しながら、その手を弾いた。
彼女はなおも叫ぶ。
自分もフレイヤのような黄金になりたい。
ヘルンのように美しい女神になりたい。
何にも代え難い『黄金』になりたいのだと。
その惨めな叫びを前に、フレイヤは初めてヘイズへ『憐憫』の眼差しを向けていた。
2
絶望の果ての執念
ヘイズは、なおも毎日『戦いの野』へ降り続けた。
武器も戦術も格闘術も試したが、才能はなかった。アレン達へ追い付こうとしても、その背中どころか影にすら届かなかった。
しかし、既に全てを失っていた彼女には、退路も妥協も存在しなかった。
女神の憐憫を向けられたあの日を境に、苦痛への恐怖も死への怯えも消え去っていた。
ヘイズは戦い、破壊され、また戦い続ける。
その苦痛そのものを、自らの魂を磨き上げる試練だと認識していた。
炎獄の中で見た黄金
ある戦闘で、ヘイズは炎に呑み込まれながらも生還した。
その極限状態の中で、彼女は『黄金』を見た。
それは、壊れかけた黄金であり、『鏡』のようにも感じられる光だった。
生と死の境界を彷徨うほどの執念と意志の果てに、ヘイズはついに『未知』へ辿り着く。
そこで発現したのが、【アース・グルヴェイグ】と【ゼオ・グルヴェイグ】だった。
自動治癒の発現
何度目とも知れぬ【ステイタス】更新で、ヘイズは自身の魔法発現を知った。
才能がないはずの自分へ現れた奇跡に、彼女は静かに涙を流した。
一方フレイヤは、その結果を見て嘆息していた。
しかしヘイズの地獄は終わらない。
ただし、今度は『自動治癒』という異常な力を得たことで、以前以上に無茶な戦いを繰り返せるようになっていた。
不死の戦士への変貌
【アース・グルヴェイグ】によって、ヘイズは精神力が尽きるまで再生し続ける存在となった。
致命傷を受けても立ち上がり続けるその姿に、これまで彼女を見下していた勇士達も、初めて不愉快そうな感情を見せ始める。
そこには、仮初めながら『不死の戦士』を体現したヘイズへの嫉妬があった。
ヘイズは、ほんの少しだけ自尊心を取り戻していた。
LV.2への到達
無茶と苦痛を繰り返し続けた結果、ヘイズはついにLV.2へ到達した。
レミリア達は既にLV.3へ至っていたが、それでもヘイズは咆哮を上げるほど歓喜していた。
自分でも不可能を超えられると証明できたからである。
彼女は更に狂気的なまでに戦いへ没頭していった。
治療師転向の勧告
そんなある日、ヘディン・セルランドがヘイズへ『治療師へ転向しろ』と告げた。
今まで彼女を『道具』としてすら見ていなかった男からの言葉に、ヘイズは困惑する。
ヘディンは、ヘイズが本来あり得なかった『可能性』へ到達したと評価していた。
そして彼女へ、自らの才能を突き詰めろと命じる。
しかしヘイズは拒絶した。
自分が目指すのは『勇士』であり、『治療師』ではないからだった。
死を許さぬ礎
ヘディンは、そんなヘイズへ冷酷な現実を突き付けた。
ヘイズは勇士になれなかった者達の残骸であり、『死を許さぬ礎』そのものだと。
さらに、どれだけ足掻いてもヘルンとは並べないとも告げる。
その言葉は、ヘイズの心を深く抉った。
戦場の癒やし手としての覚醒
その後、ヘイズの【魔力】は急激に成長していった。
治療系スキルも次々と発現し、彼女の不死性は更に強化されていく。
やがて『大抗争』が勃発すると、ヘイズは【ゼオ・グルヴェイグ】とスキル【戦野構築】を駆使し、崩壊寸前だった戦線をたった一人で支え続けた。
その活躍は、後の『戦場の聖女』アミッドをも上回るものだった。
結果として、ヘイズは都市最高峰の治療師として名声を得てしまう。
しかしそれは、彼女自身が最も望まない形だった。
勇士になれない現実
