ソード・オラトリア 7レビュー
【ダンまち】小説版全巻 あらすじ・ネタバレ・まとめ
ソード・オラトリア 9レビュー
物語の概要
■ 作品概要
本作は、大森藤ノによるライトノベル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の公式外伝シリーズ第8巻である。本編の裏側で繰り広げられる【ロキ・ファミリア】の死闘を描くファンタジーアクションであり、今巻では派閥屈指の実力者である狼人ベート・ローガに焦点が当てられる。
物語は、前巻での人造迷宮「クノッソス」における凄惨な敗北と、仲間の犠牲という重い空気の中から始まる。死者にさえ辛辣な言葉を浴びせるベートは派閥内で孤立し、単独行動を余儀なくされる。しかし、元【イシュタル・ファミリア】のアマゾネスの少女レナとの奇妙な出会いが、彼の閉ざされた過去と、強さへの過剰な執着の理由を紐解いていくことになる。
■ 主要キャラクター
- ベート・ローガ: 本作の主役。【ロキ・ファミリア】の幹部で、Lv.6の狼人(ワーウルフ)。実力至上主義者であり、弱者を徹底的に切り捨てるような言動で周囲と衝突することが多い。今巻では、なぜ彼がそれほどまでに「弱さ」を忌み嫌うのか、その凄絶な過去と内面が明かされる。
- レナ・タリー: 元【イシュタル・ファミリア】のアマゾネスの少女。強さに固執するベートに一目惚れし、猛烈なアプローチを仕掛ける。天真爛漫な性格で、頑ななベートの心を揺さぶる存在となる。
- アイズ・ヴァレンシュタイン: 外伝シリーズの主人公。今巻ではベートを見守る立ち位置となる。ベートの不器用な優しさや、彼が抱える「傷」に触れ、仲間としての絆を再確認する。
- ヴァレッタ・グレーデ: 「闇派閥(イヴィルス)」の残党であり、ベートにとって因縁深い敵。卑劣な策を弄してベートを追い詰め、彼の怒りを爆発させる引き金となる。
■ 物語の特徴
本作の最大の魅力は、シリーズを通して「嫌われ役」としての側面が強調されてきたベート・ローガの徹底的な深掘りにある。彼が咆哮し続ける理由、そして不器用な言葉の裏に隠された「祈り」に似た想いが描かれ、一人の冒険者の魂の再生を力強く描き出している。
また、他作品との差別化要素として、一匹狼の戦士が「守るべきもの」を再び得た際に発揮する熱量が凄まじい点が挙げられる。終盤のバトルシーンにおける感情の爆発と、彼独自の魔法の真意は、シリーズ屈指の熱さを誇る。単なるアクションファンタジーの枠を超え、挫折と過去を乗り越える英雄譚としての完成度が高い一冊である。
書籍情報
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア8
(Is It Wrong to Try to Pick Up Girls in a Dungeon? On the Side: Sword Oratoria)
著者:大森藤ノ 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
キャラクター原案: ヤスダスズヒト 氏
出版社:SBクリエイティブ(GA文庫)
発売日:2017年4月15日
ISBN:978-4-7973-9234-0
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あらすじ・内容
これは、もう一つの眷族の物語―【剣姫の神聖譚】―
“「言っただろ、雑魚は足手纏いだってな」
ベート・ローガ。
【ロキ・ファミリア】の中でも過度なほど実力主義を謳う一匹狼。
人造迷宮(クノッソス)撤退を受けて死者にさえ嘲笑を向ける彼は派閥から孤立するが……
「いたぁー! ベート・ローガ!」
突如アマゾネスの少女レナから猛烈な求愛(アプローチ)により、なし崩し的に同居生活が始まってしまう!
戸惑うベートだったが、彼女との交流が『牙』にまつわる記憶を喚起させ、己の過去と向き合うことになる。
一方、その裏で静かに暗躍する死神の眷族達。
仲間を奪った凶刃が今、再びベートのもとに迫ろうとしていた――。
これは、もう一つの眷族の物語、
──【剣姫の神聖譚(ソード・オラトリア)】──”
感想
普段は乱暴な言葉が目立つ狼人、ベート・ローガを主役に据えた一冊である。
外伝シリーズの中でも、一人の男の魂の軌跡をたどるような、非常に熱く、そして切ない物語に仕上がっていた。
何よりも衝撃的だったのは、これまで謎に包まれていたベートの凄惨な過去だ 。彼の故郷である銀月の狼(ルナ・アルデ)の部族は、強大な怪物によって全滅させられていたのである 。
ただ一人生き残った彼は、凄まじい復讐心を糧に強さを求めて迷宮都市へと足を踏み入れた 。
しかし、そこでもまた大切な仲間を失うという深い挫折を味わっている 。
度重なる悲劇が彼を「弱さ」を極端に忌み嫌う、拗れたツンデレのような性格へと昇華させてしまったのだろう 。
そんな彼のもとに現れたアマゾネスの少女、レナとの交流も本作の見どころだ 。
一匹狼を貫こうとするベートを強引に振り回す彼女の存在が、張り詰めた物語の中に絶妙な柔らかさをもたらしていた 。
不器用ながらも彼女を突き放しきれないベートの姿からは、彼が心の奥底に秘めている優しさが透けて見える。
クライマックスでの死闘は、まさに咆哮そのものであった 。
自らの「負の感情」を魔力に変えて燃え上がるハティ(大喰らいの狼)の姿には、言葉にできないほどの迫力を感じた 。
弱さを呪いながらも、その弱さから逃げずに戦い抜く彼の生き様は、まさに一人の冒険者としての輝きを放っていた。
そして、物語を締めくくるエピローグのオチには、思わず笑わされてしまった 。
あれほどシリアスで感動的な雰囲気を漂わせておきながら、最後にあのような展開を持ってくるとは、作者の遊び心を感じずにはいられない 。
あまりの「ぶち壊し」っぷりに、読後の重苦しさが一気に吹き飛ぶような、心地よい爽快感を味わうことができた 。
ベートという男の多面的な魅力を存分に堪能できる、満足度の高い作品であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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ソード・オラトリア 7レビュー
【ダンまち】小説版全巻 あらすじ・ネタバレ・まとめ
ソード・オラトリア 9レビュー
考察・解説
ベートの過去と葛藤
ベート・ローガの過去は、大切な者を次々と奪われた喪失の歴史であり、彼の抱える葛藤や他者への態度はその絶望に起因している。
故郷の全滅と「弱肉強食」の呪縛
ベートは大陸北方の「平原の獣民」の族長の子として生まれた。
- 幼馴染を守るために牙を磨いていたが、12歳の時に「竜の谷」から現れた怪物(平原の主)によって部族は全滅し、両親や妹、幼馴染を惨殺された。
- 唯一生き残った彼は、「弱者」は全てを奪われるという弱肉強食の理を痛感し、絶対的な強さを求めて故郷を捨てオラリオへ向かった。
- 顔の傷をあえて残し、その上に稲妻のような刺青を刻んだのは、自らの弱さを忘れず強さへの渇望を象徴する「牙」とするためであった。
二度目の喪失と【ヴィーザル・ファミリア】との決別
オラリオでは【ヴィーザル・ファミリア】に入団し、副団長の女性と恋に落ちて新たな「家族」を得た。
- 16歳の時、故郷を滅ぼした「平原の主」を単身で討ち果たしたが、凱旋した彼を待っていたのは、ダンジョンで命を落とした恋人の亡骸であった。
- どれほど自分が強くなっても弱者を守りきれない現実に絶望したベートは、神ヴィーザルに激昂し、自ら仲間を言葉の刃で突き放してファミリアを去った。
他者への暴言の真意と葛藤
その後【ロキ・ファミリア】に加わった後も、ベートは周囲の者を「雑魚」と罵り続けるが、これは極端に不器用な「発破(叱咤激励)」である。
- 弱い者を見るたびに過去の自分や失った者たちを重ねて苛立ち、戦場に立つ資格のない者を遠ざけようとしていた。
