どんな本?
『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』は、之貫紀 氏による日本のライトノベル。
この物語は、世界各地に「ダンジョン」が出現してから3年後の世界を描いている。
主人公の芳村は、元々は社畜として働いていたが、ある偶然からダンジョン探索者の世界ランキング1位になる。
彼は退職し、ダンジョンに潜ることを決意するが、手に入れた未知のスキルに振り回され、ダンジョン攻略の最前線に関わることになる。
この作品は、投稿小説サイト「小説家になろう」で2019年6月1日から投稿が開始され、その後KADOKAWAのエンターブレインレーベルより2020年2月から刊行されている。
また、『月刊コンプエース』で平未夜 氏の作画により漫画化され、連載が開始されている。
読んだ本のタイトル
Dジェネシス ダンジョンが出来て3年06
著者:之貫紀 氏
イラスト:ttl 氏
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あらすじ・内容
横浜ダンジョンからモンスターがあふれだす!?
横浜ダンジョンに分裂を繰り返すモンスターが発生!
Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 06
ダンジョンからあふれ出せば、数日で、横浜が、関東が、日本が、世界が食い尽くされる可能性が!
ダンジョン内でケリをつけるべく駆け付けた芳村と三好は、伊織率いるチームIやサイモンたちDADメンバーと協力して事態の収拾にあたる。
しかし、事態を重く見た組織から秘密裏に持ち込まれたのは、小型の核爆弾だった!!
大人気 現代ダンジョン攻略譚最新刊!!
感想
表紙はベンゼドビーム(水鉄砲)を装備したチームサイモン。
オモチャを装備していてもカッコいい。
でも、彼が装備している物はスライムには絶大な効果を持つ。
遂に三好はベンゼドビームを公開したんだな。
そうなった原因。
横浜クライシス。
ヤツメウナギみたいなクリーナーが肉片から分裂増殖する事件が発覚。
クリーナーは護衛にスライムを8匹召喚するらしく。
それが倍々ゲームに増えて行く。
このままじゃ全世界にスライムが溢れて人類は滅亡してしまう。
アメリカは横浜ダンジョンで核爆弾を使用する事を決めて、日本には総理大臣に直通電話で一方的に核爆弾を使用すると言って終わる。
そして、代々木で活動しているチームサイモンを招集して爆弾の護衛に就けるが、核爆弾を使用する事に断固反対だとサイモンが表明したせいで自身が護衛する”スモール・サン”が核爆弾とは知らずに横浜に設置させられる。
最後の最後で核爆弾だと知り。
さらに三好が爆弾の方に走って行ったのでサイモンはシェルターに入らず、三好を追いかけたせいで代々木の31層へと飛んでしまう。
次に急に代々木の31層に飛ぶのがファンタジー。
一応、ダンつくちゃんが核爆発をスライムで、、
フクイチの核燃料喰ってくれないかな、、
ダンジョンに核燃料を置いたら分解してくれるなら大変助かるよな、、
ある意味夢だよな、、
コスモクリーナより近いし。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
横浜のモンスター増殖
本作における横浜のモンスター増殖は、ファルコンインダストリーのテスト中に横浜ダンジョンに出現した未知のボスであるマルチヘッデッドクリーナーの異常な特性によって引き起こされた、人類滅亡にも直結しかねない未曾有の危機として描かれている。本稿では、その詳細な設定と事態の推移について解説する。
マルチヘッデッドクリーナーの異常な増殖特性
・横浜ダンジョン二層に出現した変異種のクリーナーは、物理攻撃でばらばらにされると、その破片の一つ一つが再生して独立した個体になるという厄介な特性を持っていた。
・実際に、20ミリ機関砲で粉砕された破片から7匹のクリーナーが再生している。
・さらに、この個体は約4から6時間ごとに自然分裂して倍増するうえ、1匹につき最大8匹のスライムを召喚し、自らの盾として利用する性質があった。
人類滅亡の予測とアメリカの核使用決断
・この増殖が放置された場合、アメリカのNSC(国家安全保障会議)の計算では、わずか数日で日本の首都圏が数千億匹のスライムに覆い尽くされ、約10日後には数兆匹に達して地球全体へ広がり、人類が滅亡すると予測された。
・クリーナーを破片を残さず完全に消滅させるためには、一瞬で蒸発させるほどの熱量が必要であり、アメリカ政府は超小型戦術核(W54)をダンジョン内で使用するという極秘の決断を下した。
・日本政府の井部総理もこの通告を受け、パニックを避けるために大規模な不発弾処理を名目とした半径1.2キロメートルの強制避難計画を秘密裏に進めることになった。
通常兵器の無効化と自衛隊の苦戦
・現場に派遣された自衛隊のダンジョン攻略群や、アメリカから急遽招集されたサイモンチームは、極めて困難な戦いを強いられた。
・物理的な破壊が新たな増殖を招くため、榴弾や徹甲弾といった現代兵器の大半が使用禁止となったのである。
・唯一の有効な攻撃手段は火で焼き尽くすことだったが、自衛隊の火炎放射器や試作焼夷手榴弾は数が圧倒的に足りなかった。
・召喚された大量のスライムが壁となって攻撃を阻むため、指数関数的に増え続けるモンスター(1万5千匹以上)を前に、現場の戦力では殲滅が不可能であることが浮き彫りになった。
芳村の仮説と事態の結末
・この異常な増殖のエネルギー源について、芳村は召喚されたスライムが空気中の成分等の異物を分解し、分裂に必要なDファクターを生産しているという仮説を立てた。
・また、クリーナーを7センチ以下のサイズまで一瞬で細分化できれば再生しないことを突き止めたが、実戦でそれを行うのは不可能であった。
・芳村は、同種のモンスターが約373匹以上存在すればさまよえる館を出現させられる条件を利用し、館出現時のモンスター全消滅現象によって事態を解決しようと試みた。
・最終的に、アメリカが仕掛けた核兵器が起爆する直前、芳村たちの介入や未知の現象が重なり、横浜ダンジョン内のクリーナーとスライムは核のエネルギーごと跡形もなく消滅(Dファクターへ還元され、芳村たちは別の階層へ転移)し、世界は間一髪で救われることになった。
まとめ
このように、横浜のモンスター増殖は、単なるダンジョン内のトラブルを超え、日米の政府や軍隊を巻き込んだ緊迫のタイムリミット・サスペンスを生み出す中核的な要因となっている。
米国の核使用検討
本作における米国の核使用検討は、横浜ダンジョンで発生した異常増殖モンスターに対し、人類滅亡の危機を回避するための最終手段として極秘裏に進められた。本稿では、その詳細な経緯と背後に隠された政治的思惑について解説する。
人類滅亡の予測と核兵器の必要性
・NSC(国家安全保障会議)のダルトン補佐官の分析によれば、クリーナーを放置した場合、数日で日本の首都圏が覆い尽くされ、約十日後には地球全体にスライムが拡散して人類が滅亡すると予測された。
・通常の爆弾では破片が飛び散り事態を悪化させる危険があるため、モンスターを一瞬で蒸発させる熱量が必要とされた。
・爆風や破片を伴わず、純粋な熱量のみを発生させる兵器として、現状では核兵器しか有効な手段がないと結論付けられた。
大統領の苦悩と限定的な使用許可
・ハンドラー大統領は、広島への原爆投下を承認したトルーマンを引き合いに出し、人口密集地である横浜での核使用に強い抵抗感を示した。
・しかし、人類滅亡の瀬戸際であるというダルトンの説得を受け、事態収拾のために準備を承認せざるを得なかった。
・ただし、使用の権限は大統領自身に限定し、クリーナー亜種がダンジョン外でも分裂し、横浜からあふれ出す瞬間にのみ実行するという厳しい条件を付けた。
超小型戦術核の選定と偽装工作
・現役の核弾頭は威力が大きすぎるため、大統領命令により退役済みの超小型戦術核W54が極秘に捜索された。
・ダンジョン地下二階の容積を満たす火球を発生させるにはTNT換算で十トン弱の出力で十分であり、これはW54の最小出力と合致していた。
・作戦の実行には、倫理観の強いサイモンチームを排除し、命令に忠実な国防総省の実働部隊がファルコンの職員に偽装して送り込まれた。
・現場の探索者たちには核であることを伏せ、純粋な熱球を発生させるサーメート利用の新型兵器リトル・サンであると虚偽の説明が行われた。
