誰が勇者を殺したか レビュー
誰が勇者を殺したか 勇者の章レビュー
どんな本?
「誰が勇者を殺したか 預言の章」は、駄犬 氏の著作で、toi8氏のイラストを担当。
このライトノベルは、魔王を倒してくれる勇者を求め、何度も同じ時間をやり直す預言者の物語。
幾度も世界を繰り返す中で、とある街で金の亡者と噂される冒険者・レナードとその一行の最期に興味を抱く。
読んだ本のタイトル
誰が勇者を殺したか預言の章
著者:駄犬 氏
イラスト:toi8 氏
出版社:KADOKAWA(角川スニーカー文庫)
発売日:2024年8月1日
ISBN:9784041152300
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あらすじ・内容
魔王を倒してくれる勇者を求め、わたしは何度も世界をやり直していた
――世界編纂――死の原因である魔王を打倒するまで世界はわたしを特定の時間まで自動的に巻き戻す。幾度となく繰り返され精神的に疲弊する中、ある男に興味を抱いたわたしは彼を勇者に認定し行動を共にする。
感想
本書は、魔王を倒すために何度も世界をやり直す巫女の物語である。
とにかく物語の持って行き方が上手い!
読み終わった時は「凄い」としか言えなかった。
Xで作者さんにもそうポストしてしまった。
買って読み終わりました。
— こも ラノベ中毒者(3月読書数116冊) (@donperin) August 2, 2024
凄いかったです。
お返事頂いて嬉しく思っております。
ありがとうございます。そう言って頂けると、書いた甲斐があったというものです。
— 駄犬 (@fallen_dogs) August 2, 2024
この巫女は特別な能力(呪い?)「世界編纂」により、自らの死をきっかけに特定の時間まで世界を巻き戻すことができた。
死に戻りというジャンルだと認識中。
彼女は魔王を倒せる勇者を見つけるため、何度も世界をやり直し続けていた。
でも、彼女には勇者をっ選出し導くことしか出来ない。
それを100年以上も続けているので、心が擦り切れていた。
この辺りで、他の作品にない悲哀を感じる。
あるとき、彼女はレナードという冒険者に興味を抱き、彼を勇者として選ぶことにした。
レナードは金にがめつい冒険者であったが、その腕前は確かであった。
彼は仲間たちと共に数々の依頼をこなし、反比例的に悪評が広がってもいた。
その悪評の裏に何があるのかは話されないまま…
彼らの冒険の中で、レナードは己の過去や仲間との絆を見つめ直し、1人の復讐者として己の牙を研ぐ。
このパーティが復讐者となるキッカケの戦いでは、前の主人公のザックの両親が関わっていたのも驚いた。
巫女もまた、レナードを通じて自らの運命を見つえ直し、彼の行動を追っていった。
だがその時間軸ではレナードは、魔王軍の司令官ベルゼラに挑み亡くなってしまう。
魔王討伐失敗。
そして、前巻の時間軸へと行き、再度魔王軍の指揮官ベルゼラとの対決に向かって進む。
レナードはベルゼラとの戦いで危機に陥るが、勇者アレス(ザック)によって助けられ、共にベルゼラを討ち取った。
レナードの仲間たちも各々の役割を果たし、全員が協力して勝利を収めた。
この戦いは「ガルナハッザの奇跡」として語り継がれ、勇者たちの功績として広く認知されることとなった。
魔王討伐の後に、レナードは自身の過去を受け入れ、仲間たちと共に、困っている人達を助ける新たな冒険へと歩みを進める。
呪いのような自身の能力から解放された巫女は、ザックにレナードを連れて来てくれと頼み何も知らないレナードと初めて面会する。
物語は彼らの成長と絆を描き、誰もが勇者となり得る可能性を伝える感動的な結末を迎える。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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誰が勇者を殺したか レビュー
誰が勇者を殺したか 勇者の章レビュー
考察・解説
世界編纂と預言者
『誰が勇者を殺したか』における「世界編纂」と預言者の関わりは、ただ時間を巻き戻すだけの能力ではなく、彼女が数多の絶望を経験しながら、どのようにして真の勇者を見出し、世界の運命を紡いでいったのかという観点から詳細に描かれている。
「世界編纂」の仕組みと預言者の役割
- 預言者(正体は王妃)は、魔王と敵対する神の眷属であり、自らの死をトリガーとして特定の時間まで世界を巻き戻す「世界編纂」の能力を授かっている。
- 彼女の使命は魔王を打ち倒す「勇者」を導くことであるが、彼女自身にも誰が真の勇者になるのかは分かっていない。
- そのため彼女は、見込みのある者に自身の幻影(影法師)を張り付かせ、その行動を観察し続けるという方法を取る。
- しかし、預言者自身には戦う力がなく、直接介入することができないため、助言を与えて見守ることしかできないというもどかしい限界を抱えていた。
繰り返される徒労と精神的疲弊
- 預言者は何十回と「世界編纂」を繰り返し、何十人もの勇者候補を導いてきた。
- 力だけでなく性格の良さも重視し、明るく仲間を作るのが上手な騎士の息子・カーマインを勇者に選んだこともあったが、勇者として名が広まったことで魔人の標的となり、道半ばで命を落としてしまう。
- このような正統派の勇者たちの死を何度も目の当たりにしてきたことで、預言者の精神的な疲弊は限界に達し、「この輪廻から抜け出せないのではないか」という深い絶望と無力感に苛まれていた。
異端の冒険者レナードとの対峙
- そんな絶望の中で彼女が興味を抱いたのが、金のためなら卑怯な作戦もいとわない冒険者・レナードであった。
- これまでの勇者候補にはない性質を持つ彼に可能性を見出した預言者は、レナードの前に現れて彼を勇者に指名する。
- しかし、レナードは「報酬がない」「国や世界のために働く気はない」と勇者の使命を一蹴し、自己犠牲を尊ぶ預言者の在り方を痛烈に皮肉る。
- 預言者は彼に「敗色が濃厚な西へは行くな」と警告を与えるが、レナードは自身の過去の因縁を清算するため、仲間と共に西の激戦地ガルナハッザへと向かってしまう。
- 預言者は彼の選択を止めることはできなかったが、その行動の結末を見届けることを決意する。
真の勇者への「助言」と奇跡の結実
- 西の地で、レナードたちは魔王軍の指揮官である強大な魔人ベルゼラに命懸けで挑むが、力及ばず右腕を失うほどの絶体絶命の危機に陥る。
- しかしここで、預言者の過去の経験と采配が活きる。
- 彼女は、別で導いていた勇者アレス(名を騙るザック)に対し、「レナードを助けろ」という助言をあらかじめ与えていた。
- 預言者を信じたアレスは仲間(レオン、マリア、ソロン)と共にガルナハッザへ駆けつけ、レナードの窮地を救い、見事にベルゼラを討ち取ることに成功する。
- この勝利は『ガルナハッザの奇跡』として称えられ、魔王軍の指揮系統を混乱させて人間側の立て直しに大きく貢献することになる。
預言者の「世界編纂」は、単なる時間の繰り返しではなく、無数の失敗の果てにレナードのような異端者の存在を利用し、それを真の勇者(ザック)の成長と勝利へと結びつけることで、ようやく千年の輪廻を終わらせる奇跡に繋がったと言える。
冒険者レナードの資質
『誰が勇者を殺したか』に登場する冒険者レナードは、自己犠牲や正義を体現する伝統的な「勇者」とは対極に位置する、極めて異端で現実主義的な資質を持った人物として描かれている。
彼の冒険者としての資質や人間性は、以下のようないくつかの側面から深く掘り下げられている。
法外な報酬を要求する「偽悪者」としての顔
- レナードは、困窮する街や商人から法外な報酬(通常の十倍の金貨など)を要求し、そのためには街を囮にするような非情な作戦もいとわない「がめつい男」として広く悪名を轟かせていた。
- 自己犠牲を尊ぶ預言者からも、当初は「勇者の資質に欠ける」と見なされていた。
- しかし、彼はただの守銭奴ではなく、手に入れた報酬の一部を使って住む場所を失った流民たちを密かに救済し、領主に食料を提供させるといった行動をとっていた。
- 彼は自身の行動を「自己満足」と呼び、偽悪的に振る舞っていたが、根底には弱者を救おうとする人間性が隠されていた。
合理的で狡猾な戦闘スタイル
- 正統派の勇者のような圧倒的な個人の武力を持たないレナードは、手段を選ばない泥臭い戦い方を得意とする。
- 真正面からの戦いを避け、魔王軍の背後からの奇襲や、魔人の「誇り」という弱点を突いて相手を孤立させるなど、敵の心理と戦況を冷徹に分析する戦術眼に長けていた。
- また、彼自身は突出して強くなくても、ソフィア(魔法)、ニーナ(回復)、エフセイ(前衛)といった仲間たちの能力を最大限に活かす優れた連携を指揮する統率力を持っていた。
過去の罪悪感と「勇者」への否定