ヘイズはLV.3へ至ったものの、それ以降能力値は頭打ちになった。
何度『戦いの野』へ降りても、ヴァン達へ叩き伏せられるだけだった。
ついにはアレン達までが、彼女へ『治療師になれ』と告げ始める。
かつてなら認められるだけで幸福だったはずなのに、ヘイズはそれを受け入れられなかった。
彼女が求めていたのは、あくまで『強靭な勇士』だったからである。
ヘルンの言葉
荒れ果てた自室で苦悩するヘイズの前へ、ある日ヘルンが現れた。
決別以来、ほとんど言葉を交わしてこなかった相手だった。
そんなヘルンは、ヘイズへ静かに告げる。
勇士になれなかったから何だというのか。
既にヘイズは、『女神の黄金』になろうとしているではないかと。
『神々の娘』であるヘルンからその言葉を向けられた瞬間、ヘイズの心は大きく揺らいだ。
フレイヤの訪問
その夜、今度はフレイヤ自身がヘイズの部屋を訪れた。
ヘイズは、女神が『勇士を諦めろ』と告げに来たのだと思い込み、再びナイフを首へ突き付ける。
何か言えば死ぬと泣き叫ぶ彼女へ、フレイヤは静かに歩み寄った。
そして告げる。
自分がこれまで許さなかったものは、『ヘイズの死』だったのだと。
フレイヤは、どれほど冷酷でも、ヘイズの犠牲だけは決して認めなかった。
だから命じる。
『私のために生きなさい』と。
黄金の真実
さらにフレイヤは、ヘイズへ真実を告げた。
【アース・グルヴェイグ】も【ゼオ・グルヴェイグ】も、全て黄金色の魔法だった。
それは、幼き日にヘイズが見た『黄金の光』そのものだったのである。
つまりヘイズは、既に自分だけの『黄金』へ辿り着いていた。
夢の終わりと受容
それでもヘイズは泣き叫んだ。
自分はヘルンのような『神々の娘』にはなれない。
どれほど地獄を潜り抜けても、『女神の出来損ない』にしかなれないのだと。
その嫉妬も劣等感も、ヘイズ自身を形作る本質だった。
しかしフレイヤは、それを否定しなかった。
ヘルンや自分にも、ヘイズという『宝』にはなれないと受け入れたのである。
ヘイズは涙が枯れるまで泣き続けた。
そして翌朝。
彼女はついに、『満たす煤者達』――治療師として生きる道を選んだ。
その二つ名は、自然と定まっていた。
【女神の黄金】と。
3
治療師転向後の急成長
治療師へ転向してから、ヘイズの人生は一変した。
それまでの苦労が嘘のように、全てが順調に進み始めたのである。
本拠でもダンジョンでも、死に続ける勇士達を癒やし続けた結果、【魔力】は急激に成長し、ヘイズは瞬く間にLV.4へ到達した。
さらに『黄金の魔女』という異名まで与えられ、ついにはアミッド・テアサナーレと並び称される存在となっていた。
満たす煤者達の長としての重責
しかし、その代償としてヘイズを待っていたのは、想像を絶する激務だった。
【戦いの野】そのものとも言える存在となった彼女は、日々大量の負傷者を癒やし続けなければならなかった。
過労で倒れかけるほどの重労働だったが、その忙しさこそが、逆にヘイズを救っていた。
かつてのように、自分の劣等感や嫉妬へ沈み込む暇がなくなったのである。
その反動からか、ヘイズの口調は以前よりも間延びした、人を食ったようなものへ変化していった。
フレイヤによる本質の指摘
そんなヘイズへ、フレイヤは語る。
もし自分と出会わず平穏に生きていたなら、ヘイズは本来、のんびりした性格の少女だっただろうと。
丘の上で呑気に咲く花のような少女。
それが本来のヘイズ・ベルベットなのだと。
自分を誰より理解してくれているフレイヤの言葉に、ヘイズは素直に喜び、照れていた。
その様子を見たヴァン達は露骨に嫌そうな顔をしていた。
仲間達との現在