日本政府の苦渋と不発弾処理の偽装
・深夜に通告を受けた日本の井部総理は、アメリカの横暴な決定に苦悩しつつも、十九日の十八時までは核を使用しないという約束を取り付けた。
・国民をパニックに陥らせることなく横浜中心部から避難させるため、政府は大規模な不発弾処理という名目で半径一・二キロメートルの警戒区域を設定し、秘密裏に事態への対応を進めた。
ダルトン補佐官たちの裏の目的
・ダルトン補佐官やエネルギー省、環境保護庁にとって、この危機はダンジョン内部で核実験を行える二度とない好機であった。
・ダンジョン内で核を使用した場合、既存の地震学や放射性核種の監視網で探知されるのか、また放射能汚染がどのように処理されるのかを検証する狙いがあった。
・特に、膨大な核廃棄物の処理問題を抱えるアメリカにとって、ダンジョンを核のゴミ捨て場として利用できるかを確かめるという国家の利益を優先した思惑が隠されていた。
まとめ
米国の核使用検討は、スライム災害による人類滅亡を防ぐという大義名分のもとで進められた。しかしその裏では、日米両政府の政治的苦悩や、ダンジョンを核実験および廃棄物処理場として利用しようとする非情な国家戦略が交錯する、緊迫した事態であった。
日本政府の避難計画
本作における日本政府の避難計画は、横浜ダンジョンでのモンスター異常増殖と、それに伴うアメリカからの核兵器使用の通告という極秘の危機に対処するため、井部総理の苦渋の決断によって実行された。本稿では、その詳細な背景と計画の全貌について解説する。
アメリカの核使用通告とパニック回避の決断
・横浜ダンジョン内で指数関数的に増殖するマルチヘッデッドクリーナーを放置すれば、数日で日本が、やがては世界がスライムに覆い尽くされて人類が滅亡すると予測された。
・これを防ぐため、アメリカのハンドラー大統領はダンジョン内での超小型戦術核の使用を決断し、日本の井部総理に通告した。
・井部総理はアメリカに対し、19日の18時までは最終手段を行使しないという約束を取り付けたが、万が一に備えて横浜中心部の住民を避難させる必要に迫られた。
・しかし、明日までに日本が滅びる、横浜で核兵器が使われるという事実をそのまま公表すれば、未曾有のパニックや暴動が起こり社会が崩壊することは明白であったため、政府は事実を完全に伏せたまま強制避難を進める決断を下した。
大規模な不発弾処理という偽装
・災害対策基本法などを適用しようにも目に見える災害が存在しないため、内閣情報官の村北の提案により、自衛隊の協力を得て大規模な不発弾処理を名目として避難を正当化するカバーストーリーが採用された。
・設定された警戒区域は、桜木町駅を中心とする半径1.2キロメートルという、通常の不発弾処理(通常は数百メートル程度)では前代未聞の広大なものであった。
・これにより、みなとみらい地区の大半や関内の中心部、伊勢佐木町、馬車道周辺などを含む横浜のど真ん中から、秘密裏かつ強制的に住民を退去させることになった。
徹底した現場封鎖と広がる疑念
・この異例ずくめの避難計画に対し、マスコミの現場取材は完全に禁止された。
・これに対して新聞記者たちは、知る権利の侵害だ、何か隠したいことがあるのではないかと激怒した。
・さらに、事前の調査や自治体との協議を飛ばして突然発表されたことや、1.2キロメートルという異常な避難範囲から、ネットの匿名掲示板でも疑念が噴出した。
・ネット上では、本当に不発弾なのか、テロリストの爆弾や原爆ではないか、ダンジョンのモンスターが原因ではないかといった憶測が飛び交い、半ばエンターテインメント化しつつも不穏な空気が広がっていった。
井部総理の政治的苦悩と覚悟
・この計画の裏で、井部総理は自国の領土内で他国が核を使用するかもしれないという事態を受け入れざるを得ない現実と、国民に嘘をつく重圧に深く苦悩していた。
・議会を招集して議論すれば反対意見が噴出して時間を浪費するだけであり、事態の解決には間に合わないという議会制民主主義の欠点を痛感した。
・それでも彼は、施政者として短期的な評価や後からの激しい非難を甘受し、国民の命と財産を守るという結果を出すために、泥をかぶる覚悟でこの強権的な避難計画を推し進めた。
まとめ
このように、日本政府の避難計画は、モンスターの増殖と核兵器使用という未曾有の危機から国民を守るための強権的な措置であった。パニックを防ぐための情報隠蔽や偽装工作の裏には、短期的批判を甘受してでも最悪の事態を回避しようとする、施政者としての重い覚悟と苦悩が存在していたのである。
界面活性剤の有効性
本作における界面活性剤の有効性は、スライムに対する画期的な対抗手段として描かれると同時に、ダンジョンの物理法則が人間の意識によって形作られている可能性を示す重要な要素となっている。本稿では、その実験の経緯と実戦での活用、そして有効性の真の理由について解説する。
各種界面活性剤の実験と結果
・横浜ダンジョンでのスライム大量発生に対抗するため、芳村と三好は代々木ダンジョン一層で様々な界面活性剤のスライムへの有効性を総当たりで実験した。
・陰イオン(アニオン)タイプ:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどを試したが、スライムは身を震わせるだけで効果はなかった。
・非イオン(ノニオン)タイプ:殺精子剤から抽出したメンフェゴールや、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどを試したが、目に見える変化はなかった。
・両性タイプ:アミノ酸系、ベタイン系、アミンオキシド系もすべて効果がなかった。
・陽イオン(カチオン)タイプ:マキロンの主成分である塩化ベンゼトニウムを噴霧したところ、わずか0.3ミリリットルでスライムがコアを残して爆散するという劇的な効果を示した。
化学的作用機序の矛盾
・塩化ベンゼトニウムが絶大な効果を示した一方で、抗微生物スペクトルや作用機序、主な副作用までほぼ同じである塩化ベンザルコニウムを試したところ、スライムには全く効果がなかった。
・タンパク質の変性作用や細胞膜の破壊といった化学的な作用機序(界面自由エネルギーの低下など)では、このごくわずかな成分の違いで劇的な効果の差が生まれる理由を説明することは不可能であった。
有効性の真の理由
・この矛盾から、二人は化学的な作用ではなく人間の意識が結果を引き起こしたという仮説に辿り着いた。
・芳村たちが初めてダンジョンで塩化ベンゼトニウムを使った際、あちこちにいるスライムをばい菌のようだと感じ、殺菌消毒液であるマキロン(塩化ベンゼトニウム)なら効くはずだと強くイメージした。
・つまり、ダンジョンのシステム(デミウルゴス)が人類の集合的無意識や知識を参照しており、探索者のこれが弱点だという強い認識が、そのままダンジョンのルール(モンスターのプロパティ)として書き込まれた結果、塩化ベンゼトニウムだけが唯一の弱点になったと推測されたのである。
横浜クライシスでの実戦投入
・この発見は、無限増殖するマルチヘッデッドクリーナーと、その盾となる数万匹のスライムに対する決定的な切り札となった。
・芳村と三好は、塩化ベンゼトニウム溶液をエイリアンのよだれと称し、それを射出する電動水鉄砲マキロガンや、溶液を染み込ませた耐スライムスーツを開発した。
・これを装備した芳村やサイモンチーム、自衛隊員たちは、物理攻撃や通常兵器が通用しない密集したスライムの壁を、触れるだけで一瞬にして弾け飛ばしながら無傷で進軍することが可能になった。
まとめ
このように、界面活性剤の実験はスライム攻略の鍵となっただけでなく、ダンジョンと人間の意識の繋がりを示唆する重要な発見となった。この発見がなければ、人類滅亡の危機を救うための道を切り開くことはできなかったと言える。
さまよえる館作戦
本作におけるさまよえる館作戦は、横浜ダンジョンで無限増殖を続けるマルチヘッデッドクリーナーと、その盾となる無数のスライムに対抗するため、芳村が考案した起死回生の秘策である。本稿では、その作戦の詳細と結末について解説する。
さまよえる館の出現条件と消失現象
・さまよえる館は、同じ種類のモンスターを約373匹倒すことで出現するという条件を持っている。
・芳村は過去の経験から、館が出現する際にはその生成に膨大なDファクターが消費され、結果として周辺の広範囲にいるモンスターが還元されて一瞬で消失する現象が起こることに目をつけた。
