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フィクション(Novel)本好きの下剋上読書感想

小説「本好きの下剋上 第五部 女神の化身6」感想・ネタバレ

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女神の化身6の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

第五部 女神の化身5レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身7レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. ローゼマインの王族養女入り
    2. ヴィルフリートとの婚約解消
    3. エーレンフェストの次期領主問題
    4. 側近たちの進退と忠誠
    5. 領地間の魔力供給と統治
    6. 最高品質の魔紙研究
    7. ライゼガング古老の暴走
  6. 登場キャラクター
    1. 中央・王族・貴族院
      1. ジギスヴァルト
      2. 中央騎士団長
      3. 王族
    2. エーレンフェスト
      1. ジルヴェスター
      2. フロレンツィア
      3. ローゼマイン
      4. ヴィルフリート
      5. シャルロッテ
      6. メルヒオール
      7. ボニファティウス
      8. カルステッド
      9. エルヴィーラ
      10. コルネリウス
      11. アンゲリカ
      12. レオノーレ
      13. ユーディット
      14. ダームエル
      15. ハルトムート
      16. マティアス
      17. ラウレンツ
      18. フィリーネ
      19. ローデリヒ
      20. ミュリエラ
      21. グレーティア
      22. オティーリエ
      23. ブリュンヒルデ
      24. リーゼレータ
      25. トルステン
      26. ニコラウス
      27. レーベレヒト
      28. ブリギッテ
      29. ラザファム
      30. ギーベ・ライゼガング
      31. フラン
      32. ザーム
      33. モニカ
      34. ニコラ
      35. ギル
      36. フリッツ
      37. ヴィルマ
      38. デリア
      39. ディルク
      40. コンラート
      41. ベルトラム
      42. カンフェル
      43. フリターク
      44. トール
      45. リック
      46. リヒト
      47. ノーラ
      48. マルテ
      49. ギュンター
      50. エーファ
      51. トゥーリ
      52. ベンノ
      53. マルク
      54. ルッツ
      55. コリンナ
      56. フーゴ
      57. ザック
      58. インゴ
      59. ディモ
      60. ヨゼフ
      61. ホレス
      62. ビアス
      63. ヨハン
      64. カルラ
      65. ライゼガング系の貴族
      66. ライゼガングの古老達
      67. 旧ヴェローニカ派の貴族
      68. グーテンベルク達
      69. プランタン商会
      70. ギルベルタ商会
    3. アーレンスバッハ
      1. ゲオルギーネ
      2. ディートリンデ
      3. レティーツィア
      4. フェルディナンド
      5. ユストクス
      6. エックハルト
      7. マルティナ
    4. ランツェナーヴェ
      1. レオンツィオ
      2. ランツェナーヴェの使者
    5. ダンケルフェルガー
      1. クラリッサ
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ
    2. 領主会議の報告会(三年)
    3. 婚約解消と未来の選択
    4. 側近達の選択
    5. カルステッドの館にて
    6. 母と娘
    7. 子供用魔術具
    8. 魔紙の準備
    9. 最高品質のサンプル作り
    10. 春の成人式と養父様の出発
    11. 子供のお茶会
    12. ライゼガングの古老
    13. 養父様の帰還
    14. フェルディナンドの手紙
    15. トロンベ狩りと星結びの儀式
    16. トゥーリの成人式
    17. アウブの面接
    18. 収穫祭とグーテンベルクの選択
    19. エピローグ
    20. ランツェナーヴェの使者
    21. わたくしの希望と問題点
    22. 騒動の事情聴取
  8. 本好きの下剋上 シリーズ 一覧
      1. 兵士の娘
      2. 神殿の巫女見習い
      3. 領主の養女
      4. 貴族院の自称図書委
      5. 女神の化身
    1. ハンネローレの貴族院五年生
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身VI」』は、魔力を持つ貴族が支配する階級社会「ユルゲンシュミット」を舞台に、本を心から愛する少女ローゼマインが、大切な人々を守るために世界の規則や領地の壁、そして派閥の思惑を乗り越えて新たな道を歩み出す姿を描いた異世界ビブリオファンタジー小説である。

領主会議を終えた領主夫妻とローゼマインがエーレンフェストへと帰還するところから物語は始まる。ジルヴェスターは領主一族を集めた極秘会議を開き、ローゼマインが1年後に王の養女となること、それに伴いヴィルフリートとの婚約が解消されることを告げた。この決定は領主一族に大きな衝撃と動揺をもたらし、特に激怒したボニファティウスとの間で激しい議論が交わされることとなる。 外向きには現状維持を装いながら水面下で中央への移動準備が進むなか、最大派閥であるライゼガング系の古老たちが、ローゼマインを中央へ出さずに次期アウブ(領主)に据えようと領主一族へ露骨な圧力をかけ始める。彼らはヴィルフリートを徹底的に侮辱し、妊娠中の第一夫人フロレンツィアの立場をも脅かしていく。ローゼマインは周囲を守るため、ハルトムートやクラリッサからの「名捧げ」を受け入れ、中央へ同行する側近たちの結束を強めていく。 一方、アーレンスバッハでは前アウブの葬儀が執り行われ、ジルヴェスターが出席する。葬儀中、中央騎士団が暴走する騒動が発生し、後の事情聴取でゲオルギーネや中央騎士団、アーレンスバッハの文官たちの間で不穏な暗闘とトルーク使用の疑惑が交わされる。フェルディナンドからは、ローゼマインの非常識な要求(隠し部屋の確保)に対する大量のお小言や、ランツェナーヴェ関連の混乱、そして現地の厳しい状況を伝える手紙が届く。激動の未来へ向けて、領地間の思惑のズレや水面下での派閥の暗闘が緻密に描かれる一冊である。

■ 主要キャラクター

  • ローゼマイン: 主人公であり、エーレンフェスト領主の養女。1年後に王の養女となることが決まり、印刷業の引き継ぎや下町の家族との別れの準備を進める。ライゼガングの古老からの圧力から周囲を守るため奔走し、ハルトムートとクラリッサの名捧げを受け入れる。
  • フェルディナンド: ローゼマインの元庇護者であり、元エーレンフェスト神官長。現在は王命によりアーレンスバッハに赴任中。前アウブの葬儀の執行や、引き継がれた膨大な執務の処理、次期領主レティーツィアの教育に追われている。ローゼマインから届く手紙に激しいお小言を返しつつ、ランツェナーヴェがもたらす現地の混乱を伝えてくる。
  • ジルヴェスター: エーレンフェストの領主(アウブ)。ローゼマインの王族入りと婚約解消を家族に極秘に明かす。アーレンスバッハでの葬儀に出席し、中央騎士団の暴走騒動を巡る事情聴取では、ゲオルギーネらを相手にアウブとしての毅然とした態度を示す。
  • フロレンツィア: エーレンフェストの第一夫人。身重の体でありながら、ローゼマインの婚約解消がもたらす領内の混乱や、ライゼガング系貴族からの執拗な圧力に深く心を痛める。解任された元側近オズヴァルトと密かに連絡を取り続けるヴィルフリートの将来を強く危惧している。
  • ヴィルフリート: ローゼマインの婚約者であった領主候補生。王命による婚約解消により、次期アウブ内定の事実上の白紙化という現実に直面する。ライゼガング系の古老たちから露骨な嫌味や嘲笑を受け、自らの甘さやあり方を見つめ直す。
  • ハルトムート: ローゼマインの側近(上級文官)であり神殿の新神官長。主への狂信的なまでの忠誠心から、中央への同行と絶対的な従属を示すために、婚約者のクラリッサと共にローゼマインへの「名捧げ」を志願し、これを受理させる。
  • クラリッサ: ダンケルフェルガー出身でハルトムートの婚約者。ハルトムートと共にローゼマインへ名を捧げ、その熱狂的な情熱と行動力で、中央へ移籍する主を全力で支える確固たる覚悟を示す。
  • リーゼレータ: ローゼマインの側仕え(中級貴族)。中央へ同行してローゼマインの筆頭側仕えを務める決意を固め、領主会議後も自主的に残留してローゼマインの身の回りを支える。

■ 物語の特徴

  • 婚約解消がもたらす領内の激しい派閥闘争:ヴィルフリートとの婚約解消とローゼマインの王の養女入りが内定したことで、ライゼガング系の古老たちが再び勢力拡大を目論んで領主一族へ容赦ない圧力をかけ始める。次期領主の座を巡る冷酷な貴族社会の現実や、取り残されるヴィルフリートの葛藤など、重厚な政治劇が描かれている。
  • 側近たちの「名捧げ」と引き継ぎの人間ドラマ:中央への移籍という別れを前に、ハルトムートやクラリッサが、主への絶対的な忠誠和未来への同行を示すために「名捧げ」を志願する。主と側近たちの絆がより一層深まり、新たな環境へ向かうための確固たる信頼基盤が構築されていく過程が丁寧に描写されている。
  • 他領・中央を巻き込む不穏な暗闘の予兆:アーレンスバッハの葬儀で起きた中央騎士団の暴走騒動や、その背後に漂う違法植物「トルーク」の影、ランツェナーヴェ関連の混乱など、フェルディナンドの手紙やジルヴェスターの事情聴取を通じて、国全体を揺るがす大きな危機の予兆が不穏に描かれている。

書籍情報

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第五部「女神の化身VI」
著者:香月美夜 氏
イラスト:椎名優  氏
出版社:TOブックス
発売日:2021年8月10日
ISBN:9784866992419

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

「婚約を解消し、王の養女になる」
 エーレンフェストに帰還したローゼマインの報告は領主一族に混乱をもたらす。だが、決定は覆らない。中央に移動するまでに与えられた期間は1年。そんな娘の旅立ちを貴族の母・エルヴィーラは温かく見守る。
「貴女は貴女らしさを失うことなく、進みなさい」と。
 神殿や印刷業務などの引き継ぎ、そのための最高品質の魔紙作りなど、着々と準備が進められていくのだった。
 移りゆく時に翻弄される母と子、側近達、下町の面々――同行する者と残る者。それぞれの選択が未来の扉を開く!

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身VI」

感想

これまでの領地内の動きからユルゲンシュミット全体、さらには他国の影までが交錯する極めて壮大なドラマへと発展し、圧倒される一冊であった。グルトリスハイトの不在がもたらす構造的な限界や、他国ランツェナーヴェも含めた魔力供給に依存する統治の過酷さが浮き彫りになる中、順位を上げたエーレンフェストがその負担の輪に巻き込まれていく様子からは、世界観の持つシビアさがまざまざと伝わってくる。

領主会議から帰還したローゼマインがもたらした「王族の養女入り」という激震と、それに伴う波紋の描写は実に見事だ。与えられた一年の猶予の中で、関係者ごとに段階的な機密を守りながら中央への移動準備に奔走する姿が印象深く描かれている。この決定は、エーレンフェストの政治体制や人間関係に巨大な変化をもたらすこととなった。

特にヴィルフリートとローゼマインの婚約解消は、王族の思惑によるものでありながら、結果として彼を長年の重圧から解放し、新たな人生の選択肢を与える契機となった点に救いを覚える。二人が良好な兄妹関係に戻ることで合意する場面には確かな温もりがあった。しかし、この決定が第一夫人フロレンツィアの政治的立場を揺るがし、領内の派閥バランスや後継者問題を揺るがす火種となる描写からは、貴族社会の冷徹さが窺える。シャルロッテが体制維持のためにアウブを目指す決意を固めるなど、次世代の覚悟を促す力学の転換には凄まじい読み応えがあった。

さらに、ライゼガング古老の暴走劇の裏に隠された高度な政治的謀略には驚嘆させられた。表面上はローゼマインへの過剰な心配や忠誠心に見える騒動が、実は増長する勢力を抑制するためにフロレンツィアたちが仕組んだ計算によるものだったという真実は、本作の持つ政治劇としての奥深さを象徴している。この事件を経て領主一族の結束や新たな力学が浮き彫りになる構成は、実に見事というほかない。

一方で、日常や研究パートに描かれる緊迫感と確かな絆の描写が、物語の大きな魅力として深く心に響く。フェルディナンドからの過酷な要求をきっかけに始まった最高品質の魔紙研究は、ローゼマインの規格外の魔力と側近たちの協力によって成し遂げられた結晶である。完成した魔紙の驚異的な性能もさることながら、フェルディナンドによる即座のレシピ改良からは、離れていても変わらない二人の高い能力と深い信頼関係が証明されており、胸が熱くなった。

また、中央移動を前にした側近たちの進退の選択は、単なる同行や残留の決定にとどまらず、それぞれの覚悟と忠誠心の形が丁寧に描写されていて感慨深い。名を捧げて未知の環境へ飛び出す者も、主の基盤や残された人々を守るために領地に残る者も、それぞれがローゼマインを深く慕っていることが伝わってきた。彼女が配った紋章入り魔石は、離れても変わらない強い絆の象徴であり、激動の未来へ向かう彼らの確固たる結束を物語っている。

そして何より、下町の面々の成長と変化が深く胸に迫る。成人したトゥーリ、そしてルッツとの婚約という知らせに接し、物語の始まりから紡がれてきた「7年」という歳物の重みを思わずにはいられなかった。平民の少女マインから始まった彼女たちの歩みが、これほどまでに遠く、かつ確かな結びつきを持って成長した事実に、言葉にできないほどの感動を覚える。

本作は、フェルディナンドを救うために王になることすら見据えるローゼマインの強固な覚悟が、物語を次なる大きな局面へと導く決定的な転換点となっている。激動する未来に向けてすべての選択が未来の扉を開くダイナミズムに満ちており、読後は次なる展開への期待と興奮が止まらない。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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第五部 女神の化身5レビュー
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本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身7レビュー

考察・解説

ローゼマインの王族養女入り

『第五部 女神の化身6』におけるローゼマインの王族養女入りについて、その背景やエーレンフェストへの影響、周囲の人間関係の変化について解説する。

王族養女入りの背景と決定
領主会議において、ローゼマインがグルトリスハイトに最も近い次期ツェント候補であることが判明した。当時の王族は、グルトリスハイト不在による国政の混乱や廃領地管理の負担、王宮の魔術具崩壊といった深刻な危機に直面していた。そのため、事態を打開すべくローゼマインを王の養女とし、一刻も早く取り込むことを決定した。
ただし、グルトリスハイトが実際に手に入るかは定かではないため、この事実は極秘扱いとなる。中央へ移動するための準備期間として実質的に与えられた1年間は、外向きには現状維持を装うこととなった。

エーレンフェストが獲得した条件
本来であれば、上位領地や王族からの要求に中位領地が逆らうことは難しい。しかし、ローゼマインは王族に対して強硬に交渉を行い、エーレンフェストのための複数の条件を獲得した。認められた主な条件は以下の通りである。

  • エーレンフェストの貴族不足を補うため、今後5年間は他領との婚姻を婿入りや嫁入りに限定すること
  • 子供用の魔術具40個の提供
  • 中央へ出たエーレンフェスト貴族の帰還命令
    さらに、ローゼマイン自身が最も重視したフェルディナンドの連座回避と待遇改善(隠し部屋の付与)も条件として確約させた。

婚約解消とヴィルフリート・シャルロッテの進路
ローゼマインが王の養女となるため、ジルヴェスターとの養子縁組が解消され、同時にヴィルフリートとの婚約も白紙となる。これに伴い、領主候補生たちの進路や決意は以下のように変化した。

  • ヴィルフリートの選択:これまでローゼマインをエーレンフェストに繋ぎ止める義務として婚約を受け入れていたが、ライゼガング系貴族からは激しく否定され、常にローゼマインやフェルディナンドと比較される状況に強い苦痛を感じていた。そのため、婚約解消を受け入れ、次期アウブの座から降りて残りの1年間で自分の新たな生き方を探す道を選んだ。
  • シャルロッテの決意:ローゼマインが変えてきたエーレンフェストの新しい体制を維持するため、次世代の発展型アウブが育つまでの中継ぎとしてアウブを目指す決意を固めた。

側近たちの同行と残留の選択
ローゼマインの中央移動に伴い、側近たちも身の振り方の選択を迫られた。それぞれの動向は以下の通りである。

  • 同行する者:すでに名を捧げているローデリヒ、マティアス、ラウレンツ、グレーティアの4人は同行が決まる。さらに、ハルトムートとクラリッサは自分たちがエーレンフェストに残されることを危惧し、強引に名を捧げて同行を確定させた。アンゲリカも中央騎士団での訓練を楽しみに同行を即決した。
  • リーゼレータの決断:ローゼマインの生活を支える熟練の側仕えが不足していることを憂慮したエルヴィーラの尽力により、リーゼレータは一族の跡取りの座を譲り、トルステンとの婚約を解消して筆頭側仕えとして同行することになった。
  • 残留する者:フィリーネは弟コンラートを見守るため成人まではエーレンフェストに残り、孤児院長を引き継ぐ。ダームエルは下町や印刷業の連絡役として残り、ユーディットやアウブ第二夫人となるブリュンヒルデもエーレンフェストに留まることになった。

ローゼマイン自身の心境
ローゼマイン自身は、大事な印刷工房や図書館を手放し、自室に図書室を作ることも渋られる中央の環境へ向かうことに不満を抱いており、忌避感があることをボニファティウスに吐露している。
しかし、王命によってアーレンスバッハへ向かったフェルディナンドを救うためにはこれしか道がないと覚悟を決めていた。フェルディナンドからの手紙で「君のゲドゥルリーヒを教えてほしい」と問われた彼女は、フェルディナンドを助けるために王になっても良いと決意している自分の変化に戸惑い、返答を出せずにいる。

まとめ
ローゼマインの王族養女入りは、ユルゲンシュミット全体の危機を打開するための決定であったが、エーレンフェストの政治体制や人間関係に巨大な変化をもたらした。獲得した有利な条件や、シャルロッテのアウブへの決意、側近たちの名捧げを伴う選択などは、すべて激動の未来へと繋がっている。フェルディナンドを救うために王になることすら見据えるローゼマインの覚悟は、物語を次なる大きな局面へと導く重要な転換点となっている。

ヴィルフリートとの婚約解消

『第五部 女神の化身6』におけるヴィルフリートとローゼマインの婚約解消について、その背景やヴィルフリートの心情、そして周囲への影響を解説する。

婚約解消
領主会議において、ローゼマインがグルトリスハイトに最も近い次期ツェント候補であることが判明し、王族は彼女を王の養女として迎え入れることを決定した。これに伴う変更は以下の通りである。

  • ローゼマインとジルヴェスターの養子縁組は1年後に解消されることになり、同時にヴィルフリートとの婚約も白紙に戻ることが確定した。
  • 中央へ移動するまでの1年間は、外向きには現状維持を装うこととなる。

ヴィルフリートの苦悩と本音
ヴィルフリートにとって、ローゼマインとの婚約は彼女をエーレンフェストに繋ぎ止めるための領主候補生としての義務として押し付けられたものであった。彼の抱えていた苦悩と本音は以下の通りである。

  • ライゼガング系貴族から「ローゼマインの方が次期アウブにふさわしい」「ヴィルフリートはアウブの実子で男だから贔屓されているだけ」「自ら辞退する見識も持てないのか」と常に比較され、否定され続けることに強い苦痛を感じていた。
  • ローゼマインの関心が常にフェルディナンドに向いており、夫になってもフェルディナンドと比較され続けるであろう生活に耐えられないと感じていた。
  • 実はヴィルフリートは以前、自ら「ローゼマインを次期アウブにして婚約を解消してほしい」とジルヴェスターに直談判していたが、ローゼマインが他領に奪われることや、ライゼガング系が勢いづくことを危惧したジルヴェスターによって却下されていた。

次期アウブからの離脱と新たな選択肢
婚約が解消されれば、ヴィルフリートは次期アウブの座から降りることになり、後ろ盾のない「白の塔に入った過去のある領主候補生」として世論の矢面に立たされるのではないかと彼は強い不安を抱いた。
しかし、ジルヴェスターは「次期アウブにならないのであれば、ライゼガングを掌握する余計な責任を負う必要はない」と告げ、以下のように彼が自由に自分の生き方を選べば良いと諭した。

  • ボニファティウスのように領主候補生として領地を支える。
  • 他領へ婿に出る。
  • ギーベ(土地持ち貴族)になる。
  • 騎士団長を目指す。

ローゼマインとの関係の変化
望まない婚約を強いられ、婚約者らしく振る舞うことを互いに苦痛に感じていた二人は、腹を割って話し合った。その結果、以下のように合意した。

  • 婚約者としては無理でも、兄妹としてならば今まで通り自然に過ごせることを確認し合った。
  • 現状維持を装う残り1年間を良好な兄妹関係として過ごす。

フロレンツィアの立場への影響
ヴィルフリート本人は婚約解消を望んでいたが、この決定によって最も立場が不安定になるのは第一夫人のフロレンツィアであった。その理由は以下の通りである。

  • これまでは、実子であるヴィルフリートが次期領主に内定しており、ローゼマインを通じてライゼガング系貴族を味方につけられる確証があったため、彼女の立場は盤石であった。
  • しかし婚約が解消されたことで、今後もし第二夫人のブリュンヒルデに子供が生まれれば、ライゼガング系貴族がこぞってそちらを次期領主に支持する可能性が高まり、フロレンツィアの立場が著しく脅かされることとなる。
  • この政治的な影響を察したローゼマインは、自分の影響力を利用してフロレンツィアを支持し、彼女の立場を強化するための行動を起こす決意を固めている。

まとめ
ヴィルフリートとローゼマインの婚約解消は、王族の思惑によってもたらされた決定であったが、結果としてヴィルフリートを長年の重圧から解放し、新たな人生の選択肢を与える契機となった。二人は良好な兄妹関係に戻ることで合意したものの、この決定が第一夫人フロレンツィアの政治的立場に与える影響は大きく、エーレンフェスト内の派閥バランスや今後の後継者問題を揺るがす新たな火種となっている。

エーレンフェストの次期領主問題

『第五部 女神の化身6』におけるエーレンフェストの次期領主(アウブ)問題について、ローゼマインの王族への養女入り決定に伴う前提の崩壊と、領主一族それぞれの選択、そして派閥への影響を解説する。

ローゼマインの王の養女入りと婚約解消

  • 領主会議において、ローゼマインがグルトリスハイトに最も近い次期ツェント候補であることが判明した。
  • 国政の危機を打開したい王族の思惑により、彼女を王の養女として迎え入れることが決定された。
  • これに伴い、ジルヴェスターとの養子縁組は1年後に解消されることとなり、同時にヴィルフリートとの婚約も白紙に戻ることが確定した。
  • この決定により、ヴィルフリートを次期アウブとする前提が完全に崩れ去ることとなった。

ヴィルフリートの苦悩からの解放と新たな道

  • ヴィルフリートにとって、ローゼマインとの婚約は、優秀な彼女をエーレンフェストに繋ぎ止めるための領主候補生としての義務であった。
  • しかし、最大派閥となったライゼガング系貴族からは「血筋も能力もローゼマインの方が次期アウブに相応しい」と否定され続け、常にフェルディナンドと比較される状況に強い苦痛を感じていた。
  • 彼は過去に自ら婚約解消と次期アウブ辞退を直談判したこともあったが、当時は領地情勢を危惧したジルヴェスターによって却下されていた。
  • 婚約解消が決まったことで、彼は次期アウブの座から降り、ライゼガング系を掌握するという重い責任から解放された。
  • ジルヴェスターからは、ボニファティウスのように領主候補生として領地を支える、他領へ婿に出る、ギーベになる、あるいは騎士団長を目指すなど、自由に自分の生き方を選ぶように諭され、ヴィルフリートもそれを受け入れた。

