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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかフィクション(Novel)読書感想

小説【ダンまち外伝】「ソード・オラトリア 9」感想・ネタバレ

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ソード・オラトリア9の表紙画像(レビュー記事導入用) ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

ソード・オラトリア 8レビュー
ソード・オラトリア 10レビュー

Table of Contents

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. ラキア王国の侵攻
      1. ラキア王国の無謀な侵攻
      2. 圧倒的な蹂躙と「ピンク色の妖精」
      3. 侵攻の「真の狙い」とフィンの完璧な采配
      4. まとめ
    2. 人造迷宮の調査
      1. ガレスによる都市外の地下補給経路の発見と破壊
      2. アイズたちによるダンジョン側連絡路の特定
      3. ベートたちの「鍵」捜索の難航と神々の駆け引き
      4. まとめ
    3. アイズの過去
      1. 両親との記憶と「剣姫」の始まり
      2. 力への執着と「人形姫」
      3. 成長の壁とリヴェリアとの決裂
      4. 邪神の誘惑と「母の風」の覚醒
      5. まとめ
    4. 師弟の絆
      1. アイズがベルの師匠となった「真意」と「打算」
      2. 「師弟の連鎖」:アイズを導いた大人たち
      3. まとめ
    5. 精神的成長
      1. アイズの「人形姫」からの脱却と「永遠の絆」の受容
      2. リヴェリアの「保護者」としての葛藤と覚悟
      3. レフィーヤの「憧憬」への向き合い方
      4. まとめ
    6. 家族の愛情
      1. 実の両親が遺した「永遠の絆」
      2. 血の繋がりを超えた新しい家族【ロキ・ファミリア】
      3. 傷を埋め合う者たちと、神の永遠の愛
      4. まとめ
    7. レフィーヤの成長
  6. 登場キャラクター
    1. ロキ・ファミリア
      1. ロキ
      2. フィン
      3. リヴェリア・リヨス・アールヴ
      4. ガレス・ランドロック
      5. ティオネ
      6. ティオナ
      7. アナキティ
      8. ナルヴィ
      9. レフィーヤ
      10. アリシア
      11. エルフィ
      12. ラクタ
      13. ベート・ローガ
      14. ラウル
      15. クルス
      16. アイズ・ヴァレンシュタイン
      17. ケビン
    2. アレス・ファミリア / ラキア王国
      1. アレス
      2. マリウス
    3. フレイヤ・ファミリア
      1. フレイヤ
      2. オッタル
      3. アレン
    4. イシュタル・ファミリア
      1. イシュタル
      2. タンムズ・ベリリ
      3. レナ・タリー
      4. アイシャ
    5. ギルド
      1. ウラノス
      2. ロイマン
      3. ローズ・ファネット
      4. ソフィ
    6. ヘルメス・ファミリア
      1. ヘルメス
      2. アスフィ
      3. ルルネ
    7. ヘファイストス・ファミリア
      1. ヘファイストス
      2. 椿・コルブランド
    8. ガネーシャ・ファミリア
      1. ガネーシャ
    9. デメテル・ファミリア
      1. デメテル
    10. ヘスティア・ファミリア
      1. ヘスティア
      2. ベル・クラネル
    11. ゴブニュ・ファミリア
      1. ゴブニュ
    12. タナトス・ファミリア / 闇派閥(イヴィルス)
      1. タナトス
      2. ヴァレッタ・グレーデ
      3. オリヴァス・アクト
    13. 豊穣の女主人
      1. ミア
      2. アーニャ
    14. エダスの村
      1. カーム
      2. リナ
      3. カームの息子達
    15. その他のキャラクター・集団
      1. ディオニュソス
      2. 覆面の冒険者
      3. アイズの父親
      4. アイズの母親
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ◆妖精の追憶
    2. 一章◆陣営での一幕
    3. 追憶一章◆少女の始まり
    4. 二章◆束の間の静穏
    5. 追憶二章◆汝は剣なりや?
    6. 三章◆北の山から
    7. 追憶三章◆在りし日の神々と人々
    8. 四章◆遺るもの、残されるもの
    9. 追憶四章◆風が望む永遠
    10. エピローグ◆風が望んだ今
  8. ダンまち シリーズ一覧
    1. ダンジジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア
  9. ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか  一覧
    1. アストレア・レコード
  10. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア9』は、大人気ライトノベル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のスピンオフ作品であり、ジャンルは異世界ファンタジーである。 本作は、広大な地下迷宮(ダンジョン)を有する迷宮都市オラリオを舞台に、神々とその恩恵を受けた冒険者たちの活躍を描く世界観を共有している。 第9巻の物語は、王国軍の出兵により都市外からの侵略者を迎撃する【ロキ・ファミリア】の姿から幕を開ける。圧倒的な力で軍勢を蹴散らしていく中、ひょんなことから発せられた少女の問いをきっかけに、ハイエルフであるリヴェリアの記憶の扉が叩かれる。かつて『人形姫』と謳われていた少女時代のアイズ・ヴァレンシュタインの秘話や、竜信仰の村を訪れた少女の追想を通じて、アイズのルーツと過去の歩みが紐解かれていくあらすじとなっている。

■ 主要キャラクター

  • アイズ・ヴァレンシュタイン: 本作の主人公であり、【ロキ・ファミリア】に所属する最強クラスの第一級冒険者である。本巻では彼女の幼少期に焦点が当てられ、感情の乏しかった『人形姫』時代から現在に至るまでの成長の軌跡と、心の内に秘めた想いが描かれる。
  • リヴェリア・リヨス・アールヴ: 【ロキ・ファミリア】の副団長を務めるハイエルフの魔導士である。幼い頃のアイズを見守り、母親代わりのように育ててきた存在であり、本巻では彼女の追憶を通じて物語が語られる重要な語り部としての役割を担う。
  • ロキ: アイズたちが所属する【ロキ・ファミリア】の主神である。普段は飄々としておどけた態度をとるが、眷族たちを深く愛しており、強力な冒険者集団をまとめる精神的支柱としての立ち位置にある。

■ 物語の特徴

本作の最大の特徴は、本編でも多くの謎に包まれていたアイズ・ヴァレンシュタインの「過去」と「内面」に深く切り込んでいる点である。常にクールで圧倒的な強さを誇る彼女が、どのようにしてその人格や実力を形成するに至ったのかが詳細に描かれている。 現在進行形の派手な戦闘劇だけでなく、キャラクターの追想や絆の深掘りに重きを置いた構成となっており、アイズとリヴェリアの関係性など【ロキ・ファミリア】内部の家族的な繋がりが強調されている。スピンオフでありながら、本編の謎や伏線に直結する重要なエピソードが含まれているため、本編の読者にとっても世界観の理解を一段と深めることができる魅力的な一冊である。

書籍情報

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア9
(Is It Wrong to Try to Pick Up Girls in a Dungeon? On the Side: Sword Oratoria)
著者:大森藤ノ 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
キャラクター原案: ヤスダスズヒト 氏
出版社:SBクリエイティブGA文庫
発売日:2017年6月15日
ISBN:978-4-7973-9281-4

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あらすじ・内容

“これは、もう一つの眷族の物語
―【剣姫の神聖譚】―”
“王国軍出兵。
ベートの活躍によりアマゾネス狩りの事件を収束させたのも束の間、都市外からの侵略者の迎撃に乗り出す【ロキ・ファミリア】。
強過ぎる冒険者達によって万の軍勢が蹴散らされていく中、ひょんなことから発せられた少女の問いが、リヴェリアの記憶の扉を叩く。

「昔のアイズさんの話、聞かせて頂けないでしょうか?」

それは、当時『人形姫』と謳われていた少女の秘話。
追憶の欠片はハイエルフの想いを過去に飛ばし、一方で竜信仰の村に辿り着いた少女もまた在りし日の情景を追想する――。”

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア9

感想

メインヒロインであるアイズ・ヴァレンシュタインの、ファミリア入団直後を描いた過去編がついに綴られた。本編では見られない彼女のルーツに深く触れることができ、非常に感慨深い一冊だといえる。

全体を通しての印象は、まさに「リヴェリアの子育て奮闘記」であった。復讐心に囚われ、周囲を拒絶し続けるアイズと、そんな彼女を真っ当な少女へと矯正させようと試行錯誤する首脳陣の姿が印象的だ。手を焼くリヴェリアの頑張りは微笑ましくもあり、親としての苦労がよく伝わってくる。

団長のフィンは多忙ゆえに、なかなか育児の場に顔を出せない。その代わりに、好々爺のような安心感を持つガレスがリヴェリアを支える構図は、大家族のような温かみを感じさせた。同時に、アイズが抱える「強くなりたい」という切実な焦燥も理解でき、彼女の孤独な戦いが少し理解出来た気がする。

また、作中でついに描かれた「お酒を飲んだアイズ」の姿には驚かされた。リヴェリアたちが頑なに飲ませるなと注意していた理由を知ることとなった。あのギャップはあまりにも危険であり、ある意味で最強の技よりも恐ろしいと感じた。

戦いだけでなく、日常や人間関係を丁寧に描写したことで、今のアイズがどれほど多くの愛を受けて育ったのかがよくわかる。読後の心には、彼女たちの絆の深さが温かい余韻として残った。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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ソード・オラトリア 8レビュー
ソード・オラトリア 10レビュー

考察・解説

ラキア王国の侵攻

『ソード・オラトリア』第9巻において描かれる「ラキア王国の侵攻」は、圧倒的な戦力差による一方的な蹂躙と、その裏で進行していた敵の真の狙い、そしてオラリオ側の的確な対応という構造で展開される。

ラキア王国の無謀な侵攻

大陸西部に位置する軍事国家・ラキア王国は、国家そのものが軍神アレスを主神とする【アレス・ファミリア】で構成されている。

  • アレスの神意により過去から侵略戦争を繰り返しており、オラリオへの侵攻は今回で実に6回目となる。
  • 王国軍の兵士たちは「恩恵」を授かっているとはいえ、レベルの上限は精々Lv.3にとどまる。
  • 一方のオラリオは「量より質」を体現する第一級冒険者を多数擁しており、両者の間には絶望的なまでの戦力差が存在していた。

圧倒的な蹂躙と「ピンク色の妖精」

オラリオ側は強制任務により【ロキ・ファミリア】をはじめとする派閥を迎撃に出陣させるが、戦場では冒険者たちによる一方的な蹂躙が繰り広げられる。

  • ガレスが単独で騎兵隊を壊滅させ、特にレフィーヤの広域砲撃魔法はたった一発で敵の大部隊を壊滅に追い込んだ。
  • 高速で移動し並行詠唱で大火力を放つレフィーヤは、ラキア軍から「ピンク色の妖精」として恐れられ、軍の士気を大きく低下させた。
  • ラキア軍が悲鳴を上げて逃げ惑うこの戦いは、見物しているロキやフレイヤといった主神たちにとっては退屈な「茶番」でしかなかった。

侵攻の「真の狙い」とフィンの完璧な采配

ただ一方的に負け続けるだけでなく、いたずらに被害を出しながらも攻勢に出ず戦争を長引かせようとする王国の動きから、フィンは敵の真の狙いを見抜く。

  • ラキア軍の目的は、オラリオの戦力を都市の外に足止めし、その隙に都市内部に密偵を送り込むことであった。
  • これに気づいたフィンは、戦局が既に決定づけられていることから、一部の戦力(【フレイヤ・ファミリア】など)を残し、【ロキ・ファミリア】を密かにオラリオへ帰還させる。
  • そしてフィンの手回しにより、強力な「クロッゾの魔剣」を持ち込んで潜入していた王国の密偵たちは全て拿捕され、都市の被害は未然に防がれた。

まとめ

王国の目論見が潰え、事態が収束に向かう中、追い詰められたラキア軍(アレス)の特攻部隊が北門付近にいたヘスティアを誘拐するという騒動を起こす。これにより、ベルとアイズがヘスティア救出のために「ベオル山地」へと向かい、アイズが自身の過去や心の傷と向き合う「エダスの村」でのエピソードへと繋がっていくことになる。最終的に、アレスは山中で捕縛されてギルド本部に連行され、オラリオを巻き込んだ傍迷惑な戦争は終息を迎えたのである。

人造迷宮の調査

『ソード・オラトリア』第9巻において、【ロキ・ファミリア】はラキア王国との戦争を利用し、戦争の裏側で最大の脅威である「人造迷宮クノッソス」の調査と包囲網の構築を水面下で着々と進めている。

ガレスによる都市外の地下補給経路の発見と破壊

オラリオへの帰還前、ガレス率いる別動隊は都市周辺の徹底的な調査を行った。

  • オラリオから南へ4km以上離れた岩場の洞窟で、天然の岩肌から人工の石材へと切り替わる通路を発見した。
  • ガレスは坑夫としての過去の経験からこの場所を探り当てており、この通路が人造迷宮と都市外を結ぶ地下経路であり、食人花の搬出入や迷宮建造の物資運搬、さらには王国の密偵や無法者の侵入ルートとして使われていたと推測した。
  • 彼は主要な補給経路を断つため、魔法による通路の派手な爆破を命じ、他の経路も虱潰しに探るよう指示した。

アイズたちによるダンジョン側連絡路の特定

一方、アイズ、レフィーヤ、ナルヴィらは、ダンジョン1階層の東端(かつて闇派閥の残党を追跡した大森林の奥)を調査していた。

  • アイズが不自然に踏み固められた地面を見抜き、レフィーヤの砲撃で岩壁を破壊すると、その内部に空洞と最硬金属「オリハルコン」で作られた巨大な扉を発見した。
  • これにより、人造迷宮が少なくともダンジョンの中層深度(1階層のすぐ隣)にまで及んでいることが確実となり、フィンの予想が裏付けられた。
  • しかし、扉の脇にある悪魔の彫像の目が蒼白く光っていることから、アイズは敵に監視されていると察知した。
  • 中途半端な見張りを残せば大量の刺客に襲われる危険があると判断し、彼女たちはフィンへの報告を優先して慎重にその場を離れた。

