どんな本?
“転生したらスライムだった件”とは、伏瀬 氏による日本のライトノベルで、異世界転生とファンタジーのジャンルに属す。
主人公は、通り魔に刺されて死んだ後、スライムとして異世界に転生。
そこで様々な出会いと冒険を繰り広げながら、魔物や人間との交流を深めていく。
小説は2014年からGCノベルズから刊行されており、現在は21巻まで発売されている。
また、小説を原作とした漫画やアニメ、ゲームなどのメディアミックスも展開されており。
小説のタイトルは「転生したらスライムだった件」だが、略称として「転スラ」と呼ばれることもある。
読んだ本のタイトル
転生したらスライムだった件 11
著者:伏瀬 氏
イラスト:みっつばー 氏
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あらすじ・内容
魔王ルミナスとの約束である音楽会を開催するため、神聖法皇国ルベリオスを訪れることになったリムルたち。 進む音楽会の準備――だが、その裏側ではリムル、そしてルミナスをも巻き込む狡猾な陰謀が張り巡らされていた。 はたして音楽会は無事に開催されるのか!?
転生したらスライムだった件 11
前巻からのあらすじ
祭りが終わり、次は西方評議会への加入を目指す。
そんなリムルに、西方評議会の陰の実力者。
グロッソのマリアベルが暗躍して来た。
リムルの経済圏拡大に反対するマリアベルはリムルの強大な力を背景にした経済圏に依存すると、リムルの言う事に逆らえなくなると警戒しており。
強大になる前に叩き潰そうとするのだが、手駒にしていたユウキに裏切られて呆気なく死亡してしまう。
操られていたユウキが解放されて安心したリムルだったが、ラファエルさんからユウキは操られてないと。
迷宮では魔王達がアバターで暗躍w
何気にユウキが一番腹黒い事が判明。
感想
魔王のディーノが、リムルに寄生しにやって来た。
ギィの誘導らしいが・・・
最初は働きたくないと言ってたが、いつの間にかベクターと一緒に研究で無自覚に仕事してる。
それも楽しそうに。
ディアブロが連れてきた悪魔たちがいい味を出している。
受肉と名前が無い状態でレオンや人類が警戒していた原初を白、黄、紫の3体も仲間に引き入れた。
それぞれの配下約700体がディアブロ直轄でリムルの配下に入る。
そして、受肉にオリハルコンの身体を用意して名前も授けられる。
原初の白、テッサロッサ。原初の黄、カレラ。原初の紫、ウルティマ。
それを知った原初の赤のギィはリムルの暴挙に愕然とする。
ただでさえ、原初の黒のディアブロを配下に入れてたのにさらに3つの原初を配下にしたリムル。
その重要さを彼は知らない。
いや、責任はディアブロが取るから良いかと思っている。。。
他人事感満載?
ルミナス待望の演奏会。
その裏で元勇者グランベルの謀略が蠢く。
平和な祭典を開催するはずが襲撃に遭ってしまう。
その演奏の練習をしているタクト達を護衛するシオン達。
グランベルと一騎打ちをするヒナタ。
その裏でユウキがルミナスの宝、勇者クロノアを奪取する。
グランベルは最後まで人類を救おうとしたが、、
その末路がこれじゃ・・・
そして、クロエとクロノア、ヒナタ、ルミナスの二千年の長き旅路が始まる。。。
クロエが勇者として覚醒しクロノアを取り込んで超強化され。
成長したクロエが爆誕。
二千年間魂の状態で耐えたヒナタは現在に帰って来る。
その根性が凄いわ・・
レオンもやっとクロエに出会えたが、、、
クロエに全く相手にされておらず扱いが軽い、、
そんなレオンが不憫・・・(涙)
とりあえず全員無事で良かったのかな?
最後までお読み頂きありがとうございます。
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主要キャラクター
リムル=テンペスト
八星魔王(オクタグラム)の一柱であり、魔国連邦テンペストの盟主にして指導者である。
・魔国連邦の創設者かつ国家元首として、国内外の行政・軍事・外交を統括していた
・八星魔王として名を連ねながらも、他国との協調と平和共存を重視する姿勢を貫いた
・帝国との全面戦争に備えた各種軍事・政治的準備を自ら主導した
・迷宮の訓練運営や依代の開発にも深く関わり、戦力整備と研究支援の両面を担当した
・演奏会警備ではルミナスと極秘会談を交わし、グランベルやユウキの策謀に備える体制を整えた
・戦後処理にも尽力し、犠牲者への配慮と外交方針の再構築を進めた
ベニマル
リムルの側近にして軍を率いる将軍格の存在である。
・魔国連邦の軍司令官として、帝国軍との戦闘準備を主導した
・カリュブディス襲来時には討伐隊の編成と対応指示を担った
・リムル不在時の対応や戦況分析などを適切に行った
・部隊再編と戦術展開の責任を持ち、的確に対応した
シオン
リムルの護衛兼秘書役を務める重鎮であり、行動力に富む戦闘員である。
・テンペスト内政においても補佐役を果たしていた
・戦闘能力が高く、実戦でも前衛として参戦した
・リムルとの親密な関係から発言機会が多く、場を取り仕切る場面もあった
ディアブロ
リムルに忠誠を誓う悪魔であり、独自の情報網と行動力を持つ参謀的存在である。
・帝国側に潜入し、重要な諜報活動を展開した
・カリュブディス出現前後の諸情報をリムルに伝えた
・自身の部隊を率い、戦力としても機能した
ゼギオン
リムル配下の戦力の一つで、戦闘力に優れた強者である。
・リムルの指示により帝国軍との戦闘に加わった
・敵将アムロと戦闘し、その能力を圧倒した
・戦闘後の捕虜収容にも関わった
アピト
ゼギオンの幹部にして、蟲型魔物の中核戦力である。
・ゼギオンの配下として命令を受け、迷宮防衛に参戦した
・敵に対して冷静かつ機械的な対応を取り、味方への指示も明確に伝達した
・戦闘後は命令系統の確認をゼギオンに求めるなど、忠誠心の高さを示した
ソウエイ
隠密行動を得意とするリムルの部下であり、情報収集の要である。
・帝国の動向を調査し、事前の警戒を怠らなかった
・リムルに対し冷静な報告と提案を行った
・戦時中は伝令や戦況把握の要員として行動した
ラミリス
迷宮を統べる精霊女王であり、テンペスト側の支援者である。
・自身の迷宮で戦闘の訓練と防衛を担当した
・テンペストの防衛拠点として迷宮を活用した
・帝国軍を迷宮に誘導し、撃退作戦に貢献した
ヴェルドラ
かつて封印されていた竜種であり、現在はリムルと契約関係にある。
・リムルの計画に従い、戦力として迷宮防衛に参加した
・敵の強者と対峙する役目を担った
・他者に対して強い影響を与える存在として描写された
ガビル
蜥蜴人族出身の将であり、部隊の指揮を任されていた。
・前線にてカリュブディスの部隊に対応した
・仲間とともに連携し、戦闘に尽力した
・勝利後の報告でもリムルに忠実な姿勢を示した
アダルマン
リムルの配下であり、迷宮防衛の中核戦力の一人である。
・アンデッドの軍勢を率い、迷宮に侵入した帝国兵を迎撃した
・自身の死霊魔術により敵軍に圧倒的打撃を与えた
・信仰の力を取り入れた独自の戦法で敵を殲滅した
ガルム
テンペストの鍛冶師であり、装備開発において技術的な支援を行っていた。
・帝国軍の動向に備え、装備の補強と供給を行った
・防具の質と供給体制を整え、戦力維持に貢献した
ドワーフ王ガゼル・ドワルゴ
ドワルゴン王国の王であり、リムルと盟約を結んだ政治的同盟者である。
・帝国との戦争に備え、軍事・外交面でリムルを支援した
・情報交換と連携体制の強化に協力した
・テンペストとドワルゴン間の連携が明示された
グランベル・ロッゾ
ロッゾ一族の長にして、かつて「勇者」として名を馳せた神聖法皇国ルベリオスの実質的支配者である。
・神聖法皇国の名目上の法皇であり、実際には裏からルミナスを補佐し、秩序の維持を担った
・過去に「勇者」として召喚され、その後長命種として存続していた
・魔王勢力を警戒し、ユウキと結託して対抗手段を整えていた
・聖騎士団の育成と指導に携わり、ヒナタらを通じて実行支配を行った
・クロエの存在を危険視し、時渡りの力を制御する目的で幽閉・封印していた
・最終的にルミナスらと対立し、策謀を明かされたのち敗北した
ルミナス・ヴァレンタイン
神聖法皇国ルベリオスの女神として崇拝される実在の魔王であり、長命かつ高い威厳を持つ存在である。
・神聖法皇国ルベリオスの真の支配者であり、八星魔王の一柱として数えられる
・長年にわたり「ルイ・ヴァレンタイン」を影武者として前面に立たせ、自身の存在を秘匿してきた
・演奏会を通じて外交的威信を高めることを目的とし、音楽祭を主催した
・グランベルの動向に対して深い警戒心を抱き、リムルらと極秘会談を行った
・会談ではヒナタの欠席を自ら判断し、肉体の未熟さを理由に明言した
・グランベルとの決裂を覚悟し、戦争への備えを本格化させた
・演奏会当日は表舞台に姿を現さず、裏方として警備指揮と対応に徹した
ヒナタ・サカグチ
聖騎士団を率いる存在であり、リムルとは一度戦った過去がある人物である。
・帝国の行動に対し独自に情報収集と判断を行った
・リムルと対等な立場で対話し、共闘関係を構築した
・帝国の計画を見抜き、警戒を共有した
ルイ・ヴァレンタイン
神聖法皇国ルベリオスに所属し、魔王ルミナスの側近として行動する人物である。
・八星魔王の一角として知られるが、その実体は魔王ルミナスの影武者である
・ルミナスの命を受け、対外的な外交・戦闘において表舞台に立つ役割を担った
・演奏会警備などに関与し、ディアブロと共に敵勢力との戦闘にも加わった
ダグリュール
八星魔王の一人であり、巨体と武力に優れた魔王である。
・ワルプルギスでの発言権を持ち、他の魔王と意見を交わした
・戦局全体への影響力は不明ながら、存在感を示した
展開まとめ
序章 黄金の憂鬱
幸福の追憶と果てなき探求
魔王レオン・クロムウェルは、かつて共に過ごした少女との記憶を胸に、彼女をこの世界へ呼び戻すため尽力していた。黄金の都「エルドラド」を築き、贅を尽くした庭園を整備したが、肝心の少女だけが見つからなかった。彼女こそが、レオンの生の目的であり、全ての行動の理由であった。
再会への儀式と限界
レオンは異世界人の召喚を幾度も試みていた。三十名を超える召喚術師による七日間にわたる儀式を繰り返し、自らも参加したが、成果は出なかった。唯一召喚に成功したのは井沢静江であり、それから六十六年が経過していた。召喚の成功率は一%未満とされ、絞り込むほど次回の儀式までの間隔も延びていた。レオンは成功確率を上げるため「不完全な召喚術式」を西側諸国に広め、幼い少女を集める手段としたが、それも頓挫した。
交渉の終焉と撤退の通告
螺旋の王城にて、ラプラス一行がレオンと謁見した。交渉担当のティアは、ユウキの方針により西方での活動中止を宣言し、特定機密商品の取引も終了とした。マリアベルの死によるロッゾ一族の衰退、魔国連邦の影響拡大が背景にあった。東の帝国への拠点移動を伝えたティアに対し、レオンは穏やかに応じながらも、今後の召喚儀式の継続可能性を問うた。
東方の戦争準備とラプラスの観察
ラプラスは、東でも戦争準備が進んでおり人材確保が難しいと報告した。この情報により、レオンは召喚計画の根本的見直しを余儀なくされた。ラプラスはレオンの力量に警戒しつつも冷静を装い、仕事としての交渉を遂行した。ユウキの真意を理解し、マリアベルの敗北や情報操作による策略に言及しながら、慎重に情報を伝えた。
子供たちの情報と意図された流出
ユウキの指示通り、ラプラスは最後に保護された異世界人の子供達の情報を提示した。それらは魔国連邦に保護されており、ティアらはその場所には手出しできないと伝えた。フットマンが子供達の名前を挙げた際、レオンは「クロベ・ホエール」という名に強く反応した。ラプラス達は謝罪しつつも、交渉の継続を示唆してその場を離れた。
エルドラドの威光と魔王の懸念