・横浜の地下2階にいる大量のモンスターを一つ一つ全滅させるのは不可能であったが、同種のスライムなどを373匹だけ倒して館を呼び出せば、残りのモンスターも道連れにして消滅させられると考えたのである。
自衛隊やDADの攻撃を利用した隠蔽
・芳村が懸念したのは、自分(ファントム)が館を出現させて事態を解決した事実が公になり、不必要に目立ってしまうことであった。
・しかし、自衛隊やDAD(サイモンチーム)の主要な攻撃手段は、火炎放射器や焼夷弾、魔法などの広範囲攻撃である。
・彼らがまとめて派手な攻撃を行っている最中に、芳村がこっそり条件を満たして館を出現させれば、他の探索者たちは自分たちの大規模攻撃によって373匹倒した結果、偶然館が出現してモンスターが消えたと勘違いしてくれるはずだと推測した。
・そして、自身の介入を隠蔽するカモフラージュ作戦を立てたのである。
ファルコンの新兵器と作戦の決行
・事態の終盤、ファルコンインダストリーがリトル・サンと呼ばれる新兵器(実際は超小型戦術核)を投入した。
・芳村はその爆発範囲を計算し、それだけでは全体の7分の1程度のクリーナーしか駆除できず、分裂によるカタストロフは防げないと判断した。
・そこで芳村は、新兵器の爆発に合わせて、爆発範囲から少し離れた場所で自ら極炎魔法インフェルノを放って館を出現させ、すべては新兵器の効果だったと偽装しながら事態を収拾しようと単独で動き出した。
作戦の結末と予期せぬ奇跡
・最終的に、芳村が作戦を完遂する前にアメリカの核兵器が起爆してしまった。
・しかし、核爆発の莫大なエネルギーと、Dファクターの生産工場となっていた大量のスライムが一気にDファクターへと還元された。
・その結果、ダンジョンのシステム(デミウルゴス)によって芳村たち現場の人間は量子レベルで分解・再構成され、代々木ダンジョンの三十一層へと転移させられたのである。
・結果として、核の放射線もモンスターも跡形もなく消滅し、芳村の想定した館作戦とは異なる形ではあったが、人類滅亡の危機は奇跡的に回避されることとなった。
まとめ
このように、さまよえる館作戦は芳村のダンジョンシステムに対する深い理解と知略を示すものであり、絶望的な状況を打破するための極秘の切り札として描かれている。
闇の神殿への転移
本作における闇の神殿への転移は、横浜ダンジョンでのモンスター増殖と核爆発の危機が、予想外の代々木ダンジョン深層への強制転移という形で決着を迎える重要な転換点である。本稿では、その詳細な現象と、転移先での展開について解説する。
核起爆と漆黒の空間への強制転移
・アメリカ国防総省の裏の意図により横浜地下二階に仕掛けられた超小型戦術核であるリトル・サンが起爆した瞬間、現場に残っていた芳村と三好、サイモンチーム、そして自衛隊のチーム1は白い閃光に包まれた。
・彼らが次に意識を取り戻したとき、そこは光を吸収するような粘りつく闇に覆われた未知の空間であった。
・転移先で各チームは分断され、芳村たちは神殿風の部屋、自衛隊は巨大な空洞、サイモンチームは迷路のような洞窟へと飛ばされていた。
転移の真相
・この不可解な転移の真相は、後に芳村と三好が秘密の花園と呼ばれる心象風景で出会ったセオドア=ナナセ=タイラー博士(の情報体)によって明かされる。
・核爆発の莫大なエネルギーと、Dファクターの生産工場として大量に存在していたスライムなどのモンスターが一気にDファクターへと還元された。
・ダンジョンのシステム(デミウルゴス)はそれを利用して彼らを量子レベルで分解し、最も近いダンジョンの未踏破フロア(代々木三十一層)へと転送・再構成したのである。
・この奇跡的な処理により、横浜ダンジョンはモンスターだけでなく、放射能汚染や爆発の被害も一切残さずにもぬけの殻となった。
闇の神殿での死闘とファントムの介入
・飛ばされた先である闇の神殿は、地獄の大侯爵であるキメイエスが支配する領域であった。
・自衛隊の部隊は、キマイラのような姿をしたキメイエスと、エバンスのボスとして知られる俊敏なデスマンティスの群れに襲撃され、犠牲者を出す絶体絶命の窮地に陥った。
・そこへ、ファントムの衣装をまとった芳村が介入した。
・芳村は圧倒的な力でデスマンティスを処理し、欠損の重傷を負っていた君津伊織二尉を〈超回復〉オーブで瞬時に治療した後、彼女の〈磁界操作〉スキルと連携してキメイエスを討伐した。
門の鍵の入手と生還への道
・キメイエス討伐後、芳村はドロップアイテムである門の鍵(32)を伊織に託してその場から姿を消した。
・その後、自衛隊と合流したサイモンチームは、この鍵を用いて広場にある塔の扉を開くことに成功した。
・塔の内部の階段を上った通信兵が、代々木ダンジョン三十層に構築されていた自衛隊の通信基地と連絡を取ることに成功した。
・これにより、彼らが飛ばされた場所が代々木三十一層であることが確定するとともに、全員の生還の目処が立った。
まとめ
このように、闇の神殿への転移は、横浜ダンジョンにおける絶望的な危機を、ダンジョンのシステムによる想定外の介入によって解決へ導く奇跡的な現象であった。同時に、代々木ダンジョン深層の攻略と新たな事実の発見へと繋がる、物語の重要なターニングポイントとなっている。
登場キャラクター
アメリカ合衆国政府・軍関係者
アルバート=ハンドラー
アメリカ合衆国の大統領である。人口密集地である横浜での核使用に強い抵抗感を示す。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国・大統領
・物語内での具体的な行動や成果
ダルトンから横浜ダンジョンで発生した異常事態について報告を受けた。人類滅亡規模の危機予測を受け、条件付きで核使用準備の命令へ署名した。日本の井部総理に核使用の通告を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
核使用の最終的な権限を自らに限定した。
ニック=マルベリー
アメリカ合衆国大統領の首席補佐官である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国・首席補佐官
・物語内での具体的な行動や成果
ハンドラー大統領とともに、ダルトンからの報告を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
ジャン=R=ダルトン
アメリカ合衆国国家安全保障担当補佐官である。事態収拾と国家の利益を優先して冷徹に行動する。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国国家安全保障会議(NSC)・国家安全保障担当補佐官
・物語内での具体的な行動や成果
横浜ダンジョンでのスライム増殖による人類滅亡の危機予測を大統領へ報告した。超小型戦術核W54の捜索を命じ、核搬送作戦を開始させた。チームサイモンには兵器の正体を偽って伝えるよう指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ダンジョン内での核実験や核廃棄物投棄の検証という裏の目的を持っていた。
マーティネス
アメリカ軍の中将であり、横田基地の司令官である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ軍・中将(横田エアベース司令官)
・物語内での具体的な行動や成果
サイモンたちへ、無理をして横浜の危機を解決する必要はないと命令を伝えた。ジョン=スミスと名乗る男とともにサイモンの適性を見極めるための発言を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
核兵器が運搬されることを察知していた。
日本政府関係者
内谷
国家安全保障局長である。深夜の呼び出しにも冷静に対応する。
・所属組織、地位や役職
日本政府・国家安全保障局長
・物語内での具体的な行動や成果
深夜に井部総理の私邸へ呼び出された。ダンジョン対策基本法の適用について疑問を呈した。内閣危機管理監である橋高への連絡を指示された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
井部
日本の内閣総理大臣である。国の存亡と国民の安全を守るための苦渋の決断を下す。
・所属組織、地位や役職
日本政府・内閣総理大臣
