どんな本?
『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』は、之貫紀 氏による日本のライトノベル。
この物語は、世界各地に「ダンジョン」が出現してから3年後の世界を描いている。
主人公の芳村は、元々は社畜として働いていたが、ある偶然からダンジョン探索者の世界ランキング1位になる。
彼は退職し、ダンジョンに潜ることを決意するが、手に入れた未知のスキルに振り回され、ダンジョン攻略の最前線に関わることになる。
この作品は、投稿小説サイト「小説家になろう」で2019年6月1日から投稿が開始され、その後KADOKAWAのエンターブレインレーベルより2020年2月から刊行されている。
また、『月刊コンプエース』で平未夜 氏の作画により漫画化され、連載が開始されている。
読んだ本のタイトル
Dジェネシス ダンジョンが出来て3年01
著者:之貫紀 氏
イラスト:ttl 氏
あらすじ・内容
これぞインテリ式ダンジョン攻略!!!
ダンジョンができて3年。ダンジョン攻略が当たり前になった世界で、
Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 01
社畜として生活していた芳村が、不意に訪れた不幸?な偶然で世界ランキング1位にランクイン!
のんびり生活に憧れて退職し、ダンジョンに潜ることにはしたものの、
手に入れてしまった未知のスキルに振り回されて、ダンジョン攻略最前線にかかわることに。スローライフの明日はどっちだ――!?
感想
「Dジェネシス ダンジョンができて3年 1」は、異次元実験から生まれたダンジョンを舞台に、普通のサラリーマン芳村がダンジョンカードを手に入れ、スキルオーブ「メイキング」を獲得するまでの奇妙な経緯を描いている。偶然の連続でダンジョン探索者になる決意をした彼の物語は、現代社会とダンジョンが融合したIF世界を面白おかしく映し出す。
この作品は、巷に溢れるなろう系ファンタジーと一線を画する。
特に目を引くのは、科学的検証を交えた物語の展開で。
ダンジョンの「魔法」的な特性を科学的アプローチで解析する過程が、理系の読者には特に魅力的に映るだろうと思う。
主人公の芳村と後輩の三好がダンジョン探索者としての道を歩む様子は、世界観の深掘りと共に今後の展開に期待を抱かせてくれる。
彼らがコツコツと検証を重ねる過程が、物語にリアリティを加えている。ダンジョンと現代社会の融合が生み出していた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
考察・解説
ダンジョン発生の謎
本稿では、世界に突如として現れた「ダンジョン」の発生の経緯、その正体と目的、および発生・消滅時に伴う物理的現象について解説する。
最初のダンジョンの誕生
ダンジョンが世界で初めて発生したのは、3年前のアメリカ合衆国ネバダ州のグルーム・レイクで行われた大型加速器による実験が契機である。余剰次元の確認を目的として、LHC(大型ハドロン衝突型加速器)をはるかに超える衝突エネルギーで粒子を衝突させた結果、マイクロブラックホールが生成された。
理論上、ホーキング輻射によって瞬時に蒸発するはずのマイクロブラックホールは消滅せず、何かの力場に囚われたように空間を高速で運動し始めた。最初のダンジョンが誕生するまでのプロセスは以下の通りである。
- 量子レベルの空間の歪みが発生
- 何らかの知的活動を行う有機体のような存在が、この歪みを「望みを叶えるためのチャンス」と認識
- 当該存在が慎重にエネルギーを加えて歪みを拡大させ、莫大なリソースを解放
- その結果、地下150メートルに最初のダンジョン「ザ・リング」が誕生
ダンジョンの正体と目的
ダンジョンの発生理由とその目的については、ロシアのキリヤス=クリエガンダンジョンで発見されたスキルオーブ〈異界言語理解〉によって翻訳された碑文に記されている。
碑文から読み取れるダンジョンの特性と目的は主に以下の3点である。
- ダンジョンは地球に打ち込まれた「テラフォーミングのツール」である
- 異界は「魔素」と呼ばれる物質で満たされており、繋がった先の世界(地球)にそれがないことを想定して、魔素をモンスターの形にしてダンジョンから送り出している
- 128層を超えるダンジョンは繋がった異界へと渡る「通路」になるとされており、これが「ダンジョン=パッセージ説」の強力な根拠となっている
発生時の物理的現象
ダンジョンが地球上に発生、または消滅する際には、特殊な物理的現象が観測される。
- ダンジョン震:ダンジョンが地球上に発生する際に観測される特殊な揺れ。
- 占有空間と衝撃:ダンジョンが実際に占有している空間は直径数メートルからせいぜい十数メートルの円柱状であり、ダンジョン震は「針が打ち込まれたときの衝撃」であることが明らかになっている。
- 消滅震:ダンジョンが攻略されるなどして消滅する際に記録される、針が抜けたときの衝撃。
まとめ
世界初のダンジョンは、人類の大型加速器実験によって生じた空間の歪みを未知の知性的存在が利用することで誕生した。その正体は、異界の物質である魔素を地球にもたらすテラフォーミングツールであり、さらに深層は異界への通路となる可能性が示唆されている。また、発生と消滅に伴う特有の地震波の観測により、ダンジョンが占有する物理的構造の解明が進んでいる。これらの知見は、ダンジョンという未曾有の存在を理解し、今後の対策を講じていく上で極めて重要な基盤となる。
世界ランキング一位
世界ダンジョン協会ランキングリスト(WDARL)における世界ランキング一位の正体とその誕生の経緯、そして社会や関係者に与えた影響について解説する。
世界ランキング一位の正体と誕生の経緯
世界ダンジョン協会ランキングリスト(WDARL)における世界ランキング一位の正体は、本作の主人公である芳村圭吾である。彼が一位になったのは、ダンジョン探索を積み重ねた結果ではない。
・工事現場の地割れにトレーラーから大量の太く長い鉄筋が滑り落ちた際、偶然にもはるか地下深くの強力なモンスターを倒してしまったためである。
・これにより莫大な経験値を一気に獲得し、初めて魔物を倒してDカードを取得した時点で、すでに「Rank 1」となっていた。
しかし、芳村自身には強くなった実感が全くなく、困惑していた。
世間の反応とネット上の騒動
芳村は探索者登録をしていない未登録者であったため、WDARL上では「エリア12の匿名探索者」として表示された。
・エリア12は日本を含む地域であるが、日本は早期から自衛隊による管理体制が確立しており、初期エクスプローラーのほぼ全員が登録済みであったため、未登録の民間人が上位に入ることは通常あり得ないことであった。
・ランキングは本来モンスター討伐によって徐々に上がるものであるが、突如として低順位帯から1位に躍り出たため、大きな騒ぎとなった。
チャットや掲示板では「誰にも知られていない深い階層を単独攻略したのか」「クリプトン星の出身だ」などと冗談交じりの議論が交わされ、世界中の探索者や関係者の間で話題となった。
周囲や関係者からの疑念
芳村は、この事実を隠して生活しようとするが、同僚の三好梓にDカードを見せたことで彼女を驚愕させる。
・三好は芳村の勤務状況からまともにダンジョンに潜る時間がなかったことを知っており、何らかの異常な手段で1位になったのだと推測した。
・芳村と三好が結成したパーティ「Dパワーズ」が、希少な未知スキルオーブ(〈水魔法〉や〈物理耐性〉など)を次々とオークションに出品し始めたことで、各方面から注目を集めるようになった。
日本ダンジョン協会(JDA)の斎賀課長は「どこの誰だか分からない、エリア12の世界ランク一位の影が、あそこにちらつく気がしないか?」と疑念を抱いた。また、実際にオーブを落札した世界ランク三位のサイモン・ガーシュウィンも、芳村たちに対し直接「最近エリア12のエクスプローラーが、WDA世界ランク一位になったんだが――君たちの知り合い?」と探りを入れるなど、次第にその正体に疑いの目が向けられるようになっている。
偶然の産物である芳村圭吾の世界ランキング一位獲得は、彼自身の意図とは裏腹に、世界中の探索者やダンジョン管理組織から多大な注目と疑念を集める結果となっている。
ステータスの数値化
本作において「ステータスの数値化」は、主人公の芳村圭吾が未知スキル〈メイキング〉を発動させたことによってもたらされた特異な現象であり、ダンジョンの謎や身体強化のメカニズムを解き明かす重要な鍵となっている。
ステータス数値化の契機と仕組み
芳村が公園で〈メイキング〉のスキルを発動させると、他人には見えない半透明のタブレット状の画面が目の前に展開された。
・そこにはRPGのキャラクター作成画面のように、NAME、RANK、SP(ステータスポイント)、HP、MPのほか、STR(強さ)、VIT、INT、AGI(敏捷さ)、DEX(器用さ)、LUCといったパラメーターが数値として表示されていた。
・検証の結果、魔物を倒すことで得られる「SP」を消費して各パラメーターに割り振ることができ、それらに固有の係数を掛け合わせるという中学生レベルの単純な計算式でHPとMPが算出される構造であることが判明した。
「ハズレオーブ」の再評価とビジネスの可能性
このステータスの数値化という概念は、スキルの効果を正確に検証できる点で画期的であった。芳村からこの話を聞いた三好梓は、以下のような可能性を指摘した。
・使っても実感が湧かずスキルも増えないため価値が低いとされていた「xH+系」などのハズレオーブが、実は各ステータスにかかるHP・MP補正係数を増加させる隠れた効果を持っていることを、数値化によって証明できる。
・さらに、ステータス変化と生理的なデータを突き合わせて計測できれば、巨大な需要を見込める計測ビジネスになると考えた。
身体強化メカニズムの解明
このアイデアをもとに、芳村と三好は鳴瀬翠の医療計測研究所で全項目検査を行った。芳村がポッドの中でSPを割り振り、段階的にステータスを上げていった結果、以下の事実が判明した。
・出力が上がっているにもかかわらず、血液などの生理学的な数値には一切の異常が見られなかった。
・一方で、脳波には明らかな異常(速波化)が観測され、その変化はステータスの項目数と一致する六段階で移行していた。
・さらに、計測環境内で機器由来ではない「謎の電磁波の揺らぎ(エネルギーフィールド)」も検出された。
これらの結果から、三好は「魔物討伐による身体の強化は、細胞が物理的に変化するのではなく、精神的な作用(脳波)によって身体の外部に『外骨格』のようなエネルギーフィールドが形成されることで起こる」という仮説を導き出した。
能力のインフレと制御機能
芳村が全ステータスを一〇〇まで上げた結果、軽く握っただけでマグカップを粉砕し、10円玉を指で簡単にへし折ってしまうほどの人間離れした力を得てしまい、身体制御が追いつかなくなった。
・しかし、ステータスが一〇〇に到達した際、画面にマイナス(-)の操作項目が出現した。
・これはSPを返還する機能ではなく、使用中の能力値を意図的に下げる(手加減する、または擬装する)ための機能であった。
・芳村はこれを利用して能力を三〇相当に抑えることで日常生活への支障を回避した。
デバイス開発と社会への懸念
得られたデータを元に、三好と翠はステータスを計測・数値化するデバイスの試作機開発に乗り出した。
・三好は、人間の能力が一律に数値化されることで「戦闘力・・・たったの五か・・・ゴミめ・・・」といった差別や遊びに繋がる危険性を懸念している。
・そのため、隠しスキャン(スカウターのような使い方)を防ぐために、一般向けには簡易表示型にするなどの工夫を検討している。
まとめ
未知スキル〈メイキング〉によるステータスの数値化は、単なる能力の可視化にとどまらず、価値が低いとされていたハズレオーブの再評価や、ダンジョンによる身体強化メカニズムの解明といった重要な発見をもたらした。能力のインフレに対する制御機能の存在も確認され、現在はこれらの知見を活用した新たな計測デバイスの開発も進められている。一方で、人間の能力が数値化されることによる社会的なリスクも危惧されており、技術の運用には慎重な配慮が求められている。
スキルオーブの特性
ダンジョンから産出される「スキルオーブ」は、「Dカード」「ポーション」と並ぶ三大アイテムの一つであり、使用した人間に魔法などの特殊な能力を与える、人類を次の位階に導くようなアイテムである。
その特性には、以下のような絶対的な法則と謎が存在する。
厳格な時間制限(消滅の法則)
スキルオーブの最大の特徴は、この世に現れてからきっかり「23時間56分4秒(地球の自転時間と同一)」で消滅してしまうことである。
・オーブに触れると名称とともに「オーブカウント」と呼ばれる数字を認識できる。
・この数字は発見からの経過時間を示しており、数値が1436に達したあたりで完全に消滅する。
・この厳しい時間制限のせいで、発見から使用までの猶予がなく、市場に流通させたりオークションにかけたりすることが極めて困難となっている。
使用における絶対条件(Dカードの必須性)
スキルオーブは誰でも自由に使えるわけではない。使用するためには、ダンジョンで自力でモンスターを倒し、「Dカード」を取得していることが絶対条件となる。
・「モンスターを独力で倒す」というDカードの取得条件は非常に厳密である。
・他人が銃を支えたり、弾を込めたり、あるいはモンスターのヘイトが他人に移ったりしただけでも取得に失敗する。
・そのため、怪我を負った民間人が治癒目的でオーブ(〈超回復〉など)を使おうとする場合、この条件が大きな壁となる。
法的・経済的な扱い
希少性が高いうえに24時間後には価値がゼロになるため、法的な扱いは長らく紛糾した。現在では「支配可能性が不完全であるため動産にあたらず、すべてのスキルオーブは所有者のいない天然物」という解釈に落ち着いている。
・所有を宣言して使用しない限りは単なる無主物として扱われる。
・その流通経路の途中で売買が発生した場合にのみ、世界ダンジョン協会(WDA)によるダンジョン税が課せられる。
未知の機能と「ハズレオーブ」の正体
オーブの中には、使っても実感が湧かずスキルも増えない「ハズレオーブ」と呼ばれるものも存在する。しかし、主人公の芳村が持つ〈メイキング〉の能力でステータスが数値化されたことにより、隠れた有用な効果を持っていることが判明している。
・「xH+系」などのハズレオーブは、各ステータス(AGIなど)にかかるHP・MP補正係数を増加させる効果を持つ。
・また、スキルには固有の機能が存在し、特定のモンスターを一定数倒す(例:スライム100匹討伐)などの条件を満たすことで、新たな機能が解放される仕組みがあることも確認されている。
使用時の感覚と身体への影響
オーブの力を使用し体に取り込む際は、オーブが光となって拡散して体に吸い込まれ、「体が一度バラバラにされて再構成されていくような」不思議な感覚を伴う。
・能力が遺伝するかどうかについては真剣に議論されているものの、現時点では結論は出ていない。
まとめ
スキルオーブは人類に超常的な力をもたらす未知のアイテムである一方、「24時間弱での消滅」や「Dカード取得の必須性」といった厳格な制約が存在する。そのため、法的な位置づけも特殊であり、市場での流通は極めて困難である。さらに、一見無価値に見えるオーブの隠された効果や、特定条件によるスキル機能の解放など、未解明のシステムも多く残されている。オーブの使用が人体や次世代へ与える影響についても明確な結論は出ておらず、今後もさらなる検証と研究が必要とされている。
スキルオーブの種類と発生率
本稿では、特定の魔物がドロップするスキルオーブの種類や、その発生率に関する情報を整理して解説する。
スライムがドロップするスキルオーブと発生率
主人公の芳村圭吾が未知スキル〈メイキング〉の機能を解放したことにより、代々木ダンジョン一層などに生息する「スライム」がドロップする可能性のあるスキルオーブの種類と、その発生確率(ドロップ率)が判明している。
・〈物理耐性〉: 1/ 100,000,000(1億分の1)
・〈水魔法〉: 1/ 600,000,000(6億分の1)
・〈超回復〉: 1/ 1,000,000,000(10億分の1)
・〈収納庫〉: 1/ 7,000,000,000(70億分の1)
・〈保管庫〉: 1/ 100,000,000,000(1000億分の1)
これまでスライムは「倒しづらい・経験値が低い・ドロップが出ない」としてほとんどの探索者から無視されていたが、実際には幻のアイテムボックスにあたるオーブを含む、5種類の希少なオーブをドロップする可能性を秘めていることが明らかになっている。
