第五部 女神の化身9レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身11レビュー
どんな本?
フェルディナンドが旅立ったエーレンフェストの冬は重い。騒乱を好む「混沌の女神」のようなゲオルギーネに関する密告があったことで粛清が早められた。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身1」
一方、貴族院の三年生になったローゼマインは喪失感を振り払うように、忙しく動き回る。寮内では旧ヴェローニカ派の子供達が連座を回避できるように説得し、院内では領主候補生の講義初日が開始。文官コースの試験に、新しい上級司書との出会い、専門コースの専攻など、一年前とは立場も環境も激変した日々へ突入していく。
次第に「らしさ」を取り戻す中、神々のご加護まで大量に得て、ますますローゼマインの暴走は止まらない!?
「わたしの本好きウィルス、皆に広がれ!」
読んだ本のタイトル
#本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身Ⅹ」
著者:#香月美夜 氏
イラスト:#椎名優 氏
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あらすじ・内容
深夜の貴族院。ローゼマインはフェルディナンド、ダンケルフェルガーの騎士と共に、アダルジーザの離宮の制圧に向かった。
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身10」
その中で中央騎士団の造反やジェルヴァージオの行方不明が判明し、一行は貴族院図書館へーーやがて全勢力が講堂内に集結。
「女神の化身」の大暴走、「魔王」の暗躍、「王の剣」の戦い!
王族、中央、ランツェナーヴェ、エアヴェルミーンの思惑が交錯しながら、「中央の戦い」は怒涛の終結を迎える!
前巻からのあらすじ
アーレンスバッハに攻め入ったが、ローゼマインに毒を盛ったギーべが現れラスボスのように暴れまくる。
それをレッサーくんの巨大化で撃退してアーレンスバッハの侵攻を撃退する。
そして、アーレンスバッハからエーレンフェストに攻め寄せて来たゲオルギーネは礎まで侵入出来たが、、
偶然にも魔石に変わる粉をやり過ごしていたジルヴェスターが撃退してゲオルギーネを討ち取って防衛成功。
そして初めての実戦で、目の前で騎士達を魔石に変えた即死性の粉攻撃を見たせいでローゼマインは魔石に魔力を込める事が出来なくなった。
戦闘のトラウマが残ってしまった。
感想
貴族院ではアーレンスバッハのディートリンデの手引きで他国の王族ジェルヴァージオが国の礎の魔術を狙っている。
それを防ぐためにローゼマインとフェルディナンドが率いるエーレンフェストの騎士達。
援軍のダンケルフェルガーの騎士達が貴族院に突撃する。
だが、ジェルヴァージオにツェントになってほしい中央騎士団の者達がそれに立ち塞がる。
現在のツェントのトラオクヴァールにツェントの矜持として先頭に立てとフェルディナンドに言われたのに、トラオクヴァールは礎の魔術を獲得した者に従うとヘタレる。
それに激怒するフェルディナンドだったが、とにかく他国の者が礎の魔術を獲得する事を防ぐために礎の魔術のある祭壇に急行すると、、
中央騎士団達が防備を固めていた。
それにローゼマインの加護を受けたエーレンフェストとダンケルフェルガーの騎士達が突撃して有利に戦闘をしていたが、、
そこに始まりの庭から戻って来たジェルヴァージオが現れてツェントの証”グルトリスハイト”を見せ付けて来た。
だがそれはローゼマイン、フェルディナンドも持っていた。
ローゼマインはジェルヴァージオが持っているグルトリスハイトを見せて、ツェントになる資格があるとは限らないと見せつける。
そんなローゼマインの後ろでハルトムートが大暴走ww
ローゼマイン伝説を垂れ流すww
周りのエーレンフェスト、ダンケルフェルトの騎士達はあぁまたかと思う程度だったが、、
中央騎士団とジェルヴァージオ達には寝耳に水状態。
そんな時にエアヴェルミーンがローゼマイン、フェルディナンド、ジェルヴァージオを呼び寄せて早く礎に魔力を満たせと言う。
エアヴェルミーンはジェルヴァージオに魔力を満たせと言うが、フェルディナンドはそれを許さない。
そのせいでエアヴェルミーンから攻撃されてしまい、それをローゼマインが防ぐのだが、、
彼女の前に知識の女神メスティオノーラが現れて。
彼女を知識の女神の図書館に待たせて女神メスティオノーラはエアヴェルミーンを説得したのだが、、
マインに本を与えたら、、
のめり込んでしまい想定より長い時間、彼女は神に身体を貸してしまった。
そのせいでローゼマインから女神の力が常に溢れている状態になってしまい。。
それでも、3人いる王の資格を持つ者は正々堂々とツェントレースを行う事になる。
それをフェルディナンドは、ローゼマインを先を行かせてジェルヴァージオを罠に嵌める。
フェルディナンドマジで魔王w
最後までお読み頂きありがとうございます。
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第五部 女神の化身9レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身11レビュー
考察・解説
ディートリンデの不満
『本好きの下剋上』におけるディートリンデは、自身の置かれた立場や周囲の対応に対して強い不満を抱いており、それが彼女の暴走を加速させる大きな要因となっている。彼女が抱えていた主な不満について解説する。
中継ぎの立場と日々の執務への不満
ディートリンデは自身の境遇や日々の業務に対して、以下のような不満を抱いていた。
- 自分が王族や父からはレティーツィアの、母ゲオルギーネからはベネディクタの中継ぎのアウブとしてしか望まれていないことを知らされ、不愉快極まりないと強い不満を感じていた。
- 自身を次期ツェント候補であると自負しており、アーレンスバッハの日常的な執務に煩わされるべきではないと考え、その状況にうんざりしていた。
王族に対する怒り
現在の支配者層である王族に対しても、彼女は激しい敵対心や恨みを募らせていた。
- 現在の王族に対して、グルトリスハイトも持たない偽りの王族のくせに威張っていると見下していた。
- 次期ツェントを目指す彼女にとって、地下書庫の調査を妨害されたことや、王の第三夫人から古語の勉強不足を嘲笑されたことは強い恨みとなっていた。
- 星結びの儀式前に婚約者へ隠し部屋を与えろという王命を下されたことについても、非常識な王命であると怒りを露わにしていた。
婚約者フェルディナンドへの不満
王命によって定められた婚約者であるフェルディナンドに対しても、彼女の不満は絶えなかった。
- ランツェナーヴェからの姫の受け入れについて王族へ直談判するよう求めた際、フェルディナンドがユルゲンシュミット側に利益が少なく王族の判断を支持すると一蹴したことで、彼女の怒りは爆発した。
- 自分の願いを聞き入れない彼を嫉妬深いエーヴィリーベだと決めつけ、わたくしを本当には愛していないと激しく拒絶した。
- 正式な夫でもない彼に隠し部屋を与えることへの強い嫌悪感や、彼が自分の意見よりも王命を優先する冷たい態度にも苛立っていた。
姉アルステーデと母ゲオルギーネへの苛立ち
身内である姉や母親の対応も、彼女の不満をさらに増幅させる原因となっていた。
- グルトリスハイトを得るために滞在した離宮では、不審者騒動による外出制限で退屈を強いられ、不満を募らせていた。
- 姉のアルステーデにお茶に付き合うよう求めたが、アルステーデは母ゲオルギーネから命じられた回復薬や魔術具の調合を優先してこれを聞き入れなかった。
- 自分用の回復薬を多めに確保するよう要求しても自分で作れば良いと受け流され、姉が次期ツェント候補である自分よりも母の命令を優先することに腹を立てていた。
- 母ゲオルギーネに対しても、エーレンフェストの礎を手に入れることに執着して自分への連絡を禁じたことや、次期ツェントを目指す自分の努力や寂しさを理解してくれないことへの苛立ちを抱えていた。
まとめ
ディートリンデが抱えていた、自分が正当に評価されず理不尽に扱われているという不満の蓄積は、周囲への強い苛立ちや孤立感を生むこととなった。この精神的な隙が、ランツェナーヴェの使者であるレオンツィオからの「私が貴女を次期ツェントにする」という甘い誘惑に容易く乗ってしまう最大の引き金となったのである。
アダルジーザの離宮
『本好きの下剋上』に登場する「アダルジーザの離宮」について、その役割や構造、そこで生まれる子供たちの過酷な運命、および物語における重要な関わりについて解説する。
アダルジーザの離宮とは
アダルジーザの離宮は、物語の背景にあるシビアな歴史と設定を象徴する重要な施設である。
- 貴族院の敷地内に存在する離宮であり、中央棟の最も奥に位置している。
- 隠蔽の神フェアベルッケンの印が刻まれて隠された扉の先にあり、フェアベルッケンの祠の近くに建設された。
- 数百年前の「アダルジーザ」という名の姫に由来し、数代に一度、外国であるランツェナーヴェから献上されてくる姫君を受け入れるための場所として作られた。
離宮の構造
離宮の構造や設計には、外部との隔離を徹底するための特殊な工夫が施されている。
- 離宮は双子のように似ている二つの建物(本館と離れ)が渡り廊下で繋がった構造をしている。
- 本館には「コラレーリエ」「シェンティス」「レーヴェライア」というユルゲンシュミットの花の名前を冠する三つの大きな部屋があり、ランツェナーヴェの姫たちが暮らしている。
- ランツェナーヴェの姫たちや、いずれ魔石となる子供たちが暮らす建物にはバルコニーが存在しない。
- 窓には頑丈な格子が嵌められており、外部からの侵入も内部からの逃亡も許さない堅牢な造りになっている。
離宮で生まれる子供たちの過酷な運命
アダルジーザの離宮で生まれた子供たちは、性別や生まれた順番、魔力量によって厳格に分類され、女児は「花」「蕾」「庭師」「実」、男児はすべて「実」と呼ばれる。彼らは生まれた瞬間から極めて残酷な運命を背負わされることとなる。
- 男児(実)の運命:男児のうち一人は、成成人へと達した段階でシュタープを授けられ、ランツェナーヴェの次期王として国へ帰還する。しかし、王位に関わりそうな男児が多く残ることはユルゲンシュミット側にとって問題視されるため、次期王に選ばれなかった残りの男児は洗礼式前に秘密裏に殺害され、魔石としてランツェナーヴェへ送られる。父親であるユルゲンシュミットの貴族が引き取りを望めば生き延びることも可能だが、正妻との不和の元になるため引き取る者はごく稀である。フェルディナンドはこの離宮で生まれた男児であったが、洗礼式前に先代のアウブ・エーレンフェストに引き取られたため、特例として生き延びることができた。
- 女児の運命:女児の「花」は、成人後に本館に戻り、新たな姫としての役割を担うこととなる。基本的には花の長女がその役割に選ばれる。「蕾」は花になる可能性のある予備の女児であり、洗礼式後は傍系王族として扱われる。
政変による閉鎖と拠点としての再利用
一度は歴史の闇に葬られた離宮であったが、物語の終盤において最悪の形で再び表舞台に現れる。
- ユルゲンシュミットの政変後、この離宮は閉鎖され、ランツェナーヴェへの魔石供給も途絶えていた。
- しかし、第五部において、中央骑士団長のラオブルートやゲオルギーネ、ディートリンデの暗躍により、アーレンスバッハのランツェナーヴェの館と離宮を繋ぐ秘密の転移陣が再び開かれることとなった。
- これにより、かつてこの離宮で育ったランツェナーヴェの王・ジェルヴァージオやレオンツィオたちが密かに貴族院へ侵入する事態となる。
- 彼らが次期ツェントとなるべく、グルトリスハイトを手に入れるための侵略拠点としてこの場所が利用された。
フェルディナンドの感情
アダルジーザの離宮は、主要キャラクターであるフェルディナンドの過去に深く関わっている。
- 離宮で魔石になることを望まれて育ったフェルディナンドにとって、この場所は非常に苦痛に満ちた過去の象徴である。
- 彼は離宮に対して懐かしさなど微塵も抱いておらず、むしろ粉々に破壊してやりたいと周囲に漏らすほど、強い憎悪と破壊衝動を見せていた。
まとめ
アダルジーザの離宮は、ランツェナーヴェとの歴史的な繋がりを示す場所であると同時に、そこで生まれた子供たちに凄惨な選択を強いる残酷な施設である。政変による閉鎖を経てなお、ラオブルートらの謀略によって再び開かれ、ユルゲンシュミットを揺るがす最終決戦の重要拠点として再利用されることとなった。フェルディナンドの過酷な生い立ちや深いトラウマを裏付ける舞台であり、物語の背景にある世界の冷徹さと緊迫感を際立たせる象徴的な場所として描かれている。
貴族院の制圧
『第五部 女神の化身10』における「貴族院の制圧」は、ランツェナーヴェの侵略者とそれに結託した中央騎士団長ラオブルートの反逆を阻止し、彼らがユルゲンシュミットの礎を奪うのを防ぐための軍事行動である。ローゼマインやフェルディナンド、およびダンケルフェルガーの有志たちが中心となって行われた。以下に制圧作戦の主な経緯を解説する。
アダルジーザの離宮への奇襲
アーレンスバッハの礎を奪取した後、国境門経由で貴族院へ転移したローゼマインたちは、ランツェナーヴェの拠点となっているアダルジーザの離宮へ深夜の奇襲をかける。
- アウブ・ダンケルフェルガーが先頭に立ち、ゲヴィンネンの駒を模した魔術具で窓を破壊して突入するという強引な手段で離宮を制圧し始めた。
- フェルディナンドの指示により、ローゼマインは離宮の前庭で護衛騎士たちと共に光の帯を使って捕虜の拘束と監視を担当した。
- この強襲により、ディートリンデやアルステーデ、レオンツィオらを捕縛することに成功した。
- 捕虜たちの口から、王族の側近である中央騎士団長ラオブルートが反逆の首幕者としてランツェナーヴェに協力しているという事実が判明した。
戦力の分断と講堂への突入
離宮制圧の最中、王宮にて中央騎士団同士の同士討ちが発生し、ツェントからダンケルフェルガーへ救援要請が入る。
- フェルディナンドはこれを、ダンケルフェルガーの戦力を王宮に隔離し、こちらの戦力を半減させるための罠だと見抜いた。
- しかし、アウブ・ダンケルフェルガーはツェントの剣としての義務を優先し、王宮へ向かってしまう。
- ダンケルフェルガーの主力不在の中、フェルディナンドとローゼマインたちは、ランツェナーヴェの王・ジェルヴァージオがグルトリスハイトを得るために向かったとされる最奥の間へと通じる講堂へ向かった。
- そこに合流したアナスタージウス王子は、講堂が奉納舞の舞台の仕様に変形させられているのを見て、ヒルデブラント王子がラオブルートに騙されて講堂の開閉用魔石を奪われたことに気付いた。
- さらに、トラオクヴァール王がグルトリスハイトを手に入れた真のツェントに国を譲ると事実上の責任放棄をしたことを知らされたアナスタージウスは、自ら騎士を率いて講堂内へ突入した。
講堂での乱戦と大規模魔術ヴァッシェン
講堂内では、魔力攻撃を通さない銀色のマントや即死毒を使用する敵との激しい乱戦が繰り広げられた。
- ローゼマインは講堂の扉の外でシュツェーリアの盾を張り、負傷した騎士たちを回復させる後方支援に徹した。
- しかし、ラオブルートが強力な攻撃用魔術具を放って大爆発を起こした直後、ローゼマインは講堂内に突入し、規格外の規模で水流の魔術ヴァッシェンを発動させた。
- 講堂全体が大量の水に呑み込まれ、敵味方の配置が混迷を極めたものの、即死毒の脅威も一緒に洗い流され、戦局を強引にリセットすることに成功した。
最終制圧と三人の消失
ヴァッシェンの水が引いた直後、王宮の制圧を終えたアウブ・ダンケルフェルガーとマグダレーナ率いる援軍が講堂に雪崩れ込む。
- マグダレーナは夫に毒を盛ったラオブルートを討つと宣言し、ダンケルフェルガーの騎士たちが手当たり次第に中央騎士団の反逆者たちを捕縛していった。
- その一方、祭壇の上ではフェルディナンドがジェルヴァージオを追い詰めていたが、アナスタージウスが加勢しようとした瞬間、神像が光を放った。
- フェルディナンド、ローゼマイン、ジェルヴァージオの三人が一瞬で姿を消してしまった。
まとめ
貴族院の物理的な制圧は完了したものの、物語は始まりの庭における神々を巻き込んだ次期ツェントを巡る争いへと移行していくこととなる。
ジェルヴァージオの正体
『第五部 女神の化身』シリーズの最大の敵として立ちはだかる「ジェルヴァージオ」の正体について、その生い立ちやフェルディナンドとの関係、およびユルゲンシュミット侵攻の真の目的を解説する。
アダルジーザの離宮の実とランツェナーヴェの王
ジェルヴァージオは、ユルゲンシュミットに侵攻してきたランツェナーヴェの現在の王である。その出自と特徴は以下の通りである。
- 彼の出生は、ユルゲンシュミットの貴族院にあるアダルジーザの離宮である。
- 離宮で生まれた男児(実)は洗礼式前に魔石とされる過酷な運命を背負うが、ジェルヴァージオは同世代の男児の中で全属性を持ち、最も魔力が高かったため、特例として生き延びた。
- 彼はランツェナーヴェの次期王となるべく離宮で教育を受け、成人すると同時に海を渡ってランツェナーヴェの王として君臨した。
- 幼名はテルツァであり、外見は四十代半ばの銀髪の老けたフェルディナンド、あるいは始まりの庭のエアヴェルミーンに酷似している。
フェルディナンドとの血縁関係
フェルディナンド(幼名:クインタ)も同じくアダルジーザの離宮で生まれた実であるが、二人の関係には以下のような事実がある。
- フェルディナンドはジェルヴァージオがランツェナーヴェへ渡った後に生まれたため、二人に直接の面識はない。
- しかし、ジェルヴァージオの同母姉であるセラディーナ(レーヴェライアの花)がフェルディナンドの母親であるため、ジェルヴァージオはフェルディナンドの血の繋がった叔父にあたる。
ラオブルートとの因縁と心酔
ジェルヴァージオの背後には、中央騎士団長ラオブルートとの深い因縁が存在する。
- ジェルヴァージオはランツェナーヴェの王となるため、冬の貴族院での就学は禁じられていた。
- しかし、それ以外の季節には貴族院の図書館へ出入りして学ぶことが許されており、当時のツェントや王族とも交流を持っていた。
- その際、彼を護衛していた新人の騎士が、後の中央騎士団長ラオブルートであった。
- ラオブルートは、生まれではなく実力で評価されるべきだという思想を持っており、当時の王太子よりも優秀であったジェルヴァージオが正当な扱いを受けないことに理不尽さを感じ、彼こそが真のツェントに相応しいと深く心酔するようになった。
- この絶対的な忠誠心が、ラオブルートが現在の王族を裏切り、彼をユルゲンシュミットに招き入れる元凶となった。
侵攻の真の目的
ジェルヴァージオがユルゲンシュミットへ侵攻し、ツェントの座を狙ったのには、単なる権力欲以外の切実な理由があった。
- 現在のランツェナーヴェでは魔力持ちを道具として扱う技術が発達し、王族が権力を失いつつあった。彼はその状況から脱却することを望んでいた。
- 何より、自らのような魔石にされる子供を生むために姫を送り込むアダルジーザの離宮という悲劇の連鎖を終わらせるために、ツェントになることを求めていた。
- シュタープを持ち帰ってランツェナーヴェで権力を握り直すことを目的としていたレオンツィオとは異なり、ジェルヴァージオはランツェナーヴェの魔力持ちがユルゲンシュミットで貴族として安住できる地を得ることを真の目的としていた。
物語終盤の動向と敗北
物語の終盤、ジェルヴァージオはツェントの座を巡る激しい争いに巻き込まれ、最終的に敗北を迎える。
- ラオブルートと中央神殿のイマヌエルの暗躍により、ジェルヴァージオの登録メダルは傍系王族に戻され、グルトリスハイトを取得する資格を得た。
- 図書館の英知の女神像から魔力を通じて始まりの庭へ至り、メスティオノーラの書を手に入れたが、直前にローゼマインが闇のマントで魔力を吸収して妨害したため、知識が虫食い状態の不完全な書となってしまう。
- その後、エアヴェルミーンの命により、ローゼマイン、フェルディナンドと共に、新しいツェントを懸けた国境門への魔力供給競争に挑むこととなる。
- 魔力量では誰よりも勝っていたものの、魔法陣構築の速度で劣っていた隙を突かれ、フェルディナンドによる容赦のない物理的・魔術的妨害(手を撃ち抜かれ、転移陣を消滅させられる等)を受けた。
- 最終的にギレッセンマイアーの国境門へたどり着くが、フェルディナンドの指示を受けたアナスタージウスによって中央神殿にあった登録メダルを破棄されたことで、シュタープを失い、完全に無力化されて敗北することとなった。
まとめ
ジェルヴァージオのユルゲンシュミット侵攻は、過酷な生い立ちやアダルジーザの離宮がもたらす悲劇の連鎖を断ち切るという、彼なりの切実な救済の願いが根底にあった。しかし、ラオブルートらの裏切りや暗躍を経て始まった真のツェントを巡る戦いは、ローゼマインとフェルディナンドの規格外の連携と容赦のない作戦により、彼の完全な無力化という結末を迎える。彼の敗北は、ランツェナーヴェの脅威を排し、ユルゲンシュミットの新たな統治体制へと移行するための決定的な節目となっている。
ソランジュの救出
『第五部 女神の化身10』におけるソランジュの救出について、ジェルヴァージオたちによる襲撃と脅迫から、ローゼマインとフェルディナンドによる救出に至るまでの経緯を解説する。
ジェルヴァージオたちによる図書館襲撃と脅迫
祠巡りを終えたランツェナーヴェの王ジェルヴァージオと中央騎士団長ラオブルートは、グルトリスハイトを得るために貴族院図書館を訪れた。
- 彼らは亡くなった上級司書オルタンシアの荷物を引き上げるという名目で侵入し、地下書庫の鍵を探した。
- 鍵がすぐに見つからなかったため、ラオブルートは外部からの連絡を遮断する目的も兼ねて、ソランジュのシュタープを封じる手枷をはめて拘束した。
- さらに剣を突きつけ、側仕えのカトリーンがひどい目に遭っても大して心は痛まないと言い放ち、脅迫によって地下書庫の鍵を出させた。
