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フィクション(Novel)本好きの下剋上読書感想

小説「本好きの下剋上 第五部 女神の化身 5」感想・ネタバレ

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女神の化身5の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

第五部 女神の化身4レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身6レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. ボニファティウスの懸念
    2. ヴィルフリートの執務態度
    3. 名捧げの神聖性
    4. 銀の布の調査
    5. 星結びの儀式準備
    6. 祠巡りとグルトリスハイト
    7. 王の養女の条件
    8. 領主会議の奉納式
  6. 登場キャラクター
    1. 中央・王族・貴族院
      1. トラオクヴァール
      2. ジギスヴァルト
      3. アナスタージウス
      4. エグランティーヌ
      5. マグダレーナ
      6. ヒルデブラント
      7. ナーエラッヒェ
      8. ワルディフリード
      9. イマヌエル
      10. ラオブルート
      11. アルトゥール
      12. オルタンシア
      13. ディルミラ
      14. ソランジュ
      15. ヒルシュール
      16. フラウレルム
      17. グンドルフ
      18. シュバルツ
      19. ヴァイス
      20. 中央騎士団
    2. エーレンフェスト
      1. ジルヴェスター
      2. フロレンツィア
      3. ローゼマイン
      4. ヴィルフリート
      5. シャルロッテ
      6. メルヒオール
      7. ボニファティウス
      8. カルステッド
      9. エルヴィーラ
      10. ヴェローニカ
      11. ガブリエーレ
      12. ベーゼヴァンス
      13. リヒャルダ
      14. ノルベルト
      15. オティーリエ
      16. リーゼレータ
      17. グレーティア
      18. ブリュンヒルデ
      19. ベルティルデ
      20. ハルトムート
      21. レーベレヒト
      22. コルネリウス
      23. アンゲリカ
      24. レオノーレ
      25. ユーディット
      26. ダームエル
      27. マティアス
      28. ラウレンツ
      29. フィリーネ
      30. ローデリヒ
      31. ミュリエラ
      32. オズヴァルト
      33. ランプレヒト
      34. ラザファム
      35. 前ギーベ・ゲルラッハ
      36. ダールドルフ子爵
      37. ブリギッテ
      38. フリターク
      39. フラン
      40. ザーム
      41. モニカ
      42. ニコラ
      43. ロータル
      44. ギル
      45. ルッツ
      46. ヴィルマ
      47. ロジーナ
      48. フーゴ
      49. エラ
      50. トゥーリ
      51. ベンノ
      52. ライゼガング系貴族
      53. 旧ヴェローニカ派の貴族
      54. グーテンベルク達
      55. プランタン商会
    3. アーレンスバッハ
      1. アウブ・アーレンスバッハ
      2. ゲオルギーネ
      3. ディートリンデ
      4. レティーツィア
      5. フェルディナンド
      6. エックハルト
      7. ユストクス
      8. ゼルギウス
      9. ライムント
    4. ダンケルフェルガー
      1. ハンネローレ
      2. クラリッサ
      3. コルドゥラ
    5. ドレヴァンヒェル
      1. アウブ・ドレヴァンヒェル
      2. アドルフィーネ
      3. オルトヴィーン
      4. オデルクンス
      5. リズベット
    6. クラッセンブルク
      1. アウブ・クラッセンブルク
    7. 旧ベルケシュトック
      1. アウブ・ベルケシュトック
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ
    2. 青色見習いと孤児院の子供達
    3. 養父様とおじい様の再取得
    4. 領主会議の星結び
    5. 地下書庫での作業
    6. 次期ツェント候補
    7. 祠の場所
    8. 相談
    9. 祠巡り
    10. 地下書庫の更に奥
    11. お手紙とお話
    12. 商人聖女
    13. 王の養女になる条件
    14. 得られた条件
    15. 領主会議の奉納式
    16. エピローグ
    17. 望まぬ結婚
    18. シュラートラウムの花
  8. 本好きの下剋上 シリーズ 一覧
      1. 兵士の娘
      2. 神殿の巫女見習い
      3. 領主の養女
      4. 貴族院の自称図書委
      5. 女神の化身
    1. ハンネローレの貴族院五年生
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、異世界ビブリオファンタジー『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~』の最終章である第五部「女神の化身」の第5巻である。魔力を持つ貴族が支配する階級社会「ユルゲンシュミット」を舞台に、本を愛する少女ローゼマインが、激動する国の情勢に巻き込まれながらも自らの目的のために奮闘する姿が描かれている。

冬の粛清が領内に不穏な影を落とすなか、領主会議の足音が近づいていた。ローゼマインは王族からの特例の依頼により、未成年ながら第一王子ジギスヴァルトとドレヴァンヒェルのアドルフィーネの「星結びの儀式」で神殿長を務めることになる。しかし、その華やかな儀式の裏側では、赴任先のアーレンスバッハで危機に瀕するフェルディナンドの境遇が浮き彫りになっていた。 彼を救うための絶対的な盾を手に入れるべく、ローゼマインは次期王の証である「グルトリスハイト(メスティオノーラの書)」の取得を決意する。貴族院に点在する大神の祠を巡り、過酷な条件をクリアして上空に巨大な魔法陣を形成するものの、最終局面で「王族登録」という非情な壁に阻まれてしまう。 絶望に暮れる間もなく、王族から「王の養女」となることを迫られたローゼマインは、持ち前の「商人モード」を発動して過酷な条件交渉へと臨む。フェルディナンドの待遇改善や、引き継ぎのための1年間の猶予、さらにはエーレンフェストの国力補強のための魔術具提供などを王族から次々ともぎ取っていく。さらに領主会議の最終日には、各領地のアウブや王族を巻き込んだ大規模な奉納式を主導し、「エーレンフェストの聖女」としての影響力を決定づけることとなる。

■ 主要キャラクター

  • ローゼマイン:主人公。エーレンフェスト領主の養女であり神殿長。フェルディナンドを連座の危機から救うためにグルトリスハイトの取得へ奔走し、王族を相手に一歩も引かない強気な条件交渉を繰り広げる。
  • ジギスヴァルト王子:第一王子。アドルフィーネを第一夫人として迎える。王としての威厳を保つため、もっともグルトリスハイトに近いローゼマインを王の養女(のちに自身の第三夫人)として囲い込もうと画策する。
  • アナスタージウス王子:第二王子。ローゼマインに星結びの儀式での神殿長役を依頼し、彼女の祠巡りを監視する。ローゼマインの規格外の行動力に振り回されつつも、その能力を頼りにしている。
  • エグランティーヌ:アナスタージウスの妻。ローゼマインの祠巡りに立ち会うなかで、祠へ入るための厳しい条件が「シュタープの取得時期と全属性」にあるという重要な事実に気づく。
  • ボニファティウス:ローゼマインの祖父。領主会議を前に、次期領主候補であるヴィルフリートの未熟な執務態度や、連座回避のために行われた「名捧げ」の変質、ローゼマインを取り巻く不穏な噂に対して深い懸念を抱く。
  • アドルフィーネ:ドレヴァンヒェルの領主候補生。ジギスヴァルトとの政略結婚に臨むが、直前に王族側の都合による夫婦生活の延期や、深刻な魔力不足を補うための要員として扱われている現実を突きつけられ、王族への激しい怒りと失望を募らせる。
  • ハルトムート:ローゼマインの側近(上級文官)。新神官長として領主会議の星結びの儀式や奉納式に同行し、主であるローゼマインを完璧に補佐すると同時に、彼女の聖女伝説を周囲へ熱狂的に拡散する。

■ 物語の特徴

  • 国の中枢を相手にした緊迫の政治交渉:これまでの領地内の派閥争いからスケールアップし、国の最高権力者である王族を相手にしたハイレベルな頭脳戦が展開される。理不尽な要求に対して自領の実情を突きつけ、フェルディナンドの救済や人材補強を勝ち取っていくローゼマインの交渉術が大きな見どころである。
  • 世界の根幹に関わる謎の解明:貴族院の敷地内に隠された祠の秘密や、失われた王の書「グルトリスハイト」の真の取得条件など、物語の根底にある世界設定が次々と明かされるファンタジーとしての高揚感を味わえる。
  • 多角的な視点による重厚な人間ドラマ:王族の傲慢さと非常識さに冷や切った失望を抱く新婦アドルフィーネの視点や、孫たちの未来と領地の足場固めを憂うボニファティウスの焦燥など、主人公以外の群像劇としての深みがより一層増している。

書籍情報

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身V」
著者:香月美夜 氏
イラスト:椎名優  氏
出版社:TOブックス
発売日:2021年4月10日
ISBN:9784866991337

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

緑萌ゆる春。ローゼマインは領主会議に呼ばれた。星結びの儀式で神殿長役を務め、地下書庫では書写とお喋りに癒される。
ところが、次期ツェント候補を巡る動きが活発化したことで、ローゼマインはフェルディナンドの連座回避を目指すことに。
王族に強要されたのは、森の中の「祠巡り」。そこで触れる世界の深淵ーー祠に並ぶ神々の像、貴色の石板、謎の言葉、巨大な魔法陣。
グルトリスハイトを手に入れたい王族に立ち向かう中、ついに迎える王子との前哨戦。
いざ、交渉へ! 平民育ちの商人聖女が見せる秘策とは!?
「取れる時に、取れるところから、取れるだけ、取っておくもの……だよね!」

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身V」

感想

エーレンフェストの利益とフェルディナンドの連座回避のためにローゼマインが王族へと立ち向かう姿が描かれ、急激に物語のスケールが大きくなったという強い印象を受ける。これまでの領地内の諍いから国の中枢へと舞台が広がり、緊迫した展開から目が離せなくなる一冊である。

まず領内においては、ボニファティウスの抱く複数の深刻な懸念が非常にリアルで重苦しく心に響いた。ヴィルフリートの精神的な未熟さや、側近たちの甘やかしによる執務態度の悪化、そして結果として次期領主教育が中止に追い込まれる一連の流れは、次期領主夫妻としての自覚や貴族社会における足場固めの決定的な不足を浮き彫りにしている。周囲に与える影響力が大きすぎるローゼマインを巡る不穏な噂も含め、今後の体制や人間関係に大きな波紋を広げる契機となる予感が漂い、読んでいて胃が痛くなるような緊張感があった。

また、ボニファティウスとローゼマインの「名捧げ」を巡る対話が深く印象に残っている。親の罪に連座する子供たちを救いたいという彼女の純粋な慈悲の心が、結果として貴族社会における忠誠と誇りのあり方を意図せず根底から歪めてしまうという指摘にはハッとさせられた。自らの持っている権力の影響力や行動がもたらす結果について、より広い視野で責任を持つことを厳しく求められる、主人公の成長において極めて重要な局面として描かれている。

さらに、人間関係の歪みだけでなく、迫り来る具体的な脅威の描写が物語の緊迫感をより一層引き立てる。前ギーベ・ゲルラッハの夏の館で発見された「銀の布」が持つ、魔力を一切受け付けないという常識外れの特性には強い衝撃を覚えた。ゲルラッハ生存の疑いや他国由来の可能性は、アーレンスバッハの不穏な動向と結びついており、フェルディナンドへの危機を予感させる。エーレンフェスト騎士団が物理的で重い通常の武器を携帯する戦術転換を迫られるなど、今後の情勢を大きく左右する重要な局面として非常に読み応えがある。

舞台が領主会議へと移ると、ジギスヴァルト王子とアドルフィーネの星結びの儀式を巡り、単なる婚礼の支度にとどまらない各勢力の思惑や不満が渦巻く極めて政治的なドラマが展開される。王族からの異例の依頼や中央神殿との対立に対し、ローゼマインがシュタープで闇のマントや光の冠を作り出して見せるなど、彼女の規格外の能力が改めて際立つシーンは痛快だ。しかしその一方で、新婦アドルフィーネが王族の魔力不足のために都合よく扱われる過酷な現実に直面し、王族への不信感を募らせる描写は冷徹であり、今後の情勢に大きな影響を与える重要な契機として深く印象に残った。

本作の最大のハイライトとも言える貴族院での「祠巡り」は、ローゼマインに次期ツェント候補としての資格をもたらし、グルトリスハイトへの道を拓く興奮に満ちた展開である。全属性のシュタープという極めて厳しい条件をクリアし、上空に巨大な魔法陣を形成する描写には高揚感を覚えた。しかし、ついに辿り着いた最奥で立ちはだかった「王族登録」という絶対に越えられない壁は、フェルディナンド救出を急ぐ彼女をあまりにも深い絶望へと突き落とす。この非情な試練は、彼女の今後の決断や物語全体の展開に決定的な影響を与える、極めて重要な転換点であると感じさせられた。

しかし、そこからの「商人聖女」としてのローゼマインの逆襲劇が見事というほかない。王の養女就任を巡る条件交渉において、領地の実情を考慮しない王族の提案に対し、現実的かつ強気な要求を突きつける姿には圧倒される。最も重視していた図書室の設置こそ国家予算の都合で却下されたものの、フェルディナンドの待遇改善やエーレンフェストの人材補強など、多くの重要条件を認めさせた結果は、未来を守るための極めて重要な布石となった。

さらに、領主会議の最終日に行われた奉納式での立ち回りは実にあっぱれである。王族の魔力不足解消という課題を逆手に利用し、自身の引き継ぎ期間を確保するための高度な政治的交渉の場へと変えてみせた。奉納式を王族主催へ切り替えさせ、採集場所の回復方法を開示するという巧妙な仕掛けによって他領の懸念を払拭しつつ、自らの聖女としての名声を不動のものにする。この鮮やかな手腕は、彼女が王の養女へと進む道を阻む周囲の反対意見を完璧に封じ込め、今後のユルゲンシュミット全体の情勢を大きく動かす重要な契機となった。

激動する人間関係、国の根幹を揺るがす神事の謎、そして最高権力者である王族との緊迫した条件交渉など、日常と政治的暗闘が多角的に絡み合う極めて密度の高い一冊であった。絶望的な状況に直面しながらも、したたかに、かつ強靭な意志で未来を切り拓いていくローゼマインの歩みに深い感動を覚え、読後はこれからの展開への強い期待感で胸がいっぱいになる。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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第五部 女神の化身4レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身6レビュー

考察・解説

ボニファティウスの懸念

物語における「ボニファティウスの懸念」について解説する。タイトルにある通り第五部において、領主会議を前に忙殺されるエーレンフェストにおいて、ボニファティウスは孫であるヴィルフリートやローゼマインの現状、そして領地内の派閥や側近たちの姿勢に対して、複数の深刻な懸念を抱いていた。

ヴィルフリートの態度と次期領主としての適性
ボニファティウスは、ヴィルフリートの執務態度が悪化していることに強い危機感を持っていた。

  • 祈念式でライゼガング系ギーベたちから冷遇された不満を執務に持ち込み、注意されても反抗的な態度をとることは、敵対貴族に弱点を晒す行為であり、次期領主として未熟すぎると指摘した。
  • ランプレヒトら側近がヴィルフリートを甘やかし、「ローゼマインと比較するな」と庇うばかりで、周囲からの厳しい目に気付いていないことにも不満を抱いていた。
  • 改善が見られないのであれば、次期領主から下ろすべきだとジルヴェスターに強く迫るほど、その適性を疑問視していた。

ローゼマインとフェルディナンドを巡る悪意ある噂
旧ヴェローニカ派の間で、「ローゼマインがフェルディナンドに恋慕しており、婚約者のヴィルフリートを蔑ろにしている」という噂が広がっていることもボニファティウスの懸念事項であった。

  • この噂は領地対抗戦でのフェルディナンドとの再会時の様子が誇張されたものである。
  • リヒャルダの推測により、オズヴァルトがヴィルフリートを守るためにローゼマインの評判を下げようとした可能性が浮上した。
  • ローゼマインの外見が成長してきたことで、かつてのようなフェルディナンドへの甘えが周囲から問題視される時期に差し掛かっていると警戒していた。

ローゼマインの神殿偏重と側近の方針への危惧
ボニファティウスは、ローゼマインが神殿に籠もり続け、領地内の従来の社交を軽視している現状にも不満を抱いていた。

  • 神殿育ちという瑕疵を埋めるためにも、神殿業務は他の者に任せ、第一夫人教育と領内貴族(特に親族)との交流を深めるべきだと考えていた。
  • しかし、コルネリウスをはじめとする側近たちは「古いやり方は必要ない」と上位領地向けの新しい社交を重視し、ローゼマインを従来の社交から遠ざけようとしていた。
  • この方針では領地の大部分の貴族の理解を得られず、足場が崩れてしまうと危惧していた。

「名捧げ」の変質とローゼマインの評判
ローゼマインの発案で、犯罪に関与していない旧ヴェローニカ派の子供たちを救うために行われた「連座回避のための名捧げ」に対しても、ボニファティウスは厳しく指摘した。

  • 本来神聖であるべき名捧げが、犯罪者の身内が延命するための手段へと変質してしまったことを問題視した。
  • このままでは他領にも悪習が広がり、本来の名捧げを行う者がいなくなると警告した。
  • ヴェローニカやゲオルギーネに名捧げを強要された世代の貴族たちが、ローゼマインの突飛な発想を恐れている現状を指摘した。
  • ローゼマイン自身が側近たちに目隠しされて真の現状を把握できていないのではないかと深く案じていた。

まとめ
ボニファティウスの懸念は、ヴィルフリートの精神的な未熟さと、ローゼマインが周囲に与える影響力の大きさ、そしてそれぞれの側近たちの偏った方針に向けられている。彼はただ孫たちを可愛がりたいと願いつつも、次期領主夫妻としての自覚や、エーレンフェストの貴族社会における足場固めが決定的に不足している現状に強い危機感を抱いていた。

ヴィルフリートの執務態度

物語におけるヴィルフリートの執務態度の悪化と、それに対するボニファティウスの懸念について解説する。領主会議を前に忙殺されるエーレンフェストにおいて、ボニファティウスはヴィルフリートの執務態度が著しく悪化していることに強い危機感を抱いていた。

執務態度悪化の原因と状況
ヴィルフリートの執務態度が悪化したきっかけと現状は以下の通りである。

  • 祈念式においてライゼガング系のギーベたちから慇懃無礼で冷たい扱いを受けたことが引き金となった。
  • 彼はその時の不満を城での執務にまで持ち込み、仕事中も上の空になることが増えていた。
  • 注意されても反抗的な感情を態度に露わにするなど、職務に向き合う姿勢に問題が生じていた。

ボニファティウスの懸念と叱責
次期領主教育を担当するボニファティウスは、ヴィルフリートの不誠実な態度に対して厳しい見解を示した。

  • このような態度は敵対貴族に弱点を晒すような真似であり、未熟にも程があると厳しく批判した。
  • 周囲の目がますます厳しくなっている状況下で不真面目な態度を見せ続ければ、あっという間に敵対勢力からの攻撃材料になると危惧していた。
  • 貴族院での成績が優秀であっても、次期領主に相応しい言動が伴わなければ意味がないと指摘している。

側近の甘やかしとヴィルフリートの反発
ボニファティウスの忠告に対し、ヴィルフリートやその周囲からは反省の態度が見られなかった。

  • ヴィルフリートは、ボニファティウスがローゼマインを次期領主に望むから厳しいことを言うのだとふて腐れ、素直に聞き入れようとしなかった。
  • ランプレヒトをはじめとする側近たちが、ヴィルフリートを過度に甘やかしていることも問題視された。
  • 側近たちは「ローゼマインと比較するな」とヴィルフリートを庇うばかりであった。
  • 貴族院三年生が終わったにもかかわらず、幼少期の延長のような扱いを続けており、態度の改善が見られない状態が続いていた。

次期領主教育の一旦停止と領主の対応
注意しても五日経って改善の兆しが見えない状況を受け、事態は教育の中止へと発展した。

  • ボニファティウスは、改善する気がないならば次期領主から下ろせとジルヴェスターに強く迫った。
  • これに対しジルヴェスターは、もしヴィルフリートを次期領主から下ろすならば、ローゼマインとの養子縁組も同時に解消すると本気で返答した。
  • 最終的にボニファティウスは、現在のヴィルフリートに次期領主教育を続けるのは急務ではないと判断した。
  • まずは課せられた領主一族としての執務をきちんとこなす方が重要であるとし、次期領主教育を一旦中止することを宣言した。
  • その後は、ジルヴェスターの口から直接ヴィルフリートへ注意がなされることとなった。

まとめ
ヴィルフリートの執務態度の悪化と、それに伴う次期領主教育の中止は、領主候補生としての自覚の欠如と側近たちの甘やかしが引き起こした深刻な問題である。ボニファティウスの懸念通り、次期領主夫妻としての自覚や、エーレンフェストの貴族社会における足場固めが決定的に不足している現状が浮き彫りとなり、今後の領内の体制や人間関係に大きな波紋を広げる契機となっている。

名捧げの神聖性

『第五部 女神の化身5』において描かれた「名捧げの神聖性」と、それを巡るボニファティウスからローゼマインへの厳しい指摘について解説する。冬の粛清後、犯罪に関与していない旧ヴェローニカ派の子供たちを救うために行われた「連座回避のための名捧げ」が、貴族社会の慣習にどのような影響を及ぼすかが問われた重要な場面である。