面会後、レオンは側近アルロスと戦争への懸念を語り合った。東の帝国の動きが本格化すれば、世界規模の戦乱に発展する恐れがあった。エルドラドは魔法で保護され、火山灰さえも防がれる理想の都であったが、それでも巻き込まれる可能性があった。レオンは人間の協力が異世界人探索に必要と認識し、現状の組織との取引継続を選択した。
目覚めの危機と情報の価値
大戦が起これば、死を糧に悪魔が覚醒する可能性があった。レオンは特に「原初の黄」の存在を懸念し、混乱を防ぐため防衛体制の強化を指示した。同時に、戦争の情報を軽く語ったラプラスの不用意さに警戒を強め、その裏にある策略を読み取ったが、それもまたユウキによる計算の一部であった。
微かな手がかりと再燃する執念
レオンは最後に語られた名前「クロベ・ホエール」に心を乱された。自らが探し続けるクロエ・オベールと紛らわしいその名は、たとえ罠であっても無視できるものではなかった。彼の目的は、彼女を見つけ出すこと──それだけであった。どれだけ時が過ぎようとも、魔王レオンの執念は決して尽きることがなかった。
第一章 視察と研究成果
レオンとの交渉と情報の意図
秘密結社“三巨頭”の拠点にて、ユウキはラプラスたちから交渉の報告を受けた。魔王レオンに異世界の子供たちの情報を伝えたのは、レオンの目的を探るための一手であった。単なる戦力増強が目的であれば、子供たち程度でリムルと対立することはあり得ず、仮にレオンが行動すれば、別の目的を有している証左となる。ラプラスたちは、可能性は低いとしながらも、ユウキの判断には一定の納得を示した。
クロベ・ホエールの名前と新たな疑念
ティアは、レオンが子供の名前「クロベ・ホエール」に過剰に反応したことを指摘した。それによりユウキとカガリは、レオンが探し続けている少女が「クロエ」であり、名前の類似性からレオンの目的が彼女にある可能性を見出した。もしそうであれば、ユウキたちは切り札を無自覚に放出してしまったことになる。あくまで可能性に過ぎないとしつつも、この発見は戦略上の転機となり得るものであった。
マリアベルとの決着とグランベルとの交渉
ユウキはマリアベルの死を契機に、西側での自らの立場を整理していた。自分が操られていたという前提で責任を転嫁し、自由な行動を可能にした上で、ロッゾ一族のグランベルと交渉を行った。その結果、マリアベルに関する問題は全て片付いたと整理され、次なる目的遂行の土台が整った。
魔国連邦の現状と影響力の拡大
一方、リムルたちは魔国連邦の政務に追われていた。マリアベルの死は事故として処理され、シルトロッゾ王国との衝突も避けられた。五大老の長であるグランベルからの動きもなく、西側の裏事情を掌握した結果、目立った脅威は確認されなかった。魔国連邦は今や西方諸国評議会における最大派閥となり、発言力を大きく高めていた。
評議会代表選出の難航
評議会に誰を派遣すべきかが議題となったが、有力幹部たちはそれぞれ他の職務に従事しており、適任者が見つからなかった。最終的に候補となったガビルも、自らの研究と育成事業に従事しており辞退。シオンが自薦したものの、性格的に議員には不適と判断され、却下された。
ディアブロの適性と暫定的な方針
会議の結果、誰もがディアブロの知略と能力を高く評価し、評議会代表として最も適任であるとの認識に至った。ただし、本人が交渉能力に長けた部下を探して旅立っていたことから、ディアブロが他に人材を連れて帰る可能性も考慮され、最終決定は保留となった。それまではリムル自身が暫定的に評議会への出席を担うこととなった。
クロベエの新作武器の紹介
リムルは平和な日常を満喫し、空いた時間を利用してクロベエの工房を訪問した。クロベエはリムルの依頼に応えて、かつて構想として語られていた「外部付加型の魔法武器」を完成させていた。特質級の剣には三つの孔が開けられており、そこに魔玉と呼ばれる精霊属性核を装着することで、武器を任意の属性魔法武器へと変化させることが可能であった。この画期的な発明にリムルは驚嘆し、魔法武器の概念を覆す技術であると絶賛した。
魔玉の仕組みと属性変化の検証
魔玉は土・水・火・風の四属性に分類され、それぞれが純度の高い魔力結晶から生成されていた。魔玉の魔力は使い切りであるが、熟練の魔法使いによって再注入が可能であり、新たな経済活動の芽生えとしての可能性も秘めていた。ただし、複数の魔玉を同時に装着すると、属性が融合・変化し、時に想定外の暴発を引き起こすことが判明していた。このため、実験段階として迷宮内での使用によるデータ収集を進める方針が決定された。
孔空き武器の製作難易度と普及計画
三つ孔が空いた武器はクロベエでも百本に一本しか製作できない稀少な逸品であり、弟子たちの技量では一つ孔を空けるのが限界であった。それでも、量産に向けた調整が進められ、耐久度や等級を抑えることで迷宮内の宝箱やボスドロップとしての供給が予定された。こうして、魔玉の組み合わせ効果を広く検証し、実用化を進める体制が整えられた。
リムルの直刀とヒヒイロカネの正体
リムルは当初の目的を思い出し、自身の直刀について相談を持ちかけた。その刀は普段は漆黒だが、魔力を流すことで虹色に輝き出し、クロベエの鑑定でも正体が掴めない異質な存在であった。調査の結果、それは「ヒヒイロカネ」と呼ばれる神話級の金属であることが判明した。この金属は、魔力の波長に反発して通常は黒く、特定の魔力波長に反応することで虹色の輝きを発する性質を持っていた。
神話級への進化と今後の展望
この直刀は、リムルの魔力によってのみ真価を発揮し、損傷しても修復可能な永久不変の属性を備えていた。クロベエはこの刀が伝説級を超え、神話級の存在に至る可能性を示唆した。現時点でもすでに伝説級上位に相当する仕上がりであり、今後孔を空けて魔玉を装着することで、さらなる進化が期待された。刀の美しさと性能の高さに魅了されたリムルとクロベエは、この成果に満足し、その刀が持つ未来に期待を膨らませていた。
孔空き剣と魔玉による新たな魔法武具の完成
リムルは時間の余裕を活かしてクロベエの工房を訪ね、かつて自らが語ったアイデアが実現されていたことを知った。クロベエは、魔力伝達に優れた魔鋼製の特質級剣に三つの孔を開け、そこに魔力を凝縮した宝玉「魔玉」を嵌めることで、任意の魔法効果を持たせる武器を完成させていた。この構造により、通常の武器を外部からの操作で魔法武器へと転換する仕組みが成立し、刻印魔法や武器進化といった従来の手法に代わる第三の方式として確立された。
魔玉の性質と属性変化の危険性
魔玉は土・水・火・風の四属性に分類され、熟練した魔法使いにより魔力の注入・補充が可能であった。属性を変化させる特性もあり、複数の異なる魔玉を装着した場合、意図せぬ属性変化や威力増幅、最悪の場合は爆発などの危険が生じることが判明した。とりわけ三つの孔を持つ武器は非常に稀少であり、クロベエ自身でも百本中一本製作できるかという高難度の代物であった。したがって、この技術は現段階では実験段階とされ、迷宮内での試験運用によるデータ収集が進められることになった。
量産計画と実戦導入に向けた取り組み
クロベエと相談の上、魔玉を迷宮内の宝箱に配置し、孔空き武器を順次投入する方針が定められた。弟子たちの鍛錬も兼ねて簡易版の孔空き武器も製造される予定であり、百人長級以上の戦士への配備も視野に入れられていた。耐久性の問題なども懸念されたが、魔玉の属性効果を活用することで戦闘力の底上げが見込まれ、今後の実用化と商業展開に向けた基盤作りが進められることとなった。
リムルの直刀とヒヒイロカネの正体
リムルは自身の直刀についてもクロベエに相談し、その刀が虹色に輝く現象を報告した。調査の結果、刀の素材は「ヒヒイロカネ」という神話級金属であり、光をも打ち消す属性を持つことが判明した。この金属は解析をも欺く性質を持ち、リムルの魔力のみに反応して本来の姿を顕現させる特異な刀であった。加えて、この刀には今後孔を空けて魔玉を装着する予定もあり、更なる進化が期待されていた。
神話級武器への到達と今後の可能性
クロベエはこの刀の品質を伝説級上位と評し、将来的には神話級に至る可能性があると評価した。既存の武器を超える存在として、ヒナタの月光の細剣やミリムの魔剣「天魔」に匹敵する性能を秘めているとされ、リムルとクロベエはその完成度に感嘆しつつ、さらなる鍛錬と進化の可能性に期待を寄せた。永久不変の性質を持つこの刀は、今後リムルの象徴的武器として扱われることとなるであろう。
ガイアの誕生とミリムの冒険宣言
ミリムは突如リムルのもとへ駆け込み、抱えていた卵が孵化間近であることを伝えた。やがて卵は孵り、小さな竜の姿をしたガイアが誕生した。ミリムはガイアを連れて冒険へ出ると意気込み、リムルはそれを止めるために迷宮での育成を提案した。ミリムはこれに乗り気となり、リムル、ヴェルドラ、ラミリスと共に五人パーティを組んで迷宮探索を開始した。
迷宮でのガイア育成と成長の記録
迷宮での冒険により、ガイアは急速に成長を遂げた。瘴気呪怨吐息と超重力波という二つの強力な能力を活用し、短期間で戦闘に慣れ、仲間たちとの連携も確立させた。ブラッドボアのような強敵に対しても、重力操作とミリムの攻撃で見事に対応し、パーティは五十階層のボスまで撃破する成果を挙げた。冒険を通じて、ガイアは戦力として着実に進化しつつあった。
フレイの登場とミリムの連行
冒険の帰還直後、フレイがミリムを迎えに現れた。約束を破り国に戻らなかったミリムに対し、フレイは怒りを露わにしつつも冷静に対応した。ミリムは反論しようとするも、言い負かされてそのまま連行されていった。リムルは状況を見守りつつ、ミリムの報連相不足を改めて痛感した。以後、ガイアはリムルが預かり、迷宮内で自動行動する仮想体と共に修行を続けることとなった。
迷宮内での誤解とユニークボスの噂
リムルたち五人の仮想体は迷宮内でユニークボスとして恐れられていた。通常時でも強力である彼らが、直接操作されているときには手がつけられないほどの存在として噂されていたが、当人たちはその影響を知らないままであった。
魔国連邦の統治体制整備と課題
リムルは西側諸国との交流強化を見据え、国家の統治体制を整備していた。三権分立を基本とし、裁判権・立法権・行政権を分けて構築を進めていた。立法府には上院と下院を設置し、上院は任命制、下院は選挙制とする方針が定まった。行政についてはリグルドを中心に進行中であり、元ゴブリンの長老たちを要職に据えていたが、能力と戦闘力のバランスに課題を抱えていた。
戦闘種族と行政の摩擦懸念
行政の中枢に戦闘能力の低い者が多く登用される中で、戦闘種族との間に摩擦が生じる懸念もあった。魔国連邦では戦闘力が高くても行政に関与できない者が不満を抱く可能性があり、力の偏重を避けつつ政治的融和を図る必要があった。
検察庁・司法府の設立と人材問題
行政の一部として検察庁の設立も進められ、司法府では裁判官の安全確保が課題となっていた。裁判官には公正さに加えて一定の戦闘力も求められ、実力者の人材登用が不可欠とされた。特に幹部や議員の不正を監視・摘発するには、高い能力と信頼性が必要であった。
人材不足と行政の未熟さ
リムルは制度の構築に対して前向きに取り組んでいたが、実際の運用面では人材不足が深刻であった。急成長した国家の実情に制度が追いついておらず、各部門の役職に適任者を配置する困難さが浮き彫りとなった。今後の安定運営には、有能な人材の確保と育成が急務となっていた。
新王都建設の進捗とゲルドの指導法
新王都建設計画は、ゲルドの指揮の下で驚異的な速さで進行していた。強度と魔力耐性を兼ね備えた特殊素材を用いた建築は、外敵の魔法や内部の暴発に対して高い防御性能を発揮する設計であり、現場の士気も高かった。ゲルドは元捕虜の魔人たちとも真摯に向き合い、彼らの不安を解消し、労働へのやる気を引き出すことに成功した。信頼関係の構築と自尊心の回復により、元捕虜たちは自主的に協力するようになり、結果的に工事効率は飛躍的に向上した。
交通網整備と各方面の工事状況
