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Dジェネシス ダンジョンが出来て3年フィクション(Novel)読書感想

小説「Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 05」感想・ネタバレ

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Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 05の表紙画像(レビュー記事導入用) Dジェネシス ダンジョンが出来て3年

Dジェネシス4巻レビュー
Dジェネシス6巻レビュー

Table of Contents

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  1. どんな本?
  2. 読んだ本のタイトル
  3. どんな本?
  4. 読んだ本のタイトル
  5. あらすじ・内容
  6. 感想
  7. 考察・解説
    1. 横浜ダンジョンの調査
    2. 斎藤涼子の特訓
    3. スキルオーブの取引
    4. ダンジョンブートキャンプ
    5. 鉱物資源のドロップ
    6. 横浜ダンジョンの買収
    7. 謎の探索者ファントム
    8. 横浜ダンジョンの危機
  8. 登場キャラクター
    1. Dパワーズ
      1. 芳村圭吾
      2. 三好梓
      3. アルスルズ(カヴァス、アイスレム、グレイシック、ドゥルトウィン、グラス、グレイサット)
      4. 三代絵里
    2. JDA(日本ダンジョン協会)
      1. 斎賀
      2. 鳴瀬美晴
      3. 坂井典丈
      4. 橘美智代
    3. マスコミ・芸能界・テレビ関係
      1. 吉田陽生
      2. 宮内典弘(テンコー)
      3. 斎藤涼子
    4. 日本政府機関
      1. 寺沢
    5. DAD(アメリカダンジョン省) / サイモンチーム
      1. サイモン=ガーシュウィン
      2. キャサリン=ミッチェル(キャシー)
      3. ジョシュア=リッチ
      4. メイソン=ガルシア
      5. ナタリー=スチュワート
      6. サイモンチーム
    6. 傭兵部隊 / 監視者たち
      1. ラーテル
      2. ファシーラ
      3. アラン=ボージェ
      4. シュート
    7. ファルコンインダストリー
      1. プリマス=コープマン
      2. ノーラ=ベルイマン
      3. カイ=ライトール
      4. ギョーム
    8. アルトゥム・フォラミニス(深穴教団) / 監視者
      1. デヴィッド
    9. DFA(食品管理局)
      1. ネイサン=アーガイル
      2. シルクリー=サブウェイ(シルキー)
    10. ダンジョン研究者 / アメリカの大学
      1. リード=ジョーンズ
      2. ポスドクの学生
      3. シカゴ大学とイリノイ工科大学の混成チーム
    11. 大規模オフ企画者(ニューヨーク)
      1. ポール
      2. ディーン=マクナマラ
    12. 新越ダンジョン株式会社
      1. 三浦典義
    13. GIJ(日本宝石学研究所)
      1. 六条小麦
    14. 探索者(渋チー)
      1. 林田
      2. 喜屋武
      3. デニス
      4. 大建(ダイケン)
      5. 渋チー
    15. スポーツ団体・その他
      1. ジャック
      2. 折原志緒里(しーやん)
  9. 展開まとめ
    1. 序章 プロローグ
    2. 第06章 ザ・ファントム
    3. 終章 エピローグ
  10. 同シリーズ
    1. Dジェネシス ダンジョンができて3年
  11. その他フィクション

どんな本?

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』は、之貫紀 氏による日本のライトノベル。
この物語は、世界各地に「ダンジョン」が出現してから3年後の世界を描いている。

主人公の芳村は、元々は社畜として働いていたが、ある偶然からダンジョン探索者の世界ランキング1位になる。
彼は退職し、ダンジョンに潜ることを決意するが、手に入れた未知のスキルに振り回され、ダンジョン攻略の最前線に関わることになる。

この作品は、投稿小説サイト「小説家になろう」で2019年6月1日から投稿が開始され、その後KADOKAWAのエンターブレインレーベルより2020年2月から刊行されている。
また、『月刊コンプエース』で平未夜 氏の作画により漫画化され、連載が開始されている。

読んだ本のタイトル

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 05
著者:之貫紀
イラスト:ttl

BOOK☆WALKERで購入

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

どんな本?

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』は、之貫紀 氏による日本のライトノベル。
この物語は、世界各地に「ダンジョン」が出現してから3年後の世界を描いている。

主人公の芳村は、元々は社畜として働いていたが、ある偶然からダンジョン探索者の世界ランキング1位になる。
彼は退職し、ダンジョンに潜ることを決意するが、手に入れた未知のスキルに振り回され、ダンジョン攻略の最前線に関わることになる。

この作品は、投稿小説サイト「小説家になろう」で2019年6月1日から投稿が開始され、その後KADOKAWAのエンターブレインレーベルより2020年2月から刊行されている。
また、『月刊コンプエース』で平未夜 氏の作画により漫画化され、連載が開始されている。

読んだ本のタイトル

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 05
著者:之貫紀
イラスト:ttl

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 05 ダンジョンの怪人・ファントム参上!! 記者会見にブートキャンプと、ますます注目を集めてしまった芳村と三好のDパワーズ。 遠 bookwalker.jp

あらすじ・内容

ダンジョンの怪人・ファントム参上!!

記者会見にブートキャンプと、ますます注目を集めてしまった芳村と三好のDパワーズ。
遠ざかるスローライフに嘆く芳村、そんな彼を世間の目から遠ざけるため三好が提案したのは
怪人コスチュームに変装した探索者のお助けマン「ファントム」として活動をすることだった!

「始めてみたのはいいけれど……どうするんだよ、これ?!」

書き下ろしの追加エピソードも多数!!
理系チート探索者の攻略は止まらない!!

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 05

感想

表紙はファントムになった芳村。
斎藤が”さまよえる館”から脱走してる時に撮影され。
それを撮影した吉田から番組作成の協力を要請されてしまった。
その斎藤を陰から護るため芳村達が護衛していたが、その芳村を尾行していた外国の特殊部隊が同化薬を使用せずにゾンビ達が蔓延る10層に侵入。
ゾンビ達を倒しまわっていたが、終わりが見えず撤退を決断したまでは良かったのだが、、

ゾンビと戦闘する彼等を撮影するために近付いて来た吉田とテンコー、斉藤にゾンビ達をトレインし、ついでにテンコー達を足止めするためにナイフで刺そうとしたのを芳村がファントムのコスプレをして、テンコー達を助け。
周りに大量にいたゾンビ達も一掃して”道は開かれた”と言って去って行ってしまう。
それを遠くから見ていた三好は爆笑。

その後に、アルスルズに新メンバーが召喚される。
小型犬サイズの連中を、、
しかも、鳴き声がケンケンとは。。

遂に芳村のメイキングを使って余剰ポイントを本人の希望するステータスに振るブートキャンプが始まる。

最初はサイモン達を相手にステータスを鑑定。
そうしたら平均が10の能力値が30から50くらいの高ステータスが測定出来た。
さすがアメリカのトップランカー。
一方、シロウトの小麦は1桁。。
ドラゴンボールゴッコで”ゴミが”と言われてしまうほど低い。
能力値が違うので、サイモンと小麦を一緒にトレーニング出来ないので、ステータスポイントを稼いでもらうためにアルスルズ達の協力の下スライム狩りをさせる。
そんな時に、かつて弟を助けもらったのに御礼を言わずに去って行った三代の姉が現れて、、

小麦のサポートに時間を取られるのを悩んでいた芳村は、三代を小麦のサポート役にするため、Dパワーズに採用してしまう。
そして、トレーニングの結果。

サイモン達は能力アップを実感。
小麦の方は、、20階層に行くには先が長そう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

BOOK☆WALKERで購入

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Dジェネシス4巻レビュー
Dジェネシス6巻レビュー

考察・解説

横浜ダンジョンの調査

本作における横浜ダンジョンの調査は、ある探索者の独自の仮説を検証するために行われ、結果として世界の市場を揺るがしかねない重大な発見と、Dパワーズの新たな拠点獲得へと繋がることになる。本稿では、その詳細な経緯と調査結果について解説する。

調査の動機と踊り場フロア仮説
・ガチャダンマスター・テンコーの二つ名を持つ宮内典弘は、横浜ダンジョンの階段の一段一段がそれぞれ一つのフロアとして機能しているという独自の仮説を立てていた。
・彼は地下駐車場フロア以外に、階段の踊り場でもモンスターが発生したと主張していた。
・しかし横浜ダンジョンはBランク以上のパーティでなければ入ダンできない高難度ダンジョンであり、Cランクの彼は自説の確認を阻まれていた。
・この話に興味を持った三好と芳村は、極小のダンジョンフロアを実験室として利用できる可能性を考え、現地調査を決意した。

地下空間の探索とダイヤモンドのドロップ
・テンコーと桜木町で合流して話を聞いた後、芳村と三好は二人だけで地下一階の調査へ向かった。
・地下一階はデパ地下の食料品売り場のような空間であり、照明や棚などの無機物もすべてダンジョンが作り出したオブジェクトであった。
・そこで二人は、ハエトリグモ型のジャンピングスパイダーと巨大ムカデ型のヒュージセンチピードに遭遇し、撃破した。
・すると、モンスターの死体は残らず、それぞれから2カラット級のカット済みブルーダイアモンドと1カラット級の透明なダイアモンドがドロップした。

仮説の証明と市場への影響懸念
・芳村が保有する〈マイニング〉スキルは二十層以深の扱いでなければ機能しないため、地下一階で鉱物(ダイヤモンド)がドロップした事実は、階段部分が一層扱いであるというテンコーの仮説をほぼ証明するものとなった。
・芳村は、自分がダイヤモンドにまつわる特撮ヒーローのことを考えながらモンスターを倒したため、カット済みのダイアが出現したのだと推測した。
・もしこの事実が公になれば、探索者が殺到して天然ダイヤモンドが大量に産出され、デビアス社などによる価格統制や既存のダイヤモンド市場に多大な影響を与えかねないという懸念が浮上した。

横浜ダンジョンの買収と占有計画
・ダイヤモンドの産出を隠蔽しつつ利益と拠点を確保するため、三好は横浜ダンジョンを研究施設として利用する大胆な計画を提案した。
・利用者が少なく赤字施設である横浜ダンジョンの特徴を突き、JDAから一階部分を丸ごと買い取り、さらに踊り場を含む一層部分を賃貸契約で借り上げるという内容であった。
・深層である地下二階の駐車場エリアへは別の直通ゲートが存在するため、一層を封鎖しても一般探索者への影響は少ないと判断された。
・この計画は後に実行に移され、Dパワーズの新たな研究開発拠点『津々庵』の設立へと繋がっていく。

まとめ
横浜ダンジョンの調査は、テンコーの仮説を証明しただけでなく、カット済みダイヤモンドのドロップという予想外の事態を引き起こした。この重大な秘密を守るため、Dパワーズは横浜ダンジョンの一階および一層を買い取り・借り上げるという大胆な行動に出ることになり、物語は新たな展開を迎える。

斎藤涼子の特訓

本作における斎藤涼子の特訓は、危険な十層での番組撮影を強要された彼女を生き延びさせるため、芳村たちが急遽実施した裏ブートキャンプとして描かれている。本稿では、その特訓の経緯と驚異的な成果について解説する。

特訓の背景と十層の危険性
・番組のパイロット版撮影の舞台が、アンデッドが徘徊する代々木ダンジョンの十層に決定してしまった。
・弓を主力武器とする斎藤涼子は、STR(強さ)が普通の成人男性程度しかなく、VIT(体力)も低いため、アンデッドの群れに囲まれれば命に関わる非常に危険な状態であった。
・撮影まで残り5日ほどしかない中、芳村と三好は彼女のステータスを急激に底上げするための秘密の特訓を計画した。

アイスレムの鬼指導と驚異的なスライム狩り
・特訓内容は、代々木一層での新方式によるスライムの連続討伐であった。
・案内役兼監視役として、三好の召喚獣であるヘルハウンドのアイスレムがお供につけられた。
・アイスレムは休む間もなく次のスライムを促し続けるため、涼子は賽の河原で石を積んでいる気分や鬼軍曹と嘆いていたが、当のアイスレム本人は真面目に仕事をこなしただけで理不尽な評価を受けたと落ち込んでいた。
・しかしこのスパルタ特訓の結果、涼子はわずか6日間で4,070匹ものスライムを討伐し、約80ポイントのSPを獲得して探索者ランキング368位にまで急上昇した。

ステータスの総合的な底上げ
・大量に獲得したSPの割り振りに際し、芳村は悩むことになった。
・弓使いの彼女の才能を伸ばすならDEX(器用さ)とAGI(敏捷)に極振りするのが理想だが、今回は十層での生存率を上げるため、VITなどを含めた総合的な能力の底上げを行うことにした。
・仕上げとして、ブートキャンプ名物のメチャ苦茶を飲ませてその衝撃でステータス上昇をごまかしつつ〈メイキング〉を使用し、彼女の能力総量をトップレベルの探索者(サイモンチーム)に匹敵する水準へと引き上げた。

特訓の成果と現実世界でのアルテミス誕生
・特訓によって得た圧倒的な能力は、現実世界でも凄まじい結果をもたらした。
・光が丘のアーチェリー大会で行われた映画の撮影において、涼子は初めて使うベアボウで70メートル先の的の中央を射抜き続け、当時の男子世界記録をも上回る705ポイント(非公認記録)を叩き出した。
・本人は探索者ならこれくらい普通と無自覚であったが、アーチェリー界の幹部を驚愕させ、ネット上ではアルテミスの異名で呼ばれるようになった。
・さらに、撮影本番のダンジョン八層でも、素早いフォレストウルフの番を二本の矢で同時に射抜いて瞬殺し、熟練探索者であるテンコーを絶句させた。

まとめ
このように、斎藤涼子の特訓は、ダンジョン内での生存を目的として行われたものであったが、結果として彼女を常識外れの超人へと変貌させ、現実のスポーツ界をも揺るがす事態へと発展することになった。

スキルオーブの取引

本作におけるスキルオーブの取引は、Dパワーズがオークション等で提供する超高額なオーブの受け渡しを巡る、JDA(日本ダンジョン協会)との水面下の駆け引きと、常識外れの契約が描かれる重要な場面である。本稿では、その取引の詳細と経緯について解説する。

取引の舞台と対象オーブ
・1月10日、JDA本部の会議室にて、Dパワーズの芳村と三好、JDAの斎賀課長と鳴瀬美晴の間でスキルオーブの受け渡しが行われた。
・対象となったのは、実在が疑われていた夢のアイテムボックスである〈収納庫〉(オーブカウント835)と、オークションに出品されたうちJDAが落札した〈マイニング〉(オーブカウント1124)であった。
・JDAは、Dパワーズが〈収納庫〉に設定した莫大なオークション手数料収入が自組織へ入ってくることを見越して、自ら高額な〈マイニング〉を落札するという戦略的な資金運用を行っていた。

異例の寄託契約(預かり)
・スキルオーブはダンジョン内でドロップしてから24時間で消滅するという特性を持っている。
・しかしJDA側は、数百億円規模の国家戦略物資とも言えるこれらのオーブを、自衛隊員や職員の誰に使用させるかを決めきれていなかった。
・一度使用すると個人にバインドされ、他人に譲渡できなくなるためである。
・そのため斎賀課長は、代金を支払った上でオーブをDパワーズにそのまま預かってもらい、必要になった時に引き出すという常識外れの寄託契約を提案した。
・これは、Dパワーズが必要な時にいつでも特定のオーブを再取得してこられるという異常な能力を見越した事実上の契約であった。

芳村の忠告とダンジョンの意思
・寄託契約を結んだ後、芳村は斎賀課長に対し〈マイニング〉は早めに使った方がいいと忠告した。
・芳村は自身の経験から、各階層で最初に鉱物をドロップさせた人間の意識によって、その階層の産出鉱物が収束・決定されるという仮説を立てていた。
・もし何の専門知識もない一般の優秀な探索者が最初に〈マイニング〉を使用すれば、ありふれた鉄ばかりが産出するようになる危険性があったため、それを防ぎたかったのである。

