スポンサーリンク
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかフィクション(Novel)読書感想

小説【ダンまち】「ファミリアクロニクル episode リュー2」感想・ネタバレ

スポンサーリンク
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episode リュー2の表紙画像(レビュー記事導入用) ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

episode フレイヤ レビュー
ダンまち全巻まとめ
episodeアスフィ レビュー

スポンサーリンク
  1. どんな本?
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. リューとアストレアの再会
    2. 剣製都市ゾーリンゲン
    3. 新生アストレア・ファミリア
    4. リューのステータス更新
    5. セシルとの対立
    6. 正義の継承
    7. 新たな武器の完成
  6. 登場キャラクター
    1. アストレア・ファミリア
      1. アストレア
      2. リュー・リオン
      3. セシル・ブラックリーザ
      4. シャウ
      5. イセリナ
      6. ウランダ
      7. アリーゼ・ローヴェル
      8. ゴジョウノ・輝夜
      9. ライラ
      10. ノイン・ユニック
      11. アスタ・ノックス
      12. ネーゼ・ランケット
      13. イスカ・ブラ
      14. マリュー・レアージュ
      15. リャーナ・リーツ
      16. セルティ・スロア
    2. ヘスティア・ファミリア
      1. ヘスティア
      2. ベル・クラネル
    3. フレイヤ・ファミリア
      1. フレイヤ
      2. シル
      3. オッタル
      4. ヘグニ・ラグナール
      5. 強靱な勇士(エインヘリヤル)
    4. ヘルメス・ファミリア
      1. ヘルメス
      2. アスフィ・アル・アンドロメダ
      3. ヘルメス・ファミリアの足自慢
    5. ガネーシャ・ファミリア
      1. シャクティ・ヴァルマ
      2. アーディ・ヴァルマ
    6. ヘファイストス・ファミリア
      1. ヘファイストス
    7. ロキ・ファミリア
      1. ロキ
    8. ブラックリーザ工房・剣製都市ゾーリンゲン
      1. セシルの父親
      2. セシルの兄達
    9. 精霊
      1. ユーフィ
    10. その他の神々・人物
      1. ボールス
      2. デメテル
      3. ニョルズ
      4. アルゴノゥト
    11. モンスター・異端児(ゼノス)
      1. バグベアー
      2. ジャガーノート
      3. 漆黒のゴライアス
  7. 展開まとめ
    1. 星々のローカス
    2. 黄昏の少女
    3. 五年前にあったなんてことのない少女達の話
    4. ファミリアクロニクル
  8. ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか  一覧
    1. ダンジジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア
    2. アストレア・レコード
  9. その他フィクション

どんな本?

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー とは、大森藤ノ氏が書いたライトノベルの外伝シリーズ。

このシリーズは、ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかの世界観を基にしていますが、主人公はベル・クラネルではなく、リュー・リオンという元冒険者で現在は酒場で働くエルフの女性。

リューの過去や現在の活躍、そして彼女が慕う女神アストレアとの関係などが描かれている。

読んだ本のタイトル

#ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー2
著者:#大森藤ノ 氏
イラスト:#ニリツ  氏

BOOK☆WALKERで購入

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

今一度、正義を試されるクロニクル・シリーズ第三弾!

それは神の眷族が紡ぐ歴史の欠片――。
「会いに行きます……アストレア様」
迷宮都市がヘスティアvsフレイヤの『戦争遊戯』の準備に沸く中、リューはひとり、都市を発った。
向かうは遥か東、剣製都市。
その地で待つ女神に会うため、力を求めるため、そして自らの時計を前に進めるため、五年分の決意を秘めて再会に臨むリューだったが――
「貴方のこと、絶対認めないんだから!!」
正義の女神を慕う『後輩』達と衝突してしまう。更にアストレアにも帰還を許されず、剣製都市への滞在を言い渡され……。
「リュー、貴方の答えを聞かせて?」
今一度、正義を試されるクロニクル・シリーズ第三弾!

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー2

感想

本編17巻末から18巻序盤の頃の話。
戦争遊戯の中盤で突然現れた、リューとアストレア・ファミリアの話が収録されていた。

オラリオではフレイヤファミリアと連合の戦争遊戯で盛り上がっていた。

その最中、リューは、戦力としての能力を高めるため、レベル上げのため剣製都市へとアストレアに会うために旅をしていた。

彼女との再会後、アストレアにステータスの更新をしてもらったリューだが、アストレアは彼女にここに滞在するようにとの命令を下す。オラリオへの帰還を心待ちにしていたリューは、主神の意図に訝しげながら、レベル5へレベルアップした力を慣らすために自分を鍛え始めたが、、

突然増した力に戸惑い繊細な身体のコントロールが出来なくなっていた。

そんな手加減が出来ない状態の彼女に協力を申し出るアストレア・ファミリアの後輩達。

唯一、現在の団長である鍛治師のセシルがリューに反発するが、他の団員達は我関せずにリューの訓練に付き合う。

そして、呆気なく撃沈。
最高でレベル2の彼女達はリューの練習相手にならなかった。
むしろ怪我をさせてしまうかもしれないと彼女達を遠ざける。

それで単独で訓練をするリューだったが、、
川沿いで訓練したら、慣れない身体に苦戦して川に転落してずぶ濡れになってアストレアの下に帰って来た。

そんな彼女を迎え入れるアストレア。
それに対して嫉妬の炎を燃やす後輩達。

そうして、リューがある程度身体に慣れた時。

そして、リューが新しい力に慣れてきたとき、アストレアの指示で、後輩たちが中位の精霊、上位の風の精霊”ユーフィ”をけしかけ、リューの訓練相手とする。
訓練が終わった夜にはアストレアからステータス更新を行い、リューのステータスはドンドンと上昇し。

遂には、レベル6へと至ってしまう。
アストレアは、急激にレベルを上げすに少しずつ上げてリューのレベルと身体の調整を最短にするようにしてくれていた。

さらに、レベル6になったリューに新たな魔法が発現した。
【星々の記憶(アストレア・レコード)】・正義継承、、

かつての仲間達の能力を受け継ぐ魔法。
彼女の中に仲間達は生きていた。

そして、現在アストレア・ファミリアの団長のセリナから戦闘衣と新たな木刀を貰い。。
さらに女神アストレアはリューが戦争遊戯に参加出来るように、主神も参加すると言って新生アストレア・ファミリアのデビュー戦を飾るためにオラリオへ向かう。

この話以外に、短編でガネーシャ・ファミリアの団員だったアーディ・ヴェルマとリューの話。
アルゴノゥトの話が出てくる。
アルゴノゥトの物語を知ってると、、、w

さらに、もう一つの短編は初期のアストレア・ファミリアの団長アリーゼ、副団長カグヤ、参謀ライラの3人の話。
リューの事を考えている彼女達の話。

最後までお読み頂きありがとうございます。

BOOK☆WALKERで購入

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

episode フレイヤ レビュー
ダンまち全巻まとめ
episodeアスフィ レビュー

考察・解説

リューとアストレアの再会

『ファミリアクロニクル episodeリュー2』における「リューとアストレアの再会」は、5年もの間、罪悪感から主神を遠ざけていたリューが、ついに自らの過去と向き合い、女神からの深い赦しと愛情を受け取る感動的な場面である。以下に、再会の経緯とその詳細な描写について解説する。

再会への決意と罪悪感
・5年前、かつての仲間であるアリーゼたちを喪い、復讐の炎に身を焦がしたリューは、正義の女神であるアストレアを自らの意志で遠ざけ、オラリオに残った。
・しかし現在、フレイヤの暴走による派閥大戦を目前に控え、圧倒的な力不足を痛感したリューは、ベルを助けシルを止める力を得るため、5年間停滞していたステイタスの更新を決意する。
・彼女は己の都合で再び女神を頼ることに強い罪悪感を抱き、断罪されるべきだという思いを抱えたまま、アストレアが滞在する剣製都市ゾーリンゲンへと向かった。

5年ぶりの対面と女神の赦し
・剣製都市の拠点である星休む宿の館の前で、ついにリューはアストレアと対面する。
・西日の光の中に現れたアストレアは、長い胡桃色の髪と星海のような双眸を持ち、リューの記憶と何一つ変わらない清廉な姿であった。
・厳しい叱責を覚悟していたリューに対し、アストレアが最初にかけた言葉は、故郷に戻った我が子を迎えるような「久しぶりね、リュー」「そして……お帰りなさい、リュー」という優しさに満ちたものであった。
・その瞬間、リューは自分が許されたことを悟り、言葉を返すこともできず、酒場の同僚たちでさえ見たことのないような大粒の涙をこぼし、アストレアの胸の中で嗚咽を押し殺しながら抱きしめられた。

空白の時間を埋める対話
・再会の抱擁を交わし、身を清めた後、二人は神室でテーブルを挟んで向かい合い、5年間の空白を埋めるように語り合った。
・手紙だけでは伝えきれなかったオラリオでの出来事、酒場での生活、そしてベル・クラネルやシルのことをリューは報告する。
・その際、ベルについて語るリューの口調があまりにも優しく甘かったため、アストレアから今のリューは恋をした女の子みたいだとからかわれ、リューが赤面して慌てふためくという穏やかな一幕も描かれた。

関係性の変化と再確認
・かつて星屑の庭にアリーゼたちを抱えていた頃、アストレアの周りには常に多くの仲間がいて、リューと二人きりでこれほど長く話し込む機会はなかった。
・アストレアが、神にとってもこの5年は悠久より長く感じていたと語るように、离れ離れになっていた時間が二人にとってどれほど重いものであったかが示される。
・この再会を通じて、リューは自分の帰る場所がアストレアの胸の中であることを再確認し、迷いと罪悪感に苛まれていた心を救済されることになる。
・同時に、外から見守っていた後輩のセシルたちに、二人の抱擁が強烈な羨望と嫉妬を抱かせるという、新生ファミリア内での複雑な感情の火種も生むことになった。

まとめ
リューとアストレアの再会は、単なる主神と眷族の合流に留まらず、長年の罪悪感からの解放と精神的な救済を描いた重要なエピソードである。過去の悲劇を乗り越え、新たな絆を結び直した二人の姿は、来るべき大戦に向けたリューの確かな一歩を示している。

剣製都市ゾーリンゲン

『ファミリアクロニクル episodeリュー2』に登場する「剣製都市ゾーリンゲン」は、迷宮都市オラリオとは異なる独自の発展を遂げた鍛冶師の都である。以下に、その概要や立地、都市特有の文化や歴史について詳細を解説する。

概要と立地
剣製都市ゾーリンゲンは、大陸最西端にある迷宮都市オラリオから、峻厳なアルヴ山脈を越えた東に位置する工業都市である。その名の通り、剣を中心とした武具の生産を担う「鍛冶師達の都」として栄えている。
・巨大な城壁に守られた都市内部には、職人たちの工房兼住居である平屋建ての石造りや木造りの建物がひしめき合っている。
・至る所から鎚の音や怒鳴り声が響き、炉の熱気と煙突からの黒煙が立ち込める、オラリオの工業区をより広大にしたような街並みが特徴である。
・都市周辺には鉱脈のある山岳、炭のための森林地帯、鍛冶水となる川が揃っており、武器造りに最適な豊かな自然環境に恵まれている。

世界最大の武器供給地と職人の葛藤
ゾーリンゲンは、世界中から武具の注文を受ける巨大な供給地としての側面を持つ。
・帝国や海洋国、カイオス砂漠諸国などから大量受注を受け、世界で最も売れている武器の産地として知られている。
・大量生産を前提とした「平均点の高い画一的な武器」を作ることに特化している。
・そのため、特定の使い手一人を思い浮かべて打つ「百点を超えるような一振り」を生み出すことが難しいという、刀剣製造都市ならではの職人の葛藤も存在する。

精霊との共存と「精霊炉」
この都市の豊かな資源は、森や山に住み着いている精霊たちの恩恵によるものである。
・都市には精霊に由来する「精霊炉」と呼ばれる、緑玉明色の光を放つ逆漏斗状の施設が存在する。
・炉の内部で精霊の魔力に焼かれながら鍛冶を行う特殊な工房であり、魔剣や特殊武装を作る際に素材や職人の能力を極限まで底上げする。
・精霊炉を使用できるのは、精霊に認められ「精霊の滴(涙)」を持ち帰った一流の鍛冶師のみと決められている。
・都市は精霊との交渉によって「精霊の護布(サラマンダー・ウールなど)」も得ており、オラリオのバベルにも供給されている。

アストレアとの深い縁
ゾーリンゲンの人々は、正義の女神アストレアに対して深い敬意と感謝を抱いている。
・数年前、古い風習が形骸化し鍛冶師たちが傲慢になったことで精霊たちの怒りを買い、都市が存亡的危機に陥る事件が発生した。
・その際、偶然訪れたアストレアが仲裁に入り、事なきを得たという過去を持つ。
・現在、アストレアは精霊たちを見守り自然環境を保全するため、都市の喧騒から離れた森の外れに「星休む宿」という拠点を構えている。
・彼女は、セシル・ブラックリーザをはじめとする新たな眷族たちとそこで暮らしている。

まとめ
剣製都市ゾーリンゲンは、豊富な資源と精霊の恩恵、自然環境、そして職人たちの卓越した技術によって成り立つ世界有数の武具生産拠点である。画一的な大量生産という職人の葛藤を抱えつつも、かつて都市を救った女神アストレアへの敬意を胸に、今日も多くの鍛冶師たちが鎚を振るい続けている。

新生アストレア・ファミリア

『ファミリアクロニクル episodeリュー2』に登場する「新生アストレア・ファミリア」は、剣製都市ゾーリンゲンに拠点を移したアストレアが新たに迎え入れた少女たちによる派閥である。以下に、その概要や特徴、所属メンバーについて解説する。

「新生」ではなく同じ【アストレア・ファミリア】
アストレア自身には、新しく派閥を作ったという意識はない。
・亡くなったアリーゼたちも、現在ゾーリンゲンにいる団員たちも、彼女にとっては等しく大切な子供たちである。
・昔も今も同じ一つの【アストレア・ファミリア】であると認識している。
・しかし、アリーゼたちが命を落とし、リューも離れていた期間に迎え入れた眷族たちであるため、世間からは新生した派閥として見られているのが実情である。

拠点と活動
拠点は、剣製都市ゾーリンゲンの東の森の奥に建てられた「星休む宿」である。
・かつてオラリオにあった本拠「星屑の庭」を彷彿とさせる二階建ての館である。
・アストレアはここで精霊たちの保護や自然保全を行いながら、眷族たちと暮らしている。

