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Dジェネシス ダンジョンが出来て3年フィクション(Novel)読書感想

小説「Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 04巻」感想・ネタバレ

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Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 04の表紙画像(レビュー記事導入用) Dジェネシス ダンジョンが出来て3年

Dジェネシス3巻レビュー
Dジェネシス5巻レビュー

Table of Contents

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  1. どんな本?
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. ダンジョン探索番組の企画
    2. Dカードチェッカーの開発
    3. 合同会社Dパワーズ設立
    4. 初心者探索者向け訓練施設
    5. スライム討伐と館の検証
    6. Dパワーズの記者会見
    7. さまよえる館の検証
  6. 登場キャラクター
    1. Dパワーズ
      1. 芳村圭吾
      2. 三好梓
      3. アルスルズ(カヴァス、アイスレム、グレイシック、ドゥルトウィン)
    2. JDA(日本ダンジョン協会)
      1. 鳴瀬美晴
      2. 斎賀
      3. 桜井
      4. 坂井
    3. マスコミ・報道機関
      1. 吉田陽生
      2. 石塚
      3. 氷室隆次
      4. 城(環)
      5. 牧村
      6. 春川
      7. 瓜田
      8. 野中
      9. 簔村
      10. 三隅
      11. 菊和
      12. 美川
      13. 桜田
      14. 津田沼
    4. 株式会社常磐医療機器研究所(常磐ラボ)
      1. 鳴瀬翠
      2. 中島
    5. 芸能界・探索者
      1. 宮内典弘(テンコー)
      2. 御劔遙(遙)
      3. 斎藤涼子
    6. アメリカ合衆国関係者(DAD)
      1. サイモン=ガーシュウィン
      2. キャサリン=ミッチェル(キャシー)
      3. メイソン
      4. ジョシュア
      5. ナタリー
    7. ナイトメア/アルトゥム・フォラミニス(深穴教団)
      1. デヴィッド=ジャン・ピエール=ガルシア
      2. サラ=イザベラ=マグダレーナ
    8. 日本政府・関係機関
      1. 某田中
      2. 寺沢
    9. ジェイン家
      1. アーシャ=アーメッド=ジェイン
    10. GIJ(日本宝石学研究所)
      1. 六条小麦
    11. その他
      1. 喫茶店のマスター
      2. サービス・スタッフ
      3. ゴーストたち
      4. 小麦の父親
      5. 鉱物ショップのおじさん
  7. 展開まとめ
    1. 序章 プロローグ
    2. 第05章 合同会社Dパワーズ
    3. 終章 エピローグ
  8. 同シリーズ
    1. Dジェネシス ダンジョンができて3年
  9. その他フィクション

どんな本?

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』は、之貫紀 氏による日本のライトノベル。
この物語は、世界各地に「ダンジョン」が出現してから3年後の世界を描いている。

主人公の芳村は、元々は社畜として働いていたが、ある偶然からダンジョン探索者の世界ランキング1位になる。
彼は退職し、ダンジョンに潜ることを決意するが、手に入れた未知のスキルに振り回され、ダンジョン攻略の最前線に関わることになる。

この作品は、投稿小説サイト「小説家になろう」で2019年6月1日から投稿が開始され、その後KADOKAWAのエンターブレインレーベルより2020年2月から刊行されている。
また、『月刊コンプエース』で平未夜 氏の作画により漫画化され、連載が開始されている。

読んだ本のタイトル

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年04
著者:之貫紀
イラスト:ttl

BOOK☆WALKERで購入

あらすじ・内容

Dパワーズが記者会見!?新たに入手した碑文とUSのスキャンダルとは!?

新たに「さまよえる館」をダンジョン1層に出現させた三好と芳村のDパワーズ。
そこで入手した碑文には、ダンジョンで行方知れずとなった人物のサインが!?
サインの謎を探るうちにDパワーズは
始まりのダンジョン「ザ・リング」に隠されたUSのスキャンダルを知ることに――。

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 04

感想

表紙のモフモフを堪能してるのはキャサリンか?
羨ましい!

アルスルズも成瀬、御剱、斎藤にも認識されて最初は怖がられるが、仕草が可愛いと言われるのはお約束。
召喚主の三好には懐いているが、自身達の世話をしない芳村には愛想が悪いが身内扱いなのも面白い。

大きな出来事は、鑑定を獲得した例の館に再び挑戦。
しかも、スライムを大量に狩って出現させたら。
御剱と斎藤。取材に来ていたテレビ関係者を巻き込んでしまい、映像に残してしまった。
その館では、最初のダンジョンで行方不明になった博士のメッセージが見つかり。
ダンジョンが何故に発生したのか、ダンジョン側の意図はという謎に近づく。

しかもそのキッカケのメッセージが、スター・トレックのクリンゴン語ってのが笑えてしまう。
それを斎藤が読めると言うのが、、

他にも、Dカード取得者がパーティーチャットが出来るようになり、その対応にDパワーズが可能かもしれないとJDAの誰かが外部にリークした結果。

三好の非公開の商用メールに大量の何とかしてくれというメールが大量に届く。
しかも、JDAに世界中の試験を抱えている組織からも問い合わせが来ており、、

その解決策のデバイスをDパワーズが特許を申請する前に作らせて、JDAの誰かが率先してDパワーズの機関損益を与えている状況になっている。

デバイスが完成してどう普及させるかとJDA内で会議をしたら。
業績が上がらないと焦る営業部が脚を引っ張る始末。
どうも次の会長になるため常務が暗躍しているとか何とか、、

さらにオーブのオークションについての説明もJDAの例の常務が勝手に記者会見を開催すると約束してしまい。
三好が遂に世界に知られる事に。
冒頭のカラー絵でパッと見、R.O.Dの読子・リードマン!?って思ったら。
本文でも本人も言ってた。
化けるな。。

その記者会見を氷室にセッティングさせ、司会を成瀬に任せ、オーブ関連の事を聞きたくて集まったマスコミにブートキャンプの事を告知するのも、なかなかに胸のすく思いにさせてくれる。

最後までお読み頂きありがとうございます。

BOOK☆WALKERで購入

Dジェネシス3巻レビュー
Dジェネシス5巻レビュー

考察・解説

ダンジョン探索番組の企画

本作において、ダンジョン探索番組の企画は、元タレントの吉田陽生がテレビ局へ持ち込んだことから始まり、芳村たちや女優の斎藤涼子を巻き込む騒動へと発展していく。本稿では、その経緯と詳細について解説する。

企画の立ち上げとパイロット版の要請
・ヒブンリークスの登場やスキルオーブのオークションにより、ダンジョンへの世間の関心が再び高まっていることに目をつけた吉田陽生は、中央TVのプロデューサーである石塚にダンジョン探索番組の企画を持ち込んだ。
・石塚は、番組改編期の特番や深夜帯のレギュラー枠を狙える可能性があると判断し、検討の材料としてパイロットフィルム(試作映像)の提出を求めた。

探索者の確保と「さまよえる館」の撮影計画
・吉田は番組の案内役兼護衛として、横浜ダンジョンで「ガチャダンマスター」として名を馳せていた探索者・テンコー(宮内典弘)に接触した。
・視聴者にインパクトを与えるため、吉田が撮影ターゲットに選んだのは、JDAが映像を公開した「さまよえる館」であった。
・館の出現条件である「1日に同一モンスターを373体倒す」ことを安全に達成するため、彼らは代々木ダンジョン一層の「スライム」を標的として、元日の早朝から撮影を開始した。

スライム討伐の苦戦と決定的瞬間の撮り逃し
・いざ討伐を始めた吉田やカメラマンの城たちであったが、物理攻撃が効きにくいスライムの討伐ペースが上がらず大苦戦し、スライムを押し出して潰すための「天突き(ところてん突き)」のような器具を買いに走らせる事態に陥った。
・そんな中、偶然にも芳村と三好が別の場所でスライムを373体狩り終えたことで、彼らの目の前に「さまよえる館」が出現した。
・吉田たちは慌てて撮影に向かったが、芳村たちや斎藤涼子らが館からモンスター(アイボール)の群れに追われて飛び出してきた最も重要な瞬間に、城の業務用ビデオカメラがバッテリー切れを起こして停止してしまった。
・吉田が慌ててスマホで撮影したものの、映像はブレておりパイロット版としては不十分な結果に終わった。

斎藤涼子への出演強要と「十層」への挑戦
・なんとか撮れ高を確保したい吉田たちは、不鮮明なスマホの映像を高解像度化し、館から逃げてきた人物の一人が、いま話題の新人女優・斎藤涼子であることを突き止めた。
・吉田は、この「さまよえる館から逃げ出している写真」を交渉材料として使い、ダンジョンでの活動を秘密にしたい斎藤にパイロットフィルムへの出演を半ば強要する形で承諾させた。
・次回の撮影舞台は危険な「十層」に設定された。
・弓を主体とするため十層では戦力にならないと不安に怯える斎藤を守るため、芳村が「探検隊見守り隊」として密かに撮影に同行し護衛を務めることになった。

まとめ
このように、吉田の野心から始まった番組企画は、機材トラブルによる撮影失敗を経て、芸能界で活動する斎藤涼子を巻き込み、芳村たちを再び厄介なダンジョン探索へと駆り立てる結果となっている。

Dカードチェッカーの開発

Dジェネシスの世界において、Dカードチェッカー(Dカード検出デバイス)の開発は、ダンジョンの未知のシステムが現実社会の制度に引き起こした混乱と、それに対する急造の対抗策として描かれている。本稿では、その開発の経緯とそれに伴う騒動について解説する。

開発の背景と着想
・ヒブンリークスでパーティ機能による念話(テレパシー)の情報が公開されたことにより、翌月に控えた大学入試センター試験などをはじめとする各種試験で、念話を用いたカンニング不正が深刻な懸念事項となった。
・試験会場でDカード所持者を特定する手段が存在しない中、JDAダンジョン管理課の斎賀課長は、Dパワーズと常磐ラボが開発していたステータス計測デバイスの特性に着目した。
・このデバイスはDカード非所持者はある値がゼロになるためステータスが計測できないという仕様を持っており、斎賀はこれをDカードの有無を判別するDカードチェッカーとして転用することを発案した。

超短期開発と極端なコストカット
・センター試験まで約20日という極端な時間的制約の中、開発は常磐ラボの中島と鳴瀬翠、そして三好たちによって進められた。
・金型を発注する時間がないため、デバイスの外装には百円ショップで売られている食品用のPPパックが採用された。
・通信部分を省き、Dカードの有無を赤と緑のLEDダイオードで判定するだけの極めてシンプルな構造とした。
・常磐ラボの旧工場を改装して手作業による組み立てを行うことで、1日100台、センター試験までに最大2,000台の製造を目指す体制が組まれた。

情報漏洩対策とトラップの設置
・三好は、JDAや日本中の入試関連部署から突然大量の問い合わせが殺到した不自然さから、誰かが意図的に情報を漏洩し、デバイスを急いで作らせてばらまこうとしているのではないかと推測した。
・そのため、産業スパイによる技術の模倣を攪乱する目的で、あえて最適かつ安価な最新センサーではなく、老舗企業が特許を持つ高価で用途に向かない旧型センサー(D132)を採用した。
・さらにソフトウェア側に無意味なフィルタを大量に仕込むという罠を設計に組み込んだ。

強気の価格設定とJDAの葛藤
・デバイスの原価は4,000から5,000円程度であったが、特急対応の費用や開発者である中島へのバックマージンを考慮し、1台10万円という非常に強気な価格が設定された。
・JDAの鳴瀬美晴は、斎賀課長からの事態の解決を最優先し言い値で決済して構わないという裁量権を背景に、この価格を即決した。
・一方でJDA側は、特許未申請の技術が世に出回ることで海賊版が流通するリスクや、二次試験も含めた限られた台数の割り振り、さらには介入してきた営業部との組織内政治に頭を悩ませることとなった。
・さらにDパワーズ側は、デバイスの技術流出に関する責任をJDAの努力目標とする文言を契約に盛り込み、将来的なトラブルの影響から巧妙に自らを切り離している。

まとめ
Dカードチェッカーの開発は、念話によるカンニングという新たな社会問題に対する迅速な解決策であった。しかし、その裏では極端なコストカットや情報漏洩を逆手に取ったトラップの設置、強気な価格設定など、Dパワーズのしたたかな戦略が展開されていた。また、JDAは海賊版流通のリスクや組織内政治に翻弄されることとなり、急造の対抗策がもたらした複雑な波紋が明確に描かれている。

合同会社Dパワーズ設立

本作における合同会社Dパワーズの設立は、JDAの独断によって設定された記者会見の場を逆手に取り、芳村と三好が自らの事業(探索者支援や技術公開)を世間に認知させるためのターニングポイントとして描かれている。本稿では、その設立と記者会見にまつわる経緯について解説する。

記者会見の強制と会社設立へのすり替え
・年末、JDAの瑞穂常務理事の独断により、マスコミ各社へDパワーズの記者会見が一方的に通達される事態が発生した。
・断りきれない状況に陥った芳村と三好であったが、三好はこの茶番を利用することを提案した。
・パーティとしての会見ではなく、あらかじめ登記申請していた合同会社Dパワーズの設立発表会見という名目にすり替えた。
・これにより、マスコミが期待するオークションの話題を躱しつつ、自社の宣伝を行う方針を固めた。

NPO設立の面倒さとスキルオーブの貸与
・1月6日に行われた会見には、三好が読子・リードマン風の変装(メガネとカツラ)をして登壇し、鳴瀬美晴が司会を務めた。
・三好は会社の目的をダンジョン探索の支援と語り、公益性が高いにもかかわらずNPO法人にしなかった理由を作るのが大変そうだったからとあっさり答えて会場の苦笑を誘った。
・さらに支援の具体例として、超高価なスキルオーブ(〈マイニング〉など)の貸与を挙げた。
・その対価は金銭ではなく強い攻略の意思と実力の提供(代々木ダンジョン攻略への協力)であり、常識外れの条件提示に記者たちはどよめいた。

ステータスの肯定とデバイスの発表
・会社の事業であるダンジョン・ブートキャンプの話題から、三好はそれが効率的なステータスの取得支援であると説明した。
・科学的に未証明とされていたステータスについて、彼女はステータスはありますよと断言した。
・その証明かつ第一弾のイノベーションとしてステータス計測デバイスの開発を発表した。

世界唯一の〈鑑定〉スキルの公表
・デバイスの数値の妥当性を問われた際、鳴瀬美晴がマイクを握った。
・そして、三好梓が知られている限り世界で唯一の〈鑑定〉スキル保持者であることを公表した。
・この事実は、会場の記者たちのみならず、ネット中継の視聴者にも計り知れない衝撃を与えた。

まとめ
この会見を通じて、Dパワーズが持つ規格外の資源(オーブ)と、常識を覆す技術(ステータス計測や〈鑑定〉)が白日の下に晒された。ネットの掲示板では驚きと混乱が巻き起こり、この日を境に三好は世界中からワイズマンという二つ名で呼ばれ、世界一有名な探索者として認知されることになった。

初心者探索者向け訓練施設

本作に登場する「初心者探索者向け訓練施設」は、芳村圭吾と三好梓が設立した合同会社Dパワーズの主要事業として企画された「ダンジョン・ブートキャンプ」を指す。本稿では、この施設とプログラムの概要、そしてその裏に隠された真の目的について解説する。

施設の概要と設立の経緯
・ダンジョン・ブートキャンプは、探索者の効率的なステータスの取得支援(潜在能力の引き出し)を目的とした訓練プログラムである。
・施設は代々木ダンジョンのゲート内に設置されたレンタルスペースの一階(元々はJDAの共用ミーティングルームの大部屋)に構築された。
・この部屋の占有権は、DパワーズがDカードチェッカーをJDAに提供することと引き換えに特別に認められたものである。

訓練の裏のカラクリ
・このブートキャンプの最大の特徴は、厳しい訓練によって能力が上がるというのは建前であり、実際には芳村の未知スキル〈メイキング〉を使用して、探索者が過去の探索で蓄積していた余剰の経験値(潜在能力)をステータスに割り振るという点にある。
・そのため、本来は初心者よりも、すでに多くの経験値を溜め込んでいる中堅以上の探索者の方が大きな恩恵を受けられる仕組みになっている。

