バッソマン 3巻レビュー
バッソマン まとめ
バッソマン 5巻レビュー
- 物語の概要
- 書籍情報
- あらすじ・内容
- 感想
- 考察・解説
- 登場キャラクター
- 展開まとめ
- プロローグ
- 第一話 君だけの飛び道具を選ぼう
- 第二話 遺失物搜索任務
- 第三話 クヴェスナの真相に迫る
- 第四話 モモとモングレルと大荷物
- 第五話 太陽から逃げる者たち
- 第六話 モングレル不在のレゴールにて
- 第七話 狩人の町ドライデン
- 第八話 ザヒア湖の手漕ぎボート
- 第九話 湖上の狩り、水面下の入魂
- 第十話 淡水魚の塩焼きとムニエル
- 第十一話 雑種犬の寝床
- 第十二話 狼からのアドバイス
- 第十三話 離れ小島の女神たち
- 第十四話 地上の泳がせ釣り
- 第十五話 水底より昇った月を撃て
- 第十六話 解体ショーのはじまり
- 第十七話 足ヒレのテスト
- 第十八話 ささやかな夜の宴
- 第十九話 月下の死神
- 第二十話 死神の定期哨戒
- 第二十一話 休息日の爺さんたち
- 第二十二話 不審な陽光
- 第二十三話 力任せの模擬戦
- 第二十四話 卑しい者の食肉
- 第二十五話 祝福の犬笛
- 特別書き下ろし番外編①モモとモングレルとモノづくり
- 特別書き下ろし番外編②新たな故郷で買い物デート
- バスタード・ソードマン シリーズ
- その他フィクション
物語の概要
■ 作品概要
本作は、圧倒的な実力を持ちながらも「平和にだらだら生きる」ことを理想とし、意図的に低ランクの冒険者に留まり続ける男の日常を描いた異世界ファンタジーシリーズの第4巻である。 物語の舞台は、ハルペリア王国の都市レゴール。主人公のモングレルは、かつて自身の不用意な行動で平穏を乱した反省から、現在は「そこそこの実力を持つ地味なギルドマン」として振る舞っている。第4巻では、レゴール伯爵ウィレムから直接の依頼が舞い込む。内容は、かつてモングレルが滅ぼした故郷であり、現在は「亡霊が出る」と噂されるシュトルーベ地方の調査であった。自らの過去と、現在の「怠惰な日常」を守るための立ち回りが交錯する物語が展開される。
■ 主要キャラクター
- モングレル: 本作の主人公。前世の知識と強力な身体強化の「ギフト」を持つ転生者だが、面倒事を避けるためにブロンズランクを維持している。中途半端な性能の「バスタードソード」を愛用し、趣味の料理や釣りに情熱を注ぐ、達観した中年ギルドマンである。
- ライナ: 女性パーティー「アルテミス」に所属する若手の弓使い。モングレルを師のように慕っており、彼から実戦的な技術や世渡りの知恵を学んでいる。本作でもモングレルの良き相棒として、共に森での活動や食事を楽しむ場面が多い。
- ウィレム(レゴール伯爵): レゴールを治める若き領主。誠実かつ有能な統治者であるが、甘い物や新しい発明品に目がないという一面を持つ。モングレルの隠された知恵と実力を見抜き、国家の安定のために彼を重用しようと画策する。
- ミレーヌ: ギルドの受付嬢。優秀な貢献度を叩き出しながら昇級を拒み続けるモングレルを怪しみつつも、彼の人柄を信頼している。厄介な依頼をモングレルに押し付ける、ギルド側の窓口役である。
■ 物語の特徴
本作の魅力は、王道の「成り上がり」を徹底して拒否する独自のスタンスにある。主人公が最強の力を持ちながら、それを誇示せず「いかにして目立たず快適に過ごすか」に全力を出す構成が、他の異世界無双ものとは一線を画している。 また、異世界生活の解像度が非常に高い点も特徴である。魔物の解体、独自の調理法、匿名の大発明家「ケイオス卿」として世界に及ぼす技術的・経済的影響など、生活感と文明の変遷が緻密に描写される。シリアスな過去を抱えつつも、それを表に出さず、酒場で仲間と馬鹿話をしながら過ごす大人の余裕を感じさせる読み味が、読者に心地よい安心感を与える。
書籍情報
バスタード・ソードマン 4
著者:ジェームズ・リッチマン 氏
イラスト:マツセダイチ 氏
出版社:KADOKAWA
発売日:2024年9月30日
ISBN:9784047381513
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あらすじ・内容
薄着の美女と水辺でバカンス!? そんなことよりヌシ釣りだ!
異世界にも暑い夏がやって来た! シュトルーベの里帰りから戻ってきたモングレルはライナから、”アルテミス”と一緒にザヒア湖へ旅行に行かないかと誘われる。なんでも日頃の慰安をかねて、大自然の中で存分に水鳥狩りを楽しみに行くのだという。湖なら本格的な釣りができると考えたモングレルも二つ返事で参加を決め、自作の釣り具一式を抱えてウキウキで”アルテミス”に同行する。もちろん狙うは湖に生息する(かもしれない)幻の巨大魚<ヌシ>! 一方、ライナはウルリカに唆され、この旅行でモングレルとの距離を縮めるためにアプローチ作戦を実行するのだが――!?
感想
第4巻は、依頼のついでに休暇を楽しむという、このシリーズらしい「ゆるさ」が全面に出た一冊であった 。護衛任務のはずがその描写は最小限で、大半がキャンプ飯とレジャーに費やされる展開には、思わず笑みがこぼれてしまう 。
まず圧倒されたのは、主人公モングレルが背負う山のような荷物である 。その中身がほとんどキャンプ用具と釣り道具という点に、彼の遊びに対する本気度がうかがえる 。今回の旅の目玉は、なんといっても湖での釣りだ 。なかでも、ゴブリンに釣り上げた獲物を横取りされた復讐として、そのゴブリンの肝臓を餌にして巨大魚を狙うという執念深いエピソードには驚かされた 。その結果、前世のサーモンに似た味の「ハイテイル」を釣り上げ、昆布締めやスープにして味わう場面では、異世界にいながら日本の味に浸るモングレルの深い満足感がこちらまで伝わってくるようであった 。また、仲間のゴリリアーナがこの旅を機に釣りの楽しさに目覚める様子も、微笑ましい一幕として印象に残っている 。
人間関係の描き方も非常に独特で心地よい。女性ばかりのパーティー「アルテミス」に男一人が混ざる構成ながら、過剰な色気や俗っぽさがまったくない 。これは、モングレルと彼女たちの間に、性別を超えた確かな信頼と「戦友」のような距離感が保たれているからだろう 。だからこそ、リーダーのシーナも彼を気兼ねなくパーティーへ勧誘できているのだと感じる 。その一方で、ライナが新たなスキルを習得し、目覚ましい成長を遂げたことは、今回の旅における最大の収穫といえる 。
しかし、物語の後半に進むにつれ、どこか「きな臭い」不穏な気配が漂い始める。ライナのシルバーランクへの昇格や、それに対するモングレルからの「お祝いの品」などは、日常の輝きが強いほど、後の波乱を予感させるフラグのように思えてならない 。さらには「月下の死神」の来訪や戦争の足音など、これまで守ってきた平穏な日常が、だんだんと危うい展開に飲み込まれていくのではないかという不安がよぎる 。
穏やかなひとときを描きながらも、忍び寄る影を感じさせる構成が実に見事であった。モングレルが愛するこの「だらだらとした日常」が、これからも続いていくことを願わずにはいられない。これからの展開に、ますます目が離せない一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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バッソマン 3巻レビュー
バッソマン まとめ
バッソマン 5巻レビュー
考察・解説
飛び道具と武器の選択
「バスタードソード・ソードマン」において、飛び道具や武器の選択は、ギルドマンたちの戦闘スタイル、実用性とコスト、そして個人のロマンが複雑に絡み合うテーマとして描かれている。
主なエピソードや武器の選択基準は以下の通りである。
若手ギルドマンたちの飛び道具談義
ギルドの酒場では、若手ギルドマンたちが各自のサブウェポンである飛び道具を持ち寄り、どれが一番優れているかを議論する場面がある。モングレルはそれぞれの武器に対し、現実的な評価を下した。
・手斧(フランク愛用):威力が最も高く、ゴブリンを一撃で倒せるほか、大物にも通用する可能性がある強力な武器である。しかし、重くて持ち運びが面倒なうえ、射程が短いため木の上にいる鳥などを狙えないという欠点がある。
・ダート(ミセリナ愛用):軽くて安価であり、鳥などの小型魔物や魔法使いの護身用に向いている。大型魔物には決定打になりにくいため、毒を仕込むなどの工夫が必要だとモングレルは助言している。
・投げナイフ(ウォーレン愛用):コンパクトで汎用性が高いものの、投擲武器としては威力が低く、刺さっても魔物に逃げられる恐れがあるため、実際には投げる機会があまりないという難点がある。
投擲武器に頼りすぎるリスク
・若手パーティー「最果ての日差し」は、空を飛ぶガミガミストラスの群れを投擲武器の一斉掃射で見事に討伐した。
・しかし、武器の紛失や破損により収支はトントンに終わってしまった。
・さらに、ベテランのバルガーからは、投げ物で戦う癖をつけると、意図せず使い勝手の悪い投擲系のスキル(槍投げなど)を習得してしまう危険があると忠告を受けた。
・この世界では戦闘経験の傾向によって習得スキルが決まるため、安易に戦法を変えるべきではないというシビアな法則が存在している。
モングレルの特異な武器選択とロマン
モングレル自身はバスタードソード一本で戦うスタイルを基本としているが、サブウェポンに関しては実用性よりも見た目のロマンで選んで失敗する傾向がある。
・チャクラム:若手たちに飛び道具を問われた際、鞄の奥から旧ハルペリア軍採用の薄いリング型刃物「チャクラム」を取り出した。しかし、上手く飛ばず切断力もないため、実際には野外で燻製器の枝を結束するための道具としてしか使われていなかった。
・弓剣:アルテミスとの合同任務では、弓の端に刃物が付いた「弓剣」を新兵器として披露した。しかし、高価な矢を一本しか持参しておらず、実際にゴブリンを射ようとして外した挙句、接近戦で刃物部分を使って倒すという本末転倒な使い方をしている。
弓使い(アルテミス)の武器とスキルの選択
専門の遠距離職である「アルテミス」の面々は、自身の持つスキルに合わせて武器や矢を工夫している。
・ウルリカ(強射・弱点看破):威力の高い「強射」スキルを持つため、通常の鏃では負担がかかり壊れてしまうという欠点がある。それを逆手に取り、スラグと粘土で作った砕けやすい鏃を用いた散弾矢を使用し、水鳥の群れを効率よく狩る工夫を見せている。
・ライナ(照星・貫通射):手ブレを完全に抑える「照星」で精密射撃を得意としていたが、後に弾道系の攻撃スキル「貫通射」を習得した。これにより、巨大な魚型魔物ハイテイルの目を的確に穿ち、決定打を与えるアタッカーとしての成長を見せている。
まとめ
このように、飛び道具と武器の選択は単なる威力の比較に留まらず、携帯性やコスト、スキルの発現条件、そして個人の趣味趣向が反映された奥深い要素として描かれている。
遺失物捜索任務
「バスタードソード・ソードマン」における「遺失物捜索任務」のエピソードは、異世界ならではのシビアな価値観と、モングレルの前世の道徳心、そして依頼主の強烈な個性が交錯するコミカルな事件として描かれている。
その具体的な経緯と顛末は以下の通りである。
異世界における遺失物の厳しい現実
・前世の日本とは異なり、ハルペリアにおいて落とし物が持ち主の元に戻ってくる確率はほぼゼロに等しいとされている。
・価値のある品は発見者に着服されるのが当たり前の風習であり、ギルドに報酬付きの捜索願いを出すこと自体が「ここに金目の物が落ちている」と情報をばらまく結果になりかねないという厳しい現実があった。
モングレルのスタンスと捜索の開始
・割に合わない遺失物捜索であるが、モングレルは前世の記憶から「落とし物は持ち主に戻ってほしい」という道徳心を持ち合わせていた。
・どこの誰ともわからないギルドマンに恩を売っておけば後々仕事がやりやすくなるという打算もあり、バロアの森に赴くついでに「特徴的な角製の柄を持つショートソード」の捜索を引き受けた。
不自然すぎる発見状況
