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フィクション(Novel)本好きの下剋上読書感想

小説「本好きの下剋上 第五部 女神の化身 4」感想・ネタバレ

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女神の化身4の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

第五部 女神の化身3レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身5レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 冬の粛清と警戒
    2. エルヴィーラの危機管理
    3. ライゼガングの総意
    4. メルヒオールの神殿教育
    5. エントヴィッケルンの計画
    6. 貴族院の順位低下
    7. ブリュンヒルデの第二夫人
    8. クラリッサの暴走到着
  6. 登場キャラクター
    1. 中央・王族・貴族院
      1. トラオクヴァール
      2. ジギスヴァルト
      3. アナスタージウス
    2. エーレンフェスト(領主一族・貴族)
      1. ジルヴェスター
      2. フロレンツィア
      3. ローゼマイン
      4. ヴィルフリート
      5. シャルロッテ
      6. メルヒオール
      7. ボニファティウス
      8. カルステッド
      9. エルヴィーラ
      10. ランプレヒト
      11. アウレーリア
      12. ベティーナ
      13. コルネリウス
      14. レオノーレ
      15. ユーディット
      16. テオドール
      17. アレクシス
      18. アンゲリカ
      19. ダームエル
      20. ハルトムート
      21. マティアス
      22. ラウレンツ
      23. ミュリエラ
      24. グレーティア
      25. リヒャルダ
      26. オティーリエ
      27. ブリュンヒルデ
      28. ベルティルデ
      29. フィリーネ
      30. ローデリヒ
      31. トルデリーデ
      32. ニコラウス
      33. オズヴァルト
      34. バルトルト
      35. ギーベ・キルンベルガ
      36. ギーベ・グレッシェル
      37. ギーベ・ゲルラッハ
      38. ヘンリック
      39. レングルト
      40. ヴァネッサ
      41. ヴェローニカ
      42. 前ギーベ・ライゼガング
      43. ラザファム
      44. 旧ヴェローニカ派の貴族達
      45. ライゼガング系貴族達
    3. エーレンフェスト(神殿・下町)
      1. フラン
      2. ザーム
      3. モニカ
      4. ニコラ
      5. ロータル
      6. イミル
      7. ギル
      8. フリッツ
      9. ヴィルマ
      10. デリア
      11. リリー
      12. フリターク
      13. カンフェル
      14. ディルク
      15. コンラート
      16. ベルトラム
      17. マルテ
      18. ギュンター
      19. エーファ
      20. トゥーリ
      21. カミル
      22. ベンノ
      23. ルッツ
      24. マルク
      25. グスタフ
      26. フリーダ
      27. コージモ
      28. オットー
      29. テオ
      30. コリンナ
      31. インゴ
      32. ザック
      33. ヨハン
      34. ハイディ
      35. フーゴ
      36. エラ
      37. イルゼ
      38. ロジーナ
      39. ルネッサンス
      40. グーテンベルク達
      41. プランタン商会
      42. ギルベルタ商会
      43. オトマール商会
    4. アーレンスバッハ
      1. アウブ・アーレンスバッハ
      2. ゲオルギーネ
      3. ディートリンデ
      4. レティーツィア
      5. フェルディナンド
      6. ユストクス
    5. ダンケルフェルガー
      1. アウブ・ダンケルフェルガー
      2. クラリッサ
      3. ハンネローレ
      4. グリゼルダ
    6. ドレヴァンヒェル
      1. オルトヴィーン
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ
    2. 帰還と周囲の状況
    3. ランプレヒトとニコラウス
    4. 領主一族の会議
    5. メルヒオールと神殿準備
    6. ライゼガングの総意
    7. アウブとの話
    8. ブリュンヒルデの提案
    9. 周囲の変化と春を寿ぐ宴
    10. 神殿見学会
    11. 儀式の準備
    12. 御加護の再取得
    13. クラリッサの来襲
    14. クラリッサの取り扱い
    15. メルヒオールと祈念式
    16. グーテンベルクの弟子達
    17. キルンベルガの国境門
    18. エピローグ
    19. 反省と羨望
    20. 西門での攻防
  8. 本好きの下剋上 シリーズ 一覧
      1. 兵士の娘
      2. 神殿の巫女見習い
      3. 領主の養女
      4. 貴族院の自称図書委
      5. 女神の化身
    1. ハンネローレの貴族院五年生
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、異世界ビブリオファンタジー『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~』の最終章にあたる第五部「女神の化身」の第4巻である。魔力を持つ貴族が支配する階級社会「ユルゲンシュミット」を舞台に、本を何よりも愛する元日本人の少女ローゼマインが、自らの理想のために突き進む姿が描かれている。

ゲオルギーネ派の暗躍を阻むために急遽前倒しで行われた「冬の粛清」は領内に大きな爪痕を残し、騎士団や領主一族を極度に疲弊させていた。そのような緊迫した情勢下で、貴族院の卒業式が幕を開ける。卒業式の奉納舞では、アーレンスバッハの領主候補生ディートリンデが大量の魔力を暴走させて意識を失い、その際に舞台に見知らぬ魔法陣が出現したことで、国全体を巻き込む「次期ツェント(王)騒動」へと発展する。 一方、エーレンフェスト領内では、粛清によって宿敵を一掃し最大派閥となったライゼガング系貴族から「貴族院の順位を十位くらいに下げてほしい」という衝撃的な要求が突きつけられる。その裏には領主一族の間に亀裂を入れて対立させ、ローゼマインを次期アウブ(領主)に擁立しようとする権力闘争の思惑が隠されていた。ローゼマインは、やる気のある若手世代を集めた「世代交代」や、他領のレベルを底上げする逆転の発想でこの政治的圧力に対抗していく。さらに、側近であるブリュンヒルデの第二夫人志願や、ハルトムートの婚約者クラリッサのエーレンフェストへの暴走到着など、周囲の人間関係や環境が激動していくこととなる。

■ 主要キャラクター

  • ローゼマイン:主人公。エーレンフェスト領主の養女であり神殿長。印刷業と本をこよなく愛するが、最大派閥ライゼガング系貴族から次期アウブとして担ぎ上げられそうになり、若手主導の「世代交代」を打ち出して権力闘争を回避しようとする。
  • ジルヴェスター:エーレンフェストのアウブ(領主)。冬の粛清の後始末やライゼガング系貴族からの圧力に追われ、精神的に疲弊している。領内の分断を防ぐため、ブリュンヒルデの第二夫人直訴を受け入れる。
  • フェルディナンド:ローゼマインの元後見人で、現在はアーレンスバッハへ赴任中。卒業式の魔法陣の真相を冷静に分析し、ローゼマインが騒乱の種にならぬよう、王族だけで検証を行うべきだと的確な助言を与える。
  • ブリュンヒルデ:ローゼマインの上級側仕え。ライゼガング系貴族がローゼマイン擁立のために暴走するのを防ぎ、フロレンツィアの懐妊を補佐するため、独断でジルヴェスターの第二夫人に志願して婚約する。
  • クラリッサ:ダンケルフェルガー出身でハルトムートの婚約者。ローゼマインの側近になることを熱望するあまり、嫁入り道具や側仕えを全て置き去りにし、護衛騎士と二人だけで騎獣に乗りエーレンフェストへ暴走到着する。
  • ヴィルフリート:ローゼマインの婚約者であり次期アウブ候補。長年仕えた筆頭側仕えオズヴァルトの解任や第二夫人問題への反発、周囲の認識のズレから精神的な支柱を失い、孤立を深めていく。

■ 物語の特徴

  • 生々しく描かれる緻密な権力闘争:冬の粛清が終わった後の領地における派閥のパワーバランスの偏りや、大人たちが突きつける「総意」の罠など、リアルで重厚な政治劇が展開される点が大きな魅力である。
  • 側近たちの強い忠誠心と覚悟:主の未来や活動環境を整えるために自ら茨の道である領主の第二夫人へ志願するブリュンヒルデや、圧倒的な熱意で強行突破してくるクラリッサなど、ローゼマインを支える側近たちの強い覚悟と個々の成長が深く描かれている。
  • 領地から国全体へと広がるスケール感:一領地内の問題であったゲオルギーネ派の脅威や危険植物「トルーク」の影が中央の騎士団へも及び、卒業式のハプニングを機に「次期ツェント騒動」へと繋がるなど、物語がユルゲンシュミット全体を揺るがす大きなうねりへと加速していく。

書籍情報

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~
第五部「女神の化身IV」
著者:香月美夜 氏
イラスト:椎名優  氏
出版社:TOブックス
発売日:2020年12月10日
ISBN:9784866990897

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

貴族院からエーレンフェストに帰還したローゼマイン達を待ち受けていたのは、領主一族の分断だった。冬の粛清で天下となったライゼガング系貴族の意向により、それぞれの不信感が募っていく。
 それでも歩みを止めないローゼマインの日々は少しずつ変化を生む。春を寿ぐ宴、久し振りの神殿見学会に下町の商人達との会合、御加護の再取得、次代の神殿長育成、そして閉ざされた国境門で知らされる壮大な物語。
 領主一族へーー歴史と派閥の壁を乗り越えろ!
「向上心とやる気のある若手を集め、エーレンフェストの世代交代を全力で進めましょう!」

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身IV」

感想

冬の粛清という血生臭く過酷な出来事の直後から始まり、終始エーレンフェスト全体を包む極度の緊張感と疲弊がリアルに伝わってくる。身分を超えた連携による北門での逃亡阻止など、緊迫した防衛戦が描かれる一方で、自爆したはずのギーベ・ゲルラッハの動向には生存の疑いが残り、これがのちに大きな災いとして祟るのではないかと不穏な予感を抱かせる。領地内の不穏分子を一掃する重要な作戦でありながら、同時に子供たちや騎士団に多大な負担を強いたこの粛清は、まさに領内の情勢を大きく左右する過酷な転換点として強い印象を残した。

こうした不安定な情勢下で、特に際立っていたのが女性キャラクターたちの圧倒的な危機管理能力と覚悟である。なかでもカルステッドの第一夫人・エルヴィーラの手腕は見事というほかない。守るべき家族や孫、そしてアウレーリアを徹底的に保護する一方で、トルデリーデの排除や使用人の解雇を冷徹に進める姿からは、一族を安全に守り抜くための強い覚悟がひしひしと伝わってきた。さらに、グレッシェルのエントヴィッケルン計画が領主一族の事情で頓挫しかけた際、この政治的調整を一身に引き受けたブリュンヒルデの決断にも胸を打たれる。彼女が独断でジルヴェスターの第二夫人に志願した経緯には、ジルヴェスターの母ヴェローニカが残した過去の圧力や因縁も絡んでおり、複雑な人間関係の歪みを感じさせる。しかし、最大派閥となったライゼガング系貴族を宥めつつ、将来の主であるローゼマインを支えようとする彼女の前向きな野心と強い覚悟は、領地の体制を立て直すための極めて重要な一手として美しく描かれていた。

その一方で、最大派閥となったライゼガング系の大人たちが突きつけた「貴族院の順位を維持、もしくは十位くらいに下げろ」という要求には、正直なところ唖然とさせられた。激変する領内の状況についていけないという事情は理解できるものの、学生たちの血の滲むような努力や順位上昇のメリットを無視したこの「総意」の本質は、領主一族を分断してローゼマインを次期アウブに擁立しようとする醜い権力闘争にすぎない。他領との付き合いよりも領内の立て直しを優先したい年長世代の都合に振り回され、両派閥共に碌なことをしない現状にはもどかしさを覚える。

何のメリットもない大人の要求に対し、ローゼマインが思惑に巻き込まれることを拒絶し、ハルトムートらの分析をもとに「向上心とやる気のある若手を集めた世代交代」をジルヴェスターに提案する流れは非常に痛快であった。他領のレベルを底上げすることで自領を相対的に目立たなくするという逆転の発想や、グレッシェルの課題を克服するために商人たちと巧みに連携する姿からは、彼女の統治者としての非凡な機転が窺える。変化を嫌う保守派の圧力に対抗し、新たな支持基盤を構築して領地を前に進める決断は、今後の物語に大きな期待を抱かせるものだった。

重苦しい政治劇が続くなかで、次世代を担う子供たちの成長やコミカルなエピソードは、物語の素晴らしい清涼剤となっている。洗礼式を終えたばかりのメルヒオールが神殿教育に自ら志願し、魔力奉納だけでなく平民の兵士たちとの交流を通じて領主候補生としての広い視野を貪欲に養っていく姿には、頼もしい次世代リーダーとしての歩みが予感でき、非常に微笑ましい。

また、何と言ってもハルトムートの婚約者であるクラリッサの「暴走到着」には爆笑を禁じ得ない。ローゼマインへの熱狂的な忠誠心とダンケルフェルガーらしい猪突猛進さで西門へ突撃してくる姿は、緊迫した物語に大きな笑いをもたらしてくれた。これに対し、ギュンターら平民の兵士たちが理路整然と足止めし、最終的に「婚約者を助けるために駆けつけた美談」へと昇華させて文官として適切に配置したエーレンフェスト側の危機管理能力の高さも、人間ドラマとして非常に読み応えがある。

本作は、派閥や歴史の厚い壁、そして大人のエゴが領主一族を引き裂こうとする過酷な試練の巻であった。しかし、ローゼマインの機転と、彼女を慕う側近たちの命懸けの覚悟、あるいは新たな世代の台頭によって、エーレンフェストが確実に新たな体制へと歩みを進める姿に深い感動を覚える。人間関係の複雑な歪みを乗り越え、次なる壮大な物語へと向かう彼らの未来から、ますます目が離せない。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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第五部 女神の化身3レビュー
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第五部 女神の化身5レビュー

考察・解説

冬の粛清と警戒

『第五部 女神の化身4』において描かれる「冬の粛清」と、それに伴うエーレンフェストの厳重な警戒態勢について解説する。マティアスたちからの事前情報に基づき、当初の予定より前倒しで行われた粛清は、領内に大きな爪痕と緊張状態をもたらした。

粛清の前倒しと騎士団の疲弊
粛清の実施時期とそれに伴う騎士団の状況は以下の通りである。

  • 粛清は冬の半ばに行われる予定であったが、ゲオルギーネ派の暗躍などの情報を得て、急遽冬の初めに前倒しで決行された。
  • 対象となったのは、ゲオルギーネに名捧げをしている者や、旧ヴェローニカ派の主要な貴族たちである。
  • この前倒しと、魔力不足による人数減の中で行われた「冬の主」の討伐が重なった結果、騎士団は極度に疲弊した。
  • ほとんどの者が寮に足止めされて家へ帰れないほどの過酷な状況に陥っていた。

ギーベ・ゲルラッハの館での攻防と生存の疑い
粛清の最前線となったギーベ・ゲルラッハの館では、激しい抵抗が繰り広げられた。

  • ボニファティウスが先陣を切って突入したものの、ギーベ・ゲルラッハや執事は自爆を図り、部屋は焦げ臭い肉塊が散乱する惨状となった。
  • 現場からはエーレンフェストのメダルに魔力登録のない複数の死体が発見され、ローゼマインは過去の襲撃事件と同様に「身食い兵」が使われていたのではないかと推測した。
  • ギーベ・ゲルラッハは自爆して死亡したと判断されたが、残された痕跡が少なすぎたため、ボニファティウスは当初からその死を疑っていた。
  • 後に彼の隠し部屋が荒らされていたことなどからギーベ生存の可能性が強まり、騎士団は再びゲルラッハへの調査に向かうこととなる。

領主候補生への厳戒態勢と子供たちへの影響
粛清による混乱は、城内や領主候補生たちにも深刻な影響を及ぼした。

  • 親が捕らえられた子供たちが感情的になって何をするかわからないため、まだ洗礼式を終えたばかりのメルヒオールは安全確保のために北の離れから出ることを禁じられた。
  • メルヒオールは子供部屋への出入りも制限されるという「幽閉状態」で冬を過ごすこととなった。
  • 貴族院から帰還したローゼマインたち領主候補生に対しても、例年のように領主夫妻が出迎えることはなく、護衛騎士のみが物々しい雰囲気で出迎えた。
  • ボニファティウスは「学生たちの連座回避に尽力したローゼマインたちは、減刑を願う貴族から直訴されたり、襲撃されたりする危険性が高い」と警告した。
  • 春を寿ぐ宴が終わって貴族が領地へ帰るまでは、北の離れから絶対に出ないよう厳命が下された。

北門における逃亡阻止
貴族街と下町をつなぐ北門でも、罪を犯した貴族の逃亡を防ぐために激しい攻防が繰り広げられた。

  • 街の結界は最大レベルまで引き上げられ、平民の兵士たちにも「馬車は決して通すな」という通達が出されていた。
  • 救援の魔術具を与えられた平民の兵士たちが数人の軽傷を負いながらも、必死に門を死守した。
  • 奉納式のために神殿にいたダームエルが真っ先に駆けつけ、逃亡貴族の背後から襲い掛かるなど、身分を超えた連携によって逃亡は阻止された。
  • この活躍により、ダームエルは下町の兵士達から深い感謝と信頼を集めることになった。

まとめ
冬の粛清は領地内の不穏分子を一掃するための重要な作戦であったが、同時にエーレンフェスト全体に極度の緊張感と疲弊を強いる過酷な出来事であった。身分を超えた連携による逃亡阻止や、生存が疑われるギーベ・ゲルラッハの動向など、今後の領内の情勢を大きく左右する重要な転換点となっている。

エルヴィーラの危機管理

『第五部 女神の化身4』において、旧ヴェローニカ派への粛清が行われる不安定な情勢下で、エルヴィーラは騎士団長の第一夫人として徹底した危機管理能力を発揮している。彼女の最優先事項は「家と息子の嫁や孫を守ること」であり、危険の芽を冷徹に摘み取るその手腕は、息子のランプレヒトからも「少々苛烈だが完璧」と評されている。

アウレーリアと赤子の徹底保護
アーレンスバッハ出身であるランプレヒトの妻・アウレーリアは、粛清によって周囲から厳しい視線を向けられる立場にあった。エルヴィーラは彼女の安全を確保するため、以下のような徹底した措置を講じた。

  • 離れではなく本館の客室に住まわせ、自らの完全な管理下に置いた。
  • 不審者の侵入を防ぐために信頼できる乳母を手配した。
  • 外部からの面会依頼は全て自身の手で断った。
  • カルステッドの職権を利用して騎士団からの事情聴取すら回避させた。
  • 生まれたばかりの赤子の存在が周囲に知られないよう、洗礼式までは親族にすら出産を伏せるという徹底した情報統制を行った。

トルデリーデの排除と使用人の解雇
ヴェローニカに仕えていた第二夫人・トルデリーデに対しては、一族の安全を最優先に容赦のない対応を取った。

  • 粛清に乗じてトルデリーデが犯した罪の証拠を騎士団に提出し、捕縛へと追いやった。
  • トルデリーデが使っていた離れを即座に閉鎖し、雇われていた平民の使用人たちを冬の最中であっても一斉に解雇した。
  • 情けをかけて本館に入れればどのような危険が及ぶかわからないため、「それ以上はわたくしの関知するところではない」と切り捨てた。

ニコラウスへの警戒とローゼマインの接触制限
血縁者や味方であっても、危険要素になり得る存在に対しては厳格な境界線を引いた。

  • トルデリーデの息子であるニコラウスについても本館へ引き取らず、城の子供部屋に残す決断を下した。
  • ローゼマインが持ち前の甘さから「ニコラウスを本館で引き取ってほしい」などと情に流されて旧ヴェローニカ派につけ込まれることがないよう、ランプレヒトに目を光らせるよう釘を刺した。
  • 赤子の誕生を喜ぶローゼマインを本館に招くことすら禁じた。
  • これは、旧ヴェローニカ派がアウレーリアとローゼマインの親交に目を付けるのを防ぐためだけでなく、ローゼマインを次期領主に擁立しようと企むライゼガング系貴族に余計な期待を抱かせないための防衛策でもあった。

まとめ
エルヴィーラの危機管理は、守るべき対象と優先順位を明確に定め、そこに脅威をもたらす可能性のある要素を一切の妥協なく排除するというものである。彼女の冷徹にも見える決断の数々は、激動の時代において家族を安全に守り抜くための強い覚悟に裏打ちされている。

ライゼガングの総意

物語における「ライゼガングの総意」について解説する。正式に旧ヴェローニカ派の粛清が実行された後、最大派閥となったライゼガング系貴族たちが領主一族に突きつけた要求と、その裏に隠された真の思惑、そしてローゼマインの対抗策が描かれている。

「ライゼガングの総意」として伝えられた要求
領主一族の会議において、アウブであるジルヴェスターの口から「エーレンフェストの大人の総意」であり「ライゼガングの総意」として、「エーレンフェストの順位を維持、もしくは十位くらいに下げてほしい」という衝撃的な要望がローゼマインたちに伝えられた。その表向きの理由は以下の通りである。