- 「傷付くより死ぬ方が取り返しがつかない」という思いから、あえて残酷な言葉を投げかけ、無理やりにでも変わることを強いていたのである。
「牙」の正体と魔法【ハティ】
ベートの誇示する「牙(刺青)」の正体は、弱肉強食の現実に打ちのめされた「始まりの傷」であり、弱さの証そのものであった。
- 彼が嫌悪する自身の魔法【ハティ】は、敵の魔力だけでなく、自らが負うダメージ(傷)をも糧として炎を肥大化させる「損傷吸収(ダメージドレイン)」の特性を持つ。
- これは、傷付くことでしか強くなれないベートの痛ましい本質を体現している。
まとめ
彼の葛藤の根底には、「弱い者が目の前で無様に死ぬのを見たくない」「もう誰も哭くんじゃねえ」という、二度と大切な存在を失いたくないという切実で不器用な願いが隠されている。
仲間への罵倒の真意
『ソード・オラトリア』第8巻において、ベート・ローガが仲間や周囲の者たちに浴びせる「雑魚」「足手纏い」といった罵倒の真意は、彼なりの極端で不器用な「発破(叱咤激励)」であり、同時に「二度と大切な存在を失いたくない」という切実な願いから来ている。
不器用な叱咤激励と「ふるい落とし」
リヴェリアが語るように、ベートは「暴言でしか人を奮い立たせる術を知らない」男である。
- 彼の口にする侮蔑は、冒険者が目を背けている弱さを強引に抉り出し、無理やりにでも変わることを強要する究極の「ふるい落とし」である。
- 厳しい言葉を投げかけ、それに立ち向かってくる覚悟がない本物の「弱者」を、彼は徹底的に蹴り落とし、戦場から遠ざけようとする。
「死ぬよりは傷つく方がマシ」という信念
ベートがここまで厳しい態度をとる理由は、「傷付くより死ぬ方が取り返しがつかない」という過酷な現実を知り尽くしているからである。
- 故郷の部族、初恋の女性、そしてファミリアの仲間たちなど、過去に何度も大切な者をダンジョンや理不尽な暴力で奪われてきた。
- 「くたばっちまった後じゃあ――何もかも遅ぇだろうが!」という痛切な思いを抱いている。
- だからこそ、戦う覚悟のない者がヘラヘラと戦場に出てきて、無様に命を落とすことが許せないのである。
自己中心的な苛立ちと過去への憎悪
しかし、ロキやガレスが指摘するように、彼の罵倒は決して純粋な善意だけではなく、「すこぶる自己中な理由」を含んでいる。
- ベートは弱い者を見るたびに、かつて何も守れず全てを奪われた「無力だった過去の自分」を重ね合わせ、激しい苛立ちを覚えている。
- 放っておけば楽なのにそれができず、弱者の泣き言を聞くたびに過去のトラウマを刺激されるため、感情のままに悪意を押し付けてしまっている。
まとめ
ベートが本当に待っているのは、どれほど罵倒され打ちのめされても立ち上がり、彼に対して「弱者の咆哮」を上げて吠え返してくる気概を持つ者である。
- 物語の終盤、ついにアイズたちの前で本心を吐露したベートは、「雑魚が目の前で野垂れ死ぬのはもう御免なんだ!!! もう、誰も哭くんじゃねえ!!!」と絶叫する。
- 彼が口にする残酷な罵倒の真意は、弱者を憎んでいるからではなく、弱者が無惨に死んでいく世界を憎み、「もう二度と仲間が死ぬ姿を見たくない」という、傷だらけの狼の悲痛な祈りそのものであった。
闇派閥の襲撃
『ソード・オラトリア』第8巻における「闇派閥(イヴィルス)の襲撃」は、闇派閥の幹部ヴァレッタ・グレーデが主導した、元【イシュタル・ファミリア】の団員(主にアマゾネスの戦闘娼婦たち)を標的とした大規模な同時暗殺作戦である。作中ではタナトスやヴァレッタによって「アマゾネス狩り」と呼ばれている。
襲撃の目的
最大の目的は、人造迷宮クノッソスを攻略するための「鍵(ダイダロス・オーブ)」に関する情報の口封じである。
- 【イシュタル・ファミリア】が壊滅し、元団員たちが都市に散らばった後、【ロキ・ファミリア】は鍵の行方を追って歓楽街の調査や彼女たちへの聞き込みを開始した。
- これを知ったヴァレッタは、鍵がフィンたちに渡ることを防ぐため、疑わしき情報源そのものを都市ごと抹殺するという暴挙に出た。
暗殺集団と「呪道具」による特攻
ヴァレッタは大陸の闇で暗躍する殺戮の女神(セクメト)の犯罪組織から暗殺者たちを雇い入れた。
- 彼らは全員、治癒を無効化する不治の呪いが込められた「呪道具(カースウェポン)」を装備していた。
- 暗殺者たちは過酷な洗脳教育を受けており、自らの命を顧みず特攻を仕掛けてきた。
- 標的や護衛の冒険者に「掠り傷一つでもつければ致命傷になる」という呪道具の特性を利用した自爆戦法であった。
都市の混乱と【ロキ・ファミリア】の対応
襲撃は白昼のオラリオ、激しい雨に紛れて都市の各所で一斉に決行された。
- 街の至る所で悲鳴が上がり、ガレスやティオネ、ティオナ、アイズら【ロキ・ファミリア】の幹部たちが急行して暗殺者たちを撃退した。
- しかし、広範囲での同時多発的な奇襲であったため、全てのアマゾネスを庇いきることは不可能であった。
ベートとレナの死闘
鍵の情報を知るアマゾネスの少女・レナと一緒にいたベートも、この襲撃に巻き込まれる。
- 暗殺者たちは第一級冒険者であるベートの命を狙うのではなく、あくまで情報源の抹殺としてレナへ攻撃を集中させた。
- ベートは奮戦するが、数に物を言わせた特攻と呪詛、さらにヴァレッタの介入による足止めを受けた。
- 最終的にレナは呪いの短剣で腹を貫かれてしまう。
- この出来事が、激怒したベートによる歓楽街の闇派閥拠点への単独強襲へと繋がることになる。
まとめ
多くの犠牲者が出たものの、治療院に運び込まれた者の中には、【戦場の聖女】アミッドが自身の血を材料にして完成させた解呪の秘薬によって一命を取り留めた者たちもいた(死を偽装して匿われたレナもその一人である)。
事件後、暗殺者たちは自決用の毒で口を封じたため、表向きは「神イシュタルに恨みを持つ一部の女神が雇った暗殺者による犯行」として処理された。【ロキ・ファミリア】やギルドも都市の混乱やパニックを避けるために闇派閥の残党の関与を意図的に伏せたのである。
レナとの関係
『ソード・オラトリア』第8巻におけるベートとレナ・タリーの関係は、アマゾネス特有の直情的なアプローチと、過去のトラウマから素直になれない一匹狼の不器用さが交錯する、非常に特異で魅力的なものである。
異常な出会いと一方的な好意
二人の因縁は「港街メレン」での抗争に遡る。
- レナはベートに斬りかかった際、彼の強烈な一撃を腹に受けて敗北した。
- しかし、「自分を負かした強い雄に惹かれる」というアマゾネスの性により、彼女はベートに猛烈に惚れ込んでしまう。
- 【ロキ・ファミリア】で孤立し落ち込んでいたベートの前に現れた彼女は、「子供を作ろう」と強烈なアプローチを仕掛けた。
- ベートは彼女の好意を鬱陶しく思い、「雑魚じゃ釣り合わねえ」と辛辣に突き放す。
- しかし、超ポジティブなレナはそれを「私が雑魚じゃなくなったら伴侶になれる」「応援してくれている」と解釈し、いつか強くなって彼の一番になることを誓うのであった。
「アマゾネス狩り」での死闘と喪失
そんな二人の奇妙な関係は、闇派閥による「アマゾネス狩り」によって引き裂かれる。
- 暗殺者たちの真の標的がレナであると気付いたベートは、「巻き込まれたのは俺だ」と彼女を背に庇い、身を挺して戦い続けた。
- しかし、自分が足を引っ張っているせいでベートが不利になっていると悟ったレナは、「私がいなければベート・ローガは強い」と彼のもとを離れ、呪道具の凶刃に倒れてしまう。
- 「あなたの、となり・・・・・・・並びたかった、なぁ・・・・・・」と微笑んで命を散らした(ように見えた)レナの最期は、過去に大切な者を失い続けてきたベートの心傷を激しくえぐり、彼を凄絶な復讐鬼へと変貌させる決定的な引き金となった。
生還と不器用な愛情表現
しかし、物語の終盤で事態は好転する。