ヘイズはやがて【満たす煤者達】の長へ就任した。
ロナやイルデを始め、多くの部下達が彼女を慕うようになっていた。
かつて絶望の底にいた自分が、今では他人から羨まれる立場にいる。
その事実に、ヘイズは人生の不可思議さを実感していた。
もちろん過去の傷が消えたわけではない。
今でも心の闇に苛まれることは多かった。
それでも、人は生き続けていくしかないのだと、ヘイズは少しずつ受け入れ始めていた。
十六歳のヘイズとヘルン
十六歳になったヘイズは、ヘルンと共に買い出しへ出ることも増えていた。
かつて人形のように感情の薄かったヘルンは、今や『女神の付き人』としての威厳を備えた存在へ変わっていた。
一方でヘイズもまた、【満たす煤者達】の長として責任ある立場になっている。
二人は互いに嫌味や皮肉を飛ばし合いながらも、以前とは違う距離感で接していた。
ヘイズは、ヘルンの極端で重い性格を反面教師にしつつ、自分も少しずつ柔軟になれたと感じていた。
そして、一度は殺そうとした相手と、今こうして普通に会話している事実へ苦笑していた。
互いに面倒な性格であり、どこか似た者同士なのだと理解していたのである。
中央広場での誓い
やがて二人は中央広場へ辿り着く。
ヘイズは『バベル』最上階――フレイヤのいる神塔を見上げながら、静かに口を開いた。
いつか、自分は女神すら癒やせる存在になりたいのだと。
ヘルンは何も否定せず、その言葉を黙って聞いていた。
ヘイズは、ヘルンのような『神々の娘』にはなれなかった。
フレイヤを守る『強靭な勇士』にもなれなかった。
しかし今の彼女は、【満たす煤者達】にして【戦いの野】そのものだった。
勇士達を育て、支え、生かし続ける大地。
原野を潤し、命を支える黄金。
それこそが、現在のヘイズ・ベルベットだった。
それでも彼女は、なお願い続けていた。
いつか、本物の黄金へ辿り着きたいと。
豊穣大作戦!!!(本編21巻後)
1
女性団員達による極秘会議
石造りの暗い室内では、【フレイヤ・ファミリア】女性団員達による秘密会議が開かれていた。
中央には漆黒の円卓が置かれ、そこへ集まっていたのはレミリア、ロナ、イルデを始めとした女性団員のみだった。
室内には、これから始まる『秘め事』への緊張感が漂っていた。
その中心で、ヘイズ・ベルベットは重々しい雰囲気を作りながら議題を切り出す。
今回の目的は、とある極秘作戦の決行だった。
男性幹部不在の好機
ヘイズは、現在の状況を冷静に分析していた。
ヘグニはシルの使いで不在、アレンは酒場監視、ヘディンやアルフリッグ達は護衛任務、オッタルはダンジョン探索中であり、厄介な男性幹部達がほぼ全員不在だったのである。
そのため、今こそ計画を実行する唯一の好機だと断言した。
しかし、その説明の中でヘイズは幹部達を『対話不可能』『ボケボケ暴力幹部』など散々に罵倒しており、レミリアは思わず冷や汗を流していた。
最大の障害ヘルン
ヘイズは、今回最大の障害としてヘルンの存在を挙げた。
もし彼女へ計画内容が露見すれば、即座にシル――ひいてはフレイヤへ情報が伝わってしまうからである。
さらにヘイズは、ヘルンを『感情激重呪詛遣い系従者』とまで評し、単独で全員を潰しに来る危険人物扱いしていた。
そのため、一同へ徹底した秘密保持を命じる。
お仕置きへの迷走
しかし話が進む中、ヘイズは突然『シルに知られた場合のお仕置き』について考え始めた。
当初は恐怖として語っていたはずだったが、途中から「むしろご褒美では」と本気で悩み始めてしまう。
ロナとイルデは困惑しながら上司を止めようとしていたが、ヘイズはしばらく真剣に悩み込んでいた。