- レナードの行動の原動力は、10年前の「マリカの戦い」で、恐怖から戦場を逃げ出し、尊敬する仲間(ルーク)を見捨ててしまったことへの強烈な罪悪感である。
- 彼は「本物の勇者」であったルークを思い続けながらも、自らを「臆病者」と自嘲し、過去を清算するために強大な魔人ベルゼラとの死闘を望んでいた。
- そのため、預言者から勇者に指名された際も、「報酬がない」「国や世界のために働く気はない」と即座に拒絶し、死後に銅像を建てるだけで済まされる勇者の自己犠牲的なシステムを痛烈に皮肉っている。
世界の運命を変える「異端のピース」
- 預言者は何十回と時間を巻き戻し、清廉潔白な正統派の勇者たちが次々と死んでいく現実に絶望していたが、これまでの候補者にはないレナードの「泥臭く生き汚い性質」に新たな可能性を見出した。
- 結果的にレナードは真の勇者にはならなかった。
- しかし、過去の因縁に決着をつけるために右腕を失いながらもベルゼラに挑んだ彼の執念と、預言者の導きによって駆けつけたアレス(ザック)たちの力が交差したことで、魔王軍の指揮系統を崩壊させる『ガルナハッザの奇跡』が生まれる。
- さらにレナードたちはその功績をアレスのものとして広め、人間側に希望をもたらした。
レナードの資質は、決して輝かしい英雄のものではなかったが、その人間臭さと過去に落とし前をつけようとする覚悟が、本物の勇者(ザック)を導き、千年に及ぶ預言者の絶望を打ち破る重要な鍵となったと言える。
勇者アレスの台頭
『誰が勇者を殺したか』における「勇者アレスの台頭」は、天賦の才に恵まれ預言者に選ばれた「本物のアレス」の旅立ちと、彼の不慮の死後にその名を継いだ従弟ザックの血のにじむような努力という、二つの段階を経て描かれている。
才能のない青年がいかにして最強の仲間を惹きつけ、世界を救う真の勇者へと上り詰めたのか、その台頭の軌跡は以下の通りである。
本物のアレスの出発と早すぎる死
- 本物のアレスは、タリズ村出身で幼い頃から剣術、魔法、回復魔法を習得し、特殊な文字の読み書きもできる多才な青年であった。
- 預言者から「世界を救う勇者が現れる」と宣言されたことで、彼は村人や家族の期待を一身に背負い、ファルム学院へ向けて旅立つ。
- しかし、王都への道中で強大な魔人に遭遇し、激戦の末に致命傷を負って遭難し、その短い生涯を閉じてしまう。
ザックによる「アレス」の継承と学院での苦闘
- アレスの死後、彼に付き従っていた従弟のザックが「アレス」の名を騙り、ファルム学院に入学したことで、真の意味での「勇者アレスの台頭」が幕を開ける。
- ザック自身は本物のアレスのような突出した才能を持っていなかったが、不器用ながらも粘り強く物事を続ける資質を持っていた。
- 彼は亡きアレスのために戦うという強い自覚と罪悪感を抱きながら、過酷な鍛錬に身を投じる。
天才たちを惹きつける「異常なまでの努力」
学院でのザック(アレス)は、その諦めの悪さと献身によって、後にパーティーを組むことになる各分野の天才たちの心を次々と動かしていく。
- 剣聖レオンの感銘:勇者候補の筆頭であったレオンは、当初平民のアレスを軽蔑していたが、彼が密かに人の少ない場所で他人の倍の鍛錬を重ねる姿を見て、次第に畏敬の念を抱くようになる。ロゾロフ大森林の野外演習で魔人と遭遇した際、アレスの的確な指示で多くの生徒が救われ、レオン自身もアレスの協力を得て魔人に勝利したことで、彼を真の勇者として認めた。
- 聖女マリアにもたらした奇跡:戦士クラスでありながら回復魔法を学びたいというアレスに対し、マリアは理不尽な試練を与えた。しかし、彼は持ち前の粘り強さでそれを乗り越え、2年以上かけて初歩の回復魔法を習得する。才能がない彼のこの成果は、神の奇跡を信じていなかったマリアに「人によって成し遂げられた奇跡」を信じさせるきっかけとなった。
- 大賢者ソロンの価値観の転換:魔法の指導を断り続けていたソロンも、アレスのしつこい懇願に根負けして基礎から教え始める。3年目にアレスが微かな火の魔法を発動させたことは、孤独な天才であったソロンに「無駄だと思っていたことが実は価値あるものだ」と気づかせ、彼を友人として認めさせる決定的な出来事となった。
王家の承認と『ガルナハッザの奇跡』
- 最強の仲間たちとパーティーを組んだアレスは、王城へ初登城し、国王から魔王討伐への期待とともに王女アレクシアとの結婚を約束されるに至り、勇者としての地位を公的なものにする。
- そして彼の名声を世界に決定づけたのが、西の激戦地ガルナハッザでの戦いである。
- アレスは預言者からの「レナードを助けろ」という助言を信じ、命懸けで戦っていた冒険者レナードの窮地に駆けつける。
- アレスは魔王軍の指揮官である魔人ベルゼラと対峙し、見事に討ち取って勝利を収めた。
- この出来事は『ガルナハッザの奇跡』として広く称えられ、魔王軍の指揮系統を崩壊させて人間側に決定的な希望をもたらした。
- レナードたちも自らの功績を隠してアレスの名を高めたことで、「勇者アレス」の存在は絶対的なものとなる。
勇者アレスの台頭は、選ばれた天才の栄光の道ではなく、才能を持たない一人の青年が、己の弱さを自覚しながらも他者のために泥臭く足掻き続け、天才たちを絆で結びつけて強大な敵に立ち向かっていった「努力と献身の軌跡」として描かれている。
魔人ベルゼラとの決戦
『誰が勇者を殺したか』における魔人ベルゼラとの決戦は、滅びたマリカ国の王都ガルナハッザを舞台に繰り広げられた、物語のターニングポイントとなる重要な戦闘である。冒険者レナードたちの捨て身の覚悟と、預言者の導きによって駆けつけた勇者アレス(ザック)たちの力が結集したこの戦いの詳細は以下の通りである。
決戦の背景とベルゼラの目論見
- レナードたちはラルフという男を通じ、魔王軍の指揮官(大将)であるベルゼラとの直接交渉の機会を得て、激戦地に近いガルナハッザへと向かった。
- ベルゼラはレナードに「勇者アレスの暗殺」を依頼するが、同時に彼らの裏切りも織り込み済みであり、強力な護衛の魔人たちを引き連れていた。
- しかしレナードたちは、過去の因縁を清算するため、命懸けでベルゼラに挑むことを選択する。
仲間たちの死闘と天才たちによる救援
- 決戦が始まると、レナードの仲間たち(エフセイ、ソフィア、ニーナ)は、ベルゼラの護衛である色付きの魔人たちを引き付け、ベルゼラを倒すための時間を稼ぐ捨て石としての役割を担う。
- 彼らが各々限界を迎え、絶体絶命の危機に陥ったその時、預言者の助言を受けたアレスの仲間たち(レオン、ソロン、マリア)が間一髪で駆けつける。
- エフセイとレオン:青い魔人と戦い、負傷して危機に陥っていたエフセイの前に若い騎士レオンが現れる。剣聖であるレオンは、基礎の積み重ねによる究極の剣技で一瞬にして魔人を討ち取った。
- ソフィアとソロン:赤い魔人を引き付け、死を覚悟して最大の呪文を準備していたソフィアの前に、大賢者ソロンが現れる。彼はソフィアの意図を見抜き、強力な炎の呪文で魔人を撃退した。
- ニーナとマリア:緑の魔人と戦い、体力の限界に達していたニーナは、聖女マリアの浄化の力によって救済される。
レナードの執念と勇者アレスの勝利
- 一方、レナードは単独で強大なベルゼラに挑み続けていた。
- 幾度も接近してわずかな傷を負わせるものの決定打には至らず、ついには右腕を失うという致命的な窮地に立たされる。
- それでも彼は執念でベルゼラの首に短剣を突き立て、ベルゼラも彼を勇者と認めて最後の一撃を振り下ろそうとした。
- その瞬間、勇者アレスが現れる。
- 預言者からの助言を信じて駆けつけたアレスは、勇者としてベルゼラと冷静に対峙し、敵の隙を突いて見事に指揮官ベルゼラを撃破・勝利した。
決戦がもたらした影響と『ガルナハッザの奇跡』
- 戦闘後、レナードの失われた右腕はマリアの回復魔法によって復元される。
- ベルゼラの死により魔王軍の指揮系統は大きく混乱し、人間側は崩壊寸前の状況から立て直しに成功する。
- この劇的な勝利は後に『ガルナハッザの奇跡』と称えられ、勇者たちの功績として広く知られることになった。
- さらに、レナードたちが自身の役割を隠し、すべてを勇者アレスの手柄として広めたことで、人間側に希望をもたらし、勇者アレスの名声を絶対的なものとしたのである。
魔人ベルゼラとの決戦は、過去の罪悪感から逃れようと足掻く冒険者たちの決死の贖罪と、未来を背負う勇者アレスたちの力が交差することで成し遂げられた。千年にわたる預言者の絶望を打ち破り、世界の運命を大きく変えた最も象徴的な戦いとして描かれている。
過去の罪と救済
『誰が勇者を殺したか』において、「過去の罪と救済」は物語の根底を流れる極めて重要なテーマである。作中に登場する主要なキャラクターの多くは、かつて「大切な者を救えなかった」「戦いから逃げ出してしまった」という強烈な罪悪感を抱えており、その過去とどう向き合い、どのようにして救済を見出していくのかが深く描かれている。
それぞれのキャラクターが抱える「罪」と、その「救済」の軌跡は以下の通りである。