奇抜な訓練プログラム
カモフラージュとして用意された訓練メニューは、ダンジョンセクションと地上セクションを交互に行うという、独特かつ理不尽な内容になっている。
・ダンジョンセクション:代々木ダンジョン二層の外周(約31.4キロ)を走破するなどの過酷な体力トレーニング。
・地上セクション:AGI(敏捷性)を鍛えるという名目で、アーケード用の音楽ゲーム(Beatmania II DX)の超高難易度曲である穴冥をプレイさせる。
・スペシャルドリンク:ラウンドの総仕上げとして、センブリ茶の成分にワサビの刺激(アリルイソチオシアネート)を加えた、拷問のように苦くて青臭い特製青汁を飲ませる。
・芳村たちは、過酷な肉体労働、理不尽なゲーム、そして強烈な苦味による精神的負荷を与えることで、これだけ苦労したのだからステータスが上がってもおかしくないと受講者に錯覚させる(ごまかす)ことを狙っている。

鬼教官の採用と完全な初心者の参加
・プログラムを運営するための鬼教官として、アメリカのトップ探索者(サイモン)の紹介で、海兵隊出身の優秀な探索者キャサリン=ミッチェル(キャシー)が採用された。
・彼女自身も最初のプレ受講者としてこの理不尽な訓練を体験し、〈メイキング〉による1ラウンドでの急激なステータス上昇に驚愕して訓練の虜となっている。
・さらに物語の終章では、ダンジョン産の宝石(ベニトアイト)に魅せられ、自ら二十層へ行くためにこれからDカードを取得するという完全な初心者である六条小麦(日本宝石学研究所の鑑定士)が、JDAの斎賀課長の思惑によってこのブートキャンプに送り込まれることになった。

まとめ
ダンジョン・ブートキャンプは、過酷な訓練による自己暗示と〈メイキング〉を組み合わせた画期的なステータス底上げ施設である。優秀な教官を迎え入れたことで本格的な稼働が見込まれる一方、本来の対象ではない完全な初心者が送り込まれるなど、今後の波乱を予感させる展開となっている。

スライム討伐と館の検証

芳村圭吾と三好梓による、代々木ダンジョン一層での「スライム討伐とさまよえる館の検証」は、未知のレベリング手法の発見と、ダンジョンの謎に迫る重要な事実を引き出す結果となった。本稿では、その詳細な経緯と検証結果について解説する。

検証の動機とアルスルズ空間を利用した高効率狩り
・正月で時間が空いた二人は、JDAが公開した1日に同一モンスターを373体倒すというさまよえる館の出現条件を、安全な一層のスライムで検証することにした。
・これは、一層を拠点とする御劔や斎藤涼子が誤って館を出現させ、危険な目に遭うのを防ぐための事前確認でもあった。
・この討伐の過程で、三好は召喚獣であるヘルハウンド(アルスルズ)の影の中(アルスルズ空間)を利用した画期的な狩りの手法を編み出した。
・影の中をダンジョンの外と判定させることで、スライムを倒すたびに疑似的にダンジョンを出入りした扱いになり、莫大な経験値(SP)を高速で取得できる驚異的なレベリング方法を確立した。

館の出現とゴーストたちとの遭遇
・373体目のスライムを倒した瞬間、一層の空間が切り取られるようにしてさまよえる館が出現した。
・以前二階の軒先に群がっていた目玉のモンスター(アイボール)の姿はなく、代わりに庭や館内には生前の記憶のまま行動を繰り返す青白いゴーストが多数徘徊していた。
・ゴーストたちは芳村たちを無視しており、芳村は探索の途中で窓を拭き続けるゴーストを手助けして窓を綺麗にしたり、奇妙なロザリオを拾ったりした。

タイラー博士の署名入り碑文の発見
・館の中央である玄関ホールに進むと台座がせり上がり、『さまよえる館の書』のページ(碑文)が現れた。
・驚くべきことに、解読不能な文字で書かれたその碑文の最後には、Theodore N. Tylor(セオドア=N=タイラー)という英語のサインが記されていた。
・彼は3年前にダンジョンが発生した米国ネバダの実験施設(ザ・リング)の所長であり、この発見はダンジョン発生の謎に深く関わる重大な事実を示唆していた。

アイボールの襲撃とゴーストの協力による脱出
・碑文を回収した直後、無害だったゴーストたちが突如として敵対し、目玉が抜け落ちてアイボールの大群となり襲い掛かってきた。
・正面玄関が開かず窮地に陥る二人であったが、先ほど窓拭きを手伝ったゴーストが埃の床に矢印を書いて逃げ道を指し示し、脱出可能な窓のある部屋へと導いてくれた。
・芳村は助けてくれたゴーストの首に拾ったロザリオを掛け、窓から脱出した。

斎藤涼子たちの救出と事の顚末
・館から脱出した直後、芳村たちは偶然一層でスライムの異常消失を不審に思い近づいてきていた斎藤涼子と御劔に遭遇した。
・芳村は二人を小脇に抱え、押し寄せるアイボールの群れから逃げ切り、鐘の音とともに館は幻のように消滅した(この二人を抱えて逃げる姿を吉田陽生が撮影していたことが、後に斎藤涼子が番組出演を強要される原因となる)。

まとめ
スライム討伐を通じたさまよえる館の検証は、アルスルズ空間を利用したレベリング手法の確立をもたらすとともに、タイラー博士の署名というダンジョンの謎に直結する情報を引き出した。後日、三好が回収したロザリオには、本来十字架があるはずの場所に淡い水色の宝石(ベニトアイト)が付与されており、館のゴーストとの間に何らかの繋がりが生まれたことが暗示されている。

Dパワーズの記者会見

本作におけるDパワーズの記者会見は、JDAの独断による強引なセッティングから始まったが、結果としてDパワーズが自らの事業や常識を覆す新技術を世界に公表し、大きな衝撃を与える歴史的な出来事となった。本稿では、その経緯と発表内容の詳細について解説する。

記者会見の強制と会社設立へのすり替え
・年末、JDAの瑞穂常務理事の独断により、マスコミ各社へDパワーズの記者会見が一方的に通達される事態が発生した。
・マスコミの関心はオーブのオークションにあったが、Dパワーズの三好梓はこの茶番を逆手に取ることを提案した。
・パーティとしての会見ではなく、あらかじめ登記申請していた合同会社Dパワーズの設立発表会見という名目にすり替えることで、マスコミが期待するオークションの話題を躱しつつ、自社の宣伝を行う方針を固めた。

読子・リードマン風の変装と会見の開幕
・1月6日、JDAのカンファレンスルームで開催された会見には、三好が身バレを防ぐため読子・リードマン風の変装(日本人形のような髪にメガネ)をして登壇し、JDAの鳴瀬美晴が司会を務めた。
・三好は、会社の目的がダンジョン探索の支援であると説明し、公益性が高いにもかかわらずNPO法人にしなかった理由を作るのが大変そうだったからとあっさりと答え、会場の苦笑を誘った。

スキルオーブの貸与という常識外れの支援
・支援の具体例として、三好は超高価なスキルオーブ(〈マイニング〉など)の貸与を挙げた。
・その対価は金銭ではなく強い攻略の意思と実力の提供(代々木ダンジョン攻略への協力)であり、この常識外れの条件提示に記者たちは大きくどよめいた。

ステータスの肯定とデバイスの発表
・会社の事業であるダンジョン・ブートキャンプの話題に関連し、三好はそれが効率的なステータスの取得支援(潜在能力の引き出し)であると説明した。
・さらに、科学的に未証明とされていたステータスについてステータスはありますよと断言し、その第一弾のイノベーションとしてステータス計測デバイスの開発を発表した。
・さらに、現在話題の新人女優である斎藤涼子がこの理論の受講者であることも明かされた。

世界唯一の〈鑑定〉スキルの公表とワイズマンの誕生
・ステータス計測デバイスの数値の妥当性を問われた際、鳴瀬美晴がマイクを握り、三好梓が知られている限り世界で唯一の〈鑑定〉スキル保持者であることを公表した。
・この事実は、会場の記者たちのみならず、ネット中継の視聴者にも計り知れない衝撃を与えた。

まとめ
この会見を通じて、Dパワーズが持つ規格外の資源と常識を覆す技術が白日の下に晒され、ネット上では三好がワイズマンという二つ名で呼ばれるようになり、世界一有名な探索者として認知される転換点となった。

さまよえる館の検証

本作におけるさまよえる館の検証は、代々木ダンジョン一層でのスライム討伐を通じて行われ、未知のレベリング手法の発見やダンジョンの謎に迫る重要な事実を引き出す結果となった。本稿では、その詳細な経緯と検証結果について解説する。

検証の動機とシャドウピットを利用した高効率狩り
・芳村と三好は、JDAが公開した1日に同一モンスターを373体倒すという館の出現条件を、安全な一層のスライムで検証することにした。
・これは、一層を拠点とする御劔や斎藤涼子が誤って館を出現させ、危険な目に遭うのを未然に防ぐためでもあった。
・この討伐の過程で、三好は召喚獣であるアルスルズの影の中(シャドウピット)を利用する画期的な狩りの手法を編み出した。
・影の中をダンジョンの外と判定させることで、スライムを倒すたびに疑似的にダンジョンを出入りした扱いになり、莫大な経験値(SP)を高速で取得できる驚異的なレベリング方法を確立した。

館の出現とゴーストとの遭遇
・373体目のスライムを倒した瞬間、一層の空間が切り取られるようにしてさまよえる館が出現した。
・以前二階の軒先に群がっていた目玉のモンスター(アイボール)の姿はなく、代わりに庭や館内には、生前の記憶のまま行動を繰り返すような青白いゴーストが多数徘徊していた。
・ゴーストたちは芳村たちを無視しており無害だったため、芳村は窓を拭き続けるゴーストを手助けしたり、館内で奇妙なロザリオを拾ったりしながら探索を進めた。

タイラー博士の署名入り碑文の発見
・館の中央である玄関ホールに進むと台座がせり上がり、『さまよえる館の書』のページ(碑文)が現れた。
・驚くべきことに、解読不能な文字で書かれたその碑文の最後には、Theodore N. Tylor(セオドア=N=タイラー)という英語のサインが記されていた。
・彼は3年前に米国ネバダの実験施設(ザ・リング)で起きたダンジョン災害の際に死亡したとされる所長であり、この発見はダンジョン発生の謎に深く関わる重大な事実を示唆していた。

アイボールの襲撃とゴーストの協力による脱出
・碑文を回収した直後、無害だったゴーストたちが突如として叫び声を上げ、目玉が抜け落ちてアイボールの大群となり襲い掛かってきた。
・正面玄関が開かず窮地に陥る二人であったが、埃の床に突如として矢印が描かれ、逃げ道を指し示してくれた。
・矢印に従って進むと、先ほど窓拭きを手伝ったゴーストのいる部屋へと導かれ、唯一開く窓から脱出することができた。
・芳村は助けてくれたゴーストの首に、拾ったロザリオを掛けて脱出した。

斎藤涼子たちの救出とベニトアイトの付与
・館から脱出した直後、芳村たちは、スライムの異常消失を不審に思い近づいてきていた斎藤涼子と御劔に偶然遭遇した。
・芳村は二人を小脇に抱え、押し寄せるアイボールの群れから逃げ切り、鐘の音が途切れるとともに館は幻のように消滅した。
・後日、三好が回収したロザリオには、本来十字架があるはずの場所に透明感のある淡い水色の宝石(後に希少なベニトアイトと判明)が付与されており、館のゴーストとの間に何らかの繋がりが生まれたことが暗示されている。

まとめ
さまよえる館の検証は、シャドウピットを利用した画期的なレベリング手法の発見をもたらすとともに、タイラー博士の署名というダンジョン発生の謎に直結する重要な情報を引き出した。また、脱出時にゴーストとの間に生じた繋がりにより、ロザリオに希少なベニトアイトが付与されるという不可思議な現象も確認されており、ダンジョンの謎の深さを示す結果となった。

Dジェネシス3巻レビュー
Dジェネシス5巻レビュー

登場キャラクター

Dパワーズ

芳村圭吾

Dパワーズのメンバーであり、三好梓と行動を共にする探索者である。未知のスキル〈メイキング〉を保有し、他者のステータスを調整する能力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 合同会社Dパワーズ・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 代々木ダンジョン一層でスライムを討伐し、さまよえる館を出現させた。館の内部で碑文とロザリオを回収し、脱出時には斎藤涼子たちを救出している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャンケンでキャサリンに全勝し、彼女から上位者として認識された。

三好梓

Dパワーズの代表社員であり、情報収集や会社運営の戦略立案を担う。芳村のサポートを行い、世界で唯一の〈鑑定〉スキルを保有する人物である。

・所属組織、地位や役職
 合同会社Dパワーズ・代表社員
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見で読子・リードマン風の変装をして登壇し、会社の事業とステータスの存在を発表した。シャドウピットを利用したスライムの効率的な討伐方法を確立している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 会見の終了後、ネット上でワイズマンと呼ばれるようになった。

アルスルズ(カヴァス、アイスレム、グレイシック、ドゥルトウィン)

三好に召喚されたヘルハウンドたちである。芳村と三好の護衛や実験の補助を担い、忠実に命令を実行する。

・所属組織、地位や役職
 Dパワーズ・召喚獣
・物語内での具体的な行動や成果
 影の中に潜むシャドウピットを利用し、三好のスライム討伐を補助した。鳴瀬美晴の元へ移動し、録画データの送受信実験に協力している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 渋谷区において犬として登録された。

JDA(日本ダンジョン協会)

鳴瀬美晴

JDAダンジョン管理課の専任管理監である。DパワーズとJDAの橋渡し役を務め、様々な調整業務をこなす。

・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課・専任管理監
・物語内での具体的な行動や成果
 Dパワーズの合同会社設立会見で司会を進行した。三好が〈鑑定〉スキル保持者であることを公表している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 Dパワーズとの交渉窓口として、数百億円規模の取引を即決する裁量を与えられた。

斎賀

JDAダンジョン管理課の課長である。鳴瀬の上司にあたり、組織内の調整や決断を下す。

・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課・課長
・物語内での具体的な行動や成果
 Dカードチェッカーの導入に向けて各大学や営業部との調整に奔走した。六条小麦の二十層探索の要望を受け、Dパワーズへ彼女を紹介することを決定している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 Dパワーズが提示した条件を受け入れ、アイテムボックスのオークション出品を阻止した。

桜井

JDAのネット広報を担当する職員である。

・所属組織、地位や役職
 JDA・ネット広報担当
・物語内での具体的な行動や成果
 鳴瀬美晴から〈マイニング〉関連のデータを受け取り、情報サイトの更新作業を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

坂井

JDAダンジョン管理課に所属する主任である。

・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課・主任
・物語内での具体的な行動や成果
 鳴瀬がアイテムボックスについて相談を持ちかけた際、周囲に注意を促すために咳払いをした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

マスコミ・報道機関

吉田陽生

元タレントであり、ダンジョン探索番組の企画をテレビ局へ持ち込んだ人物である。

・所属組織、地位や役職
 マスコミ・関係者
・物語内での具体的な行動や成果
 番組のパイロット版を制作するため、代々木ダンジョン一層での撮影を企画した。館から逃げてきた斎藤涼子の姿を撮影し、彼女に出演を強要している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

石塚

中央TVに所属するプロデューサーである。氷室とは大学時代の友人関係にある。

・所属組織、地位や役職
 中央TV・プロデューサー
・物語内での具体的な行動や成果
 吉田からの番組企画の持ち込みを受け、パイロット版の提出を条件に検討を約束した。氷室から電話で謎の警告を受けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

氷室隆次

番組制作会社に所属するディレクターである。三好に対して強い恐怖心を抱いている。

・所属組織、地位や役職
 制作会社・ディレクター
・物語内での具体的な行動や成果
 三好との接触に恐怖を抱きながらも、Dパワーズの記者会見の案内をマスコミ各社へ送付する手配を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

城(環)

カメラマンであり、吉田の撮影に同行する人物である。

・所属組織、地位や役職
 マスコミ・カメラマン
・物語内での具体的な行動や成果
 代々木ダンジョン一層で撮影を行っていたが、館が出現した決定的な瞬間にカメラのバッテリーを切らした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

牧村

中央TVの記者である。

・所属組織、地位や役職
 中央TV・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 Dパワーズの記者会見に出席し、オーブの収集方法について質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