  • エーレンフェストの急激な順位上昇と上位領地との付き合い方に、大人たちがついていけないため。
  • 粛清で貴族が減少し内政が不安定なため、他領との付き合いよりも領内の立て直しを優先すべきであるため。
  • ローゼマインが王族や上位領地と繋がりを持って目立ちすぎると、次期アウブを巡る内紛の種になるため、言動を慎んでほしいという要求。

根底にある「次期アウブ擁立」の思惑
この総意の背景には、冬の粛清によって長年の宿敵であったアーレンスバッハ系貴族(旧ヴェローニカ派)がほぼ一掃されたことがある。

  • 粛清の結果に満足した前ギーベ・ライゼガングが大往生を遂げ、彼の最期の望みが「ローゼマインを次期アウブに」というものであった。
  • ライゼガング系貴族は、ヴェローニカの血を引くヴィルフリートを次期アウブとして認めたくなく、ヴェローニカの血を引かないローゼマインを次期アウブに据えることを狙っていた。

側近たちによる「総意」の実態解明
ローゼマインがライゼガング系の側近たち(ハルトムートやレオノーレ、ブリュンヒルデ等)に確認すると、彼らは「同意していない」「総意とは言えない」と否定した。ハルトムートの分析により、この「総意」は一枚岩ではなく、以下のような複雑な裏事情があることが判明した。

  • 世代間の意識の差:順位上昇による恩恵(他領との縁組や情報収集のしやすさ等)を実感している若手世代は順位低下を望んでおらず、恩恵を感じない年長世代(保守派)との間で意見が大きく割れていた。
  • 領主一族を分断する罠:ライゼガングの上層部は、領主一族の間に亀裂を入れて対立・孤立させ、ジルヴェスターやヴィルフリートに失望したローゼマインが、自発的に立ち上がってアウブの座を奪い取るという筋書きを描き、根回しを行っていた。
  • 多様な派閥の混在:ローゼマインを神殿から救い出したい「ボニファティウス派」、ヴェローニカの血を完全に排除したい「過激派」、自分たちからアウブを出したい「主流派」、本人が望むなら協力する「消極的賛成派」など、思惑はバラバラであったが、外から見ると巨大な圧力になるよう仕組まれていた。

ローゼマインの決断と「世代交代」の提案
次期アウブになる気が全くなく、本と図書館と印刷業があれば満足なローゼマインにとって、ライゼガングの権力闘争に付き合う義理はなかった。彼女はハルトムートらの助言を受け、領主一族の亀裂を修復しジルヴェスターの足元を固めるため、「向上心とやる気のある若手を集め、エーレンフェストの世代交代を全力で進める」という対抗策を決意する。その具体的な内容は以下の通りである。

  • 保守的な年長者には変化の少ない地方ギーベとしての役割を与えて「重要な食糧庫」として遇する。
  • 派閥に関係なく変化に柔軟な若手や有能な旧ヴェローニカ派を中央の重職に登用し、新しいアウブの支持基盤を構築する。
  • これらの役割分担をジルヴェスターに提案し、反撃への第一歩を踏み出した。

まとめ
ライゼガング系貴族が突きつけた「総意」の本質は、領主一族を分断してローゼマインを次期アウブに擁立しようとする権力闘争であった。ローゼマインはその思惑に巻き込まれることを拒絶し、ハルトムートらの分析をもとに若手主導の「世代交代」をジルヴェスターに提案することで、領主一族の結束を守りつつ領地の新たな体制づくりの一歩を踏み出す契機とした。

メルヒオールの神殿教育

物語におけるメルヒオールの神殿教育について解説する。ローゼマインが成人して神殿を去った後の後任を見据え、洗礼式を終えたばかりのメルヒオールが次期神殿長として神殿業務を学ぶ過程が描かれている。

神殿教育導入の経緯
領主一族の会議において、ローゼマインが自身の成人後に神殿長職を引き継ぐための教育として提案した。その経緯と理由は以下の通りである。

  • 粛清による青色神官の減少に加え、将来ローゼマインやハルトムートが神殿を去った後の深刻な人材不足を懸念したためである。
  • メルヒオール自身も、冬の粛清期間中に北の離れに籠もらされていた寂しさや反省から、「私も領主候補生ですからお役目が欲しいです」と自ら志願した。
  • この申し出により、ジルヴェスターの許可を得て神殿へ通うことが正式に決まった。

教育の内容と得られる利点
メルヒオールの神殿教育のスケジュールや内容、周囲への説得は以下のように進められた。

  • 当面は城での生活を基本とし、三の鐘から五の鐘の間だけ神殿に通い、神官長室で祈りの言葉の暗記や魔力奉納を行う予定とされた。
  • 最初の年は魔力操作に慣れていないため祈念式には参加できないが、秋の収穫祭での神事参加を目指して訓練を進めることになった。
  • ローゼマインはメルヒオールの年嵩の側近たちに神殿通いを納得させるため、「神殿で祈りと魔力奉納を行えば、貴族院で多くの御加護を得られる」という実利を説明した。
  • この明確なメリットを提示したことで、貴族の間にある神殿に対する忌避感を払拭させた。

神殿入りのための環境整備
領主一族であるメルヒオールを神殿で預かるため、以下のような大掛かりな準備が行われた。

  • 神官長室近くの広い部屋が割り当てられ、城の未使用家具を運び込んで部屋が整えられた。
  • 孤児院へ食事を下賜するための専属料理人がオトマール商会から派遣され、ローゼマインの厨房で研修を受けた。
  • 神殿での側仕えには、フェルディナンドの元側仕えであるロータルが指導役として付けられた。
  • その他の側仕えについても、青色神官に仕えた経験のある有能な灰色神官から選抜された。

平民との関わりと領主候補生としての学び
メルヒオールは実際の現場を見学し、領主候補生として重要な教訓を得た。

  • 祈念式本番で直轄地を回ることはできなかったが、ヴィルフリートの提案でローゼマインの青色儀式服を借り、ハッセでの祈念式と小神殿を見学した。
  • ハッセでは、ローゼマインがシュタープで聖杯を作り出す実演を見て、神具の生成には祈りと奉納の積み重ねが必要であることを学んだ。
  • また、平民の兵士たちと同じ食堂を利用し、「下町の声を聞き、平民の意見を切り捨てずに治世に活かすこと」の重要性を教えられた。
  • メルヒオールはこれらの経験を貪欲に吸収し、兵士たちから聞いた話をジルヴェスターにきちんと報告すると約束した。

まとめ
メルヒオールは神殿教育を通じて、次期神殿長としての実務や魔力奉納の重要性を学ぶだけでなく、平民との交流を通じて領主候補生としての広い視野を養っている。彼が様々な経験を前向きに吸収して成長していく姿は、将来のエーレンフェストを支える頼もしい次世代のリーダーとしての歩みを期待させるものとなっている。

エントヴィッケルンの計画

物語におけるグレッシェルのエントヴィッケルン(大規模な町造り魔術)の計画と、それに伴う課題および解決策について解説する。

エントヴィッケルンの目的と延期による危機
グレッシェルを他領の商人を受け入れられる交易都市にするため、町全体を造り替える大規模魔術「エントヴィッケルン」が計画されていた。しかし、実施にあたって以下の課題と危機が発生した。

  • 当初は春に行われる予定だったが、第一夫人フロレンツィアの懐妊により領主一族の魔力負担が厳しくなったため、秋へ延期されることになった。
  • 秋に実施すると雪の降る冬の間に内装や家具の準備を行うことになり、来年の夏にやって来る他領の商人向けの宿泊施設の完成が間に合わなくなるとシャルロッテが指摘した。
  • 領主の都合による予定変更の負担をギーベ・グレッシェルに押し付ければ、粛清で不安定な情勢下にあるライゼガング系貴族の反発を招く恐れがあった。

ローゼマインによる打開案
この危機を乗り越えるため、ローゼマインはギーベではなくアウブ・エーレンフェスト(ジルヴェスター)自身が責任者となり、大半の資金と魔力を援助して計画を主導することを提案した。時間と費用を大幅に短縮するため、以下のような画期的な方策が打ち出された。

  • 建具の事前・分散発注:詳細な設計図をもとに、エントヴィッケルンを行う前から各部屋の扉や窓枠をエーレンフェストの下町や周辺ギーベの木工工房へ分散して注文しておく。これにより、エントヴィッケルン直後にすぐ建具を取り付け、冬の間でも建物内部の作業を進められるようにする。
  • 接収家具の再利用:宿泊施設の家具を全て新品で揃える時間と費用を削減するため、冬の粛清で取り潰された旧ヴェローニカ派貴族の館から質の良い家具を接収し、そのまま宿泊施設に転用する。
  • 人材の事前研修:宿泊施設で給仕等として働く予定の者をグレッシェルからエーレンフェストの下町へ移動させ、実際に他領の商人を相手にしながら実地教育を早期に済ませておく。

ブリュンヒルデの決意と政治的調整
アウブが主導でグレッシェルの整備を行うと、領主の援助は得られるものの、ギーベ・グレッシェルが「蔑ろにされた」と感じて反発する懸念があった。この問題を解決するため、次期ギーベとして育てられていたブリュンヒルデがアウブの第二夫人に志願した。彼女が領主とギーベの間に立つことで、グレッシェル側を「優遇されている」と感じさせて反発を抑え込み、エントヴィッケルンを円滑に成功させるという政治的な役割を担った。

商人たちの意欲を引き出す連携
商人たちとの會合において、ローゼマインとブリュンヒルデはこの計画を説明し、協力を仰いだ。

  • 準備期間の短さを懸念するベンノに対して、接収した家具の利用やアウブの権限による手配を説明して納得させた。
  • 夏の終わりまでであれば「商人自身で二号店の店舗設計ができる」という条件を提示した。
  • これによって商人たちは改装費をかけずに自分たちの理想の店舗を持てることになり、彼らの二号店出店への意欲を大きく引き出すことに成功した。

まとめ
グレッシェルのエントヴィッケルン計画は、領主一族の事情による延期から一時は頓挫の危機に瀕した。しかし、ローゼマインの現実的かつ画期的な打開策や、ブリュンヒルデの政治的な決意による調整、さらには商人たちの利点を突いた巧みな連携により、課題を克服して新たな交易都市の実現へ向けた基盤が整えられた。

貴族院の順位低下

物語における「貴族院の順位低下」の要求と、その背後にある思惑、そしてローゼマインの対応について解説する。冬の粛清後、最大派閥となったライゼガング系貴族たちの動きと、それに対する領主一族や若手世代の葛藤、そしてローゼマインが打ち出した画期的な対抗策が描かれている。

「エーレンフェストの大人の総意」としての順位低下要求
冬の粛清後に行われた領主一族の会議において、ジルヴェスターからローゼマインたちに対し、「エーレンフェストの大人の総意」であり「ライゼガング의 総意」として、貴族院での順位を維持、もしくは十位くらいに下げてほしいという衝撃的な要求が伝えられた。その表面的な理由は以下の通りである。

  • エーレンフェストの急激な順位上昇と上位領地との付き合い方に、領内の大人たちがついていけないため。
  • 粛清の影響で貴族の人数が減少し、空いた地位を巡る暗躍が始まるなど内政が不安定なため、他領との付き合いよりも領内の立て直しを優先しなければならないため。
  • 王族や上位領地と繋がりを持ち、最優秀を取り続けるローゼマインが目立ちすぎると、次期アウブを巡る余計な内紛の種になるため、言動を慎んでほしいという要求。

要求の裏にあるライゼガング系貴族の思惑
貴族院で少しでも順位を上げようと一丸となって努力してきた学生たちの思いを足蹴にするようなこの要求の裏には、ライゼガング系貴族の権力闘争の思惑が隠されていた。

  • 粛清によって宿敵であった旧ヴェローニカ派をほぼ一掃できたことに満足した前ギーベ・ライゼガングは、最期の望みとして「ローゼマインを次期アウブに」と願いながら亡くなった。
  • これを受けたライゼガング系貴族たちは、ヴェローニカの血を引くヴィルフリートやジルヴェスターを切り捨て、ローゼマインを次期アウブに据えようと画策した。
  • 彼らは、自分たちの要求を突きつけることで領主一族の間に亀裂を入れて対立・孤立させ、アウブに失望したローゼマインが自発的に立ち上がってアウブの座を奪い取るという筋書きを描き、根回しを行っていた。

世代間の意識の差と若手の反発
ハルトムートの分析によれば、この「順位を下げろ」という要求は、世代間の激しい意識の差から生じたものであった。

  • 他領とのやり取りやユルゲンシュミットにおける順位など関係がない「食糧庫」としての役割を担ってきた年長世代だからこそ、簡単に「順位を下げろ」と言えるのだとハルトムートは指摘する。
  • 一方で、順位が上昇したことによって他領からの扱いや立場が変わり、友人関係や情報収集のしやすさといった恩恵を実感している若手世代は、「年寄りの都合でそれを手放し、もう一度底辺に戻るなど真っ平だ」と感じていた。
  • そのため、ライゼガングの総意など蹴り飛ばしたいと考えている若者はいくらでもいる状態であった。

ローゼマインの対策と世代交代
大人の都合で自分たちの努力を否定されたことにシャルロッテは強く反発し、ローゼマインも一時はやる気を失いかけたが、以下のような現実的かつ画期的な方策を打ち出した。

  • ローゼマインは「エーレンフェストが目立たないように順位を下げる」のではなく、「他領を引き上げて平均点を上げる」ことで相対的に目立たなくするという逆転の発想に至った。
  • これまで領地内に限定していた子供向けの聖典絵本、カルタ、トランプなどの知育玩具を他領の商人に向けて販売することを許可した。
  • 変化を嫌って停滞や逆戻りを望む年長世代の要求に付き合うのではなく、順位上昇の恩恵を知る「向上心とやる気のある若手を集め、エーレンフェストの世代交代を全力で進める」ことを提案した。

まとめ
大人たちが突きつけた「順位低下」の要求は、領主一族を分断してローゼマインを次期アウブに擁立しようとするライゼガング系貴族の権力闘争が本質であった。ローゼマインはその思惑に巻き込まれることを拒絶し、他領のレベルを引き上げることで目立たなくする手法や、若手主導の世代交代をジルヴェスターに提案した。この決断は、保守派の圧力に対抗し、新たな派閥と支持基盤を構築して領地を前に進める重要な契機となっている。

ブリュンヒルデの第二夫人

物語におけるブリュンヒルデの第二夫人への志願と婚約は、エーレンフェストの政治情勢や人間関係に大きな影響を与える重要な出来事である。この出来事の背景、彼女の思惑、そして周囲の反応について解説する。

第二夫人志願の背景と政治的理由
冬の粛清によって旧ヴェローニカ派がほぼ一掃された結果、ライゼガング系貴族がエーレンフェストの最大派閥となった。彼らはヴェローニカの血を引くヴィルフリートを次期アウブから引きずり下ろし、代わりにローゼマインを擁立しようと暗躍を始める。このままでは領主一族が分断されかねない危機的な状況であった。
こうした中、領主一族の会議において、ブリュンヒルデは父であるギーベ・グレッシェルや主のローゼマインにも事前相談を行わず、独断でジルヴェスターに自分を第二夫人に迎えるよう直訴した。その主な理由は以下の通りである。

  • ライゼガング系の沈静化と分断:ライゼガング系出身の彼女が第二夫人になることで、派閥の不安を解消しつつ、過激な者が一枚岩となってローゼマイン擁立に暴走するのを防ぐ狙いがあった。
  • フロレンツィアの懐妊への配慮:第一夫人フロレンツィアの妊娠により、彼女の執務を補佐する人材が急務であった。ブリュンヒルデは未成年であるため、正式な星結び(結婚)は数年後となり、フロレンツィアの妊娠や出産に直接的な影響を与えずに婚約の事実だけを示すことができた。
  • グレッシェル改革の円滑化:フロレンツィアの懐妊に伴い、グレッシェルの大規模な町造り(エントヴィッケルン)はアウブ主導で行われることになった。ブリュンヒルデがアウブとギーベの間に立つことで、グレッシェル側の「蔑ろにされた」という反発を防ぎ、改革を成功に導く役割を担った。

ブリュンヒルデの個人的な事情と覚悟
ブリュンヒルデが第二夫人という道を選んだ背景には、彼女自身の状況と主への忠誠心が存在する。

  • ギーベ・グレッシェルの第二夫人が男児を出産したことにより、次期ギーベとして育てられ他領から婿を迎える予定であったブリュンヒルデは、その立場を事実上失ってしまった。
  • 彼女はこの事態を悲観するのではなく、領主の第二夫人という立場を得ることで、次代のギーベに対しても意見できる強さを持ち、これまで自分を振り回してきた父親の上に立つという野心を示した。
  • 彼女の根底には「ローゼマインの側近」としての強い忠誠心がある。親族との交流がなく、旧来の社交に疎いローゼマインに代わってライゼガング系貴族を掌握し、将来ローゼマインが第一夫人として動きやすい環境を整えるため、自らが矢面に立つ決意を固めていた。

周囲の反応と影響
ブリュンヒルデの直訴に対する領主一族や周囲の貴族たちの反応は様々であった。

  • ジルヴェスターとボニファティウス:ジルヴェスターは彼女の視野の広さと覚悟を認め、婚約を受け入れた。春を寿ぐ宴の婚約発表では、彼女を「エーレンフェストを癒し支える水の女神フリュートレーネ」と非常に高く評価する言葉を贈った。ボニファティウスも彼女の心意気を絶賛し、即座に第二夫人として認めた。
  • ローゼマイン:最初は、愛情の薄い政略結婚をすることになるブリュンヒルデを心配し、激しく取り乱して反対した。しかし、彼女の「自分の能力を最大限に活かすため」という前向きな野心と覚悟を聞き、最終的にはその決意を尊重し祝福した。
  • シャルロッテ:当初は、自分の発言が原因でブリュンヒルデに重責を負わせてしまったと気に病んでいた。しかし、彼女の未来を見据えた強さと覚悟を知り、深い羨望と憧れを抱きながら、共にローゼマインを支えることを約束した。
  • ヴィルフリート:祖母ヴェローニカの教育の影響からか、ヴィルフリートは第二夫人という存在自体に強い不快感を示し、この婚約に激しく反発した。この態度はライゼガング系貴族の不興を買うだけでなく、側近との認識のズレを生み、彼が孤立を深める要因の一つとなった。
  • ライゼガング系貴族:春を寿ぐ宴で婚約が発表されると、ライゼガング系貴族は大いに歓喜し、これを歓迎した。

まとめ
ブリュンヒルデの第二夫人就任は、エーレンフェストの派閥争いを一時的に沈静化させ、領主一族の体制を立て直すための極めて重要な政治的決断となった。最大派閥となったライゼガング系貴族を宥めつつ、将来の主を支え守るための強固な基盤を自らの覚悟によって構築する、極めて重要な転換点として描かれている。

クラリッサの暴走到着

物語におけるクラリッサの暴走到着について解説する。ハルトムートの婚約者であるクラリッサは、ローゼマインの側近になることを熱望しており、その強すぎる思いから前代未聞の騒動を引き起こした。

暴走の発端と動機
クラリッサのエーレンフェストへの移動における経緯は以下の通りである。

  • クラリッサは、ハルトムートが神官長に就任して結婚が延期された後も、婚約者の立場でエーレンフェストへ移動し、ローゼマインの側近になることを希望していた。
  • 本来は領主会議の時期に移動する予定であったが、アウブ・ダンケルフェルガーがフェルディナンドの件で責任を感じ、「少しでも早く支援になれば」と漏らした言葉を真に受けてしまう。
  • 彼女は予定を勝手に前倒しし、両親や側仕え、嫁入り道具を乗せた馬車などを全て置き去りにした。
  • 護衛騎士の女性であるグリゼルダと二人だけで騎獣に乗り、陸路でエーレンフェストへ向けて飛び出した。

境界門での混乱と強行突破
移動中および境界門における状況は以下の通りである。

  • 普通の花嫁行列とは全く異なる「護衛騎士と二人だけで騎獣で現れる」という異常な事態に、道中のフレーベルタークの境界門では偽物ではないかと疑われた。
  • ダンケルフェルガーへ何度も確認が取られる大混乱となった。
  • しかし、アウブの結婚許可と本人確認が取れたため通さざるを得ず、クラリッサたちはフレーベルタークの監視騎士すら振り切りかけながら、全力でエーレンフェストの西門まで到達した。

