バスタード・ソードマンフィクション(Novel)読書感想

小説「バスタード・ソードマン 3」感想・ネタバレ

バスタード・ソードマン 3の表紙画像(レビュー記事導入用) バスタード・ソードマン

バッソマン 2巻レビュー
バッソマン まとめ
バッソマン 4巻レビュー

  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. ギルドマンの日常
      1. 季節に大きく左右される仕事事情
      2. ギルド酒場での交流と暇つぶし
      3. 森での野営(キャンプ)と猟師飯
      4. 地道な労働と常に伴う危険
      5. まとめ
    2. キャンプ道具の自作
      1. 組み立て式の煙突と現地調達の石組みストーブ
      2. ハーフオープンの簡易三角テント
      3. 現地調達の天秤棒
      4. まとめ
    3. 飲食店経営のコンサル
      1. 「ケンの菓子工房」が抱えていた課題
      2. 破格のコンサル報酬契約
      3. モングレルが実行した具体的なコンサル施策
      4. まとめ
    4. 過去の因縁と復讐
      1. 故郷「シュトルーベ開拓村」の悲劇
      2. 「シュトルーベの亡霊」としての復讐
      3. 幼馴染「スピカ」の名を騙る暗殺
      4. まとめ
  6. 登場キャラクター
    1. 主人公と家族
      1. モングレル
      2. モングレルの父
      3. モングレルの母
    2. 冒険者ギルド
      1. ミレーヌ
      2. エレナ
      3. ジェルトナ
    3. パーティー「アルテミス」
      1. ライナ
      2. ウルリカ
      3. ナスターシャ
      4. ジョナ
      5. シーナ
      6. ゴリリアーナ
    4. パーティー「収穫の剣」
      1. チャック
      2. ディックバルト
      3. バルガー
    5. パーティー「大地の盾」
      1. ミルコ
      2. アレックス
      3. ランディ
      4. フリード
    6. パーティー「若木の杖」
      1. サリー
      2. モモ
      3. ミセリナ
    7. パーティー「最果ての日差し」
      1. フランク
      2. チェル
    8. その他のギルドマン
      1. ウォーレン
      2. ブライアン
    9. レゴール警備部隊・診療所
      1. カスパル
      2. ユークス
    10. 街の住民・商人・その他
      1. ダリア婆さん
      2. ケン
      3. トーマス
      4. ロイド
      5. バロメ婆さん
      6. メルクリオ
      7. 親方
    11. シュトルーベ開拓村
      1. スピカ
      2. おばさん
      3. 狩人の爺さん
    12. サングレール軍
      1. ウィード
      2. テュロク
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ
    2. 第一話 野鳥狩りの拠点
    3. 第二話 狩人の豪華な晩餐
    4. 第三話 ライナの帰宅と欲しいスキル
    5. 第四話 この世界が仮に何らかの作り物だとして
    6. 第五話 雨上がりのロードサービス
    7. 第六話 暇な酒場のボーイズトーク
    8. 第七話 ケンさんのお店をどうにかしろ
    9. 第八話 最も重要な一・二番テーブル
    10. 第九話 ストロングなモングレル
    11. 第十話 スモーカーの休憩時間
    12. 第十一話 好みの防具あれこれ
    13. 第十二話 悪意の蝶
    14. 第十三話 任務後ティータイム
    15. 第十四話 爆ぜていない種子
    16. 第十五話 やりがいのある悪い仕事
    17. 第十六話 壮絶なダメージラグマットを
    18. 第十七話 包帯男の帰還
    19. 第十八話 弱点看破と強射
    20. 第十九話 男だらけの野営大会
    21. 第二十話 罠の狩人
    22. 第二十一話 鯨の髭と道具の改良
    23. 第二十二話 伐採準備作業の護衛
    24. 第二十三話 魔法の適性
    25. 第二十四話 ウォーレンの理想的ギルドマン
    26. 第二十五話 馬の耳にフォークソング
    27. 第二十六話 第三回熟成カビ入り スモークチーズ猥談バトル
    28. 第二十七話 異世界ストラックアウト
    29. 第二十八話 ポーションの定期交換
    30. 第二十九話 アラサーが三十路になった話
    31. 第三十話 シュトルーベの亡霊
    32. 第三十一話 帰宅と次の遠征計画
    33. 特別書き下ろし番外編シュトルーベに溜め池を作ろう!
    34. 特別書き下ろし番外編 ヘシュトルーベで草むしりをしよう!
  8. バスタード・ソードマン シリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、圧倒的な実力を隠し持ちながら「平和にだらだら生きる」ことを理想とする男、モングレルの日常を描いた異世界ファンタジーシリーズの第3巻である 。物語の舞台は、ハルペリア王国の農業都市レゴールである 。 精霊祭を終え、再び穏やかな日々が戻るかと思われた矢先、街に「地獄蟻(ヘルアント)」の脅威が迫る。モングレルは相変わらず目立つことを嫌い、徴兵や面倒事を避けるために立ち回るが、周囲の仲間や街の平穏を守るため、持ち前の能力と知恵を駆使して「ほどほど」に事態へ介入していく 。

■ 主要キャラクター

  • モングレル:本作の主人公。異世界転生者であり、中途半端な長さの「バスタードソード」を二十数年にわたり愛用している 。徴兵や貴族の派閥争いに巻き込まれるのを防ぐため、あえてブロンズランクに留まり続けている 。
  • ライナ:女性パーティー「アルテミス」に所属する若手の弓使い 。モングレルを「恩人」として慕っており、彼から狩りのノウハウやギルドでの立ち回りを教わっている 。
  • ミレーヌ:ギルドの受付嬢。優秀な実績を上げながらも昇級を頑なに拒むモングレルに呆れつつ、彼に適切な依頼を回すなど信頼関係を築いている 。
  • バルガー:ベテランの短槍使い。モングレルの兄貴分に近い存在であり、酒場で共に語らう間柄である 。

■ 物語の特徴

本作の大きな魅力は、主人公が「成り上がり」を拒絶し、徹底して「現状維持」と「平穏」を追求する点にある 。他の異世界転生作品とは一線を画し、都市の衛生管理や魔物の解体、独自の食文化(釣りや自炊)の追求といった生活感溢れる描写が非常に緻密である 。 また、モングレルが匿名で便利な道具を世に送り出す「ケイオス卿」としての活動も、街の文明レベルを緩やかに変化させていく独自の面白さを持っている 。

書籍情報

バスタード・ソードマン 3
著者:ジェームズ・リッチマン 氏
イラスト:マツセダイチ  氏
出版社:KADOKAWA
発売日:2024年4月26日
ISBN:9784047378704

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あらすじ・内容

一泊二日の春キャンプ。酒の肴は二人だけの秘密の話……!?
春は目覚めの季節である。この時期のギルドマンたちは皆、硬くて不味い干し肉を放り投げ、冬眠から目覚めた獣を狩りに森へと出かけていくのだ。もちろんモングレルも例に漏れず新鮮な肉を求めてライナやウルリカらと共にキャンプへと繰り出し、楽しい毎日を送っていた。そんな彼にある日突然ギルド長から直々の呼び出しがかかる。なんとその要件とは「シルバーウルフを全く傷つけずに狩猟しろ」というあまりにも滅茶苦茶な仕事の依頼で……!?

バスタード・ソードマン 3

感想

本作の第3巻は、ゆったりとしたスローライフを軸に、バカバカしい男たちの猥談と、ベテラン冒険者としての確かな実力が同居している。
ホロリとくるような情緒あるエピソードも描かれており、硬軟織り交ぜた描写がそれぞれに心地よい。

主人公のモングレルがついに三十歳の大台に乗った。
記念すべき誕生日を、四十歳のおっさんと、もうすぐ三十歳になる兄ちゃんと共に、酒場でグダグダと飲みながら祝ってもらう。
この飾り気のない光景こそが、本作のもつ独特な魅力だといえよう。
ギルドマン以外の一般人にも妙に顔が広いモングレルだが、なかでも強烈な個性を放つパティシエのケンとのやり取りは、続き物として非常に楽しめた。

自作の釣り道具を工作したり、前世の知識を活かしてコンサルのような真似をしたりする姿は、まさに完璧なスローライフそのものである。
一方で、今はなき故郷シュトルーベに関連する話も掘り下げられ、幼馴染のスピカが登場。
また、「シュトルーベの亡霊」としての恐ろしいビジュアルが挿絵によって明かされたが、あのような姿で襲われたら、どんな兵士でも震え上がるに違いない。

前巻からつづく「例の道具」にまつわるバルガーとのやり取りには、思わず笑ってしまった。
スケベ伝道師の件もますますひどい状況(誉め言葉)になっており、この作品らしいおふざけが満載である。
ゆったりとしたキャンプの夜と、シビアな過去の記憶、そして馬鹿げた笑いが入り混じった、実に密度の濃い一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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バッソマン 2巻レビュー
バッソマン まとめ
バッソマン 4巻レビュー

考察・解説

ギルドマンの日常

「バスタードソード・ソードマン」におけるギルドマンの日常は、魔物との死闘といったヒロイックな側面だけでなく、季節に左右される仕事事情、地道な肉体労働、そして酒場での仲間との交流など、泥臭くも活気に満ちた生活として描かれている。
その具体的な日常の様子は以下の通りである。

季節に大きく左右される仕事事情

ギルドマンの仕事量は季節によって劇的に変化する。
・冬の閑散期:雪が降ると馬車の往来が減って護衛任務がなくなり、魔物の出現も減るため、仕事が激減して非常に暇になる。蓄えのない者は都市での期間工や荷運びで食いつなぐが、寒さを理由に働かない怠け者も多くいる。ギルドはこの暇な時期を利用して、新人向けの「昇級試験」を実施している。
・春から秋の繁忙期:雪が解けると交易が再開し、魔物も活発になるため稼ぎ時となる。しかし春は、一攫千金を夢見て田舎から出てきた無謀なルーキーたちがギルドに殺到し、さらに他都市からの「移籍組」も流入するため、ギルド内が混雑し、縄張り争いのような殺伐とした空気になることもある。
・秋の収穫期:農業国家であるハルペリアでは、収穫期になると荷馬車を狙う盗賊が増えるため、ブロンズランク以上のギルドマンは街道警備や農村の見回りといった任務に強制参加させられる。

ギルド酒場での交流と暇つぶし

仕事がない日や任務終わりには、多くのギルドマンがギルドに併設された酒場に集まる。冬場は自前の薪代を節約するため、暖房の効いたギルドに入り浸る者が増える。
・情報交換と装備の整備:テーブルに装備を並べて油を塗り込みながら、虫系魔物への対処法など、実戦的な戦術について真面目に語り合うこともある。
・娯楽と狂騒:「ムーンボード」と呼ばれるボードゲームで遊んだり、酒が入れば下世話なボーイズトークや「猥談バトル」などの狂騒で盛り上がったりと、荒くれ者らしい騒がしい日常が繰り広げられる。

森での野営(キャンプ)と猟師飯

討伐や護衛で都市から離れる場合、森での夜営(キャンプ)が基本となる。
・モングレルは快適な野営を好んでおり、自作の煙突付きの組み立て式かまどや、簡易テント、魔物除けのお香などを持ち込んで拠点を作る。
・狩りの醍醐味として、仕留めた獲物(クレイジーボアや鳥など)を川辺で解体し、血抜きや内臓の処理を行い、その場で串焼きや唐揚げ、スープなどのジビエ料理を作って味わう風景が日常的に描かれている。

地道な労働と常に伴う危険

・雑用と肉体労働:ギルドマンの仕事は戦闘ばかりではない。モングレルのように、街のゴミや馬糞を拾う「都市清掃任務」や、製材所での過酷な「薪割り作業」、引越しや倉庫整理の荷運びなど、体力勝負の日雇い労働で日銭を稼ぐことも日常の一部である。
・死と隣り合わせの現実:ギルドマンは常に危険と隣り合わせの職業である。不用意に森に入った若者が命を落とすことは日常茶飯事であり、ベテランであっても強力な魔物(ハーベストマンティスなど)との遭遇で突然仲間を失ったり、加齢による衰えを感じて引退を意識したりするシビアな現実を抱えて生きている。

まとめ

このように、ギルドマンの日常は泥臭く過酷な面も多いが、稼いだ金で美味い飯と酒を楽しみ、新しい装備を吟味し、仲間と語り合いながらしたたかに生き抜く、たくましい姿として描かれている。

キャンプ道具の自作

モングレルは前世(現代日本)の知識と感覚を持っており、過酷なギルドマンの任務中であっても「快適な野営(キャンプ)」環境を構築することに強いこだわりを持っている。そのため、持ち運びの利便性と現地調達を組み合わせた独自のキャンプ道具を自作・考案している。
彼が自作・工夫している主なキャンプ道具は以下の通りである。

組み立て式の煙突と現地調達の石組みストーブ

・マトリョーシカのように入れ子式に収納できる金属製の筒を持参し、現地で組み立てて約2メートルの煙突にする。
・薪ストーブの本体(箱部分)は重く嵩張るため持ち歩かず、代わりにストーブ用の天板(鉄板)のみを持参する。
・野営地で長方形に石を組んでかまどを作り、その上に天板を乗せて煙突を固定することで、即席の薪ストーブを構築する。
・これにより煙突効果で薪が効率よく燃えて暖かく、煙も上に逃げるため煙たくならないという、快適な調理・暖房環境を作り出している。