春川

朝月新聞の記者である。

・所属組織、地位や役職
 朝月新聞・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見でオーブのオークションや探索者の雇用について質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最初の質問で業務外の内容を聞いたため、回答を拒否された。

瓜田

読読新聞の記者である。

・所属組織、地位や役職
 読読新聞・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見において、法人の設立理由やスポーツ選手への効果について質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

野中

新日経済新聞の記者である。

・所属組織、地位や役職
 新日経済新聞・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見で支援内容や〈鑑定〉の適用範囲について質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

簔村

東京TVの記者である。

・所属組織、地位や役職
 東京TV・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見でスキルオーブの貸与方法やステータスの証明について質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

三隅

MBSの記者である。

・所属組織、地位や役職
 MBS・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見で貸与されるオーブの具体例や二人目の意味について質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

菊和

日ノ本TVの記者である。

・所属組織、地位や役職
 日ノ本TV・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見でダンジョン・ブートキャンプの概要について質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

美川

ニコニコ動画の記者である。

・所属組織、地位や役職
 ニコニコ動画・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見でステータスの存在証明や計測デバイスの数値の妥当性について質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

桜田

朝月TVの記者である。

・所属組織、地位や役職
 朝月TV・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見で斎藤涼子とプログラムの関係について質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

津田沼

毎朝新聞の記者である。

・所属組織、地位や役職
 毎朝新聞・記者
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見で〈鑑定〉スキルによってステータスが表示されるかどうかについて質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

株式会社常磐医療機器研究所(常磐ラボ)

鳴瀬翠

常磐ラボの所長である。鳴瀬美晴の姉にあたり、経営方針を管理する。

・所属組織、地位や役職
 株式会社常磐医療機器研究所・所長
・物語内での具体的な行動や成果
 Dカードチェッカーの量産化に向けて、旧工場を改装する提案を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 Dパワーズから百億円規模の投資を打診されている。

中島

常磐ラボに所属する技術者である。

・所属組織、地位や役職
 株式会社常磐医療機器研究所・技術者
・物語内での具体的な行動や成果
 Dカードチェッカーの基板設計と手作業による製造を主導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 機器のバックマージンを提示され、製造に専念することとなった。

芸能界・探索者

宮内典弘(テンコー)

ガチャダンマスターと呼ばれる探索者である。動画配信も行っている。

・所属組織、地位や役職
 探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 吉田からの依頼を受け、代々木ダンジョン一層での番組撮影に案内役として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 現在はランクCであるため、規制により横浜ダンジョンへ入ダンできなくなっている。

御劔遙(遙)

モデルとして活動する探索者である。斎藤涼子とともに行動する。

・所属組織、地位や役職
 芸能界・モデル
・物語内での具体的な行動や成果
 代々木ダンジョン一層でスライムを討伐していた際、さまよえる館から逃げてきた芳村に抱えられて救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

斎藤涼子

新人女優として活動する探索者である。芳村を師匠と仰ぎ、ダンジョンでの指導を受けている。

・所属組織、地位や役職
 芸能界・女優
・物語内での具体的な行動や成果
 吉田に証拠写真を提示され、番組のパイロット版への出演を承諾した。碑文の文字がクリンゴン語であることを指摘している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 映画のオーディションで主演を獲得し、急速に知名度を上げている。

アメリカ合衆国関係者(DAD)

サイモン=ガーシュウィン

アメリカの探索者チームを率いる人物である。芳村たちと情報の交換を行う関係にある。

・所属組織、地位や役職
 DAD(ダンジョン省)・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 芳村から依頼を受け、ブートキャンプの教官としてキャサリンを紹介した。ザ・リングにおける事故当時の状況を芳村へ語っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ブートキャンプの最初の受講者となることが決定した。

キャサリン=ミッチェル(キャシー)

サイモンのチームのバックアップ要員である。軍人家庭の出身で、明確な序列を重視する。

・所属組織、地位や役職
 DAD・バックアップ要員
・物語内での具体的な行動や成果
 芳村とのジャンケン勝負に全敗し、彼を上位者として認めた。ブートキャンプの訓練を体験し、急激なステータス上昇に驚愕している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 Dパワーズのブートキャンプ教官に就任した。

メイソン

サイモンのチームに所属する探索者である。

・所属組織、地位や役職
 DAD・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 ホテルでの会議中に、提供されたティーフードを食べ続けていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ジョシュア

サイモンのチームに所属する探索者である。

・所属組織、地位や役職
 DAD・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 メイソンに対してジャムとクリームの塗る順番を指導した。芳村に関するサイモンの仮説に耳を傾けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ナタリー

サイモンのチームに所属する探索者である。火魔法を扱う。

・所属組織、地位や役職
 DAD・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 キャサリンがジャンケンで負けた確率を計算した。芳村に関するサイモンの推測に対して懐疑的な意見を述べている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ナイトメア/アルトゥム・フォラミニス(深穴教団)

デヴィッド=ジャン・ピエール=ガルシア

宗教団体アルトゥム・フォラミニスの代表を務める男である。

・所属組織、地位や役職
 アルトゥム・フォラミニス・代表
・物語内での具体的な行動や成果
 Dパワーズのオーブ供給源を探るため、記者会見の場に潜入して情報を探った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

サラ=イザベラ=マグダレーナ

デヴィッドと行動を共にする女である。ナイトメアの二つ名を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アルトゥム・フォラミニス
・物語内での具体的な行動や成果
 記者会見の場に同行し、デヴィッドと会話を交わした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

日本政府・関係機関

某田中

内閣府庁舎に勤務する人物である。芳村から情報や相談を受ける。

・所属組織、地位や役職
 内閣情報調査室
・物語内での具体的な行動や成果
 芳村から教官候補の紹介を依頼された。JDAから送られてきたアイテムボックスの情報を上司へ報告している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

寺沢

防衛省に所属する人物である。ダンジョン関連の情報分析を行う。

・所属組織、地位や役職
 防衛省
・物語内での具体的な行動や成果
 アイテムボックスのオークション情報を受信したが、その後開催されなかったことに気付き、関係各所へメールを送付した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ジェイン家

アーシャ=アーメッド=ジェイン

芳村や三好の知人である。護衛を伴って行動している。

・所属組織、地位や役職
 ジェイン家
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の描写は見られない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

GIJ(日本宝石学研究所)

六条小麦

GIJに所属する鑑定士である。鉱物に対して異常な執着を持つ。

・所属組織、地位や役職
 日本宝石学研究所・鑑定士
・物語内での具体的な行動や成果
 持ち込まれたロザリオの宝石をベニトアイトと鑑定した。その宝石を産出したダンジョンの二十層へ向かうことを斎賀に直訴している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 初心者でありながら深層を目指すため、Dパワーズに紹介されることとなった。

その他

喫茶店のマスター

氷室が訪れた喫茶店を経営する人物である。

・所属組織、地位や役職
 喫茶店・マスター
・物語内での具体的な行動や成果
 来店した氷室に対して声を掛けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

サービス・スタッフ

パークハイアットのアフタヌーンティーで給仕を行う人物である。

・所属組織、地位や役職
 ホテル・スタッフ
・物語内での具体的な行動や成果
 サイモンたちのテーブルへスコーンやコーヒーを運んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ゴーストたち

さまよえる館に現れた青白い人影である。生前の記憶に従って行動する。

・所属組織、地位や役職
 さまよえる館
・物語内での具体的な行動や成果
 館の内部を徘徊し、碑文が現れた後に目玉を落としてアイボールを生み出した。一体のゴーストが芳村たちに脱出用の窓を示している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 窓を示したゴーストは芳村からロザリオを掛けられた。

小麦の父親

六条小麦の父親であり、化石マニアである。

・所属組織、地位や役職
 なし
・物語内での具体的な行動や成果
 幼少期の小麦をミネラルフェアへ連れて行った。迷子になった彼女を発見して注意している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

鉱物ショップのおじさん

ミネラルフェアで出店していた人物である。

・所属組織、地位や役職
 鉱物ショップ・経営者
・物語内での具体的な行動や成果
 迷子になっていた幼少期の小麦に小さな水晶のクラスタを販売した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

Dジェネシス3巻レビュー
Dジェネシス5巻レビュー

展開まとめ

序章 プロローグ

二〇一八年十二月二十八日(金)

港区 台場

ダンジョン企画の持ち込みと業界の状況

二〇一八年十二月二十八日、港区台場の中央TV会議室において、吉田陽生はダンジョン探索番組の企画を持ち込んだ。石塚はその説明を受けながら、スキルオーブのオークションや映像公開、ヒブンリークスの登場によって再び注目を集めつつあるダンジョン業界の現状を認識していた。かつては新鮮さを失い衰退気味であったが、未知性や危険性を伴う内容であれば再び視聴者の関心を引けると判断し、成功すれば利益を得られる一方、問題が起きた場合の責任は企画側に負わせればよいと考えていた。

番組化に向けた条件提示と合意

石塚は番組改編期に合わせた特番としてのスタートを提案し、編成上の判断材料としてパイロット版の提出を求めた。吉田陽生はこれに応じ、来月早期の提出を約束した。石塚はその内容次第では深夜帯で一定の視聴率が見込めると見積もり、スポンサー獲得の可能性も視野に入れていた。

氷室からの異常な連絡

会談後、石塚が帰路につく途中、氷室隆次から突然の電話が入った。氷室は不機嫌な様子で企画からの離脱を宣言し、相手が化け物であると強く訴えた。石塚はその発言の意味を理解できず、当初は仕事上のトラブルや訴訟問題を疑ったが、氷室の説明は支離滅裂であり、デュランタの鉢やメッセージカードの存在を巡る不可解な話に終始した。

忠告と異常の確信

氷室は捨てたはずの鉢が部屋に戻ってきたことを恐怖とともに語り、それが人ではない存在に関係していると断言した。そして石塚に対し、関係から手を引かなければ命に関わると警告した。石塚は当初これを精神的な異常と判断しつつも、氷室の切迫した様子に違和感を抱いたまま通話は途絶えた。

不安の芽生えと不可視の視線

通話後、石塚は氷室の言葉を反芻しながらも、既に企画が進行しているため後戻りできない状況を認識していた。その直後、周囲に人の気配が消えたかのような静寂と、どこかから見られている感覚に襲われた。彼は局長の部屋を見上げつつ、この仕事を引き受けたことへの後悔とともに、得体の知れない不安を強く感じ始めていた。

市ヶ谷 JDA本部

広報セクション訪問と課長不在の状況

昼前、市ヶ谷のJDA本部にて鳴瀬美晴はダンジョン管理課の広報セクションを訪れたが、課長の斎賀は朝から各部署を回っており不在であった。同僚は会議嫌いの斎賀が珍しく動き回っていることに違和感を示したが、美晴はその理由に心当たりがあった。

ミーティングルーム占有要求と新プログラム

斎賀のもとには、代々木ダンジョン内の大規模ミーティングルームを占有利用したいという要望が持ち込まれていた。それは探索者の能力を短期間で引き上げる訓練プログラム、いわゆるブートキャンプに使用するためのものであり、中堅以上の探索者を対象とした内容であった。短期間で能力向上を図るという点に斎賀は疑念を抱きつつも、提案者である三好らの自信を受け、関心を示していた。

Dカードチェッカーを巡る取引

美晴は三好からの伝言として、部屋の提供と引き換えに「Dカードチェッカー」の供給が間に合う可能性があると伝えた。斎賀はその提案を受け入れ、ミーティングルームの利用状況を確認したうえで、大ルームの予約を停止し提供を決定した。その代わりとして、Dカードチェッカーの件では強く条件を通す意向を示した。

業務の逼迫と年末対応

JDAはこの日が仕事納めであり、案件は年内対応を迫られていた。年明けでは試験日程に間に合わない可能性があるため、関係者は慌ただしく動いていた。Dパワーズ側も急な案件に対応するため動き出しており、準備に追われる様子が見られた。

情報更新と裏で進む動き

美晴は課長への報告のほか、〈マイニング〉に関する情報の更新作業も進めていた。検証の詳細は明かされなかったものの、管理課内では情報統制が強まっている様子が見られた。最後に彼女はネット広報担当の桜井にデータを渡し、当日中の公開を依頼して作業を終えた。

第05章 合同会社Dパワーズ

二〇一八年十二月二十九日(土)

代々木八幡 事務所

突然の謝罪と記者会見の発覚

二〇一八年十二月二十九日、代々木八幡の事務所に戻った一行を待っていたのは、鳴瀬による突然の謝罪であった。彼女は前夜に発生した問題として、マスコミからの取材要請が総務省出身の理事経由で直接持ち込まれ、JDAがDパワーズに記者会見を行うよう一方的に決定し、すでに各社へ通達されていた事実を説明した。

情報流出への疑念と理事の影響力

話を聞いた一行は、商業ライセンスIDや住所が外部に渡っている可能性に疑問を抱き、JDAの情報管理体制への不信を示した。鳴瀬は調査を約束したうえで、この件が総務省出身の瑞穂常務理事の意向によるものであると明かした。理事の強い影響力により会見は既成事実化しており、日程調整のみが残された状態であった。

会見対応を巡る方針の検討

当初は会見を無視する案も検討されたが、理事の性格から後々の不利益を避けるため現実的ではないと判断された。一方でマスコミの関心がオークション価格などの話題性にあることを踏まえ、単なる対応に留めず利用する方針へと議論が進んだ。

会見の利用と法人化の活用

三好は記者会見を逆手に取り、合同会社としてのDパワーズの宣伝の場にする計画を提案した。会見対象が「Dパワーズ」である以上、パーティではなく法人として対応しても問題ないと判断し、マスコミの意図とは異なる情報発信を行う方針が固められた。これにより、取材側は本来の目的を果たせないまま宣伝に利用される構図が形成された。

新技術公開への布石

さらに、Dカード検出デバイスやステータス測定装置などの開発案件についても、法人として扱うことで正式に発表可能とする準備が進められた。前日に研究所で相談を行っていたこともあり、会見はこれらの技術公開の場としても活用される見通しとなった。

江戸川区 常磐ラボ(前日)

新デバイス開発の相談と製造方針の検討

前日、江戸川区の常磐ラボにて、一行はDカード取得者を識別する新デバイスの開発について説明を行った。既にステータス計測デバイスの試作が進む中で突如持ち込まれた新規案件に対し、研究所側は困惑を示したが、回路構成の単純さと市場規模の大きさから製品化の可能性を見出していた。外装については時間的制約から既製品のPPパックを流用する案が提示され、低コストかつ短納期での製造方針が固められた。

意図的な設計と情報漏洩への対策

三好は、センサー選定においてあえて最適ではない部品を採用するよう指示した。これは開発情報の漏洩を前提とし、外部に誤った技術情報を流すことで本来の技術を守る意図によるものであった。入試関連機関からの急激な需要増加の背景に、何者かの意図的な誘導があると推測し、その対抗策として設計段階から攪乱を仕込む判断がなされた。

価格設定と短期量産体制の構築

製品の原価は数千円程度と見積もられたが、短期間での大量生産に伴う時間的コストを重視し、販売価格は十万円と設定された。中島を中心に手作業による生産体制が組まれ、初期段階では一日百台規模の製造を目標とした。年末の短期間で可能な限り生産を進めるため、即時の部品調達と臨時稼働体制が決定された。

製造拠点と量産体制の計画

ステータス計測デバイスの量産については、モジュール化による分割納品と手作業組み立てを前提とした設計が提示された。大規模な自動化設備は採用せず、翠の祖父の旧工場を改装して組立拠点とする案が採用された。これにより低コストかつ短期間での生産開始が可能となる見込みが立てられた。

資金調達と企業拡大の方針

三好は大規模な資金投入を前提とした増資計画を提示し、最大で百億円規模の投資を受ける構想を明らかにした。資本金を一億円以内に抑えつつ中小企業としての優遇を維持する方針とし、外部投資ではなく内部資金による出資や融資を組み合わせる形で資金調達を進める計画であった。この資金はデバイス製造のみならず、研究設備の拡充にも充てられる見通しとなった。

製品化準備と名称決定の課題

開発中のステータス計測デバイスは不要機能を削減した試作版が完成間近であり、量産に向けた最終調整が進められていた。一方で製品名が未定であることが課題として残され、ロゴ制作や外装設計のためにも早期決定が求められた。一行は名称決定に苦慮しながらも、年明けまでに確定させる必要があると認識していた。