ベートたちの「鍵」捜索の難航と神々の駆け引き

迷宮攻略に不可欠な「鍵(ダイダロス・オーブ)」の捜索も並行して行われた。

  • ベートたちは元【イシュタル・ファミリア】のレナの案内で歓楽街の『女神の宮殿』の隠し部屋や副団長タンムズの部屋を探したが、鍵が入っていたはずの小箱は空であり、手掛かりは得られなかった。
  • 実は、行方不明となっていたタンムズは【フレイヤ・ファミリア】に匿われており、鍵もフレイヤの手元にあった。
  • ロキは戦場でフレイヤに接触してタンムズと鍵の所在を問いただすが、フレイヤは言質を与えずにこれを突っぱね、独自の調査を進めた。
  • 打つ手がないロキは、探索と情報収集に長けた【ヘルメス・ファミリア】の本拠に単身乗り込み、情報共有を交換条件にしてダイダロス・オーブの捜索を依頼した。

まとめ

これらの一連の調査によって、【ロキ・ファミリア】は人造迷宮と地上、そしてダンジョンとを繋ぐ経路を次々と突き止め、籠城を決め込む怪人や闇派閥の残党を水際に追い詰める包囲網を完成させつつあった。しかし、いかに外堀を埋めても、オリハルコンの扉を開ける「鍵」がなければ決定的な突破口は開けない。時間が経過すれば敵の態勢が整い、迷宮都市の崩壊という最悪の事態を招きかねないため、レフィーヤたち【ロキ・ファミリア】の面々は、あと「一手」が足りない現状に強い歯痒さと焦燥を募らせていくことになるのである。

アイズの過去

『ソード・オラトリア』第9巻において明かされるアイズ・ヴァレンシュタインの過去は、愛する両親の喪失に端を発する絶望と、強さへの渇望、そして周囲の大人たちの愛情によって孤独から救済されるまでの軌跡として描かれている。

両親との記憶と「剣姫」の始まり

幼い頃のアイズには、彼女が「英雄」として憧れていた剣士の父親と、「精霊の風」を操りアイズを優しく抱きしめてくれる母親がいた。

  • しかし、ある出来事(世界の破滅の象徴である「黒竜」に関わる事象であることが示唆されている)によって両親を喪い、誰も自分を助けてくれる英雄は現れないという残酷な現実を悟る。
  • 心が永遠の氷壁に覆われた彼女は、「力が欲しい」と願い、自ら剣を執った。
  • 7歳の時、ロキの眷族として恩恵を受け、『ギルド』で冒険者登録を行う。

力への執着と「人形姫」

冒険者となったアイズは、自身の危険を顧みず、ひたすらにモンスターを殺戮し続けた。

  • Lv.1になった初日にゴブリンを粉砕するほどの異常な破壊力を見せ、その後も感情を削ぎ落とした無表情で怪物たちを屠り続ける姿から、周囲の冒険者からは「人形姫」や「戦姫」と呼ばれるようになる。
  • アイズは効率を優先して防御を軽視し、幾本もの武器を使い潰す無茶な戦い方を繰り返していた。
  • そんな彼女に対し、【ロキ・ファミリア】の大人たちは親身に接した。
  • フィンは模擬戦を通じて技術や駆け引き、知識の重要性を教え、ガレスは武器の手入れを通じて「武器は使い手の半身であり、傷ついた自分自身も大切すること」を諭した。
  • そしてリヴェリアは、時に厳しく叱責しながらも、母親のように彼女の髪を梳かし、精神的な成長を支えようとした。

成長の壁とリヴェリアとの決裂

入団から1年が経とうとする頃、アイズの【ステイタス】の成長が停滞し始める。

  • 強くなることだけが全てだったアイズは強い焦燥に駆られ、【ランクアップ】の条件である「偉業の達成」を大人たちが自分に隠していたことに気付く。
  • 焦るアイズは単独で11・12階層の稀少種「インファント・ドラゴン」を倒すという無茶を犯し、それを咎めるリヴェリアと激しく衝突する。
  • 「私には英雄なんて現れてくれない、自分で強くなるしかない」と叫ぶアイズに対し、リヴェリアは「私達は家族だ」と訴えるが、アイズは「貴方は、私のお母さんじゃない!」と拒絶の言葉を叩きつけ、雨の街へと逃げ出してしまう。

邪神の誘惑と「母の風」の覚醒

感情のままにダンジョンへ逃げ込んだアイズの前に、邪神タナトスが現れる。

  • 彼はアイズの心の闇を見抜き、「死の眷族」となるよう誘惑するが、アイズはリヴェリアたちと過ごした優しい日々を思い出し、これを拒絶する。
  • タナトスが召喚した強大な亜種「ワイヴァーン」との死闘の中、アイズは炎に焼かれ絶体絶命の危機に陥る。
  • しかし、駆けつけたリヴェリアの「言えっ、呼ぶんだ!」という叫びに導かれ、アイズは【目覚めよ】と詠唱する。
  • その瞬間、彼女の体に秘められていた「風の鎧(魔法【エアリエル】)」が解放された。
  • それは、幼い頃にいつも自分を包んでくれた「母親の優しい風」であった。
  • アイズは、自分の内に父の剣技と母の風が遺されており、自分はずっと独りではなかったのだと悟る。
  • 風を纏ってワイヴァーンを撃破した後、アイズはリヴェリアの腕の中で声を上げて泣きじゃくった。

まとめ

両親を喪った絶望から心を閉ざしていたアイズであるが、自分の中に生き続ける両親との「永遠の絆」に気づき、いつか母を取り戻すことを夜空に誓って、過去の孤独から救い出されることになった。

師弟の絆

『ソード・オラトリア』第9巻の資料から読み解ける「師弟の絆」は、アイズ・ヴァレンシュタインがベル・クラネルの鍛錬を引き受けた「真意」と、アイズ自身がかつてロキ・ファミリアの大人たちから受けた教導という「師弟関係のルーツ」として描かれている。

アイズがベルの師匠となった「真意」と「打算」

アイズがベルに戦い方を教え、師弟の絆を結んだ背景には、彼女自身の「強さへの渇望」と「焦燥」があった。

  • 約一ヵ月前の「戦争遊戯(ウォーゲーム)」で活躍し、階層主を倒すほどの異常な急成長を遂げているベルに対し、レフィーヤは激しい嫉妬と悔しさを覚える。
  • しかし同時に、レフィーヤはアイズがなぜベルの鍛錬を引き受けたのか、その理由を悟る。
  • かつて成長の壁にぶつかり、なりふり構わず強さを求めていたアイズは、凄まじい速度で強くなっていく少年の「成長の秘訣」をなんとしても知りたかったのである。
  • 真面目で優しいアイズは、少年に近付いた自分の動機を「打算」だと捉え、それを鍛錬の見返りとすることに罪悪感を抱いていたと考えられる。
  • だからこそ、ベルの純粋な師事に対して、不器用なまでに真摯に応えようとしたのだとレフィーヤは推測している。

「師弟の連鎖」:アイズを導いた大人たち

アイズがベルの良き師となれたのは、彼女自身が幼い頃にフィンたちから手厚い教導を受けていたからである。
7歳で冒険者となったアイズは、防御を軽視して武器を使い潰し、力任せの過剰殺戮を繰り返す無謀な戦い方をしており、それに対し大人たちはそれぞれの視点から「戦いの本質」を教え込んだ。

  • フィンの教え(技術と知識):模擬戦を通じて、アイズの乱れた攻撃を全て躱したフィンは、「恩恵(ステイタス)」やスキルに頼り切った力任せの戦い方の脆さを指摘した。圧倒的な「技と駆け引き」、そして「知識」の重要性を説き、心身ともに強くなることの必要性を教えた。
  • ガレスの教え(武器と自己の労わり):武器を何度も壊すアイズに、ガレスはみずから武器の手入れを指導した。「武器は使い手の半身」であり、武器を労わることは傷ついた自分自身を大切にすることと同じだと諭し、ただ戦うこと以外の冒険者の在り方を教えた。
  • リヴェリアの教え(精神の制御と知識):リヴェリアは時に厳しく叱責しながらも、座学を通じて迷宮の知識や「大木の心(揺るがない精神)」を教え込み、逸るアイズの暴走を止めようと尽力した。

まとめ

第9巻における描写は、アイズがかつて大人たちから授かった「知識」「技術」「自己の労わり」といった教えが、巡り巡ってベルへと受け継がれていく土壌を明らかにしている。
アイズがベルに向ける真摯な指導は、彼女自身がかつてフィンやリヴェリアたちから向けられた「決して見捨てない親身な導き」と、自身の「強さへの執着からくる打算」が交じり合って生まれた、非常に人間臭く深い絆であることが読み取れる。

精神的成長

『ソード・オラトリア』第9巻における「精神的成長」は、単に戦闘能力が高まることではなく、己の孤独や焦燥、喪失の痛みと向き合い、他者からの愛情や絆を受け入れていく心の成熟の過程として描かれている。特に、アイズ・ヴァレンシュタインの過去から現在に至る変化と、彼女を見守るリヴェリアやレフィーヤの成長が大きな主題となっている。

アイズの「人形姫」からの脱却と「永遠の絆」の受容

幼い頃に両親を喪ったアイズは、「力が欲しい」と感情を殺し、自身の危険を顧みずにモンスターを狩り続ける「人形姫」として生きてきた。

  • 入団から一年が経ちステイタスの成長が停滞した際、彼女は焦燥に駆られ、ランクアップの条件を隠していたリヴェリア達に対し「私の願いを知っているくせに」「貴方は私のお母さんじゃない」と激しく反発し、孤独の世界へ逃げ込んでしまう。
  • しかし、迷宮で邪神タナトスから「苦しみから解放してやる」と誘惑された際、彼女は孤独であってもリヴェリア達を裏切ることはできないと誘いを拒絶する。
  • そして翼竜(ワイヴァーン)との死闘の末に「母の風」に覚醒し、自分の中に両親の愛が生き続けていること、自分は決して独りではなかったことに気付くのである。
  • 現在の「エダスの村」でのエピソードでも、彼女の精神的成熟が描かれている。
  • かつての彼女なら絶対に受け入れられなかった「モンスター(黒竜の鱗)に守られる村」の現実に直面して心を乱すが、同じく愛する者を喪った村長カームの言葉や、ヘスティアの「思い出を抱き続けることで絆は永遠になる」という教えを通して、喪失の痛みを受け入れ、遺された想いを胸に前を向いて笑えるようになった。

リヴェリアの「保護者」としての葛藤と覚悟

アイズの成長は、保護者であるリヴェリアの精神的成長とも不可分である。

  • アイズに「母親じゃない」と拒絶された際、彼女は激しく動揺し「私はどうしたらいい」と初めて弱音を吐いた。
  • しかし、ガレスやフィンに「上辺の言葉ではなく、迷うなら引き寄せて抱きしめろ」と叱咤され、己の殻を破る。
  • 死闘を終え涙を流すアイズに対し、彼女は「母親にはなれないが、お前の側にいたい、愛したい」と涙ながらに本音を打ち明けた。
  • 現在でもアイズを過保護に心配してしまう自分を「子離れできていない」「母親っちゅうもんや」と自覚し、その不器用な愛情を素直に受け入れるようになっている。

レフィーヤの「憧憬」への向き合い方

また、後輩であるレフィーヤも精神的な成長を見せている。

  • かつては「都市最強魔導士の後釜」という言葉に萎縮していたが、現在ではそれを乗り越え、更なる高みを見据える向上心へと昇華させている。
  • リヴェリアからアイズの過去の焦燥と失敗を聞かされた彼女は、アイズがなぜ急成長するベルの鍛錬を引き受けたのか(成長の秘訣を知ろうとしたのだ)と共感を持って理解し、自身の成長の糧へと変えようとしている。

まとめ

第9巻における「精神的成長」とは、悲しみや焦りから目を背けて一人で戦い続けることではなく、自分を想ってくれる他者の存在に気付き、不器用ながらも歩み寄って「家族」や「絆」を築き上げていく過程そのものだと言える。

家族の愛情

『ソード・オラトリア』第9巻において、「家族の愛情」は血の繋がりの有無や生と死の境界を超え、傷ついた者を癒やし、前を向いて生きるための心の拠り所となる永遠の絆として描かれている。

実の両親が遺した「永遠の絆」

アイズ・ヴァレンシュタインは幼い頃に愛する両親を喪い、「自分を助けてくれる英雄はいない」という絶望から心を閉ざし、独りぼっちだと思い込んでいた。

  • しかし、ダンジョンでの死闘の末に極限状態に陥った際、彼女は自分を包み込む「風の鎧」が、幼い頃にいつも自分を抱きしめてくれた「母の風」であることに気づく。
  • さらに、彼女が無意識に振るっていた苛烈な剣の軌跡は、かつて憧れた「父の剣技」であった。
  • 肉体が失われても、両親が遺してくれた愛と想いは、アイズの中に確かに生き続けていた。
  • この「永遠の絆」に気づいたことで、彼女は決して独りではないと悟り、過去の孤独から救済されるのである。

血の繋がりを超えた新しい家族【ロキ・ファミリア】

両親を失ったアイズに「新しい家族」として寄り添ったのが、【ロキ・ファミリア】の大人たちである。

  • フィンやガレスは、自暴自棄に戦うアイズに対し、親愛の情をもって武器の手入れや自己の労わり方を教えた。
  • 中でも副団長のリヴェリアは、時に厳しく叱り、時に母親のようにアイズの髪を梳かして彼女を見守った。
  • 成長の壁にぶつかり自暴自棄になったアイズから「貴方は私のお母さんじゃない!」と拒絶された際、リヴェリアは「私達は家族だ」と訴え、激しく傷つく。
  • しかし、死闘を終えたアイズに対し、リヴェリアは「お前の母親にはなれないが、お前の側にいたい、愛したい」と涙ながらに本当の想いを伝え、アイズもそれを受け入れて彼女の胸で泣きじゃくった。
  • 現在でもリヴェリアはアイズを心配しすぎてしまう自分を「母親っちゅうもんや」とからかわれつつも自覚しており、仲間たちが待つ本拠はアイズにとって温かな「帰るべき居場所」となっている。

