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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかフィクション(Novel)読書感想

小説【ダンまち外伝】ファミリアクロニクル episodeリュー 感想・ネタバレ

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ファミリアクロニクル episodeリューの表紙画像(レビュー記事導入用) ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

episodeフレイヤ レビュー

Table of Contents

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. リュー・リオンの正義
      1. 【アストレア・ファミリア】で培われた正義
      2. 正義の喪失と葛藤
      3. 抑えきれない正義感の発露と「悪」への断罪
      4. もたらされた「正義の成果」
    2. 豊穣の女主人
      1. 客層に合わせた巧みな経営戦略
      2. 規格外の戦闘力を誇る店員たち
      3. 傷ついた少女たちの「居場所」と「家族」
      4. 「美味い飯と笑顔」がもたらす救済
    3. 大賭博場潜入
      1. 潜入の目的と動機
      2. 伯爵夫妻への変装と堂々たる入場
      3. 「上客」を演じる作戦とシルの手腕
      4. 貴賓室での直接対決とシルの圧倒的勝利
      5. 正体の暴露と鮮やかな奪還劇
      6. まとめ
    4. シルの真価
      1. 「魔女」と称される異質な人間観察力
      2. 広範な人脈としたたかな策略
      3. 魂を救済し、行動を促す「慈愛の言葉」
      4. まとめ
    5. 過去との決別
      1. リュー・リオン:復讐の虚無からの再生
      2. ルノア・ファウスト:孤独な闘争との決別
      3. クロエ・ロロ:終わりのない暗殺業からの解放
      4. 「豊穣の女主人」という新たな居場所への帰着
      5. まとめ
  6. 登場キャラクター
    1. 豊穣の女主人
      1. リュー・リオン
      2. シル・フローヴァ
      3. ミア・グランド
      4. アーニャ
      5. クロエ・ロロ
      6. ルノア・ファウスト
      7. メイ
    2. クレーズ家
      1. ヒューイ・クレーズ
      2. カレン・クレーズ
      3. アンナ・クレーズ
    3. エルドラド・リゾート
      1. テッド(テリー・セルバンティス)
      2. ファウスト
      3. ロロ
      4. 初老のヒューマンの支配人
    4. アストレア・ファミリア
      1. アストレア
      2. アリーゼ・ローヴェル
    5. ヘルメス・ファミリア
      1. アスフィ・アル・アンドロメダ
    6. ガネーシャ・ファミリア
      1. シャクティ・ヴァルマ
    7. ギルド
      1. ロイマン・マルディール
    8. モルド一味
      1. モルド
      2. スコット
      3. ガイル
    9. ブルーノ商会
      1. ヒューマンの商人
      2. ドワーフの商人
      3. ゴロツキ達
    10. デメテル・ファミリア
      1. デメテル
      2. ペルセフォネ
    11. ニョルズ・ファミリア
      1. ニョルズ
    12. その他・冒険者
      1. ベル・クラネル
  7. 展開まとめ
    1. グラン・カジノをぶっつぶせ!
    2. 1
    3. 2
    4. 3
    5. 4
    6. 5
    7. 6
    8. 7
    9. そこは豊穣の酒場~ Girl meets Girls ~
    10. 1
    11. 2
    12. 3
    13. 4
    14. 5
  8. ダンまち シリーズ一覧
    1. ファミリアクロニクル
  9. ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか  一覧
    1. ダンジジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア
    2. アストレア・レコード
  10. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー』は、大人気ライトノベル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の登場人物に焦点を当てたスピンオフシリーズ第1弾であり、ジャンルは異世界ファンタジーである。 本作は、本編のメインキャラクターの一人であるエルフの女性、リュー・リオンを主人公としている。物語は、彼女が働く酒場『豊穣の女主人』での日常から、カジノを舞台にした大騒動、そして彼女の過去に深く関わる【アストレア・ファミリア】の悲劇までを描く。広大な地下迷宮(ダンジョン)を有する迷宮都市オラリオを舞台に、本編では語られきれなかったリューの「正義」と「再生」の物語が綴られている。

■ 主要キャラクター

  • リュー・リオン: 本作の主人公。かつては【アストレア・ファミリア】に所属し、『疾風』の二つ名で知られた伝説の第一級冒険者である。現在は酒場『豊穣の女主人』の店員として身を隠している。潔癖で正義感が強く、困っている者を見捨てられない性格である。
  • シル・フローヴァ: 酒場『豊穣の女主人』の看板娘であり、リューの親友。鋭い観察眼と不思議な包容力を持ち、リューが過去の呪縛から解き放たれるきっかけを作る重要な役割を担う。
  • アーニャ・フローメル: 『豊穣の女主人』の店員である猫人の少女。明るくお調子者だが、かつては【フレイヤ・ファミリア】に所属していた実力者であり、本作のカジノ編ではその身体能力を活かして活躍する。
  • クロエ・ロロ / ルノア・ファウスト: リューと同じく酒場で働く同僚。それぞれ暗殺者、賞金稼ぎという裏の経歴を持っており、リューを助けるために共に戦いに身を投じる。
  • アリーゼ・ローヴェル: リューの回想に登場する人物であり、【アストレア・ファミリア】の団長。リューにとって憧れであり、彼女の正義の在り方に多大な影響を与えた。

■ 物語の特徴

本作の最大の特徴は、本編で非常に高い人気を誇るリュー・リオンの過去と内面に深く切り込んでいる点である。前半の「グラン・カジノ」編では、酒場の店員たちが実はオラリオ最強クラスの猛者揃いであることを示す痛快なアクションとコメディが展開される。 一方で、後半の過去編では、彼女がなぜ冒険者を辞め、復讐に走ったのかというシリーズ屈指の凄惨で重厚なエピソードが描かれる。この「光(日常)」と「影(過去)」の対比が読者の感情を強く揺さぶる構成となっており、彼女の行動原理や「正義」への葛藤が浮き彫りになる点が他作品にはない魅力である。本編の読者にとっては、後のエピソードでのリューの言動をより深く理解するための必読書となっている。

書籍情報

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー
著者:大森藤ノ 氏
イラスト:ニリツ 氏
キャラクター原案: ヤスダスズヒト 氏
出版社:SBクリエイティブGA文庫
発売日:2017年3月15日
ISBN:978-4-7973-9080-3

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

” それは神の眷族が紡ぐ歴史の欠片(クロニクル)――。

「アンナ・クレーズを買い取ったのは、『大賭博場(カジノ)』の人間です」
腕利きの元冒険者リューが働く『豊穣の女主人』で今日も騒動が起こる。
とある夫婦の一人娘がさらわれたことを知り、正義(アストレア)の名のもとに調査を開始するリュー。
その先に彼女が辿り着いたのは――迷宮都市の治外法権、大賭博場。
人の欲望が渦巻く黄金の都で【疾風】の轟きが巻き起こる!

「お前達、声を出しな! ここは笑って飯を食べてもらう場所さ!」
そして少女達が酒場に集う始まりの物語も収録!

ダンまちの世界を補完するクロニクル・シリーズ第一弾、始動!”

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー

感想

本編でも屈指の人気を誇るリューの過去と、彼女が働く酒場の秘密に深く迫る一冊であった。 物語の前半で描かれるカジノでの騒動では、彼女の内に眠る、ゆらぐことのない強い正義感があふれ出していたように思う。 また、ひょんなことから協力することになったベルの豪運ぶりも、見ていて非常に気持ちがよかった。

後半では、今の仲間たちがどのような経緯で「豊穣の女主人」という場所に集ったのかが明かされる。 これを読んで、ようやく本編において、なぜただのウェイトレスたちが平然とダンジョンに突入できたのかという謎が全て解けた。 かつての二つ名を持つ「疾風」や「黒拳」、「黒猫」に加えて「戦車の片割れ」、さらには「小巨人」までもが顔を揃えているのだ。 こうして面々を確認してみると、なんと恐ろしい店なのだろうと、思わず笑いがこみ上げてきた。

普段の賑やかな日常の裏側に、これほどまでに重厚な戦いと絆の物語が隠されていたことに驚かされる。 単なるスピンオフの枠を超えて、彼女たちの生き様や強さの理由を多角的に知ることができ、非常に読み応えのある作品であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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episodeフレイヤ レビュー

考察・解説

リュー・リオンの正義

リュー・リオンの「正義」は、彼女の根本的な性質であると同時に、過去の悲劇による深い葛藤と、それでも抑えきれない弱者救済への思いとして描かれている。

【アストレア・ファミリア】で培われた正義

・荒くれ者が集う迷宮都市オラリオにおいて「正義感なんてものを今でも持っている、変り種のエルフ」と評されるほど、生真面目で潔癖な性質を持っている。
・かつて、正義の剣と翼をエンブレムに掲げる女神の派閥【アストレア・ファミリア】に所属し、都市に蔓延る「悪」を断ち、秩序と安寧を守るために尽力していた。
・正義の根底には女神アストレアの教えがあり、悪事に手を染めた者であっても、ひれ伏して懺悔する者には慈悲をもって赦しの機会を与えるという寛容さも持ち合わせていた。

正義の喪失と葛藤

・所属していた【ファミリア】の仲間を奪われたことで、凄惨な復讐に身を投じた。
・仇を討つために私怨のままに暴れ回り、要注意人物として追われる身となった彼女は、「私にはもう正義を語る資格がない」と自らを強く戒めている。
・見ず知らずの他者への無償の救済はただの偽善にしかならないと考え、困っている人を助けようとする自分を抑え込もうと葛藤している。

抑えきれない正義感の発露と「悪」への断罪

・親の賭博の借金で理不尽に売られた少女アンナの境遇を知ると、かつての仲間アリーゼの「迷ったら、難しいことなんて考えちゃ駄目よ! 自分に素直になるの!」という言葉に背中を押され、救済に乗り出している。
・かつてアストレアの慈悲によって赦されたにもかかわらず、名前を偽って再び悪事に手を染めていた男(テッド)に対しては、「あの方に代わって、私がお前を裁く」と宣言し、正義の執行者として一切の容赦なく断罪する峻烈さを見せている。

もたらされた「正義の成果」

・仲間の仇を討つための自身の戦いは「正義ですらなかった」と自身では強く否定している。
・しかし、シルから「街はリュー達のおかげで平和になった」「私達のために戦ってくれて、ありがとう」と告げられたことで、真実に気づかされる。
・私怨にまみれたと思っていた彼女の戦いは、結果としてオラリオの「悪」を滅ぼし、街の人々が笑い合える平和をもたらしていた。
・自分が失ったと嘆いていた仲間たちが確かに遺した「正義の成果」に気づき、それを未来へ見届けるために生きていくことを決意している。

このように、リュー・リオンの正義は、一度は復讐によって失われたと思い込んでいたものの、彼女の内に優しさと厳しさとして残り続け、最終的に街と人々を救う形となって結実したと論じることができる。

豊穣の女主人

「豊穣の女主人」は、迷宮都市オラリオの西のメインストリートに位置する三階建ての石造りの酒場であり、単なる飲食店にとどまらない特異な性質と役割を持つ場所として描かれている。

客層に合わせた巧みな経営戦略

・昼は女性を中心とした一般市民、夜はダンジョン帰りの冒険者と、時間帯によって客層を分けている。
・客層に合わせて品書きや価格を変更するという、したたかな経営を行っている。
・実入りのいい冒険者からは高い料金を頂戴するが、提供される料理や特製の果実酒は絶品であり、多くの客を病み付きにさせている。

規格外の戦闘力を誇る店員たち

・この店の最大の特徴は、女将と店員たちの並外れた戦闘力である。
・女将のミア・グランドは元【フレイヤ・ファミリア】の団長であり、Lv.6の実力を持つ豪傑である。
・看板娘のシル・フローヴァを除き、リュー・リオン(元【疾風】)、ルノア(元賞金稼ぎ)、クロエ(元暗殺者)、アーニャなど、住み込みで働く店員の多くが過去に荒事を経験した「訳あり」の実力者たちで構成されている。
・店内で暴れたり粗相を働いたりした客は、彼女たちによって容赦なくボロボロにされて路上へ放り出される。