ザック:アレスを救えなかった罪悪感と自己犠牲
- 本物のアレスに付き従っていたザックは、魔人に致命傷を負わされ苦しむアレスから命を絶ってほしいと懇願され、最終的に自らの手で彼を楽にする(介錯する)という過酷な決断を下した。
- ザックは「アレスを助けられなかった」という強い責任感と罪悪感を背負い、彼に代わって「勇者アレス」として魔王を倒す過酷な道を選ぶ。
- 魔王討伐後、彼は自らが勇者であることを否定し、逃げるように姿を消すが、祖父ヴィンスの故郷である滅びたレティン村を訪れ、村人たちのために働く中で、過去の自分とルーツを受け入れていく。
- 最終的に、王女アレクシアが彼を見つけ出し、勇者としての正当な評価と「好きな人と結婚する」という約束を果たすことで、彼の献身は真に報われ、救済されることになる。
レナードと仲間たち:戦場から逃げ出した「マリカの戦い」の贖罪
- 冒険者レナードは、10年前の「マリカの戦い」で恐怖から戦場を逃げ出し、尊敬する本物の勇者ルークや仲間たちを見捨ててしまった過去に苛まれていた。
- 同じく生き残ったエフセイ、ソフィア、ニーナもまた、恐怖でルークを助けられなかったことや仲間を失った罪悪感に苦しみ、逃げるように生きていた。
- 彼らは過去を清算するため、因縁の相手である魔王軍の大将ベルゼラとの決死の戦いに挑む。
- それぞれが命を賭して捨て石となり、右腕を失ってでもベルゼラに立ち向かった彼らの姿は、かつての罪悪感を乗り越えるための贖罪であった。
- 戦いの後、レナードは王城に招かれた際、自らの罪悪感をザックに打ち明ける。
- ザックから「罪を持ちながらも現在を大切にすること」を説かれたレナードは、過去の失敗を背負いながら生きることを肯定され、精神的な救済を得た。
預言者(王妃):千年にわたる犠牲の連鎖と後悔
- 時間を巻き戻す「世界編纂」の能力を持つ預言者(王妃)は、魔王を倒す勇者を見つけるために、何十回も世界をやり直し、何十人もの勇者候補を非業の死に追いやる結果を生み出してきた。
- 彼女は、自分の選択によって生み出された無数の犠牲と、死んだ人々が二度と戻らないという現実に深い悔恨を抱き続けている。
- 彼女の救済は、ザックたちが魔王を討ち果たし、長い輪廻の旅が終わったことでもたらされたが、それは同時にこれまでの犠牲の重さを噛み締めることでもあった。
- 最終的に、レナードたちの命懸けの戦いや、ザックがアレクシアに迎えられる未来を紡いだことで、彼女の途方もない苦しみと罪悪感は結実したと言える。
まとめ
本作における「救済」とは、過去の罪や失敗が完全に消え去ることではなく、「罪悪感を抱えたまま、誰かのために今できることを全力で成し遂げること」として描かれている。ザックもレナードも、自らの弱さや過去の過ちから逃げず、現在を懸命に生き抜くことで、周囲の人々に希望をもたらし、結果として自分自身の魂をも救済していくのである。
誰が勇者を殺したか レビュー
誰が勇者を殺したか 勇者の章レビュー
登場キャラクター
神・王家
神
魔王と敵対する存在である。人々の幸せを願っていると教えられるが、人間に関心を持っていないように感じられる存在でもある。
・所属組織、地位や役職
神。
・物語内での具体的な行動や成果
作中での直接的な行動は描かれていない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
預言者に世界編纂の能力を授けた。マリアの回復魔法の源として信じられている。
預言者(王妃、巫女)
魔王と敵対する神の眷属である。王城の地下神殿に身を隠す巫女であり、王妃としての顔も持つ。
・所属組織、地位や役職
神殿の巫女。王妃。預言者。
・物語内での具体的な行動や成果
魔王を倒す勇者を導くため、自身の死をトリガーに時間を巻き戻す「世界編纂」を繰り返した。レナードに興味を抱き、彼を勇者に指名したが断られる。アレス(ザック)にレナードを助けるよう助言を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
女性であり自身には戦う力がないことに限界を感じていた。千年以上にわたり輪廻を繰り返し、最終的にザックが魔王を倒したことでその旅を終えた。
勇者アレス一行
アレス(ザック)
本物のアレスの従弟である。不器用ながらも粘り強く努力する性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
勇者。
・物語内での具体的な行動や成果
アレスの名を騙りファルム学院に入学した。レオン、マリア、ソロンとパーティーを組んで魔王討伐を果たした。預言者の助言に従いガルナハッザでレナードを助け、魔人ベルゼラを討ち取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔王討伐後は自らが勇者であることを否定し、祖父の故郷レティン村で復興を手伝っていた。最終的にアレクシアに見出され、真の勇者として帰還することになった。
レオン
伯爵家の長男である。勇者候補の筆頭であり、剣聖と呼ばれる実力を持つ。
・所属組織、地位や役職
ファルム学院の生徒。剣聖。
・物語内での具体的な行動や成果
当初はアレスを敵視していたが、彼の努力を認めて友情を結んだ。ガルナハッザの戦いでは、青い魔人を一瞬で討ち取り、エフセイを救出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アレスとの出会いにより価値観を変え、勇者になるための覚悟を固めた。
マリア
教会を運営する司教である。聖女と呼ばれるが、人々の盲目的な信仰に疑問を抱き、信仰心なく回復魔法を利用していた。
・所属組織、地位や役職
ファルム学院の生徒。教会司教。聖女。
・物語内での具体的な行動や成果
アレスに理不尽な試練を与えつつも回復魔法を指導した。ガルナハッザの戦いで緑の魔人と戦うニーナを救い、レナードの失われた右腕を復元した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アレスの努力を通じて、人による奇跡と勇者の存在を信じるようになった。アレスへの愛を自身の力の源としている。
ソロン
大賢者と呼ばれる天才魔法使いである。異常な才能ゆえに孤独を好む偏屈な性格を持っていた。
・所属組織、地位や役職
ファルム学院の生徒。大賢者。
・物語内での具体的な行動や成果
アレスの懇願に根負けし、魔法の基礎を教え始めた。ガルナハッザの戦いでは赤い魔人を強力な炎の呪文で撃退し、ソフィアを救出する。関係者の証言から勇者がザックであることを見抜いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アレスの指導を通じて、無駄だと思っていた人間関係や魔法への新たな見方を得た。
冒険者(レナード一行と関係者)
レナード
マリカ国の戦いで生き残った腕利きの冒険者である。法外な報酬を要求するがめつい男として悪名高い。
・所属組織、地位や役職
冒険者。リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
アルカンドの街で魔人を討ち取った。商人一家を救出する依頼をこなし、ガスタン村の魔物討伐も実行する。ガルナハッザではベルゼラと交渉し、後に命懸けの決戦に挑んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
表向きは偽悪的に振る舞うが、報酬の一部で流民を救済していた。ベルゼラとの戦いで右腕を失ったが、後にマリアの魔法により復元された。過去にルークを見捨てて逃げ出した罪悪感を抱えていた。
ソフィア
貴族出身で優れた魔法の才能を持つ女性である。10年前の戦いで仲間を失った罪悪感から冒険者を辞め、薬屋を営んでいた。
・所属組織、地位や役職
冒険者。元薬屋。
・物語内での具体的な行動や成果
ゴブリンや巨人を紅蓮の炎で焼き尽くすなど、強力な魔法でパーティーを支援した。ガルナハッザでは赤い魔人を引きつける役割を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レナードの誘いで冒険者に復帰した。ニーナを仲間に引き入れる際、自身の過去の経験を語って彼女の心の支えとなった。
ニーナ
流民を支援する僧侶である。戦場で恐怖にとらわれ勇者を助けられなかった過去を持つ。
・所属組織、地位や役職
冒険者。僧侶。
・物語内での具体的な行動や成果
癒しの力で仲間の疲労回復や治療を行った。ガルナハッザでは神を下ろす術を使って力を強化し、緑の魔人と交戦する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
流民を見捨てられないと悩んでいたが、報酬で彼らを救えると説得され仲間に加わった。
エフセイ
マリカの戦いの生き残りである冒険者である。仲間を失った罪悪感から一人で依頼をこなしていた。