完全な初心者・六条小麦の育成依頼
・芳村の忠告があった直後、斎賀課長はDパワーズに対し、JDAからの直接依頼を持ち掛けた。
・それは、JDAの委託先である日本宝石学研究所(GIJ)の鑑定士である六条小麦を、ダンジョン・ブートキャンプを利用して20層まで探索できるように育成してほしいというものであった。
・六条小麦はダンジョン経験が1回しかない完全な初心者であったが、鉱物への異常な執着と専門知識を持っていた。
・芳村は、彼女こそが〈マイニング〉の最初の使用者に最もふさわしい人物であると判断し、三好が驚く中、この困難な育成依頼を即座に引き受けた。

まとめ
このように、単なるアイテムの受け渡しにとどまらず、JDAのしたたかな組織的対応や、ダンジョンの謎(鉱物ドロップの仕組み)に関わる芳村の思惑が交錯する重要な取引となっている。

ダンジョンブートキャンプ

本作におけるダンジョン・ブートキャンプは、芳村と三好が設立したDパワーズの主要事業として提供されるステータス底上げプログラムである。第5巻では、その記念すべき第一回の様子と、そこから得られた驚異的な成果が描かれている。本稿では、その詳細な経緯と結果について解説する。

第一回キャンプの参加者と過酷なメニュー
・第一回の参加者は、アメリカのトップ探索者であるサイモンが率いるチームの4人(サイモン、ジョシュア、メイソン、ナタリー)と、JDAから特別に依頼された完全な初心者の六条小麦であった。
・教官のキャシーの指導のもと、代々木ダンジョン二層での31.4キロメートル走や、地上施設での大量の縫い針への糸通し(ジョシュアが激怒するほどの苦行)などの理不尽で過酷なメニューが課された。
・各ラウンドの総仕上げとして、強烈なワサビフレーバーのメチャ苦茶を飲ませ、むせて気絶寸前になるほどの衝撃を与えた。

遠隔からのメイキングによるステータス操作
・このブートキャンプの真の目的は、過酷な訓練による精神的衝撃で急激なステータス上昇をごまかすことである。
・芳村は、教官であるキャシーとあらかじめパーティを組んでおくことで、受講者を孫パーティ扱いとし、遠く離れた場所からでもステータスを操作(メイキング)できる仕組みを構築した。
・これにより、芳村は会場に付きっきりになる必要がなくなり、参加者が休憩している間にそれぞれの希望に応じたステータス(約12から13ポイント分)をこっそり割り振った。

驚異的な成果と料金設定の決定
・最後のステータス計測で、サイモンたちは自分たちの能力が1日で約1年分も急上昇していることに絶句した。
・この圧倒的な効果を前に、ナタリーやサイモンは軍人を一人育成・維持する費用対効果を考えれば数万ドルでも安すぎる、安売りすれば世界中の国が圧力をかけて枠を奪い合うと警告した。
・Dパワーズは正式な料金を決めていなかったが、この強い忠告を受け、軍や組織向け(DAD向け)は1回3万ドル、一般探索者向けは1回3万円(抽選制)という価格に設定することを決めた。

六条小麦の特別育成とDパワーズ契約探索者の誕生
・一般の受講者とは異なり、ダンジョン経験がほぼゼロの六条小麦は、通常のメニューには耐えられない。
・そこで芳村は彼女に別メニューを用意し、召喚獣ドゥルトウィンの影の中(シャドウピット)を利用した新方式で安全かつ高速にスライムを狩らせる特別特訓を開始した。
・芳村は、鉱物マニアである彼女を二十一層に到達させ、マイニングを使用させて未知の希少鉱物をドロップさせることを狙っていた。
・さらに、この特訓をサポートするため、芳村は偶然事務所を訪ねてきた洋弓使いの三代絵里をスカウトし、Dパワーズ契約探索者第一号として六条小麦の護衛と介添えを任せることになった。

まとめ
第一回ダンジョン・ブートキャンプは大成功を収め、Dパワーズの事業が本格的に始動した。それとともに、有望な探索者を自ら育成してダンジョン攻略へと送り出す新たなフェーズへと突入していく様子が描かれている。

鉱物資源のドロップ

本作における鉱物資源のドロップの仕組みは、芳村が立てた独自の仮説である鉱物決定理論(ダンジョンの意思)を中心に、世界の市場やDパワーズの行動に多大な影響を与える重要な要素として描かれている。本稿では、その詳細な設定と関連する出来事について解説する。

横浜ダンジョンでのダイヤモンドドロップ
・芳村と三好が横浜ダンジョンの地下一階(一層扱い)を調査した際、ジャンピングスパイダーなどのモンスターを倒すと、2カラット級のカット済みブルーダイアモンドや1カラット級の透明なダイアモンドがドロップした。
・この現象は、芳村が〈マイニング〉スキルを所持していたことに加え、彼がモンスターを倒す際に特撮ヒーローであるダイヤモンド・アイのことを考えていたことが原因だと推測された。

芳村の鉱物決定理論
・この出来事と、過去に代々木ダンジョン二十層でバナジウムのインゴットをドロップさせた経験(芳村がバナジウム関連の仕事のトラウマを思い出していた)から、芳村はある仮説を立てた。
・それは、各階層で最初に鉱物をドロップさせた人間の意識や知識によって、その階層で産出される鉱物資源が収束・決定されるというものである。
・芳村はこれを、波動関数の収縮(デコヒーレンス)やダンジョンの意思のようなものだと考えている。

鉄の産出回避と六条小麦の育成
・この仮説が正しい場合、大きな問題が生じる。
・もし何の専門知識もない一般の探索者が最初に〈マイニング〉を使用して深層でドロップを発生させると、一般人が最も身近にイメージする金属である鉄ばかりが全フロアで産出するようになる危険性がある。
・この事態を防ぐため、芳村はJDAから育成を依頼された鉱物の専門家である六条小麦(完全な初心者)こそが、最初の〈マイニング〉使用者に最もふさわしいと判断した。
・そして、彼女を二十一層に到達させて希少な鉱物をドロップさせるための無謀な特訓を引き受けることになった。

市場への影響と横浜ダンジョンの占有
・横浜ダンジョンでのカット済みダイヤモンドのドロップが公になれば、探索者が殺到して既存のダイヤモンド市場(デビアス社などによる価格統制)に計り知れない影響を与えかねない。
・この事実を隠蔽し、ドロップのコントロールを検証するため、Dパワーズは横浜ダンジョンの一階部分をJDAから丸ごと買い取り、一層部分を占有するという大胆な行動に出た。
・将来的にダイヤの存在を発表する際にも、借りた場所から偶然出てきたラッキーな発見としてごまかす計画を立てている。

まとめ
このように、鉱物資源のドロップは単なるアイテム収集の枠を超え、ダンジョンの深遠なシステムと直結している。Dパワーズが初心者探索者を急遽育成し、不動産買収にまで乗り出す最大の要因となっている。

横浜ダンジョンの買収

本作における横浜ダンジョンの買収は、予期せぬレアアイテムのドロップを隠蔽するという目的から始まったが、直後に未曾有のダンジョン災害(スタンピード)に巻き込まれ、Dパワーズがその解決に乗り出す直接的な要因となる重要な出来事である。本稿では、その詳細な経緯と影響について解説する。

ダイヤモンドのドロップと買収の動機
・横浜ダンジョンの地下一階(一層扱い)を調査した芳村と三好は、そこでカット済みのダイヤモンドがドロップするという事実を発見した。
・これが公になれば、探索者が殺到し世界のダイヤモンド市場に計り知れない影響を与えることは確実であった。
・この事実を隠蔽し、ドロップのコントロールを検証するための実験施設を確保するため、三好は横浜ダンジョンの一階部分を買い取り、一層部分を借り上げるという大胆な計画を提案した。

JDAの不良債権と異例の売買契約
・横浜ダンジョンのビル一階は、モンスターがあふれ出した際の無過失責任を恐れたビル運営会社から、土地の所有権を主張しないという条件でJDAに格安(八千七百万円ほど)で押し付けられた物件であった。
・さらに現在の横浜ダンジョンは入ダン制限が厳しく、店舗も全店閉店して事実上の廃墟かつ赤字施設となっていた。
・そのため、Dパワーズからの買収と賃貸の打診は、JDA(特に財務部門)にとって渡りに船であり、法務部門の夜を徹した尽力もあって、一階の売買契約と地下一層(地上から二層までの階段部分含む)の賃貸借契約が無事に完了した。

研究開発拠点・津々庵の誕生
・一階の所有権と一層の占有権を得たDパワーズは、ここを新たなダンジョン研究の開発拠点とし、三好の命名により津々庵(しんしんあん)という看板を掲げた。
・これは興味津々に由来し、松下幸之助の真々庵をもじったもので、次々と新しい発見が湧き出る場所にしたいという三好の野望が込められていた。

買収直後に訪れた無過失責任の危機
・しかし契約完了の直後、横浜ダンジョンの二層で未曾有の危機が発生した。
・米国のファルコンインダストリーの開発ユニットによる実験の最中、四時間から六時間に一回のペースで分裂して無限に増殖するモンスターであるマルチヘッデッドクリーナーが出現したのである。
・横浜の狭い地下空間がこのモンスターで埋め尽くされれば、階段を逆流して一階の津々庵から地上(桜木町)へとあふれ出す(スタンピード)危険性があった。
・もしそうなれば、入り口の所有者となったDパワーズが莫大な無過失責任を問われることになる。

JDA斎賀課長の思惑と天の配剤
・この危機的状況に対し、JDAの斎賀課長は、Dパワーズが直前に一階の権利を取得したことを神の見えざる手(天の配剤)だと考えた。
・もしDパワーズが当事者(入り口の権利者)でなければ、この厄介な問題に自ら首を突っ込むことはなかっただろうと判断したからである。
・そのため斎賀は、Dパワーズが隠している秘密を詮索するのを一旦止め、彼らがこの危機を解決するために自由に動けるよう、現場のスタッフに便宜を図る指示を出した。

まとめ
このように、横浜ダンジョンの買収は単なる不動産取引や秘密の隠蔽にとどまらず、日本を揺るがしかねないダンジョン災害に対し、Dパワーズがファントムとして当事者意識を持って立ち向かわざるを得なくなる劇的なターニングポイントとして描かれている。

謎の探索者ファントム

本作に登場する「謎の探索者ファントム」は、世界ランキング1位の匿名探索者につけられた二つ名であり、その正体は主人公の芳村圭吾である。本稿では、彼がファントムとして姿を現し、劇的なデビューを果たすまでの経緯や周囲への影響について解説する。

ファントムの衣装と声の偽装
・芳村が表舞台で活動する際の身バレを防ぐため、三好梓は自身の友人であるコスプレイヤー兼衣装制作者のしーやん(折原志緒里)に専用の衣装を発注した。
・そのデザインは『オペラ座の怪人』の25周年記念公演をベースにしており、黒の上着にホワイトタイ、中折れ帽、顔を隠す口元の開いた仮面という、非常に芝居がかったフォーマルなものであった。
・さらに芳村の地声を隠すための手段として、六層に棲息する擬態モンスターであるカマネレオンから超低確率の〈声真似〉オーブを取得し、それを用いて他人の声を真似ることで声帯の偽装を行った。

十層でのデビュー
・ファントムの初陣は、代々木ダンジョン十層で偶発的に訪れた。
・新人女優である斎藤涼子の番組パイロット版撮影に訪れていた吉田陽生探検隊が、ラーテル率いる武装集団とアンデッドの大群の戦闘に巻き込まれ、絶体絶命のピンチに陥った。
・見守り隊として密かに同行していた芳村は、三好に背中を押される形でファントムの衣装に着替え、墓石の上に颯爽と登場した。
・彼は荒野に呼ばわるものを名乗り、青白い炎のリングを放つ〈極炎魔法〉シリウス・ノヴァを発動してアンデッドの大群を一掃した。
・そして「道は開かれた」とフランス語で別れを告げ、巨大なマントを翻して影の中(シャドウピット)へ飛び込むというイリュージョンのような手法で劇的な消失を果たした。

世界のトップ探索者や裏社会への波紋
・この圧倒的な戦闘力と魔法を目の当たりにしたラーテルや、フランス特殊作戦司令部(COS)のアランたちは、その実力が世界ランク一桁のトップ探索者(ヴィクトールなど)を凌駕していると判断し、彼こそが噂に聞くエリア12出身のランキング1位であるファントムであると推測した。
・一方で、裏社会で動く深穴教団のデヴィッドは、現場の録音データを声紋分析にかけた。
・芳村が咄嗟にサイモンの声を〈声真似〉で真似ていたため、サイモンの声と95%一致するという解析結果が出てしまい、デヴィッドはサイモン自身がファントムとして暗躍し、Dパワーズにアイテムを横流ししているという大きな勘違いを抱くことになった。

映像の拡散とファントム量産計画
・吉田探検隊によって撮影されたファントムの姿は、テンコーの動画チャンネル内のミニコーナーを通じてネット上に公開され、SNSで爆発的に拡散されてしまった。
・身バレの危険が高まった芳村に対し、三好は木の葉を隠すなら森の中というチェスタトンの格言を引き合いに出し、あえてファントムの衣装を量産・販売するファントム量産計画を提案した。
・ダンジョン内にファントムのコスプレをする一般探索者を溢れさせることで、本物の芳村がその格好をしていてもただの痛いコスプレイヤーだと言い逃れできるようにするという、斜め上のカモフラージュ作戦を目論んでいる。
・同時にこれは、衣装制作を手掛ける金欠の友人(しーやん)を経済的に救済するという裏の目的も兼ねていた。

まとめ
このように、ただの正体隠しのための変装であったファントムは、三好の過剰な演出と芳村の圧倒的な実力が合わさることで、世界中の探索者や組織を巻き込む壮大な都市伝説へと発展していくことになった。

横浜ダンジョンの危機

本作における横浜ダンジョンの危機は、ファルコンインダストリーの兵器テスト中に現れた未知のボスモンスターによってもたらされた、未曾有のスタンピードの脅威である。Dパワーズがダンジョンの一階部分を買収した直後に発覚し、彼らが事態の解決に乗り出す最大の要因となった。本稿では、その詳細な経緯とポイントについて解説する。

マルチヘッデッドクリーナーの出現と異常な増殖
・ファルコンインダストリーが横浜ダンジョン二層で無人兵器であるポーターの実戦テストを行っていた際、複数の首を持つ未知のボスであるマルチヘッデッドクリーナーが出現した。
・このモンスターは物理攻撃でバラバラにされると、その肉片一つ一つが再生して独立した個体になるだけでなく、4から6時間ごとに自然に分裂して倍増する特性を持っていた。
・さらに各個体が最大8匹のスライムを召喚するため、放置すれば指数関数的に増殖を続け、地球全体を食いつくすほどの脅威となる可能性があった。

空間の限界とスタンピードの切迫
・横浜ダンジョンは商業ビルの地下を利用した特殊な構造のため、空間が狭い。
・三好が地下駐車場の容積から計算した結果、19日の13時から19時台にはフロアがモンスターで満杯になると予測された。
・駐車場ゲートは強固だが、階段側のドアは外開きで非破壊オブジェクトのため内側に押し込めず、モンスターが溢れた場合は階段を逆流し、地上(桜木町)へと押し出されるスタンピードの発生が確実視された。

Dパワーズの無過失責任とファントムの介入決意
・Dパワーズは直前に一階を購入して津々庵を構えたばかりであり、もし入り口からモンスターが溢れ出れば、莫大な無過失責任を問われる絶体絶命の立場にあった。
・階段を生コンで塞ぐなどの過激な手段も検討されたが、実行が難しいと判断された。
・最終的には、芳村が謎の探索者であるファントムとしてダンジョンに潜入し、最悪の場合は極炎魔法インフェルノを使用してでも殲滅するという、人知れず世界を守る方針をとることになった。

