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フィクション(Novel)本好きの下剋上読書感想

小説「本好きの下剋上 第五部「女神の化身 8巻」感想・ネタバレ

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フィクション(Novel)

第五部 女神の化身7レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身9レビュー

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  1. どんな本?
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 前巻からのあらすじ
  5. 感想
  6. 考察・解説
    1. フェルディナンドの窮地
    2. 名捧げ石の返却
    3. アーレンスバッハ侵攻
    4. ローゼマインの救出劇
    5. 国境門の開放
    6. ダンケルフェルガーとの共闘
    7. ランツェナーヴェ兵との戦闘
    8. 新アウブ・アーレンスバッハ誕生
  7. 登場キャラクター
    1. エーレンフェスト
      1. ジルヴェスター
      2. ボニファティウス
      3. カルステッド
      4. メルヒオール
      5. ローゼマイン
      6. ハルトムート
      7. クラリッサ
      8. リーゼレータ
      9. グレーティア
      10. オティーリエ
      11. ベルティルデ
      12. コルネリウス
      13. レオノーレ
      14. アンゲリカ
      15. ユーディット
      16. ダームエル
      17. マティアス
      18. ラウレンツ
      19. ローデリヒ
      20. フィリーネ
      21. アレクシス
      22. カジミアール
      23. ギーベ・キルンベルガ
      24. ヘルフリート
      25. ブリギッテ
      26. ヴィクトア
      27. リラローゼ
      28. フォルク
      29. フラン
      30. ザーム
      31. モニカ
      32. ニコラ
      33. ギル
      34. フリッツ
      35. ヴィルマ
      36. デリア
      37. リリー
      38. コンラート
      39. フォンゼル
      40. ギュンター
      41. エーファ
      42. トゥーリ
      43. カミル
      44. ルッツ
      45. ベンノ
      46. マルク
      47. ザック
      48. ヨハン
      49. エラ
      50. コリンナ
      51. フーゴ
      52. グニラ
      53. レクル
      54. エーレンフェストの騎士達
      55. キルンベルガの騎士達
      56. イルクナーの騎士達
      57. ゲルラッハの騎士達
      58. プランタン商会
      59. グーテンベルク達
    2. アーレンスバッハ(及び旧ベルケシュトック)
      1. ゲオルギーネ
      2. ディートリンデ
      3. レティーツィア
      4. フェルディナンド
      5. ユストクス
      6. エックハルト
      7. シュトラール
      8. ゼルギウス
      9. フェアゼーレ
      10. ゼルティエ
      11. ラザファム
      12. グラオザム
      13. ラウゴ
      14. フラウレルム
    3. ダンケルフェルガー
      1. アウブ・ダンケルフェルガー
      2. ジークリンデ
      3. レスティラウト
      4. ハンネローレ
      5. ハイスヒッツェ
  8. 展開まとめ
    1. プロローグ
    2. 合流
    3. 二人の情報と名捧げ石
    4. 転移陣
    5. 出陣
    6. アーレンスバッハの神殿
    7. アーレンスバッハの礎と供給の間
    8. フェルディナンドの救出
    9. わたしのゲドゥルリーヒ
    10. ツェントとグルトリスハイト
    11. 新しいアウブ
    12. アウブの守護
    13. ランツェナーヴェの船
    14. 冬を呼ぶ魔法陣
    15. 選択肢
    16. 遊び場
    17. 噂と出発
    18. ビンデバルト
    19. 黒の武器と小聖杯
    20. エピローグ
    21. エーレンフェスト防衛戦(前半)
    22. 望みのままに
  9. 本好きの下剋上 シリーズ 一覧
      1. 兵士の娘
      2. 神殿の巫女見習い
      3. 領主の養女
      4. 貴族院の自称図書委
      5. 女神の化身
    1. ハンネローレの貴族院五年生
  10. その他フィクション

どんな本?

フェルディナンドが旅立ったエーレンフェストの冬は重い。騒乱を好む「混沌の女神」のようなゲオルギーネに関する密告があったことで粛清が早められた。
一方、貴族院の三年生になったローゼマインは喪失感を振り払うように、忙しく動き回る。寮内では旧ヴェローニカ派の子供達が連座を回避できるように説得し、院内では領主候補生の講義初日が開始。文官コースの試験に、新しい上級司書との出会い、専門コースの専攻など、一年前とは立場も環境も激変した日々へ突入していく。
次第に「らしさ」を取り戻す中、神々のご加護まで大量に得て、ますますローゼマインの暴走は止まらない!?
「わたしの本好きウィルス、皆に広がれ!」

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身1」

読んだ本のタイトル

#本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身8」
著者: 香月美夜 氏
イラスト: 椎名優 氏

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あらすじ・内容

「絶対に助けます。手段なんて選びません」
 ローゼマインは戦準備へ突き進んでいた。大領地、中央、王族、神々……何を敵に回しても、危機に瀕したフェルディナンドを必ず救う。メスティオノーラの書を有効活用し、国境門を使って時間短縮。ダンケルフェルガーの騎士達をも味方につけてーーシュタイフェリーゼより速く! いざ出陣!
 ランツェナーヴェとの戦いが始まる一方、ゲオルギーネ達が侵攻を開始する。神殿や下町の民は心を一つに「エーレンフェスト防衛戦」へ挑むのだった。
 本物のディッターの勝利をつかめ!

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身8」

前巻からのあらすじ

王家へ養子に行く準備を進めて、学院へと行ったら奉納の儀式をしていたら、図書館のウサギ達にジジ様に魔力をと言われて魔力を捧げたら突然にジジ様の処に呼ばれてしまった。

どうやら結構長い間行方不明になってたようだ。

そしてその時にマインはジジ様に小さいと言われて、成長を年相応にまで一気に促進させられて大きくなってしまった。

そのフェルディナンドもかなりのピンチ。

マインは間に合うのだろか?

感想

フェルディナンドを救出するまでがなかなかに長い。
超特急で急いでいたのはわかるけど、フェルディナンドはよく生きてたよ、、

一応、フェルディナンドの名をマインが捧げられた形にして魔力を補給していたから助かったようだけど。
それって何気に大胆ww

そして、ダンケルフェルガーと直属の部下のみを率いてローゼマインは、アーレンスバッハに侵攻する。

そして、逆侵攻を全く予想していなかったアーレンスバッハの守備を食い破り、アーレンスバッハの神殿長を拘束。
フェルディナンドが閉じ込められてる処に行って、フェルディナンドを治療するのだが、、

フェルディナンドは、予想とは違う事をするローゼマインだったのを忘れており。

瀕死だったフェルディナンドは自身を治療する者をローゼマインと認識せず攻撃して来た。
途中でローゼマインと気が付いて彼女を治療するのだが、、

ローゼマインの目からは誉めて光線を全開に出している状態。

そして援軍のダンケルフェルガー達と、隣国に連れて行かれそうになっていたレティーツィアを拘束していたランツェナーヴェの船を沈めて、、

しかも人質諸共攻撃とか、、

いや、アーレンスバッハの領主になったマインが防壁を張ってるから大丈夫だけどさ、、

やる事が過激だよ。

そんな事をしながら会話でマインはアーレンスバッハの領主のままでいようとするのが、、

お魚天国で、図書館と研究の都市を妄想しながら敵を撃つ。

ローゼマイン恐ろしい子!

最後までお読み頂きありがとうございます。

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第五部 女神の化身7レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身9レビュー

考察・解説

フェルディナンドの窮地

『第五部 女神の化身8』におけるフェルディナンドの窮地について、孤立無援の絶望的な状況から、規格外の手段による救出までの経緯を解説する。

謀略による拘束と孤立
フェルディナンドは、ディートリンデとゲオルギーネの謀略により、レティーツィアに騙し討ちの形で強力な即死毒を浴びせられた。衣服の下に身につけていたローゼマインのお守りによって即死こそ免れたものの、毒の苦痛で動けなくなったところをディートリンデによってシュタープを封じる手枷をはめられ、魔力が枯渇するまで魔力を吸い取り続ける供給の魔法陣に拘束されてしまう。
彼が囚われた他領の供給の間には、以下のような絶望的な要素が存在していた。

  • 礎を染めたアウブと許可された領主一族しか立ち入ることができない完全な密室である
  • 外部からの救助や侵入が物理的にも魔術的にも事実上不可能である
    このため、フェルディナンドは自身の死が避けられない絶望的な窮地に陥ることとなった。

側近への最後の命令と決死の脱出
死を覚悟したフェルディナンドは、最後の力を振り絞り、自身の名捧げ石が入った籠をレティーツィアに託し、扉の外で待機していた側近のユストクスたちへ「行け」と命じた。この命令には、事前に交わされていた以下のような主命と約束が含まれていた。

  • 主に命の危機が迫った際には、巻き込まれずに速やかにその場を離れること
  • 名捧げを解除してでも、エーレンフェストへ確実に情報を届けさせること
    ユストクスとエックハルトは断腸の思いで自ら名捧げを解除した。そして、主を救えない悔しさと絶望を呑み込みながら、アーレンスバッハからの決死の脱出を図った。

死の淵での走馬灯と名を奪われる衝撃
供給の間で孤独に死を待つフェルディナンドは、自分がエーレンフェストやジルヴェスターを守るという父の命を果たせなかったことを悔いていた。意識が朦朧とする中でかつての保護者イルムヒルデの言葉を思い出すなど、静かに死を受け入れようとしていた。
ところがその時、突然他者の魔力に全身を包み込まれる。ローゼマインがユストクスから受け取ったフェルディナンドの名捧げ石を使い、強制的に彼の名を奪って「生きてください」と命じたためである。この主からの強い命令により、以下の変化が生じた。

  • 魔法陣へ吸われる魔力の勢いがわずかに減少した
  • 魔力枯渇によるデッドラインから辛うじて延命することとなった

規格外の救出と目覚め
フェルディナンドを救出するため、ローゼマインはアーレンスバッハの礎を自ら染めて新たなアウブとなり、誰も入れないはずの供給の間へ突入した。彼女による救出の手順は以下の通りである。

  • 部屋全体を広範囲魔術「ヴァッシェン」によって洗い流し、充満する毒を除去した
  • 意識のないフェルディナンドへ、ユレーヴェや解毒薬、回復薬を次々と投与した
    意識を取り戻したフェルディナンドであったが、口に流し込まれた激マズ回復薬を毒だと誤認し、最後の力を振り絞ってローゼマインを敵と見なして押し倒し、鎖で首を絞めるという容赦のない反撃に出る。
    しかし、相手が神々の力で急激に成長したローゼマイン本人であることに気付くと警戒を解いた。手段を選ばずに自分を助けに来た彼女の非常識さに呆れながらも、中身が全く変わっていないことに安堵し、ついに死の淵から生還を果たした。

まとめ
フェルディナンドの窮地とそこからの救出劇は、絶望的な謀略に対してローゼマインがアウブ・アーレンスバッハの座を最速で奪うという、文字通り規格外の行動によって成し遂げられた。側近たちの決死の脱出や名捧げによる強制的な延命、そして緊迫した目覚めの場面に至るまで、二人の深い絆と互いへの信頼が描かれた、物語の大きなクライマックスである。

名捧げ石の返却

『第五部 女神の化身8』において、名捧げ石 pillars の返却は物語の展開において非常に重要な二つの場面で描かれている。一つはフェルディナンドから側近たちへの返却であり、もう一つは救出後にローゼマインからフェルディナンドへの返却である。

フェルディナンドから側近(ユストクス・エックハルト)への返却
フェルディナンドはディートリンデたちの罠に嵌まり、供給の間で即死毒を受け、さらに魔力を吸い取られる絶体絶命の危機に陥った。死を覚悟した彼は、レティーツィアに自らの名捧げ石が入った金属の籠を託し、扉の外で待機していたユストクスとエックハルトに「行け」と最後の命令を下す。この場面における詳細な経緯と側近たちの動向は以下の通りである。

  • フェルディナンドの行動は、以前から側近たちに言い含めていた「命の危機を感じた時は名を返す。臣下を巻き込まないため、そしてエーレンフェストへ確実に情報を運ばせるため」という事前の主命に基づくものであった。
  • 名捧げ石を返されたユストクスとエックハルトは、主を救えない絶望と悔しさを抱えながらも、主の最後の命令を遂行するために自らの手で名捧げを解除し、アーレンスバッハからの決死の脱出を図った。
  • エックハルトにとって、名を捧げてフェルディナンドに仕えることは亡き妻ハイデマリーの分まで生きる意味であったため、名を解除することは耐え難い苦痛を伴うものであった。

ローゼマインからフェルディナンドへの返却
フェルディナンドを救出するため、ローゼマインはアーレンスバッハの礎を奪い、ユストクスの提案に乗る形でフェルディナンドの名捧げ石(クインタの石)を用いて強制的に彼の名を奪い、魔力供給によって彼を延命させた。見事に救出した後の返却と、そこから生じた展開は以下の通りである。

  • フェルディナンドの意識と体力が回復してきた後、ローゼマインは「フェルディナンド様の命を救うためとはいえ、勝手に名を奪ってしまって申し訳ありませんでした」と謝罪し、彼に名捧げ石を返却して右手に握らせた。
  • しかし、その返却の際にローゼマインは、自分は王族の養女になってグルトリスハイトを手に入れ、アーレンスバッハの事後処理も引き受けるから、フェルディナンド様はエーレンフェストへ戻ってほしいという、自分を犠牲にするような未来の計画を語った。
  • この自己犠牲的なローゼマインの言葉と決意を聞いたフェルディナンドは、拳を震わせて激しい怒りを露わにし、「王族はそこまで愚かで恥知らずだったか」と魔王のような恐ろしい笑みを浮かべることとなった。

まとめ
名捧げ石の返却を巡るエピソードは、主従の強い絆と、お互いを深く思いやるがゆえの葛藤を象徴している。フェルディナンドが死の間際に見せた臣下への配慮と、救出後にローゼマインが見せた誠実な対応は、二人の関係性の深さを物語るものである。しかし、ローゼマインの自己犠牲的な未来の計画がフェルディナンドの激しい怒りと魔王の笑みを誘発したことで、物語は王族の理不尽な要求に対抗するための次なる大きな局面へと動き出すこととなった。

アーレンスバッハ侵攻

『第五部 女神の化身8』における「アーレンスバッハ侵攻」について、エーレンフェストとダンケルフェルガーによる連合軍の出陣から、礎の奪取、 wilderness そしてランツェナーヴェの掃討戦に至るまでの経緯を解説する。

国境門の開放と出陣
ローゼマインたちは、ジルヴェスターが城の第一訓練場に用意した大人数移動用の転移陣を用いてキルンベルガへ移動した。出陣における具体的な経緯は以下の通りである。

  • キルンベルガの国境門にて、ローゼマインはメスティオノーラの書を用いて約二百年ぶりに門を起動させ、ダンケルフェルガー側の国境門へと転移した。
  • ダンケルフェルガー側では、アウブの許可を得たハイスヒッツェをはじめとする騎士団に加え、過去のディッターでの恥を雪ぐためにハンネローレも魔石の鎧を纏って参戦していた。
  • ローゼマインを中心とした出陣の儀式で「戦いに臨む我等に力を」とライデンシャフトの槍による祝福を与えた後、連合軍はアーレンスバッハへと突入した。

神殿強襲と礎の魔術の奪取
アーレンスバッハに突入後、神殿の制圧と礎の奪取に向けて迅速な作戦が展開された。

  • ダンケルフェルガーの騎士団が城の周辺で陽動を行う隙に、ローゼマインと側近たちは神殿へと向かった。
  • 神殿の門では、魔力を通さない銀の布をまとったランツェナーヴェの兵士たちが門を破壊しようとしていたが、エックハルトやアンゲリカの容赦ない物理攻撃によって容易に制圧された。
  • 神殿図書室へと侵入し、メスティオノーラが刻まれた本棚の奥にある礎の間に到達したローゼマインは、空の魔石で礎の魔力を減らした後、自身の膨大な魔力を一気に注ぎ込んだ。
  • これによりアーレンスバッハの礎はローゼマインの色に染まり、彼女はアウブ・アーレンスバッハとなった。

供給の間への突入とフェルディナンド救出
礎を奪ったローゼマインは城の領主執務室へ向かい、フェルディナンドが囚われている供給の間への隠し扉を開いた。

  • ハルトムートの提案により、室内に残る猛毒からローゼマインを守るためにヴァッシェンで部屋ごとフェルディナンドを洗浄した。
  • その後、ローゼマインは一人で中へ入り、魔法陣に魔力を吸われ衰弱していたフェルディナンドを魔法陣から引き離した。
  • ユレーヴェや解毒薬、激マズ回復薬を次々と流し込んで命を繋ぎ止めることに成功した。

ランツェナーヴェの掃討戦
回復したフェルディナンドの指揮の下、本物のディッターの継続としてランツェナーヴェの掃討が開始された。

  • 港での戦闘:港で暴れていたランツェナーヴェ兵に対し、ローゼマインがアウブにしか使えないアウブの守護(フォルコヴェーゼン)でアーレンスバッハの領民を守った上で、騎士団が閃光弾と広域ヴァッシェンを放って制バルトした。
  • 海上の銀色の船(変色時):境界門を通過するために船が魔力吸収の黒に変色した瞬間を狙い、アウブの守護で人質を守りつつ騎士団の一斉魔力攻撃を叩き込んで一隻を粉砕した。
  • 海上の銀色の船(未変色時):銀色のまま魔力貫通の針を飛ばしてくるもう一隻の船に対しては、フェルディナンドの策により冬を呼ぶ魔法陣を用いて船周辺を真冬に変え、ローゼマインの護衛騎士たちがエーヴィリーベの剣で船を凍らせた。極低温で金属が脆くなったところへ、ダンケルフェルガーの騎士たちがライデンシャフトの槍を投擲して装甲を破壊し、突入して人質のレティーツィアらを救出した。

国境門の閉鎖
掃討戦の完了後、ランツェナーヴェの船が二度と出入りできないよう、徹底的な防衛策が講じられた。

  • フェルディナンドがメスティオノーラの書で魔法陣の欠けを補完した。
  • ローゼマインが魔力を注いで国境門と境界門を完全に閉鎖した。

まとめ
エーレンフェストとダンケルフェルガーの連合軍によるアーレンスバッハ侵攻は、ローゼマインが最速で礎を染めてアウブとなり、フェルディナンドを死の淵から救い出すという規格外の結末を迎えた。続くランツェナーヴェとの掃討戦においても、状況に応じた魔術の行使と緊密な連携によって敵を圧倒し、国境門の完全閉鎖に至る。これによりアーレンスバッハにおける最大の脅威は排除され、前代未聞の侵攻作戦は完全な成功を収めることとなった。

ローゼマインの救出劇

『第五部 女神の化身8』におけるローゼマインによるフェルディナンドの救出劇について、供給の間での治療から、目を覚ましたフェルディナンドとのやり取りに至るまでの経緯を解説する。

供給の間への突入と事前の洗浄
アーレンスバッハの礎を奪って新たなアウブとなったローゼマインは、フェルディナンドが囚われている供給の間へと向かった。しかし、室内の環境や突入時の対応には以下のような課題と工夫が存在していた。

  • 出入り口の登録魔石はディートリンデによって外されており、たとえフェルディナンドが動けるようになっても自力では出られないよう細工されていた。
  • 毒耐性の低いローゼマインが中に入って倒れる危険を考慮し、ハルトムートが事前に部屋を洗浄する提案を行った。
  • ローゼマインは片腕だけを室内に差し入れ、供給の間全体とフェルディナンドを広域魔術「ヴァッシェン」で洗浄して毒を洗い流してから中へ踏み込んだ。

懸命な治療と激マズ回復薬
室内ではフェルディナンドが魔力を吸われ続けて衰弱し、うつ伏せで倒れていた。ローゼマインは速やかに以下の手順で懸命な治療を試みた。

  • 身体強化の魔術を使ってフェルディナンドを供給魔法陣から引き離した。
  • ユストクスの指示に従い、回復薬「ユレーヴェ」を流し込んで癒やしの魔術を重ね掛けした。
  • 解毒薬を含ませた布を口に入れて舌の麻痺を和らげ、魔力と体力を急回復させる「激マズ回復薬」を少しずつ流し込んだ。

突然の反撃と残念な言動による本人確認
意識を取り戻したフェルディナンドであったが、状況の誤認からローゼマインに対して容赦のない反撃を仕掛けた。その経緯と本人確認の流れは以下の通りである。

  • 殺的な味の激マズ回復薬を新たな毒だと誤認したフェルディナンドは激しく咳き込み、無意識のうちにローゼマインを押し倒した。
  • 彼のシュタープを封じる鎖で彼女の首を絞め、両手首を掴んで拘束した。
  • 神々の力によって急成長していたローゼマインの姿を認識できず「誰だ?」と強い警戒を示した。
  • ローゼマインが反論しようとして自ら鎖に突っ込み咽せるという残念な言動を見せたことで、中身が全く変わっていない本人であると確信し、警戒を解いた。

手枷の解除と非常識な魔法陣
正体を確認したフェルディナンドは、シュタープを封じている手枷を外すようローゼマインに指示した。その解除手順は以下の通りである。

  • 鍵穴を探すローゼマインに対し、フェルディナンドは手枷が開錠用の魔法陣で解除する仕組みであることを教えた。
  • ローゼマインはタブレット型のメスティオノーラの書にある検索機能を用いて該当する魔法陣を特定した。
  • 自ら開発した「コピペ魔法」を使って魔法陣を魔紙へ複製し、一瞬で手枷を解除した。
  • フェルディナンドは彼女のあまりに非常識な手段に愕然としつつも、その利便性を認めた。

救出の動機と家族の重み
少しずつ体を動かせるようになったフェルディナンドを見て、ローゼマインは安心から涙をこぼした。しかし、二人の間では救出の是非を巡って以下のような対話が交わされた。

  • フェルディナンドは、片方を殺してメスティオノーラの書を完成させよというエアヴェルミーンの言葉に従い、自分を見殺しにするのが最も犠牲の少ない賢い選択だったはずだと彼女を叱責した。
  • 何故助けに来たのかと問いただすフェルディナンドに対し、ローゼマインは「フェルディナンド様が助からなかったら、ユルゲンシュミットが助かっても意味がない」と断言した。
  • 彼女にとって家族同然であるフェルディナンドは、国よりも優先すべき絶対的な存在であった。
  • この言葉を聞いたフェルディナンドは、彼女の言う家族という言葉が本物の家族以上に重い意味を持つことを知った。
  • 完全な想定外の事態に強い衝撃を受けるとともに、自らの生を強く望まれたことに深い安堵を覚えた。

まとめ
ローゼマインによるフェルディナンドの救出劇は、アウブの座の奪取から始まり、ヴァッシェンによる洗浄や激マズ回復薬の投与、さらにはコピペ魔法による手枷の解除にいたるまで、彼女の規格外の行動力と魔力によって成し遂げられた。目を覚ましたフェルディナンドとの間で交わされた対話は、世界の命運や王命をも飛び越える二人の「家族同然」の深い絆と信頼関係を改めて浮き彫りにしており、物語の大きな転換点となっている。

国境門の開放

『第五部 女神の化身8』における「国境門の開放」について、エーレンフェストからダンケルフェルガーへ向かうための準備と、それに伴う驚きや重要な出来事を解説する。

キルンベルガへの転移と境界門の開放
アーレンスバッハへ侵攻しフェルディナンドを救出するため、ローゼマインやジルヴェスター、護衛の騎士たちは、エーレンフェスト東端のキルンベルガにある夏の館へと向かった。移動の背景と経緯は以下の通りである。

  • 移動には、長年使われず忘れ去られていた大人数用の巨大な転移陣が用いられた。これはローゼマインがメスティオノーラの書から得た知識をもとに復活させたものである。
  • キルンベルガに到着後、ジルヴェスターがシュタープで「エフネトーア」と唱えて白い境界門を開けると、その奥に淡く虹色に輝く国境門が姿を現した。

グルトリスハイトによる国境門の起動
国境門の開放にあたり、ローゼマインの規格外の能力と英知が発揮された。

  • ローゼマインは騎獣から降り、「グルトリスハイト」と唱えてメスティオノーラの書を実体化させた。
  • 光る板状の書を国境門に押し付けると、凄まじい勢いで魔力が吸い込まれていった。
  • 長らく魔力供給されていなかった国境門は強く発光し始め、三角の屋根が左右にスライドして開き、内部の転移陣が姿を現した。
  • この様子を見たハルトムートとクラリッサは、ローゼマインを英知の女神メスティオノーラそのものであると恍惚とした様子で称賛した。
  • 約200年ぶりに国境門が動く歴史的瞬間を目の当たりにしたキルンベルガの騎士たちやギーベは、ツェント(王)の証である本物のグルトリスハイトの出現に驚愕した。

王位簒奪の懸念と王族の許可
グルトリスハイトを持つローゼマインの姿を見て、ギーベ・キルンベルガはかつてのアイゼンライヒのように王位簒奪と見なされ、反逆罪に問われるのではないかと危惧した。しかし、領主側には以下のような大義名分が用意されていた。

  • ジルヴェスターは秘密裏に王族との養子縁組が進んでいることを明かした。
  • ジギスヴァルト王子から預かった王族の紋章が入った魔石のネックレス(求愛の魔術具)を提示した。
  • これが王族の許可を得ている証であり、他領へ武力介入する上での重要な大義名分として機能することとなった。