傷ついた少女たちの「居場所」と「家族」

・「豊穣の女主人」は、過去に傷つき、行く宛てを失った少女たちの「居場所」としての役割を果たしている。
・復讐の果てに生きる理由を失い倒れていたリューや、終わりのない殺し合いに疲弊していたルノアやクロエなどは、強引な形であれこの店に迎え入れられたことで新たな生を見出した。
・ミアは自らをこの店の「法」であり、店員たちの「母親」であると宣言している。
・店員たちも彼女を「母さん」や「母ちゃん」と呼び、互いに本気で喧嘩を交わしながらも気兼ねなく過ごせる、血の繋がらない「家族」のような絆を築いている。

「美味い飯と笑顔」がもたらす救済

・ミアが語る「『美味い飯を食べる』。生き甲斐や、生きる理由なんて、それだけで十分なのさ」という言葉に象徴されるように、この店は温かい食事を通じて人々に生きる活力を与えている。
・彼女の「どんなにクソッタレな時代だろうと、ここは笑って飯を食べてもらう場所さ」という理念のもと、過去を抱えた少女たちが懸命に働き、客と笑みを分かち合う空間となっている。

このように「豊穣の女主人」は、過酷な迷宮都市において、美味しい食事と笑顔を通じて人々に(そして従業員である少女たち自身にも)安らぎと救済をもたらす、希望の象徴として論じることができる。

大賭博場潜入

大賭博場潜入は、奪われた少女を救うためにリューとシルが身分を偽って敵地に乗り込み、知略と実力をもって悪を打ち砕く痛快な奪還劇として描かれている。

潜入の目的と動機

・事件の発端は、ヒューイ・クレーズが賭博の借金の担保として娘のアンナを奪われたことである。
・リューは調査の結果、アンナが最大賭博場『エルドラド・リゾート』の経営者テリー・セルバンティスに買い取られたことを知る。
・本来は大賭博場という治外法権に手出しすることは困難であったが、かつての仲間の「自分に素直になる」という言葉に背中を押されたリューは、救出の意思を固めた。

伯爵夫妻への変装と堂々たる入場

・厳重な警備を突破するため、シルが独自の人脈を使って大賭博場の「招聘状」を手に入れた。
・この招聘状が小国の「マクシミリアン伯爵夫妻」宛てであったため、リューが燕尾服と眼帯で男装してアリュード伯爵に、シルが華やかなドレスを纏って妻のシレーネに変装した。
・二人は警備の目を掻い潜るのではなく、正規の客として正面から堂々と大賭博場へ足を踏み入れた。

「上客」を演じる作戦とシルの手腕

・大賭博場の内部で経営者との接触を図るため、リュー達は「羽振りの良い上客」を演じて目立つ作戦をとった。
・偶然居合わせたベル・クラネルがルーレットで大勝ちした高額賭札を元手に、リューがポーカーで荒稼ぎをした。
・同時にシルが遊びに来ていた神々をそそのかし、「伯爵夫妻が白聖石の山を掘り当てた大富豪である」という偽の噂をホール中に広めさせた。
・この見事な連携により、目論見通り経営者テリーの目に留まり、アンナがいる「貴賓室」へと招待されることに成功した。

貴賓室での直接対決とシルの圧倒的勝利

・貴賓室でアンナの姿を確認したリューはテリーを牽制したが、逆にアンナとシルを賭けたポーカー勝負を強要された。
・テリーと他の招待客達は結託して暗号を交わし、リューを一方的に追い詰めていった。
・しかし、見かねたシルがリューの代わりに勝負を引き受けると状況は一変した。
・シルは相手の表情や視線から内心を読み取る「魔女」のような観察眼を駆使し、最終的に「ロイヤルストレートフラッシュ」を叩きつけてテリーに圧倒的な完全勝利を収めた。

正体の暴露と鮮やかな奪還劇

・勝利後、リューはアンナだけでなく全ての女性の解放を要求し、テリーの正体がかつてオラリオを追放された違法胴元「テッド」であることを暴いた。
・顔を隠していた肩掛を外し、自身の正体が【疾風のリオン】であることを明かして、テッドが雇っていた凄腕の用心棒達を瞬く間に打倒した。
・さらに、シルが囚われていた美姫達を煽って暴動を起こさせ、ベルやモルド達が一芝居打ってホールで大乱闘を起こすことで、都市の警備(ガネーシャ・ファミリア)を足止めするという完璧な連携を見せた。

まとめ

最後は地下金庫に逃げ込みアンナを襲おうとしたテッドに対し、リューが必殺魔法【ルミノス・ウィンド】を放って超硬金属の扉ごと粉砕し、アンナを無事に救出した。このように、大賭博場潜入は二人の見事な連携とそれぞれの持ち味が存分に発揮され、巨悪を討ち果たす爽快な奪還劇として結実している。

シルの真価

シルの真価は、酒場『豊穣の女主人』の純朴で愛想の良い看板娘という表の顔の裏に隠された、他者の心を完全に見透かす「魔女」のような洞察力と、それを駆使した狡猾なまでの策略、そして同時に傷ついた人々を救い上げる深い慈愛の共存として描かれている。

「魔女」と称される異質な人間観察力

・シルの最大の武器は、相手の瞳や表情から思考や感情を完全に読み取る並外れた観察眼である。
・シル自身が「人間観察」と呼ぶこの能力は、大賭博場でのポーカー勝負においていかんなく発揮された。
・彼女は相手の「魂」の色の揺らぎを見抜くかのように手札や心理を読み切り、圧倒的な手役(ロイヤルストレートフラッシュなど)と巧みな心理操作によって、海千山千の富豪や経営者テッドを完全に翻弄し、単独で勝利をもたらした。
・歴戦の冒険者であるリューですら、シルの賭博を「一方的な情報の蹂躙」と評しており、彼女の底知れぬ恐ろしさを示している。

広範な人脈としたたかな策略

・戦闘力こそ持たないものの、シルの機転と策略は元第二級冒険者のリューを凌駕する。
・独自の人脈を駆使して大賭博場の「招聘状」を入手し、遊びに来ていた神々をそそのかして自分たちを大富豪に見せかける偽の噂を意図的に流布させた。
・同行したベルに暗号めいた伝言を託すことでモルド一味を動かし、ホールで大乱闘を引き起こさせて都市の警備(【ガネーシャ・ファミリア】)を足止めするという完璧な盤面統制を見せている。
・極めつけには、地下金庫で悪あがきをするテッドの耳元で、女将ミアの所属する【フレイヤ・ファミリア】の名を囁き、言葉一つで敵を精神的に完全に無力化させるという非情なまでのしたたかさを発揮した。

魂を救済し、行動を促す「慈愛の言葉」

・シルの真価はただ狡猾に人を操るだけでなく、その洞察力を「他者の救済」に用いる点にある。
・復讐を終えて生きる理由を失い、路地裏で倒れていたリューの手を無条件で握り、凍てついた心を解きほぐしたのはシルの温もりであった。
・オラリオの街の人々が笑顔を取り戻している景色を見せ、リューたちの戦いが決して無駄ではなく「正義の成果」をもたらしたのだと気付かせることで、彼女を再び生へと引き戻した。
・大賭博場でも、所有物として扱われ諦めきっていた美姫たちに対し、「皆さんは、本当は意志が強い人。逆境にも負けない人。皆さんが綺麗なのは、したたかな心を持っているから」と誇りを呼び覚ます言葉をかけ、暴動を起こさせる勇気を与えている。

まとめ

このように、シルの真価は、人の心の機微を完全に掌握する恐るべき知略と、迷える者を正しい道へと導く女神のような慈愛が一体となっている点にある。直接拳を振るわずとも、事態を意のままに動かす彼女は、まさに盤上の「切り札(女王)」として機能していると論じることができる。

過去との決別

過去との決別は、過酷なオラリオで血と闘争にまみれ、心身をすり減らした少女たちが、孤独や罪悪感から抜け出し、新たな生き方と「居場所」を見出すプロセスとして描かれている。

リュー・リオン:復讐の虚無からの再生

・【アストレア・ファミリア】の仲間を奪われた後、凄惨な復讐に身を投じた。
・しかし復讐を果たした後に残ったのは達成感ではなく、生きる意味すら見失うほどの深い虚無感であった。
・雨の路地裏で死を待つばかりだった彼女はシルに救われ、「豊穣の女主人」で働き始める。
・自身の復讐を「正義ですらなかった」と悔やんでいたが、シルから「街はリュー達のおかげで平和になった」と告げられたことで、仲間たちが確かに遺した「正義の成果」に気付かされる。
・失った仲間の代わりはいないという痛みを抱えながらも、過去の喪失に囚われ続けるのではなく、遺された未来を見届けるため、そしてシルに恩を返すために生きていく決意を固めた。

ルノア・ファウスト:孤独な闘争との決別

・孤独な路上生活から身を起こし、賞金稼ぎ「黒拳」として生きてきたルノアは、際限のない闘争に疲弊していた。
・女神デメテルから安らぎと農業の生活へ誘われるが、「自分の手は血に汚れている」という罪悪感からそれを拒絶した。
・今まで行ってきた賞金稼ぎの自分と決別するための「儀式」や「けじめ」として、【疾風】の討伐を最後の仕事にすると決意した。

クロエ・ロロ:終わりのない暗殺業からの解放

・犯罪組織で暗殺技術だけを仕込まれて育った「黒猫」ことクロエもまた、血塗られた暗殺業に限界を感じ、引退と優雅な生活を望んでいた。
・神ニョルズから【ファミリア】への加入を誘われるが、「仲間」という概念が分からず、人殺しが漁師に改心するのは滑稽だとして断った。
・しかし内心では、殺し合いではなく「思いっ切り喧嘩して、軽口が叩き合える」関係に強い憧れを抱いており、【疾風】暗殺を最後の仕事と定めて動き出した。

「豊穣の女主人」という新たな居場所への帰着

・リューの命を狙ったルノアとクロエであったが、依頼主の裏切りを経てリューやアーニャたちと乱闘になり、最後は女将ミアの圧倒的な力によって制圧された。
・結果として店を破壊した借金を背負い、彼女たちも「豊穣の女主人」で働くこととなった。
・本気で殺し合い(喧嘩)をしたことで、ルノアとクロエは気兼ねなく文句を言い合える「同僚」という念願の関係を手に入れた。
・彼女たちはデメテルやニョルズに見守られながら過去の神々との関係に別れを告げ、ミアを「母親」と呼ぶ新しい「家族」の一員となった。
・また、娘を賭博の担保にしてしまった父親のヒューイが、リューに救われたことで「もう賭博には手を出さない」と過去の愚行と決別し、真人間になることを家族に誓う姿も描かれている。

まとめ

このように「過去との決別」は、血と暴力にまみれた過去や過ちを完全に消し去るのではなく、それにけじめをつけた上で、笑って「美味い飯」を分かち合える新しい未来へと歩み出すための希望の物語として論じることができる。

episodeフレイヤ レビュー

登場キャラクター

豊穣の女主人

リュー・リオン

元【アストレア・ファミリア】の冒険者であり、生真面目で潔癖な性格を持つエルフの女性である。過去の出来事から虚無感を抱えていたが、シルに救われたことで居場所を見出している。

・所属組織、地位や役職
 酒場『豊穣の女主人』の店員。元第二級冒険者(Lv.4)であり、異名は【疾風】。

・物語内での具体的な行動や成果
 大賭博場に囚われたアンナを救出するため、伯爵に変装して潜入を果たした。シルの協力を得て経営者テッドの悪事を暴き、彼が雇った用心棒を単身で打ち倒している。また、自身を狙ったブルーノ商会の襲撃をアーニャたちと共に撃退した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 要注意人物一覧に載るお尋ね者として都市に知られている。事件を通して過去の喪失感と向き合い、ベルを朝稽古に誘うなど前を向く姿勢を見せている。

