- プロローグ
- 第一話 中途半端な剣
- 第二話 時々清掃人
- 第三話 異世界の食事情
- 第四話 売られた喧嘩
- 第五話 後輩と半額の日
- 第六話 収穫時期の街道警備
- 第七話 畑の害獣駆除
- 第八話 ライナとミレーヌのお茶の時間
- 第九話 落穂拾い
- 第十話 携帯食料と無駄遣い
- 第十一話 雛の行列
- 第十二話 エビ釣りと外道
- 第十三話 ライフ・イズ・シュリンプ
- 第十四話 寂しげな異郷人
- 第十五話 万能兵装、その名は弓剣
- 第十六話 一矢の報い
- 第十七話 優位な交渉
- 第十八話 隠していない力の一端
- 第十九話 安い酒場のお疲れ様会
- 第二十話 ギルドマンの潮時
- 第二十一話 予期せぬ超大物
- 第二十二話 美味しそうなドブ
- 第二十三話 伐採作業の警備
- 第二十四話 謎の発明家ケイオス卿
- 第二十五話 黙々と薪割り
- 第二十六話 最強の種族
- 第二十七話 狩人酒場で過去の話
- 第二十八話 退屈そうな任務のお誘い
- 第二十九話 非常に政治的でハイレベルな交渉
- 第三十話 何も発生しないチュートリアル
- 第三十一話 羅針盤を握る者
- 第三十二話 失われた日常
- 第三十三話 乙女たちの夕食
- 特別書き下ろし番外編 アルテミスのオーガ退治
物語の概要
■ 作品概要
本作は、異世界に転生した主人公が、あえて目立たずにスローライフを送る姿を描いたファンタジー小説である。 物語は、中途半端な長さの剣「バスタードソード」を愛用するおっさんギルドマン・モングレルを中心に展開する。彼には「平和にだらだら生きる」という確固たる夢があった。異世界転生者である彼は、強力なギフト(異能)や現代知識を持っているものの、それらを無闇に行使して世界を変えたり、成り上がったりするつもりはない。ギルドで適当に働き、料理や釣りなどの趣味に勤しみ、時には周囲の人々のちょっとした役に立つという、あまり冒険しない適当男の日常を描いた冒険譚である。
■ 主要キャラクター
- モングレル: 本作の主人公。異世界に転生したアラサーのギルドマンである。強力な力や知識を有しているが、それらを誇示すると面倒ごとに巻き込まれる(徴兵や最前線への配置など)と考え、あえてブロンズランクに留まり続けている。「何でもできて、何にもできない」と評されるバスタードソードをこよなく愛し、広く浅い人付き合いをこなしながら、平穏で怠惰な生活を謳歌する変わり者である。
■ 物語の特徴
本作の最大の特徴は、主人公が圧倒的な能力を持ちながらも「徹底して活躍を避ける」点にある。多くの異世界転生作品では、主人公がチート能力を駆使して無双したり、世界を救ったりする展開が王道であるが、本作の主人公は面倒ごとを避けるため、意図的に「そこそこの実力を持つ地味なギルドマン」を演じている。 日常の料理や釣り、適度な労働を通じた温かい人間模様や生活感が丁寧に描かれており、過度な緊張感や焦燥感を与えないマイペースな世界観が読者にとっての大きな魅力となっている。
書籍情報
バスタード・ソードマン 1
著者:ジェームズ・リッチマン 氏
イラスト:マツセダイチ 氏
出版社:KADOKAWA
発売日:2023年05月30日
ISBN:9784047374416
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あらすじ・内容
ほどほどに戦いよく遊ぶ、これが理想の異世界生活
バスタードソードは中途半端な長さの剣だ。ショートソードと比べると幾分長く、細かい取り回しに苦労する。ロングソードと比較すればそのリーチはやや物足りず、打ち合いで勝つことは難しい。何でもできて、何にもできない。そんな中途半端なバスタードソードを愛用する俺、おっさんギルドマンのモングレルには夢があった。それは平和にだらだら生きること。やろうと思えばギフトを使って強い魔物も倒せるし、現代知識でこの異世界を一変させることさえできるだろう。だけど俺はそうしない。ギルドで適当に働き、料理や釣りに勤しみ……時に人の役に立てれば、それで充分なのさ。これは中途半端な適当男の、あまり冒険しない冒険譚。
感想
異世界に転生したアラサーの冒険者が、あえて目立たずに日常を生きる姿を描いた魅力的なファンタジー作品である。
主人公のモングレルは、長すぎず短すぎない中途半端なバスタードソードを愛用している。その剣の性質と同じように、やろうと思えば何でもできる実力を持ちながら、平和でだらだらとした生活を理想としているのだ。
物語を読み進めると、彼のどこか達観したような態度の裏には、あまりにも過酷な過去が隠されていることがわかる。言葉の通じない未知の世界に生まれ落ち、必死に言語を覚えた矢先、戦争によって自国の軍隊から食料を根こそぎ徴発されてしまった。さらにその直後、敵国であるサングレール軍に村を焼かれ、家族を失って孤児になってしまう。おまけに、彼は争い合う二つの国の混血児であるため、周囲からいわれのない差別まで受けるという理不尽な境遇を背負っている。
それでも彼は決して自暴自棄にならず、持ち前の能力を活かして生活費を稼ぎ、冒険者としての実績をしっかりと積み上げてきた。本来であれば、すぐにでもシルバーランクに昇格できるだけの力を持っている。しかし、彼は下位のブロンズランクに頑なに居座り続けているのだった。その理由は、シルバーになれば義務として徴兵され、理不尽で差別的な貴族たちによって激戦区の最前線へと送り込まれてしまうからに他ならない。ただ強さをひけらかすのではなく、この過酷な世界で確実に生き残るための切実な処世術として能力を隠す姿に、強い説得力と人間としての深みを感じた。
また、本作の大きな魅力は、派手な戦闘シーンだけでなく、地に足のついた日常がとても丁寧に描かれている点であった。美味しくないと言われる異世界の食事事情のなかで、自分で魔物の肉を解体して焼いたり、川でエビやカニを釣って料理したりと、手の届く範囲の小さな幸せを心から楽しむ姿が心地よい。
さらに、正体を隠して謎の発明家「ケイオス卿」として便利な道具を世に送り出し、こっそりと人々の生活を豊かにしているところも面白い。
それが好景気に繋がって、本人が気付かいないくらい密に注目されるのがこの作品らしい。
周囲との人間関係も温かく、決して孤独を愛しすぎているわけではない。後輩の弓使いであるライナに狩りのコツやギルドでの立ち回りを教えたり、さりげなく支援したりと、面倒見の良さが随所に表れている。
悲惨な過去を持ちながらもそれに囚われず、自分のペースで日常の平和を愛する。そんな彼の「あまり冒険しない冒険譚」は、読んでいてとても安心感があり、読後には穏やかで温かい気持ちが残る素晴らしい作品であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察
ギルドマンの日常
異世界におけるギルドマンの日常は、魔物との命がけの戦いから都市の裏方作業まで、非常に多岐にわたる。
多様な任務と貢献度の仕組み
ギルドマンの仕事は討伐から雑用まで幅広く、独自の評価制度が存在する。
・代表的な仕事は、ゴブリンやクレイジーボア、サイクロプスやチャージディアといった危険な魔物の討伐任務である。
・安全を好む者は、最低ランクでも受注可能な都市清掃などの雑用を選ぶ傾向にある。
・清掃やゴブリン討伐などは金銭的報酬が少ない反面、ギルドの貢献度が高く設定されている。
・貢献度を稼ぐことで、工作室の利用や大規模作戦への徴兵免除といった優遇措置を受けられる。
・季節ごとの仕事も存在し、収穫期には街道や農村の警備、冬が近づくと木材伐採現場での護衛任務などに駆り出される。
厳しい食事情と自炊の楽しみ
異世界における食や衛生の事情は過酷であり、ギルドマンたちは各自で工夫を凝らしている。
・主食の黒パンや燕麦の粥はパサパサしており、スープも旨味が薄く、日常の食事は美味しいとは言いがたい。
・そのため、討伐で得られるクレイジーボアなどの脂の乗った肉が、最高のごちそうとして重宝されている。
・仕事終わりには「森の恵み亭」や「狩人酒場」などの酒場に集まり、エールを飲みながら串焼きの肉を楽しむのが定番の息抜きである。
・食への探究心が強い者は、川でエビやカニを釣って自家製のスープ(かにこ汁)を作ったり、ナッツと蜂蜜で携帯食料を自作したりしている。
・衛生面や風呂事情は非常に悪く、清潔で温かい風呂は魔法使いの助けなどがない限り庶民には不可能な贅沢とされている。
パーティーの特色と新人の厳しい現実
ギルドマンの多くは「パーティー」と呼ばれるチームを組んで活動しており、新人にはシビアな現実が待っている。
・王道の近接装備で固めた「大地の盾」や、大所帯の互助会である「収穫の剣」など、パーティーごとに独自の特色と役割がある。
・女性中心で遠距離攻撃に秀でた「アルテミス」、年配者も多く護衛を専門とする「レゴール警備部隊」なども存在する。
・収穫期が終わると、一攫千金を夢見る農村の若者たちが大勢ギルドに押し寄せて登録を行う。
・しかし、ノウハウを持たずに無謀な狩りに出て命を落としたり、稼げずに犯罪奴隷へと身を落とす新人が後を絶たないという厳しい現実がある。
生き抜くための処世術
危険な世界で長く生き残るためには、独自の処世術が欠かせない。
・門番に土産を渡して顔馴染みになり、混雑時などに便宜を図ってもらう者がいる。
・あえて都市清掃などの地味で貧乏くさい仕事を選んで無害な存在をアピールし、犯罪者から目をつけられないように立ち回る者もいる。
・彼らが魔物以上に恐れているのが「貴族」の存在である。
・貴族の気まぐれや理不尽な怒りを買えば簡単に破滅させられてしまうため、極力関わりを持たず視界に入らないことが最大の防御策とされている。
まとめ
このように、ギルドマンの日常は常に死の危険や理不尽と隣り合わせであるが、彼らは自身の力や知恵、そして仲間との繋がりを頼りに、逞しく日々を生き抜いているのである。
匿名発明家
この世界で匿名発明家として人々に知られているのは、「ケイオス卿」と名乗る人物である。しかし、その正体は主人公であるギルドマンのモングレルである。
匿名で活動する理由と手法
モングレルが自身の正体を隠し、匿名で活動しているのには明確な理由がある。
・前世にあった便利な道具を異世界に普及させたい一方で、特許の取得や商人との駆け引き、利益を巡る抗争といった面倒事に一切巻き込まれたくないためである。
・彼はアイデアや設計図を匿名の手紙で工房や商会に無償で丸投げし、それが製品化されて世に出回った後に、自分も一人の庶民として購入するというリスクのないスタイルを貫いている。
・手紙には、水面に顔料と油を垂らして作る独自のマーブル模様で封を施すこともある。
主な発明品とその恩恵
ケイオス卿(モングレル)の発明は、多岐にわたる分野で人々の生活を向上させている。
・医療・救命:水、塩、砂糖(または蜂蜜)で作る「経口補水液」のレシピを発明し、下痢や脱水症状の特効薬として広めた。特定の機関が独占して利益を貪ることがないよう、複数の治療院に同時に手紙を送り、「この智慧が広く普及することを望む」と記して多くの命を救うきっかけを作っている。
・労働環境の改善:つま先を補強した「安全靴」を考案して現場の不慮の事故を減らしたほか、林業従事者向けに腰を曲げずに丸太を持ち上げられる「リフティングトング」の設計図を森林組合に提供した。これにより、腰痛で引退を余儀なくされていた職人たちが復職できるほどの成果を上げている。
・生活用品・文具:効率の良い農具や家具のほか、安価で書き味の良い「陶器ペン(ガラスペン)」などを世に送り出している。
社会への影響
彼のもたらした発明は、良くも悪くもレゴールの街に甚大な影響を与えた。
・ユースタスの雑貨屋のように、ケイオス卿のアイデアのおかげで小さな店から大商会へと成り上がった者も多くいる。
・しかし一方で、かつて市場を独占し価格操作を行っていた「ハギアリ商会」の主力商品と競合する発明を次々とばら撒いた結果、同商会は没落し、当時は血で血を洗うような激しい抗争の引き金にもなった。
・現在では彼の影響を受けた人々による「発明ブーム」まで起きている。
まとめ
発明による好景気は街に想定外の余波ももたらしており、それは彼自身の生活にも跳ね返ってきている。経済が回り人口が急増したことで街路のゴミが増え、結果的にモングレル自身の都市清掃の仕事が過酷になってしまった。さらに、陶器ペンの大流行によってインクの需要が急増した影響で、モングレルの愛剣を手入れするための整備油まで値上がりしてしまうなど、発明者自身が自分の首を絞めるという皮肉な結果も生んでいるのである。
アルテミスとの交流
主人公モングレルと、レゴールで活躍する凄腕の女性中心パーティー「アルテミス」との交流は、最初は距離のあるものであったが、いくつかの事件や任務を経て深い信頼関係へと変化していく。
「アルテミス」との関係の始まり
・「アルテミス」は弓使いと魔法使いを中心とした遠距離攻撃に秀でた精鋭パーティーであり、貴族からの依頼もこなす花形的存在である。
・モングレルは当初、彼女たち特有の華やかなノリや、過去にメンバーの性別を勘違いした一件からアルテミスを苦手としており、あえて距離を置いていた。
・しかし、アルテミスの最年少メンバーであるライナは、彼女がまだ駆け出しで苦労していた頃にモングレルが狩りのノウハウを教えたり面倒を見ていたため、彼を恩人として強く慕っていた。
実力と人柄の証明となる合同任務