名捧げの本来の意味と「延命手段」への変質
ボニファティウスは、名を捧げるという行為の重みと、今回の救済策がもたらした変質について以下のように指摘している。

  • 名を捧げるという行為は、己の誇りと誓い、そして命を主へ差し出す本来とても神聖なものである。
  • ローゼマインは親の罪に連座して処刑される子供たちを救いたいという純粋な慈悲の心から名捧げを提案し、アウブに認めさせて彼らを延命させた。
  • この決断によって命が救われた一方で、便宜的な手段として利用されたことで、己の誇りと誓いと命を貶められたと考える者もいる。
  • 神聖であるべき行為が、犯罪者の身内が生き延びるための便宜的な手段として使われるべきではないというのがボニファティウスの考えである。

悪習の拡大と本来の名捧げの消失への危惧
さらにボニファティウスは、この出来事が将来のユルゲンシュミット全体に及ぼす悪影響を予見している。

  • 一度「連座回避の手段」として利用された以上、貴族が不足している現状において、他領でも同様の目的で名捧げが行われる可能性が高い。
  • もし連座回避としての名捧げが広く定着してしまえば、「名を捧げている者は犯罪者の身内である」と見なされるようになる。
  • その結果、周囲からの視線を忌避し、純粋な忠誠心から本来の名捧げを行う者がいなくなってしまうだろうと警告した。
  • それはつまり、ローゼマインが自らの発案によって、名捧げが持つ本来の意味を変えてしまうことに他ならない。

ローゼマインの無自覚と権力の影響力
ボニファティウスからの指摘を受け、ローゼマインは自身の行動が持つ政治的な重さを自覚することとなる。

  • 「救える命を救いたかっただけ」であり、そこまで大事になるとは考えていなかったローゼマインは、この指摘に冷水を浴びせられたようなショックと震えを覚えた。
  • 彼女はかつて側近のローデリヒが同じような悲痛な目をしていたことを思い出し、自身の誇りを踏みにじられたと感じる者の心情にまで思い至っていなかったことを深く反省する。
  • ボニファティウスは、命を救いたいと願う彼女の優しさは美点であると認めつつも、彼女が持っている権力と周囲への影響力、器具や慣習を変えることの弊害についてもっと深く考えるべきだと諭した。
  • 一見大したことではないような小さなことの積み重ねが、神聖なものを貶める結果に繋がるのだと指摘した。

まとめ
名捧げの神聖性を巡るこの対話は、ローゼマインの無自覚な善意が、貴族社会における忠誠と誇りのあり方を意図せず根底から歪めてしまう危うさを浮き彫りにしている。彼女が自分の権力の影響力や行動がもたらす結果について、より広い視野で責任を持つことを求められる重要な契機として描かれている。

銀の布の調査

物語における「銀の布の調査」について解説する。冬の粛清の際、前ギーベ・ゲルラッハの夏の館で発見された謎の「銀の布」は、その後の調査でユルゲンシュミットの常識を覆す危険な性質を持つことが判明し、領主一族や騎士団に強い危機感を与えた。

銀の布の発見と異常な特性
銀の布は、騎士団の突入時に自爆したとされていた前ギーベ・ゲルラッハの隠し部屋で、力任せに引きちぎられた状態で発見された。その詳細な特性は以下の通りである。

  • 当初はただの布切れに見えたが、ボニファティウスの違和感をきっかけに文官たちが調査した結果、ユルゲンシュミットの素材には必ず含まれているはずの魔力が全く含まれておらず、魔力を一切受け付けないという異常な特性を持つことが判明した。
  • 魔力を受け付けないため、シュタープを変形させたメッサーなどの魔力による武器では切ることができず、物理的な衝撃は伝わるものの布自体に傷をつけることができない。
  • 発見時に切り取られるのではなく引きちぎられていたのは、シュタープで切れなかったためである。

結界の突破と逃亡の推測
この布の最も恐ろしい点は、魔力を全くまとわないため、この布で身を隠せばアウブが張っている領地の境界の結界を感知されることなく通り抜けられることである。

  • 実験でも、布で包んだボニファティウスの指が結界を突き抜けるのをジルヴェスターは全く感知できなかった。
  • ただし、魔力がないため存在を感知されず、転移陣を動かすことはできない。
  • 騎士団は、前ギーベ・ゲルラッハが証拠隠滅のために使用後の転移陣を燃やした際、魔力を受け付けない銀の布だけが燃え残ったのだと推測した。
  • この結果から、彼がこの布を利用して領地外へ逃亡し、生存している可能性が極めて高いと結論づけた。

他国由来の可能性とアーレンスバッハへの逃亡
ユルゲンシュミット内に魔力を全く含まない素材が存在しないことから、ローゼマインはこれが他国由来の素材(ランツェナーヴェなどの布)ではないかと推測した。

  • もし他国と繋がりがあり、かつ逃亡先として考えられる領地があるとすれば、唯一国境門が開いておりゲオルギーネがいるアーレンスバッハ以外に考えられないと指摘する。
  • 魔力を通さない防具を持った敵が潜んでいる可能性があるため、アーレンスバッハで最も危険な立場にあるフェルディナンドへ、検閲をかいくぐってでも急ぎ警戒を呼びかける必要があると判断された。

エーレンフェスト騎士団の対策
銀の布の存在が確認されたことで、エーレンフェストの騎士団も戦術の変更を余儀なくされた。

  • これまで騎士たちは、ほとんど重さを感じない魔石の鎧やシュタープ製の武器を主流として使っていたが、魔力攻撃を無効化する銀の布に対抗するため、シュタープ以外の物理的で重い通常の武器を常に携帯することが命じられた。
  • マティアスやラウレンツをはじめとする騎士たちは、重くて厄介な実体のある武器を上手く扱えるように、新たな特訓を開始している。

まとめ
銀の布の発見は、魔力を一切受け付けないというユルゲンシュミットの常識を揺るがす特性により、領内へ大きな衝撃と緊張感をもたらした。前ギーベ・ゲルラッハの生存の疑いや他国由来の可能性は、アーレンスバッハの不穏な動向とも結びついており、フェルディナンドへの危機や騎士団の物理戦術への転換など、今後の情勢を大きく左右する重要な局面となっている。

星結びの儀式準備

物語における領主会議での「星結びの儀式」に向けた準備について解説する。この儀式は、次期王と目されるジギスヴァルト王子とドレヴァンヒェルのアドルフィーネの婚姻を祝うものであったが、その準備段階から王族、中央神殿、エーレンフェスト、そして新婦それぞれの思惑やトラブルが交錯していた。

王族からの異例の依頼とエーレンフェストの準備
王族からの異例の要請に対し、エーレンフェストは特別な受け入れ態勢を整えた。その内容と準備状況は以下の通りである。

  • 王族(特にアナスタージウス王子)は、ジギスヴァルトが次期王に相応しいことを示すため、かつての卒業式で奇跡的な祝福を見せたローゼマインに神殿長として本物の祝福を与えるよう依頼した。
  • 未成年であるローゼマインは本来領主会議に参加できないが、この特例によって同行することになった。
  • エーレンフェスト側は、ローゼマインの神殿長衣装や聖典の準備に加え、側近のハルトムートが神官長として補佐することを決定した。
  • 王族から「青色神官や青色巫女の姿であれば護衛騎士の同行を許可する」と言われたため、成人している護衛騎士(コルネリウス、レオノーレ、アンゲリカ、ダームエル)に青色の儀式服を着せて護衛させるという異例の体制を整えた。

中央神殿との対立と古い儀式の導入
儀式当日の朝、講堂での打ち合わせに赴いたローゼマインたちを待ち受けていたのは、中央神殿との予期せぬ対立であった。

  • 自分たちから儀式の役目を奪われた形となる中央神殿の神官長イマヌエルは、中央神殿で見つかった古文書を根拠に「古い星結びの儀式では、神殿長が闇のマントと光の冠をまとわなければならない」と主張し、神具を持参していないローゼマインを嘲笑した。
  • しかし、ローゼマインは即座に自分のシュタープを変化させて闇のマントと光の冠を作り出し、イマヌエルを驚愕させた。
  • ローゼマインが渡された古い石板(地下書庫のものと酷似した古代語)をすらすらと読み解き、儀式の手順を把握した。
  • そこへアナスタージウスが到着し、王族側も事前の通達なしに古い儀式のやり方で本番を進めることを決定した。

新婦アドルフィーネの直前の状況
一方、新婦となるアドルフィーネは、儀式の直前に王族の不条理な現実に直面していた。

  • アドルフィーネは、儀式に向けてジギスヴァルトの離宮へ荷物を運び込み、自室を整えていた。
  • 彼女はもともとこの政略結婚に全く期待を抱いておらず、ジギスヴァルトの他者への配慮のなさや傲慢さに不満を抱いていた。
  • 星結びの直前になりジギスヴァルトから突然呼び出され、第二夫人(ナーエラッヒェ)が産後で魔力変質を避けたいため、結婚の儀式は予定通り行うが夫婦生活は1年間延期すると告げられた。
  • さらに、王族の深刻な魔力不足を理由に、自分が都合の良い魔力供給要員として急ぎ迎えられるだけだという事実を突きつけられた。
  • ローゼマインが神殿長を務めるという重大な変更すらこの場で初めて知らされ、アドルフィーネは王族の非常識さと無責任さに強い怒りと冷え切った失望を抱きながら、星結びの儀式へ臨むこととなった。

まとめ
領主会議での星結びの儀式に向けた準備は、単なる婚礼の支度にとどまらず、各勢力の思惑や不満が渦巻く極めて政治的な局面となった。王族による異例の依頼や中央神殿との対立は、ローゼマインの規格外の能力を改めて際立たせることとなった。一方で、新婦アドルフィーネが強いられた過酷な現実や王族への不信感は、今後の人間関係や情勢に大きな影響を与える重要な契機となっている。

祠巡りとグルトリスハイト

『第五部 女神の化身5』における「祠巡りとグルトリスハイト」について解説する。貴族院の敷地内に点在する大神の祠を巡ることは、次期ツェント候補が「メスティオノーラの書(実質的なグルトリスハイト)」を手に入れるための重要なプロセスとして描かれている。

祠の発見と石板の取得
ローゼマインによる祠の発見と、グルトリスハイト取得を決意するに至った経緯は以下の通りである。

  • ローゼマインは、ハンネローレやヒルデブラントたちと森を散策していた際、森の奥に忘れられたように存在する白い建物を発見した。
  • 広域魔術「ヴァッシェン」で建物を清め、扉に触れた瞬間、彼女は祠の内部へと引き込まれた。
  • そこは火の神ライデンシャフトとその眷属神が祀られた祠であった。
  • ローゼマインが祈りを捧げると、神像が持つ青い石板に魔力が入っていき文字が刻まれた。
  • 石板には「其方を認め、メスティオノーラの書を手に入れるための言葉を与える」と記されており、彼女がそれを手に取るとシュタープと同化し、頭の中に「クレフタルク」という神の言葉が刻み込まれた。
  • ローゼマインは「メスティオノーラの書」がグルトリスハイトを指していると直感した。
  • 当初は王族に危険視されることを恐れて関わりを避けようとしたが、フェルディナンドがディートリンデの連座で処刑される危険性が高いことを知る。
  • 彼を救い出すための交渉材料(盾)として、自らグルトリスハイトを手に入れる決意を固めた。

祠へ入るための厳しい条件
祠に入るためには、シュタープの取得状況に関わる極めて厳しい条件が存在することが判明した。

  • エグランティーヌもローゼマインと同様に火の祠に引き込まれ、魔力を奉納したが、「祈りが足りぬ」とされて石板を得ることはできなかった。
  • 二人の体験の違いから、ローゼマインは祠に入るための条件が「シュタープ」にあると気付いた。
  • 正しい手順は、小さい祠を巡って属性強化用の魔石を得て、全ての大神の御加護を得た上で、「始まりの庭」でシュタープを取得することである。
  • つまり、シュタープ取得時に「全属性」であった者だけが祠に入る資格を持つ。
  • 最初から全属性だったエグランティーヌは祠に入れたが、シュタープ取得後に御加護の再取得で全属性となったジギスヴァルトやアナスタージウスは、祠に入れない可能性が高い。

王族による祠巡りの強制と巨大魔法陣
ローゼマインが祠に入れることを知った王族の思惑により、彼女はすべての祠を巡ることとなった。

  • アナスタージウスとエグランティーヌは、ローゼマインを連れ出して他の祠へ入ることができるか試した。
  • ローゼマインは王族の監視下で、闇の神、風の女神、命の神と土の女神、光の女神、そして水の女神の祠を次々と巡った。
  • それぞれの祠で祈りを捧げ、シュタープと同化する石板と神の言葉を集めていった。
  • 最後の水の祠で「全ての神々より言葉を得た次期ツェント候補よ。メスティオノーラの書に手を伸ばせ」という言葉を与えられ、全ての大神の祠を巡り終えた。
  • この祠巡りの結果、貴族院の上空には六つの祠を結ぶ色とりどりの光の線が走り、中央棟の祭壇を中心とする巨大な魔法陣が形成された。

メスティオノーラの書への道と王族登録の壁
すべての祠を巡り終えたローゼマインであったが、最終的な取得の直前で強固な障壁に突き当たることとなる。

  • 全ての言葉を得て地下書庫へ戻ると、これまで動かなかった図書館の魔術具シュバルツとヴァイスが「あんないする」「しゃほんする」とローゼマインの手を引いた。
  • 彼らに導かれて書庫の壁に触れると、隠されていた白い通路が現れ、その奥には複雑な魔法陣で厳重に封印された扉が存在していた。
  • しかし、ローゼマインが扉に触れた瞬間、強い反発に遭って弾き飛ばされてしまった。
  • シュバルツたちは「おうぞくとうろく」「このさき、はいれない」と告げた。
  • メスティオノーラの書(グルトリスハイト)の保管場所へ進むためには、絶対に越えられない「王族登録」という壁があった。
  • 王族になるためには成人してジギスヴァルトと結婚するしかなく、一年後のフェルディナンドの星結びの儀式にはどうやっても間に合わない。
  • 最も確実だと思っていたフェルディナンドを救う道が絶たれたことで、ローゼマインは深い絶望と怒りに駆られることになった。

まとめ
貴族院の祠巡りは、ローゼマインに次期ツェント候補としての資格をもたらし、グルトリスハイトへの道を拓く重要な出来事であった。しかし、全属性のシュタープという厳しい条件をクリアしたものの、最後に立ちはだかった王族登録の壁は、フェルディナンド救出を急ぐ彼女を深い絶望へと突き落とした。この試練は、彼女の今後の決断や王族との関係、そして物語全体の展開に決定的な影響を与える極めて重要な転換点となっている。

王の養女の条件

物語における「王の養女の条件」について解説する。第五部において、ローゼマインが最も次期ツェント候補に近いと判明したことで、王族は彼女を王の養女としてグルトリスハイトを取得させ、後にジギスヴァルト王子の第三夫人として迎える計画を立てた。その際に行われた条件交渉の経緯と結果は以下の通りである。

王族の当初の提案とエーレンフェストの事情
王族はエーレンフェストへの見返りとして、領地順位の上昇や、多くの貴族を中央へ召し上げてローゼマインの立場を強化することを提案した。しかし、エーレンフェストには以下のような実情があり、この提案は利益にならなかった。

  • 急激な順位上昇により、領内の内政が追いついていない。
  • 粛清による深刻な貴族不足に悩まされている。
  • ローゼマインが神殿長、孤児院長、印刷事業の責任者を務めており、後継者への引き継ぎに最低でも1年以上の時間が必要である。
    これらの実情をジギスヴァルト王子に突きつけ、性急な移籍に難色を示した。

ローゼマインが提示した条件
ローゼマインは商人モードとなり、1年以上の猶予とエーレンフェストに確実に利益をもたらすための条件を提示した。

  • 準備期間の確保(奉納式による時間稼ぎ):王族の魔力不足解消と各領地の底上げを名目として、領主会議での奉納式を王族主催で実施することを提案し、引き継ぎのための1年間を確保した。
  • フェルディナンドの救済:当初は彼をエーレンフェストに帰還させるよう要求したが、アーレンスバッハの維持に不可欠であると却下された。そのため、次善の策として、グルトリスハイトを手に入れるまで婚姻を延期すること、ディートリンデが処分された際の連座回避、そして客室ではなく隠し部屋の付与を強く要求した。かつて魔力を暴走させていた自身の過去をほのめかして脅しをかけ、ジギスヴァルトに連座回避の取り計らいを約束させた。
  • エーレンフェストの人材補強:人材流出を防ぐため、5年間は他領との婚姻をエーレンフェストに入る者(婿入り・嫁入り)に限定するというツェントの承認を求めた。加えて、魔術具がなくて貴族になれない子供たちを育てるために30から40個の魔術具の提供と、情報収集のために中央に出ている自領出身貴族を一度里帰りさせることを要求した。
  • 側近の受け入れ:未成年であっても、自身に名を捧げた側近は年齢や階級に関わらず全員中央へ連れて行き、受け入れるよう求めた。
  • 図書館に関する個人的な要求:中央の全図書館・図書室への自由な出入り権と、自身の離宮にフェルディナンドの蔵書室を超える規模の図書室を設置することを結婚の絶対条件として突きつけた。

ツェントとアウブの会談で得られた最終条件
ローゼマインの要求をもとに、ツェントとジルヴェスターの間で正式な話し合いが行われ、以下の内容で決定した。

  • 図書室の設置却下とその他の承認:ローゼマインが最も重視していた図書室の設置は、本を一から揃えるための費用が国家予算を破綻させかねないという理由で却下された。その代わり、部屋だけは用意されることになり、それ以外の要求である人材補強や側近の同行などはすべて承認された。
  • フェルディナンドの待遇改善の確約:脅しの効果もあり、フェルディナンドの連座回避と隠し部屋の付与は、王族から確約を得ることができた。
  • 今後の予定:まずは1年かけてトラオクヴァールとジギスヴァルトが自力でグルトリスハイト取得に挑戦することになった。もし彼らが自力で取得できた場合、ローゼマインが養女になる計画と各種条件はご破算となるが、フェルディナンドの連座回避と隠し部屋の付与だけは今回の地下書庫の翻訳報酬として保証される。挑戦が失敗した場合は、1年間は現状維持を装いながら水面下で準備を進め、予定通り1年後に王の養女となる手はずである。

まとめ
ローゼマインの王の養女就任を巡る条件交渉は、領地の実情を考慮しない王族の提案に対し、ローゼマインが現実的かつ強気な要求を突きつける形で進められた。最も重視していた図書室の設置こそ国家予算の都合で却下されたものの、フェルディナンドの待遇改善やエーレンフェストの人材補強など、多くの重要条件を認めさせることに成功した。今後の王族によるグルトリスハイト取得の成否に関わらず、これらの交渉結果はエーレンフェストとフェルディナンドの未来を守るための極めて重要な布石となっている。

領主会議の奉納式

物語における「領主会議の奉納式」について解説する。この奉納式は、王族の深刻な魔力不足を解消すると同時に、ローゼマインが王の養女となるための「準備期間」を勝ち取るための重要な政治的取引として開催された。

奉納式開催の経緯と目的
王族は政変後に放置していた古い魔術具が魔力切れで崩壊し始めたため、極端な魔力不足に陥っていた。そこで、グルトリスハイトに最も近いとされるローゼマインを即座に王の養女として迎え入れようと画策した。しかし、開催に至る背景には以下のような事情が存在した。

  • 神殿長、孤児院長、印刷事業の責任者を務めるローゼマインにとって、後継者への引き継ぎを行うために最低でも1年以上の準備期間が絶対に必要であった。
  • 他領や中央神殿からは「ローゼマインを中央神殿長にして神事のやり方を広めろ」という強い圧力がエーレンフェストにかけられていた。
  • これらの状況を逆手に取り、ローゼマインはジギスヴァルト王子に対し、「領主会議で奉納式を行い、集まった大勢 of 貴族から魔力を集めることで、1年分の時間を魔力で買う」という提案を行った。
  • これにより、王族の魔力不足を補い、他領に神事を教えるという要求を満たしつつ、自身の引き継ぎ期間を確保した。

ローゼマインの交渉と仕掛け
ローゼマインはエーレンフェストの利益を守るため、以下のようなしたたかな交渉と仕掛けを行った。

  • 奉納式を「王族主催」とすることで、準備の労力を中央神殿と王族にすべて一任した。
  • 参加するアウブや側近たちに対して、「十年に一度の頻度で御加護の再取得に挑戦できる」という利点を提示し、領主会議での奉納式を恒例行事化する仕組みを提案した。
  • エーレンフェストに直接的な見返りがない点を補うため、王族の口から「エーレンフェストの協力によって実現した」と大々的に宣伝させることを約束させ、勝ち組領地としての恩を他領に売ることに成功した。