傷を埋め合う者たちと、神の永遠の愛

本作では、他にも様々な「家族の愛」の形が描かれている。

  • 「エダスの村」の村長カームは、愛する女神を喪った絶望の中で村に辿り着いたが、同じように傷を抱えた村人たち(血の繋がらない家族)に看病され、彼らとの絆によって孤独から救われた。
  • また、神であるヘスティアは、定命の存在であるベルに対し、「もし死が二人を一度引き離しても、生まれ変わった君に何度でも会いに行く」と、神だからこそ誓える永遠の愛を伝えている。

まとめ

本作における「家族の愛情」は、種族の違いや寿命の差、さらには死という別離をも超えて存在するものである。それは残された者の心の中に生き続け、迷った時に寄り添い、再び立ち上がるための「心の支え」となる温かな光として描かれている。

レフィーヤの成長

ソード・オラトリア 8レビュー
ソード・オラトリア 10レビュー

登場キャラクター

ロキ・ファミリア

ロキ

おちゃらけた態度を見せるが、的確な判断を下す主神である。アイズを可愛がっており、彼女の抜けた乳歯を保存しようとした。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルメスに鍵の捜索を依頼した。戦場では退屈そうにしていた。昔、アイズにジャガ丸くんの屋台を教えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フレイヤやヘルメスなど他の神々と交渉を行い、渡り合う影響力を持つ。

フィン

柔和な笑みを浮かべる小人族の指揮官である。冷静で聡明な性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア・団長。第一級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 ラキア軍との戦いで完璧な采配を見せ、撤退を偽装して敵を殲滅する指示を出した。アイズに体術や知識の重要性を教え、模擬戦で技術と駆け引きの不足を指摘した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 都市最大派閥の団長として、都市内外に高い名声を轟かせている。

リヴェリア・リヨス・アールヴ

厳格なハイエルフの魔導士である。母親のようにアイズを気にかけている。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア・副団長。第一級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 アイズの冒険者登録に付き添い、ダンジョン探索を監督した。アイズに座学を教えようとしたが反発された。竜との戦闘でアイズを助けに向かった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 都市最強魔導士として名高い。

ガレス・ランドロック

豪快で面倒見が良い性格のドワーフの大戦士である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア・首脳陣。第一級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 王国軍の騎兵隊を単独で撃退した。人造迷宮と都市外を結ぶ地下経路を発見し、爆破を命じた。アイズに武器の手入れを教えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 第一級冒険者として、派閥の戦闘を支える中心人物である。

ティオネ

フィンを慕うアマゾネスの冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア。第一級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 戦場で陽動や敵別動隊の撃退を担当した。歓楽街で鍵の捜索を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 第一級冒険者として高い戦闘力を誇る。

ティオナ

明るい性格のアマゾネスの冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア。第一級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 戦場では伝令役を務めた。歓楽街でティオネとともに鍵の捜索に協力した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 第一級冒険者として前線を担う。

アナキティ

呆れたような態度を見せることが多い猫人の女性冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 戦場では伝令役を務めた。歓楽街での鍵の捜索に協力した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ナルヴィ

ヒューマンの女性冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 戦場で伝令役を務めた。ダンジョン内で人造迷宮への扉を調べた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レフィーヤ

向上心が強いエルフの少女魔導士である。自らへの評価が厳しく、アイズに強い憧れを抱いている。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア・魔導士。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔法による広域砲撃でラキア軍の部隊を壊滅させた。ダンジョン内で人造迷宮と繋がる扉を発見した。街でベルと遭遇した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 都市最強魔導士の後継として期待されている。

アリシア

優しげな声で話すエルフの女性冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア・第二級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 戦場でレフィーヤの砲撃のタイミングを指示した。アイズがベオル山地に向かったことをリヴェリアに報告した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エルフィ

レフィーヤと同室の魔導士である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア・魔導士。

・物語内での具体的な行動や成果
 夜遅くまで勉強するレフィーヤを心配し、リヴェリアに状況を伝えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ラクタ

兎人の冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 野営地のテント内で雑魚寝をしていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ベート・ローガ

口が悪い狼人の青年である。素直ではないが、団員たちから慕われるようになっている。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 戦場でリヴェリアとともにレフィーヤの活躍を見守った。歓楽街でレナの案内のもと鍵の捜索を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 第一級冒険者として高い実力を持つ。

ラウル

フィンから指示を受ける団員である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 都市帰還後、フィンから団員たちの休息申請をまとめるよう指示された。アイズの帰還を執務室に報告した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クルス

犬人の冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア。Lv.4。

・物語内での具体的な行動や成果
 ガレスとともに都市周辺の岩場を調査し、地下経路を発見した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アイズ・ヴァレンシュタイン

金髪金眼の少女剣士である。感情に乏しく見えるが、強くなることに強い執着を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア・第一級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去に七歳で冒険者登録を行い、初戦でゴブリンを粉砕した。タナトスの誘惑を退け、翼竜を撃破した。ベルとともにヘスティアの救出に向かい、ベオル山地で遭難した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 人形姫、戦姫、剣姫と称され、高い名声と戦闘力を持つ。

ケビン

ファミリアの男性団員である。

・所属組織、地位や役職
 ロキ・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 酒場での宴会中、酔ったアイズに斬り飛ばされた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アレス・ファミリア / ラキア王国

アレス

好戦的なラキア王国の主神である。オラリオの戦力に圧倒されて動揺する姿を見せる。

・所属組織、地位や役職
 アレス・ファミリア・主神。ラキア王国・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 オラリオへの侵攻を指揮したが、レフィーヤの砲撃に驚愕して部下に指示を丸投げした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 山中で捕縛され、ギルド本部に連行された。

マリウス

アレスの副官を務める青年である。冷静に戦況を判断する。

・所属組織、地位や役職
 アレス・ファミリア・副官。ラキア王国・第一王子。

・物語内での具体的な行動や成果
 混乱するアレスに代わり、全軍の撤退と拠点の移動を指示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フレイヤ・ファミリア

フレイヤ

銀髪の美神である。アイズの魂に強い興味を示している。

・所属組織、地位や役職
 フレイヤ・ファミリア・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 ロキからの追及をはぐらかした。タンムズからイシュタルの計画を聞き出し、彼を保護した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 イシュタルからダイダロス・オーブを奪取し、手元に置いている。

オッタル

猪人の武人である。

・所属組織、地位や役職
 フレイヤ・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 フレイヤの側に控え、タンムズを狙う暗殺者を始末した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アレン

ファミリアの団員である。

・所属組織、地位や役職
 フレイヤ・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 オラリオの状況を調査するため、フレイヤに呼び出された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

イシュタル・ファミリア

イシュタル

フレイヤの打倒を目論んでいた女神である。

・所属組織、地位や役職
 イシュタル・ファミリア・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 闇派閥と結託し、人造迷宮と精霊の分身を用いて敵対派閥を討とうと企んでいた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 すでに天界へ送還されている。

タンムズ・ベリリ

褐色黒髪の青年である。

・所属組織、地位や役職
 イシュタル・ファミリア・副団長。

・物語内での具体的な行動や成果
 イシュタルの計画をフレイヤに打ち明けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フレイヤに魅了され、彼女の保護下にある。

レナ・タリー

思い込みが激しいアマゾネスの少女である。ベートに好意を寄せている。

・所属組織、地位や役職
 元イシュタル・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 ベートを女神の宮殿の隠し部屋へ案内し、鍵の捜索に協力した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アイシャ

戦闘娼婦たちを束ねるアマゾネスである。

・所属組織、地位や役職
 元イシュタル・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 ラキア王国の騎士たちを相手に男漁りをしているとレナから言及された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ギルド

ウラノス

ギルドの老神である。

・所属組織、地位や役職
 ギルド。

・物語内での具体的な行動や成果
 地下神殿において、ダンジョン内での神威解放を感知した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ロイマン

ギルドの管理機関に所属する人物である。

・所属組織、地位や役職
 ギルド・管理機関。

・物語内での具体的な行動や成果
 ロキ・ファミリアに対して遠征を急かすよう催促した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ローズ・ファネット

狼人の女性受付嬢である。事務的で率直な態度を取る。

・所属組織、地位や役職
 ギルド・受付嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去にアイズの冒険者登録を受理した。ランクアップの方法を尋ねるアイズの質問をはぐらかした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ソフィ

銀髪のエルフの女性受付嬢である。

・所属組織、地位や役職
 ギルド・受付嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 窓口でヘルメスからの誘いを冷たくあしらった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘルメス・ファミリア

ヘルメス

橙黄色の髪を持つ男神である。軽薄な態度を取るが、情報収集に長けている。

・所属組織、地位や役職
 ヘルメス・ファミリア・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 ロキからダイダロス・オーブの捜索を依頼された。過去にアイズへランクアップの条件を教えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アスフィ

ファミリアの団員である。

・所属組織、地位や役職
 ヘルメス・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 本拠を訪れたロキの唐突な依頼に立ち会った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルルネ

ファミリアの犬人の少女である。

・所属組織、地位や役職
 ヘルメス・ファミリア。

・物語内での具体的な行動や成果
 本拠を訪れたロキの突然の行動に狼狽した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘファイストス・ファミリア

ヘファイストス

右眼を眼帯で覆った紅髪紅眼の女神である。

・所属組織、地位や役職
 ヘファイストス・ファミリア・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 中央広場でロキたちと遭遇し、過去の椿の非礼をアイズに謝罪した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最大の鍛冶派閥を率いている。

椿・コルブランド

左眼を眼帯で覆った褐色の肌の女性である。

・所属組織、地位や役職
 ヘファイストス・ファミリア・鍛冶師。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去に雨宿り中のアイズと遭遇し、武器の製作依頼を断った。アイズ自身が折れる剣であると指摘した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ガレスと直接契約を結んでいる。

ガネーシャ・ファミリア

ガネーシャ

象の仮面を被った男神である。

・所属組織、地位や役職
 ガネーシャ・ファミリア・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 不安な住民を元気づけるため、豪華な山車に乗って中央広場を周回した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

デメテル・ファミリア

デメテル

蜂蜜色の髪を持つ女神である。

・所属組織、地位や役職
 デメテル・ファミリア・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 中央広場でロキたちと遭遇し、アイズを抱き締めて可愛がった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘスティア・ファミリア

ヘスティア

ベルを大切に思っている女神である。

・所属組織、地位や役職
 ヘスティア・ファミリア・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 ラキア軍に誘拐され、ベオル山地へ連れ去られた。エダスの村の祭りでベルと踊った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ベル・クラネル

心優しく謙虚な性格の少年である。

・所属組織、地位や役職
 ヘスティア・ファミリア。Lv.3。

・物語内での具体的な行動や成果
 街でレフィーヤと遭遇し、ヘスティアを探していることを伝えた。アイズとともにヘスティアの救出に向かい、遭難した村で看病を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 リトル・ルーキーとして街の人々から高い名声を得ている。

ゴブニュ・ファミリア

ゴブニュ

厳めしい面構えの老神である。

・所属組織、地位や役職
 ゴブニュ・ファミリア・主神。

・物語内での具体的な行動や成果
 アイズの最初の愛剣であるソード・エールを製作した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 質実剛健の鍛冶派閥を率いている。

タナトス・ファミリア / 闇派閥(イヴィルス)

タナトス

濃紫色の髪を持つ男神である。死神としての退廃的な本性を持つ。

・所属組織、地位や役職
 タナトス・ファミリア・主神。闇派閥。

・物語内での具体的な行動や成果
 ダンジョン内でアイズを闇派閥へ勧誘したが拒絶された。神威を解放して翼竜を召喚した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 神威を使用したことでオラリオの神々に存在を感知された。

ヴァレッタ・グレーデ

闇派閥の幹部筆頭である女性である。

・所属組織、地位や役職
 闇派閥・幹部筆頭。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去の暗黒期において、ギルド傘下の派閥や商会への襲撃を指揮した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 殺帝の異名を持つ。

オリヴァス・アクト

ヒューマンの男である。

・所属組織、地位や役職
 闇派閥・幹部。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去の暗黒期において、半壊した建物の上から抗争を見下ろして歓喜の声を上げていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白髪鬼の異名を持つ賞金首である。

豊穣の女主人

ミア

大柄なドワーフの女性である。

・所属組織、地位や役職
 豊穣の女主人・女将。元冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 ロキたちに宴会の場所を提供した。暴走したアイズの剣を白刃取りし、拳骨で沈めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ガレスやフィンたちと旧知の仲である。

アーニャ

猫人の女性店員である。

・所属組織、地位や役職
 豊穣の女主人・店員。

・物語内での具体的な行動や成果
 ミアから酒の用意を指示された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エダスの村

カーム

病を患っているヒューマンの村長である。

・所属組織、地位や役職
 エダスの村・村長。

・物語内での具体的な行動や成果
 遭難したアイズたちを邸宅に迎え入れた。自身の過去をアイズに語り、祭りの後に息を引き取った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 かつては女神の眷族であった。

リナ

気立てがよく親切なヒューマンの村娘である。

・所属組織、地位や役職
 エダスの村。カームの娘。

・物語内での具体的な行動や成果
 アイズに着替えを提供し、世話を焼いた。父の最期をアイズたちに伝えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

カームの息子達

リナの兄にあたるエルフや獣人の半亜人たちである。

・所属組織、地位や役職
 エダスの村。

・物語内での具体的な行動や成果
 食堂での騒動の際、青ざめた顔で片付けを行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

その他のキャラクター・集団

ディオニュソス

男神である。

・所属組織、地位や役職
 不明。

・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルメスに対して、ロキには気を付けるよう忠告していたことが言及された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