代々木八幡 事務所

生産能力の試算と必要台数の算出

Dカード検出デバイスの生産について、一日百台程度の製造が可能との見込みが示された。これを前提にセンター試験会場での運用を試算した結果、受験者数や確認時間を踏まえると最低でも千台規模の機器が必要であると判断された。二千台あれば余裕を持って対応できる可能性があるものの、短期間の手作業生産であるため、実際に達成できるかは不透明であった。

未確定の契約と組織側の危機感の欠如

本件は正式な発注や予算が確定していない状態で進行しており、年末年始を挟むことによる遅延リスクも存在していた。一方でJDA側には緊急性に対する認識の甘さが見られ、決定が遅れれば必要台数の確保が困難になる状況であった。

即決された価格と資金の裏付け

鳴瀬は上司との連絡後、デバイスの提供価格を確認し、一台十万円という提示を即座に受け入れた。これはダンジョン管理課に蓄積された資金を原資として対応可能であり、最終的な承認が得られなくとも内部裁量で処理できる見込みがあったためである。この決断により製造計画は一気に現実性を帯びた。

契約形態と情報管理の調整

契約内容の作成において、販売かレンタルかの形式は保留とされ、JDA側の希望に合わせる方針が取られた。同時に、機器情報の外部流出に関しては厳格な禁止ではなく「管理に努める」という表現に留める条項が提案された。これは意図的に責任範囲を曖昧にし、将来的なトラブルの影響を調整するための措置であった。

施設提供の確定と取引関係の成立

交渉の結果、代々木ダンジョン内のミーティングルームの占有利用についても承認が得られる見込みとなった。これにより双方の利害が均衡し、協力関係が成立した形となった。

記者会見準備と年末年始の対応

記者会見については実施の意思のみが確認され、具体的な日程は事業準備と併せて年明けに決定することとなった。一行は年末年始も作業を継続する方針を取り、生産体制の構築と事業準備を並行して進めることとなった。

私生活への影響と現状認識

多忙な状況の中で、三好は家族への説明を先送りせざるを得ない現状に直面していた。急激な環境変化と資金状況により従来の生活との乖離が生じており、起業の事後報告で対応する方針が語られた。一方で二人は、自らを小市民と認識しつつも、異例の状況に適応しながら進んでいることを自覚していた。

二〇一八年十二月三十日(日)

横浜 桜木町

パイロット撮影のための探索者確保

二〇一八年十二月三十日、横浜桜木町にて吉田陽生はパイロットフィルム制作のため、探索者の確保に動いていた。メディア関係者の人脈はあったものの、高位探索者との繋がりは乏しく、撮影に必要な戦力確保が課題となっていた。その中で接触したのが、横浜ダンジョン関連で活動する宮内典弘であった。

横浜ダンジョンの特性と探索環境

横浜ダンジョンは地下駐車場がそのままダンジョン化した特殊構造を持ち、各層がボス部屋扱いとなるため高い報酬が期待できる一方、モンスターの強さが極めて高く、さらにボスの再出現まで四時間を要する非効率さから利用者が減少していた。この環境により入ダンはランクB以上に制限されており、探索難易度の高さが際立っていた。

宮内典弘の実態と協力交渉

宮内はガチャダンマスターとして知られていたが、現在はランクCであり規制により横浜ダンジョンに入れない状況であった。それでも過去の経験と発信実績を評価し、吉田は協力を取り付けようとした。宮内は状況に戸惑いつつも、代々木ダンジョンでの撮影という条件付きで参加に前向きな姿勢を示した。

撮影内容の検討と危険性の認識

吉田は番組としてのインパクトを重視し、危険度の高い「さまよえる館」の撮影を希望した。しかし宮内はその危険性を理解しており、無謀な挑戦に懸念を示した。映像としての価値と生存リスクの間で認識の差が浮き彫りとなった。

代替案としての条件達成型撮影計画

吉田は館の出現条件に着目し、同一モンスターを一定数討伐することで出現させる方法を提示した。さらに、代々木ダンジョン一層のスライムを対象とすることで、安全圏に近い環境で条件達成を狙う案を示した。しかし短時間での大量討伐は現実的に困難であり、具体的な戦術が欠けている点が問題として残った。

撮影実施の決定と準備段階への移行

最終的に宮内は企画への参加を了承し、年始早々の代々木ダンジョンでの試験的潜入が決定した。撮影は早朝に行うことで人の少ない時間帯を狙う方針となり、準備は急速に進められることとなった。宮内は特急対応として高額報酬を要求し、契約条件も含めた実務段階へと移行した。

代々木ダンジョン 二層

農場確認のためのダンジョン訪問

多忙な状況にある中で、一行は代々木ダンジョン二層の農場へと向かった。年末年始は外部との連携が取りにくく、実質的に手が空いていたため、栽培実験の進捗確認を行うこととなった。小麦の発芽時期を踏まえ、種まきから約十日が経過しており、その結果を確認する段階に入っていた。

発芽の確認と苗の停滞

農場では種から育てた小麦が発芽していることが確認された一方で、苗から植えた植物には変化が見られなかった。この結果から、ダンジョン内での成長や再生には、種からの発生が重要である可能性が示唆された。

ダンジョン内植物のリポップ特性

周辺の自然植物を用いた実験により、ダンジョン内の植物は完全に除去しない限り元の位置に再生する性質を持つことが確認されていた。ただし、根ごと除去した場合には同位置での再生は起こらず、リポップの条件や位置に関する規則性は依然として不明であった。

リポップ条件に関する仮説検討

苗が再生対象とならない理由について、ダンジョン内での存在期間や「Dファクター」への適応が影響している可能性が議論された。また、ダンジョン内で生成された個体のみが対象となる可能性も指摘され、種から育成した植物の経過観察が重要視された。

生体リポップに関する思考実験

議論は生物全般へと広がり、ダンジョン内で発生した生命体がリポップ対象となる可能性についても検討された。しかしその場合に発生する矛盾や危険性から、現実的には成立しないと結論づけられた。

ブートキャンプ教官の人選問題

農場の確認後、話題は探索者育成プログラムに移り、教官の選定が急務であると認識された。自衛隊関係者の紹介や一般募集の案が検討されたが、情報漏洩やスパイの混入リスクが懸念された。最終的には適任者の確保が困難である現状が確認され、慎重な選定が必要であると結論づけられた。

二〇一八年十二月三十一日(月)

代々木八幡 事務所

教官人材の確保と不穏な近隣状況

大晦日、芳村はブートキャンプの教官候補を確保するため、某田中に連絡を取ったが即答は得られなかった。その会話の中で、近隣の屋敷に関する不穏な情報が示され、周辺で住民の転出が相次いでいる状況と合わせて、不可解な気配が漂っていることが示唆された。

オークション方針と資源の整理

話題は〈マイニング〉オーブのオークションへ移り、保有しているオーブの整理と出品方針が検討された。希少性と将来的な利用価値を踏まえ、一部は出品しつつも、回復系や耐性系などの重要スキルは今後の探索支援のために温存する方針が決定された。

レアスキル〈促成〉の評価と課題

〈促成〉スキルについては、SP取得量を増加させる強力な効果を持つ一方、ステータス上限が制限されるという欠点があることが確認された。現時点では有用性が見込まれるが、将来的な運用には制約が伴うことが認識された。

サイモンの来訪と新たな依頼

その後、サイモンが訪問し、要人の正月参拝に関する相談を持ち込んだ。混雑と安全性の問題から別日程を提案することで合意に至った。このやり取りを契機に、三好はサイモンにブートキャンプ教官の紹介を依頼し、適任者の派遣が決定した。

トップ探索者の参加と事業への影響

さらにサイモン自身もブートキャンプへの参加を希望し、チーム全体での受講が決定された。これにより、世界トップクラスの探索者が初期受講者となることが確定し、事業としての宣伝効果と影響力が大きく高まる見込みとなった。

危険区域の情報共有と探索リスク

芳村は代々木ダンジョン内の危険区域についてサイモンに警告し、特定エリアに極めて危険な存在がいる可能性を伝えた。この情報は探索における重要なリスク要因として共有された。

〈収納庫〉公開を巡る戦略的判断

続いて〈収納庫〉スキルの公開について議論が行われた。利便性の高さから需要は確実である一方、犯罪利用や監視リスクが懸念された。三好は観測気球として市場に投入し、社会的反応を確認する案を提示し、最終的にJDA側へ判断を委ねる方針となった。

ブートキャンプ内容の試作と準備

教官確保と並行して、訓練内容の検討も進められたが、具体的なノウハウが不足しているため、試行錯誤による仮設的なプログラムが組み立てられた。内容は単純作業や反復運動を中心としたものであり、実効性には疑問が残る状態であった。

記者会見準備と年明けへの移行

三好は記者会見に向けた準備を進めるため外出し、会見は年明けに実施する方針が固められた。一連の案件は年末の段階で方向性が定まり、年明け以降の本格的な事業展開へと移行する準備が整えられた。

港区

氷室隆次の恐怖と接触の回避不能性

大晦日、港区にて氷室隆次は異様な緊張状態に置かれていた。鳴り続ける電話を無視することができず、相手が現実に現れる可能性を恐れて応答した。過去の体験から、相手である三好に対して強い恐怖心を抱いており、接触自体を避けたい心理が明確であった。

喫茶店での再会と主導権の掌握

指定された喫茶店に赴いた氷室は、既にその場にいた三好と対面した。彼女は終始冷静かつ主導的に振る舞い、氷室の動揺を意に介さず会話を進めた。氷室は恐怖と困惑の中で対応を余儀なくされ、心理的優位は完全に三好側にあった。

記者会見運営の依頼内容

三好は氷室に対し、来月六日に予定されている記者会見の運営を依頼した。会見は通常の広報活動とは異なり、情報発信そのものよりも「開催した事実」を重視する形式であり、メディア対応の最低限の体裁を整えることが目的であった。

会見の本質と情報統制の意図

この会見はオークション関連の説明ではなく、新設される会社の発表を主目的としていた。マスコミの関心と実際の発表内容を意図的にずらすことで、情報の主導権を握ろうとする戦略が取られていた。結果として、メディア側は期待した情報を得られず、発表側の意図が優先される構図となっていた。

氷室による状況理解と役割受諾

氷室は当初混乱していたが、依頼内容を整理する中で、自身の役割がメディアへの告知と形式的な会見準備に限定されることを理解した。既に会場や進行体制は整っており、必要なのは開催情報の流通のみであった。

報酬提示と受諾の決断

三好は高額の報酬を提示し、氷室は葛藤を抱えつつも依頼を受け入れた。恐怖による回避不能性と報酬の魅力が重なり、最終的に関与を決断するに至った。この瞬間、氷室は三好の計画に組み込まれる形となった。

二〇一九年一月一日(火)

代々木ダンジョン 地上

正月早朝の撮影準備と探索開始

二〇一九年一月一日、吉田陽生たちは正月早朝から代々木ダンジョンでの撮影に臨んでいた。テンコーやカメラマンの城と合流し、軽口を交わしながら撮影体制を整えた。周囲の探索者も撮影に配慮し、混雑を避ける中で、一行は一層へと潜入を開始した。

目的喪失と探索動機の再確認

一方、芳村たちは明確な目的がないままダンジョンに足を運んでいた。教官候補の到着待ちで時間が空いたこともあり、過去の探索が必要性に駆られたものであったのに対し、今回は動機の曖昧さが際立っていた。それでも活動を続けてしまう自分たちの状況に、過密な日々であったことを再認識していた。

新たな目標としての「さまよえる館」検証

三好は、新たな目標として「三百七十三匹討伐によるさまよえる館出現」の検証を提案した。御劔ら他探索者の行動次第では危険な状況が発生する可能性があるため、その条件を事前に確認しておく必要があると判断された。

検証計画の具体化

検証は一層のスライム討伐によって行うこととし、時間帯を調整して安全に館を出現させる方針が立てられた。事前に必要数直前まで討伐を進め、最終段階で条件を満たす形での実施が計画された。

役割分担と実行準備

討伐役は三好が担うこととなり、ステータス向上も兼ねた実戦訓練として位置づけられた。昼食後に行動を開始する流れとなり、実験的探索の準備が整えられた。

関係者への連絡と潜在的リスク認識

「さまよえる館」への挑戦にあたり、鳴瀬への事前連絡も行うこととなった。この行動は彼女にさらなる負担を与える可能性を含みつつも、必要な情報共有として実施されることとなった。

代々木ダンジョン 一層

正月の探索と芸能人たちの状況

元日、一層では遙と斎藤涼子がスライム討伐を行っていた。人気上昇中の芸能人でありながら、正月にも関わらず仕事の都合で帰省もできず、ダンジョンでの活動を続けていた。表向きの華やかな立場とは裏腹に、実際には多忙な日常に縛られている現状が語られていた。

芳村と三好の遭遇回避と状況認識

同じフロアにいた芳村と三好は、別の探索者の存在を察知し、接触を避ける判断を取った。探索効率を優先する他の探索者たちの行動様式にも触れつつ、自分たちの方法との違いを認識していた。

アルスルズ空間の特性に関する仮説

氷室を閉じ込めた空間について議論が行われ、それが通常のダンジョンとは異なる「アルスルズ空間」と呼ぶべき別領域であると整理された。この空間はダンジョン外とみなされる可能性があり、特性の解明が重要な課題として浮上した。

経験値取得効率の革新的向上

三好はシャドウピットを用いてアルスルズ空間への出入りを行い、その直後にスライムを討伐する実験を実施した。その結果、SPが通常通り加算されることが確認され、この空間がダンジョン外扱いであると判明した。これにより、出入りを挟むことで経験値取得効率を飛躍的に高められる可能性が示された。

MP消費と運用制限の検証

シャドウピットの連続使用に伴うMP消費についても検証が行われた。長時間の使用が可能であることが確認されたものの、枯渇リスクを避けるため運用時間には制限が必要と判断された。安全運用を前提とした実用化の方向性が固められた。

別行動する吉田たちの苦戦と新案

一方、吉田たちはスライム討伐の効率の悪さに苦戦していた。物理攻撃が効きにくい特性により討伐速度が極端に低く、目標達成が困難であることが明らかとなった。その対策として、スライムを圧縮してコアを破壊する「ところてん式」の新手法が提案され、専用器具の調達が決定された。

不可解な探索者と異常なルートの発見

探索中、斎藤涼子らしき人物とその同行者が高速で通過し、その直後のルートにスライムが存在しない異常な状況が確認された。通常ではあり得ないこの現象は、短時間で継続的に討伐を行った結果である可能性が示唆され、未知の高効率戦術の存在を示すものとして強い関心を引いた。

代々木ダンジョン 地上

撮影班との遭遇による警戒

テンコーたちと遭遇した後、遙と斎藤涼子はダンジョン入口で足を止めた。元日にも関わらずテレビ関係者と思われる一行が撮影を行っていたことに違和感を抱き、自分たちが取材対象になっている可能性を懸念した。しかし追跡の様子は見られなかったため、過度な警戒は不要と判断された。

行動方針の調整と継続意思

一度は撤退も検討されたが、遙は予定していた討伐ノルマを優先し、時間をずらして活動を継続する方針を選択した。涼子は合理性に疑問を持ちながらも、最終的にはその意向を受け入れ同行することとなった。

昼食による時間調整

撮影班との再接触を避けるため、二人は一度外へ出て昼食を取ることを決めた。ダンジョン近辺の飲食店事情を踏まえつつ、元日営業している店舗を選ぶ必要があり、最終的にファミリーレストランへ向かう流れとなった。

日常感覚と立場変化の自覚

会話の中で、涼子は自身の知名度上昇により、今後は気軽に行動できなくなる可能性を自覚していた。成功への実感と同時に、これまでの自由な生活が制限されることへの複雑な感情が示されていた。

一時撤退と再挑戦への準備

二人は更衣室へ向かい、一度装備を解いて外出する準備を整えた。活動は継続する方針を維持しつつ、状況に応じて柔軟に行動を調整する姿勢が取られていた。

代々木ダンジョン 一層

シャドウピット狩りの確立と効率化

三好はシャドウピットを利用した新たな狩り方法を実用段階へと押し上げていた。椅子に座ったまま転移を繰り返し、連続してスライムを討伐する様子は異様であったが、極めて高効率であった。これにより、従来困難とされていた三百匹討伐も現実的な目標となった。