各組織の対応の遅れとJDAの天の配剤
・JDAの斎賀課長は自衛隊やダンジョン庁に協力を要請し、ファルコンインダストリー側もDAD経由で代々木十八層にいるサイモンチームの呼び戻しを図った。
・しかし、政治的手続きや移動時間の問題から、モンスターが溢れ出すタイムリミットに間に合わないことが明白であった。
・一方で斎賀課長は、このタイミングでDパワーズが一階の権利を取得し、当事者として首を突っ込まざるを得なくなった状況を天の配剤(神の見えざる手)と考えた。
・そして、彼らの隠している秘密の詮索を一旦保留し、自由に動けるよう現場に便宜を図る指示を出した。

まとめ
横浜ダンジョンの危機は、指数関数的に増殖するモンスターによって日本全体が飲み込まれかねない絶望的な状況であった。しかし、Dパワーズが自らの保身(無過失責任の回避)のためにファントムとして秘密裏に介入を決意し、JDAがそれを黙認するという、各々の思惑が交錯するスリリングな展開となっている。

Dジェネシス4巻レビュー
Dジェネシス6巻レビュー

登場キャラクター

Dパワーズ

芳村圭吾

Dパワーズのメンバーであり、三好やアルスルズと行動を共にする主人公である。未知のスキル〈メイキング〉を用いて、他者のステータスを操作する役割を担う。

・所属組織、地位や役職
 合同会社Dパワーズ・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 斎藤涼子や六条小麦のステータス向上を図る裏ブートキャンプを実施した。十層で吉田探検隊が危機に陥った際、ファントムの衣装を着て〈シリウス・ノヴァ〉を放ち、アンデッドの群れを一掃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ファントムとしての行動がネットで拡散され、上位探索者からも世界ランキング一位と推測されるようになった。

三好梓

Dパワーズの代表であり、情報収集や事業戦略の立案を主導する。芳村のサポートを行いながら、自らのステータスをINTに極振りする特異な方針を持つ。

・所属組織、地位や役職
 合同会社Dパワーズ・代表
・物語内での具体的な行動や成果
 横浜ダンジョン一階の買収と一層の借り上げを提案し、JDAと契約を結んだ。芳村のファントム衣装を折原志緒里に発注し、十層でのデビューを後押しした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 新方式のスライム狩りによって急速に経験値を獲得し、世界ランキングでトリプルの順位に突入した。

アルスルズ(カヴァス、アイスレム、グレイシック、ドゥルトウィン、グラス、グレイサット)

三好に召喚されたヘルハウンドたちの総称である。芳村たちの護衛や探索者の支援など、多岐にわたる任務を忠実にこなす。

・所属組織、地位や役職
 Dパワーズ・召喚獣
・物語内での具体的な行動や成果
 アイスレムは斎藤涼子のスライム狩りを監督し、ドゥルトウィンは六条小麦の訓練を補助した。カヴァスは九層でブラッドボアを撃破し、芳村たちを護衛した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 三好のINT上昇に伴い、小型犬の姿をしたグラスとグレイサットが新たに追加召喚された。

三代絵里

洋弓使いのプロ探索者であり、以前芳村たちに弟を助けられた女性である。真面目な性格であり、借金の返済を申し出るために芳村を訪ねた。

・所属組織、地位や役職
 プロ探索者。Dパワーズ契約探索者第一号。
・物語内での具体的な行動や成果
 弟を助けられた対価として二百万円を持参したが、芳村に断られた。代わりにDパワーズと契約を結び、六条小麦の護衛兼パーティメンバーとして活動を開始した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 Dパワーズの契約探索者となり、育成プログラムにも参加することとなった。

JDA(日本ダンジョン協会)

斎賀

JDAダンジョン管理課の課長であり、組織内の調整や決断を下す立場にある。Dパワーズの動向を注視しつつ、彼らを自由に動かす方針をとる。

・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課・課長
・物語内での具体的な行動や成果
 Dパワーズからオーブを寄託契約で預かり、六条小麦の育成を依頼した。横浜ダンジョン二層でのスタンピード危機に対し、関係各所へ協力を要請した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 横浜ダンジョンの買収を天の配剤と捉え、Dパワーズが事態解決に動くことを黙認した。

鳴瀬美晴

JDAダンジョン管理課の専任管理監であり、Dパワーズとの窓口を務める。芳村や三好の突飛な行動に驚かされつつも、実務をこなす。

・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課・専任管理監
・物語内での具体的な行動や成果
 横浜ダンジョンの一階売買と一層賃貸借の契約手続きを完了させた。芳村から横浜ダンジョンでダイヤモンドがドロップした事実や、スタンピードの危機について報告を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 Dパワーズとの交渉を通じて、JDA内部での評価が高まっている。

坂井典丈

JDAダンジョン管理課の主任であり、大学入試対策委員会にも出向している。

・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理課・主任
・物語内での具体的な行動や成果
 ファルコンインダストリーから提出された、横浜ダンジョンにおけるマルチヘッデッドクリーナーの報告書を斎賀に提出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

橘美智代

JDAダンジョン管理部の部長であり、大規模な資金決済の確認を行う。ダンジョン資源の宇宙開発への転用を構想する人物である。

・所属組織、地位や役職
 JDAダンジョン管理部・部長
・物語内での具体的な行動や成果
 斎賀のもとを訪れ、四百五十億円のスキルオーブ取引の詳細について確認した。〈収納庫〉の利用方針を斎賀に一任した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

マスコミ・芸能界・テレビ関係

吉田陽生

ダンジョン探索番組を企画する人物であり、スクープのためなら危険を顧みない性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 マスコミ・関係者(吉田陽生探検隊の隊長)
・物語内での具体的な行動や成果
 斎藤涼子を起用して代々木ダンジョン八層から十層での撮影を強行した。十層で軍人風の集団を追跡し、アンデッドの大群との戦闘に巻き込まれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ファントムの登場をカメラに収め、その映像を番組に利用しようと画策している。

宮内典弘(テンコー)

「ガチャダンマスター・テンコー」を名乗る動画配信者であり、Cランクの探索者である。横浜ダンジョンの構造に関する独自の仮説を提唱する。

・所属組織、地位や役職
 探索者・動画配信者
・物語内での具体的な行動や成果
 芳村たちを横浜ダンジョン一層へ案内し、その様子を動画で公開した。十層での撮影に護衛として同行し、ファシーラの奇襲を回避した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自身のチャンネルでファントムの映像を公開し、SNSでの情報拡散のきっかけを作った。

カメラマンであり、吉田の撮影に同行する人物である。危険な状況に対しては常識的な不安を抱く。

・所属組織、地位や役職
 マスコミ・カメラマン
・物語内での具体的な行動や成果
 代々木ダンジョン十層で、ファントムがアンデッドを一掃する様子をカメラで撮影した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

斎藤涼子

新人女優であり、芳村を師匠と仰ぐ探索者である。物怖じしない性格で、ダンジョンでの過酷な特訓をこなす。

・所属組織、地位や役職
 芸能界・女優
・物語内での具体的な行動や成果
 アイスレムの監視下でスライムを大量に討伐し、ステータスを大幅に向上させた。光が丘のアーチェリー大会で非公認ながら世界記録を上回る成績を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ネット上で「アルテミス」という異名で呼ばれるようになった。

日本政府機関

寺沢

防衛省に所属する人物であり、JDAの動向やスキルオーブの情報を探る。

・所属組織、地位や役職
 防衛省・関係者
・物語内での具体的な行動や成果
 斎賀に電話をかけ、オークションで取引されたオーブの性能や使用者について問い合わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

DAD(アメリカダンジョン省) / サイモンチーム

サイモン=ガーシュウィン

アメリカのトップチームを率いる探索者である。ブートキャンプの成果に驚き、軍人としての視点から的確な助言を行う。

・所属組織、地位や役職
 DAD・探索者(サイモンチームのリーダー)
・物語内での具体的な行動や成果
 第一回ブートキャンプを受講し、ステータスの劇的な向上を確認した。訓練費用について、安売りすれば国際問題になると芳村に警告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

キャサリン=ミッチェル(キャシー)

サイモンチームのバックアップ要員であり、ブートキャンプの教官役を務める。鍛錬に対して並々ならぬ情熱を持つ。

・所属組織、地位や役職
 DAD・バックアップ要員
・物語内での具体的な行動や成果
 受講者に過酷なメニューを課し、最後にメチャ苦茶を飲ませてステータス計測を行った。芳村から〈水魔法〉のオーブを受け取り、使用した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アームレスリングでメイソンに勝つなど、能力が大幅に向上した。

ジョシュア=リッチ

サイモンチームに所属する探索者であり、素早さと技術を重視する。

・所属組織、地位や役職
 DAD・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 ブートキャンプのDEXラウンドで大量の縫い針に糸を通す作業を課され、芳村に恨み言をぶつけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

メイソン=ガルシア

サイモンチームに所属する探索者であり、前衛として力と体力を担う。

・所属組織、地位や役職
 DAD・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 二十九層の戦闘で左腕に重傷を負っていたが、ブートキャンプを経て能力を向上させた。アームレスリングでキャシーに勝利した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ナタリー=スチュワート

サイモンチームに所属する探索者であり、魔法の威力と素早さを重視する。日本語に堪能である。

・所属組織、地位や役職
 DAD・探索者
・物語内での具体的な行動や成果
 サイモンへの軽口に対して強烈な蹴りを見舞った。ブートキャンプの料金設定の安さに驚き、頭痛を堪える様子を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

サイモンチーム

サイモンが率いる、アメリカのトップ探索者で構成されたチームである。

・所属組織、地位や役職
 DAD・探索者部隊
・物語内での具体的な行動や成果
 第一回ブートキャンプに参加し、全員が一年分に近いステータスの向上を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

傭兵部隊 / 監視者たち

ラーテル

「キュレナイカのバジリスク」と恐れられる歴戦の傭兵であり、部隊の指揮を執る。冷静な状況判断能力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊・隊長
・物語内での具体的な行動や成果
 Dパワーズの監視任務を受け、代々木ダンジョン十層でアンデッドの群れと戦闘を行った。ファントムの力を見て、まともにやり合うのを避けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ファシーラ

ラーテルの副官を務める細身の男であり、高い近接戦闘技術を持つ。

・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊・副官
・物語内での具体的な行動や成果
 テンコーを戦闘の巻き添えにしようと暗器で奇襲したが、何者かに弾かれて失敗した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

アラン=ボージェ

フランス特殊作戦司令部から派遣された探索者であり、方向を絞って距離を伸ばせる〈生命探知〉を持つ。

・所属組織、地位や役職
 フランス軍・特殊作戦司令部(COS)少尉
・物語内での具体的な行動や成果
 ラーテルの部隊に同行し、芳村たちの位置を探知しようとした。ファントムの音声を録音し、正体を分析しようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

シュート

ラーテルの部隊に所属する小柄な狙撃手である。

・所属組織、地位や役職
 傭兵部隊・狙撃手
・物語内での具体的な行動や成果
 夜の十層でのミッションへの参加を拒否し、階段の上で待機した。その後、ラーテルたちの撤退を支援するためにアンデッドを狙撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ファルコンインダストリー

プリマス=コープマン

ポーター開発ユニットのチーフを務める人物であり、テストの指揮を執る。

・所属組織、地位や役職
 ファルコンインダストリー・チーフ
・物語内での具体的な行動や成果
 横浜ダンジョン二層でポーターの戦闘テストを指揮した。マルチヘッデッドクリーナーの異常な増殖を確認し、撤退を決断した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ノーラ=ベルイマン

ポーター開発ユニットの紅一点であり、モンスターに関する知識を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ファルコンインダストリー・開発メンバー
・物語内での具体的な行動や成果
 出現したモンスターの残骸を見て、それがクリーナーであることに気が付いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

カイ=ライトール

ポーター開発ユニットのお調子者のメンバーである。

・所属組織、地位や役職
 ファルコンインダストリー・開発メンバー
・物語内での具体的な行動や成果
 二十ミリ装備のテスト準備において、オーバーキルではないかと軽口を叩いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ギョーム

ポーター開発ユニットの寡黙なエンジニアである。

・所属組織、地位や役職
 ファルコンインダストリー・エンジニア
・物語内での具体的な行動や成果
 二十ミリ懸架式バルカンのセットアップを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

アルトゥム・フォラミニス(深穴教団) / 監視者

デヴィッド

深穴教団に属する男であり、Dパワーズの周囲を探る人物である。

・所属組織、地位や役職
 アルトゥム・フォラミニス
・物語内での具体的な行動や成果
 ファントムの音声解析を依頼し、その結果からファントムの正体がサイモンであるという勘違いを抱いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

DFA(食品管理局)

ネイサン=アーガイル

DFAの本局に所属する主席研究員であり、パンク文化を好む一面を持つ。

・所属組織、地位や役職
 DFA・主席研究員
・物語内での具体的な行動や成果
 POから回ってきたダンジョニングに関する特許資料を読み、その可能性に熱狂して直ちに日本への出張を決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

シルクリー=サブウェイ(シルキー)

ネイサンのアシスタントであり、分子生物学を専門とする。

・所属組織、地位や役職
 DFA・アシスタント
・物語内での具体的な行動や成果
 ネイサンとともに特許資料を確認し、ダンジョニングの概念に衝撃を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ダンジョン研究者 / アメリカの大学

リード=ジョーンズ

シカゴ大学のダンジョン研究室に所属するアソシエイト・プロフェッサーである。「インディ・ジョーンズ」のあだ名を持つ。

・所属組織、地位や役職
 シカゴ大学・アソシエイト・プロフェッサー
・物語内での具体的な行動や成果
 インディアナ州ゲーリーで発生したダンジョン生成を観測し、ダンジョンコアに関する独自の仮説を提唱した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ポスドクの学生

リードの研究室に所属する女性研究者である。

・所属組織、地位や役職
 シカゴ大学・ポスドク
・物語内での具体的な行動や成果
 ドローンを用いてダンジョンの生成過程を観測し、リードと映画の台詞を引用して冗談を交わした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

シカゴ大学とイリノイ工科大学の混成チーム

ダンジョン研究を行う大学の合同チームである。

・所属組織、地位や役職
 アメリカの大学・研究チーム
・物語内での具体的な行動や成果
 廃墟の教会跡地でダンジョン震を感知し、地下型ダンジョンが生成される過程を世界で初めて観測した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

大規模オフ企画者(ニューヨーク)

ポール

ニューヨークでDカードの機能を探る大規模オフを企画している人物である。

・所属組織、地位や役職
 大規模オフ企画チーム
・物語内での具体的な行動や成果
 三好からのメールを受け取り、ディーンにDパワーズの支援内容を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

ディーン=マクナマラ

ポールとともに大規模オフを企画している人物である。

・所属組織、地位や役職
 大規模オフ企画チーム
・物語内での具体的な行動や成果
 Dパワーズが会場費や宿泊費を提供するという破格の提案に驚愕し、実験計画の立案を開始した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

新越ダンジョン株式会社

三浦典義

新越ダンジョンの開発部長であり、優秀な人材の獲得を目指す。

・所属組織、地位や役職
 新越ダンジョン株式会社・開発部長
・物語内での具体的な行動や成果
 上司の命を受け、三好の兄である三好将生の引き抜きを試みたが、保留されたことを報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

GIJ(日本宝石学研究所)

六条小麦

GIJに所属する鑑定士であり、鉱物に対して異常なほどの執着を持つ。

・所属組織、地位や役職
 GIJ・鑑定士
・物語内での具体的な行動や成果
 ブートキャンプに参加し、スライムのコアを分析して知識を披露した。芳村の指導のもと、新方式によるスライム狩りを開始した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 JDAにおいて〈マイニング〉オーブの使用候補筆頭と目されている。

探索者(渋チー)

林田

代々木ダンジョンの一般探索者トップグループ「渋チー」のリーダーである。

・所属組織、地位や役職
 探索者(渋チー)・リーダー
・物語内での具体的な行動や成果
 十七層で仲間と馬鹿話をしながらも、敵が出現すれば即座に戦闘態勢に入った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

喜屋武

渋チーに所属する背の高い男である。

・所属組織、地位や役職
 探索者(渋チー)
・物語内での具体的な行動や成果
 くしゃみをした林田をからかい、雑談に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