覆面の冒険者

アイズたちの同業者である。

・所属組織、地位や役職
 不明。

・物語内での具体的な行動や成果
 過去にダンジョンでレフィーヤたちを助けた。街中を巡回している姿が描写された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アイズの父親

アイズが英雄として憧れていた剣士である。

・所属組織、地位や役職
 不明。

・物語内での具体的な行動や成果
 アイズの過去の記憶の中で剣技を見せ、彼女に剣を差し出した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼の剣技はアイズの中に受け継がれている。

アイズの母親

精霊の風を持つ女性である。

・所属組織、地位や役職
 不明。

・物語内での具体的な行動や成果
 アイズの過去の記憶の中で精霊の風を与え、彼女を抱き締めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女が遺した風の力は、現在もアイズを守り続けている。

ソード・オラトリア 8レビュー
ソード・オラトリア 10レビュー

展開まとめ

プロローグ◆妖精の追憶

ラキア王国の侵攻と開戦

軍神アレスが率いるラキア王国は、国家そのものが【ファミリア】で構成された軍事国家であり、長年にわたり侵略を繰り返して勢力を拡大してきた。その王国が新たな軍事行動として迷宮都市オラリオへ出兵したことで、都市側は強制任務を発令し、複数の派閥を動員して迎撃にあたった。こうして侵略者と冒険者による戦争が開始されたが、戦況は開始直後から大きく偏ることとなった。

オラリオ側の圧倒的戦力差

戦場では【ロキ・ファミリア】を中心としたオラリオ側が圧倒的な戦力を発揮していた。高レベルの冒険者たちはラキア軍を一方的に蹂躙し、ガレスが単独で騎兵隊を壊滅させるなど、個々の戦力差がそのまま戦局に反映されていた。ダンジョンによって鍛えられた冒険者たちは質において他国を凌駕しており、レベル上限の低いラキア軍では対抗することすら困難であった。

レフィーヤの砲撃と戦場の崩壊

主戦場ではレフィーヤが広域魔法を発動し、敵の大部隊を一撃で壊滅させた。その威力は地形を抉り、兵士や騎馬を吹き飛ばすほどであり、戦場の様相を一変させた。加減を誤った攻撃により殲滅に近い結果を招いたものの、その圧倒的な火力は敵味方双方に強烈な印象を残した。高速移動と並行詠唱を駆使する彼女は「ピンク色の妖精」として恐れられ、ラキア軍の士気を著しく低下させた。

ラキア軍の混乱と撤退

予想を遥かに超える戦力差に直面したラキア軍は混乱し、本営でも動揺が広がった。軍神アレスは怒号を上げるが、第一王子マリウスが冷静に全軍撤退を指示し、戦線の崩壊を受け入れる形となった。結果として今回の侵攻もまた失敗に終わり、ラキア王国は過去と同様に敗北を重ねることとなった。

神々の倦怠と戦争の茶番化

戦場から離れた場所では、ロキやフレイヤといった主神たちが戦況を眺めていたが、戦いはあまりにも一方的であり、彼らにとっては退屈なものとなっていた。度重なるラキアの侵攻はすでに六度目であり、実力差が明白であるにもかかわらず繰り返される戦争は茶番として認識されていた。

リヴェリアの指摘とレフィーヤの未熟さ

一方でリヴェリアは、レフィーヤの魔法技術の高さを認めつつも、精神的な未熟さを見抜いていた。焦りによって自らを追い詰めている状態を指摘し、その危うさを懸念していた。ベートとの会話の中でその評価を示しつつ、戦場の中で成長途上にある彼女の姿を静かに見守っていた。

アイズの無垢と外界への視線

同じく戦場にいたアイズは、任務をこなしながらも外界の自然に興味を示していた。迷宮都市の外をほとんど知らない彼女にとって、風景や自然は新鮮なものであり、小鳥と戯れる様子には無垢な一面が表れていた。その姿を見たリヴェリアは、まだ教えていないことが多いと感じ、彼女の過去に思いを巡らせた。

アイズの過去と剣姫の誕生

リヴェリアの回想の中で、かつてのアイズは深い喪失に沈み、泣き続ける少女であった。愛する者を失い、救いも訪れない現実の中で、やがて誰も自分を助けてくれないと理解した瞬間、心は凍りついた。そして感情を失い、人形のような表情となった彼女は「力が欲しい」と願い、自ら剣を手に取った。この決意こそが、後に【剣姫】と呼ばれる存在の誕生であった。

一章◆陣営での一幕

戦闘後の疲労と仲間の労い

戦闘を終えた夜、レフィーヤは魔法の乱発による疲労でぐったりとしていた。精神力には余裕があったものの、心身の消耗は大きく、野営地でティオナやティオネから労いの言葉と食事を受け取ることとなった。オラリオ側とラキア側の陣が遠くに灯る中、彼女はフィンの指示のもと戦場を駆け回り、移動砲台として大きな戦果を上げていた。

評価と自己認識の乖離

仲間たちはレフィーヤの活躍を高く評価し、将来の第一級冒険者としての期待や、都市最強魔導士の後継としての存在価値を語った。しかしレフィーヤ自身は、魔力制御の乱れや味方を巻き込んだ可能性を反省し、任務を完璧に遂行できなかったことに不満を抱いていた。撃退を目的とした戦いにおいて精密な制御が求められていたこともあり、彼女の自己評価は厳しく、向上心として表れていた。

団員たちの賑やかなひととき

野営地では女性陣が談笑し、男性陣ではベートを中心に騒ぎが起きるなど、戦場とは思えない賑やかな空気が広がっていた。ベートは最近の出来事をきっかけに団員たちから慕われるようになっており、その態度とは裏腹に人気を集めていた。さらにレナが現れて騒動を引き起こし、場は一層混乱したが、やがて食事は終わり、それぞれが休息へと移っていった。

力への渇望と内面の変化

レフィーヤは仲間たちの後ろを歩きながら、自身の力不足について思いを巡らせていた。もしもっと力があれば救えた命があったのではないかという考えが離れず、失われた仲間の存在を思い返していた。その思考は過去に囚われたものではあったが、同時に強くなりたいという意志の表れでもあった。かつては「後釜」という言葉に萎縮していた彼女は、すでにそれを乗り越え、高みを見据えるようになっていた。

夜の研鑽と焦燥

夜が更けた後もレフィーヤは眠ることができず、テント内で魔法の書を開いて勉強を続けていた。仲間たちは休息を優先すべきだと考えていたが、彼女は何もせずにいることに耐えられず、強迫観念にも似た焦りから知識の習得に励んでいた。やがて周囲への配慮から外に出て、野営地の端で一人学習を続けることとなった。

アイズの姿と共感

外に出たレフィーヤは、見張りに立つアイズの姿を見かけた。アイズは敵陣の方向を見つめながらも、その視線は遠く別のものに向けられているように感じられた。レフィーヤはその姿に共感を覚えつつも、声をかけず再び学習に戻ろうとした。

リヴェリアの叱責と忠告

そこへ現れたリヴェリアは、無理をして勉強を続けるレフィーヤを咎め、休息の重要性を説いた。レフィーヤは自らの焦りと不安を正直に語り、力を得なければ再び何かを失うという恐怖を吐露した。リヴェリアはその思いを受け止めつつも、焦りが過ちを招くことを指摘し、冷静さを失わないよう諭した。

ロキの介入とアイズとの類似

そこへロキが現れ、騒動を起こしながらも場の空気を和らげた。彼女はレフィーヤの頑なさがかつてのアイズに似ていると指摘し、リヴェリアもそれを認めた。かつてのアイズもまた焦りから無茶を繰り返していた過去があり、現在の姿に至るまで矯正されてきたことが語られた。

過去への導入

その言葉に強く興味を抱いたレフィーヤは、アイズの過去について語るよう願い出た。リヴェリアはためらいながらも条件付きでそれを了承し、場所を移して語り始めた。九年前、冬の日にアイズと出会い保護することになった経緯が語られようとしていた。

追憶一章◆少女の始まり

眷族となる覚悟

女神は幼い少女に対し、神の眷族となることは後戻りのできない選択であると告げた。それでも少女は一切怯まず、早く刻めと求めた。その言葉と眼差しには、年齢に似つかわしくない強い覚悟が宿っていた。女神はその危うさを感じ取りながらも、背に神聖文字を刻んで恩恵を授け、少女を【ロキ・ファミリア】の一員とした。

ギルドでの冒険者登録

その後、リヴェリアはアイズを連れてギルド本部を訪れ、冒険者登録を行った。現れたアイズは七歳の少女であったが、その瞳には子供らしからぬ強い意志が宿っていた。彼女は神聖文字で記入しようとするなど特異な面を見せながらも、最低限の情報のみを記した登録書を提出し、正式に冒険者として受理された。

空白の過去と周囲の違和感

登録書には出身や経歴などが一切記されておらず、年齢以外の情報はほとんど空白であった。しかし迷宮都市では過去を問わない慣習があるため、ローズはそれ以上の追及を控えた。ただし、幼い外見に反して鋭い意志を宿したアイズの瞳は、明らかに異質なものとして周囲の印象に残った。

無謀な迷宮突入の阻止

登録を終えたアイズは、そのままダンジョンへ向かおうとしたが、リヴェリアに制止された。武器も防具も持たぬまま迷宮へ入るのは自殺行為だと諭され、まず装備を整えるよう命じられた。アイズは不服そうにしながらも従い、ギルド職員に連れられて装備の準備へ向かった。

ローズの懸念とリヴェリアの決意

アイズが去った後、ローズは少女の出自そのものよりも、その危うさに強い不安を抱いた。幼い子供に剣を持たせて迷宮へ向かわせることは早死にに直結すると見抜いていたからである。だがリヴェリアは、そんなことはさせないと断言し、そのために自分たちがいるのだと強く言い切った。

迷宮への第一歩

アイズはダンジョンに足を踏み入れた瞬間、幼い頃に迷い込んだ時の空気を思い出した。地下迷宮一階層という始まりの場所で、彼女は全身を強張らせながらも剣を握り、前へ進んだ。リヴェリアの助言すら耳に入らないほど意識を張り詰めていたが、その胸中には強くならなければならないという思いだけがあった。

最初の戦闘と異常な威力

やがて目の前に現れたゴブリンを前にすると、アイズはリヴェリアの制止を無視して飛び出した。未熟な振るい方であったにもかかわらず、その一撃はゴブリンを粉砕し、肉片へと変えた。恩恵を受けたばかりのLv.1冒険者とは思えぬ威力に、リヴェリアは言葉を失った。これがアイズの冒険者としての初戦であり、初勝利となった。

感慨なき勝利と暴走

アイズは最初の一匹を倒しても達成感や興奮を抱かず、それをただの通過点として受け止めた。そして叫び声と血の匂いに引かれて集まったモンスターたちに向かい、さらに斬りかかっていった。技術としては稚拙でありながら、その一撃一撃はゴブリンやコボルトを爆ぜさせ、周囲を鮮血と肉片で満たしていった。

危うい力の発露

アイズの戦い方は経験のない子供のものとは思えず、リヴェリアに薄ら寒いものを覚えさせた。最後のモンスターを倒し終えてもなお戦意は衰えず、戦い続けようとしたが、その時、あまりに力み過ぎていたため乳歯が抜け落ちた。凄惨な戦闘の最中に起きたその出来事だけが、彼女がまだ幼い子供に過ぎないことを強く浮かび上がらせた。

乳歯騒動に現れた幼さ

本拠へ戻った後、ロキはアイズが戦いの最中に乳歯を抜かしたことを知って大笑いした。アイズは恥ずかしさから必死に口を隠そうとしたが、ロキにくすぐられてついに歯の抜けた口元を見られてしまった。怒ったアイズはロキの脛に強烈な蹴りを叩き込み、そのまま執務室を飛び出していった。

初日の評価と異常性の確認

アイズが去った後、ロキたちは彼女の初日を振り返った。リヴェリアは、アイズが自分の危険を一切顧みず、力を得ることに執着し過ぎていると語った。ダンジョンから連れ帰れたのも、本人が限界を迎える前に武器の方が壊れたからに過ぎなかった。支給品の短剣は半日で使い潰されており、アイズの破壊力が通常の冒険者とは異なることが明白となった。

スキルの危険性と教育方針

リヴェリアたちは、アイズの異常な戦闘力の背景にスキルの存在があると判断した。しかしその力は、モンスターを倒し過ぎることでさらなる敵を呼び寄せ、自らを死地へ追いやる危険なものでもあった。そのためロキたちは、アイズに魔法の存在をまだ知らせないことを決めた。今の彼女に必要なのは新たな力ではなく、感情を制御し、戦いと向き合うための精神的な鍛錬であると結論づけた。

リヴェリアに託された役目

そのうえで、アイズの教育係を誰が務めるかが話し合われた。フィンやガレスにはそれぞれ事情があり、最終的にその役目はリヴェリアへ託されることになった。フィンは、アイズはすでに【ファミリア】の一員であり、大人たちが責任と親愛をもって接しなければならないと告げた。リヴェリアは戸惑いながらもそれを受け入れたが、母親扱いされることには最後まで抵抗を見せた。

リヴェリアの私室で始まった座学

翌日、アイズは朝食後に半ば強制的にリヴェリアの私室へ連れてこられた。木造の品や花々、書物や魔道具が整然と並ぶその部屋で、リヴェリアは迷宮知識やスキル、魔法、冒険者としての心構えを教えると宣言し、多数の分厚い本をアイズの前に積み上げた。だがアイズは勉強を拒み、戦わせてほしいと訴えた。強くなるためには戦うことこそが近道だと信じていたからである。

反発と拳骨

リヴェリアは、戦いを知らずして強くはなれず、力に頼るだけではいずれ自滅すると厳しく言い聞かせた。しかしアイズにはその言葉が理解できず、押し付けられる勉強への苛立ちばかりが募った。やがてアイズはリヴェリアをおばさんと呼んで反抗し、その瞬間、リヴェリアの拳骨が炸裂した。彼女は年長者への敬意を教える必要があると冷徹に告げ、アイズは初めて本格的な恐怖を刻み込まれた。

