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魔法科シリーズ まとめ
魔法科 (26) インベージョン編レビュー
どんな本?
『魔法科高校の劣等生』は、佐島勤 氏による日本のライトノベル。
略称は「魔法科」。
物語は西暦2097年、3月。
魔法が現実の技術として確立し、魔法師の育成が国策となった時代を舞台にしている。
主人公は、国立魔法大学付属第一高校(通称「魔法科高校」)に通う兄妹、司波達也と司波深雪。
この作品は、原作小説の累計が1,400万部、シリーズ累計が2,500万部を突破し、大人気のスクールマギクスとなっている。
また、2024年には3期目のTVアニメが放送されることが決定している。
さらに、この作品は様々なメディアで展開されており、ライトノベルだけでなく、漫画やアニメでも楽しむことができる。
読んだ本のタイトル
魔法科高校の劣等生 (24) (25)エスケープ編〈上〉〈下〉(The Irregular at Magic High School)
著者:佐島勤 氏
イラスト: 石田可奈 氏
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あらすじ・内容
迫る十三使徒の超遠距離魔法――!! 魔法師の未来を切り開け!
「トーラス・シルバーは、国立魔法大学付属第一高校三年生、司波達也氏である」
魔法科高校の劣等生(24) エスケープ編<上>
七賢人の一人レイモンド・クラークによるビデオメッセージは日本だけでなく、世界中に大きな波紋を投げかけた。
そして、実質の魔法師追放計画ともいえる『ディオーネー計画』。達也はこれに対抗すべくかねてより研究をしていた恒星炉を用いたプロジェクト『ESCAPES計画』を発表する。
それは深雪のため、魔法師の未来のため、達也が選んだ道であった。
時を同じくして、滅んだはずの周公瑾と対決する光宣。さらに、十三使徒の戦略級魔法が達也を捉える!?
達也と深雪に最大の危機が訪れようとしていた――。
その姿は救世主か、破滅を呼ぶ者か!? 運命の歯車が達也を戦いへと誘う。
十三使徒の戦略級魔法に襲われた達也と深雪は辛くも生還を果たす。だが、水波は、かつて同じようにして達也を守った穂波のように生命の危機に立たされてしまうのだった――。
魔法科高校の劣等生(25) エスケープ編<下>
そして、守るべきものと、自らの望みのためパラサイトという禁断の力を求める光宣。彼の選択は未来を揺るがすのか――!?
達也と光宣、規格外な二人の魔法師がついに対峙する。
そして、同じ頃、スターズではリーナ暗殺を目的とした叛乱が勃発!?
魔法師の未来は如何に――物語はクライマックスへと、突き進む!!
感想
光宣は病弱な身体からエスケープ。
レイモンドは主役になれない運命からエスケープ。
リーナは不本意ながら軍からエスケープ。
日本の非公開戦略魔法師、司波達也をディオーネ計画に参加させ木星圏に島流しをしたいUSNA。
さらに達也が日本の非公開戦略級魔法師だと知らない魔法協会は、USNAからの圧力を受けた外務省から圧力をうけて十師族も達也をディオーネ計画に参加させようとしたが失敗。
さらに強まる圧力に魔法協会の会長は胃潰瘍になってしまった。
それでも達也は自身の計画エスケープスを優先させると宣う。
四葉家もそれを後押し。
焦れた新ソ連の戦略級魔法師ベゾブラゾフがトゥマーン・ボンバを達也が居る伊豆別荘へ放つが、水波が防いで魔法演算領域に深刻なダメージを負ってしまった。
そのせいで、魔法を使えない状態になってしまい、達也は水波には魔法を使わず普通の人として深雪を支えて欲しいと望む。
それに対して光宣は、水波を治すために自身の身体に九藤家に封印されていたパラサイトを入れて支配。
パラサイトになった光宣は。
水波にパラサイトを同化させ、水波の人格を侵害しないで、魔法演算領域の暴走を無くす事を望むが達也が立ち塞がる。
今後、この2人の大恋愛が物語のキーになる。
さらにリーナはパラサイトに同化されたスターズ達に襲われて日本へ逃亡する事になる。
四葉家(司波達也達)の動き
マスコミ対応
四葉家はFLT社にて記者会見を開くと発表。
一部、マスコミが第一高校にて強硬な取材をしようとしていたが、達也が自ら出向いて4日後に記者会見があると言い、強行するなら記者会見で追い返すと宣言する。
その4日後の記者会見で、トーラス・シルバーとしての活動をやめると宣言。
その後、恒星炉を使った海水資源化プラントの開発計画「escapes計画」を発表してディオーネー計画には参加出来ないと表明。
その翌日、魔法協会の要請でエドワード・クラークに直接会う。
そこで再度、ディオーネ計画への不参加を伝える。
東道青波との邂逅
escapes計画のスポンサー、東道青波への説明を四葉家当主は達也自身でやるように指示をして、場所は九重八雲の寺で行う事となる。
その東道青波から個人が持つ力として強大過ぎる達也の力。
その力で何を望むと問われ、己のために社会の安寧を望むと答え。
東道青波から、日本の為の抑止力になって欲しいと望まれる。
他国に恐怖を示して牽制せよと。。
達也が抑止力として機能すれば、魔法師を兵器の使命から解放する手助けをしてくれるらしい。
東道青波の判断を受けて、四葉家は己焼島にescapes計画のプラントを建設する事になる。
更に外部から協力者も募る。
その筆頭がホクザングルーブ(北山家)となる。
兵器として消耗させれる魔法師をエネルギー供給に使う事により、戦争で使い潰せなくする司波達也の意図に気が付いて出資を約束する。
四葉家の反達也勢力
四葉家の分家当主達はマテリアル・バーストを使える達也への恐怖が拭えないようで、彼を四葉家の奥へ封印したがっている。
四大国の動き
クラークのディオーネ計画はUSNA、新ソ連が主導。
達也のエスケープス計画はインド・ペルシア連合が支持。
USNA
レイモンド・クラークが全世界にトーラス・シルバーは司波達也だと暴露して日本には司波達也をディオーネ計画に参加するよう説得してくれと言う。
エドワード・クラークが来日して司波達也を直接口説こうとするがアッサリと断られる。
その後、権力による搦手に移行する。
軍が司波達也をディオーネ計画に参加させるため、自国のエネルギー産業を守る事を大義名分にしてスターズを使ってescapes計画の施設を破壊工作する計画が立案されたが中止にされる。
だが、以前からあったマテリアル・バーストの使い手の暗殺が継続され秘密裏に工作員を送る。
スターズのアークトゥルスのマイクロブラックホールの実験が実行される。
それを秘密裏に企画したレイモンド・クラークを含め6名がパラサイトに憑依される。
その後、スターズの基地へと帰り、爆発的にパラサイトが増えて行く。
ただ、総隊長のリーナには憑依出来ず、リーナを叛乱者として抹殺に動くが、憑依されていない隊員達がリーナを護り脱走させ、日本の四葉家に保護されるよう手配していた。
それに加担したカノープスとアルゴル、シャウラはミッドウェー島の刑務所に収監された。
その後、リーナは己焼島に行く事となる。
新ソ連
エドワード・クラークが司波達也にディオーネ計画参加をハッキリと断られたのを知ると。
6月9日
ベゾブラゾフが列車型のCADを使用して「トゥーマン・ボンバ」を伊豆半島に居る達也に仕掛けるも、水波の防壁に防がれて暗殺は失敗、達也の反撃を受けるも身代わりが消失して難を逃れる。
6月20日
CADを修理して再度、ベゾブラゾフは達也の暗殺を敢行。
今度は第一高校の上空に「トゥーマン・ボンバ」を発動させる。
結果は達也がCADを雲散霧消させて失敗。
更に魔法が観測されて日本政府から正式に抗議された。
インド・ペルシア連邦
達也のescapes計画支持を非公式とはいえ表明。
USNAと新ソ連が接近して来たその牽制だと思われてる。
大亜連合
この件では沈黙中
日本国内
司波達也が非公式の戦略魔法師である事を知ってる者と、知らない者との判断の乖離が凄まじい。
外務省
司波達也が戦略魔法師と知らないせいで、ディオーネ計画に参加させるように、魔法協会、国防軍に要請。
伊豆半島を「トゥーマン・ボンバ」で爆撃された際に相手国不明で抗議する。
2度目の東京上空の「トゥーマン・ボンバ」爆撃は侵略行為だと新ソ連に抗議する。
経産省
ディオーネ計画参加をしない司波達也を鬱陶しく思っているが、escapes計画に賛同する大企業が多い事に戸惑う。
魔法協会
USNAのエドワード・クラークからトーラス・シルバーへの面会をセッティングして欲しいと要望されて頭を抱える。
更に外務省からも四葉家に圧力を掛けろと言われ、十師族を分裂させろとも言う。。
あまりのプレッシャーに会長が胃潰瘍で入院。
国防軍
101旅団の佐伯は達也がベゾブラゾフから戦略級魔法で奇襲を受ける事を把握していた。
そのための観測を風間に命令するが、長時間の術の使用により疲弊してしまい四葉家の監視網に引っかかってしまう。
より一層、達也との関係が微妙になって行く。
十師族
ディオーネ計画に参加させようと十文字を派遣したが、決闘により敗北して拒否される。
九島光宣のパラサイト事件にて緊急会議を開催し、パラサイトになった九島光宣を捕らえる事を決定。
場所が東京であるため。
水波の周辺は四葉、病院周辺は十文字が護り、光宣を捕らえるのが七草と決定。
九島光宣
周公瑾の亡霊に襲われるもパラサイトドールを縛る忠誠術式を使って周公瑾の亡霊を食う。
それにより周公瑾が溜め込んでいた知識と鋭敏な知覚を得る。
その鋭敏な知覚にて「トゥーマン・ボンバ」が達也達に降りかかった事を知り従姉の藤林に彼等の無事を聞くが、水波の負傷を知り自身が治さないといけないと思う。
そして、九島家にあったパラサイトを支配下に置いて取り込む。
それにより、人間よりも魔法に近い存在になり、魔法演算領域が暴走する心配が無くなり健康な身体を手に入れた。
魔法演算領域に深刻な負傷を負った水波もパラサイトになって欲しいと懇願する。
桜井水波
「トゥーマン・ボンバ」の衝撃波を防いだ事で魔法を操る領域、魔法演算領域に過負荷がかかり、これ以上の実戦には耐えられない身体になる。
魔法師としては瀕死状態であり、何らかの意図せぬ魔法的要因で魔法演算領域が暴走して、身体に悪影響を与えて死亡する可能性が常に付き纏う。
光宣、達也、両者共に水波には生きて欲しいと望んで居ることは共通しているが、、
パラサイになった光宣は、水波から人である事を奪う。
水波を深雪を通して身内だと思っている達也は、水波から魔法を奪う。
どっちを選ぶかは水波次第。
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考察・解説
司波達也の正体露見
司波達也が秘匿していた「トーラス・シルバー」および「戦略級魔法師」としての正体が露見し、全世界に知れ渡るまでの経緯とその波紋、そして達也の反撃策は以下の通りである。
エンタープライズ艦内での暴露とリーナの衝撃
USNAの国家科学局に所属するエドワード・クラークは、いち早くトーラス・シルバーの正体が達也であることを突き止めていた。彼は空母エンタープライズで行われた新ソ連のベゾブラゾフ、イギリスのマクロードとの極秘会談において、彼らの要求に応じる形で「トーラス・シルバーの本名は司波達也。あの『四葉』の直系です」と明かした。
この会談に護衛として同席していたUSNA軍スターズ総隊長のリーナ(アンジー・シリウス)は、以下の事実を知り激しい衝撃を受ける。
・自分がマークしていた達也こそがトーラス・シルバーであること。
・同時に「灼熱のハロウィン」を引き起こした戦略級魔法師であること。
第一高校への書状と学校上層部への露見
クラークは達也をディオーネー計画に参加させるための外堀を埋めるべく、アメリカ大使館を通じて第一高校の百山校長宛に外交文書さながらの書状を送りつけた。そこには「トーラス・シルバーこと、ミスター達也・司波がディオーネー計画に参加できるよう取りはからって欲しい」と記されており、これにより百山校長や八百坂教頭ら学校上層部に達也の正体が露見する。
百山校長はこれを名誉なこととして達也に参加を勧め、魔法大学への無条件入学などの特権を提示したが、達也は学業を理由に拒否した。
「第一賢人」による全世界への暴露とその裏事情
USNA政府の思惑として、政府機関が直接、未成年である達也のプライバシーを暴露すれば、マスコミや人権団体から激しい非難を浴びるリスクがあった。そこでエドワード・クラークは、息子であるレイモンド・クラークを利用した。
レイモンドは顔を隠した怪人物「第一賢人(七賢人の一人)」としてテレビの電波をジャックし、全世界に向けてビデオメッセージを配信した。彼は「トーラス・シルバーは、国立魔法大学付属第一高校三年生、司波達也氏である」と暴露し、日本の大衆に向けて達也をディオーネー計画に参加させるよう説得を呼びかけた。
この第三者を装った暴露により、政府は非難を避けつつ世論を煽ることに成功し、達也の正体は一般大衆にまで広く知れ渡ることになった。
達也の反撃:記者会見と「トーラス・シルバー解散」
正体を暴露され、世論の圧力を受けて孤立無援の状況に追い込まれた達也であったが、決して屈することはなかった。彼は四葉真夜の許可と、政財界の黒幕である東道青波の承認を取り付け、FLT本社で記者会見を開く。
会見の壇上には達也だけでなく、FLTの開発第三課主任・牛山も登壇した。達也はそこで「トーラス・シルバーは一人の天才技術者ではなく、ソフトウェア担当の自分(達也)とハードウェア担当の牛山による開発チームの名称である」という事実を明かし、マスコミの虚を突いた。
まとめ
さらに達也は、この場をもって「トーラス・シルバーの解散」を宣言した。これにより、以下の論理を構築し、クラークの目論見を見事に打ち砕いた。
・「USNAが参加を求めているのはトーラス・シルバーというチーム(高校生)だが、そのチームは既に存在しない」として、ディオーネー計画への参加要請を真っ向から躱した。
・自らは新たに「魔法恒星炉エネルギープラント(ESCAPES)計画」の責任者に就任したことを発表し、他の大型プロジェクト(ディオーネー計画)に関わる時間はないと宣言した。
ESCAPES計画の発表
2097年5月31日、FLT(フォア・リーブス・テクノロジー)本社にて、司波達也と牛山欣治により「魔法恒星炉エネルギープラント計画」の記者会見が開かれた。この会見は、USNAが推進し達也を宇宙へ追放しようとする「ディオーネー計画」への参加要請に対する、達也側の反撃として東道青波の承認を得て企画されたものである。
トーラス・シルバーの解散と参加要請の回避
会見の壇上に立った達也と牛山は、天才エンジニア「トーラス・シルバー」が達也(ソフトウェア担当)と牛山(ハードウェア担当)による開発チームの名称であることを公表した。そして世間に誤解を与えたとして「トーラス・シルバーの解散」を宣言し、以下の論理でUSNAからの参加要請を真っ向から躱した。
・USNAが参加を求めているのはトーラス・シルバーというチームであるが、チームが解散した以上、応えようがない。
ESCAPES計画の発表と真の目的
達也はトーラス・シルバー解散後、自身が責任者を務める新規事業としてエネルギープラント計画を発表した。非公式な略称である「ESCAPES(エスケイプス)計画」は、以下の内容を持つ壮大なプロジェクトである。
・魔法恒星炉(重力制御魔法式熱核融合炉)で生み出した電力を用いる。
・太平洋沿岸の海水から有用な資源(水素やリチウム、ウランなど)を抽出する。
・同時に海水中の有害物質を除去する。
この計画の真の目的は、エネルギー供給という社会に不可欠な分野に魔法師を組み込むことで、「魔法師を兵器として使い潰す宿命(軍事利用)からの脱出(ESCAPE)」を図ることにあった。
記者からの質問への反論とクラークの目論見の打破
会見中、魔法師の独立国を作るつもりかという悪意ある質問に対し、達也は以下の理由を挙げて冷静に反論した。
・プラントが法令を遵守して運営されること。
・魔法師以外の技術者の方が多くなること。
さらにディオーネー計画への参加についても、ESCAPES計画が既に建設地の選定段階に入っており、他の大型プロジェクトに関わる時間はないと明言し、エドワード・クラークの目論見を完全に打ち砕いた。
発表がもたらした国内外への波紋
この発表は国内外に多大な波紋を広げた。
・第一高校の友人たちからの支持を獲得した。特にレオはいち早く「ESCAPE」に込められた真の意図に気づき、魔法師の兵器としての宿命からの解放という目的に深く共感した。
・国内では、USNAの圧力を受けた政府や官僚が計画を妨害しようと動く一方、東道青波の後ろ盾を得た北山潮をはじめとする財界の大物たちから多額の出資意欲を集め、力強い支援基盤を獲得した。
・海外でも、インド・ペルシア連邦の戦略級魔法師アーシャ・チャンドラセカール博士がESCAPES計画の支持を表明し、トルコのアリ・シャーヒーンも好意的な見解を示した。
まとめ
これにより、ディオーネー計画一辺倒になりかけていた国際世論の風向きが大きく変わり、ESCAPES計画は世界的な注目と支持を集めることになった。
世界の戦略級魔法師
「戦略級魔法師」とは、「一度の魔法で都市または艦隊を壊滅させる魔法を使える者」と定義される強力な魔法師である。一個人で戦略兵器に匹敵する力を持つため、各国の軍事バランスに多大な影響を与え、その動向は常に世界中から注目されている。
世界にはおよそ50人未満の戦略級魔法師が存在すると言われているが、その存在が国家によって公式に認められ、対外的に公表されているのは13人のみであり、彼らは「十三使徒」と呼ばれている。一方で、国家の切り札として秘密裏に運用されている「秘匿された戦略級魔法師」も30〜40人ほど存在すると噂されている。
国家公認戦略級魔法師「十三使徒」
判明している主な十三使徒と、その使用魔法・所属は以下の通りである。
・アンジー・シリウス(USNA):『ヘビィ・メタル・バースト』の使い手。USNA軍の最精鋭魔法師部隊「スターズ」の総隊長であり、公認されている十三使徒の中で唯一、本名(アンジェリーナ・クドウ・シールズ)や素顔などの個人情報が厳重に秘匿されている。
・イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフ(新ソ連):『トゥマーン・ボンバ』の使い手。「イグナイター」の異名を持ち、新ソ連科学アカデミーの権威でもある。
・レオニード・コンドラチェンコ(新ソ連):黒海基地に所属する少将。
・五輪澪(日本):『深淵』の使い手。日本政府が対外的に公表している唯一の戦略級魔法師であるが、肉体的に虚弱で普段は車椅子を使用している。
・劉雲徳(大亜連合):「震天将軍」の異名を持つ魔法師であったが、2095年10月末の『灼熱のハロウィン』において、達也の魔法により戦死した。
・劉麗蕾(リウ・リーレイ)(大亜連合):戦死した劉雲徳に代わり、新たな十三使徒として公表された14歳の少女。『霹靂塔』の使い手である。
・ウィリアム・マクロード(イギリス)。
・カーラ・シュミット(ドイツ)。
・アーシャ・チャンドラセカール(インド・ペルシア連邦):『アグニ・ダウンバースト』の開発者として知られる女性科学者。
・アリ・シャーヒーン(トルコ)。
※戦略級魔法の術式は各国内で共有されることもあり、USNAには『リヴァイアサン』の使い手が2人(アラスカ基地、ジブラルタル基地)、イギリス・ドイツに『オゾンサークル』の使い手が1人ずつ、タイに『アグニ・ダウンバースト』の使い手が1人いるなど、同じ魔法を複数の術者が使用するケースもある。
秘匿された戦略級魔法師
・司波達也(日本):質量を直接エネルギーに変換する『マテリアル・バースト』の使い手。国防陸軍の「大黒竜也特尉」として、鎮海軍港を消滅させた『灼熱のハロウィン』を引き起こした。
・ドラキュラ(ルーマニア):暗殺・破壊工作を得意とする非合法活動の専門家。本名不明で、秘匿された戦略級魔法師であると噂されている。
戦略級魔法師を取り巻く情勢
これまで、戦略級魔法は「大量破壊兵器を自分からは使用しない」という建前のもと、実戦投入が控えられてきた(『灼熱のハロウィン』でさえ、日本政府は公式には認めていない)。
しかし、2097年4月にブラジル軍が『シンクロライナー・フュージョン』を実戦で使用し、それを公式に認めたことで、紛争解決の手段として戦略級魔法を使うことへの政治的・心理的なタブーが崩壊した。これに追従して大亜連合も『霹靂塔』の実戦使用を公表したことで、世界中で「魔法を使えない人々」による魔法師への恐怖と反発(反魔法主義運動や暴動)が激化する事態となっている。
まとめ
また、USNAが推進する金星のテラフォーミング計画「ディオーネー計画」は、表向きは魔法の平和利用を掲げているものの、その真の狙いは司波達也をはじめとする強力な戦略級魔法師たちを地球上から宇宙空間へ追放することにある。国家の切り札である戦略級魔法師の動向は、今後も世界情勢を左右する重要な鍵となっている。
桜井水波の身を挺した防御
桜井水波が司波深雪と達也を守るために身を挺して行った防御の経緯と、その結末について解説する。
ピクシーの警告と即応
早朝、ピクシーからの能動テレパシーによる悲鳴のような警告を受け、水波は瞬時に覚醒した。
・彼女は即座に携帯端末型CADを手に取り、視線を向けた先の空間を座標として防御魔法を展開する準備を整えた。
・屋根の上にドーム型の魔法障壁を形成した直後、新ソ連の戦略級魔法「トゥマーン・ボンバ」が作り出した強烈な衝撃波が別荘を襲った。
限界を超える防御維持
達也の分解魔法は発動が間に合わず、水波の防御魔法だけが衝撃波を受け止めることになった。
・水波が使用する「桜」シリーズの防壁は、障壁の生成と維持を連続して行う術式であり、魔法演算領域に極めて大きな負担を掛けるものであった。
・シールドが破壊されそうになる中、水波は限界を超えて魔法演算領域に過重な負荷を掛け続けた。
・その行動は義務や恐怖からではなく、理由を明確に言語化できないまま、ただ深雪を守るという強い意思に基づくものであった。
防御の成功と残酷な代償
酸水素ガスの燃焼が収まり衝撃波が消失するまでの間、水波は防御を維持し続け、別荘と深雪を完全に守り切った。
・しかし攻撃が止んで障壁魔法を解除したと同時に、水波は意識を失いその場に崩れ落ちた。
・魔法の過剰行使により魔法演算領域がオーバーヒートを起こしており、それはかつて桜井穂波が命を落としたのと同じ原因であった。
まとめ
水波の身を挺した防御により最悪の事態は免れたが、彼女自身は魔法師としての生命を脅かされる深刻なダメージを負うこととなった。その後、達也によるエイドス復元魔法「再成」で想子情報体を復元する応急処置が施されたものの、水波がすぐに意識を取り戻すことはなかった。
水波の演算領域損傷
「桜井水波」が負った魔法演算領域の損傷について解説する(なお、作中には同じ「桜」シリーズの調整体である桜崎千穂という人物も登場する)。
桜井水波の魔法演算領域の損傷は、新ソ連の戦略級魔法から主である司波深雪たちを守り抜いた過酷な防御行動の代償として引き起こされた。その経緯と彼女にもたらした影響は以下の通りである。
損傷の原因と達也の応急処置
伊豆の別荘がベゾブラゾフの「トゥマーン・ボンバ」による奇襲を受けた際、水波は直ちに限界を超えてドーム型の防壁魔法を展開し、強烈な衝撃波を受け止めた。以下の理由から、水波は意識を失って倒れることとなる。
・彼女が使用する「桜」シリーズの防壁は生成と維持を連続して行うため、魔法演算領域へ極めて大きな負担を掛ける。
・攻撃を完全に防ぎ切った直後、魔法の過剰行使によって魔法演算領域のオーバーヒートを起こした。
・これは、かつて彼女の遺伝子上の叔母である桜井穂波が命を落としたのと同じ原因であった。
倒れた水波に対し、達也は即座にエイドス復元魔法「再成」による応急処置を施した。達也は以下の手順で彼女を衰弱死の危機から救っている。
・彼女の肉体と精神をつなぐ想子情報体(幽体)の構造まで深く遡る。
・修復力の衰えによって情報体が局所的に欠落している状態を突き止める。
・攻撃を受ける前の情報で上書きする。
しかし、これはあくまで一時的な処置であり、魔法演算領域の損傷そのものを完全に治癒できたわけではなかった。
損傷の正体と今後の制約
光宣や達也の分析によれば、この損傷の根本的な問題は、魔法演算領域の過剰稼働を防ぐ「セーフティ」の機能が壊れてしまったことにあった。特に水波のような調整体魔法師は生物としての安定性に欠けており、セーフティが破損した状態で魔法を使い続ければ、再び深刻なダメージを受けて最悪の場合は「突然死」に至る高いリスクを抱えることになったのである。
この現実を受け、達也は水波が今後「激しい戦闘には耐えられない」と判断し、彼女を深雪のガーディアン(護衛)任務から外す決断を下した。達也は水波に対し、以下のことを望んでいる。
・命を削る護衛としてではなく、付き人として可能な限り長く深雪の傍にいてほしいこと。
・いずれは普通の女の子として平和な人生を過ごしてほしいこと。
光宣の診断と治療法を巡る対立
一方、水波を心から案じて見舞いに訪れた九島光宣は、直接彼女の手に触れることで魔法演算領域の傷が治っていないことを見抜き、自分が必ず治療法を見つけ出すと約束した。
しかし、光宣が知識の中から見出した唯一の根本的な治療法は、「パラサイトと融合する」という極端なものであった。
まとめ
パラサイトになれば魔法演算領域が暴走しても肉体がダメージを受ける心配がなくなるというのが光宣の主張であったが、達也は「水波から人であることを奪う結果になる」としてこれを断固拒絶した。達也は、命を救うためならば魔法演算領域を外側から封印し、魔法そのものを使えなくすることで暴走を防ぐという手段も辞さない構えを見せ、魔法師としての存在意義を何より重んじる光宣と激しく対立し、戦闘に発展することになった。
九島光宣のパラサイト化.
