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小説「Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 09」感想・ネタバレ

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Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 9の表紙画像(レビュー記事導入用) 未分類

Dジェネシス8巻レビュー
Dジェネシス10巻レビュー

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  1. どんな本?
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 高レベル放射性廃棄物
    2. ダンジョン産食物の排斥
    3. ステータス計測デバイス
    4. 異能を持つ佐山の転職
    5. 御殿通工の株価高騰
    6. スキルオーブのオークション
    7. プルトニウムドロップ事件
  6. 登場キャラクター
    1. Dパワーズ・常磐ラボ
      1. 芳村圭吾
      2. 三好梓
      3. 六条小麦
      4. 三代絵里
      5. 鳴瀬翠
      6. 中島治臣
      7. 都築縁
      8. 小野寺志帆
      9. 桜木綾乃
      10. 高良涼介
    2. 従魔・未知の存在
      1. ロザリオ
      2. ドゥルトウィン
      3. カヴァス
      4. アイスレム
      5. グラス
      6. グレイサット
      7. アヌビス
      8. タイラー博士
      9. ダンつくちゃん
    3. JDA(日本ダンジョン協会)
      1. 鳴瀬美晴
      2. 斎賀
      3. 坂井
      4. 彩月美玖
      5. 佐山繁
      6. 橘三千代
      7. 真壁
      8. 九条紗香
      9. デミル=アンダーソン
      10. 桜井
    4. 日本政府・自衛隊・警察関係者
      1. 寺沢剛健
      2. 君津伊織
      3. 田中
      4. 村北
      5. 樺島
      6. 正田
      7. 篠崎
    5. アメリカ合衆国・軍・DAD
      1. フェネル
      2. アルバート=ハンドラー
      3. ハガティ
      4. サイモン=ガーシュウィン
      5. キャサリン・ミッチェル
      6. ナタリー
      7. メイソン
    6. WDA・国連機関
      1. ネイサン=アーガイル
      2. シルクリー=サブウェイ
    7. 裏社会・活動家・傭兵部隊
      1. ラーテル
      2. ファシーラ
      3. バースト
      4. スカウト
      5. イークス
      6. シュート
      7. ショーファー
      8. ルネ=ランベール(丸山光雄)
      9. デヴィッド
      10. イザベラ
      11. ハウンド
      12. カイ
      13. アラン=スミシー
      14. コウ
    8. 民間探索者・マスコミ・その他の人物
      1. 吉田
      2. 氷室
      3. テンコー
      4. デニス=タカオカ
      5. 斎藤涼子
      6. 御劔遙
      7. 高田
      8. 不破
      9. ディーン=マクナマラ
      10. ポール=アトキンス
      11. リチャード=ファインドマン
      12. ダイアナ=プリンス
  7. 展開まとめ
    1. 序章 プロローグ
    2. 第11章 トキワ・イン・ニューヨーク
    3. 第12章 首都消失?
    4. 終章 エピローグ
  8. 同シリーズ
    1. Dジェネシス ダンジョンができて3年
  9. その他フィクション

どんな本?

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』は、之貫紀 氏による日本のライトノベル。
この物語は、世界各地に「ダンジョン」が出現してから3年後の世界を描いている。

主人公の芳村は、元々は社畜として働いていたが、ある偶然からダンジョン探索者の世界ランキング1位になる。
彼は退職し、ダンジョンに潜ることを決意するが、手に入れた未知のスキルに振り回され、ダンジョン攻略の最前線に関わることになる。

この作品は、投稿小説サイト「小説家になろう」で2019年6月1日から投稿が開始され、その後KADOKAWAのエンターブレインレーベルより2020年2月から刊行されている。
また、『月刊コンプエース』で平未夜 氏の作画により漫画化され、連載が開始されている

読んだ本のタイトル

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 09
著者:之貫紀
イラスト:ttl

Bookliveで購入 BOOK☆WALKERで購入

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あらすじ・内容

都市消滅!?

NYイベントでのデータ収集やステータス計測デバイスの発売、
ついでに一坪農園の管理引き継ぎなどで、てんてこ舞いの芳村と三好。
そんな中、二人が危惧していたとおり、
プルトニウムをドロップさせようとする勢力が現れる。
その確認を依頼されたDパワーズは、二十四層へと急ぎ入ダンするが――
プルトニウムのドロップをもくろむ組織の動機とは?
果たして二人はプルトニウムのドロップを阻止できるのか?

風雲急を告げる緊迫の第9巻!

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 09

感想

今巻では、テロリストが代々木ダンジョンからプルトニウムを持ち出し、東京で核爆発を企てるという緊迫した展開が描かれていた。
テロに加担した傭兵団が〈マイニング〉を取得し、核物質を手に入れるシーンはお宝を見つけるワクワク感が、脅威を産出するシーンへとほんへと変貌してダンジョンの恐ろしさを教えてくれた。
そんな事をする彼らの動機や背景が丁寧に描かれており、物語の深みが増していた。

一方で、芳村と三好の行動は計画的でありながらも予想外の展開が続き、飽きさせなかった。特に、ダンつくちゃんへの依頼を通じて世界中の核物質が消滅するという斜め上の解決方法は「ありえねー」と思うほどの驚きであった。
現代社会の技術とファンタジーが融合した新しいSFの形を見せてくれた。
そして、深まるダンつくちゃんの謎。
それほどの存在に権力者や宗教関係者達は耐えられるのだろうか?

歴戦の傭兵なのに短絡的な行動には時代の流れに取り残された者の盲目さを感じ。

古い価値観を持ち続けて、今の時代に適応できない旧人類と新しい価値観を持つ探索者たちの対比が、過渡期の現代を象徴していると感じた。

物語の終盤では、芳村と三好が世界の危機をあんな手で乗り越え、東京の壊滅を防ぐ姿が描かれ、感動的なはずが呆気なく終わってしまった。
あのシーンで、芳村ならもっと簡単に解決できたのではないかとも思ったが、素人が歴戦の傭兵に挑むにはアレでも良いような気がする。

全体として、今巻は物語が大きく進展し、次巻への期待を高める内容であった。
核の脅威が消えた世界での新たな展開に注目したいが、、
リアルでこんな事になったら、色々と燻ってるのが問題が着火して戦争が起こそそうで恐ろしい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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Dジェネシス8巻レビュー
Dジェネシス10巻レビュー

考察・解説

高レベル放射性廃棄物

本作における高レベル放射性廃棄物は、アメリカ政府がダンジョンの未知の性質を究極のゴミ箱として利用し、現実の深刻な環境問題と莫大な処理費用を強引に解決しようとする極秘計画の対象として描かれている。その背景とダンジョンを利用した処理計画の実態について、いくつかのポイントに整理して解説する。

ハンフォード・サイトの負の遺産と莫大な処理費用
アメリカで最も汚染された地域とされるハンフォード・サイトは、以下のような極めて深刻な課題を抱えていた。

  • 地下には2億リットルを超える高レベル放射性廃棄物が埋められており、今も外部への漏出が続いている。
  • 通常、高濃度汚染水や汚泥はガラス固化して30年ほど冷却保存した後に地層処分する手順を踏むが、そのための処理施設の稼働は大幅に遅れていた。
  • ハンドラー政権はこの処理にかかる400億ドルという天文学的な費用を圧縮するため、通常の手順を無視した代替案を模索していた。

ザ・リングにおける完全処理の発見
予算圧縮の極秘手段として目を付けられたのが、ネバダ州に存在するダンジョン「ザ・リング」である。政府は以下の実験結果を経て、ダンジョンを究極の廃棄物処理場として利用し始めた。

  • 放射性廃棄物を詰めた乾式キャスクを試験的にダンジョンの地下へ下ろし、空間線量を測定した。
  • キャスクを設置してしばらくすると一時的に放射線量が急上昇し、その後完全にゼロへと戻る不可解な現象が確認された。
  • このプロセスを繰り返した結果、キャスクは何者かに食い破られ、中身の廃棄物もろとも完全に消滅したと判断された。

倫理の欠如と人類の傲慢さ
消滅現象の再現性を確認したアメリカ政府は、極めて乱暴な投棄作戦を本格的に始動させた。

  • ガラス固化すらされていない剥き出しの高レベル放射性廃棄物が入ったドラム缶を、ローダーダンプの荷台から直接ダンジョンの地下150メートル先へ落下させる処理が実行された。
  • 現場で作業にあたったフェネル特技兵らは、ガラスキャニスターでの固化すら行わない雑な廃棄手順に強い不安と倫理的な懸念を抱いていた。
  • 廃棄物の落下音が静まり返った深夜の砂漠には不気味な静寂が広がり、何者かが人類の犯す罪を闇からじっと見つめているような恐怖が描かれている。

まとめ
高レベル放射性廃棄物のダンジョン投棄計画は、国家の財政負担や環境汚染という現実の尻拭いをするために、未知の超常存在を利用しようとする人類の傲慢さを象徴している。ダンジョンがスライムやシステムによって廃棄物を分解・還元する仕組みは、一見すると完璧なゴミ箱に見える。しかし、その深淵で何が起きているかを把握しないまま一方的な投棄を続ける行為は、いずれ人類に予測不可能な形で跳ね返ってくる危険性を孕んでいる。

ダンジョン産食物の排斥

本作におけるダンジョン産食物の排斥は、無限の食糧供給や能力向上の可能性を秘めた食物に対し、既存の権益を守ろうとする勢力が裏社会の活動家を金で操り、人々の不安や被害妄想を利用して意図的に引き起こしたネガティブキャンペーンとして描かれている。その排斥運動がどのように組織され、どのような結果を招いたのかについて整理して解説する。

巨額の資金とアラン=スミシーの暗躍
ダンジョン農業の存在に危機感を抱く穀物メジャーなどの勢力の意向を受け、付けひげにサングラス姿の謎の男がニューヨークの酒場で暗躍する。その手法や背景には以下のような特徴がある。

  • 男はアメリカ最大の銀行に「アラン=スミシー」という偽名で口座を所有していた。
  • かつて遺伝子組み換え作物の研究施設を攻撃し、FBIから環境テロリストに認定されていた「カイ」という男に接触した。
  • カイに対し、環境運動への寄付という名目で300万ドルの小切手を渡し、ダンジョン産食物の危険性を扇動するよう依頼した。

環境保護から反探索者・移民排斥へのすり替え
依頼を受けたカイであったが、直接的な食品反対運動では大衆を動員しにくいという現状に直面した。そこで彼は、運動の矛先を以下のように変化させていく。

  • ダンジョン産食物を摂取すると、人間のステータスや能力が向上するという特性に着目した。
  • 純粋な反ダンジョン運動ではなく、反探索者感情を抱く過激派グループ(リーダーのコウが率いる集団)を金で雇用した。
  • 探索者を「一般市民から仕事や居場所を奪う害虫」と定義し、食物への反発を、不法移民排斥や劣等感に基づくヘイトクライムへとすり替えて煽動した。

ジャビッツ・センターでのデモと「say NO to DO」
排斥運動の具体的なターゲットとなったのは、ニューヨークのジャビッツ・センターで開催されたDパワーズ協賛の大規模なステータス計測イベントであった。

  • コウの率いる集団は会場前へ集まり、横断幕を掲げてデモ活動を展開した。
  • 横断幕には、遺伝子組み換え食品(GMO)反対運動のフレーズをもじった「say NO to DO(Dungeon Organism)」というスローガンが記されていた。
  • しかし、この主張は会場を訪れていた探索者たちから「ゴブリンの保護でも訴えているのか」と揶揄され、当時は冗談半分に受け取られるにとどまっていた。

被害妄想と無差別テロへの発展
金によって仕組まれた歪んだ煽動は、やがてコントロールを失い、最悪の形で暴走することになる。

  • 街頭演説に影響され、社会への被害妄想を募らせた一人の男が、自動小銃を隠し持ってイベント会場内に乱入した。
  • 乱入の動機は、ダンジョン食品の安全性に対する懸念ではなく、「ステータスという勝手な秤で俺たちを貶めようとしている」という身勝手な劣等感であった。
  • WDAのネイサン博士による必死の説得も虚しく、男は暴走を続け、ステータス計測デバイスに向けて銃を乱射する惨劇を引き起こした。

まとめ
ダンジョン産食物の排斥運動は、純粋な食の安全を脅かすものではなく、大資本の利益防衛のために仕組まれた陰謀である。その過程において、人々の劣等感やヘイトクライムの感情が巧みに利用され、最終的には無差別テロにまで発展する人間の狂気を浮き彫りにした。未知の資源がもたらす恩恵に対して、既存社会の権益や人々の歪んだ感情が結びついたとき、いかに容易に暴力的で破滅的な事態が引き起こされるかを示す象徴的なエピソードと言える。

ステータス計測デバイス

本作における「ステータス計測デバイス(通称:SMD)」は、Dパワーズの依頼により常磐ラボが開発した画期的な機器である。人間やモンスターの能力を客観的な数値として可視化するこの発明は、社会や経済に計り知れない影響を与えると同時に、裏ではさらなる秘密機能を持つキーアイテムとして描かれている。ステータス計測デバイスに関する主要なポイントを以下に整理して解説する。

