どんな本?
『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』は、之貫紀 氏による日本のライトノベル。
この物語は、世界各地に「ダンジョン」が出現してから3年後の世界を描いている。
主人公の芳村は、元々は社畜として働いていたが、ある偶然からダンジョン探索者の世界ランキング1位になる。
彼は退職し、ダンジョンに潜ることを決意するが、手に入れた未知のスキルに振り回され、ダンジョン攻略の最前線に関わることになる。
この作品は、投稿小説サイト「小説家になろう」で2019年6月1日から投稿が開始され、その後KADOKAWAのエンターブレインレーベルより2020年2月から刊行されている。
また、『月刊コンプエース』で平未夜 氏の作画により漫画化され、連載が開始されている。
読んだ本のタイトル
Dジェネシス ダンジョンが出来て3年07
著者:之貫紀 氏
イラスト:ttl 氏
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あらすじ・内容
碑文に記された鉱物資源の採掘へいざ!……って、こんなドロップあり!?
ついにタイラー博士とダンジョンの本体と思しき存在に接触した
Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 07
芳村と三好のDパワーズ二人は、ダンジョンの目的を聞かされて頭を抱えていた。
そこへ、他探索者によってスキルオーブ〈マイニング〉が取得されたニュースが飛び込んでくる。
〈マイニング〉の使用規定への施行が間に合うか微妙な状況に焦る芳村たちは。
契約探索者として雇った三代絵里と、鉱物化学者の六条小麦を連れて碑文が記した
層へと向けて代々木ダンジョンに潜る。
そうしてたどり着いた21層で驚愕のドロップが!!
備忘録
タイラー博士の厚意か、代々木31層から1層へ瞬間移動して、地上に出た芳村、三好は横浜へ戻り。
自身が捕獲したクリーナーがどうなってるか確認。
クリーナーはキレイサッパリ消えていた。
あの騒動の形跡は何も無かった。
さらに、横浜の下層へ向かうと3層へ降りる事が出来なくなっていた。
以上の件を含め。
JDA(日本ダンジョン協会)の鳴瀬美晴にダンジョン(ダンつくちゃん)の目的やオーブに関する信じがたい情報を報告して、彼女の頭を悩ませ。
鳴瀬は、この重要な情報を斎賀課長に報告する。
斎賀との会話では、ダンジョンの管理やマイニングの使用制限に関する話が出て斎賀は誰にこの話を押し付けるか頭を抱える。
一方で、陸上自衛隊の君津伊織二尉は、謎の仮面の男による救出と「超回復」スキルについて考えていた。
彼女はこの事件の倫理的な側面や自身の将来について深く悩んでいる。
その後、話は三代と小麦の成長に向けた訓練に取り組む場面へと移る。
芳村たちは、代々木のダンジョンショップで探索に必要な装備を購入し、ダンジョンでのキャンプを計画。
その計画に沿って三代、小麦をパーティーに入れて、ダンジョンの10層に潜り、ペットの獲得やステータス向上に努める。
新メンバーはウストゥーラのアヌビス(話す、魔法を使う)、ガルム(噛む力がパナイ)、ライラプス(獲物を逃さない)、クー(小麦の元飼犬の黒ラブ)。
アルスルズとウストゥーラと索敵、防御陣がより強固になり。
三代も土魔法を獲得して、弓矢を土魔法で作れるようになった。
18層では、渋チーの喜屋武がナンパして来て召喚されたばかりで手加減をら知らないアヌビスの魔法で重傷を負ってしまうが、芳村が早急にポーションを使ったので事なきを得る。
その後キングサーモンこと、ランスが現れて彼を囲んでの新鮮な野菜、肉を使ったBBQを開催して親交を図る。
ついでに、ランスが以前ドロップした指輪を三好に鑑定してもらい。
指輪の効能を教えてもらい。
貸し1という事で終わる。
渋チーの喜屋武もBBQを奢ってもらった礼を言って去る。
その後、芳村たちは21層の探索に挑み、湿地と沼地の混在する地形で拠点を建築する。
彼らはこの層でダンジョン内の植物や生態系について探求し、オレンジの木を発見し実を収穫。
これが次巻の騒動の元になるとは、、
また、宝石の原石やパーティー内のアイテムの収集と分配についても触れて、探査者の常識を知る三代を閉口させる。
最後に、芳村の弟子を自称する斎藤涼子がオリンピック強化指定選手に選ばれる可能性があるニュースが出て。
彼女の成功は、ダンジョンブートキャンプでの特訓が功を奏した結果としてスポーツ業界に認識される。
ちなみに、最初のダンジョンブートキャンプで能力の上昇を実感したチームサイモンは、バックアップ要員達を全員参加させる事を決定している。
そんな中、最近伸び悩んでいる2人のマラソン選手をブートキャンプに入れた三好の策が次巻炸裂する。
感想
横浜で後片付けをした芳村と三好は、好奇心に負けて横浜の8層を目指すが、、
3層に降りれなくなっていた。
まるでゲームみたいに、、、
この条件をクリアする事は出来るのか?
それとも、最近の更新を見るに何もわからないままエタるのか?
お忙しい中、書いてるのだから待つしか無いか。。
長生きしないとな、、
そして遂に、鳴瀬に芳村がランキング1位のファントムだとバレた。
そんな彼女に芳村達は収納庫のスキルオーブを公開。
さらに横浜で出会ったタイラー博士の事を報告し。
ダンジョンを作った者デミウルゴス(ダンつくちゃん)は、人類に奉仕がしたいようだと考察を入れる。
それを知らされた鳴瀬は斎賀課長に報告するが、、
課長はこの先を誰に報告するか悩む。
間違っても、政治利用して現場に不利益を押し付ける例の常務には教えられない。
三好のアルスルズに加えて、六条小麦が召喚したモフモフ軍団ウストゥーラが新規加入した。
その中で隊長格のアヌビスは人語を話せるお陰で、アルスルズとウストゥーラの要望がよりわかりやすくなった。
昔飼っていて、亡くなった犬にそっくりな犬を召喚して自身の側に置くか、、、
自身が死なない限り死なないペット。
理想的じゃないか?
最後の最後でとんでもない事がニューヨークで起こる。
ベンゼドビームとハンマーすら要らないDカード取得方法が発見された。
ただダンジョン産の物を食べれば良いとは、、
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ダンジョン内の核実験
本作におけるダンジョン内の核実験は、横浜ダンジョンでのモンスター異常増殖危機に対処するという大義名分の裏で、アメリカの国防総省や国家安全保障会議(NSC)が極秘裏に検証しようとしていた国家戦略上の重要なテーマとして描かれている。本稿では、その結果と、そこから派生した両国政府の思惑について解説する。
横浜ダンジョンでの起爆結果と検知不能な核実験
・アメリカは横浜ダンジョン二層に超小型戦術核(W54)を設置し、実際に起爆させた。
・しかし事後の調査では、地震学、水中音波、微気圧振動、放射性核種のいずれの監視観測所でも一切の記録が検出されなかった。
・さらに、外部への一次放射線やフォールアウト(死の灰)、ダンジョン内の残留放射能も完全にゼロであった。
・設置されたはずの原爆やモンスター、現場にいた探索者すらも一切が消え失せ、現場はもぬけの殻になっていた。
・NSCのダルトン補佐官は、この事象に再現性があるならば、ダンジョン内で行われる核実験は誰にも検知できないという事実が証明されたと考えた。
膨大な放射性廃棄物のゴミ箱構想
・アメリカ政府(エネルギー省や環境保護庁など)にとって、この結果は狂喜するほどの価値を持っていた。
・アメリカは冷戦時代からハンフォード・サイトなどに膨大な放射能汚泥や核廃棄物を抱えており、その処理は長年の懸案であった。
・ダルトン補佐官らは、ダンジョン内で核爆発のエネルギーや放射性物質が完全に除去・吸収されるのであれば、アメリカ軍が直接管理しているダンジョンであるザ・リングを、これらの核廃棄物を安全に処分する巨大なゴミ箱として利用できるのではないかと画策し始めた。
転移の事実による計画の狂い
・しかし、この完璧に思えた計画に思わぬ懸念が浮上した。
・横浜ダンジョンの核爆発に巻き込まれて消滅したはずの自衛隊やDAD(サイモンチーム)が、離れた場所にある代々木ダンジョンで発見されたのである。
・この事実により、ダルトン補佐官は、とあるダンジョンで消えた何かが他のダンジョンから発見される可能性に気づいた。
・もしアメリカの関与が明白な放射性廃棄物をザ・リングに投棄した結果、それが世界中の別のダンジョンから突然あふれ出すようなことになれば、国際的かつ致命的な大問題になる。
・そのため、まずは少量で実験して検証せざるを得ないという逡巡を抱えることになった。
日本政府の視点
・一方、日本政府の井部総理も、事後の調査で放射線が一切検出されなかったという報告を受け、アメリカの裏の意図に考えを巡らせた。
・もしダンジョンに放射性物質を分解・除去する能力があるのなら、日本が抱える福島第一原発の処理やもんじゅの後始末といった深刻な放射性廃棄物問題が、いとも簡単に解決してしまうかもしれないという可能性に思い至ったのである。
・しかし井部総理は、大量の廃棄物をダンジョンに持ち込んだ場合どうなるか予測がつかないことから、いくら何でもそれはないかと頭を振ってその考えを追い出している。
まとめ
このように、横浜ダンジョンでの出来事は、単なるモンスター討伐の手段を超え、ダンジョンを用いた秘密裏の核実験と核廃棄物処理という、超大国の非情な国家戦略とそれに伴う新たなリスクを浮き彫りにする出来事として描かれている。
横浜ダンジョンの構造
本作における横浜ダンジョンの構造は、商業ビルの地下施設がベースとなっていることに起因する物理的な制約と、ダンジョン特有の不可思議な空間法則が入り交じった特殊なものとして描かれている。本稿では、その構造的な特徴について解説する。
商業ビル地下を利用した狭小空間と外開きの扉
・横浜ダンジョンは、商業ビルの地下駐車場などを利用した構造のため、空間が非常に狭いという特徴を持っている。
・各階層を繋ぐ階段側の扉は「外開き」の非破壊オブジェクトに設定されている。
・そのため、モンスターが異常増殖してフロアに溢れた場合、扉を内側に押し留めて封鎖することができず、容易に階段を逆流して地上へと押し出される(スタンピードを引き起こす)極めて危険な構造となっている。
建設途中の未完成な内装
・上層である二層までは比較的設備が整っているが、三層以降へ下りると常夜灯や「B3」といったフロアサイン(階層表示)が存在しない。
・床や壁も表面の粗いコンクリートがむき出しのままであり、寒々しい空間が広がっている。
・これは、ビルが建設途中でダンジョン化したため、内装工事が終わっていない状態がそのままダンジョンに反映されているからだと推測されている。
深層へ繋がらない「無限ループ」の構造
・本来のビルの図面では、八層(地下八階)のさらに下は機械室となっており、階段で下りられる構造にはなっていない。
・しかし、ダンジョン内には八層や九層を過ぎても、相変わらず下へと続く階段が存在し続けている。
・芳村と三好が「あっさりとダンジョンの向こう側(深層)へ行けるのではないか」と考え、三十層分ほど階段を下り続けた結果、目印として置いたカラーコーンを発見し、同じ階層を永遠にループしているだけであることが判明した。
・そこから上へ階段を上ると無事に二層(BF2)に戻れたことから、横浜ダンジョンは一定の階層から下は空間がループしており、歩いてそのまま深層へは辿り着けない特殊な構造になっていることが示されている。
まとめ
このように、横浜ダンジョンの構造は、建設途中の商業施設という物理的制約とダンジョンの不思議な法則が組み合わさった結果、スタンピードの危険性を孕みつつも、深層へは直行できない特異な環境を形成している。
タイラー博士との遭遇
本作におけるタイラー博士との遭遇は、ダンジョンの誕生理由やその背後にいる存在の目的など、物語の世界観の根幹に関わる最大の謎が明かされる極めて重要なイベントである。本稿では、芳村たちが彼から聞かされた驚愕の真相と、その後の対応について解説する。
遭遇の状況とタイラー博士の正体
・横浜ダンジョンでの核爆発(リトル・サン起爆)により、ダンジョンのシステムによって代々木ダンジョン三十一層へ強制転移させられた芳村と三好は、そこでセオドア=ナナセ=タイラー博士と出会った。
・タイラー博士は、3年前にネバダで行われた実験で死亡(公式には行方不明)したはずの科学者であるが、ダンジョンのシステム(デミウルゴス)によって、完全な記憶を持ったまま量子レベルで情報体として再構成されていた。
・芳村たちは、タイラー博士の母方のマナーハウスを模した秘密の花園のような心象風景(書斎)で、彼から直接話を聞くことになった。
ネバダ実験の事故とダンジョン発生の真相
・タイラー博士が語ったところによれば、3年前のネバダでの実験の結果、偶然どことも分からない世界と繋がってしまった。
・その世界にいた何らかの存在(デミウルゴス)が、実験場にいた27人の人間を量子レベルで分解・調査し、そこから人類について学んだ結果として、地球上にダンジョンを作り出したというのである。