・ある日、モングレルがライナを川エビ釣りに誘った際、強敵であるサイクロプスに遭遇し、これを討伐してしまう。
・これを知ったアルテミスのリーダーであるシーナは、ライナを連れ回すなら彼女を守れるだけの実力と人柄があるか試すとして、モングレルに合同の調査任務を要求した。
・モングレルはこの任務中、不法な罠を仕掛けていた密猟者たちに遭遇した際、無駄な殺生を避けて鮮やかに制圧してみせる。
・また、魔法使いのナスターシャは、モングレルが安物の剣に強大な魔力を纏わせる異常な身体強化のギフトを使っていることを見抜く。
・結果として、モングレルは実力と人柄の両面でアルテミスの面々からライナを任せられる男として合格点を出され、大いに認められることとなった。
日常での交流と食事
合同任務以降、アルテミスのメンバーとの距離は一気に縮まっていく。
・ウルリカとのサシ飲み:男装(女装)の弓使いであるウルリカと狩人酒場で飲み交わした際、モングレルは自身の戦争で滅んだ故郷について語る。モングレル自身は過去を気にしていないつもりであったが、ウルリカは彼が深い悲しみを背負っているのだと勘違いし、彼を強く気遣うようになった。
・カニ料理の振る舞い:モングレルはライナとウルリカに、川で釣った大量のカニを殻ごとすり潰して作った特製スープであるかにこ汁を振る舞う。最初は調理過程の見た目からドブと呼ばれて引かれたが、その美味しさで二人を大いに驚かせ、自身の料理スキルを認めさせた。
貴族の護衛とお風呂の誘惑
・その後、アルテミスは家出してきた貴族の令嬢ブリジットをあえて退屈な任務に連れ回してギルドマンの夢を諦めさせるという厄介な依頼を受ける。
・ナスターシャは前衛の増強のためにモングレルを助っ人として勧誘するが、貴族嫌いの彼は全力で拒否する。
・しかし、ナスターシャから報酬としてクランハウスにある温かいお風呂を使わせてやると提案された瞬間、前世の風呂文化に飢えていたモングレルは手のひらを返して快諾した。
・任務を無事に終えた後、モングレルは念願の温かい風呂を満喫し、思わず前世へ帰りてえよと弱音をこぼす。
・それをたまたま扉越しに聞いてしまったウルリカは故郷を思って泣いているとさらに勘違いを深め、アルテミスの中でモングレルを支えてあげようという空気が強まった。
まとめ
アルテミス側、特にシーナやナスターシャは、モングレルの実力や希少なギフトを評価し、パーティーに引き入れたいと何度も勧誘している。しかし、一人気楽なソロ活動を愛するモングレルは、のらりくらりとその誘いを躱し続けている。パーティー加入にこそ至っていないが、時折一緒に酒を飲んだり、クランハウスに出入りを許されたりと、確かな信頼関係と良好な交流が続いているのである。
創作料理と再現
モングレルは、異世界の不味い食事(特に酸っぱいパンや味気ないポリッジなどの炭水化物)に不満を抱いており、前世(日本)の味や美味しい料理を求めて、独自の創作料理や味の再現に日々挑戦している。
彼の「創作料理と前世の味の再現」にまつわる主なエピソードは以下の通りである。
「ドブ」から生まれた絶品かにこ汁と温泉卵
エビ釣りでカニばかりが釣れて落ち込んでいたライナを元気づけるため、モングレルは屋外炊事場で大規模なカニ料理に挑んだ。
・鋳鉄の大鍋にカニを殻ごと放り込み、すりこぎで粉々に叩き潰したため、その生臭く濁った見た目からライナとウルリカに「ドブ」と酷評された。
・しかし、布で濾して火にかけ、塩を投入すると灰汁がまとまり、カニミソと卵を加えることで、見事な「かにこ汁」が完成した。
・醤油や味噌がないという不満はありつつも、塩味でカニの旨味が上品に引き立ち、ライナたちからは大絶賛された。
・さらに、熱湯で作っておいた温泉卵をスープに落として食べさせるなど、前世の食文化を再現して仲間たちを喜ばせた。
携帯食料「モングレルスティック」の失敗
一方で、失敗に終わった創作料理もある。不味い炭水化物の代わりとして、小麦粉、ナッツ、油、蜂蜜、スパイスなどを焼き固めたエナジーバー風の携帯食料「モングレルスティック三号」を自作した時のことである。
・ギルドの酒場でバルガーとアレックスに試食させるが、陶器のように硬く焼き上がりすぎており、アレックスの歯が立たないほどの「硬すぎる」という致命的な欠陥が判明した。
・最終的にエールに浸して柔らかくし「エール粥」のようにして食べるという苦肉の策をとったが、「エールを使うならそのまま酒を飲んだ方がマシ」という結論に終わり、大量の在庫と材料費を無駄にする結果となった。
まとめ
このように、モングレルは醤油や味噌がないという異世界特有の制約に苦しみながらも、手に入る食材と塩を工夫し、失敗を交えながらも食の探求を謳歌している。
登場キャラクター
主要キャラクター
モングレル
バスタードソードを愛用する中年のギルドマンである 。ハルペリア王国とサングレール聖王国の国境付近で生まれた 。戦争で両親と故郷を失った過去を持つ 。目立つことを避け、平和で緩やかな日常を望む思想の持ち主である 。
・所属組織、地位や役職
ギルドに所属し、ランクはブロンズ三である 。
世間にはケイオス卿という名で知られる匿名の大発明家でもある 。
・物語内での具体的な行動や成果
はぐれゴブリンやサイクロプスの討伐、都市清掃、伐採作業の警備などを遂行した 。
ケイオス卿として経口補水液やガラスペン、リフティングトングの発明を世に広める実績を残した 。
アルテミスとの合同任務で密猟者を制圧し、貴族の娘の護衛任務も果たす 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
危険な任務や徴兵を避けるため、昇級を固辞し続けている 。
単独行動を貫くものの、周囲からはその実力や人柄を評価される傾向にある 。
ライナ
弓使いの少女であり、モングレルの後輩にあたる 。かつて都会で困窮していた際にモングレルから支援を受けた過去を持つ 。彼を慕い、行動を共にすることが多い 。
・所属組織、地位や役職
女性中心のパーティーであるアルテミスに所属している 。
・物語内での具体的な行動や成果
モングレルと川へ出向き、サイクロプスと遭遇した際に単眼を狙撃した 。
ルス村の討伐依頼において、オーガの眼球を射抜いて致命傷を与えた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ブロンズ三であり、昇格圏に近いと見なされている 。
オーガ討伐の実績により、仲間から確かな成長を認められた 。
シーナ
異名を継矢のシーナと呼称される弓使いである 。高い技量と冷静な判断力を有する 。
・所属組織、地位や役職
パーティーであるアルテミスのリーダーを務める 。
・物語内での具体的な行動や成果
モングレルの実力を見極めるため、合同調査任務を提案して彼を試す行動に出る 。
バロアの森での貴族護衛任務において、魔物を避ける索敵で依頼の意図を完遂した 。
オーガ討伐戦では部隊の指揮を執り、味方の射撃を的確に統率した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アルテミスの中心として組織をまとめ上げている 。
男爵家からの護衛依頼を直接受注する立場にある 。
ウルリカ
気さくな性格をした弓使いである 。モングレルとは酒場で言葉を交わす関係を持つ 。女性主体のパーティーに所属する唯一の男性メンバーに該当する 。
・所属組織、地位や役職
パーティーであるアルテミスに所属している 。
・物語内での具体的な行動や成果
モングレルと酒場で相席し、食事や酒を共にした 。
合同任務やオーガ討伐に参加し、後衛として味方の戦闘を支援した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アルテミスのメンバーとして王都行きの任務にも関与する予定である 。
ナスターシャ
水魔法や火魔法を扱う魔法使いである 。他者に対して冷ややかな態度を見せることが多い 。
・所属組織、地位や役職
パーティーであるアルテミスに所属している 。
・物語内での具体的な行動や成果
薪割りの手伝いや入浴設備の開発において魔法を活用した 。
合同任務でモングレルの剣を観察し、その異常な強化伝達能力を見抜くに至る 。
男爵家からの護衛任務において、報酬額や戦術的理由を提示してモングレルを説得した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
高い観察眼を持ち、組織内の戦術立案や交渉役を担う 。
ゴリリアーナ
屈強な体躯を持つ剣士である 。外見に反して控えめな性格をしている 。
・所属組織、地位や役職
パーティーであるアルテミスに所属する 。
・物語内での具体的な行動や成果
モングレルとの合同任務において野営時の薪割りを担当した 。
オーガとの戦闘では前衛を務め、防御の魔力を纏って攻撃に備えた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アルテミスにおける貴重な近接戦闘要員として部隊の防御を支えている 。
ブリジット
サムセリア男爵家の妾の子として生まれた女剣士である 。世間知らずであるが実直な気質を持つ 。自身の剣技を活かす場を求めている 。
・所属組織、地位や役職
サムセリア男爵家の出身である 。
一時的にギルドの新人ギルドマンとして登録された 。
・物語内での具体的な行動や成果
高級鎧を着て冬の森での討伐任務に参加するも、寒さと疲労で消耗する結果を招く 。
モングレルから薪割りを教わり、森での活動に対する自身の不向きさを自覚した 。
任務後は未熟さを認め、家族と話し合うために貴族街へ帰還の途につく 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ギルドマンとしての道を諦め、王都での騎士職を目指す方向へ進んだ 。
ミレーヌ
ギルドで働く受付嬢である 。モングレルの働きを評価し、単独行動を心配する気遣いを見せる 。
・所属組織、地位や役職
ギルドの受付嬢として勤めている 。
・物語内での具体的な行動や成果
モングレルに対して昇級試験の受験やアルテミスへの合流を勧めた 。
ライナとお茶を飲みながら、都市で生き残る若者の現状やモングレルの人柄について意見を交わした 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ギルドの窓口として冒険者たちの仕事の斡旋や評価を行っている 。
バルガー
短槍を扱うベテランのギルドマンである 。モングレルにとっては兄貴分に近い存在にあたる 。
・所属組織、地位や役職
パーティーである収穫の剣に所属する 。
・物語内での具体的な行動や成果
酒場でモングレルの試作した携帯食料を口にし、その硬さに苦戦を強いられる 。
ハーベストマンティスとの戦いで仲間を失い引退を考えたが、違約金で新しい装備を購入して現役続行を決意した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新装備を手に入れ、ギルドマンとして今後も活動を続ける意思を固めた 。
カスパル
初老の男性ヒーラーである 。農村の医療不足を憂い、人命救助を最優先する思想を持つ 。
・所属組織、地位や役職
護衛専門の大手であるレゴール警備部隊のヒーラーである 。
・物語内での具体的な行動や成果
収穫時期の街道警備に同行し、トルマン村で農民の治療を実施する 。
ケイオス卿から送られた経口補水液のレシピを受け取り、独占せず広く医療機関へ共有する決断を下した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新たな治療知識を得て、医療現場での救命活動に活力を取り戻した 。
アレックス
ロングソードを扱うベテラン剣士である 。モングレルとは酒場や現場で交流がある 。
・所属組織、地位や役職
戦闘寄りの大規模集団である大地の盾に所属する 。
・物語内での具体的な行動や成果
ギルドの酒場でモングレルスティックの試食に付き合った 。
伐採作業の護衛任務において、ゴブリンを斬り伏せる戦いを見せた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大規模集団の主力として日々の戦闘任務をこなしている 。
展開まとめ
プロローグ
中途半端な剣という評価
バスタードソードは中途半端な剣と評されていた。ショートソードより長く細かな取り回しに苦労し、ロングソードよりリーチが短いため打ち合いでは不利になりがちであった。前世の帯に短し襷に長しという言葉が当てはまる武器であった。
剣への愛着と自己投影
それでも彼はその中途半端な剣を気に入っていた。取り回しの不便さやリーチの短さは力があれば妥協でき、器用貧乏な側面に目を瞑れば大小を兼ねる使い方も可能であった。何もできないようでいて、やろうと思えば何でもできる点が自分に合っていると感じていた。
特売品との出会いと現在
彼は寂れた武器屋の入口に置かれた籠の中に乱暴に突っ込まれていた特売品のバスタードソードと出会い、それから二十数年にわたり振るい続けていた。その剣は、異世界での何気ない日常を、ほどよく無理のない範囲で守るための相棒であり続けていた。
第一話 中途半端な剣
はぐれゴブリン討伐