シャルロッテの決意と「中継ぎのアウブ」

  • ヴィルフリートが次期アウブから退いたことで、シャルロッテに新たな選択肢が生まれた。
  • 彼女は、ローゼマインがこれまでもたらしたエーレンフェストの新しい体制や変化(印刷業、流行、教育など)を古い考えの大人たちから守り、後退させないために、自らが次期アウブを目指す決意を固めた。
  • 自身は大胆な発展よりも調整や補佐が得意だと自己分析しており、メルヒオールやこれから生まれるフロレンツィアの子供など、次代の発展型アウブが育つまでの中継ぎとしての役割を担うつもりである。
  • 今後5年間の他領との婚姻制限を利用して他領から婿を迎え、新しい考え方を取り入れることで、ライゼガング系貴族の極端な思想を和らげようと考えている。

メルヒオールの選択

  • まだ洗礼式を終えたばかりのメルヒオールは、次期アウブを目指すかどうかについて「成人してから考える」と答えた。
  • 現在はローゼマインから引き継ぐ神殿長の業務を最優先とし、神事を通じてエーレンフェストを支えることに専念する道を選んだ Lights。

第一夫人フロレンツィアの危うい立場とローゼマインの支持

  • 婚約解消によって最も政治的立場が不安定になったのは、第一夫人のフロレンツィアである。
  • これまでは実子ヴィルフリートが次期領主に内定しており、ライゼガングの血を引くローゼマインがその第一夫人となることで派閥の支持を得られるという盤石な前提があったため、第二夫人にブリュンヒルデを迎えても問題なかった。
  • しかし前提が崩れた今、もしブリュンヒルデに子供が生まれれば、ライゼガング系貴族がこぞってそちらを次期アウブに推し、フロレンツィアの立場が著しく脅かされる可能性が高まった。
  • この政治的影響を察したローゼマインは、調整役を担うシャルロッテや第一夫人であるフロレンツィアの立場を強化し、彼女たちを全面的に支持する行動をとる決意を固めた。

ライゼガング古老の暴走と背後の暗躍

  • ヴィルフリートの婚約解消の事実を知らないライゼガングの古老たちは、ローゼマインが中央神殿に出されるという噂を真に受け、ジルヴェスター不在の城に押しかけて「ローゼマインを次期アウブにしろ」と抗議した。
  • しかし、ローゼマインとヴィルフリートに「神事を軽視するならライゼガングで神事を行わない」と反論されて論破され、最終的にギーベ・ライゼガングが謝罪する事態となった。
  • 実はこの騒動の裏には、ヴィルフリートの変更を狙う名捧げ側近バルトルトの暗躍だけでなく、フロレンツィアと側近レーベレヒトの謀略が隠されていた。
  • 彼らは、増長しすぎたライゼガングの力を削ぐために、アウブ不在のタイミングを狙ってわざと古老たちを煽動して暴走させ、失態を演じさせる計画を立てていた。

まとめ
ローゼマインの王族入り決定は、ヴィルフリートを重圧から解放した一方で、シャルロッテの覚悟を促し、フロレンツィアの立場を揺るがすなど、エーレンフェストの次期領主を巡る人間関係と派閥の力学に大きな転換をもたらした。領主一族のそれぞれの選択や、水面下で進む派閥の暗闘は、エーレンフェストの未来の体制を大きく揺るがす重要な転換点となっている。

側近たちの進退と忠誠

『第五部 女神の化身6』において、ローゼマインが1年後に王の養女として中央へ移動することが決定したことに伴い、彼女の側近たちは中央へ同行するか、エーレンフェストに残留するかという重大な進退 of 選択を迫られた。彼らの決断には、それぞれの家庭の事情や立場、そして主であるローゼマインへの強い忠誠心が表れている。

同行が確定した名捧げ組と強引な忠誠
未成年が他領へ移動するには親の許可が必須だが、以下の4人は親の意思に関わらず同行が確定した。

  • ローデリヒ
  • マティアス
  • ラウレンツ
  • グレーティア
    ローゼマインは一生面倒を見る覚悟を持って名を受けたとして、彼らを見捨てることはなかった。
    外向きには現状維持を装うなかで、予想外の形で同行を決めたのがハルトムートとクラリッサである。ハルトムートは、ローゼマインからの無条件の信頼を盾に、神殿や印刷業を守るためにエーレンフェストに残されることを危惧し、強引に名捧げを行って同行を確定させた。クラリッサもそれに追随し、婚約者同士で同じ主に名を捧げるという常識外れな方法でローゼマインへの狂信的な忠誠を示した。

主の生活を守るための決断(リーゼレータ)
側仕えの同行者が見習いのグレーティアだけになるという心許ない状況の中、熟練の側仕えであるリーゼレータの存在は不可欠であった。しかし、彼女の同行には以下のような障壁が存在した。

  • リーゼレータは跡取り娘であり、ヴィルフリートの側近トルステンと婚約していたため、最初は同行を諦めていた。
  • 実母エルヴィーラが裏で根回しを行い、リーゼレータの父を説得して跡取りの座を譲らせ、価値観の合わなかったトルステン側から婚約解消を申し出るように仕向けた。
  • ローゼマイン自身が家族の見守る中で一緒に来てほしいと必死に懇願する公開告白を行ったことで、リーゼレータは筆頭側仕えとして同行する決意を固めた。

騎士としての忠誠
護衛騎士たちも主を守るために決断を下した。

  • アンゲリカ:考えることが苦手な彼女は、リーゼレータに中央騎士団の方が強いと勧められたことで即座に同行を決めた。
  • コルネリウスとレオノーレ:王族や中央騎士団の不穏な動向を見て、ローゼマインを無防備に送り出すわけにはいかないと同行を希望した。エルヴィーラも彼らの決断を強く後押しした。

エーレンフェストに残留する者たちの忠誠
様々な事情からエーレンフェストに残る道を選んだ者たちも、それぞれの形でローゼマインへの忠誠を誓っている。

  • ブリュンヒルデ:アウブの第二夫人となるため残留が確定している。ローゼマインが広めた下町の流行や職人たちを守り、エーレンフェストを発展させるという重大な役割を託された。
  • フィリーネとダームエル:フィリーネは、孤児院に残ることを選んだ弟コンラートを見守るため、成人するまでの間、中継ぎの孤児院長として神殿に残る道を選んだ。彼女はダームエルに保護されるだけの存在を卒業し、自立した女性となって将来自分からダームエルに求婚したいと決意している。ダームエルもまた、神殿や印刷業、そしてフィリーネを守るためにエーレンフェストへの残留を決め、彼女の成長を待つことにした。
  • ユーディット:親からの結婚話もあり、未成年ゆえに許可が下りないため残留を決めた。ローゼマインから成人して中央へ来てくれるならば大歓迎と慰められ、それまではブリュンヒルデを支えることを約束した。

繋がりを示す紋章入り魔石
ローゼマインが中央へ移動した後、残された側近や下町の専属たちが主に捨てられたと見なされ、他の領主一族から無理な引き抜きや冷遇を受ける危険性があった。その対策として、ローゼマインは以下のような対応を行った。

  • 自身のローゼマイン工房の紋章を刻んだ魔石を彼らに配った。
  • これは、離れていても自分が彼らの庇護者であり、主であることを明確に示すためのものである。
    この対応は、側近たちに対する彼女なりの深い愛情と責任感の表れであった。

まとめ
ローゼマインの中央移動に伴う側近たちの進退の選択は、単なる同行や残留の決定にとどまらず、それぞれの覚悟と忠誠心の形を示すものとなった。名を捧げて主と共に未知の環境へ飛び出す者、主の基盤や残された人々を守るために領地に残る者、それぞれが主を深く慕い、その未来を支えようとしている。ローゼマインが配った紋章入り魔石は、離れても変わらない強い絆の象徴であり、激動の未来へ向かう彼らの一枚岩の結束を物語っている。

領地間の魔力供給と統治

『第五部 女神の化身6』において描かれる、ユルゲンシュミットにおける領地間の魔力供給と統治の現状、および各領地が負っている負担について解説する。

グルトリスハイト不在による統治의 限界
現在のユルゲンシュミットは、ツェント(王)がグルトリスハイトを持たないまま統治を行っている。そのため、以下のような深刻な限界を迎えている。

  • 領地の境界線を引き直すことや、廃領地に新しい礎を設置すること、国境門の開閉を行うことができない。
  • 政変から10年以上が経過しても真の事後処理が終わらず、王族が礎のない土地へ直接魔力を供給し続けることで何とか統治を維持しようとしてきた。
  • 王族の深刻な魔力不足により王宮の魔術具が崩壊し始めるなど、その統治方法はすでに限界を迎えている。

勝ち組の大領地による廃領地の共同管理
ツェントが廃領地の礎を再設置できないため、政変の勝ち組となった大領地が手分けをして廃領地を共同管理している。その現状と課題は以下の通りである。

  • 具体的には、クラッセンブルクが旧ザウスガースを、ダンケルフェルガーとアーレンスバッハが旧ベルケシュトックを管理している。
  • 礎がない土地に魔力だけを注ぎ続ける管理方法は非常に魔力負担が重く、長期間に及ぶことで各領地を疲弊させている。
  • 特に、アーレンスバッハが管理する旧ベルケシュトックは、与えられる魔力が少なくて困窮している状態である。

中央(王族)支援による各領地の疲弊
廃領地の土地管理を行っていない領地においても、中央を支えるための負担により疲弊が進んでいる。

  • 大領地ドレヴァンヒェルは、王族を支えるために自領から多数の上級貴族を中央へ差し出しており、その結果として自領内の上級貴族が不足するという問題を抱えている。
  • 王族と婚姻関係にあるギレッセンマイアーやハウフレッツェといった領地も、現在の王族を支えるために多大な負担を強いられている。

エーレンフェストへの新たな負担
これまで中立領地であったエーレンフェストも、領地順位の上昇に伴って勝ち組領地として扱われることになった。

  • 勝ち組になるということは、他領と同様にユルゲンシュミット全体を支えるための負担を負うことを意味する。
  • エーレンフェストは、グルトリスハイトに最も近い次期ツェント候補であるローゼマインを王の養女として中央へ差し出すという形で、国への負担(協力)を求められることになった。

ランツェナーヴェにおける魔力供給と統治
他国であるランツェナーヴェも、ユルゲンシュミットと根底を同じくする統治の仕組みと問題を抱えている。

  • ランツェナーヴェは、過去にユルゲンシュミットから離反した王族がグルトリスハイトを用いて何もない土地に礎を作り、魔力で満たして作り上げた街である。
  • そのため、ユルゲンシュミットと同様に礎の魔術への魔力供給が不可欠である。
  • シュタープを持つ者が礎の魔術を継承し、魔力を供給し続けなければ国(街)が崩壊してしまうという問題を抱えている。

まとめ
ユルゲンシュミットにおける統治と魔力供給の現状は、グルトリスハイトの不在によって構造的な限界を迎えている。勝ち組の大領地による廃領地の共同管理や中央への人材拠出は各領地を深刻に疲弊させており、順位を上げたエーレンフェストもその負担の輪に組み込まれることとなった。他国であるランツェナーヴェも含め、魔力供給に依存する統治体制の維持は、国全体にとって極めて過酷な課題となっている。

最高品質の魔紙研究

『第五部 女神の化身6』において描かれる、ローゼマインたちによる「最高品質の魔紙研究」について解説する。この研究は、フェルディナンドからの困難な要求に応えるため、ローゼマイン、ハルトムート、クラリッサの三人によって図書館の工房で行われた。

研究の背景と目的

  • 研究の発端は、アーレンスバッハへ向かったフェルディナンドから最低三百枚の不燃紙(最高品質の魔紙)を要求されたことである。
  • 通常、最高品質の魔紙を作るには強い魔獣の皮(魔獣皮紙)を用いるが、三百枚もの高品質な魔獣素材を期限内に狩りで集めることは不可能であった。
  • そのため、平民が作った魔木紙(エイフォン紙やナンセーブ紙など)の品質を、調合によって最高品質まで引き上げるという方法がとられることになった。
  • 研究場所には、城のうるさい貴族を避けつつ、他領籍であるクラリッサも自由に出入りできる図書館の工房が選ばれた。

地道な実験と「金粉」の投入

  • 当初は、ドレヴァンヒェルとの共同研究を参考に、高品質な素材を少しずつ混ぜて不純物を抜いたり、属性を増やしたりする地道な調合が繰り返された。
  • しかし、品質は低品質から普通、あるいは中品質程度までしか上がらず、ローゼマインは心が折れそうになる。
  • それでも、エイフォン紙は滑らかな音を出し、ナンセーブ紙は破片が集まる動きが速くなるなどの成果は見られていた。
  • ハルトムートやクラリッサによれば、通常の文官には魔力が続かないほどの実験量を、ローゼマインは膨大な魔力に物を言わせて1日でこなしていたという。
  • そこでローゼマインは、さらに魔力を使って作成した純粋な魔力の塊である「金粉」を調合鍋に投入した。
  • その結果、魔紙は一気に全属性の高品質へと変化した。

高品質魔紙の問題点と「最高品質」の完成

  • 高品質になった魔紙に魔法陣を描こうとした際、ハルトムートやクラリッサのシュタープ(スティロ)では魔力が弾かれて書き込めないという問題が発生する。
  • 作製者であるローゼマインにしか使えない失敗作かと思われたが、別の検証の結果、名捧げによる主従の魔力の結びつきが影響している可能性が高いことが判明した。
  • その後、クラリッサの提案により、高品質になった三種類の魔紙をすべて調合鍋に入れて合成することになる。
  • 金粉の作成から合成まで、膨大な魔力と時間を費やした結果、ついに最高品質の魔紙が完成した。
  • この最高品質の魔紙は、誰のシュタープでも書き込めるうえに、魔力を流すだけで魔法陣が自動発動し、完全に燃え尽きることはなく、破片が勝手に集まって元の大きさに再生するという驚異的な性能を持っていた。

フェルディナンドによるレシピの改良

  • ローゼマインは完成した試作品と、その作製手順(レシピ)を消えるインクで書き記した手紙を、ジルヴェスター経由でアーレンスバッハのフェルディナンドへ送った。
  • フェルディナンドは葬儀期間中にもかかわらず徹夜で工房に籠もって研究し、ローゼマインのレシピを「魔力と費用の無駄が多すぎる」と酷評しつつも、自ら改良レシピを作成して送り返してきた。
  • 改良版のレシピは、高価な素材や魔力消費を大幅に抑えつつ品質を上げるものであり、ハルトムートたちのような上級文官でも調合の補助ができるレベルに改善されていた。
  • さらに、最も重要な最後の合成工程はフェルディナンド自身が行う仕様に変更されており、これにより必要な不燃紙の量も調整されたのである。

まとめ
最高品質の魔紙研究は、フェルディナンドからの過酷な要求をローゼマインの規格外の魔力と側近たちの協力によって成し遂げた、彼らの絆と技術の結晶である。完成した魔紙の驚異的な性能や、フェルディナンドによる即座のレシピ改良は、互いの高い能力と信頼関係を改めて証明するものとなった。この研究成果は、今後の物語における重要な展開を支える基盤となっている。

ライゼガング古老の暴走

『第五部 女神の化身6』における「ライゼガング古老の暴走」について解説する。この騒動は、アウブであるジルヴェスターがアーレンスバッハの葬儀で不在のタイミングを狙い、ライゼガング系の古老たちが城に押しかけて起こした事件である。

暴走の発端と古老たちの要求
領主会議においてローゼマインが王の養女になることが決定したが、この事実はエーレンフェスト内でも一部の者にしか知らされておらず、外向きには「現状維持」とされていた。しかし、「ローゼマインが中央神殿の神殿長に出される」という噂が流れ、それを真に受けたライゼガングの古老たちが城へ押し寄せた。彼らは妊娠中の第一夫人フロレンツィアに対し、以下の要求を強硬に主張した。

  • ローゼマインの中央神殿行きを阻止して次期アウブに据えること
  • 代わりに犯罪者の身内であり過去に罪を犯したヴィルフリートを神殿へ送ること

ヴィルフリートとローゼマインの反撃
フロレンツィアを庇うため、ヴィルフリートとローゼマインが彼らの前に立ちはだかった。その際、以下のような痛烈な反撃が行われた。

  • ヴィルフリートは「ローゼマインが中央神殿に行く予定はない」と噂を完全に否定した
  • ローゼマインは「祈念式で神事を貶める発言をしたのだから、ライゼガングで神事を行わなくなるかもしれない」「現在は他領からの食料輸入も可能になり、ライゼガングの収穫に依存しなくてもよい」と、食糧庫としての彼らの絶対的な地位を揺るがす脅しをかけた
  • さらにヴィルフリートが「神事を行わないなら、自分たちで神殿に入って神事を行えばいい」と追撃したことで、古老たちは完全に言葉を失った

ギーベの謝罪と古老の真意
その後到着したギーベ・ライゼガングが謝罪したことで、事態は収束に向かう。

  • ギーベの説明によれば、古老たちの過激な行動は、ヴェローニカ時代に神殿に押し込められたフェルディナンドのように、自分たちの希望であり多くの恩恵をもたらしたローゼマインが不遇な扱いを受けるのではないかと本気で心配したゆえの暴走であった
  • フロレンツィアは彼らの突然の来訪を不問にする代わりに、今後はアウブに寄り添い協力するよう約束させた

騒動の裏側と黒幕の存在
後日、ハルトムートの調査によってこの騒動の裏側が判明する。

  • ヴィルフリートに名を捧げた側近バルトルトが噂を流して古老たちを煽っていた
  • 実はフロレンツィアと側近のレーベレヒトが、意図的に古老たちを暴走させていた
  • 旧ヴェローニカ派の粛清後に最大派閥となり増長していたライゼガング系の影響力を、アウブ不在時に失態を演じさせることで削いでおくというフロレンツィアたちの謀略であった

まとめ
ライゼガング古老の暴走は、表面上はローゼマインへの過剰な心配と忠誠心から引き起こされた騒動であった。しかしその本質は、ヴィルフリートの側近による扇動や、増長するライゼガング系の勢力を抑制しようとするフロレンツィアたちの高度な政治的謀略が絡み合った複雑な事件である。この騒動を通じて領主一族の結束や新たな派閥の力学が浮き彫りとなり、粛清後の領内の体制を揺るがす重要な転換点となった。

第五部 女神の化身5レビュー
第五部 女神の化身
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第五部 女神の化身7レビュー

登場キャラクター

中央・王族・貴族院

ジギスヴァルト

王族の第一王子である。ローゼマインの成人後の婚約者予定として名が挙がる。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。次期王。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハの葬儀の事情聴取を主導し、エーレンフェストへの疑念を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

中央騎士団長

中央の騎士を束ねる人物である。フェルディナンドと意見を対立させる場面がある。

・所属組織、地位や役職
 中央・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハの葬儀で暴れた騎士を即座に処分した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

王族

ユルゲンシュミットを統治する一族である。魔力不足に直面している。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインを王の養女にするため、エーレンフェストへ様々な条件を提示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 グルトリスハイトを手に入れるため、次期ツェント候補を求めている。

エーレンフェスト

ジルヴェスター

エーレンフェストの領主である。ローゼマインの養父として彼女を支える。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 王族との交渉でエーレンフェストの利益となる条件を引き出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインの王の養女入りを受け入れ、領地内の調整に奔走している。

フロレンツィア

ジルヴェスターの第一夫人である。シャルロッテ達の母である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 城へ押し掛けたライゼガングの古老達に毅然と対応した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 無事に女児を出産する。

ローゼマイン

本作の主人公である。エーレンフェストの領主の養女である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主候補生。神殿長。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドの連座回避や隠し部屋の確保を王族に交渉した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 次期ツェント候補と判明し、一年後に王の養女になる予定である。

ヴィルフリート

ジルヴェスターの息子である。ローゼマインの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 婚約解消の決定を受け入れ、新たな進路を模索し始める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 次期アウブの座を降りることになる。

シャルロッテ

ジルヴェスターの娘である。ローゼマインを慕っている。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインが去った後のエーレンフェストを支える決意を固めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 次世代のアウブが育つまでの中継ぎ領主を目指す。

メルヒオール

ジルヴェスターの息子である。洗礼式を終えたばかりの少年である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの後任として神殿長の業務を引き継ぐ準備を始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ボニファティウス

カルステッドの父である。ローゼマインの祖父である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主一族。
・物語内での具体的な行動や成果
 青色見習い達の訓練を行い、ダームエルを預かる約束をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインの王の養女入りに強く反対していた。

カルステッド

エーレンフェストの騎士団長である。ローゼマインの対外的な父親である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジルヴェスターの護衛としてアーレンスバッハの葬儀へ同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エルヴィーラ

カルステッドの第一夫人である。ローゼマインの実質的な母親である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの中央移動準備を主導し、リーゼレータの同行を後押しした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインの良き理解者として彼女を支える。

コルネリウス

ローゼマインの護衛騎士である。エルヴィーラの息子である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 グレッシェルの広域ヴァッシェンに参加し、中央への同行を決意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アンゲリカ

ローゼマインの護衛騎士である。深く考えることを避ける傾向がある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 中央騎士団の訓練に参加することを楽しみにし、同行を即決した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レオノーレ

ローゼマインの護衛騎士である。コルネリウスの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 グレッシェルのエントヴィッケルンで支援活動を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 コルネリウスに従って同行する予定である。

ユーディット

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 収穫祭でキルンベルガの対応を丁寧に行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 未成年で親の許可が得られないため、エーレンフェストへ残留する。

ダームエル

ローゼマインの護衛騎士である。平民との連絡役もこなす。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・下級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーレンフェストに残留し、下町や神殿の連絡役を引き受ける決断をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ボニファティウスの下で訓練を続けることになった。

ハルトムート

ローゼマインの文官である。彼女への信仰心が強い。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級文官。神官長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインに名を捧げ、中央への同行を確定させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マティアス

ローゼマインの護衛騎士である。旧ヴェローニカ派出身である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 トロンベ狩りに同行し、平民が魔木を狩る姿に驚いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 名を捧げているため、中央へ同行する。

ラウレンツ

ローゼマインの護衛騎士である。マティアスの友人である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 弟のベルトラムが貴族に戻るにあたり、現実を教え諭した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 名を捧げているため、中央へ同行する。

フィリーネ

ローゼマインの文官見習いである。コンラートの姉である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・下級文官見習い。青色巫女見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 弟のコンラートを見守るため、成人するまでエーレンフェストに残る決断をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 中継ぎの孤児院長に就任する。

ローデリヒ

ローゼマインの文官見習いである。旧ヴェローニカ派出身である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 中央で必要になる店舗の規模や仕事道具を書き出す作業を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 名を捧げているため、中央へ同行する。

ミュリエラ

エルヴィーラに仕える文官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 エルヴィーラの後ろに控え、文官として仕事を手伝っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グレーティア

ローゼマインの側仕え見習いである。旧ヴェローニカ派出身である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハから届いた布の確認など、身の回りの世話をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 名を捧げているため、中央へ同行する。

オティーリエ

ローゼマインの側仕えである。レーベレヒトの妻である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 リーゼレータを筆頭側仕えにするための教育を引き受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エーレンフェストへ残留する。