渋チーに所属する小柄な男であり、真面目そうに見えて雑談に応じる。

・所属組織、地位や役職
 探索者(渋チー)
・物語内での具体的な行動や成果
 林田の言葉にツッコミを入れつつ、彼らの不満に理解を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

デニス

渋チーに所属するハーフ風の男であり、斥候の役割を担う。

・所属組織、地位や役職
 探索者(渋チー)・斥候
・物語内での具体的な行動や成果
 後方の馬鹿話に文句を言いつつ、右前方にカマイタチが出現したことを即座に警告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

大建(ダイケン)

渋チーに所属する大剣を背負った男である。

・所属組織、地位や役職
 探索者(渋チー)
・物語内での具体的な行動や成果
 十八層への不満を漏らす林田に、上位探索者に喧嘩を売らないよう釘を刺した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

渋チー

代々木の一般探索者でトップグループに位置するチームである。

・所属組織、地位や役職
 探索者チーム
・物語内での具体的な行動や成果
 代々木ダンジョン十七層で探索を行い、連携の取れた戦闘陣形を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

スポーツ団体・その他

ジャック

代々木ダンジョン八層のキャンプ地「ターン・スピット」で豚串屋台を営む男である。

・所属組織、地位や役職
 探索者・屋台の店主
・物語内での具体的な行動や成果
 三好から預かっていたクイーバーを斎藤涼子に渡し、彼女にサインを求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

折原志緒里(しーやん)

三好の友人であり、コスプレ衣装の制作を手掛ける人物である。

・所属組織、地位や役職
 衣装制作者
・物語内での具体的な行動や成果
 三好からの発注を受け、ファントム用のフォーマルな衣装一式を制作した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項は確認できない。

Dジェネシス4巻レビュー
Dジェネシス6巻レビュー

展開まとめ

序章 プロローグ

港区 赤坂

赤坂での打ち合わせ

テンコーは、カメラマンの城が所属する赤坂のスタジオ近くのファミレスへ呼び出されていた。横浜からでは遠い場所であり、面倒さを感じながら店へ入ると、吉田に声を掛けられて席へ向かった。店内には一人用ボックスが並んでおり、ファミレスらしくない雰囲気に違和感を覚えていた。

吉田は現在の状況と今後の予定を説明し、ダンジョン探索バラエティーの本番撮影は、斎藤涼子のスケジュール次第になったと語った。城は、なぜ斎藤涼子の所属プロダクションから出演許可が出たのか疑問を口にしたが、吉田はプロダクションには門前払いされたと平然と答えた。

斎藤涼子本人との接触

吉田は、プロダクションから断られた一方で、斎藤涼子本人からは了承を得たと明かした。その発言に城は不安を覚え、危険な手段を使ったのではないかと疑った。特に、自分が関わった映像が何らかの材料に使われていた場合、自身も問題に巻き込まれる可能性があったためである。

しかし吉田は、ただ本人と話をしただけだと説明した。さらに、斎藤涼子は光が丘で開催されている新春アーチェリー大会の撮影を終えた後、時間を作る予定だと語った。

護衛と十層探索への懸念

テンコーは出演者事情よりも現場の安全性を重視しており、護衛体制について確認した。すると吉田は、斎藤涼子はあの館から生還した人物なのだから護衛は不要ではないかと語った。吉田は映像で彼女の姿を確認しており、あの危険な館から生き延びたこと自体を奇跡のように感じていた。

しかし城は、現在も撮影中の彼女に怪我を負わせる危険を懸念した。さらにテンコーも、行き先が代々木の十層である以上、危険性は極めて高いと指摘した。十層は探索者にとって死の層として知られており、同化薬の普及で通過自体は容易になったものの、依然として命に直結する危険地帯だった。

吉田は、現在は通過するだけなら問題ないと軽く受け流し、無理な戦闘は避けるつもりだと説明した。だがテンコーは、館のモンスターを前にしても平然と撮影を続けていた吉田の姿を思い出し、不安を拭えなかった。

吉田の狙い

吉田はさらに、今回の企画には別の狙いもあると語った。それは斎藤涼子の「師匠」と呼ばれる存在であった。斎藤涼子が不本意ながらも危険な十層探索へ参加するとなれば、その人物が心配して現場へ現れる可能性があると考えていたのである。

吉田は、その様子を撮影できれば面白い映像になると期待していた。城は吉田の強引さに不安を抱き、テンコーもまた、呆れ混じりに吉田の危うさを感じていた。

第06章 ザ・ファントム

二〇一九年一月八日(火)

斎藤涼子からの救援要請

二〇一九年一月八日、斎藤涼子は代々木八幡の事務所を訪れ、切迫した様子で芳村へ助けを求めた。

理由は、ダンジョン十層へ行かなければならなくなったためであった。背景には、芳村たちが隠していた何かを第三者に知られてしまい、強く拒否できない状況へ追い込まれていた事情が存在していた。芳村も無関係ではないと認識しており、対応を迫られていた。

戦力強化案の検討

三好は、探検隊を陰から見守る形を取りつつ、斎藤涼子自身の戦力を底上げするしかないと提案した。

しかし芳村は慎重だった。斎藤涼子はクリスマス前の時点で余剰SPをほぼ使い切っており、現在蓄積されているポイントも少なかったため、短期間で劇的な強化を行うことは難しかったのである。

芳村はDカードを使って彼女の現在の能力を確認した。以前より各種能力は自然成長していたものの、戦闘能力は十層攻略には不十分であり、特に弓主体の戦闘スタイルが問題視された。近接能力が低いため、囲まれた瞬間に致命的状況へ陥る危険が高かった。

育成方針と時間不足

三好は、STRやVITを伸ばしてメイス戦闘へ適応させる案や、収納系能力による矢の補充、攻撃魔法の習得、さらにはヘルハウンド運用まで様々な案を提示した。

しかし撮影まで残された時間はわずか五日程度しかなく、十分な育成期間とは到底言えなかった。

それでも芳村は、今日から三好の家へ泊まり込みで特訓を行う方針を提案した。斎藤涼子は、レッスンを休み続ければ芸能界で悪評が立つのではないかと不安を漏らしたが、最終的には秘密特訓として押し通す方向で話がまとまった。

御劔はるかの異常成長

会話の中では、御劔はるかがニューヨークのファッションウィークへ参加することも明かされた。

彼女は急激にモデルとして覚醒しており、関係者からは既に技術面で教えることが存在しないと評価されていた。その背景には、以前芳村が贈ったアクセサリーの影響があると考えられていた。

DEX70という異常な能力値によって、彼女の存在感や表現力は劇的に変化しており、その結果、有力ブランドのショーへの参加が決定していた。

横浜ダンジョンの新発見

斎藤涼子が帰宅した後、三好は別件として、横浜ダンジョンに存在する極小フロアの可能性を報告した。

この仮説を唱えたのは、「ガチャダンマスター・テンコー」の異名を持つ宮内典弘であった。彼は、横浜ダンジョンでは階段一段ごとが独立したフロアとして機能している可能性を主張し、踊り場部分でもモンスターが発生したと証言していた。

芳村はその発想に強い興味を抱き、実際に現地確認を行うことを決断した。三好は既にテンコー本人へ連絡を取っており、翌日の午後に桜木町で会う予定が組まれていた。

第二章 防衛省の動き

寺沢による問い合わせ

市ヶ谷の防衛省では、寺沢がJDAの斎賀へ連絡を取り、オークション関連の情報確認を行っていた。

寺沢は、本来出品されると予想していた品が存在していないことへ疑問を抱いていたが、斎賀は軽い態度を崩さず、真意を読ませないまま応対していた。

装備性能と使用者問題

寺沢は本題として、装備の容量や性能について確認した。輸送防護車や攻撃ヘリをダンジョンへ持ち込めれば、自衛隊の安全性と攻略能力が飛躍的に向上するためである。

しかし斎賀は、現時点では性能確認すら困難だと説明した。理由は、オーブ装備が使用者個人へバインドされる仕様にあり、一度適合すると他者への再設定が不可能だったためである。

つまり高額装備は特定個人専用となり、使用者が退職しても法的拘束はできない。寺沢もその問題を理解し、返答に窮した。

相互協力関係の成立

斎賀は、現在は生存期間などに関して柔軟な運用を行っていると説明した。

寺沢は、その発言の裏に様々な事情が存在することを察し、それ以上深く追及しなかった。そして性能情報の共有を求める代わりに、何か問題が発生した際には協力することを了承した。

寺沢は、自衛隊だけでは扱い切れない問題が今後発生する可能性を感じ取っていた。同時に、実際の使用者と外部協力関係を築く必要性も認識し始めていた。

通話終了後、寺沢は「何か」という曖昧な言葉の意味を静かに考え続けていた。

二〇一九年一月九日(水)

桜木町でのテンコーとの合流

二〇一九年一月九日、芳村と三好は午前中に斎藤涼子の特訓へ付き添った後、アイスレムを残して桜木町へ向かった。

交通費節約のため代々木公園駅を利用しながら移動した二人は、桜木町駅前のイベント広場を抜け、「ダンジョンビル」と呼ばれる施設へ到着した。待ち合わせ場所の椿屋カフェでは、横浜ダンジョン研究者として知られるテンコーこと宮内典弘が待っていた。

テンコーは動画配信者らしい強烈な個性を持ち、関西弁風の口調もキャラクター演出であると説明していた。

踊り場フロア仮説

三好は、テンコーが提唱している「踊り場フロア」について質問した。

テンコーによれば、横浜ダンジョンの階段踊り場付近でモンスターらしき存在を目撃したものの、自身がCランク探索者であるため、それ以上の調査を止められたという。

横浜ダンジョンはBランク以上を含むパーティでなければ入場できない高難度ダンジョンであり、テンコーは自分も同行させてほしいと懇願した。三好は三十分後に受付前で再集合する約束を交わした。

地下階段の探索

芳村と三好は先行してダンジョン内部へ入り、地下へ続く階段構造を調査した。

踊り場周辺ではモンスターは確認できなかったが、地下二階以降へ続く構造を見ながら、テンコーの「階段一段ごとが独立フロア」という仮説に現実味を感じ始めていた。

地下一区画へ到達すると、そこは暗いデパ地下のような構造となっていた。照明や棚などは全てダンジョン生成物であり、人工的に設置されたものではないと判明した。

芳村は、ダンジョンが無機物まで再現している事実へ強い驚きを抱いていた。

ジャンピングスパイダーとブルーダイア

探索中、最初に遭遇したのは巨大なハエトリグモ型モンスター「ジャンピングスパイダー」であった。

芳村はウォーターランスを放ち、一撃で撃破した。モンスターは黒い光へ変化し、その場にカット済みのブルーダイアモンドを残した。

三好は、それが二カラット級のブルーダイアだと分析した。芳村は驚愕したが、三好は横浜ダンジョンが実質的に二十層以下扱いになっていることと、芳村の〈マイニング〉能力が影響していると推測した。

この結果によって、「階段=フロア」というテンコーの仮説は、ほぼ証明された形となった。

高難度モンスターとダイヤ産出

続いて現れた巨大ムカデ型モンスター「ヒュージセンチピード」は、三好が鉄球散弾で瞬時に撃破した。

このモンスターからも一カラット級の透明ダイアモンドが出現したため、二人は事態の重大性を認識した。

もしこの事実が公になれば、天然ダイヤモンド市場そのものへ深刻な影響を与えかねなかった。ダンジョン由来の天然ダイヤモンドが大量供給されれば、既存市場や価格統制体制すら崩壊する可能性があったのである。

横浜ダンジョン利用構想

三好は、横浜ダンジョンを研究施設兼実験場として利用する構想を語った。

特に地下一区画全体を借り上げ、踊り場フロアを研究用に独占利用する案を提示した。横浜ダンジョンは利用者が少なく、維持コストばかり掛かる赤字施設である可能性が高いため、交渉次第では占有利用も現実的だと分析していた。

さらに地下駐車場側に直通ルートが存在するため、一層を封鎖しても深層利用者への影響は小さいと説明した。

芳村は、その大胆な発想に驚きつつも、研究設備としての価値やダイヤモンド産出能力を考慮し、横浜ダンジョン利用計画へ現実味を感じ始めていた。

第三章 斎藤涼子の特訓

アイスレムとの訓練生活

代々木ダンジョン一層では、斎藤涼子がアイスレムと共に特訓を続けていた。

慣れない訓練によって疲労が蓄積しており、腰を伸ばして悲鳴を上げる場面もあった。さらに、自分の動作がおばさん臭いと気にして落ち込んでいた。

その様子を見たアイスレムは理解不能といった顔をしていたが、涼子は犬と人間では種族が違うから仕方ないと持論を語り続けていた。

アイスレムとの交流

当初、斎藤涼子はアイスレムを普通の犬だと思っていた。しかし会話内容を理解しているような反応を見せるため、次第に友人のように接するようになっていた。

一方のアイスレムは、延々と理屈を語る彼女に困惑していたが、任務として付き添いを続けていた。

涼子が話し終えると、アイスレムはおとなしく頭を下げた。彼女が感心すると、アイスレムは鑑札を押し付け、自分は犬だと主張した。涼子がそれを認めると、嬉しそうに頬へ鼻を擦り付けていた。

スパルタ式特訓の継続

しかし休憩はすぐに終わった。

アイスレムは鼻先で涼子を押し、再び戦闘へ戻るよう促した。その直後、目の前へスライムが出現した。

涼子は、アイスレムを鬼軍曹のようだと嘆きながらも、涙目の演技を交えつつ液体スプレーでスライム退治を再開した。

第四章 テンコーチャンネル

動画公開とテンコーの演出

代々木八幡の事務所では、芳村たちがテンコーの動画チャンネルを視聴していた。

午前中に撮影された横浜ダンジョン映像は既に編集済みで公開されており、その異常な作業速度に芳村は感心していた。

動画冒頭では、テンコーが古いラジオDJ風の挨拶を披露し、独特の似非関西弁で軽妙なトークを展開していた。

三好の公開とSランクカード

動画では「レジェンド」Dパワーズの三好が大々的に紹介されていた。

さらに三好のSランクWDAカードも大きく映されており、名前は隠されていたもののカード自体の質感や細部は鮮明に映し出されていた。

芳村は不用心ではないかと不安を覚えていたが、テンコーは実物のSランクカードに興奮し続けていた。

横浜ダンジョン探索映像

続く映像では、テンコーによる横浜ダンジョン一層探索が映し出されていた。

テンコーはモンスター知識に長けており、危なげなく戦闘を処理していた。なお、今回の撮影カメラ担当は芳村であり、三好やアルスルズはダイヤドロップ回避のため戦闘へ参加していなかった。

動画終盤では、テンコーが芳村を「Gランクなのに横浜へ潜る変人」と紹介していた。

横浜ダンジョン購入計画

夕方になると鳴瀬が事務所を訪れ、三好は横浜ダンジョン利用計画について相談を始めた。

鳴瀬は、横浜ダンジョンが特殊事例であり、本来は商業ビル地下だった部分のみがダンジョン化したため、一階部分だけJDAへ売却された経緯を説明した。

そのため、転売にはビル管理会社側との調整も必要だったが、Dパワーズほどの資産規模があれば交渉自体は可能だと判断していた。

三好は、本当に欲しいのは地下深層ではなく一層部分だけだと説明した。敵が強く利用者が少ないため、研究施設として非常に扱いやすい環境だと考えていたのである。

第五章 渋チーの探索

十七層での雑談

代々木ダンジョン十七層では、渋谷チーム「渋チー」が探索を続けていた。

林田が突然くしゃみをすると、仲間たちは風邪ではないかと茶化した。林田は、美少女が自分の噂をしているのだと軽口を返し、仲間たちは呆れながらも付き合っていた。

後方では大建が、最近は十八層も飽きてきたと不満を漏らしていた。

トップ探索者への対抗意識

現在の十八層には世界中のトップ探索者たちが集まっており、渋チーの面々は自分たちが雑魚扱いされている現状へ強い不満を抱いていた。

林田は、自分たちが先に〈マイニング〉を取得して見返してやりたいと息巻いていた。

カマイタチとの遭遇

その直後、先行していたデニスが右前方に敵影を察知し、カマイタチの接近を告げた。

渋チーの面々は、先程までの軽口を即座に切り替え、長年の経験に裏打ちされた洗練された陣形を構築して敵へ対峙した。

その動きは、十七層以深で戦い続けてきたベテラン探索者チームとしての実力を十分に示していた。

二〇一九年一月十日(木)

