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とある魔術の禁書目録フィクション(Novel)読書感想

小説「とある魔術の禁書目録 (9)」感想・ネタバレ

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とある魔術の禁書目録 9の表紙画像(レビュー記事導入用) とある魔術の禁書目録

とある魔術の禁書目録(8)レビュー
【とある魔術の禁書目録】あらすじ・ネタバレ・まとめ
とある魔術の禁書目録(10)レビュー

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物語の概要

■ 作品概要

『とある魔術の禁書目録(9)』は、超能力や先進科学を扱う「科学サイド」と、聖書や魔術を扱う「魔術サイド」という相反する二つの世界観が交錯する学園アクションファンタジー小説(ライトノベル)である。

本作の舞台は、東京都の西部に位置する、総人口の8割が学生である「学園都市」である。そこでは超能力の開発がカリキュラムとして組み込まれており、最先端の科学技術が街を構成している。しかし、その裏側には、宗教やオカルト、神話に基づいた異能の力を操る「魔術師」たちの世界が実在している。

本作(第9巻)では、学園都市の全学校が合同で開催する大規模な運動会「大覇星祭(たいはせいさい)」が幕を開ける。街全体が活気と華やかな熱気に包まれる中、その喧騒の陰で、魔術サイドの脅威が学園都市へと忍び寄る。謎の霊装『刺突杭剣(スタブソード)』を求め、魔術業界屈指の「運び屋」として恐れられる魔術師オリアナ=トムソンが都市内部へと侵入を果たす。この事態に対し、科学サイドと魔術サイドの境界に立つ少年たちが、大転換の引き金となり得る危機の阻止へ向けて暗躍を開始する。

■ 主要キャラクター

  • 上条 当麻(かみじょう とうま): 本作の主人公。学園都市の高校生であり、能力の評価は最低の「無能力者(レベル0)」である。しかし、彼の右手には、超能力や魔術などの異能の力を触れるだけで打ち消す謎の能力「幻想殺し(イマジンブレイカー)」が宿っている。生まれつき非常に不幸な体質であるが、強い正義感と泥臭い行動力を持ち、大覇星祭の裏で始まった魔術師の侵入を察知し、都市の平和を守るために戦いへ身を投じる。
  • インデックス(禁書目録): 本作のメインヒロイン。イギリス清教に所属するシスターであり、頭の中に10万3000冊の魔術書を完全に記憶している「禁書目録」の少女である。魔術の知識は極めて膨大であるが、自身は魔力を持たないため魔術を発動することはできない。食欲が非常に旺盛で、現在は上条の部屋に居候している。大覇星祭では上条の応援のために街を奔走する。
  • ステイル=マグヌス: イギリス清教の「必要悪の教会(ネセサリウス)」に所属する魔術師。ルーン文字を用いた炎の魔術を巧みに操る神父であり、14歳という若さでありながら卓越した戦闘能力を持つ。かつてインデックスのパートナーを務めていたことから彼女への思いは深く、今回は学園都市に侵入したオリアナ=トムソンの追跡と霊装の回収という任務を帯びて、上条と協力しながら隠密行動を展開する。
  • 土御門 元春(つちみかど もとはる): 上条のクラスメイトであり、隣の部屋に住む友人。しかしその正体は、イギリス清教の魔術師であり、同時に学園都市の統括理事長直属の陰陽師でもある、両陣営に深く入り込んだ「多重スパイ」である。能力者でありながら魔術を使用できる特異な性質を持つ(ただし代償として重傷を負う)。大覇星祭の裏で発生した危機の重大性をいち早く察知し、上条やステイルと共に事態の解決に向けて奔走する。
  • オリアナ=トムソン: 魔術サイドで名を馳せる高名な「運び屋(ルートディスターブ)」。魔術業界におけるあらゆる荷物を目的地へと届けるプロフェッショナルであり、追跡を翻弄する「追跡封じ」の異名を持つ。独自の魔術書(単語帳型)を媒介に様々な属性の魔術を操る実力者である。学園都市の警戒網をすり抜けて侵入し、謎の霊装『刺突杭剣』を巡る事件の中心人物として上条たちの前に立ちはだかる。

■ あらすじ

学園都市で大規模な体育祭「大覇星祭」が開幕した。上条当麻はクラスメイトと共に競技へ奮闘するが、その裏ではローマ正教の魔術師オリアナらが暗躍し、不穏な空気が漂い始める。彼女たちの目的は、学園都市を自らの支配下に置く伝説の霊装「使徒十字(クローチェディピエトロ)」の取引を成功させることだ。

イギリス清教のステイルや土御門元春と合流した上条は、その企みを阻止すべくオリアナの追跡を開始する。しかし、オリアナは使い捨ての魔道書「速記原典(ショートハンド)」を用いた迎撃術式を巧みに操り、ステイルや土御門のみならず、一般生徒の吹寄制理にまで重傷を負わせた。無関係な人々を巻き込む手口に激怒した上条は、オリアナを追い詰めて強烈な拳を叩き込む。それでも彼女はダミーの荷物を残して逃亡し、事件の完全な解決には至らなかった。

真の霊装の恐るべき力が判明する中、上条たちは世界の崩壊を防ぐため、次なる戦いへの決意を固める。

書籍情報

とある魔術の禁書目録 9
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA電撃文庫
発売日:2006年4月10日
ISBN:9784048666329

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あらすじ・内容

巨大運動会の陰で暗躍する、とある魔術師の正体は!?
全学校が合同で行う巨大運動会「大覇星祭」が開催された学園都市に、謎の霊装 『刺突杭剣』 を求め、とある魔術師が侵入した。その名は、オリアナ=トムソン。魔術業界屈指の「運び屋」であり、『追跡封じ』と称される彼女の目的とは――。

とある魔術の禁書目録(9)

感想

これほど広大な学園都市において、全学校が合同でイベントを行うとなれば、その規模と熱量は想像を絶するものがある。しかも、単なる運動会ではなく、生徒たちが個々の「超能力」を遺憾なく発揮して競い合う大覇星祭は、見ているだけで圧倒されるほどの魅力を放っていた。しかし、そんな華やかな日常の裏で、世界を揺るがすようなテロの脅威が同時進行しているという、緊迫感あふれる二面性の構成には終始一貫して引き込まれた。

物語の中で特に胸を締め付けられたのは、逃亡を謀るオリアナが仕掛けた無差別な迎撃術式「速記原典」によって、一般生徒である吹寄制理が重傷を負わされてしまう場面である。本来であれば、大覇星祭の運営委員として人一倍祭りの成功を願い、仲間たちと楽しい思い出を積み重ねるはずだった彼女が、魔術の戦いに巻き込まれて理不尽に倒れる姿は見ていて本当に痛ましい。無関係な一般人をも巻き込む残酷な手口に対し、激怒した上条当麻がオリアナへと立ち向かう姿には、読者としても深く共感せざるを得なかった。

戦いにおいて、上条が怒りを爆発させて放った強烈な拳は非常に痛快であったが、それでいてオリアナが完全にノックダウンしなかった展開には驚かされた。これまで多くの異能を打ち破ってきた彼の「幻想殺し」をもってしても、プロの魔術師としての執念と多彩な術式を操るオリアナは一筋縄ではいかない。結果として彼女はダミーの荷物を残して逃亡し、事件は完全な解決に至らぬまま、不穏な余韻を残して次章へと引き継がれる。

本作は、能力を駆使したド派手な体育祭の日常パートと、世界の命運を懸けた命懸けの魔術戦という非日常パートのバランスが絶妙である。また、いがみ合いながらもどこか信頼し合う人間関係の描写も深く、それぞれの陣営が交錯する人間ドラマとしても非常に読み応えがあった。真の霊装が持つ恐るべき力が判明し、世界の崩壊を防ぐために再び決意を固める少年たちの姿を見届けて、次なる激闘への期待感が一層高まるのを感じた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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とある魔術の禁書目録(8)レビュー
【とある魔術の禁書目録】あらすじ・ネタバレ・まとめ
とある魔術の禁書目録(10)レビュー

考察・解説

大覇星祭の開催

『とある魔術の禁書目録9』における大覇星祭の開催について、行事の概要と圧倒的な規模、一般公開に伴う交通・警備対策、学校対抗の競技システム、そしてその裏で暗躍する魔術師の脅威という観点から解説する。

1. 行事の概要と圧倒的な規模
大覇星祭は、9月19日から25日までの7日間にわたって学園都市で開催される大規模な合同体育祭である。

  • 学園都市に存在する全ての学校が参加し、参加する学生の数は180万人を軽く超える。
  • 超能力開発機関である学園都市の学生たちが能力を駆使してしのぎを削り合うため、単なる運動会に留まらない半端ではないスケールを誇る。
  • そのテレビ中継の視聴率はワールドカップに匹敵するほどの人気を集めている。

2. 一般公開に伴う交通・警備対策
普段は閉鎖環境にある学園都市が年に数回だけ一般公開される特別な日であり、街は参加者の父兄や観光客で溢れ返る。

  • そのため、外部見学者対策として一般車の乗り入れを禁止し、無人の自律バスや地下鉄の臨時便を増発するなどの交通規制が取られている。
  • また、機密を守りつつも来場者に威圧感を与えないよう、警備員(アンチスキル)はヘルメットを被らず顔を見せるといった、イメージ戦略にも気を配った警備体制が敷かれている。

3. 学校対抗の競技システム
大覇星祭の競技は基本的に学校対抗で行われる。

  • 全生徒は赤組と白組に分けられており、それぞれの組の勝ち数に合わせて各学校に点数が追加される。
  • このトータルの総合得点によって最終的な学校ごとの順位が決定される仕組みとなっている。
  • そのため、上条当麻や御坂美琴を始めとする生徒たちは、自身の学校の勝利を目指して強い意気込みで競技に臨んでいる。

まとめ
学園都市にとって大覇星祭の開催は大きなアピールの場であるが、一般来場者の流れを滞らせないために警備体制にある程度の遊び(隙)を作らざるを得ないという弱点も抱えている。その間隙を縫って、ローマ正教の魔術師オリアナ=トムソンとリドヴィア=ロレンツェッティが学園都市へ侵入した。彼らは、学園都市の支配権を奪う伝説の霊装である使徒十字(クローチェディピエトロ)の取引をこの期間中に成立させようと暗躍しており、華やかな祭典の裏で世界規模の危機が進行することになるのである。

学園都市の日常

『とある魔術の禁書目録9』における学園都市の日常について、巨大な学生街と超能力開発機関、日常に溶け込む近未来の科学技術、特殊な治安維持と学校の多様性、そして能力者が当たり前に存在する社会という観点から解説する。

1. 巨大な学生街と超能力開発機関
学園都市は東京西部を占める都市であり、総人口230万人弱のうち約8割を学生が占めている巨大な超能力開発機関である。

  • 普段は外部から隔離された閉鎖環境にあり、能力開発を中心とした機密事項を守るため厳重な警備が敷かれている。
  • しかし、大覇星祭など年に数回だけ一般に向けて特別に公開される。

2. 日常に溶け込む近未来の科学技術
街中には、チューブの中を走る列車や、電気などを利用して無人で走る自律バス、風力発電のプロペラといった最先端の技術が当たり前のように存在している。

  • また、ドラム缶のような自律警備ロボットや清掃ロボットが自律的に稼働している。
  • 外部から訪れた上条刀夜が、子供の頃にクレヨンで描いた世界がそのまま広がっていると感心するほど、近未来的な風景が広がっている。

3. 特殊な治安維持と学校の多様性
世界中のあらゆる教育機関を凝縮したような街であり、家政女学校の生徒がメイド姿で弁当を売り歩いていても違和感がないほどの多様性を持っている。

  • 一方で治安維持の仕組みは特殊である。
  • 普段は黒板の前で歴史や数学を教えている教師たちが警備員(アンチスキル)として銃や専用の装備を携帯している。
  • 学生自身も能力者で構成された風紀委員(ジャッジメント)として活動するなど、学校関係者によって街の安全が守られている。

まとめ
この街の学生や住人にとって超能力は極めて身近な存在である。学生たちが感情を昂ぶらせて雷撃の火花を散らしたり、競技の最中に火炎や念動力などを平然と行使したりしても、学園都市の人間はいちいち驚いたり引っかかったりしない。外部の人間にとっては映画のような非日常的光景も、学園都市の学生たちにとってはごくありふれた日常特有の空気として受け入れられているのである。

霊装使徒十字の脅威

『とある魔術の禁書目録9』における霊装である使徒十字(クローチェディピエトロ)の脅威について、その真の正体、聖地化をもたらす効果、幸福のすり替えによる心理的支配、そして世界の支配権を崩壊させる危機という観点から解説する。

1. 使徒十字の真の正体
イギリス清教は当初、学園都市に持ち込まれる霊装を、あらゆる聖人を一撃で葬る刺突杭剣(スタブソード)だと推測していた。

  • しかし、大英博物館の調査により、その伝説は本来用途が不明だった大理石の剣に後世の伝承が交差して生まれた誤認であることが判明する。
  • オリアナたちが運んでいた霊装の真の正体は、十二使徒の一人であるペテロに由来する逆さ十字架である使徒十字であり、ローマ正教が歴史上ただの一度も公開を許さなかった伝説級の霊装であった。

2. 聖地化をもたらす絶大な効果
ペテロの墓に十字架を立てた場所がローマ教皇領(現在のバチカン)の起点となったように、使徒十字には、それを立てた場所を例外なくローマ正教の支配下に置くという法則を逆転させた効果がある。

  • もし学園都市にこの霊装が立てられれば、その空間全体がローマ正教にとって極めて都合の良いように、幸運や不幸のバランスが捻じ曲げられた聖地へと作り変えられてしまうのである。

3. 幸福のすり替えによる心理的支配
使徒十字の最も恐ろしい点は、支配される側の人間に一切の反発を抱かせないことである。

  • 聖マーティンの神話的逸話に代表されるように、この霊装は人々の心理に干渉してマイナスとマイナスの天秤を操り、幸福の相対価値を引き下げる。
  • その結果、ローマ正教からどんなに理不尽な要求や不条理な重荷を背負わされても、人々はそれに疑問を抱くことなく、これで良かったと幸福すら感じて納得し、受け入れてしまうのである。