ブリュンヒルデ

ローゼマインの側仕えである。アウブの第二夫人となる予定である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 グレッシェルのエントヴィッケルンのために奔走し、広域魔術の準備を整えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エーレンフェストへ残留し、流行や産業を発展させる役目を担う。

リーゼレータ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 トルステンとの婚約を解消し、ローゼマインと共に中央へ向かうことを決意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインの筆頭側仕えとなる予定である。

トルステン

ヴィルフリートの側近である。リーゼレータの元婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 粛清された親族の減刑を求めるため、ボニファティウスへの口利きを要求した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 リーゼレータとの婚約を解消される。

ニコラウス

カルステッドの息子である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・青色見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 冬支度についてローゼマインに相談した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レーベレヒト

フロレンツィアの文官である。ハルトムートの父である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ライゼガングの古老達をわざと暴走させる謀略をフロレンツィアと共に実行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ブリギッテ

イルクナーの領主一族である。ローゼマインの元護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの依頼で魔紙を準備し、城へ送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ラザファム

図書館にいるフェルディナンドの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・下級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハの隠し部屋へ送るための素材や調合道具をまとめた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギーベ・ライゼガング

ライゼガングを治める領主である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・ギーベ。
・物語内での具体的な行動や成果
 古老達の暴走を謝罪し、今後の協力を約束した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フラン

ローゼマインの筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 青色見習いの収穫祭参加に向けた根回しや準備を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 メルヒオールへ仕える予定である。

ザーム

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿長交代に対する孤児院の不安をローゼマインに伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 メルヒオールへ仕える予定である。

モニカ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 フィリーネへ孤児院の資金の流れを説明し、引き継ぎ作業を補助した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フィリーネの側仕えとなる予定である。

ニコラ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインから紋章入りの魔石を受け取り喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フィリーネの側仕えとなる予定である。

ギル

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 キルンベルガへの出張から戻り、報告を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 三年後に中央へ同行する予定である。

フリッツ

神殿の側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 タウの実を集め、トロンベ狩りの準備を取り仕切った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヴィルマ

孤児院の管理を担う側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの専属絵師になることを選択した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

デリア

孤児院で生活する少女である。ディルクの姉代わりである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディルクが貴族になることに泣いて反対したが、最終的には受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ディルク

孤児院で育つ少年である。身食いの魔力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 神殿・孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院を守るための権力を求め、魔術具を得ることを選択した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 貴族として洗礼式を受けることになる。

コンラート

フィリーネの弟である。

・所属組織、地位や役職
 神殿・孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族に戻ることを拒否し、自活できる青色神官を目指す決意を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ベルトラム

孤児院で生活する少年である。旧ヴェローニカ派の出身である。

・所属組織、地位や役職
 神殿・孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の生活に戻れない現実を受け入れ、メルヒオールへ名を捧げることを望んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 貴族として洗礼式を受けることになる。

カンフェル

エーレンフェストの青色神官である。

・所属組織、地位や役職
 神殿・青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 春の成人式の準備を行い、収穫祭では見習いの指導を任された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フリターク

エーレンフェストの青色神官である。

・所属組織、地位や役職
 神殿・青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 コンラートから憧れの存在として名前を挙げられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

トール

ハッセの灰色神官である。

・所属組織、地位や役職
 小神殿・灰色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 不要になった家具を馬車に運ぶ作業を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

リック

ハッセの灰色神官である。

・所属組織、地位や役職
 小神殿・灰色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 トールと共に家具の運び出し作業を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

リヒト

ハッセの町長である。

・所属組織、地位や役職
 下町・町長。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿長の交代について説明を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ノーラ

ハッセの灰色巫女である。

・所属組織、地位や役職
 小神殿・灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 足りない物品の補充についてローゼマインと話をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マルテ

ハッセの灰色巫女である。

・所属組織、地位や役職
 小神殿・灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 小神殿がなくならないと聞き、安堵した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギュンター

ローゼマインの対外的な死前の父親である。

・所属組織、地位や役職
 下町・兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
 家族ごと中央へ移動する決意をし、ルッツの後押しをした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エーファ

ローゼマインの対外的な死前の母親である。

・所属組織、地位や役職
 下町・染色職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 トゥーリの成人式の衣装用に、グラデーションの布を染め上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

トゥーリ

ローゼマインの対外的な死前の姉である。ルッツの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 下町・髪飾り職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 成人式を迎え、ローゼマインの祝福の暴走に怒りの視線を向けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ベンノ

プランタン商会の店主である。

・所属組織、地位や役職
 下町・プランタン商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの中央移動に伴い、商会を妹に譲って同行する準備を始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マルク

プランタン商会の側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 下町・プランタン商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 在庫のトロンベ紙をかき集め、ローゼマインの元へ届けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 中央へ同行する予定である。

ルッツ

プランタン商会の商人見習いである。トゥーリの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 下町・プランタン商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 キルンベルガの出張から戻り、両親を説得して中央へ同行する決意を固めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

コリンナ

ギルベルタ商会の店主である。

・所属組織、地位や役職
 下町・ギルベルタ商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 青色見習い向けの衣装の仕立て方を購入し、ローゼマインからの紋章入り魔石を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フーゴ

ローゼマインの専属料理人である。

・所属組織、地位や役職
 城・専属料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハから届いた魚の選別や、新しいレシピの試作を任された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家族と共に中央へ同行する予定である。

ザック

鍛冶職人である。グーテンベルクの一員である。

・所属組織、地位や役職
 下町・鍛冶職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 星結びの儀式で結婚し、他領への移住にも前向きな姿勢を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

インゴ

木工工房の親方である。グーテンベルクの一員である。

・所属組織、地位や役職
 下町・木工職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーレンフェストに自分の工房を構えているため、移住を断念した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ディモ

インゴの弟子である。

・所属組織、地位や役職
 下町・木工職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 インゴの代わりに中央へ移住し、新しい工房を持つことを希望した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヨゼフ

インク工房の職人である。ハイディの夫である。

・所属組織、地位や役職
 下町・インク職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハイディの移住を止めることを諦め、同行を受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ホレス

インク工房の職人である。

・所属組織、地位や役職
 下町・インク職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヨゼフの代わりにインク工房の跡取りとなることが決まった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ビアス

インク工房の親方である。

・所属組織、地位や役職
 下町・インク工房親方。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハイディとヨゼフを中央へ送り出し、ホレスを跡取りに据えることを了承した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヨハン

鍛冶職人である。グーテンベルクの一員である。

・所属組織、地位や役職
 下町・鍛冶職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 親方の孫娘との婚約が破談になり、中央への移住を決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 シャルロッテの装飾品の作成を依頼される。

カルラ

ルッツの母親である。

・所属組織、地位や役職
 下町。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルッツの中央同行を寂しがりながらも後押しした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ライゼガング系の貴族

旧ヴェローニカ派失脚後に力を持つ派閥である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴィルフリートを次期アウブから下ろし、ローゼマインを擁立しようとしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ライゼガングの古老達

ライゼガング系の中でも発言力の強い老人達である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインが中央神殿へ送られるという噂を信じ、城へ押しかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

旧ヴェローニカ派の貴族

ヴェローニカを支持していた派閥の者達である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 粛清により連座処分を受けたが、未成年の子供達は名捧げによって救済された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グーテンベルク達

印刷や製紙に関わる職人達の総称である。

・所属組織、地位や役職
 下町・職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインから三年後の移住について打診を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

プランタン商会

植物紙や本を専門に扱う商会である。

・所属組織、地位や役職
 下町・商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 グーテンベルクの受け入れ準備のため、先行して中央へ移住する計画を立てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギルベルタ商会

服飾を扱う商会である。

・所属組織、地位や役職
 下町・商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインから専属や家族用の紋章入り魔石を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アーレンスバッハ

ゲオルギーネ

アーレンスバッハの第一夫人である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 事情聴取でジルヴェスターから中央移籍者との繋がりを疑われた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ディートリンデ

アーレンスバッハの次期アウブである。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・次期アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ランツェナーヴェの使者レオンツィオに惹かれ、フェルディナンドとの婚約を疎んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 グルトリスハイトを手に入れて次期ツェントになろうと目論んでいる。

レティーツィア

アーレンスバッハの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドの厳しい教育を受けながら、ローゼマインからの贈り物を心の支えにしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フェルディナンド

ローゼマインの元後見人である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・ディートリンデの婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果
 隠し部屋を工房に改造し、ローゼマインが送った魔紙のレシピを徹夜で改良した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ユストクス

フェルディナンドの側近である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側近。
・物語内での具体的な行動や成果
 レティーツィアへシュミルの魔術具の使い方を教え、アーレンスバッハの調味料を送るよう助言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エックハルト

フェルディナンドの側近である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側近。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドの隠し部屋を準備する際、徹底的な毒の検出を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マルティナ

ディートリンデの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ランツェナーヴェの使者を迎えるため、主の指示がなくても準備を進めようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ランツェナーヴェ

レオンツィオ

ランツェナーヴェの王の孫である。

・所属組織、地位や役職
 ランツェナーヴェ・使者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディートリンデに甘い言葉をかけ、グルトリスハイトの在り処を教える代わりに自身を伴侶にするよう誘惑した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ランツェナーヴェの使者

ランツェナーヴェからアーレンスバッハへ訪れた者達である。

・所属組織、地位や役職
 ランツェナーヴェ。
・物語内での具体的な行動や成果
 貿易と姫の受け入れについて交渉するため、アーレンスバッハへ到着した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ダンケルフェルガー

クラリッサ

ハルトムートの婚約者である。ダンケルフェルガー籍である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・上級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインに名を捧げ、魔紙の調合やグレッシェルの広域ヴァッシェンに貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

第五部 女神の化身5レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身7レビュー

展開まとめ

プロローグ

領主会議後の不安

領主会議を終えたフロレンツィアは、妊娠中の身体を気遣いながらも、領地へ戻る前に整理すべき問題の多さに頭を悩ませていた。

神具から夜空が現れた星結びの儀式、ローゼマインの次期ツェント候補発覚、王族との交渉、貴族院での奉納式など、今年の領主会議は異例尽くしだったのである。

その中でも最も衝撃的だったのは、ヴィルフリートとローゼマインの婚約解消だった。

ヴィルフリートの危うい立場

婚約解消によってヴィルフリートは次期領主候補から外れることになる。フロレンツィアは、周囲に担がれやすい彼の性格を考え、今後暗殺や幽閉すらあり得ると危惧していた。

さらに、彼はいまだに解任済みのオズヴァルトと密かに連絡を取り続けていた。名捧げ側近バルトルトが手紙を仲介しているという報告まで届いている。

フロレンツィアは、側近との距離感や扱い方について教材が必要だと考え始めていた。

ジルヴェスターとの密談

フロレンツィアは着替えを済ませると、ジルヴェスターの部屋へ向かい、盗聴防止の魔術具を使って二人きりで話し合いを始めた。

ジルヴェスターは、ローゼマインが次期ツェント候補であり、王の養女になるという事態へ改めて驚きを漏らす。

グルトリスハイト不在による国政混乱、廃領地管理の負担、そして王宮魔術具崩壊などを考えれば、王族がローゼマインを取り込もうとするのは当然だった。

フロレンツィア自身も、ユルゲンシュミット崩壊が近付いている現状を理解していたため、王族側の焦りには納得していた。

ローゼマインの条件交渉

普通の領主候補生ならば国の危機を優先して王族へ従っただろう。しかしローゼマインは、エーレンフェストやフェルディナンドを最優先し、多くの条件を提示した。

王族に条件を付けるという発想自体、フロレンツィアには思い浮かばなかったため、その交渉力には感謝すら抱いていた。

一方で、フェルディナンドのアーレンスバッハ移動が前倒しされなければ、ローゼマインがここまで王族へ強硬にならなかったとも考えている。

ローゼマインの未熟さ

フロレンツィアは、ローゼマインには為政者として視野の狭さがあると感じていた。

ユルゲンシュミット全体より、自分に近しい者を優先する傾向が強いのである。フェルディナンドを最優先にする姿勢も、その延長線上にあった。

しかしジルヴェスターは、それは「視野が狭い」のではなく、「自分の手が届く範囲へ全力を尽くす性格」なのだと分析する。

そのため、中央へ移れば中央そのものを大切に思うようになるだろうと考えていた。

教育不足への懸念

フロレンツィアは、ローゼマインが神殿育ちであり、貴族女性としての常識や領主一族教育が不足している点を強く心配していた。

だがローゼマイン本人は神殿業務を優先し、城での教育を受けたがらなかったため、十分な矯正ができなかったのである。

今後中央へ移動すれば、その教育不足が「神殿育ちだから」で済まされず、粗として扱われる可能性が高いと危惧していた。

ローゼマインの引き継ぎ問題

ローゼマインの移動による影響は極めて大きかった。神殿、印刷業、下町との関係など、彼女が担っている仕事は広範囲に及んでいたからである。

フロレンツィアは、シャルロッテやヴィルフリートへ何か仕事を引き継がせられないか考えていた。

しかしジルヴェスターは、シャルロッテには出産後のフロレンツィア補佐を任せる必要があり、余裕はないと判断していた。

また、ヴィルフリートには今後も領主一族として自分の補佐をさせる方針を示す。婚約解消後も、領主一族の義務は消えないと考えていたのである。

婚約解消への複雑な感情

フロレンツィアは、もしヴィルフリートとローゼマインの間に恋情が芽生えていたなら、もっと穏便な未来もあったのではないかと考えていた。

例えば、王族入りしたローゼマインへヴィルフリートを婿入りさせる、あるいは王族問題解決後にエーレンフェストへ戻すなどの交渉材料になった可能性があるからである。

しかし実際には、ヴィルフリートは婚約解消を望み、ローゼマインは婚約へ無関心で、王族はローゼマインを手放すつもりがなかった。婚約継続の余地は最初から存在しなかった。

ライゼガング系への警戒

ジルヴェスターは、ローゼマイン移動後にはライゼガング系貴族の騒ぎも徐々に収束すると楽観視していた。

だがフロレンツィアは、婚約解消によって立場を失ったヴィルフリートが貴族達から疎まれ続ける可能性を懸念していた。

そのため、ローゼマイン移動前にライゼガング古老達の影響力を少し削いでおく必要があるかもしれないと考え始める。

情報秘匿と移動準備

最終的に二人は、ローゼマインの王族入り情報は移動直前まで伏せる方針を確認した。

引き継ぎに必要な者へだけ個別で知らせ、情報漏洩を防ぐのである。

また、移動準備は実母エルヴィーラへ任せることが決まった。ローゼマイン本人にとっても、養母より実母の方が気安く過ごせるだろうと判断されたのである。

フロレンツィアは、ローゼマインの移動準備、ヴィルフリート達の将来、アーレンスバッハ問題、出産準備など、山積みの課題を思い浮かべながら、お腹を撫でて静かに決意を固めるのだった。

領主会議の報告会(三年)

エーレンフェストへの帰還

ローゼマインが転移陣の間から出ると、シャルロッテやボニファティウス、留守番していた側近達が出迎えた。メルヒオールやヴィルフリートの姿もあり、既に戻っていた領主夫妻が談話している様子も見えていた。

ジルヴェスターは平然とした態度で、翌日に領主一族会議を行うと告げる。しかし実際には、ローゼマインが王の養女になる重大報告を行う予定だった。

ローゼマインは、周囲へ一切悟らせない領主らしい振る舞いに感心し、自身も平静を装って返事をする。

ボニファティウスの危険なエスコート

北の離れへ向かう際、ボニファティウスは自分がローゼマインをエスコートすると言い出した。

しかし、過去に何度も祖父の力加減で危険な目に遭っていたため、コルネリウス達は本気で安全確認を始める。腰に回した手が崩れないか、ぶら下がってまで検証する異様な光景となった。

周囲が笑いを堪える中、最終的にローゼマインはボニファティウスの腕へつかまり、何とか「エスコート風」に見える形で歩くことになった。

ローゼマインは、自分の身長不足によって吊革につかまっているようにしか見えない現状を嘆きつつ、成長への願望を募らせていた。

留守中のエーレンフェスト

移動中、シャルロッテ達は留守番中の出来事を話した。

メルヒオールは洗礼式用の祝詞暗記へ追われており、ヴィルフリートとシャルロッテがそれを手伝っていた。さらに、ボニファティウス達と共に礎への魔力供給も行っていたらしい。

メルヒオールは神殿で奉納経験を積んでいるため、魔力供給への適応も早かった。ローゼマインは、そんな日常の話を聞きながら久し振りのエーレンフェスト空気を感じていた。

側近達への配慮

自室へ戻ると、ローゼマインは領主会議へ同行した成人側近達へ休暇を与え、未成年側近達へ交代させた。

側仕えはグレーティア一人になってしまう問題があったが、リーゼレータが自主的に残留を申し出る。ローゼマインはその配慮を受け入れ、代わりに後日休暇を与える約束をした。

その後、ローゼマインはフィリーネやローデリヒから神殿の報告を受けたり、写本を読んだりしながら静かに過ごす。

一方で、側近全員へ王族入りの件を伝えるタイミングについて思案していた。

領主一族会議開始

翌日、領主一族と上層部を集めた報告会が始まった。今回特別だったのは、まだ貴族院入学前のメルヒオールまで出席を命じられていたことである。

ヴィルフリートは理由を探ろうとしたが、ローゼマインは「会議へ行けばわかります」とだけ答えた。王の養女入りと神殿長引き継ぎの話をここで明かすわけにはいかなかったのである。

会議室には領主一族と選抜された側近達が集まり、例年通り領主夫妻が入室した後、領主会議報告が開始される。

勝ち組領地としての負担

ジルヴェスターはまず、エーレンフェストの順位据え置きと、勝ち組領地扱い決定を報告した。

しかし同時に、勝ち組領地には重い負担も伴うと説明する。大領地は廃領地管理や中央支援のため、大量の魔力や人材を消耗しているのである。

エーレンフェストも今後はその役割を担わねばならず、来年正式発表される予定の負担が存在すると語られた。

その補償として、五年間の婚姻制限による人材流出防止と、子供用魔術具四十個提供が認められたことも発表される。

ローゼマインは、自分の王族入りが「エーレンフェストへの負担」という形で処理されていることを察していた。

神事改革と教育変化

続いて、奉納式実施、大人でも御加護再取得が可能になった件、次期ツェント候補問題など、神事関連の報告が続いた。

さらに、シュタープ取得年齢が三年生へ戻ること、それに伴う教育改革も発表される。御加護取得後の方が高品質なシュタープを得られるためである。

ローゼマインは、座学より実技部分の変更が中心になるだろうと説明し、過去教育課程についてはモーリッツへ確認するよう助言した。

また、聖典絵本や教育玩具の販売拡大によって、各領地の学力水準そのものが上昇する可能性にも言及する。

今後の問題

報告会では、アウブ・アーレンスバッハ葬儀への参加、ランツェナーヴェ姫来訪拒否、トルーク事件処理なども共有された。

ローゼマインは、フェルディナンドへ隠し部屋が本当に用意されているか、自分の目で確認できないことを残念に思っていた。

引き継ぎ準備、体力不足、護衛騎士事情などから、アーレンスバッハ行き許可は到底出ないと理解していたのである。

極秘会議への移行

一通りの報告を終えた後、ジルヴェスターは突如、側近達全員へ退室を命じた。

領主会議報告後に、側近すら排除した会議など前例がない。上層部達は動揺しながらも、命令に従って退室していく。

ローゼマインもハルトムートやコルネリウスへ退室を命じ、最後に領主一族だけが会議室へ残された。

事情を知るのは、ジルヴェスター、フロレンツィア、そしてローゼマインのみである。残されたヴィルフリート達は、何が始まるのか理解できず緊張した表情を浮かべていた。

婚約解消と未来の選択

王族入りの告知

領主一族だけが残された会議室で、ジルヴェスターは盗聴防止の魔術具を起動し、極秘会議を始めた。

そして、一年後にローゼマインが王の養女となり、成人後にはジギスヴァルトと婚約する予定だと告げる。

シャルロッテ達はすぐに言葉を失い、ヴィルフリートは固まったままジルヴェスターを凝視していた。メルヒオールは神殿長問題を思い浮かべ、小さく動揺する。

ジルヴェスターは、中央移動まで一年間の準備期間が与えられていること、その間は外向きには現状維持を装うことを説明した。グルトリスハイト関連は伏せられ、知らされるのは「王の養女になる」という事実だけだった。

ボニファティウスの激怒

最初に激しく反応したのはボニファティウスだった。領主候補生が中央へ移動するなどあり得ないと怒鳴り、ジルヴェスターへ詰め寄る。

しかしジルヴェスターは、ローゼマインとの養子縁組を解消すれば、彼女はカルステッドの娘である上級貴族へ戻るため問題ないと冷静に返した。

さらに、王命である以上拒否は不可能であり、その代わり複数の条件を取り付けたと説明する。

だがボニファティウスは、婚姻制限や子供用魔術具程度では、ローゼマインを差し出す対価として釣り合わないと激怒した。

そこでジルヴェスターは、フェルディナンドの連座回避と待遇改善も条件に含まれていることを明かす。しかも、それはローゼマイン自身が要求した条件だった。

フェルディナンドへの想い

ボニファティウスは、ローゼマインがフェルディナンドへ懸想しているのではないかと誤解する。

しかしローゼマインは、中央へ移ってもボニファティウスが自分を孫娘だと思い続けるように、自分もフェルディナンドを家族同然に思っているだけだと説明した。

本当はフェルディナンドをエーレンフェストへ返してほしいと王族へ頼んだこと、その方が領地問題の大半を解決できたことまで語る。

ボニファティウスは、自分の邪推を恥じて静かに座り直した。

中央行きへの本音

ボニファティウスは、ローゼマイン自身に中央へ行く忌避感がないのか尋ねた。

ローゼマインは即座に「ある」と答える。印刷工房も図書館も失い、自室へ図書室を作ることさえ渋られる環境へ向かうのだから、不満だらけだと本音を漏らした。

それでも、フェルディナンドも王命でアーレンスバッハへ向かった以上、自分だけ拒否はできないと受け入れていた。王の養女となることで、少しでもエーレンフェストへ恩返ししたいとも語る。

ヴィルフリートの本心

ジルヴェスターが「ヴィルフリートには勿体ないと言っていたではないか」と指摘すると、ヴィルフリートは皮肉な笑みを浮かべた。

彼は、ずっと周囲から「ローゼマインの方が優秀」「ローゼマインこそ次期アウブに相応しい」と言われ続けてきたと静かに語る。

さらに、自分にとってローゼマインとの婚約は義務だったとも明かした。エーレンフェストへローゼマインを繋ぎ止めるため、自分しか役目を果たせないと押し付けられていたのである。

しかし実際には、ライゼガング系貴族達から激しく否定され続けていた。ローゼマインの方が血筋も能力も相応しく、自分は白の塔へ入った犯罪者でしかないと言われていたのである。

