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フィクション(Novel)本好きの下剋上読書感想

小説「本好きの下剋上 第五部「女神の化身 9巻」感想・ネタバレ

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フィクション(Novel)

第五部 女神の化身8レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身10レビュー

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  1. どんな本?
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 前巻からのあらすじ
  5. 感想
  6. 考察・解説
    1. グラオザムの暗躍
    2. ゲルラッハの戦い
    3. 礎の魔術奪取
    4. ダンケルフェルガーの加勢
    5. エーレンフェストの防衛
    6. ダンケルフェルガーの貴族院奇襲
    7. ローゼマインの魔石恐怖症
    8. フェルディナンドの出生と過去
    9. 図書館国家構想と夢
  7. 登場キャラクター
    1. エーレンフェスト
      1. ジルヴェスター
      2. フロレンツィア
      3. ボニファティウス
      4. カルステッド
      5. ヴィルフリート
      6. シャルロッテ
      7. メルヒオール
      8. ヴェローニカ
      9. 前神殿長ベーゼヴァンス
      10. レーベレヒト
      11. オリスワルト
      12. リヒャルダ
      13. エルヴィーラ
      14. ランプレヒト
      15. アレクシス
      16. カトライン
      17. フォンバート
      18. カジミアール
      19. フォンゼル
      20. デドリック
      21. オーディス
      22. バルトルト
      23. カサンドラ
      24. ミュリエラ
      25. オズヴァルト
      26. クラペッヒ
      27. カンフェル
      28. フリターク
      29. グローリエ
      30. ダールドルフ子爵夫人
      31. ベルトラム
    2. ローゼマインとその側近
      1. ローゼマイン
      2. コルネリウス
      3. レオノーレ
      4. マティアス
      5. ラウレンツ
      6. アンゲリカ
      7. ユーディット
      8. ダームエル
      9. フィリーネ
      10. ローデリヒ
      11. ハルトムート
      12. クラリッサ
      13. リーゼレータ
      14. グレーティア
      15. オティーリエ
      16. ブリュンヒルデ
      17. ベルティルデ
    3. フェルディナンドとその側近
      1. フェルディナンド
      2. エックハルト
      3. ユストクス
      4. ラザファム
      5. シュトラール
      6. ゼルギウス
    4. ゲルラッハ
      1. ギーベ・ゲルラッハ
    5. エーレンフェスト神殿・下町
      1. ギュンター
      2. レクル
      3. オットー
      4. トゥーリ
      5. コリンナ
      6. ベンノ
      7. ルッツ
      8. フラン
      9. ザーム
      10. ギル
      11. モニカ
      12. ニコラ
      13. ヴィルマ
    6. アーレンスバッハ・ゲオルギーネ陣営
      1. ゲオルギーネ
      2. グラオザム
      3. ディートリンデ
      4. レオンツィオ
      5. ジェルヴァージオ
      6. レティーツィア
      7. ロスヴィータ
      8. フェアゼーレ
      9. ゼルティエ
      10. フラウレルム
      11. 身食いの商人
      12. 身食い兵
      13. 影武者
      14. 偽者ゲオルギーネ
    7. ダンケルフェルガー
      1. アウブ・ダンケルフェルガー
      2. ジークリンデ
      3. ハンネローレ
      4. レスティラウト
      5. ハイスヒッツェ
      6. ルーフェン
    8. 中央・貴族院
      1. トラオクヴァール
      2. ジギスヴァルト
      3. ワルディフリード
      4. ラオブルート
      5. セラディーナ
      6. ヴァラマリーヌ
      7. ヒルシュール
      8. ソランジュ
      9. オルタンシア
      10. カトリーン
      11. ライムント
      12. シュバルツ
      13. ヴァイス
  8. 展開まとめ
    1. プロローグ
    2. ゲルラッハの主戦場
    3. グラオザムとの対峙
    4. 勝利と帰還
    5. それぞれの武勇伝
    6. 祝勝の宴
    7. 眠れない夜
    8. 深夜のお茶会
    9. 仮縫い
    10. わたしの望み
    11. 昼食会
    12. 神殿とメルヒオールの報告
    13. 西門の兵士と根回し
    14. アーレンスバッハへ
    15. 健康診断と聖典作り
    16. ダンケルフェルガーからの要請
    17. ダンケルフェルガーの決断
    18. 祝福と出発
    19. エピローグ
    20. エーレンフェスト防衛戦(後半)
  9. 本好きの下剋上 シリーズ 一覧
      1. 兵士の娘
      2. 神殿の巫女見習い
      3. 領主の養女
      4. 貴族院の自称図書委
      5. 女神の化身
    1. ハンネローレの貴族院五年生
  10. その他フィクション

どんな本?

フェルディナンドが旅立ったエーレンフェストの冬は重い。騒乱を好む「混沌の女神」のようなゲオルギーネに関する密告があったことで粛清が早められた。
一方、貴族院の三年生になったローゼマインは喪失感を振り払うように、忙しく動き回る。寮内では旧ヴェローニカ派の子供達が連座を回避できるように説得し、院内では領主候補生の講義初日が開始。文官コースの試験に、新しい上級司書との出会い、専門コースの専攻など、一年前とは立場も環境も激変した日々へ突入していく。
次第に「らしさ」を取り戻す中、神々のご加護まで大量に得て、ますますローゼマインの暴走は止まらない!?
「わたしの本好きウィルス、皆に広がれ!」

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身1」

読んだ本のタイトル

#本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身9」
著者: 香月美夜 氏
イラスト: 椎名優 氏

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

ついに火蓋を切られる「ゲルラッハの戦い」。
騎獣で駆けるローゼマインは護衛騎士に守られながら敵陣を突破! 決戦の舞台はマティアスと潜入するギーべの館へーー冷酷なグラオザムとの宿命の対決の行方は?
終戦後、エーレンフェストに帰還したローゼマインは穏やかな時間を過ごす。領地に残った者たちの武勇伝を聞いたり、神殿や下町の様子を確認したり、衣装の仮縫いをしたり。
だが、それも束の間、一連の首謀者たちの暗躍は終わっていなかった……。
ユルゲンシュミットを揺るがす戦火の全貌を目撃せよ!

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身9」

前巻からのあらすじ

フェルディナンドを救出するまでがなかなかに長い。
フェルディナンドはよく生きてたよ、、

そして、フェルディナンドの予想とは違う事をするマイン。

しかも目からは誉めて光線を全開に出す。

そして援軍のダンケルフェルガー達と隣国の船を沈めて、、

しかも人質諸共攻撃とか、、

いや、アーレンスバッハの領主になったマインが防壁を張ってるから大丈夫だけどさ、、

やる事が過激だよ。

そんな事をしながら会話でマインはアーレンスバッハの領主のままでいようとするのが、、

お魚天国で図書館と研究の都市を妄想しながら敵を撃つ。

感想

アーレンスバッハが攻め入って来た。
アーレンスバッハを逆侵攻して礎に魔力を満たしたローゼマインは、ギーべの館を侵攻しているアーレンスバッハの侵攻軍を背後から急襲。
多くの騎士に護られながら敵中を突破してギーべの館を背後にして防衛陣を築いていたら。

背後のギーべの館が、ローゼマインに毒を盛ったグラオザムがギーべの館から現れラスボスのように暴れまくる。

グラオザムはギーべの館の2階のバルコニーから、人が魔石に変わる粉を振り撒いて、後方だと負傷したり魔力補充をしていた騎士達を魔石に変えてしまう。

そのギーべの館にローゼマインはマティアスと潜入して背後からグラオザムに襲いかかるが、、

グラオザムの義手が魔力を吸い込むようで攻撃が効かない状態。

グラオザムの義手かレッサーくんを掴み魔力をドンドン吸収して行くのだが、、
ローゼマインはレッサーくんを巨大化させ、義手が魔力を吸収出来る限界以上の魔力で義手を破壊。

義手の無くなったグラオザムは別の騎士達に討ち取られ、アーレンスバッハのギーべの館の侵攻を撃退する。

そして、エーレンフェストの本城に攻め寄せて来たアーレンスバッハのゲオルギーネは、様々な侵入経路を囮に使い守備側を混乱させ。

エーレンフェストの礎まで侵入して人を魔石に変える粉を使用してジルヴェスタを魔石にしたと思いながら礎の部屋に入るのだが、、

偶然にも外に出ており、粉をやり過ごしていたジルヴェスタと対峙して決闘となるが男性と女性、しかもジルヴェスタの方が若く実戦経験も豊富でゲオルギーネは討ち取られてしまいエーレンフェスト侵攻は失敗に終わる。

その後、エーレンフェストの防衛は成功し。
アーレンスバッハもフェルディナンド救出のため占領したローゼマインだったが、、

初めての実戦で、目の前で騎士達を魔石に変えた即死性の粉攻撃を直接見たせいで魔石に魔力を込める事が出来なくなった。

完全にトラウマになってしまっている。

それを最初は無自覚であったせいで防衛成功のパーティーで粗相をしてしまう。

後でトラウマになっているとフェルディナンドにバレて、そこでも説教を喰らうといつも通りでありながらも、普段の生活に戻るのかと思いきや、、

貴族院の方で不穏な動きがあると連絡が来る。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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第五部 女神の化身8レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身10レビュー

考察・解説

グラオザムの暗躍

『第五部 女神の化身』におけるエーレンフェスト防衛戦では、旧ギーベ・ゲルラッハであるグラオザムが徹底した工作を行い、防衛陣を大いに翻弄した。彼はゲオルギーネのエーレンフェスト侵攻を成功させるため、陽動と時間稼ぎ、そして戦力分断の要として暗躍した。その冷酷かつ周到な作戦の実態について以下に解説する。

ゲルラッハの夏の館の制圧

グラオザムは、本命であるゲオルギーネがエーレンフェストの礎を奪うための時間を稼ぐべく、旧ベルケシュトックの騎士たちに自身の故郷であるゲルラッハを襲撃させた。

・自身は身食い兵と共に商人に扮してギーベの夏の館に接近し、アーレンスバッハの即死毒を用いて見張りの騎士を迅速に排除した。
・その後、魔力を通さない銀色の布を使って館の結界をすり抜け、やすやすと館の礎を奪取して自身の所有に書き換えた。
・さらに、後任のギーベ・ゲルラッハを捕らえ、死後に魔力を含んだ質の良い魔石を得るため、わざと彼に恐怖と絶望を与えながら痛めつけるという冷酷な振る舞いを見せた。

ボニファティウス対策と全身の魔石化

グラオザムが最も警戒していたのは、計算外の動きでゲオルギーネの計画を潰す可能性が高いボニファティウスであった。かつて左手を失う原因となった天敵に対抗するため、グラオザムは全力を注いで専用の魔術具を作製していた。

・それは青い炎を操る右腕と、相手の魔力や攻撃を吸収する黒い義手の左腕であった。
・さらに彼は、自身の肉体に魔石をめり込ませ、体の半分以上を魔石化させるという人外の姿に成り果てていた。
・主であるゲオルギーネのためならば自らの肉体すら捧げるという、狂信的な執着を見せた。

影武者による戦力分断

グラオザムの周到さは、自身が最前線で戦うだけでなく、エーレンフェストの各地を同時に混乱させる戦略に表れていた。

・他者の魔力で染めやすい身食い兵などを利用し、自身と魔力の色や姿が酷似した影武者を3人用意していた。
・ゲルラッハの館でローゼマインたちと戦った本尊のほかに、エーレンフェストの西門、北門、そして神殿にも同時にグラオザムが出現した。
・これにより、西門ではギュンターたちが、北門ではヴィルフリートが、神殿ではシュミル型魔術具がそれぞれ対応に追われ、エーレンフェストの防衛陣は大いに混乱させられた。

息子・マティアスやローゼマインとの決戦と最期

ゲルラッハの夏の館において、彼は実の息子であるマティアスと対峙するが、一度古いものを破壊せねば新しいものは作り出せぬと語った。すでに自身はアーレンスバッハの貴族として登録されているためマティアスは息子ではないと言い放ち、容赦なく攻撃を仕掛けた。

・複数の神々の祝福を重ね掛けされたマティアスの猛攻を受け、次第に魔石の鎧が剥がれていったグラオザムは、ローゼマインの騎獣を黒い義手で削り、その膨大な魔力を直接奪おうと試みた。
・しかし、ローゼマインが吸収される以上の勢いで、限界を超えて魔力を注ぎ込んだ結果、黒い義手が魔力飽和を起こして金粉化してしまった。
・最大の武器と防御を失って動揺した隙を突かれ、結界を破って突入してきた護衛騎士たちの一斉攻撃を受け、彼はひび割れた魔石と金粉を残して呆気なく散った。

まとめ

グラオザムがエーレンフェスト防衛戦で仕掛けた暗躍は、自らの肉体を改造し、実の息子すら切り捨てる狂気的な執念に満ちていた。影武者を用いた戦力分断や銀色の布による結界突破など、その智略は防衛陣を大いに追い詰めた。しかし、最終的にはローゼマインの規格外の魔力量と若き騎士たちの連携の前にその野望は潰え、因縁の地であるゲルラッハで完全な破滅を迎える結果となった。

ゲルラッハの戦い

『第五部 女神の化身』において、ゲオルギーネのエーレンフェスト侵攻計画の重要な一部として引き起こされた「ゲルラッハの戦い」について解説する。周到に用意された陽動作戦から、激戦を経て結末に至るまでの経緯を以下に記述する。

戦いの背景と陽動作戦

ゲオルギーネが密かにエーレンフェストの礎を奪うための時間を稼ぎ、周囲の戦力を分散させる陽動として、旧ベルケシュトックのギーベや騎士たちがゲルラッハやイルクナーなどへ侵攻した。

・侵略者たちは黒の武器と小聖杯を使用し、土地の魔力を根こそぎ奪い取ろうとした。
・同時に、グラオザムは自身の故郷であるゲルラッハの夏の館に潜入し、新任のギーベを殺害して館の礎を奪取した。
・館の防衛結界を最大に引き上げることで、館にはグラオザムの血族と領主一族しか入れない状態にして籠城した。
・この状況下で、圧倒的な数を誇る旧ベルケシュトック勢にゲルラッハ騎士団を攻撃させ、壊滅寸前へと追い込んだ。

援軍の到着と中央突破

絶望的な状況に陥っていたゲルラッハ騎士団のもとへ、アーレンスバッハの礎を奪取したフェルディナンド、ローゼマイン、そしてハンネローレ率いるダンケルフェルガーの騎士たちが援軍として駆けつけた。

・フェルディナンドを先頭にした一団は、敵の小隊を次々と潰しながら、藤色のマントがひしめく主戦場を中央突破してゲルラッハ騎士団と合流した。
・合流後、ローゼマインがルングシュメールの癒しを広範囲に施した。
・これにより、重傷を負い壊滅寸前だったゲルラッハ騎士団は息を吹き返し、戦線を立て直すことに成功した。

グラオザムの毒物攻撃と館への潜入

戦況の不利を悟ったグラオザムは、夏の館のバルコニーから、アーレンスバッハでフェルディナンドを襲った際と同じ即死毒の粉を戦場に散布した。

・フェルディナンドの迅速な指示により、エーレンフェストとダンケルフェルガーの騎士たちはヴァッシェンで毒を洗い流し、即座にユレーヴェを服用することで難を逃れた。
・なお、この指示を知らなかった敵側や、一部のゲルラッハ騎士団には死者が出ることとなった。
・館の結界により大軍での突入が不可能であるため、フェルディナンドの命を受けたローゼマインと、グラオザムの実の息子であるマティアスが、密かに夏の館へ潜入した。
・マティアスの案内とローゼマインの騎獣の機動力を活かして罠を飛び越え、執務室にてグラオザムと対峙した。

執飾室での決戦

体の半分以上を魔石化させ、魔力を吸収する黒い義手と青い炎を操るグラオザムに対し、マティアスは黒い剣で応戦した。

・ローゼマインはシュタイフェリーゼ、アングリーフ、ルングシュメールなど、多数の神々の祝福をマティアスに重ね掛けした。
・これにより、超人的な強さを持つグラオザムと互角に渡り合えるまでマティアスを強化した。
・しかし、限界を超えたグラオザムがマティアスをバルコニーの外へ吹き飛ばし、標的をローゼマインへと変更した。
・グラオザムの黒い義手がローゼマインの騎獣を削り、凄まじい勢いで魔力を奪い始めたが、ローゼマインは吸収される以上の膨大な魔力を注ぎ込み、騎獣を巨大化させて抵抗した。
・その結果、急激な魔力吸収に耐えきれなくなった黒い義手は魔力飽和を起こして金粉化し、崩壊した。

決着と勝利宣言

・最大の武器を失って動揺したグラオザムの隙を突き、結界を破ってバルコニーからフェルディナンドや護衛騎士たちが一斉に突入した。
・彼らの黒の武器による集中攻撃を受けたグラオザムは、砕けた魔石と金粉だけを残してついに討ち取られた。
・その後、ローゼマインは拡声の魔術具を用いて戦場全体に響き渡る声で、アーレンスバッハの礎の奪取とエーレンフェスト防衛の成功、そして本物のディッターの勝利と終了を宣言した。
・勝利に熱狂するダンケルフェルガーの騎士たちをハンネローレがフェアフューレメーアの儀式で鎮め、ゲルラッハの戦いは幕を閉じた。

まとめ

ゲルラッハの戦いは、ゲオルギーネの侵攻を阻むための防衛戦であると同時に、古代の知識と神々への祈りを体現したローゼマインたちの共闘の舞台であった。グラオザムの残忍な策略や人外の能力に追い詰められながらも、フェルディナンドの的確な戦術眼、若き騎士たちの決死の応戦、そして大領地ダンケルフェルガーの協力によって、見事にエーレンフェストを守り抜くことに成功した。この勝利は、領地の境界を越えた新たな時代の幕開けを告げる象徴的な一戦となった。

礎の魔術奪取

『本好きの下剋上』における「礎の魔術奪取」は、領地の根幹を成す礎の魔術を他者が自身の魔力で染め替えることにより、領主(アウブ)の座を強制的に奪う行為である。奪われた側のアウブは命を落とすことが多く、領地防衛において礎を守り抜くことは最大の要となる。作中終盤では、ゲオルギーネによるエーレンフェストの礎狙いと、ローゼマインによるアーレンスバッハの礎奪取という、二つの大きな奪取作戦が並行して描かれる。それぞれの実態と詳細について以下に記述する。

ゲオルギーネによるエーレンフェストの礎狙い

ゲオルギーネは、通常は領主の城にあるとされる礎への入り口が、実は神殿にも存在するという過去の知識を悪用した。

・建国初期は次期アウブが神殿長を務めていたため、神殿長が継承する聖典の鍵が神殿から礎へ通じる扉を開ける鍵となっていた。
・彼女は前神殿長との手紙のやり取りからこの情報を得ており、協力者のダールドルフ子爵夫人に命じてエーレンフェスト神殿の聖典と鍵をアーレンスバッハの物とすり替えさせた。
・侵攻の際は、旧ベルケシュトックのギーベたちに黒の武器と小聖杯で土地の魔力を奪わせ、グラオザムにゲルラッハの夏の館を占拠させて防衛戦力を引き付けるという大規模な陽動作戦を展開した。
・その裏で、ゲオルギーネ自身は水路を通って密かに下町へ潜入し、手薄になったエーレンフェストの神殿から礎の間へと迫った。

ローゼマインによるアーレンスバッハの礎奪取

一方、アーレンスバッハでは、フェルディナンドがディートリンデらによって毒を盛られ、供給の間に閉じ込められて瀕死の危機に陥っていた。

・フェルディナンドを救出するため、ローゼマインは「外国勢力と結託してツェントの座を奪おうとしているアーレンスバッハを討つ」という建前を掲げた。
・大領地ダンケルフェルガーに本物のディッターとして協力を要請し、アーレンスバッハへ電撃的に攻め込んだ。
・ローゼマインはアーレンスバッハの神殿図書室からメスティオノーラ像の奥へ進み、ゲオルギーネが仕掛けた青い炎の罠を回避して礎の間へと到達した。
・そこには、フェルディナンドの魔力によって何とか維持されている淡い緑色の礎が存在していた。
・ローゼマインは持参した空の魔石を次々と置いて礎の中の魔力を吸い出して減らした後、回復薬を飲みながらシュタープを通じて自らの強大な魔力を一気に流し込んだ。
・結果として、礎はローゼマインの魔力である薄い黄色に完全に染め替わり、彼女は事実上のアウブ・アーレンスバッハとなった。これにより城の制御を奪い、フェルディナンド救出に向けた最大の障壁を突破した。

まとめ

礎の魔術奪取は、ユルゲンシュミットにおける最高権力の交代を意味する過酷な魔術戦である。ゲオルギーネが過去の歴史を悪用し、用意周到な陽動と隠密行動でエーレンフェストを壊滅の危機に追い詰めたのに対し、ローゼマインは大切な人を救うという目的のために大領地を巻き込み、力技でアーレンスバッハの礎を掌握した。この二つの作戦の結末は、形骸化していた神殿の重要性を浮き彫りにするとともに、物語の舞台を領地間の戦争へと大きく変転させる決定的な契機となった。

ダンケルフェルガーの加勢

『本好きの下剋上』の物語終盤において、エーレンフェストとアーレンスバッハの圧倒的な戦力差を覆し、フェルディナンド救出と領地防衛を成功に導いた最大の要因がダンケルフェルガーの加勢である。その経緯と彼らの目覚ましい活躍について以下に解説する。

「本物のディッター」への誘い

フェルディナンドがアーレンスバッハの供給の間で毒に倒れたことを知ったローゼマインは、彼を救出するためにアーレンスバッハの礎を奪う決意を固める。しかし、エーレンフェスト単独では大領地に攻め込む戦力が不足していた。

・ローゼマインはアウブ・ダンケルフェルガーに通信を繋ぎ、アーレンスバッハの礎を賭けた本物のディッターが始まると告げて有志の騎士の参加を要請した。
・かつてフェルディナンドをアーレンスバッハへ送る王命を後押ししてしまった過去の償いという建前と、本物のディッターへの抑えきれない情熱から、アウブ・ダンケルフェルガーは即座に参戦を決定した。

ハンネローレの参戦とランツェナーヴェ掃討

日付が変わる頃、ダンケルフェルガーの国境門には、完全武装した百人規模の騎士団が集結していた。

・その中には、過去のディッターでの失態を雪ぐために、自ら魔石の鎧をまとって参戦した領主候補生・ハンネローレの姿もあった。
・ローゼマインがアーレンスバッハの礎を最速で奪った後、救出されたフェルディナンドがダンケルフェルガーの騎士たちを指揮下におき、本物のディッターの継続としてランツェナーヴェの掃討戦を開始した。
・ハンネローレが魔獣ヴォルヘニールを使役して船内の人質を救出し、騎士たちは圧倒的な戦闘力で魔力を通さない銀の船を制圧した。
・これにより、ランツェナーヴェ兵や協力したアーレンスバッハ貴族を次々と捕縛することに成功した。

ゲルラッハの戦いへの急行

アーレンスバッハでの戦闘を終えた直後、ゲオルギーネの命を受けた旧ベルケシュトックのギーベや騎士たちが、エーレンフェストの土地の魔力を奪っていることが判明する。

・フェルディナンドとローゼマインはダンケルフェルガーの騎士たちを率いてゲルラッハへ急行した。
・ゲルラッハのギーベ騎士団は圧倒的な数の敵を前に壊滅寸前であったが、ダンケルフェルガーの騎士たちは嬉々として敵の小隊に襲い掛かり、次々と壊滅させた。
・主戦場を中央突破してエーレンフェストの騎士たちと合流し、前線を支え切るという絶大な貢献を果たした。

勝利宣言とビンデバルトでの労い

グラオザムを討ち取り、ゲオルギーネの捕縛が確認されたことでエーレンフェストの防衛は成功した。

・ローゼマインが半壊した館のバルコニーから本物のディッターの勝利と終了を宣言すると、ダンケルフェルガーの騎士たちは歓喜の声を上げて興奮状態に陥った。
・これに対し、ハンネローレが海の女神フェアフューレメーアの儀式を行って彼らの熱気を鎮めた。
・戦後、疲弊したエーレンフェストの食糧庫や酒蔵を守るというフェルディナンドの配慮により、大多数のダンケルフェルガーの騎士たちはエーレンフェストの街へは向かわなかった。
・彼らは旧ベルケシュトック勢が準備していたビンデバルトの夏の館の宴会物資を使って労われることとなった。

ツェントの剣として貴族院防衛へ

エーレンフェストの防衛戦が一段落した後、アウブ・ダンケルフェルガーから緊急の通信が入る。

・ディートリンデやランツェナーヴェの残党が貴族院へ侵入している可能性が高いにもかかわらず、王族が動かない状況に業を煮やしたアウブは、ダンケルフェルガーはツェントの剣であり貴族院を守り抜くと宣言した。
・そして、正当なツェント候補であるローゼマインからの号令を要請した。
・その号令を大義名分として、ランツェナーヴェの者たちが潜伏していると思われるアダルジーザの離宮への深夜の奇襲を自ら決定した。

まとめ

ダンケルフェルガーの加勢は、圧倒的な数と未知の武器で迫る敵の脅威からエーレンフェストとアーレンスバッハを救い出す決定打となった。本物のディッターという言葉に突き動かされた彼らの比類なき戦闘力と即応体制は、一領地の防衛にとどまらず、国家の要である貴族院の危機にまでその刃を振るうこととなる。ローゼマインとの信頼関係のもとで繰り広げられたこの電撃的な共同戦線は、ユルゲンシュミットの歴史を大きく動かす武の象徴として、物語に深く刻まれている。

エーレンフェストの防衛

『本好きの下剋上』の第五部終盤において、ゲオルギーネによるエーレンフェスト侵攻を防ぐために行われた「エーレンフェスト防衛戦」について解説する。領主一族と騎士団が総力を挙げて取り組んだ周到な準備から、領地各地で繰り広げられた激戦の全容を以下に記述する。

防衛準備と役割分担

ゲオルギーネがエーレンフェストの礎の魔術へ至る神殿の隠し入り口を知っている可能性が高いと判断した領主一族と騎士団上層部は、侵攻が予想される祈念式の時期に向けて約一ヶ月をかけて防衛体制を整えた。