デバイスの仕組みとサーバー通信
SMDはスピードガンのような形状をしたハンディタイプの機器であり、その動作システムや運用には以下のような特徴がある。

  • 対象のデータを取得し、クラウド経由でDパワーズ事務所に設置されたIBMのメインフレームサーバーに送信してステータスを算出する。
  • 電波の届かないダンジョン内ではリアルタイムの通信は行えない。しかし、事前に計測済みの対象であれば、二度目の計測時に最初のデータを利用して即座に結果を表示させることが可能である。
  • 転売を防止するために世界ダンジョン協会(WDA)のIDと紐付けられており、2年目以降はサーバー接続のための使用料(500円から)が発生するビジネスモデルとなっている。

異常な需要とパーティチェッカーの爆売れ
個人向けの「EASY版」(約35万円)と複数人登録可能な「PRO版」(約280万円から)が用意されたが、市場の反応は異常なものであった。

  • 予約開始からわずか8秒で予定台数に達し、バックオーダーが1年分を超えるという凄まじい反響を呼んだ。
  • 探索者試験の不正を防ぐために派生開発された「パーティチェッカー」は、19万8千円という仮の価格設定のまま販売されたにもかかわらず、わずか2分で完売した。
  • その後も予約は増え続け、キャンセル待ちが620万台(約1兆2千億円規模)に達するという、常軌を逸した経済現象を引き起こしている。

御殿通工株の暴騰と三好の仕手戦
SMDの主要センサーである「D132」は、老舗電機メーカーである御殿山通信工業(御殿通工)が特許と製造権を保有している。このデバイスの製造を巡り、以下のような仕手戦が展開された。

  • 三好は、JDAに預けていた試験用のDカードチェッカーが何者かに盗まれ、中身を解析した勢力が御殿通工株を買い漁ることを事前に見越していた。
  • そのため、彼女は自ら年末から密かに同社の株を500億円分も買い集めていた。
  • 結果として株価は購入時の約20倍にまで急騰し、Dパワーズは莫大な利益を手にした。

隠された裏機能:スキルの識別
SMDの最も恐ろしい点は、単なるステータス数値の測定にとどまらず、所有しているスキルを識別できる可能性を秘めていることである。

  • 計測データの複雑なモデルを解析する過程で、特定のスキル(マイニングや水魔法、火魔法など)を所有していると、モデルの特定の場所に「突起(ひずみ)」が現れることが判明した。
  • 作中では、代々木ダンジョンでプルトニウムをドロップさせようとしたテロリストを特定するため、Dパワーズは鳴瀬に渡すリファレンス機に「マイニング所持者にはステータス画面に『*』を表示する」という裏機能を密かに実装し、捜査に活用した。

まとめ
ステータス計測デバイス(SMD)は、人類の能力を可視化するという表向きの技術革命にとどまらない。その驚異的な需要は社会現象となり、関連企業の株価暴騰を通じて巨大な富を生み出した。さらに、所有しているスキルさえも識別できる裏の機能は、個人の秘匿された能力を丸裸にしてしまう危険性を孕んでいる。SMDは、取り扱い方によって社会の仕組みやパワーバランスを激変させかねない、極めて強力なテクノロジーとして描かれている。

異能を持つ佐山の転職

本作における農研機構の研究員である佐山繁のJDA(日本ダンジョン協会)への転職は、彼が偶然獲得した規格外の異能を巡るJDAの思惑と、佐山自身の研究者としての知的好奇心が交錯するエピソードとして描かれている。その転職の経緯と裏事情について、いくつかのポイントに整理して解説する。

転職の背景と佐山が獲得した異能
佐山は元々、農研機構の果樹茶業研究部門に所属する研究員であった。しかし、代々木ダンジョン二十一層でエリアボスである森の王を討伐したことで、驚異的な能力を手に入れる。

  • 植物の成長速度や局所的な天候を操作できる森の王のスキルを獲得した。
  • 討伐作戦の過程において、Dパワーズから超希少スキルである収納庫を与えられた。
  • この収納庫スキルは、自衛隊の10式戦車に匹敵する約44トンもの質量を格納できる規格外の容量を持っている。

JDAの思惑と破格の待遇に隠された裏事情
JDAのダンジョン管理課は、佐山の持つ能力を高く評価し、強引とも言える転職交渉を進めた。その裏には以下のような戦略的な思惑が存在した。

  • 今後本格化する三十二層などの深層セーフエリア開発において、佐山の収納庫スキルによる圧倒的な物資輸送能力が不可欠であった。
  • 無限食糧供給システムであるウケモチ・システムの担当や、FAO(国連食糧農業機関)などの国際機関との折衝窓口として、研究者としての経験と語学力を持つ佐山が適任と判断された。
  • JDAは佐山に対し、研究機関の理事長二人分に相当する破格の年俸を提示した。
  • 自身に使用されたスキルの市場価値が数十億円に上ることを知っていた佐山は、この待遇に驚愕して快諾した。
  • しかし、交渉にあたった斎賀課長は、この年俸を30年間支払い続けたとしても、収納庫の本来の価値からすれば極めて安価であり、JDAにとって非常に有利な契約であると計算していた。

佐山自身の研究者としての意欲と知的好奇心
佐山がJDAへの転職を決断した理由は、単に元の職場で居場所を失ったからだけではない。研究者としての強いモチベーションがそこにはあった。

  • ダンジョンにしか存在しない植物や、常識を覆す性質を持つ柑橘類など、未知の植物に溢れる環境に強く魅了されていた。
  • 自身の心境を、気分は牧野富太郎、あるいは南太平洋を目指したバンクスのようであると語っている。
  • ダンジョン農業の研究に対して、大きなやりがいと飽くなき知的好奇心を見出していた。

周囲の反応と使い潰しに対する懸念
JDAに入職した佐山を待ち受けていたのは、熱烈な歓迎と、彼の能力を過剰に利用しようとする組織の思惑であった。

  • ワイズマン(Dパワーズ)の紹介という、将来を約束されたような肩書きによって、ダンジョン管理課の女性職員たちから猛烈な歓迎を受け、戸惑いつつも囲い込まれた。
  • 一方で、JDAの上層部である真壁常務らは、佐山を非常に優秀なポーターという戦略資産として扱おうと画策した。
  • ガスタービン発電機のような大型設備を何度も往復して運ばせるなどの過酷な運用を計画した。
  • これに対し、斎賀課長や芳村らは、佐山に過度な負担を押し付けて使い潰してしまえば、嫌気がさして退職され、結果として大きな損失を被る危険性があると懸念している。

まとめ
佐山繁のJDAへの転職は、超希少な収納庫スキルと森の王のスキルを巡る、極めて政治的かつ経済的な価値のやり取りであった。JDA側は彼の能力を深層開発の切り札として破格の待遇で迎え入れ、佐山自身も未知の植物研究への情熱からこれを快諾した。しかし、その突出した輸送能力ゆえに、組織から使い潰される懸念も生じており、今後は彼の技術者としての尊厳と労働環境をいかに守るかが、JDAにとっても重要な課題となる。

御殿通工の株価高騰

本作における御殿山通信工業(御殿通工)の株価高騰は、ステータス計測デバイス(SMD)の登場に伴う特許部品の需要増を見越した水面下の情報戦と、Dパワーズの三好梓が仕掛けた桁外れの仕手戦として描かれている。この異常な株価高騰の背景と顛末について、以下のポイントに整理して解説する。

高騰の引き金となったD132センサーとデバイスの盗難
日本ダンジョン協会(JDA)に預けられていたSMDの一次試験用機器であるDカードチェッカーが、何者かによって精巧な偽物とすり替えられ、盗み出された。

  • SMDの主要センサーであるD132は、業績が低迷していた老舗の大手電機メーカーである御殿通工が特許と製造権を独占していた。
  • 三好は、機器を盗んだ勢力が中身を解析し、世界的な需要が見込まれるセンサーの存在に気付いて御殿通工の株を買い漁るだろうと事前に予測した。

三好の先読みと500億円の極秘買い付け
三好は、盗難を実行した勢力が株を買い集める前に先手を打ち、前年末から密かに御殿通工株を買い集めた。

  • 当時、御殿通工は配当削減などで下落基調と予測されており、手放したがっている株主が多く存在した。
  • 三好は大量保有報告書の提出義務が生じる5パーセント未満のギリギリのラインを狙った。
  • 500億円分(ピーク時で約6300万株)もの株を、720円から750円前後の価格帯ですべて吸収し続けた。

市場の困惑と約20倍への異常な価格上昇
株価は微動だにしないが取引量だけが異常に多いという不可解な状況は、兜町の証券関係者たちの間でも不気味なミステリーとして注目された。

  • その後、1月末頃から株価は急激な上昇基調に転じ、連日ストップ高を記録する勢いとなった。
  • SMDの予約と販売開始が目前に迫る頃には、株価は三好が購入した価格の約20倍である1万4700円にまで膨れ上がった。
  • 市場関係者の誰もが首を傾げる異常事態となった。

巨額の利益確定と卑怯者への意趣返し
三好にとってこの仕手戦は、自社のデバイスを盗み出して不当に利益をかすめ取ろうとした卑怯者たちへの痛烈な意趣返し、すなわち向こうずねを蹴っ飛ばすことであった。

  • SMD予約開始日である2月25日を天王山と見定めた三好は、相手の買い板の厚さに応じて売りを浴びせ、高値で次々と売り抜けた。
  • 結果として、500億円の投資は一時的に9000億円を超えるほどの価値となった。
  • これにより、Dパワーズに莫大な譲渡益をもたらすことになった。

まとめ
御殿通工の株価高騰は、新技術を狙う悪意ある勢力を逆手にとり、合法的かつ圧倒的な資金力で市場をコントロールした三好の恐るべき知略を証明した。同時に、Dパワーズが持つ桁外れの経済的影響力を示す象徴的なエピソードである。

スキルオーブのオークション

本作におけるスキルオーブのオークションは、Dパワーズが世界に対して規格外の影響力を行使する手段の一つである。その異常な高額取引が国家や裏社会の思惑を大きく振り回す要因として描かれている。オークションに関連する主なポイントについて、以下に整理して解説する。

Dパワーズによるオークションの再開と出品戦略
森の王事件などの対応に追われ、しばらくオークションを開催していなかったDパワーズ(芳村と三好)は、次回の開催に向けた準備を進めた。

  • 彼らの手元には超回復、水魔法、物理耐性、鑑定、不死、生命探知、マイニングなど、多数のスキルオーブのストックが存在していた。
  • 今回のオークションでは、特に需要が見込めるマイニング2個を主力とし、さらに水魔法と物理耐性を出品することを決定した。
  • 得体の知れないスキルである不死についても、将来的には研究用という名目でリリースする可能性が話し合われている。

異常な落札価格と裏社会への影響
スキルオーブのオークションは、国家や巨大組織を巻き込んだ凄まじい資金戦の場となっている。

  • 前回のマイニングの落札価格は約30億円に達していた。
  • プルトニウムのドロップを目論む傭兵部隊の隊長ラーテルも、オークションに代理人を入札させていたが、30億円という常軌を逸した価格を前に正規ルートでの入手を断念した。
  • 資金力のない裏社会の勢力は、ダンジョン深層で自力ドロップを狙うか、あるいは既存の所有者を襲撃して強奪するという非合法かつ危険な手段を選択せざるを得なくなった。

オーブの安定供給という事実の世間への露見
ニューヨークで開催されたステータス計測イベントにおいて、ある探索者がスキルの消去コマンドである「farewell」を発見し、誤って自身のスキルを消滅させてしまう騒動が発生した。その際、Dパワーズのスタッフが、ワイズマンが無償でスキルを譲るとして補填を申し出た。

  • これを聞いた周囲の探索者たちは、彼らの底知れぬ力に改めて戦慄することとなった。
  • 信じられない規模のオークションを主催している事実と合わせ、ワイズマン(Dパワーズ)は、高価で希少なスキルオーブをいつでも自由に用意できる手段を確立しているという驚愕の事実に気づいたためである。

まとめ
スキルオーブのオークションは、Dパワーズに莫大な富をもたらすだけでなく、その背後にある「ダンジョンの法則を自在に操る力」を世界に誇示するシステムとして機能している。落札価格の高騰は各国のパワーバランスや裏社会の行動原理にまで多大な影響を及ぼしており、Dパワーズの動向が世界秩序を揺るがす重要な要素となっている。

プルトニウムドロップ事件

本作におけるプルトニウムドロップ事件は、物理法則を無視して任意の鉱物をドロップさせる物理量方式を悪用し、東京で核テロを起こそうとした傭兵部隊と、それを阻止しようとするDパワーズの暗闘を描いた重大なインシデントである。この事件の背景と顛末は、最終的に世界の核兵器の消滅という途方もないパラダイムシフトを引き起こすこととなった。その詳細をいくつかのポイントに整理して解説する。

事件の発端:任意の鉱物ドロップの悪用
日本ダンジョン協会(JDA)の斎賀のもとに、匿名の英語による電話が入る。これは裏で糸を引くデヴィッドによるたれ込みであった。