儀式当日の様子と不思議な現象
領主会議の最終日に行われた儀式では、独自の形式と幻想的な光景が展開された。

  • 講堂に集まった各領地のアウブや側近、中央貴族たちは、領地ごとに赤い布の上でドーナツ状(円グラフのような形)に並び、中心に置かれた大聖杯に向かって跪いた。
  • 中央神殿のイマヌエルは祭壇に向かって儀式を行わないことに不満を示したが、ローゼマインは「中央神殿に魔力を分けるつもりはない」と突っぱねた。
  • ローゼマインの先導で祈りの言葉が唱えられると、貴族たちから赤い布を通じて魔力が聖杯に流れ込んでいった。
  • その際、一つの聖杯だけが赤く光り、炎のように揺らめく赤い光が火の粉のように天へゆっくりと昇っていくという、幻想的で美しい現象が起きた。

儀式後の対応と「聖女」としての印象付け
儀式の終了後、ローゼマインは他領の不満を解消しつつ、自身の存在感を高める対応を行った。

  • 儀式終了後、魔力差に耐えきれず円周上にいた中央神殿の青色神官や巫女が倒れるハプニングがあったものの、各領地の貴族たちは大きな疲労を見せることなく儀式を終えた。
  • ツェントは今後の奉納式の継続を宣言したが、回復薬の負担を懸念する領地が多かった。
  • そこでローゼマインは、回復薬の素材を容易に得られるようにするため、貴族院の採集場所の魔法陣を利用して「採集場所を回復させるためのお祈りの言葉」を参加者全員に教えた。
  • 採集場所の回復のために何度も祝詞を唱え、聖杯を緑に光らせるローゼマインの姿は、参加した貴族たちに神々とのやり取りに慣れた「聖女」として強く印象付けられた。
  • マグダレーナは、この一連の様子が「ローゼマインをエーレンフェストだけで独占していても良い人物ではない」という認識を他領に抱かせることに繋がり、最終的に彼女を王の養女にすることへの反対意見を封じる結果になったと分析している。

まとめ
領主会議における奉納式は、王族の魔力不足解消という課題を利用し、ローゼマインが自身の引き継ぎ期間を確保するための高度な政治的交渉の場となった。王族主催への切り替えや恒例行事化の提案、さらには採集場所の回復方法を開示するなどの巧妙な仕掛けにより、他領の懸念を払拭しつつ、ローゼマインの聖女としての名声を不動のものにした。この出来事は、彼女が王の養女へと進む道を阻む周囲の反対を封じ込め、今後のユルゲンシュミット全体の情勢を大きく動かす重要な契機となっている。

第五部 女神の化身4レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身6レビュー

登場キャラクター

指定されたリストに基づき、文書から情報を抽出し整理した結果を以下に記載する。文書内に明確な登場や記述が確認できないキャラクター(ロヤリテート、アーデルベルト、グレートヒェン)は除外している。

中央・王族・貴族院

トラオクヴァール

ユルゲンシュミットの現在の王である。グルトリスハイトを持たないまま即位した。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。ツェント(王)。
・物語内での具体的な行動や成果
 領主会議で奉納式に参加し、魔力の供給を受けた。ディートリンデがグルトリスハイトを得た場合は玉座を譲る意向を示している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力供給に追われて顔色を悪くしている。

ジギスヴァルト

トラオクヴァールの第一王子である。アドルフィーネの婚約者として知られている。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。第一王子。次期王。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下書庫の調査へ自ら赴くことを決定した。アドルフィーネに対して結婚後の夫婦生活を一年間延期すると告げている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 次期王としての役目を果たすため、グルトリスハイトがなくても統治できることを証明しようと考えている。

アナスタージウス

トラオクヴァールの第二王子である。エグランティーヌの夫である。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 中央騎士団のディッター乱入について事情聴取を行った。地下書庫で現代語訳の作業を主導する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エグランティーヌと婚約したことで、ジギスヴァルトの下につくことが決まった。

エグランティーヌ

元クラッセンブルクの領主候補生である。アナスタージウスと星結びの儀式を行った。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。
・物語内での具体的な行動や成果
 領主候補生コースの講師として貴族院に派遣された。ローゼマインから情報を収集する役目を担う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 政変で亡くなった第三王子の娘である。

マグダレーナ

トラオクヴァールの第三夫人である。ヒルデブラントの母である。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。第三夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下書庫で古い文献の現代語訳に協力した。ダンケルフェルガー出身であるため、古い言葉に堪能である。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヒルデブラントがツェントになることを望まず、臣下として育てている。

ヒルデブラント

トラオクヴァールの第三王子である。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。第三王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院の図書委員として活動し、地下書庫の調査に同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レティーツィアとの婚約が発表され、成人後にアーレンスバッハへ婿入りすることが決まった。

ナーエラッヒェ

ジギスヴァルトの第二夫人である。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。第二夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 産後であるため、魔力の変質を避ける目的でジギスヴァルトに配慮されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ワルディフリード

過去の王子である。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。
・物語内での具体的な行動や成果
 オルタンシアが文官として仕えていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

イマヌエル

中央神殿の神官長である。

・所属組織、地位や役職
 中央神殿。神官長。
・物語内での具体的な行動や成果
 星結びの儀式についてローゼマインと対立した。奉納舞の魔法陣を次期ツェント選出のためのものだと主張する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ハルトムートから危険な狂信者として警戒されている。

ラオブルート

中央騎士団長である。オルタンシアの夫である。

・所属組織、地位や役職
 中央。中央騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドがアダルジーザの実であることに気付いた。地下書庫の調査をオルタンシアに命じる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エーレンフェストに対して強い疑念を抱いている。

アルトゥール

ヒルデブラントの筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 中央。筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヒルデブラントの公務を補佐し、厳しい助言を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

オルタンシア

中央の上級文官である。ラオブルートの第一夫人である。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・図書館。上級司書。
・物語内での具体的な行動や成果
 王と夫の命を受け、貴族院の図書館に上級司書として赴任した。地下書庫の調査を進める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ディルミラ

オルタンシアの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 中央。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 オルタンシアと共に貴族院の図書館へ赴任した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ソランジュ

貴族院の中級司書である。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・図書館。中級司書。
・物語内での具体的な行動や成果
 オルタンシアを迎え入れ、共に図書館の業務を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヒルシュール

貴族院の教師である。エーレンフェストの寮監を務めている。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・教師。エーレンフェスト寮監。
・物語内での具体的な行動や成果
 ターニスベファレンの討伐や事情聴取に立ち会った。王族の遺物に関する研究発表を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フラウレルム

貴族院の教師である。アーレンスバッハの寮監を務めている。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・教師。アーレンスバッハ寮監。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーレンフェストに関する主観的な報告を行い、アウブ・アーレンスバッハから注意を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グンドルフ

貴族院の教師である。ドレヴァンヒェルの寮監を務めている。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・教師。ドレヴァンヒェル寮監。
・物語内での具体的な行動や成果
 ターニスベファレンの原因究明に興味を示し、探索に名乗りを上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

シュバルツ

貴族院図書館の魔術具である。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・図書館。魔術具。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインやヒルデブラントを「ひめさま」「トショイイン」と呼んで案内する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヴァイス

貴族院図書館の魔術具である。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・図書館。魔術具。
・物語内での具体的な行動や成果
 シュバルツと共に地下書庫へ一行を案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

中央騎士団

中央に所属する騎士の集団である。

・所属組織、地位や役職
 中央。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディッターに乱入し、王族の名を騙って学生達を煽った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 トルークという危険な植物で操られていた可能性がある。

エーレンフェスト

ジルヴェスター

エーレンフェストを治める領主である。ローゼマインの養父である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 旧ヴェローニカ派の粛清を前倒しで決行した。領主会議で他領からの要求や縁談の対処に奔走する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ブリュンヒルデを第二夫人として迎えることを決めた。

フロレンツィア

ジルヴェスターの第一夫人である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 女性貴族の派閥をまとめ、ゲオルギーネの動向を警戒している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 妊娠したことが発表された。

ローゼマイン

ジルヴェスターの養女である。エーレンフェストの神殿長を務めている。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。領主候補生。神殿長。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院で二年連続の最優秀を獲得した。領主会議の奉納式で神事を主導し、聖杯を光らせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地下書庫の調査で次期ツェント候補となったが、王族登録がないため資格なしと判定された。

ヴィルフリート

ジルヴェスターの息子である。ローゼマインの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。次期アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院で他領の学生と社交を行い、成績優秀者に選ばれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインとの婚約が王に承認され、次期アウブに内定した。

シャルロッテ

ジルヴェスターの娘である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院で他領との社交をこなし、ドレヴァンヒェルやフレーベルタークと交流を深めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

メルヒオール

ジルヴェスターの息子である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの後任として、次期神殿長になるための教育を受け始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ボニファティウス

カルステッドの父である。元領主一族である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。領主代理。
・物語内での具体的な行動や成果
 冬の粛清で先陣を切り、騎士見習い達の訓練を主導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

カルステッド

エーレンフェストの騎士団を率いる人物である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 冬の主の討伐や旧ヴェローニカ派の粛清の事後処理に奔走した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エルヴィーラ

カルステッドの第一夫人である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 印刷業に関わる打ち合わせを主導し、ランプレヒトの花嫁であるアウレーリアを保護した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヴェローニカ

ジルヴェスターの母である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。元第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去にライゼガング系貴族を迫害し、多くの貴族に名捧げを強要していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白の塔に幽閉されている。

ガブリエーレ

アーレンスバッハから嫁いできた姫君である。ヴェローニカの母である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 自分の忠臣達に名捧げを強要し、旧ヴェローニカ派の基盤を作った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 故人である。

ベーゼヴァンス

前神殿長である。ヴェローニカの弟である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。前神殿長。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去にマインの家族を襲撃し、処分された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 故人である。

リヒャルダ

ローゼマインに仕える筆頭側仕えである。ユストクスの母である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院の寮を管理し、不適切な態度をとったトラウゴットに辞任を迫った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ノルベルト

ジルヴェスターに仕える筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 領主会議の期間中、本館の領主夫妻が過ごす区域を管理した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

オティーリエ

ローゼマインに仕える側仕えである。ハルトムートの母である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 城でローゼマインの身の回りの世話や手紙の対応を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

リーゼレータ

ローゼマインに仕える側仕え見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 シュバルツ達の衣装を作り、グレーティアの指導に当たった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グレーティア

ローゼマインに仕える側仕え見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 連座を回避するためローゼマインに名を捧げ、側近となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ブリュンヒルデ

ローゼマインに仕える側仕え見習いである。ギーベ・グレッシェルの娘である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 流行の発信に尽力し、アウブ・エーレンフェストの第二夫人に志願した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 第二夫人となることが決まった。

ベルティルデ

ブリュンヒルデの妹である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 春を寿ぐ宴で姉のブリュンヒルデの補佐を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ハルトムート

ローゼマインに仕える文官である。クラリッサの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級文官。次期神官長。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハの内情を調査し、ローゼマインの聖女伝説を広めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フェルディナンドの後任として神官長に就任した。

レーベレヒト

フロレンツィアの文官である。ハルトムートの父である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 クラリッサが強行突破して到着した際の事後処理を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

コルネリウス

ローゼマインに仕える護衛騎士である。レオノーレの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院で優秀者に選ばれ、側近のまとめ役としてローゼマインを護衛した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アンゲリカ

ローゼマインに仕える護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 エックハルトとの婚約を解消し、エーレンフェストに残って護衛任務を続けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レオノーレ

ローゼマインに仕える護衛騎士見習いである。コルネリウスの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディッター対策として魔獣の弱点をまとめ、指揮官としての能力を発揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ユーディット

ローゼマインに仕える護衛騎士見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ボニファティウスの特訓を受け、命中率を上げる訓練に励んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ダームエル

ローゼマインに仕える護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。下級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿での文官仕事もこなし、西門でクラリッサの対応に当たった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マティアス

ローゼマインに仕える護衛騎士見習いである。前ギーベ・ゲルラッハの息子である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲオルギーネ派の秘密会合を密告し、連座回避のためローゼマインに名を捧げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ラウレンツ

ローゼマインに仕える護衛騎士見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 連座回避のためローゼマインに名を捧げ、旧ヴェローニカ派の子供達を説得した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フィリーネ

ローゼマインに仕える文官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。下級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 お話集めや写本の取りまとめを行い、神殿業務の手伝いを行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ローデリヒ

ローゼマインに仕える文官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 名を捧げて側近となり、物語を執筆して新しい本を作る仕事に携わっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ミュリエラ

ローゼマインに仕える文官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 連座回避のためローゼマインに名を捧げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 成人後にエルヴィーラへ名を捧げ直すことが許された。

オズヴァルト

ヴィルフリートの筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。元筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴィルフリートの側近を辞任した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ランプレヒト

ヴィルフリートの護衛騎士である。カルステッドの次男である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハのアウレーリアと結婚し、妻と子の安全を守るため配慮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ラザファム

フェルディナンドに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。下級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドのアーレンスバッハへの婿入りに伴い、館と荷物の管理を命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

前ギーベ・ゲルラッハ

ゲルラッハを治めていた領主である。マティアスの父である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。元ギーベ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲオルギーネに名捧げし、反逆を企てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 冬の粛清で自爆したとされたが、生存の可能性がある。

ダールドルフ子爵

イェレミアスの父である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。子爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 妻が聖典を盗んで自殺したため、一族の連座回避のために聖典の捜索を命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴェローニカに名を捧げている。

ブリギッテ

ローゼマインの元護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 イルクナーの製紙業の立ち上げに協力し、故郷へ戻った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フリターク

エーレンフェストの青色神官である。

・所属組織、地位や役職
 神殿。青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿の事務仕事に精通し、ローゼマインから頼りにされている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フラン

ローゼマインに仕える筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿長室の業務を取り仕切り、文官仕事もこなしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ザーム

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの身の回りの世話や来客の対応を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

モニカ

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの着替えや給仕などを担当している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ニコラ

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿長室で食事やお菓子の準備を担当している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ロータル

神殿の側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 メルヒオールの神殿教育において指導役として付けられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギル

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマイン工房の責任者として、印刷業や下町との連絡係を務めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ルッツ

プランタン商会の商人見習いである。

・所属組織、地位や役職
 下町。ダプラ見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ギルと共に各地の製紙工房へ出向き、紙作りの指導を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヴィルマ

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院の世話を担当し、ローゼマインの本の挿絵を描いている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ロジーナ

ローゼマインの専属楽師である。

・所属組織、地位や役職
 城。専属楽師。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドと共に新しい曲の編曲を行い、お茶会で演奏を披露した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フーゴ

ローゼマインの専属料理人である。

・所属組織、地位や役職
 城。専属料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族向けに新しいレシピの料理を提供し、他領からの高い評価を得た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エラ

ローゼマインの専属料理人である。

・所属組織、地位や役職
 城。専属料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿や城でローゼマインのための食事を作り続けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

トゥーリ

ローゼマインの姉である。

・所属組織、地位や役職
 下町。髪飾り職人。ダプラ見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族や王族向けの新しい髪飾りを制作し、ギルベルタ商会で活躍している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ベンノ

プランタン商会を率いる商人である。

・所属組織、地位や役職
 下町。プランタン商会店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 印刷業の拡大を担い、他領の商人や貴族と直接交渉を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ライゼガング系貴族

ヴェローニカ失脚後に最大派閥となった集団である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインを次期アウブに擁立しようと画策した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

旧ヴェローニカ派の貴族

ヴェローニカを支持していた貴族の集団である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 冬の粛清により主要な人物が捕らえられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グーテンベルク達

印刷業や製紙業に関わる職人たちの総称である。

・所属組織、地位や役職
 下町。職人集団。
・物語内での具体的な行動や成果
 各地へ赴き、新しい工房の設立と技術指導を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

プランタン商会

植物紙や本などの印刷物を専門に扱う商会である。

・所属組織、地位や役職
 下町。商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーレンフェストの印刷物を他領へ広げるための交渉窓口となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アーレンスバッハ

アウブ・アーレンスバッハ

アーレンスバッハを治める領主である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 病に倒れ、フェルディナンドを婿として迎え入れるよう王に求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ゲオルギーネ

アーレンスバッハの第一夫人である。ジルヴェスターの姉である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーレンフェストを訪れて旧ヴェローニカ派を扇動し、秘密裏に反逆の準備を進めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ディートリンデ

アーレンスバッハの領主候補生である。フェルディナンドの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。次期アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 奉納舞で魔法陣を浮かび上がらせ、次期ツェント候補だと名乗った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レティーツィア

アーレンスバッハの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドから厳しい教育の課題を与えられている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ドレヴァンヒェルから養女として迎えられた。

フェルディナンド

ローゼマインの元後見人である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。ディートリンデの婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果
 王命によりアーレンスバッハへ婿入りし、ディートリンデの執務を代行している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エックハルト

フェルディナンドに仕える護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンゲリカとの婚約を解消し、フェルディナンドと共にアーレンスバッハへ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ユストクス

フェルディナンドに仕える側近である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。文官・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 女装をして情報収集を行い、フェルディナンドと共にアーレンスバッハへ同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ゼルギウス

フェルディナンドに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハの館でフェルディナンドの身の回りの世話をしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ライムント

フェルディナンドとヒルシュールの弟子である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。中級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 省魔力で動く魔術具を研究し、フェルディナンドに課題を提出している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ダンケルフェルガー

ハンネローレ

ダンケルフェルガーの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院の図書委員として活動し、ダンケルフェルガーの歴史書をローゼマインに貸し出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

クラリッサ

ダンケルフェルガーの上級文官見習いである。ハルトムートの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー。上級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの側近になるため、予定を前倒ししてエーレンフェストへやって来た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

コルドゥラ

ハンネローレに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 お茶会でクラリッサたちの暴走を止める役割を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ドレヴァンヒェル

アウブ・ドレヴァンヒェル

ドレヴァンヒェルを治める領主である。

・所属組織、地位や役職
 ドレヴァンヒェル。アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 勘合紙に興味を示し、取り引きを求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アドルフィーネ

ジギスヴァルト王子の婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 ドレヴァンヒェル。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインとお茶会を開き、交流を深めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジギスヴァルトの第一夫人となることが決まった。

オルトヴィーン

ドレヴァンヒェルの領主候補生である。アドルフィーネの弟である。

・所属組織、地位や役職
 ドレヴァンヒェル。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴィルフリートと成績やゲームで競い合い、互いに切磋琢磨している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

オデルクンス

アドルフィーネに仕える側近である。

・所属組織、地位や役職
 ドレヴァンヒェル。側近。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジギスヴァルトからの伝言をアドルフィーネに伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

リズベット

アドルフィーネに仕える側近である。

・所属組織、地位や役職
 ドレヴァンヒェル。側近。
・物語内での具体的な行動や成果
 星結び直前にアドルフィーネを呼び出したジギスヴァルトに不満を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

クラッセンブルク

アウブ・クラッセンブルク

クラッセンブルクを治める領主である。

・所属組織、地位や役職
 クラッセンブルク。アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 領主会議でエーレンフェストと交流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

旧ベルケシュトック

アウブ・ベルケシュトック

政変で敗北した領地の元領主である。

・所属組織、地位や役職
 旧ベルケシュトック。元アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 特筆事項なし。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 政変後の粛清で処刑された。

第五部 女神の化身4レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身6レビュー

展開まとめ

プロローグ

領主会議前の焦燥

春の城内は領主会議を目前に控え、慌ただしい空気に包まれていた。ボニファティウスもまた余裕を失っており、ジルヴェスターと話すため昼食の時間を確保して休憩室へ向かう。

休憩室ではリヒャルダが給仕の準備をしていた。ボニファティウスは、彼女がガブリエーレ、ヴェローニカ、ゲオルギーネ、ジルヴェスター、そしてローゼマインと、代々の領主一族へ仕えてきた特殊な側仕えであることを改めて思い出す。

また、ローゼマインへリヒャルダが付けられた理由についても考える。神殿育ちゆえに側近不足だっただけでなく、親族と過度に交流させない意図もあったのではないかと推測していた。

ジルヴェスターへの不満

ボニファティウスは、フェルディナンドが担っていた執務を領主へ返したため、現在のジルヴェスターがかつてないほど働かされている状況を当然だと考えていた。領主が領主の仕事をするのは当たり前だという認識である。

一方で、自分は本来引退して孫娘を可愛がるだけの老後を望んでいた。しかし実際には、ヴィルフリートの次期領主教育や執務補佐を続けている。

そこには、ローゼマインを次期領主にできれば、教育係としてもっと一緒に過ごせるのではないかという下心もあった。しかしローゼマイン本人から「神殿にいたい」と明確に断られ、その望みは潰えていた。

ヴィルフリートへの失望

食事が始まると、ボニファティウスは本題を切り出す。ヴィルフリートの態度が悪化しており、このままでは面倒を見切れないとジルヴェスターへ警告したのである。

祈念式でライゼガング系ギーベ達から冷遇されたことが原因だと説明されるが、ボニファティウスは「失敗したこと」ではなく、その後に執務を放棄し、感情を態度へ露骨に出している点を問題視していた。