ダンケルフェルガーへの転移
国境門の起動後、アーレンスバッハへ向かうための転移が実行された。

  • 国境門を開けたローゼマイン以外の人間は、国境門の結界に弾かれて自力で中に入ることができない。
  • そのため、アーレンスバッハへ同行する者たちはすべてローゼマインの騎獣(レッサーバス)に乗り込むこととなった。
  • 全員を乗せた後、ローゼマインは国境門内部の虹色の床に描かれた転移陣の上に立ち、メスティオノーラの書を使って転移陣を動かす方法を検索した。
  • 「ケーシュルッセル ダンケルフェルガー」と唱えると、全属性の光を放つ巨大な魔法陣が空中に展開された。
  • 上下から凄まじい勢いで魔力が吸われる中、ジルヴェスターの「フェルディナンドを頼んだぞ」という声を背に、ローゼマインたちはダンケルフェルガーへと転移していいった。

まとめ
ローゼマインによる国境門の開放とダンケルフェルガーへの転移は、失われた神事の知識と圧倒的な魔力によって成し遂げられた歴史的な出来事である。王族の許可を示す魔術具という大義名分を携え、仲間たちを自身の騎獣に乗せて境界を越える姿は、フェルディナンド救出という目的に向けた彼女の揺るぎない決意を象徴している。この前代未聞の移動劇は、国境を越えた壮大な戦いの幕開けを告げる重要な転換点となっている。

ダンケルフェルガーとの共闘

『第五部 女神の化身8』におけるダンケルフェルガーとの共闘について、国境門での合流からアーレンスバッハでの戦闘、そしてエーレンフェスト防衛戦へ至るまでの経緯を解説する。

ダンケルフェルガー軍との合流と出陣の儀式
ローゼマインがキルンベルガの国境門を開いてダンケルフェルガー側の境界門へ転移したことで、両軍の合流と出陣が果たされた。その経緯は以下の通りである。

  • 転移先には、アウブ・ダンケルフェルガー夫妻やレスティラウトをはじめとする有志の騎士たちが集結していた。
  • 三年生のディッターでの失態の恥を雪ぐため、未成年の領主候補生であるハンネローレも魔石の鎧を纏って参戦していた。
  • ローゼマインが王族からの許可証となるジギスヴァルトの求愛の魔術具を示して大義名分を証明した後、騎士たちの要望により出陣の儀式が行われた。
  • ローゼマインが中心となってシュタープをライデンシャフトの槍に変化させ、戦いに臨む騎士たちに色とりどりの祝福を降らせた。
  • この儀式によって彼らの士気は最高潮に達し、アーレンスバッハへの侵攻が開始された。

アーレンスバッハ強襲と城の制圧
アーレンスバッハへの突入後、迅速な城の制圧作戦が展開された。

  • ハンネローレやハイスヒッツェ率いるダンケルフェルガーの騎士たちは、ローゼマインたちが神殿で礎を奪うための隙を作るべく、城の上空で派手な陽動を行った。
  • 城へ突入した騎士たちが遭遇したのは、アーレンスバッハの貴族ではなくランツェナーヴェの兵士たちであった。
  • 騎士たちは銀の布や未知の武器に多少手こずりながらも、魔力の低い動くものに食らいつく魔獣ヴォルヘニールを活用するなどして城内を制圧した。
  • 状況を理解せず騒ぐアーレンスバッハの貴族たちを一室に閉じ込めるという、強引な手段で場を迅速に掌握した。

銀色の船の攻略
境界門へ逃れようとするランツェナーヴェの船に対する攻撃でも、両軍の連携による攻略が行われた。

  • 船が魔力を吸収する黒に変色した瞬間にローゼマインがアウブの守護で人質を守り、ダンケルフェルガーとアーレンスバッハの騎士たちが一斉攻撃を叩き込んで一隻を粉砕した。
  • 魔力攻撃が効かない銀色のまま膠着状態になったもう一隻に対しては、フェルディナンドの指示でローゼマインの護衛騎士たちが冬を呼ぶ魔法陣で船を凍らせた。
  • 急激な冷却で金属が脆くなったところへ、騎士たちがライデンシャフトの槍を投擲して表面の装甲を破壊した。
  • 開いた穴から内部へ突入し、人質のレティーツィアらを無事に救出した。

「本物のディッター」の継続
ランツェナーヴェの掃討戦が終わった後、戦いは次の局面へと引き継がれた。

  • ハイスヒッツェはフェルディナンドに過去に奪われたマントを返却し、今度こそ正々堂々と取り戻したいと再びディッターを申し込んだが冷たくあしらわれた。
  • しかし、フェルディナンドが宝を奪うだけがディッターではなく、宝を守りきらなければ勝利とは言えないと告げた。
  • エーレンフェストの防衛戦まで含めてディッターが続いているという解釈に騎士たちは熱狂した。
  • ダンケルフェルガーの騎士たちはフェルディナンドの指揮下に入り、本物のディッターを継続してエーレンフェストの救援に向かうこととなった。

エーレンフェスト防衛戦における圧倒的な戦力
転移陣を使ってエーレンフェストのビンデバルトに到着した連合軍は、圧倒的な戦闘力で防衛に貢献した。

  • 到着直後、ゲオルギーネの指示でエーレンフェストの土地の魔力を奪っていた旧ベルケシュトックのギーベ小隊と遭遇した。
  • アウブ・エーレンフェストからの武力行使許可が下りた途端、ダンケルフェルガーの騎士たちは嬉々として森を吹き飛ばすほどの勢いで攻撃を開始した。
  • 圧倒的な数の有利と戦闘力により、敵の小隊を瞬く間に次々と壊滅させた局面に至る。
  • この迅速な制圧により、エーレンフェストの防衛において極めて強力な戦力として貢献した。

まとめ
エーレンフェストとダンケルフェルガーによる連合軍の共闘は、出陣の儀式からアーレンスバッハの城の制圧、銀色の船の攻略、そしてエーレンフェストの防衛戦に至るまで、圧倒的な成果を収めた。フェルディナンドが提示した宝を守りきるまでがディッターという大義名分は、戦闘民族であるダンケルフェルガーの熱意を最高潮に保ったままエーレンフェスト救援へと繋げる見事な契機となった。この緊密な連携と規格外の戦闘力は、国を揺るがす危機を排する上での決定的な勝因となっている。

ランツェナーヴェ兵との戦闘

『第五部 女神の化身8』におけるランツェナーヴェ兵との戦闘について、敵の特異な装備に対するエーレンフェストとダンケルフェルガーの連合軍の対応や、各地で繰り広げられた戦いの推移を解説する。

銀の装備の特性と神殿での初戦
ランツェナーヴェ兵の最大の脅威は、魔力を全く通さない銀の布をまとっていることであった。これにより、貴族の基本戦術である魔力攻撃やシュタープによる捕縛が一切通用しない。神殿へ向かったローゼマインたちの前には、神殿の門を物理的に破壊しようとする3人のランツェナーヴェ兵が現れたが、連合軍は以下のように対応した。

  • エックハルトが騎獣から飛び降り、身体強化による蹴りで彼らを吹き飛ばした。
  • アンゲリカがシュタープの無効化を確認し、即座に実剣での刺突に切り替えて応戦した。
  • 敵の放った銀のナイフを、アンゲリカが持つ物理攻撃を反射するお守りによって跳ね返した。
    魔力ではなく物理攻撃であれば通用することが初戦で証明され、倒した敵から回収した銀の武器や防具は貴重な検証材料となった。

城と貴族街の制圧とヴォルヘニールの投入
ダンケルフェルガーの騎士たちが城へ突入した際、そこにはアーレンスバッハの貴族ではなく、北や西の離れを襲撃し略奪を行っていたランツェナーヴェ兵たちがいた。戦況の推移は以下の通りである。

  • ダンケルフェルガーの騎士たちが敵を城から追い出し、貴族街をうろつく者たちを次々と討伐および捕縛した。
  • ハンネローレが銀の布対策として、魔力を持たず動くものに見境なく食らいつく性質の魔獣ヴォルヘニールを戦場へ投入した。
  • 自分たちより魔力の低いランツェナーヴェ兵たちを制圧するために、この魔獣の習性が有効に活用された。

港での乱闘とアウブの守護
港で出港準備中だった船の周辺では、ランツェナーヴェ兵に対してアーレンスバッハの平民たちが激しく抵抗し、乱闘状態になっていた。この局面では以下の作戦が展開された。

  • 漁師を中心とする平民たちが、爆発する魚シュプレッシュや木箱、網を投げつけて敵の動きを阻害した。
  • 平民を巻き込まないため、フェルディナンドの指示によりローゼマインが港一帯にルングシュメールの癒しと、アーレンスバッハの領民だけを守るアウブの守護を展開した。
  • 安全が確保された直後、騎士たちが上空から閃光弾と広域ヴァッシェンを放ち、銀色の兵士たちだけを海へ押し流して制圧した。

境界門前の海戦と黒化した船の粉砕
境界門へ向かって逃走する船に対しては、境界門を通過するために船が魔力を弾く銀色から、魔力を吸収する黒へ変化する瞬間が狙われた。

  • 船が黒に変色した直後、ローゼマインが船内の人質に向けてアウブの守護を放った。
  • この守護を合図に、ダンケルフェルガーとアーレンスバッハの騎士たちが一斉に魔力攻撃を叩き込んだ。
  • 轟音とともに船は爆発して粉砕され、守護された人質は海に投げ出されたところをシュタープの網で一本釣りのように救出された。
  • 魔力攻撃を無効化していた銀色の兵士たちは船を失い、海上に残される結果となった。

船の凍結とライデンシャフトの槍による突入
仲間の船が破壊されたのを見た後継の船は、銀色のまま海上で停止し、騎獣や鎧すら貫通する銀の針を無数に撃ち出して徹底抗戦の構えを見せた。この強固な装甲に対し、フェルディナンドは周囲に冬を呼び船を凍らせるという規格外の作戦を立案した。

  • ローゼマインが冬を呼ぶ魔法陣を起動し、出現した光の柱の中でコルネリウス、マティアス、ラウレンツ、ハルトムートの4人がエーヴィリーベの剣を使って船全体を氷と雪で覆い尽くした。
  • 極低温によって金属が脆くなり収縮したところへ、ハイスヒッツェをはじめとするダンケルフェルガーの騎士たちが熱を帯びたライデンシャフトの槍を投擲して表面の装甲を吹き飛ばした。
  • 装甲が剥がれてできた穴にローゼマインがアウブの守護を通し、エックハルトが大剣で船首を叩き斬って突入口を作成した。
  • 確保された突入口から騎士たちが雪崩れ込み、船内の制圧とレティーツィアら人質の救出を完了させた。

まとめ
ランツェナーヴェ兵との戦闘は、魔力を通さない銀の装備という未知の脅威に対し、連合軍が柔軟な戦術転換と強固な連携で立ち向かった激戦である。神殿での物理攻撃による突破口の発見に始まり、魔獣ヴォルヘニールの投入、アウブの守護を用いた平民や人質の安全確保、環境の利用、そして船の凍結とライデンシャフトの槍による複合攻撃にいたるまで、すべての局面において規格外の作戦が功を奏した。この一連の勝利は、エーレンフェストとダンケルフェルガーの連合軍の絆と、高い戦術的対応力を証明するものとなっている。

新アウブ・アーレンスバッハ誕生

『第五部 女神の化身8』における「新アウブ・アーレンスバッハ誕生」について、その突飛な手段から、フェルディナンドが提案した「遊び場」としての未来図、そして新アウブとしての初仕事と領地への周知活動について解説する。

規格外の手段による礎の奪取
ローゼマインがアーレンスバッハの礎を奪って新たなアウブとなった最大の目的は、領地を支配することではなく、他領の供給の間に囚われているフェルディナンドを救出することであった。その具体的な経緯は以下の通りである。

  • メスティオノーラの書から得た知識で、礎が神殿図書室の奥にあることを突き止めた
  • ダンケルフェルガーの陽動の隙を突いて神殿へ侵入した
  • 礎の間にて空の魔石を置いて礎の魔力を減らした後、回復薬を飲みながら自身の膨大な魔力を一気に注ぎ込んだ
  • 淡い緑色だったアーレンスバッハの礎を自分の魔力である薄い黄色に完全に染め替え、他領の未成年領主候補生による礎の強奪という前代未聞の事態を成し遂げた

フェルディナンドの驚愕と呆れ
救出されたフェルディナンドは、ローゼマインが「手っ取り早く入るために礎を染めた」と聞いた際、完全に処理落ちしたように停止し、「一体何をしているのだ、君は?」と深い溜息を吐いた。

  • フェルディナンドが想定していた手段は、現在のアウブを捕らえ、脅迫や拷問をしてでも登録用魔石を奪い、契約させる方法であった
  • 自分を助けるためだけに、わざわざ巨大な礎を染め替えるというローゼマインの非常識さに、心底呆れ果てる結果となった

「遊び場」としてのアーレンスバッハ
ローゼマイン自身は、王の養女となって王族にグルトリスハイトを譲渡する予定であったため、アーレンスバッハの事後処理を終えた後は誰かに礎を譲るつもりであった。アーレンスバッハには嫌な思い出が多く、留まりたくなかったためである。
しかしフェルディナンドは、王族の理不尽な婚姻から逃れる道として「アウブ・アーレンスバッハになる」という選択肢を提示し、以下のような魅力的な提案で彼女を巧みに誘導した。

  • 外患誘致の罪を犯したアーレンスバッハを、滅ぼしても良いと思っていた土地であり、君の遊び場にはちょうど良いと表現した
  • いつでも魚が食べられることや、香辛料の栽培援助ができる点を挙げた
  • 過去にローゼマインが夢見ていた図書館都市の建設や、平民も通える神殿学校の設立がアウブの権限で自由にできることを提示した
  • 下町の家族を自領へ呼び寄せ、隠し部屋と繋がる転移陣を設置して秘密裏に会うことも可能だと提案した
    この提案の裏には、フェルディナンド自身がローゼマインの図書館の隣に総合研究所を建設し、彼女に領地運営を任せて自分は研究三昧の生活を送るという企みがあったが、ローゼマインも条件交渉の末にアウブとなることを了承した。

新アウブとしての初仕事と宣伝活動
アウブ・アーレンスバッハとなったローゼマインの初仕事は、ランツェナーヴェの兵士から自領の民を守ることであった。

  • 領主しか使えない魔法「アウブの守護(フォルコヴェーゼン)」を港一帯に展開した
  • アーレンスバッハの領民と騎士たちだけが淡い黄色の光に包まれて保護され、これを見た騎士たちは彼女が本当に新しいアウブであることを実感した
  • その後、フェルディナンドの命により、ハルトムートとクラリッサがアーレンスバッハの貴族たちに対して苛烈な宣伝活動を展開した
  • 二人はローゼマインが「神々から祝福を受けて英知の書を授かり、王族にグルトリスハイトをもたらすメスティオノーラの化身」であり、「混沌に魅入られたアーレンスバッハを浄化する救いの女神」であると説き回り、貴族たちがひれ伏したくなるほど徹底的に心酔させて回った
    これにより、新アウブの威光は急速に領地内へ浸透していくことになった。

まとめ
ローゼマインによる新アウブ・アーレンスバッハの誕生は、フェルディナンド救出という目的のために引き起こされた規格外の出来事であった。フェルディナンドが提示した「遊び場」としての未来図は、彼女の夢を叶えつつ王族の理不尽な要求を回避する画期的な選択肢となり、新アウブの座を受け入れる決定打となった。アウブの守護による実力提示と、側近たちによる圧倒的な周知活動により、その統治と威光は新たな領地へと急速に定着していくこととなる。

第五部 女神の化身7レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身9レビュー

登場キャラクター

エーレンフェスト

ジルヴェスター

エーレンフェストの領主である。ローゼマインの養父であり、フェルディナンドの異母兄にあたる。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインのアーレンスバッハ侵攻とフェルディナンド救出に許可を出した。キルンベルガの国境門を開くために同行し、王族から預かった許可証を彼女に渡している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 秘密裏に王族とローゼマインの養子縁組の話を進めている。

ボニファティウス

ジルヴェスターの叔父である。戦闘力が極めて高い。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主一族。
・物語内での具体的な行動や成果
 イルクナーへ援軍として転移し、旧ベルケシュトックの騎士達を撃退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 理屈ではなく勘で罠を回避し、計画を潰す存在としてゲオルギーネ達から警戒されている。

カルステッド

エーレンフェストの騎士団長である。ボニファティウスの息子にあたる。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 キルンベルガへの転移に同行した。息子のエックハルトとコルネリウスにローゼマインとフェルディナンドの護衛を命じている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

メルヒオール

ジルヴェスターの息子である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主候補生。神殿長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマイン不在の神殿において、神殿長業務を引き継いでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ローゼマイン

本作の主人公である。神々によって年相応の姿へ急成長させられた。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主候補生。アウブ・アーレンスバッハ。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハへ侵攻して礎を奪い、フェルディナンドの命を救った。その後、ダンケルフェルガーの騎士達と共にランツェナーヴェの掃討戦へ参加している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 礎を染めたことでアウブ・アーレンスバッハとなった。将来的に王の養女となる予定である。

ハルトムート

ローゼマインの側近である。彼女に対して狂信的な忠誠心を抱いている。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハ侵攻に同行し、魔術具の管理を担当した。現地ではローゼマインをメスティオノーラの化身として貴族達へ宣伝している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

クラリッサ

ダンケルフェルガー出身の文官である。ハルトムートと同様にローゼマインを崇拝している。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハでの戦闘に同行した。上空からの広域魔術支援や、魔術具の管理を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

リーゼレータ

ローゼマインの筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインがアーレンスバッハへ向かった後、図書館に残った。避難してくる平民達の受け入れ準備を進めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グレーティア

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 リーゼレータと共に図書館へ移動した。グーテンベルク達の受け入れ準備に尽力している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

オティーリエ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 城に残り、領主一族や他の側近達との情報共有を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ベルティルデ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブリュンヒルデの補佐を務めた。領主一族の情報を側近部屋へ伝達している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

コルネリウス

ローゼマインの護衛騎士である。カルステッドの息子にあたる。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハでの戦闘に参加した。フラウレルムからローゼマインを侮辱された際に激怒し、彼女の頭を踏みつけている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レオノーレ

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・上級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ダンケルフェルガーの騎士達と作戦の打ち合わせを行った。ローゼマインの護衛と部隊の指揮補佐を務めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アンゲリカ

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハの神殿門において、銀の布を着たランツェナーヴェの兵士を物理攻撃で制圧した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ユーディット

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 未成年のためアーレンスバッハ侵攻には同行できなかった。エーレンフェストに残り、神殿の防衛を担当している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ダームエル

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・下級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 下町の家族や専属達を貴族街の図書館へ避難させた。その後、西門の防衛に向かっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マティアス

ローゼマインの護衛騎士である。グラオザムの息子にあたる。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハで破られた罠の小屋を発見した。故郷を蹂躙する父親と戦う決意を示している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ラウレンツ

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハでの戦闘に同行した。視力強化を利用し、回復薬や魔術具の補給管理を担っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ローデリヒ

ローゼマインの文官である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿に残り、避難訓練の指示を出した。フィリーネと共に神殿長室の結界用魔術具を起動させている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フィリーネ

ローゼマインの文官である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・下級文官。孤児院長。
・物語内での具体的な行動や成果
 敵接近の知らせを受け、孤児達や神殿の者達へ避難を呼びかけた。結界用魔術具を起動して神殿長室を守っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アレクシス

ヴィルフリートの側近である。ギーベ・キルンベルガの息子にあたる。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 父親からのオルドナンツに対し、城が会議中のため詳細を知らされていないと返答した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

カジミアール

メルヒオールの側近である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿で避難命令が出た際、冷静に指示を出した。フィリーネ達の避難行動をサポートしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギーベ・キルンベルガ

キルンベルガの領主である。アレクシスの父親にあたる。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・ギーベ。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウブからの手紙を受け、館の転移陣を準備した。一行を出迎え、国境門が開く様子を目撃している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヘルフリート

イルクナーの領主である。ブリギッテの兄にあたる。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・ギーベ。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハからの侵攻に備え、ブリギッテやヴィクトアと防衛策を協議した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ブリギッテ

イルクナーの貴族である。ローゼマインの元護衛騎士であり、ヴィクトアの妻にあたる。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・中級貴族。騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 イルクナーの境界付近で見回りを行い、魔力を奪う敵を発見した。ボニファティウスの援軍と共に戦っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヴィクトア

イルクナーに婿入りした貴族である。ブリギッテの夫にあたる。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 イルクナーの防衛についてヘルフリート達と協議した。妻のブリギッテが戦いに出ることを強く心配している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

リラローゼ

ブリギッテとヴィクトアの娘である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
 直接的な行動の描写はない。母親のブリギッテに守られる存在として言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フォルク

イルクナーで働く文官である。

・所属組織、地位や役職
 イルクナーの文官業務補佐。元灰色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハの平民よりも、イルクナーの防衛を優先すべきだと進言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フラン

ローゼマインの筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 避難命令が出た際、工房にいるプランタン商会の者達へ連絡に向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ザーム

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿長室で結界魔術具を起動させたフィリーネ達に果実水を提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

モニカ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 フィリーネの着付けを手伝った。避難時は外で作業していた灰色巫女達を地下へ誘導している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ニコラ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 結界魔術具を起動して疲労したフィリーネを支えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギル

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 プランタン商会からの避難に関する要望の許可を受け、工房へ知らせに向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フリッツ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 避難時に神殿長室に集められた。結界内で待機している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヴィルマ

孤児院の管理を担う側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿・灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 避難命令が出た際、上階に灰色巫女が残っていないか確認に向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

デリア

孤児院にいる灰色巫女である。

・所属組織、地位や役職
 神殿・灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 避難命令時、一階の部屋に誰もいないか確認へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

リリー

孤児院にいる灰色巫女である。

・所属組織、地位や役職
 神殿・灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 食堂にいる子供達に地下へ移動するように声をかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

コンラート

フィリーネの弟である。

・所属組織、地位や役職
 神殿・灰色神官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 避難時に廊下の清掃を片付けた。ディルク達の安否を心配している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フォンゼル

メルヒオールの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿の貴族門に到着した。避難時の防衛態勢を整えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギュンター

ローゼマインの父親である。

・所属組織、地位や役職
 下町・西門の班長。
・物語内での具体的な行動や成果
 平民に避難を呼びかけた。家族から託されたお守りを身につけて西門の防衛に当たっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 士長から班長に役職が変更されている。

エーファ

ローゼマインの母親である。

・所属組織、地位や役職
 下町・染色職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 図書館に避難した後、ローゼマインの衣装の刺繍を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

トゥーリ

ローゼマインの姉である。

・所属組織、地位や役職
 下町・髪飾り職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 家族と共に図書館へ避難した。髪飾りを作る作業を続けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

カミル

ギュンターとエーファの息子である。

・所属組織、地位や役職
 下町・プランタン商会の見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーファの職場に避難の知らせを届けた。図書館では内装を観察して商売の参考にしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ルッツ

ローゼマインの幼馴染である。

・所属組織、地位や役職
 下町・プランタン商会の店代行。
・物語内での具体的な行動や成果
 避難先の図書館で、新しい本の作製のために従来の本を見せてほしいとラザファムに頼んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ベンノ

プランタン商会の主人である。

・所属組織、地位や役職
 下町・商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 専属達を馬車に乗せて図書館へ避難させた。カミルに貴族の館の内装を観察するよう指示している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マルク

ベンノの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 下町・プランタン商会の店代行。
・物語内での具体的な行動や成果
 ベンノと共に図書館へ避難した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ザック

グーテンベルクの鍛冶職人である。

・所属組織、地位や役職
 下町・鍛冶職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 図書館へ避難した際、荷物運搬の力仕事を率先して手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヨハン

グーテンベルクの鍛冶職人である。

・所属組織、地位や役職
 下町・鍛冶職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ザックと共に力仕事を手伝うと申し出た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エラ

ローゼマインの専属料理人である。

・所属組織、地位や役職
 城・専属料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 図書館に避難した。増えた人数のために昼食の準備を手伝っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

コリンナ

ギルベルタ商会の店主である。

・所属組織、地位や役職
 下町・商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 針子達と共に図書館へ避難した。エーファに衣装の刺繍を手伝ってほしいと頼んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フーゴ

ローゼマインの専属料理人である。

・所属組織、地位や役職
 城・専属料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 避難時に神殿長室に集められた。結界内で待機している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グニラ

ギルベルタ商会の針子である。

・所属組織、地位や役職
 下町・針子。
・物語内での具体的な行動や成果
 避難準備の際にトゥーリから荷物の確認をされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レクル

西門の見習い兵士である。

・所属組織、地位や役職
 下町・兵士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 敵の接近を見て飛び出そうとした。ギュンターに制止されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エーレンフェストの騎士達

エーレンフェストの騎士団である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
 イルクナーなどの防衛や、アーレンスバッハへの侵攻作戦に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

キルンベルガの騎士達

キルンベルガの地方騎士である。

・所属組織、地位や役職
 キルンベルガ騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
 国境門が動く歴史的瞬間を目撃し、驚愕した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

イルクナーの騎士達

イルクナーの地方騎士である。

・所属組織、地位や役職
 イルクナー騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
 境界付近で見回りを行った。敵を発見してボニファティウスの援軍と共に戦っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ゲルラッハの騎士達

ゲルラッハの地方騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ゲルラッハ騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
 旧ベルケシュトックの騎士団と主戦場で激しく戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

プランタン商会

ベンノが経営する商会である。

・所属組織、地位や役職
 下町の商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの指示で避難準備を行った。馬車で図書館へ移動している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グーテンベルク達