・バロアの森の川沿いを探索していたモングレルは、目的のショートソードを発見した。
・しかしその状況は、「鞘ごと土に真っ直ぐぶっ刺さっている」という不自然極まりないものであった。
・ブービートラップなどの罠を警戒したモングレルは、剣を蹴り飛ばして引き抜くという荒業で無事に回収し、疑問を抱えたままギルドへ持ち帰った。
依頼主の正体と不気味な真相
・ギルドで受付嬢のエレナに剣を渡すと、ほどなくして依頼主が現れた。その正体は、重度の娼館通いで知られるゴールドランクパーティー『収穫の剣』の団長、ディックバルトであった。
・ディックバルトは愛用の剣が戻ってきたことに深く感謝したが、モングレルが「なぜあんな地面に突き刺さっていたのか」と疑問を抱いていると、彼は「大雑把に扱うことと雑に扱うことは別だった」「俺は愛するという事を履き違えていた」「これからはより一層この武器を慈しみ、愛でてやらねばならん」と、柄頭を撫でながら彼特有の卑猥で思わせぶりな発言を始めた。
まとめ
モングレルはそれ以上の邪推(ディックバルトが剣の柄を何に使っていたのかという想像)を全力で拒絶し、報酬だけを急いで受け取ってそそくさとギルドから逃げ帰るというオチがついた。
謎の魔物クヴェスナ
「バスタードソード・ソードマン」に登場する「クヴェスナ」は、季節や出現条件が不明なまま、バロアの森などに集団で突然現れる謎の魔物である。前世のサブカル知識が豊富な主人公モングレルにとっても元ネタが分からず、「謎系」の魔物として分類されている。その不気味な特徴と作中での扱いは以下の通りである。
骨だけで構成された異質な外見
・体色は薄灰色で、全体的に骨のような細長いパーツで構成されている。
・脚は十本以上あり、人間の肘のように折れ曲がった部分が地面に接し、虫のように歩行する。
・腕はなく、代わりにエビの尻尾の半欠片のようなエラ状の器官が胴体に何十個もついており、それがパタパタと動く。
・胴体は人間の肋骨のように見えるが、内臓を守る様子はなく、血も流れておらず呼吸もしていない。
・頭部は馬などの草食動物の頭蓋骨に近く、眼窩や脳味噌はなく、大口を開けた顎だけが存在する。
機械的な生態と正体への推測
・仲間が砕かれても怯みや怒りといった感情を見せず、ただ機械的に突進して顎で噛みついてくるだけである。
・モングレルが、動物や魔物と意思疎通できるギフトの力を試しても何の反応もなく、意思や自我の存在すら疑わしい。
・正体については、アンデッドやサングレールで作られたゴーレム、魔大陸から渡ってきた繁殖力の強い魔物など様々な推測がなされているが、決定的な根拠は見つかっていない。
ギルドマンから敬遠される討伐任務
・単体の戦闘力はゴブリン以下であり、アイアンランクのギルドマンでも容易に倒せるほど弱い。
・しかし、珍しい時には三十体ほどの集団で湧き、街道に出ると人が死ぬこともあるため、念のためギルドから討伐依頼が出される。
・人を食うわけでも作物を荒らすわけでもなく、実質的な害はほとんどない。
・砕いた後の骨には地味な毒性があるため食用にならず、素材としての利用価値も皆無である。
・討伐証明部位は尻尾の先端部の骨であるが、倒すと似たような骨パーツが散らばるため、目当ての部位を探し出すのが非常に面倒である。
・報酬も一匹二十ジェリーと極めて安く設定されており、誰も好んで受けたがらない不人気な任務となっている。
まとめ
このように、クヴェスナは生態も目的も一切不明な不気味な存在である。ギルドマンにとっては割に合わない不人気な討伐任務であるが、モングレルは純粋な知的好奇心と調査目的から、時折この謎の魔物の討伐に赴いている。
ザヒア湖への遠征
「バスタードソード・ソードマン」における「ザヒア湖への遠征」は、女性陣パーティー「アルテミス」がドライデン方面への護衛任務のついでに計画した、狩猟と休息を兼ねた旅である。この遠征にはモングレルも同行し、ライナのギルドマンとしての大きな成長や、前世の知識を活かした豪華な野営料理などが描かれる重要なエピソードとなっている。
遠征における主な出来事は以下の通りである。
釣りに釣られたモングレルの同行
・ライナは二つ目のスキル(特に攻撃系スキル)がなかなか発現しないことに焦りを感じており、気分転換も兼ねてザヒア湖での水鳥狩りを計画していた。
・当初、遠出を面倒がっていたモングレルであったが、「湖で釣りができる」と聞いた途端に手のひらを返して同行を即決した。
・道中のドライデン行き荷馬車の護衛では、凶暴な虫型魔物「バイザーフジェール」の群れに襲撃されたが、ゴリリアーナの圧倒的な一撃と、シーナの三本同時の「光条射」によって瞬殺され、モングレルの出番がないまま「アルテミス」の実力を見せつける結果となった。
湖上での狩猟と釣りの試行錯誤
・ザヒア湖に到着した一行は、手漕ぎボートを借りて拠点に分かれた。シーナとナスターシャは小島へ、モングレルたちは岸辺に陣取った。
・狩猟組のライナやウルリカは、水鳥(リードダックなど)を次々と射落とし大猟となった。
・一方、モングレルは自作のルアー釣り(鯨の髭を用いた釣り竿)に挑戦するものの、無念の根掛かりでルアーをロストしてしまった。
・しかし、餌釣りに挑戦したライナが「ラストフィッシュ」という小魚を見事釣り上げ、釣果第一号となった。
巨大魚ハイテイルとの死闘と「貫通射」の覚醒
・大物を狙うモングレルは、討伐したゴブリンの巨大な肝臓を餌にし、特大のギャング針で湖の深場を狙うという「地上の泳がせ釣り」を敢行した。
・すると、釣り竿が限界まで撓るほどの強烈な引きが発生し、海や川を遡上する巨大な魚型魔物「ハイテイル」がヒットした。
・体力と魔力強化でギリギリの攻防を繰り広げるモングレルは、水面まで引き寄せたところでライナに弓での援護を指示した。
・ライナはスキル「照星」でエラを正確に射抜き、その直後、念願であった弾道系の高威力スキル「貫通射(ペネトレイト)」を習得した。
・逃げようと跳ねたハイテイルの目を新スキルで見事に貫き、百七十センチ級の巨大魔物を討伐するという大金星を挙げた。
新鮮な魚料理のフルコース
・討伐後、ハイテイルはナスターシャの水魔法で冷凍保存され、一部は管理棟の老人たちにおすそ分けされた。
・残った魚たちを使い、モングレルは豪華な野営飯を振る舞った。
・淡水魚のアベイトは三枚におろしてバターで焼いた「ムニエル」に、脂の乗ったハイテイルの身は温燻にして「スモークハイテイル」にし、さらに玉葱と酢・油で和えて「魚介サラダ(カルパッチョ風)」に調理した。
・また、ハイテイルのアラとヤツデコンブの出汁を使った「潮汁(アラ汁)」も大好評を得た。
・モングレル自身は、こっそりとスモークハイテイルを昆布締めにし、前世の味覚を懐かしみながら深い満足感に浸った。
夜の恋バナと帰還後の「月下の死神」遭遇
・夜の焚き火の際、女性陣の間ではライナのモングレルに対する淡い想いが話題になった。
・ウルリカのそそのかしにより、ライナは夜中にモングレルのテントに忍び込んで「添い寝」をする作戦を決行したが、翌朝モングレルに「暑い」という理由でラグマットで簀巻きにされ、色気のない結末に終わった。
・撤収してレゴールへ帰還した直後、一行は北門でハルペリアの精鋭馬上騎士「月下の死神」とすれ違った。
・その騎士が持っていた武器「グレートハルペ」を見たモングレルは、自分が大金を叩いて買ったグレートハルペの鎌の角度が実物と違うことに気づき、偽物(不良品)を買わされていた事実が発覚するというオチが付いた。
まとめ
ザヒア湖への遠征は、狩猟や釣りの成果だけでなく、ライナのスキル習得による成長や仲間たちとの交流、さらにはモングレルの前世の知識を活かした料理の数々など、充実した旅として描かれている。帰還後の思わぬ出来事も含め、登場人物たちの個性や関係性が色濃く反映されたエピソードである。
戦争の予兆と防衛準備
「バスタードソード・ソードマン」の作中において、ハルペリア王国とお隣のサングレール聖王国は長年にわたり戦争と和睦を繰り返す敵対関係にある。物語が進むにつれて、秋の収穫期に向けた新たな戦争の予兆と、それを迎え撃つための水面下での防衛準備が静かに、しかし確実に進行していく様子が描かれている。
その具体的な動向は以下の通りである。
「月下の死神」による偵察と侵攻の兆候
・ハルペリア王国の諜報を担う精鋭部隊「月下の死神」のギュスターヴは、単騎で国境付近の偵察を行った。
・彼は旧シュトルーベ開拓村付近でサングレール軍の斥候を捕らえ、尋問によって今年の敵軍の動向を突き止めた。
・東のエルミート男爵領方面(シュトルーベ近郊)は「シュトルーベの亡霊(モングレル)」の長年の活動によってサングレール軍が萎縮しており、侵攻の気配はなかった。
・しかし、南の「トワイス平野」付近で軍需物資の動きが確認され、秋(ヒマワリの収穫前後)にサングレール軍の大規模な侵攻があることが濃厚となった。
レゴール伯爵の水面下の防衛準備
・ギュスターヴから報告を受けたレゴール伯爵(ウィレム)は、敵にこちらの迎撃規模を悟られないよう、軍やギルドへの公式な通達はギリギリまで控えるという冷静な判断を下した。
・その上で、有事の際にはレゴール軍を派兵し、規定通りシルバーランク以上のギルドマンを前線に動員すること、そしてブロンズランクを兵站などに回すことを確約した。
・街の開発に全力を注ぎたいウィレムにとっては頭の痛い事態であったが、速やかに兵糧や軍需物資の確保へと動く優秀な為政者としての姿を見せている。
ギルドにおける不穏な昇級条件の緩和
・時を同じくして、レゴールの冒険者ギルドではギルド長ラムレイの権限により、秋の収穫期前までブロンズ以下の昇級条件の一部緩和と試験参加費の割引が突然発表された。
・表向きは好景気による人手不足の解消とされていたが、モングレルはこの不自然な動きから、収穫期に向けた徴兵や戦時動員に向けた準備(兵力の確保)ではないかと、鋭く戦争の気配を察知した。
まとめ
モングレルは過去にギルドの徴兵で戦場に駆り出された経験があり、大義名分のない人同士の殺し合いを心底嫌っている。ハルペリア人とサングレール人のハーフである彼は、最前線に送られれば都合よく使い潰される危険性が高いと考えている。仮に戦場で活躍して英雄や軍団長に成り上がったとしても、国に縛られる人生を望んでいないため、彼は自身の圧倒的な実力を隠し、徴兵の対象(最前線要員)になりにくいブロンズ3のランクに意図的に留まり続けているのである。
バッソマン 3巻レビュー
バッソマン まとめ
バッソマン 5巻レビュー
登場キャラクター
主人公
モングレル
日本からの転生者であり、面倒な事態を避けるためブロンズランクに留まり続けている。実用性を重視し、釣りや料理などの趣味を充実させている。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルドレゴール支部・ブロンズ3。
・物語内での具体的な行動や成果
ザヒア湖での遠征で巨大な魚型魔物ハイテイルを釣り上げた。モモから渡された足ヒレのテストを行い、その使用感を報告する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正体を隠して「ケイオス卿」として発明品を広めており、レゴールの経済発展に影響を与えている。
冒険者ギルド
エレナ
冒険者ギルドレゴール支部の若き受付嬢であり、物言いに少し厳しいところがある。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・受付嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
モングレルが発見したディックバルトのショートソードを受け取り、確認を行った。ガミガミストラスの討伐依頼についてミレーヌと相談する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミレーヌ
冒険者ギルドの受付嬢であり、ギルドマンたちに任務を割り振る役割を担っている。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・受付嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