しかもヴィルフリートは注意されるたび、「ローゼマインを次期領主にしたいから厳しいのだ」とふて腐れていた。ランプレヒトや側近達も比較を避けようと甘やかしており、改善が見られない。

ボニファティウスは、勉強だけ優秀でも領主として相応しい態度が伴わなければ意味がないと断言する。領主会議準備で皆が忙しく動く中、執務中に不貞腐れている次期領主候補の姿は、周囲から見れば格好の攻撃材料になると危惧していた。

オズヴァルト解任の真相

ジルヴェスターは、オズヴァルトを単なる粛清ではなく、教育方針の違いによって解任したと説明する。

オズヴァルトは忠誠心も仕事ぶりも真面目だったが、ヴェローニカ時代の価値観を変えられなかった。ローゼマインとの婚約でヴィルフリートの立場が安定した後、その傾向はさらに悪化していたのである。

しかしボニファティウスは、ヴィルフリートの側近達が全体的に甘すぎると批判した。ローゼマインと比較するなという言葉が、いつまでも幼少期の延長で使われていることへ危機感を抱いていた。

次期領主教育の停止

ボニファティウスは、ヴィルフリートに改善の意思がないなら次期領主から下ろせとまで言い切る。

しかしジルヴェスターは、その場合はローゼマインとの養子縁組も解消すると本気で返した。ローゼマインを養女にした理由は、神殿の危険から守ることと領地安定のためであり、最初から次期領主にするつもりではなかったのである。

最終的にボニファティウスは、次期領主教育を一旦停止し、まずは領主一族としての執務をこなせるようにするべきだと判断した。

フロレンツィアとシャルロッテ

話題はフロレンツィアの体調へ移る。悪阻は落ち着きつつあったが、彼女は子供達の前で弱音を見せまいとして無理を続けていた。

ボニファティウスは、執務の一部をシャルロッテへ回すべきだと提案する。シャルロッテは飲み込みが早く、ブリュンヒルデとも連携しながら領内社交や連絡役をしっかりこなしていた。

ジルヴェスターも、ブリュンヒルデやクラリッサが領主会議準備へ奔走しているおかげで、フロレンツィアへ無理をさせずに済んでいると安堵していた。

ローゼマインが領主会議へ関与している印象

しかしボニファティウスは、その状況こそ問題だと指摘する。ブリュンヒルデ、リヒャルダ、クラリッサ、フィリーネなど、ローゼマイン側の人材が領主会議準備を支えているため、城にいないローゼマインが実際以上に領主会議へ深く関与しているように見えていたのである。

対してヴィルフリートは、祈念式の件で不満を抱え、執務室で露骨に落ち込んでいるだけに見えていた。貴族達が見るのは「傷付いた事情」ではなく、「次期領主として相応しい成果と態度」であるとボニファティウスは強調した。

フェルディナンドとの噂

さらにボニファティウスは、旧ヴェローニカ派の間で「ローゼマインはフェルディナンドへ恋慕しており、ヴィルフリートを蔑ろにしている」という噂が流れていることを伝える。

領地対抗戦の夜、フェルディナンドとの再会時の様子が誇張されて広まったらしい。リヒャルダは、その場にいたのは自分とオズヴァルトだけだったことから、噂の出所にオズヴァルトが関与している可能性を指摘した。

オズヴァルトはローゼマインへの悪意というより、ヴィルフリートを守るためにローゼマインの評判を下げようとしているのではないかと分析される。

また、リヒャルダは、ローゼマインの外見が成長してきた以上、これまで通りフェルディナンドへ甘える関係は周囲から問題視され始めるだろうとも懸念していた。

神殿と社交への対立

ボニファティウスは、ローゼマインが神殿へ籠もり続け、領地内社交を軽視していることへ強い不満を抱いていた。神殿育ちという瑕疵を埋めるためにも、第一夫人教育と領地貴族との交流を優先すべきだと考えているのである。

しかしジルヴェスターは、神殿業務、平民商人との会合、旧ヴェローニカ派子供達の監視などを理由に、ローゼマインを神殿から外せないと反論した。

さらに、ローゼマインの側近達は「古い社交は必要ない」と考え、上位領地型の新しい社交を重視している。ボニファティウスは、それでは領地内貴族の支持基盤が崩れると危惧していた。

ローゼマインの側近達への評価

一方でジルヴェスターは、ローゼマインの側近達を高く評価していた。ハルトムート、ダームエル、レオノーレ、ユーディット、アンゲリカ、コルネリウスなど、それぞれが成長し、優秀な人材になっていると認めている。

ボニファティウスも、ローゼマインには人を伸ばす才能があること自体は認めていた。しかし同時に、新しい制度や名捧げ制度改変など、突飛な発想の全てがローゼマイン発案だと思われていることを危険視していた。

ヴェローニカ時代に苦しめられた世代ほど、名捧げ制度への恐怖が強く、ローゼマインが「忠誠を強制する領主一族」だと誤解されかねないのである。

ボニファティウスの懸念

ボニファティウスは、ローゼマインもヴィルフリートと同じく、側近達によって都合の悪い情報を遮断されているのではないかと疑い始めていた。

親族との交流さえ制限される孫娘を思い浮かべながら、第三者から忠告する必要があるのではないかと考えるのだった。

青色見習いと孤児院の子供達

青色見習い達の入神殿

祈念式が終わり春も深まる頃、城からの馬車で新たな青色見習い達が神殿へ到着した。子供達は以前の見学時ほど緊張した様子もなく、貴族らしい動きで神殿へ入っていく。

メルヒオールは騎獣で到着し、ローゼマインは神殿長として彼等を迎えた。その後、神殿長室で青色見習いとして神へ仕える誓いの儀式を執り行い、自ら祝詞を唱えて青の衣を渡していく。ローゼマインは、彼等が成長のため努力してくれることを願っていた。

神殿生活の説明

儀式後、ローゼマインは神殿での生活について説明する。朝食後は神官長室で業務や課題を受け取り、午前中は神殿業務や神事の勉強を行う。三の鐘からは孤児院でヴィルマやロジーナを教師に、音楽や座学など貴族教育を受ける流れだった。

午後は比較的自由時間であり、鍛錬、工房作業、写本、商業や印刷業の勉強など、それぞれ将来に向けた活動が許されていた。事前申請を出せば城へ戻ることも可能である。

ただし孤児院生活とは完全には同じにならない。孤児院の子供達は作業があるため、勉強時間は限られているのである。また、青色見習い達を森へ出すことは認められなかった。貴族の子供に何かあれば、引率した平民達が処罰される可能性があるためだった。

ローゼマインと図書室

ローゼマインは、神殿図書室へ置いたローゼマイン工房の本を熱心に紹介したいと思っていた。しかし周囲から「熱意を持って勧めると逆に引かれる」と止められており、不満を感じていた。

その後、メルヒオールは孤児院へ一緒に行きたいと申し出る。祈念式での出来事を報告したいことも理由だった。

神殿業務と領主会議準備

ローゼマインは神官長室でハルトムートから神殿業務の進捗報告を受けた。祈念式中はフリタークが対応していたものの、フェルディナンド不在と青色神官減少の影響は大きく、仕事が溜まっていた。

さらに領主会議で行う星結びの儀式についても確認する。ローゼマインは中央神殿で用意された神具を使い、自身の聖典を持参するだけで良いと聞いていた。ハルトムートは当然のように神官長として補佐参加を宣言する。

また、王族から地下書庫への立ち入りを許可されており、ローゼマインは領主会議中、地下書庫へ籠もる予定だった。その護衛としてコルネリウスとレオノーレ、側仕えとしてオティーリエが同行することになる。

青色神官姿の護衛騎士達

王族から「青色神官や青色巫女の姿なら護衛騎士同行を許可する」と言われたため、ローゼマインは成人済み護衛騎士達へ青の服を着せて同行させる計画を立てていた。

アンゲリカ、コルネリウス、ダームエル、レオノーレは特に抵抗なく了承する。奉納式でも既に青色神官姿を経験していたためである。

しかし、ダームエルは王族しか入れない地下書庫へ入らずに済むことへ安堵していた。ローゼマインは、王族や領主夫妻が集まる場で青色神官姿の護衛騎士をする方が緊張しそうだと思ったが、口には出さなかった。

フィリーネの変化

祈念式や領主会議へ同行できないことをフィリーネが残念がると、ダームエルは神殿を守る役目も重要だと優しく慰める。

フィリーネは嬉しそうに頬を染めて微笑み、その様子を見たローゼマインは、以前ローデリヒを好いていたはずのフィリーネの視線がダームエルへ向いていることへ気付き、戸惑いを覚えていた。

メルヒオールの報告

孤児院へ向かう道中、メルヒオールは祈念式の報告をジルヴェスターへ行い、兵士達からの言葉も伝えて褒められたことを語る。さらに、収穫祭へ向けてローゼマインから教わった祈りを覚えている最中だとも話した。

また、前ギーベ・ゲルラッハの館で発見された「銀の布」についても話題に出る。ボニファティウスが「絶対に変だ」と強く主張した結果、文官達の調査によって本当に特殊な布だと判明したらしい。

孤児院の問題

孤児院へ着くと、青色見習い達と孤児院の子供達がカルタで遊んでいた。ローゼマインはヴィルマから最近の孤児院事情を聞く。

そこで判明したのは、やる気を失った子供達の存在だった。魔術具を持たないまま育った子供達は、「家へ戻れば必要とされる」と思って耐えていた。しかし実際には引き取りに来てもらえず、自分達は魔術具もなく、貴族として扱われない存在なのだと現実を突き付けられていたのである。

その結果、何を頑張っても意味がないと考え、ぼんやり過ごす子供が増えていた。

魔術具救済案

ローゼマインは、今から魔術具を用意しても貴族として育て直せないのかをハルトムートへ尋ねる。

ハルトムートは、不可能ではないと答えた。大量の回復薬を使いながら無理矢理魔力を流し込めば間に合う可能性はあるが、肉体負担も金銭負担も極めて大きいという。政変後に復帰した青色見習い達の中にも、その方法を使った者がいた。

しかしハルトムートは、孤児院の子供全員へローゼマイン個人がそこまで負担することへ反対する。旧ヴェローニカ派の子供を救うくらいなら、自分の子供へ魔術具を与えてほしいと考える貴族達は多いからである。

それを聞いたローゼマインは、「旧ヴェローニカ派の子供を救う」のではなく、「孤児院にいる子供を平等に救う」のだと考え直した。

孤児院に所属する子供ならば、派閥や出自に関係なく、一定以上の魔力と成績を収めた者を救済対象にすれば平等になると提案する。

ハルトムートは驚きながらも、その案はアウブと相談が必要だと判断し、御加護再取得を口実に領主夫妻を招いて話し合う提案を行うのだった。

養父様とおじい様の再取得

神殿での再会

ローゼマインが御加護再取得の儀式ついでに相談したいことがあると伝えると、ジルヴェスターだけでなくボニファティウスも神殿へやって来た。ローゼマインはメルヒオールと共に神殿長室へ二人を案内し、茶菓子を用意して迎える。

会話では領主会議準備の状況が話題になった。クラリッサはダンケルフェルガーとの交渉準備へ異常な熱意を見せており、その働きぶりは周囲にも良い影響を与えているという。実際には、領主会議へ同行できなければローゼマインが執り行う星結びの儀式を見られないため必死だった。

銀の布の報告

続いて、騎士団が調査を進めていた「銀の布」の話題になる。ローゼマインはマティアス達から「魔力を受け付けない布」だと聞かされていたが、詳細はボニファティウスから直接説明されることになっていた。

ボニファティウスは、銀の布が単に魔力の少ない布ではなく、「全く魔力を含まない素材」で作られていると説明する。ユルゲンシュミットの素材は普通なら多少なりとも魔力を含んでいるため、これは極めて異常な物だった。

さらに、この布は魔力を一切受け付けないため、シュタープを変形させた武器でも傷一つ付けられなかった。ボニファティウスが実演した結果、下敷きの板は割れても布には穴一つ開かなかったのである。

境界結界を抜ける布

この性質から、銀の布をまとえば領地境界の結界を感知されずに抜けられることが判明していた。実験では、布で包んだボニファティウスの指を結界へ通しても、ジルヴェスターは全く感知できなかったのである。

つまり、前ギーベ・ゲルラッハが領地外へ逃亡したのは、この布を利用した可能性が極めて高いということになる。

ただし、転移陣には利用できなかった。銀の布で包んだ物は「存在を感知できない」ため、転移陣自体が起動しなかったのである。

前ギーベ・ゲルラッハ逃亡の推測

銀の布はゲルラッハの夏の館にある隠し部屋で見つかっていた。そこには何かを燃やした痕跡も残っており、マティアスは「父は証拠隠滅のため転移陣を燃やす癖がある」と証言する。

騎士団は、転移陣を利用した後に燃やした可能性が高いと考えていた。また、本来なら完全に痕跡を消したはずだが、マティアスが処刑されず捜査協力するとは想定していなかったため、隠し部屋の調査が行われるとは思っていなかったらしい。

ボニファティウスは、名捧げによってマティアス達がローゼマインへ従い、捜査へ協力したからこそ重要証拠を得られたと評価した。

名捧げへの厳しい指摘

しかし、その流れからボニファティウスはローゼマインへ厳しい忠告を行う。

ローゼマインは、犯罪へ関与していないマティアス達を救いたい一心で、連座回避手段として名捧げを提案した。しかしボニファティウスは、本来神聖であるべき名捧げが「犯罪者の身内が延命するための制度」として使われ始めたことへ強い危機感を抱いていた。

このまま広まれば、他領でも「連座回避のための名捧げ」が行われるようになり、本来の意味で名を捧げる者が減る可能性があるという。ローゼマインは、自分の行動がそこまで大きな影響を与えるとは考えておらず、大きな衝撃を受けた。

ボニファティウスは、命を救いたいという優しさ自体は否定しなかった。しかし、ローゼマインほどの立場の者が新しい慣習を作れば、その影響は領地全体へ及ぶのだと諭した。

さらに、ジルヴェスターは「悪評が増えたら自分が背負う」と言って許可を出していたことも明かされる。ローゼマインは、自分が養父へそこまで負担をかけていた事実を初めて知った。

御加護再取得の成果

重い空気の中、儀式を終えたジルヴェスターが戻って来る。彼は二十一の御加護を得て、さらに全属性になったと誇らしげに宣言した。

命の属性まで得たことで、今後は祈りと魔力供給を継続すれば、領主一族全員が全属性へ到達できる可能性も示唆される。

その後、ローゼマインは銀の布について「他国由来の素材ではないか」と推測した。キルンベルガで聞いた話から、魔石不足に悩む他国が魔力を含まない素材を開発した可能性を考えたのである。

前ギーベ・ゲルラッハがアーレンスバッハへ逃げ込んだ可能性も高いため、フェルディナンドへ情報共有する必要があると判断される。

フェルディナンド不在の現実

しかし、ジルヴェスターはここで重大な事実を告げた。アウブ・アーレンスバッハが死亡し、ディートリンデが礎を染め始めたため、フェルディナンドとの星結びの儀式は一年延期になったのである。

ローゼマインは、少なくともその間はフェルディナンドがエーレンフェストへ戻れるのではないかと期待した。しかし、婚約解消されていない以上、それはあり得ないと否定される。

さらに、フェルディナンドの館や荷物をローゼマインが管理し続けていることが問題視され始めていた。既に「後見人と被後見人」という関係は終わったと周囲から見なされており、貴族社会では「踏み込みすぎ」だと認識されているのである。

恋情の噂

ジルヴェスターは、ローゼマインがフェルディナンドへ恋情を抱いているという噂まで流れていると打ち明けた。

しかしローゼマイン本人にその自覚は全くなく、フェルディナンドは「保護者であり師匠であり主治医」という認識だった。彼女にとっては家族同然であり、恋愛対象ではなかったのである。

それでも周囲から見れば、フェルディナンドを心配し続ける姿は「婚約者ヴィルフリートより他の男性を優先している」ように映っていた。

ローゼマインは、ヴィルフリートには家族も側近もいる一方、フェルディナンドは敵地同然のアーレンスバッハで孤立しているため、心配の度合いが違うだけだと説明する。しかし、その価値観自体が周囲とは大きくずれていた。

フェルディナンドからの自立

ジルヴェスターは、フェルディナンドがもう後見人ではなく、他領の人間になったという現実を受け入れろとローゼマインへ告げる。

これまでフェルディナンドが守り、方向を示し続けていたため、彼がいなくなった今、ローゼマインは周囲との認識齟齬や孤立を強く感じていた。ジルヴェスター自身も同じ状況に直面していると語る。

そしてローゼマインへ、「ヴィルフリートとの関係を深めろ」と命じた。フェルディナンドへ甘えるのではなく、婚約者と支え合う立場へ移行しなければならないのである。

ローゼマインは戸惑いながらも、その現実を少しずつ受け入れ始めていた。

領主会議の星結び

領主会議への出発準備

ローゼマインは神殿で、領主会議へ持ち込む儀式用衣装や聖典などの確認を行っていた。神官長として同行するハルトムートは準備完了を報告し、クラリッサも翻訳作業用の大量の文具を用意していた。

今回の領主会議には成人のみが同行するため、ローゼマインの側近も限られていた。側仕えはオティーリエとリーゼレータ、文官はハルトムートとクラリッサ、護衛騎士はコルネリウス、レオノーレ、アンゲリカ、ダームエルである。

ローゼマインは留守番となる未成年組へ役割を指示した。フィリーネとローデリヒには神殿運営の補助を、マティアスとラウレンツには神殿での鍛錬補助を頼む。さらに、旧ヴェローニカ派の名捧げ組へ辛く当たる貴族がいるため、グレーティアを守る目的でユーディットを城へ残す判断を下した。

その中で、銀の布への対策訓練も始まっていることが語られた。騎士達はシュタープではなく通常武器を携帯するよう命じられており、銀の布の脅威が現実的な問題として扱われていた。

ヴィルフリートとのぎこちない会話

出発直前、ローゼマインはヴィルフリートへ声をかけた。ジルヴェスターから関係改善を促されていたため、フェルディナンドへ行っていたような生活確認のオルドナンツをヴィルフリートへ送っていたのである。

しかしヴィルフリートは、毎日仕事や食事内容を確認されることに辟易しており、領主会議の間だけは解放されると安堵していた。ローゼマインは善意で行っていたものの、効果は芳しくなかった。

さらにローゼマインが御加護再取得について触れると、ヴィルフリートはシャルロッテやメルヒオールを見ながら意味深な笑みを浮かべた。ローゼマインはその反応に違和感を抱きつつ、転移陣へ向かう。

大人達の領主会議準備

貴族院へ到着したローゼマインは、多目的ホールでエルヴィーラ達と印刷事業やフェルネスティーネ物語第三巻について話し合った。グレッシェルでも印刷が進み、領主会議で見本を披露できる状態まで準備が整っていた。

その後、領主夫妻が到着し、初日に行われる星結びの儀式について確認が行われる。ローゼマインは王族から神事と地下書庫作業を命じられており、周囲も強い緊張感を抱いていた。

一方で、騎士達は比較的手が空いていたため、ローゼマインは貴族院の採集場所へ行くことを提案する。彼女の祝福を受けた採集場所は豊かな素材と強力な魔獣に満ちており、アンゲリカ達は大喜びで向かった。

星結びの儀式前夜

夕食では、アンゲリカ達が採集場所の異常な豊かさについて興奮気味に語った。レオノーレは地下書庫護衛のため同行できなかったが、コルネリウスへ土産を期待して微笑むなど、以前より自然な親密さを見せていた。

夜、ローゼマインはオティーリエと共に今後の側仕え事情について相談する。粛清と人員不足により、成人済みの上級側仕え確保が難しくなっており、将来的な不安が語られた。

中央神殿との対立

翌朝、ローゼマインは神殿長の儀式服へ着替え、講堂へ向かった。そこでは中央神殿の神官長イマヌエルが待ち構えており、古い星結びの儀式では神殿長が闇のマントと光の冠をまとわなければならないと主張する。

エーレンフェスト式には存在しない作法だったが、イマヌエルは古文書を根拠に譲らなかった。さらに、その文献を読む資格があるか試すような態度を取り、ローゼマインを挑発する。

ローゼマインは即座にシュタープから闇のマントと光の冠を生成し、周囲を驚愕させた。そして文献を受け取り、地下書庫の石板と酷似した古文書を読み始める。そこには確かに古い星結びの儀式が記されていた。

その後、アナスタージウスが到着し、王族側も古い儀式で進めることを決定した。ローゼマインは、王族と中央神殿の間で調整不足が起きている現状へ呆れながらも、儀式へ臨むことになる。

古い星結びの儀式

儀式が始まると、ローゼマインは神話を語りながら進行した。途中で闇のマントと光の冠をまとい直し、新郎新婦達へ祝福を与える段階へ入る。

すると祈りに応じて神具が自動的に反応し、闇のマントは夜空へ変化し、光の冠は太陽のように輝き始めた。講堂全体が神話世界のような光景に包まれ、闇と光の柱が立ち上がる。