国内では四方面への魔導列車の軌道整備が進められていた。ドワルゴンおよびイングラシア方面では整備が順調に進行し、ユーラザニア方面では資材輸送を前提とした生態系保護を優先していた。一方、サリオン方面は森林伐採から始まる難航エリアであり、猪人族を主力として作業が進められていた。それぞれの工程は段階的に調整され、人員配置にも工夫が凝らされていた。
東の帝国への警戒と建設方針
東の帝国の動向に関しては、軌道建設や要塞建設への懸念が挙げられたが、リムルは戦闘による破壊を恐れて開発を遅らせるよりも、短期決戦に備えて建設を優先する方針を取った。要塞建設は後回しとされ、人的資源の分配を最適化して国土の発展を重視した。破壊されても再建すれば良いとの発想により、計画は迅速に進行していった。
ファルメナス王国での軌道整備と政治の安定
ファルメナス王国では、ヨウムとミュウランの指導により、軌道整備の準備が農繁期を待たずに始められていた。王妃ミュウランは積極的に国政に関与し、物流整備による外貨獲得と食糧支援体制の確立を見据えていた。また、ヨウムの補佐を務めるロンメルの現地測量も概ね高評価であり、リムルは後進の育成を重視していた。加えて、ミュウランの懐妊が判明し、ヨウムと王族エドガーとの間でも後継者に関する方針が明確化された。
騎士団運営とラーゼンの功績
ファルメナス王国では、騎士団長グルーシスの不在がありながらも、ラーゼンが国内の治安維持に大きく貢献していた。ラーゼンは魔法を用いて不穏分子を監視し、国民からも高く評価されていた。かつて非道とされた行為も、現在では国防の観点から再評価され、国家統治への順応が進んでいた。ディアブロの支援により、情報操作や内政統制も成功し、魔国連邦との友好関係も円滑に進められていた。
研究都市の形成と九十五階層の都市整備
ラミリスとヴェルドラが主導する研究拠点が、迷宮九十五階層に整備されていた。この区域にはドワルゴン、サリオン、ルベリオスからの研究者が集い、精霊工学・魔導科学・物理工学といった多彩な学問が研究されていた。特に吸血鬼族の研究は異端ながら貴重なデータを提供しており、魔法との比較において重要な役割を担っていた。研究者の安全管理と機密保持のため、通信・転移機能付きの特製腕輪が支給され、迷宮内での情報流出を防いでいた。
機密管理と研究所の防衛体制
研究拠点の設置は、天使による文明攻撃に備える意味も含んでいた。迷宮九十五階層は外敵の侵入が困難であり、階層の入れ替えによりさらに防御を高めることも可能であった。研究者の福利厚生も迷宮内で完結しており、完全な隔離環境によって安全と快適性の両立が図られていた。また、かつての研究施設であった封印の洞窟は魔素濃度の低下により閉鎖され、植物の栽培区画も移転された。
研究施設と秘密結社の発展
研究者たちは国境を越えた協力体制を築き、情報の共有と相互支援を行っていた。初期は各国の技術を隠匿する動きもあったが、リムルによる技術資料の一斉開示によってそれは解消され、結果として連帯感が生まれた。研究拠点ではラミリスとヴェルドラが中心的存在となり、まるで秘密結社のような独自組織が形成されていた。研究者たちは研究に集中できる環境に満足しており、知的欲求を満たすために国籍や種族を超えた協力が実現していた。
研究成果とリムルの視察
リムルは研究所の進展状況を確認するため、ヴェルドラとラミリスに案内されて施設を訪問した。研究所は森林型都市の中にあり、外観は年季を感じさせつつも趣のある佇まいであった。研究の成果について、リムルは今後の実用化と量産体制への期待を込め、視察に臨んだのである。
ミニチュア実験施設と魔導列車の基礎設計
研究施設内では、魔導列車の基礎設計に関する実験が進められていた。施設全体は風洞実験を含む環境実験室となっており、蒸気機関を動力源とするミニチュア列車が走行していた。この列車は、熱帯・砂漠・寒冷地など様々な環境条件下での動作確認に用いられており、動力源としては精霊魔法に基づく蒸気生成が採用されていた。蒸気機関は熱エネルギーを物理的な動力へ変換し、ピストンやタービンの回転を可能にしていた。
魔法と物理法則の分離と精霊魔法の活用
魔法には〈元素魔法〉と〈精霊魔法〉の二系統が存在し、前者は物理法則に従わない性質があるため、科学技術への応用が困難とされていた。一方、精霊魔法は自然現象に近い反応を示し、酸素消費や熱量発生など物理現象を伴う挙動が可能であった。リムルはこの特性に着目し、精霊魔法を用いた動力炉「精霊魔導核」の発案に至った。カイジンや技術者たちはこの理論に基づき、魔導列車の動力炉開発に着手し、一定の成果を上げていた。
紙の試作と研究環境の発展
実験に用いられる資料用紙には、ガビルの部下たちが植物繊維から製造した自家製の紙が使用されていた。東方帝国との取引がない中で独自開発されたものであり、その品質は高く評価されていた。研究者たちは、動力効率や負荷計算、連続稼働時間などのデータを詳細に記録しており、ミニチュアの実験結果が実物製作の指針となる水準にまで達していた。
魔導列車零号の公開と精霊制御技術の実装
研究施設にて、完成した試作機「魔導列車零号」が披露された。この列車は魔鋼製の車体を有し、火炎の中位精霊を炉内に召喚し、〈刻印魔法〉によって制御する方式で動力を得ていた。従来の呪術師常駐案ではなく、自動制御方式の採用により常用運行の実現が視野に入った。召喚および維持にはラミリスの協力が不可欠であり、精霊関係の優位性が顕著に現れた事例となった。
魔素循環型エネルギー機構の実現
完成した「精霊魔導核」は、魔素を熱エネルギーに変換してタービンを回す仕組みを有していた。その上で発生した電力を蓄積し、照明などに利用することが可能であり、内部の電力供給に成功していた。大気中の魔素を主な燃料とし、魔石を補助的に使用することで半永久的な稼働も視野に入る仕組みであった。従来の物理技術と魔法技術を融合した新たな動力システムが、この段階で確立されたのである。
魔法系統の誤解と技術的な進展
ベスターら技術者は、〈元素魔法〉と〈精霊魔法〉を混同していたことで実験失敗を重ねていたが、聖霊の守護巨像の実物観察を契機に誤解が解け、技術的飛躍がもたらされた。〈精霊魔法〉により召喚された精霊を核に使用することで、精霊魔導核が安定稼働することが判明し、失敗の要因が構造的な誤認であったことが明らかになった。
祝賀会と研究者達の団結
魔導列車零号の完成を祝して、カイジンの提案により研究者達の慰労会が開催されることになった。リムルの裁量で高級店を貸し切り、全職員を招いた宴が開かれることとなった。吸血鬼族を含む多様な種族の研究者たちも一体感を見せ、親睦が深まった。なお、ラミリスの飲酒は厳しく止められたが、場の雰囲気は終始和やかであり、研究成果と団結力を実感する機会となった。
第二章 新しい仲間達
冥界におけるディアブロの暴走
ディアブロは精神世界である冥界において、他の悪魔たちを圧倒的な力で蹂躙していた。弱者は逃げ去り、有力な者は徒党を組んで抗戦するも全く歯が立たず、ディアブロの前に屠られていった。精神生命体である悪魔たちは時間と共に復活可能であるため、ディアブロは容赦なく力を振るい続けた。今回の遠征は、彼に匹敵するかつての仲間を勧誘することが目的であり、任務を終えるべく彼はその場から瞬間転移して姿を消した。
鉄道敷設と技術開発の進展
現地調査を経て、鉄道敷設に関する状況が整理された。複数の国を繋ぐ計画があり、クシャ山脈のトンネル開通を含めた大規模な工事が必要とされていた。さらに、海への鉄道接続による海産物流通の拡大も目指されていた。並行して列車開発も進み、試作機の完成により開発は新たな段階に入った。動力炉は完成していたが、乗り心地や騒音対策といった課題が残されており、研究者たちは日々改良に努めていた。
研究活動と国家予算の投入
研究には潤沢な国家予算が投入されており、研究所への出入りを通じて異世界人としての知識が重宝されていた。質問の難易度によっては智慧之王が対応し、量子コンピューター以上の処理能力でサポートしていた。日中の研究活動後は街に繰り出し、議論を交わしつつ交流を深めていた。また、ラミリスの収入は迷宮運営によって非常に高く、国庫からの支給を超える利益を得ていた。
依代の製作と人員不足
リムルはディアブロとの約束を果たすべく、依代の製作に本格的に取り掛かった。助手はラミリスであり、彼女も聖霊の守護巨像の製作に従事していた。カイジンは列車開発で多忙なため、ベスターが単独で魔装兵の開発を進める中、ラミリスの補佐にも手を貸していた。こうした状況を受け、リムルは人材の確保を検討することとなった。
執務とディーノの来訪
執務室では、智慧之王の補佐を受けながらリムルが迅速に書類を処理していた。休憩を取っていたところ、来訪者として魔王ディーノが現れた。過去の宴で訪問を予告されていたが、本当に来るとは予想外であった。ディーノは礼儀を欠いた態度で現れ、居候を希望していたが、リムルは即座に拒否した。
ディーノの目的とギィの手紙
ディーノは家も金もなく、魔王ダグリュールから追い出された結果、ギィに勧められてリムルを頼ってきたと語った。証拠としてギィからの手紙を提示し、その真偽は間違いなかった。リムルはギィを敵に回すことを避けるため、ディーノの居住を容認せざるを得なかった。
ディーノの任務と助手任命
ただし、居候を許可する代わりに労働を課す方針を示し、ディーノにはラミリスの助手を命じることにした。ラミリスは人手不足であり、ディーノが彼女に頭が上がらない点も考慮された。ディーノは不承不承ながら了承し、リムルは彼を研究所へ案内することを決めた。こうして、厄介な存在を抱えつつも、リムルは現状を利用し前向きに対処する道を選んだ。
ヴェルドラの魔素制御とディーノの驚き
地下百階層を訪れたリムルとディーノは、ヴェルドラの部屋に魔素が充満していることに気づいた。リムルはヴェルドラが魔素制御を習得したと説明し、以前の暴君ぶりを知るディーノはその変化に驚愕した。リムルは彼の変化を煽てによって導いたと明かし、ミリムやヴェルドラとの過去のやりとりを交えながら、我儘な魔王達の実態をディーノに語った。ディーノはそれを聞いて困惑し、最終的には話をまともに聞かなくなった。
研究所での新たな協力体制
研究所に到着したリムル一行は、ヴェルドラがラミリスの手伝いをしている様子を目にし、ディーノは驚愕した。ラミリスはヴェルドラを上手く煽てて作業を任せており、研究の手が足りない状況を補うべく、ベスターも百階層に呼び寄せていた。ベスターは自分の研究を中断しながらも、今の研究内容に強く引き込まれていた。ディーノは助手として紹介され、やる気のない態度を見せたが、ベスターの熱意に押され、最終的には作業に取り組むことになった。
培養カプセルの設置と成果
リムルは千体の依代を作成するため、魔素を活用した培養カプセルを用意していた。これにより魔物を人工的に発生させ、強靭な肉体を得ることが狙いであった。だが、ラミリスが独自の発想で〝精霊魔導核〟や〝擬似魂〟を組み込んでいたことが発覚し、リムルはその手間に驚かされた。ラミリスの精霊工学の知見と努力によって、依代の性能は想定を大きく超えるものとなっていた。
研究の進行とディーノの適応
実験が進む中、ディーノとベスターは武器の検証も行っていた。孔空き武器と魔玉の組み合わせを通じて、聖霊の守護巨像の改造にも役立てようとしていた。ディーノは遊び感覚ながら実験にのめり込み、当初の「働きたくない」という姿勢からは考えられないほどに協力的となっていた。
ヴェルドラによる魔素注入実験と新素材の発見
ある日、ラミリスの依頼により、ヴェルドラが直接魔素を培養カプセルに注入した。その結果、骨格に結晶化していた魔素が変質し、新たな金属「竜気魔鋼」が誕生した。この変化により、依代はかつてない強度を得たが、同時に設備が損壊する事態にもなった。実験の制御を失いかけたが、リムルの介入により収束された。
ラミリスの真意とリムルの支援