まとめ
現在、世界は科学サイドと魔術サイドでバランスを保っているが、科学サイドの中心である学園都市がローマ正教の庇護下に入れば、その均衡は完全に崩壊する。この取り引きは他勢力へ向けたものではなく、ローマ正教が科学と魔術の両方を掌握し、世界を自らの一極支配下に置くための計画であった。この恐るべき幻想による支配と世界の崩壊を防ぐため、上条当麻たちは使徒十字の完全な起動阻止を決意するのである。

運び屋オリアナの追跡

『とある魔術の禁書目録9』における運び屋オリアナの追跡について、追跡封じの異名と逃走術、自律バス整備場での攻防と迎撃術式、中学校の校庭への罠と一般人の犠牲、そして法則の看破と偽装された霊装という観点から解説する。

1. 追跡封じの異名と逃走術
オリアナ=トムソンは魔術業界屈指の運び屋であり、追跡封じの異名を持っている。

  • 彼女は追っ手を振り切るためなら手段を選ばず、罠の設置や民間人の利用も辞さないため、行動の予測が困難である。
  • 今回彼女は誰も自分を呼び止める気がしなくなる人払いの術式を保険として用いていたが、上条当麻と偶然接触した際に彼の右手によって破壊されてしまい、上条たちによる激しい追跡戦へと発展するのである。

2. 自律バス整備場での攻防と迎撃術式
上条、土御門元春、ステイル=マグヌスの3人は連携してオリアナを追い詰めるが、彼女は自律バスの臨時整備場へ逃げ込む。

  • オリアナは逃走しながらも追跡者の生命力を解析し、魔術を使うと反撃される自動迎撃術式を仕掛けていた。
  • この術式の正体は、その場で書き殴って使い捨てる魔道書である速記原典(ショートハンド)であり、ステイルは探索魔術を用いたことで迎撃を受け、重傷を負って倒れてしまうのである。

3. 中学校の校庭への罠と一般人の犠牲
オリアナの迎撃術式は、大覇星祭の玉入れ競技が行われる中学校の校庭に仕掛けられていた。

  • 彼女は外部から搬入されるポール籠に、備品名札に偽装した速記原典を貼り付けていたのである。
  • 魔術の知識がない一般人がこれに触れれば重度の日射病に似た症状で命に関わる危険があり、実際に運営委員の吹寄制理が触れて倒れてしまう。
  • 無関係な人々を平然と巻き込むオリアナのやり方に、上条は激しい怒りを燃やして速記原典を打ち砕いたのである。

まとめ
土御門まで倒された上条は、オリアナとの直接対決に挑む。上条は、一度使った魔術は二度と使わないという彼女の法則を逆手にとり、過去に攻撃された地点をなぞるように移動して死角を見抜き、強烈な一撃を叩き込んだ。オリアナは術式を使って屋上へ逃走するが、残された巨大な看板を上条が調べると、中身は取引されるはずの霊装である刺突杭剣(スタブソード)ではなく、ただのダミーの看板だったことが判明し、事態は新たな謎を呼ぶ展開となるのである。

吹寄制理の負傷

『とある魔術の禁書目録9』における吹寄制理の負傷について、運営委員としての強い責任感、玉入れ競技での『速記原典』への接触、一般人としての深刻なダメージ、そして上条当麻の怒りと決意という観点から解説します。

1. 運営委員としての強い責任感
吹寄制理は大覇星祭の運営委員として、競技の準備や審判、進行の合図などを担当し、自分のスケジュールを調整して多忙な業務をこなしていました。彼女は誰に強制されたわけでもなく自ら立候補しており、「皆に参加して楽しい思い出を共有してもらいたい」という強い願いと責任感を持って、一生懸命に祭りの準備を進めてきました。

2. 玉入れ競技での『速記原典』への接触
しかし、その彼女の真面目な思いは、暗躍する魔術師オリアナ=トムソンによって踏みにじられます。玉入れ競技の最中、将棋倒しで倒れていくポール籠を支えようと、吹寄は八本目のポールに手を伸ばしました。しかし、その支柱の金属と彼女の掌の間には、オリアナが仕掛けた自動迎撃術式である『速記原典(ショートハンド)』の厚紙が挟まっており、吹寄はそれに触れてしまったのです。

3. 一般人としての深刻なダメージ
術式が発動した瞬間、吹寄は力なく地面に倒れ込みました。上条当麻が即座に右手の『幻想殺し』で術式の効果を打ち消したものの、魔術に対する防壁を持たない素人の彼女は、生命力の空転による過負荷を受けてしまいます。それは重度の日射病に似た深刻なショック症状を引き起こし、朦朧とする意識の中で死の恐怖を感じるほど危険な状態となって、病院の緊急外来へ搬送される事態となりました。

4. 上条当麻の怒りと決意
無関係な一般人であり、皆の笑顔のために努力していた吹寄が傷つけられた事実は、上条当麻に激しい怒りを引き起こしました。彼は、人の命や思いを巻き込んでおきながら「仕事だから」と悪びれず笑うオリアナに対して、「テメェのふざけた幻想は、俺がこの手で跡形も残さずぶち殺してやる」と真っ向から宣言します。吹寄の負傷は、上条がオリアナの陰謀を何としても食い止めるという、揺るぎない決意を固める最大の要因となったのです。

魔術サイドの陰謀

『とある魔術の禁書目録9』における魔術サイドの陰謀について、暗躍するローマ正教の魔術師たち、偽装された目的である刺突杭剣、真の霊装である使徒十字、そして世界の支配を狙う最終目的という観点から解説する。

1. 大覇星祭の隙を突いたローマ正教の暗躍
この陰謀の首謀者は、ローマ正教の重役であるリドヴィア=ロレンツェッティであり、彼女は魔術業界屈指の運び屋オリアナ=トムソンを雇い、学園都市に侵入させた。

  • 大覇星祭期間中は一般来場者を招き入れるために警備体制に隙ができやすい。
  • また科学サイドである学園都市に他の魔術勢力が大々的に介入すれば混乱を招くという事情を巧みに利用した計画であった。

2. 偽装された目的である刺突杭剣
イギリス清教は当初、オリアナが持ち込もうとしている霊装を、あらゆる聖人を一撃で即死させる刺突杭剣であると推測していた。

  • 聖人は魔術業界において核兵器に等しい戦力であり、これを狙って破壊されれば宗教勢力のパワーバランスが崩れ、世界規模の戦争が引き起こされる危険性があった。
  • また、取引相手はロシア成教のニコライ=トルストイが疑われており、他勢力への霊装の売却が目的だと考えられていたのである。

3. 真の霊装である使徒十字の持ち込み
しかし、大英博物館の調査により、刺突杭剣の伝承は後世に作られた誤認であり、真の霊装は十二使徒ペテロに由来する使徒十字であることが判明する。

  • ペテロの墓に十字架を立てた場所がローマ教皇領(現在のバチカン)の起点となったように、この霊装には立てられた場所を例外なくローマ正教の支配下に置く絶大な効果があったのである。

まとめ
陰謀の真の目的は、他勢力への霊装の取引ではなく、ローマ正教が自分で自分に送る(学園都市に使徒十字を突き刺す)ことであった。科学サイドの中心である学園都市がローマ正教の庇護下に入れば、世界を二分する科学と魔術のバランスは完全に崩壊する。使徒十字の力によって人々が理不尽な状況すらこれで良かったと幸福だと錯覚する心理的支配を利用し、ローマ正教が世界を掌握して一極支配下に置くことこそが、この恐るべき陰謀の全貌だったのである。

とある魔術の禁書目録(8)レビュー
【とある魔術の禁書目録】あらすじ・ネタバレ・まとめ
とある魔術の禁書目録(10)レビュー

登場キャラクター

学園都市

上条当麻

右手に異能を打ち消す幻想殺しを宿す高校生である。インデックスを保護し、魔術サイドと科学サイドが交差する事件へ巻き込まれる。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
 オリアナの取引を阻止するため、土御門やステイルと共に彼女を追跡した。真空刃などの魔術攻撃をかいくぐり、オリアナの顔面に右拳を直撃させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 借り物競走では御坂美琴の借り物として扱われた。

御坂美琴

常盤台中学に通うエース格の少女である。上条に好意を抱いているが、素直になれず反発を繰り返している。

・所属組織、地位や役職
 常盤台中学の生徒。学園都市第三位の超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
 借り物競走で圧倒的な差をつけて優勝した。玉入れの競技中に倒れてきたポール籠から上条に助けられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 雷撃や超電磁砲を操り、競技においてもその能力をいかんなく発揮する。

青髪ピアス

上条のクラスメイトである。スポーツを通じて展開される少女たちの姿に強い興味を示す。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
 棒倒しで上条の隣を並走し、爆圧弾を回避し続けた。男子生徒からの視線に動揺し、攻撃を受けて吹き飛ばされる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 味方の念動能力に受け止められ、怪我は免れた。

姫神秋沙

上条のクラスに転入してきた少女である。腰まである長い黒髪と色白の肌をしている。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
 棒倒しなどの競技に参加した。インデックスを探す上条へ、彼女が月詠小萌と歩いていたことを教える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 吸血殺しの能力を封じるため、首から十字架を下げている。

吹寄制理

上条のクラスメイトであり、責任感が強い少女である。大覇星祭の成功に向けて真剣に取り組んでいる。

・所属組織、地位や役職
 大覇星祭運営委員。
・物語内での具体的な行動や成果
 棒倒しで土煙を利用した奇襲作戦を立案し、クラスを勝利へ導いた。玉入れの競技中、オリアナの仕掛けた速記原典に触れて倒れ込む。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 重度の日射病に似た症状に陥り、病院の緊急外来へ搬送された。

月詠小萌

上条のクラスの担任教師である。小柄な容姿だが、生徒を思いやる熱心な教育者として振る舞っている。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の教員。
・物語内での具体的な行動や成果
 他校の教師から生徒を侮辱されて涙をこらえた。空腹で倒れていたインデックスに食事を与え、チアリーディングへ誘う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 大覇星祭に合わせてチア衣装を着用している。

土御門舞夏

清掃ロボットに乗って移動する少女である。メイド弁当の販売を行っている。

・所属組織、地位や役職
 家政学校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 上条にメイド弁当を販売した。インデックスの行方を探す上条へ情報を提供する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 日本の弁当文化について独自の持論を展開する。

白井黒子

常盤台中学に通う小柄な少女である。御坂美琴を深く慕っている。

・所属組織、地位や役職
 常盤台中学の生徒。風紀委員。大能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
 怪我のため車椅子に乗って街を移動した。街頭の画面で上条と美琴の様子を目撃し、激怒して立ち上がる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 空間移動の能力を持つが、現在は負傷のため安静にしている。

初春飾利

白井黒子の同僚である。頭に多数の造花を飾っている。

・所属組織、地位や役職
 風紀委員。
・物語内での具体的な行動や成果
 白井のスポーツ車椅子を押して街を案内した。激怒して立ち上がる白井を必死に制止する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 風紀委員として大覇星祭に参加するのは今回が初めてである。

黄泉川愛穂

学園都市の治安を維持する大人の女性である。スタイルの良い外見をしている。

・所属組織、地位や役職
 警備員。教員。
・物語内での具体的な行動や成果
 パレードのため道路の通行止めを行った。路上に倒れていたインデックスをベンチへ運び、小萌へ引き渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 黒を基調とした正規装備を着用している。

アレイスター

学園都市のトップに立つ謎の存在である。円筒形の水槽に逆さまの状態で浮かんでいる。

・所属組織、地位や役職
 学園都市統括理事長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローラとの通信に応じ、学園都市への魔術師侵入について協議した。上条を案内役として起用する案に同意する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ローラの日本語を指摘して反発を買う。

カエル顔の医者

病院に勤務する医師である。カエルに似た顔立ちをしている。

・所属組織、地位や役職
 病院の医師。
・物語内での具体的な行動や成果
 搬送されてきた吹寄制理を診察した。死の恐怖を口にする彼女へ、絶対の信頼を与える言葉を返す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 素早い動きで的確な指示を飛ばす。

警備員

学園都市の治安維持や施設の警護を担う者たちである。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の警備員。
・物語内での具体的な行動や成果
 中学校の裏門で上条と土御門の入場を引き止めた。ID照合器が機能しなくなったため、協議の末に二人を通す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 黒っぽい装備に身を固め、銃を携帯している。

メンテ機械をメンテする技師達

自律バスの整備場を行き交う作業員たちである。

・所属組織、地位や役職
 整備場の技師。
・物語内での具体的な行動や成果
 整備場内で作業を行っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 死角に座り込むステイルには気づいていない。

クロークセンターの係員

デパート近くで荷物の預かりを行う若い女性である。

・所属組織、地位や役職
 クロークセンターの係員。
・物語内での具体的な行動や成果
 オリアナから番号札を受け取り、手提げバッグを返却した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 塗装業者の利用に疑問を抱くが、オリアナの言葉で納得する。

自律警備ロボット

学園都市内を走行するドラム缶型の機械である。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の警備ロボット。
・物語内での具体的な行動や成果
 メイド服の少女を乗せて音もなく走り去った。競技場の情報をスピーカーで流す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 迷子の保護に関する案内なども放送している。

イギリス清教

ローラ=スチュアート

イギリス清教を束ねる女性である。身長の二倍以上ある長い金髪をしている。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教の最大主教。
・物語内での具体的な行動や成果
 アレイスターと通信し、オリアナとリドヴィアの動向について情報を共有した。チャールズから使徒十字の報告を受け、事態の深刻さに気付く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 独自の変な日本語を用いる。

インデックス

膨大な魔道書の知識を記憶する少女である。純白の修道服を着用している。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教の魔道書図書館。
・物語内での具体的な行動や成果
 空腹で倒れていたところを小萌に助けられた。着替えの最中に上条と遭遇し、彼に噛み付く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 外部の魔術師から監視対象として注目されやすい。

ステイル=マグヌス

赤い髪にバーコードの刺青を持つ神父である。炎のルーン魔術を操る。

・所属組織、地位や役職
 必要悪の教会に所属する魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
 オリアナの迎撃術式によってダメージを受ける。自律バスを炎上させ、理派四陣を用いてオリアナの居場所を探知した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 インデックスの平穏を守るため、自らを犠牲にして行動する。

土御門元春

金髪にサングラスという風貌の少年である。能力者であるが魔術も使用できる。

・所属組織、地位や役職
 学園都市およびイギリス清教のスパイ。
・物語内での具体的な行動や成果
 上条と共にオリアナを追跡した。オリアナの罠にかかり、昏倒術式を受けて意識を失う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔術を使うと体に拒絶反応が生じる。