やがて光が弾け、祝福の粒となって新郎新婦へ降り注いだ。その神々しい現象に、会場中が言葉を失う。ローゼマイン自身は貴族院で慣れているため冷静だったが、周囲にとっては常識外れの神事だった。

中央神殿からの接触

儀式終了後、ハルトムートは危険を察知し、ローゼマインを急いで寮へ戻そうとした。中央神殿のイマヌエルが、ローゼマインを中央神殿へ取り込みたがっていると警戒していたのである。

実際、イマヌエルは途中でローゼマイン達の前へ現れ、中央神殿にはまだ多くの古文書があるため読みに来てほしいと勧誘した。さらに、真のツェントを得るためにはローゼマインの魔力が必要だと語り、中央神殿への協力を強く求める。

ローゼマインは体調不良を理由に断り、正式な話はアウブ・エーレンフェストを通すよう返答した。しかしイマヌエルはなおも接触しようとし、手を伸ばす。

その瞬間、アンゲリカがシュティンルークを抜き、「許可なくローゼマイン様に触れたら即刻その手を切り落とす」と警告した。イマヌエルは息を呑み、ローゼマイン達はそのまま包囲を突破して寮へ戻ることに成功した。

地下書庫での作業

儀式後の混乱

星結びの儀式終了後、ジルヴェスター達は他領地の貴族達から質問攻めに遭っていた。ローゼマイン達が突然姿を消し、詳細説明もないまま異常な神事だけが行われたため、エーレンフェスト側も混乱していたのである。

ローゼマインは、多目的ホールへ集められた大人達へ事情を説明した。古い儀式は中央神殿で見つかった文献に基づくものであり、中央神殿側は魔力不足で再現できなかったため、自分へ依頼が来たのだと説明する。さらに、実行を最終決定したのは王族であると強調し、質問は王族へ回すべきだと主張した。

また、儀式で起きた現象自体は、領地対抗戦でダンケルフェルガーが光の柱を立てた時と同じく、神具による魔力奉納儀式だったと整理する。ジルヴェスターもその説明である程度納得した。

中央神殿への警戒

その後、ハルトムートが中央神殿への警戒を強く訴えた。イマヌエルは常識が通じず、真のツェントを得るためならば手段を選ばない危険人物だという。

中央神殿は、古い儀式を再現できる魔力を持つローゼマインを欲しており、場合によっては王族と利害が一致して奪われる危険すらあると警告する。ハルトムートは、場合によっては王族から命じられた図書館作業を断ることまで提案した。

周囲の大人達は王命拒否へ動揺したが、ジルヴェスターは、いざとなればフェルディナンドを奪われた件を持ち出して抗議すると宣言する。ローゼマインの安全を守る姿勢を明確にしたのである。

クラリッサ達の熱狂

昼食では、クラリッサが星結びの儀式を熱狂的に称賛し続けていた。青色神官達に囲まれて歩くローゼマインの姿や、神々しい祈りの様子を延々と語り続け、ハルトムートも同調して盛り上がる。

しかし、神話由来の比喩表現が多すぎて、当のローゼマイン本人には内容がよく理解できなかった。オティーリエも途中で制止を諦め、ローゼマインは食事を優先するようクラリッサへ注意する。

午後の会議では、他領からの質問を「古い儀式の再現を王族に頼まれた」「ダンケルフェルガーの儀式と同じ」「詳細は王族へ」という三点だけで受け流す方針が成功した。

地下書庫への移動

翌日、ローゼマインは地下書庫での作業へ向かう。護衛騎士達は図書館内外での警戒体制を確認し、アンゲリカとダームエルは外部警戒へ回された。

図書館へ到着すると、シュバルツとヴァイスがローゼマインを「ひめさま」と呼びながら迎え、魔力供給を求める。オティーリエ達はその光景へ驚いていた。

執務室には、アナスタージウス、エグランティーヌ、ヒルデブラント、ハンネローレ、そして初対面となるツェント第三夫人マグダレーナがいた。マグダレーナはダンケルフェルガー出身で、古代語に通じているため現代語訳へ参加することになっていた。

地下書庫への入室

地下書庫へ移動し、ローゼマイン達は鍵を用いて封印を解除する。複雑な魔力模様が浮かび上がり、透明な壁で隔てられた地下書庫が姿を現した。

ローゼマインが最初に中へ入り、その後ヒルデブラントも入室を試みる。以前は拒まれていたが、今回は問題なく通過できた。

ヒルデブラントは、役に立つために魔力圧縮を続け、古代語も学び始めていた。マグダレーナも同様に古代語を学び直していたことが判明する。

さらに、御加護再取得によってアナスタージウスとエグランティーヌも全属性となっていた。祈りと魔力供給を意識した結果、新たな御加護を得たのである。

古文書解読作業

地下書庫では、ローゼマイン、ハンネローレ、マグダレーナが現代語訳を担当し、アナスタージウス達は古代語をそのまま筆写する形で作業が進められた。

午前中の作業を終えると、未成年が領主会議中に歩き回る姿を避けるため、その場で昼食を摂ることになる。マグダレーナは、自分が不用意に表へ出ると政治的な噂を呼ぶ可能性があると語った。

ダンケルフェルガー出身である彼女は、第一夫人より格上の領地出身という理由だけで支持勢力を生みかねず、普段は表舞台へ出ないよう配慮していたのである。

星結びの儀式の真相

昼食中、マグダレーナ達は前日の儀式について話題にした。ヒルデブラントは、講堂に夜空が現れ光の柱が立つ光景を父から聞き、強い憧れを抱いていた。ハンネローレも、兄がその光景を絵に描こうとしていると語る。

さらに、マグダレーナは重要な情報を口にした。ローゼマインの祝福後、新郎新婦の舞台に次期ツェント選別の魔法陣が浮かび上がっていたというのである。

ローゼマイン本人は祈りに集中していたため、その事実を全く知らなかった。これにより、アナスタージウスが「想像以上に良い結果」と語っていた意味と、中央神殿が古い儀式へ執着する理由を理解する。

ディートリンデ来訪

午後の作業中、ダームエルからのオルドナンツによって、ディートリンデが図書館へ来たことが知らされる。

レオノーレは、成人式で魔法陣を光らせたディートリンデが、ツェントに必要な知識を求めて地下書庫を目指した可能性を指摘した。

しかしマグダレーナは、地下書庫の存在を知る者は少ないはずだと驚く。ローゼマインは、昔は王族や領主候補生が普通に出入りしていた場所であり、情報を知る者がいても不自然ではないと説明した。

その後、マグダレーナは意味深な笑みを浮かべ、次期ツェント候補を名乗るディートリンデと直接話してみたいと申し出る。そして、ローゼマイン達へは地下書庫で作業を続けるよう指示した。

次期ツェント候補

閉架書庫への避難

ディートリンデ来訪を受け、マグダレーナは地下書庫より閉架書庫へ隠れる案を受け入れた。未成年であるローゼマイン達が王族の作業を手伝っている姿を見られない方が良いという、ハンネローレの指摘を考慮したためである。

ソランジュからも、ディートリンデの入館登録を行うため時間稼ぎをするので、その間に閉架書庫へ隠れるよう連絡が届く。ローゼマイン達は急いで地下書庫を離れ、閉架書庫へ移動した。

一方でマグダレーナは、自身がその場に残ると決める。ディートリンデが誰から地下書庫の情報を得たのか調べる必要があると考えたためである。

閉架書庫での潜伏

閉架書庫では、コルネリウスが本棚の位置を確認しながら隠れ場所を指示した。ヒルデブラントとハンネローレは奥側へ、ローゼマイン達は手前側の本棚裏へ隠れる。

しかし、ディートリンデがなかなか現れず、ローゼマインは目の前に未読本が大量にあるのに読めない状況へ強い苦痛を感じていた。静かにしているから本を読ませてほしいと考えるものの、当然許されるはずもなく、必死に耐える。

ディートリンデの来訪理由

やがて閉架書庫へディートリンデが到着し、ソランジュとの会話が始まった。

ディートリンデは、差出人不明の手紙によって地下書庫の存在を知ったと語る。その手紙には、ツェントになるために必要な知識が図書館に眠っていると書かれており、彼女は「神々からの導き」だと信じて訪れたのである。

ローゼマインは、差出人不明の怪しい手紙を信じて行動する迂闊さへ衝撃を受ける。しかし同時に、その直感だけで正解へ辿り着いていることにも驚いていた。

さらにディートリンデは、星結びの儀式でジギスヴァルトの魔法陣が光ったことを踏まえ、自分も次期ツェント候補として遅れを取るわけにはいかないと語る。グルトリスハイトを持たない現王族は真の王族ではなく、自分こそ神々に選ばれた真のツェントになるのだと高笑いした。

その危うい発言に、ローゼマインはフェルディナンドまで不敬罪へ巻き込まれかねないと危機感を抱く。

オルタンシアの暗号めいた会話

その後、オルタンシアが突然「シュラートラウムの花」についてディートリンデへ尋ねた。ディートリンデ本人は知らなかったが、オルタンシアは「ゲオルギーネへ聞けばわかる」と意味深に告げる。

ローゼマインは、この会話が単なる雑談ではなく、何らかの暗号や情報伝達だと直感した。オルタンシアの夫が中央騎士団長ラオブルートであることもあり、ゲオルギーネとラオブルートの名前が同時に出たことへ強い不穏さを感じる。

しかし、フェルディナンドへ直接相談するべきか迷っていた。接触を控えるよう命じられた直後であり、下手に動けば問題になる可能性があるためである。

図書館裏への脱出

ディートリンデ達が去った後、ソランジュは非常口のような通路からローゼマイン達を図書館裏へ避難させた。そこは昔、司書達の休憩場所だったらしい庭であり、今は草に埋もれていた。

しかし、ディートリンデが帰るまでただ待機するのも難しい。レオノーレは、閲覧室から見えないよう森へ移動するべきだと提案する。

ローゼマインは「丈夫になった」と反論したが、オティーリエやヒルデブラント達は体調悪化を恐れ、一人用騎獣へ乗るよう勧めた。結果、ローゼマインだけ騎獣に乗ったまま森へ移動することになる。

森での会話

春の貴族院の森は、美しい緑と花々に包まれていた。雪景色しか知らなかったローゼマインやハンネローレは、その鮮やかな景色へ感嘆する。

移動中、ハンネローレは『フェルネスティーネ物語』第二巻の感想を熱心に語った。絶望的な展開で終わったことへ強い不安を抱えていたが、ヒルデブラントは「王子は必ずフェルネスティーネを助ける」と断言する。

ローゼマインは第三巻を持参していることを明かし、二人を喜ばせた。

森の奥の白い建物

その後、アンゲリカが森の奥で小さな白い建物を発見する。長年使われた形跡がなく、森に埋もれるように存在していた。

ローゼマインは、その建物が神を祀る祠ではないかと推測する。扉脇の石像配置が神殿入口と似ていたためである。

汚れた祠を放置できず、ローゼマインはクラリッサ製の広域魔術補助魔法陣を使用し、「ヴァッシェン」で建物全体を丸洗いした。周囲は建物規模への広域洗浄に驚愕するが、ローゼマイン本人はフェルディナンドの大規模洗浄を見慣れていたため、比較的普通の感覚で行っていた。

火の神ライデンシャフトの祠

休憩しようと扉へ手を付いた瞬間、ローゼマインは突然祠の内部へ吸い込まれた。そこには火の神ライデンシャフトと、その眷属神達の像が並んでいた。

ローゼマインは「人並みに成長できますように」と祈りを捧げる。その祈りによって、ライデンシャフトの持つ青い石板へ魔力が吸い込まれた。

石板には「其方を認め、メスティオノーラの書を手に入れるための言葉を与える」と刻まれていた。しかし途中で文字が隠れており、ローゼマインは石板を手に取る。

すると石板は体内へ吸収され、シュタープと同化した。同時にライデンシャフトから与えられた言葉「クレフタルク」が脳裏へ刻み込まれる。

グルトリスハイトへの葛藤

次の瞬間、ローゼマインは祠の外へ戻っていた。周囲は全く時間経過に気付いておらず、祠の内部体験だけが異質だった。

ローゼマインは、「メスティオノーラの書」が実質的にグルトリスハイトを意味すると理解する。本を読みたい欲求は極めて強かったが、王族以外がグルトリスハイトを得れば危険視される現実も理解していた。

フェルディナンドが危険視されアーレンスバッハへ送られた事例を思い出し、自分も同じ立場になれば最悪殺される可能性すらあると考える。

しかし同時に、王族が求める情報でもある以上、黙って良いのか迷っていた。相談相手を思い浮かべても、今は誰にも簡単に話せない状況だった。

青い光と帰還命令

考え込んでいると、ローゼマインには祠の屋根から伸びる青い光の線が見えた。しかし周囲の誰にもその光は見えていなかった。

その時、マグダレーナから地下書庫へ戻るようオルドナンツが届く。ローゼマインは、誰にも祠での出来事を打ち明けられないまま、その場を後にするのだった。

祠の場所

地下書庫への帰還

地下書庫へ戻ると、側仕え達がお茶を用意して待っていた。森を歩き回った後だったため、ローゼマインは喉を潤しながら外での出来事を振り返る。

ヒルデブラントは、図書館裏の森で見つけた祠について母マグダレーナへ報告した。ローゼマインが神殿入口に似ていると指摘したことで、祠だと判断したのである。

マグダレーナは、貴族院の神事に大きな意味がある以上、祠にも重要な役割があるはずだと考え込む。ローゼマインは内心で「非常に大きな意味がある」と確信していたが、祠内部で起きた出来事については口を閉ざした。

さらにローゼマインは、宝盗りディッター中に壊された別の祠の話を持ち出し、貴族院には他にも祠が点在している可能性を示唆する。ハンネローレもすぐにその意図を理解した。

ディートリンデへの不安

その後、マグダレーナへディートリンデとの会話内容を尋ねるが、彼女は「非常に個性的だった」とだけ述べ、話題を打ち切った。

ローゼマインは、その態度からディートリンデが王族へ相当危険な発言をしたのだと察する。もし王族相手に閉架書庫で語っていたような「自分こそ真のツェント」という態度を見せたなら、婚約者であるフェルディナンドまで不敬罪へ巻き込まれかねない。

その不安から、ローゼマインは考えを変え始める。もし自分がグルトリスハイトを手に入れていれば、最悪の場合でも「グルトリスハイトを渡す代わりにフェルディナンドを助けてほしい」と交渉できるかもしれないと考えたのである。

メスティオノーラの書が本当にグルトリスハイトなのかは不明だったが、少なくとも無関係ではないと判断し、秘密裏に探す決意を固める。

祠の地図の発見

地下書庫へ入ると、シュバルツが「祈りが足りない」と告げた。ローゼマインは、祈りを捧げる祠の位置を示した地図がないか何気なく尋ねる。

するとシュバルツは大量の白い石板を取り出した。そこには祠の位置を示す地図が記されていたのである。

ローゼマインは急いで地図を書き写す。しかし地図は簡略化されすぎており、各領地の寮や目印がなく、実際の位置把握は難しかった。そのため、寮にあるディッター用地図と照合する必要があると判断する。

そこへジルヴェスターが迎えに現れ、集中しすぎて周囲の声が聞こえていなかったローゼマインを呆れながら急かした。

ジルヴェスターのエスコート

地下書庫は巨大な魔術具同然であり、妊娠中のフロレンツィアを入れる危険は避けたい。そのため、ローゼマインの迎えは毎日ジルヴェスター自身が行うことになっていた。

ジルヴェスターは自然にローゼマインへ手を差し出し、エスコートを始める。ローゼマインは、日常的に女性を丁寧に扱う養父へ驚いていた。

フェルディナンドやヴィルフリートからは、宴会時以外でこのような扱いを受けたことがほとんどなかったためである。フェルディナンドは歩く速度を多少調整してくれる程度であり、ヴィルフリートも講義用荷物を運んでくれた程度だった。

ジルヴェスターは、弟フェルディナンドの日常的な女性対応がここまで雑だったことへ逆に驚いていた。ローゼマインは「親しくなるほど扱いが雑になる」と評し、ジルヴェスターは複雑そうな笑みを浮かべる。

中央神殿への危機感

歩きながら、ローゼマインは星結びの儀式で浮かび上がった魔法陣が「次期ツェント候補選別」のための物だったと報告する。

それにより、中央神殿が古い儀式復活へ執着する理由も理解できたと説明した。古い儀式を再現できる神殿長として、自分へ今後さらに干渉が増えるだろうと警戒を示す。

ジルヴェスターは、ローゼマインとヴィルフリートの婚約には王命承認があるため、自分は解消するつもりがないと明言した。

しかしローゼマインは、自分が本当にグルトリスハイトへ辿り着いた場合、周囲がどう動くのかまでは相談できなかった。フェルディナンドを助ける切り札として使いたい思いと、危険視されたくない思いが衝突していたのである。

また、閉架書庫での「シュラートラウムの花」の会話についても報告する。オルタンシアの夫である中央騎士団長ラオブルートと、ゲオルギーネが繋がっている可能性を示唆した。

銀の布について王族へ報告する際は、ラオブルートを同席させない方法を考えるべきだとも警告する。ジルヴェスターは難しい表情でその話を聞いていた。

祠の配置の法則

寮へ戻ったローゼマインは、騎士コース教材に含まれる古いディッター用地図を持ち出し、地下書庫で写した祠の地図と照合を始めた。

レオノーレと共に確認した結果、今日訪れた祠と同じ大きな印が、中央棟を中心にほぼ等間隔で六つ配置されていることが判明する。

さらに、小さな印は貴族院全域へ散らばっていた。ローゼマインは、この配置に何らかの重要な意味があると直感する。

しかし、領主会議中に未成年が自由に貴族院を歩き回るのは不自然であり、祠巡りをしたいとはとても言い出せなかった。

王族との共有

翌日、地下書庫でローゼマインは祠地図の分析結果をアナスタージウス達へ報告する。マグダレーナは既に王宮図書館へも調査依頼を出していた。

アナスタージウスは実際に祠を確認したいと考え、マグダレーナやヒルデブラント達と共に視察へ向かう。ローゼマインとハンネローレは地下書庫へ残り、二人きりで現代語訳作業を続けた。

ハンネローレは昨夜『フェルネスティーネ物語』第三巻を読み進め、王子がフェルネスティーネを助けに現れた場面まで読んで安心して眠れたと嬉しそうに語る。

その後、祠視察から戻ったエグランティーヌは、顔色を悪くしながらローゼマインへ「相談したいことがある」と切り出すのだった。

相談

エグランティーヌからの招待

エグランティーヌは、地下書庫では話せない重要な相談があるとして、ローゼマインを離宮でのお茶会へ招待した。かなり切迫した様子であり、できれば翌日中に話したいという。

しかしアナスタージウスは、ローゼマインが関わる以上、自分も事情を把握する必要があるとして同席を強く主張した。一方、エグランティーヌは「ローゼマインと二人で話したい」と譲らず、二人の間で激しい応酬が始まる。

ローゼマイン自身はどちらでも構わなかったが、後から王子に睨まれるのだけは避けたいと思っていた。また、エグランティーヌの顔色が悪いことを心配していた。

マグダレーナの仲裁

この険悪な空気を収めたのはマグダレーナだった。彼女は二人の前へ進み出ると、まずアナスタージウスへ「何故土の女神ゲドゥルリーヒが周囲へ救いを求め、命の神エーヴィリーベから距離を取ったのか理解していないのか」と神話を引用しながら叱責する。

さらに、女性同士でしか話せない内容もあるのだから、夫としてその気持ちを理解するべきだと諭した。命の神のように束縛しすぎれば嫌われる、とまで言われ、アナスタージウスは沈黙する。

続いてマグダレーナはエグランティーヌへも苦言を呈した。王族との会談は、当人だけでなく側近や領地にも大きな負担をかけるものであり、事前調整なく急に誘えば混乱を招くと指摘する。

エグランティーヌは、自分が体調不良で気が回らなくなっていたことを認め、ローゼマインへ謝罪した。相談は後日へ延期されることになる。

ジルヴェスターの不安

寮へ戻る途中、ローゼマインはジルヴェスターへエグランティーヌからの招待予定を報告した。するとジルヴェスターは露骨に顔を引きつらせる。

何故アウブではなく未成年のローゼマインへ王族が直接相談を持ち込むのか理解できず、強い不安を覚えていたのである。図書館で済ませられない時点で、面倒事の気配しかしないと警戒していた。

ローゼマインは、神事関連の質問ではないかと推測する。中央神殿と王族の関係が悪い以上、神殿知識を持つ自分が最も相談しやすいのだろうと説明した。

結局、アナスタージウスが「妻に嫌われるよりは」と折れたことで、二日後にエグランティーヌとの二人きりのお茶会が正式決定した。

祠探索の準備

ローゼマインは、領主会議中に自由行動できる時間がないことを痛感していた。しかし祠巡りを諦めたわけではない。

そこで、地下書庫へ入れないアンゲリカとダームエルへ、祠探しを依頼する。二人は図書館周辺の警戒任務をしているため、その合間に地図を頼りに祠を探索できると考えたのである。