シル・フローヴァ

薄鈍色の髪を持つヒューマンの少女であり、誰にでも分け隔てなく接する性格である。リューの過去を理解し、彼女を気にかける優しい一面を持つ。

・所属組織、地位や役職
 酒場『豊穣の女主人』の店員。店の看板娘として人気を集めている。

・物語内での具体的な行動や成果
 行き倒れていたリューを助け、酒場で働くよう導いた。アンナを救うために大賭博場の招聘状を入手し、伯爵夫人に変装してリューに同行している。貴賓室では自ら賭博を引き受け、相手の心理を読んで圧倒的勝利を収めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他者の心や感情を見抜く鋭い観察眼を備えている。神々や街の者から広く好意を持たれる存在である。

ミア・グランド

豪快で厳格な気質を持つドワーフの女性であり、店員たちを「娘」と呼び家族のように大切にしている。

・所属組織、地位や役職
 酒場『豊穣の女主人』の女将。【フレイヤ・ファミリア】の元団長であり、Lv.6の冒険者である。

・物語内での具体的な行動や成果
 店内で暴れた男を片手で投げ飛ばし、騒動を鎮圧した。行き倒れていたリューに食事を与え、多額の代金を理由に店で働くよう命じている。さらに、店を破壊したリューたちに制裁を加え、修繕作業を強制した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ブルーノ商会の幹部をギルドに突き出し、背後のファミリアごと壊滅させるなど強大な実力を持つ。

アーニャ

快活で単純な性格の猫人の少女であり、リューを子分や好敵手と呼んで先輩風を吹かせようとする。

・所属組織、地位や役職
 酒場『豊穣の女主人』の店員。

・物語内での具体的な行動や成果
 店で暴れた男をクロエと共に足払いで取り押さえた。ブルーノ商会による襲撃の際は、クロエの「眠りの香」を防ぎ、戦闘に加わっている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去に【戦車の片割れ】と呼ばれていた金槍の使い手である。

クロエ・ロロ

暗殺業に疲弊し、平穏な生活を望んでいた猫人の少女である。

・所属組織、地位や役職
 元は犯罪組織の構成員。暗殺者であり、異名は「黒猫」。Lv.4の能力を持ち、後に『豊穣の女主人』の店員となった。

・物語内での具体的な行動や成果
 依頼を受けて【疾風】の暗殺を試み、「眠りの香」や幻影魔法を用いて攻撃を仕掛けた。アーニャと交戦した後、ブルーノ商会の裏切りを知ってリューたちと共闘している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ニョルズの弱みを握り、能力更新を行わせていた。

ルノア・ファウスト

単独で生き抜いてきた賞金稼ぎのヒューマンの少女であり、孤独に疲れ、暗殺業から足を洗う決意を固めていた。

・所属組織、地位や役職
 賞金稼ぎであり、異名は「黒拳」。Lv.4の能力を持ち、後に『豊穣の女主人』の店員となった。

・物語内での具体的な行動や成果
 ブルーノ商会から【疾風】の討伐依頼を受け、リューを強襲して激しい肉弾戦を繰り広げた。商会の裏切りに気づき、リューたちと協力して撃退している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 デメテルと契約を結び、能力更新を行っていた。

メイ

小柄で小人族のようにせわしなく動く猫人の料理人である。

・所属組織、地位や役職
 酒場『豊穣の女主人』の料理人。

・物語内での具体的な行動や成果
 厨房を行き交い、仕事に追われている様子が描写されている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最初は暗い顔をしていたが、現在は立ち直っている。

クレーズ家

ヒューイ・クレーズ

賭博癖があり、家族に迷惑をかけている中年のヒューマンの男性である。

・所属組織、地位や役職
 魔石製品製造業と商店の手伝いを行っている。

・物語内での具体的な行動や成果
 娘のアンナを賭け金にして賭博に負け、家と娘を失った。妻のカレンと共に『豊穣の女主人』を訪れ、リューたちに事情を話している。事件解決後、賭博をやめると家族に約束した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 反省しつつも、家族に隠れて酒場を訪れている。

カレン・クレーズ

娘のアンナを深く愛している亜麻色の髪を持つ女性である。

・所属組織、地位や役職
 魔石製品製造業と商店の手伝いを行っている。

・物語内での具体的な行動や成果
 夫のヒューイが娘を賭博の担保にしたことを知り、激しく責め立てた。『豊穣の女主人』で泣き崩れ、リューたちに助けを求めている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 かつての【アストレア・ファミリア】の存在を挙げ、救済を懇願した。

アンナ・クレーズ

容姿端麗で気立てが良い亜麻色の髪を持つヒューマンの少女である。

・所属組織、地位や役職
 クレーズ家の一人娘であり、花屋の手伝いをしている。

・物語内での具体的な行動や成果
 父親の借金のためにならず者に奪われ、大賭博場のテリーに売られた。リューによって救出され、馬車で家族のもとへ帰されている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 助けてくれたリューに恋心を抱いたが、彼女が女性であると知り驚愕した。

エルドラド・リゾート

テッド(テリー・セルバンティス)

金と権力で他者を支配し、傲慢な振る舞いを見せる大柄なドワーフの男である。

・所属組織、地位や役職
 大賭博場『エルドラド・リゾート』の経営者を名乗っている。

・物語内での具体的な行動や成果
 アンナを買い取り、自身の愛人とした。貴賓室でシルとの賭博に敗北し、地下金庫に逃げ込んだが、リューの魔法によって扉を破壊された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 本名はテッドであり、過去に違法賭博でオラリオを追放された男である。事件後、ギルドに捕らえられている。

ファウスト

金で雇われた用心棒のヒューマンの男である。

・所属組織、地位や役職
 テッドに雇われた用心棒。Lv.3程度の実力を持つ。

・物語内での具体的な行動や成果
 テッドの命令でリューを襲撃し、黒鉄の拳具で近接戦闘を行った。素早い攻撃によって武器を破壊され、壁に吹き飛ばされている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 賞金稼ぎ「黒拳」の名を偽っていたが、リューに見破られた。

ロロ

ファウストと共に金で雇われた痩身の猫人の男である。

・所属組織、地位や役職
 テッドに雇われた用心棒。Lv.3程度の実力を持つ。

・物語内での具体的な行動や成果
 二振りのナイフを使い、ファウストと連携してリューを攻撃した。眼帯の死角を突こうとしたが、反撃を受けて顎を砕かれている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 暗殺者「黒猫」の名を偽っていたが、リューに見破られた。

初老のヒューマンの支配人

丁寧な言葉遣いで客を案内する、仕立てのいい黒服を着た年配のヒューマンである。

・所属組織、地位や役職
 大賭博場『エルドラド・リゾート』の支配人。

・物語内での具体的な行動や成果
 ホールでリューたちを迎え入れ、テリーのもとへ案内した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベルの乱闘騒ぎに巻き込まれ、吹き飛ばされている。

アストレア・ファミリア

アストレア

子供たちの改心と更生を信じる、慈愛に満ちた女神である。

・所属組織、地位や役職
 【アストレア・ファミリア】の主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去にテッドの懺悔を受け入れ、赦しの機会を与えていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 現在はオラリオを離れている。

アリーゼ・ローヴェル

リューをファミリアに誘った赤髪の少女である。

・所属組織、地位や役職
 【アストレア・ファミリア】の元団長。

・物語内での具体的な行動や成果
 リューに「迷ったら自分に素直になること」と助言を与えていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 すでに故人となっている。

ヘルメス・ファミリア

アスフィ・アル・アンドロメダ

情報を冷静に分析し、律儀な性格を持つ水色の髪の女性である。

・所属組織、地位や役職
 【ヘルメス・ファミリア】の団長。

・物語内での具体的な行動や成果
 リューの依頼を受けてアンナの行方を調査した。アンナが大賭博場に買い取られたことを伝え、事件に関わらないよう忠告している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オラリオ内で広い情報網を持っている。

ガネーシャ・ファミリア

シャクティ・ヴァルマ

都市の秩序を守るため、冷静に部下を指揮する藍色の髪の女性である。

・所属組織、地位や役職
 【ガネーシャ・ファミリア】の団長。第一級冒険者である。

・物語内での具体的な行動や成果
 大賭博場の騒動で部下を指揮し、警備にあたった。リューの正体に気づきながらも、彼女を見逃している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 リューから「開錠薬」を受け取り、大賭博場の不正を追及する手がかりを得た。

ギルド

ロイマン・マルディール

権力と金に溺れ、堕落した生活を送る肥え太ったエルフの男性である。

・所属組織、地位や役職
 ギルドの最高権力者であるギルド長。

・物語内での具体的な行動や成果
 大賭博場で遊びほうけている姿をリューに目撃された。ホールでの乱闘騒ぎの際、部下にホールの鎮圧を命じている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 同胞のエルフたちから「ギルドの豚」と忌み嫌われている。

モルド一味

モルド

欲深く粗暴だが、根は悪くない強面のヒューマンの男である。

・所属組織、地位や役職
 第三級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 ベルを強引に大賭博場に連れ込んだ。シルの頼みを受け、仲間と共に乱闘騒ぎを起こしてガネーシャ・ファミリアを足止めしている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 大賭博場に金をつぎ込み、通行証であるゴールドカードを所持している。

スコット

モルドと行動を共にする仲間である。

・所属組織、地位や役職
 第三級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 モルドと共に大賭博場を訪れた。ホールの乱闘騒ぎでガイルと取っ組み合いを演じた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ガイル

モルドと行動を共にする仲間である。

・所属組織、地位や役職
 第三級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 モルドと共に大賭博場を訪れた。ホールの乱闘騒ぎでスコットと取っ組み合いを演じた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブルーノ商会

ヒューマンの商人

私利私欲のためなら裏切りも辞さない男である。

・所属組織、地位や役職
 ブルーノ商会の幹部。

・物語内での具体的な行動や成果
 ルノアに【疾風】の討伐を依頼した。【疾風】と暗殺者たちを共倒れさせるため襲撃したが、リューたちに返り討ちにされた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ミアによってギルドに突き出され、商会ごと壊滅した。

ドワーフの商人

金に執着し、クロエの交渉に圧倒されやすい商人である。

・所属組織、地位や役職
 ブルーノ商会の関係者。

・物語内での具体的な行動や成果
 クロエに【疾風】の暗殺を依頼した。内庭での襲撃の際、ヒューマンの商人とともに現れている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 クロエに足蹴にされ、制裁を受けた。

ゴロツキ達

ブルーノ商会に雇われた荒くれ者たちである。

・所属組織、地位や役職
 ブルーノ商会の手下。

・物語内での具体的な行動や成果
 剣や棍棒を持ち、リューたちを襲撃した。返り討ちにされ、内庭に転がされる結果となった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

デメテル・ファミリア

デメテル

穏和で思いやりがあり、見返りを求めない蜂蜜色の髪を持つ女神である。

・所属組織、地位や役職
 【デメテル・ファミリア】の主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 ルノアの【ステイタス】を更新し、手作りの料理を振る舞った。彼女たちが『豊穣の女主人』に就職した際、祝いの品を持って訪れている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 農業を営み、オラリオの食料事情に大きく貢献している。

ペルセフォネ

デメテルの関係者である。

・所属組織、地位や役職
 【デメテル・ファミリア】の所属者と推測される。

・物語内での具体的な行動や成果
 作中での直接の登場はないが、ルノアに会いたがっているとデメテルから言及されている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ニョルズ・ファミリア

ニョルズ

クロエの正体を知りながらも彼女を気遣う、善良な性格の男神である。

・所属組織、地位や役職
 【ニョルズ・ファミリア】の主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 クロエの【ステイタス】を更新した。自分のファミリアへの加入を勧めたが断られ、後に『豊穣の女主人』へ就職祝いに訪れている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 港街メレンで漁業を営み、オラリオに出荷している。

その他・冒険者

ベル・クラネル

気弱だが優しく素直な性格を持つ、白髪と深紅の瞳の少年である。

・所属組織、地位や役職
 上級冒険者であり、異名は【リトル・ルーキー】。

・物語内での具体的な行動や成果
 モルドに連れられて大賭博場を訪れ、ルーレットで大勝ちしてリューの資金源を作った。シルの指示を受け、モルド達と共に乱闘騒ぎを起こしている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 リューの男装を褒め、朝稽古の誘いを快諾した。

episodeフレイヤ レビュー

展開まとめ

グラン・カジノをぶっつぶせ!