婚約への苦痛

ヴィルフリートは、自分よりフェルディナンドを優先するローゼマインの夫として生きることは耐えられなかったと吐露する。

婚約者らしい贈り物をしろと言われても、どうせフェルディナンドと比較されるだけだと思い、何もできなかったのである。

ローゼマインは、自分が送った心配のオルドナンツさえ、彼を追い詰めていた可能性に気付き、内心で苦く反省していた。

ヴィルフリートは最終的に、ローゼマインがアウブになれば良いと考え、自ら婚約解消をジルヴェスターへ直談判していた。

しかしジルヴェスターは、婚約解消すればローゼマインは確実に王族や上位領地へ奪われ、さらにライゼガングの勢いが強まる時期だったため拒否したのである。

ライゼガング問題

ヴィルフリートは、ローゼマインがライゼガング系の姫でありながら、自分を支えてくれなかったことへ不満も漏らした。

しかしジルヴェスターは、神殿育ちのローゼマインには血族意識が薄く、本来その役目はボニファティウスやカルステッド、今後はブリュンヒルデが担うべきだと説明する。

それでもヴィルフリートは、自分がライゼガングから憎まれ続け、アウブを目指すことそのものを否定されてきた苦痛を吐き出した。

さらに、婚約解消後には白の塔幽閉すらあり得ると知り、将来への恐怖を爆発させる。

自由という提案

ジルヴェスターは、もし次期アウブにならないなら、ライゼガング対応は自分の責任ではないと語った。

領主候補生として残る、婿入りする、ギーベになる、騎士団長を目指す、新産業を興すなど、ヴィルフリートには様々な道があると示す。

ローゼマインも、今後一年間を「自分がどう生きたいか」を考える時間にしてはどうかと提案した。

兄妹としての関係

ヴィルフリートは、婚約者としてローゼマインと過ごすのは苦痛だったと認める。

するとローゼマインも、自分も婚約者らしい振る舞いを強制されることが辛かったと打ち明けた。二人とも、婚約者として接する方法がわからなかったのである。

しかし、兄妹としてなら問題なく過ごせるはずだとローゼマインは手を差し出した。

しばらく沈黙した後、ヴィルフリートはその手を握り返す。婚約者としては無理でも、妹としてなら自然に接することができると認めたのである。

側近達の選択

側近達への告知

ヴィルフリートとの話し合いを終えたローゼマインは、自室へ戻ると側近達を集め、自分が一年後に領主との養子縁組を解消し、王の養女として中央へ移動する予定であると告げた。

突然の話に多くの側近達が動揺する中、ハルトムートだけは予想していたような表情を浮かべる。彼は真っ先にヴィルフリートの処遇を確認し、婚約解消後も一年間は現状維持であると聞いて少し意外そうな顔を見せた。

ローゼマインは、名捧げ済みの未成年以外は基本的にエーレンフェストへ残す方針だと説明する。親の許可なしに中央へ移動できないからである。

ブリュンヒルデへの謝罪

まずローゼマインは、アウブ第二夫人となる決意をしたブリュンヒルデへ謝罪した。自分を支えるために人生を決めてくれたにもかかわらず、自分が中央へ移動することになるからである。

しかしブリュンヒルデは、自ら選んだ道であり、今後もエーレンフェスト発展へ尽力すると静かに答えた。

さらにローゼマインは、髪飾りや食文化などの流行を平民職人達ごと守り、新しい流行も作ってほしいと頼む。ブリュンヒルデは平民社会との関係を深めたことで、以前より現実的な視点を持つようになっていた。

名捧げ側近達の扱い

続いてローゼマインは、名を受けたローデリヒ、マティアス、ラウレンツ、グレーティアの四人を中央へ連れていくと明言した。

一生面倒を見る覚悟で名を受けている以上、自分から切り捨てる気はないと断言する。

ローデリヒやグレーティアは、実家問題から解放されることへ安堵し、マティアスも「名を返すと言われなくて良かった」と表情を緩めた。

一方、ラウレンツは孤児院にいる弟ベルトラムを心配していた。ローゼマインは、メルヒオールが次期神殿長となり、自分の側仕え達も神殿へ残るため、孤児院環境が急激に悪化することはないと説明する。

ハルトムートの名捧げ要求

話が進む中、ハルトムートが突然、自分の名も受けてほしいと申し出た。

ローゼマインは以前「自分が望まないなら捧げない」と言っていたはずだと困惑する。しかしハルトムートは、中央移動という重要局面で、自分だけが「残される側」になる可能性を嫌がった。

彼は、ローゼマインから無条件の信頼を受けているからこそ、神殿や図書館を守る役目を理由にエーレンフェストへ置いていかれる危険があると分析する。

そして「いついかなる時も、誰に憚ることなくお供したい」と跪き、名捧げを強く願った。

クラリッサの暴走

そこへクラリッサまで加わり、自分の名も受けてほしいと言い出す。

ローゼマインは、二人は婚約者同士なのだから、お互いへ名を捧げれば良いのではないかと当然の疑問を口にした。

しかし二人は本気で理解できない様子を見せ、「二人でローゼマインへ名を捧げた方が繋がりを感じられる」と盛り上がり始める。

あまりにも常識外れな反応に、ローゼマインは自分の感覚が間違っているのではないかと不安になり、オティーリエへ助けを求めた。

オティーリエは「貴族の常識ではない」と即答した上で、二人はどうせ中央までついて来るだろうから、いっそ名を受けて管理しやすくした方が良いかもしれないと半ば投げやりに勧める。

さらにコルネリウスとダームエルまで、ハルトムートが名捧げ組へ嫉妬して周囲へ被害を出していることを理由に、名を受けるよう勧め始めた。

結果として、ローゼマインは押し切られる形でハルトムートとクラリッサの名捧げを受け入れることになった。

フィリーネの決意

その流れで、フィリーネまで自分の名も受けてほしいと申し出る。

彼女は、メスティオノーラの御加護を得た時点で、自分の仕える相手はローゼマインだと決めていたと真剣な表情で語った。

さらに、実家へ戻りたくないため、弟コンラートを買い取り、自分も中央へ行きたいと望む。

しかしローゼマインは、洗礼前のコンラートを中央へ連れていく現実的困難を指摘した。衣食住や身分問題など、フィリーネ一人では解決不可能な課題が多かったのである。

そのため、今すぐ結論を出さず、一年間かけてコンラート本人の意思も含めて考えるよう促した。

残る側近達

コルネリウスは、結婚時期や立場の問題もあり、すぐには決断できないと答える。レオノーレは彼へ従う意思を示した。

ダームエルも、事情を理解しつつ即答は避ける。下町との繋がりや自身の立場を考え、迷っていたのである。

ユーディットは、家から婚姻話が出ており、親の許可なく中央へ行くことは難しいと悲しそうに語った。ローゼマインは、それが普通の貴族の在り方であり、ハルトムート達の方がおかしいのだと断言し、安心させる。

リーゼレータも、跡取り娘かつ婚約済みであるためエーレンフェストへ残る意思を示した。そして、今後はブリュンヒルデへ仕え、本を中央へ送る役目を担うと宣言する。

アンゲリカの即決

最後に残ったアンゲリカは、自分で考える気がなく、「どうすれば良いと思うか」と逆にローゼマインへ質問した。

リーゼレータが「中央騎士団はエーレンフェストより強い」と勧めると、アンゲリカは即座に「行きます」と決断する。

しかし結婚問題が未解決であるため、ローゼマインはカルステッドやエルヴィーラとも相談する必要があると判断した。

ダームエルの気付き

側近達との話し合いを終えた後、コルネリウスはローゼマインへ休むよう勧める。

その理由は、ダームエルが彼女の様子に異変を感じ取っていたからだった。

ダームエルは、神殿時代にフェルディナンドの後ろをついて歩いていた頃のような、不安定さをローゼマインから感じたと小声で伝える。

ローゼマイン自身も、領主一家のやり取りを見て、誰かへ甘えたい気持ちになっていたことを自覚していた。

フェルディナンドへ手紙を書こうとしたものの、リーゼレータから止められ、無理矢理休まされる。

そして最後は、お小言シュミルを抱えながら眠りにつき、図書館の隠し部屋で聞いた「大変結構」という声を懐かしく思い出していた。

カルステッドの館にて

ハルトムートの名捧げ

翌日、リーゼレータが休みとなり、グレーティアへの引き継ぎ教育が始まっていた。そんな中、ローゼマインは隠し部屋へ向かおうとしたが、ハルトムートが待ち構えており、一晩で準備した名捧げの石を差し出した。

見届け役のオティーリエですら嫌そうに視線を逸らす中、名捧げが始まる。普通なら苦痛に顔を歪める場面であるにもかかわらず、ハルトムートはローゼマインの魔力へ恍惚とした表情を浮かべていた。

その異様さに恐怖したローゼマインは、涙目になりながら一気に魔力を叩き込み、できるだけ早く儀式を終わらせる。ハルトムートは苦しみながらも上機嫌で、ますます不気味だった。

クラリッサはまだ素材不足で名捧げできないと聞き、ローゼマインは内心で安堵する。一日に二人も相手をしたら寝込みそうだと思ったのである。

フェルディナンドへの手紙

その後、ローゼマインは隠し部屋へ入り、消えるインクを用いてフェルディナンドへ手紙を書いた。

地下書庫で現代語訳を頑張った褒美として、フェルディナンドの連座回避と隠し部屋確保に成功したこと、夏の葬儀で隠し部屋の有無を確認してほしいこと、銀の布や騎士達の武器携帯問題などを報告する。

さらに、オルタンシアがディートリンデへ向けていた不可解な言葉も書き添えた。

ただし、自分が王の養女になることや次期ツェント候補であることは一切記さず、極秘事項を守り抜いている。

表向きの手紙には、アウブ・アーレンスバッハへの弔辞や体調を気遣う文面、荷物やレティーツィアへの菓子についてなど、誰が読んでも不自然ではない内容を書いていた。

実家への招待

隠し部屋から出ると、コルネリウスが待っていた。エルヴィーラから、引き継ぎの話もあるため早めに実家で話し合いたいという伝言を預かっていたのである。

ローゼマインは予定を調整し、翌日に実家へ泊まりがけで戻ることになった。

それまでの間、彼女は各所へ大量の手紙を書く。ブリギッテへは魔紙の追加依頼、ラザファムへはフェルディナンドの荷物管理変更と待遇改善の報告、神殿や商人達へは領主会議報告を書き送った。

ただし、中央行きについてはベンノだけには直接伝えたいと考え、孤児院長室の隠し部屋へ極秘で呼び出す計画を立てる。

実家での夕食会

翌日、ローゼマインはコルネリウス達と共に実家へ戻った。リーゼレータも同行しているのは、アンゲリカ問題を含め、一族側の意見をまとめる役目を期待されていたからである。

夕食会にはボニファティウスも同席していたが、給仕がいる間は印刷業務など当たり障りのない話題に終始した。

食後、側仕え達を退室させた後、カルステッドが本題へ入る。アンゲリカを中央へ同行させて良いかどうかの確認だった。

アンゲリカの中央行き

アンゲリカは、エックハルトとの婚約解消後、その埋め合わせとしてトラウゴットかボニファティウスへ嫁ぐ話が出ていた。

しかし本人は中央行きを強く希望している。リーゼレータは、一族としても王の養女の護衛騎士になることは光栄であり、可能なら本人の望みを叶えてほしいと述べた。

アンゲリカ自身も、中央騎士団との訓練を既に楽しみにしていた。

エルヴィーラは最終的に、アンゲリカの中央行きを認める。その後の婚姻補填については、一年後に改めて考えることとなった。

コルネリウスの進路

続いて話題はコルネリウスへ移る。ボニファティウスは即座に「中央へ行け」と命じ、ローゼマインを守れと熱弁した。

カルステッドは、騎士団戦力が減ることを懸念していた。しかしボニファティウスは、ローゼマインが広めた圧縮法や御加護再取得によって騎士全体の質は今後向上すると断言する。

さらにエルヴィーラも、王の養女となる娘へ上級騎士すら同行しないのは情けないと主張した。

コルネリウス自身も、王族や中央騎士団の様子を見て、ローゼマインを無防備なまま送り出せる環境ではないと考えていたため、基本的には同行を望んでいた。

レオノーレも同意し、トルーク問題などからマティアス同行の有用性にも言及する。

ただし、結婚後はレオノーレが仕事を辞めるため、二年程度の準備期間を設ける案が出された。エックハルトから譲られた館についても、エルヴィーラが管理を引き受けることになる。

リーゼレータ問題

話し合いの中で、エルヴィーラはローゼマインの側仕え不足を問題視した。グレーティア一人では到底足りず、リーゼレータのような熟練側仕えが必要だと考えたのである。

ローゼマインは、リーゼレータには婚約者もおり、跡取り娘でもあるため無理だと説明する。しかしエルヴィーラは、ローゼマインが自分の希望を全く伝えていないことを見抜いていた。

相手の意思を尊重するだけでなく、自分の希望を伝えることも主として必要だと諭し、もし双方の望みが一致するなら根回しは自分が行うと断言する。

そして、半ば強制的にローゼマインをリーゼレータの前へ立たせた。

公開告白状態

家族達に見守られる中、ローゼマインは顔を真っ赤にしながら、リーゼレータへ中央へ来てほしいと必死に頼み込む。

安心感があること、守る努力をすること、給料を上げること、シュミルを飼って良いことまで勢いで並べ立てた。

その姿は完全に公開告白のようになっており、周囲は微笑ましそうに見守っていた。

リーゼレータは頬を染めながら、「家の問題が片付くなら喜んで」と受け入れる。

ローゼマインが安堵していると、コルネリウスが面白がって自分にも同じ言葉をかけてほしいと茶化した。ローゼマインは羞恥のあまり即座に拒否するのだった。

母と娘

隠し部屋の登録

リーゼレータ達を見送った後、エルヴィーラはローゼマインを自室へ呼び、隠し部屋の登録を一緒に行おうと提案した。

本来はもっと幼い頃、不安定になった時に母親として準備してあげたかったが、フェルディナンドが頻繁に様子を見に来ていたため、必要がないように見えたのだと語る。

ローゼマインは、エルヴィーラが本気で自分を娘として受け入れようとしていたことを改めて実感していた。

登録後、二人は出来たばかりの隠し部屋へ椅子と机を運び込み、二人きりのお茶会を始める。

ダームエルとフィリーネの問題

エルヴィーラはまず、ダームエルとフィリーネをエーレンフェストへ残してほしいと切り出した。

理由の一つは、中央には下級貴族がほとんど存在せず、王族の側近として二人が極めて居場所を失いやすいことだった。

さらに、下町や神殿との橋渡し役として、ローゼマインのやり方を理解している二人を残す意義も大きいと説明する。

特に神殿では、メルヒオール側近達が青色神官へ直接教えを請うことへ心理的抵抗を持つ可能性があり、同じ領主一族の側近であるダームエルやフィリーネが必要になるというのである。

また、本来ならハルトムートを残したかったが、彼が先に名捧げを済ませてしまったため不可能になったことも明かされた。

家族を守る役目

エルヴィーラは、グーテンベルク達や本当の家族を中央へ移動させるまでの間、ダームエルとフィリーネへ守らせる案を提示する。

自分が平民出身であることを既に察していたと告げられ、ローゼマインは大きく動揺した。

エルヴィーラは、ローゼマインが特別扱いする平民達を見れば自然と推測できたと穏やかに語る。

さらに、印刷業移転についても、未成年が自由に事業を動かせるほど中央は甘くないと釘を刺した。王族教育やグルトリスハイト問題など、ローゼマインには優先すべき責務が多いのである。

フィリーネへの配慮

エルヴィーラは、フィリーネを中央へ連れていくなら、成人後に名捧げなしで移動させるべきだと提案した。

名捧げは中央行きの手段として使うべきではなく、ローゼマインがこれ以上他人の命を背負い込むことを危惧していたのである。

また、フィリーネの父は本来婿入りであり、家督はフィリーネ側にあるため、場合によってはエルヴィーラが保護することも可能だと語った。

ダームエルとフィリーネの婚約案

続いてエルヴィーラは、ダームエルとフィリーネを婚約させる案を提示した。

中央では下級貴族同士でなければ釣り合いが取れず、ダームエルは対外評価が低いため、中級貴族への婿入りは極めて難しいと説明する。

ブリギッテとの縁談は、多くの特殊条件が重なった奇跡に近かったのであり、それを基準にしてはいけないと諭した。

ローゼマインは、ダームエルがフィリーネを子供扱いしており、以前ローデリヒへの想いを誤解していた件もあるため難しいのではないかと考える。

しかしエルヴィーラは、孤独な少女を守る騎士という構図は素敵だと創作的興味まで示し、書字板へ設定を書き留め始めた。

最終的に、判断は本人達へ任せるべきだとして、ローゼマインへダームエルへ打診だけ伝えるよう求めた。

ダームエル保護案

ローゼマインが、自分の不在でダームエルの立場が不安定にならないか不安を口にすると、エルヴィーラはボニファティウスへ預ける案を提案した。

訓練と神殿業務を続ける形ならば、余計な中傷を受けにくく、更なる鍛錬にも繋がると考えたのである。

さらにエルヴィーラは、リーゼレータへの公開告白のように頼めば、ボニファティウスは即座に引き受けるだろうと笑いながら茶化した。

エルヴィーラの過去

その後、エルヴィーラは自身の過去を静かに語り始めた。

カルステッドとの結婚はライゼガング系を守るための政略結婚であり、愛情の深い関係ではなかった。そこへヴェローニカ派の第二夫人トルデリーデ、さらにカルステッドが独断で迎えた第三夫人ローゼマリーが加わり、家は混乱していった。

ローゼマリーをカルステッドが贔屓した結果、エルヴィーラとトルデリーデの対立まで発生し、カルステッドは家庭問題から逃げるようになった。

さらにフェルディナンドが神殿入りし、彼へ名捧げしていたエックハルトは深く落ち込む。ようやくハイデマリーとの結婚で立ち直りかけたが、妻子を毒殺で同時に失い、半死人のような状態になってしまった。

そんな状況でもヴェローニカはエックハルトへヴィルフリートの護衛騎士就任を求め、断るとエルヴィーラへ叛意があると責め立てた。

結局、家族を守るためランプレヒトが自らヴィルフリートの護衛騎士へ志願することになる。

コルネリウスもまた、兄達が主へ振り回される姿を見て育ったため、本気で何かへ打ち込もうとしない子供になっていた。

ローゼマインがもたらした変化

ヴェローニカ失脚後、カルステッドは平民の青色巫女見習いであるローゼマインを娘として迎えると言い出した。

フェルディナンドの還俗可能性にエックハルトが久々に笑顔を見せたことで、エルヴィーラはローゼマイン受け入れを決意する。

結果として、ローゼマインはエックハルト、ランプレヒト、コルネリウス、ハルデンツェル、女性派閥、印刷文化など、多方面へ良い変化をもたらした。

さらにカルステッドとの関係も、ローゼマイン教育を通じて初めて義務以上の会話を持つようになったのである。

フェルディナンド不在後の不安

しかしフェルディナンドがアーレンスバッハへ去ったことで、エルヴィーラはローゼマインをどう支えるべきか悩み続けていた。

さらにライゼガングへの根回しも途中で粛清が始まり、混乱が拡大する。ヴィルフリートが祈念式でライゼガングへ向かった結果、状況はさらに悪化していた。

そんな混乱の最中、今度はローゼマインの王族入りまで決定したのである。

エルヴィーラは、フェルディナンドとローゼマインが婚約していれば、アーレンスバッハ行きを避けられたのではないかと何度も考えたと打ち明けた。

連座回避への称賛

ローゼマインは、自分はフェルディナンドとの婚約より、どう救うかばかり考えていたと答える。

エルヴィーラは、連座回避によって救われたのはフェルディナンドだけでなく、ユストクスやエックハルトも含めた三人分の命なのだと静かに称賛した。

これまで誰からも褒められなかったローゼマインは、その言葉に涙を流す。

さらにエルヴィーラは、表には出さなくても、自分もリヒャルダもアーレンスバッハへ向かった者達を心配していたと明かした。

誰も心配していないように感じて孤独だったローゼマインは、自分だけが気にかけていたわけではないと知り、ようやく力を抜くことができた。

母としての願い

エルヴィーラは、隠し部屋の外では王族入りする娘を誇る母として振る舞うが、今だけは遠くへ行く子供達を悲しむことを許してほしいと涙を見せた。

彼女は、フェルディナンド達だけでなく、ユルゲンシュミットの未来を背負わされているローゼマイン自身も心配していると本音を打ち明ける。

ローゼマインは思わず母へ甘えるように手を伸ばし、エルヴィーラはその手をしっかり握り返した。

そしてエルヴィーラは、エーレンフェストのことは自分達が支えるから、ローゼマインは自分らしさを失わず、自分の望みを勝ち取れと励ます。最後に「貴女ならできます。わたくしの娘ですからね」と優しく告げるのだった。

子供用魔術具

エルヴィーラとの穏やかな時間

隠し部屋での話し合いの後も、ローゼマインはエルヴィーラと様々な話を続けた。貴族院でのコルネリウスの様子や、神殿に来るエックハルトの話を語り、エルヴィーラはアウレーリアやジークレヒト、ブリュンヒルデの奮闘について聞かせた。

深夜まで語り合ったことで、ローゼマインは久しぶりに心から安堵し、翌朝は側仕え達が起こせなかったほど深く眠り込んでしまう。これはエルヴィーラが気遣って、起こさず寝かせるよう指示していたためだった。

印刷業とヴィルマの扱い

朝食の席で、エルヴィーラは印刷業の引き継ぎについて確認した後、ヴィルマをどうするつもりか尋ねた。

ローゼマインは、中央で印刷業を始める際にはヴィルマを呼び寄せたいと答える。しかしエルヴィーラは、神殿を出た灰色巫女には選択肢など存在しないと厳しく指摘した。

主を失った灰色巫女は新たな主人に買われる存在であり、ローゼマインがいなくなった後を現実的に考えなければならないのである。ローゼマインは、自分が神殿に指示だけ残せば今の状態が維持されると甘く考えていたことを痛感した。

王族から届いた魔術具

そこへジルヴェスターからオルドナンツが届き、王族から子供用の魔術具が十二個送られてきたと知らされる。

王族側は養女話を破談にするつもりがなく、先に報酬を送ることで既成事実化を進めようとしていた。領主一族は話し合いの末、貴族不足解消を優先して魔術具を受け取ることを決定する。

ローゼマインは孤児院の子供にも魔術具を与えてほしいと願い出る。ジルヴェスターは、一定以上の魔力と思想面に問題がないことを条件に許可し、その面接役をハルトムートへ任せた。

神殿への帰還と移動の報告

神殿へ戻ったローゼマインは、側仕え達へ一年後にエーレンフェストを去ること、次の神殿長がメルヒオールになることを伝えた。王族入りの件は伏せられた。

フラン達は寂しさを滲ませながらも受け入れ、メルヒオールへ仕える意思を示す。ローゼマインも、本当は皆を図書館へ連れていきたいが、自分の行き先は神殿ではないため居場所を保証できないと説明した。

特にヴィルマについては、ローゼマインの専属絵師になるか、エルヴィーラの専属絵師になるかを一年以内に決めるよう求めた。ヴィルマはまず孤児院の将来を案じ、ローゼマインはモニカやリリーへ管理業務を引き継がせる方針を語った。

しかしフリッツやザームは、今後の神殿長次第で孤児院が再び荒れる危険を不安視していた。前神殿長時代を知る彼等にとって、その恐怖は現実的だったのである。

孤児院の子供達への魔術具面接

ローゼマインは孤児院の子供達へ魔術具を与えるため、ハルトムートと共に魔力量検査を始めた。

その結果、ディルクともう一人の幼い男児が基準を超えていた。幼児は即座に貴族化候補となり、続いてディルクへ意思確認が行われる。

すると、基準未満だった別の男児が、ディルクはただの孤児であり貴族ではないと反発した。しかしハルトムートは、洗礼式前の子供は皆孤児であり、魔力価値ではディルクの方が上だと冷静に切り捨てる。

