アラフォー賢者3巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者5巻レビュー
どんなラノベ?
■ 作品概要
『アラフォー賢者の異世界生活日記 4』は、VRMMORPGの規格外の能力を持ったまま異世界に転生した40歳のおっさん主人公による、成り上がりファンタジーおよびスローライフを描いた作品である。
本作の世界は、失われた旧魔法文明の遺産や貴族の派閥争い、裏組織の暗躍などが入り乱れるファンタジー世界である。第4巻では、ソリステア公爵家から教え子ツヴェイトらの護衛依頼を受けた主人公・ゼロスが、イストール魔法学院の実戦訓練の舞台となる「ラーマフの森」へと赴く。自作の魔導バイクを暴走させたり、Sランクのギルドマスターと対等に剣を交えたりと規格外の行動をとるゼロスは、護衛任務の中で遭遇した生意気な貴族の少年たちを、魔物が蔓延る極限のサバイバル環境に放り込み、一晩で血に飢えた戦士へと強制的に変貌させてしまう。同時に、ツヴェイトの命を狙う血統主義派や裏組織「ヒュドラ」の暗躍、異常進化を遂げた三羽のニワトリによる盗賊団の殲滅など、森を舞台にしたカオスな騒動が展開される。
■ 主要キャラクター
・大迫聡(ゼロス・マーリン):
本作の主人公。平穏を望む無職のおっさん魔導士だが、ゲーム時代に「殲滅者」と恐れられた規格外の能力を持つ。自作の魔導バイクで暴走するなど趣味に没頭し、生意気な学生には容赦なく大自然の過酷さを叩き込む非情な一面を持つ。
・ツヴェイト・ヴァン・ソリステア:
ソリステア公爵家の長男でゼロスの教え子。実戦訓練で血統主義派による暗殺の標的となるが、仲間を守るために奮闘し、次期領主としての自覚を強めていく。
・セレスティーナ・ヴァン・ソリステア:
ツヴェイトの妹。ゼロスの指導で圧倒的な魔法の才能を開花させており、学院では「魔導天使」と呼ばれ下級生から慕われている。獣人の少女ウルナを陰湿な虐めから救い、親しい友人となる。
・クロイサス・ヴァン・ソリステア:
ソリステア家の次男で魔法学院の首席。魔法研究にしか興味がなく部屋をゴミ屋敷(腐海)にする変人だが、ゼロスと似た思考を持ち、彼が作る未知の魔導具に並々ならぬ興味を示す。
・入江澄香(イリス):
ゼロスと同郷の転生者の少女。駆け出しの傭兵としてゼロスの護衛任務に同行し、同年代の学院生を驚愕させる高い魔法技術で活躍する。
・ウーケイ、ザンケイ、センケイ(三武鶏):
ゼロスによって鍛えられ、異常進化を遂げた三羽のワイルド・コッコ。盗賊や並の傭兵を瞬殺するほどの絶大な戦闘力を持ち、ツヴェイトの護衛を任される。
・カーブルノ・カシラ・パンティスキー:
パンティスキー伯爵の長男。親の権威を笠に着る傲慢な少年だったが、ゼロスによって魔物の群れに放り込まれ、一晩の死闘を経て獰猛で気高い戦士(あるいは過激思想のテロリスト予備軍)へと覚醒する。
・セイフォン:
スティーラ傭兵ギルドのギルドマスターにしてSランク傭兵。オネェのような振る舞いでゼロスを震え上がらせるが、実は男性的でパワフルな妻を53人も持つ愛妻家である。
■物語の特徴
本作の最大の特徴は、主人公ゼロスが圧倒的な力と現代知識を持ちながらも、それを英雄的な活躍ではなく、趣味の魔改造(魔導バイクの自作など)や、生意気な若者への「容赦のない教育(サバイバル)」に振り向ける点にある。
特に、平和ボケした貴族の少年たちを魔物の群れの中に放置し、生き残るための闘争本能を強制的に引き出して過激な戦士へと洗脳・変貌させてしまう展開は、他作品の主人公とは一線を画すダークなユーモアを放っている。また、主人公が育てた単なる「ニワトリ」の魔物が、盗賊団や暗殺者を圧倒的な技量で蹂躙していくというシュールでカオスなギャグ要素も大きな魅力である。
一方で、魔法学院を舞台にした貴族の腐敗や派閥争い、裏組織の陰謀といったシリアスな背景がしっかりと描かれており、コミカルな日常と非情な弱肉強食の世界観が絶妙なバランスで混在している点が、読者にとって非常に興味深いポイントとなっている。
前巻からのあらすじ

ゼロスの修業を経て学園に帰って来たツヴェイトとセレスティーナ兄妹は変貌していた。
セレスティーナは魔法が使えなかったのが嘘みたいに魔法を行使し詠唱の根底を揺るがす問題提起を教師にぶつけ。
無自覚に学界にケンカを売ってしまう。
しかも、彼女が言う事が正しそうだからタチが悪い。
長年の研究を否定される一大事。
平民の子供だったら殺されていたかもしれないが、彼女は妾腹とはいえ公爵家の一員。
下手な手出しをしたら出した側が、孫娘を溺愛してる先代公爵に瞬殺されてしまう、、
兄のツヴェイトは、戦術研究会での討論で以前だったら洗脳の影響で絶賛していた戦術を洗脳が解除されたおかげで冷静に問題点を指摘して派閥を割ってしまう。
そして引篭な弟のクロイサスはマイペースに実験して行くが、、
彼の部屋では様々な騒動が起こってるはずなのだが、、、
騒動の後には記憶が無くなっており詳細は全くの不明。
そんなツヴェイトとセレスティーナ兄妹を変貌させたオッサンは、、
ついにマイホームを手に入れる!
普段は畑を耕してるオッサン。
その辺に生えてる草を調べてみたら。
米だった。
それに歓喜するオッサンと同じ転生者のイリス(表紙の絵)。
米が手に入るならTKGを食べたい。
そうなるとニワトリを手に入れたいオッサンは。
ニワトリと似たような魔物のコッコを手に入れるのだが。
有精卵と無精卵の区別がつかない飼い主から反乱。
元A級冒険者の飼い主をボコボコにボコってしまう。
このコッコ達が、無茶苦茶強いオッサンの配下に入ったおかげで、オッサンの関係者は襲わず大人しくなったが、、、
オッサンに指導を受けてるせいでより強くなってしまう。
読んだ本のタイトル
アラフォー賢者の異世界生活日記 4
著者:寿安清 氏
イラスト:ジョンディー 氏
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あらすじ・内容
大賢者ゼロス、弟子のピンチを救うため、漆黒のバイクで華麗に参上!
おっさん賢者・ゼロスは、アルバイトをしたり畑仕事をしたり人助けをしたりといった、理想的なゆるめの日常を過ごしていた。そんな彼のもとにデルサシス公爵から依頼が舞い込む。
アラフォー賢者の異世界生活日記 4
その内容は、【ラーマフの森】で行われるイストール魔法学院主催の実戦訓練に傭兵として参加し、ツヴェイトを護衛してほしいというものだった。
さすがに教え子の危機は放置できないと協力するゼロス。早速、護身用の魔道具や、なぜかバイクまで作り始め……!?
『ふむ、まずまずの乗り心地ですね』
ルーセリスに留守を任せ、ゼロスは訓練地であるラーマフの森を目指す。
イリス達をも巻き込んでの一大護衛作戦の行方ははたして!?
感想
表紙のバイクに跨り異世界の街道を爆走するオッサン。
口ずさむのはアニソン、、、
そして、大カーブを抜けると商人を襲っているキングオークと部下のオーク達を轢き逃げ。
そのせいでバイクのブレーキとアクセルが壊れてオッサンは風になる。
普通なら死ぬのにそこはオッサン。
公爵に呼ばれたらヒョッコリと現れる。
公爵の息子、オッサンからしたら教え子のツヴェイトの暗殺計画の情報を入手したらしく、オッサンは公爵からツヴェイト護衛の依頼を受けて学院に行く。
船で学院に向かうのだが、、
オッサンは船に酔った。
こんなのが護衛かと疑われるくらい酔った。
船から降りたら普段通りになったが、、
オッサンにも弱点があったようだ。
スキルで船酔いの耐性は付かないのかな?
そんなオッサンは学院の護衛依頼に入って自身の教え子達と再会と思ったら。
今まで会ったことのないクロイサスが真っ先に会いに、、
そこで意気投合する危険人物2人。
そんな新たな出会いがありながらも、森林での実習が始まる。
移動中には街道脇に潜む数多くの盗賊をコッコ3羽が撃退して衛兵に引き渡され。
遂に実習が始まると、オッサンはくじ運が悪く護衛対象のツヴェイトの側にいることができない。
変わりに最下級生の子供達の護衛につくのだが、、
森の中で魔獣におそわれ、言う事を聞かないクソガキ最下級生を相手にしていたオッサンはまた野生に帰ってしまった。
そこから始まるブートキャンプ。
生徒達に戦場の心得を教え、安全確実な狩を教える。
一晩中休む暇なく仲間と共に魔獣と戦った最下級生達は一皮も二皮も剥けて大きくなって帰ってきた。
しかも、言う事を聞かなかった生徒は高潔な精神を宿し、領地の民のために自身の父親から家督を奪い下剋上をすると家臣に宣言。
その後どうなったかは語られていない。
オッサンの仕事は生徒の護衛だったのに人格を変えてどうするだよ、、
外伝では孤児院の子供達の修行が描かれてるが・・
己の未来をしっかりと見つめシッカリしてる。
凄く偉いけど、、
カイくんは、肉が最優先なのね(⌒-⌒; )

最後までお読みいただきありがとうございます。
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アラフォー賢者3巻レビュー
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アラフォー賢者5巻レビュー
考察・解説
魔導バイクの暴走
『アラフォー賢者の異世界生活日記』第4巻における、主人公ゼロスが自作した「魔導バイクの暴走」事件について解説する。この事件は、ゼロスが自身の趣味と現代知識、そして規格外の素材を組み合わせた結果引き起こされた、コミカルかつ危険な騒動である。
1. 魔導バイク「ハーリー・サンダース十三世」の欠陥
ハーリー・サンダース十三世は、ゼロスがアーハンの鉱山で採掘したミスリルやオリハルコン、賢者の石に加え、黒龍の鱗や甲殻といった超希少素材をふんだんに使用して製作された漆黒の魔導バイクである。
・しかし、製作時間が足りなかったため、その内部構造は地球の電池式で動く四駆のレーシングカー(ミニ四駆のおもちゃ)を魔力式モーターに置き換えただけの単純なものであった。
・さらに、軽量化を優先したため変速ギアを覆う外装などが脆い構造になっていた。
・あろうことかエンジンを停止するための始動キーを取り付け忘れるという、家電製品のような致命的設計ミスを抱えていた。
2. オークキングとの衝突事故
ある日、ゼロスはご機嫌にアニソンを大熱唱しながら、ファーフラン街道でこのバイクの高速走行テストを行っていた。
・峠を越えた直後、商人の馬車がオークキング率いる群れに襲われている現場に遭遇する。
・高速で走るバイクは急には止まれず、ゼロスは逆にアクセルを開いて突進した。
・時速120キロほどの猛スピードでオークキングを跳ね飛ばし、瀕死の重傷を負わせる結果となった。
3. 暴走の発生と「轢き逃げ」
この衝突事故の際、砕けた大剣の破片によってバイクのブレーキワイヤーが断線し、脆かった外装を貫通して変速ギアの隙間に挟まってしまった。
・その結果、前後輪のブレーキが全く効かなくなり、不運なことにアクセルも戻らなくなる。
・さらに、キーを作っていなかったため自力で電源をオフにすることもできなかった。
・これにより、満タンの魔力タンクを使い切るまで永遠に加速し続けるという恐ろしい暴走状態に陥ってしまう。
・停止できなくなったゼロスは、呆然とする商人や傭兵たちを置き去りにし、凶悪な轢き逃げ事件を起こしたかのように猛然と街道を走り去るしかなかった。
4. 暴走の顛末と傭兵たちの赤っ恥
現場に残された瀕死のオークキングは、その場にいた「赤毛熊」というパーティーの傭兵たちが袋叩きにして討伐し、自分たちの手柄として自慢していた。
・しかし後日、セザンの街で彼らがイリスたちにナンパ目的で絡んで自慢話をした際、その場にいたゼロスから「時速120キロで跳ね飛ばしたオークキングを袋叩きにしただけだろう」と真実を暴露される。
・傭兵たちは大恥をかいて逃げ出すことになった。
・その後、魔力が尽きて停止できたのかバイクは無事に回収され、ブレーキなどの欠陥が改良される。
・そして、イリスたちを乗せるための安全な四輪リヤカーが連結され、スティーラの街へ向かう快適な移動手段として活躍することになった。
まとめ
魔導バイクの暴走事件は、現代のメカニック知識と異世界のチート素材が悪魔的合体を遂げた結果生じた、本作を象徴するドタバタ劇である。設計ミスによる暴走が偶然にも魔物を討伐して商人を救う結果となり、後日談として傲慢な傭兵たちの鼻をあかす材料になるなど、おっさんの無自覚な規格外ぶりが大いに発揮されたエピソードとなっている。
魔法学院のいじめ
『アラフォー賢者の異世界生活日記』におけるイストール魔法学院での「いじめ」は、貴族の派閥争いや能力至上主義、そして種族差別が入り交じった陰湿なものとして描かれている。作中では主に2つのいじめの事例が描かれ、被害者から実力者へと成長したセレスティーナの視点を通じてその理不尽さが糾弾される。
1. セレスティーナへのいじめ(能力と出自への差別)
セレスティーナはソリステア公爵と使用人の間に生まれた妾腹の子であり、流通している魔法式の欠陥が原因で魔法を発動することができなかった。そのため、実家では公爵夫人たちや異母兄のツヴェイトから幼い頃から虐めや冷遇を受けていた。
・魔法学院に入学してからも状況は変わらず、周囲からは無能、愛人の子、公爵家のコネで入学したと陰口を叩かれ、嘲笑の的となっていた。
・さらに、成績が最底辺の落ちこぼれと呼ばれる学生たちからは、自分は魔法が使えるからマシと劣等感を慰めるための都合の良い防波堤(見下す対象)として利用される。
・これにより、理不尽な侮蔑を受けていた。
2. 獣人の少女・ウルナへのいじめ(種族差別)
ゼロスの指導によって魔法の才能を開花させ、学院で才女として見返したセレスティーナであったが、ある日、獣人族の少女ウルナが数人の女子生徒から陰湿な虐めを受けている現場に遭遇する。
・ウルナは拘束魔法「フォース・バインド」で身動きを封じられていた。
・獣人風情が魔法を学ぶなんて生意気、犬臭いから学院から消えろと、一方的で種族差別的な暴言を浴びせられていた。
3. セレスティーナの救済と加害者への叱責
かつて自分も同じように無抵抗なまま虐められていた経験を持つセレスティーナは、ウルナの痛みが理解できたため、救済に動く。
・彼女は姿を隠したままウルナの耳元で、へその下に魔力を集めて体に流すという、獣人特有 of の魔力循環のコツを助言した。
・人間に育てられたためにその使い方を知らなかったウルナであるが、助言に従うことで本能が呼び覚まされ、闘獣化という身体強化スキルを発動して自力で拘束魔法を粉砕し、いじめていた少女たちと立場を逆転させる。
・その後、姿を現したセレスティーナは、いじめていた少女たちを厳しく糾弾した。
・自分たちが強くなる努力もせずに弱い者いじめで他者を圧する行為の卑劣さを指摘する。
・さらに、獣人族は仲間意識が非常に強いため、このような差別的な虐めが獣人たちの耳に入れば、最悪の場合は国家間の戦争に発展しかねない重大な罪であることを突きつけた。
・最終的に、セレスティーナの祖父や父(煉獄の魔導士や沈黙の獅子)が裏で動いているのではないかとほのめかされた少女たちは、恐怖のあまりに逃げ出すことになった。
・このウルナ救出劇をきっかけに二人は友人となり、セレスティーナは図らずも魔法が苦手な下級生たちから、お姉さま(魔導天使)、と慕われるようになっていく。
まとめ
学院内にはびこるいじめは、古い血統主義や種族差別に根ざした歪んだ特権意識の表れである。しかし、ゼロスの教えによって力を得たセレスティーナがそれを跳ね除け、さらに同じ境遇のウルナを救ったことで、力関係は完全に崩壊した。この事件は、セレスティーナが精神的にも強者へと羽ばたいたことを象徴すると同時に、弱者が手を取り合って古い因習に立ち向かうという、学院編における重要な転換点となっている。
血統主義派の陰謀