泥濘に嵌まった馬車の救助や、収穫期の街道警備などの任務をモングレルに依頼した。「最果ての日差し」にガミガミストラスの討伐任務を提案する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラムレイ
レゴール支部のギルド長であり、気難しそうな表情をした大柄な男性である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルドレゴール支部・ギルド長。
・物語内での具体的な行動や成果
人手不足の解消を目的として、秋の収穫期前まで昇級試験の参加費用の割引と条件緩和を実施すると発表した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
普段はギルドの運営を副長に任せ、貴族街で活動していることが多い。
パーティー「アルテミス」
ウルリカ
薄紅色の髪を持つ弓使いであり、男の娘であるがパーティー内では違和感なく受け入れられている。
・所属組織、地位や役職
パーティー「アルテミス」・弓使い(シルバー2)。
・物語内での具体的な行動や成果
ザヒア湖での遠征に参加し、多数の水鳥を仕留めた。足ヒレのテストに同行し、服を着たまま湖を泳いで性能を確認する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「強射」という威力の高いスキルを持つ。
ライナ
青い短髪で小柄な弓使いであり、真面目で努力家な性格である。
・所属組織、地位や役職
パーティー「アルテミス」・弓使い。
・物語内での具体的な行動や成果
ザヒア湖でハイテイルの急所を射抜き、討伐に貢献した。その後行われた昇級試験に合格し、シルバー1へと昇格する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ハイテイルとの戦闘中に新たなスキル「貫通射」を習得した。
シーナ
黒髪の三つ編みを持つ女性であり、パーティーのリーダーとして的確な指示と判断を下す。
・所属組織、地位や役職
パーティー「アルテミス」・団長(ゴールド2)。弓使い。
・物語内での具体的な行動や成果
ドライデン行きの馬車護衛任務で、三本の矢を同時に放つ「光条射」を用いバイザーフジェールを討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
危機を回避することに長けたギフトを持っていることが示唆されている。
ナスターシャ
青い長髪で冷淡な印象を持つ女性であり、魔道具の開発や研究を趣味としている。
・所属組織、地位や役職
パーティー「アルテミス」・副団長(ゴールド1)。水魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
モングレルをパーティーに勧誘しようと交渉を行った。討伐したハイテイルを水魔法で冷却し、鮮度を保ったまま運搬させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔法使い用の湯沸かし機構を開発し、クランハウスの風呂に設置している。
ゴリリアーナ
大柄で筋骨隆々な体格の女性剣士であり、見た目に反して気弱な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
パーティー「アルテミス」・剣士(シルバー2)。
・物語内での具体的な行動や成果
ドライデンへの護衛任務では先頭を務め、バイザーフジェールをグレートシミターで両断した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
パーティー「最果ての日差し」
ウォーレン
ネクタールの農家の四男として生まれた若者であり、出世を夢見ている。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・剣士(アイアン3)。
・物語内での具体的な行動や成果
昇級試験に合格し、アイアン3に昇格した。ギルドで飛び道具についての議論に参加し、投げナイフを愛用していると語る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大手のパーティーへの移籍や、衛兵、軍での出世を目標としている。
フランク
明るく前向きな少年であり、パーティーのリーダーとして仲間をまとめている。
・所属組織、地位や役職
パーティー「最果ての日差し」・リーダー。剣士。
・物語内での具体的な行動や成果
泥濘に嵌まった馬車の救助作業を行っていた。ガミガミストラスの討伐任務では手斧を投げ、魔物を撃墜した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
サングレール人の血を引いている。
ギド
槍使いの少年であり、リーダーのフランクを支える相棒のような存在である。
・所属組織、地位や役職
パーティー「最果ての日差し」・槍使い。
・物語内での具体的な行動や成果
ガミガミストラスの討伐任務に参加し、手槍を投擲して逃げようとした最後の一羽を仕留めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
パーティー内の最年長である。
チェル
フランクの妹であり、魔法使いとしてパーティーを後方から支援する。
・所属組織、地位や役職
パーティー「最果ての日差し」・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
ガミガミストラスの討伐任務に参加し、ダートを投げて攻撃を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
体感で魔法を習得したため、実戦で十分に扱えるようになるには時間を要するとされている。
ショルト
「最果ての日差し」に所属する若者であり、ウルリカに憧れを抱いている。
・所属組織、地位や役職
パーティー「最果ての日差し」・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
ガミガミストラスの討伐において、ウルリカから勧められた長い針のダートを使用して戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
パーティー「若木の杖」
ミセリナ
気弱そうな雰囲気の少女であり、魔法使いとして活動している。
・所属組織、地位や役職
パーティー「若木の杖」・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
飛び道具についての議論に参加し、ダートを使用していると語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
モモ
眠そうな目をした少女であり、発明家を志している。
・所属組織、地位や役職
パーティー「若木の杖」・メンバー。サリーの娘。
・物語内での具体的な行動や成果
水中移動用の足ヒレを自作し、モングレルに性能のテストを依頼した。報酬として魔法の練習用指輪を渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
母のサリーから魔法の教育を受けている。
サリー
黒のボブカットと糸目が特徴の女性であり、天才的な頭脳を持つ魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
パーティー「若木の杖」・団長。
・物語内での具体的な行動や成果
ナスターシャが開発した湯沸かし機構を買い取る交渉を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
若くしてモモを産み、夫と死別している未亡人である。
パーティー「収穫の剣」
ディックバルト
パーティーの団長であり、巨体と威圧感を持つが大真面目に猥談を語る男である。
・所属組織、地位や役職
パーティー「収穫の剣」・団長(ゴールドランク)。
・物語内での具体的な行動や成果
娼婦にゴールドの認識票を盗まれる事件に遭い、ひどく落ち込んだ。「第三回熟成カビ入りスモークチーズ猥談バトル」で審判を務める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
過去の装備と共に購入した愛用のショートソードを森で紛失したが、モングレルが発見し手元に戻った。
バルガー
短槍と小盾を使用するベテランギルドマンであり、モングレルにとって兄貴分のような存在である。
・所属組織、地位や役職
パーティー「収穫の剣」・メンバー(シルバーランク)。短槍使い。
・物語内での具体的な行動や成果
違法伐採の調査中にハーベストマンティスと遭遇し、仲間を二名失う生還を果たした。その後、アストワ鉄鋼の穂先と高級小盾を新調した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
年齢による衰えを自覚し引退を考えたが、新しい装備を手に入れたことで現役続行を決意する。
チャック
赤い短髪の若者であり、荒っぽいが素直な向上心を持つ。
・所属組織、地位や役職
パーティー「収穫の剣」・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
ディックバルトを元気づけるため、猥談バトルを開催した。モングレルに模擬戦を挑むが、力任せの戦法で圧倒され敗北する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゴールドランクへの昇格を目指している。
アレクトラ
世話好きな姉御肌の女性であり、後輩の面倒を見ることが多い。
・所属組織、地位や役職
パーティー「収穫の剣」・副団長。
・物語内での具体的な行動や成果
ギルドの修練場で行われたルーキーたちの昇級試験を見守っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
パーティー「大地の盾」
アレックス
元ハルペリア軍人の剣士であり、丁寧な物腰と冷静な判断力を持つ。
・所属組織、地位や役職
パーティー「大地の盾」・剣士(シルバーランク)。
・物語内での具体的な行動や成果
伐採作業の護衛任務に参加し、ゴブリンの集団をロングソードで討伐した。モングレルのグレートハルペを鑑定し、鎌の角度の違違和感を指摘する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
月下の死神(クリストル侯爵家)
ギュスターヴ
黄色い仮面と暗色のローブを身に纏う馬上騎士であり、国の諜報任務を担っている。
・所属組織、地位や役職
「月下の死神」・騎士。クリストル侯爵家所属。
・物語内での具体的な行動や成果
シュトルーベ跡地周辺の偵察を行い、サングレール軍の斥候を制圧して情報を聞き出した。レゴール伯爵と面会し、サングレール軍の侵攻の可能性を報告する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
動物や魔物と意思疎通ができるギフト「絶対伏衆」を持つ。
モナルク
ギュスターヴが騎乗する漆黒の軍馬であり、起伏の激しい山道も駆け抜ける頑強さを持つ。
・所属組織、地位や役職
ギュスターヴの乗騎。
・物語内での具体的な行動や成果
シュトルーベ近郊の森で、サングレール兵やサイクロプスの気配を察知しギュスターヴに知らせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
テオドール
高い知能を持つコウモリ型の魔物であり、ギュスターヴの相棒として偵察を行う。
・所属組織、地位や役職
ギュスターヴの使役魔物(スレイブバット)。
・物語内での具体的な行動や成果
シュトルーベ開拓村跡地の上空を避けつつ周辺を偵察し、破壊された砦や人間の気配を発見した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
レゴール伯爵家