・つまり、ダンジョン誕生の引き金はアメリカの実験事故であり、博士によればそれは旅客機とUFOが衝突したような不幸な事故であった。
デミウルゴスの目的
・さらに衝撃的だったのは、ダンジョンの向こう側にいる創造主的な存在(芳村たちはデミウルゴスやダンツクちゃんと呼称)の目的であった。
・博士を通して伝えられたその目的とは、侵略でも破壊でもなく、人類に奉仕することだった。
・芳村たちは、魔法のような世界を瞬時に構築できる絶対的な存在が奉仕させろと望んでいる状況を、寂しがり屋で、構ってちゃんで、人類に奉仕したくてたまらない、M体質のメイドさんみたいな存在と解釈し、そのあまりに規格外な目的に困惑した。
証拠の不在と丸投げの連鎖
・タイラー博士は政治的な駆け引きを嫌い、この事実を公表するかどうかを芳村たちに一任した。
・しかし、録画していたはずの映像には何も映っておらず、死者から聞いたというこの話を裏付ける客観的な証拠は一切なかった。
・真面目に世間に訴えても新興宗教や頭のおかしい人扱いされるのが明白だったため、芳村と三好は深く悩むことを放棄し、探索者の義務としてただの体験談という形でJDAの鳴瀬美晴に丸投げした。
・常識外れの報告を受けた鳴瀬は頭を抱え、さらにその報告を受けた斎賀課長も証拠なしに信じられる内容ではない、SFか新興宗教のようだと呆れた。
・しかし、報告者が数々の常識外れな結果を出しているDパワーズであるため無下に扱うこともできず、最終的に斎賀もこの情報を適切な上位機関(国家レベル)へ厄介払い(丸投げ)する決断を下した。
まとめ
このように、タイラー博士との遭遇は、SF的な壮大なスケールの真相が明かされる場面であると同時に、あまりに大きすぎる秘密を前にした登場人物たちが、責任を次々と丸投げしていくという人間味あふれるコミカルな顛末へと繋がっている。
人類への奉仕
本作における人類への奉仕は、代々木ダンジョン深層で芳村たちがタイラー博士(の情報体)から聞かされた、ダンジョンを生み出した未知の存在(デミウルゴス)の真の目的として提示される極めて重要な概念である。本稿では、その詳細と、この規格外の目的を知った登場人物たちの反応について解説する。
侵略ではなく奉仕という不可解な目的
・タイラー博士を通じて明かされた、ダンジョンの向こう側にいる創造主的な存在(デミウルゴス)の目的は、地球の侵略や人類の破壊ではなく、人類に奉仕することであった。
・魔法のような世界を瞬時に構築できる絶対的な力を持つ存在が、あえて奉仕させろと望んでいるという事実は、人類の常識から大きく外れた不可解なものであった。
芳村たちの解釈と丸投げ
・芳村と三好は、このデミウルゴスの本質を、寂しがり屋で、構ってちゃんで、人類に奉仕したくてたまらない、M体質のメイドさんみたいな存在という身も蓋もない表現で解釈した。
・彼らは、ダンジョンの目的が人類への奉仕であるなどと世間に主張しても新興宗教や頭のおかしい人扱いされるだけだと考えた。
・客観的な証拠も一切なかったため、深く悩むことを放棄し、探索者の義務としてただの体験談という形でJDA(日本ダンジョン協会)の鳴瀬美晴にこの情報を丸投げする決断を下した。
鳴瀬美晴の困惑
・報告を受けた鳴瀬美晴は、当然ながら激しく困惑した。
・魔法みたいな世界を瞬時に作り上げられる何かが、人類に望むことが奉仕させろって意味が分からないと頭を抱え、芳村の説明放棄に対して呆れ返った。
・しかし、数々の常識外れな結果を出しているDパワーズからの報告を無視することもできず、彼女もまた主観を交えずに事実だけをレポートにまとめ、上司である斎賀課長へと丸投げした。
斎賀課長の反応と連鎖する丸投げ
・鳴瀬からのレポートを読んだ斎賀課長は、その内容を、どこのファーストコンタクト系侵略ものSFの承部分だよ、そうでなきゃ新興宗教だなと評し、呆れを隠せなかった。
・彼にとっても、奉仕してもらったらどうなるのか、その対価は何なのか、こちらの意思をどうやって伝えればいいのかなど、すべてが不明なこの情報は取り扱い不能であった。
・最終的に斎賀は、このような国家レベルの巨大すぎる爆弾(情報)はダンジョン管理課で抱え込むべきではないと判断し、国家レベルの問題は国家に任せておけばいいと、さらに上位の機関へと厄介払い(丸投げ)する方針を決定した。
まとめ
このように、人類への奉仕というデミウルゴスの目的は、物語の根幹に関わる壮大なSF的テーマでありながら、そのあまりの荒唐無稽さゆえに、情報を知った者たちが次々と責任を押し付け合うという、人間味あふれるコミカルな連鎖を引き起こす要因となっている。
スキル「メイキング」の真意
本作におけるスキル「メイキング」の真意は、芳村と三好が「コルヌコピア(豊穣の角)」の謎について考察する中で、単なる製造スキルを越えた、ダンジョンの法則そのものを書き換える可能性を持つ究極の能力として導き出された。本稿では、その解釈の変遷と、辿り着いた驚愕の結論について解説する。
初期の解釈:「五月の王」と「製造(Making)」
・芳村は自身が取得したスキル〈メイキング〉の名称について、当初は国語審議会の答申などに従い「五月の王(May King)」だと考えていた。
・その後、意味合いから素材や製造を表す「メーキング(Making)」のことだと解釈を改めていた。
・スキルのネイティブ言語での表示が個人の語彙感覚に依存するという事実は判明していたものの、なぜこのような表記になったのか、その真意は不明であった。
コルヌコピア(豊穣の角)との繋がり
・秘密の花園で出会ったタイラー博士(死者の情報体)は、芳村の持つ力を「コルヌコピア」と呼んだ。
・コルヌコピアとはギリシャ神話に登場するアマルテイアに捧げられた「豊穣の角」であり、望みのものを与える力を持つとされる。
・また、巨大な富の象徴であり、ディオニューソスを育て、のちに冥界の神「ハーデース」の象徴ともなったアイテムである。
「冥キング(冥王)」という真の解釈
・「ハーデースの象徴」という記述から、芳村は〈メイキング〉の真意が「冥王(冥キング)」であるという結論に辿り着く。
・地下世界であるダンジョンは、まさに冥王が支配する「冥界」と言える場所であり、彼らがそこで死者と対話した事実とも見事に符号していた。
・芳村が「王」よりも「キング」という言葉をよく使うという個人的な感覚が、「冥キング」という奇妙なネイティブ表記を生み出したと推測された。
スキルの最終形態:Dファクターの完全操作
・もし〈メイキング〉が本当にコルヌコピアの力(望みのものを与える力)を持つ「冥界の王」のスキルであるならば、その行き着く先は単なるアイテム作成にとどまらない。
・芳村と三好は、このスキルが最終的に「望むだけでDファクターを自由に操作し、なんでも自由に作れる」という、神のごとき能力になるのではないかと推測した。
・二人は自分たちが辿り着いたその結論の圧倒的なリアリティを前に、呆然とすることになる。
まとめ
このように、スキル〈メイキング〉の真意は、単なるアイテム作成能力ではなく、ダンジョンの法則そのものを自由に書き換える可能性を持つ「冥界の王」の力であると推測された。この驚愕の結論は、芳村の力が神のごとき規格外のものであることを示しており、二人が圧倒的なリアリティの前に呆然とするほどの重要な発見であった。
ダンジョン農業と資源収束
本作におけるダンジョン農業と資源収束は、ダンジョンの不可思議な法則を利用することで人類の食糧問題や資源問題を根本から解決しうる可能性を示すと同時に、既存の経済システムや世界秩序を劇的に破壊しかねないパンドラの箱として描かれている。本稿では、これら二つの革新的な発見とその影響について解説する。
ダンジョン農業の圧倒的効率とウケモチ・システム
・芳村と三好は、代々木ダンジョン二層に植えた小麦が、わずか1ヶ月足らずで実を結び、さらに一度収穫しても無限にリポップ(再出現)するという驚くべき事実を発見した。
・これを利用し、三好はコンバイン型の自動収穫機を循環させる無限食料供給システムであるウケモチ・システム(保食神)を考案した。
・このシステムを用いれば、わずか数ヘクタールの面積と数百台の機械だけで日本の小麦全需要を賄えるほどの異常な生産効率を叩き出すことが可能であり、天候や土地の疲弊にも左右されない究極の農業が実現する。
穀物メジャーとバイオメジャーへの致命的脅威
・このダンジョン農業の存在は、WDA知財局から情報が漏れたことで、世界の穀物メジャー(ガーギル社など)に多大な衝撃を与えた。
・農薬や種子を毎年販売するバイオメジャーのビジネスモデルは一瞬で無価値となり、既存の大農園やサイロ、巨大な穀物流通網も不要になる恐れがある。
・ガーギル社のCEOドナルドは、FAO(国連食糧農業機関)やIFAD(国際農業開発基金)を通じてこの技術が途上国へ一気に普及する悪夢を予測した。
・それに対抗するため、ダンジョン周辺の土地買収を進めると同時に、環境団体を利用してダンジョン産作物へのネガティブキャンペーンを画策し始めている。
マイニングによる資源収束の発見
・鉱物資源については、六条小麦を伴った探索により新たな事実が判明した。
・マイニングによるドロップは探索者のイメージに強く依存しており、彼女がどの宝石をドロップさせるか悩みすぎて対象を絞りきれなかった結果、宝石の原石という大分類のカテゴリでドロップが収束する現象が起きた。
・続く階層でも貴金属というカテゴリでのドロップに成功し、ダンジョンに与えるイメージ次第で産出される資源群をコントロールできることが証明された。
原子構造の伝達による超高純度化と核の危険性
・芳村と三好はさらに踏み込み、曖昧なイメージの代わりに、陽子数が57から71までの原子といった物理量や原子構造という明確な情報をダンジョンに伝達する手法を試みた。
・その結果、雑念が一切混じらない状態で情報が伝わり、現代の最先端技術でも精製困難な8N(不純物が検出限界以下)という異常な超高純度のランタノイド(レアアース)をドロップさせることに成功した。
・しかし芳村は、この原子構造を直接指定してドロップさせる手法が、理論上はウラン235やプルトニウム239といった兵器級の核物質すらも自由に生み出せることを意味していると気付く。
まとめ
このように、ダンジョン農業と資源収束は、人類に無限の食糧と無尽蔵の超高純度資源を提供する夢の技術であると同時に、取り扱いを一歩間違えれば、既存の世界経済の崩壊や核の脅威を瞬時に引き起こす、極めて危険な劇薬として位置づけられている。
超回復スキルと仮面の男
本作における超回復スキルと仮面の男は、代々木ダンジョン三十一層(闇の神殿)での死闘において、自衛隊の絶体絶命の危機を救うと同時に、その規格外の力と効果によって新たな波紋を呼ぶ重要な要素として描かれている。本稿では、この二つの要素と、それらが引き起こした影響について解説する。
仮面の男の異常な戦闘力と正体への推測
・闇の神殿でデスマンティスやキメイエスに襲撃され、部隊が壊滅の危機に瀕していた自衛隊チーム1の前に、中折れ帽にマント姿の仮面の男(ファントムに扮した芳村圭吾)が現れた。
・彼は強力なモンスターたちをまるで子供のように扱い、全く意に介さずに部隊の元へ歩いてくるという非常識な強さを見せつけた。
・その姿を見た自衛隊員の間では、ダンジョンの管理者ではないかと噂されるほどであった。
・アメリカ(DAD)の秘密兵器という線も疑われたが、身にまとっていたマントが何の防御力もないただの市販の布であったため、合理主義の権化であるDADがそのような装備を使うとは考えにくく、謎は深まるばかりであった。
超回復の真の効果と計り知れない価値
・デスマンティスの攻撃で右腕と右足を切断される重傷を負っていた君津伊織二尉に対し、仮面の男は超回復のスキルオーブを使用した。
・WDAのデータベースにおいて、超回復は疲れにくくなり、小さな怪我が非常に早く治る程度の効果と記載されていた。
・しかし実際には、伊織の失われた手足が一瞬にして完全再生するという、極めて劇的な効果を発揮した。
・この事実に気付いた鋼一曹は、もし部位欠損からの時間制限なしに再生が可能であれば、既存の最高位回復アイテムであるランク7ポーションをはるかに凌駕する価値を持つと指摘した。
・そして、この事実が公になれば、世界中の富豪や企業が探索者を雇って代々木に押し寄せ、血で血を洗う奪い合いになると強い危惧を抱いた。
50億円の利益供与と査問騒動
・伊織がこの出来事を正直に報告した結果、思わぬ問題が発生した。
・過去のオークションで50億円以上で落札された実績のある超回復を無償で受け取ったことが、国家公務員倫理規程違反(社会通念上相当と認められる程度を超えた財産上の利益の供与)にあたるとして、伊織が査問の対象になる可能性が浮上したのである。
・しかし、自衛隊上層部(防衛省人事教育局など)の真の目的は、自衛隊トップクラスの探索者である伊織を処分することではなかった。
・寺沢二佐と鋼一曹は、査問にかこつけて、50億円ものオーブを惜しげもなく使い、常識外れの戦闘力を見せつけた仮面の男の身元や背景を調査することこそが、彼らの真の狙いであると推測したのである。
まとめ
このように、仮面の男による超回復の行使は、単に伊織の命を救っただけでなく、ダンジョンの底知れぬ力と未知のアイテムの存在を世に示し、各国の組織や政治的思惑を巻き込む火種となっている。