  • 内容は、特定の組織に雇われた探索者が未決定フロアである二十四層以降に向かい、プルトニウムをドロップさせようとしているというものであった。
  • Dパワーズが以前世界ダンジョン協会(WDA)に報告していた、陽子や中性子の数を意識することで任意の鉱物をドロップさせるという仮説が、悪意あるテロリストによって実行に移された。

犯人たちの正体と狂気的な目的
実行犯は、リビア内戦などでも恐れられた名うての傭兵であるラーテルが率いる部隊であった。

  • 彼らは丸山光雄という偽名を使って代々木ダンジョンに侵入し、二十五層で核爆弾のピットにそのまま使えるプルトニウムガリウム合金の球体(コア)をドロップさせることに成功した。
  • 彼らを雇ったスポンサーは、狂信的な宗教団体の代表であるデヴィッドであった。
  • デヴィッドの目的は政治的なテロではなく、神の庭であるダンジョンを究極の悪徳で穢し尽くすことで、神を顕現させて神罰を下させるという常軌を逸したものであった。

コアの持ち出しと核爆弾の完成
ラーテルたちは、ドロップしたコアを持ち出すため、地上で待ち構えていた公安の捜査員を殺害した。

  • コアを外部へ持ち出した後、葛飾にある東都理科大学の研究室に押し入った。
  • そこでメーカーと呼ばれる研究者に爆縮レンズなどを組み込ませ、小型の核爆弾を完成させた。
  • ラーテルは口封じのためにメーカーを射殺し、核爆弾を携えて東京の中心部である日比谷へと向かった。

Dパワーズの決断とさまよえる館での極秘取引
事態の深刻さを察知したDパワーズの芳村と三好は、十層のさまよえる館でタイラー博士およびダンジョンの意志であるダンつくちゃんに接触した。

  • 二人は世界からプルトニウムガリウム合金と高濃縮ウランを消去してほしいと依頼した。
  • しかし、それが即座に実行されれば日本だけが一方的に核の脅威から逃れる形となり、世界の安全保障バランスが根底から覆ってしまう。
  • そのため、消去の実行は核が起爆されるギリギリの瞬間まで先送りすることにした。
  • この合図をリアルタイムで行うため、ダンジョン内と地上を結ぶ無線通信網が極秘裏に確立された。

日比谷での決着と世界的な核廃絶
ラーテルたちは日生劇場の屋上に陣取り、自分たちを陥れたデヴィッドを帝国ホテルの窓越しに狙撃しようとした。

  • しかし、アルスルズの力と芳村の水魔法によって致命的な狙撃は阻止された。
  • 突入してきた警視庁の特殊部隊(SAT)から銃撃を受けたラーテルは、死の間際に殺意とともに核の起爆スイッチを作動させた。
  • まさにその瞬間、隠れていた三好が芳村の指示でダンつくちゃんに合図を送り、世界規模での消去が実行された。
  • これにより爆縮レンズが作動しても核物質が消滅していたため、爆弾は不発に終わった。

まとめ
プルトニウムドロップ事件は、東京の壊滅という最悪の危機をDパワーズが裏で防ぐ形で終息した。しかし、その結果として引き起こされたのは、地球上からすべてのプルトニウムガリウム合金と高濃縮ウランが一瞬にして消失するという、人類の歴史を揺るがす奇跡であった。誰にも知られることなく世界の核兵器廃絶が達成され、ダンジョンの法則が地上の安全保障に不可逆なパラダイムシフトをもたらす結果となった。

Dジェネシス8巻レビュー
Dジェネシス10巻レビュー

登場キャラクター

Dパワーズ・常磐ラボ

芳村圭吾

Dパワーズに所属する探索者であり、三好梓とともに行動する人物である。ステータスデバイスの設置やプルトニウムドロップ事件の対応に奔走する。
・所属組織、地位や役職
 合同会社Dパワーズ。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ニューヨークイベントでのスキル消去コマンド発見を受け、自身の〈マイニング〉を消去した。プルトニウムドロップを防ぐため十層でさまよえる館を出現させ、タイラー博士に面会した。日生劇場屋上では、〈水魔法〉を使ってラーテルへの狙撃を逸らした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ファントムとしての正体を隠しながら活動している。

三好梓

Dパワーズの代表社員であり、ザ・ワイズマンの異名を持つ。情報分析や裏の交渉を得意とする。
・所属組織、地位や役職
 合同会社Dパワーズ。代表社員。
・物語内での具体的な行動や成果
 大型のメインフレームを事務所に導入し、ステータス計測デバイスのデータからスキルの識別モデルを構築した。御殿通工の株を密かに買い集めて仕手戦を仕掛け、巨額の利益を得た。ダンつくちゃんとノートPCを通じた通信経路を確立させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その卓越した先読みと資金力で、各国の情報機関や巨大企業を翻弄している。

六条小麦

宝石の鑑定資格を持つ女性探索者である。ダンジョン産鉱物に強い関心を抱いている。
・所属組織、地位や役職
 マイトレーヤ。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の探索で宝石の原石をドロップさせた実績が言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 〈マイニング〉を所持している。

三代絵里

六条小麦のパートナーとして活動する女性探索者である。
・所属組織、地位や役職
 マイトレーヤ。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 六条小麦とともに、そろそろ探索活動を本格化させそうだと三好の会話の中で触れられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 情報源としての言及に留まる。

鳴瀬翠

常磐ラボを経営する女性である。ビジネスに厳しく、冷静な判断を下す。
・所属組織、地位や役職
 常磐医療機器研究所(常磐ラボ)。所長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ステータス計測デバイスの量産やイベント運営のため、スタッフを連れてニューヨークを訪れた。銃撃事件の際、中島に庇われたことで二人の親密な関係が周囲に露見した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 予想外の製品需要に直面し、生産体制の拡充に頭を悩ませている。

中島治臣

常磐ラボに所属する技術者である。
・所属組織、地位や役職
 常磐ラボ。技術者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ステータス計測デバイスの調整に尽力し、ニューヨークイベントの運営を担当した。銃撃犯が現れた際、身を挺して翠を庇った。負傷したコスプレ女性をポーションで救護している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 翠との親密な関係が、自らのアクションカメラの映像を通じて発覚した。

都築縁

常磐ラボのスタッフであり、飛行機旅行マニアの女性である。
・所属組織、地位や役職
 常磐ラボ。スタッフ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ニューヨークイベントにおいて、スキル消去コマンドを発見して落胆していたリチャードに対し、ワイズマンが無償でスキルを譲るという提案を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エミレーツ航空のファーストクラスに乗るため、ドバイ経由の遠回りな旅程を組んだ。

小野寺志帆

常磐ラボのスタッフである。
・所属組織、地位や役職
 常磐ラボ。スタッフ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ニューヨークイベントの運営スタッフとして参加し、映像を通じて芳村たちとやり取りした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 変なジュース購入仲間の一人として紹介された。

桜木綾乃

常磐ラボのスタッフである。
・所属組織、地位や役職
 常磐ラボ。スタッフ。
・物語内での具体的な行動や成果
 小野寺の友人としてニューヨークイベントのスタッフを務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

高良涼介

常磐ラボのスタッフである。
・所属組織、地位や役職
 常磐ラボ。スタッフ。
・物語内での具体的な行動や成果
 中島の友人としてニューヨークイベントに参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

従魔・未知の存在

ロザリオ

芳村の頭や肩に乗る鳥型の従魔である。
・所属組織、地位や役職
 Dパワーズ。従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
 キーボードを嘴で叩いてローマ字入力を行い、人間との意思疎通を図った。十層のさまよえる館では、芳村たちを書斎まで案内する役割を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ダンジョンの集合的無意識に繋がっている可能性が示唆された。

ドゥルトウィン

芳村の影に潜む犬型の従魔である。
・所属組織、地位や役職
 Dパワーズ。従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
 ロザリオとの間で意思疎通を行う様子を見せた。影を通じた転移能力を使用し、芳村たちを日生劇場の屋上付近へ移動させた。SATからの狙撃弾を処理している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

カヴァス

三好の影に潜む犬型の従魔である。
・所属組織、地位や役職
 Dパワーズ。従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
 プルトニウムガリウム合金発見の報告を記録したメモリカードを持ち、アイスレムと入れ替わる形で鳴瀬へ届けた。SATの狙撃弾を処理した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

アイスレム

犬型の従魔である。
・所属組織、地位や役職
 Dパワーズ。従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
 カヴァスと入れ替わって芳村たちの元へ現れた。ファシーラによるデヴィッドへの狙撃を、弾道を逸らす形で自然に妨害した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

グラス

犬型の従魔である。
・所属組織、地位や役職
 Dパワーズ。従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
 事務所のソファを占有してくつろぐ様子が描写された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

グレイサット

犬型の従魔である。
・所属組織、地位や役職
 Dパワーズ。従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
 ソファの上で丸くなっている存在として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

アヌビス

犬型の従魔である。
・所属組織、地位や役職
 マイトレーヤ。従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
 人の言葉を喋る存在として芳村たちの会話で触れられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

タイラー博士

死亡したはずの科学者であり、ダンジョンの法則に縛られた存在である。
・所属組織、地位や役職
 不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 さまよえる館の書斎で芳村たちを迎え、紅茶を振る舞った。プルトニウム消去に関する新たなルール設定の可能性を示唆し、ダンつくちゃんへの通信経路構築を黙認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ダンジョンの端末としての役割を果たしながらも、人類の行く末に興味を示している。

ダンつくちゃん

ダンジョンの向こう側にいるとされる未知の存在である。
・所属組織、地位や役職
 未知の存在。
・物語内での具体的な行動や成果
 さまよえる館の書斎に現れ、三好が用意したノートPCを操作してネット接続を試みた。芳村の合図を受け、世界中のプルトニウムガリウム合金と高濃縮ウランを消失させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 人類に奉仕する対象を探しており、JDAの質問箱を通じて人間との直接対話を開始した。

JDA(日本ダンジョン協会)

鳴瀬美晴

ダンジョン管理課に所属し、Dパワーズの専任管理監を務める女性職員である。
・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課。専任管理監。
・物語内での具体的な行動や成果
 ステータス計測デバイスの設置やプルトニウムドロップ事件の情報を斎賀へ報告した。芳村から送られた質問箱のURLを、JDAのサイトで公開するための手続きを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 Dパワーズの非常識な行動に影響され、図太く対応するようになっている。

斎賀

ダンジョン管理課の課長である。冷静に事態を収拾しようと努める。
・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課。課長。
・物語内での具体的な行動や成果
 セーフエリアの入札処理や営業部との折衝に追われた。プルトニウムドロップの通報を受け、寺沢や田中と連携して核テロの阻止に動いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 JDAには実力行使の権限がないため、警察や自衛隊への協力要請を余儀なくされている。

坂井

ダンジョン管理課に所属する主任である。
・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課。主任。
・物語内での具体的な行動や成果
 ステータスデバイスの偽物へのすり替えと、御殿通工株の異常な高騰を関連付けて斎賀に報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 多忙な業務に追われながらも鋭い調査能力を発揮する。

彩月美玖

商務課の受付嬢である。
・所属組織、地位や役職
 JDA商務課。
・物語内での具体的な行動や成果
 美晴が案内してきた佐山に興味を示し、歓迎会を口実に連絡先を交換した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

佐山繁

農研機構からJDAへ転職してきた研究者である。
・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課。
・物語内での具体的な行動や成果
 ウケモチ・システムの担当としてダンジョン農業の発展に意欲を燃やす。二層の一坪農園を視察し、ダンジョニングの成果を確認して驚嘆した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 超大容量の〈収納庫〉スキルを所持しており、JDAから破格の年俸で迎えられた。

橘三千代

ダンジョン管理部の部長である。
・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理部。部長。
・物語内での具体的な行動や成果
 斎賀へ連絡を取るよう指示を出していたことが紗香の口から語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

真壁

JDAの常務理事である。合理主義者である。
・所属組織、地位や役職
 JDA。常務理事。
・物語内での具体的な行動や成果
 佐山の〈収納庫〉を利用して、ガスタービン発電機などの大規模な資材搬入を計画した。代々木開発計画試案第六号をリソースの無駄として営業部に移管する方針を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 佐山を戦略資産として最大限に活用しようと目論んでいる。

九条紗香

斎賀の秘書的役割を担う職員である。
・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課。
・物語内での具体的な行動や成果
 各所から寄せられる斎賀への面会要請や連絡事項を伝達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

デミル=アンダーソン

国際協力課の課長である。
・所属組織、地位や役職
 JDA国際協力課。課長。
・物語内での具体的な行動や成果
 WDAの要請で、美晴の協力を求める打ち合わせを斎賀に申し入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

桜井

JDAの広報担当者である。
・所属組織、地位や役職
 JDA。広報担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 斎賀の指示を受け、代々ダン情報局にダンつくちゃん質問箱の掲示板システムを組み込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