・アウブであるジルヴェスターは最も重要な礎の魔術を守るために礎の間へ籠城した。
・騎士団長のカルステッドが街全体の防衛を指揮し、ボニファティウスが地方のギーベ領への救援を担当する体制を敷いた。
・さらに、フロレンツィアとシャルロッテは領主の城、ヴィルフリートは貴族街、メルヒオールは神殿および下町の防衛を任され、領主一族が総出で指揮を執った。

神殿と下町における防衛策

ゲオルギーネの標的となる神殿と、そこへ至る下町でも徹底した防衛策が講じられた。

・神殿の罠とシュミル:ジルヴェスターは神殿図書室の礎への入り口前に、侵入者を重罪人用の白の塔へ強制転移させる一晩で消えるインクで描いた転移陣を設置した。また、ローゼマインはフェルディナンドの護符に刻まれていた反撃魔法陣を搭載した戦闘特化型シュミルを3体作製し、神殿の各門の防衛に配備した。
・下町の避難と防衛:下町では避難訓練が行われ、印刷業に欠かせないグーテンベルクたちはダームエルの主導で安全な貴族院の図書館へ避難した。また、魔力を通さない銀の布を着た不審者への警戒が平民の兵士たちにも周知された。

地方ギーベ領における陽動作戦との戦い

ゲオルギーネはエーレンフェストの戦力を街から引き剥がすため、旧ベルケシュトックのギーベたちを扇動し、イルクナーやグリーベル、そしてゲルラッハへ侵攻させた。彼らは黒の武器を用いて土地の魔力を根こそぎ奪い取ろうとした。

・ボニファティウスはローゼマインが発見した大人数用の転移陣を活用し、素早くイルクナーへ駆けつけて敵を討伐した。
・主戦場となったゲルラッハには、アーレンスバッハの礎を奪取した直後のローゼマインやフェルディナンドがダンケルフェルガーの有志を率いて急行し、グラオザムを討ち取った。

街と城での決戦

地方での戦闘と並行して、エーレンフェストの街でもゲオルギーネの軍勢による侵攻が開始された。

・西門の戦い:囮の船が西門に到着し、銀の布をまとった敵と魔獣ヴォルヘニールが襲来した。ギュンターをはじめとする平民の兵士たちは、魔力攻撃が効かない敵に対して汚物を投げて銀の布を剥がすなどの物理的な手段で抗戦した。さらに、ローゼマインから渡されたお守りを駆使して敵の指揮官であるグラオザムの影武者を捕縛することに成功した。
・城と神殿の防衛:城の隠し通路から侵入した敵は、フロレンツィアとレーベレヒトが仕掛けた罠によって一網打尽にされ、そこに混ざっていたゲオルギーネの偽物が捕縛されて白の塔へ転移させられた。また、神殿の図書室に侵入した別のゲオルギーネの偽物も、鳥もちや足を取られる魔石の罠にかかった末に、転移陣を踏んで白の塔へ送られた。
・礎の間の決戦:本物のゲオルギーネは、下町のエントヴィッケルンで作られた水路を使ってこっそりと神殿に潜入し、礎の間へと到達していた。彼女は礎の間に毒を放ってジルヴェスターを暗殺しようとしたが、事前に罠を増設して待ち構えていたジルヴェスターとの直接対決となった。激しい戦闘の末、ジルヴェスターはシュヴェールトでゲオルギーネを討ち取り、ついにエーレンフェストの礎を守り切ることに成功した。

まとめ

エーレンフェスト防衛戦は、ゲオルギーネの緻密な多方面同時侵攻作戦に対し、領主一族、貴族騎士、そして平民の兵士がそれぞれの持ち場で全力を尽くして抗戦した総力戦であった。グラオザムの影武者や偽のゲオルギーネを用いた高度な陽動に翻弄されながらも、事前に張り巡らせた魔術的な罠や平民兵の臨機応変な物理戦術、そしてジルヴェスター自身の執念によって、最悪の危機を乗り越えて領地の命運を守り抜く結末となった。

ダンケルフェルガーの貴族院奇襲

『本好きの下剋上』の第五部終盤において、アーレンスバッハでの戦いの直後に行われた「ダンケルフェルガーによる貴族院への奇襲」について解説する。これは、ランツェナーヴェの者たちやディートリンデが貴族院へ侵入し、ユルゲンシュミットの根幹を脅かそうとしている事態に対する迅速な軍事行動であった。その背景から出陣までの詳細を以下に記述する。

奇襲の背景と標的の特定

アーレンスバッハでの戦いを終えた後、ダンケルフェルガーのアウブと第一夫人は、貴族院の状況に強い危機感を抱いていた。

・寮監のルーフェンからの報告により、中央騎士団長のラオブルートがディートリンデや見知らぬ者たちと密かに合流していたことが判明した。
・ラオブルートが彼らを木立の中に隠すよう指示していた事実を受け、フェルディナンドと第一夫人はその情報から潜伏先を推測した。
・敵が隠蔽の神フェアベルッケンの印で隠された「アダルジーザの離宮」に潜伏していると結論付け、標的を特定した。

大義名分としての号令

ダンケルフェルガーは、ツェントの剣として貴族院とユルゲンシュミットを守る意志を固めていたが、王族と連絡が取れず正規の出兵要請がない状態であった。

・そこで彼らは、正当な次期ツェント候補であるローゼマインからの号令を要請した。
・フェルディナンドの巧みな交渉と牽制を経て、ローゼマインは「貴族院を、ひいてはユルゲンシュミットを守るため、ダンケルフェルガーに救援をお願いします」と正式に号令を発した。
・この号令により、ダンケルフェルガーの騎士たちに領地を越えて軍を動かすための正当な大義名分が与えられた。

他領を待たない単独での決断

アウブ・ダンケルフェルガーは、敵の本拠地がアダルジーザの離宮であると見当がつくと、全員が揃っていそうな深夜に奇襲をかけると即断した。

・当初は他領とも足並みを揃えようと呼びかけたが、他領からは「出立に三日はかかる」と消極的な返答しか得られなかった。
・これに対し、巨大な魔獣が出た時でもすぐに出撃するダンケルフェルガーのアウブは、腑抜けた者ばかりで話にならぬと呆れ、他領の不参加を意に介さず「奇襲は今夜決行だ」と単独での出撃を宣言した。
・彼らは、疾風の女神シュタイフェリーゼより速く敵を討つべく、迅速に行動を開始した。

ローゼマインの支援と出陣の祝福

フェルディナンドの指示により、ローゼマイン自身はアーレンスバッハでの留守番を命じられたため、実際の戦闘には参加しなかった。

・しかし彼女は、ダンケルフェルガーの騎士たちが敵に気付かれず隠密行動を取れるよう、フェアベルッケンの印を使った魔法陣の知識を提供して支援した。
・そして出陣の直前、ローゼマインは騎士たちを前にシュタープを掲げ、雷の女神フェアドレンナ、幸運の女神グライフェシャーン、武勇の神アングリーフ、狩猟の神シュラーゲツィールらの御加護を願う祈りを捧げた。
・この大規模な多色の祝福が降り注いだことで、騎士たちの士気は最高潮に達し、アーレンスバッハの国境門の転移陣を通じて貴族院における掃討戦へと向かっていった。

まとめ

ダンケルフェルガーによる貴族院への奇襲は、危機に対して驚異的な即応力を誇る武の領地ならではの決断であった。他領の遅れを待たずに単独で深夜の奇襲を敢行するアウブの果断さと、ローゼマインがもたらした隠密の知識および強大な祝福の連携により、ユルゲンシュミットの命運を懸けた夜襲作戦が開始された。この迅速な軍事行動は、敵の不意を突き、貴族院の奪還に向けて大きく前進する重要な契機となったのである。

ローゼマインの魔石恐怖症

『本好きの下剋上』の物語終盤において描かれる、ローゼマインの魔石恐怖症は、ゲルラッハの戦いにおける凄惨な経験によって引き起こされた、極めて重篤なトラウマ症状である。貴族の日常生活や魔術の行使に不可欠な存在である魔石そのものに対し、心身が強い拒絶反応を示すようになった。その発症の原因から具体的な症状、周囲への影響について以下に解説する。

発症の原因と決定的な恐怖

ダンケルフェルガーの加勢を得てゲルラッハの館の救援に向かった際、ローゼマインはフェルディナンドの指示により、激戦区である戦場の中央突破を敢行した。

・その移動の最中、血飛沫や切断された腕が飛び交う凄惨な光景や、戦死した者が一瞬にして魔石へと変化する瞬間を間近で目撃した。
・さらにその後、肉体の半分以上が魔石化した異様な姿のグラオザムに襲撃され、自身の魔力を吸い取られるという恐怖を味わった。
・これらの衝撃的な体験が重なったことが、彼女の精神に決定的なトラウマを植え付ける原因となった。

具体的な症状と日常生活への致命的な影響

戦いの後、ローゼマインは戦場の悪夢にうなされて飛び起きるようになり、魔石を見るだけで当時の凄惨な光景がフラッシュバックし、吐き気や寒気、激しい震えに襲われるようになった。この恐怖症は、貴族としての生活に以下のような致命的な支障をきたすこととなった。

・魔術具や騎獣の拒絶:魔石に直接触れることができなくなったため、自身の魔術具である騎獣を出現させることすら不可能となった。
・通信魔術具への恐怖:特に、白い鳥の形から黄色の魔石へと姿を変えるオルドナンツに対しては、人間が死んで魔石に変わる様子を連想するため強い恐怖を抱き、助けを呼ぶ通信すら行えなくなった。
・調合への支障:フェルディナンドによる診察の際、植物の素材を魔力で魔石に変化させるテストを行ったが、魔石を握る恐怖からパニックに陥り、無我夢中で魔力を叩きつけて一瞬で金粉化させてしまった。
・社交での失態:祝勝会の宴においても、周囲の貴族が身に付ける魔石の恐怖に耐えきれず、無作法な形で急遽中座してしまい、事情を知らない周囲から奇行と受け取られる事態を招いた。
・なお、自身のシュタープに関しては、一般的な魔石のような外見をしていないため、恐怖を感じることなく使用できている。

フェルディナンドの後悔と苦悩

ローゼマインの重篤な症状を確認したフェルディナンドは、自らの判断を深く悔いることとなった。

・ローゼマインが本来、血や命の喪失に対して非常に脆い精神の持ち主であることを知っていながら、ゲルラッハ騎士団の救出を優先して中央突破を命じたのは自分の責任であると痛感した。
・日常的に魔石を扱う貴族社会において、魔石に恐怖を覚えるというのは致命的な弱点であり、彼女に生涯消えない重い十字架を背負わせてしまったと深く苦悩した。

トラウマの消失と側近たちの困惑

この強烈な魔石恐怖症は、物語のさらなる展開によって奇妙な結末を迎える。

・後に英知の女神メスティオノーラが降臨し、ローゼマインの心から大切な記憶の繋がりを断ち切った際、この凄惨なトラウマも一緒に抜け落ちることとなった。
・その結果、彼女は恐怖症を完全に忘れたかのように平然と騎獣を出そうとし、当時の深刻な錯乱状態を知る周囲の側近たちを大いに困惑させる事態を招いた。

まとめ

ローゼマインの魔石恐怖症は、戦争という非日常がもたらした残酷な現実と、彼女の本質的な繊細さが衝突して生まれた悲劇的な症状であった。貴族生活の基盤を揺るがすほどの深刻な障害となり、フェルディナンドに深い悔恨を残したが、後の神罰ともいえる記憶の欠損によって症状そのものが消滅するという特殊な経過をたどった。この一連の動向は、彼女の抱える精神的な危うさと、激動する運命の過酷さを物語る象徴的なエピソードとなっている。

フェルディナンドの出生と過去

『本好きの下剋上』に登場するフェルディナンドの出生と過去は、物語の根幹に関わる重要な要素である。彼は「アダルジーザの実」と呼ばれる特殊な出自を持ち、非常に過酷な幼少期を経てきた。その過酷な生い立ちから先代領主との約束に至るまでの経緯を以下に解説する。

アダルジーザの離宮での誕生と魔石としての運命

フェルディナンドは、ランツェナーヴェから献上された姫が住まう中央の「アダルジーザの離宮」で誕生した。

・アダルジーザの離宮で生まれた子供のうち、女児はユルゲンシュミットの姫として育てられるが、男児は次期ランツェナーヴェ王として一人だけが帰還し、残りは王位継承の争いなどを防ぐために秘密裏に処分(魔石化)される運命にあった。
・フェルディナンドの母親は、彼を最初から魔石にする目的で生み出した。魔力を上げるためではなく属性の偏りを埋める相手を探し、全属性で属性値が平均している「最も魔石に適した子供」として彼を誕生させた。
・そのため彼は、洗礼式を前に魔石となってランツェナーヴェへ返されるはずの、いわば「出来損ない」として扱われていた。

エーレンフェストへの引き取りとイルムヒルデの庇護

洗礼式前に処分されるはずだったフェルディナンドを引き取ったのは、先代のアウブ・エーレンフェストであった。

・先代領主は引き取った理由について、「時の女神のお導きだ。必ずエーレンフェストのためになる」としか語らなかった。
・エーレンフェストへ連れてこられたフェルディナンドの最初の保護者となったのは、先代領主の異母妹であり第二夫人となる予定だったイルムヒルデである。
・彼女は「貴方に生きてほしいと願った方がいらっしゃるから、フェルディナンドはここにいるのですよ」と語り、フェルディナンドにとって幼い頃の大きな精神的支えとなった。

ヴェローニカによる過酷な迫害

洗礼式を経て正式にエーレンフェストの領主候補生となったフェルディナンドであったが、城での生活は決して平穏ではなかった。

・愛妾の子であり、養子縁組もされていなかったため本来は領主になれない立場であったが、先代の第一夫人であるヴェローニカは、フェルディナンドが実子ジルヴェスターの地位を脅かす存在だとして激しく敵視した。
・住む場所も分けられ、先代領主との接触もヴェローニカが同席する夕食の時だけという孤独な生活を強いられた。
・食事に毒が盛られたり、異なる食材が使われたりするなど、日常生活の中で命を狙われる危険な日々を送っていた。
・しかし、貴族院1年生の時に最優秀の成績を修めた夜、初めて先代領主の部屋に呼ばれ、ジルヴェスターと共に褒められたことは、彼にとって非常に大切な思い出となっている。
・また、貴族院時代はヴェローニカの干渉から逃れるため、冬以外も貴族院に滞在し、ヒルシュールのもとで研究や魔術具の作製に没頭していた。

神殿入りと先代領主との約束

先代領主が病に倒れると、ヴェローニカからの迫害は命の危険を感じるほど苛烈になった。フェルディナンドが先代の死を望み、領主の座を狙っているという被害妄想から、排除の動きが強まったためである。

・先代領主の死後、ジルヴェスターはフェルディナンドを守るために、政治の世界から離れることを意味する神殿入りを勧め、フェルディナンドは神官長となった。
・フェルディナンドは先代領主と「ジルヴェスターを領主とし、私はその補佐としてエーレンフェストに尽くす」という最期の約束を交わしていた。
・彼はこの約束を何よりも重んじており、自分が領主となってエーレンフェストを治める道を決して選ばない。
・物語の終盤、アダルジーザの実であることを中央の騎士団長ラオブルートに知られ、王位簒奪の疑いをかけられた際も、自らがアウブ・エーレンフェストとなって王族との繋がりを断つという選択肢を拒否した。
・彼がアーレンスバッハへの婿入り(王命)を受け入れたのは、ひとえにこの先代領主との約束を守り抜くためであった。

まとめ

フェルディナンドの過酷な出生と凄惨な幼少期、そして青年期に受けた迫害の歴史は、彼の合理的で感情を見せない性格を形成する要因となった。しかし、その冷徹な表皮の裏には、イルムヒルデの慈愛や先代領主との思い出、そしてジルヴェスターとの絆が深く根づいている。自己犠牲を厭わずにエーレンフェストを守ろうとする強い意志と、先代領主との最期の約束を何よりも優先する忠誠心こそが、彼のすべての行動指針となって物語を終局へと導いていくのである。

図書館国家構想と夢

『本好きの下剋上』の物語において、主人公ローゼマインのすべての行動原理の根源にある「本に囲まれて暮らすこと」という夢と、そこから派生した壮大な「図書館都市」および「図書館国家」の構想について解説する。

ローゼマインの原点と司書への夢

ローゼマインの最も根源的な望みは、前世である麗乃時代から変わらず本に囲まれて暮らすことであり、図書館の司書になることである。

・貴族院のソランジュのように図書館に住み込み、利用者が欲しい本を探し、古い資料を修復し、他領の図書館と本を融通し合うような生活を理想としている。
・彼女にとって領主(アウブ)や王(ツェント)といった権力や地位は全く興味の対象ではない。
・もしその地位に就くとしても、それは自分の理想の図書館を作るための手段に過ぎないと考えている。

夢の巨大図書館と創造魔術への期待

ローゼマインは、物質を創り出す創造魔術を使えばユルゲンシュミットで一番の巨大図書館を作れると夢見ていた。

・蔵書が増えるたびに建物が拡張していく、成長する有機体のような図書館の建設を希望していた。
・期限を過ぎたら自動で本が戻ってくる魔術具や、検索すれば本が光る魔術具の導入を考えていた。
・シュバルツやヴァイスのような魔術具の司書をたくさん配置することを計画していた。
・しかし、この計画をフェルディナンドに語った際、改築のたびに膨大な魔力が必要になることや、後世の者が魔力を維持できなければ崩壊し資料保存という役目を果たせないと指摘され、現実味がないと一蹴された。

図書館都市構想と図書館国家構想

側近たちに自分の本当の望みを明かした際、ローゼマインは自らの立場を利用した壮大な計画を語った。

・アウブになった場合(図書館都市):平民たちにも文字を教え、読書の楽しみを広く普及させ、印刷工房がたくさんあって毎日新しい本が生み出される本の都を作る。
・ツェントになった場合(図書館国家):ユルゲンシュミット中のすべての図書館に国境門と同じような転移陣を敷き、全国の図書館をネットワークで繋いで気軽に行き来できる国家を作る。
・本人はアウブかツェントかの違いは図書館都市か図書館国家かの些細な違いでしかないと豪語したが、全国の図書館を転移陣で自由に繋ぐという発想は、悪用されれば領地の防衛を無力化する極めて危険な思想であり、フェルディナンドから激しく叱責されることとなった。

夢のための交渉と現実

物語終盤、次期ツェント候補としてジギスヴァルト王子との婚姻話が浮上した際、ローゼマインは自身の夢の実現のために交渉を試みた。

・自らの離宮に、エーレンフェストやフェルディナンドの蔵書を超える規模の図書室を準備してほしいと王族側に要求した。
・しかし、国家予算を破綻させかねない規模であったため要求は完全に却下され、ローゼマインはひどく絶望した。
・一方で、アーレンスバッハの礎を奪取した後、フェルディナンドから、アーレンスバッハのアウブになれば君の望む通りに創造魔術を行って図書館都市を建設し、平民の識字率を上げる神殿学校も自由に作れるという提案を受ける。
・この具体的な提案により、ローゼマインは自らの夢である図書館都市の実現に向け、アウブ・アーレンスバッハになる道へと強く心を揺さぶられることとなった。

まとめ

ローゼマインの図書館都市および図書館国家の構想は、一見すると荒唐無稽で危険性を孕んだ夢の領域にとどまっていた。しかし、王族との交渉決裂と、フェルディナンドによるアーレンスバッハでの主導権提示を経て、その夢は明確な現実の選択肢へと変貌を遂げた。地位や権力に興味のない彼女が領主の座を受け入れる契機となったのは、どこまでも本を愛し、理想の読書環境を追い求める執念に他ならない。

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登場キャラクター

エーレンフェスト

ジルヴェスター

アウブ・エーレンフェストである。ローゼマインの養父という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 防衛戦で礎の間に籠もり、侵入してきた本物のゲオルギーネと直接対決した。弓へ変化させたシュタープで攻撃し、光の帯で拘束して自ら止めを刺した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ゲオルギーネを討ち取り、エーレンフェストの礎を守り抜いた。

フロレンツィア

ジルヴェスターの第一夫人である。シャルロッテらの母親という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主の第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 城の隠し通路に罠を仕掛け、侵入してきた偽者のゲオルギーネを捕縛した。その後、白の塔の転移陣を用いて偽者を牢へ転移させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 城の防衛を成功させ、ヴェローニカに対して完全な決別の挨拶を告げた。

ボニファティウス

ジルヴェスターの叔父である。ローゼマインの祖父という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主一族。
・物語内での具体的な行動や成果
 騎士達を率いてイルクナーへ向かい、敵を討伐した。祝勝の宴では鎧姿のまま飛び込み、イルクナー救援戦の武勇伝を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 敵であるグラオザムが専用の魔術具を用意して警戒するほど、高い戦闘力と予測不能な行動力を持つ。

カルステッド

エーレンフェストの騎士団長である。ジルヴェスターの側近という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 領主執務室で防衛戦の指揮を執った。各門や貴族街に騎士を配置し、戦況を把握して指示を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 防衛戦の後始末に追われ、祝勝の宴には遅れて参加した。

ヴィルフリート

ジルヴェスターとフロレンツィアの息子である。貴族街の防衛を担当する。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 キルンベルガの騎士を率いて貴族街の東側を守った。北門の戦闘でグラオザムの影武者を捕縛したと祝勝の宴で語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 次期領主を下ろされたことが側近達に伝わり、動揺を引き起こしている。

シャルロッテ

ジルヴェスターとフロレンツィアの娘である。次期領主としてエーレンフェストの防衛を指揮する。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 領主執務室でジルヴェスターの代理として防衛戦の指揮を執った。各所へオルドナンツを飛ばし、騎士の配置や避難の指示を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 いざという時の次期領主に任命され、礎の魔術の場所と鍵について教えられた。

メルヒオール

ジルヴェスターとフロレンツィアの息子である。神殿長として神殿を守る立場にある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・神殿長。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿内で避難を指揮した。青色神官や側仕えが犠牲になったことに強い罪悪感を抱き、ローゼマインと共に死者へ祈りを捧げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 西門で兵士達に新しい神殿長として紹介され、褒賞を配った。

ヴェローニカ

先代アウブの第一夫人である。白の塔に幽閉されている。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・罪人。
・物語内での具体的な行動や成果
 白の塔を訪れたフロレンツィアに対し、ゲオルギーネが自分を救いに来ると主張した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フロレンツィアからアーレンスバッハの礎がローゼマインに奪われたことを告げられ、言葉を失った。

前神殿長ベーゼヴァンス

ヴェローニカの弟である。すでに死亡している。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・前神殿長。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ゲオルギーネが彼との手紙のやり取りから礎の魔術への入り口を知ったと推測されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去にローゼマインを虐げていたと言及されている。

レーベレヒト

フロレンツィアの側近である。ハルトムートの父親という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 城の隠し通路に罠を仕掛けた。侵入してきた敵に対し、掃除用魔術具で即死毒を防ぐなどの対策を講じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 罠の作動結果を観察するために待ち構えるなど、研究熱心な一面を見せた。

オリスワルト

レーベレヒトの長男である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。城の隠し通路の罠をレーベレヒトと共同で作製したと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

リヒャルダ

ジルヴェスターの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 礎の間から出たジルヴェスターに対し、戦いが終わったことを告げられて道を譲った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 かつてゲオルギーネに仕えていた時期がある。

エルヴィーラ

カルステッドの第一夫人である。ローゼマインの養母という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝勝の宴でハンネローレと恋物語について語り合った。新作の物語をハンネローレに贈った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦いの様子を新たな物語の題材にしようと取材の姿勢を見せた。

ランプレヒト

ヴィルフリートの側近である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ヴィルフリートがバルトルトの危険性を排除することを課題とされたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アレクシス

ヴィルフリートの側近である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。彼を通じてキルンベルガの騎士が派遣されたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

カトライン

フロレンツィアの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 見回りをするシャルロッテに対し、活動的になったと笑いかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 非常事態のため騎獣服を着用している。

フォンバート

エーレンフェストの副団長である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・騎士団副団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。フロレンツィアが報告を入れるように命じたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

カジミアール

メルヒオールの側近である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿内で避難を指揮した。ユーディットからの報告を受け、神殿の大門を閉鎖した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フォンゼル

メルヒオールの側近である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿の貴族門へ到着したことをオルドナンツで報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

デドリック

メルヒオールの側近である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿に侵入したゲオルギーネを白の塔へ転移させたとオルドナンツで報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

オーディス

エーレンフェストの騎士である。ユーディットと共に神殿を防衛する。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿裏門で敵と交戦し、シュミルの魔術具に攻撃を命じた。捕縛したグラオザムを見て、マティアスを処刑すべきだと主張した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

バルトルト

旧ヴェローニカ派の貴族である。特別室に隔離されている。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 城の特別室に隔離され、アウブやヴィルフリートとの面会を望んで不満を漏らした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴィルフリートの元側近と連絡を取っていたため危険視されている。

カサンドラ

旧ヴェローニカ派の貴族である。バルトルトの妹という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 城の特別室に隔離され、刺繍をして過ごしている。ミュリエラに諭されて大人しくなった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 兄のバルトルトに影響されていたと言及されている。

ミュリエラ

エルヴィーラに名を捧げた貴族である。特別室に隔離されている。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 城の特別室に隔離され、本を読んで過ごしている。不満を漏らすカサンドラに対して痛烈な言葉で諭した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 普段は騎士団長の館で生活しているが、隔離措置に巻き込まれた。

オズヴァルト

辞任したヴィルフリートの元側近である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・元側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。バルトルトと連絡を取っていたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クラペッヒ

神殿の青色神官である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ゲオルギーネに部屋へ侵入され、側仕えと共に殺害されたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

カンフェル

神殿の青色神官である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。彼の側仕えがゲオルギーネに服を奪われて殺害されたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フリターク

神殿の青色神官である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。クラペッヒの話題の中で名前のみ言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

グローリエ

ダールドルフ子爵である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。聖典と鍵を盗み出した実行犯であったと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ダールドルフ子爵夫人

ダールドルフ子爵の妻である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。名前のみ言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ベルトラム

神殿の青色神官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・青色神官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ローゼマインがラウレンツに様子を見に行かせたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ローゼマインとその側近

ローゼマイン

本作の主人公である。エーレンフェストの領主候補生からアウブ・アーレンスバッハになる。

・所属組織、地位や役職
 アウブ・アーレンスバッハ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハの戦いで騎士達に癒しの祝福を与え、グラオザムとの戦闘ではマティアスに祝福を与えて支援した。アーレンスバッハの礎を得て、アウブ・アーレンスバッハとなることを宣言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 本物のディッターに勝利し、アウブ・アーレンスバッハとしての地位を得た。図書館の司書になるという夢を語っている。