ラミリスが焦って依代を完成させようとしていた理由は、樹妖精や樹人族たちに肉体を与え、自立行動を可能にするためであった。リムルはその思いを受け止め、ディアブロ用の依代の一部を先に彼女らに提供することを了承した。さらに、霊樹人形妖精として進化させる提案をし、トレイニー達の喜びを引き出した。
人手不足と迷宮運営の改善策
ラミリスの迷宮では人手不足が深刻であり、肉体を持たない樹人族では活動に制限があった。リムルはこの課題を依代で解消しようとし、また樹妖精たちには自立型の木製人形を提供する意向を示した。これにより、迷宮の運営体制は強化され、トレイニーやその配下達の戦力も向上する見通しとなった。
ラミリスとのやりとりと研究への期待
ラミリスはリムルがトレイニーに丁寧に話すことに不満を漏らしたが、リムルはそれを軽く受け流した。依代の完成によって、研究と迷宮運営はさらに効率的になると見込まれ、チームの士気も高まりつつあった。
ディーノとベスターの作業再開
休憩後、ディーノは意気揚々とベスターを伴い作業へ戻っていった。ディーノは働いている自分に多少の誇りを持ちつつも、依然として場に不慣れな様子であった。リムルも自身の作業に戻ろうとしたが、ヴェルドラが新たな願いを持ちかけ、場が再び騒がしくなった。
ヴェルドラの助手候補とイフリートの存在
ヴェルドラは自らの助手として、かつてリムルの胃袋内に隔離されていた上位精霊イフリートを復活させることを望んでいた。イフリートはヴェルドラとの交流によって協調的になっており、魔導列車用のサラマンダー召喚にも協力していたという。リムルは当初警戒を示したが、ラミリスの助言やヴェルドラの熱意、そして実利性を認め、復活を許可した。
イフリートの復活と受肉
イフリートの依代には、ヴェルドラの魔素が浸透した竜気魔鋼が使用された。智慧之王の補助のもと、イフリートの魂はその器に融合され、驚くほど美しい女性の姿で顕現した。元の姿とは異なる容姿に困惑するリムルに対し、イフリートはヴェルドラの影響による変化であることを説明した。
カリスへの命名と進化
ヴェルドラはイフリートに「カリス」という名前を授けた。魂の回廊を介した名付けにより、カリスは災厄級の存在から一気に進化し、「炎の精魔霊王」となった。精霊に魔的要素が融合し、肉体を持ったことで、カリスの魔素量は魔王級に達し、非常に強力な存在となった。
カリスの忠誠と役割の明確化
復活したカリスは、レオンへの忠誠はすでに過去のものであり、今後はヴェルドラに仕えると明言した。シズとの関係にも反省の念を示し、リムルやヴェルドラへの敬意を抱いていた。リムルはその態度に満足し、正式に仲間として迎え入れる決断を下した。
霊樹人形妖精と仮魔体の完成
リムルは作業を進め、木製の霊樹人形妖精を自ら彫刻し、樹妖精たちを進化させていった。これにより、迷宮内で遠隔行動が可能な仲間が増加した。また、樹人族用の仮魔体も完成が近づいており、百名以上が新たに活動可能となる体制が整えられた。効率優先の構成で、各個体が憑依後に微調整する運用となっていた。
仕事の引き継ぎとリムルの課題
人手が増えたことで迷宮の運営にも余裕が生まれ、トレイニーは深く感謝の意を示した。ラミリスとも協力体制を確認したリムルは、残された政治的・行政的業務のため執務室に戻ることとなった。幹部同士の調停や犯罪者の処遇、日々の決裁など、課題は山積みであり、人材の育成と任務の分担が今後の課題として浮上していた。
ディアブロの帰還と応接室の準備
ディアブロが見知らぬ者を伴って帰還するという報せを受け、リムルは応接室にて面会の準備を整えた。専属の侍女たちは緊張しつつも丁寧に対応し、リムルは茶の用意を命じた。シオンとシュナはそれぞれの任務に就いており、応接はリムルが単独で行うこととなった。
三人の女性悪魔の登場
ディアブロは、リムルに面会させたいと三人の女性を連れて現れた。彼女たちは一見普通の人間に見えたが、智慧之王の解析により、上位魔将であることが判明した。彼女たちはそれぞれ二百名の配下を率いており、リムルに忠誠を誓って配下に加わることを申し出た。
追加の配下とその規模
三人以外にも、七体の悪魔がディアブロに選ばれ、各々百体ほどの配下を伴っていた。結果として、七百体もの悪魔がディアブロの配下として魔国連邦に加わることとなった。ディアブロは自らの働きを誇らしげに語ろうとしたが、リムルはそれを制し、速やかに紹介を進めるよう指示した。
迷宮内での召喚と上位魔将たちの顕現
召喚に適した場所として迷宮内が選ばれ、ディアブロの号令のもと七体の悪魔とその配下が姿を現した。うち六体は上位魔将であり、もう一体も特殊な個体であった。彼らの中にはディアブロに対して挑んだ者もいたが、最終的には服従を誓っていた。
悪魔界における階級と評価基準
悪魔族には明確な階級制度が存在しており、古い時代に生まれた者ほど権能に優れていた。三人の女性は支配者階級に属し、他の悪魔を従えるに相応しい力を持っていた。ディアブロもまたその階級に属する存在であった。
悪魔達の受肉とリムルによる調整
リムルは悪魔達を『暴食之王』で捕食し、擬似魂に統合することで受肉させた。特に三人の女性には人間らしさを強調した外見調整を施し、魔鋼の骨格に金を加えて神輝金鋼へと変質させた。彼女たちはその仕上がりに感謝し、忠誠を誓った。
命名と進化による強化
リムルは三人にそれぞれテスタロッサ、ウルティマ、カレラと名を与えた。これにより三人は悪魔公へと進化し、さらにその腹心たちや他の六名にも次々と名付けを行い、大半が上位魔将あるいは悪魔公へと進化した。これにより、魔国連邦には前代未聞の強大な戦力が加わることとなった。
大量命名の完了と総戦力の把握
培養カプセルに蓄積された魔素を利用することで、リムルはわずか二日で七百体以上の悪魔全員に名を与えた。その多くが上位悪魔に進化し、少数は上位魔将へと成長を遂げた。すべての悪魔が忠誠を誓い、リムルの指揮下に入った。
ディアブロへの信頼と任務の委任
テスタロッサが代表して感謝と忠誠を表明すると、リムルはそれに頷いた。そして、これらすべての責任をディアブロに委ねることで、自身の役割を果たしたと内心で納得した。リムルは、この事態の収束をディアブロに託すことにしたのである。
三人娘の本音と過去の忠誠事情
テスタロッサ、ウルティマ、カレラの三人は、初めからリムルに忠誠を誓う意思を持っていたわけではなかった。彼女たちはディアブロとの古い因縁により一時的に協力するつもりであり、リムルという存在には疑念すら抱いていた。だが、リムルが自分たちの正体を見抜いたうえで特別扱いをせず、その上で名前を与えたことによって、彼女たちの心境は一変した。
黒色軍団の実力と構成
三人娘を頂点とする悪魔たちは、魔王すらも圧倒する存在であった。中でもモスとヴェイロンはそれぞれ数万年と四千年にわたり無敗を誇る先史種であり、他の腹心たちも侯爵から男爵に相当する強さを備えていた。彼らの大半は転生を繰り返して成長を遂げた強者たちであり、ユニークスキルを持つヴェノムのような特殊個体も含まれていた。これらの悪魔がリムルに名を与えられたことで、規模こそ千に満たぬながらも恐るべき破壊力を持つ「黒色軍団」が誕生し、魔国連邦の象徴的戦力として世界にその名を知らしめることとなった。
三人娘の忠誠とその動機
テスタロッサはリムルの存在に興味を抱いたことを語り、長きにわたる権謀術数の戦いよりも、リムルを見守ることの方が面白いと感じたと明かした。ウルティマもまた拷問よりもこの国での活動に興味を示し、カレラは自身の威圧を受け流したリムルの器に惹かれ、忠誠を誓うことを決意した。彼女たちはディアブロに敵意を抱いていた過去も明かしたが、今では名に誇りを持ち、心からリムルの配下となる覚悟を示した。
ディアブロとの駆け引きと命令系統の形成
三人娘はディアブロに対しても対等な立場を崩さず、指揮下に入ることを認めつつも、いずれは彼を凌ぐことを目標に掲げた。ディアブロは内心の苛立ちを抑えながらも、彼女たちの協力を受け入れた。結果として、リムルの知らぬ間に彼女たちはディアブロの指揮下に入り、独自の命令系統が形成されていた。
リムルの困惑と責任の丸投げ
後日、ディアブロはリムルに三人娘の忠誠と支配下への編入を報告した。リムルはその報告に困惑し、あくまでディアブロが招いた存在である以上、全責任を彼に預けるという姿勢を取った。真偽の不明な報告に半信半疑ながらも、リムルは問題を深く追及せず、気楽に構えることを選んだのである。
第三章 不穏な気配
三権分立を担う悪魔三人娘の登用
リムルはディアブロと共に、悪魔三人娘――テスタロッサ、ウルティマ、カレラ――の職場配属を協議した。外交武官、検事総長、最高裁判所長官という三つの重要役職に彼女らを任命する提案をしたところ、三人はいずれも快諾した。各役職の責任は重く、幹部からの反発も予想されたが、それらはディアブロの抑制に委ねられた。テスタロッサは国家法を暗唱するほどに精通しており、その知識と姿勢が評価され、外交武官に内定した。ウルティマも法典を記憶しており、捜査への適性が認められた。カレラは公平な裁きを強調し、司法長官としての資質を示した。こうして三人の登用が決定し、魔国連邦は法治国家としての制度整備を急速に進展させた。
悪魔たちの職務適性と人間関係
テスタロッサは法令理解と交渉能力に長け、国家の威厳を損なわずに外交任務を遂行できる人物として信頼を得た。ウルティマはログルドと良好な関係を築き、彼を「おっちゃん」と呼び慕うなど親和性を見せた。一方、ログルドは彼女の正体を知らず、無邪気に接していた。カレラは司法府を正式な独立機関へと整備し、ルグルドの監視下で真面目に職務をこなしていた。賄賂や暴力に屈しない態度が評価され、彼女の登用も正当化された。
情報収集能力とモスの活用
テスタロッサ配下のモスが各国の情勢を調査し、国家間の反応を把握した。分身体を用いた情報収集によって、魔国連邦に対する疑念や利権を狙う国家の動向が明らかになった。この情報を活用し、テスタロッサが外交対処にあたることとなった。リムルは必要に応じてソウエイとの協力を進める方針を示し、情報戦の体制を強化した。
建設された学校と教育制度の紹介
リムルは完成した学校を視察し、子供達の様子を見守った。この学校では人間と魔物の子供が共に学び、大人も識字や計算を習っていた。教育は職業選択の幅を広げるための手段とされ、子供達も漫画などを通して学習意欲を高めていた。特にケンヤは人気の中心でありつつ、クラスの実質的な支配者はアリスであった。二人のやりとりは周囲の生徒にも楽しまれており、学園生活は平和に保たれていた。
教育現場と教師陣の連携体制
教師陣は冒険者の引退者や商人出身者で構成されており、聖騎士も協力して授業にあたっていた。校長は元ゴブリン村の長老であり、魔物の子供達の差別を防ぐ役割を担っていた。聖騎士フリッツも教育に貢献していたが、ヒナタの登場によって緊張が走る一幕もあった。彼の軽率な発言がヒナタの誤解を招き、その場の空気は一変したが、学校全体としては順調な運営がなされていた。
迷宮内での子供たちとの模擬戦闘
ヒナタの来訪により、ケンヤ達五人とクマラが迷宮に集合した。彼らの成長を確認するため、リムルは分身体を使って模擬戦を行った。ケンヤは聖騎士を凌駕する剣技を習得しており、リョウタは水と風の精霊魔法を巧みに使い分けた。ゲイルは堅実な戦い方で土魔法による守備を強化していた。アリスは魔鋼製の人形を複数操り、加えて浮遊剣による一斉攻撃も可能にしていた。クマラは九本の尻尾から八体の魔獣を召喚し、連携も完璧であった。クロエは剣技において他を圧倒し、リムルさえ本気で応じなければならないほどの実力に成長していた。
子供たちの能力と指導方針の再確認
模擬戦後、子供たちの実力についてヒナタやハクロウが高く評価した。特にクロエの才能は飛び抜けており、剣技はヒナタの型に酷似していた。ケンヤの構えはマサユキから教わったものであったが、技としては未熟な部分もあり、ハクロウが今後指導を続けると表明した。ヒナタは、子供達が歪まずに成長するよう、リムルにも引き続き注意を促した。
