どんな本?
元々は小説の投稿サイトArcadiaで読んでいた小説だった。
大賞を取れたと書かれた後に消されて、書籍化されたら買おうと思い出版されたのが10年前。
もう10年経つんだ、、
その後、コミック化され遂にアニメ化された。
この作品への感情移入感はハンパない。
3巻まで紙の本、Kindle、BOOK⭐︎WALKERでそれぞれ買って保存してる。
それ以降は電子書籍のみのだがKindle、BOOK⭐︎WALKERで購入している。
もちろん、外伝の方も買っている。
読んだ本のタイトル
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 5
(Is It Wrong to Try to Pick Up Girls in a Dungeon?)
著者:大森藤ノ 氏
イラスト:ヤスダスズヒト 氏
出版社:SBクリエイティブ(GA文庫)
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あらすじ・内容
「リリ達は囮にされました! すぐにモンスターがやって来ます!」
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか5
「…そんな」
「おいおいっ、冗談だろ?」
鍛冶師のヴェルフを加え中層へと進んだベル達。しかし他パーティの策略により一転、ダンジョン内で孤立してしまう。
ヘスティアはベルを救うため、Lv.4の元冒険者・リュー、さらには神・ヘルメスと共にダンジョン侵入を試みるが……
「──階層主(ゴライアス)!?」
立ち塞がる最凶の敵が、ベル達を更なる絶望へと追いつめる。
希望を求め、決死行が繰り広げられる、迷宮譚第五弾!
『限界まで──限界を越えて己を賭けろ』
これは、少年が歩み、女神が記す、
── 【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】──
前巻からのあらすじ
世界最速でレベル2になったベルくんは、突然注目されるようになってしまう。
まずはヘスティア・ファミリアから引き抜きを行おうとする神々。
今まで全く見向きもしなかったベルくんに執拗に粘着質に勧誘をかけて来る。
自分のパーティーに入れと言ってくる冒険者もいた。
新しいメンバーが欲しいとも思っている。
前衛、中衛、後衛とあと1人は最低でもパーティーメンバーが欲しい。
そう思っているベルくん達だったが、、
寄って来るのはロクな連中じゃない。
そんな状況だが、まずは全壊した装備を再度揃えたいと思いへファイスト・ファミリアの店に行って前回装備していた鎧と同じ鍛治師の鎧を探していたが無い。
それならと店員に聞いてみると、たまたま店員と口論していた鍛治師がベルくんの鎧を作成したヴォルフ・グロッソだった。
ヴォルフは、自身の作った鎧を好んで使ってくれるベルくんと専属契約を結びさらに上級鍛冶師のスキルを取るまでパーティーにも参加してくれるという。
そしてベルくんは、リリと合流してヴォルフと共にダンジョンに行く。
ヴォルフとの相性はすごく良く、3人パーティーは快進撃を続ける。
感想
新たなキャラクター達は。
タケミカヅチ・ファミリアの団長の桜花。
レベル2になったミコト、ポーターのような役割をしている千草。
さらに神ヘルメスがこの巻から出てくる。
もっと前から出てそうなくらい存在感のある男神。
その神に苦労する万能者と呼ばれるアスフィもこの巻から、、
あと、ベルくんの男性ファンのモルドもこの巻から、、
じゃなくて4巻から出てたか。。
でも、注目されるのはこの巻から。
この時のモルドって、悪い奴だよな、、、
そしてレベル4の元冒険者、疾風リューの実力も明らかになる。
一気に登場人物も増えて話の規模も大きくなる5巻。
話は。。
新たな仲間、鍛治師のヴォルフを仲間に入れて順調に中層へ足を伸ばしていたベルくん一向。
とは言っても余裕があるわけではなく。
パーティー構成としてはレベル2のベルくんを中心にした多少歪な構成ではあった。
3人だもんな、、
そんなベルくん一行は、タケミカヅチの眷属のパーティー千草が重傷を負ってしまい撤退している場面に出くわしてしまった。
それでタケミカヅチの眷属のリーダーオウカが、ベルくん達に魔獣を押し付けるモンスターパーレードを敢行。
襲って来た魔獣達を倒すが、勢いに乗った魔獣達はベルくん達に波状攻撃をして来る。
それでも何とかまじゅうを撃退して退却しようとしたら、罠の落とし穴に落ちてしまい12層がら15層に来てしまった。
ダンジョンで地獄を見るベルくん達は上を目指さず、下層の安全地区を目指して突貫するも、途中でヴェルフとリリがダウン。
彼等を引きずりながらもベルくんは何とか安全地区18層にたどり着いた。
辿り着いた瞬間に気を失ってしまったベルくんだったが、、
彼を保護したのが遠征帰りのロキ・ファミリアのアイズだった。
彼女の保護下に置かれたベルくんは、ミノタウロスを討伐したのを見届けた人達からしらたら。
故意ではなかったとは言え、もう18層まで来てる事に驚きもあった。
そして、ベルくんを救出するために神ヘスティアとヘルメス。
助っ人に豊穣の女主人のリュー(レベル4)を呼び。
それとベルくん達にモンスターパレードをしたオウカ達が18階層にまで来てお互いに無事を確認する。
そして、モンスターパレードをした事を謝罪してとりあえずの遺恨は無くすのだが、、
そんな彼等が安全地区で買い物をしている時にトラブルがやって来た。
その後、ベルくんは他の冒険者から悪意のある洗礼を受ける。
しかも、それを誘導したのが神ヘルメスというのがタチが悪い。
それでも、ベルくんは悪意を持って襲って来たモルドを仲間の助力もあり撃退するのだが、!
そんな時に、神ヘスティアの神力を感じて攻撃して来たのか、階層主ゴライヤスが安全地区に現れた!
しかも変異種のようで力は強く推定レベル5。
それにレベル2がメインの冒険者達が攻め寄せる。
最初は逃げ腰だった冒険者達だったが、レベル4のアスフィとリューがゴライアスを誘導足止めをして、ベルくんの英雄願望で増幅したファイヤボルトを放って倒したと思ったら、、、
ゴライアスは復活してベルくんを襲いベルくんは重傷を負ってしまう。
普通ならそこで終わるのだが、ベルくんは再度立ち上がって英雄願望の構えを取る。
それを見て周りの冒険者はベルくんの攻撃が当たるように、ゴライアスを足止めするために攻め寄せる。
そして、ベルくんの英雄願望がチャージされて高威力の攻撃をゴライアスにぶつけて討伐する。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察
中層への挑戦
冒険者ベル・クラネルとそのパーティ(リリルカ、ヴェルフ)による13階層からの中層挑戦は、これまでの上層探索とは次元の違う過酷なサバイバルとなった 。彼らが直面した迷宮の不条理と、死の淵からの生還に至る経緯を以下に整理する 。
中層進出の許可と過酷な環境
- ベルはランクアップからわずか10日で全アビリティを3段階上昇させる異常な成長を遂げ、ギルドから中層進出の許可を得た 。
- アドバイザーのエイナは、中層モンスターが放つ火炎攻撃への対策として、精霊の加護を宿す特別装備サラマンダー・ウールの着用を絶対条件として課した 。
- 13階層は湿った岩盤に覆われた洞窟のような地形で、通路が長く光源も乏しいうえに、下層へ通じる縦穴が存在する危険な環境であった 。
- 出現するヘルハウンドの火炎攻撃や、集団戦を仕掛けてくる兎型モンスターのアルミラージといった中層特有の脅威が一行を待ち受けていた 。
怪物進呈(パス・パレード)の災難
- 怪物進呈とは、自パーティが遭遇したモンスターを退却の際に別のパーティへ押し付ける、迷宮における強引な緊急回避戦術である 。
- タケミカヅチ・ファミリアの桜花は、千草の重傷という絶望的な状況下で仲間を守るため、ベル達にモンスターを押し付ける非情な決断を下した 。
- リリルカはいち早く囮にされたことを察知したが、直後にアルミラージの大群とヘルハウンドが雪崩れ込み、ベル達は絶望的な窮地へ追い込まれた 。
- 天井の崩落やヘルハウンドによる一斉放火を浴びる中、サラマンダー・ウールの耐性により焼死は免れたものの、ヴェルフの負傷や物資の喪失といった甚大な被害を受けた 。
18階層(安全階層)への決死の逃避行
- 縦穴への落下により帰還ルートを見失った一行は、上層への退路を断念し、下層の安全階層である18階層を目指すというリリルカの逆転案を採用した 。
- 15階層の移動では、ナァーザが開発した強臭袋を用いて戦闘を回避し、さらにヴェルフが対魔力魔法ウィル・オ・ウィスプでヘルハウンドを自爆させることで道を切り拓いた 。
- 16階層ではベルが覚醒し、因縁のモンスターであるミノタウロスの群れを圧倒的な技術とスキル英雄願望による光の大斬撃で粉砕した 。
- 17階層では階層主ゴライアスの誕生に遭遇したが、ベルは限界状態の仲間二人を両手に抱え、巨人の猛攻から死に物狂いで逃走した 。
- 衝撃波で吹き飛ばされながらも18階層の草原へと辿り着いたベルは、偶然そこに居合わせたアイズ・ヴァレンシュタインに仲間を助けるよう懇願して意識を失った 。
18階層での再会と事後の清算
- 18階層でアイズらのロキ・ファミリアに救助された後、ベル達は捜索隊として現れた命や桜花らと再会した 。
- 命は自陣の行いを深く恥じ謝罪したが、桜花は仲間を守るためのリーダーとしての判断を撤回せず、一時一触即発の空気が流れた 。
- 最終的には神ヘルメスが、命たちが捜索に協力した事実などを挙げて仲裁に入り、ヴェルフも割り切ることを選んで一応の決着を見た 。
まとめ
中層への挑戦は、ベル・クラネルにとって仲間の命を預かるリーダーとしての重責と、迷宮の不条理を経験する過酷な試練となった 。怪物進呈という最悪の災難に見舞われながらも、一行が限界を超えて18階層への生還を果たした事実は、彼らの絆をより強固なものにした 。この壮絶な逃避行は、少年の物語が新たな局面へと進むための不可欠な経験であったと言える 。
神々の救援動向
ベル・クラネル一行が中層の13階層で遭難した際、主神ヘスティアを中心に派閥の垣根を超えた大規模な捜索隊が結成された 。これは複数の神々の思惑と絆が交錯する異例の救出劇であり、迷宮都市オラリオにおける神々の連携の深さを示す出来事となった 。
ヘスティアによる迅速な初動と生存の確信
- ベル達が探索に出発した翌日になっても帰還せず換金所にも現れていないことから、ヘスティアは中層脱出の失敗を判断した 。
- 全滅が危惧される状況下、彼女はベルに授けた恩恵の繋がりが消えていないことを根拠に、その生存を神としての感覚で確信した 。
- ギルドのエイナに情報収集を依頼するとともに、派閥の全財産である40万ヴァリスを投じて捜索の冒険者依頼を即座に発注した 。
- 捜索依頼の掲示板への貼り出しを待たず、彼女は自ら信頼できる神々のもとへ助力を求めるために奔走した 。
交流の深い神々による全面的な協力
- ミアハは過去にナァーザを中層で失いかけた経験からヘスティアを後押しし、ナァーザは大量の回復薬を支援物資として提供した 。
- タケミカヅチは、自派閥による怪物進呈が遭難の一因となった事実を認めて謝罪し、主力の桜花、命、および補給役の千草を捜索隊へ派遣した 。
- ヘファイストスはヴェルフの生存を確認した上で、彼がかつて製作し封印していた魔剣をヘスティアに託した 。
- 同時にヘファイストスは、意地と仲間を秤にかけるなという重要な伝言をヴェルフへ向けて預けている 。
ヘルメスの介入と規格外の戦力補強
- ヘルメスはベルが時代を担う英雄の器であるかを見極めるため、自ら捜索への協力を申し出た 。
- 自派閥のエースである万能者アスフィを投入し、さらに酒場「豊饒の女主人」のリュー・リオンを強力な助っ人として引き入れた 。
- リューの勧誘にあたっては、彼女の過去や疾風という通り名を盾にするような形で協力を要請している 。
- また、行動開始前に美神フレイヤを訪ね、ベルへの執着を確認した上で自派閥への干渉を防ぐための念入りな根回しを行った 。
神々のダンジョン同行という禁忌の強行
- 本来、神がダンジョンに入ることは天界送還のリスクを伴うが、ヘスティアとヘルメスは素性を隠して捜索隊に同行した 。
- ヘルメスは自身の目的遂行のため、ヘスティアは愛する眷族を自らの手で救いたいという強い意志からこの危険な決断を下した 。
- 覆面の助っ人であるリューやアスフィの活躍もあり、捜索隊は数時間で中層へ到達するという驚異的な進行速度を実現した 。
- この迅速な救援活動が、結果として18階層でのベル達の救出を成功させたのである 。
まとめ
ヘスティアを中心とした捜索隊の結成は、神々の個人的な親愛や責任感、そして将来への期待が結実した結果である 。この迅速な救援行動はベル一行の命を救っただけでなく、その後に発生した異常事態である階層主ゴライアスの討伐においても、勝利を導く決定的な役割を果たすこととなった 。
ヘルメスの策略
神ヘルメスの策略と英雄への期待
神ヘルメスによる一連の動向は、飄々とした態度の裏に隠された神としての冷酷な観察眼と、英雄への強い期待から引き起こされたものである 。彼の策略と、その背景にある真意について以下に整理する。
早期帰還と英雄の器の見極め
- ヘルメスは通常一ヶ月は要する旅をわずか十日ほどで切り上げ、異例の早さでオラリオに帰還した 。
- 表向きの理由は、ベルの育ての親である祖父から、孫の様子を見てきてほしいと頼まれたことであった 。
- しかし真の目的は、ベルが次代を担うに足る英雄であるのかを、自分自身の目で見極めることにあった 。
周到な根回しと戦力の確保
- 従者のアスフィを使い、ベルの到達階層や装備、魔法の所持、さらに周囲からの評価を正確に把握した 。
- 美神フレイヤを自ら訪ね、自派閥への干渉を防ぐための保険をかけた 。
- ベルの捜索隊にアスフィを同行させるだけでなく、元冒険者のリューを半ば強引に引き入れ、強力な戦力を整えた 。
冒険者の洗礼としての演出
- 安全階層である18階層において、ヘルメスはベルに嫉妬を抱く上級冒険者モルド達に接触した 。
- 透明化の魔道具ハデス・ヘッドを貸し与え、見世物としてベルを襲撃するよう仕向けた 。
- ヘルメスはこの策略を自分なりの愛だと語り、人の悪意や醜さという冒険者の洗礼を経験させることが目的であった 。
- もしこれでベルの心が折れるのであれば、それまでの器であったと断じる冷酷な視座も併せ持っていた 。
策略の結末と確信
- モルド達との死闘、そして黒い階層主ゴライアスとの戦いを経て、ベルは見事に勝利を収めた 。
- 劇的な光景を目の当たりにしたヘルメスは、ベルを貴方のファミリアが遺した最後の英雄だと絶賛した 。
- 時代が動く予感を得た彼は、神々と子供たちが紡ぐ予測不能な物語を、最高の娯楽として見届ける決意を新たにした 。
まとめ
ヘルメスの策略は、ベル・クラネルを真の英雄へと導くための過酷な試練として機能した 。彼の行動は一見して不謹慎であるが、その根底には次代を託せる存在を渇望する神としての強い期待が込められている 。ヘルメスの視線は、今後も少年の歩む英雄譚に強く注がれ続けることになるだろう 。
安全階層の危機