ウィレム・ブラン・レゴール
醜い容姿と内向的な性格を持つが、優れた利害調整の手腕で領地を発展させた名君である。
・所属組織、地位や役職
レゴール伯爵家・当主(伯爵)。
・物語内での具体的な行動や成果
ギュスターヴからサングレール軍の侵攻情報を聞き、兵糧や軍需物資の確保、動員の約束を取り付けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ケイオス卿の発明を利用して街の経済を発展させており、彼を探るような真似はしないとギュスターヴに約束した。
街の住民・商人・その他
トーマス
製材所で働く壮年の職人であり、淡々と仕事をこなす堅物である。
・所属組織、地位や役職
製材所・職人。
・物語内での具体的な行動や成果
モングレルと共に薪割りの作業を行い、リフティングトングを使って丸太を配置した。モングレルからハイテイルのジャーキーを受け取り味わう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
コーンパイプを愛用している。
ジョスラン
鍛冶屋であり、職人らしい荒っぽい口調で話す男性である。
・所属組織、地位や役職
鍛冶屋。
・物語内での具体的な行動や成果
狩人酒場でモングレルやトーマスと酒を飲み、ハイテイルのジャーキーを味わった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
モングレルの釣り竿の部品を作成したジョゼットという娘がいる。
犯罪奴隷
ロディ
違法罠を仕掛けた罪で犯罪奴隷に落ちた青年であり、狩人としての技能を持っていた。
・所属組織、地位や役職
犯罪奴隷。元ギルドマン(アイアンクラス)。
・物語内での具体的な行動や成果
レゴール東門外の下水道工事現場で労働していた。モングレルからクレイジーボアのジャーキーをこっそり受け取り、涙を流して食べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
真面目に働いているため看守に気に入られ、近く解放される予定である。
バッソマン 3巻レビュー
バッソマン まとめ
バッソマン 5巻レビュー
展開まとめ
プロローグ
異世界における移動の不便さ
ハルペリアにおける旅行は、未整備の道路事情により極めて手間のかかるものであった。移動手段は主に馬車や徒歩であり、宿場町をいくつも経由してようやく目的地に到達するという長期的な行程を要していた。馬車は速度が遅く、馬も長時間の高速移動には耐えられないため、頻繁な休憩が必要であり、結果として移動は非常に非効率であった。
旅に伴う危険と不確実性
移動中には魔物や盗賊の出現といった危険が伴い、さらに悪天候によって旅程が大きく狂うことも珍しくなかった。このような環境下では、旅行そのものが負担となり、宿場町に何度も宿泊する必要がある点も含めて、精神的な負担が大きいものであった。
前世との比較による不便さの実感
前世での日本の記憶と比較すると、ハルペリアの旅行環境は著しく不便であった。日本では交通インフラが整備されており、新幹線によって長距離移動も短時間で完了していたが、異世界ではそのような利便性は存在せず、移動そのものが大きな障壁となっていた。この落差が、異世界での旅行をより一層面倒なものとして認識させていた。
旅行への葛藤と必要性の認識
旅行は非常に面倒である一方、同じ環境に留まり続けることへの飽きも存在していた。そのため、年に一度か二度程度であれば旅行も許容できるという感覚に至っており、完全に拒絶するものではなかった。変化を求める人間の性質が、旅行への意欲をわずかに支えていたのである。
ザヒア湖への旅の決意
そうした事情の中で、語り手は夏にザヒア湖への旅行を決意していた。距離は遠いものの、同行者としてアルテミスの仲間がいるため、道中の退屈は軽減される見込みであった。また、現地では自作の釣り竿を用いた本格的な釣りを試みることを楽しみにしており、広大な自然環境の中での娯楽として釣りに期待を寄せていた。
第一話 君だけの飛び道具を選ぼう
旅行前の準備と資金確保の意図
ザヒア湖への出発を控え、モングレルは釣り道具の整備や高価な素材の購入を進め、着実に準備を整えていた。さらに旅先で使う資金を確保するため、ギルドで適当な任務を探すことを考え、足を運んでいた。
若手ギルドマンたちとの遭遇
ギルドでは若いギルドマンたちが集まり、モングレルに相談を持ちかけようとしていた。彼らは剣士や魔法使いでありながら、接近できない状況に備えて飛び道具の必要性を感じ、それぞれ装備を持ち寄って議論していた。テーブルには投げナイフやダート、手斧などが並べられていた。
各武器の特徴と使用者の意図
ウォーレンは汎用性の高い投げナイフを選び、ミセリナは軽く扱いやすいダートを使用していた。フランクは威力重視で手斧を選択しており、それぞれの武器は利便性や携行性、威力といった観点で特徴が分かれていた。議論は自然と、どの武器が最も優れているかという比較へと発展していった。
モングレルによる評価と現実的な助言
最強を求める若者たちの要求に対し、モングレルは威力の面から手斧が最も強力であると結論づけた。大型の魔物にも通用する可能性がある点を評価した一方で、重量や取り回しの悪さといった欠点も指摘した。また、ダートは軽量で扱いやすく、鳥などへの対応や魔法使いの護身に適していると評価し、毒の併用を提案した。投げナイフについては汎用性を認めつつも、実際に投げる機会は少ないと現実的な使用頻度を示した。
モングレル自身の飛び道具とその実態
若者たちに促され、モングレルは自身の飛び道具として旧ハルペリア軍のチャクラムを取り出した。しかしそれは実用性に乏しく、うまく飛ばず切断力も期待できない代物であった。結果として戦闘ではなく燻製作業の補助に使われていると明かされ、周囲から呆れられることとなった。
最終的な結論と選択の帰結
議論の末、若者たちは最強の武器を一つに決めるのではなく、それぞれの用途や好みに応じた飛び道具を選ぶべきだと理解し、自分に合った装備を選択することとなった。一方でチャクラムを選ぶ者は現れず、モングレルのみがそれを持ち続ける結果となっていた。
第二話 遺失物搜索任務
異世界における遺失物の扱い
前世の日本では落とし物が持ち主のもとに戻ることが多かったが、ハルペリアでは事情が異なっていた。遺失物は発見者のものとされる風習が強く、価値ある品ほどそのまま持ち去られることが一般的であり、持ち主に返る可能性は極めて低かった。
遺失物捜索依頼の実情と動機
それでも諦めきれない者はギルドに捜索依頼を出し、報酬を提示して探索を依頼していた。しかしそれは利益になりにくく、場合によっては落とし物の情報を広めるだけに終わることもあった。モングレルは利益を承知の上で、道徳心や人脈作りも兼ねてこうした依頼を引き受けることにしていた。
ショートソード捜索と探索開始
モングレルは特徴的な角製の柄を持つショートソードの捜索依頼を選び、バロアの森へと向かった。駆け出しのギルドマンにとっては貴重な武器である可能性を考え、持ち主の事情に思いを馳せながら探索を進めていた。
不自然な形で発見された遺失物
川沿いを探索していたモングレルは、土に鞘ごと突き刺さったショートソードを発見した。その異様な配置に違和感を覚え、罠の可能性を疑いながら慎重に確認したが、特に異常は見られなかった。最終的に剣を回収し、依頼の品であると判断した。
ギルドへの持ち帰りと報酬の期待
ギルドに戻ったモングレルは剣を受付のエレナに預け、依頼主の確認後に報酬が支払われる手続きを行った。発見の経緯を説明するとエレナは疑念を示したが、特徴が一致していることから依頼品である可能性は高いとされた。
依頼主の判明と剣の価値
その後、依頼主がゴールドランクのディックバルトであることが判明した。彼にとってそのショートソードは過去の装備と共に購入した思い出深い品であり、強い愛着を持つ重要な武器であった。発見に対してモングレルへ深い感謝が示された。
違和感と曖昧な結末
しかしモングレルは、剣が地面に突き刺さっていた状況に対する違和感を抱いたままであった。ディックバルトの言動にもどこか含みがあり、真相は曖昧なまま残された。それでもモングレルは報酬を受け取り、出来事を深く追求せず、そのまま日常へと戻ることにした。
第三話 クヴェスナの真相に迫る
異世界観と理解不能な存在への疑問
モングレルは、この世界にドラゴンやゴブリン、魔法といった前世の創作に類似した要素が存在することから、ある程度は世界観を受け入れていた。しかしその中でも、まったく理解できない存在として「クヴェスナ」の存在に強い疑問を抱いていた。
クヴェスナ討伐依頼の受注理由
クヴェスナの討伐依頼は報酬や効率の面で魅力が薄く、多くのギルドマンが敬遠していた。それでもモングレルは純粋な興味と調査目的から依頼を受け、正体不明の存在に迫ろうとしていた。
クヴェスナの異質な外見と性質
バロアの森で遭遇したクヴェスナは、薄灰色で骨のような構造を持ち、十本以上の脚で虫のように移動する異形の存在であった。肉や血液は見られず、頭部も動物の頭蓋骨のような形状でありながら内臓や感覚器官は確認できなかった。こうした特徴からモングレルは、通常の魔物とは異なる「謎系」の存在として認識していた。
戦闘とクヴェスナの行動特性
クヴェスナは音に反応して機械的に襲いかかるが、動きは鈍く、骨のような身体は脆いため簡単に破壊できた。仲間が倒されても反応を示さず、怒りや恐怖といった感情も見られなかったことから、意思や自我の存在も疑わしいと考えられた。
正体に関する考察と検証の試み
モングレルはアンデッドやゴーレム、あるいは魔大陸由来の魔物など様々な可能性を推測したが、いずれも決定的な根拠は得られなかった。さらにギフトを用いて反応を探る試みも行ったが、クヴェスナは一切の変化を見せず、その正体は依然として不明のままであった。
討伐後に残る問題と結論
討伐自体は容易であったものの、証明部位である尻尾の骨の回収は煩雑であり、報酬も極めて低額であった。また、食用や資源としての価値もなく、存在理由すら不明であることから、モングレルにとってクヴェスナは依然として不可解な存在であり続けていた。
第四話 モモとモングレルと大荷物
都市清掃中の再会と指摘
モングレルが都市清掃を行っている最中、若木の杖の団長サリーの娘であるモモと再会した。モモは彼の実力に見合わずブロンズ3に留まっていることを指摘し、強い口調で問いただしたが、モングレルは以前から昇格しない方針を貫いていると受け流した。
護衛任務と湖の話題
モモはモングレルがドライデンへの護衛任務に同行することを知っており、その目的地であるザヒア湖に強い関心を示した。モングレルは護衛よりも釣りを主目的としていることを明かし、話題は湖での活動へと移っていった。
足ヒレの発明と依頼
モモは自作した水中移動用の足ヒレを取り出し、その性能検証をモングレルに依頼した。マーマンの構造を参考にした装備であり、泳法ごとの動作確認など詳細なテスト項目も用意されていた。モングレルは内容に興味を示しつつも引き受けることにした。
報酬としての魔法の指輪
モモは報酬として金銭ではなく、自身が使用していた魔法の指輪を前払いで渡した。モングレルは戸惑いながらもそれを受け取り、魔法練習の継続を装うことを内心で決めた。
発明家としての志と依頼の追加
モモは発明の街レゴールで名を上げることを目標としており、足ヒレを第一歩と位置付けていた。さらに旅先で珍しい素材の持ち帰りも依頼したが、モングレルは対価の必要性を示し、モモもそれを受け入れた。
出発前の荷造りと大荷物
帰宅したモングレルは翌日からの護衛任務に備えて荷造りを行った。任務用の装備はバスタードソードのみであったが、釣り道具や調理器具、野営用品など私的な荷物が大半を占め、結果としてバックパックは限界まで膨らむこととなった。それでも旅への期待を抱きつつ、準備を終えたのであった。
第五話 太陽から逃げる者たち
護衛任務の出発とモングレルの大荷物
夏の早朝、モングレルは北門の馬車駅でアルテミスの面々と合流した。ライナたちは彼の大荷物に驚いたが、モングレルはドライデンへの護衛任務を終えた後、ザヒア湖で数日遊ぶつもりであることを明かした。一方でナスターシャは遊びではなく湖周辺での狩りだと訂正し、今回の遠征に対する温度差も見えていた。