・物語内での具体的な行動や成果
アメリカ大統領から横浜ダンジョンへの核使用通告を受けた。パニックを防ぐため、事実を伏せたまま不発弾処理を名目とした強制避難計画を実行した。緊急事態大臣会合を招集した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
最終的に横浜での被害は確認されず、事態は収束した。
村北
内閣情報官である。インテリジェンスの専門家としての助言を行う。
・所属組織、地位や役職
日本政府・内閣情報官
・物語内での具体的な行動や成果
深夜に井部総理の私邸へ呼び出された。不発弾処理を名目として避難を正当化するカバーストーリーを提案した。橋高内閣危機管理監への連絡役を引き受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
川野
外相である。他国による自国領土内での核使用に強く反発する。
・所属組織、地位や役職
日本政府・外相
・物語内での具体的な行動や成果
緊急事態大臣会合に招集された。アメリカの核使用検討について、戦争同然であると激しく抗議した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
屋岩
防衛相である。突然の不発弾処理騒ぎに疑問を抱いていた。
・所属組織、地位や役職
日本政府・防衛相
・物語内での具体的な行動や成果
緊急事態大臣会合に招集された。不発弾処理が通常の段取りを飛ばして進められていることに関する報告を受けていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
本山
国家公安委員長である。
・所属組織、地位や役職
日本政府・国家公安委員長
・物語内での具体的な行動や成果
緊急事態大臣会合に招集された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
須賀
官房長官である。
・所属組織、地位や役職
日本政府・官房長官
・物語内での具体的な行動や成果
緊急事態大臣会合に招集された。与党幹部への根回しを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
自衛隊・防衛省
鋼博英
自衛隊のダンジョン攻略群に所属する一曹である。百戦錬磨の隊員として部隊を支える。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群・一曹
・物語内での具体的な行動や成果
習志野駐屯地から横浜へ向かう車内で作戦内容を説明した。水魔法を用いてキマイラへ先制攻撃を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
代々木ダンジョン三十一層へ転移し、伊織とともに部隊の指揮を執った。
君津伊織
自衛隊のダンジョン攻略群のチーム1を率いる二尉である。磁界を操る強力なスキルを持つ。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群(チーム1)・隊長(二尉)
・物語内での具体的な行動や成果
専用弾頭を用いて巨大騎馬戦士を攻撃した。デスマンティスに襲撃されて右腕と右足を失ったが、芳村から超回復オーブを与えられて再生した。芳村と協力してキメイエスを討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
代々木ダンジョン三十二層への門の鍵を芳村から受け取った。
海馬泰斗
自衛隊のダンジョン攻略群に所属する三曹である。お調子者だが真摯に任務に取り組む。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群・三曹
・物語内での具体的な行動や成果
単独で網を持ってスライムの群れに突入したが、まとわりつかれて撤退した。漆原が持ち込んだ試作焼夷手榴弾を使用してクリーナーを焼き尽くした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
塔の壁面に門の鍵を差し込む穴を発見した。
沢渡芳信
自衛隊のダンジョン攻略群に所属する二曹である。堅実な行動で前衛を担う。
・所属組織、地位や役職
陸上自衛隊ダンジョン攻略群・二曹
・物語内での具体的な行動や成果
盾を用いてスライムを弾き飛ばし、クリーナーの捕獲を試みたが分裂を招いて撤退した。デスマンティスの攻撃から鋼をかばって突き飛ばした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
通信兵とともに上階の調査へ向かった。
漆原清麻呂
防衛装備庁の次世代装備研究所に所属する技官である。ザ・シックスという異名を持つ。
・所属組織、地位や役職
防衛装備庁次世代装備研究所ダンジョン装備研究部・技官
・物語内での具体的な行動や成果
現場に試作焼夷手榴弾やエネルギー兵器を持ち込んだ。マキロガンを見て民間企業の開発力を絶賛した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
寺沢
自衛隊の二佐である。部下の安否を強く案じている。
・所属組織、地位や役職
自衛隊・二佐
・物語内での具体的な行動や成果
JDAの斎賀と行方不明者の情報を共有する協定を結んだ。君津二尉のチームから代々木ダンジョン三十一層にいるという連絡を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
Dパワーズ
芳村圭吾
Dパワーズのメンバーであり、未知のスキルを用いて事態を解決へと導く。
・所属組織、地位や役職
合同会社Dパワーズ・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
耐スライムスーツを着て横浜地下二階に突入し、クリーナーを捕獲した。代々木三十一層でファントムの姿となり、君津伊織を超回復オーブで治療してキメイエスを討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
タイラー博士の幻影からデミウルゴスの目的について聞かされた。
三好梓
Dパワーズの代表であり、情報分析とアイテム開発を担当する。芳村をサポートする。
・所属組織、地位や役職
合同会社Dパワーズ・代表
・物語内での具体的な行動や成果
界面活性剤の実験からスライムの弱点を発見し、耐スライムスーツとマキロガンを開発した。核爆弾の作動直前に横浜地下二階へ飛び込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
門の鍵を鑑定し、自衛隊に情報を提供した。
アルスルズ(カヴァス、アイスレム、グレイシック、ドゥルトウィン、グラス、グレイサット)
三好に召喚されたヘルハウンドたちである。
・所属組織、地位や役職
Dパワーズ・召喚獣
・物語内での具体的な行動や成果
闇の神殿での戦闘において芳村と三好を護衛した。入れ替わりの能力を利用して横浜の鳴瀬へメモリーカードを届けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
ロザリオ
魂の器にベニトアイトを差し込んだことで出現した小鳥である。
・所属組織、地位や役職
不明(芳村に命名された小鳥)
・物語内での具体的な行動や成果
塔の蔦に隠されたドアノブを発見し、芳村たちを秘密の花園へと導いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
キメイエスの隠されたものを見つける力を受け継いでいると推測されている。
チームサイモン(DAD)
サイモン=ガーシュウィン
アメリカのトップ探索者チームのリーダーである。軍人としての誇りを持ち、理不尽な命令に怒りを見せる。
・所属組織、地位や役職
DAD(アメリカダンジョン省)・チームリーダー
・物語内での具体的な行動や成果
横浜での作戦に参加し、マキロガンを用いてスライムを処理した。マーティネス中将からの命令に憤った。核爆発の事実を知り、自衛隊を退避させるため地下二階へ突入した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
代々木三十一層へ転移し、芳村がファントムであることを疑いつつも確証を得られなかった。