1

荒れた酒場で語られる「豊穣の女主人」の評判
陰気な酒場の片隅で、汚れた身なりの男が安酒を飲みながら「豊穣の女主人」という酒場について語っていた。酒や料理は美味く、店員も美しいが、値段は高く、粗暴な振る舞いをすれば即座に叩き出される危険な場所であると説明した。特に店員たちが非常に強く、軽率に関われば痛い目を見ると警告していた。

店員への恐怖と女将への畏れ
男は、客を追い出すのは店の女たちであり、彼女たちの実力は並ではないと語った。中でもドワーフの女将の存在には強い恐怖を抱いており、その名を口にすることすらためらう様子を見せた。酒をあおりながら震えを隠す姿から、その店が単なる酒場ではないことが示されていた。

困窮者にだけ示される例外的な救い
一方で男は、本当に行き場がなく困り果てた者であれば、その店を頼る価値があるかもしれないと語った。酒を一杯買い、泣きつくことで助けられる可能性があると示唆したのである。

正義感を持つ異質なエルフの存在
その理由として、店には異様に強い店員の中でも特に際立った存在がいると明かした。生真面目で潔癖、妖精のように美しいエルフであり、この迷宮都市では珍しく正義感を持ち続けている人物であると語った。男はその存在を嘲りと畏怖を混ぜて語り、最後に厄介事があるなら訪ねてみるよう勧めた。

再び酒に沈む語り手
話し終えた男は、それ以上語ることなく再び酒をあおり、喧騒の中に溶け込むように安酒に浸り続けた。

2

暁の稽古とリューの剣技
夜明け前の静寂の中、風を切る音が響く中で、エルフの女性リュー・リオンが長い木刀を振るっていた。華奢な体躯に反して、その動きは鋭く、型に忠実でありながらも居合いに匹敵する斬撃を繰り出すほどの冴えを見せていた。対峙する者がいれば恐怖を覚えるほどの剣技であった。

鍛錬を続ける理由と日課
リューは迷宮都市オラリオの酒場『豊穣の女主人』に勤める身であったが、元冒険者としての習慣から、日の出前に鍛錬を行う生活を続けていた。過去の経験から身に染み付いた研鑽を怠ることなく、愚直な反復を積み重ねる姿勢を保っていた。

満たされない実戦感覚と孤独
広い内庭で鍛錬を終えたリューは、自身の腕を見つめながら物足りなさを感じていた。かつて同僚を鍛錬に誘ったものの、力加減を誤ったことで敬遠され、それ以来相手を得られていなかった。過去に浴びた罵声を思い出し、自分がやり過ぎてしまう性質を自覚していた。

クラネルへの思考と自制
新たに知り合った冒険者クラネルの名が頭に浮かび、共に鍛錬する可能性を考えたが、すぐにその考えを打ち消した。彼が友人シルの想い人であることを思い出し、不義理になることを避けようとしたためである。純粋な鍛錬であっても、後ろめたさを覚える自身の性格がその行動を制していた。

酒場での一日の始まり
思考に区切りをつけたリューは、名残惜しさを抑えつつ自室へ戻り、身支度を整えることを決めた。やがて朝日が都市を照らし始める中、酒場の店員としての新たな一日が始まろうとしていた。

繁盛する「豊穣の女主人」と店の実態
酒場『豊穣の女主人』は、西のメインストリート沿いという好立地により、多くの客で賑わっていた。昼は一般市民、夜は冒険者と客層を分け、料理や価格も時間帯で変えることで利益を上げていた。ドワーフの女将ミア・グランドの方針のもと、美味な料理と酒、そして魅力的な店員によって繁盛を維持していた。

店員たちの日常と役割
店ではアーニャやクロエ、ルノアらが働き、リューもまたその一員として忙しく立ち働いていた。看板娘のシルは来客対応を担い、柔らかな接客で客の人気を集めていた。それぞれが役割を果たすことで、店は円滑に運営されていた。

店内で起きた夫婦の騒動
昼時、来店したばかりの男女が激しい口論を始め、店内の空気が一変した。女性は男が娘を賭博の担保にしたことを責め立て、やがて泣き崩れた。逆上した男は周囲に怒鳴り散らし、店内で暴れ始めたため、店員たちが介入する事態となった。

店員とミアによる制圧と追放
暴れる男はルノアに取り押さえられ、続いてクロエとアーニャに足を払われて床に倒された。最終的には女将ミアに持ち上げられ、そのまま店外へ放り出された。周囲もこの店の事情を理解しており、騒動は日常の一幕として受け止められていた。

娘を賭けた賭博の真相
騒動後、リューとシルは夫婦から事情を聞き出した。男ヒューイは賭博に溺れ、借金の末に娘アンナを賭けて敗北し、ならず者に奪われていた。家も失い、妻カレンは絶望の中で酒場へ辿り着いたのである。

背後にある計画的な犯行の疑念
話を聞いたリューは、娘が以前から狙われていた可能性に気付いた。容姿や評判、外出の多さなどの条件から、計画的に嵌められたと推測したのである。シルがギルドへの相談を提案するも、同様の被害が多く対応は期待できないと否定された。

失われた正義とリューの葛藤
カレンがかつて弱者を救っていた【アストレア・ファミリア】の名を口にすると、リューは動揺を抑えた。それはかつて自らが所属していた組織であり、既に失われた正義の象徴であった。リューは他者を救わないと決めていたが、内心では過去の仲間や信念が蘇り、葛藤に揺れていた。

揺れ動く決意の兆し
自らの信念と感情の間で揺れる中、リューはかつての仲間の言葉を思い出した。迷いの中で自分に正直であれという教えが心に響き、抑えていた感情が再び芽生えていた。彼女はその思いに抗えず、静かにため息をつくのであった。

夜半に動き出すリュー
営業時間を終えた『豊穣の女主人』から、リューは一人で抜け出していた。フード付きのロングコートとロングスカートを身にまとい、路地裏を進んだ彼女は、ヒューイが賭博をしたという場末の酒場へ向かった。

ゴロツキ達の酒場とアンナの手がかり
リューが辿り着いた酒場には、堅気ではない冒険者や亜人達がたむろしていた。彼女は賭博をしている男達の前に立ち、アンナ・クレーズの名を出した。頭目らしき男はアンナを知っている様子を見せ、手下達に出口を塞がせた。

情報を賭けたポーカー勝負
男はリューが腕の立つ相手だと見抜き、暴力ではなく賭博で決着をつけようとした。自分はアンナの情報を賭け、リューには金、あるいは身体を賭けるよう迫った。リューは五十万ヴァリス入りの袋を卓上に置き、勝てば全て話すよう条件を付けて勝負を受けた。

不正を封じるリューの威圧
男がカードを配る中、リューは不正は許さないと告げ、小太刀を抜いて男の指の間へ刃を突き立てた。男の手から隠していたカードが落ち、イカサマは即座に暴かれた。リューは次は指を落とすと静かに告げ、相手と周囲の平静を奪った。

九連勝で追い詰める賭博術
ポーカー勝負では、リューが九連勝を収めた。彼女は騙しを得意としないが、真摯に手札を受け止め、相手の駆け引きを見抜いて勝負していた。かつて【アストレア・ファミリア】で違法賭博場へ潜入していた経験と、同僚から教わった賭博の手ほどきが活きていた。

暴力に訴えたゴロツキ達の敗北
追い詰められた男は勝負を有耶無耶にするため、手下達にリューを襲わせた。しかしリューはそれを迎え撃ち、一分ほどで酒場の冒険者達を叩き伏せた。賭博の決着よりも早く、酒場の床には倒された亜人達が転がっていた。

交易所へ連れて行かれたアンナ
リューに胸ぐらを掴まれた男は、アンナを交易所へ連れて行ったと白状した。さらに、そこの者達に頼まれ、金を受け取って騒ぎを起こさぬよう娘をさらったのだと明かした。依頼主は商会らしいが、男は詳しい情報を知らなかった。

酒場を後にするリュー
必要な手がかりを得たリューは、男を解放して酒場を去った。その後、夜の街に身を隠すように移動し、ある場所へ立ち寄ってから『豊穣の女主人』へ戻った。

アスフィの来訪と依頼の返答
翌日、リューが『豊穣の女主人』で働いていると、アスフィ・アル・アンドロメダが来店した。彼女は紅茶と話し相手を注文し、リューが昨夜【ヘルメス・ファミリア】へ残した依頼書について、すでにアンナ・クレーズの行方を調べ終えたと告げた。

交易所から売られたアンナ
アスフィの調査により、アンナが交易所を経て商会に引き取られたことは事実だと判明した。しかし、調査時点で彼女はすでに別の相手へ売られていた。リューは歓楽街への売却を危惧したが、アスフィはそれを否定したうえで、この件には関わらない方がよいと忠告した。

大賭博場という治外法権
アンナを買い取ったのは、繁華街にある大賭博場の人間であった。大賭博場は外国資本によって発展した巨大産業であり、ギルドも運営に強く口出しできない特別な存在だった。上級冒険者や神々、都市外の富豪も訪れるため、施設には【ガネーシャ・ファミリア】の屈強な警備が配置されていた。

エルドラド・リゾートと黒幕の名
アンナを買ったのは、娯楽都市サントリオ・ベガ系の最大賭博場『エルドラド・リゾート』を運営するドワーフ、テリー・セルバンティスであった。商会やゴロツキ達も、彼が裏で糸を引いていたと見られていた。リューはその名を静かに呟き、事件の核心を掴んだ。

アスフィの忠告とリューの沈黙
アスフィは、侵入すれば拿捕され、騒動になれば外交問題に発展しかねないと警告した。リューであっても大賭博場の警備を突破するのは困難であり、関わらない方が身のためだと重ねて忠告した。リューは黙ってその言葉を聞き、去っていくアスフィを見送った。

シルの気付き
一方、厨房の入り口ではシルがリューの様子を見守っていた。アーニャは大賭博場という言葉を聞き取っており、シルもまたその言葉を静かに反芻していた。

救出を決意したリューの準備
二日後、リューは酒場で働きながらも思考を巡らせ続けていた。迷っていたのは決断ではなく侵入方法であり、アンナ救出の意思は固まっていた。魔石や怪物の宝を売却して資金を確保し、装備を整えながら大賭博場への侵入手段を模索していたが、警備の厳重さから有効な手立てを見出せずにいた。

路地裏でのシルとの遭遇
夕暮れ時、ゴミ捨てのため裏路地に出たリューは、曲がり角でシルが誰かと会話している場面に遭遇した。相手は去った後で姿を確認できなかったが、猫人らしき特徴だけが視界に残った。シルはその人物から受け取った手紙を嬉しそうにリューへ見せた。

大賭博場への招聘状
シルが手にしていたのは、大賭博場からの正式な招聘状であった。彼女はリューとアスフィの会話を聞き、独自の人脈を使って入場手段を用意していた。これにより、侵入ではなく正面から堂々と大賭博場へ入る道が開かれた。

なりすましによる潜入計画
その招聘状は本来、外国の伯爵夫妻宛てのものであり、二人一組での入場が前提となっていた。シルはこの条件を利用し、リューとともに夫妻になりすまして潜入することを提案した。リューはその大胆な手段に驚きつつも、他に方法がない現状を受け入れざるを得なかった。

シルの同行希望と主導権
さらにシルは、自らも同行したいと申し出た。危険性を理由にリューは一度は制止しようとしたが、招聘状の条件を突きつけられ、最終的に同行を認めた。リューはシルに対し決して離れないよう念を押し、潜入計画の再構築に着手した。

「夫妻」という意味への動揺
しかし、計画を受け入れた直後、リューは招聘状に記された「夫妻」という条件の意味に気付いた。すなわち、自分とシルが夫婦として振る舞う必要があるという点である。その事実に動揺するリューに対し、シルは意味深な笑みを浮かべるのであった。