迷宮都市オラリオの地下ダンジョンにおける18階層は、本来モンスターが産まれない安全階層(セーフティポイント)であり、美しい水晶や自然が広がることから迷宮の楽園とも呼ばれている 。冒険者たちがリヴィラの街という拠点を築いている場所だが、この絶対の安全が約束されているはずの階層で、前代未聞の危機が発生した 。
神威によるダンジョンの暴走
- 危機の引き金となったのは、ベル・クラネルを狙うモルド一派との決闘騒動である 。
- 争いを止めるために主神ヘスティアが神としての威光である神威を解放し、冒険者たちを強制的に停止させた 。
- 本来、神の侵入が禁忌とされるダンジョンにおいて、この神威の発生が致命的な要因となった 。
- ダンジョンが神々の存在を感知して暴走し、神を抹殺するための刺客としてモンスターを送り込んできたのである 。
黒い階層主ゴライアスの出現
- 安全階層の天井を覆う白水晶に亀裂が走り、本来は17階層に出現するはずの階層主ゴライアスが直接18階層へ産み落とされた 。
- この個体は通常の階層主とは異なり、全身が漆黒に染まった黒いゴライアスであった 。
- 巨体に似合わぬ機敏な反応速度、魔力を衝撃として放つ飛び道具の咆哮、そして致命傷をも瞬時に修復する自己再生能力を備えていた 。
- その潜在能力はレベル5級に達すると判断されるほどの、絶望的な強さを誇っていた 。
退路の断絶と階層の幽閉状態
- 階層主の出現と同時に、上層へ続く南端の洞窟が大規模に崩落し、冒険者たちの退路は完全に絶たれた 。
- ヘルメス派のアスフィは、階層の幽閉状態と階層主の出現が連動している可能性を指摘した 。
- この階層主を倒さない限り脱出は叶わず、外部からの救援も期待できない状況に陥ったのである 。
派閥を超えた冒険者たちの総力戦
- 逃げ場を失ったことで、リヴィラの街の冒険者たち、モルド一派、そしてベルたちの臨時パーティが派閥を超えて結集した 。
- 総勢百名規模の冒険者たちが、リューやアスフィを前衛の囮とし、大盾を持つドワーフたちが防衛線を構築した 。
- 後方では魔導士たちが一斉砲撃のための長文詠唱を行うなど、即席ながらも決死の総力戦が展開された 。
討伐の結果と神災の認定
- 多くの犠牲を伴う死闘の末、最終的にベルがスキル英雄願望(アルゴノゥト)を乗せた一撃を放ち、階層主は消滅した 。
- ギルドはこの異常事態を、神の存在が引き起こした人為的事故である神災として処理した 。
- 無用な混乱を防ぐため、ヘスティアとヘルメスには厳重注意と罰則が科され、事件の目撃者には厳格な箝口令が敷かれた 。
- この事件を経て、ベル・クラネルの実力と名声は水面下でさらに高まることとなったのである 。
階層主ゴライアス
迷宮都市オラリオの地下迷宮において、迷宮の孤王(階層主)と呼ばれるゴライアスは、冒険者たちの前に立ちはだかる巨大な壁である。物語では通常の個体に加え、神への刺客として産み落とされた異常個体との死闘が描かれている。
ゴライアスの基本設定と17階層での遭遇
- ゴライアスは、ダンジョン17階層に出現する迷宮の孤王(階層主)である 。
- 通常、17階層最奥にある嘆きの大壁から約二週間前後の間隔で産み落とされる性質を持つ 。
- 外見は総身7メートルに及ぶ豚頭人間に似た巨人で、通常個体は灰褐色の体皮を備えている 。
- ベル・クラネル一行は中層から18階層へ逃げ込む直前に、この大壁から誕生した通常個体と遭遇した 。
- この時に出現した通常個体は、後にロキ・ファミリアのアイズ・ヴァレンシュタインによって討伐されている 。
18階層における異常事態:黒いゴライアスの誕生
- 安全階層であるはずの18階層に、もう一体のゴライアスが出現するという前代未聞の事態が発生した 。
- 事の発端は、主神ヘスティアが神としての威光である神威を解放したことで、ダンジョンが神の存在を感知したことにある 。
- 神々を憎むダンジョンは、神を抹殺するための強襲仕様の刺客として、17階層の領域を飛び越えて18階層の天井から直接ゴライアスを産み落とした 。
- この個体は全身を黒く染め上げた漆黒の体皮と、鮮血のような赤い眼を持つ異常な姿をしていた 。
黒いゴライアスの異常な戦闘能力
- 神の刺客として生み出された黒いゴライアスは、潜在能力がレベル5に迫る規格外の力を有していた 。
- 巨体に似合わぬ機敏な反応速度を持ち、その体皮はレベル2の冒険者の武器が傷一つ付かずに折れ欠けるほど強固である 。
- 通常の威嚇ではなく、魔力を衝撃として放つ純粋な遠距離攻撃としての咆哮を放ち、さらに階層中のモンスターを大量に呼び寄せて尖兵として使役した 。
- 最大の脅威は赤い光の粒子を燃焼させて傷を即座に修復する超速再生能力であり、魔法の一斉射撃やベルのチャージ魔法による頭部への直撃を受けても瞬時に再生してのけた 。
死闘の決着と英雄讃歌
- 黒いゴライアスに対し、ベルの仲間たちやリヴィラの街の冒険者ら約百名による総力戦が展開された 。
- リュー・リオンやアスフィ・アル・アンドロメダが囮となって前線で奮闘し、命の超重圧魔法フツノミタマが巨人の動きを拘束した 。
- 鍛冶師としての矜持を一時捨てたヴェルフ・クロッゾが放った魔剣の業火が、再生能力を上回る勢いで巨人の魔力を焼き尽くし、決定的な致命傷を与えた 。
- 最後はリリルカ・アーデが届けた深層域の素材と思われる黒大剣を手に、最大蓄力を完了させたベルが英雄の一撃を放った 。
- この一撃によって巨人の上半身は完全に消し飛ばされ、階層主の討伐が完了した 。
まとめ
この一件は後にギルドによって神災という人為的事故として処理され、厳格な箝口令が敷かれた 。しかし、水面下ではベル・クラネルが階層主を討ったという事実が伝わり始め、彼に対する注目度は一層高まることとなった 。少年の異常な成長は、ある一柱の神による執着をさらに強める結果となり、新たなる狩猟の対象としてその名を刻まれることとなったのである 。
キャラクター紹介
ベル・クラネル
本作の主人公であり、驚異的な速度で成長を続ける【ヘスティア・ファミリア】の団長である。心優しく、敵対した者や自分を陥れようとした者であっても見捨てずに助ける度量を持つ。祖父から受け継いだ英雄への憧れを胸に、過酷な状況下でも諦めずに前へ進む意志の強さを見せる。
- 所属組織、地位や役職 【ヘスティア・ファミリア】団長。Lv.2冒険者。二つ名は【リトル・ルーキー(未完の新人)】。
- 物語内での具体的な行動や成果 中層探索中に他パーティから大量のモンスターを押し付けられる「怪物進呈(パス・パレード)」を受け、ダンジョン下層領域への落下を余儀なくされた。極限状態の中で負傷した仲間を守り抜き、安全地帯である18階層への到達を果たした。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 18階層に出現した階層主「黒いゴライアス」に対し、スキル【英雄願望(アルゴノゥト)】を限界までチャージした一撃を放ち、撃破に成功した。
リリルカ・アーデ
ベルのサポーターを務める小人族(パルゥム)の少女である。現実的で計算高い一面を持つが、ベルに対しては絶対的な信頼と献身を捧げている。過酷なダンジョン探索において、物資管理や状況判断でパーティの生存率を高める司令塔の役割を果たす。
- 所属組織、地位や役職 【ヘスティア・ファミリア】サポーター(所属は【ソーマ・ファミリア】)。
- 物語内での具体的な行動や成果 中層での予期せぬ崩落事故に巻き込まれ、ベルと共に18階層へ落下した。物資が尽きかけた絶望的な状況下でも冷静さを保ち、ベルを精神的に支え続けた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 18階層のリヴィラの街でモルドたちに拉致されかけたが、ベルたちの介入により救出された。
ヴェルフ・クロッゾ
【ヘファイストス・ファミリア】に所属する鍛冶師であり、ベルの専属契約者としてパーティに参加している。実直で兄貴肌な性格だが、自身の血筋と魔剣に対して強い忌避感を抱いていた。仲間の危機に際して信念を曲げる覚悟を持ち合わせている。
- 所属組織、地位や役職 【ヘファイストス・ファミリア】所属の鍛冶師。ベルのパーティメンバー。
- 物語内での具体的な行動や成果 中層での連戦により精神力枯渇(マインドダウン)を起こし、戦闘不能状態に陥った。ミノタウロスの群れに包囲された際、仲間を守るために「魔剣は作らない、使わない」という誓いを破り、隠し持っていた魔剣を使用して活路を開いた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 魔剣を使用したことで自身のこだわりを乗り越え、鍛冶師としても冒険者としても精神的な成長を遂げた。
ヘスティア
ベルの主神であり、彼に対して深い愛情と独占欲を抱く女神である。普段は駄女神のように振る舞うが、眷族の危機には自ら危険なダンジョンへ乗り込む行動力と、神としての威厳を発揮する。
- 所属組織、地位や役職 【ヘスティア・ファミリア】主神。
- 物語内での具体的な行動や成果 ベルが行方不明になった報せを受け、救助隊を編成してダンジョン探索へ出発した。18階層でベルと再会を果たし、涙ながらに無事を喜んだ。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 黒いゴライアス戦において、神威を解放して怪物の注意を引きつけ、ベルが攻撃を準備するための時間を稼ぐ囮となった。
ヘルメス・ファミリア
ヘルメス
【ヘルメス・ファミリア】の主神であり、飄々とした態度で周囲を煙に巻くトリックスターである。ベルの祖父であるゼウスと面識があり、ベルを「最後の英雄」の器として見定めようと画策する。
- 所属組織、地位や役職 【ヘルメス・ファミリア】主神。
- 物語内での具体的な行動や成果 ヘスティアの捜索隊に同行し、道中でベルの実力を試すような状況を作り出した。悪徳冒険者のモルドを唆してベルを襲わせ、彼が困難を乗り越える様を観察した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 物語の裏で糸を引く黒幕的な動きを見せ、ベルが英雄へ至る道筋を作ろうとしている。
アスフィ・アル・アンドロメダ
【ヘルメス・ファミリア】の団長を務める眼鏡をかけた女性冒険者である。数々の魔道具(マジックアイテム)を作成する技術を持ち、「万能者」の二つ名を持つ実力者だが、主神ヘルメスの奔放な行動に振り回される苦労人でもある。
- 所属組織、地位や役職 【ヘルメス・ファミリア】団長。Lv.4冒険者。
- 物語内での具体的な行動や成果 透明化する兜「ハデスの頭巾」などの魔道具を駆使し、捜索隊のサポートを行った。黒いゴライアス戦では、リューと共に前線で戦い、怪物の足止めを行った。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ヘルメスの命令で不本意ながらも様々な工作に関与させられている。
タケミカヅチ・ファミリア
カシマ・桜花(オウカ)
【タケミカヅチ・ファミリア】の団長を務める巨漢の戦士である。義理堅い性格だが、仲間の命を守るためなら汚名を被ることも厭わない非情な決断力を併せ持つ。
- 所属組織、地位や役職 【タケミカヅチ・ファミリア】団長。
- 物語内での具体的な行動や成果 ダンジョン中層で負傷した団員を守るため、遭遇したベルたちのパーティに大量のモンスターを擦り付ける「怪物進呈(パス・パレード)」を行った。後に18階層で再会した際、自身の行いを謝罪し、黒いゴライアス戦ではベルたちの盾となって戦った。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ベルたちを犠牲にした罪悪感を抱えつつも、それを償うために共闘を選んだ。
ヤマト・命(ミコト)
【タケミカヅチ・ファミリア】に所属する極東出身の女性冒険者である。真面目で責任感が強く、桜花の指示とはいえベルたちを陥れたことに深い罪の意識を感じている。
- 所属組織、地位や役職 【タケミカヅチ・ファミリア】団員。
- 物語内での具体的な行動や成果 重力魔法を使用してモンスターの群れを足止めし、ベルたちの進路へ誘導する役割を担った。18階層での再会後、贖罪のために自ら危険な囮役を買って出て、黒いゴライアスの注意を引きつけた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 黒いゴライアス戦での捨て身の行動により、パーティの連携に貢献した。
タケミカヅチ
【タケミカヅチ・ファミリア】の主神であり、武芸に秀でた男神である。眷族とは家族のような親密な関係を築いており、彼らの過ちに対しては自ら頭を下げる誠実さを持つ。
- 所属組織、地位や役職 【タケミカヅチ・ファミリア】主神。
- 物語内での具体的な行動や成果 眷族が犯した「怪物進呈」の件を知り、ヘスティアに対して土下座をして謝罪した。18階層での戦闘では、神としての指揮能力を発揮し、混乱する冒険者たちをまとめ上げた。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ヘスティアからは当初怒りを買っていたが、その誠意ある態度により和解した。
救援・協力者
リュー・リオン
酒場『豊饒の女主人』の店員であり、かつては冒険者として名を馳せたエルフである。ベルのことを気にかけており、ヘスティアからの依頼を受けて捜索隊に参加した。
- 所属組織、地位や役職 酒場『豊饒の女主人』店員。元冒険者。
- 物語内での具体的な行動や成果 緑色のフードで正体を隠しつつ捜索隊に同行し、圧倒的な戦闘力でモンスターを蹴散らして18階層へ到達した。黒いゴライアス戦では、魔法と剣技を駆使してアスフィと共に怪物を翻弄した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 正体は周囲に露見しているが、本人は隠せているつもりでいる。
アイズ・ヴァレンシュタイン
【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者であり、ベルが憧れる「剣姫」である。遠征の帰路で18階層のリヴィラの街に滞在していた。
- 所属組織、地位や役職 【ロキ・ファミリア】幹部。Lv.6冒険者。
- 物語内での具体的な行動や成果 リヴィラの街近郊で水浴びをしていたところ、迷い込んだベルと遭遇した。黒いゴライアスが出現した際には、風を纏った突撃で怪物の防御を崩し、ベルの攻撃が通る隙を作り出した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ベルとの共闘を通じて、彼の成長を改めて目の当たりにした。
その他
モルド・ラト
18階層の無法者の街「リヴィラ」を拠点とする悪徳冒険者である。粗暴で強欲な性格だが、どこか憎めない一面も持つ。
- 所属組織、地位や役職 冒険者。
- 物語内での具体的な行動や成果 ヘルメスの嘘を信じ込み、懸賞金目当てでベルを襲撃・拉致しようとした。その後、黒いゴライアスの出現により窮地に陥ったところをベルに助けられ、改心して討伐戦に協力した。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ベルに助けられたことで彼に恩義を感じるようになった。