ナタリー=スチュワート
サイモンチームのメンバーであり、強力な火魔法を操る。
・所属組織、地位や役職
DAD・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
横浜地下二階で炎を用いてサイモンたちを援護した。代々木三十一層へ転移し、明かりを確保した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
ジョシュア=リッチ
サイモンチームのメンバーであり、斥候の役割を担う。
・所属組織、地位や役職
DAD・斥候
・物語内での具体的な行動や成果
サイモンとともに横浜地下二階へ突入した。代々木三十一層で周辺を探索し、戦闘音を発見した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
メイソン=ガルシア
サイモンチームのメンバーである。
・所属組織、地位や役職
DAD・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
横浜地下二階でマキロガンを両手で撃ちながらスライムを処理した。代々木三十一層へ転移した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
キャサリン=ミッチェル(キャシー)
サイモンチームのバックアップ要員である。
・所属組織、地位や役職
DAD・バックアップ要員
・物語内での具体的な行動や成果
ミーティングに参加し、熱兵器に関する知識を提供した。Dカードチェッカーの組み立て作業を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
チームサイモン
サイモンが率いるアメリカのトップ探索者チームである。
・所属組織、地位や役職
DAD・探索者部隊
・物語内での具体的な行動や成果
横浜でクリーナー捕獲作戦に参加した。代々木三十一層へ転移し、三十二層で未踏領域の確保に動いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
ファルコンインダストリー
ジョン=スミス
ファルコンインダストリーの職員を名乗る男である。裏の目的のために冷酷に行動する。
・所属組織、地位や役職
国防総省の実働部隊(ファルコン職員に偽装)
・物語内での具体的な行動や成果
リトル・サンと称して超小型戦術核を横浜地下二階へ設置した。サイモンたちをシェルターへ避難させようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
JDA(日本ダンジョン協会)
鳴瀬美晴
JDAの専任管理監である。芳村たちの行動に驚かされつつも実務をこなす。
・所属組織、地位や役職
JDAダンジョン管理課・専任管理監
・物語内での具体的な行動や成果
横浜ダンジョンで芳村たちと合流し、状況を確認した。ファルコンの職員によってシェルターへ避難させられた。アルスルズを介して芳村たちからの連絡を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
斎藤涼子からファントムの正体が芳村であると告げられた。
斎賀
JDAダンジョン管理課の課長である。行方不明者の情報を集める。
・所属組織、地位や役職
JDAダンジョン管理課・課長
・物語内での具体的な行動や成果
WDARLを確認し、サイモンや伊織が生存していることを推測した。寺沢と行方不明者の情報を共有する協定を結んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
マスコミ関係者
吉田陽生
ダンジョン探索番組の制作者である。スクープを追い求める。
・所属組織、地位や役職
中央TV・番組制作者
・物語内での具体的な行動や成果
パイロットフィルムを石塚に見せた。ラーテルやフランス軍が映っている映像の取り扱いに悩んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ファントムの正体を声紋分析で探ろうとした。
石塚
番組制作に関わる人物である。
・所属組織、地位や役職
マスコミ関係者
・物語内での具体的な行動や成果
仮面の男を番組の目玉にしようと提案した。大手企業がスポンサーに名乗りを上げたことを吉田に伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
城
吉田の番組スタッフである。
・所属組織、地位や役職
マスコミ関係者
・物語内での具体的な行動や成果
国際報道の知り合いから、映像に映っている人物が危険な傭兵や特殊部隊であることを聞き、吉田へ報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
芸能界・その他
斎藤涼子
女優であり探索者である。芳村を師匠と仰ぐ。
・所属組織、地位や役職
女優・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズの事務所前で鳴瀬と遭遇した。WDARLを確認し、芳村が生存していることと、彼がランキング一位のファントムであることを鳴瀬に伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
企業から番組出演を強く求められている。
セオドア=ナナセ=タイラー
ダンジョンの研究者であったが、現在は量子レベルで再構成された情報体である。
・所属組織、地位や役職
情報体(元科学者)
・物語内での具体的な行動や成果
秘密の花園で芳村たちと対話した。三年前の事故の真相や、デミウルゴスの目的について自身の推測を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
メアリー・レノックス(仮)
記憶から作られた心象風景に現れた少女の幻影である。
・所属組織、地位や役職
幻影
・物語内での具体的な行動や成果
荒れ果てた庭で土を耕す作業をしていた。黒い光に変化し、タイラー博士の姿となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特記事項はない。
展開まとめ
序章 プロローグ
アメリカ合衆国 ワシントンD.C.
スライム災害への核使用提言
アメリカ合衆国ワシントンD.C.のオーバルオフィスでは、アルバート=ハンドラー大統領が、国家安全保障担当補佐官ジャン=R=ダルトンから横浜ダンジョンで発生した異常事態について報告を受けていた。ファルコンから提出された分析では、クリーナーを完全に消滅させるには瞬時に蒸発させるほどの熱量が必要であり、通常兵器では破片となった個体が拡散して被害が拡大する危険があると結論付けられていた。そのため、現状では核兵器以外に有効な手段は存在しないと判断されていた。
しかしハンドラーは、横浜や首都圏の人口規模を理由に核使用へ強い抵抗感を示した。広島への原爆投下を承認したトルーマンを引き合いに出し、自らが同様の判断を下すことへの葛藤を抱いていた。
人類滅亡規模の危機予測
ダルトンは、この事件が単なる局地的問題ではなく、人類滅亡に直結する危機であると説明した。分析によれば、放置した場合には二十三日午後十一時までに二千四百億匹を超えるスライムが発生し、日本の首都圏全域を覆い尽くすと予測されていた。
さらに二十五日には日本全土が七兆匹規模のスライムで埋め尽くされ、その数日後には地球全体へ拡散すると計算されていた。分裂増殖を繰り返すスライムは、短期間で地球規模へ達する危険性を持っており、ダルトンは二十八日には人類の命運が尽きる可能性すらあると断言した。
ハンドラーは非現実的な数字に動揺しつつも、備えの必要性だけは認めざるを得なかった。
限定条件付きでの核使用準備
ダルトンは、横浜程度の放射能汚染で済むならば、人類滅亡より遥かに軽微な被害であると主張した。一方のハンドラーは、横浜を火の海にすることを避けるため、あくまでダンジョン内部で決着を付ける方針を示した。
その上で、使用可能な戦術核の存在を確認した。かつて運用されていたSADMは既に退役していたものの、ダルトンは調査済みであるかのように即座に対応を請け負った。