ハーフオープンの簡易三角テント

・野営時の寝床として、ピラミッドの四面のうち三面だけを布で覆ったような、半分オープン状態の簡易テントを使用している。
・設営には現地の長い木の枝をポールとして使い、布の隅は小さな枝をペグ代わりにして地面に固定する。
・普通の雨や落ちてくる虫を防げるだけでなく、布の壁が焚き火や薪ストーブの熱を受け止めてくれるため、内部は非常に暖かくなる。
・床にはチャージディアの毛皮で作ったラグマットを敷くことで、寝心地を格段に向上させている。

現地調達の天秤棒

・狩りを終えて獲物を持ち帰る際、現地の細木を切り出して天秤棒を自作する。
・木の両端に溝を掘り、中央には肩当て用の窪みを作ったシンプルなものであるが、溝の位置を変えることで重さの違う荷物でもバランスを取ることができる。
・血の滴る魔物の肉を吊るして運ぶことで、服を汚さずに血抜きをしながら歩けるという非常に実用的な道具である。
・不要になれば燃やしたり捨てたりできる手軽さも兼ね備えている。

まとめ

このようにモングレルのキャンプ道具は、「持ち運ぶものは最小限のパーツ(煙突、天板、布)に留め、重い土台や骨組み(石、木の枝)は現地で調達して組み合わせる」という合理的な思想で作られており、彼の野営における高いサバイバル技術と快適さへの執念を示している。

飲食店経営のコンサル

「バスタードソード・ソードマン」において、モングレルが飲食店経営のコンサルタントのような役割を果たすエピソードは、王都から移住してきた菓子職人「ケンさん」の店(ケンの菓子工房)の立て直しとして描かれている。
その具体的な経緯と施策は以下の通りである。

「ケンの菓子工房」が抱えていた課題

ケンさんの店は、美味しくて質の高いお菓子(豊穣クッキーやフロランタンなど)と、代用コーヒーであるタンポポ茶を提供する素晴らしい店であった。
・しかし、庶民向けの通りにあるため高級路線の商品と客層が合わず、店内飲食の客が全く来ないという深刻な経営不振に陥っていた。
・モングレルは原因を分析し、小さなネームプレートしかない圧倒的な視認性の低さと、丸テーブルと椅子しかない殺風景で長居したくならない内装が大きな障壁になっていると見抜いた。

破格のコンサル報酬契約

ケンさんの作るお菓子とタンポポ茶を深く気に入ったモングレルは、店が潰れてしまっては困ると考え、相談役として店のテコ入れを買って出た。
・彼が要求した報酬は金銭ではなく、「店が繁盛した暁には、今後自分が頼むタンポポ茶を半額にする」という、自分の食生活を豊かにするためのささやかな(しかし店からすれば厄介な)条件であった。

モングレルが実行した具体的なコンサル施策

モングレルは現代のマーケティング知識を活かし、以下の施策を矢継ぎ早に実行した。
・立て看板の設置(視認性の向上):失敗した洗濯板の木材を流用し、メニューや店名が大きく書かれたA字型の立て看板を自作して店の前に設置した。
・ターゲット層へのプロモーションと口コミ戦略:甘いものを好む女性層を狙い、ギルドの受付嬢(エレナ)にお菓子を賄賂として渡して宣伝ポスターをギルド内に掲示させた。さらに、女性パーティー「アルテミス」の面々にサンプルのお菓子を振る舞い、彼女たちの口コミネットワークを利用して集客を図った。
・顧客からのフィードバックと内装投資:来店した「アルテミス」のシーナから「店が殺風景で居心地が悪い」という的確なダメ出しを引き出し、ケンさんに店内の環境改善(内装への投資)の重要性を説いた。

まとめ

これらの施策は見事に的中し、アルテミスの来店を皮切りにギルドの女性陣が次々と訪れるようになった。ケンさんが売上を惜しみなく調度品などの設備投資に回したことで、店内は見違えるほど魅力的な空間になり、女性客やそれ目当ての男性客で連日満員御礼の大繁盛店へと成長した。人を雇うほどの人気店になった後も、モングレルは約束通り半額のタンポポ茶と安い豆菓子で席に長時間居座り、コンサルの見返りを存分に堪能している。

過去の因縁と復讐

「バスタードソード・ソードマン」において、「過去の因縁と復讐」というテーマは、普段は面倒事を避け、平和を愛する怠惰なギルドマンとして振る舞う主人公・モングレルの「裏の顔」と深く結びついて描かれている。
彼が抱える過去の因縁と、現在も密かに続けている復讐(報復活動)の具体的な内容は以下の通りである。

故郷「シュトルーベ開拓村」の悲劇

・モングレルは、ハルペリア王国とサングレール聖王国の国境付近にあった「シュトルーベ開拓村」の出身である。
・ハルペリア人の父とサングレール人の母の間に生まれたハーフであり、前世の記憶を持っていた彼は、幼馴染の少女スピカと共に「村を二つの国の間を取り持つ大きな交易都市にする」という夢を語り合っていた。
・しかし彼が九歳の頃に両国の戦争が再開し、村はハルペリア軍に物資を根こそぎ徴発された後、サングレール軍の侵攻を受けて皆殺しにされ、両親を含め村は滅亡してしまった。

「シュトルーベの亡霊」としての復讐

・モングレルは表向き「人同士の殺し合いは嫌だ」と語り、対人任務を徹底して避けている。
・しかしその裏で、彼は毎年夏になると、現在はサングレール領となっている故郷の跡地へ単独で赴いている。
・そこで両親の墓参りや村の跡地の草刈りを行う一方で、周辺に建設されているサングレール軍の砦や軍事施設を容赦なく破壊し続けている。
・この長年にわたる破壊活動と暗殺により、サングレール軍からは「人か魔物かもわからない恐ろしい存在」として、「シュトルーベの亡霊」と呼ばれ深く恐れられている。

幼馴染「スピカ」の名を騙る暗殺

・特別書き下ろし番外編では、サングレール軍の若い兵士・ウィードの視点から、モングレルによる冷酷な復讐の様子が描かれている。
・モングレルはサングレール軍の装備を身に纏い、かつての幼馴染である「スピカ」の名を名乗って友軍を装い、敵兵に接近する。
・そして相手が油断した隙を突き、自身のギフトである『蝕(イクリプス)』の力を用いて、一瞬で首を斬り落とし暗殺するという非情な手口を用いている。

まとめ

モングレルは狩人酒場でウルリカに故郷の滅亡を語った際、「当時(転生後)は語学習得に必死で、故郷への思い入れはほとんどなかった」と内心で独白している。しかし実際には、毎年危険な敵国領の深部まで足を運び、両親の墓を守りながらサングレール軍への執拗な攻撃(彼自身の言葉を借りれば「哨戒活動」)を続けている。表の「平和主義で気楽なギルドマン」という顔と、裏の「故郷を滅ぼした軍隊を一人で狩り続ける亡霊」という顔のギャップが、彼の底知れない強さとキャラクターの深い陰影を生み出している。

バッソマン 2巻レビュー
バッソマン まとめ
バッソマン 4巻レビュー

登場キャラクター

主人公と家族

モングレル

日本で生きた記憶を持つ転生者であり、面倒事を避けるため昇級を拒み続けている。実用性を重視し、中途半端な長さのバスタードソードを愛用する。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルドレゴール支部・ギルドマン(ブロンズ3)。謎の発明家ケイオス卿。

・物語内での具体的な行動や成果
 サイクロプスやシルバーウルフの討伐、違法罠を仕掛けた男たちの制圧を行った。また、シュトルーベ跡地周辺でサングレール軍の兵士を暗殺している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 身体強化のギフトを持つ。

モングレルの父

辺境の開拓村で暮らすハルペリア人であり、独特の感性を持つ息子を見守る。

・所属組織、地位や役職
 辺境の開拓村の住人。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公が六歳の時、初めて町へ連れて行きバスタードソードを買い与えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦争により命を落とし、現在は村の跡地に墓が残されている。

モングレルの母

サングレール人であり、開拓村で家族とともに暮らしていた。

・所属組織、地位や役職
 辺境の開拓村の住人。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公の回想や墓参りの場面で言及された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主人公の白髪交じりの髪は彼女の血筋によるものである。

冒険者ギルド

ミレーヌ

丁寧な対応でギルドマンを支える受付嬢であり、主人公にも気さくに接する。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルドレゴール支部・受付嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公に泥濘に嵌まった馬車の救助や、収穫期の街道警備を依頼した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主人公に昇級を度々勧めている。

エレナ

額に青筋を浮かべて激務をこなすなど、真面目で几帳面な性格である。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルドレゴール支部・受付嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公が持ち込んだお菓子屋のポスターの掲示を許可した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 お菓子を賄賂として受け取るなど、少し柔軟な一面も見せる。

ジェルトナ

不在がちなギルド長に代わり、実務を取り仕切る苦労人である。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルドレゴール支部・副長。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公に没落貴族からの無理な依頼を回し、シルバーウルフの毛皮を調達させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主人公の実力を高く評価し、昇格を望んでいる。

パーティー「アルテミス」

ライナ

青い短髪で小柄な弓使いであり、素直で努力家な一面を見せる。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「アルテミス」・弓使い(ブロンズ3)。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公と川で釣りをし、オーガ討伐任務では目を射抜いて致命傷を与えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 手ブレを完全に抑制するスキル「照星」を持つ。

ウルリカ

薄紅色の髪を持つ弓使いであり、明るく気さくな性格で女装をしている。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「アルテミス」・弓使い(シルバー2)。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公と野営を行い、クレイジーボアを討伐した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 パーティー内で唯一の男性ギルドマンである。スキル「弱点看破」「強射」を操る。

ナスターシャ

青い長髪の女性であり、冷淡な印象を与えるが理知的な判断を下す。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「アルテミス」・副団長。水魔法使い(ゴールド1)。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公をパーティーに勧誘した。湯沸かし機構を開発し、サリーと商談を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「氷壁」の異名を持つ。

ジョナ

三十代後半の既婚女性であり、落ち着いた性格で他のメンバーをサポートする。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「アルテミス」・弓使い。

・物語内での具体的な行動や成果
 クランハウスで料理を作り、ブリジットの鎧の着脱を手伝った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 子供がいるためクランハウスには通いで在籍している。

シーナ

黒髪三つ編みの女性であり、パーティーのリーダーとして的確な指示を出す。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「アルテミス」・団長。弓使い(ゴールド2)。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公の実力を測るための合同任務を企画し、ブリジットの護衛を行った。ストラックアウトで三枚抜きを成功させる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「継矢」の異名を持つ。

ゴリリアーナ

大柄で筋骨隆々な体格の女性剣士であり、見た目に反して気弱なところがある。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「アルテミス」・剣士(シルバー2)。

・物語内での具体的な行動や成果
 アイアンランクの昇級試験で試験官を務めた。オーガの接近を防御魔法で牽制する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 グレートシミターを使用する。

パーティー「収穫の剣」

チャック

赤い短髪の若者であり、荒っぽく喧嘩っ早い性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「収穫の剣」・メンバー。

・物語内での具体的な行動や成果
 ギルドで猥談バトルを開催した。主人公と対決し、敗北を喫して吹き飛ばされた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 受付嬢のエレナに好意を寄せている。

ディックバルト

巨体を持つ大男であり、真面目な顔で下ネタを語る独特の思考を持つ。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「収穫の剣」・団長。

・物語内での具体的な行動や成果
 猥談バトルの審判を務め、主人公の発言を高く評価した。腕相撲大会で優勝し、賞品のウイスキーを皆に振る舞う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ゴールドランクであり、娼館通いに大金を使っている。

バルガー

冴えない髭面の男性であり、堅実な戦い方をするベテランである。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「収穫の剣」・短槍使い(シルバーランク)。

・物語内での具体的な行動や成果
 伐採作業の護衛任務でゴブリンを討伐した。ハーベストマンティスとの戦いで仲間を失い引退を示唆したが、新装備を買って現役続行を決める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 主人公の兄貴分的な存在である。

パーティー「大地の盾」

ミルコ

クールな顔立ちの剣士であり、思わせぶりな口調を用いる。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「大地の盾」・メンバー。

・物語内での具体的な行動や成果
 ギルドの酒場で主人公とボードゲームで対戦した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 既婚者である。

アレックス

元ハルペリア軍人の剣士であり、丁寧な物腰で冷静な判断力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「大地の盾」・剣士(シルバーランク)。

・物語内での具体的な行動や成果
 伐採作業の護衛でゴブリンを斬り伏せた。ストラックアウトで投擲の練習に参加する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ランディ

剣士であり、後輩に実力を教える面倒見の良さがある。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「大地の盾」・メンバー。

・物語内での具体的な行動や成果
 ウォーレンの昇級試験の相手を務めた。ストラックアウトで最も良い成績を残す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ウォーレンに主人公の強さを秘密裏に教えた。

フリード

剣士であり、ストラックアウトに関心を示す。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「大地の盾」・メンバー。

・物語内での具体的な行動や成果
 ストラックアウトでボール投げに参加した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 あまり投擲は上手くない。

パーティー「若木の杖」

サリー

黒のボブカットと糸目が特徴の女性であり、自由奔放で物怖じしない性格である。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「若木の杖」・団長。魔法使い(ゴールド3)。