モングレルは郊外の林に出現したはぐれゴブリンの群れを討伐していた。バスタードソードで三匹を斬り、脚を断った一匹も遠からず死ぬと見て、最後の一匹にとどめを刺した。依頼はリーダー格のホブゴブリンを含む四匹の討伐であり、リーダーを倒した時点で達成同然であった。
討伐証明と装備の手入れ
モングレルは討伐証明となる鼻を削ぎ落として袋に詰めた。鼻水を嫌い、汚れた刀身をゴブリンの血で洗い流したのち、川辺で装備を整えた。その後、売れそうな野草や薬草を採取し、拠点であるレゴールの街へ帰還した。
貢献度を目的とした依頼達成
処理場で交換票を受け取り、受付嬢ミレーヌに提出した結果、四匹討伐で最高評価を得た。報酬は少額であったが、目的は貢献度であった。貢献度を積めば特典や優遇を受けられ、大規模作戦への参加免除も見込めるためである。
昇級拒否と現状維持
ミレーヌから昇級試験を勧められたが、モングレルは危険な任務や義務が増えることを嫌い、ブロンズ三のままでいることを選んだ。緩やかに生きるには現状が最適だと考えていた。
酒場での語らい
仕事後、酒場へ向かったモングレルは、ベテランのギルドマンであるバルガーと合流した。かつて世話になった兄貴分に近い存在である。バルガーからバスタードソードの使いにくさを指摘されるも、モングレルはその中途半端さを気に入っていると語った。こうして彼は、変わらぬ日常の延長として酒場へと向かった。
第二話 時々清掃人
都市清掃の選択
モングレルは受付嬢ミレーヌに依頼票を提出し、都市清掃の任務を選んだ。報酬は少ないが貢献度が高く、綺麗好きな彼にとっては苦にならない仕事であった。街にはゴミや馬糞が散乱しており、自分の使う道くらいは清潔であってほしいと考えていた。
清掃作業と価値観
清掃はゴミ拾いに加え、必要に応じて汚物の回収も含まれていた。この都市では雨で流れない固形物の方が厄介とされ、下水の詰まりを防ぐためにも優先して回収されていた。モングレルは臭気の強い下水道掃除だけは避けつつ、淡々と街を整えていった。
ライナとの再会
作業中、弓使いのライナに声をかけられた。彼女はパーティー“アルテミス”の一員としてホブゴブリン討伐に向かうところであった。後輩として慕われつつも、モングレルは自らの任務を変える気はなく、軽口を交わして見送った。
周囲の評価と処世術
遠巻きに雑用ばかりで冴えないと評されることもあったが、街の人々と会話しながら清掃を続けることで、社会の一員としての実感を得ていた。さらに、あえて貧乏そうな仕事を選ぶことで無害な存在と見なされ、厄介事を避けられると考えていた。モングレルはそうした処世術を胸に、今日も街を整えていた。
第三話 異世界の食事情
不味い主食と現代人の舌
この世界の食事は総じて不味いとモングレルは感じていた。主食は雑穀混じりの黒パンや燕麦の粥であり、どちらも口に合わなかった。スープは旨味が薄く、塩味で誤魔化している印象が強い。野菜も品種改良が進んでおらず、味にばらつきがあった。元現代人である彼の舌は、前世の味を忘れられずにいた。
美味なる肉への執着
しかし、この世界にも確かな美味があった。それが肉である。クレイジーボア討伐の依頼を受けると、彼は内心で歓喜した。突進を躱して喉元を斬り、川で血抜きを行い、腹を割いて内臓を取り出す。肝臓や心臓、舌など好みの部位を選び、塩を振って焼くだけで十分な旨さを得られた。
森での解体と保存
肉はその場で焼いて食べる分、燻製にする分、持ち帰る分に分けた。脚肉は換金用として確保し、他は自らの食料とした。手際は完璧ではないが、森で野営しながら作業を続けた。戦闘は苦ではなく、食用魔物の依頼は彼にとって好都合であった。ただし、醤油やタレの作り方を知らないことだけが心残りであった。
街への帰還と処世
レゴールへ戻ると、門番と軽口を交わしながら通行手続きを済ませた。解体屋を利用すれば手数料が取られるため、自ら解体する道を選んでいる。燻製を土産に渡し、日頃から門番と良好な関係を築いていた。腕の立つギルドマンとして振る舞いつつも、街では無用な警戒を招かぬ立場を保つ。それもまた、彼の生き方の一部であった。
第四話 売られた喧嘩
転生と出自の事情
モングレルは転生の経緯をはっきりとは覚えていなかった。ハルペリア王国とサングレール聖王国の国境付近の開拓村に生まれ、戦争再開により九歳で両親を失った。父はハルペリア人、母はサングレール人であり、敵対国同士の血を引く彼は、父方の祖父にも受け入れられず追い出された。
ギフトと慎重な生き方
幼少期に目覚めたギフトにより生計を立てられたが、立身出世を目指すことはしなかった。知識を用いた商売を試みた際、功績を奪われたうえ関係者が失踪した経験から、目立つことの危険を悟った。黒髪に白のメッシュという外見はハーフであることを強く示し、人種差別の対象にもなり得たため、表立った行動は避けていた。
差別と挑発
ある日、ギルド内で新顔の四人組に公然と侮辱された。敵国の血を引くことや愛剣を嘲られたことで、モングレルは応じることを決めた。無闇に媚びるよりも、必要な場面では力を示す方がこの世界では有効であると理解していたからである。
不意打ちと反撃
ギルドの外に出た直後、不意打ちを受けて吹き飛ばされた。しかし彼は身体強化の魔法を用い、殴られながらも反撃に転じた。魔力を注ぎ込んだ肉体で一人ずつ打ち倒し、最後の一人には蹴りを叩き込んで決着をつけた。愛剣を侮辱された怒りもその一因であった。
余波と評価
ギルドに戻ると、周囲はその実力を認めつつも昇級しない姿勢を惜しんだ。モングレル自身は痛みをこらえながら治療室を利用し、今回の立ち回りが力の誇示として機能したことを自覚していた。それでも、次はもっと無傷で済ませたいと内心で反省していた。
第五話 後輩と半額の日
森の恵み亭と半額の串焼き
モングレルはギルド併設の酒場は高く品揃えも悪いため、食堂代わりにはギルド近くの森の恵み亭を贔屓にしていた。店は普段から安く美味い人気店であり、この日は討伐で大量のボア肉が入ったため串焼きが実質半額となり、店内はいつも以上に賑わっていた。モングレルは脂の乗ったボア串を頬張り、薄いエールと合わせて満足していた。
ライナの成果と労苦
隣に座った後輩の弓使いライナは、そのボア肉が自分たちパーティー“アルテミス”が討伐して卸したものだと明かした。丘向こうの林で多数のボアを仕留め、射抜くより解体の方が大変だったと語り、ウルリカの手際が作業を支えたと振り返った。モングレルはその成果を強く褒め、ライナは過去の死闘より肉の話が優先されることに不満を漏らした。
乱闘の噂と力の見せ方
ライナはギルドでの喧嘩の噂を持ち出し、モングレルは華麗に戦ったと誇張したが、実際は泥試合だったと突っ込まれた。モングレルは相手が半端者だったことを認めつつ、外から来た者が力を誇示しようとして揉めるのは珍しくないと捉えていた。さらに、必要以上の力を公然と示す利が少ないため、勝ち方が地味でも構わないと考えていた。
ソロ志向と後輩への気遣い
ライナからパーティーを組むよう勧められても、モングレルは共同生活の相性や、いざという時に本気を出しにくい点を理由にソロを続ける意志を示した。一方でライナの近況を気にかけ、アルテミスで良好にやれていると聞いて安堵した。かつて所属した仲良しパーティーが崩れ、その後も馴染めずに転々としていた事情を踏まえ、今の居場所が得られたことを良いことだと受け止めていた。
味覚談義と満腹の夜
ライナが柑橘の皮のジェルを乗せた料理を選ぶと、モングレルは通は塩で素材の味を楽しむのだと主張し、ライナは彼を貧乏舌だとからかった。軽口を交わしながら、モングレルは串焼きとエールを腹一杯に楽しみ、後輩の変化を感じつつ夜を過ごしていた。
第六話 収穫時期の街道警備
農業国家ハルペリアと治安悪化の季節
ハルペリア王国は平地が多く河川にも恵まれ、農業と酪農に適した国土で成り立っていた。国名や国旗が示す通り農具の大鎌を象徴とし、農業人口の多さから農民が蔑まれない社会であった。一方で国土の広さは管理の負担にもなり、収穫前の浮かれた時期には羽振りの良い荷馬車を狙うならず者が街道に増えていた。
強制参加の街道警備と編成
この時期の街道警備は示威も兼ねるため人数が必要であり、モングレルは単独参加を認められなかった。収穫シーズンの護衛は毎年恒例で、ブロンズ以上のギルドマンは強制参加となっていた。警備や農村見回り自体は重労働ではないが、村の好意として収穫祭に参加させられることが負担であるとモングレルは感じていた。
配属先の選択とミレーヌとのやり取り
ミレーヌは“アルテミス”への合流案を示したが、モングレルは女だらけの集団を避けた。代わりに知り合いのいる“レゴール警備部隊”三班への参加を希望し、班長トマソンの班に入ることになった。遠方への派遣でも、どうせ避けられない任務なら遠出して景色を楽しむと割り切っていた。
カスパルの疲弊と警備部隊の雰囲気
集合場所にはヒーラーのカスパルがいたが、徹夜明けのように震え、目の下に濃いクマを抱えていた。貴族街から急患を頼まれ断れなかった事情を語り、馬車で休むつもりだとして任務に臨んだ。警備部隊は気心の知れた年配の男たちが多く、内輪の笑いを交えながら動く町内会のような空気をまとっていた。モングレルはその輪に無理に入らず距離を保って同行した。
荷馬車護衛の行軍と農村の景色
一行は必需品を積んだ荷馬車とカスパルを伴い出発し、前後に分かれて囲む陣形でのんびり進んだ。道中には麦刈りに励む農民の姿があり、槍のように長い柄の大鎌で麦を薙ぐ独特の動きが見えた。グレートハルペのような大鎌が騎士装備にも似た形で存在することに触れつつ、文化としての景色を楽しんだ。途中で疲れた者が荷台で休む場面もありながら、薄暗くなる前に最初の中継地点へ到着し、これを数日続ける移動の大変さを実感していた。
第七話 畑の害獣駆除
穏やかな護衛行程と村の空気
街道警備の道中は盗賊もゴブリンも現れず、雨も降らない穏やかな旅であった。カスパルの体調は日ごとに回復し、警備先のトルマン村に着く頃には元気になっていたが、薄めたポリッジを震える手で啜りながら無言で微笑む食べ方は、見ている側を不安にさせていた。トルマン村は外から来た者にも大らかで、モングレルは差別的な扱いを受けず、農作業を眺めつつ穏やかに過ごせていた。
収穫期の治療と危険の説明
カスパルは午後の休憩時間に広場で軽い治療を行う予定であり、収穫期は怪我人が増えると話した。草や刃物で手を切る以外にも、麦畑から好戦的な野生生物が現れることがあるため油断できないと語られた。モングレルは長柄の大鎌が好まれる理由を想像しつつ、自身の村では小型のナイフで収穫していたことを思い出していた。
畑のゴブリン駆除の依頼
村人から、畑にいるゴブリンを畑の外で殺してほしいと頼まれた。三班の年配組が巡回する中で体力のあるモングレルが向かうことになり、彼は作業を引き受けた。麦畑は背の高い麦が遮蔽物となり、ばら撒きに近い植え方のため奥が手入れされにくく、小柄で悪臭の強いゴブリンにとって隠れ家になりやすかった。
干し肉で釣り出して討伐
畑の奥には二匹のゴブリンがいたため、モングレルは血を畑に撒かないよう外へ誘導する方針を取った。臭いの強い干し肉を見せつけて挑発し、怒ったゴブリンを麦畑から引きずり出したうえで、バスタードソードを抜いて一匹を頭から斬り下ろし、もう一匹も袈裟斬りにして素早く仕留めた。
後片付けの不満
討伐後、村人は収穫作業に戻り、モングレルはゴブリンの死体の後始末という嫌な役回りを任された。血塗れになるくらいなら殴り殺した方が良かったかもしれないと、彼は内心でぼやいていた。
第八話 ライナとミレーヌのお茶の時間
護衛任務のすれ違いとライナの不満
ライナはモングレルが収穫期の護衛任務で既に出発しており、アルテミスとの合同を断っていたとミレーヌから聞かされ、不満を抱いた。アルテミスは女性中心のパーティーで貴族街の護衛などを受けることも多いが、今回の派遣警備はそれとは別であり、ライナは一緒に仕事をしたかったと感じていた。
成長を見せたかった思いと過去の褒め言葉への引っかかり
ライナは以前、オーガ討伐の激戦よりもクレイジーボア大量討伐を褒められたことを思い出し、納得できなさを語った。それでもモングレルと一緒に働き、自分の成長を見せたかったという本音をミレーヌに打ち明けた。
ギルドでのお茶と自立の実感
ミレーヌは仕事が一段落したタイミングで休憩を提案し、ライナを座らせてギルド内でお茶を飲みながら話をすることにした。ライナは奢りを遠慮し、自分で稼いだ金で支払うことに満足感を覚えていた。村にいた頃には得られなかった、稼いだ金で落ち着いて休む感覚を噛みしめていた。
レゴールでの苦労と転落の危険
ミレーヌは、都市外から来た若者のパーティーはすぐにリタイアしたり、最悪は野盗に堕ちることもあると語り、ライナが落ち着いたことを喜んだ。ライナは村の仲間と三人で都会に出たものの稼げず、宿代と食事代で精一杯だった現実を語り、馴染みの二人は村へ戻ったと説明した。解散後は一人での非効率と寂しさに苦しみ、他パーティーでは馴染めず失敗し、金を騙し取られることもあったと振り返った。
モングレルとの出会いと支援の積み重ね
ライナは、転々としていた頃に森でモングレルと出会った経緯を語った。モングレルは安売りの子供用のような弓で鳩を狙っており、ライナが助言すると対等に接し、怒りも馬鹿にもせずに応じた。ライナが鳥を撃ち落とすと大げさに驚いて褒め、困窮を察してギルド経由の取引を提案し、狩り以外の採取物の売り方など稼ぎ方やギルドでの身の振り方も教えた。ライナは、アルテミスに認められて入れたのはモングレルの地道な支えがあったからだと理解していた。