ディルクの決意

ハルトムートに問われたディルクは、魔術具を望むと明言した。

彼は、ローゼマインによって孤児院が救われたこと、フェルディナンドやハルトムートのような良い神官長がいたから今の神殿が維持されていることを理解していた。孤児院を守るには、貴族を抑えられる貴族の神殿長や神官長が必要だと考えたのである。

そのため、自分が貴族となり、神殿長や神官長になって孤児院と仲間達を守りたいと語った。

ディルクにとって、孤児院はローゼマインから受け継いだ大切な居場所であり、それを失わせたくなかったのである。

デリアの悲しみ

しかしデリアは、ディルクが貴族になれば家族として接することもできなくなると泣きながら拒絶した。

ローゼマインは、自分自身が家族と引き離された経験を重ね合わせ、胸を痛める。だが孤児院長として口を挟むことはできず、黙って見守るしかなかった。

ディルクはデリアを慰めながらも、自分はローゼマインのように孤児院を守りたいのだと説得した。さらに、ハルトムートが日頃からローゼマインの偉業を孤児院で熱心に語っていたことまで明かされる。

最終的にデリアは折れ、ディルクが貴族になるまで「姉上」と呼ばせる罰を与えることで和解した。

フィリーネとコンラートの進路

一方フィリーネは、コンラートへ母の形見の魔術具を差し出し、貴族へ戻らないかと説得した。

しかしコンラートは、貴族生活には莫大な金が必要であり、フィリーネ一人では支え切れないと冷静に判断していた。さらに、父親と継母のいる家へ戻ることを強く拒絶する。

フィリーネは、自分には四つの道があると整理して語った。ローゼマインに名捧げして中央へ行く道、成人までエーレンフェストに残ってから追う道、実家へ戻る道、そしてコンラートと共にエーレンフェストへ残る道である。

コンラートは、自分は孤児院と共に生きたいと答えた。貴族になるのではなく、フリタークのような自立した青色神官になり、ディルクやメルヒオールを支えたいと語る。

工房へ出入りし、商人達とも交渉できる神官を目指すという夢まで語り、ローゼマインのような交渉上手になりたいと目を輝かせた。

フィリーネはその願いを受け入れ、成人まではエーレンフェストでコンラートと共に孤児院を支える決意を固めた。

ダームエルの支え

その後、フィリーネは、自分が冷静にコンラートと向き合えたのはダームエルのおかげだと明かす。

ダームエルは、ローゼマインへこれ以上負担をかけるべきではないと諭し、コンラートの将来はフィリーネ自身が考えるべき問題だと教えた。さらに、どうしても必要なら婚約者になって支えることもできると申し出ていたのである。

しかしフィリーネは、それに甘えるのではなく、自立して隣に立てる女性になりたいと決意した。そして将来は、自分からダームエルへ求婚したいと照れながら語った。

魔紙の準備

ベンノとの密談準備

朝食後、ローゼマインはフェシュピールの練習をしながら、午後に予定されているベンノとの密談について準備を進めていた。話を外部へ漏らしたくないため、孤児院長室の隠し部屋を使うことを決め、護衛はダームエルへ任せる。

同行する文官について問われたローゼマインは、秘密保持のため名捧げ済みの者しか選べず、結局ハルトムートを同行させることになった。

孤児院長の後任問題

午前中、ローゼマインは神官長室でメルヒオールやその側近達と共に、神殿と孤児院の引き継ぎについて話し合った。

メルヒオール側近達は、神官長業務なら引き継げても、孤児院長は平民の子供を管理する特殊な役目であり、一年では習得できないと困惑していた。特に女性側近が少ないことも問題視される。

そこでローゼマインは、フィリーネへ三年間の中継ぎ孤児院長を提案した。フィリーネなら孤児院業務を理解しており、コンラートを見守る理由もあるうえ、役職手当で安定した収入も得られるためである。

フィリーネは戸惑いながらも引き受け、メルヒオールも安心した様子を見せた。ローゼマインは孤児院長室や側仕え、維持費まで支援すると決め、引き継ぎを急ぐよう指示した。

隠し部屋でのベンノとの会談

昼食後、ローゼマインは孤児院長室の隠し部屋でベンノと会談を行った。同行者はハルトムート、ダームエル、アンゲリカのみである。

ハルトムートが同席していることにベンノは驚くが、ローゼマインは名捧げ済みなので秘密保持に問題ないと説明する。するとハルトムートは、自分はローゼマインが平民出身であり、ギュンターの娘であることまで既に知っていると平然と明かした。

孤児院や工房で集めた情報と矛盾を丁寧に潰し、最後はフェルディナンドから答え合わせを受けたという告白に、ローゼマインもベンノも絶句する。ダームエルすら初耳だった。

ハルトムートは、名捧げ前に伝えればローゼマインが余計な心労を抱えると思ったため伏せていたと説明した。

ローゼマインの移動計画

気を取り直したローゼマインは、自分が一年後にエーレンフェストを離れることになったとベンノへ告げる。

ただし、他領では未成年が事業を自由に動かせないため、印刷業関係者の本格移動は三年後になる見込みだった。

しかしベンノは、ローゼマインの事業計画は必ず前倒しになると断言し、三年後基準では間に合わないと即座に判断する。

ローゼマインは、トゥーリやルネッサンス、フーゴやエラなど一部の専属人員は早めに連れていきたいと説明し、根回しを依頼した。

また、ローゼマイン工房については、三年間はフィリーネとギルへ任せ、その後は次の孤児院長やエルヴィーラ側が管理する見込みだと語る。さらに、ディルクやコンラートを神殿と工房を守れる人材へ育てたいという意向も明かした。

ベンノへの本音

ベンノは、プランタン商会も一緒に移動した方が良いのかと尋ねる。

ローゼマインは、来てくれれば心強いし、三年後のグーテンベルク達受け入れも楽になると本音を漏らした。ただし、極めて忙しくなるため、最終的にはベンノの手腕次第だと挑発的に笑う。

ベンノもそれを受けて立つように笑い返した。

大量のトロンベ紙確保

続いてローゼマインは、フェルディナンドからの依頼として、不燃紙を最低三百枚欲しいと注文した。

最高品質の魔紙を作る研究のためであり、工房在庫を全て買い取る勢いで集め始める。フェルディナンドが残した資金を使うため、支払いにも問題はなかった。

その後、マルクが大量のトロンベ紙を届け、大金貨五枚分の支払いに側近達は驚愕する。ローゼマインは更に神殿や他工房の在庫まで掻き集め始めた。

フィリーネへの引き継ぎ開始

ベンノとの会談後、ローゼマインは正式にフィリーネを孤児院長後任として発表した。

モニカやニコラもそのままフィリーネ付きにし、孤児院管理をリリーへ引き継ぐ準備も始める。さらに孤児院の年間収支資料を積み上げ、季節ごとの資金の流れを把握するようフィリーネへ指示した。

フィリーネは膨大な資料量に一瞬怯みながらも、気を引き締めて引き継ぎへ取り組み始めた。

図書館工房での魔紙研究

その後、イルクナーからブリギッテ経由で魔紙が届くとの連絡が入り、ローゼマインは図書館工房で研究を進めることを決定した。

神殿ではクラリッサが入れず騒ぎになるためであり、図書館工房なら静かに調合研究ができると判断したのである。

翌日、図書館へ移動したローゼマインは、ラザファムからフェルディナンド関連の事情説明を求められた。フェルディナンドの荷物管理や連座回避、王族との交渉、そしてアーレンスバッハに隠し部屋を確保したことまで説明する。

ラザファムは、フェルディナンドが最も長く過ごした場所は工房だったと懐かしみ、新たな隠し部屋の話を喜んだ。

さらに、ハイデマリーが実家の蔵書を守るためフェルディナンドへ献上した過去も語られ、ローゼマインは図書館の本が守られていたことに深い感慨を抱く。

最後にクラリッサ達と共に調合研究へ向かい、ローゼマインは葬儀までに最高品質の魔紙試作品を完成させる決意を固めるのだった。

最高品質のサンプル作り

最高品質の魔紙研究開始

ローゼマインは図書館工房で、フェルディナンドから依頼された「最高品質の魔紙三百枚」の研究を開始した。

まずはフェルディナンドが残した道具を用いて、エイフォン紙やナンセーブ紙の属性や品質を測定しながら、どこまで品質を引き上げられるか実験する。

クラリッサは、魔獣の皮を素材にした従来型の魔紙を使う方が遥かに簡単ではないかと提案した。しかしローゼマインは、三百枚もの最高品質魔紙を作るには大量の高品質魔獣素材が必要であり、期限内調達は現実的ではないと説明する。

ハルトムートも、護衛騎士全員を投入しても素材確保は困難だと同意した。

地道な品質向上実験

三人は、ドレヴァンヒェルとの共同研究を参考にしながら、魔木紙へ高品質素材を混ぜ、不純物を抜く調合を繰り返していった。

その結果、エイフォン紙やナンセーブ紙は低品質から普通品質程度まで向上する。しかし、ローゼマインが求める最高品質には程遠かった。

ローゼマインは、フェルディナンドが平然と新しい魔術具を作り続けていた理由が理解できず、実験の進まなさに早くも心が折れかける。

だがハルトムートは、音を出す魔紙の音質改善や、勝手に集まる魔紙の速度向上など、着実に成果が出ていると励ました。

属性追加による改良

昼食後、クラリッサは属性数を増やすことで品質向上を狙う案を提案した。

そこで三人は、高品質素材を少量ずつ投入しながら属性を追加していく。しかし、中品質止まりで高品質には届かず、ローゼマインは次第に実験へ飽き始める。

そんな中、ハルトムートは、普通の文官ならば魔力不足で到底できない量の実験を、ローゼマインは一日でこなしていると説明した。

そこでローゼマインは、自分の金粉を使えば一気に品質を引き上げられるのではないかと思いつく。

金粉による高品質化

ローゼマインは回復薬を飲みながら、大量の魔石を浄化し、自分の魔力を込めて次々と金粉化していった。

その豪快さに、ハルトムートとクラリッサは驚愕する。

金粉を投入した結果、エイフォン紙は全属性の高品質魔紙へ変化した。しかし、まだ最高品質ではなかった。

それでも、魔紙自体には劇的変化が現れる。ナンセーブ紙は破片同士が自動で集まり、元の形へ復元されるようになり、エイフォン紙は歌うような滑らかな音を発するようになったのである。

高品質魔紙の問題

ハルトムートとクラリッサは、高品質魔紙へ魔法陣を書き込む実験を始める。しかし、二人のスティロでは魔紙に全く線が描けなかった。

ところが、ローゼマインだけは問題なく書き込める。

ローゼマインは、自分しか使えない魔紙では失敗作だと青ざめるが、ハルトムートは、作製者かそれ以上の魔力保持者しか使えない魔術具は珍しくないと説明した。

さらに、フェルディナンドの方が魔力は上だろうと推測し、使用可能性へ期待を繋ぐ。

高品質魔紙の新能力

翌日、ハルトムートとクラリッサも金粉を用いた高品質魔紙作製へ挑戦した。

ローゼマインは待ち時間の間に、高品質エイフォン紙へ魔法陣を書いて実験する。その結果、魔力を流すだけで魔法陣が自動詠唱される特殊効果が判明した。

一方、ナンセーブ紙は完全再利用こそできなかったが、燃えカス同士が自動で集まる現象を見せる。

また、ハルトムート作製の魔紙にはローゼマインも書き込めたが、クラリッサ作製の魔紙には書き込めなかった。

クラリッサは、これは名捧げによる魔力結び付きの影響だと推測する。ハルトムートも、ローデリヒが名捧げ後に全属性化した事例を踏まえ、その可能性を認めた。

最高品質魔紙の完成

さらにクラリッサは、高品質魔紙同士を合成する案を提案した。

莫大な魔力と時間を費やした末、三種類の高品質魔紙を融合し、ついに最高品質魔紙が完成する。

その魔紙は、誰でもスティロで書き込めるうえ、魔法陣を自動発動し、燃え尽きず、破片が自動で集まって再生する性能まで持っていた。

ハルトムートは、これならばどんな文官も文句を付けられないと断言する。

ただし、作製には膨大な金粉と回復薬が必要であり、超高級品であることも判明した。クラリッサは、自分達では量産不可能だと頭を抱える。

不燃紙の正体

研究中、ハルトムートは不燃紙の素材について質問した。

ローゼマインは「にょきにょっ木から作られている」と笑顔で答えるが、詳細は伏せる。ハルトムートは孤児院の子供達から聞いた名称を思い出しつつも、正体までは掴めなかった。

ローゼマインは、夏には大量の不燃紙が必要になるため、今後タウの実を大量確保しなければならないと計算していた。

フェルディナンドへの準備

最高品質魔紙の試作品完成後、ローゼマインは、アーレンスバッハへ向かうジルヴェスターへ持たせる準備を始めた。

工房から回復薬や解毒薬素材を集め、フェルディナンド用の調合道具や素材を整理していく。

ハルトムートとクラリッサも楽しそうに工房整理を手伝い、ローゼマインは、フェルディナンドから「大変結構」を貰えれば本格量産へ移りたいと考えるのだった。

春の成人式と養父様の出発

青色見習い達の成人式参加問題

春の成人式を目前に控えた神殿長室では、ローゼマインと側仕え達の間で、青色見習い達を儀式へ参加させるかどうかの議論が起きていた。

ローゼマインは、次期神殿長となるメルヒオールには絶対に成人式を見学させるべきだと主張する。しかしフランとザームは、未成年は儀式へ参加できないという慣習を理由に反対した。

それに対しローゼマインは、自分も青色巫女見習い時代に祈念式や癒やしの儀式へ参加した前例があると反論する。

さらに現在は青色神官が七人しかおらず、未成年の領主候補生まで動員して神事を回している危機的状況であり、将来的には青色見習い達も収穫祭へ参加させなければ神殿が維持できないと説明した。

収穫祭参加の必要性

ローゼマインは、今年受け入れた青色見習い達には親からの援助がなく、領地からの補助金と収穫祭収入で冬支度を整えなければならないと語る。

そのため、秋の収穫祭へ参加して自ら稼ぐ必要があり、儀式経験を積ませることが不可欠だった。

また、収穫祭では洗礼式や星結び、成人式など複数の儀式を一度に執り行う必要があるため、見学経験なしで本番へ臨ませるのは酷だとも訴える。

ローゼマイン自身が、神殿長就任直後に何もわからないまま神事へ放り込まれた経験を持っていたからである。

夏からの見学開始

最終的にフラン達は、準備期間が必要だとして、青色見習い達の見学は夏の成人式から始めることで妥協した。

衣装準備や教育、青色神官側の根回しなどを進める必要があるためである。

ローゼマインは、保管されている旧青色神官達の衣装を仕立て直して使うよう提案し、フラン達へ根回しを任せた。

ラルフとの再会への不安

春の成人式当日、ローゼマインは別の意味でも緊張していた。新成人の中に、ルッツの兄ラルフがいるはずだったからである。

マイン時代を知る数少ない人物であり、自分の正体に気付かれる可能性を危惧していた。

礼拝室へ入り、新成人達を見下ろしながら赤毛の男性達を探すものの、皆成長しており誰がラルフなのか判別できない。

しかし、ラルフらしき人物がこちらを不審そうに見つめている様子に気付き、ローゼマインは慌てて視線を逸らした。

その後は平静を装いながら儀式を終えたが、退出時にラルフが振り返ったことで、更に不安を募らせる。結局、藪蛇を恐れて何もせず、様子を見ることにした。

収穫祭参加の正式決定

成人式後、神殿では青色見習い達も交えた会議が開かれた。

成人の青色神官達も深刻な人手不足を理解しており、見習い達の収穫祭参加には概ね賛成だった。むしろ、領主の後見を受ける立場なのだから働くべきだという意見すら多かった。

そのため、青色見習い達には収穫祭参加が正式に命じられた。ただし初年度は負担を考慮し、成人の青色神官とペアを組ませる方針が決まる。

ニコラウスの不安

会議後、ニコラウスが不安そうにローゼマインへ相談を持ちかけた。冬支度を父カルステッドが手伝ってくれるのか不安だったのである。

ニコラウスは、母トルデリーデの件からエルヴィーラに嫌われていると感じており、手紙すら受け取ってもらえないのではと怯えていた。

ローゼマインは、エルヴィーラは公平さを保てる人物だから、無茶な願いでなければ応じてもらえるはずだと励ます。

さらに、ボニファティウスが神殿へ来て青色見習い達へ訓練を付けていたことも聞かされる。ニコラウスは筋が良いと褒められていた。

ボニファティウスへのお礼

ニコラウスから「祖父へお礼のオルドナンツを送ってほしい」と頼まれたローゼマインは、マティアスやユーディットに勧められるまま感謝の言葉を送った。

するとボニファティウスからは、「ローゼマインとの約束を守るのは当然だ」という短い返事が届く。

後にフィリーネから、ボニファティウスの機嫌が悪いと騎士団訓練が苛烈になるため、ダームエルやコルネリウスを守る意味もあったと聞かされるのだった。

青色見習い達の神殿生活

収穫祭参加が決まったことで、青色見習い達は祝詞暗記や衣装準備に追われ始めた。

特に青色巫女見習い達は、成長期にも着られるような衣装仕立て方法を求めてきた。以前のように毎回新調する余裕がないからである。

ローゼマインは、自分の儀式用衣装にも使われた仕立て法を、ギルベルタ商会へ利益が流れる形で販売するようコリンナへ指示した。

また、家族と引き離され、貧しい生活へ慣れない青色見習い達は、孤独と寂しさを抱えていることも吐露していた。ローゼマインは、そんな彼等へ神殿生活の知恵や経験談を伝えて支えていく。

フェルディナンドへの準備

やがて、ジルヴェスターがアーレンスバッハの葬儀へ向かう日が近付いた。

ローゼマインは、フェルディナンドへ届けるため、最高品質魔紙の試作品や調合セット、大量の料理や素材を準備する。

手紙には、最高品質魔紙のレシピや研究過程を消えるインクで記し、更に何も加工していない魔木紙素材まで同封した。フェルディナンドならば必ず自分で研究を始めると確信していたのである。

また、ジルヴェスターへは、フェルディナンドへ工房と隠し部屋が本当に与えられているか、必ず自分の目で確認するよう何度も念押しした。

兄妹茶会と別れ前の時間

一方、ローゼマイン達は、城滞在中に兄妹だけのお茶会を開く予定を立てていた。

メルヒオールは、神殿生活や工房見学の話を楽しそうに語り、側仕え達の間でも神殿への忌避感が徐々に薄れ始めていた。

そしてジルヴェスターとカルステッドを見送った後、ローゼマインの側近達が久しぶりに勢揃いする。中央移動発表時以来の全員集合だった。

ユーディットは、リーゼレータだけが中央同行を決めた時には裏切り者だと泣いたことを暴露され、恥ずかしそうに赤面した。

ローゼマインは、将来短期間でも中央へ来てくれたら嬉しいと素直に誘い、ユーディットも照れながら頷く。

クラリッサの名捧げ

そんな穏やかな空気の中、クラリッサが突然前へ進み出た。

そして「準備が整った」と宣言し、自分の全てを受け取ってほしいと名捧げを申し出る。

ローゼマインは内心で激しく嫌がりながらも、周囲の流れに押され、二人目の“ゴリ押し名捧げ”を受け入れることになった。

ただし、ハルトムートの時のような恍惚反応がなかったため、ローゼマインは一瞬だけ安心する。しかし直後に、「クラリッサは普通ではない」と自分へ言い聞かせるのだった。

子供のお茶会

クラリッサの中央準備

クラリッサは、領主会議終了後からローゼマインの部屋で仕事を行い、中央移動後の印刷業開始に向けた準備を進めていた。

これまでフェルディナンドが貴族達と交わした契約や交渉内容、動員された店や人員数を調査し、更にはダンケルフェルガーと中央のやり取りも参考にしながら、どの部署へ話を通せば中央で円滑に事業展開できるかを整理していたのである。

ローゼマインは、自分が孤児院工房設立時にフェルディナンドがどれほど裏で動いていたのかを初めて具体的に知り、自身の視野の狭さを痛感した。

一方、フィリーネは孤児院長業務の引き継ぎを進めており、既に誓いの儀式を終えて正式な青色巫女見習いとなっていた。ローデリヒもまた、中央で必要になる店舗規模や従業員数などを整理していた。

兄妹茶会の開始

やがてヴィルフリートとメルヒオールが部屋を出たという報告を受け、ローゼマインは兄妹だけのお茶会へ向かう。

席に着いた後、シャルロッテは側近達を全員下がらせ、盗聴防止の魔術具を使用しようとした。

ローゼマインは、範囲指定型は使用者への負担が大きいと止めようとする。しかしシャルロッテは、個別携帯型の方がメルヒオールに負担になると説明した。

ローゼマインは、自分が幼少時から平然と長時間使わされていたことを思い出し、フェルディナンドへの怒りを新たにする。

その後、自分が作動させると申し出て、素早く魔術具を起動した。たまには姉らしいことをしたいという思いがあったのである。

シャルロッテの本音

シャルロッテは、自分はいつもローゼマインに甘やかされていると語り始めた。

ヴィルフリートとの婚約時に、自分へ選択肢を残すようジルヴェスターへ進言してくれたこと、今回も王族入りするローゼマインが自分へ様々な未来を残してくれたことに感謝していたのである。

そして、自分はローゼマインへ何を返せるのかを真剣に考えていた。

エーレンフェストの変化

シャルロッテは、エーレンフェスト内部の世代間意識差について語る。

フェルディナンド世代は下位領地時代を知り、コルネリウス世代は下位領地扱いと急成長の両方を経験した。そしてローゼマイン世代は、急成長後の上位領地的扱いしか知らない世代だった。

しかし領地内部には依然として古い価値観の大人が多く、ローゼマインがいなくなれば後退する危険があると危惧していた。

そのため、自分はローゼマインが変えてきた体制を維持し、少しずつ浸透させる役割を担いたいと決意していたのである。

シャルロッテの将来像

シャルロッテは、自分は大胆な改革者ではなく、調整役や補佐役に向いていると客観的に分析していた。

だからこそ、次世代の発展型アウブが育つまでの中継ぎ領主として、現在のエーレンフェストを維持する役目を果たしたいと考えていたのである。

さらに、今後五年間は他領との婚姻が増えることを利用し、他領文化を取り入れることでライゼガング系貴族達の極端な思想を和らげたいとも語った。

また、魔力圧縮契約によってローゼマインへ敵対できない以上、他領へ嫁ぐよりもエーレンフェストへ残る方が最適だと説明する。

ローゼマインは、自分がシャルロッテを縛ってしまったのではと青ざめるが、シャルロッテは全て自分で選んだ道だと穏やかに告げた。

ヴィルフリートの宣言

シャルロッテに続き、ヴィルフリートもまた、自分達は中央へ行くローゼマインへ十分な後ろ盾を与えられないが、「絶対的な味方」という安心感だけは持たせたいと語った。

ローゼマインがフェルディナンドへ示している態度を見れば、中央へ行ってもエーレンフェストを裏切ることはないと信じていたのである。

しかし同時に、フェルディナンドへ散々世話を焼いているローゼマインへ、「面倒を押し付けそうだ」と皮肉も飛ばした。

ローゼマインは全力で否定するものの、兄妹達は誰も賛同してくれなかった。

ローゼマイン評議会

その後、ヴィルフリートはメルヒオールへ、「神事と勉強はローゼマインを見習って良いが、社交と常識だけは絶対に基準にするな」と真顔で忠告する。

シャルロッテも、自分達兄妹は皆、一度はローゼマインと比較して自信を失った経験があると告白した。

ローゼマインは、自分もフェルディナンドという規格外相手に苦労したと仲間入りを主張する。しかしヴィルフリート達からは、「叔父上とローゼマインは同類だ」と断言されてしまう。