・所属組織、地位や役職
冒険者。戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
槍を武器に前衛として戦った。巨人の首を槍で貫いて倒している。ガルナハッザでは捨て石として青い魔人を引き付け、時間を稼いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レナードに過去の罪悪感を乗り越えるため協力を求められ、仲間に加わった。
ルーク
レナードが尊敬していた冒険者である。レナードから「本物の勇者」と見なされていた。
・所属組織、地位や役職
冒険者。勇者。
・物語内での具体的な行動や成果
10年前のマリカの戦いで、ベルゼラから逃げられなくなった際にレナードを逃がした。戦場に残り、他の仲間たちと共に戦って散った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼の死はレナードやエフセイ、ニーナに強い罪悪感を残した。
レイ
かつてのレナードの仲間である。
・所属組織、地位や役職
冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
作中での直接的な行動の描写はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ルークと共に冒険者として活動していた。
その他の勇者候補
カーマイン
明るく気さくな性格の騎士の息子である。仲間を作るのが上手な人物であった。
・所属組織、地位や役職
勇者候補。
・物語内での具体的な行動や成果
預言者によって勇者に選ばれた。王都から他の街へ向かう途中で魔人に襲われて命を落とす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼の死後、その持ち物はレナードに奪われた。
市井の人々・騎士・関係者
エルデリアの有力な商人
レナードの悪評を預言者の導く勇者に伝えた人物である。
・所属組織、地位や役職
商人。
・物語内での具体的な行動や成果
レナードに救出された過去を持つ。その際、法外な報酬を要求されたことを語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アルカンドへの荷物運搬をレナードから依頼された。
商人一家
魔王軍に占領された国から脱出できずにいた人々である。
・所属組織、地位や役職
商人。
・物語内での具体的な行動や成果
レナードたちに救出され、無事にエルデリアの街へ到着した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村にいた子供の同行を追加報酬と引き換えに依頼した。
少年(村の子供)
魔王軍の占領地にいた子供である。
・所属組織、地位や役職
平民。
・物語内での具体的な行動や成果
商人一家の依頼によりレナードたちに救出された。魔物に襲われそうになったところをレナードに助けられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ガスタン村の村長
穀倉地帯の村をまとめる人物である。
・所属組織、地位や役職
ガスタン村。村長。
・物語内での具体的な行動や成果
レナードから魔物討伐の報酬として穀物を要求され、躊躇しつつも提案を受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルカンドの領主
街を守るため、冒険者を雇う人物である。
・所属組織、地位や役職
アルカンド。領主。
・物語内での具体的な行動や成果
レナードの要求した十倍の報酬を承諾した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レナードからの依頼で流民を受け入れるため食料を提供した。
アルカンドの初老の騎士
アルカンドの街の防衛を任されている人物である。
・所属組織、地位や役職
アルカンド。騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
街に被害が出たことに対し、レナードたちにもう少し早く魔人を倒せなかったのかと沈痛な表情で問いかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レナードの勇者らしからぬ態度に納得がいかない様子であった。
ラルフ
魔王軍が勝利することを前提に行動している小太りの男である。
・所属組織、地位や役職
仲介人。
・物語内での具体的な行動や成果
レナードに勇者アレスの暗殺を依頼した。レナードを魔人ベルゼラと引き合わせる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ソロンの策により、彼の所属する組織は壊滅した。
魔王軍・魔物
魔王
世界の半分を制圧した存在である。
・所属組織、地位や役職
魔王軍。魔王。
・物語内での具体的な行動や成果
ザックたちとの死闘の末に討伐された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ベルゼラ
魔王軍の指揮官である。人間と魔人を区別せずに受け入れる合理的な思考を持つ。
・所属組織、地位や役職
魔王軍。大将。
・物語内での具体的な行動や成果
レナードに勇者アレスの暗殺を依頼した。ガルナハッザでレナードたちと決戦を行い、レナードの右腕を奪う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
駆けつけた勇者アレスによって撃破された。彼の死により魔王軍の指揮系統が大きく混乱した。
魔人
人間を獲物として狩ることを好む強力な魔物である。誇り高く、救援を求めることを良しとしない性質を持つ。
・所属組織、地位や役職
魔王軍。
・物語内での具体的な行動や成果
本物のアレスに致命傷を負わせた。アルカンドの街を襲撃したが、レナードの策にはまり孤立して討ち取られる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
複数体存在し、各地で勇者候補や人間たちを襲っている。
青い魔人
ベルゼラの護衛である。
・所属組織、地位や役職
魔王軍。
・物語内での具体的な行動や成果
ガルナハッザの戦いでエフセイを負傷させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
駆けつけたレオンの究極の剣技によって一瞬で討ち取られた。
赤い魔人
ベルゼラの護衛である。
・所属組織、地位や役職
魔王軍。
・物語内での具体的な行動や成果
ガルナハッザの戦いでソフィアと交戦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ソロンの強力な炎の呪文によって撃退された。
緑の魔人
ベルゼラの護衛である。
・所属組織、地位や役職
魔王軍。
・物語内での具体的な行動や成果
ガルナハッザの戦いでニーナと交戦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マリアの浄化の力によって退けられた。
巨人
魔王軍の手先である。
・所属組織、地位や役職
魔王軍。
・物語内での具体的な行動や成果
村の手前で道を塞いでいたが、ソフィアの魔法で全身に火傷を負った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レナードに注意を引かれ、エフセイに首を槍で貫かれて倒れた。
誰が勇者を殺したか レビュー
誰が勇者を殺したか 勇者の章レビュー
備忘録
第一章 預言者
人々は魔王によって滅びる運命にあった。
ある巫女は、その様子を何度も様々な形で見てきた。
彼女は魔王と敵対する神の眷属であり、特別な能力「世界編纂」を授かっていた。
この能力によって、彼女が死ぬたびに世界は特定の時間まで自動的に巻き戻され、死の原因が取り除かれるまで繰り返された。
魔王を倒すのは勇者の役割であったが、その勇者を導くのは預言者とされていた。
しかし、預言者は巫女が作り出した幻影に過ぎず、誰が真の勇者であるのかは分からなかった。
彼女は魔王を打倒してくれる勇者を求めて、何度も世界をやり直していた。
ある時、彼女は一人の冒険者の存在を知った。それは、多くの冒険者が死んだマリカ国の戦いで生き残った数少ない者の一人、レナードであった。
彼の仲間たちも同じく生き残りであり、難しい依頼をこなせる冒険者のパーティーとして知られていた。
アルカンドの街が魔王軍に狙われていたとき、レナードたちは他の冒険者の十倍の報酬を要求し、街を襲っていた魔人を倒すことを提案した。
結果として、レナードは依頼を果たし、魔人を討ち取ったが、その作戦は街を囮にするものであった。