やがて彼女は邪念を振り切り、改めて指揮官らしく立ち上がる。
極秘作戦の発令
ヘイズは、まるで大作戦を指揮する英雄のような姿勢で、今回の計画名を高らかに宣言した。
その名は――『伴侶の種子で豊穣豊穣大作戦』。
あまりにも不敬かつ頭の悪い名称に、その場の反応は完全に割れていた。
ロナやイルデは顔を赤くし、レミリアは頭を抱え、一部の勇士達は妙に覚悟を決めた眼差しを浮かべていた。
こうして、【フレイヤ・ファミリア】女性団員達による危険極まりない極秘作戦が始動したのである。
2
ヘイズによる掃除の誘い
ある晴天の日、ベル・クラネルはヘイズに呼び出され、『豊穣の女主人』の買い出しを手伝っていた。
その道中、ヘイズは旧【フレイヤ・ファミリア】本拠『戦いの野』の大掃除を行うと語る。ギルドに押収された後も、あそこはフレイヤの神殿同然であり、年末前に清めておきたいのだという。
ベルもまた、『竈火の館』や旧拠点『教会の隠し部屋』へ愛着を抱いていたため、その説明には素直に納得していた。
さらにヘイズは、シルには秘密にしたいとも付け加える。
シルはきっと、押収された本拠の掃除など不要だと言い、自分達へ気を遣わせまいとするだろうからだった。
ベルへの勧誘
ヘイズは、ベルこそ掃除へ参加する資格があると熱弁した。
ベルはシルの『騎士』であり、かつては偽りとはいえ【フレイヤ・ファミリア】の一員だった。だからこそ、女神の住処を掃除する資格があるという理屈だった。
ベルは多少違和感を覚えながらも、結局その頼みを承諾してしまう。
ただしヘイズは、ヘスティア達へは事後報告にしてほしいと念押しした。秘密が漏れればシルへ即座に伝わる可能性があるからだった。
女神貢献得点という謎理論
さらにヘイズは、『強靭な勇士』と『満たす煤者達』は、女神への忠誠度を競い合うライバル関係なのだと語り始める。
この『女神貢献得点』を稼ぐことで、死後にフレイヤからより多く甘やかしてもらえるのだという。
当然ながら初耳だったベルは困惑するが、ヘイズは平然と「初めて言いましたから〜」と返した。
その横ではロナとイルデが顔を赤くしながらベルを見ており、ベルは彼女達がこの話題を恥ずかしがっているのだろうと勘違いしていた。
戦いの野への潜入
その日の夜、ベルはヘイズ達に連れられ、『戦いの野』へ侵入した。
広大な本拠では大量の女性団員達が掃除を行っていたが、その様子には妙な違和感があった。
防音結界を張る者まで存在し、ベルは「なぜ大掃除に結界が必要なのか」と首を傾げる。
さらにレミリアと遭遇した際、彼女はなぜか顔を真っ赤にし、胸元を隠しながらぎこちなく振る舞っていた。
ベルは徐々に不穏さを感じ始める。
ベルの危機察知
ベルは、ヘイズが『治療部隊と戦闘部隊は対立関係』と説明していたにもかかわらず、レミリアが普通に参加していることへ疑問を抱いた。
その瞬間、ヘディンから叩き込まれた危機察知能力が警鐘を鳴らす。
これは異常事態だと。
ベルは即座に脱出を決意し、掃除道具を置いて駆け出した。
しかしその直後、屋敷中の魔石灯が一斉に消灯する。
闇の中で、ベルは完全な罠だったことを悟った。
下着姿のレミリア
暗闇の廊下の先から現れたのは、携帯用魔石灯を持ったレミリアだった。
しかし彼女は、靴下留帯付きの下着姿という、ほぼ半裸同然の格好になっていた。
顔を真っ赤にし、涙目になりながら、レミリアはベルへ「わたしじゃダメ?」と告白する。
突然の異常事態へ、ベルは完全に混乱していた。
さらにレミリアは、「ベル印の種で豊穣して」と意味不明かつ危険な発言まで始める。
精神的限界へ達したベルは、謝罪しながら全力逃走した。
戦乙女達の総攻撃