〈異界言語理解〉
ロシアのキリヤス=クリエガンダンジョンで世界で初めて発見された、ダンジョンの碑文を翻訳できるスキルオーブである。
このオーブをドロップする魔物の正式名称は公開されていないが、芳村は「言葉や文字に関わるスキル=社会性のあるモンスターの中で魔法を操るもの」という仮説を立てている。そこから、ロシアのダンジョンに生息する「ブラッドクランシャーマン」、あるいは代々木ダンジョン(十四層)に生息する同種のゴートマン系「ムーンクラン(のシャーマン)」がドロップするのではないかと推測している。
〈磁界操作〉
日本のエースエクスプローラーである君津伊織が、沖縄の洞窟(未発見のティラーのダンジョン)に滑落した際に取得したスキルオーブである。
彼女を襲ってきた、空中を泳ぐ5メートルほどあるホオジロザメのような姿のモンスターを倒した際にドロップした。このスキルを使用すると、磁束の強さや方向を操作し、磁性体を引き寄せたり高速で弾き飛ばしたりすることが可能になる。
まとめ
特定の魔物がドロップするスキルオーブには、それぞれ固有の法則や特性が存在する。スライムのように最弱クラスと認識されながら極めて希少なオーブを内包する例や、社会性を持つ魔物が言語に関連するスキルを持つという推測、さらには未知のダンジョンでの偶然の討伐による強力なスキルの発見など、多岐にわたる。これらの情報は、ダンジョンの生態系やアイテム発生のメカニズムを解明し、未知の領域を攻略する上で極めて重要な手がかりとなる。
スライムの検証効率
主人公の芳村圭吾と三好梓が行った代々木ダンジョン一層でのスライム検証により、経験値(SP)の獲得に関する「減衰」と「リセット」の法則が明らかになっている。本稿では、スライムの特性を利用した討伐法と、経験値獲得における最高効率の手法について解説する。
スライムの特性と画期的な討伐法
代々木ダンジョン一層に大量に発生するスライムは、「倒しづらい・経験値が低い・ドロップが出ない」という理由で、ほとんどの探索者から不人気で無視されていた。しかし、三好はスライムの特性を利用した以下の画期的な討伐法を編み出した。
・スライムが液体で形を保っていることに着目する。
・陽イオンタイプの界面活性剤(塩化ベンゼトニウム、通称「エイリアンのよだれ」)を吹き付ける。
・界面自由エネルギーを下げて瞬時に破裂させ、露出した核(コア)をハンマーで簡単に叩き割る。
経験値(SP)の減衰現象
芳村と三好がこの方法でスライムを連続で72匹討伐してステータスの数値を検証した結果、獲得できたSPは本来見込まれる1.44ポイントではなく、わずか0.182であった。データを確認すると、以下のような減衰の仕様が存在することが判明した。
・連続して倒せば倒すほど得られる経験値が割られる。
・10匹目以降はずっと10分の1(0.002)に落ちてしまう。
リセット条件の解明
芳村はこの減衰を解除する条件を突き止めるため、「毎日リセットされる」「ダンジョンに入るたびにリセットされる」という2つの仮説を立てて単独で検証を行った。
・結果として、「ダンジョンの入り口を出て、影響を及ぼす境界(入り口から受付までの通路の半分くらい)を越えてから再び戻る」ことで、経験値の減衰がリセットされると判明した。
・これにより、再び最大の0.02SPを得られるようになる。
・なお、外に出ている時間の長さは関係ないことが確認された。
最高効率の討伐法とその成果
このリセット条件を利用した「1匹倒すたびにダンジョンの境界まで外に出て、再び戻ってきて次の1匹を倒す」という手法が、スライム狩りの最高効率となる。
・通常、連続して10匹倒した場合はたったの0.059SPしか得られない。
・しかし、この出入りを繰り返す方法をとることで10匹で0.2SPが得られ、効率は3倍以上に跳ね上がる。
芳村はこの最高効率の討伐法と特製スプレーを、ダンジョンで出会った初心者探索者である御劔遙と斎藤涼子に伝授した。御劔が教えを忠実に守り、入り口との往復を繰り返しながら1日平均118匹のスライムを討伐し(1日平均約2.36SPを獲得)、それを42日間(約6週間)続けた結果、彼女はあっという間に世界ランキング986位へと大躍進を遂げることになった。
まとめ
代々木ダンジョン一層のスライムは、界面活性剤を用いた討伐法により容易に倒すことが可能である。さらに、連続討伐による経験値(SP)の減衰現象と、ダンジョンの境界を越えることによるリセット条件を組み合わせることで、極めて高い効率で経験値を獲得できる。この手法の実践により、初心者探索者であっても短期間で世界ランキング上位に食い込むほどの急成長を遂げることが証明されている。
Dパワーズの結成
芳村圭吾が未知スキル〈保管庫〉を利用して代々木ダンジョン一層でスライムを狩り続けた結果、多数の希少なスキルオーブ(〈水魔法〉や〈物理耐性〉など)が集まったことがパーティ結成の契機である。将来的なオーブの売却益で当面の生活の目処が立ったため、芳村と三好梓の二人は勤めていた会社を正式に退職した。
法人設立の挫折とパーティ制度の採用
オーブの販売と利益分配を行うにあたり、商業ライセンスを取得した三好は当初、会社の設立を検討していた。しかし、以下の壁に直面し、方針の転換を余儀なくされた。
・現代日本で名前を隠して巨額の取引を行うことは非常に困難であること。
・非上場企業を作って配当として利益を受け取る場合、総合課税による超累進課税(所得税と住民税)が適用され、利益の大部分が税金で引かれてしまうこと。
この「匿名性の確保」と「利益の分配(税金対策)」という問題を一挙に解決するために三好が目を付けたのが、ダンジョンの「パーティ制度」の利用であった。
・パーティ制度は本来、グループでダンジョン探索をした際に収益を共有・管理するための仕組みである。
・これを利用することでパーティ全体が「ひとつのダンジョン法人」のような立ち位置となる。
・結果として、法人に近い形で合法的に利益分配と匿名性の両立が可能になると判断された。
「ダンジョンパワーズ」の誕生
結成にあたり、二人はそれぞれ30万円ずつ資金を出し合い、法定費用や実印の作成費用などに充てた。
・パーティの登録上の住所は三好のマンションとされたが、実務は芳村のアパートのダイニングを占拠する形で行われた。
・パーティ名である「ダンジョンパワーズ(通称:Dパワーズ)」は、ワインで酔っ払った三好が明け方近くに勢いで決めて申請してしまった、非常にベタな名称である。
まとめ
芳村圭吾の未知スキルによる希少オーブの獲得を機に、芳村と三好は勤め先を退職し、新たな活動の基盤を構築した。匿名性の確保と税金対策の観点から法人設立を見送り、ダンジョンのパーティ制度を法人に見立てて利用するという画期的な手法を採用した。こうして、リーダー兼エージェントである三好と、探索メンバーの芳村という、たった2名のみの最小構成で「Dパワーズ」は船出することとなった。
スキルオーブの取引
スキルオーブの取引は、その特殊な性質から長らく困難とされてきたが、新興パーティ「Dパワーズ」の登場により市場は一変した。本稿では、従来の取引の課題と、Dパワーズが開催した画期的なオークションの手法、およびそれが世界に与えた影響について解説する。
従来のスキルオーブ取引の困難さ
スキルオーブは、この世に現れてからきっかり「23時間56分4秒」で消滅してしまうため、市場に流通させたりオークションにかけたりすることが極めて困難であった。
・これまでの取引は、JDA(日本ダンジョン協会)の「オーブ購入希望リスト(WL)」に掲載された希望価格に対し、発見者が直接連絡をとって売買を行うのが一般的であった。
・法的な扱いとしては「支配可能性が不完全であるため動産にあたらず、所有者のいない天然物」と解釈されている。
・流通経路の途中で売買が発生した場合にのみ、世界ダンジョン協会(WDA)によるダンジョン税(10%)とJDA管理費(10%)が課せられる仕組みとなっている。
Dパワーズによるオークションの開催
芳村圭吾と三好梓が結成したパーティ「Dパワーズ」は、独自のオーブ販売サイト(オークション)を立ち上げた。これは芳村が未知スキル〈保管庫〉を入手し、オーブの時間を停止させ保存できるようになったためである。
・落札期間を「3日間」に設定したため、当初は「1日で消えるオーブを3日間も維持できるはずがない」と世界中の関係者から詐欺を疑われた。
・しかし、入札にはWDAライセンスIDの認証が必要であり、日本の防衛省や警察庁、海外のトップエクスプローラーたちが実際に入札に名を連ねていたことから、次第にその信憑性が認識されるようになった。
厳密な取引手順と安全性
オーブの受け渡しは、宅配などでは生存時間が保証できないため、必ず手渡しで行われる。Dパワーズは以下の手続きをとることで、安全な取引を実現している。
・落札者にお互いの公開鍵で暗号化した符丁を発行し、JDAの貸し会議室で直接対面して復号・確認を行う。
・取引の際は、JDAの立会人がオーブの真贋とオーブカウント(発生からの経過時間が少ないこと)を保証し、買い手がそれを了承した上で振り込み手続きを行う。
・代金はJDAを通じて支払われ、税金と管理費が引かれた額が販売者のライセンスに紐づいたパーティ口座に自動で入金されるため、税務上も安全なシステムとなっている。
オークションの結果と世界への影響
Dパワーズのオークションは、スキルオーブ市場の常識を完全に破壊した。
・第一回オークションでは、購入希望リストで8000万円程度とされていた〈水魔法〉3個がそれぞれ24億円超で落札され、未知スキルの〈物理耐性〉は世界ランク3位のサイモンによって35億円超で落札された。これにより、従来の買い取りリストの価格が安すぎたことが証明された。
・第二回のオークションでも、海外のトップランカーたち(黄やウィリアムなど)が数十億円で次々とオーブを落札し、未知スキル〈超回復〉は個人の落札者(アーメッド)によって55億円超という天文学的な価格で落札された。
まとめ
希少なスキルオーブを安定供給し、さらに保存できるというDパワーズの異常な取引能力は、オーブ市場に革命をもたらした。しかしその結果として、彼らは世界中の政府や諜報機関の標的となった。現在では日本政府(ダンジョン庁、外務大臣、国家公安委員長の連名)から芳村と三好に対して事実上の海外渡航自粛要請が出されるなど、単なるアイテム取引の枠を超え、国家の安全保障に関わる事態へと発展している。
登場キャラクター
Dパワーズ
芳村圭吾
本作の主人公であり、総合化学メーカーの研究職を退職して探索者となった青年である。Dパワーズのメンバーとして、未知の事象に対する探求心を持って行動する。三好梓は元の職場の後輩であり、パーティの相棒として信頼関係を築いている。
・所属組織、地位や役職
元総合化学メーカー研究職。Dパワーズメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
偶然ゴブリンを倒してDカードを取得し、未知スキル〈メイキング〉を発現させた。代々木ダンジョンでスライムの効率的な討伐法を編み出し、多数のスキルオーブを獲得した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
Dカード取得時に世界ランキング1位となった。全ステータスを100まで上げた結果、人間離れした身体能力を得た。
三好梓
芳村の元の職場の後輩であり、ワインと美食を好む合理的な思考の持ち主である。Dパワーズのリーダー兼エージェントとして、実務や交渉を主導する。
・所属組織、地位や役職
元総合化学メーカー社員。Dパワーズリーダー。商業ライセンス保持者。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村のスキル検証をサポートし、スライムの討伐に界面活性剤を使用するアイデアを出した。商業ライセンスを取得し、スキルオーブの販売用オークションサイトを立ち上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
会社を退職し、Dパワーズの運営を担うこととなった。オーブオークションにより莫大な資産を獲得した。
日本ダンジョン協会(JDA)
鳴瀬美晴
JDAダンジョン管理課の職員であり、鳴瀬翠の妹である。業務に対して真摯に取り組む姿勢を持ち、DパワーズとJDAを繋ぐ窓口の役割を担う。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会ダンジョン管理課監視セクション職員。後にDパワーズの専任管理監、課長補佐待遇となる。
・物語内での具体的な行動や成果
新国立競技場付近での深深度ダンジョンの発生と消滅を観測し、上司に報告した。芳村とサイモンらのオーブ取引において、立会人としてオーブの真贋と時間を保証した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
Dパワーズの専任管理監に任命され、自由裁量勤務となった。
風来翔
JDAダンジョン管理課の係長であり、鳴瀬美晴の直属の上司である。神経質そうな外見を持つ。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会ダンジョン管理課係長。
・物語内での具体的な行動や成果
鳴瀬美晴から深深度ダンジョン発生と消滅の報告を受け、事態の異常さに困惑した。瑞穂常務の芳村へのオーブ保存技術買い取り交渉に同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
瑞穂常務の交渉が失敗した際、常務から自室へ来るよう命令された。
斎賀
JDAダンジョン管理課の課長であり、物事を的確に進める実務家である。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会ダンジョン管理課課長。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズに対し、JDAが買い取ったオーブの保管サービスを打診し、契約の道筋をつけた。鳴瀬美晴に対し、Dパワーズに〈異界言語理解〉のオーブ取得を依頼するよう指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
防衛省の寺沢から国際的な機密情報を受け取り、事態の対応に当たった。
瑞穂
JDAの常務であり、次期協会長の座を狙う派閥に属する人物である。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会常務。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村と三好に対し、一億円でオーブ保存技術を買い取ろうと持ちかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
芳村に技術の存在を否定されて目論見が外れ、憤慨して退室した。
防衛省・自衛隊(ダンジョン攻略群)
寺沢
防衛省・自衛隊の幹部であり、ダンジョン攻略群に関わる人物である。鋼一曹とは旧知の仲である。
・所属組織、地位や役職
防衛省・自衛隊三佐。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズとの〈水魔法〉オーブの取引に臨み、代金を支払ってオーブを受け取った。部下の君津伊織たちに取得したオーブを使用させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
Dパワーズの能力がオーブ保存ではなくオーブ生成である可能性に気づいた。
君津伊織
日本のエースエクスプローラーであり、ダンジョン攻略群に所属する女性自衛官である。困難な状況でも他者を見捨てない意思を持つ。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群二尉。エクスプローラー。
・物語内での具体的な行動や成果
沖縄で未発見のダンジョンに転落し、サバイバルナイフでサメ型モンスターを倒してDカードと〈磁界操作〉を取得した。救出に来た自衛隊員とともに人魚のミイラ型モンスターと対峙し、磁界操作でナイフを射出して撃破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
鋼の勧誘を受けて自衛隊に入隊し、ダンジョン攻略の主力となった。世界ランク十八位である。
鋼