・物語内での具体的な行動や成果
 王都からレゴールへ戻り、ナスターシャから湯沸かし機構を買い取る交渉をした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 モモという娘を持つ未亡人である。

モモ

眠そうな目をした小柄な少女である。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「若木の杖」・メンバー。

・物語内での具体的な行動や成果
 サリーから魔法の指導を受けている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 サリーの娘であり、将来美人になるとチャックから評されている。

ミセリナ

物静かで内向的な雰囲気を持つ少女である。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「若木の杖」・風魔法使い。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公を王都から進出してきた魔法用品店に案内した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 路地裏で絡まれていたところを主人公に助けられた経緯がある。

パーティー「最果ての日差し」

フランク

サングレール人の血を引く若者であり、独特の距離感を持つ。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「最果ての日差し」・リーダー。

・物語内での具体的な行動や成果
 泥濘に嵌まった行商人の馬車の救助作業を手伝った。主人公を自身のパーティーに勧誘する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他の弱小パーティーを吸収合併し、メンバーを六人に増やした。

チェル

フランクの妹であり、魔法使いとして兄を支える。

・所属組織、地位や役職
 パーティー「最果ての日差し」・魔法使い。

・物語内での具体的な行動や成果
 泥濘に嵌まった馬車の救助作業に参加した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フランクと同じくサングレール人の血を引いている。

その他のギルドマン

ウォーレン

ネクタールの農家出身の若者であり、出世を夢見ている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド・アイアン3の剣士。

・物語内での具体的な行動や成果
 ランディを相手にした昇級試験に合格した。ストラックアウトで的にボールを当てた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アレックスやライナから主人公の強さを聞き、実力への憧れを抱く。

ブライアン

ギルドマンであり、猥談バトルに参戦する。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド・メンバー。

・物語内での具体的な行動や成果
 猥談バトルに参加し、連合国出身の女性についての知識を披露した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 判定で有効打なしとされ敗北した。

レゴール警備部隊・診療所

カスパル

温厚な初老の男性であり、患者を救うことに強い使命感を持つ。

・所属組織、地位や役職
 「レゴール警備部隊」三班・ヒーラー。

・物語内での具体的な行動や成果
 収穫期の街道警備に同行し、村で農民の治療にあたった。骨折した親方の外科手術を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ケイオス卿の経口補水液のレシピを受け取り、他の医療機関への普及を決意した。

ユークス

若い青年であり、利益を重視する俗っぽい一面がある。

・所属組織、地位や役職
 「レゴール警備部隊」診療所・新米ヒーラー。

・物語内での具体的な行動や成果
 投函箱に入っていたケイオス卿からの手紙を発見し、カスパルに報告した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レシピの独占による利益を夢見ていた。

街の住民・商人・その他

ダリア婆さん

街の住人であり、手作りの保存食を振る舞う。

・所属組織、地位や役職
 街の住人。

・物語内での具体的な行動や成果
 チャックにピクルスを提供した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ケン

ロマンスグレーの中年男性であり、妥協を知らない菓子職人である。

・所属組織、地位や役職
 ケンの菓子工房・店主。

・物語内での具体的な行動や成果
 豊穣クッキーやタンポポ茶を主人公に提供した。提案を受けて店の内装や看板を改善する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王都から移住してきており、店が大きく繁盛するようになった。

トーマス

渋い顔立ちの老人であり、淡々と仕事をこなす職人である。

・所属組織、地位や役職
 製材所・職人。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公に丸太の玉切りの仕事を任せた。ケイオス卿の設計したリフティングトングを使って作業を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 コーンパイプを愛用している。

ロイド

現実的な思考を持つ解体屋である。

・所属組織、地位や役職
 ギルドの解体処理場・解体長。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公が持ち込んだサイクロプスの部位を確認し、交換票を作成した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 胃袋の内容物確認の重要性を主人公に助言している。

バロメ婆さん

街の住人であり、特製の食品を作る技術がある。

・所属組織、地位や役職
 街の住人。

・物語内での具体的な行動や成果
 チャックに熟成カビ入りスモークチーズを提供した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

メルクリオ

無精髭の中年男性であり、商売そのものを楽しむ変わり者である。

・所属組織、地位や役職
 黒靄市場・露天商。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公が作成した発火器や洗濯板を販売し、売上を渡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 野球ボールのような商品を主人公に販売した。

親方

若い青年であり、責任感が強い。

・所属組織、地位や役職
 建設会社・親方。

・物語内での具体的な行動や成果
 二階の高さから落下して脚を骨折し、カスパルの診療所で荒療治を受けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 父親から会社を継いだばかりである。

シュトルーベ開拓村

スピカ

青のショートカットの少女であり、都会への憧れを持っている。

・所属組織、地位や役職
 シュトルーベ開拓村・住人。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公とともに溜め池作りの作業を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

おばさん

開拓村の住人であり、主人公を頼りにしている。

・所属組織、地位や役職
 シュトルーベ開拓村・住人。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公にチャージディアを狩ってくるよう頼んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 スピカの母親である。

狩人の爺さん

村の住人であり、知識が豊富である。

・所属組織、地位や役職
 シュトルーベ開拓村・狩人。

・物語内での具体的な行動や成果
 主人公に空き地の土が農作業に向かないことを教えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

サングレール軍

ウィード

サングレール軍の若い兵士であり、出世を夢見ている。

・所属組織、地位や役職
 サングレール軍星球兵団・兵士。

・物語内での具体的な行動や成果
 シュトルーベ跡地の近くで食料調達を行っていたところ、スピカを名乗る人物に斬られて死亡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 民間の駆除人から兵士に出世した。

テュロク

聖堂騎士であり、兵士たちの目標となる存在である。

・所属組織、地位や役職
 サングレール軍・聖堂騎士。

・物語内での具体的な行動や成果
 ウィードが目標としていた人物として回想された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

バッソマン 2巻レビュー
バッソマン まとめ
バッソマン 4巻レビュー

展開まとめ

プロローグ

レゴールの治安と平和の実感
語り手は、治安の悪い世界においてこそ平和のありがたみを強く実感できると認識していた。レゴールの街では衛兵の存在によって犯罪が抑えられ、景観も保たれており、彼らの働きが街の秩序維持に大きく貢献していたと評価していた。

城壁と防衛機構の重要性
街を囲む城壁の存在は、魔物や犯罪者の侵入を防ぐ上で重要な役割を果たしていた。原始的な防御手段ではあるが、この世界においては極めて有効であり、街の安全性を支える基盤となっていた。

ギルドの役割と社会の安定
ギルドは荒くれ者に仕事を与え、統制することで社会の安定に寄与していた。無職の者が犯罪に流れるのを防ぐセーフティーネットとして機能しており、その存在が街の平和に不可欠であると語り手は認識していた。

都市と自然の両立した生活環境
レゴールは都市としての利便性と安全性を備えつつ、近隣にはバロアの森という自然豊かな環境も存在していた。騒がしさや不潔さといった欠点はあるものの、それを上回る価値があり、拠点として非常に優れていると語り手は評価していた。

開拓村との対比と心情の余韻
語り手は開拓村での不便な生活を経験していたため、レゴールの快適さをより強く実感していた。しかし同時に、開拓村での日々も決して悪いものではなかったと振り返り、過去への一定の愛着をにじませていた。

第一話 野鳥狩りの拠点

ライナとの野鳥狩りと夜営計画
モングレルはライナとの約束通り、バロアの森北部で野鳥狩りを行うため訪れていた。人の少ない穴場で一泊の夜営を行う予定であり、危険に慣れているライナにとっても問題のない計画であった。宿泊事情の悪さから、夜営の方が快適だと考えるモングレルは、森での滞在にも前向きであった。

装備の違いと拠点選定
モングレルは調理器具や夜営用の道具を詰めた大荷物を持参していたのに対し、ライナは軽装であった。二人は水場に近い場所を目指して森を進み、途中で獲物を狙うことを確認しつつ進行した。

パフ鳥との遭遇と初射撃の失敗
春の狙い目であるパフ鳥を発見し、モングレルはライナに促されて弓を構えた。しかし初めての樹上狙いに戸惑い、放った矢は外れて獲物を逃してしまった。ライナはその結果を前向きに評価し、訓練の継続を促した。

拠点の設営とライナの実力
二人は水場と焚き火跡のある場所を拠点に定め、荷物を置いて活動準備を整えた。その間にライナはすでに三羽のパフ鳥を仕留めており、的確な射撃と索敵能力の高さを見せていた。モングレルは自作の煙突と簡易かまどを用いて調理環境を整え、役割分担としてライナが狩り、モングレルが調理を担当することになった。

解体作業と羽毛の価値
モングレルは川辺でパフ鳥の解体作業を進めた。羽毛は扱いにくいものの、高価な素材となるため丁寧に回収していた。作業は手間がかかり、特に羽根の処理に苦労していた。

クレータートードとの小競り合い
解体中、パフ鳥を狙ってクレータートードが現れた。モングレルはこれを迎え撃つが、予想外に水しぶきを浴びて服を濡らされてしまう。その後トードを仕留めたものの、不快な状況に苛立ちを覚えていた。

作業の継続と役割の偏り
ライナはさらに狩りを続けて獲物を増やし、モングレルに解体を任せた。次々と持ち込まれる獲物に対し、モングレルは処理が追いつくかを気にしながら作業を急ぐこととなった。

第二話 狩人の豪華な晩餐

調理の開始と料理の準備
モングレルは濡れた服を乾かしながら早めに調理を開始した。パフ鳥を部位ごとに分け、唐揚げ風、塩串焼き、スープ用の骨、ほぐし肉など複数の料理を同時に仕込んでいった。香味野菜や野草も加え、宿屋よりも美味い料理を目指して準備を進めていた。

火起こしと野営技術
火起こしには道具もあるものの、自身の力を活かしたきりもみ式の方法を用いて素早く着火した。薪も周囲の木を利用して確保し、煙突付きかまどと魔物避けの煙を併用することで、安全かつ効率的な調理環境を整えた。

狩りの成果と弓の難しさの実感
ライナはさらにパフ鳥を仕留め続け、狩りの腕前を発揮した。一方でモングレルは弓の命中に苦戦し、矢の回収に追われることで弓使いの難しさを実感していた。日頃の訓練の重要性を改めて理解する結果となった。

拠点の充実と装備の工夫
ベースキャンプには三角テントや鹿皮の敷物が用意され、快適な環境が整えられていた。布による防風や保温の工夫も施され、ライナはその設備の充実に驚いていた。モングレルは市場の発明品の活用を勧め、装備の工夫の重要性を語っていた。

夕食の開始と料理の評価
串焼きや内臓料理を皮切りに食事が始まり、続いて衣揚げやスープの調理が進められた。揚げた胸肉は外は香ばしく中は柔らかく仕上がり、ライナはその味に強い満足を示した。素材の良さと調理の工夫により、野営とは思えない食事となっていた。

ガラスープの完成と満足感
パフ鳥とクレータートードの骨から取ったスープに野菜を加え、濃厚な味わいの料理が完成した。見た目は粗雑であったが、旨味の強い仕上がりとなり、ライナは店の料理以上だと評価した。モングレルもその出来に満足していた。

夜営と将来への考え
食事後、二人はテントで休むこととなった。ライナは料理が得意でないことや女性らしさについて悩みを打ち明けたが、モングレルは生き方に性別の制約は不要だと考え、弓に打ち込む姿勢を肯定した。この言葉にライナは安心感を得ていた。

就寝と静かな夜の終わり
暖を取りながら二人は眠りにつき、満ち足りた一日を終えた。モングレルは日課の魔法の訓練を忘れつつも、明日への意識を残したまま静かに眠りに落ちた。

第三話 ライナの帰宅と欲しいスキル

帰還後の会話と周囲の反応
ライナは狩りを終えてレゴールへ戻り、クランハウスでウルリカと会話を交わした。モングレルとの夜営について問われるも、特別な関係ではなくただ共に寝ただけであると説明した。ウルリカは一般的な男性像との違いを指摘しつつも、軽く忠告を与えていた。

狩りの成果とクランでの共有
ライナは持ち帰ったパフ鳥の肉と羽毛を仲間と分け合い、ジョナが調理を担当した。羽毛はウルリカがクッション用に活用することとなり、クラン内で有効に使われた。清潔で居心地の良い環境の中、ライナは自分も戦力として成長したいと強く意識していた。

拠点生活の振り返りと安心感
夕食時、ライナは夜営の様子を仲間に報告した。モングレルが拠点の防備や火の管理を徹底していたことで、安全に過ごせたと語った。少人数での夜営は本来危険であるが、モングレルの存在によって安心して休めたことを実感していた。

昇格の話と条件の提示
ウルリカはライナの実力を評価し、シルバーランクへの昇格を提案した。しかしシーナは、スキルが一つでは不十分であるとして昇格を見送った。弓使いとして高難度任務に対応するには、追加のスキルが必要であると判断された。

自身の実力認識と課題
ライナは現在の実力では大型の敵を単独で仕留められないことを理解していた。過去の戦果も仲間との連携によるものであり、今後の成長には新たなスキルの習得が不可欠であると認識していた。