最終的にハンドラーは、核使用は自らの許可がある場合、あるいはクリーナー亜種がダンジョン外でも分裂し始めた瞬間に限定すると条件を付け、準備命令へ署名した。
極秘核兵器捜索と出力計算
オーバルオフィスを出たダルトンは、即座に関係機関へ連絡を開始した。現役核弾頭では威力が大き過ぎるため、退役済みの超小型戦術核W54の捜索を命じた。沖縄に残存している可能性や研究施設保管分まで含め、極秘裏に探索が進められた。
また、ダンジョン内部の広さを基準に必要出力の計算も行われた。六十メートル×百五十メートル、高さ三メートルの空間を火球で満たすには、TNT換算で十トン弱の出力で足りると判明した。これはW54の最小出力と一致しており、ダルトンは運命的だと満足していた。
必要なのは爆風ではなく、スライムを一瞬で蒸発させる熱線のみであったため、多少余裕を持たせた設定で運用する方針が決定された。
作戦実行部隊への不信
実行部隊について部下からチームサイモンの名が挙がったが、ダルトンは彼らを信用していなかった。DAD所属後、彼らは軍人としてよりも「正義の味方」のように振る舞う傾向が強く、自律的に命令を判断する姿勢を危険視していた。
ダルトンは、命令へ疑問を抱かず従う部隊こそ必要だと考え、DoD側の実働部隊をファルコン支援要員として潜入させる方針を決定した。
さらにチームサイモンには、兵器の正体をサーメート利用の新型兵器だと偽って伝えるよう指示した。核兵器である事実は、妨害不能な段階まで伏せられることになった。
核搬送作戦の開始
ダルトンは、戦術核を横田基地経由で現場へ空輸するよう命じた。作戦実行まで二十四時間以内という厳しい制限時間が設定され、関係者たちは即座に行動を開始した。
時計を確認したダルトンは、日本時間で十七日二十二時という時刻を踏まえ、作戦準備は十分間に合うと判断し、満足げに頷いていた。
第07章 横浜クライシス
二〇一九年一月十八日(金)
深夜に始まった国家的危機対応
午前一時三十分、井部総理は内谷国家安全保障局長を極秘裏に総理私邸へ呼び出した。そこで井部は、アメリカが横浜ダンジョン事案を人類滅亡級危機と認識し、最悪の場合には核使用も辞さない方針であると明かした。
アメリカ側は、横浜ダンジョンの異常増殖を世界的感染災害に等しい脅威と判断しており、日本政府の同意がなくとも独自行動を取る可能性を示唆していた。井部は、十九日十八時までは核使用を行わない約束を取り付ける一方、横浜市民避難を正当化するため、「不発弾処理」名目による大規模避難計画を進め始めた。
極秘避難計画と政治的苦悩
井部たちは、真実を公表すれば社会秩序が崩壊しかねないと判断し、情報統制を維持したまま対応を進めていた。横浜市長との調整、自衛隊との連携、安全保障会議の招集準備が秘密裏に進められ、政治家たちは国家存亡と民主主義の板挟みに苦悩していた。
一方で、多くの政治家は責任回避を優先し、JDAやアメリカへ責任転嫁する発言を繰り返していた。井部は、現場で命を懸けている者たちと政治家たちの温度差へ強い苛立ちを抱いていた。
サイモンたちの対策模索
代々木ダンジョン十八層では、サイモン率いるDADチームが緊急招集されていた。彼らは、通常兵器ではクリーナーへ有効打を与えられない現実に直面し、熱兵器中心の対策を検討していた。
火炎放射器、焼夷手榴弾、サーモバリック兵器など様々な候補が挙がったものの、いずれも決定打にはならず、サイモンたちは可能な限り熱兵器を集める方針を固めていた。
芳村と三好のスライム研究
芳村と三好は、横浜で必要になると予想されるスライム対策技術を公開するため、代々木ダンジョンで界面活性剤実験を行っていた。
各種薬剤を試した結果、塩化ベンゼトニウムだけがスライムへ劇的な効果を示した。しかし類似薬品には全く効果がなく、二人は「探索者の認識やイメージがモンスターの弱点を書き換えているのではないか」という仮説へ辿り着いた。
この考察はさらに発展し、ダンジョンそのものが人類の知識体系や集合的無意識へ適応している可能性、さらにはDファクター自体を直接操作する未来技術構想へ繋がっていった。
横浜到着と地下二階調査
芳村と三好は横浜へ到着し、工事中だった津々庵内部を臨時研究拠点として利用しながら、マルチヘッデッドクリーナーの調査を開始した。
地下二階では、巨大な牙付きの口を持つクリーナーや大量のスライムが確認された。さらにスライムには世代番号が存在し、番号違い個体は別モンスター扱いされることも判明した。これにより、「さまよえる館」を利用した大量消滅作戦の難易度が大幅に上昇していた。
また、地下二階では鉱物ドロップも発生しており、この階層が代々木深層に相当する危険領域である可能性も浮上した。
耐スライム装備の開発
三好は、塩化ベンゼトニウム溶液を染み込ませた「耐スライムスーツ」と、水鉄砲型兵器「マキロガン」を開発していた。
芳村はそのDIY感へ呆れながらも協力し、二人はスライム群を突破しながらクリーナー捕獲へ成功した。その過程で、クリーナーは地上へ出てもスライムを召喚すること、さらに「シャドウ個体」という特殊分裂形態が存在することも判明した。
再生条件の解明
芳村と三好は、クリーナー再生実験を繰り返した結果、「七センチ以下へ細分化された断片は再生しない」という重大発見へ到達した。
さらにガソリン火炎による長時間焼却で完全消滅することも確認され、クリーナー攻略法が徐々に確立されていった。しかし地下二階全域を焼却する現実性は低く、依然として決定的解決策には至っていなかった。
自衛隊の苦戦
習志野駐屯地から出動した自衛隊は、火器使用制限とスライム大量発生に苦しめられていた。通常兵器では破片から再生が起こるため、重火器も使えず、現場は盾と火炎放射器による旧式戦術を強いられていた。
海馬や沢渡たちはクリーナー捕獲を試みたものの、増殖とスライム召喚により現場は混乱し、状況は悪化していた。
Dパワーズ装備の実戦投入
その後、美晴の判断でDパワーズが正式に自衛隊へ協力することとなった。芳村と三好は耐スライムスーツとマキロガンを実演し、その圧倒的なスライム処理能力に現場は驚愕した。
漆原清麻呂率いるD研は、その技術を絶賛し、試作焼夷手榴弾と組み合わせることでクリーナー撃破にも成功した。しかし焼夷手榴弾は十二発しか存在せず、既に数千匹規模へ膨れ上がった敵を殲滅するには圧倒的に不足していた。
アメリカ側の真意
横田基地では、サイモンがマーティネス中将から「無理に解決しなくていい」と告げられ、激怒していた。
しかしその裏では、「ジョン=スミス」と名乗る男が、ダンジョン内部で核実験を実施する計画を進めていた。彼らの真の目的は、ダンジョン内核爆発が外部監視網へ探知されるか、さらに核廃棄物処理へ利用可能かを検証することであり、横浜事案はその実験機会として利用されていた。
スミスは、翌日十八時に投入予定の新兵器「リトル・サン」をサイモンへ説明した。それは純粋熱量のみで広範囲を焼却する兵器であり、地下二階全域を十数発で焼き払える性能を持っていた。
しかし同時に、それはダンジョン内核実験へ繋がる極めて危険な計画でもあった。
二〇一九年一月十九日(土)
静まり返った地下二階
十九日早朝、芳村は地下二階の異様な静けさに違和感を覚えていた。
前日まで自衛隊は、漆原清麻呂が持ち込んだ急造粉砕装置を用いて、クリーナーを七センチ以下へ細断する実験を続けていた。しかし処理速度は遅く、実戦向きではなかった。
その頃には、地下二階には一万四千匹以上のクリーナーと十万匹以上のスライムが密集しており、耐スライムスーツなしでは歩行すら困難な状態となっていた。芳村は不穏な変化を察知し、三好へ情報収集を依頼した。
ファルコンの新兵器情報
三好は鳴瀬から、自衛隊が活動を縮小している理由を聞き出して戻ってきた。
ファルコン側が投入する「決定打」となる新兵器が存在し、自衛隊はその到着を待ちながら休息と研究へ移行しているというのである。しかし、その兵器の到着予定は十八時前とされており、あまりにも綱渡りな時間設定だった。
芳村は、人類滅亡級危機への対応としては異常なほど余裕のない計画だと違和感を抱いていた。
上層部の不自然な指示
一方、自衛隊側でも異変が起きていた。
伊織は上層部へ新兵器による解決見込みを報告したものの、返ってきたのは「十八時までに撤収しろ」という不可解な指示だった。さらに、その理由として「不発弾処理に伴う警戒区域設定」が説明された。
鋼は、作戦直前まで存在しなかった不発弾話が突然持ち上がったことに強い不信感を抱いていた。それでも伊織は、今は任務を果たすしかないと判断し、現場対応へ戻っていった。