しかしそれは始まりに過ぎなかった。
廊下、柱の陰、扉の奥――至る場所から、薄着や下着姿の女性団員達が次々と出現したのである。
彼女達は『種即豊穣』など意味不明な叫びを上げながらベルへ迫り、しかも武器まで装備していた。
ベルは第一級冒険者としての身体能力で必死に逃げ回るが、相手側も全員【フレイヤ・ファミリア】の精鋭であり、包囲網は極めて巧妙だった。
さらに、ベルの性格を逆手に取る形で、『衣装を破壊できない』という弱点まで利用されていた。
ベルは、自分が完全に罠へ嵌められていることを理解する。
女湯への追い込み
追跡の果て、ベルが辿り着いたのは本拠深部の巨大女湯だった。
そこには、ヘイズを中心とした大量の女性団員達が集結していた。
しかも大浴場中央には、超巨大な寝台まで設置されていた。
当然ベルは全力で困惑する。
するとヘイズは、平然と宣言した。
「これより、夜の戦いの野をおっ始めます」と。
ベルは白目を剥きながら絶叫するが、その声をかき消すように、女性団員達の鬨の声が浴場へ響き渡った。
こうして、『この世で最も破廉恥な戦いの野』が幕を開けたのである。
3
戦乙女達の総攻撃
女湯へ追い込まれたベル・クラネルへ、【フレイヤ・ファミリア】女性団員達が一斉攻撃を仕掛けた。
斧槍、戦槌、槍、棍棒による波状攻撃が四方八方から飛び交い、魔導士達は弱体化魔法まで重ねてくる。
しかも彼女達は、前衛・中衛・後衛へ自然に分かれた高度な連携を展開していた。
ベルは【戦いの野】で鍛えられた回避能力を駆使しながら必死に逃げ回るが、相手は全員本気だった。
その上、ベルは相手を傷付けられない。
薄着や下着姿の団員達へ攻撃すれば、衣装が破れてしまうからである。
結果として、ベルは圧倒的に不利な状況へ追い込まれていた。
豊穣計画の真意
戦闘中、ヘイズ達はついに今回の目的を明かした。
それは、フレイヤへ『孫』を抱かせることだった。
『派閥大戦』で破れた女神の幸せを願い、倫理観も理性も投げ捨てた結果、ベルを強制的に『豊穣』させようとしていたのである。
ベルはようやく全てを理解し、絶叫する。
しかし団員達は完全に本気だった。
人数はおよそ八十人。
ベルは、自分が敗北すれば『八十児の父』になる未来すら想像し、本気で恐怖していた。
持久戦による消耗
ベルはデッキブラシ一本で応戦していた。
戦闘員達を撃退しても、ヘイズの【ゼオ・グルヴェイグ】によって即座に回復されてしまう。
つまり女性団員側は、最初から持久戦を前提としていた。
ベルは階層主攻略戦のような構図を理解しながら、精神的にも肉体的にも追い詰められていく。
特に、肌色攻撃による精神的ダメージが深刻だった。
ヘイズへの突撃
この状況を打開するため、ベルは後方指揮を執るヘイズを狙う決断を下した。
驚異的な速度で団員達を突破し、ヘイズ目前まで肉薄する。
しかしヘイズはそれすら想定済みだった。
彼女は側にあったレバーを引き、床へ巨大な落とし穴を出現させる。
ベルはそのまま奈落へ落下し、ヘイズ自身も後を追って飛び込んだ。
覗きトンネルの秘密部屋
落下した先は、巨大な地下空間だった。
そこには鎖、手錠、足枷、巨大寝台など、明らかに監禁部屋じみた設備が並んでいた。
ヘイズによれば、この場所はかつて神を覗き見するために掘られた『覗きトンネル』の跡地だった。
彼女達は最近になってそこを再利用し、寝台まで設置して準備していたのである。
そしてヘイズは、その場で服を脱ぎ始めた。
ヘイズの告白
ヘイズはベルへ向かい、「好きですよ、ベル。愛してます」と告白した。
彼女は、ベルが可愛く、強く、他派閥の問題児達より遥かに愛らしいと語る。