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における「血統主義派の陰謀」は、ウィースラー派内部で孤立し追い詰められたサムトロールらが、ソリステア公爵家の長男であるツヴェイトを暗殺しようとした一連の企みである。その全容と結末について解説する。
1. 血統主義派の正体と増長
血統主義派とは、生まれながらに固有の血統魔法を受け継ぐ貴族たちで構成された集団である。
・彼らは旧時代から続く正当な魔導士の血統を自称しエリート意識を持っている。
・しかし古い文献によれば、実際は旧時代の魔法実験の失敗作であり、犯罪者の子孫であるとされている。
・四神の一柱から神託を受けたことで増長し、過去には百年に一度の割合で反乱を起こして悲惨な歴史を繰り返してきた。
・彼らは未完成の広範囲殲滅魔法を基盤にしていたが実力は伴っておらず、他人の功績に縋って威張るだけの集団であった。
2. 陰謀の動機である派閥の分裂と資金難
ウィースラー侯爵家の次男サムトロールは、血統主義派を率いてウィースラー派を牛耳ろうとしていた。
・彼は仲間のブレマイトが使う精神系の血統魔法である洗脳を用いて派閥の学生たちを操り、ツヴェイトをも自陣営に取り込もうとしていた。
・しかし、大賢者ゼロスによる過酷な実戦訓練を経て精神的に成長したツヴェイトの洗脳が解け、派閥の戦術論議会でサムトロールの稚拙な机上の空論を完全に論破してしまう。
・これにより洗脳から解放される者が続出し、派閥は分裂してサムトロールは孤立状態に陥った。
・さらに、ツヴェイトの父デルサシス公爵が率いるソリステア派の経済戦略によって資金源を次々と潰され、彼らは経済的にも完全に追い詰められた。
3. ツヴェイト暗殺計画とヒュドラの介入
逆恨みと焦りに駆られたサムトロールは、学院の恒例行事であるラーマフの森での実戦訓練に乗じて、ツヴェイトを事故死に見せかけて暗殺する計画を立てる。
・彼らは懇意にしていた裏組織であるヒュドラに暗殺を依頼した。
・ヒュドラの幹部ガーランスは、かつて自身の組織を壊滅寸前に追い込んだ沈黙の獅子(デルサシス公爵)への報復としてこの依頼を承諾する。
・そして、色仕掛けも辞さない暗殺者シャランラ、犯罪奴隷の少年ラインハルト、桃色の装束を着た名無しの少女(忍者)という3人の手練れを刺客として派遣した。
4. 森での暗躍と邪香水の使用
実戦訓練が始まると、サムトロール達は本来のルートを外れて暗殺者と合流する。
・彼らはツヴェイトを孤立させるため、ほとんどの魔物を強力に引き寄せ興奮状態にさせる禁薬である邪香水を使用するという暴挙に出た。
5. 陰謀の破綻と自滅への道
この計画は致命的な情報不足と見通しの甘さによって破綻に向かうこととなった。
・ツヴェイトの護衛には、ゼロスによって異常なまでに鍛え上げられた三羽の凶悪なワイルド・コッコ(ウーケイ、ザンケイ、センケイ)がついていた。
・サムトロール達は遠見の血統魔法で、自分たちが放った盗賊が三羽のコッコによって一瞬で蹂躙・殲滅される光景を目撃し、その桁違いの強さに恐怖と絶望を味わう。
・さらに、ソリステア公爵家を完全に敵に回したことに気づいたブレマイトは保身のためにサムトロールを裏切る決断を下した。
・雇った暗殺者たちからも、なんのプランも考えずに殺せとしか言えない馬鹿な子達、と見下されていた。
まとめ
結果として、血統主義派の陰謀は自らの身の程知らずと、相手(ゼロスやソリステア家)の規格外の力を見誤ったことで、彼ら自身を破滅の淵へと追いやる愚行として終わることになる。目先の権力や歪んだ特権意識に縛られ、現実の実戦や実力差を認識できなかった旧体制の象徴が、次世代の台頭と新しい力の前に完全に自滅していくプロセスを描いたエピソードである。
貴族兄妹の成長
『アラフォー賢者の異世界生活日記』に登場するソリステア公爵家の兄妹、ツヴェイトとセレスティーナは、大賢者ゼロスとの出会いと指導を通じて、能力面だけでなく精神的にも大きな成長を遂げる。その成長の経緯と、かつて冷え切っていた二人の関係性の変化について解説する。
1. セレスティーナの成長:「無能」から「才女」への飛躍と目標の発見
セレスティーナは妾腹の子であり、世間に流通する魔法式の欠陥によって魔法が発動できなかったため、長年一族から「無能」と蔑まれ冷遇されていた。
・しかし、ゼロスによって魔法式が最適化されたことで魔法が使えるようになる。
・その後、ゼロスからマッドゴーレムを用いた格闘訓練や、ファーフランの大深緑地帯での過酷なサバイバル実戦訓練を受ける。
・これにより、状況判断力や近接戦闘の基礎を身につけ逞しく成長した。
・学院に戻った彼女は、魔法発動訓練において無詠唱のファイアーで対魔法耐性を持つ鎧を粉砕し、周囲を驚愕させて才女として名を馳せることとなる。
・また、ゼロスが説いた破壊魔法の危険性を理解し、戦うためではなく、人々の暮らしを豊かにする魔法を作りたい、という明確な目標を見出した。
2. ツヴェイトの成長:傲慢な問題児から覚悟を持つ次期領主へ
ツヴェイトは当初、次期領主としての自尊心が高く、魔法が使えない妹を虐め、ルーセリスに対して権力を使って強引に迫るなど、粗暴で問題のある青年であった。
・しかし、ゼロスの圧倒的な実力と、大深緑地帯での少しの油断が死を招く過酷な実戦を経験したことで、己の未熟さや井の中の蛙であったことを痛感する。
・学院に復帰した後は、所属するウィースラー派の戦術論議において、実戦を知らない仲間たちの机上の空論や、未完成の広範囲殲滅魔法に依存する無謀な戦略を正論で完全に論破した。
・これにより、現実的な軍事論を展開するまでに成長を遂げている。
3. 過去の清算と兄妹の和解
自身の過ちに気づいたツヴェイトは、セレスティーナが魔法を使えなかった原因が魔法式の欠陥にあったと知り、幼い頃からの冷遇を深く反省する。
・彼はセレスティーナに対し、自分の過ちを清算したい、と真っ直ぐに頭を下げて謝罪した。
・その際、ツヴェイトは、民の命や財産を守るため、その手を血に染める、という公爵家の跡取りとしての重い責務と覚悟を語る。
・セレスティーナは、彼が幼い頃から民の命の重さを理解し、貴族としての義務を背負っていたことを知り、兄を許した。
・こうして、かつて不仲であった兄妹は過去のわだかまりを解消する。
・セレスティーナは民の暮らしを豊かにする道へ、ツヴェイトは民を守るために戦う道へと、それぞれ異なる形でありながらも民のために魔法を追求する決意を固めることになった。
まとめ
ツヴェイトとセレスティーナの劇的な変貌は、ゼロスという本物の強者に出会い、現実の過酷さを知ったことから始まった。かつて反目し合っていた兄妹が、それぞれの進むべき道と貴族としての覚悟を認め合ったことで、関係性は完全に修復された。民を豊かにする知性と、民を守るための武力という、異なるアプローチで同じ理想を追いかける二人の絆は、ソリステア公爵家のみならず、停滞した異世界の未来を動かす強力な礎となっている。
転生者たちの合流
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における「転生者たちの合流」は、主人公のゼロス(大迫聡)と、彼と同じく地球の日本から転生してきた中学生の少女・イリス(入江澄香)が異世界で出会い、交流を深める重要なエピソードである。その合流の経緯と、二人が共有した事実について解説する。
1. 盗賊団からの救出と出会い
イリスは転生後、生活費を稼ぐために駆け出しの傭兵として活動し、ジャーネやレナといった女性傭兵と共に商人の馬車を護衛していた。しかし、その帰路で盗賊団に襲撃され、囚われの身となってしまう。
・一方、セレスティーナやツヴェイト、護衛の騎士たちと共にファーフランの大深緑地帯での過酷な実戦訓練を終えて帰還する途中だったゼロス一行は、偶然この盗賊団のアジトを発見する。
・過酷なサバイバルを経て完全に修羅と化していたゼロスや騎士たちは、容赦なく盗賊団を壊滅させた。
・この制圧劇によってイリスたち人質は無事に救出された。
2. 川原での夜営と思わぬ正体の発覚
盗賊討伐後の川原での夜営中、イリスはゼロスに話しかける。二人は言葉を交わすうちに、お互いが四神の身勝手な不始末(邪神の自爆テロ)によって異世界に転生させられた同郷の日本人であることを確認した。
・ゼロスはイリスに対し、元の世界でリストラに遭い、厄介な姉から逃れて田舎で農業をしながらひきこもり生活を送っていたという身の上話を語る。
・そして互いに自己紹介をした際、イリスは彼がゼロスと名乗ったことで、彼がゲーム内で最強のトッププレイヤーとして名を馳せた憧れの存在である「黒の殲滅者」であることに気付いた。
・一方のゼロスは、厨二病的な二つ名で呼ばれることにいたたまれなさを感じていた。
3. ゲーム世界「ソード・アンド・ソーサリス」の真実についての考察
同郷のよしみとして、ゼロスはイリスに自身が抱いていた「世界のシステムに対する違和感」を打ち明ける。
・ゼロスは、この異世界の摂理が、彼らがプレイしていたVRゲームであるソード・アンド・ソーサリスと酷似していることを指摘した。
・本来、プログラムで作られたゲームの世界で、彼らが開発したような常識外れの新魔法がシステムエラーも起こさずに発動したり、NPCが人間と同等の自由意思を持ったりすることは、地球の技術では絶対に不可能である。
・そこからゼロスは、ゲームの世界そのものが神々によって創られた別の現実世界であり、プレイヤーたちは認識を操作されて精神(アバター)だけを異世界へ飛ばして遊ばされていたのではないか、という仮説を語った。
・イリスもこの荒唐無稽ながらも辻褄の合う推測を聞き、動揺しながらも深く考えさせられることになった。
4. その後の関係性
この合流をきっかけに、イリスや彼女の傭兵仲間(ジャーネ、レナ)は、規格外の実力を持つゼロスと行動を共にすることが増えていく。
・ゼロスは生活に困窮しがちな彼女たちに安全な装備(守護のアミュレットなど)を無償で提供した。
・さらに、イリスに錬金術や魔法薬の調合を教えて稼ぐ手段を与える。
・このように、同郷の年長者として保護者のような立場で彼女たちを支援していくことになった。
まとめ
ゼロスとイリスの合流は、異世界で孤独だった転生者同士が繋がりを持つ重要な転換点である。元トッププレイヤーとしての正体の発覚によるコミカルなやり取りの一方で、二人が共有したゲーム世界の真実に関する考察は、この異世界の成り立ちや神々の思惑に迫る重大な伏線となっている。互いを支え合う関係を築いたことで、物語はスローライフの側面を強めつつも、世界の謎に迫る深みを増していくこととなる。
地獄の実戦訓練
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における「地獄の実戦訓練」は、イストール魔法学院のラーマフの森での実戦訓練において、ゼロスが護衛を担当した生意気な貴族の少年たちに対し、大自然の過酷さと弱肉強食の現実を強制的に叩き込んだ苛烈なエピソードである。
1. 傲慢な貴族少年と圧倒的な実力差の提示
ゼロスはクジ引きの結果、教え子であるツヴェイトの護衛から外れ、パンティスキー伯爵の長男カーブルノ・カシラ・パンティスキーが率いる少年パーティーの護衛を担当することになる。
・カーブルノは親の権威を笠に着て傭兵を見下す傲慢な態度をとっていた。
・これに対しゼロスは「親の権威に縋るから坊やなのだ」「少しは立場を考えて行動しないといつか死ぬ」と冷酷な殺意を込めて忠告し、彼を震え上がらせる。
・森へ入った直後、一行は学院生では手におえないレッサーオーガ3体に遭遇する。
・しかし、ゼロスともう一人の護衛ラーサスがあっさりと瞬殺し、少年たちに圧倒的な力量差を見せつけた。
・その後、ゼロスはガイア・コントロールで土を集めてカモフラージュしたトーチカ(防衛拠点)を作る。
・少年たちをそこへ隠れさせて安全に魔物を迎撃させる作戦をとり、初歩魔法にインテリジェンス・ブーストをかけて威力を底上げした。
・これにより、状況に応じた魔法の選択と実戦の基礎を教え込んでいった。
2. 終わらない夜と狂気のサバイバル
トーチカの中から順調に魔物を倒しレベル上げ(格上げ)をしていた少年たちだが、血の匂いに誘われて周囲に魔物が殺到し、野営地へ帰れない状況に陥ってしまう。
・一晩を穴倉で過ごすなど考えられない、食事ができない、と騒ぎ立てるカーブルノにゼロスが応じる。
・大深緑地帯での過酷なサバイバルを経て自然の恐ろしさを熟知しているゼロスは、かつての狂気に満ちた姿へと覚醒した。
・ゼロスは邪悪な笑みを浮かべてマスクを外し、「泣き言も弱音も諦めも許さない。最後まで戦って生き延びろ」と宣言し、少年たちを魔物の群れの中に突き落とす。
・少年たちは魔力が尽きれば杖で魔物を殴りつけ、倒したゴブリンから武器を奪った。
・本当に危険な時以外は手を出さないゼロスとラーサスに監視されながら、極限状態の中で一晩中戦い続けるという地獄を味わうこととなった。
3. 戦士への覚醒と過激思想への傾倒
翌朝、自らの力で生き延びて野営陣地に帰還した少年たちは、精も根も尽き果てていたが、昨日までの純朴さは消え失せ、わずかな物音にも反応して陣形を組む獰猛な獣のような歴戦の戦士へと変貌していた。
・我儘だったカーブルノも、貴族の地位に慢心していた自らの愚かさを悟る。
・歴史に名が残る名家にするため、父を隠居させて領内を改革する、と宣言するほど凛々しく気高い姿へと成長を遂げた。
・しかし、過酷な生存競争を強いられた少年たちは、弱いなら戦え、過酷な現実から目を背けるな、という価値観を身につけた。
・それだけでなく、平穏を守るためには脅威を殺す、敵は殲滅、そこに魔物と人の区別はない、といった危険な思想に傾倒していく。
・まるで武闘派の右翼組織やテロリスト集団のような過激な誓いを立てるようになってしまった。
・ゼロスは魔物相手の生存術を教えただけだったが、予想の斜め上をいく少年たちの過激化に、少々やり過ぎたかもしれない、と冷や汗を流す結果となった。
まとめ
このように、ラーマフの森での実戦訓練は、甘えていた貴族の少年たちを自立した一人前の戦士へと引き上げるきっかけとなった。しかし、ゼロスの規格外な指導環境がもたらした極限の恐怖体験は、少年たちの人間性や思想をも根底から塗り替え、国家の将来に良くも悪くも多大な影響を与える過激な実利主義集団を誕生させるという、本作らしい皮肉でコミカルな結末を迎えている。
アラフォー賢者3巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者5巻レビュー
登場キャラクター
転生者
大迫聡(ゼロス・マーリン)
おっさん魔導士であり、平穏な生活を望む転生者である。面倒事を嫌い、目立たないように行動している。セレスティーナやツヴェイトの師匠として彼らを指導する立場にある。
・所属組織、地位や役職
無職の魔導士。ソリステア大公爵家の客分。
・物語内での具体的な行動や成果
ツヴェイトの護衛として実戦訓練に参加した。生意気なカーブルノたちを魔物の群れに放り込み、極限状態を経験させている。自身の魔導錬成で様々な魔導具を作成した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
規格外の魔法能力や魔導具作成技術を持ち、周囲から畏怖されている。スティーラ傭兵ギルドでSランクとして登録された。
イリス(入江澄香)
駆け出しの傭兵であり、ゼロスに憧れを抱く転生者の少女である。ゲーム時代の知識を持ち、異世界での生活を楽しもうとしている。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
セレスティーナの護衛としてラーマフの森へ同行した。無詠唱の多重魔法を展開し、周囲を驚愕させている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゼロスから自動で障壁を展開するアミュレットを受け取った。