理想とするスキルへの憧れ
ライナはウルリカの持つ弱点看破や強射といった実用性の高いスキルに強い憧れを抱いていた。しかしスキルは本人の性質や積み重ねによって決まるため、同様の能力を得られるとは限らないと理解していた。

成長への意欲と不安
ライナは新たなスキルの習得とシルバーランク昇格を目標に掲げていた。弾道系スキルの可能性を考えつつも、大物を仕留められる力を望んでいた。次のスキル習得の時期に期待と不安を抱きながら、さらなる成長を志していた。

第四話 この世界が仮に何らかの作り物だとして

スキルという異能の性質
語り手は、この世界に存在するスキルを、ギフトや魔法とは異なる異能として捉えていた。魔力を消費して発動する点は魔法と共通していたが、習得のしやすさや発動時に目が光るという特徴によって区別されていた。国や立場によって解釈は異なるものの、いずれにせよスキルは神や特別な力と結び付けて理解されていた。

戦闘と結び付いた習得条件
スキルは主にギルドマンや軍人のように戦闘を重ねる者が習得しやすく、一般人には持たない者も多かった。語り手は、弱い動物ではなく魔物との戦いによってこそ熟練のようなものが蓄積され、スキル習得に繋がるのだと考えていた。そのため生活に直結する技能系スキルはほとんど存在せず、世界の仕組みが戦闘に偏っていることに疑問も抱いていた。

武器ごとの熟練と成長の偏り
スキルは対応する武器を継続して使うことで習得される仕組みだとされていた。剣を使い続ければ剣系、盾を使い続ければ盾系のスキルが閃くため、武器をあれこれ変えると習得が分散し、結果として戦いの幅が中途半端になると語っていた。持ち運べる武器にも限界がある以上、武器種を絞って成長することが重要だと認識していた。

ゲームのようでゲームらしくない世界
語り手は、この世界の成長要素や熟練の仕組みがゲーム的であると感じていた一方で、ファンタジー作品らしい華やかさや劇的な設定には乏しいとも見ていた。ドラゴンが最強種ではなく、国ごとの最強モンスターも地味であり、魔大陸や魔人、エルフといった要素も定番の幻想世界ほど派手ではなかった。そのため、作り物めいた構造を感じつつも、典型的なゲームや物語の世界とも言い切れない違和感を抱いていた。

世界の成り立ちへの思索
語り手は、自身の転生やこの世界の成り立ちについて思考を巡らせていた。神は存在するのか、この世界は異世界なのか別惑星なのか、あるいは何らかの作品世界なのかと考え続けていた。また、自分がその中で主人公なのか脇役なのか、もし作品であるなら人気や都合で世界そのものが終わる可能性すらあるのではないかと想像していた。

現実感のある他者の存在
雨の降る宿屋で思索を続ける中、語り手は外を行く衛兵の姿に現実感を見出していた。通りすがりの人間一人ひとりにも固有の人生があり、それは物語の中の記号的な存在として片付けられるものではないと感じていた。仮に世界に作り物の土台があったとしても、そこに生きる他者の重みは現実そのものであり、軽々しく扱えるものではないと考えていた。

作り物であるならばという願望
それでも語り手は、この世界がもしアニメのような作品であるならと空想していた。その場合、自分には渋く格好いい声優が付き、美形に描かれ、人気投票で上位に入り、雑に退場しない立場を得たいと願っていた。そして最終的には、現代風の学園もののような派生世界で穏やかに生きてみたいという願望にまで思いを巡らせていた。

第五話 雨上がりのロードサービス

雨による気分の沈みと仕事への切り替え
モングレルは雨の続く天候のせいで気分が沈みがちになっていたが、一人でいると余計なことを考えてしまうため、仕事に打ち込んで気を紛らわせようと考えた。酒に頼るのは気分次第で危ういと判断し、あえて忙しく過ごす道を選んだ。

泥濘に嵌まった馬車の救助依頼
ギルドに向かったモングレルは、ミレーヌから緊急の依頼を受けた。南門側のネクタール街道で馬車が泥濘に嵌まり、先に向かったアイアンランクのパーティーだけでは解決できない可能性があるため、追加の人員として現地に向かうことになった。モングレルは力仕事を歓迎し、すぐに出発した。

現地到着と被害状況の確認
現場では、街道脇の休耕地に馬車の右側の車輪が深く沈み込んでおり、自力での脱出は不可能な状態であった。先に救助に当たっていたのは新米パーティーの最果ての日差しであり、積荷を下ろして馬車を軽くする作業を進めていた。依頼人の行商人も疲れ切っていたが、馬たちは泥まみれになりながらも草を食んで休んでいた。

馬車の引き上げと救助の成功
モングレルはまず自分一人で馬車を持ち上げると決め、泥濘の中に入って身体強化を用いながら車輪を引き上げた。水平を確保した後、最果ての日差しの面々にも手伝わせて方向転換を行い、無事に馬車を街道まで戻すことに成功した。馬たちも再び繋がれ、行商人の馬車は復旧した。

帰路での会話とランクへの考え
救助後、モングレルは行商人の厚意で馬車に乗せてもらいながらレゴールへ戻った。その途中、フランクから実力に対してブロンズランクに留まっている理由を尋ねられた。モングレルは、実力だけならシルバー以上だと認めつつも、面倒事や指名依頼を避けたいからあえてランクを上げていないのだと答えた。

依頼達成と仕事による気晴らし
レゴールに戻った後、モングレルは依頼を無事達成し、臨時収入を得た。その後も都市清掃の任務をこなし、一日の仕事を終えた。仕事に集中している間は余計な思考から離れられることを実感し、今後は雨の日も事務仕事などで気を紛らわせるのも悪くないと考えていた。

第六話 暇な酒場のボーイズトーク

酒場での暇つぶしとボードゲーム
モングレルは適当な任務が見つからず、昼からギルドの酒場で時間を潰していた。ミルコとルールも曖昧なボードゲームを楽しみながら、勝敗もよくわからないまま対局を続けていた。酒場には他のギルドマンも集まり、珍しく賑やかな空気となっていた。

春の仕事事情と不満の共有
周囲のギルドマンたちは、春の任務が小粒で儲けが少ないことに不満を抱いていた。遠征しても利益が薄く、街の工事の方が稼げる状況に対して愚痴が飛び交っていた。一方で、効率的に動くパーティーとの差も意識されていた。

女性ギルドマンの話題へ発展
酒場に女性がいないことをいいことに、チャックが女性ギルドマンの好みを語る話題を切り出した。モングレルやミルコ、アレックスも加わり、各々が気になる人物について軽口を叩き合う形となった。

サリーやモモに関する情報
話題の中で『若木の杖』のサリーやその娘モモについての情報が共有された。サリーが未亡人であり、モモがその娘であることが明かされ、見た目とのギャップに驚きが広がった。親子関係については一定の距離感があるものの、大きな問題はない様子であった。

過去のトラブルと警戒心
アレックスは過去に女性絡みのトラブルに巻き込まれた経験から、ギルド内での恋愛には慎重な姿勢を取っていた。その話題は周囲にも共有され、軽い笑いとともに扱われた。

ライナやウルリカへの評価
ライナについては真面目で良い人物だと評価されつつも、色気に欠けるという見方が共有された。ウルリカに対しても外見に関する軽口が飛び交い、男たちの軽薄な会話が続いた。

チャックの恋愛観と周囲の反応
チャックは受付嬢エレナへの好意を語りつつ、他の女性にも関心を示す軽い態度を見せた。その発言は周囲から呆れられつつも受け流され、最終的にはミレーヌに会話を聞かれている可能性が指摘された。それでもチャックは前向きに解釈し、場の空気に温度差を生んでいた。

第七話 ケンさんのお店をどうにかしろ

大麦増産とウイスキーへの不満
語り手は近年拡大している大麦の作付けと、それに伴うウイスキー需要の高まりを感じていた。しかし実際には流通が限られており、主に貴族向けや輸出に回されているため、下町では手に入りにくい状況に不満を抱いていた。

ケンの菓子店との再会
市場で久しぶりにケンの菓子店が営業しているのを見つけ、語り手は店に立ち寄った。ケンは王都出身の職人で、質の高い菓子を作るものの、経営は厳しい状況にあった。店内は旧酒場を改装した造りで、商品は主に外部への卸しが中心となっていた。

菓子の品質と売れない理由
語り手は新作の豊穣クッキーとタンポポ茶を味わい、その品質の高さを認めた。しかし店の立地が庶民向けの通りにあるため、高級菓子としての需要と噛み合っていないことが問題であると理解した。材料にもこだわるケンの姿勢がコストを押し上げ、経営をさらに圧迫していた。

支援の決意と報酬の約束
語り手は店の味に価値を見出し、相談役として店の繁盛を手助けすることを提案した。報酬は不要とし、その代わりに将来タンポポ茶を半額で提供してもらう約束を取り付けた。

宣伝戦略の実行
語り手は手製の宣伝ポスターを作成し、ギルドの掲示板に貼り出す計画を立てた。受付のエレナを菓子で説得し、期間限定で掲示の許可を得ることに成功した。さらにギルド内での認知拡大を狙い、影響力のある人物への働きかけを進めた。

アルテミスへの試食と口コミ戦略
語り手は女性中心のパーティーであるアルテミスに菓子を配り、試食させた。味の評価は非常に高く、女性同士のネットワークを通じた口コミ効果を期待できる手応えを得た。ギルドという人の出入りが多い場所を活用し、効率的な集客を図る意図であった。

今後への期待
語り手はポスター掲示や店前の看板設置など、追加の施策も見据えながら、翌日以降の集客効果に期待を寄せていた。自身の利益と店の存続を結びつけた形で、珍しく積極的な行動を取ったのであった。

第八話 最も重要な一・二番テーブル

立て看板の設置と課題の認識
モングレルは翌朝、ケンの店にA字型の立て看板を持ち込み、店前に設置した。従来の小さな看板では店の存在が認識されにくく、まずは視認性を改善する必要があると指摘した。また、来店後の滞在時間を延ばす工夫として、タンポポ茶の価格設定などにも言及し、客の行動を促す施策を提案した。

開店直後の状況と問題点の露呈
営業開始後もすぐには客は来ず、さらに配達中に店名が外から見えなくなるという新たな問題も判明した。店の存在自体が周囲に認識されていないことが、集客の最大の障害であると明確になった。

アルテミス来店による初動の成功
昼頃、アルテミスの三人が来店し、看板によって初めて店に気付いたことが示された。彼女たちは菓子とタンポポ茶を注文し、その味を高く評価したことで、店内に活気が生まれた。

内装と居心地に関する指摘
シーナは店の内装があまりにも簡素である点を問題視し、味だけでなく滞在環境の改善が必要だと指摘した。テーブルと椅子のみの殺風景な空間では客が長居しにくく、結果として売上にも影響するという課題が明らかとなった。

改善提案の整理と実行方針
アルテミスの意見を受け、看板の大型化と内装の充実という具体的な改善点が整理された。ケンはそれらの助言を受け入れ、店の改善に取り組む意思を示した。

口コミと集客の連鎖
アルテミスの来店を皮切りに、ギルド関係者が次々と訪れるようになり、口コミによる集客効果が現れ始めた。ポスターと試食による宣伝が機能し、店の認知が急速に広がっていった。

設備投資と繁盛への転換
その後、ケンは売上を内装や設備に積極的に投資し、店の雰囲気を大きく改善した。結果として客足は増加し、従業員を雇うほどの繁盛店へと変化した。

繁盛後の様子とモングレルの満足
店内は女性客を中心に賑わい、満席となるほどの人気を獲得した。モングレルは半額のタンポポ茶を楽しみながら、長居する客として店を利用し、計画の成功を実感していた。

第九話 ストロングなモングレル

金欠と酒場での愚痴
モングレルはギルドの酒場で金欠を嘆いていた。原因は高価な装備の購入であり、身体を守るための投資だと正当化していた。一方でバルガーはその浪費を呆れつつも、年齢による衰えや怪我のリスクについて語り合う中で、将来への不安が共有されていた。

強すぎる酒と薬草による対処
モングレルは普段より強いビールを飲み過ぎて酔いが回っていたが、バルガーに渡された薬草ダンパスを摂取することで一気に酔いを覚ました。この酒は蒸留酒が混ざった強力なものであり、通常の感覚で飲むと危険な代物であった。

ライナたちの来訪と日常の会話
そこへライナとウルリカが現れ、軽い狩りの帰りであることが明かされた。モングレルは弓や魔法の練習を怠っていることを思い出し、現状への軽い反省を抱いていた。

奇抜な新装備の披露
モングレルは新たに購入したヘルムを披露した。それは角や斧のような装飾が付いた奇抜な防具であり、周囲からは理解されないものの本人は満足していた。実用性と見た目を兼ねた装備として購入したが、重さなどの欠点も含めて個性的な一品であった。

収入源としての発明品販売
モングレルは金欠でありながらも、黒靄市場で自作の発明品を売ることで収入を得ていた。洗濯板などの実用的な道具は実際に流通しており、身近な場所でも使用されていることが判明した。

下世話な話題と酒場の盛り上がり
酒の席の流れで、モングレルは過去に製作・販売した特殊な道具の話題を持ち出した。その内容は下品なものであったが、バルガーは大いに笑い転げ、場は大きく盛り上がった。一方でライナは呆れ、ウルリカは戸惑いながらもフォローを試みる様子を見せた。