登場キャラクター
Dパワーズ
芳村圭吾
Dパワーズに所属し、三好梓とともに行動する探索者である。世界ランク一位の「ファントム」の正体として活動している。
・所属組織、地位や役職
Dパワーズ。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
横浜ダンジョン地下の探索に赴き、無限に続く階段のループ構造を発見した。代々木ダンジョンでは深深度ダンジョンのボスを鉄筋で倒した経緯を鳴瀬美晴に明かしている。また、十八層でゲノーモスを大量に討伐し、六条小麦と三代絵里のダンジョン探索をサポートした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ファントムとしての正体が斎藤涼子に露見した。WDAカード取得前からファントムとしてランク入りしており、異常なステータスポイントを所持している。
三好梓
Dパワーズのメンバーであり、ザ・ワイズマンの二つ名を持つ。情報収集や交渉事に長けた人物である。
・所属組織、地位や役職
Dパワーズ。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
横浜ダンジョンの地下を芳村とともに探索した。農業問題を解決しうる「ウケモチ・システム」を考案している。鳴瀬美晴に〈収納庫〉の詳細を明かし、ランサム・マルソンからは指輪の鑑定を依頼された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
〈鑑定〉および〈収納庫〉のスキルを所持している。
六条小麦
芳村たちとともに探索を行う女性である。鉱物や宝石に対して強い興味を持っている。
・所属組織、地位や役職
マイトレーヤ。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョン二十層以降で〈マイニング〉を使用した。悩み抜いた結果、二十一層で「宝石の原石」を、二十二層で「貴金属」をドロップさせている。神話に登場する犬や、かつて自分が飼っていた犬を召喚した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
LUCの数値が異常に高く、プロの鑑定士に匹敵する知識を持つ。
三代絵里
芳村たちと探索を行う女性である。六条小麦のパートナーとして活動している。
・所属組織、地位や役職
マイトレーヤ。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョン十層で〈地魔法〉のクリエイトアローを使い、モンスターを倒した。探索の過程で〈マイニング〉や〈物理耐性〉のオーブを使用している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ランキングが三十六万位台から千位台へ急上昇した。
グラス
三好梓を護衛するヘルハウンドの一頭である。
・所属組織、地位や役職
Dパワーズの従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョンで三好の足元を守った。アヌビスの言動に対して首を振る様子を見せている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
影の中からでも外の様子を把握できる。
アイスレム
ヘルハウンドの一頭である。
・所属組織、地位や役職
Dパワーズの従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョンにおいて、周囲の警戒にあたった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
斎藤涼子から鬼軍曹扱いされている。
カヴァス
ヘルハウンドの一頭である。
・所属組織、地位や役職
Dパワーズの従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
横浜ダンジョン地下探索の際、階段の暗闇で瞳を光らせていた。代々木ダンジョンでは周囲の警戒任務に就いている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
影の中から外の様子を把握できる。
ロザリオ
ダンジョン由来の鳥である。アメリカンロビンのような外見をしている。
・所属組織、地位や役職
Dパワーズの従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
新越の契約書の上に舞い降りた。六条小麦の膝に飛び乗ってさえずる姿を見せている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
胸がオレンジ色で、グレーの羽が青みを帯びている。
アヌビス
六条小麦に召喚された黒い犬型のモンスターである。尊大な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
マイトレーヤの従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
六条の影に潜み、周囲の警戒を担当した。魔法で敵を倒し、馴れ馴れしい態度をとった喜屋武を影の魔法で拘束している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
召喚直後から人語を話し、ハイディングシャドウを使用できる。
ガルム
六条小麦に召喚された犬型のモンスターである。胸元に赤黒い毛が生えている。
・所属組織、地位や役職
マイトレーヤの従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
スノーアルミラージの突撃をかわし、首筋に噛みついて倒した。アヌビスに甘噛みと称して本気で噛みついている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
兄貴風を吹かせるアヌビスを避けて六条小麦の後ろへ逃げ回る。
ライラプス
六条小麦に召喚された犬型のモンスターである。
・所属組織、地位や役職
マイトレーヤの従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
ラブドフィスパイソンの頭を噛み潰して討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
近接戦闘を主体とする。
クー
六条小麦に召喚された犬型のモンスターである。黒のラブラドール・レトリーバーのような外見をしている。
・所属組織、地位や役職
マイトレーヤの従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
召喚直後に六条小麦の傍に寄り添い、体をこすりつけた。テントの前で番犬の役割を担っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
六条小麦が幼少期に飼っていた犬と同じ姿をしている。
JDA(日本ダンジョン協会)
鳴瀬美晴
JDAダンジョン管理課に所属する職員である。Dパワーズの専任管理監を務める。
・所属組織、地位や役職
JDAダンジョン管理課。専任管理監。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村の入退記録の矛盾を、システム一時停止を利用した手作業処理で補完した。芳村からファントムの正体や深深度ダンジョンの真相を聞き出している。Dパワーズからもたらされた情報を主観を交えずに斎賀へ報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
Dパワーズの活躍により、高額な賞与を受け取る見込みとなった。
斎賀
JDAダンジョン管理課の課長である。鳴瀬美晴の上司にあたる。
・所属組織、地位や役職
JDAダンジョン管理課。課長。
・物語内での具体的な行動や成果
セーフエリアの区画割り当てを、特別区画と一般区画の入札制へ変更するよう指示を出した。鳴瀬からDパワーズの国家機密級の報告を受け、上位機関へ厄介払いする方針を決めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
Dパワーズの情報をどう扱うかに頭を悩ませている。
坂井典丈
JDAダンジョン管理課管理セクションに所属する主任である。
・所属組織、地位や役職
JDAダンジョン管理課管理セクション。主任。
・物語内での具体的な行動や成果
斎賀からセーフエリアの割り振り作業をやり直すよう指示を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
斎賀が提示したシンプルなルール化を聞いて安堵した。
橘
JDAダンジョン管理部の部長である。
・所属組織、地位や役職
JDAダンジョン管理部。部長。
・物語内での具体的な行動や成果
過去に〈収納庫〉の扱いを斎賀に任せたことが作中で語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
〈収納庫〉の利用例としてISS建設を引き合いに出していた。
真壁
JDAの常務である。
・所属組織、地位や役職
JDA。常務。
・物語内での具体的な行動や成果
網刈抹畝の採用エピソードにおいて名前が言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
情報源としての言及に留まる。
瑞穂
JDAの常務である。
・所属組織、地位や役職
JDA。常務。
・物語内での具体的な行動や成果
オーブの預かり契約の内容を議員との懇談会で自慢げに話した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
守秘義務の意識が薄い。
網刈抹畝
JDA商務課の課長である。
・所属組織、地位や役職
JDA商務課。課長。
・物語内での具体的な行動や成果
斎賀から「ダンジョン始める君」の製造プロジェクトを丸投げされる方針が示された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
過去に履歴書の名前から一発採用されたという噂がある。
石塚
中央のマスコミ関係者である。ディレクターである氷室の大学時代の友人にあたる。
・所属組織、地位や役職
マスコミ(中央)。
・物語内での具体的な行動や成果
吉田と城の会話内で言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
斎藤涼子の番組パイロット版に関わっている。
日本政府・自衛隊
井部
日本政府の内閣総理大臣である。現実的な政治判断を下す傾向がある。
・所属組織、地位や役職
日本政府。内閣総理大臣。
・物語内での具体的な行動や成果
川野からのアメリカへの非難決議案を、証拠がないとして退けた。桜木町の爆発を不発弾処理として公式に説明する方針を示している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ダンジョン内での核爆発の可能性から、放射性廃棄物処理への応用を推測した。
川野
日本政府の外務大臣である。
・所属組織、地位や役職
日本政府。外務大臣。
・物語内での具体的な行動や成果
日本国内で核が使用されたとして、アメリカへの非難決議を出すよう井部に迫った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
井部に証拠の不在を指摘され、言葉に詰まった。
内谷
国家安全保障局長である。
・所属組織、地位や役職
日本政府。国家安全保障局長。
・物語内での具体的な行動や成果
マスコミが不発弾処理手続きの異常性を問題視していると井部に報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
井部や川野とともに会議に参加している。
秋庭武雄
外務省の事務次官である。
・所属組織、地位や役職
日本政府(外務省)。事務次官。
・物語内での具体的な行動や成果
川野とともに井部の執務室を訪れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
井部の言葉に小さく頷いた。
寺沢
防衛省に所属する二佐である。
・所属組織、地位や役職
防衛省。二佐。
・物語内での具体的な行動や成果
斎賀から送られた報告書を読んだ。鋼から伊織に対する査問について報告を受けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
査問の真の目的は仮面の男の身元調査だと推測した。
君津伊織