西門での攻防と兵士の対応
エーレンフェスト西門における攻防と対応は以下の通りである。

  • アウブの許可証を持たないクラリッサは、西門でギュンターをはじめとする平民の兵士たちに足止めされた。
  • 彼女は「ハルトムートの婚約者でローゼマインの側近」だと主張し、護衛騎士は武器に手をかけるなど一触即発の事態になった。
  • しかし、ギュンターが「許可証を持たない不審者が無理を通れば、平民を重用する主(ローゼマイン)の評価を下げる」と厳しく非難したことで、クラリッサも一理あると認めた。
  • その後、ハルトムート宛に送ったオルドナンツに対し、ローゼマイン本人から「西門で待機しなさい。従えなければ即刻ダンケルフェルガーに送り返す」という怒りの返信が届き、叱られると思っていなかったクラリッサは困惑した。
  • その後、ローゼマインの配慮で上位領地貴族の対応に慣れているダームエルとアンゲリカが派遣され、場は収束した。
  • 待機中、クラリッサはダームエルからローゼマインの城での生活について目を輝かせながら聞き出していた。

エーレンフェストの受け入れと叱責
エーレンフェスト領内での対応と処分は以下の通りである。

  • クラリッサの突然の来訪は明らかな緊急事態であったが、ローゼマインは下町商人との重要な会合を優先し、それが終わってから西門へ迎えに行った。
  • 城ではレーベレヒトらが対応を協議し、ここで追い返せば双方のアウブや関係者全員の不名誉となるため、「婚約者を助けるために駆けつけた」という美談として受け入れることが決定された。
  • その後、ローゼマインは図書館でクラリッサを厳しく叱責した。
  • クラリッサは「ローゼマインの役に立ちたかった」と神殿入りを志願したが、ローゼマインは「他領の娘を神殿に入れることはできない」と即座に却下した。
  • 結果として、クラリッサはハルトムートの実家に住み、城でフィリーネと共にレーベレヒトの下で文官として働くことになった。
  • ローゼマインと三日に一度図書館で会う約束を取り付けて納得した。

まとめ
クラリッサの暴走到着は、彼女のローゼマインに対する熱狂的なまでの忠誠心と、ダンケルフェルガーらしい猪突猛進な気質を改めて浮き彫りにした。突然の事態に対してエーレンフェスト側は、平民の兵士による理路整然とした対応や、領主一族・文官による政治的な受け入れ、美談への昇華など、優れた危機管理能力を発揮した。最終的にクラリッサを城の文官として適切に配置したことで、領内の混乱を収束させつつ、新たな有能な人材を確保する契機となった。

第五部 女神の化身3レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身5レビュー

登場キャラクター

中央・王族・貴族院

トラオクヴァール

ユルゲンシュミットの現在の王である。グルトリスハイトを持たないまま即位した。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。ツェント(王)。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院での奉納式に参加し、魔力の供給を受けた。ディートリンデがグルトリスハイトを得た場合は玉座を譲る意向を示している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力供給に追われて顔色を悪くしている。

ジギスヴァルト

トラオクヴァールの第一王子である。アドルフィーネの婚約者として知られている。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下書庫の調査に赴くことを決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 次期王の座に最も近いとされている。

アナスタージウス

トラオクヴァールの第二王子である。エグランティーヌの夫である。

・所属組織、地位や役職
 中央・王族。第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 中央騎士団がディッターに乱入した件でエーレンフェストに事情を聞いた。トルークに関する情報を得て警戒を強める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王位を巡る争いを回避するため、ジギスヴァルトの下につくことを公言した。

エーレンフェスト(領主一族・貴族)

ジルヴェスター

エーレンフェストを治める領主である。ローゼマインを養女として迎えた。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。アウブ(領主)。
・物語内での具体的な行動や成果
 旧ヴェローニカ派の粛清を前倒しで決行した。フェルディナンドのアーレンスバッハへの婿入りを王に命じられ、対応に苦慮する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ブリュンヒルデを第二夫人として迎えることを決めた。

フロレンツィア

ジルヴェスターの第一夫人である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 旧ヴェローニカ派の情報を集め、派閥の取りまとめを行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 妊娠中であり、体調を崩しやすい状態にある。

ローゼマイン

本作の主人公である。平民のマインからカルステッドの娘とされ、領主の養女となった。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。領主候補生。神殿長。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院で二年連続の最優秀を獲得した。印刷業や植物紙の普及、新しい流行の発信に尽力している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴィルフリートとの婚約が王によって承認された。

ヴィルフリート

ジルヴェスターの息子である。ローゼマインの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院で他領の学生との社交をこなし、成績優秀者に選ばれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインとの婚約により、次期アウブに内定した。

シャルロッテ

ジルヴェスターの娘である。ローゼマインを尊敬している。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの不在時に冬の子供部屋の運営を手伝い、祈念式で直轄地を回った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

メルヒオール

ジルヴェスターの息子である。洗礼式を終えたばかりである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの後任として、次期神殿長になるための教育を受け始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ボニファティウス

カルステッドの父である。元領主一族である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。領主代理。
・物語内での具体的な行動や成果
 冬の粛清で先陣を切り、騎士見習い達の訓練を主導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインを非常に可愛がっている。

カルステッド

エーレンフェストの騎士団を率いる人物である。ローゼマインの対外的な実父である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 冬の主の討伐や旧ヴェローニカ派の粛清の事後処理に奔走した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エルヴィーラ

カルステッドの第一夫人である。ローゼマインの対外的な実母である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハルデンツェルでの印刷業を主導し、恋愛物語を執筆している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フロレンツィア派の中核として、女性貴族の派閥を取りまとめている。

ランプレヒト

カルステッドの次男である。アウレーリアの夫である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。ヴィルフリートの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウレーリアと結婚し、冬の粛清下で妻と子の安全を守るため配慮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アウレーリア

ランプレヒトの妻である。アーレンスバッハの第三夫人の娘である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ランプレヒトとの間に子をもうけ、粛清の際は本館の客室で保護された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 顔を隠す厚いヴェールを被っている。

ベティーナ

アーレンスバッハからエーレンフェストへ嫁いだ花嫁である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 ギーベ・ヴィルトルの息子に嫁いだが、ゲオルギーネ派の陰謀に関与した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 冬の粛清で捕らえられ、処刑された。

コルネリウス

カルステッドの三男である。レオノーレの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。ローゼマインの護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院で優秀者に選ばれ、側近のまとめ役としてローゼマインを護衛した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レオノーレ

ローゼマインに仕える護衛騎士見習いである。コルネリウスの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディッター対策として魔物の性質や弱点を調査し、全体の指揮を執った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ユーディット

ローゼマインに仕える護衛騎士見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ボニファティウスの特訓を受け、回復薬を大量に消費しながら鍛錬に励んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

テオドール

ユーディットの弟である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院に在学する間のみローゼマインの側近として仕えることを希望した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 将来はギーベ・キルンベルガに仕えることを目標としている。

アレクシス

ヴィルフリートに仕える護衛騎士見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。護衛騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ギーベ・キルンベルガに対して、ローゼマインを領主とすることの懸念を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アンゲリカ

ローゼマインに仕える護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 魔剣シュティンルークを持ち、主の護衛任務に専念している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エックハルトとの婚約を解消し、エーレンフェストに残ることを選んだ。

ダームエル

ローゼマインに仕える護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。下級護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿での文官仕事もこなし、ローゼマインの護衛と実務の両面を支えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力圧縮によって中級貴族並みに魔力を伸ばした。

ハルトムート

ローゼマインに仕える文官である。クラリッサの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級文官。次期神官長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの聖女としての名声を広め、神殿長業務の補佐を積極的に行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マティアス

ギーベ・ゲルラッハの息子である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲオルギーネ派の秘密会合を密告し、粛清のきっかけを作った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 親の罪による連座を回避するため、ローゼマインに名を捧げる予定である。

ラウレンツ

旧ヴェローニカ派の騎士見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 マティアスと共に旧ヴェローニカ派の子供たちを説得し、名捧げを主導する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインに名を捧げる予定である。

ミュリエラ

旧ヴェローニカ派の文官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 エルヴィーラの執筆する恋愛物語を深く愛好し、ローゼマインの側近となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローゼマインに名を捧げた。

グレーティア

旧ヴェローニカ派の側仕え見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインに名を捧げ、側仕えとして仕え始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

リヒャルダ

ローゼマインに仕える筆頭側仕えである。ユストクスの母である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院の寮を管理し、ローゼマインの生活と社交の差配を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 不適切な態度をとったトラウゴットに辞任を迫った。

オティーリエ

ローゼマインに仕える側仕えである。ハルトムートの母である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 城でローゼマインの身の回りの世話や手紙の対応を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ブリュンヒルデ

ローゼマインに仕える側仕え見習いである。ギーベ・グレッシェルの娘である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。上級側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 流行の衣装や髪飾りの発信に尽力し、他領の貴族との社交を取り仕切った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アウブ・エーレンフェストの第二夫人となることが決まった。

ベルティルデ

ブリュンヒルデの妹である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 春を寿ぐ宴で姉のブリュンヒルデの補佐を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フィリーネ

ローゼマインに仕える文官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。下級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインのために物語を集め、神殿の業務や写本の手伝いを行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ローデリヒ

旧ヴェローニカ派の文官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインに名を捧げ、物語を執筆して新しい本を作る仕事に携わっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

トルデリーデ

カルステッドの元第二夫人である。ヴェローニカに仕えていた。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。元第二夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 冬の粛清に乗じて、エルヴィーラから罪の証拠を提出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 捕らえられ、幽閉されて魔力を奪われる処罰を受ける予定である。

ニコラウス

カルステッドとトルデリーデの息子である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 洗礼式とお披露目を行った後、城の子供部屋で生活している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

オズヴァルト

ヴィルフリートに仕えていた筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。元筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴィルフリートの教育と側近のまとめ役を務めていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヴィルフリートに迷惑をかけないためとして自ら辞任した。

バルトルト

旧ヴェローニカ派の文官見習いである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。中級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 連座を回避するため、ヴィルフリートに名を捧げる予定である。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギーベ・キルンベルガ

キルンベルガを治める領主である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。ギーベ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインを次期領主に相応しいと評価し、印刷業の導入に協力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギーベ・グレッシェル

グレッシェルを治める領主である。ブリュンヒルデの父である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。ギーベ。
・物語内での具体的な行動や成果
 娘のブリュンヒルデをアウブの第二夫人に出し、グレッシェルの町造り(エントヴィッケルン)を受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギーベ・ゲルラッハ

ゲルラッハを治めていた領主である。マティアスの父である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。元ギーベ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲオルギーネに名を捧げ、エーレンフェスト内で反逆を企てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 冬の粛清で騎士団の突入を受け、自爆して死亡した。

ヘンリック

ダームエルの兄である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。下級文官。
・物語内での具体的な行動や成果
 印刷業に関わる下級文官として、ローゼマインの事業を手伝っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レングルト

シャルロッテに仕える護衛騎士である。グレッシェルの出身である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 特筆事項なし。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヴァネッサ

シャルロッテに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 シャルロッテに対して、旧ヴェローニカ派への対処をフロレンツィアに相談するよう勧めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヴェローニカ

ジルヴェスターの母である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。元第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドやライゼガング系貴族を冷遇し、罪を犯して失脚した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白の塔に幽閉されている。

前ギーベ・ライゼガング

ライゼガング伯爵である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。前ギーベ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインを次期アウブに据えることを強く望みながら亡くなった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 故人である。

ラザファム

フェルディナンドに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドのアーレンスバッハへの婿入りに伴い、エーレンフェストの館と残された荷物の管理を命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

旧ヴェローニカ派の貴族達

ヴェローニカを支持していた貴族の集団である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲオルギーネの来訪を機に活気づいたが、冬の粛清により主要な人物が捕らえられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ライゼガング系貴族達

ヴェローニカ失脚後に最大派閥となった集団である。

・所属組織、地位や役職
 エーレンフェスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインを次期アウブに擁立しようと画策し、領主一族に圧力をかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エーレンフェスト(神殿・下町)

フラン

ローゼマインに仕える筆頭側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。筆頭側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿長室の業務を取り仕切り、文官仕事もこなしてローゼマインを補佐している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 元はフェルディナンドの側仕えであった。

ザーム

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの身の回りの世話や来客の対応を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 元はフェルディナンドの側仕えであった。

モニカ

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの着替えや給仕などを担当している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ニコラ

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿長室で食事やお菓子の調理を担当している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ロータル

神殿の側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 メルヒオールが神殿に通うにあたり、指導役として付けられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フェルディナンドの元側仕えである。

イミル

神殿の側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ロータルと共にメルヒオールに仕え、儀式服の準備などを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギル

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマイン工房の責任者として、印刷業や下町との連絡係を務めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フリッツ

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 工房の業務を手伝い、孤児院や職人との間を取り持っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヴィルマ

ローゼマインに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 神殿。灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院の子供たちの世話をし、ローゼマインの本の挿絵を描いている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

デリア

前神殿長のスパイとしてローゼマインに仕えていた少女である。

・所属組織、地位や役職
 神殿。元側仕え見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 特筆事項なし。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

リリー

神殿の灰色巫女である。

・所属組織、地位や役職
 神殿。灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハッセの小神殿で出産を経験した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フリターク

エーレンフェストの青色神官である。

・所属組織、地位や役職
 神殿。青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿の事務仕事に精通し、ローゼマインから頼りにされている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

カンフェル

エーレンフェストの青色神官である。

・所属組織、地位や役職
 神殿。青色神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 フリタークと共に神殿の業務を担っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ディルク

身食いの魔力を持つ孤児である。

・所属組織、地位や役職
 神殿。孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
 孤児院で生活し、新しく来た子供たちに神殿の生活を教えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

コンラート

フィリーネの弟である。

・所属組織、地位や役職
 神殿。孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
 実家を出て孤児院に入り、他の子供たちから読み書きを教わっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ベルトラム

旧ヴェローニカ派の貴族の子供である。

・所属組織、地位や役職
 神殿。孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
 粛清により親を失い、孤児院に引き取られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マルテ

ハッセの孤児である。

・所属組織、地位や役職
 神殿。孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインに引き取られ、神殿の生活に順応しようとしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギュンター

ローゼマイン(マイン)の対外的な死前の父親である。

・所属組織、地位や役職
 下町。兵士。士長。
・物語内での具体的な行動や成果
 西門でクラリッサの強行突破を防ぎ、下町の門番として職務を全うした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エーファ

ローゼマイン(マイン)の対外的な死前の母親である。

・所属組織、地位や役職
 下町。染色職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインのために新しい衣装の布を染め上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

トゥーリ

ローゼマイン(マイン)の姉である。

・所属組織、地位や役職
 下町。髪飾り職人。ダプラ見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族や王族向けの新しい髪飾りを制作し、ギルベルタ商会で活躍している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

カミル

ローゼマイン(マイン)の弟である。

・所属組織、地位や役職
 下町。
・物語内での具体的な行動や成果
 特筆事項なし。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ベンノ

プランタン商会を率いる商人である。

・所属組織、地位や役職
 下町。プランタン商会店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの印刷業の拡大を担い、他領の商人や貴族と直接交渉を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ルッツ

プランタン商会の商人見習いである。

・所属組織、地位や役職
 下町。ダプラ見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ギルと共に各地の製紙工房へ出向き、紙作りの指導や商取引を補助している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

マルク

ベンノに仕える側仕えである。

・所属組織、地位や役職
 下町。プランタン商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 ベンノを補佐し、貴族との交渉のための資料や契約書類を整えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グスタフ

エーレンフェストの商業ギルド長である。

・所属組織、地位や役職
 下町。商業ギルド長。オトマール商会店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 他領の商人の受け入れや、イタリアンレストランの経営に関与している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フリーダ

グスタフの孫娘である。

・所属組織、地位や役職
 下町。
・物語内での具体的な行動や成果
 イタリアンレストランの業務を取り仕切り、新しいレシピの導入を進めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 身食いである。

コージモ

オトマール商会の商人である。

・所属組織、地位や役職
 下町。オトマール商会ダプラ。
・物語内での具体的な行動や成果
 グスタフの補佐として、ローゼマインとの会合に同席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

オットー

ギルベルタ商会を率いる商人である。

・所属組織、地位や役職
 下町。ギルベルタ商会店主。
・物語内での具体的な行動や成果
 エグランティーヌやディートリンデ向けの髪飾りの注文を受け、制作を取り仕切った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

テオ

ギルベルタ商会の商人である。

・所属組織、地位や役職
 下町。ギルベルタ商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 オットーの補佐として髪飾りの注文内容を書き留めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

コリンナ

オットーの妻である。

・所属組織、地位や役職
 下町。ギルベルタ商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族向けの衣装の仕立てを担当している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ベンノの妹である。

インゴ

木工工房の親方である。

・所属組織、地位や役職
 下町。木工職人。グーテンベルク。
・物語内での具体的な行動や成果
 印刷機や製紙用の道具の制作を担当している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ザック

鍛冶職人である。

・所属組織、地位や役職
 下町。鍛冶職人。グーテンベルク。
・物語内での具体的な行動や成果
 コイル入りのマットレスを制作し、ローゼマインに納品した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ヨハン

鍛冶職人である。

・所属組織、地位や役職
 下町。鍛冶職人。グーテンベルク。
・物語内での具体的な行動や成果
 金属活字を完成させ、ローゼマインからグーテンベルクの称号を与えられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ハイディ

インク職人である。

・所属組織、地位や役職
 下町。インク職人。グーテンベルク。
・物語内での具体的な行動や成果
 新しい素材を用いた色インクの研究と開発を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

フーゴ

ローゼマインの専属料理人である。

・所属組織、地位や役職
 城。専属料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族向けに新しいレシピの料理を提供し、他領からの高い評価を得た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

エラ

ローゼマインの専属料理人である。

・所属組織、地位や役職
 城。専属料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 神殿や城でローゼマインのための食事を作り続けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

イルゼ

グスタフの館の料理人である。

・所属組織、地位や役職
 下町。料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの考案したカトルカールなどのレシピを再現した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ロジーナ

ローゼマインの専属楽師である。

・所属組織、地位や役職
 城。専属楽師。元灰色巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドと共に新しい曲の編曲を行い、お茶会で演奏を披露した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ルネッサンス

ローゼマインが染色職人に与える称号として咄嗟に口走った言葉である。

・所属組織、地位や役職
 称号の名前。
・物語内での具体的な行動や成果
 特筆事項なし。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 人物ではなく称号の名称であるが、そのまま定着してしまった。

グーテンベルク達

印刷業や製紙業に関わる職人たちの総称である。

・所属組織、地位や役職
 下町。職人集団。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハルデンツェルなど各地へ赴き、新しい工房の設立と技術指導を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

プランタン商会

植物紙や本などの印刷物を専門に扱う商会である。

・所属組織、地位や役職
 下町。商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーレンフェストの新しい印刷物を他領へ広げるための交渉窓口となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ギルベルタ商会

衣装や髪飾りなどの服飾品を扱う商会である。

・所属組織、地位や役職
 下町。商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 リンシャンや髪飾りなどの流行品を製造し、貴族院の学生や他領の貴族へ販売した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

オトマール商会

食料などを扱う老舗の商会である。

・所属組織、地位や役職
 下町。商会。
・物語内での具体的な行動や成果
 イタリアンレストランの運営に関わり、レシピの交換や料理人の育成を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

アーレンスバッハ

アウブ・アーレンスバッハ

アーレンスバッハを治める領主である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 病に倒れ、次期領主を支えるためにフェルディナンドを婿として迎え入れるよう王に求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ゲオルギーネ

アーレンスバッハの第一夫人である。ジルヴェスターの姉である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。第一夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 エーレンフェストを訪れて旧ヴェローニカ派を扇動し、秘密裏に反逆の準備を進めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ディートリンデ

アーレンスバッハの領主候補生である。ゲオルギーネの娘である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。次期アウブ(中継ぎ)。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドとの婚約が決まり、自分が次期ツェントになれると喜んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

レティーツィア

アーレンスバッハの領主候補生である。ドレヴァンヒェルの血を引く。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドをアーレンスバッハの境界門で出迎えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 成人後に正式な次期アウブとなる予定である。

フェルディナンド

ローゼマインの元後見人である。エーレンフェストの元神官長である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。ディートリンデの婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果
 王命によりアーレンスバッハへ婿入りし、ディートリンデの執務を代行している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ユストクス

フェルディナンドに仕える側近である。

・所属組織、地位や役職
 アーレンスバッハ。文官・側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェルディナンドと共にアーレンスバッハへ同行し、情報収集の任務を担っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ダンケルフェルガー