音楽交流会に向けた準備と同行の決定
ヒナタは本来の用件として、ルミナスが音楽交流会の開催を強く望んでいることを伝えた。楽団の移動については、聖騎士による転移魔法の活用が提案された。これにより、タクト率いる楽団の移動が現実的となり、開催が決定した。また、クロエの発言をきっかけに子供達全員が同行を希望し、最終的にリムルもこれを許可した。同行に際し、リムルは宿題を課すことでバランスを取る対応を示した。
ルベリオスへの到着と晩餐会の様子
一行はルベリオスに到着し、ヒナタの案内で王族級の歓待を受けた。タクト達は緊張しながらも丁寧な待遇と食事に驚きつつ対応し、子供達も豪華な晩餐に満足していた。翌日の調律、練習日程、本番の段取りも整い、タクトはこれまでの努力に基づいた自信をリムルに示した。
ルミナスとの深夜会談と警戒情報の共有
晩餐会後、ルミナスの使いによりリムルは密会に招かれ、シオンとディアブロを伴って出向いた。会談にはルミナス、ルイ、ギュンターが同席し、グランベルの動向について報告がなされた。グランベルは元勇者であり、西方諸国の平和を築いた立役者であったが、現在は不穏な動きを見せていた。しかも、神楽坂優樹との接触も確認され、何らかの陰謀が進行しているとされた。ルミナスは、ヒナタの肉体が進化に追いついていないことも理由に、あえて彼女を同席させなかった。
勇者グランベルの真意と警戒すべき動向
ルミナスの説明によれば、グランベルは長きに渡り人類の生存圏の拡大と維持を担い、西方評議会の設立にも尽力してきた。しかし、マリアベルの死により抑制が外れた可能性が高く、現在は不明な目的で行動を開始していると見られていた。ルミナスは、かつて味方として温存していたグランベルが敵に回った今、密かにルベリオスへ侵入する可能性があるとして、リムルに協力を求めた。
ユウキとの関係と警戒態勢の確立
神楽坂優樹がグランベルと手を結んでいるという情報も提示され、今後の対処が急務とされた。シオンは二人の護衛がいれば問題ないと楽観視し、ディアブロも相手を軽視した姿勢を見せたが、ルミナスは慎重に警戒を呼びかけた。今回の演奏会が無事に終わるまで、リムルたちは陰ながらの守り手として行動することが決定された。
グランベルの正体と脅威の再確認
ルミナスは、グランベルが既に勇者として覚醒しており、その強さは旧来の魔王たちを凌ぐ可能性があると語った。その存在は人類の守護者であると同時に、今や制御不能の脅威となり得る存在であった。ルミナスは長らくグランベルを監視しつつ協力関係を維持していたが、今後は敵対の可能性が高まっていると判断し、リムルへの警戒と協力を要請した。
今後の展望と演奏会への期待
演奏会当日までに事件が起こらないよう、各自が警戒を強めることとなった。ルミナスはグランベルの思惑や行動に関して全てを明かさなかったが、状況は切迫していた。リムルは、タクト達の努力を無にしないためにも、演奏会の成功を最優先とする姿勢を取った。こうして緊張感を孕んだ夜の会談は静かに幕を下ろした。
音楽祭当日の開催と各勢力の参集
音楽祭当日、各国の要人がルベリオスの式典会場に集結した。神聖法皇国ルベリオスの宗教的権威を高める意図もあり、各国代表は列席を義務づけられていた。トラウマを抱えたタクトは緊張しながらも指揮に集中し、演奏は順調に開始された。クロエは聴衆を前にしたスピーチも堂々とこなし、その場に居合わせた者たちの感嘆を誘った。
潜伏する脅威と戦力の配置
リムルとルミナスは、演奏会を警戒しながら見守っていた。ディアブロは潜伏して周囲を監視し、ヒナタやフリッツも厳戒態勢で警備にあたっていた。グランベルが潜伏しているとの確信があり、各自が一瞬の油断も許さない状態にあった。会場には多数の国の代表が参列し、万が一の場合、外交的にも取り返しがつかない事態となることが懸念された。
グランベルの奇襲と勇者の覚醒
演奏終盤、グランベルは満を持して登場した。彼の目的はルミナスの抹殺であり、その手段として時間停止魔法を発動した。しかし、勇者の存在であるクロエにより時間停止は破られた。グランベルは勇者の剣を手にしてクロエに襲いかかったが、クロエもまた勇者としての覚醒を遂げ、真なる力を発現させた。両者の戦いは凄絶を極めた。
ディアブロとルイの対決と優樹の策謀
一方、別行動をとっていたディアブロはルイと共に、グランベルの協力者と対峙していた。その中には神楽坂優樹の気配が感じ取られたが、彼自身は姿を見せなかった。代わりに異空間より召喚された魔人が姿を現し、ディアブロたちの前に立ちはだかった。この敵はかつてない力を持ち、ルイでさえその実力に驚愕した。ディアブロは全力で応戦し、被害を抑えるため単独での交戦を選んだ。
ルミナスとヒナタの戦線離脱と後方指示
ルミナスは自らが狙われていることを悟り、最小限の行動に留めた。ヒナタも冷静に指示を出し、クロエと共にグランベルに対抗する態勢を整えた。会場の外では、聖騎士団が警備と避難誘導を行い、一般人への被害を最小限に抑える努力が続けられた。
クロエの逆襲とグランベルの敗北
クロエは勇者の剣に宿る意志と完全に同調し、時間停止すら無効化する力を獲得した。彼女はグランベルの剣術を正面から受け止め、やがてその隙を突いて剣を折り、致命傷を与えた。グランベルはクロエの覚醒を見届けながら、自らの目的が果たせなかったことを悟り、その場に倒れた。
演奏会の終結と犠牲者の記録
戦闘終了後、ルベリオスは被害状況の確認と後処理に追われた。リムルは演奏会の意義と犠牲を重く受け止め、タクトや子供達の努力が無駄とならぬよう、慰霊と成果の両立を目指す決意を固めた。ルミナスもグランベルの遺志を引き継ぎ、西方の安定のための新たな体制構築を模索し始めた。
リムルの覚悟と新たな外交戦略
一連の事件を受け、リムルは優樹の動向と新たな敵勢力の存在に強い危機感を抱いた。今後は表と裏の両面から警戒を強化し、仲間たちとともに綿密な情報網と対応戦力を整えていく必要があった。グランベルという人類側の大義を体現した存在が失われた今、新たなバランスと秩序を築く責任がリムルに課せられようとしていた。
魔王レオンの動向とクロエの可能性
ユウキは、魔王レオンの目的が無作為な子供ではなく、異世界から来た特定の人物にあると断定した。その候補としてクロエが浮上し、因果律の観点からその可能性が強まった。カガリや道化連の面々は、ユウキの情報操作の危険性と目的の不明瞭さに疑問を呈したが、ミーシャの説明により、レオンとの関係を断つことが今回の行動の核心であると明かされた。
ロッゾ一族を利用した策略と責任転嫁
ユウキはレオンとの取引を打ち切る口実として、ロッゾ一族を黒幕に仕立て上げる計画を示した。異世界人の子供達の供給源を失わせ、取引の継続不可能な状況を演出し、最終的に責任をロッゾ一族に押し付けるという構図であった。これによりレオンの警戒を回避しつつ、再交渉の余地を残す狙いがあった。
謎の守護者ラズルの存在と戦力分析
ユウキは、グランベル直属の存在として北方を守る謎の男「ラズル」の情報を明かした。その実力はギィ・クリムゾンの配下と渡り合うほどであり、ダムラダにすら警戒されていた。仮面と鎧に包まれたこの男は人間ではなく、ロッゾ一族内でも異質な存在として認識されていた。
グランベルとの交渉と聖櫃の存在
ユウキはグランベルと秘密裏に会談し、マリアベルの死とその経緯を正直に伝えた。グランベルはユウキに対し、ルミナスが隠す秘宝「聖櫃」の存在を語り、それが封印された最強の勇者であると明かした。この情報を共有することで、グランベルはユウキに共闘を持ちかけ、ルミナスへの反旗を翻す決意を示した。
魔王リムルへの対抗と未来への警鐘
グランベルは、リムルが世界に混乱をもたらすと予見し、元勇者としての勘から討伐の必要を訴えた。ユウキは懐疑的であったが、聖櫃の存在とその価値を見極めるため、協力に乗り出す選択肢を真剣に検討し始めた。
大聖堂を巡る決戦と三巨頭の暗躍
ユウキと三巨頭は、グランベルとともに大聖堂を舞台にした作戦を練り上げた。ラプラス、フットマン、ティアらはそれぞれの役割を任され、ユウキ自身も現地に同行することで万全を期す構えを見せた。作戦の目的は、聖櫃の奪取と術式の解析による勇者支配であり、それが成功すれば世界征服への足掛かりとなる。
レオンとリムルへの偽情報工作
ティアには、魔王レオンによって子供が狙われていると見せかける役割が与えられた。この情報を魔王リムルに流すことで、ユウキ達がロッゾに利用された側であると誤認させ、信用を得る狙いであった。ユウキはレオンの動きと合わせて混乱を誘い、戦場の支配を図った。
作戦の本格始動と決戦の予兆
グランベルとユウキは、綿密な打ち合わせを終え、ついに行動を開始した。ラズルを動かし、聖櫃の奪取を企図するこの計画は、ルミナス、リムル、レオンを巻き込む大規模な抗争の幕開けとなった。ユウキはその渦中において、最大の戦力を手中に収めるべく、慎重かつ大胆に動く決意を固めたのである。
人類の守護者としての過去と変遷
グランベルは千年以上にわたり人類のために尽力し続けてきた。かつては理想と仲間への誓いに基づいて行動していたが、幾度も繰り返された裏切りと仲間の死により、その理想はやがて歪み、上位者による人類支配と管理という思想へと変質していた。それでもなお、人類の平和を願う信念だけは揺らいでいなかった。
マリアベル喪失による絶望と狂気の発露
グランベルは、マリアベルを希望とし人類統一を志していたが、その死によって未来への光を完全に喪失した。魔王たちが勢力を増す中、人類が生存圏を維持するにはもはや統一と魔王への対抗しか道はないと考えていたが、後継者も失い、その実現は不可能となった。失われた理想とともに、彼は絶望の淵へと沈み、世界に対する憎悪と諦念を募らせていった。
増大する脅威と限界の認識
魔王ギィ・クリムゾンやダグリュールといった魔王の力は圧倒的であり、さらに東の帝国には人智を超えた存在が潜む可能性があった。そうした中で、人類を統べ導くべき調停者を失ったことは致命的であった。人類は欲望のままに自滅へと突き進む種であり、かつて愛した妻や子供たちをも奪われたグランベルには、もはや希望を託す先が残されていなかった。
崩壊した信念と世界への断罪
最後に残ったのは、この世界そのものに対する呪詛であった。奪われ続けた末に、グランベルは世界の滅亡を望むまでに至り、自らの狂気を肯定していた。その精神は既に常軌を逸しており、迷いも後悔もなく、破滅へと突き進む覚悟を固めていたのである。
第四章 西方動乱
魔王レオンとエルメシアの会談
魔王レオンは、魔導王朝サリオンの天帝エルメシアと東屋にて会談していた。両者は旧知の仲であり、レオンが勇者として活動していた時代からの関係であった。エルメシアは親しげに接したが、レオンは時間の無駄を嫌い本題に入ろうとする。しかし、エルメシアのペースに巻き込まれ、甘い菓子を薦められるなど話はなかなか進展しなかった。
魔王リムルとの関係と誤解
レオンは、自身の元部下であった静江が魔王リムルと接触したことで、誤解が生じていることを明かした。リムルとの敵対は避けるべきと判断していたため、招待状を送る意向を示したが、エルメシアに話を遮られながらも本題に入っていった。彼女はすでに情報を掴んでおり、リムルが保護する子供達の中に探し人クロエが含まれていると告げた。
レオンの過去と覚悟
エルメシアは、レオンの無口で不器用な性格が、英雄シズとの信頼関係を築けなかった一因であると皮肉を込めて語った。レオンは自身の目的のためならば手段を選ばず、どんな悪名も受け入れる覚悟を持っていた。彼はかつて勇者であったが、今は魔王として目的の達成を優先していると語った。
西方での緊張と情報交換
レオンは、テンペストとルベリオス間の関係悪化を懸念し、エルメシアに情報提供を依頼した。彼女は、ルベリオスを襲撃する計画を進めるロッゾ一族の動きや、ギィの配下が暴走する可能性についても述べた。さらに、魔王ルミナスの協定順守や、ケルベロスの不透明な動きについても警戒を促した。