ウラノス
ギルドの主神であり、オラリオの管理者として君臨する古き神である。
- 所属組織、地位や役職 ギルド主神。
- 物語内での具体的な行動や成果 ダンジョン内で発生した異変を察知し、祭壇の間で祈祷を捧げることで迷宮の沈静化を図った。
- 地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 地上からダンジョンの深淵に干渉し、事態の収束に尽力した。
展開まとめ
プロローグ 予兆の前触れ
オラリオの朝と二柱の女神
朝日が昇り、オラリオの街は活気に満ちていた。北西と西のメインストリートに挟まれた館の最上階で、ロキとヘファイストスは朝食を取りながら語らっていた。ロキは遠征のために鍛冶師を融通してもらったことに感謝し、今回の遠征では到達階層の更新が見込めると語った。アイズがLv.6に到達し、眷族の士気も高いことが、その自信の根拠であった。
ヘスティアと新人への関心
会話はヘスティアの眷族へと移り、ヘファイストスは自らの眷族がヘスティアの子と直接契約し、共に中層へ向かう予定であることを明かした。ロキは面白くなさそうにしつつも、その成長ぶりを意識していた。穏やかな朝の最中、微細な揺れが断続的に続き、二柱は迷宮の存在を思い浮かべ、不安をにじませた。
微震と街の平穏
揺れは小さく、街の賑わいに変化はなかった。ロキは窓外に目をやり、通りの一角に集まる一団の姿を捉えた。表面上は平穏でありながら、地中で何かが起きている可能性が示唆される状況であった。
タケミカヅチ・ファミリアの出立
一方、男神タケミカヅチは地面の揺れを感じ取りつつ、眷族を見送っていた。命を含む六人編成の冒険者達は、中層への探索に向かう。命のランクアップにより、ファミリアは下位派閥ながら勢いを増していた。タケミカヅチは無事の帰還を祈り、自身は露店の仕事へ向かおうとした。
ヘルメスの来訪と関心
そこへヘルメスが現れ、命の成長を祝うとともに、早期帰還の理由を語った。神会で台頭した新人、とりわけヘスティアの眷族に属するベル・クラネルへの強い関心が目的であった。情報を求めるヘルメスに対し、タケミカヅチは口を閉ざす。風が吹き抜け、ヘルメスは青空を仰ぎ、早く会いたいと胸中を明かした。
1章 中層
中層到達と地形の危険
ベル・クラネルは13階層の中層に踏み込み、湿った岩盤に覆われた洞窟のような光景を前に、上層との違いを実感した。通路は幅が広い一方で異様に長く、光源も乏しかった。壁の隅には下層へ繋がる落とし穴もあり、通路での戦闘は包囲や退路断絶に直結すると理解した。リリルカ・アーデは地図知識を根拠に、最初の広間へ急ぐ方針を示し、三人は間隔を保って前進した。
精霊の護布と遠距離火炎への備え
道中、三人は同素材の護布サラマンダー・ウールを装備していることを話題にした。これは精霊の加護を宿す特別装備で、火炎や熱に強い耐性を持つ代わりに汎用性は低い性質であった。ベル・クラネルは中層進出の条件として三着を購入しており、ヘルハウンドの火炎攻撃が13~14階層での全滅要因であるため、最優先で叩くべき相手だと確認した。
ヘルハウンドとの初戦と連携の成立
前方から足音を捉えた三人は臨戦態勢に入り、二頭のヘルハウンドと遭遇した。射程を警戒しつつヴェルフ・クロッゾが先制して突入し、大刀で一頭を両断した。もう一頭が火炎を溜める姿勢に入ったが、リリルカ・アーデがハンドボウガンで右眼を射抜き発射直前に動きを止めた。ヴェルフ・クロッゾが懐に飛び込み斬り伏せ、火炎を許さず撃破した。ベル・クラネルは溜め動作の存在と、連携が通用した手応えを得て、攻略の見通しをわずかに掴んだ。
アルミラージ出現と集団戦の警戒
直後、通路奥から三匹の兎型モンスターアルミラージが現れた。アルミラージは近くの岩を砕いて石斧を取り出し、天然武器で武装したうえで一斉突進してきた。リリルカ・アーデは各自が単独で相手取るのは危険だと釘を刺し、三対三ではなく三対一を繰り返す形で各個撃破する必要を示した。アルミラージは戦闘能力自体は低いが、集団戦が強みであるため、六つの影が正面衝突する状況へ三人は踏み込んでいった。
露店での報告と違和感
北のメインストリートの露店で働くヘスティアのもとを、タケミカヅチが訪ねてきた。ヘルメスが異例の早さでオラリオへ戻ってきたこと、その理由が読めないことを告げられ、ヘスティアは驚きを見せた。神会に出席した直後の帰還は不自然であり、タケミカヅチは強い違和感を抱いていた。
ベル・クラネルへの関心
タケミカヅチは、ヘルメスがベル・クラネルに興味を示していたことを伝えた。ヘスティアは過剰な警戒だと受け止めつつも、近頃ベルを巡って他の神々から干渉を受けている現状を認めた。ヘルメスは争いを避ける神であり、軽率な行動は取らないとする一方、タケミカヅチは神の勘として今回だけは違うと断じた。
神友としての忠告
会話の途中、露店の店主に叱責されるタケミカヅチの姿を横目に、ヘスティアは苦笑しつつ思案を続けた。やがてタケミカヅチは別れ際に、ヘルメスの動向には注意しておくべきだと忠告し、露店を後にした。ヘスティアはその親切心に感謝し、彼の背中を見送った。
拭えぬ不安の兆し
一人になったヘスティアは、晴れ渡る空を仰ぎながらヘルメスの笑顔を思い浮かべた。その脳裏に、別の神の存在がよぎり、胸の奥に小さな不安が芽生える。しかしその考えを否定するように呟き、思いは風に流されていった。
街路での情報収集
西のメインストリートの雑踏を歩くヘルメスは、従者アスフィからベル・クラネルの近況を報告されていた。ベルは短期間で到達階層を伸ばし、サラマンダー・ウールを購入して中層へ進出した可能性が高かった。さらに高出力の攻撃魔法を用い、小竜を一撃で退けたとの目撃情報も集まっていた。
冒険者達の評価と反発
一方で、ベルの急成長は周囲の反感も招いていた。ミノタウロス討伐も運によるものと受け取られ、討ち漏らしを奪っただけの軟弱者、インチキ・ルーキーと揶揄されていた。ヘルメスはそれを笑い飛ばしつつ、神の恩恵が安易な成果で昇華されるほど甘くないと内心で評価していた。
酒場への立ち寄りと女将への依頼
ヘルメスはアスフィを伴い、酒場『豊穣の女主人』を訪れた。女将ミアにフレイヤとの面談の仲介を求めたが、彼女は神に顎で使われることを拒み、要求を一蹴した。失敗を悟ったヘルメスは苦笑を浮かべ、場を移す。
酒場の少女との対話
そこで現れたウエイトレスのシルに対し、ヘルメスは軽口を交えつつ席へ案内され、彼女がいつも少年に用意する席へ腰を下ろした。ヘルメスはベル・クラネルについての情報を求めたが、シルは理由を問い返し、やがて今のヘルメスには何も教えないと明確に拒絶した。信じられないと笑顔で断言する彼女の態度により、酒場での探りは成果なく終わった。
アルミラージの奇襲と千草の重傷
13階層の通路において、【タケミカヅチ・ファミリア】はアルミラージの群れと交戦していた。撹乱を得意とする兎型モンスターの波状攻撃に翻弄される中、後衛に潜んでいた一体が投擲した石斧が前衛の千草に直撃し、彼女は致命的な重傷を負って倒れた。中層モンスターの知性と連携は上層の比ではなく、一瞬の隙が壊滅へ直結する状況であった。
命の奮闘と撤退判断
包囲を狭められる中、命は前衛を庇って戦列に割り込み、卓越した太刀筋でアルミラージを斬り伏せた。彼女は殿として追撃を引き受け、仲間の撤退を支えたが、通路奥からハード・アーマード二体が高速転進で出現した。物理攻撃がほぼ通じない敵を前に、命は盾で正面衝突し、進路を強引に逸らして同士討ちを誘発させることで突破口を作った。その代償として彼女自身も深手を負い、パーティは12階層への後退を決断した。
追撃と絶望の加速
負傷者を抱えた撤退中、アルミラージの追撃に加え、ヘルハウンドまで合流したことが判明した。火炎攻撃の恐怖が現実味を帯び、命達は死に物狂いで走った。左半身の痛みを隠しつつ、命は石斧が刺さったままの千草の容態を見て歯を食いしばった。
広間での選択と怪物進呈
やがて一行は大規模なルームに到達し、そこで別の三人組冒険者パーティがアルミラージと交戦している光景を目にした。桜花は生存を最優先とし、追ってきたモンスターをその場へ押し付ける怪物進呈を選択する。命は強く反対したが、瀕死の仲間を前に決断は覆らなかった。命は白髪の冒険者が剣を振るう姿を視界に捉え、心中で謝罪を繰り返しながら、逃げるしかなかった。
継戦の消耗と戦線維持
ベルはヴェルフとリリの連携でアルミラージの群れを捌き続けた。ヴェルフが前衛として踏みとどまり、リリが後方から矢で支え、ベルが高速の動きで数を削る構図であった。しかし中層の質量は上層と異なり、戦闘が途切れず、ベルは四肢の重さと持久力の低下を自覚し始めていた。
他パーティの接近と異変
戦域へ不自然に接近する六人規模の冒険者一行が現れ、負傷者を抱えたままベル達のすぐ横を掠めていった。ベルは黒髪の少女と目が合い、涙を堪えるような青紫の瞳を見た直後、リリが即座に事態を察した。相手は撤退の際に追尾モンスターを別パーティへ押し付ける怪物進呈を行い、ベル達は囮にされた。
増援モンスターの雪崩と退避
直後、アルミラージの大群に加えヘルハウンドまで流れ込み、ベルとヴェルフの顔色は一変した。リリの指示で三人は通路へ退避したが、追撃側が速く、特にリリの機動力では逃げ切れない危険が濃厚であった。
ベルの反転とファイアボルト
ベルは二人を先行させ、自身が反転して追撃を受け止めた。盾を構え【ファイアボルト】を三連射し、一本道を炎雷で洗って追撃を焼き払った。しかし炎を突き破って四頭のヘルハウンドが出現し、炎耐性ゆえに生き残っていた。ベルは一頭を斬り払い、もう一頭を盾で受け止めたが、残りはリリとヴェルフへ抜けた。リリは背負う大剣で体当たりを受け、ヴェルフも反撃で斬り伏せるが腕に負傷を負った。
挟撃と撤退策の相談
さらに新手のアルミラージが現れ、三人は背中を寄せて三角形の陣形を作り、回復薬を回しながら突破撤退を選ぶ。中層は休息を許さず、連戦で精神の摩耗が加速していた。
ダンジョンの牙と天井崩落
不穏な破砕音が頭上から響き、通路一帯の天井に蜘蛛の巣状の亀裂が走った。直後、夥しい数のバッドバットが天井から落下し、通路は崩落と砂塵で混乱に陥った。ベルは額を裂傷し、視界が晴れた先でヘルハウンドの群れを目撃した。
火炎斉射の絶望
ヘルハウンド達は一斉に伏せ、口腔を赤熱させて照準を定めた。リリは間に合わない未来を直感し、ヴェルフは無力感を噛みしめ、ベルは数の暴力に戦慄した。次の瞬間、圧縮された炎が解放され、通路を大爆炎が飲み込んだ。
二章 生還まで何M?
失踪の発覚とギルドへの駆け込み
ヘスティアはベルが「昨日からホームに帰ってこない」事実を受け、ギルド本部へ駆け込んだ。窓口のエイナに、ベルだけでなく、同行しているサポーター(リリ)やヴェルフの行方も不明であることを告げ、探索出発(正午)以降に目撃情報が途絶えている点を共有した。
換金所照会で深まる確信
エイナは換金所にも確認を取り、ベル達と思しき冒険者が一度も来ていないと報告した。通常、帰還後は換金所へ立ち寄る導線が発生しやすく、この不在は「帰還していない」可能性を強く裏付けた。しかも当日は初の中層挑戦日であり、ヘスティアは「連絡が途切れた」こと自体を危険信号と判断し、中層脱出に失敗した結論へ傾いた。
捜索の正式手段へ移行
ヘスティアはエイナに目撃情報収集を依頼し、同時に冒険者依頼(クエスト)として「ベル達の捜索」を発注した。報酬は40万ヴァリスで、【ファミリア】の全財産を投じる決断であった。依頼書はギルド上層部の認可後に掲示されるため、貼り出しまで約1時間を要する見込みとなった。
前庭での合流と“生存”の確認
ギルド前庭でミアハとナァーザと合流したヘスティアは、ベル達が未帰還である事実を伝えたうえで、「ベルはまだ生きている」と断言した。根拠は、ベルに授けた“恩恵”のつながりが消えていないことであり、神としての感覚で絆の健在を主張した。全滅の可能性がよぎる沈黙を、ヘスティアはこの一点で押し返した。
支援要請の拡大と都市奔走
ミアハは、過去に中層でナァーザを失いかけた経験を踏まえ、「徒労でもいいから、取り返しのつかない前にできることをするべきだ」と背中を押し、ヘスティアは依頼発注に踏み切れた。三者はさらにヘファイストスやタケミカヅチらへ助力を求め、都市内を奔走する方針を固めた。
掲示板の依頼書とヘルメスへの報告
約1時間後、ギルド掲示板にヘスティアの捜索依頼が貼り出された。依頼書を確認した冒険者の一人が羊皮紙を剥がして注視し、「大変なことになっていますよ……ヘルメス様」と告げる。捜索依頼が、ヘルメス陣営へも即座に届く導入で章が締まる。
二十時間前 爆炎後の逃走と負傷の現実
ベルはダンジョンの薄暗い通路を、ヴェルフの肩を支えながら進んでいた。額の裂傷は血が固着し、全員が息を切らしている。直前にヘルハウンドの一斉放火を受けたが、『サラマンダー・ウール』のおかげで焼死を免れ、軽い火傷で生き延びた。ただし代償は重く、ヴェルフは崩落で片足を潰して自力歩行不能、リリは逃亡の負荷で極度に疲弊し、バックパック損壊で道具も大きく失われていた。
残存資源の確認と“脱出不能”の見通し
リリの所持品は回復薬4・解毒剤2で、高等回復薬はなし。ヴェルフの脚は潰れ方が深刻で、通常の回復薬では治らない。武装も失われ、リリはボウガン喪失、ベルも装備を落としている一方、《ヘスティア・ナイフ》《牛若丸》と『サラマンダー・ウール』だけは残っていた。さらにベル達は縦穴に落ち、推定14階層(あるいはそれ以下)へ移動していた。縦穴は垂直で登攀不能であり、地上へ戻る起点も失われた。方位磁針も磁気で使えず、行き止まりを繰り返して完全に迷う。
リリの冷静な立て直しと現状分析
袋小路で座り込み、恐怖を抑えながら装備と道具を棚卸しし、方針を整理する。基本方針は「戦闘回避、逃げ優先」で一致した。そこでリリは、落下時間や通路幅、光源、迷宮の難解さから「現在は15階層の可能性」を提示し、上層へ戻る道程が現実的に“詰みに近い”ことを言語化した。
逆転案 上へではなく18階層の安全階層へ
リリは本題として、上部階層への帰還を捨て「下へ進み、18階層の安全階層へ避難する」案を提示した。18階層はモンスターが生まれない安全階層で、下層遠征を狙う上級冒険者の拠点になっている可能性が高い。合流できれば護衛・随伴で中層突破を狙える、という構想である。移動手段は「縦穴を探して飛び込む」ことで、階段を闇雲に探すより効率的だとした。
最大障害 17階層の階層主の扱い
ヴェルフは17階層の階層主(迷宮の孤王)の脅威を指摘するが、リリは【ロキ・ファミリア】が二週間前に遠征へ出た事実を根拠に「安全のため階層主を撃破している可能性が高い」と説明し、さらに再出現間隔(約二週間前後)から「まだ生まれていない可能性がある」と時間計算で押し切った。
決断の重圧とベルの“リーダー”確定
リリは最終判断をベルに委ねる。ヴェルフも「どちらでも恨まない」と言い、信頼と同時に逃げ道を断つ。ベルは、仲間の命を預かる重責に怯えながらも、ここで背を向けるのは冒瀆だと理解し、恐怖を飲み込んで結論を出す。
選択 前進
ベルは「進もう」と宣言し、18階層を目指す“下り”の生還策を採用した。
青の薬舗での捜索会議と「怪物進呈」の告白