九島光宣のパラサイト化について、その動機、実行プロセス、達也との対立、そしてその後の波紋について解説する。
パラサイト化の動機と背景
光宣は強大な魔法力を持ちながらも、その力に肉体が耐えきれず頻繁に体調を崩す虚弱体質に長年苦しんでいた。しかし、彼が自らをパラサイト化するという極端な決断を下した最大の理由は、自身のためではなく、想いを寄せる桜井水波を救うためであった。
水波は新ソ連の戦略級魔法による奇襲から深雪たちを守るため、限界を超えて防壁魔法を行使し、魔法演算領域に深刻なダメージ(オーバーヒート)を負っていた。光宣は、以下の結論に至り、自身を実験体とする決意を固める。
・自らの内に取り込んでいた周公瑾の知識(亡霊)との対話を通じて、水波の損傷は完治不可能であることを知る。
・いずれ魔法の暴走により「突然死」に至る高いリスクがあることを理解する。
・それを防ぐ唯一の根本的な治療法が「パラサイトとの融合」であるという結論に達する。
光宣は水波にパラサイト化を勧める前に、まず自分が実験体となり、パラサイトと融合しても人間の自我や心を失わずにいられることを証明しようと決意した。
パラサイトとの融合プロセス
6月16日の未明、光宣は家族に内緒で旧第九研(現在の第九種魔法開発研究所)の保管倉庫に侵入した。そこには、かつて達也たちが演習林で封印したパラサイトの死体が安置されていた。光宣は周公瑾の知識を利用して封印術式を解き、休眠状態のパラサイトを目覚めさせて自らの身体に招き入れた。
パラサイトが侵入する際、光宣は以下の手段を用いた。
・自らに冷却魔法を掛けて肉体を仮死状態にし、生物としての拒否反応を抑え込む。
・少しでも自我を奪われまいとする強い意志と、パラサイトを隷属させる術式を用いる。
これにより、パラサイトに飲み込まれることなく完全に支配し、同化することに成功した。光宣は「九島光宣」としての自我を保ったまま、パラサイト特有の強力な治癒再生能力を獲得し、肉体の脆弱性という欠陥を克服した。
達也との激突
同日の夕方、光宣は水波の病室を訪れ、彼女に完治が不可能であるという残酷な現実を突きつけ、自分と同じパラサイトになるよう懇願した。光宣は自らパラサイトの妖気を発してみせ、自我を保てることを証明しようとした。
しかし、同席していた達也は、「魔法演算領域を外側から封印して魔法を使えなくしてでも、人として普通の人生を歩ませるべきだ」と主張し、水波から「人であること」を奪う光宣の提案を断固として拒絶した。魔法師としての存在意義を何より重んじる光宣はこの達也の言葉に激昂し、達也に攻撃を仕掛けた。
病室から中庭へと場所を移した戦闘で、パラサイト化した光宣は、以下の能力を駆使して達也を大いに苦戦させた。
・向上した魔法発動速度や強力な治癒再生能力。
・エレメンタル・サイト。
・周公瑾の知識(鬼門遁甲などの大陸古式魔法)。
達也も光宣を殺害することには躊躇いがあり、互いに決定打を欠く中、光宣は自ら戦いを打ち切ってその場から撤退した。
まとめ
翌日、達也は臨時師族会議に出席し、光宣がパラサイト化したこと、そして水波を狙っていることを報告した。事態を重く見た十師族は、放置すればパラサイトの被害が拡大すると判断し、光宣を無力化して精神体ごと封印する方針を決定した。
これにより、以下の強固な包囲網が敷かれることとなった。
・四葉家が水波の護衛を担当する。
・七草家が光宣の迎撃・捕縛を担当する。
・十文字家が病院外周の警備を担当する。
・九島家・二木家・一条家が援軍に回る。
第一高校での魔法迎撃
第一高校における新ソ連の戦略級魔法師イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフからの魔法攻撃と、達也による迎撃、そしてそれがもたらした国際的な波紋についての詳細は以下の通りである。
攻撃の予兆と達也の警戒
6月20日、東京は朝から雨が降り続き、ほぼ無風という状態であった。達也は、この天候が新ソ連の戦略級魔法「トゥマーン・ボンバ」にとって最高の気象条件であると認識し、伊豆の別荘での一件からベゾブラゾフがまだ諦めていないと確信して、朝から警戒心を最大にして過ごしていた。
ベゾブラゾフの執念と戦術
一方、ベゾブラゾフは前回の敗走による屈辱から達也の抹殺に強い執念を燃やしていた。彼は以下の戦術と態勢で攻撃に臨んだ。
・改修を終えた大型CAD「アルガン」を用い、位置情報からの反撃を避けるため作戦拠点をウスリースク郊外の列車に変更した。
・魔法式の出力を補助する「イグローク(奏者)」を過去最多の5体に増強し、万全の態勢を整えた。
・達也が第一高校にいることを確認し、学校の建物の堅牢性を考慮して、単純な衝撃波ではなく、まず窓を破壊して内部に霧を侵入させ、その後に内部から爆破するという戦術を選択した。
達也の魔法迎撃と敵の自滅
午前の授業終了直前、達也はついに平穏な日常に迫る攻撃の兆候を感知し、即座に迎撃を行った。達也の魔法によってベゾブラゾフの作戦は未遂に終わり、以下の結果となった。
・接続を断たれた3体のイグロークはショックにより心停止に陥った。
・ベゾブラゾフ自身も激しい頭痛に見舞われて呆然と座り込むことしかできず、攻撃は完全に失敗した。
後に達也は、敵が日中に攻撃を仕掛けてくるとは考えておらず、学校で迎撃できたのは偶然であったと振り返っている。
観測データによる国際問題化
第一高校に対するこの魔法攻撃は未遂に終わったが、学校周辺の充実した観測機器群によって、頭上に酸水素ガスを生成し爆発させる魔法が発動しかけていたこと、そしてそれが新ソ連沿海州から放たれたものであることが客観的なデータとして詳細に記録されていた。
このデータは魔法大学を経由して政府に提出され、以下の対応がとられた。
・外務大臣は新ソ連による侵略行為として強く非難し、国際社会へ制裁を呼び掛けた。
・産業大臣は、この未発の攻撃がベゾブラゾフによるものと推測されると名指しで発表し、彼が推進に協力しているUSNAの「ディオーネー計画」の平和的性格に対して深刻な疑念を呈した。
まとめ
この政府発表と報道により、日本国内ではディオーネー計画に対する逆風が吹き、世論の風向きが大きく達也に有利な方向へ変わることになった。達也はこれを「思い掛けない副産物」と受け止めた。自分を宇宙へ追放しようとする世論工作を、逆の世論工作で叩き潰すことに一切の罪悪感を抱いていなかった達也は、自身が責任者を務める「ESCAPES計画」の推進にこの状況を利用する意志を固めた。
アンジェリーナの日本亡命
アンジェリーナ・クドウ・シールズ(リーナ)がUSNA軍を脱出し、日本へ亡命(実質的な保護)を求めるに至った経緯は、USNA軍内部でのパラサイト増殖による大規模な叛乱と、魔法師の非人道的な扱いに直面した彼女自身の心情の変化が深く関係している。
エンタープライズでの衝撃と達也の言葉
リーナは空母エンタープライズにおいて、十数人以上の魔法師が強制的に魔法を使わされ、発電機の燃料(部品)のように扱われている非人道的なシステムを偶然目撃し、深いショックを受けていた。この出来事は彼女の心情に以下の変化をもたらした。
・それまで「魔法師が兵器として扱われるのは自分たちの自由意思によるものだ」と自らを納得させていたが、その考えが揺らいだ。
・以前達也から掛けられた「もし軍人であることを辞めたければ、力になれると思う」という言葉を強く意識するようになった。
スターズ内部の叛乱とリーナへの襲撃
そんな中、スターズ内部でパラサイトによる大規模な叛乱が発生する。第三隊、第四隊、第六隊、第十一隊の一部がパラサイトに憑依され、部隊の指揮系統が崩壊した。
リーナは基地の格納庫で、パラサイト化した部下のレイラ・デネブ(第四隊)やベガたちから強襲を受けた。彼女たちは、マイクロブラックホール実験の失敗等を理由に、以下の主張をしてリーナを一方的に断罪し、処断しようとした。
・リーナが「日本の工作員(司波達也)に籠絡された」こと。
・部下をパラサイトの犠牲にした「裏切り者」であること。
バランス大佐の機転と日本への脱出命令
孤立無援となったリーナであったが、シャウラ少尉の魔法による防御やミルファクの助けにより窮地を脱する。逃走するリーナに対し、内部監察局のバランス大佐からミルファクを通じて緊急の命令が下された。
バランス大佐は、軍内部で以下の勢力が暗躍していることを危惧していた。
・リーナを暗殺するのではなく、彼女を洗脳して都合の良い駒として利用しようとする勢力。
そこで大佐は、自身の権限のギリギリである「在日武官の秘密監査」という名目の正式な命令書を発行し、リーナに日本へ脱出して四葉家の保護を受けるよう指示した。
まとめ
6月19日の午後、日本に無事到着したリーナは、バランス大佐から指定された連絡先に電話を掛け、四葉真夜の命を受けた黒羽家(黒羽亜夜子ら)によって保護された。
その後、リーナは調布にある達也と深雪のマンションを訪れ、二人に再会した。四葉家は、リーナの逃亡が偽装であり内部工作を企てている可能性に対するポーズとして、同じ戦略級魔法師である達也を監視兼案内役とし、リーナを四葉家の管理下にある「巳焼島(日焼島)」へ匿うことを決定した。達也たちに温かく迎え入れられたリーナは、スターズの叛乱とパラサイト再出現の詳しい事情を打ち明け、以降は達也たちと共闘していくこととなる。
キャラクター紹介
第一高校
司波達也
四葉家の次期当主の婚約者であり、深雪のガーディアンとしての役割を担う。感情の大部分を失っており、常に冷静な思考を維持して深雪の利益を最優先に行動する。
・所属組織、地位や役職
第一高校魔法工学科の生徒。生徒会書記長。四葉家次期当主の婚約者。国防陸軍独立魔装大隊・特尉。
・物語内での具体的な行動や成果
九校戦の技術スタッフとして一高の総合優勝に貢献し、新人戦モノリス・コードでも優勝を果たした。横浜事変や吸血鬼事件などの脅威を退け、ディオーネー計画への参加を拒否する決断を下した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レイモンド・クラークにより、トーラス・シルバーの正体であることが全世界に暴露された。強力な「分解」と「再成」の魔法を行使する。
司波深雪
第一高校の生徒会長であり、達也の妹にして婚約者である。達也に対して絶対的な信頼と深い愛情を抱き、常に彼を気遣う。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。生徒会長。四葉家次期当主。
・物語内での具体的な行動や成果
九校戦のピラーズ・ブレイクなどの競技で優勝し、第一高校の総合優勝に貢献した。達也がトーラス・シルバーであることを公にされた際、彼を強く擁護する姿勢を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
四葉真夜から次期当主として正式に指名された。強力な冷却魔法や精神干渉魔法を操る。
桜井水波
四葉家から派遣された調整体魔法師であり、達也と深雪の同居人として仕える。亡き桜井穂波の遺伝子上の姪にあたる。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。生徒会書記。司波家の家政婦および護衛見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
達也と深雪の生活を支えつつ、護衛としての技術を磨いている。ベゾブラゾフの攻撃から対物障壁で達也たちを護った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
障壁魔法において高い練度を持つ。
光井ほのか
第一高校の生徒であり、深雪や雫の友人である。達也に対して強い好意を抱き続けている。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。生徒会会計。
・物語内での具体的な行動や成果
九校戦のミラージ・バット競技において、達也の調整を活用して優勝を果たした。ピクシーに光学魔法で視線をつなぎ、パラサイトへの抵抗を支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
光波振動系統の幻影魔法を得意とする。
北山雫
第一高校の生徒であり、ほのかの親友である。口数は少ないが、的確な指摘を行う。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
九校戦のスピード・シューティングに出場し、優れた成績を収めた。USNAへ留学し、レイモンド・クラークと知り合い情報を持ち帰る役割を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大実業家・北山潮の娘であり、豊富な資金力を持つ。
吉田幹比古
第一高校の生徒であり、古式魔法を伝承する吉田家の出身である。真面目で責任感が強い。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。新風紀委員長。
・物語内での具体的な行動や成果
九校戦のモノリス・コードで達也やレオンハルトと共に優勝を飾った。吸血鬼事件では精霊魔法を駆使してパラサイトの追跡や戦闘に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
二科生から風紀委員長へ抜擢されるという異例の昇進を遂げた。
西城レオンハルト
第一高校の生徒であり、達也の友人である。直情的な性格だが、友人思いの熱血漢である。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。山岳部所属。
・物語内での具体的な行動や成果
九校戦のモノリス・コードに出場し、達也の調整したデバイスを使用して優勝した。パラサイト事件や吸血鬼事件でも前線で戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
硬化魔法を得意とし、近接戦闘において高い能力を発揮する。
千葉エリカ
第一高校の生徒であり、千葉家の娘である。明るく物怖じしない性格で、剣術に秀でている。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。千葉一門の印可。
・物語内での具体的な行動や成果
ブランシュの襲撃時や横浜事変において、得意の剣術を駆使して敵兵を無力化した。矢車侍郎に剣術の稽古をつけている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
秘剣「山津波」や「薄羽蜻蛉」を使いこなす卓越した剣の腕前を持つ。
柴田美月
第一高校の生徒であり、達也の友人である。内気で大人しい性格をしている。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。美術部所属。
・物語内での具体的な行動や成果
パラサイト事件において、自身の特殊な目を用いて霊子情報体の動きを視認し、達也たちの戦闘を支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
霊子放射光過敏症(水晶眼)と呼ばれる特異体質を持つ。
七草泉美
七草真由美の妹であり、第一高校の生徒である。深雪に対して強い憧れと敬意を抱く。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。生徒会副会長。
・物語内での具体的な行動や成果
生徒会役員として深雪を支え、新入生の詩奈を生徒会に勧誘する際もサポートを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十師族・七草家の直系である。
七草香澄
七草真由美の妹であり、泉美の双子の姉である。男勝りな性格で、達也に反発することもある。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。風紀委員。
・物語内での具体的な行動や成果
生徒会入りを断固拒否し、風紀委員に就任した。詩奈が行方不明になった際、侍郎の元へ急行して状況を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十師族・七草家の直系である。
十三束鋼
第一高校の生徒である。優秀な成績を持ちながらも遠距離魔法を苦手とする。
・所属組織、地位や役職
第一高校魔法工学科の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
二年生への進級時に、自身の専門分野に合わせて新設された魔法工学科を選択した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
百家・十三束家の出身である。接触状態のレンジ・ゼロにおいて無類の強さを発揮する。
七宝琢磨
第一高校の生徒であり、野心家な性格である。達也に対してライバル心や反発心を抱いている。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。新入生総代。部活連執行部員。
・物語内での具体的な行動や成果
生徒会への参加を辞退し、部活連で活動することを決めた。達也をライバル視しつつも、次第に現実を受け入れ葛藤を抱えるようになる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十師族に選ばれた七宝家の出身である。
三矢詩奈
第一高校の生徒であり、三矢家の娘である。温和で人懐こい性格をしている。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。生徒会書記。
・物語内での具体的な行動や成果
新入生総代として答辞を読んだ。国防軍情報部の要人救出訓練において、人質役として協力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十師族・三矢家の直系である。異常聴覚という体質を持ち、普段はイヤーマフを着用している。
矢車侍郎
第一高校の生徒であり、矢車家の少年である。詩奈の幼馴染みであり、彼女を護ることに強い執着を持つ。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。剣術部所属。
・物語内での具体的な行動や成果
詩奈が行方不明になったと聞き、救出に向かおうとした。エリカに指導を乞い、修行を積んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
三矢家の使用人の家系出身であり、念動力者としての特性を持つ。
五十嵐
第一高校の生徒である。深雪が新生徒会長に就任した時期に、部活連のトップとなる。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。部活連会頭。
・物語内での具体的な行動や成果
新会頭として、生徒会長である深雪との顔合わせに臨んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
部活連の代表としての役割を担っている。
平河千秋
第一高校の生徒である。姉が学校を去った原因が達也にあると思い込み、深い憎悪を抱く。
・所属組織、地位や役職
第一高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
周公瑾らの勢力に利用され、達也に対する妨害工作未遂を引き起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
事件後は病院に収容され、周公瑾による精神操作を受けた。
百山
第一高校の校長である。魔法教育の国家的権威としての背景を持つ。
・所属組織、地位や役職
第一高校・校長。
・物語内での具体的な行動や成果
USNA国家科学局からの書状を受け取り、達也にディオーネー計画への参加を名誉なこととして勧めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
達也に対して実質的な登校免除を言い渡した。
ピクシー
第一高校のロボット研究部に所属するヒューマノイド・ホームヘルパーである。達也をマスターとして従う。
・所属組織、地位や役職
第一高校の備品。
・物語内での具体的な行動や成果
パラサイトに憑依された後、達也の指示に従い生徒会室での雑務や監視行動をこなした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
機械でありながらサイキック能力を行使できる。
魔法大学
七草真由美
魔法大学の学生であり、元第一高校生徒会長である。小悪魔的な性格だが、魔法師の社会的な立場を憂慮している。
・所属組織、地位や役職
魔法大学の学生。十師族・七草家の長女。
・物語内での具体的な行動や成果
名倉三郎の死の真相を探るため、達也に協力を依頼して京都での捜査に同行した。テロ事件の首謀者追跡において、達也や十文字克人と協力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
第一高校卒業後、魔法大学へ進学した。卓越した遠隔精密射撃魔法の使い手である。
十文字克人
魔法大学の学生であり、十文字家の当主である。実直で責任感が強い。
・所属組織、地位や役職
魔法大学の学生。十師族・十文字家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
ディオーネー計画への参加を拒否する達也を説得するため、伊豆の別荘地で激しい戦闘を繰り広げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
父親から十文字家当主の座を正式に譲られた。鉄壁の防御魔法「ファランクス」の使い手である。
四葉家および分家
四葉真夜
四葉家の現当主であり、冷酷かつ底知れない思惑を持つ女性である。
・所属組織、地位や役職
十師族・四葉家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
深雪を次期当主に指名し、達也をその婚約者として発表した。達也に顧傑の捜索などの任務を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「極東の魔王」と称される世界最強の魔法師の一人である。
葉山
四葉本家に仕える老執事である。真夜の腹心として実務を取り仕切る。
・所属組織、地位や役職
四葉家の執事。
・物語内での具体的な行動や成果
真夜の指示を達也や他の分家当主に伝達し、情報収集や工作活動の調整を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
四葉家内部において高い発言力を持つ。
花菱兵庫
四葉家に仕える青年である。丁寧な物腰だが、裏の任務もこなす。
・所属組織、地位や役職
四葉家の使用人。花菱執事の長男。
・物語内での具体的な行動や成果
達也と深雪の送迎を行い、海外の情報収集任務にも従事している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イギリスの民間軍事会社で修行を積んでいた経歴を持つ。
黒羽貢
四葉家の分家である黒羽家の当主である。四葉家の諜報活動を取り仕切る。
・所属組織、地位や役職
黒羽家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
周公瑾やパラサイトの追跡・捕縛作戦を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
四葉家の中でも特務や汚れ役を担う立場にある。
黒羽文弥
黒羽家の子息であり、達也と深雪の再従兄弟にあたる。達也を強く慕っている。
・所属組織、地位や役職
黒羽家のエージェント。
・物語内での具体的な行動や成果
深雪が次期当主になることを支持し、裏の任務に従事している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
四葉家の諜報活動を担う次期当主候補の一人である。
黒羽亜夜子
黒羽家の令嬢であり、文弥の双子の姉にあたる。達也に好意を抱いている。
・所属組織、地位や役職
黒羽家のエージェント。
・物語内での具体的な行動や成果
四葉家の代理人としてバランス大佐と交渉し、干渉の停止を要求した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
四葉家のエージェントとして高い交渉力を持つ。
新発田勝成
四葉分家・新発田家の次期当主である。
・所属組織、地位や役職
防衛省の事務官。
・物語内での具体的な行動や成果
達也の行動を評価する四葉家の会議に同席し、黒羽貢とも情報交換を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔法をどう使って戦うべきかを考える業務に従事している。
津久葉夕歌
津久葉家の長女である。魔法演算領域のオーバーヒートを研究している。
・所属組織、地位や役職
四葉分家の魔法師。
・物語内での具体的な行動や成果
一条剛毅が倒れた際、治療のために派遣された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
精神そのものに干渉する魔法に優れている。
桜崎千穂
調整体「桜」シリーズの第二世代である。
・所属組織、地位や役職
津久葉夕歌のガーディアン。
・物語内での具体的な行動や成果
ベゾブラゾフの戦略級魔法攻撃の際、夕歌を護るために行動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
対物・耐熱防御シールドを得意としている。
十師族・百家および日本魔法協会
一条剛毅
十師族・一条家の当主であり、将輝の父親である。
・所属組織、地位や役職
十師族・一条家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
国籍不明船舶の爆発から部下をかばい、魔法演算領域に深刻なダメージを負った。達也と深雪の婚約発表に対して異議申し立てを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
日本海沿岸部の防衛において強力な影響力を持つ。
一条将輝
第三高校の生徒であり、一条家の次期当主である。深雪に強い好意を抱いている。
・所属組織、地位や役職
第三高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
九校戦のモノリス・コードで達也と激闘を繰り広げた。横浜事変やテロ首謀者追跡の任務において、達也と協力して前線で戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「爆裂」の使い手であり、「クリムゾン・プリンス」の異名を持つ。
二木舞衣
十師族・二木家の当主である。
・所属組織、地位や役職
十師族・二木家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
師族会議のオンライン会議に参加し、達也をアメリカへ行かせる案に賛同するような発言をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
議論の調整役を担う場面も見られる。
三矢元
十師族・三矢家の当主であり、詩奈の父親である。
・所属組織、地位や役職
十師族・三矢家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
娘の詩奈が軍の演習に連れ出された際、遠山つかさの意図を探りつつ事態への対応を協議した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
国防軍と協力関係を持ち、兵器ブローカーとしての裏の顔を持つ。
五輪勇海
十師族・五輪家の当主である。
・所属組織、地位や役職
十師族・五輪家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
師族会議のオンライン会議において、達也に計画参加を強制するような日本魔法協会の動きに疑問を呈した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
六塚温子
十師族・六塚家の当主である。四葉真夜を崇拝している。
・所属組織、地位や役職
十師族・六塚家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
師族会議のオンライン会議において、真夜に追従する形で早々に退席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
七草弘一
十師族・七草家の当主であり、真由美の父親である。権謀術数に長けている。
・所属組織、地位や役職
十師族・七草家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
反魔法主義者の動きを利用してマスコミ工作を行い、四葉の力を抑え込む計画を立てた。一条家と結託して達也を真由美の婿に迎えようと画策した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十師族のバランスを保つため、他家を牽制する政治的影響力を持つ。
七宝拓巳
十師族・七宝家の当主であり、琢磨の父親である。
・所属組織、地位や役職
十師族・七宝家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
師族会議のオンライン会議において、十師族としての滅私奉公の必要性を主張した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新たに十師族に選出された。
八代雷蔵
十師族・八代家の当主である。
・所属組織、地位や役職
十師族・八代家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
師族会議のオンライン会議において、真夜の退席に続いて会議を退席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
九島烈
九島家の前当主であり、多大な影響力を持つ老人である。抜け目なく、他家や他組織の動きを利用しようとする。
・所属組織、地位や役職
九島家前当主。元国防軍少将。
・物語内での具体的な行動や成果