- 鍵の魔力登録を書き換えた後、彼らはソランジュを床に縛り上げて放置し、地下書庫へと向かった。
ローゼマインの焦燥とフェルディナンドの制止
一方、アダルジーザの離宮を制圧したフェルディナンドたちは、ヒルシュールからのソランジュと連絡が取れないという情報と、ジェルヴァージオがすでに祠巡りを終えている可能性から、敵が図書館に向かったことに気が付いた。
- ローゼマインは瀕死のソランジュを想像して激しく動揺し、今すぐ図書館へ助けに向かおうとした。
- しかし、フェルディナンドは彼女を強く制止した。
- 図書館の魔術具であるシュバルツとヴァイスは主であるローゼマインの接近を感知してしまうため、敵に接近を気付かれて待ち伏せされたり、ソランジュを人質に取られたりする危険性が高かったからである。
- ローゼマインは理路整然と諭され、まずは自分に名捧げをしていないコルネリウスやアンゲリカたちを偵察に向かわせるという判断を受け入れた。
執務室への突入と癒し
偵察に向かった騎士から、図書館周辺に潜入の跡や罠はなく、執務室でソランジュが倒れていることが報告された。
- それを聞いたフェルディナンドは、ローゼマインが到着するより先に驚くべき速さで執務室へ入り、ソランジュにルングシュメールの癒しの魔術を施した。
- これは、現場の状況をローゼマインに見せる前に状態を確認し、必要ならば癒しを与えるという、彼女への細やかな配慮であった。
救出されたソランジュの証言
癒しを受けて体を起こしたソランジュは、ローゼマインたちに事の経緯を証言した。
- 彼女の話により、ジェルヴァージオとラオブルートが地下書庫へ向かったものの、大股で感情的な足音を響かせて戻ってきたことから、目的のグルトリスハイトは得られなかったらしいことが判明した。
- さらに、シュバルツとヴァイスが、ジェルヴァージオがじじさまのところへ行ったと告げたことで、敵がすでに始まりの庭のエアヴェルミーンの元へ向かっていることが発覚した。
- ソランジュを無事に救出した一行は、次期ツェントを巡る最終決戦の場へと急ぐことになった。
まとめ
貴族院図書館におけるソランジュの救出劇は、ジェルヴァージオらの非道な手段を暴くと同時に、フェルディナンドの冷静な戦術眼とローゼマインへの配慮が光る局面となった。魔術具の特性を考慮した慎重な突入によってソランジュは無事に救われ、彼女の証言から敵が始まりの庭へと向かった事実が突き止められた。この救出は、物語を次期ツェントの座を巡る最終決戦へと加速させる決定的な転換点である。
グルトリスハイト
『本好きの下剋上』におけるグルトリスハイトは、物語の根幹に関わる非常に重要な要素である。その役割や歴史的変遷、およびこれを入手しようとする各キャラクターの思惑について解説する。
グルトリスハイトとは
グルトリスハイトは、ユルゲンシュミットのツェント(王)の証である。これを持っていなければ、以下のような国を治めるために不可欠な大魔術を行使することができない。
- 国境門の開閉
- 領地の境界線の引き直し
- 廃領地への新たな礎の設置
現在のツェントであるトラオクヴァールは、政変の影響でこれを持たずに即位した不完全な王である。そのため、王族自らが身を削って国中の魔力を維持せねばならず、中央神殿や他領からも軽んじられる苦境に立たされている。
歴史と変遷(魔術具への変化と喪失)
本来、王の証とは、全属性を持つ者が貴族院の祠を巡って祈りを捧げ、始まりの庭でエアヴェルミーンからシュタープに直接写し取らせてもらうメスティオノーラの書のことであった。しかし、長い歴史の中で以下のように変遷し、失われてしまった。
- マニュアル化と怠慢:ガランゾルグという人物が、エアヴェルミーンから直接英知を授からなくても、地下書庫の奥にある女神像から知識を書き写すことで外形と知識を得られる方法を発現し、祠巡りをしないツェント候補が増加した。
- 王族への限定:ラオヘルシュトラ女王が、ツェントを巡る争いを憂い、候補者を王族(一族として登録した者)のみに限定した。
- 魔術具型の誕生:アルプゼンティ女王が、属性の足りない最愛の息子(ナイグンハイト)をツェントにするため、他者へ引き継げる魔術具型のグルトリスハイトを作り出した。
- 喪失:以降、グルトリスハイトは自力で得るものではなく、親から子へシュタープで魔力を通して継承される魔術具となった。政変時、これを継承していた第二王子が殺害されたことで、魔術具型のグルトリスハイトは本来あるべき地下書庫の奥へと戻ってしまい、行方不明となって現在の危機を招いた。
取得するための条件
現在、グルトリスハイト(またはメスティオノーラの書)を手に入れるには、主に以下のルートが判明している。
- 本来のルート:全属性を持ち、各地の祠を巡って祈りを捧げ、すべての属性の石板を得て始まりの庭へ至る方法。
- 地下書庫ルート:王族として登録されている全属性の者が、貴族院図書館の地下書庫の最奥へ進み、英知の女神像に魔力を注ぐ方法。王族登録がなければ、いくら魔力や属性があっても魔法陣に弾かれて入ることはできない。
グルトリスハイトを巡る各人物の思惑
国を揺るがすこの書を巡り、様々な人物が異なる思惑で動いている。
- 王族(トラオクヴァール、ジギスヴァルト):国の崩壊危機を悟った王族は、グルトリスハイトに最も近いローゼマインを王の養女として取り込み、グルトリスハイトを得させたうえで、ジギスヴァルトの妻(第三夫人、後に第一夫人の予定)にして自分たちの政権を安定させようと目論んだ。トラオクヴァール自身は、真のツェントが誕生するなら自らは退く覚悟を持っている。
- ヒルデブラント王子:アーレンスバッハへの婿入り(王族からの離脱)という王命を回避し、想いを寄せるローゼマインと結ばれるため、ラオブルートの甘言に乗り、自らがグルトリスハイトを得て真の王になるという決意を抱いてしまう。
- アナスタージウスとエグランティーヌ:エグランティーヌは政変のトラウマから、血塗られた争いが起きず、平和裏に正当な王が誕生することを望んでいる。アナスタージウスは彼女の憂いを払うため、何としてもグルトリスハイトを探し出そうと奔走する。
- ジェルヴァージオ:ランツェナーヴェの王である彼は、魔石にされる子供を生むアダルジーザの離宮の悲劇を終わらせ、自国の魔力持ちがユルゲンシュミットで貴族として安住できる地を得るため、ラオブルートの手引きで傍系王族として登録を書き換え、ツェントの座を狙った。
- ローゼマイン:本人はツェントになって国を治めたいわけではなく、心安らかに本を読みたいだけである。しかし、フェルディナンドがアーレンスバッハで理不尽な扱いを受け、連座で処罰される危機に陥ったため、彼を助けるための強力な交渉カード(盾)としてグルトリスハイトを手に入れようと決意する。
- フェルディナンド:ローゼマインがツェントの重責や王族のしがらみに巻き込まれることを良しとしない。王族制度の崩壊を防ぎ急場を凌ぐため、自ら一代限りで消滅する魔術具型のグルトリスハイトを作成し、それを王族に手渡した上で、本来の自力でメスティオノーラの書を取得した者からツェントを選ぶ方式へ戻すべきだと考えている。
まとめ
グルトリスハイトは単なる王の象徴にとどまらず、ユルゲンシュミットという世界の存続そのものを左右する絶対的な魔術具である。失われた英知を巡る王族や他国の思惑の交錯、そして大切な人を守るために立ち上がるローゼマインの決意など、この書を巡る動向は物語を最終決戦へと導く最大の中心軸となっている。
女神の化身と降臨
『第五部 女神の化身』において重要なキーワードとなる「女神の化身」という呼称と、物語のクライマックスで実際に起きた「英知の女神メスティオノーラの降臨」について解説する。
「女神の化身」としての宣伝と神々しい姿
「メスティオノーラの化身」という言葉は、当初ハルトムートやクラリッサがローゼマインを神聖視させ、アーレンスバッハの貴族たちを宣伝するために用いていたプロパガンダであった。しかし、その後の展開により事実として受け入れられることとなる。
- 始まりの庭において、育成の神アーンヴァックスによってローゼマインの身体は強制的に急成長させられた。
- さらにメスティオノーラの力をまとって帰還した彼女の姿は、他者の目には直視し難いほど神々しく映った。
- その圧倒的な女神の御力の残滓によって、ハルトムートの言葉は単なる妄言ではなく、事実として周囲に受け入れられるようになった。
英知の女神メスティオノーラの降臨
始まりの庭において、エアヴェルミーンは礎の魔術を満たそうとしないフェルディナンドたちに激怒し、神の力による全力攻撃を放った。この危機の最中に発生した現象は以下の通りである。
- ローゼマインは闇のマント(フィンスウンハン)でその攻撃を吸収してフェルディナンドを庇った。
- しかし、許容量を超える膨大な魔力に苦しみ、神に助けを求めることとなった。
- 祈りに応じるように天井の穴から光が降り注ぎ、ローゼマインと瓜二つの姿をした英知の女神メスティオノーラが現れた。
- メスティオノーラはエアヴェルミーンの怒りを鎮め、枯渇しつつある彼に神力を分け与えるため、魔力の馴染みが良いローゼマインに少しの間、体を貸してほしいと要求した。
究極の図書館と「体を貸す」代償
メスティオノーラが体を借りる間、ローゼマインの意識は別の空間へと誘われた。
- 彼女の意識が運ばれたのは、床から天井まで本で埋め尽くされ、金色のシュミルが司書として働く「わたくしの英知が詰まった図書館」であった。
- そこはまさに、本を愛するローゼマインにとって神が作り給いし地上の楽園であった。
- 本さえ読めれば良いローゼマインは、「わたくしの体くらい、いくらでもお貸しします!」と二つ返事で快諾し、夢中で読書に没頭していった。
殺し合いの禁止とツェントレースの提示
ローゼマインの体に降臨したメスティオノーラは、神力を分け与えた後に重要な命を下した。
- ユルゲンシュミットにおける命を奪う行為、すなわちツェント候補同士の殺し合いを明確に禁じた。
- 難のある候補者たちであるローゼマイン、フェルディナンド、ジェルヴァージオに対し、新たな選別方法を提示した。
- 誰が最も早く国境門に魔力を満たすかを競い合う競争(ツェントレース)を命じ、正当な手段での決着を促した。
フェルディナンドの激怒と精神干渉の影響
この降臨の裏では、ローゼマインの記憶に関わる深刻な精神干渉が行われていた。
- メスティオノーラは、ローゼマインが体を貸しやすくするため、読書に対する執着より深く心の内に入り込んでいる記憶への繋がりを切るという干渉を行った Lights。
- フェルディナンドが脳内への直接の呼びかけを行い、「さっさと戻れ。さもなくば君の大事なものが順番に消えることになるぞ」とローゼマインの意識を無理やり現実へ引き戻した。
- 意識は戻ったものの、彼女はフェルディナンドに関する重要な記憶などを失うという深刻な代償を負うこととなった。
まとめ
「女神の化身」という呼称は、ハルトムートらの宣伝から始まり、最終的には本物の女神メスティオノーラの降臨によって現実のものとなった。この降臨は、殺し合いの禁止とツェントレースの開始という物語の決定的な転換点をもたらした一方で、ローゼマインがフェルディナンドに関する記憶を失うという悲劇的な代償を伴うこととなった。この記憶の欠落と救出の行方は、最終決戦の人間ドラマをさらに深化させる重要な要素となっている。
ツェントレース
『第五部 女神の化身10』における「ツェントレース」について、その開催経緯やルール、参加者たちの思惑、そしてレース開始直後の規格外な展開を解説する。ユルゲンシュミットの命運を握る次期ツェント決定戦の全貌をひも解く。
ツェントレース開催の経緯とルール
ツェントレースとは、始まりの庭においてエアヴェルミーンの命により行われた、次期ツェントを決めるための競争である。開催の経緯と規則は以下の通りである。
- 魔力枯渇の危機に瀕しているユルゲンシュミットを救うため、エアヴェルミーンは一刻も早く礎の魔術を満たす新しいツェントの誕生を望んでいた。
- メスティオノーラの書(またはそれに準ずる知識)を手にしたローゼマイン、フェルディナンド、ジェルヴァージオの三人が候補者として競い合うこととなった。
- 英知の女神メスティオノーラから「ツェント候補同士で命を奪うこと」を禁じられたため、フェルディナンドは殺し合いを避けつつ魔力量を比較できる平和的な方法として、国境門への魔力供給の速さを競うことを提案した。
- これまでの戦いで魔力が満ちている風、闇、火の国境門を除き、残る三つの国境門(土、水、光)へ各自が転移して魔力を満たし、最も早く始まりの庭に戻ってきた者を勝者とするルールが決定された。
- 勝者はエアヴェルミーンによって世界の礎の場所へと案内される。
参加者の思惑と行き先の決定
エアヴェルミーンが放った魔力の光により、三人の行き先が強制的に割り振られた。それぞれの背景と思惑は以下の通りである。
- ジェルヴァージオ(行き先:ギレッセンマイアー/金・光の女神)
悲劇の元凶であるアダルジーザの離宮を取り壊し、ランツェナーヴェの魔力持ちがユルゲンシュミットの貴族として安住できる地を作るためにツェントを目指す。また、自身に協力してくれた中央騎士団の者たちに報いるという目的も抱いている。 - フェルディナンド(行き先:ハウフレッツェ/緑・水の女神)
自身がツェントになる望みは持っていない。一代限りの魔術具型グルトリスハイトを作って現在の王族に渡し、将来的には自力でメスティオノーラの書を取得する本来の体制へ戻すことを目的としている。 - ローゼマイン(行き先:クラッセンブルク/赤・土の女神)
自身はすでにアーレンスバッハの礎を染めたアウブであるため、二つの礎を同時に染められない自分は参加する意味がないと主張した。しかし、エアヴェルミーンから「国境門への魔力供給は元々アウブの仕事である」「別の者にアウブの礎を染めさせればよい」と論破され、半ば強制的に参加を義務付けられた。
レース開始と規格外の展開
国境門へ向かうためには、メスティオノーラの書を使って自らの手で空中に転移陣を構築する必要があったが、開始直後から規格外の展開となった。
- フェルディナンドとジェルヴァージオが手作業で複雑な転移陣を描き始める中、ローゼマインは革袋から事前に準備していた魔紙を取り出した。
- 彼女はコピーシテペッタンという自作のコピペ魔法を唱え、一瞬にして転移陣を完成させた。
- ジェルヴァージオたちが驚愕するのを横目に、ローゼマインは一番乗りでクラッセンブルクの国境門へと転移していった。
- 一方、残されたフェルディナンドは、魔術具を使ってジェルヴァージオの手足を撃ち抜き、描きかけの転移陣を掻き消すという容赦のない妨害工作を行った。
- さらにフェルディナンドは、自分に割り当てられたハウフレッツェではなく、貴族院の中央棟(エアストエーデ)へと転移した。
- これはジェルヴァージオを完全に無力化するため、登録メダルを破棄してシュタープを封じるための暗躍の開始であった。
まとめ
次期ツェントを巡るツェントレースは、国の危機を救うための平和的な魔力供給競争として始まった。しかし、ローゼマインによるコピペ魔法を用いた一瞬での転移や、フェルディナンドによる徹底した妨害工作と別ルートへの転移など、開始早々から予測不能な展開を見せる。それぞれの思惑が交錯する中、このレースは単なる速度競走にとどまらず、ユルゲンシュミットの未来をかけた激しい知略戦へと発展していくこととなる。
第五部 女神の化身9レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身11レビュー
登場キャラクター
アーレンスバッハ・ランツェナーヴェ陣営
ディートリンデ
次期ツェントを自称するアーレンスバッハの領主候補生である。ゲオルギーネの娘であり、アルステーデの妹という立場にある。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮でランツェナーヴェの者達にシュタープの扱いを教えた。深夜の奇襲によってエックハルトの攻撃を受け、気絶した状態で捕縛された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
次期ツェントになると思い込んでいたが、外患誘致の首謀者として捕らえられた。
アルステーデ
ゲオルギーネの長女であり、ブラージウスの妻である。アーレンスバッハの礎を染めたアウブという立場にある。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
母親の命令に従い、ランツェナーヴェの者達をアーレンスバッハの貴族として登録した。アダルジーザの離宮で捕らえられ、フェルディナンドの尋問で計画の全容を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
外患誘致の首謀者の一人として捕虜となり、尋問対象として扱われた。
ブラージウス
アルステーデの夫である。政変後に処刑された第二夫人の息子で、次期アウブ候補の片割れだった立場にある。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮で捕らえられ、猿轡をされた状態でフェルディナンド達を睨みつけた。中央神殿がローゼマインを望んでいることをユストクスの尋問で明かした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
レオンツィオ
ランツェナーヴェの王となるために行動する者である。ディートリンデに同行し、シュタープを得る目的を持つ。
・所属組織、地位や役職
ランツェナーヴェ・使者。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮でシュタープを得て、魔法陣の襲撃時に騎獣で逃走を図った。アーレンスバッハの騎士達に包囲され、捕縛された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ジェルヴァージオ
ランツェナーヴェの王として育てられた男である。フェルディナンドと血縁関係にあり、ユルゲンシュミットのツェントを目指している。
・所属組織、地位や役職
ランツェナーヴェ・王。ユルゲンシュミットの傍系王族。
・物語内での具体的な行動や成果
始まりの庭でメスティオノーラの書を不完全な状態で授かった。講堂の祭壇に現れてラオブルート達から真のツェントと称えられたが、フェルディナンドによってメダルを破棄され、シュタープを失う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
メダルを破棄されたことでシュタープを失い、ツェントになる可能性が完全に絶たれた。
ジョルダーノ
ランツェナーヴェの使者の一人である。レオンツィオの背後に従者として控えている立場にある。
・所属組織、地位や役職
ランツェナーヴェ・従者。
・物語内での具体的な行動や成果
離宮の食堂でジェルヴァージオの姿が見当たらないことを指摘した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マルティナ
ディートリンデの側近である。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・側近。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮で捕らえられ、急成長したローゼマインの姿を見て目を見開いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ローゼマインとその側近
ローゼマイン
アウブ・アーレンスバッハの立場にあり、メスティオノーラの化身と呼ばれる。図書館に関する夢を抱き、フェルディナンドと協力して事態の収拾に動く。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
講堂の戦いでシュツェーリアの盾を張り、広域の癒しやヴァッシェンを発動した。国境門の魔力供給を新しい呪文で素早く終えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
英知の女神が降臨したことで女神の御力をまとい、周囲から畏れ多い存在と見なされるようになった。
レオノーレ
ローゼマインの護衛騎士である。戦場において的確な状況判断と指示を出す。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮で捕虜の状況を分析し、講堂の戦いでは騎士たちに陣形の指示を出した。ハルトムートの暴走を光の帯で物理的に止めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マティアス
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮で敵の攻撃を盾や武器で防いだ。講堂の戦いでは中央騎士団の攻撃の強さに苦戦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
コルネリウス
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮でアンゲリカと共に図書館の偵察に向かった。講堂の戦いでは盾を張り、癒しを施した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アンゲリカ
ローゼマインの護衛騎士である。身体強化と機敏な動きを得意とする。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮で捕虜に素早く接近し、取り押さえた。女神の御力を隠すため、銀色の布を被ったローゼマインを抱えて移動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラウレンツ
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮で盾を展開して敵の攻撃を防いだ。講堂の扉の前で開閉のための待機を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ユーディット
ローゼマインの護衛騎士である。未成年のため貴族院での戦闘には参加していない。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮でローゼマインの護衛を担当した。講堂での戦いを体験したかったと語る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ダームエル
ローゼマインの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮でローゼマインが休んでいる間、護衛を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ハルトムート
ローゼマインの文官である。彼女を狂信的に崇拝している。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの文官。
・物語内での具体的な行動や成果
講堂でローゼマインをメスティオノーラの化身だと大声で称え、周囲の注目を集めた。中央神殿でイマヌエルを尋問し、聖典と鍵を回収した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クラリッサ
ローゼマインの文官である。ハルトムートと同様に彼女を崇拝する。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの文官。
・物語内での具体的な行動や成果
講堂の戦いで広域魔術の補助魔法陣を起動した。敵に攻撃用魔術具を投げつけて足止めした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フィリーネ
ローゼマインの文官である。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの文官。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮で、ローゼマインの女神の御力の影響について語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
オティーリエ
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮でローゼマインの着替えを手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブリュンヒルデ
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮でローゼマインの食事を運び、新しい衣装について説明した。女神の御力を直視するのが難しいと語る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ベルティルデ
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮でローゼマインの髪飾りを外し、着替えを手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フェルディナンドとその側近
フェルディナンド
アーレンスバッハの領主一族であり、ローゼマインの元後見人である。合理的な思考と高い戦闘力を持つ。
・所属組織、地位や役職
アーレンスバッハ・領主一族。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮の制圧を指揮し、ジェルヴァージオのメダルを破棄してシュタープを奪った。ツェントレースにおいて国境門の魔力供給を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦況をコントロールし、戦後の政治的交渉を見据えた行動を取り、周囲から脅威と認識されている。
エックハルト
フェルディナンドの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
フェルディナンドの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮でアルステーデを尋問のために踏みつけた。中央神殿へ突入し、神官達を切り伏せて道を開いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ユストクス
フェルディナンドの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
フェルディナンドの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮でディートリンデを引きずり出し、アーレンスバッハの者達の尋問を行った。講堂の戦いでは魔術具や回復薬の補給を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
シュトラール
フェルディナンドの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
フェルディナンドの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
中央棟の様子を探り、中央騎士団の動きを報告した。アダルジーザの離宮で捕虜の管理を任される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ダンケルフェルガー
ヴェルデクラフ
ダンケルフェルガーの領主である。戦いを好むが、政治的な判断も行う。
・所属組織、地位や役職
ダンケルフェルガー・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
王宮で中央騎士団の反乱を鎮圧し、講堂でラオブルートを討ち取った。フェルディナンドの頭脳戦を高く評価した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ジークリンデ
ダンケルフェルガーの第一夫人である。後方支援の責任者を務める。
・所属組織、地位や役職
ダンケルフェルガー・領主の第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンケルフェルガー寮で騎士たちの休息場所や食事の手配を行った。領地や前線との連絡を取り仕切った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ハイスヒッツェ
ダンケルフェルガーの騎士である。
・所属組織、地位や役職
ダンケルフェルガー・騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
アダルジーザの離宮での制圧に参加し、フェルディナンドの指示で王宮の状況を報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
王族
トラオクヴァール
ユルゲンシュミットのツェントである。グルトリスハイトを持たないことに苦悩している。
・所属組織、地位や役職
中央・ツェント。
・物語内での具体的な行動や成果
王宮の襲撃時にトルークを使われ、「真のツェントを望む」と責任を放棄する発言を繰り返した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
責任を放棄したことで、フェルディナンドとヴェルデクラフからツェント失格と判断された。
ラルフリーダ
トラオクヴァールの第一夫人である。
・所属組織、地位や役職
中央・第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
王宮封鎖の際、王宮内の文官や側仕え達に通達を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ラオブルートを騎士団長に推薦した人物であると明かされた。
クレメンディア
トラオクヴァールの第二夫人である。
・所属組織、地位や役職
中央・第二夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
王宮封鎖の際、騎士団の移動を担当し、自身の離宮への護衛追加を求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マグダレーナ
トラオクヴァールの第三夫人であり、ダンケルフェルガーの出身である。
・所属組織、地位や役職
中央・第三夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
トラオクヴァールの居住区域で防衛の指揮を執り、王宮の封鎖を解いた。講堂へ向かい、銀色の短剣でラオブルートを刺した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アナスタージウス
トラオクヴァールの息子である。妻と娘を守る意志が強い。
・所属組織、地位や役職
中央・王子。
・物語内での具体的な行動や成果
講堂でラオブルートと剣を交えた。フェルディナンドの指示でジェルヴァージオのメダルを破棄した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エグランティーヌ
アナスタージウスの妻である。政変に関する傷を抱えている。
・所属組織、地位や役職
中央・王族。
・物語内での具体的な行動や成果
王宮襲撃の報告に怯えながらも、母親として娘を守る決意を固めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ステファレーヌ
アナスタージウスとエグランティーヌの娘である。
・所属組織、地位や役職
中央・王族。
・物語内での具体的な行動や成果
母親に抱えられていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヒルデブラント
トラオクヴァールの息子である。
・所属組織、地位や役職
中央・王子。
・物語内での具体的な行動や成果
ラオブルートに誘導されて最奥の間の扉を開き、シュタープを得た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
秘密裏に扉を開け、敵にシュタープを得る機会を与えたため、重大な罪に問われることになった。
ハーランド
アナスタージウスの筆頭護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
アナスタージウスの筆頭護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
離宮の防衛状況をアナスタージウスに報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メルギルト
アナスタージウスの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
アナスタージウスの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
王宮に残り、他領からの問い合わせをアナスタージウスに報告する連絡係を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
オスヴィン
アナスタージウスの筆頭側仕えである。
・所属組織、地位や役職
アナスタージウスの筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
アナスタージウスの身支度を整えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イスハイト
マグダレーナの護衛騎士である。
・所属組織、地位や役職
マグダレーナの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンケルフェルガーへの救援要請の連絡を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルトゥール
ヒルデブラントの側近である。
・所属組織、地位や役職
ヒルデブラントの側近。
・物語内での具体的な行動や成果
最奥の間を開けた後、ヒルデブラントを離宮へ連れ帰った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
中央騎士団
ラオブルート
中央騎士団長であり、トラオクヴァールを裏切った首謀者である。ジェルヴァージオを真のツェントと仰ぐ。
・所属組織、地位や役職
中央騎士団・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
ヒルデブラントを利用してランツェナーヴェの者達にシュタープを与えさせた。講堂でフェルディナンドやアナスタージウス達と戦い、マグダレーナに刺されて捕縛される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
外患誘致の首謀者として捕らえられた。
中央神殿
イマヌエル
中央神殿の神殿長である。聖典原理主義者であり、ローゼマインを中央神殿に入れることを望む。
・所属組織、地位や役職
中央神殿・神殿長。
・物語内での具体的な行動や成果
ラオブルートと協力し、ジェルヴァージオのメダルを傍系王族のものへ変更した。中央神殿でフェルディナンドに拘束され、ハルトムートの尋問を受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カーティス
イマヌエルの側仕えである。前神殿長に仕えていた青色神官である。
・所属組織、地位や役職
中央神殿・青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
イマヌエルの行動を不審に思い監視していた。フェルディナンド達にメダルの保管場所を案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エーレンフェスト
ジルヴェスター
アウブ・エーレンフェストである。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮でフェルディナンドから報告を受けた。女神の御力をまとったローゼマインを見て驚愕する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フロレンツィア
ジルヴェスターの第一夫人である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・領主の第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮で王族を招く昼食会の準備を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
シャルロッテ
ジルヴェスターの娘である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
アーレンスバッハの騎士達への食事支援などの采配を振るった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後方支援の腕をフェルディナンドから高く評価された。
カルステッド
エーレンフェストの騎士団長である。
・所属組織、地位や役職
エーレンフェスト・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮でフェルディナンドの報告に同席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
リヒャルダ
ローゼマインの側仕えである。
・所属組織、地位や役職
ローゼマインの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
エーレンフェスト寮でローゼマインの世話を取り仕切った。ハルトムートの暴走に影響されたクラリッサを叱責する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
貴族院・図書館
ソランジュ
貴族院図書館の中級司書である。
・所属組織、地位や役職
貴族院図書館・中級司書。
・物語内での具体的な行動や成果
ラオブルートとジェルヴァージオに脅され、地下書庫の鍵を渡した。その後、拘束されているところをフェルディナンド達に救出される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
シュバルツ
貴族院図書館の魔術具である。
・所属組織、地位や役職
貴族院図書館・魔術具。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの呼びかけに応えて図書館の扉を開けた。ソランジュの居場所を伝える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヴァイス
貴族院図書館の魔術具である。
・所属組織、地位や役職
貴族院図書館・魔術具。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの呼びかけに応えて図書館の扉を開けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
神々
エアヴェルミーン
始まりの庭にいる神格的存在である。ユルゲンシュミットの崩壊を危惧している。
・所属組織、地位や役職
神々。
・物語内での具体的な行動や成果
フェルディナンドに攻撃を仕掛け、ジェルヴァージオに礎を満たすよう命じた。メスティオノーラの介入を受け入れ、ツェントレースの規定を定める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メスティオノーラ
英知の女神である。ローゼマインの体に降臨した。
・所属組織、地位や役職
神々。
・物語内での具体的な行動や成果
ローゼマインの体に降臨し、エアヴェルミーンへ神力を分け与えた。ツェント候補同士の殺し合いを禁じ、国境門の魔力供給による競争を提案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
第五部 女神の化身9レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身11レビュー
展開まとめ
プロローグ
離宮での退屈な日々
ディートリンデは、グルトリスハイトを得るために滞在している離宮で退屈を感じていた。
調合室ではアルステーデや文官達が真剣に回復薬や魔術具の調合を行っていたが、ディートリンデ自身は側仕えに爪を磨かせながら眺めているだけだった。
離宮は本来ランツェナーヴェの姫が過ごすための施設であり、家具や魔術具も豪華な物が揃っていた。食料や下働きもランツェナーヴェ側から持ち込まれていたため、生活自体に不自由はなかった。
ランツェナーヴェでの優越感
ディートリンデは、自分がランツェナーヴェの者達へ回復薬の作り方や騎獣、全身鎧の作り方を教えたことを誇らしく思っていた。
彼女にとって、周囲から称賛され、頼られることは非常に心地良い経験だったのである。
さらに、この離宮には彼女へ仕事を押し付ける婚約者も文官もおらず、自由気ままに過ごせる環境が整っていた。
祠巡りと外出制限
ラオブルートの根回しによって、一時的に外出も許可されていた。
レオンツィオ達はシュタープ取得のために動き、ディートリンデ自身も次期ツェントに必要な祠巡りを行っていた。
しかし、不審者騒動によって中央騎士団が動き始めたため、再び離宮へ押し込められることになる。
レオンツィオもシュタープの取り込みで寝台へ籠もっていたため、ディートリンデは相手をしてくれる者がおらず、不満を募らせていた。
アルステーデへの不満
アルステーデは母ゲオルギーネの命令を忠実に守り、回復薬や魔術具の調合を優先していた。
ディートリンデは、自分が次期ツェントとなる立場である以上、本来ならば自分の方が優先されるべきだと考えていたが、アルステーデは全く態度を変えなかった。
さらに、調合中の回復薬についても、自分用を多めに確保したいと要求する。
しかしアルステーデは、必要なら自分で作れば良いと返し、ディートリンデのわがままを受け流した。
アーレンスバッハへの執着
ディートリンデは、アルステーデが幼い娘ベネディクタよりも母ゲオルギーネの命令を優先していることにも不満を抱いていた。
また、アーレンスバッハの礎が奪われたという報告を受けても、彼女は「次期ツェントである自分」がグルトリスハイトを得れば全て解決できると信じ込んでいた。
敵へ送った魔術具の手紙に返答が来ないことにも苛立ちながら、それでも自分なら全てを覆せると思っていたのである。
離宮の構造と男女の対立
この離宮は、通常の離宮と違い、ほぼ同じ構造の建物が二つ並ぶ奇妙な造りになっていた。
ジェルヴァージオは、ランツェナーヴェ側が離れを使い、ディートリンデ達が本館へ移動するよう求めた。
ディートリンデは未婚男女が同じ建物で寝起きすることを問題視したが、ジェルヴァージオは全く気にせず、嫌なら自分達が移動すれば良いと突き放した。
結局、ディートリンデ達が本館へ移ることになったが、彼女は最後まで納得していなかった。
レオンツィオとの再会
夕食時には、シュタープの取り込みを終えたレオンツィオが姿を現した。
彼はディートリンデへ久し振りに会えた喜びを伝え、今後はシュタープの扱いを学んで役に立ちたいと語る。
その言葉に気分を良くしたディートリンデは、自らが次期ツェントとして彼等へ教える立場なのだと得意げに振る舞った。