陸上自衛隊の二尉である。日本のトップクラスの探索者として知られる。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊。二尉。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョンで仮面の男から〈超回復〉のオーブを使用され、欠損した手足を再生した。その事実を報告したことで査問の対象となっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界ランキング十八位に位置する。
鋼
陸上自衛隊に所属する一曹である。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊。一曹。
・物語内での具体的な行動や成果
伊織から〈超回復〉の事実を聞き、それが公になれば争奪戦になると危惧した。伊織に査問の話を伝え、寺沢への相談を勧めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
仮面の男の非常識な強さを寺沢に説明した。
漆原
防衛装備庁の技官である。愛称はキヨミーと呼ばれる。
・所属組織、地位や役職
防衛装備庁。技官。
・物語内での具体的な行動や成果
三好からダンジョン内木材の利用について質問を受け、過去の資料を送付した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
三好から横浜の津々庵へ招待され、喜んで了承した。
アメリカ合衆国政府・軍関係
ダルトン
アメリカ合衆国政府の関係者である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国政府。
・物語内での具体的な行動や成果
マッシュフォードからダンジョン内での爆発実験の報告を受けた。ザ・リングを放射性廃棄物の処理場にする構想を立てている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
DAD関係者が代々木で発見されたことに危機感を抱いた。
J=D=マッシュフォード
特殊作戦に従事する准士官である。
・所属組織、地位や役職
DoD(ダンジョン省)。准士官(海兵隊からの出向)。
・物語内での具体的な行動や成果
ダルトンに対して、爆発実験の痕跡がなかったことを報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
爆発後、ダンジョンで神の御業を感じたと発言している。
ハンドラー
アメリカ合衆国大統領である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国政府。大統領。
・物語内での具体的な行動や成果
過去に処理予算の大幅削減を行ったことが言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
議会を通さずに日本政府へ直接連絡を入れている。
世界の探索者
サイモン=ガーシュウィン
DADのトップ探索者である。
・所属組織、地位や役職
DAD(ダンジョン省)。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
〈マイニング〉の預かりを芳村に直接依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
芳村たちから情報を引き出すなど、交渉に長けた一面を見せる。
キャシー
ファルコンインダストリーのユニフォームを着た探索者である。
・所属組織、地位や役職
ファルコンインダストリー。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
〈マイニング〉をドロップし、それを預けるためDパワーズの事務所を訪れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ブートキャンプでの体験に非常に満足している。
ランサム=マルソン
世界ランキング上位の探索者である。通称キングサーモンと呼ばれる。
・所属組織、地位や役職
探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木十八層で芳村たちのキャンプを訪れ、致死の指輪の鑑定を三好に依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
バンクーバー付近のポイント・ロバーツ出身である。
ドミトリー=ネルニコフ
ロシアの世界ランク二位の探索者である。
・所属組織、地位や役職
探索者(ロシア)。
・物語内での具体的な行動や成果
バティアンを睨みつけ突撃しようとしていたところ、三好から警告を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
常に無表情で硬質な雰囲気を漂わせている。
アラン=ボージェ
フランス最高の斥候である。ラバーネックの異名を持つ。
・所属組織、地位や役職
探索者チーム(フランス)。斥候。
・物語内での具体的な行動や成果
バティアンの異変を調査しに行き、岩の上に立つファントムの姿を目撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ファントムとサイモンが同一人物だとは考えていない。
エラ=アルコット
キャンベルの魔女と呼ばれる探索者である。
・所属組織、地位や役職
探索者(オーストラリア政府からの依頼)。
・物語内での具体的な行動や成果
ランスの会話内で代々木に来日していることが言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦闘中に光る特徴がある。
林田康生
代々木ダンジョンの民間トップチームの一つである渋谷チートリアルのリーダーである。
・所属組織、地位や役職
渋谷チートリアル(渋チー)。リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
十八層で芳村たちのキャンプを訪れた。酔い潰れたデニスを抱えて撤収している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
軽薄な見た目に反して責任感が強い。
デニス=タカオカ
渋谷チートリアルの斥候であり、外国語担当を務める。
・所属組織、地位や役職
渋谷チートリアル(渋チー)。斥候。
・物語内での具体的な行動や成果
林田とともに芳村たちのキャンプを訪れた。提供されたビールを飲んで寝てしまった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
半分リトアニア人であり、アルコールに弱い体質を持つ。
東
渋谷チートリアルのメンバーである。
・所属組織、地位や役職
渋谷チートリアル(渋チー)。
・物語内での具体的な行動や成果
喜屋武の行動に対して突っ込みを入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
キャンベルの魔女のファンらしい。
大建
渋谷チートリアルのメンバーである。
・所属組織、地位や役職
渋谷チートリアル(渋チー)。
・物語内での具体的な行動や成果
ベースキャンプでミリ飯の準備を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
喜屋武と林田の行動を見送っている。
喜屋武
渋谷チートリアルのメンバーである。
・所属組織、地位や役職
渋谷チートリアル(渋チー)。
・物語内での具体的な行動や成果
六条小麦に馴れ馴れしく接し、アヌビスの影の魔法に拘束された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身をイケメンだと言って憚らない性格である。
ガーギル社(穀物メジャー)
ドナルド=マクレーン
ガーギル社のCEOである。冷静な経営判断を下す。
・所属組織、地位や役職
ガーギル社。CEO。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョン農業のレポートを読み、既存の農業システム崩壊の危機を感じた。ダンジョン周辺の土地買収とネガティブキャンペーンの実施を指示している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
一族に対してバイオメジャー株の売却を密かに命じた。
テリー
ドナルドの部下である。
・所属組織、地位や役職
ガーギル社。
・物語内での具体的な行動や成果
WDA知財局から流出したレポートをドナルドに提出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ドナルドの指示を受け、速やかに行動に移す。
WDA・国連機関
ネイサン・アーガイル
WDA食品管理局(DFA)に所属する職員である。
・所属組織、地位や役職
WDA食品管理局(DFA)。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョン産小麦で作ったパンケーキを自ら試食した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
パンケーキを食べたシルクリーの前にDカードが現れたのを目撃する。
シルクリー=サブウェイ
ネイサンのアシスタントである。
・所属組織、地位や役職
WDA食品管理局(DFA)。アシスタント。
・物語内での具体的な行動や成果
ネイサンが作ったダンジョン産小麦のパンケーキを食べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
パンケーキを食べた直後、自身のDカードを取得した。
アンブローズ=メイガス
FAOの農業委員会に所属する高官である。
・所属組織、地位や役職
FAO(国際連合食糧農業機関)農業委員会。
・物語内での具体的な行動や成果
ドナルドとテリーの会話の中で、厄介な存在として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
情報源としての言及に留まる。
マスコミ・芸能・スポーツ界
斎藤涼子
注目を集めている新人女優である。
・所属組織、地位や役職
芸能界。女優。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村の正体がファントムであることに気づいた。映画撮影の余興でアーチェリーの驚異的な記録を出し、オリンピック強化指定選手候補となっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
オリンピック関係の騒動に巻き込まれ、本業である女優業とのズレに悩んでいる。
御劔遙
ファッションモデルである。
・所属組織、地位や役職
モデル。
・物語内での具体的な行動や成果
ファッションウィークに参加するためニューヨークに滞在していることが語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
三代絵里が強い興味を示している。
吉田
テレビ番組の制作関係者である。
・所属組織、地位や役職
テレビ番組制作会社。
・物語内での具体的な行動や成果
城から三好梓の提示した協力条件を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
番組制作においてスポンサーの権利や条件の調整に頭を抱える。
城
マスコミ関係のカメラマンである。
・所属組織、地位や役職
マスコミ。カメラマン。
・物語内での具体的な行動や成果
吉田に三好からの条件を記したファイルを渡した。仮面の男の映像使用に危険性を感じている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
斎藤涼子の出演がすでに決まっていることに気づく。
氷室
制作会社のディレクターである。
・所属組織、地位や役職
制作会社。ディレクター。
・物語内での具体的な行動や成果
三好梓からの伝言を吉田と城にもたらした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつては「火の玉リュージ」と呼ばれていたが、現在は異常なほど慎重になっている。
八尾
マスコミのリポーターである。
・所属組織、地位や役職
マスコミ。リポーター。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョンのゲート前でブートキャンプ参加者を探して取材を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
同行のカメラマンがWDAカードを持っていなかったことに愕然とする。
高田瀬里奈
青菱大陸上競技部に所属する長距離ランナーである。
・所属組織、地位や役職
青菱大学陸上競技部。
・物語内での具体的な行動や成果
大阪国際女子マラソンで世界記録を更新し優勝した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ブートキャンプに参加したことで大幅に記録を縮めている。
その他の人物・集団
タイラー博士
3年前のネバダでの実験事故で死亡したとされる科学者である。