キャシーの鍛錬熱

二〇一九年一月十日、芳村はJDA本部へ向かう前から、キャシーの鍛錬に付き合わされて疲弊していた。

プレキャンプでステータス上昇を実感したキャシーは、隙あらば事務所へ押しかけ、芳村を訓練へ引っ張り出していた。三好はそれを面白がり、芳村を生贄のように差し出していたため、キャシーのAGIとSTRは大きく伸びていた。

一方で、INT系訓練だけは二度とやりたがらず、芳村は彼女の鍛錬熱に恐怖を覚えていた。

三好の多忙な業務

JDA本部の会議室で、芳村は疲れた状態のまま三好と合流した。

三好は、デバイス量産化、横浜ダンジョンの根回し、ブートキャンプ調整、農園管理、各種申請手続き、さらにニューヨークで予定されている大規模イベント対応まで抱えていた。

そのイベントはDカードやテレパシーに関する大規模検証企画であり、Dパワーズは特別協賛として資金提供する予定であった。三好の真の狙いは、大量の探索者データをステータス測定デバイスで収集し、新たな知見を得ることにあった。

斎藤涼子の急成長

三好は、アイスレムを付き添わせた斎藤涼子の訓練も順調に進んでいると説明した。

統計的推定では、斎藤涼子は一日あたり約三百体を討伐しており、このペースなら一日六ポイント前後の成長が見込める状態であった。五日間続けば約三十ポイントの上昇となり、ダブルランク級へ届く可能性もあった。

しかし芳村は、急激な能力上昇だけでは実戦経験や精神面が伴わず、かえって危険になり得ると懸念していた。

〈収納庫〉オーブの正式取引

その後、斎賀課長と鳴瀬が入室し、〈収納庫〉オーブの正式取引が始まった。

三好は恭しくオーブを提出し、鳴瀬が確認した。オーブカウントは八百三十五であり、斎賀はその数値から採取場所を逆算しようとしていた。

さらにJDAは、オークションで落札した〈マイニング〉オーブも提示した。〈収納庫〉取引で得られる手数料収入を見越して、その資金で確保していたのである。

芳村は、〈マイニング〉は早く使用した方がよいと忠告した。一定人数以上の保持者がいれば、ダンジョン全体で鉱物ドロップが安定化する可能性があると考えていたためである。

鉱物専門家育成依頼

取引終了後、斎賀はDパワーズへ新たな依頼を持ちかけた。

内容は、ある女性探索者を二十層まで到達できるよう育成してほしいというものだった。その人物は鉱物分野の専門家であり、鉱物探索への意欲は極めて高いが、現状では二十層到達が難しいとされていた。

三好は、これを受けると今後JDA推薦枠が作られるのではないかと警戒した。しかし芳村は依頼を承諾し、鳴瀬だけが複雑な表情を浮かべていた。

DADへの警戒と情報操作案

会議後、芳村と三好はDAD側の〈マイニング〉受け渡しが遅れている件を話し合った。

十八層周辺を監視し、誰が〈マイニング〉を採取しているのかを探ろうとしている可能性が高かった。三好は、悪戯半分にダンジョン農園へオーブを埋めて、監視者へ農業でオーブが採れると誤認させる案を出した。

芳村は呆れながらも、そのような情報操作が世界を動かす可能性について考えていた。

横浜買収案へのJDA側の困惑

一方、JDAダンジョン管理課では、斎賀が鳴瀬からDパワーズの横浜ダンジョン一階買い取り案を聞き、頭を抱えていた。

横浜ダンジョン一階は、無過失責任を恐れたビル経営陣が、土地所有権を主張しない条件でJDAへ格安売却した場所であった。価格は八千七百万円ほどであり、斎賀にとっては押し付けられた物件に近かった。

かつてはショップが並んでいたが、入ダン制限の厳格化で利用者が激減し、現在は半ば廃墟同然となっていた。

Dパワーズの利用構想と斎賀の不安

Dパワーズは一階を買い取った上で、一層部分を借り上げたいと提案していた。

地下二層へは駐車場ゲート側から直接入れるため、一層を占有しても一般探索者への影響は小さかった。管理課としても受付縮小による維持費削減が期待でき、合理的な提案であった。

しかし、提案者がDパワーズであるという一点が斎賀を不安にさせていた。彼は、Dパワーズが代々木では広すぎてできない実験を横浜で行うと聞き、また新たな特許案件や騒動を抱え込むのではないかと危惧していた。

売却容認への流れ

斎賀は、財務部門なら横浜ダンジョンを不良債権処理として歓迎し、契約を進めるだろうと判断した。

ただし正式決定まではDパワーズ側へ伝えないよう美晴に命じた。また、彼らの真の目的が判明した場合は、業務が爆発するような危険案件かどうかを先に報告するよう釘を刺した。

美晴はその言い方に笑いを漏らしながらも、斎賀の指示を受け入れていた。

二〇一九年一月十一日(金)

橘部長の来訪

二〇一九年一月十一日、市ヶ谷のJDA本部ダンジョン管理課へ、ダンジョン管理部長・橘美智代が直接姿を現した。

橘は一分の隙もない高級スーツ姿で現れ、前日に支払われた四百五十億円の詳細確認を求めた。取引記録には単に「スキルオーブ」としか記載されておらず、その異常な金額から、実態把握が必要だと判断していたのである。

斎賀は、取引対象が〈収納庫〉オーブであると説明した。

〈収納庫〉の価値

橘は、〈収納庫〉というスキル自体が実在していたことに驚きを示した。しかし同時に、これほどの価値を持つオーブを、よく四百五十億円程度で取引成立させたものだと感心していた。

斎賀は、専任管理監として送り込んだ人物の尽力によるものだと説明した。橘は、それまで半ば人身御供のような扱いだと思っていたが、想像以上に有能だったと評価を改めていた。

さらに斎賀は、〈収納庫〉導入の経緯とJDA内部での利用計画について説明した。

現在、自衛隊の攻略層は二十九層付近に到達しており、碑文情報が正しければ、間もなくセーフエリア発見が見込まれていた。大量輸送を可能にする〈収納庫〉は、その攻略を大きく前進させる可能性があった。

使用者問題と寄託契約

しかし最大の問題は、誰に〈収納庫〉を使わせるかであった。

スキルオーブは使用者個人へ固定されるため、一度使用すれば他者へ移せない。そのため適任者選定は極めて重要な問題だった。

橘は、既に誰かが使用済みだと思っていた。しかし実際には、Dパワーズへの寄託契約という形で保留されていると知り、驚きを隠せなかった。

寄託契約は形式上のものだと思われていたが、Dパワーズ側は実際に契約を成立させていたのである。

宇宙開発への応用可能性

橘は、〈収納庫〉の真価は宇宙開発分野にあると考えていた。

宇宙輸送では重量と体積が絶対的制約となる。もし〈収納庫〉が実用レベルなら、月面基地や火星基地すら丸ごと輸送できる可能性が生まれるからである。

ISSへの補給、大規模宇宙ステーション建設、さらには軍事転用まで視野に入る規模の技術革新であり、NASAやESA規模の予算で見れば、四百五十億円程度は問題にならない金額だった。

斎賀は、低軌道へ大量の質量兵器を配置することすら可能になる危険性を指摘した。しかし橘は、それを含めても価値は計り知れないと判断していた。

性能未確認への懸念

ただし現時点では、〈収納庫〉の容量や詳細性能は不明だった。

寄託契約によっていずれ使用者は現れるはずだったが、その人物が能力を完全公開する保証はない。探索者の多くは切り札を隠したがり、WDA登録情報にも多数の欠落が存在すると考えられていた。

そのため、まずは実際の性能確認が最優先課題だと認識されていた。

斎賀への一任

最後に橘は、この案件については真壁常務ら上層部へ過度に介入させず、基本的には斎賀へ一任すると告げた。

それはJDA内部利用であれ外部売却であれ、使用者選定まで含めて斎賀が責任を負うという意味だった。

橘は獰猛な笑みを浮かべながら去って行ったが、斎賀は、結局厄介事をすべて押し付けられただけだと内心で毒づいていた。

それでも彼は、「分かりました」と答えるしかなかった。

二〇一九年一月十二日(土)

ブートキャンプ当日の朝

二〇一九年一月十二日、第一回ダンジョンブートキャンプ当日の朝、芳村がダイニングへ下りると、三好が朝食の準備を進めていた。

外は雨模様だったが、アルスルズたちはどうせ活動場所がダンジョン内部であるため問題ないと話されていた。

三好は、ブートキャンプ開始前に十層へ向かいたいと切り出した。理由は、護衛や貸し出しで不足し始めていたアルスルズを追加召喚するためだった。

アルスルズ追加召喚計画

現在アルスルズは、斎藤涼子やキャシーの補助、事務所警備、芳村と三好自身の護衛に割り振られており、余裕がなくなっていた。

過去の狙撃事件もあり、護衛個体は必須と判断されていた。しかし召喚数を増やせば、一頭ごとの能力低下が発生する可能性も懸念されていた。

三好は、Dファクター濃度によって召喚能力も変化しているのではないかと推測していた。そのため、以前と同じ十層環境で召喚を行いたいと考えていたのである。

三好のINT極振り

出発前、芳村は三好の余剰SPを用いてステータス再調整を行った。

三好は、ロマンがあるという理由でINT極振りを強く希望した。芳村は呆れながらも了承し、ほぼ全てのSPをINTへ投入した結果、三好のINTは80へ到達した。

補正込みMPも二百を超える水準となり、三好は満足そうだった。

ブートキャンプ準備

代々木ダンジョンへ到着した芳村たちは、事前リハーサル通りに準備を進めていた。

芳村は〈メイキング〉によって、キャシーを経由した孫パーティメンバーまでステータス調整可能であることを確認済みだった。そのため、一度キャシーとパーティを組めば、多人数管理も容易になっていた。

一方、細かなラウンド調整は廃止されていた。芳村自身が常時張り付く必要を避けるためだった。

サイモンたちの期待

エントランスでは、サイモンがキャシーの異常成長について語っていた。

キャシーは既にメイソンとのアームレスリングで圧勝しており、DAD側もブートキャンプ効果を強く実感していた。サイモンは、自分たちも責任を持って強化してほしいと半ば本気で訴えていた。

さらに、DADが四人編成を採用している理由についても説明していた。空軍基地由来の組織であり、狭いダンジョン環境では四人+支援チーム構成が合理的だったのである。

ブートキャンプ開始

ブートキャンプルームへ入ると、キャシーは恒例となったじゃんけん勝負を芳村へ挑んだ。しかし今回も敗北し、悔しそうにしていた。

参加者たちはそれぞれ強化希望を伝えていた。

サイモンはSTRとAGI、ジョシュアはAGIとDEX、メイソンはSTRとVIT、ナタリーはINTとAGIを求めていた。

その背景には、二十九層ボス「デスマンティス」の存在があった。

デスマンティスの脅威

デスマンティスは超高速で動く巨大カマキリ型モンスターだった。

メイソンは左腕を半ば切断される重傷を負っており、高ランクポーションで辛うじて接合されていた。DAD側が〈物理耐性〉を重視していた理由もそこにあった。

高速型モンスターへの対抗には、AGIや耐久力の強化が不可欠だと認識されていたのである。

六条小麦の参加

最後に参加したのは、鉱物専門家の六条小麦だった。

彼女は英国宝石学協会特別会員であり、米国宝石学会資格も持つ本格的な鉱物専門家だった。しかしダンジョン経験はほぼ皆無で、実質初心者同然だった。

芳村と三好は、その事実に愕然とし、急遽別室で対応協議を始めた。

鉱物決定理論

芳村は、六条小麦こそ〈マイニング〉の適任者ではないかと考えていた。

その背景には、「最初に鉱物をドロップさせた人物の認識によって、その階層の鉱物資源が決定される」という仮説が存在していた。

横浜で産出した研磨済みダイヤモンドや、二十層のバナジウムインゴットがその根拠だった。

一般探索者では鉄など凡庸な鉱物しか出ない可能性が高い。しかし六条小麦ほどの専門家なら、希少鉱物を引き出せるかもしれなかった。

六条小麦の個別訓練

芳村は、六条小麦を通常ブートキャンプから外し、個別育成へ切り替えた。

人気のない一層奥地へ移動し、ベンゼトスプラッシュによるスライム狩りを開始させた。同行したドゥルトウィンは周囲警戒を担当していた。

六条小麦はスライムコアを見るなり、鉱物学的分析を始めた。長石系鉱物との類似やラメラ構造について熱弁し、芳村を圧倒していた。

彼女が本気で鉱物を愛していることは明白だった。

シャドウピット訓練

芳村は、スライム撃破後にドゥルトウィンのシャドウピットを利用し、経験値効率を高めていた。

六条小麦自身は何が起こったか理解できていなかったが、極めて高効率で討伐を続けていた。

芳村は、このペースなら四日程度で必要討伐数へ到達できると試算し、彼女の適性へ驚いていた。

探索者育成への本心

途中で戻った三好は、芳村へ、なぜそこまで探索者育成へ真剣になるのか問い掛けた。

芳村は、本来はブラック企業から逃げ出し、適当にダンジョンと関わりながら生きる程度のつもりだったと語った。

しかし現実には、碑文、Dファクター、国家機密、博士の存在など巨大問題へ巻き込まれ続けていた。

その全てへ決着を付けるには、結局ダンジョン攻略を進めるしかないのではないかと、自分でも整理できていない感情を吐露していた。

三代絵里との再会

訓練終了後、芳村たちは以前ハウンドオブヘカテ事件で関わった洋弓使い・三代絵里と再会した。

彼女はヒールポーション代返済として二百万円を差し出した。しかし芳村は、それを受け取れば密売扱いになる危険があるとして拒否した。

代わりに、Dパワーズ契約探索者にならないかと提案した。

三代絵里は驚きながらも、その申し出を受け入れ、Dパワーズ契約探索者第一号となった。

スペシャルドリンク地獄

ブートキャンプ最後には、恒例の「スペシャルドリンク」タイムが行われた。

実態はワサビ系刺激臭を持つ「メチャ苦茶」であり、メイソンは鼻から噴き出し、六条小麦は即座に気絶した。

サイモンたちも涙目になりながら飲み干し、キャシーは満足げに終了宣言を行っていた。

驚異的な成長結果

その後、芳村と三好はステータス調整を実施した。

各人へ十二〜十三ポイント相当の成長を割り振った結果、サイモン、ジョシュア、メイソン、ナタリー全員が一年分に匹敵する成長を一日で達成していた。

DAD側は、このプログラムを全隊員へ受けさせるべきだと本気で語り始めていた。

料金問題とブートキャンプ成功

しかし、その流れで料金未設定問題が発覚した。

ナタリーは、これほどの効果を持つ訓練を安価提供すれば各国政府が争奪戦を始めると警告した。

最終的に、DAD向けは一回三万ドル、一般向けは三万円程度+抽選制という方向性でまとまりつつあった。

こうして第一回ダンジョンブートキャンプは成功裡に終了した。

鳴瀬との夕食

帰宅後、芳村たちは鳴瀬を交えて夕食を囲んでいた。

芳村は新玉葱料理やサバ料理を振る舞いながら、「ラストページ」の扱いについて相談していた。

結果として、その内容は公開見送りで一致した。公開すれば騒動になるだけでなく、捏造扱いされる危険も高かったためである。

六条小麦と〈マイニング〉

鳴瀬は、六条小麦が〈マイニング〉候補者となった経緯を説明した。

利益優先の探索者ではなく、純粋に鉱物へ執着する専門家へ使わせたいという意見が存在していたのである。

GIJからJDAへ相談が来ていたタイミングと、Dパワーズのブートキャンプ開催が重なったことで、六条小麦へ白羽の矢が立ったのだった。

探索者育成方針の共有

食事を続けながら、芳村たちは今後より積極的に探索者育成へ関わる方針を共有していた。

有望探索者を直接育成し、攻略へ送り出す。その方向性自体は、もはや避けられない流れになりつつあった。

三好は、それによって「世界最強の探索者軍団」を作るのも面白いのではないかと語っていた。

第一回ブートキャンプは、単なる訓練企画ではなく、Dパワーズが本格的に探索者育成へ乗り出す転機となっていた。

二〇一九年一月十三日(日)