さらに、自分達女性団員もベルと夜を共にしたいのだと続けた。
しかしベルは、その言葉を否定する。
それは愛ではない、と。
ヘイズ達が本当に見ているのは、ベルではなく、その後ろにいる『シル』なのだと断言した。
愛の価値観の違い
ヘイズはベルの言葉を否定しなかった。
その代わり、自分達の愛とベルの愛は形が違うだけだと説明する。
フレイヤは『広く愛する者』だった。
だから自分達もまた、二番目の愛を持つことができる。
その言葉に、ベルは強い衝撃を受ける。
ベルが求めるのは『ただ一人を深く愛すること』。
一方ヘイズ達は、『広く愛すること』を肯定していた。
それは根本的に相容れない価値観だった。
ベルへの指摘
さらにヘイズは、逆にベル自身の在り方を突き付ける。
ベルこそ、多くの女性達を無自覚に惹きつけ、広く愛される存在ではないかと。
シル、【疾風】リュー、そのほか多くの少女達の存在を示唆しながら、ベルへ自覚を求めた。
そして、自分はそんなベル達へ『楔』を打ち込みたいのだと語る。
憧憬の奴隷となっている者達へ、ほんの少しでも揺らぎを与えたいのだと。
嫉妬と愛憎
追い詰められたベルは、最後の言葉を口にする。
ヘイズは自分を愛しているのではなく、『嫉妬している』のだと。
『強靭な勇士』へ最も近い存在である自分を、憎んでいるのだと。
その瞬間、ヘイズの動きは止まった。
彼女は静かに、自分がかつて『強靭な勇士』になりたかったことを語り始める。
女神の黄金になりたかった。
寵愛を独占したかった。
しかし、自分はなれなかった。
その夢へ最も近い場所へ辿り着いた存在こそ、ベルだった。
殺したいほど愛している
やがてヘイズは、微笑を浮かべたまま訂正する。
自分はベルへ嫉妬しているのではない。
『殺したいほど愛している』のだと。
それは憧憬、愛情、憎悪、劣等感、執着が全て混ざり合った、極めて歪で重い感情だった。
ヘイズは、届かなかった夢へ最も近い存在であるベルを、自分の中へ取り込みたいと願っていた。
その想いのまま、彼女はベルへ跨がり、ゆっくりと首へ手を伸ばす。
ベルは、かつて絞め殺されかけた記憶と重なる既視感に支配され、身動きできなくなっていた。
ヘルンの強襲
ベルがヘイズへ押し倒され、身動きできなくなっていたその瞬間、地下室の扉が突如破壊された。
怒声と共に飛び込んできたのは、『神々の娘』ヘルンだった。
ヘルンは凄まじい速度でヘイズを掴み上げ、そのまま片手で吹き飛ばした。
LV.2であるはずの彼女が、LV.4のヘイズを容易く投げ飛ばした光景に、ベルは戦慄する。
そしてベルは、自分が感じていた『既視感』の正体を理解した。
ヘルンとヘイズは極めて似ていたのである。
深い愛情と同時に、激しい憎悪や嫉妬を抱える『最高位の狂信者』同士だった。
怒り狂うヘルン
ヘルンは顔を真っ赤にしながら、ヘイズへ激怒していた。
語彙力が崩壊するほど怒り狂い、ヘイズ達を罵倒し続ける。
その姿は普段以上に恐ろしく、ベルは助けられたにもかかわらず寝台の隅で震え上がっていた。
どうやってこの事態を知ったのかは不明だったが、ヘルンは完全にヘイズ達を制裁しに来ていた。
監禁部屋という誘惑
しかしヘイズは慌てるどころか、逆にヘルンへ周囲を見るよう促した。
そこには巨大寝台、防音構造、拘束具、堅牢な錠前など、『監禁』に最適化された設備が並んでいた。
ヘイズは、ベルをここへ閉じ込めれば被害者を増やさずに済むのではないかと囁き始める。
それは、かつてヘルン自身が語っていた『危険人物は監禁すべき』という思想を逆利用した悪魔の誘惑だった。
ヘルンの瞳が揺れる。
ベルは、その瞬間に最悪の流れを察知していた。
密談する二人