パーティー加入への願いとミレーヌの見立て
ライナは、モングレルがずっと一人でいることを寂しさと危険の面で心配し、パーティーに入ってほしいと願った。ミレーヌも心配は同じだが、本人の考えがあっての単独行動であり強制はできないと諭した。ミレーヌはモングレルを、好き勝手に見えて実際に好き勝手だが面倒見が良く誠実で、悪事は働かない人物だと評し、派遣先でも模範的に働いているはずだと述べた。
正義像への笑いと二人の共感
ライナはモングレルを「正義」「模範的」と評するのは少し違うと感じつつも、悪ではなく良い人だとは認めていた。二人はそのズレを共有し、モングレル像を思い浮かべて笑い合いながら、お茶の時間を過ごしていた。
第九話 落穂拾い
混沌の帝王テラ・カオス降臨
モングレルはダートハイドスネークの頭を被り、「混沌の帝王テラ・カオス」を名乗って子供たちを脅かしていた。枝を武器に立ち向かう子供たちの攻撃を受けつつも、武器を“破壊”し、「落穂を集めなければ弓は手に入らぬ」と宣言する。報酬として子供用の弓を提示すると、子供たちは競うように落穂拾いへ散っていった。遊びを利用して労働を促す、巧妙な誘導であった。
収穫の終わりとカスパルの憂い
診療を終えたカスパルは、収穫が大きな怪我なく終わったことに安堵する。だが農民たちの慢性的な足腰の不調を前に、治療を受ける機会の少なさと、それを当然と受け入れてしまう現状に苦悩を滲ませた。都会と村の寿命差、教育機会の不足、ヒーラー不足の現実を語り、後進育成の必要性を痛感するが、農民の子供に十分な教育が与えられない構造的問題に直面していると吐露する。
収穫祭とささやかな別れ
夜は収穫祭が開かれ、モングレルは村人に引きずられるように踊りと歌に参加する。料理は口に合わぬながらも、もてなしを受け入れる。最後に子供用の練習弓を子供たちへ譲り、別れを告げた。帰路では班長トマソンが腰を痛める小さな騒動はあったものの、任務は終始平穏に終わった。
宿での工作と密かな決意
レゴールへ戻ったモングレルは宿で工作を行う。水面に浮かべた油膜でマーブル模様を作り、そこに手紙を潜らせるという細工を施す。封印の刻印を押したその手紙は、「死ぬ前に恩返しをしておきたい」という彼なりの思いを込めたものであった。
ケイオス卿の手紙と経口補水液
翌朝、警備隊診療所では助手ユークスが騒然とした様子で現れる。投函箱に「ケイオス卿」からの手紙が届いていたのだ。そこに記されていたのは、水・塩・砂糖や蜂蜜で作る経口補水液のレシピであった。下痢や嘔吐、脱水への効果が記されており、ヒールに頼らず多くの命を救える可能性がある内容である。
ユークスは独占による利益を夢見るが、カスパルは手紙の意図を読み取り、他医療機関へも広めるべきだと判断する。独占よりも救命を優先する姿勢を示し、まずは治験と検証から始めると決めた。
救える命の増加という希望
このレシピが真実であれば、治療は格段に効率化し、多くの患者を救える。カスパルは新たな活力を胸に、ユークスと共に仕事へ取り掛かる。こうして混沌の帝王を名乗る発明家の知恵は、静かに医療現場へと広がり始めたのであった。
第十話 携帯食料と無駄遣い
炭水化物への不満と自炊への執着
収穫期後の物価下落で粥やパンは少し安くなるが、モングレルにとってこの世界の炭水化物は「硬い・パサつく・酸っぱい」など不満だらけで、値下げに喜べない。娯楽の少なさもあり、せめて食の満足を得るために自炊へ手を出し続けている。
モングレルスティック三号の品評会
ギルド酒場のスペースで、モングレルは携帯食料「モングレルスティック三号」を持ち込み、短槍使いバルガーと剣士アレックスに試食を依頼する。材料は小麦粉、複数のナッツ、油、蜂蜜、スパイス、塩で、形状はエナジーバーに近い。だが名前は即座に酷評され、さらに硬さが問題になる。
硬すぎる欠陥と“エール浸し”という苦肉の策
スティックは打ち鳴らすと陶器のような音がするほど硬く、アレックスが噛み切れず動きを止める事態に至る。モングレルは「エールに浸せば柔らかくなる」と対処法を提示し、数十秒浸して再挑戦するが、外側が少し食べられる程度で、味の評価も「エールのお粥」寄りとなる。焼き過ぎによる異常な硬化が疑われ、エールの底に沈めても形が崩れないほどであった。
発明ブームへの言及とモングレルの野望
周囲ではケイオス卿の影響による“発明ブーム”が起きており、バルガーとアレックスはモングレルの試みを半ば後追いだと見なす。モングレルは「ハルペリア軍の戦闘食糧に採用させ、儲けて喫茶店のマスターになる」という謎の将来像を語るが、試作品の現状は「兵士の歯が折れる」と揶揄される。
材料費の大台と浪費癖の指摘
モングレルは四十本ほど作ったらしく、材料費の話題になると口を濁す。討伐に出ず都市清掃ばかりで収入源が細い点も指摘され、「無駄遣いが多いから大きめの依頼を受けろ」と促される。モングレルは賭場に行かないと弁明するが、変な武器を定期的に買う癖を突かれる。
新しい相棒ソードブレイカーの致命的欠陥
モングレルが自慢げに出した新ナイフは、刀身に櫛状の切れ込みが入ったソードブレイカーである。剣を受けて捻り折る用途だと語るが、アレックスのロングソードを当てると、そもそも櫛の溝に刃が入らないことが判明する。用途がショートソード級に限定される“雑魚専”であり、購入額を問われたモングレルは沈黙する。
結末はエール粥化と厄日の総括
エールに沈めていたモングレルスティックは時間経過で多少柔らかくなり、崩して粥のようにして飲む案に落ち着く。しかし結論として「エールを使うなら酒はそのまま飲んだ方が良い」という一致に至り、この日の試みは成果に乏しい。モングレルは連続する失敗を厄日として受け止め、仲間は機会があれば任務に誘うと声をかけるに留まった。
第十一話 雛の行列
ギルドのパーティー概説と実情
モングレルは、ギルドの「パーティー」が複数人で登録するチーム制度であり、受注・発注を名義で行える仕組みだと整理した。ただしRPG的な役割分担は現実には薄く、剣士なら剣士ばかり、弓使いなら弓使いばかりの同系統構成が多い。職業はジョブ制ではなく、武器・戦闘様式の自己申告に近いものであり、「盗賊」は戦闘スタイルではなく犯罪者扱いである。
レゴールで目立つ勢力の整理
モングレルは、レゴール周辺で活動が目立つ集団を挙げ、性質を比較する。
- “大地の盾”
剣・槍・盾・鎧の王道装備で討伐や盗賊征伐もこなす戦闘寄りの大規模集団。自前の馬を多数保有し、現地到達が非常に速い一方、維持費負担も大きい。元軍人が多く体育会系で、モングレルは距離を置く。 - “収穫の剣”
大地の盾ほどのノリに馴染めない者が集まる、より大人数の互助会的組織。武器や役割が混在し、統一感はワッペンで補う。全体での集団行動は弱く、小勢力が離脱しがちで、モングレルはネトゲの大規模ギルドを連想する。 - 女性パーティー“アルテミス”
弓使い・魔法使いが中心で近接が少ない尖った構成。討伐に加えて貴族街からの依頼もあり、女性だけであることが仕事上の利点になる。強者も複数おり、軽く触れれば危険。男が一人いる噂はあるが、モングレルは見たことがない。過去に性別を誤認して声をかけた件で目の敵にされ、加入は不可能かつ本人も望まない。 - 護衛専門“大手”「レゴール警備部隊」
討伐より護衛を主に受け、人数も多い。戦闘特化ではないが安定収入を求める者が集まり、中年・年寄りも含む。需要があるため成立しており、カスパルもヒーラーとして所属する。モングレルは老後ならともかく、若いうちは討伐でジビエを得たいので入る気がない。
収穫後に押し寄せる“雛”たち
収穫期が終わると、家を継げない若者や「外で稼げ」と追い出された層が名声と食い扶持を求めてレゴールへ流入し、ギルドは登録対応で激務になる。施設内では新人同士の喧嘩も頻発し、受付エレナは苛立ちを隠せない。モングレルはその様子を眺めながら、酒ではなく新鮮なミルクを飲み、密かな贅沢を楽しむ。
新参三人組との小競り合いと“列”の現実
モングレルは、サングレール人扱いで絡んでくる新人三人組に遭遇する。彼らはブロンズを見下し、挑発しつつも、登録の順番待ちの列を離れたせいで自分たちの位置が詰められる失態を犯す。モングレルは「行列に慣れていない田舎者のあるある」と捉え、基本は大目に見る姿勢を取る。
故郷の名でほどける虚勢
新人の一人が「酒場でミルクを飲むのはださい」と揶揄するが、モングレルはモーリナ牧場の搾りたてミルクの価値を語る。するとその一人がモーリナ村出身だと判明し、急に気まずくなって引き下がる。小さな縁が、彼らの虚勢を崩す決定打となった。
見送る視線と、未来の“弄りネタ”
モングレルは、今は初々しい彼らが数年後にどれだけ残るのかを思い、少し重さも覚える。しかし同時に、彼らが結成した厨二的なパーティー名――「勇者の軌跡」――をメモし、数年後に弄り倒すことを楽しみにする。若者の青さを温かく眺めつつ、自分なりの距離感でこの季節を味わう回であった。
第十二話 エビ釣りと外道
ルーキーの現実と「仕事がない季節」
モングレルは、新入りギルドマンが信用不足で警備任務を回されず、採取も先行者に刈り尽くされ、都市清掃すらこの時期は新入りが群がって競争になる現状を語った。残る稼ぎ口は、下水清掃のような汚れ仕事、建設系の重労働、あるいは背伸びした討伐である。にもかかわらず討伐は人気で、講習後に軽いノリで森へ入り、毎年多くの若者が死ぬことにモングレルは強い嫌悪を抱いていた。
ライナの困窮と、モングレルの“穴場”提案
掲示板前で仕事不足に項垂れるライナに、モングレルも「清掃が全滅」と同調しつつ、冗談を挟んでから別口の暇つぶし兼食料確保を提案した。レゴールはケイオス卿(実質モングレル)由来の発明ブームで工房拡張が続き、交易都市化が進み、人も仕事も集まりすぎて森も混み合う。そこでモングレルは、素人が狙わない川の“穴場”へライナを誘う。
エビ釣り開始と、想定外のビギナーズラック
川辺でモングレルが取り出したのは自作の釣り竿であり、狩りを想像していたライナは落胆する。しかしモングレルは、釣りは一人だと虚しいから同行が必要だと押し切った。餌はその場の虫で十分で、流れの緩い岩陰に落とす待ち釣りで川エビを狙う段取りとなる。
ここで想定外が起こり、最初の当たりはライナに来る。指示通りに待って引き上げると、川エビが釣れ、鍋に投入して蓋をする。以後もライナは連発し、十匹近くまで伸ばす一方、モングレルはほぼ当たり無しという屈辱を味わう。
“外道”の出現:サイクロプスとの遭遇
釣果の偏りに苛立つ最中、ライナが川向こうに異変を察知する。そこには、猫背で体毛に覆われ、頭部に単眼を持つ巨大な魔物――サイクロプス――が立っていた。体格は約三メートル級で、よだれを垂らしてこちらを狙っている。
モングレルは、浅瀬なら渡ってくる、足も速く力も桁外れで、逃げる方が危険だと判断し、討伐を決める。ライナは弓を構えるが、彼女の弓では頑丈な胴体を抜くのは難しく、狙い所は単眼となる。
ライナのスキル射撃失敗と、モングレルの近接処理
ライナはスキル「照星」を発動し、震えのない精密射撃で単眼を狙う。しかし矢は頬骨付近に当たり弾かれ、サイクロプスを激怒させる。
モングレルはライナに離脱を指示するが、優先は釣ったエビ入り鍋の確保であり、鍋を持って下がらせるという奇妙な優先順位を示す。ライナが後退する間、モングレルはバスタードソードで迎撃に入る。
腱斬り・脚裂き・転倒誘導による安全な討伐
サイクロプスが川を渡り切る直前、モングレルは伸ばしてきた腕の腱を斬って把持を封じ、続いて脚を裂いて膝をつかせる。巨体は浅瀬で踏ん張れず転倒し、流れに煽られて体勢を崩す。
以後モングレルは反撃に警戒しつつ、太腿・膝・脇腹・首など、血管や腱・筋を狙って刺突を重ね、生命力の高い大型個体を確実に失血死へ持ち込む。オーバーキル気味に徹底し、死んだふりを許さない姿勢を取った。
討伐証明の採取と、嫌悪感の残る後始末
討伐証明として、サイクロプスの単眼の部位を削ぎ取る必要がある。モングレルはグロさに嫌悪を示しつつ、目玉の一部を確保する。ライナは剣技を称賛するが、釣りの下手さを皮肉り、モングレルは言い訳しつつ次回の釣り勝負を宣言する。
エビの下処理と、次の不安
エビはすぐ食べず、苔石を入れて一日水に晒して泥抜きをする段取りとなる。だがモングレルの頭は、サイクロプス出現の異常さに向く。はぐれ個体ではなく群棲なら、混み合う今期の森でルーキーの大量死が起こり得る。ギルドがどう動くかで被害が決まるとして、モングレルは不穏な予感を抱いたまま章を締めた。
第十三話 ライフ・イズ・シュリンプ
サイクロプスの報告と「胃袋確認」の重み
川エビ十匹とサイクロプスの単眼を持ち帰ったモングレルとライナは、処理場で解体長ロイドに部位確認と交換票作成を依頼した。ロイドは「次があれば胃袋の内容物確認を忘れるな」と助言し、人や家畜が入っていれば事案の扱いが重くなると示した。ライナも、オーガ討伐時に胃袋と腸の確認をした経験を語り、人型魔物の解体が生理的に厳しいことを共有した。
副長への報告と、再調査の決定
サイクロプスの遭遇はライナの目撃もあるため黙殺できず、二人はギルド副長室へ通される。副長は、ルーキーが採取で動き回っていたことで辺鄙に潜んでいた個体を刺激した可能性を考え、シルサリス橋近辺の地理を踏まえて再調査が必要だと判断した。衛兵は市内の警備と揉め事対応で手一杯のため、外部対応はギルドが引き受ける形になっており、シルバー以上の人員を複数回派遣し、空振りが続けば打ち切る方針を示した。