パラサイドール実験に関与し、七草弘一の持ち掛けた反魔法主義者を利用する計画に暗黙の了解を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「老師」と呼ばれ、かつては世界最強の魔法師と謳われた存在である。
九島光宣
九島家の末子であり、中性的な美貌と卓越した魔法の才能を持つ少年である。
・所属組織、地位や役職
第二高校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
パラサイトと化し、周公瑾の残留思念を取り込んだ。水波を狙い、独自の目的のために行動を起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
身体が弱く学校を休みがちであるが、その魔法技能は極めて高い水準にある。
十三束翡翠
日本魔法協会の会長である。穏便に事を済ませようと苦慮している。
・所属組織、地位や役職
日本魔法協会会長。十三束鋼の母親。
・物語内での具体的な行動や成果
ディオーネー計画への参加を促すため、トーラス・シルバーの正体が達也であると明かし、四葉真夜に説得を依頼したが拒否された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
国防軍・政府機関
佐伯広海
国防陸軍の将官であり、独立魔装大隊を率いる。魔法師の権利を守ろうとする。
・所属組織、地位や役職
国防陸軍第一〇一旅団司令官。少将。
・物語内での具体的な行動や成果
北海道から帰還した風間たちをねぎらい、特別休暇を与えた。情報部の動きを警戒し、達也に関する対応を風間と協議した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「銀狐」の異名を持ち、十師族に対して批判的な立場を取っている。
風間玄信
国防陸軍の士官であり、達也の上官にあたる。古式魔法を修めており、冷静で厳格な指揮官である。
・所属組織、地位や役職
国防陸軍第一〇一旅団・独立魔装大隊隊長。中佐。
・物語内での具体的な行動や成果
北海道への出動から部隊を無事に帰還させた。情報部による達也の粛清計画を佐伯と協議し、達也に自衛の言質を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「大天狗」の二つ名を持ち、山岳戦や空挺部隊の運用において国内屈指の名指揮官と評されている。
藤林響子
国防陸軍の技術士官であり、九島烈の孫娘である。達也と連携して情報の提供やハッキングを行う。
・所属組織、地位や役職
国防陸軍第一〇一旅団・独立魔装大隊所属の少尉。
・物語内での具体的な行動や成果
横浜事変や吸血鬼事件において、市街地監視システムへの侵入や情報の解析を行い、達也たちの作戦を後方から支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「電子の魔女」の異名を持ち、電子・電波への干渉において圧倒的なスキルを誇る。
山中
独立魔装大隊の軍医である。
・所属組織、地位や役職
国防陸軍第一〇一旅団・独立魔装大隊所属の軍医少佐。
・物語内での具体的な行動や成果
水波の症状について、魔法の使いすぎによる精神へのダメージであると推測した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
一級の治癒魔法師である。
東道青波
日本の政財界を裏から操る黒幕的人物である。
・所属組織、地位や役職
政府関係の黒幕。
・物語内での具体的な行動や成果
達也が九重寺を訪れる際、一人で来ることを条件として課した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
USNA
エドワード・クラーク
USNAの国家科学局に所属する人物である。
・所属組織、地位や役職
USNA国家科学局の人物。
・物語内での具体的な行動や成果
ディオーネー計画を提唱し、トーラス・シルバーの参加を公式に求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
トーラス・シルバーの排除を目的として行動している。
レイモンド・S・クラーク
USNAのハイスクールに通う生徒であり、エドワード・クラークに縁の者である。
・所属組織、地位や役職
USNAのハイスクール生徒。七賢人の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
ビデオメッセージを通じて第一賢人を名乗り、トーラス・シルバーの正体が達也であることと、ディオーネー計画への参加を要求するメッセージを全世界に公開した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ハッキングシステム「フリズスキャルヴ」のアクセス権を持つ。
アンジェリーナ・クドウ・シールズ
USNA軍の魔法師部隊スターズの総隊長であり、金髪碧眼の美しい少女である。達也たちをライバル視している。
・所属組織、地位や役職
USNA軍スターズ総隊長・少佐。コードネームは「アンジー・シリウス」。
・物語内での具体的な行動や成果
日本に潜入し、パラサイトの対処や脱走兵の追跡にあたり、達也と共闘した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦略級魔法「ヘビー・メタル・バースト」の術者である。
ウォーカー大佐
USNA軍スターズの幹部である。
・所属組織、地位や役職
USNA軍の士官。
・物語内での具体的な行動や成果
日本におけるマイクロブラックホール実験の任務について、アークトゥルスと情報を秘匿する相談を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヴァージニア・バランス
USNA軍の幹部であり、内部監察局の副局長を務める女性である。
・所属組織、地位や役職
USNA統合参謀本部情報部内部監察局の大佐。
・物語内での具体的な行動や成果
四葉家のエージェントである亜夜子と面会し、干渉の中止を要求された。リーナに秘密監査の名目で日本への渡航手配を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
USNA軍の内部監察において強い権限を持つ。
ベンジャミン・カノープス
USNA軍スターズの隊員であり、リーナの部下である。
・所属組織、地位や役職
USNA軍スターズ第一隊隊長・少佐。
・物語内での具体的な行動や成果
日本に密入国し、ジード・ヘイグが潜伏するとされる貨物船を探索した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アレクサンダー・アークトゥルス
USNA軍スターズの隊員である。
・所属組織、地位や役職
USNA軍スターズ第三隊隊長・大尉。
・物語内での具体的な行動や成果
日本の工作員を燻り出す目的の実験任務において、ウォーカー大佐と相談を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラルフ・ハーディ・ミルファク
USNA軍スターズの隊員である。
・所属組織、地位や役職
USNA軍スターズの士官。
・物語内での具体的な行動や成果
リーナにバランス大佐からの命令書や渡航用のパスポートなどを手渡し、彼女の任務をサポートした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カペラ
USNA軍スターズの隊員である。
・所属組織、地位や役職
USNA軍スターズ第五隊隊長・少佐。
・物語内での具体的な行動や成果
リーナに対して、パスワードの変更を律儀に報告していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
シルヴィア
USNA軍スターズの隊員であり、リーナの補佐役を務める女性である。情報収集と分析を得意とする。
・所属組織、地位や役職
USNA軍スターズ惑星級隊員・准尉。
・物語内での具体的な行動や成果
日本に潜入し、リーナと同居しながら情報面から彼女の任務をサポートした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ジャーナリズム専攻の経歴を持ち、優れた情報処理能力を有する。
フォーマルハウト
USNA軍スターズの隊員である。
・所属組織、地位や役職
USNA軍スターズ一等星級隊員・中尉。
・物語内での具体的な行動や成果
パラサイトに憑依されて軍を脱走し、日本へ潜伏した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
リーナの追跡対象となった。
新ソ連
イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフ
新ソ連の戦略級魔法師である。
・所属組織、地位や役職
新ソ連の戦略級魔法師。
・物語内での具体的な行動や成果
クラークやマクロードと協力してトーラス・シルバーの排除を図り、大型コンピューターを利用したCADで戦略級魔法「トゥマーン・ボンバ」を発動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「イグナイター」の異名を持つ十三使徒の一人である。
アンナ・アンドレエヴナ
新ソ連の魔法師である。
・所属組織、地位や役職
イグローク(奏者)の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
ベゾブラゾフの魔法式出力をアシストするため、強制的に想子を抽出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ベロニカ・アンドレエヴナ
新ソ連の魔法師である。
・所属組織、地位や役職
イグローク(奏者)の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
ベゾブラゾフの戦略級魔法発動において、魔法式の構築をサポートした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イグローク(奏者)たち
新ソ連の魔法技術を支える要員たちである。
・所属組織、地位や役職
魔法式の出力を補助する人員。
・物語内での具体的な行動や成果
ベゾブラゾフの魔法式構築において、出力タイミングを合わせるための補助を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
電気的な刺激により強制的に利用されている。
その他の海外
ウィリアム・マクロード
イギリスの戦略級魔法師である。
・所属組織、地位や役職
イギリスの戦略級魔法師。
・物語内での具体的な行動や成果
クラークやベゾブラゾフとの会議に参加し、トーラス・シルバーの排除について協議した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十三使徒の一人である。
劉雲徳
大亜連合の戦略級魔法師である。
・所属組織、地位や役職
大亜連合の戦略級魔法師。
・物語内での具体的な行動や成果
灼熱のハロウィンの戦闘において、達也の魔法により戦死した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「震天将軍」の異名を持つ十三使徒の一人であった。
劉麗蕾
大亜連合の新たな戦略級魔法師である。
・所属組織、地位や役職
大亜連合の戦略級魔法師。
・物語内での具体的な行動や成果
大亜連合の公式発表により、新たな十三使徒として世界に向けて大々的に公表された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
14歳の少女であり、戦略級魔法「霹靂塔」の術者である。
その他
司波龍郎
達也と深雪の父親である。
・所属組織、地位や役職
FLTの開発本部長。
・物語内での具体的な行動や成果
ビジネスネームである「椎原辰郎」の名前で企業役員として活動している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
九重八雲
九重寺の住職であり、忍術を伝承する古式魔法師である。達也の武術の師である。
・所属組織、地位や役職
九重寺の住職。
・物語内での具体的な行動や成果
達也に対して情報部の動きを警告した。達也や深雪の行動をサポートしつつ、世捨て人を自称している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
政財界や軍内部にも深い情報網を持っている。
北山潮(北方潮)
大実業家であり、北山雫の父親である。
・所属組織、地位や役職
企業経営者。
・物語内での具体的な行動や成果
娘の友人である達也たちを自身の所有する施設へ歓待し、気さくな態度で接した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
豊富な資金力を背景に持つ。
周公瑾
大亜連合のスパイであり、古式魔法や方術を操る青年である。
・所属組織、地位や役職
大亜連合の工作員。
・物語内での具体的な行動や成果
横浜事変において暗躍し、光宣に知識と魔法技能を取り込まれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
顧傑
国際テロ組織ブランシュの総帥であり、無国籍の華僑である。
・所属組織、地位や役職
ブランシュ総帥。七賢人の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
日本に魔法師排斥運動を仕掛け、社会的な混乱を引き起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「ジード・セイジ・ヘイグ」や「黒の老師」などの名を持つ。
陳祥山
大亜連合の工作員である。
・所属組織、地位や役職
大亜連合の工作員。
・物語内での具体的な行動や成果
第一高校における協力者の関本勲が任務に失敗した際、彼を処分するよう指示を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔法科 (23)孤立編レビュー
魔法科 まとめ(3年生)
魔法科シリーズ まとめ
魔法科 (26) インベージョン編レビュー
展開まとめ
24
[1]
正体暴露と親子の思惑
トーラス・シルバーの正体暴露による波紋
七賢人を名乗る怪人のビデオメッセージによって、トーラス・シルバーの正体が国立魔法大学付属第一高校三年生の司波達也であると暴露された。この情報は日本だけでなくアメリカでも大きな反響を呼び、魔法に強い関心を持たない層にまで衝撃的な話題として広がっていった。アメリカ魔法学会では、理論分野のカーディナル・ジョージと並び、技術分野ではトーラス・シルバーが日本を代表する存在と見なされており、その素性が高校生であったことがさらに注目を集める要因となっていた。
レイモンドの満足と孤独な愉悦
ネット上で大衆が期待どおりに騒ぐ様子を見たレイモンドは、ひとり満足げに笑っていた。しかし、七賢人の正体が自分であることは父エドワード・クラークしか知らず、友人とこの出来事を共有して楽しむことはできなかった。そのため彼の満足は、秘密を抱えたまま味わう孤独な愉悦であった。
父の帰宅と表向きの叱責
普段は一週間に一、二度しか家に帰らない父エドワードが珍しく早く帰宅したことで、レイモンドは昼間の件が原因だとすぐに察した。怒られると予想しつつも、レイモンドは笑顔で父を迎えた。実際にエドワードは厳しい口調で馬鹿な真似をしたと叱責したが、レイモンドは本気で父が怒っていないと確信しており、謝罪も口先だけのものであった。
暴露行為が持っていた政治的価値
エドワードは、レイモンドの行為を結果的には好都合であったと認めた。政府関係者が未成年である司波達也の個人情報を暴露すれば、マスコミや人権団体から激しい批判を受けることになるため、USNA政府は公然とその手段を取れなかったのである。だが、政府とは無関係の第三者による暴露という形であれば、世論を動かして司波達也を追い詰める効果を得つつ、政府は直接の非難を避けられた。レイモンドはその構図を見抜いたうえで七賢人を演じており、父の思惑に沿う形で動いていた。
日本行きへの同行決定
さらに役に立てることはないかと尋ねたレイモンドは、実際にはもっとこの遊びを続けたいという欲求を抱いていた。エドワードはその思惑を理解しつつも、七賢人に利用価値があると判断したためか、叱責はしなかった。そして近く日本へ行く予定があると告げ、レイモンドにも同行を勧めた。父の誘いに対し、レイモンドは即座に喜んで応じた。
反撃への相談
七賢人の動画を受けた決断
達也が七賢人の動画をニュースで確認したのは朝七時であった。その後三時間にわたり状況を検討した末、午前十時に思考を打ち切り、具体的な行動へ移った。
真夜への連絡と意思表明
達也は四葉本家へ連絡し、真夜と直接通話を行った。真夜は状況の重大さを感じさせない態度で応じたが、達也は消極的な対応では対処しきれないと判断し、積極的な反撃を望む意志を明確に示した。
反撃案の提示と真夜の判断
達也の発言から具体的な考えがあることを察した真夜は、表情を改めて思案に入った。達也は余計な言葉を挟まず、静かにその判断を待ち続けた。
対面での協議決定
短い沈黙の後、真夜は迎えを出すことを決め、昼食を取りながら直接話し合うよう指示した。達也は当初電話での相談も可能と考えていたが、この提案を受け入れ、恭しく応じて通話を終えた。
四葉本家での協議と反撃計画
四葉本家への到着と会食の準備
達也は午前十一時半に四葉本家へ到着し、花菱兵庫の案内で母屋の奥へ通された。食堂は既に会食の準備が整えられていたが、真夜はまだ現れていなかった。達也は彼女を待たせずに済んだことに安堵しつつ席に着き、ほどなくして現れた真夜を起立して迎えた。両者は向かい合って席に着き、背後にはそれぞれ葉山と兵庫が控え、会話の妨げにならないよう簡素な食事が用意された。
レイモンドに関する認識と反省
食事を進めながら、真夜は今回の騒動について言及し、達也にレイモンド・クラークについての認識を確認した。達也は直接の接触は無かったものの、過去の報告書で存在を伝えていたことを説明した。しかしエドワード・クラークとの関係には気づいておらず、さらに継続的な情報提供の申し出や使用ツールの調査を怠った点について、自身の判断の甘さを認めて後悔を述べた。真夜は過去の失敗を責めることはせず、話題を切り替えた。
封印解除に関するやり取り
真夜は達也の封印状態に言及し、現在それが解かれていることを確認した。達也は十文字との戦闘に際して誓約そのものを解呪したと説明した。真夜はその判断を無茶だと評しつつも、勝利という結果を踏まえ、完全には否定しなかった。達也はその意図を深く探らず、簡潔に応じた。
記者会見による反撃案の提示
話題が本題に移ると、達也はFLT本社での記者会見実施の許可を求め、自ら矢面に立つ意志を示した。その場で発表する内容として、恒星炉を用いた海水資源化プラントの開発計画、すなわちESCAPES計画を提示した。この計画は太平洋沿岸から有用物質と有害物質を抽出するものであり、魔法師の社会的立場を強化することを目的としていた。
計画の意図と真夜の評価
達也は魔法師の独立国家建設を目的とせず、あくまで既存国家の中で権利の実効的保障を勝ち取ることを目指していると説明した。その手段として実質的な自治的環境を得る可能性は認めつつも、政府との対立は避ける方針であった。真夜はこの現実的な考えを評価し、計画に一定の成算があると判断した。
スポンサー承認という条件提示
しかし真夜は自身の判断だけでは許可できないとし、四葉家と親しいスポンサーである東道の承認を条件として提示した。達也はこれを受け入れ、自ら東道に計画を説明することとなった。
記者会見日程の仮決定
さらに真夜は記者会見の仮日程として四日後の金曜日午前十時を提案し、達也は即座に了承した。ただし東道の都合や承認の有無によって延期または中止となる可能性があることも確認され、達也はそれを当然の条件として受け入れた。
真夜と葉山の再評価と危機認識
達也帰宅後の真夜の独白
真夜との打ち合わせを終えた達也は伊豆の別荘へ戻った。使用人たちの態度は変化していたが、達也自身はそれを意に介していなかった。一方、真夜は書斎で達也について思考を巡らせ、その無関心さに言及しつつも内心の評価を深めていた。
誓約解除に対する葉山の評価
真夜は葉山に対し、達也が誓約を独断で解呪した件について意見を求めた。葉山は問題ないと判断し、達也が深雪の婚約者となった時点で封印は役目を終えたと考えていた。さらに、達也が魔法を暴走させる可能性は極めて低く、その制御能力は世界最高水準にあると評価した。
封印の本質と不要性の指摘
達也に施された封印は、マテリアル・バーストの暴発を防ぐためのものであったが、理性的制御が可能な現状では不要であると葉山は指摘した。また誓約は達也だけでなく深雪の魔力も消費し、四葉家の戦力を削ぐ要因となっていたため、むしろ有害であると結論付けた。
深雪の危険性と新たな脅威認識
葉山は達也よりも深雪の安全にこそ最大のリスクがあると指摘した。達也はほぼ不死に近い存在であるが、深雪はそうではなく、暗殺の巻き添えとなる可能性があるとした。真夜はこの指摘により、自身が過信していたことを自覚し、世界中の勢力が達也の暗殺を企てる可能性を現実的脅威として認識した。
達也の限界と戦闘事例の再確認
達也は圧倒的な力を持ちながらも万能ではなく、過去には強敵との戦闘で苦戦や被害を受けていた。物理攻撃や特定条件下では対応に限界があり、深雪を完全に守りきれない可能性も否定できなかった。これにより、封印による制限はむしろ護衛能力を削ぐ要因であると再評価された。
封印解除の正式追認
これらの議論を踏まえ、真夜は誓約の解呪を追認する決断を下した。形式上は不問ではなく追認とされたが、実質的には問題視しない扱いとなり、達也の行動は四葉家として容認された。
ESCAPES計画の評価と対抗手段
続いてESCAPES計画についての評価が行われた。葉山はこの計画を高く評価し、エドワード・クラークのディオーネー計画に対抗する現実的な手段であると判断した。理想性では劣るものの、実現性と投資価値の高さにおいて優れており、資本家の支持を得やすいと分析された。
妥協可能性の新たな視点
さらに葉山は、達也の力を巡る問題について完全な対立ではなく妥協の可能性も提示した。達也が国家と同等の立場を持つ存在となれば、各国との利害調整が成立し、対立構造そのものを緩和できる可能性があると示唆した。
第一高校包囲と生徒たちの対応
マスコミの殺到と学校側の対応
トーラス・シルバーの正体が暴露された当日、第一高校には朝から多数のマスコミが押し寄せていた。登校時間帯には間に合わなかったものの、二限目が始まる頃には正門と通用口の双方が記者で埋め尽くされていた。記者たちは達也への取材を要求したが、学校側は未成年のプライバシー保護を理由にこれを拒否し、さらに達也が登校していない事実も明かさなかった。
包囲の長期化と生徒たちの不安
しかしマスコミは取材拒否に屈することなく、昼休みになっても校外に居座り続け、むしろ人数は増加していた。生徒会室から外を確認した泉美や香澄、ほのかはその状況に不安と疲労を感じており、学校全体が異様な緊張状態に包まれていた。
下校時の危機と対応の検討
深雪は特に下校時の混乱を問題視し、対策の必要性を認識していた。雫は警察への連絡を提案したが、深雪はそれが教師側の判断に委ねられるべき問題であるとして即断を避けた。
魔法使用の制約と行動の難しさ
詩奈は自力での安全確保に不安を示したが、魔法の使用には法的制約が伴い、正当防衛として認められる可能性は低かった。報道の自由を盾にされれば、未成年であっても魔法行使が違法と判断される恐れがあり、生徒たちは容易に行動できない状況に置かれていた。
対策模索への動き
こうした状況を踏まえ、深雪は生徒会として何らかの対策を講じる必要があると判断し、対応策の検討に入る決意を固めた。
FLT対応と龍郎の葛藤
FLTへのマスコミ殺到と収束
トーラス・シルバーの正体暴露により、第一高校だけでなくフォア・リーブス・テクノロジーにも多数のマスコミが押し掛けた。未成年への配慮が不要であることから、記者たちは露骨な取材姿勢を見せ、業務妨害に近い状況となっていた。しかし午後二時、FLT側が四日後に記者会見を実施すると発表し、当日の取材自粛を求めたことで状況は収束へ向かった。
記者会見発表による沈静化
FLTは金曜日午前十時に記者会見を行うと正式に告知し、従わない場合は入場を拒否する方針を明示した。一部の記者は報道の自由を盾に反発したが、他の報道関係者がこれを制止し、確実に情報を得ることを優先する判断が働いた。その結果、大きな混乱は起きず、報道陣は撤収した。
四葉の使者と龍郎の立場
FLT開発本部長室では、司波龍郎が四葉本家の使者である花菱兵庫を迎えていた。兵庫は表面的には丁寧に労いながらも優位な立場を崩さず、龍郎は内心の反感を抑えつつ従順に応じた。FLTの対応は四葉本家の意向に基づくものであり、龍郎はその指示に従う立場に置かれていた。
達也の扱いを巡る問い
兵庫が退室しようとした際、龍郎は躊躇しながらも達也の今後について問いかけた。しかし兵庫は明確な答えを示さず、自身は当主の意向を知らないとしつつ、龍郎の関与する問題ではないと突き放した。
父としての立場の否定
龍郎が達也の父であることを主張すると、兵庫はそれを一蹴した。深雪が次期当主となり達也が婚約者となった時点で、龍郎の役割は既に終わっていると告げ、親子関係としての関与すら不要であると断じた。
血縁の否定と過去の清算
さらに兵庫は、達也の実の両親は龍郎ではなく四葉当主であるという設定を事実として突きつけた。これは達也と深雪の関係を成立させるための措置であったが、現在はそれが正式な扱いとなっている。加えて龍郎が達也を疎んじてきた過去を指摘し、現在の関係は龍郎自身が望んだ結果でもあると告げた。
言葉を失う龍郎
これらの指摘に対し、龍郎は反論することができなかった。自身の過去の態度を否定できず、兵庫の言葉を受け入れざるを得ない状況に追い込まれていた。
達也の介入とマスコミ制圧
マスコミの残存と生徒たちの限界
午後になると第一高校を取り囲むマスコミの数は半減していたが、それでも生徒にとっては十分な脅威であった。魔法師である生徒たちは力で排除することも可能であったが、社会的制裁や将来への影響を考慮し、それを選べない状況に置かれていた。
深雪の決断と仲間の制止
警察の介入も期待できない中、深雪は自らマスコミと対話する決断を下した。しかし泉美や雫は強く反対し、特に雫は深雪が前面に出ることで魔法師全体の印象悪化につながる危険性を指摘した。それでも深雪は行動を起こそうとしたが、その直前に異変に気づく。
達也の登場と状況の一変
校門前に自走車が到着し、そこから姿を現したのは達也であった。報道陣にとっても予想外の登場であり、場は一気に緊張に包まれた。達也は冷静に記者会見の予定を告げ、その場での取材を拒否する姿勢を示した。
圧力による報道陣の制御
達也は記者に対し、学校や生徒に迷惑をかけた場合は記者会見への参加資格を失う可能性を改めて示した。この発言により、報道陣の間に動揺が広がり、無遠慮な取材を継続するリスクが明確化された。
テロリスト襲撃と達也の対処
その最中、報道陣に紛れていた反魔法主義のテロリストが銃撃を開始した。達也は分解魔法により銃弾の運動量を分散させ、素手で受け止めるという常識外れの対応を見せた。さらにナイフでの攻撃も容易に制圧し、無傷で犯人を取り押さえた。
圧倒的実力の誇示と心理的制圧
達也の行動は、報道陣に強烈な衝撃を与えた。魔法の使用が検知されなかったこともあり、彼の能力は理解を超えたものとして認識され、恐怖と混乱が広がった。この一連の出来事により、達也が脅威であること、そして容易に干渉できない存在であることが明確に示された。
深雪の救出と現場離脱
混乱の隙を突き、達也は校門内へ入り深雪と水波を連れ出した。報道陣は抵抗できず道を開け、達也はそのまま二人を車に乗せて現場を離脱した。
行動の真意と目的
車中で達也は、深雪の負担を軽減するために迎えに来たと説明した。同時にマスコミへの牽制と、自身が恐れていないことを示す意図もあったと明かした。今回の行動は、学校への圧力を排除しつつ今後の取材環境を制御するための布石でもあった。
報道陣撤退と裏工作の意図
報道陣の完全撤退
達也の行動により、第一高校を取り囲んでいた報道陣は最終的に全て撤退した。即座とはいえないものの、達也が去ってから三十分ほどで記者やリポーターは姿を消し、生徒や職員は妨害を受けることなく安全に下校できた。記者会見から締め出されるという警告が強く作用した結果であった。
兵庫との再会と情報共有
伊豆の別荘へ戻った達也は、事前に情報を提供していた花菱兵庫と対面した。達也は暴漢の存在についての事前情報に礼を述べ、兵庫もまた達也の行動を労った。両者は対等ではなく、兵庫は立ったまま応対するなど四葉家の序列が反映された関係であった。
暴漢対策と事前調整
兵庫は深雪への被害を防ぐため、事前に危険人物を排除していたことを明かした。結果として現場に現れたのは単独犯であり、達也もこの判断を妥当と評価した。襲撃自体は計画されたものではなかったが、状況によっては演出として利用する意図もあった。
意図的な被弾演出の目的
達也が銃撃を受けたのは偶然ではなく、意図的な演出であった。銃撃という強烈な視覚的衝撃を報道陣に与えることで、反魔法主義者の危険性を印象づける狙いがあった。銃弾を受け止める異常な光景は、恐怖と動揺を増幅させる効果を持っていた。
世論誘導と報道操作
この出来事を通じて、反魔法主義者とテロリストを結びつける認識を報道内部に広める動きが始まっていた。兵庫はこの流れをさらに強化するため、記事として定着させる工作を進める意向を示し、達也もそれを了承した。
深雪への配慮と制御
達也は自らが負傷する可能性についても検討していたが、深雪がそれにより感情を乱す危険性を考慮し、過度な演出は避ける判断を下した。深雪の存在が、行動の制約要因であると同時に重要な優先事項であることが示された。
計画の進行と確信
今回の一連の行動は、マスコミへの牽制と世論操作を目的とした計画の一環であった。達也と兵庫はその効果を確認し、今後の展開に向けた手応えを共有していた。
結界構築と監視者の排除
伊豆の監視拠点と目的