スミスによる爆弾設置
夕刻、ついに新型爆弾が到着した。
しかし、受け取りに向かったジョシュアは、爆弾を持たずに戻ってきた。スミス自身が設置を担当すると主張したためだった。
爆弾は十八時十五分起爆に設定され、地下二階中央部付近へ設置されることになった。耐スライムスーツを着用したDADと自衛隊が進路を確保し、スミスは大量のスライムを踏み越えながら地下深部へ進んでいった。
芳村の違和感と館作戦
地下二階で待機していた芳村は、ファルコンの行動に強い疑問を抱いていた。
もし本当に決定打となる兵器が存在するなら、もっと早い段階で投入していれば状況悪化を防げたはずだからである。
芳村と三好は爆発範囲を計算した結果、一度の攻撃で焼却できるクリーナー数は全体の七分の一程度に過ぎないと分析した。これでは十九時の再分裂を止められず、カタストロフ回避には不十分だった。
そこで芳村は、自ら地下二階へ突入し、「さまよえる館」を出現させて大量消滅を誘発する作戦を決断した。
核兵器の発覚
爆弾設置後、ファルコン職員はサイモンたちへシェルター退避を要求した。
その際、「放射線」という言葉が漏れたことで、サイモンはようやく真実へ気付いた。ファルコンの新兵器とは、実際には小型戦術核だったのである。
職員は、最終的には横浜地下二階を核で浄化する計画だったと口を滑らせた。大型シェルターが用意されていた理由も、放射線対策だった。
サイモンは激怒し、即座に芳村たちへ警告を伝えるため地下へ突入した。三好もまた、芳村へ知らせるため、スーツすら着ないままスライムの海へ飛び込んでいった。
三好からの警告
地下二階では、三好がベンゼトスプラッシュでスライムを撃退しながら、必死に芳村へ念話を送り続けていた。
ようやく念話が繋がると、三好はファルコンの新兵器が核兵器だったことを伝えた。芳村は最初、「角」と聞き間違えるほど現実感を持てなかったが、真実を理解すると愕然とした。
しかし芳村は、地下二階から安全圏まで逃げ切れる時間は存在せず、横浜地下で核を爆発させるわけにはいかないと判断した。そして、自分が爆弾そのものを消滅させると決断した。
三好の異変
芳村が行動を決意した直後、三好から短い悲鳴が響いた。
芳村が呼びかけても返答はなく、三好は最後に「後、よろしく」とだけ残して念話を絶った。芳村は異変を察知したが、すでに立ち止まることはできなかった。
核爆発
その頃、スミスはシェルター内で薄い笑みを浮かべていた。
彼は、使用している兵器は旧式であり、遅延信管には一、二分程度の誤差があるかもしれないと呟いていた。その言葉には、現場へ残された者たちへの悪意が滲んでいた。
そして次の瞬間、地下二階は真白な閃光へ包まれた。
圧倒的な光がすべてを呑み込み、世界から音が消え失せた。やがて、その光景は深い闇へ沈んでいった。
第08章 闇の神殿
横浜壊滅回避後のJDA本部
センター試験への対応で人員が減っていたJDA本部ダンジョン管理課では、前日までの混乱が嘘のように静まり返っていた。美晴は斎賀に対し、横浜で発生した一連の出来事を報告した。核兵器使用の事実を知った三好が地下二階へ飛び込み、それを追ってサイモンや君津の隊も突入した経緯を説明した。自身はファルコン職員によって半ば強引にシェルターへ避難させられた状況を付け加えたのである。
しかし、起爆予定時刻を過ぎても爆発音や振動が発生することはなかった。十分後にシェルターが開放されると、地下二階からはクリーナーもスライムも完全に消失していた。放射線反応もなく、横浜地上部にも被害は及んでいなかったのである。ただし、君津隊の隊員、サイモンチーム、そして芳村と三好だけが行方不明となった。
WDARLによる生存確認
斎賀はWDARLを確認し、サイモンの順位が第三位、伊織が第十八位のまま残っている事実を把握した。このシステムでは死亡者の名前が消失するため、少なくとも彼らが生存している可能性は極めて高かった。芳村と三好の順位は不明であったが、同行者の生存から二人も生きていると判断されたのである。
さらに斎賀は寺沢へ連絡を入れ、自衛隊側と情報共有協定を結んだ。双方は行方不明者に関する情報を隠さず共有することで合意した。その後、美晴は以前メモリーカードを受け取った件を思い出し、芳村たちからの連絡に希望を見出してDパワーズ事務所へ向かった。
漆黒の空間で目覚めた芳村たち
芳村が意識を取り戻すと、周囲は完全な闇に包まれていた。そこはアルスルズ空間とは異なり、空気や匂いを伴った現実感のある空間であった。最後に思い出したのは、核爆発直前の状況と、警告のため飛び込んできた三好の姿であった。
やがて念話によって三好の声が届き、二人は互いの無事を確認した。慎重に光を灯したが、闇そのものが光を吸収しているかのように、ごく短い範囲しか照らすことができなかった。壁面には精緻な装飾が施されており、バティアン地下遺跡に似た雰囲気を持ちながらも、複雑な文化様式が混在していたのである。
二人は自分たちが異世界へ飛ばされたのか、あるいはダンジョン内部に転移したのか議論したが、明確な答えは得られなかった。それでも冗談を交わし続けることで、極限状況の緊張を和らげていた。
カヴァスたちの出現と休息
芳村はアルスルズ空間側の異常を疑い、カヴァスたちの安否を確認した。すると三好の足元からカヴァスたちが姿を現したのである。しかし、カヴァスはこの空間が自分たち側の領域ではないことを否定した。
状況分析を続けていた二人であったが、三好の空腹によって長時間食事を取っていなかったことを思い出した。芳村は軽口を叩きながらドリーを取り出し、正体不明の闇の中で一旦休息を取ることに決めた。
闇の中で目覚めた伊織たち
伊織が意識を取り戻すと、鋼をはじめとする隊員たちが周囲を探索していた。三好が地下二階へ飛び込んできた直後、世界は強烈な閃光に包まれ、次に気が付いた時には全員がこの闇の空間へ転移していたという。隊員たちはケミカルライトで最低限の視界を確保していたが、周囲は質量を持ったような重い闇に覆われていた。
さらに装備状況も深刻であった。横浜地下二階用の短時間作戦装備しか持ち込んでいなかったため、照明や食料、弾薬の全てが不足していたのである。それでも伊織は生きて帰ると宣言し、鋼へ周辺探索を命じた。鋼は敬礼してそれを受け入れ、自衛官もまた守るべき国民の一部だと返した。その言葉は伊織に強い安心感を与えた。
サイモンチームの状況
サイモンたちもまた、完全な闇の中で目を覚ましていた。ナタリーは掌に炎を灯し、サイモンと軽口を交わしながら互いの生存を確認した。ジョシュアとメイソンも無事であったが、長期行動用の装備はほとんど持ち合わせていなかった。
サイモンは、核の存在を知った後に三好を追って飛び込んだ直後、視界が真っ白になったことを思い返した。彼はこの現象が過去の「ザ・リング二十七人失踪事件」と関係している可能性を疑い始めたのである。しかし現実問題として、食料も水も極端に不足していた。生き残るには即座の行動が必要だと判断し、ジョシュアを斥候として探索へ向かわせた。
探索支援システムによる調査
伊織たちはESS(探索支援システム)を起動し、隊員の位置情報を利用して簡易マップを形成した。衛星通信などの外部ネットワークは完全に断絶されていたが、探索履歴を記録することで最低限の地図作成だけは可能であった。
しかし、周囲は自然洞窟に近い複雑な構造を持ち、分岐も極端に多かったのである。ケミカルライトを設置しながら進んでも全てのルートをカバーすることは不可能であり、彼らは深刻な物資不足と時間制限に追い詰められていった。
神殿の発見
探索を続ける沢渡たちは、重苦しい空気を紛らわせるように装備談義を交わしていた。その最中、沢渡が投げたケミカルライトによって、暗闇の中に奇妙な装飾が浮かび上がった。ヘッドランプで照らしてみると、そこには精緻な文様で埋め尽くされた梁と天井が存在していたのである。彼らが歩いていた場所は単なる洞窟ではなく、巨大な神殿構造物の一部であった。
鍵穴と塔の開放
伊織たちは塔の壁面に存在する六角形の穴へ、神殿《S》で入手した鍵を差し込んだ。鍵は異様なほど奥まで吸い込まれるように入り込み、海馬は向きを誤った場合に二度と抜けなくなる危険を警戒した。