・所属組織、地位や役職
不明。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョン三十一層の書斎で芳村たちにダンジョン発生の真相を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
完全な記憶を持ったままダンジョンによって情報体として再構成されている。
未知の存在
デミウルゴス
ダンジョンの向こう側にいるとされる創造主的な存在である。
・所属組織、地位や役職
未知の存在。
・物語内での具体的な行動や成果
人類について学び、地球上にダンジョンを作り出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
その目的は「人類に奉仕すること」であるとタイラー博士を通じて芳村たちに伝えられる。
展開まとめ
序章 プロローグ
アメリカ合衆国 ワシントンDC
核爆発の痕跡が消えた報告
ワシントンDCで、ダルトンはマッシュフォードからダンジョン内で行われた爆発実験の報告を受けていた。地震学的監視、水中音波、微気圧振動、放射性核種のいずれの観測所にも記録は残っておらず、外部から爆発を確認できる痕跡は存在しなかった。しかし、設置された原爆、モンスター、残留物、探索者たちまでもが消えていたため、何かが起きたこと自体は明白であった。
検知不能な核実験への懸念
ダルトンは、報告に再現性があるなら、ダンジョン内の核実験は誰にも検知されない可能性があると考えた。その事実が知られれば、核爆弾を作れる国や組織がダンジョンを利用する危険があった。マッシュフォードは、爆発の瞬間に振動などは感じなかったが、後にダンジョンへ戻った際、神の御業を身近に感じたと述べた。
放射性廃棄物処理への発想
ダルトンは、ダンジョン内で物質が消えるなら、ハンフォード・サイトの放射能汚泥処理に利用できる可能性を考えた。ハンフォード・サイトでは、放射性汚染物質を含むタンクの一部が破損し、コロンビア川への影響が問題になっていた。解決困難な廃棄物を処理できる場所として、彼はステイツが直接管理するダンジョン、ザ・リングを思い浮かべた。
ザ・リングをゴミ箱にする構想
ザ・リングは調査が保留され閉鎖されていたが、廃棄物を投げ込むだけなら内部の危険地帯へ踏み込む必要はなかった。ワシントン州のハンフォード・サイトからネバダのエリア5までは陸路でも空輸でも運搬可能であり、ダルトンは廃棄物処理の現実的手段として検討した。しかし、消えた物が本当に分解されるのか、他のダンジョンへ移動するのかは不明であった。
代々木で発見されたDAD関係者
ダルトンは、爆発に巻き込まれて消えたはずのDADの者たちが代々木で発見されたことをマッシュフォードに告げた。マッシュフォードは不幸な事故だったが生きていて幸いだったと白々しく答えた。爆発には自衛隊やサイモンチームも巻き込まれており、予定通りの爆破ではなかった可能性が示されていた。
転移の可能性と実験の必要性
ダルトンは、とあるダンジョンで消えた物が別のダンジョンから発見される可能性に危機感を抱いた。関与を示す物品が別の場所から出れば致命的であり、廃棄物処理に使うには危険が残っていた。物質が分解されるのか転移するのかを判断するため、ダルトンは少量で実験するしかないと考えた。
第09章 マイナー
二〇一九年一月二十日(日)
津々庵で確認された異常消失
芳村と三好は横浜・桜木町の津々庵を訪れ、放射線量を確認した。内部の空間線量は通常値であり、核爆発が起きたとは到底思えない状態だった。しかし、水槽内にいたクリーナーやスライムたちはすべて消失していた。録画映像を確認すると、クリーナーたちは十八時十三分五十七秒十六フレームの時点で、映像が切り替わったように突然消えていた。芳村は、以前二層で発生した現象と同じだと推測した。
爆発時刻への疑念
芳村は、本来十八時十五分予定だった爆発が一分以上早く起きていることを不審に感じていた。三好は、自衛隊ダンジョン攻略群を事故に見せかけて排除しようとした可能性を冗談めかして口にしたが、芳村はそこまでの陰謀性には否定的だった。一方で、放置されていたクリーナーが増殖して第二の惨事を招く危険が消えたことについては安堵していた。
横浜ダンジョン地下探索の開始
三好は地下へ続く階段を見下ろし、未踏の下層探索を提案した。芳村は危険を警戒したものの、立ち入り禁止区域もなく、誰も下りていないこと自体に違和感を覚えていた。三好は、もし安全ならダンジョンの秘密へ近付けるかもしれないと期待を膨らませていた。芳村は結局、三好を一人で行かせることはできず、共に地下へ向かう決断を下した。
暗闇の下層と無限階段
三層以降には照明もフロアサインも存在せず、未完成のコンクリートが剥き出しになっていた。〈生命探知〉にも反応はなく、不気味な静寂だけが広がっていた。さらに進んだ先で、二人は本来存在しないはずの下り階段を発見した。八層で終わるはずの構造が延々と続いていたのである。
三十層近く下り続けた後、三好は検証のためカラーコーンを設置した。するとさらに下った先で、そのコーンが再び現れ、階段構造がループしていることが判明した。芳村は最悪の可能性を警戒したが、上層へ戻ること自体は可能であり、二人は横浜を後にした。
タイラー博士の情報を巡る議論
代々木八幡の事務所へ戻った芳村と三好は、タイラー博士から聞かされた内容について整理していた。ダンジョン誕生の経緯、向こう側の存在、人類再構成技術など、内容はあまりに非現実的だった。芳村は、そうした情報を自分たちが冷静に受け入れていること自体に戸惑いを覚えていた。
最終的に三好は、人類規模の問題を個人で抱え込むべきではなく、専門機関へ情報を渡した上で判断を委ねるべきだと提案した。芳村もそれに同意し、鳴瀬やサイモンへ体験談として報告する方針を固めた。
斎藤へのCM依頼殺到
そこへ斎藤が現れ、大手企業からCM出演依頼が殺到していると報告した。依頼元は三ケミ、触媒、新越といった業界大手であり、代理店を介さず直接オファーが届いていた。芳村は、三好との接点を狙った動きだと判断した。最終的にロザリオが新越の名札へ舞い降りたことをきっかけに、斎藤は新越との契約を決めた。
芳村の正体発覚
斎藤は続けて、鳴瀬へ芳村が世界ランキング一位だと話してしまったことを告白した。鳴瀬は指輪からファントムの正体が芳村だと察していたのである。芳村は否定しようとしたが、三好にあっさり切り捨てられた。さらに二人は戦闘映像を見ながら必殺技を真似し始め、芳村は完全に玩具扱いされていた。
福岡で行われた違法取引
福岡市箱崎では、痩せた男とふくよかな男による密会が行われていた。痩せた男は緊張しながらパック状の物品を受け渡し、ふくよかな男はそれを確認していた。店内に流れる『ストールン』の歌詞は、痩せた男の罪悪感を強く刺激していた。
やがて、ふくよかな男はDカード検査機の偽装基板を差し出した。それは、Dカード未取得者でも未取得と表示させられる細工が施された偽装品だった。取引を終えた痩せた男は、逃げるように喫茶店を後にした。
鳴瀬によるログ改竄工作
後日、鳴瀬は疲弊した様子で事務所を訪れた。横浜セーフエリア発見の影響で、JDAは混乱状態にあった。鳴瀬は、芳村と三好の入退ダン記録に矛盾が生じている問題について説明した。彼女は自衛隊からの連絡を受けた直後、入退管理システムを二分間停止したことにしてログを補完していたのである。
深深度ダンジョン震の真相
芳村はついにDカードを見せ、自身が世界ランキング一位であることを明かした。さらに、去年九月に深深度ダンジョンへ鉄筋を落下させ、そのままボスを討伐してしまった経緯を説明した。鳴瀬は、その日時が観測された深深度級ダンジョン震と一致していることに気付き、長年の謎が解けたことへ衝撃を受けていた。
〈収納庫〉と横浜無限階段の説明
三好は〈収納庫〉の詳細資料を鳴瀬へ渡した。容量二百トン超、内部時間遅延という異常性能に鳴瀬は絶句したが、芳村たちは電子機器の不具合など意外な欠点も説明した。
さらに、横浜ダンジョンの無限階段について質問すると、鳴瀬はそれが探索者間では有名な現象であり、「横浜の新人が罹るはしか」とまで呼ばれていることを明かした。実害がないため、JDAも黙認していたのである。
スライム対策商品の企画
三好は、スライム対策液と水鉄砲をセットにした初心者向け商品「ダンジョン始める君」の販売を提案した。未成年でも安全にDカード取得を行えるようにする構想であり、鳴瀬は業務増加に頭を抱えつつも、その必要性は認めざるを得なかった。
タイラー博士とデミウルゴスの目的
芳村は三十一層で遭遇したタイラー博士について説明した。博士はネバダ事故で死亡した本人ではなく、ダンジョンが再構成した存在だと考えられていた。そして、異世界との接触によってダンジョンが誕生し、「デミウルゴス」という存在が人類へ奉仕するためにダンジョンを構築したと語られたことも共有した。鳴瀬は、理解不能な内容に完全に言葉を失っていた。
コルヌコピアと〈メイキング〉の正体
最後に芳村と三好は、〈メイキング〉の本当の意味について考察した。芳村は、それが単なる「製造」ではなく、「冥王」を意味する「冥キング」ではないかと気付いた。ダンジョンが冥界に近い存在であり、死者であるタイラー博士と会話した事実も、その仮説を補強していた。
さらに、もし〈メイキング〉がコルヌコピアそのものならば、最終的にはDファクターを自在に操作し、あらゆる物を生み出せる力へ至る可能性があると理解した二人は、その想像の大きさに言葉を失っていた。
二〇一九年一月二十一日(月)
総理官邸での非難決議論争
井部総理は、川野外相からアメリカへの非難決議案を迫られていた。川野は、日本国内で核が使用された可能性を重く見て強硬対応を求めたが、井部は、放射線異常やフォールアウト、残留放射能が確認されていない以上、核使用を証明できないと冷静に反論した。証明不可能な段階で非難決議を行えば、単なる言いがかりになると判断していた。
政治的現実を重視した判断
井部は、今回の件で日米関係を悪化させることの危険性を重視していた。さらに、巻き込まれた中にはDADのトップ探索者たちも含まれていたため、アメリカが自国の重要人材を犠牲にして日本を攻撃するとは考えにくいと見ていた。横浜事件そのものにも不自然さを感じていたが、真相は見通せなかった。
不発弾処理という公式見解
一部マスコミは、不発弾処理手続きの異常性を問題視していた。しかし井部は、それを陰謀論好きによる騒ぎだと切り捨てた。そして、桜木町地下で発見された危険な不発弾を、第102不発弾処理隊が適切に処理したという公式説明を徹底する方針を示した。
ダンジョン利用への危険な発想
会議後、井部は、もしダンジョン内で核爆発が発生していたなら、ダンジョンには爆発エネルギーや放射性物質を消去する能力があるのではないかと推測した。さらに、放射性廃棄物処理へ応用できれば、福島第一原発やもんじゅ問題すら解決できる可能性に思い至った。しかし、そこまで危険な実験を行う必要はないと考え直し、意識を外交日程へ切り替えた。
鳴瀬が見た三十一層の映像
帰宅した鳴瀬美晴は、芳村たちから受け取った封筒を開封した。中にはメモリーカードと大粒のダイアモンドが入っていた。彼女は動画データを再生し、三十一層で芳村が圧倒的な戦闘力を見せる映像を目撃した。マント姿で敵を蹴散らす姿は映画のようであり、最後に格好良く決めながら消える場面では、あまりの芝居がかり方に爆笑してしまった。
映像削除と報告書作成
映像を見終えた鳴瀬は、指示通りデータを削除し、メモリーカード自体も破棄した。芳村が世界ランキング一位だという話についても、証拠不十分としてあえて報告しないことに決めた。続いて彼女は、〈マイニング〉使用制限に関する上申書や、タイラー博士関連の内容を含む報告書作成へ取り掛かった。
横浜セーフエリア騒動による混乱
昼前にJDAへ出勤した鳴瀬は、ダンジョン管理課が戦場のような状態になっていることに驚いた。横浜セーフエリア発見により、協賛企業の申し込みが殺到していたのである。営業一課が企業へ期待を持たせた結果、区画調整作業がすべて管理課へ押し付けられ、現場は完全に疲弊していた。
DADサブチーム来日の報告
斎賀は、DADサイモンチームが受講したブートキャンプの成果が大きかったため、DADサブチームが続々と来日予定だと説明した。詳細な内容は不明だったが、世界最上位組織が一斉に動くほどの成果が出ていることだけは確実だった。斎賀は、代々木のブートキャンプが世界規模の争奪戦になると予測していた。
〈収納庫〉の脅威的性能
鳴瀬は〈収納庫〉の詳細を報告した。容量は二百トン以上、しかも限界未確認であり、内部では時間の流れまで変化している可能性があった。斎賀は、その性能がISS建設や軍事運用すら変革しかねないと理解し、大きな衝撃を受けていた。
〈マイニング〉の危険性認識
続いて鳴瀬は、〈マイニング〉によって探索者側のイメージに応じた鉱物ドロップが発生する可能性を説明した。実際にDパワーズはダイアモンドをドロップさせており、仮説の信憑性は高まっていた。もし無秩序に利用されれば、地球規模で鉱物資源バランスが崩壊しかねないため、未確定層への侵入制限が必要だと判断された。
セーフエリア割り振り制度改革