ダンジョン攻略群の精鋭であり、現場指揮官を務める人物である。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群一曹。第一分隊隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
沖縄でのダンジョン遭難事案において、部隊を率いて伊織を救出した。人魚のミイラ型モンスターから伊織を逃がすため、部隊で囮となる作戦を実行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
幹部候補生の選考試験を受ける年齢に達している。
沢渡
ダンジョン攻略群の隊員であり、鋼の部下である。真面目で冷静な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群三曹。
・物語内での具体的な行動や成果
沖縄の未発見ダンジョンで、鋼の指揮下に入り人魚のミイラ型モンスターと交戦した。寺沢の部屋で初めて見るオーブの使用に尻込みした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
常に冷静に対応する頼もしい存在として部隊を支えている。
海馬
ダンジョン攻略群の隊員であり、お調子者で場を和ませる性格の持ち主である。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群士長。
・物語内での具体的な行動や成果
沖縄の未発見ダンジョンで鋼の部隊に同行した。寺沢から与えられたオーブをためらうことなく使用し、体の変化を確認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
宮城
ダンジョン攻略群の隊員であり、沖縄の地元出身者である。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群士長。
・物語内での具体的な行動や成果
救出に向かった沖縄の洞窟が「ティラー」と呼ばれる忌地であることを部隊に伝えた。洞窟内で白骨死体を見て恐怖に陥り、戦意を喪失した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
島袋
ダンジョン攻略群の隊員である。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群一士。
・物語内での具体的な行動や成果
沖縄のダンジョンで人魚のミイラ型モンスターに遭遇し、パニックに陥り発砲した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
モンスターの攻撃により上半身を吹き飛ばされ死亡した。
日本政府・警察
田中
関係省庁の命を受けて動く、特徴のない平凡な外見の男である。
・所属組織、地位や役職
内閣情報調査室所属の人物。
・物語内での具体的な行動や成果
寺沢とDパワーズの取引に同席した。芳村と三好に対し、ダンジョン庁長官・外務大臣・国家公安委員長の連名による海外渡航自粛要請を伝達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
内閣情報調査室の上司
中央合同庁舎第二号館で田中の報告を受ける神経質そうな男である。
・所属組織、地位や役職
内閣情報調査室の上官。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズのオークションに関する各機関からの報告を田中から受けた。対象者の渡航禁止勧告を決定し、ダンジョン庁長官や外務大臣への根回しを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
警視庁サイバー犯罪対策課
サイバー犯罪の相談窓口を担当する職員たちである。
・所属組織、地位や役職
警視庁サイバー犯罪対策課。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズのオークションが詐欺ではないかという多数の電話相談に対応した。犯罪が成立していない段階では捜査できないと説明し、JDAへの問い合わせと報告を行うことを決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ダンジョン庁
ダンジョン行政を司る庁の職員たちである。
・所属組織、地位や役職
ダンジョン庁職員。
・物語内での具体的な行動や成果
都民からのDパワーズのオークションに関する問い合わせ電話に対応した。情報を国家公安委員会とJDAダンジョン管理課に共有した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
サイモンチーム(米国ダンジョン探索チーム)
サイモン=ガーシュウィン
アメリカのトップ探索チームのリーダーである。軍人とは思えないほど気さくな態度をとる。
・所属組織、地位や役職
米国ダンジョン探索チームリーダー。中尉。エクスプローラー。
・物語内での具体的な行動や成果
エバンスダンジョンの中深度攻略を成功させた。Dパワーズのオークションで〈物理耐性〉のオーブを高額で落札した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界ランク三位である。芳村に対して、エリア12の匿名世界ランク1位が知人ではないかと探りを入れた。
ジョシュア=リッチ
サイモンチームに所属する優秀な斥候であり、少しこずるい印象の男である。
・所属組織、地位や役職
米国ダンジョン探索チーム所属。
・物語内での具体的な行動や成果
サイモンからDパワーズのオークションサイトを見せられ、詐欺ではないかと疑念を持った。オーブ取引の際、チタン製ケースの魔法陣について芳村に質問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メイソン
サイモンチームのガードを担う、大柄で頑丈な体つきの男である。
・所属組織、地位や役職
米国ダンジョン探索チーム所属。
・物語内での具体的な行動や成果
エバンスダンジョンの攻略時に負傷し、腕を吊った状態で日本を訪れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
サイモンが〈物理耐性〉のオーブを必要とした理由の人物である。
ナタリー
サイモンチームの紅一点であり、ブロンド碧眼の女性である。十二歳まで横須賀で育った経験を持つ。
・所属組織、地位や役職
米国ダンジョン探索チーム所属。
・物語内での具体的な行動や成果
日本を訪れた際、チームメンバーに日本の地理や文化について説明した。オーブ取引の場において、日本語で芳村たちと会話した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アメリカ合衆国関係者
セオドア=ナナヤ=タイラー
グルーム・レイクでの大型加速器実験の責任者である。
・所属組織、地位や役職
大型加速器実験責任者。博士。
・物語内での具体的な行動や成果
マイクロブラックホールの生成を確認し、実験の成功を喜んだ。若い研究者からマイクロブラックホールが消滅していないという異常報告を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
最初のダンジョンが発生する契機となった実験を指揮した。
アーロン=エインズワース
ネバダのエリア51にあるダンジョン研究所の所長である。
・所属組織、地位や役職
エリア51ダンジョン研究所所長。
・物語内での具体的な行動や成果
ロシアで発見された〈異界言語理解〉のオーブによる碑文翻訳の報告を受けた。翻訳内容からダンジョンがテラフォーミングのツールである可能性を知り、真偽検証の必要性を認識した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マーティネス
横田エアベースの基地司令であり、サイモンチームの行動に頭を抱える人物である。
・所属組織、地位や役職
第五空軍司令官兼在日米軍司令官。中将。
・物語内での具体的な行動や成果
日本に到着したサイモンチームから挨拶を受け、便宜を図ることを約束した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
サイモンチームが日本と摩擦を起こさないよう神に祈った。
アーメッド一家
アーメッド=ラフール=ジェイン
インド有数の大富豪であり、娘のアーシャを深く愛する父親である。
・所属組織、地位や役職
資産家。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズのオークションで〈超回復〉のオーブを五十五億円超で落札した。日本を訪れ、娘にDカードを取得させる依頼を芳村たちに取り付けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
娘の回復という奇跡を社交界で日本の魔法使いの仕業として語った。
アーシャ
アーメッドの娘であり、過去の事故で手足や顔の右半身に重大な欠損を負っていた女性である。
・所属組織、地位や役職
アーメッドの娘。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村の支援により代々木ダンジョンでスライムを倒し、Dカードを取得した。〈超回復〉のオーブを使用して失われた身体部位を完全に再生させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
回復後は美しい容姿を取り戻し、三好から贈られたジュエリーを身につけた。
執事然とした男
アーメッドに同行する中年の細身の男であり、通訳を務める。
・所属組織、地位や役職
アーメッドの同行者。通訳。
・物語内での具体的な行動や成果
JDA本部でのオーブ取引においてアーメッドの通訳を担当した。芳村から交渉の場から外される形で退室させられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ウィリアムの取引の際にも姿を見せ、イギリス関係者であることが示唆された。
医療計測系ベンチャー
鳴瀬翠
鳴瀬美晴の姉であり、三好の大学時代の先輩である。医療計測系のベンチャー企業を立ち上げた。
・所属組織、地位や役職
医療計測系ベンチャー企業経営者。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村の依頼を受け、研究所の全検査医療カプセルを用いて芳村の身体データを計測した。三好からの出資の提案を受け、計測デバイスの開発について話し合った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
中島
鳴瀬翠の研究所に所属する研究員である。
・所属組織、地位や役職
医療計測系ベンチャー企業研究員。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村の計測データを分析し、脳波の速波化や電磁波の揺らぎといった異常を報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
芳村・三好の元勤務先
榎木義武
芳村と三好がかつて勤めていた会社の課長であり、芳村の元上司である。
・所属組織、地位や役職
総合化学メーカー課長。
・物語内での具体的な行動や成果
営業のミスによる取引先への謝罪を芳村に押し付け、失敗の責任を問うて減給を示唆した。芳村が早退の電話を入れた際にも彼を罵倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
理不尽な態度が芳村と三好の退職の引き金となった。
その他の探索者・関係者
御劔遙
ボーイッシュで正統派美人のモデルであり、斎藤涼子と同じ事務所に所属する。
・所属組織、地位や役職
モデル。fiversityブランドの専属モデル。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョンで芳村からスライムの効率的な討伐法を教わった。教えを忠実に守って毎日スライムを狩り続け、世界ランキング986位まで上昇した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ダンジョンでの特訓により身体動作が最適化され、モデルのオーディションに合格した。
斎藤涼子
ガーリーな雰囲気の俳優であり、御劔遙と同じ事務所に所属する。
・所属組織、地位や役職
俳優。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョンで御劔とともにスライムに襲われていたところを芳村に助けられた。御劔と一緒にスライム討伐法を実践し、演技力が向上して売れっ子となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
黄俊熙
中国のトップエクスプローラーであり、寡黙でせっかちな男である。
・所属組織、地位や役職
エクスプローラー。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズのオークションで〈物理耐性〉のオーブを高額で落札した。JDAでの取引直後にオーブを使用し、挨拶を残して去った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界ランク四位である。
ウィリアム
イギリスのダンジョン攻略部隊に関わる軍人然とした男である。
・所属組織、地位や役職
イギリスのダンジョン攻略部隊関係者。エクスプローラー。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズのオークションで〈物理耐性〉のオーブを高額で落札した。執事風の男とともにオーブの取引に現れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界ランク六位である。
吉田陽生
ダンジョン研究家としてメディアに出演する人物である。
・所属組織、地位や役職
ダンジョン研究家。
・物語内での具体的な行動や成果
ラジオ番組に出演し、アメリカのエバンスダンジョン攻略のニュースやダンジョンの深度分類について解説した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
美保
君津伊織の友人であり、スピリチュアルな場所を好む工学系女子である。
・所属組織、地位や役職
大学生。
・物語内での具体的な行動や成果
伊織とともに沖縄の御嶽のような場所を訪れ、足を踏み外しかけた。洞窟に落ちた伊織からの頼みで、警察へ助けを呼びに走った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
展開まとめ
序章 プロローグ
三年前 アメリカ合衆国 ネバダ州
大型加速器による実験開始
三年前、アメリカ合衆国ネバダ州グルーム・レイクにおいて、グルーム・レイクとボールド山にまたがる大型加速器が稼働していた。地下百五十メートルの施設では、余剰次元の確認を目的として出力が引き上げられ、LHCを大きく上回る衝突エネルギーで粒子衝突が行われていた。その結果は計測器によって記録され、モニターに表示されていた。
マイクロブラックホール生成の成功
観測の結果、マイクロブラックホールの生成が確認され、研究者たちは歓声を上げた。責任者であるセオドア=ナナヤ=タイラー博士は周囲から祝福を受け、実験は新理論の証明として成功を収めたかに見えた。
異常の発覚と緊張の広がり
祝賀の空気の中、若い研究者がモニターに異常を発見した。コンピューターは通常通り処理を続けていたが、表示された結果は常識を覆すものであった。呼びかけに応じたタイラーが確認すると、生成されたマイクロブラックホールが消滅していないという報告がなされ、場は沈黙に包まれた。
理論の破綻と不可解な現象
理論上、マイクロブラックホールはホーキング輻射によって瞬時に蒸発するはずであったが、実際には空間内を高速で移動し続けていた。それは何らかの力場に囚われているかのように観測され、既存の理論では説明不能な状態であった。
歪みを捉えた存在の介入
この現象の背後では、量子レベルの空間の歪みが発生していた。その歪みを認識した何者かが、わずかな機会を捉え、慎重にエネルギーを加えることで歪みを拡大させていった。これにより、事態は制御不能な方向へと進行し始めていた。
アメリカ合衆国ワシントンD.C.