ヘスティアは【ミアハ・ファミリア】の拠点兼店舗『青の薬舗』を捜索依頼の招集場所にし、会議を開いた。そこにはミアハ、ナァーザ、ヘファイストス、タケミカヅチ、そして命達が集結していた。タケミカヅチは、13階層で自陣がベル達へ行った『怪物進呈』が原因の一端になった可能性を認めて謝罪し、命達も顛末を打ち明けてうつむく。ヘスティアは「戻らなければ死ぬほど恨むが憎まない」と告げた上で、力を貸してほしいと要請し、命達は忠誠を誓って協力を確約した。
生存確認と戦力不足の現実
捜索隊編成にあたり、ヘスティアは自分の恩恵が消えていないことからベルの生存を断言し、ヘファイストスもヴェルフの生存が「多分」確認できると述べた。ただしヘファイストスは有力団員をロキの遠征に預けており、即応戦力を出せない。結果として中層でまともに動けるのはタケミカヅチ側が中心となるが、同派のLV2は桜花と命のみで、千草はLV1のサポーターとして補給役に回される。速さ最優先で小規模精鋭にするべき、という議論が進む一方、人手不足への不安は残った。
ヘルメス参戦とアスフィ投入
そこへヘルメスが依頼書を手に現れ、ベル救助に協力すると申し出る。周囲は動機を警戒するが、ヘルメスは「ヘスティアを助けたい」「ベルを助けたい」と言い切り、ヘスティアも救助優先として受諾した。ヘルメスは団員アスフィを連れていくと宣言し、探索系として名高い彼女を「うちのエース」として戦力に組み込むことで、捜索隊は出発可能な形に近づいた。
神の同行問題とヘスティアの強行参加
しかしアスフィは、ヘルメスが神の身でダンジョンに潜るつもりだと察して動揺する。禁止ではないが発覚すれば不味い、というリスクが語られる中、ヘスティアが密談を聞きつけ、ヘルメスの首をツインテールで締め上げて「自分も連れていけ」と強行する。力が使えない神は危険で、露見の問題もあると止められても、ヘスティアは「神が増えても同じ」と押し切り、同行を既成事実化した。ヘファイストスとタケミカヅチは呆れつつも、意志の固さを認めて容認する流れとなる。
支援物資の受領と“意味深”な伝言
ナァーザは大量の回復薬を小鞄ごと手渡し、同行できない代わりの支援を示す。ヘファイストスはさらに、ヴェルフの作品だという赤い刃の武器をヘスティアに預け、「危なくなったら使ってもいいが、ヴェルフを見つけたら渡せ」「意地と仲間を秤にかけるのは止めろ」と伝言を託した。ヘスティアは仲間達の厚意を受け取り、救助への決意を強めた。
ヘルメスの不穏な独白と追加の助っ人示唆
会議の輪の外で、ヘルメスは「不味いな」と呟き、アスフィに「自分とヘスティアの両方を守れるか」と確認する。アスフィはタケミカヅチ派の足手まとい次第では保証できないと率直に答え、ヘルメスは黙考の末に「もう一人、助っ人を連れてくるか」と決める。捜索隊は出発直前ながら、追加戦力の投入が示唆される段階に入った。
夕刻の豊穣の女主人とヘルメスの来訪
夕暮れが迫り、冒険者達が探索を切り上げて街の酒場が夜営業の準備に入る中、『豊穣の女主人』も仕込みと配置換えで慌ただしく動いていた。働いていたリューは、扉の鐘とともにヘルメスとアスフィの来店を受ける。準備中だと制止するルノアをヘルメスは軽くいなし、店の中心でリューの前に立った。
「疾風のリオン」指名と店内の緊張
ヘルメスはリューに「冒険者依頼」を持ちかけ、彼女の通り名「疾風のリオン」を口にして力を貸せと要請した。その呼称はリューの過去と悪名に直結するため、店内の空気は一気に凍りつく。アーニャ、クロエ、ルノアら従業員全員が敵意と殺気を露わにし、ヘルメスとアスフィは四面楚歌の圧力に晒される。リューは「脅すつもりか」と問い、過去を盾にした脅迫の意図を疑う。
シルの懇願とリューの決断
緊迫の最中、シルが青ざめた表情でリューに近づき、「ベルさんを助けて」と懇願する。シルの瞳には、思い人を失うかもしれない不安と恐怖があり、リューはそれを見て苦笑しつつ、恩義を理由に断れないと答える。さらにリュー自身も「クラネルさんには死んでほしくない」と明言し、救助参加を受け入れる。シルは繰り返し謝罪し、最後に感謝を伝えた。
仲間達の後押しと出発
状況を見守っていた同僚達は、店番や言い訳を引き受けるなどしてリューを送り出す。アーニャは店番と女将への口裏合わせを申し出、ルノアは不本意ながら理解を示し、クロエは冗談めかして恩賞をせしめてこいと煽る。厨房の料理人達も親指を立てて後押しし、リューは礼を述べた上で、胸元のリボンを引き抜いて支度を整え、店を飛び出して救助へ向かった。
中層での消耗と移動
湿った空気と高い温度により汗が止まらず、ベルはヴェルフに肩を貸しながら中層を進行していた。後方警戒はリリに任せ、三人は孤立無援の状況下で冷静さを保つことに専念する。18階層を目指す方針は決めていたが、下層へ直通する縦穴はいまだ見つからず、焦りだけが募っていた。
強臭袋による遭遇回避
リリが携行する「強臭袋」は、モンスターを忌避させる効果を発揮し、中層の凶暴な敵との交戦を大幅に回避していた。これはナァーザが試作した道具であり、効果は実地で証明されつつあった。代償として強烈な悪臭に耐える必要はあったが、生存のためには不可欠であった。
ヘルハウンドとの遭遇
通路の先に三体のヘルハウンドが出現し、臭い袋の効果が薄れる距離で停止、火炎攻撃の準備に入る。接近戦も魔法迎撃も難しい間合いに、一瞬の逡巡が生じるが、ヴェルフが決断する。
対魔力魔法【ウィル・オ・ウィスプ】
ヴェルフは超短文詠唱で対魔力魔法【ウィル・オ・ウィスプ】を発動。ヘルハウンドの魔力反応を起点に魔力暴発を誘発し、三体を自爆させることに成功する。モンスター相手での初使用であったが、結果は決定的であり、火炎系の敵に対する有効な切り札となった。
回復と士気の回復
戦闘後、ベルはナァーザ製の二属性回復薬をヴェルフに渡し、体力と精神力を同時に回復させる。三人は回復薬を分け合い、緊張の合間に短い会話を交わすことで士気を立て直した。
縦穴の発見と決断
探索を続けた末、通路の中央に歪な縦穴を発見。深さから16階層へ通じていると判断する。三人は視線を交わして頷き合い、ヴェルフを支え、装備を確保したうえで、迷いなく縦穴へと飛び込んだ。
バベル最上階での対面
夜のオラリオを見下ろすバベル最上階で、フレイヤはヘルメスとアスフィを迎えた。ヘルメスはベル・クラネルが帰還していない件に触れ、自分がヘスティア側と同行して捜索に入る意向を伝え、事前にフレイヤへ「断り」を入れに来たのだと説明した。フレイヤは用件の核心を促し、ヘルメスは「ベルの力をこの目で見たい」と述べつつ、フレイヤ・ファミリアが自派閥に干渉しないよう保険をかける形で懇願した。
フレイヤの許容と独占宣言
フレイヤは、ヘルメスがベルに害を与える意図ではないと見抜いたうえで、当面は行動に目をつむる判断を下した。ただし退出間際、耳元で「あの子で遊んでいいのは私だけ」と釘を刺し、ベルへの独占的な執着を明確化する。ヘルメスは恐怖を押し隠せず、誓いの言葉で従う姿勢を示した。
オッタルの懸念とフレイヤの計算
ヘルメス退室後、オッタルは「胡散臭い」と警戒を口にするが、フレイヤは「その時はその時」と受け流す。さらに、イシュタルが自身の動きを嗅ぎつけている状況を踏まえ、下手な詮索や付け込みを招くより、ヘルメスが何か企図しても現段階では容認してよい、という判断基準を示した。
窓外の観察と一団の発見
フレイヤは大窓から夜景を俯瞰し、中央広場、バベル門前で固まる「とある一団」を見つける。彼女はその集団に対して微笑を送り、次の動きへ意識を向けた。
門前での合流と焦燥
夜の帳が下りた中央広場、バベル西門前で捜索隊は出発準備を整えていた。ヘスティアは旅装に身を包み、【タケミカヅチ・ファミリア】の命達も集結している。到着が遅れたヘルメスに、ヘスティアは苛立ちを隠さず声を荒げるが、彼は手続きがあったと素直に詫びた。
謎の助っ人の登場
出発直前、フード付きケープを纏う謎の冒険者が一行の前に現れる。長い木刀と二刀の小太刀を携え、顔はフードの影に隠れている。緊張が走る中、ヘルメスは彼女を「助っ人で、超強い」と紹介し、警戒は不要だと告げた。フードの奥から覗く空色の瞳が、その存在感を際立たせる。
捜索開始
覆面の助っ人を加え、捜索隊はバベルの門前を出発する。目的はただ一つ、ベル達の救出である。一行は夜のオラリオを後にし、広大な地下迷宮へと踏み込んだ。
三章 迷宮決死行
覆面の冒険者の圧倒的戦闘
13階層に突入した捜索隊は、覆面の冒険者の異常な戦闘能力を目の当たりにした。木刀と小太刀を自在に操り、アルミラージやヘルハウンドの群れを旋風のような動きで瞬時に殲滅する。包囲や背後からの奇襲すら通じず、その速度と技量は上層・中層のモンスターでは到底対抗できないものであった。
進行速度の異常と実力の証明
出発から数時間で中層へ到達するという異例の進行速度は、覆面の冒険者の独力によるところが大きい。命、桜花、千草はその強さに言葉を失い、彼女がかつて【疾風】と呼ばれ、LV.4に至った実力者であることを実感する。数を頼みとするモンスターの戦術は完全に無力化されていた。
アスフィの介入と万能者の技
通路脇からの奇襲に対しては、アスフィ・アル・アンドロメダが即座に対応する。ダンジョン・ワームを正面から両断し、続けて魔道具と投擲武器を駆使してヘルハウンドを仕留めるその戦いぶりは、明らかにLV.2の域を超えていた。彼女が【万能者】と称される理由が、命達の目前で示された。
ヘルメス・ファミリアの立ち位置
アスフィの実力を前に、ヘスティアはヘルメスへ疑問を投げかける。ヘルメスは笑って【ランクアップ】未申請を認め、意図的に地位と名声を抑え、中立を保つ処世術を取っていることが示唆された。天界での付き合いを思い返し、ヘスティアはそれを彼らしい在り方だと受け止める。
中層の闇と女神の不安
中層は燐光が乏しく、神の力を封じたヘスティアにとっては酷く暗く不気味な場所であった。放置されたモンスターの死骸や腐臭が不安を煽り、闇が心身を圧迫する感覚に襲われる。眷族と神との感覚差が、ここで改めて浮き彫りとなる。
進路選択を巡る議論
安全階層である16階層、さらには18階層を目指すという提案に、桜花は常識外れだと反発する。しかし沈黙していた覆面の冒険者は、「彼なら前へ進む」と断言し、ベルの覚悟を信じる姿勢を示した。ヘルメスとヘスティアもこれに同意し、多数決の結果、下層を目指す方針が決定される。
次階層への進行
隊列は覆面の冒険者を前衛に据え、命と桜花が守りを固め、アスフィが遊撃を担う盤石の形となった。一行は正規ルートを選び、階層間を繋ぐ階段を下っていく。ベル達を救出するため、捜索隊はさらに深い迷宮へと踏み込んでいった。
張り詰める気配と異変の兆し
臭い袋の効果が切れた瞬間、通路を覆っていた防護は消え、代わりに濃厚な殺気が満ちた。ヴェルフ、ベル、リリは1656階層の通路で足を止め、闇の奥から迫る圧倒的な存在感に心身を縛られる。呼吸は熱く、鼓動は視界を揺らし、意識は断線寸前に追い込まれていった。
猛牛の出現と絶望
闇の中から現れたのは、巨大な天然武器を携えたミノタウロスであった。初対峙の威圧は抗戦の意志を砕き、咆哮が恐怖を強制する。ヴェルフは大刀を抜くことすらできず、迫る斧を前に死を覚悟する。
白兎の突貫
その刹那、ベルが前に出た。雷霆のごとき踏み込みで正面突破し、漆黒のナイフと紅の短刀を交互に閃かせる。神速の連続斬撃がミノタウロスを圧倒し、反撃を許さぬまま致命傷を重ねる。最後の一閃で猛牛は崩れ落ち、沈黙した。
連戦への即応
間を置かず、通路奥から三体のミノタウロスが出現する。ベルは逃げず、地面の大石斧を掴み、白い光粒を収束させた。鐘音のような響きとともに畜力を完了させ、突進する猛牛へ突撃する。
光撃の解放
振り下ろされた一撃は純白の大斬撃となり、通路ごと敵を呑み込んだ。爆音とともに地面は爆砕し、岩壁と天井に亀裂が走る。砂煙が収まると、敵影は消え、砕けた斧の破片だけが地に落ちていた。
確信
立ち尽くすヴェルフとリリの前で、ベルは浅い呼吸のまま背を向けて佇む。連続撃破に見えたのは、レベルやスキルを超えた技と駆け引きの冴えであった。ヴェルフはこの瞬間、ベルの猛牛単身撃破が真実であると確信する。オックス・スレイヤー――その背中は、確かな実力を示していた。
問いかけと緊張
薄闇のダンジョンを進む捜索隊の中で、ヘスティアはついにヘルメスへ核心を突く問いを投げかけた。ベルを救おうとする理由、その真意である。照明具の魔石灯が揺れ、仲間の顔を照らす中、神々を中心とした陣形は崩れない。ヘルメスは一度とぼけるが、ヘスティアの強い視線に観念し、語る決意を見せた。
依頼の正体
ヘルメスは旅を早期に切り上げた理由として、ある人物からの頼みを明かす。それはベルの様子を見てきてほしいという依頼であり、差出人はベルの育ての親、すなわち祖父であった。死んだとされていた祖父は事情あって身を隠しており、世界に広まったベルの名声を聞いて動かずにはいられなかったという。
使者としての役割
身動きの取れない祖父に代わり、オラリオに出入りするヘルメスが白羽の矢を立てられた。彼はそれを軽く語るが、依頼主が神かどうかについては明言を避け、含みを持たせる。ヘスティアはその態度に苛立ちつつも、ベルに危害を加える意図がないことだけは確信した。
個人的な関心
依頼だけが理由ではないと、ヘルメスは続ける。彼自身がベルに強い興味を抱いているのだと。モンスター迎撃が続く中、ヘルメスは神としての静かな表情を見せ、ベルをこの目で確かめたいと語る。
神の視線
ヘルメスはヘスティアに近づき、囁くように結論を告げた。ベルが時代を担うに足る英雄かどうか、それを見極めるために自らダンジョンへ足を運んだのだと。神の意志は明かされぬまま、しかしその視線は確かに少年の未来へ向けられていた。
対魔力魔法の限界
ヴェルフはヘルハウンドの群れを【対魔力魔法】で自爆させ続けたが、精神力の枯渇でついに意識を失った。続けてリリも極度の緊張と疲労、補給不足で気絶し、ベルだけが動ける状態として取り残された。
荷を捨てて単独搬送へ
回復薬が尽きたベルは、ヴェルフの大刀やリリのバックパックなど装備一式を捨て、最低限の武装だけ残して二人を抱え上げた。右肩にヴェルフ、左脇にリリを抱え、中層での遭遇を避けるため縦穴を探しながら強行突破に切り替えた。
縦穴発見と17階層への到達
ベルは行き止まりの奥に縦穴を見つけ、二人を抱えたまま飛び降りた。着地に失敗して転倒しつつも、17階層へ移動することに成功した。しかし【英雄願望】の畜力攻撃を使った反動が表面化し、体力・精神力の急激な低下に苦しみながら歩を進めた。
不自然な静寂と「嘆きの大壁」
17階層ではモンスターの気配はあるのに襲ってこないという異様な静けさが続いた。ベルは通路が広がる方向へ進み、最奥の大広間へ到達する。そこには、特定の階層主だけを生む障壁「嘆きの大壁」があり、強烈な不吉さが広間を支配していた。
階層主ゴライアスの誕生と逃走
大壁に雷のような亀裂が走り、崩壊の末に階層主ゴライアスが出現した。ベルは二人を抱えたまま全力で出口(18階層へ繋がる洞窟)へ走る。背後からの一撃が洞窟入口を爆砕し、衝撃波でベルたちは洞窟内を跳ね回され、三人とも投げ出される形で外へ吐き出された。
18階層への転落と救いの懇願
吐き出された先は草の感触と温かさがある場所で、ベルは動けないほど満身創痍となったが、リリとヴェルフの呼吸だけは確認できた。そこへ誰かが近づき、ベルは最後の力で相手のブーツを掴み「仲間を助けてください」と懇願する。金髪の気配を幻のように捉えた直後、ベルは意識を失った。
四章 DUNGEON RESORT?