笑いと虚しさの交錯
モングレルは売れた事実に複雑な感情を抱きつつも、酒場の笑いの中でその話題を消化していた。結果としてバルガーを笑わせることで場の空気は和み、日常の一幕として締めくくられた。

第十話 スモーカーの休憩時間

製材所での重労働と仕事観
モングレルは製材所で大型材木の運搬作業に従事していた。重労働ではあるものの報酬が良く、ノルマ達成後は自由になるため効率の良い仕事として受け入れていた。力と体力があれば安定して稼げる環境であると認識していた。

ギルドマンの質と現場の厳しさ
休憩中、トーマスから仕事を怠る新入りギルドマンの話を聞いた。真面目に働かない者は現場で制裁を受けることもあり、過酷な環境ではあるが当然の結果だと受け止められていた。モングレルは自分も休憩は取るが、仕事を放棄することはないと自覚していた。

コーンパイプと職人の嗜み
トーマスは自作のコーンパイプで煙草を楽しんでいた。安価で実用的なこの道具は、かつて使っていた高価なパイプが壊れた経験から選ばれたものであった。手間をかけて火を入れる様子は、職人らしい落ち着きと渋さを感じさせるものであった。

煙草に対する距離感
モングレルは煙草には手を出しておらず、健康面や金銭面からも習慣化を避けていた。トーマスから勧められるも断り、あくまで興味の範囲に留めていた。

煙の輪への興味と挑戦
トーマスが吐き出した煙の輪に興味を持ち、モングレルは試しにパイプを借りて挑戦した。しかし慣れない操作によりむせながら失敗を繰り返し、思うように形を作ることはできなかった。

未熟さの自覚と引き際
モングレルは煙草を扱う技術の未熟さを自覚し、遊び半分の挑戦であることを再認識した。トーマスにからかわれつつもパイプを返し、依存する前に手を引くべきだと判断した。

第十一話 好みの防具あれこれ

パイクホッパー素材の活用
モングレルは過去に討伐したパイクホッパーの甲殻を利用し、防具の製作を行っていた。この魔物の額の殻は軽量で頑丈なため、膝当てや肘当てとして利用されることが多く、初心者向け装備として一定の需要があった。

防具の評価と人気の低さ
性能面では優れているにもかかわらず、虫由来という点からパイクホッパー製の防具は人気が低かった。見た目や印象の問題で敬遠されがちであり、実用性と評価が一致していない状況であった。

試着によるサイズ問題の発覚
モングレルが作った膝当てをライナに試着させたところ、サイズが大きすぎて装着できなかった。個体差のある素材ゆえに適切なサイズを揃えるには手間とコストがかかることが明らかとなった。

ナスターシャの検証と使用感
ナスターシャも試着を行い、装着自体は可能であるものの、関節の可動に違和感があると評価した。魔法使いである自身には必要性が低いとし、近接職の使用者に評価を委ねるべきだと判断した。

防具の実用性と安全性の議論
モングレルは魔法使いであっても防具は有用であると主張したが、ナスターシャは仲間の支援を理由に危険性を軽視する姿勢を見せた。防具の必要性については立場による認識の違いが浮き彫りとなった。

最終的な判断と価値観の優先
最終的にモングレル自身も、防具としての性能は認めつつも見た目の問題から採用を見送った。実用性や価格だけでなく、外見の良さも装備選択において重要であるという価値観が示された。

第十二話 悪意の蝶

レゴール周辺の代表的な魔物
語り手はレゴール周辺に現れる代表的な魔物として、クレイジーボア、チャージディア、そしてイビルフライを挙げた。クレイジーボアは野生化したブタ型の魔物であり、強い殺意をもって人を襲う危険な存在であった。チャージディアは鋭い角で突進してくる鹿型の魔物で、その攻撃力は騎兵突撃に等しいほどであった。そして最も厄介なのがイビルフライであり、その鱗粉には人の記憶を時間差で失わせる特殊な毒があった。

イビルフライの恐ろしさと事件の発生
イビルフライ自体には高い戦闘力はないものの、その鱗粉による記憶喪失が人間同士の惨事を招いていた。鱗粉を浴びた者は直近の記憶を失うため、その隙に仲間への悪意を実行に移す者が現れるのである。語り手が解体処理場でロイドと話している最中にも、イビルフライに遭遇した新人パーティーが同士討ちを起こし、重傷者と拘束される者が出る事件が持ち込まれた。

人の悪意を暴く蝶という認識
語り手はイビルフライを、単なる記憶喪失の魔物ではなく、人の心の奥底にある悪意を引きずり出す存在として捉えていた。邪魔な仲間を排除したい、欲しいものを奪いたい、相手を傷つけたいといった潜在的な悪意が、記憶を失うことを前提に噴出してしまうのである。そのためイビルフライの出現する季節は、多くのパーティーにとって試練の時期でもあった。

単独討伐への決意
新人たちの事件を見た語り手は、イビルフライを放置できないと判断し、自ら単独で討伐に向かうことを決めた。一人であれば仲間割れの危険もなく、記憶を失っても被害を広げずに済むからであった。ロイドに出立の証人を頼み、ギルドへの報告も任せたうえで、すぐに東門から森へ向かった。

記憶喪失への備えと討伐行動
語り手はイビルフライ対策として、自分の行動を羊皮紙に書き残していた。鱗粉を浴びて記憶が飛んだ後でも、自分が何をしに来たのか確認できるようにするためであった。身体強化による高い戦闘力と、自分は誰も殺さず誰にも殺されないという自負をもって、元凶である蝶の群れの殲滅に向かった。

討伐後の空白と成果確認
気がついた時には、語り手は森の入口に立っており、時間は夕暮れになっていた。服には銀色の鱗粉が付き、記憶はすでに失われていたが、それ自体は想定内であった。残されたメモを確認すると、イビルフライを十七体討伐し、効率を優先してギフトまで使っていたことが記されていた。危険な判断ではあったものの、装備も失っておらず、大量討伐に成功していたことがわかった。

討伐を終えた帰路
語り手は成果を確認すると、蝶の複眼を持ってレゴールへ戻ることにした。記憶を失ったことへの不満はありつつも、元凶を大きく減らせたことは確かであり、ひとまず無事に終えたと受け止めていた。

第十三話 任務後ティータイム

お茶文化と語り手の関心
語り手はお茶の多様性について語り、この世界でもハーブティーを中心に様々なお茶が広く飲まれていると認識していた。ただし味の幅は限定的であり、前世の知識を持つ語り手はより多様な風味を求めていた。

森での即席ティータイム開始
語り手はバロアの森の入口にある野営地で、アレックスを巻き込みながら即席のお茶作りを始めた。植物を煎ってお湯に入れるだけでお茶になるという考えのもと、様々な素材で試作を行っていた。

野草茶の試作と無難な成功
最初にサラダ用の野草を焙煎して抽出したお茶は、味や香りは薄いものの問題なく飲める仕上がりとなった。強い個性はないが、飲みやすい無難な結果であった。

枯れ草茶の失敗
次に枯れたダミグラスを使ったお茶を試したが、味も香りもほとんどなく、実質的に白湯に近い結果となった。安全を考慮し、この試作は即座に廃棄された。

木の実の殻による成功例
バシネットナッツの殻を使ったお茶は、香りと味ともに良好で、ルイボスティーに近い風味を持つ成功例となった。個人で楽しむ分には十分な品質であり、アレックスからも高評価を得た。

昆布茶の発見と認識の転換
最後にヤツデコンブを使ったお茶を作り、塩を加えたことで旨味のある飲み物が完成した。しかしアレックスからそれはお茶ではなくスープではないかと指摘され、語り手はその見方に衝撃を受けた。

試行錯誤の中での気づき
語り手は様々な素材でお茶作りを試す中で、新たな発見と価値観の転換を経験した。お茶という枠組みに囚われていた認識が揺らぎ、日常の中での小さな発見を楽しむひとときとなった。

第十四話 爆ぜていない種子

ポップコーン作りの失敗
モングレルは屋外炊事場で乾燥コーンを油で炒め、膨らませる料理を試みていた。しかし期待していた変化は起こらず、ただ焦げるだけで失敗に終わった。香りこそそれらしかったものの、食材として成立する兆しは見られなかった。

ライナとゴリリアーナとの遭遇
そこへ狩り帰りのライナとゴリリアーナが現れ、かまどを譲ることになった。モングレルは料理の失敗を認めつつ場所を提供し、その代わりに調理された鳥肉を分けてもらうこととなり、損失を補う形となった。

昇級試験への同行
二人が昇級試験の関係でギルドへ向かうと知り、モングレルも興味本位で同行した。ライナは試験補佐、ゴリリアーナは試験官として参加しており、それぞれ緊張を抱えながら役割を担っていた。

試験官としての責任の重さ
モングレルはライナに対し、審査を甘くしすぎる危険性を指摘した。実力不足のまま上位ランクに上がれば命に関わるため、試験官には適切な判断が求められると説いた。

昇級試験の実態
修練場ではゴリリアーナが新人剣士たちを相手に厳しい試験を行っていた。木剣による実戦形式の試験や、ライナによる弓の精度試験が行われ、合格には実力と対応力が求められていた。

苛烈な模擬戦と戦場の現実
模擬戦ではゴリリアーナが圧倒的な力で新人たちを圧倒し、わずかな成果を上げた者のみが評価された。その様子を見たモングレルは、実際の戦場ではさらに苛烈な戦いが待っていることを語った。

戦争経験と価値観の共有
モングレルは過去に戦争へ徴兵された経験を語り、人同士の戦いへの嫌悪感を明かした。ライナも同様に戦争への恐怖を抱いており、両者は戦争を望まないという認識を共有した。

平和への願いと現実
戦争は避けたいものであるが、個人の意思とは無関係に起こり得るものであり、備えは必要であると結論づけた。平和を望みつつも、それが保証されない現実に対する諦観が語られた。

第十五話 やりがいのある悪い仕事

平和な春と街の活気
語り手は、戦争の気配がまだないことに安堵していた。春は作付けの時期でもあり、街の内外では拡張事業や整備事業が進み、多くの働き手によって仕事が回っていた。小さな諍いはあっても、街中は衛兵が、街外はギルドマンが対処しており、全体としては平和な季節であった。

副長からの呼び出し
資料室で過ごしていた語り手は、ギルド副長ジェルトナに個室へ呼ばれた。副長はまず語り手にシルバーへの昇格を打診したが、語り手は即座に拒否した。副長はそれ自体は制度上問題ないと認めつつも、語り手の実力に見合わないランクに周囲が疑問を抱いていることを説明した。

昇格拒否者に向けた悪い任務
副長は、昇格を嫌がる語り手に対し、内々で握り潰す予定だった厄介な依頼を持ちかけた。その依頼は、元貴族の没落者が出してきたもので、報酬は極端に安く、要求内容は無茶苦茶であった。依頼主は質も態度も最悪であり、ギルドとしても追い払いたい相手であった。

無理難題としてのシルバーウルフ討伐
依頼内容は、傷一つない美しいシルバーウルフの毛皮を、しかも背中に黒い縦線のない個体に限定して持ち帰るというものであった。語り手はシルバーウルフ自体は倒せると認めたが、その性質上、毛皮を美品のまま確保するのは現実的ではないと判断していた。そもそもシルバーウルフは凶暴で生命力が高く、戦えば毛皮が傷むのが当然の相手であった。

失敗した場合の都合の良さ
副長は、この依頼に失敗して粗悪な毛皮を持ち帰れば、依頼主を黙らせるために語り手の評価を大きく落とさざるを得ず、その結果シルバーへの昇格も遠のくと説明した。その代わり、苦労に見合うだけの報酬は別途支払うつもりであった。語り手は、その仕組みが自分、ギルド、そして厄介な依頼主への対処という三方に都合の良いものだと理解した。

任務の受諾と出立準備
語り手はこの依頼にやりがいと達成感を見出し、喜んで受けることにした。副長はすでにシルバーウルフの目撃情報が入っていることを伝え、場所がモーリナ村近くの小山であると説明した。急がなければ他支部に討伐依頼が回る可能性があるため、副長は馬車の相乗り証まで用意し、語り手の出立を後押しした。

久々の大きな仕事への意欲
語り手は、久々に少し大きな任務へ向かうことに高揚していた。シルバーウルフは肉も毛皮も魅力の薄い魔物だと考えていたが、今回ばかりはその毛皮にも意味があった。逃げ回らず正面から襲ってくる相手であるため戦いやすく、久しぶりに本気で剣を振るう機会としても楽しみにしていた。

第十六話 壮絶なダメージラグマットを

任務の目的と語り手の思惑
語り手は、モーリナ村付近の小山に出たシルバーウルフ一匹の討伐任務に向かった。この任務は表向きは通常の討伐依頼であったが、実際には無茶な注文をつける没落貴族を黙らせ、同時に自身の昇格を遠ざけるための都合の良い仕事でもあったため、語り手は強い意欲を持って取り組んでいた。

モーリナ村での聞き込みと現地確認
モーリナ村に到着した語り手は、村の顔役からシルバーウルフの目撃情報を聞き出した。まだ家畜被害は出ていなかったものの、村人たちは遠吠えに怯え、不安を募らせていた。語り手は討伐後の証人を頼み、任務達成後の証明まで見据えて行動していた。