シュタープ講習と高揚感
夕食後も、ランツェナーヴェの者達はシュタープの扱いについて熱心に質問を続けた。
ディートリンデはメッサーを実演しながら、シュタープの安定した扱い方や変形方法を教える。
周囲から「素晴らしい」と歓声を浴び、彼女は久し振りに強い満足感を得ていた。
そして、明日からまた楽しい日々が始まると期待していた。
静寂の終わり
しかし、その平穏な時間は真夜中に破られることになる。
ディートリンデが期待していた「明日」が訪れることは、二度となかったのである。
夜の貴族院
貴族院への転移
ローゼマイン達は国境門から国境門への転移呪文を使い、貴族院へ到着した。
しかし、到着した場所は従来の国境門とは異なり、白い壁と転移陣だけが存在する閉鎖的な部屋だった。転移の間に似ていたが、床と扉の縁取りには国境門と同じ淡い虹色が施されていた。
ローゼマインはメスティオノーラの書で位置を確認し、この場所が貴族院中央棟の立ち入り禁止区域にあると知る。
フェルディナンドの過去
ローゼマインが計画変更の必要性を尋ねると、フェルディナンドは以前「少々事情があって」この転移の間へ入り込んだことがあるため問題ないと答えた。
ローゼマインは、立ち入り禁止区域へ侵入した過去を当然のように語るフェルディナンドへ呆れながらも、その経験に助けられている現状を実感する。
中央棟からの脱出
騎士達が集合すると、フェルディナンドは即死毒対策としてフェアベルッケンの印を持っているか確認した。
その後、ローゼマインがグルトリスハイトを使って扉を開く。外は真夜中で、静まり返った中央棟には緊張感が漂っていた。
先行したエックハルトとアンゲリカが周囲を確認し、中央騎士団が回廊側にいることを発見する。そこで一行は会議棟側の窓から外へ脱出することになった。
同行を巡るやり取り
フェルディナンドは、ローゼマインへここで帰還しても良いと告げた。
だがローゼマインは、グルトリスハイトを持つ自分が正当性の証明に必要だと考え、同行を拒否する。
最終的にフェルディナンドは折れ、ローゼマインを抱えて窓から飛び降りた。ローゼマインは騎士達が当然のように夜の空を駆ける様子に改めて感心していた。
ダンケルフェルガーへの連絡
中央棟を離れたローゼマインは、ハルトムート作成の魔紙を使ってダンケルフェルガーへ到着を知らせた。
白い紙飛行機となったオルドシュネーリは夜空を飛び、待機していたダンケルフェルガー騎士団へ向かう。
彼等はアーレンスバッハ寮付近で合流し、フェアベルッケンに隠されたアダルジーザの離宮を捜索する予定だった。
アダルジーザの離宮への感情
ローゼマインは、フェルディナンドにとってアダルジーザの離宮が嫌な思い出の場所ではないかと気遣った。
しかしフェルディナンドは、自分はむしろ離宮を粉々に破壊したいと思っていると冷たく答える。
ローゼマインは、最近のフェルディナンドの思考が物騒になっているのではないかと心配するが、本人は元々だと苦笑した。
地図理解への指摘
ローゼマインは、夜空からではアーレンスバッハ寮や離宮の位置が全くわからないと漏らした。
するとフェルディナンドは、地図の位置関係を理解できていない状態でダンケルフェルガーへ案内役を引き受けたのかと呆れる。
ローゼマインは、自分が理解していなくてもフェルディナンドがわかっているから問題ないと言い切った。
その言葉にフェルディナンドは非常に嫌そうな顔をしながらも、離宮の位置を把握していることを認めた。
ダンケルフェルガーとの合流
やがて上空で待機していたダンケルフェルガー騎士団が姿を現した。
彼等はまるで蜜蜂の群れのように旋回しながら合流を図り、その様子を見たフェルディナンドは、これでは隠密行動も何もないと呆れていた。
フェアベルッケンの印を外したアーレンスバッハ側の騎士達が姿を現すと、ダンケルフェルガー騎士達は興奮の声を上げる。
さらに、ハイスヒッツェまで参加していることにフェルディナンドは驚きを隠せなかった。
離宮突入前の説明
アウブ・ダンケルフェルガーは、戦場なので形式的な挨拶は不要だと言い、すぐに離宮への案内を求めた。
そこでフェルディナンドは、助言の女神アンハルトゥングの魔法陣でフェアベルッケンの隠蔽を暴き、その後に突入すると説明する。
さらに、ディートリンデ、アルステーデ、レオンツィオの三名は外患誘致の首謀者であり、可能な限り生け捕りにしてほしいと要請した。
また、敵は即死毒を躊躇なく使用する可能性が高いこと、ジェルヴァージオやランツェナーヴェ王族の人数が不明であることも共有される。
離宮への進軍
フェルディナンドはローゼマインへ、グルトリスハイトを掲げて離宮の方向を示すよう指示した。
ローゼマインがメスティオノーラの書を掲げると、騎士達から歓声が上がる。
そしてフェルディナンドを先頭に、一行はアダルジーザの離宮へ向かって夜空を駆け出した。
アダルジーザの離宮
隠された離宮の発見
フェルディナンドが上空を確認しながら進んでいた一行は、黒い森の上空で停止した。
ローゼマインは、ハルトムート達と作成した助言の女神アンハルトゥングの魔法陣へ魔力を注ぎ込む。すると光の魔法陣が空へ浮かび上がり、隠蔽の神フェアベルッケンに隠されていたアダルジーザの離宮が姿を現した。
そこには渡り廊下で繋がった双子のような二つの建物が存在していた。荒廃していたものの、前庭や噴水、池や花壇の跡から、かつては華やかな離宮だったことがうかがえた。
フェルディナンドの感情
ローゼマインは、離宮を見つめるフェルディナンドの表情を窺った。
しかし彼は懐かしさなど一切見せず、眉間に皺を刻みながら本気で離宮を粉々にしそうな顔をしていた。
その様子から、ローゼマインは彼がこの場所へ強い嫌悪感を抱いていることを改めて実感する。
ダンケルフェルガーの突撃
アウブ・ダンケルフェルガーは、まず結界の有無を確認するよう命じた。
ダンケルフェルガーの騎士達は、巨大なゲヴィンネンの駒を模した魔術具を投入する。それは自律的に飛行し、離宮の窓へ突撃した。
結界が存在しないことを確認すると、アウブ・ダンケルフェルガーは即座に突入を命じ、自ら先頭で三階のバルコニーへ飛び込んだ。
彼に続き、多数のダンケルフェルガー騎士達が窓を破壊しながら離宮へ突入していく。
建物の違い
フェルディナンドは、見張りを置かず突撃していくダンケルフェルガーに呆れながら、自分達は別の建物へ侵入すると指示した。
ローゼマインは、片方の建物には三階のバルコニーがなく、窓に頑丈な格子が嵌められていることに気付く。
フェルディナンドによれば、そこはランツェナーヴェの姫達や、いずれ魔石となる子供達が暮らす側の建物だった。侵入も逃亡も許さない構造によって、住人達の扱いが察せられた。
その説明を聞いたローゼマインは、フェルディナンドが離宮を破壊したがる理由を理解した。
前庭での待機
フェルディナンドはローゼマインへ、前庭で捕虜監視を行うよう命じた。
歩く速度も遅い彼女は足手まといになるため、魔力の多さを利用して捕虜を光の帯で縛り直す役目を与えられたのである。
フェルディナンドはエックハルトとユストクスを連れ、建物内部へ入っていった。
捕虜達の様子
ダンケルフェルガーの騎士達によって、次々と捕虜が前庭へ運ばれてくる。
ほとんどが寝間着姿であり、寝込みを襲撃されたことがわかる状態だった。
その中には、アーレンスバッハで正式に挨拶していたランツェナーヴェの使者達も含まれていた。彼等は無言で周囲を睨むだけだった。
レオンツィオの逃走
やがて、新たに連れてこられた捕虜が光の帯を引きちぎって逃走した。
その男はレオンツィオだった。彼は騎獣へ乗り、シュタープを握りながらランツェナーヴェの王になるのだと叫んでいた。
ローゼマインは、ランツェナーヴェの者であるはずの彼がシュタープを所持していることへ強い衝撃を受ける。
シュタープ所持者達の反撃
さらに、前庭へ転がされていた他の捕虜達まで光の帯を破り、シュタープを構えて一斉に魔力攻撃を放った。
コルネリウス達は即座に盾と剣で対応し、攻撃を防ぎながら反撃する。
アンゲリカは勢い余って敵を殺しかけ、レオノーレから怒鳴られる場面もあった。
その後、捕虜達にはシュタープ封印用の手枷が嵌められ、動けないよう骨まで折られた。
未熟なシュタープ使用
レオノーレは、敵が光の帯を破れるほどの魔力を持ちながら、何故効率の悪い魔力弾しか使えないのか疑問を抱いた。
ローゼマインは、彼等がシュタープを手に入れて日が浅いのだろうと推測する。
実際、彼等は騎獣や魔力放出は使えても、ロートや武器変形など貴族院で最初に学ぶ技術を扱えていなかった。
ディートリンデの捕縛
その最中、建物の三階から爆発音が響き渡った。
続いて、ディートリンデがフェルディナンドへ愛を求めているなどと叫ぶ声が聞こえたが、途中で強制的に黙らされる。
やがてユストクスによって、気絶したディートリンデが前庭へ引きずり出された。豪奢な金髪は汚れ、寝間着姿のまま無惨な姿となっていた。
ユストクスやアーレンスバッハ騎士達は、彼女へ隠しきれない軽蔑と怒りを向けていた。
アルステーデ夫妻の捕縛
続いて、ゲオルギーネに似た髪色を持つ女性と、赤髪の男性が連行される。
彼等こそ、ゲオルギーネの長女アルステーデと、その夫ブラージウスだった。
フェルディナンドは、制圧完了を確認した後、ジェルヴァージオの姿が見当たらないことへ気付く。
ランツェナーヴェ側の捕虜は若者ばかりであり、年齢的に王であるジェルヴァージオ本人やその側近が存在しなかったのである。
アルステーデへの追及
フェルディナンドはアルステーデへ猿轡を外し、ジェルヴァージオの居場所を問い質した。
しかしアルステーデは、フェルディナンドが生きていることや、アーレンスバッハ騎士が自分達へ剣を向ける状況に混乱し、まともに答えられなかった。
激昂したエックハルトは彼女を踏みつけ、無理矢理回答を迫る。
アルステーデは恐怖で泣きながら、ランツェナーヴェ側とは別棟だったため、ジェルヴァージオの所在は知らないと答えた。
王族の関与
フェルディナンドはさらに、何故ディートリンデではなくアルステーデが礎を染め、ランツェナーヴェ人を貴族として登録し、シュタープを与えたのか追及した。
アルステーデは、全て母ゲオルギーネの命令だったと弁解する。
しかしフェルディナンドは、それでも実際に最奥の間を開け、ランツェナーヴェ人へシュタープを与えたのはアルステーデ自身だと断じた。
そこでアルステーデは、最奥の間を開けるには王族の協力が必要だったため、中央騎士団長を通じて王族が協力したのだと明かす。
その衝撃的な告白に、周囲の騎士達は一斉に驚愕した。
協力者
王族関与の発覚と動揺
アルステーデは、ランツェナーヴェの者達へシュタープを与える際、中央騎士団長を通じて王族が協力したのだと語った。
その発言に周囲は大きく動揺する。中央騎士団長の危険性は警戒されていたが、王族まで関与しているとは誰も予想していなかったのである。
アルステーデは、自分達ではなく、離宮を襲撃した側こそ反逆罪に問われる可能性があると必死に主張した。
一方、ブラージウスは猿轡をされたままフェルディナンドを嘲笑うように見上げていた。
王宮からの救援要請
そこへアウブ・ダンケルフェルガーからオルドナンツが届く。
王宮では中央騎士団による同士討ちが発生しており、ダンケルフェルガーへ救援要請が出されたという。
その報告を受け、ダンケルフェルガーの騎士達は次々と王宮へ向けて飛び立ち始めた。
フェルディナンドは、離宮を完全に放置して向かおうとする彼等へ呆れながら、せめて報告役と連絡役を残すよう要求した。
尋問と探索の分担
フェルディナンドは即座に部隊を再編した。
ユストクス達にはアーレンスバッハ側の尋問、ハルトムート達にはランツェナーヴェ側の尋問を命じる。さらに離宮内の探索も班ごとに割り振り、ジェルヴァージオの行方を追わせた。
ローゼマインとその護衛騎士達は、フェルディナンドに同行することとなる。
アルステーデの移送
アルステーデだけは別扱いとなり、六班の騎士によって宙吊り状態で別棟へ運ばれていった。
ローゼマインは怯え切っている彼女を少し気の毒に感じたが、フェルディナンドは合理的な理由から彼女を選んでいた。
アルステーデは強者へ従うことに慣れており、ディートリンデより会話が成立し、ブラージウスより情報を引き出しやすいと判断されたのである。
さらに、彼女こそが国境門を開き、ランツェナーヴェの侵入を許した張本人であるため、全ての情報を吐かせる価値があると見なされていた。
ローゼマインは、敵に回してはいけない相手だと改めて実感していた。
ダンケルフェルガーの報告
フェルディナンド達は、離宮に残っていたハイスヒッツェ達と合流した。
彼等によれば、離宮内には魔術具や回復薬、銀色の筒など、見慣れない道具が大量に保管されていた。
フェルディナンドは、即死毒が含まれている可能性を警戒しつつ、後で文官棟へ運び込むよう指示する。
また、それらの研究成果を政治交渉に利用する構想まで口にし、ローゼマインは内心で呆れていた。
整えられた離宮
離宮内部は、十年以上閉鎖されていたとは思えないほど綺麗に整えられていた。
家具や布製品も良好な状態で保たれており、まるで新たな住人を迎える準備が整えられているようだった。
ローゼマインは誰が準備したのか疑問に思うが、フェルディナンドはそれ以上に気になる点があるとして、ハイスヒッツェへ王宮の状況を問い質した。
王宮での同士討ち
ハイスヒッツェによれば、王宮では護衛交代時に突然切りかかる騎士が現れ、中央騎士団が敵味方不明の混戦状態へ陥っているという。
ツェントは隠し部屋へ避難しているが、それ以外の場所では完全な同士討ちになっていた。
フェルディナンドは、王宮封鎖を解除してダンケルフェルガーを受け入れること自体に強い危険性を感じていた。
敵の狙いの推測
ローゼマインは、ダンケルフェルガー受け入れに乗じて別の敵を王宮へ侵入させる計画ではないかと推測した。
しかしフェルディナンドは、むしろ敵の狙いはダンケルフェルガーの戦力を王宮へ隔離することだと分析する。
ダンケルフェルガーは今回の主力であり、彼等が王宮へ引き寄せられれば、貴族院側の戦力は半減以下になるのである。
さらに王宮内で即死毒を繰り返し使えば、強力な騎士達をまとめて始末できるとも指摘した。
その悪辣な想定に、ローゼマインは血の気が引く思いを抱く。
ダンケルフェルガーへの評価
ハイスヒッツェはアウブ・ダンケルフェルガーへ注意を送ると答えたが、止まることはないだろうとも認めた。
ローゼマインも、罠へ突撃しても力技で突破していきそうなダンケルフェルガーらしさを思い浮かべ、妙に納得していた。
救援参加への判断
ハイスヒッツェは、探索終了後に王宮へ合流しようと提案した。
しかしフェルディナンドは、正式な救援要請がダンケルフェルガーへ出されたのであって、アーレンスバッハには出ていないと指摘する。
外患誘致の罪に問われているアーレンスバッハ勢力が勝手に王宮へ向かえば、王族側も警戒するだけだという。
ローゼマインもまた、まずはジェルヴァージオ捜索を優先すべきだと考えていた。
図書館への懸念
そしてローゼマインは、王族よりも連絡が取れないソランジュの方が気掛かりだと語った。
フェルディナンドは、こちらの処理が終われば図書館へ向かうと答える。だが、その前にアルステーデから情報を聞き出す必要があると判断していた。
アルステーデの話
アルステーデへの本格的な尋問
フェルディナンド達は最初の部屋へ戻り、アルステーデへの尋問を開始した。
ローゼマインは文官役として、メスティオノーラの書へ問答を書き留めるよう命じられる。
当初アルステーデは母ゲオルギーネの命令を理由に黙秘しようとしていた。だが、ゲオルギーネの死や自身の罪、さらにアーレンスバッハに残してきた幼い娘の安全を材料にされ、次第に心を折られていった。
ラオブルートと離宮の鍵
アルステーデによれば、離宮の鍵を所持していたのは中央騎士団長ラオブルートだった。
彼女達がランツェナーヴェの館と離宮を行き来するようになったのは、前年秋からだったという。
フェルディナンドは、正面玄関の鍵は王族管理でも、側仕え用の裏口の鍵が別系統で残っていた可能性を指摘した。
その鍵を利用し、ラオブルートはゲオルギーネ達の計画を実行へ移していたのである。
計画開始の流れ
レティーツィアがフェルディナンドへ毒を盛り、ディートリンデが死亡確認を行ったことで計画は始動した。
ゲオルギーネはエーレンフェストへ向かい、ディートリンデはグルトリスハイト取得のため離宮へ移動する。さらにランツェナーヴェの王族達にはシュタープ取得が課されていた。
アルステーデ自身も、アウブとしてランツェナーヴェの者達をアーレンスバッハ貴族へ登録する役目を負っていた。
離宮での生活
離宮到着後、ディートリンデは「未婚男女が同じ建物にいるのは外聞が悪い」と主張し、アーレンスバッハ側とランツェナーヴェ側で建物を分けることになった。
ローゼマインとフェルディナンドは、その言い分に今更感を覚えて呆れていた。
その後、一行はシュタープ取得のため最奥の間へ向かおうとする。
ジギスヴァルトによる妨害
しかし、ラオブルートが扉の外を確認したところ、ジギスヴァルト王子が側近を連れて回廊を歩いていたため、その日は中止となった。
ローゼマインは、それがジギスヴァルトとジルヴェスターの話し合いの日だったことに気付き、偶然計画を妨害していた事実へ驚く。
王宮封鎖と離宮籠城
その夜、ラオブルートは王族から緊急招集を受けた。
フェルディナンドの側近が貴族院へ移動したことや、アーレンスバッハ側の動向が王族へ伝わったため、王宮は封鎖され、中央騎士団が転移扉やアーレンスバッハ寮周辺を警備する事態になったのである。
アルステーデ達は離宮へ籠もり、回復薬や武具の準備を進めていた。ランツェナーヴェの者達は騎士鎧や騎獣の練習を重ねていたという。
最奥の間の扉
やがて警戒が薄れ、再び最奥の間の扉を開けようとした。
しかしアルステーデには開けられなかった。彼女はツェント承認が得られていないからだと考えていたが、ローゼマインとフェルディナンドは、既に礎を失っていた可能性を疑う。
そこでラオブルートは別の手を打っていた。中央神殿から神殿長イマヌエルと青色神官達を呼び寄せていたのである。
ヒルデブラントの利用
祈念式を名目に最奥の間が開かれる日に合わせ、ランツェナーヴェの者達は中央騎士団を装って同行した。
アナスタージウスが周辺確認のため離れた後、ヒルデブラントがシュタープ取得用の扉を開いたという。
ローゼマインは、幼少でのシュタープ取得が将来的な弊害を生むことを知っているため、強い衝撃を受ける。
フェルディナンドは、ヒルデブラント自身に「シュタープを得たい」という願望があったからこそ、ラオブルートに利用されたのだと冷静に分析した。
王族協力の真相
フェルディナンドは、アルステーデの証言から「王族の協力」の正体を見抜いた。
中央神殿が管理するメダルを操作し、ランツェナーヴェへ渡っていたジェルヴァージオを、ユルゲンシュミットの傍系王族として再登録していたのである。
ラオブルートとイマヌエルは協力し、ジェルヴァージオをグルトリスハイト取得資格者へ仕立て上げていた。
その狙いは、ランツェナーヴェ側へグルトリスハイトを奪取させることだった。
イマヌエルへの嫌悪
ローゼマインは、以前からイマヌエルへ強い嫌悪感を抱いていた。
神具や古い儀式へ異常な執着を見せる彼の狂信的な目を、気味悪く感じていたのである。
フェルディナンドは、聖典原理主義者のイマヌエルなら、グルトリスハイトさえ得られるならランツェナーヴェの者でもツェントへ据えるだろうと断じた。
アーレンスバッハ崩壊後
ランツェナーヴェの者達がシュタープを得た後、アルステーデはアーレンスバッハへ戻ろうとした。
しかし館も寮も閉ざされており、そこで初めて礎が奪われたことを知らされる。
ディートリンデは激怒し、再びアウブへ戻るためにもグルトリスハイト取得が必要だと意気込んで祠巡りを始めた。
ローゼマインは、フェルディナンドを瀕死へ追い込んだ張本人の名を聞くだけで怒りが込み上げるのを感じていた。
ディートリンデ擁護への激怒
アルステーデは、ディートリンデは少し自己中心的だが根は悪くないのだと妹を庇った。
しかし、その言葉はローゼマインの逆鱗に触れる。
レティーツィアを陥れ、フェルディナンドへ即死毒や痺れ薬を使い、魔力枯渇で殺そうとした人物を「根は悪くない」と言われたことで、ローゼマインは怒りに任せて威圧を放った。
アルステーデは苦しみ始め、フェルディナンドが慌ててローゼマインを制止する。
ローゼマインは成長したことで対象を限定した威圧が可能になっていたが、それでもフェルディナンドは彼女を落ち着かせ、アルステーデを退避させた。
ジェルヴァージオの現在地
落ち着きを取り戻した後、フェルディナンドは本題へ戻る。
重要なのは、ジェルヴァージオが既に祠巡りを終えている可能性だった。
ローゼマインは、祠巡り自体にはそれほど時間がかからないことを思い出す。ヒルシュールから不審人物目撃情報があった文官棟付近には祠が存在していた。
つまり、ジェルヴァージオは既に全ての祠を巡り終えている可能性が高かったのである。
フェルディナンドは、もしグルトリスハイト取得段階へ進んだからこそ中央騎士団が裏切りを明かしたのだとすれば、ジェルヴァージオは今どこへ向かっていると思うかと問い掛けた。
その瞬間、ローゼマインは血の気が引く。
グルトリスハイトを望む者が最後に向かう場所は、一つしか存在しなかったのである。
ソランジュの救出
ソランジュ救出への焦燥
フェルディナンドから、ジェルヴァージオが図書館へ向かっている可能性を指摘されたローゼマインは、瀕死のソランジュを想像して激しく動揺した。
すぐに図書館へ向かおうとするが、フェルディナンドは彼女を引き留め、捕虜管理や戦力配分を決めなければならないと冷静に説く。
ジェルヴァージオ達が離宮へ戻る可能性や、押収武器を奪い返される危険性もあり、無計画に動くべきではないと警告した。
現在の戦力状況
フェルディナンドは、今回の離宮制圧が成功したのは、ダンケルフェルガーによる圧倒的人数差と深夜奇襲のおかげに過ぎないと説明する。
敵は銀色の武器や防具、即死毒、さらにシュタープまで得ており、正面から戦えば決して楽な相手ではなかった。
しかもダンケルフェルガー主力は王宮へ向かっており、現在はアーレンスバッハの騎士だけで捕虜管理と警戒を行わなければならない状況だった。