アド
童顔の青年であり、裏社会の暗殺者を思わせる手練れの転生者である。イサラス王国の重鎮として活動している。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の重鎮。
・物語内での具体的な行動や成果
戦士のアミュレットの試作品を開発した。情報収集のためにイストール魔法学院の大図書館を訪れている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
この世界のシステムがゲームの世界と酷似していることに疑問を抱いている。
シャクティ
弁護士を目指していた女性魔導士であり、正義感の強い転生者である。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の重鎮。
・物語内での具体的な行動や成果
アドたちと共に大図書館を訪れた。スティーラの街にある記念碑から、過去のクーデターの背景を考察している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
危険な魔導具が裏社会に流出することに葛藤を抱いている。
リサ
ポニーテールの少女魔導士であり、アドたちと行動を共にする転生者である。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の重鎮。
・物語内での具体的な行動や成果
大図書館で宗教関連の資料を調べることになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
危険な計画の共犯者になることに怯えている。
ソリステア大公爵家
クレストン・ヴァン・ソリステア
ソリステア大公爵家の元当主であり、孫娘のセレスティーナを溺愛する老人である。ゼロスを高く評価している。
・所属組織、地位や役職
ソリステア大公爵家・元当主。ソリステア派創設者。
・物語内での具体的な行動や成果
魔法スクロールを販売し、敵対派閥の資金源を潰す工作を進めた。ゼロスから魔法媒体の指輪のレポートを受け取っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
セレスティーナに一目惚れしたディーオに殺意を向け、ゼロスに依頼して肉体改造を行った。
デルサシス・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵領の現領主であり、優秀な経営者である。複数の妻や愛人を持ち、仕事とプライベートを両立させている。
・所属組織、地位や役職
ソリステア公爵領・領主。ソリステア商会会長。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスにツヴェイトの護衛を依頼した。ソリステア商会を通じて、ゼロスが考案した冷蔵庫や最適化魔法のスクロールを販売している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
独自の諜報網を持ち、裏社会の組織を壊滅させた過去から沈黙の獅子と呼ばれている。
ツヴェイト・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵家の長男であり、次期領主としての責任感を持つ青年である。ゼロスの指導を受けて大きく成長している。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
所属する派閥の戦術論を論破し、出入り禁止となった。過去の冷遇についてセレスティーナに直接謝罪している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
サムトロールから逆恨みされ、暗殺の標的とされた。
セレスティーナ・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵家の息女であり、魔法の才能を開花させた少女である。ゼロスを深く尊敬している。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
いじめられていたウルナを助け、彼女と友人になった。実戦訓練で高い戦闘力を見せ、周囲を驚かせている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
下級生から慕われ、魔導天使という二つ名で呼ばれるようになった。
クロイサス・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵家の次男であり、魔法研究に没頭する青年である。他人に無関心で、自室をゴミ捨て場のようにしている。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院主席。
・物語内での具体的な行動や成果
独自に魔法式の解読法に辿り着いた。ゼロスから貰った魔法媒体の指輪を研究し、レポートを提出している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゼロスと性格が似ており、ミスカに荒縄で縛られて連行されるなどの扱いを受けた。
ミスカ
セレスティーナの専属メイドであり、クールで図々しい性格の女性である。気配を完全に消すことができる。
・所属組織、地位や役職
ソリステア公爵家のメイド。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスを荒縄で縛って宿屋へ連行した。セレスティーナをからかいながらも彼女の成長を見守っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
公爵夫人たちからも恐れられる存在である。
ダンディス
ソリステア公爵家の執事であり、紳士的な男性である。
・所属組織、地位や役職
ソリステア公爵家の執事。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスを迎えに赴き、領主邸へ案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
デルサシスに次いでダンディーな人物であると言及されている。
イストール魔法学院
キャロスティー
サンジェルマン侯爵家の息女であり、セレスティーナの友人である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。サンジェルマン派。
・物語内での具体的な行動や成果
セレスティーナの護衛についたイリスたちの女子力の高さを見抜いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
体力がないため、実戦訓練中は馬車で移動した。
マカロフ
クロイサスの同期であり、共に研究を行う青年である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスの危険な実験に巻き込まれ、刺激臭の被害に遭った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
セレスティーナやツヴェイトから名前を正しく覚えられていない。
イー・リン
獣人の血を引く少女であり、クロイサスの同期である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスにセレスティーナの噂を伝えた。本を返却しないクロイサスを大図書館へ連行している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
クロイサスと恋人同士だという噂が流れている。
セリナ
クロイサスの同期であり、噂好きの少女である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスとイー・リンの関係について誤解し、変な噂を流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
噂を流した罰として昼食を奢らされた。
ディーオ
ツヴェイトの親友であり、セレスティーナに一目惚れした青年である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
ツヴェイトの制止を聞かずにセレスティーナへの思いを貫こうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
クレストンから殺意を向けられている。
サムトロール
ウィースラー侯爵家の次男であり、権力志向が強い青年である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。ウィースラー派。
・物語内での具体的な行動や成果
ツヴェイトを逆恨みし、裏組織ヒュドラに暗殺を依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実家からも見捨てられつつある。
ブレマイト
サムトロールの取り巻きであり、精神系の血統魔法を使う生徒である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。ウィースラー派。
・物語内での具体的な行動や成果
派閥の生徒たちに洗脳魔法を掛けていた。サムトロールを裏切る決断を下している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ウルナ・ラハ
獣人族の少女であり、魔導士サーガスの養女である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
いじめられていたところをセレスティーナに助けられた。実戦訓練でセレスティーナと行動を共にしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
セレスティーナの二人目の友人となった。
学院生達
イストール魔法学院で学ぶ生徒たちである。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
実戦訓練に参加し、魔物との戦闘を経験した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
講師陣
イストール魔法学院で教鞭をとる教員たちである。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の講師。
・物語内での具体的な行動や成果
実戦訓練で学院生たちを引率した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
パンティスキー伯爵家
カーブルノ・カシラ・パンティスキー
パンティスキー伯爵家の長男であり、親の権威を笠に着る少年である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスに傲慢な態度をとった。魔物の群れに囲まれたことで戦士として覚醒している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
父を隠居させて領地を改革すると宣言した。
ズロース
カーブルノの世話係であり、初老の執事である。
・所属組織、地位や役職
パンティスキー伯爵家の使用人。
・物語内での具体的な行動や成果
生還したカーブルノの姿を見て感動の涙を流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
変な腰つきを見せていると言及された。
傭兵ギルド・傭兵
セイフォン
スティーラ傭兵ギルドのギルドマスターであり、Sランクの傭兵である。
・所属組織、地位や役職
スティーラ傭兵ギルド・ギルドマスター。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスと剣で手合わせをし、圧倒的な力量差を見せつけられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
オネェの振る舞いをしているが、既婚者で多くの子を持つ男性である。
ジャーネ
赤髪の長身な女性傭兵であり、男勝りだが純情な性格である。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
ワイルド・コッコに大剣を折られ、ゼロスに修復してもらった。セレスティーナの護衛として実戦訓練に参加している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ぬいぐるみを集める趣味がある。
レナ
甘栗色の髪の女性傭兵であり、年下の少年に目がない奔放な性格である。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスの護衛担当になり、目当ての少年たちから離れたことに絶望した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラーサス
戦斧を扱う傭兵であり、冷静な性格の男である。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスと共にカーブルノたちの護衛を担当した。レッサーオーガを撃破している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゼロスの過酷な指導に言葉を失った。
スティーラ傭兵ギルドの職員達
スティーラ傭兵ギルドで働く職員たちである。
・所属組織、地位や役職
スティーラ傭兵ギルド。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスが提出した公爵家の紹介状を見て驚愕した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
料理戦士達(料理人達)
実戦訓練の野営地で食事を作る料理人たちである。
・所属組織、地位や役職
傭兵ギルドの料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
殺到する学院生たちを相手に、戦場のような調理をこなした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
傭兵達
護衛や討伐などの依頼をこなす者たちである。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
実戦訓練で学院生の護衛を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
裏組織・盗賊
ガーランス
裏組織ヒュドラの幹部であり、紫のスーツを着た男である。
・所属組織、地位や役職
裏組織ヒュドラ・幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
サムトロールからツヴェイト暗殺の依頼を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
組織を壊滅寸前に追い込んだデルサシスに恨みを持っている。
シャランラ
黒いドレスを着た女暗殺者であり、物欲に忠実な性格である。
・所属組織、地位や役職
裏組織ヒュドラ。
・物語内での具体的な行動や成果
ツヴェイト暗殺の依頼を引き受け、ラーマフの森へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ガーランスの愛人である。
ラインハルト十三世
鎧を着た少年の暗殺者であり、奴隷の首輪をつけている。
・所属組織、地位や役職