ローゼマインの印刷業に関わる職人達である。

・所属組織、地位や役職
 下町の職人集団。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインと共に中央へ移動する予定である。戦禍を避けるために図書館へ避難した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アーレンスバッハ(及び旧ベルケシュトック)

ゲオルギーネ

アーレンスバッハの第一夫人である。エーレンフェストを狙う黒幕として暗躍している。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンド毒殺計画を立案した。自らは身食い商人の船を利用してエーレンフェストに潜入している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ディートリンデ

次期アウブとされる領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドを罠に嵌めた。境界門を勝手に開けてランツェナーヴェの船を招き入れている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レティーツィア

王命で次期領主に定められている領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 側仕えを救うために騙され、フェルディナンドに即死毒を使用してしまった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ランツェナーヴェの船から救出され、被害者として扱われることになった。

フェルディナンド

ローゼマインの元後見人である。アーレンスバッハへ婿入りした。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果
 毒で瀕死の状況から救出された。即座にランツェナーヴェの掃討戦の指揮を執っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインに名を奪われる形で命を救われた。

ユストクス

フェルディナンドの側近である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側近。
・物語内での具体的な行動や成果
 主の危機に際して名捧げを自ら解除した。エーレンフェストへ情報を届けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エックハルト

フェルディナンドの側近である。戦闘能力が高い。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側近。
・物語内での具体的な行動や成果
 ユストクスと共に名捧げを解除して脱出した。アーレンスバッハでの掃討戦に参加している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

シュトラール

ディートリンデに罷免された元騎士団長である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 レティーツィアの命令に従って貴族達を守った。令嬢達の救助活動を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フェルディナンドの護衛騎士となっている。

ゼルギウス

フェルディナンドの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ユストクス達が脱出する際、領主執務室前で声をかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フェアゼーレ

レティーツィアの側仕え見習いである。シュトラールの娘にあたる。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 船から救出された後、ローゼマインの身支度を手伝った。父親の安否を確認して安堵している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ゼルティエ

ゲオルギーネの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲオルギーネと共に身食い商人の船に乗り込み、エーレンフェストへの潜入に同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ラザファム

フェルディナンドの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 図書館で避難者の受け入れ準備を指揮した。平民達の案内を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グラオザム

マティアスの父親である。旧ゲルラッハのギーベにあたる。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲオルギーネの右腕として活動した。エーレンフェスト侵攻の陽動作戦を指揮している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ラウゴ

グラオザム配下の身食い商人である。

・所属組織、地位や役職
 下町・商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲオルギーネ達をエーレンフェストへ潜入させるため、船を手配した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フラウレルム

元貴族院教師である。アーレンスバッハの貴族にあたる。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ビンデバルトへ転移してきたローゼマイン達を罵倒した。その後、ハンネローレに捕縛されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 失言が原因で貴族院の教師を辞めさせられている。

ダンケルフェルガー

アウブ・ダンケルフェルガー

ダンケルフェルガーの領主である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 本物のディッターに参加しようとしたが、妻に止められて見送りに回った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ジークリンデ

アウブ・ダンケルフェルガーの第一夫人である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 夫がアーレンスバッハへ向かうのを制止した。ローゼマイン達の出陣を見送っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レスティラウト

ダンケルフェルガーの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 グルトリスハイトを持つローゼマインに丁重な態度を取った。妹のハンネローレを心配している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ハンネローレ

ダンケルフェルガーの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去のディッターの恥を雪ぐため、自ら指揮官としてアーレンスバッハ侵攻に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ハイスヒッツェ

ダンケルフェルガーの騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドの救出に尽力した。船の制圧やランツェナーヴェの掃討戦で活躍している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

第五部 女神の化身7レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身9レビュー

展開まとめ

プロローグ

供給の間からの異変

ユストクスとエックハルトは、今日も供給の間へ向かったフェルディナンドの扉前で待機していた。

そこへ突然、領主執務室の扉越しにレティーツィアの声が響く。供給終了には早すぎる時間だったため、二人は異変を察知した。

現れたレティーツィアは、フェルディナンドが常に腰に付けていた籠を差し出す。その中には騎獣用魔石と、ユストクス達の名捧げ石が入っていた。

フェルディナンドは「行け」とだけ言い残していた。

ユストクスは、命の危機を感じた際には名を返し、側近達を巻き込まず、エーレンフェストへ情報を届けさせるという主命を思い出す。

エックハルトの激昂

エックハルトは激怒し、レティーツィアへ詰め寄った。

しかしユストクスは、事情聴取より主命が最優先だと怒鳴り、エックハルトを強引に正気へ戻す。

この場で暴れれば、領主一族へ武器を向けた罪で拘束されるだけだった。

ユストクスはフェルディナンドと領主執務室を睨みつけた後、すぐ転移の間へ向けて駆け出す。

名捧げ解除

逃走中、ユストクスは名捧げ石を取り出し、自ら名捧げを解除した。

フェルディナンドの魔力が消えた瞬間、強烈な喪失感が襲う。

ユストクスは、主命遂行を優先するなら名捧げ解除が必要だと判断していた。さもなければ、自分達も主と運命を共にしかねなかったのである。

エックハルトもまた、泣きそうな顔で名捧げ解除を行った。

亡き妻ハイデマリーの分までフェルディナンドへ忠誠を尽くすことが、彼の生きる意味だった。だからこそ、自ら名捧げを解かなければならない現実は、耐え難い屈辱と喪失だったのである。

ラザファムへの想い

籠には、エーレンフェストへ残されたラザファムの名捧げ石も残っていた。

ユストクスは、ラザファムを受け入れられる環境を整え、フェルディナンドを守ると約束していた。しかし、その約束を守れなかったことへ強い悔恨を抱く。

名捧げ石が変化する時、それはフェルディナンドの死を意味していた。

ユストクスは吐き気や絶望を必死に呑み込みながら、主命遂行だけを支えに走り続けた。

転移の間突破

転移の間では、ユストクスはいつも通り飄々とした態度を装い、ヒルシュールへの素材運搬という名目で転移許可を得た。

転移の間の騎士達も特に疑わず、二人はアーレンスバッハ城から脱出する。

貴族院へ到着後、ユストクスはジルヴェスター直筆の許可証を使い、エーレンフェストのお茶会室を避難場所として使用する準備を整えた。

その後、緊急事態を知らせる魔術具の手紙を送り、二人はお茶会室でジルヴェスターを待機する。

ユストクス達の憎悪

待機中、ユストクスはアーレンスバッハへの激しい憎悪を募らせていた。

ディートリンデ、ランツェナーヴェ、レティーツィア、その全てがフェルディナンドを追い詰めた存在に思えたのである。

必要ならば領主一族を滅ぼしてでも報復する。そんな危険な決意すら抱いていた。

エックハルトもまた、「自分の手で息の根を止めたい」と怒りを露わにしていた。

ジルヴェスター来訪

そこへ、ジルヴェスターが驚くほど早く到着する。

彼は既にローゼマインから事情を聞いており、フェルディナンドが毒に倒れたことまで把握していた。

さらに、ローゼマインから託された回復薬まで持参していた。

ユストクス達は、ローゼマインが「遺言」を受け取ったと知る。命の危機に瀕した者が、強く想う相手へ状況を伝える魔力現象だった。

ローゼマイン救出決定

ジルヴェスターは、ローゼマインが今夜フェルディナンド救出へ向かうと告げた。

ユストクスは、他領の供給の間にいるフェルディナンドを救える者など存在しないと思っていたため、言葉を失う。

だが、ローゼマインには勝算があるらしいと聞かされ、絶望しかなかった心へ希望が差し込む。

フェルディナンドは「エーレンフェストから動くな」と伝言を残していたが、ジルヴェスターは「伝言程度でローゼマインは止まらない」と断言した。

ユストクスは、相変わらずフェルディナンドの予想を超えるローゼマインへ痛快さすら覚えていた。

王族交渉と証拠提出

ジルヴェスターは、これから王族へ出向き、救出作戦の許可を求めると語る。

許可が出なくてもローゼマインは止まらないとも理解していた。

ユストクスは、ディートリンデとランツェナーヴェの癒着、フェルディナンドへの危害を示す証拠や録音魔術具を提出する。

それらは本来、ディートリンデの不適格性を訴えるための材料だったが、今は王族を動かす切り札となっていた。

救出への参加

その直後、第一王子からのオルドナンツが届く。

ローゼマインは王族との会談より、救出準備を優先したという。

ジルヴェスターは、エーレンフェスト貴族としての認証ブローチをユストクス達へ返却した。

そして、アーレンスバッハ城内部や供給の間への道を知る案内役として、二人へ救出参加を命じる。

エックハルトは深く感謝し、フェルディナンド救出を即断したジルヴェスターを「兄でよかった」とまで語った。

最後にジルヴェスターは、「必ず私の弟を救え」と命じる。

ユストクスとエックハルトは、その命令へ強く応えた。

合流

ダンケルフェルガーとの協力成立

ローゼマインはダンケルフェルガーとの交渉を終え、自室へ戻りながら側近達へ状況確認を行った。

フロレンツィアは、ローゼマインが感情的に漏らした重要情報について、側近や騎士達へ契約魔術を結ばせようとしていた。

その途中でジルヴェスターからオルドナンツが届き、ダンケルフェルガーの協力獲得、真夜中の出発、貴族院への急行が伝えられていた。

ローゼマインは詳細説明を避けつつも、「悪い知らせではない」とだけ側近達へ伝える。

護衛騎士達への作戦説明

ハルトムートは既に護衛騎士達を招集済みだった。

自室へ戻ると、護衛騎士達が集まっており、ローゼマインは「今夜アーレンスバッハの礎を盗りに行く」と告げる。

突然の宣言に騎士達は絶句した。

ローゼマインは、フェルディナンドが供給の間で倒れたこと、ゲオルギーネ侵攻の可能性、救出作戦、ダンケルフェルガーとの協力、そしてユストクス達が合流予定であることを説明する。

皆の表情は緊張で強張っていった。

側仕え達への指示

ローゼマインは、城と図書館へ側仕え達を振り分け、物資・衣装・魔石・料理人などの準備を急がせた。

リーゼレータは不足食材への対応まで即座に判断し、エルヴィーラへの協力依頼まで視野に入れて動き始める。

また、城へ残るオティーリエ達には、ゲオルギーネ侵攻への警戒と、フロレンツィア達との情報連携を命じた。

ベルティルデだけは急展開に完全についていけず、目を白黒させていた。

ハルトムート達の参加

ハルトムートとクラリッサは、図書館で魔術具や回復薬を管理し、救出部隊へ配布する役割を担うと申し出た。

ローゼマインは、文官であるハルトムートが当然のように侵攻作戦へ参加しようとしていることへ驚く。

しかしハルトムートは、魔術具や薬の管理役として同行する必要性を冷静に説明した。

クラリッサもまた、ダンケルフェルガーからエーレンフェストまで駆け抜けた経験を誇らしげに語り、戦闘参加へ強い意欲を見せる。

ローゼマインは頭を抱えつつも、二人を図書館へ送り出した。

ラウレンツとユーディット

ローゼマインは未成年のラウレンツへ選択権を与えたが、彼は名捧げしている以上同行を望んだ。

一方、ユーディットも同行を希望したが、未成年騎士見習いを無断で他領戦へ連れ出すことは不可能だった。

ローゼマインは、必ず父親の許可を取るよう命じる。

その後、護衛騎士達へ交代で夕食・仮眠・出発準備を行うよう指示した。

ダームエルへの依頼

ローゼマインはダームエルへ盗聴防止の魔術具を渡し、自分にしか頼めない役目を命じた。

それは、下町の家族やグーテンベルク達を守ることである。

ゲオルギーネ達は、神殿時代の情報からローゼマインの弱点を把握している可能性が高かった。家族や下町は、人質や脅迫材料として極めて有効なのである。

ダームエルは、以前フェルディナンドから「ローゼマインの心を守れ」と命じられていたことを明かした。

さらに、ハルトムートが余計な暴走をしないよう見張れとも言われていた。

ローゼマインは、昔は見上げるほど高かったダームエルが、今では跪いても頭しか見えなくなったことに成長を実感する。

ダームエルは、護衛騎士としてなら本来止めるべきだと前置きした上で、「望みを偽らず進み、必ずフェルディナンドを救え」と送り出した。

ローゼマインは、ダームエルを「やはり一番の騎士」だと称える。

図書館での準備

図書館では、ラザファムが不安を抱えながらも準備を進めていた。

ローゼマインは、ユストクス達の客間準備や食材、料理人の配置状況を確認し、さらに二人の着替えやフェルディナンドの衣服準備まで指示する。

やるべきことを与えられたことで、ラザファムは徐々に落ち着きを取り戻していった。

侵攻への備え

ローゼマインはイルクナーのブリギッテへオルドナンツを送り、ゲオルギーネ侵攻の可能性や銀の布の情報を共有した。

ブリギッテは平民達にも情報を流し、周辺ギーベと連携して警戒を強めると返答する。

その後、ローゼマインはフロレンツィアにも詳細情報共有を求め、ギーベ達へ守りを固めさせるよう依頼した。

メスティオノーラの書の利用

ローゼマインは隠し部屋でメスティオノーラの書を使い、アーレンスバッハの地図や神殿見取り図を検索した。

街のエントヴィッケルン時の地図や神殿構造を確認できたことで、大きな手応えを得る。

ただし、肝心の城内部や供給の間の見取り図は発見できなかったため、そこはユストクス達頼みとなった。

ローゼマインは役立ちそうな魔法陣を次々と魔紙へ複製していく。

ユーディットの役割

ユーディットは父親から同行許可を得られず、落ち込んだ顔で戻ってきた。

ローゼマインは、神殿や下町防衛も重要任務だと説得する。

特に、遠距離攻撃と視力に優れるユーディットは、銀の布で防げない虫爆弾系魔術具によってゲオルギーネを牽制できると考えていた。

ユーディットは神殿防衛を引き受けた。

ユストクス達との再会

六の鐘が鳴った後、ユストクスとエックハルトが図書館へ到着した。

成長したローゼマインを見て、ユストクスは完全に言葉を失う。

だが、エックハルトは「フェルディナンドを大事にする妹」である限り問題ないと平然としていた。

ローゼマインが救出準備とダンケルフェルガー協力について説明すると、エックハルトは素直に称賛し、強い希望を見せる。

ローゼマインもまた、自分が役立てていることを嬉しく感じていた。

ハルトムートの暴走

一方、ユストクスはローゼマインの急成長へ強い興味を示した。

そこへハルトムートが割り込み、「神々に愛された奇跡」として大仰な賛美説明を始める。

ローゼマインは、ユストクスならすぐ飽きるだろうと考え、好きにやらせることにした。

二人の情報と名捧げ石

レティーツィアへの疑念

ローゼマインは、夕食を摂りながらエックハルトへレティーツィアの安否を尋ねた。

しかしエックハルトは、「彼女には護衛騎士がいる」と冷淡に返し、特に気にかけていない様子を見せる。

ローゼマインが不満げな顔をすると、エックハルトは盗聴防止の魔術具を使い、本音を漏らした。

彼は、レティーツィアがフェルディナンドへ危害を加えた犯人だと考えており、フェルディナンドの命令が最優先でなければ、その場で切り捨てていたかもしれないと語る。

供給の間で起きたこと

エックハルト達は、魔力供給中の供給の間の外側で警戒していた。

そこへ顔色を変えたレティーツィアが現れ、震えながら「行け」と伝言し、名捧げ石入りの籠を差し出したのである。

フェルディナンドが名を返すのは命の危機だけだと事前に聞かされていたため、ユストクス達は異常事態を即座に理解した。

エックハルトは、その場でレティーツィアを拘束し事情を吐かせようとしたが、護衛騎士に阻まれ、さらにユストクスに止められた。

ローゼマインは、フェルディナンド関連で暴走しかねないエックハルトを引き離したユストクスの判断を正しいと感じていた。

ディートリンデの関与

ローゼマインは、自分が見た光景をエックハルトへ説明する。

レティーツィアが供給の間から出た後、ディートリンデが入室し、「ゲオルギーネが計画を立て、自分が実行し、レティーツィアを動かした」と語っていたのである。

さらにローゼマインは、フェルディナンドが毒へ対処した後、ディートリンデが痺れ薬で動きを封じ、シュタープ封印の手枷をはめ、供給魔法陣を起動したと明かした。

エックハルトは怒りに歯を軋ませながらも、レティーツィアが毒を使った事実自体は変わらないと断じる。

エックハルトの絶望

エックハルトは、フェルディナンド救出が間に合うのかとローゼマインへ問う。

しかし彼自身は、本来ならフェルディナンドの死を確認した後を追うつもりだったと平然と口にした。

ローゼマインは激怒し、「絶対に間に合わせる」と断言する。

フェルディナンドもエックハルトも諦めが早すぎると叱責した。

ユストクスの分析

ユストクスは、レティーツィアの毒よりも魔力枯渇が危険なのかを確認する。

ローゼマインは、ディートリンデが「即死で魔石化するはずだった」と語っていたこと、フェルディナンドが解毒薬らしきものを飲んでいたことを説明した。

そのため、現在最も危険なのは供給による魔力枯渇だと判断する。

ユストクスは、食後に工房で解毒薬を作ると即決した。

境界門の情報

ユストクスは、ランツェナーヴェの船が予定より早く到着した経緯を説明する。

ディートリンデは周囲の制止を無視して境界門を開け、現在も開放状態のままだった。

ローゼマインは、その情報で作戦を大きく修正する。

彼女は当初、ダンケルフェルガー側の境界門から転移陣を構築する予定だった。しかし既にアーレンスバッハ側の境界門が開いているなら、大幅に時間短縮できるのである。

ユストクスによれば、国境門の方が城に近かった。ローゼマインは、それを「好都合」と笑みを浮かべる。

フェルディナンドの脱出準備

ユストクス達が貴族院へ脱出できたのは、星結び前にフェルディナンドが契約を結んでいたためだった。

ライムントを冬以外も貴族院へ置く代わりに、フェルディナンド達が貴族院へ出入りできるよう権利を確保していたのである。

さらにフェルディナンドは、もし何かあれば、ランツェナーヴェとアーレンスバッハの癒着証拠と引き換えにエーレンフェストへ受け入れてもらえと指示していた。

ローゼマインは、自分の命を完全に後回しにするフェルディナンドの悪癖へ強い怒りを覚える。

フェルディナンドからの伝言

ユストクスは、フェルディナンドからローゼマイン宛の伝言を伝えた。

それは、「ユストクス、エックハルト、ラザファムを預ける。エーレンフェストから動かず待っていろ。そうすれば私の死と共に全て君の物になる」という内容だった。

ローゼマインは、それがメスティオノーラの書を指していると理解する。フェルディナンドは、自分の死で書が完全な形になることを知っていたのである。

しかしローゼマインは、その提案を断固拒否した。

いくら怒られても、自分はフェルディナンドを助けると宣言する。

エックハルトは、その言葉へ心底嬉しそうに笑った。

名捧げ石という手段

その後、ユストクスは盗聴防止の魔術具を使い、「名捧げは主を生かすためにも使える」と明かした。

つまり、フェルディナンドの名捧げ石をローゼマインが受け取れば、魔力供給によって命を繋げる可能性があるのである。

ローゼマインは激しく動揺した。了承もなく名を奪うことへ強い抵抗を感じたのである。

しかしユストクスは、「手段を選ばない覚悟」とはそういうことではないのかと問い詰める。

さらに、「今だけ生かすために使い、後で事情説明して返せば良い」と説得した。

クインタの名捧げ石

ローゼマインは最終的に折れ、名捧げ石を包む箱の作り方を教わる。

隠し部屋へ入り、革袋の二重底から「クインタ」と刻まれた全属性の名捧げ石を取り出した。

それを白い箱へ入れ、自らの魔力を注ぎ込む。

名捧げ石は繭のような形へ変化し、ローゼマインは祈るように語りかけた。

どんな手段を使っても構わないから、生きていてほしい。絶対に助けに行く。そう強く願いながら、彼女はフェルディナンドへ魔力を送り続けるのだった。

転移陣

出発準備

フェルディナンドの名捧げ石を受け取った後、ローゼマインは短時間の仮眠を取っていた。

リーゼレータに起こされた彼女は、騎獣服へ着替え、革袋へフェルディナンドの名捧げ石を入れて自室を出る。

階下には、魔石の鎧を纏った護衛騎士達が既に集結していた。

ローゼマインは、図書館へ残るリーゼレータ、グレーティア、ラザファムへ留守を任せる。三人は、フェルディナンド救出だけを考えるよう彼女を送り出した。

第一訓練場への移動

ローゼマインはオルドナンツでジルヴェスターへ連絡し、第一訓練場へ向かう。

レッサーバスには大量の魔術具や回復薬が積み込まれており、その管理役としてハルトムートとユストクスが同乗していた。

ユストクスは薬の手順確認を理由に同行し、ハルトムートはローゼマインの救出劇そのものへ興奮していた。

一方、城ではゲオルギーネ襲来へ備え、夜中にもかかわらず大勢の騎士達が待機しており、訓練場は強い緊張感に包まれていた。

大転移陣による移動

第一訓練場には、領主しか設置できない巨大な転移陣が用意されていた。

これはキルンベルガへ一気に移動するためのものであり、ジルヴェスターは今回を「アーレンスバッハ襲来時の予行演習」と位置づけていた。

カルステッドは、エックハルトとコルネリウスへ「必ず無事に戻れ」と声を掛ける。二人は護衛騎士としてフェルディナンドとローゼマインを守ると誓った。

その後、複数の騎士が転移陣へ魔力を注ぎ込み、ジルヴェスターが「ネンリュッセル キルンベルガ」と唱える。

空間は歪み、一行は一瞬でキルンベルガの夏の館へ転移した。

忘れられていた転移陣

キルンベルガには、初代領主時代から存在する転移陣が残されていた。

長年大規模出兵がなく、存在自体が忘れられていたが、メスティオノーラの書で知識を得たローゼマインが発見し、ジルヴェスターへ使用を提案していたのである。

転移後、騎士達は「便利だが到着直後に戦闘は厳しい」と魔力消耗について議論を始めた。

しかしローゼマインは、「検証は後回し」と境界門開放を急かす。

境界門の開放

一行は騎獣で境界門へ向かった。

ジルヴェスターが「エフネトーア」と唱えて門へ触れると、真白な境界門がゆっくり開き、その向こうに虹色の国境門が姿を現す。

ジルヴェスターは、本当に使えるのかと不安を漏らした。

だがローゼマインは、グルトリスハイトを持っていれば国境門使用は可能だと説明する。

ただし、彼女のメスティオノーラの書は一部欠けており、門の開閉自体はできず、既存転移陣の利用しかできない状態だった。

グルトリスハイトの顕現

ローゼマインは騎獣を降り、「グルトリスハイト」と唱えた。

彼女の手へ現れたメスティオノーラの書を国境門へ押し付けると、凄まじい勢いで魔力が吸われ始める。

長年魔力供給されていなかった国境門は、次第に強い虹色の光を放ち始めた。

屋根が左右へ開き、内部の転移陣が姿を見せる。

ハルトムートとクラリッサは、その光景を「英知の女神メスティオノーラそのもの」と恍惚した様子で称賛した。

キルンベルガの騎士達も、二百年動かなかった国境門が再び光を取り戻したことへ驚愕していた。

アーレンスバッハ行きの条件

ローゼマインは、アーレンスバッハへ同行する者達へ、レッサーバスへ乗り込むよう指示した。

この門を開けた本人以外は弾かれるため、全員が彼女の騎獣へ乗る必要があったのである。

出発直前、ジルヴェスターはジギスヴァルト王子から預かった王族紋章入りの守護魔術具をローゼマインへ渡した。

これは「王族の許可を得た証」であり、アーレンスバッハの貴族達を抑えるための重要な政治的意味を持っていた。

ローゼマインは、青色巫女見習い時代に黒のお守りをもらった頃を思い出し、自分の成長を実感する。

ジルヴェスターは「其方の守りたい者ごと守ってくれるはずだ」と告げ、彼女を送り出した。

ダンケルフェルガーへの転移

国境門内部へ入ったローゼマインは、虹色の床へ描かれた転移陣へ立つ。

メスティオノーラの書で操作方法を検索し、「ケーシュルッセル ダンケルフェルガー」と唱えた。

全属性の光を放つ巨大な魔法陣が空中へ浮かび、上下から凄まじい勢いで魔力が吸い取られていく。

光の奔流に包まれる中、最後にジルヴェスターの「フェルディナンドを頼んだぞ、ローゼマイン!」という声が響いた。

出陣

ダンケルフェルガー到着

転移特有の揺れに耐えている最中、遠くから野太い雄叫びが響いてきた。

それだけで、ローゼマインはダンケルフェルガーへ到着したことを悟る。ディッターへの熱狂に満ちた声に、彼女は「暑い」と感じるほど圧倒されていた。

屋根がまだ開いていない国境門内部でも、騎士達の興奮ははっきり伝わってくる。クラリッサは、十年以上ツェントの訪れがなかった国境門が動いているのだから当然だと笑顔で語った。