ワシントンD.C.での状況報告
ワシントンD.C.では、グルーム・レイクでの実験映像が確認されていた。スピーカーからは固定された力場内に巨大な質量が現れたという報告と悲鳴が流れ、その直後にモニターは白光に覆われ映像は途絶した。報告を受けた男は状況の全容を確認し、記録されている映像がこれで全てであることが説明された。
被害状況の確認と限定性
続いて、地上施設への影響が確認された。加速器の地上コントロールおよび電力供給用原子力発電所は無事であり、連絡が途絶したのは地下施設のみであった。この報告により、大規模災害の懸念は一時的に否定されたが、地下で何が起きたのかは不明のままであった。
未知の存在の活動開始
一方で、地下では有機体とみられる存在が知的活動を行っていた。その器官は微弱かつ複雑な電流を発し続け、何らかの判断と指示を行っていた。刹那の時間の中でそれは膨大なリソースを解放し、自らの目的を実現しようとしていた。
ダンジョン誕生の瞬間
その結果、ネバダの地下百五十メートルにおいて、後に「ザ・リング」と呼ばれる最初のダンジョンが誕生した。この出来事は、未知の現象が現実世界へ侵食し始めた転換点となった。
現在 二〇一八年 九月某日
ネバダ・エリア51ダンジョン研究所
ダンジョン研究所での報告
ネバダのエリア51にあるダンジョン研究所において、所長アーロン=エインズワースは、ダンジョン=パッセージ説が証明された可能性について報告を受け、驚愕した。この説は、ダンジョンが異なる場所や世界へ通じる通路であるとするものであり、従来は半ば空想的な理論として扱われていたが、近年の研究により一定の注目を集めていた。
ロシアで発見されたスキルオーブ
報告の発端は、ロシアのオビ川流域に存在するダンジョンで発見されたスキルオーブであった。そのオーブには〈異界言語理解〉というスキルが封じられており、偶然その場に居合わせたDカード保持者イグナート=セヴェルニーが使用したことで発動した。これにより、ダンジョン内の碑文の一部が翻訳されたとされていた。
碑文が示したダンジョンの正体
翻訳内容は極めて衝撃的であった。ダンジョンは地球に打ち込まれた装置であり、『魔素』を生成するための手段であると記されていた。異界は魔素で満たされており、これを持たない世界に対して、モンスターという形で魔素供給を行う仕組みが存在するとされた。この作用は環境を変質させるものであり、実質的にはテラフォーミングに相当するものであった。
通路としてのダンジョン構造
さらに、百二十八層を超えるダンジョンは異界へ通じる通路となる可能性が示されていた。この内容が事実であれば、人類の認識を根底から覆す重大な意味を持つものであった。しかし、この翻訳はイグナート一人にしか理解できず、客観的な検証は不可能な状態であった。
検証の必要性と課題
内容の真偽を確かめるには、同様のスキルオーブを入手し、別の人物による再翻訳を行う必要があるとされた。しかし、該当オーブをドロップするモンスターは特定されておらず、公開されているダンジョン情報を基に総当たりで調査するしかない状況であった。
不穏な気配と研究者の不安
報告を受けたアーロンは、その非現実的な内容に戸惑いながらも、調査の必要性を受け入れた。夕暮れのネバダの風景を眺めながら、彼は冷気とは別の不安を感じていた。それは地下百五十メートルに存在する未知の力の影響である可能性があり、やがて夜の訪れとともにその不穏さは静かに広がっていった。
第1章 そうして俺たちは仕事を辞めた
二〇一八年九月二十七日(木)
新国立競技場青山口付近
理不尽な謝罪対応と上司への不満
芳村圭吾は車内で上司の榎木義武と通話していたが、取引先との問題の責任を一方的に押しつけられ、減給やボーナスなしを示唆されたうえで通話を打ち切られた。原因が自分にないにもかかわらず責任を負わされたことで、芳村は強い疲労と不満を抱き、職場へ戻る気力を失っていた。
ダンジョン攻略ニュースによる現実認識
車を発進させようとした際、ラジオから中深度ダンジョン攻略の速報が流れた。専門家の解説によりダンジョンの深度分類や希少な攻略例が示され、芳村はダンジョンが世界に定着しつつある現実を再認識した。
ダンジョン産アイテムの重要性の理解
芳村は、Dカード、ポーション、スキルオーブという三つの重要な存在を思い返した。これらは世界に大きな影響を与えており、特にスキルオーブは各国が本格的にダンジョンへ関与する契機となっていた。一方で、その希少性と消滅特性により管理は困難であり、一般人には縁遠い存在であると認識していた。
地震とゴブリン撃破による転機
突然の地震により混乱が発生し、芳村は車を制御できず工事現場へ突っ込んだ。その過程で何かに衝突した感覚を覚えたが、確認するとそれはゴブリンであり、消滅した後にDカードが残された。これにより芳村は初めて魔物を倒した事実を理解した。
Dカード取得と状況の把握
出現したDカードには自身の情報と低い順位が表示されていた。芳村はこれが討伐による経験値の結果であると認識し、すでに膨大な人数が魔物と接触している現実をぼんやりと受け止めていた。
地割れと異常な深度の示唆
現場では地割れが発生し、トレーラーの鉄筋が次々と飲み込まれていった。落下音がなかなか届かないことから、その深さは異常であると認識された。
虹色オーブとの遭遇
やがて地中から衝突音と異様な気配が伝わり、芳村は強い感覚の変化に襲われた。その直後、目の前に虹色のオーブが出現し、現実とは思えない状況に直面していた。
市ヶ谷 JDA本部での異常検知
同時刻、JDAでは新国立競技場付近の異常なダンジョン反応が観測されていた。鳴瀬美晴は通常ではあり得ない内容に困惑しながら報告を行った。
深深度ダンジョン発生と消滅
観測されたダンジョンは深度千四百メートル以上と推定される深深度であったが、発生から短時間で消滅していた。この現象は攻略後の消滅震に類似しており、極めて異常な事態と認識された。
説明不能な攻略の可能性
風来翔は発生直後に攻略された可能性に言及したが、その現実性は極めて低く、報告自体が困難な状況であった。結果として事象は未解明のままとなった。
オーブの持ち帰りと帰宅
芳村はオーブを持ち帰り、会社には早退連絡を入れて帰宅した。上司からの罵倒には形式的に応じるのみであった。
未知スキル〈メイキング〉の確認
帰宅後、オーブに触れたことで〈メイキング〉という未知スキルの存在を知ったが、データベースにも情報は存在せず、その価値や効果は不明であった。
スキル使用と変化の不在
芳村はオーブを使用したが、体感や外見に明確な変化はなく、スキルの発動方法も理解できなかった。
ランク1への変動と衝撃
Dカードを確認した結果、芳村のランクが1に変化していることが判明した。この変化の原因は不明であり、本人にも実感は伴っていなかった。
世界ランキングの混乱
同時に世界ランキングでも未登録の人物が突如1位に現れ、既存の序列が大きく崩れた。観測されていない急激な順位上昇は説明不能であり、各種仮説も成立しなかった。
正体不明の存在としての結論
最終的に匿名の1位は特定されず、議論は結論に至らないまま収束した。芳村の変化とダンジョンの異常は未解明のまま残され、不可解な事象として認識され続けることとなった。
二〇一八年 九月二十八日(金)
榎木の叱責と退職意思の強まり
芳村圭吾は前夜の情報収集で寝坊し、始業ぎりぎりで出社した直後に榎木義武から会議室へ呼び出された。芳村は午前中いっぱい陰険な叱責を受け、営業の失敗処理まで押しつけられる状況に限界を感じ、退職の意思を強めていた。
三好への相談とDカードの開示
昼休み、芳村は三好梓に退職を考えていることを話し、今後はダンジョンに潜るつもりだと告げた。そのうえで秘密を約束させ、ランク1と記されたDカードを見せた。三好は偽造を疑うほど驚いたが、WDARLの表示と一致したことで本物の可能性を認めていた。
三好による異常性の分析
三好は、芳村が通常勤務の中でダンジョン探索を重ねる時間などなかったことから、何らかの異常な経緯で1位になったと分析した。さらに、エリア12の管理体制を踏まえれば、未登録の民間人が突然1位になるのは極めて不自然だと指摘していた。
メイキング発動とエージェント構想
芳村はメイキングの使い方が分からず、三好に相談した。三好はスキル発動を試す前に危険性を指摘し、芳村がダンジョンで生計を立てるなら、表に立たずに活動するためのエージェントが必要だと提案した。商業ライセンスを自分が取得すれば、取引の矢面に立てると説明し、芳村もその案を前向きに受け止めていた。
JDAでのメイキング監視登録
市ヶ谷のJDA本部では、スキルデータベースに一度だけ検索されたメイキングという語が注目されていた。単発検索であることから、未知スキルを実際に得た人物による検索の可能性が考えられた。個人特定は法的に慎重な扱いが必要だったため、JDAはメイキングを非公開の監視対象スキルとして登録していた。
公園でのスキル発動成功
芳村は早退後、都内の公園でメイキングの発動を試みた。人目を気にしながら繰り返し唱えた末、半透明のタブレット状画面が出現した。画面は他人には見えず、物理的にも干渉しない特殊なインターフェースであった。
ステータス画面とSP消費の確認
表示された画面には、名前、ランク、HP、MP、能力値、SPが並んでいた。芳村がSTRにポイントを割り振るとSPが減少し、STRとHPが上昇したため、メイキングはSPを使って能力値を操作するスキルであると推測された。
自宅での検証と能力数値化の発見
芳村は帰宅後、紙に表を作ってステータス変化を検証した。各能力値がHPやMPに影響する単純な構造を見出し、人間の能力が数値化されている可能性に気づいた。身体測定と照合すれば強化の仕組みを理論化できるかもしれないと考え、医療計測系ベンチャーに関わる三好の先輩の存在を思い出していた。
二〇一八年九月二十九日(土)
三好との再会と検証結果の共有
芳村圭吾の自宅を三好梓が訪れ、芳村は前日にまとめたメモを渡してメイキングによるステータス構造を説明した。数値と係数に基づく単純な計算体系が示され、三好はその内容に強い関心を示していた。
数値化スキルの本質的価値の認識
三好は計算構造そのものよりも、能力を数値として可視化できる点に重大な価値があると指摘した。これにより従来は感覚的にしか把握できなかったスキル効果を、客観的に検証可能となる意義が明確となった。
ハズレオーブ再評価の可能性
三好はJDAのデータを踏まえ、従来効果不明とされていたスキル群について言及した。特にxH+系と呼ばれるスキルは体感差が乏しいため低評価であったが、係数の変化として捉えることで実際には能力補正として機能している可能性が示された。
計測技術の市場価値への着目
能力の数値化と係数の解明が進めば、スキル効果を定量的に評価できるようになり、大きな経済的価値を生むと三好は判断した。政府や企業、探索者にとって需要が見込まれるため、新たな市場形成の可能性が浮上していた。
医療計測ベンチャーとの連携構想
芳村は医療計測系ベンチャーとの協力を提案し、ステータス変化と生理データを対応させることで能力強化の仕組みを明らかにする計画を示した。三好は理論的には成立すると認めつつも、生体への影響や個体差による誤差といった課題を指摘していた。
検証実施に向けた障壁
計測を実現するには協力先への説明が不可欠であったが、スキルの存在を秘匿する必要があり、正当な理由付けが困難であった。共同研究に踏み込めばスキルの開示が避けられず、現段階では実行が難しい状況であった。
今後への布石と関係の深化
三好は知人への打診を決め、計画は小さく前進した。芳村は将来的な特許取得や事業化の可能性に言及し、両者は新たな可能性に期待を抱きながら次の展開に備える姿勢を固めていた。
二〇一八年九月三十日(日)
市ヶ谷での講習参加
芳村圭吾は雨の中、市ヶ谷のJDA本部を訪れ、三好梓と合流した。三好はエージェントとして備えるため講習を受け直す意図で同行しており、二人は前日の食事や医療計測ベンチャーの話題を交わしながら会場へ向かっていた。
計測計画の費用問題
三好は鳴瀬翠の会社で高度な医療計測が可能であると説明したが、検査一回あたり約二百万円の費用がかかると伝えた。芳村は必要回数から総額が数千万円規模に達することを知り、現段階では資金不足であると判断し、まずダンジョンで資金を確保する必要性を認識していた。
JDAライセンス申請と制度の理解
芳村はJDAでダンジョンライセンスを申請し、講習後の審査を経てWDAライセンスカードが発行される仕組みを知った。講習ではダンジョンの利用手順や税制度、管理費などが説明され、民間探索者は取得物の売買時に費用負担が発生することを理解した。
講習中の出会いと人物観察
講習中、芳村と三好は前席の御劔と斎藤と会話を交わした。御劔は落ち着いた知的な印象を持ち、斎藤は明るく社交的であった。三好は自然に打ち解けたが、芳村は斎藤の期待する反応を返せず、鈍感さを指摘される場面となっていた。
昼食時の業界考察