裏組織ヒュドラの犯罪奴隷。
・物語内での具体的な行動や成果
シャランラの護衛として暗殺任務に同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
奴隷ハーレムを作ろうとして犯罪奴隷に落ちた過去がある。
名無しの少女
桃色の忍び装束を着た少女の暗殺者であり、無表情な性格である。
・所属組織、地位や役職
裏組織ヒュドラ。
・物語内での具体的な行動や成果
ガーランスに拾われ、シャランラの護衛として暗殺任務に同行している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
取り巻き達
サムトロールと行動を共にする生徒たちである。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
サムトロールと共に暗殺者を手引きするため森へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
盗賊達
街道などで略奪を行う犯罪者集団である。
・所属組織、地位や役職
盗賊。
・物語内での具体的な行動や成果
街道で学院生を待ち伏せしていたが、ワイルド・コッコたちに全滅させられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
教会・養護院
ルーセリス
旧市街の養護院を運営する見習い神官であり、心優しい女性である。
・所属組織、地位や役職
四神教の見習い神官。
・物語内での具体的な行動や成果
怪我人の治療を行った。感染症にかかったジャーネを看病している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゼロスに好意を抱いている。
ジョニー
養護院に住む孤児の少年であり、リーダー格である。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョンに行くためにカエデに剣術を習っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラディ
養護院に住む孤児の少年であり、角刈りの頭をしている。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
将来のために剣術の訓練に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アンジェ
養護院に住む孤児の少女であり、赤毛で元気な性格である。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
カエデから剣術を習い、訓練に励んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カイ
養護院に住む孤児の少年であり、ぽっちゃり体型である。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
肉を食べるために訓練へ参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カエデ
緑色の髪を持つハイ・エルフの少女であり、好戦的な剣士である。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
ジョニーたちに剣術を教えた。醤油をもらう条件でゼロスに同行している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
侍のような口調で話す。
孤児達
養護院で暮らす身寄りのない子供たちである。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供たち。
・物語内での具体的な行動や成果
街の掃除をして小遣いを稼いだ。ゼロスから肉をもらって喜んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ワイルド・コッコ
ウーケイ(グラップラー・コッコ)
格闘戦に特化した異常進化を遂げた魔物である。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの家の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
盗賊を大木に叩きつけて即死させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ザンケイ(スラッシュ・コッコ)
斬撃を得意とする異常進化を遂げた魔物である。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの家の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
カエデと剣の稽古を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
センケイ(スナイパー・コッコ)
狙撃を得意とする異常進化を遂げた魔物である。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの家の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
ウーケイたちと共にツヴェイトの護衛任務についた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
コッコ達
ゼロスの家で飼われているニワトリの魔物たちである。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの家の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
型稽古を行い、畑仕事を手伝うようになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
その他
サーガス・セフォン
高名な魔導士であり、権力にこだわらない奔放な性格である。
・所属組織、地位や役職
魔導士。
・物語内での具体的な行動や成果
ウルナを養女として引き取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
クレストンと同期であり、昼行灯と呼ばれている。
ジュリー
ハンベル家の一人娘であり、恋愛症候群を発症した女性である。
・所属組織、地位や役職
ハンベル家。
・物語内での具体的な行動や成果
船着き場でロメルと抱き合い、親への不満を叫んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ロメル
仇敵の家の跡取りであり、恋愛症候群を発症した男性である。
・所属組織、地位や役職
商家。
・物語内での具体的な行動や成果
ジュリーへの愛を叫び、父親の冷酷な仕打ちを暴露した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アラフォー賢者3巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者5巻レビュー
展開まとめ
プロローグ おっさんの失敗
漆黒のバイクと止まらない暴走
街道を走る異物
ファンタジー世界の街道に似つかわしくない漆黒のバイクが、ファーフラン街道を走り抜けていた。ゼロスがあり合わせの部品と魔導具を組み込んで作った魔導バイクであり、正式名称は【ハーリー・サンダース十三世】であった。中世風の街道を走るには明らかに時代背景を間違えた存在だったが、ゼロスは気にせず試運転を楽しんでいた。
歌いながらの試運転
ゼロスは高速で走るバイクに風を感じながら、アニメの主題歌を口ずさんでいた。選曲は次第に盛り上がり、彼の一人リサイタルは第二ラウンドへ突入していた。周囲から見ればかなり痛い光景であったが、ゼロスは他人の評価を気にせず、趣味に生きる男として街道を走り続けていた。
魔導バイクの完成度
ゼロスはバイクの乗り心地や魔導モーターの状態を確認し、今のところ問題はないと判断した。工科大学時代に省エネカーを製作した経験や、田舎暮らしでバイク好きの青年と整備をしていた経験があったため、乗り物の構造にはそれなりに詳しかった。魔法と素材を使えば産業革命を起こせる自信もあったが、責任を背負う気はなく、文明の発展は他人任せにするつもりであった。
技術を広めない理由
ゼロスは、自分の改造魔法や魔導技術を世間に広めれば、弟子入り希望者や利用しようとする者が押しかけ、自由が奪われると考えていた。バイクも使い方次第では戦局を左右するため、売るつもりはなかった。素材には希少なミスリルやオリハルコン、賢者の石が使われており、一台だけで国家予算が吹き飛ぶほどの代物だったため、量産にも向いていなかった。
ワンオフへのこだわり
ゼロスは低コストで似たものを作ることもできたが、同じものを大量生産する気はなかった。彼はワンオフの装備製作を好み、素材を持ち込まれれば相手に合わせた武器を作ることはあっても、戦争目的の量産依頼は断るつもりでいた。性能の違う武器を作って遊ぶことこそ、ゼロスにとっての楽しみであった。
高速走行の開始
通常速度の走行に問題がないと判断したゼロスは、高速走行のテストへ移った。ハーリー・サンダース十三世はオートマチック式に近い操作方法で、原付のように扱える楽な仕様であった。ゼロスがアクセルを開くとバイクは一気に加速し、急なカーブや難所の峠をあっさり走破した。
オークの襲撃現場
峠を越えたところで、ゼロスは商人の馬車がオークに襲われている現場に遭遇した。傭兵たちは馬車を守っていたが、敵の中には知能の高いオークキングが混じっており、完全に劣勢であった。ゼロスは状況を瞬時に見て取ったが、高速で走るバイクは急には止まれなかった。
オークキングとの衝突
停止できないと判断したゼロスは、逆にアクセルを開いて加速した。背を向けていたオークキングは、突っ込んできたバイクの重量で弾き飛ばされ、他のオークを巻き込みながら瀕死の重傷を負った。ゼロスのバイクはそのまま他のオークを次々に轢きながら街道を駆け抜け、商人や傭兵たちは呆然とその姿を見送った。
轢き逃げのような通過
ゼロスは状況に関係のない台詞を呟いて誤魔化しつつ、速度を落とそうとブレーキを引いた。しかしバイクは止まらず、何度操作しても速度が落ちなかった。事故の衝撃によってブレーキワイヤーに不具合が出ており、前後輪のブレーキが効かなくなっていたのである。
戻らないアクセル
さらに不運なことに、アクセルも戻らなくなっていた。速度は落ちるどころか上がり続け、ハーリー・サンダース十三世は創造主を嘲笑うように加速していった。街道には商人の馬車が通る可能性があり、魔力タンクも満タンだったため、どこまで走り続けるのか分からなかった。
後から分かる欠陥
ゼロスは、手を抜いて鍵を付けなかったことも含め、設計の甘さを激しく後悔した。助けてくれる者はおらず、この世界に高速で走るバイクへ追いつける者もいなかった。彼の乾いた笑いが街道に虚しく響き、欠陥とはいつも後から判明するものだと示すように、バイクは止まらぬまま走り続けた。
第一話 セレスティーナのボッチ脱却
セレスティーナとウルナの出会い
孤独な大図書館通い
セレスティーナは、いつものように魔法式の研究をするため、大図書館へ向かっていた。落ちこぼれから才女となったことで陰口すら言われなくなり、学院ではキャロスティー以外に声を掛けてくる者もいなかった。講師たちも彼女を教えることを諦め、自由に研究できる一方で、セレスティーナは気軽に話せる友人が欲しいと感じていた。
ミスカのからかい
ミスカは、友人のいないセレスティーナを一人寂しく魔法研究に勤しむ悲しい青春だとからかった。セレスティーナは気にしていることを言われて反発したが、ミスカは図々しさを誇るように胸を張った。友人作りの話は、拳で語り合うという妙な方向へ進み、セレスティーナはミスカが勧めた小説の影響を受けていることを指摘した。
危険な読書の影響
セレスティーナは、ミスカが三日前に渡した本に夢中になっていた。その本は青春と拳、愛を題材にした危険な内容で、最終的に薔薇の花園へ突入する物語であった。セレスティーナはミスカの思惑に気付きつつも、知らず知らずのうちにむっつり腐女子の道へ足を踏み入れ始めていた。
ミスカの地雷
セレスティーナがミスカの年齢へのこだわりに触れかけると、ミスカは黒いオーラを放ちながら迫った。セレスティーナは恐怖に震え、言葉を取り消した。ミスカは不用意な一言が命取りになると忠告し、セレスティーナはぎこちない足取りで大図書館へ向かおうとした。
拘束された獣人の少女
道中、ミスカは数人の少女が一人の少女に絡んでいる場面を見つけた。絡まれている少女は拘束魔法【フォース・バインド】で身動きを封じられていた。セレスティーナはすぐ止めようとしたが、ミスカはどちらに非があるか見極めるため様子を見るべきだと止めたため、セレスティーナは【ミラージュ・カーテン】で姿を隠して近付いた。
獣人への陰湿な虐め
拘束されていたのは、犬のような耳を持つ獣人の少女であった。彼女は力任せに拘束を破ろうとしていたが、うまくいかなかった。周囲の少女たちは、獣人風情が魔法を学ぼうとするのは生意気だ、犬臭い、学院から消えろと侮辱し続けていた。セレスティーナは、かつて自分も似た言葉を浴びせられていたため、その少女の苦しみを強く理解した。
獣人の魔力運用
セレスティーナは、獣人が本来は魔力を体内に循環させて身体能力を高める種族であることを思い出した。ゼロスがツヴェイトに教えていた身体強化の方法を記憶しており、獣人の少女は本能的に使い方を知っていても、やり方を教わっていないだけではないかと考えた。彼女は、人に育てられたために獣人族特有の魔力運用を学べなかったのだと推測した。
耳元の助言
セレスティーナは姿を隠したまま獣人の少女の耳元で囁き、へその下に魔力を集め、練り上げてから体の隅々へ流すよう教えた。少女は匂いで誰かが近くにいることを知り、言われるままに魔力を巡らせた。すると体の中に熱い感覚が駆け巡り、力が漲り、本能が呼び起こされるように魔力の循環が形になっていった。
砕けるバインド
少女たちがなおも獣人の少女を侮辱すると、彼女はやり返していいのかと笑った。挑発された彼女は拘束魔法を砕き、自由になった。さらに爪が鋭く伸び、腕に獣のような体毛が生える【闘獣化】を起こした。今まで虐めていた少女たちは、拘束が破られたことに動揺し、立場は完全に逆転した。
姿を現したセレスティーナ
獣人の少女が飛び掛かろうとした時、セレスティーナは待つよう声をかけた。少女は匂いで彼女の存在に気付いており、姿を見せるよう求めた。セレスティーナは【ミラージュ・カーテン】を解き、姿を現した。虐めていた少女たちは、最初から見られていたことに狼狽した。
ウルナの事情
獣人の少女は、魔力の使い方がしっくりきたと語った。セレスティーナが獣人なら本能的に知っていると思っていたと話すと、少女は養子であり、実の両親を覚えていないことを明かした。彼女は魔導士サーガス・セフォンの養女で、母が獣人だったらしい。獣人族の親から戦い方を教わらなかったため、特有の魔力運用ができなかったのである。
虐めた少女たちへの叱責
セレスティーナは、虐めをしていた少女たちに自分たちの行いを理解しているかと問うた。力で他者を圧するなら、同じく力で滅ぼされても文句は言えないと語り、今は弱くても努力すれば強くなれると説いた。少女たちは逃げるか迷ったが、名前を知られれば結果は同じであるため、その場に留まるしかなかった。
獣人族への無知