国境門の開放

ローゼマインは騎獣から降り、再びメスティオノーラの書を壁へ押し当てて魔力を注ぎ込む。

国境門の屋根がゆっくり開くにつれ、外から響く雄叫びはさらに大きくなっていった。

完全に開くと、そこには予想以上の数のダンケルフェルガー騎士達が集結していた。

右側の門柱には完全武装した百人規模の騎士団、左側には見送りや見学の人々がひしめいている。

その前には、アウブ・ダンケルフェルガー夫妻とレスティラウトが立っていた。

ハンネローレの参戦

ローゼマインはハンネローレの姿が見えないことへ少し残念さを感じていた。

しかし振り返ると、そこには魔石の鎧を纏ったハンネローレ本人が立っていたのである。

ハンネローレは、三年生時のディッターでの失態を雪ぐため、自らアーレンスバッハ侵攻へ参加すると宣言した。

「ディッターの恥はディッターの勝利で雪ぐ」というダンケルフェルガー独特の価値観に、ローゼマインは強い衝撃を受ける。

だが、他領へ攻め込む中心人物が未成年女性である自分自身だと気付き、何も言えなくなっていた。

騎士達との作戦調整

レオノーレは、アーレンスバッハ到着後では遅いとして、ダンケルフェルガー騎士達との事前打ち合わせを提案した。

彼女は地図を手に騎士達の元へ向かい、ローゼマインの護衛をアンゲリカと文官達へ任せる。

実際には、ユストクス、クラリッサ、ハルトムートという戦闘力の高い文官達だったため、合理的な判断だった。

ハイスヒッツェは、ローゼマインが用意した詳細地図を見ながら驚きを隠せずにいた。

王族の許可証

ローゼマインは、ジギスヴァルト王子から授かった王族紋章入りの許可証を領主夫妻へ示した。

第一夫人ジークリンデは、それを見てようやく全てが事実だと認識し、「ダンケルフェルガーはツェントのご意向に従う」と協力を明言する。

アウブ・ダンケルフェルガー自身は本物のディッターへ参加したがっていたが、ジークリンデに止められていた。

現在のダンケルフェルガーでは、アウブが中央へ赴いた場合、レスティラウトが礎を守る役目を担う必要があったのである。

レスティラウトの態度変化

レスティラウトは、以前と違って極めて丁重な態度を取っていた。

ローゼマインが違和感を覚えるほどだったが、その理由は急成長ではなく、彼女がグルトリスハイトを持っているからだった。

歴史を重んじるダンケルフェルガーにとって、本物の王の証であるメスティオノーラの書は絶対的な意味を持っていたのである。

ローゼマインが「いつものように接してほしい」と頼むと、レスティラウトはようやく以前の口調へ戻った。

ハンネローレへの心配

レスティラウトは、ローゼマイン本人よりもハンネローレを心配していた。

三年生時のディッターで、ハンネローレがヴィルフリートの手を取って陣を離れたことは、ダンケルフェルガーでは大きな恥と見なされていたのである。

今回の戦いは、その名誉回復の機会だった。

ローゼマインは、礎奪取そのものは難しくないが、最も困難なのはフェルディナンド救出だと語る。

ハイスヒッツェの後悔

ハイスヒッツェは、以前フェルディナンドをアーレンスバッハへ送り出したことを深く後悔していた。

彼は「今回は必ず救出する」と誓い、フェルディナンドから奪ったマントを返却すると宣言する。

その理由は、「真実の勝利」を得た時に再び正式に奪い返すためだった。

ローゼマインは、その光景を思い浮かべながら、フェルディナンドが迷惑そうな顔をする未来を想像していた。

それでも、全てを諦めた表情よりは遥かに良いと感じる。

出陣の儀式

ハンネローレは、出陣前の儀式を行うよう求めた。

ローゼマインは舞えないと慌てたが、ハンネローレは「中心で士気を上げるだけで良い」と微笑む。

周囲の騎士達も、「聖女の祝福」を求めて熱狂していた。

逃げ場を失ったローゼマインは、境界門の屋上中央へ立つ。

彼女が「ランツェ!」と唱えると、シュタープはライデンシャフトの槍へ変化した。

騎士達も一斉に槍を打ち鳴らし、歌と掛け声を響かせながら士気を高めていく。

ローゼマインが「戦え!」と叫ぶと、色とりどりの祝福が夜空から降り注ぎ、歓声が爆発した。

アウブ・ダンケルフェルガーは「奪え、アーレンスバッハの礎を! シュタイフェリーゼより速く!」と号令を掛け、騎士達は応じた。

アーレンスバッハへの転移準備

その後、ハンネローレ達と共にローゼマインは国境門内部へ入る。

レオノーレは、転移陣の大きさでは百人全員を一度に送れないと説明し、二回に分けて転移する案を提示した。

第一陣は階段から出る部隊、第二陣はレッサーバスへ乗って上空から飛び出す部隊である。

エックハルトは「境界門に騎士はいない」と言ったが、ローゼマインはディートリンデ達の混乱状況を考え、油断は危険だと判断した。

彼女はレオノーレ達の慎重案を採用する。

アーレンスバッハ到着

二度に分けて転移を行った後、一行はアーレンスバッハ側の国境門へ到着した。

しかし予想に反して、そこには誰一人いなかった。

暗い海と波音だけが広がっている。

不気味な静けさに不安を覚えながらも、エックハルトは「目的は戦闘ではない。一気に進む」と指示した。

ハンネローレとハイスヒッツェは、撹乱部隊として城周辺へ散開していく。

クラリッサも広域魔術支援役として同行した。

そしてローゼマインは、レッサーバスのハンドルを強く握りながら、「案内をお願いします、エックハルト兄様」と声を掛ける。

アーレンスバッハの神殿

アーレンスバッハの港

ローゼマイン達は、夜空と同じ色をした海の上をレッサーバスで進んでいた。

ダンケルフェルガー騎士団は城へ向かい、ローゼマイン達は神殿へ進路を変える。アーレンスバッハの神殿は、エーレンフェストと違って貴族街の中心に存在していたのである。

港には見慣れぬ銀色の大型船が停泊していた。ローゼマインは潜水艦のようだと感じるが、銀色という特徴に強い警戒心を抱く。

ユストクスは、それがランツェナーヴェの船だと説明した。国境門通過時は黒かったが、海上で銀色へ変化していたという。

ローゼマインは、銀色の布だけでなく船まで魔力無効化能力を持つ可能性へ気付き、即座にダンケルフェルガーへ警告を送らせる。

さらにハルトムートは、「いつでもどこでもお手紙セット」を使い、エーレンフェストと中央へも警告文を飛ばした。

神殿への侵入

その直後、城上空で爆発音が響き、ダンケルフェルガーによる陽動が始まる。

ローゼマイン達は神殿の門を飛び越え、中庭へ降下した。だが、深夜とはいえ異様なほど静まり返っており、門番の姿すらない。

ユストクスも、祈念式時には神殿内部へ入れなかったため、神殿構造までは把握していなかった。

ローゼマインは、自分が神殿へ向かうつもりでいることをハルトムートへ見抜かれていると悟る。

ハルトムートは、ローゼマインが姿を消した時の状況や防衛時の発言から、目的地が礎に繋がる場所だと推測していたのである。

神殿内部の確認

ローゼマインは、侵入許可証代わりとなる魔紙をハルトムートへ渡し、本棚の女神を探すよう命じた。

ユストクスも同行し、罠や仕掛けの確認役を担う。

一方、エックハルトはローゼマイン護衛へ残ることを選んだ。フェルディナンドから叱責される未来が見えていたためである。

その後、レオノーレは城側の異変へ警戒感を示した。ダンケルフェルガーが大規模陽動を行っているにもかかわらず、騎士団の応戦や警報が全く聞こえなかったのである。

クラリッサからの報告

そこへクラリッサからオルドナンツが届く。

ダンケルフェルガーが城上空で派手に撹乱しても騎士団が現れず、想定外の事態が起きている可能性が高いという報告だった。

ローゼマインは、ディートリンデがグルトリスハイト獲得を急ぎ、騎士団を中央へ引き連れている可能性を考える。

レオノーレは待ち伏せも警戒しつつ、ダンケルフェルガーへ城内部の偵察を継続させるよう提案した。

銀の衣の襲撃者

その時、神殿門の外から怒号と破壊音が響き始める。

「白の鳥だ」「門を壊せ」「魔石は俺の物だ」など、騎士らしからぬ粗暴な声だった。

アンゲリカが様子を見に行き、銀色の衣を着た三人組であることを報告する。

エックハルトは、アーレンスバッハ騎士ではなくランツェナーヴェの者だと判断した。

ローゼマインは敵装備や銀の武器への対処確認のため、攻撃許可を出す。

銀装備との初戦闘

エックハルトは騎獣で門を越え、アンゲリカは門を一気に開放した。

体勢を崩して転がり込んできた男達を、エックハルトは身体強化で次々と蹴り飛ばしていく。

アンゲリカはシュタープによる捕縛が通用しないことを確認した後、即座に実剣へ切り替え、敵を容赦なく刺し貫いた。

銀装備相手でも物理攻撃は有効だったのである。

ローゼマインは血が流れる光景に強い嫌悪感を覚え、喉の奥が引きつる。

しかし護衛騎士達は誰一人動揺せず、淡々と敵制圧を続けていた。

お守りの反射効果

敵の一人は銀のナイフをアンゲリカへ投げつける。

だがアンゲリカのお守りが物理攻撃へ反応し、攻撃をそのまま跳ね返した。

男は自分の攻撃を受けて倒れ込み、最後の一人もアンゲリカの回し蹴りによって無力化される。

レオノーレは、銀の布や武器が脅威でも、こちらの武器やお守りが通用すると確認できたことを大きな収穫だと評価した。

一方ローゼマインは、エックハルトやアンゲリカの肉弾戦慣れした戦い方へ強い衝撃を受けていた。

神殿長の拘束

その後、マティアスとラウレンツが戻り、神殿内部準備完了を報告する。

ハルトムートとユストクスは既に図書室内部を調査済みであり、神殿長も捕縛していた。

シュタープの光帯で拘束された神殿長は、助けを求めるような視線をローゼマインへ向ける。

ローゼマインは、おとなしくしていれば解放すると告げた後、図書室へ入室した。

本棚の女神

アーレンスバッハ神殿図書室は、エーレンフェストより蔵書量が遥かに多かった。

ハルトムートは、メスティオノーラが刻まれた本棚へローゼマインを案内する。

ローゼマインが聖典の鍵を本棚へ差し込むと、魔力線が走り、本棚が左右へ開き始めた。

その奥には、虹色の油膜のような空間が広がっていた。

ハルトムートは、回復薬や空の魔石などを用意した木箱を叩きながら、「必要になれば呼んでください」と告げる。

ローゼマインは頷き、その奥へ足を踏み入れた。

アーレンスバッハの礎と供給の間

礎の間への侵入

虹色の油膜を抜けた先には、床一面に魔法陣が描かれていた。

ローゼマインは危うく踏み込みそうになり、慌てて端へ避難する。

ゲオルギーネ側が仕掛けた罠だと考えた彼女は、自分の魔力入り魔石を投げ込んで確認した。

すると魔法陣が発動し、青い炎柱が噴き上がる。

その熱気は凄まじく、髪一本触れれば燃え尽きそうな勢いだった。ローゼマインは壁へ張り付きながら、青い炎へゲオルギーネの執念を重ねて恐怖を覚える。

炎が消えると魔法陣も消滅し、部屋は再び真っ白な空間へ戻った。

アーレンスバッハの礎

部屋中央には七つの大神の貴色を持つ魔石が浮かび、天球儀のように回転していた。

そこから零れ落ちる光の粉は、供給の間から流れてくる魔力であり、今もフェルディナンドの魔力が消費され続けていることを意味していた。

光の粉が落ちる先には、巨大な球体状の礎が存在していた。

現在の礎は淡い緑色に染まっており、水属性の強いアウブ・アーレンスバッハによって支配されているとわかる。

しかし、半日以上フェルディナンドが供給している割に、礎を満たす魔力は少なかった。

ローゼマインは、フェルディナンドが魔力流出をギリギリまで抑えて抵抗していたのだと推測する。

礎の染色

ローゼマインは、持参した空の魔石を次々と礎へ置き、中の魔力を吸収させた。

礎の魔力を減らしすぎれば領地全体へ悪影響が出るため、慎重な調整が必要だった。

その後、シュタープを礎へ触れさせ、一気に自身の魔力を流し込む。

回復薬を飲みながら強引に魔力を叩き込み続けた結果、礎は次第にローゼマインの薄黄色へ染まっていった。

最後には礎全体が彼女の色で眩く輝き、完全染色が完了する。

大量魔力使用によって軽い眩暈を覚えながらも、ローゼマインは礎の間を後にした。

神殿からの離脱

神殿図書室へ戻ると、ハルトムートが顔色を心配した。

だが、ハンネローレ達が待機しているため、ローゼマインは休憩を拒否して城行きを急ぐ。

ハルトムートへ少しだけ手を借りながら移動し、神殿長や灰色神官達を解放した。

ユストクスによれば、ダンケルフェルガーが制圧した城内には、アーレンスバッハ貴族ではなくランツェナーヴェの者達が大量に入り込んでいた。

特にレティーツィア派やフェルディナンド周辺が徹底的に襲撃され、魔術具類が根こそぎ略奪されていたという。

一方、ダンケルフェルガー側は事前情報共有のおかげでほぼ被害がなく、むしろ敵が弱すぎて不満まで出ていた。

レティーツィアの安否

ローゼマインは、レティーツィアの安否を強く気に掛けていた。

しかしユストクスは、オルドナンツが逆に居場所暴露へ繋がる危険を考え、まだ連絡を取っていなかった。

その後、ランツェナーヴェ排除完了を知らせるオルドナンツを飛ばしたが、三人分は反応が返ってこなかった。

ローゼマインは不安を抱えたまま、城へ向かう。

領主執務室での混乱

城では、アーレンスバッハ貴族達がハンネローレを取り囲んでいた。

ローゼマインは、自分が礎を奪ったことを宣言し、「今はフェルディナンド救出が最優先」と告げる。

だが、一人の貴族は王族許可証を見て歓喜し、「境界門を閉じて娘達を救ってくれ」と懇願してきた。

彼の娘はランツェナーヴェへ連れ去られていたのである。

ローゼマインも境界門封鎖の重要性は理解していたが、フェルディナンド救出を優先し、自力で礎を奪えと冷たく突き放した。

そしてアンゲリカへ命じ、その男を執務室から排除させる。

供給の間への扉

ユストクスは、隠された小扉を動かし、供給の間への入口を示した。

しかし、そこには登録魔石が存在しなかった。

ディートリンデが外し、フェルディナンドが動けても出られないよう細工していたのである。

ローゼマインは怒りを覚えるが、今はフェルディナンド救出が先だった。

ユストクスは、意識がなかった場合の投薬手順や薬の順番を早口で説明していく。

毒への対処

その時、ハルトムートが供給の間全体へヴァッシェンを掛けるべきだと提案した。

フェルディナンドと同じ毒が残っていた場合、毒耐性の低いローゼマインが倒れる危険が高かったのである。

ユストクスも、フェルディナンドは特殊な毒耐性を持つが、ローゼマインへ同じことは期待できないと同意した。

ローゼマインは片腕だけ供給の間へ差し込み、フェルディナンドごとヴァッシェンで洗浄する。

その後、薬箱を抱えて供給の間へ踏み込んだ。

中では、ディートリンデが去った時と同じ状態で、フェルディナンドが倒れていた。

フェルディナンドの救出

フェルディナンドの救出

ローゼマインは供給の間へ駆け寄り、魔法陣の上で衰弱しているフェルディナンドを確認した。

まず魔法陣から引き離さなければならないと判断し、身体強化を使って彼を仰向けへひっくり返し、脇を抱えて壁際までずるずると移動させる。

成長した体格のおかげで運搬できたことへ感謝しつつ、ローゼマインは呼吸確認を行った。

呼吸自体は安定していたため、回復体位を取らせた後、ユストクスから託された薬箱を開く。

ユレーヴェによる治療

ローゼマインは、最初にユレーヴェを投与する。

意識のない相手へ薬を飲ませるのは初めてだったが、自分が二年間ユレーヴェへ浸かって毒由来の魔力塊を溶かしていた経験を思い出しながら慎重に流し込んでいった。

さらにフリュートレーネとルングシュメールの癒やしを重ね掛けし、毒の緩和と回復を祈る。

続いて解毒薬を染み込ませた布を口へ入れ、舌の麻痺を緩和させようと試みた。

観察していると、フェルディナンドの口元がわずかに動き始める。

ローゼマインは解毒薬を再度含ませた布を使い、その後激マズ回復薬を少しずつ口へ流し込んだ。

突然の反撃

しかし次の瞬間、フェルディナンドが激しく咳き込み始める。

慌てて背中をさすっていたローゼマインだったが、突然腕を掴まれ、一瞬で体勢を逆転させられた。

フェルディナンドはローゼマインを押し倒し、両手首を掴んだまま警戒心剥き出しで「誰だ?」と問いかける。

彼は成長したローゼマインを認識できていなかったのである。

ローゼマインは、鎖が首へ食い込みながらも必死に名乗った。

しばらく見つめた後、フェルディナンドは「ローゼマインはこのくらいの大きさだ」と、小さなぬいぐるみ程度の高さを示す。

ローゼマインは激しく抗議したが、自ら鎖へ突っ込む形となって咳き込む羽目になった。

いつものやり取り

完全回復には程遠いフェルディナンドは、その場へ倒れ込むように横たわりながら、「君は本当に馬鹿ではないか」と呆れた。

ローゼマインも「今は少しそう思う」と返しつつ、感動的な再会にならなかったことへ不満を漏らす。

フェルディナンドは、瀕死状態では敵排除が優先されると説明し、ローゼマインが勝手に名捧げ石を使ったことへ遠回しに苦言を呈した。

一方ローゼマインは、薬を飲ませていた相手を敵認定する方がおかしいと反論する。

だがフェルディナンドは、激マズ回復薬を毒と誤認したと白状した。

ローゼマインは、それは完全に自業自得だと呆れる。

主従逆転の失敗

フェルディナンドは依然動けない状態だったが、解毒薬や手枷解除を次々と指示し始めた。

名捧げによって立場上はローゼマインが主になっているにもかかわらず、完全にいつも通り命令されている。

ローゼマインは頬を膨らませながらも薬を準備し、少しずつ飲ませていった。

フェルディナンドは、「文句を言うなら、その緩んだ顔を何とかしろ」と指摘する。

ローゼマインは、自分がにやけていることを自覚しつつ、「回復して憎まれ口を叩けるようになって嬉しいから無理」と素直に答えた。

フェルディナンドは照れを否定するが、腕を上げようとして途中で力尽きる。

ローゼマインは「回復したら頭を撫でてもいいし、ぎゅーしてもいい」と冗談混じりに語りながら、早く回復してほしいと願った。

涙と本音

その時、張り詰めていた緊張が解け、ローゼマインの目から涙が零れ落ちる。

フェルディナンドが生きていて、意識を取り戻し、いつものように会話できていることへの安心感だった。

フェルディナンドは「泣くな」と言いながら手を伸ばそうとするが、まだ最後まで腕を上げられない。

そして「助けに来る必要はなかった」と語り、どうやってここへ来たのかを問い質した。

その瞬間、ローゼマインの涙は止まる。

彼女は、自分が何度も「幸せにならなければ助けに行く」と脅迫していたことを忘れたのかと怒り出した。

呼び声と頭突き

フェルディナンドは、自分が呼んだ覚えはないと視線を逸らす。

しかしローゼマインは、フェルディナンドの危機が見えたのは、彼が必死に助けを求めたからだと断言した。

近すぎる距離を嫌がったフェルディナンドへ、ローゼマインは苛立って頭突きを食らわせる。

フェルディナンドは痛みに呻きながら、「来ない方が良い状況を作ったのは君だ」と返した。

彼は、ローゼマインがメスティオノーラの書を手に入れ、エアヴェルミーンから「自分を消せ」と命じられたはずだと考えていたのである。

ユルゲンシュミットより大事な存在

ローゼマインは、エアヴェルミーンの命令を断固拒否したと即答した。

フェルディナンドは、どちらかが犠牲にならなければユルゲンシュミットが崩壊すると聞かされていたため、断った後どうするつもりなのかと驚愕する。

だがローゼマインは、「フェルディナンド様が助からなかったら、ユルゲンシュミットが助かっても意味がない」と平然と言い切った。

フェルディナンドは、その言葉が「ユルゲンシュミットより自分を選ぶ」と聞こえると困惑する。

しかしローゼマインは、「大領地、中央、王族、神々を敵に回しても助けに行くと言った」と言い返した。

唖然としたフェルディナンドは、その場へうつ伏せに倒れ込む。

ローゼマインは、回復してきている様子を確認しながら、二人とも助かる形でメスティオノーラの書を完成させる方法を探そうと提案するのだった。

わたしのゲドゥルリーヒ

メスティオノーラの書を巡る対立

ローゼマインは、ユルゲンシュミット全体を包む魔力が薄くなっているとエアヴェルミーンから聞かされたことをフェルディナンドへ伝えた。

一方フェルディナンドは、自分には「メスティオノーラの書を完成させるためにさっさと死ね」と言われたようなものだと吐き捨てる。

ローゼマインはエアヴェルミーンを放置し、まず本当にメスティオノーラの書完成が必要なのか検証すべきだと主張した。国境門への魔力供給で時間稼ぎできる可能性があると考えたのである。

しかしフェルディナンドは、楽観的すぎると呆れつつ、ローゼマインが自分の計画を潰したのだと恨めしそうに睨んだ。

フェルディナンドの計画

フェルディナンドは、本来なら卒業式翌日に貴族院図書館からエアヴェルミーンの元へ向かい、知識の穴を埋める予定だった。

それによって、王族へ渡す魔術具型グルトリスハイトを完成させるつもりだったのである。

しかし最初はローゼマインがエアヴェルミーンの場所へ入っていたため入室できず、春に再訪した時には、既にローゼマインがメスティオノーラの書の残りを持ち去っていたため失敗した。

ローゼマインは、そんな重要計画なら教えてほしかったと反論する。自分は王族養女となって地下書庫のグルトリスハイトを得るつもりだったのであり、フェルディナンドの計画など知らなかったのである。