アウブ・ダンケルフェルガー

ダンケルフェルガーを治める領主である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー。アウブ。
・物語内での具体的な行動や成果
 領地対抗戦でローゼマインに歴史本の翻訳についての交渉を持ちかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

クラリッサ

ダンケルフェルガーの文官見習いである。ハルトムートの婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー。上級文官見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローゼマインの側近になるため、予定を前倒しして強引にエーレンフェストへやって来た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ハンネローレ

ダンケルフェルガーの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 貴族院の図書委員としてローゼマインと親交を深め、本の貸し借りを行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

グリゼルダ

クラリッサの護衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ダンケルフェルガー。護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 クラリッサの暴走に同行し、エーレンフェストの西門までやって来た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

ドレヴァンヒェル

オルトヴィーン

ドレヴァンヒェルの領主候補生である。

・所属組織、地位や役職
 ドレヴァンヒェル。領主候補生。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴィルフリートと成績やゲームで競い合い、互いに切磋琢磨している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項なし。

第五部 女神の化身3レビュー
第五部 女神の化身
本好きの下剋上 全巻まとめ
第五部 女神の化身5レビュー

展開まとめ

プロローグ

冬の主討伐後の休暇と騎士団の疲弊

冬の主の討伐によって吹雪が止み、久々の晴天が訪れていた。ランプレヒトは騎士団長室へ向かいながら、粛清と冬の主討伐によって騎士達が極度に疲弊している現状を実感していた。領主候補生達が貴族院へ行っているため本来なら休暇を取りやすい時期だったが、今年は粛清の前倒しや騎士不足によって状況が大きく狂っていた。

カルステッドはランプレヒトへ二日間の休暇を与えたが、それはようやく得られた短いものだった。ランプレヒトはローゼマインの護衛騎士達だけが優遇されているように見えることへ不満を漏らしたが、カルステッドは彼等が神事対応のため神殿に詰めていただけであり、休暇ではないと説明した。また、ローゼマインの神事がツェントにも認められ始めていることも語られた。

アウレーリアの保護とエルヴィーラの管理

休暇取得を知らせるオルドナンツを送ると、エルヴィーラからは戦いの気配を持ち込まぬよう厳命され、アウレーリアからは帰宅を待っているとの返事が届いた。側近仲間達はアウレーリアが厳しく管理されていることに驚いたが、ランプレヒトはアーレンスバッハ出身の彼女が疑われぬよう守るためだと説明した。実際、アーレンスバッハから来たベティーナはゲオルギーネとの繋がりが発覚して処刑されていた。

帰宅したランプレヒトは、本館で生活するアウレーリアと再会した。エルヴィーラは赤子と産後のアウレーリアを守るため、面会依頼の遮断や本館への避難、乳母の手配などを徹底していた。アウレーリアもエルヴィーラへ深く感謝しており、不安定な情勢の中でも平穏に過ごせていると語った。

トルデリーデ失脚とニコラウスへの警戒

エルヴィーラはヴェローニカ派への粛清についても語った。ヴェローニカの側仕えだった第二夫人トルデリーデは捕らえられ、その証拠を提出したのはエルヴィーラ自身だった。彼女はニコラウスがローゼマインへ接近し、母親の減刑や保護を求める展開を警戒していた。ローゼマインが困っている者を助けたがる性格であるため、旧ヴェローニカ派に利用される危険を危惧していたのである。

さらに、トルデリーデの離れは閉鎖され、使用人達も全て解散させられていた。エルヴィーラは危険の芽を徹底的に排除し、騎士団長家と嫁や孫を守ることを最優先にしていた。

ライゼガング系貴族の思惑とローゼマイン問題

エルヴィーラは、ライゼガング系貴族が再びローゼマインを次期領主に望み始めている現状を語った。粛清によってヴェローニカ派への長年の恨みを晴らした古老達は勢いづき、前ギーベ・ライゼガングの最期の願いもローゼマイン擁立だったという。

ランプレヒトは、ローゼマインにライゼガング系貴族をまとめてもらえばよいのではないかと考えたが、エルヴィーラはそれを強く否定した。ローゼマインは神殿育ちで、意図的に親族と距離を置かされてきたため、ライゼガングを統率できるほど交流がないと指摘したのである。さらに、ヴィルフリート側近達が十分な情報収集を行っていないことにも不満を示した。

また、ボニファティウスまでもがローゼマイン擁立側へ取り込まれそうだと警告し、ヴィルフリートが不用意にライゼガング系貴族を刺激すれば危険だと忠告した。ランプレヒトは事態の深刻さを初めて理解し、ヴィルフリートへ慎重な行動を進言する必要性を感じていた。

父親としての実感と穏やかな時間

その後、ランプレヒトはようやく息子と対面した。出産直後より成長した赤子を見て、父親としての実感と守るべき存在への責任感を強く抱いた。アウレーリアもまた、ランプレヒトが側にいられない立場を理解しており、互いに労わり合う穏やかな時間を過ごした。

ランプレヒトはヴィルフリートや領主候補生達の結束を信じており、多少の問題で崩れることはないと考えていた。そして息子へ「ジークレヒト」という名を考えていることを語り、家族との束の間の休暇を楽しんでいた。だがその裏で、ヴィルフリートはオルトヴィーンの情報を鵜呑みにし、ローゼマインへの不信感を募らせ始めていた。

帰還と周囲の状況

領主候補生達の帰還と厳重な警戒態勢

ローゼマインが貴族院から帰還すると、ボニファティウスが大声で迎えた。しかし勢いよく突進したため、アンゲリカやコルネリウス達が慌てて制止した。例年なら領主夫妻達が出迎えていたが、今年は護衛騎士達だけであり、帰還方法も領主候補生全員をまとめて移動させるなど、異様に警戒された状態になっていた。

ボニファティウスは、粛清によって減刑を求める直訴や襲撃の危険があるため、領主候補生達を厳重に守っていると説明した。特に学生達の連座回避へ尽力したローゼマイン達は狙われやすく、春を寿ぐ宴が終わるまで自由な外出は禁止だと告げられた。

北の離れに閉じ込められていたメルヒオール

北の離れへ戻ると、メルヒオールが兄姉達の帰還を待っていた。粛清開始後、メルヒオールは安全確保のため北の離れから出ることを禁じられ、子供部屋への出入りすら制限されていた。親を捕らえられた子供達が感情的になっているため危険だと判断されたのである。

洗礼式後初めての冬を一人で過ごしたメルヒオールは非常に寂しかったようで、兄姉達の帰還を心から喜んでいた。その後、ローゼマイン達はカルタやトランプで一緒に遊び、久々に穏やかな時間を共有した。

領主一族の夕食と粛清後の課題

夕食には領主一族全員が揃い、貴族院での成果について話し合われた。エーレンフェストの成績向上や共同研究、御加護の増加などが高く評価され、フロレンツィアやボニファティウス、ジルヴェスターから称賛を受けた。

しかし最後にジルヴェスターは、明後日に領主一族会議を開き、粛清後の問題について話し合うと告げた。楽しい食事の場とは裏腹に、領内には依然として緊張感が漂っていた。

新たな側近達と周囲の警戒

翌日、ローゼマインはマティアス、ラウレンツ、ミュリエラ、グレーティアを正式に側近として紹介した。マティアスとラウレンツはゲオルギーネへ名捧げした家系の出身であり、コルネリウスは複雑な表情を見せた。

ダームエルは、彼等自身の忠誠は疑っていないものの、彼等を救済したことで減刑を求める声がローゼマインへ向かう危険を心配していると説明した。ローゼマインは周囲の反発の強さを実感し、貴族院とは違う厳しい現実を感じ取っていた。

その後、ローゼマインは神殿へ向かう護衛騎士の当番や文官達の仕事を振り分け、側近達へ指示を出した。

フェルディナンドの魔術具と褒め言葉の罠

ローゼマインは隠し部屋で、フェルディナンドから渡された魔術具を確認した。最初の録音魔術具には延々とお小言しか入っておらず、期待していた褒め言葉は一切なかったため落胆した。

しかし革袋の二重底から別の録音魔術具と手紙を発見する。そこには、本当に褒め言葉を録音してあるが、図書館の隠し部屋以外で再生すると自動消滅する仕掛けがあると書かれていた。ローゼマインは危うく褒め言葉を失うところだったと青ざめつつ、図書館へ行けるまで我慢する決意を固めた。

一方、リーゼレータはフェルディナンドのお小言入り魔術具をシュミルのぬいぐるみに入れたいと喜び、ローゼマインはそのシュミル愛の強さに呆れつつ感心していた。

ランプレヒトとニコラウス

ランプレヒトによる出産報告

ローゼマインは北の離れでメルヒオールのために一緒に過ごしていたが、珍しくランプレヒトから話があると呼び出された。レオノーレとアンゲリカを同席させた上で話を聞くと、ランプレヒトは冬の初めにアウレーリアとの間に子供が生まれたことを報告した。

ローゼマインはすぐに祝福しようとしたが、ランプレヒトとコルネリウスはそれを止めた。粛清によってアーレンスバッハ系貴族への視線が非常に厳しくなっており、アーレンスバッハ出身のアウレーリアとその赤子を守るため、生誕自体を家族以外には伏せているのだと説明した。

ローゼマインは事情を理解し、安全のため秘密にすると約束した。その後、赤子の様子を尋ねると、ランプレヒトはアウレーリアが授乳で疲弊しつつも、赤子は元気に育っていると嬉しそうに語った。

コルネリウスとレオノーレの結婚予定

ローゼマインは続けて、コルネリウスとレオノーレの結婚時期について質問した。二人はすでに婚約しているが、領内情勢が不安定であるため、通常通り一年から二年ほど準備期間を設けるつもりだと答えた。

ローゼマインは盛大な祝福をすると意気込んだが、コルネリウスは王族級の祝福はやめてほしいと必死に止めた。レオノーレはそのやり取りを楽しそうに見守っていた。

ニコラウスを巡る議論

その後、話題はトルデリーデの息子ニコラウスへ移った。トルデリーデが捕らえられた後も、ニコラウスは子供部屋に残されたままだった。ローゼマインは父親が引き取れば良いのではないかと疑問を抱いたが、異母兄弟は完全に別家庭として扱われるため、母親の同意なしに簡単には引き取れないと説明された。

さらに、トルデリーデがフェルディナンドやローゼマインを激しく嫌悪していたこともあり、コルネリウス達はニコラウスを本館へ入れることに強い警戒感を抱いていた。特に騎士見習いとして鍛えられているニコラウスが感情的になった場合の危険性を懸念していた。

ローゼマインはまだ罪を犯していない子供に対する扱いが厳しすぎると感じ、胸の奥にもやもやを抱えることになった。

孤児院への移送案と現実的な問題

ローゼマインは、子供部屋に残される子供達を孤児院へ移せないかと考え始めた。そこでハルトムートを呼び、孤児院の現状を尋ねる。ハルトムートによれば、第二夫人や第三夫人の子供は引き取り手が少なく、すでに何人かは残留予定だった。

ただし、子供部屋にいるのは既に貴族として扱われる子供達であり、灰色神官や灰色巫女へ従わせることは難しいと説明された。孤児院へ受け入れること自体は可能でも、運営面で大きな問題があるという現実が示された。

ヴィルフリートの考えとニコラウスの希望

そこへヴィルフリートが現れ、ローゼマインの考えを聞いた。彼は、世間の目から隠すだけでは解決にならず、本人達が胸を張って生きるべきだと語った。また、教育問題についてはフロレンツィアの管轄であり、ローゼマインが抱え込む問題ではないと指摘した。

さらにヴィルフリートは、ニコラウス本人はローゼマインへ仕えたいと望んでいたことを明かした。ボニファティウスに可愛がられるコルネリウスやアンゲリカを羨ましく思い、ローゼマインの側近を希望していたのである。しかし、トルデリーデによって神殿育ちのローゼマインへ仕えることを禁じられていた。

コルネリウスは、ニコラウスにはヴィルフリートへ仕える道を用意していたと説明したが、ヴィルフリートは本人の希望ではないと反発した。一方でコルネリウスは、トルデリーデがローゼマインへ偏った悪感情を吹き込んでいたことを理由に、簡単には信用できないと主張した。

ローゼマインは双方の意見を理解しつつも、まだ何もしていないニコラウス本人とは一度きちんと話をしたいと思うようになっていた。

領主一族の会議

領主一族会議とフロレンツィアの懐妊

領主一族の会議では、フロレンツィアの懐妊が最初に報告された。出産は夏の終わりから秋頃になる予定であり、しばらく体調が不安定になることを前提に仕事を再配分する必要があると説明された。

ローゼマインとメルヒオールは素直に祝福したが、シャルロッテは複雑な表情を浮かべていた。ジルヴェスターはこの件を内密にするよう命じ、その後すぐに冬の粛清についての報告へ移った。

粛清の実態とギーベ・ゲルラッハの死

粛清はマティアス達の情報によって前倒しで実施され、ゲオルギーネへ名捧げしている者達が優先的に捕縛された。ギーベ・ゲルラッハの館では多くの者が自害しており、その中にはエーレンフェストのメダル登録を持たない者達も多数含まれていた。

ローゼマインはそれを身食い兵ではないかと推測した。過去の襲撃でも身食い兵が利用されていたためである。ボニファティウスは、館へ突入した際には既に肉塊が散乱する惨状になっていたと説明した。

ギーベ・ゲルラッハ本人については、メダルと残された魔力によって死亡と判断されたが、ボニファティウスはどうにも納得していなかった。逃走経路は徹底的に封鎖されていたものの、残された痕跡が少なすぎることに違和感を覚えていたのである。

名捧げ調査と側近達への協力要請

ジルヴェスターは、名捧げをしている貴族の特定が非常に困難だと語った。トルークによって記憶が曖昧になっているため、周囲との関係から慎重に推測するしかない状況だった。

また、ゲルラッハやヴィルトルなどの館を調査するため、マティアス達の協力が必要だとも説明された。ギーベの館には血族登録が必要な部屋が多く、新しいギーベへ交代すると調査不能になるため、急いで調べる必要があった。

ローゼマインは側近達への乱暴を禁じた上で協力を約束した。カルステッドも騎士団へ徹底すると応じたが、親族の罪を隠蔽しないよう主として責任を持つよう釘を刺した。

順位上昇への否定とローゼマインの失意

その後、ジルヴェスターはエーレンフェストの大人達が「順位を十位程度まで下げてほしい」と望んでいると告げた。粛清によって貴族数が減少し、内政整理が急務となったため、上位領地としての振る舞いへ対応する余裕がないのである。

さらに、ライゼガング系貴族は長年の宿敵だったヴェローニカ派を粛清できたことで満足しており、順位上昇の必要性を感じなくなっていた。前ギーベ・ライゼガングも、ローゼマインへ感謝しつつ、彼女にアウブとなってほしいと願いながら亡くなったと伝えられた。

ローゼマインは、自分達が貴族院で積み重ねてきた努力を否定されたように感じ、大きな喪失感を抱いた。そして、自分が目立つことで次期アウブ問題が混乱すると指摘され、図書館や神殿へ引き籠もりたい気持ちを強めていった。

神殿業務を巡る対立

ローゼマインは、神殿や商業ギルドとの連携に専念したいと申し出たが、ジルヴェスターはフロレンツィアの穴埋めとして社交や執務補佐を望んだ。ヴィルフリートもローゼマインへ社交経験を積ませるべきだと主張した。

しかしローゼマインは、神殿業務や商業関係を代替できる文官が存在しない現実を指摘した。下町や商人との交渉には高度な調整能力が必要であり、ヴィルフリートが言うように簡単に他者へ任せられるものではなかった。

シャルロッテもローゼマインを擁護し、神殿や商業関係は代替不能であり、妊娠したフロレンツィアの負担を養女のローゼマインへ押し付けるのは間違っていると主張した。さらに、第二夫人を迎えずにフロレンツィアを妊娠させたジルヴェスター自身の判断にも厳しい言葉を向けた。

ローゼマインはシャルロッテの言葉に救われ、失いかけていたやる気を少し取り戻していた。

グレッシェル問題とローゼマインの提案

シャルロッテは、フロレンツィアの妊娠によってグレッシェルのエントヴィッケルンが延期される問題も指摘した。他領商人を迎え入れる準備が間に合わなくなる危険性が高く、グレッシェル側へ大きな負担がかかることを懸念していた。

ローゼマインは、アウブ主導で宿泊施設の建設や家具調達を進める案を提案した。粛清で取り潰された貴族の家具を接収して再利用し、複数工房へ並行発注することで時間短縮を図る構想だった。また、グレッシェルの人材をエーレンフェスト下町で実地教育する方法も示した。

この提案にジルヴェスターは乗り気となり、計画を実行することを決断した。シャルロッテは結局ローゼマインの仕事が増えていると心配したが、ローゼマイン自身は神殿へ引き籠もる時間を確保できることを内心喜んでいた。

メルヒオールの神殿教育

メルヒオールは自分にも役目が欲しいと願い出た。ローゼマインは、将来の神殿長候補として神殿業務を学ばせることを提案した。

ハルトムートも、ローゼマインの側近達は将来的に神殿へ残らないため、次世代育成は急務だと補足した。メルヒオールは真剣に神殿で働きたいと願い、最終的にジルヴェスターも許可を出した。

ローゼマインは、神殿を支える新たな人材を確保できたことに満足していた。

ボニファティウスの提案とローゼマインの本音

会議終了後、ボニファティウスはローゼマインへ、神殿を離れて領主一族の仕事へ専念しないかと声をかけた。会議室は緊張に包まれたが、ローゼマインは即座に「成人後も神殿にいられるよう助力してほしい」と本音を返した。

その返答にジルヴェスター達は安堵し、逆にボニファティウスは驚愕した。ローゼマイン自身は、なぜそこまで驚かれるのか理解できないままだった。

メルヒオールと神殿準備

メルヒオールへの神殿教育開始

会議後、メルヒオールは神殿で何をすれば良いのかを期待に満ちた様子で尋ねた。ローゼマインは、当面は三の鐘から五の鐘まで神殿へ通い、祈りの言葉を覚えたり、魔力奉納を行ったりする予定だと説明した。まだ魔力操作の訓練が不十分なため祈念式には参加できないが、秋の収穫祭には参加できるよう準備を進めるつもりだった。

また、神殿へ通うこと自体に大きな意味があると語り、祈りと奉納によって神々の御加護が増えることや、王族までもが神事へ関心を寄せ始めている現状を説明した。これにより、メルヒオールの側近達も神殿への認識を変え始めていた。

御加護再取得研究への関心

ローゼマインは、神殿での祈りや奉納を積み重ねれば御加護を増やせるだけでなく、将来的には御加護の再取得も研究したいと語った。成人済みの騎士達は特に強い関心を示し、神殿へ同行したいと申し出始める。

ローゼマインは、御加護を得るためには継続的な祈りと奉納が必要であり、神殿に出入りしていない者が簡単に恩恵を得られるわけではないと釘を刺した。それでも側近達の意識は大きく変わり、神殿業務への協力姿勢が強まっていった。

神殿入りに必要な準備

ハルトムートは、メルヒオールが神殿へ入るには様々な準備が必要だと指摘した。ローゼマインは孤児院長室や既存設備を流用できたが、領主一族であるメルヒオールは新品の家具や設備を整える必要があるのである。

リヒャルダの助言で、未使用家具を活用する案が出され、ローゼマインは必要となる設備を具体的に挙げていった。厨房、食器、衣装収納、書棚、浴室などが必要であり、特に料理人の確保は重要だった。孤児院へ食事を下げ渡すことも青色神官の役目であるため、神殿専属の料理人を雇う必要があった。

さらに、冬の奉納式に備え、宿泊設備や寝台の準備も必要だと説明された。神殿入りには想像以上の出費と手間が伴うことを、メルヒオールの側近達は実感することになった。

青色神官不足と神殿運営の危機

ハルトムートは、粛清によって青色神官がさらに減少し、神殿運営が危機的状況になっていることを説明した。青色神官が減れば奉納魔力も減少し、孤児院の食事や神殿運営全体に悪影響が及ぶ。

ローゼマインも、領主一族の魔力は本来礎へ向けるべきものであり、神殿運営を一人へ依存する現状は危険だと認識していた。そのため、御加護研究によって貴族達が神殿へ奉納に来るよう期待しつつも、それだけでは不十分だと考えていた。

子供部屋の子供達を青色神官見習いへ

そこでローゼマインは、子供部屋にいる子供達を青色神官見習いとして扱う案を提案した。孤児院ではなく貴族区域で生活させ、貴族としての待遇を維持しつつ神殿へ奉納させる構想だった。

ハルトムートはこの案に強い関心を示した。神殿への安定した魔力供給源となるだけでなく、将来的に神殿へ定着する人材育成にも繋がるからである。また、孤児院の子供達へ将来の目標を示す意味もあった。