ドライデン行き隊商と街同士の関係
今回護衛するのは、ドライデンへ物資を運ぶ十台の荷馬車であった。ドライデンは山に近い僻地であり、物資輸送にはレゴールを経由する必要があったため、両都市は深く結びついていた。ただしギルド支部同士の関係は良好ではなく、狩猟能力に優れたドライデン側のギルドマンは、稼ぎの良いレゴールへ人材が流れる現状に対抗意識を抱いていた。
護衛体制と旅路の安定
アルテミスは隊商の主戦力として雇われており、馬車ごとの警備員は補助的な役割にとどまっていた。配置は先頭にゴリリアーナ、最後尾にモングレルという形で、モングレルは最後尾の御者と話しながら進むことになった。旅程は王都方面と違って混雑が少なく、道も安定していたため、商人にとっては利益を出しやすい手堅いルートであった。
三日目の襲撃とバイザーフジェール討伐
大きな異変が起きたのは三日目で、シーナが右前方から三体のバイザーフジェールを発見した。バイザーフジェールは巨大な白い虫のような魔物で、脚が速く顎の力が強い存在であった。ゴリリアーナは接近した二体のうち一体を圧倒的な一撃で両断し、抜けた一体に対してはシーナが三本の矢を同時に放つ光条射で脚と頭を正確に破壊し、無力化した。
アルテミスの実力とモングレルの立場
この戦闘でモングレルの出番はなく、アルテミスの戦闘能力の高さが際立つ結果となった。特にゴリリアーナの圧倒的な近接戦闘力と、シーナの精密かつ独自性の高い射撃能力に対し、モングレルは改めてその実力を認めていた。ライナもそんな仲間たちに囲まれて成長できる環境にいることが示されていた。
平穏な到着と物足りなさ
襲撃はこの一度きりで、その後は盗賊や魔物の大規模な襲来もなく、隊商は無事にドライデンへ到着した。任務自体は順調に終わったが、追加報酬につながるような戦闘が増えなかったことに対して、モングレルはわずかな物足りなさも感じていた。
第六話 モングレル不在のレゴールにて
モングレル不在でも変わらぬ日常
モングレルとアルテミスがザヒア湖へ出発してから数日が経過しても、レゴールの街は特に変化なく日常が続いていた。ギルドにおいても同様であり、有力なパーティーや目立つソロの不在は大きな影響を及ぼしていなかった。
空飛ぶ魔物ガミガミストラスの討伐依頼
ギルドにはガミガミストラス討伐の依頼が届いていた。この魔物は大型のフクロウ型で空を飛び、死体を横取りする習性を持つため、地上戦主体のギルドマンにとって対処が難しい存在であった。本来はアルテミスのような遠距離戦力を持つパーティーに任せるべき任務であったが、不在のため対応に苦慮していた。
最果ての日差しへの任務割り当て
そこへ現れたのが若手パーティー最果ての日差しであった。彼らは飛び道具を試すための準備を整えており、人数や装備の条件が任務に適していたことから、受付の判断で討伐任務を任されることとなった。突然の大役に彼らは強い意欲を見せ、任務に向かうこととなった。
餌による誘導と戦闘開始
現地に到着した彼らは、ガミガミストラスの習性に従い、マレットラビットを餌として設置し誘き寄せる作戦を取った。上空から様子を窺う群れに対し、接近の瞬間を狙って投擲武器を一斉に投げることで戦闘を開始した。
投擲武器による討伐成功
手斧やダートを中心とした投擲攻撃は効果を発揮し、複数の個体を撃墜することに成功した。最後の一体も手槍によって仕留められ、最果ての日差しは怪我人を出すことなく群れを全滅させるという成果を上げた。
成功の裏にあった損失と課題
しかし帰還後、彼らは投擲武器の紛失や破損によって収支が悪化したことに落胆していた。さらに先輩ギルドマンのバルガーからは、投擲武器に頼りすぎることで不適切なスキルを習得する危険性があると指摘され、戦闘スタイルの選択には慎重さが必要であると学ぶこととなった。
モングレルの評価と不在の余韻
会話の中でモングレルの名前も話題に上がり、その実力や独特な戦い方について評価と疑問が入り混じった形で語られた。最終的にバルガーは彼のスタイルを深く気にする必要はないと助言しつつ、不在のモングレルに思いを巡らせていた。
第七話 狩人の町ドライデン
ドライデン到着と街の特徴
ドライデンは畜産と狩猟を主とする街であり、周囲の酪農村を結ぶ拠点として機能していた。革製品や乳製品、馬などが主要な産物であり、レゴールとは物資の流通において密接な関係にあった。護衛任務を終えたモングレルたちは依頼人と別れ、報告のためにギルドへ向かった。
ドライデン支部の空気とアルテミスの存在感
ドライデンのギルド支部は魔物との戦闘が日常的に発生する環境にあり、全体的に緊張感のある雰囲気であった。レゴールから来たアルテミスの一行に対して周囲の視線は厳しかったが、その実力が知られているため、直接的な衝突には至らなかった。
モングレルへの敵意とライナの対応
しかしモングレルに対してはサングレール人に対する偏見から敵意が向けられた。これに対しライナが前に出て擁護し、彼が正当なギルドマンであることを主張したことで場は収まった。モングレルは無用な対立を避けるため反発を控え、仲間への配慮を優先した。
衝突後のやり取りと価値観の示唆
ギルドを出た後、ライナは言い返さなかったことを疑問視したが、モングレルは彼女の行動を評価しつつも、より冷静な対応の重要性を示した。また、人種による偏見についても内心で複雑な思いを抱いていた。
宿泊と束の間の休息
その後一行は食事を取り、宿に宿泊した。部屋割りは男女別であり、旅の疲れを癒す一夜となった。
ザヒア湖への出発と移動事情
翌朝、一行はザヒア湖へ向かうため農場方面の馬車に相乗りして出発した。専用の交通手段はなく、こうした相乗りが一般的な移動手段であった。女ばかりのパーティーであったこともあり、馬車の確保は比較的容易であった。
狩猟事情とドライデンの実態
道中、ザヒア湖周辺は水鳥が豊富であるものの、より利益の出る狩場が近隣に存在するため人が少ないことが語られた。ドライデンは常に危険な狩猟に従事する土地という印象とは異なり、場所によっては人手の偏りがある現実も見えていた。
移動中の様子と旅の続行
農場に近づくにつれ道は悪くなり、馬車の揺れも激しくなった。ウルリカが舌を噛む場面もあったが、大きな問題はなく一行はそのままザヒア湖へと向かって進み続けた。
第八話 ザヒア湖の手漕ぎボート
湖までの道のりと荷物運び
馬車を降りた一行は、傾斜のある道を歩いてザヒア湖を目指した。モングレルは重い荷物を難なく運んでいたが、ナスターシャは五十ジェリーを支払って自分の荷物を持たせた。モングレルは報酬を得たことで素直にそれを引き受け、湖への期待を高めながら坂を登っていった。
ザヒア湖の眺望と狩猟対象の確認
坂を登り切ると、周囲を木々に囲まれた大きなザヒア湖が姿を現した。モングレルは釣りに適した広さに感動していたが、アルテミスの弓使いたちは早速水鳥の姿を見つけ、狩猟対象として意識を向けていた。ナスターシャとゴリリアーナはすぐに管理棟へ向かい、舟を確保しようとしていた。
管理棟の老人と舟の貸し出し
管理棟には老人がいて、湖で騒がしい水鳥を狩ってくれるなら歓迎すると述べた。リードダックを分けてもらう代わりに食材を提供する話もまとまり、一行は裏に置かれていた舟を借りることになった。ただし一番左の舟は老朽化して沈むため使ってはならないと忠告され、湖の舟の古さにモングレルは不安を覚えていた。
手漕ぎボートでの移動開始
ゴリリアーナと共に舟を水に浮かべた後、一行は二人ずつに分かれて乗り込んだ。モングレルはライナと同じ舟に乗り、荷物を中央に置いて向かい合う形で座った。ライナは弓を持参していたが、湖上で矢を失えば大赤字になるため慎重な姿勢を見せ、モングレルは漕ぎ役として舟を進めていった。
移動中のやり取りと魔法による追い抜き
舟を進めながら二人は弓や矢の扱い、湖上での狩猟の難しさについて話した。その最中、シーナとナスターシャの舟が魔法の力で水上を素早く進み、モングレルたちを追い抜いていった。モングレルはそれを見て、自分たちだけ普通に漕いでいる状況に複雑な思いを抱いていた。
湖上で見つけた拠点候補
湖を巡った結果、一行は三つの有力な拠点候補を見つけた。一つは湖中央の小島で、広い視界を確保できる狩猟向きの場所であった。二つ目は湖奥の岸辺で、杭とロープがあり舟を留めやすく、ある程度整備もされていた。三つ目は管理棟から見えない砂浜で、人目につかず水鳥も多く、キャンプに適した場所であった。
岸辺の拠点選定とキャンプ準備
シーナたちは見晴らしの良い小島を選び、モングレルとライナは拠点作りに適した岸辺を選んだ。ライナは天幕を湖から少し奥まった位置に張るよう求め、水鳥に気配を悟られないよう配慮した。岸に上がったモングレルは、湖水の透明さに満足しつつ、ここを拠点として生活する準備を始めた。
釣りへの期待とライナへの誘い
モングレルは釣りを始めるつもりであり、以前道具を失くしたことを気にするライナにも再挑戦を勧めた。今回は予備のルアーや針、錘や糸まで十分に用意してきており、多少の損失は問題にしないつもりであった。ライナも獲物が寄っていない時間に釣りをやりたいと応じ、二人は湖の主のような大魚を釣り上げ、魚と鳥で豪華な夕食にしたいと期待を膨らませていた。
第九話 湖上の狩り、水面下の入魂
餌釣りと拠点整備の開始
モングレルは水辺で石を集めながら川虫を捕まえ、餌釣りを開始した。岸近くに糸を垂らして放置しつつ、石でかまどを作り煙突を組み、さらに天幕を拡張して拠点を整備した。今回は長期滞在を見据えた豪華な野営環境となっていたが、食事が肉中心になることへの懸念も抱いていた。
水鳥狩りの進行とライナの成果
設営中、湖の方からスキルによる衝撃音が響き、水鳥の悲鳴が続いた。その後、ライナがリードダックを射止め、モングレルが舟で回収することとなった。ライナは葦の陰から正確に射撃を行っており、水鳥の動きや矢の落下を読み取る技術の高さが示されていた。
散弾矢と狩猟技術の共有
ライナはウルリカの使用する散弾矢について説明した。脆い鏃を用いて強射を放つことで矢が分散し、複数の破片で水鳥を仕留める手法であった。威力は低いものの、群れに対して効果的であり、前世の散弾銃に近い発想であるとモングレルは理解した。
狩りと釣りの成果差
その後もライナは順調に水鳥を仕留め、合計三羽の成果を上げた。一方でモングレルの釣果は振るわず、釣りと狩りの成果の差に悔しさを感じていた。水鳥を餌にした釣りの可能性についても考察し、大物への期待を膨らませていた。
アルテミス合流と豊富な獲物
昼頃にはウルリカとゴリリアーナが合流し、さらに五羽の水鳥を持ち帰ったことで、短時間で大量の獲物が確保された。これにより食料は十分すぎるほど確保され、狩猟の成功が際立つ結果となった。
釣りの体験共有と道具の特徴
ウルリカとゴリリアーナも釣りに興味を示し、モングレルは自作の釣り竿を用いて簡単な指導を行った。彼の竿は一般的なものと異なり、しなりを活かして魚を釣る構造であることが説明された。ゴリリアーナは落ち着いた様子で餌釣りを楽しみ、各々の性格の違いも表れていた。
ライナの初ヒットと現実のサイズ
やがてライナの竿に魚が掛かり、強い引きに大物を期待する場面となった。モングレルの指示に従い竿を立てて慎重に巻き取った結果、釣り上げられたのは二十センチ弱のラストフィッシュであった。想像より小さいサイズに驚きつつも、ライナにとっては初の釣果であり、確かな成果として喜ばれる結果となった。
第十話 淡水魚の塩焼きとムニエル
釣りの調整と魚の釣果増加
モングレルはルアーのサイズや針を小さく調整することで釣果を改善し、小魚が次々と掛かるようになった。ライナはさらに連続して釣果を上げ、ウルリカやゴリリアーナも魚を釣り上げるなど、釣りは順調に進んでいった。
釣りと狩りを両立する一行の様子
釣りに慣れていないはずの面々も躊躇なく魚を締めて内臓を取り出すなど、狩人としての適応力を見せていた。モングレルだけが釣果を上げられず、周囲から軽くからかわれる場面もあったが、全体としては釣りと狩りを同時に楽しむ状況となっていた。
水鳥の大量確保と作業の増加