主な所属メンバー
現在、アストレアとリューを除いて、ヒューマンと亜人の少女合わせて6名が生活している。主なメンバーの特徴は以下の通りである。
・セシル・ブラックリーザ:ヒューマンの鍛冶師で団長(Lv.2)。アストレアが剣製都市で最初に声をかけた最古参の団員である。当初はアストレアを利用するつもりで加入したが、次第に彼女を深く敬愛するようになる。リューの新たな専用武器「アルヴス・ユースティティア」を打ち上げ、リューの半身(鍛冶師)となることを誓う。
・シャウ:小人族(パルゥム)の少女(Lv.1)。かつての参謀ライラに憧れ、弱い人を助けられる小人族になりたいという真っ直ぐな正義を持っている。
・イセリナ:狼人(ウェアウルフ)の少女(Lv.2)。アストレアが剣製都市を救った武勇伝を聞きつけて加入した。現在は自身の正義を探している最中である。
・ウランダ:ヒューマンの呪詛使い。アストレアへの愛が極めて重く、女神を守ることを自身の正義としている。

それぞれの「正義」を探す後輩たちと先達との交流
彼女たちは旧世代のメンバーとは異なり、まだ未熟で、各々の正義を探している途上にある後輩たちである。
・主神アストレアへの敬愛は皆深く、当初はアストレアを遠ざけていたリューに対して、セシルは激しい怒りをぶつけ、他のメンバーも畏縮していた。
・しかし、リューのLv.5への昇華に伴う調整のための模擬戦などを通じて、互いに本気でぶつかり合い、心の距離を縮めていく。
・さらに、リューの口からアリーゼや輝夜、ライラたち旧メンバーの昔話を聞くことで、彼女たちは先達が抱いていた正義の在り方に感銘を受ける。
・最終的に、リューが戦争遊戯に参加するためオラリオへ出発する際、セシルやシャウたちも同行を強く志願し、ファミリア総出で迷宮都市へと旅立っていった。

まとめ
新生アストレア・ファミリアの少女たちの存在は、アリーゼたちからリューへ、さらに新たな世代へと「正義が巡っていく」ことを象徴している。未熟ながらも先達の遺志を継ぎ、各々の正義を模索しながら前へ進む彼女たちの姿は、派閥の新たな歴史の幕開けを告げるものである。

リューのステータス更新

『ファミリアクロニクル episodeリュー2』におけるリュー・リオンの「ステータス更新」は、5年間の停滞から脱却し、過去を乗り越えて新たな力を得るまでのプロセスが段階的に描かれている。その更新の経緯と、裏に隠されていた主神アストレアの神意について以下に解説する。

ステータス更新の目的と5年ぶりの禊
オラリオで勃発した【フレイヤ・ファミリア】を中心とする派閥大戦に参戦するため、リューは5年間止まったままだった自身のステータスを更新し、力を得ることを決意する。彼女は過去の罪悪感に苛まれながらも、剣製都市ゾーリンゲンに滞在する主神アストレアの元を訪れ、更新を懇願した。

第一段階:LV.5への昇華と保留された魔法
アストレアによる更新作業は、5年間に蓄積された膨大な経験値を反映するため、非常に長い時間を要することとなった。
・更新の結果、リューはLV.5へのランクアップを果たす。
・発展アビリティである魔導を修得し、正式に魔法剣士としての能力を獲得した。
・同じ神血を持つ眷族を強化する強力なスキル、正義継巡(アストラエ・ヴァルマス)を発現させる。
しかし、アストレアはリューが発現可能だった新たな魔法をあえて刻まなかった。当時のリューは心が焦り、かつての仲間であるアリーゼたちを忘れかけていたため、魔法を十全に使いこなせないと判断されたからである。

心身のズレの調整と異常な熟練度上昇
急激にLV.5へと昇華したことで、リューの肉体と精神には大きなズレが生じ、剣圧だけで木の葉を粉砕してしまうなど力を制御できない状態に陥った。
・アストレアの指示でゾーリンゲンに残り、後輩団員たちとの鬼ごっこや精霊ユーフィとの実戦を通じて調整を重ねる。
・その間、日々のステータス更新において、通常の訓練ではあり得ないほど全能力値が急激に上昇するという異常な成長を記録した。

アストレアの神意とステイタスの裏技
オラリオ出発の直前、アストレアはリューに隠された真実を明かす。
・リューは5年間の死闘を経て、一度の更新でLV.6に至るほどの膨大な経験値を溜め込んでいた。
・しかし、一度にLV.6へ昇華させると、急激な器の拡大に心身が耐えきれず、肉体が崩壊する危険性を孕んでいた。
・そのためアストレアは、神々の技巧判断と呼ばれるステイタスの裏技を用い、経験値を段階的に解放する措置をとった。まずLV.5に上げて肉体を慣らし、能力値を限界まで引き上げた上で、最終的にLV.6へとランクアップさせる戦略的運用であった。

最終段階:LV.6への到達とアストレア・レコードの発現
最後のステータス更新により、リューはついにLV.6の領域へと到達する。
・ここで保留されていた魔法、星々の記憶(アストレア・レコード)が発現した。
・これはアストレアの神血を媒介とし、アリーゼたちかつての仲間たちの正義、すなわち彼女たちの魔法を継承して行使できる規格外の力である。
・アストレアがゾーリンゲンで時間をかけさせたのは、リューが後輩たちとの交流を通じて仲間たちの遺志を思い出し、この魔法を完全に扱えるようにするためであった。

まとめ
この一連のステータス更新は、単なる能力の向上にとどまらない。リューが過去の迷いを断ち切り、正義は巡るという教えを自らの魂に宿して完全な復活を遂げるための、極めて重要な儀式として昇華されている。

セシルとの対立

『ファミリアクロニクル episodeリュー2』におけるリュー・リオンとセシル・ブラックリーザの対立は、リューが己の身勝手さを痛感する契機となると同時に、セシルが鍛冶師としての壁を乗り越え、二人が先達と後輩(半身)としての強い絆を結ぶための重要なエピソードとして描かれている。その対立の経緯から和解にいたるまでの詳細を以下に解説する。

最悪の出会い
ステイタス更新のために剣製都市ゾーリンゲンを訪れたリューが最初に遭遇したのは、新生アストレア・ファミリアの最古参であり鍛冶師の少女であるセシルであった。
・セシルはリューの正体を知るなり、アストレア様を捨てた裏切り者と激怒して掴みかかろうとする。
・アストレアへの忠誠心と敬愛が深いセシルにとって、己の都合で一度は女神を遠ざけ、再び頼ろうとするリューは許しがたい存在であった。

模擬戦での敗北と涙の糾弾
翌朝、セシルはシャウやイセリナと共にリューのステイタス調整のために模擬戦を挑むが、LV.5に昇華したリューとの実力差は歴然であり、為す術もなく敗北する。
・圧倒的な力の差を見せつけたリューが、これでは互いの時間が無駄になる、早くオラリオへ戻った方がいいと呟いたことが引き金となり、セシルの怒りが爆発する。
・アストレアがリューからの手紙をどれほど嬉しそうに読んでいたかを語り、あんたはアストレア様をステイタスを更新する道具としか思っていない、自分のことしか考えていないと涙ながらに激しく糾弾した。

リューの自責
セシルの糾弾によって図星を突かれたリューは、何も言い返すことができず打ちのめされる。
・大義名分を盾にしてアストレアの想いを蔑ろにし、すぐオラリオへ帰ろうとしていた己の自己中心的な振る舞いを猛省する。
・小川の中で16時間もの間、自分自身を罰するように血を流しながら木刀を振り続けることとなった。

対立の背景にあるセシルの葛藤
セシルがこれほどまでにリューを敵視し、激しい感情をぶつけた背景には、彼女自身の深い葛藤と罪悪感があった。
・セシルは5年前、アストレアからリューが新たな旅を始めるための専用装備の製作を依頼されていた。
・しかし、父親たちに認められない劣等感や、アストレアに愛されるリューへの嫉妬、そして何より鍛冶師としての芯(正義)が見つからず、どれだけ足掻いても武器を完成させることができずにいた。
・納期であるリューの到着が来てしまい、アストレアとの約束を破る悪者になってしまうことへの恐怖や惨めさが、リューへの強い拒絶と怒りになって表れていた。

過去の吐露と和解
精霊ユーフィの悪戯で崖から落ちたセシルをリューが救出した後、二人は静かな林の中で対話の機会を持つ。
・自らの弱さと醜い嫉妬を吐露し涙するセシルに対し、リューは説教するのではなく、自身の暗黒期や復讐に塗れた過去を打ち明ける。
・完璧に見えた先達も深い罪を重ねて迷い続けていたこと、そして迷い続けることは決して恥ではないと優しく諭した。
・その上で、リューはアストレアの依頼としてではなく、自身の願いとして、私のために武器を作ってくれませんか、と請うた。
・このリューの真摯な対話によって憑き物が落ちたセシルは、先輩のための武器を作れる気がすると笑みを浮かべ、二人は完全に和解を果たした。

まとめ
この激しい対立と対話を経て、セシルは好きな人のために武器を作るという自らの正義を見出し、リューの強力な専用装備であるアルヴス・ユースティティアを完成させる。一方のリューも、未熟で迷う後輩を真っ直ぐに導き、かつての仲間たちから受け取った想いを次の世代へ巡らせるという、立派な先達としての成長を遂げることとなった。

正義の継承

『ファミリアクロニクル episodeリュー2』における「正義の継承」は、物語の中核をなす極めて重要なテーマである。亡き親友アーディ・ヴァルマが遺した「正義は巡る」という教えが、リューの魂と能力、そして次世代への繋がりを通して具現化していく過程が描かれている。以下に、作中で描かれた「正義の継承」の具体的な形について解説する。

アーディ・ヴァルマの教え「正義は巡る」
「正義の継承」の根源にあるのは、7年前の抗争で命を落とした親友アーディの教えである。
・彼女は生前、リューに「正義は一人で背負っては駄目。限界が来たら他の人にも分けてあげてほしい。それは誰かの種になって違う花になって咲く。私達の想いと一緒に巡っていく」と語っていた。
・この「正義は巡る」という言葉は、仲間を喪い復讐に身を落としていたリューを支え、再び前を向かせるための真理となっていく。

スキル【正義継巡(アストラエ・ヴァルマス)】の発現
アストレアのもとでLV.5への昇華を果たしたリューに発現した新たなスキルが【正義継巡】である。
・このスキルは「器力共鳴」の効果を持ち、同じ神血を持つ眷族のスキル効果の増幅や魔力・精神力の加算、さらには精神汚染に対する耐性を付与する。
・リューはこのスキルの名と効果を見て、アーディから教わった言葉が自身のステイタスに芽吹いたのだと確信し、友の正義を受け継いだ証であると感じ取る。

究極の継承魔法【アストレア・レコード(星々の記憶)】
LV.6への到達とともに発現したリューの新たな魔法が、【星々の記憶(アストレア・レコード)】である。この魔法の効果は、共通語で「正義継承」と記されている。
・アストレアの神血を媒介として、アリーゼ、輝夜、ライラたちかつてのアストレア・ファミリアの仲間たち10人の正義(魔法)を受け継ぎ、行使できるという規格外の奇跡である。
・アリーゼの紅炎の付与魔法や、輝夜の五光、ライラの地雷原など、仲間たちの力を自身に宿して戦うことができる。
・ただし、この魔法には「仲間たちの存在を心から遠ざけたり、忘れてしまうと効果が半減する」という欠点が存在する。
・アストレアがすぐにこの魔法を与えなかったのは、焦燥に駆られて仲間を忘れかけていたリューに、再び星乙女たちの記憶と正義を取り戻させるためであった。

次世代(後輩たち)への継承
「正義の継承」は、能力面だけでなく、人と人との繋がりを通しても描かれている。
・かつてアストレア・ファミリアで最も未熟な末っ子であり、アリーゼたちから導かれていたリューは、今や先達として、セシルやシャウといった新たな世代の後輩たちと向き合う。
・リューは後輩たちに、かつての仲間たちの姿やその教えを語り継ぎ、葛藤するセシルに対しては「迷い続けることは恥ではない」と自身の過去をさらけ出して導いた。

まとめ
かつて自分が先輩たちから受け取った正義の軌跡を、今度は自分が後輩たちへと伝えていく。これこそが「正義は巡る」という言葉の体現であり、リュー自身が歩み続けた正義を探す旅のひとつの到達点である。能力的な奇跡の開花と精神的な成長が、見事な調和をもって描かれている。

新たな武器の完成

『ファミリアクロニクル episodeリュー2』における新たな武器の完成は、鍛冶師セシル・ブラックリーザが深い苦悩と挫折を乗り越え、リュー・リオンのための専用装備であるアルヴス・ユースティティアを打ち上げるまでの軌跡を描いた重要なエピソードである。その完成にいたるまでの経緯と武具の詳細について、以下に解説する。

製作の背景とセシルの苦悩
セシルは5年前、主神アストレアからリューのための専用装備の製作を依頼されていた。
・エルフのための武装として、剣と杖の性能を両立させるために最高級の素材を厳選し、剣身と握りを分離させる特殊な構造を考案する。
・しかし、父親たちに認められない劣等感やリューへの嫉妬、そして鍛冶師としての芯(正義)が定まらなかったことから重度のスランプに陥る。
・結果として、リューが到着する納期が来ても武器を完成させることができずにいた。

再起と新たな素材の獲得
リューとの真摯な対話を経て、好きな人のために武器を作るという自らの正義を見出したセシルは、再び鍛冶に挑む決意を固める。
・リューから、かつてジャガーノートとの死闘で砕け散った愛剣アルヴス・ルミナの破片である大聖樹の木片を託される。
・さらに、精霊の森で中位精霊ユーフィと真正面から向き合い、その想いを認めさせたことで、一流の鍛冶師の証である精霊の滴を獲得した。

精霊炉での鍛錬と家族との和解
工房へ駆け戻ったセシルは、獲得した最高位の資格を盾に、父親へ精霊炉の使用を直訴する。
・精霊炉は、精霊の魔力に焼かれながら鍛冶を行うことで、職人の能力や武器の性能を極限まで底上げする特殊な施設である。
・セシルが鍛冶師としての芯を手に入れたことを悟った父親は、彼女の才能を本物と認め、精霊炉の使用を許可した。
・セシルは不眠不休で炉にこもり、最後の調整を施してついに一振りの武器を打ち上げる。

星屑の剣「アルヴス・ユースティティア」
完成した武器は、深緑色へと変化を遂げた大聖樹の木剣であった。
・かつてのアルヴス・ルミナよりも長い剣身には、精霊炉の作用によって翡翠色の美しい輝きが宿っている。
・最大の特徴は鍔の中央に据えられた星精石であり、これはリューから託された木片と精霊の滴を融合させたものである。
・この星精石の存在により、剣としての斬撃性能と杖としての魔力触媒機能が高次元で両立された。
・凄まじい魔力を放ち、使い手の手に見事に吸い付くこの武器を、アストレアが司る正義にちなんで星屑の剣(アルヴス・ユースティティア)と命名した。

まとめ
アルヴス・ユースティティアの完成により、リューは迫り来る派閥大戦を戦い抜くための強大な翼を手に入れた。同時に、セシルもまた一流の鍛冶師としての誇りを取り戻し、リューの半身としてともに歩んでいくことを誓う。このエピソードは、二人の強い絆の結実として見事に描かれている。