その結果、多くの騎士や兵士、冒険者たちが犠牲になり、彼らの中には騎士の息子も含まれていた。
レナードたちは自身に傷を負うことなく勝利し、報酬を手にして街を去った。
騎士はこの結果に納得がいかず、レナードを勇者の仲間にしないほうが良いと感じていた。
報酬を求めること自体が悪いわけではなかったが、勇者としての資質に欠けていると感じたためであった。
巫女もまた、レナードを勇者の候補から除外し、その存在をしばらく忘れていたのである。
次にレナードの話を聞いたのは、別の『勇者』を導いていたときであった。
エルデリアの有力な商人は「レナードはマリカ国が滅亡したときの戦いで生き残った冒険者のひとりで、今では数少ない腕利きの冒険者として有名である」と語った。
『勇者』は彼に興味を示し、強い仲間を求めていた。しかし、商人は「レナードはがめつい男で、何かにつけて金を要求してきた」と忠告した。
商人が魔王軍に占領された国から脱出できないときに、レナードたちは道を切り開いて救出してくれたが、その報酬として金貨四百枚を要求したのだ。
商人はさらに「村で出会った少年を連れていく際にも、レナードはその子の分の金貨五十枚を要求してきた」と述べた。
『勇者』は金で動く人間は信用できないと考え、レナードを仲間に加えることを断念した。
この『勇者』も、仲間を求めて他の街へと去ったが、道半ばで倒れた。
また別の『勇者』を導いているとき、兵士は「レナードという冒険者が魔物を退治した報酬として、ガスタン村から農作物を奪った」と話した。
ガスタン村は穀倉地帯にあり、戦地の兵士たちの食糧を供給していたが、補給路を魔物に妨害されて困っていた。
レナードはこの状況を利用し、村長に対して通常の十倍の報酬を要求して依頼を受けた。
そして魔人を討ち取ったが、その後に穀物を横取りして商人に高値で売ったという。
兵士は「勇者様はレナードとは違い、困っている人々のために魔物を倒してくれる」と賛美し、『勇者』もまたレナードの行動に不快感を示した。
預言者である彼女も、レナードの悪い噂を何度も聞いては呆れていた。
世界編纂を何十回と繰り返した後、ある『勇者』が訪れた酒場で、レナードが金目当てで危険な依頼を引き受け、魔王領で魔人にやられたとの噂が広まっていた。
酒場の客たちは彼の死を嘲笑し、誰も悼む者はいなかった。
彼女もまた、ふさわしい最期であると感じたが、腕の立つ彼がそのように死んだことに意外さを覚えた。
しかし、彼が勇者にふさわしい人物ではないと改めて思った。
第二章 邂逅第
このとき、預言者が導いていた『勇者』はカーマインという名の青年であった。
彼は騎士の息子として育ち、明るく気さくな性格で仲間を作るのが上手であった。
預言者は『世界編纂』を繰り返す中で、勇者には力だけでなく、性格的な部分も重要であると考えるようになっていたため、カーマインを選んだのである。
カーマインはその運命を受け入れ、周囲からも祝福されていた。
しかし、カーマインは王都から他の街へ向かう途中で魔人に襲われて倒れてしまった。
本来なら彼は魔王軍と戦う立派な騎士となる運命であったが、勇者に指名されたことで魔人に狙われることになった。
勇者となった者は名が広まるにつれ、魔人たちの標的となるため、非常に危険な状況に置かれるのである。
預言者はまた徒労に終わったことに疲れを感じていた。
『世界編纂』を行う気力も尽きており、この輪廻から抜け出せないのではないかと絶望感を抱いていた。
そんな中、カーマインとの戦いで傷を負った魔人が現れた。
そこへ現れたのはレナードという男で、軽薄な口調で魔人に挑んだ。
レナードは仲間と共に魔人を倒し、戦利品としてカーマインの持ち物を手に入れた。
彼の行動は倫理的に問題があったが、預言者は彼に興味を抱いた。
レナードは今まで選んだ勇者候補にはいない性質を持つ人物であり、今回の『世界編纂』で残された時間もまだ長いことから、彼を勇者に指名してその末路を見届けることを考えた。
どうせ彼は遠くない将来に死ぬ運命にあると感じていたため、やり直すのはその後でも悪くないと考えたのである。
三章 アルカンド
預言者は自身の幻影をレナードの影法師に変えて、その行動を観察し始めた。
カーマインを埋葬した後、レナードたちはアルカンドという街に向かった。
この街は魔王軍と連合軍の戦地に近く、物資の中継地点として栄えていたが、治安は乱れていた。
レナードはこの街の混沌を見て、「賑やかだがロクな街ではない」と評した。
彼の仲間ニーナは流民たちを憐れみ、銀貨を渡して助けようとしたが、レナードはそれを「自己満足」として批判した。
アルカンドの領主は儲けた金で冒険者を雇い、街を守っていた。
レナードたちも報酬を目当てにその依頼を受けることにした。
依頼者である騎士に対し、レナードは「魔人を始末するので報酬を十倍にしてほしい」と要求した。
騎士はその要求を渋ったが、レナードは過去の実績をアピールし、安心と安全の価値を説いた。
最終的に、騎士は領主の判断を仰ぐと答え、レナードたちは返事を待ちながら酒場で過ごすことにした。
預言者は彼らの交渉の様子を見届けつつ、レナードの行動を興味深く観察していた。
次の日まで返事を待つ必要はなかった。
その夜に「十倍の報酬を出す」という連絡が来たからである。
レナードは酒場で仲間たちに「話はまとまった。魔王軍を指揮している魔人を倒す」と告げた。
ソフィアは魔王軍の数が多いことを懸念しつつ、レナードの自信をからかった。
ニーナは金よりも依頼の価値を重視し、多くの人を救うために戦うことに賛同した。
エフセイはいつも通り「任せる」とだけ言った。
レナードは「敵の立場に立って考えれば、次の襲撃は正面から来るはず」と推測し、魔王軍を背後から狙う作戦を立てた。
彼は「ヤバくなったら逃げればいい」と気楽に考えていたが、仲間たちと具体的な作戦を詰めた。
その夜、レナードは宿の部屋で「預言者」と名乗る何者かに遭遇した。
この預言者はレナードを勇者に指名したが、レナードは即座に断った。
報酬がないことを理由に拒絶し、王の地位には興味がないと述べた。
預言者が「世界を変える力がある」と説得を試みたが、レナードは激怒し、預言者に姿を消すように要求した。
預言者は煙のように消え去り、レナードはその場に立ち尽くした。
レナードたちはアルカンドの街に約十日間滞在した。
彼らは「十倍の報酬を要求した強欲な冒険者」として街中で知られており、あまり居心地は良くなかった。
ソフィアは絡んできた男たちに魔法を使って悪評を広め、ニーナは流民たちの世話をして聖女のように称賛されていた。
エフセイは酒場で喧嘩を無言で返り討ちにしていた。
その後、待ちかねていた魔王軍が現れた。
領主の物見櫓から「魔王軍だ!」という声が上がった。
ソフィアが魔法で視力を強化し、敵の戦力を分析したところ、魔王軍は千を超える規模であったが、統一感がなく、指揮している魔人はひとりだけであった。
レナードはその情報を基に、住民の避難に紛れて街を離れ、魔王軍の背後から魔人を狙う作戦を立てた。
彼らは住民たちの集団に紛れて街を出て、敵の監視がないことをソフィアが確認した後、魔王軍の後方に回り込んだ。
魔王軍が攻撃するタイミングを待ちつつ、背の高い草むらを利用して身を隠しながら移動した。
レナードたちは神頼みの心境で作戦の成功を願っていた。
魔人はアルカンドの街への襲撃での勝利を確信していた。
前回の襲撃で人間たちに大きな損害を与えたこともあり、今回も同じ規模の魔物を集めてきたため、人間には防ぐ術がないと考えていた。
魔人は魔物たちに攻撃命令を発し、ゴブリンやホブゴブリンを率いて街に迫った。
戦闘が始まり、魔物たちは街へ攻め入った。
オーガたちは矢を受けながらも門を破ろうとしていたが、魔人は後方で護衛のホブゴブリンたちと待機していた。
そこに突然、魔力の高まりを感じ、爆発系の魔法で攻撃を受けた。
ホブゴブリンが二匹倒れたものの、魔人は防御のための結界を張っていた。
魔法使いの攻撃を受けていることを知った魔人は、ホブゴブリンを派遣して探索を命じた。
その直後、槍を持った人間の戦士が空からホブゴブリンを襲い、さらに草むらから現れた剣士がホブゴブリンを斬り伏せた。
魔人は剣士と対峙し、力を誇示する戦いを好んだが、相手は巧みに足を狙ってきた。
魔人は戦士の剣技に翻弄され、次第に傷を負っていった。
ホブゴブリンたちは戦士に釣り出されて距離を置かれ、魔人は孤立した。
自分の誇りから魔物たちに救援を求めることはできず、戦士の攻撃に対応しきれないまま、ついに全身が傷だらけになった。
戦士と目が合い、そこには深い憎しみが宿っていることを感じ取った。
魔人は、自分が獲物として狩られる立場にあることを悟ったのである。
レナードたちは魔人との戦いで勝利を収めた。レナードは魔人が地に伏したのを確認してようやく息をついた。
魔人は誇りを持って戦うが、レナードはその誇りを突いて勝利した。
しかし、無傷では済まず、脇腹を負傷していた。
レナードは作戦通り、仲間たちの元へ向かった。