シーナとナスターシャも合流し、大量の水鳥を持ち帰ったことで、羽根むしりなどの処理作業が必要となった。一行は釣りと並行して羽根をむしるなど、多忙ながらもレジャーとしての充実した時間を過ごしていた。
塩焼きによる淡水魚の調理
モングレルはまずラストフィッシュを串に刺し、塩を振って遠火で焼く塩焼きを作った。シンプルな調理でありながら、ほくほくとした食感と塩気が評価され、釣り上げた魚の新鮮さが際立つ結果となった。
魚の三枚おろしと調理指導
続いてモングレルはアベイトを用い、頭の切断、内臓除去、中骨に沿った三枚おろしといった基本的な解体方法を実演した。ライナやウルリカもこれを見て実践し、魚の処理技術を学ぶ機会となっていた。
ムニエルの調理と工夫
モングレルは三枚におろした魚に塩や香辛料を擦り込み、小麦粉をまぶしてバターで焼き、蒸し焼きにすることでムニエルを完成させた。さらに残ったバターでキノコを炒め、付け合わせとして仕上げた。
料理の評価と満足感
完成したムニエルは団長や仲間たちから高く評価され、塩焼きとは異なる味わいが好評であった。バターの風味が染みたキノコも含め、食事は非常に満足度の高いものとなり、一行は狩りと釣りの成果を十分に堪能していた。
第十一話 雑種犬の寝床
水鳥の分配と物資の交換
モングレルとシーナはそれぞれ舟を漕いで管理棟へ向かい、獲れすぎた水鳥を老人に分け与えた。その代わりとして玉葱や芋などの野菜を受け取り、食料の幅が広がることとなった。
シーナとの対話と力の在り方
帰路の湖上で、二人はギフトや力の扱いについて語り合った。シーナは力を隠すことの重要性を認めつつも、アルテミスはそうした力を持つ者も受け入れると述べ、互いに支え合う集団の意義を示した。モングレルはそれに理解を示しつつも、あくまで一匹狼ならぬ雑種犬として単独で生きる姿勢を崩さなかった。
拠点の分散と夜営体制
日が暮れる前に岸へ戻り、シーナとナスターシャは小島へ拠点を移した。一方、モングレルはライナ、ウルリカ、ゴリリアーナと共に岸で夜を過ごすこととなり、それぞれが毛皮やマントで防寒を整えた。
焚き火を囲む休息と会話
焚き火を囲みながら、釣りや狩りの感想が語られた。モングレルは釣りの時間が少なかったことを惜しみつつも、翌日の釣果に自信を見せた。仲間たちはそれぞれの体験を楽しみながら、穏やかな時間を過ごしていた。
食事と狩人たちの語らい
夕食はリードダックの丸焼きと蒸し焼きの芋であり、素朴ながら満足度の高い内容であった。その後は散弾矢の製法など狩人としての知識が共有され、自然の中での生活が充実したものとして描かれていた。
就寝と静かな終わり
モングレルは早々に眠りにつき、若い仲間たちはなお談笑を続けていた。静かな夜の中で、それぞれの時間が流れ、湖畔での一日が穏やかに締めくくられた。
第十二話 狼からのアドバイス
夜更けの語らいと高揚感
モングレルが眠りについた後も、ライナたちは焚き火を囲んで語り合っていた。普段より整った野営環境と非日常の雰囲気により、疲れはありつつも高揚感が勝り、なかなか眠る気にはなれなかった。
モングレルの人物像への言及
会話はモングレルの年齢や外見へと移り、三十歳でありながら若々しく見える点について語られた。特別な手入れをしているのではないかといった話題も出たが、結論は出ず、軽い雑談として続いていった。
ライナの想いと過去の経緯
やがて話題はライナのモングレルへの想いへと移った。ライナはかつて一人で困窮していた時期にモングレルに助けられ、多くを教えられた過去を語り、その恩返しとして彼を孤独にしたくないという気持ちを明かした。その想いは恋愛感情と重なりながらも、慎重で控えめな形で表れていた。
仲間たちの反応と助言の方向性
ウルリカはライナの態度をもどかしく感じ、もっと積極的に行動すべきだと助言した。一方でゴリリアーナはライナの穏やかな歩みでも問題ないと感じており、三者の間で価値観の違いが見えていた。
積極性を促す具体的な提案
ウルリカは具体策として、モングレルの隣で添い寝をすることで意識させる案を提示した。ライナは戸惑いながらも、仲間の後押しを受けて実行する決意を固めた。
作戦決定と心境の変化
最終的にライナは勇気を振り絞り、添い寝という形で距離を縮める行動に踏み出すことを決めた。ウルリカはさらなる進展には不十分と感じつつも、第一歩としては十分だと判断し、この夜の会話はライナの行動を後押しする結果となった。
第十三話 離れ小島の女神たち
小島での静かな休息時間
シーナとナスターシャはザヒア湖中央の小島に拠点を構え、日中の狩りや作業を終えた後、ようやく二人きりの時間を過ごしていた。焚き火を囲み、紅茶を飲みながら穏やかな湖面を眺めるひとときは、彼女たちにとって貴重な休息であった。
食事を通じた親密なやり取り
夕食の水鳥料理について語り合う中で、ナスターシャは独特な言葉と仕草でシーナへの愛情を示した。シーナはそれに戸惑いながらも応じ、二人の間には親密で穏やかな関係が築かれていることが表れていた。
ナスターシャの変化とシーナの心情
シーナは、かつて自分だけに関心を向けていたナスターシャが、現在は他の仲間にも目を向けるようになったことに気付いていた。それを嬉しく思いながらも、彼女の内面にはその変化を独占できないことへの複雑な感情も存在していた。
過去と現在、そして未来への認識
二人は過去に社会へ適応できず、狭い世界に閉じ込められていた経験を共有していた。現在は自由を手に入れた一方で、その自由の中でどのように生きていくかを模索しており、今後さらに世界を広げていく必要性を互いに確認していた。
愛情の再確認と関係の深化
ナスターシャはシーナの言葉に不安を覚え、自らの愛情が変わらないことを強く示した。シーナもそれを受け入れ、互いの想いを確かめ合うことで関係をより深めていった。
二人だけの時間の締めくくり
夜の小島では、外の世界の広がりとは対照的に、二人だけの時間が静かに流れていた。未来へ向かう決意を抱きつつも、その夜だけは互いの存在に寄り添いながら、穏やかなひとときを過ごしていた。
第十四話 地上の泳がせ釣り
目覚めとライナの奇襲の失敗
翌朝、モングレルが目を覚ますと隣にライナが寝ており、思わぬ形で顔を合わせることとなった。しかし暑さに耐えきれず、モングレルはライナを簀巻きにして引き離し、奇襲とも言える行動はあっけなく失敗に終わった。ライナはそのまま妙に落ち着いた様子を見せ、周囲も半ば呆れながら受け入れていた。
朝食準備と狩人たちの出発
モングレルは焚き火を起こし、玉葱や水鳥の肉、キノコをバターで炒めた簡素な朝食を用意した。食事を終えるとライナたちは再び狩りに出発し、フレッチダックの捕獲を目指して湖へ向かっていった。
一人での釣りと試行錯誤
一人残ったモングレルは、三本の釣り竿を使い分けて釣りを開始した。餌釣りでは小魚が釣れるものの、ルアーによる大物狙いはうまくいかず、試行錯誤を重ねていた。また後に足ヒレの試験も控えており、時間配分も考えながら釣りを続けていた。
ゴブリンの出現と獲物の横取り
釣りの最中、葦の中からゴブリンが現れ、モングレルが釣り上げたラストフィッシュを狙った。モングレルは巻き取りを優先したため即座に対処できず、その隙に魚を奪われてしまった。
反撃と怒りの発露
魚を奪われたモングレルは激怒し、直後にゴブリンを一刀で斬り伏せたものの、既に魚は食われた後であった。これにより怒りは収まらず、ゴブリンへの強い敵意を露わにした。
復讐としての新たな釣り方
モングレルは復讐心から、倒したゴブリンの肝臓を餌として利用するという発想に至った。実験的な意味も含めつつ、ゴブリンを利用した「地上の泳がせ釣り」という新たな試みに踏み出すこととなった。
第十五話 水底より昇った月を撃て
異様な餌による大物狙いの開始
モングレルはゴブリンの肝臓を餌として加工し、特大のギャング針に縫い付けて湖へ投げ込んだ。強烈な臭気に疑念を抱きつつも、大物を狙うために深場へと仕掛けを送り、試行的な釣りに踏み切った。
強烈な当たりと異常な引き
やがて竿に明確な反応があり、これまでとは比較にならない強烈な引きが発生した。単なる根掛かりではなく、生き物の動きであると確信したモングレルは、竿を立てて慎重に巻き取りを開始したが、相手は圧倒的な力で抵抗し続けた。
未知の大物との力比べ
魚は横方向や深部へと激しく動き、竿や糸の耐久に不安を抱かせるほどの力を見せた。モングレルは竿に魔力を込めて強度を補強し、自身の体力と技術で粘り強く対抗した。戦いは完全に体力勝負となり、互いに消耗しながら距離を詰めていった。
正体の判明と脅威の規模
水面近くまで引き寄せた際、その正体は巨大な魚型魔物ハイテイルであると判明した。高い遊泳能力を持つこの魔物は、淡水にも現れる異常な存在であり、その巨体と力から通常の釣りの対象を遥かに超える脅威であった。
ライナの介入と初撃の成功
モングレルの要請を受け、ライナは弓での援護を決意した。高速で動く標的に対してスキルを用いて照準を定め、エラを正確に射抜くことでハイテイルに致命的なダメージを与えた。これにより抵抗は弱まり、モングレルは一気に引き寄せることに成功した。
新スキルの習得と決定打
この一撃を契機に、ライナは新たな貫通系スキルを習得した。直後、なおも逃走を試みたハイテイルに対し、ライナはその新スキルで目を貫き、完全に仕留めた。巨大な魔物は湖岸に倒れ、戦いは終結した。
成果と高揚の共有
百七十センチ級の大物を仕留めた成果に加え、ライナが念願の攻撃スキルを得たことで、二人は大きな達成感を共有した。騒ぎを聞きつけた仲間たちも集まり、狩りや釣りを超えた大きな成果として、この出来事は強く印象に残るものとなった。
第十六話 解体ショーのはじまり
ライナの新スキル習得を祝う仲間たち
ハイテイル討伐の直後、アルテミスの面々はライナの二つ目の弓スキル習得を心から祝福した。ライナは仲間たちに揉みくちゃにされながらも喜びを噛みしめており、これまで攻撃系スキルを持たないことを気にしていた分、その達成は大きな意味を持っていた。モングレルもまた、ライナの努力が実ったことを自分のことのように嬉しく感じていた。
大物ハイテイルへの関心の集中
祝福が一段落すると、話題は巨大なハイテイルへ移った。モングレルは釣り糸が限界近くまで削られていたことから、その危険さを改めて実感していた。魚体は薪の上に横たえられ、まるで市場の大物のような迫力を放っていたが、とても自分たちだけで食べきれる量ではなかった。
解体前の方針決定
モングレルは魚を無駄にしないため、管理棟の老人たちにも分けることを決めた。その前に鮮度を保つため、まずは内臓を抜いてからナスターシャの魔法で魚体を冷やすことになった。シーナは舟の漕ぎ手を引き受け、ナスターシャは魔力を使ってハイテイルの保存に専念することとなった。
内臓処理と食性の確認
モングレルはソードブレイカーで腹を裂き、内臓を取り出していった。その過程で、ライナに胃の中身を確かめさせたところ、藻や甲殻類、貝のようなものが見つかり、図鑑にある単純な草食とは異なる食性が示唆された。ゴブリンの肝臓に食いついた理由にも一応の納得がいき、ハイテイルが湖底の多様な生物を食べて生きていた可能性が見えてきた。
ナスターシャによる冷却と魚の搬送
解体と洗浄を終えたハイテイルは、ナスターシャの魔法で表面を凍らされ、魚の氷像のような姿になった。水魔法の便利さに感心しつつ、モングレルはライナと共に魚を舟に載せ、管理棟へと運んだ。
管理棟での披露と分配
巨大魚を見た老人たちは大いに驚き、湖にそんな怪物がいたことに騒然となった。モングレルはライナが弓で仕留めたことも含めて説明し、ハイテイルの身をその場で大胆に切り分けて分配した。老人たちは礼としてまた野菜を渡してきたため、食料はさらに増えることとなった。
岸への帰還と次の料理への期待
岸へ戻ると、アルテミスの面々は狩りよりもライナの祝いに気持ちが向いていた。一方でライナとウルリカは、ハイテイルがどのように料理されるのかに強い関心を示していた。モングレルはまず身を使いやすい形に整え、焼いて味を確かめるつもりでいた。そして、その味次第では、さらに踏み込んだ魚料理に挑むことも考えていた。
第十七話 足ヒレのテスト
ハイテイル料理の下準備と味の判明