夜のオラリオと富豪達の来訪
夜を迎えた迷宮都市オラリオは、魔石灯の光に照らされ、昼とは異なる賑わいを見せていた。冒険者や労働者、神々までもが街に繰り出す中、南門は開放され、都市外から多くの富豪達が馬車で流入していた。彼らは厳重な審査を経て繁華街へと向かい、都市の経済を循環させる一端を担っていた。

変装したリューとシルの潜入開始
その列に紛れるように、リューとシルもまた箱馬車で繁華街へと到着した。リューは燕尾服に身を包み男装し、シルは華やかなドレス姿で伯爵夫人として振る舞っていた。二人は招聘状に記された人物になりすまし、夫婦として潜入を開始したのである。

夫婦としての演技とリューの葛藤
シルは自然に夫婦らしく振る舞うことを求め、リューは戸惑いながらもそれに応じた。シルの装いは普段とは異なり華やかで、人目を引くものであったため、リューは彼女に向けられる視線を警戒しつつ護る意識を強めていた。

厳重な警備と緊張の進行
繁華街には多くの警備が配置されており、【ガネーシャ・ファミリア】の構成員も巡回していた。リューはかつての知人であるシャクティの姿を確認しつつ、気付かれぬよう慎重に行動した。

大賭博場への入場
やがて二人は巨大なアーチ門へ到達し、シルが招聘状を提示したことで正規の客として迎え入れられた。警備の目を掻い潜ることなく堂々と通過し、二人は豪奢な噴水と煌びやかな建物が並ぶ大賭博場へ足を踏み入れた。

賭博の楽園への潜入成功
こうしてリューとシルは、外界から隔絶された賭博の楽園へ潜入することに成功した。目的であるアンナ救出に向けた行動は、新たな局面へと進んでいった。

3

大賭博場区域の全容と異世界的空間
オラリオ南方の繁華街に広がる大賭博場区域は、複数の巨大施設が集結した異質な空間であった。各国や都市の資本によって築かれた建物は異国情緒に満ち、中央広場には巨大な噴水とヤシの木が並び、魔石灯の光によって不夜城のごとき輝きを放っていた。一般区とは明確に隔絶された別世界であった。

エルドラド・リゾートへの到達
リューとシルは伯爵夫妻として振る舞いながら区域内を進み、目的地である『エルドラド・リゾート』へと向かった。黄金色に輝く壮麗な外観を持つ建物は一際目を引き、内部へ入ると巨大なシャンデリアや豪華な絨毯、各種賭博が繰り広げられる壮観な光景が広がっていた。

潜入後の方針と作戦
リューは潜入後の行動として、上客を装い目立つことを選択した。資金を増やしながら羽振りの良さを演出し、大賭博場側から接触を引き出す狙いであった。その先にある貴賓室こそが目的地であり、そこにアンナと経営者がいると見込んでいた。

ベルとの再会と賭博の転機
その最中、リューとシルは偶然ベル・クラネルと遭遇した。彼はモルド達に連れられて場に来ており、成り行きで賭博に参加することとなった。ルーレットに挑んだベルは連続で的中を重ね、最終的に高額配当を引き当てる大勝を収めた。

資金確保と本格的な賭博開始
ベルの勝利によって得られた大量の賭札を元手に、リューとシルは一気に動き出した。リューはポーカーを中心に勝利を重ね、時には大負けを演出しながら富豪としての振る舞いを強めていった。シルもまた伯爵夫人としての演技と人脈を活かし、神々を利用して虚偽の噂を広め、二人の価値を高めていった。

注目の集中と経営者の接触
その結果、リュー達は大賭博場内で大きな注目を集める存在となった。狙い通り経営者テリー・セルバンティスが接触を図り、より高額な賭博を行う貴賓室へ招待する提案を持ちかけてきた。

経営者との対面と警戒
テリーは友好的な態度を装いながらも、シルに対して好色な視線を向けていた。リューはそれを警戒しつつも貴族としての演技を崩さず応対し、用意していた身の上話で疑念をかわした。

貴賓室への侵入
最終的にリューとシルはテリーの案内を受け、厳重に守られた樫の大扉の前へと辿り着いた。門番を通過し、その扉の先――敵の中枢である貴賓室へと足を踏み入れたのであった。

4

貴賓室の実態とアンナの確認
扉の先に広がっていたのは静寂に包まれた高級空間であり、外の喧騒とは対照的に落ち着いた雰囲気であった。そこでは富裕層の客が上質な賭博に興じ、給仕や美姫が従う異質な空間が形成されていた。リューはその女性達が経営者テリーにより集められた存在であると察し、やがて呼び出された少女アンナが探していた人物であると確信した。

リューの牽制と賭博の提案
リューはアンナの境遇を暗に示す話を語り、テリーに対して事実を知っていることを示唆した。それに対しテリーは敵意を露わにし、賭博で決着をつけることを提案した。敗者は勝者の願いを受け入れるという条件が提示され、さらに用心棒による包囲によって拒否できない状況が作られていたため、リューはやむなく勝負を受け入れた。

共謀による不利な賭博
開始されたポーカーでは、テリーと招待客達が共謀し、互いの手役を密かに共有することでリューを追い詰めていた。リューは一方的に不利な状況に置かれ、賭札を減らしていく。テリーは勝利後の要求としてシルを差し出させる意図を露骨に示し、リューの怒りを煽った。

シルの介入と主導権の逆転
激昂しかけたリューを制し、シルは自らが賭博を引き受けると申し出た。さらにベルを呼び出し、別れを装ったやり取りで周囲の警戒を緩めつつ状況を整えた後、ドローポーカーへの変更と新たな賭け条件を提示した。これにより賭博の流れはシル主導へと移行した。

シルの異質な勝利と心理操作
賭博が再開されると、シルは自らの手役をあえて口にしながら勝利を重ねた。その言動はブラフとも真実とも判別できず、招待客達の心理を大きく揺さぶった。彼女は相手の思考や動揺を読み取るかのように賭けを行い、次第に場の支配権を握っていった。

圧倒的勝利とテリーの敗北
最終局面において、テリーはフォーカードを手に勝利を確信し全てを賭けた。しかしシルはそれを上回るロイヤルストレートフラッシュを揃え、決定的な勝利を収めた。全ての賭札を失ったテリーは敗北を認めざるを得ず、場の支配は完全に覆されたのであった。

「魔女」と呼ばれる力の正体
シルは人の表情や視線から内心を読み取る能力に近い観察力を持ち、それによって相手の判断や賭け方を見抜いていた。その異質な力は周囲に恐怖と混乱を与え、結果として賭博の勝敗を決定づけた。リューはその力により勝利がもたらされたことを認め、シルの勝利を宣言した。

5

勝利後の要求とアンナの解放
貴賓室はシルの勝利によって静まり返っていた。テリーは約束に従い、屈辱を噛み締めながらアンナをリュー達のもとへ戻した。しかしリューはそれだけでは終わらせず、テリーが奪い集めた全ての女性を解放するよう求めた。

テリーの本性と偽名の暴露
激昂したテリーは脅迫で要求を退けようとしたが、リューは彼が娯楽都市の人間でもテリー・セルバンティスでもなく、かつてオラリオで違法賭博を行っていたテッドであると暴いた。さらに「開錠薬」を突き付け、封印された【ステイタス】に刻まれた真名が証拠になると示した。

疾風のリオンの正体
テリーはリューを始末しようと用心棒を動かしたが、リューはシルの肩掛で顔を覆い、かつての姿を再現した。その空色の瞳を見たテッドは、彼女が過去に悪党達を震え上がらせた【疾風のリオン】であると悟った。死んだと思っていた正義の執行者の再来に、テッドは激しく動揺した。

アストレアの慈悲を裏切った男
リューは、かつて【アストレア・ファミリア】がテッドを捕らえた際、彼が懺悔して赦しの機会を与えられていたことを語った。それにもかかわらず、テッドは名と身分を偽って再び悪事に手を染めていた。女神アストレアの慈悲を踏みにじったことが、リューの怒りを決定的なものにした。

用心棒達の制圧と裁きの宣告
テッドの命令で用心棒達が襲いかかると、リューはシルとアンナを庇いながら格闘術で次々と叩き伏せた。そして、アストレアに代わって自分が裁くと宣言した。

手練二人との戦闘開始
追い詰められたテッドは、切り札であるヒューマンのファウストと猫人のロロにリューの殺害を命じた。リューはシルとアンナを下がらせ、自らも表情を引き締めて二人の手練との戦闘に臨んだ。

ファウストとロロの猛攻
リューは、黒鉄の拳具を使うファウストと二振りのナイフを操るロロを相手に戦った。二人はかつて「黒拳」と「黒猫」と呼ばれた賞金稼ぎと暗殺者であり、互いの弱点を補い合う連携でリューを攻め立てた。丸腰のリューは眼帯による死角も突かれ、迂闊に踏み込めない接戦を強いられた。

シルとアンナを狙うテッドの命令
リューが用心棒二人と戦う中、テッドは給仕達にシルとアンナを捕えるよう命じた。給仕達は逆らえず、壁際にいる二人を取り囲んだ。アンナは怯えたが、シルは状況を観察し、リューは彼女を信頼して戦闘に集中していた。

シルの呼びかけと美姫達の覚醒
シルは手を叩いて場の注目を集め、テッドにさらわれた女性達へ語りかけた。彼女達は助けを待つだけの籠の鳥ではなく、逆境に負けない強い意志を持つ人達であると告げた。そしてリューが勝てば自由になれると示し、暴れるよう促した。

貴賓室に広がる反乱
シルの言葉をきっかけに、美姫達は一斉に怒りを爆発させた。給仕へ飛びかかる者、賭札を投げつける者、顔を引っかく者が現れ、貴賓室は混乱に包まれた。給仕達は彼女達を抑えきれず、シルとアンナを捕えるどころではなくなった。

アンナの問いとシルの答え
アンナは、なぜ見ず知らずの自分達を助けようとするのかと問いかけた。シルは、自分はおまけのようなものだとしつつ、リューがアンナの話を聞いてどうしても助けたいと思ったのだと語った。さらに、リューは善人ではなく間違いも犯すが、優しいリューが好きだと静かに告げた。

招待客達の逃走と事態の拡大
美姫達の反乱により、招待客達は恐慌を来たして逃げ出した。彼らは【ガネーシャ・ファミリア】を呼ぶよう叫びながら貴賓室の出入り口へ向かった。テッドは事態の表面化を恐れて制止したが、混乱した招待客達には届かなかった。

リューの戦闘続行と信頼
【ガネーシャ・ファミリア】の介入は、リューにとっても望ましいものではなかった。要注意人物である彼女の訴えが通るとは限らず、テッドを取り逃がす危険があったためである。それでもリューは招待客達を止めず、戦闘を続けた。そこには、別の誰かが外の対応を引き受けてくれるという信頼があった。

貴賓室からの異変の波及
貴賓室の扉付近では、門番が異変に気付き内部へと入った直後、激しい衝撃音が響き始めた。やがて扉が開かれると、招待客達が悲鳴を上げながら雪崩のように飛び出してきた。上位の客層である彼らが体裁も捨てて逃げ出す異様な光景に、周囲は騒然となった。

ガネーシャ・ファミリアの出動
事態を受けて【ガネーシャ・ファミリア】の団員達は即座に貴賓室へ向かおうとした。しかし、その進行を阻むように、ホール内で別の騒動が発生した。

モルド一味とベルによる乱闘
突如として冒険者同士の乱闘が始まり、場内は一気に混乱に包まれた。騒ぎの中心にいたのはモルド一味とベル・クラネルであった。彼らは泣き叫びながら激しく取っ組み合い、周囲の制止も効かないほど暴れ回った。この騒動は、シルの言葉を受けたベルが【ガネーシャ・ファミリア】を足止めするために仕組んだものであった。

ホール全体への混乱の拡大
乱闘は瞬く間に周囲へ波及し、テーブルはひっくり返り、賭札が宙を舞った。客同士は衝突し、神々は散らばった賭札を奪い合うなど、ホールは完全な混乱状態に陥った。もはや秩序は崩壊し、通常の対応では収拾がつかない状況となった。