- レナはアミッドが完成させていた解呪の秘薬によって一命を取り留め、リヴェリアの機転で死を偽装されて匿われていたのである。
- 全てが終わり、再び満面の笑みで目の前に現れたレナに対し、ベートは放心した後、容赦のない膝蹴りの連打を浴びせる。
- それは照れ隠しや安堵が極まった彼なりの反応であったが、殴られても恍惚と喜ぶレナと、それを止めに入る仲間たちという、騒がしくも温かい日常の光景が戻ってきた。
まとめ
エピローグでは、撤去される予定だったレナの偽の墓石の前に、彼女がかつてデート中に「好きだ」と語っていた薄青のミオソティスの花束が供えられていた。
決して言葉で素直になることはないベートであるが、この不器用で優しさに満ちた贈り物は、彼がレナに対して確かに特別な想いを抱き始めていることを証明している。
凶狼の覚醒と勝利
『ソード・オラトリア』第8巻における、ベート・ローガの覚醒と闇派閥(イヴィルス)への勝利は、彼の抱えるトラウマと強さへの執着が爆発するカタルシスに満ちた展開である。
ヴァレッタの罠と【シャルドー】による窮地
ベートは敵の血文字による挑発に乗り、単身で「女神の宮殿」の広大な地下空間へと乗り込む。
- そこにはヴァレッタ・グレーデと闇派閥の残党が待ち構えており、床には赤紫の幾何学模様が張り巡らされていた。
- これはヴァレッタの結界魔法【シャルドー】であり、結界内で動けば動くほど対象の能力と動きを強制的に低下させる「女王蜘蛛の巣」であった。
- 結界の力によって能力が極端に低下したベートに対し、ヴァレッタは残党たちに多数の「魔剣」を持たせ、一斉砲撃を浴びせる。
- 回避もままならず、次々と砲撃を浴びて傷を増やしていくベートは絶体絶命の危機に陥る。
禁断の魔法【ハティ】の解放
追い詰められたベートは、ついに自らに課していた戒めを破り、大嫌いだった自身の魔法の詠唱を開始する。
- 彼の魔法は自らの「弱さ」と「傷」を露わにしてしまうものであったため、これまで頑なに使用を避けていた。
- 敵の砲撃を無防備に浴びながらも詠唱を完了させたベートは、魔法【ハティ】を発動し、四肢に紅蓮の炎を宿す。
- この魔法の真髄は「魔力吸収(マジックドレイン)」と「損傷吸収(ダメージドレイン)」にある。
- 敵の魔法や魔剣の砲撃を喰らうだけでなく、ベート自身が負う傷をも糧として、炎は際限なく肥大化していくという恐るべき特性を持っていた。
「獣化」と結界の破壊
ハティの炎は敵の攻撃と自らの傷を吸収するごとに巨大な「炎の牙」へと成長し、ついには地下空間の天井を貫くほどの大炎柱となる。
- 穿たれた大穴から蒼然とした月光が地下に差し込み、それを浴びたベートは狼人特有の「獣化」を果たし、凶暴性とともに身体能力を劇的に向上させた。
- さらに、全てを喰らい尽くすハティの炎は、ヴァレッタの結界魔法【シャルドー】の魔力すらも跡形もなく喰らい尽くして消滅させ、ベートの能力下降を完全に解除した。
凶狼の蹂躙と完全なる勝利
完全に枷が外れ、炎の巨狼と化したベートは、圧倒的な力で闇派閥の残党を蹂躙する。
- 自決用の火炎石の爆発すらも炎の糧として取り込み、残党たちを容赦なく炎と灰に変えていった。
- 最後の一人となったヴァレッタに対し、ベートは豪速で肉薄し、炎の拳と蹴撃による連打で彼女を追い詰める。
- 命乞いをするヴァレッタに対し、ベートは彼女自身が語った「強者は何をしても許される。弱者は何をされても抗えない」という冷酷な世界の理を突きつけた。
- そして、「俺がてめぇをブチ殺そうが、何も問題はねえ」と咆哮し、炎の大顎でヴァレッタを漆黒の灰燼へと焼き尽くした。
まとめ
全てを喰らい尽くしたベートは、月光を浴びながら夜天に向かって遂げられた誓いを告げる遠吠えを放ち、凄惨な復讐劇に終止符を打った。
呪いの武具
『ソード・オラトリア』第8巻において、「呪いの武具(カースウェポン)」は【ロキ・ファミリア】や元【イシュタル・ファミリア】の団員たちに甚大な被害をもたらした、極めて危険な武器として描かれている。
「不治の呪い」と常軌を逸した呪術師
闇派閥(イヴィルス)の残党や彼らに雇われた暗殺者集団が使用するこの漆黒の武具には、治癒を無効化する「不治の呪い」が込められている。
- この武器で傷つけられると、回復魔法やポーションをどれだけ使用しても傷口が塞がらず、血が流れ続けて対象を死に至らしめる。
- 【戦場の聖女】アミッド・テアサナーレによれば、既存の防呪の装身具や魔道具では防ぐことができず、彼女が多大な精神力を注いだ魔法でしか解呪できないほど強力な呪詛である。
- アミッドは、これを作成した呪術師を「常識の埒外の能力、あるいは妄執の持ち主」と評し、その存在を強く危惧した。
特攻戦術と「アマゾネス狩り」での猛威
この呪道具の最も恐ろしい点は、「掠り傷一つでも致命傷になり得る」という特性である。
- 闇派閥の幹部ヴァレッタが主導した「アマゾネス狩り」において、雇われた殺戮の女神(セクメト)の暗殺者集団は全員がこの呪道具を装備していた。
- 過酷な洗脳教育を受けた彼らは、自らの命を顧みず、標的にかすり傷でも負わせることを目的とした自爆特攻を仕掛けてきた。
- この外法の戦術により、上級冒険者である戦闘娼婦たちでさえも防ぎきれず、多くの犠牲者が生じた。
- ベートと共にいたアマゾネスの少女・レナも、暗殺者たちの執拗な攻撃の末にこの呪いの短剣で腹を貫かれてしまう。
まとめ
人造迷宮クノッソスで治療師のリーネ・アルシェをはじめとする多くの仲間をこの武器で失った【ロキ・ファミリア】にとっても、呪道具への対策は急務であった。
アミッドは「こんな武器、あってはいけない」「この呪い、私が殺します」と聖女としての強い怒りと決意を露わにし、困難を極める解呪薬の開発に尽力した。結果として彼女が完成させた秘薬により、レナを含む多くのアマゾネスたちが死の淵から救い出されることになる。
人造迷宮クノッソス
『ソード・オラトリア』に登場する「人造迷宮クノッソス」は、迷宮都市オラリオの地下に密かに建造された、闇派閥(イヴィルス)の残党や怪人たちの根城である。第8巻において、【ロキ・ファミリア】をはじめとするオラリオの冒険者たちに立ちはだかる最大の障壁として描かれている。
常識の埒外の規模と難攻不落の防壁
その規模は凄まじく、横は迷宮都市のほぼ全域に広がり、深さはダンジョンの「中層」にまで及ぶという、神であるロキをも驚嘆させる広大さを誇る。
- 内部は複雑怪奇な迷路となっており、随所に最硬金属「オリハルコン」で作られた扉が設置されている。
- この扉によって「破壊不能・脱出不能」という絶対的な地の利を敵に与えており、一度罠に嵌められれば脱出は困難を極める。
- 実際に【ロキ・ファミリア】は迷宮内で分断され、「不治の呪い」を宿す呪道具を持った敵の強襲により、治療師リーネをはじめとする多くの団員を惨殺されるという凄惨な被害を出した。
「精霊の分身」の揺り籠
闇派閥や怪人たちが掲げる最終目標は「迷宮都市の破壊」であり、人造迷宮はそのための「待ち」の態勢を整える拠点となっている。
- 迷宮内には既に七つの「宝玉の胎児」が地上から運び込まれている。
- それらが凄まじい破壊力を持つ「精霊の分身(デミ・スピリット)」へと羽化・成熟する時を静かに待っている。
攻略の要「鍵(ダイダロス・オーブ)」を巡る攻防
この難攻不落の迷宮を攻略するための唯一の希望が、「D」の記号が刻まれた球形の魔道具「鍵(ダイダロス・オーブ)」である。
- これがあればオリハルコンの扉を開けることができ、迷宮の圧倒的な優位性を崩すことが可能になる。
- 闇派閥は迷宮増設の資金提供の見返りとして、神イシュタルにこの鍵の一つを預けていた。
- しかし、【フレイヤ・ファミリア】の襲撃によるイシュタルの天界送還に伴い、鍵が行方不明となってしまった。
まとめ
鍵が【ロキ・ファミリア】の手に渡ることを何よりも恐れた闇派閥の幹部ヴァレッタは、鍵の在処を知り得る情報源(元【イシュタル・ファミリア】の戦闘娼婦たち)を都市ごと抹殺するという、「アマゾネス狩り」の暴挙を引き起こすことになるのである。