だがフェルディナンドも、王族養女計画を一切報告されていなかったと返した。

二人とも重要情報を隠していた事実に、ローゼマインは気まずさを覚える。

手枷解除

ローゼマインはフェルディナンドの手枷へ触れ、外し方を尋ねた。

鍵穴を探していた彼女へ、フェルディナンドは「君の聖典は何のためにある」と呆れた。

この手枷は鍵ではなく、開錠用魔法陣で解除する仕組みだったのである。

ローゼマインはメスティオノーラの書を取り出して検索する。

タブレット状の書を見たフェルディナンドは、「また非常識な形だ」と半ば投げやりに呟いた。

ローゼマインは、自分のメスティオノーラの書は暗闇でも光り、検索機能付きの高性能仕様だと胸を張る。

しかしフェルディナンドは、「わざわざ検索が必要な時点で不便ではないか」と返した。

その後、フェルディナンドが魔法陣を特定し、ローゼマインはコピペ魔法で魔紙へ複製して即座に発動させる。

手枷はガチャンと音を立てて外れた。

フェルディナンドは愕然としつつも、「非常識だが便利ではある」と認める。

エーレンフェストの現状

フェルディナンドは、状況説明を求めながら少しずつ体を動かし始めた。

ローゼマインは、エーレンフェストが既に総力を挙げて防衛準備を進めていることを伝える。

さらに、自分がシュバルツ達の色違いで戦闘特化魔術具まで作ったと語ると、フェルディナンドは「何故シュミル型にする必要があった」と呆れ返った。

ローゼマインは、「リーゼレータが可愛いからと言った」と平然と返す。

話を続けるうちに、フェルディナンドの指先や腕は少しずつ動くようになっていった。

頬をつねる理由

フェルディナンドは突然、「頬を差し出せ」と要求した。

以前ローゼマイン自身が「回復したら頬をつねってもいい」と言っていたからである。

ローゼマインは不思議がりながらも頬を差し出した。

まだ完全に動かない指先は頬を上手く摘まめず、顎付近をうにうにと揉むように触れる。

その直後、フェルディナンドの指輪から緑色の光が溢れ、「ローゼマインにルングシュメールの癒しを」と唱えられた。

ローゼマインの首元へ残っていた鎖の痕を消すためだったのである。

ローゼマインは、自分より回復を優先すべきだと激怒する。

しかしフェルディナンドは、「魔力とシュタープの動作確認だ」と言い張った。

ゲドゥルリーヒの確認

ローゼマインが外へ出ようとした時、フェルディナンドは彼女を呼び止め、「君のゲドゥルリーヒを教えろ」と問い掛ける。

彼は、ローゼマインのゲドゥルリーヒは自分と同じエーレンフェストだと思っていた。

しかし、王族から求婚され、それを受け入れているように見える今、彼女の本心を知りたかったのである。

ローゼマインは、視線の先にあったジギスヴァルトからのネックレスを見て、ようやく誤解へ気付いた。

フェルディナンドは、かつてローゼマインが「王子と結婚する物語」を書いていたことを思い出し、それが夢だったのだと勘違いしていたのである。

ローゼマインの理想

ローゼマインは即座に猛反論した。

本を一冊も持たず、印刷業も制限される環境へ嫁ぐことなど悪夢でしかないと断言する。

さらに、自分の理想の夫は父親のギュンターだと語った。やりたいことを支え、全てから守り、大切にしてくれる存在が理想なのである。

図書館へ籠もって読書し、家族や大切な人達と食事をし、司書として本を扱い、図書館ネットワークを構築したい。それが本当の夢だった。

フェルディナンドは、どうやら自分が酷い誤解をしていたらしいと苦笑する。

王族入りの覚悟

ローゼマインは、理想ではなく現実として、自分が王の養女となり、将来的にジギスヴァルトと結婚する予定だと説明した。

ジギスヴァルトが欲しているのは自分ではなく、グルトリスハイトと魔力であるとも理解していた。

フェルディナンドは、自分がそのような扱いを受けることを受け入れたのかと厳しい顔で問う。

ローゼマインは、一度唇を引き結んだ後、自分にとって最優先なのは大切なゲドゥルリーヒ達を守ることだと答えた。

下町の家族、グーテンベルク、神殿の側仕え達、そしてフェルディナンド。彼らを守るためなら王族入りも受け入れる覚悟だったのである。

さらに、王族となれば全ての権力を使ってフェルディナンドを守り、エーレンフェストへ戻すと断言した。

名捧げ石の返却

ローゼマインは、白い繭のようなフェルディナンドの名捧げ石を取り出し、彼へ返却する。

フェルディナンドは拳を震わせながらそれを握り締めた。

しかし彼は、自分は今回の不祥事処理のためアーレンスバッハから離れられず、だからローゼマインが王の養女になる必要はないと語る。

ローゼマインは、まだ秘密だが、地下書庫のグルトリスハイトを得た後は領地線引きをやり直すつもりだと明かした。

それまでアーレンスバッハの運営は自分と側近達で何とかするとも続ける。

その瞬間、フェルディナンドの瞳に激しい感情の揺らぎが浮かんだ。

ローゼマインは、自分がどこで「魔王のスイッチ」を押してしまったのか全く理解できず、困惑するのだった。

ツェントとグルトリスハイト

フェルディナンドの激怒

ローゼマインが、自分は王の養女となりジギスヴァルトと結婚する予定だと語ると、フェルディナンドは「王族はそこまで愚かで恥知らずだったか」と低く呟いた。

そのまま恐ろしい笑顔を浮かべながら立ち上がり、ローゼマインは本能的な危険を感じる。

さらにフェルディナンドは、「君もだ、ローゼマイン」と視線を向けた。

ローゼマインは理由もわからぬまま、全力で謝罪するしかなかった。

しかし当然その場しのぎの謝罪は見抜かれ、フェルディナンドは「君の言動で色々なことに気付かされた」と冷えた声で告げる。

アーレンスバッハ滅亡宣言

ローゼマインは必死に話題を変えようとし、ランツェナーヴェが暴れている現状を説明した。

ところがフェルディナンドは、「ひとまずアーレンスバッハを滅ぼして更地にするのが先決か」と平然と言い放つ。

ローゼマインは慌てて止めに入った。

しかしフェルディナンドは、「アーレンスバッハがあると私が動きにくい。どちらもまとめて潰せば問題ない」と続ける。

ローゼマインは、フェルディナンドが契約魔術に違反して死ぬ危険があるため絶対に駄目だと訴えた。

その言葉でフェルディナンドは警戒色を強め、「君は一体何をした?」と問い質す。

アウブ・アーレンスバッハ誕生

ローゼマインは、ここへ最速で入るために礎を染めたと白状した。

つまり現在、魔力的には彼女自身がアウブ・アーレンスバッハとなっていたのである。

フェルディナンドは完全に処理落ちしたように停止し、その後「一体何をしているのだ、君は?」と深い溜息を吐いた。

彼にとって最速手段とは、本来のアウブを捕らえ、登録用魔石を奪って強制的に契約させる方法だったのである。

しかしローゼマインは、そんな恐ろしい発想は思いつかなかったし、実行もできなかったと答えた。

さらに、ディートリンデの姉の顔も名前も知らず、探している間に時間切れになる可能性も高かったと説明する。

助力要請

ローゼマインは、自分でしたことの責任は取るから、フェルディナンドだけでもエーレンフェストへ戻ってほしいと頼んだ。

するとフェルディナンドは、今度はしっかりと頬をつねりながら、「君は言うべき言葉を間違っている」と告げる。

ローゼマインが正解を教えてほしいと涙目で頼むと、フェルディナンドは「私に助力を請え」と命じた。

ディートリンデは外患誘致とツェントへの反逆、姉は加担、母親はエーレンフェスト侵攻、レティーツィアは殺人未遂。アーレンスバッハ事情に最も詳しいのは自分だと言う。

ローゼマインは、フェルディナンドが助けてくれるなら非常に心強いと認めつつも、彼をこれ以上アーレンスバッハへ縛り付けたくないと本音を漏らした。

しかしフェルディナンドは耳を引っ張りながら、「私が教えた通りに言え」と叱責する。

ローゼマインは観念し、「助けてくださいっ! お願いします! フェルディナンド様だけが頼りですぅっ!」と叫んだ。

フェルディナンドは満足げに「よかろう。君を野放しにする方がよほど怖いからな」と返した。

ツェント問題

フェルディナンドは、ローゼマインへ「アウブになればツェントにはなれぬ」と確認した。

二つの礎は同時に染められないためである。

ローゼマインは、他者へアーレンスバッハの礎を譲り、自分が国の礎を染めるか、地下書庫のグルトリスハイトを王族へ譲渡するつもりだと説明した。

地下書庫のグルトリスハイトを王族へ継承する方が、領地間への影響は少ないと考えていたのである。

フェルディナンドは、メスティオノーラの書とグルトリスハイトの違いを説明させ、認識確認を行った。

メスティオノーラの書とグルトリスハイト

ローゼマインは、メスティオノーラの書とは祠巡りと始まりの庭を経て得る英知であり、自分のシュタープへ写し取るため他者継承はできないと説明した。

一方、現在グルトリスハイトと呼ばれるものは、昔の王族がメスティオノーラの書を得られなくてもツェントになれるよう作った魔術具であり、継承可能だった。

フェルディナンドはさらに、ガランゾルグやラオヘルシュトラ、アルプゼンティの時代を例に、グルトリスハイト継承の歴史と混乱を説明していく。

ガランゾルグによって、祠巡り不要の「地下書庫型グルトリスハイト」が広まり、争いが増えた。

ラオヘルシュトラは王族限定制度を作り、さらに争いを固定化させた。

アルプゼンティは、属性不足の息子ナイグンハイトをツェントにするため、魔術具型グルトリスハイトを作り出した。

以後、グルトリスハイトは「親から子へ継承される魔術具」として扱われるようになり、奪い合いによる政変が頻発するようになったのである。

王族入りへの諦め

ローゼマインは、地下書庫のグルトリスハイトを王族へ譲ることで、周囲への影響を最小限にしたいと語った。

だがフェルディナンドは、「今の王族には中身が読めぬ」と冷たく切り捨てる。

ローゼマインは、王族も忙しすぎて勉強できないのだろうと庇いながら、自分も王族入り後は読書時間を失う現実を嘆いた。

するとフェルディナンドは、「そのような馬鹿なことに王族命令を使う君は絶対に王族になるべきではない」と断言した。

そして、「王の養女にならずに済む方法を模索し、アーレンスバッハを片付け、さっさとエーレンフェストへ戻る方法を考えるべきだ」と告げる。

その言葉に、ローゼマインは自分自身がエーレンフェストへ戻る未来を考えていなかったことへ気付かされた。

居場所の喪失

ローゼマインは、もうエーレンフェストには戻れないと説明した。

王との養子縁組話によってヴィルフリートとの婚約は解消予定であり、仮に王族入りが消えても婚約復活は無理だと語る。

さらにヴィルフリート自身がアウブを望んでおらず、今後のエーレンフェスト体制には自分が含まれていないことも明かした。

フェルディナンドは静かに息を吐いた後、「君の居場所については考える」と告げる。

そしてまずはランツェナーヴェ掃討と境界門閉鎖を優先すると決め、歩き始めた。

ローゼマインが登録用魔石が必要だと引き留めると、フェルディナンドは、入口を塞いでいた書箱の中に予備の登録用魔石があると指示した。

新しいアウブ

フェルディナンドの復帰

登録用魔石を取りに供給の間を出た瞬間、エックハルトが食らいつく勢いでフェルディナンドの容態を尋ねた。

同時にアンゲリカが、エックハルトからローゼマインを守るように武器を構える。

ローゼマインは二人を落ち着かせ、ユストクスの指示通りに解毒剤を飲ませたこと、フェルディナンドが回復しつつあり、ランツェナーヴェ掃討と境界門閉鎖へ向かう予定であることを説明した。