ローゼマインはさらに、洗礼式を受けられない子供達の新たな生存ルートを作りたいと考えていた。青色神官が自立して生活できる環境を整えれば、コンラートやディルクのような子供達の未来にも繋がると期待していたのである。

シャルロッテの怒りとローゼマインの決意

シャルロッテは、会議でローゼマインへ向けられた冷淡な言葉に納得しておらず、どうして笑っていられるのかと問いかけた。ローゼマインは、神殿と図書館へ引き籠もる決意を固めていたため表面上は穏やかだったが、内心では大きな失意を抱えていた。

ヴィルフリートについても、会議で順位低下を求められながら平然としていた態度へ違和感を抱いていた。シャルロッテは、貴族院で努力した皆の思いを踏みにじるような発言へ強い不満を示した。

ローゼマインは、ジルヴェスター達の言動に強い矛盾を感じ始めていた。貴族院では順位上昇を目指していたはずなのに、急に順位低下を望み始めた背景には、「ライゼガングの総意」という別の事情が隠されていると推測する。

ライゼガング系側近達への聞き取り決意

ローゼマインは、真相を知るためライゼガング系側近達へ直接話を聞くことを決めた。ハルトムートやコルネリウスもライゼガング系であり、冬の社交を通じて事情を知っているはずだった。

ハルトムートは、ライゼガングがローゼマインの選択を待っていると意味深に告げた。ローゼマインは、領地内で何か大きな思惑が動いていることを確信しながら、側近達から事情を聞き出そうとしていた。

ライゼガングの総意

ライゼガングの総意への疑問

ローゼマインは自室へ戻ると、ライゼガング系の側近達を集め、領主一族会議で語られた「ライゼガングの総意」について確認した。レオノーレは、自分はそのような意思確認に同意していないため総意とは認められないと不快感を示した。

一方でブリュンヒルデは、順位上昇へ付いていけない年長世代の不満が存在することは事実だと語った。また、ローゼマインを次期アウブに望む声は、神殿や神事の価値向上によって以前より強くなっているとも説明した。

リヒャルダも事前には何も知らされておらず、アウブが「ライゼガングの総意」を盾にしたことへ怒りを覚えていた。ローゼマインは、貴族院へ行っていた者達ほど事情を知らされていなかったことを理解した。

ヴィルフリートへの秘密の課題

コルネリウスは、ランプレヒトから少し情報を聞いていた。ライゼガング系貴族は、ヴェローニカ派を一掃した後もヴィルフリート周辺に旧ヴェローニカ派が残っていると考え、次期アウブとして認められたければ自力で課題を達成しろと要求していたのである。

ヴィルフリートは秘密任務のように考えて張り切っているらしく、ライゼガングに知られない形で援助してほしいと頼んでいた。しかしコルネリウスは、何も情報を出さない相手をこれ以上助けるつもりは薄く、既に祈念式の舞台情報を渡した時点で十分な援護をしたと考えていた。

ローゼマインへの女性貴族達の不満

オティーリエは、ライゼガング系貴族からローゼマインの性格や価値観について細かく質問されていたことを明かした。さらに女性貴族達の間では、ローゼマインが印刷業や神殿業務ばかりを優先し、第一夫人として必要な社交へ力を注いでいないことへの不満が高まっているという。

ローゼマイン自身も、利益や効率を最優先してきた結果、ヴィルフリートを立てる意識が薄かったことを自覚した。だが、既に業務を引き継げる人材もおらず、今さら社交中心へ切り替えることも困難だった。

オティーリエは、これまでフェルディナンドが領主夫妻とローゼマインの調整役を担っていたため問題が表面化していなかったのだと説明した。フェルディナンド不在によって、領主一族の意思疎通が噛み合わなくなっているのである。

ハルトムートによる真相暴露

ローゼマインは、会議中のハルトムートの態度から、彼が何かを知っていたと見抜いた。問い詰められたハルトムートは跪き、ライゼガングの狙いを明かす。

ライゼガングの目的は、ヴェローニカの血を引くヴィルフリート達を排除し、ローゼマインを次期アウブへ据えることだった。粛清によってアウブ派の支持基盤が崩れた今こそ好機だと判断し、ローゼマインへ失望と孤立感を与え、自発的に立ち上がらせようとしていたのである。

ハルトムートは、ボニファティウスも「ローゼマインを神殿から救い出したい」という理由でこの流れに協力していると説明した。ボニファティウスは、最も優秀な領主候補生であるローゼマインが神殿へ押し込められている状況を不満に思っていたのである。

ライゼガング派の内部事情

ハルトムートによれば、ライゼガング派も一枚岩ではなかった。完全排除を望む過激派、ボニファティウス派、ライゼガングからアウブを出したい主流派、ローゼマイン本人の意思を尊重する消極派、実力主義派など、様々な思惑が混在していた。

それでも、粛清によって支持基盤を削られたジルヴェスターとヴィルフリートは、「ライゼガングの総意」という圧力を非常に重く感じざるを得ない状況に追い込まれていた。

ハルトムートの本音と若手世代構想

ハルトムートは、自分が望むのはローゼマインの幸福であり、領主一族が仲睦まじく過ごせる状況だと語った。そのためには、ライゼガングの年長世代を敵として設定し、若手世代を集めて新しい支持基盤を作ればよいと提案する。

順位上昇による恩恵を実感している若者達は多く、旧来の停滞を望む年長世代へ反発している者も少なくないという。ローゼマイン式魔力圧縮や御加護取得に関心を持つ下級貴族達も、新たな派閥基盤になり得ると説明した。

コルネリウスも、ライゼガングを「重要な食糧庫」として敬意を払いながら、停滞を望む年長者達を地方へ押し込めればよいと提案した。オティーリエは、派閥形成そのものはヴィルフリートへ任せ、ローゼマインは必要な提案だけ行えばよいと助言した。

世代交代への決意

ハルトムートは最後に、御加護再取得研究こそローゼマインにとって最優先だと熱弁した。その本音に力が抜けつつも、ローゼマインは考えを整理する。

領主一族の亀裂を修復し、ジルヴェスター達の足元を支えるためにも、向上心とやる気のある若手を集めて世代交代を進める必要があると決意した。ローゼマインは、エーレンフェストの未来を変えるため、新たな若手勢力の形成へ動き出そうとしていた。

アウブとの話

シャルロッテとの情報交換

ローゼマインはジルヴェスターとの面会準備を進めながら、シャルロッテと互いに集めた情報を交換した。シャルロッテ側にはライゼガング系側近が少なかったため情報は限定的だったが、フロレンツィア側近から「過激派がヴィルフリートの命を狙っている」という危険な情報が伝わっていた。ヴィルフリートが排除されれば、ローゼマインを次期アウブへ据えることが容易になるためである。

ローゼマインは、ヴィルフリートやジルヴェスターがライゼガングから秘密の課題を課されていると説明した。シャルロッテは、二人がライゼガングに騙されている可能性を疑い、何らかの圧力や条件によって従わされているのではないかと推測した。

ローゼマインは、自分がライゼガングの旗印になれる存在だからこそ、ジルヴェスターは自分を守るために苦労しているのだと理解していた。そして、養父を支えるために全力で協力する決意をシャルロッテへ伝えた。

新しい派閥構想とシャルロッテの視点

ローゼマインは、やる気のある若手を集めて世代交代を進め、ジルヴェスターとヴィルフリートの新たな支持基盤を作る構想をシャルロッテへ説明した。しかしシャルロッテは、それだけではライゼガングを抑えるには弱いと冷静に指摘した。

また、急激な改革は年配者だけでなく若者にも反発を招くと説明した。魔力圧縮法や旧ヴェローニカ派への対応でも、変化についていけない上級貴族達が不満を抱いていたのである。シャルロッテは、変化へ戸惑う者への配慮や手本を示すことが重要だと語った。

さらにシャルロッテは、最も穏便な方法として、ライゼガング系から第二夫人を迎える案を提示した。従来通りの形を示してライゼガングを安心させ、その間に世代交代を進める考えである。しかしフロレンツィアの懐妊によって、今すぐ第二夫人を迎えることは不可能になっていた。

ヴィルフリート側近とのすれ違い

ローゼマインはヴィルフリート側近とも話し合おうとしたが、まともな情報交換はできなかった。側近達は「ヴィルフリート様を婚約者として支えてほしい」と繰り返すばかりで、ライゼガングの課題についても何も語らなかったのである。

ローゼマインは、自分が潜在的な敵として扱われているのだと理解しつつも、婚約者として新しい派閥形成案をアウブへ提案するつもりだと告げた。そして、自分は神殿へ籠もるので、後はヴィルフリート達に任せるつもりでいた。

ジルヴェスターとボニファティウスとの面会

後日、ジルヴェスターが北の離れを訪れ、ボニファティウスも同席することになった。ローゼマインは、ボニファティウスを敵視する必要はないと考えていた。彼はライゼガングの側に立っているように見えても、本質的にはローゼマインを神殿から救い出したいだけだったからである。

場の空気を和らげながら、ローゼマインはまずメルヒオールの神殿入り準備について説明した。家具の使用許可、料理人の派遣、厨房整備など具体的な要望を伝え、グレッシェルのイタリアンレストラン展開も見据えた料理人教育の必要性を語った。

子供部屋の子供達の救済提案

続いてローゼマインは、子供部屋へ残された子供達を青色神官見習いとして神殿で預かりたいと提案した。教育不足を補い、神殿の魔力不足も解消し、悪意ある貴族から子供達を守るためである。

ボニファティウスは、なぜそこまで罪人の子供へ配慮するのかと疑問を呈した。しかしローゼマインは、彼等自身は罪を犯しておらず、貴重な人材を潰す方が損失だと説明した。これは聖女的な慈悲ではなく、領主一族としての合理的判断だと明言したのである。

また、子供達を引き受ければフロレンツィアやシャルロッテの負担軽減にも繋がると説明し、ジルヴェスターも基本的には賛成姿勢を見せた。

ライゼガングの裏工作発覚

ローゼマインは、自分がライゼガング系側近達から情報を集めたことを明かし、ジルヴェスター達へ伝えた。ライゼガング内部では、領主一族へ亀裂を入れ、ヴィルフリートの課題さえ利用してローゼマインを次期アウブへ押し上げようとしている可能性が浮上したのである。

ジルヴェスターは、自分が課題を受け入れれば子供達へ手を出さないという約束だったはずだと激怒し、ボニファティウスも知らなかった様子だった。双方とも、ライゼガングから与えられていた情報が不完全だったのである。

ローゼマインは、ヴィルフリート側近達が自分を敵視していることも説明した。するとボニファティウスは、婚約者でありながらローゼマインを敵のように扱うことへ怒りを露わにした。

ジルヴェスターへの信頼

ボニファティウスは、なぜそこまでジルヴェスターを信用できるのかと尋ねた。ローゼマインは、本当に邪魔なら自分を排除できたはずなのに、それをせず面倒を抱え込んで守ってくれているからだと答えた。

面倒臭がりながらも、重要な場面ではきちんと守ってくれていると評価し、だからこそ自分も協力したいのだと語った。その言葉にジルヴェスターは深く心を動かされていた。

世代交代案の提示

ローゼマインは本題として、ライゼガングの総意へ対抗するための世代交代案を提示した。保守的な貴族には地方ギーベとして従来型の統治を任せ、変化に柔軟な若手や有能な者を派閥を問わず中央へ登用するという構想である。

ジルヴェスターはこれを面白がり、ギーベ候補に三年間の試験期間を設ける案を追加した。成果次第で正式任命する形にすれば、領民への無茶も防げると考えたのである。

ローゼマインはさらに、旧ヴェローニカ派という理由だけで有能な人材を排除するのは勿体ないと主張した。すでに罪を犯した者は処罰されており、これからは派閥ではなく能力で人材を登用すべきだと語った。

最後に、シャルロッテが提案した「第二夫人案」に触れると、ジルヴェスターは複雑そうな表情を浮かべていた。

ブリュンヒルデの提案

ブリュンヒルデによる第二夫人志願

静かに控えていたブリュンヒルデは、ジルヴェスターへ発言許可を求めた後、自らをアウブの第二夫人にしてほしいと申し出た。突然の発言に場は騒然となり、ローゼマインは混乱して取り乱した。

ジルヴェスターは冷静に対応したが、ローゼマインは深呼吸すらまともにできず、リーゼレータがフェルディナンドの録音魔術具入りシュミルを使って落ち着かせることになった。ようやく平静を取り戻した後、ローゼマイン達は改めてブリュンヒルデの説明を聞くことになる。

独断による進言と第二夫人案の理由

ブリュンヒルデは、この話をローゼマインや父ギーベ・グレッシェルへ相談していないと説明した。事前に根回しすれば、ライゼガング系貴族による正式な圧力と見なされ、今のジルヴェスターには断れなくなるため、自分の独断という形でしか提案できなかったのである。

さらに彼女は、ローゼマインとヴィルフリートの婚約が領地のために決められたように、アウブ自身も領地を治めるために必要な第二夫人を選ぶべきだと主張した。息子達へ問題を押し付けず、自ら決断しろという意味でもあった。

ブリュンヒルデによれば、ライゼガング系貴族は、上位領地との婚姻を重視する領主一族へ強い不安を抱いていた。ライゼガング出身の第二夫人を迎えれば、従来通りアウブとライゼガングの結び付きが維持されると安心できるのである。

ジルヴェスターの窮状

ブリュンヒルデはさらに、ジルヴェスターが粛清によって多数の側近を失い、フロレンツィアと側近を共有しなければならないほど困窮している状況を指摘した。ローゼマインへフロレンツィア補佐を求めた背景には、人材不足もあったのではないかと見抜いていた。

また、ライゼガングとの交渉窓口をボニファティウスへ頼らざるを得ないほど、現在のアウブには支持基盤が不足しているとも分析した。フロレンツィアの妊娠によって今すぐ第二夫人を迎えることは難しいが、自分は未成年であるため、婚約から正式な星結びまでは二年の猶予があると説明する。

そのため、今の段階で婚約を発表するだけでもライゼガングを安心させる効果があり、同時に他領からの縁談も断りやすくなると提案した。

ブリュンヒルデの狙い

ブリュンヒルデは、自分が第二夫人となれば、フロレンツィアと対立するのではなく協力者として動けると語った。ローゼマインの代わりに領内社交を担い、シャルロッテと協力しながら上位領地との社交経験を持つ側仕え達を育成できるという。

さらに、若い旧ヴェローニカ派の登用を進めやすくなり、遠ざけざるを得なかった側近達を戻す環境作りにも繋がると説明した。ジルヴェスターは、その観察力と視野の広さへ感心していた。

しかしローゼマインは、優秀なブリュンヒルデが愛情の薄い結婚をすることへ強く反対した。ジルヴェスターがフロレンツィアを深く愛しており、第二夫人へ十分な愛情を向けられるとは思えなかったのである。

それに対しブリュンヒルデは、ローゼマイン自身も愛情ではなく、図書館と印刷業のためにヴィルフリートとの婚約を受け入れたのではないかと指摘した。ローゼマインは反論に窮しつつも、ブリュンヒルデへの冷遇だけは心配していた。

第二夫人承認

ブリュンヒルデは、自分は犠牲として第二夫人になるのではなく、エーレンフェストを支え、自らの能力を最大限活かすためにこの立場を望んでいると語った。その姿は野心と覚悟に満ちていた。

ボニファティウスは、その心意気を気に入り、第二夫人として認めると即座に宣言した。ローゼマインは複雑な感情を抱えながらも、ブリュンヒルデの決意を尊重するしかなかった。

その後、ジルヴェスターは正式にギーベ・グレッシェルへ面会を申し込み、春を寿ぐ宴で婚約発表を行う方針を決定した。ブリュンヒルデは勝利を得たような笑みを浮かべ、その手を取った。

ゲルラッハからの急報

その最中、ゲルラッハ調査隊からオルドナンツが届いた。調査中にギーベ・ゲルラッハの息子が「父は生きている可能性がある」と口にしたのである。

ボニファティウスは即座に現地へ向かう決断を下し、ジルヴェスターはライゼガング対策に専念するため城へ残ることになった。ローゼマインはマティアス達を心配したが、ジルヴェスターは「フェルディナンドはもういない」と釘を刺し、無茶をしないよう忠告した。

リヒャルダの離脱

その後、リヒャルダはジルヴェスターの元へ戻りたいと願い出た。現在のローゼマイン側近は人数も安定している一方で、領主夫妻側は粛清によって深刻な人材不足に陥っていたためである。

また、ブリュンヒルデが第二夫人となる以上、フロレンツィアとの間を調整できる存在が必要だとも説明した。ローゼマインは寂しさを覚えながらも、今はジルヴェスター達を支える方が優先だと理解し、リヒャルダを送り出す決断を下した。

筆頭側仕えはオティーリエへ引き継がれ、ローゼマインは最後の命令として、リヒャルダへジルヴェスターを支え、本館の調整を行うよう託した。リヒャルダは深く頭を下げ、その役目を受け入れた。

周囲の変化と春を寿ぐ宴

ライゼガングとの交渉開始

リヒャルダがジルヴェスター側へ戻った影響もあってか、ジルヴェスターはすぐにライゼガング系貴族への働きかけを始めた。ブリュンヒルデは実家へ呼び戻され、コルネリウスやランプレヒトも事情聴取のためエルヴィーラへ呼び出されるなど、周囲は慌ただしく動き始める。

一方、北の離れから出られないローゼマインは比較的自由な時間を得て、ハンネローレから借りた神話本を読んで過ごしていた。聖典には載っていない神々の逸話を楽しみながら、各地で集めた神話との共通点を見つけて考察していた。

ゲルラッハ調査とボニファティウスの活躍

その頃、ゲルラッハ調査へ向かったマティアス達からは、ボニファティウスの勘によって調査が進展しているというオルドナンツが何度も届いていた。ローゼマインが軽く褒め返した結果、今度は頻繁に活躍報告が飛んでくるようになり、読書の邪魔になるほどだった。

ハルトムートはそれらの報告を通じて、ライゼガング側の情報や北の離れの現状もジルヴェスターへ伝えていた。また、記憶確認で問題のなかった青色神官を神殿へ戻してもらう交渉も行っており、ローゼマインは特に仕事に慣れ始めたフリタークの復帰を強く望んでいた。

第二夫人迎え入れの正式発表

数日後、夕食の席でジルヴェスターは正式にブリュンヒルデを第二夫人へ迎えると宣言した。既にギーベ・グレッシェルから了承を得ており、ライゼガング系貴族からも支持を集め始めているという。

ヴィルフリートは、ブリュンヒルデがローゼマインの側仕えだったことへ複雑そうな反応を見せたが、ジルヴェスターはライゼガングへ自ら歩み寄る姿勢を示す必要があったと説明した。さらに、年頃のライゼガング系女性が少なく、婚約済みの者も多いため、ブリュンヒルデが最適だったと補足する。

フロレンツィアは穏やかにブリュンヒルデを歓迎し、ローゼマインの代わりに女性貴族との社交を支えてくれることへ感謝を示した。シャルロッテも、ギーベ・グレッシェルの娘として非常に良い縁談だと祝福したが、ヴィルフリートだけは最後まで複雑そうな表情を崩さなかった。

春を寿ぐ宴の開始

春を寿ぐ宴当日、ローゼマイン達はジルヴェスターの指示で会場近くの控室に待機していた。調査から戻ったマティアス達も合流したが、マティアスは厳しい表情を浮かべており、ギーベ・ゲルラッハ生存の可能性がかなり高いことが暗に示されていた。

大広間では、ライゼガング系貴族達が非常に機嫌良さそうに振る舞っていた。その中心にいるのが、春らしい衣装をまとい、堂々と貴族達へ対応するブリュンヒルデである。エルヴィーラとベルティルデもその傍に控え、次期第二夫人としての姿を支えていた。

一方で、旧ヴェローニカ派の軽処分組と思われる貴族達は沈痛な表情を浮かべていた。ヴィルフリートも、連座によって側近を失った苦しさを口にし、筆頭側仕えだったオズヴァルトが辞任したことを明かす。

ローゼマインは、今後はライゼガング系と協調しながら、無実で有能な旧ヴェローニカ派を再登用していく必要があると語った。しかしヴィルフリートは、ローゼマインがまるで他人事のようだと不満を漏らす。ローゼマイン自身は、神殿へ籠もり、これ以上出しゃばらないようにするつもりだった。

神事重視への転換とメルヒオールの神殿入り

宴ではまず貴族院成績優秀者の表彰が行われ、その後ジルヴェスターが今年の貴族院で起きた変化を説明した。王族が奉納式へ参加したことや、御加護再取得の流れが中央で始まりつつあることが語られると、会場は驚きに包まれた。