ソード・オラトリア 7レビュー
【ダンまち】小説版全巻 あらすじ・ネタバレ・まとめ
ソード・オラトリア 9レビュー
登場キャラクター
ロキ・ファミリア
ロキ
ファミリアを率いる主神である。ベートの本質を見抜いており、彼の不器用さを理解している。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・主神。
・物語内での具体的な行動や成果
孤立したベートの真意をアイズたちに伝え、関係修復のきっかけを作った。雨の中でベートに接触し、回復薬と果実を渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
直接の戦闘は行わない。眷族たちを精神的に支える存在である。
フィン
冷静沈着な小人族の指揮官である。大局を見て非情な決断を下すこともある。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・団長。第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
ベートを囮にして闇派閥の退路を断ち、鍵を奪取する作戦を立案した。大食堂での騒動ではティオナたちを制止した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
組織の頭として嫌われ役を引き受ける覚悟を持っている。
リヴェリア・リヨス・アールヴ
理知的なハイエルフの王女である。ベートの暴言が不器用な激励であることを理解している。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・副団長。第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
アミッドから受け取った解呪の秘薬でレナたちを救った。その後に彼女たちの死を偽装して匿った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
独断でアマゾネスたちを保護し、事件の解決に貢献した。
ガレス・ランドロック
豪快なドワーフの大戦士である。かつて入団前のベートを何度も叩きのめした。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・首脳陣。第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
街で襲撃を受けたアマゾネスたちの救助を指揮した。ベートの魔法の特性をラウルたちに説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
第一級冒険者として、ファミリアの強さの象徴となっている。
アイズ・ヴァレンシュタイン
金髪金眼の少女剣士である。ベートの暴言を嫌いつつも、ファミリアの平穏を望んでいる。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア。第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
酒場でベートに同行し、彼の暴走を剣で制止した。歓楽街でベートとヴァレッタの戦いを見届けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ベートの遠吠えから彼の不器用な本心を理解した。関係修復の行動を起こした。
ベート・ローガ
灰色の毛並みを持つ狼人である。弱者を嫌い暴言を吐くが、それは大切な者を失う恐れと不器用な激励によるものである。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア。第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
酒場でアイシャたちを打ち倒した。歓楽街の地下でヴァレッタの結界に囚われながらも、自身の魔法を発動して闇派閥を壊滅させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レナの生存を知り、ファミリアの仲間たちと和解の兆しを見せた。
ティオネ
感情的になりやすいアマゾネスである。ベートの暴言に対して激しい怒りを見せる。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア。第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
大食堂でベートに蹴りを放とうとした。市街で暗殺者を撃退し、アマゾネスたちの救援に当たった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ベートへの怒りを爆発させるが、彼の本心を知って和解の輪に加わった。
ティオナ
明るい性格のアマゾネスである。仲間の死を悼まないベートの態度に怒りを露わにする。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア。第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
大食堂でベートに殴りかかろうとした。地下水路でフィンに対し、ベートが人を見下す理由を問いかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ベートの真意を知り、からかいながらも関係を修復した。
レフィーヤ
エルフの魔導士である。ベートの態度に戸惑いながらも、過去に彼の強さから影響を受けている。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・魔導士。
・物語内での具体的な行動や成果
大食堂の騒動をアイズに伝えた。雨の街で凄惨な光景を目撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラウル
ヒューマンの青年である。仲間の死を軽視するベートの態度に激しく反発する。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・幹部候補。
・物語内での具体的な行動や成果
大食堂でベートを糾弾した。街で襲撃事件が発生したことをフィンに報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ベートの暴言が不器用な激励であったと知り、誤解を謝罪した。
アナキティ
冷静な猫人の少女である。リーネの死に直面し、ベートへの嫌悪を隠さない。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・幹部候補。
・物語内での具体的な行動や成果
人造迷宮の石室で悲鳴を上げた。摩天楼施設でベートの遠吠えを聞いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アリシア
エルフの少女である。ベートの極端な実力主義に反発を覚える。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・第二軍。
・物語内での具体的な行動や成果
大食堂でベートの言動に不満の表情を浮かべた。リヴェリアから受け取った秘薬をアマゾネスたちに処方した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クルス
犬人の青年である。ベートを恐れ、距離を置いている。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・第二軍。
・物語内での具体的な行動や成果