ただし、完全回復しているとは思えないとも本音を漏らす。

アーレンスバッハの混乱

エックハルト達は、ディートリンデがレオンツィオと共にランツェナーヴェの館へ向かったまま戻っていないと報告した。

さらに、ランツェナーヴェの非道を止めてほしいと館へ向かった者達も帰還せず、館は既にもぬけの殻だったという。

続いてユストクスは、アルステーデと夫ブラージウスもディートリンデに招かれランツェナーヴェの館へ行ったまま戻っていないと伝えた。

フェルディナンドは、だからこそローゼマイン達の侵入を防げなかったのかと納得し、必要なら登録メダル廃棄処分も考えていたと語る。

また、ゲオルギーネも旧ベルケシュトックで祈念式を行うため各地のギーベ館を巡っており、現在位置不明だった。

ダンケルフェルガーの戦況

その頃、バルコニー側からダンケルフェルガーの騎士達が次々と戻ってきた。

ハンネローレ自身に大きな怪我はなかったが、多くの騎士が負傷していた。

理由を尋ねると、ランツェナーヴェ兵そのものは脅威ではないが、船の攻略に苦戦しているという。

船からは銀色の針のような武器が大量に放たれ、それは騎獣も鎧も貫通した。

さらに船体は魔力を通さず、通常武器でも大きな損傷を与えられなかった。

ローゼマインはフリュートレーネの杖で負傷者達を癒しながら、フェルディナンドへ相談する必要を感じる。

新アウブへの反発

ハンネローレは、アーレンスバッハの騎士の一部を境界門監視へ回し、騒ぐ貴族達は一室へ閉じ込めていると説明した。

領主執務室へ押しかける貴族達を、ダンケルフェルガー騎士達が「邪魔者」と判断して制圧したのである。

ローゼマインは、自分達を守るための措置だったため問題ないと受け止めた。

求愛の魔術具

その後ハンネローレは、ローゼマインが身につけている王族のネックレスの鎖が傷んでいることに気付いた。

確認すると、鎖部分はざらつき、金色の粉が落ちる状態になっていた。

ハンネローレによれば、それはローゼマインの巨大な魔力に耐え切れなかったためであり、求愛の魔術具特有の現象だった。

ローゼマインは、それが単なる許可証ではなく求愛の魔術具だった事実に驚愕する。

求婚の魔石より格下だが、紋章や名前が刻まれ、魔力が滲み出ているのが特徴らしい。

そこでローゼマインは、フェルディナンドがこれを見て「王子との結婚」を誤解した理由へようやく思い至った。

ハルトムートは布と革袋を差し出し、ローゼマインはネックレスを大切に保管した。

フェルディナンドとダンケルフェルガー

全身鎧姿で現れたフェルディナンドは、廊下にひしめくダンケルフェルガー騎士団を見て一瞬顔を引きつらせた。

ローゼマインは、フェルディナンド救出と「本物のディッター」参加のために集まった有志達だと説明する。

ハイスヒッツェは満面の笑みで近付き、かつて奪われたマントを返却しつつ、今度こそ正々堂々と取り戻したいと語った。

しかしフェルディナンドは「いらぬ。持って帰れ」と即座に切り捨てる。

それでもハイスヒッツェは全くめげず、今回こそ役に立ちたいと熱弁を続けた。

本物のディッター継続

レオノーレから事情説明を受けたフェルディナンドは、ローゼマインへ「どこまで非常識な手段を使ったのだ」と頬をつねった。

ローゼマインは、常識的手段ではフェルディナンドを救えなかったのだと反論し、まずダンケルフェルガーへ礼を言うべきだと主張する。

するとフェルディナンドは、境界門閉鎖とランツェナーヴェ掃討完了後、ハイスヒッツェをエーレンフェストへ連れていくと宣言した。

そして、「宝を奪うだけがディッターではない。守り切ってこそ勝利だ」と語り、エーレンフェストの礎防衛まで含めて本物のディッターは続いていると断言する。

さらに、ダンケルフェルガー騎士団を自らの指揮下へ置き、「完膚なきまでにランツェナーヴェを叩きのめす」と宣言した。

騎士達は熱狂的に応じ、即座に動き出す。

各自への命令

フェルディナンドはユストクスへ、隠し部屋の貴族救出と情報収集を命じた。

またハルトムートとクラリッサには、アーレンスバッハ貴族達へローゼマインの聖女性とアウブとしての優秀さを徹底的に宣伝し、跪きたくなるほど洗脳して構わないと命じる。

ローゼマインは強烈な不安を覚えたが、フェルディナンドは「これ以上適任はいない」と平然としていた。

出撃

フェルディナンドは、アウブ・アーレンスバッハであるローゼマインが全てを手中に収めなければならないと告げる。

そこへ、ランツェナーヴェの船が動き出したとの緊急オルドナンツが届いた。

フェルディナンドは即座に返信し、自分と新アウブが境界門閉鎖へ向かうこと、相手へ姿を見せず待機することを命じた。

アウブの守護

境界門への出撃

ローゼマイン達は騎獣で城を飛び出し、境界門へ向かった。

アーレンスバッハはエーレンフェストより暖かく、祈念式の時期でありながら初夏のような気候だった。

夜明け前の薄紫と淡黄色の空が、白い貴族街や海沿いの下町を照らし始める。

海上には、境界門へ向かって動き出した銀色の船が三隻、さらに港には出港準備中の船が一隻残っていた。

フェルディナンドは、見張り騎士達へ待機命令を飛ばしつつ、次々とオルドナンツを送って指揮を執る。

騎士団の再編

貴族街各地で救助活動をしていたアーレンスバッハ騎士達も徐々に集結してきた。

彼等はローゼマインのレッサーバスを見て驚愕し、中には「グリュンか!」と誤認して攻撃しかける者まで現れる。

フェルディナンドは、ハイスヒッツェとエックハルトへ十人単位の班編成を命じ、門柱上で指揮系統を整えさせた。

その後、ローゼマインの護衛騎士達が各班へ閃光弾や広域魔術補助魔術具などを配布していく。

ハンネローレの作戦

フェルディナンドはハンネローレへ、城へ戻る選択肢も示した。

しかしハンネローレは、ディッターの恥を雪ぐために来たのだと断り、ヴォルヘニールを使った作戦を提案する。

騎獣内には三匹のヴォルヘニールが積み込まれていた。

ローゼマインには意図が理解できなかったが、フェルディナンドは即座に察し、「ランツェナーヴェ兵相手には有効」と評価した。

そのため、出港できていない船への潜入と人質救出をハンネローレへ任せ、第一班と第二班を同行させる。

銀の船への対策

フェルディナンドは、銀色の船は魔力を通さないが、境界門通過時には黒へ変わると説明した。

黒化した瞬間に総攻撃を仕掛けるつもりだったのである。

その際、ローゼマインは「アウブの守護」で人質を守り、その後騎士団が船を粉砕するという作戦だった。

ローゼマインは人質を心配したが、フェルディナンドは「海へ投げ出されてから回収すればよい」と淡々と返す。

さらにフェルディナンドは、この大規模作戦は、ローゼマインがアウブであり、ダンケルフェルガー騎士団がいるからこそ成立すると語り、感謝を示した。

回復薬管理

フェルディナンドは、回復薬や魔術具管理を見習い達へ任せるよう命じた。

ラウレンツが名乗り出て、視力強化を利用しながら補給役を担当することになる。

その後フェルディナンドは、ローゼマインへレッサーバスを片付け、自分の騎獣へ同乗するよう指示した。

理由は、レッサーバスがアーレンスバッハ騎士達に「間抜けなグリュン」としか見えず、余計な攻撃を招く危険があるからだった。

さらに、乗り込み型騎獣ではアウブとしての姿を周囲へ見せられず、新アウブのお披露目にならないとも続ける。

同乗を巡る対立

しかしレオノーレとコルネリウスは、フェルディナンドとの同乗は外聞が悪いとして猛反対した。

女性騎士へ同乗させるべきだと主張するが、フェルディナンドは、領主候補生でないレオノーレでは領主魔術に制限が出るとして却下する。

コルネリウスはハンネローレへ頼もうとしたが、彼女自身も乗り込み型騎獣であり、さらに突入指揮役を担っていたため不可能だった。

結局、エックハルトが「今更何の外聞を気にする」と一喝し、ローゼマインはフェルディナンドへ従うことになる。

フェルディナンドのライオン型騎獣へ乗ったローゼマインは、乗り心地の悪さと硬さへ不満を漏らした。

しかしフェルディナンドは、「君が普通の騎獣を作ればよかった」と切り返し、さらに「成長しすぎて前が見えにくい」とぼやく。

港での異変

港へ向かう途中、海上で停止している船が見えた。

ハイスヒッツェは、既にダンケルフェルガー騎士達が内部制圧を始めている可能性を示唆する。

また、港を出られずにいる船では、ランツェナーヴェ兵と平民達が乱闘状態になっていた。

ローゼマインが視力強化して確認すると、漁師達が木箱や網を武器に銀色の兵士達へ襲い掛かっていたのである。

爆発魚シュプレッシュまで投げ込まれ、船内は混乱していた。

フェルディナンドは、平民を巻き込まぬよう作戦変更を決断し、ローゼマインへ先に「アウブの守護」を掛けるよう命じた。

ルングシュメールの癒し

まずローゼマインは、フリュートレーネの杖でルングシュメールの癒しを発動する。

緑の光が乱闘地帯へ降り注ぎ、負傷した漁師達の傷が癒えた。

人々が驚きながら空を見上げる中、ローゼマインはすぐに次の魔術へ移行する。

アウブの守護

ローゼマインは、アウブのみが使える領民保護魔術「フォルコヴェーゼン」を発動した。

黄色い巨大な鳥が現れ、光の粉を港全体へ降り注がせる。

これにより、アーレンスバッハの領民達だけが守護対象となった。

アーレンスバッハ騎士達は、自分達へだけ光が宿ることで、ローゼマインが本当に新アウブなのだと実感する。

港制圧作戦

フェルディナンドは直ちに攻撃命令を出した。

閃光弾と広域ヴァッシェンが港一帯へ降り注ぎ、ランツェナーヴェ兵達は水流によって海へ押し流されていく。

一方、守護された領民達は無傷のまま呆然と空を見上げていた。

続いてフェルディナンドは、平民避難、人質救助、ランツェナーヴェ兵捕縛を各班へ命じる。

そしてハンネローレ率いるダンケルフェルガー騎士団が銀色の船へ突入した。

ヴォルヘニールは巨大化し、一瞬平民へ飛び掛かりかける。

だがハンネローレは光帯のリードで制御し、騎士達と共に船内へ駆け込んでいった。

ランツェナーヴェの船

ヴォルヘニールの性質

境界門へ向かう騎獣の上で、ローゼマインはヴォルヘニールについて尋ねた。

フェルディナンドによれば、ヴォルヘニールは自分より魔力の強い者へ絶対服従する一方、魔力の低い動く物には見境なく食らいつく魔獣だった。

家具移動時には外へ出しておかなければ家具へ噛みつくほど凶暴らしく、ローゼマインは「本当に見境なし」と呆れる。

船内制圧成功

その直後、海上で停止していた船内部から爆発が起こり、船体の一部が吹き飛んだ。

フェルディナンドは即座にローゼマインを抱き寄せて警戒を命じる。

白煙の向こうを確認するため、フェルディナンドは安全距離を維持しつつ騎獣を停止させ、ローゼマインへ視力強化での偵察を頼んだ。

ローゼマインは、その時になってようやく、自分が同乗させられた理由を理解する。

フェルディナンドはまだ完全回復しておらず、視力強化や戦況確認を代行できる者が必要だったのである。

ローゼマインは、フェルディナンドが休めないのは自分達が頼りないからだと感じ、せめて足を引っ張らないよう努めようと決意した。

煙の中から現れた銀色の男は、銀衣を脱ぎ捨て、シュタープを使って魔力を放つ。

それはダンケルフェルガー騎士による船内制圧完了の合図だった。

さらにオルドナンツで、人質救出開始が報告される。

フェルディナンドは第六班へ救出と魔石回収を命じ、残る船への追撃準備を整えた。

魔力不足への懸念

境界門へ向かう途中、フェルディナンドはローゼマインへ残り魔力を確認した。

ローゼマインは、あと二回程度ならアウブの守護を使えるが、それ以上回復薬を飲めば活動不能になると正直に申告する。

フェルディナンドは、黒化した船は魔力吸収能力を持つ可能性が高く、港での守護以上に大量の魔力を消費するのではないかと懸念していた。

さらに、先行船が攻撃される様子を見れば、後続船は色を変えなくなる可能性が高いとも分析する。

時間をかけず、人質を傷付けず、魔力消費を抑えつつ船を破壊する方法が必要だった。

そこでフェルディナンドは、異世界知識も含めて解決策を考えるようローゼマインへ求める。

銀色の船への対策検討

ローゼマインは、銀色部分が塗料なのか金属なのかを考え始めた。

熱で溶かす案や塗膜を剥がす案を思い浮かべるが、人質への危険もあり決め手にならない。

その間にも、フェルディナンドは先行船への攻撃準備を進めていた。

先行船への総攻撃

先行船が境界門直前で黒へ変わり始める。

ローゼマインは即座にアウブの守護を発動した。

黄色い鳥が一直線に船へ飛び込み、人質達へ守護を与える。

それを合図に、ダンケルフェルガーとアーレンスバッハ騎士達が一斉に魔力攻撃を放った。

虹色に捻じれ合った莫大な魔力は黒化した船へ直撃し、凄まじい轟音と共に船を大爆発させる。

海面は大きく揺れ、破片が四散した。

その後、守護を受けた人質達をダンケルフェルガー騎士達が一本釣りのように救助していく。

アーレンスバッハ騎士達は、光の網で海上の人や魔術具をまとめて回収した。

一方、銀衣によって魔力攻撃を無効化していたランツェナーヴェ兵達は海上へ取り残される。

ローゼマインが証言確保を提案したが、フェルディナンドは既に十分捕虜がいるとして切り捨てた。

後続船との膠着

後続船は先行船爆発を目撃し、黒へ変わることなく海上で停止した。

その時、銀色の甲板の一部が開き、銀色の箱状武器がせり上がる。

ハイスヒッツェは、それこそが銀色の針を撃ち出す兵器だと説明した。

すぐに無数の針が上空へ撃ち出され、騎士達は距離を取って警戒する。

ローゼマインは、人質を救うためにも攻撃口を塞げないか考え始めた。

エントヴィッケルン案

ローゼマインは、白い石を作るエントヴィッケルンで攻撃口へ蓋をする案を提案した。

フェルディナンドは発想自体へ驚きつつも、大きさ測定、設計図、魔紙、インク、金粉など問題点を次々と挙げる。

しかしローゼマインは、クラリッサ製の魔紙やスティロ、さらに王族のネックレスから取れる金粉を利用できると主張した。

フェルディナンドは、不敬を避けるべきだと制止し、さらにローゼマイン自身が危険地帯へ近付くことも反対した。

冬を呼ぶ発想

次にローゼマインは、氷で攻撃口を塞ぐ案を思いつく。

しかしエーヴィリーベの剣は冬しか使えないため諦めかけた。

するとフェルディナンドは、「この場を冬に変えれば良い」と平然と言い放つ。

ハルデンツェルの春呼び魔法陣を書き換えて冬を呼ぶ案だった。

ローゼマインは、そんな芸当を当然のように言うフェルディナンドへ驚愕する。

ただし、大規模魔法陣には大量魔力が必要となるため、フェルディナンドは魔石の有無を確認した。

ローゼマインは、礎から抜き取った魔力入り魔石を持っていると答える。

さらに魔紙も持参していた。

フェルディナンドは、ローゼマインの非常識さへ改めて呆れ果てる。

神具使用者達

フェルディナンドは、この場を冬に変えても、エーヴィリーベの剣を使える者が自分達以外にいるのかと尋ねた。

ローゼマインは、護衛騎士達が神殿通いの競争で神具を扱えるようになっていると胸を張る。

ダームエルですら形だけなら作れるほどだった。

それを聞いたフェルディナンドは、ローゼマインの周囲には非常識が多すぎると頭を抱える。

冬を呼ぶ魔法陣

冬を呼ぶ作戦

フェルディナンドは、第九班と第十班の騎士達へ、銀色の船を凍らせて攻撃を封じると宣言した。

暖かなアーレンスバッハで冬を呼ぶという発想に、ハイスヒッツェ達は理解不能という顔になる。

しかしフェルディナンドは構わず、ローゼマインの護衛騎士達へエーヴィリーベの剣を振るうよう指示した。

コルネリウスとレオノーレは、使用者の魔力が根こそぎ奪われること、回収役がいなければ海へ落下する危険があることを即座に説明する。

フェルディナンドは、できるだけ多くの高魔力者が必要だが、ローゼマインの護衛も残さねばならないと判断した。

ハルトムート招集

マティアスは、ラウレンツもエーヴィリーベの剣を使えると提案する。

さらにフェルディナンドは、神殿で魔力奉納していたハルトムートも使用可能ではないかと尋ねた。

ローゼマインは、ハルトムートがコルネリウスと神具習得競争をしていたほどだと答える。

フェルディナンドは、護衛騎士を減らさず戦力を増やせる好都合な存在だと判断し、オルドナンツで即座に呼び出させた。

ローゼマインは、ハルトムートへ「大規模な神事を行うため協力が必要」と伝え、魔石の鎧をまとって急行するよう命じる。

続けてクラリッサへは、回復薬と魔術具管理を担当しつつ、アーレンスバッハ貴族達へ本来の神事を見せつけるため外壁へ来るよう命じた。

ハルトムートとクラリッサは異様な熱量で応じ、ローゼマインは洗脳活動の一環であることに少し引き気味になる。

護衛騎士達の準備

フェルディナンドはラウレンツへ、回収役の騎士見習い四人を選び、回復薬運用を整えた上で合流するよう命じた。

また、コルネリウス達には、エーヴィリーベの剣使用者を除いた護衛編成を決めるよう指示する。

女性護衛騎士を残すべきだという判断も示された。

アンゲリカの名言

一方、ダンケルフェルガー騎士達は未だ状況を飲み込めず混乱していた。

ハイスヒッツェは、なぜエーレンフェスト側がこれほど冷静なのかアンゲリカへ尋ねる。

アンゲリカは、「難しい要求は理解するより、自分の役割をどう果たすかが重要」と答えた。

ハイスヒッツェは深く感心するが、ローゼマインは「難しいことは最初から考えていないだけ」と内心で突っ込む。

各地との連絡

フェルディナンドは、救出作業中のシュトラールへ状況確認のオルドナンツを送った。

シュトラールは、令嬢達の救出完了と魔石回収を報告する。

フェルディナンドは、この後冬を呼ぶため海水温が急激に低下すると警告した。

シュトラールは疑問符混じりの返答を返したが、フェルディナンドは説明を追加しなかった。

また、ハンネローレ側も船制圧をほぼ完了し、人質から事情聴取中であることが報告される。

ローゼマイン机化事件

フェルディナンドは突然、ローゼマインへ前傾姿勢を取るよう命じた。

両手を伸ばして騎獣へ体重を預けたローゼマインの背中へ、フェルディナンドは板状の魔石を置く。

そしてそのまま、ローゼマインの背中を机代わりにして魔法陣を書き始めた。

ローゼマインは腕を震わせながら抗議するが、「もう少し耐えろ」と軽く流される。

金属脆化の知識

腕の負担から気を逸らすため、ローゼマインは異世界知識を利用した提案を始めた。

通常金属は極低温下で脆くなる性質があり、急冷直後に強い衝撃を加えれば船表面の銀色部分を剥がせる可能性があると説明する。

さらに、金属は冷却で収縮するため、隙間へ槍を突き込めば表面装甲を剥離できるかもしれないとも続けた。

フェルディナンドはこの案を高く評価し、銀色を剥がしてアウブの守護を通すことを目的に据える。

その後、ハイスヒッツェへ「凍結後、人質のいない場所へ数人がかりで槍を降らせよ」と命じた。

冬を呼ぶ儀式

やがてハルトムート、ラウレンツ、回収部隊が合流する。

日の出の瞬間、フェルディナンドはローゼマインへ儀式開始を命じた。

ローゼマインは魔紙へ描かれた魔法陣へ魔石の魔力を注ぎ込んでいく。

五個目の魔石で魔法陣が起動し、赤い光柱が船を包み込んだ。

しかし次の瞬間、赤は白へ塗り替えられ、船周辺だけが冬へ変貌する。

光柱内部は急激に寒冷化し、護衛騎士達はエーヴィリーベの剣を展開した。

冷気は濃密な氷雪へ変化し、冬の眷属達が船へ食らいついていく。

コルネリウス、マティアス、ラウレンツ、ハルトムートの四人は魔力を使い切り、騎士見習い達に支えられながら回収されていった。

銀色の攻撃口を中心に氷結が広がり、やがて船全体が雪と氷へ閉ざされる。

ライデンシャフトの槍

フェルディナンドは、残った冬の眷属数を確認すると、ハイスヒッツェ達へ突撃命令を出した。

ダンケルフェルガー騎士達は、神殿通いで得たライデンシャフトの槍を展開する。

フェルディナンドは、アーレンスバッハへ閉じこもっていたせいで、自分が情報に遅れていたと苦々しく認めた。

四本の槍は凍結船へ投げ込まれ、氷を砕きつつ銀色装甲を吹き飛ばす。

一本は収縮によって生まれた隙間へ食い込み、網目状に銀色装甲を剥離していった。

突入開始

フェルディナンドは即座にローゼマインへアウブの守護を命じる。

黄色い鳥が船へ飛び込むと同時に、エックハルトが虹色に輝く大剣で船首を叩き斬った。

できた穴からダンケルフェルガー騎士達が船内へ突入していく。

ローゼマインが魔法陣を解除すると、冬の光柱は消え、初夏の陽気の中へ凍った船だけが残された。

レティーツィア救出

その後、船内からレティーツィアが救出される。

フェルディナンドはローゼマインへ、彼女を反逆者一族として扱うのか、殺人未遂犯として裁くのか、それとも温情を与えるのか尋ねた。

ローゼマインは、できるなら温情を与えたいと答える。

フェルディナンド自身も、レティーツィアに本心からの殺意はなかったと考えていたため、ひとまず被害者として扱う方針を決めた。

選択肢

レティーツィアとの再会

氷に包まれた銀色の船の上には、レティーツィアと側近達の姿があった。

ローゼマインはフェルディナンドに騎獣から降ろしてもらい、レティーツィアへ近付こうとする。

しかしアンゲリカとレオノーレが護衛として前へ出て、これ以上不用意に接近しないよう制止した。

レティーツィアは、成長したローゼマインを見て本人だと気付けず、恐る恐る確認する。

さらに、ダンケルフェルガー騎士達から、ローゼマインがフェルディナンド救出のため礎を奪い、ランツェナーヴェ掃討を行っていると聞かされ、自責の念を口にしかけた。

しかしフェルディナンドがその言葉を遮る。

フェルディナンドの牽制

レティーツィアは、フェルディナンドが生きていたことに深い安堵を見せた。

ディートリンデから死亡したと聞かされていたのである。

フェルディナンドは、ユストクス達へ薬を届けた功績を認めながらも、凄みを含んだ笑顔で「余計なことを言うな」と無言の圧力をかけた。

レティーツィアはその意図を理解し、口を閉ざす。

続けてフェルディナンドは、礎を得てアウブとなったローゼマインが、事情を全て知った上でレティーツィアを救おうとしていると説明した。

レティーツィアと側近達は驚愕する。

フェルディナンドを救うため現れたローゼマインが、自分達加害側へも温情を与えるとは予想していなかったのである。

沈黙の命令

レティーツィアは再び弁明しかけるが、フェルディナンドは「話を聞く場を設けるまで余計なことを言うな」と厳命した。

今度こそ従えるかと問われたレティーツィアは、震えながら頷く。

そしてローゼマインとフェルディナンドへ深く感謝を述べた。

レティーツィアへの役割

フェルディナンドは、これから自分達が国境門閉鎖へ向かうため、レティーツィアへ先に城へ戻り、ダンケルフェルガー騎士達の休息場所と客間準備を整えるよう命じた。

ローゼマインは、捕らわれ続けていたレティーツィアへ休息を与えるべきだと反対する。

しかしフェルディナンドは、毒を盛られた自分や礎を染めたローゼマインより、船内で拘束されていただけのレティーツィアの方が体力も魔力も残っていると合理的に返した。

さらに、今の混乱状況では、旧領主一族であるレティーツィア自身が救われたと語ることに大きな意味があると説明する。

彼女が健気に働けば同情票も集まり、旧領主派貴族達へ「自分達も救われるかもしれない」という希望を与えられるのである。

また、何も役目を与えられず待たされる方が精神的に辛い場合もあると指摘した。

レティーツィアの決意

フェルディナンドの説明を聞いたレティーツィアは、ローゼマインの前へ進み出て跪いた。

今の自分にできることなら何でもしたい、じっとしていられないと強い意志を見せる。

ローゼマインも納得し、ダンケルフェルガー騎士達が休める場所の準備を正式に任せた。

しかしレティーツィアが側近ロスヴィータを呼ぼうとした瞬間、表情が強張る。

代わりにフェアゼーレという見習い側仕えが肩へ触れ、自分が側仕え達へ呼びかけると申し出た。

そのやり取りから、ロスヴィータに何かあったことが察せられた。

フェアゼーレの質問

フェアゼーレは、去る前にフェルディナンドへ一つだけ質問したいと願い出る。

彼女は、自分の父がアーレンスバッハ貴族達を守れたのか不安だったのである。

フェルディナンドは、シュトラールは被害を最小限に抑えており、今も救助活動中だと答えた。

フェアゼーレは安堵で目を潤ませ、深く礼をしてからレティーツィア達と共に城へ戻っていく。

銀衣回収命令

その後フェルディナンドは、ハイスヒッツェへランツェナーヴェ兵の銀色装備を剥ぎ取るよう命じた。

エーレンフェストや中央での戦いでも利用されている可能性が高いため、解析材料として必要だったのである。

さらにエックハルトへも魔石回収を命じ、盗聴防止魔術具を渡して何事かを密命した。

国境門へ

全体指示を終えると、フェルディナンドはローゼマインを呼び、国境門を閉ざしに向かうと告げた。

ローゼマインは、自分しか国境門を通っていないことを指摘する。

しかしフェルディナンドは、ユストクスから事情を聞いており、国境門閉鎖を他者へ見せないためにもローゼマインが必要だと判断していた。

二人は騎獣で国境門へ向かう。

海には砕けた氷塊が漂い、朝日に照らされた国境門の向こうには白い砂漠のような異界が広がっていた。

国境門閉鎖

ローゼマインが屋根を開けたまま突入してきたことを知ったフェルディナンドは、「開ける手間が省けた」と淡々と述べる。

続いて、周囲から見えるよう聖典を掲げるよう命じた。

ローゼマインがメスティオノーラの書を掲げる一方、周囲から見えない位置ではフェルディナンド自身もメスティオノーラの書を展開していた。

二人を乗せた騎獣は国境門へ突入する。

レオノーレ達は追従できず、慌てて引き返すよう叫んだ。

国境門内部へ入ったフェルディナンドは騎獣を消し、ローゼマインへ屋根閉鎖を命じる。

ローゼマインは自分のメスティオノーラの書を使って屋根を閉ざした。

四つの選択肢

屋根が閉まるまでの間、フェルディナンドはローゼマインへ今後の選択を迫った。

一つ目は、礎を譲って王族へ嫁ぎ、不満を抱えながら生きる道。

二つ目は、礎を譲った上で王族入りし、自らツェントとなる道。

三つ目は、グルトリスハイトを王族へ渡し、アウブ・アーレンスバッハとして生きる道。

四つ目は、グルトリスハイトを渡した後、礎を他者へ譲ってエーレンフェストへ戻る道だった。

フェルディナンドは、以前ローゼマインが「幸せにならなければ許さない」と言ったことを持ち出し、不幸な王族婚姻を選ぶなと釘を刺す。

さらに、感情優先で国を切り捨てかねないローゼマインにはツェントの資質がないと断言し、自分を犠牲にする覚悟がない限りツェントを選ぶなと告げた。

ローゼマインは当然そんな選択を拒否する。

ツェント案の否定

ローゼマインは、フェルディナンド自身がツェントになる選択肢はないのかと尋ねた。

しかしフェルディナンドは、「私に君を殺せと言うのか」と睨み返す。

慌てて否定したローゼマインは、王族入り後にグルトリスハイトをフェルディナンドへ渡せばよいのではと提案した。

フェルディナンドは、それが可能でも、ローゼマイン自身は自分がツェントになることを望むのかと問い返す。

ローゼマインは、フェルディナンドにはエーレンフェストへ戻り、研究三昧の平穏な余生を送ってほしいと本音を漏らした。

その瞬間、頬を強くつねられる。

残された道

ローゼマインは、アウブ・エーレンフェストになれない以上、自分に残された道はアウブ・アーレンスバッハしかないと語った。

しかし本音ではアーレンスバッハに良い感情を抱いていなかった。

ビンデバルト伯爵事件、ゲオルギーネによる侵攻、フラウレルムやディートリンデとの関係、そしてフェルディナンド毒殺未遂など、嫌な思い出ばかりだったのである。

フェルディナンドはメスティオノーラの書を取り出しながら、「別に他の選択でも構わぬ」と告げた。

さらに、「元々滅ぼしてもよいと思っていた土地だ。君の遊び場にはちょうど良い」と平然と言い放つ。

遊び場

アーレンスバッハという遊び場

フェルディナンドは、「遊び場」とはローゼマインが好きに遊んでも構わない土地という意味だと説明した。

アーレンスバッハは既に外患誘致の罪を犯しており、アウブとして選択を誤って潰しても、逆に慈悲を与えたように見せることも可能だと平然と言い放つ。

ローゼマインは、そこには実際に領民や貴族が暮らしているのだと強く反発した。

その瞬間、ローゼマインはかつてハッセを滅ぼしても構わないと言い切ったフェルディナンドを思い出す。

ディートリンデに毒を盛られた腹いせ程度の発言ではなく、フェルディナンドは本気でアーレンスバッハ滅亡を視野に入れていたのだと理解したのである。

海と香辛料の誘惑

そんなローゼマインへ、フェルディナンドは「君が欲しがっていたではないか」と続けた。

アーレンスバッハには海があり、魚がいる。

さらに、ランツェナーヴェ依存を減らすため、香辛料の原木を入手して栽培実験を進めている文官達も存在すると説明する。

援助次第では、様々な香辛料の自給も可能かもしれなかった。

魚と香辛料という単語に、ローゼマインの中でアーレンスバッハの印象が急激に変化していく。

図書館都市構想

続いてフェルディナンドは、ローゼマインが以前講義予習で提案していた「図書館都市」の建設も可能だと語った。

もちろん、アーレンスバッハ向けに特産品や産業構造を考慮した設計変更は必要だが、構想自体は実現できるという。

ローゼマインは、講義では夢物語扱いされた構想へ正式に許可が出たことで、急激に現実味を感じ始めた。

さらにフェルディナンドは、平民の識字率向上を目的とした神殿学校構想も、自領なら自由に実施できると続ける。

ツェントの許可を得る必要もなく、混乱期なら急改革も押し通しやすいと説明された。

ローゼマインは、自分が過去に語った夢を全て覚えているフェルディナンドへ驚きながらも、徐々にアウブ・アーレンスバッハ案へ心を揺さぶられていった。

家族と再会できる可能性

フェルディナンドはさらに、ローゼマインの大事な者達は既に移動準備を進めているのだから、そのまま自領へ連れて来ればよいと提案する。

神殿学校や図書館、印刷業拡大によって貴族と平民の垣根を低くできれば、家族とも会いやすくなるかもしれないという。

そして決定的だったのは、ローゼマインが下町家族と交わした契約は「エーレンフェスト限定」であり、他領では効力が失われるという事実だった。

ローゼマインは、また家族と会えるのかと警戒混じりに確認する。

フェルディナンドは、公には家族と名乗れなくても、エントヴィッケルンで与えた部屋へ転移陣を設置し、隠し部屋と繋げれば秘密裏に会えると説明した。

ただし、節度は必要だとも付け加える。

ローゼマインが「つまり自主的に会うなということですよね」と睨むと、フェルディナンドは「季節に一度か二度くらいなら家族水入らずで過ごせる」と返した。

さらに、自分かハルトムートが予定管理すれば、その程度の時間は確保可能だと断言する。

フェルディナンドの本音

あまりに条件が良すぎるため、ローゼマインは逆に「何を企んでいるのか」と疑い始めた。

フェルディナンドは少し考えた後、自分は図書館の隣に研究所が欲しいのだと本音を明かす。

しかも、魔木研究だけではなく、魔獣研究、魔魚研究までしたいと望んでいた。

ローゼマインは、「つまり図書館の隣に総合研究所、人里離れた場所に植物園・動物園・水族館を作りたいということか」と理解する。

フェルディナンドは、エーレンフェストでは研究施設が多すぎるとしてジルヴェスターから許可されなかったため、こちらで実現したいのだと語った。

研究施設分の金粉も設計も自分で用意するので、ローゼマインは許可だけ出せばよいという。

条件交渉

ローゼマインは、フェルディナンドだけが研究三昧で遊ぶのはずるいと反発した。

そのため、執務補助、予定管理、定期的な家族面会調整、薬を飲みやすくする研究、本の執筆と図書館納本まで条件として押し付ける。

フェルディナンドは、それら程度なら以前の生活より遥かに楽だと笑いながら了承した。

さらに、研究施設を使う文官達にも成果を本として提出させると付け加える。

ローゼマインは、本が増える未来を想像して喜んだ。

アウブ・アーレンスバッハ決定

フェルディナンドは最後に、アウブ・アーレンスバッハとなることへ異存はないか確認した。

ローゼマインは正式に了承する。

その直後、フェルディナンドはメスティオノーラの書を開き、国境門閉鎖用の魔法陣を確認し始めた。

ただし一部が欠けていたため、ローゼマインへ不足部分検索を頼む。

ローゼマインの書には断片しか表示されなかったが、フェルディナンドはそれを見ながら自分の書へ書き込み、魔法陣を完成させた。

ローゼマインは「コピペできないのか」と口にするが、フェルディナンドは興味を示しつつも後回しにした。

完成した魔法陣で「インデグランツ」を発動すると、国境門が振動し始め、完全封鎖が行われる。

フェルディナンドは、思ったより魔力を消費しなかったことから、国境門自体への魔力供給不足を問題視した。

帰還と休息

外へ出た後、フェルディナンドは境界門も閉じるようローゼマインへ指示する。

全て閉鎖されたことで、ランツェナーヴェ側からの侵入は不可能となった。

その後、フェルディナンドは騎士達を労い、ゲオルギーネ派騎士の回収へ向かうと宣言する。

ローゼマインはレオノーレへ同乗して城へ戻ることになった。

レオノーレの苦言

移動中、レオノーレはローゼマインへ、フェルディナンドとの距離感を改めるよう厳しく忠告した。

今の二人は、保護者と被保護者ではなく、仲睦まじい恋人同士にしか見えないという。

ローゼマインは以前と変わらないつもりだったが、成長した外見によって周囲の見え方が変わったのだと指摘される。

ただしローゼマイン自身は、自分の外聞より、フェルディナンドの体調と作戦遂行の方が大事だった。

また、研究所建設許可も、他者視点ではかなり問題視される案件ではないかと気付き始める。

城での混乱

城へ戻ると、クラリッサが興奮状態で出迎えた。

既にダンケルフェルガーとエーレンフェストへ報告を送り、エーレンフェスト側からは「よくやった」と返答が来ているという。

その一方、クラリッサの後ろにいるアーレンスバッハ貴族達まで熱狂的になっており、ローゼマインは少し恐怖を覚える。

レティーツィアは、ダンケルフェルガー騎士達が宴を始めてしまったため、まだ休めていないと説明した。

ヴォルヘニール返却で不在のハンネローレに代わり、騎士達が完全放し飼い状態になっていたのである。

ダンケルフェルガー鎮圧

ローゼマインは大広間へ向かい、酒盛り中の騎士達へ笑顔で語りかけた。

そして、「礎を守るまでがディッターなのに、まだ終わっていない戦いの最中に酒を飲むのか」と静かに問い詰める。

その瞬間、大広間の空気は凍り付き、騎士達は慌てて片付けと就寝を約束した。

ローゼマインは「明日も期待しています」とだけ告げ、大広間を後にする。

レティーツィア達は心底安堵していた。

激マズ回復薬

最後にローゼマインは、厨房へ冷めても食べられる料理準備を指示した後、客間へ戻る。

ヴァッシェンで汚れを落とし、ハルトムートが持ってきた「倍量」の激マズ回復薬を飲み、フェルディナンドの指示通り騎獣の中で休息を取った。

噂と出発

目覚めと完全回復

ローゼマインが目を覚ますと、そこはレッサーバス内部だった。

男の側近達も客間へ出入りするため、寝顔や寝相を見せないよう窓を閉めて眠っていたのである。

回復薬がよく効いたらしく、体調も魔力も完全に回復していた。

アンゲリカを通じて側仕えを呼ぶと、レオノーレとフェアゼーレがやって来る。

そこでローゼマインは、自分が丸二日も眠り続けていたことを知らされた。

フェルディナンドは事前に「二、三日は起きない」と予測していたらしい。

フェルディナンドの出発

ローゼマインは、フェルディナンドが休んでいるはずがないと察する。

予想通り、フェルディナンドはアーレンスバッハとダンケルフェルガーの騎士団を率い、既にエーレンフェストへ出発していた。

ローゼマインは、自分を置いていったことへ不満を漏らす。

しかし実際には、役目のない状態で城に留まったダンケルフェルガー騎士達が、宴会や模擬ディッターを始めようとしたため、フェルディナンドが彼等を率いて外へ出る必要があったのである。