セレスティーナは、獣人族は魔導士の天敵に近い種族であり、体内で魔力を循環させるため魔力感知にかからず、五感を使って一瞬で距離を詰められると説明した。さらに獣人族は仲間意識が強く、今回の行いが知れ渡れば最悪戦争に発展しかねないと告げた。虐めていた少女たちは、軽い憂さ晴らしのつもりが重罪につながると知り、青ざめた。
学院と兵役の現実
少女たちは戦争は国の問題だと反論したが、セレスティーナは学院生が有事には予備兵役として戦場に送られる立場であることを思い出させた。学院生は魔導士として育てられている以上、戦争になれば男女の区別なく戦場へ向かう義務を負っていた。セレスティーナは、実力の伴わない者は無駄に命を落とすだけだと厳しい現実を突きつけた。
広範囲殲滅魔法への否定
少女たちは広範囲殲滅魔法があると主張したが、セレスティーナは複数の魔導士の魔力を同調させる無理があり、必要な魔力も足りず、旧時代の試作品で役に立たない可能性が高いと否定した。さらに彼女たちがウィースラー派であることを見抜いた。血統主義派が頼る広範囲殲滅魔法の基盤は揺らいでおり、資金源もソリステア派によって潰され始めていた。
血統主義派への恐怖
少女たちは、ソリステア家が血統主義派の邪魔をしていると責めたが、セレスティーナは自分は派閥に関わっていないと答えた。祖父クレストンと父デルサシスが裏で動いているのではないかと口にすると、少女たちは【煉獄の魔導士】と【沈黙の獅子】の名に震え上がった。二人が動いていると知った少女たちは、派閥を抜ける、学院も退学すると叫びながら逃げ出した。
セレスティーナの家族の噂
セレスティーナは、なぜ少女たちがそこまで慌てるのか分からなかった。彼女は家族の悪い噂に疎く、クレストンが敵対者を焼き払い、デルサシスが経済的に追い込んで相手を破滅させるといった話を知らなかった。彼女の前で父や祖父の悪評を口にする者がいなかったため、恐れられる理由を理解していなかったのである。
ウルナとの約束
獣人の少女は、助けてもらった礼をしたいと申し出た。セレスティーナは、自分もかつて同じ立場だったため気にしなくてよいと返したが、少女は義理堅く恩を返したがった。セレスティーナは、一週間の実戦訓練でパーティーを組むことを提案した。少女はウルナ・ラハと名乗り、受けた恩は必ず返すと約束した。
サーガスとの繋がり
ウルナは魔導士サーガス・セフォンの養女であった。サーガスはクレストンと学院同期であり、互いに研鑽を積んだ実力者だった。セレスティーナは気難しそうな印象を持っていたが、ウルナは面白いおじいちゃんだと語った。二人は思わぬ縁を知り、世間は広いようで狭いと感じた。
突然現れたミスカ
そこへミスカが突然姿を現し、セレスティーナとウルナを驚かせた。ウルナの五感でも気配を察知できなかったほど、ミスカの隠密性は凄まじかった。ミスカは、ボッチのお嬢様に友人ができたと大げさに喜び、セレスティーナはボッチ呼ばわりに抗議した。さらにミスカはクレストンを勝手に草葉の陰へ送ろうとし、セレスティーナに怒られた。
二人目の友人
ミスカの混沌とした言動に、ウルナは引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。それでも、キャロスティー以外に友人のいなかったセレスティーナに、二人目の友人ができたことは喜ばしい出来事であった。
魔導天使のファンクラブ
セレスティーナに声を掛ける者が少なかった理由は、彼女が強くなったからだけではなかった。実は裏でファンクラブが結成され、近付く者を容赦なく排除していたのである。彼女は【魔導天使】と呼ばれ、写真宝具で姿を記録され、同志たちに配られていた。セレスティーナ本人は、周囲からそのような目で見られていることを知らなかった。
第二話 血は争えぬ兄妹達
クロイサスの装備問題と師の来訪
上機嫌なクロイサス
クロイサスは研究室が片付き、サンジェルマン派の若い研究員候補たちと魔法式研究を進められるようになったため、最近は上機嫌であった。研究が好調なことに加え、ツヴェイトやセレスティーナとの関係も改善していた。魔法に対して異なる視点を持つ兄妹との会話は、研究者であるクロイサスにとって刺激的で有意義なものになっていた。
忘れられていた実戦訓練
マカロフが来週の実戦訓練について触れると、クロイサスは嫌そうに動きを止めた。彼は実戦訓練を頭から忘れており、強制参加であることを指摘されて落胆した。イー・リンやセリナからも準備などしているわけがないと言われ、研究以外が駄目な人物として扱われていた。
だらしない私生活
クロイサスは銀髪の長身美形で頭脳明晰だが、運動音痴で私生活が極端にだらしなかった。使用人が掃除してもすぐに部屋が荒れ、イー・リンが世話をしなければ寮の部屋は数日でゴミ箱のようになるほどであった。ツヴェイトやセレスティーナが身の回りを整えているのに対し、クロイサスの部屋は別格に危険な空間になっていた。
寮を混乱させた試薬
クロイサスは、精神系魔法に対する回復ポーションの試作品を寮の部屋で作ったことがあった。試薬から怪しい煙が広がり、寮内の学院生たちは奇行に走り、救護に当たった者たちまで異常な光景を目にすることになった。クロイサス本人は記録が残っていないことを残念がったが、仲間たちからは国を滅ぼしかねない危険人物として見られていた。
借り物を失う男
実戦訓練用の装備について、クロイサスはツヴェイトから予備の装備を借りようと考えた。しかし、彼は借りたものを返さず、返しても錆やカビが浮いた状態にすることがあったため、仲間たちは危険だと判断した。クロイサス自身の装備も発掘された時には腐敗し、酸で溶けたような痕跡まで残っていた。
腐海の部屋
クロイサスの部屋は、得体の知れない物が積み上がる腐海のような空間であった。かつてキャロスティーが部屋を訪ねた時、扉を開けた瞬間に絶叫して気絶し、その日の記憶を失った。部屋からは人間になりたいという声が聞こえたという噂まであり、クロイサス自身も何を作ったのか覚えていなかった。
闇に消えた怪生物
時間は二ヶ月ほど戻り、夏季休暇中の深夜、クロイサスの寮の部屋では得体の知れない粘液状の生物が瓶から這い出していた。それは闇の中で体を作り変え、人型に近い醜い姿へ変化すると、窓を開けて外へ消えた。創造主であるクロイサスはその経緯を知らず、後にその存在は地下下水路で咆哮を上げる正体不明の都市伝説めいた生物となっていた。
ツヴェイトへの頼み込み
クロイサスはマカロフと共にツヴェイトを探し、大図書館で装備を貸してほしいと頼んだ。しかしツヴェイトは即座に拒否した。クロイサスに物を貸せば戻ってこないか、破損するか、得体の知れない生物に持ち去られる可能性が高いためである。マカロフも監督役を押し付けられそうになり、ツヴェイトと言い争った。
怪しい仮面
ディーオがクロイサスに実戦訓練は避けられないと告げると、クロイサスは彼の名前を間違えたうえ、詫びとして血を掛けると棘が出る石の仮面を渡そうとした。ディーオは人体実験に使われそうになって拒否した。クロイサスは骨董市で怪しい魔導具を買い込み、研究しないまま部屋に積み上げる癖があり、それが危険な部屋を作る原因にもなっていた。
大図書館の口論
ツヴェイト、クロイサス、マカロフ、ディーオは、大図書館で実戦訓練用装備について口論を続けた。クロイサスは後方待機なら装備は不要だと都合よく考えたが、後方でも魔物に襲われる可能性があるため却下された。彼らの騒がしいやり取りに、司書官たちは迷惑そうな視線を向けていた。
ウルナへの魔法訓練
同じ頃、セレスティーナは修練場でウルナに魔法を教えていた。獣人族寄りのウルナは潜在意識に刻める魔法式の数が限られているため、セレスティーナは格闘戦に合う魔法として【マナ・シールド】【エア・フィールド】【ホークアイ】を選んだ。実戦訓練で生存率を高めるため、使える手札を増やすことが目的であった。
障壁魔法の刃
セレスティーナは【白銀の神壁】を腕に展開し、剣状にして案山子を両断してみせた。障壁魔法は防御だけでなく、腕に纏わせれば打撃力を高める武器にもなると示したのである。周囲の学院生たちは、シールド魔法の応用を目の当たりにして言葉を失った。
ウルナの魔力操作
ウルナはセレスティーナが再構築した【マナ・シールド】を発動し、障壁を腕に集める訓練を始めた。初めてにもかかわらず、ウルナは驚くほど早く精密に魔力障壁を凝縮させた。少ない魔力を効率よく使う獣人族の種族特性が、魔力操作に大きく働いていた。
砕け散る案山子
ウルナは身体強化も併用し、魔力障壁を纏わせた腕で案山子を殴った。案山子は粉々に砕け、周囲の者たちは落ちこぼれと見られていたウルナの一撃に呆然とした。だがシールド魔法と身体強化の同時使用は負担が大きく、ウルナは魔力切れを起こしかけたため、セレスティーナは魔力操作の訓練と実戦訓練での格上げが必要だと判断した。
クレストンの手紙
そこへミスカが気配も匂いもなく現れ、クレストンからの手紙をセレスティーナへ渡した。手紙には祖父らしい気持ち悪い寂しがりの文面が長々と書かれていたが、最後にゼロスが実戦訓練の護衛に来るという重要な情報があった。セレスティーナはそれを知り、急いでツヴェイトへ知らせに向かった。
モフられるウルナ
セレスティーナが大図書館へ向かった後、ミスカはウルナを介抱すると言いながら怪しい笑みを浮かべた。ウルナは恐怖を覚えたが逃げられず、ほどなく修練場に悲鳴が響いた。ミスカはウルナのふさふさした尻尾を好き放題にモフモフしたのであった。
装備修復の妥協案
大図書館では、ツヴェイトが素材を持ち、クロイサスが装備を修復するという案にまとまりかけていた。しかし、ファーフランの大深緑地帯の素材を前にすると、クロイサスが装備修復ではなく研究素材として着服する可能性が高かった。実際にキマイラの毒針の話を聞いた瞬間、クロイサスは金を出すから売ってほしいと即答し、仲間たちから理性がないと呆れられた。
師の来訪の知らせ
息を切らして大図書館へ来たセレスティーナは、ゼロスが実戦訓練の護衛に参加すると告げた。ツヴェイトは、ゼロスがわざわざ参加するなら生活苦ではなく、自分の警護が目的ではないかと考えた。血統主義者たちが動き、父デルサシスの情報網に何か引っかかったのだろうと推測し、表情を険しくした。
ディーオの紹介
ディーオはセレスティーナと話す機会を求めて挙動不審になり、ツヴェイトは面倒に思いながらも彼を紹介した。セレスティーナは兄たちから聞いていると言いながら、ディーオとマカロフの名前を見事に間違えた。三兄妹はどうでもいい相手の名前を覚えない点で似ており、ディーオは自分がセレスティーナにとってどうでもいい人物だったと知ることになった。
舞い上がるディーオ
その後、ディーオは何とかセレスティーナに名前を覚えてもらった。それだけのことにもかかわらず、彼は大きく舞い上がった。ツヴェイトはその様子に呆れていた。
動き出す爺馬鹿
一方、クレストンは、セレスティーナのもとに虫が来たと笑みを浮かべていた。彼はディーオをこんがり焼くつもりらしく、ダンディスに巻き込まないでほしいと言われながらも、バレなければよいと返した。クレストンは凶悪な笑みでナイフを研ぎ始め、ディーオの運命は不穏なものになっていった。
第三話 おっさん、船に酔う
護衛出発と船着き場の騒動
マスクと改良バイク
ゼロスは護衛依頼へ向かう準備を整え、正体を隠すための鬼を模したマスクを確認していた。そのマスクは仲間の位置を知らせる魔導具でもあった。一方、三日前に暴走したハーリー・サンダース十三世は、ブレーキワイヤーの配置ミスや外装の耐久不足、始動キーを付けなかったことが原因で止まれなくなっていたため、ゼロスは反省しつつ改良を済ませていた。
女性傭兵たちの不安
イリス、ジャーネ、レナがゼロスの様子を見に来ると、入り口付近に置かれたバイクに目を留めた。イリスは暴走を知っているため強張った表情になり、レナも本当に持っていくのかと心配した。ゼロスは現地に着けば分かるとだけ答え、バイクの改良は済んでいると示した。
玩具じみた構造
ゼロスは、三日で本格的なバイクを一から作れるわけがないと語り、ハーリー・サンダース十三世の本質が電池式の四駆玩具に近い構造だと明かした。動力は魔力式モーターで、魔力タンクはカートリッジ式バッテリーに近いものであった。見た目はバイクだが、内部は魔導具の集合体であり、恐ろしく貴重な素材を使った贅沢な玩具でもあった。
選ばれた三羽
護衛には、ウーケイ、ザンケイ、センケイの三羽のコッコも同行することになっていた。他のコッコたちも行きたがったが、家を空けるわけにはいかず、集団戦を得意とする彼らは目立ちすぎるため選ばれなかった。ゼロスは、いずれ大深緑地帯に連れて行くことも考えつつ、今回はもっとも頼りになる三羽を選んだ。
船旅への出発
ゼロスたちは、護衛依頼を果たすため、スティーラの街にある傭兵ギルドを目指して船着き場へ向かった。船旅は三日ほどかかる予定であり、運がよければ二日で着く可能性もあった。生活苦の傭兵三人組にとって、この依頼は生活改善の機会でもあった。
船着き場の愁嘆場
サントールの船着き場では、ゼロスたちが乗る予定の船を舞台に、恋愛症候群を発症した男女が演劇のような愁嘆場を繰り広げていた。二人は商家の一人娘と仇敵の跡取りであり、両家の父親に反対された恋を嘆きながら、互いの愛と苦しみを大声で暴露していた。その騒ぎのせいで出航が遅れ、周囲の商人や乗客たちは苛立っていた。
父親たちへの非難
出航を妨げられた人々は、二人の父親へ罵声を浴びせた。商談に遅れる者や商売の機会を逃す者も出かねず、父親たちは周囲から強い非難を受けた。しかも二人の子供は、家庭内の不満や父親の冷酷さを暴露し続け、父親たちの信用と世間体は急速に失われていった。
暴露される家庭の恥
ジュリーは父が仕事ばかりで自分を見ず、政略結婚の道具として扱ったと訴えた。ロメルも、父が血の繋がらない自分を軽んじ、義母を苦しめたことを語った。さらに愛人や義母への侮辱といった恥部まで暴露され、周囲の視線は父親二人へ冷たく集まった。ついに父親たちは耐えきれず、自分たちが悪かったと音を上げた。
恋愛症候群の混沌
ようやくゼロスたちは船に乗れたが、船着き場では別の恋愛症候群の発症者たちが暴走していた。全裸で走るカップルや、思い人に襲いかかる者、連れ去ろうとする者まで現れ、衛兵が追い回す騒乱状態になっていた。ゼロスとイリスは、自分たちも本気で誰かを愛した時に同じように暴走する可能性を悟り、恐怖に震えた。
馬車酔いの男
一方、スティーラの街では、ある男が傭兵ギルド運営の移送馬車に乗って到着していた。彼は馬車酔いで顔色が悪く、他の同乗者たちも同じように苦しんでいた。御者は馬車に乗ると性格が変わり、街まで爆走したため、乗客たちは生きていることに感謝するほどの恐怖を味わっていた。
ギルドレストランでの合流
男は少し休んだ後、傭兵ギルドへ入った。そこは食堂のように整えられた落ち着いた場所で、彼の黒いコートと武装はひどく浮いていた。男は二階ロフトへ上がり、商人風の案内役二人と、魔導士風の女性二人を見つけた。彼はアドと呼ばれ、シャクティとリサに遅れて合流した。
イサラス王国での失敗
アドは、イサラス王国で頼まれていた魔導具開発の結果を二人に報告した。謎の鉱石を用いた【戦士のアミュレット】の試作品は、被検体の傭兵たちを魔物へ変えてしまう危険なものだった。安全な軍事装備になる予定は頓挫し、その存在は放置できないほど危険なものになっていた。
危険物の処分
アドは、危険な鉱石を裏社会の者たちへ売り捌き、薬に微量混ぜさせて処分するつもりだと語った。シャクティは一般人に被害が出る可能性を懸念し、リサも共犯になるのかと怯えた。弁護士を目指していたシャクティにとって、危険物の流通を黙認する立場になることは重い葛藤であった。
転生者三人の経緯
アド、シャクティ、リサは三ヶ月ほど前、山岳地帯の小国に転生していた。彼らは貧しい村で食料を探し、岩石芋【ポルタ】を見つけたことで村を飢えから救った。その噂が国王の耳に入り、イサラス王国の重鎮として迎えられ、武器開発を手伝うことになったのである。しかしその国は戦争を始めようとしていた。
学院図書館への目的