モングレルはハイテイルの切り身を燻製にする準備を進め、保存と安全性を考慮して温燻を選択した。焼いた切り身を仲間に振る舞った結果、脂が乗り香り高い味わいで、サーモンに似た風味であることが判明した。この評価を受け、大量の切り身をまとめて燻製にする方針を固めた。
ライナのスキル訓練と準備の並行
調理の合間、ライナは新たに習得した貫通射の訓練に没頭していた。攻撃系スキルの消費や射程を確認することは実戦に直結するため重要であり、仲間たちもその成長を見守っていた。モングレルはそれを横目に見つつ、自身は別の役目に取りかかることを決めた。
足ヒレテストの開始
モングレルはモモから預かった足ヒレの性能確認のため、湖の別の岸へ移動した。ウルリカも興味を示して同行し、モングレルは半裸で入水してテストを開始した。最初は扱いに戸惑い、直立状態や動作に違和感を覚えたものの、足先を撓らせるように動かすことで安定した泳ぎを得ることに成功した。
性能の把握と評価
モングレルは複数回の往復や潜水を試し、足ヒレによって手を使わずとも前進できること、通常より速く移動できていることを確認した。一方でヒレの硬さや短さには改良の余地があると感じつつも、道具としては十分実用的であると評価した。
ウルリカによる追加検証
続いてウルリカも足ヒレを装着し、泳ぎの経験が乏しい状態でテストに参加した。彼女は短時間で動作を習得し、安定した遊泳を見せたことで、初心者でも一定の効果が得られる可能性が示された。第三者視点でその動きを観察したモングレルは、足ヒレの有効性をより客観的に把握した。
テスト終了と帰還
十分な検証を終えたモングレルたちは拠点へ戻ることにした。ウルリカは泳ぎによる疲労を感じつつも満足しており、足ヒレの実用性は概ね証明された形となった。モングレルは得られた感想をモモへ伝えることを考えながら、料理の続きへと戻ることとなった。
第十八話 ささやかな夜の宴
燻製料理の完成と試食
モングレルは燻製したハイテイルを仕上げ、スモークハイテイルとして提供した。アルテミスの面々はその独特な風味に戸惑いながらも興味を示し、従来の白身魚とは異なる味わいに新鮮さを感じていた。味の評価は慎重であったが、未知の食材として受け入れられつつあった。
魚料理の工夫と提供
モングレルは燻製を薄く切り、玉葱や酢、油と合わせて魚介サラダを作り上げた。さらにハイテイルのアラを用いたスープも用意し、昆布出汁と魚の旨味を組み合わせた料理は高い評価を受けた。特にスープはアルテミスの面々にも好評であり、魚料理の可能性を示す結果となった。
アルテミス側の料理と共同の食事
シーナたちも香草焼きのリードダックを完成させ、双方の料理を持ち寄って食事が行われた。香草の風味と肉の旨味が合わさった料理は好評であり、焚き火を囲んでの食事は賑やかなものとなった。モングレルもその味を認めつつ、酒がないことを惜しむ場面もあった。
ライナの成長と将来への期待
食事の席ではライナのスキル習得が祝われ、シルバー昇格試験への挑戦が話題となった。仲間たちはライナの実力を評価し、試験突破を確信していた。一方でモングレルは自身の立場を軽く茶化されながらも、彼女の成長に感慨を覚えていた。
年齢と立場の違いの自覚
会話の中で年齢の話題が上がり、モングレルが最年長であることが明らかになった。他のメンバーが若い中で、自身の年齢や将来について思いを巡らせる場面もあったが、それでも場の雰囲気は終始和やかであった。
夜の余韻と個人的な満足
夜が更け、各自が寝床につく中で、モングレルは別に仕込んでいた燻製の昆布締めを一人で味わった。昆布の旨味と燻製の風味が重なり、完全ではないながらも故郷の味を思わせる仕上がりに満足する。異世界の食材と調理でありながら、自身の記憶にある味に近づけたことに、深い充足感を覚えていた。
第十九話 月下の死神
湖畔からの撤収と帰路
ザヒア湖での滞在を終えた一行は、拠点を撤収してドライデン経由でレゴールへ戻ることとなった。収穫は水鳥肉とハイテイルの肉が中心で、現金収入には乏しかったものの、モングレル自身は釣りを十分に楽しめたこともあり、遠征そのものには満足していた。帰路は極めて平穏で、道中に大きな襲撃もなく、時折ライナが樹上の鳥を射落とす程度で順調に進んでいった。
北門前に現れた月下の死神
レゴール北門へ到着したその瞬間、一行の横を黒い軍馬に乗った騎士が駆け抜けていった。その人物は黄色い仮面をつけ、大鎌状の長柄武器グレートハルペを担いでおり、ハルペリアの精鋭馬上騎士部隊である月下の死神の一員であることは明白であった。シーナですら緊張を滲ませるほどの威圧感があり、その存在は一行に強い衝撃を与えた。
死神よりも気になった武器の違和感
周囲が月下の死神そのものに圧倒される中、モングレルはその騎士が持っていたグレートハルペの形状に注目していた。自分が以前購入したグレートハルペと鎌の角度が違って見えたため、自身の武器が偽物、あるいは不完全品ではないかという疑念を抱いた。
アレックスによる鑑定と問題点の判明
宿に荷物を戻した後、モングレルはすぐにギルドへ向かい、アレックスに自身のグレートハルペを見せて確認を求めた。その結果、武器自体は本物らしいものの、鎌の取り付け角度が実物よりも急であり、使い勝手に問題がある可能性が指摘された。安く売られていた理由も、その欠点にあるのではないかと推測された。
月下の死神来訪の理由をめぐる不安
ギルドでは月下の死神がレゴールに現れた理由について話題となったが、誰にも明確な心当たりはなかった。戦争や大規模な異変、あるいはラトレイユ方面の重大事案など、さまざまな可能性が挙げられたものの、いずれも推測の域を出なかった。そのためギルド内には不穏な空気が漂い、念のため待機しておくべきではないかという判断も出された。
平穏な終幕と残る不気味さ
その後、モングレルはギルド仲間たちに遠征で作ったハイテイルのジャーキーを振る舞いながら雑談に加わった。仲間たちは相変わらずアルテミスとの関係をからかってきたが、大きな事件には発展しなかった。そして月下の死神の来訪によって何かが起きる気配はありつつも、その日は結局何事も起こらぬまま終わったのであった。
第二十話 死神の定期哨戒
密命を帯びた夜間行動
モングレルたちが湖で過ごしていた頃、月下の死神の一員であるギュスターヴは、漆黒の軍馬モナルクに跨り、険しい山道を進んでいた。彼はハルペリア王国の諜報任務を担い、秘匿された山道を通ってシュトルーベ近郊へ向かっていた。道中では不用意な接近を避けるため慎重な行動を取り、任務の性質上、常に警戒を維持していた。
シュトルーベ開拓村跡地の異常確認
目的地であるシュトルーベ開拓村跡地に到着したギュスターヴは、廃村の様子を遠方から観察した。村は亡霊の影響により危険な土地とされており、内部への侵入は避けた上で周辺の調査を行う判断を下した。彼は愛馬の異変察知能力を頼りに、周囲の状況把握を進めることとした。
使役魔物による偵察
ギュスターヴはギフトの力を用いて、スレイブバットのテオドールを偵察に送り出した。この能力により彼は魔物と意思疎通を行い、効率的な情報収集を可能としていた。テオドールの報告により、破壊された砦や焼け跡、さらに人間の気配があることが判明し、敵勢力の存在が示唆された。
敵斥候の排除と情報収集
ギュスターヴは現地に潜伏していたサングレール兵の斥候を発見し、無音のうちに制圧した。生き残った一人から情報を引き出し、今年は南方で侵攻準備が進んでいることを把握した後、速やかに処理を行った。彼の行動は冷徹でありながらも迅速で、任務遂行を最優先としたものであった。
戦争の兆しと憂鬱
得られた情報から、サングレールによる侵攻の可能性が高いと判断され、ギュスターヴは戦争の到来を予感した。国のために働く立場でありながら、多くの命が失われる未来に対して憂鬱な感情を抱いていた。彼はその情報を各領主へ伝達するため、帰路へとついた。
道中での魔物討伐
帰路の途中、ギュスターヴはサイクロプスと遭遇したが、グレートハルペを一閃するだけで瞬時に討伐した。常人であれば危険な魔物であっても、月下の死神にとっては障害にもならない存在であり、その圧倒的な戦闘能力が示された。
影の守護者としての役割
ギュスターヴは愛馬や使役魔物と連携しながら任務を継続し、各地への報告に向かって進んでいった。月下の死神は表舞台に立つことなく、国家の安全を支える存在であり、その活動は常に人知れず行われていたのであった。
第二十一話 休息日の爺さんたち
帰還後の休息と報告
モングレルはレゴールへ帰還後、宿でしっかりと休息を取った。遠征は精神的な疲労も大きかったが、釣りを含めて充実した時間であり、十分に気分転換となっていた。その後、依頼されていた足ヒレのデータ報告のため、クランハウスにいるモモのもとを訪れた。
足ヒレ改良の検討
モングレルの報告をもとに、モモとミセリナは試作品の改良について議論を行った。現状の足ヒレは硬さや厚みに問題があり、より撓りや長さを持たせる必要があると判断された。素材についても検討が進み、クジラの髭や魔物の甲殻など、弾力性のある素材の活用が候補として挙げられた。モングレルの実体験に基づく意見は、改良の方向性を定める上で有益なものとなった。
報酬と今後の協力
モングレルは報酬の必要性を示しつつ、今後の試作にも協力する意志を示した。モモは改良への意欲を強め、次回はより完成度の高い道具を作ることを誓った。土産としてハイテイルのジャーキーも渡され、和やかなやり取りの中で依頼は一区切りとなった。
居酒屋での再会
その後モングレルは『森の恵み亭』を訪れ、製材所のトーマスと鍛冶屋のジョスランと再会した。軽口を交わしながら酒と食事を楽しみ、久しぶりの気楽な時間を過ごした。焼きたての料理にこだわるモングレルと、豪快に飲み食いするジョスランのやり取りは、いつも通りの調子であった。
釣果の披露と驚き
モングレルはザヒア湖での釣果について語り、巨大魚ハイテイルの存在を説明した。最初は半信半疑であった二人も、スケッチと体験談を聞くうちに興味を示し始めた。さらに実際にジャーキーを食べることで、その価値を認め、酒の肴として高く評価した。
酒席での雑談と交流
三人はハイテイルの味を楽しみながら、釣りや食材、魚の生態について語り合った。淡水と海水で魚の種類が異なるという知識に感心する場面もあり、終始賑やかな雰囲気であった。モングレルはからかわれつつも、酒と雑談を満喫し、久々の安らいだ時間を過ごしたのであった。
第二十二話 不審な陽光
月下の死神による報告任務
ギュスターヴは愛馬モナルクを伴い、レゴール伯爵邸を訪れた。長距離の強行軍であったためモナルクを厩舎で休ませ、自身は伯爵との面会に臨んだ。月下の死神としての立場上、急ぎの重要案件を携えての訪問であった。
シュトルーベの亡霊出現という吉報
ギュスターヴはまず、今年もシュトルーベの亡霊が現れたことを報告した。サングレール側が建設中だった砦は破壊され、戦略物資も焼き払われていた。これにより、東側からの侵攻圧力は今年も弱まる可能性が高いと判断され、レゴール伯爵にとっては良い知らせと受け止められた。
亡霊の正体不明性と継続する脅威
シュトルーベの亡霊は十年以上にわたり夏ごとに現れ、サングレールの軍事施設を襲ってきた存在であった。しかし姿形も攻撃方法も一定せず、アンデッド説を含めて決定的な正体は不明のままであった。月下の死神ですら詳細を掴めておらず、依然として謎多き脅威として認識されていた。
南方侵攻の可能性という凶報
続いてギュスターヴは悪い知らせとして、サングレール聖王国が南方のトワイス平野付近で軍需物資を動かしていることを報告した。収穫期の前後を狙った侵攻の可能性が高く、今年の秋に戦争が起こる懸念が強まっていた。東でなく南から攻める近年の傾向とも一致しており、事態は深刻であった。
レゴール伯爵の判断と防衛準備
レゴール伯爵は、敵に迎撃規模を悟らせないため軍やギルドへの通達は最小限に抑えつつ、水面下で準備を整える方針を示した。必要時にはレゴール軍を派兵し、ギルドからもシルバー以上を動員する意向を示し、国軍からの後続指示に従う形で対応することとなった。ギュスターヴはその迅速かつ現実的な判断を高く評価した。
ケイオス卿探索への牽制