さらにジルヴェスターは、ローゼマインの後任としてメルヒオールを次期神殿長候補の青色神官見習いに任命し、三年間の引き継ぎ期間を設けると発表した。神事重視の流れもあって、ライゼガング系貴族達は好意的に受け止めていた。

また、人事改革として空位となったギーベへライゼガング系貴族を配置し、三年間の働きを見て正式任命する制度も発表された。同時に、軽処分で済んだ者や連座で離れた者については、能力次第で再登用する方針も示される。これによって旧ヴェローニカ派側には安堵が広がった。

ブリュンヒルデとの婚約成立

その後、ジルヴェスターはライゼガング系と協力して領地を治める証として、ブリュンヒルデを第二夫人へ迎えると正式発表した。会場からは歓迎の拍手が巻き起こる。

壇上へ上がったブリュンヒルデに対し、ジルヴェスターは彼女を「エーレンフェストを癒し支える水の女神フリュートレーネ」として迎えたいと語った。第二夫人がここまで高位の女神へ例えられることは異例であり、ブリュンヒルデへの高い評価が示された。

ブリュンヒルデもまた、自分はエーレンフェストのフリュートレーネとなろうと応じ、婚約魔石を交換した。こうして二人の婚約は正式に成立する。

ローゼマインは心から祝福しようとして、少し強めの祝福魔力を飛ばしてしまった。周囲の視線が集まる中、フィリーネやユーディットは「これくらいなら許容範囲」と慰めたが、ハルトムートは自分の星結びでも盛大な祝福を望むと語り、ローゼマインは不安を覚えていた。

神殿見学会

神殿見学会の開始

ローゼマイン達は、メルヒオールと子供部屋の子供達を連れて神殿見学会へ向かった。子供達には神殿での生活を実際に見せた上で、城と神殿のどちらで暮らすかを自分で選ばせる予定だった。現在子供部屋に残っているのは四人で、その中にはニコラウスも含まれていた。

神殿へ到着すると、メルヒオールは巨大なレッサーバスへ強い憧れを示した。しかし側近達から、アウブの子である以上は獅子型騎獣にすべきだとやんわり諭される。

出迎えたハルトムートは、安全面を考慮し、見学先を神殿長室ではなく神官長室へ変更したと説明した。ローゼマインは神殿長衣装へ着替えるため神殿長室へ戻り、久し振りの神殿へ安堵を覚える。

神殿への帰還と成長実感

神殿ではフランやモニカ達が変わらぬ様子で迎えてくれた。ローゼマインは、城で張り詰めていた気持ちが神殿では自然と緩むことを実感する。

モニカに神殿長衣装を着付けてもらう中で、ローゼマインは衣装の裾が以前より短くなっていることに気付き、自分の身体が成長していることへ驚きと喜びを覚えた。ユレーヴェや魔力圧縮の変化が影響しているのではないかと考える。

神官長室での歓迎

神官長室では、ニコラ達がパルゥケーキを準備していた。久し振りの懐かしい香りに、ローゼマインは強い郷愁を覚える。

メルヒオールの側近達は、神殿の灰色神官達の働きぶりを注意深く観察していた。ローゼマインとハルトムートは、彼等がフェルディナンドによって徹底的に教育された優秀な側仕えであることを説明し、その能力へ理解を促した。

また、ハルトムートはメルヒオールへフェルディナンドの元側仕えであるロータルを付ける予定だと説明し、その他の側仕えは孤児院から選ぶ方針を示した。

子供達への配慮

ローゼマインは、神殿で暮らす場合は自分で側仕えを選べると子供達へ説明した。監視役としてではなく、長く共に暮らす相手だからこそ、自分で選ぶことが大切だと考えていたのである。

子供達は、自分達にも選択権があることに驚きつつ、少しずつ表情を明るくしていった。特にニコラウスは、ローゼマインが異母姉として自分を認識してくれていたことに安心していた。

しかしコルネリウスは、ローゼマインが情に流されてニコラウスまで側近へ取り込みかねないと強く警戒していた。

神殿の居室案内

ローゼマイン達は神殿内の居室を案内した。メルヒオールには、執務人数や護衛の出入りを考慮して神官長室近くの広い部屋が割り当てられる予定だった。

また、女の子達には女性用区域、中級貴族用の部屋なども紹介された。家具の持ち込みは可能だが、接収済みの財産についてはアウブの許可が必要だと説明される。

ローゼマインは、神殿で生活することになれば、孤児院で勉強しながら貴族としての洗礼式を目指せることも教えた。その話を聞いた子供達は、少しずつ未来への希望を持ち始める。

神殿生活への希望

孤児院へ向かう途中、一人の女の子が「神殿で暮らしたい」と希望を口にした。勉強ができ、貴族院を目指せる環境へ魅力を感じたのである。

それをきっかけに、他の子供達も神殿生活への関心を示し始めた。ニコラウスも神殿で暮らしたいと望んだが、コルネリウスはトルデリーデが反対するだろうと難色を示す。

ローゼマインは、今のニコラウスに必要なのは親の都合ではなく本人の意思を尊重することだと主張し、神殿にいる間だけでも本人を見て判断してほしいと訴えた。

孤児院の現状

孤児院へ到着すると、ヴィルマ、ギル、フリッツを中心に灰色神官達が整列して迎えた。洗礼前の子供達も増えており、粛清による影響の大きさが改めて実感される。

ハルトムートは、メルヒオール達に側仕え選びを始めさせた。青色神官へ仕えた経験があり、孤児院へ戻されても不満を見せず真面目に働いていた者達が優先的に選別される。

フィリーネやダームエルは、ハルトムートが日頃から孤児院の状況や灰色神官達を細かく観察し、厳しい基準で評価していることを説明した。

孤児院の子供達との交流

ローゼマインは、冬の間に増えた洗礼前の子供達とも交流した。ラウレンツは異母弟ベルトラムと再会し、弟が無事だったことを喜ぶ。

また、ローゼマインは子供達へ、秋にアウブが再度面会を行い、貴族として扱うかどうかを決めると説明した。そのため、孤児院で努力を続けるよう励ます。

孤児院にはフェシュピールや本棚も整備されており、貴族院教育を見据えた環境が整っていた。マティアス達は、その充実ぶりへ驚きを隠せなかった。

孤児院経験の価値

ベルトラムは、孤児院生活は貴族として役に立たないのではないかと疑問を口にした。床掃除、水汲み、自分で衣装を整える生活は、貴族らしくないと考えたのである。

しかしローゼマインは、孤児院生活には商人との交流、工房運営、下町文化との接触など、普通の貴族には得られない経験が詰まっていると説明した。それを活かせるかどうかは本人次第だと語る。

さらに、森へ向かう途中で商人達の本音を聞けること、商人との交渉経験が将来の文官として大きな武器になることも教えた。これにより、子供達だけでなく側近達まで神殿生活への見方を変え始める。

魔石実演と価値観の転換

ローゼマインは最後に、自分だけの特技として、騎獣用魔石を砕いて再び丸める実演を行った。常識ではあり得ない光景に、貴族達は騒然となる。

ローゼマインは、土遊びの経験から「砕けても魔力で柔らかくすれば戻せる」と発想できたのだと説明した。そして、どんな経験も活かし方次第で力になるのだと語る。

その言葉に、ベルトラムやメルヒオールは強く感化され、神殿での様々な経験へ前向きな姿勢を見せ始めた。

ハルトムートの暴走

見学会の最後、ハルトムートは祈りの言葉を唱えた。しかし最高神や大神達へ続けて、自然な流れで「エーレンフェストの聖女ローゼマイン様」への祈りまで混ぜ込んでいた。

周囲が微妙に引いている中、ローゼマインだけが引きつった笑みを浮かべ、問い詰めたい気持ちを必死に押し殺しながら孤児院を後にすることになった。

儀式の準備

祈念式の人材不足

神殿見学会を終えて城へ戻ったローゼマインは、夕食の席でジルヴェスターへ見学会の報告を行い、家具搬入や予算について相談した。大半は問題なく許可されたが、最大の課題として祈念式へ向かう人材不足が挙げられた。

フェルディナンド不在に加え、粛清で青色神官が減少したため、祈念式の負担は極めて重くなっていた。本来なら参加予定だったメルヒオールも、魔力供給の練習不足から今年は参加できない。

メルヒオールは来年こそ参加したいと悔しさを見せたが、今年はどうにもならなかった。ローゼマインは神殿での奉納を通して練習できると説明し、来年への希望を示した。

祈念式の新たな分担案

ローゼマインは、側近達を分散して派遣できれば人数問題は解決すると説明した。しかし成人済み側近の多くは護衛騎士であり、護衛を減らす危険は許されないため難航していた。

そこでヴィルフリートが、ギーベ領への小聖杯運搬を自分とシャルロッテで担当し、ローゼマインとハルトムートが直轄地で神事を行う案を提案した。ライゼガング系貴族へ、自分達も神事に積極的に関わっている姿を見せる狙いもあった。

ローゼマインは、効率ばかり重視していた結果、自分だけが神事を押し付けられているように周囲へ映っていたことへ初めて気付かされる。シャルロッテも賛同し、領主候補生達が各地を回る新体制が決定した。

ヴィルフリートは南方とグレッシェルを重点的に回り、新任ギーベ達と関係構築を進めることになった。一方ローゼマインは、キルンベルガへの印刷業関係者同行も兼ねて、直轄地を担当する。

御加護再取得への期待

ヴィルフリートは、神事によって成人後でも御加護を再取得できる可能性を早く実証してほしいとローゼマインへ依頼した。同行する側近達を説得する材料が必要だったのである。

ローゼマインは、ヴィルフリートとシャルロッテへ護身用のお守りを作ることを提案した。するとシャルロッテが、メルヒオールだけ除外すれば拗ねると指摘し、結局三人分のお守りを作ることになる。

フェルディナンドからの書簡

その後、ジルヴェスターはフェルディナンドから届いた書簡について説明した。アーレンスバッハへ送る私物準備の依頼に加え、フェルディナンド自身がアーレンスバッハで祈念式を行うことになったという。

アーレンスバッハでは次期アウブによる礎の染め直しが始まっている可能性があり、フェルディナンドは礎へ直接魔力供給できない代わりに神事を担当させられるらしい。

さらに、ディートリンデがレティーツィアへ無理に魔力供給をさせようとしていたため、フェルディナンドはレティーツィアを同行させ、自ら祈念式を通じて魔力操作を教えることになった。

ローゼマイン達は、練習不足の子供へ魔力供給を強要する危険性を案じた。また、フェルディナンドの「優しさ入り回復薬」が嫌がらせと受け取られかねないことを伝えるべきではないかとローゼマインは真剣に心配していた。

ゲオルギーネへの警戒

ローゼマインは、粛清結果をフェルディナンドへ知らせたのか確認した。マティアス達の調査では、ギーベ・ゲルラッハ生存の可能性が高まっていたからである。

ジルヴェスターは、秘密連絡手段を用いて必要な情報を送ったと明かした。フェルディナンドもゲオルギーネ周辺を調べると返答していた。

図書館での準備

翌日、ローゼマインは御加護儀式の準備とフェルディナンドへの荷物整理のため、自身の図書館へ向かった。館へ到着したローゼマインは、「わたしの図書館」という響きに強い幸福感を覚えていた。

館では側仕えラザファムが出迎え、フェルディナンドの荷物整理を進める。ローゼマインは工房の探索を側近達へ任せ、自身は隠し部屋へ向かった。

録音魔術具の内容

隠し部屋でローゼマインは、フェルディナンドから預かっていた録音魔術具を再生した。フェルディナンドは、ゲオルギーネ周辺の不穏な動きや、粛清残党流入の可能性について警告する。

また、ライゼガング抑制に必要な情報を自身の書類箱へ残していることも伝え、必要ならジルヴェスターへ渡すよう指示した。

しかしローゼマインは、褒め言葉を期待していたため、注意事項ばかり続く内容に肩を落とす。

平民用お守りの作成法

続いてフェルディナンドは、他領から狙われる危険が高まっていることを指摘し、平民達を守る必要性を説いた。特に印刷業や髪飾り事業の中心人物達は危険だと分析する。

その上で、平民でも持てるお守りの作成方法を説明した。魔力を持たない者向けに、貴族用とは異なる素材と構造が必要らしく、ローゼマインは慌ててメモを取る。

フェルディナンドは、神殿へ呼び出す理由付けにも使えること、さらに成人祝いとして贈る形にも適していることまで考えていた。ローゼマインは、それがトゥーリへの贈り物を意識した遠回しな配慮だと気付く。

褒め言葉

注意事項ばかりで終わるのかと思われた直後、フェルディナンドは長い沈黙の末に「君はよく頑張っていると思う」「大変結構」と短く褒め言葉を口にした。

その言葉だけで、ローゼマインはこれまでの努力が報われたような気持ちになる。嬉しさを噛み締めたローゼマインは、また褒めてもらえるよう努力しようと決意し、元気を取り戻して工房へ向かった。

御加護の再取得

御加護再取得の準備

ローゼマインは工房で平民用のお守り作りに励んでいた。下町の家族やグーテンベルク達へ配る分に加え、ギルド長や商会関係者にも渡す必要があり、大量生産になっていたのである。

翌日に控えた御加護再取得の儀式に向け、神殿への荷物搬入も進められた。既に再取得を終えているレオノーレやリーゼレータは不参加を表明し、ユーディットも祈り不足を理由に見送ることを決める。

一方で、名捧げ組には強制参加が決定していた。ローデリヒの全属性化が名捧げの影響ではないかと推測されていたため、その検証を兼ねていたのである。

また、ローゼマインはエルヴィーラへ連絡し、名捧げの主変更による属性変化も調査することにした。エルヴィーラは新しい菓子レシピを条件に神殿訪問を了承する。

礼拝室での儀式準備

当日、礼拝室ではハルトムート達が貴族院と同じ形式で祭壇や魔法陣の準備を整えていた。魔法陣は刺繍ではなくインク描きであり、フェルディナンドが作成したものだった。

ローゼマインは、まずアンゲリカを実験台として儀式を行わせると説明した。魔法陣が正常に動作するか、一属性ずつでも御加護を得られるかを検証する必要があったのである。

また、ハルトムートを優先的に儀式へ参加させる方針も示された。神官長代理としての執務負担が大きいため、早く仕事へ戻す必要があったからである。

アンゲリカの失敗

アンゲリカは魔法陣の中央で祈りを始めた。しかし彼女は、自分が欲しい御加護だけを狙い、武勇の神アングリーフと疾風の女神シュタイフェリーゼのみを呼んで儀式を省略してしまう。

結果、光の柱は途中で消滅し、儀式は失敗した。神々の名を全て唱える正式手順を守らなければならないことが判明する。

シュティンルークによる補助

続いてアンゲリカは、シュティンルークの読み上げを復唱する形で再挑戦した。フェルディナンドの人格が反映されたシュティンルークは、実験だから協力すると渋々了承する。

今度は儀式が正常に進行し、アングリーフとシュタイフェリーゼの御加護を獲得した。風の大神シュツェーリアの御加護も得られたことが確認される。

アンゲリカは、早く訓練場へ行って強化された力を試したいと大喜びしていた。ボニファティウスへ自慢するようローゼマインに言われると、勢いよく飛び出していく。

ハルトムートの御加護

次に儀式を終えたハルトムートは、適性属性から秩序の女神ゲボルトヌーン、育成の神アーンヴァックス、飛信の女神オルドシュネーリの御加護を得たと報告した。

さらに適性外から長寿の神ダオアレーベンと夢の神シュラートラウムの御加護を得て、新たに命属性も獲得する。神殿で神事に参加してきた成果が現れていた。

ハルトムートは、今後も神殿で祈り続ければヴィルフリートを追い抜けるかもしれないと嬉しそうに語っていた。

ハルトムートへの叱責

工房では、ハルトムートがお守りを要求したため、ローゼマインは条件として「聖女ローゼマイン様」入りの改変祈祷文を止めるよう命じた。

ハルトムートは、領主一族への感謝を子供達へ教える必要性を主張したが、グレーティアからも「祈りの改変は将来のためにならない」と指摘され、最終的に了承する。

ローゼマインは、危うくハルトムートの理屈へ流されかけたものの、グレーティアの助言によって正気を取り戻していた。

コルネリウスの成果

コルネリウスは、武勇の神アングリーフ、疾風の女神シュタイフェリーゼ、さらに退魔の神フェアドレーオスの御加護を得て、新たに闇属性を獲得した。

婚約者レオノーレと同じ御加護を得られたことに安堵しており、ローゼマインにからかわれると照れ隠しに頬をつねって去っていく。

名捧げ組の変化

マティアスは、儀式開始時点で全属性の光柱が立ったと報告した。名捧げによって全属性化していることがほぼ確定となる。

さらにアングリーフとフェアドレーオスの御加護も獲得していた。名捧げによる属性追加は調合成功率向上など、小さな恩恵も与えているらしい。

ラウレンツも同じく全属性化し、アングリーフとフェアドレーオスの御加護を得る。神殿育ちの弟達が少しでも生きやすくなるかもしれないと語っていた。

ミュリエラは全属性化に加え、芽吹きの女神ブルーアンファの御加護を獲得する。恋物語好きの彼女らしい結果だった。

ボニファティウス来訪

その頃、レオノーレからの連絡を受けたボニファティウスが、エルヴィーラと共に神殿へ現れた。アンゲリカの変化を聞きつけ、御加護再取得へ興味を抱いたのである。

ローゼマインは、神殿が以前ほど不快な場所ではないことを示しつつ、今後神殿へ入る子供達の教育をボニファティウスへ頼み込んだ。ニコラウスの騎士志望も後押しする。

また、アンゲリカが以前より速く強くなっていたこともボニファティウス自身が認めていた。

ボニファティウス達の意識変化

ローゼマインは、ボニファティウスとエルヴィーラへも御加護再取得を勧めた。しかし二人とも、祈りの言葉や神々の名を既に忘れているため、まず復習が必要だと答える。

それでも、神事によって御加護が増える事実には強い興味を示しており、神殿への忌避感も薄れ始めていた。

ダームエルの結果

最後にダームエルは、縁結びの女神リーベスクヒルフェの御加護を得て、新たに光属性を獲得した。さらに時の女神ドレッファングーアと別れの女神ユーゲライゼの御加護も得ていた。

ブリギッテとの結婚を願って必死に祈った結果だったが、同時に別れの女神からも御加護を得てしまったため、本人は「結婚は絶望的ですね」と深く落ち込んでいた。

クラリッサの来襲

下町商人との会合準備

ローゼマインは、下町商人達との会合に向けて平民用のお守りやレシピを準備していた。オトマール商会とはイルゼとフーゴの新レシピ交換も予定されており、ローゼマインは新しい料理への期待に胸を弾ませていた。

そこへ珍しく困惑した様子のハルトムートが現れ、クラリッサがダンケルフェルガーを出発したと報告する。クラリッサは婚約延期自体は受け入れたものの、婚約者として一刻も早くエーレンフェストへ移動し、ローゼマインの側近として働きたいと強く望んでいたのである。

本来なら領主会議後の正式移動予定だったが、アウブ・ダンケルフェルガーがフェルディナンドの件で責任を感じ、「少しでも早く支援になれば」と漏らした言葉をクラリッサが真に受け、女性騎士を連れて陸路で出発してしまったらしい。

クラリッサの両親も慌てて追いかけており、ダンケルフェルガー側からは謝罪と迎え要請が届いていた。ローゼマインは、善意が迷惑になっている典型だと頭を抱えながらも、受け入れ準備を進めるしかなかった。

商人達との再会

その後、会議室にはギルド長、ベンノ、オットー、トゥーリ、ルッツ達が集まった。久し振りに下町の面々が揃った光景に、ローゼマインは強い安心感を覚える。

ローゼマインはフェルディナンドから伝えられた危険性を説明し、平民用のお守りを配布した。ベンノ達も、慣れによる油断が出る時期だと認識しており、警戒を強める必要性を理解していた。

トゥーリやルッツは、本当にローゼマインが作ったのか半信半疑の視線を向けていたが、ローゼマインは平民生活に合わせて作動条件を調整したことを誇らしげに説明した。トゥーリが感心した表情を見せたことで、ローゼマインは満足げに胸を張る。

新しい孤児院教育計画

ローゼマインは、孤児院へ増えた子供達へ商人とのやり取りを学ばせたいと提案した。神殿長退任後も、商人と意思疎通できる文官を育てることが目的である。

ベンノは、その重要性を即座に理解し協力を約束した。また、ギルベルタ商会へは今後神殿への出入りを依頼し、新しい衣装や髪飾りの準備も頼む。オットーから成長を認められたローゼマインは、密かに喜んでいた。