やがてヘイズとヘルンは、小声で相談を始めた。
時間は十分ある。
最初は自分が先。
そんな不穏極まりない会話が交わされていく。
ベルは完全に蒼白となり、自分の運命が崩壊していく感覚に襲われていた。
ヘルンの参戦
そしてヘルンは、頬を真っ赤に染めながら服を脱ぎ始めた。
黒い下着姿となった彼女は、ヘイズと並んで寝台へ上がってくる。
二人は無言のまま、ベルへにじり寄った。
ベルは逃げ道を必死に探すが、既に背後は寝台頭板で塞がれている。
目前には、熱を帯びた視線を向ける二人の少女。
状況は完全に破綻していた。
シルの降臨
しかし、その瞬間だった。
突如、地下室へ新たな声が響く。
『何をやっているのか』と、妙に穏やかな声で問いかけながら現れたのは、若葉色の制服を纏った街娘シル・フローヴァだった。
その姿を見た瞬間、ヘルンは限界まで青ざめる。
ヘイズは即座にヘルンの背後へ隠れた。
ベルですら、これまで見たことがないほど恐ろしい笑顔だった。
笑みを浮かべたまま、瞳だけが完全に『女神』となっていたのである。
女神の神命
静寂の中、シルは静かに息を吸う。
そして、圧倒的威圧感と共に命じた。
「ひれ伏しなさい」と。
その瞬間、ベル、ヘルン、ヘイズの三人は即座に土下座した。
こうして、『伴侶の種子で豊穣豊穣大作戦』は、女神本人の降臨によって完全終了を迎えた。
4
中央広場での公開処刑
『伴侶の種子で豊穣豊穣大作戦』の結末として、ヘイズ達は厳しい罰を受けることとなった。
無実のベル・クラネルが解放された後、主犯格であるヘイズやヘルン、参加した女性団員達は縄でぐるぐる巻きにされ、逆さ吊りのまま中央広場へ晒されたのである。
一般人や冒険者、更には神々までもが見物する中、ロナやイルデ、レミリア達は半泣きで羞恥に震えていた。
しかし一方で、シル自らによる罰であることを理由に、どこか幸福そうな笑みを浮かべる者も存在しており、周囲からは完全に情緒不安定集団として恐れられていた。
ヴァン達やヘディンも冷たい視線を向け、ヘイズ達を徹底的に罵倒していた。
シルからの罰
『豊穣の女主人』へ戻った後も、ヘイズへの制裁は続いた。
シルはヘイズへ、『一ヶ月同じ寝台で寝る禁止』という重罰を言い渡す。
ヘイズはこの世の終わりのような悲鳴を上げていた。
一方、巻き添えで同衾禁止となったヘルンも膝から崩れ落ちて絶望していたが、逆さ吊りで縄が食い込んだ感覚を思い出し、なぜか頬を赤らめていた。
ベルは全力で記憶から消去しようとしていた。
シルとの買い出し
その後、ヘイズはシルと二人きりで買い出しへ出ていた。
荷物は全てヘイズが抱え、シルは手ぶらで歩いている。
シルは改めて、二度とあんな真似をしないよう説教する。
しかしヘイズは、叱られることすら嬉しそうに受け止めていた。
やがて二人は、高台から迷宮都市を見下ろせる場所へ辿り着く。
夕暮れに染まる街並みを前に、シルは静かに問いかけた。
なぜ、あんなことをしたのかと。
ヘイズの本心
最初、ヘイズは冗談めかして答えた。
ベルの子供を産めば、自分ごとフレイヤに可愛がってもらえると思ったのだと。
しかしシルは、それが本心ではないと見抜いていた。
観念したヘイズは、静かに本音を語る。
ベルは、シルの伴侶にはならない。
だからせめて、自分の子供がシルの伴侶になればいいと思ったのだと。
本当に欲しいものが手に入らない苦しみを、自分はよく知っているから。
その願いには、フレイヤを愛しながらも結ばれなかった者としての痛みが込められていた。
女神と眷族の共通点
シルは、そんなヘイズの言葉を否定しなかった。
神と眷族は似ているのかもしれないと、静かに受け止める。