ローゼマインへの制止
ローゼマインは、それでもソランジュを救いたい一心で、自分だけでも図書館へ向かわせてほしいと懇願した。
しかしフェルディナンドは、図書館の魔術具が主であるローゼマインの接近を感知してしまうため、敵へ存在を知られる危険があると説明する。
シュバルツ達が反応すれば、ソランジュを人質に取られる可能性すらあるため、まずは騎士達による偵察が必要だった。
理路整然と諭されたローゼマインは、ようやく自分の行動が逆にソランジュを危険へ晒す可能性を理解する。
図書館への偵察
コルネリウスとアンゲリカが数名の騎士を連れ、図書館の様子見へ向かった。
その間もフェルディナンドは、ランツェナーヴェの武器や道具を隠し部屋へ封印するよう指示を出し続ける。
ハイスヒッツェは、もし敵が活動中に戦っていれば、ダンケルフェルガーにも大きな被害が出ていただろうと語った。
傍系王族についての調査
落ち着かないローゼマインへ、フェルディナンドはグルトリスハイトで「傍系王族」について調べるよう課題を与えた。
その結果、傍系王族は司書登録なしでも図書館へ入れるが、地下書庫最奥へは行けないことが判明する。
フェルディナンドは、その情報から、ジェルヴァージオがまだグルトリスハイトを入手していない可能性へ安堵した。
図書館の異変
やがてコルネリウスからオルドナンツが届く。
図書館は施錠されていたが、執務室の窓に薄明かりが見えたという。潜入跡は確認されなかったため、フェルディナンドは援軍と共に向かうまで侵入を禁じた。
その後、一行は約六十騎の騎獣で図書館へ向かう。
移動中、クラリッサは図書館でローゼマインが起こした数々の「奇跡」を熱弁し、本人は必死に止めていた。
裏口からの侵入
図書館周辺へ到着した一行は、中央騎士団の姿がないことを確認した。
コルネリウスは窓からの潜入を提案するが、フェルディナンドは、主であるローゼマインがいれば裏口を開けてもらえると言う。
ローゼマインがシュバルツとヴァイスへ呼びかけると、扉はあっさり開いた。
彼女は、図書館の主という立場の危険性と重要性を改めて実感していた。
ソランジュの発見
シュバルツ達は、ソランジュが執務室で動けなくなっていると告げた。
ローゼマインが駆け出そうとした瞬間、フェルディナンドが制止し、まずハイスヒッツェ達に安全確認を命じる。
罠がないと判明すると、フェルディナンドは真っ先に執務室へ入り、癒しを施した。
レオノーレは、フェルディナンドがローゼマインへ配慮して先に状態確認をしているのだと説明する。
ソランジュの証言
回復したソランジュは、ラオブルートとジェルヴァージオが訪れた経緯を語った。
ラオブルートは、死亡したオルタンシアの部屋整理を理由に訪れ、ジェルヴァージオは昔馴染みとして同行していた。
その後、ラオブルートは地下書庫の鍵を要求し、武器と側仕えを盾にソランジュを脅迫する。
ソランジュは地下書庫関連の鍵を渡し、シュタープ封印の手枷を嵌められて拘束された。
地下書庫への侵入
ラオブルート達は、騎士へ鍵を染めさせた上で、ジェルヴァージオと共に地下書庫へ向かった。
しかし、グルトリスハイト取得には失敗したらしく、感情的な足音を響かせながら去っていったという。
ローゼマインがジェルヴァージオの現在地を疑問視すると、シュバルツ達が答えた。
ジェルヴァージオは「じじさま」のところへ向かったというのである。
始まりの庭への確信
その言葉を聞いた瞬間、フェルディナンドは即座に踵を返した。
彼は、ジェルヴァージオが既に始まりの庭へ向かったと確信したのである。
シュバルツ達への命令
ローゼマインは、ソランジュと図書館を守るため、シュバルツとヴァイスへ命令を下した。
協力者登録されていない者が鍵を持って侵入した場合は、鍵を奪い返して追い出すよう命じ、二人は了承する。
始まりの庭へ向けて
フェルディナンドは、ローゼマインへ離宮へ戻れと命じた。
だがローゼマインは拒否し、置いて行けば秘密を暴露すると脅迫まがいの抗議を行う。
さらに、始まりの庭へ最速で向かうには、大魔力で魔法陣を強引に起動して突っ込むしかないと提案した。
それは、かつてフェルディナンド自身が行った方法だった。
フェルディナンドは頭を抱えながらも最終的には折れ、ローゼマインを肩へ担ぎ上げて移動を開始する。
そして騎獣へ乗せると、「最速で行くぞ」と告げ、一行は始まりの庭へ向かって飛び立った。
始まりの庭への道
始まりの庭への強行突入
フェルディナンドはローゼマインを抱えたまま、始まりの庭へ繋がる魔法陣を起動するため上空へ駆け上がった。
護衛騎士達も必死で追いかけてくるが、フェルディナンドは中途半端な高度にいると死ぬと怒鳴り、さらに上空へ退避するよう命じる。
一の鐘が鳴り響く中、フェルディナンドはローゼマインへライデンシャフトの槍を使うよう指示した。
魔法陣の起動
ローゼマインはシュタープを槍へ変化させ、大量の魔力を注ぎ込んだ。
フェルディナンドは同時に片手剣へ魔力を蓄積し、護衛騎士達が十分に離れるのを待つ。
そして合図と共に、ローゼマインは槍を真下へ落下させた。
フェルディナンドは落下する槍を追うように急降下し、剣から放った虹色の魔力塊を魔法陣へ叩き込む。
その瞬間、貴族院全域を覆う巨大な魔法陣が眩く発光し、空と始まりの庭を繋ぐ光の柱が現れた。
ローゼマインは、その光をメスティオノーラの加護だと直感する。
魔法陣からの拒絶
二人はそのまま始まりの庭へ飛び込もうとした。
しかし、魔法陣から強烈な風が吹き出し、騎獣ごと激しく弾き飛ばされる。
フェルディナンドは、これはシュツェーリアの盾と同じく、内部にいる者へ敵意を持つ存在を拒絶する結界だと分析した。
以前フェルディナンドが侵入できたのは、中に誰もいなかったためらしい。
次の突破策
始まりの庭へ上空から侵入できないと判明し、フェルディナンドは銀色の衣装を用いるか、最奥の間から侵入する方法を検討し始める。
ローゼマインは、銀色武装ではシュタープが使えなくなる危険性を指摘した。
さらに彼女は、光の柱へ別の方法で干渉できるのではないかと思いつく。
闇のマントによる妨害
ローゼマインはライデンシャフトの槍を回収すると、闇の神具であるマントを作り出した。
彼女は、光の柱を遮ればジェルヴァージオの邪魔ができるかもしれないと考えていたのである。
さらに、本音では光そのものを吸収し、メスティオノーラの英知まで奪えないかという下心も抱いていた。
フェルディナンドは呆れながらも、その発想自体は否定しなかった。
神の魔力吸収
ローゼマインが闇のマントを広げると、光の柱から膨大な魔力が一気に流れ込んできた。
ライデンシャフトの槍で消費した魔力は瞬時に完全回復する。しかも激マズ回復薬のような苦痛も一切なかった。
しかし、期待していたメスティオノーラの知識は流れ込んでこなかった。
ローゼマインはしょんぼりしながら闇のマントを解除する。
フェルディナンドの魔力回復
ローゼマインに勧められたフェルディナンドも、闇のマントを展開して魔力を吸収した。
彼は神々から魔力を吸収するなど普通は考えないと呆れながらも、その効果自体には素直に感心する。
だが、完全回復する前に光の柱そのものが消滅してしまった。
フェルディナンドは、ジェルヴァージオがほぼ完成した聖典を得た可能性を危惧し始める。
始まりの庭からの出口
フェルディナンドは、始まりの庭から出る際の経路をローゼマインへ尋ねた。
ローゼマインは図書館へ戻れず、最奥の間へ出たと答える。
一方フェルディナンドは、以前自力で上空から脱出していた。
ローゼマインは、その無礼な脱出方法こそエアヴェルミーンに嫌われる理由ではないかと内心で呆れていた。
王族捕獲の提案
護衛騎士達が合流すると、フェルディナンドはハイスヒッツェへ王族を捕獲して最奥の間へ連れて来るよう依頼した。
最奥の間を開けるには王族が必要であり、中央騎士団を抑える役目以外に王族は役に立たないと冷徹に言い切る。
その物言いにハイスヒッツェやレオノーレは顔を引きつらせた。
アナスタージウスへの連絡
フェルディナンドは、オルドナンツの送信先としてアナスタージウスを選んだ。
彼は、礎を奪われれば現在の王族は処分対象になると警告し、直ちに最奥の間へ来るよう要求する。
何故トラオクヴァールではなくアナスタージウスなのかと問われると、フェルディナンドは「最も弱点が明確で、身軽に動ける男だからだ」と答えた。
エグランティーヌへ危険が及ぶなら、アナスタージウスは必ず動くと確信していたのである。
王族を保険扱いするフェルディナンド
ローゼマインは、自分でも最奥の間を開けられるのではないかと提案した。
しかしフェルディナンドは、正式なアウブではない以上、失敗した時の保険として王族が必要だと平然と言い放つ。
ローゼマインは、王族を完全に「保険」扱いするフェルディナンドへ内心で呆れていた。
ツェントの責任
中央棟突入前の戦力集結
フェルディナンド達は中央棟近くの木立へ移動しながら、各方面へオルドナンツを飛ばして戦力集結を進めた。
中央棟の転移扉周辺には中央騎士団が配置されているため、戦闘に備えて今すぐ動ける戦力を集める必要があったのである。
ハイスヒッツェはダンケルフェルガーへ、コルネリウスはエックハルトへ連絡を送り、各隊との合流を急いだ。
トラオクヴァールへの圧力
フェルディナンドはシュトラールへ合流命令を送った後、さらにツェント・トラオクヴァールへもオルドナンツを送る。
内容は遠回しな貴族言葉で包まれていたが、実際には「ユルゲンシュミットの礎を奪われたくないなら、信用できる中央騎士団やダンケルフェルガーを率いて自ら来い」という強い要求だった。
ローゼマインは、王族が来なかった場合を尋ねる。
フェルディナンドは、別手段を使うだけだと答えつつ、この危機に対して王族がどう動くのか見極めたいと語った。
フェルディナンドの王族観
ローゼマインは、グルトリスハイトを持たないトラオクヴァールは礎の場所自体を知らないのではないかと擁護した。
しかしフェルディナンドは、知らないなら敵を討ち取るため前線へ出るべきだと切り捨てる。
未成年のローゼマインですら戦地へ立っているのに、ツェントが隠れているのは許せないというのである。
ローゼマインは、護衛騎士に裏切られていたら自分も戦場へ向かえなかったと反論した。
するとフェルディナンドは、側近の裏切りなど珍しくもなく、常に警戒し、自衛するのが当然だと語る。
守られていたローゼマイン
ローゼマインは、自分がそんな殺伐とした日常を送っていないと驚く。
フェルディナンドは、ローゼマインへ近付ける人物を厳選し、危険を最初から排除していたと明かした。
さらに、ヴェローニカのような明確な敵が周囲にいなかったことも大きいと語る。
ローゼマインは、自分が思っていた以上に過保護に守られていた事実を知り、愕然としていた。
ツェント失格という断罪
フェルディナンドは、国の命運がかかる状況で責任を果たさず逃げる者は上に立つ資格がないと断言した。
そのままでは、ランツェナーヴェへ玉座を明け渡そうとした愚か者として、グルトリスハイトの有無に関係なくツェント失格と判断するとまで言い切る。
ローゼマインは、その厳しさがヴィルフリート廃嫡を主張していた時と同じものだと感じ、内心でトラオクヴァールへ「頑張って」と願っていた。
中央騎士団の状況
アウブ・ダンケルフェルガーからの報告では、中央騎士団の制圧は順調に進んでいた。
しかし敵味方の判別が難しく、全員を殺せないため、手当たり次第に拘束している状態だった。
フェルディナンドは、礎を守る責任をアーレンスバッハへ押し付けるなと不機嫌に返答させる。
その後、エックハルトやシュトラール達も合流した。
中央棟では、転移扉周辺を守っていた中央騎士団が講堂へ集結しており、中にはさらに多くの敵がいると予想されていた。
密偵排除と突入準備
フェルディナンドは、こちらを監視している者がいると判断し、エックハルトとアンゲリカへ密偵排除を命じた。
二人は軽量化と消音の魔術具を受け取り、木々の間を高速で駆けていく。
その間に、トラオクヴァールからオルドナンツが届いた。
トラオクヴァールの返答
トラオクヴァールは、自分はグルトリスハイトを持たぬ偽りのツェントであり、真のツェントを望むと返答した。
それは実質的に、グルトリスハイトを持つ者へ国を譲るという意思表示だった。
フェルディナンドは激怒し、それはジェルヴァージオへ国を明け渡すのと同じだと断じる。
さらに、ランツェナーヴェによる虐殺や女性攫いがユルゲンシュミット全土で起こる可能性を騎士達へ突きつけた。
騎士達は、ジェルヴァージオを排除すべきだと一致して応じる。
講堂突入前
密偵排除を終えたエックハルト達が戻り、講堂前から安全に侵入可能だと報告した。
フェルディナンド達は中央棟へ突入し、講堂周辺へ布陣する。
ローゼマインの役目は、扉前でシュツェーリアの盾を張り、怪我人を癒すことだった。
アナスタージウスの到着
そこへ、護衛騎士に守られたアナスタージウスが到着する。
彼は、最奥の間へ来いと言われたのに講堂前で何をしているのか問い質した。
フェルディナンドは、講堂内の敵を排除しなければ最奥の間へ辿り着けないと説明する。
その直後、別動隊が講堂上部から攻撃用魔術具を投げ込み、内部で爆発が発生した。
ツェント不在の宣言
アナスタージウスは、貴族院への攻撃はツェントへの反逆だと激昂した。
しかしフェルディナンドは、トラオクヴァールの返答を録音した魔術具を再生し、「今のユルゲンシュミットには礎を守るツェントがいない」と言い切る。
ローゼマインもまた、トラオクヴァールは自分達の末路を覚悟した上で国を譲ろうとしているのだと冷静に語った。
アナスタージウスへの揺さぶり
さらにローゼマインは、王族から「大切な者を人質にして逃げ場を塞ぐ」のが王族流だと学んだと述べる。
その上で、ランツェナーヴェ支配下ではエグランティーヌも危険に晒されると暗に脅した。
アナスタージウスは、ならばローゼマインがグルトリスハイトを父へ渡し、真のツェントへ任命すべきだと主張する。
しかしローゼマインは、現在のトラオクヴァールは心が折れ切っており、グルトリスハイトを渡しても余計に追い詰めるだけだと考えていた。
アナスタージウスの決断
最終的にアナスタージウスは、父が動けないなら自分が動くと宣言した。
彼と護衛騎士達は即死毒対策として口元を布で覆い、講堂へ突入していく。
講堂の戦い
講堂前での待機
アナスタージウス達が講堂へ突入した後、ローゼマインは護衛騎士達に守られながら扉の前で待機していた。
中の様子が見えないことで不安は増幅していく一方、戦場の惨状を直視したくない安堵も同時に存在していた。
ローゼマインは、皆の無事を祈りながら扉を見つめ続ける。
負傷騎士達の帰還
やがて扉が開き、負傷したアーレンスバッハの騎士達が飛び出してきた。
ローゼマインは即座に癒しを施しながら、中の状況を尋ねる。
奇襲自体は成功したものの、中央騎士団には銀色のマントを装備した者が多く、攻撃が通りにくい状況になっていた。
また、アナスタージウス側は通常武器を持っていなかったが、倒した敵から武器を奪って応戦しているという。
さらに、王族であるアナスタージウスが参戦したことで、敵側にも迷いが生じ始めていた。
回復係としての役目
ローゼマインは戦場へ入りたい焦燥を抱いていたが、自分が突っ込んでも恐怖で役に立たないと理解していた。
そのため、即死毒使用時や大規模癒しが必要な場合を除き、扉前での回復役に徹していた。
彼女は広域洗浄用の魔紙を準備しながら、講堂の様子を気にし続ける。
ハルトムート達の到着
そこへ、ハルトムート、クラリッサ、ユストクスが大量の魔術具と回復薬を持って現れた。
三人はフェルディナンドの命令で補給に来たのである。
その直後、講堂内部で大爆発が発生し、ローゼマイン達は緊張に包まれた。
ユストクスは即座に講堂へ向かい、ローゼマインも突入準備を命じる。
広域洗浄と癒しの準備
ローゼマインは、フリュートレーネとルングシュメールの魔法陣が描かれた魔紙を取り出した。
同時に、ハルトムートとクラリッサも補助用魔法陣へ魔力を込め、発動準備を整える。
護衛騎士達も配置につき、ラウレンツが扉を開けられるよう待機した。
準備はわずか数秒だったが、ローゼマインには非常に長く感じられていた。
講堂への突入
ユストクスから癒しを求める声が響くと、ローゼマイン達は講堂へ飛び込んだ。
クラリッサが補助魔法陣を起動し、ローゼマインはフリュートレーネの魔法陣を撃ち込む。
すると緑色の光が講堂全体へ広がり、広域洗浄が発動した。
続けてルングシュメールの癒しも発動し、重傷だった騎士達が次々と立ち上がっていく。
異様に変形した講堂
癒しの光の中で、ローゼマインは講堂の異変に気付く。
講堂は卒業式の時のような構造へ変形しており、奉納舞の舞台と最奥の間へ続く祭壇が現れていた。
祭壇前にはラオブルートが立っており、フェルディナンドはエックハルトに庇われながら立ち上がっていた。
ラオブルートの殺意
その瞬間、ラオブルートがローゼマインへ向けて虹色の攻撃を放つ。
フェルディナンドや護衛騎士達の盾が展開され、攻撃を辛うじて防いだ。
ラオブルートは、最も邪魔な存在を始末したと思ったのに癒しを行われたと語り、ローゼマインを排除対象として明確に敵視する。
さらに、グルトリスハイトを得るのはジェルヴァージオだけでよいと言い切った。
祭壇の異変
ラオブルートが再び剣を構えた瞬間、祭壇の神像と神具が発光し始める。
神像は奉納舞のように左右へ動き始めた。
ローゼマインは、その動きが御加護の儀式や始まりの庭で見たものと同じであることに気付く。
一方、周囲の騎士達は異変に動揺し始めていた。
中央騎士団の分断
怒ったラオブルートは、ローゼマインを捕らえ、中央神殿の聖女にすると命令する。
中央騎士団は三手に分かれた。
一部はアナスタージウス達へ向かい、一部は祭壇周辺で待機し、残りはフェルディナンド側へ集中攻撃を開始する。
フェルディナンド達は矢や魔術具の集中攻撃を受け、合流を阻まれていた。
シュツェーリアの盾
ラオブルートの強力な攻撃を受け、護衛騎士達が苦戦する中、レオノーレはローゼマインへシュツェーリアの盾展開を指示した。
ローゼマインは祈りを捧げ、半球状の巨大な風の盾を完成させる。
これによって魔力攻撃はある程度防げるようになったが、中央騎士団の攻撃は依然として強力だった。
マティアスは、祝福を受けてなお中央騎士団が強すぎると絶望感を滲ませる。
ローゼマインは、中央騎士団側も神々の祝福を得ている可能性を指摘した。
海の女神の儀式
戦況を変えるため、ローゼマインは海の女神フェアフューレメーアの儀式を行うことを決断する。
これは全員の祝福を一度神々へ返還する儀式だった。
儀式が始まると、中央騎士団も味方も突然体が重くなり、動きに乱れが生じる。
ローゼマインは祝詞を唱え、神々へ魔力を奉納した。
その結果、講堂全体から神々の祝福が剥ぎ取られ、戦場は一瞬静まり返る。
不穏な気配
儀式を終えたローゼマインは、講堂内に妙な圧力のような気配を感じ取った。
彼女は、その異様な気配が祭壇最上部から漂っていることに気付き、視線を向ける。
始まりの庭から戻った者
ジェルヴァージオの出現
祭壇最上部へ、一人の男がゆっくりと姿を現した。
ローゼマインが視力を強化して確認すると、その男は銀色の長髪を束ねた中年男性であり、驚くほどフェルディナンドに似ていた。
むしろエアヴェルミーンに近い雰囲気すらあり、血縁関係を疑う余地のない容貌だった。
ジェルヴァージオは講堂を見下ろし、ラオブルートへ何事かと問いかける。
グルトリスハイトの顕現
ラオブルートは感極まった様子で、真のツェントの証を示してほしいと求めた。
ジェルヴァージオが「グルトリスハイト」と唱えると、その手にはメスティオノーラの神具と同じ形の聖典が現れる。
最高神の像に挟まれて聖典を掲げる姿は、誰の目にも正統なツェントに見えた。
ラオブルートは、神々に選ばれた真のツェントだと歓喜し、一部の中央騎士団も熱狂する。
一方、アナスタージウス達は本物の王の証を見て顔を青ざめさせていた。
ローゼマインの危機感
ローゼマインは、ジェルヴァージオがツェントとなれば、自分やフェルディナンド、エーレンフェスト全体が危険に晒されると理解する。
ランツェナーヴェ側が、仲間を倒され船や拠点を奪われた状況で穏便に済ませるはずがないと考えていた。
そのため、話し合いの余地はないと判断する。
フェルディナンドからの密書
その時、ローゼマインの手元へ小さな紙飛行機が飛んできた。
中にはフェルディナンドから、「グルトリスハイトと祝福の重ね掛けで注目を集めろ。妨害はフェアドレンナで。こちらは準備済み」と走り書きされていた。
ローゼマインは、フェルディナンドが別行動で何か仕掛けるつもりだと察する。
ローゼマインのグルトリスハイト
ローゼマインは右手を掲げ、自分のグルトリスハイトを出現させた。
中央騎士団からは本物ではないという声も上がるが、ダンケルフェルガー側は国境門開閉実績を根拠に本物だと主張する。
ローゼマインは周囲を無視し、神々の祝福の重ね掛けを開始した。
武勇、狩猟、疾風、忍耐、幸運など次々と神名を唱え、その度に光の柱が立ち、味方へ祝福が降り注ぐ。
ハルトムートの暴走
ハルトムートは、ローゼマインこそメスティオノーラの化身であり、次期ツェントへグルトリスハイトを授ける存在だと大声で主張した。
侵略者であるランツェナーヴェの者をツェントに選ぶ必要はないと断言する。
ローゼマインは止めたかったが、祈りの途中で口を塞ぐこともできず、周囲は完全にハルトムートの演説へ注目してしまった。
その結果、ラオブルートの殺意も再びローゼマインへ集中する。
アナスタージウスの進撃
祝福を受けたアナスタージウス達は、中央騎士団を押し返しながら祭壇へ向かい始めた。
それを見たジェルヴァージオは、講堂では神々へ祈りが届くのかと感心し、自らも聖典を掲げて祝詞を唱え始める。
ローゼマインは、ジェルヴァージオがあまりにも容易く祝詞を扱うことへ衝撃を受けた。
ジェルヴァージオの祝福
ジェルヴァージオは武勇神アングリーフへの祈りを捧げ、青い光柱を発生させた。
中央騎士団側は歓喜し、アナスタージウス達の進撃は止められる。
さらにジェルヴァージオは、ローゼマインと同じように祝福の重ね掛けを始めた。