最終的に伊織が半ば強引に鍵を押し込むと、塔全体が地鳴りと共に振動を始めたのである。やがて壁面が内側から崩壊するように崩れ、内部へ続く空間が出現した。そこには上下へ伸びる階段が存在していた。代々木三十一層の可能性を察した伊織は、沢渡と通信兵を上階へ向かわせた。自衛隊は三十層入口に通信拠点を設置していたため、通信が繋がる可能性に賭けたのである。
誰もいない塔の広場
一方、芳村と三好が神殿から戻ると、塔の広場には誰の姿もなかった。〈生命探知〉にも反応はなく、ゲートを抜けた瞬間に杭の文字も消灯した。二人はここがすでに再利用可能状態へ戻ったのではないかと推測し、塔内部の階段構造を確認した。
上り階段と下り階段の両方が存在していたことから、芳村は伊織たちが地下方向へ進んだ可能性を考慮した。しかし、すぐに追跡するのではなく、まずは塔の裏側で野営準備を整えることにした。ドリーは目立ち過ぎるため使用を避け、テントを設営して休息を取る方針を選択したのである。
横浜との通信成功
テント内で食事を取りながら、芳村と三好は戦闘結果について整理した。その最中、カヴァスが再び現れ、首にマイクロSDカードを装着していた。カードには美晴と斎藤涼子の映像が収録されており、横浜側との通信が成立したことが判明したのである。
横浜ダンジョン自体には被害が発生しておらず、行方不明者として民間二名、自衛隊十二名、DAD四名が認識されている状況が伝えられた。しかし芳村は、自分が転移していないことになっている現状で全員と帰還すれば矛盾が発生すると気付いた。自身の存在については今後も一切触れないよう三好へ指示し、彼女もそれを了承した。
ベニトアイトと魂の器
その後、三好は以前入手したベニトアイトと魂の器の存在を思い出した。芳村がロザリオに付属していたベニトアイトを壺型の魂の器へ差し込んでみると、壺は淡く発光し始めた。やがて激しく明滅した後、周囲を強い白光が包み込んだのである。芳村は咄嗟に三好を庇って爆発に備えたが、次に聞こえてきたのは妙に陽気な声であった。
小鳥ロザリオの誕生
光が収まると、そこには小さな鳥がいた。灰色の羽毛とオレンジ色の腹部を持ち、深い藍色の瞳をしたその鳥は、周囲のクラスト片をついばんだ。鳥はテントの外へ出たそうに振る舞い、芳村たちが後を追うと塔の蔦を辿りながら隠された場所を示すように鳴き始めたのである。
蔦の隙間から、今まで存在しなかったはずのドアノブが姿を現した。三好は物語にある隠し扉を連想し、芳村も同様の感覚を抱いた。芳村はその鳥を「ロザリオ」と名付け、小鳥は美しいトリルを奏でてそれに応えた。
三十二層への到達と判明
塔の階段を下りた先には、生命そのものが腕を広げたような巨大な一本の樹木がそびえ立っていた。周囲には発光する花々や草原が広がり、闇の神殿とは対照的な穏やかで神秘的な空間であった。サイモンたちはこの場所が「セーフエリア」に酷似していることに気付き、即座に縄張り確保のため行動を開始した。
その頃、伊織たちの通信兵は代々木三十層入口の拠点との接続に成功した。現在地が未踏の三十二層であることが判明し、遭難状態から生還の見通しが立ったことで隊員たちは安堵した。自衛隊側も国益を守るため、未踏領域の調査と優先権の主張に乗り出したのである。
防衛省と後日譚
市ヶ谷の防衛省では、寺沢が生存情報と三十二層発見の報を受けた。人類が初めてダンジョン内部へ恒久的拠点を築ける可能性に、彼は事態の重大性を戦慄と共に理解した。
一方、横浜事件は「何も起きなかった事件」として処理される方向へ進んだ。核兵器使用の証拠は発見されず、日本政府はアメリカとの関係悪化を避ける方針を優先したのである。吉田陽生が制作した映像は大きな注目を集めたが、映り込んだ人物たちの正体を巡って製作陣には動揺が広がっていた。
秘密の花園と真相
芳村と三好はロザリオに導かれ、蔦に隠された扉の奥へ進んだ。そこには荒れ果てた庭園があり、少女の幻影が現れたのである。やがて少女はタイラー博士の姿へ変わり、この場所が人々の記憶から構築された心象風景であることを語った。
博士は、三年前の実験がゲートを開き、二十七人の研究者が分解されたことがダンジョン形成の切っ掛けだったと明かした。横浜での核エネルギーが還元された結果、芳村たちは再構成されて代々木へ転送されたという。芳村たちはダンジョンを構築する存在を「デミウルゴス」と名付けた。
代々木一層への帰還
空間が崩壊を始める中、芳村と三好は代々木ダンジョン一層へ戻された。現実時間はほとんど経過しておらず、二人は三十一層での出来事を証明する手段を失っていたのである。芳村は、自分が横浜へ転移していなかったように振る舞える現状を好都合と考え、事務所へ戻って情報を整理することにした。
終章 エピローグ
後日譚
港区 台場
仮面の男への注目
中央TVの会議室では、吉田陽生が制作したパイロットフィルムを見た石塚が強い興味を示していた。特に反応していたのは仮面の男の存在であり、石塚は彼を番組の目玉として扱うべきだと考えていた。
吉田は、映像の演出が行き過ぎだったのではないかと危惧していたが、石塚はむしろ強い手応えを感じていた。仮面の男を毎回ヒーローのように登場させれば人気が出るとまで語り、映像からその存在を削除することに否定的だった。
傭兵と特殊部隊の正体
後日、吉田は城から慌てた様子で電話を受けた。城は映像を国際報道関係者へ見せた結果、映像内の人物が危険な存在である可能性を知らされたのだった。
仮面の男の周囲にいた戦闘服の人物たちは、「キュレナイカのバジリスク」と呼ばれる著名な傭兵集団の一員だと判明した。彼らはリビア内戦などで暗躍した危険人物であり、日本にいること自体が異常視されていた。
さらに、その場にはフランス軍特殊作戦司令部COS所属のダンジョン攻略部隊メンバー、アラン=ボージェも映っていたことが明らかになった。吉田たちは、自分たちが極めて危険な現場を撮影してしまった可能性に動揺した。
番組化への期待と不安
吉田は、映像の一部を削除しようとしても、周辺映像から内容が推測されるため、完全な編集は不可能だと悟った。また、石塚はスポンサー候補の企業へ話を持ちかけた結果、大手ダンジョン関連企業が番組支援に強い関心を示したと明かした。
しかし企業側には条件があり、斎藤涼子を出演させることを強く求めていた。吉田は、探索者としても優秀な斎藤へ企業が異常な関心を示していることに違和感を覚えた。
斎藤涼子への疑念
石塚は、斎藤には「師匠」が存在するらしいと語った。その言葉を聞いた吉田は、以前リュージが斎藤について調査した際に異様な反応を示していたことを思い出した。
さらに吉田は、仮面の男と斎藤の関係を疑い始め、声紋分析によって正体を探れないか考えるようになっていた。
新たな歯車の始動
斎藤との契約は一度限りの出演予定であり、今後も彼女を利用し続けることは難しかった。それでも吉田は、この企画を成功させるため前へ進む決断を下した。
そうして、芳村たちの知らない場所で、新たな思惑と企みが動き始めていた。
渋谷 HAIR G
横浜事件の終息
激動の二日間を経て、横浜の異常事態は突如として終息した。土曜日十八時十五分を境に、現地から一切の情報が途絶え、防災ヘリによる確認でも街に大きな異変は見られなかった。
その後、桜木町から届いた報告では、横浜ダンジョン二層に存在していたクリーナーやスライムが完全に消失していた。核兵器が持ち込まれた可能性は高いと判断されていたものの、実際に使用された証拠は確認されず、真相は不明のままだった。
行方不明者の帰還
事件では自衛隊員十二名と民間人二名が行方不明となっていたが、その日の深夜には全員無事で発見されたとの報告が届いた。発見場所は常識では説明できない場所であり、現実離れした状況に関係者たちは困惑していた。
それでも最終的には犠牲を最小限に抑えた形で事態は収束し、日本政府としてもアメリカとの関係悪化を避けるため、深追いは控える方向となっていた。
新時代への移行
三十二層で発見されたセーフエリアはJDAの管理下で扱われることとなり、日本のダンジョン開発は新たな段階へ進もうとしていた。
井部は、一連の騒動が終わったことを実感しながら、美容室「HAIR G」で静かに髪を切っていた。明日から始まる新たな仕事へ向け、彼は束の間の平穏に身を委ねていた。
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Dジェネシス ダンジョンができて3年











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