アーチェリー撮影への参加

二〇一九年一月十三日、斎藤涼子は映画撮影のため、練馬区光が丘の弓道場を訪れていた。

現地ではアーチェリー大会が開催されており、監督は競技風景を利用して、神代役としての涼子の射を撮影しようとしていた。

しかし用意されていたのはベアボウであり、普段コンパウンドボウしか扱わない涼子は戸惑いを見せていた。それでも監督は深く気にせず、撮影はそのまま進行した。

競技選手との交流

涼子は近くにいた男性選手へ、コンパウンドボウとベアボウの違いを質問していた。

男性選手は緊張しながらも丁寧に説明し、リリース方法へ注意すれば問題ないと助言していた。涼子は気さくに記念撮影にも応じ、現場を自然に盛り上げていた。

監督は、彼女の人懐っこさと場の空気を和ませる能力へ感心していた。

初射の失敗と異常な適応力

昼休み後、涼子は七十メートル先の的へ向かって第一射を放った。

しかし感覚が掴めておらず、矢は的へ届かず地面へ突き刺さった。周囲から小さな笑いが漏れたものの、涼子自身は気にしていなかった。

第二射では修正を行い青エリアへ命中させ、第三射ではいきなり中心へ当てていた。

そこから先は異常だった。エンド後半になる頃には、ほぼ全ての矢が中央へ吸い込まれるように命中していたのである。

会場を支配した静寂

その後三十分間、涼子は無言で射を続けていた。

会場全体は次第に静まり返り、雑談は消え、全員が彼女の射を見守る状態となっていた。

最後の矢が中央へ命中した瞬間、観客席から大歓声が巻き起こった。周囲の選手たちは、彼女のスコアが七〇五ポイント相当であり、世界記録級であると騒然となっていた。

しかし涼子本人だけは、自分の射をそれほど特別だと思っていなかった。探索者ならあの程度は普通なのではないかと本気で考えていたのである。

キャシーの再出向

一方、代々木八幡事務所には早朝からキャシーが訪れていた。

ブートキャンプは終了したものの、一般募集開始まで期間が空くため、その間は再びDAD側へ出向する予定となっていた。

サイモンたちは五人編成の試験運用を始める予定であり、メイソンへ勝利したキャシーの評価は大きく上昇していた。

芳村は、強化後の実戦確認としても丁度良い機会だと考えていた。

〈水魔法〉オーブの贈与

芳村と三好は、餞別としてキャシーへ〈水魔法〉オーブを渡していた。

DADパーティ構成では補助系魔法が有効であり、キャシー自身も探索荷物軽減のため〈水魔法〉を望んでいたのである。

キャシーは入手経路を不思議がっていたが、芳村たちは曖昧に誤魔化していた。

「人間をやめる」儀式

しかし三好は、オーブ使用には「ルール」があると言い出した。

それは、「俺は人間をやめるぞ!」と叫びながら使用するという完全なジョジョネタだった。

キャシーは妙に乗り気で、ポーズ付きで台詞を叫びながらオーブを使用していた。さらに英語版台詞まで再現し、芳村は強い衝撃を受けていた。

使用後、キャシーは身体へ水が染み込むような感覚を覚えており、芳村は魔法スキルはイメージが重要だと助言していた。

ファントム衣装完成

キャシーが去った後、三好は以前から準備していた「ファントム様」用衣装が完成したと告げた。

オンライン通話越しに紹介された衣装は、『オペラ座の怪人』二十五周年公演版をベースにした黒いフォーマル衣装だった。

ショールラペル付き上着、ホワイトタイ、中折れ帽など、本格的な舞台衣装そのものだった。

三好は細部の色使いまで熱心に解説していた。

マント演出構想

さらに三好は、大型黒マントも用意していた。

これは〈保管庫〉を利用した退出演出用であり、マントに包まれた瞬間、芳村だけが消失し、現場にはマントだけが残るという派手な演出を想定していた。

芳村は完全に過剰演出だと呆れていたが、三好は本気で「ファントム様には重厚なマントが必要」と主張していた。

ただし防御性能は皆無であり、三好自身も「紙ですね」と断言していた。

〈報いの剣〉との組み合わせ

芳村は、衣装へ合わせる小道具として〈報いの剣〉を取り出した。

三好は、そのシミター風形状が意外に似合うと評価し、マントの陰から〈保管庫〉経由で抜刀する演出まで考え始めていた。

一方で芳村は剣術経験皆無であり、自分やマントを斬りそうだと不安を漏らしていた。

ファントム・デビュー計画

最終的に三好は、「ファントム様には笑撃的なデビューが必要」と語り始めた。

探検隊が危機へ陥った場面で颯爽と登場させたいなど、完全に劇場型演出構想へ暴走していた。

芳村は必死に止めようとしていたが、三好は完全に楽しみ始めており、芳村は今後押し付けられる役割へ本気で危機感を抱いていた。

ニューヨーク大規模オフ計画

その頃、ニューヨーク州キングストン近郊では、ディーン=マクナマラが探索者仲間ポールから連絡を受けていた。

内容は、ニューヨークでDカード検証を行う大規模オフ会計画だった。

さらにポールは、「ザ・ワイズマン」こと三好梓から直接メールが届いたと興奮気味に語っていた。

Dパワーズの支援提案

Dパワーズ側は、このイベントへ強い興味を示していた。

人数次第ではジャビッツセンターを貸し切れると提案し、さらに発売前のステータス測定デバイスまで貸し出したいと申し出ていた。

実験内容は、パーティ状態やゲート通過前後など、様々な条件下でのステータス変化観測だった。

匿名タグ管理まで考慮された本格的な実験計画に、ディーンたちは驚いていた。

破格の宿泊支援

さらにDパワーズは、参加者の宿泊費負担まで提案していた。

交通費こそ自己負担だったが、ニューヨークの高額ホテル代をDパワーズ側が負担するという条件は破格だった。

ディーンたちは、これは単なるビジネスではなく、ダンジョン研究支援を通じたブランディング活動ではないかと分析していた。

また、DADが代々木で受けている恩返し的意味合いもあると考えられていた。

実験準備開始

通話を終えたディーンは、夕焼けと墓地を眺めながら、世界初となる大規模Dカード検証イベントについて考えていた。

ジャビッツセンター級の会場が利用可能になれば、千人規模での検証も可能になる。

ステータス変化、パーティ効果、探索者間相互作用など、未知の研究領域が一気に開かれようとしていた。

二〇一九年一月十四日(月)

第十章 横浜契約と斎藤涼子の波紋

横浜ダンジョン契約完了

二〇一九年一月十四日、鳴瀬は横浜ダンジョン関連の契約書類を持って代々木八幡の事務所を訪れた。

三好が署名と押印を行ったことで、横浜ダンジョン一階の売買契約と、現在一層と呼ばれている地下部分の賃貸借契約が正式に成立した。

地下部分の契約は前例がほとんどなく、JDA法務部門が徹夜で対応するほど複雑だった。しかし、その作業は将来発見される可能性があるセーフエリア所有権問題への法的準備にもつながったため、JDA側にとっても意義あるものとなっていた。

『津々庵』計画

契約完了後、三好は横浜ダンジョンを「ダンジョン研究の開発拠点」として利用すると宣言した。

施設名は『津々庵』であり、「興味津々」の「津々」から取られていた。芳村は最初、松下幸之助の「真々庵」を連想して吹き出していた。

三好は、次々と新しい発見が湧き出る場所にしたいと本気で語った。鳴瀬は、その構想によってJDA側の業務がさらに増えそうだと不安を抱いていた。

横浜一層の真実

芳村はその後、横浜ダンジョン一層に関する重大な秘密を鳴瀬へ打ち明けた。

現在「一層」と呼ばれている場所は、実際にはダンジョン構造上、二十層より下層扱いになっている可能性が高かった。芳村は、横浜ダンジョンの階段一段ごとが独立した階層として扱われているのではないかという仮説を説明した。

その裏付けとして、〈マイニング〉による鉱石ドロップが既に発生していた。鳴瀬は、以前テンコーチャンネルで聞いた荒唐無稽な説が真実だったことに強い衝撃を受けていた。

鉱石選択仮説の共有

続いて芳村は、〈マイニング〉による鉱石選択仮説を説明した。

各フロアで産出される鉱物は最初から固定されているのではなく、最初にドロップを発生させた人物の認識や知識によって決まる可能性が高かった。

無計画にドロップさせれば、最も身近な金属である鉄ばかりが出現する危険すらあった。

そのため芳村は、鉱物専門家である六条小麦へ〈マイニング〉を使用させるべきだと考えていた。

六条小麦育成計画

鳴瀬は、スポーツ経験すら乏しい一般女性を二十層以降へ送り込むなど不可能ではないかと驚いた。

しかし芳村は、新方式育成と〈闇魔法(W)〉を組み合わせれば、一ヶ月以内に目処を付けられると説明した。六条小麦本人の意欲も極めて高く、実際の成長速度も想定以上だった。

ただし、アルスルズ二頭による同時支援にはMP面の不安があり、継続運用には課題が残っていた。

各国による鉱石争奪懸念

芳村は、〈マイニング〉情報が世界へ広まった場合、各国が他国のパブリックダンジョンで事前検証を行い、自国ダンジョン本番へ挑む流れになると警告した。

代々木は〈マイニング〉ドロップ層と検証階層が近く、世界的にも特殊な環境だった。そのため規制を行うなら今しかないと訴えた。

鳴瀬も重要性は理解したが、現状では証拠が少なく、外圧に耐えられるか不安を抱いていた。

ダイヤモンド問題

芳村は、横浜一層関連の本当の相談内容を明かした。

横浜一層でドロップする鉱物は、原石ではなくカット済み高品質ダイヤモンドだった。芳村たちは当時そこを普通の一層だと思い込み、ダイヤの話題を考えながら探索していたため、その思考内容がドロップへ反映された可能性が高かった。

鳴瀬は、ダイヤモンドカルテルやデビアスとの衝突可能性まで考え、一気に頭を抱えることになった。

証拠隠蔽方針

問題は、Dパワーズが横浜一層を占有契約した直後にダイヤドロップが発覚した点だった。

この事実が表に出れば、ダイヤが出ると知っていて独占契約したと疑われる危険が高かった。

しかし三好は、しばらくドロップさせなければ問題ないと平然と言い切った。将来的には、借りた場所から偶然出てきた幸運な発見という形へ持ち込むつもりだった。

鳴瀬も最終的には苦笑しながら、その方針へ乗ることを了承した。

ダンジョンダイヤ構想

芳村は、ダンジョンダイヤが天然ダイヤとも人工ダイヤとも異なる、新しいカテゴリーになる可能性を語った。

デビアスが前年発表した人工ダイヤブランド「ライトボックス」の例を挙げながら、ダンジョン産ダイヤも独自ブランドとして成立する余地があると考えていた。

ただし、それは大量供給後に既存業界がどう反応するか次第でもあった。

アーチェリー連盟への衝撃

同じ日、代々木の岸記念体育会館では、アーチェリー連盟の強化委員が強化部長へ緊急報告を行っていた。

内容は、光が丘の撮影で斎藤涼子が七十メートルラウンド七〇五ポイント相当の記録を出したというものだった。

七十メートルラウンドは七十二射の合計点を競う競技であり、当時の男子世界記録ですら七〇〇ポイントだった。そのため、強化部長は最初まったく信じられずにいた。

斎藤涼子の非公認記録

記録を出した人物は、正式登録選手ではなく女優の斎藤涼子だった。

彼女は大会参加者ですらなく、映画撮影の一環として弓を射っただけだった。現場映像はYouTubeへ投稿されたが、その後芸能関係者の要請で削除されていた。

強化委員は、初使用のベアボウで最初の二射だけ外し、残り七十射を全て一〇ポイント圏内へ入れた事実を重視していた。

しかも事前のつけ矢も行っておらず、最初の二射が調整射撃だったと考えれば、満点すら視野に入る異常な結果だった。

強化指定を巡る葛藤

強化委員は、斎藤涼子を即座に強化指定選手へ加えるべきだと主張した。

しかし強化部長は、未登録の芸能人を特例で選考会へ加えれば、ごり押し選出と批判される危険を懸念した。

さらに、斎藤涼子が世界選手権最終選考会や本番に出場可能かどうかも不明であり、まずはプロダクションへ確認する必要があった。

ダンジョンが競技へ与える影響

強化部長は、斎藤涼子が探索者である点にも注目していた。

これまでダンジョンの影響は筋力や体力主体の競技へ現れると考えられていた。しかし、アーチェリーのように技術精度が重視される競技にも影響が及ぶなら、スポーツ界全体の前提が変わってしまう。

将来的に七二〇ポイント近い成績を出す探索者が複数現れれば、一般競技者が競技を続ける意欲を失う可能性すらあった。

強化部長は、アーチェリー競技の振興という本来の役目を守るためにも、ダンジョンがスポーツへ与える影響を見極めなければならないと考えていた。

二〇一九年一月十五日(火)

論文提出と代々木入り

二〇一九年一月十五日、斎藤涼子たちによるパイロットフィルム撮影当日、芳村と三好も代々木ダンジョンへ向かっていた。

三好は徹夜明けで疲労していたが、それはダンジョニング実験結果を論文化していたためだった。麦の芽の成長実験や切断株の変化をまとめ、ダンジョン特許申請用資料として完成させていたのである。

芳村は、この論文公開によって世界中の研究者たちがダンジョニング追試へ走り出すだろうと考えていた。

斎藤涼子の異常成長

そこへ、一層で最後のスライム狩りを終えた斎藤涼子が現れた。

彼女は六日間、毎日十時間以上スライムを討伐し続け、四〇七〇匹撃破、八〇・一四ポイント獲得という異常な成果を叩き出していた。その結果、探索者ランキングは三百六十八位まで急上昇していた。

しかし本人は、その訓練を「賽の河原」と表現し、延々とスライムを叩かせ続けたアイスレムを「鬼」と呼んで愚痴を漏らしていた。一方のアイスレムは、任務を真面目に遂行しただけなのに理不尽な扱いを受けたと落ち込んでいた。