迎撃のための野営準備
小山に着いた語り手は、小川近くの平坦な場所を陣地に定め、野営の支度を整えた。シルバーウルフを自ら探し回るのではなく、縄張りで挑発して迎え撃つつもりであり、かまどを組み、干し肉を火にかけて匂いで誘き寄せる準備を進めた。あわせてテントや装備も整え、討伐後にはその場で解体まで済ませる算段であった。

毛皮を美品にする気のない方針
語り手は、依頼主が望むような無傷の美しい毛皮を納めるつもりは全くなかった。仮にそれが可能であっても、わざと価値の落ちる状態に仕上げるつもりであり、そのために盾や剣、弓といった装備の使い道まで考えていた。今回の毛皮は、使い物にならないほどではないが、商品価値が大きく下がる絶妙な傷み方を狙っていた。

シルバーウルフとの即時遭遇
設営中、語り手の予想に反してシルバーウルフはすぐに現れた。しかも石のかまどに頭を突っ込んで肉を食おうとする間抜けな姿で現れたため、語り手は呆れつつも戦闘態勢に入った。相手は大柄で凶暴な魔物であったが、真正面から飛びかかってくる単純な性質を持っていた。

激しい戦闘と計画的な損傷
語り手は小盾を用いた力任せの受け返しでシルバーウルフの体勢を崩し、川辺で何度も斬撃や突きを加えていった。毛皮を一枚で剥ぐ必要があるため両断は避けつつも、脚や肩を中心に傷を重ねて動きを鈍らせ、商品価値を落とすことも忘れなかった。相手は何度傷つけられても逃げず、死ぬまで殺意を失わない愚直な戦い方を続けた。

決着とわずかな情
出血と損傷によって動きが鈍ったシルバーウルフに対し、語り手は最後に頭上を取り、叩き割るようにして致命傷を与えた。戦いの最中は徹底していたものの、倒れた後には相手の愚直さと生き物としての熱にわずかな感傷も抱いていた。しかしそれもすぐに切り替え、ここからは一枚の毛皮として処理すると決めた。

毛皮への徹底的な加工
討伐後、語り手はシルバーウルフの毛皮をさらに意図的に傷つけた。斬り、刺し、弓の的にし、内出血の痕まで残るようにして、見た目にも実用面にも価値の低い仕上がりへと導いた。翌日解体を終えた毛皮は、黒線も残り、穴や傷や血の痕が目立つ、到底美品とは呼べない惨状になっていた。

任務完了と周囲の反応
語り手はその毛皮を持って村へ戻り、証人を得たうえで帰路につくことにした。討伐自体は待ち時間も少なく、戦闘訓練としても有意義であったため、本人としては満足のいく結果であった。ただし、あまりに凄惨な状態の毛皮を見た村の顔役には、壮絶な戦いだったのだと誤解され、自身の身体を心配されることになった。

第十七話 包帯男の帰還

包帯で誤魔化した帰還
任務を達成したモングレルは、シルバーウルフを単独で討伐した事実をそのまま見せるのはやりすぎだと判断し、適当に苦戦したように見せるため腕や脚や額に包帯を巻いてレゴールへ戻った。実際に傷があったのは右腕の切り傷だけであり、他は演出にすぎなかったが、普段ほとんど怪我をしない彼が包帯姿で現れたことで、道行く知人たちは皆驚き、声をかけてきた。

ライナとウルリカの心配
ギルドに戻ったモングレルは、ライナとウルリカにも包帯姿を見られた。二人は任務で何があったのかと心配したが、モングレルは討伐で少し怪我をした程度だと曖昧に答え、そのまま副長の部屋へ急いだ。怪我人を装う演技に自信がなく、長く説明すれば綻びが出ると考えていたのである。

副長への報告と偽装の種明かし
副長にシルバーウルフの毛皮を提出したモングレルは、その状態が依頼を果たすには十分であると認められた。そのうえで足と額の包帯を外し、無傷であることを示した。右腕の切り傷だけは本物であったが、ほぼ無傷で単独討伐を果たしたと知った副長は改めてその実力を評価し、再びシルバー昇格を勧めた。しかしモングレルは即座に断った。

没落貴族への対処と評価操作
副長は今回の依頼が、しつこく無茶な注文を出してくる没落貴族を黙らせるためのものであったことを明かした。依頼文の甘さを利用すれば、通常なら価値の低いズタボロの毛皮でも無理やり買い取らせることができるため、今回はその機会として使われたのである。そしてギルド側は、依頼主の機嫌を取る建前として、モングレルの評価を少し下げる処置を取ることにした。これによってシルバー昇格はさらに遠のくことになったが、その代わりに討伐に見合う現金報酬と治療費名目のポーションが支払われた。

悪い仕事の完了と新たな期待
モングレルは、昇格を避けつつ報酬も得られた今回の任務を理想的な仕事だったと受け止めた。副長に対しても、自分の安全が保てる範囲であれば今後も似たような厄介な任務を回してほしいと頼み、副長もそれを了承した。こうしてモングレルにとって都合の良い悪い仕事は、無事に終わりを迎えた。

包帯の後始末と土産話
部屋を出たモングレルは再びライナとウルリカに会い、包帯が取れたことをポーションのおかげだと誤魔化した。そしてシルバーウルフを一人で倒したことを明かしつつも、罠や火や肉を囮に使って工夫した結果だと説明し、決して真似するなと釘を刺した。二人にはモーリナ村のスモークチーズを土産として渡し、場を和ませた。

弓使い育成とウルリカの提案
ライナとウルリカはその日、ブロンズ以下の弓使いたちへの指導協力を担当していた。弓使いの育成はアルテミスにとって重要な仕事であり、報酬は少なくとも無視できない役目であった。その話の流れから、モングレルはウルリカの弓術をまだ見たことがないと気付き、興味を示した。するとウルリカは今度森で自分の弓を見せ、あわせてモングレルの弓の扱いも少し指導すると申し出た。モングレルは乗り気ではなかったものの、腕の立つ相手に教わる機会でもあるため、その提案を受け入れることにした。

第十八話 弱点看破と強射

ウルリカとの合同任務開始
モングレルはウルリカとともに、バロアの森北部での討伐任務に出た。今回は自由狩猟が許可された魔物を間引く任務であり、ウルリカの弓技とスキルを見せてもらいつつ、自身の弓の扱いについても助言を受ける機会となっていた。

森での移動と斥候技術の指導
道中、ウルリカは足跡や葉の折れ方などを手がかりに獲物の痕跡を読む方法を教えた。モングレルはその観察眼に感心しつつ、自分にはまだその手の判断力が乏しいことを自覚していた。ウルリカは見た目に反して狩人としての技能も高く、森の中での振る舞いにも慣れていた。

野営拠点の設営と価値観の共有
二人は川沿いの砂地を拠点に定め、モングレルは煙突付きのかまどや簡易テントを設営した。快適な野営を重視するモングレルに対し、ウルリカも不潔な野営相手を苦手としており、その点で意気投合した。モングレルの綺麗好きな性格は、ウルリカから見ても好ましいものとして映っていた。

クレイジーボアとの遭遇
森の深部で二人は泥浴びをしているクレイジーボアを発見した。泥を纏った状態は厄介であったが、ウルリカは自らのスキルを使えば問題ないと判断し、遠距離から仕留める構えを取った。

弱点看破による標的の把握
ウルリカは弱点看破を発動し、相手の弱点を見抜いた。このスキルにより、狙うべき箇所や目的に応じた攻撃点を把握できるため、弓使いとして極めて有用であると説明した。ウルリカ自身も、このスキルを最初に得られたことを幸運だと感じていた。

強射による圧倒的な一撃
続けてウルリカは強射を発動し、突進してくるクレイジーボアへ矢を放った。その一撃はボアの肩を貫き、勢いごと吹き飛ばして行動不能にするほどの威力を持っていた。モングレルは弓の強撃系スキルの破壊力に驚き、ウルリカの技量の高さを改めて認識した。

弓使いとしての技量の差
ウルリカは強射の威力が高い反面、矢が駄目になりやすいことを欠点として語った。また、ライナのように照準補助を行うスキルではないため、命中させるには本人の技量が必要であることも明かした。モングレルはその説明を受け、ウルリカの実力がスキル頼みではなく、確かな腕に支えられていると理解した。

モングレルの弓修行と結果
その後、モングレルはウルリカの指導を受けながら、自分でも大物相手に弓を試した。ウルリカは弱点を教え、そこを狙わせたが、モングレルは結局一匹も仕留めることができなかった。最終的にはすべてウルリカが仕留める形となり、モングレルにとっては貴重ではあるが厳しい弓の実地訓練となった。

第十九話 男だらけの野営大会

討伐後の解体作業と役割分担
ウルリカとモングレルは、討伐したクレイジーボア二匹の解体を進めた。ウルリカは慣れた手つきで皮や内臓の処理を行い、モングレルは不要な残滓を埋める役割を担った。解体の知識や手際の差が明確であり、ウルリカの経験の深さが窺えた。

獲物の多さと連携の評価
一日で二匹のボアを仕留めた結果、運搬や処理に困るほどの収穫となった。ウルリカはモングレルの前衛としての働きを評価し、互いの役割が噛み合っていると感じていた。モングレルもまた、遠距離役と組むことで戦闘が安定することを実感していた。

野営料理と肉中心の食事
モングレルは感謝を込めて調理を担当し、舌・レバー・ハツなどの部位を中心に豪快な料理を振る舞った。特にレバーは脂で揚げることで風味が増し、ウルリカも満足していた。二人の食事はほぼ肉尽くしとなり、野営ならではの贅沢な時間を過ごした。

蛇の出現と即応した対処
食事中、ダートハイドスネークが出現したが、ウルリカは即座に弓で射抜いた。モングレルがとどめを刺し、獲物として処理することにした。戦闘から解体までの流れは自然であり、両者の連携が安定していた。

食事中の会話と年齢の自覚
食事をしながら二人は年齢や体感の変化について語り合った。モングレルは三十歳を目前に控え、脂の多い肉よりあっさりした肉を好むようになったと感じていた。一方でウルリカは若さゆえに肉中心の食事を楽しんでいた。

過去の回想と剣との出会い
モングレルは自身の過去について語り、開拓村で幼少期から働いていたこと、六歳の時に初めて剣を手に入れた思い出を明かした。その剣こそ現在使っているバスタードソードであり、今でも変わらず愛用している理由が語られた。

就寝前の準備と共同テント
夜になると肉の保護や魔物除けを施し、就寝の準備を整えた。ウルリカはモングレルのテントでの就寝を希望し、二人は同じテントで休むことになった。狭いながらも快適な環境であり、野営の質の高さが保たれていた。

夜の静寂と翌朝の様子
その夜は魔物の接近もなく静かに過ぎた。ウルリカの寝相は大きな問題はなかったが、起床時にはモングレルにしがみつきかけており、彼はそれを引き剥がしていた。こうして二人の野営は無事に一夜を終えた。

第二十話 罠の狩人

撤収と運搬の工夫
翌朝、モングレルとウルリカは野営地の撤収を開始した。モングレルは現地の木材を使って天秤棒を作り、肉や獲物を効率よく運べるよう工夫した。血で衣服が汚れない利点もあり、実用的な道具であった。

帰路での狩猟と荷物の増加
帰路ではウルリカが樹上の鳥を射落とし、その都度モングレルの天秤棒に獲物が追加された。モングレルは荷運び役に徹しつつ、ウルリカの弓技を評価し、安定した連携を保っていた。

罠のための準備と狩人の知恵
道中、ウルリカはスラグを地中に埋める作業を行った。これは魔物に金属の匂いを慣れさせ、後日仕掛ける罠にかかりやすくするための下準備であった。時間をかけて環境を整える狩人の技術に、モングレルは感心していた。

成果の分配と帰還
討伐した肉はウルリカと分配され、仕留めた本人であるウルリカの取り分が多くなった。モングレルは主に補助役として働いたため、戦果を挙げられなかったことに若干の物足りなさを感じていた。

クランハウスでの別れ
レゴールに戻った二人はクランハウスで肉を引き渡し、そこで別れることとなった。モングレルは弓の指導への礼として次の機会を約束し、ウルリカも再びの同行を望んだ。

入浴と内省
その夜、ウルリカは入浴しながら今回の野営を振り返った。モングレルの人柄や身体の印象を思い出し、彼に対する好意や関心が強まっていることを自覚した。また、自身の在り方や外見についても前向きに受け止め始めていた。

次への期待
今回の野営は成果と充実感を伴うものであり、ウルリカは再びモングレルと共に任務へ赴くことを望んだ。そうした思いを抱きながら、彼女は一日の終わりを迎えた。

第二十一話 鯨の髭と道具の改良

珍しい素材との出会い
モングレルは市場で、鯨の髭という珍しい素材を見つけた。大帆船によって仕留められた巨大な鯨から採れたものであり、見栄えのしない素材であるため売れ残っていたが、モングレルはその使い道を知っていたため興味を示した。さらに小物作りに使えそうな牙も併せて買い取り、宿へ持ち帰った。

鯨の髭を使った釣り竿の改良
宿の作業台でモングレルは鯨の髭を加工し始めた。材質は想像していたほど単純なものではなく、牛の角や鼈甲に近い質感でありながら、適度な撓りと加工のしやすさを備えていた。モングレルはそれを細く削り出して釣り竿の先端部を作り、自作の木製釣り竿に取り付けて改良を施した。