座学からの逃亡

それでも翌日、アイズは早々に座学から逃げ出した。本拠に団員が少ない状況を利用し、塔の間を抜けて無人の書庫へ潜り込んだのである。分厚い本への拒絶感は一層強まり、勉強など意味がない、そんなことをしている暇はないという反発だけが胸に残っていた。アイズにとって必要なのは、悲願を果たすための力と、モンスターを倒すための武器だけであった。

フィンとの遭遇

書庫の隅で膝を抱えていたアイズの前に、いつの間にかフィンが現れた。彼は、アイズがリヴェリアから逃げるのに必死だったため見つけやすかったと穏やかに語り、リヴェリアには居場所を知らせていないと付け加えた。そして座学がそんなに嫌になったのかと尋ねると、アイズは強くならなければならないのに勉強などしている暇はない、勉強には意味がないと胸の内をそのままぶつけた。

中庭での模擬戦

それを受けてフィンは、ならば実戦で示そうと、中庭で自ら模擬戦の相手になることを提案した。アイズは訓練用の短剣を手にし、木の棒しか持たないフィンへ挑みかかったが、彼は余裕を崩さず、正面からの突撃や乱れた斬撃をことごとくかわしていった。特別な技を誇示することもなく、円を描くように淡々と動くだけで、アイズの攻撃は一度も届かなかった。

力任せの限界

何度挑んでも通じず、ついには転ばされ、反撃を受け、最後には吹き飛ばされたアイズに対し、フィンは彼女の戦い方がスキルの力に頼り切っていることを指摘した。力の上辺が剥がれれば何も残らないこと、第一級冒険者たちは能力と技術を分けて見ていることを教えたうえで、アイズに足りないのは技術と駆け引き、そして圧倒的な知識であると断じた。このままダンジョンへ向かえば、いずれ確実に死ぬとまで言い切った。

リヴェリアとの和解

そこへ、模擬戦を見守っていたリヴェリアが姿を現した。フィンは、自分たちも最初から強かったわけではなく、鍛錬と学びを積み重ねてここまで来たのだと語り、アイズにリヴェリアの手を取るよう促した。アイズは躊躇しながらもその手を取り、立ち上がらせてもらった。フィンは、アイズの悲願は自分たち以上に険しく、それを果たすには自分たち以上に励まなければならないと告げた。模擬戦を通じて自分の未熟さと世界の広さを知ったアイズは、その言葉を受け止めた。

謝罪と学ぶ決意

さらにフィンは、体術の稽古は自分やガレスが付き合うから、リヴェリアの座学と合わせて心も体も強くなってほしいと伝えた。リヴェリアもまた、自分が熱くなり過ぎていたと認め、至らなかったことを詫びた。その真摯さと戸惑い、そして親が子に向けるような心遣いに触れたアイズは、自分も謝罪し、勉強を教えてほしいと頭を下げた。こうして二人の間には、確かな歩み寄りが生まれた。

努力の始まり

その後の早朝、アイズは静まり返った中庭に一人で立ち、剣を手に空を見上げていた。リヴェリアたちの強さの理由が少しだけ理解できた気がしていたのである。彼女たちは多くのものを積み重ねてきたのであり、それはかつて自分を守ってくれた父たちも同じであった。悲願を果たすためには彼ら以上の努力と決意が必要だと悟ったアイズは、剣を抜き、素振りを始めた。こうして少女は、遠い未来まで続く不断の努力の第一歩を踏み出した。

二章◆束の間の静穏

戦線離脱とオラリオ帰還

開戦から五日目、フィンはラキア王国軍が被害を出しながらも決定的な攻勢に出ず、オラリオの戦力を都市外に釘付けにしようとしていると見抜いた。その狙いは都市内部にあると判断され、【ロキ・ファミリア】は団旗だけを残して密かに戦場を離脱した。そしてその日の夕方にはオラリオへ帰還し、フィンは密偵への対応、「鍵」の捜索継続、さらに団員たちへの休息を命じた。

ガレスによる地下経路の発見

本隊と別行動を取っていたガレスは、数名の団員を率いて都市周辺の調査を進めた。その結果、オラリオ南方の岩場にある洞窟の奥で、天然の岩肌から人工の石材へと変わる通路を発見した。それは人造迷宮と都市外を結ぶ地下経路であり、食人花や物資の搬出入のみならず、密偵や無法者の侵入経路としても使われていた可能性が示された。ガレスは鉱夫としての経験を生かしてこの場所を見つけ出し、即座に通路の爆破を命じて主要補給路の一つを断った。

歓楽街での鍵捜索と空振り

その夜、ベートはレナを伴い、元【イシュタル・ファミリア】の本拠であった女神の宮殿を捜索した。目的は人造迷宮の「鍵」であるダイダロス・オーブの所在を探ることであったが、レナの記憶にあった隠し部屋の小箱は既に空となっており、目的の品は見つからなかった。ティオナやティオネらも別の部屋を調べたが成果はなく、捜索は空振りに終わった。

レナの妄想と捜索隊の混乱

手掛かりを失った捜索隊の中で、レナはベートが自分のために敵討ちを誓ったのだと思い込み、それを愛情の証と受け取ってはしゃぎ始めた。ベートは激怒して鉄拳を見舞い、ティオネも嫉妬混じりに殺意を露わにしたため、その場はたちまち混沌とした空気に包まれた。周囲の団員たちは呆れつつも、結局有効な情報を得られなかった現実を受け入れるしかなかった。

ダンジョン内での連絡路発見

一方、アイズとレフィーヤたちはダンジョン一階層東端の大森林を抜けた先で調査を行っていた。そこはかつて闇派閥残党を追った場所であり、ベルや覆面の冒険者を巻き込んだ戦闘が起きた現場でもあった。アイズは地面の不自然な踏み固められ方を見抜き、岩壁を砕いて内部を調べるよう指示した。レフィーヤの砲撃によって現れたのは巨大な金属製の扉であり、ダンジョンと人造迷宮を結ぶ連絡路の存在がついに明らかになった。

監視の目を見抜いた撤収判断

この発見により、人造迷宮が少なくとも一階層、中層の深度にまで及んでいることが確実となった。しかしアイズは、扉の脇にある悪魔像の瞳に蒼白い光が潜んでいることから、敵もすでにこちらの行動を把握していると判断した。そのため見張りを置く案は退けられ、中途半端な人数を残せば刺客に襲われる危険があると考えられた。団員たちはフィンへの報告を優先しつつ、周辺の追加調査を進めることとなった。

レフィーヤの回想と揺れる妄想

調査の合間、レフィーヤは野営地でリヴェリアから聞かされたアイズの過去を思い返していた。今の凛然としたアイズからは想像し難い幼少期の姿を反芻し、その流れで乳歯の抜けた頃のアイズを見てみたかったなどと妄想を膨らませてしまった。表情が目まぐるしく変わる様子は周囲にも気付かれるほどであり、アイズ本人から声をかけられるとレフィーヤは激しく動揺した。

アイズの否定と小さな微笑み

焦ったレフィーヤは、昔のアイズと自分が似ているとリヴェリアに言われたことを思わず口にしてしまった。するとアイズはレフィーヤに近づき、手や髪、装備まで確かめたうえで、彼女は自分よりずっとしっかりしており、昔の自分とは似ていないと告げた。そしてアイズは小さく微笑んだ。その笑みは、レフィーヤに幼い頃のアイズを想起させるほど自然で柔らかなものであり、彼女は返す言葉を失ったまま団員たちとその場を離れた。

ロキとフレイヤの駆け引き

眷族たちが各地で動く中、ロキもまた独自に動いていた。戦場でフレイヤに接触したロキは、イシュタルの副団長タンムズの所在を問い質した。歓楽街の抗争の最中に行方をくらませたタンムズが、人造迷宮の「鍵」を持ち出した可能性を睨んでいたためである。フレイヤは明言を避けつつも、自分の目に適った者の居場所を簡単に明かすことはないと示唆し、実質的に匿っていることを匂わせた。ロキはそれを察しつつ、放置すれば取り返しのつかないことになると警告してその場を去った。

フレイヤによるタンムズ保護

その後フレイヤは、自陣の天幕でタンムズから事情を聞き出していた。タンムズは、イシュタルがフレイヤ打倒のために闇派閥残党と手を組み、人造迷宮へ誘い込んだうえで精霊の分身を用いて【猛者】たちを討とうとしていたと明かした。フレイヤの手元には、イシュタル壊滅の際に持ち出されたダイダロス・オーブがあった。当初は単なる興味でタンムズを本拠へ連れ帰ったフレイヤであったが、その後彼を狙った刺客が現れたことで事態の重要性を理解し、彼を守るために刺客を排除し、情報の漏洩も防いでいた。

フレイヤの独自調査開始

タンムズの証言と鍵の存在から、フレイヤはオラリオの水面下で自分の知らない大きな動きが進んでいると判断した。しかしロキに接触すれば必ず鍵の引き渡しを求められると考え、直接協力する道は選ばなかった。むしろこの鍵はまだ自分の手元に置いておくべきだという直感を優先し、都市で何が起きているのかを探るため、アレンを呼んで調査へ向かわせることを決めた。

ロキとヘルメスの取引

オラリオへ戻ったロキは、【ヘルメス・ファミリア】の本拠を訪れ、ダイダロス・オーブの捜索を依頼した。ヘルメスは同盟相手として事情の説明を求めたが、ロキは明確な情報を渡さないまま、逆にヘルメスがフレイヤを動かしてイシュタルを潰したことを見抜き、ウラノスの隠し事も含めて疑念を突きつけた。最終的にロキは、鍵を見つけて自分のもとに持ってくれば情報を共有すると交換条件を提示し、ヘルメスは手掛かりの乏しさに難色を示しつつも依頼を受けた。

膠着する包囲網と王国側の収束

日々が過ぎる中で、【ロキ・ファミリア】による人造迷宮包囲網は着実に整っていった。怪人たちと闇派閥残党を追い詰めている実感はあったものの、決定打となる突破口は開かず、時間だけが無慈悲に過ぎていった。それは敵を利するだけでなく、迷宮都市崩壊の危険を高めるものでもあり、レフィーヤたちは歯痒さを募らせた。他方で王国側の件は収束へ向かい、フィンの手回しによってラキアの密偵が拿捕されたとの報が入った。表向きは【ヘファイストス・ファミリア】の手柄とされたが、団員たちはフィンの手腕に感嘆し、ようやく対闇派閥に専念できる状況が整いつつあった。

街で高まるベルの評判

昼前の街路で買い出しと情報収集を進めていたレフィーヤの耳に入ってきたのは、密偵騒ぎではなく【リトル・ルーキー】ベル・クラネルの武勲であった。戦争遊戯での活躍に加え、階層主を倒したという話まで広まり、街の人々は彼を新たな英雄候補として称賛していた。必死にあがいている自分をよそに、少年が軽々と先へ進んでいくように感じられたレフィーヤは、悔しさと嫉妬を覚えた。だが同時に、アイズがなぜベルの鍛錬を引き受けたのかも理解できた気がし、自分もその成長の秘訣を聞いてみようと思い始めた。

ベルとの遭遇と協力の申し出

その矢先、レフィーヤは街角でベルと偶然出会った。ベルは本拠を飛び出した主神ヘスティアを探しており、街中を走り回っていた。事情を聞いたレフィーヤは、彼の顔色や曇った表情から単なる喧嘩では済まない悩みを抱えていることを察した。嫌いではあるが、困っている相手を助ける程度の心はあると告げ、ヘスティアを見かけたら知らせると約束した。内心では見返りとして成長の秘訣を聞き出すつもりであったが、真っ直ぐな感謝を向けられると頬を熱くしつつ、その感情を隠して別行動に移った。

都市に走る異変の気配

レフィーヤは鍵の情報も兼ねてヘスティアの行方を追い、人通りの多い通りで聞き込みを続けていた。やがて街の空気が急に慌ただしく変わり、商人や冒険者、ギルド職員たちが一斉に北へ向かい始めた。ただならぬ騒ぎを感じたところへ、武装したティオナとティオネが現れ、王国の特攻が北門に現れ、その場にいたオラリオの女神が攫われたと告げた。さらには攫われたのがヘスティアであり、すでに出発した救助隊の構成も異例であると知ったレフィーヤは、衝撃のあまり絶叫した。

記録書に刻まれたアイズの足跡

一方、リヴェリアは『黄昏の館』の執務室で、フィンが記し続けてきた【ロキ・ファミリア】の記録書を読み返していた。そこには派閥の到達階層や団員数、各団員の成長や活躍が細かく残されており、その中でも彼女はアイズの足跡を一つひとつ辿っていた。危うさを秘めていること、護衛が必要だったこと、剣技に光るものがあること、半年で単独十階層へ至ったことなどを目にしながら、リヴェリアは自然に笑みをこぼした。

髪留めと短剣が呼び起こす追憶

やがてリヴェリアは髪留めを外し、手の中のそれを見下ろした。そこへガレスが現れ、傷だらけの短剣を磨くため『霊峰の浄水』を探していると告げた。その短剣はなお衰えぬ輝きを持っており、リヴェリアにも見覚えのある品であった。ガレスは最近ふと思い立ってその剣を磨いてやろうと思ったのだと語り、リヴェリアもまた、レフィーヤにアイズの昔話をしたことをきっかけに、当時を振り返るようになったと明かした。

保護者としての感傷

二人は、戦いが激しくなっている今だからこそ過去を振り返ってしまうのかもしれないと語り合った。ガレスは、自分たちの方が子離れできていないのではないかと冗談めかして口にし、アイズもすでに一端の冒険者であり、以前ほど手がかからなくなったはずだと続けた。しかしその言葉は最後まで言い切られることはなかった。

アイズ出立の報と不穏な空模様

そこへアリシアが血相を変えて飛び込み、アイズが王国の別動隊を追うために【リトル・ルーキー】とともに都市の外へ向かい、『ベオル山地』へ入ったと報告した。リヴェリアとガレスはすぐに窓の外へ目を向け、北方の山脈を覆う灰色の雲と稲光を伴う雷鳴を確認した。その悪天候に、二人は強い不安を覚えた。

再び動き出す保護者たち

予断を許さぬ状況と判断したリヴェリアたちは、すぐにフィンたちのもとへ向かうため執務室を出た。足早に廊下を進みながら、リヴェリアは小さく嘆息し、やはりまだ手がかかると漏らした。その言葉には、アイズを一人前と認めながらも、なお案じずにはいられない保護者としての思いが滲んでいた。

追憶二章◆汝は剣なりや?