本当に欲しいものは、決して手に入らない。
その運命まで含めて、互いによく似ていた。
そして物陰には、二人の会話を盗み聞くヘルンの姿もあった。
彼女もまた、同じ苦しみを抱える者だった。
ヘイズの想い
シルは改めて尋ねる。
ベルのことは好きか。
自分のことはどうか。
ヘイズは、ベルのことは好きだと答えた。
そして、シルのことは大好きだと。
だが、かつてのように『愛しています』とは言わなかった。
ヘイズは既に、『女神への狂信』という軛から解放され始めていたからである。
黄金の涙
さらにシルは、かつて天界では自分の涙が『黄金』と呼ばれていたことを明かす。
そして、実際にその瞳から一筋の涙を流した。
夕日に照らされたその涙は、本当に黄金のように輝いていた。
シルは、その涙を指で掬い、ヘイズの目尻へ優しく乗せる。
今のヘイズこそ、自分の涙そのものなのだと。
自分の宝物なのだと。
その言葉を聞いた瞬間、ヘイズは堪え切れず泣き崩れた。
女神の黄金
シルは、泣きじゃくるヘイズを優しく抱き締め続けた。
何度も大丈夫だと囁き、ヘイズが泣き虫であることも、何度も涙を流してきたことも、全部知っていると伝える。
そして語る。
ヘイズはもう、自分の大切な黄金なのだと。
ヘイズは、自分はヘルンのようにはなれないと泣きながら訴えた。
ヘディンから『女神の成りそこない』と呼ばれたことも、劣等感も、嫉妬も、全部吐き出した。
しかしシルは、それでもヘイズだけが持つ輝きがあると断言する。
ヘルンにはできないことを、ヘイズは沢山できるのだと。
届かなかった言葉
ヘイズは、なぜ今までそんな言葉を伝えてくれなかったのかと問いかけた。
するとシルは、ずっと前から言っていたと答える。
ただ、当時のヘイズには届いていなかっただけなのだと。
ヘイズはその瞬間、ようやく理解する。
シルの言葉が今届いたのは、シル自身が『女神』ではなく一人の少女となり、ヘイズもまた『女神への妄執』から解放され始めていたからだった。
二人はようやく、同じ目線で互いを見られるようになっていた。
黄金としての受容
シルは最後に、ヘイズへ感謝を告げる。
ここまで輝いてくれてありがとう、と。
才能もなく、何度も壊れ、燃やされ、それでも砕けなかった少女。
ヘイズ・ベルベットは、涙色だった魂を黄金へ変えた、唯一無二の『魔女』となっていた。
ヘイズは泣きながら、そして笑いながら答える。
自分だけが、シルの黄金なのだと。
その光景は、幼い日にヘイズが見上げた『黄金の女神』そのものだった。
三人の未来
感極まったヘイズは、シルへ口付けを求めようとした。
しかしそこへ、ヘルンが凄まじい勢いで割り込む。
ヘイズとヘルンは再び騒ぎ始めるが、シルはそんな二人を見て笑い出した。
そして、二人それぞれの頬へ優しく口付けを落とす。
途端に真っ赤になるヘイズとヘルン。
シルは二人の肩を抱き寄せ、穏やかな笑みを浮かべていた。
夕暮れの黄金色に染まる高台で、三人は笑い合う。
ヘイズは、かつて女神へ焦がれた幼い日のことを思い出しながら、その眩しい光景を見つめていた。
黄昏はどこまでも輝き、少女達を黄金色に染め上げていた。
ファミリアクロニクル





ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 一覧





















ダンジジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア
















アストレア・レコード





その他フィクション

Share this content:


コメント