昇格の話題と、モングレルの“拒否の政治性”
副長は、ブロンズ3のライナが昇格圏に近いことを指摘し、優秀な弓使いの希少性を評価した。一方モングレルには、貢献値を稼いでいるため強くは言わないが、昇級拒否を続けるなら周囲への周知と振る舞いを徹底するよう釘を刺した。人種差別で昇格を渋っているという噂はギルドの沽券に関わるためであり、モングレルはこれまで通り「拒否の理由」を目立たせる姿勢を取ると応じた。副長室を出た二人は、偉い相手への緊張と、貴族相手ならなおさらという現実を語り合う。
エビの素揚げと“文化的な昼飲み”
翌日、泥抜きを終えた川エビを「森の恵み亭」に持ち込み、調理の手間を金で解決して素揚げにした。揚げたての香ばしさ、殻や脚まで食えるパリパリ感にライナは素直に感嘆し、エールが進む昼食となる。釣果の全てがライナのものだったため、モングレルは遠慮なく食べる立場に回り、代わりに調理費を出した点で折り合いをつける構図となった。
酢の提案と「人生観」の押し付け
モングレルは揚げエビに酢をかける食べ方を勧め、柑橘が理想だが酢でも十分合うと断言した。半信半疑のライナも試して美味さを認め、モングレルの「人生の半分を損している」理屈に半ば呆れつつも受け入れる。こうして、危険な魔物の報告という重い用事を片付けた後に、釣りと揚げ物と酒という小さな娯楽が成立した。
次回への約束と、モングレルの課題
ライナはエビ釣りの良さを認めつつ、人生を懸けるほどではないと距離を置く。モングレルは再び釣りに誘い、ライナは次は先輩にも釣果を出すよう要求する。モングレルは渋く了承し、自分で釣り上げてこそ旨いという原点に立ち返り、次回のリベンジを誓った。
第十四話 寂しげな異郷人
新人淘汰と生き残りの現実
新人が増えてしばらくすると、ギルド内は次第に落ち着きを取り戻した。向いていない者は故郷へ戻り、短慮な者は衛兵に捕らえられ、犯罪奴隷へ堕ちる例すら出た。新パーティー「神殺しの稲妻」は、リーダーの転落で瞬時に瓦解した。
人数過多で分け前が薄まり空中分解する例も多く、高難度任務へ無理に挑んだ末に重傷や借金奴隷へ落ちる者もいる。残った者が比較的まともとはいえ、不発弾のような危うさを抱えた者も少なくない。
その一方で、嗅覚の鋭い新人は悪質な勧誘を避け、大手へ滑り込む。モングレルは酒やミルク一杯で情報を与え、武器店や欠員情報などをゆるく紹介していた。
ベテランへの逆勧誘
そんな中、初心者パーティー「最果ての日差し」のリーダー・フランクが、モングレルを勧誘するという異例の展開が起きる。フランクはサングレール人の血を引くと明かし、同族意識を示すが、モングレルはソロを好んでいると断る。
フランクはなお食い下がるが、最終的に引き下がる。モングレルは、彼らが悪人ではないと感じつつも、無自覚に地雷を踏みかねない危うさを見抜いていた。周囲の酔客は冷やかすが、モングレルは意に介さない。
シーナの来訪と試練の提示
後日、ギルドで自家製携帯ポリッジの素を食べていたモングレルの前に、アルテミスのリーダー「継矢のシーナ」が現れる。
彼女は、ライナがサイクロプスと遭遇した件を問い質し、モングレルの実力を疑問視する。単独でサイクロプスを倒したという事実が、運か実力かを見極めたいというのが本音であった。
そして、合同討伐任務で腕前を示せと要求する。拒否するなら、ライナを連れ出すなと明言する。
受諾と内心の算段
モングレルは条件を受け入れる。理由は、ライナとの約束と、釣果の雪辱という私情が混ざっていた。
ただし人前でギフトやスキルを露骨に使うわけにはいかず、実力を示す方法を工夫する必要があると内心で考える。
最後に携帯ポリッジの素を売り込もうとするが、シーナに即座に断られ、商売の芽は潰える。
第十五話 万能兵装、その名は弓剣
合同任務の趣旨と任務内容
モングレルはアルテミスとの合同任務に臨むことになった。目的は、ライナを連れ出すに足る実力を証明することである。任務は二日間の森林探索で、森で消息を絶った新入りの捜索と、無許可で仕掛けられた罠の解除が主な内容であった。作業小屋までの往復という明確なルートが設定され、日没前に到達できるかが鍵となる。道中に何も起きないことはほぼないとモングレルは踏んでいた。
アルテミスメンバーとの顔合わせ
東門に集まったのは五人。リーダーのシーナ、ライナ、以前誤解を生んだ剣士ゴリリアーナ、気さくな弓使いウルリカ、そして冷ややかな水魔法使いナスターシャであった。
ナスターシャは今回の目的を「実力の見極め」と明言し、緊張感を漂わせる。ゴリリアーナは屈強な体躯に反して控えめな態度を見せ、以前のわだかまりを解こうとする空気が生まれる。
指揮権を巡る軽い駆け引き
森へ入るにあたり、モングレルは自ら舵取りを申し出る。実力を見る任務である以上、判断力も含めて見せるべきだと主張する。ウルリカが賛同し、シーナも最終的に容認した。
隊列は剣士・弓使い・魔法使い・剣士の形で整えられ、警戒を維持しつつ進行する。
道中の会話と新武装のお披露目
道中、ウルリカとの雑談でソロ活動の利点が話題に上がるが、ライナからは散財癖を指摘される。
そこでモングレルは新武器を披露する。黒靄市場で購入した「弓剣」である。弓の先端に刃を備え、遠距離と近接を兼ねる万能兵装だと説明するが、矢は一本のみという現実的な制約も明らかになる。射程は短く、外せば接近戦という割り切った運用を前提としていた。
周囲は半ば呆れ、半ば不安の視線を向けるが、モングレルは意に介さない。
森の深部へ
冗談交じりのやり取りを経て、一行は森の奥へ進む。ここから先は遠足気分では済まない領域である。
陰で囁かれる評価を耳にしつつも、モングレルは警戒を促し、合同任務は本格的な緊張帯へと入っていった。
第十六話 一矢の報い
違法罠の発見と解除
モングレルは森の進行中、茂みのそばに括り罠を発見して隊を止めた。色紐も番号金具もない違法罠であり、さらに獲物を弱らせる鉄片まで埋め込まれていた。アルテミスの面々は新人の無法さに呆れつつ、罠を回収して進行を続けた。シーナは罠の見極めを評価し、モングレルは狩人ほどの精度ではないと自嘲しつつも応じた。
足跡の手掛かりとチャージディアの気配
道中、ライナが足跡を見つけ、シーナらはその観察からチャージディアの通過と推定した。ナスターシャも土の沈み具合を確認し、縄張りや水場への移動ではないと判断する。森の分布は新人の流入で乱れており、行動予測は難しいという見解に落ち着いた。シーナはモングレルの意見も求めるが、本人は猟の理屈は分からないと距離を置いた。
ゴブリン遭遇と弓剣の失態
獣道の先でゴブリン二体と鉢合わせる。シーナはモングレルに一体を任せ、弓で数を減らす段取りを示すが、モングレルは二体とも任せろと受ける。
ここでモングレルは弓剣を使い、矢一本で仕留めると豪語して射るが、矢はゴブリンを外し、横の木の幹に深々と刺さる。ウルリカやライナたちの容赦ない反応に晒される一方、モングレルは即座に懐へ入り、弓剣の刃で喉と心臓を断ち、二体を短時間で処理した。
評価の分岐と武器観の衝突
シーナは弓術は評価不能だが接近戦の踏み込みは良いと評する。モングレルは弓剣を早々にしまい、弓は向かないと拗ねる。
話題はモングレルのバスタードソードへ移り、シーナはロングソードではない理由を問うが、モングレルは短めでも扱いで補えるとして譲らない。ライナは実体験からその剣の強さを認め、ウルリカは半信半疑で模擬戦を提案するが、モングレルはゴリリアーナとの対戦を露骨に避ける。
作業小屋到着と不穏な先客
一行は罠解除や小規模な対処を繰り返しつつ、夕方近くに作業小屋へ到着した。しかし小屋には先客がいる。林業関係者など正当利用者の可能性はあるものの、盗賊が宿泊拠点に使うこともあるため、面々はこれまでとは違う緊張を帯びる。ここから先は、相手が「まともな利用者かどうか」を見極める局面へ移っていった。
第十七話 優位な交渉
作業小屋の現状と不穏な兆候
バロアの森はレゴールにとって重要な木材供給地であり、作業小屋は宿泊・整備の拠点として設けられていた。ただし本来は許可制であるにもかかわらず鍵がなく、無法者の温床になりやすい。予約もできず利用が被ることも多く、雑魚寝状態になることも珍しくない。モングレルはこの不合理さに強い不満を抱いていた。
違法罠の“作り手”を特定
作業小屋付近には解体の痕跡があり、東屋には加工途中の木材や煉瓦、木にはクレイジーボアの足が吊られていた。モングレルはその足に食い込んだ棘付き金具と紐を検分し、先ほど回収した違法罠と同一仕様であることを確認する。つまり、小屋にいる人物が違法罠の使用者である可能性が濃厚となった。
夜が迫り、どのみち小屋周辺で一夜を明かす必要がある状況で、相手が違法行為の当事者だと分かったことが事態を面倒にした。
交渉役の指名と方針の衝突
シーナは交渉をモングレルに任せたいと述べた。理由は「ならず者相手にどう対処するか」を見極めるためであり、いざとなればアルテミスが全力で援護するという。
モングレルは「一晩だけ知らないふりで同居する」案を確認するが、シーナは無法者相手に隙を晒せないとして否定し、最低限の拘束が必要だと断言する。結果、モングレルは穏便に済ませる意図を示しつつ、交渉に踏み込むことになった。
小屋内での対峙と“見逃し”の拒否
モングレルが扉をノックして入ると、中には若い猟師風の男が三人いた。会話の流れでボアを罠で捕ったことを自慢げに口にし、隠す意志が薄い。モングレルは違法罠を突き付け、首に下げた新人用の鉄飾りから「講習を受けた以上、言い訳はできない」と責める。
彼らは金に困っているとして「もうやらないから見逃してほしい」と懇願するが、モングレルは任務放棄は信用に関わるとして拒否し、さらに「森は伯爵領でギルドが管理を任されている」ため、貴族側の信用を捨ててまで無名の新人のお願いに乗れないと突き放す。
交渉決裂と“優位”の提示
男たちは言外に武器へ手を伸ばし、実力行使の姿勢を見せる。モングレルは狭い小屋内を避ける形で外へ誘導し、外には五人が待機していること、シルバー・ゴールドがいること、弓の名手が複数いることを告げて諦めるよう促す。
しかし相手は「ブロンズがそんな連中と組めるはずがない」と読み切り、襲撃を決断する。モングレルは「撃つな、俺一人でやる」と叫びつつ小屋外へ飛び出し、追ってきた三人の前でアルテミスの布陣が現実であることを突き付ける形となった。
最小限の流血での制圧
モングレルは強化を込めたバスタードソードでマチェットを弾き飛ばし、リーダー格の腹を蹴り上げて屈ませ、首元に剣先を当てて降伏を要求する。アルテミスには「動いたら撃っていい」と指示し、残り二人も武器を捨てて拘束に従う。拘束には違法罠の頑丈な紐が転用され、皮肉にも“違反の道具”が制圧手段として機能した。
シーナの評価と価値基準のすり合わせ
シーナは「たった一発の剣だったが見事」と評しつつ、殺意を向けてきた相手に甘いとも指摘する。モングレルは人間を殺すことに抵抗があり、寝覚めの悪さを理由に必要以上の殺傷を避けた。シーナは危険性を認めつつも、モングレルが躊躇なく人を殺す類の人物ではない点を“良かった”とも受け止める。
彼女が見たかったのは戦闘力だけではなく、ライナを預ける相手としての性質も含まれていた。
焚き火の支度と“加入”の冗談
ライナとウルリカが朽木を集め、ゴリリアーナが薪割りをして焚き火の準備を進める。食材は拘束した三人が捌いていたボア肉になる見込みである。
シーナはモングレルを認めた上で、冗談めかしてアルテミス加入を持ちかけるが、モングレルは「女ばかりだから嫌」と即答し、シーナはライナの言葉通りの反応だと笑う。さらに「二人目の男メンバーになれたのに」と言われ、モングレルは“男メンバー”の正体に驚く形で締まった。
第十八話 隠していない力の一端
試験任務の目的と想定外の展開
シーナは、ライナが懐くモングレルの「実力」と「人柄」を確認するため、合同の調査任務で彼を試す方針を取っていた。通常なら低級魔物の対処だけで済む往復任務だったが、作業小屋に密猟者が屯していたことで状況は一段重くなる。それでも結果として、対人戦闘力まで含めた評価材料が得られたことをシーナは肯定的に捉えた。
捕縛後の説教と人柄の測りにくさ
夜、焚き火後にモングレルは拘束した三人へ「犯罪奴隷になっても抜け出せる余地はある」「真面目にやれば這い上がれる」と説く。捕らえた側からの説教で鬱陶しさはあるはずだが、シーナはそれを彼なりの善意と見なす。
一方で、反省を口にすれば肉を食わせるという“半ば脅しの取引”も行い、シーナは「人柄は良いのか」と内心で揺れる。モングレルが掴みどころのない男である点は、依然として残った。
実力評価の総括
シーナは一日観察して、結論として「付き合わせても問題ない」と判断する。
罠の見極め、道選び、歩き方はいずれも合格。矢は素人丸出しだったが、弓剣から接近戦へ即座に切り替えて確実に仕留めた点を、単なる失態ではなく“カバーできる実力”として評価した。
作業小屋でのならず者対処も同様で、危険を抑えつつ瞬時に制圧へ持ち込めたこと、必要以上に命を奪わなかったことを肯定する。ただし捕縛は後衛リスクを増やす行為でもあり、その是非は留保したまま「巻き返せる実力があるからこそ」と整理した。
アルテミス側の温度差と“安心”の共有
ウルリカはライナへの心配が強く、探り方がわざとらしいとシーナに突っ込まれるが、本人も結局は安心している。ウルリカの蟠りもこの任務で溶けたとシーナは見立てる。