エフセイはホブゴブリンたちを引きつけており、ソフィアとニーナも追跡されながら魔人の護衛を分散させていた。
最終的に、レナードがホブゴブリンたちを背後から奇襲し、全員で協力して難なく撃退した。
仲間たちは疲れ果てていた。
ソフィアは疲れを訴え、ニーナも神の奇跡で身体を強化していたものの消耗していた。
エフセイは黙って座っていた。レナードはニーナに疲労回復の祈りを頼んだ。
魔人を倒してもアルカンドの状況は依然として劣勢であり、街を救うために行動を続ける必要があった。
レナードは自身の傷を気にせず、報酬を受け取るために街に戻ることを優先した。
魔人の首を掲げて魔物たちを退却させる作戦を考えていた。
彼は自身の戦い方が卑怯であることを認識しており、最悪の死に方をする覚悟があることを自嘲気味に語った。
魔人の首は予想通り効果を発揮した。
レナードたちが街に戻り、その首を見せると、魔物たちは恐れて逃げ去った。
無理して戻った甲斐があったというものである。
街の防衛を任されていた初老の騎士は、感謝と怒りの入り混じった反応を示した。
魔人を倒したことに礼を述べたが、街が攻撃されてから時間が経過していたため、守備隊には甚大な被害が出ており、騎士、兵士、冒険者の半数が戦死していた。
「もう少し早く魔人を倒せなかったのか」と騎士は沈痛な表情で問いかけた。
レナードたちには犠牲が出ていないため、騎士は納得がいかない様子であった。
レナードは「俺たちの仕事は魔人を仕留めることであり、街を救うことではない」と返答した。
人間ができることには限界があり、勇者であればもっと献身的に行動したかもしれないが、彼はそういう性格ではないと語った。
領主はレナードの要求した報酬を快く承諾した。
魔王軍の指揮官である魔人が倒れたことで、街に一時的な平和が訪れることを意味していたからである。
間章 ソフィア
薬屋を営んでいたソフィアのもとに、無頼の雰囲気を漂わせた金髪の男が訪れた。
彼は強力な傷薬を求め、代金として多めの金貨を差し出し、ソフィアに昔の話を聞かせてほしいと頼んだ。
ソフィアは貴族出身で、若い頃は優れた魔法の才能を持ち、冒険者として活躍していたが、10年前のマリカ国での戦いで仲間を失い、その後は薬屋を営むようになった。
ソフィアは、戦いで仲間を失った罪悪感から冒険者を辞め、薬屋として静かな生活を送っていた。
男は実はソフィアの実家からの依頼で彼女を探していたと告白し、彼女を貴族に戻そうとするが、彼女は戻る気はなかった。
男はレナードと名乗り、冒険者仲間としてソフィアを誘った。
彼はルークとレイのかつての仲間であり、再び冒険者として戦う決意をしていた。
ソフィアはレナードの言葉に心を動かされ、冒険者として再び旅立つ決意を固めた。
彼女は過去の罪悪感を振り払い、新たな冒険に挑む決意をした。
レナードはソフィアの手を取り、共に戦う仲間として迎え入れた。
第四章 エルデリア
レナードは酒場で仲間たちに次の依頼について伝えた。魔王軍に占領された国から脱出できなくなった商人の一家を救出するもので、一人あたり金貨百枚、合計四百枚の報酬が見込まれていた。
ニーナは魔王領での危険性を心配したが、レナードは最近占領されたばかりのため、状況はそこまで危険ではないと説明した。
ソフィアは金銭の重要性を皮肉り、馬車の手配を提案した。
ソフィアは貴族出身であるため、見栄えが良くて頑丈な馬車が最適だと主張したが、レナードは地味で頑丈な馬車が望ましいと考えていた。
レナードたちは、商人の一家を無事に脱出させることが目的であるため、急ぐ必要があると決め、準備を進めた。
エフセイは酒を飲み干しながら億劫そうに立ち上がり、仲間たちはそれぞれ出発の準備に取りかかった。
その夜、レナードが宿屋の部屋に戻ると、預言者が待っていた。
預言者は魔王が現れるときに人々の中から勇者を選び導く者であった。
レナードは皮肉を交えて預言者に話しかけたが、預言者は「西には行くな」とだけ告げた。
預言者は東へ行って勇者としての使命を果たすように求めた。
東側の戦況はまだ悪くなく、敗色濃厚な西よりも良い選択であるということだった。
しかし、レナードは国や世界のために働く気はなく、金のためにしか動かないと告げた。
自己犠牲を尊ぶ者を皮肉り、勇者が死んだ後には銅像を立てる程度で済まされることを批判した。
レナードは預言者にも厳しい言葉を投げかけ、自ら戦うことを求めた。
預言者は動揺した様子を見せ、そのまま部屋の闇に溶け込むように消えた。
レナードは「俺は勇者なんかじゃない。勇者はいないんだよ」と呟いた。
レナードとエフセイは馬を走らせ、救出対象の商人一家が潜伏している村へ向かっていた。魔王軍の占領地であるため、御者はいなかった。村の手前で道を塞ぐ巨人とゴブリンたちに遭遇した。ゴブリンたちは巨人と一緒にいるため、挑発的に踊っていた。
レナードはソフィアに魔法を使ってゴブリンたちを焼き払うよう頼んだ。
ソフィアは古代語で詠唱し、紅蓮の炎を竜巻のようにして巨人とゴブリンたちを焼き尽くした。
ゴブリンたちは即座に消滅し、巨人は全身に火傷を負ったがまだ生きていた。
レナードとエフセイは巨人にとどめを刺すために馬を走らせた。
レナードは巨人の注意を引きつけながら、剣で細かい傷を与えた。
その隙にエフセイは高く跳躍し、巨人の首を槍で貫いた。巨人はそのまま倒れた。
ニーナが駆け寄り、レナードたちに怪我がないか確認したが、彼らは無傷であった。
レナードは親指を立て、エフセイは槍を引き抜いて着地した。
レナードたちは巨人を倒し、目的地の村に到達した。村は廃村同然で、商人の一家は無事に見つかった。
だが、商人が村にいた子供も一緒に連れて行ってほしいと頼んできた。
レナードは追加で金貨五十枚を要求し、商人は不満ながらも支払いに同意した。
レナードは契約が成立したことを確認し、すぐに出発するよう促した。
馬車が手狭になるため、荷物を減らすように指示し、金貨五十枚分の価値があると考えてその子供を守ることを約束した。
出発を急がねばならない状況で、レナードたちは迅速な行動を取った。
レナードたちは商人一家と追加の子供を馬車に乗せ、さらに西のエルデリアの街へ向かった。
道中で魔王軍に遭遇し、交渉を試みたが失敗し、戦闘に突入した。
ソフィアの魔法により多くの魔物を倒したが、魔人と少数の魔物が残った。
レナードは、エフセイを後方支援に回し、自ら魔人と対峙した。
魔人は両手に大剣を持ち、強力な攻撃を繰り出した。
レナードは魔人の攻撃をかわしつつ、隙を見て魔人の左腕を切り落とした。
魔人はブレス攻撃を試みたが、レナードはその予備動作を見抜き、喉元を斬り裂き、致命傷を与えた。
魔人は自身の炎で焼かれ絶叫し、最終的にレナードにより首を落とされ絶命した。
馬車の中では、商人一家と追加で救出された少年が恐怖に震えていた。
商人たちは子供を抱えて身を固め、少年は後方に迫る魔物を呆然と見ていた。周囲には魔物たちの叫び声が響いており、状況の悪化を物語っていた。
少年と目が合ったゴブリンは仲間を集め、じわじわと馬車に迫ってきた。
商人一家は恐怖におののき、少年に対して非難の視線を送っているように見えた。
ゴブリンが馬車に手をかけた瞬間、剣士が現れてゴブリンを倒した。
剣士は血まみれで疲れていたが、少年に「金貨五十枚のスリルはあっただろう?」と声をかけた。剣士は怪我を負っていたが、僧侶が治療できるから問題ないと楽観的な言葉を続けた。
少年は何度も頷きながら、安堵の表情を見せた。
冒険者一行は魔王軍との戦いを経て、無事にエルデリアの街に到着した。
商人一家は依頼の達成に感謝する一方、馬車に魔物が侵入したことに不満を示した。エルデリアの街は戦争にも関わらず繁栄していた。
冒険者たちはしばらく休息をとった後、次の依頼を探したが、報酬や目的に合うものはなかなか見つからなかった。
結局、彼らは条件が合わないが興味を引く依頼を見つけた。
ガスタンでの魔物討伐であり、提示された報酬は低かったが、報酬の引き上げを交渉できる可能性があった。
しかし、その夜、預言者が現れ、西へ行くなと警告した。
リーダーの男は預言者の忠告を無視し、自らの選択を貫いた。
預言者との対話では、男が預言者に対して不信感を持ち、何者なのか問い詰めた。
預言者は「何者でもない」と答えたが、その声には不安が感じられた。
預言者は再び姿を消したが、また現れるだろうと男は確信していた。
間章 ニーナ
僧侶のニーナは、魔王軍の侵攻で住む場所を失った流民を支援する活動をしていた。
戦況の悪化により各国の支援が減少し、流民たちは困窮していた。
ある日、ニーナの元にレナードとソフィアという冒険者が現れ、ニーナを仲間に勧誘した。
ニーナは流民を見捨てられないと断ったが、ソフィアが過去の戦いでの経験を共有し、ニーナに心の支えとなった。
ソフィアはかつて貴族であり、冒険者として戦った過去を語り、レナードの誘いに応じて冒険者に復帰したことを説明した。