登場キャラクター

アストレア・ファミリア

アストレア

正義の女神であり、アストレア・ファミリアの主神である。慈悲深い性格で、迷えるリューを優しく導く存在となっている。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの主神。
・物語内での具体的な行動や成果
 剣製都市ゾーリンゲンの森に居を構え、精霊たちとの調停を行っている。リューに段階的なステイタス更新を施し、Lv.6へと昇華させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去に剣製都市と精霊の衝突を仲裁したことで、都市の住民から深く感謝されている。

リュー・リオン

本作の主人公であるエルフの少女である。過去の罪悪感から主神を遠ざけていたが、仲間を助けるために再びアストレアの元を訪れる。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
 剣製都市で後輩たちと交流しながら心身の調整を行った。最終的にLv.6へと到達し、新たな魔法「アストレア・レコード」を発現させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ステイタス更新により第一級冒険者となり、仲間たちの魔法を継承する力を手に入れた。

セシル・ブラックリーザ

藍色の髪を持つヒューマンの少女である。鍛冶師一族の生まれであり、父親たちに認められたいという思いとアストレアへの敬愛を抱えている。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの団長。鍛冶師。Lv.2。
・物語内での具体的な行動や成果
 アストレアを捨てたリューに反発していたが、対話を経て和解した。精霊ユーフィから精霊の滴を獲得し、リューの専用装備を完成に導く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 リューのために武器を作るという自身の正義を見出し、一人前の鍛冶師として父親たちに認められた。

シャウ

小人族の少女である。かつての参謀であるライラに憧れており、弱い人を助けられる存在になりたいと願っている。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの団員。Lv.1。
・物語内での具体的な行動や成果
 リューの調整を手伝うため、魔剣を用いた鬼ごっこを提案して実行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

イセリナ

狼人の少女である。アストレアが剣製都市を救った武勇伝を聞いて眷族となった。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの団員。Lv.2。
・物語内での具体的な行動や成果
 シャウたちと共にリューの鬼ごっこに参加し、魔剣を用いて罠を仕掛ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自身の正義を探している最中である。

ウランダ

ヒューマンの少女である。アストレアを守ることを正義としており、女神に近付くリューに対して呪詛めいた言葉を吐く。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの団員。呪詛使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 鬼ごっこにおいて、自身の苦痛を代償にリューへ能力低下と強制停止の呪いをかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アリーゼ・ローヴェル

明るく破天荒なヒューマンの少女である。かつてリューを導いた存在として回想される。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの初代団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の団欒の場で、リューが美しい正しさを貫く未来を信じると語っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の炎の付与魔法は、アストレア・レコードを通じてリューに継承された。

ゴジョウノ・輝夜

極東出身の剣客である。理想を嫌い、現実の厳しさをリューに叩き込もうとしていた。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの副団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の団欒の場で、リューの危うさを指摘しながらも彼女の成長を案じている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の魔法はアストレア・レコードを通じてリューに継承された。

ライラ

狡賢い小人族の少女である。知識を知恵に変える手段をリューに教えていた。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの参謀。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の団欒の場で、輝夜やアリーゼと共にリューの未来について語り合っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の魔法はアストレア・レコードを通じてリューに継承された。

ノイン・ユニック

如才なく器用なヒューマンの少女である。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの前衛攻役。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の回想でリューが語る昔話の中に登場した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の魔法はアストレア・レコードを通じてリューに継承された。

アスタ・ノックス

小柄な体躯を持つドワーフの少女である。仲間たちを身を呈して守っていた。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの前衛壁役。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の団欒の場で水晶飴の瓶詰めを隠し持っていたことが言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の魔法はアストレア・レコードを通じてリューに継承された。

ネーゼ・ランケット

狼人の少女である。イセリナの正当な先輩にあたる存在として語られる。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの中衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の回想でリューが語る昔話の中に登場した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の魔法はアストレア・レコードを通じてリューに継承された。

イスカ・ブラ

お洒落好きで変わり者のアマゾネスである。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの拳士。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の回想でリューが語る昔話の中に登場する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の魔法はアストレア・レコードを通じてリューに継承された。

マリュー・レアージュ

包容力と母性の化身と称されるヒューマンの少女である。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの治療師。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の団欒の場にパンプキンケーキを作って提供したことが言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の魔法はアストレア・レコードを通じてリューに継承された。

リャーナ・リーツ

魔法大国出身のヒューマンの少女である。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアのはぐれ魔導士。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の回想において、アストレアの護衛として出払っていたことが語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の魔法はアストレア・レコードを通じてリューに継承された。

セルティ・スロア

リューより年下で勤勉なエルフの少女である。

・所属組織、地位や役職
 アストレア・ファミリアの最後衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の団欒の場に木苺のクッキーを作って提供したことが言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女の魔法はアストレア・レコードを通じてリューに継承された。

ヘスティア・ファミリア

ヘスティア

オラリオの女神である。派閥大戦の当事者となっている。

・所属組織、地位や役職
 ヘスティア・ファミリアの主神。
・物語内での具体的な行動や成果
 フレイヤ・ファミリアに対抗する派閥連合軍の旗頭となる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヘルメスの協力により、戦争遊戯において有利な条件を引き出そうとしていた。

ベル・クラネル

白髪の少年である。リューの想い人であり、尊敬の対象として描かれている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 フレイヤの箱庭を打ち破り、派閥大戦を引き起こす原因を生み出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 激動の半年間で成長を遂げ、リューに大きな影響を与えた。

フレイヤ・ファミリア

フレイヤ

美の女神である。一人の少年を手に入れるためにオラリオ全土に魅了を行使した。

・所属組織、地位や役職
 フレイヤ・ファミリアの主神。
・物語内での具体的な行動や成果
 少年を求める開戦要求により、オラリオ史上異例の派閥大戦を決定させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

シル

薄鈍色の髪を持つ娘である。その正体はフレイヤであり、リューに再生の日々をもたらした知己でもある。

・所属組織、地位や役職
 酒場の店員。
・物語内での具体的な行動や成果
 少年に想いを打ち明けたが果たされず、都市への侵略を断行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

オッタル

猛者の二つ名を持つ猪人の冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の戦いでリューに敗北を与えたことが言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 真性の怪物として恐れられている。

ヘグニ・ラグナール

黒妖の魔剣の二つ名を持つ黒妖精の冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の戦いでリューを二度敗北させたことが言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

強靱な勇士(エインヘリヤル)

フレイヤ・ファミリアの戦闘員たちである。

・所属組織、地位や役職
 フレイヤ・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
 シルを護る存在としてリューの前に立ち塞がり、彼女を敗北させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 都市最強の軍勢として認知されている。

ヘルメス・ファミリア

ヘルメス

トリックスターを気取る男神である。リューとアストレアの通信を支援している。

・所属組織、地位や役職
 ヘルメス・ファミリアの主神。
・物語内での具体的な行動や成果
 リューにアストレアの所在を教え、神会で派閥大戦の条件交渉を暗躍した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベルたちの陰の支援者として機能している。

アスフィ・アル・アンドロメダ

ヘルメス・ファミリアの団員である。リューの移動を支援する。

・所属組織、地位や役職
 ヘルメス・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
 リューに通行許可証と連絡用の魔道具を手渡し、送迎の準備を整えていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘルメス・ファミリアの足自慢

ヘルメス・ファミリアに所属する俊足の団員である。

・所属組織、地位や役職
 ヘルメス・ファミリアの団員。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルメスの手紙をオラリオから剣製都市のアストレアのもとへ届けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ガネーシャ・ファミリア

シャクティ・ヴァルマ

厳格な性格の冒険者である。アーディの姉にあたる。

・所属組織、地位や役職
 ガネーシャ・ファミリアの団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去に最大賭博場へ潜入したリューを見逃したことが言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 リューが尊敬するヒューマンの一人である。

アーディ・ヴァルマ

温厚な少女である。誰にでも分け隔てなく接し、リューをよく抱きしめていた。

・所属組織、地位や役職
 ガネーシャ・ファミリアの団員。Lv.3。
・物語内での具体的な行動や成果
 黄昏の麦畑でリューに「正義は巡る」という教えを説いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 七年前の大抗争で戦死し、リューの心に深い影響を残した。

ヘファイストス・ファミリア

ヘファイストス

鍛冶を司る女神である。剣製都市ゾーリンゲンとも縁が深い。

・所属組織、地位や役職
 ヘファイストス・ファミリアの主神。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去にセシルから入団を懇願されたが、ブラックリーザの意向を汲んで断った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ロキ・ファミリア

ロキ

オラリオの大派閥を率いる女神である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリアの主神。
・物語内での具体的な行動や成果
 ステイタスの裏技を用いた戦略的眷族運用が得意な神として名前が挙がる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブラックリーザ工房・剣製都市ゾーリンゲン

セシルの父親

巨大工房ブラックリーザを率いる男性である。頑固な性格だが、娘の才能を高く評価している。

・所属組織、地位や役職
 ブラックリーザの工房長。
・物語内での具体的な行動や成果
 セシルに精霊炉の貸与を拒んだが、彼女が精霊の滴を持ち帰ると試練を見守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 セシルの才能を潰さないために、あえて冷たく接して彼女を外へ送り出していた。

セシルの兄達

セシルの上に立つ七人の兄弟である。父親と同じく不器用な職人気質を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ブラックリーザの鍛冶師。
・物語内での具体的な行動や成果
 セシルを落ちこぼれ扱いして嘲笑していたが、彼女が工房へ戻った際には作業衣を貸し与える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

精霊

ユーフィ

残虐性も併せ持つ風の中位精霊である。普段は発光する幼女の姿をとる。

・所属組織、地位や役職
 剣製都市の森に住む精霊。
・物語内での具体的な行動や成果
 精霊馬の姿に変貌してリューと激戦を繰り広げた。セシルの覚悟を認め、精霊の滴を授ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アストレアと交流があり、彼女の頼みでリューの調整相手を務めた。

その他の神々・人物

ボールス

迷宮の宿場街を束ねる冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 リヴィラの大頭。
・物語内での具体的な行動や成果
 リューがオラリオを出発する際に見送りに訪れ、破壊された武器の破片を渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

デメテル

豊穣の女神である。

・所属組織、地位や役職
 主神。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルメスの手紙の片隅に、戦争遊戯の参加派閥として名前が記されていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ニョルズ

海の神である。

・所属組織、地位や役職
 主神。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルメスの手紙の片隅に、戦争遊戯の参加派閥として名前が記されていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アルゴノゥト

英雄譚に登場する主人公である。

・所属組織、地位や役職
 物語の登場人物。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーディが愛読していた本の中で、元気のない少女の手を取って踊り出す場面が語られる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

モンスター・異端児(ゼノス)

バグベアー

山中で商人たちを襲っていたモンスターである。

・所属組織、地位や役職
 モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
 リューの斬撃によって片腕を切り落とされ、瞬く間に殲滅された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ジャガーノート

ダンジョン下層でリューが遭遇した因縁のモンスターである。

・所属組織、地位や役職
 モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
 リューの主武装であるアルヴス・ルミナを破壊したことが言及される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

漆黒のゴライアス

巨大なモンスターである。

・所属組織、地位や役職
 モンスター。
・物語内での具体的な行動や成果
 五年前の出来事において、リューが乗り越えた死闘の相手として名前が挙がる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