ローマ正教

リドヴィア=ロレンツェッティ

ローマ正教の重役である女性である。社会不適合者を専門に布教活動を行う。

・所属組織、地位や役職
 ローマ正教の構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
 オリアナと通信し、術式が破られた報告を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 告解の火曜という別名を持つ。

大英博物館

チャールズ=コンダー

大英博物館で物品の管理を担う人物である。考古学の権威とされる。

・所属組織、地位や役職
 大英博物館の保管員。
・物語内での具体的な行動や成果
 ローラに対して刺突杭剣のレプリカに関する報告書を提出した。大理石の剣が実際は使徒十字であることを伝える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔術については知識を持たない一般人である。

運び屋

オリアナ=トムソン

追跡封じの異名を持つ運び屋である。露出の多い作業服を着ている。

・所属組織、地位や役職
 魔術業界屈指の運び屋。
・物語内での具体的な行動や成果
 単語帳を用いた速記原典で魔術を行使し、上条たちと交戦した。看板を残して上条の前から撤退する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 一度使った魔術は二度と使用しないという制約を自らに課している。

その他

上条刀夜

上条当麻の父親である。地味な服装で大覇星祭を訪れる。

・所属組織、地位や役職
 上条当麻の父。
・物語内での具体的な行動や成果
 開会式へ向かう途中で美琴を探していた女性とぶつかった。昼食の場所を探している際にオリアナともぶつかる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 無自覚に女性と良い雰囲気になるため、妻の嫉妬を買う。

上条詩菜

上条当麻の母親である。お嬢様のような服装をしている。

・所属組織、地位や役職
 上条当麻の母。
・物語内での具体的な行動や成果
 手作りの弁当を持参して刀夜と共に行動した。刀夜が他の女性と接触するたびに深い嫉妬の表情を浮かべる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 怒ると物を投げつける性質がある。

美琴を探していた女性

美琴の知り合いである大学生である。軽いノリで会話を進める。

・所属組織、地位や役職
 美琴の知人。
・物語内での具体的な行動や成果
 刀夜とぶつかり、美琴の居場所を教えられた。美琴をからかいながら、刀夜たちを昼食へ誘う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条と美琴の関係に興味を持っている。

メイド服の少女

メイド弁当を販売している少女である。自律警備ロボットに乗っている。

・所属組織、地位や役職
 繚乱家政女学校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 純和風の弁当をメイド弁当として売り歩いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 刀夜と詩菜の前を通り過ぎて驚かせる。

大覇星祭参加者の父兄達

生徒たちの家族である。街のあちこちに溢れ返っている。

・所属組織、地位や役職
 大覇星祭の一般来場者。
・物語内での具体的な行動や成果
 上条と美琴の言い争いを見て困惑して固まっていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 学園都市の特殊な空気に触れて刺激を受けている。

三毛猫

インデックスに懐いている猫である。

・所属組織、地位や役職
 インデックスの同行者。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋台の食べ物に夢中になるが、猫舌のため苦戦した。上条を植物園の奥へと導く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 食べ物の匂いに敏感に反応する。

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展開まとめ

序章 第三者から見た準備時間 Parent’s_View_Point

大覇星祭の開幕

大覇星祭に沸く学園都市

九月一九日、学園都市では七日間にわたる大覇星祭が始まった。街中には参加者の父兄が溢れ、一般車両の乗り入れ禁止や臨時便、自律バスなどによって混雑対策が取られていた。

大覇星祭は学園都市が一般公開される特別な行事であり、外部の人々にとっては超能力者同士の競技を間近で見られる大きな催しであった。

上条刀夜と上条詩菜の来訪

上条刀夜と上条詩菜は、上条当麻が参加する開会式の会場へ向かっていた。

刀夜は学園都市の近未来的な景色に感心し、詩菜は巨大宇宙戦艦や人型兵器がないため自分の思う近未来には届いていないと語った。二人は夫婦でありながら、外見や服装の雰囲気が大きく異なっていた。

メイド弁当と学園都市の奇妙な風景

二人の前を、自律警備ロボットに乗ったメイド服の少女が通り過ぎた。

少女は繚乱家政女学校のメイド弁当を売り歩いていたが、中身は純和風の弁当であった。詩菜は学園都市には色々な学校があると感心し、刀夜もメイドが街にいても違和感のない光景に驚いていた。

常盤台中学を探す女性との遭遇

刀夜は通行中の女性とぶつかった。女性は常盤台中学の場所を尋ね、美琴を探していると話した。

刀夜がパンフレットを調べたが、常盤台中学はリストに載っていなかった。女性は美琴の居場所が分からないことに慌て、刀夜へ近づいて一緒にパンフレットを確認した。

その様子を見た詩菜は、刀夜がまた女性と良い雰囲気になっていると嫉妬をにじませた。

上条当麻と御坂美琴の発見

詩菜は人混みの向こうに上条当麻を見つけた。

刀夜が視線を向けると、体操服姿の当麻の近くに、陸上競技用のユニフォームを着た御坂美琴がいた。刀夜と一緒にいた女性は、それが自分の探していた美琴だと気づいた。

赤組と白組を巡る口論

当麻と美琴は、互いが赤組か白組かを巡って話していた。

当麻は最初、自分も赤組だと美琴に思わせたが、直後に白組だと明かして挑発した。美琴は怒り、白組を吹き飛ばすと宣言した。

当麻は美琴に負けたら罰ゲームを受けてもいいと言い、美琴もその条件に乗った。さらに美琴が負けた場合も罰ゲームを受ける流れになり、二人は雷撃混じりに言い争った。

父兄たちの困惑と大覇星祭の開始

周囲の父兄たちは、当麻と美琴のやり取りに固まっていた。

詩菜は当麻が年下の少女に無茶な要求を通している様子を見て、自分の学生時代を思い出しそうだと語った。刀夜は、当麻が女子中学生にどんな命令を出すつもりなのかと衝撃を受けた。

美琴を探していた女性も、当麻たちの影響を疑いながらため息をついた。こうして、七日間にわたる学園都市総合体育祭、大覇星祭が始まった。

第一章炎天下の中での開始合図 Commence_Hostilities

1

大覇星祭の裏で動く魔術側の思惑

ローラとアレイスターの会談

ロンドンの聖ジョージ大聖堂で、イギリス清教の最大主教ローラ=スチュアートは深夜の静寂の中、一人で長い金髪を整えていた。

彼女は学園都市の統括理事長アレイスターと通信を行いながら、自らの髪の手入れについて語った。しかしアレイスターから日本語の使い方を指摘され、ローラは強く反発した。

その後、二人は雑談を切り上げ、本題である学園都市への侵入者について話し合いを始めた。

学園都市への魔術師侵入

ローラは、大覇星祭によって学園都市の警備に隙が生じていることを説明した。

その隙を利用して、ローマ正教の関係者二名が学園都市へ侵入していることが判明していた。確認されているのは運び屋のオリアナ=トムソンと、その依頼主であるリドヴィア=ロレンツェッティであった。

二人の目的は破壊工作ではなく、ある重要な物品の取引であるとローラは語った。

運び屋オリアナ=トムソン

オリアナ=トムソンは『追跡封じ』の異名を持つ魔術業界屈指の運び屋であった。

彼女は追跡者を振り切るためなら手段を選ばず、橋の破壊や罠の設置、人心の利用など多彩な方法を用いて逃走する人物だった。さらに人脈を利用して民間人を巻き込みながら姿を消すこともあり、追跡が極めて困難な存在として知られていた。

リドヴィア=ロレンツェッティの人物像

リドヴィア=ロレンツェッティは、ローマ正教の重役でありながら各地を巡って布教活動を続ける人物であった。

彼女は社会から排斥された人々や犯罪者、異端者たちを救済し、その才能を見出してきた。問題を抱える者たちをまとめ上げる能力にも優れており、多くの有能な人材を自身の周囲へ集めていた。

その活動方針から、ローラにとっても扱いの難しい相手であった。

取引相手と運搬物の正体

ローラは、取引相手としてロシア成教のニコライ=トルストイの名が挙がっていることを説明した。

さらに問題の運搬物について語るため、大英博物館から借りたレプリカの剣を取り出した。それは『刺突杭剣』と呼ばれる霊装であり、竜すら地面に縫い止めたと伝えられる強力な魔術的武器であった。

この霊装は十字教世界における重要な『聖人』を一撃で無力化できる存在であり、その価値は核兵器に匹敵するほどであった。

学園都市で取引が行われる危険性

ローラは最大の問題が、刺突杭剣の取引場所が学園都市内部であることだと説明した。

学園都市側は大覇星祭のため一般来場者を多数受け入れており、イギリス清教の魔術師だけを特例で送り込むことはできなかった。一方で、学園都市の治安維持組織が魔術師へ直接介入することも科学と魔術の勢力均衡を崩しかねず、容易には行動できなかった。

そのため侵入者たちは、双方が自由に手を出せない状況を利用して取引を進めようとしていた。

学園都市への協力者派遣計画

しかしローラは、その程度で手をこまねいているつもりはなかった。

学園都市には一般来場者が大量に出入りしているため、休暇中の個人が旅行者として訪れるのであれば不自然ではないと考えたのである。

アレイスターもその案を認め、組織的な介入ではなく個人として学園都市へ入るのであれば問題は少ないと判断した。そして、その案内役として学園都市で暮らすある少年を利用するしかないと語った。

こうして両者は、学園都市で行われようとしている危険な取引へ対処するための方策を固めたのであった。

2

大覇星祭開幕と上条当麻の憂鬱

開会式後の疲労

開会式が終了した後、上条当麻は強い暑さの中で疲労困憊していた。

大覇星祭には学園都市中の学校が参加しており、開会式も三百か所以上で同時開催されていた。長時間に及ぶ校長たちの挨拶を聞かされた生徒たちは皆ぐったりしており、上条もその一人だった。

一方で大覇星祭は赤組と白組に分かれて総合得点を競う仕組みであり、上条は御坂美琴との勝負を思い出していた。学校順位で負ければ罰ゲームが待っているため、上条は何としても勝ちたいと考えていた。

インデックスとのやり取り

開会式後、上条はインデックスと合流した。

インデックスは屋台から漂う食べ物の匂いに誘惑され、空腹を訴えていた。上条は後で一緒に屋台を回る約束をしたものの、自身の競技開始が近づいていたため、先に競技場へ向かわなければならなかった。

途中で舞夏からメイド弁当を購入した上条は、それをインデックスへ渡して空腹をしのがせ、自分は選手用入口から競技会場へ向かった。

棒倒しへの意気込み

競技場へ向かう途中、上条は大覇星祭の戦略について考えていた。

七日間に及ぶ大会では序盤の勢いも重要であり、上条は早い段階で点差を広げるべきだと考えていた。特に御坂との勝負を意識していたため、最初の競技である棒倒しから結果を出そうと意気込んでいた。

やる気のないクラスメイトたち

しかし選手控えエリアへ到着すると、クラスメイトたちは全員が疲れ切っていた。

前夜から作戦会議や大騒ぎを続けた結果、睡眠不足と疲労で戦う前から力を使い果たしていたのである。青髪ピアスや土御門元春、姫神秋沙らも例外ではなく、棒倒しへの士気は著しく低下していた。

上条は対戦相手がエリートスポーツ校だと聞かされ、さらに不安を募らせた。

吹寄制理との騒動

そこへ大覇星祭運営委員を務める吹寄制理が現れた。

吹寄は無気力な空気に呆れ、上条へ厳しく喝を入れた。二人が言い争う中、上条が誤って散水用ホースを踏みつけたことで水が噴き出し、吹寄は全身ずぶ濡れになってしまった。

周囲の男子生徒たちは気まずさを誤魔化すように水遊びを始め、クラスはますます統制の取れない状態となった。上条は棒倒しどころではない現状に頭を抱えた。

小萌先生への侮辱

その後、上条は体育館裏で担任の月詠小萌と言い争う他校の教師を目撃した。

男の教師は小萌の学校を落ちこぼれの集まりだと嘲笑し、生徒たちを失敗作呼ばわりしたうえ、自分の育てたエリート集団で叩き潰すと宣言した。

小萌は生徒たちを必死に庇ったが、男は聞き入れず立ち去っていった。

生徒たちの闘志の再燃

男が去った後、小萌は生徒たちが落ちこぼれではないと信じながらも、自分のせいで侮辱されたことに苦しみ、一人で肩を震わせていた。

その様子を見ていた上条は振り返ると、そこには無言で集まったクラスメイトたちが立っていた。

上条は先ほどまでやる気がないと嘆いていた仲間たちへ向かい、本当にそのままでいいのかと問いかけた。

侮辱された小萌と仲間たちの思いを前に、彼らの気持ちは大きく変わろうとしていたのであった。

3

御坂美琴の観戦

上条当麻の競技を見守る美琴

御坂美琴は学生用応援席で上条当麻たちの競技開始を待っていた。

常盤台中学は学園都市屈指の名門校であり、例年の順位争いも限られた強豪校同士で行われていた。そのため、美琴は本来であれば自校が負けるはずはないと考えていた。

しかし同時に、能力や常識を覆して奇跡を起こしてきた上条の姿も思い出していた。学園都市最強の超能力者を打ち破った彼の姿を思い返した美琴は、自分でも気づかないうちに上条のことを意識し、顔を赤くしていた。

インデックスとの遭遇

美琴は応援席で、空腹のあまり倒れているインデックスを発見した。

インデックスは弁当を食べ終えた直後にもかかわらず空腹を訴えており、美琴は熱中症を疑ってスポーツドリンクを渡した。しかし実際には本当に空腹だっただけであり、美琴は呆れながらも世話を焼いた。

さらに美琴は上条の様子について尋ねたが、インデックスからはいつも通りだったと聞かされた。その返答を受けた美琴は、上条が勝負に強い執着を見せていないのではないかと考えた。