SP割り振り問題

芳村は、獲得したSPの振り分け方に頭を悩ませていた。

弓使いとして考えればDEXとAGIへ特化するのが理想だった。しかし今回の目的は十層での生存率向上であり、物量戦となる十層ではDEX偏重だけでは対応できなかった。

そのため芳村は、全体能力を底上げする形でバランス良く調整を施した。

急激な身体変化

三好が「メチャ苦茶」を飲ませたタイミングで、芳村は斎藤涼子のステータス再調整を実施した。

急激な能力上昇によって、斎藤涼子は自分の身体感覚そのものが別物へ変化したことに驚いていた。芳村は、うっかり全力疾走などしないよう警告していた。

今回の増加量はクリスマス時よりも遥かに大きく、ステータス総量だけならサイモンチーム級へ到達していた。

撮影隊見守り準備

その後、芳村と三好は撮影隊を追うため先を急いだ。

既にアイスレムが斎藤涼子へ同行しているため、位置を見失う心配はなかった。今回の目的は、撮影隊と合流する前に六層で別件作業を済ませることだった。

また現在、六条小麦たちへドゥルトウィンを貸し出していたため、芳村たちの護衛戦力はカヴァス一頭のみとなっており、二人での行動が必須になっていた。

ラーテル隊の監視開始

一方その頃、二層出口付近では軍人風装備をまとった集団が待機していた。

中心人物は「ラーテル」の異名で呼ばれる傭兵であり、イラク内戦やリビア内戦で名を馳せた歴戦の男だった。

彼らは「Dパワーズへ張り付け」という依頼を受け、代々木ダンジョン内部で監視行動を開始していた。

ファシーラは、中国やロシアが〈異界言語理解〉関連でDパワーズへ接触し失敗したという噂まで把握しており、日本側の探索者や治安組織を軽視できないと分析していた。

カマネレオン探索開始

六層へ到達した芳村と三好は、「Bittacus Chameleon」、通称カマネレオンの探索を開始した。

このモンスターは高い擬態能力を持ち、発見が極めて困難だった。二人の目的は、このモンスターが落とす〈声真似〉オーブの確保だった。

ファントム用変装計画において、最大の問題だった「声」を解決するためである。

〈声真似〉オーブの重要性

カマネレオンが有名になったのは、マダガスカルのダンジョンで〈impersonate〉オーブを落としたためだった。

このオーブは声色を自在に変化させる能力であり、探索用途ではほとんど役に立たない。しかしファントム演出には極めて重要だった。

芳村は、現実には完全なボイスチェンジャーなど存在しないため、このオーブは理想的だと考えていた。

紫外線作戦

探索は難航したが、三好は秘密兵器として携帯型強力紫外線照射装置を取り出した。

実在する一部カメレオンが紫外線下で骨格を蛍光発光させることから、同じ性質を持つ可能性へ賭けたのである。

紫外線を森林へ照射した瞬間、樹上各所へ青白い光点が無数に浮かび上がった。その光景は、まるで森に星空が現れたかのようだった。

カマネレオンの断末魔

芳村がウォーターランスを撃ち込むと、命中したカマネレオンは擬態を解除し、人間そっくりの悲鳴を上げ始めた。

やめてくれ、酷い、などと叫びながら黒い光へ還元されていく様子は完全にホラーそのものだった。

芳村と三好は、夜中にこんな声を背後から聞かされたら心臓麻痺を起こすと本気で恐怖していた。

超レアオーブ出現

七匹ほど倒した時点で〈メイキング〉が発動した。

〈声真似〉だけでなく、〈タンショット〉、〈カモフラージュ〉、さらに三十一億分の一という超低確率オーブ〈インビジブル〉まで出現した。

三好は透明化能力へ興奮しつつも、服まで透明化しないなら裸で歩くことになると真顔で問題点を指摘していた。

〈声真似〉習得

芳村は予定通り〈声真似〉を取得し、その場で使用を試した。

すると単なるボイスチェンジではなく、「既存人物の声を真似る」形式であることが判明した。三好の声を再現した際、録音音声そのもののような精度となっていた。

ただし、ファントム用として使うには、元になる低音ボイスが必要という問題も浮上していた。

監視部隊側の混乱

その頃、ラーテル配下の監視チームは、「人間をやめるぞ!」という叫び声や人間の断末魔のような音声を傍受して混乱していた。

しかし〈生命探知〉担当のアランは、その場にDパワーズ二人以外の生命反応が存在しないと断言していた。

結果として彼らには、「誰もいない森から聞こえる断末魔」という異様な現象だけが残されていた。

斎藤涼子の異常な戦闘能力

八層へ到達した斎藤涼子たちは撮影を継続していた。

テンコーは、八層という危険域にもかかわらず、涼子がほとんど緊張していないことに違和感を抱いていた。

その最中、涼子は突然反応し、二本の矢を瞬時に放った。四十メートル先にいたフォレストウルフの番へ放たれた矢は、それぞれ正確に喉を貫き、二体をほぼ同時に絶命させた。

テンコーは、そんな芸当をできる人間を知らないと衝撃を受けていた。

アルテミス誕生

追いついた芳村と三好は、八層入口から密かにその様子を見守っていた。

三好は、二本同時射撃を行う涼子の姿を映画のエルフのようだと評し、ネット上では彼女が「アルテミス」と呼ばれていると説明した。

光が丘でのアーチェリー記録が拡散され、ダンジョンでモンスターを射抜く女神として認識され始めていたのである。

しかし実態は、ひたすらスライムを叩き続けて得た成果だったため、芳村はそのギャップに吹き出していた。

ターン・スピット到着

長時間の撮影を続けた一行は、予定より早く八層キャンプ地点「ターン・スピット」へ到着した。

豚串屋のジャックは、斎藤涼子へクイーバーとメモを差し出した。そこには三好の筆跡で「使いすぎ!」と書かれていた。

八層撮影で大量消費した矢を、見守り隊が先回りして補充していたのである。

ラーテル部隊との遭遇

休憩中、吉田は九層へ向かう異様な集団へ視線を向けた。

そこには、バトルドレス姿で統率された軍人風集団が存在していた。中央には、周囲を完全支配しているかのような威圧感を持つ男がいた。

城は、その男を「覇王みたいだ」と表現していた。

吉田は、彼らが普通の探索者ではなく、軍や特殊部隊に近い存在だと直感していた。

十層突入準備

芳村と三好は十層階段前へ到達すると、わざと目立つ場所で同化薬を飲み、そのまま下層へ進んだ。

後続監視者たちへ、「自分たちは普通に十層へ下りる」という印象を与えるためだった。

ラーテル部隊もそれを確認し、同化薬なしでの追跡を決定した。

吉田たちの十層突入

吉田たちも最終的に十層追跡を決断した。

テンコーは同化薬を配布し、戦闘へ関与しなければアンデッドから狙われにくいと説明した。

また、ゾンビよりもスケルトンの方が弓使いには厄介であり、眼窩を射抜いて頭部を破壊しなければならないと涼子へ説明していた。

十層の異変

十層へ侵入したラーテル部隊は、ゾンビやスケルトンを近接戦闘で処理しながら進軍した。

しかし、その戦闘行為自体が周囲のアンデッドを刺激し、さらに大量のアンデッドを呼び寄せる結果となっていた。

一方、吉田たちも丘陵地帯に広がる無数の墓とアンデッドを目撃し、異様な恐怖を感じていた。

ラーテル部隊の危機

アンデッドの数は想定を超え、ラーテル部隊も徐々に追い詰められていった。

ラーテルは、丘の上にいる吉田たちを突破口として利用し、その混乱に紛れて突破する方針を決定した。

さらに狙撃手シュートへ発砲支援を命じ、アンデッドの一部を探検隊側へ誘導し始めた。

テンコーとファシーラの交戦

テンコーは、吉田へ掴みかかった傭兵の腕を止めた。

その直後、ファシーラが死角からナイフによる奇襲を仕掛けたが、テンコーはそれを回避した。

さらに暗器による追撃まで行われたが、何者かによって弾き飛ばされ阻止された。

ファントムの出現

その瞬間、墓石の上へ突如としてマント姿の男が現れた。

ホワイトタイの礼装と仮面を身に着けたその人物は、まるで舞台俳優のような芝居がかった動作で現れ、周囲の全員を呆然とさせた。

芳村は内心では冷や汗をかきながらも、即興で“荒野に呼ばわるもの”を名乗った。

アンデッド殲滅

涼子がゾンビへ襲われかけた瞬間、ファントムは青白いリング状魔法を展開した。

その魔法は周囲のアンデッドを瞬時に切り裂き、さらに広範囲へ拡散して大量のアンデッドを一掃した。

芳村は、その魔法へ〈シリウス・ノヴァ〉と名付けて発動していた。

ラーテルやアランは、その威力が世界ランカー級すら超えていると理解し、完全に警戒態勢へ入っていた。

ファントムの消失

ファントムは「道は開かれた」とだけ告げ、九層への退路を示した。

その後、フランス語で別れを告げると、マントを翻した瞬間に姿を消した。

アランは〈生命探知〉へ一切反応が残っていないことを確認し、世界ランキング一位の匿名探索者“ファントム”ではないかと推測していた。

涼子の確信

撤退後、斎藤涼子はファントムが芳村であることへほぼ確信を抱いていた。

帽子へ手を当てた際、小指の指輪が芳村の物と同じだったからである。

しかし彼女は、それを口に出さず、心の中だけで「当たり」と呟いていた。

正体隠し後の反省会

シャドウピット経由で戻った芳村は、三好に大笑いされていた。

三好はファントム演出を絶賛していたが、芳村本人は羞恥心でかなり疲弊していた。

また〈シリウス・ノヴァ〉は威力が高すぎ、ドロップ管理が難しくなるという欠点も判明していた。

〈闇魔法(W)〉取得成功

その後、芳村は大量討伐によって出現したオーブから〈生命探知〉を追加取得し、〈魔法耐性(1)〉も回収した。

さらにバーゲスト討伐を経て、芳村と三好は目的だった〈闇魔法(W)〉の取得へ成功した。

二人は、その成果を確認しながら夜の代々木ダンジョンを後にしていた。

二〇一九年一月十六日(水)

保存機能による快適な朝

二〇一九年一月十六日、芳村と三好は代々木ダンジョン十層のドリー内部で目を覚ました。

二人は交代でシャワーを浴び、サンドイッチとブラッドオレンジジュースで朝食を取っていた。食事は前年十一月に用意されたものだったが、〈保管庫〉によって作りたて同然の状態が維持されていた。

芳村は、時間経過を感じさせない保存機能の性能へ改めて感心していた。

三好の急成長

朝食後、芳村は〈メイキング〉で三好のステータスを確認した。

すると、わずか数日で十五ポイントも増加しており、三好は既に世界ランキング八百十四位へ到達していた。アンデッド狩りと新方式の効率が原因であり、その成長速度は芳村の予想を超えていた。

芳村は、高ランク匿名探索者が増える問題に不安を抱いたが、三好は「是非もなし」と笑い飛ばしていた。

INT極振りの継続

三好は、今回増えたポイントもほぼINTへ振るよう要求した。

芳村は、現実世界で能力を極端に偏らせる危険性を指摘したが、最終的にはAGIを三十へ整えた上で、残りをINTへ投入した。

その結果、三好のINTは九十へ到達した。三好は、ピーキーな構成へのこだわりを崩さず、芳村は呆れながらも調整を終えていた。

グラス召喚

強化後、三好は新たなヘルハウンド召喚を実行した。

しかし巨大な魔法陣から現れたのは、大型のヘルハウンドではなく、スキッパーキそっくりの小型犬だった。

芳村は呆然としたが、三好は以前から小型ヘルハウンドを望んでおり、その願望がダンジョンに反映されたと考えて大喜びしていた。

小型ヘルハウンドの実力

グラスは見た目こそ愛玩犬のようだったが、戦闘能力は本物だった。

一瞬でスケルトンへ飛び掛かり、その頭部を粉砕してみせたのである。ただし周囲への警戒は甘く、三好からは脇が甘いと指摘されていた。

それでもグラスは十分な戦闘力を示し、見た目と実力の落差で芳村を驚かせていた。

グレイサット召喚

三好は続けて二体目の召喚を行った。

現れたグレイサットも、グラスと瓜二つの小型犬型ヘルハウンドだった。三好は、三頭セットならグレイシックも小型化すべきだったと本気で悩み始めていた。

芳村は、三好だけが当然のようにマビノギオン知識を前提に話している状況へ、わずかな疎外感を覚えていた。

ポーター実戦試験

一方、横浜ダンジョン二層では、ファルコンインダストリーのポーター開発ユニットが武装試験を行っていた。

十二・七ミリ機関銃を搭載したポーターは、大型蜘蛛型モンスターを十数秒で撃破し、実戦性能を証明していた。

チーフのプリマス=コープマンは、その結果を確認した上で、次段階として二十ミリ装備型の試験実施を決定した。

二十ミリ武装への懸念

次に準備されたのは、M197改良型の二十ミリ懸架式バルカン砲だった。

昆虫型フレームとの相性や照準制御には問題があり、開発陣内でも扱いの難しさが議論されていた。それでも実戦環境での検証は不可欠であり、チームは最終調整を進めていた。

プリマスたちは、この試験成功後にポーターを代々木十八層へ持ち込み、世界中のトップ探索者たちへ披露する構想を持っていた。

異常リポップの発生

ボス再出現時刻を迎える直前、横浜二層の部屋中央に異常な光が発生した。

通常のボス出現とは異なる演出に、プリマスたちは警戒態勢へ移行した。光の中から現れたのは、複数の首を持つ細長い異形だった。

プリマスは即座に攻撃を命じ、二十ミリバルカン砲がその未知モンスターを粉砕した。

再生するクリーナー

一見すると敵は瞬殺されたように見えた。

しかしノーラは、その残骸が“クリーナー”に似ていることへ気づいた。さらに通常のモンスターと違い、死体は黒い光へ還元されなかった。

バラバラになった肉片は独立して蠢き、それぞれが新たなクリーナーへ変化した。プリマスは、攻撃によって敵が分裂増殖している事実を即座に理解した。

スライム大量召喚と撤退

さらに部屋全体へ魔法陣が浮かび上がり、多数のスライムが召喚された。

クリーナーは“ダンジョンの掃除屋”と呼ばれる存在であり、外部物資や異物処理のためにモンスター群を呼び寄せる能力を持っていた。

ポーターのAIは自動戦闘モードで射撃を始めたが、その攻撃がかえってクリーナーを増殖させていた。

プリマスは、火力兵器とこの敵の相性が最悪だと判断し、ポーターを放棄して撤退を命じた。四人は急いで出口へ脱出したが、残されたポーター群にはスライムと増殖したクリーナーが群がり続けていた。

十層映像の確認

その頃、吉田陽生探検隊は十層から帰還し、打ち上げもせず赤坂のスタジオへ直行していた。

吉田、城、テンコーの三人は、撮影データをPCへ移し、ラッシュ映像を確認した。そこには、番組化が確実と思えるほど強烈な内容が収められていた。

特に、十層で現れた仮面の男の映像は三人に大きな衝撃を与えた。

ファントム正体推測

仮面の男は、暗い映像ながらも日没直前の光で比較的鮮明に記録されていた。

テンコーは、あの規模の戦闘はシングルランカー級でも難しいのではないかと推測した。吉田は世界ランキング上位者の特徴と照合したが、体格や性別、戦闘スタイルが一致しない者が多かった。

最終的に、匿名一位探索者“ファントム”説が強まった。ただし、礼装と仮面があまりにも出来過ぎており、城は演出臭さも感じていた。

音声解析と武装集団への警戒

三人は、映像だけでなく声紋分析による身元特定も検討した。

科警研や民間解析会社への依頼も話題になったが、費用面から現実的ではなかった。そのため、画像検索や報道関係者への聞き込みを優先する方針となった。

また城は、映像に映っていた武装集団にも強い警戒心を抱いていた。彼らが国際的な特殊部隊や傭兵である可能性が高く、危険な相手へ踏み込んだのではないかと不安を感じていた。

映像秘匿とSNS捜索案

吉田は、この映像データを暗号化し、複数箇所へ分散バックアップするよう城へ指示した。

吉田自身も、半ば本気で報復やデータ奪取の危険を感じ始めていた。テンコーのチャンネルでの公開も、番組企画が正式決定するまでは見送る方針となった。

しかしテンコーは、仮面の男だけを切り抜き、軽いノリのミニコーナーとしてSNSへ流す案を提案した。

現代では誰もがスマホを持ち、探索者同士の接触も避けられないため、どこかで目撃されている可能性があると考えたのである。

出演交渉への野望

テンコーは、もし正体が分かれば番組出演交渉も可能になると指摘した。

その言葉は吉田の野心を大きく刺激した。ファントムの正体探しは、映像素材の保全だけでなく、番組企画そのものを左右する新たな目的へ変わり始めていた。

二〇一九年一月十七日(木)

DFAでの特許資料確認

二〇一九年一月十七日、ニューヨークの国際連合本部ビル内にあるDFAでは、主席研究員ネイサン=アーガイルのもとへPOから緊急・最重要扱いの特許資料が送付されていた。

その内容を読んだネイサンは、冗談のような話だと感じながらも、ただの与太話では済まされない何かを直感していた。

シルキーとの検討

助手のシルクリー=サブウェイは、ネイサンから渡された資料を確認した。

そこには、ダンジョン内部を構成する未知の存在“Dファクター”について記されていた。提出者たちは、それをダンジョン内のあらゆるオブジェクトを構成する可変的な基礎物質であると主張していた。