新しい道具への手応え
完成した釣り竿は、先端がしなやかに曲がることで糸への負担を減らせる構造になっていた。モングレルはその撓り具合を確かめ、狙い通りの性能を得られたことに満足していた。また、この素材は釣り竿以外にも応用できそうだと感じ、良い買い物だったと評価していた。

試運転のための釣行
新しい道具を試したくなったモングレルは、すぐにいつものシルサリス川へ向かった。川虫を餌にした餌釣りを始め、川の流れに任せて仕掛けを流しながら竿先の反応を確かめた。改良した先端部は小さなアタリも感じ取りやすくなっており、以前より感度が増していた。

ラストフィッシュの釣果
しばらくして竿先に反応があり、モングレルは一匹のラストフィッシュを釣り上げた。見た目から不吉な魚として扱われてはいるものの、食用には問題がなく、彼もこれまでに何度も食べてきた魚であった。釣果としては小ぶりだったが、道具の試運転としては十分な成果であった。

川辺での調理と静かな時間
モングレルは釣ったラストフィッシュをその場で締め、内臓を取り出して塩を振り、小枝に刺して丸焼きにした。小さなかまどでじっくり焼きながら再び糸を垂らし、次の一匹を待つ時間を楽しんでいた。こうした無駄にも見える静かな時間こそが釣りの醍醐味であり、すでに一匹釣れていることがその余裕を支えていた。

試運転の成功と次への意欲
結局この日の釣果はラストフィッシュ一匹だけで終わったが、モングレルは改良した釣り竿の性能に手応えを感じていた。釣果自体は少なかったものの、試運転で実際に魚を釣れたことに満足し、次はもっと魚影の濃い場所で本格的に試したいと考えていた。

第二十二話 伐採準備作業の護衛

伐採護衛任務への参加
モングレルはギルドでバルガーから伐採護衛任務への同行を誘われ、即座に引き受けた。受付のエレナには規則通り条件確認を求められたが、軽口を交わしつつ手続きを済ませ、久々の合同任務に向かうことになった。

拡張された森道と資源開発の実感
馬車でシャルル街道からバロアの森東部へ進む途中、モングレルは森の中まで延びた道を見て伐採工事の進行ぶりに驚いていた。建材や燃料需要の高まりを背景に森林資源の消費が加速していることを実感しつつ、将来的な資源の枯渇にも思いを巡らせていた。

護衛対象の作業内容
今回の任務は、十分に育ったバロア材を選定して色紐を巻きつける作業員たちの護衛であった。単なる伐採ではなく、伐採候補木の選別作業であるため、人の手がほとんど入っていない悪条件の森を進む必要があり、護衛役も藪を払いながらの行動を強いられていた。

森での遭遇戦と作業員への配慮
任務中にはゴブリンが何度か出現し、モングレルとバルガーがこれを手早く始末した。モングレルは作業員の負担軽減のため色紐を預かって運搬も引き受け、森歩きに慣れた者でも年齢による衰えを抱えている現実を感じ取っていた。

イビルフライとの遭遇
作業の最中、一行は森の中でイビルフライを発見した。鱗粉を浴びれば作業員の記憶に支障が出て帰路にも影響するため、モングレルは安全に始末する必要を感じた。ここでバルガーは自分が討伐役を引き受けると申し出て、モングレルには護衛継続を任せた。

記憶喪失を前提にした討伐
バルガーは鱗粉を浴びることを承知の上でイビルフライに接近し、短槍で素早く腹を裂いて仕留め、複眼を回収した。記憶が失われることを理解しながらも任務を優先して動く姿に、モングレルは慣れた者同士の信頼関係を感じていた。

失われる記憶とベテランの対処
記憶喪失が起こるまでのわずかな時間をどう使うかについて、モングレルは未熟な者なら感情を暴発させるのだろうと考えていた。一方でバルガーは、自分が後で忘れることを利用して筋力鍛錬を始め、嫌なことを先に済ませて効果だけ受け取ろうとした。その発想にモングレルは呆れつつも、熟練者らしい図太さを認めていた。

無事な任務完了
やがてバルガーの記憶は飛んだが、その後は追加の魔物とも遭遇せず、任務は無事に終了した。モングレルは、危うさも含めてこうした場を乗り切れるのがベテランの力なのかもしれないと感じていた。

第二十三話 魔法の適性

風呂の話題とクランハウスの商談
暑さが増す中、モングレルはアルテミスの風呂を使う権利をいつ行使するべきか悩んでいた。そんな折、ギルドではナスターシャと若木の杖の団長サリーが、クランハウス用の湯沸かし器について商談していた。サリーは共同浴場の不潔さに嫌気が差しており、拠点整備の一環として風呂の導入を決めていた。モングレルは両パーティーの風呂を有料開放してほしいと持ちかけたが、部外者を入れたくないという理由で即座に断られた。

ナスターシャとサリーの過去の縁
モングレルが二人の親しさを不思議に思って尋ねると、ナスターシャとサリーは魔法学園時代からの知り合いであることを明かした。サリーは研究塔に勤めており、ナスターシャはそこで学ぶ立場にあった。直接深い関わりがあったわけではないが、同じ導師から嫌われ、似たような雑用を回されていたことで接点が増えたという経緯があった。

魔法入門書への相談
モングレルは話題を変え、自分が読んでいる魔法の入門書を二人に見せた。魔法を少しでも扱えるようになりたいという思いから勉強していたが、内容がどうにも腑に落ちず、魔法使いである二人に意見を求めた。するとサリーは、魔法の基礎教育とは常識や偏見が固まる前に身につけるべきものであり、モングレルのように既に世界を理解したつもりでいる者には向かないと率直に指摘した。

魔法適性の厳しい現実
ナスターシャもサリーの意見に同意し、モングレルが今から魔法使いとしての適性を得る可能性は極めて低いと告げた。成人後に魔法の適性を得る者が皆無ではないものの、それは稀有な例であり、まして三十手前のモングレルにはほとんど望みがないと見られていた。神話には後天的に魔法を得た人物もいるが、それを励ましとして持ち出されても、モングレルにとっては気休めにしかならなかった。

現実的な見立てと諦め
ナスターシャは、魔法よりも弓の練習を続ける方がまだ可能性があると助言した。サリーもまた、モングレルが弓を扱う姿には違和感を覚えつつも、魔法よりは現実味があると考えていた。二人から魔法の適性をほぼ否定されたモングレルは、長く続けていた魔法の練習に区切りをつける決心をした。自分には魔法は向いていないのだと受け入れ、未練を断ち切る方向へと気持ちを切り替えた。

第二十四話 ウォーレンの理想的ギルドマン

農家の四男からギルドマンへ
ウォーレンはネクタールの農家の四男として生まれたが、農地を継ぐことはできず、去年からギルドマンとして働くことになっていた。最初のうちは不慣れな作業や不安定な生活に苦しんだものの、冬を乗り切るうちに装備も少しずつ揃い、仲間とパーティーも組めるようになっていた。今はランクを上げ、より良い依頼を受けられるようになることを目標にしていた。

理想の将来像と昇級試験
ウォーレンは、今のぬるい環境から抜け出して収穫の剣や大地の盾のような大きなパーティーに入り、さらに先では衛兵や軍で出世したいと夢見ていた。その思いを抱いたまま昇級試験に臨み、ランディ相手の試験をあっさり突破してアイアン3への昇格を認められた。冬の試験よりも簡単に感じられたことで、ウォーレンは手応えを得ていた。

モングレルの評価を知る
試験後、ウォーレンはランディから、以前自分の試験官を務めたモングレルについて聞かされた。モングレルはブロンズ3でありながら実力はシルバー級であり、徴兵や緊急依頼を嫌って自ら昇格を避けている変わり者だと説明された。さらに、ランディ自身よりも強く、喧嘩では負けたところを見たことがないほどだと語られ、ウォーレンはモングレルへの憧れを強めていた。

アレックスとライナへの質問
別の日、ウォーレンは森の恵み亭で相席になったアレックスに、モングレルの強さについて改めて尋ねた。そこへライナも加わり、話題はモングレルとアレックスのどちらが強いかという最強議論に発展した。ライナは即座にモングレルの方が強いと言い切り、サイクロプスすらほとんど一人で討伐できると断言した。

隠し玉を持つ剣士という印象
アレックスは、表に見えている技量だけで比べれば自分が勝つとしながらも、モングレルには見せていない切り札や奥の手があるはずだと考えていた。その隠された部分がある以上、いざ本気で戦えば自分が負けるだろうと結論づけた。ウォーレンはその話を聞き、実力を隠し持つ凄腕の剣士というモングレル像に強く惹かれていた。

理想への未熟さの自覚
ウォーレンは、自分もいつか本気を出したら敵わないと言われるような存在になりたいと願った。しかしアレックスとライナから、今はまだ隠すほどの力もなく、まずは地道に鍛錬すべきだと釘を刺された。その言葉を受け、ウォーレンは口先だけで強がっても虚しいと理解し、まずは実力を積み上げなければならないと考え直した。

第二十五話 馬の耳にフォークソング

馬車駅での足止め
モングレルはギルドの連絡任務でレオミュール村へ向かうため馬車駅を訪れたが、定期便は馬車の故障で欠便となっていた。後の便を待つしかなく、すでに食事も済ませていたため、時間を持て余すことになった。

馬車駅と厩舎の光景
待ち時間の中で馬車駅を歩き回ったモングレルは、荷馬車や倉庫の多さ、人々の忙しない働きぶりに活気を感じていた。また厩舎では、仕事を終えた馬たちが休んでおり、街の働き手としての頼もしさを改めて認識した。一方で、子供たちからサングレール人との混血であることを理由に軽くからかわれ、複雑な気持ちにもなっていた。

リュートを使った暇潰し
時間を持て余したモングレルは、持参していた改造リュートを取り出し、路上ライブでもしようと考えた。人ではなく、広場で放されている馬たちを相手に演奏を試みることにし、馬が音楽にどう反応するか確かめようとした。

神田川の弾き語りと馬の反応
モングレルはリュートで神田川を弾き語った。歌詞はこの世界の言葉には訳しておらず、自分だけが理解できるままの演奏だったが、音楽そのものは言葉や時代を超えるものだと信じていた。しかし、興味を示しているように見えた馬も結局は立ち去ってしまい、演奏は馬に響いたわけではなかった。

失われた歌への郷愁
演奏の途中でモングレルは、前世で知っていた別の曲を思い出そうとしたが、歌詞も旋律も曖昧になっていることに気づいた。もう元の曲を聞くことはできず、自分の記憶の中に残る断片だけが頼りである現実を改めて思い知り、寂しさを覚えていた。

暇潰しとしての路上ライブ
結局、馬に音楽を聞かせる試みは成功したとは言い難く、演奏も途中から歌詞の記憶を辿る作業へと変わってしまった。それでも考え事に没頭できたことで、次の馬車が来るまでの時間を潰す手段としては十分役に立った。

第二十六話 第三回熟成カビ入り スモークチーズ猥談バトル

猛暑によるギルドの混雑と弓の訓練
季節外れの暑さにより食材が傷みやすくなり、街全体が影響を受けていた。涼を求めて多くのギルドマンがギルドに集まり、モングレルはライナとウルリカから弓の指導を受けていた。氷入りのエールで暑さをしのぎながらも、装備や技術の課題を感じていた。

ディックバルトの事件と沈鬱な空気
そこへ『収穫の剣』の一団が現れ、団長ディックバルトが娼婦に認識票を盗まれる事件に遭ったことが明らかとなった。犯人はすぐ捕まったものの、ディックバルトは自責の念から落ち込み、ギルド内には重い空気が漂っていた。

猥談バトルの開催決定
その雰囲気を打破するため、仲間たちは強引に盛り上げようとし、「第三回熟成カビ入りスモークチーズ猥談バトル」の開催を宣言した。勝者には貴重なチーズが与えられるという条件により、ギルド内の男たちが次々と参加を表明し、場は一気に熱気を帯びた。

白熱する猥談対決
参加者たちは下ネタを武器に競い合い、互いの発言の真偽や威力を巡って勝敗が決していった。ディックバルトも審判として関わることで徐々に元気を取り戻し、場の空気は完全に回復していった。

モングレルの逆転勝利
モングレルも参戦し、チャックとの対決では大胆な賭けに出た上で、知識を駆使した一連の発言によって決定的な勝利を収めた。その結果、大量のチーズを獲得し、場の中心的存在となった。

チーズの分配と余韻
戦いの後、モングレルは獲得したチーズを仲間に分け与え、ウルリカやライナと共に味わった。女性陣からは冷ややかな視線を受けつつも、普段は手に入らない高級チーズを堪能し、この日の騒動は締めくくられた。

第二十七話 異世界ストラックアウト

珍しいボールとの出会い
モングレルは黒靄市場で、前世の軟式野球ボールに近い感触を持つ珍しいボールを発見した。異世界では珍しい質の良いボールに興味を持ち、用途は単純に遊ぶためとして購入した。

投擲訓練器具の製作
購入したボールを活用するため、モングレルは九分割されたプレートを並べたボードを自作した。投げた球でプレートを落とす単純な構造でありながら、狙った場所を宣言して当てるルールを加えることで、遊びと訓練を兼ねた器具として完成させた。