講習後、二人は食事を取りながら、御劔と斎藤の背景について考察した。三好はダンジョンによる能力向上が芸能やモデル分野にも影響を与える可能性を指摘し、身体能力の強化が表現力や動作精度の向上につながると推測していた。
ステータス上昇の本質理解
三好はAGIやDEXの上昇が単なる筋力強化ではなく、反射や制御能力といった総合的な身体性能の向上である可能性を示した。芳村もこれに同意し、ダンジョンによる強化が従来の身体能力とは異なる層で作用していると認識していた。
初探索計画と装備検討
芳村は週明けにダンジョンへ潜る計画を立て、ライセンス到着を考慮して木曜日の探索を目標とした。装備については、扱いやすさとコスト面からハンマーやナタ、斧といった実用的な武器が現実的であると判断していた。
スライム検証案の提示
芳村は二層のゴブリンを想定していたが、三好は一層のスライムで検証を行いたいと提案した。スライムは効率の悪い対象であるにもかかわらず、三好は何らかの検証意図を持っており、芳村はその提案に驚きつつも関心を示していた。
二〇一八年 十月四日(木)
退職交渉と引き留めの発生
芳村圭吾は退職届を提出しようとしたが、上層部による引き留めに遭い、交渉は長引いた。関係者は残された業務責任を理由に退職の撤回を求め、説得を繰り返していた。
責任転嫁への反論と意思の明確化
芳村は今回のトラブルに自身の過失がないことを明確に主張し、営業部門の問題であるにもかかわらず責任を押しつけられた経緯を説明した。そのうえで、榎木の責任を肩代わりする働き方を続ける意思がないことを示し、退職の決意を崩さなかった。
暫定的決着と自由時間の確保
最終的に退職願は保留となったが、有給休暇の取得が認められ、芳村は実質的に出社義務から解放された。これにより、退職に向けた準備期間が確保された。
同日 代々木ダンジョン
探索開始と一層への滞在選択
芳村は届いたライセンスを手に三好梓とともにダンジョンへ向かった。多くの探索者が二層へ進む中、二人は検証目的で一層に留まり、探索を開始した。
スライム検証の実施
三好は経験値の数値化を目的にスライムを対象とした実験を行った。芳村が防御を担い、三好は持参した薬剤を用いて攻撃方法の検証を進めた。
界面活性剤による有効打の発見
スライムの構造を踏まえた化学的攻撃が試され、陰イオン系では効果が薄かったが、陽イオン系の薬剤によりスライムは瞬時に破裂した。この結果から、特定の化学作用に対する脆弱性が明らかとなった。
コア破壊と討伐完了
破裂後に残ったコアを破壊することでスライムは消滅し、適切な手段を用いれば容易に討伐可能であることが確認された。
経験値の定量化と継続測定
芳村はメイキングでSP増加を確認し、その値は一体あたり0.02であった。二人はこれを基にデータ収集を続け、安全な一層で効率的な検証を進めていった。
代々木八幡
討伐結果の分析と低効率の実感
帰宅後、収集データを分析した結果、七十二体討伐で得られたSPは合計0.182と極めて低い値であることが判明した。芳村は討伐数に対する報酬の少なさを実感していた。
経験値減衰の発見
分析により、初期の討伐では高い増分が得られる一方、それ以降は減衰が発生し、最終的に報酬が大幅に低下する仕組みが確認された。このため、本来得られるはずの値より大きく減少していた。
分配仕様とリスクの認識
例外的な低数値の原因として、複数人関与時の均等分配が推測された。貢献度に関係なく分配される仕様である可能性があり、第三者の介入による不正分配の危険性が示唆された。
情報管理の必要性
この仕様が公になることで探索環境が悪化する可能性があるため、二人は情報公開には慎重であるべきだと判断した。数値化による知見は有用である一方、運用にはリスクが伴うと認識していた。
今後の方針と準備
三好は商業ライセンス取得のため別行動を取り、芳村は単独で検証を続ける方針を固めた。また、スライム対策として有効だった薬剤を増産し、次の探索に備えた。
探索効率への無自覚
芳村は自身の討伐数を特別視していなかったが、実際には単独で大量のスライムを処理することは異例であった。また、一般的なパーティ探索との違いについて十分に認識していなかった。
二〇一八年 十月五日(金)
経験値減衰とリセット現象の確認
芳村圭吾は単独で一層に潜り、スライム討伐によるSP変動を再検証した。初回は0.02を得たが連続討伐で0.01へ減少し、前日の減衰現象が再現された。その後ダンジョン外へ出て再入場すると再び0.02となり、経験値が条件によってリセットされることを確認した。
リセット条件の特定
芳村は日付リセットと入退場リセットの仮説を立て、再入場実験により後者が有力であると判断した。ただし入口付近ではリセットされない場合があり、外部判定領域まで移動する必要があると結論づけた。また時間経過は影響しないことも明らかとなった。
異常行動による誤解と対応
出入りを繰り返す行動は周囲から不審視され、鳴瀬美晴に呼び止められた。彼女は自殺未遂を疑っていたが、芳村の説明により誤解は解消された。以後は簡易装備を整えるよう助言を受けた。
百体討伐による新機能解放
スライムを百体討伐した時点で、メイキングに新たな機能が発現した。画面上に複数のスキルオーブ候補と極めて低い確率が表示され、スライム由来のスキルリストであると推測された。
スキルオーブの選択と取得
芳村は最も希少な〈保管庫〉を選択し、実体化したオーブを回収した。その後追加討伐を行ったが再発はなく、百体討伐が発生条件である可能性が示された。
検証段階の移行
機能発生条件の解明は困難と判断され、芳村は撤収して三好梓へ報告した。経験値挙動とスキル生成の存在が明らかとなり、検証は新たな段階へ進んだ。
代々木八幡
スキルオーブの共有と評価
芳村は三好に〈保管庫〉のオーブを提示し、三好はその仕組みと希少性に強い関心を示した。オーブは触れることで情報が認識される特性を持っていた。
未登録スキルの確認
三好はJDAデータベースで〈保管庫〉を検索したが該当はなく、未登録スキルであることが判明した。さらに候補リストの存在自体が極めて重要な機能であると評価された。
発生条件の不明と検証方針
オーブ候補表示の条件は不明であり、連続討伐や総数など複数の可能性が検討された。芳村は追加検証として同一種および別種での百体討伐を試す方針を立てた。
スキル価値と市場性の認識
候補に含まれていた〈水魔法〉には高額の買い手が存在し、スキルオーブが大きな経済価値を持つことが確認された。芳村は売買に伴う税や管理費も含め、収益性を意識するようになった。
保管系スキルの可能性と不確実性
〈保管庫〉と〈収納庫〉の存在から、物品保管系スキルである可能性が考えられたが、具体的効果は不明であった。希少性と実用性が一致するかは判断できなかった。
情報公開リスクの共有
スライムから希少スキルが得られると広まれば乱獲や危険行動が誘発されると判断され、二人は情報の公開を控えることで一致した。
使用判断を巡る葛藤
〈保管庫〉の使用者については結論が出ず、芳村の探索用途と三好の立場の双方から検討が行われた。複数スキル取得の可否や既存スキル消失の懸念もあり、判断は保留された。
利便性と危険性の認識
〈保管庫〉は利便性が高い一方で犯罪利用の可能性もあり、所持が知られた場合のリスクが懸念された。二人は扱いに慎重になる必要を認識した。
掲示板における噂の拡散
ダンジョン内での芳村の行動は掲示板で話題となり、不審人物として共有された。自殺疑惑やJDA対応の情報も拡散された。
ランキングとの結び付けと混乱
同時期に出現したランキング1位と不審人物を結び付ける憶測が広がったが、確証はなく冗談混じりの議論として扱われた。異常な存在への関心のみが強く残る形となった。
二〇一八年 十月六日(土)
スライム討伐の継続と環境の利用
芳村圭吾は代々木ダンジョン一層にてスライム討伐を継続していた。一層は探索者が少なく、人目を避けた検証に適していたため、薬剤でスライムを破裂させコアを破壊する作業を反復していた。
初心者二人組の救助
討伐中、通路奥からの叫び声を受けて現場へ向かった芳村は、スライムに襲われている女性二人を発見した。小柄な女性の首元から胸にかけてスライムが絡みついており、芳村は薬剤を用いて即座に破裂させ、危機を排除した。
御劔遙と斎藤涼子との再会
救助した二人は講習で出会った御劔遙と斎藤涼子であった。斎藤は付着物を拭き取り、御劔は薬剤の人体への影響を確認した。芳村は安全性を説明し、水で拭き取るよう助言した。
ダンジョン参加の背景と御劔の課題
御劔はモデル、斎藤は俳優として活動しており、同一事務所に所属していた。御劔はファッション分野への転向を目指す中で評価が伸び悩み、表現に不足する要素を補うためダンジョン経験に活路を見出していた。
動作最適化という視点の提示
芳村は、求められている要素を抽象的なオーラではなく身体動作の最適化と捉えるべきだと説明した。意図した表現を正確に再現するためには身体制御精度や反応速度の向上が重要であり、ダンジョン強化がそれに寄与する可能性を示した。
効率的討伐法の指導
芳村は薬剤でコア化させてから迅速に破壊する方法を教え、さらに一匹ごとにダンジョン外の境界まで戻って再入場する手順を指示した。この行動によりSP効率が向上することを前提とした指導であった。
秘密保持と装備支援
芳村はこの手法の秘匿を求め、薬剤入りボトルと予備ハンマーを二人に提供した。また討伐は個別に行い互いに干渉しないこと、討伐数を記録することを徹底させ、連絡先も共有した。
撤収と二人の継続行動
芳村は手順が問題なく実行されていることを確認した後、自身の装備を譲渡したため撤収した。御劔と斎藤はスライム討伐の容易さに驚きつつも、指示通りの方法で検証を継続することとなった。
二〇一八年 十月七日(日)
代々木ダンジョン
継続検証と環境選択
芳村圭吾は一層でスライム討伐を継続していた。三好梓が不在であったため単独で検証を進め、御劔遙と斎藤涼子の行動を妨げないよう、通常より奥で作業を行っていた。
二百匹討伐による機能再発動
通算二百匹目の討伐到達時、再びメイキングのスキルオーブ選択画面が表示された。これにより百匹単位で同機能が発動する可能性が高まった。
保管庫の再選択不可と制限の存在
候補の中で〈保管庫〉のみが選択不可となり、カウントダウン表示が付されていた。芳村は再取得制限またはクールタイムの存在を推測した。
水魔法オーブの取得と保管
芳村は検証目的で〈水魔法〉を選択し、出現したオーブを〈保管庫〉へ収納した。これにより時間制限の回避が可能かを確認しようとした。
保管庫選択の意図とリスク
〈保管庫〉使用はスキル消失の危険を伴っていたが、オーブ消失制限を突破できる可能性を重視して選択されていた。成功すれば売却や活用の幅が大きく広がると判断されていた。
乱獲リスクと影響への自覚
スライムから希少オーブが得られると判明すれば乱獲が起きると考え、芳村は収集を急いでいた。一方で、自身が教えた効率的討伐法が予想以上の影響を持つ可能性にも気づき始めていた。
成長速度への危機感
効率化により短期間で大量のSPを獲得できることを認識し、特定能力の急激な強化が常識外れの存在を生む危険性を感じていた。芳村は自身の行動が危険な情報提供であった可能性を自覚した。
無心による作業継続
不安を抱えつつも、芳村は思考を切り離し、機械的にスライム討伐を続けた。
代々木八幡
クールタイム法則の解明
自宅で三好梓と検証を行い、クールタイムが出現確率の逆数を基に算出されることが判明した。これにより〈保管庫〉は約千日後、〈水魔法〉は約六日後に再取得可能であると導かれた。
保管庫の価値と検証リスク
〈保管庫〉がオーブの消失を防げる場合、流通構造を変える可能性があると認識された。一方で検証失敗による損失も大きく、芳村はそのリスクを受け入れていた。
三好の退職意向と関係の変化
三好は現職への不満から、オーブ保管成功を契機に退職を望む意思を示した。芳村もこれを了承し、両者の関心はダンジョン関連の利益へと移行していた。
スキルの危険性認識
〈保管庫〉は利便性と同時に犯罪利用の可能性を持ち、外部に知られれば危険であると認識された。二人は秘匿の必要性を理解していた。
御劔からの連絡と供給対応
御劔遙から薬剤の追加依頼があり、芳村は翌日の受け渡しを約束した。継続的な訓練が行われていることが明らかとなった。
薬剤コストと取引成立
薬剤の原価は一本約三千円と判明し、その価格で提供することが決定された。これによりスキル関連物資の初の実質的取引が成立した。
指導影響に対する見解の相違
芳村は急成長の可能性を懸念したが、三好は数値把握が困難な一般探索者には再現性が低いと分析した。両者の認識には差が存在していた。
認識不足と潜在的影響
ランキング上位の意味や社会的影響について、二人は十分に理解していなかった。そのため、自身の行動が将来的に大きな影響を及ぼす可能性を認識しきれていなかった。
掲示板での噂の拡散
ダンジョン内での行動は掲示板で話題となり、御劔と斎藤と思われる二人組の存在が注目を集めていた。特異な行動が誤解や憶測を生み、噂として広がっていった。
情報歪曲と状況の変化