日本政府・自衛隊・警察関係者

寺沢剛健

防衛省に所属する二佐である。
・所属組織、地位や役職
 防衛省ダンジョン攻略群(JDAG)。二佐。
・物語内での具体的な行動や成果
 篠崎へ鉄球の調査と人事教育局長への接触調査を依頼した。代々木公園で斎賀と会談し、核兵器消失の可能性という重大な情報を共有された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ファントムの正体やDパワーズの動向に強い疑念を抱いている。

君津伊織

陸上自衛隊の二尉である。
・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊ダンジョン攻略群。二尉。
・物語内での具体的な行動や成果
 代々木ダンジョンの三十二層から携帯電話で寺沢へ通話を行い、ダンジョン内通信が実用化されたことを証明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

陸上自衛隊の隊員である。
・所属組織、地位や役職
 陸上自衛隊ダンジョン攻略群。
・物語内での具体的な行動や成果
 伊織とともに三十二層のセーフエリア護衛任務や、未踏階層への対応策について協議した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

田中

内閣情報調査室に所属する人物である。
・所属組織、地位や役職
 内閣情報調査室(内調)。
・物語内での具体的な行動や成果
 プルトニウム持ち出し事件で公安の捜査を指揮し、ラーテルとの取引交渉を主導した。芳村から得た情報をもとに、大学の計算機ログから核爆弾製造拠点を特定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 常に冷静沈着であり、国益を最優先して動く。

村北

内閣情報官である。
・所属組織、地位や役職
 内閣情報官。
・物語内での具体的な行動や成果
 田中から、ラーテルとの取引に用いる五億円の用意を要請された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

樺島

警視庁公安部の捜査員である。
・所属組織、地位や役職
 警視庁公安部外事第四課。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲート前で外国人一行の荷物検査を行おうとしたが、別室へ誘い込まれファシーラに殺害された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その死が大規模な報復捜査を引き起こすきっかけとなった。

正田

警視庁公安部の捜査員である。
・所属組織、地位や役職
 警視庁公安部外事第四課。
・物語内での具体的な行動や成果
 樺島とともにゲート前で監視にあたり、ファシーラの虚偽の報告を信じて一行を通してしまった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

篠崎

探偵業を営む元自衛官である。
・所属組織、地位や役職
 探偵。
・物語内での具体的な行動や成果
 寺沢の依頼を受け、鉄球が三好によって大量発注されている事実を突き止めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 寺沢の無茶な依頼に文句を言いながらも的確に調査を遂行する。

アメリカ合衆国・軍・DAD

フェネル

アメリカ軍の特技兵である。
・所属組織、地位や役職
 アメリカ軍。特技兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 ネバダ州のダンジョンで、高レベル放射性廃棄物の投棄作業に従事し、その倫理的な問題に強い不安を感じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

アルバート=ハンドラー

アメリカ合衆国の大統領である。
・所属組織、地位や役職
 アメリカ合衆国政府。大統領。
・物語内での具体的な行動や成果
 Dパワーズへの依頼報酬として、個人のワインコレクションを提供したことが言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

ハガティ

アメリカ合衆国の駐日大使である。
・所属組織、地位や役職
 アメリカ駐日大使。
・物語内での具体的な行動や成果
 外交官ナンバーの公用車でDパワーズの事務所を訪れ、契約書と報酬のワインを届けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

サイモン=ガーシュウィン

アメリカのトップ探索者である。
・所属組織、地位や役職
 DAD。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブートキャンプのプレプログラムに参加し、アメリカ政府からの依頼をDパワーズに取り次いでいた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

キャサリン・ミッチェル

DAD出身の女性探索者である。愛称はキャシー。
・所属組織、地位や役職
 探索者。ブートキャンプ教官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブートキャンプの教官として厳しい指導を行い、常磐ラボでの機器生産作業も手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

ナタリー

DADチームの探索者である。
・所属組織、地位や役職
 DADチーム。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 プレブートキャンプで計測されたデータが、スキルの識別モデル検証に使用された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

メイソン

DADチームの探索者である。
・所属組織、地位や役職
 DADチーム。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 キャシーと腕相撲をした結果が、ステータス向上を証明する材料として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

WDA・国連機関

ネイサン=アーガイル

WDAの食品管理局に所属する研究者である。
・所属組織、地位や役職
 WDA食品管理局(DFA)。主席研究員。
・物語内での具体的な行動や成果
 ニューヨークイベントに参加し、銃を持った男を自ら説得しようと試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 Dパワーズの設立した基金を当てにしてダンジョン研究を進めようとしている。

シルクリー=サブウェイ

ネイサン博士のアシスタントを務める女性である。
・所属組織、地位や役職
 WDA。アシスタント。
・物語内での具体的な行動や成果
 銃乱射事件の際、身を挺してネイサン博士を押し倒し、被弾から守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 博士の無軌道な行動に常に振り回されている。

裏社会・活動家・傭兵部隊

ラーテル

歴戦の傭兵部隊の隊長である。冷徹な判断力を持つ。
・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊。隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
 デヴィッドの依頼でプルトニウムガリウム合金のコアをドロップさせ、都内で核爆弾を完成させた。日生劇場の屋上でデヴィッドを狙撃させた後、核の起爆スイッチを押したが、爆発は起きずSATに射殺された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最後まで傭兵としての矜持を保ち、裏切ったデヴィッドへの復讐を試みた。

ファシーラ

傭兵部隊の副官である。
・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊。副官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ダンジョンゲートで樺島を殺害して突破し、メーカーから核爆弾を受け取った。日生劇場の屋上から帝国ホテルのデヴィッドを狙撃しようとしたが、アイスレムの妨害により失敗し、SATに射殺された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ラーテルの指示を忠実に実行する右腕である。

バースト

傭兵部隊の爆発物専門家である。
・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 二十四層でウェザビー・マグナムを使用してトロルを倒し、二十五層でプルトニウムガリウム合金のコアをドロップさせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ダンジョンをファンタジー世界のように感じ、探索を楽しんでいた。

スカウト

傭兵部隊の隊員である。
・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 二十四層の戦闘において、トロルを牽制する役割を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

イークス

傭兵部隊の隊員である。
・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 ポーターであるアッシュの操作や、通信・情報戦のサポートを担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

シュート

傭兵部隊の隊員である。
・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 トロルに対して七・六二ミリ弾を撃ち込み、その耐久力を確認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 日系人であることが示唆されている。

ショーファー

傭兵部隊の運転担当である。
・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 地上で待機し、逃走経路の確保や監視カメラ位置の調査を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

ルネ=ランベール(丸山光雄)

傭兵部隊のメンバーである。
・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 丸山光雄という偽名でダンジョンに潜入したが、三層で芳村たちに拘束され、田中に引き渡された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ラーテルの取引材料として扱われた。

デヴィッド

狂信的な思想を持つ宗教団体の代表である。
・所属組織、地位や役職
 宗教団体。代表。
・物語内での具体的な行動や成果
 ラーテルたちを雇い、東京で核テロを起こすよう仕向けた。帝国ホテルの窓から狙撃をかわし、核が消失する奇跡を目撃して狂喜した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 神の庭を穢すことで神罰を顕現させようと企んでいた。

イザベラ

デヴィッドに同行する女性である。
・所属組織、地位や役職
 不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝国ホテルの部屋でデヴィッドの自殺願望じみた狂気に巻き込まれ、恐怖を覚えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

ハウンド

傭兵部隊のメンバーである。
・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
 猟犬の二つ名を持ち、デヴィッドの居場所を特定するために追跡を行っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

カイ

元環境テロリストである。
・所属組織、地位や役職
 活動家。
・物語内での具体的な行動や成果
 アラン=スミシーから三百万ドルを受け取り、反ダンジョン食品の排斥運動を組織するためコウを雇った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過激化する集団を止められず、事態の暴走を傍観することになった。

アラン=スミシー

偽名を名乗る謎の男である。
・所属組織、地位や役職
 不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 カイに巨額の小切手を渡し、ダンジョン産食品の危険性を煽る運動を起こすよう依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 大資本の意向を受けて暗躍している。

コウ

反探索者系の過激派グループを率いるリーダーである。
・所属組織、地位や役職
 過激派グループ。リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
 カイに雇われ、ジャビッツ・センター前で移民排斥と結びつけたデモ演説を行い、参加者を扇動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 思想よりも金を目的として行動している。

民間探索者・マスコミ・その他の人物

吉田

テレビ番組の制作関係者である。
・所属組織、地位や役職
 マスコミ関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ステータス計測デバイスを入手し、モンスターの計測企画をテンコーに持ちかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

氷室

テレビ番組のディレクターである。
・所属組織、地位や役職
 制作会社。ディレクター。
・物語内での具体的な行動や成果
 予約開始前のステータス計測デバイスの試作機を調達してきたことが言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

テンコー

テレビ番組に出演する人物である。
・所属組織、地位や役職
 タレント。
・物語内での具体的な行動や成果
 吉田から、ダンジョン内でモンスターを計測する事前調査の依頼を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

デニス=タカオカ

民間トップチームのメンバーである。
・所属組織、地位や役職
 渋谷チーム(渋チー)。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブートキャンプに参加し、プログラム内容を把握するため全ステータス向上を希望した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

斎藤涼子

新人女優である。
・所属組織、地位や役職
 女優。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーチェリーの非公認世界記録を出し、ステータス計測のデータモデルの基準となったことが言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

御劔遙

モデルである。
・所属組織、地位や役職
 モデル。
・物語内での具体的な行動や成果
 彼女の活動が、ステータス計測デバイスの需要急増の要因の一つになったと翠が推測した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

高田

マラソン選手である。
・所属組織、地位や役職
 陸上選手。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブートキャンプの影響で記録を大きく伸ばしたことが掲示板で話題に上がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

不破

マラソン選手である。
・所属組織、地位や役職
 陸上選手。
・物語内での具体的な行動や成果
 高田とともに、記録更新の要因として掲示板で言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 直接の登場はない。

ディーン=マクナマラ

ニューヨークイベントの責任者である。
・所属組織、地位や役職
 イベント責任者。探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 中島とイベントの打ち合わせを行い、会場に乱入した銃撃犯を格闘で取り押さえた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

ポール=アトキンス

ニューヨークイベントの副責任者である。
・所属組織、地位や役職
 イベント副責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディーンとともに中島へ挨拶し、イベント運営をサポートした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

リチャード=ファインドマン

ニューヨークイベントの参加者である。
・所属組織、地位や役職
 探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 別れの挨拶を意味する単語を入力してスキル消去コマンドを発見し、ワイズマンからスキル無償譲渡の提案を受けて歓喜した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 描写が限られている。

ダイアナ=プリンス

ワンダーウーマンのコスプレをした女性参加者である。
・所属組織、地位や役職
 スミソニアン博物館の職員と推測される。
・物語内での具体的な行動や成果
 乱射事件で負傷したが中島のポーションで回復し、彼に感謝のキスをした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 メディアのインタビューに応じ、ポーションの威力を世界に知らしめた。

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展開まとめ

序章 プロローグ

アメリカ合衆国 ネバダ州 ザ・リング

ハンフォード・サイトの廃棄物処理問題

ハンフォード・サイトは、地下に二億リットルを超える放射性廃棄物を抱え、今も漏出が続くアメリカで最も汚染された地域であった。ハンドラー政権は処理費用四百億ドルの大幅圧縮を目指していたが、関係者の多くは実現不可能だと考えていた。

ダンジョンへの放射性廃棄物投棄

ネバダ州のザ・リングでは、兵士たちがハンフォード・サイトから運ばれた高レベル放射性廃棄物をダンジョンへ投棄しようとしていた。フェネル特技兵は、ガラス固化すらされていない廃棄物を雑に扱うことへ不安を示したが、運転席の男は命令書が本物である以上、実行するだけだと答えた。

過去の試験による処理判断

最初の試験では、乾式キャスクを地下へ下ろして空間線量を測定していた。下ろしてしばらくすると線量が急上昇し、やがてゼロへ戻る現象が確認された。これを繰り返した結果、キャスクは何かに食い破られ、その後すべてが処理されたと判断されたため、今回の試験計画が本格的に進められた。

静寂の中で進む危険な実験

やがてドラム缶はダンプの荷台から滑り落ち、百五十メートル先の地下へ落下した。フェネル特技兵は音が消えるまで唇を噛みしめていた。深夜の砂漠には不気味な静寂が広がり、何者かが人類の罪を見つめているような気配が漂っていた。

アメリカ合衆国 ニューヨーク

ニューヨークの酒場での接触

ニューヨークの薄暗い酒場で、環境活動家だったカイは一人酒を飲んでいた。そこへ、サヴィル・ロウの香りを漂わせる場違いな男が現れ、カイへ親しげに接触した。付けひげとサングラスで正体を隠した男は、環境活動家がタバコを吸うとは感心しないと皮肉を口にしながら、酒を奢って会話を始めた。

三百万ドルの小切手

カイが追い返そうとすると、男は三百万ドルの小切手を差し出した。署名にはアラン=スミシーという明らかな偽名が記されており、カイは、このような名義でアメリカ最大の銀行に口座を持てる人物の危険性を察した。男は自身を単なる支援者だと名乗り、環境団体への寄付に過ぎないと説明した。