中央移動の噂

そんな中、ヴィルフリートは、ローゼマインの中央行きが既に各所で噂になっていると切り出した。

領主会議での王族との接触や、神殿引き継ぎの慌ただしさから、「中央神殿の神殿長として王命が下ったのではないか」と推測されているらしい。

ヴィルフリートは、中央神殿の実態を他領の話で聞いており、ローゼマインが本当に神殿長にされるのではと心配していた。

ローゼマインは、視察程度はあるかもしれないが、自分を神殿長にするなら他の王族も同様に神殿へ入るべきだとジギスヴァルトへ直談判済みだと平然と説明する。

その非常識さにヴィルフリート達は絶句し、ヴィルフリートは「これだからローゼマインと一緒にいるのは嫌なのだ」と頭を抱えた。

ライゼガング古老達の来訪

そこへハルトムートからオルドナンツが届く。

ライゼガング系の古老達が、ジルヴェスター不在を狙って城へ押しかけ、フロレンツィアへ抗議を始めたという報告だった。

ローゼマインは即座に、誰がライゼガング側へ領主会議情報を流したのか調査するようハルトムートへ命じる。背後で煽動している人物がいると考えたのである。

ヴィルフリートは、父不在時を狙った行動へ怒りを露わにし、母フロレンツィアを守るため自分達が対応すると決断した。

シャルロッテは今後のライゼガング対応を考え、不安を滲ませる。しかしヴィルフリートは、自分は既に次期アウブではないため、協力を得るために耐える必要はないと断言した。

そして、シャルロッテには「これを好機として、どうライゼガングを抑え協力を得るか考えよ」と役割を託す。

ライゼガング制圧へ

ローゼマインも護衛騎士達を集め、レオノーレへエルヴィーラやギーベ・ライゼガングへの連絡を命じた。

ヴィルフリートはローゼマインへ手を差し出し、「父の留守に勝手な振る舞いは許さぬ」と宣言する。

ローゼマインもまた、粛清後に増長しすぎたライゼガング系貴族達へ「今後のためにもガツンと叩くべきだ」と笑顔で応じた。

ヴィルフリートは、「自分達が担ぎ上げているライゼガングの姫が一番怖いと思い知れば良い」と返し、ローゼマインは抗議しながらも共に抗議対応へ向かうのだった。

ライゼガングの古老

ライゼガング古老達との対面

シャルロッテの部屋を飛び出したローゼマイン達は、本館へ向かった。しかしローゼマインはヴィルフリートの歩く速さについていけず、騎獣で移動することになる。

移動中、ローゼマインはヴィルフリートの側近達の配置変化に気付いた。以前よりランプレヒトが遠くなり、代わりに名捧げしたバルトルトが近くに控えていたのである。

応接室へ到着した一行は、フロレンツィアの護衛騎士を通じて中へ入り、ライゼガングの古老達と対面した。

古老達は堂々とした態度で、ローゼマインを中央神殿へ送るなど到底認められないと主張する。さらに、ジルヴェスターはフェアベルッケンに惑わされて判断を誤っていると批判し、フロレンツィアへ説得を求めた。

その本音は、ローゼマインを次期アウブへ据え、中央へ出させないようにすることだった。

ヴィルフリートへの侮辱

古老達は、更にヴィルフリートを見ながら、中央神殿へ行くならむしろ彼の方が適任だと遠回しに嘲笑した。

ヴェローニカに育てられ、自身も問題を起こしたヴィルフリートならば、神殿へ送られても構わないという意味だったのである。

ローゼマインは、祈念式でライゼガングへ赴いた際にもヴィルフリートが同じような嫌味を受けていたのだと悟り、幼少時の失敗が長く尾を引く貴族社会の厳しさを痛感した。

シャルロッテは、妊娠中のフロレンツィアへ負担をかけないため退室を勧める。しかしフロレンツィアは、子供達を残して自分だけ逃げるわけにはいかないと穏やかに拒否した。

中央神殿行きの噂

ローゼマインは、自分に中央神殿へ行く予定などないと説明し、誰がそんな噂を流しているのか疑問を呈する。

しかし古老達は、領主会議参加者達の間で既に広まっている情報だと断言した。

さらに、ヴィルフリートやジルヴェスターでは領地運営が不安であり、ローゼマインこそアウブに相応しいと繰り返す。

そこへボニファティウスが駆け込んできた。古老達は期待を込めて協力を求めるが、ボニファティウスはローゼマインの中央神殿行きなど聞いたことがないと即答する。

その返答に古老達は動揺を見せた。

ライゼガングへの反撃

ヴィルフリートは、古老達が誰かに騙されているのではないかと指摘する。しかしそれが逆に古老達を刺激し、再びヴィルフリートへの嫌味が始まった。

ローゼマインは、ヴィルフリートが空気を読まず相手を刺激している様子を見て、むしろ自分より社交に向いていないのではと頭を抱える。

そこでローゼマインは笑顔で割って入り、ライゼガング側にも先見性が欠けていると指摘した。

もし自分が中央へ行くなら、エーレンフェストの神事を誰が行うのか当然考えているはずだと問いかける。

ヴィルフリートもそれに合わせ、自分こそ神殿入りに最も適した立場になるだろうと皮肉を返した。

更にローゼマインは、ライゼガングで祈念式を行わなくなる可能性まで示唆する。

神事がなければ収穫量は落ち、食糧庫としてのライゼガングの地位は揺らぐ。しかし現在のエーレンフェストは交易拡大によって他領から食料輸入も可能になっており、以前ほどライゼガングへ依存していないと説明した。

その脅しに古老達は青ざめる。

後ろ盾への失望

古老達は、自分達はローゼマインの後ろ盾なのに裏切るのかと非難する。

しかしローゼマインは、自分はエーレンフェストの神殿長であり養女である以上、神事を軽視し、兄弟やアウブを蔑ろにする者達を後ろ盾とは思えないと切り返した。

更に、以前ライゼガング側から「順位をもっと下げろ」と言われたことを持ち出し、自分が貴族院で努力してきた成果を否定されたようで悲しかったと訴える。

ボニファティウスは言葉に詰まり、古老達も沈黙した。

そこへヴィルフリートが、「嫌なら自分達が神殿へ入って神事を行えば良い」と笑顔で追撃する。

神事を忌避する古老達は顔を引きつらせたが、メルヒオールはむしろ安心した様子を見せた。

ギーベ・ライゼガングの謝罪

その後到着したギーベ・ライゼガングは、古老達が噂を鵜呑みにして暴走したことを謝罪した。

彼は、ヴェローニカ時代に苦しめられたライゼガング系貴族にとって、ローゼマインは希望であり恩人であると説明する。

収穫量増加、春の祈念式再現、印刷業、魔力圧縮法、御加護増加など、多くの利益をもたらした姫が、養女という理由だけで中央神殿へ押し込められると聞けば、耐えられなかったのだと語った。

更に、フェルディナンドがヴェローニカによって神殿へ追いやられた過去を重ね合わせ、同じことがローゼマインへ繰り返されると恐れていたのだと明かす。

ローゼマインは、やり方は迷惑だったが、心配自体は本心だったのだろうと理解した。

最終的に、これまで通り神事を行う代わりに、ライゼガング側はジルヴェスターへもっと協力することを約束する。フロレンツィアも、突然の押しかけを不問に処した。

ヴィルフリートへの忠告

帰り際、ギーベ・ライゼガングはヴィルフリートへ静かに問いかけた。

ヴェローニカが何をしてきたのか、自分がなぜここまで恨まれているのか、本当に理解しているのかと指摘したのである。

ヴィルフリートはヴェローニカ派の恩恵を最も受けて育った立場であり、その視点が欠けているから不用意にライゼガングを刺激してしまうのだと諭された。

ヴィルフリートは黙って自分の足元を見つめ続けた。

黒幕の正体

数日後、神殿へ戻ったローゼマインは、ハルトムートから内密の報告を受ける。

ライゼガング古老達を煽っていた黒幕は複数存在し、その一人がヴィルフリートへ名捧げしたバルトルトだった。

彼は名捧げによって命令違反はできない一方、ヴィルフリートのためという名目で側近間の分断や無理難題の押し付けを行い、情報共有まで妨害していた。

更に驚くべきことに、フロレンツィアとレーベレヒトもこの件へ関与していた。

彼等は、ジルヴェスター不在時を狙い、ライゼガング古老達をわざと暴走させることで、その影響力を削ぐ計画を立てていたのである。

ローゼマインは、妊娠中のフロレンツィアを本気で心配して飛び出した自分が馬鹿らしく感じた。

ハルトムートの反省

ハルトムートは、自分が不用意にオルドナンツを飛ばしたせいでローゼマインを危険へ向かわせたと父レーベレヒトから叱責されたことを明かす。

妙な動きの裏には誰かの意図があることが多く、見極めず動けば主を危険へ晒すだけだと教えられたのである。

また、ライゼガングの勢力削減という利益を得たのは領主夫妻側だけで、自分達には何も残らなかったことにも落ち込んでいた。

ローゼマインはそんなハルトムートを労い、彼がいなければ背後関係すら判明しなかったのだから十分頑張ったと褒め、お茶へ誘うのだった。

養父様の帰還

神殿と孤児院の日常

ローゼマインは、神殿や印刷業の引き継ぎを進めながら、貴族院の勉強の復習や孤児院の子供達の学習指導を行って日々を過ごしていた。

洗礼式を控えた孤児達は、秋に行われるジルヴェスターとの面談へ向け、貴族として相応しいと認められるため必死に勉強し、生活態度にも注意を払っていた。

ディルクもまた、自分専用の魔術具を得たことで、回復薬を使いながら魔力蓄積に励んでいた。貴族院入学までに少しでも多く魔力を蓄える必要があったのである。

ジルヴェスター達の帰還

そんな中、オティーリエからオルドナンツが届き、アーレンスバッハへ葬儀に向かっていたジルヴェスター達が帰還することを知らされる。

更にフェルディナンドから大量の土産が届いたと聞き、ローゼマインは大喜びで城へ戻った。

到着した馬車列を見たローゼマインは、その荷物量へ驚愕する。行きよりも帰りの方が荷物が増えており、まるでフェルディナンドが婿入りした時のような規模だった。

ジルヴェスターは、誰のせいだと思っているのかと嫌そうな顔をしながら、馬車五台分のうち三台がローゼマイン宛てだと説明した。

大量の荷物整理

ローゼマイン達は急いで荷物の仕分けを始める。しかし最初の箱を見た時点で、その物量にうんざりした。

最初の箱には、時を止める魔術具から取り出された大量の食器や鍋が入っていた。ローゼマインはどれが誰の物かわからず困惑するが、フィリーネの提案で神殿の厨房へ運び、フーゴ達に選別を任せることになる。

続いて現れたのは、アーレンスバッハ産の薄手の布だった。オティーリエは、それらを女性達への贈り物に使えると判断し、誰へ渡すか考え始める。

フェルディナンドからの返礼品

大量の時を止める魔術具を見て、ローゼマインはフェルディナンドがどれほど所持していたのかと驚く。

しかしリーゼレータは、これまでローゼマインが料理や食材を送り続けていたため、その返礼が一気に返ってきただけだと笑った。

ローゼマインは、フェルディナンドが返礼品選びに苦労している姿を想像し、最後はユストクスへ丸投げしていそうだと考える。

箱の中には、アーレンスバッハの珍しい素材や調合用資材が大量に詰められていた。ハルトムートとクラリッサは、それらが極めて貴重な品だと感嘆し、図書館工房へ運び込むよう指示する。

大量の魚との再会

次に開けた箱からは、海の生臭い香りが漂ってきた。

中には大量のシュプレッシュやレーギッシュ、更には名前や捌き方メモ付きの魚介類がぎっしり詰め込まれていたのである。

ローゼマインは歓声を上げるが、魚が動き出すためダームエルに即座に蓋を閉められた。

それでも、魚料理を想像したローゼマインは幸福感で満たされる。半分は城、半分は神殿へ運び、皆で分け合うことを決めた。

他にも、レティーツィアからのお礼として小物や調味料、香辛料、そして手紙が届いていた。

兄妹達との会話

荷物整理の途中、ヴィルフリートは、フェルディナンドからの荷物が本当にローゼマインの分しかなかったことへ呆れていた。

ローゼマインは、自分が料理や素材を送っていたから返礼も自分宛てなのは当然だと説明する。

しかしヴィルフリートとメルヒオールは、兄弟達への配慮が全くないのは寂しいと漏らした。

そこでローゼマインは、フェルディナンドはヴェローニカから兄弟への贈り物という文化を教わっていないため、その感覚自体が欠けているのだと語る。

シャルロッテも、自分もヴェローニカから直接贈り物を貰ったことはなく、ヴィルフリート経由で下げ渡されていただけだと明かした。

ヴィルフリートは衝撃を受けるが、シャルロッテは、フェルディナンドには母親もいなかったのだから仕方ないと静かに同情した。

フェルディナンドの近況

夕食の席で、ローゼマインは真っ先にフェルディナンドの隠し部屋について確認した。

ジルヴェスターは、西の離れに隠し部屋が確保されていたことを報告する。しかし、フェルディナンドは大量の素材を受け取った結果、葬儀期間中ずっと徹夜で研究していたらしく、酷い顔色になっていたという。

ローゼマインは、自分は徹夜させるために隠し部屋を用意したわけではないと内心で憤慨した。

葬儀中の騒動

ジルヴェスターは、更にアーレンスバッハ葬儀中に起きた騒動について語る。

葬儀中、中央騎士団の一部が突然暴れ出し、五人中二人が死亡、三人が拘束されて中央へ送還されたのである。

事件は即座に鎮圧されたが、翌日には「中央騎士団がアーレンスバッハ次期領主へ武器を向けた事件」として広まっていた。

ディートリンデが大袈裟に騒ぎ立てたことで、中央騎士団への不信感が各領地へ植え付けられたのである。

フェルディナンドは騒ぎを大きくするべきではないと諌めたが、逆にディートリンデから、何故もっと自分を心配しないのかと責められていた。

更にジルヴェスターは、ディートリンデの側にランツェナーヴェの王族が寄り添っており、フェルディナンドより余程婚約者らしかったと苦々しく語った。

ランツェナーヴェの話

話題はそのままランツェナーヴェへ移る。

ランツェナーヴェは国境門を通じてアーレンスバッハと交流しており、春から秋にかけて交易船が出入りしているという。

ジルヴェスターは、海の上に浮かぶ巨大な国境門の光景を珍しいものとして語った。

また、ランツェナーヴェの者達が着ていた銀色の布が、ゲルラッハで発見された魔力を通さない銀布と同種ではないかと警戒も示される。

ボニファティウスは、防御性能自体は限定的だが、初撃防御には脅威になり得ると評価した。

更にジルヴェスターは、ランツェナーヴェの現地民は褐色肌で、ユルゲンシュミットの人間とは外見が大きく異なると説明する。

異国の話にメルヒオールは興味津々となり、ローゼマインもまた、ランツェナーヴェや他領の図書館にどんな本があるのか想像してうっとりしていた。

最後にジルヴェスターは、フェルディナンドやレティーツィアから届いた手紙へ早めに返事を書くようローゼマインへ念押しするのだった。

フェルディナンドの手紙

布の扱いとフロレンツィアへの配慮

夕食後、ローゼマインは翌日に図書館へ向かう予定を側近達へ伝えた。フェルディナンドやレティーツィアから届いた手紙を読むためである。

一方、オティーリエは大量の布をどう扱うか相談を持ちかけた。貴族社会では贈り物を配る際、一人ずつ個別のお茶会を開くのが望ましいとされていたからである。

ローゼマインは、引き継ぎで忙しい中、そんな社交を何度も行う余裕はないと頭を抱える。

そこで、フロレンツィアへ布を預けて配ってもらう案が出る。しかしオティーリエは、それではフロレンツィアからの贈り物扱いになり、ローゼマイン自身の政治的影響力が薄れると指摘した。

それに対しローゼマインは、自分は一年後に去る身であり、今最も立場が不安定なのはフロレンツィアだと静かに語る。

ヴィルフリートとの婚約解消によって、ライゼガング系貴族はブリュンヒルデ側へ流れやすくなり、第一夫人であるフロレンツィアの立場が揺らぐ危険が生まれていたのである。

ローゼマインは、自分はライゼガングよりもフロレンツィアとシャルロッテの立場を守りたいのだと明言した。

その答えにオティーリエは理解を示し、布の半分は側近達への下げ渡し用として残し、残りをフロレンツィアへ委ねることに決めた。

図書館への移動

翌日、ローゼマインはグレーティア以外の側仕えを残し、文官と護衛騎士を連れて図書館へ向かった。

調味料や香辛料の仕分け、料理準備も必要なため、フーゴ達料理人も同行している。

ラザファムに迎えられたローゼマインは、図書館工房へ運び込まれた大量の素材を確認し、ハルトムート達へ整理を任せる。

そして、自分は隠し部屋で手紙を読む準備を始めた。机や文具、消えるインクまで完璧に整えさせ、一人で隠し部屋へ入る。

レティーツィアからの手紙

まずローゼマインは、レティーツィアからの手紙を開いた。

そこには、両親の声入りシュミル魔術具を大変喜んでいること、ユストクスに使い方を教わったことが書かれていた。

ローゼマインは、ユストクスがフェルディナンドへ「今です」とシュミルを出させている光景を想像し、思わず笑いそうになる。

また、領主会議後からフェルディナンドの教育が更に厳しくなり、お菓子とシュミル魔術具だけが心の支えだとも綴られていた。

ローゼマインは、新しいお菓子を送ってあげようと考え始める。

更にレティーツィアは、ユストクスの助言でアーレンスバッハの調味料や香辛料、料理レシピまで同封していた。

ローゼマインは、送られてきた未知の調味料を使った料理を作り、逆に送り返してみようと考える。

フェルディナンドからの叱責

続いてフェルディナンドからの大量の手紙を開くと、最初に待っていたのは大量のお小言だった。

ローゼマインが王族へ隠し部屋確保を要求したことは、婚約前から同室生活を強制するに等しい非常識行為だったと厳しく指摘される。

ローゼマインは、そんな意味ではなかったと頭を抱えた。

実際には、ディートリンデもフェルディナンドも互いに距離を取りたがり、フェルディナンドは西の離れへ部屋を移されたことで安堵したらしい。

しかし、葬儀直前の多忙な時期に引っ越しをする羽目になり、ユストクスとエックハルトは毒検査まで徹底して行ったため、アーレンスバッハ側近達を引かせていた。

その後、隠し部屋を工房化し、久々の研究へ没頭していたことも書かれている。

更にフェルディナンドは、長椅子を送れと遠回しに要求していた。ローゼマインは、完全に隠し部屋生活を満喫する気だと呆れる。

アーレンスバッハの混乱

別の手紙には、ランツェナーヴェ関連の混乱が詳しく書かれていた。

ディートリンデはランツェナーヴェ側へ強く肩入れし、魔力不足の時代にもかかわらず大量の魔石を無償同然で渡そうとするなど、暴走状態に陥っていたのである。

フェルディナンドがそれを厳しく叱責すると、ディートリンデは「本当に愛していない」と意味不明な反論をして飛び出していった。

ローゼマインは、自分にも全く理解できないと困惑する。

結果として、城内ではレティーツィアを早く次期領主へ据えようという空気が強まっていた。

魔紙レシピ改良

最後の手紙には、ローゼマインが送った最高品質魔紙のサンプルに対する感想と、改良レシピが書かれていた。

フェルディナンドは、魔力消費が無駄に多すぎると酷評しつつ、徹夜で新レシピを作成していたのである。

ローゼマインは、葬儀期間中にまで研究へ没頭するフェルディナンドへ怒りながらも、その手紙から楽しそうな高揚感を感じ取っていた。

ゲドゥルリーヒへの問い

しかし、最後に書かれていた一文を見て、ローゼマインは固まる。

そこには、「君のゲドゥルリーヒを教えてほしい」とだけ記されていた。

故郷を意味するのか、それとも別の意味を含むのか、ローゼマインには判断できなかった。

脳裏には、かつてフェルディナンドから「君は王になることを望むのか」と問われた場面が蘇る。

当時は即座に否定できた。しかし今は違う。フェルディナンドを救うためなら王になっても良いと、自分自身が既に決意してしまっているからである。

次期ツェント候補となり、王の養女となる未来を抱えた今、ローゼマインは答えを出せなくなっていた。

結局、彼女は返答を避け、まずは魔紙三百枚を完成させようと決意する。問題への答えは、その後で考えることにしたのである。

トロンベ狩りと星結びの儀式

フェルディナンドの改良レシピ

ローゼマインが書き写したフェルディナンドの改良版レシピを見て、ハルトムートとクラリッサは強く感嘆した。

そのレシピは、高価な素材を極力抑えつつ、魔力消費も削減しながら最高品質の魔紙を作り出す内容だったのである。

ローゼマインは、自分のレシピの方が工程自体は単純で早いと主張する。しかしハルトムートは、ローゼマインほど膨大な魔力を持たない者にとっては、フェルディナンド方式の方が圧倒的に効率的だと説明した。

ローゼマイン方式では大量の金粉と回復薬が必須であり、他者には到底真似できない調合だったのである。

さらに改良版では、最後の合成工程だけをフェルディナンド自身が行う形へ変更されていた。自分専用の工房を得たことで、最重要工程だけは自身で調合可能になったからである。

そのため、不燃紙の必要量も減少していた。

不燃紙不足と秘密

しかしクラリッサは、必要量を満たすには現在保有している不燃紙では足りないと指摘した。

プランタン商会の在庫を既に買い占めている以上、追加調達方法が不明だったのである。

それに対しローゼマインは、「ないなら作れば良い」と当然のように返した。

ただし、素材や製法の詳細についてはまだ秘密だと笑顔で誤魔化し、これ以上は語らなかった。

図書館から神殿へ

素材整理を終えた後、ローゼマインは神殿へ戻ることを決める。星結びの儀式準備や神殿業務の引き継ぎが残っていたからである。

また、レティーツィアから送られた調味料や香辛料を使った新しい料理についても考えていた。香辛料の組み合わせ次第では、カレーに近い味を再現できそうだと期待していたのである。