館の廊下でベートとすれ違った際、無表情のまま通り過ぎた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ナルヴィ
ヒューマンの少女である。ベートの言動に不満を持つ。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・第二軍。
・物語内での具体的な行動や成果
大食堂でベートを非難する輪の中にいた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エルフィ
魔導士の少女である。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
街でベートがレナと歩いているのを目撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラクタ
兎人の青年である。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
瓦礫の広場でベートの本心を聞き、涙を溜めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
リーネ・アルシェ
ベートを慕っていた治療師の少女である。ベートの心に深い影響を与えていた。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・治療師。
・物語内での具体的な行動や成果
人造迷宮の石室で呪いの短剣を受け、命を落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつての遠征でベートの言葉を好意的に解釈した。
ロイド
ファミリアの団員である。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
人造迷宮の石室で死亡したことが確認された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
元イシュタル・ファミリア
アイシャ・ベルカ
戦闘娼婦たちのまとめ役である。仲間思いで勝気な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
元イシュタル・ファミリア・戦闘娼婦。第二級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
酒場でベートと乱闘になり、敗北した。レナが襲撃された現場に駆けつけ、ベートを非難しようとしたが拳を下ろした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イシュタルの送還後、生き残った仲間たちを束ねる役割を担っている。
レナ・タリー
アマゾネスの少女である。ベートに強い好意を寄せ、積極的にアプローチする。
・所属組織、地位や役職
元イシュタル・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
ベートを自身の隠れ家へ案内し、鍵の情報を手渡した。暗殺者に襲撃され致命傷を負ったが、アミッドの秘薬により一命を取りとめた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
死を偽装されて匿われた後、自分の墓石の前にベートからの花束を見つけた。
サミラ
灰髪のアマゾネスである。
・所属組織、地位や役職
元イシュタル・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
中央広場でティオナの聞き込みに対し、情報を知らないと答えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
仲間の死を悲しみ、墓石を準備していた。
タンムズ
イシュタルの従者であるヒューマンの青年である。
・所属組織、地位や役職
元イシュタル・ファミリア・副団長。
・物語内での具体的な行動や成果
イシュタルの神室でレナを追い出したことが言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イシュタルの送還後、行方不明となっている。
タナトス・ファミリア / 闇派閥(イヴィルス)
タナトス
死を司る男神である。軽薄な態度を見せながら、都市の破壊を目論む。
・所属組織、地位や役職
タナトス・ファミリア・主神。
・物語内での具体的な行動や成果
人造迷宮でヴァレッタと会話した。アマゾネス狩りを実行するヴァレッタの行動を祝福した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヴァレッタ・グレーデ
残忍な殺人鬼である。他者の命を奪うことに悦びを感じる。
・所属組織、地位や役職
闇派閥の幹部。Lv.5。
・物語内での具体的な行動や成果
暗殺者を雇い、都市中でアマゾネス狩りを実行した。地下空間で結界魔法を用いてベートを追い詰めたが、最後は灰にされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
【殺帝】の二つ名を持っていたが、ベートとの戦闘で死亡した。
バルカ
人造迷宮の増設に執念を燃やす人物である。
・所属組織、地位や役職
闇派閥。
・物語内での具体的な行動や成果
人造迷宮でタナトスに対し、地上での襲撃が自殺行為であると警告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ディオニュソス・ファミリア
ディオニュソス
秀麗な相貌の男神である。
・所属組織、地位や役職
ディオニュソス・ファミリア・主神。
・物語内での具体的な行動や成果
雨の裏通りで、暗殺されたアマゾネスの遺体を確認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フィルヴィス・シャリア
エルフの少女である。
・所属組織、地位や役職
ディオニュソス・ファミリア。
・物語内での具体的な行動や成果
ディオニュソスとともにアマゾネスの遺体を前にしていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ディアンケヒト・ファミリア
アミッド・テアサナーレ
白銀の髪を持つヒューマンの少女である。治療に対する強い責任感を持っている。
・所属組織、地位や役職
ディアンケヒト・ファミリア。治療師。
・物語内での具体的な行動や成果
呪いの短剣を検証し、解呪の秘薬を完成させた。治療院に運び込まれた重傷者たちの治療に尽力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼女の作った秘薬により、レナを含む多くのアマゾネスが一命を取りとめた。
ヴィーザル・ファミリア
ヴィーザル
口数の少ない男神である。ベートの本質を見抜いていた。
・所属組織、地位や役職
ヴィーザル・ファミリア・主神。
・物語内での具体的な行動や成果
かつてオラリオにやってきたベートをファミリアに迎え入れた。ベートが平原の主を討った後、彼に謝罪の言葉を述べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
団員の死をきっかけにファミリアごとオラリオを去った。
その他のキャラクター
ベートの父親
部族の族長である。強さを重んじる屈強な戦士であった。
・所属組織、地位や役職
平原の獣民・族長。
・物語内での具体的な行動や成果
幼いベートに弱肉強食の教えを説いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
平原の主の襲撃を受け、命を落とした。
ベートの母親
豪快な性格の獣人である。
・所属組織、地位や役職
平原の獣民。
・物語内での具体的な行動や成果