コルネリウス

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハの戦いでローゼマインを守りながら中央突破した。アンゲリカと共にグラオザムへ攻撃を仕掛けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フェルディナンドとローゼマインが隠し部屋へ入ることに強く反対した。

レオノーレ

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハの戦いで周囲の状況を分析し、ローゼマインに助言した。ローゼマインに政略結婚の相手としてフェルディナンドを勧めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

マティアス

ローゼマインの護衛騎士である。グラオザムの息子という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ギーベ・ゲルラッハの館へ潜入し、実の父親であるグラオザムと交戦した。ローゼマインの祝福を受けて戦い抜いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家族を告発して領地を守った功労者であるが、父親の罪により周囲からの視線を懸念されている。

ラウレンツ

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハの戦いで最後尾から合流した。館への侵入を試みたが結界に阻まれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アンゲリカ

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハの戦いでグラオザムの光の網を切り裂き、ローゼマインを救出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ユーディット

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿の裏門で敵と交戦し、戦闘特化のシュミルを起動させて敵を撃退した。悪夢に悩むローゼマインを温室へ誘った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ダームエル

ローゼマインの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 西門の戦いで兵士達を指揮し、ヴォルヘニールと交戦した。グラオザムの影武者を捕縛した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 兵士見習い達から憧れの的になっている。

フィリーネ

ローゼマインの文官である。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿襲撃時に孤児院の避難を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ローデリヒ

ローゼマインの文官である。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝勝の宴でヴィルフリートらの武勇伝を熱心に記録した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 新しい物語の執筆に意欲を見せている。

ハルトムート

ローゼマインの文官である。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 小聖杯の魔力をゲルラッハの土地に戻した。祝勝の宴でローゼマインの武勇伝を広めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインを王族より上位に位置づけるため、メスティオノーラの化身という噂を広めている。

クラリッサ

ローゼマインの文官である。ハルトムートの婚約者という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝勝の宴でアーレンスバッハでの戦いの様子を誇張して語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

リーゼレータ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ダンケルフェルガーの客間準備を行い、図書館での仮縫いの手配に奔走した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

グレーティア

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの着替えや世話を行い、夜の温室でお茶の準備をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

オティーリエ

ローゼマインの側仕えである。ハルトムートの母親という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 城でローゼマインを出迎え、アーレンスバッハへ向かう出発準備を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブリュンヒルデ

ローゼマインの側仕えである。ジルヴェスターの第二夫人予定者という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦地への物資輸送を指揮し、ライゼガング系貴族に食料支援を要請した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ベルティルデ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 ローゼマインの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 客室準備や出発準備の手伝いを行い、ローゼマインに新刊本を渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フェルディナンドとその側近

フェルディナンド

アーレンスバッハへ王命で向かった人物である。ローゼマインの元後見人という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハの領主一族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ダンケルフェルガーの騎士を率いてゲルラッハ防衛戦に参加した。ローゼマインのメスティオノーラの書の知識を自身の書に写した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アーレンスバッハで研究に没頭することを望んでおり、ローゼマインと共にアーレンスバッハの統治へ関わることになった。

エックハルト

フェルディナンドの側近である。

・所属組織、地位や役職
 フェルディナンドの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハの戦いでフェルディナンドを護衛し、国境門からアーレンスバッハへ転移する際の殿を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ユストクス

フェルディナンドの側近である。

・所属組織、地位や役職
 フェルディナンドの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドの隠し部屋へ素材を運搬した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ラザファム

フェルディナンドの側近である。

・所属組織、地位や役職
 フェルディナンドの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドの受け入れ準備を整え、昼食のためにローゼマイン達を呼びに来た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

シュトラール

フェルディナンドの側近である。

・所属組織、地位や役職
 フェルディナンドの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 旧ベルケシュトックの騎士達を捕らえ、ビンデバルトの館へ運送した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ゼルギウス

フェルディナンドの側近である。

・所属組織、地位や役職
 フェルディナンドの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハの城で荷物の整理やお茶の準備を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ゲルラッハ

ギーベ・ゲルラッハ

グラオザムの後任のギーベである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・ギーベ。
・物語内での具体的な行動や成果
 館の執務室でグラオザムに拘束されて致命傷を負わされ、魔石化して死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エーレンフェスト神殿・下町

ギュンター

ローゼマインの父親である。西門の班長という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・西門の兵士班長。
・物語内での具体的な行動や成果
 西門の戦いでヴォルヘニールと交戦し、魔獣を討伐した。さらにグラオザムの影武者を蹴り飛ばした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインの専属としてアーレンスバッハへ同行することが決まっている。

レクル

西門の兵士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・西門の兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
 敵に汚物を投げつけ、魔獣に襲われそうになったところをギュンターに助けられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

オットー

プランタン商会の関係者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト・平民。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。過去に門で働いていたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

トゥーリ

ローゼマインの姉である。ギルベルタ商会の針子という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 ギルベルタ商会・針子。
・物語内での具体的な行動や成果
 図書館でローゼマインの仮縫いを行い、ハンネローレの髪飾りの注文を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

コリンナ

ギルベルタ商会の関係者である。

・所属組織、地位や役職
 ギルベルタ商会・針子。
・物語内での具体的な行動や成果
 図書館でローゼマインの衣装の仮縫いを行い、王族に会うための衣装を最高のものに仕上げると宣言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ベンノ

プランタン商会の関係者である。

・所属組織、地位や役職
 プランタン商会・商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。コリンナが彼に似た商人の顔を見せたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルッツ

プランタン商会の関係者である。

・所属組織、地位や役職
 プランタン商会・関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ローゼマインが会いたいと思い浮かべたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フラン

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿内で避難を呼びかけ、フェルディナンドへお茶を淹れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインと共にアーレンスバッハの神殿へ移動することが提案されている。

ザーム

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドの帰還を喜び、アーレンスバッハへの移動について尋ねた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ギル

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。下町の被害状況を報告する予定だと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

モニカ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院への先触れを行い、アーレンスバッハへの移動について尋ねた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ニコラ

ローゼマインの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 厨房へ向かい、アーレンスバッハへの移動についてローゼマインに尋ねた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヴィルマ

孤児院の責任者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト神殿・灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院の避難状況を報告し、無事に日常を守れたことへの感謝を述べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アーレンスバッハ・ゲオルギーネ陣営

ゲオルギーネ

アーレンスバッハの領主一族である。ジルヴェスターの姉という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・領主一族。
・物語内での具体的な行動や成果
 水路から神殿へ侵入し、礎の間に毒を放ってエーレンフェストの礎を奪おうとした。ジルヴェスターと交戦の末、討ち取られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 偽者を複数用意してエーレンフェストを攻撃したが、本人は死亡した。

グラオザム

旧エーレンフェストの貴族である。ゲオルギーネの側近という立場にある。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハの館の礎を奪い、マティアスやローゼマインと交戦した。肉体を魔石化させて戦ったが、護衛騎士達の攻撃により崩壊した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 死亡した。

ディートリンデ

アーレンスバッハの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院へ侵入し、自身が次期ツェントになると主張する手紙をレティーツィアへ送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レオンツィオ

ランツェナーヴェの関係者である。

・所属組織、地位や役職
 ランツェナーヴェ・関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ディートリンデと共に貴族院へ向かったと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ジェルヴァージオ

ランツェナーヴェの王として育てられた男である。

・所属組織、地位や役職
 ランツェナーヴェ・王候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 祠巡りを終えて貴族院の地下書庫へ侵入し、最終的にグルトリスハイトを手に入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 グルトリスハイトを得たことで、次代のツェントとなる可能性が生じた。

レティーツィア

アーレンスバッハの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーレンスバッハの城で留守番をし、ディートリンデの手紙を受け取った。フェルディナンド達に即死毒の情報を提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 側近を失った強い心的外傷を負っている。

ロスヴィータ

レティーツィアの筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。行方不明になったと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フェアゼーレ

レティーツィアの側近である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側近。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。毒見をして生き残ったと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ゼルティエ

ゲオルギーネの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ゲオルギーネと共に潜入したと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フラウレルム

アーレンスバッハの貴族である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。宴の準備をしていたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

身食いの商人

ゲオルギーネの協力者である。

・所属組織、地位や役職
 ゲオルギーネの協力者。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ゲオルギーネと共に潜入したと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

身食い兵

グラオザムの部下である。

・所属組織、地位や役職
 グラオザムの部下。
・物語内での具体的な行動や成果
 グラオザムの指示で毒の粉を放ち、見張りの騎士を排除した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

影武者

グラオザムの影武者である。

・所属組織、地位や役職
 グラオザムの影武者。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーレンフェストの各門や神殿を襲撃し、それぞれ討伐された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

偽者ゲオルギーネ

ゲオルギーネの影武者である。

・所属組織、地位や役職
 ゲオルギーネの影武者。
・物語内での具体的な行動や成果
 城の隠し通路や神殿に侵入し、フロレンツィアや神殿の罠にかかって白の塔へ転移させられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ダンケルフェルガー

アウブ・ダンケルフェルガー

ダンケルフェルガーの領主である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 水鏡を通じてローゼマインに号令を要請し、貴族院へ奇襲をかけることを決定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フェルディナンドから次代のツェントになる可能性を示唆された。

ジークリンデ

ダンケルフェルガーの第一夫人である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・領主の第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 水鏡での通信に同席し、中央の状況やルーフェンからの報告を説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ハンネローレ

ダンケルフェルガーの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハの戦いに参加し、エーレンフェストでの祝勝の宴に出席した。フェルディナンドとの政略結婚をローゼマインに勧めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レスティラウト

ダンケルフェルガーの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。過去にトゥーリへ髪飾りを注文したと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ハイスヒッツェ

ダンケルフェルガーの騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルラッハの戦いで騎士を指揮し、祝勝の宴でエーレンフェストの料理や酒を堪能した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルーフェン

ダンケルフェルガーの寮監である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー・寮監。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。貴族院で不審者を発見し、中央騎士団へ連絡したと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

中央・貴族院

トラオクヴァール

ユルゲンシュミットの王である。

・所属組織、地位や役職
 中央・ツェント。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。貴族院の防衛を中央騎士団に命じたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ジギスヴァルト

中央の王子である。

・所属組織、地位や役職
 中央・王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ジルヴェスターから事情を聞いてツェントへ報告したと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ワルディフリード

中央の王族である。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。過去にラオブルートがジェルヴァージオと比較したと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ラオブルート

中央騎士団の団長である。

・所属組織、地位や役職
 中央騎士団・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジェルヴァージオを貴族院へ招き入れ、ソランジュを拘束して地下書庫へ案内させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジェルヴァージオをツェントに擁立するために暗躍している。

セラディーナ

フェルディナンドの母親である。

・所属組織、地位や役職
 アダルジーザの離宮・花。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ジェルヴァージオの姉であり、魔石になったと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヴァラマリーヌ

ラオブルートの想い人である。

・所属組織、地位や役職
 アダルジーザの離宮・花。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。ジェルヴァージオの妹であり、政変時に処刑されたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヒルシュール

エーレンフェストの寮監である。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・寮監。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。文官棟付近で不審者を発見し、救援を求めたと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ソランジュ

貴族院の図書館司書である。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・図書館司書。
・物語内での具体的な行動や成果
 ラオブルートによって拘束され、地下書庫の鍵の在り処を明かして案内させられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

オルタンシア

貴族院の元図書館司書である。

・所属組織、地位や役職
 貴族院・図書館司書。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。死亡しており、ラオブルートが荷物を引き取る口実に使ったと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

カトリーン

ソランジュの側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 貴族院図書館・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ラオブルート達をオルタンシアの部屋へ案内した。その後、ラオブルートに縛られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ライムント

アーレンスバッハの文官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ・文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 文書内に直接の登場はない。文官棟の付近で見慣れない者達を発見したと言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

シュバルツ

図書館の魔術具である。

・所属組織、地位や役職
 貴族院図書館・魔術具。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジェルヴァージオ達を地下書庫の扉の前まで案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヴァイス

図書館の魔術具である。

・所属組織、地位や役職
 貴族院図書館・魔術具。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジェルヴァージオ達を地下書庫の扉の前まで案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

第五部 女神の化身8レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
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展開まとめ