ローゼマインは「祠を清める」と説明し、以前クラリッサが研究した広域魔術補助魔法陣が洗浄に非常に役立ったことを伝えた。クラリッサは、自分の研究成果がローゼマインの役に立ったことへ感激し、すぐに追加準備を申し出る。

ただし、王族の手伝い中に起きている出来事なので他言無用だと厳しく口止めされた。聞き耳を立てていたハルトムートも含め、全員が了承する。

エグランティーヌとの密談

二日後、ローゼマインはエグランティーヌの離宮を訪れた。人払いされた室内には二人だけが残り、さらに盗聴防止の魔術具まで使用される。

エグランティーヌは、祠へ入った時の出来事を語り始めた。ヒルデブラントの案内で祠へ行き、扉へ触れた瞬間、魔力を引き抜かれる感覚と共に祠内部へ引き込まれたという。

内部には火の神ライデンシャフトの像があり、彼女は自然と奉納舞を舞い始めていた。講堂で魔石を使って舞った時と同じように、魔力がどんどん吸い上げられていったのである。

やがてライデンシャフトの手に青い魔石が形成され始めた。しかし、どれだけ奉納しても「祈りが足りぬ」と示され続けたため、エグランティーヌは回復薬を使い切るまで奉納を続けた。

それでも魔石は未完成であり、魔力切れになった瞬間、祠の外へ弾き出されていたという。外では時間がほとんど経過しておらず、アナスタージウス達も中へ入れなかった。

シュタープ取得時期の重要性

エグランティーヌは、自分だけが祠へ入れた理由がわからず、ローゼマインへ問いかけた。

ローゼマインは即座に「シュタープです」と答える。地下書庫の石板には、大きな祠と小さな祠の役割が記されていたのである。

小さい祠では眷属神へ祈りを捧げ、属性強化用の魔石を得る。それら全てを集めて御加護取得儀式を行い、大神の御加護を得た状態で「始まりの庭」でシュタープを取得した者だけが、真の次期ツェント候補になれるらしい。

エグランティーヌは、まさにその条件を満たしていた。最初から全属性だったため、卒業前に始まりの庭でシュタープを取得していたのである。

逆に、属性不足のままシュタープを取得したジギスヴァルトは、たとえ後から全属性になっても大神の祠へ入れない可能性が高かった。

ローゼマインは、ヒルデブラントならばまだ可能性があると説明する。卒業前までに属性強化と大神の御加護取得を済ませれば、次期ツェント候補になれるかもしれないのである。

エグランティーヌの苦悩

しかしエグランティーヌは浮かない顔をしていた。現在、王族はジギスヴァルトを次期ツェントとして押し立てる流れでまとまりつつある。そこへ自分やヒルデブラントが「真の候補」として現れれば、再び国内が荒れると恐れていたのである。

ローゼマインは、グルトリスハイト不在こそ混乱の根源なのだから、王族内から正当な継承者が出るなら混乱は最小限で済むと説得する。

一方で、ローゼマイン自身は別の計算をしていた。自分がグルトリスハイトへ最も近い場所にいると理解していたのである。祠へ入った時点で既に青い石板が完成していたことからも、それは明白だった。

しかし、それを王族へ明かすつもりはなかった。もし知られれば、ジギスヴァルトの正当性維持のため、自分が取り込まれるか、最悪の場合は殺される危険すらあるからである。

そのためローゼマインは、「地下書庫を調べれば、ジギスヴァルト王子がグルトリスハイトを得る方法も見つかるかもしれません」と、当たり障りのない言葉だけを返した。

大神の祠の位置特定

寮へ戻った後、アンゲリカとダームエルから報告が届く。地図に記されていた大神の祠の位置を、二人は全て特定し終えていたのである。

祠巡り

王族による祠巡りの強制

大神の祠の位置は判明したものの、地下書庫と寮を往復するだけのローゼマインには自由に祠を巡る時間がなかった。エグランティーヌへ相談する案も考えたが、決定打にはならず、悩みを抱えたまま地下書庫へ向かう。

すると、エグランティーヌがローゼマインを呼び止めた。今日は王族と一緒に祠へ向かい、広域魔術で祠を洗浄する様子を見せてほしいというのである。さらに「試してみてほしい」と続けたことで、ローゼマインは自分が祠へ入れるか確認する意図なのだと悟った。

ローゼマインは強い重苦しさを覚える。祠へ入れた事実を曖昧にしていたのに、王族は監視下で再確認する形へ持ち込んできたのである。

アナスタージウスとの対立

移動中、アナスタージウスは盗聴防止の魔術具を渡し、エグランティーヌへ隠し事をしたことを責めた。ローゼマインが祠へ入れることは明らかなのだから、何故黙っていたのか理解できないという態度だった。

しかしローゼマインにとっては、正直に話すこと自体が危険だった。祠へ入り、石板を得ているなどと告白すれば、不敬や反逆と見なされる可能性があったのである。

さらにローゼマインは、もし自分が祠へ入れると確認された後、王族がどう動くのかも理解していた。王命によってジギスヴァルトの第三夫人として中央へ取り込まれる未来が現実味を帯びていたのである。

アナスタージウスは、エグランティーヌの不安を消し、中央の争いを防ぐことが最優先だと断言する。エーレンフェストの事情やローゼマイン自身の希望は、その優先順位の下に置かれていた。

ローゼマインは、今まで王族へ多くの協力をしてきたにもかかわらず、自分の気持ちは全く考慮されていないことへ強い苦味を覚えていた。

闇の祠

最初に訪れたのは闇の神の祠だった。ローゼマインが広域ヴァッシェンで祠を洗浄すると、一瞬で白く輝きを取り戻し、周囲はその規模に驚愕する。

ローゼマインが扉へ触れると、再び祠の内部へ吸い込まれた。中央には星空のようなマントをまとった闇の神シックザントラハトの像があり、黒い石板が完成済みの状態で置かれている。

ローゼマインは、強引な王族から距離を取れますようにと半ば怒り交じりに祈りを捧げた。その後、石板へ記された「其方に与えられし、我が名を唱えよ」という文に従い、実技で得た神名を唱える。

すると石板が魔力を吸収し、「ヴィレデアール」という言葉を授けた。さらに、全ての神々から言葉を得よと告げられる。

祠を出ると、空には黒い線が追加されていた。しかしその光はローゼマインにしか見えていないようだった。

王族による要求

祠を出た後、アナスタージウスはついに本音を告げた。ローゼマインにはジギスヴァルトの第三夫人として中央へ来てもらう、と断言したのである。

それが「全てを丸く収める方法」だという。エグランティーヌを争いの中心へ置かずに済み、王族はグルトリスハイト取得者を確保できるからである。

しかしローゼマインは当然拒絶した。女神の本を読むこと自体には興味があるが、ジギスヴァルトの第三夫人になる気など全くないと明言する。

エグランティーヌは、中央の混乱を防ぐためには仕方ないという立場を崩さなかった。ローゼマインの意思やエーレンフェストの事情は、中央の安定より優先順位が低いのである。

フェルディナンド救出の条件

ローゼマインは、せめてフェルディナンドをディートリンデの連座から外してほしいと訴える。だがアナスタージウスは、正式に夫婦になれば連座は避けられないと冷酷に返した。

さらに、フェルディナンドをエーレンフェストへ戻したければ、一年以内にグルトリスハイトを手に入れろと挑発する。

現在のアーレンスバッハは、実質的にフェルディナンド一人が支えている状態であり、グルトリスハイトを持つツェントが国境線や領地再編を行わない限り、彼を戻すことは不可能だという。

ローゼマインは、この言葉で完全に決意を固める。王族に利用されようとも、グルトリスハイトを交渉材料にしてでもフェルディナンドを救い出すと心に誓った。

風の祠

次に訪れたのは風の女神シュツェーリアの祠だった。黄色の石板も既に完成している。

ローゼマインは、フェルディナンドを救うためメスティオノーラの書を与えてほしいと祈りを捧げる。そして「タイディヒンダ」という新たな言葉を授かった。

空には黄色の線が追加され、複雑な模様が徐々に形成され始めていた。

命と土の祠

続いて到着した命の神エーヴィリーベの祠では、他と違って白い石板が未完成だった。ローゼマインは命属性への祈りが少なかったことを思い出す。

祈りを捧げると、石板へ大量の魔力が流れ込み、ようやく完成した。その結果、「ゲドゥルリーヒへ祈ることを許す」と告げられ、奥に隠されていた土の女神の祠が開かれる。

しかし、ゲドゥルリーヒは命の神とその眷属に守られており、直接近付けない構造になっていた。ローゼマインが困惑しながら祈りを捧げると、赤い石板だけがエーヴィリーベの手元へ移動する。

ローゼマインは白と赤、二枚の石板からそれぞれ「ナイグンシュ」「トレラカイト」という言葉を授かった。

光の祠

光の女神フェアシュプレーディの祠では、金色の石板が待っていた。ローゼマインは、フェルディナンドを助ける道を示してほしいと祈り、「アオストラーク」という言葉を得る。

この頃には、アナスタージウス自身も祠へ入ろうと試していたが、何度扉へ触れても拒絶され続けていた。

水の祠と最後の言葉

最後の祠は、水の女神フリュートレーネの祠だった。ローゼマインは、フェルディナンドへ降りかかる災難を押し流す力を求めて祈りを捧げる。

そこで与えられた言葉は、それまでと違っていた。「全ての神々より言葉を得た次期ツェント候補よ。メスティオノーラの書に手を伸ばせ」と告げられたのである。

最後の言葉「ロームベクーア」を得たローゼマインは、ついに全ての大神の祠を巡り終えた。

巨大魔法陣の出現

祠巡りを終えた後、ローゼマインは空へ向かってメスティオノーラの書を呼ぼうと試みる。しかし何も起きなかった。

その後、回復薬で魔力を整えている最中、ローゼマインは自分のシュタープが変化している感覚に気付く。祠で得た石板がシュタープと同化したことで、魔力操作が以前より遥かに楽になっていたのである。

エグランティーヌは、その変化によってジギスヴァルトにも希望が出たと喜んだ。しかしローゼマインは、そこへ至るまでには小祠巡り、大神の御加護、始まりの庭など、極めて長く不確定な工程が必要だと説明する。

そして騎獣で図書館へ戻る途中、ローゼマインは上空に広がる巨大な魔法陣を視認した。六つの祠を結ぶ色とりどりの光が、貴族院全体を覆うほど巨大な術式を形成していたのである。

その中心は中央棟最奥の祭壇だった。何が起ころうとしているのか理解できないまま、ローゼマインは得体の知れない恐怖を覚えるのだった。

地下書庫の更に奥

祠巡り後の異変

ローゼマインを地下書庫へ送り届けた後、アナスタージウスとエグランティーヌは王族へ報告するため離宮へ戻る予定だった。祠巡りの結果を受け、すぐにツェントやジギスヴァルトと話し合う必要が生じたのである。

ローゼマインが「今回の行動はアナスタージウス王子の独断なのか」と問うと、彼は完全な独断ではないが、多少先走っている自覚はあると認めた。その様子から、ローゼマインは王族側に何らかの焦りがあるのではないかと感じ取る。

地下書庫では、ヒルデブラントとマグダレーナが作業を続けていた。ハンネローレは休憩中で、穏やかな笑顔でローゼマインを迎える。

ヴァイスによる案内

その時、今まで壁際で静止していたヴァイスが突然動き出し、ローゼマインの右手を取った。そして「ひめさま、あんないする」と告げる。

ローゼマインは、祠巡りを終えた自分が案内される先は一つしかないと悟る。すなわち、メスティオノーラの書へ繋がる場所である。

さらにシュバルツも左手を取り、「しゃほんする」と告げた。周囲が困惑する中、アナスタージウスは緊張した表情で一度頷き、ローゼマインへ進む許可を与える。

隠された通路

シュバルツ達は、地下書庫の壁へローゼマインの手を触れさせた。すると魔法陣が浮かび上がり、壁の一部が開いて白い通路が現れる。

同時に、外から見えていた透明な壁は真っ白に変化し、外側の人々から内部が見えなくなった。ローゼマインは、シュバルツとヴァイスに導かれながら、その白い通路を進んでいく。

通路の先には、複雑な魔法陣で厳重に封印された扉があった。ローゼマインは緊張と興奮を抱えながら、その扉へ手を伸ばす。

王族登録という壁

しかし、扉へ触れた瞬間、強い静電気のような反発が走り、ローゼマインは弾き飛ばされた。

シュバルツとヴァイスは、「おうぞくとうろく」「このさき、はいれない」と告げる。つまり、奥へ進むには「王族登録」が必要だったのである。

ローゼマインは血の気が引く。祠を巡り、大神の石板を全て集めたことで、この先も当然進めると思い込んでいた。しかし実際には、王族登録がなければメスティオノーラの書の保管場所へすら辿り着けなかった。

しかも、王族登録を行う方法は実質的にジギスヴァルトの第三夫人になる以外にない。成人後の星結びを待つなら最低でも三年必要であり、一年後のフェルディナンドの星結びには間に合わなかった。

扉への激昂

絶望したローゼマインは、扉を叩きながら「開けて」と叫ぶ。しかし、叩く度に強烈な反撃が返り、手には火傷のような痕が残っていく。

怒りと焦燥に駆られたローゼマインは、「入れてよ!」と感情のまま拳で魔法陣を殴りつけた。すると防御魔法陣とローゼマインの魔力が激しく衝突し、フェルディナンドから渡されていたお守りが次々と砕け散る。

シュバルツとヴァイスはローゼマインを危険人物と判断し、攻撃態勢へ移行しかけた。ローゼマインは慌てて手を引き、「もう戻ります」と呟きながら通路を引き返す。

フェルディナンドへの想い

通路を戻った後も、ローゼマインは納得できなかった。グルトリスハイトを得られなければ、フェルディナンドを救えない可能性が高いからである。

書庫へ戻ると、アナスタージウスが単独で中へ入り、ローゼマインへ状況を確認する。ローゼマインは「王族登録がなければ奥の扉は開かない」と説明した。

さらに、フェルディナンドがどうなるのかを問い詰める。ディートリンデの連座で処分されるのではないかと感情を爆発させた。

アナスタージウスは、「其方とフェルディナンドは家族でも婚約者でもない」と困惑したように返す。しかしローゼマインは、フェルディナンドは後見人であり、保護者であり、師匠であり、主治医であり、自分にとって家族同然だと強く言い返した。

感情が高ぶった瞬間、全身に付けたお守りが一斉に光り始める。威圧寸前まで膨れ上がった魔力を、ローゼマインは必死に圧縮して抑え込んだ。

アナスタージウスの謝罪

ローゼマインの反応を見たアナスタージウスは、自分が挑発しすぎたことを悟る。本来は、グルトリスハイト取得へ動かすために危機感を煽っただけだったのである。

彼は癒しをかけながら説明する。ディートリンデの処分は、アーレンスバッハが安定した後になる見込みであり、フェルディナンドもそれを理解した上で動いているはずだと語った。

さらに、ローゼマインをジギスヴァルトの第三夫人にする話も撤回すると明言する。王族登録が不可能な以上、グルトリスハイト取得者として囲い込む理由が薄れたためである。

ただし、その代わりに「其方はもう少し護衛を増やした方が良い」と警告を残した。ローゼマイン自身が危険視されていることを示唆する発言だった。

理不尽への理解

書庫の外へ戻ると、ハンネローレや側近達は何が起きたのか必死に尋ねる。しかしマグダレーナは軽く首を振り、軽率に話さないようローゼマインへ示唆した。

ローゼマインは「資格が足りなかった」とだけ答え、それ以上の説明を拒む。ヒルデブラントにも詳細を明かさず、アナスタージウスへ尋ねるよう促した。

この一日で、ローゼマインはフェルディナンドやジルヴェスターが繰り返し忠告していた「王族や上位領地へ関わるな」という意味を嫌というほど理解した。

友好的に接していても、立場が違えば優先順位も違う。理不尽を押し付けられたくなければ、拒絶できる力を持つか、視界に入らないようにするしかないのだと痛感する。

王族との距離

帰り際、ローゼマインはジルヴェスターへ「自分は危険なのか」と尋ねる。しかしジルヴェスターは後で話すと濁し、逆に「王族とそのような会話をする何かがあったのだな」と察していた。

ローゼマインは、今日一日で王族と関わる危険性を理解したと力なく呟く。するとジルヴェスターは、疲れ切った顔で「今更か。もはや手遅れだぞ」と返すのだった。

お手紙とお話

フェルディナンドからの手紙

夕食後、ジルヴェスターとローゼマインが寮へ戻ると、ヒルシュールが待っていた。彼女はフェルディナンドから預かった箱を届けに来たのである。

星結びの儀式は延期されたものの、フェルディナンドはまだエーレンフェスト籍であるため、貴族院への出入り自体は可能だった。箱の中には研究資料と手紙が入っており、ジルヴェスターでなければ開けられないよう細工されていた。

ヒルシュールは中身の研究資料を見た瞬間、夢中になって読み始める。その内容は図書館用魔術具の研究資料だった。資料整理用や検索用の魔術具を用途ごとに分離し、製作難易度を下げる研究である。

ローゼマインは、自分の図書館にも簡易版シュバルツ達を置ける可能性に大興奮する。しかしヒルシュールは「まず自分が読む」と譲らなかった。

代わりに、必要素材を書き出して領主会議終了までに届けると約束され、ローゼマインは冬に研究室へ籠もって魔術具を作れる未来へ胸を躍らせる。

検閲を前提とした返事

ローゼマインは自室の隠し部屋へ入り、フェルディナンドからの手紙を読む。手紙には、返事には検閲が入ると考えるよう注意書きがあった。

本文の冒頭では、「安否確認の手紙を書けと言ったのに、君からの便りが途絶えているのはどういうことだ」と早速小言を言われる。

ローゼマインは、ジルヴェスターから手紙や心配を控えるよう言われていた事情を書きつつ、不満や愚痴を紙へぶつける。ヴィルフリートを心配しろと言われたので実際に心配したら嫌がられたことまで書き連ね、かなり気が晴れていた。

もちろん、その内容は検閲向きではないため、最終的には簡略化した返事へ書き直す。

アーレンスバッハでの状況

手紙には、フェルディナンドが祈念式をアーレンスバッハでも行わせたことが書かれていた。レティーツィアは魔力回復薬だけで最後まで耐え、祈念式中に倒れることもなかったらしい。

それと比較され、ローゼマインは改めて自分の虚弱体質を痛感する。しかし同時に、自分は以前よりかなり丈夫になったと必死に主張した。

さらにフェルディナンドは、祈念式で得たヴェーリヌールの花を送ってきた。お守り作成に適した素材であり、壊れたお守りを補充するには絶好のタイミングだった。

その代わりとして、最高品質の魔紙三百枚以上や、各種最高品質素材を来年の領主会議までに準備するよう要求される。ローゼマインは要求量の多さに呆れつつも、最終的には「頑張って準備します」と返事を書く。

ただし、後半で「魚を土産にする」と書かれていた瞬間、ローゼマインは一気に機嫌を直した。食べたい魚料理を楽しそうに列挙しながら返事を書き進める。

中央神殿への圧力

しかし手紙後半には、極めて深刻な領主会議の状況が記されていた。

中央神殿は、ローゼマインを中央神殿長へ迎え入れたいと主張している。神事や古い儀式を各地へ広め、正しいツェント選出を復活させるためだという。

これに強く加勢しているのがゲオルギーネだった。フェルディナンドがアーレンスバッハで祈念式を実施し、御加護や収穫量増加の可能性を示したことで、「ローゼマインを中央神殿へ移せば全領地で同じことができる」と他領を煽っていたのである。

魔力不足に苦しむ領地が多い現在、この提案は非常に魅力的だった。そのためエーレンフェストは、ローゼマインを独占している領地として妬みと圧力を一身に受けていた。

フェルディナンドは、王族からの申し出を即断で拒否するのではなく、できるだけ時間を稼げと忠告する。また、必要ならば「ヴィルフリートを深く愛しているので婚約解消したくない」と恋愛物語のように訴えろとまで書いていた。

ローゼマインは、その助言に複雑な表情を浮かべる。そもそも恋愛経験が皆無であり、ヴィルフリートへの恋愛感情を演じられる気がしなかったのである。

発熱とクラリッサの意見

翌朝、ローゼマインは熱を出して倒れた。祠巡りで長時間外にいたことや、精神的疲労が原因だった。

寝込むローゼマインへ、クラリッサは「エーレンフェストからローゼマイン様を失うことはできない」と断言する。

しかしローゼマインが「もし自分が必要人材でなければどうするか」と尋ねると、クラリッサは他領視点から冷静な意見を述べた。

たった一人の領主候補生を差し出すだけで、王族と全領地へ恩を売れる最大の好機である。逆に独占し続ければ、全領地から恨みと妬みを買うことになるという。

ダンケルフェルガーにいた頃なら、自分も「エーレンフェストがローゼマインを独占するな」と考えただろうと、クラリッサは率直に語った。

次期ツェント候補の告白

夕方、熱が下がったローゼマインは、ジルヴェスターとフロレンツィアへフェルディナンドの手紙を見せた。ジルヴェスターは改めて、「婚約解消も中央神殿入りも認めるつもりはない」と明言する。