ギルド長の判断と対応の遅延
混乱を目の当たりにしたギルド長ロイマンの命令により、【ガネーシャ・ファミリア】は貴賓室への突入ではなく、ホールの鎮圧を優先することとなった。この判断により、貴賓室への救援は大幅に遅れることとなり、内部で戦うリュー達にとって有利な時間が確保された。

用心棒との接戦と実力の見極め
リューはファウストとロロを相手に、徒手空拳で拳具とナイフの猛攻を凌ぎ続けた。二人の連携は完成度が高く、互いの死角を補い合う戦い方でリューを追い詰めたが、リューもまた彼らの実力を冷静に分析し、Lv.3程度であると見抜いた。

偽りの正体の暴露
戦いの最中、リューは二人が「黒拳」と「黒猫」を名乗る偽物であると断言した。本来の両者は個人主義で連携を取らない存在であり、さらに女性であると指摘する。真実を暴かれた用心棒達は動揺し、怒りに任せて攻撃を仕掛けた。

死角を利用した反撃
リューは眼帯による死角を逆に利用し、誘い込む形で猫人のロロに強烈な蹴撃を叩き込んだ。顎への一撃でロロは意識を失い、戦線から脱落した。

武装後の圧倒と決着
リューは落ちたナイフを拾い、残るヒューマンの男へ攻勢に転じた。高速の斬撃で拳具を破壊し、続けて回し蹴りで叩き伏せることで、用心棒二人を完全に無力化した。これにより貴賓室中央の戦闘は決着を迎えた。

テッドによるアンナの拉致
しかしその隙を突き、テッドはアンナに忍び寄って腕を掴み、貴賓室奥の通路へと連れ去った。リューの勝利を察し、逃走を図ったのである。

リューの追撃と最終局面へ
シルの呼びかけを受けつつも、リューは即座に追跡を決断し、アンナ救出のため通路へ駆け出した。シルにはその場に残るよう指示し、貴賓室での騒動を後にした。攫われた少女の奪還は、最終局面へと移行した。

6

テッドの敗走と追撃
テッドはアンナの腕を掴んだまま、豪奢な廊下を駆け抜けて逃走した。用心棒を失い、貴賓室から逃げ出した彼は、もはや経営者としての威厳を失い、ただの悪漢として取り乱していた。背後から迫るリューの気配に焦りながら、従業員に足止めを命じて逃走を続けた。

賭博場全体の混乱拡大
地上ではホールの騒動と貴賓室の暴動が重なり、大賭博場全体が混乱に包まれていた。裏側の通路でも乱闘と悲鳴が発生し、テッドの恐怖をさらに煽った。

地下への逃避行
テッドはアンナを引きずるようにして裏道を進み、階段を駆け下りて地下へと逃げ込んだ。見張り達に扉を開けさせながら進み、最終的に巨大な金属扉の前へと辿り着いた。

地下金庫への侵入
テッドは親鍵を使って重厚な円形扉を開き、アンナを中へ押し込んで自身も入り、即座に施錠した。内部には莫大なヴァリス金貨が山のように積まれ、「エルドラド・リゾート」の全財産が集められていた。

鉄壁の金庫と籠城の意図
この金庫はダンジョン産の超硬金属で作られており、外部からの侵入も破壊も不可能な構造であった。テッドはここに籠城すればリューでも手出しできず、やがて【ガネーシャ・ファミリア】がリューを拘束すると踏んでいた。

追い詰められたアンナ
安堵したテッドは嗜虐心を露わにし、怒りと鬱憤をアンナに向けた。恐怖に震えながら後ずさるアンナに対し、テッドは暴力を加えようと迫り、少女は絶体絶命の状況へ追い込まれた。

リューの追撃と金庫への到達
リューは地下階へ進み、行く手を阻む守衛達を次々と倒しながら、テッドとアンナを追った。最後の扉を突破した先で、彼女はテッドが籠城した地下金庫を発見した。

ルミノス・ウィンドによる金庫破壊
リューは地下金庫の扉を前に詠唱を開始した。テッドは超硬金属製の金庫は破壊できないと嘲笑したが、リューの魔法【ルミノス・ウィンド】は扉を内側へ歪ませ、ついには爆砕した。金庫に使われていた超硬金属は純度が低く、リューの魔法で貫ける強度であった。

アンナの救出とテッドへの制裁
テッドはなおもアンナを人質にしようとしたが、リューはそれより早く少女を保護した。さらに白手袋を嵌め、容赦はしないと告げたうえで、疾風の一撃をテッドの顔面へ叩き込んだ。テッドは金貨の山へ吹き飛ばされ、完全に無力化された。

アンナの感謝とシルの合流
リューはアンナの無事を確認し、怪我がないことに安堵した。アンナは見ず知らずの自分を助けるためにここまで来たリューへ、涙を滲ませながら感謝を告げた。その直後、シルが地下金庫に現れ、倒れている者達を辿って追いかけてきたと説明した。

テッドの脅迫とシルの一言
意識を取り戻したテッドは、リューが都市にいるという噂をばらまき、恨みを持つ者達に追わせると脅した。これに対し、シルはテッドの耳元で何事かを囁いた。その言葉にテッドは硬直し、力が抜けたように沈黙した。

フレイヤ・ファミリアの名による決定打
脱出の途中、シルはリューに、ミアが籍を置く【フレイヤ・ファミリア】の名をテッドに告げたと明かした。その名はテッドを完全に怯えさせるには十分であった。後に駆けつけた【ガネーシャ・ファミリア】の前で、テッドは放心したまま【フレイヤ・ファミリア】の名を譫言のように呟いていた。

シャクティとの遭遇
リュー達は大賭博場の裏口まで辿り着いたが、外には【ガネーシャ・ファミリア】の包囲網が敷かれていた。そこへ団長シャクティ・ヴァルマが現れ、部下達を別の場所へ向かわせた。彼女はリューの正体を察しており、何も見ていないと告げて逃走を黙認した。

開錠薬の受け渡し
リューはシャクティへ感謝を述べ、すれ違いざまに「開錠薬」を渡した。シャクティはそれだけで事情を理解し、大賭博場側の不正を追及する手がかりとして受け取った。リュー達はその隙に包囲を抜け、大賭博場区域から脱出した。

アンナを家族のもとへ帰す手配
繁華街の裏通りへ出たリューとシルは、あらかじめ用意していた馬車にアンナを乗せようとした。馬車はカレン達のもとへ向かうよう手配されており、アンナはようやく家族のもとへ戻れる状況になった。

アンナの告白と誤解の発覚
別れ際、アンナは自分を救ったリューに恋心を告げようとした。だが彼女は、男装したリューを男性だと誤解していたのである。リューは眼帯を外し、髪型を戻して、自分も女性であると明かした。

崩れた恋心とシルの笑い
アンナは激しく驚き、恋心を抱いた相手が同性だった事実に半ば放心したまま馬車へ乗り込んだ。馬車が去った後、シルは笑いを堪えきれず肩を震わせた。リューは、男装を提案した張本人であるシルへ恨めしげな視線を向けるのであった。

大賭博場の騒動とリューの安堵
大賭博場区域の前には野次馬が集まり、事件に尾ひれのついた噂が広がっていた。リューは路地裏からその様子を眺め、ギルド職員が大賭博場へ入っていくのを確認した。テッド達の処理はもう任せられると判断し、肩の力を抜いた。

ベルとの再会と感謝
リューは大賭博場から追い出されるベルとモルド達を見つけた。ベルはこちらに気付き、誰にも見られないよう路地裏へやって来た。リューは協力への礼と巻き込んだことへの謝罪を伝え、ベルは無事に目的を果たせたと聞いて安堵した。

男装へのわだかまり
リューは、アンナに男性と誤解されたことを気にしていた。自分がシルのような可憐さとは遠いことを自覚しつつも、女性らしくないのではないかという思いに囚われていた。

ベルの率直な言葉
リューは思わず、ベルに自分は女性らしくないかと尋ねた。ベルは戸惑いながらも、リューは強く格好良いだけでなく、優しく丁寧で、綺麗な女性だと思っていると答えた。さらにリューのドレス姿も見てみたいと口にし、照れながら本心を伝えた。

リューの心の変化
ベルの言葉に、リューの胸には穏やかな嬉しさが広がった。男と間違われたことへのわだかまりは消え、彼女は自分の気持ちに少し素直になることを選んだ。

朝稽古の約束
リューはベルに、酒場の内庭で行っている朝稽古へ誘った。ベルは嬉しそうに応じ、毎日は難しくとも参加したいと答えた。夜の繁華街を望む路地裏で、二人はささやかな約束を交わした。

大賭博場事件の処理と都市の対応
大賭博場「エルドラド・リゾート」は経営者のみが交代し、営業は継続されることとなった。テッドは本来の経営者テリーの身分を偽っていたが、「開錠薬」により正体が暴かれ、ギルドの取り調べで罪を認めた。娯楽都市側は責任を否認し、テッドに全ての罪を押し付ける形で事態を収束させた。

被害者の救済と噂の拡散
テッドに囲われていた女性達は補償を受け、それぞれ故郷へ帰された。事件の功績は【ガネーシャ・ファミリア】のものとされ、リューとシルの存在は伏せられたままとなった。一方で世間では、正体不明の救出者について様々な噂が飛び交うこととなった。

酒場で語られる後日談
酒場「豊穣の女主人」では、シルやアーニャ達が事件の顛末を語り合っていた。テッドの所業や都市の対応について軽口を交わしつつも、救出された家族の無事が確認されたことで一応の安堵が広がっていた。

リューとベルの鍛錬の日常
その最中、店の奥からリューがベルを打ちのめしたという騒ぎが起きた。二人は約束通り、酒場の内庭で鍛錬を行っていたのである。シル達は慌てて様子を見に向かい、日常の延長としての騒動が広がった。

日常への回帰
女将の怒声が飛び交う中、酒場はいつもの賑やかな朝を迎えていた。事件は収束し、リュー達は再びそれぞれの日常へと戻っていった。

7

酒場で語られる過去の失敗
陰気な酒場の一角で、ヒューマンの男は仲間達と酒を酌み交わしながら過去の出来事を語っていた。かつて「豊穣の女主人」を訪れ、軽率な行動によって店から叩き出された経験を笑い話にしつつ、場の空気は賑やかに盛り上がっていた。

家族に叱責された傷と反省
男の顔に残る傷は酒場の者によるものではなく、妻と娘に叱責された際につけられたものであった。彼は賭博にのめり込み、家族を危険に晒しかけた過去を振り返り、それを恥じていた。

リューによる救いと決意
男は、全てを失いかけた自分を救ったのが「豊穣の女主人」にいるエルフであったと語った。生真面目で潔癖でありながら他人を見捨てないその存在により、家も娘も取り戻すことができたのである。その経験から、男は賭博を断ち、真人間になることを家族に誓っていた。

小さな弱さと日常の継続
しかし男は、家族に隠れてわずかな酒を楽しむ程度の弱さは残していた。それでも自らの過ちを自覚しながら、慎ましく日常を生きている様子が描かれていた。

アンナの登場と親子のやり取り
そこへ娘のアンナが現れ、約束を破った父を叱責した。男は情けない様子で弁解するが、最終的には娘に腕を引かれて店を後にすることとなった。周囲の客はその様子をからかいながらも温かく見守っていた。

最後に残された助言
去り際、男は対面の客に向けて、過度な悪事を慎むよう忠告しつつ、本当に困った時には「豊穣の女主人」を訪れるよう助言した。そこには、かつて自分を救った存在への確かな信頼が込められていた。

そこは豊穣の酒場~ Girl meets Girls ~

1

依頼の提示と標的の正体
ルノア・ファウストは流浪の賞金稼ぎとして迷宮都市オラリオに身を置き、裏の界隈では「黒拳」と呼ばれていた。いつものように場末の酒場で依頼を受けた彼女に対し、商人は新たな標的として「疾風」の名を告げた。死んだと噂されていたそのエルフは生存しており、闇派閥壊滅直後に姿を見せたという証拠として似顔絵が提示された。さらに、その潜伏先が「豊穣の女主人」であると断定され、口封じのための討伐依頼が下された。