行動の意図が正しく理解されないまま、根拠のない推測が拡散された。その結果、芳村たちの活動は意図せず注目を集める状況へと変化していった。
二〇一八年 十月二十六日(金)
スキルオーブ蓄積と退職の決断
芳村圭吾はランキング一位到達後の一カ月間、代々木ダンジョン一層でスライム討伐を継続し、〈保管庫〉に複数のスキルオーブを蓄積していた。これにより生活基盤が確保され、芳村は正式に退職し、三好梓も退職願を提出した。
資金確保と商業化の検討
蓄積されたオーブの中でも〈水魔法〉は高額での売却が可能であり、当面の資金確保の見通しが立った。三好は商業ライセンスを取得し、法人設立による事業化を検討したが、匿名性や利益分配の問題に直面した。
税制上の制約と計画の停滞
利益移転ごとに課税される現行制度の下では、匿名性を維持した資金運用が困難であることが判明した。配当方式も高い課税対象となり、海外法人案も検討されたが心理的要因から断念された。
パーティ制度の採用
三好はこれらの問題を回避するため、ダンジョンのパーティ制度を利用する方針を決定した。この制度は収益をパーティ単位で扱えるため、匿名性と利益分配の両立が可能と判断された。
設立準備と初期投資
パーティ設立に際し、芳村と三好はそれぞれ三十万円を拠出した。三好は税務処理の複雑さに不満を抱きつつも、オーブ販売サイトの構築を進め、収益化を急いだ。
活動拠点と運営体制の確立
所在地は三好のマンションとされたが、実際の作業は芳村の自宅で行われた。少人数体制のため、生活空間と業務空間が一体化した運営となっていた。
パーティ結成と活動開始
パーティ名は「ダンジョンパワーズ」と定められ、リーダーは三好、メンバーは芳村のみの構成で発足した。こうして二人はスキルオーブを基盤とした新たな事業活動を開始した。
第02章Dパワーズ始動
二〇一八年十一月一日(木)
霞が関 ダンジョン庁
通報対応の集中と現場の疲弊
ダンジョン庁では同一内容の通報が相次ぎ、担当職員は疲弊しながら対応に追われていた。問題の中心は特定のオークションに関する疑念であり、調査の必要性が高まっていた。
ダンジョン庁設立の背景と役割
ダンジョン庁は各省庁の利害対立を調整するために設立された独立機関であり、世界ダンジョン協会および日本ダンジョン協会との連携を担っていた。各省庁の権限争いが激化した結果、統合的調整機関として機能していた。
オークション問題への苦情増加
問題のオークションは正規ライセンスIDを掲示していたため、形式上は合法であったが、詐欺の疑念が広がっていた。管轄外のため対応が困難であり、関係機関への情報共有が進められた。
港区新橋 警視庁サイバー犯罪対策課
問い合わせ集中と対応限界
サイバー犯罪対策課にも同様の問い合わせが殺到していたが、違法性が確認されない限り捜査対象とできず、対応は説明に限定されていた。被害が発生していない段階では詐欺罪は成立せず、介入が困難であった。
法的制約と現場の負担
疑念のみでは捜査できない制度上の制約により、職員は対応の限界と非効率性を感じていた。最終的に日本ダンジョン協会への報告を行う方針が示された。
代々木ダンジョン
販売サイトへの疑念と鳴瀬の接触
芳村圭吾はダンジョン入口で鳴瀬に呼び止められ、販売サイトについて説明を求められた。オーブの消滅特性により詐欺疑惑が広がっており、日本ダンジョン協会への問い合わせが急増していた。
保存技術への追及
鳴瀬はオーブ保存技術の存在を疑い、その有無を問いかけた。芳村は明言を避けたが可能性は否定せず、技術が存在する場合の社会的影響の大きさが示唆された。
特許・売却提案の拒否
鳴瀬は技術の特許や売却を打診したが、芳村は少人数で扱える規模ではないと判断し拒否した。自由とリスク回避を優先する姿勢が明確となった。
JDAとの交渉可能性
JDAによる保管依頼の可能性が提示され、芳村は条件付きで応じる姿勢を示した。交渉窓口として鳴瀬の継続関与を求め、主導権維持を図った。
事態拡大の予感と撤退
外部介入の兆候を察知した芳村は、当日の探索を中止し帰宅する判断を下した。
霞ヶ関 中央合同庁舎第二号館
政府内での問題認識
関係機関からの報告を受け、オークション問題は単なる詐欺ではなく、技術的事案として再評価された。出品者の価値が国家レベルの問題に発展する可能性が指摘された。
技術の戦略的価値と危険性
オーブ保存技術が実在する場合、それは利益と同時に脅威にもなり得ると判断された。過去の特殊能力事例と同様に重要な要素として認識された。
内閣情報調査室の対応方針
対象者の国外移動制限を含む対応が検討され、関係機関との連携体制構築が進められた。国家レベルでの対処が開始された。
代々木八幡
販売後の反応と状況共有
芳村は帰宅後、三好梓と状況を共有した。販売サイト公開により詐欺疑念が拡大し、保存技術の存在が疑われていることを確認した。
保管依頼に対する条件設定
二人は保管依頼を受ける場合の条件を整理し、鳴瀬を窓口とすることで交渉主導権を確保しようとした。手数料や時間管理も含めた戦略が構築された。
オークション戦略と需要の顕在化
三好はオークション形式を採用し、信頼性を演出する仕組みを組み込んでいた。〈水魔法〉は開始価格を大きく上回る入札を集め、高い需要が確認された。
取引方法と安全確保
取引は直接受け渡しとし、符丁による認証で安全性を確保する方式が採用された。オーブの時間制約が取引条件に大きく影響していた。
利益期待と将来への不確実性
高額取引への期待が高まる一方で、社会的影響やリスクも認識されていた。国外逃避などの選択肢も検討されたが、その後の展開までは見通せていなかった。
掲示板での議論と疑念の拡大
オークションは掲示板で大きな話題となり、詐欺と本物の両面から議論された。特にオーブ保存技術の存在が最大の論点となっていた。
信憑性の上昇と不透明性
公的機関の入札参加が確認されたことで信憑性は高まったが、供給源や仕組みは依然不明であった。最終的な判断はオークション結果に委ねられる状況となった。
二〇一八年 十一月二日(金)
サイモン=ガーシュウィン
海外チームによる異変の認識
サイモン=ガーシュウィンはチーム拠点にてDパワーズの英語サイトを確認していた。ジョシュアは当初、三日間のオークションという条件から詐欺と判断したが、サイトが閉鎖されていない点や各国機関の入札状況を踏まえ、単純な詐欺ではない可能性が浮上した。
スキルオーブ保存技術の推定
サイモンは、通常一日で消滅するスキルオーブが三日間維持されている事実から、保存技術の存在を推測した。この技術が実在する場合、その価値は国家レベルの資産に匹敵すると認識された。
個人による技術保持の可能性
さらにサイモンは、この技術が組織ではなく個人に帰属している可能性を指摘した。その場合、当該人物は極めて重要な戦略資産となり、各国が確保を試みる対象となると判断された。同時に、日本側もその重要性を理解しているため、接触は容易ではないと分析された。
未知スキルの戦術的価値
サイトに掲載された未確認スキル〈物理耐性〉に注目が集まった。既存データに存在しない能力であり、防御面での強化において戦術的価値が高い可能性が示された。
入札決定と資金運用
サイモンはオークション参加を決断し、パーティ口座の使用許可を出した。競合には世界上位探索者が含まれるため、高額入札が不可避と判断された。
日本への移動方針
サイモンはオークション結果に関わらず日本へ向かう方針を示した。ランキング一位の存在と本件の関連性を疑い、現地での情報収集を目的とした行動であった。チームはこれを了承し、準備を開始した。
二〇一八年十一月四日(日)
代々木八幡ほか
オークション結果の衝撃
芳村圭吾が自宅でシャワーを終えた直後、三好梓が訪れ、スキルオーブオークションの結果を伝えた。〈水魔法〉三個はそれぞれ二十億円台、〈物理耐性〉は三十五億円超で落札され、合計は想定を大きく上回る規模となった。〈物理耐性〉の購入者が上位探索者サイモン=ガーシュウィンであることも判明した。
巨額資金の確定と管理体制
今回の取引により、税引き後でも約九十億円規模の資金がパーティに入ることが確定した。資金はパーティ口座で管理され、二人のみの構成から実質的に折半に近い形で扱われることとなった。三好はパーティカードを発行し、残高内で自由に使用できる体制を整えた。
受け渡し準備と対外対応の開始
翌日の受け渡しに向けて専用ケースが準備され、防衛省への引き渡しが最初の案件として予定された。さらにJDAから面会要請が入り、オーブ保存技術に関する件として対応することが決まった。芳村も同席することとなり、外部組織との関係が本格化した。
拠点整備と生活基盤の構築
拠点については代々木周辺での物件取得が検討され、最終的に二世帯住宅が選定された。一階を事務所、二階を居住空間とする構成で、業務と生活の両立が図られた。家具や内装は外部コーディネーターへ委託され、効率化が進められた。
役割分担の明確化と日常の維持
三好が運営・事務を担い、芳村がダンジョン活動を担当する体制が確立された。急激な環境変化の中でも、二人は役割分担を整理しつつ、日常生活とのバランスを維持する方向へ移行していった。
習志野駐屯地での異変認識
一方、千葉県の習志野駐屯地ではダンジョン攻略群がオークション問題に注目していた。防衛省が実際に落札している事実と、三日経過後も成立している取引状況から、単なる詐欺ではない可能性が強く認識された。
緊急招集と任務の示唆
君津伊織二尉らに対し、市ヶ谷への緊急招集が命じられた。通常手順を省いた異例の命令であり、事案の重大性が示された。オーブ保存技術の有無が焦点となり、部隊は対応準備へと移行した。
国家規模への波及
オークションを巡る事象は、防衛省やJDAを巻き込み、国家レベルの問題として扱われ始めていた。現時点では真偽不明ながらも、本物である可能性を前提とした対応が各方面で進行していた。
二〇一八年 十一月五日(月)
市ヶ谷ほか
水魔法オーブの受け渡しと取引成立
芳村圭吾と三好梓はJDA本部にて、防衛省側の寺沢と〈水魔法〉オーブ三個の取引を行った。鳴瀬美晴が立会人として確認し、すべて本物であると保証したうえで、オーブカウントが極めて低い状態であることが明かされた。振り込み確認後、三好は専用ケースに収めたオーブを引き渡し、巨額取引は正式に成立した。
政府による渡航自粛要請
取引後、関係省庁の指示を受けた田中が現れ、芳村と三好に対し海外渡航の自粛を求めた。オークションの影響で各国の諜報機関が動いている現状が説明され、二人は民間人でありながら事実上の保護対象として扱われる立場となった。
JDA常務の独断と失敗
続く打ち合わせでは瑞穂常務が現れ、オーブ保存技術を一億円で買い取ろうとした。しかし芳村は技術の存在自体を否定し、単なる取得と輸送の結果であると説明したため、交渉は成立せず瑞穂は退場した。
斎賀課長との正式交渉
改めて斎賀課長が現れ、JDAによるオーブ保管と運用の提案がなされた。芳村はオーブカウントの制限や事前連絡など複数の条件を提示し、さらに外部には偶然入手した体裁で供給する建前を設定した。これにより保管サービスの枠組みが具体化した。
保管サービス条件の確定
芳村は保管料として一個一億円、売却時は売却額の三割または基本料金の高い方を徴収する条件を提示した。また他オークションへの登録禁止や、二人揃わなければ機能しないという制約も説明し、リスクを明確化した。
鳴瀬の専任管理監就任
交渉の結果、鳴瀬美晴はDパワーズ専任管理監に任命され、JDAとパーティの正式な窓口となった。これにより両者の関係は制度的に結び付けられ、今後の運用体制が整備された。
防衛省でのオーブ使用と新たな疑念
防衛省では受け取った〈水魔法〉オーブの使用者が選定され、海馬が即座に使用した。現場ではDパワーズの供給能力に疑問が生じ、単なる保存ではなく生成能力の可能性が指摘された。寺沢は未知スキル〈メイキング〉の存在に着目し、関連性を疑い始めた。
事務所整備と生活基盤の進展
会議後、芳村と三好は青山で新事務所の内装打ち合わせを行い、入居日を決定した。三好は高い機密性を重視し、過剰ともいえる防犯対策を提案した。帰路では今後の検査計画や取引予定を整理し、活動継続の方針を確認した。
資産増加と今後の選択
三好は資産増加を実感しつつも、安定した生活に留まらず活動を続ける意思を示した。芳村も同様に現状維持を望まず、ダンジョンと事業の両立を続けることを選択した。二人は身の上を共有しつつ、今後の方針を固めていった。
日常への回帰と新たな段階
その日の締めくくりとして訪れた寿司店で、初めてパーティカードが使用された。急激に変化した状況の中でも日常の行動を維持しながら、二人は次の段階へと進み始めていた。
二〇一八年 十一月七日(水)
翠との再会と計測依頼
芳村圭吾と三好梓は江戸川区の研究施設を訪れ、翠鳴瀬と再会した。三好は測定可能な全項目の計測を依頼し、回数を三十回と指定した。高額な費用であったが、二人は個人資金での実施を決断した。
計測実験とステータス操作
芳村は検査ポッドに入り、全身にセンサーを装着された状態で測定を受けた。計測の合間に自身のステータスを操作し、STRを中心に能力値を段階的に上昇させながらデータ取得を進めた。