episode フレイヤ レビュー
ダンまち全巻まとめ
episodeアスフィ レビュー

展開まとめ

星々のローカス

1

激動の半年間

秋は深まり、迷宮都市へ『とある少年』が訪れてから半年以上が過ぎていた。

春の出会い、夏の激闘を経て、その時間はあまりにも濃密で、かけがえのないものとなっていた。

白髪の少年は、未熟だった頃とは別人のように成長していた。

そして、薄鈍色の髪を持つ少女は、そんな彼へ穏やかな想いを抱くようになっていた。

かつて見せたことのない笑顔を浮かべながら。

見守るだけだったはずの存在

彼女は本来、その二人を遠くから見守るだけの存在でいるはずだった。

しかし、少年を守るために幾度も力を貸し、その中で彼自身を尊敬するようになっていく。

出会いと交流を重ねる中で、三人の関係は少しずつ変化していた。

だが、その変化は穏やかなものではなく、破滅すら孕んだ危うさを帯びていた。

収穫祭から始まった崩壊

収穫祭を契機に、一人の少女は少年へ想いを打ち明けた。

しかし、その想いは叶わなかった。

だからこそ彼女は、全てを手に入れようとした。

行われたのは『侵略』。

築かれたのは『箱庭』。

反逆したのは『聖火』。

そして最後に決まったのは、『大戦』だった。

美神の派閥を打ち倒すため、オラリオ全土の派閥が連合を組む史上最大級の戦争が始まろうとしていた。

力不足の自覚

しかし、今のままでは力になれない。

少女には、その確信があった。

美神の眷族達は、あまりにも強大だった。

知恵や工夫だけでは到底覆せない圧倒的な力の差が存在していた。

だからこそ、強くならなければならなかった。

少年を助けるため。

そして、想い人である少女を止めるため。

禊と清算の決意

そのため少女は、ずっと避け続けていた『禊』を受ける決意を固める。

同時に、それは過去との『清算』でもあった。

自分勝手な都合だと理解していても、絶対に守りたい『絆』があった。

だから彼女は、『正義』との再会を選ぶ。

旅立ち

旅立ちを見送ったのは、一人の友人と、迷宮の宿場街を束ねる大頭だった。

彼女は二人から魔道具と『木片』を受け取る。

そして、まだ夜明け前の都市を後にした。

白亜の塔『バベル』と巨大市壁を背にしながら、少女は空へ輝く星を見上げる。

そして静かに呟いた。

待っていてほしいと。

そして、会いに行くのだと。

その相手の名は――アストレア。

2

疾風の東進

迷宮都市を離れた旅

リュー・リオンは、迷宮都市オラリオを離れ、大陸東方へ向かって疾走していた。

草原も山岳も断崖絶壁も関係なく、彼女は『疾風』の異名そのままに駆け抜けていく。

その速度は常人の理解を遥かに超えており、魔物すら障害として認識しないほどだった。

しかし道中、崖下で商人達がモンスターに襲われている光景を見た瞬間、リューは迷わず飛び込んだ。

銀閃の如き斬撃で魔物達を瞬時に殲滅し、商人達を救い出す。

商人達との一夜

助けられた商人一行は、リューへ深く感謝した。

不眠不休で進み続けるつもりだったリューだったが、商人達の厚意を受け、一夜だけ野営へ加わる。

焚き火の前で干し肉と豆のスープを口にしながら、リューは久しぶりに僅かな休息を得ていた。

商人達は、名前も素顔も明かさないリューを詮索せず、ただ善意だけを向けてくる。

そんな彼等へ、リューは静かに感謝していた。

派閥大戦の噂

夜更け、傭兵達は最近オラリオで起きている『戦争遊戯』の噂話を始める。

【フレイヤ・ファミリア】を相手に、各派閥が連合を組んでいるらしい。

その言葉を聞いた瞬間、リューの心は大きく揺れた。

それは彼女自身、よく知る話だったからである。

女神祭と大戦の始まり

豊穣の宴『女神祭』で、フレイヤは都市全体へ『魅了』を行使した。

ただ一人の少年を手に入れるために。

しかしその箱庭は、少年自身と『悠久の聖火』によって打ち破られる。

その結果、操られていた冒険者達の怒りが爆発し、史上最大規模の『派閥大戦』が決定した。

リューもまた、本来ならその戦いへ参加するつもりだった。

しかし彼女は理解していた。

今の自分では、ベル・クラネルの力になれないと。

【フレイヤ・ファミリア】幹部達との実力差は圧倒的だった。

だからこそ、リューは迷宮都市を離れたのである。

五年前から止まったままの自分を、もう一度前へ進めるために。

目的地ゾーリンゲン

リューが向かう先は、『剣製都市ゾーリンゲン』だった。

そこには、五年前から手紙を送り続けていた存在――アストレアの居場所が記されていた。

長い旅路の末、リューは巨大な都市門を越え、工業都市ゾーリンゲンへ辿り着く。

そこは鍛冶工房と鉱山に囲まれた、武器製造の都だった。

街中には鎚の音が鳴り響き、黒煙が空を覆っている。

自然を愛するエルフであるリューにとって、その環境は決して心地良いものではなかった。

それでも彼女は、アストレアへ会うために進み続ける。

アストレア眷族との遭遇

案内された先は、都市東部の森林地帯にある館だった。

そこでリューは、一人の少女と遭遇する。

藍色の髪を持つ少女セシルは、アストレア眷族の一員だった。

しかし彼女は、リューの正体を知るなり激怒する。

アストレアを捨てた裏切り者。

そう言い放ち、掴みかかろうとした。

リューは反射的にその手を弾いてしまい、自分の未熟さへ自己嫌悪する。

最悪の再会だった。

再会を待つ時間

セシルはリューを睨みつけながら、アストレアへ報告へ向かった。

残されたリューは、館の前でただ待ち続ける。

胸が苦しかった。

謝りたいことも、伝えたいことも沢山ある。

しかし何より、自分は許される資格などないと思っていた。

むしろ断罪されるべきだと。

緊張と罪悪感に押し潰されそうになりながら、リューはただその時を待つ。

女神との再会

やがて館の扉が開く。

そこに現れたのは、五年前と何一つ変わらない女神アストレアだった。

胡桃色の長髪。

星海のような双眸。

清廉な白衣。

その姿を見た瞬間、リューは震えながら彼女の名を呼ぶ。

するとアストレアは、穏やかな微笑を浮かべたまま告げた。

久しぶりだと。

そして――お帰りなさい、と。

許しと帰郷

その言葉を聞いた瞬間、リューは理解した。

自分は許されてしまったのだと。

叱責される覚悟をしていた。

アリーゼ達を死なせ、自分だけ生き残り、復讐へ走った罪を裁かれるべきだと思っていた。

しかしアストレアは違った。

彼女は、帰ってきた子供を迎える母親のように、ただ優しく抱き締めた。

リューは涙を止められなかった。

嗚咽を必死に押し殺しながら、震える手でアストレアへ縋り付く。

アストレアは、そんな彼女の髪を何度も撫でながら、頑張ったのだと優しく語りかける。

アリーゼ達も、今のリューを見て笑っているはずだと。

その温もりに包まれながら、リューはようやく、自分が帰ってきたのだと実感していた。

眷族達の衝撃

一方、その様子を見ていたセシル達は完全に硬直していた。

女神へ抱き締められ、胸元へ顔を埋めるリューの姿は、彼女達から見れば衝撃的すぎたのである。

特にセシルは嫉妬で爆発寸前だった。

しかしアストレアはそんな彼女へ、リューは『先輩』なのだと穏やかに告げる。

さらに、リューへ部屋を用意するよう命じた。

不承不承ながらも了承するセシル。

そしてアストレアは、リューの手を優しく取り、本拠へ案内する。

リューは顔を赤らめながら、借りてきた猫のように大人しく従っていた。

新生アストレア・ファミリア

剣製都市ゾーリンゲンにあるアストレアの拠点『星休む宿』は、森の奥に建てられた二階建ての館だった。

その姿は、かつての本拠『星屑の庭』を思わせるものだった。

現在この館には、アストレアと六人の新たな団員達が暮らしている。

リューは、アストレアが新たな【ファミリア】を作ったのかと尋ねるが、アストレアは否定した。

彼女にとって、アリーゼ達もリューも今なお大切な眷族であり、【アストレア・ファミリア】は変わっていないのだと語る。

後輩達への複雑な感情

身を清めた後、リューはアストレアの神室へ招かれた。

そこでは五年間の空白を埋めるように、二人だけの会話が続いた。

しかし一方で、リューは新たな団員達との距離感に戸惑っていた。

特にセシルは、アストレアを捨てた存在としてリューを強く敵視している。

リュー自身、その感情を否定できなかった。

もし自分が逆の立場でも、同じように怒っていただろうと理解していたからである。

五年間を埋める対話

アストレアとリューは、互いの五年間について語り合った。

暗黒期後のオラリオ。

酒場『豊穣の女主人』での日々。

新たな出会い。

そしてベル・クラネルという少年の存在。

リューは、ベルを語る時だけ口調が柔らかくなるとアストレアに指摘され、激しく動揺する。

しかしアストレアは、そんなリューをからかいながらも、とても嬉しそうに笑っていた。

リューもまた、かつての【アストレア・ファミリア】では得られなかった穏やかな時間を感じていた。

シルという存在

やがてリューは、本題を切り出す。

それは『シル』についてだった。

復讐を終えた自分を救い、再び光を与えてくれた少女。

しかしその正体は女神フレイヤであり、今やベルを巡ってオラリオ全体を巻き込む『派閥大戦』を引き起こしている。

リューは胸を焦がす感情を抑えながら、現在のオラリオの状況をアストレアへ説明した。

ステイタス更新の願い

説明を終えたリューは、アストレアへ願い出る。

オラリオへ戻り、ベル達とともに戦うために。

止まったままの自分を前へ進めるために。

もう一度、神血による【ステイタス】更新をしてほしいと。

リューは、オッタルやヘグニとの敗北を通して、自分の限界を痛感していた。

このままでは、シルを止めることも、ベルを助けることもできない。

だからこそ、力が必要だった。

アストレアはその願いを受け入れた。

五年分の恩恵

上半身を露わにしたリューへ、アストレアは五年分の【経験値】を反映していく。

更新作業は異例なほど長時間に及んだ。

五年間積み重ね続けた経験が、一気に神の恩恵へ変換されていく。

やがてリューは、自らの内側で明確な変化を感じ取る。

第一級冒険者へ至った感覚。

器そのものが昇華したという実感だった。

LV.5への昇華

更新結果を見たリューは、強い安堵を覚えた。

彼女はついにLV.5へ到達していたのである。

さらに新たな『発展アビリティ』として『魔導』を獲得。

そして新たなスキル【正義継巡】も発現していた。

それは同じ神血を持つ眷族を強化し、精神汚染への抵抗を与える強力な能力だった。

リューはその名から、かつて命を落としたアーディ・ヴァルマの言葉を思い出す。

『正義は巡る』

このスキルは、自分が彼女達の意志を継いできた証なのだと、リューは感じていた。

オラリオ帰還の拒絶

目的を果たしたリューは、すぐオラリオへ戻ろうとする。

しかしアストレアは、それを止めた。

まだゾーリンゲンへ残れと。

今のままでは戦局を変えられないと。

さらにアストレアは、発現可能な新たな『魔法』を、あえて刻んでいないと明かす。

その魔法は、フレイヤ・ファミリアへ届き得るほど強力なものだった。

だが今のリューでは使いこなせない。

焦燥と執着で心が曇っているからだと、アストレアは静かに告げた。

忘れかけていたもの

アストレアは、さらに続ける。

今のリューは、アリーゼ達のことを忘れかけていると。

その言葉を聞いた瞬間、リューの中で何かが止まった。

脳裏に浮かぶ仲間達の声。

アリーゼ。

輝夜。

ライラ。

失った仲間達の面影が、次々と胸へ蘇る。

リューは、自分が力だけを求め、心を置き去りにしていたことへ気付かされる。

女神への信頼

納得はできなかった。

不満も残っていた。

それでもリューは、アストレアを信じることを選ぶ。

彼女との絆を、誰より理解していたからである。

かつて雨の日にアストレアへ反抗した幼い頃の自分を思い出しながら、リューは静かに頭を下げた。

アストレアはそんな彼女の髪を撫で、変わったのだと優しく微笑む。

星空への謝罪

部屋を出たリューは、廊下の窓から星空を見上げた。

そして、小さく呟く。

ベル。

シル。

もう少しだけ待っていてほしいと。

アストレアの苦悩

リューを止めた理由

リュー・リオンが部屋を去った後、アストレアは床へ落ちていた更新用紙を拾い上げながら、小さく呟いた。

今のリューには、ああするしかなかったのだと。

アストレア自身がオラリオへ同行する案も考えた。

しかし、それすら否定する。

『派閥大戦』が近付くことで、都市全体の熱狂と重圧が、今のリューから冷静さを奪ってしまうと理解していたからである。

だからこそ、迷宮都市から遠く離れたゾーリンゲンでのみ、リューに必要な『修行』ができると考えていた。

それは、最初で最後の鍛え直しでもあった。

前代未聞の状況

しかしアストレア自身も、この状況に明確な正解を見出していたわけではなかった。

困ったような、苦笑混じりの表情を浮かべながら、彼女は別の更新用紙を取り出す。

そこに記されていたのは、リューのLV.4時代における最終能力値だった。

力:D8
耐久:D30
器用:S35
敏捷:S6
魔力:S00

異常なほど高水準の能力値。

特に器用と敏捷、魔力は第一級冒険者級の極致に達していた。

アストレアは、それほど優秀な能力値であるにもかかわらず、『難産だった』かのように苦笑していた。

正義の神としての限界

アストレアは、自分には不得手な領域なのだとも認めていた。

こうした導き方は、ヘルメスやロキの方が得意だろうと。

それでも彼女は、リューのために悩み続けるしかなかった。

女神として。

そして、一人の子供を想う母親のように。

3

眠れぬ夜

『星休む宿』で一夜を過ごしたリュー・リオンだったが、まともに眠ることはできなかった。

脳裏を巡るのは、オラリオへ戻らなくていいのかという焦燥だった。

『戦争遊戯』はどうなるのか。

ベルやシルは無事なのか。

迷宮都市から遠く離れた静かな森の中ですら、その不安は消えなかった。

朝を迎えても心身の重さは抜けず、まるで体の内側へ鉛が詰め込まれているようだった。

それでもリューは、自らを奮い立たせて立ち上がる。

怠惰へ屈することは、自分自身でなくなることだと理解していたからである。

LV.5という異常

早朝の森へ出たリューは、小川で顔を洗った後、木々を相手に訓練を開始した。

大木を蹴り飛ばして大量の落葉を散らし、それらを空中で次々と斬り裂いていく。

しかし、その表情は険しかった。

葉は綺麗に斬断されていなかったのである。

斬撃そのものではなく、リューの身体能力が生み出した暴風圧によって、葉が抉り壊されていた。

つまり彼女は、急激に上昇した力を制御できていなかった。

七年間も同じ【ステイタス】で戦い続けた結果、急激なLV.5への昇華が、肉体と精神へ巨大な『ズレ』を発生させていたのである。

リューは、自分が想像以上に危険な状態へ陥っていることを痛感していた。

後輩達の来訪

そんなリューを、森の茂みから見守っていた者達がいた。

セシル、シャウ、イセリナの三人である。

彼女達はアストレアの命令によって、リューの『調整』を手伝うために来ていた。

セシルは木刀や模擬武器を差し出し、リューへ模擬戦を挑む。

しかしリューは、その提案へ難色を示した。

今の自分はLV.5。

もし加減を誤れば、相手を壊しかねないと理解していたからである。

圧倒的な実力差

それでもセシル達は引かなかった。

正義の神の眷族として、主神の命令を拒否できないと意地を張る。

リューは仕方なく応じるが、模擬戦は一分も持たなかった。

シャウは一撃で吹き飛ばされ、イセリナも柄頭の打撃で悶絶する。

セシルだけは最後まで食らいついたが、リューは冷静に武器を弾き飛ばした。

その戦闘の中で、リューはセシルが鍛冶師であることも見抜く。

彼女達の優れた装備品や武器は、セシル自身が作り上げた物だったのである。

しかし模擬戦の結果は、あまりにも一方的だった。

リューは、自分の『調整役』として彼女達では荷が重すぎると告げる。

セシルの怒り

だが、その言葉を聞いたセシルは激怒した。

彼女はリューへ向かって叫ぶ。

結局リューは、自分のことしか考えていないのだと。

オラリオへ戻ることばかり考え、アストレアの気持ちを全く見ていないのだと。

リューは反論しようとした。

しかし、その言葉を否定し切れなかった。

【ステイタス】更新が終われば、すぐオラリオへ戻るつもりだったのは事実だったからである。

アストレアへの想い

さらにセシルは、アストレアの気持ちを語り始めた。

アストレアは、リューからの手紙が届くたび嬉しそうにしていた。

何度もリューの話をしていた。

それほど大切な存在として想い続けていた。

だからこそ、自分達もリューの存在を認めざるを得なかったのだと。

それなのにリューは、アストレアを大切にしていない。

その糾弾は、リューの胸を深く抉った。

打ちのめされたリュー

リューは、その場で立ち尽くした。