ローゼマインは、せっかく敵側の祝福を奪った意味がなくなったと焦燥する。
フェルディナンドの奇襲
その直後、ジェルヴァージオの祈りが突然途切れた。
見えない位置から攻撃が加えられ、お守りが次々と破壊されたのである。
ラオブルートが反撃先を探す中、祭壇最上部近くにフェルディナンドの盾が現れた。
フェルディナンドはフェアベルッケンのお守りを使って隠密行動を取っていたのである。
彼は盾と黒い水鉄砲を構え、ジェルヴァージオへ次々と攻撃を撃ち込んだ。
フェアドレンナによる援護
ラオブルートが祭壇へ駆け出そうとすると、クラリッサが即座に広域補助魔法陣を起動した。
ローゼマインもハルトムートの用意した雷の魔法陣へ魔力を流し込み、「フェアドレンナの雷」を発動する。
複数の雷撃が祭壇周辺へ降り注ぎ、中央騎士団から悲鳴が上がった。
同時に、フェルディナンドが仕込んでいた魔法陣も起動し、各所へ雷撃が放たれる。
ラオブルートは銀色のマントで防げと叫びながら祭壇へ向かうが、見えない壁によって弾き返された。
祭壇最上部へ上がる資格を拒絶されたような状態だった。
フェルディナンドとジェルヴァージオの対話
ジェルヴァージオは、フェルディナンドを「クインタ」と呼び、生まれへの怒りはないのかと問いかけた。
ランツェナーヴェでは男児が魔力で選別され、魔石になる運命を背負わされること、自分がツェントになればその不幸を終わらせられることを語る。
しかしフェルディナンドは、自分はクインタではなくエーレンフェストの領主一族フェルディナンドだと冷淡に返した。
さらに、ランツェナーヴェへの感情は「トルキューンハイトを恨みながら滅べ」という一つだけだと言い放つ。
ジェルヴァージオは、もはや理解し合えないと悟り、フェルディナンドへ即死毒入りの銀筒を向けた。
ローゼマインの即応
それを見た瞬間、ローゼマインは反射的にシュタープを掲げ、「ヴァッシェン!」と叫びながら準備済みだった魔紙を撃ち抜いた。
祭壇上の戦い
暴走したヴァッシェン
ローゼマインは、ランツェナーヴェから持ち込まれた危険物を全て洗い流そうと考え、広域魔術の補助魔法陣へ「ヴァッシェン」を叩き込んだ。
大量の水が講堂全体へ滝のように降り注ぎ、さらにローゼマインが「全部洗い流す」ことを強く意識した結果、水流は洗濯機のような巨大な渦となって講堂内を高速で回転し始める。
敵味方関係なく全員が渦へ巻き込まれ、アナスタージウス達も悲鳴を上げながら流されていった。
ローゼマイン自身も完全に想定外の事態に巻き込まれ、上下左右の感覚を失ったまま水流に翻弄される。
祭壇への落下
やがてローゼマインだけが水流から放り出され、高所から落下を始めた。
その瞬間、お守りが反応して光の帯が彼女へ巻き付き、強引に引き寄せられる。
ローゼマインは悲鳴を上げながら祭壇上へ飛ばされ、フェルディナンドの腕の中へ収まった。
しかし無事を喜ぶ間もなく、フェルディナンドから「何をしているのだ」と叱責される。
ローゼマインは、即死毒を警戒してヴァッシェンを発動した結果、自分でも想定外の事態になったと説明した。
祭壇だけ無事だった理由
ローゼマインは、自分だけ祭壇側へ飛ばされた理由を疑問に思う。
フェルディナンドは、ローゼマインが祭壇へ上がる資格を持つため、透明な壁に弾かれず祭壇側へ排出されたのだろうと分析した。
一方、祭壇外では依然としてヴァッシェンの渦が暴れており、フェルディナンドは、何を「汚れ」と認識したのか問い質す。
ローゼマインは、ランツェナーヴェから持ち込まれた危険物を洗い流そうと考えたと答えた。
フェルディナンドは、トルークなども危険物扱いされているなら洗浄が長引く可能性があると推測する。
講堂内の混乱
その直後、水流は突然消滅した。
講堂中へ放り上げられていた騎士達が一斉に落下し、激しい金属音が響き渡る。
コルネリウスやレオノーレは騎獣で空中制御し、アンゲリカも器用に着地していた。
ハルトムートやクラリッサも無事であり、祭壇上のローゼマインを神々しいと騒ぎ立てていた。
一方、アナスタージウスは観覧席へ吹き飛ばされており、事前説明なしにヴァッシェンを使ったことへ怒鳴り声を上げていた。
ダンケルフェルガーの乱入
その時、講堂の扉が勢いよく開かれ、大量の青いマントを纏ったダンケルフェルガー騎士達が雪崩れ込んできた。
先頭にはアウブ・ダンケルフェルガーがおり、その隣には中央騎士団の黒マントも重ね着した女性騎士の姿があった。
彼女は、夫であるトラオクヴァールへ毒を盛ったラオブルートを討つと宣言する。
その人物こそ、第三夫人マグダレーナだった。
ローゼマインは、ツェントの妻になっても当然のように戦場へ立つ彼女を見て、ダンケルフェルガーらしさを実感していた。
講堂制圧の開始
フェルディナンドは、ラオブルートを含む裏切り者達の捕縛をアウブ・ダンケルフェルガーへ任せた。
しかしアウブは、ヴァッシェンによって敵味方の配置が滅茶苦茶になっているため、まずは銀色装備と中央騎士団の黒マントを片端から拘束しろと大雑把な命令を下す。
ローゼマインは不安を覚えるが、フェルディナンドはアナスタージウス達について気にする必要はないと切り捨てた。
図書館都市計画への執着
フェルディナンドは、アナスタージウスよりもジェルヴァージオを一刻も早く捕らえ、図書館都市計画について考えられる状況へ戻すべきだと言う。
ローゼマインも、本音では戦いより図書館都市計画を優先したいと考えていた。
彼女は、海沿いのアーレンスバッハを利用し、巨大図書館や印刷工房、研究施設を備えた理想の図書館都市を構想していたのである。
ジェルヴァージオとの最終戦準備
フェルディナンドは、ジェルヴァージオほど魔力量が拮抗する相手には普通の魔力拘束が効きにくいと判断し、自分が攻撃準備をする間、ローゼマインへ防御を任せた。
ローゼマインはシュツェーリアの盾を展開する。
その最中、ジェルヴァージオはローゼマインを「マイン」と呼び、何故クインタと協力しているのか問いかけた。
ローゼマインは、始まりの庭でエアヴェルミーンから似たようなことを言われたのを思い出す。
フェルディナンドは、余計な言葉に耳を貸すなと叱責しながらも、剣へ魔力を蓄積していった。
フェルディナンドの一撃
シュツェーリアの盾が完成した瞬間、フェルディナンドは剣を振り下ろした。
虹色の巨大な魔力塊が放たれ、ジェルヴァージオごと神像を祭壇から吹き飛ばす。
その衝撃で神像の神具が一斉に発光し、複数の光柱が交差した。
あまりにも強烈な光景に、ローゼマインは思わず目を閉じていた。
始まりの庭にて
始まりの庭への転移
神具の光が交差した直後、ローゼマインは激しい浮遊感に襲われた。
フェルディナンドに引き寄せられた直後、二人は地面へ落下し、ローゼマインはフェルディナンドの鎧の上へ叩きつけられる。
叱責されながら起き上がると、そこは講堂ではなく始まりの庭だった。
庭には白い大樹ではなく、実体化したエアヴェルミーンが立っており、極めて不機嫌な様子を見せていた。
ジェルヴァージオも同じく転移しており、エアヴェルミーンへ跪いていた。
エアヴェルミーンの怒り
エアヴェルミーンは、一刻も早く礎を満たさねばならない状況で何をしているのかと激怒する。
彼は、フェルディナンドへ英知を授けたにもかかわらず、染め直しに来なかったこと、ローゼマインへ片方を殺してメスティオノーラの書を完成させよと命じたのに拒絶されたことを不満として挙げた。
さらに、ようやく礎を染める意思を持つ者が現れたと思えば、その邪魔までしていると怒りをぶつける。
ローゼマインは、怒りの大半がフェルディナンドへ向いていることを察していた。
フェルディナンドの反論
フェルディナンドは平然とグルトリスハイトを開き、崩壊まで二十年ほど猶予があると説明する。
国境門へローゼマインが魔力を注いだことで時間が延びたのであり、人間にとっては次世代が育つほどの長さだと語った。
ローゼマインは、そんな情報まで載っているのかと興味を示し、本を見せてほしいと近寄る。
しかしフェルディナンドは勢いよく本を閉じ、今が読書している場合かと呆れ返った。
それでもローゼマインは、どんな状況でも読書機会を逃したくないと断言する。
礎を巡る対立
フェルディナンドは、ジェルヴァージオ達のせいで既に多くの犠牲が出ている以上、ランツェナーヴェの者をツェントにはできないと主張した。
しかしエアヴェルミーンは、人間側の理屈など知らないと言い切る。
ユルゲンシュミットは、エーヴィリーベから逃れた者達を匿う贖罪の地であり、崩壊だけは絶対に避けねばならないと語った。
そして、礎を染める気のないフェルディナンドへ消えろと告げ、強烈な魔力攻撃を放つ。
エアヴェルミーンの圧倒的な力
フェルディナンドは即座にゲッティルトを展開したが、盾は一撃で破壊された。
さらに腕輪型のお守りも三つ同時に砕け散る。
ローゼマインは、人間とは比較にならない圧倒的な力に恐怖する。
エアヴェルミーンは、ジェルヴァージオへ礎を満たして来いと命じた。
フェルディナンドの阻止
背を向けたジェルヴァージオへ、フェルディナンドは即座に水鉄砲を撃ち込んだ。
お守りを失っていたジェルヴァージオは太腿を撃ち抜かれ、倒れ込む。
フェルディナンドは、自分は新たなツェントを立て、祈りを復活させ、次代では自力で聖典を得る者からツェントを選ぶつもりだと宣言した。
余計な邪魔をするなと、エアヴェルミーンへ真っ向から反論する。
闇のマントによる防御
エアヴェルミーンが再び指を動かした瞬間、ローゼマインはフェルディナンドの前へ飛び出した。
彼女は「フィンスウンハン」を唱え、闇のマントで二人を包み込む。
マントはエアヴェルミーンの攻撃を吸収したが、今度は膨大すぎる魔力がローゼマインへ流れ込んだ。
ヴァッシェンで消耗した魔力は瞬時に回復し、さらに圧縮が追いつかないほど魔力が膨れ上がる。
ローゼマインは、かつての身食いの熱に似た苦しさへ襲われた。
光の柱と女神の出現
フェルディナンドは、溜め込まず放出しろと叫ぶ。
ローゼマインが助けを求めると、彼女の体から光の柱が立ち、天井の穴から神々しい光が降り注いだ。
その光の中には、自分と似た容姿を持つ女性が現れる。
夜空のような髪と月色の瞳を持つその女性は、少しの間体を貸してほしいと語った。
彼女は、エアヴェルミーンを止めるためだと説明する。
英知の図書館
ローゼマインが不安を抱くと、女性は「快適な場所で待っていてもらう」と言って景色を変えた。
そこは、床から天井まで本で埋め尽くされた巨大図書館だった。
椅子や机まで完璧に整った理想の空間であり、ローゼマインは圧倒される。
女性は、ここは自分の英知が詰まった図書館であり、どの本も読めると説明した。
その言葉から、ローゼマインは相手が英知の女神メスティオノーラ本人だと確信する。
読書へ没頭するローゼマイン
ローゼマインは歓喜し、体くらいいくらでも貸すと即答した。
彼女は金色シュミルから本を受け取り、夢中で読み始める。
神々に関する古い物語を次々と読み進め、完全に読書へ没頭していった。
しかしその最中、フェルディナンドの怒りに満ちた声が脳へ直接響く。
戻らなければ大事なものを順番に消すと脅され、ローゼマインは青ざめた。
現実への帰還
ローゼマインが慌てて体を返してほしいと叫ぶと、メスティオノーラは、ずっと呼びかけていたのに反応しなかったのはそちらだと呆れたように返した。
その直後、図書館の景色は揺らぎ始め、神の楽園は消えていった。
ツェントレース
女神から返還された体
ローゼマインが意識を取り戻すと、目の前には至近距離のフェルディナンドの顔があった。
先程までの激怒とは違い、彼は本気で心配した表情を浮かべていた。
しかし、ローゼマインが反応した瞬間、その表情は怒り混じりのものへ変わる。
フェルディナンドは頬をつねりながら、本当にローゼマイン本人か確認し始めた。
図書館への執着への説教
フェルディナンドは、ローゼマインが図書館や本へ意識を奪われるたびに厄介事へ巻き込まれていると指摘した。
神殿図書室で前神殿長に目を付けられたことや、貴族院図書館で魔力暴走を起こし王族と関わることになった件まで例に挙げる。
それにもかかわらず、メスティオノーラの図書館へ行くため自分の体を差し出したことを、愚かだと叱責した。
ローゼマインは、あの図書館は本当に素晴らしく、フェルディナンドにも一度見てほしいと熱弁する。
しかしフェルディナンドは、「はるか高みへ一緒に行こう」という誘いだと受け取り、余計に顔を引きつらせた。
精神干渉の発覚
フェルディナンドは、ローゼマインへ次々と質問を浴びせた。
大切な者の名前、自分が何をしていたか、何をするべきかなどを確認し、記憶異常がないか探っていたのである。
ローゼマインは、本の内容は鮮明に覚えているのに、それ以外が曖昧になっていることへ戸惑う。
フェルディナンドは、メスティオノーラが体を借りやすくするため精神へ干渉したのだろうと説明した。
さらに、ローゼマインは身食いゆえに他者の魔力影響を受けやすいと警告する。
周囲の確認
フェルディナンドは、エーレンフェストの領主一族や側近達の名前を言わせ、人格や記憶に異常がないことを確認した。
ローゼマインは、メスティオノーラの図書館のような場所をいつか作りたいという新たな夢ができたと語る。
フェルディナンドは、余計に心配になったと呆れていた。
戦闘終了の事実
その時、近くから別人の声が響いた。
フェルディナンドが離れると、ローゼマインは始まりの庭にエアヴェルミーンとジェルヴァージオがいることを思い出す。
慌てて戦闘態勢を取ろうとするが、フェルディナンドは既に戦いは終わったと告げた。
メスティオノーラによって、この場での命の奪い合いは禁止されたのである。
祈りへの警告
ローゼマインが女神を称えて祈ろうとすると、フェルディナンドは即座に止めた。
エアヴェルミーンによれば、始まりの庭のような神々との交信が行われる場所で、身食いであるローゼマインが祈ると、神々が面白がって降臨してくる可能性が高いという。
エアヴェルミーン自身は懐かしい顔触れなので歓迎するが、人間側の負担は極めて大きいと忠告した。
神々の視点
フェルディナンドは、メスティオノーラとの話し合い内容を説明し始めた。
ユルゲンシュミットは、エーヴィリーベに迫害された魔力持ちを受け入れるための土地であり、外から救いを求めて来る者を拒否する発想自体が神々には存在しないのだという。
ローゼマインが、アーレンスバッハの貴族達を殺したことをどう思うのかと問うと、エアヴェルミーンは「人は昔から勝手に殺し合っている」と淡々と返した。
数十人の死など、ユルゲンシュミット全体から見れば誤差であり、外から魔力持ちが補充されるなら問題ないという認識だった。
ローゼマインは、人間と神では価値観そのものが噛み合わないと痛感する。
エアヴェルミーンの願い
エアヴェルミーンは、自分の望みはただ一つだと語る。
ユルゲンシュミットの崩壊を防ぐため、一刻も早く礎を染めるツェントが誕生することだけを望んでいるのである。
礎を染められない現在の王族は、彼にとってツェントとして認識されていなかった。
ツェントレースの開始
そのため、始まりの庭にいる三人――ローゼマイン、フェルディナンド、ジェルヴァージオ――が競い合い、未だ魔力が満ちていない国境門を染めることになった。
最も早く戻った者を、エアヴェルミーンが礎の場所へ案内するという。
フェルディナンドは、自分が礎を染めれば、エアヴェルミーンはその後の人間社会へ干渉しないと説明した。
つまり、王族廃止や新制度導入も自由になるのである。
ジェルヴァージオの本心
ローゼマインは、ジェルヴァージオへ何故ツェントを望むのか尋ねた。
ジェルヴァージオは、自分のような子供を生むため娘達を送り込む離宮制度を廃止したいと語る。
さらに、ランツェナーヴェでは魔力持ちが道具のように扱われ始めており、ユルゲンシュミットへ逃れて安住したい者も多いのだという。
シュタープを持ち帰り権力を握りたい派閥を率いるのがレオンツィオであり、ユルゲンシュミットへ移住したい派閥を率いるのがジェルヴァージオだった。
彼は、中央騎士団やランツェナーヴェの者達を守るためにも、ツェントになる必要があると主張した。
ローゼマインの参加
ローゼマインは、自分はアウブなのでツェントの礎を染められないと主張する。
しかしエアヴェルミーンは、アウブとして国境門へ魔力供給する義務がある以上、参加は当然だと返した。
さらに、別の者へアウブの礎を譲れば、ローゼマインがツェントになること自体も不可能ではないと言う。
その時、エアヴェルミーンはローゼマインを正確に認識していた。
理由は、メスティオノーラの力によって魔力が女神色へ染め替えられていたためだった。
ジェルヴァージオもまた、ローゼマインから女神の残滓を感じ取っていた。
国境門の決定
エアヴェルミーンは魔力を放ち、三人それぞれへ光を振り分けた。
ローゼマインは土の女神の貴色である赤を持つクラッセンブルク、フェルディナンドは水の女神の緑を持つハウフレッツェ、ジェルヴァージオは光の女神の金を持つギレッセンマイアーへ向かうことになる。
三人は同時にグルトリスハイトを展開し、転移陣構築を始めた。
ローゼマインの奥の手
フェルディナンドとジェルヴァージオが手作業で転移陣を描く中、ローゼマインは革袋から魔紙を取り出した。
彼女は「コピーシテペッタン!」と叫び、一瞬で転移陣を完成させる。
ジェルヴァージオ達が驚愕する中、ローゼマインは勝ち誇った笑みを浮かべながら、クラッセンブルクへの転移を開始した。
魔王の暗躍
クラッセンブルク国境門への到着
ローゼマインは、コピーした転移陣を利用してクラッセンブルクの国境門へ到着した。
土の女神ゲドゥルリーヒの記号を確認し、目的地が正しいことを確認すると、すぐに国境門へメスティオノーラの書を押し当てて魔力供給を開始する。
彼女にとって国境門への魔力供給は既に経験済みであり、簡単な作業だった。
フェルディナンドの乱入
しかし、魔力供給中に転移陣が光り始めた。
地下書庫奥のグルトリスハイトを持つ者しかこの転移陣は使えないため、現れるのはフェルディナンドかジェルヴァージオしかいない。
ローゼマインは、これは競争妨害だと直感し、現れたフェルディナンドへ指摘した。
フェルディナンドは、ローゼマインではなくジェルヴァージオを阻止するためだと平然と答える。
ジェルヴァージオ妨害の真相
ローゼマインは、国境門を染める速度で競うなら正々堂々と戦えばよいと主張した。
するとフェルディナンドは、ジェルヴァージオへの最大の妨害者は既にローゼマイン本人だと告げる。
ローゼマインが始まりの庭へ突入しようとした際、闇のマントで魔力を吸収した結果、ジェルヴァージオが英知を授かる途中で中断されたのである。
そのため、ジェルヴァージオの聖典は礎へ向かう情報が途切れ途切れの不完全な状態になっていた。
さらに、ローゼマインが既に吸収した分は再取得できないため、ジェルヴァージオは今後も完全な知識を得られないと女神から説明されていた。
不完全なツェント候補達
フェルディナンドは、自分達三人は全員「不完全なメスティオノーラの書」しか持たない問題児扱いされていると語る。
フェルディナンドとローゼマインは知識を分け合っているため穴だらけであり、ジェルヴァージオも途中で知識取得が止まっていた。
ローゼマインは、崩壊寸前の国を支える候補としては絶望的だと実感する。
フェルディナンドの隠蔽
ローゼマインは、フェルディナンドがコピペによって聖典知識を補完していた事実をエアヴェルミーンへ伝えなかった理由を尋ねた。
フェルディナンドは、後々のためには隠しておく方が都合が良いとだけ答え、詳細を明かさなかった。
結果として、エアヴェルミーンは全員を「不完全な候補」と認識し、今回の競争形式を採用したのである。
エーレンフェスト寮での休息命令
フェルディナンドは、国境門への魔力供給後、ローゼマインへエーレンフェスト寮で休息を取るよう命じた。
彼は既にエーレンフェストへ連絡を入れ、部屋や食事の準備を進めているという。
ローゼマインは、自分の側仕えの多くはアーレンスバッハへ同行していると反論した。
しかしフェルディナンドは、リヒャルダやオティーリエ達がまだ残っていると指摘する。
エーレンフェストを戦功へ関与させる意図
フェルディナンドは、エーレンフェストにも後方支援という形で戦いへ関与させる必要があると説明した。
国境門への魔力供給は他領からも確認できるため、戦後の発言権に大きな影響を及ぼすのである。
ダンケルフェルガーのように前線参加は無理でも、後方支援という形で功績を示さねば、今後エーレンフェストを庇いにくくなると語った。
意味深な発言
さらにフェルディナンドは、「君はその後が大変だからな」と意味深な言葉を残した。
ローゼマインが何をさせるつもりなのか問い詰めると、フェルディナンドは話題を逸らしつつ、ハウフレッツェの国境門にも魔力供給してほしいと頼む。
また、転移陣を封じて護衛なしで不用意に他者を入れるなと警告した。
最後には、ローゼマインを軽く押してよろめかせ、「この程度で崩れるなら練習が必要だな」と呟く。
しかし何の練習か説明しないまま、フェルディナンドは中央棟へ転移していった。
二つ目の国境門
ローゼマインは文句を言いつつも、クラッセンブルクへの魔力供給を終えると、ハウフレッツェの国境門へ向かった。
フェルディナンドのためではなく、ユルゲンシュミット崩壊を防ぐためだと自分へ言い聞かせながら魔力を注ぐ。
しかし、回復薬と魔力消費の影響で激しい頭痛が始まっていた。
ローゼマインは、フェルディナンドが自分の行動を全て見越していたことへ悔しさを覚える。
貴族院への帰還
魔力供給を終えたローゼマインは、中央棟へ戻った。
転移酔いと魔力消耗で気分は最悪だったが、コルネリウスへ帰還連絡を送る。
すると、声を出さずに出て来いという返答が返ってきた。
扉を開けた瞬間、アンゲリカに銀色の布を頭から被せられ、そのまま抱え上げられる。
女神の力の隠蔽
エーレンフェスト寮へ入ってから布を外され、ローゼマインは事情を聞かされた。
現在のローゼマインからは、直視しづらいほど女神の力が溢れているらしく、他領へ見られると大混乱になるという。
そのため、ランツェナーヴェから押収した銀色の布で隠しながら運ばれてきたのである。
側近達の反応
部屋へ入ると、女性側近達が休息準備を進めていた。
クラリッサはローゼマインを見るなり涙を流して跪き、まさに女神の化身だと称え始める。