プロローグ

グラオザムの焦り

三の鐘が鳴る中、グラオザムはまだギーベ・ゲルラッハの館へ到着できていなかった。

予定が遅れた原因は、森の管理小屋へ仕掛けられていた罠だった。

罠の仕掛け方から、グラオザムはそれがボニファティウスによるものだと見抜く。

さらに、マティアスが情報を流したことで、ボニファティウスが隠し場所へ辿り着いたのだとも推測していた。

ゲオルギーネとの連携

グラオザムは、銀布をまとった状態でも連絡できるよう改良した簡易魔術具を使っていた。

魔石が緑色へ変化したことで、ゲオルギーネが冬から潜伏させていた協力者との合流に成功したと知る。

グラオザムは魔術具を黄色へ戻し、自分がまだゲルラッハへ到着していないことを伝えた。

複数の船へ分散して侵入したことが功を奏し、ゲオルギーネ側は順調に潜伏を進めていたのである。

ボニファティウス誘導作戦

グラオザムは、旧ベルケシュトックの騎士達へ指示を送る準備を整えていた。

イルクナーやグリーベル同様、ゲルラッハにもアーレンスバッハの騎士団が攻め込むことで、ボニファティウスを南方へ釘付けにする狙いだった。

神殿へ侵入するゲオルギーネから、エーレンフェスト側の注意を逸らすためである。

グラオザムは、ボニファティウスの勘と行動力を極めて危険視していた。

隠し通路への侵入

食糧運搬用の荷馬車で館裏へ接近したグラオザムは、隠し通路入口の見張りへ遭遇する。

彼は御者役の身食い兵へ合図を送り、銀の筒から白い粉を放出させた。

騎士は苦しみながら魔石へ変化し、下働き達も即座に殺害される。

グラオザムは騎士の魔石から魔力を吸収し、残骸を握り潰した。

銀布による結界突破

隠し通路内部には、本来ギーベや領主一族しか通れない結界が存在していた。

しかし、グラオザムはランツェナーヴェ製の銀布を使って、その結界を突破する。

誰にも見咎められることなく、彼は悠然とギーベの館へ侵入した。

銀布は、結界すら無力化する極めて危険な道具だったのである。

礎の奪取

グラオザムは館の礎の間へ到達し、所有権を書き換え始めた。

これにより、館の主はギーベではなくグラオザムへ変更される。

さらに館の結界を強化し、自分と血族、領主一族以外が再侵入できない状態へ変えてしまった。

これでボニファティウス以外は脅威にならないと、グラオザムは勝利を確信する。

神殿侵入成功の報告

礎奪取後、魔術具の魔石は赤色へ変化していた。

それはゲオルギーネが神殿侵入に成功した合図だった。

グラオザムも魔石を緑色へ変え、自分がゲルラッハの館奪取に成功したことを知らせる。

彼は、後は騎士団をこちらへ引き付けて時間を稼ぐだけだと考えていた。

後任ギーベの拘束

グラオザムは隠し通路から執務室へ侵入し、後任のギーベ・ゲルラッハを急襲した。

彼は男を拘束し、喉を焼く薬を流し込んで声を奪う。

さらに、「礎を書き換えた」と告げて絶望を与えた。

その上で、旧ベルケシュトック勢へ小聖杯による土地魔力奪取を開始するよう魔術具の手紙を送る。

ボニファティウスへの警戒

グラオザムは、イルクナー方面へ向かったボニファティウスなら今から戻れないと考えていた。

しかし同時に、彼の神出鬼没な行動力と直感を強く警戒している。

かつて左腕を失う原因となった襲撃も、ボニファティウスによるものだった。

グラオザムは、その対抗策として黒い義手を用意していたのである。

フェルディナンドへの執着

グラオザムは、フェルディナンドもまた厄介極まりない相手だったと回想する。

神殿へ潜入し聖典と鍵を奪う計画も、フェルディナンドによって即座に見抜かれてしまった。

さらに、グローリエを辿って聖典を回収し、罪を擦り付ける計画も崩壊した。

だが、今やフェルディナンドはレティーツィアの即死毒で死亡したはずであり、もう邪魔は入らないとグラオザムは考えていた。

不安と罠

計画は順調に進んでいるにもかかわらず、グラオザムは拭えない不安を感じていた。

そこで彼は、館内へ次々と罠を仕掛け始める。

途中で遭遇した下働きや側仕え達も容赦なく排除していった。

それでも、できるだけ少ない犠牲でゲルラッハを取り戻したいという意識だけは残っていた。

絶望する後任ギーベ

その後、騎士団長から「援軍到着まで持ち堪える」と告げるオルドナンツが届く。

グラオザムは返信させるつもりもなく、その魔石を握り潰した。

さらに拘束したギーベを武器で刺し、苦痛と恐怖を与えながら魔力を高めていく。

より質の良い魔石を作るためだった。

迫る青い影

バルコニーへ出たグラオザムは、藤色のマントをまとったアーレンスバッハ勢が、ゲルラッハ騎士団を圧倒している光景を眺めていた。

勝敗は明らかであり、グラオザムは優位を確信する。

しかしその時、藤色の向こう側に森とは異なる「青い色」を発見した。

ゲルラッハの主戦場

ダンケルフェルガー援軍との合流

ローゼマイン達が戦場へ近付くと、藤色のマントをまとったアーレンスバッハ側と、黄土色のマントをまとったゲルラッハ騎士団が激しく交戦していた。

人数差は圧倒的であり、フェルディナンドは一刻も早く中央突破して合流する必要があると判断する。

彼は自ら先頭へ立ち、ローゼマインとハンネローレには速度を落とさず敵陣を抜けるよう命じた。

中央突破の恐怖

ダンケルフェルガー騎士団が密集隊形を組み、ローゼマイン達を守りながら突撃を開始した。

遠隔魔力攻撃や矢が次々と飛来し、盾が激しく光る。

さらに前線へ突入すると、血飛沫や切断された腕が飛び交い、騎士達が騎獣から吹き飛ばされる凄惨な戦場が広がっていた。

ローゼマインは恐怖で震えながらも、止まれば後続が巻き込まれるという叱責に従い、必死で騎獣を走らせ続けた。

敵陣突破と癒し

中央突破に成功すると、フェルディナンドの命令を思い出したローゼマインは上空へ移動し、癒しの祝福を発動する。

ルングシュメールの祝福によって緑の光が降り注ぎ、負傷したエーレンフェストとゲルラッハの騎士達が回復した。

特に疲弊していたゲルラッハ騎士団は歓喜し、士気を大きく回復させる。

ローゼマイン自身も、自分が役立てたことへ安堵していた。

マティアスとラウレンツの合流

その後、最後尾から合流したマティアスとラウレンツが無事を報告した。

二人はグラオザムへオルドナンツを飛ばそうとしたが、飛び立たなかったという。

ラウレンツは、銀色の布をまとっているせいでオルドナンツが届かない可能性を指摘した。

ゲオルギーネ側が旧ベルケシュトックの騎士達を捨て駒として扱っていることも、彼等は理解していた。

ゲルラッハ騎士団長の感謝

ゲルラッハ騎士団長が、ローゼマインへ直接礼を述べに現れる。

彼は、ダンケルフェルガー援軍とローゼマインの癒しによって壊滅寸前の状況を立て直せたと語った。

援軍到着前は、敵の数があまりにも多く、館を守るため全騎士が出払うほど追い詰められていたのである。

フェルディナンド達が突破してきた時には、本当に救われた気持ちだったと安堵を滲ませていた。

館への異変

しかしその最中、「館へ入れない」という報告が届く。

直後、館から高速で何かが放たれ、前線で炸裂した。

白い粉を浴びた騎士達は、姿を消したり、騎獣から落下したり、動きを鈍らせたりする。

フェルディナンドは即座にヴァッシェンで洗い流し、「ユレーヴェを飲め」と命じた。

それは、彼自身がアーレンスバッハで受けたものと同じ毒だったのである。

グラオザムの出現

ローゼマインが館を見上げると、二階のバルコニーに男の姿があった。

それは、ローゼマインをユレーヴェ送りにした元凶であるグラオザムだった。

騎士団長が突撃するが、パンという音と共に即座に魔石化してしまう。

グラオザムは、自分が館の礎を書き換えたため、今や自分こそがギーベ・ゲルラッハだと宣言した。

マティアスの決意

マティアスは、館の防衛機能が最大化されているため、自分とローゼマインしか中へ入れないと説明する。

彼は血族として、自ら館へ向かう決意を示した。

しかしその直後、グラオザムが放った光の網がレッサーくんを捕らえる。

ローゼマインは、かつて自分が毒を飲まされた襲撃事件を思い出しながらも、騎獣から出ないよう必死に耐えた。

護衛騎士達の迎撃

コルネリウスの怒声と共に、アンゲリカが光の網を斬り裂き、ローゼマインを解放する。

さらに、コルネリウスとアンゲリカは同時攻撃でグラオザムへ魔力攻撃を叩き込んだ。

しかし、グラオザムの左腕の小手がその攻撃を吸収してしまう。

直後、グラオザムは吸収した魔力を利用して広範囲攻撃を放ち、周囲の騎士達を襲った。

フェルディナンドとの対峙

そこへ白い獅子の騎獣に乗ったフェルディナンドが現れ、複数の盾を展開して攻撃を防ぐ。

フェルディナンドが生きていることを見たグラオザムは、ディートリンデの死亡報告が虚偽だったと知り激しく動揺した。

だが、それでも自分の役目は変わらないとして、ゲオルギーネの礎奪取のために時間を稼ぎ、エーレンフェストの戦力を削ると宣言する。

その狂気じみた執念に、ローゼマインは強い恐怖を覚えていた。

青い炎とハンネローレ隊

グラオザムは銀布を外し、青い炎を全身へまとわせる。

その隙を突いてハンネローレ隊が一斉攻撃を仕掛けるが、全て左腕の小手へ吸収されてしまった。

さらに吸収された魔力で青い炎は勢いを増し、逆にハンネローレ達へ襲いかかる。

フェルディナンドとハンネローレは辛うじて盾で防ぎ切ったが、グラオザムは吸収した魔力に満足げな笑みを浮かべていた。

館潜入命令

フェルディナンドはオルドナンツで、ローゼマインとマティアスへ極秘命令を送る。

館へ入れるのは二人だけであり、自分がグラオザムを引き付けている間に背後へ回れという内容だった。

さらに、義手が魔力を吸収するため、攻撃には黒の武器を使うよう指示する。

たとえマティアスが死んでも、ローゼマインは決して騎獣から出るなという厳命まで下された。

館への潜入

レオノーレは危険すぎると反対するが、館の礎を奪われた以上、領主一族として放置はできなかった。

ローゼマインは、自分達が行かなければならないと告げる。

護衛騎士達がグラオザムとの戦闘へ加わる中、ローゼマインとマティアスは密かにギーベの館へ侵入した。

グラオザムとの対峙

ギーベの館への侵入

ローゼマインは騎獣に乗ったまま、マティアスの案内でギーベ・ゲルラッハの館内部を進んでいた。

館内には既に複数の死体が転がっており、グラオザムが邪魔者を排除しながら進んだ痕跡が残されていた。

マティアスは黒の剣を構え、ローゼマインも闇の神の祝福を施した黒い水鉄砲を準備する。

しかしマティアスは、自分がグラオザムを倒すので、ローゼマインは奥の手を隠しつつ騎獣で出口封鎖を優先してほしいと頼んだ。

罠の突破

館の階段には、侵入者察知と時間稼ぎを兼ねた罠が大量に仕掛けられていた。

だがローゼマインは、レッサーくんを二人乗りへ変形させ、階段ごと飛び越えるという方法を選ぶ。

マティアスは、通常の騎獣では不可能な発想に驚きながらも、ローゼマインが常に想定外の行動で人々を救ってきたことを思い返していた。

そして、故郷を蹂躙するゲオルギーネではなく、助けられる者を救おうとするローゼマインを主として選べたことへ誇りを抱く。

執務室での対面

二人はギーベの執務室へ到着し、レッサーくんで扉を完全封鎖した。

そこには青い炎をまとったグラオザムと、既に致命傷を負った後任ギーベ・ゲルラッハの姿があった。

ローゼマインが癒しを施そうとするが、マティアスは既に魔石化が始まっており助からないと制止する。

グラオザムは、平民出身のローゼマインへ膝をつくマティアスを情けないと嘲笑した。

親子の決裂

マティアスは、他領の侵略者へ従い故郷を蹂躙するグラオザムこそ情けないと反論する。

さらに、ローゼマインがアーレンスバッハの礎を押さえたことで、ゲオルギーネは既にアーレンスバッハ領主一族ですらないと指摘した。

しかしグラオザムは、ゲオルギーネがエーレンフェストのアウブになるのだから問題ないと言い切る。

マティアスは、破壊と破滅しかもたらさないゲオルギーネを絶対にアウブにはさせないと宣言した。

魔術具による圧倒

グラオザムは青い炎と黒い義手を駆使し、騎士並みの身体能力でマティアスを圧倒し始める。

応接机や椅子は簡単に粉砕され、執務室は破壊されていった。

外ではラウレンツ達が侵入を試みていたが、結界に阻まれて入れない。

グラオザムは、この魔術具はボニファティウス対策として作り上げたものであり、並の騎士では敵わないと語った。

ローゼマインの祝福支援

ローゼマインは、自分が直接戦うのではなく、祝福によって騎士を強化する戦い方を選ぶ。

風の女神の眷属による速度強化、火の神の眷属による攻撃力強化、水の女神の眷属による回復と勢いの付与など、次々と祝福を重ね掛けしていった。

さらに、闇と光の最高神の眷属による悪縁断絶と浄化の祝福まで与えられる。

その結果、防戦一方だったマティアスは徐々にグラオザムへ対抗できるようになっていった。

忠誠の違い

マティアスは、ゲオルギーネに祝福されたことも、救われたこともないのではないかと問い掛ける。

一方、自分はローゼマインに命も誇りも故郷も救われたのだと語った。

グラオザムは激昂し、忠誠に見返りなど不要だと叫ぶ。

彼にとっては、主の望みを叶えること自体が全てだったのである。

グラオザムの正体

戦いが激化する中、マティアスの黒い剣が青い炎を削り取っていく。

やがて炎が消えると、グラオザムの肉体の半分以上が魔石化している異形の姿が露わになった。

彼は、この魔術具を動かすため、自らの肉体を魔石へ変えてまで戦っていたのである。

マティアスが理由を問うても、グラオザムは何も答えなかった。

マティアスの排除

グラオザムは残る魔力を速度へ集中し、マティアスを窓から外へ吹き飛ばす。

その後、倒れていたギーベの死体から更に魔力を吸収し、再び青い炎をまとった。

そして、今度はローゼマインを直接殺そうと襲いかかる。

レッサーくんへ黒い義手が突き刺さり、騎獣維持用の魔力まで強制的に吸収され始めた。

ローゼマインの反撃

ローゼマインは恐怖に震えながらも、騎獣から出た時点で自分は終わりだと理解していた。

そこで、水鉄砲から闇の祝福を込めた黒い矢を放ち、至近距離からグラオザムへ命中させる。

顔面へ受けた矢によって、グラオザムの肉体は更に魔石化した。

しかし彼はなお狂気じみた笑みを浮かべ、ローゼマインの膨大な魔力を奪おうとする。

黒の義手の崩壊

レッサーくんは巨大化しながらグラオザムを押し返すが、その間も黒の義手によって凄まじい勢いで魔力を吸われ続けていた。

ローゼマインは負けまいと、更に大量の魔力をレッサーくんへ注ぎ込む。

すると、急激な魔力吸収に耐えきれなくなった黒の義手が、魔力飽和を起こして金粉化し始めた。

グラオザムはその異変に激しく動揺する。

グラオザムの最期

その瞬間、フェルディナンドの「やれ!」という号令が響いた。

結界を突破した護衛騎士達が一斉に執務室へ突入し、黒の武器をグラオザムへ突き立てる。

黒の義手を失い、動揺していたグラオザムは集中攻撃に耐え切れず、砕けた魔石のように崩壊した。

後には、ひび割れた魔石と金粉だけが残されていた。

勝利と帰還

館破壊への動揺

グラオザム撃破後、フェルディナンドはギーベの礎を書き換えながら、何が起きて館が半壊したのか説明を求めた。

ローゼマインは、グラオザムの黒い義手にレッサーくんを削られたため、安全確保のため巨大化させた結果だと必死に弁解する。

しかし、白い建物であるギーベの館を壊してしまったことに気付き、自分が反逆罪になるのではないかと青ざめた。

フェルディナンドは、今のローゼマインはアウブ・アーレンスバッハなのだから、反逆罪よりもアーレンスバッハからの宣戦布告扱いではないかと淡々と返した。

エーレンフェスト勝利の報告

フェルディナンドは、ジルヴェスターからのオルドナンツにより、エーレンフェスト側の戦いも終結したと伝える。

グラオザムとゲオルギーネの侵攻は完全に連動しており、ゲルラッハ占拠と同時にエーレンフェストでも決戦が始まっていたのである。

ローゼマインは、下町や神殿の被害状況を真っ先に気に掛けた。

しかし、フェルディナンドにもまだ詳細な情報は届いていなかった。

帰還への焦り

ローゼマインは、少しでも早くエーレンフェストへ戻りたいと訴える。

だがフェルディナンドは、ゲルラッハ側の後始末や、アーレンスバッハへの指示、さらにダンケルフェルガーとの決着を付けなければ帰れないと制止した。

特に今回の戦いは、本物のディッターとしてダンケルフェルガーを巻き込んだ以上、正式な勝利宣言を行わなければならない。

ローゼマインがこのまま帰還すれば、興奮状態のダンケルフェルガー騎士団全員がエーレンフェストへ押し寄せる危険があった。

ダンケルフェルガー騎士団問題

ローゼマインは、協力してくれたダンケルフェルガーを労うため、エーレンフェストへ同行させたいと考えていた。

しかしフェルディナンドは、彼等を連れて行けば食料庫と酒蔵が空になると即座に却下する。

ランツェナーヴェ掃討後、ローゼマインが眠っている間、ダンケルフェルガー騎士達は反省会と称した宴会を延々と続け、アーレンスバッハ城の食料と酒を大量消費していたのである。

エーレンフェストは長期戦直後で疲弊しており、彼等を受け入れる余裕はなかった。

ビンデバルト案

そこへシュトラールが、旧ベルケシュトック勢を迎え入れるため、ビンデバルトの夏の館に大量の食料と酒が準備されていると報告する。

フェルディナンドは、それをそのままダンケルフェルガー騎士団の労いへ流用する案を採用した。

これにより、大多数の騎士達はビンデバルトへ留まり、ハンネローレ、ハイスヒッツェ、一部側近のみがエーレンフェストへ同行する形になる。

ローゼマインも、その方法なら感謝を示しつつ、最速で帰還できると納得した。

残された問題

フェルディナンドは、まだ全てが終わったわけではないと釘を刺す。

中央へ向かったディートリンデやレオンツィオの問題も残っており、アーレンスバッハへ戻る必要があった。

そのため、エーレンフェスト滞在は短時間で済ませなければならない。

ローゼマインは、下町や神殿を見れば離れ難くなるかもしれないと零すが、フェルディナンドは「私が引き剥がす」と即答した。

ディッター勝利宣言

ローゼマインは、半壊したギーベの館のバルコニーへ立ち、集結した騎士達へ宣言を行う。

自分がアーレンスバッハの礎を得て、エーレンフェストの礎防衛も確認できたことを告げ、本物のディッターの勝利と終了を宣言した。

ダンケルフェルガー騎士団は歓声を上げ、武器を打ち鳴らして勝ち鬨を上げる。

ローゼマインは、彼等の勇猛さこそユルゲンシュミット最高だと称賛した。

ハンネローレの鎮静

興奮状態へ陥ったダンケルフェルガー騎士達を見て、ハンネローレは海の女神フェアフューレメーアの杖を取り出す。

そして、勝利後に行う神事によって騎士達を静めた。

ローゼマインは、この儀式はダンケルフェルガーに必須だと実感していた。

エーレンフェストへの招待

ローゼマインはハンネローレ達へ、ジルヴェスターからの招待を伝える。

急な訪問であり、短時間滞在になること、転移陣を使うことなどを説明したが、ハイスヒッツェは「こういう機会でもなければエーレンフェストへ入れない」と快く了承した。

柔軟に機会を掴む姿勢に、ローゼマインは好感を抱いていた。

後始末の継続

フェルディナンドは、シュトラールへレティーツィアへの報告や、捕虜移送、魔石回収などの後始末を命じる。

さらに、酒なしの反省会をしたければ働けと言われたダンケルフェルガー騎士達は、途端に真面目に作業を始めた。

ローゼマインは、彼等の酒好きとタフさに呆れながら感心していた。

ハルトムートの暴露宣言

ハルトムートは、小聖杯から土地へ魔力を戻す作業を終えて合流する。

しかし彼は、ローゼマインが館を突き破るほど騎獣を巨大化させてグラオザムへ勝利したことを、ぜひ皆へ語りたいと言い出した。

ローゼマインは、ジルヴェスターへ金粉を渡して密かに修理してもらうつもりだったため、必死に止めようとする。

だが、コルネリウスやマティアスまで戦闘内容を語り始め、完全に暴露路線になっていた。

転移陣起動

そこへフェルディナンドが、転移陣の準備が整ったとローゼマインを呼ぶ。

ハンネローレは、ランツェナーヴェ掃討からゲルラッハ戦まで大活躍したローゼマインを素直に称賛した。

そして転移陣から現れたジルヴェスターは、ローゼマインとフェルディナンドへ「よく戻った」と告げる。

ローゼマインとフェルディナンドが魔力を注ぎ、転移陣が発動した。

それぞれの武勇伝

エーレンフェストへの帰還

転移陣を抜けたローゼマイン達を、シャルロッテとフロレンツィアが迎えた。

しかし、ヴィルフリートやカルステッド、メルヒオールの姿はなく、ローゼマインは胸騒ぎを覚える。

ジルヴェスターによれば、エーレンフェスト側の戦闘もつい先程終わったばかりで、領主一族は後始末に追われている最中だった。

それでも、大きな怪我人は出ていないと聞き、ローゼマインは少し安堵する。

ダンケルフェルガーへの感謝

ジルヴェスターはハンネローレ達へ深い感謝を述べた。

ランツェナーヴェ掃討戦での戦い方や情報共有が、エーレンフェスト防衛にも役立ったという。

さらに、六の鐘の後に小広間で勝利を祝う宴を開くと告げ、ダンケルフェルガーの協力へ正式に礼を尽くした。

ハンネローレも、宴の前に身を清めたいと微笑みながら応じた。

フェルディナンドの帰る場所

ジルヴェスターはフェルディナンドにも客間を用意したと伝える。

しかしフェルディナンドは、自分の館を既にローゼマインへ譲っていることを思い出し、一瞬戸惑った。

そこでローゼマインは、図書館となった旧フェルディナンド邸をそのまま使ってほしいと提案する。

さらに、ラザファムへ無事な姿を見せてほしいと頼み、フェルディナンドがいつでも帰れるよう部屋を残していたことも明かした。

図書館の自慢

ローゼマインは、自分の図書館は元々フェルディナンドの館であり、本がたくさんあるとハンネローレへ自慢した。

フェルディナンドは、どうせ本に侵食されて自分の部屋など残っていないと思っていたらしく、まだ残されていることへ驚く。

ローゼマインは、本がまだ足りず、図書室から溢れるほど増えてほしいと真顔で語っていた。

フェルディナンドは最終的に、自室を使わせてもらうことを受け入れる。

下町へ向かいたい焦り

ローゼマインは、すぐに下町や神殿の様子を見に行こうと考えていた。

しかしフェルディナンドは、今は客人を放置すべきではないと止める。

六の鐘まで時間も少なく、まずは湯浴みや側近達からの報告を優先するよう命じられた。

ローゼマインはラザファムへオルドナンツを送り、フェルディナンド達の受け入れを頼む。

側仕え達との再会

ローゼマインの部屋では、オティーリエ、リーゼレータ、グレーティアが出迎えた。

突然の招待により、ダンケルフェルガー側の客間準備で皆が奔走している状況だった。

それでもオティーリエは、息子ハルトムートとクラリッサの無事な姿を見て安堵し、再び準備へ戻っていく。

ローゼマインは、受け入れ側も大変なのだと改めて実感していた。

図書館の避難者達

グレーティアは、図書館には戦いの被害が全くなかったと報告した。

ダームエルが危険を察知し、グーテンベルク達とその家族を図書館へ避難させていたのである。

髪飾り職人達は、自分達の身よりもローゼマインの衣装や髪飾りを優先して持ち込み、不安を紛らわせるように作業を続けていた。

プランタン商会の者達は、貴族街の図書館や食事処を熱心に見学し、本作りの参考を探していたという。

神殿襲撃

フィリーネとユーディットは、神殿で実際に戦闘が起きたと説明した。

ダームエルからの連絡を受け、孤児達は訓練通り避難させられていた。

その後、神殿の裏門が爆破され、毒の魔術具や閃光弾を使った敵襲が発生する。

だが、ローゼマインが残した戦闘用シュミル達が起動し、銀布を纏っていない敵を瞬く間に斬り伏せた。

ゲオルギーネの侵入

銀色の布を纏った一人だけがシュミル達に認識されず、神殿内部へ侵入した。

それがゲオルギーネだったらしく、いくつかの罠を突破した後、最終的に白の塔へ転移させられたという。

また、シュミル達に倒された敵の中にはグラオザムもいたと聞かされ、ローゼマインは困惑した。

マティアスから聞いていた影武者の存在を思い出し、本物がどれなのか不安を抱き始める。

ダームエルの奮闘

ダームエルは、ブリギッテからの不審者情報を受けて早期警戒を行っていた。

イルクナーの材木商が、旅商人に見えない怪しい集団を船で目撃していたのである。

その情報を元に各所へ警戒を飛ばし、グーテンベルク達の避難も実施していた。

結果として、四の鐘直前に銀布を纏った敵集団が西門へ現れた。

西門防衛戦

騎士達は門兵へ、敵の銀布を脱がせるため汚物を投げつける役目を与えた。

激昂した敵がヴォルヘニールを放った瞬間、隠れていた騎士達が一斉に襲撃した。

さらに、ヴォルヘニールへ襲われた門兵達を救うため、ギュンターが金属小手で殴り掛かった。

ヴォルヘニールがギュンターへ噛み付いた瞬間、ローゼマインのお守りが発動し、魔獣は爆散した。

ギュンターの武勇

お守りの威力を知ったギュンターは、家族から預かっていたお守りを利用し、無茶な戦い方を続けた。

最終的にはヴォルヘニール二匹を倒し、さらに元ギーベ・ゲルラッハであるグラオザムまで蹴り飛ばして止めを刺したという。

ダームエルは、西門兵士達への褒賞をジルヴェスターへ進言してほしいと頼む。

ローゼマインは父の無茶に頭を抱えながらも、皆が生き残ったことへ深く安堵していた。

影武者への不安

神殿でも西門でもグラオザムが倒されたという話から、ローゼマインは影武者の存在を説明した。

非道な方法を使えば、身食い兵を染めて影武者を作ることは可能だと語る。

さらに、第二第三のゲオルギーネが存在するのではないかという不安まで浮かび上がった。

そこでジルヴェスターへ確認を取り、本物のゲオルギーネは礎の間で討たれたことを知る。

拭えない不安

ゲオルギーネ本人が倒されたと聞いても、ローゼマインの胸の不安は消えなかった。

オルドナンツの魔石を受け取ろうとした瞬間、理由のわからない寒気と胃痛に襲われ、手が震える。

リーゼレータへは「何でもない」と誤魔化したが、落ち着かない感覚は消えなかった。

何か嫌な予感だけが、心に残り続けていた。

祝勝の宴

祝宴で語られる戦いの武勇

祝勝の宴が始まると、各地で戦いの武勇伝が語られ始めた。

ヴィルフリートは北門制圧の戦いについて誇らしげに語り、ローデリヒはその内容を必死に書き留めていた。

西門へ騎士が移動していたため北門は手薄であり、高い魔力を持つ領主候補生としてヴィルフリートも出撃を命じられたのである。

彼は敵をできるだけ捕縛するよう命じられて苦戦したものの、最終的にはグラオザムを捕らえたと得意げに語った。

繰り返されるグラオザムの存在

ヴィルフリートの話にもグラオザムの名が現れ、ローゼマインは再び不気味さを覚えた。

既にゲルラッハや神殿でも倒されたはずなのに、次々と現れる存在に、影武者が何人いるのかも分からなくなってきていたのである。

ヴィルフリートによれば、北門の敵は銀色のマントを使っていたが、裏地や翻った瞬間を狙えば魔力攻撃は通用したという。

時間はかかったものの、彼は最終的にグラオザムの捕縛へ成功していた。

恋物語扱いされるローゼマイン

ローゼマインは、ハルトムート達が戦いの話を誇張して語っていることにうんざりしていた。

さらに、ハンネローレがエルヴィーラへ戦いの様子を熱心に語ったことで、話は恋物語めいた方向へ進んでいく。

ハンネローレは、ローゼマインをまるで物語の女神のように語り、エルヴィーラは取材姿勢になっていた。

その結果、フェルディナンドは不機嫌を隠すための笑顔を浮かべるしかなくなり、ローゼマインも強い居心地の悪さを感じていた。

ヴィルフリートとの口論

ヴィルフリートは、王族や神々を敵に回してでも助けたいと宣言したのだから、今更噂されて困る方がおかしいと言った。

さらに、フェルディナンドへ懸想していると認めれば良いとまで口にする。

ローゼマインは何度も否定しているのに周囲が全く信じてくれず、恋が実っただの失恋だのと勝手に解釈される状況に苛立っていた。

初恋すらしていないのに恋愛劇の中心にされていることへ、理解できない感情を抱いていたのである。

神殿での偽者ゲオルギーネ捕縛

メルヒオールは、偽者ゲオルギーネが図書館で次々と罠にかかった様子を語った。

偽者は魔石の上で派手に転倒し、さらに粘着罠へ突っ込み、銀色の手袋や靴を脱ぎ捨てながら必死に逃げようとした。

しかし最後には転移陣へ触れてしまい、銀色の衣装だけを残して白の塔へ転移させられた。

その様子は宴の参加者達に大変面白がられていた。

本物のゲオルギーネの侵入経路

メルヒオールは、本物のゲオルギーネが図書館へ侵入した経路についても説明した。

神殿には紙作り用の水路が引かれており、そこを利用して神殿内部へ侵入したらしい。

さらに、協力していた青色神官と側仕えによって待機場所も提供されていたという。

本物のゲオルギーネは灰色巫女の服へ着替えていたため、騎士達にも怪しまれず移動できたのだった。

フロレンツィアの活躍

メルヒオールは、フロレンツィアも偽者ゲオルギーネを捕らえていたと明かした。

ジルヴェスターは以前の襲撃事件を受け、密かに隠し通路を改修していたのである。

旧通路を使った偽者ゲオルギーネは、出口で待ち構えていたフロレンツィアに捕らえられた。

さらに白の塔へ連行した直後、神殿から転移してきた別のゲオルギーネが天井から落ちてきたことで、偽者の存在が発覚したのである。

ハイスヒッツェと毒対策

ハイスヒッツェは、今回ダンケルフェルガーの騎士達に死者が出なかった理由を語った。

フェルディナンドとローゼマインから、毒対策として口元を覆うことやユレーヴェ携帯を徹底するよう指示されていたのである。

実際には毒で重症になった者もいたが、即死は免れていた。

一方、敵やゲルラッハ側では毒の特性を知らず、瞬時に魔石化した者が多数いたという。

魔石への拒絶反応

毒によって魔石化した者達の話を聞いた瞬間、ローゼマインの脳裏には魔石が落ちる光景が蘇った。

全身に鳥肌が立ち、胃の奥から吐き気が込み上げる。

必死に嘔吐を堪えているところへ、ボニファティウスが鎧姿のまま小広間へ飛び込んできた。

そのあまりに勢いのある登場に驚いたことで、ローゼマインの吐き気は一時的に消え去った。

ボニファティウスの帰還

ボニファティウスは、ローゼマインを助けに来たと叫びながら現れた。

イルクナーからの帰還に苦労したことや、自分のためには転移陣を使ってもらえなかったことへ不満を漏らす。

フェルディナンドに促され、ローゼマインはイルクナーの話を聞かせてほしいと頼み、ボニファティウスを着替えへ向かわせた。

その結果、ローゼマインへ新たな武勇伝が追加されることとなった。

イルクナー救援戦

着替えを終えたボニファティウスは、イルクナー救援について語り始めた。

イルクナーは遠方であり、本来なら騎士団が到着するまで数日かかる。

しかし、敵に潰される前に救援する必要があったため、ジルヴェスターが転移陣を使って騎士達を送り込んだ。

敵は数こそ多かったものの、本気でイルクナーを落とす気はなく、騎士団を釘付けにするための陽動だったようだとボニファティウスは分析した。

ブリギッテの奮闘

ボニファティウスは、ブリギッテが今もローゼマインの側近として動いているようだったと語った。

敵の侵入情報をローゼマイン側へ伝えようとした行動も、主へ手柄を立てさせたい側近の思考だという。

ローゼマインは、遠く離れてもなお自分を主として立ててくれていることを知り、深く喜んだ。

さらに、ブリギッテはイルクナーの土地や工房を守るため必死に戦っていたと聞き、ローゼマインは誇らしく感じていた。

ゲルラッハへの直感

ボニファティウスは、ゲルラッハに危険な気配を感じていたと語った。

そのため、一刻も早くイルクナーを片付けて向かわねばならないと思ったという。

騎士達を叱咤しながら敵を蹴散らし続け、最終的にはイルクナーを守り切った。

ローゼマインが短時間でフェルディナンド救出まで成し遂げたことにも、本気で驚いていた。

ジルヴェスターの礎防衛

ジルヴェスターは、礎の間で待機していた間の様子を語り始めた。

西門襲撃の情報や各地の戦況がオルドナンツで次々届く中、自分だけが動けない状況に苛立っていたという。

暇潰しのように礎の間へ罠を増設し、階段へ鳥もちを塗ったり、木の盥を仕掛けたりしていた。

しかし、その後本物のゲオルギーネが侵入し、礎の間で直接対決が始まることとなる。

ゲオルギーネとの決戦

ゲオルギーネは、礎の間に毒を放ってアウブを殺した後、自分だけ洗浄して礎を奪う計画だった。

しかし、フロレンツィアの報告で一度礎の間を出ていたため、ジルヴェスターは難を逃れていた。

戻った時には礎の間が大量の水で満たされ、浮かび上がった木の盥が飛び交う危険な状態になっていた。

その中で灰色巫女姿のゲオルギーネが現れ、二人は礎の間で激突した。

ゲオルギーネの最期

ジルヴェスターは弓へ変えたシュタープで魔力の矢を放ち続け、ゲオルギーネへ攻撃した。

ゲオルギーネも魔術具や針による反撃を行ったが、最終的には押し切られた。

そして、名捧げした者達が今後もエーレンフェストを滅ぼそうとするかもしれないという言葉を残し、ジルヴェスター自身の手で止めを刺された。

ジルヴェスターは、自らの姉を殺した重さを静かに抱えていた。

ローゼマインの異変

ジルヴェスターが取り出したゲオルギーネの魔石を見た瞬間、ローゼマインの体は激しく震え始めた。

息苦しさと強烈な拒絶感に襲われ、その場から逃げ出したくなる。

何とか理由を作って席を立とうとしたが、リーゼレータ達に止められた。

その時、フェルディナンドがローゼマインを呼び、人の少ない場所で話がしたいと告げる。

フェルディナンドの懸念

フェルディナンドは、ローゼマインの健康状態こそ最優先事項だと考えていた。

しかし、周囲は王族との婚約話や恋愛の噂を重視し、今は二人が接触するべきではないと判断する。

フェルディナンドは、既に自分はローゼマインの専属主治医ではないと語り、必要なら呼べと言い残して立ち去った。

ローゼマインは明らかに体調がおかしいと感じながらも、人目を避けるため宴を最後まで作り笑顔で乗り切るしかなかった。

眠れない夜

悪夢による目覚め

ローゼマインは、ゲルラッハの戦いを夢に見て飛び起きた。青いマントの騎士達に囲まれて進む恐怖、飛び交う矢や血飛沫、腕や魔石が騎獣に当たる感触が鮮明に蘇ったのである。

戦場で見た魔石化した者達や、半ば魔石と化したグラオザムの姿が繰り返し浮かび、ローゼマインは吐き気と寒気に襲われた。夢の中の恐怖は薄れるどころか、むしろ現実よりも鮮明になって彼女を苦しめた。

オルドナンツを使えない恐怖

ローゼマインはフェルディナンドへ連絡しようとしたが、オルドナンツ用の魔石を見た瞬間、戦場で見た魔石の記憶が蘇った。魔術具だとわかっていても手を伸ばせず、恐怖で全身が震えた。

助けを呼ぶ手段すら使えないことに気付き、ローゼマインは自分の体を抱き締めるようにして震えるしかなかった。

ユーディットとグレーティアの気遣い

足音に驚いたローゼマインは反射的にシュタープを構えたが、現れたのは不寝番のユーディットとグレーティアだった。ユーディットは、フェルディナンドとハルトムートから、戦後の精神不安定に注意するよう指示されていたと説明した。

グレーティアはローゼマインの寝汗に気付き、すぐに着替えの準備へ向かった。ユーディットは、騎士見習い達も騎士寮で上役や医師に話を聞いてもらっていると語り、ローゼマインのために温室へ入る許可を得ていた。

夜の温室への誘い

ユーディットは、綺麗な花を見ながら香りのよい茶を飲めば落ち着けると考えていた。ローゼマインは、その発想に少し勘違いを感じつつも、自分を心配してくれる厚意をありがたく受け入れた。

グレーティアは、夜中にフェルディナンドへ助けを求めるより、温室へ向かう方が外聞上は良いのだろうと察したローゼマインへ、要望に応えられないことを申し訳なく思っていた。

成長によって変わる周囲の目

着替えを手伝いながら、グレーティアは成長することが良いことばかりではないと語った。体が成長すると周囲の目が変わり、今まで許されていたことが許されなくなると、自身の経験を交えて説明したのである。

ローゼマインは、成長すれば皆に追いつけて楽しいことが増えると思っていたが、実際には戸惑いや制限も増えるのだと知った。

ハンネローレへの誘い

ユーディットは、ハンネローレも眠れずに外の空気を吸いたがっていると伝えた。戦いに慣れているように見えたハンネローレも、実際にはローゼマインと同じように人死にのある戦いに苦しんでいる可能性があった。