もはやLV.5という力は意味を持たなかった。

少女達との力の差など関係なく、セシルの言葉そのものが、リューを打ちのめしていた。

やがてセシルは、リューを『薄情者』『我儘エルフ』と罵り、その場を去っていく。

シャウとイセリナもまた、複雑そうな表情を浮かべながら彼女の後を追った。

自責の剣

取り残されたリューは、長い間その場から動けなかった。

やがて彼女は、小川の上流へ歩き出す。

激しい流れの中央へ立ち、冷たい水へ足を沈めながら、再び木刀を振り始めた。

それは鍛錬ではなく、自罰に近いものだった。

不安定な水流の中で何度も体勢を崩し、掌から血を流しながらも、リューは剣を振り続ける。

朝から夜まで。

セシルが作った武器に責め立てられるように。

自らの未熟さを刻み込むように。

リューはただ、黙々と剣を振り続けていた。

自責に沈むリュー

夜遅く、『星休む宿』へ戻ったリュー・リオンは、全身ずぶ濡れで衣服もぼろぼろだった。

川の中で十六時間も剣を振り続け、自分自身を責め立てていたのである。

LV.5へ昇華した力に体が追い付かず、水流へ何度も叩き込まれ、衣服すら耐え切れず裂けていた。

そんな姿を見たアストレアは、何も責めず、まず体を温めるよう促す。

リューは、自分がセシルから『自分のことしか考えていない』と咎められたことを素直に打ち明けた。

アストレアは、それだけで事情を理解していた。

優しい受容

浴室へ案内されたリューは、温水を浴びながらも、自分を温める資格すらないような罪悪感に襲われていた。

しかしアストレアを心配させたくないという想いから、その考えを振り払う。

その後、神室へ連れて行かれたリューは、アストレアから直接、傷付いた手へ治療を施される。

回復魔法が使えると申し出るリューへ、アストレアは静かに問い返した。

今のリューは、自分自身を癒やすつもりがあるのかと。

その言葉通り、リューは完全に自責へ囚われていた。

本当の謝罪

やがてリューは、自らの非を認めて謝罪する。

ベル達を案じるあまり、自分勝手な都合を押し付け、アストレアへ不敬な態度を取っていたのだと。

しかしアストレアは、その謝罪すら否定した。

リューが焦るのは当然であり、ベル達を助けたいという気持ちも間違っていないのだと受け止める。

それでもリューは、自分を許せなかった。

許されたいと願っていたくせに、力を得た途端、すぐオラリオへ戻ろうとしていたからである。

女神からの罰

そんなリューへ、アストレアは『罰』を与えると言い出した。

今夜は一緒に寝ること。

そして、ベル・クラネルについて沢山話を聞かせることだった。

その瞬間、リューは悲鳴じみた声を上げる。

女神は笑顔のまま、一切逃がそうとしなかった。

リューにとって、それは確かに最も堪える罰だったのである。

こうしてリューの表情から陰が薄れ始めたことを見て、アストレアは密かに安堵していた。

リューの心を肯定する言葉

アストレアは、リューの心そのものを否定しなかった。

本当に薄情な者なら、五年間も手紙を送り続けてなどいない。

大切な存在ができたからこそ、リューは『正義の旅』を終えられたのだと。

リューは、その言葉へ何度も頷く。

彼女はアストレアとベル達を天秤にかけていたのではなく、未来のために最善を尽くそうとしていただけだった。

その本心を理解してもらえたことで、リューの迷いは少しずつ解けていく。

セシルへの疑問

その後、夜食を取りながら、リューはセシルについて尋ねた。

彼女は他の団員達以上に、自分へ強い反感を抱いているように感じていたからである。

アストレアは、セシルが剣製都市ゾーリンゲン生まれの鍛冶師一族『ブラックリーザ』の娘であることを明かした。

さらに、リューと別れた後、アストレアが最初に勧誘した眷族こそセシルだった。

つまり現在の【アストレア・ファミリア】において、最古参であり団長でもあるということだった。

アリーゼとリューに似た少女

アストレアは、セシルへ声をかけた理由も語る。

彼女が、アリーゼとリューに似ていると思ったからだった。

その言葉に、リューは驚きを隠せない。

自分でも説明できなかった『既視感』の正体を言い当てられた気分だったのである。

もっとも、アリーゼと似ているという点については、リューは強く否定したかった。

アリーゼは、あまりにも破天荒な少女だったからである。

しかし、そんな反応を見たアストレアは楽しそうに笑うだけだった。

セシルが抱える秘密

さらにアストレアは、セシルがまだリューへ話していないことがあると示唆する。

だが、それを自分から語るつもりはない。

もしセシルが何かを伝えようとしていたら、その時は耳を貸してほしい。

そうだけ告げた。

リューは完全には納得できなかったものの、それ以上は追及しなかった。

異常なステイタス成長

その夜、アストレアは再び【ステイタス】更新を行うと言い出す。

リューは当然困惑した。

LV.5へ昇華したばかりであり、しかも今日は森で素振りをしていただけだったからである。

しかし更新結果を見た瞬間、リューは絶句する。

全能力値が、一気に四十ずつ上昇していた。

力、耐久、器用、敏捷、魔力。

全てが『10→50』へ変化していたのである。

リューは、到底ありえない成長速度だと理解していた。

深層遠征でもない。

たった一日の訓練で得られる数値ではなかった。

しかしアストレアは、ただ穏やかに笑うだけだった。

そして告げる。

明日も『調整』を頑張るようにと。

4

後輩達との交流

女神との同衾

翌朝はすぐに訪れた。

アストレアと同じ寝台で眠ることになったリュー・リオンは、昨夜もまた緊張と羞恥に翻弄されていた。

ベル・クラネルについて根掘り葉掘り尋ねられ、赤面し続ける羽目にもなった。

しかし不思議なことに、アストレアと話しているうち、リューは自然と眠りへ落ちていた。

そして目を覚ませば、女神の胸元へ抱き寄せられていた。

リューは危うく悲鳴を上げかけながらも、アストレアの新たな一面へ戸惑いを隠せなかった。

森で待っていた後輩達

剣製都市滞在三日目。

まだ夜明け前の森へ向かったリューは、そこでシャウ、イセリナ、そして新たな団員ウランダと遭遇する。

セシルの姿はなかった。

しかし三人は、リューへ普通に接してきた。

昨日の対立が嘘のように。

しかも、アストレアと同衾していた事実まで完全に知られていた。

特にウランダは、リューが女神の寝台へ入ったことへ呪詛めいた怨念を漏らしていた。

後輩達の歩み寄り

シャウとイセリナは、自分達もリューと話したかったのだと語る。

昨日は張り詰めた雰囲気に気圧されていたが、今のリューは違って見えたのだと。

アストレアが裏で手を回していたことも、リューは察していた。

女神の気遣いによって、彼女自身の空気が柔らかくなっていたのである。

リューは、そんな後輩達へ感謝を告げる。

アリーゼ達を失った今、再び【ファミリア】として交流できる日が来るとは思っていなかった。

その温かさに、彼女は小さな幸福を覚えていた。

木刀に込められた想い

その後、シャウはリューが今もセシルの木刀を使っていることへ気付く。

本来リューは、それを返却するつもりだった。

しかしシャウは、その木刀はリューのために作られた物だと口を滑らせる。

慌てて誤魔化そうとするシャウ。

イセリナも制止する。

リューは違和感を覚えながらも、今は深く追及しないことにした。

鬼ごっこの提案

やがてシャウは、リューへ『鬼ごっこ』を提案する。

森の中を逃げ回る自分達へ触れられればリューの勝ち。

逆に、リューへ触れられれば自分達の勝ちという内容だった。

実力差があり過ぎるとリューは難色を示す。

しかしシャウ達は『秘密兵器』があると胸を張った。

その熱意を無駄にしたくないと感じたリューは、勝負を受ける。

疾風の追跡

一分後、リューは森へ飛び込んだ。

LV.5の身体能力による超高速移動。

木々を蹴り、暴風のように森を駆け巡る。

それは単なる遊びではなく、『ズレ』を矯正するための本格的な訓練でもあった。

リューは精神と肉体の乖離を埋めるため、敢えて無茶な挙動を繰り返していたのである。

魔剣による包囲

だが、その時。

突如として横殴りの暴風がリューを襲った。

少女達が使用していたのは、セシル製の『魔剣』だった。

風属性の魔力を放つ短剣型魔剣を利用し、シャウ達は森全体へ風を錯綜させる。

音も気配も乱され、索敵は極めて困難となった。

しかも、この森は彼女達の庭だった。

地形も隠れ場所も完全に把握している。

リューは、その戦術を素直に賞賛する。

同時に、この嵐のような状況が、自分の『姿勢制御訓練』に最適であるとも理解していた。

本当の秘密兵器

しかしリューは、この程度で終わるはずがないとも考えていた。

そして、その予感は的中する。

シャウを追おうとした瞬間、ウランダの詠唱が発動した。

リューへ降りかかったのは、『能力低下』と『強制停止』。

ウランダの正体は、呪詛使いだったのである。

彼女は自身へ苦痛を与える代償によって、対象を拘束する呪いを行使していた。

そこへシャウとイセリナが一斉に飛び込む。

最初から全ては、リューを罠へ嵌めるための流れだった。

リューの切り返し

だが、リューもまた警戒を怠っていなかった。

彼女は事前に『並行詠唱』を仕込んでいたのである。

風音へ紛れ込ませる形で。

リューは足元へ光弾魔法【ルミノス・ウィンド】を放ち、その衝撃で拘束圏外へ強引に離脱する。

シャウ達は完全に虚を突かれていた。

そしてリューは、その隙を逃さない。

超加速を纏いながら樹々を蹴り、まずウランダへ接近。

加減した木刀の一撃で戦闘不能へ追い込む。

続いてシャウとイセリナも瞬時に制圧した。

こうして『鬼ごっこ』は、リューの勝利で終わる。

しかし彼女は確かに感じていた。

後輩達は、ただ遊んでいたのではない。

自分を支えようと、本気で知恵を絞ってくれていたのだと。

後輩達の挑戦

『鬼ごっこ』を終えた後、四人は森の中で休憩していた。

シャウは、今回の作戦には自信があったのだと肩を落とす。

しかしリュー・リオンは、その策を高く評価した。

罠の完成度は甘かったものの、『駆け引き』そのものは優秀だったと。

実際、リュー自身も大きな刺激を受けており、『調整』として非常に有意義な訓練だったと感じていた。

その称賛を受けた瞬間、シャウはすぐ調子に乗り始める。

イセリナが即座に釘を刺していた。

足りなかったもの

イセリナは、自分達の敗因をリューへ尋ねた。

するとリューは、あと二つか三つ、自分を陥れる罠が必要だったと率直に答える。

シャウは絶望したような顔を浮かべ、ウランダはオラリオの冒険者が嫌いになりそうだと呟いていた。

だがリューは、そんな彼女達を微笑ましく感じていた。

世界を知らない若さ。

身の程を弁えず挑み続ける無鉄砲さ。

それこそが成長には必要なのだと、暗黒期を生き抜いた先達として理解していたのである。

ライラへの憧れ

その時、リューは何気なく、自分の知る小人族なら更に多くの罠を張っていただろうと口にした。

その瞬間、シャウが勢いよく立ち上がる。

彼女が食い付いたのは、『ライラ』という名だった。

シャウは、アストレアから聞かされた昔話を通して、ライラへ強い憧れを抱いていたのである。

小人族でありながら、知略によって仲間達を支えた存在。

力がなくても、頭脳で戦える『正義の味方』。

それがシャウにとっての希望だった。

それぞれの正義

リューは、そんなシャウへ問いかける。

自分自身の『正義』はあるのかと。

シャウは即答した。

自分のような弱い人を助けられる小人族になりたいのだと。

その真っ直ぐな答えを、リューは好ましく感じていた。

一方、イセリナはまだ自分の正義を探している最中だと語る。

それでいい、とリューは思った。

そしてウランダは、女神アストレアを守ることこそが自分の正義なのだと、不穏な笑みを浮かべながら呟く。

やはり少し怖かった。

先達達を語る時間

やがてシャウ達は、かつての【アストレア・ファミリア】について教えてほしいと頼み込む。

リューは少し困惑しながらも、同時に嬉しく感じていた。

自分達のことを、後進へ語れることが。

仲間達の存在を、未来へ繋げられることが。

だからリューは、語り始めた。

アリーゼ・ローヴェル

まず語られたのは、団長アリーゼ・ローヴェルだった。

誰よりも真っ直ぐで、太陽のように明るい少女。

常に仲間達を引っ張り続けた存在だった。

その破天荒さには皆が振り回されていたが、それでも彼女の背中を誰もが信頼していた。

輝夜とライラ

続いて副団長ゴジョウノ・輝夜。

普段は猫を被りながらも、本質は極めて苛烈な少女だった。

そして小人族の参謀ライラ。

誰よりも狡賢く、罠と策謀を愛した存在。

しかし同時に、仲間達を守るためなら手段を選ばない知恵者でもあった。

仲間達の面影

リューはさらに語っていく。

器用で如才ないノイン・ユニック。

小柄ながら仲間達の盾となったアスタ・ノックス。

狼人の中衛ネーゼ・ランケット。

お洒落好きな拳士イスカ・ブラ。

母性に満ちた治療師マリュー・レアージュ。

放浪の魔導士リャーナ・リーツ。

そして、リューより年下だった勤勉なエルフ、セルティ・スロア。

総勢十人。

彼女達は、いつもリューを支え、導き、ともに戦った大切な仲間達だった。

受け継がれるもの

話し上手ではないと自覚しながらも、リューはたどたどしく語り続ける。

それでもシャウ達は真剣に耳を傾けていた。

『正義の剣と翼に誓って』

かつて仲間達と交わしたその誓いを。

どうか後進達へ受け継いでほしいと願いながら。

リューは、静かに先達達の物語を語り始めるのだった。

物陰から見守るセシル

リュー・リオンが後輩達へ昔話を語る姿を、物陰から静かに見つめる者がいた。

セシルだった。

シャウ達が楽しそうに笑い、もっと話を聞かせてほしいとせがむ光景を、彼女は輪へ加わることなく遠巻きに眺めていた。

そこへ、いつの間にかアストレアが現れる。

女神は、セシルへ静かに問いかけた。

輪へ加わらないのかと。

依頼を果たせない少女

しかしセシルは、リューのことが嫌いだと答える。

アストレアは、それでも二人はきっと仲良くなれると信じていた。

だがセシルは、今の自分には無理だと俯く。

『依頼』の一つも果たせていない自分には、その資格がないのだと。

アストレアへ詫びるように頭を下げ、セシルはその場を去っていった。

その後ろ姿を、アストレアはただ静かに見送っていた。

そして、離れた場所からそのやり取りを察知していたのは、リューだけだった。

女神の配慮

その日の夜。

リューは再びアストレアと二人きりで夕食を取っていた。

既にシャウ達とも十分親しくなっていたため、本来なら食堂で全員と食べても良かった。

しかしアストレアは、今日も二人で食事を取ってほしいと頼んできた。

リューは、その理由を察し始めていた。

もし自分が食堂へ加われば、今のセシルには居場所がなくなってしまう。

だからこそアストレアは、自分へ配慮しているのだと。

順調に進む調整

リューは、『調整』が想像以上に順調であることを報告した。

シャウ達との訓練によって、心身のズレは大きく改善していたのである。

だからこそ、そろそろ新たな『魔法』について教えてほしいと切り出そうとした。

しかし、その言葉を遮るように、アストレアは今日も【ステイタス】更新を提案してくる。

リューは察する。

まだ『その時』ではないのだと。

アストレアは、何かを見極めようとしていた。

異常な成長

そして更新結果を見た瞬間、リューは再び息を呑む。

力、耐久、器用、敏捷、魔力。

全ての能力値が、さらに大幅上昇していたのである。

しかも今度は、前日以上の伸び幅だった。

LV.5でありながら、信じ難い速度で熟練度が積み上がっていく。

それはもはや異常事態だった。

リュー自身も、これは通常の成長ではないと理解していた。

五年間という旅路

アストレアは、そんなリューへ静かに告げる。

自分もこんな現象は初めてだと。

しかし、リューにはこの『過程』が必要なのだと。

そして、この調整が全て終わった時、発現を保留している『魔法』も必ず与えると約束した。

だから今は、自分が歩んできた五年間という『旅路』そのものと向き合ってほしいのだと。

その言葉を聞き、リューはようやく理解し始めていた。

アストレアが見ているのは、単なる能力値ではない。

五年間積み重ねた経験、苦悩、迷い、想い。

それら全てを、今の自分自身へ統合させようとしているのだと。

女神への信頼

だからリューは、迷わなかった。

アストレアの導きへ従うと決めていたからである。

彼女は静かに頭を垂れた。

全てを委ねるように。

そして告げる。

仰せのままに、と。

5

停滞する鍛冶師

エルフのための武装

セシル・ブラックリーザが作ろうとしていたのは、『エルフのための武装』だった。

高速戦闘を行いながら並行詠唱を駆使し、砲撃級魔法と回復魔法を自在に操る魔法剣士用の武器。