しかしリヒャルダが即座に叱り飛ばし、薬準備へ戻らせた。
リヒャルダ達は、ジルヴェスターから「ローゼマインが休める環境を最優先に整えよ」と命じられ、真っ先に移動してきたのである。
講堂での出来事
レオノーレは、始まりの庭へ転移した後の講堂の状況を説明した。
神具から七色の柱が立ち、ローゼマイン達が消えた後も、ダンケルフェルガーは淡々と中央騎士団を拘束していた。
ラオブルートはマグダレーナとアウブ・ダンケルフェルガーに敗北したという。
その後、ハルトムートが「ローゼマインの魔力が女神によって塗り替えられた」と泣きながら騒ぎ始めた。
場違いすぎたため、フェルディナンドが戻るまで縛られていたらしい。
フェルディナンドの戦後処理
フェルディナンドは戻ると、新たなツェント選出が行われることを説明し、各方面へ次々と命令を出していた。
エーレンフェストへ休息環境整備を命じ、ダンケルフェルガーには捕虜の命を奪うなと指示する。
さらに、ジェルヴァージオが戻った際には必ず拘束するよう騎士配置まで済ませていた。
また、ヒルデブラントへ図書館の鍵を返却させるため、マグダレーナへ半ば脅迫まがいの交渉も行っていた。
中央神殿への移動
食事と薬を終えたローゼマインは、レオノーレからフェルディナンドの現在地を聞く。
フェルディナンドはアナスタージウスと共に中央神殿へ向かい、神殿長イマヌエルを探していた。
ローゼマインは、中央神殿の聖典の鍵が礎へ繋がる保険だと理解する。
つまりフェルディナンドは、ジェルヴァージオがツェントになるための手段を徹底的に潰して回っていたのである。
次の準備
最後にレオノーレは、フェルディナンドから「起きたら奉納舞の練習をしろ。王族との話し合いも行う」と命じられていると伝えた。
ローゼマインは、全く聞かされていなかった展開へ困惑する。
しかし薬が効き始めており、反論する間もなく眠りへ落ちていった。
暗躍の報告
ローゼマインの目覚め
ローゼマインが目を覚ますと、時刻は五の鐘が鳴る頃だった。
気分はすっきりしており、二度寝するより起きた方が良いと判断する。
フェルディナンドは昼食をエーレンフェスト寮で取り、その後はアーレンスバッハ騎士達と共に離宮で休息しているとリヒャルダから聞かされた。
また、ローゼマインがアーレンスバッハ側を気にせず休めるよう配慮されていることも伝えられる。
王族との会談準備
現在、領主夫妻は王族を招く昼食会の準備で忙しく動いていた。
女神の力をまとったローゼマインを公の場へ出せば大混乱になるため、明後日にエーレンフェストのお茶会室で王族との話し合いを行う予定になっているのである。
ローゼマインは、フロレンツィアだけでなくジルヴェスターまで来ていることに驚いていた。
新しい衣装
ブリュンヒルデ達が準備した衣装は、急遽エーレンフェストで仕立てられている途中のものだった。
完成を急ぐため、紐で調整可能な仮縫い状態で作られているという。
ギルベルタ商会の正式な衣装も翌日には届く予定だった。
女神の御力による変化
ブリュンヒルデは、今のローゼマインを直視するには強い意志が必要だと語った。
近付くほど畏れ多い感覚が強まり、ほんのり光をまとって見えるという。
ベルティルデは、神々しい姿を間近で見られることを喜び、フィリーネもヴィルマなら絵に残そうとすると笑った。
女神の御力は魔力量差とは別で、誰にでも感じられるものらしく、銀色の布で遮るまでは寮中がローゼマインの部屋を気にしていたらしい。
ユーディットとの会話
ユーディットとダームエルも既に寮へ戻っており、護衛を担当していた。
ユーディットは、巨大洗濯機のようだった講堂での戦いを体験したかったと語る。
ローゼマインは、実際に戦場ではユーディットの投擲能力が欲しかったと感じていたことを伝えた。
その言葉にユーディットは誇らしげな笑みを浮かべる。
銀色の布と移動
ローゼマインは、女神の御力を遮るため再び銀色の布を被せられた。
視界が悪すぎて自力歩行は危険なため、アンゲリカに抱えられて移動することになる。
既に成長した年齢で抱き上げられる状況に、ローゼマインは内心で激しく羞恥していた。
フェルディナンドとの報告会
報告会の部屋へ到着すると、フェルディナンドの他、エックハルトやユストクスも待機していた。
布を外した瞬間、二人は女神の力を実感し驚いた表情を見せる。
ローゼマインはフェルディナンドへ、ちゃんと休めたのか尋ねた。
するとフェルディナンドは、悪夢を見る薬を使った方が効率よく休めると平然と言い放つ。
ローゼマインは、結局まともに休んでいないのではないかと不満を抱いた。
捕虜達の扱い
フェルディナンドは、捕らえたアーレンスバッハ側の者達はまだ離宮に拘束していると説明する。
中央騎士団が機能不全なため、今後の処遇は王族との話し合い次第だった。
また、シャルロッテが離宮への食事支援を取り仕切っており、その采配を高く評価していた。
フェルディナンドは、シャルロッテは第一夫人向きだとまで評する。
ジェルヴァージオへの妨害
盗聴防止の魔術具を作動させた後、ローゼマインはジェルヴァージオの処遇を尋ねた。
フェルディナンドは、まずジェルヴァージオが転移陣を完成させた瞬間に手を撃ち抜き、魔法陣を消滅させて時間を稼いだと語る。
さらに中央神殿へ向かい、聖典と鍵、そしてランツェナーヴェへ渡った王達のメダルを回収した。
イマヌエルが騒がしかったため「死ねないようにした」と物騒な言葉まで口にする。
メダル破棄による無力化
フェルディナンドは、ジェルヴァージオのメダルを破棄したと明かした。
ただし、ギレッセンマイアー国境門にいる間に破棄したため、命は奪っていないと平然と言い切る。
結果としてジェルヴァージオはシュタープを失い、転移も魔力供給も不可能になった。
フェルディナンドは、反撃できないほど弱らせた状態で回収するつもりだと説明する。
ローゼマインは、絶対に敵に回したくない相手だと痛感していた。
ジェルヴァージオへの警戒
ローゼマインは、ジェルヴァージオはそこまで悪人には見えなかったと語った。
しかしフェルディナンドは、ランツェナーヴェの王として育てられ、あの離宮で生き延びた男を簡単に信用するなと叱責する。
女神の前では表面上友好的に振る舞う程度、貴族なら当然だとも言われた。
ローゼマインは、自分が単純すぎたことを反省する。
話し合いを急がない理由
ローゼマインは、王族との会談まで時間を置く理由を尋ねた。
フェルディナンドは、最優先事項だったのはジェルヴァージオ排除とランツェナーヴェ側の制圧であり、それが終わった以上、今は自分達の回復が最優先だと言い切る。
さらに、王族との正式な場に出るためには衣装完成も必要だと説明した。
奉納舞の命令
フェルディナンドは、始まりの庭へ戻るためには奉納舞が必要だと告げた。
女神の化身のような外見で転倒するわけにはいかないため、今の体に慣れるまで練習しろと命じる。
ローゼマインは、そんな重要任務に奉納舞が必要だとは聞いていないと抗議した。
しかしフェルディナンドは、「そういう流れになっている」と当然のように返し、不機嫌な笑顔で押し切った。
アーレンスバッハ騎士達への慰労
フェルディナンドはさらに、食事受け取りに来るアーレンスバッハ騎士達をローゼマイン自身に労わせたいと話す。
女神の御力をまとったローゼマインが笑顔を見せれば、騎士達の不満を封じやすくなるという。
ローゼマインは、その程度なら協力すると了承した。
王族対応の準備
続けてフェルディナンドは、王族との話し合い用にまとめた要求事項や進行内容の書類をローゼマインへ渡す。
女神の化身として最低限の役割を果たせるよう、暗記するよう命じた。
ローゼマインは、相変わらず要求量が多いと内心で嘆きつつも、フェルディナンド本人の激務を思えば文句を言えなかった。
夕食会
夕食時になると、ローゼマインは再び銀色の布を被せられ、アンゲリカに抱えられたまま会議室へ向かった。
そこにはジルヴェスター、フロレンツィア、シャルロッテ、フェルディナンドが揃っていた。
布を外した瞬間、フロレンツィア達は気後れしたが、ジルヴェスターだけは「化けたな」と興味津々で眺め始める。
その変わらない態度に、ローゼマインは大きな安心感を覚えていた。
離宮の転移陣再起動
食事中、フェルディナンドはアダルジーザの離宮とランツェナーヴェの館を繋ぐ転移陣を再起動したと報告した。
これにより、アーレンスバッハの荷物や側近達も徐々に移動できるようになる。
王族からも、離宮は本来ローゼマインへ与えられる予定だった場所なので自由に使ってよいと許可が出ていた。
周囲の誤解
しかし、フェルディナンドの魔力が離宮側に登録済みだと知ったジルヴェスター達は妙な反応を見せた。
ジルヴェスターは、「最高神への挨拶も済ませず冬を早めたのか」と意味深な言葉を投げる。
ローゼマインだけは意味が分からず困惑していたが、フェルディナンドは呆れたように受け流していた。
その懐かしいやり取りを見ながら、ローゼマインはエーレンフェストの日常が戻ってきたような感覚を覚えていた。
エピローグ
ダンケルフェルガーの後方支援
ダンケルフェルガーでは、騎士達が心置きなく戦えるのは後方支援が万全だからだと、第一夫人ジークリンデは自負していた。
怪我人の治療、回復薬や魔術具の準備、食事の転送、癒しの魔術を扱う者の待機、交代要員の手配まで全て整えられている。
戦闘中も、運び込まれた騎士を癒し、交代要員へ支援物資を渡し、戦況を逐一領地へ伝えるなど、後方支援側も休む暇はなかった。
混乱する戦況報告
ダンケルフェルガー寮には、連絡役の騎士から次々とオルドナンツが届いていた。
王宮制圧、中央騎士団長ラオブルート討伐、祭壇での三人の消失、中央神殿での戦闘など、予想外の報告ばかりである。
ジークリンデはディッターに慣れているつもりだったが、今回の戦いは理解不能な展開の連続だった。
当初の想定との違い
ヴェルデクラフは当初、この戦いは短期決戦になると考えていた。
ローゼマインが礎の魔術を押さえ、アーレンスバッハ貴族もランツェナーヴェの援軍も動けない状況だったからである。
しかし実際には、中央騎士団の反乱、グルトリスハイトの出現、講堂の水没騒動、中央神殿での戦闘など、全てが想定外だった。
ヴェルデクラフの帰還
戦後処理を終えたヴェルデクラフが寮へ戻ったのはかなり遅い時間だった。
ジークリンデは、戦いの空気をまだ引きずっている夫を見て、まず洗浄の魔術を施し、騎士達から少し離した場所へ案内する。
戦後の政治的な会話は、臣下に聞かせられない内容も多かった。
ハンネローレの成長
ジークリンデは、ハンネローレが夜明けまで後方支援を頑張っていたことをヴェルデクラフへ伝えた。
ハンネローレはアーレンスバッハ掃討戦から連日の戦いで睡眠感覚を崩していたため、深夜帯の支援指揮を担当していたのである。
また、アーレンスバッハ戦で成果を出したことで、騎士達からの評価も回復していた。
ジークリンデは、それが今回最大の収穫だと感じていた。
レスティラウトへの警戒命令
ヴェルデクラフは、レスティラウトを礎の間へ待機させた理由についても語った。
アーレンスバッハが少人数で一気に礎を奪われた前例がある以上、敵襲の可能性を完全には否定できなかったのである。
若い騎士達にとっても、長時間の本格的警戒を経験する良い機会になったと考えていた。
国境門発光への問い合わせ
クラッセンブルクからは、突然国境門が光ったことへの問い合わせが届いていた。
中央は戦闘直後で機能しておらず、ダンケルフェルガーへ直接確認が来たのである。
しかしヴェルデクラフ達は、「ダンケルフェルガーの国境門も以前光った」とだけ返答し、詳細は伏せた。
女神降臨の説明
ジークリンデが国境門を光らせた理由を尋ねると、ヴェルデクラフは「女神の指示らしい」と答えた。
フェルディナンドによれば、ローゼマインへメスティオノーラが降臨し、魔力枯渇によるユルゲンシュミット崩壊を防ぐため、国境門を次期ツェント候補の魔力で満たしたという。
しかしジークリンデには説明されてもなお現実味がなかった。
情報統制
王族からは、戦いへ参加しなかった領地の貴族院立ち入りを禁止する通達が出されていた。
だがジークリンデは、それが実際にはフェルディナンド主導の情報統制だと即座に察する。
ヴェルデクラフも、中央騎士団制圧やラオブルート討伐では活躍したものの、結局はフェルディナンドに全て主導権を持っていかれた感覚だと認めた。
フェルディナンドへの評価
ヴェルデクラフは、フェルディナンドの戦い方を「悪辣で卑怯」と評した。
純粋な力比べなら歓迎するが、戦後政治まで見据えた頭脳戦では絶対に敵に回したくない相手だと断言する。
戦い好きなヴェルデクラフがそこまで言うことに、ジークリンデは驚いていた。
王族との昼食会
ヴェルデクラフは、明後日にエーレンフェストのお茶会室で王族との話し合いを行うと伝えた。
ジークリンデは、王族相手に日程調整もせず、しかも主催がエーレンフェストであることに衝撃を受ける。
フェルディナンドは、ローゼマインの後方支援をエーレンフェストが担っていることを理由にしていた。
エーレンフェスト主催への納得
ジークリンデは当初、エーレンフェストの政治的立場強化のためだと考えていた。
しかし、ローゼマインが今もエーレンフェスト寮で休んでいることから、アーレンスバッハをまだ掌握できていない現状に思い至る。
未成年のローゼマインが、親兄弟のいるエーレンフェストへ頼るのは自然なことだと納得した。
フェルディナンドの立場
ヴェルデクラフは、フェルディナンドもグルトリスハイト保持者である可能性を示唆した。
祭壇から消えた三人のうち二人が保持者なら、残る一人も同等だろうという推測である。
ジークリンデは、自分達が完全に前提を読み違えていたことに気付き、頭を抱えたくなった。
次期ツェント問題
ヴェルデクラフは、フェルディナンド自身はツェントになる気がないだろうと語る。
その一方で、次期ツェント選定の主導権は完全にフェルディナンド側にあるとも感じていた。
ヴェルデクラフ自身が次期ツェントになる可能性もまだ残されていたが、状況は大きく変化している。
トラオクヴァール失格の理由
ヴェルデクラフは、トラオクヴァールがツェント候補から外れた理由も説明した。
ラオブルートによる情報操作と、トルークの影響が疑われているうえ、最も重要な局面で責任を放棄したことが決定打だった。
フェルディナンドは、その場でトラオクヴァールへ「ツェント失格」の烙印を押したという。
ジークリンデは、今まで国のために尽くしてきたトラオクヴァールへの情状酌量を望んだが、ヴェルデクラフは否定的だった。
ダンケルフェルガーの立場
ヴェルデクラフは、ダンケルフェルガーは「王の剣」であり、ツェントを守るために戦う存在だと語る。
しかし、自ら王位を投げ出した者を支援するつもりはないと断言した。
今後の話し合いでは、ダンケルフェルガーは基本的に傍観者として振る舞う方針である。
ヒルデブラントの失墜
さらにヴェルデクラフは、ヒルデブラント王子も重大な罪を犯したと説明する。
ラオブルートに唆され、秘密裏に最奥の間を開放した結果、敵側がシュタープを得る原因を作ってしまったのである。
その罪は重く、もはや次代王候補として扱うのは困難だった。
ジギスヴァルト不在の理由
ジークリンデは、今回の戦いでジギスヴァルトの名前がほとんど出なかったことにも疑問を抱く。
ヴェルデクラフによれば、フェルディナンドは「弱点が明確なアナスタージウスの方が動かしやすい」と判断していたらしい。
また、ジギスヴァルトは誇りが高く、戦場で他者の指示へ従える人物ではないと評価されていた。
夫婦のやり取り
長い会話の後、ジークリンデはヴェルデクラフへ休息を促した。
ヴェルデクラフは、明後日の昼食会準備を任せると言って立ち上がる。
その際、彼はジークリンデの目元に触れ、彼女自身も疲労を溜めていることを指摘した。
ジークリンデは、戦勝を称えながら夫へシュラートラウムの祝福と安眠を祈り、休息へ送り出した。
中央の戦い
イマヌエル 帰還した傍系王族
ラオブルートからの密書
中央神殿の神殿長室へ白い鳥の魔術具が飛び込み、机の上で手紙へ変化した。
緑のインクを見たイマヌエルは、それがラオブルートからの命令書だと察する。
しかし、側仕えカーティスに内容を確認され、不快感を抱いた。
レリギオンへの軽蔑
イマヌエルは、前神殿長レリギオンを愚かな人物だと考えていた。
ローゼマインこそ中央神殿の神殿長に相応しいと信じていたにもかかわらず、レリギオンがそれを拒絶したからである。
また、古の神事復活へ消極的だったことから、ラオブルートにとっても邪魔な存在となり、毒によって始末されたのだと理解していた。
カーティスへの警戒
カーティスは、レリギオンの急死を怪しんでおり、イマヌエル宛ての手紙を必ず確認していた。
イマヌエルは彼を追い払いたかったが、神殿長就任から日が浅く、仕事を回すには必要不可欠だった。
そのため、祈念式を理由に貴族院訪問申請を王宮へ出すよう命じ、話題を逸らした。
メダルの準備
全員を下がらせた後、イマヌエルは神殿長のみが扱える保管室へ向かった。
そこにはランツェナーヴェへ移動した者達のメダルが保管されており、彼はその中から最も新しい物を取り出した。
それはラオブルートが帰還した新たなツェント候補だと語っていた人物のメダルだった。
ローゼマインへの執着
イマヌエルは、ローゼマインが本物の神具を扱えることに強い憧れを抱いていた。
特に、フリュートレーネの杖や星結びで見た神具の輝きを思い返すだけで興奮していた。
彼は、ラオブルート側のツェント候補がグルトリスハイトを得れば、褒賞としてローゼマインを中央神殿へ迎えられると信じていた。
貴族院への入場
三日後、ようやく中央神殿側へ貴族院立ち入り許可が下りた。
王族に危機が迫っているため、安全確認が済むまで待たされていたのである。
集合場所にはアナスタージウス、ヒルデブラント、多数の中央騎士団員、そしてラオブルートが待機していた。
講堂への移動
一行は中央騎士団に囲まれる形で講堂へ向かった。
ヒルデブラントが鍵の魔石で最奥の間を開き、祭壇へ入る。
普段と違い、中央騎士団は神官達を厳しく監視していたため、青色神官達は緊張していた。
祭壇での作業
イマヌエルは神官達へ細かく指示を出し、祭壇清掃や供物準備、神具の魔力確認を進めさせた。
作業が進むにつれて神官達も監視を気にしなくなっていく。
その様子を見たアナスタージウスは、別件確認のため講堂を離れることにした。
ヒルデブラントへの誘導
アナスタージウスが去った後、ラオブルートはヒルデブラントへ「シュタープを得る許可が出た」と告げた。
側仕えは疑念を抱いたが、ラオブルートはエグランティーヌの政変時の経験を引き合いに出し、身を守るため必要だと説得する。
ヒルデブラントは父から認められたことを喜び、シュタープ取得へ向かった。
シュタープ取得場所への羨望
祭壇脇に開いた穴からヒルデブラント達が入っていく様子を見て、イマヌエルは激しく心を揺さぶられた。
神へ祈りを届けるために必要なシュタープを、自分は決して得られないからである。
その羨望は、貴族への妬みと怒りへ変わっていった。
新ツェント候補との接触
イマヌエルは周囲を避けながら、ラオブルートへメダルを見せた。
すると騎士の一人が前へ出され、彼こそ新しいツェント候補だと示される。
男がメダルへ魔力を流すと、全属性を示す光が浮かび上がった。
グルトリスハイト計画
ラオブルートは、その男が祠巡りと図書館地下を経てグルトリスハイトを得る予定だと説明した。
王族ではないローゼマインより先に、全属性王族である彼が取得できるという。
イマヌエルは、それによって正統なツェントが誕生し、自分はローゼマインを中央神殿へ迎えられると確信していた。
メダル登録変更
イマヌエルは、本人確認済みメダルを神殿へ持ち帰り、保管区分を変更する役目を引き受けた。
実際にはその場でも変更可能だったが、神殿側で管理する必要があると説明して持ち帰ったのである。
その後、神官達の作業確認へ戻り、カーティスからの追及もかわした。
ヒルデブラントの帰還
しばらくして、ヒルデブラントが筒状の物を抱えて戻ってきた。
ラオブルート達は、シュタープ取得直後は他者へ触れられないことを理由に、先に離宮へ戻るよう勧める。
ヒルデブラントは、最奥の間の鍵魔石をラオブルートへ託し、中央神殿側を先に帰還させる役目を引き受けた。
神殿での期待
神殿へ戻ったイマヌエルは、すぐにメダル登録を変更した。
翌日にはラオブルートから「英知の女神に招かれた」との報告が届き、戴冠儀式準備を命じられる。
イマヌエルは、新たなツェント誕生へ自分が大きく関わっていることに興奮し、中央神殿が貴族達の上へ立つ未来を夢見ていた。
アナスタージウス 王族の立場
王宮襲撃の報告
深夜、アナスタージウスのもとへ母ラルフリーダからオルドナンツが届き、王宮でマグダレーナが戦闘中であること、ダンケルフェルガーへ救援要請が出されたことが伝えられた。
突然の知らせにエグランティーヌは悲鳴を上げ、政変時の恐怖を思い出して怯え始める。
アナスタージウスは彼女を抱きしめ、自分達はすぐ動ける準備をしていること、一人ではないことを繰り返し伝えた。
エグランティーヌの克服
エグランティーヌは、自分はもう幼い頃のように逃げ惑うだけではなく、母親として娘ステファレーヌを守らねばならないと自分へ言い聞かせた。
シュタープを出し入れし、装備を確認しながら少しずつ冷静さを取り戻していく。
その姿を見たアナスタージウスは、彼女へ口づけを残し、離宮内の安全確認へ向かった。
離宮の防衛確認
護衛騎士達による確認では、転移扉や各門に異常はなかった。
アナスタージウスは、王宮から襲撃が飛び火する可能性を考え、離宮を守る方針を優先する。
一方で、王宮封鎖によって他領や貴族院との連絡が離宮経由になる現状にも改めて思い至っていた。
ラオブルート反逆の判明
再び届いたオルドナンツで、王宮襲撃の首謀者がラオブルートだと明かされた。
アナスタージウスは、王宮封鎖や離宮待機命令、不審者騒動など、全てラオブルート主導だったことに気付き激怒する。
中央騎士団長である彼を誰も疑わなかったため、完全に利用されていたのである。
最奥の間への召集
その直後、フェルディナンドからオルドナンツが届いた。
ランツェナーヴェ側に礎を奪われる危険があり、最奥の間を開けられる王族が必要だと告げられる。