シルキーは、魔素のような概念かと推測したが、ネイサンはそれ以上に包括的な存在だと説明した。

Dファクター仮説

資料によれば、ダンジョンはDファクターを自在に構成変換することで、モンスターやアイテムなどを生成しているという。

常識外れの内容ではあったが、POが緊急扱いでDFAへ回した以上、一定の妥当性があるとネイサンは判断していた。

ダンジョニング理論

さらに資料では、“ダンジョニング”という概念が提示されていた。

それは現実世界の物質や生物をダンジョン管理下へ組み込む工程であり、理論上は人間ですらダンジョン化できる可能性を示唆していた。

シルキーは、死後にリポップする人間まで作れる可能性へ思い至り、大きな衝撃を受けていた。

農作物リポップ論文の衝撃

添付されていた論文には、“ダンジョン内作物のリポップ”や、“通常作物のダンジョン化”について記載されていた。

これによって、ダンジョニング理論は単なる空想ではなく、既に現実の現象として確認されている可能性が示された。

DFAへ資料が送られてきた理由も、この農業・食品分野への影響が原因だった。

ネイサンの熱狂

ネイサンは、この未知の可能性へ完全に魅了されていた。

若い頃にパンク文化へ傾倒し、既存秩序へ反発してきた彼にとって、Dファクター理論は人類史を書き換えかねない誘惑そのものだった。

彼は、それを“抗いがたい何か”として感じていた。

東京行き決定

ネイサンは即座に東京行きを決断した。

論文内に記載されていた農園を、自分の目で確認する必要があると考えたのである。

シルキーは業務上の問題を指摘したものの、ネイサンは最短で仕事を片付け、日本へ向かうつもりでいた。彼は、これは人類史に残る出来事だと確信していた。

音声解析の実施

一方、西新宿の分析施設では、デヴィッドが仮面の男の音声解析を依頼していた。

ソナグラフ分析の結果、持ち込まれた音声データのうち、三番目のデータと九五%の確率で同一人物と判定された。

三番の音声は、エバンス攻略時に記録されたサイモンのインタビュー音声だった。

音声からの人物推定

解析担当者は、声道構造の一致により、単なる声真似ではなく同一人物と考えられると説明した。

さらに声帯や声道の特徴から、対象人物の身体的特徴まで推定可能であると語った。

その結果、仮面の男は身長百八十〜百八十五センチ程度、均整の取れた体格を持ち、ヒスパニック系またはスペイン語圏に近い地域で育った可能性が高いと推定された。

スペイン訛りの分析

解析では、英語発音にスペイン訛り特有の特徴が確認されていた。

特にR音やS音の発音傾向が一致しており、解析担当者はそれを根拠として説明した。

一方、日本語部分はほぼネイティブレベルであり、訛りは確認できなかった。

デヴィッドの推論

解析結果とラーテルたちの証言を総合したデヴィッドは、仮面の男がサイモン本人である可能性を強く疑った。

そして、サイモンがDパワーズの人間と、日没直前の代々木十層で接触していたのではないかと推測した。

十八層でしか採取できない〈マイニング〉や、夜の十層を利用する探索者が少ない事実が、その仮説を補強していた。

横流し疑惑

デヴィッドは、ダンジョン内部では監視機器が使えない点にも着目していた。

通常、組織所属探索者は取得アイテムを提出する義務を負う。しかしDパワーズが行う異常な高額オークションは、その流通経路を逸脱しているように見えた。

そのため彼は、サイモンがDパワーズへアイテムを横流ししていると結論づけた。

デヴィッドの思惑

この情報を利用すれば、世界ランキング三位のサイモンへ大きな交渉材料を握れるとデヴィッドは考えていた。

特に〈超回復〉系アイテムを優先的に確保し、それ以外は自由を認める形なら、過度な反発を招かずに済むとも判断していた。

坂井からの緊急報告

その頃、市ヶ谷のJDA本部では、坂井典丈が斎賀へ横浜ダンジョンに関する緊急報告を持ち込んでいた。

報告書は、横浜ダンジョン二層を貸し切って試験を行っていたファルコンインダストリーから提出されたものだった。そこには、“マルチヘッデッドクリーナー”という変異モンスターの存在が記録されていた。

増殖能力の危険性

そのクリーナーは、破壊された肉片ごとに再生し、さらに四〜六時間ごとに分裂増殖を繰り返していた。

六時間周期で増殖し続ければ、三日後には四千倍以上へ膨れ上がる計算になる。

しかも各個体は八体のスライムを召喚可能であり、危険度は指数関数的に増大していくと予測された。

横浜ダンジョン構造の問題

横浜ダンジョンは既存ビルを利用した特殊構造であり、内部空間は狭かった。

そのためモンスターが空間限界を超えた場合、階段や出入口から地上へ溢れ出す可能性が高かった。

斎賀は、それが桜木町周辺へ流出する最悪の未来を想定していた。

対応策の検討

ファルコン側は、二十ミリ級兵器でも効果がなかったと報告していた。

斎賀は、既知の弱点である火を利用し、ナパームなど大規模火炎兵器で焼き払う案を考えた。しかし換気設備やエレベーターシャフト経由で上層へ火災被害が広がる危険もあった。

関係機関への協力要請

斎賀は、地下構造図面の回収、ファルコンとの連携、ダンジョン庁と自衛隊への正式協力要請を指示した。

必要なら、日本全体の危機だと訴えてでも動かすべきだと判断していた。

ファントム映像の拡散

代々木八幡の事務所では、三好がテンコーの最新動画を芳村へ見せていた。

そこには、十層で撮影された“ファントム”姿の芳村が映されており、SNSでは正体探しが始まっていた。

ファントム量産計画

芳村は身元特定を危惧していたが、三好は逆に“ファントム”を増やして埋もれさせれば良いと主張した。

ファントム風衣装を一般化し、コスプレ文化として広めれば、芳村が同じ格好をしていても言い逃れできるという理屈だった。

折原への支援目的

三好の本音は、衣装製作者である折原しーやんへ仕事を回すことだった。

彼女は趣味へ資金を注ぎ込みすぎて生活が困窮しており、三好はファントム衣装の商品化によって収入源を作ろうとしていた。

鳴瀬の緊急報告

そこへ鳴瀬が駆け込み、横浜ダンジョンで“スタンピード”級の危機が発生していると説明した。

マルチヘッデッドクリーナーは、肉片ごとに再生し、時間経過でも増殖を続ける危険存在だった。

津々庵への無過失責任問題

さらに問題だったのは、横浜ダンジョン一階が現在Dパワーズ所有である点だった。

もしモンスターが階段側から地上へ溢れれば、津々庵側からスタンピードが発生したと見なされ、Dパワーズが無過失責任を負わされる可能性が高かった。

三好による対策案

三好は、一階売却、生コン封鎖など複数案を提示したが、どれも決定打にはならなかった。

最終的に芳村と三好は、自分たちも横浜へ向かう必要があると判断した。三好はこれを“ファントム様案件”と呼び、妙な高揚感を見せていた。

横浜危機への焦燥

一方、JDA管理課では、就業時間を過ぎても職員たちが対応を続けていた。

斎賀は、サイモンチーム到着までの時間不足、自衛隊の即応限界、増殖型モンスターの危険性を冷静に計算し、現実の厳しさを痛感していた。

Dパワーズへの奇妙な期待

それでも斎賀は、もしDパワーズが横浜ダンジョン一階を取得していなければ、芳村たちは今回の件へ関与しなかっただろうと考えていた。

問題発生直前に彼らが一階を取得していたことを、斎賀は半ば本気で“天の配剤”だと感じていた。

芳村たちへの黙認

斎賀は、芳村たちが何か重大な秘密を抱えていると確信していた。

本来なら追及すべき状況だったが、今は制約なく自由に動いてもらう方が世界全体の利益になると判断していた。

そうして彼は、“それが世界のためだ”と冗談めかして締めくくっていた。

終章 エピローグ

後日譚
インディアナ州 ゲーリー

ゲーリーで発生した新ダンジョン

インディアナ州ゲーリーで、新たなダンジョン震が観測された。場所はマイケル・ジャクソンの生家近くに存在する、有名な廃墟メソジスト教会であった。

シカゴ大学とイリノイ工科大学の混成チームは、異変を検知すると即座に現地へ急行した。そこで彼らは、後に「神の思し召し」と呼ばれる現象を目撃することとなった。

施設型から地下型への変化

当初、その場所には施設利用型ダンジョンが生成されようとしていた。

しかし老朽化した教会建築はダンジョン震に耐えきれず崩壊した。その結果、Dファクターは施設利用型ダンジョンの構築を断念し、研究者たちの目の前で地下型ダンジョンへと構築方式を切り替えたのである。

研究者たちは、千載一遇の機会に興奮しながら、ドローンや各種観測機器を用いて生成過程の記録を開始した。

リード=ジョーンズの考察

現場にいたリード=ジョーンズは、地球物理学ではなく天体物理学からダンジョン研究へ転向した異色の研究者であった。

彼は、地中へ潜り込んでいく未知の現象を観測し、それが“ダンジョン針”の正体ではないかと推測した。

学生たちが送り込んだ多数のドローン映像では、まるで巨大なドリルのような何かが地中を掘り進む様子が確認されていた。

地下深部で現れた異形

やがて最深部に到達していたドローンの映像が乱れ始めた。

超音波センサーには、丸太のように太い紐状の生物が映し出されていた。リードはそれを蛇のような存在だと推測し、映画『インディ・ジョーンズ』の台詞を引用して冗談めかした反応を見せた。

その直後、地下へ投入されていたドローンは下層から順番に通信を失い、最終的に全機が沈黙した。

ダンジョンコア仮説

得られたデータから、リードは独自の仮説を立てた。

まずDファクターの塊が地中へ潜行し、一定深度へ達した段階で“コア”を形成する。そしてそのコアがDファクターを生成しながら最下層を作り出し、さらに上層へ向けて階層を構築していくという理論である。

彼は、地下で確認された蛇状存在こそが、そのコア形成に関わる“ボスモンスター”ではないかと考えていた。

DFA論文との関連

リードは、最近DFAが公開したDファクター論文にも触れた。

助手の女性研究者は専門外だったため内容を知らなかったが、リードはダンジョン研究が始まったばかりである以上、関連分野の論文へ広く目を通す必要があると助言した。

さらに彼は、コア形成直後なら地上と空間が繋がっているため、もしその瞬間にミサイル攻撃が可能なら、ダンジョンを完成前に破壊できる可能性すらあると推測した。

新たなダンジョンの誕生

研究者たちが得た観測データは、人類史上初となるダンジョン生成過程の直接観測記録となった。

その代償として、有名な廃墟教会は完全に瓦礫の山へ変わり果てた。

教会跡地に開いた新たなダンジョン入口は、まるで地獄へ通じる穴のような漆黒の空間となっていた。

誰が書いたかも分からぬ落書きが、その入口を“リンボへの門”と呼び、荒廃した街の景色と共に異様な光景を作り上げていた。

千代田区 大手町

新越ダンジョンによる三好将生への接触

千代田区大手町にある新越ダンジョン株式会社では、開発部長の三浦典義が上司へ引き抜き交渉の結果を報告していた。

対象は三好将生であり、彼はワイズマンこと三好梓の実兄であった。交渉自体は拒絶されたわけではなく、保留という形で返答を待つ状況になっていた。

ワイズマンを巡る企業間競争

〈鑑定〉公開以降、世界中のダンジョン関連企業は三好梓への接触を試みていた。

JDAが身元を秘匿していても、調査能力を持つ企業にとって素性の特定は難しくなかった。しかし新越ダンジョンは違法手段を取る企業ではなく、あくまで合法的な協力関係の構築を目指していた。

その中で、身近な人物を介した接触こそ有効だと上司は考えていた。金や地位に執着しない相手でも、親しい人物から頼まれれば断りづらいという、日本人的な心理を利用しようとしていたのである。

北谷マテリアルへの接触計画

上司は次の接触先として、三好梓の元勤務先である北谷マテリアルに注目していた。

表向きには円満退社だったため、旧職場経由での接触はまだ有効だと判断されていた。さらに、新越内部で扱いに困っている“謎の液体”の研究案件を利用し、北谷側を追い込めば、結果的に三好梓へ協力を求めざるを得なくなると考えていた。

その液体は出所すら不明であり、同定や物性研究という地味な基礎研究分野だったため、社内でも積極的に取り組みたがる研究員は少なかった。

企業戦争としてのダンジョン開発競争

上司の男は、北谷マテリアルが三好梓を失ったことを重大な失策だと考えていた。

もし彼女を保持していれば、ダンジョン関連業界で圧倒的優位に立てたはずであり、逆に言えば彼女を取り込んだ企業が世界市場を席巻する可能性すらあると見ていた。

そのため、表向きは穏やかに見えるダンジョン産業の裏側では、企業間による熾烈な情報戦と人材獲得競争が繰り広げられていた。

男は調査資料を鍵付きの引き出しへしまい込むと、次の予定へ向かうため立ち上がった。窓の外では、冬の日差しを受けたメトロポリタンホテルのガラスが静かに輝いていた。

代々木ダンジョン 十八層

十八層への緊急命令

代々木ダンジョン十八層では、早朝四時、サイモンが疲弊した連絡員によって叩き起こされていた。

連絡員は夜通しで十八層まで下りてきたらしく、姿勢を崩さないままサイモンへ命令データを差し出した。そこには「世界の危機」とも言うべき事態への対応命令が記されていた。

横浜ダンジョン危機の共有

寝ぼけ眼のまま復号キーを用いて内容を確認したサイモンは、その情報が単なる冗談ではなく、アメリカ大統領レベルの正式案件であることを理解した。

資料には、横浜ダンジョンで発生した増殖型クリーナーの危険性が詳細に記されており、もはや軍が直接介入するべき規模の危機だと感じていた。

しかし、自国軍が国外で動くには政治的手続きが多すぎ、即応できない現実に苛立ちを覚えていた。

DADへの出動命令

サイモンは、今回自分たちへ命令が下された理由について、チーム内にナタリーが存在するためだと理解していた。

だが、それだけで解決できる問題ではないとも感じていた。

連絡員によれば、必要装備については在日米軍経由ではなく、ファルコンインダストリーを介して供給される手筈になっていた。軍の直接介入という形を避けるための措置であり、政治的配慮に満ちた対応であった。

サイモンは、その裏で在日米軍司令官マーティネス中将が頭を抱えている姿を想像しながら、迫りつつある危機への対応を始めようとしていた。

横浜ダンジョンビルの成立経緯

横浜・ダンジョンビル「ヌーヴォ・マーレ」は、横浜桜木町駅前に建設された複合型商業ビルであった。

建設途中、地下部分にダンジョンが発生したことで状況は一変した。上層階はまだ骨組みしか完成していなかった一方、地下部分は構造自体が完成していたため、その全域がダンジョン化したのである。

設計通りに形成された地下ダンジョン

ダンジョン化した地下空間は、内装工事前だったにもかかわらず、なぜか設計図通りに近い形状で形成されていた。

この現象は多くの憶測を呼んだものの、具体的な原因は解明されていなかった。

商業施設とダンジョンの共存

当時はダンジョンに関する知見が乏しく、運営側はこれを一種の集客要素として利用した。

地下部分を物理的に隔離することで安全性を確保し、そのまま二階以上の建設を継続した結果、地上は通常の商業施設、地下はダンジョンという極めて特殊な建築物が誕生した。

その異様な構造から、施設は「ダンジョンビル」と呼ばれるようになった。

炎上した横浜市長の発言

ダンジョン化した部分には非破壊属性が付与されるため、建物自体の強度は極めて高くなっていた。

当時の横浜市長は、桜木町駅前に巨大な廃墟が残る事態を避けたい意図もあり、SNS上で「建物の基礎が丈夫になったと思えばいい」と発言した。

しかし、この軽率とも受け取れる表現は大きな批判を招き、炎上騒動へ発展した。

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