最初にその注文内容を聞いた時、セシルはあまりの無茶苦茶さに呆れ返った。

しかし同時に、その要求へ応えようと本気で考え始める。

軽量性。

耐久性。

魔力増幅。

剣としての性能。

杖としての性能。

本来なら両立困難なそれら全てを成立させるため、セシルは素材から徹底的に吟味していた。

理想の武器像

セシルは、妖精郷の『大聖樹の枝』を基礎素材へ選んだ。

さらに魔法大国製の『魔宝石』を粉末化し、枝へすり込む。

加えて『星窟の聖泉』へ長時間浸し、魔力増幅を狙う。

その発想は、彼女自身ですら革命的だと思えるものだった。

そして武器構造についても、『杖』としての握り部分と、『剣』としての刃部分を分離構造にする案へ辿り着く。

それによって、魔法補助性能と武器性能の両立を図ろうとしていた。

脳裏に描いていた完成形は、『星屑宿す木剣』。

それは彼女にとって、理想そのものだった。

崩れていく理想

しかし現実は、セシルの理想へ応えなかった。

百を超える試作品。

千にも及ぶ設計図。

どれだけ試行錯誤しても、納得できる形にならない。

最初は失敗も糧になると信じていた。

だが次第に、自分自身の迷いすら武器へ見透かされているような感覚へ襲われる。

これは机上の空論なのではないか。

そんな不安が、日に日に胸を侵食していった。

眠れない。

心臓が痛い。

手も工具も握れない。

工房から逃げ出し、空を見上げるだけの日が増えていく。

そして気付けば、納期だけが目前へ迫っていた。

崩壊寸前の工房

夜明け前。

セシルは机へ突っ伏したまま目を覚ました。

工房は荒れ果てていた。

使い物にならなくなった素材。

破り捨てられた設計図。

長く使われていない炉と鉄床。

自分自身の停滞そのものだった。

LV.2の身体であるはずなのに、全身は重く、痛み、何もしたくなかった。

それでも空腹だけは容赦なく襲ってくる。

セシルは、自分が肩へ防寒布を掛けていたことにすら気付いていなかった。

アストレアがそっと掛けていった可能性に思い至る余裕すらない。

弱さへの嫌悪

桶の水へ顔を突っ込みながら、セシルは自分自身へ嫌悪していた。

シャワーすら浴びていない。

体を拭くだけの日々。

もし亡き母が見たら、間違いなく拳骨を落としていただろう。

そして彼女は、その全てを『あのエルフ』――リュー・リオンのせいにしかけている自分へ気付く。

情けなかった。

溺死したいなどと考える弱い自分が。

責任を他人へ押し付けようとする自分が。

だからセシルは、自分自身を叩き起こすように立ち上がる。

今からは、いつもの気の強い『セシル・ブラックリーザ』へ戻らなければならないのだと。

消えた魔剣

だが工房を出ようとした瞬間、置き手紙を発見する。

『魔剣、持ってくねー☆』

シャウによる犯行だった。

工房内へ備蓄していた魔剣が全て持ち出されていたのである。

セシルは頭を抱えた。

魔剣製作にどれだけ費用と労力がかかると思っているのか。

怒るべきか呆れるべきかも分からなかった。

森の方角

その時だった。

森の奥から、激しい戦闘音が響いてくる。

シャウ達が、リューの訓練へ力を貸している。

セシルは理解していた。

彼女達は、自分ではなくリューを選んだのだと。

自分がどれだけリューを糾弾し、嫌悪を口にしても、それでも彼女達は彼女へ手を差し伸べている。

その事実が、セシルの胸を深く抉っていた。

少女の孤独

工房の出口で立ち尽くしたセシルは、森の方向を見つめ続けていた。

怒りとも違う。

嫉妬とも違う。

ただ、悲しかった。

そして何より、自分自身が情けなかった。

追い詰められる後輩達

剣製都市滞在四日目。

この日も早朝から、リュー・リオンはシャウ達との『鬼ごっこ』へ興じていた。

しかし既に、その内容は完全に遊びの範疇を超えていた。

落とし穴。

各種罠。

大量の魔剣。

シャウ達は、ありとあらゆる手段を投入してリューへ対抗していたのである。

それでもリューは、それら全てを突破していた。

今やイセリナとシャウは完全に敗走状態であり、森の中を必死に逃げ回っていた。

順調に進む調整

一方のリューは、自分自身の変化を確かに実感していた。

急激に昇華したLV.5の【ステイタス】へ、ようやく心身が馴染み始めていたのである。

これまで彼女は、『調整』と称して無茶苦茶な訓練を繰り返していた。

超近距離から魔剣や魔法を撃ち込ませる。

高所から何度も飛び降りる。

そうした荒療治によって、第一級冒険者としての感覚を肉体へ叩き込んでいたのである。

その成果は、確実に現れ始めていた。

変わり始めた森

リューは、後輩達がどのような策を仕掛けてくるのか楽しみにしていた。

だからこそ、追い付ける距離を敢えて維持しながら、付かず離れずで追跡していた。

だが、その最中。

森の様子が異変を見せ始める。

木々は青々と茂り、濃密な植物の香りが漂っていた。

しかし今は晩秋。

本来なら、この森は既に朽葉色へ染まっているはずだった。

その異常へ気付いた瞬間、リューの脳裏へ一つの存在が浮かぶ。

現れた中位精霊

そして次の瞬間、ウランダの叫び声が響いた。

シャウ達が用意していた切り札。

それは、『精霊』だった。

巨大樹の前に浮かんでいたのは、発光する幼女のような存在。

半透明の肉体。

膨大な魔力。

空中浮遊。

リューは即座に、それが『精霊』であると見抜いた。

しかも下位精霊ではない。

中位精霊級の存在だった。

ユーフィという厄災

その精霊の名は『ユーフィ』。

剣製都市の森へ住み着いている風の中位精霊だった。

普段はアストレア以外の前へ姿を見せない存在。

しかし今回は、シャウ達がリュー対策として引っ張り出してきたのである。

もっとも、彼女達自身もかなり怯えていた。

ユーフィは悪意こそないが、『玩具を壊して遊ぶ』性質を持っていたからである。

つまり、無邪気な厄災だった。

精霊達の森

ユーフィが笑った瞬間、森全体へ旋風が吹き荒れる。

さらに周囲には、多数の下位精霊達まで現れ始めた。

光の玉となった精霊達が、森中を漂い始める。

それは幻想的であると同時に、圧倒的な脅威でもあった。

シャウ達は、リューへ死なないよう叫ぶ。

ウランダは、女神を独占する妖精へ天罰をと呪詛めいた声を漏らしていた。

もはや『鬼ごっこ』の趣旨は完全に崩壊していた。

リューの昂揚

しかしリューは、むしろ気持ちを高揚させていた。

精霊を相手取った訓練など、オラリオでは到底不可能だったからである。

それはまさしく、最高峰の『調整』。

リューは木刀を構え、真正面から戦意を示した。

するとユーフィは、無邪気な笑みを浮かべながら告げる。

皆で遊ぼう、と。

精霊の森と少女の叫び

精霊達との激戦

ユーフィ達との『鬼ごっこ』を終えた後、リュー・リオン達は夕暮れの森へ戻っていた。

シャウやウランダは完全に疲弊し切っていたが、リューは平然としていた。

イセリナは、精霊達があまりにも危険な存在であるため、本来ならリューを近付けるつもりはなかったのだと明かす。

しかし結果として、その心配は杞憂だった。

リューは精霊達との戦闘すら、自身の『調整』へ利用していたのである。

そして彼女は理解する。

アストレアが自分を剣製都市へ引き留めていた理由を。

ここには精霊達という、オラリオでは得られない訓練環境が存在していたのだと。

剣製都市と精霊達

リューは、ユーフィのような中位精霊がなぜこの森へ住み着いているのかをイセリナへ尋ねた。

すると彼女は、そもそも精霊が存在したからこそ、この地へ剣製都市が築かれたのだと説明する。

豊かな森。

豊富な鉱物。

清浄な水源。

それらは全て、精霊達の加護によるものだった。

だが数年前、都市側と精霊側は大規模な衝突を起こしていた。

その争いを仲裁したのが、アストレアだったのである。

アストレアの役目

イセリナはさらに語る。

アストレアは現在も、精霊達との共存を維持するため、この森で暮らしているのだと。

自然保護。

植林。

精霊達との調停。

それら全てを担っていた。

リューは、自分の知らない場所でも、アストレアが変わらず『正義』を貫いていたことを知る。

そして同時に、セシルもまた、その姿へ惹かれて【ファミリア】へ入ったのだと理解した。

女神からの依頼

その後、アストレア本人が森へ姿を現す。

彼女はリューへ、セシルがまだ戻っていないことを伝えた。

剣製都市へ向かったきり帰ってこないのだと。

そして、彼女を迎えに行ってほしいと頼む。

アストレアは、懐へ一通の手紙を忍ばせながら、夕暮れの都市へ駆け出すリューを静かに見送っていた。

ブラックリーザ工房

剣製都市へ辿り着いたリューは、巨大工房『ブラックリーザ』へ向かう。

その隣には、『精霊炉』と呼ばれる神秘的施設が存在していた。

そして工房前では、セシルが家族へ必死に訴えていた。

精霊炉を貸してほしい。

それがあれば依頼された武器を完成させられるはずだと。

だが父親も兄達も、その願いを冷たく突き放す。

精霊すら従えられない半端者へ、精霊炉は貸せないのだと。

少女の慟哭

その言葉へ、セシルはついに感情を爆発させた。

自分だって必死に努力してきた。

家を飛び出し、アストレアのもとで鍛え、LV.2へ到達し、『鍛冶』のアビリティまで得た。

魔剣だって作れる。

それなのに、なぜ認めてもらえないのか。

少女は涙なき慟哭をぶつける。

しかし父親達は揺らがない。

問題は技術でも能力でもない。

セシルには『芯』が足りないのだと。

鍛冶師としての『正義』が欠けているのだと。

止められた拳

激昂したセシルは、父親へ殴り掛かろうとする。

その拳を止めたのは、駆け付けたリューだった。

リューは、今は落ち着くべきだと諭そうとする。

しかしセシルは逆上する。

先輩面をするな。

余計なお世話だと叫び、その場から走り去ってしまった。

父親の願い

セシルを追おうとしたリューだったが、その時、父親から呼び止められる。

彼はリューを、『使い手』かと尋ねた。

リューは、自分はただの先達に過ぎないと答える。

すると父親は、小さく頷いた後、深く頭を下げた。

セシルを、どうかよろしく頼むと。

兄達もまた、同じように頭を下げていた。

先輩としての決意

館へ戻っても、セシルの姿はなかった。

アストレアの言葉を頼りに、リューは夜の森を駆ける。

本来なら、今すぐオラリオへ戻るべきだった。

ベルやシルのもとへ急がねばならない。

それでもリューは、今の自分が【アストレア・ファミリア】であることを選ぶ。

アリーゼ達なら、目の前の少女を見捨てなかった。

ベル・クラネルもまた、きっと同じ道を選んだはずだった。

だからリューは、自分の欲張りを肯定する。

未熟でも、自分は彼女の先輩なのだと。

精霊への懇願

精霊達の棲家へ辿り着いたリューが見たのは、ユーフィへ叫ぶセシルの姿だった。

『滴』を渡してほしい。

そうすれば全て上手くいく。

父親達にも認められ、依頼された武器も完成する。

そうじゃなければ、自分は――。

その背中は、まるで迷子の子供のようだった。

しかしユーフィは、そんなセシルへ無邪気な拒絶を返す。

今のセシルは嫌いだと。

怒りに駆られたセシルは、精霊へ向かって突撃する。

だが、その瞬間。

ユーフィの『悪戯』が発動した。

断崖への落下

突風が吹き荒れ、セシルの体が空中へ吹き飛ばされる。

さらに森の壁が開き、その先には断崖絶壁が広がっていた。

リューは即座に加速する。

そして空中へ投げ出されたセシルへ向かい、手を伸ばした。

二人はそのまま、夜の断崖へ落下していくのだった。

崖下への落下と休息

断崖の下に川は存在せず、代わりに小さな林が広がっていた。

リュー・リオンは落下するセシルを抱えたまま、岩壁や木々を足場にして衝撃を殺し、無事着地を果たした。

しかしセシルは枝へ引っ掛かった末に地面へ叩き付けられ、怒りと恐怖を混ぜた声でユーフィへの文句を叫ぶ。

なおも精霊の棲家へ戻ろうとするセシルだったが、極度の疲労で膝をつき、その場へ崩れ落ちてしまった。

リューは彼女の疲弊を見抜き、休息を促す。

連日まともに眠っていないことも、顔色や体の状態から看破していた。

惨めさを吐露するセシル

星明りの下、セシルはリューへ問い掛けた。

嫌いだと言った相手へ助けられるなど最悪だと。

笑いに来たのか。

文句を言いに来たのかと。

しかしリューは、アストレアや仲間達が彼女を心配していること、自分自身も気掛かりだったことを静かに伝える。

するとセシルは、アストレアが何も話していなかったことへ呆れ混じりの苦笑を漏らした。

そしてついに、自分が抱えていた秘密を打ち明け始める。

五年前の依頼

五年前。

アストレアはセシルへ、リュー専用の武器製作を依頼していた。

長い旅路を終えた時、新たな旅へ羽ばたくための『翼』を贈りたい。

そのための武器を作ってほしいと。

つまりアストレアが剣製都市へ来た理由そのものが、リューの未来のためだったのである。

その事実に、リューは女神の慈愛の深さを改めて痛感した。

同時に、セシルが自分へ激しい感情を抱いていた理由も理解する。

リューは何も知らないまま、すぐオラリオへ戻ろうとしていたのだから。

父親に認められたかった少女

セシルは、自分が最初から純粋だったわけではないと告白した。

剣製都市の英雄となったアストレアの眷族になれば、父親達に認められると思っていたのだと。

剣を打つこと自体は好きだった。

鉄が武器へ変わる工程は芸術のように感じられた。

だが、鍛冶師一族『ブラックリーザ』の中で、女であり末っ子だったセシルは、常に落ちこぼれ扱いされていた。

兄達に馬鹿にされ、どれほど努力しても認められない。

他の家族は皆【ファミリア】へ所属しているのに、自分だけは許されない。

その現実が、彼女の劣等感を深めていった。

『精霊の滴』への執着

やがてセシルは、父親達を見返すため『精霊の滴』を求めるようになった。

精霊へ認められ、『精霊炉』を扱える資格を得れば、自分の武器を認めさせられると考えたのである。

剣製都市では、精霊と信頼関係を築いた鍛冶師のみが『精霊炉』を扱うことを許される。

それは単なる設備ではなく、鍛冶師として認められた証でもあった。

だからセシルは、アストレアすら利用するつもりで【ファミリア】へ入ったのだと語る。

アストレアとの日々

しかしセシルの思惑は、少しずつ変化していった。

アストレアは、セシルの打算や嘘を見抜いていたはずなのに、一度も嫌な顔をしなかった。

森へ小屋を建て。

精霊達のもとへ通い。

一緒に食事を取り。

愚痴を聞き。

笑い合う。

そんな日々の中で、セシルは次第にアストレアを慕うようになっていた。

鍛冶の腕も上達し、【ファミリア】も仲間が増え、大きくなっていく。

そして気付けば、自分はアストレアの側にいたいと思うようになっていた。

リューもまた、その気持ちへ共感を示した。

嫉妬と罪悪感

しかし問題は残り続けていた。

リューの専用装備。

アストレアとの約束。

それだけは果たさなければならなかった。

セシルは叫ぶ。

アストレアを好きになるほど、リューへ嫉妬したのだと。

利用するつもりだったはずなのに、愛を求めてしまった。

武器を作りたくなかった。

だが作らなければ、自分はアストレアを騙している悪者になる。

だから図面を書き続けた。

素材を集めた。

木刀の再現まで試みた。

それでも完成しない。

何度挑戦しても、武器が形にならない。

父親にも認められない。

ユーフィにも拒絶される。

自分に足りないものが何なのかわからない。

ついにセシルは涙を流しながら、アストレアとの約束を守れないことへの恐怖を吐露した。

リューが見た少女の本質

リューは、泣き崩れるセシルを静かに見つめていた。

かつてアストレアの前で、自分自身も同じように感情を爆発させたことを思い出していたのである。

セシルはずっと、暗い海の中でもがき続けていた。

父親へ認められたい。

アストレアを裏切りたくない。

リューへの嫉妬と劣等感。

その全てが彼女を縛り、武器を完成させられなくしていた。

そして何より、セシルはリュー自身が思う以上に、リューのことを真剣に考えていたのである。

それゆえ、使い手本人が現れた時、約束の日が来てしまったと絶望した。

もしリューが嫌な人物なら、適当な武器を渡して終われたかもしれない。

しかし実際のリューは真っ直ぐで、潔癖で、自分の過ちを認められる人物だった。

だからこそ、セシルは余計に惨めさを覚えてしまった。

そして最後に。

アストレアから愛想を尽かされていないか。

失望されていないか。

それが何より怖いのだと、涙ながらに吐き出すのだった。

帰りを待つ仲間達

夜半に差しかかる頃になっても、リューとセシルは戻ってこなかった。

『星休む宿』の外では、イセリナ達が不安を抱えながら二人の帰りを待っていた。

シャウは探しに行くべきではないかと右往左往し、ウランダはリューの会話能力へ辛辣な評価を下していた。

そんな眷族達へ向け、アストレアは迷いなく大丈夫だと断言する。