しかし、ゆっくり試行錯誤する時間がないことを惜しんでもいた。

タウの実集め

神殿へ戻ると、ローゼマインはフリッツへタウの実集めを命じた。最高品質魔紙作製には、まだ大量の不燃紙が必要だったのである。

ただし、魔力を持つ孤児達は森へ連れて行かないよう厳命した。血が流れるなどしてトロンベが暴走する危険を避けるためだった。

また、にょきにょっ木については広く知られることを望まず、秘密として扱い続けるつもりでいた。

トロンベ狩りの実演

三日後、フリッツが大量のタウの実を準備すると、ローゼマインはマティアス、ラウレンツ、そして強引についてきたハルトムートを連れて孤児院裏へ向かった。

灰色神官達が刃物を構えて待機する中、ローゼマインは同行した貴族達へ、これから見るものは決して口外するなと命じる。

そしてタウの実へ魔力を流し込み、土の上へ投げつけた。

瞬間、実は巨大なトロンベへ成長する。マティアス達は衝撃を受けるが、灰色神官達は慣れた手つきで枝を切り落とし、あっという間に狩りを終えた。

ローゼマインにとっては、まだ成長しきる前の若木を切っただけに過ぎなかった。

秘密にする理由

ラウレンツは、タウの実がトロンベになる事実を騎士団へ共有すべきではないかと尋ねる。

しかしローゼマインは、星祭りで平民達が実を投げ合うことで自然に回収されており、今の運用で十分機能していると説明した。

もし騎士団が森を管理し始めれば、星祭り文化そのものが消え、かえって管理不能になる危険もあると考えていたのである。

また、身食いの子供が大量の魔力で発芽させる危険についても問われるが、そもそもそこまでの魔力を持つ身食いは幼少期に死ぬことが多く、現実的ではないと語った。

さらに、今後は安全性を優先し、孤児院での本格的なトロンベ狩りは終了する方針も明かした。

今後は森で偶然得た若木を買い取る形へ切り替える予定だった。

ザックの星結び

やがて星結びの儀式当日となり、ローゼマインは神殿長として礼拝室へ立った。

そこには、晴れ着をまとったザックと、その幼馴染みの花嫁が並んでいた。

ルッツ達から聞いた話によれば、花嫁は控えめながらしっかり者で、長年ザックを支え続けてきた女性だった。

別の町へ出稼ぎに行くザックへ、彼女の両親が結婚するか別れるか決断を迫り、ザックは即座に結婚を選んだのである。

ローゼマインは二人の幸せを願いながら祝福を与える。しかし、思わず少し強めの祝福になってしまい、自分でも冷や汗を流した。

次に控えるトゥーリの成人式では、更に危険ではないかと不安を覚えたのである。

ダームエルの悩み

午後、城へ向かうレッサーバスの中で、ダームエルは肩を落としていた。成人側近の中で、未だ独身なのは彼だけだったのである。

周囲の友人達は既に結婚し、子供までいる者も多かった。ハルトムートからは「自分の子供が洗礼式を迎えてもダームエルは独身」とまで言われているらしい。

ローゼマインは、いっそフィリーネが成人するまで待てば良いと提案する。しかしダームエルは、フィリーネから結婚の意思はないと言われたと思い込み、既に振られた気分になっていた。

そこでローゼマインは、フィリーネは対等な女性として成長した後、自分から求婚したいと語っていたことを伝える。

ただし、クラリッサを参考にしているため、ダンケルフェルガー式の過激な求婚になる可能性もあると付け加えた。

ダームエルは本気で怯えるが、落ち込んでいた時よりは遥かに元気を取り戻していた。

ダームエルの決断

その後、ダームエルは真剣な表情で、自分は中央へ同行すべきか、それともエーレンフェストへ残るべきかをローゼマインへ尋ねる。

中央へ行けば、独身の下級騎士を領主養女が重用していると悪い噂を立てられる危険があった。

しかしローゼマインは、ダームエルは書類仕事や神殿事情に強く、長年共に過ごした最も信頼できる側近だと率直に評価する。

一方で、神殿や印刷業、フィリーネやグーテンベルク達を守るためには、エーレンフェストへ残ってほしい気持ちもあると本音を語った。

しばらく考えた末、ダームエルはエーレンフェストへ残る決断を下す。

もしフィリーネから正式に求婚されたなら、その時は共に中央へ向かうつもりだった。

ローゼマインは、待つだけでなく自分からフィリーネの心を奪うくらい頑張った方が格好良いと励ます。

しかしダームエルは、「エルヴィーラの本になるのは一度で十分だ」と全力で拒否するのだった。

トゥーリの成人式

ダームエルの保護依頼

星結びの儀式の際、ローゼマインはボニファティウスへ盗聴防止の魔術具を渡し、周囲に内緒でダームエルを預かってほしいと頼んでいた。

結婚相手探しの宴でダームエルが苦労しないよう配慮したのである。ボニファティウスは快く了承し、ダームエル本人も愕然としながら深く感謝していた。

メルヒオールへの相談役提案

数日後、ローゼマインはダームエルを連れてメルヒオールの部屋を訪れた。

エーレンフェストへ残る予定のダームエルを、神殿での相談役として活用してはどうかと提案するためである。

しかしローゼマインは、シャルロッテやメルヒオールが自分の優秀な側近達を取り込もうとしていることも見抜いていた。

特に成人後に中央移動予定のフィリーネや、その未来の伴侶候補であるダームエルまで引き抜かれるのは困ると考えていたのである。

メルヒオールは側近として取り込むこと自体は諦めるが、神殿滞在中に自分の側近達を鍛えてもらう方針を決めた。

側近引き抜き問題

神殿長室へ戻ったローゼマインは、中央移動後に側近引き抜き競争が始まる可能性を皆へ伝える。

レオノーレは、領主夫妻の仕事を支えたことで側近達の優秀さが領主一族へ広く知れ渡っている以上、勧誘されるのは当然だと説明した。

特に下級貴族であるフィリーネ達にとって、領主一族からの要請を断り続けるのは大きな負担になる。

そのためレオノーレは、ローゼマイン専属であることを示す紋章入りの魔石を作るべきだと提案した。

紋章入り魔石の準備

ローゼマインは、自身の紋章として既に使っている「ローゼマイン工房」の紋章を利用することに決めた。

本、インク、植物紙材料の木、花の髪飾りを組み合わせた、ベンノやフラン達と考案した個人紋章である。

レオノーレは、平民と貴族、本人用と家族用では魔石の格差も必要だと助言した。中央では細かな身分差にも厳しい視線が向けられるからである。

ローゼマインは多少面倒に思いながらも、その必要性を理解して準備を始めた。

魔石選定

ローゼマインは隠し部屋へ入り、配布対象ごとに魔石を選別していく。

エーレンフェスト残留組ではフィリーネ、ダームエル、ユーディット用を準備した。

更に、トゥーリ、エーファ、ギュンター、カミル、ロジーナ、フーゴ、エラ、ヴィルマなど、中央同行予定の専属や家族達の分も選び分けていった。

エラの母親も、孫の世話をするため中央移動へ同行する予定となっていた。

コピペ魔術の発見

紋章を一つずつ描いていたローゼマインは、同じ図柄を何度も描く作業へうんざりしていた。

そこで、麗乃時代の感覚で、始点と終点を指先で指定する動作を試してみる。

すると魔力が範囲指定され、魔紙上の紋章をそのまま複製できることへ気付いた。

ローゼマインは感動しながら、「コピーしてペッタン」と唱え、紋章を大量複製していく。

更に魔石へ刻印し、平民でも身につけられるよう紐通し部分まで加工して、一気に必要数を完成させた。

写本革命の失敗

ローゼマインは、この技術を利用すれば写本が劇的に楽になると大興奮した。

皆でコピペを使えば、大量の本を一気に増やせると期待したのである。

しかし、実際には魔紙と魔力インクでしか発動せず、普通の紙には使用できなかった。

その瞬間、「皆で写本計画」は崩壊した。

更に、最初に設定した呪文が正式登録されてしまい、ユルゲンシュミットでは正式名称が「コピーシテペッタン」になってしまった。

ローゼマインは、本来は「コピーアンドペースト」だったのにと頭を抱える。

紋章入り魔石の配布

完成した紋章入り魔石は、まずダームエル、ユーディット、フィリーネへ配布された。

ダームエルは、中央へ同行予定の側近達にも同じ物を渡すべきだと提案する。

ローゼマインは、必要ならハルトムート達にも後で刻印すると約束した。

その後、ギルベルタ商会からコリンナとトゥーリ達が訪れ、同行者用の魔石が正式に渡される。

トゥーリは、自分達だけ特別扱いされているのではと一瞬不安そうにするが、他の専属達にも同じ物が配られていると知って安心した。

トゥーリの成人式準備

ローゼマインは、髪を下ろしたトゥーリの姿ももう見納めなのだと実感する。

一方、自身は魔力圧縮の影響で成長が止まり、胸もまだ小さいままだった。

更に、トゥーリがそろそろ結婚相手を決める年齢だと考え始めると、強い寂しさと独占欲が湧き上がる。

想像上の結婚相手へ拳を叩き込みたくなるほどだった。

しかしトゥーリ本人からは、「成人式では皆と同じ祝福にしてください」と釘を刺される。以前のザック達への祝福が強すぎたと噂になっていたからである。

祝福調整作戦

ローゼマインは側近達へ相談し、祝福量を安定させる方法を探る。

コルネリウスは、魔石を利用した祝福制御を提案した。以前ランプレヒトの結婚式でも、暴走防止のため魔石を利用していたのである。

レオノーレも、メルヒオール達見習いにとって良い手本になると賛同した。

ローゼマインは即座に採用し、祝福用魔石を準備した。

トゥーリの成人式

成人式当日、ローゼマインは礼拝室でトゥーリの姿を見て息を呑む。

髪を結い上げ、紅を引いたトゥーリは、一気に大人の女性へ成長していた。

髪飾りは洗礼式の頃と同じ色合いを使いながら、遥かに洗練された意匠となっており、家族で作った最初の髪飾りを思い出させる物だった。

衣装も母エーファが染めた布によるグラデーション仕立てで、ローゼマインの衣装とどこか似た雰囲気を持っていた。

胸元には、ローゼマインが贈った青い紋章入り魔石も輝いていた。

ローゼマインは感動しつつ、何とか冷静を保ちながら儀式を進める。

そして魔石を使った祝福によって、トゥーリの希望通り、皆と同程度の祝福量に抑えることへ成功した。

トゥーリも満足そうに微笑み、ローゼマインへ「よくできました」と言うような表情を向ける。

最後の大暴走

しかし儀式終了後、扉の向こうに父ギュンターと母エーファの姿を見た瞬間、ローゼマインの感情が爆発する。

家族全員が、自分の我儘で中央移動へ付き合ってくれることを、当然のように受け入れてくれていたのである。

その喜びと愛情で魔力が暴走し、礼拝室中へ巨大な青い祝福が降り注いだ。

新成人達も神官達も、青色見習い達までも呆然と光を見上げる。

トゥーリは完全に怒った視線を向けていた。

慌てたローゼマインは、「見習い達への実演だった」と苦しい言い訳を試みる。

ハルトムートは感動しながら「素晴らしいお手本でした」と称賛するが、全くフォローになっていなかった。

こうして、ローゼマインは最後の最後で大失敗しながら、トゥーリの成人式を終えるのだった。

アウブの面接

収穫祭準備と青色見習い達

秋の洗礼式を終えた後、ローゼマインはエントヴィッケルンへ向けて魔力を蓄えるため、何度も城へ通って魔力供給を行っていた。

神殿では収穫祭準備が本格化し、青色見習い達は馬車や荷物の手配、同行側仕えの選別、儀式確認などへ追われていた。

徴税のため文官も同行するため、ローゼマインは旧ヴェローニカ派の子供達が現地で冷遇されないか心配していた。

収穫祭の派遣先を決める会議では、成人の青色神官と未成年の青色見習いの組み合わせが決定されていく。

フィリーネを留守番にする理由

メルヒオールは、青色巫女見習いとなったフィリーネが収穫祭へ参加しないのか疑問を呈した。

ローゼマインは、フィリーネには孤児院長後任として自分の部屋や側仕えを引き継ぐ予定があり、現在はまだ共有状態なので専属料理人や側仕え体制が整っていないと説明する。

さらに、他の青色見習い達と違い、収穫祭へ参加しなくても冬支度に困らないことも理由だった。

そのため、フィリーネには神殿留守番を任せる方針が決まる。

孤児院出身者の洗礼式面接

そこへジルヴェスターからオルドナンツが届き、三日後に冬の洗礼式対象者の面接を行うよう命じられる。

今年対象となるのは、ディルクとベルトラムの二人だった。

ローゼマインは、弟ベルトラムへ声をかける機会を作るため、ラウレンツを呼び出す。

孤児院へ入った時点で、洗礼式後は兄弟として扱われなくなる貴族社会の慣習を説明しつつ、それでも兄として気にかけてほしいと頼んだ。

また、ベルトラムは貴族へ戻れば以前の生活へ戻れると誤解している可能性があるため、現実を教えてあげてほしいとも求める。

一方ディルクについては、忠誠心や意志の強さには問題がなく、むしろ不足しているのは貴族常識だと説明し、フィリーネやダームエルへ教育役を頼んだ。

ジルヴェスターとの確認

面接当日、ジルヴェスターはローゼマインへ、孤児達が役に立つかどうかが最重要であり、役立たぬ者へ余計な温情をかけるつもりはないと釘を刺した。

ローゼマインも、旧ヴェローニカ派の子供達をどう扱うかは領主一族の重要問題であり、自分は口を挟まないと理解を示す。

その言葉に、ジルヴェスターも少しだけ安堵した。

ディルクの覚悟

面接では、まずディルクが問い質された。

ジルヴェスターは、旧ヴェローニカ派の子供扱いされ、辛い人生になると警告しながら、それでも貴族になりたいのか尋ねる。

ディルクは、自分はローゼマインのように孤児院を守る力が欲しいのだと真っ直ぐに答えた。

さらに、魔力不足を補うため貴族院入学まで努力し続ける決意も語る。

ジルヴェスターは、その純粋さに少し表情を緩めた。

名捧げについて問われた際、ディルクは、自分で主を選べるだけでも孤児にとっては幸運だと答える。

灰色神官達が理不尽な主に殺されてきた歴史を知る彼にとって、自ら主を選べる制度はむしろ救いだったのである。

その答えに苦笑しながらも、ジルヴェスターはディルクへ貴族としての洗礼式を認めた。

ベルトラムの葛藤

続いてベルトラムの面接が行われる。

ベルトラムは、自分はギーベ・ヴィルトルの息子であり、ディルクのような孤児とは違うと反発する。

しかしジルヴェスターは、洗礼式前の子供に親は存在せず、孤児院にいる時点で二人は同じ孤児だと断言した。

さらに、貴族として洗礼式を受けても、過去の生活には戻れない現実を突きつける。

ベルトラムは、ラウレンツからも、今生きていること自体が奇跡なのだと諭されていた。

葛藤しながらも、彼は領主一族へ感謝していると認める。

そして、自分はローゼマインではなく、優しく接してくれたメルヒオールへ名捧げしたいと語った。

その答えを受け、ジルヴェスターはベルトラムの後見人になることを認める。

洗礼式準備

二人の洗礼式参加が決定すると、衣装や付き添いについての話し合いが行われた。

衣装はお下がりを使い、付き添いはローゼマインの側近達から選出されることになる。

グレッシェルのエントヴィッケルン

その後、話題はグレッシェルのエントヴィッケルンへ移った。

フロレンツィアの出産後に実施予定であり、回復薬で体調を整えてでも第一夫人として参加する意向らしい。

町の設計図や商人街構想も既に整っており、魔力圧縮と御加護再取得のおかげで魔力蓄積も順調だった。

ただし問題は、町全体の広域ヴァッシェンだった。フェルディナンド不在の今、従来通りの大規模洗浄が困難なのである。

クラリッサ派遣交渉

そこでジルヴェスターは、クラリッサを貸してほしいと頼み込む。

クラリッサは、貴族院ディッターで使った広域補助魔法陣を所持しており、ブリュンヒルデ達がその力を期待していたのである。

しかしローゼマインは、まだダンケルフェルガー籍であるクラリッサだけを酷使することには反発した。

そのため、領主一族側近の上級貴族達も全員グレッシェル支援へ参加させることを条件として提示する。

グレッシェル支援はライゼガング系貴族との融和にも繋がるため、ジルヴェスターも最終的に了承した。

ブリュンヒルデはその知らせを受け、大幅に負担が減ると喜びのオルドナンツを返してきた。

フロレンツィアの出産

その直後、レーベレヒトからオルドナンツが届き、フロレンツィアへ出産の女神エントリンドゥーゲが訪れたと知らされる。

つまり産気づいたのである。

ジルヴェスターとメルヒオールは急いで城へ戻った。

ローゼマインは血縁ではないため、本館奥へ入ることも、魔力供給で役立つこともできない。そこで神殿長室へ戻り、小祭壇の前でエントリンドゥーゲへ祈りを捧げ続けた。

数日後、メルヒオールから、無事に女児が誕生したことを聞かされる。

真っ白な新都市

更に一週間後、エントヴィッケルンが実施された。

クラリッサ、ハルトムート、コルネリウス、レオノーレ、オティーリエら上級貴族側近達がグレッシェルへ向かい、広域ヴァッシェンを実施する。

その結果、グレッシェルは汚れ一つない真っ白な町へと生まれ変わった。

収穫祭とグーテンベルクの選択

グレッシェル再生の反響

グレッシェルのエントヴィッケルンは無事成功し、広域ヴァッシェンによって町全体が一瞬で美しく生まれ変わった。

コルネリウス達によれば、空中に無数の魔法陣が浮かび、一斉に水が降り注ぐ光景は圧巻だったという。

町では今後、美しい景観維持のため兵士や商人達が管理を徹底する方針となり、既に木工工房の第一陣が移転を始めていた。

商人達も劇的に変化した町並みに驚き、来年以降の交易へ大きな期待を抱いていた。貴族院でも話題になる可能性が高いと予想されている。

また、領主一族側近の上級貴族達が総出で協力したことで、ギーベ・グレッシェルを始め周囲の貴族達からアウブ・エーレンフェストへの好感も高まっていた。

クラリッサの居場所

ローゼマインは、広域魔術を支えたクラリッサへ改めて礼を述べた。

クラリッサは、今回の件で自分が正式にローゼマインの側近として数えられたように感じられたことを喜んでいた。

ハルトムートが神官長職に就いている影響で、クラリッサは未だダンケルフェルガー籍のままであり、普段は領地運営に深く関わる仕事を与えられていなかったのである。

ローゼマイン自身は、魔紙調合を手伝ってくれるだけでも十分助かっていると考えていたが、クラリッサにとっては「側近として認められること」自体に大きな意味があった。

収穫祭への出発

やがて収穫祭の時期が訪れた。

今回は、シャルロッテが春の祈念式で回ったギーベ領を担当し、ヴィルフリート、ローゼマイン、メルヒオールが直轄地を分担する体制となる。

ハルトムートにはライゼガング系ギーベ領が任され、ローゼマイン自身は小神殿引き継ぎやキルンベルガ周辺を担当するため多忙だった。

一方、フィリーネは神殿留守番役として張り切り、未成年側近達はこの機会を利用して貴族院予習に励むよう勧められる。

ローゼマインは、収穫祭準備と並行して図書館へ通い、フェルディナンドへ渡す最高品質魔紙作製も続けていた。できれば貴族院で直接渡したいと考えていたのである。

青色見習い達への忠告

最初に出発する青色神官達へ、ローゼマインは丁寧に注意を与えた。

初参加の青色見習い達は、神殿内では対等であり、貴族としての立場を振りかざしてはならないと諭す。

さらに、徴税に関わるライゼガング系文官達から嫌味や挑発を受ける可能性にも触れ、感情を爆発させず、ローゼマインやメルヒオールへ報告するだけに留めるよう命じた。

緊張した面持ちの見習い達は頷きながら馬車へ乗り込み、収穫祭へ出発していく。

メルヒオールとの会話

出発準備中、メルヒオールはレッサーバスを羨ましそうに見つめていた。

しかしローゼマインは、大きさ変化には大量の魔力が必要であり、自分の魔力圧縮法を教えられない世代になる以上、まずは自力で努力するしかないと説明する。

さらに、古語学習をしっかり続けることが重要だと助言した。将来的には地下書庫にある魔力圧縮法も利用可能になるはずだからである。

メルヒオールは聖典読解の難しさへ肩を落としていた。

ハッセ小神殿の引き継ぎ

ローゼマインはメルヒオールを連れてハッセの小神殿へ向かい、町長リヒトへ神殿長交代を告げた。

その後、守りの魔石への魔力供給方法や、シャルロッテ達と協力して維持する方法を教える。

メルヒオールは、ローゼマインがこれまで全て一人で担っていたことへ驚いていた。

また、ローゼマインは自分の隠し部屋や家具をそのまま譲ることも決める。年に数回しか使わない部屋へ新規家具を揃えるより合理的だと考えたのである。

メルヒオール側近達も、時間と予算節約になると安堵していた。

兵士達は、貴族の部屋引き継ぎには魔力登録解除など面倒な手順が多いことへ感心していた。

移動の秘密と兵士達

兵士達は、ギュンターが家族ごと移動するため引き継ぎを始めたと聞き、ローゼマインの中央移動を察していた。

しかしローゼマインは、それはまだ秘密だと念押しする。

さらに、兵士達への礼金予算についても、下町情報を利用してジルヴェスターから予算を引き出すようメルヒオールへ教えていた。

商人流の「必要なら余所から引っ張る」という発想に、側近達は驚きつつも納得していた。

キルンベルガでの回収

ローゼマインは東側直轄地の収穫祭を終えた後、キルンベルガへ向かい、徴税確認後にグーテンベルク達を回収した。

ユーディットが初参加者達へ丁寧に配慮していたおかげで、大きな混乱もなく収穫祭は進んでいたらしい。

ローゼマインは、中央移動後の準備でもユーディット達の知識が役立つかもしれないと考える。

グーテンベルク達への招集

神殿へ戻ったローゼマインは、各工房へ木札の招待状を送り、重要な話があるとしてグーテンベルク達を孤児院長室へ集めた。

平民達が極度に緊張している様子を見て、ローゼマインは多少の無礼は不問と事前に宣言する。

そして、自分が次の春の終わりにエーレンフェストを離れ、成人後は他領で印刷業を始めるため、グーテンベルク達にも同行してほしいと打ち明けた。

移住は強制しないが、移住しない場合でも長期出張で技術指導を頼むつもりだと説明する。

ルッツ達の決意

ベンノは既に中央移住準備を進めるつもりであり、マルクとルッツも同行予定だと説明した。

ルッツは、トゥーリへ遅れを取るつもりはないと力強く宣言する。

しかしヨハン達は、「未成年で好き勝手にパトロン活動していたローゼマインの方が特殊だ」と指摘した。

ダームエルまで頷いていたことに、ローゼマインは衝撃を受ける。

工房ごとの事情

インゴは、自分の工房と地盤を捨てられないため移住を断念した。

その代わり、弟子ディモが移住を志願する。ローゼマインは、新天地で印刷技術を広めれば親方資格取得も可能だと励ました。

ザックも他領で自分の名前付き道具を残したいと移住希望を表明する。ただしローゼマインは、新婚の妻と必ず相談するよう釘を刺した。

インク工房では、研究狂いのハイディを止めるより、ホレスを新たな跡取りにする方が現実的だと判断され、ヨゼフ達も半ば諦めていた。

ヨハンは婚約問題で一度移住を断念しかけるが、後日、婚約相手はダニロを選んだため、最終的にヨハン自身が同行する流れとなった。

紋章入り魔石の配布

キルンベルガ帰還後、ギルは自分も中央へ同行できるのか不安げに尋ねた。

ローゼマインは、三年後に同行予定である証として紋章入り魔石を渡す。

ニコラやヴィルマにも同様の魔石が渡され、ヴィルマはローゼマイン専属絵師になる意思を改めて示した。

その後帰還したシャルロッテは、灰色巫女のニコラが紋章入り魔石を身に着けていることへ驚く。

ローゼマインは、それが「自分が連れていく者」の証だと説明した。

するとシャルロッテは、自分も離れても姉妹であることを示す品が欲しいと願い出る。

その言葉に姉心を刺激されたローゼマインは即座に乗り気となり、主従用魔石とは別に、姉妹の繋がりを示す金属製紋章をヨハンへ発注することを決めた。

エピローグ

プランタン商会での移動準備

神殿での話し合いを終えたルッツは、プランタン商会へ戻ると大きく伸びをした。貴族の側近達が同席する会議は緊張感が強く、他のグーテンベルク達が無事だったか気にしていたのである。