メルヒオール達の参加

続いて、メルヒオール、ブリュンヒルデ、若手文官達が入室した。ローゼマインは、メルヒオールが将来の神殿長として神殿業務を引き継ぐ予定であると紹介する。

さらに、ブリュンヒルデがギーベ・グレッシェルの娘であり、グレッシェル改革を担う存在だと説明した。商人達は緊張しつつも、二人へ丁重に挨拶を行う。

グレッシェル改革の計画

会議では、まずグレッシェル改革について話し合われた。ローゼマインは、他領商人を受け入れられる都市へ作り変える計画を説明し、今年は交易枠を広げず、来年から本格運用する方針を示す。

オトマール商会にはイタリアンレストラン二号店の出店を提案した。フリーダは料理人や給仕の教育体制について質問し、神殿で新たな料理人見習いを育成する計画が共有される。

また、ベンノは内装や家具準備の時間不足を指摘したが、ブリュンヒルデは接収家具の活用や都市設計権限を説明し、商人達の負担軽減策を提示した。商人側は、自分達で店を設計できることに大きな魅力を感じていた。

ローゼマインは、以前は下町へ行ったことすらなかったブリュンヒルデが、今では平民商人達と直接交渉している姿に深い感動を覚えていた。

キルンベルガ派遣の調整

続いて印刷業関係の話題へ移る。ルッツは、妊娠中のハイディが今年はキルンベルガへ行けず、弟子へ任せたいと説明した。ローゼマインは即座に許可し、新素材を土産として持ち帰るよう勧める。

さらに、ザックも星結びを控えているため弟子派遣を希望していた。ヨハンについて尋ねると、工房の親方の孫娘との婚約が決まっており、二年後に結婚予定だと聞かされる。

ローゼマインは、インゴにも弟子を出すよう依頼し、グレッシェル宿泊施設や図書館本棚製作へ参加させる方針を示した。

ハッセ孤児院の話題

メルヒオールは、ハッセにも孤児院が存在することへ驚きを示した。ローゼマインは、ハッセでは住民との交流や農作業が多く、エーレンフェスト孤児院とは異なる良さがあると説明する。

祈念式見学を兼ねた訪問案も出され、メルヒオールは強い関心を示していた。職場見学の重要性について、トゥーリやルッツも賛同する。

カミルの見習い希望

その流れで、ルッツはプランタン商会見習い希望者の工房見学許可を求めた。木札を見たローゼマインは、そこに弟カミルの名前を発見して激しく動揺する。

ローゼマインの記憶の中では、まだ幼児だったカミルが、既に見習い先を探す年齢になっていたのである。必死に平静を装いながらも、内心では歓喜していた。

クラリッサ到着

その直後、ハルトムート宛てにオルドナンツが飛来する。送り主はクラリッサだった。

クラリッサは既にエーレンフェスト西門へ到着しており、許可証がないため門番に止められていた。ローゼマイン達は、朝に出発したはずのクラリッサが、既に街へ到達している事実へ騒然となる。

ローゼマインは、クラリッサへ門前待機を命じ、従わなければダンケルフェルガーへ送り返すと厳命した。そして、ダームエルとアンゲリカへ西門への急行を命じ、自分も商談終了後に向かう決意を固める。

クラリッサの取り扱い

クラリッサ到着後の対応

ローゼマインは、西門へダームエルとアンゲリカを向かわせた後、ハルトムートへアウブ・エーレンフェストへの連絡を命じた。クラリッサの突然の来訪は明らかな緊急事態だったが、ローゼマインは商人達との会議を優先し、予定通り進行すると決断する。

一部の文官は「ダンケルフェルガーの貴族対応を優先すべき」と主張したが、ローゼマインはグレッシェル改革には準備期間が不足しており、商人達の時間を無駄にできないと説明した。失敗して困るのは商人ではなく、アウブやギーベ・グレッシェルなのだと断言する。

ブリュンヒルデも、ローゼマイン達は商人へ融通しているのではなく、領地運営上必要な予定を優先しているだけだと補足した。領主会議や神事で今後さらに多忙になることを示し、文官達を納得させる。

商談継続と新商品の解禁

会議では、夏の改善点や売上目標などの話し合いが続けられた。フリーダ達は今年の目標達成へ強い意欲を見せていた。

その後、ローゼマインは大きな決定事項として、これまで領地内限定だった子供向け聖典絵本、カルタ、トランプなどの知育玩具を、他領向けにも販売可能にすると発表した。

これは、エーレンフェストだけが突出して目立たないよう、他領全体の学力を底上げする狙いがあった。ベンノは莫大な利益を確信し、肉食獣のような笑みを浮かべていた。

クラリッサが西門へ到着した経緯

商談終了後、ローゼマインはハルトムート達から詳細報告を受けた。クラリッサは、護衛騎士と二人だけでフレーベルタークとの境界門へ現れていた。

通常の花嫁行列とはあまりにも異なるため、フレーベルターク側は偽物を疑い、ダンケルフェルガーへ何度も確認を取る事態となる。しかし、正式な結婚許可と本人確認が成立していたため、通行を拒否できなかった。

さらにクラリッサ達は騎獣で全力移動を続け、監視役の騎士すら振り切りかけながらエーレンフェストへ到達する。エーレンフェスト側でも不審人物扱いされたが、領主間連絡によって情報自体は共有されていたため、最終的に西門で停止させる形となった。

ローゼマインは、皆が不審がっているにもかかわらず、そのまま突破して来たクラリッサへ半ば感心していた。

クラリッサ受け入れ決定

レーベレヒトは、ここでクラリッサを追い返せば、両領地のアウブや関係者全員の不名誉になると説明した。結果として、クラリッサが婚約者を助けるため駆け付けたという美談にまとめ、受け入れる方針が決定される。

クラリッサはハルトムートの実家へ住み、オティーリエと共に城へ通勤しながら、レーベレヒトの下で文官として働くことになった。さらにフィリーネも同時に城勤務へ移され、共に教育を受けることになる。

ローゼマインは、クラリッサが神殿に入れないことへ不満を抱くと予想し、三日に一度は図書館で報告を聞く機会を設けることにした。読書時間確保も兼ねていた。

西門での再会

その後、ローゼマインは図書館から西門へ向かった。そこにはアンゲリカ、ダームエル、クラリッサ達だけでなく、父ギュンターの姿もあった。

ローゼマインは感情を抑えながらも、許可証を持たない他領貴族を正しく止めた兵士達を高く評価した。特に西門の士長は責任問題になる可能性もあったため極度に緊張していたが、ローゼマインは褒美として大銀貨を渡し、アウブも兵士達を評価していると伝えて安心させる。

クラリッサへの叱責

その後、ローゼマインはクラリッサを図書館へ連行し、事情聴取を始めた。クラリッサは「ローゼマインの役に立ちたかった」と説明したが、ローゼマインは、連絡もなく飛び出し、側仕えも馬車も置き去りにした暴走ぶりを厳しく指摘する。

しかし、思い込むと周囲が見えなくなると言われてきたというクラリッサの反省を聞き、ローゼマイン自身も身に覚えがありすぎて強く叱れなくなっていた。

オティーリエとハルトムートも、祈念式準備や商談へ多大な迷惑がかかったことを説明し、クラリッサへ自覚を促した。クラリッサは、自分が役に立つどころか負担になっていたことを知り、顔色を失う。

神殿入り却下

クラリッサはなおも神殿入りを希望したが、ローゼマインは即座に却下した。必要なのは優秀な文官であり、青色巫女ではないと断言する。

さらに、フェルディナンドがアーレンスバッハで婚約者扱いされず神事へ駆り出されている現状を例に出し、今エーレンフェストが他領の娘を神殿へ入れれば悪評の材料になると説明した。

クラリッサは最終的に、ローゼマインの文官として城で働くことを受け入れる。そして、三日に一度図書館で会えると聞き、嬉しそうに返事をした。

最後にオティーリエが「クラリッサの荷物はいつ届くのでしょう」と呟いたが、その場の誰も答えられなかった。

メルヒオールと祈念式

神殿長としての多忙な日々

クラリッサとフィリーネが城で働き始め、マティアス達は再び騎士団調査へ協力することになった。ブリュンヒルデもグレッシェル改革と第二夫人準備で多忙を極めており、ローゼマインの側近達はそれぞれ忙しく動いていた。

ローゼマイン自身も、フェルディナンド不在によって神殿長執務の重さを痛感していた。これまで半分近くをフェルディナンドが担っていたため、貴族側との調整が極めて困難になっていたのである。ローゼマインは、無理だと理解しつつも「フェルディナンド様、カムバック」と心中で叫ぶほど疲弊していた。

カミル見学問題

ギルベルタ商会との衣装打ち合わせに際し、ローゼマインはカミルの工房見学許可を再度相談した。しかしハルトムートは、神殿へ貴族が増えた現状では、理不尽な扱いを受けた平民をローゼマインが冷静に調整できない危険性を指摘する。

ローゼマイン自身も、カミルが傷付けられた場合に領主一族として冷静に振る舞える自信が全くないと認めざるを得なかった。そのため、一度は見学許可を諦めようとする。

しかしハルトムートは、祈念式までなら比較的安全かもしれないと判断し、最終的に見学許可を押し切った。ローゼマインは嬉しさを覚える一方で、フェルディナンドなら止めていたはずの境界線を押し広げられているような感覚へ恐怖も覚えていた。

最終的に、カミルの見学は洗礼式後、プランタン商会が見習いとして連れて来る時に行う方針となった。ローゼマインは会える期待を抱きながらも、大切な弟を貴族社会へ深く近付けすぎないことに安堵していた。

ギルベルタ商会との再会

ギルベルタ商会との打ち合わせ当日、孤児院長室には女性だけが集められた。コリンナ、トゥーリ、そして母エーファの姿を見たローゼマインは、久し振りの再会に胸を熱くする。

しかし、母エーファはトゥーリ越しにしか言葉を交わせず、直接話すことはできなかった。貴族の前で平民が無作法とされる危険を避けるためであり、ローゼマインはその距離にもどかしさを覚えていた。

衣装や髪飾りの打ち合わせでは、成長によって裾丈や体型調整が必要になっていることが確認される。ローゼマインは、母エーファとコリンナへ平民用お守りを渡し、常に身に付けるよう頼んだ。

メルヒオールの神殿準備

祈念式が近付くと、メルヒオール用家具や神殿入りする子供達の家具搬入が始まった。側仕え達が慌ただしく部屋を整える中、ローゼマインはメルヒオールへ神具への魔力奉納を行わせ、少しずつ訓練を進めていく。

また、オトマール商会から派遣された料理人を神殿厨房で研修させ、メルヒオール用厨房の準備も整えた。

メルヒオールは祈念式同行を望んでいたが、宿泊準備や衣装問題があり難航していた。ヴィルフリートはローゼマインの青色儀式服を借りれば良いと提案したが、花柄衣装であることを知り、メルヒオールは微妙な顔をする。

しかしシャルロッテから「ローゼマイン姉上の儀式は勉強になる」と聞かされていたため、最終的に衣装を借りる決意を固めた。ローゼマインは、自分が褒められていたことへ大きな喜びを感じ、張り切って祈念式へ向かう気持ちを強めていた。

フリターク帰還と神殿維持

ローゼマインは騎士団からフリタークを引き取り、神殿へ戻した。処罰を免れたフリタークは、補助金、収穫祭収入、写本仕事などを組み合わせれば、自力でも生活できる見通しが立ったため、神殿で働く決意を固める。

今回の祈念式では、準備不足からフリタークは留守番役となり、神殿執務を担当することになった。また、フィリーネも「神殿業務が忙しい」という理由で城勤務から一時的に戻され、久し振りの写本仕事を楽しみにしていた。

一方クラリッサは、領主会議へ同行するため、ダンケルフェルガーとの交渉資料を猛烈な勢いで読み込んでいた。その熱量は周囲の若手文官達にも影響を与え、城全体の準備速度を押し上げていた。

ヴィルフリートの反抗期

フィリーネは、リヒャルダから聞いた話として、最近ジルヴェスターとヴィルフリートが激しく言い争っていることを伝えた。リヒャルダは「あの年頃にはよくあること」と語っていたが、かなり心配しているらしい。

ローゼマインは、麗乃時代の幼馴染達を思い出しながら、ヴィルフリートもいわゆる反抗期なのだろうと考えていた。

祈念式出発

祈念式当日、ローゼマインは兵士達や荷馬車を見送り、その後メルヒオール達と共にハッセへ向かった。同行したのはアンゲリカ、ダームエル、フラン達であり、コルネリウスには新居準備とヴィルフリート調査を命じて同行を禁じていた。

ハッセ到着後、ローゼマインは広場で祈念式を開始した。今回は神殿の大聖杯ではなく、自身のシュタープから作り出した聖杯を使用する。

聖杯へ魔力を注ぎ、水の女神フリュートレーネへの祈りを捧げると、金色に輝く魔力液が村長達の桶へ流れ込んだ。初めて見る光景に、平民だけでなく側近達まで驚愕していた。

メルヒオールは、自分も聖杯を作れるようになるのか不安を覚えたが、ローゼマインは、まず奉納と祈りを積み重ねることが大切だと教える。アンゲリカも神具生成に成功していることを示し、神事経験の重要性を語った。

ハッセ小神殿での教育

小神殿へ移動した後、ローゼマインは工房や畑を案内し、平民達の暮らしや農業をメルヒオールへ教えた。収穫量増加によって、昔のように幼い子供を捨てる必要がなくなっていることも説明する。

さらに、兵士達と同じ食堂を利用する理由について、下町や平民の声を聞くことが領主候補生には重要だと語った。ジルヴェスターも平民の意見を切り捨てず、治世へ活かせる懐の広さを持っていることを褒め、メルヒオールにもその姿勢を学んでほしいと伝える。

グーテンベルクの弟子達

兵士達とダームエルへの感謝

ローゼマインはメルヒオールを兵士達の席へ連れていき、次代の神殿長として兵士達と交流する重要性を説明した。兵士達は、ローゼマインとの対話によって領主一族や騎士団との連携が取りやすくなったと感謝を述べる。

さらにギュンターは、北門封鎖や西門騒動の際、ダームエルが真っ先に駆け付けてくれたことを語った。逃亡貴族への対応や他領貴族来訪時の混乱収拾で、ダームエルは下町兵士達にとって極めて頼もしい存在だったのである。

兵士達は揃って跪き、ダームエルへ感謝を捧げた。ローゼマインは、ダームエルがそこまで平民達から信頼されていたことへ驚きながらも誇らしく感じていた。

メルヒオールへのお守り

兵士達との交流を終えた後、メルヒオールは今日の経験が非常に勉強になったと感謝を述べる。ローゼマインは、その努力を認め、褒美としてお守りの魔術具を贈った。

さらにメルヒオールは、兵士達との話を父ジルヴェスターへ報告すると約束し、ローゼマインへ内容確認まで依頼する。ローゼマインは、弟の真面目さと成長ぶりへ感心しながら見送っていた。

ギュンターへのお守り

翌朝、ローゼマインは護衛兵士達へ出張手当を配りながら、ギュンターへこっそりお守り入りの袋を渡した。既にエーファとトゥーリも同じお守りを受け取っているため、使い方も理解できるだろうと考えていたのである。

短い会話を交わしながらギュンター達を見送ったローゼマインは、こうして父と向かい合って話せる時間へ深い喜びを感じていた。

キルンベルガ行きの準備

祈念式から神殿へ戻ったローゼマインは、体力回復の休養を二日で切り上げ、すぐにキルンベルガ行きの準備へ取り掛かった。以前なら移動だけで寝込んでいた自分が、今回は三回しか寝込まなかったことへ成長を実感している。

同行する側近達も集められた。側仕えはリーゼレータとグレーティア、文官はハルトムートとローデリヒ、護衛騎士はコルネリウス、レオノーレ、ユーディットである。さらに印刷関係の下級文官や、エルヴィーラの文官としてミュリエラも同行する。

一方、ダームエルとアンゲリカは祈念式で直轄地を回ったため今回は留守番となり、オティーリエとフィリーネはクラリッサ抑制役を任されていた。ローゼマインは、本当はハルトムートを神殿へ残したかったが、気付けば同行を押し切られていた。

ユーディットの事前調整

ユーディットは、キルンベルガ受け入れ準備について得意げに報告した。ライゼガングやグレッシェルでの苦労を参考にしながら、テオドール経由でギーベ・キルンベルガへ事前調整を行っていたのである。

特に、平民職人達が働きやすい環境整備を徹底させており、グーテンベルク達が失敗しないよう配慮していた。ローゼマインは、平民との橋渡し役になろうとしているユーディットを心から褒めた。

新しい弟子達の紹介

正面玄関では、ベンノを先頭にグーテンベルク達と新たな弟子達が並んでいた。ローゼマインは順番に紹介を受ける。

木工職人インゴの弟子ディモは、神殿工房で最初の印刷機を作った頃から働いていた職人だった。ローゼマインが当時の丁寧な仕事ぶりを覚えていたことで、インゴ達は驚きを隠せなかった。

ヨゼフの代わりとして同行するインク職人ホレスは、ハイディのような研究暴走型ではなく、堅実に仕事を進められる人材として選ばれていた。ローゼマインは、ハイディの妊娠を祝いながらも、その暴走ぶりに苦労するヨゼフへ同情していた。

鍛冶職人ザックの弟子セアドは、人懐っこい性格を買われ、頑固なヨハンと現地職人達の仲介役として選ばれていた。ザック自身は、本当は新しい発明に集中したいと本音を漏らしていた。

さらにヨハンは、弟子ダニロを正式に同行させた。ダニロは金属活字製作へ合格しており、今回から本格的に技術継承を担う立場となる。ヨハンも、弟子育成を考えながら行動するようになっていた。

ローゼマインは、職人達それぞれの成長や個性を楽しみながら見守っていた。

キルンベルガへの出発

最後にローゼマインは、貴族用と平民用それぞれのお守りを配布した。その後、巨大化したレッサーバスへ荷物を積み込み、キルンベルガへの出発準備が進められる。

初参加の弟子達はレッサーバスへ驚きつつも、既に噂を聞いていたため比較的落ち着いていた。しかし、飛び立った瞬間、高所恐怖症だったダニロが声にならない悲鳴を上げて暴れ出す。

ヨハンに頭を押さえ付けられ、「外を見るな」と言われながら耐えるダニロを見て、ローゼマインは小さな騒動を微笑ましく見守っていた。

キルンベルガの国境門

キルンベルガ到着

レッサーバスはキルンベルガの夏の館へ到着した。ギーベ・キルンベルガと印刷担当文官達が出迎え、フラン達神官組は離れへ、グーテンベルク達は下町へ案内される。

ギーベ・キルンベルガは、まず職人達の生活環境を確認できるよう配慮していた。ローゼマインは、その心遣いへ感謝を示す。

下町へ降りると、町は大きいにもかかわらず人が少なく、どこか空虚な雰囲気を漂わせていた。空き家も多く、必要ならいつでも住み替えられるほどだった。

キルンベルガの衰退理由

ローゼマインが人口減少の理由を尋ねると、ギーベ・キルンベルガは、かつてここが「アイゼンライヒ」という大領地だったと語り始めた。

キルンベルガにはかつて国境門が存在し、他国との交易で大いに栄えていた。しかし、その国境門は二百年以上前に閉ざされてしまったのである。

ローゼマインは、閉ざされた国境門という存在へ強く興味を抱き、印刷関係の話が終われば実際に案内してもらう約束を取り付けた。

国境門への案内

その後、ローゼマインはギーベに案内され、国境門へ向かった。キルンベルガでは国境門近くに貴族街があり、奥へ行くほど平民街になる特殊な町構造をしていた。これは昔、他国商人を迎えるための配置だったという。

国境門は、真珠層のような淡い虹色に輝く巨大な壁と門で構成されていた。ローゼマインは、その幻想的な光景に圧倒される。

さらに、境界門の奥には広大な砂の海が広がっていた。ローゼマインは、かつて交易していた隣国が滅びたのではないかと不安になるが、ギーベはそれを否定した。

国境門の仕組み

ギーベによれば、国境門とは「国と国を繋ぐ巨大な転移陣」であり、ツェントの許可がなければ通行できない仕組みだった。

国境門が開くと巨大な魔法陣が現れ、他国の者達はそこを通ってユルゲンシュミットへ転移してきたという。つまり、国境門は単なる門ではなく、転移施設だったのである。

ユーディットは、キルンベルガの騎士達が国境門を見たくて騎士を目指す者ばかりだと語った。自分も騎獣を得て初めて国境門を見た時、深く感動したらしい。

アイゼンライヒ反逆の真相

ローゼマインが、なぜ国境門が閉ざされたのかを尋ねると、ギーベ・キルンベルガはアイゼンライヒ反逆の歴史を語り始めた。

当時のアウブ・アイゼンライヒは、交易相手国ボースガイツに唆され、グルトリスハイトを持つツェントへ反逆を企てた。ボースガイツから大量の支援物資を受け取り、貴族院経由で中央侵攻準備を進めていたのである。