今のリューなら問題ないと。

そして、『特定の者のために打つ武器は特別な威力を発揮する』という言葉を思い返していた。

リューの依頼

一方、林の中ではリューがセシルへ静かに告げていた。

自分のために武器を作ってほしいと。

アストレアの依頼としてではなく、リュー自身の願いとして。

涙を浮かべたままのセシルは、なぜそんなことを言うのか理解できず困惑する。

自分は情けない話ばかりしていた。

嫉妬も劣等感もさらけ出した。

それでもリューは、だからこそ彼女の武器を手にしてみたいと思ったのだと答える。

迷い続けた者同士

リューは、自分にも迷い続けた時期があったことを語った。

罪を重ね、悩み続け、どこへも進めなくなっていた過去があった。

だが、その迷い続けた時間があったからこそ、自分は納得できる答えへ辿り着けたのだと。

セシルは、その言葉へ衝撃を受ける。

自分より遥かに完成された存在に見えていたリューにも、そんな過去があったとは思っていなかったのである。

リューは、セシルもまた『正義』を探す旅の途中にいるのだと告げた。

その言葉によって、アストレアが以前語っていた『似ている』という意味を、リューはようやく理解する。

迷い、苦しみ、停滞し、それでも答えを求め続ける姿が、かつての自分と重なっていたのである。

リューの昔話

そしてリューは、自らの過去を語り始めた。

故郷を飛び出したこと。

オラリオで失敗を繰り返したこと。

アストレア・ファミリアの仲間達と『暗黒期』を戦い抜いたこと。

七年前の『大抗争』。

五年前の『厄災』。

復讐に焼かれた日々。

豊穣の女主人で過ごした再生の時間。

そして今、未来を求めて再び歩き出したこと。

上手な語りではなかった。

だが、一つ一つの言葉には確かな実感と想いが込められていた。

受け継がれる正義

話を聞き終えたセシルは、かつて完璧に見えていたリューも、ずっと迷い続けていたことを知る。

頭上には無数の星が広がっていた。

それは人の数だけ存在する『正義』のようでもあった。

リューは、迷い続けることは決して恥ではないと告げる。

問い続けること。

答えを探し続けること。

それを教えてくれた大切な友人達の面影を重ねながら、リューは微笑んだ。

かつて【アストレア・ファミリア】の末っ子だった自分が、今は新しい世代へ言葉を伝えている。

それこそが『巡る』ということなのだと、リューは感じていた。

武器を作る決意

セシルはまだ『正義』について完全には理解できていないと認める。

それでも、不思議と今なら武器を作れる気がすると語った。

絶対に完成しないと思っていた。

だが今は違う。

『先輩』のための武器を作れる気がすると。

その顔には、リューがこれまで見たことのない柔らかな笑みが浮かんでいた。

リューもまた、過去の仲間達へ向けるような穏やかな笑みを返す。

そして二人は立ち上がり、手を取り合って『星休む宿』へ帰還した。

アストレアの抱擁

宿へ戻ると、シャウ達が大騒ぎで二人を迎えた。

セシルの表情には、既に笑みが戻っていた。

その様子を見たアストレアは、リューへ『ちゃんと先輩ができたみたいね』と微笑む。

その後、アストレアはセシルへ歩み寄り、『やっと私を見てくれた』と優しく語り掛けた。

セシルは、自分から勝手に避けていただけだったと涙ながらに謝罪する。

武器を作れない負い目から、アストレアと向き合うことすら怖くなっていたのである。

そんな少女を、アストレアは静かに抱き締めた。

セシルもまた、その身体へ腕を回す。

神では届かない想いを、同じ目線の眷族同士が繋いだ瞬間だった。

迫る『派閥大戦』

その後、アストレアはリューを神室へ呼び出した。

そこで渡されたのは、ヘルメスから届いた手紙だった。

内容は『派閥大戦』の詳細。

戦争遊戯の形式は『神探し』。

開催予定日は三日後。

オラリオへ戻るには、遅くとも二日後の朝には出発しなければ間に合わない。

ヘルメス達は神会で時間を稼ぎ続けていたが、既に限界を迎えていた。

リューとアストレアが参戦することを、彼等は最後まで望んでいたのである。

五年間の真実

そこでアストレアは、最後の【ステイタス】更新を行うと告げた。

そしてリューへ真実を明かす。

彼女は五年間分の【経験値】を、一度に全て解放してはいなかった。

もし全てを解放していたなら、リューは一度でLV.6へ到達していたからである。

しかも急激な成長によって、肉体と精神の『ズレ』に耐えられなくなっていた可能性すらあった。

だからアストレアは段階を踏ませた。

まずLV.5へ至らせ。

『調整』によって肉体を慣らし。

その上で、最終的な【ランクアップ】へ至らせようとしていたのである。

リューは、自分が二度連続で【ランクアップ】可能なほど膨大な【経験値】を蓄積していた事実へ衝撃を受ける。

それは世界でも前例のない事態だった。

LV.6への昇華

アストレアは最後の確認を行った。

本来なら、更に能力値を鍛え切ってから【ランクアップ】した方が効率は良い。

しかし今は『派閥大戦』が迫っている。

最強の敵【フレイヤ・ファミリア】を相手取る以上、出し惜しみなどしていられない。

リューは迷わず頷いた。

そして【ステイタス】更新が行われる。

結果、リュー・リオンはLV.6へ到達した。

さらに新たな魔法――【アストレア・レコード】が発現する。

その効果は『正義継承』。

アリーゼ達の想いと『正義』が、今もなお自分の中へ受け継がれている。

その事実を知ったリューは、涙を流しそうになるほど胸を震わせるのだった。

新たな戦闘衣

夜が明け、リューは再び『精霊の棲家』へ向かおうとしていた。

その途中、セシルが慌てた様子で呼び止める。

彼女が抱えていたのは、自作の戦闘衣だった。

『精霊の護布』を使って仕立てた高性能な装備であり、昨夜の礼としてリューへ渡そうとしていたのである。

一晩で仕上げたと聞き、リューはセシルの無茶を察して半眼を向けるが、セシルは仮眠は取ったと慌てて弁明した。

リューは感謝を伝え、その戦闘衣を身に着ける。

動きを一切妨げない完成度に、リューは素直な称賛を送った。

壊れた木剣の欠片

続いてリューは、自分の荷物から木片を取り出した。

それは、かつて使用していた武器《アルヴス・ルミナ》の破片だった。

『ジャガーノート』との戦いで砕けた武器の残骸であり、大切な知己から贈られた品でもあった。

リューは、その欠片を新たな武器の素材として使ってほしいと頼む。

セシルは、その想いの重さを理解しながら、丁重に受け取った。

そして彼女は、自分も『精霊の棲家』へ同行したいと願い出る。

リューのためだけの武器を完成させるには、『精霊炉』と『精霊の滴』が必要だったのである。

彼女は、自分のためではなく、リューのために武器を打ちたいと真っ直ぐに告げた。

その決意に、リューはアリーゼを重ね、苦笑とともに同行を認めた。

精霊ユーフィの本来の姿

『精霊の棲家』では、アストレアがユーフィへリュー達との鍛練を頼んでいた。

中位精霊ユーフィは喜びながら魔力を解放する。

そして幼女の姿を捨て、本来の姿――巨大な『精霊馬』へ変貌した。

風を纏う深緑の牝馬。

その圧倒的な威圧感に、セシルは戦慄する。

一方リューは、セシルの後ろへ立ち、必ず守ると静かに告げた。

LV.6の暴走

戦闘が始まると同時に、リューは超加速によってユーフィへ肉薄する。

しかし急激な能力上昇による感覚のズレから、盛大に空振りしてしまった。

それでも空振りの余波だけで精霊を吹き飛ばすほど、LV.6の力は凄まじかった。

ユーフィは風によって攻撃を逸らしながら応戦する。

対するリューは、未だ制御不能な速度に振り回されながらも猛攻を続けた。

アストレアは、その様子を見守りながら、最後の『調整』としてユーフィを選んだのは正解だったと判断していた。

精霊達の猛攻

やがてユーフィは下位精霊達へ命令を下す。

森全体が戦場となった。

光弾、炎弾、雷撃、氷雨が一斉に降り注ぎ、リューは地下迷宮を思わせる猛攻を受ける。

しかしリューは、その過酷さに歓喜していた。

ダンジョンにも匹敵する環境。

それは望外の『調整』だったのである。

武器の破壊

だが戦闘の最中、セシルが作った木刀は限界を迎えた。

リューの圧倒的な力に耐え切れず、刀身が砕け散ったのである。

セシルは、自分の武器が使い手の足を引っ張ったことへ絶望する。

鍛冶師として最も恐れていた事態だった。

しかしリューは、壊れた柄を握ったままセシルへ大丈夫だと告げる。

そしてアストレアへ視線を向け、静かに宣言した。

使います、と。

【アストレア・レコード】発動

精霊達の一斉攻撃が降り注ぐ中、リューは新たな魔法を発動する。

【アストレア・レコード】。

詠唱とともに『神聖文字』が星屑のように周囲へ展開され、巨大な障壁を形成した。

それは『正義』を守護する領域だった。

さらにリューは、『アガリス・アルヴェシンス』を発動する。

紅蓮の炎が砕けた木刀へ宿る。

その炎は、かつての団長アリーゼ・ローヴェルの魔法だった。

セシルは理解する。

この魔法は、アリーゼ達【アストレア・ファミリア】の仲間達の力を継承する魔法なのだと。

受け継がれる星々の記憶

【アストレア・レコード】とは、アストレアの神血を媒介として、かつての仲間達の『正義』を継承する魔法だった。

リューはアリーゼ達を忘れてはならない。

その想いを遠ざければ、魔法の力は弱まる。

だからこそアストレアは、この数日間を用意したのである。

イセリナ達やセシルとの交流を通して、リューが再び仲間達の存在を思い出せるように。

リューは炎を纏いながら、涙を浮かべて呟いた。

皆が今もそこにいて、自分とともに戦ってくれているのだと。

セシルの嫉妬と決意

そんなリューを見つめながら、セシルは強い悔しさを覚えていた。

リューは魔法と仲間達との絆に心から喜び、笑っている。

しかし自分の武器は役に立たなかった。

その現実が、鍛冶師としての誇りを強く刺激する。

武器とは、使い手の半身でなければならない。

ならば自分もまた、リューを支える『星』になりたい。

そう決意したセシルは、戦場へ飛び込んだ。

セシルの『正義』

精神疲弊によって隙を晒したリューへ、ユーフィが反撃を仕掛ける。

その瞬間、セシルが割って入った。

ハンマーを振り下ろし、ユーフィの額へ直撃させる。

さらに彼女は精霊馬の顔を掴み、自らの想いを叫んだ。

自分はリューの鍛冶師になりたい。

好きな人達を護る武器を作りたい。

それこそが自分の『正義』なのだと。

その想いは、古の英雄へ力を貸した精霊達にも通じるほど真っ直ぐだった。

ユーフィは、その覚悟を認める。

そして『精霊の滴』をセシルへ授けた。

それは一流鍛冶師として認められた証だった。

旅立つ鍛冶師

セシルはユーフィへ礼を告げる。

そしてリューへ向き直り、必ず武器を完成させると約束した。

今度こそ納期を守ると。

彼女は『星休む宿』へ駆け戻り、鍛冶へ取り掛かるため森を去っていく。

その背を、アストレアとリューは温かく見送った。

終わらない鍛練

しんみりとした空気が流れた後、リューは再び剣を構えた。

アストレアは大量の精神力回復薬を取り出す。

つまり、リューはほぼ無限に戦闘を継続できる状態となった。

精霊達は一斉に青ざめる。

リューは鍛練に本気だった。

そしてアストレアは、そんな眷族を徹底的に追い込む女神だった。

間もなく、『精霊馬』ユーフィの幼児じみた悲鳴が、森中へ響き渡るのだった。

工房への帰還

セシルは『精霊の棲家』を飛び出し、全力で剣製都市へ駆け戻った。

都市中央部にある『ブラックリーザ』工房の前では、シャウやイセリナ達が工具や鉄床を準備して待っていた。

セシルは到着するなり制服を脱ぎ捨て、父親へ『精霊炉』を貸してほしいと迫る。

さらに、自分が『精霊の滴』を得たことを証明し、使用資格があると宣言した。

周囲の鍛冶師達が驚愕する中、セシルは『大聖樹の枝』、『木片』、『精霊の滴』を取り出す。

そして迷いなく作業衣へ袖を通した。

父親との対話

セシルの父親は、娘へ静かに問いかける。

鍛冶師としての『芯』、つまり『正義』を見つけたのかと。

セシルは恥ずかしいから教えないと笑い飛ばしながら、『精霊炉』へ飛び込んでいった。

その背を見送りながら、父親はリューへ本音を語り始める。

剣製都市の鍛冶師達は大量生産を前提としており、『誰のための武器か』を考えることを失ってしまっている。

平均点の高い武器は作れても、『たった一人のための百点の武器』へ到達できない。

だがセシルは違った。

発想力も努力もあり、本来ならば『本物』になれる才能を持っている。

だからこそ、自分達の工房へ閉じ込めたくなかったのだと。

父親は、セシルへ敢えて厳しく接していた理由を明かした。

挫折も苦悩も経験しなければ、本当の鍛冶師にはなれないからだ。

そして今、セシルは確かに『芯』を手に入れたと確信していた。

完成した武器

やがて『精霊炉』の門が開く。

全身に軽い火傷を負いながらも、セシルは一振りの木剣を抱えて姿を現した。

その姿を見た父親達は背を向けながらも、娘を誇らしく思っていた。

リューは、家族としてきちんと話し合うべきだと忠告する。

すると男達は、確かに間違っていないな、と呟きながら去っていった。

その後、セシルは完成した武器をリューへ差し出す。

深緑色へ変化した大聖樹の木剣。

《アルヴス・ルミナ》より長い剣身には、『精霊炉』の作用による翡翠色の輝きが宿っていた。

さらに中心部には、『木片』と『精霊の滴』を融合させた『星精石』が据えられている。

剣としても杖としても機能する、専用装備だった。

リューはその武器を手に取り、圧倒的な魔力と手への馴染みを感じ取る。

セシルは、リューの手の形を覚えて作ったのだと誇らしげに胸を張った。

《アルヴス・ユースティティア》

シャウ達に銘を尋ねられたセシルは、高らかに答える。

その名は、《アルヴス・ユースティティア》。

『星屑の剣』。

アストレアの象徴たる『正義』の名を冠した武器だった。

リューも、その名を気に入る。

そしてセシルへ深く感謝を告げた。

セシルは満面の笑みで、それに応えた。

苦悩と挫折を乗り越えた少女は、ようやく一人前の鍛冶師として歩み始めたのである。

オラリオへの出発

そこへ、アストレアが『精霊馬』ユーフィへ騎乗した状態で現れる。

彼女はリューへ同行し、戦争遊戯へ参加するため、共にオラリオへ向かうと告げた。

戦争遊戯の形式が主神参加型である以上、アストレア不在では問題が生じるからだった。

するとセシル達も同行を志願する。

シャウやウランダまで参加を表明し、結局【アストレア・ファミリア】は総出で出発することになった。

精霊馬を中心に、少女達は剣製都市を駆け抜ける。

セシルの願い

道中、セシルはリューへ並走しながら叫ぶ。

自分と『直接契約』してほしい、と。

アストレアへ戻るにせよ、オラリオへ残るにせよ、リューの本命武器は自分に作らせてほしいのだと。

それこそが、自分の『正義』だから。

好きな人のために武器を作る。

その想いを真っ直ぐにぶつける後輩へ、リューは微笑み返した。

本命の武器は貴方へ任せる。

そう認められたセシルは、満面の笑みを浮かべてさらに速度を上げる。

リューは、今回の旅は決して無駄ではなかったと実感していた。

『正義』を思い出し、新たな仲間との絆を得た旅路。

その全てを胸に抱きながら、彼女は西へ向かって駆け抜ける。

シルを止めるために。

かつての、そして新たな星乙女達とともに。

黄昏の少女

抱擁癖の少女

アーディ・ヴァルマは、リューにとって不思議な少女だった。

【ガネーシャ・ファミリア】所属のLv.3冒険者であり、厳格な姉シャクティとは対照的に、天真爛漫で誰にでも優しく接する性格をしていた。

しかし同時に、極度の抱き着き癖を持っていた。

初対面の際、アーディはリューを見るなり抱き着こうとし、リューは反射的に張り手で迎撃した。

それでもアーディは全く懲りず、リューへ好意的に接し続ける。

やがてリューも、彼女の裏表のない優しさや人柄を理解し、心を許すようになっていた。

その結果、今度は油断すると抱き締められるようになってしまい、リューは顔を真っ赤にしながら抗議する日々を送ることになる。

しかしアーディは、抱き着くのはリオンだけだから大丈夫だと言って笑うだけだった。

黄昏の読書時間

アーディは英雄譚『アルゴノゥト』を読むことが好きだった。

ある日も彼女は、黄昏に染まる麦畑で本を読みながら、リューを隣へ座らせる。

リューは苦言を呈しながらも、結局いつものように折れて隣へ腰を下ろした。

アーディは、英雄譚の好きな場面について嬉しそうに語る。

元気のない少女の手を取って踊り出すアルゴノゥト。

その無邪気で真っ直ぐな物語を語るアーディ自身もまた、周囲を笑顔にする存在だった。

リューは、そんな彼女の隣にいると自然に心が和らいでいくのを感じていた。

笑顔を教えてくれた少女

やがてアーディは、リューへ笑おうと言った。

リューの笑顔は、きっと誰かを幸せにできるからだと。