依頼に対する戸惑いと現実認識
依頼人が去った後、ルノアは報酬と引き換えに標的を仕留めてきた自分のこれまでを振り返りながらも、今回の依頼に対して強い疲労と戸惑いを覚えていた。オラリオの冒険者は桁違いに強く、第二級以上の相手となれば達成は容易ではない現実を痛感していた。戦い続けることで名が広まり、さらに危険な依頼が舞い込む悪循環に陥っていたのである。

心身の疲弊と生活への渇望
絶え間ない戦闘と緊張により神経はすり減り、かつて好んでいた酒の味すら感じなくなっていた。ルノアは戦いから離れ、平穏な生活を送りたいという願望を抱くようになっていた。気を遣ってくれる伴侶と共に静かな暮らしを望むなど、これまでの生き方とは対照的な思いが芽生えていた。

賞金稼ぎからの離脱への決意の芽生え
十七歳の少女であるルノアは、自らの生き方に疑問を抱き始めていた。強さのみで生き抜いてきた日々に限界を感じ、賞金稼ぎという生業そのものを手放すべきか思案するに至っていた。

依頼の提示と交渉の主導
クロエ・ロロは流浪の暗殺者として迷宮都市オラリオに身を置き、「黒猫」の異名で知られていた。忘れ去られた鐘楼で依頼を受けた彼女に対し、商会の男は標的として「疾風」を提示した。高額懸賞金がかけられた危険な相手であったが、クロエは冷静に条件を引き上げ、前金と報酬配分で優位な契約を成立させた。脅しすら交えた交渉によって、依頼人を圧倒したのである。

依頼人の退散と素の姿の露呈
依頼人が情報を残して去った後、クロエは緊張を解き、普段の砕けた口調へと戻った。交渉の場では冷酷な暗殺者として振る舞っていたが、その裏では相手の弱さに呆れ、刺激のなさに不満を抱いていた。

暗殺業への疲労と現実の厳しさ
クロエはこれまで暗殺の技量のみで生き抜いてきたが、オラリオの環境は過酷であった。強大な冒険者を相手にするためには入念な準備が必要であり、その費用が報酬を圧迫するという非効率な状況に陥っていた。成功率の高さゆえに依頼の難度は増し続け、消耗は避けられなかった。

生活への渇望と価値観の揺らぎ
過酷な生業に疲れ切ったクロエは、優雅で安楽な生活への憧れを口にした。戦いとは無縁の環境で満足を得たいという願望は、これまでの生き方との決別を示唆していた。荒れた毛並みに象徴されるように、心身の余裕は既に失われていた。

暗殺業からの離脱への思案
十六歳の少女であるクロエは、自らの生業に限界を感じていた。これ以上暗殺を続けることへの疑問が強まり、廃業という選択肢を現実的に考え始めていた。

2

復讐の果てに訪れた虚無
冷たい雨が降りしきる中、リューは人気のない路地裏を傷ついた体で歩いていた。仲間を奪った者達への復讐を果たし、敵対する【ファミリア】を滅ぼしたものの、その先にあったのは達成感ではなく、深い虚無であった。激情が消え去った後、彼女の内には何も残っていなかった。

心の喪失と死への傾倒
仲間の記憶や感情すら曖昧となり、涙も叫びも失われていたリューは、自身が空虚になったことを自覚していた。体を動かしていた衝動が消えたことで、心は暗い闇に包まれ、生への執着も薄れていった。降り続く雨は体温を奪い、その存在を責め立てるかのようであった。

力尽きた末の孤独な終焉
重傷と疲労により限界を迎えたリューは、その場に倒れ伏した。血と泥にまみれた体は冷え切り、誰にも看取られることなく命を終える運命を受け入れようとしていた。女神や仲間の面影を思い浮かべながら、安らぎを求めて瞼を閉じた。

少女との邂逅と救いの兆し
その時、リューの意識の淵に一人の少女が現れた。薄鈍色の髪を持つ少女は膝をつき、彼女の手を優しく包み込んだ。その温もりは、拒絶してきた他者の触れ合いを受け入れさせるほど穏やかであった。触れられた瞬間、リューの内に残っていた感情が溢れ出し、失われていたものがわずかに蘇った。

意識の消失と再生への布石
少女の声と温もりに包まれながら、リューは再び意識を手放した。しかしそれは単なる終わりではなく、救いへと繋がる契機であった。死の淵で差し伸べられた手が、彼女の運命を変える兆しとなっていた。

目覚めとシルとの対面
リューは木造の部屋で目を覚ました。三日間眠り続けていた彼女を看病していたのは、雨の路地裏で手を差し伸べた少女シル・フローヴァであった。リューは助けられたことに戸惑い、なぜ自分を救ったのかと問いかけた。

名前を呼びたいという善意
シルは、傷ついた人を放っておけなかっただけだと答えた。そしてリューの名を尋ね、名前を呼びたいのだと告げた。リューはその真っ直ぐな善意に調子を狂わされながらも、自分の名を名乗った。

ミアとの対面と滞在の提案
そこへ女将のミアが現れ、リューが【疾風】であることを見抜いた。しかしミアはギルドへ突き出す気などなく、動けるようになったなら好きにすればよいと告げた。シルはしばらく店にいればよいと提案し、リューはその優しさに心を乱された。

生きる理由を失ったリューの叫び
リューは、自分には仲間も帰る場所も残っておらず、生きる理由などないと叫んだ。だがその直後、空腹を示す腹の音が鳴り、ミアは体は生きたがっていると告げた。リューは羞恥に赤面しながらも、ミアに食事へ連れて行かれた。

温かな食事と小さな生きる理由
ミアが出した米料理を口にしたリューは、文句を並べながらも、その温かさと美味しさを認めた。ミアは、美味い飯を食べることだけでも生きる理由になると語った。リューはその言葉と料理に、空っぽだった心へ小さな幸福が染み込むのを感じた。

借金を口実にした雇用
食事を終えた直後、ミアは代金として五千万ヴァリスを請求した。払えないなら借金分を店で働けと告げ、リューは詐欺だと抗議したが、店ではミアの言葉が絶対であった。シルもそれに乗り、リューは嵌められたと悟った。

新たな居場所の始まり
こうしてリューは、半ば強制的に酒場「豊穣の女主人」で働くことになった。シルとミアの強引なやり方は、絶望していたリューを生かし、顔を上げさせるための口実であった。

ルノアの住処と最後の依頼
ルノアは都市北西部の安い集合住宅に住んでいた。人目につきにくく、詮索されない環境を気に入っており、今回の【疾風】討伐を最後の依頼にしようと考えていた。だが商会から渡された情報は乏しく、潜伏先以外に有用な手がかりはほとんどなかった。

ギルド情報への疑念
ルノアは【疾風】の本名や詳細が不明なことに違和感を抱いた。ギルドが【アストレア・ファミリア】最後の生き残りに対して、処断しつつも情報を伏せていると推測した。結局、自分の目で確かめるしかないと判断し、「豊穣の女主人」へ向かう準備を始めた。

クロエの調査と暗殺への警戒
一方、隣室のクロエも【疾風】と【アストレア・ファミリア】について調査していた。彼女は【疾風】がLv.4でも最上位級の実力者であると見て、正面から挑むのは危険だと考えた。これを最後の仕事にして高飛びするつもりであり、毒や罠も含めた暗殺のために標的の習慣を探ろうとしていた。

隣人同士の初対面
同じ集合住宅に住みながら顔を合わせていなかったルノアとクロエは、同時に部屋を出たことで初めて互いを認識した。双方とも相手を怪しい人物だと感じながらも、深入りしない方がよいと判断した。

同じ目的地へ向かう二人
ルノアとクロエは無言で別々の方向へ歩き出した。互いの目的を知らないまま、二人は同じ標的を確かめるため、同じ酒場「豊穣の女主人」を目指していた。

ウェイトレス姿への戸惑い
リューは鏡に映る自分の姿を見て呆然とした。若葉色の制服と白いエプロン、さらに髪まで薄緑に染められ、かつて「疾風」と恐れられた面影は消えていた。シルは似合っていると喜んだが、リューにとっては強い違和感と屈辱であった。

強制された従業員生活の開始
体調回復後、リューは「豊穣の女主人」の店員として働かされることになった。ミアの借金返済の名目と、シルの指導のもと、逃げ場のない状況で業務に就くことを余儀なくされた。リューは羞恥をこらえながら、渋々従うしかなかった。

皮剝き作業での失敗
最初の仕事である野菜の皮剝きでは、慣れない作業と他者との接触に対する拒否反応により、アーニャを弾き飛ばしてしまった。結果として厨房は混乱し、ミアから叱責を受ける形となった。

買い出しでの失敗
次に任された買い出しでは、シルの助言どおりに値引きを試みたものの、笑顔で頼むどころか威圧的な態度となり、店主を怯えさせてしまった。結果、店を出禁となり任務は失敗に終わった。

接客での失敗
接客においても無愛想な態度を改められず、客から指摘を受ける結果となった。以後の業務もことごとく失敗が続き、店内での評価は低迷した。

連続する失敗と内省
失敗の連続によりミアから呆れられ、借金は増える一方となった。リューは自身の不器用さを否定しようとしたが、かつて【アストレア・ファミリア】加入当初も同様に失敗を重ねていたことを思い出した。慣れない環境であることを自覚しつつも、試練の日々は続いていった。

ルノアによる潜入と違和感
ルノアは客として酒場「豊穣の女主人」に潜入し、標的であるリューを確認した。しかし、都市で恐れられる【疾風】がウェイトレスとして働いている姿に強い違和感を覚えた。情報と一致する人物であると認識しつつも、その状況が理解できず困惑した。

店内でのリューの様子
リューは不慣れな動きで接客や片付けに追われ、周囲の助けを受けながら何とか業務をこなしていた。ルノアはその姿を観察し、隠れ蓑や罠の可能性を考えたものの、あまりに不格好な様子に判断を保留した。

クロエによる裏口からの偵察
一方、クロエも飛脚に変装して酒場へ侵入し、リューの様子を確認した。彼女もまた、【疾風】が雑務をこなしている現状に疑問を抱いたが、店員の説明から最近入った新人であると理解した。

酒場の異様な雰囲気の察知
クロエは店内の様子を観察する中で、女将の威圧感や厨房の動きに違和感を覚えた。単なる酒場ではない可能性を感じ取ったものの、その考えはあまりに現実離れしていると判断し、自ら打ち消した。

二人の認識の一致と誤判断
ルノアとクロエはそれぞれ独立してリューの存在を確認し、同一人物であると確信した。しかし、どちらも酒場の異質さを完全には理解できず、状況の本質を見誤ったまま、その場を離れることとなった。

アーニャの言葉とリューの停滞
リューは「豊穣の女主人」で働き続けながらも、心に空いた穴を抱えていた。アーニャは辛気臭い顔をしていると率直に指摘し、悩みなどそのうち忘れると雑に励ました。その言葉は乱暴で根拠もなかったが、リューの心をわずかに軽くした。

シルへの特別な意識
皿洗いをしていたリューのもとにシルが現れ、自然に手伝い始めた。リューは、路地裏で倒れていた自分の手を拒ませなかった少女として、シルを特別に意識していた。彼女がいることが、リューをこの酒場に留まらせる理由の一つになっていた。

シルの過去とリューの笑み
シルは、自分も最初は皿を割り、鍋を焦がし、食材を間違えるなど失敗ばかりだったと語った。今の姿からは想像できない話に、リューは思わず小さく笑った。シルは、リューがようやく笑ってくれたことを喜び、彼女を屋上へ連れ出した。

屋上で見た街とシルの言葉
シルは寂れた聖堂の屋上から、オラリオの街を見せた。かつて恐怖に包まれていた街が、最近は少しずつ笑うようになったと語り、それはリュー達が戦ってくれたおかげだと告げた。リューは、自分の復讐が正義ではなかったと否定したが、シルはそれでも街は救われたのだと伝えた。