SP獲得効率の飛躍的向上と影響

この手法によって得られるSPは非常に高く、短期間で上位探索者に匹敵する成長が可能であることが確認された。もし継続すればランキング上位を占めることも現実的であり、個人の成長を超えてダンジョン社会全体へ影響を与えかねない危険性が認識された。

技術公開の制限と慎重な方針

しかしこの方法は、闇魔法や特殊スキルの存在を前提とするため、容易に公開できるものではなかった。数値的検証が不可欠であり、その過程で秘匿している能力の存在が露見する可能性が高いため、段階的に情報を開示していく必要があると判断された。

ンガイの玉座の検証実験

一行は保管していた「ンガイの玉座」の効果を確認するため、スライムを用いた実験を行った。スライムを玉座に乗せた際、一時的に反応は見られたものの、最終的には弾き出され、特異な変化は確認されなかった。この結果から、一定の条件を満たさない対象は玉座に受け入れられない可能性が示唆された。

討伐カウントの不確実性と課題

実験中、討伐数のカウントに誤差が生じる可能性が浮上した。複数人の関与や特殊な行動が討伐として認識されるかが不明であり、条件達成型イベントにおいては重大な問題となり得ることが認識された。

通信実験とアルスルズの応用

三好はアルスルズを用いた通信実験を実施し、メモリーカードの送受信に成功した。これにより、ダンジョン内外での非同期的な情報伝達手段が確立され、実務上の利便性が大きく向上した。

探索継続と条件達成への最終段階

討伐は順調に進み、目標の三百七十三匹に到達する直前まで進行した。時間調整を行いながら、館出現の条件を満たす最終段階へと移行した。

スライム消失という異常事態の発生

その頃、別行動していた遙と斎藤涼子は、ダンジョン内からスライムが完全に消失している異常に気付いた。本来常に存在しているはずのモンスターが見当たらない状況は、通常では考えられない現象であり、何らかの大きな変化が起きている可能性が示唆された。

代々木ダンジョン 一層 さまよえる館

館の出現と空間構造の変化

三好が三百七十三匹目のスライムを討伐した瞬間、一層の通路空間は突如として館へと置き換わった。周囲は円柱状に切り取られたような異質な空間となり、館は薄暮に包まれた状態で存在していた。外観は過去と似ていたが、内部の様子は明らかに変化していた。

ゴーストの出現と非干渉状態

館の敷地内には青白い人型のゴーストが多数存在していたが、芳村たちに対して敵意を示すことはなく、それぞれが生前の行動を繰り返すかのように動いていた。この段階では直接的な脅威とはならず、探索は慎重に進められた。

屋内侵入と異常な環境の確認

裏口から侵入した館内部では、ゴーストが使用人のように徘徊しており、埃に覆われた環境が維持されていた。特定のゴーストの行動に干渉したことで一時的な変化が見られたが、基本的には外部からの影響を受けにくい閉鎖的な空間であることが確認された。

ロザリオの発見と重要物の入手

館内で芳村はロザリオ状のアイテムを発見した。その構造は宗教的な装飾品に類似していたが、一部に異質な要素が含まれており、後の展開に関わる重要なアイテムとして回収された。

碑文出現と重要人物の痕跡

玄関ホールに到達すると、戦闘を経ずに碑文が出現した。そこには読解不能な文字と共に、「Theodore N. Tylor」という署名が記されていた。この名前は過去の重大事故で死亡した人物と一致しており、事態の異常性が一層強調された。

敵対化と戦闘状況の急変

碑文回収を契機に、これまで無害であったゴーストが一斉に敵対化し、目玉状の存在を放出して攻撃を開始した。これらの攻撃は体力を削る効果を持ち、通常の防御では対処が困難であったため、一行は撤退を余儀なくされた。

脱出経路の封鎖と追撃

正面玄関は開かず、館内は敵の群れによって包囲された。窓や構造物も破壊不能であり、逃走経路は限定されていた。一行は階層を移動しながら逃走を試みたが、時間制限も迫る中で極めて危険な状況に追い込まれた。

導きとゴーストの協力

逃走中、床に現れる矢印に導かれた一行は、特定の部屋へと到達した。そこにいたゴーストは敵対せず、脱出可能な窓を示した。この窓は唯一開く構造となっており、脱出の鍵となった。

ロザリオの付与と象徴的行為

芳村は助力したゴーストに対し、発見したロザリオを首に掛けた。通常であれば干渉しない存在であるにもかかわらず、ロザリオはそのまま留まり、何らかの意味を持つ行為として成立した。

脱出と館の崩壊

鐘の音と共に館の空間は崩壊を開始し、一行は窓から脱出した。最後にゴーストが出口を守るように立つ姿が確認され、館内の存在が単なる敵ではない可能性が示唆された。

遙と斎藤涼子の接触と異常認識

一方、遙と斎藤涼子はスライム消失の原因を追って館へと到達していた。異常な空間に戸惑いながらも内部へ侵入した直後、館の崩壊に巻き込まれ、逃走する芳村と遭遇したことで事態の異常性を強く認識するに至った。

撮影班の異変遭遇と館出現の確認

吉田陽生たちはスライムが消失した異常事態に困惑していたが、突如として鳴り響いた鐘の音を手掛かりに、その発生源へと向かった。到達した先には、空間ごと切り取られたように出現した館が存在しており、これまでの調査で得た情報と一致する現象であると認識された。

撮影不能と混乱の発生

城は館の撮影を試みたものの、バッテリー切れにより決定的瞬間を記録できなかった。さらに館から探索者が飛び出してくると同時に、異形の群れが追い出てくる様子が確認され、状況は一気に緊迫した。

アイボール群との接触と危機

館から出現した目玉状の群体は吉田たちにも接近し、逃走が困難な状況に陥った。テンコーは迎撃を試みたが、攻撃は実体を捉えず無効化され、戦闘による対処が不可能であることが判明した。

現象の消失と幻の収束

群体が襲いかかる直前、鐘の音とともに異常現象は突如として消失した。館および敵対存在は跡形もなく消え、一層は通常の状態へと戻った。この現象は極めて非現実的であり、幻のような出来事として認識された。

芳村たちとの合流と状況共有

脱出してきた芳村と三好は遙と斎藤涼子と合流し、混乱の中で安全圏へと移動した。館内の存在が一層に常在するものではないと説明され、二人は訓練継続が可能であることに安堵した。

新たな訓練手法の提案

芳村は、アルスルズを活用した効率的なダンジョン訓練法を提案した。従来の往復を必要としない手法であり、探索効率を大きく改善できる可能性が示されたため、今後の実験的運用が検討されることとなった。

案内と離脱準備

三好はカヴァスを用いて地上への経路を案内し、遙たちは安全に離脱する準備を整えた。混乱状態からの収束が図られ、事態は一応の終息を迎えた。

ロザリオの変化と象徴的意味

最後に三好が回収したロザリオは、館内で見つけたものと同一であったが、新たに淡い水色の宝石が付与されていた。この変化は、館内で助力したゴーストとの関係を示唆するものであり、出来事の余韻として強く印象付けられた。

港区 赤坂

映像確認と撮影失敗の判明

代々木ダンジョンから戻った吉田陽生は、撮影された映像の確認のため、城の所属するスタジオを訪れた。確認の結果、館から探索者が飛び出す場面にズームしようとした直後でバッテリーが切れており、決定的な瞬間は記録されていなかった。

映像解析による人物特定

静止画の解像度を補正したことで、映像内の人物の特徴がある程度判別可能となった。抱えられていた二人のうち一人は、装備や外見の特徴から斎藤涼子である可能性が高いと判断された。個性的な装備の組み合わせが識別の決め手となった。

素材不足とパイロット制作の課題

今回の映像は準備段階の記録が中心であり、番組用のパイロット映像としては内容が不足していた。館内部の詳細な映像や攻略要素が欠けており、現状の素材だけでは企画として成立させるには不十分であると認識された。

追加情報獲得の方針

吉田は不足する映像を補うため、映像に映っていた人物に接触し、館内部の記録を入手する可能性を検討した。特に斎藤涼子であれば、スマートフォンなどで撮影している可能性があると考え、情報収集の対象とする方針を示した。

未確認探索者への関心

映像には斎藤涼子以外にも複数の人物が映っており、彼らが館を出現させ内部を探索していたことから、吉田は強い関心を示した。これらの人物が企画にとって重要な存在となる可能性が意識された。

映像利用を巡る調整と停滞感

テンコーは自身の配信での映像使用範囲について吉田と調整を行い、権利関係を巡る交渉が発生した。一方で年始の休業期間により外部との連携が進まず、次の動きが制限される状況に苛立ちが生じていた。

二〇一九年一月二日(水)

代々木八幡 事務所

年始の再始動と日常会話

芳村は前日の疲れから昼過ぎに事務所へ現れ、三好と軽口を交わしながら年始の緩やかな空気の中で活動を再開した。初夢や縁起物の話題など、束の間の日常的なやり取りが交わされた。

箱根駅伝と探索者の影響

テレビで箱根駅伝を観戦する中、異常な記録を叩き出した選手について、探索者である可能性が指摘された。これにより、探索者の能力がスポーツ分野へ波及し始めている兆候が認識された。

教官候補とJDAの動き

三好は教官候補について、三日にJDAで面接が行われる予定であることを報告した。また鳴瀬も来訪予定であり、ダンジョン関連の案件が年始から動き続けている状況が示された。

ロザリオと碑文の解析進展

ロザリオの宝石については鑑定依頼が進められており、その内容には宗教的象徴や再生を示唆する要素が含まれていた。一方、碑文は前半が探索者への激励文であると判明したが、後半は未知の言語で構成されており解読不能であった。

タイラー博士と署名の異常性

碑文に記された署名が、過去に事故で死亡したとされるタイラー博士のものである可能性が浮上した。経歴調査は進められたものの、署名の一致確認はできず、事象の異常性だけが際立つ結果となった。

斎藤涼子の来訪と言語の解明

斎藤涼子が来訪し、碑文の未知言語がクリンゴン語であると判明した。これにより、これまで解読不能だった部分の翻訳手段が確立され、状況は大きく進展した。

ダンジョン由来情報への疑念

ダンジョンからクリンゴン語と英語署名が同時に出現した事実により、現象の不可解さはさらに増した。芳村たちは悪戯では説明できない事象として認識しつつも、原因の特定には至らなかった。

念話の普及と社会的影響の懸念

念話能力の普及により、若年層を中心に講習需要が急増している状況が共有された。言語の壁を越える可能性や教育現場への影響など、社会構造への影響が懸念され、制度整備の必要性が議論された。

今後の課題と準備

鳴瀬は講習対応のためJDAへ戻り、芳村と三好はデバイスの名称決定と商標準備に着手した。新たな事業展開に向けた具体的な準備が進められることとなった。

新コマンド「find」の発見

パーティ機能に関する新たなコマンドとして「find」が発見された。従来のコマンドと同様の形式で実行すると、対象人物の横に数値が表示され、それが自身を基点とした相対位置情報を示すものである可能性が指摘された。

検証活動の拡大と混乱

この発見は海外掲示板を中心に広まり、当初は冗談半分の検証スレッドであったものが、参加者の増加により大規模な共同検証へと発展した。英語辞典の語彙を用いてコマンドを網羅的に試す試みが行われたが、検証方針を巡って分裂が生じ、複数の流れに分かれて検証が続けられる混乱状態となった。

操作体系の多様な検証

単語入力だけでなく、Dカードの接触方法や操作手順の違いによる影響も検証対象となり、スマートフォンの操作に類似した入力方法の可能性まで探られるようになった。これにより、単純なコマンド探索から、インターフェース全体の仕様解明へと関心が広がっていった。

情報拡散とネット文化の影響

検証結果は別の掲示板へ転載され、そこから再び元の掲示板へ人が流入するという形で情報が拡散した。この過程はネット文化特有の動きとして認識され、情報の発生源や拡散経路の分析対象としても注目された。

テレパシー機能の重大発見

検証の中で特に注目されたのがテレパシー機能であり、異なる言語を母語とする者同士でも意思疎通が可能であることが確認された。双方は相手が自分の言語を話していると認識していたが、通常の通話では会話が成立しなかったことから、この機能が言語の壁を越えていることが明らかとなった。

検証体制の組織化

検証項目は体系化され、テレパシーの有効範囲やパーティ構造における影響など、より高度な検証が進められる段階に入った。大人数での実験が必要と判断され、ニューヨークで大規模なオフライン検証が計画されるに至った。

海外ダンジョンとの関連性

検証拠点として言及された地域には、大規模かつ複雑な条件を持つダンジョンが存在しており、多言語環境と探索者人口の多さが実験に適していると考えられていた。この環境が、新たな発見の基盤となる可能性が示唆された。

二〇一九年一月三日(木)

代々木八幡 事務所

機器名称の検討と迷走

芳村と三好は新たなデバイスの名称決定に取り組んでいたが、有力な案は出ず、試行錯誤が続いていた。各国語や神話、文献などを参照しても決定打に欠け、ネーミング作業は停滞していた。

簡易版名称案の提示

三好は簡易版の名称として「SMDIEASY」を提案した。これはStatus Measure Deviceを基にした略称であったが、同時に「ステータス見えるくんです」という語呂合わせでもあった。芳村はその安直さに疑問を抱きつつも、一定の分かりやすさは認めていた。

愛称決定への試行錯誤

正式名称とは別に愛称についても議論が行われ、「ステミエ」などの案が検討されたが決定には至らなかった。最終的に三好は語句を分解・再構成した逆読みから「ルエミスター」という名称を提示し、独自性のある呼称として採用される流れとなった。

名称決定と割り切り

長時間の検討の末に生まれた名称ではあったが、結果として直感的に決めた案に落ち着く形となった。芳村は完全な納得には至らないまでも、現実的な落とし所として受け入れた。

次の行動への移行

名称の仮決定を終えた二人は、ブートキャンプ教官候補の面接に向かうため、事務所を出て市ヶ谷へと移動した。

市ヶ谷 JDA本部 小会議室

教官候補キャサリンの面接

芳村と三好は、鳴瀬の案内で教官候補であるキャサリン=ミッチェルと対面した。彼女は高身長で均整の取れた体格を持ち、学歴・職歴・技能いずれも優秀であり、提出された資料からも極めて高い能力を有する人物であることが確認された。

序列意識による対立の発生

キャサリンはパーティを組むにあたり、明確な上下関係の確立を重視する姿勢を見せた。芳村が探索者ランクGであると知ると、その序列に疑問を抱き、実力による立場決定を求めて勝負を提案した。

背景事情の判明

芳村はサイモンに連絡を取り、キャサリンの行動原理を確認した。彼女は軍人家庭に育ち、常に明確な序列を求める性質を持っており、過去の所属組織でも同様に実力確認のための対立を繰り返していたことが明らかとなった。

勝負方法の転換と提案

戦闘による衝突を避けるため、芳村はジャンケンによる勝負を提案した。当初キャサリンは運任せの手法として否定的であったが、芳村の挑発により勝負を受け入れた。

圧倒的勝利による序列確定

芳村は高い反応速度を活かし、ジャンケンで連続勝利を収めた。繰り返しの対戦においても結果は覆らず、キャサリンは敗北を認めるに至った。

関係の確立と教官就任

勝負の結果、キャサリンは芳村を上位と認識し、軍隊式の規律に基づく態度で従う姿勢を示した。こうして芳村たちは、高い実力と統率力を兼ね備えた教官を獲得することに成功した。

市ヶ谷 JDA本部 ロビー

面接後の相談と異変の兆し

面接を終えた芳村と三好は鳴瀬に声を掛け、新たな案件について相談を持ちかけた。三好の切り出しに対し、鳴瀬は過去の経験を想起するかのように警戒した反応を示した。

アイテムボックス出品の提案

三好は次回のオークションにおいてアイテムボックスの出品を検討していると告げた。この発言に対し、鳴瀬は強い衝撃を受け、手にしていた書類を取り落とすほど動揺した。

重要案件としての認識

アイテムボックスという存在の重大性から、鳴瀬は即座に状況を把握しようとし、二人をロビーの隅へ移動させて詳細を確認した。芳村は内容が未確定であるとしながらも、重大案件である認識を共有した。