競技開始前のやり取り

競技開始が近づく中、美琴とインデックスは軽口を交わした。

インデックスは美琴を短髪と呼び続け、美琴はその呼び方に不満を示した。やがて校内放送で棒倒し開始の案内が流れ、会場には大会特有の緊張感が広がっていった。

空腹で動けなくなっていたインデックスに対し、美琴は携帯食を与えながら、上条は緊張などせずに競技へ向かっているだろうと考えていた。

対戦相手と上条たちの異変

美琴は校庭へ目を向け、まず対戦相手のエリートスポーツ校の様子を観察した。

相手校の生徒たちは統率が取れており、専門的な訓練を受けた集団らしい雰囲気を漂わせていた。

しかし続いて上条たちの学校を見た美琴は、その異様な光景に驚愕した。

戦場のような士気の高まり

上条当麻を中心に並んだ生徒たちは、先ほどまで疲労していた集団とは思えないほどの威圧感を放っていた。

誰一人として騒がず、無言のまま敵を見据える姿は、運動会というより戦場へ向かう兵士のようだった。能力者たちの力がぶつかり合うほどの緊張感が漂い、美琴はその異常な士気の高さに圧倒された。

なぜ上条たちがそこまで本気になっているのか理解できないまま、美琴は上条が本気で勝利を狙っているのではないかと動揺した。

そして棒倒し開始の合図と共に、上条たちは砂煙を巻き上げながら敵陣へ突撃していったのであった。

4

棒倒し開戦

上条当麻の突撃開始

棒倒しが始まると、上条当麻は自陣の棒を守る側ではなく、敵陣の棒を倒す役を選び、開始と同時に敵陣へ向かって走り出した。

学園都市の競技は能力者同士の戦いでもあり、多数の能力者が入り乱れるため、単なる運動会以上の緊張感に包まれていた。

能力者同士の遠距離攻撃

敵陣からは火炎や爆発系の能力を利用した爆圧弾が大量に放たれた。

それに対し、上条たちの陣営からは念動能力によって操られた砂の槍が迎撃に向かい、中間地点で激突した。爆発によって暴風が発生し、応援席からは歓声と悲鳴が上がった。

上条は恐怖を感じながらも前進を続けた。

幻想殺しへの限界認識

上条は右手に備わる幻想殺しによって超能力や魔術を打ち消せるが、その効果範囲は右手だけであった。

周囲から一斉に能力攻撃を受ければ防ぎ切れないことを理解しており、能力者同士の戦いの危険性を改めて実感していた。

青髪ピアスとの並走

敵陣へ向かう途中、青髪ピアスが上条の隣を走り始めた。

青髪ピアスは競技そのものよりも、スポーツを通じて繰り広げられる少女たちの青春模様に興奮しており、愛の力だと熱弁しながら楽しそうに走っていた。

さらに飛来する爆圧弾を軽やかに回避し続けていた。

青髪ピアスの脱落

上条が敵側にいる筋骨隆々の男子生徒から熱烈な視線が向けられていることを指摘すると、青髪ピアスは動揺した。

その直後、回避に失敗した青髪ピアスは爆圧弾の直撃を受けて後方へ吹き飛ばされた。

しかし味方の念動能力によって空中で受け止められ、大きな事故には至らなかった。観客席からは歓声と拍手が巻き起こった。

敵陣への突入

青髪ピアスが戦線を離脱した後も、上条は前進を続けた。

敵陣まで残り十メートルほどの距離となり、上条は右拳を握り締めた。そして迷うことなく敵陣の中央へ突撃したのであった。

5

棒倒しの勝利

吹寄制理の作戦による逆転勝利

上条当麻たちは正面からの実力勝負では勝てないと判断し、能力を利用して大量の土煙を発生させる奇襲作戦を実行した。

吹寄制理は土煙を発生させる担当、敵の棒を倒す担当、念話能力による指示伝達担当を細かく割り振り、全体の指揮も執っていた。競技中には上条が味方の攻撃に巻き込まれ、さらに敵軍から集中攻撃を受ける場面もあったが、作戦は成功し、上条たちは勝利を収めた。

小萌先生の涙と生徒たち

競技を終えた生徒たちは傷だらけになりながらも勝利を喜び、怪我を気にする様子もなく校庭を後にした。

そこへ月詠小萌が救急箱を抱えて現れ、勝敗よりも皆が無事であることが大切だと涙ながらに訴えた。しかし生徒たちは多くを語らず、それぞれ散っていった。

インデックス捜索

上条は学生用応援席にいるはずのインデックスを探し始めた。

彼女は魔道書図書館として重要な存在であり、一般来場者席に一人で置いておくことを避けていた。しかし応援席を何度探しても姿は見つからず、人混みに紛れてしまっていた。

そこで上条は、教室に置いてきた携帯電話を取りに行き、連絡を取ろうと考えた。

無人の校舎への立ち入り

上条は警備員に事情を説明し、校舎へ入った。

校内は静かだったが、放送の音が響いていた。上条は教室へ向かいながら、姫神秋沙もクラスに馴染めていることを思い出し、インデックスと連絡を取った後に皆で祭りを回ろうと考えていた。

吹寄制理との遭遇

教室へ入った上条は、その場で固まった。

吹寄制理が濡れた衣服を着替えている最中であり、教室の中には彼女しかいなかった。吹寄は落ち着いていたが、上条は慌てて土下座し、自分にやましい意図がなかったことを必死に説明した。

吹寄は怒ることなく、着替えが終わるまで教室から出るよう命じた。

通販好きな吹寄の一面

廊下へ出た上条は、吹寄が投げた箱を拾った。

それは携帯電話に接続する遠赤外線治療器の箱であり、上条は意外そうに眺めた。吹寄は教室の中から、自分が通販商品を買うことを隠そうとしたが、話の流れでアイデア調理器具や健康グッズを多数購入していることが明らかになった。

上条はその意外な一面に驚きながらも会話を続けた。

不用意な発言と報復

会話の途中、上条は吹寄の肩こりについて触れ、それが胸の大きさと関係しているのではないかと口にした。

その瞬間、教室の引き戸を突き破る勢いでスポーツバッグが飛んできて上条へ直撃した。さらに携帯電話も投げ渡され、上条は吹寄から強烈な報復を受ける結果となったのであった。

6

インデックスとの再会

空腹に苦しむインデックス

上条当麻はようやくインデックスを見つけ出したが、その頃には涙目になっていた。しかし携帯電話の電池切れや人混みの中での捜索など、自身の苦労については語らなかった。

再会したインデックスは三毛猫と空のスポーツドリンクのペットボトルを抱えていた。さらに弁当や飲み物、チョコクッキーまで食べていたにもかかわらず、依然として空腹を訴えていた。

屋台エリアへの移動決定

上条は次の競技である大玉転がしまで時間があることを確認し、インデックスを連れて屋台エリアへ向かうことにした。

インデックスは食べ物が大量にあると聞いただけで目を輝かせたが、上条は大覇星祭七日間分の生活費を初日で使い切る危険を感じ、財布の中身を確認しながら頭を悩ませていた。

通行止めとの遭遇

二人は屋台エリアへ向かう途中、大通りの横断歩道へ到着した。

しかし信号が青に変わった直後、警備員によって通行止めの看板が設置された。吹奏楽部による複数校合同パレードが始まるため、事前に人の流れを止める必要があったのである。

学園都市の警備体制

上条は警備員の女性に迂回路を尋ねた。

女性は学園都市が一般公開期間中でありながらも、研究施設などの機密を守るため厳重な警備体制を敷いていることを背景に、案内を行った。一般来場者へ威圧感を与えないよう配慮された警備体制も、大覇星祭の運営方針の一つであった。

絶望的な迂回路

警備員によると、パレードのため前後八キロにわたって道路が封鎖されており、最も近い横断手段は西へ三キロ離れた地下街の入口だった。

その説明を聞いた上条は絶句した。隣では、すでに空腹の限界を迎えていたインデックスが、これ以上歩けないという様子で静かに崩れ落ちようとしていたのであった。

7

借り物競走

借り物競走に挑む御坂美琴

御坂美琴は大通りを走りながら借り物競走に参加していた。この競技は学園都市第七・第八・第九学区全域を舞台とし、指定された物品を探して競技場へ持ち帰る内容であった。

決められたコースは存在せず、体力だけでなく最適な移動経路を見極める判断力も求められた。さらに一般来場者が多い環境では能力を使いにくく、干渉数値五以上の能力使用も禁止されていたため、美琴は自身の力を活用できずにいた。

目的の物品の発見

給水所を通過した美琴は、手元の紙に記された指定物品を確認しながら走り続けた。

やがて人混みの先に目的の物品を発見する。競技ルールでは第三者の所有物である場合、その所有者の了承を得たうえで一緒に競技場へ向かわなければならなかったため、美琴は目標へ向かって一気に駆け出した。

屋台へ行けず絶望するインデックス

その頃、上条当麻は通行止めの看板にしがみついているインデックスをなだめていた。

別の屋台を探そうと提案した上条だったが、最寄りの屋台は西へ三キロ先であり、しかも迂回路の地下街入口と同じ場所にあった。さらにパレードの影響でバスも迂回運行となっていたため、次の競技までに往復することは難しかった。

上条が大玉転がし終了まで我慢するよう告げると、空腹の限界に達していたインデックスは怒りを爆発させ、上条へ噛みつこうと飛びかかった。

御坂美琴による確保

インデックスの攻撃が命中する直前、御坂美琴が高速で現れた。

美琴は上条の首根っこを掴み、そのまま勢いよく連れ去った。美琴は上条こそが自身の勝利条件であると宣言し、人混みの中へ消えていった。

突然の出来事に取り残されたインデックスは呆然としたまま地面に突っ伏した。そんな彼女を見かねた警備員の女性は、携帯食料を差し出していた。

8

借り物競走の終了

御坂美琴の優勝と上条当麻の困惑

御坂美琴に連れられた上条当麻は借り物競走のゴールへ到着した。競技場では運営委員が迅速に選手のケアを行い、美琴は優勝者として表彰とインタビューに備えることになった。

一方で上条は完全に場違いな存在として扱われているように感じていた。そこで運営委員の一人が吹寄制理であることに気づき、先ほどの着替え騒動について謝罪した。吹寄は仕事中のため感情を抑えつつも、競技運営の邪魔をしないよう釘を刺した。

美琴の世話と照れ隠し

上条が借り物競走のルールについて不満を漏らすと、美琴は強引にスポーツタオルで彼の汗を拭き始めた。

さらにドリンクを渡そうとしたが、規則の関係で追加の支給ができないことを知ると、自分の分を上条へ押し付けた。その後、美琴は顔を赤くしたまま表彰台へ向かい、吹寄は呆れた様子で二人を見送った。

借り物競走の真相

競技が終わり出口へ向かう途中、上条は風で飛ばされてきた借り物競走の指令書を拾った。

そこには第一種目で競技を行った高等学生という条件だけが記されていた。条件に当てはまる人間は他にも大量にいるはずなのに、自分が選ばれたことに上条は困惑した。また、美琴が自分の参加競技を把握していた理由にも疑問を抱いた。

インデックスのもとへ向かう上条

上条はインデックスの待つ場所へ戻るため、自律走行バスを利用した。大覇星祭期間中の街では各種競技の実況や案内放送が流れ続けており、借り物競走で常盤台中学が圧勝したことも伝えられていた。

携帯電話が使えないインデックスを心配しながら歩いていた上条は、途中で屋台に寄ればよかったと考えつつ、彼女のもとへ急いでいた。

魔術師の存在と新たな問題

しかしその途中、人混みの中でステイル=マグヌスの姿を発見した。

インデックスに会いに来たのだろうと考えた上条だったが、近づくとステイルが土御門元春と深刻な表情で話していることに気づいた。二人は大覇星祭の賑わいとは無縁の緊張感を漂わせていた。

そしてステイルは、この街へ潜入した魔術師を自分たちの手でどうにかしなければならないと告げた。その言葉によって、上条は再び魔術に関わる問題へ引き込まれていったのである。

行間 一

白井黒子と大覇星祭

病院を抜け出した白井黒子

白井黒子は事件で負った怪我が完治しておらず、本来なら安静にしているべき状態だった。しかし大覇星祭の最中に病院で過ごすことに退屈していたため、初春飾利に車椅子を押されながら街へ出ていた。

初春は風紀委員の仕事を手伝わせるためだと語り、白井も軽口を返しながらその誘いを受け入れていた。

大覇星祭の治安状況

街の様子を眺めていた白井は、今年の大覇星祭で大きな問題が起きているかを初春に尋ねた。

初春は焼きイカ屋台に偽装した産業スパイが生徒の唾液からDNA情報を盗もうとした程度だと説明した。白井は過去に起きた無人ヘリ撃墜未遂や競技場爆破未遂などと比べれば平穏な方だと語り、初春を驚かせた。

借り物競走の中継

その時、街頭の大型画面から借り物競走のハイライト映像が流れ始めた。

白井は興味を示していなかったが、優勝者として御坂美琴の名前が紹介されると一変した。御坂が圧倒的な差をつけて優勝したことに感激し、画面へ釘付けになった。

御坂美琴と上条当麻の映像

しかし続いて映し出された映像を見て、白井は衝撃を受けた。

御坂が男子生徒の手を引いてゴールしている姿や、自らのタオルで汗を拭き、スポーツドリンクを渡している様子が映されたのである。

その相手が上条当麻だと気づいた白井は激怒した。御坂と親しく接する上条の姿に耐えられず、重傷を負っているにもかかわらず勢いよく立ち上がり、上条を許さないと叫んだ。

騒がしい二人と祭りの熱気

白井が怒りに任せて暴れ出そうとすると、初春は必死に制止した。

深手を負った状態で立ち上がる白井に慌てる初春と、怒り心頭の白井が騒ぎ続ける中、大覇星祭は変わらず賑わいを増していったのであった。

第二章 魔術師と能力者の競技場 “Stab_Sword.”