シーナ自身も「野営で誰かに手を出すなら問答無用で殺す」という一線は保持しつつ、総合的にはモングレルを許容可能と結論づけた。
ナスターシャの観察が暴く“異常さ”
ナスターシャは戦闘にほぼ参加しなかった代わりに、水魔法で水桶を用意し、衛生面を整える。その後、薪割りの手伝いでモングレルの剣を観察し、核心を提示する。
モングレルが弾き飛ばした大鉈には深い切れ込みが刻まれていた一方、モングレルのバスタードソードには刃こぼれ一つなかった。つまり、単なる身体強化だけでは説明しづらい“武器への強化伝達”が起きている可能性が高い。
ナスターシャは、魔剣でもない数打ちの鋼に大鉈と拮抗する強化を施せるのは稀有であり、王都基準ならゴールド相当だと断じる。ここでシーナは、モングレルがブロンズに留まる理由を「目立ちたくない」「ギフト持ちだと知られたくない」方向で理解し始める。
強化系ギフトの示唆と“抱え込み”の検討
ナスターシャは、モングレルが身体能力系のギフト持ちである可能性を示し、強化系は国家に召し上げられやすい最上級の素質である点を踏まえると、彼が力を隠す動機は筋が通る。
その上で、シーナは「よそに取られるくらいならアルテミスで抱える」選択肢を現実的に検討し始める。ナスターシャも「既に男もいるし、ライナが懐く相手なら問題ない」として、方針はシーナに委ねた。
焚き火端の雑談が示す“馴染み方”
モングレルはクレイジーボアの脂身から獣脂を取り出し、保存食を作る話でライナとウルリカを引かせる。ライナは「脂は蝋燭にした方が良い」と実用的に返し、ウルリカは干し肉で十分だと笑う。
シーナはそのやり取りを見て、アルテミスに入った場合の空気感まで含めて「楽しそう」「前向きに考える価値はある」と捉える。ただしモングレルは一度加入を断っており、今後は“気長な勧誘”が必要だとも見積もった。
第十九話 安い酒場のお疲れ様会
任務完了と帰還の道中
作業小屋で一夜を明かした一行は、翌朝すぐレゴールへ戻った。捕縛した三人組も抵抗せず同行し、引き渡しまで大きな混乱は起きなかった。帰路ではシーナが木上のマルッコ鳩を射抜き、喉から脳天を貫く一射で「継矢」の異名に見合う技量を示した。モングレルはその腕前に感嘆しつつ、自分が同水準に達する未来は早々に切り捨てた。
“試したお詫び”と食料の臨時収入
シーナは試したことへの詫びとして鳥肉を渡し、モングレルは迷いなく受け取った。食える物は正義であり、報酬以外の実入りも確保するのが彼の流儀である。別れ際、ライナたちから再び加入を勧められるが、モングレルはソロの気楽さを理由に断った。裏には、誰も見ていない所での“楽をする仕事”など、単独でこなしたい事情もある。
ならず者の引き渡しと解散
三人組は証拠と自供が揃っていたため、引き渡しは短時間で済んだ。彼らは反省の真偽はともかく、心証を良くする方向で従順に振る舞った。夜にレゴールへ戻った後、報告を終えてアルテミスは解散となる。
森の恵み亭での“ひとり打ち上げ”
二日間歩き通したにもかかわらず、モングレルは“疲労で倒れる”ではなく、森の恵み亭でエールと外食の快楽を優先した。自分で調理せず、望む料理が運ばれてくる仕組みを「豊かな人生の必須要素」と捉え、怠惰を肯定する。
ウルリカとの合流と“安い店の良さ”
そこへウルリカが現れ、隣席で合流する。アルテミスの打ち上げに来なかったことを残念がりつつ、エール、ウサギ肉スープ、塩炒り豆を注文する。モングレルは「女だらけは疲れる」と言い、ウルリカは否定するが、会話の端々で両者の距離は近い。
モングレルはライナを今後も大事にしてほしいと頼み、ウルリカは王都行き任務にも連れていく意向を示す。ライナが“期待の新人”として守られていることが再確認される。
食い物の交換と味覚の一致
塩炒り豆を少しもらう代わりに、モングレルはウサギ串肉を分ける。モングレルはウサギ肉を「肉の満足感はあるが酒が進まない」と評し、店の味付けを“男が好むシンプルで強い味”だと位置づける。アルテミスがあまり来ないのは、店が狭いこと、シーナとナスターシャが別の店を贔屓にしていることが理由だった。
“聞かない”という距離の取り方
ウルリカは、自分の格好や話し方についてモングレルが深掘りしない点を話題にする。モングレルは「向こうが話すなら聞くが、自分からは無理に聞かない」「不便がない」と答え、過剰に踏み込まない姿勢を示した。偏見を持たないと誇るのではなく、違和感はあっても○点の反応はしない、という現実的な距離感である。
怠惰の完成と“男のつまみ”
モングレルは塩炒り豆を追加で欲しがるが、自分で頼むのを避け、ウルリカに注文させる。ウルリカは呆れつつもエールと塩炒り豆を二つ注文し、「一緒に食べよ」と付き合った。こうして二人は、安い酒場で好みのつまみをつつきながら、遅くまで飲み続けた。
第二十話 ギルドマンの潮時
傷だらけの帰還と不穏な報告
都市清掃任務中、モングレルは歴戦の傷を負った鎧姿のバルガーと再会する。折れた短槍、貫通寸前の小盾。聞けば「収穫の剣」の護衛任務のついでに受けた二次調査で、国境付近の森に出没したハーベストマンティスと交戦したという。十人で囲み撃破したが、仲間二人が死亡した。
危険度の齟齬と犠牲
違法伐採の調査と思われた依頼先に、ゴールド複数人級の魔物が潜んでいた。一次調査を請け負ったパーティーには大きなペナルティ、支部からは高額な違約金と手厚い死亡補償が出るという。しかし金で浮かばれる命ではない。バルガーは仲間の死を受け止めつつ、どこか達観した調子で語った。
“最後の買い替え”と引退の影
折れた短槍を眺めながら、バルガーは「これが最後の買い替えになるかも」と呟く。年齢による衰えを自覚し、いずれの引退を示唆する。レゴール警備部隊への移籍という選択肢もあるが、パーティーへの愛着が揺らぎを止める。モングレルは去る背中に老いを感じ、自身の将来を重ねる。
将来妄想と“今はまだ”の選択
モングレルは引退後の夢を思い描く。喫茶店のマスター。昼は喫茶、夜はバー。面倒な実務は他人に任せるという都合のよい設計図まで浮かぶが、結局は「まだ今は飯を楽しむ年齢」と結論づける。脂っこい料理が受け付けなくなってから考えればいい。現役続行を自分に許す。
翌朝の急旋回
翌日、ギルドで再会したバルガーは一転して上機嫌。アストワ鉄鋼製の穂先と高級小盾を新調し、誇らしげに見せびらかす。違約金で懐が温まり、勢いで買ったらしい。「これであと十年は現役」と豪語する姿は昨日の沈鬱とは別人だ。
潮時はまだ遠い
引退をほのめかしたはずの男は、新装備を手に“まだ負けない”と笑う。周囲は半ば呆れつつも、その前向きさを受け入れる。モングレルは安堵しながらも、老いを自覚しないままの無理が大怪我に繋がらぬよう、心のどこかで頃合いを願っていた。
第二十一話 予期せぬ超大物
新兵器完成の報せ
モングレルはギルドの配達任務中、鍛冶屋ジョスランから注文品が完成間近だと聞かされる。忘れられていると思っていた品が仕上がると知り、その日は酒も飲まずに早々と就寝した。翌朝、開店直後の店で受け取ったのは鉄製のロッドガイドであった。釣り竿の糸を通す金具であり、彼が独自に開発する新式竿の要となる部品であった。
鍛冶屋との軽口と発明談義
ジョスランは装備専門の鍛冶師であり、細工は娘が担当したと明かす。モングレルはこのロッドガイドが釣り界隈に旋風を巻き起こすと豪語するが、鍛冶屋は半信半疑で笑い飛ばす。店主が履く安全靴はケイオス卿の発明品で、現場事故を減らしているという話題にも触れつつ、発明が社会に浸透する様子を横目に店を後にした。
改良型釣り竿の完成
二日かけて竿を組み上げたモングレルは、ライナと共にシルサリス橋近くの川辺へ向かう。糸にはスカイフォレストスパイダーの縦糸を用い、自作の大型リールを装着していた。折り畳み式構想は強度不足で断念したが、従来より洗練された仕様であった。
疑似餌釣りへの挑戦
川辺でエビ釣りと並行し、金属錘付きのルアーを投げる。糸を巻き取りながら疑似餌を泳がせる釣法を説明し、ライナにも体験させる。待ち主体のエビ釣りと異なり、動きを重視する釣りであると語るが、操作はやや難しく、リールの不出来さも目立っていた。
超大物の正体
やがて竿が大きく曲がり、強い手応えが伝わる。大物を期待し二人で竿を支えるが、振動のない重みから根掛かりであると判明する。川底に引っ掛かった疑似餌は回収不能となり、モングレルはバスタードソードで糸を切断した。地球を釣り上げたと冗談めかして場を収めるが、新兵器の実用性に一抹の不安を抱く。
変化した川と釣果
その後はエビが姿を消し、代わりに大ぶりのカニが次々と釣れた。最終的な釣果はカニ二十三匹であったが、ライナは期待していたエビが釣れず落胆する。モングレルは最高のカニ料理を作ると約束し、若者の失敗を気にするなと諭した。こうして新兵器の試運転は苦い結果に終わったが、二人の川辺の一日は穏やかに締めくくられた。
第二十二話 美味しそうなドブ
宿屋スコルの宿と泥抜き地獄
モングレルは長年拠点にしている「スコルの宿」でカニの泥抜きを続けた。桶や甕、鍋まで総動員し、数日かけて水を替え続ける作業は手間が重く、上水道の不足を恨むほどであった。廊下で泥抜きをしていたため宿の末っ子はカニを気に入り、別れ際に一匹を残していく羽目になる。
屋外炊事場での料理会
泥抜きが終わった朝、モングレルはライナを連れて市場近くの屋外炊事場へ向かう。ここはかまどと水場が整った共用施設で、薪さえあれば安価に調理できる。ライナは気分も回復しており、カニ料理を心待ちにしていた。
卵の差し入れとウルリカの合流
ライナは前回の根掛かりの詫びとして、任務帰りに得た高価な卵を三個差し出す。そこへウルリカも鍋を持って現れ、エビもカニも食べたことがないため手伝い兼試食に加わる。三人で大量の調理に取りかかる体制が整った。
解体の段取りと“本番”の宣言
カニを絞め、洗い、殻を外し、エラや殻は別に分け、カニミソはボウルへ、メスなら卵も取り分ける。狩猟経験のあるライナとウルリカは手際よく作業を進め、モングレルは自分の出番を誇示するように鋳鉄の大鍋を取り出す。
ドブ作りの工程
モングレルは鍋にカニを放り込み、すりこぎで殻ごと叩き潰してミンチ状にする。殻片と体液が混ざった灰茶色の液体は見た目も匂いも最悪で、二人から「ドブ」と評される。さらにザル、荒布で二段階に濾し、異物を減らした“さらさらしたドブ”へと変える。
加熱と塩で起こる変化
濾したカニスープを火にかけると表面に泡や浮きが増えるが、モングレルは取り除かず煮込み続ける。そこで塩を投入すると、液が澄み、成分が固まり始め、見た目が一気に料理へ近づく。続けてカニミソと卵を混ぜたものを加え、塩で味を整えて完成させた。
完成品“かにこ汁”と三者三様の反応
出来上がったのはカニ由来の旨味が凝縮した汁物で、モングレルはこれを“かにこ汁”と呼ぶ。醤油や味噌がない不満は抱えつつも、塩味ゆえに素材の風味が立つと納得する。ライナはしみじみと満足し、ウルリカは語彙が追いつかないほど喜ぶ。
酒と温泉卵の追撃
モングレルは隠し持っていたエールを取り出し、後片付けを手伝う者にだけ分けると宣言する。さらに卵で温泉卵を作り、塩を足した汁に落として食べさせると、ウルリカは驚きつつも美味さに感嘆し、卵は瞬く間に消える。
次回の釣りへの布石と宿での余韻
食後、カニ釣りも選択肢として肯定され、ウルリカも釣り参加に乗り気になる。モングレルは次回は時期を見て、ルアーが根掛かりしにくい場所で釣りをしたいと考える。帰宿後、置いていった“子供のカニ”は女将の手で茹でられており、末っ子は泣き叫ぶが、モングレルはそれも成長だと受け止めた。
第二十三話 伐採作業の警備
冬支度と伐採需要の爆発
寒さが近づくにつれ、レゴールでも冬支度が本格化した。断熱性能の低い家屋と貧弱な暖房事情のため、冬を越すには薪と炭が不可欠である。近年の好景気で移住者が流入し人口が増えた結果、建材・薪ともに需要が急伸し、伐採仕事が途切れない状況になっていた。レゴール伯爵も外周部からの伐採に踏み切り、現場は大量動員で稼働していた。
チャージディアの襲来と挑発
伐採音に反応して現れる代表的な危険がチャージディアである。角による突進・刺突を武器にし、縄張りで音を立てる習性ゆえ、人間の伐採は“喧嘩を売られる行為”に等しいらしい。モングレルは木の幹を叩いて挑発し、突進を誘発する。突っ込んできた角を強引に弾き、隣の樹木へ角を深々と突き刺させて動きを封じ、喉を裂いて仕留めた。
作業現場への搬送と“大地の盾”合流
モングレルは血抜きと内臓抜きだけを森で済ませ、解体は人と道具が揃う作業現場で行う方針を取る。現場では護衛役が多数配置され、その中心がベテラン近接パーティー“大地の盾”であった。そこに酒場でも馴染みのアレックスがいて、モングレルが単独でチャージディアを狩ったことに驚く。解体は“大地の盾”側でまとめて進めているため、モングレルは前脚二本を渡す条件で解体を依頼し、自分はレバー・ハツ・舌だけ確保する方針を示した。
ゴブリン出現と現場対応
伐採現場付近の林から「ゴブリン、ホブもいる」と報が入り、モングレルとアレックスは加勢に向かう。前線では“大地の盾”が既に交戦しており、ロングソードのリーチと体格差でゴブリンを一方的に斬り伏せていた。新入りが盾受けや駆け引きで苦戦する領域を、ベテランは外から押し切る常識として処理している。
足止め役と“猿威嚇”の小細工