またフェルディナンド自身も、丸一日は隠し部屋から出ず、最低限の休養は取っていたらしい。

フェアゼーレの感謝

身支度を整えながら、フェアゼーレはレティーツィア救出への感謝を語った。

お菓子による支援、船からの救出、さらに「反逆者」ではなく被害者として扱う決定によって、レティーツィアは大きく救われたという。

現在レティーツィアは、ランツェナーヴェ被害者達や、ハルトムートとクラリッサによる“洗脳被害者”達をまとめている最中だった。

また、ローゼマインが三日近く目覚めなかったことで、レティーツィアは非常に心配していたとも聞かされる。

メスティオノーラの化身騒動

髪を整えながら、フェアゼーレはローゼマインの髪を「闇の神の祝福を受けた夜空のよう」と称賛した。

その背景には、ハルトムートとクラリッサによる宣伝活動が存在した。

二人はアーレンスバッハ貴族達へ、ローゼマインが神々から祝福を受け、グルトリスハイトを王族へもたらす「メスティオノーラの化身」であると説き回っていたのである。

さらに、混沌に魅入られたアーレンスバッハを浄化する救いの女神として語られていた。

ローゼマインは、何が起きているのか理解できず頭を抱えそうになる。

識別用マント

フェアゼーレが着ていた藤色のマントには、黄色と青の大きな×印が描かれていた。

これは、フェルディナンドが「敵意なし」と判断した者のみ着用を許された識別用マントだった。

逆に、この印のない者は拘束され、判断が済むまで解放されないという。

フェルディナンドは、眠るローゼマインごとレッサーバスをシュツェーリアの盾で保護しつつ、貴族達の敵意確認まで済ませていたのである。

側近達との相談

身支度後、側近達が一斉に集まり、ローゼマインの無事へ安堵する。

ローゼマインは、エーレンフェストの状況確認へ向かいたいと告げた。

コルネリウスもそれを止めなかった。

ラウレンツによれば、フェルディナンドは、ローゼマインがどうしても行きたければ転移陣で追って来てもよいと許可していた。

ただし、独断行動は禁止であり、到着連絡を待てという条件付きだった。

アウブ・アーレンスバッハの噂

コルネリウスは、ローゼマインが本当にアウブ・アーレンスバッハになるのか尋ねた。

ローゼマインは、できれば図書館都市を建設したいと本音を語る。

しかし同時に、王族が簡単に自由を与えるとは思えないとも冷静に分析していた。

青色巫女見習い時代、下町で本作りをしながら暮らす未来も、十歳まで家族と過ごす予定も、全て周囲の事情で潰されてきたのである。

ユレーヴェによる空白、急成長、フェルディナンドの毒殺未遂など、自分の望み通りになったことの方が少なかった。

そのため、アウブ・アーレンスバッハ案も「夢のまた夢かもしれない」と現実的に考えていた。

コルネリウスは、そんなローゼマインへ「意外と現実的だ」と複雑そうに呟く。

昼食会

食堂では、レティーツィアとハンネローレが待っていた。

レティーツィア達も、識別用の×印マントを身につけている。

レティーツィアは、この印によってエーレンフェスト側へ敵意がないと証明されているのだと説明した。

ハンネローレは、ランツェナーヴェの館調査結果を報告する。

そこには、アウブでなければ開けられない扉があり、ランツェナーヴェ姫君用離宮へ繋がっていた。

さらに、貴族院や中央棟の転移機能も、新アウブ認証がなければ使えなくなっているため、ディートリンデ達は戻れないらしい。

犠牲者への想い

レティーツィアは、回収された魔石確認作業によって、多数の死者が判明していることを悲しげに語った。

ローゼマインは、シュトラールとレティーツィアが多くの命を救ったのだと励ます。

そして、詳しい事情聴取はフェルディナンド立会いの場で行う約束を守るよう、口元へ指を立てて制止した。

礎への執着なし

ハンネローレは、アウブであるローゼマインが礎を離れてエーレンフェストへ行くことへ驚いた。

しかしローゼマインは、礎を奪いたい者がいるなら奪えばよいと平然と言い切る。

王族許可なしで反逆領地の礎を得ようとする者など存在しないと考えていたのである。

さらに、自分のメダルはまだエーレンフェストにあるため、礎を奪われても処刑されないとも説明した。

加えて、場所は既に把握済みなので、本当に必要なら再び奪い返せばよいと豪語する。

魔力勝負で負ける気はしていなかった。

ハンネローレは、その理屈へ納得し、自分も護衛として同行すると宣言する。

転移準備

昼食後、ローゼマインは大人数用転移陣を描き始めた。

同行者は、ローゼマイン側近達、ハンネローレ部隊、そしてアーレンスバッハ騎士五名だった。

その騎士達は、「メスティオノーラの化身であるローゼマインを守れることは光栄」と熱烈に感謝を捧げる。

ローゼマインは突然の神格化へ悲鳴を上げそうになるが、満足げなハルトムートの姿を見て全ての元凶を察した。

その直後、フェルディナンドからオルドナンツが届く。

ザイツェンではなく、ビンデバルトへ来いという指示だった。

昨夜、ビンデバルトから大量の騎士がエーレンフェストへ雪崩れ込んだという情報が入り、フェルディナンド達は現在ビンデバルトへ向かっている最中らしい。

ローゼマインは即座に転移陣を起動する。

闇と光が渦巻く中、ローゼマインはシュタープを魔法陣へ触れさせ、「ネンリュッセル ビンデバルト」と唱えた。

ビンデバルト

ビンデバルト到着

転移陣を抜けたローゼマイン達を迎えたのは、フラウレルムの大声だった。

貴族院教師を辞めさせられた彼女は、親族らしき女性達と共に現れ、エーレンフェスト側を非常識だと怒鳴りつける。

ハンネローレは、そんなフラウレルム達を即座に光の帯で拘束した。

同時にダンケルフェルガー騎士達も動き、一瞬で四人の捕縛を完了させる。

アーレンスバッハ騎士達の反応速度を「遅い」と柔らかく叱責するハンネローレの姿に、ローゼマインは改めてダンケルフェルガーらしさを感じていた。

毒殺計画の露見

拘束されたフラウレルムは、ローゼマインが「死んでいるはず」だと叫ぶ。

それを聞いたハルトムートは冷たい目で彼女を見下ろし、遅効性毒の存在を知る者は毒殺計画関係者だけだと追及した。

フラウレルムは「報告を受けただけ」と言い逃れするが、ハルトムートはコルネリウスへ「死ねないようにしておけ」と命じる。

平民疑惑の再燃

さらにフラウレルムの親族と思われる女性が、ローゼマインは平民であり、ガマガエルことビンデバルト伯爵は騙されたのだと叫び始めた。

ローゼマインは思わず胸を押さえる。

しかしハルトムートは、そんな主張をする者こそ愚かだと切り捨てた。

現在のローゼマインを本気で平民と思う者など、正気ではないと言い切る。

さらに、もし本当に平民なら、貴族院最優秀を三年連続で平民が獲得したことになると皮肉った。

ハンネローレも、祝福や金粉生成を行うローゼマインを平民と考えるのは無理があると断言する。

ダンケルフェルガー騎士達は、「平民でもディッターができれば人口が増えるのに」と妙な方向で納得していた。

夏の館の制圧

探索へ向かっていたアーレンスバッハ騎士達が戻り、館内の貴族達を全員拘束したと報告する。

レオノーレは、仮にローゼマインが平民なら、その平民に一夜で礎を奪われたアーレンスバッハは恥さらしだと追い打ちをかけた。

アーレンスバッハ騎士達も、ローゼマインが国境門や境界門を閉じた姿を自分達は見ていると証言し、フラウレルム達を狂人扱いする。

それでもフラウレルム達は、「本当のことを言え」と叫び続けた。

ローゼマインは、平民云々には触れず、今は自分がアウブ・アーレンスバッハであることだけを静かに告げる。

するとコルネリウスが怒りのまま、フラウレルムの頭を踏みつけた。

ローゼマインへの侮辱を許せなかったのである。

フェルディナンド到着

そこへエックハルトを先頭に、フェルディナンド達が到着した。

ローゼマインは、遅いと文句を言いながらも、フェルディナンドの体調を確認する。

フェルディナンドは休息時間が全くなかったわけではないと答え、周囲を気にしながら健康確認を始めた。

その様子を見たフラウレルムは「破廉恥だ」と騒ぎ立てる。

フェルディナンドは、健康診断を破廉恥と思う方がおかしいと切り捨て、エックハルトへ猿轡を命じた。

黒の武器の真相

フェルディナンドは、拘束した男達について説明する。

彼等は、黒の武器を使ってエーレンフェストの土地から魔力を奪っていたギーベ達だった。

ゲオルギーネが語っていた「祈念式」とは、自ら魔力を奉納することではなく、エーレンフェストの土地から魔力を強奪する計画だったのである。

現在、旧ベルケシュトック系貴族達は二手に分かれ、数の力で土地の魔力を奪っているという。

先に狙われたのはグリーベルとイルクナーであり、そこへ戦力を回した結果、ゲルラッハが苦戦していた。

さらに、ゲルラッハ側を率いているのは左腕に義手を付けたグラオザムだった。

マティアスの決意

グラオザムの名を聞いたマティアスは、厳しい表情で父と向き合う決意を示した。

ローゼマインは他者へ任せるよう勧めるが、マティアスは拒否する。

グラオザム達によって罪人にされた者や、家族を失った者が大勢いる以上、自分だけ逃げることはできないと語った。

ラウレンツはそんなマティアスの背中を叩き、一人で抱え込むなと励ます。

ゲルラッハへ出陣

フェルディナンドは、犯罪者達を先にアーレンスバッハ城へ送り返し、自分達は即座にゲルラッハへ向かうと決定した。

ローゼマインが転移陣を起動し、捕虜達を城へ送還する。

その後、一行は騎獣でゲルラッハへ向けて飛び立った。

ビンデバルト上空では、魔力不足によって緑が減少した荒れた土地が広がっていた。

フェルディナンドは、今は魔力不足が続いていたビンデバルトより、現在進行形で魔力を奪われているゲルラッハを優先すべきだと告げる。

ゲルラッハ上空へ到達すると、土地にはトロンベ被害のような赤茶けた円形地帯が点在していた。

それは、土地の魔力が無理やり奪われている証拠だった。

遠方では、藤色のマントとエーレンフェスト騎士達が激しく戦っている。

さらに別地点では、ギーベ達と思われる集団が土地の魔力を吸い上げ続けていた。

黒の武器と小聖杯

主戦場への分析

フェルディナンドは、陽動戦場にいるのは間違いなく旧ベルケシュトック騎士団だと断言した。

ローゼマインが視力強化で確認すると、明るい黄土色のゲルラッハ騎士団に対し、藤色の旧ベルケシュトック騎士団の方が数で勝っていた。

マティアスは、敵側にとっては陽動でも、ゲルラッハ騎士団にとっては夏の館を守る主戦場だと説明する。

さらに、ジルヴェスターが各地へ防衛準備を命じており、夏の館には魔術具も集められているため、敵に落とされる前に急ぎ合流すべきだと進言した。

フェルディナンドも同意しつつ、合流前に散在する小隊を潰して戦力を削る方針を決める。

役割分担

フェルディナンドは、ローゼマインとハンネローレへ、上空から敵小隊の数や戦況変化を監視する役目を命じた。

同時にローゼマインへ、アウブ・エーレンフェストへ武力行使許可を取るよう指示する。

一方、ハイスヒッツェ率いるダンケルフェルガーとアーレンスバッハの混合部隊百五十名は、三十人規模の小隊へ襲いかかる準備を整えた。

マティアスの申し出

その時、マティアスが声を上げた。

彼は、ボニファティウスと共に仕掛けた罠の確認へ向かいたいと願い出る。

グラオザムは元ギーベであり文官であるため、騎士団の正面戦場ではなく森へ潜んでいる可能性が高いと考えたのである。

フェルディナンドは、確認のみで勝手な戦闘は禁止する条件付きで許可を与えた。

マティアスは、ラウレンツを同行させてほしいと願い出る。

管理小屋の位置を他領騎士へ教えられないためだった。

ローゼマインは、危険があれば即座にロートを上げるよう念押しし、二人を送り出した。

マティアスの苦悩

マティアスは、自分が育った故郷ゲルラッハが、父グラオザムによって蹂躙されている現実へ苦悩を滲ませる。

次々と赤茶けた土地へ変わっていく光景を前に、怒りと悔しさで拳を震わせていた。

それでも彼は、自分だけ逃げるわけにはいかないと強い決意を示す。

上空監視と疑問

ローゼマイン達は上空へ移動し、ジルヴェスターへオルドナンツを送った。

その最中、森の一部が消失する異変が起こり、敵小隊がまだ潜伏している可能性が浮上する。

ハンネローレは、黒の武器で奪える魔力量に限界があるはずなのに、現在の被害規模は異常だと疑問を呈した。

さらに、ゲオルギーネが本当にエーレンフェストの礎を奪うつもりなら、土地魔力をここまで奪うのは悪手ではないかと指摘する。

ローゼマインも、ゲオルギーネはエーレンフェスト破滅そのものを目的にしているのではないかと不安を抱いた。

敵小隊の確認

やがて、フェルディナンド側から飛び立った七羽のオルドナンツが確認される。

主戦場と六つの敵小隊へ向かったことから、敵は少なくとも七拠点存在していると判明した。

さらに、斥候らしき動きも確認され、敵側がこちらへ気付き始めたこともわかる。

そこへ、ジルヴェスターから正式な武力行使許可が届いた。

許可直後、ダンケルフェルガー騎士達は嬉々として攻撃を激化させ、森を吹き飛ばすほど派手な戦闘を始める。

ハンネローレは、ダンケルフェルガー側がエーレンフェストの土地まで荒らしてしまいそうだと申し訳なさそうに漏らした。

小隊壊滅

圧倒的戦力差によって敵小隊は短時間で壊滅した。

ローゼマインとハンネローレが合流地点へ降りると、捕らえられた貴族達が転がされていた。

フェルディナンドは、彼等が黒の武器と小聖杯を使っていたと説明する。

旧ベルケシュトックのギーベ達は、ゲオルギーネが礎を得た後、自分達が新生エーレンフェストのギーベになる予定だった。

黒の武器で奪った土地魔力を小聖杯へ蓄え、ゲオルギーネが礎を奪った後に土地へ戻す計画だったのである。

旧ベルケシュトック側の叫び

捕らえられたギーベは、王族から見捨てられたベルケシュトックでは、どれほど魔力を注いでも意味がなかったと叫ぶ。

新しいアウブも与えられず、土地も民も飢えていく絶望の中、ゲオルギーネだけが希望を示したのだと訴えた。

ローゼマインは、彼等にも彼等なりの理由があることを理解する。

しかし同時に、アーレンスバッハのマントをまとって他領を侵略し、魔力を奪った罪は許されないと断言した。

そして、全ての小聖杯を回収し、絶対に持ち逃がすなと命じる。

ゲオルギーネの狙い

フェルディナンドは、この大規模な土地魔力奪取は、貴族街の戦力を外へ引き剥がす陽動だと分析する。

つまり、ゲオルギーネ本人は既にエーレンフェストの街近辺、あるいは内部へ侵入している可能性が高かった。

ローゼマインの脳裏には、下町や神殿の人々の顔が浮かぶ。

今すぐ街へ向かいたい思いを察したフェルディナンドは、まずはここを片付けるべきだと制止した。

さらに、自分やダンケルフェルガー騎士達は、アウブの許可なしにエーレンフェストの街へ入れない立場であることを改めて説明する。

ローゼマインは、フェルディナンドが既に「他領の人間」として扱われている現実を痛感した。

グラオザム発見

そこへマティアスからオルドナンツが届く。

ボニファティウスの罠が破られた管理小屋を発見したという報告だった。

フェルディナンドは、予想以上にグラオザムが手強いと判断する。

さらに別の報告で、ダンケルフェルガーが追加小隊も壊滅させたことが伝えられた。

フェルディナンドは、罪人輸送をシュトラールへ任せ、自分達は主戦場へ中央突破すると決断する。

そしてローゼマインへ、決してレッサーバスから身を乗り出さず、周囲から目を逸らすなと厳命した。

四の鐘が鳴り響く中、一行はギーベ・ゲルラッハの館へ向けて飛び立った。

エピローグ

ビンデバルトでの成功報告

ディートリンデから計画成功のオルドナンツが届いた時、ゲオルギーネはビンデバルトのギーベ館に滞在していた。

ビンデバルトは、ローゼマイン襲撃事件以降衰退を続けており、エーレンフェストと領主一族への恨みが強い土地だった。

そのため、ゲオルギーネにとって極めて利用しやすい拠点になっていたのである。

側仕えゼルティエから成功確認を受けたゲオルギーネは、レティーツィアの精神的限界が予想より早かったため、計画が想定以上に順調だったと分析する。

レティーツィア誘導計画

ゲオルギーネは、筆頭側仕えロスヴィータを捕らえれば、レティーツィアが必死に捜索すると確信していた。

そして、頼れる相手が王命で教育係となったフェルディナンドしかいないことも理解していた。

しかし同時に、フェルディナンドなら「諦めろ」と切り捨てるだろうとも予想していた。

教育係から拒絶された絶望状態のレティーツィアへ、レオンツィオがトルーク入り菓子を用い、「銀の筒を使えばまだ助けを求められる」と誘導する流れまで計算済みだった。

ゲオルギーネは、洗礼式以前から側に仕える筆頭側仕えが、領主候補生にとって第二の母親にも等しい存在であることを深く理解していたのである。

フェルディナンドへの評価

ゲオルギーネは、フェルディナンドを非常に危険視していた。

必要なら非情な判断を下せる思考回路が、自分と似ていると感じていたのである。

さらに、ヴェローニカによって大切なものを奪われ続けた境遇も近いと考えていた。

そのため、フェルディナンドとは常に互いを警戒し、隙を狙い続ける関係になっていた。

一方で、ジルヴェスターやディートリンデよりは遥かに理解しやすい人物だとも感じていた。

レティーツィアの未熟さ

グラオザムは、計画が想定以上に簡単に進んだことから、レティーツィアは危機感に乏しいのではないかと疑問を呈する。

ゲオルギーネは、北の離れへ隔離されて育ったため、本当の危機感が育っていないのだと説明した。

また、自分自身が意図的にレティーツィアへ敵意を見せず、直接的な害を与えないよう振る舞ってきたとも明かす。

その結果、レティーツィア達は「警戒は必要だが実害はない相手」程度にしかゲオルギーネを認識していなかった。

さらに、王命によって次期領主の座が保証されているレティーツィアは、立場を脅かされる恐怖を経験していないとも語る。

供給の間での誤算

ゲオルギーネは、本来ならフェルディナンドの部屋かレティーツィアの部屋で毒殺計画が行われると考えていた。

その場合、側近達もまとめて始末できるはずだったのである。

しかし実際には供給の間で事件が起きたため、即死毒の犠牲者はフェルディナンドのみになった。

ユストクスやエックハルトが無事であることを、ゲオルギーネは厄介視していた。

それでも、最も排除困難だったフェルディナンドを消せたのだから、現時点では十分な成果だと判断する。

情報遮断工作

グラオザムは、境界門を既に制圧済みであり、オルドナンツも手紙もエーレンフェストへ届かないと報告した。

境界門の騎士も押さえているため、ユストクス達が情報を届ける手段は極めて限られている。

また、銀の布を持たない彼等は個人で領地境界を越えられないため、ゲオルギーネの方が先に動けると説明する。

ゲオルギーネは、これでジルヴェスターが自分の侵攻を知る機会はないと判断した。

ボニファティウス対策

ゲオルギーネ達にとって、最大の不確定要素はボニファティウスだった。

彼は理屈ではなく勘で罠を回避し、計画を崩壊させる存在なのである。

しかも正面戦闘力が極めて高く、真正面からでは勝てない可能性すらあった。

そのため、まずイルクナーへ侵攻を起こしてボニファティウスを誘導し、その後ゲルラッハでも騒動を起こす二段構えを採用した。

辺境へ戦力を振り分けさせることで、城からボニファティウスを引き離す算段だったのである。

さらにグラオザムは、義手を撫でながら「対抗手段を得た」と不穏な発言をしていた。

旧ベルケシュトック利用

旧ベルケシュトックのギーベ達は、慢性的魔力不足で土地も民も疲弊していた。

そこへ「民を守れる」と提示されたため、多くの者がゲオルギーネへ協力したのである。

彼等は、自領を救うためなら手段を選べないほど追い詰められていた。

エーレンフェスト侵入準備

ゲオルギーネ達は、銀の布で魔力を隠し、その上から通常のマントを羽織った。

馬車で境界線を越えた後、今度はラウゴという身食い商人の船を利用してエーレンフェストへ潜入する計画だった。

ラウゴは、染料や薬草を扱う商人として潜伏しているグラオザム配下の平民である。

彼の手配によって、ゲオルギーネ達は複数の商船へ分散して乗り込み、目立たずエーレンフェストへ近付く予定だった。

最終的にゲオルギーネ達は、最速便で三の鐘頃にはエーレンフェストへ到着できる見込みとなっていた。

身食い商人への褒美

船内でゼルティエは、報酬以上の黒の魔石をラウゴへ渡した。

グラオザムがギーベを失ったことで、身食い達は魔力を抜く機会を失い、死の恐怖に晒されていたのである。

そこへ黒の魔石と今後の支援継続を約束されたことで、ラウゴは深い感謝と崇拝を抱く。

ゲオルギーネは、その視線を当然のものとして受け止めていた。

エーレンフェストへの執着

船に揺られながら、ゲオルギーネは過去を思い返す。

エーレンフェストには碌な思い出がない。

それでも、自分が本当に生きていると感じられるのは、今も昔も「エーレンフェストの領主」を目指している時だけだった。

ゲオルギーネの原点

ゲオルギーネにとって最も古い記憶は、母ヴェローニカから「貴女が次期領主になるのですよ」と言われたことだった。

カルステッドが領主候補生として育てられる中、ゲオルギーネは「負けてはならない」と厳しく育てられた。

失敗も瑕疵も許されず、泣きながら勉学や礼儀作法を叩き込まれていたのである。

しかし同時に、優秀であれば母は褒めてくれた。

ゲオルギーネは、次期領主になれば母を救えると無邪気に信じていた。

コンスタンツェへの接し方

妹コンスタンツェが生まれた時、ヴェローニカは露骨に失望した。

ゲオルギーネは、母に見放されそうな妹を心配し、自分が受けてきたのと同じ厳しい教育を施そうとした。

しかし周囲は二人を引き離す。

当時は理解できなかったが、後に自分の態度が次期領主候補ではない妹へ向けるには厳しすぎたのだと理解する。

それでも、リヒャルダや叔父ベーゼヴァンスが愛情を向けてくれたため、当時のゲオルギーネはまだ救われていた。

ジルヴェスター誕生による崩壊

ジルヴェスター誕生によって、全てが変わった。

ヴェローニカは男児誕生を喜び、何もしていない赤子だけを愛した。

ゲオルギーネは、自分がどれだけ努力しても無意味なのではないかと疑い始める。

さらに、カルステッドは領主候補生の立場を失った。

それを目の当たりにしたゲオルギーネは、次は自分が排除される番かもしれないと恐怖する。

同時に、「ジルヴェスターさえいなければ」と強い憎悪を抱くようになった。

次期領主教育とリヒャルダ喪失

病弱なジルヴェスターに不安を抱いた周囲の進言により、ゲオルギーネは洗礼式後に正式な次期領主教育を受けることになった。

しかしその直後、最も信頼していた筆頭側仕えリヒャルダを奪われる。

ヴェローニカは「病弱なジルヴェスターには信用できる側仕えが必要」と言い、リヒャルダを弟付きへ配置換えしたのである。

ゲオルギーネにとって、リヒャルダは実母よりも母親らしい存在だった。

そのため、この喪失は決定的だった。

この時、ゲオルギーネは初めて本気でジルヴェスターへ殺意を抱いた。

ジルヴェスターへの嫌悪

成長するにつれ、ジルヴェスターは悪戯ばかりするようになった。

しかしヴェローニカは甘やかし続け、叱るどころか庇う。

同じことをゲオルギーネがすれば厳罰だったにもかかわらず、弟だけは許されるのである。

ゲオルギーネが「努力しろ」と叱れば、ジルヴェスターは泣きつき、逆にゲオルギーネが叱責された。

さらに、ジルヴェスターは母の庇護を理解した上で、舌を出して挑発する。

その姿を見たゲオルギーネは、「エーレンフェストのためにもいなくなった方が良い」と考えるようになった。

婚約と希望

父親は、ゲオルギーネの努力を認めていた。

そのため、婿入り前提の領主候補生との婚約を整えてくれたのである。

女性が領主になるには、夫も領主一族である必要があった。

この婚約により、ゲオルギーネは自分がまだ次期領主候補であると信じ続けられた。

洗礼式による絶望

しかし、ジルヴェスターの洗礼式でヴェローニカは「次期領主」と公言してしまう。

ゲオルギーネは即座の撤回を父へ訴えたが、「領主夫妻の対立を見せられない」と拒否された。

その結果、婚約者から「次期領主候補ではなくなった」と婚約解消を求められる。

両親は、ジルヴェスターの地位を撤回するのではなく、ゲオルギーネ側の婚約を破棄した。

さらに父は、ゲオルギーネへ「ジルヴェスターの補佐役になれ」と告げる。

この瞬間、ゲオルギーネは、自分の人生全てが否定されたと理解した。

グラオザムとの結び付き

絶望したゲオルギーネへ、グラオザムが近付いた。

彼は、愚かなジルヴェスターではなく、ゲオルギーネこそ次期領主に相応しいと断言する。

さらに、ヴェローニカのように「裏切れない味方」を集めるべきだと進言し、自ら名捧げ石を差し出した。

ゲオルギーネは、その提案を素晴らしいと感じた。

以後、彼女は薬学知識を深めつつ、水面下で支持者と名捧げ貴族を増やしていく。

アーレンスバッハへの嫁入り

しかし、父親はゲオルギーネを危険視し、大領地アーレンスバッハへの嫁入りを命じた。

しかも相手は父親ほど年の離れた男であり、第三夫人という立場だった。

次期領主になるため全てを費やしてきたゲオルギーネにとって、それは耐え難い侮辱だった。

だが、次期領主教育を受けてきたが故に、領地利益を損なう拒否もできなかった。

ジルヴェスター毒殺未遂

そんな中、ジルヴェスターはフロレンツィアとの恋愛結婚を望み、自分の願いだけは通そうとした。

ゲオルギーネは完全に限界を迎える。

そして、ヴェローニカが邪魔者排除に使っていた毒を用い、ジルヴェスター暗殺を決意した。

夕食時、名捧げした側近が毒を混入し、ジルヴェスターは苦しみ倒れる。

ヴェローニカが恐慌状態で取り乱す姿を見た時、ゲオルギーネは強い愉悦を感じていた。

しかし、冷静な側仕えが即座に解毒したため、ジルヴェスターは死ななかった。

空虚な結婚生活

ゲオルギーネはアーレンスバッハへ嫁いだ後、生きている実感のない日々を送っていた。

第一夫人になり、領主会議でジルヴェスターより上に立っても、心は満たされなかった。

やはり、自分が本当に欲しいのは「エーレンフェストそのもの」だと理解したのである。

最後の侵攻開始

叔父ベーゼヴァンスの遺品から手紙を得たことを契機に、ゲオルギーネは再び動き出した。

ラウゴの船でエーレンフェストへ潜入した彼女は、ボニファティウスがイルクナーへ誘導されたことを確認する。

西門警戒が厳重化していると知ると、下町エントヴィッケルンで作られた水路を利用して潜入する方針へ変更した。

門を通らず神殿や下町へ侵入できる秘密経路だった。

そしてゲオルギーネは、自分が長年望み続けたエーレンフェストの礎へ、ついに手が届くところまで来たのだと実感する。

三の鐘が鳴る中、ゲオルギーネは最後の戦いの始まりを静かに受け止めていた。

エーレンフェスト防衛戦(前半)

ギーベ・キルンベルガ 動いた国境門

キルンベルガへの警告

祈念式を目前に控えた頃、キルンベルガの夏の館へフロレンツィアから急ぎの手紙が届いた。

内容は、ゲオルギーネがエーレンフェストの礎を狙って侵攻している可能性が高いため、土地の見回りを強化し、不審者を発見した場合は即座に城へ連絡せよというものだった。

ギーベ・キルンベルガは、かつて次期領主候補だったゲオルギーネの姿を思い出しながら、彼女が未だに恨みを抱いているのか、それとも別の理由があるのかと考える。

また、昨冬の粛清によって、ゲオルギーネへ名を捧げていた貴族達の多くが処刑されているため、今やエーレンフェスト内部に彼女の手駒はほとんど残っていないだろうとも推測していた。