ローゼマインは、押し付けにならないよう注意しながら、ハンネローレを夜の温室へ誘うよう命じた。

消えない魔石への拒絶感

ハンネローレから夜の散歩に出たいというオルドナンツが届いた。白い鳥が黄色の魔石へ戻った瞬間、ローゼマインの脳裏には再び戦場で見た魔石が蘇った。

彼女はその魔石を受け取り損ね、足元へ落ちた音と共に全身へ鳥肌が立った。悪夢は終わっても、魔石への恐怖はまだ消えていなかった。

深夜のお茶会

温室へ向かう道中

温室へ向かうため部屋を出たローゼマインは、騎獣を出そうとして魔石を見た瞬間、再び恐怖で手を止めた。

戦場や死者の記憶が蘇ることを告げると、ダームエルはリーゼレータ達へ事前に知らせるべきだったと苦い顔をする。

ユーディットは、一晩休んでから報告するつもりだったと弁解したが、ダームエルは側仕え達にも事情を共有しなければ適切に支えられないと考えていた。

ローゼマインは歩いて温室へ向かいながら、宴の後に起きていた問題を聞かされることになった。

宴での無作法

ダームエルによれば、ローゼマインは祝勝会の席でアウブの話を突然遮り、仮縫いの予定を持ち出して席を立ったように見えていた。

実際には魔石への恐怖から逃げ出したかっただけだが、事情を知らない周囲には無作法な奇行にしか映らなかったのである。

その後、残されたリーゼレータは、段取り不足でローゼマインを焦燥させたのではないかと責められていた。

ローゼマインは、自分のことで頭がいっぱいで、側近達へ大きな負担を押し付けていたことに初めて気付かされた。

リーゼレータ達の奔走

ユーディットは、リーゼレータがローゼマインの希望を叶えるため、図書館で仮縫いができないかフェルディナンドと交渉していたことを教えた。

さらに、ギルベルタ商会とも連絡を取り、外聞を損なわない方法を必死に探していたのである。

フェルディナンドの館へローゼマインが向かうのは良くないため、ハンネローレやハイスヒッツェも招いて髪飾りを贈る形にできないかまで考えていた。

ローゼマインは、自分を支える側近達の苦労と配慮を改めて痛感した。

幻想的な夜の温室

温室へ到着すると、そこは月光と小さな灯りに照らされた幻想的な空間だった。

白い建物はほのかに輝き、色とりどりの花が静かに咲き誇っている。

ローゼマインは、その美しさに心を和らげられた。

グレーティアは既に茶の準備を整えており、ハンネローレもまもなく到着すると伝えた。

ハンネローレとの散策

ハンネローレは、眠れなかったので誘いが嬉しかったと微笑んだ。

二人は護衛騎士達を少し離れた場所へ下がらせ、温室の中をゆっくりと歩き始める。

ハンネローレは、ダンケルフェルガーにはない花々を興味深そうに眺め、冬の雪景色の中で見る温室はさらに美しいだろうと語った。

ローゼマインも、温室へ入るのは初めてだと打ち明けながら、穏やかな時間を過ごしていく。

恋物語への困惑

ハンネローレは、エルヴィーラから恋物語の話を聞いたことを楽しそうに語った。

さらに、自分達のやり取りが新たな恋物語の題材になると教えられ、ローゼマインは慌てて止めたいと言い出す。

しかしハンネローレは、儘ならない現実を物語へ昇華するのだとエルヴィーラが話していたことを伝えた。

ローゼマインは、それが以前自分自身が口にした言葉だったことを思い出していた。

私的な謝罪

お茶を飲みながら、ローゼマインは盗聴防止の魔術具を使い、ハンネローレへ正式に謝罪した。

当初はフェルディナンド救出だけの予定だったのに、結果としてランツェナーヴェ掃討やゲルラッハの激戦へまでダンケルフェルガーを巻き込んでしまったからである。

ハンネローレは、それはダンケルフェルガーが自ら選んだことであり、ローゼマインが責任を感じる必要はないと必死に否定した。

それでもローゼマインは、私的な場でだけでも感謝と謝罪を伝えたかったのだと語った。

ハンネローレの後悔

すると今度は、ハンネローレが涙ぐみながら自分の後悔を語り始めた。

彼女の攻撃がグラオザムを強化してしまい、その結果、エーレンフェストの騎士達に死者が出たのである。

ダンケルフェルガーの騎士達はローゼマインの癒しによって回復薬を使わずに済んだため、即死毒を受けなかった。

一方、後方へ下がって回復薬を飲んだギーベ騎士団は口元の布を外したため、多数の死者が出たという。

互いを責めない約束

ローゼマインは、ダンケルフェルガーの協力がなければフェルディナンド救出も勝利も不可能だったと断言した。

そして、自分を責めないでほしいとハンネローレへ伝える。

ハンネローレもまた、自分達は選んで戦ったのだから謝罪される理由はないと繰り返した。

二人は互いに罪悪感を抱えながら、それでも相手を責めようとはしなかった。

死者への祈り

ローゼマインは、共に死者を悼もうとハンネローレへ提案した。

ダンケルフェルガーでは、騎士の死は誇るべきものであり、領主候補生が悲しむべきではないと教えられてきたため、ハンネローレは戸惑う。

しかしローゼマインは、ここはエーレンフェストであり、死者を悼む気持ちがあれば十分だと答えた。

二人は側近達と共にバルコニーへ移動し、夜明け前の冷たい空気の中で死者へ祈りを捧げた。

夜明けの祝福

ローゼマインが死者を送る祝詞を唱えると、光と闇の祝福が空へ向かって飛び立った。

ハンネローレや側近達の祝福も続き、静かな祈りが夜明け前の空へ広がっていく。

祈りを終えたハンネローレは、自分が祝福されたような気持ちだと清々しく微笑んだ。

そして、一の鐘が鳴り響き、新しい朝がエーレンフェストへ訪れた。

仮縫い

夜明け後の別れ

ローゼマインは、ハンネローレへ今日の午後にはアーレンスバッハへ移動し、そのままダンケルフェルガーへ戻ることになると伝えた。

髪飾りの注文よりも体調を優先して休むよう勧めると、ハンネローレは素直に従いながらも、ローゼマインの専属へ髪飾りを頼めることを楽しみにしていると笑った。

別れ際には、三の鐘に再び会えるだろうと軽やかに挨拶し、本館の客間へ戻っていった。

ローゼマインも自室へ戻ろうとしたが、その直後に騎獣の接近を察知する。

フェルディナンドの来訪

高速で飛来した白いライオン型の騎獣から降り立ったのはフェルディナンドだった。

夜明け前に放たれた大量の魔力を、夜勤明けを狙った襲撃かと警戒して駆けつけたのである。

ローゼマインは、ハンネローレと共に死者を悼む祈りを捧げていたことを説明し、起こすつもりはなかったと謝罪した。

フェルディナンドは、ちょうど薬が切れた頃だったので問題ないと答えた。

睡眠薬の提案

フェルディナンドは、短時間でも夢を見ずに眠れる薬をローゼマインへ勧めた。

ローゼマインは、また長時間眠らされるのではないかと警戒したが、寝不足の顔でギルベルタ商会の者達に会うつもりかと問われ、最終的には薬を受け入れる。

ダームエルは、ローゼマインが魔石を見るだけで戦いを連想し、騎獣すら出せない状況になっていると説明した。

フェルディナンドは、予想以上に症状が重いと難しい顔をする。

神殿への配慮

フェルディナンドは、現在の神殿にはメルヒオールの側近達が設置した魔術具の罠がまだ残っており、魔石を恐れるローゼマインにはあまり良い環境ではないと語った。

そのため、罠の撤去と清めが終わる午後以降に訪れる方が良いと判断する。

ローゼマインは、自分の目で神殿を確認したいと答え、フェルディナンドはダームエルへ罠撤去を伝えるよう命じた。

フェルディナンドと話したことで、ローゼマインの気持ちは少し落ち着いた。

悪夢と最悪の目覚め

フェルディナンドの薬によって、ローゼマインは鐘一つ分だけ夢も見ずに眠れた。

しかし薬が切れると再び悪夢に襲われ、飛び起きることになる。

短時間で必ず起きられるというフェルディナンドの言葉を、ローゼマインは身を以て理解した。

体調は多少回復したものの、寝起きの気分は最悪だった。

側仕え達の忙しさ

朝食の席で、オティーリエは側近達の動きを報告した。

フェルディナンドから、数日間は問題なくアーレンスバッハで過ごせる準備を整えるよう命じられており、側近達は交代で出発準備を進めているという。

ローゼマインは、ようやく戻れたエーレンフェストから再び危険な地へ向かわなければならない現実を改めて実感した。

ベルティルデは、戦闘中よりも宴やダンケルフェルガー客室準備の方が大変だったと苦笑していた。

本で恐怖を忘れる時間

リーゼレータとグレーティアは、ローゼマインがまだ読んでいなかった新刊本を準備していた。

エルヴィーラは、ローゼマインが嫁ぐ前に少しでも多く本を作ろうとしているらしい。

ローゼマインは、新作を読み始めることで嫌なことや恐怖を忘れようとしていた。

やはり彼女にとって、本を読むことが最良の逃避だったのである。

図書館での仮縫い

三の鐘が鳴ると、ローゼマインはハンネローレ達と共に図書館へ移動した。

図書館にはギルベルタ商会の針子達が集められており、そこには無事な姿のトゥーリもいた。

ローゼマインは、ダンケルフェルガーへの感謝として、ハンネローレへ最高の髪飾りを贈りたいと説明し、トゥーリへ注文を任せる。

トゥーリも、以前レスティラウトから受けた髪飾り注文を鮮明に覚えていた。

お揃いの髪飾り

トゥーリは、ローゼマインとハンネローレで似た雰囲気の髪飾りを作ることを提案した。

ハンネローレは、友人同士でお揃いの髪飾りを持つことへ強い憧れを抱いていたらしく、目を輝かせて喜ぶ。

ローゼマインも、自分に似合う飾りを一番理解しているのはトゥーリだと笑顔で応じた。

その様子に、トゥーリも安心したように表情を綻ばせる。

王族用衣装の仮縫い

ローゼマインは次々と衣装を着せ替えられながら仮縫いを進めていった。

急成長により衣装を一新しなければならず、さらにアーレンスバッハ行きまで控えているため、針子達は極めて短期間で仕上げなければならない。

コリンナは、王族と会うための衣装だからこそ、高級感と品格を重視して最高の品に仕上げると宣言した。

その挑戦的な表情に、ローゼマインはベンノと同じ商人の気質を感じていた。

ハンネローレの問い

仮縫いの最中、ハンネローレはローゼマインへ、エーレンフェストの領主候補生、アウブ・アーレンスバッハ、次期ツェント候補のどの立場を選ぶのか尋ねた。

ローゼマインは、自分には選ぶ立場などないと答える。

しかしハンネローレは、貴族院時代からローゼマインへ強い憧れを抱いていたと語り始めた。

王族にも物怖じせず、自らの望みを貫く姿が眩しかったのだという。

恋を成就させる提案

ハンネローレは、今ならまだ正式発表前だから間に合うと真剣な顔で言い出した。

そして、アウブかツェントを目指してフェルディナンドとの恋を成就させるべきだと熱弁する。

以前ローゼマインが「婚約者以外に想う相手がいる」と語った話を、ハンネローレは完全にフェルディナンドへの恋だと解釈していたのである。

その発言を、トゥーリやコリンナ達ギルベルタ商会の面々が全て聞いており、ローゼマインは強烈な居た堪れなさに襲われた。

わたしの望み

恋愛感情の否定

ローゼマインは、フェルディナンドとの恋を成就させるべきだというハンネローレの発言へ強く困惑した。

彼女にとってフェルディナンドは、王命によってアーレンスバッハへ送られてしまった大切な存在であり、できるだけ早くエーレンフェストへ戻したい相手ではあるが、恋愛対象ではなかった。