営業一課による無責任な運営で管理課が限界に達していたため、斎賀は区画割り当て方式の変更を決断した。区画を「特別区画」と「一般区画」に分け、一般区画は協賛企業限定の入札制へ移行する方針だった。これにより、管理課が個別調整地獄へ巻き込まれる状況を改善しようとしていた。
専任管理監報酬の衝撃
移動中、斎賀は専任管理監制度について鳴瀬へ説明した。専任管理監の賞与は担当パーティがJDAへもたらした利益の一・六パーセントであり、Dパワーズは〈異界言語理解〉だけで四百億円超の利益を生み出していた。その結果、鳴瀬の賞与は七億円規模になる見込みだと判明し、鳴瀬は金額以上に周囲から妬まれることを恐れていた。
国家機密級情報の共有
鳴瀬は外濠公園で、通常ルートでは送れなかった資料を斎賀へ直接手渡した。そこには、「地球の同胞諸君に告ぐ」と題された碑文や、ネバダ実験とダンジョン発生の関係が記されていた。さらに、三十一層で遭遇したタイラー博士が、ダンジョンによって再構成された存在だという話も共有された。
ザ・リングと異世界ゲート仮説
斎賀は、アメリカ軍管理下にある唯一のダンジョン「ザ・リング」が、ネバダ実験現場に形成されたものではないかと推測した。それが異世界へのゲートだとすれば、アメリカはすでに重要情報を握っている可能性があった。しかし一方で、アメリカ最強クラス探索者たちが代々木へ集中している現状とも噛み合わず、状況全体に強い不自然さを感じていた。
デミウルゴスの目的
報告には、ダンジョンの向こう側に存在する「デミウルゴス」の目的が、人類への奉仕だと記されていた。斎賀は、それが侵略SFの導入か新興宗教の教義にしか見えないと評した。しかし、もし事実だとしても、意思疎通方法も対価も不明であり、現時点では判断不能だった。
Dパワーズへの世界的警戒
斎賀は、各国諜報機関がDパワーズへ接触を試みている現状を説明した。海外ではすでにDパワーズは「魔法使い」と呼ばれ、危険なVIP扱いされていた。問題を起こした工作員を、本人たちが当局へ直接通報する例まで出ており、鳴瀬はその異常さに驚いていた。
ダンジョン小麦の異常成長
一方、代々木八幡の事務所では、芳村と三好がダンジョン産小麦について議論していた。代々木二層で育てていた柳久保という品種は、常識外れの速度で成長し、すでに収穫可能になっていた。さらに、収穫後に再び同じ小麦がリポップする現象まで確認され、二人は世界の食糧事情を根本から変える可能性を感じていた。
ウケモチ・システム構想
三好は、自動収穫機を循環運用する「ウケモチ・システム」を提案した。試算では、一台で年間三万トン以上の小麦を生産でき、日本全体の国産小麦生産量すら数十台で賄える計算になった。芳村は、その効率が既存農業を崩壊させかねないと理解し、巨大企業や既得権益との衝突を危惧していた。
ダンジョン内工業化への着想
二人はさらに、セーフエリアを単なる休憩所ではなく、生産工場として利用できるのではないかと考え始めた。ダンジョン産木材や高純度インゴットを用いれば、ダンジョン内で素材採取から加工まで完結する工業体系すら成立し得た。芳村は、それが宇宙開発以上の産業革命になる可能性を感じていた。
漆原との接触
三好は、自衛隊の漆原へ電話をかけ、ダンジョン内木材研究について質問した。漆原は、「グレン・ランバージャック」と呼ばれた木材研究の資料を送ると約束した。さらに三好は、横浜の津々庵へ遊びに来ないかと誘い、漆原は即座に了承した。電話を終えた漆原は、Dパワーズの連絡先が極めて危険な情報であることを改めて実感していた。
グレン・ランバージャック資料の発見
資料によれば、ダンジョン産木材自体に特別な性質はなかったが、ダンジョン内木材で作られた看板はスライムに捕食されないことが確認されていた。芳村たちは、ダンジョン素材をダンジョン内で加工すれば、工業設備すら維持できる可能性に気付いた。さらに、ダンジョン産鉄インゴットが超高純度鉄である可能性も浮上し、二人はセーフエリアを利用した工業化構想へ思考を広げていった。
二〇一九年一月二十二日(火)
仮面の男への思索
横浜騒動後の報告を終えた君津伊織は、休養日の朝に習志野駐屯地で走りながら、代々木深層で遭遇した仮面の男について考えていた。彼は伊織を救った後、礼を言う間もなく姿を消していた。
伊織は周囲に聞き込みをしたが、誰も男の正体を知らなかった。隊員たちは、彼が強力なモンスターをものともせず伊織の元へ歩いてきたことから、ダンジョン管理者だと言われても納得しそうだと語っていた。サイモンだけは何か知っているような態度を見せたが、問い詰めても明確には答えなかった。
〈超回復〉による手足の再生
伊織は、自身のDカードに追加されていた〈超回復〉について考えていた。WDAデータベースでは疲労軽減や小傷の高速治癒程度の効果しか記されていなかったが、伊織自身は失われた手足を瞬時に再生されていた。
三十二層セーフエリアで、伊織は鋼に右手足が切断され復元されたことを説明していた。鋼は衣服やバイタルチェックデバイスの状態から、切断後に生えたとしか考えられないと判断していた。
ランク7ポーションを超える可能性
鋼は当初、ランク7級回復手段を疑ったが、伊織は使われたのが〈超回復〉オーブだったと明かした。鋼は、欠損部位まで復元する効果に衝撃を受けた。
さらに鋼は、印欧社交界で噂されていた「日本の魔法使い」の話を思い出した。何年も前の傷や欠損まで完全修復された女性の噂が本当なら、〈超回復〉はランク7ポーションすら超える可能性があった。
情報秘匿の理由
伊織は、そんな効果があるならWDAのスキルデータベースで大騒ぎになっているはずだと疑問を抱いた。しかし鋼は、騒ぎになっていないことこそ、報告者が情報を伏せている証拠だと考えた。
〈超回復〉が公になれば、世界中の富豪や企業が代々木へ押し寄せ、血で血を洗う争奪戦になる恐れがあった。鋼は、それが〈マイニング〉以上に危険な情報だと見ていた。
査問の可能性
その後、伊織のもとへ鋼が現れ、〈超回復〉オーブを受け取った件で査問話が出ていると告げた。問題視されていたのは、収賄というより国家公務員倫理規程違反の可能性だった。
直近で〈超回復〉が五十億円以上で落札されていたため、極めて高額な利益供与と見なされかねなかったのである。
伊織の反論
伊織は、自分が仮面の男へ職務上の便宜を図ったわけではなく、そもそも正体すら知らないと反論した。また、オーブがなければ自分は公務災害で退官していた可能性が高く、自衛隊側こそ大きな利益を受けているとも主張した。
さらに、現行解釈ではスキルオーブは完全な動産ではなく、無償使用は贈与や譲渡にあたらないという見方も確認していた。
寺沢への相談
鋼は、理屈としては通る可能性があるとしつつも、正式な査問前に寺沢二佐へ相談するよう勧めた。調査の焦点は、伊織自身ではなく、オーブを使った仮面の男の身元に向かう可能性が高かったためである。
伊織はその助言を受け入れた。彼女は世界ランク十八位の日本最上位探索者であり、自衛隊にとって失うには大きすぎる存在だった。鋼は、今の時期に伊織を失うわけにはいかないと考えていた。
キャシーの〈マイニング〉取得
一方、代々木八幡の事務所では、キャシーが〈マイニング〉オーブを取得したと報告に来ていた。しかし問題は、そのオーブの使用者を巡ってDADとDoDの間で政治的対立が発生していたことだった。
サイモンは、上層部の正式決定までオーブをDパワーズへ預けたいと申し出た。三好は即座に契約書を用意し、DAD側の〈マイニング〉も一週間、Dパワーズ管理下に置かれることになった。
二十一層攻略の前倒し
サイモン帰還後、三好はアメリカ側使用者が代々木で〈マイニング〉検証を行う可能性を指摘した。芳村は、彼らに先を越される前に二十一層探索を進める必要があると判断した。
そのため六条たちへ連絡を入れ、予定を前倒しして四日間規模の探索計画を立て始めた。
JDA漏洩と最新マップ
後から訪れた鳴瀬は、JDA常務の瑞穂がオーブ契約内容を議員との懇談会で漏らしていたことを説明した。その情報がアメリカ側へ伝わり、サイモンが鎌をかけてDパワーズから詳細を引き出したのだと三好は分析した。
鳴瀬はさらに、自衛隊探索分を含む未公開マップデータを提供した。これはDパワーズがJDAへ提供している詳細3Dマップの見返りでもあった。
セーフエリアと〈マイニング〉制限
鳴瀬は、モニカがセーフエリアを古いドルイド用語で「towen」と表現していたことを伝えた。それは儀式や生贄の聖域を意味する言葉であり、芳村は不吉さを覚えつつも、現代の探索者にとっての聖域なのかもしれないと考えていた。
最後に芳村たちは、JDAへ〈マイニング〉使用制限の早期発表を依頼した。鳴瀬は、六条たちの使用についてはJDA許可済み扱いにすることを了承した。
二〇一九年一月二十三日(水)
氷室経由の接触
吉田は、カメラマンの城から「ザ・ワイズマン」側から連絡が来たと聞き、赤坂の喫茶店へ急行していた。実際の連絡主は氷室というディレクターであり、以前石塚の友人として話題に出ていた人物だった。さらに彼は、Dパワーズ記者会見をセッティングした張本人でもあった。
城は、Dパワーズへ関わった結果、氷室がまるで「悪魔に仕える司祭」のようになっていると評していた。
氷室の異常な変化
氷室は、Dパワーズ関連で各方面から接触を受けていたにもかかわらず、どれほど好条件を提示されても全て拒絶していた。かつては「火の玉リュージ」と呼ばれる突撃型ディレクターだった男が、異様なほど慎重になっていたのである。
その態度は、Dパワーズと接触したことで何か恐ろしいものを知ってしまったようにも見えていた。
番組協力の提案
氷室経由で届けられた内容は、条件付きならDパワーズ側が番組制作へ協力するというものだった。吉田は、これで斎藤や仮面の男を番組へ絡められると興奮した。
しかし城は、仮面の男を扱うこと自体が危険だと強く警戒していた。
仮面の男映像を巡る対立
吉田は、仮面の男の映像をCGや代役を用いて再現し、番組へ組み込もうとしていた。だが城は、実在する人物をやらせのように再現する危険性を指摘した。
吉田は、もし本人から抗議が来れば逆に話題になると考えていたが、城はその発想に強い不安を抱いていた。
追い詰められた吉田
吉田は、自分たちには後がないと語った。スポンサーや企画上の事情もあり、大型番組を成功させなければならなかったのである。
城は、そこまで追い詰められているのは吉田個人ではないかと思ったが、既に深く関わってしまった以上、一蓮托生だと理解していた。
協力条件の意味
提示された条件は、単なるモンスター討伐番組ではなく、実験や検証を主体とした方向性だった。吉田自身も、現代視聴者には受けると感じていた。
しかしその内容は、スポンサー企業の権利や従来の制作常識を侵食するものでもあり、吉田は新たな問題を抱え込むことになった。
斎藤出演の既成事実
会話の途中、城は重要な矛盾へ気付いた。もし斎藤の出演が未決定なら、三好梓側から協力条件が送られてくるはずがないのである。
つまり、吉田の知らないところで、既に斎藤側は出演を了承している可能性が高かった。吉田も、その事実へようやく気付き始めていた。
斎賀から届いた危険な報告
市ヶ谷の防衛省では、寺沢がJDAダンジョン管理課長・斎賀から送られてきたメールを読んでいた。添付されたテキストには、ダンジョンの目的や異世界との接触といった常識外れの内容が記されていた。
しかもそれは暗号化すらされておらず、寺沢は、あえて平文で送ることで「本物か罠か」を判断させる構図になっていると理解した。
〈異界言語理解〉再来への警戒
寺沢は、この状況が〈異界言語理解〉発見時と同じ構図だと感じていた。内容は荒唐無稽でも、もし事実だった場合の影響が大きすぎるため、各国は無視できなくなるのである。
もし日本がダンジョンの向こう側と最初に接触した国家なら、世界秩序そのものが揺らぎかねなかった。
鋼と伊織の来訪
そこへ、鋼一曹と君津伊織二尉が訪れた。寺沢は、妙に堅苦しい鋼の態度を笑い飛ばしながら二人を迎え入れた。
伊織は、寺沢と鋼が想像以上に気安い関係であることに内心驚いていた。
査問問題の共有
鋼は、伊織へ査問話が出ている件を説明した。寺沢は、その内容で懲罰決議を行うのは無理があると即座に判断した。
しかし査問を動かしているのが防衛省人事教育局、あるいはそこへ影響力を行使できる存在なら話は別だった。
本当の狙い
鋼は、この件で本当に狙われているのは伊織本人ではないと分析した。伊織を排除しても防衛省に利益はなく、得をするのは彼女を退職後に確保したい企業や組織だけだからである。
そのため、真の調査対象は〈超回復〉を使った仮面の男ではないかと推測した。
仮面の男の異常性
寺沢は、伊織の報告書を初めて読んだ時、小説と勘違いしそうになったと語った。しかし実際には映像記録まで存在していた。
鋼も、デスマンティスやキメイエスを子供扱いするように倒していた仮面の男の異常さを改めて説明した。
ダンジョン管理者説
鋼は、現場では仮面の男がダンジョン管理者ではないかと噂されていたことまで明かした。伊織はさすがにそんな話を報告書へ書くわけがないと否定したが、鋼は、それほど現実離れした存在だったと強調した。
DAD説への疑問
伊織は、サイモンの態度から仮面の男がDAD関係者ではないかと考えていた。しかし鋼は、それに否定的だった。