アドたちは、この世界の情報を集めるため、イストール魔法学院の大図書館へ向かうことにした。目的は、歴史書、遺跡関連、宗教資料を調べ、【四神】に関する情報を得ることだった。彼らはこの世界のステータスやスキル、レベルアップなどの仕組みが【ソード・アンド・ソーサリス】に似ていることへ違和感を抱いており、その正体を確かめようとしていた。
学院の巨大建築
三人はスティーラのメインストリートを進み、巨大な大図書館の建物を目にした。ゴシック様式を思わせる芸術的な建築で、増築の跡も見られた。リサは建築関係の知識から石材や繋ぎ目に注目し、アドはその規模に驚いた。
芸術都市の名残
イストール魔法学院の敷地は、かつて芸術都市として開発されるはずだった場所であった。王の肝いりで進められた都市開発は民衆の反発を招き、クーデターによって頓挫した。その後、芸術の都として造られた建築物は魔導士育成の場として利用され、記念碑には愚王を倒した魔法貴族たちの名が刻まれていた。
シャクティの歴史観
シャクティは記念碑の内容を鵜呑みにせず、民衆向けの正当化や権力奪取の大義名分だと分析した。建築物の美しさだけでなく、どれだけの予算が使われ、民衆がどれほど苦しんだのかを考える彼女に、アドは純粋に建築美を見られないのかと呆れた。話は革命や政、テロリズムにまで広がり、アドは難しい話についていけず疲れていた。
大図書館への入館
話がようやく戻り、三人は大図書館へ入った。館内には読書用の机が並び、学院生だけでなく一般人の姿もあった。危険な書物は学院生や講師のみが入れる区画で管理されており、司書や衛兵が監視していた。三人は役割を分け、リサは宗教関連、シャクティは歴史書、アドは遺跡関連を調べることにした。
船酔いのゼロスとイリス
一方、ゼロスたちは船で三日ほどかけ、セザンの街を目指していた。向かい風で船足は鈍く、予定に間に合うか微妙な状況であった。ゼロスとイリスはひどい船酔いに苦しみ、ジャーネに呆れられていた。二人は船から降りた後も気分が悪く、今後は船に乗りたくないと弱音を吐いた。
レナという危険要素
船上でジャーネは、レナを学院に連れて行ってよいのかと指摘した。レナは成人ぎりぎりの少年を好む重度のショタコンであり、少年の多い学院行事へ連れて行くことは危険だった。ゼロスとイリスは生活苦や準備に気を取られてその問題を忘れており、野外講習が淫欲の場になる危険を思い出して青ざめた。
オークキング自慢の傭兵たち
船には、オークキングを倒したと自慢する傭兵たちも乗っていた。ゼロスは、その話が自分のバイク事故で跳ね飛ばしたオークキングのことではないかと察したが、船酔いでそれどころではなかった。船はいよいよセザンの街へ到着した。
セザンでのナンパ
船を降りたゼロスたちに、威勢のいい傭兵たちが馬車に乗らないかと声をかけてきた。だがその目的は下心が明らかで、イリスたちは挑発的に断った。彼らはオークキングを倒したと威張ったが、ゼロスがファーフラン街道で瀕死にしたオークキングを袋叩きにしただけではないかと指摘すると、傭兵たちは顔を背けた。
逃げる傭兵たち
ゼロスがオークキングを時速百二十キロほどで跳ね飛ばしたと話すと、イリスたちは本当の功績を知った。傭兵たちは手柄を自分たちのものにしていたことがばれ、反論できずに逃げるように馬車へ乗り込んだ。ジャーネたちは、彼らと一緒に仕事をしたくないと呆れた。
リヤカー付きバイク
ゼロスはインベントリーからハーリー・サンダース十三世を出し、後部に四輪のリヤカーを固定した。リヤカーは魔法信号でバイクとブレーキが連動する仕様で、クッションも用意されていた。イリスたちはそのリヤカーに乗ることになり、三羽のコッコも一緒に乗り込んだ。ゼロスは安全運転を約束し、一行はスティーラへ向かった。
赤毛熊の自業自得
先ほどの傭兵たちは【赤毛熊】というパーティーで、ゼロスたちへの恨みを口にしながら馬車でスティーラへ向かっていた。彼らはゼロスを裏で痛めつけようと企んでいたが、その直後、漆黒のバイクに牽引されたリヤカーが馬車の横を一気に抜き去った。驚いた馬が暴走し、馬車は森へ突っ込んで横転した。
受付に間に合わない結末
【赤毛熊】の馬車は車軸が折れ、修理に時間を取られて日が暮れてしまった。彼らも学院生護衛の依頼を受けるつもりだったが、受付時間には間に合わず、強引に受け付けさせようとして返り討ちに遭った。残ったのは馬車の修理費、交通費として借りた借金、そして怪我だけであった。彼らの結末は、自業自得であった。
第四話 ツヴェイト、サムトロールに現実を突きつける
ツヴェイトの悪夢とサムトロールの動揺
不気味な屋敷の夢
ツヴェイトは、自分が夢を見ていると理解しながら、薄暗い不気味な屋敷の中を歩いていた。廃墟のような部屋を進む体は自分の意思では動かず、浮遊感が現実ではないことを示していた。彼は目の前の扉を開き、そこでディーオらしき声に迎えられた。
人を捨てたディーオ
ディーオは漆黒のマントを羽織り、セレスティーナと生涯を共にするために邪魔者を排除すると語った。さらに、クロイサスと手を組み、人を捨てたと宣言した。振り返ったディーオは怪しげな仮面を被っており、ツヴェイトは彼が何になったのかと混乱した。
マッドなクロイサス
夢の中のクロイサスは、ディーオを実験に参加させたと語り、興味深い結果だと黒い笑みを浮かべた。ツヴェイトは何をしたのか問い詰めたが、クロイサスは色々だと答えるだけだった。ツヴェイトにとっては、ディーオの変貌もクロイサスの態度も理解しがたいものだった。
肉体改造されたクレストン
そこへクレストンが現れ、セレスティーナに近付く者を葬るため、鋼の肉体を手に入れたと叫んだ。クレストンは上着を脱ぎ捨て、老人とは思えない強靭な肉体を見せた。彼はゼロスに鍛えてもらったと語り、ゼロスもどこか誇らしげにその成果を認めていた。
怪人同士の激突
ディーオとクレストンは、人外改造と肉体改造の存在として互いに対峙した。クロイサスとゼロスは互いの成果に感心し合い、ツヴェイトは収拾のつかない状況に叫んだ。やがて二人の攻撃がツヴェイトを挟む形で迫り、彼は完全な巻き添えとなって炎と打撃に呑まれた。
目覚めたツヴェイト
ツヴェイトは叫びながら目を覚ました。そこは整頓された寮の部屋であり、傍にはディーオがいた。ディーオは、クロイサスからもらった怪しい石の仮面を手にしていた。ツヴェイトは夢を思い出し、その仮面を絶対に被るなと忠告した。
封印された仮面
ディーオは、仮面を被るつもりはなく、捨てるにも困っていると話した。ツヴェイトは、クロイサスが集めたものなら碌でもない物に違いないと考えた。ディーオは箱に入れて封印すると決め、ツヴェイトはその判断に安堵したが、夢が正夢にならないことを祈った。
師への気まずさ
その日の昼、ツヴェイト、セレスティーナ、クロイサスは学院内のカフェテラスで顔を合わせた。ツヴェイトとセレスティーナはゼロスが来ることに落ち着かず、魔法に関して十分な成果を出せていないため、会いづらさを感じていた。クロイサスはゼロスと会ったことがなく、話に聞く人物像があまりに矛盾しているため、明確な印象を持てずにいた。
クロイサスとゼロスの近さ
セレスティーナとツヴェイトは、クロイサスとゼロスの思考や行動基準が似ていると見ていた。クロイサス自身は、自分は歪んだ人間ではなく、研究以外はどうでもよいだけだと主張した。しかし二人は、その考え方こそ歪んでいると内心で思っていた。
ミスカの情報
そこへミスカが突然現れ、ゼロスは正午過ぎにセザンへ着き、その三時間後にはスティーラへ到着する見込みだと報告した。ゼロスがすごい魔導具を作ったらしいと聞き、クロイサスは強い興味を示した。ミスカは、以前ゼロスが空を飛ぶ農機具を作ったことにも触れ、ツヴェイトたちはその非常識さに困惑した。
唐箕失敗の推測
クロイサスは、空を飛ぶ農機具について、魔法式を間違えたか強力にしすぎたのではないかと推測した。その場にいなかったにもかかわらず的確に言い当てたため、ツヴェイトとセレスティーナは、クロイサスがゼロスをよく理解していると感じた。趣味が絡むとやり過ぎる点で、二人はよく似ているのだった。
お姉さまになったセレスティーナ
ミスカは、セレスティーナがウルナと親しくなったことをきっかけに、下級生の女子から慕われるようになり、お姉さまと呼ばれていると告げた。ツヴェイトは、セレスティーナがなぜお姉さまルートを進んでいるのかと驚いた。セレスティーナはただ親切心から魔法を教えただけであり、その呼び方の意味も理解していなかった。
ソリステア派の広がり
セレスティーナを慕う後輩たちは、魔法の扱いが苦手な落ちこぼれたちであった。彼女が改良した魔法式で魔法が使いやすくなり、親身に教えたことで憧れを抱かれるようになっていた。セレスティーナ本人は知らないが、彼女の行動は結果的にソリステア派の勢力拡大にもつながっていた。
クロイサスの迎え役
ツヴェイトは、ゼロスへの指輪の礼もあるため、クロイサスがゼロスに会うことを決めた。ただしクロイサスは寄り道や迷子の可能性が高いため、ミスカが付き添うことになった。ミスカは、クロイサスが研究レポートを持ち出したり、怪しい露店に足を止めたりするだろうと見抜き、頃合いを見て寮へ迎えに行くと答えた。
汚れたローブ
クロイサスはそのままのローブでゼロスに会おうとしたが、ミスカに汚れていると指摘された。ツヴェイト、セレスティーナ、ミスカは、人に会う格好ではないと揃って止めた。クロイサスは青いローブを好んでいたが、実家から送られた新しいローブの場所をすでに見失っていた。
広がる腐海
クロイサスは新しいローブを探すことになったが、それによって彼の部屋はさらに散らかることになった。彼の部屋はもともと危険地帯であり、得体の知れない生物が人知れず野に放たれてもおかしくない状態であった。ツヴェイトは、面白い魔導具ではなく危険物だろうと内心で考えながらも、言葉にはしなかった。
実りのない論議会
ツヴェイトとディーオは、ウィースラー派の戦術論議会に出席したが、相変わらず実りはなかった。血統主義者たちは都合のよい戦術案を並べ、ツヴェイトたちがそれを論破する流れになっていた。ツヴェイトは、戦争などない方がいいが、平穏を守るには最悪を予想しなければならないと考えていた。
サムトロールへの探り
論議会の後、ツヴェイトはサムトロールとブレマイトを含む血統主義者たちと遭遇した。サムトロールが喧嘩腰に絡んできたため、ツヴェイトは冷静に、裏で怪しい連中と接触して自分を始末する算段でもしているのかとカマを掛けた。確証はなかったが、サムトロールは明らかに動揺し、ツヴェイトは何かを企んでいると確信した。
切り札のブラフ
ツヴェイトは、こちらにも切り札があると告げ、企みが成功しても失敗しても破滅しかないと追い打ちをかけた。それはブラフであったが、サムトロールは真偽を確かめられず、問い詰めれば自分の企みを認めることになるため、聞き出すこともできなかった。ツヴェイトは表情を崩さず、サムトロールの単純さに内心で呆れていた。
王族血統の差
サムトロールは自分がウィースラー家の者であり、王族の血を引くと主張した。しかしツヴェイトは、サムトロールの王位継承権より自分の方が上であり、王族血統を裁く権限はソリステア公爵家にも十分あると告げた。実家のウィースラー家も庇いきれないため、サムトロールは自分の立場の危うさを思い知った。
追い詰められたサムトロール
ツヴェイトとディーオが去った後、サムトロールとブレマイトは青ざめていた。成功しても失敗しても破滅する可能性を突きつけられ、ソリステア公爵家を敵に回したことを実感したのである。サムトロールは浅はかさに気付いたが、暗殺依頼を出した後ではすでに手遅れであった。
ブレマイトの裏切り
サムトロールは、追い詰められた末にツヴェイトを道連れにしようと短絡的に考えた。周囲の血統主義者たちも危険を感じ取り、ブレマイトはこんな馬鹿と心中するのはご免だと考えた。彼は保身のため、サムトロールを売る決断を下した。権力欲だけで集まった者たちの間に、信頼関係など存在しなかった。
第五話 おっさん、Sランクのギルマスと剣を交える
スティーラ到着とSランク登録
丘で止まったバイク
ゼロスはスティーラの街の手前にある丘で魔導式バイクを止めた。街へは歩いて入るつもりだったが、その前にレナとジャーネが激しく乗り物酔いを起こしていた。船では酔わなかった二人も、時速六十キロで走るリヤカーには耐えられず、慣れない高速移動にすっかり消耗していた。
逆転した船酔い組
ゼロスとイリスは船で酔っていたが、今度はレナとジャーネが青い顔で歩くことになった。ゼロスは、バイクなら馬車で十時間かかる距離も三時間足らずで到着できると考えていたが、乗せられる側の体感は別物であった。レナとジャーネにとって、初めての高速リヤカーは終わらない絶叫体験のような時間だった。
スティーラの街
一行はゆっくり歩き、二十分ほどかけてスティーラの街門をくぐった。スティーラはイストール魔法学院を中心とした学院都市であり、初等科、中等科、高等科の校舎や寮が広大な敷地に広がっていた。貴族と一般学院生の校舎を分けていた過去もあったが、身分差別への反発と派閥抗争を経て、学院は現在の形へ変わっていた。
学院都市の傭兵ギルド
スティーラ傭兵ギルドは、学院生が学費を稼ぐために利用する場所でもあった。近年は派閥争いの影響で学生の利用者は減っていたが、学院から薬草採取や魔法薬の性能実験などの依頼が出るため、金に困った傭兵たちが集まっていた。実験用の魔法薬を飲む依頼もあり、報酬として得られる魔法薬は傭兵にとって重宝されていた。
レストラン風のギルド
スティーラの傭兵ギルドは、サントールの酒場のような建物とは異なり、ステーキ専門店のような綺麗な外観だった。学院生も利用するため、荒くれ者が集まる酒場ではなく、レストラン風に整えられていた。ゼロスはデルサシスからの紹介状を持っており、それをギルドマスターへ渡す必要があった。
公爵家の紹介状
ゼロスが受付で紹介状を差し出すと、封にはソリステア公爵家の家紋が押されていた。男性職員は驚きながらも慌てて奥へ向かった。ゼロスはその反応を不思議がったが、ジャーネやレナは公爵家の手紙なら当然の反応だと見ていた。ゼロスは貴族権力への認識が薄く、この世界の住民とは考え方にずれがあった。
オネェのギルドマスター
男性職員が連れてきたのは、セイフォンという若い美形のギルドマスターだった。だが彼は化粧と香水、独特の仕草をまとったオネェであり、ゼロスに生理的な恐怖を与えた。セイフォンはデルサシスから、ゼロスにSランク傭兵資格を与えてほしいと頼まれていると話した。
実力確認の要求
セイフォンは、Sランク資格を与えるためにゼロスの腕前を見せてほしいと言った。彼自身も高い実力を持つ手練れであり、ゼロスとの立ち合いに強い興奮を示した。ゼロスは平和主義者だと逃げ腰になったが、ギルドカードが必要なため、ベッドでの相手よりは剣の手合わせの方がましだと判断した。
閃光のセイフォン
ジャーネは、セイフォンが【閃光のセイフォン】というSランク傭兵だと気付いた。彼はレイピアでワイヴァーンやヘル・キマイラを倒した最強剣士の一人であり、高速の剣技から【閃光】の異名を持っていた。一方で、多くの男を瞬く間にベッドへ連れ込んだことから【百人斬りのセイフォン】とも呼ばれており、別の意味でも恐れられていた。
訓練場への移動
ゼロスはセイフォンに案内され、ギルド裏の訓練場へ向かった。訓練場は閑散としており、新人傭兵が手ほどきを受けている程度だった。セイフォンは訓練用の模造剣を使うか尋ねたが、ギルドの運営資金にも余裕がないことを知ったゼロスは、自前の武器で相手をすることにした。
張り詰める空気
ゼロスとセイフォンが向き合うと、訓練場の空気が一変した。先ほどまでのふざけた気配は消え、まるで凶悪な獣同士が対峙しているような重苦しさが満ちた。ゼロスは両手にコンバットナイフを持ち、セイフォンはレイピアを構えたまま微動だにしなかった。見物人たちは息ができないほどの緊張を感じた。
コインで始まる勝負