環境テロリストだった過去

カイはかつて、遺伝子組み換え作物の研究施設を攻撃する環境運動に関わっていた。しかし活動は過激化し、組織はFBIから環境テロリスト認定を受けていた。現在その組織は事実上消滅していたが、男は過去の経歴を把握した上で接触してきていた。

ダンジョン産食物への排斥運動依頼

男の依頼内容は、ダンジョン産食物の危険性を煽る運動を展開することだった。カイは、ダンジョンは人為的な遺伝子改変とは異なり自然の範疇ではないかと疑問を呈したが、男は、世界にはもっと自然ではないものが存在すると語った。そして、ダンジョン産食物への不信感さえ広められれば、その後は自由にやればよいと告げた。

不気味な男への恐怖

男は環境運動家たちを道化と評しながらも、そこに悪意はなく、本気でそう信じている様子だった。カイは、その無邪気さゆえに男へ強い不気味さを感じた。依頼の真意は理解できなかったが、過激な活動家たちを金で動かせば実行は可能だと判断し、最終的に小切手を受け取って依頼を引き受けた。

得体の知れない陰謀の始動

店を出る直前、カイは笑みを浮かべたまま手を振る男を見返し、自分が危険な存在へ関わってしまったことを悟った。連絡先すら交換していなかったが、男がすべてを把握済みであることは明白だった。カイは、金で過激派を動かしながらも、この排斥運動が何を目的としているのか最後まで理解できないままだった。

掲示板で拡散された謎の黒い存在

代々木ダンジョン三層で、黒い巨大生物が凄まじい速度で走る姿が目撃され、その情報は瞬く間にSNSや掲示板で拡散されていた。目撃者によれば、その存在は人を二人乗せたまま高速で移動しており、通常の犬では到底不可能な大きさと能力を持っていた。

犬ではないという分析

掲示板では、ダンジョン管理課へ問い合わせた結果、「犬」と説明されたという情報も出回っていた。しかし、画像を分析した利用者は、犬歯の間の切歯が四組しか存在しない点を指摘し、通常六組存在するイヌ科とは異なる生物だと断定した。そのため、ヘルハウンドではないかという意見が強まっていった。

鑑札の存在による混乱

さらに画像の一部には、東京の犬型鑑札に酷似した特徴的なタグが写っていた。これにより、その生物が正式に登録されているのではないかという憶測が広がり、登録番号から飼い主を調べようとする者まで現れた。問い合わせ行為が犯罪ではないかと指摘する声も上がったが、多くの利用者は巨大生物の入手方法へ強い関心を示していた。

ダンジョン内部で飼育されている可能性

一方で、あれほど巨大な存在が地上にいれば大騒ぎになっているはずなのに、誰もエントランス付近で見たことがない点が疑問視された。過去には、二層で女性がヘルハウンドらしき存在に追いかけられていたという噂も存在していたため、掲示板ではダンジョン内部で飼育されているのではないかという説が浮上した。

冗談交じりの推測

最後には、モンスターボールのような道具で収納しているのではないかという冗談まで飛び出し、利用者たちは半ば興奮しながら未知の存在について議論を続けていた。

第11章 トキワ・イン・ニューヨーク

二〇一九年 二月二十日(水)

ダンジョン管理課の過密業務

JDAダンジョン管理課では、セーフエリア関連の申請が殺到し、職員たちは徹夜続きで書類処理に追われていた。美晴を含む語学対応可能な職員も総動員され、管理課は不夜城のような状態になっていた。

佐山の採用と〈収納庫〉の価値

美晴は途中入職予定の佐山をJDAへ案内した。佐山はDパワーズ関係者らしいと噂され、女性職員たちの関心を集めた。

斎賀は佐山へ雇用条件を説明し、〈収納庫〉スキルが年収十五億円規模の価値を持つと試算していた。JDAの提示額は高待遇であったが、スキルの価値から見れば破格に安い契約であった。

佐山を巡る運用上の懸念

斎賀は、佐山の〈収納庫〉がセーフエリア開発に不可欠である一方、能力を公開しすぎれば協賛企業から過剰な要求が殺到すると懸念していた。Dパワーズ側は佐山をウケモチ・システム担当にする意向であり、彼の扱いには慎重な調整が必要であった。

Dパワーズ事務所への巨大サーバー設置

代々木八幡のDパワーズ事務所では、SMD用の処理サーバーとして巨大なメインフレームが設置されていた。三好は、ステータス変換処理を企業秘密として守るため、計測機器側ではなくサーバー側で処理する方針を取っていた。

芳村は一般住宅に置く設備としては過剰だと感じたが、三好は信頼性、大量処理、外部へのはったりを理由に導入を正当化していた。

常磐ラボの納品とニューヨーク行き

翠は、チェッカー四千台の納品が完了する見込みだと報告した。中島やキャシーたちは連日の作業で疲弊していたが、国公立大学二次試験への配備は間に合うことになった。

さらに常磐ラボのスタッフはニューヨーク行きを控えており、都築縁はエミレーツA380のファーストクラスに強いこだわりを見せていた。三好は既にドバイ経由の旅程を予約しており、芳村たちはその長大な移動時間に呆れていた。

キャシーへの疑念

翠は、常磐ラボへ頻繁に出入りするキャシーの正体を尋ねた。芳村たちは、キャシーがDパワーズのブートキャンプ教官であり、アメリカのDADから来た人物だと説明した。翠は、DADが大統領直属機関であることを踏まえ、その説明を胡散臭そうに受け止めていた。

坂井が告げたデバイスすり替え疑惑

坂井は斎賀へ、ステータス計測デバイスがすり替えられていた可能性を相談した。回収されたデバイスの一台が故障しており、中身を確認すると正常品とは内部構造がまるで異なっていたのである。

斎賀は、盗まれたデバイスを解析した者が先に特許出願していないかを懸念したが、坂井の調査では該当出願は見つかっていなかった。

御殿通工株の異常な高騰

坂井は、ステータス計測デバイスの主要センサーが御殿通工製であり、その株価が異常に高騰していることを斎賀へ示した。御殿通工には急騰材料がなく、前年末から不自然な買い支えが続いていた。

盗まれたデバイスを解析した第三者が、御殿通工製センサーの需要増を見越して株を買い集めている可能性が浮上した。斎賀は、Dパワーズ自身が買っているならまだましだが、JDAから流出した機器を得た別勢力なら重大問題になると考えていた。

寺沢によるファントム関連調査

寺沢は旧友の篠崎と再会し、三十一層でファントムから渡された鉄球の出所調査を依頼した。篠崎は鉄球販売業者を当たれば辿れる可能性があると判断した。

さらに寺沢は、防衛省人事教育局長へ接触している人物の調査も依頼した。不可解な査問の背後に、ファントムを探ろうとする勢力がいる可能性を警戒していたのである。

真壁によるセーフエリア搬入計画

真壁常務は斎賀へ、セーフエリアへ運び込みたい資材の膨大なリストを渡した。ガスタービン発電機まで含まれる内容であり、佐山の〈収納庫〉を前提にした計画であった。

真壁は、アメリカが横田基地で研究設備らしきものを組み立てているとも語った。その搬入手段として、Dパワーズの異常な輸送能力が想定されていた。

試案第六号の移管

真壁は、代々木開発計画試案第六号を営業部へ移す方針を示した。深層維持人員の確保が困難である以上、JDA本体が深入りするべきではないと判断していた。

斎賀も計画の失敗可能性を見ており、営業部へ渡すことを受け入れた。しかし、計画を巡る調整と責任の所在は依然として重く、斎賀の苦労は終わらなかった。

次回オークションの検討

Dパワーズでは、三好が次回オークションの開催を提案した。保有オーブには〈超回復〉〈水魔法〉〈物理耐性〉〈鑑定〉〈不死〉〈生命探知〉〈マイニング〉などがあった。

二人は、今回の主力を〈マイニング〉二個にする方針を固めた。鉱物資源関連で需要が高く、各国や大組織が欲しがると判断したためである。

新規探索への意欲

芳村は、最近の危険な案件続きに疲れ、浅層で気軽に新スキル探索をしたいと考えていた。農場関連は佐山へ任せることで、Dパワーズ側にも多少の余裕が生まれる見込みだった。

三好は〈不死〉も研究用なら需要があるかもしれないと考えつつ、オークションと新スキル探索の準備を進めようとしていた。

二〇一九年二月二十一日(木)

二〇一九年二月二十一日 SMD拡大と深層開発

吉田によるステータス計測デバイス披露

赤坂のファミレスで、吉田はテンコーへステータス計測デバイスを見せていた。氷室が予約開始前の試作機を持ち込んだことで、テンコーは強い驚きを見せた。

SMDは本来サーバー接続が必要であり、ダンジョン内部では利用できない。しかし吉田は、事前取得したデータを利用してリアルタイム計測に見せかける演出を構想していた。

テンコーは、それはやらせではないかと呆れていたが、吉田はバラエティ番組の演出だと開き直っていた。

モンスター計測企画の始動

吉田は、計測対象が探索者ではなくモンスターであると明かした。Dパワーズによって、モンスターにもステータスが存在し、計測可能だと判明していたのである。

これにより、モンスターの強さを客観的数値として示せる可能性が生まれていた。

吉田は、この企画でステータス計測ブームの元祖という立場を確立し、その後JDAとの協力体制へ繋げることで主導権を握ろうとしていた。

SMDの希少性と追加依頼

試作機は三百万円相当、量産版でも三十五万円程度になる予定であり、生産数不足から一般入手は極めて困難と予想されていた。

吉田はテンコーへ、単独でダンジョンへ潜りモンスター計測を行う事前調査も依頼した。さらに、別件としてSMDを借りたい依頼が来ていることも打ち明けた。

本来は又貸しに近い行為であったが、テンコー本人が同行すれば形式上問題ないと考えていたのである。

吉田は何を測定するかまでは詳しく伏せていたが、何を計測したか外部には分からないと強引に正当化していた。

役得としてのSMD利用

ダンジョン探検隊の本放送は四月予定であり、映像素材は既に十分集まっていた。吉田は、これまで番組制作で苦労してきたのだから、この程度の役得は許されるだろうと語っていた。

テンコーは、その強引な論理に困惑しながらも、完全には断りきれずにいた。

三十二層セーフエリア護衛任務

習志野駐屯地では、伊織と鋼が新たな護衛任務について確認していた。

任務内容は、三十二層セーフエリアへ向かうポーター隊の護衛であった。三十二層セーフエリアは既に区画整理が進んでおり、JDAによる利用区画入札も予定されていた。

自衛隊とDADには発見者特典として専用区画が割り当てられており、部隊は既にポーター護衛を経験していた。

二十八〜三十層のナイトエリア

最大の危険は、二十八層から三十層へ続く暗闇エリアだった。

二十八層は薄暮、二十九層は常夜、三十層は深闇に覆われており、そこには巨大蜘蛛型モンスター「トラップドア」が潜んでいた。

トラップドアは地面の巣穴から飛び出して噛みつく待ち伏せ型であり、タイプⅢ防弾シールドすら危険なほどの威力を持っていた。

ただし、前衛を無視して後衛を狙うほどの知能はなく、警戒を徹底すれば対応可能だと分析されていた。

護送船団構想と限界

JDAは複数企業合同の護送船団方式を検討していたが、鋼は戦力不足を懸念していた。

K2HF製ポーターは大型化しており、護衛可能数は六〜八台が限界と予想されていたのである。

各国企業も十八層へのポーター投入を進めており、日本企業も競争に遅れられない状況だった。

K2HF製ポーターの実態

K2HF製ポーターは試作段階であり、機体ごとに形状が大きく異なっていた。

特に蜘蛛型ドローン母艦タイプは、大型インバーター発電機を搭載し、セーフエリア内から大量のドローンを展開していた。AW3D技術を応用した高精度マッピングも組み込まれており、深層開発用インフラとして急速に進化していた。

三十三層未発見と深層予測

三十二層の地図作成は進んでいたが、三十三層への階段は未発見だった。

三十一層のキメイエスは三十二層への鍵を落としただけであり、ダンジョンボスではないと判断されていた。そのため、代々木ダンジョンにはさらに深層が存在すると考えられていた。

ダンジョン兵器開発の迷走

会話は、日本のダンジョン兵器研究へ移った。

二十層以降では小火器の有効性が低下しており、日本ではダンジョン由来能力を補助する方向へ研究が進められていた。

サイエクスパンダーのような実現性不明の技術にも期待が集まり始めていたが、鋼は、小型ドローンへ爆薬を積んだ方が現実的だと考えていた。

高価な対戦車兵器を雑魚モンスター相手へ乱用するのは、予算面で到底持続不可能だったのである。

深層攻略への模索

こうして伊織と鋼は、三十二層以降の探索を見据えながら、必要戦力や護衛対象数の調整を進めていた。

深層開発は急速に進んでいたが、それに見合う安全対策や戦力整備は、まだ追いついていなかった。

二〇一九年 二月二十二日(金)