飛竜船での移動とエルメシアの忠告
エルメシアは、レオンを飛竜船で送ると申し出、ケルベロスの罠に注意するよう忠告した。レオンは了承し、エルメシアに原初の黄が消えたという重要情報を提供した。情報収集を得意とするエルメシアですら知らなかった事実に驚きを隠せず、レオンの存在価値を再確認することとなった。
ルベリオスへの襲撃と混乱の始まり
その日、ルベリオスの大聖堂にて、聖騎士見習いが敵襲を報告する。敵は百体近く、B+ランク相当の戦力を持ち、内部構造に精通した動きを見せていた。これはロッゾ一族と日曜師率いる七曜の仕業であるとヒナタが即座に断定し、聖騎士団の出動を命じた。
演奏を続けるタクト一行とシオンの叱咤
大聖堂内では、演奏のために集められたタクトたちが戦闘の音に怯えていたが、シオンの叱咤によって士気を取り戻し、美しい音色を奏で始めた。リムルは彼らの姿に誇りを感じ、演奏会の成功を強く望むようになった。
リムルの決意と戦場への突入
リムルは子供達の警護をシオンとディアブロに任せ、自らは戦場へと向かった。ディアブロは命令に素直に従い、リムルの行動を後押しした。ヒナタと枢機卿ニコラウスも同行し、大聖堂へと移動を開始する。
クライマックスへの進行
激しい戦闘が続く中、リムルは大聖堂へと転移し、指揮棒を振るタクトと、その演奏に応える仲間達の姿を見守った。子供達の安全を守りつつ、リムルは演奏会を成功させるため、戦場の混乱を収束させる決意を固めたのである。
大聖堂前の戦況とグランベルの登場
大聖堂の前では大規模な戦闘が発生し、ヒナタは老剣士グランベル・ロッゾと対峙していた。グランベルはロッゾ一族の総帥であり、只者ではない覇気を纏っていた。彼はルミナスの居所を突き止めるよう命じ、命令を受けた女性マリアは機械的に行動を開始した。リムルが友好姿勢を見せつつ挨拶するも、マリアベルの件で恨みを持つグランベルには通じなかった。
ニコラウスらによる迎撃とグランベルの強さ
ニコラウスと聖騎士団の隊長格であるレナード、アルノー、リティスの三人がグランベルに挑んだ。彼らは見事な連携を見せたが、グランベルは流れるような動きで余裕を保ち、ニコラウスの究極魔法「霊子崩壊」をも無効化した。彼は同じ技術を応用した「崩魔霊子斬」で逆に反撃し、ヒナタがかろうじてニコラウスを守ったものの、全員が重傷を負う結果となった。レナードらが命を落とさなかったのは、リムルが間一髪で絶対防御を展開していたためである。
ヒナタとグランベルの対峙と剣技の分析
グランベルはヒナタの奥義を使いこなすほどの実力者であり、伝説級以上の剣を所持していた。ヒナタは真剣勝負に臨むが、グランベルの実力は計り知れず、状況は予断を許さなかった。グランベルの実力と余裕ぶりからは、彼が聖騎士の隊長格を遥かに超えていることがうかがえた。
大聖堂の爆発と異世界人の襲来
戦いの最中、大聖堂から爆発音が響いた。そこには子供達とタクト一行がいたため、リムルは即座に行動を起こそうとするが、グランベルは複数の異世界人を召喚して進路を阻んだ。召喚された者達は、様々な人種と年齢層ながら高い魔素量を有し、呪言で支配されていた。リムルは彼等を殺すことを避け、一人ずつ呪言を解除し無力化する道を選択した。
リムルと異世界人の戦闘開始
リムルは『絶対防御』と『無限再生』を駆使し、時間をかけて異世界人たちを無力化し始めた。膨大な演算能力の一部を使いながら、周囲の戦況にも意識を向けていた。グランベルとヒナタの戦いは互角に見えたが、グランベルの剣は鑑定すら困難な強力な武器であった。
ラズルの正体とディアブロの苦戦
一方、大聖堂ではディアブロとシオンが黒い甲冑の男ラズルと交戦していた。ラズルは千年来のグランベルの相棒であり、蟲型魔獣の完全形態という特殊な存在で、シオンとディアブロを合わせた魔素量すら上回っていた。ディアブロはその異常に気付きつつも対応に苦慮していた。
作戦変更と指令の伝達
リムルはランガをシオンの影に送り込み、二人でラズルを相手取るよう命じた。ディアブロには、気になる空間の異常への対処を指示し、本人も納得の上で行動を開始した。リムルは、シオンやランガの力を信じ、冷静に戦局を分析しつつ異世界人の無力化を続けていた。
今後の戦局の展開
状況は緊迫していたが、リムルは各自に適切な指示を出し、最小限の被害で危機を乗り越えようとしていた。グランベルの強大な力、ラズルの脅威、そして異世界人の存在と、複数の脅威が重なる中、リムルは冷静に戦局を制御しようと努めていた。
ディアブロとシオンの分担と決意
シオンとディアブロは短いやり取りの中で互いを認め合い、役割を分担して行動に移した。ディアブロは自身の副官ヴェノムに子供達の護衛を命じ、シオンに戦場の対応を託し、自らは懸念する異常の源へと『転移』した。
原初の青レインとの対決
ディアブロが転移した先には、原初の青レインが待ち構えていた。二人はかつての因縁と確執を背景に激突する。レインはディアブロがギィと互角に渡り合った事実に嫉妬し、その自由な在り方を否定していた。一方ディアブロは冷徹にレインの攻撃をいなすと同時に、戦闘の最中に多段式の霊子崩壊魔法陣を描き上げ、レインを完全に封じた。
決着とディアブロの信念
魔法陣に捕らわれたレインは、悪魔にとって禁忌の霊子崩壊術式の行使に衝撃を受ける。ディアブロはそれを当然と切り捨て、リムルへの忠誠によって不可能を可能にしたと宣言した。そして、七条の光の矢を放ち、レインに制裁を与えた。
ルミナスの聖櫃を巡る攻防と侵入者たち
その頃、ルミナスは怒りを抑えながら最奥の間を守っていた。聖櫃の防衛を目的に、彼女は動かずに待機していたが、侵入者ラプラス、フットマン、そしてマリア・ロッゾの姿をした存在が現れる。挑発的な言動の末、ルミナスの命令でルイとギュンターがそれぞれラプラス、フットマンと戦闘を開始し、ルミナス自身はマリアとの対決に臨んだ。
聖櫃の突破とユウキの暗躍
戦闘により最奥の間が無人になった隙を突き、ユウキが姿を現した。彼は聖櫃の封印を見事に突破し、その中に眠る少女──〝勇者〟を発見した。少女には強力な結界が張られていたが、ユウキの能力には通じなかった。彼は少女を抱え上げ、聖櫃を破壊して脱出を開始した。
ユウキの誤算と決断の影
ユウキはグランベルの話を全面的には信用していなかったが、自らの才能への過信から協力を選択していた。聖櫃を破壊し勇者を連れ去ったユウキは、その行動の先に待つ結果について深く考えることはなかった。この選択が後に大きな波紋を広げることになるとも知らず、彼は満足げにその場を後にした。
異世界人との戦闘とその特異性
リムルは大量の“異世界人”たちと対峙し、彼らを殺さずに一人ずつ無力化していった。彼らは魔素や身体能力の面で高水準であり、Aランク相当の者すら含まれていたが、ユニークスキルを一切使用していなかった。そのため、彼らの攻撃は単調であり、リムルにとっては対処が容易であった。最終的にリムルは全員を解呪し、意識を奪って戦闘不能とし、その場を制圧した。
戦況の把握と仲間たちの奮戦
戦場を確認したリムルは、子供たちが無事であることを確認した。タクト一行は演奏練習を続け、ヒナタはグランベルと互角の戦いを演じていた。シオンとランガは蟲型魔獣ラズルと戦っていたが、ラズルの硬質な外殻と魔力妨害効果のため攻撃は通用していなかった。ラズルの実力は非常に高く、シオンとランガでは歯が立たない相手であった。
魔王レオンの出現と緊張の高まり
大聖堂の入り口に突如として魔王レオンが現れたことで、リムルを含む戦場の面々は動揺した。レオンは騎士団を伴っており、ただならぬ威圧感を放っていた。グランベルはレオンの到来を予期していたように振る舞い、彼が“異世界人の子供たち”の召喚に関与していると暴露した。リムルは激しく動揺し、グランベルの言葉に怒りを爆発させ、レオンへと殴りかかった。
レオンの対応とリムルの真意
リムルの拳をレオンは無防備に受け止めた。これにより、リムルはレオンの人柄と真意に一抹の信頼を抱いた。シズの最期の想いを伝えるため、そしてその真意を確かめるため、リムルはレオンと語り合う姿勢を見せた。レオンもまた、リムルの行動から信頼に値すると判断し、共にグランベルへの対策を講じようと構えた。
聖地の混乱とレオンの判断
レオンは戦場の混乱を確認し、自軍の騎士団が意図せず戦闘に巻き込まれていることを把握した。彼は部下に不殺を命じ、可能な限り死者を出さぬように配慮した。また、ルミナスの姿が見えぬ異常な状況に警戒を深め、この混乱がリムルと自身を戦わせる罠であると看破した。リムルが罠を見抜き、利用していることに気づいたレオンは、彼を信じる決断を下した。
ヒナタとグランベルの戦術戦
ヒナタはグランベルと熾烈な戦いを続けていた。ユニークスキル『簒奪者』によって一度奪った技を使おうとするも、グランベルはその技を再び使用してみせた。ヒナタの奥の手『強制簒奪』すら無効化され、技術的な優位を奪われていった。グランベルはヒナタの戦術を見抜いた上で、意図的に疲労を蓄積させる陰湿な戦法を採っており、ヒナタは消耗と焦燥を募らせた。
技量と経験の差
ヒナタは自らの分析能力を駆使していたが、経験に裏打ちされたグランベルの戦術には太刀打ちできなかった。技の奪取が通用しないと悟ったヒナタは、これ以上の簒奪を断念し、純粋な実力での決着を覚悟した。そして、互いに全力での激突を宣言し、戦闘は新たな段階へと突入した。
ディアブロとレインの戦闘とギィの登場
ディアブロは“霊子崩壊”によってレインを戦闘不能に追い込みながらも、彼女の正体が“遍在”であることを見抜いていた。本体を引き出すために大技を使い、レインを撃退した直後、魔王ギィ・クリムゾンが姿を現し、ディアブロと対峙した。両者は互いの真意を探りながらも余裕ある態度を崩さず、ディアブロはリムルに忠誠を誓ったことや進化の理由を語り、ギィはそれに苛立ちを隠せない様子であった。
評議会襲撃とヨハンの裏切り
イングラシア王都では、ヨハン・ロスティア公爵が五大老の一角として暗躍し、評議会を裏切って“緑の使徒”を呼び寄せた。彼の指示で王都の防衛結界が破壊され、“悪魔公”ミザリーが召喚される。評議会内ではパニックが広がるが、魔国連邦の代表であるテスタロッサが冷静に対処を始める。
テスタロッサとミザリーの対峙
召喚されたミザリーはテスタロッサの前で行動を止める。二人は互いに“原初”の悪魔であり、ミザリーはテスタロッサが受肉して“白”として進化した存在であることを認識していた。会話の中でミザリーは敵意を示さず撤退を選び、ジラードを含む“緑の使徒”の計画は瓦解した。
ジラードとアインの錯乱、ヨハンの失墜
ミザリーの撤退により、ジラードは現実を受け入れられず発狂し、アインと共に魔法審問官によって拘束された。ヨハンもまたテスタロッサの詰問により計画の失敗を認識し、錯乱状態となる。最終的に彼もまた断罪され、王国から処分されることとなった。
評議会におけるテスタロッサの地位確立
この一連の事件により、テスタロッサは王都を救った英雄として西方諸国評議会内での地位を確立した。軍事・政治の両面で圧倒的な信頼を得た彼女は、リムルの名代として西方の支配権を確固たるものとした。
ギィとディアブロの対話と原初の変動
一方、ディアブロはギィに対し、原初の紫(ウルティマ)と黄(カレラ)もリムルに仕えるようになったことを明かす。これにより原初三柱の均衡は崩れ、ギィは戦力バランスの変化に危機感を覚える。最終的にギィは直接リムルに会うことを決意し、ディアブロの挑発を受け流しつつその場を去った。
西方の動乱の終結と新たな不安
北方ではテスタロッサの配下シエンと魔導王朝サリオンの援軍により防衛戦が成功し、ギィの配下の悪魔達も撤退した。これにより西方動乱はひとまず収束を迎えたが、原初の悪魔たちがリムルの配下となった事実が示すように、世界の均衡は確実に変動しつつあった。真の動乱は、まだ始まったばかりであった。