ベートの回想に登場した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
平原の主の襲撃を受け、死亡した。
ルーナ
狼人には珍しい金髪を持つ少女である。大人しく可憐な性格であった。
・所属組織、地位や役職
平原の獣民。
・物語内での具体的な行動や成果
ベートの幼馴染として彼を見守っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
平原の主の襲撃を受け、死亡した。
ソード・オラトリア 7レビュー
【ダンまち】小説版全巻 あらすじ・ネタバレ・まとめ
ソード・オラトリア 9レビュー
展開まとめ
プロローグ◆強者の嘲笑
惨劇の発見と仲間の死
人造迷宮クノッソスの石室において、【ロキ・ファミリア】の一行は凄惨な光景に直面していた。室内は血に染まり、多くの仲間が倒れており、既に命を落としていた。アイズ達は絶叫を頼りに駆けつけたが、そこにあったのはモンスターではなく人による蹂躙の痕跡であり、壁には嘲笑を示す文字が血で刻まれていた。生存者を探し出して治療を試みたものの、倒れていた者達は次々に息絶えていった。
呪いの武器による絶望
負傷者達はいずれも呪いの武器による致命傷を負っており、回復魔法や回復薬は一切効果を示さなかった。不治の呪いによって治癒は拒まれ、団員達は仲間を救う手立てがない現実に直面していた。解呪の術も存在せず、助けを求める声は虚しく石室に響くだけであった。その場は完全に冒険者の墓場と化していた。
リーネの最期
石室の奥で、瀕死の治療師リーネ・アルシェが発見された。腹部には呪いの短剣が突き立てられており、アイズがそれを引き抜いた時には既に手遅れであった。リーネは力を失いながらもわずかに意識を保ち、アイズの顔を静かに見つめ続けていた。
ベートの嘲笑
その場に現れたベートは、仲間の死を前にしても悲嘆を示さず、嘲笑を浮かべていた。彼は弱さこそが死の原因であると断じ、倒れた者達を無駄死にと切り捨てた。その言葉は団員達の怒りと悲しみを激しく刺激し、視線が一斉に彼へと向けられたが、ベートは一切意に介さなかった。
別れと残された者達の感情
ベートは冷酷な言葉を残してその場を去ろうとし、団員達は彼を仇のように睨んでいた。アイズも怒りを覚えながらも、彼の内面にあるものを理解していたため、行動を起こすことはできなかった。一方でリーネは最期に微かな笑みを浮かべ、静かに息を引き取った。惨劇の中で生き残った者達は、仲間の死と強者の嘲笑を胸に抱え込むこととなった。
四日前の出来事
この一連の惨劇は、四日前に起きた出来事であった。
一章◆ロンリーウルフ
首脳陣の反省と戦死者への悼み
【ロキ・ファミリア】の執務室において、フィン、ガレス、リヴェリアの三人は戦死者の発生と向き合っていた。入団間もない団員を含む初の戦死という現実に重苦しい空気が漂い、三人は自らの判断の甘さと慢心を認め、守るべき仲間を救えなかった責任を痛感していた。
再戦への決意と組織の切り替え
短い黙祷の後、フィンは敗北を認めつつも立ち止まることを否定し、雪辱に向けた行動を即座に決断していた。三人は感情を抑え、情報整理と対策検討へと移行し、組織として次の戦いに備える姿勢を明確にしていた。
人造迷宮クノッソスの脅威認識
議題は闇派閥の拠点である人造迷宮クノッソスへと及んだ。この迷宮は都市全域に匹敵する規模を持ち、呪道具や怪人、精霊の分身など多様な脅威を内包していた。さらに死亡したはずのヴァレッタの生存も確認され、敵戦力は想定以上であると認識された。
敵の戦略と最終目的の分析
敵は迷宮内という地の利を活かし、外部での戦闘を避ける戦略を取っていた。また精霊の分身が地上に持ち込まれ、完成を待つ段階にあると推測され、それが実現すればオラリオの滅亡に繋がると判断された。迅速な攻略が不可欠であるとの結論に至った。
イシュタル・ファミリア壊滅の影響
【フレイヤ・ファミリア】による壊滅によって、イシュタルという重要な情報源は失われていた。元団員の動向は把握されていたが、闇派閥との繋がりに関する情報は断たれ、状況把握は一層困難となっていた。
ベートへの不満の噴出
大食堂では、仲間の死を無駄死にと断じたベートに対する怒りが団員達の間で爆発していた。ラウルやアナキティをはじめとする団員達は強い反感を露わにし、長く蓄積された不満が一気に表面化していた。
アイズとレフィーヤの戸惑い
アイズとレフィーヤはその状況を前に戸惑いを見せていた。レフィーヤはベートに励まされた過去と今回の言動の乖離に揺れ、アイズもまた彼の内面を言葉にできず、何も伝えられない自分に苛立ちを抱えていた。
ベートの挑発と対立の激化
その場に現れたベートは団員達を挑発し、群れなければ何もできないと嘲笑した。その態度は対立を決定的なものとし、食堂の緊張は極限にまで高まっていた。
衝突寸前の制止と退場
ティオナとティオネが激昂し攻撃に出ようとしたが、フィンやガレス、アイズの介入によって衝突は回避された。ロキの命令によりベートは食堂を去るが、自身の言葉を撤回することはなかった。
孤立と本拠からの放逐
団員達から完全に孤立したベートは、フィンから一時的な本拠離脱を命じられた。組織維持のための判断であり、ベートもそれを理解した上で無言のまま館を去っていた。
酒場でのアイズとの対話
向かった酒場でアイズと対面したベートは、彼女から見下す理由と強さを求める理由を問われた。ベートは弱者を否定し、強者が全てを奪うという価値観を語り、その思想の根深さを露わにしていた。
乱闘とさらなる孤立
挑発を続けたベートはアイシャ達と衝突し、乱闘に発展した。圧倒的な力で制圧したものの、アイズから明確な拒絶を受け、彼は完全に孤立した存在となっていた。
レナとの再会と執着
孤独の中で現れたレナ・タリーは、戦いをきっかけにベートへ強い好意を抱いていた。彼女は執拗に付きまとい、拒絶されてもなお執着を見せ、ベートを困惑させていた。
歓楽街の廃墟と一時の滞在
ベートはレナに連れられ歓楽街の廃墟へ向かい、かつての娼館を拠点として一夜を過ごすこととなった。荒廃した光景の中で、彼は自身の状況を皮肉りながらも疲労に身を委ねていた。
過去の記憶と弱肉強食の原点
眠りの中で、ベートは部族の壊滅という過去を思い出していた。全てを奪われた経験から、弱肉強食の理を絶対のものとして受け入れ、強さへの執着を抱くに至っていた。
覚醒と次なる行動への思考
目覚めたベートは現実へと意識を戻し、自身の立場を整理した。資金確保と目的達成のために行動を再開する必要を認識し、次の手掛かりとして「鍵」の情報を求め始めていた。
闇派閥側の動向と危機感
一方、クノッソス内部ではヴァレッタが計画の崩壊と「鍵」の喪失に激怒していた。迷宮の支配に不可欠な魔道具を失ったことで戦略的危機に陥り、奪還のための行動が命じられていた。
二章◆ご注文は狼ですか?
鍵探索の方針決定
朝の会議においてフィンは、人造迷宮の鍵の所在を突き止める方針を示した。闇派閥だけでなくイシュタルの関係者にも着目し、歓楽街の捜索と並行して元【イシュタル・ファミリア】団員への接触を進める体制が整えられた。
ベート不在と情報統制
会議ではベートの不在が話題に上がったが、実際の処分内容は伏せられ、団員達には曖昧な説明がなされた。フィンは組織の安定を優先し、情報を制限したまま任務を開始させた。
ロキの密命とアイズの決意
ロキはアイズに対し、任務の傍らでベートの様子を探るよう密かに命じた。アイズはファミリアの関係修復を願い、その役割を引き受けてベートと向き合う決意を固めた。
鍵の手掛かりとレナとの交渉
歓楽街の隠れ家にて、ベートはレナから鍵に関する情報を引き出そうとした。レナは心当たりを示しつつも対価を要求し、情報を独占することで交渉優位を確立した。
デートを条件とした譲歩
交渉は難航したが、最終的にレナは情報の対価としてデートを要求した。ベートは不満を抱えながらも情報獲得を優先し、その条件を受け入れることとなった。