1

白井黒子と大覇星祭

病院を抜け出した白井黒子

白井黒子は事件で負った怪我が完治しておらず、本来なら安静にしているべき状態だった。しかし大覇星祭の最中に病院で過ごすことに退屈していたため、初春飾利に車椅子を押されながら街へ出ていた。

初春は風紀委員の仕事を手伝わせるためだと語り、白井も軽口を返しながらその誘いを受け入れていた。

大覇星祭の治安状況

街の様子を眺めていた白井は、今年の大覇星祭で大きな問題が起きているかを初春に尋ねた。

初春は焼きイカ屋台に偽装した産業スパイが生徒の唾液からDNA情報を盗もうとした程度だと説明した。白井は過去に起きた無人ヘリ撃墜未遂や競技場爆破未遂などと比べれば平穏な方だと語り、初春を驚かせた。

借り物競走の中継

その時、街頭の大型画面から借り物競走のハイライト映像が流れ始めた。

白井は興味を示していなかったが、優勝者として御坂美琴の名前が紹介されると一変した。御坂が圧倒的な差をつけて優勝したことに感激し、画面へ釘付けになった。

御坂美琴と上条当麻の映像

しかし続いて映し出された映像を見て、白井は衝撃を受けた。

御坂が男子生徒の手を引いてゴールしている姿や、自らのタオルで汗を拭き、スポーツドリンクを渡している様子が映されたのである。

その相手が上条当麻だと気づいた白井は激怒した。御坂と親しく接する上条の姿に耐えられず、重傷を負っているにもかかわらず勢いよく立ち上がり、上条を許さないと叫んだ。

騒がしい二人と祭りの熱気

白井が怒りに任せて暴れ出そうとすると、初春は必死に制止した。

深手を負った状態で立ち上がる白井に慌てる初春と、怒り心頭の白井が騒ぎ続ける中、大覇星祭は変わらず賑わいを増していったのであった。

白井黒子と大覇星祭

病院を抜け出した白井黒子

白井黒子は先日の事件で負った傷が完治しておらず、本来は大覇星祭に参加できる状態ではなかった。しかし退屈な入院生活に飽きていたこともあり、初春飾利に車椅子を押されながら街へ出ていた。

初春は楽しそうに白井へ仕事を手伝わせようとし、白井も皮肉を返しながら応じていた。内心では祭りの雰囲気を味わえることを喜んでいたが、それを表には出さなかった。

今年の大覇星祭の治安状況

白井は今年の大覇星祭で問題が起きているかを初春へ尋ねた。

初春は焼きイカ屋台に偽装した産業スパイが生徒の唾液からDNAマップを盗もうとした事件程度だと説明した。すると白井は、過去には無人ヘリ撃墜未遂事件や競技場爆破未遂事件もあったと語り、初春を驚かせた。

御坂美琴の優勝を知る

その時、街頭の大型モニターから借り物競走のハイライト映像が流れ始めた。

白井は最初こそ興味を示していなかったが、御坂美琴が優勝したという実況を耳にすると態度を一変させた。御坂が圧倒的な差をつけて優勝したことに感激し、その活躍を称賛した。

映像に映った上条当麻

しかし映像には御坂だけでなく、借り物競走で協力者となった上条当麻の姿も映し出されていた。

御坂が上条の手を取って走る様子や、タオルで汗を拭いてやる姿、さらにはスポーツドリンクを渡している姿まで映されたため、白井は激しい衝撃を受けた。

怒りを爆発させる白井黒子

相手が上条当麻だと気づいた白井は怒りを爆発させた。

御坂と親しく接する上条の姿に耐えられず、重傷を負っているにもかかわらず車椅子から立ち上がり、上条への怒りを叫んだ。初春は慌てて制止しようとしたが、興奮した白井は聞く耳を持たなかった。

祭りの喧騒の中で

怒り心頭の白井と、それを止めようとして半泣きになる初春が騒ぐ中でも、大覇星祭は変わらず賑わいを見せ続けていた。

二人の騒動も祭りの喧騒に溶け込みながら、学園都市全体はさらに熱気を増していったのであった。

2

聖人の力と弱点

聖人の本質

大玉転がしを終えた後、上条当麻は土御門元春から聖人について説明を受けた。

土御門は、聖人とは十字教の神の子に似た体質を持つ人間であり、そのため神の子に由来する強大な力を宿している存在だと語った。しかし同時に、神の子の特徴だけでなく弱点までも受け継いでいると説明した。

刺突杭剣の脅威

土御門は、神の子が十字架にかけられ、最終的に槍によって刺殺されたことに触れた。

そして刺突杭剣は、その処刑と刺殺の宗教的意味を極限まで増幅した霊装であり、聖人に対して絶大な効果を発揮すると語った。普通の人間には意味を持たないが、聖人に対しては距離に関係なく命を奪うほど危険な武器であった。

魔術社会における戦争の危機

上条が魔術師たちの目的を尋ねると、土御門は戦争だと断言した。

聖人は魔術社会において核兵器に等しい存在であり、その聖人だけを排除できる刺突杭剣は戦況を大きく左右する力を持っていた。聖人の死は宗教勢力の均衡を崩し、国家や組織の崩壊、さらには世界規模の戦争へ発展する危険性を秘めていると説明した。

学園都市が動けない理由

上条は、聖人以外の魔術師も存在するのだから対処できるのではないかと疑問を抱いた。

しかし土御門は、問題は実際の勝敗ではなく勝てるかもしれないという錯覚を生み出すことだと語った。そして学園都市側も簡単には介入できず、警備員や風紀委員が魔術師を直接捕らえることは、科学サイドと魔術サイドの均衡を崩す危険を伴うと説明した。

そのため、土御門やステイルのような例外的な立場の人間が動いているのだと明かした。

インデックスを関与させられない理由

上条は、魔術に詳しいインデックスの協力を求めるべきではないかと提案した。

しかし土御門は、それは不可能だと断言した。魔術業界では上条当麻よりも禁書目録の名の方が広く知られており、多くの魔術師たちは何か事件が起きればその中心にインデックスがいると考えていた。

そのため外部の魔術師たちはインデックス周辺を重点的に監視している。逆にインデックスを事件から遠ざけておけば、監視の目をそちらへ向けさせ、本当の現場で起こる魔術戦を隠しやすくなるのであった。

上条への依頼

土御門は、今回の事件についてインデックスに気付かせず、現場から遠ざけておくことが重要だと説明した。

上条は事情を隠し通す難しさを感じながらも、インデックスの身を案じていた。そんな上条に対し、土御門はインデックスの世話も含めて任せたと軽い調子で告げた。

さらに、困ったら食べ物で気を引いて事件現場から遠ざければ良いと冗談めかして話し、上条は呆れながらもその話を聞き続けていた。

3

大覇星祭 インデックスと小萌先生

インデックスの保護

空腹で路上に倒れていたインデックスを見かねた黄泉川愛穂は、通行止め解除の作業を中断し、彼女を街路樹の下のベンチまで運んだ。そこへ連絡を受けた月詠小萌が駆け付け、ぐったりしたインデックスの姿に熱中症を疑って慌てた。

しかし黄泉川は、インデックスが熱中症ではなく空腹であると説明した。さらに携帯食料を三食分も食べていることを明かし、小萌を驚かせた。インデックス本人も、空腹を訴えながら上条当麻の帰りを待っていた。

屋台の食べ物で回復

インデックスがソースの匂いに反応したため、小萌は大通りの向こうにある屋台へ向かい、焼きそばやお好み焼き、フランクフルト、たこ焼きなどを買い込んできた。

食べ物を見たインデックスは勢いよく起き上がり、並べられた料理を次々と平らげた。小萌は箸の使い方など日本文化を教えようとしていたが、その前に食事が終わってしまい落胆した。一方のインデックスは満腹になりながらも、その様子に全く気付いていなかった。

上条と離れている寂しさ

食事を終えたインデックスは、上条がどこへ行ってしまったのかと気に掛けていた。大覇星祭の間ずっと上条と離れ離れでいるように感じ、自分だけ取り残されていることを寂しく思っていた。

その様子を見た小萌は、イベントの中で一人だけ取り残される辛さを理解し、何とかインデックスも大覇星祭に参加できる方法を考え始めた。

チアリーディングへの誘い

小萌は、競技への参加はできなくても応援する側なら問題ないと考え、インデックスへチアリーディングを提案した。

自らのチア衣装を示しながら、一緒に応援すれば上条と共に大覇星祭を盛り上げられると説明した。さらに指導できる機会を得たことに大喜びしながら、半ば圧倒されるインデックスの手を引いて、その場を後にした。

4

大覇星祭 インデックスとの再会

インデックス捜索の開始

上条当麻は通行止めが解除された場所へ戻ったが、そこにインデックスの姿はなかった。土御門元春から、事件を悟らせないためにもインデックスと定期的に接触するよう頼まれていた上条は、手掛かりのない状況に頭を悩ませた。

空腹のインデックスなら屋台エリアへ向かった可能性があると考えた上条は、最悪の場合は食べ物を巡る騒動が起きているかもしれないと危機感を抱いた。

姫神と舞夏からの情報

屋台エリアへ向かおうとした上条は、姫神秋沙と土御門舞夏に呼び止められた。インデックスが空腹のまま行方不明になったと説明すると、二人はインデックスが月詠小萌に手を引かれて別の方向へ歩いていたと教えた。

小萌が一緒なら問題はないだろうと判断した上条は、二人に礼を言い、示された方向へ向かった。

三毛猫に導かれた先

歩いている途中、聞き慣れた三毛猫の鳴き声を耳にした上条は、その声を追って只山大学植物学部所有の植物園へ足を踏み入れた。

奥へ進んだ先で上条が目にしたのは、チアリーディング衣装へ着替えている最中のインデックスだった。小萌が手伝っていたが、インデックスは下着を身につけている途中であり、上条と目が合った瞬間に動きを止めた。

インデックスの激怒と動揺

状況を理解したインデックスは怒りに染まり、上条へ飛び掛かった。上条は逃れようとしたものの完全には避けきれず、インデックスの口は頬に当たった。

その直後、インデックスは突然動揺し、顔を真っ赤にして上条から距離を取った。普段のように騒ぐこともなく、恥ずかしさから混乱している様子だった。上条もまた戸惑いながら弁明を試みたが、かえってインデックスの怒りを強めてしまった。

吹寄制理の誤解

そこへ月詠小萌を捜していた吹寄制理が現れた。吹寄は、顔を赤くしたインデックスと小萌、脱ぎかけの衣装や下着、そしてその場にいる上条を順番に見渡した。

状況を見た吹寄は、上条が応援をさぼって問題を起こしていると判断し、容赦なく拳を叩き込んだ。その一撃によって上条は吹き飛ばされ、地面を転がっていった。

5

大覇星祭 吹寄制理との移動

吹寄による説教と連行

上条当麻は植物学の試験場から吹寄制理に引きずられる形で連れ出された。インデックスは小萌先生の手伝いで着替えを続けており、吹寄は大会成功への協力姿勢が見られない上条へ不満をぶつけた。

吹寄は紙パックの牛乳を飲みながら上条を叱責し、上条は現在行われている競技について尋ねたが、吹寄は呆れながらも答えた。

糖分補給を巡る騒動

吹寄は上条の物覚えの悪さを糖分不足だと判断し、シュガースティックを直接飲ませようとした。逃げようとした上条は吹寄にヘッドロックをかけられ、強引に砂糖を摂取させられそうになった。

抵抗する中で上条は吹寄の胸が顔に当たっていることに気付き、さらに動揺した。吹寄はその様子に気付かないまま対応を続けたが、最終的にはヘッドロックを解いた。

運営委員としての責任

再び襟首を掴まれた上条は、吹寄に運営委員の仕事が大丈夫なのかと尋ねた。吹寄は月詠小萌への伝言は済ませてあり、突発的な事態にも対応できるよう余裕を持った予定を組んでいるため問題ないと説明した。

また、自由時間を友人と過ごした方が良いのではないかという上条の言葉に対し、思い出の作り方は人それぞれであり、友人たちも納得していると語った。その時だけ吹寄は穏やかな表情を見せた。

手を取って歩く二人

上条が襟首を掴むのをやめるよう頼むと、吹寄は意外にも素直に手を離した。そして代わりに手を差し出したため、上条はその手を取った。

冷たいと思っていた吹寄の手は温かく、その感触に上条は不意を突かれたように胸を高鳴らせた。しかし吹寄はそんな上条を見て、歩くのが遅いと言いながら手を引き続けた。

こうして上条は、不機嫌そうな吹寄に手を引かれながら移動していった。

6

塗装業者の女性との遭遇

吹寄との会話と大覇星祭への思い

吹寄制理に連れられて街を歩いていた上条当麻は、人混みの中で大覇星祭への集中力が欠けていることを指摘された。吹寄は運営委員として準備を重ねてきた立場から、参加者全員に楽しい思い出を作ってほしいと考えており、上条が祭りを楽しめていないのではないかと気にしていた。

上条は大覇星祭をつまらないとは思っていないと答え、吹寄たち運営委員や参加者の努力を無駄にしないためにも頑張らなければならないと改めて考えた。

吹寄との接触事故

吹寄と手を繋いだまま歩いていた上条は、人混みに押されて前へよろけた。その結果、吹寄との距離が一気に縮まり、額と鼻先が触れ合ってしまった。

吹寄は即座に頭突きを見舞い、上条を突き放した。上条が弁解しても吹寄の不機嫌は収まらず、後頭部を叩かれるなど散々な目に遭った。

謎の塗装業者との出会い

その直後、上条は金髪碧眼の女性とぶつかった。女性は塗装業者らしい作業服を着ていたが、非常に露出の多い格好をしており、脇には白い布で覆われた大きな看板を抱えていた。

女性は流暢な日本語で謝罪し、上条や吹寄に穏やかに対応した。その余裕ある態度に吹寄もたじろぎ、上条は彼女の優しさに感激していた。

握手と幻想殺しの発動

女性はぶつかったお詫びとして握手を求めた。上条が右手で握手に応じた瞬間、何かが砕けるような音が響いた。

上条は自分の右手に宿る幻想殺しが何らかの力を打ち消したことを察し、女性も何を破壊されたのか確認するような反応を見せた。直後、女性は急に余裕を失った様子を見せながら、その場を去っていった。

土御門への連絡と疑惑の確信

吹寄が運営委員の仕事へ戻った後、上条は土御門元春へ連絡した。握手した相手が学園都市外から来た業者らしく、大きな看板を持っていたことを伝えると、土御門は看板の特徴を確認し、その女が刺突杭剣を運んでいる可能性に気付いた。

土御門は上条にその場で待つよう指示したが、上条は女を見失うことを恐れ、姿が消えた方向へ走り出した。何か重大な事態が始まろうとしている予感を抱きながら、上条は女の後を追ったのであった。

7

オリアナの通信

術式の異変を自覚するオリアナ

作業服姿の金髪の女・オリアナ=トムソンは、大きな看板を抱えながら人混みの中を歩いていた。しかし、自分が周囲から浮いていることを自覚しており、予想外の出来事によって感情の制御が完全ではなくなっていることを感じていた。