しかしローゼマインは、これから先はもっと深刻な状況になるかもしれないと考えた。そこで盗聴防止の魔術具を用意し、側近達を全員退出させる。

そして、ジルヴェスター、カルステッド、フロレンツィアへ向かって、自分は「次期ツェント候補」であると告白した。

突然の発言に、ジルヴェスターとカルステッドは絶叫する。ローゼマインは、祠巡りの結果、自分が最も次期ツェントに近い位置にいること、ただし王族登録がないため正式資格は得られないことを説明した。

さらに、王族は今後自分を確保しようと動く可能性が高いと警告する。

エーレンフェストの方針

ジルヴェスターは、ヴィルフリートを呼ぶ必要はないと判断した。騒ぎを広げるだけで意味がないからである。

ローゼマインも、今重要なのは王族の意向ではなく、エーレンフェストがどれだけ利益を引き出せるかだと考え始めていた。

王族はエーレンフェストの利益を優先してはくれない。ならば、自領で最大利益を取るしかない。ローゼマインは、ダンケルフェルガーとの出版交渉を例に挙げながら、「最低条件」「妥協条件」「大勝利条件」を決めるべきだと提案する。

ジルヴェスター達は最初こそ驚いたが、次第に領地利益や条件を具体的に出し始める。ローゼマインも、自分が中央へ移る場合の条件として、側近制限の禁止、領主候補生扱い、本の充実などを挙げた。

そして最後に、養子縁組解消には自分の同意も必要である以上、自分の意見も必ず聞かせるよう王族へ要求してほしいと伝えるのだった。

商人聖女

療養中の読書

熱が下がった翌日、ローゼマインは地下書庫へ行くことを止められた。オティーリエやクラリッサが再発を心配したためである。

しかしローゼマインは「ゆっくり休むには本が必要」と言い、本を持ってこさせて寝台で読書を始めた。側近達は呆れながらも読書環境を整え、ローゼマインは久し振りの穏やかな時間を満喫する。

そこへヒルデブラントからお見舞いのオルドナンツが届いた。未成年であるローゼマインは本来ここに存在しない扱いのため、直接の見舞いは禁止されたらしい。

ローゼマインは感謝を伝えつつ、翌日には地下書庫へ戻ると返事を送った。

ヒルデブラントの申し出

翌日、地下書庫へ戻ると、ハンネローレやヒルデブラントが回復を喜んで迎えた。ヒルデブラントは特に嬉しそうに接し、その様子はローゼマインにメルヒオールを連想させた。

しかしマグダレーナは、そんな二人をじっと監視していた。

写本作業中、ヒルデブラントはローゼマインへ声をかける。そして、ハンネローレ達が離れている隙に、「ローゼマインがグルトリスハイトを手に入れてツェントになるのですか」と問いかけた。

ローゼマインは、「自分は王族ではないので資格がない」と返答する。これにより、王族内でローゼマインが次期ツェント候補だという情報が共有されたことを察した。

さらにヒルデブラントは、ローゼマインの手を取り、「私は貴女を助けたいのです」と告げる。

だが直後にマグダレーナが現れ、会話は遮られた。ローゼマインは内容を誤魔化し、次期ツェント候補の話題には触れなかった。

ジギスヴァルトとの対面

午後になると、地下書庫へジギスヴァルトが訪れた。彼はハンネローレを先に帰し、「ここでなければ話せない」と言ってローゼマインの正面へ座る。

ジギスヴァルトは、アナスタージウスからの報告で、ローゼマインが次期ツェント候補であることを知ったと明かした。また、王族登録がなければグルトリスハイトを得られないことも共有されていた。

さらに彼は、中央の深刻な魔力不足を説明する。古い魔術具の一部は魔力切れで崩壊しており、王族達は回復薬を使いながら延命処置のように魔力供給を続けていた。

そのため、王族には祠巡りを行う余裕がない。だからこそ、ローゼマインを王族へ取り込み、早急にグルトリスハイトを得させたいのだと訴える。

ジギスヴァルトは、「王の養女となり、グルトリスハイトを得て、成人後に自分と結婚する」のが最善だと提案した。

エーレンフェストの事情

ローゼマインは、ジギスヴァルトの提示する利益がエーレンフェストの実情を理解していないと指摘する。

王族は「順位上昇」「中央への貴族召し上げ」などを好条件だと思っていたが、エーレンフェストは急激な順位上昇についていけておらず、むしろ内政安定が急務だった。

また、粛清によって貴族数も減少しているため、これ以上中央へ人材を出せば領地運営が立ち行かなくなる。

ローゼマインはさらに、自分が神殿長、孤児院長、印刷事業責任者として担っている仕事を列挙する。それらは簡単に引き継げるものではなく、最低でも一年は必要だと説明した。

加えて、ヴィルフリートとの婚約破棄による領地内混乱、フロレンツィアの妊娠、妹の御加護取得など、エーレンフェスト側にも差し迫った事情が山積していた。

しかしジギスヴァルトは、それでも「ユルゲンシュミット全体の危機の方が重い」と主張する。

ローゼマインは笑顔のまま、「自分にとってはエーレンフェストの方が大事です」と言い返した。

奉納式という提案

ローゼマインは、王族の魔力不足を解消する代わりに、一年間の猶予を買いたいと提案する。

ジギスヴァルトは、一人分の魔力では到底足りないと否定するが、ローゼマインは「自分一人とは言っていない」と返した。

そして領主会議中のアウブ達や側近達から魔力を集めるため、「領主会議で奉納式を行いましょう」と提案する。

各領地が神事へ参加することで御加護や収穫量が増えるなら、参加を拒めない。中央神殿や各領地が望んでいた「神事の普及」も達成できる。しかも、大量の魔力まで確保できる。

ローゼマインは、これは王族側の望みを叶えるための提案だと強調する。王族が自分へ中央神殿入りを要求した以上、それに必要な神事を主催する責任も王族側にあると言い返したのである。

王族への反撃

ジギスヴァルトは、奉納式はあまりにも急すぎると反論した。事前準備や予定調整が必要だというのである。

それに対し、ローゼマインは冷ややかに問い返す。

王の養女になる予定など、自分の人生には元々存在しなかった。本来ならば十分な話し合いと準備期間が必要なはずなのに、王族はそれを当然のように押し付けている。

ならば、奉納式を急に要求することと何が違うのか、と。

さらに、離宮準備や側近環境整備など、王族側ですら何一つ整っていない現状を次々に突きつける。

客室対応を示唆したジギスヴァルトへは、「実子には離宮を与え、養女には客室ですか」と追撃した。

完全に押し込まれたジギスヴァルトは、最終的に奉納式をツェントへ進言すると認める。

商人としての交渉

奉納式実施が決まると、ローゼマインは即座に条件交渉へ移った。

祭壇や神具準備は中央に任せること、各領地の側近達まで参加対象にすること、王族主導でエーレンフェストの功績を宣伝することなどを次々と要求する。

さらに、御加護再取得儀式を恒例化し、継続的に魔力を集める案まで提示した。

ジギスヴァルトは、「エーレンフェストが急激に富んだ理由がわかった」と疲れた笑みを浮かべる。

しかしローゼマインは満足しなかった。奉納式は前哨戦にすぎず、本番はこれからの養女条件交渉だと理解していたのである。

王の養女になる条件

準備期間を巡る認識の違い

ローゼマインは、奉納式によって得られる一年間の猶予は、エーレンフェストにとって利益ではなく最低限必要な準備期間にすぎないと説明した。

しかしジギスヴァルトは、未成年であるローゼマインの仕事量を軽く見ており、それほど大きな引き継ぎが必要とは考えていなかった。

これに対しローゼマインは、自分は単なる手伝いではなく、印刷事業や神殿運営の責任者であると明言する。フェルディナンドを失った現在、神殿長・孤児院長・神官長の役割を短期間で後継へ引き継がなければならず、その負担は極めて大きかった。

さらに、神事には古語知識や祝詞理解も必要であり、一年でも足りないほどだと訴える。

ジギスヴァルトは、幼い子供が本当の責任者になっていること自体に衝撃を受けた。しかしローゼマインは、人材不足のエーレンフェストではそれが現実だったと淡々と返した。

印刷事業と中央移転問題

ローゼマインは、中央へ移る場合には印刷業務の調整も必要になると説明した。

専属職人を中央へ移すのか、新たな工房を作るのか、商人との関係をどう築くのかなど、確認すべき問題は山積していた。

ジギスヴァルトは、それらは文官の仕事だと返したが、ローゼマインは「責任者ならば自分の目で確認する必要がある」と反論する。書面と現場が違うことや、文官が必ずしも正確な報告をするとは限らない現実を理解していたのである。

その姿勢を見て、ジギスヴァルトは初めてローゼマインが本当に責任者として動いていることを理解した。

交渉の立場整理

ローゼマインは、ここでの話し合いはあくまで意見交換であり、最終決定権はツェントとアウブ・エーレンフェストにあると強調した。

これは、自分が王族と勝手に条件を決めたと後で責められないための予防線でもあった。

また、王族と正面衝突したいわけではなく、条件さえ整えば王命には従う意思があるとも伝える。

ただし、王族がユルゲンシュミットだけを優先し、エーレンフェストを軽視するならば受け入れられないとも釘を刺した。ローゼマインにとって最も大切なのはエーレンフェストだったのである。

フェルディナンド返還要求

ローゼマインが最初に提示した条件は、フェルディナンドをエーレンフェストへ返すことだった。

フェルディナンドが戻れば、魔力問題、人材育成、領地統制など多くの問題が解決すると考えていたのである。

しかしジギスヴァルトは、アーレンスバッハを維持するためにフェルディナンドは必要不可欠であり、返還は不可能だと即座に却下した。

その代わり、グルトリスハイトを得られれば婚約解消は可能になると認める。

ローゼマインはそこで方針を切り替えた。グルトリスハイト取得、あるいは完全不可能と判明するまで、フェルディナンドの婚姻を延期させてほしいと要求したのである。

レティーツィア問題

しかしジギスヴァルトは、これ以上星結びを延期できない事情を説明した。

アーレンスバッハでは、新アウブ承認後に他の領主候補生が上級貴族へ降格される決まりがある。レティーツィアを守るためには、領主会議初日までに養子縁組と婚姻を済ませる必要があった。

ローゼマインは、その理不尽な決まり自体を廃止すればよいと提案したが、領地独自の慣習に王族は介入できないと説明される。

そこでジギスヴァルトは、領主会議前にローゼマインを王族へ迎え入れ、グルトリスハイト取得を試みる案を提示した。成功すれば婚約解消、失敗すればそのまま結婚させるという算段だった。

ローゼマインは即答を避け、まずはフェルディナンドの待遇改善を優先する。

隠し部屋を巡る攻防

ローゼマインは、少なくともフェルディナンドへ隠し部屋を与えるよう要求した。

ジギスヴァルトは、婚約者の立場では隠し部屋を持たないのが貴族の慣例だと説明する。

しかしローゼマインは、星結び延期によって既に慣例が崩れていると反論した。

本来ならば、一度エーレンフェストへ帰還させるのが慣例である。もし帰還させないならば、代わりに隠し部屋を与えるべきだと迫る。

さらに、薬漬けで執務を行わされ、連座の危険に晒されているフェルディナンドを思う自分の感情を率直に語った。

そして、「昔は感情で魔力を暴走させていた。今暴走したらどうなるのかしら」と静かに脅しをかける。

その言葉にジギスヴァルトは顔色を失い、フェルディナンドの連座回避について真剣に取り計らうと約束した。

ローゼマインは内心で大きく安堵し、最低条件を一つ達成したと感じていた。

エーレンフェスト補強策

続いてローゼマインは、エーレンフェストからの人材流出を防ぐため、五年間は婿入り・嫁入りをエーレンフェスト入り限定にするよう要求した。

これにより、他領から人材を取り込み、貴族数不足を補う狙いだった。

さらに、子供用魔術具を三十から四十個提供してほしいと求める。これは魔術具不足で貴族になれない子供達を育成するためだった。

加えて、中央にいるエーレンフェスト出身貴族を一度帰郷させるよう依頼する。中央との情報断絶を改善し、今後の側近選定にも役立てるためである。

この要望については、ジギスヴァルトも快諾した。

側近と図書館の条件

ローゼマインは、未成年側近を含め、自分に名を捧げた者達を全員受け入れるよう要求した。

名捧げした者は、既に親よりもローゼマインへの所属が優先されているため、置き去りにはできなかったのである。

そして最後に、ローゼマインは最重要条件を提示する。

中央の全図書館・図書室への自由な出入り権と、自分の離宮への図書室設置である。

ローゼマインは、「結婚には図書館が必須」であり、「図書館を贈られるのが夢」だと真顔で語った。

さらに、エーレンフェストの図書室やフェルディナンドの蔵書室を超える規模を希望し、難しいなら王宮図書館を離宮代わりにしても良いとまで言い出す。

ジギスヴァルトは完全に呆然とし、「自分が夫になるのか」と困惑していた。

一方ローゼマインは、自分は本来ジギスヴァルトと結婚したいわけではないが、王命なら受け入れるしかないと本音を漏らす。だからこそ、せめて心の平穏を守る図書館だけは欲しいと訴えるのだった。

得られた条件

王族との交渉結果報告

ジギスヴァルトとの個人面談後、ローゼマインはジルヴェスター達へ王族との認識の違いを説明した。王族はエーレンフェストを優遇しているつもりであり、一方的に負担だけ押し付けようとしているわけではないと報告する。

さらに、奉納式開催や養女条件について話し合ったこと、自分には決定権がなく、あくまで意見を述べただけだと何度も強調した。これは前年のフェルディナンド問題の再現を避けるためだった。

二日後、王族との正式な話し合いが行われる。しかし戻ってきたジルヴェスターは、非常に疲れた様子だった。

脅迫認定された交渉

ジルヴェスターは、地下書庫でローゼマインがジギスヴァルトへ「信じられないほどの不敬」を働いたと聞かされ、胃が痛くなったと怒鳴る。

しかしローゼマインは、事前に「率直に話してよい」「処罰しない」と許可を得ていたため、自分も本音で話しただけだと平然としていた。

さらに、自分は確かにフェルディナンド救済のため王族を脅したと認める。普通に頼んでも通じなかったため、あの場でしか使えない手段を使ったのだと説明した。

ジルヴェスターは、必死に「脅迫ではなく言葉の行き違い」と弁明した直後だったため、頭を抱える。

しかし結果として、フェルディナンドへの隠し部屋付与や待遇改善、連座回避については、王族側が受け入れる形となった。

ローゼマインは大喜びし、他の条件についても確認する。すると、ほぼ全ての要求が受け入れられたと知らされる。

王族内部の対立

話し合いでは、ローゼマインの扱いについて王族内でも意見が割れていた。

トラオクヴァールは、グルトリスハイトを得た者こそ次期ツェントであり、その者が望む形で国を導けば良いという立場だった。だからこそ、自分達が派閥形成や婚姻へ口を出すべきではないと考えていた。

一方ジギスヴァルトは、エーレンフェスト出身で後ろ盾もない未成年が、いきなりツェントとして国を治めるのは無理だと主張する。王族が後ろ盾となり、自分の妻として迎えて支えるべきだと考えていた。

さらにアナスタージウスは、「神殿育ちで本狂いのローゼマインに国を任せたら大混乱になる」と発言した。

加えて、グルトリスハイトを奪った後は中央神殿長として利用し、必要時以外は図書館へ閉じ込めておけば良いとまで言い出す。

この発言には、さすがのトラオクヴァールも激怒し、アナスタージウスへ地下書庫でのローゼマイン接触禁止を命じた。

ローゼマイン自身は、アナスタージウスの言い方は失礼だが、内容自体は間違っていないと冷静に受け止めていた。

図書室問題の崩壊

そして最大の問題になったのが、ローゼマインの個人図書室要求だった。

王族は、他の条件については概ね受け入れ可能だった。しかし図書室だけは国家予算を破綻させかねない規模だと判断され、エーレンフェスト側も「図書室要求だけは諦めさせる」ことで合意していた。

それを聞いたローゼマインは絶叫する。彼女にとって図書館こそ最重要条件だったからである。

ジルヴェスターは、図書館への自由な出入り権は確保されているし、他の条件を通す方が遥かに重要だったと説得した。

しかしローゼマインは、自分の生活水準の基準が図書室であり、それを失うのは重大問題だと主張する。

さらに、ジギスヴァルトが個人蔵書を持っていないと知り、強い衝撃を受けた。

フェルディナンドは一代で巨大な個人図書館を築いていたが、それは極めて異常な例だったのである。王族の本は基本的に王宮図書館管理であり、個人所有ではなかった。

ローゼマインは、「本の一冊も持たずに王子を名乗るなんて」と失望し、乙女の夢を壊された気分になる。

それでも、フェルディナンドの待遇改善と連座回避が確保されたため、最終的には中央行きを受け入れるしかなかった。

今後の方針

王族側は、奉納式で十分な魔力が得られた場合、トラオクヴァールとジギスヴァルト自身もグルトリスハイト取得へ挑戦する方針を決めた。

もし成功すれば、ローゼマインを養女にする必要はなくなる。失敗した場合のみ、予定通り王の養女とする流れである。

ただし、フェルディナンドの連座回避と隠し部屋については、地下書庫翻訳への報酬として確定した。

ローゼマインは、中央へ行きたくないため、二人にはぜひ成功してほしいと本気で思う。

その後、一年間は現状維持を装いながら、水面下で養子縁組準備を進める方針が決定された。

ローゼマインは、神殿やグーテンベルク達への引き継ぎ、中央移転準備などを本格的に考え始める。

また、メルヒオールとの側近共有許可も取り付け、地下書庫対応のため上級護衛騎士育成を急ぐことになった。

ヴィルフリートへの感情

ジルヴェスターは、婚約解消されるヴィルフリートについてどう思うかを尋ねた。

ローゼマインは、婚約解消自体には特別な感情はないと答える。二人は兄妹としては接していたが、婚約者らしい関係ではなかったためである。

ただし、次期アウブ候補として育てられていたヴィルフリートの将来が、王命で覆されることには同情していた。

しかし同時に、自分もフェルディナンドもまた、王命によって人生を大きく変えられていると静かに語る。

ヴィルフリートは少なくともエーレンフェストに残り、家族と共にいられるだけ恵まれていると考えていた。

奉納式への期待

その後、王族主催奉納式の招待状が各領地へ配布された。

御加護再取得の機会として、多くの領地が参加を希望する。ダンケルフェルガーも強い関心を示していた。

マグダレーナによれば、参加しないのはアーレンスバッハのみだった。フェルディナンドが既に神事を教えているためである。

しかし、そのアーレンスバッハからは、「ディートリンデが次期ツェントになれば儀式は何度でもできる」という恐ろしい発言まで飛び出していた。

それを聞いたローゼマインは、改めてフェルディナンドの連座回避を確約させて本当に良かったと戦慄するのだった。

領主会議の奉納式

ヒルシュールの来訪

ヒルシュールは珍しく寮を訪れ、シュバルツ達のような図書館魔術具を作るために必要な素材を書いた木札をローゼマインへ渡した。さらに、自身も奉納式への参加が認められたことを嬉しそうに報告する。

今回の奉納式は本来、各領地のアウブとその側近向けだった。しかし研究熱心な教師達も強い関心を示していたため、ローゼマインはジルヴェスターを通じて王族へ働きかけ、希望する教師達にも招待状を出させたのである。

ヒルシュールは、貴族院奉納式で配られた高品質回復薬をグンドルフが欲しがっていたと語る。だがローゼマインは、今回の主催は王族であり、エーレンフェストが負担する必要はないと冷静に返した。

御加護再取得への懸念

ヒルシュールは、奉納式を恒例化した場合の問題点を指摘した。御加護の再取得には長期的な魔力奉納が必要であり、最初の順番を割り当てられた領地ほど不利になるというのである。

特に魔力不足の小領地は、長年奉納し続けても十分な成果を得られない可能性が高かった。そのため、不満を逸らすためにも回復薬を配布してはどうかと提案する。

しかしローゼマインは、それは王族や中央教師陣が考えるべき問題であり、エーレンフェストが負担する必要はないと笑顔で拒否した。

一方でヒルシュールは、ローゼマインが最終的には何か対策を考えるだろうと見抜いていた。彼女は利益にならないことでも動く性格だと理解していたのである。

貴族院改革

ヒルシュールは、王族主導で貴族院教育が大きく変わろうとしていることも伝えた。

王族は、シュタープ取得を一年生ではなく三年生へ戻す方針を決定した。御加護を得てからシュタープを取得した方が良いという意見が採用されたのである。

教師陣は急な変更へ反発したが、過去にフラウレルムが古い教育範囲を導入した実績を持ち出され、押し切られた。

さらに、奉納式そのものを講義へ組み込む案まで出ていた。しかし教師側に神事ノウハウがなく、現時点ではエーレンフェストとクラッセンブルクの共同研究として継続されることになった。