佐山のJDA契約成立

佐山は代々木八幡の事務所を訪れ、JDAとの契約が正式に成立したことを芳村たちへ報告した。

同時に、温州みかんへ掛かっていた魔法が消失し、桜川などへ残されていた木や枝も普通の温州みかんへ戻ったことを伝えた。その結果、魔結晶価格は急落し、買い占めていた政府系ファンドには大きな損失が発生する見込みとなっていた。

佐山は、損失回避を狙う勢力が二十一層のオレンジ関連資源を狙う危険性を懸念していた。

佐山の移籍理由

芳村は、森の王として世界を救った功績に対する報酬として、貸与装備は返却不要だと伝えた。

しかし佐山は、装備価格や〈物理耐性〉オーブの落札額を知り、自分には過大な待遇だと恐縮していた。

一方で、JDAへの移籍自体は前向きに捉えていた。未知のダンジョン植物研究への興味が強く、牧野富太郎やバンクスのような探検植物学者への憧れも口にしていた。

JDAからの農園業務引き継ぎ要請

佐山は、JDAから預かった封書を三好へ渡した。

内容は、セーフエリア開発開始までに、農園関連業務と能力詳細をまとめて引き継いでほしいという依頼だった。

しかし芳村たちは、実際には農園をほとんど放置していたため、まともな管理資料など存在していなかった。佐山自身も二層の一坪農園を知らず、ダンジョン内で農作物を栽培していた事実に驚いていた。

森の王能力の秘匿方針

佐山は、自分には植物の成長促進や局地的な天候操作能力があるらしいと報告した。

三好は、そのまま報告すれば砂漠緑化など国家規模プロジェクトへ利用されかねないと警戒した。

そのため、提出資料では「ダンジョン影響下植物の生育へ影響を与える能力」程度へ表現を抑え、未確認能力については後日のスキル成長として説明する方針が決められた。

〈収納庫〉容量測定実験

続いて、佐山の〈収納庫〉容量を測る方法が議論された。

鉄球、車両、水など様々な案が出る中、三好は、水入りグラスを丸ごと収納した後、グラスだけ取り出せることを実演した。

佐山も同様に実行できたが、芳村には不可能だったため、〈収納庫〉は利用者ごとに仕様が異なる可能性が浮上した。

最終的には、一メートル四方の升を海へ浮かべ、水ごと収納して升のみ取り出すことで容量を測定する案へ落ち着いた。

三十二層入札業務の混乱

午後になると鳴瀬が事務所を訪れた。

JDAでは三十二層セーフエリア関連の入札処理が大混乱しており、各国政府、企業、個人から膨大な申請が殺到していた。

単純な金額競争ではアメリカや中国が独占する恐れがあったため、国別制限や供託金制度が導入されていた。しかし各勢力は抜け道を探しており、職員たちは外国語資料や企業調査対応へ追われていた。

佐山歓迎会と女性職員たち

鳴瀬は、佐山歓迎会が女性職員主体で企画されていることを直前まで知らなかった。

ダンジョン管理課では、佐山がDパワーズ関係者として認識されており、莫大な収益規模を知る女性職員たちから強い注目を集めていたのである。

疲労困憊の鳴瀬は、芳村たちへ外国語資料翻訳を頼みかけたが、法務文書と日常会話は別物だとして断られていた。

御殿通工株急騰の真相

鳴瀬は、斎賀から頼まれていた件として、Dパワーズが御殿通工株へ関与しているのか尋ねた。

三好は、自分が株価急騰の原因ではないとしつつ、以前から御殿通工株を大量購入していたことを認めた。

Dカードチェッカーに使用されていた主要センサーD132が御殿通工製であることから、三好は盗難デバイス解析勢力がそこへ気づくと予測していたのである。

実際、JDA保管中のチェッカーは一台すり替えられており、その後株価は異常高騰していた。

三好による株式戦略

三好は、盗難側が需要増加を見込んで買い集めを始める前提で、先回りして御殿通工株を購入していた。

発行株数が多いため買収は不可能だったが、五百億円近い資金を投入し、大量保有報告書提出義務を避けながら取得していたのである。

株価が二十倍近くへ達した段階で半数を売却し、残りも売却予定だった。

芳村は利益規模に驚愕したが、三好は「相手の向こうずねを蹴る合法行為」だと説明していた。

アメリカ大使館からの正式報酬

その後、アメリカ大使館の公用車と定温輸送車が事務所へ到着した。

これはサイモンとの契約に基づく正式報酬搬入であり、短時間の契約確認後、荷物だけを置いて去っていった。

芳村は金塊でも届くのかと警戒していたが、中身は高級ワインだった。

ワイン報酬と三好の誕生日

木箱には特にコート・ドール産ワインが多数含まれており、三好は強い満足感を見せていた。

鳴瀬は、本当にワインで買収されていることに呆れていたが、三好は「二〇一六年のモンラッシェなら仕方ない」と真顔で語っていた。

さらに芳村は、二月二十二日が三好の誕生日であることを理由に、シャトー・ディケム一九九六年を誕生日プレゼントとして手渡した。

三好は嬉しそうにそれを受け取り、大切そうにセラーへしまっていた。

二〇一九年 二月二十三日(土)

ブートキャンプ正式開始

代々木ダンジョンのゲート内施設では、ブートキャンプの初回開催が正式に始まり、施設内は普段以上の騒がしさに包まれていた。

抽選で選ばれた七名の参加者は各トレーニングへ挑み、室内からは悲鳴のような叫び声が響いていた。キャシーはグランドオープン初日として強い意気込みを見せていた。

ステータス計測デバイスの設置

芳村と三好は、ブートキャンプ施設の隣室でステータス計測デバイスの設置作業を進めていた。

三好は接続後にテスト計測を行い、夜に控えるニューヨークイベントへ備えようとしていた。ただし、その準備とは実務ではなく気持ちの準備であった。

デニス=タカオカの参加

芳村は参加者一覧にデニス=タカオカの名を見つけた。

デニスはJDA推薦枠で参加しており、希望ステータスとして全項目を選択していた。三好は、彼が単なる強化目的ではなく、ブートキャンプの内容把握を狙って全ラウンドを体験しようとしているのだと推測した。

ブートキャンプ模倣への予兆

芳村は、デニスの行動をブートキャンプ模倣側の調査活動だと理解した。

三好は、DADを含めた各所で同様の取り組みが始まる可能性に触れ、ブートキャンプ方式が世界へ広がることに興奮していた。

JDAへの設置完了報告

芳村は、ステータス計測デバイスの設置完了を鳴瀬へ連絡した。

市ヶ谷のJDAでは、鳴瀬がセーフエリア入札集計に追われていた。斎賀は、休日にもかかわらず職員が働き続ける状況を嘆きつつ、区画確定と国立大学二次試験が終わるまでの辛抱だと考えていた。

アメリカ大使訪問の報告

鳴瀬は、前日にDパワーズ事務所でアメリカ駐日大使の訪問と報酬受け渡しに立ち会ったことを斎賀へ報告した。

報酬は現金ではなく、大統領個人のコレクションに含まれる特別なワインだった。斎賀は、アメリカ側が三好の扱い方を理解していることを認め、日本側には真似しにくい方法だと感じていた。

御殿通工株への不介入

鳴瀬は、御殿通工株についても報告した。

Dパワーズの説明は、株価高騰は自分たちの購入によるものではないというものだった。斎賀は、Dカードチェッカーを盗んだ側が株を買い集めている可能性を察したが、JDA保管中の盗難を不問にしてもらえるなら深入りしない方がよいと判断した。

ニューヨークイベントの準備

ジャビッツ・センターでは、ステータス計測イベントの準備が進んでいた。

中島は、押し寄せる探索者の多さに驚きながら機器を設置していた。翠は、Dパワーズが会場費だけでなく実験参加者のホテル代まで補助していることに呆れていた。

探索者たちの祭り

イベント責任者ディーン=マクナマラと副責任者ポール=アトキンスは、中島たちへ挨拶し、ステータス計測デバイスに興味を示した。

会場には、キック・アスやスパイダーマンなどのコスプレをした探索者もおり、探索者イベントというより祭りのような熱気があった。

豪華すぎるケータリング

翠たちは食事調達のため、クリスタルパレスへ向かった。

そこにはネイサンズのホットドッグから高級ホテルの料理まで並び、無料とは思えないほど豪華なケータリングが展開されていた。縁は感激し、翠はやり過ぎだと呆れながらもホットドッグを注文していた。

事務所からの遠隔参加

日本時間の深夜、芳村たちは代々木八幡の事務所でニューヨークイベントの映像を確認していた。

公式チャンネルや常磐ラボスタッフのウェアラブルカメラを通じて、現地の熱気や準備状況を把握していた。

ロザリオの意思表示

書類整理中、ロザリオはキーボードをつつき、ローマ字入力で「おもしろい」と表示した。

さらに三好の問いへ「ひとのいとなみ」と入力し、芳村と三好を驚かせた。ロザリオは日本語を理解し、キーボードを使って意思を示せる存在だったのである。

ドゥルトウィンとの会話

ロザリオは、ドゥルトウィンの意思も伝えた。

ドゥルトウィンは、人間のことを聞かれていないから答えなかったという趣旨の反応を示した。これにより、アルスルズたちが人間に関する質問へ答えなかった理由が、知識不足ではなく質問対象の違いだった可能性が浮かんだ。

召喚魔法販売の中止判断

芳村と三好は、ロザリオやアルスルズが人類の集合的無意識のような知識基盤へ接続している可能性を考えた。

もし召喚獣がそのようなインターフェースになるなら、産業スパイや情報漏洩の危険が大きすぎた。そのため、召喚魔法を市場へ流す案は中止すべきだと判断された。

ダンジョン開発加速への懸念

三好は、ダンジョン開発がある境界を越えると、インターネットのように加速度的に進む可能性を語った。

芳村は、ステータスが人類の階層化を生む危険を感じていた。しかし自分自身が高ステータス側にいるため、その懸念を語ることに説得力のなさも感じていた。

転移と自己同一性

芳村たちは、ダンジョン技術による瞬間移動の可能性や、肉体がDファクターで分解・再構成される場合の自己同一性について考えた。

三好は、元の自分と再構成された自分が区別できず不都合もないなら問題ないと受け止めていた。芳村はその感覚に呆れつつ、やがてニューヨークから流れ込むデータへ意識を向けていた。

二〇一九年二月二十四日(日)

夜明け前のニューヨーク監視

芳村たちは、夜明け前までニューヨークイベントの映像を見守っていた。芳村は映像を眺めるだけの状況に退屈し、眠気を抑えきれずにいた。

一方、三好はニューヨークから送られてくるSMDの計測データに没頭していた。条件別に整理された膨大な生データは、スキルやパーティ構成の解析に使える貴重な資料であり、三好にとって宝の山だった。

スキル消去コマンドの発見

ジャビッツ・センターでは、探索者たちがDカード上のスキルに対するコマンド調査を行っていた。

その中でリチャード=ファインドマンが、farewellという単語によってスキルを消去してしまった。会場は騒然となり、誰も危険な追試をしようとはしなかった。

〈マイニング〉消去の確認

映像を見ていた三好は、すぐに〈マイニング〉へfarewellを試し、消去コマンドが本物であることを確認した。

芳村たちは、〈マイニング〉の呪縛から解放されたことに安堵した。一方で、〈促成〉のように強力な代償付きスキルの価値が大きく変わることも理解していた。

リチャードへの補填

縁は、ワイズマン側がリチャードへ無償でスキルを提供してもよいと伝えた。

リチャードは感激し、周囲の探索者たちも、ワイズマンがスキルオーブを用意できる存在であることを改めて認識した。その後、会場では消去されたスキルを復元するコマンド探しが始まった。

〈収納庫〉再取得と今後の探索方針

代々木八幡の事務所では、芳村と三好が〈マイニング〉を消したDカードを眺め、今後の探索方針を話し合っていた。

翌二十五日には〈収納庫〉のクールタイムが明けるため、再取得は必須だった。さらに、〈マイニング〉の在庫が少ないことから、二十一層への補給と合わせて十八層で再び集める必要もあった。

三十二層開発への懸念

芳村たちは、三十二層セーフエリアの開発についても話し合った。

企業が区画を取得しても、深層へ人員や機材を運べなければ意味がなかった。佐山の〈収納庫〉はJDA開発を進める鍵になり得たが、能力を過剰に使わせれば佐山が離れてしまう危険もあった。

ブートキャンプの反響

掲示板では、Dパワーズのブートキャンプを受けた探索者が体験を語っていた。

具体的な内容はNDAで語れなかったが、握力や背筋力が一日で大幅に伸びたと報告され、参加者たちは驚いていた。スポーツ界への影響やドーピングとの関係も話題となり、ダンジョン由来の能力向上が広く注目され始めていた。

佐山への農園引き継ぎ

芳村たちは佐山を連れて、代々木ダンジョン二層の一坪農園を訪れた。

佐山は、丘の上に麦らしき植物が生えているだけの光景を見て驚いた。芳村が麦を切ると、光とともに再生し、佐山はダンジョン作物のリポップを実感した。

ウケモチ・システムの課題

三好は、ウケモチ・システムの運用には工学的課題と生物学的課題が山積していると説明した。

スライム対策、ダンジョン産素材による機材加工、作物のダンジョニング条件、リポップの挙動などが未解明だった。佐山は、それが農業研究に近い内容だと理解し、強いやりがいを感じていた。

森の王の能力確認

佐山は、柳久保の種へ力を込め、急速に芽吹かせて成長させた。

芳村たちは、その能力が農作物研究にとって極めて有用だと確認した。ただし、佐山自身は使いすぎると疲労すると語り、MPのような消耗があると考えられた。

横浜実験への準備

帰路で、芳村たちは横浜ダンジョンに持ち込む土について話し合った。

代々木の土が横浜で異物扱いされるかどうかは、ダンジョン同士の管理構造や、ダンジョニング作物の他ダンジョン利用可能性を調べる重要な実験になると考えられた。

二〇一九年 二月二十五日(月)

第12章 首都消失?