残されていたマントが、防御力皆無の普通の布だったからである。合理主義のDADが、あのような趣味性の強い装備を採用するとは考えにくかった。
キメイエス戦の真相
伊織は、キメイエス討伐は自分へ譲られたものだったと説明した。仮面の男は、〈超回復〉で彼女の手足を再生した後、「倒したいか」と問い掛け、鉄球を渡して準備を指示していた。
光の柱が上がった瞬間に攻撃するよう命じられ、戦況自体は完全に彼が支配していたのである。
鉄球調査と査問の結論
寺沢は、その鉄球が重要な手掛かりになる可能性を考え、回収されているなら探してほしいと頼んだ。マントは普通の布でも、鉄球には加工設備や素材的特徴が残っているかもしれなかった。
最終的に寺沢は、査問について過度に心配する必要はないと結論付けた。調査側の目的は仮面の男の情報収集であり、伊織を処分することではないと見ていたからである。
伊織は礼を述べ、鋼と共に部屋を後にした。廊下へ出た鋼は、叩き上げらしい見事な所作で帽子を被り直し、模範的な敬礼をして寺沢へ別れを告げた。
二〇一九年一月二十四日(木)
六条小麦の有給取得
出発当日、六条小麦は強引に有給を取得し、高いテンションのまま代々木八幡事務所へやって来た。二十層以降の探索には最低四日必要であり、平日の休暇取得が不可欠だったのである。
彼女は仕事中も探索のことばかり考えていたらしく、GIJ側から愚痴まで届いていた。
ダイア鑑定と六条の専門知識
芳村は以前ドロップしたダイアモンドを六条へ見せた。六条は即座に鑑定士としての顔を見せ、カラーグレードやクラリティ、カットの特徴まで詳細に分析した。
特にカットについては、ヨーロッパ貴族好みの「ブリリアンス重視」の理想主義的なカッターによるものだと推測していた。芳村は、その特徴自体がダンジョン産宝石の証拠になりうると考えていた。
ロザリオへの誤解
ロザリオが現れると、六条はその羽色を「スペサルティンガーネット」だと興奮気味に分析し始めた。しかし芳村には専門用語がほとんど理解できなかった。
三好はロザリオを「元メイド」と紹介し、六条はドゥルトウィンと同種の存在だと理解していた。
斎藤涼子への注目
三好は、斎藤涼子がオリンピック強化指定選手候補として話題になっているニュースを芳村へ見せた。記事には「全部師匠のおかげです」という見出しまで付いており、芳村は思わず吹き出していた。
さらに当人の斎藤から電話が入り、騒動の真相が語られ始めた。
アーチェリー騒動の真相
斎藤は映画撮影中、余興として七十メートルラウンドへ参加した結果、常識外れの記録を叩き出してしまった。さらに彼女は「ダンジョンにはこれくらいできる人が他にもいる」と発言してしまい、業界全体を混乱させていた。
本人は、突然アーチェリー界へ割り込む形になったことへ後ろめたさを感じていた。
ダンジョン特訓という建前
斎藤は急激な成長を説明するため、「師匠の下でダンジョン特訓を受けた」という設定を既成事実化していた。実際には、彼女が弓を始めたのは数か月前であり、それ以前の競技経験も存在しなかったため、通常の説明では納得されなかったのである。
芳村も、ダンジョン訓練以外に合理的説明は難しいと認めていた。
芸能活動とのズレ
斎藤は、本来女優を目指していたにもかかわらず、アーチェリーやダンジョン関連ばかり注目される現状へ違和感を抱いていた。
スポーツ選手扱いされ続ける未来にも不安を感じており、テレビ番組で見世物のように扱われることを嫌がっていた。
御劔の話題と混沌
御劔がニューヨークでファッションウィーク準備をしていると聞き、三代絵里は大きく反応した。
さらに三好が、御劔やアーシャ、斎藤、美晴らを「芳村の彼女候補」と勝手に列挙し始めたことで場は混沌となった。芳村は三好へチョップを落として制止したが、三代は芳村の人脈の広さに驚いていた。
ブートキャンプ応募者の異変
三好はブートキャンプ応募者一覧を芳村へ見せた。そこにはWDAカード取得直後の女性探索者が大量に並んでおり、斎藤や御劔の影響で、スポーツ・芸能関係者が大量流入していることが判明した。
芳村は、素人が軽率にダンジョンへ入ろうとしている現状へ危機感を抱いていた。
探索スタイルの確認
芳村は出発前、六条と三代へ、どのような探索者スタイルを目指すか確認した。
三代は弓主体に加え、物理系魔法を組み合わせた万能型を希望した。一方、六条は自ら戦うより、従魔に戦わせる方向を望んでいた。
芳村は、その構成なら後衛中心でも十分成立すると判断していた。
異常なランキング上昇
三代は、自身のランキングが三十六万位台から一気に千位台へ上昇していることに気付き愕然としていた。
六条も既に千七百位台へ到達しており、一般探索者から見れば完全にトップ層だった。芳村は、Dパワーズの育成効率が異常領域へ達していることを当然のように受け止めていた。
新たな育成開始
芳村は、六条には犬型従魔中心の構成を与え、三代には弓と魔法を組み合わせた万能型育成を進める方針を固めた。
その後、三好が用意した「地獄の飲み物」を二人へ飲ませ、ステータス強化を実施した。二人は苦味に悶絶していたが、芳村は静かにステータス操作を進め、能力値を大幅に底上げしていた。
ガーギル社の危機感
アメリカ・ミネソタ州では、穀物メジャー「ガーギル」CEOドナルド=マクレーンが、WDA知財局から流出したレポートを読んでいた。
内容は「ダンジョン内作物のリポップと、現行作物のダンジョン内作物への変換」であり、既存農業システムそのものを崩壊させかねない代物だった。
既存農業システム崩壊への恐怖
ドナルドは、ダンジョン農業が農地、農薬、農機具、労働力の全てを不要にする可能性を見抜いていた。
特にF1種子や遺伝子組み換え作物ビジネスは、一度収穫できた作物が無限再生産される可能性によって、根本から崩壊しかねなかった。
圧倒的生産効率
試算では、自動収穫システム一台で年間八万八千トン規模のトウモロコシ生産が可能だった。しかも土地を傷めず、気候変動にも左右されないため、環境問題すら回避できる構造だった。
ドナルドは、この新農業システムが既存産業を根底から破壊すると確信していた。
物流支配への転換
真正面から潰すことは不可能だと判断したドナルドは、ダンジョン周辺物流用地の先行買収へ方針転換した。
既存流通網維持と、新システム適応の両方を進めることで、どちらへ転んでも生き残る戦略を取ろうとしていた。
ダンジョン産作物へのネガティブキャンペーン
さらにドナルドは、ダンジョン産作物を「地球外由来の危険物」と印象付けるネガティブキャンペーン展開を命じた。
環境団体や活動家を利用し、研究や普及そのものを妨害する戦略だった。
代々木ダンジョンへの出発
芳村たちは、三好を先頭に、三代、六条、芳村がしんがりを務める縦隊で探索を開始した。
芳村のバックパックは見た目ほど重くなかったが、最大化されたステータスによって装備への負荷自体は極めて高く、乱暴に動けば破損しかねない状態だった。
十層までの高速突破
三好は十層までは探索ではなく移動優先だと宣言し、最短距離突破を指示した。
アルスルズが影から敵を拘束していたため、モンスターたちは接近すらできず、三代は矢を撃つだけ、六条は観光気分で歩くだけという異常な攻略状態になっていた。
九層での昼食
十層手前では、階段付近で昼食が取られた。
芳村が取り出した洋風幕の内弁当はほのかに温かく、三代は不思議がっていた。三好は、元ビストロシェフが営む弁当店への特注品だと説明し、料理論まで語り始めていた。六条は会話そっちのけで夢中になって食べていた。
ダンジョン用簡易トイレ
食後、芳村は「ルー」と呼ばれるダンジョン用簡易トイレを設置した。使用後はダンジョン内へ放置しておけば自然消滅する仕組みだった。
三好は、女性陣が用を足している間は周囲警戒を徹底するよう芳村へ命じ、従魔たちも芳村を厳重警戒していた。
十層到達と召喚準備
十層へ到達した六条は、アンデッド層特有の腐臭へ顔をしかめていた。
階段周辺には自衛隊がいたため、芳村たちは少し離れた場所へ移動し、そこで召喚準備を始めた。
スキルオーブ授与
芳村は三好経由で、六条と三代へスキルオーブを渡した。
三代はオーブカウントから、これが直前に取得された物だと気付き混乱していたが、三好は「難しいことは考えない」と強引に流していた。
人間をやめる儀式
三好は、オーブ使用時には「俺は人間をやめるぞ!」と叫ぶべきだと妙な指導を始めた。
その結果、偶然通りかかった探索者たちに怪しまれる騒ぎになったが、三代が必死に誤魔化し、どうにか切り抜けていた。
アヌビス召喚
六条が最初に召喚したのは「アヌビス」と名付けられた黒犬だった。しかしその犬は突然人語を話し始め、一同を驚愕させた。
アヌビスは高い知性を持ちながらも尊大で、特に芳村へ辛辣だった。一方で撫でられるのは大好きだった。
ガルムとライラプス
続いて召喚されたガルムは、アヌビスの兄貴風な態度を嫌がり、本気で噛みついていた。
さらに「どんな獲物も逃さない」神話由来の犬ライラプスまで召喚され、芳村たちは六条のイメージ力へ感心していた。
クーとの再会
最後に召喚されたクーだけは神話由来ではなく、六条が幼少期に飼っていた黒ラブラドールだった。
六条は、死に目にも会えなかった愛犬と再会したような気持ちになり、複雑な表情でクーを撫でていた。
マイトレーヤ結成
移動中、芳村は二人まとめて「マイトレーヤ」という名前で登録していることを確認した。
その名は「三」と「六」から取られたもので、「友情ある者」という意味も含まれていた。芳村は、仲良く探索する二人を見て、その名は意外と似合っていると感じていた。
十一層での注目
十一層では、初心者丸出しの装備が目立ち、自衛隊通信拠点で強い関心を集めてしまった。
芳村たちはマントを装備して誤魔化しながら進み、十七層まで順調に攻略を続けていた。
ウストゥーラと影潜り
六条は神話由来の犬たちをまとめて「ウストゥーラ」と呼んでいた。
犬たちはハイディングシャドウを習得し、影の中へ潜れるようになっていた。アヌビスは自分だけ最初から使えたと誇っていたが、実際の指導役はアルスルズだった。
十八層の変貌
十八層へ到達すると、そこは大量のタルチョが並ぶエベレストのベースキャンプのような光景へ変貌していた。
芳村たちは岩陰へテントを設営し、アルスルズたちに周囲警戒を任せながらBBQと焼きそばの夕食を始めていた。
渋チーとの衝突
食事中、渋谷チートリアルの喜屋武が六条へ馴れ馴れしく接触したことで、ウストゥーラ側が敵意を示した。
黒い包帯状の影が喜屋武を拘束したものの、芳村がポーションで治療したことで事態は収束した。アヌビスは、主へ手を出した者が死んでも当然だと語っていた。
キングサーモンとの邂逅
そこへ現れたのが、世界的探索者ランサム・マルソン、通称キングサーモンだった。
彼はアーシャの奇跡的回復や「日本の魔法使い」の噂を把握しており、代々木へ世界中の探索者や富豪が注目している現状を語った。
致死の指輪の鑑定
ランスは三好へ「致死の指輪」の鑑定を依頼した。
その効果はSP比率による即死確率付与であり、強敵相手にも僅かな確率で即死を発生させる危険なアイテムだった。
スキル欄拡張
深夜、芳村と三好は〈魔法耐性(1)〉を使用し、スキル欄がページ切り替え式へ変化した。
二人は、スキル上限が八個ではないことを確認し、将来的なスキル偽装の可能性まで考え始めていた。
地下神殿での暴走
その夜、芳村は単独で地下神殿へ向かい、ゲノーモスの群れへシリウス・ノヴァを連発した。
大量の爆発と笑い声は十八層全体へ響き渡り、各国探索者たちは、立ち入り禁止区域で活動する存在を「魔王」のようだと恐れていた。
二〇一九年一月二十五日(金)
魔王騒動の余波
翌朝、十八層キャンプでは、昨夜の地下神殿騒動が「魔王出現」の噂として広がっていた。各国探索者たちは、バティアン地下の立ち入り禁止区域をどう扱うかで議論を続けていた。
芳村は、すでに危険性を警告済みであり、それ以上は自分たちの責任ではないと割り切っていた。誰かを助けるために仲間を危険へ晒すような英雄的行為は、自分には無理だと冷静に考えていた。
大量討伐と力への酩酊
芳村は、昨夜だけで〈マイニング〉三個に加え〈地魔法〉〈暗視〉〈器用〉を獲得したと明かした。五百体以上のゲノーモスを短時間で殲滅した結果だった。
しかし同時に、圧倒的な力を振るう快感へ酔っていた自分自身へ不安も抱いていた。シリウス・ノヴァを連発する中で、力そのものが体へ馴染むような感覚を覚えていたのである。三好は、それを脳内麻薬に近い状態ではないかと推測していた。
十八層の優雅な朝食
芳村たちは、サンドイッチと果物、淹れたてのコーヒーによる朝食を楽しんでいた。危険な深層とは思えない優雅な光景に、三代絵里はDパワーズがダンジョン飯へ異常な情熱を注いでいると呆れていた。
そこへ渋谷チートリアルの林田が現れ、昨夜の騒動を気にして様子を見に来たと語った。芳村たちは、〈マイニング〉目的ではなく、さらに下層へ向かう予定だと説明していた。
世界ランク二位との遭遇
十八層から下層へ向かう途中、一行は異様な気配を放つ男を目撃した。それはロシアの世界ランク二位、ドミトリー・ネルニコフだった。
彼はバティアンを睨みつけ、今にも単独突撃しそうな危険な空気を漂わせていた。芳村は、このままではエンカイへ挑み命を落とすと判断し、三好へ忠告を任せた。