急成長するアイズへの懸念

冒険者となって半年が経ち、アイズの【ステイタス】は著しい成長を示していた。リヴェリアとフィンはその伸びを認めつつも、素直には喜べなかった。アイズは鍛錬にも座学にも意欲的で、心の制御も以前より身につけていたが、その一方で自分の体を顧みず、強くなること以外に関心を向けていなかったからである。ロキもまた、このままではいずれ転ぶと感じており、下級冒険者たちの間でアイズが人形姫と呼ばれていることを口にした。

半年で形になった戦闘型

その頃アイズは、ガレスとともにダンジョンを探索していた。装備は支給品より上等なものへ変わり、戦い方も半年前とは見違えるほど洗練されていた。以前のような力任せの過剰殺戮ではなく、敵の弱点や魔石を的確に狙い、真正面から先手を取って速く鋭い斬撃を重ねる戦闘型を身につけつつあった。それは確かに、アイズ自身の戦い方として形を成し始めていた。

防御を捨てた危うい戦い

しかしその成長は、新たな問題も生んでいた。アイズは効率を優先するあまり防御を軽視し、頬から血を流し、防具を裂かれても、倒すことだけを考えて次の斬撃へ移っていた。武器も短期間で何本も使い潰しており、体も道具も労わらない戦い方が常態化していた。ガレスはそれを苦々しく見つめ、もっと自分の体も武器も大切にしなければ、いずれその代償を支払うことになると諭したが、アイズはモンスターに勝っているから平気だとしか考えていなかった。

ガレスとの距離感とアイズの本音

アイズは、フィンやリヴェリアよりもガレスとの距離感を好んでいた。彼の教えは豪快で単純であり、必要以上に小言を重ねないからである。痛い目も学びになると考えているらしいガレスの態度は、説教が増えつつあったリヴェリアへの反発を抱えていたアイズにとって都合が良かった。だからこそアイズは、なるべくガレスと迷宮探索に出たがったが、ガレスは決して無理を許さず、限界を超える前に必ず引き返させていた。

十階層への欲求と深まる反発

帰路の途中でも、アイズは鎧がきつくなってきたことや、壊れない特注の武器が欲しいこと、さらに十階層まで行かせてほしいことを次々に口にした。しかしガレスは、防具の新調こそ考えたものの、武器の扱いも未熟であり、十階層行きもリヴェリアたちの許可が必要だとして却下した。すでに十階層へ二度到達していたアイズにとって、その制限は不満でしかなく、近頃の彼女はリヴェリアたちへの反発を強めていた。ガレスはそんな様子を見ながらも、彼女が彼らの前ではまだ年相応の顔を見せること、そして最近ますますやつれていることを気にかけていた。

連絡路前での救援戦

その時、迷宮の奥から複数の悲鳴が響いた。アイズとガレスが急行すると、六階層の連絡路前で複数のパーティがキラーアントの大群に追い詰められていた。仕留め損ねた冒険者が怪物進呈を引き起こし、仲間を呼び寄せるフェロモンによって事態が拡大していたのである。正規ルートを塞がれて逃げ場を失った冒険者たちを前に、ガレスが状況を見極めようとした矢先、アイズは制止を振り切って飛び出した。

心身制御を破った殺戮

アイズは助けを求める冒険者たちを救うため、普段抑えていた心身制御を破り、自らの能力を十全に解放した。無感情な顔のまま金の瞳に獰猛な殺意を宿し、死神の鎌のように剣を振るってキラーアントを次々と屠っていった。傷を負い血を流しながらも止まらず、凄烈な剣技と暴力的な攻勢で群れ全体を殲滅へ追い込んだ。その姿を目の当たりにした冒険者たちは言葉を失い、人形姫ではなく戦姫と呼ぶ者まで現れた。

戦いの果てに残った凶気

戦いが終わった時、そこにはモンスターの屍が積み上がり、その中心に血まみれのアイズが立っていた。ダンジョンの一角は荒野のような静寂に包まれ、彼女の凶気の一端に触れた冒険者たちは立ち尽くすことしかできなかった。やがてアイズが天井を見上げたその時、使っていた剣にも限界が訪れ、亀裂の入った剣身は銀色の破片をこぼしながら砕け散った。

剣を求める訴えとリヴェリアの激怒

ダンジョンから戻ったアイズは、執務室に呼び出されるなり丈夫な剣が欲しいと訴えた。すでに顛末を聞いていたリヴェリアは、最近の無理は目に余ると激怒し、スキルへの依存や無茶な戦い方を厳しく叱責した。だがアイズは勉強も鍛錬もこなしていると反論し、それでもなお剣の話を優先したため、リヴェリアの怒りはさらに強まった。ついにはうるさいエルフとまで言い放ち、両者の溝は深まっていった。

酷使された身体への指摘

怒りの中でリヴェリアは、アイズが鍛錬ばかりに時間を費やし、食事も睡眠も削っている現状を突きつけた。細すぎる腕、こけた頬、荒れた髪は、その異常な修練の積み重ねを物語っていた。それでもアイズは、自分は戦えるから平気だと考え、それよりも壊れない武器が欲しいと繰り返した。リヴェリアが悲しみを滲ませていたことにも気付かず、アイズは団長であるフィンにまで視線を向けた。

フィンの拒絶とすれ違い

アイズは、自分の貯金を全部使ってもよいから強い武器を与えてほしいと求めた。しかしフィンもまた、今のアイズに強力な武器は与えられないとはっきり告げた。自分のことだけでなく、いつも想ってくれている他人の気持ちにまで目が届かないほど視野が狭くなっているからである。その意味を十分に理解できないまま、アイズは願いを分かってもらえないことへの苛立ちを募らせ、執務室を飛び出していった。残されたフィンとガレスは、その様子を親の心子知らずと評した。

家出同然の飛び出しと武器探し

本拠を飛び出したアイズは、北西のメインストリート、通称冒険者通りへ向かった。フィンたちが武器を与えてくれないなら、自分で探すしかないと考えたのである。鍛冶派閥に特注品を頼むのは現実的ではないと理解していたため、掘り出し物を見つける方針に切り替えていた。そこには、大人たちに許してもらえず、自分だけの特別な剣を欲しがって意地になっている幼さもあった。

雨宿りで出会った椿

しかし街へ向かう途中、突然の強い雨に見舞われ、アイズは軒下で雨宿りをすることになった。そこへ現れたのが、褐色の肌と眼帯を持つ【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師、椿であった。椿はアイズがガレスのところの小娘だと見抜き、鍛冶大派閥の一員であることを明かした。アイズはその相手なら自分の求める剣を作ってくれるかもしれないと期待し、真っ直ぐに剣を作ってほしいと頼み込んだ。

願いの中にある危うさ

椿はアイズに、なぜ自分に頼むのか、なぜ剣が欲しいのか、そして剣を手に入れてどうするのかと順に問いかけた。アイズは、今まで使う剣がすべて壊れてしまうから壊れない剣が欲しいこと、そして強くなりたいことを口下手に答えた。その間、椿は痩せた手足や荒れた髪、鬼気迫る瞳を静かに見つめていた。

剣とは何かという拒絶

問いの末に、椿は依頼を断った。理由を明確には語らず、気が進まない、気に食わないからだと言い放ったうえで、壊れない剣が欲しいという願いに対し、まだ折れていない剣ならそこにあるだろうと告げた。そして椿が指差したのは武器ではなく、アイズ自身であった。今のアイズにはその意味が理解できず、自分が剣だと言われたことも、いつか折れる剣だと示唆されたことも、ただ鋭く胸に突き刺さるばかりであった。

言葉だけを残して去った鍛冶師

雨が上がると、椿は武器が欲しいなら他を当たれと言い残して去っていった。後には、まだ折れていない剣とは何か、自分が剣だというのはどういう意味なのかという問いだけが残された。アイズはその場から動けず、椿の言葉が心に深く食い込んだまま立ち尽くしていた。

帰還後にこぼれた戸惑い

空が闇に包まれる頃、アイズはうつむいたまま本拠へ戻ってきた。様子の異変に気付いたガレスに対し、彼女は椿に会い、自分のことを剣だと言われたと打ち明けた。人ではなく武器であり、いつか折れる剣なのではないかという不安を抱え、アイズは自分自身を見失いかけていた。ガレスは事情を察し、まずは体を温め、その後自分の部屋へ来るよう静かに告げた。

ガレスの部屋で始まった手入れ

浴場で体を温め、部屋着に着替えたアイズは、迷いながらもガレスの私室を訪れた。そこはリヴェリアの部屋とは対照的に、大型武器や盾が並ぶ武骨な空間であった。ガレスは寝台の上に武器や手拭い、羊毛などを広げており、アイズに武器の手入れを教えると言い出した。戸惑いながらも、アイズは促されるまま短剣を手に取り、彼の指示に従って作業を始めた。

武器は半身であり、自身でもあるという教え

黙々と作業を続ける中で、ガレスは武器というものは頑丈そうに見えて実際は繊細であり、きちんと手入れをしなければ錆び、切れ味も鈍ると語った。そして武器は使い手の半身であり、それを労わることは冒険者自身にも同じように当てはまると告げた。傷だらけの短剣は、まるで今のアイズ自身のようであり、彼女の手足や髪や傷跡と重なって見えた。

折れるだけではない剣の在り方

ガレスは、気をつかわなければ武器はすり減って最後には折れるが、しっかり手入れをすれば再び輝きを取り戻せると教えた。砕けたとしても、破片を集めれば生まれ変わることもできるのだと語り、折れるだけが剣の末路ではないと示した。そして武器も自分自身も大切にしてこそ、初めて一端の冒険者だと優しく言い聞かせた。アイズはその言葉と温かな手つきに触れ、黙って剣を磨き続けた。

生活の変化と剣への向き合い方

その日を境に、アイズは夜ごと月明かりの下で剣の手入れをするようになった。傷付いた剣身をなぞりながら、寝る前に必ず武器を磨き続けた。また、強い武器を欲しいとねだることもなくなり、ガレスが選ぶ得物を体の延長のように使うようになった。食事も三食きちんと取るようになり、嫌いな人参すら口にするようになったことで、先達の団員たちはその変化に驚きつつ、温かく見守った。

リヴェリアとの新たな距離

やがてリヴェリアも、アイズの髪の手入れを自分にさせてほしいと申し出た。アイズがそれを受け入れると、最初はぎこちなかったものの、日を重ねるにつれて櫛を入れる手つきは優しく滑らかなものへと変わっていった。髪を梳かす時間の中で二人の間には穏やかな空気が生まれ、リヴェリアの表情にもこれまでにない柔らかさが宿るようになった。やがてリヴェリアの翡翠の髪は背中まで伸び、その金の髪留めはアイズが用意したものとなった。並ぶ後ろ姿は姉妹、あるいは母子のように見えるほど似ていった。

特注品を許されたアイズ

そうした変化を見届けたフィンたちは、ついにアイズに武器を作ると告げた。最初はその言葉をうまく飲み込めなかったアイズであったが、今の彼女なら大丈夫だとフィンやガレスに認められたのである。ロキは大いに盛り上がったが、余計なことをするなとリヴェリアに制止された。その後アイズは、武器の完成を待ちわびて緊張と期待を募らせ、眠れない夜を過ごすようになった。

最初の愛剣《ソード・エール》

一週間後、アイズはリヴェリアとガレスに付き添われて【ゴブニュ・ファミリア】の工房を訪れた。そこで鍛冶神ゴブニュのもと、新たな剣を受け取ることとなった。鞘から抜かれたその剣は、これまでの短剣より長く、今のアイズにとっては長剣のように感じられる代物であった。うっすらと波紋が走る蒼みがかった美しい剣身に、アイズは言葉を失って見惚れた。そしてその剣は《ソード・エール》と名付けられ、天井を衝く最初の愛剣として、アイズの手の中で静かに輝きを放った。

三章◆北の山から

遭難と村での保護

アイズは暖炉のある室内で濡れた体を拭きながら、自身の置かれた状況に困惑していた。王国による女神誘拐を受け、ヘスティア救出のためベルと共に出撃したものの、「ベオル山地」での戦闘の最中にヘスティアが谷底へ落下し、二人も後を追って飛び降りた結果、遭難してしまったのである。険しい地形と豪雨により迷い込んだ中、彼女たちは「エダスの村」の住人に発見され、村へと保護された。

村娘リナとの交流と衣装の変化

村長の娘リナの世話を受け、アイズは村娘の衣装に着替えることになった。戦闘衣とは異なる可愛らしい服装に戸惑いながらも、彼女は礼を述べた。村長カームは体調が優れない様子ながらも親切に対応し、ヘスティアが無事であること、現在はベルが看病していることを伝えた。温かなもてなしを受けたアイズは、感謝を重ねながら客間へと向かった。

ヘスティアの容態と今後の方針

客間では、寝台で休むヘスティアと、その傍で付き添うベルの姿があった。神の力を封じられているヘスティアは衰弱しており、回復には時間を要する状況であった。敵である王国軍の所在も不明であるため、アイズとベルは三人で行動する方針を決め、しばらく村に滞在することを選択した。アイズは仲間たちやオラリオの状況を案じつつも、ここでの判断が最善であると認識していた。