目覚めと激痛
ベルはテントの中で目を覚ましたが、全身を襲う倦怠感と激痛でまともに起き上がれなかった。リリとヴェルフの安否を叫んだ直後、傷の反動が一気に表面化し、悶絶するほどの痛みに飲まれた。
救助者の正体と再会
隣にいたのは金髪金眼の冒険者アイズ・ヴァレンシュタインだった。ベルは気絶直前に掴んだ相手がアイズだった可能性を思い出し、動揺する。アイズは【ロキ・ファミリア】が遠征帰りで18階層に野営している最中だと説明した。
仲間の無事と治療
ベルが前のめりに倒れかけたところをアイズが支え、混乱と羞恥でベルはさらに自爆する。視線の先には毛布をかけられたヴェルフと、少し奥に眠るリリがいた。二人の傷はリヴェリアらによって治療され、軽傷は包帯程度で済んでいると告げられ、ベルは安堵した。ベル自身も頭に包帯が巻かれ、危険な状態だったとアイズに示される。
団長への連絡と野営地の圧
アイズはフィン(団長)へ連絡するためベルを同行させる。テントを出ると、18階層の森に大規模な野営地が広がり、ドワーフや獣人、エルフを含む【ロキ・ファミリア】の精鋭が集結していた。団員の視線は概ね友好的ではなく、ベルは強い圧と敵意を感じながらアイズについて歩く。
18階層の光への疑問
地下迷宮のはずなのに木漏れ日が差し、空や太陽があるように感じられる環境にベルは戸惑う。疑問を口にすると、アイズは「少し寄り道する?」と提案し、野営地から離れて森の奥へ案内した。
水晶の森と小川
森には蒼く輝く水晶が大小さまざまに点在し、淡い藍色の光が森全体を染めていた。せせらぎの音がする小川もあり、団員たちが水を汲んでいる姿が見える。ベルは妖精の里のような幻想を抱く。
迷宮の楽園の全景
森を抜けると眩い光に包まれ、草原・湖・大樹が広がる壮大な景観が現れた。天井には膨大な量の水晶が生え渡り、中心の白と周囲の蒼が発光して“昼の空”を形作っていた。アイズは時間とともに光が弱まり、ここには“夜”も訪れると説明する。18階層は水晶と自然に満ちた安全階層であり、「迷宮の楽園」と呼ばれる場所だと示され、ベルはアイズと並んでその全景を見渡した。
首脳陣との面会
森の野営地奥に設けられた大きな幕屋で、ベルは【ロキ・ファミリア】首脳陣との面会に臨んだ。そこにいたのは団長フィン・ディムナ、ドワーフの老戦士ガレス・ランドロック、そしてエルフの魔導士リヴェリア・リヨス・アールヴである。いずれも迷宮都市オラリオを代表する第一級冒険者であり、ベルは強烈な緊張に包まれていた。
フィンの配慮と場の緩和
フィンはアイズから既に報告を受けていたと語り、冗談交じりの口調で場を和ませる。アイズの知人を見殺しにできないという言葉に、ベルは思わず気が緩み、肩の力が抜けた。団長としての話術と配慮が、場の空気を穏やかなものへ変えていく。
事情説明と評価
ベルは中層での戦闘、階層主からの逃走、18階層への避難に至るまでの経緯を包み隠さず説明した。ガレスは豪快に笑い、その無謀さと生還を面白がって称賛するが、リヴェリアが場を引き締める。結果として、ベル達が極めて危険な状況を切り抜けてきた事実が共有された。
ロキ・ファミリア側の事情
続いてフィンは自分達の現状を語る。遠征帰りの途中、モンスターの襲撃によって多くの団員が強力な毒に侵され、下位団員の多くが行動不能に陥っていた。物資も乏しく、全員分の解毒ができないため、安全階層である18階層に留まり、回復を待っているという。
地上への使者と停滞
【ロキ・ファミリア】では、足の速い団員ベートを地上へ向かわせ、解毒剤の調達を命じていた。早ければ翌日には戻る見込みだが、それまでは野営を続けざるを得ない状況にある。ベル達が18階層に辿り着いたタイミングは、その使者と入れ違いだった。
客人としての受け入れ
物資不足を前提としながらも、フィンはベル達を客人として迎え入れると明言する。周囲と揉め事を起こさない限り、貸し与えたテントは自由に使ってよいと約束し、その旨を団員達にも伝えると告げた。毒に苦しむ団員が多い中での配慮に、ベルは深く感謝する。
感謝と退出
ベルは何度も礼を述べ、フィン達から「貸しの一つだ」と笑顔で返される。こうして面会は穏やかに終わり、ベルはアイズとともに幕屋を後にした。
首脳陣による判断の確認
ベルが幕屋を去った後、リヴェリアはフィンに対し、彼を客人として受け入れた判断が妥当だったのかを問いかけた。アイズが個人的に気にかけている点に加え、ベルの仲間の一人が【ヘファイストス・ファミリア】所属である事実にも言及する。
ヘファイストスとの関係性
遠征隊に同行している上級鍛冶師からの情報により、ヴェルフの所属は確認されていた。フィンは、神ヘファイストスの性格を踏まえ、団員一人の受け入れを拒むことで無用な反感を買う方が損失になると説明し、リヴェリアもその判断に同意した。
アイズとベルへの関心
フィンは、リヴェリア自身もベル・クラネルに関心を抱いているのではないかと指摘する。その理由は、他ならぬアイズが彼に強い関心を示している点にあった。リヴェリアは否定しきれず、ガレスからは保護者のようだと茶化されるが、彼女は即座に言い返した。
アイズの変化と期待
リヴェリアは、アイズが自発的に興味を持って動いている現状を前向きに捉え、それがベル・クラネルとの接触によるものだろうと推測する。遠征前にアイズから冒険者への指導について質問を受けていたこともあり、二人の早朝特訓の存在には既に気付いていた。
フィンの対応方針
フィンは、アイズの変化自体は良いことだと認めつつも、神ロキには当面内緒にしておくべきだと判断した。ガレスがベルの力量を測るために相撲を取りたいと提案するが、首領陣が迂闊に関与すれば、他団員による過剰な反応を招くとして即座に却下する。
暫定的な結論
最終的にフィンは、今回に限ってはベル・クラネルを受け入れて問題ないと結論づけた。彼は周囲と衝突を引き起こすタイプではなく、しばらくは要観察とするのが妥当だと判断し、幕屋の出入り口へ視線を向けて思案を巡らせた。
野営地での居心地の悪さ
フィン達との面会を終えた後も、ベルはアイズの後ろについて野営地を歩いていた。天幕は十以上設けられ、毒に倒れた団員の看病が続いている様子であった。団員達はアイズには敬意を払う一方、彼女に引率されるベルには警戒と不信の視線を向け、明確な居心地の悪さが漂っていた。
アイズとの会話と違和感
歩きながら、アイズは「もう18階層まで来た」と呟き、ベルがミノタウロスを倒してレベル2になったことを確認する。さらに彼女はベルの背後に回ろうとし、不自然な動きを見せる。互いに位置をずらす妙な攻防が続き、周囲の団員から奇異の目で見られる状況となった。
ヒリュテ姉妹の登場
そこへ、アマゾネスの双子冒険者ティオナ・ヒリュテとティオネ・ヒリュテが現れる。ティオナはベルを「アルゴノゥト君」と呼び、ミノタウロス戦を見ていたと明かす。ベルは一瞬、自身のスキルが知られたのではと動揺するが、それは童話に由来する渾名に過ぎないと分かり、胸を撫で下ろす。
評価と動揺
第一級冒険者である姉妹から実力を認められ、からかわれるベルだったが、露出の多い服装と周囲の視線に強い緊張を覚える。特に男性団員達から向けられる殺気混じりの視線に耐えきれず、ベルは慌てて仲間の様子を見に行くと告げ、その場から逃げ出した。
その場の余韻
ベルの去った後、アイズ達の背後には、彼を巡る微妙な空気と、【ロキ・ファミリア】内部の複雑な感情だけが残されていた。
夜の到来と再会の兆し
18階層では水晶の光が弱まり、迷宮の「夜」が訪れていた。ベルはテント内でリリとヴェルフを見守り、二人が目を覚ますと安堵した。状況を簡潔に説明した後、互いの謝罪を否定し合い、三人は無事を喜び合った。
野営地での食事と交流
アイズの案内で野営地中央の営火へ向かい、ベル達は果物の食事を受け取った。甘味の強い果実に悪戦苦闘するベルを横目に、【ロキ・ファミリア】の団員達は和やかに食事を進めていた。フィンは場を取り仕切り、客人への敬意を促した。
18階層の驚異と期待
夜の森と水晶の天井が織りなす光景に、ベル達は18階層の異様さを改めて実感する。ダンジョン内に「街」が存在することを知り、ベルは翌日の訪問を約束され、冒険への高揚を募らせた。
好奇と圧迫の狭間で
ティオナとティオネが割り込み、ベルに能力値の話題を振る。過去の評価を暴かれた形となり、ベルは動揺する。周囲の視線と質問に追い詰められる中、場は緊張を帯びた。
突発の叫びと捜索隊の合流
その最中、洞窟方面から聞き覚えのある叫びが響く。ベル達が駆けつけると、ヘスティアを中心とする捜索隊が18階層へ到達していた。再会を果たしたヘスティアはベルに抱きつき、強い安堵を示した。
ヘルメスとの邂逅
同行していた男神ヘルメスが名乗り、捜索に協力した理由を説明する。覆面の冒険者の正体はリューであり、彼女も依頼を受けて加わっていたことが明かされた。
不穏な視線の正体
ベルの視線は洞窟前に残る冒険者達へ向かう。13階層で遭遇し、モンスターの大群を招いた一行であることに気付き、場の空気は一転して緊張を孕んだ。物語は、因縁の再浮上を予感させる形で幕を閉じた。
謝罪と対立の整理
貸与されたテント内で、命は正式な土下座によって謝罪した。リリとヴェルフは、13階層での一件が命取りになりかねなかった事実を理由に、容易な和解を拒む。桜花は当時の判断を撤回せず、仲間を守るために他者を切り捨てる決断を下したと明言し、ヴェルフと一触即発の空気が生まれた。
ヘルメスの調停
フィンへの根回しを終えたヘルメスとアスフィが戻り、場は一変する。ヘルメスは「借り」と「罪滅ぼし」という枠組みを提示し、命たちの誠意と、捜索に加わった事実を強調して両者の感情を収めた。ヴェルフは割り切ることを選ぶが、納得はしないと明確に線を引き、桜花もそれを受け入れる。
今後の方針決定
話し合いの結果、階層主は【ロキ・ファミリア】に討伐を任せ、その後に18階層を出発する方針が固まる。ロキ・ファミリアの再出発は二日後となり、残る一日は安全階層での行動が許可された。ベルはアイズとの約束もあり、翌日に18階層の「街」を訪れることが決定する。
別れ際の伝言
就寝前、ヘスティアはヴェルフを呼び止め、千草から託された白布包みの武器を渡す。主神ヘファイストスからの伝言は「意地と仲間を秤にかけるのは止めなさい」というものだった。ヴェルフは言葉少なにそれを受け取り、胸中に思いを抱えたまま夜の見張りへ向かう。
18階層の朝と出発
18階層に朝が訪れ、ベル一行は朝食後、約束通りアイズの案内で『街』へ向かうことになった。同行者はティオナ、ティオネ。リューの姿が見当たらない点が気に掛かるものの、事情があるとのヘルメスの言葉に従い、疑念を胸に野営地を後にする。
神威とダンジョンの暗黙ルール
道中、ベルは神々の雰囲気の変化に気づく。ヘルメスは、神が発する神威を抑えているためだと説明する。神威は神性を悟らせる波動であり、ダンジョン内で目立てば規則違反として天界送還に繋がる。そのため神はダンジョンに入らない、という暗黙の了解があると語られる。
湖と木橋、島への道
『街』は湖に浮かぶ島の上にあり、南部の森を抜け西部へ進む。湖には切り倒した大木を繋げた天然の橋が架かっており、手すりもなく足場は悪い。慎重に渡る一行は、温かなクリスタルの光に照らされた湖面と、自分たちの影を眺めながら島へ上陸する。
18階層の全景
高所から見渡す18階層は、迷路のない円形の大空間である。南に野営地、東に森と清流、北に湿地、西に湖と島、中央には巨大な大樹がそびえる。モンスターもこの階層の豊かな自然を求めて集まる“楽地”であり、その壮観な景色に一同は心を奪われる。
リヴィラの街
断崖上に築かれた『リヴィラの街』は、水晶と岩に彩られた宿場町で、冒険者たちが自由に商売を営む拠点である。元はギルドの計画を冒険者が引き継いだもの。湖に囲まれた立地は砦として機能するが、モンスター侵攻の危険は常にあり、街は幾度も破壊と再建を繰り返してきた。現代のリヴィラは三百三十四代目で、名は創始者リヴィラ・サンティリーニに由来する。
自由行動の開始
街の広場に到着後、ヘルメスの提案で自由行動が許可される。ただし単独行動は禁止。水晶の換金価値を聞いて目を輝かせるリリを横目に、各自が小グループに分かれる。最後にヘルメスはベルを強引に連れ出し、アイズには「付いてくるな」と言い置いて、街の奥へと向かった。
リヴィラの街の空気と「商売の街」
リヴィラの街は即席小屋の大半が商店で、武器屋・道具屋・宿屋・酒場など、客はほぼ冒険者に限られていた。上級冒険者が完全武装で闊歩しており、地上の冒険者通り以上に物々しい。ヘスティアはアイズが付いてきたことに怒るが、ヘルメスは賑やかさを面白がり、ベル一行は街を観光して回った。
法外な物価の理由
ベルは品物の値段が異常に高いことに気づく。アスフィとヘルメスは、迷宮内では水・食料・道具の補給が難しく「吹っかけても売れる」閉鎖環境だと説明する。砂漠の水と同じ理屈で、命綱の道具を買うか、出費を惜しんで死を選ぶかという二択を突き付ける商売であった。リリはバックパックの価格に激怒し、ヴェルフも砥石の値段に呻く。ティオナとティオネは、遠征規模で宿泊すれば破滅的な請求になるため森でキャンプしているのだと補足した。
買取り所の搾取構造
街には魔石やドロップアイテムの買取り所があり、派手な看板で存在感を放っていた。そこでは大型モンスターの牙などが取引されるが、買値は地上の半額以下で、店側は「不服なら他所へ行け」と強気にふるまう。冒険者は荷物制限上、邪魔になる魔石を抱え続けられないため泣く泣く売り払い、店側は差額で利益を得る。価格競争が起きないのは、腕力で他店を黙らせる「一番強い店」が最高値を決めるからで、桜花がぼったくりを口にすると、眼帯の大男に睨まれて命と千草が慌てて退散させた。
決済は証文とエンブレム
ヘスティアは「金貨を持ち込まないのに支払いはどうするのか」と疑問を抱く。ヘルメスは、羊皮紙の証文に冒険者の署名と【ファミリア】のエンブレム印影を残し、後日その証文で所属派閥へ請求する仕組みだと説明した。買取り所は逆に店側が証文を発行し、自派閥へ請求させる。身元不明者は取引不可となるため、派閥の徽章は実質的な身分証明でもある。ヘルメスはヘスティアに、ベルのためにもエンブレムを作るべきだと勧め、ベルも少し胸を躍らせた。
酒場の因縁が再燃
ベルは路地で冒険者と肩がぶつかり、相手がモルド一味だと気づく。彼らは以前『豊穣の女主人』でベルの昇格祝いの場に現れ、リューたちに叩き伏せられて追い出された者たちであり、その恨みからベルに掴みかかろうとした。しかしアイズの存在を認めた瞬間、モルドは怯んで舌打ちし、仲間と去っていった。事情を聞いたヘスティアとヘルメスにベルは説明し、ヘルメスは去っていくモルドたちの背を意味深に見つめ、彼らがベルを敵視している可能性を感じ取った。
広場での独り時間と憧憬