王宮襲撃は陽動で、本命は貴族院だと悟ったアナスタージウスは、即座に貴族院行きを決断した。
エグランティーヌとの別れ
出発前、アナスタージウスはエグランティーヌへ別れを告げた。
ユルゲンシュミットの礎を侵略者へ奪わせるわけにはいかないと説明し、離宮に残るよう頼む。
エグランティーヌは震えながらも、夫へ武運を祈り、帰還を待つと言って送り出した。
講堂の異様な戦場
貴族院へ到着したアナスタージウスは、口元を布で覆って講堂へ突入した。
そこでは騎獣を使わない乱戦が起こっており、銀色のマントを纏った敵が多数存在していた。
さらに講堂は奉納舞仕様へ変形しており、王族の許可なしでは不可能な構造変化を見て、王族側にも裏切り者がいる可能性を疑う。
ヒルデブラント利用の真相
ダンケルフェルガー側から、講堂開閉用魔石を渡したのはヒルデブラントであり、ラオブルートに誘導されていたと聞かされる。
アナスタージウスは、貴族院確認中にラオブルートが「ヒルデブラントを送ってきた」と語っていた場面を思い出し、怒りを募らせた。
幼い異母弟が騙されて利用されたことに強い憤りを覚える。
銀色マントとの戦闘
アナスタージウスはラオブルートを討つため舞台へ向かった。
しかし敵の銀色マントや武器は通常の魔力攻撃を防ぎ、騎獣さえ貫通する特殊なものだった。
敵の多くは侵略者ではなく、中央騎士団の裏切り者達だった。
ラオブルートとの対峙
奉納舞の舞台へ辿り着いたアナスタージウスは、ラオブルートへ何故父を裏切ったのか問い質した。
ラオブルートは、自分の主はジェルヴァージオであり、元々トラオクヴァールではないと平然と答える。
さらに、アーレンスバッハ調査時にゲオルギーネを通じてランツェナーヴェ側と繋がったことも認めた。
中央騎士団へのトルーク流入
アナスタージウスは、ディッター乱入や葬式襲撃など、トルーク絡みの事件もラオブルートの仕業だったと看破する。
ラオブルートは、計画の障害排除やゲオルギーネへの協力だったと認めた。
その結果、中央騎士団内へトルークが広がっていた実態が浮かび上がる。
真のツェント宣言
ラオブルートは、自分は英知の女神に招かれた真のツェントを迎えるため動いているのだと語った。
アナスタージウスは、グルトリスハイトは地下書庫にあるはずだと反論するが、ラオブルートは王族でなくとも女神に認められれば到達可能だと断言する。
アナスタージウスには、その言葉の真意を理解できなかった。
大爆発
ラオブルートはフェルディナンド達へ向け、極めて強力な攻撃用魔術具を投げ放った。
フェルディナンドや護衛騎士達が必死に回避を叫ぶ中、魔術具は大爆発を起こし、多くの者達を吹き飛ばす。
アナスタージウスも巻き込まれ、死を覚悟するほどの衝撃を受けた。
ローゼマインの介入
その直後、講堂へ飛び込んできたローゼマインが広域癒しを発動し、戦況が一変した。
さらに祝福や神事によって巨大な光柱が立ち、祭壇の神像までも動き始める。
ラオブルートはローゼマインを最優先排除対象とみなし、集中攻撃を命じた。
ジェルヴァージオ出現
祭壇上へ突然現れた男を見て、アナスタージウスは彼が傍系王族だと察する。
ラオブルートの要請に応じて、ジェルヴァージオはグルトリスハイトを出現させた。
その光景を見たアナスタージウスは、王族の希望が崩れ去る感覚に襲われる。
ローゼマインの対抗
しかしローゼマインもまた、自身のグルトリスハイトを掲げて対抗した。
ローゼマイン側近達は、侵略者をツェントへ戴く必要はないと叫び、味方へ祝福を重ね掛けする。
アナスタージウスも再び奮起し、ラオブルート達への攻撃を再開した。
フェルディナンドへの信頼
戦いの最中、フェルディナンドがジェルヴァージオ排除へ動いている姿を見て、アナスタージウスは彼へ賭ける決意を固める。
王族へ良い感情を持っていないはずのフェルディナンドでさえ、侵略者を新ツェントにしようとはしなかったからである。
そのため、アナスタージウスは自らラオブルート討伐へ向かった。
大規模ヴァッシェン
突然ローゼマインがヴァッシェンを発動し、講堂全体が大量の水へ呑み込まれた。
敵味方問わず全員が渦へ巻き込まれ、アナスタージウスも混乱する。
やがて水が消えると、彼は観覧席へ叩き落とされていた。
ダンケルフェルガー到着
その直後、アウブ・ダンケルフェルガーとマグダレーナ率いる援軍が講堂へ雪崩れ込んできた。
王宮制圧が終わったことを知り、アナスタージウスは離宮の家族が無事だと安堵する。
そして侵略者ジェルヴァージオは自分が捕らえると決意を新たにした。
三人の消失
祭壇上ではフェルディナンドが虹色の剣でジェルヴァージオへ斬りかかっていた。
アナスタージウスも加勢しようと騎獣へ乗ったが、その瞬間、神像が光り、フェルディナンド、ローゼマイン、ジェルヴァージオの三人が消失する。
祭壇へ上がろうとしたアナスタージウス自身は透明な壁に弾かれ、選ばれた者と選ばれなかった者との差を痛感していた。
マグダレーナ 裏切り者の討伐
王宮再封鎖と夫人達の役割
貴族院で不審者が発見されたことで、中央騎士団長ラオブルートから王宮封鎖を求めるオルドナンツが届き、トラオクヴァールの命令で王宮は再び封鎖された。
封鎖によって他領との連絡は全て離宮経由となり、三人の夫人達がそれぞれ役割を担う。ラルフリーダは王宮内への通達、クレメンディアは騎士団移動、マグダレーナは各離宮への警戒連絡を担当した。
クレメンディアの不安とマグダレーナの危機感
クレメンディアは、騎士達が自らの離宮を通過することへの不安から、防衛騎士増員を願い出た。
その願いを受け入れるトラオクヴァールを見ながら、マグダレーナは逆にツェント周辺の守りが薄くなることを危惧していた。
ダンケルフェルガー出身である彼女は、自分で戦い守る覚悟を固めていた。
エーレンフェストからの警告
ラルフリーダは、エーレンフェストからの侵入者情報が正しかったことへ言及した。
しかし、中央騎士団が厳重警戒していたにもかかわらず敵は現れず、一度封鎖が解除された直後に不審者が発見されたため、王宮側は完全に後手へ回っていた。
マグダレーナは、敵が見えないところで大きく動いているような不穏さを感じ取っていた。
ツェント防衛への決意
マグダレーナは、王宮封鎖中でも最優先で守るべきはトラオクヴァールだと主張し、自分の騎士達を王宮へ移動させたいと申し出た。
彼女は「ダンケルフェルガーは王の剣」という教えを胸に、ツェントを守るために戦う覚悟を示す。
トラオクヴァールは呆れながらも許可を与えた。
王宮警備体制の再構築
マグダレーナは離宮へ戻って警備体制を整えた後、自らの護衛騎士達を連れて王宮へ戻った。
ツェント居住区域の警備があまりに手薄であることに衝撃を受け、不寝番の増員や罠の設置、寝室変更などを次々に指示する。
さらに、自分が囮となるためトラオクヴァールの寝台を使用すると決めた。
深夜の侵入者
夜更け、マグダレーナは小さな異音を察知し、即座に飛び起きた。
侵入者は中央騎士団所属の護衛騎士を名乗ったが、マグダレーナは例外なく武装解除と拘束を命じる。
その直後、各地から不審者発見のオルドナンツが相次ぎ、敵が中央騎士団へ変装して侵入している可能性が高まった。
ダンケルフェルガーへの救援要請
マグダレーナはトラオクヴァールへ報告し、ダンケルフェルガーへ救援を求める許可を得た。
離宮と騎士寮を経由した多重連絡を指示し、妨害されても必ずダンケルフェルガーへ伝わる体制を構築する。
同時に、トラオクヴァールは各離宮へ安全確保を命じるオルドナンツを送った。
戦闘指揮権の委任
騎士団長不在の中、トラオクヴァールはマグダレーナへ戦闘指揮を委ねた。
彼は、敵がどのような姿をしていても動揺しないマグダレーナこそ適任だと判断したのである。
マグダレーナはその任を受け、自らも完全武装して指揮へ臨んだ。
ラオブルートへの疑念
イスハイトから、アウブ・ダンケルフェルガーが既に貴族院で戦闘中だと知らされたことで、マグダレーナは敵の正体へ辿り着く。
王宮封鎖で他領との連絡を断ったこと、貴族院に居続けていたことなど、全てラオブルートの行動と繋がったのである。
彼女は、敵はラオブルートだと断定した。
中央騎士団への制圧命令
マグダレーナは、ラオブルート配下である可能性を考慮し、トラオクヴァールの護衛騎士達すら拘束対象とした。
トラオクヴァールは苦悩しながらも判断を下せず、マグダレーナ達が強引に制圧を進める。
ツェント居住区域は一気に戦場と化した。
フェルディナンドからの報告
そこへフェルディナンドからオルドナンツが届き、アダルジーザの離宮でランツェナーヴェ勢力を捕縛したこと、ジェルヴァージオがグルトリスハイトを求めて動いていること、ラオブルートが講堂で彼を守っていることが伝えられた。
トラオクヴァールは、自分が十年以上得られなかったグルトリスハイトへ他国者が近付いている現実へ大きな衝撃を受ける。
トラオクヴァールの異変
フェルディナンドはツェントとして戦場へ立つよう求めたが、トラオクヴァールは「自分は真のツェントではない」と繰り返し始めた。
さらに、彼の周囲には甘い香りが漂っており、マグダレーナはトルーク使用を疑う。
拘束されていた護衛騎士達も、トルーク使用者と酷似した症状だと証言した。
ラオブルート討伐決意
マグダレーナは、トルーク事件すらラオブルート主導だった可能性に思い至る。
彼によってどれだけ情報や報告が歪められていたのかと憤り、ラオブルートだけは絶対に許さないと決意した。
トルークに侵されていない護衛騎士達へ防衛を任せ、自らは貴族院へ向かう。
銀色武器の受領
ヴェルデクラフと合流したマグダレーナは、ランツェナーヴェ側から回収した銀色の短剣を受け取った。
その武器は魔石の鎧すら容易に切り裂き、銀色の布は魔力攻撃を完全に防ぐという、常識外れの武器だった。
マグダレーナは短剣の重みと扱いを走りながら身体へ馴染ませた。
講堂への突入
ダンケルフェルガー勢は講堂へ突入した。
混乱する講堂内でマグダレーナは即座にラオブルートを見つけ出し、トラオクヴァールへ毒を盛った罪を糾弾する。
ヴェルデクラフも銀色の剣を手に共闘し、ラオブルートを追い詰めていった。
ラオブルートとの激戦
ラオブルートは、真のツェントが必要だと語り、トラオクヴァールを解放してやりたかったのではないかと問いかけた。
しかしマグダレーナは一切耳を貸さず、裏切りそのものを討伐理由と見なす。
彼女はヴェルデクラフとの連携で隙を待ち続けた。
ラオブルート討伐
祭壇側で異変が起こり、ジェルヴァージオ達が消失した瞬間、ラオブルートは動揺して祭壇へ走り出した。
その隙を突き、マグダレーナは銀色の短剣をラオブルートの横腹へ深く突き刺す。
さらにヴェルデクラフの剣が肩へ突き刺さり、ラオブルートは完全に戦闘不能となった。
戦いの終結
ラオブルートは拘束され、二の鐘と共に戦いは終結へ向かう。
マグダレーナは、夫の敵を討ち、ダンケルフェルガーの「王の剣」としての役目を果たせたことへ安堵していた。
その後、彼女は祭壇から消えたローゼマイン達について思いを巡らせる。
グルトリスハイトへの祈り
ローゼマイン達が神々に招かれた可能性を考えたマグダレーナは、彼等がグルトリスハイトを得るかもしれないと察する。
そして、長年ユルゲンシュミットを支えてきたトラオクヴァールにも、どうかグルトリスハイトが授けられるよう祈った。
ジェルヴァージオ 女神の降臨
ジェルヴァージオへの英知授与
ジェルヴァージオは始まりの庭でエアヴェルミーンからメスティオノーラの英知を授けられた。
彼はランツェナーヴェへ送られた自分の運命を変え、ついにグルトリスハイトを得たことへ強い達成感を抱いていた。
しかし、流れ込む膨大な知識を受け止めきれず、途中で光が不自然に途切れてしまう。
不完全なメスティオノーラの書
授与後に確認したメスティオノーラの書は、多くの記述が欠けており、後半は空白だらけだった。
エアヴェルミーンは、途中で英知の流入が途切れたことが原因だと説明し、ジェルヴァージオを不完全なツェント候補と評した。
ジェルヴァージオは不足を補う方法を尋ね、王族の書庫へ残された知識を探す必要があると知らされる。
他のツェント候補の存在
ジェルヴァージオは他の候補者について尋ね、マインとクインタという名を聞いた。
クインタがフェルディナンドであると察した彼は、ローゼマインとフェルディナンドが一冊のメスティオノーラの書を分け合っている状態だと知る。
エアヴェルミーンは、二人のうち片方が死ねば書が完成すると語りつつ、無礼者のクインタよりマインにツェントになってほしいと漏らした。
礎の魔術への命令
ユルゲンシュミットが魔力枯渇寸前であることから、エアヴェルミーンはジェルヴァージオへ一刻も早く礎の魔術を満たすよう命じた。
ジェルヴァージオの書には礎への道筋が欠落していたが、彼はラオブルートを頼れば王族の供給場所へ辿り着けると考えた。
不完全ながらもツェント候補として認められたことに、彼は一定の満足を覚えていた。
祭壇上での対峙
始まりの庭を出たジェルヴァージオは講堂祭壇へ現れ、ラオブルートに迎えられた。
彼がグルトリスハイトを呼び出すと、講堂の者達は熱狂的に彼を真のツェントと称え始める。
しかし直後、別の場所からローゼマインもグルトリスハイトを出現させ、ジェルヴァージオは彼女が既に完成した書を持っている可能性を疑った。
ローゼマインへの警戒
ローゼマインは祈りによる祝福で味方を強化し始めた。
ジェルヴァージオは、自分も書を使って祝福を再現できると確認した一方で、彼女が自分より遥かに使い慣れていることへ危機感を抱く。
彼は、ローゼマインこそ最も危険なツェント候補だと認識した。
フェルディナンドとの交戦
そこへ姿を隠していたフェルディナンドが現れ、ジェルヴァージオへ攻撃を仕掛けた。
ジェルヴァージオは、フェルディナンドの攻撃に特別な脅威を感じなかったが、片方を殺せばもう片方の書が完成する点を厄介視していた。
さらにローゼマインとフェルディナンドが協力関係にあることへ困惑しつつ、彼はフェルディナンドよりローゼマインを危険視し続けた。
神像による強制送還
戦闘中、神像が双方の魔力へ反応し、講堂全体へ光柱が立ち上った。
直後、ジェルヴァージオ達は再び始まりの庭へ強制転移させられる。
エアヴェルミーンは、礎を満たすべき時に争っていることへ激怒していた。
メスティオノーラ降臨
エアヴェルミーンはフェルディナンドを排除しようとしたが、ローゼマインが未知の術式で防御し、その身へ英知の女神メスティオノーラを降臨させた。
完全に別存在となったローゼマインへ、ジェルヴァージオは圧倒的な威圧感を覚える。
メスティオノーラはエアヴェルミーンへ神力を与え、今後はツェント候補同士で命を奪う行為を禁じた。
ツェント選定方針の決定
フェルディナンドは、王族へ魔術具型グルトリスハイトを渡し、将来的に新たなツェント候補を育てる体制を望むと語った。
一方ジェルヴァージオは、自分こそ魔力量に優れ、即座に礎を満たせると主張する。
最終的に、三人が別々の国境門へ赴き、魔力供給速度を競うことで新しいツェントを決める方針が定まった。
ローゼマインの異常性
競争開始直後、ローゼマインは「コピーシテペッタン」という新呪文で一瞬にして転移陣を完成させた。
ジェルヴァージオは、自分が不慣れな魔法陣構築で遅れる一方、フェルディナンドが高速描写に慣れていることを理解する。
魔力量では優位でも、技術面で不利である現実が明確になっていた。
フェルディナンドの妨害
転移陣を描いていたジェルヴァージオは、フェルディナンドから魔術具攻撃を受け、手足を撃ち抜かれた。
さらに転移陣も破壊され、彼は大きく出遅れる。
エアヴェルミーンは、命を奪わない以上は規則違反ではないと判断し、妨害を黙認した。
国境門への到達
傷を癒やしたジェルヴァージオは、ようやくギレッセンマイアーの国境門へ到達した。
彼はメスティオノーラの書を通じて国境門へ魔力供給を開始し、魔力量で巻き返せると考えていた。
しかし供給途中、突如としてメスティオノーラの書とシュタープが消失する。
シュタープ喪失による絶望
ジェルヴァージオは何度呼び出してもシュタープを再現できず、完全に貴族としての力を失っていた。
閉ざされた国境門の内部で、彼はフェルディナンドの妨害を疑い、激しい怒りと絶望へ呑み込まれる。
ツェントになれなければ、協力者達も、ランツェナーヴェも、自らの家族も破滅すると悟った彼は、神へ裁きと救済を求めて叫び続けた。
フェルディナンド 負けられない戦い
フェルディナンドの危機認識
フェルディナンドは祭壇上でジェルヴァージオと対峙し、正面から戦って勝てる相手ではないと判断していた。
ジェルヴァージオは圧倒的な魔力量に加え、ランツェナーヴェ王として国を支えてきた経験から、魔力運用の技量にも優れていた。
祭壇上の戦いでフェルディナンドは攻撃の手数を増やすことで辛うじて対抗していただけであり、相手に慣れられれば敗北すると理解していた。
ジェルヴァージオ攻略方針
フェルディナンドは、個人戦ではなくジェルヴァージオをツェントにしなければ勝利だと考え、搦め手による排除を決意していた。
回復薬や道具の補給を断つため、アダルジーザの離宮を奇襲していたことを有利材料と捉えていた。
さらに、ジェルヴァージオのメスティオノーラの書が不完全であることを、ローゼマインが生んだ大きな優位だと認識する。
国境門競争への誘導
フェルディナンドは、英知の女神の提案を受け入れる振りをしながら、国境門への魔力供給競争を自分に有利な条件へ誘導した。
競争開始直後、ローゼマインは「コピーシテペッタン」で瞬時に転移陣を完成させて転移する。
フェルディナンドはその便利さに感心しつつも、ジェルヴァージオが魔法陣構築へ不慣れであることを見抜いた。
ジェルヴァージオへの妨害
フェルディナンドは転移陣完成直前までジェルヴァージオの警戒度を観察し、隙を見て攻撃用魔術具を使用した。
彼はジェルヴァージオの手足を撃ち抜き、転移陣を破壊して大幅に時間を奪う。
さらに回復薬を投げ渡し、命を奪う意図がないことを神々へ示すことで、規定違反ではない形に整えた。
神と人の理の違い
ジェルヴァージオが妨害を卑怯だと叫ぶ一方、エアヴェルミーンは妨害禁止の規定がない以上問題ないと判断した。
フェルディナンドは、神々にとって重要なのは契約違反の有無であり、人間的な公平性ではないと理解していた。
彼は、ジェルヴァージオが未だ神と人の理の違いを理解できていないと見抜いていた。
ローゼマインとの合流
フェルディナンドはクラッセンブルクの国境門へ移動し、ローゼマインと合流した。
ローゼマインはフェルディナンドが妨害を行うと予測していたが、なお正々堂々と戦うべきだと主張する。
フェルディナンドは、英知の女神による精神干渉でローゼマインから戦いの凄惨な記憶が薄れている可能性を考えた。
ローゼマインの隔離方針
フェルディナンドはローゼマインへ、魔力供給後は側近の指示に従いエーレンフェスト寮で休むよう命じた。
彼女を血腥い戦場から遠ざけ、ジェルヴァージオ排除計画へ余計な介入をさせないためだった。
女神の力が残っていても本質はローゼマインのままだと確認しつつ、フェルディナンドはその状態を最大限利用するつもりでいた。
中央神殿への急行
フェルディナンドはエアストエーデへ転移し、各方面へオルドナンツを飛ばしながら講堂へ急行した。
彼はダンケルフェルガーやアナスタージウスへ指示を出しつつ、中央神殿へ向かう準備を整える。
ジェルヴァージオが国境門への魔力供給を終える前に行動を完了させる必要があり、彼は極度の時間制限へ追われていた。
中央神殿制圧
フェルディナンド達は中央神殿へ突入し、立ちはだかる神官達を排除しながら神殿長室へ向かった。
彼は神官であっても邪魔者に過ぎないと断言し、躊躇なく制圧を進める。
神殿長室では冷静な青色神官カーティスが協力し、隠れていたイマヌエルを誘い出すことに成功した。
イマヌエル拘束とメダル捜索
フェルディナンドはイマヌエルを拘束し、ハルトムートへ尋問を任せた。
その後カーティスの案内で保管室へ入り、中央所属者のメダルを保管する箱を確認する。
彼はそこでジェルヴァージオとキアッフレードの白いメダルを発見した。
王族への強制協力
中央所属者のメダルは王族にしか破棄できないため、フェルディナンドはアナスタージウスへ処理を命じた。
アナスタージウスは躊躇したが、フェルディナンドはジェルヴァージオ排除を迷うなと激しく叱責する。
そしてアナスタージウスは、魔法陣と呪文を使ってジェルヴァージオのメダルを破棄した。
ジェルヴァージオ排除成功
ジェルヴァージオのメダルは黒い炎に包まれ、砕けながら灰となって消滅した。
フェルディナンドは、これによってジェルヴァージオがツェントになる可能性は完全に消えたと確信する。
さらに、ローゼマインが中央神殿へ引き渡される未来や、自分が魔石としてランツェナーヴェへ送られる危険も回避できたと理解した。
戦後への意識転換
中央神殿での目的を終えたフェルディナンドは、神殿側の処理を後回しにし、講堂へ戻ることを決めた。
ジェルヴァージオという最大の脅威は排除できたが、今後は王族との交渉や新たなツェント選定を進めなければならない。
彼は勝利へ浸ることなく、すぐに次の政治的局面へ意識を切り替えていた。
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兵士の娘

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神殿の巫女見習い

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領主の養女

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貴族院の自称図書委

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女神の化身

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ハンネローレの貴族院五年生

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その他フィクション

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