キルンベルガでの対応協議

キルンベルガは領地東端に位置しており、アーレンスバッハや旧ベルケシュトック方面から遠い。

そのため、直接侵攻を受ける可能性は低いと判断されていた。

しかし文官達は、絶対に安全とは言えない以上、備えは必要だと進言する。

騎士団の見回り強化や、必要なら南方ギーベへの援軍派遣も検討され始めた。

さらに、息子アレクシスを通じてヴィルフリートへ恩を売るべきではないかという意見も出る。

アレクシスからの返答

ギーベ・キルンベルガはアレクシスへオルドナンツを送った。

しかし返ってきた返答では、ヴィルフリートは領主一族と騎士団上層部による会議中であり、アレクシス自身もまだ詳細を知らされていないという。

その返答を聞き、ギーベ・キルンベルガは、余程緊急の事態が起きているのだと察した。

アウブからの突然の通達

そこへ今度はアウブ・エーレンフェスト本人からの手紙が届く。

内容は、「今夜、境界門を開くためキルンベルガを訪れる」というものだった。

しかも、ギーベの館に存在する転移陣を利用して騎士達と共に現れるため、館の敷地へ立ち入ると記されていた。

ギーベ・キルンベルガ達は、館内に転移陣など存在すること自体を知らず、混乱する。

転移陣捜索

館中が総出で転移陣探索を開始した。

側仕えは屋内、騎士達は訓練場を含む屋外、文官は古文書を調査する。

その結果、転移陣は騎士訓練場の石畳に刻まれていた。

しかも、貴族院の三人用転移陣とは異なり、大人数移動を前提とした巨大な魔法陣だった。

訓練用具や棚を撤去し、騎士達がヴァッシェンで清掃を行い、夜までに何とか体裁を整えた。

夜中の転移

深夜、転移陣が突如光り始める。

ギーベ達が駆け付けると、黒と金の炎が渦巻く中から、アウブ・エーレンフェストと多数の騎士達が現れた。

さらに、その中には成長したローゼマインの姿もあった。

冬の始まりの宴からは考えられないほど急成長しており、ギーベ達は誰もが困惑する。

しかも同行者には、アーレンスバッハへ向かったはずのユストクスやエックハルトの姿まで存在していた。

境界門へ向かう一行

ローゼマインは「話し合いは後回しにして境界門を開けてほしい」と急かした。

一行は騎獣で境界門へ向かう。

ギーベ・キルンベルガ達も放置できず、同行した。

夜警騎士達が見守る中、アウブ・エーレンフェストはシュタープを取り出し、「エフネトーア」と唱えて境界門を開く。

白い境界門がゆっくり開き、その奥に真珠層のような虹色の国境門が現れた。

グルトリスハイト出現

その直後、ローゼマインは騎獣から降り、「グルトリスハイト」と唱える。

彼女の手には淡く光る板状の魔術具が現れていた。

ギーベ達は息を呑む。

グルトリスハイトは本来ツェントだけが持つ存在であり、しかもローゼマインの力によって国境門が実際に反応したため、本物であることは疑いようがなかった。

約二百年ぶりに国境門が動き出し、その光景に騎士達は騒然となる。

王族公認の事実

ギーベ・キルンベルガは、これが王位簒奪にならないのかと不安を口にした。

アイゼンライヒ滅亡の歴史を知っているからである。

しかしアウブ・エーレンフェストは、王族と秘密裏に養子縁組の話が進んでいること、さらに第一王子ジギスヴァルトから求愛のネックレスを賜っていることを示した。

これによって、ローゼマインの行動は王族公認であると理解される。

同時に、ローゼマインがエーレンフェストへ戻らず、将来的に王族入りする未来も明確になった。

ダンケルフェルガーへの転移

アウブ・エーレンフェストは、ジギスヴァルトから預かった求愛の魔術具をローゼマインへ手渡した。

ローゼマインはそれを受け取り、国境門内部へ進む。

そして「ケーシュルッセル ダンケルフェルガー」と唱えると、全属性の光を放つ巨大魔法陣が展開された。

ローゼマインは、フェルディナンド救出のため、ダンケルフェルガーへ転移していった。

ギーベ・キルンベルガの不安

国境門が閉じた後も、ギーベ・キルンベルガは複雑な思いを抱えていた。

ローゼマインが王族入りすることで、ヴィルフリートとの婚約解消は避けられない。

しかし、ヴィルフリートは既に重大な失態を犯しており、ローゼマインとの婚約があったからこそ次期領主の座に留まれていた。

その婚約が消えれば、彼の立場は極めて危うくなる。

さらに、ヴィルフリートの側近である息子アレクシスの将来も不透明になる。

歴史的な国境門開放を目撃しながらも、ギーベ・キルンベルガはエーレンフェストの未来へ強い不安を抱いていた。

ブリギッテ イルクナーの戦い

イルクナーへの警戒命令

ギーベ・イルクナーの館に、フロレンツィアからゲオルギーネ侵攻の警戒を求める手紙が届いた。

ブリギッテは兄ヘルフリートと夫ヴィクトアから相談を受ける。

イルクナーはアーレンスバッハとの接地面が少なく、戦略的重要性も低いため、当初は大規模侵攻の可能性は低いと考えられていた。

しかし、最低限の警戒として騎士達の見回り強化や、平民達への注意喚起を行う方針が決定される。

ローゼマインからの緊急連絡

そこへローゼマインから直接オルドナンツが届いた。

フェルディナンドがゲオルギーネの計画によって危機に陥っていること、侵攻は既に目前まで迫っており、早ければ今日か明日にも動きがあることが告げられる。

さらに、銀の布は魔力攻撃を無効化すること、黒の武器や毒への警戒、馬車による隠密移動の可能性など、詳細な注意事項まで伝えられた。

ブリギッテ達は、フロレンツィアの手紙より遥かに切迫した危機を感じ取り、即座に対応を強化する。

イルクナー防衛の決意

ローゼマインからの情報を受け、イルクナーでは本格的な防衛準備が始まった。

平民への避難警告、山への立ち入り禁止、騎士達の見回り強化などが進められる。

ブリギッテ自身も騎士として戦列へ加わる決意を固めた。

出産と育児で訓練から離れていたことを理由にヴィクトアは強く反対したが、ブリギッテは「イルクナーを守れなければ娘も守れない」と言い切る。

ローゼマインの護衛騎士を辞したのもイルクナーのためであり、ここで退くつもりはないと宣言した。

侵攻の発見

翌日の見回り中、ブリギッテは山の稜線に不自然な変化を発見した。

近付くと、アーレンスバッハ側の木々が広範囲に消滅しており、土地が赤茶けて露出している。

さらに、黒の武器を持ったアーレンスバッハの騎士達の姿も確認された。

ブリギッテは、黒の武器が魔獣だけでなく土地からも魔力を奪っていると察する。

敵の侵攻目的が単なる通過ではなく、「土地そのものの魔力略奪」であることが判明した瞬間だった。

初戦と撤退

敵はブリギッテ達に気付き、矢を放ちながら接近してきた。

イルクナー側は攻撃用魔術具で応戦し、黒の武器を解除させる戦法を取る。

しかし周辺に別動隊が多数潜んでいることが判明し、圧倒的不利を悟ったブリギッテは撤退を決断した。

館へ戻った彼女は、即座に援軍要請を進言する。

さらに敵の中には旧ベルケシュトックのギーベ達も存在しており、魔力不足に苦しむ土地を救うため、本気で魔力略奪へ走っていることが判明した。

転移陣による援軍到着

ボニファティウス率いる援軍が来ると連絡が入った時、ブリギッテ達は騎士団が「転移」で到着すると聞かされ驚愕する。

五の鐘と共に前庭へ巨大転移陣が出現し、約五十名もの騎士達が転移してきた。

さらにアウブ・エーレンフェスト本人まで同行していた。

アウブは、この転移陣もローゼマインが古文書から発見したものだと説明する。

ブリギッテは、自分達が救われたのはローゼマインのおかげだと強く実感した。

ボニファティウスとの反撃

ボニファティウスは、黒の武器対策として銀対応武器の使用を指示し、小聖杯奪取を優先目標と定める。

敵ギーベ達は小聖杯を使い、土地から魔力を吸い上げていたのである。

ブリギッテが案内して境界へ向かうと、既に更なる被害が広がっていた。

ボニファティウスは単独で敵へ突撃し、魔力攻撃ではなく周囲の木々を切り倒して敵へ降らせるという力技を行う。

黒の武器では魔力のない木片を防げず、敵は潰されていった。

その隙にイルクナー騎士達が敵を拘束し、小聖杯を奪取することに成功する。

陽動作戦の判明

しかし敵の本命はイルクナー壊滅ではなかった。

少数部隊による広範囲侵攻で騎士団を各地へ分散させ、時間を稼ぐことこそが目的だったのである。

翌日にはグリーベル方面にも敵が出現し、ボニファティウスは援軍を率いてそちらへ移動する。

イルクナー騎士団は境界警備を継続することになった。

ローゼマインの戦い

戦闘中、材木商から「ライゼガング経由でエーレンフェストへ向かう不審な貴族達」の情報がもたらされた。

ブリギッテは急いでローゼマインへ連絡しようとするが、オルドナンツは戻ってきてしまう。

一瞬、ローゼマインの死を想像し恐怖したが、ダームエルへの連絡は繋がった。

そこでブリギッテは、ローゼマイン達が現在アーレンスバッハで戦っていることを知る。

かつて共にユレーヴェ素材採集で戦った日々を思い出しながら、ブリギッテは自分もイルクナーを守るため全力を尽くそうと決意を新たにした。

フィリーネ 避難訓練通りに

側近達の情報共有

ローゼマインがアーレンスバッハへ向かって不在となった後も、エーレンフェストに残る側近達は毎朝集まり、情報共有を行っていた。

フィリーネとグレーティアも、支度部屋で他の側近達から情報を求められながら急いで側近部屋へ向かう。

オティーリエは、イルクナーやグリーベルだけでなくゲルラッハ方面にも不穏な動きがあり、ボニファティウスが強く警戒していることを伝えた。

さらに、クラリッサからの手紙によって、フェルディナンドがダンケルフェルガー騎士団を伴いエーレンフェストへ向かっていることも共有される。

本館と騎士団の緊張

ベルティルデは、シャルロッテが騎士団との連絡役や後方指揮を担い始めたことを報告した。

これにより、アウブ・エーレンフェストが礎の間へ籠もっても対応できる体制が整いつつあった。

また、騎士達への食事や回復薬の補給も、フロレンツィアとブリュンヒルデが分担して行っている。

城全体が戦時体制へ移行していることが、側近達にも強く伝わっていた。

神殿防衛体制

ダームエルは、神殿側へ避難訓練の継続状況を確認した。

フィリーネ達は、青色神官や灰色神官がオルドナンツを使えないことを考慮し、何度も訓練を重ねて連絡体制を整えていた。

一方、リーゼレータとグレーティアは、中央へ移動するグーテンベルク達を図書館へ避難させる準備を進めていた。

さらに、プランタン商会からは、作りかけのローゼマインの衣装や針子達も避難対象へ加えてほしいという要望が届く。

ローゼマインの中央行きに必要な衣装制作を止めるわけにはいかず、その要望は受け入れられた。

神殿での日常業務

フィリーネ達は神殿へ戻り、通常業務を続けていた。

ローゼマイン不在のため、メルヒオールが神殿長業務を引き継ぎつつあり、フィリーネも孤児院長として収支確認などの執務を担当する。

孤児院や工房の収支確認では、春の成人や洗礼式に向けた準備費用なども細かく確認されていた。

緊迫した状況下でも、神殿の日常業務は止まっていなかったのである。

敵接近の報告

三の鐘が鳴る頃、ダームエルから緊急のオルドナンツが届いた。

ライゼガングからエーレンフェストへ向かう商船に、ゲオルギーネ達と思われる不審な貴族が乗っており、昼頃には西門へ到着するという内容だった。

フィリーネは激しく動揺するが、カジミアールの冷静な指示によって訓練通り行動を始める。

孤児院、門番、工房、神殿内部へ避難命令が次々と伝達された。

孤児院避難

フィリーネ達は神殿中を走り回り、灰色神官や巫女達へ避難を呼びかける。

コンラートはディルク達を心配していたが、フィリーネは落ち着いて避難するよう言い聞かせた。

フランは工房へ向かい、グーテンベルク達への連絡を担当する。

ヴィルマやデリア、リリー達も訓練通りに動き、孤児院の子供達は速やかに地下へ避難した。

さらに、貴族区域の扉を閉鎖し、壺や台で封鎖することで侵入経路も遮断する。

神殿長室への集結

避難完了後、フィリーネ達は神殿長室へ戻った。

そこにはギルやフリッツ、ニコラやフーゴなど、ローゼマイン専属の平民達も集められている。

ローゼマインは事前に、神殿長室を強力な結界で守るよう命じていた。

そのため、フィリーネとローデリヒは大量の魔力を消費しながら結界用魔術具を起動する。

急速回復薬を使っても魔力が激しく吸い取られ、二人は魔力枯渇寸前まで追い込まれた。

それでも結界は無事展開され、神殿長室は図書館級の防御力を持つ安全地帯となる。

開戦直前

結界展開直後、ユーディットからオルドナンツが届いた。

西門に船が到着し、銀の布をまとった者達が確認されたという。

ついにゲオルギーネ側の侵攻が始まったのである。

神殿長室の全員が緊張に包まれる中、フィリーネは皆の無事とエーレンフェストの勝利を願い、神々へ祈りを捧げた。

エーファ 強固な守りと繋がり

避難命令と街の混乱

三の鐘が鳴って間もなく、カミルがエーファの職場へ駆け込み、西門で戦いが始まるため昼までに避難を終えろという連絡を伝えた。

最近は各門に騎士の出入りが増え、余所の貴族が来るので危険があれば隠れるよう平民達にも通達されていたため、職場は一気に騒然となる。

ローゼマインと中央へ同行するグーテンベルク達は、貴族街へ避難するよう事前に指示されており、エーファはカミルと共に急いで集合場所へ向かった。

ギルベルタ商会での準備

避難場所は当初のプランタン商会ではなく、荷物量の都合でギルベルタ商会へ変更されていた。

店では、貴族街へ入るため平民用の服ではなく上等な衣装へ着替えるよう急かされる。

さらに、ローゼマインが中央へ持っていく衣装を守るため、ギルベルタ商会の針子達も共に避難対象となっていた。

馬車には衣装だけでなく、避難先でも仕事を続けられるよう裁縫道具まで積み込まれていた。

貴族街への移動

馬車は北門でダームエルと合流し、そのまま貴族街へ入る。

エーファは初めて見る貴族街の広大さと静けさに驚いていた。

白い石畳や巨大な館が並び、各家に専用井戸まで存在するという話に、平民街との違いを強く実感する。

トゥーリは、以前ローゼマインの図書館へ行ったことがあり、その大きさを語って聞かせた。

図書館到着

馬車は複数の建物を通り過ぎた末、巨大な建物の前へ到着した。

エーファはそれをローゼマインの家だと思ったが、ダームエルは「図書館」だと訂正する。

そこは本を保管し読むための施設であり、神官長から譲り受けたものだった。

エーファは、本のためだけにこれほど巨大な建物を使う娘の在り方に驚きを隠せなかった。

ローゼマイン不在

館へ入ろうとしたグーテンベルク達へ、ダームエルはローゼマイン本人は既に戦場へ出ていると説明した。

未成年で虚弱だったローゼマインが騎士達を率いて戦っている事実に、皆が息を呑む。

しかしダームエルは、ローゼマインなら誰も思いつかない方法で必ず勝利を掴むと断言した。

その言葉に、ルッツやベンノ達も安心した表情を見せる。

ギュンターへのお守り

一方、エーファは西門へ向かう夫ギュンターのことが心配でならなかった。

かつてローゼマインを狙った貴族との戦いで傷を負った姿を思い出し、自分のお守りをダームエルへ託す決意をする。

トゥーリも、自分のお守りを父へ渡してほしいと願った。

さらにカミルも、自分のお守りを父のために使ってほしいと差し出した。

ダームエルはそれらを受け取り、西門へ向かって飛び去っていった。

図書館内部での受け入れ

館へ入ると、リーゼレータとグレーティアは結界魔術具を起動しに向かった。

ラザファムは平民達へ館内を案内し、立ち入り禁止区域や宿泊部屋について説明する。

ギルベルタ商会には裁縫部屋が与えられ、衣装制作を継続できるよう配慮されていた。

また、エラやグーテンベルクの妻達は、増えた人数に対応するため厨房作業を手伝い始める。

それぞれの役割

ベンノは、カミルへ貴族館の内装をよく見て商売へ活かせと教えた。

ルッツは、図書館の本を見せてほしいとラザファムへ願い出る。

エーファは、周囲がそれぞれ役目を果たしている姿を見ながら、自分も何かしようと考え始めた。

その時、コリンナから、ローゼマインの衣装制作を手伝ってほしいと頼まれる。

母としての願い

エーファは、自分のような素人が領主一族の衣装へ手を入れて良いのかと戸惑った。

しかし時間が足りず、人手不足であること、そして何かしていた方が不安を紛らわせられるというコリンナの言葉を受け、刺繍を引き受ける。

トゥーリが髪飾りを作る隣で、エーファは一針ずつ丁寧に花の刺繍を施していった。

ローゼマインもギュンターも、どうか無事に戻ってきてほしいと願いを込めながら。

ギュンター 誓いを果たす日

西門での準備

ギュンターは見習い兵士達と共に、西門で戦闘準備を進めていた。

騎士達の指示により、門には大量の汚物が用意されている。

銀の布を使う敵には魔力攻撃が通じないため、平民兵士も武器を持って戦う必要があり、汚物を浴びせて銀布を剥がす作戦が採用されていたのである。

見習い達は悪臭に文句を漏らすが、ギュンターは理不尽な命令ではなく、街を守るために必要な準備だと言い聞かせる。

ローゼマインへの信頼

見習い達は、平民のことを考えてくれるのはローゼマインくらいだと口にした。

ギュンターは、最近は他の貴族達も少しずつ変わり始めていると感じながらも、その変化の中心には常にローゼマインがいると断言する。

彼は本当は娘自慢をしたかったが、見習い達は慣れた様子で距離を取っていた。

ライゼガングからの船警戒

水浴び中、騎士から「ライゼガングから到着する船に注意せよ」と緊急命令が下る。

敵が船で侵入する可能性があるため、特に銀の布を使う者へ警戒を強める必要があった。

ギュンターは即座に門番達へ情報を伝達し、監視体制を強化する。

船が到着すると、商人達へ厳格な確認が始まった。

ラウゴの通過

ギュンターは、植物や薬草を扱う商人ラウゴの尋問も担当する。

ラウゴはゲルラッハの商人として、薬屋やインク工房へ向かう予定を淀みなく説明し、商業ギルドカードも提示した。

不審点は見当たらず、ギュンターは彼を通行させる。

しかし、その男こそゲオルギーネ側の潜入協力者だったのである。

避難命令発令

三の鐘が鳴った直後、騎士達から正式に平民避難命令が下された。

昼頃到着する船に敵が乗っている可能性が高いという情報が入ったためである。

ギュンターは見習い兵士達へ指示を飛ばし、それぞれ分担区域へ避難呼びかけに向かわせた。

屋台商人、工房、買い物客へ次々と声をかけ、昼までに隠れるよう命じる。

家族避難の確認

避難誘導の途中、ギュンターはエーファの染色工房へ立ち寄った。

そこで、カミルが先に知らせへ来ており、エーファ達が既に避難済みだと知る。

ローゼマイン専属達は貴族街へ向かっていると聞き、ギュンターは安心した。

これで家族を気にせず戦えると考えたのである。

マインへの想い

中央広場から神殿を見つめながら、ギュンターはマインが自分の娘でなくなった日のことを思い出していた。

今回もまた家族を奪われるのではないかという不安が、無意識に体を強張らせる。

それでも、今度こそ敵を門で止めると強く決意していた。

ダームエルとの再会

西門へ戻ったギュンターは、ダームエルから呼び出される。

ダームエルは、ローゼマインの命令で家族達を無事に貴族街へ避難させたと伝えた。

さらに、エーファ、トゥーリ、カミルから預かった三つのお守りを手渡す。

「自分達は守られているから、父を守ってほしい」という家族の想いが込められていた。

ギュンターは、その想いに胸を熱くする。

ローゼマインの戦い

ギュンターは、ローゼマイン自身は安全な場所にいるのかと尋ねた。

しかしダームエルは、ローゼマインは領主の養女として騎士達を率い、自分の大切な者達とエーレンフェストを守るため戦っていると答える。

その言葉を聞いたギュンターは、かつてマインが「街ごと皆を守る」と誓った日のことを思い出した。

娘は今、本当にその誓いを果たそうとしているのである。

ギュンターは、自分の娘であることを改めて誇りに感じていた。

戦闘開始直前

ライゼガングからの大型船が到着すると、門番達は銀の布をまとった集団を発見した。

彼等こそ、領主一族を狙う侵略者達だった。

若い兵士達は飛び出しそうになるが、ギュンターは「最初の攻撃を外すな」と制止する。

そして、四の鐘が鳴る。

西門における戦闘開始の合図だった。

ギュンターは、お守りを握り締めながら静かに決意を口にする。

自分の家族も、この街も、自分が守るのだと。

望みのままに

毒による拘束とレティーツィアへの失望

フェルディナンドは供給の間で毒に侵され、魔力を吸われ続けながら身動きも取れない状態に陥っていた。

レティーツィアが放った毒は、ローゼマインのお守りに組み込まれた浄化魔法陣すら突破する強力な即死毒だった。

フェルディナンドは、ロスヴィータを救おうとしたレティーツィアへ忠告していたにもかかわらず、彼女は敵の罠にはまり、自ら毒を放ってしまったのである。

その結果、フェルディナンドは彼女を「守りながら教育すべき相手」ではなく、「忠告を理解できず周囲へ被害を広げる愚か者」と見なすようになった。

レティーツィアの罪と周囲への被害

フェルディナンドは、レティーツィアが犯した罪の重大さを冷静に分析していた。

王命によって移動した他領の領主一族であり、教育係であるフェルディナンドを毒殺したという事実は、幼さでは許されない。

彼女本人だけでなく、側近や派閥の貴族達まで連座によって処罰される可能性が高かった。

さらに、ディートリンデやゲオルギーネは、その混乱を利用して粛清を進めるだろうとも予測していた。

フェルディナンドは、浅はかな行動に巻き込まれる側近達の未来を強く案じていた。

エーレンフェストへの後悔

フェルディナンドは、ユストクスやエックハルトが逃げ延びられるかを気に掛けていた。

同時に、ゲオルギーネが祈念式を口実にエーレンフェスト侵攻を企てていることを、ジルヴェスターへ伝えられなかった自分の失敗を悔やむ。

父から託された「エーレンフェストとジルヴェスターを守れ」という使命を果たせなかったと思い込み、フェルディナンドは自らを役立たずと断じていた。

その時、幼少期にヴェローニカから浴びせられた「無能は生きる価値がない」という言葉まで脳裏に蘇る。

名捧げによる救命

朦朧とする意識の中、フェルディナンドは突然ローゼマインの魔力に包まれた。

それは名捧げによる支配の感覚だった。

ローゼマインは、フェルディナンドから預かっていた名捧げ石を使い、彼の名を受け取ったのである。

頭の中へ直接、「絶対に助けに行くので生きてください」という命令が響く。

フェルディナンドは、その無茶な命令へ呆れながらも、主命として受け入れるしかなかった。

ローゼマインへの理解

フェルディナンドは、ユストクスがローゼマインを誘導したのだと察していた。

他者の死を極端に嫌うローゼマインなら、名捧げを使ってでも自分を生かそうとすると理解していたのである。

彼は、神々から「互いに殺し合ってメスティオノーラの書を完成させよ」と命じられているにもかかわらず、ローゼマインが自分の生存を優先したことへ困惑していた。

しかし同時に、自分の死を望まれなかったことへ安堵も感じていた。

幼少期の記憶

死を目前にしたフェルディナンドの脳裏には、幼少期の記憶が次々と浮かび上がる。

アダルジーザの離宮で、自分へ「フェルディナンド」という名を与えた女性から、「望みのままに生きられる」と告げられた記憶。

そして、保護者だったイルムヒルデから「自分の望みを持ち、それを守るために生きられるようになればよい」と優しく諭された記憶。

フェルディナンドは、自分が結局何を望んで生きてきたのかを考え続けていた。

ローゼマインによる救出

意識を失っていたフェルディナンドは、突然ヴァッシェンの水流で叩き起こされる。

その後、誰かが薬液を口へ流し込もうとしたため、敵だと判断したフェルディナンドは全力で相手を押さえ込んだ。

しかし目を凝らして見た相手は、成長したローゼマインだった。

四、五年分ほど急成長した外見は別人同然だったが、言動は全く変わっていない。

鎖へ自分から突っ込んで咳き込む様子を見て、フェルディナンドは「間違いなくローゼマインだ」と確信した。

変わらなかったもの

フェルディナンドは、神々の干渉によって完璧に整えられたローゼマインの美貌よりも、以前と変わらない中身に安堵していた。

残念な言動、感情を隠せないところ、自分の大切なものを絶対に諦めない強情さ。

それら全てが、フェルディナンドにとっては「ローゼマインらしさ」だったのである。

ローゼマインは涙を流しながらも、動けるようになったら褒めてもいいし抱き締めてもいいと言い出した。

フェルディナンドは、その無防備さに呆れながらも、変わらないことへ安心感を抱いていた。

「家族同然」の意味

フェルディナンドは、何故ここまでして助けに来たのかと問い質した。

ローゼマインは、「フェルディナンドが助からなければユルゲンシュミットが助かっても意味がない」と当然のように答える。

その言葉に、フェルディナンドは強い衝撃を受けた。

彼は「家族同然」と言われても、本当の家族より優先されることはないと思い込んでいた。

しかしローゼマインは、時に下町の家族よりもフェルディナンドを優先していたのである。

それはフェルディナンドにとって完全に想定外だった。

望みのままに生きる決意

ローゼマインは、エアヴェルミーンの命令に逆らい、「二人とも無事に済む方法」を探そうと言い出す。

そのあまりにも突飛な発想に、フェルディナンドは呆れながらも少し愉快さを覚えていた。

そして、イルムヒルデの「望みのままに生きられるように」という言葉を思い出す。

フェルディナンドは、自分もまた望みのままに生きても良いのではないかと思い始めた。

毒が徐々に浄化され、指先が動き始める中、彼はアーレンスバッハをいかに滅ぼすかを考え始めていた。

第五部 女神の化身7レビュー
第五部 女神の化身
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本好きの下剋上 シリーズ 一覧

兵士の娘

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神殿の巫女見習い

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領主の養女

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貴族院の自称図書委

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女神の化身

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本好きの下剋上 第五部「女神の化身 11巻 」の表紙。
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本好きの下剋上 第五部「女神の化身 12巻 」の表紙。
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ハンネローレの貴族院五年生

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本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 1の表紙。
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本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 2の表紙。
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本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 3の表紙。
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