彼女はズボンのポケットから白紙の単語帳を取り出し、一枚をちぎって耳に当てた。すると紙に文字が浮かび上がり、通信手段として機能し始めた。

リドヴィアとの会話

オリアナは通信相手であるリドヴィア=ロレンツェッティと連絡を取った。リドヴィアは本名を口にする危険性を指摘したが、オリアナは軽口を交えながら応対した。

リドヴィアは宗教的な説教を続けたが、オリアナは適当に受け流し、本題へ移った。

破られた保険の術式

オリアナは、自分に施していた術式が破られたことをリドヴィアへ報告した。

その術式は「表裏の騒静」と呼ばれるもので、人払いの魔術を応用した保険だった。相手が背を向けた後に追跡や呼び止めを諦めさせる効果を持ち、オリアナが魔術を使っていても周囲の人間に干渉されないようにするものだった。

しかし、その術式は何者かによって破壊されてしまい、しかも一度壊されたため再構築も不可能な状態になっていた。

今後の対応

リドヴィアは原因や対策を問いただしたが、オリアナはどちらも分からないと答えたため、通信越しに冷たい反応を受けた。

それでもオリアナは笑みを崩さず、まず優先すべきことがあると告げた。

追跡者の存在

オリアナは、自分の背後に追跡している少年がいることに気づいていた。

そのため、これから最初にやるべきことは、その少年を撒くことだと判断していたのであった。

8

追跡劇と自律バス整備場

オリアナの追跡

上条当麻はオリアナ=トムソンに気づかれた可能性を感じながらも、見失わないことを優先して追跡を続けた。人混みを縫うように走り、何度も角を曲がりながら距離を詰めようとした。

途中で土御門元春から電話が入り、上条は現在地を特定するためのGPSコードを送信した。その後も追跡を続け、ようやく表通りへ出ると、遠くを走るオリアナの姿を再び発見した。

土御門とステイルの合流

オリアナを追う上条のもとへ、GPS情報を頼りに土御門とステイル=マグヌスが合流した。

上条がオリアナを指差すと、二人は即座に追跡を開始した。上条も後を追ったが、オリアナは迷路のような道を利用して逃走を続けた。さらに追跡者が三人に増えたことを察知したオリアナは、相手の追跡技術が格段に向上したことを悟っていた。

自律バス整備場への誘導

前方にテレビ中継による大きな人混みを見つけたオリアナは、看板を抱えたままでは突破できないと判断し、別ルートへ進路を変更した。

その先は、自律バスが大量に並ぶ臨時整備場だった。上条たちも後を追って整備場へ足を踏み入れた。

魔術による迎撃

整備場へ入った直後、土御門を狙って青白い炎が降り注いだ。土御門が警告する中、ステイルは上条を前方へ放り出し、幻想殺しによって炎を打ち消させた。

続いて石弾や炎の槍、風の刃、巨大な氷塊などの魔術攻撃が次々と襲いかかったが、土御門はそれらが時間稼ぎのための囮であると見抜いていた。上条は幻想殺しを使いたい衝動を抑えながら、土御門と共にオリアナを追い続けた。

土の壁の突破

やがて大型洗車機付近でオリアナの姿を発見したが、その直後に高さ五メートルもの巨大な土の壁が出現した。

土御門はそれが暫定物質で構成された魔術だと見抜き、上条へ破壊を依頼した。上条は幻想殺しを発動し、巨大な土壁を粉々に砕き散らした。

逃走と置き土産

壁の向こうへ回り込んだ上条たちはオリアナの姿を探したが、そこには単語帳の厚紙が貼り付けられているだけだった。

近くには裏口や開いたマンホール、割られた窓ガラスが残されており、どれが本当の逃走経路なのか判別できなかった。土御門は苛立ちながら厚紙を剥がし、オリアナの追跡封じの技量を痛感した。

一方のオリアナは既に表通りへ戻り、人混みに紛れて歩いていた。追跡者を撒いたと判断した彼女は、さらに次の手を打つことを考えていた。

霊装の解析開始

上条が厚紙について尋ねると、土御門はそれがオリアナの使用する霊装であり、『土の象徴』を意味する術式札だと説明した。

しかし本来土属性に対応しない青色が使われており、意図的に相性の悪い属性を組み合わせて反発力を攻撃力へ変換していることも明かした。

そこへステイルが合流し、土御門は回収した厚紙から魔力の流れを逆探知する術式を組み立てるため、協力を求めたのであった。

9

逆探知の失敗と新たな作戦

理派四陣の準備

土御門元春は魔術を使うと命に関わる拒絶反応が起こるため、自ら術式を発動せず、逆探知の魔術である『理派四陣』の準備だけを担当していた。

地面に描かれた円の中心へオリアナが残した厚紙を置き、その周囲に四色の折り紙を配置する。術式の発動はステイル=マグヌスが担当した。

理派四陣の発動

ステイルが呪文を唱えると、四色の折り紙が独りでに動き始め、地面へ色付きの線を描きながら中心へ収束していった。

土御門はその様子を見ながら、ルーン魔術の仕組みや『理派四陣』の探知性能について説明した。半径三キロ以内なら高精度で探知できるが、一度使用すると再使用まで十五分の間隔が必要になるという制約もあった。

オリアナによる逆探知への対抗

理派四陣によって地図が形成され始めた頃、オリアナは追跡の気配を察知した。彼女は探知術式の存在を見抜き、余裕を浮かべながら迎撃の準備を整えた。

直後、理派四陣を発動していたステイルの身体に異変が発生した。地図は完成目前で崩壊し、ステイルは激しい苦痛に襲われた。

上条当麻が幻想殺しで異常を打ち消したことで暴走は収まったが、探知は失敗に終わった。

迎撃術式の正体

土御門は状況を分析し、オリアナがステイルの魔力を読み取ったうえで、ステイル個人に反応する迎撃術式を仕掛けていると推測した。

通常であれば多様な魔力の種類すべてに対応する必要があるため困難な芸当だったが、オリアナは生命力そのものを解析することで、その問題を克服している可能性が高かった。

ステイルは、これは単なる魔術師の技量を超えたものであり、自動処理による迎撃術式ではないかと考え始めた。

魔道書原典の可能性

土御門とステイルは議論を重ね、その迎撃術式の正体が魔道書の原典に近いものである可能性へ辿り着いた。

魔法陣と魔道書は本質的に同じ性質を持ち、膨大な情報量を内包した魔道書の原典は超高密度の魔法陣として機能する。オリアナは本格的な原典ではなく、短期間だけ機能する『速記原典』のようなものを作り出して利用しているのではないかと推測された。

それは知識を後世へ残すためではなく、その場で使い捨てるための原典だった。

迎撃術式破壊の方針

土御門は、まず迎撃術式を破壊しなければステイルは魔術を使えず、オリアナの再探知も不可能だと説明した。

そのため、迎撃術式から発せられる魔力を逆探知する『占術円陣』を作成し、わざとステイルに魔術を使わせて迎撃を誘発させる作戦を提案した。

しかしその方法は、迎撃によってステイルが再び深刻なダメージを受ける危険を伴っていた。

命を懸けた決断

上条はステイルを危険に晒す作戦へ強く反対した。成功が保証されていないにもかかわらず、何度も迎撃を受けさせる可能性があることに納得できなかったのである。

それでもステイルは迷わず作戦への参加を承諾した。彼は問題を自分たちだけで解決し、インデックスの学園都市での生活を守ることを条件として土御門へ約束を求めた。

その姿を見た上条は、ステイルが自分自身ではなく、ただインデックスの幸福だけを考えて行動していることを痛感した。

迎撃術式への挑戦

土御門が完成させた占術円陣の中へ、ステイルは自ら足を踏み入れた。

そして上条に対し、インデックスのそばにいないことへの不満を口にした後、ルーンの炎を発動させた。

その瞬間、迎撃術式が作動し、激しい爆発と絶叫が響き渡ったのであった。

第三章 追う者と逃げる者の戦略 Worst_Counter.

1

大覇星祭運営委員の多忙な役割

吹寄制理は大覇星祭の運営委員として、競技準備や審判などを担当していた。運営委員は競技にも参加するため、自身の予定と運営業務を両立しなければならず、高い計画性と臨機応変な対応力が求められていた。

吹寄も審判を担当する競技場へ向かう途中であり、人混みを避けて遠回りすることで結果的に時間を短縮しようと考えていた。地図やスケジュールを頭に入れながら、最適な移動経路を検討していた。

競技場への移動と上条との別行動

吹寄はスポーツドリンクの入った箱を抱えながら、人の少ない小道を選んで進んでいた。地下鉄や自律バスの利用も検討したが、競技による交通規制や人混みを考慮し、徒歩で移動する方が効率的だと判断していた。

その結果、先ほど上条当麻を連れてきた道を逆に辿る形となり、独り言を呟きながら競技場へ急いでいた。

落ち込むインデックスとの遭遇

移動中の吹寄は、植物学試験場近くで四つん這いになって落ち込んでいるインデックスを発見した。インデックスはチアリーディングの衣装に着替えたにもかかわらず、上条が待たずにどこかへ行ってしまったことに大きなショックを受けていた。

その傍らでは月詠小萌がインデックスを慰めていたが、効果は薄かった。

吹寄の対応と上条への疑問

吹寄は以前小萌へ伝言した件について確認しつつ、落ち込むインデックスを立ち直らせようと考えた。七味唐辛子を使った独特の提案まで行ったが、小萌に慌てて止められた。

しかしインデックスは周囲のやり取りにも気づかないほど落胆しており、ただ上条の行方を気にし続けていた。

その様子を見た吹寄は、上条が今どこで何をしているのか分からないまま、首を傾げるのであった。

2

迎撃術式の位置特定

占術円陣の成果

迎撃術式の反撃によってステイル=マグヌスは地面へ倒れ込んだが、土御門元春は彼に目を向けることなく占術円陣の結果を確認していた。

土御門は反応の方角が北西であり、距離がおよそ三十メートルであることを突き止めた。さらに反応が移動していないことから、迎撃術式は設置型であり、オリアナ自身もまだ遠くへ離れていない可能性を推測した。

上条の怒り

ステイルが倒れているにもかかわらず冷静に分析を続ける土御門に対し、上条当麻は激しい怒りを覚えた。

上条は土御門の胸倉を掴み、ステイルが誰のために傷を負ったのか理解しているのかと声を荒らげた。しかし土御門は、迎撃術式は魔力精製を空回りさせる妨害型の術式であり、症状は日射病のようなものだと説明して受け流した。

土御門自身の犠牲

上条がさらに責め立てた直後、土御門のこめかみや脇腹から血が滲み始めた。

占術円陣も魔力なしでは発動できず、土御門自身が魔術を使った代償を受けていたのである。彼は探索魔術ほどではないものの、自らも傷を負っていたことを明かした。

そして、自分がまともに魔術を使えないせいでステイルを傷つけた責任は認めるが、それでも迎撃術式を破壊し、オリアナを捕らえ、『刺突杭剣』の取引を阻止すると強く語った。

土御門の本心

上条は土御門が本当に冷酷なのではなく、倒れた仲間の犠牲を無駄にしないために感情を押し殺していることを理解した。

土御門は一刻も早く戦いを終わらせることで、少しでもステイルの負担を減らそうとしていたのである。

迎撃術式の設置場所判明

土御門に促された上条は、携帯電話のGPS機能を使って北西三十メートル付近の位置を調べた。

しかし表示された場所を見た上条は思わず息を呑んだ。土御門も画面を確認すると驚きで表情を凍らせた。

そこに示されていたのは、とある中学校の校庭の中央だった。

さらに飛行船の放送によれば、その校庭ではあと十分もしないうちに競技が開始される予定であり、迎撃術式が大勢の生徒の集まる場所に仕掛けられていることが判明したのであった。

3

迎撃術式破壊への準備

ステイルを残して行動開始

上条当麻と土御門元春は倒れたままのステイル=マグヌスをその場に残した。騒ぎを外部へ漏らさないためでもあり、土御門は迎撃術式を破壊した後に再び探索を行うため、『理派四陣』の折り紙と魔法陣をステイルの側へ再設置した。

迎撃術式を破壊したら携帯電話で連絡し、それを合図に探索魔術を発動する手筈となった。ステイルはわずかに頷き、生存を示した。

上条の単独行動

土御門は負傷した脇腹を包帯で止血したが、血に染まった体操服では人目を避けられないため、自分は後から向かうと告げた。

上条は一人で中学校へ向かって全力で走りながら、携帯電話で土御門と連絡を取り続けた。土御門は、オリアナがこちらの事情を把握しているらしく、あえて人目の多い競技場に迎撃術式を設置した可能性を指摘した。

玉入れ競技への潜入計画

上条が競技内容を確認すると、その中学校では全校生徒参加の大規模な玉入れ競技が行われる予定だった。

競技開始まで残り時間が少なく、正面から潜入する余裕もなかったため、土御門は選手として競技へ紛れ込むしかないと判断した。上条は高校生である自分たちが中学生の集団へ混ざることに強い不安を覚えたが、他に有効な手段はなかった。

一般人への危険性発覚

土御門は迎撃術式について新たな懸念を口にした。

迎撃術式は魔術そのものではなく、魔術を行うための準備行動に反応して生命力を解析する仕組みであるため、条件によっては一般人や能力者にも影響する可能性があるというのである。

言霊のように言葉を発するだけで成立する術式や、触れるだけで意味を持つ宗教的動作を例に挙げ、素人ほど防御手段を持たないため危険だと説明した。

上条は、競技場全体に見えない地雷が埋められているような状況だと理解し、犠牲者が出る前に迎撃術式を除去しなければならないと決意した。

吹寄との遭遇

中学校へ到着した上条は、正門からの侵入が困難と判断して裏門へ回った。

そこで運営委員の吹寄制理が校内へ入っていく姿を目撃した。吹寄は一度こちらを振り返ったものの、上条には気づかず校庭へ向かっていった。

土御門との合流

裏門からの侵入方法を考えていた上条の前へ、傷の手当てを終えた土御門が現れた。

土御門は裏門突破は簡単だと語り、近くの水たまりへ上条を突き飛ばしたうえ、自らも飛び込んで二人とも泥だらけになった。

警備員を欺く作戦

泥で体操服の特徴を隠した二人は、警備員へ競技前に転倒して汚れてしまった選手を装った。

警備員はID照合を行おうとしたが、土御門が泥だらけの手で機器を故障させたため確認できなくなった。競技開始が迫っていたこともあり、警備員たちは協議の末に二人の通行を認めた。