伊豆には達也の滞在する別荘とは別に、四葉家が所有する小屋が存在していた。本来は深夜の安全確保のために設けられた監視拠点であったが、彼女の死後はほとんど使用されていなかった。その小屋が再び使われたのは、達也の周辺からマスコミを排除する任務のためであった。
津久葉夕歌の任務開始
夕暮れ時、小屋を訪れた津久葉夕歌は四葉当主の命を受け、別荘周辺に人払いの結界を構築する任務に取り掛かった。津久葉家は精神干渉系魔法に長けており、古式魔法に近い仕組みで対象の認識を操作する結界を展開することが可能であった。
認識阻害の結界の完成
夕歌が構築した結界は、別荘そのものを視認できなくするのではなく、見えている対象を認識できないよう意識に干渉するものであった。そのため結界完成直前まで監視していた者は、突如として別荘が消失したように錯覚することになる。
不審者の発見と対応指示
結界完成の影響で動揺した不審者の存在に、夕歌の部下が気づいた。男は双眼鏡を持ち、達也の別荘を監視していたと見られた。夕歌は即座に捕縛を命じるが、殺害や重傷を与えることは禁止し、慎重な対処を指示した。
達也の黙認と後処理の委任
夕歌は、達也自身が既にこの監視者の存在に気づいていたと推測していた。しかし達也は直接対処せず、実害が無いと判断して放置していた可能性が高い。また、拘束後の処理の煩雑さを避ける意図もあったと考えられた。
四葉による裏方処理と夕歌の内心
不審者が侵入していた場所は四葉家の実質的な私有地であったが、法的には扱いが難しく、過剰対応は問題となり得た。そのため処理は夕歌たちに委ねられていた。達也に代わって雑務を押し付けられている状況に、夕歌は苦笑と共にため息を漏らしていた。
魔法協会の介入と誓約問題の整理
不審者の正体と背後関係の判明
結界構築後、夕歌は捕縛した不審者を尋問し、その正体が百家の一つである富田家の術者であることを突き止めた。さらにその行動は魔法協会の指示によるものであり、達也の動向を監視する目的で派遣されていたことが判明した。
真夜の対応方針と解放指示
報告を受けた真夜は、術者の身柄を解放し記憶処理も不要と指示した。これは四葉家が身内を見捨てないという建前を示す意図であったが、夕歌はその言葉に内心で違和感を抱いていた。
四葉家の姿勢への疑念
夕歌は、これまでの達也の扱いや過去の出来事を踏まえ、四葉家の対応が必ずしも一貫したものではないと感じていた。特に達也が単独で危険な役割を担わされてきた経緯を思い起こし、表向きの理屈と実態の乖離に疑問を抱いていた。
誓約解呪に対する懸念の提示
続いて夕歌は、達也の封印が解除された件について母・冬歌の懸念を伝えた。真夜はそれを過小評価しつつも、完全に問題がないわけではないと認めたうえで、現状では受け入れるしかないとの見解を示した。
解呪の不可逆性と現実認識
真夜は、誓約の再施行が現実的に不可能であることを指摘した。誓約は維持者である深雪にも大きな負担を強いるため、現在の状況で再び適用することは許容されないと判断された。
真夜の結論と価値観
最終的に真夜は、既に起きた事象に固執しても意味はなく、現実を受け入れるべきだと結論付けた。その発言は、誓約の解呪に対して感情的に反発する立場への暗黙の批判でもあった。
夕歌の受容と内面の整理
夕歌はその指摘を理解し、形式的な従順ではなく内心でも納得する形で受け入れた。誓約問題については、過去ではなく現実を基準に判断すべきであるという認識に至っていた。
[2]
分家内対立と達也の評価
勝成と貢の会談
新発田家次期当主である勝成は、防衛省の業務を終えた後、都内のホテルで黒羽家当主・黒羽貢と会談した。話題はトーラス・シルバーの正体暴露、すなわち達也に関する問題であった。貢はこの事態を問題視し、達也の行動に原因がある可能性を示唆したが、勝成はこれを否定し、不可避の事態であったと位置付けた。
マテリアル・バーストの必要性を巡る議論
貢は達也が表舞台に出たことを問題視し、マテリアル・バーストの使用も必須ではなかったと主張した。しかし勝成は、当時の戦局においてその魔法の使用は不可避であり、結果として国家の被害を大きく抑えたと反論した。戦争における戦力温存と経済的負担の観点からも、達也の行動は合理的であったと論じた。
達也隔離案の提示
貢は議論の方向を変え、達也を四葉家の内部に隔離し、死亡したことにして国外の関心を断つ案を提示した。この提案は、対外的な圧力を回避しつつ国内の安全を確保する意図に基づくものであった。
勝成の反対と真意の開示
しかし勝成はこれに強く反対した。彼は分家が達也を敵視する理由を理解できず、父から事情を聞いたうえで、その考えに賛同できないと明言した。達也を危険視する姿勢そのものが誤りであると断じたのである。
個人と権力の危険性の比較
貢が達也の危険性を指摘すると、勝成はそれを否定せず、むしろ国家や権力者が持つ大量破壊兵器と本質的に同質であると論じた。戦力は常に即時使用可能な状態で保持されており、完全な抑止は現実的に不可能であるという認識を示した。
独裁と個人の違いの指摘
さらに勝成は、独裁者と個人の違いに言及した。独裁者は内部から制御されないが、個人は他者との関係性の中で抑制や説得が可能であるとし、達也も孤立させなければ制御不能な存在にはならないと主張した。
結論と警告
勝成は、達也を孤立させることこそが危険を増大させると結論付け、分家の方針は逆効果であると警告した。そしてこの考えが自身だけでなく新発田家としての総意であることを示し、貢に現実的な判断を求めて会談を終えた。
魔法協会会長の苦悩
USNAからの要請と板挟みの状況
黒羽貢と勝成の会談と同時期、京都の魔法協会本部では会長の十三束翡翠が頭を抱えていた。彼女のもとにはUSNAからの正式な要望書が届いており、その内容はエドワード・クラークの訪日に伴い、司波達也との面会を手配するよう求めるものであった。
権限不足による対応不能
翡翠は求められている対応自体は理解していたが、自身には達也との面会を調整できる権限が無いという現実に直面していた。そのため要請を拒否することもできず、実行も困難という板挟みの状態に陥っていた。
記者会見との時期的衝突
さらに問題を複雑にしていたのは、達也による記者会見が予定されている点であった。USNAの訪日前日に記者会見が行われるという状況に、翡翠は不穏な展開を予感し、強い不安を抱いていた。
事態への不安と精神的疲弊
一連の出来事により、翡翠の思考は混乱し、冷静な判断が難しい状態に陥っていた。自らの立場と責任の重さに苦しみつつも、事態を打開する手段を見出せず、疲労と苛立ちを募らせていた。
東道との会談決定と新たな疑念
真夜からの連絡と会談決定
夜遅く、達也のもとに真夜から連絡が入った。東道青波との面会が正式に決まり、翌日の夜七時に会うことが告げられた。これは事前の取り決めどおりの連絡であったが、真夜自身が直接電話をかけてきたことは達也にとって予想外であった。
会談場所と八雲の関与
面会場所は九重寺であり、さらに九重八雲が立ち会うことも明かされた。この事実は達也に大きな衝撃を与えた。真夜はその反応を楽しむように振る舞い、東道と八雲が以前から親しい関係にあることを説明した。
達也の内心に生じた疑念
表面上は冷静に応じながらも、達也の内心には強い疑念が芽生えていた。八雲との関係は、四葉家の意図とは無関係に築かれたものと認識していたが、東道との繋がりが判明したことで、その前提に揺らぎが生じた。
八雲との関係の再評価
これまで達也は、八雲から受けた多くの助力を気まぐれや個人的な好意によるものと考えていた。しかし今回の事実を受け、そうした認識が誘導されたものではないかという疑いを抱くようになった。
信頼と警戒の揺らぎ
八雲を信頼していた自分自身に対し、達也は改めて警戒心を強めた。八雲が自身の理解を超えた存在であることを再認識し、その意図や立場について慎重に見極める必要があると考え始めていた。
会談への準備と内面の緊張
達也は真夜に対して会談への参加を了承し、表面的には平静を保った。しかし内心では、東道と八雲という二人の存在が交差する場に向かうことへの警戒を強めており、緊張を抱えたまま翌日の会談に臨むこととなった。
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九重寺での試練と八雲との邂逅
世間の無関心と達也の来訪
トーラス・シルバーの正体暴露は一時的な話題となったが、数日も経たぬうちに一般大衆の関心は急速に薄れていた。魔法に関係の薄い人々にとっては重要性の低い出来事であり、達也の置かれた状況も深刻な問題としては認識されていなかった。そのような中、達也は九重寺を訪れ、単身で東道との面会に臨むこととなった。
監視の消失と不自然な静寂
到着した達也は周囲を警戒し、あえて目立つ行動を取ったが、監視の気配は既に消えていた。この状況は偶然ではなく、八雲側による介入と判断され、達也は警戒を維持しつつも進行を続けた。
幻術による試験の開始
石段を登る途中、達也は突如として遠近感を歪める幻術に襲われた。精神に干渉する古式魔法によるものであったが、達也は術式解体を応用してこれを押し返し、完全に術中に落ちることを防いだ。
連続攻撃と即応対応
幻術に続き、空気と石粉によるカマイタチが襲い掛かったが、達也は瞬時に分解して無効化した。さらに闇から降り注ぐ矢を分解する中で、それが実体ではなく情報体を偽装した攻撃であると見抜き、五感を研ぎ澄ませて敵の位置を特定した。
接近戦による決着寸前の攻防
達也は一気に距離を詰め、接近戦に持ち込んだ。互いに攻撃を繰り出しながらも決定打の直前で止まり、相手の正体が九重八雲であることが明らかとなった。両者の攻防は実力差を示す形で終わり、八雲は時間を理由に戦闘を打ち切った。
力量差の自覚
戦闘はわずか数分であったが、達也は八雲が余裕を持って時間を調整していたことを察し、自身との実力差を改めて認識した。完全に本気ではない相手に対してなお及ばない現実を受け止めつつ、達也は次の場へ向かうこととなった。
東道青波との会談と抑止力の受諾
東道青波との対面
達也は八雲の悪戯による汚れを再成で取り除いたうえで本堂に入り、奥の間で東道青波と対面した。東道は寺に似つかわしい剃髪姿でありながら高級なスーツをまとい、老いを感じさせながらも強い威圧感を放っていた。達也はその左目に見覚えを覚え、正月にこの寺で一度姿を見かけていたことを思い出した。
四葉達也としての呼びかけ
達也が挨拶を申し出ると、東道はそれを許し、直答も認めた。達也は礼を尽くして名乗ったが、東道は彼を司波達也ではなく四葉達也と呼んだ。達也はその呼称が意図的なものであると察しつつも動揺を表に出さず、相手の視線を正面から受け止めた。
ESCAPES計画の説明と許可
東道に促され、達也はESCAPES計画を説明した。魔法を用いたエネルギー資源生産プラントの構想と、それを記者会見によってエドワードとレイモンドの情報戦への反撃に結びつける意図を語ると、東道はそれを聞き終えたうえで計画への協力を認め、記者会見も許可した。さらに、自身の知己にも協力を呼びかける意向を示した。
力の用途を問う東道
その後、東道は達也が政治的権力を求めないとした点を取り上げ、個人の域を超えたその力を何のために使うのかを問いかけた。達也は快い日々のためと即答し、社会の安寧と国家の存続もまた自らの平穏な生活に不可欠であると説明した。東道はその答えに不快感を示しつつも、国家や治安のために力を用いる意思があることを確認すると、それで良いと判断した。
抑止力としての役割の提示
東道は達也に対し、この国のための抑止力になれと求めた。達也が戦略級魔法師として名乗りを上げることかと問い返すと、東道は今は不要だが必要になればそうせよと答えた。さらに、現実化した脅威を排除する戦力ではなく、恐怖を示して他国を牽制する存在こそが抑止力であると説き、必要であれば再び力を見せつけることもやむを得ないとした。
達也の受諾とその理屈
達也は東道の言葉を受け、自らも近頃、抑止力は必要悪ではないかと考えていたことを再確認した。魔法師を軍事から民生へと移行させれば、失われた軍事的均衡が世界情勢を不安定にし、結果的に再び魔法師が兵器として駆り出される未来があり得ると考えていたからである。そうした未来を避け、ESCAPES計画を進めるために自らが抑止力となることはやむを得ないと判断し、東道の意向を受け入れた。
八雲の警告と達也の覚悟
ここで八雲が初めて口を挟み、その道の先に待つのは孤独であると警告した。しかし達也は構わないと答えた。彼にとって本当に必要なのは深雪ただ一人であり、その存在が自分のそばにある限り、他の孤独は問題にならなかった。八雲の懸念は理解しつつも、それは達也をためらわせる理由にはならなかった。
自己責任の確認と退出
達也が今後何をすべきかを問うと、東道は具体的な指示は出さず、自ら必要と判断したことを行えと告げた。それは東道が責任を負うのではなく、何かあれば達也自身が責任を負うという意味であった。達也はその意図を正しく理解したうえで了承し、会談の終了後、深く頭を下げてその場を辞した。
東道と八雲の評価と達也の危険性
達也の評価と東道の印象
達也を送り出した後、八雲は東道と再び向き合い、対面の印象を問うた。東道は達也について、予想以上に壊れていると評した。これは単なる否定ではなく、安全装置の外れた道具のように扱い次第で有用にも危険にもなり得る存在であるという認識であった。
東道の眼力と達也の特異性
東道は霊的な「目」を持つ家系に連なる人物であったが、その能力は達也には通用しなかった。達也の内面は読み取れず、四葉家が生み出した存在として特異であると改めて認識された。八雲もまた達也を一つの極致と評し、その異質性を共有していた。
討伐可能性の検証
東道は八雲に対し、いざという時に達也を仕留められるかを問いかけた。八雲は石段での戦闘を踏まえ、勝率は六割、相討ちを含めれば七割と見積もった。ただし残る三割は逃走ではなく、返り討ちに遭う確率であると明言した。
成長による脅威の増大
さらに八雲は、現時点でも危険である達也が、今後一年も経てば自分では手に負えなくなると予測した。この見解に東道は強い衝撃を受け、達也の成長速度と潜在能力の高さに対する危機感を露わにした。
対抗可能な存在の希少性
八雲は、自身と同等以上に達也と渡り合える若者が存在する可能性を示唆しつつも、それは極めて限られた存在であるとした。世界規模で見ても、そのような人物はごく少数に留まると考えられていた。
時代認識と達也の位置付け
このやり取りを通じて、東道は達也が単なる戦力ではなく、時代そのものの変化を象徴する存在であると認識した。従来の枠組みでは測れない力を持つ個人の出現が、世界の在り方に影響を与え始めていることを実感していた。
会談の終結と余韻
会話の後、二人は再び茶を交わし、東道は静かに席を立った。達也に対する評価と警戒を共有したまま、東道はその場を後にし、八雲はそれを見送ることなく応対を終えた。
東道承認後の連絡と計画拡張
真夜への報告と迅速な応答
九重寺から戻った達也は、東道の了承を伝えるため連絡を入れた。本来は葉山への伝言で済ませるつもりであったが、応答には直接真夜が現れた。達也は会談の結果として計画の許可が得られたことを報告し、真夜もそれを確認した。
抑止力としての役割の共有
東道から求められた条件について、達也は諸外国に対する抑止力となることだと説明した。真夜はそれを、達也の立場を事実上公認する要求と受け取ったが、達也は現時点での公表は不要であり、方法も任されていると補足した。これにより責任の所在が達也側にあることも双方で認識された。
記者会見の実施決定
東道の承認を受け、記者会見は予定どおり進める方針が固まった。真夜は計画進行に支障がなくなったことに安堵し、達也もまた後ろ盾が得られたことに一定の安心を覚えていた。
日焼島計画の提案
続いて真夜は、新たに日焼島で進めていた研究施設計画の変更を提案した。達也のESCAPES計画のプラントを同地へ誘致し、事業として展開する構想であった。
外部協力の導入と構想の拡大
この案では四葉関連企業だけでなく外部の協力者も参入させることが想定されていた。達也は、閉鎖的な体制では魔法師の解放という目的が損なわれると考え、この方針に合理性を見出した。
自治区的運用の可能性
日焼島の規模であれば実質的な自治的運用も可能であり、社会的な反発も限定的であると見込まれていた。この点についても達也は現実的な判断として受け入れた。
承諾と残る不安
達也は提案を受け入れ、計画の推進を優先する決断を下した。ただし、自身の構想が他の意図に利用される可能性への懸念も完全には拭えず、その不安を抱えたまま計画は新たな段階へと進むことになった。
東道の後押しと財界の参入
北山潮への召集
五月末、ホクザングループ総帥である北山潮は、東道青波の呼び出しを受けて都内の料亭を訪れた。東道は表に出ない実力者であり、その影響力を知る潮は他の予定を差し置いてでも応じざるを得なかった。過去に東道の力を軽視した者が破滅した例を目の当たりにしていたことも、その判断を後押ししていた。
達也の計画への出資要請
東道は世間話の後、達也の事業に協力するよう潮に依頼した。対象は核融合炉を核としたエネルギー生産事業であり、魔法師を兵器としてではなく社会的生産に組み込む構想であった。達也の名を聞いた潮は一瞬驚いたものの、その内容を理解すると即座に協力を承諾した。
潮の動機と家族の事情
潮が迷わず応じた背景には、魔法師である妻と娘の存在があった。戦争が起これば彼女たちが再び戦場に駆り出される可能性を危惧しており、魔法師を兵器から解放する構想は自身の利害と一致していた。
ディオーネー計画への否定的評価
東道が試す形で言及したディオーネー計画について、潮は強く否定した。この計画は魔法師を宇宙へ送り出し、地上から排除する性質を持つものであり、結果として魔法師の居場所を奪うと判断していた。
ESCAPES計画の本質的価値
これに対し達也の計画は、魔法師の役割を拡張し、エネルギー供給という不可欠な分野に組み込むことで存在価値を高めるものであった。戦時においてもエネルギー供給は重要であるため、魔法師を消耗させる選択を抑制する構造が生まれると評価された。
東道の戦略的評価
東道はこの構想が、戦力とエネルギー供給の間にトレードオフを生み出す点を特に評価していた。魔法師を戦力として使い潰せばエネルギー供給が損なわれるため、結果として魔法師の保護につながる構造であった。さらに達也自身が抑止力として機能することで、日本の軍事的優位も維持されると見込んでいた。
政府への対応と確約
潮は最後に政府の反応を懸念したが、東道は日本政府に干渉させないと明言した。この言葉により、達也の計画は政治的障害を排除された形となり、財界の支援を得て本格的に動き出す基盤が整えられた。
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記者会見と新事業発表
FLT本社に集結した報道陣
二〇九七年五月三十一日金曜日、フォア・リーブス・テクノロジー本社には朝から大量の報道関係者が押し寄せていた。彼らの目的はトーラス・シルバーの記者会見であり、会見開始前から会場周辺は業務妨害や交通妨害になりかねないほどの混雑を見せていた。普段は魔法産業に強い関心を示さない大手新聞社まで前列を占め、会場は異様な熱気に包まれていた。
達也と牛山による登壇
十時ちょうどに達也が牛山を伴って壇上に現れた。達也の背後の大型スクリーンには魔法恒星炉エネルギープラント計画の文字が映し出され、報道陣は当初から想定していた告白会見とは異なる雰囲気に戸惑いを見せた。さらに達也がトーラス・シルバーのソフトウェア担当、牛山がハードウェア担当であると名乗ったことで、トーラス・シルバーが単独の天才研究者ではなく二人による開発チーム名であったことが明かされ、会場は一気に混乱した。
トーラス・シルバーの正体を巡る応酬
記者たちは、これまで一人の人物名だと信じていたトーラス・シルバーの実態に強い反発を示した。だが達也は、団体名での特許出願や構成員情報の非公開は珍しいことではなく、虚偽を述べたつもりはないと冷静に応じた。未成年であったことを理由に個人情報を伏せ、取材を拒否していたという説明も加えられたが、記者たちはなおも、第一賢人の動画内容の一部が事実だったのではないかと追及を続けた。これに対し達也は、トーラス・シルバーを自分個人の名称として報じたこと自体が誤報であると切り返し、報道側と真正面から対立した。
トーラス・シルバー解散の宣言
混乱の中で牛山は、この場をもってトーラス・シルバーの解散を宣言した。達也がチームとしての活動を終え、自身は別の事業へ移ること、牛山はCAD開発を続けることが示された。これにより記者会見の焦点は、正体暴露への釈明から、達也が次に何を始めるのかという点へ移っていった。
魔法恒星炉プラント計画の公表
達也は新たな事業として、重力制御魔法による核融合炉を用いたエネルギー供給計画を発表した。離島や海上にプラントを建設し、魔法恒星炉で生み出した電力を用いて海水から水素を製造し、それを本土へ輸送する構想であった。この過程では海水中の有害物質も除去されるため、海洋環境の浄化にも寄与する計画であると説明された。会場では、単なる釈明会見ではなく新規事業発表の場であったことが明確になった。
計画の実務性と慎重な設計
工業系や魔法関係の記者からは、送電方式や必要な魔法師数について質問が出た。達也は、魔法恒星炉の安定性に不安を抱く声を考慮し、市街地から距離を置いた場所に建設する方針であること、そのため送電ではなく水素燃料への変換を選んだことを説明した。またプラント運営には相当数の魔法師が必要である一方、実際のスタッフ構成では魔法師以外の技術者の方が多くなると述べ、魔法師のみの閉鎖的な施設ではないことを強調した。
独立国家論への否定
反魔法的な立場の記者は、この計画が魔法師の独立国建設につながるのではないかと追及した。しかし達也は、プラントは法令を遵守して運営されるものであり、魔法師だけでは成り立たず、少数の魔法師が多数を支配する構図でもないと答えた。感情的な難癖には深入りせず、制度と実務の両面から冷静に否定した。
ディオーネー計画への対抗姿勢
さらに記者たちは、USNA国家科学局のディオーネー計画への参加要請をどうするのかと問いただした。これに対し達也は、USNAが求めていたのはトーラス・シルバーを名乗る高校生であり、そのトーラス・シルバーは既に解散したのだから応じようがないと返した。記者から屁理屈だと非難されても動じず、仮に今後自分個人に誘いがあったとしても、新たなプラント計画が既に建設地選定段階に入っている以上、他の大型計画に関わる余裕はないと明言した。これにより達也は、正体暴露への防御だけでなく、自らの進む方向をはっきり示して会見を締めくくった。
九島光宣と亡霊の融合
記者会見を見つめる光宣の心情
達也の記者会見は魔法関連に特化したケーブルテレビで生中継されていた。体調不良で学校を休んでいた九島光宣は、自室のベッドでその様子を視聴していた。中継終了後、光宣は達也の発表内容と、その圧力の中で堂々と振る舞う姿に強い賞賛と憧れを抱いた。同時に、自身はただ画面越しに見ているだけである現実に悔しさを覚え、健康な身体さえあれば対等に並べるという自負を胸に抱いていた。
過去の記憶と自己認識の再確認
光宣は達也との出会いや共闘、再会の記憶を思い返した。初めて誰かの役に立てた実感を得た経験は、彼にとって特別なものであった。自身の才能は周囲からも認められており、祖父九島烈もその能力を高く評価していた。論文コンペでの優勝経験を含め、光宣は自らの実力を正確に理解していたが、それでも達也との差を埋められない現実に焦燥を感じていた。
夢の中での周公瑾との再会
眠りに落ちた光宣は、過去の出来事を再現する夢を見る。宇治橋での戦いの記憶が鮮明に蘇り、やがて自身が周公瑾の視点に入り込んでいることに気づいた。夢の中で体験する光景や痛みは極めて現実的であり、やがてそれが単なる夢ではなく、現在進行している事象であると認識するに至った。
亡霊の侵入と光宣の覚醒
周公瑾の霊が光宣へと接近し、その身体に侵入しようとした。光宣はそれがパラサイトと同質の存在であることを理解し、恐怖を抱くことなく対処に移った。彼は精神干渉系魔法を発動し、霊体を吹き飛ばして侵食を阻止した。肉体を持たない状態でありながらも魔法行使に支障はなく、むしろ現実以上の自由を感じていた。
霊体の撃退と支配への転換
周公瑾はなおも執念をもって襲い掛かるが、光宣は七色の稲妻による攻撃でその幻体を弱体化させた。さらに光宣は九島家の秘術を用い、単なる排除ではなく支配へと転じた。忠誠術式を応用し、周公瑾の霊を自らの内に取り込み、従属させることを選択したのである。
亡霊の吸収と変質した精神
光宣は周公瑾の霊体を取り込み、その知識や情報を自らのものとして吸収した。これは単なる防御ではなく、他者の存在を糧とする行為であった。夢の中で微笑む光宣の姿は、かつての人間的な感情を薄め、超越的で傲慢な存在へと変質しつつあることを示していた。
魔法協会からの接触と達也の対応
記者会見後の対応と父親への無関心
達也は記者会見に協力した牛山へ感謝を伝え、会場を整えたスタッフを労った後、本社を後にしようとした。父親と会うことは選ばず、会いたいという感情も抱かなかった。父親側も同様に接触を望んでいないと達也は判断しており、その推測は的を外していなかった。
魔法協会職員の訪問と違和感
マスコミを避けるため地下駐車場へ向かった達也を呼び止めたのは、父の関係者ではなく魔法協会の女性職員であった。彼女は極度に怯えた態度を見せ、達也に対して不自然な応対を続けた。魔法協会が印象を良くする意図で女性を選んだと考えられるが、その人選は逆効果となり、達也は不快感を覚えた。
クラークとの面会要請と判断
女性職員の用件は、翌日来日するエドワード・クラークとの面会を魔法協会で行ってほしいという依頼であった。急な要請に対して達也は疑問を呈したが、外交的影響を考慮し、最終的に応じる判断を下した。達也は既に結論を持っていたものの、正式な代表格に近い立場の人物を無視することは適切ではないと認識していた。
会話の打ち切りと距離の確保
女性職員は達也の了承に過剰に感謝を示したが、その態度は達也にとって煩わしいものであった。やり取りをこれ以上続ける価値はないと判断した達也は、車を停止させて彼女を降ろし、強制的に会話を終了させた。これにより、不要な接触を断ち切り、次の行動へと移った。
第一高校での校長面談と進路の確定
第一高校への帰還と校長面談の申し出
達也はそのまま第一高校へ向かった。これは当初からの予定であり、途中で魔法協会の対応に時間を取られたことを無駄と感じていた。制服に着替えた達也は教室には向かわず、事務室で校長への面会を申し出た。通常であれば突発的な面会要求は拒否される状況であったが、事情を把握している学校側はこれを受け入れ、達也はすぐに校長室へ通された。
校長との対話と計画の確認
百山校長は記者会見を視聴しており、達也の新事業についてすでに把握していた。ディオーネー計画への不参加の理由として今回の発表があったのかと問い、達也はそれを肯定した。さらに計画の名称について触れられ、非公式名称であるESCAPES計画の意味が魔法師の軍事からの離脱を示唆していることも理解された。
計画の実現性と校長の評価
百山はその計画が単なる口実ではないかと疑念を抱いていたが、達也はすでに実現に向けて動いていると明言した。それを受けて百山は完全な確信ではないものの、達也の説明を受け入れる姿勢を示した。達也の構想は、ディオーネー計画と同様に魔法師の在り方を変える意義を持つと評価された。
処遇の維持と支援の表明
達也はディオーネー計画への不参加により、これまでの特別措置が取り消される可能性を確認しようとした。しかし百山は授業免除の継続を明言し、卒業資格と魔法大学への推薦も保証した。さらに達也に対し、ESCAPES計画へ専念するよう促した。
達也の受容と新たな方向性
校長の判断の真意は不明であったが、達也はその評価と支援を受け入れ、感謝を述べた。百山の激励を受けた達也は、学校という枠組みから事実上解放された立場で、新たな計画の推進に専念することとなった。
生徒会室での再会と達也の退室
校長面談後の行動選択
達也が校長室を出たのは昼休み直前であった。当初はそのまま伊豆へ戻る予定であったが、短く迷った末に生徒会室へ向かうことを決めた。授業中の教室から見られない経路を通り、静かに室内へ入り、自席に着いて端末を起動した。
生徒会業務の確認と平常の維持
達也は生徒会の業務状況を確認したが、深雪たちは問題なく職務を進めていた。特段の異常も無く、日常の延長にある光景であった。達也自身も業務とは無関係の作業に意識を向け、短い時間を過ごした。
生徒会メンバーの来室と違和感
昼休みになると、達也の予想に反して深雪たちがすぐに生徒会室へ現れた。深雪をはじめ、ほのかや雫、泉美、香澄、水波といった面々が揃っていた。彼女たちは達也の来訪理由を即座に見抜き、校長への報告であることを確認した。
記者会見の視聴意図の判明
会話の中で、彼女たちが生徒会室に集まった理由が明らかとなった。それは達也の記者会見を録画で視聴するためであった。授業中に行われた会見をリアルタイムで見ることができなかったため、深雪はあらかじめ中継を録画していたのである。
達也の退避と場の譲渡
自分の記者会見を目の前で視聴される状況に気恥ずかしさを覚えた達也は、その場に留まることを避けた。図書館へ向かう旨を告げ、視聴が終わった後に声を掛けるよう伝えて、生徒会室を後にした。
カフェテリアでの友人たちとの対話
放課後の再会と周囲の反応
放課後、達也は校内カフェテリアで友人たちと合流した。今日は車で来ていたため、いつもの喫茶店は利用できなかった。校内では記者会見の録画が広く視聴されており、多くの生徒の注目を集めていた。そのため周囲から向けられる視線は強く、達也にとっては煩わしいものであった。
友人たちの率直な感想
レオ、エリカ、美月、幹比古らは記者会見をすでに見ており、それぞれ率直な感想を述べた。生徒会メンバーとは異なり、遠慮のない言葉で達也の発表を評価し、計画の規模や発想の大きさに驚きを示した。特にエネルギープラント計画について、達也が独自に構想していたことに強い関心が寄せられた。
ESCAPES計画の意図の共有
計画の略称について問われた達也は、ESCAPES計画であることを明かし、その意味が軍事利用からの脱却にあると説明した。その言葉を受け、調整体魔法師の血を引くレオや水波をはじめ、周囲の面々はその本質を理解し、表情を引き締めた。魔法師が兵器として扱われる運命からの解放という目的が、全員に重く受け止められた。
空気の変化と仲間の支え
一時的に重くなった空気は、エリカの明るい言葉によって和らげられた。達也への信頼が場の雰囲気を支え、計画の成功を信じる気持ちが共有された。美月やほのかも安心した様子を見せ、達也が今後も学校に関わる意思を持っていることに安堵した。