そう言いながら、彼女は自分の頬を指で持ち上げ、無理やり笑顔を作って見せる。

さらにリューの頬へも手を伸ばし、二人はもつれ合うように麦畑へ倒れ込んだ。

声を上げて笑うアーディにつられ、リューも笑い出す。

その穏やかな時間の中で、リューは感謝を口にした。

迷った時、何度も導いてくれたこと。

『正義』を信じさせてくれたこと。

そして、自分にとっての『希望』だったことを。

黄昏の別れ

しかし、その光景はどこか幻想めいていた。

黄金色の麦畑。

黄昏に染まる地平線。

そして、本を抱えたアーディは、まるで別れを告げるように立ち上がる。

彼女は言う。

『正義』を一人で抱え込み過ぎてはいけないと。

抱えきれなくなったなら、他の誰かへ伝えてほしいと。

想いは巡り、種となり、別の花として咲いていく。

それが『正義は巡る』ということなのだと。

アーディは最後まで笑顔だった。

リューへ、にこにこ笑うのだと伝えながら。

リューもまた、涙を流しながら微笑んでいた。

夢から覚めて

リューは夢から目を覚ます。

そこは『星休む宿』の一室だった。

見ていた夢の内容は既に曖昧になっていたが、胸に残る温かさだけは消えていなかった。

幸福な夢だったのだと、リューは理解していた。

その夢は、心の迷いを溶かし、優しく背中を押してくれた。

リューは身支度を整え、再び訓練へ向かう。

廊下で出会ったシャウは、珍しく笑っているリューを見て大騒ぎした。

リュー自身も、自分が何故こんなにも自然に笑えているのか、よくわかっていなかった。

だが後輩達が嬉しそうに笑う姿を見て、悪い気はしない。

だからリューは、その想いへ少しだけ素直になることにした。

もう思い出せなくなった『黄昏の少女』も、きっとそれを望んでいる気がしたからだった。

五年前にあったなんてことのない少女達の話

静寂に包まれた夜

星々が輝く夜空の下、【アストレア・ファミリア】本拠『星屑の庭』は珍しく静けさに包まれていた。

団員達の多くは依頼で出払っており、アストレアも神々の会議へ参加している。

そのため本拠に残っていたのは、アリーゼ、輝夜、ライラの三人だけだった。

年長組によって強制的に休暇を与えられた彼女達は、久しぶりに肩の力を抜き、酒や菓子を囲んで団欒を楽しむ。

平穏なオラリオを感じながら、三人は【ファミリア】結成初期の頃を思い返していた。

昔の輝夜とライラ

アリーゼは、最初の頃の輝夜とライラが酷くひねくれていたと笑いながら語る。

輝夜は嫌そうに目を閉じ、ライラも苦い顔を浮かべた。

だが三人の間には、長年苦労を共にしてきた者達だけが持つ気安さがあった。

互いに遠慮なく過去を暴露し合いながらも、自然と笑みがこぼれる。

テーブルにはマリューの作ったパンプキンケーキやセルティの木苺クッキーなどが並び、賑やかな時間が流れていた。

話題はリューへ

やがて酒の肴として話題に上がったのは、やはりリューだった。

三人とも、今なおリューが最も危なっかしい団員だと認識している。

輝夜は以前、犠牲を前提とした平和についてリューと激しく言い争ったことを語る。

理想を求め続けるリューへ、現実の厳しさを突きつけたのである。

そこへアリーゼは、アーディ・ヴァルマの名前を出した。

二年前の『大抗争』で命を落とした少女。

彼女の死は、リューへ深い影響を与えていた。

それでもリューは、『仕方ない犠牲』を認めるのではなく、『犠牲なき未来』を求め続けている。

アリーゼはそれをリューの長所だと言い、輝夜は欠点だと断言する。

ライラは、その両方が正しいと結論づけた。

リューへ与えた教え

輝夜は『理想と現実』を。

ライラは『知識と知恵』を。

二人とも、方法は違えど、リューが将来折れないよう導こうとしていた。

そしてアリーゼは、それこそが彼女達の願いなのだと微笑む。

リューが立ち上がれるように。

どんな困難にも向き合えるように。

彼女はずっと支えられているのだと。

未来のリューを想像する三人

ライラはふと思いついたように、新しい団員が増えた未来を想像し始める。

その時、リューが後輩を指導している姿はどうなるのか。

潔癖で不器用な鬼教官。

妥協を許さず空回りし、逆に後輩へ言い返されて落ち込む姿。

三人は、その光景を想像して笑い合った。

だがアリーゼだけは、優しい表情で語る。

リューはきっと不器用で、衝突もするだろう。

それでも誰よりも親身になって、後輩達を導く人間になるのだと。

ライラも、結局放っておけないだろうと頷く。

輝夜は、余計な荷物を背負い込む愚か者だと呆れながらも、その本質自体は否定しなかった。

リューの未来

しかし話題は次第に、より深刻なものへ変わっていく。

リューの理想主義は危うさと表裏一体だった。

『理想』を求め続ける者の末路は、砕け散る剣に等しい。

輝夜はそう断言する。

ライラも完全には否定できなかった。

もしリューの理想が砕けた時、彼女がどうなってしまうのか。

それはアストレアですらわからないかもしれない。

重い沈黙の後、アリーゼは問いかけた。

リオンは、どんな『正義』へ辿り着くのだろうかと。

三人の願い

ライラは、きっとどこまで行っても頭の堅いままだろうと笑う。

輝夜も、愚かな正義を振りかざし続けるだろうと呆れたように語る。

それでも二人とも、その在り方自体は否定しなかった。

アリーゼは静かに目を閉じる。

そして、夢物語のようで、それでも美しい『正しさ』を、リューはきっと貫くのだと語った。

その未来には、酒場の仲間や、別の【ファミリア】、あるいは彼女を慕う後輩達がいるのかもしれない。

そして、その背中を見守るように、自分達も寄り添っている。

アリーゼは果実酒のグラスを掲げる。

『正義の剣と翼に誓って』ではなく。

『リオンが辿り着く希望を信じて』。

三人の杯が重なり、小さな音を響かせる。

それはリューの知らない、少女達だけの静かな夜だった。

episode フレイヤ レビュー
ダンまち全巻まとめ
episodeアスフィ レビュー

ファミリアクロニクル

ファミリアクロニクル episodeリューの表紙画像(レビュー記事導入用)
ファミリアクロニクル episode リュー
ファミリアクロニクル episodeフレイヤの表紙画像(レビュー記事導入用)
ファミリアクロニクル episode フレイヤ
ファミリアクロニクル episode リュー2の表紙画像(レビュー記事導入用)
ファミリアクロニクル episode リュー2
ファミリアクロニクル episodeアスフィの表紙画像(レビュー記事導入用)
ファミリアクロニクル episodeアスフィ

ファミリアクロニクル episodeヘイズの表紙画像(レビュー記事導入用)
ファミリアクロニクル episodeヘイズ

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか  一覧

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 1の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 1
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 2の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 2
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 3の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 3
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 4の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 4
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか5の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 5
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか6の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 6
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか7の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 7
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか8の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか8
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 9の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか9
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 10の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか10
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 11の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか11
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 12の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 12
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 13の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 13
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 14の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 14
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 15の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 15
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 16の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 16
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 17の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか17
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 18の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか18
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 19の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか19
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 20の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか20
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 21の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか21

ダンジジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア1の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア1
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア2の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア2
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア3の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア3
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア4の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア4
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア5の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア5
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア6の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア6
ソード・オラトリア7の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア7
ソード・オラトリア8の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア8
ソード・オラトリア9の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア9
ソード・オラトリア10の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア10
ソード・オラトリア11の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア11
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア12の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア12
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア13の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア13
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア14の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア14
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア15の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア15
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア16の表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア16

アストレア・レコード

アストレア・レコード 1 邪悪胎動の表紙画像(レビュー記事導入用)
アストレア・レコード 1 邪悪胎動
アストレア・レコード 2 正義失墜の表紙画像(レビュー記事導入用)
アストレア・レコード 2 正義失墜
アストレア・レコード 3巻 正邪決戦の表紙画像(レビュー記事導入用)
アストレア・レコード 3巻 正邪決戦
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オラリオ・ストーリーズの表紙画像(レビュー記事導入用)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オラリオ・ストーリーズ
アルゴノゥト 前章 道化行進の表紙画像(レビュー記事導入用)
アルゴノゥト 前章 道化行進

その他フィクション

フィクション固定ページアイキャッチ画像
フィクション(novel)あいうえお順

Share this content:

コメント

タイトルとURLをコピーしました