事前相談の意図

三好は過去の事例を踏まえ、正式な出品前に管理監へ相談する必要性を説明した。これにより、組織側としての対応準備を整える意図が示された。

緊急対応の要請

オークションの開催が目前に迫っていることから、三好は翌日中の回答を求めた。鳴瀬は突然の大規模案件に困惑しながらも、対応を約束せざるを得なかった。

新たな混乱の予兆

仕事始め直前に持ち込まれたこの案件により、JDA内部で再び大きな混乱が発生する可能性が示唆された。状況は急速に動き始める段階へと移行した。

二〇一九年一月四日(金)

日本宝石学研究所 JDA出張所

鑑定士・六条小麦の来訪

新年早々、日本宝石学研究所の出張所に六条小麦が訪れ、スタッフに挨拶を行った。彼女は高度な資格を持つ優秀な鑑定士であり、強い鉱物愛好家としても知られていた。

ロザリオの簡易鑑定開始

JDAから持ち込まれたロザリオ風の装飾品について、小麦は簡易鑑定に加わった。石を外すことが禁止されていたため、重量測定や詳細分析は制限され、利用可能な機材による観察に限定された。

石の構造と加工技術の確認

小麦は石の接合部分を確認し、その固定方法が不明瞭であることを認識した。また、カットは高い技術によるブリオレットカットであり、アンティークジュエリーに近い質感を持つ優れた加工であると評価した。

鑑定過程での候補絞り込み

屈折率や複屈折性、蛍光特性などの情報から、アクアマリンやサファイアなどの一般的な候補は否定された。最終的に観測データと特性が一致する鉱物として、ベニトアイトが有力視された。

極めて異常な品質とサイズ

対象の石は十カラット級と推定され、既知の標本を大きく上回る規模であった。通常は一カラットでも大粒とされるベニトアイトとしては極めて異例であり、天然物としての希少性が際立っていた。

人工合成不可能な鉱物の出現

ベニトアイトは人工合成の例が存在しない鉱物であり、その出現自体が異常であった。ダンジョン由来である可能性が示唆され、通常の鉱物学的枠組みでは説明が困難な現象として認識された。

ダンジョン資源への関心の高まり

小麦はこの石の出自に強い興味を示し、ダンジョンでの産出可能性に関心を抱いた。鉱物資源が特定階層から産出されるという情報と結びつき、ダンジョン探索への関心を一層強める結果となった。

市ヶ谷 JDA本部 ダンジョン管理課

年始業務と情報漏洩の発覚

鳴瀬美晴は仕事始め早々に出勤し、斎賀へ報告を行った。Dカード検出デバイスに関する情報が外部へ広まり、国内外の試験機関や大学から大量の問い合わせが殺到している状況が明らかとなった。

国際的影響の拡大

問い合わせは各国の試験機関にまで及び、テレパシーによる不正対策としてデバイスの需要が急速に高まっていた。従来の監視や通信遮断では対応できない問題として、世界規模の課題へと発展していた。

特許未申請による危機

Dパワーズがデバイスの特許を未申請のまま開発を進めていることが判明した。製品が市場に出る前に模倣品が流通する可能性があり、JDAが情報漏洩に関与したと見なされる危険性も浮上した。

運用方針の検討

限られた台数で広範囲をカバーするため、機器を販売ではなく貸与し、スケジュールを組んで各試験会場で使い回す案が提示された。人員の確保や運用体制の整備はJDA側の負担となる見込みであった。

契約条件の異質性

Dパワーズ側は情報管理について厳格な義務ではなく「努力目標」とする条件を提示していた。この異例の条件はJDAにとって有利である一方、その意図は不明であり、警戒を要するものと受け止められた。

アイテムボックス問題の浮上

さらに美晴は、次回オークションでアイテムボックスが出品される可能性について報告した。犯罪利用や密輸への悪用が懸念され、極めて重大な社会的リスクを伴う案件として認識された。

対応困難な意思決定

斎賀は限られた時間の中で、デバイス運用とアイテムボックスの扱いという二つの重大案件に対処する必要に迫られた。資金や権限にも制約があり、いずれも容易に解決できない問題として重くのしかかった。

市ヶ谷 防衛省

アイテムボックス出品情報の受信

寺沢はJDAから送られてきた暗号化メールを受信し、翌日のオークションにアイテムボックスが出品されるという情報を確認した。その内容は一見すると信じがたいものであったが、送信元から事実であると判断された。

〈メイキング〉への疑念と推測

寺沢はアイテムボックスの出現を受け、スキル〈メイキング〉の性質について思考を巡らせた。スキルオーブを生成できる可能性があるならば、なぜこれまでアイテムボックスが作られなかったのか疑問を抱き、生成には時間や条件が必要なのではないかと推測した。

予算と取得困難性の認識

オークション形式での取得は極めて高額になると予想され、防衛省の予算規模では対応が難しいと判断された。庭先での直接買い付けも現実的ではなく、巨額資金を持つ犯罪組織との競争になれば勝ち目がないと認識された。

倫理的制御の不可能性

出品自体を止めるために倫理的な説得を行う案も考えられたが、実効性はないと即座に否定された。需要が存在する以上、流通を止めることは現実的ではないと理解された。

軍事的価値と不確定要素

アイテムボックスの性能次第では、ダンジョン運用や軍事戦術に大きな影響を与える可能性があると考えられた。しかし容量や制限などの詳細が不明なため、上層部への提案材料としては不十分であった。

判断不能な存在としての認識

結果として、アイテムボックスは極めて有用である一方で、扱いが難しく判断が困難な存在として認識された。取得の必要性と実現可能性の間で結論を出せないまま、寺沢は対応の難しさを痛感した。

永田町 内閣府庁舎

内閣府での情報受領と困惑

内閣府において某田中は、JDAから送られてきた情報を確認し、その内容に困惑していた。記載されていたのは、アイテムボックスというスキルオーブがオークションに出品されるというものであった。

国家介入の難しさの認識

〈異界言語理解〉のように国家間問題へ直結する案件とは異なり、今回のスキルは表面上国家の関与対象とは言い難かった。そのため、政府として直接介入する根拠に乏しく、対応方針の判断が難しい状況であった。

治安リスクへの懸念

一方で、このスキルが犯罪組織の手に渡れば、警察機関に重大な影響を与える可能性が高いと認識された。特に密輸や隠匿といった犯罪行為への利用が懸念され、看過できない問題であると判断された。

情報の不完全性と対応制限

しかし提供された情報は不十分であり、スキルの詳細や性能が不明なため、具体的な対策を講じることができなかった。内容は不確定要素が多く、分析資料としても完成度に欠けるものであった。

上層部への報告

田中は最終的に、内閣情報官である村北へ情報を報告するにとどまった。自身の裁量で対応できる範囲を超えていると判断し、判断を上層へ委ねる形となった。

市ヶ谷 JDA本部 会議室

停滞する会議と原因の発生

センター試験対応のための会議は、朝から進展を見せず停滞していた。本来はDパワーズから提供されるデバイスの割り振りを議題としていたが、営業部門が介入したことで議論が混乱していた。営業側は機器を一括購入し大学へ再販する案を提示し、議題の方向性が逸れていった。

営業部門の思惑と対立構造

営業部門の提案は、JDAが大学を選別する立場となるため公平性の問題を孕んでいた。加えて、Dパワーズとの直接取引ではなく再販形式にすることで、営業部門が主導権を握る構図となる。この動きは、ダンジョン管理課が主導している現在の収益構造への対抗意識が背景にあると推測された。

最適解と現実の乖離

斎賀と鳴瀬は、Dパワーズの依頼を受けてJDAが大学にサービス提供する形が最適であると認識していた。この方式であればJDAは仲介者としての立場を維持でき、責任の所在も明確になる。しかし営業案ではJDAが直接取引主体となり、立場上の問題が増大するため合理性に欠けていた。

組織内政治と不信感

営業部門の強硬な姿勢は、今年度の収益構造の変化による焦りが原因と考えられた。オーブ取引による利益が営業部を経由せず発生したことで、内部対立が顕在化していた。美晴の存在もその象徴となっており、結果として部門間の不信感が強まっていた。

アイテムボックス問題と資金の限界

会話の中で、オークションに出品予定のアイテムボックスについても議論が及んだ。JDAには数百億規模の余剰資金があるものの、オークション形式では到底太刀打ちできない可能性が高いと判断された。また、仮に取得できた場合でも運用責任の所在が問題となることが明らかであった。

現場対応と役割分担

斎賀は会議の混乱を受けつつも、美晴に対してDパワーズへの張り付き対応を指示した。状況の変化に迅速に対応するため、現場との連携を優先した判断であった。自身は再び会議へ戻り、停滞した議論の収拾に向かうこととなった。

市ヶ谷 JDA本部 ダンジョン管理課

営業部の執拗な介入と決着

不毛な会議を終えた斎賀は、自席に戻りながら営業部の執拗な介入を振り返っていた。営業部は一度買い取り案を引っ込めた後、所有権移転ファイナンスリースという形で再提案を行った。結果として大学との契約主体をJDAに維持する構図が確保され、最終的にはその方式で決着した。

ファイナンスリースの問題点

ファイナンスリース案は形式上リースでありながら、実質的には買い取りと同等であった。そのため機器の所有と責任がJDA側に集中し、大学への公平な配分が保証されない状況となった。また、申込順対応という条件により、必要性に基づいた適切な割り振りが困難になる問題も浮上した。

機器情報管理リスクの増大

契約形態がリースのみとなったことで、機器情報の取り扱いに関するリスクが高まった。斎賀は事前にその危険性を周知していたが、万が一情報が流出した場合には未必の故意が適用される可能性が高く、法務対応も厳格になると見込まれた。これにより一定の抑止力は確保されたと判断していた。

営業部の意図への疑念

斎賀は営業部の行動について、単なる業務合理性では説明できない違和感を抱いていた。必要以上に契約主体を握ろうとする姿勢から、内部政治的な意図や会長選挙を見据えた点数稼ぎの可能性を疑っていた。

JDA組織構造の整理

思考を巡らせる中で、斎賀はJDAの組織構造を改めて確認していた。組織は会長の下に専務理事が置かれ、実務は二名の常務理事に分担されていた。瑞穂常務理事は管理・営業・法務を統括し、もう一人の真壁常務理事がダンジョン管理部を統括している構造であった。こうした体制が今回の対立の背景にあることを、斎賀は認識していた。

代々木八幡 事務所

鳴瀬の動揺と状況の察知

携帯の通知を受けた鳴瀬は思わず声を上げ、明らかな動揺を見せた。その様子から三好は直近の出来事を想起し、再び厄介な案件が持ち込まれたと推測した。やり取りの流れから、問題の内容がアイテムボックスに関するものであると即座に見抜かれた。

アイテムボックス問題の浮上

鳴瀬は言い出しづらそうにしながらも、アイテムボックスに関する相談であることを認めた。この件はすでにDパワーズ側でも議論されており、三好と芳村は事前に対応方針を共有していた。

観測気球としての出品戦略

アイテムボックスの出品は本来、必ずしも実際の販売を目的としたものではなかった。これは市場や各機関の反応を探るための観測気球としての意味合いが強く、状況次第では取引そのものを成立させない選択も想定されていた。

国家機関の制約と市場構造

この商取引に対し、国家機関は法的に介入する明確な理由を持たない一方で、実利を伴う競争においては巨大犯罪組織と対抗できる予算を確保することも困難であった。さらに、現状ではアイテムボックスの具体的な利用シーンが限定的であるため、積極的に資金を投じる動機も乏しい状況であった。

主導権を握るための布石

こうした前提のもと、Dパワーズ側は出品という形で主導権を握りつつ、各方面の出方を見極めようとしていた。三好はその状況を楽しむ余裕を見せつつ、鳴瀬に対して対応方針を確認する姿勢を取っていた。

国家介入の限界と取引方針

芳村たちは、アイテムボックスが国家にとって扱いづらい存在であると認識していた。極端な用途を除けば政府が直接介入する理由は乏しく、自衛隊でさえ性能不明の段階では莫大な予算投入は困難であった。そのため、最終的にはオークションで第三者に渡る可能性が高いと判断していた。

JDAからの買い取り要請

鳴瀬は、オークションを回避したいという意向を伝えたうえで、JDAとして買い取りたい旨を提示した。ただし予算は限られており、交渉の余地がある状況であった。これに対し三好は商人として交渉に乗り出し、価格の具体的提示を求めた。

価格交渉と四百五十億の提示

JDA側は約四百億円を提示したが、三好はそれを退け、四百五十億円を要求した。この金額は過去の取引や手数料を踏まえた計算に基づくものであり、将来的な市場価格形成を見据えた戦略的な設定であった。安価な取引による相場固定を避ける意図が明確であった。

契約条件の提示

三好たちは価格に加え二つの条件を提示した。一つは使用者の開示、もう一つは必要時の協力であった。これによりアイテムボックスの運用実態を把握し、研究および実務的活用に繋げる狙いがあった。

JDA側の即時承認と追加条件

鳴瀬は上司との確認後、提示条件を受け入れると回答した。ただし、使用までJDA側で預かるため保管コストを軽減してほしいという追加条件が提示された。この提案は転用余地を含むものであったが、Dパワーズ側にとっても利益確保が可能な範囲であった。

秘密保持と裏取引の成立

芳村はさらに、取得者の秘匿とそれに対するJDAの協力を求めた。この条件は文書化できない性質のものであり、実質的には関係者間の裏取引として成立する形となった。鳴瀬はこれを受け入れる方向で調整を約束し、双方は契約成立に向けて合意に至った。

オークション中止と今後への影響

この合意により、アイテムボックスはオークションから外されることとなった。結果として市場への流出は回避され、Dパワーズは主導権を維持したまま、次の展開に備える状況が整えられた。

二〇一九年一月五日(土)

代々木八幡 事務所

契約成立と裏条件の明文化

前日の交渉に基づき、JDAから正式な契約書が送付された。そこには情報開示を制限する条項が自然に組み込まれており、実質的に裏条件の内容も文書化されていた。これにより〈収納庫〉の運用に関する秘匿性が担保され、Dパワーズ側に有利な環境が整えられた。

オークション開始時期の決定

三好はオークションの開始日を一月七日に設定した。記者会見前日に開始すると混乱を招くため、それを避ける判断であった。準備を進めつつ、情報公開のタイミングも慎重に調整されていた。

ブートキャンプ施設の完成

代々木ダンジョン内のレンタルスペース一階に確保した大型ミーティングルームの改装が完了した。この場所はゲート外に出ることなく利用できるため、ダンジョン出入りを伴う訓練プログラムに適していた。部屋の占有は困難であったが、Dカードチェッカーの提供を条件にJDAから譲歩を引き出して実現した。

プレ・ブートキャンプの準備

キャサリンに対しては、教官としての指導に先立ち、プログラムを体験させる方針が決定された。機材搬入と設置の進行に合わせ、事前体験としてのプレ・ブートキャンプが計画され、資料の読み込みも指示された。

宿泊環境と生活基盤の検討

キャサリンの宿泊先はパークハイアットであり、広大な客室に滞在していた。一般的な日本の住居と比較しても圧倒的に広く、生活環境の差が明確であった。三好は今後のために賃貸物件の確保を進める一方、当面はホテル滞在を継続させる判断を下した。

短期間での設備構築の完了

ブートキャンプ用機材の設置は、年末年始にもかかわらず特急対応で進められ、数日という短期間で完了した。これにより訓練プログラム実施に向けた準備が整い、Dパワーズの次の段階への移行が可能となった。

市ヶ谷 防衛省

オークション未開催の発覚

寺沢は、日本時間午前九時に合わせてオークションサイトを確認したが、予定されていたオークションは開催されていなかった。本来であればUTC基準で開始されるはずの催しが存在しないという事実に、異常性を認識した。

原因の推測と違和感

この事態について寺沢は、情報が誤りであった可能性と、何者かが介入した可能性の二つを考えた。しかし状況から後者の可能性が濃厚であると判断し、JDA内部の人物が何らかの手段でオークションを止めたと推測した。

介入不能だった現実

寺沢自身も田中も、この案件に対して有効な介入手段を持たなかった。通常であれば価格の高騰を傍観するしかない立場であったため、今回の展開は想定外のものであった。

JDA内部への疑念

オークションが消滅したという結果は、JDAの課長が裏で動いたことを示唆していた。しかしその具体的手段は不明であり、組織内部の影響力の大きさに対する疑念が強まった。

アイテムボックスの行方

最大の問題は、オークションに出されるはずだったアイテムボックスの所在であった。市場に現れなかった以上、どこかに確保されたことは明らかであり、その行方は重大な関心事となった。