ベルは街の広場で18階層の景色を眺め、崖下に広がる湖と地下迷宮最前線の意味を噛みしめていた。冒険者が営む街リヴィラは、深層攻略への拠点であり、第一級・第二級冒険者のみが踏み込める高みへの入口である。ベルはそこに至る“憧れの距離”を実感し、ただ仰ぎ見るしかない自分を見つめ直していた。
アイズとの静かな会話
一人でいるベルのもとにアイズが現れ、18階層から10階層へ通じる中央樹の樹洞を教える。ベルが姿を消していたため心配して来たのだと語る彼女の言葉に、ベルは動揺し、互いの距離の近さに胸が高鳴る。アイズの柔らかな微笑と名を呼ぶ声は、身近さを帯び、ベルの心を大きく揺さぶった。
自制と決意
ベルは、その温かさに身を委ねれば追いかけることをやめてしまうと悟り、必死に自制する。自分はまだ何も成し遂げていないという現実、そして彼女との歴然とした隔たりを再確認し、焦らず歩む決意を固める。
神様の乱入と場の転換
緊張の空気を切り裂くようにヘスティアが乱入し、二人の間に割って入る。香水を取り出して騒ぎ立て、過剰にベルとの“仲”を主張する姿に、場は一転して賑やかになる。ヘスティアは地道に続けようとベルを励まし、無茶をしないという約束を思い出させた。
再確認された道
アイズが階層主を単独で討伐した事実に、ベルは自分との隔たりを改めて認識する。だが同時に、憧憬のために強くなりつつ、神様を一人にしないという約束を胸に刻む。焦らず、今できることに全力で取り組む——その覚悟を新たにし、ベルは神様とアイズのやり取りを苦笑とともに見守っていた。
18階層の昼と水浴びの誘い
18階層に昼が訪れ、光量が増す中、ティオナの提案で女性陣は森の奥にある清水で水浴びをすることになった。ヘスティア、アイズ、ティオネ、リリ、命、千草、アスフィらが同行し、見張りを交代制で配置したうえで、滝と泉に囲まれた静謐な場所へ向かう。
森の聖域での水浴び
案内された滝壺の泉は、木々と水晶に囲まれた美しい聖域であり、清冽な水が階層奥の水晶から湧いていると説明される。女性陣は打ち解けた雰囲気で水浴びを始め、場は賑やかになる。
ヘルメスの“企て”
一方、野営地に残っていたベルは、ヘルメスに密かに連れ出され、森の奥へと向かう。真剣な表情に見えたヘルメスの目的は、水浴びの様子を“覗く”ことであった。ベルは必死に止めようとするが、木の枝伝いに進む途中で事故が起きる。
落下事故と大混乱
枝が折れ、ベルは滝壺の泉へ落下する。突然の落下により、泉で水浴びをしていた面々の前に姿を現してしまい、場は一瞬で騒然となる。見張りや仲間たちの視線が集中し、誤解と驚愕が交錯する。
謝罪と逃走
状況を理解したベルは平身低頭で謝罪し、見張りの追及を振り切って全力でその場を離脱する。18階層の昼下がりは、ヘルメスの悪戯と不運な事故により、予期せぬ大混乱で幕を閉じた。
森での迷走と遭遇
ベル・クラネルは混乱のまま森を逃走し、18階層の奥深くで完全に道に迷った。見知らぬ水晶林と薄明るい林冠の下、バグベアーの出現に身を潜めながら危険を痛感する。夜が来る前に森を抜けねばならないと焦る中、水の音に導かれ泉へと辿り着いた。
泉での邂逅と謝罪
泉の中心で水浴びをしていたのはリュー・リオンであった。小太刀が木に突き立つ緊張の瞬間を経て、ベルは土下座で非礼を詫びる。リューは状況を理解し、責めを退けたうえで野営地まで案内すると告げる。
同行と墓標の地
森を熟知するリューに導かれ、二人は彼女の目的地へ向かう。辿り着いた先は、白い花と酒が供えられた墓場であり、そこはかつて彼女が属した【アストレア・ファミリア】の仲間たちの墓であった。
過去の告白
リューは自らの素性を語る。正義を掲げ都市の秩序を守っていた一団は罠により壊滅し、彼女だけが生き残った。私怨に駆られた単独の復讐は過剰に及び、ギルドの要注意人物となり、冒険者の地位も剥奪された。路地裏で力尽きかけた彼女を救ったのがシルであり、その縁で「豊穣の女主人」に身を寄せる現在に至った。
オラリオに来た理由
リューは、閉鎖的で他者を見下しがちなエルフの在り方に疑問を抱き、種族を越えて尊敬し合える仲間を求めてオラリオへ来たと明かす。だが外界でも恐れと習性に縛られ、覆面を外せなかった自分自身への失望を吐露する。
手を取る意味
リューは、これまでに手を振り払わなかった相手が三人だけであると語り、ベルがその一人だと告げる。過去の出来事を通じて彼の弱さと真摯さを理解した彼女は、ベルを尊敬に値する存在だと認めた。
静かな和解と余韻
墓場に差す白い光の中、リューは穏やかな笑みを見せる。気を許した者にだけ向けられるその表情は、ベルの胸に強く刻まれ、森の一日は静かな余韻を残して終わった。
第五章 無法者達の宴
夜のリヴィラと酒場の不穏
18階層が夜に沈む中、ヘルメスとアスフィは森の野営地を抜け出し、『リヴィラの街』の酒場へ向かった。店内では上級冒険者モルドを中心に、急成長を遂げ中層へ踏み込んできたベル・クラネルへの反感と嫉視が渦巻いていた。新人が短期間で成果を上げた事実は、長年この地に留まる者たちの自尊心を刺激し、私怨と苛立ちは次第に暴発寸前へと傾いていく。
ヘルメスの介入と取引
酒場に現れたヘルメスは、無法者たちの悪意を止めるどころか、面白がるように交渉へ踏み込む。彼は魔道具――【万能者】作の漆黒の兜――を提示し、直接の協力はしない代わりに「見世物として楽しませろ」という条件を突き付けた。神の気まぐれと娯楽性が、冒険者たちの野心と結びつき、ベル・クラネルを狙う陰謀は具体性を帯びていく。
野営地での準備と別れ
一方、野営地ではベルの【ステイタス】更新が行われ、18階層進出の試練が「偉業」として評価されたことが明かされた。撤収が進む中、ロキ・ファミリアは先行部隊と後続部隊に分かれて帰還の準備に入る。ベルは前行部隊に組み込まれたアイズと短い言葉を交わし、互いの無事を祈って別れる。
帰還支度と静かな兆し
リリ、ヴェルフ、命らは武器整備と荷造りを進め、各自が地上への帰路に備えた。ヘルメスとアスフィは観光を口実に残留するが、その裏で酒場の取引は既に動き出している。朝の気配が森に差し始める頃、野営地は静まり返り、最後の撤収が行われた。
神の拉致
撤収作業中のヘスティアは、突如として不可視の存在に拘束される。透明な何者かに口を塞がれ、空中へと持ち上げられた彼女は、森の奥へ連れ去られていった。地面に残された羊皮紙と散乱する道具だけが異変を告げ、無法者達の宴は、次なる騒乱の幕を静かに上げるのだった。
神の失踪と異変の発見
帰還準備を終えたベルは、野営地でヘスティアの姿が見当たらないことに気付いた。テントや周囲を探しても行き違いの形跡はなく、不審を抱いたまま野営地の外れへ足を向ける。そこでベルは、草地に散乱する回復薬の試験管と羊皮紙の巻物を発見し、ヘスティアの身に異変が起きたことを察する。
拉致の宣告
羊皮紙には、ヘスティアを預かったという脅迫文と、指定された集合地点が記されていた。犯人は人為的な計画のもとで行動しており、単なる悪戯ではないことが明白であった。ベルはヘスティアの安否を案じながら、地図を握りしめ、単独で指定地点へ向かう決意を固める。
単独行動への突入
ベルは仲間に知らせることなく走り出し、森と草原を越えて中央樹の方角へ全力で進んだ。行く手に現れるモンスターを圧倒的な速度で振り切り、阻む存在は意にも介さない。その進路上で現れたマッドビートルに対しては【ファイアボルト】を放ち、爆炎の中を強行突破する。
追走の始まり
女神を人質に取られた事実は、ベルの中で恐怖と焦燥を燃え上がらせた。同時に、その身を顧みない疾走は、無法者達の仕掛けた罠へ自ら踏み込んでいく行為でもあった。こうしてベル・クラネルは、救出のための単独行動へと身を投じ、無法者達の宴の幕は、静かに本格化していく。
魔道具の真価
モルドは、ヘルメスから借り受けた漆黒の兜――魔道具《ハデス・ヘッド》の能力を確信し、歓喜に震えていた。この兜は装備者を完全な透明状態にするもので、精神力や体力の消耗もなく、ほぼ恒久的に効果が持続する。その力によって、彼は野営地の死角を突き、誰にも気取られずヘスティアを連れ去ることに成功していた。
女神の拘束
18階層東部の森の一角、木の下に縛られたヘスティアは激しく抗議するが、周囲にはモルドと協力者の冒険者二名が控え、逃走は叶わない。モルドは女神に直接危害を加える意図はないと装いながらも、剣をちらつかせ、髪や衣服を傷つけると脅して抵抗を封じる。その態度は、脅迫と侮蔑に満ちていた。
目的の露呈
ヘスティアの問いに対し、モルドはついに本音を漏らす。狙いは女神そのものではなく、彼女の眷族――ベル・クラネルであった。急激に頭角を現した後輩に「冒険者の掟」を思い知らせるため、女神を人質に取るという無法な手段を選んだのである。
衝突への布石
こうして、無法者達はベルを誘き出すための舞台を整えた。女神を縛り、魔道具の力を手にしたモルドの一派は、若き冒険者との衝突を待ち構える。その宴は、もはや後戻りのできない暴力の前夜となっていた。
誘拐の確証
散乱した回復薬を調べていたリリは、地面に落ちている羊皮紙の巻物に気付き、慎重に拾い上げた。その表情が一変する。巻物には、無造作ながら明確な悪意を帯びた文言が記されていた。ヘスティアを預かったこと、返還の条件として指定された場所、そして単独行動を要求する内容である。
ベルの行動の裏付け
千草の証言と合わせ、ベルが森の外へ全力で駆け出していった理由は明白となった。彼は既に状況を把握し、女神を救うため単身で指定地点へ向かったのだと、リリは即座に理解した。これは偶発的な失踪ではなく、計画された拉致事件であった。
迫る時間制限
一方で、【ロキ・ファミリア】の部隊は出発間近であり、彼らが足止めしてくれる保証はない。同行者であるリリ達は正式な隊員ではなく、これ以上の遅延は見捨てられる可能性を孕んでいた。時間は敵であり、判断の猶予はほとんど残されていない。
分岐する選択
ヴェルフは歯噛みし、命は唇を引き結ぶ。救出に向かうべきか、あるいは後続支援として動くべきか。リリは巻物を握り締め、誘拐犯がベルを狙っている以上、これは単なる人質事件ではなく、彼を試すための罠であると断じた。
決意
四人は短い沈黙の末、覚悟を固める。ベルが一人で危険に飛び込んだ以上、後方で迷っている時間はない。彼の行動を無駄にしないためにも、最善の形で追撃と支援に動く必要があった。無法者達の宴は既に始まっており、選択を誤れば、女神と若き冒険者の命運は取り返しのつかないものとなる。
不可視の暴力
一本水晶の麓に設けられた円形の高座で、ベルはモルドとの決闘に臨んだ。周囲を取り囲む上級冒険者達の視線と嘲笑の中、条件は一騎打ちであったが、それは名ばかりのものであった。モルドは魔道具《ハデス・ヘッド》の力を用い、自身を完全な透明状態へと移行する。大剣による一撃で煙幕を作り、その隙に姿を消した彼は、不可視のままベルへ襲いかかった。
一方的な制圧
姿の見えない拳と蹴りが、四方八方からベルを打ち据える。こめかみへの強打、胸部への飛び蹴り、そして高座を砕く追撃。音と衝撃だけが残り、攻撃者の位置を特定する術はない。速度を武器とするベルであっても、事前動作を捉えられない攻防では反応が半拍遅れ、その差が致命的となっていた。透明化という未知の手段は、ベルの常識と戦闘経験を根底から破壊していく。
群衆の悪意
決闘の場は次第に見世物と化す。周囲の冒険者達は喝采と罵声を飛ばし、愉悦に染まった笑い声を上げる。高座の縁に追い詰められたベルは、彼らに突き飛ばされ、再びモルドの一撃を受ける。そこにあるのは武勇の競い合いではなく、集団による悪意の発露であった。酒と鬱屈、嫉妬と優越感が渦を巻き、若き冒険者を叩き潰そうとする。
冒険者の洗礼
モンスターとの戦いとは異なる、人間の敵意と害意。ベルはこれまで触れたことのない生々しい激情に晒され、眩暈と恐怖を覚える。優しさに守られてきた世界とは隔絶した場所で、無法者達の宴が続いていた。ここにいる者達もまた冒険者であり、この残酷さこそが冒険者の現実であると突きつけられる。
崩れゆく均衡
必死に意志を保とうと歯を食い縛るベルであったが、不可視の強打がさらに頬を打ち抜いた。血と痛みの中で、彼は一方的な暴力に晒され続ける。女神を救うという目的だけを胸に抱きながら、ベルはなおも立ち上がろうとするが、無法者達の宴は終わりを見せず、戦況は決定的な劣勢へと傾いていった。
傍観者の視線
無法者達が作り上げた残酷な見世物――ベルとモルドの一方的な戦いを、木上から見下ろす二つの視線があった。ヘルメスとアスフィである。興奮に沸く冒険者達の輪を前に、アスフィは強い嫌悪を示し、これを楽しむ理由を問い質した。
ヘルメスの意図
ヘルメスは、ベルの力と資質を自分の目で確かめたいと語る。理想は階層主との戦いであったが、それが叶わぬ以上、この形になったと述べた。アスフィが魔道具まで貸し与え、無法者を焚き付けた行為を非難すると、ヘルメスはそれを「愛」だと言い切る。しかし、その愛は過酷であり、アスフィには到底受け入れ難いものであった。
冒険者の洗礼という試練
ヘルメスは、ベルが人間の「綺麗ではない部分」を知らなさ過ぎると指摘する。遅かれ早かれ訪れる冒険者の洗礼――人の悪意や醜さに直面する経験を、今ここで知ってほしかったのだと。魔道具を渡し、見世物に仕立て上げた行為は、悪趣味でありながらも、彼なりの試練であり期待の裏返しであった。
賭けの結末
アスフィが、もしここでベルの牙が折れたらどうするのかと問うと、ヘルメスは淡々と「器ではなかっただけ」と答える。その冷酷さは神の視点であり、同時に覚悟でもあった。ヘスティアを巻き込んだことへの後悔を滲ませつつも、彼は介入しない。
仲間を想う光
やがてヘルメスは、別の方角へと視線を向け、苦笑する。ベルも、彼を取り巻く者達も、皆が眩しいほど仲間想いであることに気付いたからだ。残酷な宴の只中で、仲間を思う心だけが、確かな光として浮かび上がっていた。
桜花・命・ヴェルフによる強襲
森の奥で固まる冒険者集団を発見したヴェルフは、桜花・命・千草とともに即座に接敵した。すでに【ロキ・ファミリア】には置いて行かれていたが、目的は明確であり、ベルとヘスティアの奪還を最優先とする判断で一致していた。千草の支援により短弓を装備した桜花と命は、奇襲による同時射撃で敵陣に揺さぶりをかけた。
武神流の連携戦闘
上級冒険者の突撃に対し、桜花と命は弓を捨て、即座に近接戦へ移行する。狼人の高速攻撃を命が投げで制し、桜花が踏み付けで追撃するなど、タケミカヅチに叩き込まれた武芸を遺憾なく発揮した。千草の武器供給を受け、得物を切り替えながら戦う二人は、技と駆け引きで数的不利を補っていった。
数の暴力と森での消耗戦
敵は二十名を超え、包囲を試みる。桜花は地形を利用した戦闘を指示し、四人は固まりながら森の中で消耗戦に持ち込んだ。激戦の音は囚われていたヘスティアのもとにも届き、ベルへの不安を一層強めることになる。
リリの単独救出行動