村の背景と新たな世界の認識

滞在中、アイズはリナの手伝いをしながら村について話を聞いた。「エダスの村」は古代に遡る歴史を持ち、かつてはエルフの里であったが、現在は様々な事情を抱えた者たちが集まる隠れ里となっていた。行き場を失った者たちを受け入れてきた背景を知り、アイズはこれまで知らなかった世界の広がりを実感した。ダンジョンと戦闘にのみ生きてきた自分の視野の狭さに、静かに気付かされることとなった。

ヘスティアの回復とベルの看病

ヘスティアは徐々に回復し、言葉を交わせるまでに持ち直していた。ベルは付きっきりで看病を続けており、その献身的な姿にアイズは感心する。彼の行動には家族を思わせる温かさがあり、単なる主神と眷族以上の関係性が垣間見えた。アイズはリヴェリアとの記憶を重ね合わせながら、かつて自分にも似たような時間があったのではないかと感じた。

ベルの自責と対話の試み

ベルは自らの行動が原因でヘスティアが危険に晒されたと考え、強い自責の念を抱いていた。アイズはそれを否定しつつも、彼の内面にある悩みを察し、拙い言葉ながら相談に乗ろうとした。しかしベルは戸惑いながら拒み、二人のやり取りは次第に押し問答の様相を呈した。距離を詰めて問い詰めるアイズに対し、ベルは慌てふためきながら抵抗することとなった。

騒動とヘスティアの誤解

その最中、目を覚ましたヘスティアは、アイズとベルが至近距離で向き合う姿を目撃し、誤解から激しく動揺した。止めに入ろうとした瞬間、バランスを崩した二人がそのまま倒れ込み、ヘスティアの上に覆いかぶさる形となった。結果として、村長宅に女神の絶叫が響き渡り、騒動は一層混乱を極めることとなった。

夕餉の席に残る気まずさ

ヘスティアを巻き込んだ騒動の後、アイズとベルは村長カームから、もう少し女神を労わるよう気の毒そうに注意を受けた。二人は申し訳なさそうに身を縮め、その場を収めたリナの声で夕餉が始まった。食卓には山草や川魚を中心とした料理が並び、カームとリナ、さらに三人の息子たちを含めた賑やかな席となったが、アイズとベルの間にはなお気まずい空気が残っていた。ベルが謝ろうとしても、アイズはまだ機嫌を直せずそっぽを向き、その様子を見た村人たちは微笑ましく受け止めていた。

杯の誤飲と突然の暗転

ベルとの距離感に迷いながら考え込んでいたアイズは、手近にあった杯を自分のものと思い込んで口にした。だがそれはカームの息子の酒の杯であり、口をつけた瞬間、アイズの意識は暗転した。直後に浴びせられた水で我に返ったアイズは、自分がびしょ濡れになっていることと、目の前でベルがぼろぼろの姿で床に倒れていることに気付いた。食堂はひっくり返った机や椅子で荒れ果てており、カームも腰を抜かして失神しかけていたため、アイズは一瞬で謎の襲撃があったと判断した。

見えない敵への誤認

アイズは状況を把握しきれないまま、右手に握っていた血まみれの木の棒を構え、見えない敵を警戒した。ベルの手に黒いナイフが握られていたことから、彼が必死に抵抗したのだと推測し、第二級冒険者を打ちのめせるほどの刺客が潜んでいると考えて警戒を強めた。しかしアイズは、床にこぼれた杯の中身が酒であることにも、自分が誤ってそれを口にしていたことにも気付かなかった。さらに周囲の者たちの怯えた視線が自分自身に向けられていることにも、まるで思い至らなかった。

リナの制止と後始末

その様子を見たリナは、疲労をにじませながらも、アイズにはベルを見ていてほしいと告げた。敵の存在を訴えるアイズに対しても、妙な真似をしないこと、特に床にこぼれた酒には絶対に触れないことを強く念押しした。リナと息子たちは悲しい事件でもあったかのような顔で食堂の後始末を始め、カームも意識を取り戻した。アイズはなお状況に納得できなかったが、結局それ以上の異変は起こらず、言われた通りベルの手当てに回ることになった。

ベルの看病とアイズの決意

アイズは回復薬でベルの傷を癒やし、これまでの気まずさを忘れて献身的に看病した。その後、何となく寂しさを覚えたアイズはベルを膝枕し、白い髪を撫で続けた。ベルは苦しげに呻いていたが、アイズはそれすら見えない敵に襲われた後遺症のように受け取っていた。こうしてアイズは、自分がベルとヘスティアを守らねばならないと強く思い込み、この日以降、雨が止んでも邸宅から一歩も出ずに二人の警護を続けるようになった。一方でリナたちは、何故かアイズを酒に近付けまいと固く決めるのだった。

追憶三章◆在りし日の神々と人々

暗黒期のオラリオと闇派閥の跳梁

アイズが【ロキ・ファミリア】に入団した当時のオラリオは、三大冒険者依頼の失敗と最強を誇った二大派閥の凋落をきっかけに、秩序が崩れた暗黒期にあった。街では闇派閥が勢力を拡大し、白髪鬼オリヴァスや殺帝ヴァレッタといった幹部たちが、建物や商会、ギルド傘下の派閥を狙った襲撃を繰り返していた。迷宮都市では、正義に与する冒険者たちと悪の勢力との戦いが日常の一部となっていた。

出撃を拒まれたアイズの疎外感

闇派閥の事件を受けて【ロキ・ファミリア】でも出動準備が進められたが、アイズが同行を申し出ても、リヴェリアはまだ早いとして強く退けた。対人戦に発展しかねない危険な現場へは、彼女を連れて行かないと決めていたからである。アイズは館に残され、素振りをして過ごすことになった。表面上は淡々としていたが、その背中には仲間外れにされた寂しさや不満が滲んでおり、ロキはそれを見抜いていた。

鍛錬の中に現れる剣技の片鱗

翌日もアイズは中庭で《ソード・エール》を振り続けていた。特注の愛剣は彼女の手によく馴染み、その重さにも耐えながら鋭い斬撃を繰り出していた。ロキはその剣技を見守り、教わった覚えのない技が混ざっていることを指摘した。アイズはそれを聞き、自分の中にある技の由来を意識する。思い浮かんだのは、かつて憧れ、英雄だと信じていた父の姿であった。今の自分の剣の中には、その記憶の残滓が生きているのかもしれないと感じた。

ロキとの外出と街の現実

その後ロキは、気分転換を兼ねてアイズを街へ連れ出した。冒険者通りとは異なる市井の通りを歩く中で、アイズは崩れた建物や損壊した街路、人々の暗い表情、巡回するギルド職員や冒険者たちを目にした。闇派閥の跳梁が都市全体に傷跡を残していることを、初めて具体的な光景として理解したのである。人同士が争っている理由を問うアイズに、ロキはそれも子供たちの本質の一つだと語りつつ、それでも人々は明るい明日を望んで生きていると答えた。

ジャガ丸くんとの出会い

ロキに連れられて立ち寄った屋台で、アイズは「ジャガ丸くん」と呼ばれる揚げ芋を口にした。芋と油の旨味が一気に広がり、彼女は瞬時にその味の虜となった。気付けば追加を求めるほど気に入り、ロキに買わせて食べ歩きをするほどであった。これはアイズにとって、戦いとは無関係な楽しみを知る出来事でもあった。

ガネーシャとの遭遇と神々の奇矯さ

中央広場に出たアイズは、突如として轟く大音声とともに現れたガネーシャの山車に遭遇した。奇抜な仮面と大仰な振る舞いに、アイズは本気でモンスターと見間違え、抜剣して身構えるほど混乱した。だがそれは、怯える子供たちを元気づけるために行われていた神の催しであった。暑苦しい勢いのままガネーシャ本人が目の前に飛び降りてきて挨拶まで交わし、アイズは神という存在の突飛さと、都市における役割の広さを思い知ることとなった。

ヘファイストスとデメテルとの邂逅

さらに広場では、ロキがヘファイストスとデメテルという二柱の女神と出会った。ヘファイストスは椿の主神であり、椿がちょっかいを出したことを詫びながらアイズに手を差し伸べた。アイズは気まずさを覚えつつも、その手を取った。一方のデメテルは、アイズを見るなり人形以上に可愛いと抱き締め、豊かな胸で窒息しかけさせるほどの勢いで愛情を向けた。ロキやヘファイストスとの会話を交えながら、アイズは神々が変で、おかしく、綺麗で、慈愛にも満ちた存在であることを、身をもって知っていった。

知らなかった世界への認識

この一連の外出を通して、アイズは自分の知らなかった都市の現実と、神々の多様さに触れた。闇派閥の暴力がもたらす暗い現実だけでなく、その中でも人々を元気づけようとする神や、美味しい食べ物を生み出す者、気さくに手を差し伸べる女神たちがいることを知ったのである。ダンジョンと戦いだけでは見えなかった世界の広がりを、アイズは初めて実感した。

フレイヤの観察とアイズへの無関心

中央広場でロキや他の女神たちと過ごすアイズの姿を、白亜の巨塔の最上階からフレイヤが見下ろしていた。彼女はアイズの魂を眩しい金色で、しかも刃のように鋭いと評し、強い興味を示した。だが同時に、ただの剣には興味がないとも言い切り、手を出すつもりはないとロキへ向けて暗に返した。アイズはこの時、自分を見つめる別の神の存在など知ることなく、また一つ神々との縁の中に置かれていた。

豊穣の女主人への案内

デメテルたちに散々可愛がられた後、ロキはアイズを東のメインストリートにある新しい酒場へ連れて行った。それが『豊穣の女主人』であった。ロキはこの店を、荒れ果てたオラリオの中で唯一ゆっくり楽しく美味い酒が飲める場所だと保証し、今後ずっと世話になる店だと教えた。アイズにはその意味がまだよくわからなかったが、これから自分たちにとって特別な場所になることだけは、なんとなく感じ取っていた。

店主ミアとの対面

店内では、まだ営業前の静かな空間の中で、大柄なドワーフの女店主ミアがグラスを磨いていた。彼女は強い存在感を放っており、アイズはフィンやガレスに匹敵する実力者だと直感した。ロキは彼女に夜の宴会利用を頼み込み、ミアは渋々ながら了承したうえで、アイズを見て人形姫かと確認した。そしてそんな小さい体では冒険者は大変だろうが、今日はたらふく美味いものを食べさせると豪快に言い放った。

宴の開始とミアの過去

夜になると、ロキの主導で『豊穣の女主人』にて宴会が始まった。事件を鎮圧して戻ったフィンたちを労うための場であり、ロキ自身の酒欲も大いに混ざっていた。アイズは果汁を飲みながら、リヴェリアやフィンたちとミアの関係を尋ねた。するとミアは元冒険者であり、かつて彼らと深く関わっていたこと、そして今は誰もが笑って酒を飲める場所を作るために、自らの派閥から半ば身を引いて酒場を営んでいることを知った。治安の悪い時代にあっても、ここだけは安心して食事と酒を楽しめる場所であった。

酒場の温かさと過去の記憶

店内には【ロキ・ファミリア】の団員だけでなく、亜人の労働者や鍛冶師など多くの者が集っており、皆が笑い声を交わしながら料理と酒を楽しんでいた。日中に見た暗い街の空気とは対照的な光景に、アイズはこの場所の温かさを感じた。そしてその賑わいは、かつて父と仲間たちが酒を酌み交わしていた遠い日の記憶とも重なった。郷愁が胸を刺したが、ロキたちの馬鹿騒ぎがその痛みを和らげ、『豊穣の女主人』という名にふさわしい場なのだとアイズは実感した。

団員たちとの交流と油断

宴が進むにつれ、酔いの回った団員たちがアイズの席に押しかけてきた。普段は感情に乏しく近寄りがたい彼女に対し、酒の勢いで親睦を深めようとしたのである。アイズは戸惑いながらも、団員たちに勧められた不思議な飲み物を受け取った。強くなれるという言葉に反応した彼女は、それが果実酒であるとも知らず口にしてしまった。

酔剣の暴走

酒を飲んだ直後、アイズは無反応になったかと思うと、突如として酔いの中で剣を振るい始めた。頬を赤らめ、しゃっくりをしながらも放たれる斬撃は鋭く、団員たちは次々と斬り伏せられていった。酒場はたちまち悲鳴と血が飛び交う混沌の場と化し、椅子やテーブルまで切り刻まれた。ロキは即興でそれを酔剣と名付け、リヴェリアは本気で取り押さえようとしたが、事態は彼女たちの手にも余り始めていた。

ミアの制裁と新たな禁則

その暴走を止めたのは、いつの間にか背後に立っていた店主ミアだった。彼女は振り下ろされた剣を二本の指で受け止めると、店のものを壊すなと一喝し、直後に強烈な拳骨をアイズの頭頂部へ叩き込んだ。その一撃でアイズは床に沈み、酔いもほぼ醒めた状態で、ここで羽目を外してはならないと痛感することになった。この日を境に、アイズには絶対に酒を飲ませてはならないという決まりが【ロキ・ファミリア】内に加えられ、『豊穣の女主人』では決して騒ぎを起こしてはならないという不文律も共有されることとなった。

四章◆遺るもの、残されるもの

黒竜の鱗との遭遇

村に滞在して三日目、豊穣を祈る祭りの準備を手伝っていたアイズは、飾り付けられた石の小屋の中で人の胴体ほどもある漆黒の鱗を目にした。それは黒竜の鱗であり、村人はそれを黒竜様の鱗と呼んでいた。三大冒険者依頼の最後の標的であり、世界を奈落に突き落とした災厄の象徴である黒竜の一部が、この村では祀られていたのである。

守り神として祀られる厄災

村人の説明によれば、かつて迷宮都市から追われた黒竜がこの村の上空を通過した際に鱗を落とし、その気配を恐れてモンスターが近寄らなくなったという。村にとってこの鱗は平穏を守る守り神であり、生活を成り立たせるための加護であった。黒竜が討たれなければ世界は滅びると理解しつつも、それでも村人たちはこの鱗を祀らずにはいられなかった。