さらに、トゥーリへ妙な誤解を与える状況が何より困りものだった。

ローゼマインは、本当にフェルディナンドへ懸想しているわけではないと必死に説明する。

誤解を深める発言

しかしハンネローレは、宴でローゼマインが「王族や神々を敵に回してもフェルディナンドを救う」と宣言したと聞いており、その時点で完全に恋愛話だと確信していた。

その説明を聞いたトゥーリの目は輝き始め、ローゼマインは強い危機感を抱く。

ローゼマインは、家族のためならば自分は暴走するだけなのだと慌てて弁解した。

トゥーリは一応納得したように見えたが、どこまで誤解が解けたのかは不明だった。

政略結婚としての評価

ハンネローレから、結婚相手としてフェルディナンドをどう思うのか尋ねられたローゼマインは、恋愛感情を抜きにすれば非常に理想的な相手だと気付く。

本を大量に持ち、図書館を与えてくれ、体調管理や薬の管理までしてくれる有能で頼れる存在だったからである。

不安な時に顔を見るだけでも安心できる存在だとも語った。

しかしローゼマイン本人は、それでも恋愛感情ではないと断言した。

理想の殿方

ローゼマインは、自分の理想は父親のような男性だと説明した。

やりたいことへ突き進む自分を全力で支え、身分差など関係なく守ってくれる相手こそ理想なのだという。

そのため、エーレンフェストや約束を優先し、王命へ従ってアーレンスバッハへ向かうフェルディナンドは理想とは異なると語った。

トゥーリは、そんな妹へ呆れたような視線を向けていた。

フェルディナンドへの願い

それでもローゼマインは、フェルディナンドを大切に思っていること自体は認めた。

だからこそ、できるだけ早くアーレンスバッハからエーレンフェストへ戻したいと望んでいるのである。

一方でハンネローレは、フェルディナンドもまたローゼマインを大事にしているように見えると主張した。

だがローゼマインは、フェルディナンドに恋愛感情など存在しないと即座に否定する。

婚約話の過去

ローゼマインは、以前アウブからフェルディナンドとの婚約話を打診されていたことを明かした。

しかしフェルディナンド本人から、ローゼマインのように面倒事を引き起こす相手と添い遂げたくはないと断られていたのである。

その事実に、ハンネローレや側近達は驚愕した。

ローゼマインは、自分には多くの利があっても、フェルディナンドには厄介事しか増えない結婚だと冷静に分析していた。

誤解の解消

ローゼマインは、結婚話の度に苦しんできたフェルディナンドへ、自分の不本意な婚約を押し付けたくはないと語った。

できるならば、彼には自分の望む相手と添い遂げてほしいと願っているのである。

その言葉を受けて、ハンネローレはようやく二人の恋愛が成立しないことを理解し、浅慮だったと謝罪した。

ローゼマインは、何とか誤解を解けたことへ安堵していた。

新たな選択肢への気付き

ローゼマインは、ハンネローレの中ではアウブやツェントも現実的な選択肢になっていることを知る。

ハンネローレは、本物のディッターで勝ち取った礎をどう扱うか決める権利はローゼマインにあると断言した。

さらに、グルトリスハイトを王族へ渡すのではなく、ローゼマイン自身がツェントになるべきだとも主張する。

魔力が釣り合わず求愛魔術具が金粉化する王子では、王配として不適格だとも語った。

本当の望み

レオノーレ達から、本当に望む道を教えてほしいと問われたローゼマインは、自分が一番なりたいのは司書だと宣言した。

図書館で本を管理し、利用者へ本を紹介し、古い資料を修復し、図書館同士を繋ぐ仕組みを作りたいのだという。

そして、平民も貴族も関係なく読書を楽しめる世界を目指したいと熱弁した。

その夢は、マインだった頃から全く変わっていなかった。

図書館都市と図書館国家

ローゼマインは、自分の望みを実現するならば、アウブでもツェントでも構わないと考え始める。

図書館都市を作るか、図書館国家を作るかの違いでしかないと真顔で語った。

転移陣を利用して全国の図書館を繋ぐ「図書館ネットワーク」構想まで口にし、ツェントの立場ならばより広範囲へ理想を広げられると盛り上がる。

周囲の貴族達は、本気で図書館国家を考えていたのかと呆然としていた。

再び浮上する結婚話

ローゼマインは、王族へ嫁ぐのも図書館計画のためなら悪くないかもしれないとまで考え始めた。

しかしレオノーレは、フェルディナンドの「ツェントになってはいけない」という忠告が正しいと思うと静かに告げる。

さらにハンネローレは、今こそフェルディナンドと結婚するのが最善だと確信したと真剣な顔で言い出した。

レオノーレまで「勝算があります」と同調し始め、ローゼマインは状況が再び恋愛方向へ傾き始めたことに混乱する。

夫婦同然という暴論

ハンネローレは、恋情がなくてもフェルディナンドはローゼマインを大切にしているし、ローゼマインにとっても理想的な政略結婚相手なのだから問題ないと主張した。

さらに、家族同然なら夫婦同然でも良いではないかと真顔で言い切る。

ローゼマインは、家族同然と夫婦同然は全く違うと心の中で激しく反論していた。

昼食会

昼食会前の危機感

昼食のため城へ戻る準備が整う中、ハンネローレは真剣な顔で、フェルディナンドへ政略結婚を了承させる方法を考え始めていた。

ローゼマインは、ダンケルフェルガー式の求婚をする気など全くなく、むしろフェルディナンドにはエーレンフェストへ戻って研究所を作ってほしいと考えていた。

しかし、このままではハンネローレ達の勢いで、フェルディナンドが再び不本意な政略結婚へ巻き込まれてしまうかもしれない。

ローゼマインは、自分だけでもフェルディナンドの味方になろうと決意する。

フェルディナンドへの緊急連絡

ローゼマインはレオノーレへ、昼食前にフェルディナンドと話したいと急ぎのオルドナンツを送らせた。

「大変なことになりました」と伝えれば、必ず時間を作ってくれると確信していたのである。

その予想通り、フェルディナンドは昼食会場近くの部屋を用意し、ローゼマインを迎えた。

そこには双方の側近達も集められていた。

結婚阻止の訴え

フェルディナンドは、いつも通り「君は一体何をしたのだ」と呆れた様子で事情を尋ねた。

ローゼマインは、このままでは自分と結婚させられてしまうかもしれないから今すぐ逃げてほしいと訴える。

当然ながらフェルディナンドには意味がわからず、盗聴防止の魔術具を用意させた上で詳しい説明を求めた。

側近達は二人だけで話せる空間を即座に整えた。

図書館国家構想への評価

ローゼマインは、仮縫いの場で起きた一連の流れをフェルディナンドへ説明した。

話を聞いたフェルディナンドは、皆が意見を翻した理由は単純で、ローゼマインへ権力を持たせたまま野放しにすると危険だと判断されたからだと断言する。

特に、図書館同士を転移陣で繋ぐ「図書館ネットワーク」構想は、領地防衛の観点から見れば極めて危険だった。

悪意がなくても、後世で悪用される危険性を考えれば、ダンケルフェルガーが警戒するのは当然だと厳しく叱責した。

軽率さへの叱責

ローゼマインは、ただ理想を思いつくまま語っただけだと弁解した。

しかしフェルディナンドは、ローゼマインが本気を出せば実現してしまう可能性があるからこそ周囲が恐れたのだと説明する。

聖女らしく完璧に取り繕っていた領主候補生が、図書館という理由だけで全てを投げ出しかねない事実に頭を抱えていた。

ローゼマインも、自分が考えなしだったことをようやく理解する。

フェルディナンドの本心を守りたい願い

それでもローゼマインは、今まで我慢ばかりしてきたフェルディナンドには、自分の望みを最優先してほしいと真剣に語った。

だからこそ、ダンケルフェルガーやジルヴェスターが何を言っても負けず、自分の望む道を勝ち取ってほしいと応援する。

フェルディナンドは、悪巧みをしていそうな笑みを浮かべながら、自分は勝てない勝負はしない主義だと答えた。

その返答に、ローゼマインは彼へ任せておけば大丈夫だと安心する。

和やかな昼食会

ローゼマインが警戒していたほどの騒動は起きず、昼食会自体は非常に和やかに進行した。

話題の中心は、エーレンフェストの騎士達がダンケルフェルガーの騎士達に鍛えられた件であり、ヴィルフリートは興奮気味にその強さを語っていた。

その後、食後の予定について話し合われる。

ハンネローレは神殿見学を希望したが、時間不足と神殿の戦後処理のため断念せざるを得なかった。

中央の状況確認

食後、ハンネローレは中央の状況についてジルヴェスターへ尋ねた。

ジルヴェスターは、王族へランツェナーヴェとの戦いを報告したものの、返ってきたのは「敵はまだ中央へ来ないのか」という呑気な確認だけだったと説明する。

それを聞いたフェルディナンドは、ディートリンデ達が向かった先は王宮ではなく貴族院だと断言した。

グルトリスハイトを狙うなら、当然向かう先は祠のある貴族院だからである。

貴族院への警戒

フェルディナンドは、ヒルシュールやルーフェンを通じて貴族院の状況確認を急がせた。

アーレンスバッハ寮は閉鎖され、寮監も不在という異常事態になっていることも共有される。

ローゼマインは、貴族院図書館にいるソランジュの無事も確認してほしいとジルヴェスターへ頼んだ。

図書館が重要地点であることを知っているため、彼女の安否が非常に気がかりだったのである。

魔石への恐怖

神殿へ向かうため皆が騎獣を作り出す中、ローゼマインだけは騎獣用の魔石へ触れることができず固まってしまった。

結局、アンゲリカの騎獣へ同乗させてもらうことになる。

魔石を恐れるせいで、調合も、オルドナンツも、騎獣もまともに扱えない自分へ強い焦りを感じていた。

アーレンスバッハへ戻る日が近付く中、アウブとして責任を果たせるのかという不安が、ローゼマインの胸を重くしていた。

神殿とメルヒオールの報告

神殿への帰還

ローゼマイン達が神殿へ戻ると、フランやザーム達がフェルディナンドの帰還を心から喜んで迎えた。

フェルディナンドも、懐かしい神殿の空気にわずかに表情を緩める。

ローゼマインは、神殿と孤児院の無事を確認したいと告げ、報告を求めた。

メルヒオールは、神殿襲撃の詳細を説明すると申し出る。

神殿長室での再会

着替えを終えたローゼマインが神殿長室へ向かうと、元側仕え達はフェルディナンドへ嬉しそうに茶を淹れ始めた。

フェルディナンドは、久しぶりに飲むフランの茶を「懐かしい味だ」と静かに味わっていた。

一方でメルヒオールは、西門で戦った兵士達へ褒賞を渡すため、一緒に来てほしいとローゼマインへ頼む。

ローゼマインは、兵士達と顔を繋ぐ良い機会になると考え、快く了承した。

神殿襲撃の黒幕

メルヒオールは、神殿襲撃について語り始めた。

当初疑われていた旧ヴェローニカ派の子供達ではなく、実際には青色神官クラペッヒの部屋が利用されていたという。

しかしクラペッヒ本人が協力者だったわけではなく、ゲオルギーネが勝手に部屋へ侵入しただけだった。

フェルディナンドは、ライゼガング寄りの中級貴族であるクラペッヒとゲオルギーネが結びつかないことへ疑問を抱く。

水路からの潜入

ゲオルギーネは、西門襲撃より前に別の船でエーレンフェストへ到着していた。

彼女は水路を利用して下町へ潜入し、北門襲撃組と合流した後、再び水路を通って神殿へ向かったのである。

ローゼマインは、貴族然としたゲオルギーネが水路を使うほど本気だったことへ驚いていた。

フェルディナンドも、彼女がなりふり構わず礎を奪う覚悟だったと理解する。

ゲオルギーネの執念

フェルディナンドは、ゲオルギーネほどの知性と行動力が、復讐ではなく別の方向へ向いていればと惜しんだ。

ローゼマインは、もし彼女が図書館計画へ力を注いでいたなら、エーレンフェストもアーレンスバッハも既に図書館都市になっていたかもしれないと真顔で同意する。

その発言に、フェルディナンドは「残念な者は他にもいるようだ」と呆れた視線を向けた。

ローゼマインは不満を抱きつつも、話の続きを促される。

神殿内部への侵入

ゲオルギーネが神殿へ着いた時、すでに避難命令は出ていた。

しかし、側仕えや下働き達は食事準備などのため、まだ地階や一階を行き来していたのである。

ゲオルギーネは、西の出入り口から出てきた灰色巫女を襲って服を奪い、そのまま灰色巫女へ変装した。

フェルディナンドは、どのように服を奪ったのかは語らせなかったが、ローゼマインはその灰色巫女が殺されたのだと察する。

図書室への侵入

灰色巫女の服を着たゲオルギーネは、神殿内を自然に移動し、図書室へ向かった。

図書室の結界は銀色の衣装で突破し、罠の位置も理解していたため、鳥もちや転移陣を全て回避していた。

神殿で騒動が起き、偽者ゲオルギーネを白の塔へ転移させたことを喜ぶ声を、隠れて聞いていたらしい。

そこから先の流れは、礎の間での戦いへ繋がっていく。

メルヒオールの罪悪感

報告を終えたメルヒオールは、自分の対応が不十分だったせいでクラペッヒや側仕え達が死んだのだと苦しそうに語った。

図書室の見張りを残していれば、もっと避難を徹底していれば、水路に気付いていれば、と後悔していたのである。

ローゼマインは、人を殺したのはゲオルギーネであり、メルヒオールのせいではないと諭した。

それでもメルヒオールの表情から、不眠と疲労の色は消えていなかった。

死者への祈り

ローゼマインは、メルヒオールへ一緒に死者へ祈ろうと提案した。

二人は神殿長室の祭壇前へ跪き、側近達や神殿の者達も後ろへ並ぶ。

ローゼマインが祝詞を唱えると、金と黒の光が渦巻いて天井を突き抜けていった。

メルヒオールは、魔力を捧げたことで少し気が楽になったと安堵する。

孤児院の無事

ローゼマイン達は孤児院へ移動し、ヴィルマ達から無事の報告を受けた。

フィリーネやユーディットが早く避難を指示していたため、孤児院の子供達は戦いの恐怖を知らずに済んだのである。

ヴィルマは、後始末が続く中でも孤児院や工房の日常を守れたことへ感謝を述べた。

メルヒオール達も、自分達の努力で守れた者がいたことを知り、ようやく笑顔を取り戻していた。

西門へ向かう準備

孤児院を出た後、ローゼマインはメルヒオールと共に西門へ向かうことになる。

その途中、フェルディナンドは昨夜から祈りばかりしているのかと呆れ気味に問いかけた。

ローゼマインが「二回だけです」と反論している間に、フェルディナンドは自然な動きで彼女を自分の騎獣へ乗せてしまう。

ローゼマインは、外聞を気にしていた周囲が何も言わないことへ首を傾げながら、西門へ向かうのだった。

西門の兵士と根回し

西門での褒賞授与

ローゼマインとメルヒオールが西門へ到着すると、ダームエルとマティアスが戦功を立てた兵士達を整列させて待っていた。

兵士達の中には怪我人も多く、包帯姿の者も見受けられた。

平民兵には騎士のような癒しが与えられていなかったことを知ったメルヒオールは心を痛める。

ローゼマインは、自分が癒しを与えると微笑みながら告げた。

神殿長としての教え

メルヒオールは、祈りや弔いで魔力を消耗したばかりのローゼマインが、なお癒しを行えることへ驚いていた。

ローゼマインは、神々の御加護が増えれば必要魔力は減るのだと説明し、神殿長として祈り続ける大切さを語る。

さらに、メルヒオールならば自分以上に優れた神殿長になれると優しく励ました。

その言葉に、メルヒオールは真剣に頷いていた。

兵士達への感謝

ローゼマインは、西門を守り抜いた兵士達へ感謝を述べた。

ヴォルヘニールが街へ侵入していれば、平民達へ甚大な被害が出ていたと語り、彼等の勇敢さを称える。

兵士達は、急成長したローゼマインの姿に驚きながらも、真剣に言葉を聞いていた。

父であるギュンターは、誇らしさと寂しさの混じった複雑な表情で娘を見つめていた。

癒しの祝福

ローゼマインはシュタープをフリュートレーネの杖へ変化させ、癒しの祝福を捧げた。

緑色の祝福の光が兵士達へ降り注ぎ、怪我が次々と癒えていく。

兵士達だけでなく側近達までも、その強大な癒しの力に驚愕していた。

フェルディナンドは、魔力を注ぎ込みすぎるローゼマインを途中で制止する。

新しい士長

癒しを受けた兵士達を代表し、新しい士長が感謝を述べた。

ローゼマインは、士長がギュンターではないことに驚く。

ギュンターは、ローゼマイン専属としてアーレンスバッハへ同行するため、既に引き継ぎを終えていたのである。

兵士達は、ギュンターを失うことを大きな損失だと惜しみつつも、彼がローゼマインを守る頼もしい護衛になると認めていた。

メルヒオールの紹介

ローゼマインは、兵士達へ新しい神殿長としてメルヒオールを紹介した。

メルヒオールは、領民から頼られる神殿長になりたいと真摯に語り、兵士達へ褒賞を配り始める。

ローゼマインは、その間に兵士達から西門の戦いについて話を聞いた。

特にダームエルの奮戦は高く評価されており、兵士見習い達の憧れの的になっていた。

ギュンターの奮戦

兵士達は、ギュンターが家族全員分のお守りを使い切るまで戦い続けたことを興奮気味に語った。

犬型魔獣を殴り飛ばそうとした姿に、兵士達は肝を冷やしていたらしい。

ギュンター自身は、お守りを使い切ったことを謝罪しつつも、大切なものを守るためには手段を選べなかったと笑う。

ローゼマインは、その姿に自分が父の娘なのだと強く実感していた。

フェルディナンドの宣言

新しい士長から、再び同じ戦いが起こる可能性について質問が飛ぶ。

その時、フェルディナンドが一歩前へ進み出たことで、西門の空気は一変した。

フェルディナンドは、アーレンスバッハが再び攻め込むことは絶対にないと断言する。

そして、ローゼマインがアーレンスバッハの礎を奪い、事実上のアウブ・アーレンスバッハとなったことを公表した。

兵士達の歓喜

兵士達は歓声を上げ、危険な隣領が味方になることを心から喜んだ。

一方で、メルヒオールや側近達は突然の公表に驚愕していた。

ローゼマイン自身も頭が真っ白になってしまう。

しかしフェルディナンドは、これからエーレンフェストを安心して離れられるよう、兵士達へ街を託した。

ギュンターへの依頼

フェルディナンドはギュンターへ、まだ不安定なアーレンスバッハでローゼマイン達専属を守ってほしいと頼む。

さらに、自分のお守りを外してギュンターへ託した。

ギュンターは複雑そうな表情を浮かべながらも、「必ず」と力強く請け負う。

ローゼマインは、そのやり取りを静かに見つめていた。

下町の上空飛行

西門を離れた後、フェルディナンドはローゼマインを騎獣へ乗せたまま、下町上空を巡り始めた。

西門から南門、東門、北門へと回る中、下町の人々は騎獣を見上げて指差していた。

ローゼマインは、西門での発言を軽率だと抗議する。

しかしフェルディナンドは、自分は嘘を言っていないし、ローゼマイン自身も望んでいたはずだと返した。

グルトリスハイトの新案

ローゼマインは、ツェント承認もない段階で期待を煽るべきではないと反論する。

するとフェルディナンドは、本当に王族との婚姻や王族化が必要なのかと問い返した。

さらに、必要ならばグルトリスハイトを新たに作れば良いと語る。

それは、一代限りで消滅する魔術具型グルトリスハイトを作り、王族制度そのものを終わらせる構想だった。

現実へ引き戻されるローゼマイン

神殿へ戻ると、モニカやニコラは、ローゼマインがアーレンスバッハでも神殿長を務めるのかと尋ねてきた。

ハルトムートが、ローゼマインがアウブ・アーレンスバッハになる前提で、神殿側仕え達へ移住の話を進めていたのである。

さらにフランやザームまで、共にアーレンスバッハへ行けるのかと期待を込めて問いかけてきた。

ローゼマインは、フェルディナンドとハルトムートが既に大規模な根回しを始めていたことを知り、自分だけが現実を理解していなかったと悟る。

覚悟を問う言葉

ローゼマインが、魔石すらまともに扱えない自分に本当にアウブが務まるのかと不安を漏らすと、フェルディナンドは「君が腹を括ればどうにでもなる」と断言した。

そして、不安でも迷うな、望め、と背中を押す。

ローゼマインは、仮縫いの時に語った自分の夢を思い出しながら、広がる空を静かに見つめていた。

アーレンスバッハへ

アウブ就任の決意表明

城へ戻ったローゼマインは、ジルヴェスターへ自らの決意を伝えた。

アウブ・アーレンスバッハになると宣言したローゼマインは、当然反対される覚悟をしていた。

しかしジルヴェスターは、すでにその話を知っていると答える。

ダンケルフェルガー側が既に領主一族へ強く働きかけていたのである。

ダンケルフェルガーの後押し

ハンネローレ達は、ローゼマインがアーレンスバッハへ向かうことを当然のように受け入れていた。

アーレンスバッハの礎を奪う許可を出した以上、アウブ就任を認めないのは理不尽だとダンケルフェルガーは主張したらしい。

さらに、グルトリスハイトを持つ者は現王族より上位だという理屈まで持ち出されていた。

ローゼマインは、その理屈が本当に通用するのか不安を覚えていた。

エーレンフェスト側の受容

ジルヴェスターは、中央へ行こうとアーレンスバッハへ行こうと、ローゼマインがエーレンフェストを離れることに変わりはないと説明した。

ハルトムートも、移動する人員や荷物は既に準備済みであり、多少の調整だけで済むと語る。

疲れ果てた様子のジルヴェスターは、もう好きにしろと半ば投げやりに受け入れていた。

ローゼマインは、自分が神殿へ向かう時点ではここまで話が進むとは思っていなかったと謝罪する。

フェルディナンドの選択

フェルディナンドは、エーレンフェストに固執せず、自分の幸せを優先しろと言ったのはジルヴェスター自身だと返した。

そして、自分はその言葉通りに生きることを決めただけだと淡々と語る。

ジルヴェスターは、そんな弟へ腹立たしさと安堵の入り混じった複雑な表情を向けていた。

二人のやり取りには、兄弟としての深い信頼関係が滲んでいた。

研究所問題

ローゼマインは、フェルディナンドの本当の望みはエーレンフェストへ研究所を作ることだったと訴えた。

しかしジルヴェスターは、ゲルラッハ再建などで領地に余裕はなく、研究所を建てる余地はないと断言する。

さらに、ゲルラッハの館を完全に破壊した責任をローゼマインへ突き付けた。

ローゼマインは慌てて金粉を作って補填すると申し出るが、フェルディナンドに今の状態で安請け合いするなと止められる。

アーレンスバッハでの未来

フェルディナンドは、エーレンフェストとの関係が完全に切れるわけではなく、賠償という形で援助も行う予定だと説明した。

また、自分はたまに里帰りできればそれで良いと語る。

ローゼマインは、本当に自己犠牲ではないのか何度も確認した。

それに対し、フェルディナンドは「自分の選択の結果だ」と繰り返した。

ローゼマインの決意

ジルヴェスターからも、フェルディナンドが珍しく自分の幸せを優先した結果なのだと言われ、ローゼマインはようやく覚悟を決める。

そして、自分がアウブ・アーレンスバッハとなり、フェルディナンドが研究に没頭できる環境を整えると宣言した。

その勢いある発言に、ジルヴェスターやカルステッドは思わず吹き出してしまう。

ハンネローレ達も「惜しい」と言いたげな顔で見守っていた。

耳を赤くするフェルディナンド

フェルディナンドは、ローゼマインの肩を掴み、もう黙れと制止した。

ローゼマインが、耳が赤いと指摘しかけると、さらに強く黙らされる。

その直後、転移陣の準備が整ったとの報告が届いた。

一行はアーレンスバッハへの移動準備へ入る。

転移陣による荷物輸送

フェルディナンドは、徴税用転移陣を利用して荷物をアーレンスバッハへ送る計画を説明した。

魔石へ触れられないローゼマインへ配慮し、レッサーくんを使わずに済む方法を選んでいたのである。

通常は警備上の問題から許可されない方法だったが、今回はアウブ自身の荷物移送であるため問題なかった。

また、本格的な移動や正式な采配は領主会議での承認後になると説明される。

境界門への転移

一行は転移陣でエーレンフェストとアーレンスバッハの境界門へ移動した。

ローゼマインは、魔石は怖くても、魔法陣へ魔力を流すこと自体は問題ないと知り安堵する。

境界門では、リーゼレータやグレーティアが中心となって荷物整理を進めていた。

フェルディナンドは、この後も何度も転移陣を使うため、回復薬を飲んでおけと忠告する。

ダンケルフェルガー騎士達の移送

その後、一行はビンデバルトへ移動し、ダンケルフェルガー騎士団の輸送を開始した。

ビンデバルトでは、ダンケルフェルガー騎士達がディッター大会を行っていたらしく、アーレンスバッハ騎士達は疲弊していた。

ローゼマインは転移酔いで気分が悪くなり始める。

最後はフェルディナンドとエックハルトが補助に入り、輸送を終えた。

メスティオノーラの化身

別れ際、ハンネローレは未成年ながら領主会議へ参加したいと申し出た。

その理由は、「メスティオノーラの化身」であるローゼマインがグルトリスハイトをもたらす場面を見たいからだった。

ローゼマインは、自分がアウブ・アーレンスバッハになる話と全く別方向へ話が膨らんでいることに愕然とする。

さらにハンネローレは、ダンケルフェルガー騎士達へ「メスティオノーラの化身に敬礼」と号令をかけた。

ハルトムートへの疑念

ローゼマインは、聖女伝説がさらに暴走していることへ危機感を抱く。

その背後に、ハルトムートの存在を強く感じ取っていた。

フェルディナンドは、王族より上位の立場を確保しなければローゼマインが危険だとハルトムートが主張していたと説明する。

ローゼマインは、城へ戻ったらハルトムートを問い詰めると決意した。

ディートリンデからの手紙

アーレンスバッハ城へ戻ると、レティーツィアがディートリンデから届いた手紙を差し出した。

そこには、礎を奪われたことへの怒りと、自分はいずれ次期ツェントになるのだという妄言が綴られていた。

さらに、レオンツィオやジェルヴァージオの存在まで記されていた。

ローゼマインは、あまりに理解不能な内容へ力が抜けるような感覚を覚える。

ジェルヴァージオの正体

レティーツィアは、不安そうな顔でジェルヴァージオという人物について尋ねた。

フェルディナンドは、作り笑いを浮かべながら答える。

ジェルヴァージオとは、ランツェナーヴェの王として育てられた男の名だった。

健康診断と聖典作り

工房への移動

レティーツィアからジェルヴァージオの存在を聞いたフェルディナンドは、報告会を後回しにして工房へ向かうことを決めた。

彼は急ぎのオルドナンツを飛ばしながら、ローゼマインを騎獣へ乗せて西の離れへ向かう。

そこには、ランツェナーヴェに荒らされたままの彼の部屋が残されていた。

室内は傷だらけで、破壊された物が散乱する痛々しい状態だった。

隠し部屋への籠城

フェルディナンドは、図書室工房から運び出した素材入りの木箱を隠し部屋へ運び込ませた。

コルネリウスは、ローゼマインと二人きりで隠し部屋へ入ることへ強く反対する。

しかしフェルディナンドは、入りたい者は好きに入れば良いと突っぱね、そのままローゼマインを連れて入室した。

だが、魔力量制限によってコルネリウス達は弾かれてしまう。

健康診断

フェルディナンドは、側近達を締め出したままローゼマインの診察を始めた。

彼は、ローゼマインが以前より感情を取り繕うのが上手くなったことを不満そうに指摘する。

さらに、魔力の不安定さが非常に危険な状態だと診断した。

特に、祈りの際に魔力が暴走気味になっていることを問題視していた。

過剰な祈りへの警告

ローゼマインは、死者への弔いや兵士達への癒しを行っただけだと説明した。

しかしフェルディナンドは、街全体へ届きかねない規模の癒しだったと厳しく注意する。

また、魔力を持たない平民へ過剰な癒しを与える危険性についても警告した。

今のローゼマインは、魔石で魔力を抜き出せないため、以前より危険な状態にあるという。

魔石恐怖症の確認

フェルディナンドは、どのような魔石に恐怖を感じるのか細かく質問を重ねた。

ローゼマインは、加工されていない原石やオルドナンツを見ると、戦場の記憶が一気に蘇ると答える。

一方で、シュタープは魔石に見えないため問題なく使えるらしかった。

フェルディナンドは、その違いを慎重に分析していく。

シャルラウプの実による試験

フェルディナンドは、素材段階ならば触れられるか確認するため、シャルラウプの実を渡した。

ローゼマインは震えながらも魔力を込め、実を黄色の魔石へ変化させる。

しかし魔石となった瞬間に恐怖が強まり、そのまま大量の魔力を叩きつけて金粉化させてしまった。

フェルディナンドは、確認したいことは確認できたと判断する。

フェルディナンドの後悔

フェルディナンドは、中央突破を選択させた結果、ローゼマインへ魔石への恐怖という致命的な傷を負わせたことを悔いていた。

彼は珍しく優しい態度で、ローゼマインの頭を撫でながら慰める。

さらに、ローゼマインがいたからこそゲルラッハの騎士団を救えたのだと伝えた。

ローゼマインは、その言葉を静かに受け止める。

食欲不振への薬

フェルディナンドは、今後の食事に備え、食欲がなくても食べられるようになる薬を渡した。

アーレンスバッハ料理は香辛料が強く、今のローゼマインには負担が大きいと判断したのである。

ローゼマインは、以前病後に出された料理を思い出し、素直に薬を飲んだ。

フェルディナンドの配慮は細やかだった。

アダルジーザの離宮

ローゼマインは、ディートリンデが現在どこにいるのかを尋ねた。

フェルディナンドは、ランツェナーヴェの館にある転移陣を使い、アダルジーザの離宮へ移動した可能性が高いと説明する。

その離宮は貴族院にあり、グルトリスハイトを狙うには最適な場所だった。

ローゼマインは、フェルディナンドがそこまで詳しいことへ驚いていた。

メスティオノーラの書の補完

フェルディナンドは、大量の魔紙を取り出し、メスティオノーラの書の欠けた部分を埋め始めた。

ローゼマインは、自分の書から該当部分を検索して内容を提示する。

フェルディナンドは、それを魔紙へ高速で書き写していった。

ローゼマインは、もっと効率的な方法として「コピーシテペッタン」を提案する。

コピペ魔術の成功

最初は文字サイズが合わず失敗したが、ローゼマインは直接フェルディナンドのメスティオノーラの書へコピペすることに成功した。

空白部分へ正確に知識が流れ込み、完全な形で補完されたのである。

フェルディナンドは、その便利さを認めつつも何か考え込んでいた。

そして、ローゼマインへ回復薬と魔力回復薬を飲ませ始める。

フェルディナンドの不調

ローゼマインが繰り返しコピペを続ける中、フェルディナンドは頭を抱えたり腕を擦ったりして明らかに様子がおかしくなっていった。

ローゼマインは、毒を受けた後に十分休めていないせいではないかと心配する。

しかしフェルディナンドは、コルネリウス達が次は隠し部屋へ入れなくなるかもしれないから、今のうちに必要部分を終わらせたいと作業を優先した。

ローゼマインは不安を抱えながらも、指示通りコピペを続ける。

知識共有の拒否

作業後、ローゼマインは自分のメスティオノーラの書にも内容を写してほしいと要求した。

しかしフェルディナンドは、ローゼマインにはまだ早いとして拒否する。

ローゼマインが食い下がると、フェルディナンドは「成人後にしなさい」と言い切った。

その理由は説明されず、ローゼマインは強い不満を抱く。

ジェルヴァージオの正体

ローゼマインは、ジェルヴァージオについて改めて質問した。

フェルディナンドは、ジェルヴァージオがアダルジーザで生まれた子供達の中で最も高い魔力を持ち、ランツェナーヴェの王として選ばれた存在だと語る。

さらに、自分自身は魔石にするために生まれた子供だったことも淡々と明かした。

ローゼマインは、その残酷な出生の真実へ強い衝撃を受ける。

抱擁による慰め

ローゼマインは思わず立ち上がり、フェルディナンドを強く抱きしめた。

そして、フェルディナンドは魔石ではなく、生きて必要とされる存在なのだと必死に訴える。

フェルディナンドは焦りながらも、ローゼマインへ放せと繰り返した。

しかしローゼマインは、理解するまで放さないと拒否した。

慎みへの説教

最終的にフェルディナンドは折れたものの、ローゼマインへ年頃の女性らしい慎みを持てと説教する。

ローゼマインは、自分なりに慎みを覚えたつもりだったため少し不満だった。

その後、フェルディナンドは魔石を扱う工程へ入るため、ローゼマインを隠し部屋から追い出した。

さらに、側近達へ現在の症状を説明し、今後の対策を相談するよう指示する。

コルネリウスの激怒

隠し部屋から出た途端、コルネリウスが駆け寄ってきた。

彼は、婚前の男女が二人きりで隠し部屋へ入ることは極めて問題だと真剣に説教する。

しかしローゼマインは、フェルディナンドにとって必要なことだったと説明した。

むしろ、自分の方が慎みのない行動をしてしまったと少し反省していた。

緊急報告

その時、ハルトムートからオルドナンツが届き、エーレンフェストから緊急報告が入ったことが知らされる。

ローゼマインは、フェルディナンドへ伝えるよう頼み、自分は先に領主執務室へ向かった。

予想通り、途中でフェルディナンドとも合流する。

二人はそのまま緊急報告を受けるため、領主執務室へ急いだ。

ダンケルフェルガーからの要請

貴族院からの緊急連絡

領主執務室へ到着したローゼマイン達は、領主間用の緊急通信魔術具が光っていることを知らされた。

フェルディナンドは、魔石が視界に入らないようローゼマインへ目を閉じるよう指示し、誘導しながら通信を繋げる。

映し出されたのはジルヴェスターだった。

彼は、貴族院から緊急の報告が届いたことを告げる。

ヒルシュールからの報告

ヒルシュールから、文官棟付近で見慣れない者達がうろついているとの連絡が入っていた。

ライムントが、どこの領地のマントも身につけていない不審者を発見したのである。

その報告を受けたヒルシュールは、王族や中央騎士団へ急いで救援を求めた。

中央騎士団も既に貴族院へ向かっているらしかった。

ソランジュとの連絡断絶

しかし、事態はそれだけでは終わらなかった。

図書館司書であるソランジュから返事が返ってこないという。

ヒルシュールも様子を見に行こうとしたが、ルーフェンから出歩くなという警告が届き、動けない状況だった。

ローゼマインは、図書館で何か起きている可能性を強く感じて顔色を変える。

図書館へ向かいたいローゼマイン

通信を終えたローゼマインは、すぐにでも貴族院図書館へ向かいたいと訴えた。

しかしフェルディナンドは、騎獣にも乗れない今の状態では連れていけないと却下する。

ローゼマインは、せめてシュバルツとヴァイスを戦闘状態にできればソランジュを守れるのに、と悔しそうに呟いた。

フェルディナンドは、シュバルツ達は本来ツェント候補を屠るための強力な魔術具だと説明する。

ソランジュへの不安

ローゼマインは、シュバルツ達が強いからソランジュは無事だと肯定してほしかった。

しかしフェルディナンドは、図書館の魔術具を戦闘状態にするには主の命令と魔力が必要だと現実を突きつける。

ソランジュがそれを使える保証はなかった。

ローゼマインは、どうしても不安を拭えなかった。

ダンケルフェルガーからの要請

その時、再び緊急通信が入る。

相手はアウブ・ダンケルフェルガーだった。

彼は、ローゼマインを「グルトリスハイトを得た正当なる次期ツェント候補」と呼び、貴族院を守るため号令を出してほしいと要請する。

ダンケルフェルガーは、その命令に従って戦う「ツェントの剣」になると宣言した。

フェルディナンドの拒絶

ローゼマインが答える前に、フェルディナンドが割って入った。

彼は、ローゼマインは既にアウブ・アーレンスバッハであり、そのような号令を出す立場ではないと主張する。

さらに、号令を出した後に王族が救出された場合、全責任をローゼマインへ押し付けられる危険性を指摘した。

フェルディナンドは、王族がそのまま感謝して終わるとは思っていなかった。

ローゼマインの甘さ

ローゼマインは、そこまで非道な真似をするとは思えないと反論した。

しかしフェルディナンドは、だから君は甘いのだと冷たく返す。

ダンケルフェルガーは「貴族院を守る」とは言ったが、「ローゼマインを守る」とは一言も言っていない。

彼は、その言葉の違いを鋭く見抜いていた。

アウブ・ダンケルフェルガーへの逆提案

アウブ・ダンケルフェルガーは、今ユルゲンシュミットを救えるのはローゼマインしかいないと迫る。

だがフェルディナンドは、「一人ではない」と静かに返した。

そして突然、次期ツェントになるのはアウブ・ダンケルフェルガー自身だと宣言する。

ローゼマインは予想外の展開に完全に呆然としていた。

メスティオノーラの化身という建前

フェルディナンドは、ローゼマインはメスティオノーラの化身であり、その役目はグルトリスハイトを授けることであって、自らツェントになることではないと説明した。

つまり、ダンケルフェルガーがユルゲンシュミットを救えば、ローゼマインからグルトリスハイトを授けられる資格を得ることになる。

もし王族救出に失敗した場合、次代のツェントになる責任も全て背負うことになると突き付けた。

フェルディナンドは、ダンケルフェルガーの本気を試していたのである。

一晩の猶予

フェルディナンドは、ダンケルフェルガーへ第一夫人や領地内との相談、次期領主選定なども必要だろうと告げた。

さらに、アーレンスバッハ側も騎士達がまだ戻っておらず、今すぐ号令を出せる状態ではないと説明する。

そして、返答期限を翌日の三の鐘と定めた。

通信を切った後、フェルディナンドは「安易に他領の要請へ乗るな」とローゼマインを睨む。

休息を求めるフェルディナンド

ローゼマインは、それでも図書館が心配だと訴えた。

フェルディナンドは、ダンケルフェルガーは必ず動くから今は休めと説得する。

しかしローゼマインは、眠ればまた悪夢を見そうで怖いと漏らした。

フェルディナンドは、体力の限界が近いのだから休息が必要だと厳しく言い聞かせる。

レティーツィアの疲弊

夕食では、レティーツィアからディートリンデ関連の報告が行われた。

ランツェナーヴェ側からの接触や問い合わせについて、どう対応すべきか迷っていたらしい。

ローゼマインは余計な情報を与えず放置するよう指示した。

一方で、レティーツィア自身も心身ともに限界へ近付いている様子だった。

魚の塩焼き

食卓には、ローゼマインのために用意された白身魚の塩焼きが並んでいた。

フェルディナンドが、ローゼマインの好みをレティーツィアへ伝えていたのである。

香辛料の強いアーレンスバッハ料理の中で、その塩焼きだけは今のローゼマインでも問題なく食べられた。

ローゼマインは、その気遣いへ素直に感謝した。

レティーツィアへの祝福

食後、ローゼマインはレティーツィアへ感謝を込めてシュラートラウムの祝福を捧げた。

レティーツィアは、眠りたくても眠れない日々が続いていたらしく、祝福を受けた途端に眠気へ襲われる。

護衛騎士が慌てて支え、そのまま部屋へ運んでいった。

ローゼマインは、少しでも安らかな眠りを得てほしいと願っていた。

強制的な安眠

その後、フェルディナンドはローゼマインの視界を手で塞ぐ。

そして、同じくシュラートラウムの祝福をローゼマインへ与えた。

ローゼマインは抗う間もなく眠気へ呑まれ、そのまま抱き留められる。

フェルディナンドは、今夜は悪夢を見ることもないだろうと静かに告げた。

久しぶりの安眠

翌朝、ローゼマインは驚くほどすっきりとした気分で目を覚ました。

リーゼレータも、顔色が良くなったことへ安堵する。

側近達からは、フェルディナンドが昨夜のうちに現在の症状や対処法を説明してくれたと知らされた。

また、ダンケルフェルガーからの要請を受けた場合に備え、護衛騎士達は既に出陣準備へ入っているという。

国境門経由の移動計画

今回は、ランツェナーヴェ側を避けるため、国境門を経由して貴族院へ向かう予定らしかった。

そのためには、グルトリスハイトを持つローゼマイン自身の同行が必要になる。

しかし、ダンケルフェルガーから返答が来るまでは休息時間として与えられていた。

そしてリーゼレータは、アーレンスバッハの本を一冊用意してくれていた。

ダンケルフェルガーの決断

ダンケルフェルガーの決断

三の鐘が鳴ると、ダンケルフェルガーから緊急連絡が入った。ローゼマインとフェルディナンドが水鏡の前へ立つと、向こう側にはアウブ・ダンケルフェルガーだけではなく、第一夫人ジークリンデの姿もあった。

アウブ・ダンケルフェルガーは、貴族院とユルゲンシュミットを守り、王族を救うことを最優先とすると宣言した。そして、ダンケルフェルガーはツェントの剣であり、手段がある以上見過ごせないとして、ローゼマインへ正式に号令を要請した。