三好はワイズマンのような口調で、今の彼では死ぬだけであり、まだステータスが足りないと告げた。ドミトリーは無表情のまま聞いていたが、最後まで三好の背中を見つめ続けていた。
十九層の氷雪世界
十九層へ下りると、一面の雪景色が広がっていた。十八層の荒涼とした岩場とは対照的な白い世界に、六条小麦は感嘆していた。
この階層では積雪エリアを避けるようにルートが設定されており、既知ルートから外れること自体が危険だった。数メートル級の新雪へ埋もれれば、それだけで命に関わるためである。
スノーアルミラージとの遭遇
雪原に点在する小山は、雪へ潜ったスノーアルミラージだった。ガルムが近づいた瞬間、巨大なウサギ型モンスターが飛び出して攻撃してきた。
しかしガルムは突撃を容易く回避し、そのまま首筋へ噛みついて仕留めていた。十九層のルート上では、このモンスターが主な脅威となっていた。
本番開始の宣言
二十層へ到達すると、芳村はマイトレーヤの二人へ、今回の探索はここからが本番だと告げた。
芳村は、鉱石ドロップには探索者の意識が関与している可能性があると説明した。すると六条小麦は、好きな宝石を自由に選べるのではないかと興奮し、雪原ではしゃぎ始めていた。
〈マイニング〉と〈物理耐性〉の付与
芳村は、二人へ〈マイニング〉を与えた。三代絵里は、オーブカウント時間から、それが直前に取得された物だと気付き驚愕していた。
さらに芳村は、VIT不足を補うため〈物理耐性〉まで追加で付与した。三代は、芳村がスキルオーブを自由生成できるのではないかと疑い始めていたが、芳村は否定していた。
二十一層への到達
準備を終えた一行は、ついに二十一層へ到達した。そこは湿地帯であり、階段周辺はボグ状の斜面になっていた。
三好は、この層に出現する巨大蛇ラブドフィスパイソン、異形のヒキガエル・ウォーターリーパー、巨大トンボ・ウィッチニードルについて説明していた。
宝石選択に悩む六条小麦
しかし六条小麦は、モンスター説明などほとんど聞いておらず、どの宝石をドロップさせるべきか悩み続けていた。
コランダム系、石英系、ガーネットなど候補が増え続け、ついには思考停止状態へ陥っていた。芳村たちは、その間モンスターを避けながら時間稼ぎを続けていた。
最初のドロップ
ついにラブドフィスパイソンが接近すると、ライラプスが瞬時に頭部を噛み砕いた。その瞬間、六条小麦の足元へ水晶クラスタがドロップした。
六条は、それを見て幼少期の思い出を蘇らせていた。父と訪れたミネラルフェアで、迷子になった際に鉱物商から譲られた小さな水晶クラスタ「マグメル」の記憶だった。
『宝石の原石』への収束
その後もウォーターリーパーやウィッチニードルから鉱石がドロップした。六条は、それらをソーヤブルダイアやタンザナイト原石だと即座に見抜いていた。
芳村は、一層につき一種類しか鉱物は出ないと思っていたため驚愕していた。六条が最後まで一種類へ絞り切れなかった結果、「宝石全般」という大分類へ収束し、『宝石の原石』というカテゴリが成立していたのである。
宝石天国となった二十一層
その後もウストゥーラたちは次々と宝石原石をドロップさせ、二十一層は宝石だらけになっていった。
六条が収束させた原石には、一つ一つ異なる個性が存在していた。芳村は、それらが六条自身の価値観や嗜好を反映した結果なのだと理解していた。
二十二層の貴金属ドロップ
二十二層では、銀、プラチナ、パラジウム、ロジウムなどの貴金属インゴットが次々とドロップした。
この階層で収束したカテゴリは『貴金属』だった。金だけが出現しないことから、五十層限定資源として制限されているのではないかという冗談まで飛び出していた。
資源収束への応用検討
芳村と三好は、この現象を国家的資源確保へ応用できないか議論していた。
芳村は、曖昧なイメージではなく、陽子数や原子構造そのものをイメージすれば、ランタノイドなどの希少資源も収束可能なのではないかと考えていた。三好は大胆な発想だとしつつも、理論的にはあり得ると認めていた。
六条小麦の決断
二十三層手前で、六条小麦は今回の探索をここで終えると申し出た。
自分のイメージが宝飾系へ偏りすぎていることを理解しており、さらに下層ではウストゥーラだけでは危険だと判断していたのである。アヌビスが反論しなかったことも、その危険性を裏付けていた。
マイトレーヤ継続決定
三代絵里は、六条の離脱でマイトレーヤが解散するのではと不安を抱いていた。しかし六条は、今後も探索を続ける意思を明確に示した。
彼女は、三代との探索そのものが非常に楽しかったと語り、二人は正式な探索者契約を結ぶ方向でまとまっていた。
イグルー一号の公開
芳村は、今後の活動拠点として二十一層へ「イグルー一号」を設置する案を示した。
三代が理解できず困惑していると、三好が「本邦初公開」と言ってイグルー一号を呼び出した。巨大な円柱状建築物が突如として出現し、三代は完全に呆然としていた。
未踏区域への進出
その後、一行は二十一層の未踏区域へ進出した。六条は英国のピーク・ディストリクトを思い出しながら、クーと共に上機嫌で歩いていた。
丘を越えた先には、美しい湖畔地帯が広がっていた。オレンジ色の実を付けた木々が湖まで続き、その静かな風景に芳村たちは感嘆していた。
ダンジョン産果実への疑念
三好が収穫した果実は、高級柑橘「せとか」に酷似した味をしていた。芳村は、それが単なるオレンジではなく、食べる者の理想的な味覚へ収束している可能性を指摘した。
さらに三好は、代々木ダンジョンそのものが探索者たちの記憶や印象によって形成されている可能性を示唆していた。
湖に現れた異変
湖面では魚のライズのような現象まで確認された。
ダンジョンには本来、生態系が存在しないはずである。六条が英国の自然風景や物語世界を強くイメージしていたことから、その想像が湖や魚類生成へ影響した可能性が示唆されていた。
ダンジョン生態系への不安
芳村たちは、もし魚類や植物が成立するなら、人間活動や生殖はどう扱われるのかという問題へ行き着いていた。
ダンジョンにはリポップや非成長といった特殊法則が存在しており、そこで生まれた生命がどうなるのかは不明だった。芳村は、セーフエリアへ宿屋ができた時点で、この問題は避けられないと感じていた。
イグルー一号の設置
三好は、丘の上へイグルー一号を正式展開した。内部には冷蔵庫、水、寝室、シャワー、監視設備まで揃っていた。
芳村は〈水魔法〉オーブも追加で渡し、今後はマイトレーヤ自身が二十一層で活動を継続するよう指示した。アヌビスも、下層やエンカイへ近付かなければ安全だと断言し、護衛を引き受けていた。
二十三層への出発
全ての準備を終えた後、芳村と三好はイグルー一号を後にした。
二人は、ランタノイド収束実験への期待と不安を抱えながら、日没前の二十三層へ向かって駆け出していった。
二〇一九年一月二十六日(土)
報道陣が集まった代々木
代々木ダンジョンのエントランスは、Dパワーズのブートキャンプ取材を狙う報道陣でいつもより騒がしくなっていた。斎藤涼子の件でDパワーズの知名度が急上昇したため、有名人が参加するのではないかという憶測も広がっていた。
参加者を見つけられない取材陣
ブートキャンプはプレオープン日であること以外、詳細な場所や参加者情報が公開されていなかった。そのため報道陣は、入ダンしようとする探索者へ片っ端から声を掛けていた。しかし参加者かどうかを見分ける方法はなく、八尾は成果の出ない取材に苛立っていた。
WDAカードによる足止め
ダンジョン内部へ入るにはWDAカードが必要であり、JDA職員は取材目的でも例外を認めなかった。八尾は事前にカードを取得していたが、同行カメラマンが未取得だったため、映像撮影の段取りは大きく崩れかけていた。
高田瀬里奈の発見
その時、スポーツ畑のカメラマンが青菱大学陸上部の高田瀬里奈に気付いた。彼女は翌日の大阪国際女子マラソンに出場予定であり、本来なら既に大阪入りしているはずだった。隣には同じく長距離ランナーの不破もいた。
ブートキャンプ参加疑惑
八尾は、高田瀬里奈と不破が代々木にいる理由から、二人がブートキャンプ参加者ではないかと察した。彼女は慌ててカメラマンを引っ張り、二人へ接近していった。
二〇一九年一月二十八日(月)
大阪国際女子マラソンで世界新記録
朝のワイドショーでは、高田瀬里奈による大阪国際女子マラソン優勝が大々的に報じられていた。
高田は二時間十四分十八秒という驚異的な記録を叩き出し、十五年間破られなかった女子マラソン世界記録を一分以上更新していた。従来の自己ベストを八分以上縮めたためドーピング疑惑まで浮上したが、検査結果に問題はなかった。
ブートキャンプ参加の告白
高田はインタビューで、もし前日から大阪入りしていたなら、この記録は出なかったと語った。
彼女は東京で外せない予定があったと明かし、その正体がDパワーズのブートキャンプ参加だったことが判明した。これにより、ブートキャンプへの注目度はさらに急上昇していた。
ブートキャンプ効果への驚き
テレビを見ていた鳴瀬は、ここまで露骨に効果が現れるとは思っていなかったと驚いていた。
高田瀬里奈と不破正人は以前からダンジョントレーニングを行っており、三好は宣伝効果を狙って意図的に当選させていた。Dパワーズ側はAGIとVITを重点強化しており、その成果が世界記録という形で表面化したのである。
三好の宣伝戦略
芳村は、さすがにやりすぎではないかと呆れていた。
しかし三好は、話題になれば応募者が増えるだけであり問題ないと意に介していなかった。むしろ、これ以上ない宣伝効果だと考えていた。
JDA推薦枠の調整
鳴瀬は続けて、JDA推薦枠の扱いについて相談を持ち掛けた。
三好は、六条小麦のような特殊例ばかり送り込まれても困ると難色を示し、最低探索時間や最低ステータスを条件化する案を提案した。一定基準を満たした探索者だけを推薦対象とする方向で話がまとまっていった。
ステータス計測サービス構想
さらに、翠の工場改装完了を受け、探索者向けステータス測定サービスをJDAで提供する構想まで浮上していた。
これにより、推薦基準の数値化と探索者管理を進める狙いがあった。
ランタノイド分析結果の異常
鳴瀬は、芳村たちが持ち帰ったランタノイド系インゴットの分析結果も報告した。
バナジウムや鉄ですら4N級の高純度だったが、ランタノイド群はさらに異常であり、ICP発光分析や質量分析でも不純物が検出限界以下だった。最低でも8N以上という超高純度金属だったのである。
原子構造イメージ仮説
芳村と三好は、その理由が「原子構造を模式的にイメージしたこと」にあるのではないかと考えていた。
従来の曖昧なイメージではなく、陽子数など数学的・物理学的情報を直接ダンジョンへ伝達したことで、極端な高純度化が発生した可能性があった。
危険性への気付き
しかし芳村は、その技術が極めて危険な領域へ踏み込んでいることにも気付いていた。
もし原子構造指定が可能なら、理論上はウラン235やプルトニウム239のような核物質すらドロップ可能になるからである。
ダンジョン側ルールの存在推測
三好は、コルヌコピアの祝福を使い、集合的無意識へ危険物質禁止ルールを書き込めばいいと冗談交じりに語っていた。
一方で、貴金属ドロップだったにもかかわらず金だけが出現しなかった事実から、既にダンジョン側へ何らかの制限ルールが存在している可能性も示唆されていた。
終章 エピローグ
後日譚
ニューヨーク州 ニューヨーク 国際連合本部ビル
ニューヨークの国際連合本部ビルで出勤したシルクリーは、ネイサンの部屋から漂う甘い香りに気付いた。部屋ではネイサンが床に座り込み、エレクトリックグリドルで何かを焼いていた。
彼は、日本から送られてきた報告書と共に届いたダンジョン産の麦を用いてパンケーキを作っていた。その報告書には、ダンジョン内作物がリポップし、既存作物がダンジョン産作物へ変換される現象について記されていた。
ネイサンは分析結果に問題がなかったことや、ザ・ワイズマンの〈鑑定〉で「食用」と判定されていたことを理由に、自ら試食を行おうとしていた。しかしシルクリーは、〈鑑定〉の基準も不明な以上、それを無条件に信用するのは危険だと指摘した。
パンケーキ試食と異変
ネイサンは焼き上がったパンケーキをシルクリーにも振る舞った。彼女は高カロリーさに呆れつつも、それを完食し、普通のパンケーキより少しもっちりしていると感想を述べようとした。
しかしその瞬間、彼女の目の前に突然何かが現れた。静まり返った空間の中、それは重力に従って床へ落下し、小さな音を立てた。
ネイサンは驚愕しながら、シルクリーがまだDカードを取得していなかったことを思い出した。彼女が拾い上げた物体は、紛れもなく彼女自身のDカードだったのである。
新たな可能性の示唆
ダンジョン産小麦を摂取した直後にDカードが出現した現象を前に、ネイサンは、ダンジョン産小麦には地上の小麦には存在しない特殊な副作用があるのではないかと語った。
その現象が人類にとって救済となるのか、それとも災厄の始まりとなるのか、彼にはまだ判断できなかった。
同シリーズ
Dジェネシス ダンジョンができて3年











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