ニーナも過去のマリカの戦いを振り返り、ルークという勇者がいたことを語った。
ニーナは戦場で恐怖にとらわれ、勇者を助けることができなかったと告白した。
これに対し、レナードは一度の失敗に囚われるべきではないと励まし、再び戦うことを勧めた。
ニーナは流民を見捨てることはできないと悩んだが、レナードは冒険者として多くの報酬を得て、流民たちを救うことができると説得した。
レナードの言葉は、悪魔の誘いのように思えたが、ニーナにとっても新たな道を示すものであった。
第五章 ガスタン
ガスタンは穀倉地帯として重要な土地であったが、魔王軍に輸送される穀物が狙われていた。
レナードたちは村長と交渉し、報酬を穀物で受け取ることを提案した。
村長は躊躇したが、最終的にその提案を受け入れた。
その夜、預言者が現れ、不当な報酬を要求することを非難したが、レナードは正当な報酬であると主張した。
預言者は自分には力がないと告げたが、レナードは自分で行動するように促した。
翌日、レナードたちは馬車に潜んで出発し、道中で魔物の襲撃を受けた。
レナードたちは戦いに備え、馬車を降りて魔物たちを迎え撃った。
ソフィアの魔法とニーナの癒しの力を駆使し、レナードとエフセイは魔物たちを倒していった。
最後に、魔物の群れが後方から迫ってきたが、レナードたちは迎え撃つ準備を整えた。
預言者は影法師を通じて、魔物と戦うレナードたちの姿を見ていた。
レナードは突出した強さを持っていなかったが、彼のパーティーは優れた連携を見せていた。
しかし、預言者は彼らが魔王を倒せるかどうかについては悲観的であった。
過去に何十人もの勇者を導いてきたが、実際に魔王を倒した者だけが本物の勇者となるという現実を思い知らされていた。
預言者は「世界編纂」という時間を巻き戻す力を使い続けており、その回数は十回を超えていた。
精神的な疲弊が限界に達していたが、それでも勇者を導く使命を続けていた。
レナードは魔人と戦い、手段を選ばずに勝つための戦い方をしていた。
パーティーの仲間たちも各々の役割を果たし、連携して戦っていた。
戦いが終わった後、レナードたちはエルデリアの商人と再会した。
彼は彼らにアルカンドに荷物を運ぶ仕事を依頼し、報酬を約束した。
レナードは金次第で何でもする男だと自嘲的に語り、商人たちはアルカンドに向けて出発した。
レナードたちはこの戦いを通じて、金と目的を果たすために行動していた。
レナードたちは商人から馬車を譲り受け、次の街への移動を始めたが、その夜は野宿をすることに決めた。
見張りについていたレナードのもとに預言者が現れ、商人の行動について問いただしたが、レナードは明確な答えを避けた。
預言者は「世界をやり直す力」を持つことを明かし、過去に何度も魔王を倒せる勇者を探し続けていることを説明した。
預言者はレナードたちを勇者と見なしてはいなかったが、彼らの力を試すために選んだのだという。
預言者は、今までの候補者がすでに死んでいることを告げ、レナードもまた、魔王を倒すには力が及ばないことを示唆した。
レナードはかつての仲間ルークを「本物の勇者」として尊敬していたが、自身は臆病者であると自嘲した。
レナードは報酬の一部を使い、流民を救うために動いていることを告白した。
彼は流民を受け入れるために、アルカンドの領主に食料を提供するように頼んでいた。
これにより、流民を救うという目的を果たす一方で、自分たちのためにも報酬を確保していた。
レナードは命を救うことで自己満足を得ており、金を利用してその目的を達成していたのである。
この会話の中で、レナードは今後の目的についてもほのめかしたが、詳細を語ることはなかった。
彼は仲間と交代し、馬車での休息を取ることにした。
間章 エフセイ
マリカの戦いの後、冒険者であるエフセイは一人で依頼をこなしていた。戦場を共にした仲間を失い、生き残った罪悪感から逃れるように黙々と日銭を稼いでいた。ある日、彼は冒険者のレナードから声をかけられ、仲間に誘われた。レナードはマリカの生き残りと自称し、金次第で何でもする冒険者として知られていた。
エフセイは初め、レナードを嫌って断ろうとしたが、彼の仲間である美しい女性たち、ソフィアとニーナの話を聞くうちに考えが変わった。
ソフィアとニーナもまた、マリカの戦いを生き延びた冒険者で、共に過去を背負っていることがわかった。
エフセイは、自分の過去について話し始めた。
彼はマリカの戦いで、仲間を失い、魔王軍の大将ベルゼラに挑んだが、力及ばず逃げざるを得なかった。
そして、彼を助けたのはルークという勇者であった。
エフセイはその過去を悔やみ続け、何もできなかった自分を責めていた。
その後、レナードも自分の過去を語り始めた。彼は実は戦わずに逃げ出したと告白した。
エフセイはレナードに対し怒りを感じたが、レナードはその罪悪感から逃れられず、過去を清算するためにベルゼラを倒したいと語った。
レナードはエフセイに協力を求めた。
エフセイは、レナードの言葉に心を動かされ、彼の申し出を考えることにした。
彼らは過去を乗り越えるために、共にベルゼラを討つことを決意した。
第六章 ガルナハッザ 1
レナードは、ガスタンからさらに西に行った街の酒場で次の依頼を探していた。
魔王軍との激戦地に近く、冒険者や傭兵が集まる物騒な場所であった。
そんな中、ラルフと名乗る小太りの男がレナードに接触してきた。
ラルフは、各地で魔人を討伐してきたレナードに仕事を依頼したいと考えていた。
ラルフはレナードを羽振りの良い商人たちが利用する酒場へ誘い、そこで依頼の内容を説明しようとした。
話が始まる前にラルフは、食事と酒を共にし、世間話を交えながらレナードの人となりを探った。
そして戦況について話が進むと、ラルフはレナードに勇者の暗殺を依頼した。
彼の依頼主は、魔王軍が勝利することを前提にしており、唯一の不安要素である勇者の存在を排除したいと考えていた。
ラルフは前金として金貨を差し出したが、レナードは人間を裏切って勇者を殺すことを依頼されたことに対して冷たい態度を見せた。
そして、レナードは魔王軍の指揮をとっているベルゼラとの直接の交渉を求めた。
ラルフは、レナードがその要求に応じたことで、彼を信用できると判断した。
ラルフは最終的に、レナードを魔王軍の勢力圏内でベルゼラと引き合わせることに同意した。
レナードは、仲間の冒険者3人も同行することを条件とし、ラルフはそれを了承した。
レナードは、預言者が部屋に現れた夜、ベルゼラを倒す機会を狙っていることを打ち明けた。彼は、悪評を広めて魔王軍に近づく計画を立てていたが、預言者の言葉が真実だと知り、驚いていた。
預言者はレナードに西に行くなと忠告したが、彼は仲間たちと共にマリカの戦いで失ったものを取り戻すために戦う決意を示した。
預言者はレナードの運命を知り、彼を止めようとしたが、レナードは預言者の努力を認めつつも、自分の選択を貫く意志を固めていた。
彼は預言者の孤独な戦いを理解し、彼女がいつか本物の勇者を導くことを信じていた。
預言者は感情を露わにし、過去の罪に苦しんでいたが、レナードは軽やかに励ました。
レナードは、戦いに向かう決意を変えず、預言者に自分たちの選択を尊重するよう求めた。
そして、預言者に「心配するな」と言い残し、話を終えた。
レナードはラルフとの会合で、魔王軍の占領地でベルゼラに会うための依頼を受けることになった。
ラルフは、ベルゼラがレナードたちの実力を評価し、人間と魔人を区別せずに受け入れる合理的な存在であると説明した。
レナードたちは、ベルゼラに会う準備を整え、西に向かうことを決めた。
一方、レナードは仲間たちと共に、ガルナハッザを目指す計画を練った。
彼らは、15年前の戦地であるガルナハッザでベルゼラと対峙することを決意していた。
エフセイやソフィアはそれぞれに決意を固めており、ニーナも自分の意思に従うことを選んだ。
旅の途中、預言者が現れ、レナードに忠告したが、彼の決意は変わらなかった。
預言者は、レナードを勇者と認め、彼の行動を見届けることを決めた。
レナードは、自分が演じてきた役割を明かしながらも、勇者としての心の強さを信じ続ける決意を示した。
レナードは仲間たちとの絆を深め、誰もが勇者になれる可能性があると信じて旅を続けた。
彼らの冒険は、互いに信頼し合いながら進んでいった。
滅びたマリカ国の王都、ガルナハッザにレナードたちはたどり着き、魔人ベルゼラと対峙した。
ベルゼラはレナードたちを迎え入れたが、彼らの裏切りも織り込み済みで護衛の魔人たちを連れてきていた。
レナードたちは戦いを選び、命を賭してベルゼラに挑んだ。
エフセイ、ソフィア、ニーナはそれぞれの方法で護衛の魔人たちを引きつけ、時間を稼いだ。レナードはベルゼラに立ち向かい、右腕を失いながらも彼の首に短剣を突き立てたが、致命傷には至らなかった。
ベルゼラはレナードを勇者と認め、最後の一撃を振り下ろした。
戦いは終わりを告げ、レナードの仲間たちも倒れたが、彼らの勇気と信念は預言者に新たな希望を与えた。