反探索者運動の過激化

ニューヨークでは、カイが資金を出した反探索者デモが準備されていた。デモの中心にいたコウの集団は、ダンジョン産食品への不安だけでなく、移民排斥思想まで絡めて探索者を敵視していた。カイは、騒動が想定以上に危険な方向へ進んでいると感じながらも、自分も関与した立場として結末を見届けようとしていた。

SMD予約の異常な殺到

代々木八幡の事務所では、芳村と三好がニューヨークイベントを見守る中、翠からSMD予約サイトの異常が知らされた。SMDは予約開始直後に完売し、さらにパーティチェッカーは仮価格のまま販売されていたにもかかわらず、膨大な予約が殺到していた。芳村たちは、探索者試験の不正対策に不可欠な機器を生み出した責任を自覚し、供給体制の構築という重い課題に直面した。

ニューヨーク会場での銃撃事件

ジャビッツ・センターでは、ネイサン博士が来場し、ステータス計測デバイスの意義を確認していた。そこへ反探索者思想に染まった男が自動小銃を持って乱入し、ステータス計測デバイスへ発砲した。シルクリーや中島たちは身を挺して周囲を守り、ディーンが犯人を一撃で制圧したことで、事件は拡大を免れた。

ポーションの力の拡散

銃撃による負傷者には、三好の指示で常磐ラボのスタッフがポーションを使用した。重傷者まで回復したことで、事件はステータス計測デバイスだけでなく、ポーションの効果を世界へ強烈に印象づける結果となった。反探索者デモを仕掛けたカイは、騒動がテロ事件へ変質したことに焦ったが、コウは注目を集められたことだけを喜んでいた。

〈マイニング〉を巡る危険な接近

代々木八幡では、ラーテルとファシーラが〈マイニング〉確保の方法を検討していた。通常のドロップ狙いや所有者拉致はリスクが高く、爆発物に詳しいバーストへ使わせる方針が固まりつつあった。そこへデヴィッドが現れ、神を呼び出すためには世界を穢すほどの悪徳が必要だという狂信的な思想を語った。

デヴィッドの異常性と協力継続

ラーテルはデヴィッドとの契約を終えようとしたが、デヴィッドはラーテル側のメールを把握していることを示し、彼らを揺さぶった。さらに〈マイニング〉落札の通知を材料に協力継続を持ちかけたため、ラーテルは不信を抱きながらも手を引けなくなった。デヴィッドは、譲れないもの同士が衝突すれば殲滅しかないと考え、危険な企みを進めていた。

御殿通工株の売却完了

ニューヨークイベント後、三好は御殿通工株の売却が完了したことを確認した。SMDやパーティチェッカーの予約状況を見た市場が御殿通工株を買い支えたため、三好は購入価格の約二十倍で売り抜けていた。芳村は追い打ちを止め、得た利益をネイサン博士と約束したダンジョン研究基金へ回すことを提案した。

三好とファントムへの疑念

ホテルグランドヒル市ヶ谷では、寺沢が篠崎からファントムの鉄球に関する調査結果を受け取った。鉄球の発注者として三好の名が浮かび、しかも大量発注されていたことから、寺沢は三好とファントムの関係を疑い始めた。さらに寺沢は、オーブ供給の背後にもファントムがいる可能性を考え、防衛省内での不審な動きと合わせて警戒を強めていた。

第12章 首都消失?

二〇一九年二月二十六日(火)

核テロ計画の始動

ラーテルたちはYDカフェで〈マイニング〉のオーブを受け取り、バーストにフランス製ポーター「アッシュ」を使った潜入任務を命じた。目的は未決定フロアで危険な鉱物をドロップさせることであり、バーストは疲労を訴えながらも作戦に組み込まれた。

匿名通報とJDAの動揺

JDAには英語の匿名通報が入り、〈マイニング〉所持者がプルトニウムをドロップさせに向かったと告げられた。斎賀は悪質ないたずらの可能性を疑いながらも、内容が具体的すぎるため無視できなかった。通報者はデヴィッドであり、ラーテルたちを利用しつつ、自らのいう悪徳へ追い込もうとしていた。

斎賀と寺沢の情報共有

斎賀は寺沢と密会し、〈収納庫〉の能力とプルトニウム生成疑惑を共有した。調査の結果、フランス製ポーターを連れた「丸山光雄」という不審人物が浮かび上がったが、外見が日本人名と一致せず、偽装の疑いが強まった。寺沢は篠崎へ独自調査を依頼し、同時に三好梓とファントムを結びつける鉄球の情報も斎賀へ伝えた。

Dパワーズへの協力要請

鳴瀬はDパワーズを訪れ、匿名通報と丸山光雄の件を芳村たちへ伝えた。芳村と三好は、任意鉱物ドロップの危険が現実化したと受け止めたが、JDAの通達違反だけでは法的に止められないことも確認した。そのため三好は、ステータス計測データを利用して〈マイニング〉所有者を識別する案を出し、出ダン時の職務質問へつなげる方針を立てた。

泥縄の対策開始

芳村たちは、犯人を追い越して自分たちが二十四層のドロップ内容を決めてしまう危険を警戒しながらも、確認に向かう準備を進めた。鳴瀬には密閉容器や線量計の手配を頼み、Dパワーズ側では〈マイニング〉識別モデルの作成が始まった。

九層での武装準備

一方、ラーテルたちは九層で野営し、アッシュに積まれた重装備を点検していた。HK417やヘカートⅡなどの火器に加え、大型モンスター対策としてウェザビー・マークVも用意されていた。ラーテルは装備の不備があればデヴィッドを切り捨てるつもりであり、核テロ計画は不信と打算を抱えたまま進行していた。

二〇一九年 二月二十七日(水)

〈マイニング〉識別技術の完成

Dパワーズ事務所では、三好が芳村の計測データ解析を続けた結果、〈マイニング〉所有者を識別できる可能性へ辿り着いていた。ステータス計測モデルには、スキルごとに固有の突起状変形が現れており、〈水魔法〉や〈超回復〉などにも同様の特徴が確認された。

スキル解析の発展

ナタリーのデータも重ね合わせたことで、〈火魔法〉系統と思われる特徴位置も判明した。芳村の〈極炎魔法〉と近い位置に変形が存在したため、近い系統のスキルほど似た位置に特徴が現れる可能性が浮上した。これにより、ステータス計測モデルからスキル種別を推定できる見通しが強まった。

個人特定リスクへの懸念

しかし、この解析には重大な問題も存在していた。プレブートキャンプ時のデータを利用した結果、三好はナタリー個人のモデルを識別できてしまっていたのである。契約上は個人識別不能な形で扱うことになっていたが、解析知識次第では個人特定が可能であり、芳村は危険な領域へ踏み込んでいると感じていた。

〈マイニング〉検出機能の実装

二人は、鳴瀬へ渡す専用リファレンス機へ〈マイニング〉検出機能を組み込んだ。特定デバイスで測定した場合のみ、〈マイニング〉所有者へ「*」を表示する仕組みであり、これによって出ダン者から〈マイニング〉所持者を特定できる可能性が生まれた。

スキル監視社会への危機感

芳村は、ステータス計測装置からスキル情報を抽出できる事実そのものに強い危機感を抱いていた。もし公表されれば、Dパワーズが探索者の能力情報を密かに収集していると見なされかねなかったのである。三好は契約上の問題はないと説明したが、芳村は感情面での反発までは防げないと考えていた。

二十四層行きの決定

最終的に二人は、「〈マイニング〉だけを特別に検出できた」という説明で押し通す方針を決めた。しかし他スキルへの応用可能性については曖昧なままであり、不安は残った。徹夜作業で疲弊した二人は仮眠後、鳴瀬へ装置を渡し、そのまま二十四層へ向かう計画を立てた。

二〇一九年 二月二十八日(木)

二十四層への到達

ラーテルたちは長い移動の末、二十四層へ到達した。葉巻をくゆらせるラーテルとは対照的に、バーストは憧れていたファンタジー世界そのものの光景へ強い興奮を覚えていた。彼は探索中に初めて得たDカードを大切に持ち歩いていた。

トロルとの戦闘

一行は巨大なトロルと遭遇し、戦闘へ移行した。ラーテルは七・六二ミリ弾の有効性確認を優先し、通常火器による交戦を指示した。しかしトロルの皮膚は極めて頑丈で、弾丸は十分なダメージを与えられず、さらに再生能力によって弾すら体外へ押し出されてしまった。

バーストはウェザビー・マグナムで脚部を破壊し、HK417で眼球を狙ったものの致命傷には至らなかった。それでも至近距離から頭部へ連射し、最後は接近して撃破した。一方、ファシーラはヘカートⅡの十二・七ミリ弾で別個体の頭部を吹き飛ばし、大口径弾なら有効だと証明した。

失敗したドロップ

戦闘後、バーストは銀白色のインゴットを持ち帰った。しかし、それはラーテルたちが期待していたプルトニウムではなかった。目的の鉱物生成に失敗したことで、一行は二十五層へ向かうことになった。

二十五層での方針変更

落胆するバーストに対し、ラーテルは鉱石ではなく、完成済みの「コア」を直接ドロップさせろと命じた。二十一層から二十四層までのドロップ傾向を踏まえれば、完成部品が出現しても不自然ではないと考えていたのである。

ラーテルは、ダンジョンを常識で測るべきではないと断言し、依頼者が核爆弾設計図まで用意していたことから、最初からプルトニウム・ガリウム合金球を狙っていた可能性を疑っていた。

核テロへの懸念

バーストは、依頼者が東京で核爆弾を組み立てるつもりではないかと不安を抱いていた。しかしラーテルは、自分たちの役目は運搬までだと切り捨てた。ただし本当に東京で実行されるなら、自分たちも巻き込まれる前に国外へ逃げるべきだと考えていた。

さらにラーテルは、小型核兵器こそテロ向きだと説明した。大量破壊よりも、「核」という事実そのものが恐怖と脅迫材料になるためである。

次の挑戦への切り替え

不安を隠せないバーストに対し、ラーテルはまだ五回も試行できると告げた。彼は失敗を気にする様子もなく、すでに次のドロップへ意識を向けていた。

二〇一九年 三月一日(金)

二十四層の異変

芳村と三好は、プルトニウム生成を試みた探索者を追って二十四層へ到達した。未確定フロアで不用意に鉱物をドロップさせる危険を避けるため、芳村だけが〈マイニング〉を保持し、二人は慎重に探索を進めた。

プルトニウムを強く意識する危険を避けるため、三好は代替対象としてニッケルを提案した。しかしラプトル討伐後に現れたのは、現実には存在しない「ミスリル」だった。さらに続けて「オリハルコン」まで出現し、二十四層ではファンタジー金属がドロップすることが判明した。二人は、金属自体がステータスを持つ可能性に強い衝撃を受けた。

二十五層で発見された核兵器コア

二十五層へ進んだ芳村たちは、ゴルゴノプス討伐後に金色の球体を入手した。それは、金メッキされたプルトニウム・ガリウム合金であり、核爆弾用コアそのものだった。

芳村は即座に〈保管庫〉へ格納し、密閉容器へ移して安全を確保した。三好は、インゴットではなく球体である時点で、既に爆弾外装が都内に用意されている可能性を指摘した。二人は鳴瀬へ証拠映像を送り、事態の深刻さをJDAへ伝達した。

タイラー博士への相談

さらなるコア流出を防ぐため、芳村と三好は十層のさまよえる館へ向かい、タイラー博士との接触を試みた。〈シリウス・ノヴァ〉による大量討伐で館を出現させたものの、殲滅速度が速すぎてモンスター密度が下がるという問題にも直面した。

書斎で対面したタイラー博士は、二十五層のルール自体は簡単に変更できないと説明した。しかし「ウラン以上の質量数を持つ物質をドロップさせない」という新ルールなら、人類側が望めば設定可能だと語った。芳村は、核兵器問題が世界の安全保障を揺るがすため、その場で決断できずにいた。