遺されたものへの気付き
街に響く子供達の笑い声や吟遊詩人の歌を聞き、リューは仲間達が遺したものに気付いた。失われたと思っていた正義の成果は、街の平穏として残っていたのである。リューは、アリーゼ達の分までそれを見届けなければならないと思い、曇っていた視界が晴れていくのを感じた。

シルへの恩返しという答え
リューは、これからどうするかを問うシルに、恩を返したいと答えた。彼女がいなければ自分は仲間に叱られるところだったと考え、しばらく酒場に留まることを決めた。二人は青空の下で笑い合い、新たな関係を築いていった。

帰還と新しい日常
酒場へ戻ると、アーニャ達がリューを待っていた。アーニャは改めて友好の握手を求めたが、リューは反射的に手を弾いてしまった。シルが抱き着き、アーニャが対抗し、店員達が笑い合う中で、ミアの怒声が響いた。リューは騒がしい日常の中に、新しい居場所を見出し始めていた。

失われた仲間への思い
リューは、シル達がアリーゼ達の代わりになるわけではないと考えていた。失った仲間への痛みと喪失感は消えるものではなく、これからもふとした瞬間に寂しさとして疼くだろうと受け止めていた。

未来へ進む覚悟
それでもリューは、過去を抱えたまま前を向かなければならないと思った。アリーゼ達が遺してくれたものと共に、未来へ進む必要があると感じていた。

女神への手紙
リューは、離れ離れになった女神アストレアへ手紙を書こうと決めた。今の自分がどうしているのか、何を決めたのかをいつか伝えれば、女神はきっと微笑んでくれるだろうと考えた。

シルへの感謝
「豊穣の女主人」へ戻る道すがら、リューは自分に多くの気付きを与えてくれたシルへ、心の中で深く感謝した。そして小さく、ありがとうと呟いた。

3

変わりゆくリューの姿
ルノアは夕暮れの大通りから「豊穣の女主人」を眺め、店員として働くリューの変化を感じ取っていた。かつては強張り、迷いを抱えた亡者のようであったが、今は意思の光を取り戻し、わずかな笑みすら見せるようになっていた。その姿から、彼女が居場所を見つけたのだと理解する。

ルノアの孤独な過去
ルノアは幼少期に戦争で家族を失い、路上で生き延びてきた。やがて【ファミリア】に入り力を得たものの、主神に対する不信や派閥崩壊を経て放浪の身となった。以降は賞金稼ぎとして生き、各地を渡り歩きながら力を頼りに生き抜いてきたが、どの場所にも根付くことはなかった。

迷宮都市での挫折と疲労
オラリオに来てからは、強者がひしめく環境に圧倒され、初めての敗北も経験した。戦い続ける日々の中で力は伸びたものの、終わりのない闘争と孤独が心身を蝕み、次第に疲労を自覚するようになっていた。

デメテルとの再会と安らぎ
街中で出会った女神デメテルのもとを訪れたルノアは、【ステイタス】の更新を受けるとともに、穏やかな時間を過ごした。デメテルは見返りを求めず、優しさで接してくれる存在であり、そのひとときはルノアにとって数少ない安らぎであった。

差し伸べられた居場所の拒絶
デメテルは農業を営む生活への参加を提案したが、ルノアはそれを拒んだ。自分の手は血に汚れており、人々に喜びを与える仕事に関わるべきではないと考えていたからである。自らの生き方を否定しつつも、その場に留まることはできなかった。

最後の依頼への決意
ルノアは賞金稼ぎとしての生き方に区切りをつけるため、最後の依頼を果たす決意を固めていた。それは過去の自分との決別であり、同時に居場所を見つけたリューへの複雑な感情からくる八つ当たりでもあった。自嘲を浮かべながらも、彼女は再び戦いの場へ向かうのであった。

変化したリューへの認識
クロエは夜の街を見下ろしながら、「豊穣の女主人」で働くリューの姿を観察していた。かつての張り詰めた雰囲気とは異なり、同僚に微笑みを向ける様子から、本来の姿を取り戻したのだと理解する。そして彼女が居場所を得たことを察した。

暗殺者としての過去
クロエは犯罪組織のもとで生まれ育ち、幼少期から殺しの技術を仕込まれてきた。母を失ったことで組織に反発し、過酷な試練を乗り越えて脱退したが、その後も生きる術として暗殺業を続けるしかなかった。

オラリオでの挫折と疲弊
迷宮都市に足を踏み入れたクロエは、圧倒的な実力差に打ちのめされ、初めての敗北を経験した。以後は標的を選びながら仕事を続けたが、終わりのない殺しの連鎖に心は疲弊し、居場所を求めるようになっていた。

ニョルズとの再会と関係
偶然再会した神ニョルズのもとでクロエは【ステイタス】の更新を行った。彼とは弱みを握った関係にあったが、それでもニョルズは彼女を気遣い、穏やかな時間を与えてくれる存在であった。

居場所への誘いと拒絶
ニョルズは自らの【ファミリア】への加入を提案したが、クロエはそれを断った。暗殺者として生きてきた自分がそのような場所に収まることに違和感を覚え、また仲間という存在自体を理解できていなかったためである。

求める関係への戸惑い
クロエは仲間や友達というものがわからないと語りつつも、ぶつかり合いながらも関係を続けられるような繋がりに憧れを抱いていた。殺し合いではなく、軽口を交わせる関係こそが、自分にとって心地よいものではないかと考え始めていた。

ルノアの決意と依頼人との対峙
ルノアは依頼人であるブルーノ商会の男に呼び出され、任務の遅れを責められていた。だが彼女は動じることなく、この仕事を最後に足を洗うと宣言し、依頼達成と引き換えに今後の関係断絶を求めた。そして自らのけじめとして任務遂行を誓い、翌夜に【疾風】へ仕掛けることを告げた。

クロエの葛藤と状況認識
一方、クロエもまた依頼人から急かされ、別の場所で【疾風】暗殺の催促を受けていた。ルノアという競合の存在を知らされながらも、彼女は状況を冷静に受け止めつつ、混乱と悪意に満ちていたオラリオが終わりに向かっていることを実感していた。

暗殺対象への複雑な感情
クロエは【疾風】が都市の変革に関わった存在であると理解しつつも、その存在が新たな禍根となる可能性を考慮し、排除の必要性を理屈として受け入れた。内心ではこの任務に嫌悪感を抱きながらも、仕事として割り切る姿勢を崩さなかった。

同時に下された決断
こうしてルノアとクロエは、それぞれ異なる思いを胸に抱えながらも、同じ結論へと至った。すなわち、翌夜に【疾風】へと仕掛けるという決断である。邂逅と衝突の時は、目前に迫っていた。

4

殺意の気配の察知
早朝、離れを歩いていたリューは窓の外に目を向け、不穏な空模様の中で自身に向けられる視線の変化を感じ取った。これまで曖昧だった視線は明確な殺意を帯びており、追手の存在を確信するに至った。自らを匿うことで酒場に危険が及ぶ現実を認識し、リューは対応を決意した。

退店の申し出とミアの拒絶
リューはミアのもとを訪れ、店を辞めることで被害を防ごうとした。しかしミアは既に状況を把握しており、その申し出を一蹴した。リューを雇った責任は自分にあると断言し、勝手な離脱を許さない姿勢を示したことで、リューは動揺することとなった。

シルの引き止めと仲間としての受容
さらにシルもまたリューを引き止め、安全面においてもこの酒場に留まる方が良いと説いた。店員達の実力を踏まえた上での言葉であり、リューにとっては否定しきれない現実であった。自分が原因である問題に対し逃げるのではなく向き合うべきだと諭され、リューは覚悟を固めた。

自らの責任への決意
ミアの叱咤に背を押され、リューは自分が招いた事態に自ら決着をつけると決意した。二人の信頼と受容に対する感謝を胸に、逃げるのではなく問題に立ち向かう意思を示したのである。

新たな不穏の示唆
その後、ミアは今夜シルと共に店を離れる予定があると告げた。詳細は明かされなかったものの、シルに関わる「過保護な連中」への説明が必要であるとされ、リューには店の留守を任されることとなった。さらに店に損害が出れば容赦しないと釘を刺され、リューは緊張を抱えながらそれを受け入れた。

酒場の騒動と束の間の平穏
ミアとシルが外出すると、アーニャ達は臨時休業に歓喜し、離れで宴を開いた。酒と料理に溺れた店員達はやがて酔いつぶれ、リューはそれを見届けながら静かな夜を迎えた。かつての仲間達との日々を思い出しつつ、安らかな眠りへと落ちていった。

暗殺の開始と奇襲の迎撃
しかしその眠りは、仕込まれた「眠りの香」によって破られた。耐異常を持つリューですら意識を奪われかける中、敵襲を察知し武器を手に取る。直後、天井から奇襲を仕掛けたのは暗殺者クロエであった。煙幕と幻影、毒を組み合わせた搦め手によりリューは追い詰められるが、辛うじて致命打を凌ぐ。

黒拳の乱入と三つ巴の形成
そこへルノアが乱入し、戦況は三つ巴へと変化した。ルノアは純粋な肉弾戦でリューに迫り、クロエは漁夫の利を狙って介入の機を窺った。さらにアーニャが参戦し、クロエと激突することで戦場は混迷を極めた。

リューの魔法と戦況の一変
毒に侵されながらもリューは並行詠唱に踏み切り、近距離での魔法発動という危険な賭けに出た。ルノアの猛攻を受けながら詠唱を完遂し、魔法を炸裂させたことで戦場の全員が吹き飛ばされる結果となった。互いに消耗しながらも、戦意は衰えなかった。

黒幕の露見と共闘
そこへブルーノ商会の一団が現れ、今回の依頼が三者を同時に始末するための罠であったことが明かされた。リュー、ルノア、クロエは利用されていた事実に怒りを覚え、アーニャと共に商会の刺客を瞬時に蹴散らした。

決着寸前の乱入者
再び戦闘を再開しようとした矢先、地響きと共にミアが帰還する。破壊された店内を目の当たりにした彼女は激怒し、アーニャを一撃で沈めた。その圧倒的な存在感にリュー達は動きを止め、ミアがかつての強大な冒険者であることを理解する。

怒りの咆哮
惨状を前にしたミアは怒りを爆発させ、少女達へと叱責を叩きつけた。その怒号は戦場を完全に制圧し、三つ巴の戦いは思わぬ形で終結へと向かうのであった。

5

強制労働となった修繕作業
襲撃事件から三日後、ルノアとクロエは「豊穣の女主人」の制服を着せられ、壊した離れや倉庫の修繕作業に従事していた。ミアの怒りを買った彼女達は、一億ヴァリスの借金返済まで店で働かされることになったのである。

黒幕の処理と追手の消滅
リュー達を陥れようとしたブルーノ商会の幹部達は、ミアによってギルドへ突き出され、背後の勢力ごと壊滅させられていた。その結果、リュー、ルノア、クロエの正体が外へ漏れる危険は消え、追われる心配もなくなった。

新しい同僚達の騒がしい日常
リュー、アーニャ、ルノア、クロエは修繕作業をしながら互いに言い合いを続けていた。殺し合いに近い喧嘩を経たことで、気を遣わず文句を言い合える関係になっていた。

神々との別れ
デメテルとニョルズは、ルノアとクロエの再就職祝いとして食材を持って訪れた。二人はそれぞれの眷族が新しい居場所に馴染んでいることに安堵し、ルノアとクロエもこれまでの感謝を伝えた。こうして彼女達は、神々との関係に一区切りをつけた。

ミアによる家族宣言
朝食後、ミアは店員達を集め、自分はこの店の法であり女主人であり、店員達の母親であると宣言した。リュー、ルノア、クロエは戸惑いながらもミアを母と呼び、店の一員として受け入れられた。

豊穣の女主人の新たな朝
ミアの号令のもと、少女達は扉の前に並び、来店する客を笑顔で迎えた。「豊穣の女主人」は、過去を抱えた少女達が働き、笑い、美味い飯を振る舞う酒場として、新たな朝を迎えた。

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