ゼロスは銅貨を弾き、地面に落ちた瞬間に互いに仕掛けることを提案した。セイフォンはそれを受け入れ、銅貨が落ちると同時に二人は動いた。レイピアとマンゴーシュを使うセイフォンに対し、ゼロスはコンバットナイフとガントレット、格闘技能を組み合わせて応じた。
剣戟の応酬
セイフォンはリーチの長いレイピアで突きを放ち、マンゴーシュで防御を補った。ゼロスは懐へ踏み込もうとしたが、セイフォンはそれを見事に迎撃した。互いに決め手のないまま、高速の剣戟が続き、見物人たちはギルドマスターと対等に戦うゼロスの技量に驚いた。
武器破壊の狙い
ゼロスは【烈空蹴】で足元を狙い、セイフォンを後方へ飛び退かせた。さらにセイフォンの突きに合わせて、ガントレットの拳でレイピアの破壊を狙った。セイフォンは寸前で危険を察知して回避し、ゼロスのカウンターと武器破壊の布石を見抜いた。ゼロスは、セイフォンの実戦勘を高く評価した。
連続突きへの対応
セイフォンは身体をぶらし、複数の姿を見せるようにして【ファントム・ストラッシュ】を放った。ゼロスは連続する突きをナイフで捌き、さらに剣先へナイフの切っ先を合わせる【点尖撃】で防いだ。見物人たちは、凄まじい連続攻撃をナイフだけで迎撃するゼロスに言葉を失った。
喉元への一撃
ゼロスはナイフを投げ、セイフォンの視線を一瞬そらした。セイフォンがそれを弾いた直後、ゼロスは【蠢動】で移動し、弾かれたナイフを掴みながらもう一方のナイフをセイフォンの喉元へ突きつけた。セイフォンは、ゼロスの戦い方が魔導士というより暗殺者に近いと評した。
Sランクの認定
セイフォンは、自分が熱くなったために負けたと認め、ゼロスは間違いなくSランク、それ以上かもしれないと判断した。ゼロスは本気で相手をしていたが、途中から自分にまだ余裕があることに気付き、Sランク傭兵との力量差に戸惑っていた。セイフォンは、この国で自分より強い者は数人しかいないと語り、ゼロスをその中でも最強だと見た。
逃げ出したゼロス
セイフォンは恋する乙女のような目でゼロスを見つめ、悩ましげな仕草で欲望を露わにした。ゼロスは危機を感じ、全速力で逃げ出した。イリスたちは、ゼロスが心底嫌がっていたと見ており、彼が二度とギルドへ戻らないだろうと察した。ギルドカードは後に宿へ届けられ、ゼロスは怯えながら受け取った。
Sランク傭兵の登録
ゼロスは無事に傭兵として登録され、ランクはSとなった。後に、Sランク傭兵に勝利した魔導士として一時的に有名になることになったが、この時のゼロスはセイフォンから逃げることで頭がいっぱいであった。
モテる三武鶏
ゼロスがセイフォンと対峙している間、ウーケイ、ザンケイ、センケイの三羽は受付前で待機していた。彼らは女性職員たちに囲まれ、艶のある羽毛や凛々しさを褒められていた。コッコたちは照れながらも、種を超えて雌たちを虜にしてしまったと受け止めていた。
受付での成敗
護衛依頼の受付締切を過ぎてから来た傭兵たちが、職員の胸倉を掴んで依頼を受け付けさせようと脅した。三羽のコッコはその瞬間に動き、傭兵たちを死なない程度に叩きのめした。ある者は装備を斬り刻まれて全裸になり、ある者は全身が腫れ上がるほど打ちのめされた。
三武鶏の伝説
女性職員たちは、荒くれ傭兵を瞬殺したコッコたちに歓声を上げた。可愛くて強いと絶賛された三羽は、一躍人気者となった。これをきっかけに、後にワイルド・コッコを連れた傭兵が増えることになる。ウーケイ、ザンケイ、センケイは、傭兵を瞬殺した【三武鶏】として伝説を作った。
第六話 おっさん、クロイサスと会う
高級宿での再会と護衛用魔導具
場違いな高級宿
ゼロスは傭兵ギルドから逃げ出し、デルサシスに指定された宿へ入った。そこは一人で滞在するには広すぎる高級な部屋で、絵画や花瓶、柔らかな絨毯、大きなベッドが揃っていた。小市民気質のゼロスには身の丈に合わず、皺一つないシーツや大理石の床に戸惑うばかりだった。
ミスカの来訪
ゼロスが部屋の広さに困惑していると、扉がノックされた。現れたのはセレスティーナの世話係であるミスカだった。ゼロスは到着したばかりなのに訪問されたことに驚き、密偵がいるのではないかと疑ったが、ミスカは企業秘密だと答えた。その一言から、ゼロスはデルサシスの情報網の広さを察した。
荒縄のクロイサス
ミスカは、ツヴェイトとセレスティーナの代わりにクロイサスを連れてきたと告げた。しかし彼女の背後にいたのは、荒縄で巻かれて芋虫のように転がるクロイサスだった。ミスカは、目を離すと怪しい露天商の方へ行ってしまうため仕方なく縛ったと語ったが、どこか楽しんでいるようにも見えた。
容赦のないメイド
ミスカは、クロイサスがゼロスに会いたがっていたにもかかわらず、怪しい露天商を優先しようとしたため強行手段に出たと説明した。公爵家の次男を足蹴にしても平然としており、それを許されるのが自分だと言い切った。ゼロスは、その遠慮のなさと行動力に恐怖を覚えた。
引きずられたクロイサス
ミスカはクロイサスをロープで引きずりながら部屋へ入った。途中までは馬車で運んできたと語りながらも、実際には馬で引きずったと明かし、ゼロスをさらに戦慄させた。彼女は死なない程度にロープの厚みを調整したと平然と言い、クロイサスにも快適なスリルを味わわせたと語った。
魔導具への反応
ゼロスが高速移動用の魔導具の装備変更を手伝ってほしいと話すと、クロイサスは芋虫状態のまま勢いよく跳ね起きた。彼は挨拶よりも魔導具の性能や種類を知りたがり、ゼロスを呆れさせた。ミスカは、クロイサスは魔法や魔導具の研究以外に興味を持たない人物だと説明した。
クロイサスの挨拶
クロイサスは改めて名乗り、兄妹からゼロスの噂を聞いており、以前から話を聞きたいと思っていたと告げた。だが彼はまだ荒縄で縛られており、ロープを解く必要があった。ゼロスはインベントリーからナイフを探したが、手持ちのナイフはどれも危険な追加効果を持つものばかりで、単にロープを切る用途には向いていなかった。
呪われたナイフ
ミスカは愛用のナイフを貸したが、その形状は髑髏や蛇の装飾がある禍々しいものだった。ゼロスは、悪魔への生贄にとどめを刺すような代物だと感じて戸惑った。しかもロープには鋼線が編み込まれており、切るのに苦労した。クロイサスが解放されたのは十五分後だった。
バイクの装備変更
ゼロスはクロイサスと共に、部屋の中でハーリー・サンダース十三世の装備変更を始めた。広く石造りの部屋だったため、インベントリーからバイクを出して作業できたのである。ゼロスはサイドカーのシャフトを固定し、クロイサスにフレームを押さえさせた。
武器内蔵のサイドカー
クロイサスは、サイドカーに突き出したコンテナ状の部品を見て疑問を抱いた。ゼロスは、以前に興味本位で作った武器が内蔵されており、正面への牽制に使えると説明した。だが詳細は秘密にし、量産する気もないと明言した。クロイサスは研究者として分解したがったが、ゼロスは未完成で組み直すのが面倒だから駄目だと拒んだ。
魔導錬成への驚き
ゼロスがバイクを【魔導錬成】で作ったと話すと、クロイサスは強く反応した。クロイサスは魔導錬成を魔導士が極める到達点の一つだと考えていたが、ゼロスは錬金術師や鍛冶師などの職業スキルを高めれば覚えられると説明した。ただし極めるには大量の素材を使い潰す覚悟が必要であり、不良品や欠陥品も大量に出ると語った。
神仙人への疑問
ゼロスは、採掘や採取、薬師などのスキルを得て統合させた結果、さまざまな職業スキルを獲得してきたと話した。最近は【神仙人】という職業スキルまで出たが、その理屈が分からず、今さら必要なものでもないと感じていた。クロイサスは東方の魔導士のようなものかと考えたが、ゼロス自身もこの世界の仕組みを理解できていなかった。
楽しい魔法談義
クロイサスは研究者らしく、知らないことや疑問を淡々と質問した。ゼロスは答えるのに少し苦労しながらも、その時間を楽しいものだと感じた。ゲーム時代の仲間と会話しているような錯覚を覚えるほど、二人は魔法や魔導具の話で通じ合っていた。
メイドの秘密
クロイサスが持っていた魔法式の束について、ゼロスは彼が簀巻き状態だったのにどこから出したのか疑問に思った。ミスカは、メイドのスカートの中には秘密がいっぱいだと答えた。辞典並みに厚い書類の束をどこに隠していたのかは分からず、ゼロスとクロイサスはメイドという存在に得体の知れない不吉さを感じた。
護衛用の指輪とアミュレット
ゼロスは本題として、指輪とアミュレットを取り出した。指輪には複雑な幾何学模様と小さな魔石があり、アミュレットにも強い魔力が封じられていた。アミュレットは攻撃に対して自動で障壁を展開し、指輪はゼロスのマスクと連動して居場所を知らせ、緊急時には危険を伝える波動を出せるものだった。
三兄妹への備え
ゼロスは、それらをツヴェイト、セレスティーナ、クロイサスの三人分用意していた。狙われているのはおそらくツヴェイトだが、場合によってはソリステア公爵家の三兄妹全員が標的になる可能性があった。ゼロスは愚かな相手が事故に見せかけて襲撃する可能性を考え、万が一に備えたのである。
見抜かれた着服心
クロイサスは魔導具を研究したいと興味を示し、ゼロスは彼が二人に渡さず懐に入れようとしていないか問いかけた。クロイサスは動揺したが、ゼロスは自分なら真っ先に懐へ収めて知らん顔をするため、似た性格のクロイサスの行動も読めると語った。クロイサスは、その予想が的中していたため冷や汗を流した。
ミスカへの託送
ゼロスは、指輪とアミュレットをミスカに託し、ツヴェイトとセレスティーナへ確実に渡すよう頼んだ。クロイサスは自分が信用されていないのかと不満を漏らしたが、ゼロスは趣味に関しては自分すら信用できないと答えた。二人は互いに考えが読めるほど似ていることを実感し、気は合うが敵に回せない相手だと感じた。
準備の完了
クロイサスは自分用の指輪とアミュレットだけでも研究してみたいと語った。ミスカは、クロイサスは室内でできること以外の努力をしないため、ゼロスとは違う部分もあると指摘した。ゼロスは自分そっくりではないことに安心した。こうして魔導具はその日のうちにツヴェイトとセレスティーナのもとへ渡り、護衛の準備は整った。
第七話 おっさん、衝撃を受ける
ヒュドラの暗躍と恋愛症候群の発覚
地下拠点の刺客たち
地下深くの遺跡となった街には、犯罪組織【ヒュドラ】の拠点があった。屋敷跡の一室では、黒いイブニングドレスを着たシャランラと、派手なスーツ姿のガーランスが話していた。ガーランスは、シャランラの補助として少年奴隷と桃色の忍び装束の少女を用意していた。
ラインハルト十三世の事情
少年はラインハルト十三世と呼ばれており、合法奴隷に手を出して訴えられ、犯罪奴隷となったところをガーランスに買われていた。本人は奴隷ハーレムを作れると思っていたが、現実の奴隷制度は彼の想像とは違っていた。彼は奴隷から解放されるために仕事を引き受けようとしていたが、シャランラからは浅はかな坊やと見られていた。
桃色忍者の少女
もう一人の少女は名も分からず、道端で行き倒れていたところをガーランスに拾われていた。食べ物を与えられてから付いてきた少女であり、無表情でパンを食べていた。忍びを名乗りながら桃色の装束でまったく忍んでいなかったが、腕は確かで、商売敵を蹴散らした実力を持っていた。
シャランラの出発
シャランラは、護衛など必要ないと思いながらも、相手がソリステア公爵であるため油断はできないと聞かされ、仕事へ向かうことにした。ガーランスはシャランラと濃厚な口づけを交わし、帰ってきたら可愛がると告げた。シャランラは、すぐに片付けてくると言い残し、二人の助っ人と共に闇へ消えた。
ガーランスの報復心
部屋に残ったガーランスは、デルサシス公爵への恨みを晴らす好機が巡ってきたと考えていた。失敗すればこの国で裏家業を続けられなくなる危険な賭けだったが、彼は報復が失敗するとは思っていなかった。複数の思惑を抱えた者たちは、ラーマフの森へ向けて動き出した。
セイフォンの真実
高級宿【明けの明星亭】で、ゼロスはイリスたちからギルドカードを受け取り、セイフォンに関する真実を聞かされた。ゼロスは、セイフォンが男色ではなくノーマルで、しかも五十三人の妻と三十八人の子供を持つ既婚者だと知り、強い衝撃を受けた。オネェのような言動は新人傭兵をからかう趣味であり、耽美な趣味からくるものだった。
納得できないゼロス
ゼロスは、あのセイフォンに多くの妻子がいることを受け入れられず、独身である自分との不条理に打ちひしがれた。セイフォンはボーイッシュな女性が好みで、男色疑惑はその妻たちの見た目が男性的だったことから広まった噂であった。ゼロスは、ふざけていると嘆きながらも現実を突きつけられていた。
標的になり得るジャーネ
レナは、セイフォンの好みが男性的な女性ならジャーネも守備範囲に入るのではないかとからかった。ジャーネは強く否定したが、見た目だけなら彼の好みに合う可能性があった。さらにゼロスが、ジャーネは女性的で可愛いと評したことで、ジャーネは羞恥のあまり動揺した。
ぬいぐるみの秘密
ジャーネは、部屋に大量のぬいぐるみを置いていることをゼロスに言い当てられた。イリスはそれを教会の子供たちの物だと思っていたが、実際にはジャーネが預けていた私物であった。ジャーネは見た目とのギャップを恥ずかしがり、可愛いと言われてさらに赤面した。
白馬の王子様への憧れ
レナは、ジャーネが料理上手で、今でも白馬に乗った王子様が迎えに来るような夢を見ていることまで暴露した。ジャーネは酔った時に口を滑らせていたことを知り、酒をやめようと考えた。イリスはその様子を見て、酒で自滅する恐ろしさを感じた。
恋愛症候群の兆し
ゼロスは、ジャーネやルーセリスを見ていると胸がざわつくと正直に語った。レナはそれを恋愛症候群だと指摘し、ジャーネやルーセリスとも相性がよいのだと説明した。ゼロスは船着き場で見た恋愛症候群の暴走を思い出し、自分も同じように迷惑な告白や奇行をしてしまう可能性に青ざめた。
胸への劣等感
イリスは、ルーセリスやジャーネの胸の大きさと自分を比べ、ゼロスも胸が基準なのかと感情的になった。ゼロスは無意識に、ないよりはあった方がいいと答えてしまい、イリスはさらに激しく反応した。一方、ジャーネはゼロスから意識されていると知り、恥ずかしげに彼を見ていた。
護衛配置の問題
話はようやく護衛の件へ戻った。ラーマフの森での実戦訓練では、学院生七人のパーティーに護衛一人が付く形式であり、傭兵側が護衛対象を自由に選べるわけではなかった。そのため、ゼロスたちが必ずツヴェイトの近くにいられるとは限らなかった。
三羽烏ならぬ三羽のコッコ
ゼロスは、万が一の時にはウーケイ、ザンケイ、センケイをツヴェイトの護衛につけるつもりだった。三羽は並の傭兵より遥かに強く、完全進化したコカトリスを上回るほどの存在になりつつあった。ただし戦いに夢中になって役目を忘れる危険もあり、見た目だけなら学院生の後ろをついていくニワトリでしかなかった。
格四百超えの脅威
ゼロスは、三羽の格が四百を超えたとさらりと告げ、イリスたちを驚かせた。三羽はゼロスとの組み手を重ね、【限界突破】まで取得して成長していた。ゼロスは意図せず、人類の天敵になりかねない凶悪な生物を育てていたのである。
姉への殺意
イリスたちは、ゼロスが人間を憎んでいるのかと冗談めかして問うた。ゼロスは、自分が憎むのは姉だけだと語り、もし彼女がこの世界にいたなら再び【殲滅者】に戻るだろうと暗い殺意を滲ませた。その圧迫感に、三人は背筋が寒くなった。
三人への護身具
ゼロスは、自分の都合で護衛依頼に付き合わせているため、イリス、ジャーネ、レナにも身を守るためのアミュレットと指輪を渡した。アミュレットは自動防御で障壁を展開し、指輪は居場所と緊急信号を伝える魔導具であった。三人はその価値に驚いたが、ゼロスは元手がただだから自由に使えばいいと気軽に渡した。
国宝級の無自覚
ゼロスに自覚はなかったが、渡したアミュレットは売れば二十年は遊んで暮らせるほどの価値を持つ魔導具であった。遺跡から発見される魔導具にも匹敵する品であり、装飾を施せば国宝級にもなり得た。イリスは素直に喜んだが、ジャーネとレナはその価値の高さに戸惑っていた。