生理学的異常の不在
計測終了後、翠たちは結果を確認したが、生理学的な数値には変化が見られなかった。能力値を上昇させているにもかかわらず身体的指標が変動しないことから、強化が肉体そのものに起因しない可能性が示された。
脳波に現れた段階的変化
一方で脳波には顕著な変化が確認された。計測の進行に伴い速波化が進み、その変化は六段階に分かれて推移していた。この現象は通常の覚醒状態とは異なり、異常な情報処理や入力の増大を示唆していた。
未知の電磁現象の検出
さらに測定中、機器由来ではない電磁的な揺らぎが観測された。芳村の周囲に何らかのエネルギーフィールドが存在している可能性が浮上し、現象は仮にオーラと呼ばれる形で認識された。
ダンジョン強化の仮説形成
帰路において三好は、ダンジョンによる強化は肉体変化ではなく外部フィールドによる補助作用であると考察した。身体の数値が変わらない一方で能力が向上する現象は、外骨格のようなエネルギー場の存在によって説明可能であると整理された。
ステータスと脳波の対応推測
三好はさらに、脳波の六段階変化がステータス項目数と対応している可能性に言及した。これにより、能力強化は脳を媒介とした超常的現象であり、精神的作用によって形成されるフィールドが実体として機能しているという仮説が導かれた。
二〇一八年 十一月九日(金)
横田エアベースほか
サイモンチームの来日
サイモン=ガーシュウィン率いるチームは横田エアベースに到着し、日本へ上陸した。軽口を交わしつつ行動し、到着後は基地司令への挨拶へ向かった。表向きは休暇であったが、実際には情報収集を目的とした来日であった。
オーブ捜索任務への疑問
チームには〈異界言語理解〉オーブの捜索命令が与えられていたが、サイモンはこれを非効率と判断していた。対象モンスターの多さと出現率の低さから、通常探索では目的達成が困難であると結論づけていた。
Dパワーズへの関心と仮説
サイモンは、Dパワーズが同一種のオーブを複数揃えた事実に注目していた。単なる保存ではなく、特定オーブを狙って取得する手段が存在する可能性を考え、その実態を探るために日本での調査を決めた。
滞在方針と行動計画
チームは翌日にJDA訪問を予定し、その日は新宿のホテルへ移動する計画を立てた。滞在期間は一カ月程度としつつ、状況次第で延長する柔軟な方針が示された。
基地司令の警戒と懸念
横田基地司令マーティネス中将は、サイモンチームの能力を評価しながらも、その問題行動の多さに強い懸念を抱いていた。成果は大きい一方で被害も伴う傾向があり、日本での行動が新たな問題を引き起こす可能性を危惧していた。
オークション結果への衝撃と議論
一方、掲示板ではDパワーズのオークション結果が大きな話題となっていた。〈水魔法〉が二十億円台で落札されたことで、従来の相場が大きく覆され、その価格の異常性に注目が集まっていた。
入札非公開と信頼性の揺らぎ
終盤で入札者IDが非表示となったことにより、透明性への疑問が生じた。当初の大組織の参加が信頼性を支えていた可能性が指摘され、演出の意図を疑う声も上がっていた。
詐欺説と本物説の対立
オーブ保存技術の有無を巡り、掲示板では意見が分かれていた。取引が成立している以上本物とする見方と、巧妙な詐欺の可能性を残す慎重論が対立していたが、JDAが関与している点から完全な虚偽は考えにくいという認識も共有されていた。
サイモン来日による事態の加速
新宿での目撃情報によりサイモンチームの来日が確認されると、Dパワーズとの関連を疑う声が急速に広がった。世界上位探索者の動向とオークション問題が結びついたことで、事態は国際的な関心を集める段階へと進んでいった。
二〇一八年 十一月十日(土)
市ヶ谷 JDA本部
サイモンとの取引成立
芳村圭吾と三好梓はJDA本部にて、サイモン=ガーシュウィンと〈物理耐性〉オーブの取引を行った。鳴瀬美晴が本物であることを確認し、オーブカウントが六〇未満であることも明らかとなった。サイモン側はその短さに驚きつつも支払いを完了し、取引は成立した。
サイモンチームによる探り
取引後、サイモンチームは雑談を装いながら、オーブの入手方法や代々木ダンジョンの案内について探りを入れた。芳村たちは企業秘密や経験不足を理由に応じず、情報を明かすことなく場を離れようとした。
世界ランク一位への疑念
別れ際、サイモンはエリア12の世界ランク一位について言及し、芳村たちとの関係を問いかけた。芳村はこれを否定したが、サイモンは疑念を残したまま去った。Dパワーズと匿名一位の関連は海外探索者にも疑われ始めていた。
異界言語理解を巡る状況説明
一方で斎賀課長は鳴瀬に対し、〈異界言語理解〉オーブの重要性を説明した。ロシアでの発見によりダンジョン内の碑文解読が進み、ダンジョンの本質に関わる仮説が補強されつつあったが、内容の検証は困難であった。
Dパワーズへの依頼構想
斎賀はDパワーズに対し、〈異界言語理解〉の取得依頼を行う可能性を検討していた。鳴瀬はその依頼が技術の存在を示す危険性を伴うとして慎重姿勢を示したが、斎賀は実現への期待を捨てていなかった。
国家案件化と報酬問題
〈異界言語理解〉は国家規模で争奪される可能性が高く、JDA単独では対価を用意できないと見られていた。斎賀は国家予算による対応を視野に入れつつ、当面は交渉可能な範囲での調達を模索した。
代々木への強者集結
同時に、サイモンチームおよび君津伊織の部隊が代々木ダンジョンへ潜る予定が共有された。世界上位の探索者が集中する状況となり、短期間で大きな変化が起こる兆しが強まっていた。
鳴瀬への監視任務付与
斎賀は鳴瀬に対し、Dパワーズの動向を継続的に把握するよう指示した。鳴瀬は困惑しながらもこれを受け入れ、両者の関係は監視と協力が混在する形へと移行していった。
二〇一八年 十一月十二日(月)
代々木八幡
新事務所への引っ越し
芳村圭吾と三好梓は代々木八幡の新事務所兼住居へ移転した。二階はそれぞれの住居、一階は事務所として整えられており、芳村は自室の洗練された内装に落ち着かなさを覚えた。三好の趣味も反映された事務所には、ワインセラーや大型モニター付きのデスクが配置されていた。
鳴瀬による依頼の提示
引っ越し後、鳴瀬美晴が訪問し、専任管理監として〈異界言語理解〉のスキルオーブ探索を依頼した。このオーブはロシアのダンジョンで一度だけ確認され、碑文翻訳に用いられた重要な存在であった。
異界言語理解の重要性
翻訳内容はダンジョンの本質に関わる可能性を持っていたが、真偽は確認されていなかった。そのため各国が同オーブの入手を狙っており、JDAはDパワーズに期待を寄せていた。
ドロップ元の推測と探索方針
芳村は言語系スキルが社会性と魔法を持つモンスターに由来すると推測し、ゴートマン系シャーマンに着目した。代々木ダンジョン十四層奥に該当セクションが存在することが判明し、探索を決定した。
探索準備とスキル取得
鳴瀬が帰った後、芳村と三好は準備を進め、複数のスキルオーブを使用した。三好は〈収納庫〉と〈超回復〉を取得し、芳村も〈物理耐性〉〈水魔法〉〈超回復〉を取り込んだが、異常は発生しなかった。
サイモンチームとの遭遇
スキル確認のため訪れた代々木ダンジョンで、芳村はサイモン=ガーシュウィンのチームと遭遇した。軽装のまま現れた芳村に対し、サイモンは危機意識の欠如を指摘した。
注目の集中と会話
サイモンが親しげに声をかけたことで、周囲の探索者の注目が集まった。芳村は目立つ状況を避けようとしながら応対した。
君津伊織の登場
そこへ君津伊織が現れ、サイモンは彼女を避けるようにその場を離れた。伊織は冷静に芳村へ接しつつ、その装備や態度に疑問を抱いた。
Dパワーズ関係者への疑念
芳村は自らを下位ランクのメンバーと装ったが、伊織はサイモンとの関係や状況から不自然さを感じ、単なる初心者ではない可能性を疑った。
伊織の過去とスキル取得
伊織は過去に沖縄で未発見ダンジョンへ落下し、鮫型モンスターを撃破して〈磁界操作〉を取得していた。その後も戦闘を重ね、強力なモンスターを磁力操作によって撃破した経験を持っていた。
伊織の推測と追及未遂
伊織は芳村が特異な経緯で強力なスキルを得た可能性を考え、さらにオーブ生成能力の存在も疑った。しかし問いかける直前に呼び出され、追及は中断された。
芳村の警戒と撤退
芳村は自衛隊のトップ探索者と関わる危険性を感じ、注目を避けるため探索を中止した。予定していた検証を断念し、新居へ戻る判断を下した。
後日譚 沖縄 二〇一五
中頭郡西原町宇上原
救助後の再会
沖縄の病院にて、鋼二曹は回復した君津伊織を見舞った。伊織は二日間意識を失っていたが既に回復しており、落ち着いた様子で鋼と会話を交わした。鋼がなぜ逃げなかったのかを問うと、伊織は助けられる可能性がある限り見捨てる選択はしなかったと答えた。
行動原理の背景
伊織は人魚のミイラに対して神話的発想に基づき行動したと語った。黄泉比良坂で桃を投げて悪霊を退けた逸話になぞらえ、弟から渡されたナイフに刻まれた桃太郎の意匠を拠り所として攻撃を行ったのである。鋼は当初その理屈に戸惑ったが、ダンジョンの存在により現実と神話の境界が曖昧になっていることを認識し、その考え方を受け入れた。
ナイフと日常への回帰
伊織は命を救ったナイフを失ったことを気にしていたが、鋼は代わりの品を贈ることを提案した。喜ぶ伊織の様子は、ダンジョンでの戦いとは対照的に、平常の学生としての姿を示していた。
ダンジョン攻略群への勧誘
鋼は伊織に対しダンジョン攻略群への参加を打診した。その理由は〈磁界操作〉の能力だけでなく、危険な状況でも他者を見捨てない判断力にあった。伊織は戸惑いながらも興味を示し、自衛隊の試験制度について理解している様子を見せた。
新たな進路の可能性
鋼は特例措置によって受験機会を用意できる可能性を示した。伊織は合格を保証しない条件で前向きな姿勢を見せ、鋼はその資質を高く評価した。伊織もまた自身の経験を踏まえ、新たな進路について考え始めていた。
オークション継続への疑念
一方、Dパワーズが短期間で再びスキルオーブを出品したことで、探索者たちの間に疑念が広がっていた。オーブは極めて希少であり、短期間で複数個を入手すること自体が常識から逸脱していた。
未知オーブの出現
出品された中には〈超回復〉のようにJDAのデータベースに存在しない未知スキルが含まれていた。この事実により、単なる収集能力では説明できない異常性が指摘された。
供給手段への憶測
掲示板では闇市場や組織的収集、スキルによる複製や生成など様々な仮説が提示されたが、いずれも決定的な根拠に欠けていた。そのため現実的には説明不能な現象として扱われていた。
市場構造の異常性
Dパワーズがオーブのみを出品し、ポーションなど一般的なアイテムを扱っていない点も注目された。このことから、通常の探索者とは異なる供給手段または特殊能力の存在が強く示唆された。
国際的関心の高まり
異常な供給能力により、海外探索チームや国家機関の関与が疑われる状況となった。代々木ダンジョンには著名な探索者が集まり始め、事態は国際的な関心を帯びていった。
不穏な空気の拡大
掲示板では関係者に危険が及ぶ可能性まで言及され、状況の深刻さが共有された。Dパワーズの存在は単なる話題を超え、探索者社会全体に警戒と不安を広げていた。
二〇一八年 十一月十五日(木)
代々木八幡
新居での朝と日常の変化
代々木八幡の新事務所にて、芳村圭吾は快適な寝具の影響で早朝に目を覚まし、一階で朝食をとる三好梓と合流した。二人は新生活に順応しつつあり、従来とは異なる余裕のある日常を送っていた。
〈収納庫〉の性能検証
三好は新たに取得した〈収納庫〉の性能を検証していた。物体の出し入れが可能であり、時間が完全停止する〈保管庫〉とは異なり、内部時間は半分の速度で進行する性質を持つことが判明した。この特性により、保存期間を延ばす手段として一定の実用性が確認された。
〈保管庫〉の制約と容量分析
芳村は〈保管庫〉の検証結果を説明した。生物の収納には制限があり、人間や哺乳類は不可である一方、昆虫や魚は収納可能であった。また容量は重量制限に依存し、およそ十トン以上二十トン未満と推定された。この分析は実際に路線バスを用いた検証によって得られたものであった。
ダンジョン攻略準備の構想
芳村はダンジョン内にベースキャンプを設営する構想を持っていたが、重量制限や水回りの問題から実現は困難であると判断した。その代替としてキャンピングカーの導入を決定し、三好が手配を進めていた。
資源確保と生活手段の検討
水は〈水魔法〉によって生成可能であったが、純水であるため味や長期使用への不安が残った。そのためミネラルウォーターの備蓄を行う方針となった。食料についても〈保管庫〉を活用した長期保存を前提として準備が進められた。
探索計画と方針決定
目的であるシャーマン探索について、芳村は一週間から十日程度の短期滞在を前提とした計画を立てた。ムーンクラン内での出現条件を踏まえ、効率的に対象個体を引き当てる方針とした。失敗時には無理をせず撤退するという現実的な判断も共有された。