呪いの短剣の脅威
一方、治療院では呪いの短剣の検証が進められていた。この武器は既存の防御や回復を無効化する「不治の呪い」を持ち、極めて危険な存在であることが明らかとなった。
対抗手段の模索と決意
リヴェリアはこの脅威への対策が不可欠であると判断し、解呪薬の開発を急務とした。困難な状況ながらもアミッドは開発を引き受け、呪いを打ち破る決意を示した。
迷宮での疑似デートと戦闘
ベートとレナはダンジョンに入り、戦闘を通じて時間を共にしていた。レナは軽快な戦いぶりを見せ、一定の実力を持つことを証明する一方で、戦闘の合間にもベートへの好意を強く示していた。
拒絶と価値観の衝突
ベートはレナの想いを受け入れず、弱者は強者に相応しくないと断じた。希望や未来を語る姿勢そのものを否定し、彼女を突き放した。
レナの誤解と執着の強化
しかしレナはその言葉を拒絶と受け取らず、強くなれば隣に立てるという意味だと解釈した。侮蔑すら糧とするその反応に、ベートは困惑を深めた。
リーネの記憶の再来
やり取りの中で、ベートは過去の遠征とリーネの言葉を思い出した。もし違う言葉をかけていれば結果は変わったのではないかという後悔が、彼の内に残り続けていた。
地上での追走劇
地上に戻った後もレナに振り回される中、ベートはアイズと遭遇した。誤解が重なった結果、ベートはレナを抱えたまま逃走し、アイズとの追走劇へと発展した。
再び隠れ家へ戻る夜
逃走の末、ベートは再び隠れ家へ戻り、疲労困憊のままその場に倒れ込んだ。レナは自らの行動を反省しつつも、共に過ごせることを喜んでいた。
揺らぐ内心と感傷
一人となったベートは、自身の行動に違和感を覚えていた。本来なら関係を断つべき相手と共にいる現状に戸惑いながらも、レナや過去の記憶が心を揺らしていた。
過去の歩みと強さへの道
彼はかつてオラリオへ辿り着き、【ヴィーザル・ファミリア】に所属して力を磨いていた。仲間との関係を築きながらも、強さへの執着は変わらず、やがて故郷の仇を討つに至っていた。
勝利の果ての空虚
仇を討ち果たしてもなお、ベートの内には満たされない空虚が残っていた。強さを得ても消えない痛みが、彼の本質として刻まれていた。
歓楽街での鍵探索と推察
夜の歓楽街ではフィン達が鍵の捜索を進めていた。イシュタルの関与を踏まえ、鍵は闇派閥の手を離れている可能性が高く、双方による争奪戦の段階に入っていると判断された。
闇派閥の決断と戦端の準備
クノッソスではヴァレッタが報告を受け、敵も鍵の所在を掴めていないと分析した。その上で先制攻撃を決断し、暗殺者と呪道具を動員して地上での戦闘に踏み切る準備を整えた。
三章◆流れ落ちぬ涙
鍵の手掛かりと宮殿への接近
朝、目覚めたベートはレナから鍵に関する情報を引き出した。イシュタルの神室の隠し部屋に存在した球形の魔道具が鍵である可能性が示され、二人は女神の宮殿へ向かうことを決めた。
不穏な気配と暗殺者の出現
宮殿付近に差し掛かったベートは異様な視線を察知し、直後に巡回冒険者が暗殺される場面に遭遇した。周囲には闇派閥の暗殺者達が現れ、ヴァレッタも姿を見せ、二人は完全に包囲された。
戦闘開始とレナの巻き込み
激しい雨の中、呪道具を持つ暗殺者達が一斉に襲いかかり戦闘が始まった。ベートはレナを守りながら応戦したが、敵の数と異常な戦法により状況は次第に不利へと傾いていった。
都市全域での同時襲撃
同時刻、都市各地でもアマゾネス達が襲撃されていた。呪いの武器による致命傷が多発し、治療も通じない状況により街は混乱に陥った。ロキ・ファミリアは救援に動くも、被害の拡大を防ぐことは困難であった。
闇派閥の真の目的
フィンは襲撃の狙いが鍵ではなく、元イシュタル派閥のアマゾネス達の抹殺であると看破した。情報源そのものを消し去るという徹底した口封じが、今回の作戦の本質であった。
標的がレナである事実
戦闘の中でベートは、敵の攻撃が自分ではなくレナに集中していることに気付いた。ヴァレッタの言動からも、今回の襲撃の本来の標的がレナであることを悟った。
劣勢とレナの決断
レナを庇い続けることでベートは本来の力を発揮できず、戦況は悪化していった。やがてレナは自分が足手まといであると認め、ベートのもとを離れる決意を固め、彼の勝利を願って走り去った。
ヴァレッタの挑発と怒りの爆発
レナを追おうとしたベートの前にヴァレッタが立ちはだかり、さらにリーネ達を殺した張本人であることを明かした。その侮辱によりベートの怒りは限界を超え、激しい殺意が燃え上がった。
レナの最期
ベートが駆けつけた時、レナは既に致命傷を負って倒れていた。彼女は自分の弱さを詫びながら、隣に立ちたかったと願いを残し、静かに息を引き取った。ベートは何も言えず、その場に立ち尽くした。
救えなかった現実と嘲笑
駆けつけた仲間達が救おうとするも、呪いの傷は癒せなかった。ベートは再び嘲笑を浮かべ、弱者は死ぬだけだと吐き捨てたが、その態度は周囲に哀れみを抱かせるものとなっていた。
孤独と崩壊する内面
全てが去った後、ベートは雨の中に一人残された。怒りと絶望が渦巻く中で、彼は何もできず、ただ立ち尽くすしかなかった。
過去の喪失と絶望の深化
過去、故郷の仇を討って帰還した際にも、彼は大切な存在を失っていた。強くなっても守れない現実が、彼の内面を深く傷つけていた。
ファミリアとの決別
仲間達は都市を去る決断を下し、ベートはそれを引き止めず、自ら突き放した。こうして彼は完全に孤立し、一人で戦い続ける道を選んだ。
強さへの執着と歪み
以後のベートは強さのみを求め、弱者を侮蔑するようになった。守れなかった過去への絶望が歪んだ形で表れ、彼の言動を形作っていった。
【凶狼】の誕生
救えなかった弱者達の記憶と絶望を抱えたまま、ベートは孤独な戦士として在り続けた。その結果、仲間を持たず戦う存在として【凶狼】と呼ばれるようになった。
四章◆独りの夜
治療院での沈黙と傷の現実
激しい雨が降りしきる夜、【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院にて、ベートは全身を濡らしたまま長椅子に座り続けていた。アイズに連れられて運ばれたものの、言葉を発することはなく、ただ沈黙を保っていた。アミッドによる治療で外傷は癒されたが、「呪詛」の影響は完全には消えず、回復には時間を要する状態であった。
救えなかった命の告知
ベートの問いに対し、アミッドは助かった者もいるが救えなかった者もいると静かに告げた。その言葉はレナの死を示唆しており、ベートはそれ以上言葉を発さなかった。救えなかった命への悔恨が、治療師の態度にも色濃く滲んでいた。
襲撃の正体と都市の対応
暗殺者達は外部の犯罪組織であり、イシュタルに関係する者を標的としていたことが明らかとなった。しかし彼らは自害によって情報を断ち、首謀者の特定は困難であった。ギルドは混乱回避を優先し、事態は曖昧なまま処理されていった。
孤独の中での内面崩壊
一人となったベートは、窓に映る自分を見つめながら抑えていた感情を爆発させ、拳で窓を叩き割った。内に蓄積された怒りと無力感が、ついに表面化した瞬間であった。
アマゾネス達の保護と現実認識
一方で生き残ったアマゾネス達は保護され、フィンはアイシャに対して自身の判断の影響を詫びた。しかしアイシャはそれを否定し、今回の襲撃は避けられないものであったと断じ、戦士として受け止めるべきだと語った。
フィンの冷徹な戦略
フィンはベートが報復に動くことを見越し、その行動を囮として利用する戦術を提示した。敵の注意を引き付けた上で退路を断つという判断は、団員達に強い衝撃と反発を生んだが、最終的にベートへの一任が決定された。
雨の中の単独行動
治療院を出たベートは、雨の街を一人で歩きながら戦いの準備を進めた。仲間に頼る選択肢は存在せず、全てを自分一人で決着させる覚悟を固めていた。
ロキとの対話と怒りの吐露