ローゼマインは、その覚悟へ感嘆しながら要請を受け入れる。

国境門を使った進軍計画

ダンケルフェルガー側は、貴族院にいる者達へ正統なツェント候補であることを示すため、グルトリスハイトを誇示しながら来てほしいと求めた。

ローゼマインは、国境門を利用して貴族院へ向かう予定だと説明する。かつての国境門再現の光景を見れば、誰の目にも正統性が明らかになるはずだった。

それを聞いたジークリンデも納得し、アウブ・ダンケルフェルガーは即座に騎士達へ命令を出そうとした。

情報共有の開始

しかしジークリンデは夫を制し、まずは双方の情報を摺り合わせるべきだと提案する。

フェルディナンドも同意し、アーレンスバッハ側は寮を閉鎖しているため、中央や貴族院の情報がエーレンフェスト経由でしか入ってこない現状を説明した。

そして、その情報源が研究最優先のヒルシュールであることも付け加えた。

王族側の初動

ジークリンデは、ローゼマインが本物のディッターを申し込んだ日、ジギスヴァルト王子から事情を聞いたツェントが、中央騎士団へ貴族院防衛を命じていたことを明かす。

さらに、各領地の寮監には、それぞれの寮で待機するよう命令が出ていた。

しかしヒルシュールは、その命令を「外へ出なければ良い」と独自解釈し、文官棟へ引き籠もったままだったらしい。

ダンケルフェルガーの待機

一方、ダンケルフェルガーでは、本物のディッターと国境門での待ち合わせに騎士達が盛り上がっていた。ジークリンデは、その熱気を抑えるだけでも大変だったという。

王族からの追加命令がないまま、有志達はアーレンスバッハへ向かい、その後も中央からの連絡はなかった。

やがてハンネローレから、ローゼマインがアーレンスバッハの礎を得たことと、エーレンフェスト防衛のためにダンケルフェルガーの有志を率いたいという報告が届く。

ツェントとの連絡不通

アーレンスバッハの戦いが終わったことを知らせようと、ダンケルフェルガーはツェントへ直通連絡を試みた。だが、通信は繋がらなかった。

アウブ・ダンケルフェルガーは、その時点では戦闘指揮中で不在なのだろうと判断したらしい。

しかし丸一日待っても何の連絡もなく、痺れを切らしたアウブはルーフェンへ連絡を取った。

ルーフェンの行動

ルーフェンは命令通り寮で待機していた。寮の外へ出ようとすると、アーレンスバッハの寮を見張る騎士達から叱責される状態だったという。

また、中央騎士団の知人へ連絡すると、王族は避難中で敵の姿もないという返答が返ってきた。

そのため王族側は、ダンケルフェルガーへ追加連絡する必要はないと判断していたようだった。

警戒解除と侵入者

その後、中央棟では警戒が解かれ、貴族院と中央には日常が戻った。

しかしその日の夕方、ヒルシュールから「余所者が貴族院へ入り込んでいる」という報告が届く。

ラオブルートはルーフェンへ、すぐに寮へ戻るよう命令した。

ラオブルートへの疑念

ルーフェンは文官棟へ向かう途中、ラオブルートへオルドナンツを飛ばした。警戒や戦闘へ参加させてもらうつもりだったのである。

その際、木立の中へ降りたオルドナンツを追って視線を向けたルーフェンは、黒いマントを纏った騎士達と、見知らぬ者達が集まっている場面を目撃した。

その中には、派手な髪飾りを付けた金髪の女性――ディートリンデもいた。

さらに、ラオブルート自身が見知らぬ者達へ木立に隠れるよう指示しているようにも見えた。

敵の正体が不明な状況

ルーフェンは即座にその場を離れ、教師達へ外出禁止のオルドナンツを送った。

しかし、ラオブルート側からは「余所者の捕縛は中央騎士団の役目だ」という返事が返ってくる。

第一夫人は、中央騎士団の一部だけが裏切っているのか、それとも全体が敵なのか判別できないと指摘した。

ツェントの命令で余所者を保護している可能性すら否定できないため、敵が誰なのか断定できないのである。

アダルジーザの離宮の存在

そこで第一夫人は、ランツェナーヴェの館から行き来できる別ルートについて尋ねた。

フェルディナンドは、ランツェナーヴェの館には、ランツェナーヴェの姫君が入る離宮へ繋がる転移陣があると説明する。

それは、かつて存在したアダルジーザの離宮だった。

離宮へ繋がる扉は、中央棟の最奥、隠蔽の神フェアベルッケンの印で隠されているという。

祠と離宮の位置

さらにフェルディナンドは、離宮自体もフェアベルッケンの祠の近くにあると資料に記されていたことを話した。

ローゼマインは、地下書庫で見た地図のおかげで、おおよその位置を把握していると説明する。

しかし、離宮へ入るには管理していた傍系王族の許可が必要であり、現在誰が管理しているのかは不明だった。

そのため、ディートリンデ達を受け入れた人物も特定できていなかった。

ラオブルートへの疑惑

ローゼマインは、ルーフェンの証言からラオブルートが怪しいと考えていた。

だがフェルディナンドは、証言がルーフェン一人だけでは言い逃れされる可能性があると冷静に指摘する。

第一夫人も、騎士団長程度の立場で離宮管理を任されるとは考えにくいと難色を示した。

判断材料が圧倒的に不足していたのである。

ダンケルフェルガーの奇襲決定

その空気を打ち破るように、アウブ・ダンケルフェルガーが大きく手を叩いた。

彼は、余所者が入り込んでいることだけは確実なのだから、本拠地らしき場所へ奇襲をかけるべきだと断言する。

しかも、全員が揃っていそうな深夜を狙うつもりだった。

証拠不足の話をしていたところへ突然奇襲を決定したアウブに、フェルディナンドは顔を顰め、第一夫人は額を押さえた。

他領との温度差

フェルディナンドは、他領との足並みを揃える必要があると確認した。

しかしアウブ・ダンケルフェルガーによれば、他領は「出立まで三日は必要」と消極的だった。

騎士達の招集や回復薬の準備、生活基盤の整備などに時間が必要だという。

その返答に、アウブ・ダンケルフェルガーは巨大魔獣討伐より呑気だと激怒したらしい。

ローゼマインは、むしろいつでも戦えるダンケルフェルガーの方が特殊なのだと感じていた。

ランツェナーヴェの脅威

アウブ・ダンケルフェルガーは、ディートリンデだけでなく、ランツェナーヴェ側の者達も脅威だと語る。

フェルディナンドは、ランツェナーヴェへ送られる姫君達は王族と交わって魔力の高い子を産み、その中でも優秀な者はシュタープを得て帰国していたと説明した。

さらに、今回貴族院へ向かった者達の中には、シュタープを持ち、ランツェナーヴェ王となるために育てられた者がいるという。

その者は、登録メダル次第ではいつグルトリスハイトを手に入れてもおかしくない存在だった。

深夜奇襲の宣言

その説明を聞いたアウブ・ダンケルフェルガーは、もはや猶予はないと断言する。

他領が参加しなくとも構わない。今夜、離宮へ奇襲を仕掛け、ランツェナーヴェの者達を討つと宣言した。

そして彼は、騎士達は寮から騎獣で離宮へ向かい、疾風の女神シュタイフェリーゼより速く駆けるのだと力強く告げた。

祝福と出発

ダンケルフェルガーの出撃決定

アウブ・ダンケルフェルガーは言いたいことだけを言い切ると通信を終えた。水鏡を見つめながらローゼマインが呆れていると、フェルディナンドは、いかにもダンケルフェルガーが好みそうな言葉だと評した。

さらにフェルディナンドは、ラオブルートが中央騎士団を利用して暗躍している可能性を放置できないと判断し、ランツェナーヴェの問題は早急に片付ける必要があると語った。

その一方で、本来はエーレンフェストが動いている間に、ランツェナーヴェ側か王族側のどちらかが片付いていることを期待していたとも漏らした。

ローゼマインは、その物騒な本音に恐怖を覚えながらも抗議した。

戦闘準備の開始

フェルディナンドはすぐに指示を出し始めた。戻った騎士達には七の鐘まで休息を命じ、貴族街の騎士や文官には出発直前まで戦闘準備を整えるよう伝えさせる。

また、ハルトムートとクラリッサを中心に、回復薬や魔術具の作製が進められていることも確認した。

彼等が実際にはローゼマイン用の魔術具を優先して作っていることを知り、ユストクスは苦笑していた。

ローゼマインへの留守番命令

フェルディナンドは、今夜の戦いにローゼマインは参加せず留守番するよう命じた。

ローゼマインには国境門から貴族院の転移陣を動かして騎士達を送り届けた後、アーレンスバッハへ戻る役目だけを任せるという。

ローゼマインは戦場へ出なくて済むことに安堵する一方、自分こそがアウブ・アーレンスバッハであり、外患誘致を訴えた張本人なのだから、全てを他者へ任せて良いのかという焦燥感を覚えた。

アウブとしての責任

ローゼマインは、ランツェナーヴェやディートリンデを捕らえるのは、本来アウブ・アーレンスバッハである自分の役目ではないのかと問い返した。

フェルディナンドも、本来ならばアウブとして赴くべきだと認める。だが、現在のローゼマインの精神状態では賛成できないと答えた。

しかしローゼマインは、仕事を全てフェルディナンドへ押し付けるつもりはないと強く反論した。

フェルディナンドへの眠りの祝福

ローゼマインは、最も休息が必要なのはフェルディナンド自身だと考えていた。

準備自体はハルトムート達でも可能であり、フェルディナンドには眠ってほしいと語る。

そう言いながらシュタープを取り出したローゼマインは、夢の神シュラートラウムへ祈りを捧げ、フェルディナンドへ心地良い眠りを与える祝福をかけた。

フェルディナンドは「この馬鹿者」と呟きながらも、すぐに深い眠りへ落ちていった。

隠蔽された離宮への対策

フェルディナンドが眠った後、ローゼマインはハルトムート達と共に、フェアベルッケンによって隠蔽された離宮を探す方法について議論した。

ハルトムートは、助言の女神アンハルトゥングの力で隠蔽を暴けるのではないかと考える。

さらにレオノーレは、逆にフェアベルッケンの印を自分達も使えば、敵に気付かれず隠密行動ができると提案した。

ローゼマインはメスティオノーラの書を検索し、使えそうな魔法陣を選び出してハルトムートへ渡した。

通信魔術具の研究

ハルトムートは、オルドナンツに使われているオルドシュネーリの魔法陣を改良すれば、戦場で双方向通信が可能になるかもしれないと考えた。

その着眼点に感心しながら、ローゼマインは再びメスティオノーラの書で古い魔法陣を検索していく。

ハルトムートへの気遣い

ローゼマインは、ハルトムート自身もかなり寝不足なのではないかと気付いた。

ハルトムートは冗談めかして、自分にもシュラートラウムの祝福を与えてくれるのかと尋ねる。

クラリッサも期待した様子を見せたため、ローゼマインは祝福を惜しまないと答えた。

しかしハルトムートは、今は側近を減らせないとして休息を後回しにした。

フェルディナンドの目覚め

フェルディナンドは予想よりも早く、五の鐘前には目を覚ました。

ローゼマインは、どんな夢を見たのか尋ねる。自分は素敵な図書館で本を読む夢を見たと嬉しそうに語った。

だがフェルディナンドは、特に何ということもない夢だったと素っ気なく返した。

ローゼマインは、祝福に込めた祈りが足りなかったのではないかと首を傾げる。

フェアベルッケンの印の活用

準備状況を確認したフェルディナンドは、フェアベルッケンの印を利用した隠密行動案を高く評価した。

ただし、自分達よりもむしろダンケルフェルガーの騎士達へ与えるべきだと判断する。

ローゼマイン達は国境門を使う時点で非常に目立つため、完全な隠密行動は不可能に近いからである。

レティーツィアからの申し出

その後、ローゼマインはレティーツィアから、即死の毒について戦闘前に話したいという申し出があったことを伝えた。

ランツェナーヴェの情報は貴重であり、フェルディナンドも話を聞くことを了承する。

リーゼレータ達によって急ぎお茶と軽食の準備が整えられ、盗聴防止の魔術具も作動された。

毒への対抗薬

レティーツィアは、ランツェナーヴェの者達が、自分達へ毒が効かないようにする薬を持っていると説明した。

それは土産として渡される菓子に酷似しており、中心部にわずかな苦味があるという。

レティーツィア自身も、供給の間へ向かう前にディートリンデとレオンツィオからそれを食べさせられていた。

領主執務室での惨劇

その後、レオンツィオは領主執務室で毒を使用した。

レティーツィアと毒見役のフェアゼーレ以外、居合わせた上級貴族達は一瞬で倒れたという。

ローゼマインは、その光景を想像しただけで吐き気を覚えた。

レティーツィアは最後に、ランツェナーヴェの者達は自分達を魔力の塊程度にしか見ていないと悔しげに語った。

レティーツィアへの配慮

ローゼマインは、レティーツィアこそ深刻な心の傷を負っていると感じていた。

だがフェルディナンドは、彼女が自分へ毒を向けた罪人でもある以上、その扱いは後回しにすると断言する。

今は、これ以上犠牲者を増やさないためにランツェナーヴェ側を捕らえることが優先だった。

再びの祝福

ローゼマインが仮眠へ向かおうとすると、フェルディナンドはハルトムートへの祝福は自分が代わりに行うと言った。

そして、自室へ戻るローゼマインへ、再びシュラートラウムの祝福を与える。

今回は急激な眠気こそなかったものの、夢見は非常に良かったため、ローゼマインは今後も毎日してほしいと密かに思った。

出陣前の演説

仮眠から目覚めると、出撃準備は完了していた。

訓練場には、アーレンスバッハの騎士約八十名と、護衛騎士や文官達が整列している。

フェルディナンドは、彼等へ休息不足の中での戦いになることを認めつつ、アーレンスバッハへ平穏を取り戻すため、外国と結託した者達を捕らえなければならないと語った。

騎士達は熱気を帯びた返答で応じる。

騎士達への祝福

続いてローゼマインが前へ出た。

彼女はシュタープを掲げ、水の女神フリュートレーネとその眷属、火の神ライデンシャフトとその眷属、風の女神シュツェーリアとその眷属達の加護を騎士達へ与える祝福を重ね掛けした。

フェルディナンドは途中で止めようとしたが、ローゼマインは拒否する。少しでも生存率を上げたかったからである。

国境門への移動

祝福を終えると、一行は騎獣へ乗って出発した。

夜空と海の境界も曖昧な暗闇の中、ローゼマインはフェルディナンドの騎獣へ同乗し、説教を受けながら回復薬を飲む。

フェルディナンドは、無茶な祝福で体へ大きな負担をかけたことを叱責した。

しかしローゼマインは、魔力は回復できても命は戻らないのだから、自分が無理をすることに問題はないと反論した。

国境門の起動

ローゼマインはアウブとして境界門を開き、さらにメスティオノーラの書を使って国境門を開いた。

騎士達は海上の扉から順に内部へ入り、最後にエックハルトが殿として入場する。

その後、フェルディナンドは他者の視線がなくなると、メスティオノーラの書を取り出した。

ローゼマインが、自分は隠れ蓑なのかと尋ねると、フェルディナンドは、派手に聖典を光らせて注意を引いてくれれば良い、自分は闇を呑む役目を担うのだと答えた。

転移陣の発動

国境門へ降り立ったローゼマインは、転移陣へ騎士達を整列させる。

全員が並んだことを確認すると、画面上の魔法陣を選択し、「ケーシュルッセル エアストエーデ」と唱えた。

全属性の光を放つ魔法陣が空中へ浮かび上がり、転移陣が起動する。

上下から魔力を吸い上げられながら、視界は白い光に包まれ、転移特有の浮遊感が一行を包み込んだ。

エピローグ

最後の石板と貴族院への侵入発覚

ジェルヴァージオは最後の石板を手に入れ、祠巡りを終えた安堵を感じていた。だが、ディートリンデに急かされ、祠を清めた後でその場を離れる。

その直後、エーレンフェストの寮監ヒルシュールから、見知らぬ者が貴族院へ侵入しているというオルドナンツが届いた。

ラオブルートは即座に木立へ隠れるよう指示し、中央騎士団が捜索と捕縛を行うと返答する。さらに各寮監へ外出禁止を伝え始めた。

ダンケルフェルガーからの介入

続いてダンケルフェルガーの寮監ルーフェンから、警戒や戦闘へ参加したいという申し出が届いた。

ラオブルートは中央騎士団の役目だと断りつつ、勝手に動くなと苛立ちを見せる。

さらにソランジュからも連絡が入り、ラオブルートがオルタンシアの荷物を引き取りに来る予定であることを確認された。

ラオブルートは、オルタンシアの死はまだ内密にしてほしいと頼みつつ、ヒルシュールには自分から説明すると答えた。

図書館へ向かう決断

ラオブルートは、祠巡りが終わった以上、急いで動くべきだと判断した。

彼は司書寮に置かれている妻オルタンシアの荷物を引き取りに行く名目で、ジェルヴァージオを図書館へ誘う。

ジェルヴァージオは、ソランジュへ挨拶するのも良いだろうと同行を決めた。

一方、ディートリンデも同行を希望したが、顔が知られ過ぎていて誤魔化しが利かないため却下された。

ラオブルートは、自分達が囮となることでディートリンデを安全に離宮へ戻すのだと説明した。

ダンケルフェルガーへの警戒

図書館へ向かう途中、ジェルヴァージオはラオブルートに、先程のオルドナンツは問題ないのかと尋ねた。

ラオブルートは、ダンケルフェルガーが異変へ気付いてツェントへ問い合わせたり、介入したりする可能性があると説明する。

だからこそ、彼等が本格的に動く前にグルトリスハイトを手に入れる必要があるのだと語った。

さらに、グルトリスハイトさえ得られれば、ダンケルフェルガーを後ろ盾へ取り込める可能性もあると考えていた。

貴族院への郷愁

文官棟近くの東屋へ差しかかると、ジェルヴァージオは昔と変わらぬ景色へ懐かしさを覚えた。

図書館で本を読んだ後、東屋で食事や茶を楽しんでいた日々を思い出したのである。

ラオブルートもまた、初めて護衛騎士として配属され、ジェルヴァージオに図書館へ連れ出された時のことを懐かしそうに語った。

アダルジーザの離宮の記憶

二人は、アダルジーザの離宮にいた頃の話を交わした。

ラオブルートは、本来ヴァラマリーヌ個人の護衛として配属されたと思っていたが、実際にはレーヴェライア全体を担当する護衛騎士だったと振り返る。

アダルジーザの離宮では、子供達が花、蕾、庭師、実に分類されて育てられていた。

ジェルヴァージオ自身も、本来ならば魔石になる運命の「実」だったが、次期王候補として選ばれたことで生き延びた存在だった。

ラオブルートの忠誠

ラオブルートは、今でもジェルヴァージオ以上にツェントへ相応しい者はいないと本気で考えていた。

生まれではなく能力で評価されるべきだという価値観を持つ彼は、優秀でありながら正当な扱いを受けなかったジェルヴァージオへ強い同情と忠誠を抱いていたのである。

その忠誠の背景には、ヴァラマリーヌを守れなかった後悔や、王族への怒りも複雑に絡んでいた。

図書館への到着

一行は貴族院図書館へ到着した。

ラオブルートがオルタンシアの登録魔石を用いて扉を開くと、シュバルツとヴァイスが出迎える。

さらにソランジュも現れ、久しぶりの再会を喜んだ。

ソランジュは、療養のため遠くへ行ったと聞いていたジェルヴァージオが元気そうで安心したと語る。

地下書庫の鍵探索

ラオブルートはオルタンシアの荷物を引き上げたいと告げ、司書寮へ案内される。

しかし本当の目的は、地下書庫へ入るための鍵を探すことだった。

オルタンシアの部屋を調べたものの鍵は見つからず、ジェルヴァージオ達はソランジュから直接聞き出す必要に迫られる。

ソランジュへの拘束

その時、ヒルシュールからソランジュ宛のオルドナンツが届いた。

返事をしようとしたソランジュの手を、ラオブルートは手枷の魔術具で拘束する。

ジェルヴァージオは、今は外部と連絡されると困るのだと説明した。

さらに地下書庫の鍵の在処を教えるよう求め、拒否すれば側仕えが酷い目に遭うと脅す。

ラオブルートが剣を出して圧力をかけると、ソランジュは蒼白になりながら案内を承諾した。

地下書庫への侵入

ソランジュは執務室で管理していた鍵を取り出し、ジェルヴァージオ達は自らの魔力を登録し直した。

その後、ソランジュを縛り上げ、シュバルツとヴァイスの案内で地下書庫へ向かう。

白い空間の奥にある金属質の壁へ三つの鍵を差し込むと、壁が回転して書庫への道が開かれた。

神秘的な光景を前に、ジェルヴァージオはついにグルトリスハイトへ辿り着けるのだと期待を高めた。

フェルディナンドへの憎悪

地下書庫へ進みながら、ラオブルートは、セラディーナの子であるフェルディナンドへグルトリスハイトを渡すわけにはいかないと語った。

フェルディナンドが離宮から逃れたことで、ヴァラマリーヌは花として本館へ戻され、最終的に政変時には処刑されたのである。

ラオブルートは、アダルジーザの犠牲を理解しないフェルディナンドへの強い憎悪を抱いていた。

王族資格の壁

さらに奥へ進んだジェルヴァージオは、王族のみが入れる扉の前へ立った。

しかし彼は魔法陣に弾かれ、内部へ入ることができない。

傍系王族へ戻っていても、直系王族ではないため資格が不足していたのである。

ジェルヴァージオは、生まれだけで優遇される直系王族との差を改めて思い知らされた。

英知の女神像への到達

地下書庫から戻った後、ジェルヴァージオはローゼマインが図書館二階で行方不明になったという情報を思い出し、そこへ向かった。

閲覧室を調べる中で、彼は英知の女神メスティオノーラ像へ目を留める。

グルトリスハイトは、メスティオノーラの神具を写したものだと考えたからである。

神具へ手を触れると、突然魔力が吸い上げられ始めた。

ジェルヴァージオは抵抗せず魔力を注ぎ込み続ける。すると脳裏へ魔法陣と言葉が浮かび上がった。

「グルトリスハイト」と呟いた瞬間、ジェルヴァージオの姿はその場から消失した。

エーレンフェスト防衛戦(後半)

シャルロッテ 後方を担う者

シャルロッテによる後方支援の確認

シャルロッテは完成した回復薬や魔術具を受け取り、厨房近くで戦地への輸送を担うブリュンヒルデの元を訪れた。

城では非常事態を受け、女性達にも騎獣服の着用が推奨されており、シャルロッテも簡易防具を身につけて行動していた。普段通りの日常が失われている現状を痛感しながらも、彼女は後方支援の状況確認を優先した。

ブリュンヒルデは、料理や回復薬、魔術具を戦地へ送り続ける役目を一人で引き受けていた。これは本来フロレンツィアが担っていた仕事だったが、ゲオルギーネ襲撃時には隠し通路の出入口で待機する必要があるため、引き継がれていたのである。

次期領主としての重責

シャルロッテは、緊急時にはカルステッドと共に行動するようアウブから命じられていた。これは、ヴィルフリートではなくシャルロッテを次期領主として認めたことを意味していた。

礎の魔術について教えられた彼女は、自分より神事に関わるメルヒオールの方が領主に向いていると思いつつも、現実的には自分が役目を担うしかないと理解していた。

一方で、ヴィルフリートの側近達は突然の扱いの変化へ動揺していた。ローゼマインの王族入りや婚約解消、ヴィルフリートの降格などが伏せられていたためである。

ライゼガング系貴族への配慮

キルンベルガの騎士達が広めた噂により、ローゼマインがグルトリスハイトを持つことや、王族との関係が貴族達へ広まり始めていた。

その結果、ヴィルフリートとローゼマインの婚約解消や、シャルロッテが次期領主候補として扱われていることも察され始めていた。

ブリュンヒルデは、ライゼガング系貴族に領主一族の方針を周知しておくことは必要だと考えており、ヴィルフリート派との不要な対立だけは避けるべきだと助言した。

援軍と補給問題

ゲオルギーネ側の攻撃はイルクナー周辺だけでなく、ゲルラッハ方面にも及び始めていた。敵は各地で戦力を分散させ、エーレンフェストを疲弊させようとしていたのである。

そこへキルンベルガに続き、ハルデンツェルからも援軍が到着した。

しかし騎士の増加は食料や回復薬などの消耗増加も意味していた。シャルロッテは補給への不安を抱き、ライゼガングへ支援を求めるようブリュンヒルデへ依頼する。

ブリュンヒルデは既にギーベ達へ働きかけており、本日中に転移陣を通じた支援体制が整う予定だと説明した。

領主執務室での指揮

見回りを終えたシャルロッテは、騎士団の司令部となっている領主執務室へ戻った。

そこでは騎士、文官、側仕え達が戦闘準備に追われており、アウブ・エーレンフェストであるジルヴェスターも鎧姿で指揮を執っていた。

シャルロッテは調合室や厨房、城内の異常がないことを報告する。ジルヴェスターは、ライゼガングから食料支援が届くことを喜んだ。

怪しい船の出現

その時、イルクナーから不審な報告が届いた。二日前にライゼガングを出た商船へ、貴族らしき集団が乗り込んでいるというのである。

通常、貴族が商船を使うことはない。領主執務室には緊張が走った。

シャルロッテは、二日前なら既に到着している可能性もあると指摘し、礎を守るためにジルヴェスターへすぐ礎の間へ向かうよう進言した。

ジルヴェスターはそれを受け入れ、カルステッド達へシャルロッテを支えるよう命じ、自ら礎の間へ向かった。

シャルロッテによる指揮開始

残されたシャルロッテは、自分が後を任されたと宣言し、騎士達へ指示を出し始めた。

西門への警備強化、ハルデンツェル騎士の配置変更、貴族街の防衛体制などが次々と決められていく。

そこへライゼガングから追加の報告が届き、不審な船は四の鐘頃に到着予定だと判明した。

ダームエルからも、貴族街や神殿への避難開始を求める連絡が入る。

各地への連絡と避難

シャルロッテはフロレンツィアやブリュンヒルデ、メルヒオールへ次々とオルドナンツを飛ばした。

メルヒオールは神殿内の避難を進めており、姉へ互いに頑張ろうと伝える。彼の声は緊張した空気をわずかに和らげた。

さらにヴィルフリートからは、自分がシャルロッテを守りに行くという連絡が届く。

しかし側近達への情報漏洩を警戒していた騎士達は、ヴィルフリートへキルンベルガ騎士団の指揮を任せ、貴族街東側の守備を担当させる案を出した。

シャルロッテもそれを了承し、ヴィルフリートへ援軍指揮を依頼した。

ゲルラッハの危機

その最中、ジルヴェスターからゲルラッハへの援軍要請が届いた。敵戦力が圧倒的であり、本命がゲルラッハだと疑われる状況だった。

イルクナーで戦闘中のボニファティウスはすぐ動けず、周辺ギーベ達も自領防衛を理由に消極的だった。

エーレンフェストの戦力を分散させる敵の狙いが明確になり、シャルロッテは恐怖と重圧で震え始める。

ダンケルフェルガーの援軍到着

そんな中、ダンケルフェルガーの指揮官ハイスヒッツェから手紙が届いた。叔父とダンケルフェルガー有志の騎士達が境界門へ到着間近であり、エーレンフェストへの立ち入り許可を求める内容だった。