価値観の崩壊と拒絶

その事実は、モンスターは絶対の悪であり、人々の敵であると信じて剣を振るってきたアイズの価値観を根底から揺るがした。討つべき怪物が同胞を守っているという矛盾を、彼女は受け入れられなかった。もし怪物と人間が共存し得るのだと認めてしまえば、自分が怪物を斬るために生きてきた意味そのものが揺らいでしまう。アイズは竜鱗を前に激しく動揺し、剣を抜きそうになる衝動をかろうじて抑えながら、その場を離れた。

矛盾した村の光景との折り合い

村のあちこちには竜鱗の破片が置かれており、そのすぐ傍らで人々が穏やかに笑いながら暮らしていた。アイズはその光景を見るたびに手を握り締め、剣を抜きたい衝動を必死に抑え込んだ。この村の人々のためには看過しなければならないと、自分に何度も言い聞かせたからである。だがその折り合いは容易ではなく、彼女の胸の内では黒い炎がなお燃え続けていた。

ベルとのすれ違い

夕刻、最初に鱗を見つけた祭壇の前に戻っていたアイズに、ベルが声をかけた。ベルはその鱗を見て神様みたいだと口にしたが、その瞬間アイズの中の激情は一気に噴き上がり、あれは神なんかじゃないと冷たく言い放った。自分でも驚くほど鋭い声であった。その感情の断片に触れたベルは絶句し、アイズもまた自らの反応に気付き、感情を押し殺して人形の仮面を被り直した。二人の間には大きな距離が生まれ、アイズは自分が世界から離れてしまったような孤独を覚えた。

カームの告白

一人で心を落ち着かせた後、村長の邸宅に戻ったアイズは、窓辺で外を眺めていたところをカームに声をかけられた。彼は、今朝までとは違う目をしているとアイズに告げ、自分もかつてこの村が嫌いだったと打ち明けた。かつて女神の眷族であり、愛する女神を守れず喪った彼は、絶望の果てに命を絶とうとしてこの村に辿り着いたのだった。しかし村人たちは彼を見捨てず、孤独の中にいた彼の手を引いて救った。その経験を通して、彼は自分が独りではなかったと知ったのである。

アイズへの祈り

カームは、この村の住人たちは皆それぞれに傷を抱えているが、傷の舐め合いであっても互いを支え合って生きているのだと語った。そしてアイズもまた自分に似ていると告げ、まだ癒えていないその傷を誰かが埋めてくれることを祈っていると伝えた。顔色を悪くしながらも穏やかに微笑むその老人に、アイズは否定も誤魔化しもできず、ただありがとうと告げることしかできなかった。

祭りの再開とヘスティアの回復

夜になり、予定通り村の祭りが開かれた。焚き火を囲み、料理と飲み物が振る舞われる中、三日間安静にしていたヘスティアも回復し、ベルやアイズとともに祭りへ参加した。アイズはこの村から早く出たいと思っていたはずなのに、今は不安定な感情に揺れながらも、その場をただ眺めていた。そんな中、村人たちがヘスティアに豊穣の祝福を願い、村の踊りへ誘った。仕来りでは、男が女を踊りに誘い、女が受ければ恋人になれるという意味を持つ踊りであった。

ベルとヘスティアの踊り

村人たちに囃し立てられたヘスティアは、先日の喧嘩を水に流す代わりに、自分と踊るようベルに求めた。ベルは照れながらもこれを受け入れ、ヘスティアと手を取り合って焚き火のもとへ向かった。女神と少年が楽しげに踊る光景に、アイズは目を離せなくなった。胸の痛みは竜鱗のせいだと思おうとしたが、やがてそれが違うと気付く。自分は寂しかったのであり、レフィーヤやティオナ、ティオネ、リヴェリアたちがいないこの場で、ひとりきりであることを突きつけられていたのである。

孤独の自覚とベルの接近

祭りの輪からそっと外れ、壁際に身を寄せたアイズは、自分は場違いで、ここにいてはいけない存在だと感じていた。そんな彼女を見つけたのはベルであった。何事もなかったように振る舞うアイズは、みんな楽しそうだねと呟き、ベルがヘスティアと踊る様子を上手だったと二度も口にした。会話の流れの中で、踊る相手がいないと零したアイズに、ベルは自分でよければと真っ赤になりながら手を差し出した。アイズは驚きつつも、その手を取ろうとした。

ヘスティアの介入と対話

しかしそこへヘスティアが横から飛び込み、ベルを吹き飛ばしてアイズの手を奪い、自分が一緒に踊ると宣言した。そしてベルからアイズを取り返したのだと言いながらも、看病に来てくれた時からアイズがずっと迷子のような顔をしていることを見抜き、放っておけないと告げた。アイズはその洞察に驚きながらも、ヘスティアに対して、自分はやはり独りぼっちなのではないか、この村のことを知って怖くなったのだと、たどたどしく胸の内を明かした。

神の視点から語られる絆

ヘスティアは、神々にとって下界の子どもたちとの愛は一瞬であり、怖くないわけではなく寂しいのだと正直に認めた。そのうえで、神々はその一瞬を永遠にしようとするほど図々しいとも語った。そして思い出を大切に抱き続けることで、人と人との絆は永遠になり得るのだと教えた。忘れられない思い出は、悲しい時には抱き締め、迷った時には大切なものを思い出させてくれる。逆に忘れられた思い出は、残された者が前を向いて笑えるようになったことを喜ぶはずだと語るヘスティアの言葉は、アイズの心に静かに染み込んでいった。

笑顔の中へ戻るアイズ

ヘスティアと踊り始めたアイズのもとには、村人たちの喝采が集まり、リナやベルを含めた皆の笑顔が向けられた。孤独は一瞬で吹き飛ばされ、気付けばアイズの唇にもほのかな笑みが浮かんでいた。祭りが終わった後、ヘスティアは体調も戻り、翌朝には村を出ようという話になった。アイズもそれに頷きながら、名残惜しさが芽生えていることに自ら驚いた。思い出に浸ることが必ずしも悪ではないと、少しだけ感じられるようになっていたのである。

別れを前に訪れた死の報せ

しかしその矢先、リナが泣きそうな顔で駆け込んできた。森の奥からモンスターの遠吠えが木霊する中、彼女は父カームの天への旅立ちを見届けてほしいと告げた。その言葉を聞いた瞬間、アイズの胸には、やはり永遠などないのだという虚ろな感情が忍び込んだ。せっかく得かけたぬくもりと安らぎの中で、残される者の痛みが再びアイズの心を蝕み始めたのである。

追憶四章◆風が望む永遠

順調だった成長と停滞の到来

アイズはフィンに師事し、リヴェリアに学び、ガレスに導かれながら着実に成長していた。しかし入団から一年を迎えようとする冬、更新された【ステイタス】の伸びが鈍化し、ほとんど変動しなくなったことで、前に進めなくなったという恐怖に襲われた。

ランクアップへの焦燥

停滞を前に、アイズは【ランクアップ】を求めた。だがリヴェリアたちは、それは容易なものではなく、焦れば自滅を招くと諭し、従来通りの探索を続けるよう告げた。しかしアイズには、その慎重さは時間の浪費にしか思えず、焦りは募るばかりであった。

隠された条件と大人たちの判断

リヴェリアたちは、ランクアップには偉業が必要であり、それは死地を意味するため、アイズには知らせていなかった。今の彼女に伝えれば無謀な行動に出ることは明らかであり、安全に経験を積ませるしかないと判断していたのである。

過去の記憶と現在の乖離

焦燥の中で、アイズは父と母と過ごした穏やかな記憶を思い出した。剣を振るう父と、それを見守る母の姿は幸福そのものであった。しかし目覚めた現実にはその温もりはなく、失われた過去への痛みと、強くならなければならないという思いだけが残った。

焦燥に追い立てられる日々

その後のアイズは、ダンジョンで無理を重ねても成長の壁を越えられず、焦燥を深めていった。周囲の制止も枷としか感じられず、黒い炎のような衝動と孤独が再び彼女を支配し始めた。

偉業を求めた単独行動

アイズはランクアップの条件を探るためギルドへ向かい、男神から昇華には偉業が必要であると知らされた。その結果、単独で深層へ潜り、インファント・ドラゴンを討つという無茶を実行したが、それでも満足できず、さらなる強さを求め続けた。

リヴェリアとの決裂

帰還後、リヴェリアに止められたアイズは感情を爆発させ、真実を隠されていたことへの怒りをぶつけた。自分は強くならなければならないと叫び、ついにはリヴェリアを母ではないと拒絶した。リヴェリアもまた、母ではないと返し、二人は決定的にすれ違った。

孤独への回帰と逃避

アイズは雨の中を走り去り、自分は独りであると再び思い込もうとした。誰も助けてくれないという過去の絶望に囚われながら、ダンジョンへと逃げ込んでいった。

迷うリヴェリアと仲間の叱咤

残されたリヴェリアは迷い、弱音を漏らした。だがガレスはそれを叱り、言葉を選ぶだけでは届かないと諭した。フィンもまた、これまでの時間を否定するなと告げ、ロキはアイズに必要なのはリヴェリア自身だと背中を押した。リヴェリアは覚悟を決め、アイズを迎えに行く決意を固めた。

タナトスの誘惑

ダンジョンでアイズの前に現れたのは神タナトスであった。彼はアイズの孤独や憎しみを見抜き、力と救いを与えると誘惑した。黒い炎に駆られるアイズの心は揺らいだが、フィンやガレス、リヴェリアとの日々を思い出し、それを裏切ることはできないと拒絶した。

神威による異変と竜の召喚

タナトスは神威を解放し、迷宮を歪ませた。その結果、上層には存在しないはずの漆黒の亜種ワイヴァーンが出現し、アイズは単独でそれと対峙することとなった。

絶望の中での死闘

アイズは全力で戦い、竜に傷を与えたものの、圧倒的な力の前に追い詰められた。炎に包まれ、死の淵に立たされる中で、自らの限界と絶望に直面した。

リヴェリアの呼び声と覚醒

その瞬間、リヴェリアが駆けつけ、アイズの名を呼び、魔法の発動を促した。アイズが応えた時、彼女の中に眠っていた力が解き放たれた。

母の風の顕現

アイズの体を包んだのは、母の遺した風であった。それは彼女を守り続けていた精霊の風であり、失われたと思っていた絆が確かに残っていたことを示していた。アイズは自分が独りではなかったと理解した。

父と母が遺した力での反撃

風の力を得たアイズは再び立ち上がり、竜へと突撃した。父の剣技と母の風を重ね、渾身の一撃でワイヴァーンを打ち砕いた。

リヴェリアの抱擁と和解

戦いの後、リヴェリアはアイズを抱き締め、自分は母にはなれないが側にいたいと涙ながらに告げた。アイズもそれを受け入れ、謝罪とともに涙を流し、二人はようやく心を通わせた。

永遠の絆の理解

その後、カームの死とヘスティアの言葉を通じて、アイズは永遠とは形を変えて残るものであると理解した。思い出や想いは失われず、絆として生き続けるのである。

風が望む未来への誓い

夜空を見上げたアイズは、胸に宿る風に触れながら母へと語りかけた。そして、必ず取り戻すと誓い、自らの歩むべき未来へと目を向けたのであった。

エピローグ◆風が望んだ今

エダスの村との別れ

夜明け前の澄んだ空気の中、アイズは回復したヘスティアとベルとともに『エダスの村』の前に立っていた。祭りの後にもう一日滞在し、カームの埋葬を手伝った三人は、五日間の出来事を経て村人たちから感謝を受けた。リナは涙を浮かべながら再会を願い、アイズも微笑みでそれに応じた。こうして多くの見送りを受けながら、三人は村を後にした。

下山の道での穏やかな時間

ベオル山地を下る道中、穏やかな川の音に包まれながら、ヘスティアとベルは村の思い出を語り合った。再び訪れたいという言葉に、アイズもまた同行したいと口にした。軽口を交えたやり取りの中で三人の表情は晴れやかであり、村での経験がそれぞれの心に確かな変化を残していた。

帰るべき場所への自覚

短い旅を経て、アイズは自分の帰るべき場所を明確に意識した。それは自分を受け入れ、愛したいと告げたリヴェリアのもとであった。山道を下りながら白亜の巨塔を見つめ、アイズは胸に芽生えた想いを伝えたいと強く感じていた。

オラリオの平穏な日常

一方オラリオでは雨が上がり、街には平穏な活気が戻っていた。戦争も終息へ向かい、都市は日常を取り戻しつつあった。【ロキ・ファミリア】の執務室では戦後処理の話し合いが進められていたが、リヴェリアは心ここにあらずの様子であった。

リヴェリアの胸中

問いかけに応じたリヴェリアは、アイズへの不安を打ち明けた。成長したとはいえ、彼女の中に残る黒い炎が再び彼女を遠ざけるのではないかという恐れが拭えなかったのである。顔を見られないだけで募る不安を認めた彼女に対し、ロキはそれを母の心だと評した。リヴェリアはそれを完全には否定せず、わずかに笑みを浮かべた。

帰還の報せと飛び出す想い

その時、アイズの帰還が伝えられると同時に、リヴェリアは言葉を待たずして執務室を飛び出した。その背を見送りながら、フィンたちは微笑を交わした。

仲間たちの出迎え

正面玄関では、団員たちがアイズを囲み、無事の帰還を喜んでいた。レフィーヤは涙を浮かべ、ティオナやティオネは賑やかに場を和ませ、ベートも不器用ながら安堵を隠せずにいた。その光景を見たリヴェリアは、かつて孤独であった少女が、今は仲間に迎えられる存在へと変わったことを実感した。

ただいまとおかえり

やがてアイズは、叱責を待つかのようにリヴェリアを見上げた。しかしその表情に微笑があることを知ると、安心したように笑みを浮かべた。そしてただいまと告げたアイズに対し、リヴェリアは静かにおかえりと返した。二人の間に流れた風は、再会と絆を優しく包み込むものであった。

ソード・オラトリア 8レビュー
ソード・オラトリア 10レビュー

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ダンジジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア

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