情報共有への動き

寺沢は状況整理を終えると、関係各所へ情報を共有するためのメール作成に着手した。今回の異常事態を報告し、今後の対応に備える必要があると判断したためであった。

代々木ダンジョン ブートキャンプ施設

キャシーの来訪と訓練開始準備

キャシーは連絡を受けると即座にブートキャンプ施設へ駆けつけた。芳村はその高揚を抑えるように彼女を案内し、ダンジョン内に設けられた専用施設へと向かった。施設内では銃器の携行も可能であり、訓練環境として整備されていた。以降の訓練を見据え、日本語での対応が指示された。

ステータス測定の実施

最初の工程として、SMDIPROによるステータス測定が行われた。芳村が被験者となり、平均よりやや高い程度の数値が示された。続いてキャシーの測定が行われ、全項目において非常に高水準の値が確認された。これにより彼女は特定能力に偏らない万能型の戦闘適性を持つと判断された。

戦闘スタイルの確認

キャシーは銃とナイフを主体とした戦闘を行うと説明し、魔法については未習得であることを明かした。芳村は遠距離は銃撃、接近戦は魔法と近接武器を組み合わせる戦術を提案し、防御は回避主体とする方向性を定めた。また、魔法属性についても今後選択可能であると示された。

訓練方針の決定

キャシーの能力と志向を踏まえ、ブートキャンプはダンジョンセクションと地上セクションを交互に行う形式で進めることが決定された。特にダンジョン内での基礎能力向上を主軸としつつ、地上での訓練には一見目的不明の要素も含まれる構成となっていた。

ダンジョンセクション開始

パーティ結成後、一行は二層へ移動し、最初の訓練として外周三一・四キロのランニングが課された。芳村と三好は同行せず、キャシー単独での実施となった。

グレイシックの同行と警戒の緩和

三好の召喚により現れたグレイシックに対し、キャシーは即座に警戒して銃を構えたが、芳村が制止した。グレイシックはペットとして説明され、さらに影に潜む能力を見せることで、見張り役としてキャシーに同行することとなった。これにより安全確保と進行補助が図られた。

キャシーの走行開始と余力の確認

キャシーは指示に従い走行を開始し、高いステータスにより短時間での完走が予測された。芳村と三好はその能力の高さを踏まえ、戻り時間を一時間程度と見積もり、その間に別行動を取ることを決めた。

代々木ダンジョン 二層

農園の異変と被害確認

芳村と三好は農園の様子を確認するため丘へ向かったが、設置していた壁は消失し、小麦も大部分が失われていた。状況からスライムによる被害と判断されたが、完全に全滅したわけではなく、一部の小麦だけが残っていた。

リポップ現象の発見

三好は過去の記録と比較し、残っている小麦が過去に刈り取った個体であると特定した。消失したものと残存したものの差異を分析した結果、刈り取られた小麦が再出現している可能性、すなわちリポップ現象が発生していると結論づけた。芳村たちはこの事実に衝撃を受けた。

種の状態による差異の仮説

調査の結果、苗から植えた小麦は消失し、ダンジョン内に放置されていた種から発芽した小麦のみがリポップ対象となっていることが判明した。これにより、種の段階でダンジョン環境に晒されたものが「ダンジョン産」として扱われるのではないかという仮説が立てられた。

検証実験の開始

原因を特定するため、芳村たちは新たに種を異なる条件で植え直し、場所と種のどちらが影響しているかを検証する実験を開始した。また、放置されていた種を回収し、後の分析用として保管することにした。

ダンジョン化(ダンジョニング)の概念提唱

三好は、対象がダンジョンの管理対象になる過程を「ダンジョニング」と定義した。これは種がDファクターに触れることで前段階が成立し、その後イベント発生を契機にダンジョン側へ登録される仕組みであると推測された。

イベント処理による管理仮説

ダンジョンはすべての存在を常時監視するのではなく、イベント発生時のみ処理する仕組みで管理されていると考えられた。ダンジョニングされた対象はイベント通知が可能となり、その初回処理時にコピーが生成され、以後リポップ対象となると推定された。

成長停止の問題提起

リポップする小麦は成長が固定される可能性が示唆された。もし成長しない場合、実を付けることができず、農業利用に重大な制約が生じる。このため、成長が継続するかどうかが次の重要な検証課題となった。

人工物への応用可能性の検討

さらに芳村は、ダンジョニングの前段階を人工物に適用できれば、ダンジョン内に人工物を配置できる可能性に言及した。この仮説が成立すれば、ダンジョンの利用価値は飛躍的に拡大する可能性があるとされた。

キャシーのランニング訓練

同時刻、キャシーは外周走行を継続していた。障害物やモンスターを回避しつつ進行し、グレイシックに誘導されながらルートを維持していた。外部からはモンスターに追われているように見える異様な光景となっていたが、本人は訓練として一定の手応えを感じていた。

代々木ダンジョン ブートキャンプ施設

キャシーの帰還と記録的走行

キャシーは約九十分で三十キロ超の外周走行を終えて施設へ戻った。その速度は世界記録に匹敵する水準であり、極めて高い身体能力が示された。帰還後すぐに地上セクションへ移行することとなった。

AGI訓練としての音楽ゲーム導入

芳村は敏捷性強化のため、AGI特化訓練として音楽ゲームを用意した。設置されていたのは改造済みの筐体であり、プレイに集中できるよう不要な操作は排除されていた。キャシーはヘッドフォンを装着し、落下するノートに合わせて入力する基本操作を理解した上でプレイを開始した。

極端な高難度課題の提示

設定されていた楽曲は極めて難易度が高く、通常では最後まで到達することすら困難なものであった。そのためキャシーは開始直後から対応できず、短時間で失敗を繰り返すこととなった。芳村は最終目標として高評価ランクを掲げつつも、まずは完走を目標とするよう指示していた。

キャシーの反発と訓練の意図

繰り返し失敗したキャシーは強く反発し、この課題が現実的でないことを訴えた。しかしこの訓練は、高速な視認・判断・反応を同時に要求することで、AGIの極限強化を狙ったものであり、通常では達成困難な負荷を与える意図があった。

苦味飲料による追加負荷の検討

一方で三好は、身体能力向上を補助する目的で極めて苦味の強い飲料を試作していた。その成分は強烈な苦味と刺激臭を伴い、飲用者に大きな負担を与えるものであった。芳村も試飲し、その異様な苦さと刺激に強い嫌悪感を示した。

苦行による成長促進という発想

三好は、この強烈な苦味が訓練効果を高める可能性に言及し、負荷の大きさが成長に寄与するのではないかと考えていた。芳村はその発想に疑問を抱きつつも、過酷な訓練と組み合わせることで成果が得られる可能性を否定できず、今後の運用を検討することとなった。

代々木ダンジョン 受付

異常報告の発生と連絡

代々木ダンジョン受付で講習会業務を手伝っていた鳴瀬は、上司である斎賀からの連絡を受けた。内容は、二層外周において巨大なヘルハウンドに女性が追われているという複数の報告が上がっているというものであり、状況確認が求められた。

ヘルハウンドの正体の判明

鳴瀬はその報告がDパワーズの関係によるものであると判断し、対象が三好たちの使役するアルスルズであることを明かした。さらに、その四頭は渋谷区に正式に登録された「犬」として扱われていることも説明された。

行政手続きの不備と混乱

登録は書類上の記述のみで受理されており、種別に「ヘルハウンド」と記載されていても問題視されなかった。この結果、モンスターでありながら制度上は犬として扱われるという矛盾した状況が発生していた。斎賀はその杜撰さに困惑しつつも、制度上は否定できない現実を受け入れざるを得なかった。

運用上の安全性の確認

鳴瀬は、アルスルズは影に潜る能力を持ち、通常は三好の影の中に存在しているため、外部で視認される機会は限定的であると説明した。また、首輪が付いた個体であり、刺激しなければ危険性は低いと判断されていた。

管理側の対応方針の決定

斎賀は、当該個体を「首輪付き・金色の目の犬」として扱い、攻撃しなければ問題なしという方針で処理することを決定した。これにより、現場の混乱を最小限に抑えつつ、制度との整合性を保つ対応が取られた。

鳴瀬の内心と事態の収束

通話を終えた鳴瀬は安堵しつつも、アルスルズに対する個人的な興味を抑えきれない心情を抱えていた。この騒動は、モンスターと社会制度の齟齬を象徴する一件として処理された。

代々木ダンジョン ブートキャンプ施設

秘伝ドリンクと強烈な反応

ブートキャンプ施設にて、八セットを終えたキャサリンは仕上げのスペシャルドリンクを飲み、激しい苦味と刺激にむせ返った。芳村はそれをステータスを引き出すための秘伝の茶であると説明し、彼女に水を渡して落ち着かせた。

ステータス再計測と異常な成長

キャサリンがドリンクを飲み干した後、芳村は密かに〈メイキング〉で彼女のAGIを上昇させた。再計測の結果、AGIが大きく増加していることが確認され、キャサリンは一ラウンドで3ポイントも上昇した事実に驚愕した。

訓練効果の説明と誤解

芳村はこの訓練が新たな能力を得るものではなく、これまで蓄積された経験を効率的に引き出すものであると説明した。しかしキャサリンはこれを潜在能力の解放と捉え、自身の成長余地に強い関心を示した。

キャサリンの意欲の暴走

残りの成長余地について問われると、芳村は安全を見て二十ラウンド程度と答えたが、実際にはそれ以上の余剰が存在していた。これを聞いたキャサリンは強い意欲を示し、次のセットへと即座に向かい、訓練に没頭していった。

付き添いの負担と現実問題

キャサリンが繰り返しラウンドを行うことにより、芳村と三好は長時間付き合わざるを得ない状況に陥った。三好は翌日の準備を理由に離脱を示唆し、芳村は一人で対応する可能性に頭を抱えた。

スローライフへの認識の揺らぎ

多忙な状況にもかかわらず、三好は現在の生活をスローライフと捉えていると語った。芳村はその言葉に違和感を覚えつつも、時間に縛られない生活や農作業をしている現状を踏まえ、自身の生活を再評価することになった。

二〇一九年一月六日(日)

市ヶ谷 JDA本部 カンファレンスルーム

三好の変装と会見準備

市ヶ谷のカンファレンスルームでは、合同会社Dパワーズの設立会見が行われようとしていた。三好は読子・リードマン風の変装を施し、素性を隠したまま登壇する準備を整えていた。会場には多数のマスコミが集まり、短期間の告知にもかかわらず高い注目を集めていた。

会見開始と情報統制

司会を務める鳴瀬が会見開始を宣言し、三好が登壇した。最初の質問でオークションの仕組みを問われたが、業務外であるとして回答を拒否し、情報統制を徹底した。これにより、記者側は主題を会社の事業内容へと切り替えざるを得なくなった。

会社概要と運営方針の提示

三好はDパワーズがダンジョン攻略支援を目的とした企業であることを明かし、パーティのリーダーと代表が同一人物であると説明した。また、NPOではなく合同会社とした理由については、簡便さを理由に挙げるなど、意図的に軽い応答で場をコントロールした。

スキルオーブ貸与という衝撃

支援内容としてスキルオーブの貸与を提示した瞬間、会場は静まり返った。三好は探索者の貢献に対する対価としてオーブを提供し、そのまま保持させる方針を示した。この発言は極めて高額な資源を報酬として扱うことを意味し、記者たちに大きな衝撃を与えた。

オーブ供給源への追及と回避

記者はオーブの入手経路を追及したが、三好は探索者の協力によるものと曖昧に回答し、核心には触れなかった。これにより、供給源の謎は依然として伏せられたままとなった。

ブートキャンプとステータス概念の提示

三好はダンジョン・ブートキャンプについて、ステータスの効率的な取得支援であると説明し、ステータスの存在を断言した。この発言は科学的に未証明とされていた概念への直接的な挑戦となり、記者たちの間に大きな動揺を生んだ。

ステータス計測デバイスの発表

続いて三好は、ステータス計測デバイスの開発を発表した。数値の正当性について問われると、比較対象の出現によって妥当性が示されると説明し、具体的な検証方法には踏み込まなかった。

〈鑑定〉スキルの公開

鳴瀬は補足として、三好が世界で唯一の〈鑑定〉スキル保持者であることを明かした。この情報は会場とネット双方に衝撃を与え、ステータスの実在性を裏付ける決定的要素として受け止められた。

ブートキャンプの実績と波及効果

三好はブートキャンプが潜在能力を引き出すものであると説明し、斎藤涼子の成長がその理論に基づくものであることを示した。この発言により、芸能・スポーツ分野への応用可能性が想起され、記者たちはさらなる波及を予感した。

会見の余波と新たな存在の誕生

会見は予定時間を大きく超過しながら終了したが、その影響は即座にネット上へと広がった。この日を境に、三好梓は後に「ワイズマン」と呼ばれる存在として認識され始めたのである。

掲示板での会見前の期待と困惑

Dパワーズの設立会見直前、探索者たちの掲示板ではその意図を巡る議論が活発化していた。オークション主催者と同名の企業である点や、会場がJDAであることから、何らかの重大発表があるのではないかと推測されていたが、具体的な内容は誰にも分かっていなかった。

会見開始による注目の集中

ネット中継が開始されると視聴者数は急増し、探索者だけでなく一般層や海外勢も巻き込んだ大規模な注目が集まった。司会を務める鳴瀬や登壇した三好の姿に対して、驚きや興味が入り混じった反応が相次ぎ、会見は一種のイベントとして消費されていた。

オーブ貸与発言による衝撃

三好がスキルオーブの貸与を発表すると、掲示板は一気に混乱した。高額なオーブを一定期間の協力で提供するという仕組みは、事実上の高額報酬と受け取られ、常識外れの条件に対する驚きと疑念が入り混じった議論が展開された。

支援条件への評価の分裂

対価として提示された「意思と実力」の提供については、抽象的であるとの批判と、むしろ参入障壁が低いとする肯定的意見が対立した。特に実力の証明方法については不透明であり、制度としての実効性を疑問視する声も見られた。

ステータスと計測デバイスの登場による混乱

ステータスの存在が断言され、さらに計測デバイスの存在が示唆されると、掲示板は一時的に理解不能な状況に陥った。未知の概念と技術が同時に提示されたことで、驚愕と混乱が連続的に広がっていった。

〈鑑定〉公開による評価の確定

三好が〈鑑定〉スキル保持者であることが明かされると、状況は一変した。JDAがそれを認めたことで信憑性が急激に高まり、疑念は一気に現実として受け入れられる方向へと傾いた。海外では三好を「ワイズマン」と呼ぶ動きが広まり、世界的な注目対象となった。

ブートキャンプの波及効果への期待

ブートキャンプが能力向上に寄与するという情報や、女優の成長との関連が語られると、探索者以外の分野への応用可能性が議論された。特にスポーツや芸能への影響が想定され、社会全体への波及が現実味を帯び始めた。

参加意欲と不安の混在

掲示板では、スキルオーブ獲得の可能性に惹かれて参加を希望する声が増加した一方で、過酷な条件や拘束期間への懸念も示された。高額報酬に見合うリスクをどう評価するかで意見は分かれていた。

世界への影響の予兆

最終的に、ステータス計測デバイスの存在は国家や企業レベルでの導入を想起させ、ダンジョン攻略の基準そのものを変える可能性が指摘された。会見は単なる企業発表にとどまらず、探索者社会の構造を揺るがす転換点として認識され始めていた。

四ツ谷 外濠公園

ベニトアイト鑑定結果の判明

鳴瀬に呼び出された芳村は、JDAを離れて外濠公園へ向かう道中で、ペンダントの宝石がベニトアイトである可能性が高いと知らされた。屈折率や蛍光などの特徴から導かれた結論であったが、そのサイズは約十カラットとされ、既知の最大級を上回る極めて異例のものであった。その希少性ゆえに断定は避けられ、「おそらく」という表現に留められていた。

鑑定依頼の拒否と関心の薄さ

詳細鑑定の要望が出されていたものの、芳村は手入れ方法が分かれば十分であるとしてそれを断った。宝石の価値そのものには強い関心を示さず、実用面のみを重視する姿勢が見られた。