新たな繋がりと次の展開
会話の中で雫から父との面会の話が持ち出された。達也は即座に応じ、日曜日に訪問する約束を取り付けた。この申し出の背後に何らかの意図があることを察しつつも、それを表には出さず冷静に対応した。
日常の中で得た意義ある時間
当初は短い休息のつもりであったこの時間は、結果として達也にとって有意義なものとなった。友人たちとの対話を通じて計画の意義を再確認し、同時に新たな人脈へと繋がる機会を得る場となっていた。
新居での一夜と深雪との距離の変化
調布の新居への帰還と環境の変化
達也は伊豆の別荘には戻らず、調布の新居へ帰宅した。翌日のクラークとの面会や、その翌日の雫の家への訪問を考慮し、移動の効率を優先したためである。この新居で過ごすのは初めてであり、達也自身は特別な感慨を抱かなかったが、深雪は強い高揚を見せていた。
二人きりの生活空間の成立
住居は同一フロアにありながらも、水波の部屋は独立しており、夜間は達也と深雪が実質的に二人きりになる環境であった。この状況に深雪は大きな意味を見出していた。呼称も自然に「お兄様」に戻り、関係の距離がより親密なものとして表れていた。
入浴場面での距離の接近
入浴時、深雪は達也に背中を流すことを申し出て浴室に入り、物理的にも心理的にも距離を縮めた。達也は戸惑いながらも拒絶はせず、深雪の行動を受け入れた。深雪は最近共に過ごす時間が減っていたことへの寂しさを吐露し、その思いが行動に現れていた。
湯船での会話と今後の予定
二人は同じ湯船に入り、今後の予定について話し合った。達也は日曜日に伊豆へ戻る予定であること、情勢を見て学校復帰を判断する考えを示した。深雪はそれを受け入れつつも、再び伊豆を訪れる意思を示し、関係の継続を望んだ。また、雫の家への訪問には深雪も同席することとなり、計画の重要性が共有された。
深雪の感情の高まりと危機
会話の最中、深雪は達也への依存と安心感から感情を高め、湯にのぼせる状態となった。達也は異変に気づき、入浴を中断する判断を下した。適切な対処により大事には至らず、二人とも体調を崩すことなくその場を収めた。
関係性の深化と変化の兆し
この一夜は、達也と深雪の関係がこれまで以上に密接なものへと変化していることを示す出来事であった。互いに意識しながらも距離を保っていた関係が、徐々に新たな段階へ移行しつつあることが明確に表れていた。
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クラークとの会談
来日と世間の反応
エドワード・クラークの来日は、多数の報道陣によって大きく取り上げられた。彼とレイモンドは人目を避けるどころか、むしろ注目を集めることを前提とした行動を取っており、その姿勢が騒動を拡大させていた。記者対応は行わなかったものの、警察の護衛のもとで大使館へ移動し、その背後にUSNA政府の意向を感じ取った報道関係者たちは一定の萎縮を見せていた。
魔法協会での対面準備
その後、クラーク父子はヘリで魔法協会関東支部へ移動し、達也との面会に備えた。一方、達也は予定時刻の直前に到着し、相手が先に待っている状況にも動揺を見せなかった。急な呼び出しに対する内心の不満を抱えつつも、表面上は冷静さを保っていた。
エドワードとの初対面と駆け引き
対面した達也は日本語で挨拶を行い、エドワードも流暢な日本語で応じたことで、互いに容易に隙を見せない人物であることを認識した。会話の中でエドワードはエネルギープラント計画を評価しつつ、ディオーネー計画への参加を打診した。これに対し達也は、トーラス・シルバーが個人ではないことを強調しつつ、相手の情報収集能力を踏まえた皮肉を交えながら応じた。
技術論争と主導権争い
エドワードは達也をトーラス・シルバーの中核と見なし、参加の正当性を主張したが、達也はソフトとハードの関係性を巡る議論に持ち込み、話題を逸らして主導権を握ろうとした。レイモンドの介入によって議論は本筋に戻されるが、このやり取りを通じて双方が互いの力量と狡猾さを確認する形となった。
参加要請の拒絶
最終的にエドワードは、トーラス・シルバーではなく司波達也個人としてディオーネー計画への参加を正式に求めた。しかし達也は、既にエネルギープラント計画の責任者となっていることを理由に、その要請を明確に拒絶した。もし最初から個人宛の要請であれば検討の余地もあったとしつつも、現状では受け入れられないと結論づけ、交渉は決裂した。
交渉決裂後の思惑
交渉の決着と誤算
エドワードと達也の間ではその後も激しい押し問答が続いたが、最終的に達也を言い負かすことはできなかった。達也を説得できないこと自体は想定内であったものの、不利な言質を一切引き出せなかった点はエドワードにとって誤算であった。彼は達也の手強さが予想以上であると認識した。
ホテルでの父子の会話
面会後、二人はUSNA大使館が用意したホテルに戻り、今後の方針について話し合った。エドワードは穏便な手段では目的達成が困難である可能性に言及し、レイモンドも暗殺を最終手段として肯定するなど、両者は倫理観よりも目的達成を優先する姿勢を共有していた。
ディオーネー計画の真の目的
エドワードにとってディオーネー計画の本質は金星開発ではなく、司波達也の無力化にあった。戦略級魔法を持つ達也の存在を脅威と見なし、その排除または封じ込めこそが最重要課題であると位置づけていた。
世論操作という次の一手
ただし即座に強硬手段へ移ることは避け、まずはテレビ取材を利用して日本国内の世論を動かす方針を決めた。その結果を見て次の対応を検討するという段階的な戦略であった。同時に、新ソ連が独自に強硬策へ出る可能性についても警戒を示した。
新ソ連への警戒と慎重姿勢
エドワードは新ソ連、特にベゾブラゾフの動向を懸念していた。拙速な行動が達也に反撃の材料を与える可能性を危惧し、情報収集についてもフリズスキャルヴの使用を控えるなど、協力関係維持を優先する慎重な判断を下した。
レイモンドの独自行動
会話の後、レイモンドは自由行動の許可を求め、北山家の令嬢・雫に会う意向を示した。エドワードはその利害を一瞬考慮した上で了承し、レイモンドは軽い足取りで連絡を取るため部屋へ向かった。エドワードはその様子を穏やかに見送った。
レイモンドとの対話と決裂
北山家での面会と協力の確定
達也と北山潮の面会は、終始和やかな雰囲気の中で短時間に終わった。東道青波の後押しもあり、潮がESCAPES計画に協力することは既に確定していた。達也は計画の詳細を説明し、潮は資源抽出や事業化の可能性に強い関心を示し、全面的な協力を約束した。
レイモンドとの再会
その後、雫のもとを訪れた達也と深雪は、そこでレイモンド・クラークと対面した。レイモンドは達也に直接話をしたいと考えており、場の主導権はすぐに達也へ移った。雫は距離を取るように席を移し、深雪がその間に座ることで、場の構図が整えられた。
計画の真意を巡る対話
レイモンドはESCAPES計画の実行意思を問いただしたが、達也はこの計画がディオーネー計画への対抗策ではなく、以前から構築していたものだと断言した。さらにディオーネー計画を現実性に欠ける構想と指摘し、その動機にも疑問を呈したことで、議論は本質的な対立へと進んだ。
理想と現実の対立
レイモンドは宇宙進出を人類の未来として語り、魔法による宇宙開発のロマンを主張した。一方達也は、宇宙であっても資源や環境には限界があり、問題の先送りに過ぎないと冷静に指摘した。理想を重視するレイモンドと、現実的な達也の価値観の違いが明確に浮き彫りとなった。
決裂と対立の明確化
議論の末、達也は自身の目的のためにESCAPES計画を推進すると宣言し、レイモンドの理想に協力する意思は無いと明確に示した。レイモンドもまた達也を諦めきれず、今後の対立を示唆する言葉を残してその場を去った。両者の関係は決定的に対立へと傾いた。
メディア戦と達也の反応
ティールームの重苦しい空気
レイモンドが去った後、ティールームにはどこか後味の悪い空気が残っていた。雫はその雰囲気を変えようと窓を開けさせ、テレビをつけたが、その選択は結果的に逆効果となった。
エドワードのテレビ発言
テレビにはエドワード・クラークのインタビューが映し出されており、彼は魔法を宇宙開発に活用すべきだと主張していた。魔法恒星炉についても評価しつつ、その利用は地球ではなく宇宙環境にこそ適していると語り、ディオーネー計画の正当性を強調した。
世論誘導の意図
さらにエドワードは、達也に計画への参加を望むと公の場で発言し、あくまで理想的な未来のための協力要請という形を取っていた。その内容は表向きには正論であり、視聴者に対して一定の説得力を持つものであった。
達也の冷静な反応
しかしエドワードの本意を理解している達也にとって、その発言は建前に過ぎなかった。彼はテレビ越しの言葉に対し、内心で嘲笑をもって応じ、改めて相手の意図と手法を冷静に見極めていた。
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第九研と光宣の選択
第九研の実態とパラサイドール
魔法技能師開発研究所は半数が閉鎖されていたが、その一部は形を変えて存続していた。奈良の旧第九研も民間研究所として活動を続けており、表向きは知覚系魔法の研究を掲げながら、実際にはそれ以外の分野にも手を広げていた。その成果の一つが、人型兵器パラサイドールであり、実用化は凍結されたものの高い性能を持つ存在として厳重に保管されていた。
光宣の侵入
六月二日の夜、九島光宣がその保管庫へ単独で侵入した。彼は魔法やハッキングではなく、管理部門から入手した鍵を用いて扉を開け、内部へ足を踏み入れた。室内は霊的な反応が乏しく、パラサイトが休眠状態で固定されていることを示していた。
増設知性との対話
光宣は、自身の中に取り込んだ周公瑾の亡霊――増設知性と対話を行った。パラサイトを取り込めば肉体の不調を解消できる可能性が示される一方で、身体の一部が変質する危険も指摘された。光宣は従来の努力では自身の欠陥を克服できない現実を既に理解しており、この選択肢を前に葛藤していた。
人間を捨てる決断の瀬戸際
パラサイトの取り込みは技術的には可能であり、後は決断するだけの段階にあった。それはすなわち、人間であることを捨てる覚悟を意味していた。光宣はその選択を目前にして長く思考を巡らせた。
選択と離脱
しかし最終的に光宣は決断を下さず、保管庫を後にした。増設知性に判断を委ねることもなく、自らの意思でその場を離れる選択を取ったのである。その選択の是非を問うことなく、光宣は静かにその場を去った。
帰国後の策動と新ソ連との連携
エドワードの帰国と特権的立場
エドワード・クラークは日本での活動を終え、息子と共に帰国した。ロサンゼルス到着後、彼は国家科学局カリフォルニア支局の自室へ向かった。そこでは上司の監督もなく、完全な裁量権と機密性の高い環境が与えられていた。この特権は本来エシェロンⅢの秘匿のためのものであったが、現在は対司波達也戦略に活用されていた。
新ソ連への連絡と状況共有
エドワードは通信機を用い、新ソ連のベゾブラゾフへ連絡を取った。達也がディオーネー計画を拒否し、代替として魔法恒星炉エネルギープラント計画を提示した事実を伝える。しかしベゾブラゾフは既にその情報を把握しており、計画の魅力を認めつつも余裕ある態度を崩さなかった。
主導権争いと揺らぐ立場
ベゾブラゾフは冗談めかしながらも優位に立ち、エドワードに心理的な揺さぶりをかけた。エドワードは主導権を奪われたことに動揺しつつも、ディオーネー計画がまだ有効であると主張し、日本政府への圧力やプラント事故の誘発といった手段を提示した。
強硬策への警戒と抑制
ベゾブラゾフはより直接的な方法、すなわち達也の無力化を示唆したが、エドワードはそれを強く制止した。強攻策が失敗した場合、国際的な疑惑が新ソ連およびディオーネー計画に向かう危険があるためである。最終的にベゾブラゾフは一時的な静観を受け入れた。
最終警告と焦燥
しかしベゾブラゾフは、達也を計画に取り込めない場合には独自路線を選び、あらゆる手段を用いると警告した。その中には戦略級魔法の使用も含意されていた。通信終了後、エドワードは強い焦燥に駆られ、次の手を打つため別の連絡へと動き出した。
外務省の圧力と魔法協会の限界
外務省からの強硬な要求
外務省の職員は魔法協会京都本部を訪れ、十三束翡翠に対し四葉家へ圧力を掛けるよう要求した。翡翠はその意図を理解すると即座に拒否し、魔法協会には魔法師に命令する権限が無いと強く反論した。
魔法協会の権限の実態
翡翠は、魔法協会があくまで魔法師の互助組織であり、個々の魔法師の行動や経済活動を制限できる立場ではないと説明した。また、強力な魔法師は十師族に多く、仮に懲罰的な組織を編成できたとしても四葉家を抑えることは不可能であると断言した。
十師族への介入要求と対立
しかし外務省職員は、十師族内部での牽制を促す形で影響力を行使すべきだと主張した。翡翠はそれを内部抗争の扇動と受け取り強く反発し、魔法協会は十師族の統制機関ではないと改めて否定した。
一方的な押し付けと翡翠の苦悩
外務省職員は翡翠の説明に耳を貸さず、最後には要求を押し付ける形で退室した。会長室に一人残された翡翠は、精神的な負担に加えて身体的な不調も覚え、腹部の痛みを押さえながらその場に立ち尽くした。
政府の思惑と財界の動き
政府によるESCAPES計画への妨害方針
日本政府がESCAPES計画の妨害に動いたのは、USNA政府からの要請によるものであった。政府は海中資源抽出の実現性や経済性に懐疑的であり、過去の失敗例を踏まえて積極的な価値を見出していなかった。そのため計画の推進よりも、外交や貿易における不利益を回避することを優先した。
財界における関心の高まり
一方で経済界は異なる反応を示した。北山潮が関与しているという情報は瞬く間に広まり、非公式の昼食会においても話題の中心となった。財界人たちは潮の動向に強い関心を寄せ、その背景や経緯について探りを入れた。
出資意欲の連鎖と情報拡散
潮は達也との関係を娘を通じたものとして説明し、特に隠す様子を見せなかった。この情報拡散は東道青波の意図によるものと潮は推測していた。既に大口出資者が存在することで、他の財界人たちも参入を検討しやすくなり、出資への関心が一気に高まった。
潮の戦略と主導権の確保
出資希望者が相次ぐ中で、潮はその流れを歓迎していた。出資者が増えればリスク分散が可能となり、同時に多数の利害関係者を調整する役割を担うことで、自身の発言力を強めることができると判断していた。最終的に潮は、達也への紹介を約束しつつ、プロジェクト内での主導権確保を見据えて動いていた。
スターズへの命令と倫理的葛藤
司令室への召集と不吉な予感
訓練後に司令室への出頭を命じられたアンジェリーナ・シリウスは、過去の任務の記憶から嫌な予感を抱いていた。カノープスと同時に呼び出されたことで、単独任務ではなく重大な案件である可能性が高まり、不安はさらに強まった。
任務検討という異例の状況
司令室ではウォーカー大佐とバランス大佐が待っており、今回の任務について実行の是非を問うという異例の対応が取られた。通常は決定済みの任務に対して手段のみが問われるため、この段階で意見を求められること自体が異常であった。
達也排除計画の提示
提示された内容は、司波達也のエネルギープラント計画に対する破壊工作、さらには暗殺の可能性を含むものだった。ディオーネー計画で無力化できない場合の代替手段として、軍による直接介入が検討されていた。
リーナの強い反対
リーナはこの計画に対し明確に反対を表明した。達也は同盟国の人間であり、現時点で敵対していないにもかかわらず、潜在的脅威を理由に暗殺するのは軍の行為として許されないと主張した。
カノープスの現実的反論
カノープスも同様に反対し、破壊工作自体が戦略的に不利益であると指摘した。エネルギー供給の面ではむしろ自国にも利益があり、排除ではなく技術の取り込みを図るべきだと提案した。また、軍が特定産業の利益のために動く前例を作る危険性にも言及した。
バランスの補足と世論への懸念
バランスはカノープスの意見を支持し、特に世論への影響を問題視した。スターズが企業利益のために行動していると見られれば、社会的反発を招く可能性が高いと指摘した。また、破壊工作を完全に隠蔽することは現実的ではなく、発覚した場合のリスクが大きいと補足した。
作戦中止の決定
これらの意見を受け、ウォーカーは作戦のデメリットが大きいと判断し、参謀本部に対して中止を申請する決断を下した。この結論により、リーナは強い安堵を覚えた。
対立から協力へ向かう可能性
バランスによる個別面談
司令官室を退いた後、バランスはリーナを別室に呼び出し、改めて状況を伝えた。参謀本部の最終判断はまだ確定しておらず、場合によっては任務が再び発動される可能性があることを示唆した。
軍内部に存在する別方針
バランスは、軍内部において司波達也と対立するのではなく、利用すべきだとする別の意見があることを明かした。その内容は、核融合炉の技術を取り込み、戦略級魔法の抑止力を分担するというものであった。
抑止力分担という構想
その分担案では、リーナ自身も当事者とされていた。司波達也のマテリアル・バーストとリーナのヘヴィ・メタル・バーストを組み合わせることで、より強力な抑止体制を構築できると考えられていた。双方の能力を補完し合うことで、軍事的優位性を確保する意図である。
日本との協調の現実性
バランスは、新ソ連よりも日本の方が協調しやすい相手であると指摘し、状況次第では同盟関係に近い形になる可能性を示した。その際には、過去の敵対関係に囚われず行動するようリーナに釘を刺した。
リーナへの警戒と牽制
この助言の裏には、リーナが達也に対して特別な感情を抱いているのではないかという懸念があった。バランスは事前に忠告することで、不自然な行動や疑念を招く態度を防ごうとしていた。
不安を残したままの了承
リーナは命令に従う姿勢を示したものの、その表情には戸惑いが残っていた。バランスはその様子を見て、事前に話しておく必要があったと判断し、今回の面談の意義を確信した。
秘密命令と分断された指揮系統
ウォーカーによる別動部隊の招集
バランスたちが退室した後、ウォーカーはスターズ第三隊隊長アークトゥルスと第四隊隊長ベガを呼び出した。両者はリーナより下の階級であったが、部隊構成上は不自然ではなかった。ただしベガは年下のリーナに対して強い対抗意識を抱いており、関係は良好ではなかった。
隊長たちの背景と心理
アークトゥルスはリーナに反発こそ抱いていないものの、かつて自隊の部下がリーナに処断された経緯から、完全に信頼しているわけではなかった。一方ベガは明確にリーナを敵視しており、個人的な感情を強く抱いていた。
機密任務の提示
ウォーカーは二人に対し、この任務をシリウス少佐にも秘匿するよう命じた上で、司波達也のエネルギープラント計画の妨害を命令した。その手段には暗殺も含まれており、妨害が困難な場合は排除も辞さない方針が示された。
任務への異なる受け止め方
アークトゥルスは命令を受諾しつつも内心では戸惑いを隠せなかったのに対し、ベガは積極的な姿勢を見せた。彼女にとってこの任務は、リーナを出し抜く好機でもあった。
個人的感情と任務の結び付き
ベガはリーナが達也に特別な感情を抱いているという噂を知っており、それを軍人として許されないものと捉えていた。達也の排除を自らの手で成し遂げることで、リーナを正しい方向へ導くという名目のもと、強い意欲を抱いていた。
指揮系統の分断と危険な兆候
この命令は、リーナたちに中止が示唆された方針とは異なるものであり、内部での意思統一がなされていないことを示していた。結果として、スターズ内部における指揮系統の分断と、事態の危険な進行が浮き彫りとなった。
フォーマルハウト事件の再燃と危険な決断
事件の影とレグルスの執念
アルフレッド・フォーマルハウト中尉の凶行は、スターズ内部に深い傷を残していた。特に同じ第三隊に所属し親しかったジェイコブ・レグルス中尉は、公式見解に納得できず、独自に事件の真相を追い続けていた。
公式見解と残された疑問
フォーマルハウトの暴走はパラサイトに憑依された結果であるとされ、脳に未知の器官が確認されたことで、その説明は一定の説得力を持っていた。しかしレグルスは、いつどこで誰が憑依を引き起こしたのかという核心部分に疑問を抱き続けていた。
偶発説への傾きと行き詰まり
マイクロブラックホール実験が原因で偶発的にパラサイトが発生したという説が主流となりつつあり、レグルス自身も次第にその結論へ傾き始めていた。だが完全に納得するには至らず、捜査は行き詰まりを見せていた。
不審な電子メールの到来
そのような状況の中、軍の最高レベルのセキュリティを突破した差出人不明のメールがレグルスの元に届いた。本来であれば隔離すべきそれを、彼は直感に従って開封した。
陰謀説の提示と動揺
メールには、マイクロブラックホール実験が日本の民間魔法師組織によって誘導されたものであり、パラサイト出現も意図的だったと記されていた。さらに再実験を行えば関係者が現れる可能性があると示唆されていた。この内容は疑わしい点も多かったが、実験の経緯に感じていた不自然さと一致する部分があり、レグルスの心を強く揺さぶった。
再実験という危険な選択
陰謀論に流される危険性を理解しながらも、真相解明の糸口を求めたレグルスは再実験を行う決断に傾いた。パラサイトによる新たな被害の可能性を認識しつつも、自分たちなら対処可能だと判断したのである。
見落とされた最大の危険
レグルスは冷静な分析を重ねたつもりでいたが、自身がパラサイトに憑依される可能性については考慮していなかった。その判断は、後に重大な危険を招く兆しとなっていた。
再実験計画の始動
レグルスの提案と怪文書の告白
レグルスは直属の隊長であるアークトゥルスに対し、差出人不明の電子メールの内容を隠さず明かした上で、マイクロブラックホール実験の再実施を提案した。彼は事件の真相解明のために再実験が不可欠であると強く訴えた。
アークトゥルスの動揺と判断の揺らぎ
本来であれば軽率な行動として制止されるはずであったが、アークトゥルスは直前に受けた任務の影響で精神的に不安定な状態にあった。日本の関与を示す証拠を得られる可能性に引き寄せられ、冷静な判断を欠いたまま提案に傾いていった。
交渉材料への期待と打算
アークトゥルスは、もし日本の工作の証拠を掴めれば、暗殺という手段に頼らず戦略級魔法マテリアル・バーストを封じる交渉材料にできると考えた。この期待が判断を後押しし、危険性よりも利点を優先させる結果となった。
司令部への持ち込みと異例の決定
アークトゥルスはレグルスを伴って司令室へ戻り、ウォーカー大佐に提案を持ち込んだ。ウォーカーもまた任務への消極的な思いを抱えていたためか、レグルスの主張に説得される形となった。
参謀本部との調整と再実験方針
その場で参謀本部との交渉が行われ、最終的にマイクロブラックホール実験の再実施に向けて調整を進める方針が決定された。正式な連絡を後日に行うという形で、再実験計画は動き出すこととなった。
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対立の激化と模擬戦の決着
十三束の来訪と異変の告白
水曜日の放課後、十三束東鋼が生徒会室を訪れ、達也の所在を尋ねた。深雪は登校予定が未定であると答えたが、十三束はさらに所在を求めた。態度に余裕を欠く様子に不審を抱かれる中、彼は母が倒れたことを明かした。
政府圧力と対立の顕在化
十三束の母は政府から達也を説得するよう強く圧力を受けており、それが体調悪化の原因とされていた。十三束は政府への反発を抱きつつも、ディオーネー計画の有用性を理由に達也の参加を支持し、説得のため所在を求めた。しかし深雪はその目的を拒絶し、協力を断った。
決闘の申し込みと受諾
交渉が決裂すると、十三束は決闘を申し込んだ。勝てば達也の居場所を教えるよう要求するその提案に、深雪は受諾したが、水波が介入し自らが代理として戦うことを申し出た。達也の意向を理由に深雪は反論できず、水波が敗北した場合に限り情報を渡す条件で試合が成立した。
模擬戦の準備と異例の形式
試合は白兵戦形式で行われることとなり、風紀委員長の幹比古が審判を務めることになった。水波は軽装の体操服姿で臨み、十三束は格闘用装備で対峙した。条件的にも心理的にも異様な緊張の中、試合が開始された。
序盤の攻防と戦術の差
開始直後、十三束は接近戦を仕掛けたが、水波は高速で障壁を展開して進路を遮断した。十三束は術式解体で障壁を破壊しながら前進したが、水波は位置をずらし続け、攻撃をかわしつつ距離を調整した。双方の特性がぶつかる中、水波は防御と機動を軸に戦局をコントロールしていった。
中盤の展開と均衡の崩れ
十三束は圧倒的な接触戦能力で障壁を次々と破壊し接近を続けたが、水波は連続的に障壁を再構築し時間を稼いだ。追い詰められたように見えた水波だったが、後退を計算しながら相手の動きを誘導していた。
決着への転機と逆転
コーナーへ追い込まれた局面で、水波はあえて障壁を展開せず大きく後退し、十三束の体勢を崩した。その隙を突いて下降気流の魔法でバランスを崩し、背後へ回り込んで組み付いた。
勝敗の確定
水波は十三束を倒し込み、背後から拘束した上で模擬ナイフを喉元に突きつけた。これにより勝敗は決し、幹比古の宣言によって水波の勝利が確定した。
模擬戦後の余波と意見の対立
喫茶店での振り返り
模擬戦後、生徒会の後始末を終えた深雪たちは、エリカやレオと合流し喫茶店に集まった。話題は自然と水波と十三束の試合に集中し、水波の勝利に対して周囲は実力を評価したが、本人は運によるものだと謙遜した。エリカは水波の身体能力を以前から見抜いていたと語り、レオもその見立てに納得した。
十三束の戦いにくさの指摘
幹比古は試合内容について、十三束が非常に戦いにくそうだったと指摘した。白兵戦形式で女子相手だったことが影響しており、彼本来の戦い方が制限されていたと説明された。また、彼の魔法特性が接近戦に依存するため、戦術的にも不利な状況だったことが共有された。
試合中の動揺と逸脱
話題は試合中の出来事へ移り、十三束が水波の露出に動揺していた様子が明かされた。これにより一時的に動きが止まったことが勝敗に影響した可能性が示唆され、水波自身は羞恥から強く動揺した。一方で深雪は、水波の行動は試合そのものを止めさせる意図があったと説明した。
模擬戦の真の目的
模擬戦の発端について泉美が説明し、十三束は達也の所在を知るために勝負を挑んでいたことが明らかになった。彼の母である魔法協会会長・十三束翡翠が政府から圧力を受け、心労で入院したことが背景にあり、その責任を達也に重ねていたことが語られた。
周囲の評価と同情
十三束の行動に対し、達也に責任はないという認識はその場で一致していた。一方で、美月は母のために何かしようとした十三束の心情に同情を示し、ほのかも試合後の落胆した様子を思い出して共感した。
意見の対立と今後の予兆
しかしエリカは、達也の方針に干渉する十三束の行動を明確に否定し、レオも同様に達也の決断を尊重すべきだと主張した。一方で香澄は、十三束と同じ考えを持つ者は今後も現れると指摘した。この見解に対して誰も反論できず、達也を巡る対立が今後さらに広がる可能性が示唆された。
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国際的支持の転換
チャンドラセカール博士の記者会見
木曜日、達也を巡る情勢に大きな変化が生じた。インド・ペルシア連邦のハイダラーバード大学にて、戦略級魔法アグニ・ダウンバーストの開発者であり魔法工学の第一人者であるアーシャ・チャンドラセカールが記者会見を開いた。
彼女はその場で、USNA主導のディオーネー計画ではなく、日本の恒星炉を用いたESCAPES計画を支持することを明言した。
ディオーネー計画への不支持の衝撃
これまでインド・ペルシア連邦はディオーネー計画に対して明確な態度を示していなかった。そのため、政府公式ではないとはいえ有力科学者による不支持表明は、国際社会に大きな衝撃を与えた。
さらに、その理由が国家プロジェクトではない一青年の民間計画を支持するという点にあり、各国は強い関心と驚きをもって受け止めた。
ESCAPES計画への注目拡大
この発言により、達也のESCAPES計画は正式名称すら定まっていない段階にもかかわらず、国際的な注目を急速に集めることとなった。
国家主導の宇宙開発計画に対抗する形で、一個人の計画が支持を得たことは、世界の勢力図に影響を及ぼす兆しを見せていた。
国際的支持の拡大と世論の変化
シャーヒーンのインタビュー放送
チャンドラセカール博士の記者会見が世界に中継された翌日、USNAの野党系テレビ局がトルコの「十三使徒」の一人であるアリ・シャーヒーンへのインタビューを放送した。
この内容は当日中に北アメリカや西ヨーロッパにも広まり、国際世論に影響を及ぼすこととなった。
ディオーネー計画への慎重姿勢
インタビューの中でシャーヒーンは、政府の公式見解ではないと前置きしつつも、ディオーネー計画に対して消極的な反対意見を示した。
魔法の平和利用の方向性は一つに限定されるべきではなく、多様な選択肢が認められるべきだと主張したのである。
ESCAPES計画への評価
シャーヒーンは、日本で発表された重力制御魔法を用いた核融合炉、すなわち達也のESCAPES計画に言及した。
この技術が魔法工学における難題の一つを解決し、平和利用へと繋がる可能性を持つ点を高く評価し、こうした動きが今後世界各地で生まれる可能性を示唆した。
世論への影響
彼の発言は押しつけがましさを持たなかったため、チャンドラセカール博士の声明以上に欧米の人々に受け入れられた。
その結果、ディオーネー計画一辺倒ではない新たな選択肢として、ESCAPES計画への関心と支持がさらに広がっていった。
新ソ連の判断と強硬策への傾斜
コンドラチェンコの分析
アリ・シャーヒーンの発言を受け、新ソ連の戦略級魔法師レオニード・コンドラチェンコは強い不快感を示した。彼はシャーヒーンの狙いを、自国とUSNAの接近を阻止するためにディオーネー計画の印象を悪化させることだと断じた。
さらに今回の行動は外部勢力の影響ではなく、シャーヒーン自身の判断によるものだと明言し、日本との共謀の可能性も否定した。
タイミングと計算された行動
ベゾブラゾフは発言のタイミングに疑問を呈したが、コンドラチェンコはその点についても説明した。シャーヒーンは以前からディオーネー計画を妨害する材料を探しており、達也のESCAPES計画発表を好機として利用したに過ぎないと推測した。
その上で、短期間で状況を見極め、意図的にインタビューの場を整えたと分析され、計算された行動であったことが示された。
クラークへの評価と見限り