ダンつくちゃんとの接続

三好は、タイラー博士とダンつくちゃんへ向けた「ダンつくちゃん質問箱」を用意していた。国家ではなく、人類全体と直接対話する場を作ろうとしたのである。

芳村が周波数情報を伝えると、ダンつくちゃんのPCはDパワーズのメインフレームへ接続され、ダンジョン内通信が成立した。二人は、その危険性を理解しながらも、目前の危機へ対処するためには必要な行動だったと受け止めていた。

JDAの危機感

一方、鳴瀬から報告を受けた斎賀は、二十五層で核爆弾用コアが実際にドロップした事実を知り、事態を極めて重大視していた。さらに〈マイニング〉所持者を識別できる「マイニングチェッカー」の存在から、将来的に全スキル解析へ発展しかねない危険性も感じ取っていた。

しかしJDAには逮捕権も強制力もなく、対応には公安の協力が必要だった。斎賀は通常警察では対応不能だと判断し、公安関係者へ直接連絡を取る決断を下した。

ラーテルたちの突破

その頃、ラーテルたちはプルトニウム・コアを保持したまま地上へ向かっていた。ゲート前には線量計と監視要員が配置されており、ラーテルは内部リークを疑った。

公安とJDAは通常検査しか行えず、ファシーラは別室確認を提案して樺島を誘導した。そして待機室で樺島を殺害し、死体を隠蔽したまま検査を突破した。ラーテルたちは、そのままコアを持った状態で都内への逃走を開始した。

二〇一九年三月二日(土)

公安課員殺害とJDAの限界

代々木ダンジョンのゲート施設では、公安部外事第四課の課員が殺害されているのが発見された。外国人探索者の持ち物確認へ向かった後に消息を絶っており、遺体はロッカーへ隠されていた。

斎賀は、核テロと公安殺害が絡んだ以上、もはやJDA単独で扱える案件ではないと判断した。以後は警察と内調が主導する事態となり、JDAは協力側へ回るしかなくなった。

ダンジョン内通信と新ルール

その直後、八層にいる芳村から美晴へ電話が入り、ダンジョン内部で通信が成立している事実が明らかになった。さらに芳村は、今後〈マイニング〉ではウラン以上の質量数を持つ元素がドロップしなくなったことと、二十四層でミスリルやオリハルコンなどのファンタジー金属が出現するようになったことを報告した。

加えて、ダンつくちゃんと直接やり取りできる「ダンつくちゃん質問箱」の公開も依頼された。斎賀は混乱しながらも、代々木ダンジョン情報局経由で限定公開する方針を決めた。

丸山光雄の発見

三層へ戻った芳村たちは、ロザリオに導かれて林の奥へ進み、ポーターを連れた金髪の男を発見した。芳村は、その男が丸山光雄ことルネ=ランベールだと察した。

もし重武装のまま地上へ出れば公安との銃撃戦になる危険があったため、芳村たちは自力で制圧する決断を下した。丸山は即座に発砲したが、芳村は紙一重で回避し、三好は黒い穴で弾丸を消滅させた。直後、丸山はシャドウバインドで拘束され、意識を失った。

世界規模の危機

代々木公園で寺沢と田中へ接触した斎賀は、ダンジョン側との通信成立を伝えた上で、さらに重大な問題を打ち明けた。もしプルトニウム・ガリウム合金問題を処理する過程でルール変更が行われれば、世界中の核兵器が消滅する可能性があるというのである。

高濃縮ウランまで対象になれば、原子力潜水艦や空母にまで影響が及ぶ恐れがあった。田中と寺沢は、その情報を各方面へどう扱うべきか頭を抱えることになった。

核爆弾製造への追跡

地上へ戻った芳村たちは、拘束したルネとアッシュを田中へ引き渡した。三好は、逃亡した傭兵たちを追うだけでなく、核爆弾製造に必要なシミュレーション環境を追跡すべきだと提案した。

特に、大学や研究機関のスーパーコンピュータ利用履歴を調べれば、爆縮レンズ計算の痕跡が見つかる可能性があると指摘した。田中はその着眼点を高く評価し、即座に調査を開始した。

傭兵たちの正体

田中は、逃亡した男たちが中東で知られる傭兵集団であり、リーダー格が「ラーテル」、副官がルネ=ランベールだと明かした。宗教テロではなく、金で動く傭兵だったことで、田中は交渉による収束可能性も考えていた。

核爆弾の完成

その頃、ラーテルとファシーラは大学研究室へ侵入し、「メーカー」と呼ばれる研究者へプルトニウム・ガリウム合金コアを渡していた。研究者は既に爆縮装置を完成させており、コアを組み込むことで核爆弾を完成させた。

ラーテルは、依頼者がデヴィッドだったと見抜いていた。デヴィッドは情報をリークし、自分たちを追い詰めることで、核爆発という「悪徳」を実現させようとしていたのである。

完成後、ラーテルは口封じのため研究者を射殺した。研究室には予備の核爆弾が残されたが、完成済みの一基は既に持ち出されていた。こうして、東京には実働状態の小型核爆弾が存在することになった。

二〇一九年三月三日(日)

逃亡を拒んだ芳村

芳村と三好は、ロザリオが示した日比谷周辺の地図を確認していた。

三好は、〈メイキング〉やコルヌコピアを消去して東京から逃亡する案を提示した。しかし芳村は、自分たちだけ助かっても仲間を見捨てた後悔だけが残ると考え、逃亡を拒否した。傭兵相手なら自分たちでも対処できる可能性があると判断し、現地へ向かう決意を固めた。

三好も同行を宣言し、万が一の際にはダンつくちゃんへ合図を送る役目を引き受けた。

ラーテルとの交渉開始

一方、渋谷警察署では田中が捜査指揮を一任されていた。

そこへラーテルから連絡が入り、拘束されたルネ=ランベールの解放と国外逃亡支援、さらに五億円を要求された。見返りは核爆弾の引き渡しだった。

田中は、相手が思想犯ではなく損得で動く傭兵だと理解していたため、逮捕よりも核回収を優先する方針を取った。ラーテルは二時間後に日比谷で取引すると指定し、通話を終えた。

しかし田中は、葛飾から危険を冒して都心へ移動した点に強い違和感を抱いていた。

日比谷への潜入

芳村と三好は日比谷へ到着すると、ロザリオに導かれて日生劇場屋上へ敵がいると察知した。

三好は小型ドローンを飛ばし、屋上にいるラーテルとファシーラを確認した。ファシーラは既にライフルを準備しており、二人は狙撃を警戒した。

さらにラーテルの左手には起爆装置らしき機械が握られていたため、単純な制圧は危険だと判断された。

芳村たちはミッドタウン日比谷側から屋上へ接近し、アイスレムには狙撃妨害だけを行うよう命じた。

デヴィッドへの狙撃

帝国ホテルでは、デヴィッドがラーテルから電話を受けていた。

ラーテルは、今回の件への「礼」としてデヴィッドを狙撃しようとした。しかしアイスレムの妨害によって弾道は逸れ、致命傷には至らなかった。

それでもデヴィッドは窓際から動かず、自分は神の奇跡を見る資格があると狂気じみた言葉を口にしていた。

芳村たちは屋上設備の陰から状況を確認し、狙撃が阻止されていることを把握した。

SAT突入と核起爆

ファシーラが帝国ホテルへ向けて発砲したことで、SATには狙撃許可が下った。

狙撃弾が屋上へ飛来し、アルスルズと芳村の妨害で直撃は避けられたものの、ファシーラは死亡した。

激怒したラーテルは、起爆装置を作動させた。隠されていた核爆弾は爆縮を開始したが、核爆発は発生しなかった。

芳村が三好へ合図を送り、ダンつくちゃんによって世界中のプルトニウムガリウム合金と高濃縮ウランが消去されたためである。

核が不発に終わったことを悟ったラーテルは大笑いしながら武装警官へ反撃したが、そのまま集中射撃を受けて死亡した。

一方デヴィッドは、これを「神の奇跡」だと確信し、歓喜していた。

核消失後の余波

芳村と三好は、SAT突入直後にシャドウピットで日比谷公園へ離脱していた。

二人は、東京壊滅を防ぐ代償として、世界中の核兵器体系が変質したことを理解していた。また、ファントム出現直後に核消失が起きたことで、自分たちへの疑惑が強まる可能性も自覚していた。

芳村は、SATの強行突入が結果的に核起爆寸前まで事態を悪化させたことへ強い怒りを抱いていた。

田中との会話

その後、田中が二人の前へ現れた。

田中は、核爆弾が実際に起爆状態へ入っていたことを明かし、ダンつくちゃんの介入がなければ東京は消滅していたと説明した。

さらにSAT隊員たちが、劇場内で「コスチューム姿の人物」を目撃したと証言していることも伝えた。芳村は知らないふりを続けたが、田中は芳村が現場用語を知っていた点へ軽く探りを入れた。

芳村は適当に誤魔化し、田中もそれ以上追及せず、再び現場へ戻っていった。

終章 エピローグ

後日譚
ダンつくちゃん質問箱

質問箱の公開

斎賀の許可が下りた後、JDAのサイト上に「ダンジョンの向こう側に誰かがいるとしたら、どんなことが聞きたい?」という企画として、『ダンつくちゃん質問箱』が公開された。

この仕組み自体は単純なものであり、広報担当の桜井は短時間で実装を完了させた。しかし、なぜJDA自身が直接運営せず、別サイトへ転送する形を取る必要があるのか理解できず、疑問を抱いていた。

世間の反応

公開直後、『ダンつくちゃん質問箱』は大きな反響を呼んだ。

もっとも、当初は代々木ダンジョン掲示板や各種SNS利用者の多くが、これを単なるジョーク企画、あるいは遊び半分のネタサイトだと認識していたのである。

質問箱を巡る探索者たちの混乱

『ダンつくちゃん質問箱』が公開されると、探索者掲示板では即座に話題となった。

しかし多くの利用者は、これをJDAによるジョーク企画やエイプリルフールの前振りだと受け止めていた。JDAがこれまで冗談めいた企画を行ったことがないという指摘もあったが、今回が初めてなのではないかと軽く流されていた。

「ダンつくちゃん」の意味探し

やがて話題は、「ダンつくちゃん」という名称そのものへ移った。

ある者はネット辞典を参照し、別の者は愛知地方の獅子舞を「だんつく」と呼ぶ風習を持ち出した。そこから祭り言葉や方言ネタへ脱線し、掲示板は半ば雑談状態となっていった。

検索エンジンの珍現象

さらに利用者の一人が、「だんつく」という語を検索した結果、児童向けルパン小説へヒットしたと報告した。

調べた結果、それは「秘密の階段を作っておいた」という文章に振られていたルビが、「ひみつかいだんつく」と検索対象になっていたためだと判明した。これにより、検索エンジンのルビ処理仕様を巡る話題へも発展した。

獅子舞ちゃんの誕生

流れの中で、探索者たちは「ダンつくちゃん=獅子舞」という方向で盛り上がり始めた。

利用者の一人が「獅子舞ちゃん、十二歳」と題したイラストを投稿すると、掲示板ではその絵を称賛する声が上がり、各国語風の「獅子」の読み方を用いた派生ネタまで飛び出した。

こうして掲示板では、様々な「獅子舞ちゃん」のイラストやネタが投稿され、一時的に完全なお祭り状態となっていた。

ジョークか現実かという疑念

ひとしきり騒いだ後、利用者たちは改めて質問箱の本質について考え始めた。

単なるなりきり企画ではないかという意見もあったが、一方で「質問」を募集する以上、そこには「答える存在」が想定されているのではないかという指摘も出た。

さらに、JDAがこれまで軽薄な企画をほとんど行ってこなかったことから、もしこれが本物ならば、JDAがダンジョンの向こう側の存在と接触した、あるいは接触可能になったことを意味するのではないかという不穏な推測が語られ始めていた。

代々木ダンジョン界隈の熱狂

当時の代々木ダンジョン界隈は、かつてないほど活気づいていた。

探索者たちによる到達深度の急速な更新や、『ヒブンリークス』による新知識の公開が続いており、人々の関心はこれまで以上にダンジョンそのものへ向いていた。そのため、「ダンジョンの向こう側に関する何かが発見されているのではないか」という話題には、大きな夢と期待が伴っていたのである。

セーフエリア発見による空気の変化

利用者の一人が、実際にセーフエリアが発見された事実を挙げたことで、掲示板の空気は変化した。

ダンジョン内部でこれまで想像上だった要素が次々と現実になっている以上、「向こう側の存在」に関する何かが見つかっていても不思議ではないという意見が広がり始めたのである。

それまで冗談半分だった利用者たちも、次第に本気で質問内容を考え始めていた。

世界規模への拡散

やがて、誰かが掲示板の内容を翻訳して海外へ紹介したことで状況は一変した。

redditへ投稿された情報は瞬く間に拡散され、ローカルなJDA掲示板に過ぎなかった『ダンつくちゃん質問箱』へ、世界中から大量のアクセスが殺到し始めたのである。

見た目こそ素人が即席で作ったような簡素な掲示板であったが、その背後に存在するかもしれない意味は、もはや日本国内だけの話ではなくなっていた。

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