こうして上条と土御門は正々堂々と裏門を通過し、競技開始まで残り三分弱の状況で校舎内へ向かった。保健室で体操服を調達し、競技参加者へ紛れ込むためであった。

4

玉入れ競技と迎撃術式の捜索

常盤台中学との対戦開始

御坂美琴は玉入れ競技の会場となる中学校の校庭に立っていた。生徒数こそ少ないものの、強能力者や超能力者を擁する常盤台中学は他校から恐れられており、対戦相手の中学校も敗北を覚悟したような雰囲気に包まれていた。

その中で美琴は、相手陣営に学校指定の体操服を着た上条当麻の姿を発見した。競技へ紛れ込んでいる上条を見て、不信感と怒りを募らせた。

迎撃術式の正体を探る

上条と土御門元春は競技に紛れ込みながら、校庭内に設置された迎撃術式『速記原典』の捜索を続けた。

土御門は、玉ではなく玉入れ用のポール籠が怪しいと推測した。籠は事前に設置されていたため、搬入中にオリアナが細工を施した可能性が高いと考えたのである。また、競技中に誰かが触れれば迎撃術式が発動する危険性も指摘した。

能力者同士の激しい玉入れ競技

競技開始の合図とともに両校の生徒が中央へ殺到した。しかし常盤台中学の生徒たちは能力を駆使し、雷撃や火炎、衝撃波を放ちながら競技を進めていた。

上条と土御門は能力攻撃を避けながらポール籠の調査を続行した。土御門は一本ずつ籠を確認したが、なかなか迎撃術式を発見できなかった。

倒壊したポール籠と少女の救出

調査中、男子生徒たちの将棋倒しによって五本目のポール籠が倒れ、その衝撃で隣の六本目のポール籠も倒れ始めた。

倒壊する先には常盤台中学の少女が立っていた。上条は土御門を踏み台にして人混みを飛び越え、少女を抱えて危険地帯から救出した。

しかし爆風によってポール籠の進路が変わり、上条たちへ襲いかかった。その直前、御坂美琴の超電磁砲が放たれ、ポール籠は真っ二つに破壊された。

御坂との遭遇と誤認

少女を助けた上条は、美琴から雷撃による攻撃を受けながらも応戦し、救出した少女を退避させた。

その後、七本目のポール籠に貼られた厚紙を見つけた上条は、それを迎撃術式の正体だと思い込んだ。美琴がその場所へ触れようとしたため、上条は危険を伝えようと必死に説得した。

しかし美琴は事情を理解できず、上条の言葉に戸惑うばかりだった。上条は彼女を危険から遠ざけようと押し倒し、体調の変化まで確認したが、実際には厚紙はただの備品名札であり、『速記原典』ではなかった。

吹寄制理の被害

競技が中断される中、運営委員の吹寄制理が倒れたポール籠を支えようとして八本目のポールへ手を伸ばした。

その支柱には本物の『速記原典』が貼り付けられていた。吹寄が触れた瞬間、迎撃術式が発動し、彼女は力なく倒れ込んだ。

厚紙には『Wind Symbol』という文字が記されており、上条はそれが本物の迎撃術式であることを悟った。

吹寄の救護と上条の怒り

土御門の指示を受けた上条は、吹寄の背中へ右手を当てて術式を打ち消した。しかし吹寄の状態はすぐには回復せず、重度の日射病に似た症状のまま意識を失っていた。

運営委員や教師たちが駆け寄り、吹寄は救護のため運ばれていった。

その様子を見た上条は怒りを募らせ、八本目のポールに貼られた『速記原典』を右手で破壊した。そして無関係な人々を巻き込むオリアナ=トムソンに対し、自らの手でその企みを打ち砕くことを決意した。

行間 二

病院へ搬送された吹寄制理

朦朧とする意識の中での自己分析

吹寄制理は担架で病院へ運ばれながら、朦朧とした意識の中で自分の状況を認識していた。しかし周囲の声は上手く聞き取れず、断片的に聞こえた日射病という言葉だけが強く印象に残った。

吹寄は運営委員として応急処置の知識を持っていたため、日射病の危険性を理解していた。十分な水分補給や体調管理を行っていたにもかかわらず倒れた理由を考え、無意識のうちに抱えていた緊張が原因だったのかもしれないと思い至った。

運営委員としての後悔

吹寄は、大覇星祭のために多くの時間と努力を費やしてきたことを思い返した。運営委員たちと協力して準備を進め、競技運営を学び、成功のために尽力してきたにもかかわらず、自分が倒れたことで周囲へ迷惑をかけてしまったと感じていた。

その結果、自分は競技を台無しにしただけだと考え、これ以上迷惑をかけないためにも大覇星祭から退場すべきだと思った。

上条当麻への違和感と願い

一方で吹寄は、自分が倒れた際に上条当麻が見せた激しい反応を思い出していた。単なる日射病に対する驚きではなく、何か予想外の事態が起きたような表情だったことが気に掛かっていた。

上条が何を知っていたのか、何を後悔していたのか知りたいと思う一方で、あの表情のまま大覇星祭を過ごし続けることを嫌だと感じていた。上条個人への好悪ではなく、自分が準備に携わった祭典を誰もが楽しんでほしいという思いからだった。

死への恐怖と医師との対面

病院へ運び込まれた吹寄は、頭痛や寒気に苦しみながら、自分の状態が重度の日射病による危険な段階に達していることを断片的に理解していた。

意識が薄れていく中で死への恐怖を感じた吹寄は、自分が助かるのかと医師へ問いかけた。

カエル顔の医師の言葉

吹寄の前に現れたカエルのような顔立ちの医師は、慌ただしく指示を出しながらも彼女の問いに応えた。

医師は絶対的な自信と安心感を与える笑みを浮かべながら、自分を誰だと思っているのかと告げた。その言葉は、不安に包まれていた吹寄の耳へはっきりと届いた。

第四章 戦いの結末は勝利か否か Being_Unsettled.

1

迎撃術式解除後のステイル

自らの未熟さへの反省

ステイル=マグヌスは自律バス整備場の死角に座り込み、自身の不甲斐なさを振り返っていた。

かつて上条当麻に『魔女狩りの王』を破られた時と同じように、自分は切り札を失うと急激に弱くなると痛感していた。その後も対策は講じてきたものの、それは切り札を守るための工夫に過ぎず、自身を根本的に鍛える努力は不足していたのではないかと考えた。

さらに今回の失態によって、本当に守るべき相手を守れるのかという不安も抱いていた。

迎撃術式の解除確認

その時、土御門元春から電話が入った。上条当麻がオリアナの『速記原典』を破壊したため、体調の変化を確認してほしいという連絡だった。

ステイルはルーンカードを取り出し、慎重に術式を発動した。すると指先に炎が灯り、これまで襲っていた迎撃術式の妨害も感じられなかった。

その結果、迎撃術式の影響は消えており、問題なく魔術を使える状態に戻っていることを確認した。

競技場で起きた被害

土御門は続けて、『理派四陣』の探索術式を起動するよう依頼した。

その際、ステイルは競技場へ潜入している上条たちの状況を案じたが、土御門は既に競技場の外へ出ていると説明した。競技中に生徒が一人倒れ、重度の日射病として搬送されたため、その介抱を装って退場したのである。

さらに上条が荒れているかと尋ねたステイルに対し、土御門は反撃に移らなければ倒れた生徒へ申し訳が立たないと答えた。その声には普段の軽さがなく、事態を重く受け止めている様子がうかがえた。

上条への理解と探索開始

通話を終えたステイルは、誰も完璧ではなく、上条当麻でさえ失敗することがあると考えた。

そして今、上条自身が誰かを救えなかったことを最も悔いているはずだと理解したため、それ以上は何も言わず、自分の役目を果たすことにした。

やがて四枚の折り紙が回転を始め、『理派四陣』の魔法陣が起動した。ステイルはオリアナ=トムソンの居場所を探るため、探索術式を発動させたのであった。

2

オリアナ追跡と対峙

オリアナの動揺と移動

オリアナ=トムソンは人混みの中で電光掲示板を見上げ、急病人の発生によって競技が中断されたことを確認した。

表向きは単なる急病人の発生に過ぎないが、彼女にとっては予想外の展開であった。緊張をにじませながらも、やるべきことがあると判断し、その場を離れて移動を開始した。

探索術式による追跡

一方、上条当麻と土御門元春は、ステイル=マグヌスが発動した探索術式によってオリアナの居場所を特定していた。

地下鉄の二日駅付近にいるとの報告を受けた二人は急いで引き返し、北へ向かうオリアナを発見した。オリアナも追跡に気づき、脇道へ逃走したため、二人はその後を追った。

自律バスによる逃走と阻止

逃走したオリアナは自律バスへ乗り込み、そのまま離脱しようとした。

上条は追いつけず焦るが、土御門は整備場でステイルが仕掛けていたルーンを利用することを思いついた。ステイルが遠隔で術式を発動すると、自律バスは爆発を起こして横転し、炎に包まれた。

しかしオリアナは単語帳のページを利用した術式を発動し、霧を伴う風で炎を完全に消火した。濡れた姿で現れた彼女は、平然と冗談を口にしていた。

吹寄の被害を巡る対立

上条は、オリアナの術式によって吹寄制理が倒れたことを問い詰めた。

オリアナは一般人を傷つけるつもりはなかったと語りながらも、自らの行動を悔いる様子は見せなかった。その態度に対し、上条は怒りを抑えながら追及を続けた。

土御門への新たな攻撃

オリアナは単語帳のページを破り、術式を発動した。

直後に土御門の体が大きく折れ曲がり、そのまま地面へ崩れ落ちた。術式は火属性の回復や再生の象徴を逆利用し、一定以上の傷を負った人間を昏倒させるものだった。

既に負傷していた土御門は耐えきれず倒れ、上条が幻想殺しで術式を打ち消そうとしても効果は消えなかった。大本となるページを破壊しなければ解除できない術式だったのである。

上条の怒り

土御門を倒したオリアナは、助けたければ自分を倒せと挑発した。

上条は土御門やステイル、そして吹寄制理が本来なら大覇星祭を楽しめたはずだと考えた。彼らが傷ついたのはオリアナの行動が原因であり、その犠牲の上に成り立つ『刺突杭剣』の価値など認められないと断言した。

誰かが傷つく結果しか生まないのであれば、自分の手で『刺突杭剣』を破壊すると宣言した。

戦闘開始

それでもオリアナは上条の言葉を意に介さず、仕事だからと軽く受け流した。

その態度によって上条の怒りは頂点に達した。人の命を弄ぶような振る舞いを許せなかった上条は、激しい怒声を上げながらオリアナへ一直線に突撃した。

オリアナはそんな上条の姿を見てもなお、楽しそうに笑い続けていた。

3

オリアナの連続攻撃

氷壁による攪乱

上条当麻はオリアナとの距離を一気に詰めたが、オリアナは単語帳のページを破り、緑色の『Wind Symbol』を発動した。

その直後、二人の間に巨大な氷壁が出現した。上条は迷わず右拳で氷壁を粉砕したが、その先にいたオリアナの姿も砕け散った。氷壁は光の屈折を利用した幻影を生み出していたのである。

風刃と石刃による攻撃

幻影に気を取られた上条へ、オリアナは風の刃を放った。

上条は右手でそれを打ち消したが、その隙を突かれ、極薄の石刃によって頬を深く切り裂かれた。傷を負った上条は、土御門を倒した昏倒術式の存在を思い出し、危機感を抱いた。

影の剣による爆発

オリアナはさらに術式を切り替え、闇の剣を上条の影へ突き刺した。

すると影そのものが爆発し、上条の体は大きく吹き飛ばされた。上条は受け身を取りながら着地したが、土御門に使用された昏倒術式が発動しないことに困惑した。

オリアナは、一度使った術式を繰り返す趣味はないと語り、自らが膨大な種類の術式を使い分けている理由を明かした。

看板を使った近接攻撃

上条が再び接近しようとすると、オリアナは風で上条の体勢を崩した。

さらに巨大な看板を利用して顎へ強烈な一撃を叩き込み、続けて腹部にも打撃を与えた。上条は呼吸と意識を乱され、そのまま吹き飛ばされた。

さらに術式による爆発が追撃となり、上条は路上を転がるしかなかった。

術式の仕組みの説明

上条は、同じ術式を二度使わないにもかかわらず無数の攻撃手段を持つ理由を疑問に思った。

オリアナは、色や元素だけでなく、ページを咥える角度や星座の座相法則、ページ数による数秘術的要素まで組み合わせていることを説明した。

さらに、自らの原典は長時間維持できず短期間で消滅するため、常に新たな魔道書を書き続けていると語った。

最後通告

オリアナは新たなページを作り出し、『明色の切断斧』という術式を発動する準備を整えた。

そして上条へ、動けば死ぬが、動かなければ次の一手で降参させると宣告した。同時に地面には複雑な文様が広がり、不気味な振動音を立て始めた。

上条は恐怖を感じながらも、吹寄制理の言葉を思い出した。大覇星祭を成功させたいという思いを踏みにじられたまま終わらせるわけにはいかないと考えたのである。

上条の決意と突撃

上条は恐怖を押し殺し、拳を強く握り締めた。

敵がプロの魔術師であろうと関係ないと自らを奮い立たせ、吹寄が積み重ねてきた努力を無駄にしたくないという思いを再確認した。

そして雄叫びを上げながら前へ踏み出し、オリアナへ向かって再び突撃した。

同時に、オリアナは口に咥えていた厚紙を吐き捨て、術式を完全に発動させた。

4

真空刃の発動

オリアナ=トムソンは『明色の切断斧』を発動した。

地面に描かれた巨大な文様から二〇八本もの真空刃が真上へ噴き上がり、蜘蛛の巣のように広がる斬撃空間を形成した。本来は上条当麻を安全地帯へ閉じ込め、その後に昏倒させるつもりだったが、上条は警告を無視して前進したため、自ら刃の渦の中へ飛び込む形となった。