議論の中で、エドワード・クラークの世論工作は失敗したと判断され、もはや頼る対象ではないと結論づけられた。
これにより、新ソ連側はより直接的な対応へと方針を転換する必要に迫られた。
強硬策への決断
ベゾブラゾフはウラジオストクへ戻り、「イグローク」を伴う行動に出ることを決断した。
その目的は、将来的に脅威となり得る戦略級魔法を放置せず、排除することであった。
この決断は、新ソ連が事態を静観する段階を終え、より危険な局面へと踏み込もうとしていることを示していた。
伊豆別荘への来訪と不穏な気配
深雪の訪問と水波の不安
土曜日の昼過ぎ、天候は雨へと変わったが、達也のいる伊豆の別荘へ向かう深雪の心は晴れていた。宿泊の許可を得ていた彼女は期待に胸を弾ませていたが、その一方で水波は出発時から言い知れぬ不安を抱えていた。
護衛としての責務から警戒を怠らぬよう努めつつも、その不安の正体は掴めず、達也がいる以上安全は保証されているはずだと自らに言い聞かせても、違和感は消えなかった。
悪天候下での到着
伊豆に到着した頃には雨と霧が強まり、周囲は視界十メートルにも満たない状態となっていた。それでも自動走行システムと運転を担当する花菱兵庫の技量により、車は予定どおり別荘へ到着した。
達也は傘を差して出迎え、深雪と水波を労った。水波は兵庫よりも先に動き、深雪を濡らさぬよう配慮するなど、護衛としての役割を徹底していた。
屋内への誘導と応対
深雪は淑やかに挨拶を交わし、水波は無言で一礼した後、荷物の運搬を手伝った。しかし自走台車が作業を代替し、二人は屋内へ入るよう促された。
その後、達也は兵庫と外で短い会話を交わし、最近の動向について確認を行った。
国外情勢への警戒
兵庫は国内に目立った動きは無いとしながらも、国外ではチャンドラセカールの発言やシャーヒーンのインタビューに対する反応がUSNAや新ソ連から見られないことを指摘した。
この沈黙はむしろ不自然であり、何らかの動きが水面下で進行している可能性が示唆された。達也もそれを認めつつ、現状では受け身で警戒を続けるしかないと判断した。
情報収集の継続
兵庫は自身の海外ネットワークを活用して情報収集を続けることを約束し、達也もそれを了承した。
やがて兵庫は一礼して別荘を後にし、達也は深雪と水波を屋内へ迎え入れることとなった。
別荘での報告と感情の交錯
帰宅後のひととき
達也が別荘に戻ると、リビングにはピクシーが用意した温かいコーヒーが並んでいた。身体を温めた後、深雪と水波は着替えのため一旦席を外し、水波は深雪の世話を担う意思を示すように同行した。
再び戻ってきた深雪は神官のような気品ある衣装に身を包み、水波も動きやすい装いに替えていた。達也は二人に着席を促し、自分の不在中の出来事について報告を求めた。
十三束の来訪と要求
深雪は水曜日の出来事として、十三束が生徒会室に現れ、達也の登校予定や別荘の場所を教えるよう要求してきた経緯を説明した。
その目的は達也を説得することであり、ディオーネー計画に関する件であったことが明らかになった。
事情の説明と達也の反応
深雪と水波は、十三束の行動の背景にある事情を順を追って説明した。母の件を含めた一連の経緯を聞き終えた達也は、十三束に対して同情を示しつつも、淡々とした態度を崩さなかった。
その関心はむしろ、水波の身の安全へと向けられた。
水波への労りと動揺
達也は十三束との模擬戦における危険性を指摘し、水波が無事だったことを幸運と評した上で、無理をしないようにと労わった。
この言葉に水波は予想外の反応を受けたことに戸惑いながらも礼を述べたが、内心では動揺していた。
深雪の視線
達也と水波のやり取りを見守る深雪は、表面上は穏やかでありながらも、どこか緊張を含んだ笑みを浮かべていた。
その場には、静かながらも微妙な感情の揺らぎが漂っていた。
ベゾブラゾフの到来と異質な戦力
ウラジオストク到着と標的の確認
ウラジオストクに到着したベゾブラゾフは、情報部員から司波達也が伊豆の別荘に婚約者と滞在しているとの報告を受けた。人里離れた場所にいる状況を好機と捉えつつ、単独ではない点にはわずかな不満を抱いたが、作戦遂行に支障はないと判断した。
婚約者も強力な魔法師であると認識していたが、自身の魔法と準備した戦力に絶対的な自信を持っていた。
ベゾブラゾフの出自と能力
ベゾブラゾフは遺伝子操作を伴わない人工授精によって生み出された選抜個体であり、無数の受精卵から選ばれた最高の成功例であった。
その後、同一の遺伝子を持つクローンが複数作られ、彼と同様に戦略級魔法を扱う存在として育成されたが、彼女たちは身体的欠陥を抱え、単独では実戦に耐え得る能力を持たなかった。
イグロークの正体
それでもクローンたちは、ベゾブラゾフの補助装置として活用された。彼女たちは自我を奪われ、生体機械として魔法演算を担う存在となり、『イグローク』として運用されていた。
指揮者であるベゾブラゾフに従い魔法を発動する彼女たちは、彼の能力を増幅する外部端末として機能していたが、その使用のたびに精神は消耗し、破壊へと近づいていた。
非情な選択と本質
ベゾブラゾフはその犠牲に一切の躊躇を見せなかった。自らもまた作られた存在であるがゆえに、生存競争の勝者として敗者を利用することを当然と受け入れていた。
彼にとってイグロークを使わないという選択肢は存在せず、その在り方は現在も変わっていなかった。
戦闘準備の開始
やがてベゾブラゾフは軍用列車で運ばれてきた大型CADの最終調整を指示し、作戦の準備を進めた。
達也を標的とする戦いは、着実に現実のものとなりつつあった。
日本側の警戒と観測の選択
ベゾブラゾフへの国際的注視
国家公認戦略級魔法師「十三使徒」の動向は世界各国の軍事関係者にとって重大な関心事であった。中でも新ソ連のベゾブラゾフは、ディオーネー計画への協力表明以降、表舞台での活動が増えたことで特に強い注目を集めていた。
日本にとって彼は国境を接する非同盟大国の戦略級魔法師であり、直接的な脅威として認識されていた。実際に過去には佐渡島近海や宗谷海峡で彼の魔法によるものと推定される攻撃を受けており、その動向の把握は最重要課題とされていた。
専用列車による移動情報
六月八日夜、佐伯広海少将は私的な情報網を通じて、ベゾブラゾフが専用列車で極東へ移動したという報告を得た。目的地はウラジオストクである可能性が高く、大型CADを用いた戦略級魔法の運用と関連していると推測された。
この情報が正しければ、トゥマーン・ボンバは無制限の射程を持つわけではなく、一定距離まで接近する必要があることを意味していた。
攻撃対象の推測
ベゾブラゾフが極東へ移動した事実から、日本近海あるいは日本本土そのものが攻撃対象となる可能性が浮上した。
その中でも、現在の情勢を踏まえれば、最も狙われる可能性が高い存在として司波達也の名が想定された。
警告か観測かの判断
佐伯は達也への警告を一度は検討したが、最終的にそれを見送った。代わりに状況を観測する方針を選択したのである。
その理由は、達也とベゾブラゾフの双方の実力や特性を把握する好機と捉えたためであった。
風間への招集
佐伯は即座に風間中佐を呼び出し、密かに状況を監視させる準備を進めた。
達也に悟らせることなく事態を見極めることで、双方の攻略の糸口を探るという思惑の下、日本側もまた静かに動き始めていた。
別荘での静かな時間と距離の調整
共に過ごす時間への欲求
深雪を別荘に迎えた達也は研究を中断し、彼女と過ごす時間を選択した。それは義務ではなく、共にいたいという達也自身の内面からの欲求によるものであった。
その感情は過去の精神操作に起因する可能性もあったが、達也はそれを否定せず、むしろ深雪に負の感情を抱かずに済む現在の状態を受け入れていた。
深雪の願いと達也の葛藤
夕食と入浴を終えた後、居間でくつろぐ中、深雪は同じベッドで眠ることを望んだ。これは恋愛的な意味ではなく、寄り添うことを求める純粋な願いであったが、達也にとっては簡単に受け入れられるものではなかった。
拒否すべきと理解しながらも強く断れない自分に、達也は内心で葛藤を覚えた。
折衷案としての同室就寝
最終的に達也は、同じベッドではなく同じ部屋で眠るという妥協案を提示した。
深雪はその提案に満足し、嬉しそうに受け入れた。
距離を保ちながらの関係
このやり取りの中で、達也は深雪との距離を保とうとしつつも、完全には突き放せない自身の立場を再確認した。
二人の関係は変わらぬ親密さを保ちながらも、微妙な均衡の上に成り立っていた。
トゥマーン・ボンバ発動準備
アルガンへの搭乗と構成
ベゾブラゾフはアンナとベロニカの二人のイグロークを無菌カプセルごと大型CAD『アルガン』に収容し、自らはオペレーター席に着いた。
この装置は一車両を占有する規模を持ち、その外観から「パイプオルガン」に例えられて命名されたものであった。内部ではプレーヤーが装置に取り込まれ、指揮者であるベゾブラゾフも筐体内に閉じこもる構造となっていた。
イグロークの役割と選択
イグロークは七人存在するが、同時使用は行われない。トゥマーン・ボンバの発動自体はベゾブラゾフ単独でも可能であり、彼女たちはあくまで補助および安全装置として機能していた。
今回の作戦規模では二人で十分と判断され、最小限の構成で運用されることとなった。
攻撃条件の確認
ベゾブラゾフは軍の情報網を通じて得たターゲット周辺の情報を確認した。現地は小雨で風もなく、魔法の使用には極めて適した気象条件であった。
また、日本時間では早朝にあたり、標的が無防備な状態にある可能性が高いと判断された。
発動直前の状況
すべての条件が整ったと見たベゾブラゾフは、標的の眠りを永遠のものへと変えるべく、トゥマーン・ボンバの発動態勢へと移行した。
攻撃は目前に迫っていた。
夜明け前の静寂
並べられた寝具と穏やかな眠り
誓約の解呪儀式を行った和室には、二組の布団が隙間なく並べられていた。達也と深雪はそれぞれの布団で眠っており、寝具や寝間着には寝返りの跡があるのみで、乱れた様子は見られなかった。
深雪は横向きに達也の方を向き、安らかな表情で眠っていた。一方の達也は仰向けで静かに眠り、規則正しい休息を取っていた。
訪れぬ覚醒の気配
時刻は夜明け前であり、達也の起床予定時刻まではまだ余裕があった。
二人ともまだ深い眠りの中にあり、覚醒の兆しは見られなかった。
静寂の中で、穏やかな時間だけが流れていた。
トゥマーン・ボンバの起動
大型CADによる魔法式構築
CADアルガンに付属する大型コンピューターは、観測機器から得たターゲットの位置情報を魔法に使用可能な形式へ変換し、同時に起動式の元データを生成していた。
ベゾブラゾフは精神内で魔法式を組み立てる代わりに、コンソール上で条件を指定し、それを基に起動式を構築することで、通常の魔法師には不可能なほど複雑な魔法式を成立させていた。
イグロークを用いた魔法補助
今回ベゾブラゾフがアルガンを使用したのは、イグロークの支援を必要としたためであった。
無菌カプセル内で眠らされている二人のアンドレエヴナから想子が抽出され、アルガンへと供給された。彼女たちは意識を持たぬまま強制的に魔法演算へ参加させられていた。
三者同期による魔法発動
アルガンは想子の供給と同時に起動式の出力を開始し、ベゾブラゾフと二人のイグロークに同時に読み込ませた。
装置が読み込み速度を調整することで三者のタイミングが同期され、魔法式の構築が完了した。
その瞬間、ベゾブラゾフ自身の意思すら介在しない形で、戦略級魔法トゥマーン・ボンバが発動された。
襲来するトゥマーン・ボンバ
覚醒と攻撃の察知
達也は自分と深雪に向けられた悪意を感知し、眠りから急速に覚醒した。
覚醒直後に魔法の性質を読み取り、それが水の分解と再結合による爆発現象であるトゥマーン・ボンバであると即座に理解した。
対抗魔法による初動防御
達也は枕元のCADトライデントを手に取り、対抗策として雲散霧消を発動した。
水分子の分解を改変対象とするこの魔法により、トゥマーン・ボンバと相反する事象改変が衝突し、双方の魔法は一度破綻した。
しかし敵の攻撃は継続しており、チェイン・キャストによって新たな爆発の準備が進行していた。
深雪の支援による時間確保
その直後、深雪が凍火を発動し、対象領域内の熱量増加を封じた。
これにより燃焼そのものが成立しなくなり、酸水素ガスが生成されても爆発が起こらない状態が作られた。
深雪の魔法によって確保された時間を利用し、達也は反撃へ移る準備を整えた。
術者の特定とさらなる脅威の確認
達也は攻撃の「縁」を辿り、術者の位置を視認した。
しかしその結果、攻撃は一度きりではなく、深雪の防御範囲外の上空にもトゥマーン・ボンバが仕掛けられていることを確認した。
戦闘はなお終わっていなかった。
迎撃と逆転の契機
ベゾブラゾフの継続攻撃
トゥマーン・ボンバの初撃と二撃目を防がれても、ベゾブラゾフは動揺を見せなかった。
宗谷海峡での戦闘経験を踏まえ、達也のような相手との再戦を想定した戦術を事前にシミュレートし、その結果をアルガンに組み込んでいたためである。
燃焼阻害という予想外の対抗を受けても、現象としては計算済みの範囲内と判断し、予定どおり波状攻撃を継続した。
上空に形成された最終攻撃
達也は別荘上空二百メートルに、逆漏斗状に圧縮された霧の塊を視認した。
その構造がモンロー効果による衝撃集中を狙ったものであると理解し、分解を試みたが、魔法は既に最終段階に入っており間に合わなかった。
霧は水素と酸素に分解され、外側から内側へ連続的に燃焼し、衝撃波が一点に集中して別荘へと叩き込まれた。
達也の防御行動
迫る衝撃に対し、達也は反射的に深雪を抱き寄せ、その身を盾として守った。
一方でベゾブラゾフは三連続攻撃の成功を確信し、勝利を確定したと判断していた。
予想外の結果と動揺
しかし衛星観測によって確認されたのは、無傷のまま残る別荘の姿であった。
木造建築があの衝撃波に耐えた事実に、ベゾブラゾフは強い衝撃を受けた。
防御シールドの可能性を考慮しつつも、計算上それでは防ぎきれないはずであり、想定外の事態であった。
判断の遅れと機会損失
十文字克人の介入すら疑ったが、その可能性も情報上否定され、答えの出ない疑問に思考を奪われた。
この迷いにより、ベゾブラゾフは次の行動へ移るための時間を失い、結果として勝機を逃すこととなった。
水波の防衛と代償
ピクシーの警告と即応
水波は早朝、ピクシーからの能動テレパシーによる警告を受け、瞬時に覚醒した。
即座に携帯型CADを起動し、視線方向の空間を基準とする座標定義によって、防御魔法の発動準備を完了させた。
障壁展開と衝撃波の迎撃
水波は屋根上を覆うドーム型の防御障壁を展開し、直後に襲来したトゥマーン・ボンバの衝撃波を受け止めた。
彼女の防御魔法は生成と維持を同時に行う術式であり、同一領域に連続的に魔法を重ねることで、破壊されかける障壁を維持し続けていた。
限界を超える防御維持
襲来する攻撃は極めて強力であり、水波のシールドは破壊寸前まで追い込まれていた。
それでも彼女は魔法演算領域に過大な負荷を掛け続けながら、防御を維持し続けた。
その行動は義務や恐怖によるものではなく、理由を明確に言語化できないまま、深雪を守るという意思に基づくものであった。
戦略級魔法の防ぎ切り
やがて酸水素ガスの燃焼が収束し、衝撃波は消失した。
水波は防御を成し遂げ、別荘と深雪を守り切った。
代償としての崩壊
しかしその代償として、水波の魔法演算領域は限界を超え、オーバーヒートに至った。
防御解除と同時に意識を失い、その場に崩れ落ちた。
その状態は、かつて桜井穂波が命を落とした原因と同質のものであった。
反撃と殲滅
生存と状況認識の遅れ
深雪は衝撃波を感知しつつも、致命的な破壊が訪れなかったことに困惑していた。
達也の存在に対する信頼から、自身が致命傷を負っても回復されると無意識に考えていたが、そもそも破壊そのものが発生しなかったことで、状況の理解が遅れた。
減速領域による正しい対抗
達也は即座に状況を把握し、深雪に減速領域の発動を指示した。
深雪の魔法は気体分子の運動にも作用し、爆発による膨張と衝撃波の伝播を抑制した。
これによりトゥマーン・ボンバの破壊力は大きく減衰し、別荘への致命的な被害は回避された。
水波の救護と反撃準備
達也はピクシーに水波の対応を任せ、自身は反撃に集中した。
トライデントを構え、爆発現象ではなく魔法の発生源そのものへと照準を向けた。
発生源の特定と異常の認識
エレメンタル・サイトによって達也が捉えたのは、ベゾブラゾフではなく二人の若い女性のエイドスであった。
それは極めて不安定で歪な存在であり、通常の魔法師とは異なる性質を持っていた。
このことから達也は、新ソ連が秘匿する別の戦略級魔法師、あるいはその代替手段である可能性を推測した。
三連分解魔法による殲滅
発生源が特定された以上、達也は迷わず排除を決断した。
三連分解魔法トライデントを発動し、防御を担う事象干渉力の場、肉体強化情報、そして肉体そのものを順に分解した。
その魔法は約千キロメートルの距離を越えて対象に到達し、二人の魔法師を完全に消滅させた。
決着と余波
イグロークの消失とアルガンの異常
アルガンのコンソールには警告が表示され、ベゾブラゾフは事態を把握して愕然とした。
トゥマーン・ボンバの発生源となっていた二人のイグロークは、肉体が気化したことでカプセル内部の圧力が上昇し、装置ごと破裂して消失していた。
緊急離脱と生存の確保
ベゾブラゾフは即座にアルガンから脱出した。
イグロークは魔法の補助装置であると同時に、自身を守る防壁でもあったため、その消失により自らが直接攻撃対象になる危険を察知したためである。
列車車両から離脱した後、追撃が来ないことを確認し、生存への安堵を得た。
達也側の戦闘終了
一方、達也は情報の次元において敵魔法師の消失とCADの破損を確認し、戦闘の終結を判断した。
深雪に安全を告げると同時に、水波の状態を確認するため行動を移した。
水波の倒壊と緊急対応
ダイニングに駆け込んだ達也と深雪の前には、床に倒れた水波の姿があった。
深雪は彼女の異変に気付き、衝撃を受けた。
水波はトゥマーン・ボンバの衝撃から二人を守り切った代償として、限界を超えた状態に陥っていたのである。
魔法科 (23)孤立編レビュー
魔法科 まとめ(3年生)
魔法科シリーズ まとめ
魔法科 (26) インベージョン編レビュー
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大規模魔法攻撃と被害の発生
二〇九七年六月九日早朝、伊豆半島中央東寄りの高原地帯が大規模魔法による爆破攻撃を受けた。この攻撃は新ソビエト連邦の戦略級魔法師イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフによる『トゥマーン・ボンバ』と推定され、別荘二十七戸が全半壊し、十一人の重軽傷者が発生した。人的被害が比較的少なかったのは、地域の家屋が疎らであり、オフシーズンで利用者が少なかったためであった。負傷者はいずれも別荘管理に従事する者であった。
日本政府の対応と国際的主張
日本政府は同日、国際社会に対して攻撃への厳重な抗議を表明し、攻撃者の特定を行わないまま犯人の引き渡しを要求した。国土と国民の安全が脅かされた事実を重く受け止めた対応であった。
攻撃映像と疑惑の発生
攻撃は奇襲であり夜明け直後であったにもかかわらず、国防陸軍により地上から近距離で撮影されていた。この映像は不当な先制攻撃の証拠となる一方で、日本軍が事前に察知していながら外交材料とするために被害を黙認したのではないかという疑惑を招いた。
国防軍の否定と報道の応酬
当該疑惑について記者が国防軍に質問したが、国防軍はこれを事実無根の言い掛かりとして一蹴した。政府・軍側は関与を全面的に否定し、疑惑の拡大を否認する姿勢を示した。
[1]
水波の倒伏と容態の確認
ダイニングで倒れている水波を目にした深雪は一瞬動揺したが、すぐに駆け寄り容態の確認を行った。ピクシーも脈を測定しており、水波には呼吸があったものの体温は低く脈も弱く、極めて危険な状態であった。深雪は穂波の最期を重ねて恐怖を抱き、達也に助けを求めた。
ピクシーの診断と危機の判明
達也がピクシーに状況を問うと、外傷はないが体温・血圧・脈拍の全てが危険水準にあり、このままでは衰弱死の可能性があると告げられた。緊急事態を受け、達也は即座に治療へと移行した。
達也による『再成』の発動
達也はCADを用いる余裕もなく、自身の力のみでエイドス復元魔法『再成』を発動した。この魔法は事象の情報であるエイドスの過去状態を現在に上書きすることで状態を回復させるものであり、因果の原因に干渉する特性を持っていた。達也は水波の肉体だけでなく、想子情報体や精神と肉体を繋ぐ構造にまでアクセスし、原因の特定を試みた。
原因不明の衰弱と幽体の損傷
詳細な解析の結果、水波の衰弱の直接的な原因は特定できなかったが、精神に直結する想子情報体には欠損があり、幽体が損傷している状態であった。この損傷は原因ではなく結果であり、修復力の低下によって生じたものであった。幽体の破損は肉体に誤った情報を伝え、実際には損傷していないにもかかわらず機能低下を引き起こしていた。
応急処置としての復元と容態の改善
達也は応急処置として『再成』を用い、水波の想子情報体および関連構造を攻撃前の状態へと復元した。その結果、体温・血圧・心拍は危険域を脱したが、意識の回復には至らなかった。
応急対応と環境整備
達也はピクシーに布団の準備を命じ、水波を安静にさせる指示を出した。さらに深雪には周囲の温度を水波の体温に合わせるよう命じ、環境の安定化を図った。
四葉本家への連絡と対応要請
達也は医療機関ではなく四葉本家へ連絡し、遠距離魔法による攻撃と水波の容態を報告した。葉山は冷静に対応しつつも、魔法演算領域のオーバーヒートという症状にわずかな動揺を見せた。これは過去に四葉元造の死因とされる重大事象であったためである。葉山は入院手配と迎えの手配を約束し、達也はそれを了承した。
結界による防護と監視機構
達也の滞在する別荘周辺には、半径約一キロメートルにわたり津久葉家の精神干渉魔法による結界が張られていた。この結界は精神耐性のない者を無意識に遠ざけると同時に、侵入者があれば術者へ通知する対人センサーの役割も担っていた。
結界内への軍用装甲車の侵入
しかしその結界内には、前夜から国防陸軍の迷彩装甲車が潜伏していた。通常であれば結界や周囲の市民に気付かれるはずであったが、その存在は一切認識されていなかった。装甲車は爆風に耐えるため車高を極限まで下げており、内部には四名の軍人が乗っていた。
風間の天狗術による認識阻害
この不可視状態は、指揮官である風間中佐の認識阻害魔法『隠れ蓑』によるものであった。この魔法は光や音を遮断するのではなく、対象の存在を認識できないよう意識に干渉するものであり、結界の感知機能そのものを欺いていた。風間は結界に対抗するため長時間集中し続けており、他の行動を取る余裕はなかった。
観測任務の終了と撤収命令
遠距離魔法攻撃の終了が確認されると、風間は撤収を命じた。隊員たちは観測データを回収し機器を停止させ、撤収準備を整えた。装甲車も走行モードへ移行し、出発の態勢に入った。
異変の察知と行動の停止
しかし出発直前、風間は外部から接近するモーター音を感知し、即座に待機を命じた。状況の変化を察知したことで、撤収行動は一時中断された。
結界監視小屋と夕歌の対応開始
別荘周辺の結界は津久葉家の術者によって監視されており、この日は次期当主の夕歌が担当していた。突如発生した強力な魔法の波動により叩き起こされた夕歌は、地下の儀式室へ急行し、被害状況の報告を求めた。地上部分はほぼ全壊と推測され、遠距離魔法による爆発と衝撃波の制御が原因と説明された。
攻撃魔法の推定と別荘の無事
夕歌はその特徴から『トゥマーン・ボンバ』である可能性に思い至り、部下も同意した。達也と深雪の安否は無事と報告されたが、別荘自体に被害が無い点に夕歌は違和感を覚えた。衝撃波は別荘を狙っていたはずであり、防御が働いたと考えられた。
水波の防御と代償の推測
夕歌の問いに対し、ガーディアンの桜崎千穂は水波が防御を担ったと断定した。防御内容から見て、強力な魔法シールドによる受け止めが行われたと推測されたが、その代償として魔法演算領域のオーバーヒートが発生し、行動不能に陥る可能性が示された。この指摘を受け、夕歌は即座に現地へ向かう決断を下した。
出動準備と結界異常の発覚
夕歌は短時間で出動準備を整え、千穂と共に移動を開始した。車両は無事であり、即座に出発可能な状態であったが、その直前に結界の状態確認を行ったことで異常が発覚した。結界に反応しない侵入者の存在が確認され、通常ではあり得ない事態に夕歌は警戒を強めた。
侵入者への対応と優先順位の判断
侵入者は高度な技術を持つ者と判断され、水波の容態よりも優先して対処すべきと夕歌は決断した。千穂は全員出動を提案し、夕歌もこれを認めつつ先行して現場へ向かう方針を取った。
装甲車との対峙と待機判断
侵入者の正体は陸軍の装甲車であると判明し、夕歌は直接交渉を試みるため進路を塞ぐ位置に車両を停止させた。しかし千穂の助言により、増援到着まで車内で待機する判断に変更し、慎重に状況を見極める姿勢を取った。
装甲車前での対峙と風間の対応
SUVが装甲車の前に停車すると、風間は部下に車内待機と敵対的行動の禁止を命じ、自ら単独で下車した。相手に配慮した行動を取りつつ反応を待ったが、周囲に高レベルの魔法師が潜んでいることを察知し、状況を把握した。
夕歌との接触と名乗り
SUVから降りた夕歌は津久葉家の名を名乗り、風間の身分を言い当てた。風間も応じて名乗り返し、互いに距離を詰めながら対話の姿勢を示した。夕歌の背後には護衛である千穂が付き従い、風間はその実力を見抜いた。
私有地侵入の追及と風間の苦慮
夕歌はここが四葉家の私有地であることを指摘し、軍の行動目的を問いただした。風間は事前に発覚を想定しておらず、明確な説明を用意していなかったため、軍機を理由に回答を拒否するしかなかった。
軍の行動への疑念と応酬
夕歌は軍が攻撃を事前に察知していたのではないかと追及し、装甲車の装備から情報収集目的であった可能性を示した。風間は四葉家を単なる民間人ではないと位置付けつつ、敵対意思が無いことを強調したが、夕歌はその論理を完全には否定できず、議論は拮抗した。
達也の介入と緊張の変化
その場のやり取りを遮るように、木立の陰から達也の声が投げ掛けられた。風間と夕歌は同時にその名を口にし、状況は新たな局面へと移行した。
風間の来訪察知と達也の出動
水波の容態がひとまず安定した中、着替えを済ませた達也は突如として強い警戒を示した。深雪が異変を問うと、達也は風間中佐が来ていると告げ、自分もその存在には気付けなかったが、夕歌の魔法によって炙り出されたのだと説明した。さらに、別荘周辺には津久葉家の術者による人払いの魔法が張られており、それは真夜の指示によるものだろうと推測した上で、深雪に水波を任せて自ら外へ向かった。
達也の潜行と問答の傍受
達也が現場に到着した時、風間と夕歌はすでに対峙していた。達也は津久葉家の術者に気付かれながらも手振りで沈黙を促し、自身は隠形したまま二人のやり取りを聞いた。互いに相手を警戒するあまり注意が他へ向いていなかったため、達也の接近は見過ごされた。夕歌が国防軍は攻撃を事前に察知していたのではないかと追及する言葉を聞き、達也は軍が奇襲を予測していた可能性を重く受け止めた。
達也の介入と風間への追及
夕歌が風間の反論に言葉を失ったところで、達也は隠形を解いて姿を現し、トゥマーン・ボンバによる攻撃を軍が予期していたのかを直接問いただした。風間は答えを拒んだが、達也はそれを事実上の肯定と受け取り、事前に警告があれば新ソ連の奇襲を防げたはずだと不満を滲ませた。
攻撃者に関する情報交換
風間は奇襲が新ソ連によるものと断定する根拠を求めたため、達也は魔法の発動地点がウラジオストク近郊の線路上であり、そこに付随する情報から術者を読み取ったと説明した。術者は二人の女性であり、達也はこれを倒したが、ベゾブラゾフ本人ではないと判断していた。この証言により、トゥマーン・ボンバ級の魔法が新シベリア鉄道の軍用車両を用いて発動されている可能性が強く示され、国防軍にとって重要な情報がもたらされた。
奇襲予測の事実確認
情報を提供した後、達也は取引として今度は風間に回答を求めた。風間は日時までは分からなかったが、この場所が奇襲の標的となる可能性は予測していたと認めたに等しい返答をした。達也はさらに、佐伯がベゾブラゾフの動向に関する情報を入手し、そこから自分を狙った奇襲を予測したのではないかと指摘した。風間が否定できなかったことで、達也は自らの推測が正しかったと確信した。
水波負傷への無念と帰還
警告があれば水波が倒れる事態は避けられたはずであり、深雪や水波を別荘に来させることもなかったと達也は考えたが、その恨み言を口にはしなかった。そして負傷者がいるとして別荘へ戻ろうとしたところ、夕歌がその負傷者が水波であることを察して呼び止めた。夕歌は搬送の手助けを申し出たが、達也はすでに四葉本家がヘリを手配していると告げ、礼を述べてその場を去った。夕歌は心配そうにその後ろ姿を見送ったが、風間は最後まで水波を案じる言葉を口にしなかった。
【2】
病院搬送と深雪の帰宅
水波は調布のマンション近くの病院に収容された。この病院は四葉家東京本部に隣接する形で設けられており、偶然ではなく事前に想定された配置であった。深雪は付き添いを望んだが、無意識に放出する魔法力が治療の妨げになるとして医師に制止され、達也と共に自宅へ戻ることになった。
水波の容態と達也の説明
深雪は水波の安否を強く案じたが、達也は命に関わる状態ではないと見ていると答えた。ただし『再成』による処置はあくまで応急的なものであり、完治には至っていないとも説明した。一方で肉体の衰弱が致命的段階に至ることは防げたとし、水波が第二世代であることから、第一世代の穂波よりも魔法に対する耐性が高い可能性を示した。
調整体と世代差の理論
達也は調整体に関する一般的傾向として、世代が進むほど安定性が増すと述べた。その背景には、魔法への耐久力が獲得形質として遺伝するという仮説があり、第二世代は第一世代が得た耐性を受け継いでいると考えられていた。深雪はこの説明により、水波の回復への希望を見出し、不安を和らげた。
リミッター不全説と調整体の危険性
同時に達也は、調整体の不安定さを説明する有力仮説として、魔法演算領域のリミッターが機能していないという説を内心で整理していた。本来人間の精神には魔法行使を制限する機構があるが、調整体は人工的に魔法使用が可能な状態にされているため、精神が過負荷に晒され続け、最終的に破綻する可能性があるとされていた。
達也の内心に生じた懸念
深雪の不安が和らぐ一方で、達也の内心には新たな懸念が生じていた。深雪自身も調整体である可能性を否定できず、その生命の安定性に疑問を抱いたためである。もし調整体特有の欠陥が深雪にも及ぶなら、突発的な死の危険が存在することになる。