クリンゴン語碑文の再翻訳

本題として鳴瀬は、問題となっていたクリンゴン語碑文について、新たに専門家へ翻訳を依頼した結果を提示した。自動翻訳の内容が不自然であったための再検証であり、固有名詞を補正した上で得られた訳文は、従来の碑文とは異なる強い意味を持つものであった。

ダンジョン発生と実験の関連示唆

その内容には、ダンジョンの出現が三年前のネバダでの実験と関係している可能性を示唆する記述が含まれていた。さらに詳細を知るための手がかりとして、「マナーハウスの書斎に来い」との一文が記されていた。

マナーハウスの特定と過去の接点

鳴瀬は調査の結果、そのマナーハウスがタイラー博士の母方の屋敷である可能性が高いと説明した。サンタクルーズ近郊に存在したその建物は既に失われていたが、過去の写真に写る外観は、芳村が見覚えのあるものと一致していた。

証拠の不確実性と外交リスク

しかし、この情報には確固たる裏付けが存在せず、公開した場合にはアメリカから強い反発を招く可能性があった。特に問題の部分がクリンゴン語で記されているため、後付けの改ざんと主張されれば反論が困難であるというリスクも抱えていた。

公開可否を巡る判断の迷い

ヒブンリークスが内容に責任を持たないという建前がある一方で、この情報を公開すべきかどうかについて鳴瀬は判断に迷っていた。影響の大きさと不確実性の双方を踏まえ、軽率な発表が許されない状況であった。

専門家への相談決断

最終的に芳村は、この件について最も事情を把握しているであろう人物へ確認を取る必要があると判断し、その場で電話をかけた。問題の真偽と対応方針を見極めるため、外部の知見に委ねる選択を取ったのである。

西新宿 パークタワー 四十一階

会見後のアフタヌーンティーと情報共有

西新宿の高層階では、サイモン隊とキャシーが会見後の情報共有を兼ねて集まっていた。会見内容の予想以上の影響を受け、議論は活発化していたが、キャシーはブートキャンプ体験の報告を兼ねて合流し、場は一時的に休息の空気を帯びていた。

ジャンケン勝負による異常性の認識

キャシーは芳村との対面について、戦闘ではなくジャンケンによる勝負を強いられた経緯を説明した。そして百回以上挑戦して一度も勝てなかった事実が共有され、その確率はほぼあり得ない水準であると認識された。この結果から、何らかのスキル的要因が存在する可能性が強く疑われた。

訓練プログラムへの興味と警戒

ブートキャンプの詳細については意図的に報告が保留されていたが、その理由が「初回参加者の体験を損なわないため」であると説明され、サイモンはDパワーズの余裕と計算高さを感じ取った。さらに守秘義務を課さない姿勢から、情報流出すら織り込み済みであるとの見方が強まった。

高額報酬による異常な待遇

キャシーの報酬が年二十五万ドルという高額であることが明かされ、軍の高級将校を上回る待遇に一同は驚いた。これは単なる雇用ではなく、何らかの価値ある情報や能力に対する対価である可能性が示唆された。

芳村への違和感の共有

キャシーは芳村について、不思議で一貫性に欠ける人物であると評価した。過度にへりくだる一方で物怖じせず、行動に統一性がない点が違和感として認識された。また三好が芳村に従う関係性も、外部からは理解し難いものと見られていた。

行動履歴からの異常性の抽出

サイモンは独自に収集した情報を基に、芳村と三好の行動履歴を整理した。芳村は会社退職直後にダンジョンへ潜り始め、当初は意味不明な行動を繰り返していた。一方で三好は突然商業ライセンスを取得し、ほとんど潜らないまま独立に踏み切っていた。これらの動きは連動しており、計画的な行動と見なされた。

オーブ取得の不可能性と仮説の必要性

短期間で大量のオーブを確保した事実について、既存の探索手法では説明がつかないことが確認された。特に短期間での大量討伐や市場への影響の欠如は、通常の探索者活動では成立し得ないものであった。

芳村=最強探索者仮説の提示

これらの矛盾を解消する仮説として、サイモンは芳村が突如現れた最強探索者である可能性を提示した。この仮説により、急激なランク上昇やオーブ供給の不可解さが合理的に説明可能となった。

“見えていたのに認識されなかった存在”

芳村は目立つ存在でありながら、その実力が正しく認識されていなかった点が強調された。これは観測者側の認識の問題であり、結果として彼は「ファントム」と呼ばれる不可視の存在として扱われていたと結論付けられた。

調査と接触方針の確定

最終的にサイモンは、自らの任務達成のためにも芳村の能力の秘密を解明する必要があると判断した。そのためキャシーに対し、引き続き芳村を観察し、その本質を見極めるよう命じた。

二〇一九年一月七日(月)

代々木八幡 事務所

報道過熱と情報の歪曲

代々木八幡の事務所では、Dパワーズの記者会見を受けて、各テレビ局が関連情報を大々的に取り上げていた。報道はオーブのオークションや〈異界言語理解〉を中心に構成されており、実際の発言内容とは異なる形で再編集された情報が流布されていた。結果として、センセーショナルな内容が強調され、社会的関心は急速に高まっていた。

探索者制度への影響と受講者増加の懸念

報道の影響は探索者制度にも波及し、特にWDAライセンス講習の受講希望者増加が懸念された。これまで情報に関心を示さなかった層にも話題が広がり、保護者の判断によって未成年の参加が増加する可能性が指摘された。また、マイニングや食料ドロップといった要素も報道され、ダンジョンの実利的側面への関心が強まっていた。

三好への私生活への影響

三好は会見後、家族や親戚からの連絡に対応を迫られていた。両親からは身を案じる連絡が入り、さらに疎遠な親戚からも収入に関する探りを入れるような問い合わせが相次いだ。直接的な金銭要求こそなかったものの、社会的注目の高まりが私生活に影響を及ぼしている状況が示されていた。

二つ名の拡散と個人特定の危険性

ネット上では三好や鳴瀬にそれぞれ異名が付けられ、存在が象徴化されていた。三好にはワイズマンやオーブハンター、鳴瀬には翻訳者としての呼称が広まり、さらに芳村にもザ・ファントムとしての認識が浸透していた。これにより、個人特定のリスクが高まり、変装や行動制限の必要性が議論された。

芳村の過去行動の再評価

芳村は過去に軽装でダンジョンへ出入りしていた行動が話題となり、すでに一部で認知されている存在であったことが明らかになった。これにより本人は無自覚のまま知名度を獲得しており、現在の騒動と結びつくことでさらなる注目を集める可能性が示された。

JDA内部の動きと圧力の兆候

JDA内部では三好に対する協力要請が増加しており、常務理事が関係性を理由に安易な約束をしているとの噂が広がっていた。これにより、組織的な圧力や依頼が増大する兆しが見え始め、三好はJDAへの接近を控える必要性を認識した。

鑑定能力を巡る需要の急増

〈鑑定〉の存在が公になったことで、JDAには依頼や紹介要請が急増していた。さらに旧知の人物からも素材鑑定の依頼が届き、社会全体でこの能力への需要が高まっている状況が浮き彫りとなった。

社会貢献と情報公開の検討

芳村たちは、過度な批判を避けるためにも何らかの社会貢献が必要であると認識し、鑑定結果の公開などの案を検討した。しかし公開方法については慎重であり、JDA経由では効果が薄い可能性や、過度な露出によるリスクも考慮されていた。

騒動の中での現実的対応

最終的に三人は、急激に拡大する影響と注目の中で、表立った活動を控えつつ対応していく方針を共有した。社会的影響の拡大と個人リスクの増大が同時に進行する中で、慎重な行動が求められる局面に入ったのである。

マイニング出品による衝撃

掲示板では、Dパワーズによる新たなオークションとして〈マイニング〉オーブが二つ出品されたことが大きな話題となっていた。事前告知のない突然の開催に対して驚きと混乱が広がりつつも、その希少性から強い関心が集まっていた。特に各国未取得とされるオーブが同時に複数出品された点が異常視され、供給源の存在に疑問が呈されていた。

供給者の特定と探索状況の推測

マイニングオーブの供給者については、代々木ダンジョンに潜る探索者の中に存在するのではないかという推測が交わされていた。しかし十八層には国内外から多数の探索者が集まっており、特定は困難と認識されていた。また、二十層以降への進行が確認されていない点から、意図的に情報を隠している可能性や、特定資源の独占を狙っている可能性も議論されていた。

ダンジョン構造と未解明領域への関心

話題は十八層の状況から、立ち入り禁止となっている山頂区域の存在にも及んだ。そこには危険物質や強力なモンスターが存在するのではないかという憶測が飛び交い、ダンジョン内部の未解明領域に対する関心が高まっていた。

促成オーブの効果とリスク認識

オークションに出された別のオーブ〈促成〉については、経験値獲得量が二倍になる効果があるとされ、大きな注目を集めていた。しかし同時に成長制限が存在することも判明し、そのリスクと制約について議論が行われた。それでもなお、現トップ探索者を上回る成長余地があるとされ、強力なアイテムとして認識されていた。

水魔法の実戦効果と評価の変化

過去に出品された水魔法オーブについても再評価が進んでいた。防衛省が取得したと推測されるその魔法により、ダンジョン攻略が一気に進展し、探索可能階層が拡張されたと報じられていた。これにより水魔法の実用性が証明され、従来の評価が大きく引き上げられていた。

魔法体系への理解の深化

魔法に関する議論では、番号付き魔法と番号なし魔法の違いについても言及されていた。番号なし魔法は習得が難しい一方で応用性が高く、熟練すればより強力であるとされ、実戦での価値が見直されていた。また、水魔法による飲料水生成が可能であることが判明し、ダンジョン探索における装備負担軽減という観点でも注目されていた。

攻略進展と情報公開の影響

代々木ダンジョンにおいては二十五層までの到達とルート公開が行われており、探索環境が大きく変化していた。その一方で、マイニング取得者がさらなる階層へ進んでいない点は不自然とされ、意図的な情報統制や行動制限の可能性が指摘された。

匿名空間における評価と感情の混在

掲示板では、Dパワーズに対する評価は賞賛と疑念が入り混じったものとなっていた。革新的な技術や資源を提供する存在として期待される一方、その行動の不可解さから警戒や不信も同時に存在していた。匿名環境特有の軽口や誇張も含まれつつ、情報の断片を基にした推測が拡散していく状況が形成されていた。

代々木八幡 事務所

サイモンへの相談と話題の提示

芳村は三好とともにサイモンを事務所へ招き、未公開の碑文内容について相談を持ちかけた。話題はネバダの事故で死亡したとされるタイラー博士に及び、その生死の確認が主題として提示された。サイモンは当初冷静に応じつつも、内容の重要性を察して慎重な姿勢を見せた。

ネバダ事故とダンジョン発生の経緯

サイモンは三年前の事故について、加速器稼働中にダンジョンが発生し施設が破壊されたと説明した。事故直後に救助部隊が突入したが、強力なモンスターに阻まれ救助は難航し、対応は大きく遅れたと語られた。

救助作戦と内部探索の実態

二週間後に突入した部隊は重武装で施設内部へ侵入し、モンスターの激しい抵抗を受けながらも奥へ進んだ。しかし施設内部では戦闘の痕跡が乏しく、さらにモンスターの存在も消失していた。異常な状況の中で探索が続行された。

コントロールルームの不可解な状況

最終的に到達したコントロールルームは内側から施錠されていたため、強制的に突破された。しかし内部には人間の痕跡が一切存在せず、研究員の遺体も発見されなかった。脱出経路も存在しない状況で人間が消失していたことが明らかとなった。

タイラー博士の生死の不確定性

この結果から、タイラー博士を含む関係者の死亡は状況的には確実視されるものの、物理的証拠は一切存在しないと結論づけられた。芳村はこの点に着目し、碑文との関連性を疑問として提示した。

事故原因に関する新たな仮説

サイモンは独自の見解として、事故はダンジョンが自然発生したのではなく、実験の結果として発生した可能性があると示唆した。この発言は、ダンジョン災害の原因が人為的である可能性を含んでおり、極めて重大な意味を持っていた。

碑文公開の危険性と判断

この情報を踏まえ、サイモンは碑文の公開を控えるべきだと助言した。内容が国家間の問題へ発展する可能性が高く、公開は双方にとって不利益をもたらすと判断されたためである。芳村もその意見を受け入れ、該当部分の公開中止を決断した。

今後の方針と各者の動き

話の決着後、サイモンはブートキャンプ参加と並行して〈マイニング〉取得を目標とし、将来的にはタイラー博士の行方を探る意志を示した。一方芳村たちは、情報の扱いに慎重を期し、沈黙を選択することで事態の悪化を回避する方針を固めた。

終章 エピローグ

後日譚
市ヶ谷 JDA本部

六条小麦の来訪と異例の要望

斎賀は美晴経由で届いた書類を確認し、その内容に困惑していた。それはGIJ所長による推薦文であったが、実質的には彼女の行動を止めてほしいという懇願に近いものであった。応接室に現れた六条小麦は、自身の意思で〈マイニング〉を取得し、二十層より下へ向かうことを強く望んでいた。

宝石への執着と動機の形成

六条小麦は、過去に鑑定したダンジョン産の宝石に強い衝撃を受けており、それが行動の原動力となっていた。未知の鉱物や宝石の存在を確かめるためには、より深層へ進む必要があると確信しており、そのための手段としてダンジョン探索を選択していた。

初心者である事実と危険性の認識

しかし彼女は探索者としての経験がなく、これからDカードを取得する段階であることが判明した。この事実に斎賀は驚愕し、二十層到達が極めて危険であることを指摘したが、六条小麦は根拠のない自信を崩さず、問題ないと断言した。

鳴瀬の発言と責任の転嫁

六条小麦は、その自信の根拠として鳴瀬の発言を挙げ、Dパワーズならば何とかしてくれると信じていた。斎賀はこの発言から、説得を放棄した鳴瀬が問題を自分へ回したと理解し、内心で不満を抱いた。

組織的事情と判断の葛藤

GIJとの関係性から無下に断ることは難しく、斎賀は現実的な危険性と組織的な立場との間で判断を迫られた。初心者を深層へ送り込むことは本来あり得ないが、同時にDパワーズの能力を考慮すると完全否定もできない状況であった。

ブートキャンプの検証機会としての転換

最終的に斎賀は、この件をDパワーズのブートキャンプの実力を測る機会として捉えるに至った。もし六条小麦が成長可能であれば、探索者全体の底上げに繋がる可能性があると判断し、実験的な価値を見出した。

紹介決定と残る不安

斎賀は条件付きでDパワーズへの紹介を承諾し、二十層到達の保証はしないことを明言した。六条小麦は感謝とともにその場を後にしたが、彼女の無邪気さを前にして、斎賀はわずかな良心の痛みを覚えていた。

代々木八幡 事務所

斎藤の来訪と写真による動揺

斎藤涼子は突然事務所を訪れ、焦燥した様子で助けを求めた。彼女が持参した写真には、芳村圭吾が二人を抱えて「さまよえる館」から脱出する姿が鮮明に写っており、これが問題の発端であった。撮影者と遭遇していたこともあり、写真の存在が表沙汰になる可能性を強く危惧していた。

出演依頼と断れない状況

斎藤涼子は吉田陽生からパイロットフィルムへの出演依頼を受けていたが、当初は断るつもりであった。しかしその際に問題の写真を提示され、やむなく出演を承諾していた。芳村圭吾は、秘密にする必要性が薄いと考えていたが、その認識の違いにより斎藤涼子は大きく悩んでいた。

撮影内容と十層探索の危険性

撮影は代々木ダンジョン十層で行われる予定であり、斎藤涼子はその危険性に不安を抱いていた。彼女は探索経験が浅く、主武装が弓であるため、十層のモンスター相手では戦闘継続が困難であると予想されていた。同化薬を用いた移動であれば問題は少ないが、戦闘が発生した場合の危険は大きかった。

護衛提案と同行決定

三好梓は、芳村圭吾が撮影隊に同行せず、後方から密かに見守る形で護衛する案を提案した。芳村圭吾は当初消極的であったが、斎藤涼子の強い要望を受け、その条件での同行を了承した。これにより、撮影中の安全確保の目処が立った。

三好の思惑と新たな展開の予感

三好梓はこの状況を機会と捉え、芳村圭吾の露出や新たな展開につなげようとしていた。彼女の意図を察した芳村圭吾は強い違和感を覚え、事態が単なる護衛に留まらない可能性を感じ取っていた。

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