一方、ヘスティアの監視役は油断していた。そこに現れたのはアルミラージ――に擬態したリリであった。果物と蜂蜜でバグベアーを誘引し、見張りを壊滅させた後、変身魔法を解除して正体を明かす。香水の匂いと獣人の感覚を複写する魔法によって居場所を特定し、ヘスティアを無事救出することに成功する。
ヴェルフの魔法と劣勢
桜花達の戦場では、ヴェルフが対魔力魔法【燃えつきろ、外法の業】を発動し、詠唱中の敵をまとめて魔力暴発に追い込んだ。しかし直後、彼は二人の上級冒険者に狙われ、防戦一方となる。致命傷は避けたものの、愛用の大刀を斜面の下へ落としてしまい、苦渋の表情を浮かべる。
リューの介入
ヴェルフに止めを刺そうとした瞬間、覆面の冒険者が背後から介入する。木刀の一撃で敵を沈めたその人物は、正体を明かしたリューであった。かつてモルド一味を叩きのめした存在の再来に、敵は恐慌に陥る。リューは瞬く間に戦況を覆し、上級冒険者達を蹂躙する。
戦線の整理と次への決断
圧倒的な助太刀により、桜花達の周囲の敵は一掃された。ヴェルフは斜面の下に消えた白布の包み――失われた得物を一瞬見つめるが、追うことを諦め、仲間のもとへ戻る。戦いはまだ終わっておらず、ベルのもとへ向かうための決断が優先されたのである。
決闘の転機と「視線」の覚醒
観客であった上級冒険者達が森へ散り、舞台にはベルと不可視のモルドだけが残った。ベルは攻撃の「時機」と位置を読み取り、防御を重ねて倒れない。決定打となったのは、フレイヤの執拗な「視線」を浴び続けた経験である。ベルは相手の姿ではなく、敵意を帯びた「視線」の出どころを感じ取り、透明状態でもモルドの位置を捕捉する段階へ至った。
水晶の散弾による不可視破りと兜の破壊
モルドが剣を抜き本気で斬りに来た瞬間、ベルは高座の青水晶を折って砕き、破片を散弾として投擲した。破片がモルドの輪郭と長剣に付着し、不可視の優位を消し去る。ベルは《ヘスティア・ナイフ》で斬撃を弾き、続けてアイズ直伝の回し蹴りをこめかみに叩き込み、魔道具『ハデス・ヘッド』を砕いて透明化を解除した。
ヘスティア救出と神威による強制停止
ヘスティアがリリと共に現れ、無事を告げて戦闘停止を命じたことで、ベル達は安堵し武器を下ろす。だがモルドは従わず再戦を煽る。ここでヘスティアは静かな一言とともに神威を解放し、下界の者を金縛りのように停止させた。命令は「剣を引きなさい」であり、上級冒険者達は恐慌と畏怖の中で撤退していく。
戦後の回復と仲間の再結集
ヘスティアはベルに高等回復薬を浴びせ、傷と体力を回復させる。ベルは神の威厳と、泣きべそで抱きつく幼い主神の落差に戸惑いながらも、彼女を愛しく感じる。ヴェルフは安堵し、リリは単独行動を叱責しつつも再会を喜ぶ。命・桜花・千草も含め、短い静けさが森を包む。
18階層の異変と「安全階層」の崩壊兆候
しかし直後、階層全体が揺れ始め、天井の白水晶(太陽役)の内部で巨大な影が蠢く。亀裂が走り、水晶片が落下し、周辺の青水晶にも破断が広がる。安全階層で本来あり得ない現象に、ベル達は異常事態を確信する。ヘスティアは「神威が原因か」と疑うが、ヘルメスはそれを否定し、ダンジョンが神々を憎み、神々の存在に「感付いた」ことで暴走したと語る。
逃走路の封鎖と階層主出現の確定
南端の洞窟側で崩落音が響き、逃げ道が塞がれた可能性が示される。ヘルメスはアスフィにリヴィラの街へ応援要請を命じ、自身は天井の亀裂から姿を現す存在を見据える。水晶が菊花のように開く中、出現したのは階層主であり、ヘルメスは「やっぱり階層主か」と苦笑する。
ゴライアスの異常出現と18階層の暗転
天井の白水晶を突き破り、巨人の階層主『ゴライアス』が頭部から出現した。肩と腕まで晒した直後、凄烈な産声とともに水晶を破砕し、腰まで現れたところで落下に移る。本来は17階層にいるべき階層主が、安全階層である18階層へ飛び越えて誕生した異常事態である。ゴライアスは落下の衝撃で中央樹を踏み潰し、巨大樹の樹洞や幹を押し潰して地中へ埋め込むほどの破壊を起こした。白水晶が完全粉砕された結果、階層は青水晶の薄明だけが残る蒼い暗がりへ変わった。
モルド一派の遭遇と黒い孤王の蹂躙
決闘の場から逃走していたモルド一派は、中央樹付近を横断中にゴライアスと鉢合わせた。全身を黒く染めたゴライアスは鮮血の眼で彼らを照準し、咆哮とともに蹂躙を開始する。階層主と戦う選択肢を持たない彼らは恐慌し、ただ逃げ惑うしかなかった。
神への強襲仕様という推測とベル達の衝撃
東の森出口に到着したベル達も、黒いゴライアスとモルド達の阿鼻叫喚を目撃する。ヘスティアは、ダンジョンが神々の存在を感知し、神を抹殺するために刺客としてモンスターを送り込んだ可能性を示す。突発的に用意されたためか、知能は低く手当たり次第に獲物を襲っているようにも見えるが、ベル達は階層主が「神への強襲仕様」であると知らされ息を呑む。
救助判断を巡る衝突とリューの評価
ベルは恐怖を振り払ってモルド達を助けに向かおうとするが、リューが手を掴み、少人数の臨時パーティで推定LV.4以上の階層主に挑む無謀さ、さらに「助ける価値」を問いかける。ベルは逡巡を一瞬で断ち切り、「助けましょう」と即答する。リューは「パーティのリーダー失格だ」と冷たく断じつつ、直後に「だが、間違っていない」と微笑し、先陣を切って救助へ走り出す。
仲間の同意と突入の決断
ベルは背後を振り返り、リリ、ヴェルフ、命、桜花、千草、ヘスティアが異を唱えず頷く姿を確認する。胸中で謝意を告げ、ベルは「行こう!」と号令を発した。七つの影は森を抜け、悲鳴と爆音が響く階層中央へ向けて草原を駆け、猛る巨人の戦場へ身を投じていった。
六章 英雄讃歌
18階層の異変と街からの目撃
白水晶を失った18階層は蒼い薄闇に沈み、階層中央の大草原では漆黒の巨人が暴れ回っていた。その咆哮と地響きは、西部湖沼の島に築かれたリヴィラの街からも明瞭に確認でき、崖際の広場に集まった冒険者達を硬直させた。安全階層に階層主が出現するという前代未聞の事態に、街の者達は即座に動けずにいた。
アスフィの帰還と強硬な号令
突如現れたアスフィは、街の実力者である買取所の主人ボールスに対し、街中の冒険者と武器を集めて階層主を討伐すると宣言する。逃走を主張するボールスに対し、アスフィは南の洞窟が崩落し退路が断たれた現状を突き付け、時間稼ぎでは全滅が先だと論破した。
黒い階層主の異常性と幽閉の推測
アスフィは、眼前のゴライアスが通常の階層主ではないこと、そして階層の幽閉状態と階層主の出現が連動している可能性を指摘する。すなわち、あれを倒さない限り脱出は叶わず、外部からの救援も期待できないという結論であった。
覚悟の共有と出撃準備
説得を受け入れたボールスは街の冒険者達に号令を下し、逃亡者は街への立ち入りを禁じると宣言する。腹を括った者達は武器を手に取り、次々と大草原へ向かった。街は一転して出撃準備に追われる。
アスフィの決断
喧騒の中、アスフィは広場の欄干に立ち、再び黒い巨人を見据える。そして逡巡なく崖下へと身を投じ、自らも戦場へ向かう決意を示した。
こうして、街全体を巻き込んだ階層主討伐の戦いが幕を開けるのである。
大草原の地獄絵図
ゴライアスの標的となったモルド一派は潰走し、逃げ遅れた者から太腕で殴り飛ばされて宙を舞った。回避しても吹き飛ばされる結末は変わらず、悲鳴だけが連鎖した。散り散りになった獲物を前に、ゴライアスは追撃を止め、血のように赤い眼をぎらつかせて体勢を整えた。
「咆哮」の実体化と恐慌の拡大
ゴライアスは口内を爆発させるように衝撃波を放ち、遠距離の冒険者を狙い撃ちして地面ごと吹き飛ばした。通常の威嚇ではなく、魔力を衝撃として放つ飛び道具の「咆哮」であり、射程も威力も規格外であった。距離を稼いでも安全にならない現実に、モルド一派は青ざめて混乱を深めた。
階層全域のモンスター招集
ゴライアスの雄叫びに呼応し、森・草原・湿地帯から18階層のモンスターが大量に集結した。冒険者達は四方から押し寄せる怪物の波に包囲され、否応なく乱戦へ引きずり込まれていく。ゴライアスは「咆哮」を撒き散らしながら、召集した尖兵ごと獲物を弾き飛ばし、個体としても戦線を押し潰していった。
リューの強襲と臨時パーティの介入
ゴライアスが冒険者を叩き潰そうとした瞬間、リューが死角から突撃し、木刀で左膝を強打して攻撃軌道を逸らした。続いて桜花と命が同じ左膝を狙うが、体皮は階層主の鎧のように硬く、桜花の斧は刃が欠け、命の刀は折れるほどであった。巨人は激昂し、大薙ぎの腕で二人を地盤ごと弾き飛ばし、さらに「咆哮」で追い打ちを狙う。
ヴェルフの対魔力魔法と「咆哮」阻止
ヴェルフが対魔力魔法【燃えつきろ、外法の業】を放ち、ゴライアスの「咆哮」を装填段階で強制中断させ、顔面周辺を爆発させた。直後、怒りの照準がヴェルフに向くが、リューが巨体の背へ駆け上がって後頭部を攻撃し、射角を逸らして救う。リューは個体の異常性を分析し、防御力・「咆哮」・反応速度の全てが標準個体を超え、潜在能力はLV.5級に届くと判断したうえで、脚を狙う撹乱戦で糸口を探し続けた。
モルド一派の乱戦崩壊
一方、南東の乱戦地帯ではモルド一派がモンスターの群れに飲み込まれていた。仲間の名を叫んでも応答はなく、ミノタウロスやバグベアなど中層級の怪物が途切れなく襲いかかる。モルドは肩を裂かれて地面に叩きつけられ、バグベアに囲まれて絶体絶命に陥る。
ベルの救援とリリの「運搬」
断末魔寸前のモルドの前に、白髪の少年ベルが現れ、モルドの長剣を拾ってバグベアを連続撃破し、魔石を貫いて瞬時に屠った。さらに戦場では、ベルが炎雷を連射しながら遠近を問わず冒険者達の窮地へ割って入り、敵味方入り乱れる中で救出を続けていた。そこへリリが現れ、モルドの襟首を掴んで戦場外へ引きずり出す。水晶で体を擦られて悲鳴を上げるモルドを、リリは最短の安全経路で運搬し、草原の安全地帯へ投げ出した。
救う理由と残された屈辱
モルドが「なぜ助ける」と問うと、リリは「底抜けにお人好しなベルへの感謝」を突きつけ、命を無駄にするなと吐き捨てて戦場へ戻った。取り残されたモルドは呆然と呟き、激しい剣戟の音だけが遠くから返ってきた。
後方支援へ回るヘスティアと千草
ヘスティアと千草は、戦場から離れてリヴィラの街へ向かった。階層主戦では武器や盾が短時間で損耗し、桜花達の装備が持たないと千草が説明する。零能のヘスティアとLV.1の千草が戦場に残るのは足手まといになり得るため、前線支援はリリに任せ、二人は補給確保に徹する方針を取った。
橋での襲撃と援軍の到来
湖の橋が見える地点でバグベアーに捕捉され、千草が前に出た瞬間、エルフ弓使いの矢がモンスターの瞳を射抜いた。直後、リヴィラの街からの冒険者集団が大挙して通過し、道中のモンスター殲滅・ベル達への急行・階層主への直進に分かれて進軍する。ヘスティアと千草は「援軍が来た」事実に高揚する。
アスフィの合流と囮役の押し付け
最前線に最も早く到達したのはアスフィであり、特製の爆炸薬(手投げ弾)をゴライアスへ投擲して爆破させるが、損傷は浅く火傷程度に留まる。アスフィはリューと合流し、「援軍が一斉射撃の準備に入るため、注意を引き付けてほしい」と伝える。ところがボールスの号令で「アンドロメダが囮」と既成事実化され、アスフィは抗議しつつも危険な囮役としてゴライアスの周囲を高速で走り回ることになる。
即席補給拠点と包囲網の形成
ゴライアスから距離を取った小高い丘に、街の冒険者達が即席の補給拠点を構築した。武器や盾、予備装備が大量に供給され、破損した者は交換できる体制となる。遅れて到着したヘスティアと千草は、【ファミリア】の垣根を越えて総勢百名規模の冒険者がゴライアスを包囲しつつある状況を目撃する。
魔導士の長文詠唱と盾役の防衛線
複数地点で魔導士が集結し、上位魔導士の証となる魔法円(魔導強化)を展開して長文詠唱による強力砲撃を準備する。無防備な詠唱中の魔導士を守るのは大盾を持つドワーフ達であり、ゴライアスの「咆哮」を盾で受け止めて余波すら通さない。巨腕は防ぎ切れないため、最前線の攪乱・攻撃はリューとアスフィに一任し、壁役は防衛に徹する。
前衛攻役の突撃と脚部への集中攻撃
前衛攻役は小隊を組み、リューとアスフィが注意を奪う隙に脚へ大剣・破壊鎚・斧を叩き込む。完全な連携ではなく、互いの邪魔にならない間合いで各自が動く「包囲戦」へ移行していく。アスフィの爆炸薬は視界妨害にもなり、小隊の断続攻撃が成立する。
ベルの戦線復帰と役割選択
援軍によりベルは戦場へ戻り、ヴェルフと合流する。命と桜花は別働で周辺モンスターを抑えており、ヴェルフはベルに「周囲のモンスター掃討に回るか」と問う。ベルが迷う中、前衛攻役の小隊が挑発混じりにベルを呼び、ヴェルフは「階層主を倒した相棒が自分の契約した冒険者だと威張らせてくれ」と背中を押す。ベルは前衛攻役に合流する。
大剣の受領と“置き去り”の危機
眼帯の大男の小隊から予備の大剣を渡され、ベルは四名で突撃する。しかしゴライアスが反応した瞬間、経験豊富な前衛達は危機察知で即座に離脱し、ベルだけが間合いに残される格好となる。ベルは階層主を単独撃破した剣士への憧憬を脳裏に掠めさせ、恐怖を押し切って前進を選ぶ。
ベルの踏み込みと初撃の成果
ベルは回避行動を捨てて最高速度で突進し、巨腕の通過地点を間一髪で抜けて懐へ侵入する。左足へ大剣を叩きつけ、刃は通らないが衝撃が貫通する手応えを得る。既に蓄積していた損害もあり、巨体が揺らいだことで周囲が沸く。ベルは即座に一撃離脱し、股下を抜けて後方へ退避する。
リューの指揮下に入るベル
並走してきたリューが、無謀な単独突撃を厳しく戒める。ベルの敏捷を評価し、「合図を出す。攻撃の時だけ私の後に続け」と指示する。ベルは従い、以後はリューの後方に密着して行動し、師弟のように連携しながら階層主攻略を継続した。
一斉砲撃の成功と「膝をつく」ゴライアス
前衛が脚部への波状攻撃で動きを鈍らせた隙に、魔導士の詠唱が完了し、前衛撤退の号令がかかる。多属性の攻撃魔法が一斉射撃として叩き込まれ、砲火の中心でゴライアスは片膝をつき、体皮は抉れて血肉を晒し、消耗の白い呼気を吐いた。冒険者達は勝機と見て歓声を上げ、前衛攻役が「たたみかけ」に入った。
再生の発動と包囲網の壊滅
リューが異変を察した直後、ゴライアスは顔を上げ、傷が消え、赤い光粒(魔力燃焼の残滓)を発散しながら驚異的速度で自己再生した。直後、両拳を振り下ろして大地を割り、放射状の衝撃波と地割れで前衛攻役と後衛(魔導士・壁役)までまとめて吹き飛ばす。包囲網は一瞬で崩壊し、戦場は死屍累々となった。
第二次召喚と戦線の分裂
ゴライアスは追い打ちとして『咆哮』で動く者を狙い撃ちし、さらに二度目の召喚を行って階層中のモンスターを呼び寄せる。冒険者側は統制が取れず、撤退・治療・再詠唱がばらばらに発生し、前線維持が困難になる。アスフィは部隊再編を促すが、現場は混乱に支配された。
リューの判断とベルの決意