預言者は何度でもやり直し、いつかこの結末を変えることを決意した。
間章 レナード
主人公のレナードは、ルークという冒険者を尊敬しつつ、死ぬことへの恐怖を抱いていた。
レナードは冒険者になった理由を、金を稼いでモテたいという単純な欲望からだと述べた。
ルークはそれを受け入れ、逃げることの簡単さを認めつつも、現在の状況では逃げられないことを説明した。
戦いに敗れれば人間側は崩壊すると理解しつつも、レナードは他人事のように感じ、恐怖を隠せなかった。
ルークは父親の話を持ち出し、父が村人を救うために戦い続けたことを語った。
それに対し、レナードは自分の親を嫌っていると告白し、戦う理由が見つからないと訴えた。
ルークはそんなレナードに逃げるよう促し、彼にはまだ命を賭ける場所があるはずだと伝えた。
レナードは結局戦場から逃げた。ルークたち冒険者は戦いに散り、人間側が魔王軍を押し返すのに成功したが、その犠牲は大きかった。
レナードは、逃げた自分を肯定する理由を見つけようとしたが、心の中では戦場に残ったルークたちを思い続け、今でも彼らと共に戦う夢を見ていた。
間章 預言者
栗毛色の髪を持つ若者アレスは、預言者から「レナードを助けろ」という言葉を受け取り、危険なガルナハッザへ向かうことを決意していた。
彼の仲間たちは、レナードについて悪評を耳にしていたが、アレスは彼に何かしらの魅力があると信じていた。
アレスの仲間には、勇敢な戦士レオン、美しい修道女マリア、そして賢明な魔法使いソロンがいた。
アレスは、自身の決意と使命感を持っていたが、仲間たちは彼の選択を心配していた。
預言者は過去に数多くの勇者候補を殺した魔人によって狙われていたことから、ソロンは預言者の正体にも不安を抱いていた。
しかし、アレスは預言者を信じ、ベルゼラという魔王軍の指揮官を倒す機会を逃さないよう、仲間たちとともにガルナハッザへ向かった。
一方で、アレスは実際にはザックという名の少年で、彼はアレスの代わりに勇者となった。
預言者は、アレスを勇者として宣言し、その選択を支持した。
アレスは、仲間の力を借りて数々の試練を乗り越え、勇者として成長していった。
アレスの仲間であるレオン、マリア、ソロンは、それぞれの役割を果たし、アレスを支えた。
彼らは、魔王軍の圧倒的な力に立ち向かい、戦争の流れを変えようとしていた。
預言者は、アレスがレナードを助けることで、ベルゼラを倒し、多くの命を救うことができると信じていた。
たとえそれが魔王討伐の遠回りになったとしても、彼らの行動が未来を変える一歩となることを願っていた。
第七章 ガルナハッザ 2
魔人ベルゼラは、レナードに「勇者アレスを殺せ」という簡潔な依頼を持ちかけた。
ベルゼラは、レナードたちが裏切っても構わないとし、どちらに転んでも自分たちに利益があると話した。
レナードはベルゼラとの交渉を終え、戦いの準備を始めた。
エフセイは青い魔人と戦っていた。
彼の目的は勝つことではなく、魔人を引き付けることだった。
彼は自らの役割を捨て石とし、ベルゼラを倒す時間を稼ごうとしていた。
しかし、魔人の槍によって負傷し、危機に陥った。
そのとき、若い騎士レオンが現れ、エフセイを救った。
レオンは一瞬で魔人の槍の穂先を斬り飛ばし、圧倒的な剣技を披露した。
彼の動きには無駄がなく、究極の剣技で魔人を討ち取った。
エフセイはその技に驚愕し、レオンにその技の秘密を尋ねたが、レオンは「基礎の積み重ね」と答えた。
レオンは「剣聖」と呼ばれる存在であり、彼の技は基礎を極めた結果であった。
彼の答えにエフセイは驚きを隠せなかったが、レオンは人間の頂点に立つ存在として、自身の実力を示した。
ソフィアは魔法の精度と体力を高め、赤い魔人を引きつけ続けたが、状況は厳しかった。
彼女は最大の呪文を準備しつつ、死を覚悟していた。
そのとき、紫色のローブを着た痩せた男が現れ、彼女の意図を見抜いて強力な炎の呪文で魔人を撃退した。
彼は「ソロン」と名乗り、自分を大賢者と称した。
ニーナは僧侶の力で緑の魔人と戦っていたが、体力の限界に達し、神を下ろす術を使って自らの力を強化していた。
彼女が危機に陥ったとき、黒髪の女性マリアが現れ、魔人を浄化の力で退けた。
ニーナはマリアにその力の秘密を尋ねたが、マリアは「愛」が力の源であると答えた。
マリアは、自分がアレスという勇者に対する愛によって力を得ていると語り、彼女の力が神に由来するものであることを示した。
彼女は、アレスが死んでも生き返らせることができると信じており、その思いが彼女の強さの源であることを明かした。
ニーナはマリアの力を恐れつつも、ベルゼラと戦うレナードの救援を頼んだ。
マリアは笑顔でそれを了承し、勇者アレスがすでにレナードの助けに向かっていると告げた。
ニーナは、マリアの表情に神の本質を垣間見たように感じたが、その力を頼りにするしかなかった。
ベルゼラとの激闘において、レナードは自らの命を懸けて戦い続けていた。
幾度もベルゼラに接近し、わずかな傷を負わせるが、決定打には至らなかった。
戦いの末、レナードは右腕を失い、絶体絶命の状況に陥ったが、突如現れた勇者アレスに助けられた。
アレスは勇者としてベルゼラと対峙し、見事に勝利を収めた。彼は戦いの最中に冷静さを保ち、ベルゼラの隙を突いて撃破した。
レナードはアレスの姿にかつての仲間ザックを重ね、彼の名を口にしたが、アレスは自分がザックの従兄弟であることを明かした。
彼はまた、預言者からの助言でレナードを助けに来たことを告げた。
戦闘後、仲間たちが合流し、レナードの失った腕はマリアの力で復元された。
ソロンは今後の作戦を立案し、ベルゼラの死を利用して敵の組織を壊滅させる計画を提案した。
レナードたちはそれぞれの役割を再確認し、アレスは勇者として魔王を倒すために進む決意を新たにした。
レナードはアレスに軽口をたたきつつも、彼の勇者としての運命を受け入れる姿勢を認め、激励の言葉を贈った。
彼らはそれぞれの使命を胸に、これからの戦いに向けて再び歩み始めた。
ベルゼラの死により、魔王軍の指揮系統が混乱し、人間側は立て直しに成功した。
この出来事は『ガルナハッザの奇跡』として称えられ、勇者たちの功績として広く知られることになった。
この奇跡を広めたのはレナードたちであり、彼らは自分たちの役割を隠し、勇者の名を高めることで人々に希望を与えようとした。
また、ソロンの策によって、魔人たちに与していたラルフたちの組織は壊滅した。
この際も中心的な役割を果たしたのはレナードたちであったが、彼らはラルフたちを殺すことを望まなかった。
第八章 王妃の依頼
ザックは王妃から冒険者レナードを捜して連れてくるよう頼まれた。
レナードの居場所は不明であったが、王妃はザックと彼の友人たちなら捜し出せると信じていた。
ザックはまずソロンに相談しようとした。
ザックが王妃の部屋を出ると、マリアと出会った。
マリアもレナード捜しに協力すると申し出た。ザックは協力を頼むことにした。
その後、ザックは城の出口付近でレオンに会った。レオンもまた、レナード捜しに力を貸すと申し出た。
ザックはレオンの申し出に感謝し、三人でソロンの屋敷に向かった。
ソロンはレナードの行方についてアドバイスを求められ、冒険者の情報を集めるために酒場や関係者を訪ねるよう提案した。
ソロンは友情についての独自の考えを述べ、ザックとの関係を特別視していることを強調した。
ソロンの話に対して、レオンとマリアはやや冷ややかに反応したが、結局、四人でレナードを捜す旅に出ることになった。
レナードは仲間たちと共に、金に不自由する村人たちの依頼で魔物を狩っていた。
彼らがゴブリンを探して山に入ると、先に洞窟の前でザックたちがゴブリンを退治していた。
ザックはレナードたちを捜しに来たと説明した。
王妃からの命令で、魔王軍との戦いでの功績を称え、彼らを城に招待したいということであった。
レナードは王妃からの招待を一度は断ったが、ザックはレナードの過去の評判を話し、彼を説得した。
ソフィアや仲間たちは、王族に称賛されることを望んでおり、ソロンが帰りの魔法を提供することで、レナードの抵抗を和らげた。
結局、レナードは仲間たちと共に王国へ行くことを決めた。
エピローグ
レナードたちはソロンの転移魔法で瞬時に王国に到着した。
彼らが城に向かうと、多くの騎士が整列して彼らを出迎え、彼らの偉業を称えた。
王妃からの招待を受け、ザックに案内されて王妃の元へと向かったレナードは、ザックに過去の戦いでの罪悪感を打ち明けた。
ザックは彼の心情を理解し、罪を持ちながらも現在を大切にすることを説いた。
王妃の前に進み出たレナードは、彼女から「美しいか」と尋ねられた。
レナードは彼女の美しさを認め、命を賭ける価値があると述べた。
この言葉は、彼自身も予期していなかったものであり、その場の雰囲気と彼の心情が交錯した結果であった。
誰が勇者を殺したか レビュー
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