ギィの過去と七柱の魔王の成り立ち
ギィは、世界が旧神の支配下にあった太古の記憶を振り返った。世界は創造神ルシアによって創られ、守護竜ヴェルダナーヴァ、魔神イヴァラージュ、人神ルミナスが存在していた。しかし、イヴァラージュの反逆により秩序は崩れ、創造神は姿を消した。イヴァラージュは神に敵対する勢力を築いたが、やがてヴェルダナーヴァの配下であるギィによって滅ぼされ、世界は神無き時代へと突入する。
この混乱の中、ギィは原初の悪魔たちを従え、暴虐によって世界を鎮圧していった。やがて七柱の魔王を“偽装”として設立し、各地の支配を委任。世界の秩序維持のための方便として魔王制度が機能するようになった。こうしてギィは、真なる王でありながらも、表向きはそのうちの一柱として君臨することになった。
ギィの思惑とディアブロへの疑念
ギィはディアブロの急激な力の成長を不審に思い、その背景にある“リムル”の存在に興味を抱いていた。原初三柱のうち、赤(ギィ)を除く紫(ディアブロ)・黄(カレラ)・白(テスタロッサ)が全てリムルの配下となったことは、世界のバランスを大きく揺るがす異常事態であった。
ギィはディアブロの挑発的な態度にも動じず、彼の本質を見極めようとしていたが、ディアブロはリムルの意志と恩恵によって力を得たと語り、その信仰心とも呼べる忠誠心を隠そうとしなかった。ギィはその姿勢に対して危機感を強めつつ、リムルがどこまでの存在であるのかを直接確認する必要があると判断した。
ギィと原初たちの再結集
ギィは古の盟友である原初の青ミザリー、緑レインを再び自らの配下として呼び戻し、彼らに命じて情報収集と監視を命じた。また、原初の悪魔たちの異変、特にリムルの影響で中立を失った彼らの動向を把握するため、ギィは表に出る決意を固める。
ルミナスの懸念とルイの報告
聖教会側では、聖騎士団長ルイが“異世界人”と“魔王リムル”の件についてルミナスに報告を行った。ルミナスは、自身の旧友であるギィとリムルとの接触が近づいていることを察し、世界の均衡が大きく変動しようとしていることに不安を募らせた。
リムルの決意と会談の準備
一方、リムルは自身の支配領域と“魔国連邦”の今後の外交を見据え、西方諸国との関係改善と支配の拡大を目的とした準備を進めていた。ヒナタとの和解を果たし、聖教会との衝突も回避した彼は、次なる局面として“ギィ・クリムゾン”との対話を選択しようとしていた。
動乱は収束しつつあるように見えたが、世界の深層で蠢く意志は、さらなる激変の兆しを見せ始めていた。
ヒナタの死とルミナスの覚醒
ルミナスは、死者蘇生が効かないヒナタの肉体を前に、魂が失われている事実を視認し、深い悲しみに沈んだ。グランベルの挑発により怒りが頂点に達した彼女は、感情の高まりと共に究極能力『色欲之王』へと覚醒し、その権能は「生と死」を司る力へと昇華された。しかしルミナス自身は、その力に何の価値も感じず、ヒナタを救えなかった無力さに苛立ちを覚えた。グランベルとの因縁に終止符を打つため、両者は戦闘を開始した。
死者蘇生の失敗と魂の喪失
死者蘇生が効果を発揮しなかった理由は、ヒナタの魂そのものが完全に消失していたためであった。通常ならば魂が残っていれば復元可能なはずが、今回は例外であった。周囲の者たちはこの異常事態に動揺しつつも、戦場での混乱に対応するため意識を切り替え、冷静な行動をとるよう努めた。
爆発と未知の脅威の出現
大聖堂が突如として爆発し、異常なまでの存在力を持つ者が出現した。その存在は上位精霊に近く、ヴェルドラと同等の力を検知された。その正体は、生まれたままの姿で現れた少女クロノアであり、極めて危険な存在であった。クロノアの出現によって、戦況は更なる混迷を迎えた。
ユウキの登場と中庸道化連の暗躍
封印が解かれたことに対しルミナスは怒りを示し、その背後にはユウキがいた。ユウキは自らの特異体質『能力殺封』によって聖霊力の封印を解いたと語り、さらに中庸道化連のラプラスおよびフットマンも姿を見せた。ユウキとグランベルは互いに言葉を交わしつつ、状況の成り行きを見守っていた。
クロノアの正体とグランベルの狙い
グランベルは、クロノアが「勇者」であって「勇者ではない」、すなわち邪悪の化身であると明かした。彼はユウキを利用し、封印を解かせることで無敵の存在を生み出すことに成功したと高らかに宣言した。ルミナスの焦燥も明らかとなり、事態の深刻さが浮き彫りになった。
クロノアの覚醒と圧倒的戦力
クロノアが目を開いたことで戦闘が開始された。彼女は漆黒の鎧衣を纏い、美しいが神話級に匹敵する細剣を召喚した。その攻撃力は非常に高く、リムルの展開した『絶対防御』をも貫通する可能性があった。リムルは冷静に回避し、辛くも直撃を避けた。
ユウキへの攻撃と能力の限界
クロノアの次なる攻撃はユウキを狙い、彼に軽い傷を負わせた。『能力殺封』があっても物理攻撃に対しては無力であることが露呈し、ユウキの脆さが浮き彫りになった。リムルはこの情報からクロノアの脅威を改めて実感した。
ヴェルドラへの救援要請
リムルは最終手段として『暴風之王』の力を使い、ヴェルドラを召喚する決断を下した。魂の回廊を通じて本音を伝えたことで、ヴェルドラはそれに応じ、力を貸すと応えた。大聖堂に、暴風が吹き荒れる直前の瞬間であった。
クロノア出現による混乱とレオンの覚醒
レオンは、長年探し続けた幼馴染である少女がクロノアであると確信しつつも、その存在が目前で消失したことで動揺していた。その混乱が原因となり、戦場での警戒が甘くなった彼は、壁際のティアから放たれた魔力弾によりクロノアの標的とされてしまった。ユウキ一行の計画が成功し、クロノアの攻撃がレオンに向いたことで、彼らは退却の機会を得ることとなった。
ユウキ一行の撤退と魔法結界の破壊
ティアの行動が功を奏し、ラプラスは魔法を準備、ユウキは国家規模の魔法結界を破壊してルベリオスからの脱出を実行した。中庸道化連の面々と共に、ユウキは勝利を確信しつつ戦場を離脱した。敵対関係が明確となった今、次に対峙した際は容赦ない戦いになることを示唆しつつ、彼らは戦場から姿を消した。
ユウキの離脱とリムルの戦況認識
ユウキらの撤退を確認したリムルは、背後の脅威が減ったことを前向きに捉え、目の前の敵に集中する体勢を整えた。西方世界においては、ルミナスの支持を得られればユウキの影響力は低下すると見込んでいた。また、ユウキが対峙していたグランベルがルミナスと交戦中である事実も、有利な状況を形成していた。
ヴェルドラの参戦と旧敵との再戦
リムルはヴェルドラを召喚し、クロノアの足止めを依頼した。ヴェルドラは自身を封じた因縁の相手と戦えることに意欲を見せ、喜々として戦場に赴いた。リムルはその様子に若干の疑念を抱きつつも、ヴェルドラの参戦を頼もしく受け入れた。
レオンとリムルの協力関係の構築
リムルは、満身創痍のレオンを癒しつつ、彼の奮闘を称賛した。折れた剣と引き換えに得た時間が、ヴェルドラ召喚の成功を支えていた。レオンもヴェルドラの力に期待を寄せつつ、クロノアの危険性を改めて確認した。両者の信頼と連携が、共闘の礎を築いた。
カリスの召喚と旧主従の再会
リムルはヴェルドラとともに、レオンのかつての従者イフリート──今はカリスと名乗る存在をも召喚していた。カリスはレオンに忠誠を誓い、過去の誤りを悔い改めたことを伝えた。再会を果たした主従は、共に次の戦いに備え、再び絆を結び直した。
レオンの奥の手と決戦への準備
レオンはリムルに時間稼ぎを依頼し、自身の奥の手の準備を始めた。リムルはそれを信じ、ヴェルドラの援護に向かうことを選択した。カリスはレオンの護衛を引き受け、旧主従による新たな戦いの布陣が完成した。リムルは戦場へ戻り、最後の決戦に向けた布石を打ち始めたのである。
第五章 勇者覚醒
走馬燈の中での自省と覚醒
ヒナタは死に際のような深い眠気に襲われ、過去の記憶を回想していた。父親への恨みと自己正当化に囚われていた彼女は、自らが許されない存在であると思い込んでいた。しかし心の奥底では誰かの役に立ちたいと願い、その思いが原動力となっていた。意識が闇に飲まれようとする中、クロエの声がヒナタを呼び戻し、彼女は奇妙な世界で目覚める。そこは視覚ではなく、心に映る光景であり、クロエの導きにより小さな光へと向かい、意識を取り戻すに至った。
魂の所在と異常事態の認識
ヒナタは自分の魂がクロエの中にあると知り、現実の肉体が存在しない理由を理解した。クロエによれば、刺された瞬間に魂がクロエと干渉し、通常とは異なる現象が起きたという。ヒナタはこの状況を理解し、リムルやルミナス、グランベルの無事を尋ねるが、クロエはこの場所が過去であると断言する。ヒナタは最初疑念を抱いたが、クロエが何度も過去に飛ばされているという話から、信憑性を認めた。
クロエの時間跳躍能力と記憶の継承
クロエは自らの能力が時間跳躍であると説明し、未来の自分の権能が宿ったことで記憶を受け継いでいると語った。記憶は曖昧だが、前回の跳躍時の記憶は比較的明瞭であり、それに基づいて行動しているという。リムルとの出会いや、精霊の棲家での出来事が起点となって能力が発現したと述べ、過去に飛ぶたびに未来の自分の記憶を思い出す仕組みであることが明らかになった。
ループの記録と未来の変化
クロエの記憶では、リムルが異世界人を撃退し、各国に実力を知らしめた後、ヒナタ率いる討伐軍とテンペストが衝突するも和解に至り、その後の関係が改善された。平和な時期が五年続いた後、帝国が侵攻し、リムルは仮面を渡して戦地へ向かい帰らなかった。テンペストは滅び、ヴェルドラの暴走が発生し、ヒナタは不明な敵に殺害された。クロエの跳躍はこの直後に発生し、その後の詳細は不明のままだった。
今回の変化と未来への希望
これまでのループと異なり、今回の時間軸ではリムルが生存したままクロエが跳躍しており、大きな変化が感じられた。クロエはこの違いに希望を見出し、今回は皆が生き残れると信じていた。彼女は未来の記憶の一部を思い出し、リムルを引き留めたことで結果が変わった可能性を語る。仮面も無事に受け取っており、希望ある未来への道が開かれていると確信した。
ルミナスのもとへの旅路
ヒナタとクロエは、過去の時代にも存在する知己・ルミナスを訪ねることにする。クロエはヴェルドラの暴走前にルミナスに協力を仰ぎ、被害を最小限に抑える計画を立てていた。道中、クロエは記憶の混同によりやや無邪気な行動を取るが、ヒナタの助言を受け入れ、慎重に行動することを約束する。歴史への影響を危惧したヒナタは、クロエの軽率な行動を改めさせようと主導権を握ることを決意した。
夜薔薇宮への到達と対応の齟齬
ルミナスの居城・夜薔薇宮に到達した際、クロエは兵士に直接ルミナスとの面会を要求し、ヒナタはその軽率さに驚愕した。クロエは過去の記憶から正しい行動だと主張するが、ヒナタは時代による違いを踏まえ、慎重な立ち回りの必要性を訴える。最終的に二人はルミナスのもとへ案内されるが、今後の行動にはより一層の情報共有と冷静な対応が求められると、ヒナタは改めて自覚した。
ルミナスとの接触と予知の伝達
クロエとヒナタはルミナスに対し、ヴェルドラ襲来の予知を告げた。ヒナタは『数学者』の助言に従い、ルミナスの性格に合わせた説明を行わせ、説得を試みた。ルミナスはクロエの心拍や挙動から虚偽でないと判断し、滞在を許可した。
歴史の再現と行動の制限
ヴェルドラは予告通りに現れ、ルミナスが迎撃にあたった。クロエの参戦はヒナタにより制止され、前回の歴史をなぞるよう指示された。未来の知識に基づく行動によって歴史が変化するのを防ぐため、クロエとヒナタは行動を慎重に選択し、結果としてルミナスの信頼を勝ち得た。
未来の開示とルミナスの協力
ルミナスとクロエは密室で対面し、クロエが未来から来た存在であることが語られた。クロエは自らが勇者であること、リムルやヒナタの死が近い将来に発生すること、そしてその未来を再現しようとしている意図を説明した。ルミナスはこれを受け入れ、協力を約束し、クロエを友として遇することとした。