真空刃突破とオリアナの困惑

しかし上条は切断されなかった。

彼は斬撃が集中しない地点へ飛び込み、新たな安全地帯へ到達していた。さらに目の前の真空刃へ右拳を突き出すと、真空刃そのものが粉砕され、展開されていた全ての刃も連鎖的に破壊された。

理解不能な現象に戸惑いながらも、オリアナは次の術式を発動した。

昏睡の風の無効化

オリアナは『昏睡の風』を放った。

圧縮された風の槍は直撃した相手を昏倒させる術式だったが、上条は右拳でその先端を殴り飛ばし、術式を無効化した。

上条は着実に距離を縮め続け、オリアナは追い詰められながらも、なぜ攻撃が通用しないのかを必死に分析した。

術式の弱点の看破

その中でオリアナは、上条が自分の戦法の欠点を見抜いていることに気付いた。

オリアナは同じ魔術を二度使わないため、一度攻撃が行われた地点には同じ攻撃が再び来ない。上条はその法則を利用し、過去に攻撃された地点をなぞるように移動することで、次の攻撃の死角を見つけ出していたのである。

自らの工夫が逆に攻略の手掛かりとなっていた事実に、オリアナは驚きながらも笑みを浮かべた。

接近戦での決着

両者が至近距離に入ると、オリアナは看板を振り下ろして上条の頭部を狙った。

しかし上条は身をひねって回避し、看板はアスファルトへ叩き付けられた。その瞬間、上条は渾身の右拳を放ち、オリアナの顔面へ直撃させた。

激しい衝撃によってオリアナは道路上を大きく吹き飛ばされ、転がっていった。

オリアナの反撃準備と撤退

上条は勝利を確信しかけたが、オリアナはすぐに起き上がった。

彼女は上条の一撃を評価しつつも、素人の拳としては上出来だった程度だと語った。そして単語帳を使って風の術式を発動し、自らの体を小型の竜巻で吹き上げて屋上へ退避した。

さらに『刺突杭剣』を上条側へ残したまま、その場を離れる選択を取った。

戦いの一時終了

上条は、重要なはずの『刺突杭剣』を置いて撤退した理由を問い掛けた。

しかしオリアナは、その理由を考えることも楽しみの一つだとだけ答え、建物の死角へ姿を消した。

去り際に、土御門元春へ掛けた昏倒術式は二〇分で自動的に解除されると告げると、声も姿も完全に消え去った。

上条は周囲を見回したが、オリアナの痕跡はどこにも残されていなかった。

5

刺突杭剣の処分を決意

土御門元春は昏倒したままで、しばらく目を覚まさない状態だった。

上条当麻はオリアナを追うか迷ったものの、土御門を放置できないことや、『刺突杭剣』とされる巨大な荷物を抱えての追跡が困難であることから、その場に留まることを選んだ。そして土御門の携帯電話を借り、ステイル=マグヌスへ連絡を取った。

ステイルの指示

ステイルは、上条の右手で『刺突杭剣』を破壊し、取引そのものを潰すべきだと指示した。

オリアナたちが報復のため学園都市を攻撃する可能性について上条が懸念を示したが、ステイルは学園都市が魔術師にとって危険な敵地である以上、取引失敗後は安全確保を優先して撤退するはずだと説明した。

上条はその判断に従い、『刺突杭剣』の破壊を決意した。

看板の正体を確かめる作業

上条は白い布で何重にも巻かれた荷物へ向かった。

確実に破壊できたか確認するため、まず布を取り外そうとした。布は頑丈に巻かれており苦戦したが、徐々に緩めて剥がしていった。

作業を続けながら、上条は『刺突杭剣』がどのような姿をしているのか考えていた。

刺突杭剣が存在しないという事実

しかし布の中から現れたのは、『刺突杭剣』ではなかった。

そこにあったのは学生が作ったような細長い看板であり、可愛らしい文字でアイスクリーム屋さんと書かれているだけだった。

上条は、これまで『刺突杭剣』が看板に偽装されていると考えていたが、その前提が完全に崩れ去ったことに気付いた。

深まる疑問

『刺突杭剣』が存在しなかったことで、上条の疑問は一気に膨れ上がった。

本物の『刺突杭剣』はどこにあるのか。オリアナは何のために上条たちの前へ姿を現し、そして逃げたのか。ステイルや土御門の前提は正しかったのか。そして、本当に『刺突杭剣』の取引そのものが行われるのか。

答えを知る者はその場におらず、土御門は昏倒したまま、オリアナも姿を消していた。

上条は呆然としながら、一体何がどうなっているのかと困惑を深めていた。

行間 三

1

オリアナの着替えと状況整理

オリアナ=トムソンは、大手デパート近くに設営されたクロークセンターを訪れた。

大覇星祭期間中はコインロッカーが停止されているため、彼女は預けていた手提げバッグを受け取った。バッグの中身は貴重品ではなく着替えであり、看板を失った今の塗装業者姿では目立つため、服装を変える必要があったのである。

戦闘によって作業服のボタンも破損しており、そのまま行動するには不都合が生じていた。

消費した術式への思い

歩きながらオリアナは先ほどの戦闘を振り返っていた。

彼女は一度使った魔術を二度と使わないという方針を持っているため、本来は術式を温存しながら戦う。しかし今回の戦闘と逃走では予定外に複数の大技を使用してしまった。

優れた術式であるほど二度と使えなくなることへの惜しさはあったが、それだけの相手と出会えた結果でもあると受け止めていた。

リドヴィアへの報告

人目のない路地へ入ったオリアナは、その場で着替えを始めた。

同時に単語帳の術式を使い、壁面へ文字を表示する形でリドヴィア=ロレンツェッティとの通信を開始した。

オリアナは第一段階が完了し、必要な確認事項も終えていると報告した。その過程で上条当麻との戦闘や服の破損などについて軽い調子で語ったが、リドヴィアは呆れ気味の反応を示していた。

戦闘による影響

リドヴィアから損傷の有無を問われたオリアナは、計画への支障はないと断言した。

しかしその一方で、上条の一撃による影響が全くないとは言い切れず、自分の芯を打ち抜かれたかもしれないと認めた。実際に体がふらつく場面もあったが、それでも作戦続行に問題はないと判断していた。

刺突杭剣の真相

着替えを続ける中で、オリアナは重要な事実を明かした。

彼女が持ち運んでいた看板は回収されており、その中身がダミーであることも相手側に知られたはずだと語った。つまり、上条たちが追っていた看板には本物の『刺突杭剣』は入っていなかったのである。

それでもオリアナは取引そのものに影響はなく、状況は計画の範囲内だと説明した。

取引成功への確信

リドヴィアとの会話を終えたオリアナは、取引への決意を改めて口にした。

誰にも取引を妨害させるつもりはなく、妨害できる者もいないと断言した。そして、この取引によって皆が幸せになるのならなおさら成功させるべきだと考えていた。

オリアナは青く澄んだ学園都市の空を見上げながら、揺るぎない自信と共にその決意を胸に抱いていた。

2

刺突杭剣の正体判明

学園都市のアレイスターとの会話を終えた後、イギリス清教最大主教ローラ=スチュアートは、大英博物館から提出された『刺突杭剣』に関する報告書を確認していた。

報告書を作成したのは、大英博物館の保管員であり考古学者でもあるチャールズ=コンダーであった。彼は長年展示されていた『刺突杭剣』のレプリカについて再調査を行い、従来の認識が誤りだった可能性を報告した。

伝承の交差という考古学的見解

チャールズは、歴史上には本来の用途が不明な物品へ後世の人々が意味や伝承を付け加えていく事例が数多く存在すると説明した。

ナスカの地上絵やモアイ像などを例に挙げながら、『刺突杭剣』も同様に、本来の用途が不明な物品へ後世の伝承が積み重なった結果ではないかと推測した。

ローラは、ローマ正教側が大理石の剣へ都合の良い伝承を付与した可能性を考えたが、それも確証のない憶測に過ぎないと判断した。

刺突杭剣の否定

考古学的な調査の結果、チャールズは『刺突杭剣』という霊装そのものが最初から存在しなかった可能性を示した。

少なくとも、伝承に語られるような、聖人を確実に殺害する力を持つ霊装ではないと結論づけたのである。

この報告を受けたローラは、学園都市で行われようとしている取引の重要性も低下したと考え、一旦は警戒を緩めた。

使徒十字の正体

しかしチャールズはさらに調査結果を続けた。

彼によれば、問題の大理石製の物品は剣ではなく、逆さにした十字架であった。現地では『使徒十字』と呼ばれていたものであるという。

その言葉を聞いた瞬間、ローラは激しく動揺した。

ローラの危機感

『使徒十字』とは、使徒ペテロに由来する十字架であり、十字教世界において極めて重要な聖遺物であった。

それは『刺突杭剣』など比較にならない規模の霊装であり、歴史上存在すると伝えられながらも、ローマ正教が一度も公開を許さなかった伝説級の存在であった。

ローラは、もし学園都市で行われようとしている取引の対象が『刺突杭剣』ではなく『使徒十字』であるならば、取引の意味そのものが根本から変わると悟った。

取引の真の危険性

ローラは、『使徒十字』が文献通りの力を持つならば、取引の完了と同時に学園都市が崩壊する可能性すらあると考えた。

事態の深刻さを理解した彼女は、その危険性に戦慄しながらも、同時に急激に変化する状況を利用して最大の利益を得る方法を模索していた。

ローラは唾を飲み込みながら、壮絶な笑みを浮かべて思考を巡らせていた。

3

使徒十字の正体

ステイル=マグヌスは携帯電話で報告を受けた後、上条当麻と土御門元春に『使徒十字』について説明した。

それはペテロの十字架を意味するものであり、十二使徒の一人であるペテロの墓に建てられた十字架に由来していた。ペテロの墓の上には後に聖ピエトロ大聖堂が建てられ、その地がローマ教皇領、ひいては現在のバチカンの起点となったのである。

聖地を生み出す霊装の力

ステイルは、ローマ教皇領が『使徒十字』を立てた場所から始まったのなら、その逆も成立すると説明した。

つまり『使徒十字』を立てた場所は例外なくローマ正教の支配下となるのであり、それが学園都市であっても変わらないというのである。

土御門は、『刺突杭剣』に伝わる竜を地面へ縫い止めるという伝承も、本来は天使や悪魔をこの土地へ繋ぎ止め、聖地へ変える意味を持っていたのではないかと語った。

ローマ正教に都合の良い世界

上条が支配の意味を尋ねると、土御門とステイルは『使徒十字』の真の効果を説明した。

それはローマ正教徒に幸運を与えるだけではなく、周囲の人々までもローマ正教にとって都合の良い状況を幸福だと受け入れさせる力であった。

ローマ正教徒が勝利すれば敗者も納得し、理不尽な出来事が起きても人々は不幸ではなく幸福だと感じてしまう。その結果、ローマ正教にとって理想的な環境が形成されるのであった。

幸福のすり替えの例

土御門は聖マーティンの逸話を例に挙げた。

異教徒たちが切り倒したご神木が聖マーティンではなく農民たちの方へ倒れたにもかかわらず、人々はそれを奇跡として受け入れ、十字教へ改宗したという話である。

その結果、異教徒たちの文化や伝統は失われたにもかかわらず、彼らは幸福を感じていた。土御門とステイルは、『使徒十字』も同様に幸福の価値をすり替え、人々へ理不尽を受け入れさせる力を持つと説明した。

取引の真の目的

上条は、オリアナたちが何を狙っているのかを尋ねた。

それに対しステイルは、科学サイドと魔術サイドで均衡している世界において、科学サイドの中心である学園都市がローマ正教の庇護下へ入れば、世界の勢力図が一気に崩れると語った。

学園都市そのものがローマ正教にとって都合良く動くようになり、結果としてローマ正教は科学と魔術の両方を掌握することになるのである。

世界支配を阻止する決意

ステイルは、この取引は単なる霊装の受け渡しではなく、学園都市と世界の支配権そのものを巡る計画だと結論づけた。

さらに、この取引はローマ正教が他勢力へ渡すものではなく、自らの手で自らへ送る計画だったと明かした。

世界がローマ正教一極支配へ傾く事態を防ぐため、ステイルは取引を必ず阻止すると宣言した。上条当麻と土御門元春もその決意に同意し、ローマ正教の幻想を打ち砕くことを誓った。

4

上条刀夜たちの昼食場所探し

上条刀夜と上条詩菜は、大覇星祭の昼休みに昼食場所を探して街を歩いていた。

大覇星祭では競技会場ごとに移動が必要なため、昼食を取る場所の確保も重要であった。刀夜は詩菜の手作り弁当をできるだけ良い場所で食べたいと考え、当麻も喜ぶだろうと語りながら場所探しを続けた。

美琴と女子大生の会話

刀夜は以前出会った女子大生と、その隣を歩く御坂美琴を見つけた。

女子大生は、美琴の父親が来られなかったことや、美琴が気になる男の子の存在についてからかい続けた。美琴は顔を真っ赤にして否定しながら反発したが、女子大生は楽しそうに追及を続けた。

刀夜は、美琴が電撃を放ちながら怒る様子を見て、改めて学園都市らしさを感じていた。

昼食への誘い

女子大生は刀夜たちに気付き、昼食へ誘った。

弁当の持ち込みも可能な喫茶店があると説明し、美琴を巻き込みながら同行を提案した。刀夜は詩菜を長時間歩かせるより良いと判断し、その申し出を受け入れた。

しかし詩菜は不機嫌そうな様子を見せ、刀夜は理由が分からないまま慌てることになった。

オリアナとの遭遇

詩菜から逃げるように後退した刀夜は、誤って一人の女性とぶつかった。

その女性は金髪の西洋系の美貌を持つオリアナ=トムソンであった。刀夜は謝罪したが、オリアナは気にしていないと軽く応じると、単語帳を指で弄びながら人混みの中へ消えていった。

際立った容姿と存在感を持ちながらも、誰にも気づかれないまま姿を消したのである。

親子の共通点と迫る危機

刀夜はオリアナが去った方向を見つめていたが、その様子を見た詩菜はさらに不機嫌になった。

刀夜は慌てて弁明したものの途中から謝罪へ変わり、その姿を見た美琴はやはり親子なのねと呟いた。

一方で刀夜たちは、学園都市で進行している危機にも、それを止めるために当麻が奔走していることにも気づいていなかった。危機はすでに彼らのすぐ近くまで迫っていたが、大覇星祭は科学と魔術の両面でさらに盛り上がりを見せていた。

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