ギルドマンたちの熱中
実演ではモングレル自身は上手く当てられなかったが、ランディらが参加すると次第に盛り上がり、ゲームとして熱中する者が増えていった。やがて新入りのウォーレンたちも加わり、修練場は遊びと競争に満ちた空間へと変わっていった。投石技術の有用性にも言及され、単なる遊び以上の価値が見出されていた。

弓との比較と議論
遊びの中で、投石と弓の有用性についての会話が交わされると、その場に現れたシーナが反応した。弓の優位性を示すため、自らそのボードに挑戦することを宣言した。

シーナの圧倒的技量
シーナは特殊な射法で矢を自在に曲げ、複数のプレートを同時に撃ち抜く離れ業を披露した。二枚抜きどころか三枚抜きまで成功させ、最終的に少ない射数で全てのプレートを落とすという圧倒的な結果を残した。

残された者たちの驚嘆
その技量を目の当たりにしたギルドマンたちは、弓使いの実力の差に驚愕した。モングレルの発案した遊びは盛況のうちに終わったが、同時にシーナの異次元の実力が強く印象付けられる結果となった。

第二十八話 ポーションの定期交換

ポーションの特性と制約
この世界のポーションは外傷に対して即効性を持つ強力な薬であり、傷口に直接使用することで止血や治癒を行える便利な道具であった。しかし高価で入手経路も限られ、さらに使用期限が存在するため管理が難しい品でもあった。それでも命を繋ぐ可能性を持つため、モングレルは常に一つ携帯していた。

診療所でのポーション交換
モングレルは期限が迫ったポーションを交換するため、ヒーラーであるカスパルの診療所を訪れた。診療所では期限の短いポーションを持ち込むことで、追加料金を支払えば新しいものと交換できる仕組みがあり、効率よく薬を循環させていた。カスパルはこのような利用者を歓迎しており、無駄を防ぐ手段として機能していた。

急患の来訪と治療の必要性
会話の最中、建設現場で事故に遭った男が運び込まれた。二階から落下し脚を骨折しており、仕事の都合から即座の回復を強く望んでいた。通常は安静が必要な状態であったが、責任ある立場ゆえに無理を承知で治療を求めた。

荒療治の決断
カスパルは即時回復の方法として、痛みを伴う外科的処置を提案した。男は高額な費用と激痛を受け入れ、その方法を選択した。モングレルも補助として治療に立ち会うこととなった。

外科治療とポーションの活用
治療は患部を切開し、内部に直接ヒールとポーションを施す方法で行われた。麻酔は不完全であり患者は強い痛みに耐える必要があったが、迅速な処置によって骨は修復され、傷口も短時間で塞がれた。ポーションは消毒や治療補助としても用いられ、その有用性が示された。

治療後の余韻と価値の再認識
治療を終えた男は仕事への責任を語りながら感謝を述べて去っていった。モングレルはこの一連の光景を通じて、ポーションや医療の価値、そしてそれを支える人々の覚悟を改めて実感した。その後、カスパルから振る舞われた菓子を味わいながら、非日常的な体験の余韻に浸るのであった。

第二十九話 アラサーが三十路になった話

誕生月を祝う文化
ハルペリア王国では誕生日ではなく誕生月をまとめて祝う風習があり、神殿で簡素な儀式を行うのが一般的であった。家庭ごとに祝う場合もあるが、全体としては淡泊で、節目の年齢以外では特別な扱いはされにくい文化であった。

三十歳を迎えたモングレル
七月生まれのモングレルはこの日三十歳となった。ギルドマンの間では年齢への関心が薄く、誕生日を大きく祝う習慣もないため、本人も大げさに捉えてはいなかった。

仲間との誕生会という名の飲み会
バルガーとアレックスとともに酒場で開かれた祝いは、実質的にはただの飲み会であった。軽口を叩き合いながら年齢や装備の話題で盛り上がり、三十歳になっても変わらぬやり取りが続いた。

ギルドマンとして生き延びる重み
会話の中で、危険な職業であるギルドマンとして三十歳まで無事に生き延びたこと自体が価値あることであると語られた。軽装で戦い続けるモングレルの生存は、周囲から見ても特異であり、称賛に値するものと受け止められていた。

変わらぬ価値観と日常
モングレルは多くの装備を持ちながらもバスタードソードを使い続けるなど、自身の信念を変えることはなかった。三十歳になっても考え方や振る舞いは変わらず、仲間たちとの軽妙なやり取りも同様であった。

ささやかな幸福の実感
豪華な祝いはなくとも、共に酒を酌み交わす仲間がいることに満足を感じていた。こうした何気ない日常を続けていくことこそが望みであり、長く生きてまた同じような時間を過ごしたいと考えるのであった。

第三十話 シュトルーベの亡霊

夏の到来と野営の決断
夏が訪れ、人々が薄着で過ごす季節となった。モングレルはこの時期の依頼内容に魅力を感じられず、七日間の野営を申請した。表向きは自由討伐としての外出であったが、実際には別の目的を持っていた。

東方への単独行動
モングレルはレゴールを出発し、バロアの森を越えてさらに東へと進んだ。人目を避けながら険しい森を進み、夜は野営を行うなど過酷な移動を続けた。途中で魔物を狩って食料とするも、環境の厳しさに苦しみながら進行した。

故郷シュトルーベの現状
到達したのは、かつて自らが生まれ育ったシュトルーベ開拓村の跡地であった。村は既に滅び、建物は破壊され、自然に侵食されつつある廃墟となっていた。かろうじて残る基礎や構造物が、かつての生活の痕跡を示していた。

両親の墓参り
モングレルは家の裏にある両親の墓を訪れ、花を供えて語りかけた。現在の生活や人間関係について報告しながら、時の流れや自身の年齢の変化を実感する。返答のない独白でありながらも、そこには確かな想いが込められていた。

故郷の整理と決意
墓周辺や家の跡地の草を刈り、簡単な手入れを行った。かつての生活の名残に触れながらも、今は戻る場所ではない現実を受け入れていた。そして自身はこの先も生き続ける決意を新たにした。

シュトルーベの亡霊としての活動
作業を終えた後、モングレルは装備を整え、村周辺の巡回に移った。ここは現在サングレール領となっているが、彼は毎年この地を訪れ、周辺の軍事施設を破壊していた。その行動により、この地には正体不明の存在――シュトルーベの亡霊として恐れられていた。

今年の戦果と静かな帰還
今年は建設途中の無人砦を一つ破壊するに留まり、大きな戦闘はなかった。例年に比べ平穏な結果であり、モングレルはその状況を受け入れつつ、来年以降の変化を願いながら帰路につくのであった。

第三十一話 帰宅と次の遠征計画

野営からの帰還と成果処理
モングレルは七日間の野営を終えてレゴールへ戻り、門番と軽口を交わしながら入城した。持ち帰ったのは主に毛皮であり、処理場に預けてなめし作業を依頼することで収入へと繋げる準備を整えた。今回はハルパーフェレットの毛皮がまとまっており、金銭的な成果としては十分な内容であった。

ライナとの再会と日常のやり取り
ギルドに立ち寄ると、ライナが後輩たちに弓の指導を行っている場面に遭遇した。指導を終えた後に合流し、野営の様子や戦果について軽く語り合う。モングレルはジャーキーを振る舞うが、その味の悪さにライナは強い反応を示し、日常的な軽口の応酬が続いた。

自由討伐の報告と報酬受領
モングレルは自由討伐の成果を報告し、わずかな報酬を受け取った。張り出し依頼ではないため金額は低かったが、それでも生活の足しとして活用されるものであった。

ライナのスキル習得の悩み
ライナは次のスキルがなかなか発現しないことに悩んでいた。弓の鍛錬を続けているものの成果が見えず、焦りを抱えていた。モングレルは無理に結果を求めず、気分転換の重要性を説き、長い目で向き合うべきだと助言した。

遠征計画と新たな目的地
ライナはクラン「アルテミス」の遠征でドライデンへ向かう予定を語り、その先のザヒア湖での狩猟も計画していることを明かした。モングレルは当初乗り気ではなかったが、湖での釣りが可能と聞いた途端に同行を決断した。

釣りを中心とした新たな楽しみ
モングレルは釣りへの強い興味を示し、道具を準備して同行する意欲を見せた。ライナにも釣りを勧め、魚料理を振る舞うことを約束するなど、新たな楽しみとして遠征を捉えていた。こうして次の行動は、狩猟だけでなく釣りを含めた遠征へと発展していくのであった。

特別書き下ろし番外編シュトルーベに溜め池を作ろう!

開拓村シュトルーベの現状と志
シュトルーベ開拓村はエルミート男爵領の東端に位置する新興集落であり、十年の歳月を経てもなお生活基盤の整備途上にあった。モングレルはこの厳しい環境に不満を抱きつつも、村を将来的に大都市へ発展させたいという強い志を抱いていた。

スピカとの開拓活動の開始
モングレルは同年代の少女スピカを誘い、開拓活動へと向かった。二人は兄妹同然の関係であり、日常的に採取や作業を行う労働力として扱われていた。スピカは都会への憧れを語りつつも、野生的な技術を身につけた開拓村の子供としての側面を持っていた。

溜め池建設計画の提示
モングレルは森の空き地に到達し、モルタルを用いた溜め池の建設計画を明かした。これは乾季に備えた水資源確保を目的としたものであり、農業拡張を見据えた重要な基盤整備であった。スピカはその意図を理解し、協力する姿勢を見せた。

材料準備と秘密裏の作業
モングレルは木灰や貝殻粉、粘土などを用いて独自にモルタルを生成し、事前に材料を集めていた。大人たちの理解を得るのが難しいため、この計画は秘密裏に進められていた。二人は地面を掘り、モルタルを塗布する作業に取り組みながら、試行錯誤を重ねていった。

作業の困難と継続の決意
溜め池の建設は想定以上に手間がかかり、資材もすぐに尽きるなど進行は遅かった。それでもモングレルは諦めず、長期的に取り組む必要性を認識した。スピカも秘密を共有しつつ協力を誓い、計画は継続されることとなった。

交易都市構想の共有
帰路の中でモングレルは、シュトルーベをハルペリアとサングレールの間に立つ交易都市へ発展させる構想を語った。対立する両国の人々が交流できる場所を作るという理想に対し、スピカは理解を示し、自らも協力する意思を固めた。

幼き日の夢と現在への対比
夕暮れの中、二人は開拓の未来を語り合いながら帰路についた。より良い明日を目指す開拓精神と、共に過ごす時間への充足が描かれていたが、その夢は後に記憶の奥へと沈み、静かに眠るものとなっていったのであった。

特別書き下ろし番外編 ヘシュトルーベで草むしりをしよう!

サングレール兵ウィードの境遇
ウィードはサングレール軍の星球兵団に所属する若い兵士であり、民間の討伐者から抜擢されて出世を果たしていた。現在は物資運搬任務に従事し、奪還を目指すエルミート男爵領へ向かう行軍の最中であった。

シュトルーベ跡地への接近と恐怖
部隊は行軍中、かつて滅ぼした開拓村シュトルーベの跡地に接近した。この地は「シュトルーベの亡霊」と呼ばれる存在の出現により恐れられており、兵士たちの間でも忌避される危険地帯となっていた。隊長は安全を優先し、廃村には入らず近くで野営する判断を下した。

食料調達と畑の発見
ウィードは食料確保のため単独で周辺を探索し、廃村近くの畑に踏み入った。そこには放置された作物が野生化して残っており、ウェッジラディッシュなどを大量に収穫することに成功した。任務を超えた成果を持ち帰ろうと夢中で収穫を続けていた。

謎の兵士スピカとの遭遇
収穫中のウィードの前に、スピカと名乗る兵士が現れた。彼はサングレール軍の装備を身につけており、ウィードは味方と認識して警戒を解いた。スピカは親しげに会話を交わしつつ、ウィードの部隊へ案内を求め、荷物運搬も手伝った。

帰還直前の裏切りと襲撃
野営地へ戻る直前、スピカは突如としてウィードを襲撃した。ウィードは何が起きたか理解する間もなく首を斬られ、致命傷を負った。部隊は異変に気付き戦闘態勢に入るが、スピカの正体は「シュトルーベの亡霊」と呼ばれる存在であった。

亡霊の正体と絶望的結末
スピカは敵兵を欺き接近することで確実に殺害する存在であり、ウィードの部隊もその脅威に直面することとなった。ウィードは意識を失う直前、白い輝きと黒い炎に包まれる光景を目にしながら命を落としたのであった。

バスタード・ソードマン シリーズ

バスタード・ソードマン 1の表紙画像(レビュー記事導入用)
バスタード・ソードマン 1
バスタード・ソードマン 2の表紙画像(レビュー記事導入用)
バスタード・ソードマン 2
バスタード・ソードマン 3の表紙画像(レビュー記事導入用)
バスタード・ソードマン 3
バスタード・ソードマン 4の表紙画像(レビュー記事導入用)
バスタード・ソードマン 4
バスタード・ソードマン 5の表紙画像(レビュー記事導入用)
バスタード・ソードマン 5
バスタード・ソードマン 6の表紙画像(レビュー記事導入用)
バスタード・ソードマン6
バスタード・ソードマン 7の表紙画像(レビュー記事導入用)
バスタード・ソードマン7

その他フィクション

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