シャルロッテは間に合ったことへ強い安堵を覚える。

騎士達は、フェルディナンドが自分の手紙が妨害される可能性を考慮し、ダンケルフェルガー側にも同内容を送らせたのだろうと推測した。

シャルロッテは急ぎ返答を作成し、ゲルラッハへ援軍を送ってほしいこと、武力行使を許可することなどを書き記した。

中央からの問い合わせ

その後、中央から「アーレンスバッハやランツェナーヴェの者達はいつ到着するのか」という呑気な問い合わせが届いた。

シャルロッテは呆れつつも、ジルヴェスターへ判断を仰ぐ。

ジルヴェスターは、中央が騒乱に巻き込まれていないなら後回しで良いと答え、エーレンフェスト防衛を優先するよう命じた。

戦いの開始

四の鐘が近付き、各門や神殿、貴族街から続々と配置完了の報告が届いた。

ブリュンヒルデは輸送完了を報告し、ボニファティウスがゲルラッハで強敵の気配を感じていると伝える。

さらにジルヴェスターからは、ローゼマインがフェルディナンドと合流し、ゲルラッハへ到着したとの連絡も入った。

シャルロッテはローゼマインの迷いない姿を思い出し、自分も次期領主として恥じない戦いをしようと決意する。

そして四の鐘が鳴り、西門から銀色の衣をまといヴォルヘニールを連れた不審者達を発見したとの報告が届いた。こうして、エーレンフェストの礎を巡る本格的な戦いが始まったのである。

レクル 西門の戦い

西門への敵襲

ライゼガングから到着した商船から、銀色の布を纏った怪しい貴族達が姿を現した。彼等は周囲の者を当然のように退かせながら進み、一目で異質だとわかる集団だった。

船着き場ではダームエルと兵士達によって事前に注意喚起が行われており、平民達は距離を取りながら敵を観察していた。銀色の布の下には別の装備が隠されており、さらにヴォルヘニールまで連れていることが判明すると、待機していた騎士達にも緊張が走った。

平民兵士達の恐怖

兵士達は汚物入りの桶と柄杓を持って待機していた。敵の銀色の布を脱がせるため、汚物をぶちまける役目を与えられていたのである。

レクルは戦いへの恐怖で震えていた。貴族同士の戦いへ平民が駆り出される現実に、本能的な恐怖を覚えていたのである。

そんな中、ギュンター班長だけは敵意を剥き出しにしていた。その表情を見たレクルは、かつてギュンターが士長へ殴りかかった時のことを思い出す。

ギュンターの怒り

ギュンターの娘は、かつて門でオットーの助手をしていた少女だった。だが、士長の嫌がらせによる情報隠蔽の結果、余所の貴族に殺され、遺体すら戻らなかった。

その娘こそ、後にローゼマインと呼ばれることになる少女だった。

レクルは、ギュンターが娘の仇討ちのつもりで戦おうとしていることに気付き、恐怖を覚える。貴族へ突っ込めば死ぬのは班長の方だと思ったのである。

汚物作戦の開始

四の鐘が鳴ると、敵は西門へ踏み込んできた。隠れていた騎士達の号令と共に、ギュンター達兵士は一斉に汚物を敵へ浴びせかける。

怒号を上げる敵へ、兵士達は次々と汚物をぶちまけた。さらに石や刃物まで投げつけられ始める。銀色の布は魔術を防ぐが、普通の武器は通用するからだった。

やがて敵は怒りながら銀色の布を脱ぎ捨てた。これこそが汚物攻撃の狙いだった。

敵との直接対峙

レクルが頭へ汚物を命中させた敵は、白い仮面の奥から激怒した視線を向けてきた。

敵はシュタープを構え、魔術を放とうとする。恐怖で腰を抜かしたレクルへ向けて緑の光が膨れ上がった。

その瞬間、隠れていた騎士達が一斉に飛び出し、ダームエルが身を挺してレクルを庇った。

ヴォルヘニールとの戦い

銀の布を脱ぎ捨てた敵達と騎士達による本格的な魔術戦が始まる。同時に解き放たれたヴォルヘニール達が、平民兵士へ襲いかかった。

巨大化した黒犬がレクルへ飛びかかり、その頭を食い千切ろうとした瞬間、ギュンターが拳で殴りつけて阻止する。

しかしヴォルヘニールはギュンターの腕へ噛みついた。直後、低い爆発音と共に黒犬が爆散する。

ダームエルは、それがローゼマインから与えられたお守りの効果だと説明した。

ギュンターの暴走

お守りの力を知ったギュンターは、逆にヴォルヘニールへ自ら飛び込んでいくようになる。

ダームエルは兵士へ下がれと命じるが、ギュンターは街を守るのが自分の仕事だと叫び、黒犬へ突撃した。

ダームエルはギュンターを庇いながら必死に戦い続ける。だが、敵側の指揮官はギュンターがお守りでヴォルヘニールを倒していることに気付き、魔術で直接始末しようとした。

グラオザムの撃破

敵の魔力攻撃が放たれると、ギュンターは逆にその光へ向かって駆け出した。

光に呑まれながらも、彼の蹴りは敵指揮官の腹へめり込み、相手は呻きながら倒れ込む。

ダームエルが急いで手枷を嵌め、仮面を剥がした瞬間、その正体が元ギーベ・ゲルラッハのグラオザムだと判明した。

ダームエルは興奮しながら、これは大手柄だと叫んだ。

西門防衛戦の終結

敵指揮官が捕縛されたことで戦況は一気に傾き、西門での戦闘は終息へ向かう。

兵士側に死者は出なかった。負傷者は多数いたものの、貴族との戦いで死人が出なかったこと自体が奇跡に近かった。

ギュンターは、家族から渡されたお守りは使い切ったが、ローゼマインから最後にもらった一つが残っていたのだと語った。

レクルは、ダームエルが逃げろと言っていたのに班長が無視しただけだと呆れながらも、その無茶のおかげで街が守られたことを理解していた。

続く戦い

戦闘後、兵士達は怪我人の搬送と門の清掃を命じられた。敵の船に残党がいる可能性もあり、騎士達は確認へ向かっていた。

見習い達は戦いを見世物のように騒いでいたが、ギュンターは騎士達の戦いはまだ終わっていないと指摘する。

その視線の先では、神殿や北門上空に騎獣達が集まり、様々な魔術の光が飛び交っていた。エーレンフェストの戦いは、まだ終わっていなかったのである。

ユーディット 残された者

神殿への避難開始

三の鐘が鳴って間もなく、ダームエルから昼までに避難を完了させるよう指示するオルドナンツが届いた。

フィリーネは緊張でシュタープを震わせ、返答すら難しい状態になっていた。ユーディットは、その動揺が灰色神官達へ伝われば神殿全体が混乱すると危惧し、自分もローデリヒへオルドナンツを飛ばして避難準備を進めた。

さらにカジミアールの指示を受け、ユーディットはフィリーネへ同行しながら孤児院で避難を呼びかける。訓練通りに行動するよう声をかけ続けたことで、フィリーネも徐々に落ち着きを取り戻していった。

神殿門の封鎖

やがて騎士団から派遣された騎士達が次々と神殿へ到着した。

ユーディットは騎獣で裏門へ向かい、灰色神官達へ避難を命じる。彼等が孤児院へ移動した直後、神殿の大門は重々しい音を立てて閉鎖された。

閉ざされていく門を見ながら、ユーディットは神殿もまた貴族のための施設なのだと改めて実感した。

戦闘特化シュミルの起動

裏門へ到着した騎士達へ、ユーディットはローゼマインが作製した戦闘特化型シュミルの魔術具を説明した。

ピンク色の可愛らしいシュミル達は、一見すると強そうには見えなかった。しかしユーディットは、元になった図書館の魔術具がダンケルフェルガーの騎士達を蹴散らした実績を持つと語る。

さらに、想定以上の敵が来た場合や、騎士達が戦闘不能になった時のため、敵を容赦なく殺害する仕様だと説明した。

騎士達は驚きながらも、ユーディットから味方登録や起動方法を教わっていった。

役目への葛藤

ユーディットは、他の側近達がそれぞれ重要任務を与えられていることを思い出していた。

グーテンベルク達の避難はダームエル、図書館の守りは側仕え達、孤児院はフィリーネが任されている。対して自分は遊撃扱いで、具体的な役目を持たされていないように感じていた。

さらに、ローゼマインがアーレンスバッハへ向かった際、自分だけ同行を許されなかったことも悔しさとして残っていた。

父親からは、ローゼマインが大事にしているものを守るのも護衛騎士の役目だと諭されていたが、それでもユーディットはダームエル達への羨望を抑えきれなかった。

西門の戦闘開始

四の鐘が近付く頃、下町では避難が進んでいた。そんな中、ダームエルから西門に敵襲があったとの連絡が届く。敵は銀色の布をまとっていた。

ユーディットは神殿担当として裏門を守るよう命じられていたが、西門で戦うダームエル達を羨ましく思っていた。

しかし、かつて護衛騎士としての役目を勘違いし、任務を疎かにした経験を思い出し、自分に与えられた役目を果たそうと決意する。

北門への不審な動き

下町を監視していたユーディットは、避難の流れに逆らうように北側へ向かう荷馬車へ気付いた。

さらに、その荷馬車から降りたと思われる者達が建物の陰に隠れながら北上している様子も確認する。

ユーディットは、西門の襲撃は陽動であり、本命は北門や神殿かもしれないと推測した。

その報告を受けた騎士達は北門へ警告を飛ばし、ユーディット自身も騎士団長へオルドナンツを送る。

北門での戦闘

やがて北門付近で騎士達が不審者へ声をかけた瞬間、相手は騎獣を出して上空へ飛び上がった。

北門上空では即座に戦闘が始まり、ロートが打ち上げられて援軍が呼ばれる。

さらに城の隠し通路にも敵が現れたとの連絡が入り、神殿や貴族街も危険な状況に陥っていた。

神殿裏門への侵入

その直後、神殿裏門で爆発音が響いた。

大門自体は無事だったが、人用の通用口が魔術具によって爆破され、敵が侵入を開始したのである。

敵は白い粉を撒き散らした。ランツェナーヴェの毒を知っていたユーディットは、即座にヴァッシェンを唱えて騎士達を洗い流す。

さらにハルトムートとクラリッサが作製した、虫や刺激物入りの魔術具で反撃した。魔力によらない攻撃だったため、銀色の布をまとった敵にも効果があった。

毒の影響と回復

しかしユーディット自身も毒を吸い込んでおり、呼吸困難と体の重さを感じ始めていた。

慌てて再びヴァッシェンを使い、自分へユレーヴェを飲む。

オーディスはロートを上げ、シュミル達へ敵殲滅を命じた。

シュミル達の虐殺

閃光弾によって騎士達が倒れる中、ピンク色のシュミル達が敵へ突撃する。

敵が困惑する間もなく、シュミル達は黄金の鎌で次々と敵を切り裂いた。

返り血を浴びながら振り返る可愛らしいシュミル達の姿は、敵だけでなく騎士達すら恐怖させるほど異様だった。

逃げようとした敵も、水色とピンクのシュミルに挟み撃ちにされ、一瞬で切り伏せられていく。

ゲオルギーネの侵入

だが、一人だけシュミルの判別をすり抜け、神殿内部へ侵入した者がいた。

銀色の布によって魔力を感知できず、シュミル達が敵と認識できなかったのである。

ユーディットは急いでオルドナンツを飛ばし、侵入者の存在を報告した。

その後、回復に努めていたところへ、デドリックから連絡が届く。侵入者の正体はゲオルギーネであり、罠にかかった末に白の塔へ転移させられたという。

騎士達は快哉を叫び、神殿防衛成功を喜んだ。

グラオザムの死とマティアスへの不安

敵の武装解除を進める中、ユーディットは倒れていた男がグラオザムだと気付く。

グラオザムはマティアスの父親だった。ユーディットは、自分達の魔術具が彼の父を殺した事実に胸を痛める。

しかし周囲の騎士達は、名捧げで連座を免れたマティアス達も危険だと語り、この機会に処刑した方が良いのではないかと口にした。

ユーディットは激しく反発する。マティアス達は家族を告発して領地を守った功労者であり、彼等がどれほど苦悩したか理解していないと訴えた。

だがオーディスは、今回の襲撃で犠牲が出た以上、彼等への風当たりはさらに厳しくなるだろうと現実を語った。

ローゼマインへの想い

騎士達が去った後、ユーディットは返り血を浴びたシュミル達へヴァッシェンをかけた。

血も痕跡も一瞬で消え去る様子を見ながら、マティアス達の苦悩や、貴族達の悪意もこのように簡単に消えれば良いのにと願わずにはいられなかった。

そしてユーディットは初めて、ローゼマインがエーレンフェストを離れることになって良かったのかもしれないと思う。

マティアス達が中央へ同行できることが、少しでも彼等の救いになるようにと、ユーディットは神々へ祈りを捧げた。

フロレンツィア 白の塔で

城内での警戒体制

ボニファティウスがイルクナーへ出陣して以降、城内は常に緊迫した空気に包まれていた。戦況報告が絶えず届き、騎士達への物資補給も続いていたため、戦いが身近に迫っていることを誰もが実感していた。

フロレンツィアは、各部署を巡回しながら隠し通路の確認や不審者の監視を進めていた。ゲオルギーネへ密かに名を捧げた者が城内に残っている可能性を完全には否定できなかったためである。

特別室の監視

名捧げによって処刑を免れた旧ヴェローニカ派の者達は「特別室」に集められていた。現在そこにはバルトルト、カサンドラ、ミュリエラの三人が隔離され、常時監視されていた。

ゲオルギーネ襲撃時に彼等が協力者となる可能性が危惧されていたためである。

一方、神殿にいる青色見習い達は隔離されていなかった。メルヒオールの側近であるカジミアールと灰色神官達による監視の方が安全だと判断されたためだった。

ヴィルフリート周辺への懸念

フロレンツィアは、まだ幼い旧ヴェローニカ派の子供達が利用されることを強く危惧していた。

特にバルトルトは柔和な態度で周囲を操る傾向があり、貴族院で一年生達を危険へ巻き込んだ疑いもあった。

レーベレヒトは、バルトルトを泳がせてヴィルフリートへ責任を取らせる構想も持っていたが、フロレンツィアは現状でそれを実行すれば多くの未成年者が処刑対象になると反対した。

ミュリエラの言葉

監視者の報告によると、バルトルトは不満を募らせ、アウブやヴィルフリートとの面会を求めていた。カサンドラも兄へ同調していたが、ミュリエラに諭されてからは大人しくなったという。

ミュリエラは、そこまで監視が嫌なら自死すれば良い、領主一族は本来処刑されるはずだった自分達を生かそうとしているのに何故理解しないのか、と痛烈に言い放ったのである。

その物言いに、フロレンツィアはエルヴィーラの影響を感じ取っていた。

隠し通路の改装

ゲオルギーネが旧領主一族として隠し通路を知っていることを受け、城では秘密裏に隠し通路の改装が行われていた。

新しい通路の構造を知っているのは領主夫妻とシャルロッテのみであり、古い通路には罠が仕掛けられていた。

罠の作製にはレーベレヒトだけでなく、オリスワルト、ハルトムート、クラリッサまで参加していた。フェルディナンドの残したレシピやダンケルフェルガーの攻撃用魔術具の知識も活用されていた。

ライゼガングからの急報

その最中、ライゼガング発の商船にゲオルギーネ達が乗っている可能性があるとの報告が届いた。

フロレンツィア達は即座に騎士達へ警戒を命じ、回復薬の追加準備も指示する。

さらにシャルロッテから、四の鐘に敵襲があるとの情報も届いた。フロレンツィアは娘の武運を祈りながら、自身も隠し通路防衛へ向かった。

子供達への指示

フロレンツィアは、幼い末娘ヘンリエッテを隠し部屋へ避難させるよう命じた。

また、ヴィルフリートから出陣許可を求めるオルドナンツが届く。

フロレンツィアは、銀色の布を纏う敵には魔術が効かないため、魔力に頼った戦い方しか知らない領主一族は逆に足手まといになる危険があると説明し、騎士団長の判断に従うよう命じた。

さらにメルヒオールへも、神殿で決して部屋から出ず、カジミアールの指示に従うよう伝えた。

敵の侵入

やがて隠し通路へ敵が侵入したとの報告が届く。

フロレンツィアは騎士達へ、銀色の布へ対応できる武器を準備するよう命じ、自身は礎の間にいるジルヴェスターへ警告を飛ばした。

そして四の鐘が鳴り、西門で戦闘開始の報告が届く。直後、隠し通路の罠が発動した。

罠と毒への対抗

隠し通路から飛び出してきた敵は五名だけだった。フロレンツィアは、西門の船が騎士団を引きつけるための囮だと悟る。

レーベレヒトの罠は銀色の布にも有効で、刃物によって布を裂き、多少の魔術攻撃を通せる状態にしていた。

さらに敵は即死毒を撒いたが、騎士達は掃除用魔術具で毒を吸い込み、被害を防いでいた。

予想外の対策に敵は動揺し、その隙に全員が制圧される。

ゲオルギーネ捕縛

敵のフードと仮面を剥がした騎士達は、その中にゲオルギーネ本人を発見した。

フロレンツィアは、自分達がエーレンフェストを守り切ったのだと実感し、緊張が緩む。

しかしレーベレヒトは、まだ戦いは終わっていないと警戒を解かなかった。西門や神殿、貴族街ではなお戦闘が続いていたのである。

白の塔への転移

ゲオルギーネは一般牢へ収容できないため、領主一族しか出入りできない白の塔へ転移させることになった。

フロレンツィアはジルヴェスターから許可を受け、転移陣を起動する。

白の塔には依然としてヴェローニカが幽閉されていた。彼女はフロレンツィアを見るなり、いつものように自分を陥れたと罵倒し始める。

フロレンツィアは疲労感を覚えながらも、隣室で転移されたゲオルギーネを確認し、自分の役目を果たしたことへ安堵した。

二人目のゲオルギーネ

しかしその直後、神殿に仕掛けられていた転移陣が光り、天井からもう一人のゲオルギーネが落下してきた。

牢内には二人のゲオルギーネが存在する異常事態となる。

フロレンツィアは血の気が引き、即座にジルヴェスターへ、本物が確定するまで礎の間から出ないよう警告した。

さらにシャルロッテからも、神殿でグラオザムが捕縛され、偽者が存在するとの報告が届く。

ヴェローニカとの決別

ヴェローニカは、ゲオルギーネが自分を救いに来たのだと喜んでいた。

その姿を見たフロレンツィアは、これまでヴィルフリートや領地へ落としてきた暗い影の全てがヴェローニカを起点としていることを痛感する。

そして怒りのままに、アーレンスバッハの礎はローゼマインに奪われ、ヴェローニカの血筋にはもう何の価値もないと告げた。

長年アーレンスバッハの血を誇ってきたヴェローニカは言葉を失う。

フロレンツィアは最後に、時の女神ドレッファングーアの紡ぐ糸が再び重なることはないと告げ、ヴェローニカへ決別の挨拶を送った。

ジルヴェスター 礎を巡る戦い

礎の間での待機

ジルヴェスターは、礎の間で四の鐘を聞きながら各地から届くオルドナンツを受け取っていた。

西門では銀色の衣を纏った集団とヴォルヘニールが確認され、戦闘が始まったという。ジルヴェスターは自ら動けない苛立ちを抱えながらも、領地全体で準備してきた防衛体制を信じるしかなかった。

シャルロッテは領主執務室、メルヒオールは神殿、ヴィルフリートは貴族街で戦っている。フロレンツィアからも、隠し通路側に敵が来ると連絡が届いていた。

各地の戦況

神殿や北門への襲撃、貴族街での戦闘開始など、各所から報告が次々と届く。

さらにローゼマインとフェルディナンドからは、ゲルラッハで黒の武器や小聖杯が使われていること、中央突破に成功したことなどが伝えられた。

しかし、その直後に神殿へ敵が一人侵入したとの知らせが届く。

ローゼマインから、神殿図書室には礎の間へ繋がる扉があると聞いていたジルヴェスターは、ついにゲオルギーネが来たのだと身構えた。

ゲオルギーネ捕縛の報告

その直後、シャルロッテからグラオザム捕縛の報告が届き、さらにフロレンツィアからはゲオルギーネ捕縛の知らせが届いた。

ジルヴェスターは、神殿に入り込んだ敵は残党だったのだろうと考え、自分も白の塔へ確認へ向かうことを決める。

礎の間を出た彼は、リヒャルダへ戦いが終わったと告げ、騎獣で白の塔へ向かった。道中ではボニファティウスやフェルディナンドへ勝利の連絡も送っていた。

偽者の存在

しかしその最中、シャルロッテから神殿でもグラオザムが捕縛されたこと、偽者が存在することが報告される。

さらにフロレンツィアから、白の塔へもう一人のゲオルギーネが現れたとの連絡が届いた。

ジルヴェスターは即座に騎獣を引き返させ、護衛騎士達と共に礎の間へ戻る。ゲオルギーネらしい多重の罠に悪態をつきながらも、急いで礎の間へ再突入した。

礎の間の罠

礎の間へ戻るには複雑な解錠が必要だった。ジルヴェスターは急ぎながらも黒い魔石と金色の器を用いて結界を解除し、礎の間へ飛び込む。

その瞬間、大規模なヴァッシェンによる水流へ呑み込まれた。

さらにローゼマインが仕掛けていた盥の罠まで降ってきたため、ジルヴェスターは咄嗟に転がって回避する。

その直後、神殿側の入り口から白い手が現れた。シュタープを握っていたその手の主こそ、灰色巫女の服を着たゲオルギーネだった。

幼少期の恐怖

ゲオルギーネを見た瞬間、ジルヴェスターの脳裏には幼少期の記憶が蘇る。

物心ついた頃から、ゲオルギーネは彼を執拗に責め続けていた。洗礼式前はヴェローニカが止めていたが、北の離れへ移って以降は誰も止める者がいなくなった。

シュタープで首を絞められ、引きずられ、可愛がっていたシュミルを隠され、さらには食事へ毒を盛られたことまであった。

その時のゲオルギーネは、彼が苦しむ姿を見ながら楽しそうに笑っていたのである。

ゲオルギーネとの対話

ジルヴェスターは、何故そこまでエーレンフェストや自分を憎むのか問いかけた。

ゲオルギーネは大領地アーレンスバッハへ嫁ぎ、第一夫人となり、娘を次期領主にできる立場まで得ていた。それでもなお礎へ執着する理由が理解できなかったのである。

だがゲオルギーネは、礎を譲るなら話し合っても良いと冷たく告げるだけだった。

結局、ジルヴェスターは最後まで彼女の本心を理解できなかった。

礎の間での戦闘

ゲオルギーネはシュタープを構え、即死毒によってジルヴェスターを殺そうとしていたことを明かす。

もしフロレンツィアの呼び出しで一度礎の間を出ていなければ、ジルヴェスターはすでに死んでいた。

ジルヴェスターは弓へ変化させたシュタープで攻撃し、ゲオルギーネはゲッティルトと攻撃用魔術具で応戦する。

互いのお守りを削り合う戦いとなり、やがてゲオルギーネの頬へ傷が走った。

その隙を突き、ジルヴェスターは光の帯でゲオルギーネを拘束し、押さえ込むことに成功する。

殺害の決断

ジルヴェスターは降参を勧めたが、ゲオルギーネはまだ名捧げした者達が残っていると告げた。

さらに、従属契約した身食い達へ命令を下そうとしたため、ジルヴェスターは被害拡大を防ぐために彼女を殺す決断を下す。

シュヴェールトで胸を貫かれながらも、ゲオルギーネは満足そうに笑い、「恨むわ」と呟いて息絶えた。

ジルヴェスターは、自分が勝ったはずなのに負けたような気分に襲われる。最後まで姉の本心は理解できなかったのである。

聖典の鍵

その後、ジルヴェスターは記憶を読むために必要な部位を時を止める魔術具へ収めた。

さらに魔力器官を破壊すると、ゲオルギーネの死体は黒い液体となって溶ける。

そこには、美しい大きな魔石と共に、エーレンフェストの聖典の鍵が残されていた。

ローゼマインからの報告

呆然と座り込んでいたジルヴェスターのもとへ、ローゼマインからゲルラッハ攻略成功のオルドナンツが届く。

彼女はフェルディナンド達を連れて戻るため、街への入場許可と客間の準備、転移陣の使用許可を求めてきた。

その声によって、ジルヴェスターはようやく現実へ引き戻される。まだ各地の戦いは終わっておらず、自分はアウブ・エーレンフェストとして動き続けなければならなかった。

フロレンツィアの支え

礎の間を出たジルヴェスターを迎えたのは、返り血を見ても動じずヴァッシェンをかけるフロレンツィアだった。

彼女は、名捧げした者達の死によって本物のゲオルギーネだったことが証明されたと告げる。

ジルヴェスターは、捕らえることではなく殺害を選ばざるを得なかった苦しみを吐露した。

しかしフロレンツィアは、彼が領地と家族を守ったのだと感謝を伝える。

失うばかりと思えた戦いの中で、守れたものも確かにあった。ジルヴェスターは、その温もりを失わないようにフロレンツィアを強く抱きしめた。

第五部 女神の化身8レビュー
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本好きの下剋上 全巻まとめ
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本好きの下剋上 シリーズ 一覧

兵士の娘

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘I」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘II」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘Ⅲ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。

神殿の巫女見習い

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いI」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いⅡ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いⅢ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い4」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いⅣ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。

領主の養女

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女I」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女Ⅱ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女Ⅲ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女4」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女Ⅳ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女5」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女Ⅴ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。

貴族院の自称図書委

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員I」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅱ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅲ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員4」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅳ」の表紙。
あらすじと考察は本文で詳しく解説。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員5」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅴ」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員6」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅵ」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員7」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅶ」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員8」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅷ」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員9」の表紙画像(レビュー記事導入用)
「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員Ⅷ」の表紙。
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女神の化身

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身1」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 1巻」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身2」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 2巻」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身3」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 3巻」の表紙。
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女神の化身4の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 4巻」の表紙。
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女神の化身5の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 5巻の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身 6巻の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身7」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身7」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身8」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身8」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身9」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身9」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身10」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上 第五部「女神の化身 10巻」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身11」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上 第五部「女神の化身 11巻 」の表紙。
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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身12」の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上 第五部「女神の化身 12巻 」の表紙。
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ハンネローレの貴族院五年生

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本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 1の表紙。
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本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生2の表紙画像(レビュー記事導入用)
本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 2の表紙。
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本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 3の表紙。
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