アレックスはモングレルに「足止めだけ」を指示する。前方に逃げてきたゴブリンに対し、モングレルは剣で斬りに行かず、大声と木の幹を叩く威嚇で動きを止める。人間が突然“猿化”する異様さにゴブリンが怯み、足止めは成立する。背後からアレックスが首を刎ね、戦闘は即座に片付く。
薪不足の現実と、くだらない追いかけっこ
戦後、今年は特に木が足りず、薪不足による凍死が貧民区では現実的だとアレックスは淡々と語る。モングレルは汚れを嫌がり、ゴブリンの鼻水まみれの鼻を削ぐアレックスの所作に嫌悪を示す。アレックスは冗談で「部位をどうぞ」と鼻を差し出して迫り、モングレルが全力で逃げる“鬼ごっこ”が発生するが、“大地の盾”副団長の叱責で強制終了となった。
第二十四話 謎の発明家ケイオス卿
廉価版ガラスペンとの遭遇
モングレルは装備用の油を買うため雑貨屋を訪れ、店主ユースタスが勧める新商品に目を留める。陶器製でありながら「ガラスペン」と呼ばれる筆記具で、先端の捻れ溝にインクを溜めて書く仕組みであった。高級品は滑らかな書き味で評判だが、店で扱うのは廉価版である。それでもギルドへの卸数は増え、価格との兼ね合いから普及は廉価版が担うだろうとユースタスは語った。
発明家ケイオス卿の評判
この筆記具の発明者は匿名の発明家ケイオス卿である。農具、工具、事務用品から家具意匠まで幅広い発明を無償・無特許で商会へ丸投げし、莫大な利益を求めない変人として知られていた。庶民的で実用的な品を世に広め、多くの商会を成長させた存在である。
ハギアリ商会の凋落と血生臭い過去
かつて街の流通を支配していたハギアリ商会は、独占的価格操作で一強を誇っていた。しかしケイオス卿の新商品が他商会へ流れ込み、主力商品が次々と競合に晒されると急速に凋落した。その過程では大金を巡る抗争が起き、血で血を洗う争いも絶えなかった。ユースタスもその混乱を生き抜いた商人の一人であった。
匿名主義という選択
ケイオス卿は発明を丸投げし、量産や利権、駆け引きに関わらない。ロイヤリティを放棄する代わりにリスクも負わず、世に出回った品を一般人として購入する立場を選ぶ。発明を事業化せず匿名で手放すことで、便利な道具だけが社会に広がる形を取っていた。その正体は、他ならぬモングレル自身であった。
便利さの裏側と値上げの皮肉
発明が経済を回し、人が集まり、街は活況を呈する。しかし人口増加はゴミや治安の問題も招き、モングレルの仕事も増える。さらにガラスペンの普及でインク需要が増し、刀剣整備用の油まで値上がりするという皮肉が生じる。恨むならケイオス卿を、と言われつつ、モングレルは値上げを受け入れて油とペンを購入した。
正体は平凡なギルドマン
発明家ケイオス卿は道楽好きの貴族と噂されるが、その正体は平凡なギルドマンである。誰もが追い求める匿名の発明家は、街を歩き、雑貨屋で買い物をする一人の男に過ぎなかった。
第二十五話 黙々と薪割り
冬支度と薪需要の逼迫
冬が近づくにつれ、街の人々は厚着に変わり、各所で薪割りの音が響き始めた。都会であるレゴールでは家庭ごとの薪割りは少なく、専門業者が冬分をまとめて供給する。今年は木材不足の影響で薪の価格も上昇気味であり、製材所は大量生産に追われていた。
製材所での力仕事
モングレルは東門近くの製材所で、玉切りにされた丸太を薪へと割る仕事を引き受ける。儲けは薄いが、力仕事を楽しむ性分である。壮年の職人トーマスと組み、トーマスが丸太を切り株に置き、モングレルが大斧で割る役割を担う。魔力強化を込めた一撃で、硬いバロア材も軽快に割れていった。
グレートアックスの爽快感
分厚く重い大斧は扱い手を選ぶ道具であるが、身体強化が可能なモングレルには好都合であった。前世では味わえなかった力の解放感に満足しながら、次々と薪を両断する。トーマスはその様子に呆れつつも、作業効率を評価する。
新道具リフティングトングの登場
トーマスは倉庫から鉄製の器具を持ち出す。丸太を挟み込み、立ったまま持ち上げられる道具で、名をリフティングトングという。設計図はケイオス卿が森林組合へ送ったものだと明かされる。腰を曲げずに丸太を扱えるため、負担が大幅に軽減される革新的な道具であった。
復職をもたらした発明
トングの導入により、腰痛で引退していた仲間二人が復職できたとトーマスは語る。作業効率だけでなく、現役期間を延ばす効果があったという。発明者に礼を言いたいが宛先が分からないと嘆く姿に、モングレルは内心で複雑な思いを抱く。
競い合う作業と静かな充実
トーマスは巧みにトングを操り、丸太を次々と置いていく。モングレルも負けじと斧を振るい、二人は競うように作業を進める。やがて言葉は減り、薪の割れる乾いた音だけが響く。膠の匂いが風に乗り、預けていた毛皮の仕上がりを思い出しつつ、冬の暖炉とラグマットの情景を想像する。黙々と続く薪割りの時間は、彼にとって確かな充実をもたらしていた。
第二十六話 最強の種族
恐れられる魔物たち
この世界には、存在そのものが脅威となる魔物がいる。かつて“収穫の剣”の仲間二人を葬ったハーベストマンティスはその代表格である。国境の森林に棲む虫型魔物で、空は飛べないが陸上では覇者級の強さを誇る。堅牢な外殻を持ち、通常の剣撃では歯が立たない。重量刺突武器による正攻法が主とされ、剣で討伐した事例は十年単位で遡るほどの金星であった。
湖に築かれる“砦”
平野部リュムケル湖に棲むアステロイドフォートレスもまた厄介な存在である。巨大なヒトデ型の魔物の上にマーマンが乗り、湖から陸へ進出して襲撃を行う。触手で前進し、上から槍や魔法で攻撃する統率された戦術を取る。さらに本体は水魔法で身体を膨張させ“砦”と化し、遠距離攻撃まで行う。ただし弱点は斬撃であり、深い切り傷こそ攻略の要とされる。
遠方の脅威と身近な恐怖
ドラゴンやジャイアントゴーレムのような大物も存在するが、レゴール支部から遠征しなければ遭遇しない。だがレゴールにおいて最も身近で恐れられる種族は別にある。それが貴族である。
現れた女剣士ブリジット
冬を前に仕事も減ったギルドに、一人の女が現れる。名はブリジット。磨き抜かれた高級鎧と非売品級のロングソードを携えた、明らかに貴族然とした剣士であった。姓を持たぬと語りつつも、その振る舞いと装備は庶民の域を逸している。討伐任務を求めるが、冬前のこの時期に緊急依頼は存在しない。登録だけを済ませ、再訪を告げて去っていった。
ギルドに漂う緊張
扉が閉まると、ギルド内には安堵の溜息が広がる。誰もあからさまに「貴族」とは口にしない。万一耳に入れば面倒事になるからだ。モングレルはライナに、貴族の気まぐれが庶民を簡単に破滅させ得ることを諭す。恐れを忘れぬことが最低限の防御であると。
静かな警戒と日常
緊張の後、二人は再びリバーシに戻る。勝敗はライナの勝ちとなり、エールを奢る約束が決まる。魔物以上に厄介な存在が身近にいるという現実を噛み締めつつ、ギルドの冬は静かに更けていくのであった。
第二十七話 狩人酒場で過去の話
ブリジットの正体と危険性の整理
モングレルは、昨日ギルドに現れた自称旅する女剣士ブリジットを「まず間違いなく貴族」と断じる。装備の質、言葉遣いの品、世間知らずぶり、そして何より「流派を隠す剣術」が根拠であった。剣術の流派は対人戦の体系であり、隠す必要があるのは出自が割れるからである。結果として、軍人ではなく貴族側の人間だと推測が固まる。
さらに恐ろしいのは本人よりも「親の存在」であり、放逐されていない場合は、娘の交友関係を揉み消すために荒っぽい手段を取る可能性が高いと考える。貴族とのコネ作りは庶民にとって自殺行為であり、サングレール系の血が見える風貌を持つモングレルにはなお危険である、という結論に至る。
ギルド回避と森の恵み亭の異常な混雑
「また後日」という言葉を警戒したモングレルは、ギルドに寄らず森の恵み亭へ直行する。しかし店内は見知ったギルドマンでぎゅうぎゅう詰めで、全員が同じ理由でギルドを避けていた。席もなく、この場に留まっても意味がない状況となる。
ウルリカとの合流と狩人酒場へ
人混みの中からウルリカが現れ、混雑回避のためモングレルと行動を共にすることになる。二人は寒風を避けて「狩人酒場」に入る。ここはジビエ系で森の恵み亭より高めだが、客を詰め込まず、エールも薄めていないのが売りである。ウルリカはアルテミスで獲物が多い時に肉を卸しに来ることがあると語る。
アルテミスの判断と“貴族案件”への接近
ウルリカは、アルテミスの団長がブリジット絡みの仕事があれば受けたいとして、仲間たちはギルドに残っていると明かす。女だけのパーティーならリスクが低いという読みも示唆され、モングレルはその上昇志向と判断の速さに内心驚く。一方で自身は徹底して「視界に入らない」方針を崩さない。
血筋の話とモングレルの過去
話題は互いの髪色と出自に移る。ウルリカは連合国由来の血が祖母の代にあるらしいが、生まれ育ちはハルペリアのドライデン周辺であると語る。
モングレルは自身が「純ハルペリアと純サングレールの間の子」で、故郷は国境すぐそばだったと告げる。そして開戦と同時に村が滅び、徴発で干上がった後にサングレール軍に蹂躙され、皆殺し同然になった過去を淡々と語る。本人にとっては昔の話でも、ウルリカには重く刺さり、軽率な質問をしたと落ち込んでしまう。
空気の修復と残った余韻
モングレルは慌てて話題を切り替え、酒と温かい料理を頼んで場を立て直す。結果としてウルリカの明るさは戻り、穏やかな時間は取り戻せた。しかしウルリカの中で、モングレルが「悲しい過去を背負った人物」として強く印象づいた可能性が残る。モングレル自身は、当時は語学習得に必死で故郷への思い入れは薄かったと内心で整理しつつも、その本音は人前で語りにくいものだと自覚する。
第二十八話 退屈そうな任務のお誘い
ウルリカの後悔と帰宅
ウルリカは狩人酒場での会話を思い返し、モングレルの過去に踏み込んでしまったことを強く後悔していた。本人は気にするなと言っていたが、軽率だったという感覚が消えないまま、アルテミスのクランハウスへ戻る。
ブリジットの正体判明
ロビーではシーナらが既に帰還しており、ギルドが貴族街に送った調査員の報告が共有される。ブリジットの正体は「ブリジット・ラ・サムセリア」。サムセリア男爵家の妾の子であり、家名を出さなければ身分を隠せると思っていたらしい。
彼女は騎士訓練場で稽古を重ねる実力者で、女性騎士として十分、男性に混じっても大半に勝てると評される。家としても後継争いに関心が薄い彼女を厚遇していたが、本人が将来に疑問を抱き「剣技を活かせる場で生きたい」と家を飛び出し、ギルド登録に至った経緯が明かされる。
男爵家からの依頼内容
サムセリア男爵家からギルドへ依頼が届いていた。内容は「ブリジットを退屈な討伐任務に同行させ、ギルドマンの職務への失望感を植えつけろ」というものだった。要するに、わざと成果の出にくい、効率の悪い任務を体験させて心を折り、帰参させる狙いである。
報酬は破格で、同行者の性別指定もない。ナスターシャはこれを親子愛ではなく、男爵家が将来有望な戦力を宮廷騎士に回したい思惑だと見立てる。
アルテミスの受注と任務の概要
シーナは既に受注を確約しており、参加した人数分だけ成功報酬も上乗せされる条件である。日程は明後日。バロアの森を散策し、冬でも外に出ているはぐれゴブリンを見つけたら討伐する、という退屈さが売りの任務になる見込みだ。ゴリリアーナも参加可能で、前衛の確保で安全面は厚くなる。
外部戦力の追加とモングレル勧誘案
ナスターシャは任務に外部から腕の立つ近接役を一人雇うべきだと提案する。候補としてモングレルの名が挙がり、ウルリカが当日会って予定も聞いていることから、翌日に接触して勧誘する流れが固まる。
ただしウルリカは、モングレルが貴族を本気で避けていることを知っており、色よい返事が返る見込みは薄いと直感していた。
第二十九話 非常に政治的でハイレベルな交渉
即時拒否から始まる交渉
市場で布地を物色していたモングレルは、ナスターシャ、ライナ、ウルリカに捕まる。要件はサムセリア男爵家絡みの任務同行。内容を聞いた瞬間、彼は即答で拒絶する。
理由は明白である。家出貴族の「ギルドマンごっこ」に巻き込まれるのは地雷以外の何物でもない。何かあれば責任を押し付けられかねず、彼にとってはデメリットしかない仕事であった。
報酬提示と論理戦
ナスターシャは具体的な報酬額を提示する。金額は破格であり、一瞬モングレルの心が揺らぐ。しかし彼はなお拒否を貫く。
ナスターシャは続けて、サムセリア男爵家は小規模で大きな権力はないと説明する。今回の任務は「何もいない冬の森を歩くだけ」であり、ブリジットを退屈させることが目的。貴族対応はアルテミス側が引き受け、モングレルは前衛兼荷物持ちで良いと条件を緩和する。
戦術的必要性の提示
さらにナスターシャは、前衛を厚くしたいという実務的理由を示す。冬の森は魔物が少ない反面、出現個体は荒く危険である。ゴリリアーナ一人では負担が大きく、警護対象も増える以上、近接戦力の増強は合理的であった。
モングレルはなお警戒するが、論理的な説明により完全否定はしづらくなっていく。
譲歩案と決定打
交渉は続き、ナスターシャは最後の譲歩として任務後にアルテミスのクランハウスで温かい風呂を用意すると提示する。
この一言で空気が変わる。冬場の清潔な風呂は、モングレルにとって何よりの贅沢であった。公衆浴場は高価かつ不衛生で、上等な風呂は落ち着かない。静かに温まれる機会は貴重である。
二回入浴可能と聞いた瞬間、彼は即座に態度を翻し、頭を下げて任務参加を快諾する。
交渉の帰結