ローゼマインは、王族とクラッセンブルクの行動の早さに感心する一方、エーレンフェストには特に正式要請が来ていないことへ少し疑問を抱く。

ヒルシュールの自由さ

話の途中、ヒルシュールは突然食事箱を受け取ると、そのまま帰ってしまった。ローゼマインはまだ質問したいことが残っていたため呆然とする。

リーゼレータは、自分の準備不足を悔やむが、ローゼマインは「ヒルシュールは貴族の常識から最も遠い人物だから仕方ない」と慰めた。

奉納式前の緊張

領主会議最終日、ローゼマインは神殿長衣装を身にまとい、青色衣装の側近達と共に控室へ向かう。

そこで出迎えたのはイマヌエルだった。星結びの際の異様な執着を思い出したローゼマインは、無意識に距離を取る。コルネリウスとハルトムートも警戒を強めていた。

イマヌエルは、ローゼマインが近いうち中央神殿長になるはずだと期待を露わにする。しかしハルトムートは、領主候補生が中央へ移るには婚姻しかなく、結婚した者は神殿長になれないと冷たく言い返した。

さらに、王族が中央神殿ではなく、自分達でローゼマインを囲い込もうとしている可能性まで示唆する。イマヌエルはそこで初めて、自分達が完全に蚊帳の外へ追いやられている事実に気付いた。

中央神殿への拒絶

イマヌエルは、奉納式で聖杯を中心に貴族達を円形配置にしたことへ強い不満を示した。祭壇へ魔力を流せば中央神殿にも利益があるからである。

しかしローゼマインは、各領地の収穫量低下は中央神殿へ青色神官を集めすぎたことも原因だと反論する。むしろ中央神殿が地方神殿を助けるべきだと考えていた。

そして今回の奉納式は王族主催であり、自分は中央神殿へ魔力を渡すつもりはないと明言した。

奉納式開始

講堂へ入ると、各領地の貴族達が円状に並び、中央の聖杯へ向かって跪いていた。領地ごとのマント配置は、まるで円グラフのようだった。

中央には大聖杯と複数の小聖杯が設置され、内部には空の魔石が準備されている。ローゼマインは、それを確認して問題ないと判断した。

ツェントから感謝を受けた後、ローゼマインは奉納式を開始する。祈りの声が揃っていく中、赤い布を通じて魔力が聖杯へ流れ込んでいった。

その時、一つの聖杯だけが赤く光り始める。炎のように揺らめく光は天へ昇り、ローゼマインはフリュートレーネの夜を思い出して見入っていた。

奉納式の成果

ローゼマインは適切なタイミングで儀式を終了させ、参加者達へ回復薬使用を促した。領主会議参加者達は、想定より余裕を残していた。

しかし円周部分で参加していた青色神官や青色巫女達は魔力切れで倒れており、ローゼマインは内心で大慌てする。

その後、ローゼマインは奉納式の本来の意味を説明した。各領地で神殿へ魔力奉納を行えば収穫量は増え、さらに御加護も得られるようになると語る。

ツェントも、今後は貴族院で奉納式を継続する方針を発表した。

採集場所回復の秘匿知識

多くの領地が回復薬負担に不安を見せる中、ローゼマインは新たな知識を明かす。

貴族院の採集場所には特殊な魔法陣があり、領地の貴族達が祈りながら魔力を奉納すれば、採集場所自体を回復できるというのである。

採集地が回復すれば、高品質素材を得やすくなり、回復薬作成も容易になる。各領地はざわめきながら、その祈りの言葉を必死に聞き取っていた。

ローゼマインは祈りを繰り返しながら、こっそり聖杯へ追加魔力を注ぎ込む。危うく別儀式へ切り替わりかけたが、無事に聖杯を満たし切ることに成功した。

こうして奉納式は滞りなく終了し、ローゼマインは一年間の猶予確保に成功したのである。

エピローグ

奉納式を語るマグダレーナ

領主会議終了後、ヒルデブラントは母マグダレーナと夕食を共にし、奉納式の様子を尋ねた。未成年で参加できなかったため、自ら見られなかったことを残念に思っていたのである。

マグダレーナによれば、冬の奉納式で見られたような赤い光の柱は立たなかった。しかし、聖杯が赤く輝き、炎のような光が空へ昇っていく光景は非常に幻想的だったという。

さらに、多人数による神事特有の一体感や、大量の魔力の流れへ身を任せる感覚は恍惚感すら伴うものだったと語った。

一方で、中央神殿の青色神官や青色巫女は魔力差に耐え切れず倒れていた。ローゼマインは、魔力量が違いすぎる者同士では同じ奉納式はできないと困惑していたという。

マグダレーナは、古い神事を利用して王族へ要求ばかり重ねる中央神殿に不満を抱いていたため、その失態に少し溜飲を下げていた。

聖女としての印象付け

食後、人払いを済ませた上で、ヒルデブラントは今回の奉納式がローゼマインを「聖女」として印象付ける目的を果たせたか尋ねた。

マグダレーナは成功したと断言する。奉納式そのものだけでなく、ローゼマインが採集場所回復の祝詞を何度も唱え、聖杯を緑に輝かせた姿は、誰の目にも特別な存在として映ったからである。

エーレンフェストだけで独占して良い人物ではないという空気作りには十分成功したと評価していた。

また、グルトリスハイト問題がなくても、ローゼマインは中央へ迎えるべき人材だと語る。神事知識、魔力量、全属性の可能性など、次代王族に必要な条件を全て備えていたからである。

図書室要求への理解

マグダレーナは、そんなローゼマインが「結婚条件に図書室を要求した人物」と同一人物に見えなかったと苦笑する。

ヒルデブラントは、ローゼマインがジギスヴァルトとの結婚を望んでいないだけだと察していた。地下書庫で涙ぐみながら条件交渉していた姿を見ていたからである。

さらに、アウブ・エーレンフェストが図書室要求却下に同意したことへ話題が及ぶ。ヒルデブラントは、ヴィルフリートとの婚約解消まで受け入れたことに驚いていた。

しかしマグダレーナは、エーレンフェストにはそれ以上有力者を流出させる余裕がないため、ヴィルフリートを王配にする選択肢は現実的ではなかったと分析する。

中央神殿長案と反論

マグダレーナは、ローゼマインを中央神殿長に迎える案が王族側から出された際、エーレンフェスト側の若手文官が鮮やかに反論したことを語る。

その文官は、「中央神殿は王族管轄なのだから、王族であるヒルデブラントが神殿長になるべきだ」と主張し、逆にヒルデブラントを神殿へ入れるよう提案したのである。

ヒルデブラントは、自分がアーレンスバッハへの婿入りだけでなく、神殿入りまでさせられそうだった事実に強い衝撃を受けた。

アーレンスバッハへの不安

ヒルデブラントは、ディートリンデを義母に持つ未来を強く不安視していた。奉納式不参加を告げるオルドナンツの内容からも、その人物像の危険さを理解していたのである。

マグダレーナは、ヒルデブラントが婿入りするまでに必ずディートリンデを排除すると断言した。

そして、本来ならばフェルディナンドが婚約者としてディートリンデを抑えるべきなのに、それが全くできていないと強く批判する。

フェルディナンドは優秀だが、人間関係や感情面への配慮が致命的に欠けている人物であり、他者を適切に導けるような人間ではないと酷評した。

その評価を聞き、ヒルデブラントはローゼマインの語るフェルディナンド像との違いに困惑する。

ヒルデブラントの願望

ヒルデブラントは、ローゼマインが王族へフェルディナンド救済を条件として出したことから、彼女が本当にフェルディナンドを慕っているのだと理解した。

そして、自分もツェントになれば、ローゼマインを不本意な結婚から救い、自身もアーレンスバッハへ行かずに済むのではないかと考える。

しかしマグダレーナは、それを厳しく否定した。国の崩壊はヒルデブラントの成長を待てず、さらに将来ローゼマインがツェントになった後で、王族であるヒルデブラントが資格を持てば国を二分しかねないからである。

ヒルデブラントはなおも、体の弱いローゼマインを支えたいだけだと訴えた。しかしマグダレーナは、それは婚約者であるジギスヴァルトの役目だと諭した。

ヒルデブラントは、自分の方がローゼマインを大切にできるのに、と内心で強く不満を抱いていた。

ラオブルートとの会話

領主会議後、ヒルデブラントは久し振りにラオブルートとの剣稽古を再開する。しかし心が乱れていたため、剣筋も荒れていた。

ラオブルートは悩みを尋ねるが、ヒルデブラントは本心を明かせない。代わりに、以前オルタンシアとディートリンデが話していた「シュラートラウムの花」について質問した。

ラオブルートは、それは甘い香りの白い花であり、かつて自分が仕えた離宮の主が好んでいた花だと静かに語る。現在その離宮は閉鎖されていた。

話題を変えた後も、ラオブルートは再びヒルデブラントの悩みへ踏み込む。そこでヒルデブラントは、シュタープ取得が三年生へ変更されたことへの不満だけを口にした。

ラオブルートは、良いシュタープを得るためには、魔力圧縮と祈りによる属性増加が重要だと説明する。そして、それこそがツェントが講義内容変更を急いだ理由だと語った。

その言葉から、ヒルデブラントは小祠巡りと属性増加によって、自分も次期ツェント候補になれる可能性があるのではないかと考え始める。

ラオブルートは、今は魔力圧縮と祈りに励むよう勧めた。ヒルデブラントは、それを父へ認めさせる道だと受け止め、希望を抱く。

教育玩具の献上

最後にラオブルートは、エーレンフェストから献上された教育玩具をヒルデブラントへ渡した。神々の名前を覚えやすくするための本や玩具であり、エーレンフェスト急成長の秘密の一つだという。

美麗な絵本をめくりながら、ヒルデブラントは神々の名前を覚え、祈りを捧げ、属性を増やし、自分もローゼマインへ近付きたいと強く願うのだった。

望まぬ結婚

アドルフィーネの期待

卒業式後、アドルフィーネはオルトヴィーンから呼び出され、領主夫妻同席の会議へ向かった。彼女は領地対抗戦で浮かび上がった魔法陣と、中央神殿長がディートリンデを次期ツェント候補と呼んだ件について情報を求めていたのである。

もしディートリンデが次期ツェントになれば、ジギスヴァルトとの婚約契約の前提が崩れ、婚約解消の可能性が生まれる。アドルフィーネは本気でそれを期待していた。

彼女は本来、次期アウブ・ドレヴァンヒェルを目指して努力してきた。しかし王族との政略結婚によって、その夢を奪われていたのである。

ジギスヴァルトへの嫌悪

オルトヴィーンが得た情報によれば、ディートリンデはまだ次期ツェントにはなれず、アドルフィーネの婚約にも問題はないという。

両親は安堵したが、アドルフィーネだけは露骨に落胆した。婚約解消の機会を失ったからである。

父親に理由を問われた彼女は、ジギスヴァルトの傲慢さ、他者への配慮の欠如、自分を蔑ろにする態度が心底嫌いだと率直に語った。

婚約者候補時代から正式婚約後まで、彼女はまともに扱われていなかった。だからこそ、この結婚へ期待など持てなかったのである。

星結び前の呼び出し

季節が移り、アドルフィーネは王族離宮へ移り住む準備を進めていた。しかし結婚への喜びは全くなかった。

そんな中、中央文官オデルクンスがジギスヴァルトからの呼び出しを伝える。アドルフィーネは、星結び直前に花嫁を突然呼び出す非常識さへ苛立ちを募らせた。

夫婦生活延期という侮辱

応接室でジギスヴァルトは、第二夫人ナーエラッヒェが産後であるため、魔力変質を避ける目的からアドルフィーネとの夫婦生活を延期すると告げた。

アドルフィーネは耳を疑った。普通ならば結婚自体を延期するべき状況であり、星結びだけ強行するなど貴族常識から外れていたからである。

彼女は一度、聞き間違いという形で結婚延期へ話を修正しようとした。しかしジギスヴァルトは、結婚は予定通り行い、夫婦生活だけ延期すると改めて明言する。

さらに彼は、王族の魔力不足が深刻であり、古い魔術具崩壊への対処に王族を一人でも増やす必要があると説明した。つまりアドルフィーネは、王族の魔力要員として急ぎ迎えられるだけだったのである。

アドルフィーネは、自分を妻としてではなく便利な魔力供給源として扱う態度へ、強い怒りと冷え切った失望を覚えた。

ローゼマイン利用計画

ジギスヴァルトはさらに、星結びでローゼマインを神殿長に据え、本物の祝福を行わせると語った。アナスタージウスの卒業式で起きた奇跡的祝福への対抗演出である。

アドルフィーネは、他領の未成年領主候補生を領主会議へ呼び出し、中央神殿長の役目まで奪う計画に反対した。しかしジギスヴァルトは、計画したのはアナスタージウスだから自分は詳しくないと責任逃れをする。

その無責任さに、アドルフィーネはさらに嫌悪感を強めていた。

対等な条件要求

アドルフィーネは、夫婦生活延期に関して自分へ瑕疵がないことを、両親と側近達へジギスヴァルト自身の口から説明するよう要求した。

夫婦生活のない花嫁として軽んじられることを許さなかったのである。彼女は、最初の対応で今後の力関係が決まると理解していた。

結果として、ドレヴァンヒェル側は王族事情を尊重しつつも、相応の見返りを要求した。父親もまた、ジギスヴァルトを好きになれない娘の気持ちを理解していた。

王族入り

星結び当日、アドルフィーネはドレヴァンヒェルのマントを外され、王族の黒マントを身に付けた。

父親が自分へ跪く姿に強い違和感を覚えながらも、彼女は大領地の姫として完璧な笑顔を浮かべ続ける。

ローゼマインによる神秘的な祝福を受けたことで、一時は王族としてユルゲンシュミットを支える決意も抱いた。

離宮での孤立

しかし領主会議期間中、アドルフィーネは極めて中途半端な立場に置かれる。王族入りしたにもかかわらず情報共有から排除され、ドレヴァンヒェル側会議にも出席できず、離宮に半ば隔離されていたのである。

彼女は新妻らしい振る舞いを拒み、魔力回復薬の調合やお守り作りへ没頭した。ローゼマインが配った高性能回復薬を参考に、独自改良まで進めていたのである。

また、王族の魔力不足が予想以上に深刻であることを察し、回復速度が速すぎる薬は逆に酷使へ繋がると忠告を受ける。

ローゼマイン養女化への反応

領主会議最終日、ようやく離宮から出されたアドルフィーネは、ジギスヴァルトからローゼマインを王の養女にし、その後自分の第三夫人として迎える計画を知らされる。

ジギスヴァルトは、グルトリスハイトを得られる可能性があるローゼマインを取り込むことは当然だと考えていた。

アドルフィーネは、次期王の資格を持つ者を第三夫人扱いする厚かましさに呆れ果てる。さらに、ローゼマインへの態度と自分への扱いの差も痛感した。

しかし同時に、王族入りしたローゼマインとなら研究仲間になれるかもしれないと考え、少しだけ気持ちを前向きにする。

別れの女神への祈り

アドルフィーネは、ローゼマインを迎える離宮準備について説明を受けながらも、ジギスヴァルトの自己都合優先の態度へ頭痛を覚えていた。

そして、自作した別れの女神ユーゲライゼのお守りへ魔力を込め、この悪縁を断ち切ってほしいと心から祈るのだった。

シュラートラウムの花

図書館司書としての日常

オルタンシアは学生達が領地へ戻った後も、貴族院図書館へ通い続けていた。閉架書庫の整理や傷んだ本の修復、領主会議に向けた地下書庫準備など、やるべき仕事が山積みだったのである。

夫ラオブルートの頼みで司書に就任したものの、彼女自身は今の仕事へ強いやり甲斐を感じていた。

崩壊した古い魔術具

ある日、帰宅したオルタンシアはラオブルートから極秘の話を聞かされる。政変後、魔力供給を止めていた古い魔術具の一部が崩壊したというのである。

物置扱いされていた小塔が白い砂のように崩れ去り、王宮は大混乱となっていた。王族達は慌てて各地の魔術具を調査し、魔力供給へ回っていたのである。

ラオブルートは、貴族院図書館や地下書庫にも同種の危険な魔術具がないか確認するよう、ツェント命令としてオルタンシアへ依頼した。

しかしオルタンシアは、ライムントと共に図書館の魔術具を既に調査済みであり、危険だった守りの魔術具へはローゼマインが奉納式の残余魔力を大量供給していたと説明する。

ラオブルートは、その守りの魔術具には本来王族の魔力が必要なはずだと考え込み、奉納式に参加した王族の魔力が混ざっていた可能性へ思い至った。

文官棟調査命令

さらにラオブルートは、文官棟にも同種の魔術具が存在する可能性を危惧し、オルタンシアへ追加調査を依頼した。

研究しか頭にない文官教師達では、命令しても後回しにされると理解していたからである。

その結果、オルタンシアは領主会議まで司書寮へ泊まり込み、図書館と文官棟の調査を進めることになった。

ディルミラの不信感

司書寮へ向かう途中、側仕えディルミラは、オルタンシア不在中にラオブルートが女性を連れ込むのではないかと疑った。

ディルミラは、結婚当初にラオブルートの筆頭側仕えから「忘れられない女性がいる」と言われた件を未だに根に持っていたのである。

しかしオルタンシア自身は恋情を求めて結婚したわけではなく、夫婦関係へ大きな不満を持っていなかった。

中央騎士団の混乱

移動途中、オルタンシアは中央騎士団副団長ロヤリテート達と遭遇する。彼等は領主会議警備やローゼマインの神殿長就任に伴う調整で忙殺されていた。

中央神殿内部では、神殿長派と神官長派が対立しているという情報も語られた。

また、中央騎士団内部でも情報統制が乱れ、ラオブルートの単独行動増加によって疑心暗鬼が広がっていることが示唆される。

ロヤリテートは、ラオブルートが妻に誠実だと保証した上で、旧ベルケシュトック調査時にアーレンスバッハ側から「シュラートラウムの花」と呼ばれる女性達を紹介された話を語った。

その際、ラオブルートだけは女性ではなく、飾られていた白い花そのものを欲したという。

アナスタージウスからの極秘依頼

後日、アナスタージウスが極秘でオルタンシアを訪問した。彼は騎士団を介さず、直接調査協力を求めたのである。

王への忠誠契約へ署名を求められたオルタンシアは、自分は英知の女神メスティオノーラへ忠誠を誓う知識の番人であるため、他者へ忠誠契約できないと説明した。

さらに、政変時に処刑された上級司書達も同じ理由で契約できず、処刑された事実を明かす。

アナスタージウスは衝撃を受け、当時の王族の非情さへ愕然としていた。

最終的に、忠誠契約ではなく黙秘契約だけ締結し、調査が開始される。

トルーク調査

アナスタージウスは、中央騎士団暴走事件に関係する危険植物「トルーク」について説明した。乾燥させて燃やすと、幻覚や陶酔感を引き起こす植物である。

王宮図書館には資料が存在せず、貴族院図書館へ調査依頼が回ってきたのである。

オルタンシアは教師資料や研究資料を辿ったが、後任教師が粛清されており、資料の多くは失われていた。

そこで第三閉架書庫まで調査範囲を広げ、類似薬物の記述を探し始める。

シュラートラウムの花

調査の末、オルタンシアは「シュラートラウムの花」という単語へ辿り着く。二百年前の資料には、特殊な女性へ使われる薬の素材として記されていた。

さらに百年前の資料では、王族や領主を招待する女性達そのものを「シュラートラウムの花」と呼んでいたことが判明する。

アナスタージウスは、その言葉が花捧げと関係している可能性を推測した。

また、オルタンシアはアーレンスバッハでその名称が使われていた件を伝える。するとアナスタージウスは、アーレンスバッハに強い反応を示した。

彼は、暖炉の甘い匂いや珍しい植物などについて追加確認を求め、さらにディートリンデへ探りを入れるよう依頼する。

ディートリンデへの探り

領主会議中、オルタンシアはディートリンデへ「シュラートラウムの花」について尋ねた。

しかしディートリンデだけでなく、周囲の年嵩の護衛騎士達も全く知らない様子だった。

その反応から、オルタンシアは、この言葉がゲオルギーネ周辺だけで使われている可能性を考え始める。

だが直後、地下書庫騒動によってユルゲンシュミット全体を揺るがす事態が発生し、彼女は調査結果をアナスタージウスへ報告できないまま領主会議終了を迎えた。

帰宅後の問い詰め

領主会議後、オルタンシアは司書寮生活を終えて帰宅する。するとラオブルートから即座に呼び出され、「シュラートラウムの花について誰から聞いた」と問い詰められるのだった。

第五部 女神の化身4レビュー
第五部 女神の化身
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本好きの下剋上 シリーズ 一覧

兵士の娘

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神殿の巫女見習い

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領主の養女

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貴族院の自称図書委

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女神の化身

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ハンネローレの貴族院五年生

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