リューはベルに「周囲と協力してモンスターを抑えろ」と命じ、自身はアスフィ(アンドロメダ)と共にゴライアスを押さえ、次の一斉射撃に向けて時間を稼ぐと決める。最悪の戦況と倒れ伏す冒険者、散乱する武器を見たベルは、自分の切り札であるスキル【英雄願望(アルゴノゥト)】の行使を決断し、最高出力の溜めに入る。発動後に戦力になれなくなるリスクを承知で、「やるしかない」と迷いを断ち切った。
補給拠点での危機認識とリリの再出動
包囲網壊滅の光景を見たリリは愕然とし、拠点へ急行して「武器と道具を前線に届ける」と宣言する。動ける者がほぼいないため、恐怖で固まる者より自分が動く方が良いと判断し、ヘスティアと共に装備品の選定・詰め込みを開始する。千草は爆発を見て血相を変えて飛び出し、桜花達のもとへ向かったとヘスティアが説明する。
“深層産”の黒大剣の発見
リリは拠点で、布に包まれた漆黒の大剣状の得物に目を奪われる。未加工に近い無骨な外見だが、硬度・切れ味・破壊力を見抜き、素材が大型級モンスターの爪か牙、しかも出身が深層域だと推測する。リリはそれをバックパックへ強引に取り付け、能力補正で膨れ上がった荷を担いで飛び出す。ベルの光の一撃と組み合わせれば突破口になるかもしれない、という発想で前線へ急行した。
リューとアスフィの死線
リューはゴライアスの懐に踏み留まり、回避と打撃を繰り返して自らを囮とする戦いを続けた。『咆哮』と巨腕の風圧に晒されながらも離脱せず、的になることで敵の注意を引き付ける。アスフィも爆炸薬を投げ込み援護するが、体皮は貫けず、核への有効打や魔法による決定打は望めないと判断される。それでも二人は魔力枯渇まで削り続ける以外に道はないとして、絶望的な状況に抗い続けた。
魔導士の壊滅と戦術の破綻
ゴライアスは詠唱中の魔導士を優先的に索敵し、『咆哮』で狙撃する。足を止めざるを得ない魔導士は次々に倒れ、周囲のモンスターにも阻まれて砲撃準備が進まない。前衛壁役が機能せず、魔導士を守る盾が欠けたことで、対階層主戦の要である砲撃が成立しなくなり、戦況はさらに悪化した。
桜花の危機感と千草の到来
魔導士が倒れていく光景を見た桜花は、このままでは戦線が崩壊すると悟る。その最中、補給を背負って危険地帯に駆け込んできた千草と合流する。盾を備えた装備を見た桜花は、前衛壁役として立つ決意を固め、千草に盾を出すよう叫んだ。
恐怖と決断
千草は前衛壁役の危険性を理解し、涙ながらに拒絶する。桜花が死ぬかもしれない現実に怯え、必死に制止する。しかし桜花は、自分が体を張らなければ他者を犠牲にするだけの男になると訴え、タケミカヅチの眷族としての誇りを示す。彼の覚悟に打たれた千草は涙をこぼし、震える手で盾を差し出した。
別れの背中
桜花は礼を告げて大盾を受け取り、振り返らず戦場へ駆け出す。千草は嗚咽を堪えながら、その背中をただ見送ることしかできなかった。戦場では、仲間それぞれが恐怖と覚悟を抱え、自らの役割を選び取っていく段階に入っていた。
英雄願望の解放
白光の粒子の収束が止まり、【英雄願望】は最大畜力に到達した。ベルは発光する右手を握り締め、草原を疾走してゴライアスへ肉薄する。接近に気付いたリューとアスフィは退避し、ベルは真正面から敵と相対した。
正面衝突と致命の一撃
ゴライアスが『咆哮』を放つのと同時、ベルは【ファイアボルト】を解放する。大炎雷は敵の魔力塊を貫き、弾道は逸れながらも頭部を撃ち抜いた。顔面の大半が消失し、周囲は勝利を確信しかける。
再生という絶望
しかし、巨人は即座に再生を開始した。赤い粒子が噴き上がり、失われた頭部が修復されていく。畜力最大の一撃すら致命に至らず、【英雄願望】は通用しなかった。殺意を宿した双眼がベルを捉える。
反動と直撃
反動で動けないベルに向け、『咆哮』が叩き込まれる。回避は間に合わず、吹き飛ばされたベルの前に、さらに巨躯が迫る。救援は届かず、回避不能の一撃が振り下ろされようとした。
桜花の介入
その瞬間、桜花が盾を構えて割り込む。薙ぎ払いは盾ごと彼の体に食い込み、衝撃はベルにも貫通する。血飛沫とともに二人は吹き飛ばされ、眷族のエンブレムが宙を舞った。
仲間たちの反応
拠点から目撃したヘスティアは呆然と駆け出し、武器を届け損ねたリリも戦場へ走る。ヴェルフはベルの名を呼びながら、主神の忠告を思い出し、自責に駆られて東の森へと駆け込んだ。
戦況の転換点
最大火力の失敗と桜花の重傷により、戦況は決定的に悪化する。仲間の覚悟と犠牲が重なり、戦いは次の局面へと突入した。
桜花の救出と離脱
重傷を負った桜花は地面に墜落し、千草と命に抱えられて戦域外へと運び出された。血に染まった体は力なく、意識も閉ざされたままであった。
ベルの救助と応急対応
別方向へ吹き飛ばされたベルは、疾走してきたリューによって抱え上げられ、戦場南部の草原へと運ばれた。呼びかけにも反応はなく、全身は裂傷と骨折に覆われ、瀕死の状態であった。高等回復薬は尽き、通常の回復薬では治療が追いつかない状況であることが判明する。
ヘスティアの到着と決断
補給拠点から駆け付けたヘスティアもまた、手持ちの道具が尽きていることを悟る。二人はベルの命が辛うじて繋がっていることを確認するが、戦場ではアスフィが単身ゴライアスを引き付け続け、窮地に立たされていた。
時間稼ぎの要請
ヘスティアはリューに対し、戦場へ戻って時間を稼ぐよう要請する。ベルは必ず目を覚まし、ゴライアスを倒すと強く信じる神の言葉に、リューは決意を固め、再び戦場へと向かった。
神の祈りと叫び
一人残されたヘスティアは、ベルの右手を握り締め、戦場から届く仲間たちの叫びを伝えながら必死に呼びかける。仲間を救えるのはベルしかいないと、胸の底から訴え続け、深紅の瞳を開くよう懇願する。
覚醒への呼び声
瀕死の少年に向けて放たれた神の叫びはただ一つであった。
立ち上がれ、ベル・クラネル。
覚醒への導入
意識の闇を漂うベルのもとに、ヘスティアの必死な呼び声が届く。体は動かずとも、右手に宿る熱だけが彼を現世へ繋ぎ止めていた。立ち上がろうとする意思が肉体を叱咤するが、限界に達した体は応えない。
英雄の定義
その瞬間、闇に響いたのはヘルメスの声であり、やがて祖父の言葉へと重なる。「己を賭した者こそが英雄である」「仲間を守れ、女を救え、己を賭けろ」。幼少期の原点が呼び覚まされ、ベルの内に眠る誓いが再点火される。
覚醒
叫びとともにベルは目覚め、震える体で立ち上がる。その前に現れたのはヘスティア、そしてヘルメス。恥じぬため、仲間を救うため、限界を超えて戦う決意を固める。
武器の受領
駆け付けたリリが投じた黒大剣を、ベルは片手で掴み取る。両手で構え、禍々しい黒き巨人を真っ向から見据える。
力の解放
憧憬と願望を燃料に、【英雄願望】の畜力を開始。背の刻印が灼熱に輝き、限界解除が発動する。鐘の音は小さな響きから荘厳な大鐘楼の轟きへと変わり、戦場全体に鳴り渡った。
戦意喪失の広がり
主戦場から離れた南東部、大草原と森の境界では、モルド一派を含む冒険者達が押し寄せるモンスターに追い詰められていた。階層主ゴライアスの圧倒的暴威と終わりの見えない戦況により、撤退や逃走を口にする者が現れ、戦意は急速に失われつつあった。
モルドの叱咤
逃げ腰になる仲間達を前に、モルドは激昂しながら制止する。リューやアスフィが命懸けでゴライアスを食い止めている現実を突き付け、「何もせずに逃げていいのか」と怒鳴り散らした。その言葉は荒々しくも、彼自身の後悔と焦燥から発せられたものであった。
冒険者達の覚醒
満身創痍で立ち尽くす前衛や魔導士達にまで罵声を浴びせ、矜持を刺激された冒険者達は次第に立ち上がる。モルドが襲い来る大甲虫を斬り伏せながら叫び続けた、その瞬間、戦場全体に荘厳な鐘の音が響き渡った。
希望の出現
南方を振り向いた冒険者達の視界に映ったのは、白髪の少年ベルと、漆黒の大剣に収束する眩い光であった。言葉を交わさずとも、冒険者としての直感がそこに希望を見出す。
総突撃
モルドは咆哮とともに突撃を命じ、全冒険者が一斉に前進する。ゴライアスが異変を察知してモンスターをベルへ向かわせる中、冒険者達は彼を守るため雄叫びを上げ、怪物達へ斬りかかった。戦場は再び、希望を中心に動き出した。
階層主の進撃開始
大鐘楼の音に呼応するかのように、ゴライアスは明確な敵意を示し始めた。赤眼の色を変え、モンスターの全軍を差し向けつつ、南の草原に立つベル・クラネルただ一人を標的として前進を開始する。その異変にアスフィは即座に気付き、リューは彼のもとへ近づけさせまいと強い決意を示した。
リューとアスフィの阻止行動
疾走するゴライアスに対し、リューは恐れず肉薄し、走行中の膝を的確に打ち抜く。重心を崩した巨人は大草原に倒れ伏し、階層主が四つん這いになるという異常事態が生じた。アスフィもこの好機を逃さず、短剣で攻撃を重ね、二人は一時的にゴライアスの進撃を止める。
並行詠唱という離れ業
怒り狂うゴライアスの猛撃をかわしながら、リューは詠唱を開始する。攻撃・移動・回避と同時に詠唱を進める並行詠唱という高度な技を、階層主相手に成し遂げる姿は、第一級冒険者であるアスフィや命をも戦慄させた。その戦闘技術は、剣姫にも引けを取らぬ域に達していた。
命の決意と参戦
瀕死の桜花を千草に託した命は、戦場へ戻り、リューの戦いに心を打たれる。自らの未熟さを痛感しながらも、仲間とベルの力になるため詠唱を開始し、全精神力を一撃に注ぐ覚悟を固めた。
飛翔靴タラリアの解放
ゴライアスが再び立ち上がろうとする中、アスフィは切り札を解放する。飛翔靴タラリアの力により空へ舞い上がり、上空から顔面へ斬撃を叩き込む。階層主は片目を潰され、進撃を阻まれる。
ルミノス・ウィンドの一斉砲火
アスフィの援護を受け、リューは詠唱を完成させる。緑風を纏った光玉群【ルミノス・ウィンド】がゴライアスを次々と貫き、黒い体皮を破壊し後退させた。
重圧魔法フツノミタマ
しかし、損傷と再生を繰り返しながらゴライアスは強引に突進する。リューとアスフィが危機に陥った瞬間、命が切り札を解放した。超重圧魔法【フツノミタマ】が発動し、巨大な重力の檻がゴライアスを押し潰す。大草原は円状に陥没し、階層主は膝を地に叩き付けられる。
限界迫る結界
それでもなお、ゴライアスは怪力で重圧を押し返し始める。命は力負けを悟りながらも必死に抑え続けるが、結界は刻一刻と破られつつあった。ベル・クラネルの畜力が完了する前に、時間は残されていない状況となる。
ヴェルフの後悔と決断
ヴェルフは、ベルと桜花が吹き飛ばされた直後、自分だけが何もできず立ち尽くしていた事実に耐えられず、東の森へ走った。ヘファイストスに預け、二度と打たないと誓って拒んだ「白布に包まれた武器」を取り戻すためである。女神からの忠告「意地と仲間を秤にかけるな」が、今の惨状によって現実の刃として突き刺さり、矜持を捨ててでも力を借りる覚悟へ変わった。
封印していた魔剣への呼びかけ
森の斜面でヴェルフは、見つからない武器に向けて叫び続けた。捨てたものに今さら助けを乞う虫の良さを自覚しながらも、「友を助けたい」「砕けさせてくれ」と願った。その声に応じるように赤い光が灯り、紅の宝珠を備えた武器が根元に突き立つ形で発見される。ヴェルフはそれを掴み、重さを噛み締めながら戦場へ引き返した。
魔剣による前線の掃討
ヴェルフは戦場へ戻ると、ベルへ迫るモンスター群へ突入し、警告とともに白布の武器を薙ぎ払った。直後、大炎塊が爆走し、モンスターを一掃、草原ごと灰燼に帰す。白布が焼け落ち、飾り気のない長剣の姿が露わとなるが、同時に剣身には早くも亀裂が走り、自壊が始まっていた。
結界の崩壊と単独の迎撃
命の重圧魔法が限界に達し、ゴライアスが結界へ両手を突き入れて強引に破り始める。拘束から解けた巨人に対し、リューとアスフィが構える中、ヴェルフは先頭へ進み出た。右手だけで長剣を握り、ただ一撃のために背後へ溜め、魔剣の真名を叫ぶ。
火月の一撃と致命傷の刻印
ヴェルフの叫びとともに、真紅の轟炎が放たれた。巨大な炎流が一直線にゴライアスを呑み込み、全身を覆って燃焼させる。自己再生が追い付かず、治癒の光と赤粒が立ち上る先から炎が喰らい尽くし、巨人の膨大な魔力を焼き枯らす勢いとなった。長い戦闘の中で初めて、ゴライアスに「致命傷」と言える烙印が刻まれ、アスフィとリューはクロッゾの魔剣の威力に戦慄した。
魔剣の自壊と別離
放った直後、剣身に走った亀裂は全体へ広がり、魔剣はヴェルフの手の中で砕け散った。ヴェルフは破片が別離の音を立てる中、うつむいて「すまねえ」と呟き、力を貸して砕けた武器への謝意と悔恨を飲み込んだ。
決着前夜――畜力完了の瞬間
ベルは三分の畜力が満ちたことを悟り、燃え盛るゴライアスを正面に据えて黒大剣を構えた。引鉄に据えた憧憬は英雄ダヴィドであり、仲間が切り拓いた唯一の好機に全てを賭す覚悟を固める。
総突貫と道の形成
ヘスティアの号令と同時にベルは疾走を開始した。ヴェルフ、命、リュー、アスフィらが進路を開き、冒険者全員が背中で信を示す。燃える巨人の薙ぎ払いを前にしても速度を緩めず、ベルは距離を詰め切った。
英雄の一撃
集束した純白の極光を剣に載せ、ベルは渾身の一撃を放つ。轟音と閃光が戦場を覆い、次の瞬間、ゴライアスは右腕と上半身を失って断たれた。剣身を消耗し尽くした黒大剣を振り抜いた姿勢のまま、ベルは静止する。
階層主の消滅
残された下半身と左腕は灰へと還り、魔石を失った体は溶けるように消失した。大量の灰の上にドロップアイテム「ゴライアスの硬皮」が残され、戦いの終結が確定する。
勝利の歓声
沈黙していたダンジョンに新たな産声はなく、冒険者達は歓喜の叫びを上げた。武器を掲げ、肩を組み、涙を浮かべて凱歌を分かち合う。
仲間のもとへ
力尽きて片膝をついたベルのもとへ、ヘスティアを先頭にヴェルフ、リリ、リュー、命らが駆け寄る。蒼くきらめく水晶の花の光の下、18階層は勝利の余韻に包まれた。
エピローグ 兎を射る者
階層主ゴライアスの撃破後、ベル達は後日、全員無事に地上へ帰還した。18階層という極限状況から一人の脱落者も出さず生還した事実は、関係者に大きな安堵と歓喜をもたらした。ある者は主神に感謝を捧げ、砕け散った武器の破片を弔い、ある者は派閥へ顛末を報告し、またある者は正体を隠したまま日常へと戻っていった。
一方、今回の異常事態を目撃した冒険者達には厳格な箝口令が敷かれた。安全階層である18階層に階層主が出現した前代未聞の事件は、ギルドによって神為的事故、すなわち「神災」と位置付けられた。混乱を防ぐため、関与した主神達には注意と罰則が与えられ、事件の詳細は外部に漏らされないよう徹底されたのである。
しかし、人の噂は完全には封じられない。やがて、水面下では「18階層の階層主を討ったのはリトル・ルーキー、ベル・クラネルである」という情報が流れ始めた。
その報告を受け、暗い一室で愉悦の笑みを浮かべる神がいた。彼は報告者を労わりつつ、天を仰ぎ、強い執着を宿した眼差しで名を呟く。
ベル・クラネル――その存在は、すでに一柱の神の狩猟対象として、鮮やかに射抜かれていた。
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