ベンノやマルクも貴族対応用の服を脱ぎながら疲労を漏らしていた。

ルッツは、ベンノが移動先の詳細をどこまで知っているのか尋ねる。しかしベンノも、ローゼマインが中央へ行くことしか聞かされておらず、詳しい事情は口止めされていた。

特に印刷関係で接する下級貴族へ情報が漏れることを強く警戒していたのである。

さらにベンノは、ローゼマインの計画は常に前倒しになり、規模も拡大する傾向があるため、いつでも出発できるよう準備を進めろと忠告した。

プランタン商会の後継者

ベンノは、自分達が中央へ移動した後、神殿工房とのやり取りはダミアンとミロスへ任せる予定だと説明した。

また、プランタン商会自体は妹ミルダ夫妻へ引き継ぐという。

ミルダは植物紙工房設立やハッセ小神殿整備などでも協力しており、商人として十分信頼できる人物だった。

ルッツは、他領移動の実感が徐々に湧き始める。エーレンフェスト内を巡るだけで夢が叶ったように感じていたが、今度は本当に未知の世界へ出るのだと胸を高鳴らせていた。

過去を振り返るベンノ達

ルッツが「親を説得してでも行く」と宣言すると、ベンノは軽く頭を叩きながら、昔のように親と拗れて神殿沙汰になるのは勘弁してほしいと苦笑した。

さらに、ベンノとマルクは七年前のルッツとマインの非常識ぶりを懐かしそうに語り始める。

当時はまだマインが青色巫女見習いで、神官長もフェルディナンドだった。あれから多くの変化があったことを、ルッツは改めて実感する。

未成年の男でありながら婚約を認められているのも、ルッツが十分な稼ぎを持つようになったからだとベンノにからかわれ、ルッツは赤面していた。

トゥーリとの再会

ベンノから「婚約者へ土産を渡してこい」と送り出されたルッツは、ギルベルタ商会の工房へ向かった。

受付女性達から冷やかされながら待っていると、成人したトゥーリが姿を現す。

髪を結い上げ、長いスカートを纏ったトゥーリは、ルッツにとって見慣れた幼馴染ではなく、大人の女性へ変わっていた。

ルッツは突然強く意識してしまい、うまく言葉も出せなくなる。

トゥーリに促され、二人は中央広場へ移動した。

中央行きへの決意

広場でルッツは、自分は親を説得してでも中央へ同行すると改めて宣言する。

するとトゥーリは、ギュンターが既にカルラ達へ「ルッツの面倒も見る」と話していることを教えた。

ルッツは大きく安堵し、自分もちゃんと婚約者として意識を切り替えなければならないと感じ始める。

さらに、カミルがプランタン商会へ入り、中央新店舗のダルア見習い第一号になる予定だとも聞かされる。

ローゼマインのせいで進路変更を強いられたとカミルが怒っていることに、ルッツは思わず笑ってしまった。

トゥーリの成人式騒動

ルッツは、ローゼマインがトゥーリの成人式で暴走しなかったのか尋ねる。

するとトゥーリは、最初は普通の祝福だったものの、退場時に巨大な祝福が礼拝室へ降り注いだと怒り混じりに語った。

ローゼマインは「おまけの祝福」や「見本を見せた」と誤魔化していたらしい。

ルッツは、家族を見た瞬間に感情が暴走したのだろうと簡単に察する。

トゥーリは、自分はしっかり睨んで叱っておいたと胸を張っていた。

キルンベルガの土産

ルッツは、キルンベルガで手に入れた刺繍や珍しい花の絵をトゥーリへ渡した。

髪飾りの新案へ使えると知り、トゥーリは喜ぶ。

さらにルッツは、キルンベルガの昔話や風習を書き留めた紙束も見せた。国境門が開いていた頃の異文化の名残があり、グレッシェルとはまた違った興味深い内容だったのである。

本にしたいと考えていたが、移動準備で時間が足りないと愚痴を零すルッツへ、トゥーリは「中央へ行ってから最初の本にすれば良い」と提案した。

実家への帰宅

トゥーリと別れたルッツは、土産や保存食を抱えて実家へ戻った。

井戸端では近所の女性達から相変わらず根掘り葉掘り聞かれるが、家へ入るとカルラは真剣な表情へ変わる。既にギュンターから事情を聞いていたのである。

夕飯の支度を手伝いながら、ルッツは中央移動への許可を求めた。

カルラは、未成年の内に他領へ行くことへ不安を漏らしながらも、反対はしなかった。ルッツは既にほとんど家へ帰らず、自分の道を進んできたからである。

ただし、自分達は他の子供や孫もいるためエーレンフェストへ残ると告げる。

ルッツも、それを当然だと受け止めた。

母親からの後押し

カルラは、ギュンターも「仕事で認められたなら迷わず進め」という意味のことを言っていたと伝える。

さらに、トゥーリと婚約している以上、もう親が細かく口を出す年齢ではないとも語った。

親としての寂しさを滲ませながらも、カルラは「あんたが決めた道だ。しっかりおやり」と背中を押す。

ルッツは、その言葉を受け止め、力強く頷くのだった。

ランツェナーヴェの使者

ディートリンデの不満と野望

領主会議から戻ったディートリンデは、日々の執務へ強い不満を抱いていた。自分は本来「次期アウブ」ではなく「次期ツェント候補」であり、雑務に煩わされるべきではないと考えていたのである。

彼女は、グルトリスハイトを得られない原因を王族にあると断じていた。地下書庫調査を妨害され、第三夫人から古語の勉強不足を嘲笑されたことも強く恨んでいる。

さらに、トラオクヴァールからフェルディナンドへ隠し部屋を与えろと命じられている件についても、非常識な王命だと怒りを募らせていた。

ディートリンデは、自分が正当なツェントとなってユルゲンシュミットを救わなければならないと思い込んでいたのである。

ランツェナーヴェ船の来訪

執務中、ディートリンデは境界門への侵入を感知した。領主一族のみが感じ取れる異変であり、海上国境門と繋がる境界門からの侵入だと理解する。

急いで騎獣を駆り現地へ向かうと、そこにはフェルディナンドや騎士団が先に到着していた。

侵入者はランツェナーヴェの使者船であり、以前より細長い魚のような形へ変化していた。さらに門を抜けると船体が銀色へ変化する特殊な構造も見せる。

ディートリンデは、ランツェナーヴェとの交易はアーレンスバッハの利益に直結するため、自分が主導すべきだと考えていた。

一方フェルディナンドは、境界門へ騎士を常駐させ監視体制を整えるべきだと判断する。ディートリンデはそれを過剰警戒だと考えたが、彼は意見を聞かずに騎士団長へ指示を出した。

自分を軽視されたと感じたディートリンデは、強い不快感を抱いていた。

ゲオルギーネの助言

その後、ゲオルギーネがディートリンデの元を訪れた。話題は、王命で求められているフェルディナンドへの隠し部屋付与についてである。

ディートリンデは、正式な夫でもない男へ隠し部屋を与えることに強い嫌悪感を示した。将来的には婚約解消を考えており、神殿出身のフェルディナンドを信用していなかったのである。

しかしゲオルギーネは、西の離れの部屋を与えれば王命にも従え、貞操問題も回避できると助言した。

ディートリンデはその案へ喜び、母が少しは自分を考えてくれていたのだと感じる。だがゲオルギーネの目には依然として娘への情は映っていなかった。

歓迎の宴とレオンツィオ

ランツェナーヴェ歓迎の宴当日、ディートリンデは正式な大人として初めて最後まで参加することになり、高揚感を抱いていた。

会場には、エーレンフェストの色を纏ったフェルディナンドが立っていた。ディートリンデはそれを謙虚な態度だと受け取っている。

そこへランツェナーヴェ使節団が入場し、その代表としてレオンツィオが名乗りを上げた。

レオンツィオは美しい青年であり、ユルゲンシュミット式の貴族礼法も身につけていた。彼はフェルディナンドを見た瞬間だけ驚愕を見せたが、すぐ笑顔で隠す。

歓迎の宴が始まると、ディートリンデはレオンツィオからランツェナーヴェ姫受け入れ拒否について尋ねられた。

トラオクヴァール王が拒否したと説明すると、レオンツィオは激しく動揺する。彼がディートリンデへ縋ろうとした瞬間、フェルディナンドが手を叩き落として制止した。

フェルディナンドは、王命で決まった以上は自分達にできることはないと冷淡に切り捨てる。

その姿勢にディートリンデは腹を立て、レオンツィオへ同情を深めていった。

ランツェナーヴェの歴史

ディートリンデはレオンツィオを個室へ招き、ランツェナーヴェの事情を聞く。

そこで彼は、四百年前にグルトリスハイトを持った王族トルキューンハイトがユルゲンシュミットを離れ、ランツェナーヴェを建国した歴史を語った。

トルキューンハイトはグルトリスハイトで礎を作り、白い街を築き上げたが、シュタープを継承できる者がいなければ国は維持できない。

そのため、代々ランツェナーヴェの姫をユルゲンシュミットへ送り、そこで生まれた男子がシュタープ取得後に帰還する制度が続いてきたのである。

しかし今、姫受け入れが拒否されたことで、ランツェナーヴェは滅亡の危機にあるという。

ディートリンデは、この話を聞いてトラオクヴァール王への怒りをさらに募らせた。

また、「グルトリスハイトはシュタープへ写し取る物」という話から、今の王族が何も知らずに争っているのだと独自解釈していた。

フェルディナンドとの対立

翌日、ディートリンデはフェルディナンドへ事情説明を行い、王族へ掛け合ってほしいと頼んだ。

しかしフェルディナンドは、ランツェナーヴェに都合の良い話ばかりであり、ユルゲンシュミット側に利益が少ないと一蹴する。

さらに、ランツェナーヴェが滅ぶとしても、それは「王族が築いた街が崩壊する程度」であり、国全体が滅亡するわけではないと冷静に分析した。

ディートリンデは、フェルディナンドがただ王族へ意見するのを恐れているだけだと非難する。

フェルディナンドは、現在ランツェナーヴェの姫を受け入れれば王位継承争いを悪化させる危険があると説明したが、ディートリンデには理解されなかった。

彼女は、自分の願いを聞き入れないフェルディナンドを「嫉妬深いエーヴィリーベ」だと決めつけ、激しく拒絶する。

最終的にフェルディナンドは、王族の判断を支持すると明言した。ディートリンデは怒り狂い、「顔も見たくない」と叫んで彼を追い出した。

レオンツィオの誘惑

その後ディートリンデは、ランツェナーヴェ館でレオンツィオへ謝罪した。

レオンツィオは、ディートリンデの優しさや美しさを率直に褒め称え、彼女の心を大きく揺さぶる。

さらに、現在の王族はグルトリスハイトを隠し、正当なツェント候補が近付けないよう妨害しているのだと聞くと、レオンツィオは強い憤りを示した。

ディートリンデは、自分を心配してくれる彼へ強く惹かれていく。

そしてレオンツィオは、自分はグルトリスハイトの在処を知っていると打ち明けた。

条件は、ディートリンデが自分を伴侶として受け入れることだった。

彼は、フェルディナンドは冷酷な婚約者であり、義理立てする価値はないと甘い言葉で語りかける。

さらに、自分ならディートリンデを次期ツェントへ導けると囁いた。

ディートリンデは、これを運命の導きだと信じ込む。フェルディナンドより若く、美しく、神殿出身でもないレオンツィオは理想的な伴侶に見えたのである。

側近マルティナの制止も振り切り、ディートリンデは夢見心地のままレオンツィオの手を取った。

わたくしの希望と問題点

エルヴィーラからの呼び出し

領主会議の休暇中、リーゼレータはエルヴィーラから急な呼び出しを受けた。五の鐘に屋敷へ来るよう求める内容であり、婚約者トルステンとの約束は中止となる。

トルステンは「良い報告」を期待するような態度を見せていた。リーゼレータは、それがボニファティウスへの口利きを求める意味だと理解しており、気が重くなる。

トルステン一族は、粛清で捕らえられた親族への減刑嘆願を、領主一族との縁を使って実現しようとしていたのである。

リーゼレータ自身は、罪を犯した以上は償うべきだと考えており、その要求に強い抵抗感を抱いていた。

ローゼマイン移動計画

エルヴィーラは、フロレンツィアの出産準備に伴い、自分がローゼマインの移動準備を主導すると告げた。

その中には、中央へ同行する側近の選定も含まれていた。エルヴィーラは、現在の側仕え構成では不安が大きいと考えている。

リヒャルダは領主夫妻側へ戻り、ブリュンヒルデはアウブ第二夫人となるため同行不可能だった。オティーリエも夫の立場上、中央移動は現実的ではない。

結果として、同行予定の成人側仕えは不在であり、未成年のグレーティアだけでは心許ない状況だった。

リーゼレータの葛藤

エルヴィーラはリーゼレータへ同行意思を確認した。リーゼレータ自身は強く同行を望んでいたが、跡取り娘という立場と婚約問題が障害になっていた。

さらに、トルステンとの価値観の違いも深刻だった。彼は旧ヴェローニカ派らしい考えを持ち、ローゼマインへ歩み寄る姿勢を全く見せなかったのである。

ヴィルフリートとローゼマインの関係改善を求めても、「養女が譲るべき」と押し付けるだけで、協力的ではなかった。

リーゼレータは、夫婦として次期領主夫妻を支えたいという理想が既に崩れていることを痛感していた。

エルヴィーラの評価

リーゼレータは、自分は中級貴族であり、社交面では力不足だと語った。王族や上位領地との交流は主にブリュンヒルデやオティーリエが担っていたためである。

しかしエルヴィーラは、ローゼマインに必要なのは「普通の生活を守る側仕え」だと断言した。

倒れやすいローゼマインの看護、薬の扱い、日常管理は一朝一夕で身につくものではない。中央貴族や新入りには任せられないと判断していたのである。

さらにエルヴィーラは、リーゼレータがローゼマインのために魔力圧縮へ励み、医者資格取得まで目指していたことも把握していた。

リーゼレータは、自分の密かな努力まで見抜かれていたことへ驚愕する。

エルヴィーラは、薬の調合や社交は他者で補えるが、ローゼマインの日常を守れる側仕えは替えが利かないと高く評価した。

その言葉によって、リーゼレータは自分の役割を明確に理解し、全力で仕える決意を固める。

父との話し合い

その後エルヴィーラは、リーゼレータの父を呼び出し、後継ぎから外してローゼマインの側仕えとして同行させたいと申し出た。

王命による中央移動、側仕え不足の現状、リーゼレータの希望などが順に説明される。

父は、リーゼレータ自身の意思を確認した。リーゼレータは、ローゼマインから直々に望まれたこと、自分も主と共にありたいと明言する。

すると父は、後継ぎは一族男性ウーデリックへ譲れば良いと判断し、同行を許可した。

父は、リーゼレータは魔力を増やしすぎたことで、一族内では結婚相手選定や長としての役割が難しくなっていたとも語る。

ローゼマインの圧縮法が広まる未来なら問題なかったが、ローゼマインの移動によって前提条件が崩れたのである。

婚約解消への動き

父は、トルステン一族からボニファティウスへの口利きを求められ続けていることを明かした。

領主一族が粛清へ苦心している中、減刑を求めて縁を利用しようとする態度に強い困惑を覚えていたのである。

半年近く要求をかわしてきたが、領主会議終了により言い訳も限界へ達していた。

エルヴィーラは事情を理解し、「向こうから婚約解消を申し出るようにする」と宣言する。

その代わり、リーゼレータにはローゼマインの筆頭側仕えとなるよう求めた。

中級貴族の自分が筆頭側仕えになることへリーゼレータは驚いたが、エルヴィーラは結婚による上級貴族化も視野に入れていた。

さらに、オティーリエやブリュンヒルデから社交面の引き継ぎを受けるよう指示される。

側近達への報告

リーゼレータは、婚約解消と同行決定を側近仲間へ報告した。

事情を知るコルネリウスやレオノーレは、ローゼマインが可愛らしく同行をお願いしていたことを思い出しながら祝福する。

一方、ハルトムートは自分が招かれていなかったことへ不満を露わにした。

リーゼレータはオティーリエへ、筆頭側仕えとして教育をお願いする。オティーリエも、リーゼレータが同行できることへ強い安堵を示していた。

しかしユーディットだけは、エーレンフェストへ残る約束を破られたと泣きながら抗議する。

騒動の事情聴取

アーレンスバッハでの待機

アウブ・エーレンフェストであるジルヴェスターは、アウブ・アーレンスバッハの葬儀後、騒動の影響で客室待機を命じられていた。

長椅子へ寝そべるジルヴェスターに対し、カルステッドは「領主らしく振る舞え」と苦言を呈する。しかしジルヴェスターは、暑いアーレンスバッハで自室にいる時くらい自由で良いだろうと気にしていなかった。

アーレンスバッハの夏は非常に暑く、フェルディナンドから簡易冷却魔法陣まで渡されていた。だが魔力調整が難しく、魔力量の多いジルヴェスターは、気を抜けば寒すぎるほどだったのである。

カルステッドは、その魔法陣は葬儀中にジルヴェスターが居眠りしないよう配慮した嫌がらせだろうと笑っていた。

葬儀中の騒動

葬儀中、前方で突然中央騎士団が動き、何者かが取り押さえられる騒動が発生した。

しかしジルヴェスターは後方席におり、立ち上がって確認しようとした瞬間、カルステッドに「野次馬根性を出すな」と肩を押さえられたため、詳細を見ていなかった。

そのまま葬儀は何事もなかったかのように続行され、何が起きたのか誰にも十分共有されなかったのである。

ジルヴェスターは、事情聴取と言っても説明を聞かされるだけだろうと考えながら、不満を漏らしていた。

事情聴取の場

やがて事情聴取への呼び出しが来る。ジルヴェスターは急いで身なりを整え、護衛騎士を連れて会議室へ向かった。

そこにはジギスヴァルト王子、中央騎士団長、フェルディナンド、そして何故かディートリンデではなくゲオルギーネが座っていた。

既に成人し次期領主であるディートリンデが同席していないことに、ジルヴェスターは強い違和感を抱く。アーレンスバッハ自身が彼女を信用していないと公に示しているように見えたのである。

さらに、ディートリンデの未熟ささえゲオルギーネが意図的に放置しているのではないかと疑い始める。

中央騎士団への疑念

事情聴取では、暴れた者達がエーレンフェスト出身の騎士ばかりだったと告げられる。

ジルヴェスターは、中央騎士団にエーレンフェスト出身者がいること自体を初めて知った。彼等はゲオルギーネが次期領主から外された頃に中央へ移籍した者達であり、名捧げしていた可能性もあると考える。

そのため、今回の騒動にも裏があるのではないかと疑念を深めていった。

一方ジギスヴァルト王子は、移籍者であってもエーレンフェストと無関係ではないだろうと責任を匂わせる。

しかしジルヴェスターは、移籍者は中央所属であり、エーレンフェストには責任がないときっぱり言い切った。

さらに、中央へ出た者達は冬にも帰省せず、領地との接点がほとんどないことも説明する。

ゲオルギーネとの牽制

ゲオルギーネは、中央との連携が不足しているのではないかと皮肉を向けた。

しかしジルヴェスターは、エーレンフェストはそれで困っていないと受け流す。

さらに、今の中央貴族達は衰退気味のアーレンスバッハより、順位を上げたエーレンフェストとの繋がりを求めるだろうと逆に指摘した。

その発言には、ローゼマインによって急成長したエーレンフェストへの自負と、ゲオルギーネへの牽制が込められていた。

トルーク疑惑への苛立ち

ジルヴェスターは、アーレンスバッハからトルークが流出している可能性を以前から警告していたにもかかわらず、中央が十分動いていないことへ苛立っていた。

ただし現時点では決定的証拠がなく、表立って追及できない。王族もアーレンスバッハへの疑惑を表面化させたくないのだろうと考える。

そのためジルヴェスターは、中央貴族の冬季帰省そのものを拒否したいとまで考え始めていた。

中央騎士団の失態

中央騎士団長は、暴れた騎士達は既に処分済みだと説明した。

フェルディナンドは、原因究明より先に処分したことへ強く反発する。

しかし中央騎士団長は、騎士達は同じ言葉を繰り返すだけで会話にならず、しかも王族臨席の葬儀で暴れた以上、即処分は当然だと主張した。

さらに、ディートリンデ自身が「領主一族へ危害を加える者を生かしておくな」と命じたとも明かされる。

その結果、フェルディナンドが騒動隠蔽のためにディートリンデへ指示したのではないかという疑いまで向けられていた。

フェルディナンド擁護

その疑惑へ対し、アーレンスバッハ文官は、フェルディナンドはそのような人物ではなく、むしろディートリンデが軽率な命令を出したのだと弁護した。

それでもなおフェルディナンドを疑う視線を向ける王族へ、ジルヴェスターは強い不快感を示す。

フェルディナンドやローゼマインは王族の要求へ十分応じている。それでもなお忠誠を疑うなら、エーレンフェスト側も対応を見直さねばならないと牽制した。

ジギスヴァルト王子は慌てて、単なる聞き取りであり疑っているわけではないと弁解する。

ジルヴェスターの勘

最後にジルヴェスターは、今回の騒動は「自分と中央騎士達を接触させたくない者」が引き起こしたのではないかという勘を口にした。

冬に中央貴族が帰省する前に、何らかの情報漏洩や接触を防ごうとした可能性を感じ取っていたのである。

明確な根拠はない。ただの勘だと本人も認めていた。

しかしジルヴェスターは、自分の勘が重要局面で外れたことはないと確信している。フェルディナンドも、その発言を聞いて情報収集を始めるだろうと考えていた。

事情聴取を終えたジルヴェスターは、ヴェール越しに笑うゲオルギーネを見つめながら、いずれ姉と決着をつける時が来ると強く感じ取る。

第五部 女神の化身5レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身7レビュー

本好きの下剋上 シリーズ 一覧

兵士の娘

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘I」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘II」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘Ⅲ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。

神殿の巫女見習い

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いI」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いⅡ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いⅢ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い4」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いⅣ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。

領主の養女

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女I」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女Ⅱ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女Ⅲ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女4」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女Ⅳ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女5」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女Ⅴ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。

貴族院の自称図書委

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員I」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅱ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅲ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員4」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅳ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員5」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅴ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員6」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅵ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員7」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅶ」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員8」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅷ」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員9」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅷ」の表紙。
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女神の化身

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 1巻」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 2巻」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 3巻」の表紙。
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女神の化身4の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 4巻」の表紙。
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女神の化身5の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 5巻の表紙。
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女神の化身6の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 6巻の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身7」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身7」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身8」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身8」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身9」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身9」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身10」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上 第五部「女神の化身 10巻」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身11」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上 第五部「女神の化身 11巻 」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身12」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上 第五部「女神の化身 12巻 」の表紙。
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ハンネローレの貴族院五年生

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本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 1の表紙。
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本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生2の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 2の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上 ~ハンネローレの貴族院五年生~ 3の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 3の表紙。
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