こうして「非常に政治的でハイレベルな交渉」は決着する。
貴族案件への強い拒絶、合理的説明、報酬提示、そして最後は風呂。
冷静なリスク計算はどこかへ消え、モングレルは明日、温かい風呂に入る権利を得たのであった。
第三十話 何も発生しないチュートリアル
風呂のための合理性放棄
モングレルは自らの判断を自嘲する。風呂に数回入れるというだけで、明らかにリスクを孕む任務を受けた事実は否定できない。しかしこの世界で清潔な風呂を個人で再現することはほぼ不可能である。
水道も循環設備もなく、庶民は桶の湯で体を拭くのがせいぜい。公衆浴場は高価で不衛生、上等な風呂は別種の厄介事がつきまとう。ゆえに「清潔な風呂」は希少資源であり、彼にとっては重大な価値を持つ。
アルテミスのクランハウス訪問
任務当日、夜明け前にクランハウスへ到着する。シーナに迎えられ、内部へ招かれる。参加者はシーナ、ナスターシャ、ゴリリアーナ、ウルリカ、ライナ、ジョナの六名に、雇われのモングレルを加えた七名編成。
ジョナは半ば引退状態の既婚弓使いで、女性主体のクランらしい柔軟な在籍形態が語られる。
布陣決定と配慮
前衛はゴリリアーナとブリジット。中衛にシーナとジョナ。後衛にライナ、ウルリカ、ナスターシャ。殿を守るのがモングレルとなる。
ブリジットと距離を置く配置であり、モングレルの警戒心に配慮した形でもあった。
ブリジットとの合流
ギルドで合流したブリジットは全身鎧で現れる。態度は高圧的ではなく、初心者として指示に従う姿勢を示す。シーナは貴族扱いせず、平民ギルドマンとして接することを明言し、問題発生時は即帰還すると釘を刺す。
ブリジットは寡黙で、任務や魔物の話を前衛陣と交わすなど真面目な様子を見せる。
冬のバロアの森の現実
移動中、ライナが冬の森の魔物事情を尋ねる。モングレルの答えは簡潔である。「いない」。
冬のバロアの森は本当に何も出ない。獣は冬眠し、魔物も森奥へ引っ込む。五日通えば何かに遭遇するかもしれないが、基本は虚無である。
今回の任務は、まさに「何も発生しないチュートリアル」と呼ぶに相応しい内容であった。
風呂という最終目的
危険も事件もなく、ただ寒い森を歩く苦行。それでもモングレルにとっては問題ではない。
任務の先にあるのは、清潔で温かい風呂。
そのためならば、冬の虚無すら甘受する覚悟であった。
第三十一話 羅針盤を握る者
霜の森と装備格差
バロアの森は未だ雪はないが、霜が張り、足音が砂利のように鳴る冷え込みであった。モングレルは偽装した特製ブーツで快適に歩ける一方、ブリジットは全身鎧のまま前衛を務め、寒さに耐えて進む。行軍は二時間以上、休憩も挟まず、魔物を避けるかのように非効率な進路が選ばれ続けた。
シーナの進路変更と「避ける索敵」
フラッグバードやマッドラットしか見えない中、シーナは矢で方角を示し進路を頻繁に変える。ライナは霜に残った足跡からチャージディアの存在を読み取り、シーナが「獲物のいる方向」を意図的に避けたのだと推測する。
この任務は「討伐」ではなく、ブリジットの期待と気力を削るために、徹底して“何も起こらない”よう舵を切られていた。
鎧の撤去と荷物持ちの交代
ついにブリジットは寒さで震え、歩行も億劫になる。シーナは行軍を止め、鎧を脱ぐよう命じ、予備の衣服を着せる。着脱はジョナが補助する。
脱いだ鎧はモングレルの荷に固定される。鎧は高級品で見た目ほど重くなく、さらに冷却用の油が塗布されている可能性まで示唆され、装備選択の致命的な不適合が浮き彫りとなる。
休憩と「折れさせる会話」
薪を拾って火を起こし、干し肉を食べるが、場の空気は沈む。ブリジットは王都で予定された仕事を嫌い、ギルドマンを志したと吐露し、しかし現実は惨状だったと打ち明ける。
シーナは「向き不向き」を理由に再考を勧め、ブリジットは受け入れざるを得ない形で頷く。依頼の意図通り、士気を折る状況が完成していた。
モングレルの介入と薪集め
モングレルは耐えきれず、焚き火の火力を上げるため薪集めに誘う。温石を渡し、ブリジットを同行させる。
森の奥で枝を切り、薪割りを教える。ブリジットは剣での作業に不慣れだが、無心で体を動かすうち表情を持ち直す。モングレルは、彼女の剣術が対人向けであり森の作業に向かないのは当然だと整理し、王都の仕事の方が培ってきた技に合う可能性を示して背中を押す。
結果として焚き火は盛大に燃え、ブリジットの顔色も回復する。
帰路の雑談と任務の残酷さ
帰り道、シーナとブリジットは距離を取って会話し、後方では任務の趣味の悪さが語られる。男爵家の依頼である以上割り切るしかないが、初手で夢を折る手際は鮮やかであった。
同時に、シーナの進路選択が安全側に偏り続けた事実が、任務が「演出」されていたことを裏付ける。
ナスターシャの勧誘と“羅針盤”の正体
ナスターシャはモングレルの荷物持ちも織り込み済みだったことを匂わせつつ、シーナの危機回避が完全ではないことも示唆する。シーナと同等の力を自分も持つと語り、ギフトの存在に踏み込む。
ただし彼女の推測は「強化魔力=ギフト」であり、モングレルの本質的な秘密とは噛み合っていない。ナスターシャはアルテミス加入を勧め、危険回避や貴族対応、秘密保持まで提示して主導権を握ろうとする。
ライナの制止と交渉の着地点
ライナが「弱みを握るような誘いは卑怯」と明確に止め、ナスターシャは狼狽えて引き下がる。モングレルは自由を優先し加入には消極的だが、報酬としての風呂だけは当然のように受け取る姿勢を崩さない。
こうして、戦闘も討伐も起きない一日でありながら、進路選択・心理誘導・勧誘交渉という“別種の戦場”が成立した日となった。
第三十二話 失われた日常
任務の終幕と謝罪
任務報告を終えた後、ブリジットは未熟と不勉強を詫び、家族と仕事について改めて話し合うと告げる。報酬の少なさと任務内容の虚無に戸惑いながらも、それが正規の算出である現実を受け止めた様子であった。
シーナは静かに背中を押し、すべてを失った時はアルテミスを訪ねよとだけ伝える。その態度は冷静で、役割を完遂した者のそれであった。
モングレルとの短い対話
最後にブリジットはモングレルへ礼を述べる。自然への無防備を知れたことを糧にすると語り、彼もまた王都での仕事をやり遂げよと返す。拾っていた認識票を返し、安易に逃げるなと釘を刺す。
ブリジットは前を向く決意を示し、貴族街へと去っていった。姿が見えなくなると、一行は揃って安堵の溜息を吐く。精神的負担の大きい任務であった。
それぞれの本音
ジョナは母親の立場から若年でのギルド入りを否定し、まずは恵まれた仕事に挑むべきだと語る。アルテミスの面々も複雑な思いを抱えつつ、依頼として割り切っていた。
モングレルは自分がこの種の仕事に向かないと自覚しつつも、ひとまず解放感を覚える。
風呂への執念
解散後、モングレルは一度宿に戻り身体を清めてからクランハウスへ向かう。他人の風呂に入る前に自分を洗うのは当然だと主張し、周囲を困惑させる。
走って到着するほどの期待ぶりであった。
魔法仕掛けの浴場
クランハウスの浴場は石造りで、横長の湯船を備えていた。壁面にはナスターシャが開発した火魔法用の湯沸かし機構が埋め込まれており、魔力で直接加熱する仕組みである。
売り物にはならぬと謙遜するが、個人で湯を沸かせるその発想と技術は革新的であった。
湯に溶ける弱音
ナスターシャが退室し、独りになったモングレルは湯船に身を沈める。全身を包む熱と、肌に染みる感覚に懐かしさを覚える。
桶の湯では満たされなかった何かが解けていく感覚。冷えたエールを飲みながら、前世で当たり前だった日常の重みを思い出す。
水と燃料の壁に阻まれた世界で、それでも今こうして湯に浸かれている事実。幸福でありながらも、失われた日常への郷愁が胸を締めつける。
思わず漏れた帰りたいという弱音は、湯気の中に溶けて消えていった。
第三十三話 乙女たちの夕食
扉越しに聞いた本音
ウルリカは、風呂場の向こうから漏れたモングレルの「帰りてえよ」という呟きを聞いてしまう。狩人酒場で語られた「気にしていない」という言葉は強がりだったのではないかと胸を痛める。
故郷は既に失われている。だからこそ、その言葉の重さに罪悪感を覚え、少しでも彼を元気づけたいと決意する。
暖炉前の談話
ロビーではシーナが帳簿を確認し、他の面々は夕食を囲みながらブリジットの今後を話題にしていた。
彼女は貴族にしては実直で好感の持てる人物だったが、王都の騎士職は花形であり、まずはそちらで努力すべきだという意見で概ね一致する。任務は重かったが、彼女ならやっていけるだろうとシーナは断言する。
男の存在と小さな不安
モングレルが風呂から上がると、クランハウスに男性がいることへの不思議さが話題になる。
アルテミスは今後、男性の加入も視野に入れているが、同じ屋根の下で暮らすことへの不安は消えない。
その中で、モングレルの人柄だけは安心材料として語られる。
ささやかな距離
ライナが夕食に誘うが、モングレルは遠慮して断る。まだ一線を引いている様子がうかがえ、ウルリカはその壁を感じ取る。
彼の貴族嫌いは根深い。過去の戦禍が影を落としていることを思えば無理もないが、アルテミスとも距離を取られてしまうのではないかという不安が芽生える。
冬の先にあるもの
話題は冬の昇格試験へと移る。新人を迎える可能性、後輩ができるかもしれない未来。
ライナはまだ自分は未熟だと語るが、成長への意欲を見せる。
寒く停滞しがちな季節の中で、それでも新しい出会いと変化の予感がある。
失われたものを抱えながらも、日常は静かに続いていく。
暖炉の火の前で交わされる何気ない会話が、その日常を確かに繋ぎとめていた。
特別書き下ろし番外編 アルテミスのオーガ退治
南部馬車駅での出発
南部馬車駅に、清潔な装いと整った装備の女性ギルドマンたちが集まり注目を浴びた。狩猟パーティー“アルテミス”が、ルス村の討伐依頼に向けて出発したためである。遅刻したウルリカは買い忘れを取りに戻っていたが合流し、シーナの号令でベイスン方面行きの馬車に乗り込んだ。
任地ルス村と想定外の被害
ルス村は養蜂場のある長閑な村であり、依頼内容はホブゴブリンの討伐とされていた。だが到着直後、サウナ小屋が外壁を剥がされ使用不能になっている事実が判明した。村人は「大物らしく近づけない」と語り、依頼は村の共有資金で賄われているため失敗は許されない空気も漂った。サウナ目的で持参したオイルまで無駄になりかけ、アルテミスの士気は逆に上がった。
現場検分と獲物の再推定
サウナ小屋は川沿いで林に隣接していた。壁板が力任せに剥がされた破壊痕から、ナスターシャは「ホブゴブリンではない可能性」を示唆し、シーナは分散をやめて全員で固まる方針に切り替えた。聞き取りでは養蜂箱も破壊されており、足跡は大柄で深い。シーナは慎重さと怪力の両立から、ホブゴブリン級を超える相手を確信していった。
ライナへの“格上”実戦の宣告
ナスターシャはサイクロプスやオーガを警戒すべきと判断し、ライナは格上の魔物名に怯えた。シーナは人型魔物の急所を示し、これを機会としてライナに格上戦を経験させる意図を明確にした。ウルリカも後押しし、ライナは不安を抱えつつも参加を受け入れた。
足跡追跡と砂辺での接触
秋の地面に残る痕跡を手掛かりに、アルテミスは川沿いへと追跡を進めた。やがて湾曲した小川の砂辺で、胡坐をかいた大柄な人影を発見する。相手はサイクロプスではなくオーガであり、村の申告の甘さが決定的となった。オーガは接近に気付いており、肩で荒く息をしながら殺気を放った。
先制“曲射”と二刀木剣の防御
シーナは先制として“曲射”を放つが、オーガはサウナ小屋の壁材と思しき巨大な木剣で上空からの矢を防いだ。しかも木剣は二刀であり、矢への対処能力が高いことが露呈する。ナスターシャは氷の棘で進路を制限し、ゴリリアーナは防御の魔力を纏って接近戦に備え、オーガは不用意な突入を躊躇した。
三射斉撃と“弱い矢”が刺さる理屈
シーナは弓持ち三人での一斉射撃を命じ、ライナには眼を狙うよう指示した。オーガは魔力の波動を視認でき、危険度の高い“強射”は回避し、シーナの複数矢は木剣で処理し、肩の浅い傷で済ませた。だがライナの矢は「危険性が低い」と判断され無視される。オーガの常時強化により通常矢は通らないはず、という油断が、逆に急所を突かれる形になった。
ライナの一矢による決着
ライナの矢はオーガの眼球を貫き、脳に達して致命傷となった。シーナは心臓への追撃で死亡と防御消失を確認し、討伐完了とした。威力系スキルを用いずに大物を仕留めた“ジャイアントキリング”として、ライナは仲間から抱きつかれ祝福され、ナスターシャとシーナも明確に成長を評価した。
村の謝罪と歓待、サウナ復旧
報告を受けた村側は、討伐対象がオーガだったことに驚きつつ謝罪し、報酬を上乗せした。村は誠意として手厚く歓待し、鶏肉の蜂蜜焼きなどで機嫌を取った。さらに元凶が排除されたことで、その日のうちにサウナ小屋は村の有志により修繕され、アルテミスは念願のサウナ浴を楽しむことになった。
湯けむりの団らんと残る課題
サウナでは枝葉で扇ぐなどして騒ぎ、ライナの祝いとして和やかな時間が流れた。一方で別室では、アルテミス唯一の男性であるウルリカが「一人だけ寂しい」と嘆き、女性側も声を聞かなかったふりをする。シーナは湯けむりの中で、今後は男性ギルドマンの加入も必要になるのではないかと考えるに至った。
バスタード・ソードマン シリーズ







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