未来への恐怖と覚悟
真夜の言葉を信じるしかない状況の中で、達也は深雪にそのような運命が訪れた場合の未来を想像できなかった。その時には自分も生きていないだろうという思考に至り、さらに自分一人では済まない可能性すら内心で抱くに至った。
伊豆攻撃の即時把握とUSNAの認識
伊豆半島への遠距離魔法攻撃は、日本政府が正式に抗議を表明するより前に、USNAによって把握されていた。偵察衛星が同時刻に新ソ連極東領内で強力な魔法反応を検知しており、両者の関連は当然の前提として認識された。数時間後、この情報はリーナにも伝達された。
スターズ幹部への報告と達也の安否
スターズ本部でのミーティングにおいて、日本本土が戦略級魔法の攻撃を受けたという報告がなされ、標的が達也であった可能性も示された。達也の安否については生存していると伝えられ、リーナは安堵を見せた一方、他の幹部たちはそれぞれ異なる反応を示した。
不干渉方針の通達
ウォーカーは参謀本部の決定として、本件についてUSNAは基本的に不干渉の立場を取ると通達した。幹部たちは内心の不満を抱えつつも、その方針を受け入れた。
アークトゥルスへの極秘命令
会議後、ウォーカーはアークトゥルスを残し、遮音フィールドを展開させた上で極秘任務を伝えた。それはダラス国立加速器研究所におけるマイクロブラックホール実験の実施であり、日時と場所が具体的に指定された。
任務内容と人員配置
この実験ではパラサイト出現の可能性も考慮されていたが、アークトゥルスは単独での対応を申し出た。ウォーカーも関与人数を最小限に抑える方針を取り、第三隊のみを主力としつつ、外部には追跡に特化した第六隊を待機させることを決定した。
人種的偏見とアークトゥルスの立場
アークトゥルスは精神干渉魔法に優れた能力を持ちながらも、その出自ゆえに特定任務から外されてきた経緯があった。今回の任務は、その実力を示す機会であると同時に、彼自身の自負が試される場でもあった。
情報秘匿と潜在的リスク
今回の実験は日本の工作員を誘き出す目的を持っていたため、情報は厳重に秘匿された。ウォーカーとアークトゥルスは必要最小限の共有に留める判断を下したが、その結果として重要情報の隠匿というリスクも内包することとなった。
政府発表と魔法師政策の強調
日本政府は伊豆高原の別荘地帯が魔法攻撃を受けた事実を公表し、攻撃主体を特定しないまま強く非難した。同時に、魔法戦力の強化が不可欠であると強調し、反魔法主義が国防力を低下させるとして間接的に批判した。しかし攻撃の標的が達也であったことや、水波が被害を受けた事実は厳重に秘匿された。
情報漏洩と推測の拡散
それでも完全な隠蔽は不可能であり、達也の所在を知る者や高い魔法知覚を持つ者によって、攻撃と達也の関連は推測され始めた。政府発表直後、藤林中尉のもとに九島家から私的な通信が入った。
光宣からの問い合わせと核心への接近
通信の主である光宣は、遠距離魔法の攻撃対象が達也たちではないかと問いかけた。藤林は思わず反応してしまい、秘匿情報に触れる形となった。光宣は東方で衝突する強大な魔法の波動を感知し、その一方が達也たちであると直感していた。
光宣の異常な知覚能力
光宣の説明は、四百キロメートル以上離れた地点の魔法発動を受動的に感知したことを意味していた。この能力は達也のエレメンタル・サイトを凌駕する可能性があり、藤林は光宣に異常な変化が生じていることを直感した。
水波の容態と光宣の動揺
光宣は達也や深雪よりも水波の安否を強く気にしており、藤林はその意図を察しながらも、水波が入院し精神にダメージを負っている可能性を伝えた。これに対し光宣は、現場にいたはずの独立魔装大隊が治療に当たらなかったことを強く非難した。
機密情報への到達と藤林の疑念
光宣は独立魔装大隊の出動という機密事項まで言い当てており、藤林はその情報源に強い疑念を抱いた。本来知り得ない情報に到達している光宣の様子は、従来の彼とは明らかに異なっていた。
異変の予感と見過ごされた直感
藤林は光宣の変化に対し、不気味な直感を抱きながらも、それを妄想として退けてしまった。しかしその判断が、後の展開に影響を及ぼす可能性を孕んでいた。
光宣の受け止めと感情の方向
藤林から今朝の経緯を聞いた光宣は、軍の対応に対して強い怒りは抱かなかった。多少の失望はあったものの、軍は冷酷なものだという認識から、それを当然のものとして受け止めた。それよりも光宣の関心は、水波の容態に集中していた。
魔法演算領域オーバーヒートへの理解
水波の症状は魔法の使いすぎによる精神ダメージ、すなわち魔法演算領域のオーバーヒートであると光宣は理解した。この症状は特に遺伝子調整を受けた魔法師に発生しやすく、治療法が確立していない危険な状態であった。光宣自身も類似の不安定な体質を抱えており、その原因が同様の過負荷にあると認識していた。
治療への希望と焦燥
周公瑾から得た知識の中にも、この状態を完全に修復する方法は存在していなかった。それでも光宣は、四葉家であれば何らかの対処が可能ではないかと考えた。確証は無かったが、その可能性に縋ることで焦燥を抑えようとしていた。
見舞いの決意と行動選択
光宣は水波の安否を自分の目で確かめるため、見舞いに行くことを決意した。達也が身内を見殺しにするはずがないと信じ、適切な処置が行われていることを確認しようと考えた。そのために、学業よりも優先して行動することを選び、しばらく高校を欠席する決断を下した。
水波の覚醒と衰弱の自覚
水波は病室で目を覚ましたが、激しい倦怠感に襲われ、身体を起こすことすらできないほど衰弱していた。状況を把握した直後、深雪の安否を気にして無理に動こうとしたが、それも叶わなかった。
深雪と達也の来訪
そこへ深雪が見舞いに訪れ、水波の様子を見て駆け寄った。続いて達也も声を掛け、水波は二人の無事を確認して安堵した。自分の状態よりも主の安全を優先する姿勢を見せ、達也はその働きを認めた。
水波の謝罪と使命感
水波は自らが途中で力尽きたことを詫び、護衛として務めを果たせなかったと述べた。その言葉には強い使命感が込められており、衰弱した状態でもその信念は揺らいでいなかった。
達也の評価と戒め
達也は水波の功績を明確に認め、衝撃波を防いだ事実を否定するなと諭した。さらに、極端な使命感によって自らを追い込む姿勢を戒めたが、水波は完全には納得していない様子であった。
新たな役割の提示
続いて達也は、水波を単なる護衛ではなく、深雪の側に仕える存在として信頼していると伝えた。自分が信頼できる数少ない人間の一人であると明言し、命を削るような在り方ではなく、長く生きて支えることを望んだ。
深雪の願いと水波の心情変化
深雪もまた、水波が傍にいることを望み、自分を大切にするよう訴えた。二人の言葉を受け、水波は自分が大切にされていることを実感し、感情を揺さぶられた。
療養の決意と再誓約
水波は養生に専念することを受け入れ、回復後に再び深雪の側に仕えることを願い出た。深雪もそれを受け入れ、両者の関係は改めて確認された。
見舞いの終了と次への移行
医師と看護師が入室したことで、達也と深雪はその場を離れた。達也は再訪を告げ、水波は感謝の言葉で見送り、三者の関係は新たな形で再確認された。
水波の不在と達也の帰還決定
達也は深雪と共に調布のマンションへ戻り、外出せずその場に留まる姿勢を見せた。深雪は達也が今夜ここに泊まるのかを尋ね、達也は伊豆の別荘を引き払い、都合がつけば翌日に荷物を取りに行った上で、以後はこのマンションに戻って暮らすつもりだと告げた。深雪はその言葉に喜びを覚えつつも、水波が不在である現実に寂しさも滲ませていた。
深雪の気遣いと達也の配慮
深雪はすぐに部屋の準備をしようとしたが、達也はそれを止め、少し休むよう促した。水波の倒れた出来事が深雪にも大きな衝撃を与えていると達也は考えており、不安を紛らわせるために動きたがっているのだと察していた。それでも今は休息が必要だと判断し、深雪をソファに座らせた。
水波の今後を巡る問い
しばらくためらった後、深雪は水波を今後どうするつもりなのかを達也に尋ねた。達也は最初こそ問いの意味を取り違えたが、やがて深雪が尋ねたいのは、水波に今後どのような役目を与えるつもりなのかという点だと理解した。
ガーディアン任務から外す決断
達也は、水波にはもう無理をさせられないと明言し、ガーディアンの任務から外すべきだと判断していることを深雪に伝えた。魔法演算領域の損傷が治るまでは魔法を使わせられず、そもそも回復の見通しも不確実であるためであった。過去の事例を踏まえても、治療について楽観はできないと二人は認識した。
再発への懸念と戦闘不能の判断
たとえ今回回復したとしても、同じ事態が再び起こらない保証はなく、次は応急処置が間に合わない可能性もあった。そのため達也は、水波が普通の魔法師として生きることはできても、激しい戦闘や撤退の許されないガーディアンの務めはもはや不可能だと考えていた。
水波に望む平和な人生
深雪は水波がその判断を受け入れるかを案じたが、達也は戦いだけが生きる道ではなく、水波にはこれから平和な人生を歩んでほしいと語った。その言葉に深雪の表情はわずかに和らいだが、達也自身には同じ平穏が許されないこともまた、二人には明らかであった。
達也の現実と深雪の沈黙
深雪は達也にも平和に生きる権利があるのではないかと問いかけかけたが、その問いが現実には意味を持たないと悟って言葉を飲み込んだ。達也が望まなくとも、戦略級魔法を使える存在である以上、周囲が彼を平穏の中に置いてはおかないからである。達也もその事実を深く理解しており、深雪の言外の思いを受け止めながら、ただ静かに応じるしかなかった。
[3]
日常への復帰と水波の療養
六月十日、前日の非日常的な魔法攻撃にもかかわらず、日常は変わらず訪れた。深雪は水波の容態を気にしながらも登校し、達也は通学免除の立場で水波の見舞いに訪れていた。水波はまだ自力で身体を支えられず、補助外骨格を装着してベッドに身を預けていた。
リハビリと身体異常の兆候
水波は医師の指示に従い、寝たきりを避けるため外骨格を用いて体を起こしていた。しかし装着による不快感を感じていないと語り、その理由として皮膚感覚の鈍化を挙げた。達也はその異常に強い懸念を示したが、医師は神経や脳に損傷はなく、一時的な衰弱によるものと診断していた。
水波の疑問と達也の応答
水波は自身でも理由が分からぬまま、達也がなぜ自分を気遣うのかを問いかけた。達也はその問いの背後にある認識を察し、自身が他人に対して強い感情を持てない存在であることを前提に説明を始めた。
深雪を介した感情の所在
達也は、自身の感情は深雪に強く結びついており、水波が深雪にとって姉妹同然の存在である以上、自分にとっても無関係な他人ではないと語った。水波を案じる気持ちは、深雪への想いを通じて生じているものであると明確にした。
水波の受容と内面的変化
水波はその説明を受け、深雪からの想いと達也の評価の両方を受け止めた。自分が大切にされている立場にあることを理解し、その感情を恐縮と光栄という形で表現したが、その思考過程を自ら説明することはできなかった。
療養の継続と関係の維持
達也は水波に無理をせず養生するよう伝え、夜には深雪と共に再び訪れることを約束した。水波はそれを受け入れ、達也の言葉に従って療養を続ける意思を示した。
登校の決断と内心の葛藤
深雪は本来、水波の容態を案じて学校を休むつもりであった。しかし自身が側にいることで、無意識に放出する想子波が治療の妨げになる可能性を指摘され、看病を断念した。自らの魔法制御は改善していると認識していたものの、想子量の多さゆえに影響を完全には否定できず、通常どおり登校する選択を取った。
友人たちの反応と状況共有
教室に到着すると、ほのかと雫が心配そうに声を掛けた。政府発表から、達也の別荘が攻撃対象であったと二人も気付いており、深雪の安否を確認した。深雪は自身と達也が無事であることを伝えつつ、水波が入院している事実を明かした。
水波の容態説明と配慮
水波の状態について、深雪は怪我ではないがそれに近いものと曖昧に表現した。魔法演算領域のオーバーヒートという性質上、詳細を説明することは避けつつも、決して軽い状態ではないことを示唆した。
見舞いの申し出と慎重な判断
雫は水波の見舞いを申し出たが、深雪は即答せず、医師の許可を確認する必要があると応じた。見舞い自体は歓迎したい気持ちがありながらも、事情の特殊性から慎重な対応を選んだ。
日常の継続と不安の共有
最終的に深雪は友人たちに控えめに応じ、日常の会話を続けた。しかしその内心には、水波の容態への不安が残り続けており、平常を装いながらも緊張を抱えた状態であった。
病室への来訪と光宣の出現
午前十一時過ぎ、水波の病室にノックの音が響いた。達也は伊豆に、深雪は一高にいるはずであり、水波は四葉関係者の誰かが部屋を間違えたのだろうと考えた。だが扉の向こうから名乗ったのは九島光宣であり、その予想外の来訪に水波は強く動揺した。もっとも、我を失っていたのは一瞬だけであり、水波は身だしなみを整えようとして補助機器を操作し、髪を直してから入室を許可した。
水波の動揺と光宣への応対
病室に入ってきた光宣の姿に、水波は神々しい幻視すら覚えるほど強く心を揺さぶられた。だが光宣が穏やかに体調を尋ねたことで、水波は現実感を取り戻し、ひとまず苦痛や痛みはなく、身体に力が入らない程度だと答えた。本来であれば、なぜ自分の入院先を知っているのか問いただすべき場面であったが、水波はそれを口にできなかった。
症状の確認と光宣の真剣さ
光宣は続けて、他に異常がないかを医師のように細かく尋ねた。視覚や聴覚ではなく、触覚の異常についても確かめようとし、水波は迷いながらも皮膚感覚が少し鈍っていることを明かした。光宣はそれを聞くと強く反応し、真剣な様子でさらに確かめようとした。その眼差しの強さに押され、水波は自分の異常を隠し通すことができなかった。
呼び方の変化と距離の接近
触覚の話のさなか、水波は以前からの願いを口にし、自分のことを桜井さんではなく水波と呼んでほしいと頼んだ。そうでなければ自分も九島さまと呼ばねばならなくなると付け加えたことで、二人の間には気恥ずかしさを伴う親密な空気が生まれた。光宣はそれを受け入れ、水波さんと呼ぶようになり、水波もまた光宣さまと応じた。
病状への不安と光宣の診断
医師からは一時的な異常だと説明されていたものの、光宣はその話を聞いて表情を険しくした。水波はその反応を見て、自分が意識的に押し込めていた不安を改めて突きつけられた。調整体の不安定さや、魔法の使いすぎと突然死の関係を知っていた水波は、自分にもその運命が訪れたのではないかという恐れを抱かずにはいられなかった。
接触による確認と残酷な告知
光宣は水波の手に触れてもよいかと願い出て、両手で彼女の右手を包み込むようにして状態を確かめた。緊張と羞恥の入り混じる時間の後、光宣は水波の怪我は治っておらず、魔法演算領域は今も損傷したままであり、一時的に体調が戻っても再び倒れる危険があると告げた。水波はその言葉に驚くというより、自分でも薄々感じていた現実を認めるしかなかった。
治療法を見つけるという約束
しかし光宣はそこで終わらず、自分が必ず治療法を見つけ出すから諦めないでほしいと約束した。その言葉に水波は、なぜそこまでしてくれるのかという疑問を抱きつつも、それを問い返すことはできなかった。代わりに彼女は、その申し出を受け入れるように、よろしくお願いいたしますと答えた。
別荘撤収作業と達也の動向
達也は伊豆の別荘を引き払う作業を進めており、昼食を取ったのは午後一時を過ぎてからであった。荷物の多くは四葉本家が用意したものであったため持ち帰る必要は少なかったが、研究データだけは自ら管理して移動させていた。作業員たちは別に食事を取り、達也は一人でダイニングに残っていた。
兵庫からの報告と来訪者の存在
食後、花菱兵庫が現れ、水波の入院する調布碧葉医院からの報告を伝えた。それによれば、午前十一時頃に水波の病室へ来訪者があったという。本来面会は制限されていたが、本家の許可により通された人物であった。
来訪者の正体と達也の疑問
その来訪者は九島光宣であった。達也はまず、なぜ平日に学校を欠席してまで見舞いに来たのかという点に疑問を抱いた。水波との接触は短期間であり、特別な関係があったとは考えにくかったため、その行動は不自然に思われた。
訪問の短さと意図への疑念
さらに光宣は二十分ほどで病室を後にしており、その短さも達也の違和感を強めた。学校を休んでまで訪れたにもかかわらず滞在時間が短いことから、単なる見舞いではなく別の目的があった可能性を達也は考えた。
連絡の試みと不通の状況
達也は直接意図を確認するため光宣に連絡を試みたが、呼び出しは行われるものの応答はなかった。端末の故障ではなく、本人が応答できない状況か、意図的に応じていない可能性が示された。
疑念の保留と状況整理
光宣の行動には不審な点が残ったものの、情報が不足しており結論には至らなかった。達也はこの問題を一旦保留し、他の優先事項へ意識を切り替えることにした。
列車内での思考と通話不応答の理由
達也が光宣へ連絡を試みた時、光宣は奈良へ向かう長距離列車内にいた。個室環境にあったため通話は可能であったが、光宣は外界の音に気付かないほど内面的な対話に没頭していた。彼は周公瑾の知識を吸収した存在と意識の中で会話を行っており、その内容は水波の治療法に関するものであった。
治療困難という非情な結論
その対話の中で示された結論は、水波の魔法演算領域の修復は極めて困難であるというものであった。一条剛毅の回復例と比較しつつも、水波の損傷はより深刻であり、根本的な治療は望めないとされた。
肉体回復と再発リスクの指摘
肉体的な衰弱や感覚異常は回復する見込みがあるものの、その原因である魔法演算領域の損傷が残る限り、再発の危険は消えないとされた。特に強い魔法の使用によって想子が活性化すれば、再び同様の状態に陥る可能性が高く、水波の魔法師としての活動は大きく制限されると結論付けられた。
調整体としての根本的危険性
さらに水波は調整体の血統を持つため、魔法を意図的に使用しなくとも暴走による過負荷が発生する可能性があると指摘された。これは光宣自身の体質と類似しつつも、回復力の差により水波の方が致命的な結果に至る危険が高いとされた。
達也の介入と救命の推測
今回水波が助かったのは、何者かによる即時の修復が行われたためと分析され、光宣はそれが達也によるものだと直感した。達也の能力があったからこそ命が繋がったと理解したのである。
極端な解決策の提示と葛藤
最終的に提示された治療法は、パラサイトとの融合という極端な手段であった。光宣はそれを拒絶すべきものと認識しながらも、自身と同じ存在になるという点に奇妙な共鳴を覚え、強い葛藤を抱くこととなった。
光宣の来訪目的の確認
夜になり、達也は深雪を伴って水波の見舞いに訪れた。そこで達也は、水波から光宣が治療法を見つけ出すと語ったことを聞き、単なる見舞いではなく治療を目的とした来訪であったと理解した。当初は軽率な意図も疑ったが、最終的には光宣の真意が水波の救済にあると判断した。
光宣の知識に対する疑問と評価
深雪は、魔法演算領域の治療という難題に対して光宣が解決策を持ち得るのか疑問を呈した。これに対し達也は、光宣が精神分野において高度な知見を有していることや、古式魔法の研究背景から可能性を完全には否定できないと述べた。しかし同時に、この場で能力の真偽を議論しても意味は無いと結論付け、光宣の申し出は好意として受け取るべきだと判断した。
水波の治療体制と達也の姿勢
達也は、水波の治療については病院および四葉本家が対応を進めていること、自身も何もせずにいるわけではないことを伝え、安心して回復を待つよう促した。これは水波の不安を和らげる意図であったが、完全には伝わらなかった。
水波が抱いた別の不安
水波が示した懸念は自身の治療ではなく、光宣の状態であった。彼女は光宣の様子に強い緊張と、表に出さない深刻な悩みを感じ取っていた。身体的には問題が無いように見えたものの、精神面における異変を察していたのである。
光宣への懸念と達也の違和感
水波の指摘を受け、深雪も光宣を案じる様子を見せた。達也は理性的には光宣が無謀な行動を取る人物ではないと考えつつも、今回の行動が従来の印象と一致しないことに違和感を覚えていた。そのため、光宣に対する不確かな不安を拭いきれずにいた。
[4]
通学路での再会と注目
六月十一日の朝、第一高校の通学路で生徒たちの間にざわめきが広がった。司波深雪が司波達也に寄り添って登校していたためである。久々に登校した達也の姿は、多くの生徒の注目を集めた。そこへほのかが駆け寄り、雫やエリカたちも続いて合流し、達也は周囲の反応を受けつつも自然に応じながら校舎へ向かった。
教室での再合流と現状の共有
教室に入った達也は、自分の席が残されていることに素直な感想を漏らした。美月は恒星炉プロジェクトの進行を気遣い、達也は多忙のため毎日の通学は難しいと答えた。それでも登校してくれるだけで嬉しいと伝えられ、達也の存在が周囲にとって大きいことが示された。
深雪のエスコートという役割
エリカは、深雪のエスコートだけでも登校してほしいと軽口を叩いたが、その言葉は達也の考えと一致していた。達也は学校生活そのものよりも、深雪の安全確保という役割を重要視しており、登下校時の同行を検討していた。
水波の不在と影響
レオから水波の容態を問われ、達也は回復には時間がかかると説明した。これにより、水波の不在が日常に影響を与えていることが改めて認識された。達也にとっては水波の回復だけでなく、深雪の護衛体制の再構築という問題も同時に浮上していた。
護衛不在への対応と達也の判断
水波の不在により、深雪は一人で登下校する状況となっていた。危険性は低いと認識しつつも、抑止力としての付き添いの重要性を達也は理解していた。校内に新たな護衛を配置することは現実的ではないため、自らが登下校時に同行するという判断を固めつつあった。
復学の背景と状況
達也が第一高校へ戻ったのは、ディオーネー計画を巡る騒動が収束したためではなかった。むしろ彼が対抗策を打ち出したことで事態は一層激化していた。学校周辺に報道陣の姿が見られないのは、拳銃による殺人未遂事件の影響であり、危険を冒してまで取材する必要が薄れたためと考えられていた。
騒動の世界規模への拡大
問題はすでに達也個人の範囲を超え、国際規模の対立へと発展していた。新ソビエト連邦はディオーネー計画を支持し、インド・ペルシア連邦はESCAPES計画に事実上賛同する姿勢を見せていた。大亜連合は態度を保留し、その他の国々も地域ごとに支持が分かれる状況となっていた。
二つの計画の関係性と宣伝戦
ディオーネー計画とESCAPES計画は、いずれも魔法の平和利用を掲げており、理論上は両立可能な内容であった。ただし同一の魔法師が同時に両計画へ参加できないという制約が存在していた。この構造により、両者の対立は単純な排他関係ではなく、より複雑な様相を呈していた。
達也優勢とクラークの対応
両計画が共存可能であると認識されたことで、達也とエドワード・クラークの宣伝戦は達也優位で進行していた。これは戦略的な後出しによる優位も影響していたが、結果が重視される戦いにおいては問題とならなかった。一方で劣勢に立たされたクラークは、論理ではなく権力を用いた別の手段に頼る方向へ転じていた。
産業省の板挟み
達也とエドワード・クラークの対立に翻弄されていたのは外務省だけではなかった。産業省もまた、与党重鎮の大臣事務所からの圧力に苦しんでいた。主要な貿易相手国であるUSNAとの関係を重視する立場から、官僚たちは通商摩擦の回避を優先し、達也には早期にアメリカへ渡ることを望んでいた。
方針転換を示す政治的圧力
しかしその状況は急変した。大臣事務所から「魔法恒星炉エネルギープラント計画」に必要な立法措置について問い合わせが入り、これは事実上ディオーネー計画に参加しない方向での検討を求めるものだった。政府主導の事業ではないとはいえ、国内で実施される計画である以上、産業省の関与は不可避となっていた。
経済界からの強い後押し
こうした動きの背景には、大企業グループからの陳情が存在していた。与党の重要な資金源でもある複数の企業がプラント計画を支持しており、それが政治的圧力となって産業省に及んでいた。一方で、USNAとの関係悪化を懸念して反対する財界人も存在し、経済界全体としては意見が分裂していた。
達也の影響力への困惑
結果として、達也が提示した計画は経済界を二分するほどの影響力を持つに至っていた。産業省の職員たちは、一高校生に過ぎない達也がどのようにして大企業や有力者の支持を取り付けたのか理解できず、困惑しながら対応に追われていた。
十三束からの呼び出し
昼休み、達也は食事へ向かおうとしたところを十三束に呼び止められた。十三束は緊張と躊躇を見せながらも、すぐに話したいと申し出る。周囲の干渉もあったが、達也は最終的に話を聞くことを決め、場所として屋上を選んだ。
母の入院と対立の発端
屋上で十三束は、母である魔法協会会長・十三束翡翠が倒れたことを切り出した。しかし達也はそれを個人的な問題ではなく、魔法協会と政府の問題として切り離して受け止めた。その冷淡な態度に十三束は反発するが、達也はむしろ十三束側の行動に対する不満と怒りを露わにした。
ディオーネー計画を巡る衝突
十三束はディオーネー計画が魔法師のためになると信じていたが、達也はその認識を否定した。達也はこの計画の真の目的が、魔法師を地球から排除し宇宙へ拘束することにあると指摘し、自身が参加すれば長期間帰還できない状況に置かれる可能性を示した。
価値観の断絶と決別
達也は自分の見解を鵜呑みにせず、自ら資料を読み直して判断するよう促し、それ以上の議論を打ち切って立ち去った。彼はディオーネー計画に参加しない意思を固めており、深雪を置いて地球を離れることは決してないと決断していた。このやり取りは説得ではなく、十三束に自覚を促すための時間稼ぎでもあった。
十三束の動揺と拒絶
残された十三束は、達也の言葉を陰謀論として否定しながらも、その内容を完全には振り払えず動揺した。彼は自分の知る情報との乖離に戸惑い、達也の主張を受け入れられないまま思考を巡らせ続けた。達也と十三束の間には、経験や情報の差による根本的な認識の隔たりが存在しており、その溝は容易に埋まるものではなかった。
ベゾブラゾフとの連絡不能
伊豆高原への攻撃失敗以降、エドワード・クラークはベゾブラゾフに何度も連絡を試みていたが、一切応答は得られていなかった。クラークはイギリスのマクロードと通信を行い、ベゾブラゾフが意図的に接触を拒んでいる可能性が高いと認識した。
再攻撃の可能性と共通認識
マクロードは、ベゾブラゾフが依然として実力行使によって質量エネルギー変換魔法を排除しようとしていると分析した。クラークもこれに同意しつつ、攻撃の成否は司波達也の実力に大きく左右されると認めざるを得なかった。
達也の実力不明という問題
クラークは自らの情報収集手段であるフリズスキャルヴを用いても、達也の能力を把握できていなかった。四葉家の情報収集も思うように進まず、当主である四葉真夜から得られる情報も極めて限定的であった。そのため達也の実力は依然として未知数のままであった。
不確実な勝算と焦燥
マクロードは成功の可能性を五分五分と見積もったが、その根拠は乏しく、クラークにとっても心許ないものだった。それでも他に打つ手がない以上、ベゾブラゾフの再攻撃に期待するしかない状況であった。
クラークの不安と限界
通信終了後、クラークは冷静さを保ちながらも内心では強い不安と焦燥を抱えていた。状況を主導できない現実と、達也という不確定要素に対する無力感により、彼は安らぎを得ることができなかった。
[5]
陰謀の進行と実験準備
水曜から金曜にかけて大きな動きは見られず、達也とクラークの対立は一時的に沈静化したように見えた。しかしその裏では、レイモンド・クラークの計画が着実に進行していた。六月十五日、テキサス州ダラス郊外の国立加速器研究所において、マイクロブラックホール生成実験が極秘裏に準備されていた。この実験は本来の研究目的ではなく、潜入しているとされる工作員を誘い出すための囮であった。
スターズによる監視と誤情報
警備はスターズ第三隊が担当し、アークトゥルス大尉とレグルス中尉が中心となって監視を行っていた。しかし工作員の存在は確認できず、隊員の間には疑念が広がっていた。日本の関与を示すとされた情報は、実際には歪められたものであり、レイモンドによって意図的に作られたものだった。
レイモンドの潜入と策略
レイモンドは正規のパスを用いて研究所に潜入し、事務棟屋上から実験を見守っていた。彼はレグルスの復讐心を利用し、日本の工作員という虚構を信じ込ませることで実験を実現させていた。目的はただ一つ、パラサイトを再び呼び出し、達也に対抗する戦力を得ることであった。
実験成功とパラサイト侵入
実験開始直後、加速器は一度の試行で成功した。その瞬間、レグルスは自らの内部に異質な存在が侵入する感覚に襲われた。激しい苦痛と拒絶の中で抵抗を試みたが効果はなく、侵食はやがて同化へと変わった。彼の自我は静まり、パラサイトとしての意識に置き換えられた。
アークトゥルスの同化
同様にアークトゥルスも精神への侵入を察知したが、精霊魔法の経験から初動では動揺しなかった。しかし侵入者は意思を持たない存在であったため排除できず、やがて彼も同化された。自我と異物の境界が消え、完全な融合に至った。
レイモンドの変貌
屋上にいたレイモンドもまた、同じ侵食に襲われた。激痛の中で彼の願望は増幅され、達也を打倒したいという歪んだ執念と結びついた。やがて彼もパラサイトとして再定義され、自らの意思と異質な存在が一体化した。
パラサイト拡散と帰還
パラサイトはレグルスやアークトゥルスだけでなく、他のスターズ隊員にも拡散していた。彼らは外見上は変化を見せず、そのまま本部へ帰還した。レイモンドも何事もなかったかのように帰宅し、計画は静かに進行を続けることとなった。
再び招かれた脅威
こうしてパラサイトは再びこの世界に現れた。レイモンドの歪んだ願望と結びついた存在は、司波達也を屈服させるという目的を共有し、新たな脅威として動き始めた。
光宣の再訪と孤独な決意
六月十六日の日曜日、まだ夜明け前の暗い時間に、九島光宣は再びパラサイドールを格納した倉庫を訪れていた。家族は誰もその行動を知らず、光宣が自室で休んでいると思っていた。先日、水波の見舞いのために学校を休んで東京まで往復した件でも、家族はほとんど干渉しなかった。祖父の烈だけが理由を尋ねたが、説明を受けるとそれ以上追及しなかった。光宣は父や兄に見限られたのだと受け止め、その放任をむしろ都合の良いものとして利用していた。
水波を救いたいという執着