偽名「クロノア」の誕生と旅立ち
クロエの本名が知れ渡るのを避けるため、ヒナタの発案によりクロエは「クロノア」と名乗ることになった。その後、城を放棄したルミナス一行と別れ、クロエとヒナタは旅を開始した。クロエは勇者として人々を救いながら、ヴェルドラ封印の時を迎えることとなった。
ヴェルドラとの再戦とヒナタの参戦
三百年後、クロエはユニークスキルを揃えた状態でヴェルドラ封印に臨んだ。ヒナタは過去にヴェルドラに敗北した記憶から再戦を望み、自らが主導して戦闘に挑んだ。クロエの支援を得たヒナタはヴェルドラを完封し、勝利を収めた。
時間跳躍の限界と別離の決意
やがてクロエは、自らの存在が時空の矛盾を招くと語り、消滅の時が迫っていることを明かした。ヒナタはその理由を推測しており、ループを終わらせる覚悟を固めていた。クロノアが暴走する前兆が見られる中、ヒナタはシズエを助け、ルミナスのもとで聖櫃に封印されることを選択した。
封印とリムルへの希望
クロノアを制御できなくなったヒナタは、計画通りシズエと別れ、ルミナスに自身の封印を託した。クロノアの正体についての確証は得られなかったが、ヒナタはリムルに未来を託し、静かに眠りについた。
戦場での混乱と正体への疑念
一方、現在の戦場では、ヴェルドラがクロノアの攻撃に苦戦していた。リムルはヴェルドラの状況からクロノアの戦闘力を把握しつつ、彼女の正体がクロエである可能性を悟った。ルミナスからの思念伝達により、クロノアにはクロエとヒナタの魂が眠っていると知らされ、戦闘不能にする方針を取る決断を下した。
反撃準備と仮面の再現
レオンの支援により、リムルはクロノアを鎮静化させる策を模索し、ディアブロやカリスの助言を得て、精神安定効果を持つ仮面の使用を決定した。智慧之王の能力で仮面を複製し、リムルは作戦を実行に移した。
仮面の接触と意識の侵入
クロノアとレオンの戦いが続く中、リムルはヴェルドラの援護を得て、仮面を携えてクロノアに接近した。そして仮面を押し付けた瞬間、リムルの意識はクロノアの内なる闇へと引き込まれていった。
シオンとランガ、劣勢の中での奮闘
ラズルとの戦闘において、シオンとランガは爆裂波によって吹き飛ばされ、共に重傷を負っていた。特にランガは再生能力に限界があり、戦線離脱を余儀なくされた。シオンは戦況を冷静に分析し、勝利よりも生存を優先する姿勢に変化していた。同時に、リムルへの忠義と認められたいという思いが、彼女の戦意を強く支えていた。
戦闘技術の覚醒と精神的成長
シオンは力任せな戦法から脱却し、ハクロウの教えに基づいた技術主体の戦闘へと変化していた。戦闘中にもなお成長を続け、ユニークスキル『料理人』の『確定結果』の力を用いて、ラズルの外骨格を破壊しようと試みた。連続攻撃の末に一瞬の隙を突き、戦況を逆転せんとしたが、ラズルの圧倒的な力により再び劣勢へと押し戻された。
精神的覚醒とスキルの進化
死闘の最中、シオンは自身の過去と向き合った。リムルとの出会いや戦いを経て、他者を見下す価値観から脱し、人間性の本質や自己の在り方を見直すようになった。他人との比較ではなく、自身の超克に重きを置く成長が、不屈の精神を芽生えさせた。そしてその結果、固有能力『闘鬼化』はユニークスキル『闘神化』へと進化を遂げた。
新たな力による反撃と勝利
『闘神化』を発動したシオンは、凄まじい力と集中力でラズルに立ち向かった。魔素の消耗が激しく、短時間での決着が必要とされた中、ランガの最大出力の雷撃を纏い、一撃必殺の構えで勝負に出た。『料理人』の能力により、わずかに刻んだ外骨格の傷を起点とし、雷撃と妖気を乗せた大太刀の一閃がラズルを打ち倒した。ラズルは自身の死を悟り、グランベルへの思いを抱きながら命を落とした。
ルミナスの信頼とリムルへの託し
ルミナスは、リムルがクロノアに仮面を被せた瞬間を見て、希望を抱いた。クロエやヒナタが語っていた通り、リムルを信じることが最善と考えたためである。リムルを敵視しないという決意は以前からあり、彼の存在はルミナスにとって不確かな未来への道標となっていた。
グランベルの狂気と裏切りの発露
グランベルは、聖櫃が失われた今、クロノアの中にクロエが本当に存在しているのかと嘲り、世界の滅びを望む意思を露わにした。ルミナスは彼の狂気を拒絶し、戦いの火蓋が切られた。グランベルはラズルの死により魂を吸収し、ユニークスキル『不屈者』を究極能力『希望之王』へと進化させた。
究極能力同士の一騎討ち
ルミナスとグランベルは、それぞれ究極能力『色欲之王』と『希望之王』を持って対峙した。剣閃と精神のぶつかり合いが発生し、強固な意思が勝者を決める構図となった。勝利したのは、ルミナスであった。立ち尽くす彼女の姿が、戦いの終結を静かに示していた。
心象風景での邂逅とクロノアとの対話
リムルは智慧之王の力を借りてクロノアの精神世界に侵入し、亡きシズと再会した。心象風景内でのシズは火傷の痕もない穏やかな姿で、リムルの前進を後押しした。その先に現れたクロノアは憎悪を帯びた気配を放っていたが、リムルの存在を確認すると一転して抱きついた。クロノアは自身がクロエの中に封じられた悪徳の化身であり、別人格であることを明かした。彼女はリムルが無事であったことに安堵し、敵意を収めた。
ヒナタの死と魂の残滓の真実
リムルがヒナタの安否を問うと、クロノアは彼女がグランベルの攻撃により魂ごと死亡したと明言した。ヒナタの魂はクロエに吸収されたが、時間跳躍には耐えられず、自我はユニークスキル『数学者』に保存されたまま『無限牢獄』へと取り込まれていた。ヒナタの蘇生は不可能とされるが、シズの励ましにより希望を捨てない方針が示された。
『無限牢獄』への干渉と能力の進化
クロノアはリムルに干渉権限を委譲し、智慧之王が情報子レベルでの操作を開始した。その結果、クロノアの能力は究極能力『時空之王』へと進化し、彼女自身も神智核として最適化された。これにより、クロエとクロノアは自在に切り替え可能な状態となり、さらなる成長を遂げた。
ヒナタとの再会とシズとの別れ
心象風景にはヒナタも現れ、リムルとの再会を果たした。ヒナタはシズとの感動的な再会を迎え、涙を流して感謝の言葉を述べた。シズは幻影としての存在であることを認め、皆に別れを告げて消えていった。彼女はリムルにヒナタの蘇生を託し、全員がその想いを受け止めた。
現実への帰還と蘇生準備の開始
現実世界へ戻ったリムルは、倒れたクロノアの横にヒナタの遺体を安置した。ルミナスの魔法により傷のない状態で保存されていたヒナタの肉体に、予備のコートをかけて整える。『数学者』は『時空之王』の中に残されており、蘇生には膨大な魔素と代替エネルギーが必要とされた。リムルは最後の手段として、ルミナスに協力を求めて呼びかけた。
グランベルの最期とルミナスの覚悟
グランベルはルミナスの一撃によって致命傷を負い、静かに命を落とした。彼は人類の未来を託すために、あえて絶望を演出し、クロエの正しい覚醒を促そうとしていた。ルミナスはその意図を理解し、彼の覚悟に応える形で打ち倒したのである。死の間際、グランベルは自らの希望をクロエに託すようルミナスに願い、ルミナスもそれを受け入れた。グランベルはルミナスの手によって静かにその因果から解放され、世界へと霧散していった。
ヒナタの蘇生とルミナスの権能
ルミナスはリムルの協力を得て、クロエの『無限牢獄』からヒナタの魂を回収し、遺骸に蘇生処置を施した。ルミナスの使用した権能は解析不能なほど高度であり、その力によってヒナタは蘇り、無事に目覚めた。ヒナタと分離されたクロノアの身体も安定を取り戻し、魂の主であるクロエとして完全な覚醒状態に至った。
クロエの再会と身体変化
クロエは目を覚まし、リムルのもとへ飛び込んだ。その姿は子供の外見に戻っており、聖霊武装が適切に機能していたことが示された。一方、周囲からの視線や誤解も発生し、ヒナタやレオンの反応により、場の雰囲気はやや緊迫したものとなった。
勇者クロエの真なる覚醒
クロエは、自身の中にあった勇者の卵とヒナタが宿していた卵が一つに融合し、真の意味での勇者として覚醒したことを明かした。彼女の存在力は明らかに高まり、レオンですらその変化に驚きを示した。クロエの成長は精神的にも顕著であり、かつての少女から真の勇者へと変貌を遂げていた。
リムルの決意と覚悟の再確認
クロエの覚醒とその笑顔を見たリムルは、再び己の信念を強くし、今後は敵対勢力に対して甘さを捨てる覚悟を新たにした。己の敗北が国家全体に波及する可能性を認識したリムルは、勝利のために非情な手段も辞さぬという決意を胸に刻んだのである。
終章 約束の場所へ
クロエとレオン、そしてクロノアの関係
その夜、関係者は軽く情報交換を行い、詳細な議論は後日に回された。レオンはクロエと幼馴染で兄妹のように育った過去を語ったが、詳しい事情は明かさなかった。クロエはその記憶を失っている様子であり、真相は不明のままであった。レオンはクロエに対して強い執着を見せており、その様子は周囲に危うさすら印象づけた。一方、クロエは自らの意思で子供の姿を保ち続けていたが、クロノアの自我と共存しつつ、大人の姿へも変化できることを明かした。彼女はクロノアとの意識を融合させることで本来の戦闘能力を取り戻せる状態にあった。
ルミナスが語ったグランベルの過去
ルミナスはグランベル・ロッゾの過去について語った。グランベルは妻マリアの死によって精神を病み、続いて希望の存在であったマリアベルを失ったことで、再び狂気に陥ったという。最終的にはその喪失を受け入れ、正気を取り戻していた。正気に戻ったグランベルは、世界を救うための賭けとして〝真なる勇者〟の覚醒計画を実行に移した。その選択には世界崩壊のリスクすら伴っていたが、彼はそれでもなお希望に懸けたのである。彼の行動は、狂気と正義が紙一重であることを物語っていた。
音楽交流会と葬送の調べ
翌日、予定通り音楽交流会が開かれた。会場は大空の下、壊れた大聖堂を背に、整然と整列した観客の前で進行された。演奏された音楽は、未来に希望を託して旅立った者たちへの鎮魂の意を込めた葬送曲であり、その旋律は静かに空へ響いていった。
夢の中のマリアとグランベル
マリアは夢の中で、かつてのわがままな自分を回想しながら、グランベルと再会していた。二人は穏やかに語り合い、スライムを信じなかった理由や人間の臆病さについて思いを交わした。グランベルは用心深さが為政者の資質であると語りつつも、マリアの信じたいという意思に静かに共感した。マリアは次に同じ夢を見たら、今度はスライムを信じると語り、未来への希望を示した。グランベルもまた、悲しい過去を含めた人生を「良い夢」と総括し、互いの存在が幸福であると確かめ合った。
二人の旅立ちと約束の地へ
夢の中でグランベルとマリアは、かつて叶えられなかった未来への願いを語り合い、子供と共に幸せに暮らす想像を交わした。そして、彼らは美しい旋律に導かれながら、ラズルの待つ旅立ちの時を迎えた。手を取り合った二人は、もう戻れぬこの場所を後にして、遥かなる約束の地へと歩み出していったのである。
同シリーズ
転生したらスライムだった件 シリーズ
小説版






















漫画版







その他フィクション

コミックス(外伝含む)
『「転生したらスライムだった件~魔物の国の歩き方~」(ライドコミックス)』
『転生したらスライムだった件 異聞 ~魔国暮らしのトリニティ~(月刊少年シリウス)』
『転スラ日記 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス)』
『転ちゅら! 転生したらスライムだった件(月刊少年シリウス)』
『転生したらスライムだった件 クレイマンREVENGE(月刊少年シリウス)』
TVアニメ
転生したらスライムだった件 3期(2024年4月から)
劇場版
PV
OP
ED
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