しかし、アウブの娘が父の計画を止められないと悟り、単身騎獣で中央へ向かってツェントへ密告した。怒ったツェントは国境門を閉鎖し、中央騎士団と共にアイゼンライヒを討伐する。

エーレンフェスト誕生

反逆後、アウブ・アイゼンライヒの娘だけは処刑を免れた。しかし、大領地アイゼンライヒは分割され、豊かな鉱山地帯も失い、中領地へ転落する。

その後も領地内では、ボースガイツの人々を帰国させるべきか否かで争いが続き、領地は混乱した。最終的にアウブは自ら統治不能を認め、ツェントへ助けを求める。

そこでツェントと共にやって来たのが初代アウブ・エーレンフェストだった。ツェントはグルトリスハイトを用いて礎を改め、領地名も「エーレンフェスト」へ変更したのである。

ローゼマインは、自分が学んだ歴史と現地に残る口伝の違いへ驚きながら、文献調査への強い意欲を見せていた。

グルトリスハイトの重要性

この話を聞き、ローゼマインは、グルトリスハイトなしではユルゲンシュミット統治は極めて困難なのだと痛感する。国境門の開閉、領地線引き、礎の変更など、国家運営の根幹がグルトリスハイト前提だったのである。

そのため、今のツェントであるトラオクヴァールがどれほど苦労しているかへ思いを馳せていた。

ギーベ・キルンベルガの本音

ギーベ・キルンベルガは、エーレンフェストのアウブに必要なのは「グルトリスハイトを持つツェントへ忠誠を尽くすこと」だと語った。

そのうえで、ライゼガングの支持を得ようと苦悩しているヴィルフリートより、王族から信頼され、領主夫妻の不足を埋める動きをしているローゼマインこそアウブに相応しいと考えていることを明かす。

しかしローゼマインは、自分は周囲の独走や事情に巻き込まれただけだと否定し、ヴィルフリートがライゼガングの支持を得ようとするのは当然だと擁護した。

さらに、「ここでギーベの願いに頷けば、自分こそ他者に流される領主候補生になる」と返し、アウブ就任意思を明確に否定する。ギーベも、それ以上は踏み込まなかった。

古文書の書き写し

館へ戻ったローゼマインは、キルンベルガに残る古文書を書き写し始めた。内容は年表やツェントへの報告書写しなどであり、ボースガイツ商人達の動向や、反逆前の不穏な交易増加なども記録されていた。

口伝や歴史授業では語られなかった具体的な記録を前に、ローゼマインは強い知的興奮を覚えていた。

神殿帰還と新生活準備

神殿へ戻ると、ザーム達は新たに神殿入りする青色見習い達の受け入れ準備を終えていた。家具や勉強道具、生活予定まで整えられており、フィリーネも教育内容へ助言していた。

ローゼマインは、これから神殿が賑やかになることを楽しみにしながら、子供達の移動準備を進める。

ヴィルフリートへの懸念

最後にローゼマインは、コルネリウスへヴィルフリートの様子を尋ねた。

コルネリウスによれば、ヴィルフリートはライゼガング問題、自尊心、次期アウブとしての義務感の板挟みで苦しんでいた。さらに祈念式では、ライゼガング系ギーベ達から次期アウブ問題で嫌味を受け続けていたらしい。

ローゼマインは、自分が同行して庇えば良かったかもしれないと考える。しかしコルネリウス達は、今のヴィルフリートへローゼマインが不用意に助言すると、余計に傷付ける可能性が高いと忠告した。

ローゼマインは、自分の言葉が今は素直に届かない状況なのだと理解し、「不必要に触らない」という注意を心に刻むのだった。

エピローグ

アレクシスの帰郷

ヴィルフリートの護衛騎士であるアレクシスは、祈念式後のキルンベルガへ向かっていた。任務内容は、ローゼマインと接触したギーベ・キルンベルガの様子を探り、可能なら協力を取り付けることである。

しかしアレクシスは、父であるギーベ・キルンベルガが簡単にヴィルフリート支持へ回るとは思っていなかった。最近のヴィルフリートの不安定な様子を知っているため、せめてローゼマインへの印象が悪いことを願うしかなく、その消極的な考えへ自分自身で嫌気が差していた。

キルンベルガ騎士達との再会

土砂降り寸前でキルンベルガへ到着したアレクシスは、昔から自分を知る騎士達に歓迎された。彼等は、成人したアレクシスを誇らしげに迎え入れる。

その中にはユーディットの父親もおり、娘の様子を尋ねてきた。アレクシスは、ユーディットが訓練へ真剣に取り組み、ボニファティウスからも高く評価されていることを伝える。父親は娘を褒められ、嬉しそうな反応を見せていた。

ギーベ・キルンベルガとの対面

執務室へ通されたアレクシスは、父ではなく「ギーベ」として対応するキルンベルガ当主と向き合う。そこには、貴族同士の緊張感が漂っていた。

アレクシスがヴィルフリートの命令でローゼマインの情報を探りに来たことを告げると、ギーベ・キルンベルガは、護衛騎士へ情報収集任務を与えねばならないほど領主一族が混乱しているのかと鋭く指摘した。

さらにギーベは、祈念式で接したローゼマインについて、自ら次期領主を望まず、ヴィルフリートを推していたと語る。アレクシスは、それを聞いてようやく安堵した。最近のヴィルフリートは、ローゼマインやライゼガング系貴族が自分を排除しようとしていると思い込み、不安定になっていたのである。

ローゼマイン評

ギーベ・キルンベルガは、ローゼマインを高く評価していた。

彼は、ローゼマインには他者の意見へ流されず、自分の考えを述べられる強さがあり、派閥を利用しても派閥に操られない資質があると分析する。さらに、本の普及、教育改革、神殿改革、平民地位向上など、将来の展望が明確であり、下の者が付いていきやすい領主像を持っていると語った。

アレクシスは、ローゼマインの突飛な発想や周囲を振り回す性格を問題視したが、ギーベは「それを調整するのが側近や配偶者の役目だ」と一蹴した。むしろ、側近達がしっかり機能しているからこそ、エーレンフェスト全体の成績向上へ繋がっていると評価していた。

ヴィルフリート側近達との乖離

アレクシスは、ヴィルフリートの筆頭側仕えオズヴァルトが「周囲を困らせないヴィルフリートこそ優秀」と語っていたことを説明した。

しかしギーベ・キルンベルガは、それは側近に都合が良いだけであり、領地のためになる素質ではないと断言する。領主に必要なのは、目標を定め、責任を負って進む意思だと語った。

アレクシスは、城の旧ヴェローニカ派側近達と外部貴族達との認識の乖離を改めて実感する。城の中では常識だった価値観が、外では全く通用していなかったのである。

ヴィルフリートの変化

アレクシスは、ヴィルフリートが粛清後から急激に変化したと語った。

以前のヴィルフリートは、ローゼマインと比較されながらも努力を重ね、優秀者となり、領主候補生として立派に振る舞っていた。しかし最近は、ローゼマインを目の敵にし、弟妹へ功績を譲れと要求するようになっていた。

その背景には、オズヴァルトの解任があるとアレクシスは推測する。ヴィルフリートにとって、領主夫妻よりも長年仕えていたオズヴァルトの方が心理的に近く、その喪失によって精神的な支柱を失った可能性があった。

さらに、旧ヴェローニカ派が減り、中立派やライゼガング系貴族が増えたことで、城の空気も大きく変化していた。ボニファティウスとの執務時間増加や、第二夫人問題もヴィルフリートへ強い負担となっている。

第二夫人問題への反発

ヴィルフリートは、ジルヴェスターがブリュンヒルデを第二夫人として迎えることへ強い反発を抱いていた。

彼は、ライゼガング系貴族の勢力がさらに強まることや、ローゼマイン側近が領主一族へ入ることを嫌がっていたのである。

ギーベ・キルンベルガは、その第二夫人嫌悪はヴェローニカ教育の影響だと分析した。ヴェローニカ自身が夫へ第二夫人を許さず、ジルヴェスターにも同様の価値観を植え付けていたのである。

ライゼガングへの誤解

ヴィルフリートは、祈念式でライゼガング系ギーベ達を回れば支持を得られると考えていた。しかし実際には、彼等から冷淡で慇懃無礼な対応を受け、大きな衝撃を受ける。

ライゼガング系貴族は、ローゼマインを支持しているのであって、婚約者であるヴィルフリートを支持しているわけではなかったのである。

失敗後のヴィルフリートは、責任をランプレヒトやローゼマインへ転嫁し始めた。名捧げ側近のバルトルト達もそれを慰め、周囲はますます歪んだ空気になっていた。

ギーベ・キルンベルガの叱責

アレクシスは、自分も側近を辞任してキルンベルガへ戻りたいと漏らした。

しかしギーベ・キルンベルガは、それは主が理想から外れたから逃げたいだけであり、ヴィルフリートと同じく「思い通りにならない現実から逃避している」と厳しく叱責する。

さらに、ヴィルフリートの周囲を細かく観察しろと命じた。名捧げ側近達が本当に忠誠心を持っているのか、旧側近達と裏で繋がっていないか、執務妨害がないか、ライゼガング系貴族への配慮不足はないかを調べるべきだと指摘する。

そして最後に、「主が道を外しているなら引き戻せ。それが側近の役目だ」と言い切った。もし本当に領主候補生失格なら、その証拠を集めてアウブへ廃嫡を進言してから戻って来いと命じる。

アレクシスの決意

父親の叱責によって、アレクシスは自分自身の中途半端さを痛感した。

そして、ヴィルフリートの変化や周囲の問題を本気で調べ、自分にできる限りの努力を尽くすことを決意する。

反省と羨望

シャルロッテの動揺

夕食の席で、ジルヴェスターがブリュンヒルデを第二夫人に迎えると発表した瞬間、シャルロッテは強い衝撃を受けた。自室へ戻った後も平静ではいられず、自分が以前「第二夫人を迎えるべきだ」と訴えたことが原因で、ブリュンヒルデへ重責を背負わせてしまったのではないかと苦悩する。

シャルロッテは、今回の婚約は領主一族ばかりが利益を得ており、ブリュンヒルデ側の利が少なすぎると感じていた。次期ギーベ候補だった彼女が突然その立場を失い、しかも寵愛も次期領主の母という立場も望めない第二夫人になることへ強い同情を抱いていたのである。

ブリュンヒルデとの対話

春を寿ぐ宴の後、シャルロッテは西の離れの下見へ来ていたブリュンヒルデを自室へ招き、直接話し合いの場を設けた。

シャルロッテは改めて謝罪し、未成年のブリュンヒルデへライゼガング系貴族のまとめ役という重責を押しつけたことを申し訳なく思っていると伝える。しかしブリュンヒルデは、年嵩の未亡人では逆に危険だったと語った。

彼女によれば、ライゼガング系貴族の年長者達はヴェローニカへの恨みが深く、第二夫人を中心に結束すれば、ローゼマインを次期領主へ押し上げ、現領主一族を排除しようと動く可能性すらあったのである。

そのため、ヴェローニカ時代を「昔のこと」として扱える若い世代であり、なおかつローゼマインの「次期領主になりたくない」という意志を尊重できる人物でなければならなかった。ブリュンヒルデは、自分の役目はライゼガング系貴族をまとめることではなく、危険なほど一枚岩にならないよう分裂させることだと説明する。

次期ギーベから外れた理由

シャルロッテが「本意ではないだろう」と問いかけると、ブリュンヒルデは盗聴防止の魔術具を使い、本当の事情を明かした。

ギーベ・グレッシェルの第二夫人が男児を出産したことで、ブリュンヒルデは次期ギーベ候補から外れたのである。跡継ぎ問題が不安定になり、彼女が婿を取れば将来争いの種になるため、立場を失ったも同然だった。

さらに、第一夫人である母親の立場悪化も予想されていた。そのため、領主の第二夫人という立場は、グレッシェルの代替わり後も母子を守れる有力な嫁ぎ先だったのである。

ブリュンヒルデは、自分の将来を前向きに捉えていた。次代ギーベへ意見できる領主第二夫人という立場は悪くなく、しかも「今まで振り回してきた父の上に立てる」と悪戯っぽく笑う余裕まで見せた。

ヴィルフリートへの不安

会話の中で、シャルロッテはヴィルフリートが第二夫人問題へ強く反発していたことを打ち明ける。彼は「ライゼガング系貴族をまとめるならローゼマインにやらせれば良い」と主張し、感情的に婚約へ反対していた。

ブリュンヒルデは、ダンケルフェルガーとのディッターでハンネローレを第二夫人にする条件を受け入れていたヴィルフリートが、第二夫人自体を否定するとは思わなかったと驚く。

そこでシャルロッテは、オズヴァルトが実は「辞任に見せかけた解任」だったことを明かした。オズヴァルトはヴェローニカ式のやり方を強く残そうとしていたため、フロレンツィアが危険視していたのである。

さらにシャルロッテは、最近のヴィルフリートの不自然な変化について、「側近が主を動かしている可能性」を疑い始めていた。以前のオズヴァルトは主に気付かれないよう暗躍していたが、今は露骨にヴィルフリートを煽っているように見えたのである。

ローゼマインを支える覚悟

ブリュンヒルデは、自分が第二夫人になる最大の理由を明かした。彼女はローゼマインの側近として、将来的にローゼマインが神殿長職を辞し、第一夫人として城へ移った時に動きやすい環境を整えたいと考えていたのである。

ローゼマインはライゼガング系貴族との従来型の社交に向いておらず、彼等の感情や望みへ共感できない部分がある。だからこそ、自分がライゼガング系貴族との調整役となり、ローゼマインの苦手分野を補いたいのだと語った。

さらに、エーレンフェストは今後、従来の下位領地型社交ではなく、ローゼマインが実践している王族・上位領地型の社交へ移行しなければならないとも指摘する。彼女は、その世代交代を進めたいと考えていた。

シャルロッテは、その強い意志と覚悟へ羨望を抱きながら、共にローゼマインを支えていくことを約束した。

シャルロッテの本心

しかし話し合いを終えた後も、シャルロッテの胸には重い感情が残っていた。

彼女は、自分が感じていた「羨ましさ」の正体へ気付く。ブリュンヒルデは次期ギーベの座を失っても、ローゼマインの側近として「進むべき道」が残っていた。一方、自分は将来的に他領へ嫁ぐ予定であり、エーレンフェストから離れなければならない。

つまりシャルロッテは、ローゼマインやブリュンヒルデ達と、これからもずっと一緒にエーレンフェストを支え続けたいと思っていたのである。

他領へ嫁ぐことは領主一族として当然の義務だと理解していた。しかし心の底では、それを嫌だと思っていたことを自覚し、シャルロッテは深く動揺した。

新たな目標

そんな中、側仕えヴァネッサとの会話によって、シャルロッテは「他領へ嫁いでもローゼマインの妹であることは変わらない」と気付かされる。

他領の第一夫人となれば、エーレンフェストを外側から支えることもできる。ローゼマインと協力できる領地へ嫁ぐ道もある。

その可能性を見出した瞬間、シャルロッテの中から敗北感や羨望は消えていった。彼女は、自分なりの立場でローゼマインを支える未来を、新たな目標として見据えるのだった。

西門での攻防

士長会議と厳戒態勢解除

季節ごとに行われる士長会議で、ギュンターは北門担当として貴族街の様子を報告していた。重罪人の処分が終わり、救援用魔術具も回収されたことで、冬の厳戒態勢を解除して良いという騎士団からの通達が共有される。さらに、冬の間遠ざけられていたローゼマインも神殿へ戻ったと聞き、ギュンターは安堵していた。

会議では、三年に一度の士長交代についても議論されていた。異動によって門番の連携が乱れることを避けるため、厳戒態勢中は交代を延期していたのである。

西門の緊急事態

その最中、西門担当の兵士が飛び込んできた。許可証を持たない他領貴族が街へ入ろうとしているという報告だった。

ギュンターは、かつて許可証関連の不備でマインを失いかけた過去や、灰色神官誘拐事件を思い出し、強い警戒心を抱く。許可証を持たない貴族は絶対に通してはならないと即座に判断した。

士長の許可で緊急魔術具が起動され、北門と西門双方から赤い光が上がる。騎士団への連絡が成功したことを確認すると、ギュンター達は西門へ駆け出した。

クラリッサとの遭遇

西門で騎士達と問答していたのは、ダンケルフェルガーから来た若い女性二人だった。彼女達は馬車ではなく騎獣で直接飛来しており、その時点でギュンターは強い違和感を覚える。

女性の一人は、自分が「ハルトムートの婚約者で、ローゼマインの側近であるクラリッサ」だと名乗った。しかし、許可証もなく押し入ろうとしている態度に、ギュンターは全く信用できなかった。

騎士達がアウブへの報告へ向かった後、西門での待機が決まると、ギュンターはクラリッサへ厳しく言い放つ。平民を重用するローゼマインの側近ならば、平民兵士へ武器を向けるような真似は主の評価を下げるだけだと非難したのである。

クラリッサ側の護衛騎士グリゼルダは激昂したが、クラリッサ自身はギュンターの言葉に一理あると認めた。ただし、自分が本当にローゼマインの側近であることも事実だと主張する。

オルドナンツによる確認

ギュンターは、本当に婚約者ならハルトムートへオルドナンツを送れば良いと提案した。神殿で顔を合わせているため、自分はハルトムートの声を知っていると断言する。

クラリッサが送ったオルドナンツに返ってきたのは、ハルトムートではなくローゼマイン本人からの返事だった。ギュンターは、娘の声を聞き間違えるはずがないと即座に理解する。

しかしローゼマインは、クラリッサへ「兵士の言葉に従って西門で待機しなさい。従えないなら即刻ダンケルフェルガーへ送り返します」と厳しく命じた。叱責されるとは思っていなかったクラリッサは困惑する。

ダームエル達の到着

そこへダームエルとアンゲリカが到着した。ローゼマインは、上位領地貴族の対応を平民兵士へ任せる負担を考え、二人を派遣していたのである。

兵士達は、親しみやすく平民へ傲慢さを見せないダームエルの登場へ歓声を上げた。神事などで普段から交流があるため、兵士達からの信頼は非常に厚かった。

クラリッサは、ローゼマインが迎えに来るまで待機すると素直に従う。その代わり、ダームエルへ「エーレンフェストでのローゼマインについて教えてほしい」と頼み込んだ。

ローゼマインの日常談

クラリッサは、ローゼマインの日常生活へ強い興味を示し、城と神殿での生活や起床時間などを次々に質問する。ダームエルは困惑しつつも、一つずつ説明を始めた。

ローゼマインは二の鐘起床だが、実際には早起きして寝台で読書をしていることが多く、朝一番の文官仕事は本の片付けだという話に、クラリッサは嬉しそうに反応する。

ギュンターもその会話へ聞き耳を立てていた。最近はトゥーリやルッツからもマインの話を聞けなくなっており、娘の日常を知れる貴重な機会になっていたのである。

ローゼマインの迎え

やがて許可証が発行され、ローゼマイン本人がハルトムート達と共に西門へ到着した。

ギュンターは、別れた頃の幼い姿とは違う、成長し貴族らしさを身につけた娘の姿へ胸を熱くする。ローゼマインは兵士達を順に見渡し、西門の士長へ「街を守ってくれた兵士達を労ってください」と大銀貨を渡した。

その後、ローゼマインはクラリッサ達を連れて速やかに立ち去る。兵士達は、ローゼマインから渡された金で酒場へ行こうと盛り上がっていた。

家族との晩酌

帰宅後、ギュンターはエーファへ今日の出来事を語る。ローゼマインがずいぶん成長し、厳めしい顔をするようになったことも嬉しそうに話していた。

一方カミルは、両親がローゼマインの話になると急に夢中になることへ呆れた様子を見せる。しかしギュンターは、プランタン商会へ入れば、いずれカミルもローゼマインと自然に関われる日が来るだろうと考えていた。

そしてギュンターは、娘との未来の再会を思い描きながら、杯を掲げてヴァントールへ感謝を捧げるのだった。

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本好きの下剋上 シリーズ 一覧

兵士の娘

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神殿の巫女見習い

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領主の養女

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貴族院の自称図書委

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女神の化身

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ハンネローレの貴族院五年生

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