道中でロキと遭遇したベートは、彼女から回復薬を受け取るも、その意図に苛立ちを見せた。やがて彼は自らの弱さへの怒りを爆発させ、強くならなければならないと叫んだ。その本質は敵への憎しみではなく、自身の無力さへの苛立ちであった。
ロキの洞察と託された言葉
ロキはその怒りの奥にある悲しみを見抜き、ベートがさらに強くなっていくことを理解していた。そしてかつての主神ヴィーザルの言葉を伝え、彼を見守る責務を受け継いでいることを示した。
牙の意味の自覚
ロキの問いかけに対し、ベートは答えを口にしなかったが、その意味を理解していた。彼にとって「牙」とは力であると同時に、自らを縛り続ける傷でもあった。
過去の記憶とファミリアとの関係
回想の中で、ベートは【ロキ・ファミリア】との出会いと入団当初の孤立を思い出した。暴言と衝突を繰り返しながらも、遠征を通じて仲間達との関係は徐々に変化し、彼の中に価値観の変化が生まれていた。
アイズという理想の存在
アイズの成長と強さは、ベートにとって理想そのものであった。弱さに屈しない姿に過去の記憶を重ねつつも、彼女が強者であり続けることを望んでいた。
揺り戻される痛みと怒り
しかしリーネやレナの死、そしてヴァレッタの嘲笑が、その穏やかな時間を打ち砕いた。過去の痛みは再び蘇り、ベートの内面を強く揺さぶった。
ヴァレッタの待ち構え
一方、歓楽街ではヴァレッタがベートの行動を読み切り、彼が単独で襲ってくることを確信して待ち構えていた。彼の孤独と執念を利用し、確実に仕留めるための準備を整えていた。
咆哮による開戦の宣言
やがてベートは廃墟の屋上から夜空へ向けて咆哮を放った。それは敵を呼び寄せるための挑発であり、自ら戦いを引き寄せる宣戦布告であった。都市中に響くその声は、これから始まる戦いの幕開けを告げていた。
五章◆傷だらけの狼
遠吠えに込められた誓い
ベートにとって遠吠えとは、縄張りや連携のためではなく、自らの覚悟を刻む誓いであった。どれほどの窮地にあろうとも強くなるという意志を天へ示す行為であり、この時彼は「絶狩」という誓いを立て、必ず獲物を狩り尽くす決意を固めていた。
暗殺者の集結と狩りの開始
咆哮に引き寄せられた暗殺者達は復興区へ集結し、呪道具を手に包囲を進めた。しかし遠吠えの変化とともに異変が生じ、次の瞬間にはベートが姿を消し、仲間が一瞬で殺される事態となった。
狩る者と狩られる者の逆転
ベートは血の匂いと呪道具の気配を頼りに敵の位置を把握し、雨の中でも迷うことなく先回りして襲撃を繰り返した。暗殺者達は次第に恐怖に支配され、狩る側から狩られる側へと完全に転じていった。
頭目の追い詰めと恐怖の対峙
最後に残った頭目はレナを殺した張本人であったが、逃走を図った瞬間に捕らえられ、顎を砕かれて地に叩きつけられた。自決も許されず、彼は初めて純粋な恐怖に支配された。
餓狼による断罪
吠えることもできぬ者に戦場に立つ資格はないと断じ、ベートは一撃で頭目を葬った。こうして暗殺者達は全滅し、狩りは終わりを迎えた。
ベートの本質に対する周囲の理解
その頃、フィンやリヴェリア、ロキ、ガレスはベートの本質を語っていた。彼の暴言は弱者を奮い立たせるための歪んだ発破であり、同時に戦場から遠ざけるための非情な選別でもあった。傷よりも死の方が取り返しがつかないと知るがゆえに、彼は罵倒という手段を選んでいた。
弱者を遠ざける理由
ベートは弱い者を見るたびに過去の自分を重ね、その弱さを許せなかった。無関心でいれば楽であるにもかかわらず、それができないために絡み、罵倒し、変わることを強いていたのである。
牙の正体の自覚
戦いの中でベートは、自らの牙が実際には傷であると認めた。頬に刻まれた刺青の下にあるのは弱さの証であり、家族や仲間を失うたびに刻まれてきた傷であった。彼はその傷を強さで覆い隠し、傷付くことでしか強くなれぬ存在となっていた。
傷だらけの狼の願い
それでもベートは戦い続けるしかなかった。弱さを許せないがゆえに自他を傷付けながらも、根底には弱者にも立ち上がり吠えてほしいという願いがあった。戦場に立つならば、弱者であっても咆哮を上げるべきだという思いが彼の本心であった。
アイズが理解した想い
ベートの咆哮を聞いたアイズは、かつて向けられた言葉の意味を理解した。それは強くあり続けてほしいという願いであり、二度と大切な存在を失いたくないという不器用な祈りであった。
ヴァレッタの迎撃準備
一方でヴァレッタは暗殺者の全滅にも動揺せず、怒りに駆られたベートが単独で襲来すると見抜いていた。彼女は自らの縄張りに誘い込み、罠と戦力を整えて迎え撃つ準備を進めた。
地下への誘導と罠の発動
ベートは血文字による挑発を受け、女神の宮殿の地下へと踏み込んだ。そこではヴァレッタと闇派閥の残党が待ち構え、広範囲に及ぶ結界魔法によって能力を削り取られていった。
追い詰められる狼
結界と魔剣の砲撃により、ベートは動くほどに力を失い、全身に傷を負いながらも立ち続けていた。地下という環境は獣化すら封じ、ヴァレッタは勝利を確信していた。
禁じられた魔法の解放
しかしベートは自らの戒めを破り、魔法【ハティ】の詠唱を開始した。それは自身の弱さと傷を露わにするため忌避していた力であったが、彼は怒りと決意のもとで解放した。
魔力と損傷を喰らう炎
発動した炎は敵の魔剣による魔力を吸収し、さらにベート自身の傷と連動して肥大していった。その力は単なる付与魔法ではなく、あらゆる攻撃と損傷を糧とする異質なものであった。
巨狼への変貌と蹂躙
炎は四肢に宿る牙となり、やがて地下空間を覆うほどに膨れ上がった。獣化と重なったベートは巨狼のごとき存在となり、闇派閥の残党を圧倒的な力で蹂躙した。
ヴァレッタとの決着
最後に残ったヴァレッタは結界すら失い絶望に染まった。ベートは一対一を選び、炎の牙による猛攻で彼女を追い詰め、命乞いすら退けて断罪した。
遠吠えと戦いの終焉
ヴァレッタを焼き尽くした後、ベートは炎に包まれたまま夜空へ向けて遠吠えを放った。それは誓いを果たした証であり、同時に傷だらけの狼の孤独と悲しみを響かせるものであった。
エピローグ◆サヨナラのかわりに――
生還したアマゾネス達の墓地行き
東の空が明るむ朝、レナ達アマゾネスの一団は第一墓地へ向かっていた。彼女達は、暗殺で命を落としたと思われていたが、アミッドの秘薬によって一命を取りとめ、リヴェリアの判断でしばらく治療院の奥に匿われていたのである。そのため仲間達には死んだものと伝えられ、墓まで用意されていた。レナはその件でアイシャやサミラに叱られながらも、自分達の墓を撤去するため墓地へ向かった。
救えなかった仲間達への祈り
一行が辿り着いたのは、かつて【イシュタル・ファミリア】が買い取っていた墓地の一角であった。そこには実際に命を落とした同僚達の墓が並んでいた。秘薬によって助かった者がいる一方で、発見が遅れた者や秘薬の数が足りず救えなかった者も存在した。レナは新しく作られた仲間達の墓の前に膝をつき、もう会えない同胞達の冥福を祈り、いつか生まれ変わって再び会おうと心の中で語りかけた。
自分の墓に残された贈り物
湿っぽい空気を断ち切るように、アイシャは余計な墓を片付けようと皆を促した。だがレナの墓の前に来た時、アイシャは突然大笑いし始めた。不思議に思ったレナが自分の墓を覗き込むと、そこには墓前に置かれた花束があった。それは薄青いミオソティスの花束であり、レナが好きだと話していた品であった。これを贈ることができる相手は、アイシャを除けばただ一人しかいなかった。
ベートからの不器用な想い
アイシャは、レナが惚れた雄は本当にどうしようもないと笑いながらも、その贈り物に込められた気持ちを認めていた。レナは花束を胸に抱きしめ、熱くなる頬と込み上げる愛おしさを抑えきれなかった。自分がどれだけ戦っても得られなかった喜びが胸に満ちていく中、彼女は涙ぐみながら青空へ向かって、ベート・ローガが大好きだと叫んだ。胸に抱かれた薄青の花束は、その想いに応えるように静かに揺れていた。
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