面会の最後に、レゴール伯爵はギュスターヴへ、この街でケイオス卿を探ることを控えてほしいと求めた。理由は明言されず、なんとなくとしか語られなかったが、伯爵は明確に一線を引いていた。ギュスターヴは本件が本務ではないこともあり、その場では要求を受け入れ、鎌に誓って探索を行わないと約束した。
迫る戦争への備え
こうしてギュスターヴは、レゴールからの出兵と動員の確約を得ることに成功した。最善は戦争が起こらないことであったが、敵の自制に期待するだけでは国は守れないため、過剰であっても備えを進める必要があると改めて認識していた。彼にとって今回の訪問は、不穏な秋に備えるための重要な布石となったのであった。
第二十三話 力任せの模擬戦
ギルドでの噂と挑発
モングレルがギルドを訪れると、チャックに絡まれた。話題はジョゼットへの贈り物という噂であったが、実際は釣り竿の部品製作への礼に過ぎなかった。さらに話は「月下の死神」がレゴールに滞在し、兵士たちに訓練を施しているという噂へと移った。強大な実力を持つ彼らの話題に、若いギルドマンたちは興奮し、自分の実力を試したいという気持ちを募らせていった。
模擬戦への流れ
チャックは勢いのままモングレルに勝負を挑んだ。周囲も面白がって観戦に回り、修練場で模擬戦が行われることとなった。ルールは一撃を有効打とする簡易なものであり、両者は木剣を手に向かい合った。チャックはロングソード、モングレルはバスタードソード型の木剣という装備差があった。
力任せの戦闘開始
試合開始と同時にチャックは上段からの強打を繰り出したが、モングレルは正面から受け止め、力で押し返した。通常であれば不利なはずの打ち合いで、モングレルは圧倒的な腕力によって主導権を握った。力任せの鍔迫り合いにより、チャックは早くも押し込まれる形となった。
間合い戦への移行と崩壊
チャックはリーチを活かした間合い戦へ切り替え、慎重に攻撃を繰り出した。しかしモングレルはそれを許さず、相手の剣に自ら打ち当てることで体勢を崩し、距離を詰め続けた。剣術ではなく純粋な力と圧力で押し切る戦法により、チャックの優位性は完全に失われた。
決着と圧倒的差
激しい打ち合いの末、モングレルの一撃によってチャックの木剣は弾き飛ばされ、勝負は決した。周囲から見ても明確な実力差であり、モングレルの勝利は疑いようのないものであった。チャックはその力に驚愕しつつも敗北を認めるしかなかった。
戦闘後のやり取り
試合後、モングレルは対人戦用の剣術の重要性を指摘し、チャックに助言を与えた。チャックは悔しさを滲ませながらもその言葉を受け止め、今後の課題として認識した。一方でモングレルは勝利を理由に酒を奢らせようとし、いつもの軽口の応酬へと戻っていった。
第二十四話 卑しい者の食肉
風呂を目標とした任務開始
モングレルは任務後にアルテミスの風呂を利用する計画を立て、そのために仕事への意欲を高めていた。ライナに事前連絡を頼みつつ、任務を終えた後の楽しみとして風呂を位置付けていた。
下水工事と犯罪奴隷の労働
任務先はレゴール東門外の下水道工事現場であり、そこでは犯罪奴隷たちが重労働に従事していた。街の衛生を支える重要な工事である一方、彼らにとっては懲罰的な作業であり士気は低かった。モングレルは自らも労働に加わり、作業の進行を助けた。
犯罪奴隷ロディとの再会
モングレルは過去に捕縛したギルドマンのロディと再会した。ロディは違法行為を悔いながらも、真面目に働くことで待遇が改善しつつある状況にあった。自由を失い粗末な食事しか与えられない生活に苦しみつつも、更生を目指していた。
肉への渇望とジャーキーの施し
ロディは肉をほとんど口にできない生活を嘆き、狩人としての過去を懐かしんでいた。モングレルは周囲に見られないようジャーキーを与えた。ロディはそれを味わい、久々の肉の味に涙を流すほど感動した。この出来事は、彼の更生への意欲をさらに強めるものとなった。
作業の進展と小さな配慮
その日の作業は順調に進み、モングレルはロディの働きを兵士に伝えるなど、彼の待遇改善を後押ししようとした。わずかな配慮ではあるが、ロディの未来に影響を与える可能性が示唆された。
風呂での休息と交流
作業後、モングレルはアルテミスのクランハウスで風呂を利用した。ナスターシャの準備した湯に浸かり、労働の疲れを癒やした。その最中、ウルリカが入ってきて共に入浴し、エールを差し入れるなど親しい交流が行われた。
入浴中の会話と価値観の対比
風呂の中でウルリカはモングレルをアルテミスへ勧誘したが、モングレルは自由を重視してこれを拒否した。ソロであることや徴兵回避など、自身の立場にこだわる理由が語られた。ウルリカはなおも関係を深めようとするが、最終的に照れを見せてその場を離れた。
一人の余韻と満足
再び一人となったモングレルは、風呂と酒という贅沢を味わいながら静かな満足感に浸った。過酷な労働と対照的な安らぎの時間が、彼にとって大きな価値を持つものであった。
第二十五話 祝福の犬笛
昇級試験緩和の通達
その日ギルドには珍しくギルド長のラムレイが姿を見せ、人手不足への対応として昇級試験の実施日増加と参加費用の割引、さらにブロンズ以下の昇級条件の一部緩和を発表した。木材不足や収穫期に向けた人員確保が目的であり、若いギルドマンたちは思わぬ好機に大いに沸き立っていた。
ライナの昇格試験開始
この日はライナがブロンズ3からシルバー1へ上がるための昇級試験の日でもあった。試験場にはシーナとアレクトラが見守りに来ていたが、二人ともライナの合格をほとんど疑っていなかった。最初の試験は遠距離の標的に書かれた数字を順番に射抜くものであり、ライナは補助スキルに頼ることなく正確にこなしていった。
弱点射撃試験と実力の証明
続く試験では、チャージディアを模した標的の弱点部位を狙う内容が課された。こちらではライナは照星を用いて精密射撃を行い、危なげなく高得点を重ねた。実戦経験を積んでいたこともあり、シーナたちは一年前でも十分合格できたはずだと評していた。
戦争の気配への懸念
試験を見守る中で、昇級条件の緩和が単なる人手不足対策ではなく、収穫期に向けた徴兵や戦時動員の準備ではないかという不安も語られた。ブロンズやシルバーの数を早急に増やそうとしていることに、モングレルは戦争の兆しを感じ取っていた。シーナは仮に徴兵が起きても、アルテミスの仲間は守りきると断言した。
ライナの合格と昇格
やがて試験は無事に終了し、ライナは見事シルバー1への昇格を果たした。本人は思ったよりも試験が簡単だったと驚いていたが、周囲にとっては当然の結果であった。これによりライナは、ついに念願だったシルバーの認識票を得る立場に到達した。
モングレルからの合格祝い
モングレルは以前から用意していた合格祝いとして、シャチの牙から削り出した犬型のペンダントをライナに贈った。それは単なる装飾品ではなく、内部に玉を仕込んであり、息を吹き込めば笛として鳴る実用品でもあった。遭難時には助けを呼ぶ道具になり、さらに矢に取り付ければ鏑矢のようにも使える工夫まで施されていた。
祝福の受領と二人の関係
ライナはその手作りの贈り物を予想以上に喜び、モングレルに深く感謝した。モングレルもまた、その反応に満足しつつ、シルバーとなってからも安全第一で行動するよう改めて言い聞かせた。こうしてライナの昇格は、仲間たちの祝福とモングレルの過保護とも言える贈り物によって、温かく締めくくられた。
特別書き下ろし番外編①モモとモングレルとモノづくり
モモの生い立ちと母サリーの教育
若木の杖の団長サリーは、若くして娘モモを授かり、夫を事故で失った後は一人で育てていた。常識から外れた教育方針により周囲を困惑させることも多かったが、モモに対する愛情は確かであり、周囲の支えを受けながら成長していった。幼少期には高度すぎる魔法書を読ませようとするなど危うい場面もあったが、周囲の介入によって回避されていた。
誕生日の贈り物と親子の関係
十歳の誕生日にサリーは高品質なロッドをモモに贈った。普段は奇妙な言動が多い母であったが、この贈り物には確かな愛情が込められており、モモは心から喜んだ。こうした出来事を通じて、サリーは不器用ながらも母としての役割を果たしていた。
モモの発明への目覚め
十二歳頃になるとモモは魔法使いとしての道よりも、魔道具や生活用品の開発に興味を持つようになった。試作した水筒などは未完成なものが多かったが、失敗を繰り返しながらも意欲を失うことはなかった。その原動力には、街で活躍する発明家ケイオス卿への憧れがあった。
モングレルとの出会い
発明について悩むモモに対し、サリーはギルドマンのモングレルを紹介した。ギルドマンに対して偏見を持っていたモモであったが、実際に会ったモングレルは落ち着いた人物であり、発明や道具作りに関して的確な知識を持っていた。モモの作った水筒を見ただけで構造や問題点を理解し、具体的な改良案を提示したことで、モモは彼の知性を認めるようになった。
モノづくりを通じた交流
モングレルは自分の装備を改良することを楽しむ実用主義の人物であり、その考え方はモモの志向と一致していた。二人は物作りについて長時間語り合い、サリーはその様子を満足げに見守っていた。モングレルは失敗を否定せず、前向きに積み重ねることの重要性を語り、モモに自信を持つ姿勢を教えた。
モモの変化と新たな目標
モングレルとの対話を経て、モモは失敗に対する捉え方を改め、より前向きに発明へ取り組むようになった。彼を目標の一つとして意識し、次に会う時には自分の発明で驚かせると決意した。サリーはその変化を喜び、モモの成長を静かに見守った。
再会と成長の証
その後、若木の杖が王都へ拠点を移したため二人は長く離れることとなったが、再会したモモは自信に満ちた姿へと成長していた。モングレルとの出会いは、モモにとって発明家としての意識を芽生えさせる重要な転機であった。
特別書き下ろし番外編②新たな故郷で買い物デート
クランハウスでの日常と役割分担
アルテミスのクランハウスでは、シーナとナスターシャを中心に少人数のメンバーが共同生活を送っていた。ライナは掃除などの雑務を積極的にこなし、ウルリカは料理を担当し、ゴリリアーナは力仕事を担っていた。一方でナスターシャは家事に不慣れで、手を動かさずに過ごす場面もあり、ライナから生活態度を注意されることもあった。
ナスターシャへの指摘と外出の提案
ライナの指摘を受けたナスターシャは、自身の生活態度を省みることとなった。そこへシーナが現れ、備品の買い出しを理由にナスターシャを外へ連れ出すことを提案した。これによりナスターシャは荷物持ちとして同行することとなり、他のメンバーには土産の菓子を約束して出発した。
街での会話と関係性の確認
道中、シーナはナスターシャに対し、仲間との関わり方や気遣いの重要性を説いた。ナスターシャはそれを受け入れ、今後は配慮する意志を示した。二人は周囲から自然と道を譲られるほどの存在感を持ちながらも、穏やかに会話を重ねていた。
雑貨店での買い物と街の変化
二人は雑貨店でインクや封蠟といった日用品を購入した。店主とのやり取りを通じて、レゴールの商人たちの気質や商売の在り方も垣間見えた。王都と比べれば品揃えや質に差はあるものの、街の発展によって今後の成長が期待される様子であった。
菓子店での休息と街への愛着
続いて訪れた菓子店では、流行のデザートを楽しみながら会話を交わした。店の成長にはモングレルの助言が関わっている可能性が語られ、彼の意外な一面が示唆された。二人は料理や店の質に満足しつつ、レゴールの店に対しても王都に劣らぬ価値を見出していた。
新たな故郷としてのレゴール
シーナはかつての貴族としての生活と比較しながらも、現在のギルドマンとしての生活に適応している自分を自覚していた。レゴールでの暮らしに満足し、この地を新たな故郷として受け入れつつある心境が語られた。ナスターシャもまた、シーナと共にいることを最も重要視しており、場所ではなく関係性に価値を置いていた。
帰路と日常への回帰
二人は土産を手にクランハウスへ戻ることを決め、仲間たちの待つ日常へと帰る準備を整えた。レゴールでの生活と人間関係は確実に深まり、彼女たちにとってかけがえのない日常となっていた。
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