二〇一八年十一月十六日(金)
代々木八幡
第二回オークションの朝
十一月十六日、芳村圭吾は第二回オークションの結果を確認するため早朝に事務所へ下りた。三好梓は徹夜でステータス計測用のコードを作成しており、翠鳴瀬の会社との追加計測について話を進めていた。
追加計測と機器開発構想
三好は芳村のステータスを一〇〇まで段階的に上げながら再計測する案を提示した。さらに得られたデータをもとにステータス計測デバイスの開発構想を示し、翠の会社への投資も検討していた。芳村は試作機開発を優先条件として、当面十億円規模の投資を認めた。
計測器の形式と課題
二人は計測データを外部端末で取得し、最終処理を自分たちのサーバーで行う方式を検討した。一方で芳村自身の数値が露見する危険性から、一般向けには差別や悪用を避ける簡易表示型が望ましいと判断された。
物理耐性の高額落札
第二回オークションでは三個の〈物理耐性〉がそれぞれ二十億円以上で落札された。落札者はサイモン、黄俊熙、ウィリアムといった世界上位探索者であり、代々木にトップ層が集まりつつある状況が示された。
超回復への不安と効果確認
未知スキル〈超回復〉は五十五億円以上で落札されたが、落札者は個人IDで正体が不明であった。三好は動機に不安を抱きつつも、実際に自身で効果を確認し、疲労軽減や傷の即時回復といった強力な性能を認識した。芳村もその効果に衝撃を受けた。
急ぎの受け渡し準備
〈超回復〉の落札者は当日午前十時の受け取りを指定していた。二人は事情の切迫性を感じ取り、急ぎ市ヶ谷へ向かう準備を進めた。
市ヶ谷での取引と依頼
JDA本部で芳村圭吾と三好梓は落札者アーメッドと対面し、鳴瀬美晴の立会いのもと取引を完了させた。その直後、アーメッドは娘アーシャをダンジョンへ連れて行ってほしいと依頼した。
Dカード未所持という問題
アーシャはDカードを持たず、オーブを使用できない状態であった。彼女は身体に深刻な欠損を抱えており、既存のポーションでは回復できなかった。芳村は事情を知り、彼女を救うことを決意した。
直接交渉と条件提示
芳村は通訳を排してアーメッドと直接交渉し、Dカード取得が間に合わない場合は別の〈超回復〉を用意する可能性を示した。報酬としてアーシャとの食事を条件に提示し、アーメッドはこれを受け入れた。
Dカード取得作戦の実行
三好が装備を準備し、芳村たちはアーシャを背負子に乗せて代々木ダンジョンへ入った。アーシャはスライムを破裂させ、コアを破壊することで初めて魔物を討伐し、Dカードを取得した。
超回復による再生
Dカード取得後、アーシャは〈超回復〉を使用した。光に包まれた後、欠損していた手足や顔が再生し、元の姿を取り戻した。芳村と三好は彼女を連れて追跡を避けながら帰還した。
父娘の再会と追及
回復したアーシャを見たアーメッドは驚愕し、父娘は再会を果たした。一方で鳴瀬は〈超回復〉の効果について鋭く問いただし、三好の発言から未知スキルの実験が疑われたが、芳村は話を抑えた。
超回復の制限の発見
アーシャのDカードを確認すると、〈超回復〉は括弧付きで表示されていた。芳村は大規模な発動による一時的使用不能、または再使用不可の可能性を考えた。さらにこの力が他者に狙われる危険を認識し、平穏な生活が遠ざかりつつあることを実感した。
二〇一八年 十一月十七日(土)
代々木八幡
遅い起床と前夜の余韻
芳村圭吾は翌朝遅く起床し、シャワーを浴びてから一階の事務所へ下りた。三好梓はすでに起きており、前夜の出来事を振り返っていた。アーシャの回復後、アーメッドは感謝を繰り返し、銀座で祝宴を開いて高級シャンパーニュを振る舞っていた。
三好の酒への感動
三好は前夜に供されたサロンやクリスタル、クロ・ダンボネなどを振り返り、非日常的な体験であったと語った。さらに希少なボトルまで出されたことに驚き、銀座の特異な環境に感心していた。
当日の予定確認
芳村は当日の予定を確認し、三好からオーブ受け渡しが三件あるためダンジョン探索は控えるよう告げられた。芳村は〈超回復〉取得が近いと考えており、時間があれば短時間だけ潜る意向を示した。三好はステータス計測用コードが完成したと報告した。
事務所での朝のやり取り
芳村は冷蔵庫の水としてシャテルドンが用意されていることに気づいた。三好は芳村の嗜好に合わせて準備したと説明し、芳村はそれを飲んで満足した。
昼食と鳴瀬への連絡
昼食について三好は市ヶ谷で取ることを提案し、鳴瀬美晴を誘う意向を示した。芳村は前日の対応で鳴瀬が多忙であると推測し、三好は電話連絡を行うことになった。
各国上位探索者との取引
市ヶ谷のJDA本部では、黄俊熙、サイモン=ガーシュウィン、ウィリアムの順で取引が行われた。黄は寡黙に取引を終え、その場でオーブを使用して効果を確認すると短い言葉を残して去った。
サイモンとの情報交換
サイモンは代々木ダンジョンで十七層まで到達していたことを語り、各国の思惑が交錯する場となっている現状を指摘した。同時に、誰でも入れる環境と資源の豊富さから人類全体にとって有益であると評価した。
英国側の接触と警戒
ウィリアムの取引には執事風の男と軍人風の人物が同行していた。イギリスの関係者と見られ、オーブカウントへの反応などから芳村たちは警戒を強めた。
緊張後の雑談と状況認識
取引後、芳村と三好は各国の動きに緊張を覚えながらも冗談交じりに受け流した。鳴瀬は芳村の態度を評価しつつ、その特異性に言及した。
アーシャの来訪と約束の確認
その後アーシャが現れ、芳村に抱きつき、約束していた食事について確認した。芳村は発言を正式な約束として受け入れた。
高級寿司店への招待と驚き
三好が招待状を確認すると、会場は高級寿司店「ないとう」であった。通常休業日であるにもかかわらず営業されることから、アーメッドの影響力の大きさが示された。
参加者調整と今後の展開
芳村は三好と鳴瀬を誘い、招待に応じることを決めた。三好は翠との関係にも言及し、今後の協力関係や人脈拡大の可能性が示された。これにより状況は新たな展開へと進み始めていた。
二〇一八年 十一月十八日(日)
市ヶ谷JDA本部
御劔の合格報告
芳村圭吾は〈超回復〉の取得を目的に代々木ダンジョンを訪れたが、エントランスで御劔遙に呼び止められ、突然抱きつかれた。御劔はモデルのオーディション合格を報告し、芳村へ感謝を伝えた。
スライム狩りによる急成長
御劔はDカードを見せ、自身のランキングが九八六位まで上昇したことを明かした。芳村に教えられた方法で一日平均百十八匹のスライムを討伐し、四十二日間継続した結果であり、短期間で大きな成長を遂げていた。芳村はその成果から敏捷性や器用さの大幅な向上を推測した。
秘密の共有と連絡先交換
御劔は芳村の特異性に気づきつつも、斎藤涼子以外には話していないと告げた。芳村はDカードの情報を他者に見せないよう忠告し、御劔もこれを受け入れた。二人は連絡先を交換し、芳村は当夜の食事会へ彼女を誘った。
御劔の食事会参加決定
芳村はアーメッド親子との食事会に御劔を招待し、斎藤にも声をかけるよう伝えた。しかし斎藤は撮影の都合で不参加となり、御劔のみが出席することとなった。待ち合わせ場所も具体的に取り決められた。
〈超回復〉の取得と事務所への帰還
芳村は短時間でスライムを追加討伐し、目的であった〈超回復〉のオーブを取得した。その後事務所へ戻り、移動のためハイヤーを手配した。三好梓は御劔たちの成長速度から、経験値取得の仕組みが極めて強力であると再認識した。
贈り物の準備と三好の配慮
三好はアーシャへの回復祝いとして高価な宝飾品を用意していた。外見を隠して生きてきた過去を踏まえ、今後自由に装えるよう配慮したものであり、芳村はその意図を理解した。
〈収納庫〉の危険性と販売保留
三好は〈収納庫〉の検証結果として、極めて大容量の収納が可能であることを報告した。芳村はその危険性を認識し、悪用防止の観点から収納系オーブの販売を当面見送る方針を決定した。
御劔への祝い選定
芳村は御劔への祝いを用意するため三好に相談し、服装を妨げない真珠のピアスが適切であると助言を受けた。その結果、銀座で購入することを決めた。
六本木一丁目での合流
芳村は六本木一丁目で三好たちと合流した。翠鳴瀬はスーツ姿で現れ、普段との違いに驚きが生じた。三好は御劔の合格を祝いつつ、芳村の行動をからかった。
アーメッドとの再会
店前でアーメッドと再会し、芳村と三好は恩人として歓迎された。芳村は周囲の人物関係を紹介し、御劔がダンジョン経験を仕事に活かしていることも伝えた。
アーシャへの回復祝い
芳村は三好から預かった宝飾品をアーシャへ贈り、彼女はそれを喜んだ。芳村はその場で装着を手伝い、似合うと伝えたことで場の雰囲気は和やかになった。
寿司店での食事と交流
一行は貸し切りの寿司店で食事を行い、それぞれが会話と料理を楽しんだ。複数言語が入り混じる中で交流が進み、賑やかな時間が過ごされた。
芳村を巡るやり取り
アーシャと御劔は芳村に対して親密な態度を見せ、三好や鳴瀬はそれを眺めつつ反応を楽しんでいた。芳村は主導権を握るというよりも、周囲に翻弄される立場にあった。
アーメッド親子との別れ
食事後、アーシャは再会を願いながら芳村に抱きつき、アーメッドも支援を約束した。芳村はその申し出を受け止めつつ別れた。
御劔への合格祝いと別れ
帰路のハイヤー内で、芳村は御劔へ真珠のピアスを渡した。御劔は感激し、別れ際に頬へキスをした。芳村は表面上は冷静を保ちながらも、内心では動揺していた。
二〇一八年 十一月十九日(月)
江戸川区
鳴瀬研究所での再検査
芳村圭吾と三好梓は再び鳴瀬翠の研究所を訪れ、全項目検査を四十三回行う大規模な再計測に臨んだ。費用は約一億円に達し、中島は成果に期待を示す一方で、翠は冷静に準備を進めた。
ステータス上昇と再計測
芳村はメイキングを用いて全ステータスを三十に揃え、特定能力を突出させない方針で均等に上昇させながら検査を実施した。各計測ごとに数値を引き上げる形式で進行し、作業は機械的に繰り返された。
一〇〇到達で現れた制御機能
STRが一〇〇に達した際、ステータスにマイナス操作が出現した。芳村はポイント返還を期待したが、実際には能力値を下げる機能であり、過剰な力の抑制や数値の偽装に用いるための機構であると判断された。
全能力一〇〇到達と身体制御の失敗
五時間後、全ステータスが一〇〇に達した芳村は、日常動作で力加減を誤りマグカップを破壊した。さらに十円玉を容易に折るなど、強化に対して身体制御が追いついていない状態であることを認識した。
能力値の一時的な抑制
芳村は制御機能を用い、STR、VIT、INT、AGI、DEXを三十程度まで下げた。LUCのみは問題ないと判断して維持したが、その直後に御劔遙から連絡が入り、運との関連を意識する契機となった。
御劔からの誘い
御劔は前日の礼を伝えるとともに、連絡できなかった理由を語った。ダンジョンでの訓練により身体操作能力が向上し、モデル業のレッスン負担が軽減されたことから、芳村に再び同行を依頼した。
研究と運用への視点
芳村は予定調整を約束し、通話後は喜びを隠せない様子を見せた。三好はそれを指摘しつつも、翠とステータス計測デバイス開発の話を進めていた。能力の数値化が社会に与える影響を認識しながら、研究と実用化の両面で検討が進められていた。
終章 エピローグ
後日譚 とある社交パーティーで
アーシャの回復が社交界の噂となる
社交パーティーにおいて、淡いライムグリーンのドレスをまとったアーシャは周囲の視線を集めていた。清楚さと成熟を兼ね備えた姿は強い印象を与え、かつての状態を知る者たちは失われていた手足や容貌が完全に回復している事実に驚愕し、日本で何が起きたのかを噂し合っていた。
アーメッドが語る日本の魔法使い
アーメッドは周囲の問いに対し、娘は日本で魔法使いに出会ったのだと説明した。肉体は一日で回復したが、心は二日後に贈られたピアスとペンダントによって癒やされたと語り、その品に特別な意味を見出していた。
スキルオーブオークションの話題化
会話はやがて、日本で行われていた異例のオークションへと移った。スキルオーブを扱う個人サイトでありながら、通常は一日で消滅するオーブが三日間維持されて取引されていたことから、当初は詐欺が疑われていた。しかしWDAライセンスの存在とサイトの継続運営により、正規取引である可能性が指摘されていた。
超回復とアーシャの奇跡の関連性
さらに、未知スキル〈超回復〉が出品され、アーメッドの訪日直後に落札された事実が語られた。アーシャの回復とこのスキルの関連が示唆されたが、彼女がDカード取得条件を満たせない状態であったことから、確証には至らなかった。
魔法使いのチームという結論
最終的に、彼らは日本の魔法使いのチームが関与したのだろうと結論づけた。アーシャの回復、異常なオーブ取引、Dカード取得の謎はいずれも説明不能な現象として残り、話題はやがて別の問題へと移っていった。
同シリーズ
Dジェネシス ダンジョンができて3年











その他フィクション

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