光宣の胸中を占めていたのは、水波を治したいという一念であった。自分がなぜそこまで彼女のために必死になっているのかを、光宣は意識的に直視しようとはしなかった。だが、その感情が極めて強いものであることだけは否定できなかった。家族や使用人に気を取られる時間すら惜しいほど、彼の心は水波を救う方法を求めることに傾いていた。
封印倉庫への侵入
光宣は前回とは異なり、周公瑾の知識から得た解錠魔法を使って倉庫に侵入した。その術式は警報すら作動させないほど洗練されていた。倉庫内に満ちる冷たく乾いた空気の中で、光宣は最奥に置かれた棺へと向かった。そこには、かつて第一高校の演習林で封印されたパラサイトの死体が凍結された状態で安置されていた。この死体は、パラサイドール製造のためにパラサイトを供給する源として保管され続けていたものであった。
封印解除とパラサイトの解放
現在は封印更新の時刻が近づき、術の効力が弱まり始めていた。光宣は棺を開き、凍った死体の胸に手を当てて想子を送り込んだ。すると休眠していたパラサイトが目覚め、光宣は覚悟を決めて死体に施された封印術式を解除した。次の瞬間、死体の中から光る不定形の存在が飛び出し、光宣へと襲いかかった。光宣はそれを避けず、自ら用意していた魔法陣へ導くように両手を広げて受け入れた。
仮死状態による侵食への対抗
パラサイトが身体に入り込むと、光宣は激しい異物感と苦痛に襲われた。それでも彼は床に座り込み、自らに冷却魔法を施して肉体を仮死状態へ近づけた。これは生物としての拒否反応を抑えるための処置であり、同時に意識を自分の内側へ集中させることで、主導権を手放さないよう努めていた。光宣は自分を侵食しようとするパラサイトを受け入れつつも、その支配を許さず、逆に隷属させようとしていた。
自我を守るための戦い
光宣は自分の意思を一片たりとも奪われるつもりはなかった。彼が求めていたのは、人としての自我を保ったままパラサイトの力だけを得ることだった。自分自身を保てなければ、水波を彼女のままで救うことはできないと考えていたからである。自らが先にその方法を試し、人の心がパラサイトに呑まれずに済むと証明できた時にのみ、水波の治療にこの手段を使うつもりであった。そのため光宣は、自らを実験体にする覚悟でこの賭けに臨んでいた。
他に方法がないという結論
光宣がこの道を選んだのは、単に自分の脆弱な身体から逃れたかったからではなかった。周公瑾の知識を得たことで、他に有効な方法が存在しないと理解してしまったためである。だからこそ、この術式を成功させるしかなかった。失敗は許されず、その強い想念こそが光宣の武器となっていた。精神生命体を滅ぼすだけなら技術でも可能だが、それを支配し従えるには、それ以上に心の強さが必要であった。
同化の成功と変質しない自我
光宣の強い意志は、ついにパラサイトとの同化を完遂させた。パラサイトと一体化した後も、光宣は「僕は僕だ」と認識し続け、自我を失わなかった。彼は「僕たち」ではなく、あくまで九島光宣として存在し続けていた。冷却魔法を解くと、凍傷はたちどころに癒え、体内にはこれまでになかった器官が形成されたことも感じ取った。だがその変化は、今のところ彼の意識そのものを揺るがすものではなかった。
成功の実感と高揚
倉庫の床に仰向けに寝転んだ光宣は、込み上げてくる笑いを抑えきれなかった。自我を保ったままパラサイトの力を得るという無謀な試みが成功したことで、彼は強い高揚感に包まれていた。
[6]
光宣の再来と病室での対話
六月十六日の夕方、水波の病室に九島光宣が再び訪れた。深雪が応対し、光宣は花を手渡して見舞いに来たことを示した。水波と光宣の間には気まずい空気が流れたが、やがて達也も戻り、光宣は水波の身体について相談があると切り出した。達也は場所を変えようとしたが、水波自身が同席を望み、そのまま話が進められることとなった。
治療不可能という宣告
光宣は、水波の状態は完治しないと断言した。これは肉体ではなく魔法演算領域の回復不能を意味していた。達也はその見解に完全には同意しなかったが、調整体の特性と魔法演算領域の損傷が重なれば、突然死の危険が高まるという点では認識を共有した。光宣はセーフティ機構の破損が問題の核心であると指摘し、水波の現状は極めて危険な状態であると説明した。
光宣の提示した解決策
達也に問い詰められた光宣は、やがて自らの解決策を示した。それはパラサイトとの融合であった。光宣自身がすでにパラサイトとなっており、自我を保ったままその力を扱えることを証明したと語る。パラサイトの身体であれば想子波動への耐性が高く、魔法演算領域の暴走による肉体損傷を回避できる可能性があると主張した。
達也の拒絶と価値観の対立
これに対し達也は強く反対した。水波を生かすためには、魔法演算領域を封印し魔法を使えなくする方法もあると提示する。光宣はそれを魔法師としての存在意義の否定と捉え激しく反発したが、達也は人として生きることを優先すべきだと譲らなかった。光宣の提案が人間性を失わせるものであると指摘し、明確に拒絶した。
水波への選択の強要と衝突
光宣は水波自身に選択させるべきだと訴え、パラサイトになる道を受け入れてほしいと懇願した。その言葉は水波の心を揺さぶったが、達也は即座に介入し、その提案を退けた。激昂した光宣は魔法を行使し、達也との戦闘に突入した。
病室外での戦闘開始
達也は水波と深雪を守るため、戦場を病室外へ移す必要があると判断した。光宣もまた被害を避ける意図で外へ誘導し、窓から飛び出した。達也もこれに応じ、中庭へと戦いの場を移した。
高速魔法戦と実力の拮抗
戦闘は激しく、光宣はパラサイト化により魔法発動速度と威力を大きく向上させていた。達也は『術式解散』を駆使して攻撃を無効化しつつ接近戦に持ち込み、肉体分解の魔法で光宣にダメージを与えた。しかし光宣はパラサイトの治癒能力により瞬時に回復し、戦闘は一進一退となった。
達也の迷いと決断の逡巡
達也は光宣を無力化するためには致命的な攻撃が必要であると理解しながらも、彼を殺すことに躊躇していた。光宣は敵対者でありながら、水波を救うという同じ目的を持つ存在でもあったためである。また、将来的に戦力として利用できる可能性も考慮していた。
戦闘の収束と一時的な決着
互いに決定打を欠いたまま戦闘は膠着し、光宣は自ら戦いを打ち切る判断を下した。達也を殺さずに目的を果たすことは難しいと認めつつ、水波に自分の考えを伝えたことで満足すると述べ、その場を離脱した。
未解決の対立
達也は光宣の離脱を見送りながらも、この問題が終わっていないことを理解していた。光宣は再び現れる可能性が高く、水波を巡る対立も依然として解決していなかった。
戦闘後の報告と水波の沈黙
達也は病室に戻ると、水波には光宣が帰ったことだけを伝えた。領域干渉によって魔法の発動は阻害されていたが、戦闘の激しさ自体は水波にも伝わっていたはずであった。しかし水波は詳細を問うことなく、状況を受け入れた。達也はその後、光宣の襲来を四葉真夜へ報告し、警備強化を要請した上で自宅へ戻った。
達也の消耗と深雪の気遣い
帰宅後、達也はソファに腰を下ろし、深雪からコーヒーを受け取った。戦闘による疲労と、精気を吸収された影響がわずかに残っていたが、致命的な問題は無かった。達也は光宣との戦いが苦戦であったことを認め、その強さを率直に語った。
パラサイト化した光宣の脅威
達也は、光宣の脅威は単なるパラサイト能力に留まらないと指摘した。元々高かった魔法発動速度がさらに向上し、加えて強力な治癒再生能力を獲得していることが厄介であると説明した。深雪も、過去に遭遇したパラサイト個体と比較してその危険性を理解した。
エレメンタル・サイトの発覚
さらに達也は、光宣がエレメンタル・サイトの保持者であると断定した。これは相手の魔法式を直接読み取る能力であり、光宣が達也の魔法を正確に打ち消したことから確信に至ったものであった。この事実は深雪に強い衝撃を与えたが、達也の言葉である以上、疑う余地は無かった。
周公瑾の知識の取り込み
達也はもう一つの重大な要素として、光宣が周公瑾の知識と魔法技能を取り込んでいると指摘した。単なる学習ではなく、亡霊に近い残留思念を吸収した可能性が高いと考えられた。これは旧第九研の精神干渉系技術とパラサイト制御技術の応用によるものと推測された。
複合的脅威への認識
この結果、光宣は旧第九研の技術、大陸系古式魔法、そしてパラサイトの能力を併せ持つ存在となっていた。達也はこの複合的な力を持つ相手に対し、従来の戦い方では対抗が困難であると判断した。
今後の対応と達也の懸念
達也は今後の対策として、九島家への連絡と協力の必要性を認識した。加えてディオーネー計画への対応も並行して進めなければならず、負担の増大に憂慮を示した。深雪はその様子を、強い不安と共に見守っていた。
臨時師族会議と光宣対策の決定
師族会議への招集
真夜が光宣に関する情報を握りつぶすかもしれないという達也の懸念は外れ、六月十七日、達也は魔法協会関東支部へ呼び出された。用件はディオーネー計画を巡る説得ではなく、臨時師族会議へのオブザーバー参加であり、実態としては証人としての出席であった。会議室には達也と克人だけが集まり、スクリーン越しに九人の十師族当主と九島烈が参加していた。
光宣のパラサイト化の確認
会議は形式的な挨拶をほとんど省き、直ちに本題へ入った。一条剛毅の問いに対し、達也は九島光宣が本人の言葉どおりパラサイトになっており、自身の感覚でもそれを確認したと証言した。さらに、光宣の標的が四葉家配下の桜井水波であることも、本人の口から直接聞いたと明言した。
問題の焦点と感染源の議論
七草弘一と五輪勇海は、光宣個人の動機よりも、パラサイトがどこから来たのかという点を問題視した。これに対し達也は、かつて友人と共に二体のパラサイトを封印したが、その後何者かに奪われたことを明かし、その二体が今回の感染源である可能性を示した。弘一は調査不足を咎めるような口調を見せたが、達也は東京が四葉家の縄張りではないと切り返し、克人も当時情報共有されていた事実を認めた。
真夜の介入と一体の所在
ここで真夜が、一体は自分の手元にあると突然明かした。達也が交戦中だったため、自身が回収を手配したが一体しか確保できなかったと説明し、現在保管している個体には異常が無いと述べた。この発言により、残る一体が感染源である可能性が高まったが、八代雷蔵は結論を急ぐべきではないと制した。
光宣の処遇を巡る方針転換
議論はやがて、今確実に分かっている問題、すなわち光宣本人への対処へと移った。パラサイトとなった以上放置できないという意見が大勢を占めたが、達也は宿主を失ったパラサイトが新たな宿主を求めて飛び去る危険を指摘した。そのため単純な殺害ではなく、精神体ごと封印して無力化する必要があるという認識が共有された。
封印術式と各家の役割分担
九島烈はパラサイト封印の方法を提供すると申し出た。剛毅がその由来に疑念を示したが、真夜が九島家で使われている封印術式も元は烈から教わったものだと補足し、疑念を鎮めた。その上で舞衣が議論を整理し、光宣の最終的な狙いが水波である以上、水波の近くで待ち受けるのが効果的だと確認した。
水波を中心とした包囲網の構築
弘一は水波を囮にする案を臆面もなく提示し、真夜は表面上それを受け入れつつ、水波の護衛は四葉家が手配すると冷ややかに応じた。克人は病院の外で十文字家が警備を担うと申し出て、真夜もそれを認めた。一方で九島家については、光宣が戻る可能性を踏まえて二木家と一条家が援軍を出すことになった。
十師族の対応方針の確定
最終的に、四葉家が桜井水波の護衛、七草家が光宣の迎撃と捕縛、十文字家が病院外周の警備、九島家には二木家と一条家が援軍を出すという分担が決まった。その他の家もそれぞれ警戒に当たることとなり、十師族としての対光宣方針が正式に固められた。
会議後の遭遇と真由美の介入
会議室を出た達也と克人は、無言のままエレベーターホールへ向かった。二人の間には先月の決闘の余韻が残っており、互いに露骨な敵意こそ見せなかったが、自然に会話が生まれる空気ではなかった。その沈黙を破ったのは、死角で待っていた真由美であった。彼女は何事もないように二人へ声を掛け、会議の結果を聞きたがった。克人は呆れを隠さなかったが、真由美が簡単には引き下がらないことも理解していたため、結局三人は談話室へ移ることになった。
談話室での確認と真由美の理解
談話室に入ると、真由美はまず紅茶を淹れ、三人が着席してから本題を促した。彼女は会議の内容が、光宣がパラサイトになった件とその対策であることを既に把握していた。克人は真由美の口調の軽さに違和感を覚えたが、真由美は前回のパラサイト騒動にも関わっていた以上、事態の意味は十分理解していると冷静に答えた。達也も、真由美が状況を軽く見ているわけではないと察していた。
光宣捕縛の方針と水波を巡る策
具体策について問われると、克人は光宣が桜井水波を攫いに来るのを待ち伏せて捕らえる方針であると説明した。ただし実際に迎え撃つ役目は七草家が引き受けていた。これを聞いた真由美は、水波が香澄のクラスメイトであることを確認し、高校二年生の少女を囮のように扱うことへの違和感を露わにした。達也は、自分たちの思惑とは無関係に光宣は再び水波のもとへ現れるはずだと説明し、克人も四葉家と十文字家が警備を担って水波の安全を軽んじることはないと補足した。
警戒と待ち伏せへの懸念
真由美は、あまりに厳重に警戒すれば光宣も姿を見せないのではないかと懸念したが、克人はその場合は別の策を講じるだけだと明言した。その言葉を聞いた真由美は表面上そっけなく応じながらも、内心では一定の納得を得た様子を見せた。彼女が本当に確かめたかったのは、光宣対策そのもの以上に、達也と克人がこの件で協力して行動するのかどうかであった。
達也と克人の協力確認
真由美は、十文字家と四葉家が手を取り合って事態の解決に当たるのかを改めて問いかけた。克人はその意図を測りかねていたが、達也は真由美の善意と気遣いを理解していた。達也は、十文字家と四葉家は十師族の一員として協力関係にあり、一時的な対立をいつまでも引きずるつもりはないと答えた。その返答を聞いた真由美は、ようやく笑みを浮かべた。
[7]
スターズ本部とリーナの立場
ニューメキシコ州ロズウェル郊外にあるスターズ本部では、十二の部隊がそれぞれ独立して行動していた。本来であれば総隊長であるリーナが全任務を把握すべきであったが、実際には彼女に内容が知らされない任務も多く存在していた。先代シリウスと比較され、リーナは統率力不足と見なされており、総隊長としての権威が十分に認められていない現実に直面していた。
情報共有の欠如による不満
週末に第三隊と第六隊が無断で出動していた件を巡り、リーナは強い不満を抱いていた。カノープスですら出動先を把握しておらず、自分だけが知らされていないわけではないと理解しつつも、総隊長として扱われていない現実に落胆した。報告もなく任務が進められることで、そのしわ寄せが自分に来ることへの苛立ちも募っていた。
自己評価の低下と葛藤
リーナは自らの年齢や経験不足を理由に、総隊長として軽視されているのではないかと自虐的に考え始めた。自分は戦略級魔法を扱えるだけの存在であり、指揮能力や知性を評価されていないのではないかという疑念が強まる。こうした思考は止まらず、自己憐憫に陥りながらも抜け出せない状態となっていた。
感情の発散と疲労
独り言で不満を吐き出した後、リーナは疲労からベッドに潜り込み、照明を消して眠りについた。愚痴を言い続けることで一時的に気持ちは軽くなったが、内面の不安や不満が解消されたわけではなかった。
夢に現れる過去の戦闘記憶
その夜、リーナは第一高校の裏山でパラサイトと戦った過去の記憶を夢として見た。夢の中ではパラサイトを倒し続ける光景が繰り返され、まるで終わりのない戦闘のループのようであった。その中でリーナは、達也と深雪が登場しないことに違和感を覚えた。
達也たちとの関係への思い
現実では敵対関係にあった達也と深雪であったが、リーナにとっては対等な立場で共に戦った存在として強く印象に残っていた。彼らはリーナを年齢や立場で見下すことなく扱い、そのことが彼女にとっては大きな意味を持っていた。USNAに戻ってからは、その感情を素直に認められるようになっていた。
孤独と未練の自覚
夢の中で達也と深雪がいないことに寂しさを感じながら、リーナはその感情を打ち消すように戦い続けた。かつての戦場で得た対等な関係への未練と、現在の孤立した立場との対比が、彼女の内面に強く影響していた。
精神侵入の失敗とパラサイトの判断
精神侵入の試行と拒絶
夜の闇の中、パラサイトたちはリーナの精神へ侵入を試みたが、ことごとく拒絶されていた。彼女には本来、精神系魔法やルーナ・マジックの適性は無いはずであり、侵入が阻まれる理由は理解できなかった。それにもかかわらず、彼らの干渉は押し返され、退けられ、撃退されていた。
パラサイト同士の共有意識
その状況を巡り、パラサイトたちは精神体同士の通信によって意見を交わした。肉体の耳では聞こえないざわめきが広がり、それは個々の思考であると同時に、群体としての共有意識でもあった。疑問と分析が繰り返される中で、リーナの存在が特異であるという認識が強まっていった。
結論としての危険認定
やがて彼らは結論に至った。リーナの同化は困難であり、実質的に不可能であると判断された。さらに彼女は単なる障害ではなく、将来的にパラサイトにとって脅威となる存在であると認識された。
排除方針の決定
個々の声は次第に収束し、一つの意思へと統合された。最終的にパラサイトたちは、リーナを敵と見なし、排除すべき対象として決定した。
リーナ襲撃と脱出
早朝の覚醒と散歩の開始
六月十八日の早朝、リーナは普段よりもすっきりとした目覚めを迎え、散歩に出ることを決めた。身支度を整え基地内を歩き始めたが、周囲はまだ人影が少なく、静寂に包まれていた。
突如の狙撃と内部からの攻撃
フェンス付近まで進んだリーナは、不可視の高エネルギーレーザーによる狙撃を受けた。偶然にも幻影魔法『パレード』を展開していたため直撃は免れたが、攻撃が基地内部から行われた事実に強い衝撃を受けた。攻撃者はスターズ第三隊のレグルスであり、さらにアークトゥルスも加わっていることが判明した。
仲間による襲撃と混乱の拡大
リーナは反撃しつつ倉庫へ退避したが、第四隊のデネブやベガまでもが敵として現れた。彼女たちはリーナを裏切り者と断じ、第六隊を日本に売ったと非難した。さらに第六隊の隊員がパラサイトに憑依されたという情報を突きつけられ、リーナは困惑と動揺を深めた。
多方面からの攻撃と劣勢
重力操作や銃撃、投擲武器など複数の攻撃を受け、リーナは追い詰められていった。状況は完全に包囲に近く、敵は複数隊に及んでいた。彼女は必死に防御と回避を続けるが、情報不足と混乱により冷静さを欠いていた。
カノープスの介入と脱出支援
そこへ第一隊隊長カノープスが介入し、リーナを裏切り者ではないと断言して援護した。さらに部下のミルファクが車両で現れ、リーナを脱出させた。別の隊員アルゴルが敵を引きつけ、脱出を支援する形となった。
叛乱の全容とパラサイトの関与
脱出後、ミルファクから状況説明がなされた。第三隊・第四隊・第六隊・第十一隊の一部が叛乱に参加しており、その多くがパラサイトに憑依されていると推測されていた。第十一隊のシャウラが異常を察知し、事態が発覚した経緯も語られた。
日本への脱出命令
さらに上層部のバランス大佐からの指示として、日本へ脱出し四葉家の保護を受けるよう命令が下された。これは単なる逃亡ではなく、在日武官の監査任務という名目の正式命令として整えられていた。リーナは戸惑いながらも、その指示に従う決断を下した。
リーナ日本到着とスターズの粛清
リーナの日本到着と保護
六月十九日午後、リーナは無事に日本へ到着した。到着後すぐに、バランスから伝えられていた連絡先へ電話を掛け、四葉真夜の指示を受けた黒羽家によって保護された。これにより、リーナは日本側の庇護下に入ることとなった。
スターズ内部の処分決定
一方その頃、スターズ本部基地では事態の収拾が進められていた。カノープス、アルゴル、シャウラの三名は略式裁判にかけられ、その結果、ミッドウェー島にある魔法師専用の軍事刑務所へ送られることが決定された。
ミルファクの逃走
また、リーナの脱出を支援したミルファクは基地へ戻らず、そのまま西海岸方面へと逃走した。これにより、スターズ内部の混乱は収束どころか、更なる不安要素を残す形となった。
[8]
ベゾブラゾフの再起
アルガン修理の進行と現場訪問
USNAでスターズの叛乱が発生していた頃、新ソ連ではベゾブラゾフ専用大型CAD『アルガン』の修理が急ピッチで進められていた。ベゾブラゾフ自身が修理現場を訪れたことで作業責任者は驚きを見せたが、修理は当日中に完了し、翌日のテスト実施が決定された。
ベゾブラゾフの異例の行動背景
ベゾブラゾフが現場に姿を見せたのは、作戦再開を急いでいたためであった。普段は技術者や現場に関心を示さない彼が直接確認に来たことは、それだけ今回の任務に対する執着が強いことを示していた。
達也暗殺失敗と屈辱
彼はこれまで戦略級魔法師として失敗を経験していなかったが、『トゥマーン・ボンバ』による司波達也暗殺に失敗した。生体増幅器である『イグローク』を投入したにもかかわらず達也を仕留められず、逆に二体のイグロークを失い、『アルガン』も使用不能に追い込まれていた。
敗北への執念と作戦再開の決意
この一連の結果は、ベゾブラゾフにとって明確な敗北であり、大きな屈辱であった。かつてスターズ総隊長ウィリアム・シリウスを撃破した実績を持つ彼にとって、その失敗は受け入れ難いものであった。ゆえに彼は屈辱を晴らすため、一刻も早く作戦を再開することを強く望んでいた。
再来する脅威の兆し
雨天と警戒の高まり
六月二十日木曜日、東京は朝から雨に覆われていた。通学する生徒たちは梅雨らしい天気として気に留めていなかったが、達也だけは強い警戒心を抱いていた。伊豆で戦略級魔法による攻撃を受けた際と同様の気象条件が揃っており、再び攻撃が行われる可能性を強く意識していたためである。
ベゾブラゾフ再攻撃の確信
達也はベゾブラゾフが攻撃を諦めていないと確信していた。伊豆で撃破した魔法師たちの身体構造が同一であったことから、クローンの存在を推測し、トゥマーン・ボンバの使い手が複数存在する可能性を考えていた。また、その攻撃がベゾブラゾフの指示によるものであるとも判断していた。
国家規模の意思と標的認識
さらに達也は、新ソ連が自分の排除を国家的に決断していると結論付けていた。レイモンド・クラークを通じて自分が『マテリアル・バースト』の術者である情報が伝わっていると見ており、その脅威を除去するための行動が既に始まっていると認識していた。
周囲への警戒指示
この状況を踏まえ、達也は深雪やピクシーにも最大限の警戒を指示していた。自身も授業中であっても緊張を緩めず、常に異変を察知できるよう備えていた。
攻撃兆候の察知
そして午前の授業終了直前、達也はついに攻撃の兆候を感知した。平穏に見えていた日常の中で、再び戦略級魔法による脅威が迫っていることを確信するに至った。
再攻撃の準備
アルガン改修と作戦再開
六月二十日、ベゾブラゾフは改修を終えた大型CAD『アルガン』のオペレーター席に着き、作戦実行に意識を集中していた。前回の失敗を踏まえ、『イグローク』が分解魔法によって消滅しても装置に影響が及ばないよう改良が施されていた。
配置変更と戦力増強
作戦拠点となる列車は前回と異なるウスリースク郊外に配置され、位置情報からの反撃を避ける対策が取られていた。また投入される『イグローク』は二体から五体へと増強され、演算用、盾役、予備と役割分担された編成が組まれていた。これは過去の任務以上の戦力投入であり、ベゾブラゾフの執念の強さを示していた。
敗北の記憶と執着
前回の戦闘で達也に圧倒され逃走した記憶は、ベゾブラゾフにとって消し難い屈辱となっていた。その屈辱を晴らすためには達也の抹殺以外に道はなく、その思いは妄執へと変わっていた。
攻撃目標と戦術選定
情報から達也が第一高校にいることを確認したベゾブラゾフは、建物の堅牢性を考慮し、単純な衝撃波では効果が薄いと判断した。そのため、窓を破壊して内部に霧を侵入させ、内部から爆破する戦術を選択した。
攻撃開始の決断
ベゾブラゾフは『ディリジォール』としてコンソールを操作し、『イグローク』を用いた攻撃の準備を完了させた。こうして彼は、達也への再攻撃を実行に移した。
迎撃と再衝突
攻撃兆候の探知と即応
ピクシーからの能動テレパシーにより、一高上空二百メートル地点での魔法発動兆候が達也に伝えられた。達也自身も同時に『チェイン・キャスト』の発動を感知しており、即座に行動へ移った。授業中である状況にも関わらず、周囲の動揺を無視し、CAD『トライデント』を取り出して天井越しに照準を定めた。
イグロークの瞬時消滅
照準を固定した瞬間、達也は引き金を引き、攻撃を実行した。その結果、発動途中だった『イグローク』は魔法式の固定前に消滅した。魔法は発動に至らず、未完成のまま霧散する形となった。
アルガン内部の混乱と再指示
同時刻、『アルガン』内部では警報が鳴り響き、発動要員の消失が報告された。ベゾブラゾフは状況を即座に把握し、予備の『イグローク』への交換を命じた。魔法発動直前のわずかな隙を突かれたことにより、攻撃は阻止されていた。
退けない覚悟と恐怖
前回の敗北を繰り返すことを許さないベゾブラゾフは、撤退を選ばず作戦続行を決断した。しかし同時に、達也の攻撃による肉体消失という異質な死への恐怖も抱えていた。彼はその恐怖を押し殺しながら、次の攻撃機会を待ち構えていた。
決戦の一撃
術式無効化の限界と戦術転換
達也は二度の交戦を通じて、『チェイン・キャスト』による『トゥマーン・ボンバ』は『術式解散』では完全に無効化できないと結論付けていた。複数に分岐した魔法式は微妙に異なり、一括処理が困難であるため、発動前に術者そのものを排除する戦術へと切り替えていた。
逆探知による先制攻撃
『チェイン・キャスト』開始と同時に魔法経路を逆探知し、術者を三連分解魔法『トライデント』で消滅させる。この手法により魔法発動自体を未然に阻止する構えを取っていた。これは偶然ではなく、明確な勝算に基づいた迎撃であった。
ベゾブラゾフの再攻撃準備
一方ベゾブラゾフは、『イグローク』の交換を終え、即座に再攻撃を可能とする状況を整えていた。前回の戦闘から、達也の分解魔法には再発動まで時間がかかると判断し、連続攻撃で押し切る戦術を採用した。さらに第三射まで見据えた設定変更を行い、達也の排除を確実なものとしようとしていた。
アルガンへの照準と魔法構築
達也は逆探知によって術者ではなく、大型CAD『アルガン』そのものを標的とした。魔法発動中においてCADは術者と一体化した存在であり、これを破壊することで攻撃そのものを断ち切る狙いであった。複雑な起動式の読み込みが続く中、その隙を突いて攻撃準備を完了させた。
分解魔法の同時発動
達也は『術式解散』と『雲散霧消』を連続発動し、『アルガン』を構成する情報体と物質の双方を分解した。千キロ以上離れた対象に対し瞬時に魔法を行使できたのは、『分解』に特化した魔法演算領域によるものであった。
決定的破壊の成立
情報体と物質の両面から同時に分解されたことで、『アルガン』は完全に破壊された。これによりベゾブラゾフの再攻撃は根本から断たれ、達也による迎撃は決定的な成功を収めた。
アルガン崩壊
突如の崩壊と異変の認識
ベゾブラゾフは最初、地震が起きたのかと錯覚した。しかし身体に揺れはなく、代わりに自らが落下している感覚に襲われた。椅子やコンソール、床や壁といった構造物が次々と崩れ、すべてが砂や塵へと変わっていった。
肉体と精神への衝撃
地面に叩きつけられたベゾブラゾフは、強い痛みによってすぐには立ち上がれなかった。さらに、CADとの接続が強制的に断たれたことで、頭部に激しい内側からの痛みが生じ、思考もままならない状態に陥っていた。
状況把握の遅れ
顔にかかった砂を払いながらも、それが『アルガン』の残骸であることに気付く余裕はなかった。周囲に広がるウスリースクの景色を見て、ようやく自分が外へ放り出されたことを認識した。
イグロークの機能停止
同時に、接続を断たれた三体の『イグローク』はショックにより心停止していた。しかしベゾブラゾフはその事態にも気付かず、激しい頭痛の中で呆然と座り込むことしかできなかった。
[9]
情勢変化と新たな来訪者
魔法攻撃未遂の公表と国際的波紋
第一高校上空で発生しかけた魔法攻撃は未遂であっても観測機器により記録され、その詳細なデータが政府へ提出された。外務大臣は新ソ連による侵略行為として強く非難し、国際社会へ制裁を呼び掛けた。さらに産業大臣は、この攻撃がベゾブラゾフによるものと推測されると発表し、彼が関与するディオーネー計画の平和性に疑念を呈した。
世論変化と達也の認識
六月二十二日、達也はこの報道を見て、予期せぬ形で世論がディオーネー計画に不利に傾いたことを認識した。ただしこれは計算した結果ではなく偶然の産物であった。達也はこの流れを利用しつつも、ESCAPES計画は当初の目的通り継続する意志を示した。
日焼島計画への関心
会話の流れで、四葉真夜が用意した日焼島の施設について話題が及んだ。達也は条件の良さに疑念を抱きつつも、その意図を探る必要を感じていた。深雪は四葉家の利益を踏まえた判断であると受け止め、肯定的に捉えていた。
リーナ来訪と亡命の事実
同日夕方、リーナが亜夜子に伴われて訪問した。彼女はスターズ内部の叛乱によりアメリカを脱出しており、黒羽家によって保護されていた。達也と深雪はその説明を受け、事態を事実として受け入れた。
日焼島への移送計画
真夜の意向により、リーナの滞在先として日焼島が候補に挙げられ、その案内役を達也が担うことになった。これは安全確保と同時に、万一の危険に備えた措置でもあった。達也はその意図を理解し、任務を引き受ける決断を下した。
今後の動きと新たな脅威
翌日に日焼島へ向かうことが決まり、同時に水波の警備強化も指示された。リーナの証言から、パラサイトの再出現という新たな脅威が示唆され、達也と深雪は事態の深刻さを改めて認識した。
魔法科 (23)孤立編レビュー
魔法科 まとめ(3年生)
魔法科シリーズ まとめ
魔法科 (26) インベージョン編レビュー
魔法科高校の劣等生 シリーズ 一覧
魔法科高校の劣等生


























続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー










新魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち







魔法科高校の劣等生 夜の帳に闇は閃く



漫画版
四葉継承編



師族会議編




エスケープ編

その他フィクション

アニメ
PV
OP
ED
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