自由日前日の不安
実戦訓練は明後日から始まるため、翌日は自由行動として旅の疲れを癒すことになった。イリスは街の散策を楽しみにし、レナも何かを企んでいる様子だった。ゼロスとジャーネは不安を感じたが、その不安は的中した。翌日、イリスは遊び気分で街へ出かけ、レナはひと時の愛を求めて街をさまよった。
男子学院生の離脱
実戦訓練当日、一部の低学年男子学院生が体調不良を理由にリタイアした。彼らは単位を落とすことになったが、なぜか幸せそうであり、足腰も立たないほどふらついていた。レナの肌が異様なほど艶やかだったことから、肉食獣は時と場所を選ばないことが示されていた。
大図書館へ向かうミスカ
クロイサスと別れたミスカは、大図書館へ向かった。大図書館は元々大聖堂として建てられかけたものの予算の都合で放置され、その後、学院生のための知識の場として改築された建物であった。ミスカは館内でツヴェイトとセレスティーナを見つけ、優雅に合流した。
ゼロスからの魔導具
ミスカは、ゼロスが二人のために用意したアミュレットと指輪を渡した。アミュレットは不意の攻撃を自動で防ぎ、指輪は居場所の把握と危機の通知に使えるものだった。ツヴェイトとセレスティーナは、短期間でこれほどの魔導具を用意したゼロスの技術に感嘆した。
黒ずくめの護衛
ミスカは、ゼロスが武器を搭載した二輪の魔導具を持ち、全身黒ずくめで邪神に仕える神官のような格好をしていたと伝えた。ツヴェイトとセレスティーナは、護衛に来たはずのゼロスが思い切り目立っているのではないかと困惑した。ミスカは、暗殺者を実験台と見るつもりではないかと語り、二人はあり得るだけに無言になった。
ニワトリへの疑問
さらにミスカは、ゼロスが予備戦力として凶暴なニワトリを連れてきていると伝えた。ツヴェイトとセレスティーナは、なぜ護衛にニワトリなのか理解できず、困惑するしかなかった。二人はまだウーケイたちの強さを知らず、その疑問を抱えたままラーマフの森での実戦訓練へ向かうことになった。
第八話 おっさん、ラーマフの森へ
ラーマフの森への行軍と白い悪魔の襲撃排除
一大キャラバンの出発
ラーマフの森へ向かう傭兵たちは、一度傭兵ギルドに集まり、そこから学院生を運ぶ馬車と合流していた。馬車は約四十両にもなり、農家や商人から借りたものを含む一大キャラバンとなっていた。大型馬車は食料を運び、学院生や傭兵たちは馬車移動と徒歩を交互に繰り返しながら目的地へ向かっていた。
実戦訓練の目的
学院生たちの馬車は二個小隊の騎士に守られており、騎士たちはベースキャンプの防衛も兼ねていた。森の内部では傭兵が護衛につき、素材の剥ぎ取り方や採取方法を教えることも訓練の一部であった。訓練自体は四日間だが、往復の移動を含めると十日ほどの日程であり、体を鍛えていない学院生にはかなり厳しい行程だった。
限界に近いクロイサス
クロイサスは二日間歩き続けたことで、すでに体力の限界に近づいていた。マカロフは鍛えておけと言っただろうと呆れたが、クロイサスは研究室にこもって研究ばかりしていたため、体力が人並み以下なのも当然だった。首席として強制参加させられていることにも不満を漏らし、望んでいない期待は押し付けだと考えていた。
強制参加の意味
成績優秀者を実戦訓練に参加させる理由は、技量を見せることで他の学院生のやる気を奮い起こさせるためであった。ただし実際にその施策が機能しているかは微妙であり、研究職志望の者にとってはつらいものだった。一方で、傭兵志願者にとって実戦訓練は予備兵役の緩和にも関わる重要な機会であった。
タフなセレスティーナ
マカロフは、前方を歩くセレスティーナが二日間ほとんど馬車に乗らず歩き続けていることに驚いていた。学院指定の防具とメイスを身につけているにもかかわらず、彼女は疲れをほとんど見せていなかった。クロイサスは妹の体力を羨ましげに見ており、兄としての面目は丸潰れであった。
セレスティーナたちの行動
セレスティーナは、ウルナやキャロスティーと行動を共にしていた。ウルナとセレスティーナは歩き続けていたが、体力のないキャロスティーは馬車で休んでいた。キャロスティーは錬金術や調薬の評価は高いものの、実戦講義を研究に当てていたため、単位不足を補うために参加せざるを得なかった。
ウルナが感じた強者の気配
ウルナは、セレスティーナから同年代の学院生よりも強い気配を感じ取っていた。さらに、護衛の中には強い気配が複数あり、そのうち一つは恐ろしいほど強いと話した。セレスティーナはそれをゼロスではないかと考えたが、もう一つの気配については分からなかった。
女性傭兵パーティーとの遭遇
ウルナが近づいてくる強い気配を指し示すと、そこにはイリス、ジャーネ、レナの女性傭兵パーティーがいた。三人は退屈そうに歩き、イリスはオークでも出てこないかと物騒なことを口にしていた。ジャーネとレナはそれをたしなめたが、三人とも疲れた様子はあまりなかった。
胸への敗北感
セレスティーナとキャロスティーは、ジャーネの胸の大きさに目を奪われ、同時に自分の胸を見て敗北感を覚えた。二人は、あの胸は広域魔法並みの破壊力だと感じ、イリスを見てわずかに自信を取り戻した。ウルナは戦うには邪魔ではないかと考えたが、セレスティーナとキャロスティーはジャーネの女子力まで見抜いていた。
イリスとの再会
イリスはセレスティーナを指さし、ゼロスの教え子ではないかと声をかけた。セレスティーナは失礼なことを考えていたのを見抜かれたのかと焦ったが、イリスは以前盗賊に捕まっていた時に見かけたことを思い出しただけだった。レナもその時の救出を思い出し、ゼロスとの縁が再びつながった。
ルーセリスとの縁
ジャーネは、ルーセリスと同じ養護院で育った幼馴染だと語った。セレスティーナはルーセリスを知っていたため、ジャーネたちとも思わぬ縁があることを知った。先ほどまでジャーネについてかなり失礼な感想を抱いていたため、セレスティーナは内心で強く焦っていた。
空から落ちる盗賊
セレスティーナがゼロスの所在を尋ねると、突然森の中から人影が高々と吹き飛び、回転しながら地面にめり込んだ。続けて別の人間も森から飛ばされ、女性陣は驚いた。イリスたちは状況から、ゼロスではなく三羽のコッコが動いているのだろうと察した。セレスティーナたちは、白い悪魔という言葉に困惑した。
意地を張るディーオ
一方、ツヴェイトは傭兵たちの馬車の後ろを歩いていた。傍らのディーオは杖をつき、遭難者のような足取りになっていたが、セレスティーナが歩いているのに自分だけ馬車に乗るわけにはいかないと意地を張っていた。ツヴェイトは、現地で動けなくなればむしろ恥ずかしいと諭し、ディーオは次で馬車に乗ることを決めた。
黒ずくめのゼロス
その時、ツヴェイトは全身黒ずくめのゼロスに声をかけられた。ゼロスは黒龍の皮膜のローブや黒鎧竜の防具、目元を隠すマスク、漆黒の魔法杖を身につけており、暗黒の司祭のような外見になっていた。ツヴェイトは一瞬誰か分からず、あまりに目立つ姿に驚いた。
威圧としての装備
ゼロスは、デルサシスの要請で手練れがいることを印象づけるためにこの格好をしていると説明した。襲撃者への牽制になる可能性があるからである。ツヴェイトは、父デルサシスが裏組織を根元から潰すつもりだと察し、ゼロスもデルサシスが裏で何をしているのか分からないと評した。
サムトロールの不在
ツヴェイトは、サムトロールたち血統主義者が参加しているはずなのに姿が見当たらないと話した。ゼロスは、襲撃者を手引きしているのではないかと見た。出発時には姿があったため、途中で離れて裏で動いている可能性が高かった。
護衛としてのコッコ
ツヴェイトが他の護衛について尋ねると、ゼロスは知り合いの傭兵三人と異常成長したコッコ三羽がいると答えた。ツヴェイトはワイルド・コッコが役に立つのか疑ったが、ゼロスは彼らが言葉を理解し、今いる傭兵たち全員を倒せるほど強いと説明した。さらに初めて見た時点で格が二百を超えていたと聞き、ツヴェイトは驚愕した。
拳で語り合う師弟
ツヴェイトが何をしたのか問い詰めると、ゼロスは煙草を吸いながら、毎日拳で語り合っているだけだと答えた。最近は良い拳を打つようになったと語り、翼の切れ味も鋭くなっていると続けた。ツヴェイトは、鳥に拳や翼の切れ味という表現が出てくること自体に混乱した。
断末魔の叫び
ゼロスは、目で見ようとせず感じろと告げ、愚か者たちの断末魔が聞こえないかと語った。直後、森から何かが天高く飛び上がり、回転しながら後方の列へ落下した。ゼロスは、盗賊が先行したコッコたちに発見され、殲滅されたのだろうと冷静に判断した。
目の前に落ちる盗賊
ツヴェイトがなおもコッコの異常性を問い詰めていると、ディーオが危ないと警告した。次の瞬間、盗賊らしき男がツヴェイトの目の前に落下し、地面に突き刺さった。男は死んではいなかったが、両腕両足は変な方向に曲がり、全身が腫れ上がっていた。ゼロスは、手加減がうまくなっていると満足そうに評価した。
盗賊の待ち伏せ
少し前、ラーマフの森手前の街道沿いでは、盗賊たちが学院生の通過を待ち構えていた。彼らは一週間前に懇意にしている貴族から、ある貴族の子息を殺せば他は好きにしてよいという依頼を受けていた。盗賊たちは、女子学院生を楽しみ、売り飛ばすつもりでやる気になっていた。
ウーケイの一撃
そこへウーケイ、ザンケイ、センケイが現れた。盗賊たちはワイルド・コッコを邪魔な鳥だと見て始末しようとしたが、直後にウーケイの一撃で一人が大木に叩きつけられて即死した。三羽は技を習得するための相手を探していたため、殺さず手加減する訓練をしていたが、強くなりすぎて加減が難しかった。
技の実験台
三羽は、どれだけ獲物を倒せるか競争することになり、盗賊たちを相手に惨劇を始めた。ウーケイは回転するような拳で盗賊を打ち上げ、ザンケイは無数の残像を残しながら武器や防具を解体し、センケイは姿を見せずに羽を手裏剣のように投げて仕留めた。盗賊たちは、普通ではないコッコたちに恐怖し、逃げようとしたが手遅れだった。
状態異常の恐怖
三羽の攻撃は単なる打撃や斬撃だけでなく、後遺症を残す状態異常が恐ろしかった。ウーケイは石化、ザンケイは猛毒、センケイは麻痺毒を伴う攻撃を使い、盗賊たちは死なずとも長く苦しむことになった。コカトリスの能力を獲得し始めているのか、その追加効果は強烈であり、盗賊たちは自分たちの悪行を一生後悔することになった。
血統主義派の遠見
盗賊の襲撃を依頼したサムトロールたち血統主義派は、離れた場所から【遠見】の血統魔法で様子を見ていた。盗賊たちがコッコに蹂躙される光景を目の当たりにし、サムトロールが運が悪かったと呟くと、周囲の者たちは運の問題ではないと一斉に突っ込んだ。彼らは、チョーカーをつけたコッコが誰かに育てられた護衛だと気付いた。
血統魔法の限界
血統魔法は旧時代の実験で生まれ、母体を介して子へ遺伝する特殊な魔法であった。だがその異質さのため、持ち主は他の魔法を覚えにくく、潜在意識領域の容量も少なかった。【遠見】も便利に見えて効果範囲は一キロ程度で、消費魔力も大きく、スキルで代替できるため使い勝手は悪かった。
孤立するサムトロール
サムトロールたちは、あのコッコがソリステア公爵の差し金ではないかと恐れた。さらに、もし大深緑地帯のコッコをテイムしたのなら、もっと強い存在がいるのではないかと怯えた。計画が失敗すれば自分たちも犯罪者になるため、周囲の血統主義者たちは責任をサムトロールに押し付けようとし始めた。
合流地点への移動
血統主義者たちは今さら後悔しながらも、後は刺客に任せるしかないと考えた。彼らは自分たちはまだ安全だと思い込み、予定通り刺客との合流地点へ向かうことにした。しかし、その場にブレマイトの姿はなかった。彼がどこへ消えたのか、誰も知らなかった。
第九話 おっさん、ラーマフの森に到着す
ラーマフの森の陣地設営と護衛配置の不運
ラーマフの森の性質
ラーマフの森はソリステア魔法王国の中央付近にある広大な森であり、多くの魔物が生息する場所であった。傭兵や学者が薬草、鉱石、魔物素材を集める稼ぎ場であり、騎士や魔導士の鍛錬の場としても知られていた。ゼロスは、ファーフランの大深緑地帯から流れる魔力がこの森で滞留している可能性を聞き、大深緑地帯の異常な生命力やマンドラゴラの繁殖力にも納得していた。
街道と魔導具の話
ゼロスは、スティーラまでの街道が広かったことを疑問に思い、ツヴェイトに尋ねた。ツヴェイトは、スティーラの先に国内最大級の要塞があり、兵や物資を運ぶために街道が広く整備されていると説明した。ゼロスは移動に使った魔導具について詳しく語るのを避け、人が乗って移動できる玩具だとぼかした。
未完成の大型玩具
ゼロスは、ハーリー・サンダース十三世に取り付けたサイドカーの性能に不安を抱いていた。魔導砲コンテナを付けたものの、まだ機能テストをしておらず、砲撃時に吹き飛ぶ可能性が残っていた。記憶にあるものを再現し、廃棄物をつなげただけでは危険だと反省しつつも、時間が足りなかったため改良しきれなかったのである。
兵役と傭兵の違い
ツヴェイトは、学院生たちがテント設営をしているのは戦争に備えた訓練でもあると説明した。魔導士には兵役義務があり、学院生も例外ではなかった。ゼロスは、実戦経験だけで軍と連携できるとは思えず、死にに行くようなものではないかと疑問を抱いた。傭兵にも一定ランクまでは戦争参加の義務があり、上位ランクになるとその義務が緩和される代わりに未熟な傭兵を鍛える役目が生じる仕組みだった。
テントへの警戒
ツヴェイトは、自前のテントがあるなら使った方がいいとゼロスに助言した。傭兵の中には泥棒や男色の者もおり、過去の実戦訓練ではテントに連れ込まれた者がいたからである。ゼロスは変態に襲われる可能性を警戒し、コッコたちもいるため自前のテントを使うことに決めた。
苦戦するセレスティーナたち
セレスティーナ、キャロスティー、ウルナは、テントの設営に苦戦していた。キャロスティーはキャンプ未経験であり、セレスティーナも以前の訓練では騎士が設営していたため組み立て方を知らなかった。ウルナは獣人らしく、テントを張るくらいなら地面で寝ればよいという大雑把な感覚であった。
ウルナの距離感
キャロスティーは、ウルナが自分を呼び捨てにする一方でセレスティーナを様付けすることに不満を抱いた。セレスティーナは、獣人族は恩人や強者に敬意を示すが、貴族の位にはあまり関心がないと説明した。ウルナがセレスティーナに様を付けるのは、虐めから助けられた恩義によるものであった。
様付けへの戸惑い
セレスティーナは、ウルナに様付けされることへ疎外感を覚えていた。彼女は気軽に話しかけられたいと考えており、あだ名で呼ばれることにも憧れていた。ウルナは様付け以外は自由奔放に接してくるため、セレスティーナは多少の不満を抱きつつも、友人ができたことを嬉しく思っていた。
黒ずくめのゼロス
テント設営中のセレスティーナは、黒ずくめで煙草をふかしながら歩くゼロスを見つけた。彼の姿は普段と大きく異なっていたため、セレスティーナは一目では気付けなかった。ゼロスは傭兵のテントエリアへ戻る途中であり、学院生と傭兵の設営場所が分けられていることを説明した。
危険な状況
セレスティーナは、この三日間ゼロスを見かけなかった理由を尋ねた。ゼロスは、先行して魔物を倒したり、コッコたちの鍛錬に付き合ったり、ツヴェイトの護衛をしていたと答えた。盗賊たちが貴族に雇われていたことから、相手は必ず動くだろうと見ていたのである。
血統魔法への評価
セレスティーナは、血統魔法がそれほど優れているのかとゼロスに尋ねた。ゼロスは、遺伝的に受け継がれた魔法は潜在意識領域を占有する割に効果は大したものではなく、強力な魔法も使いこなせるかは怪しいと語った。覚えられる魔法も限定され、高威力の魔法も使いづらいため、魔導士ではなく別の道を勧めると考えていた。
ゲーム世界への違和感
ゼロスは、血統魔法を継承する魔導士が反乱を起こす傾向に、【ソード・アンド・ソーサリス】での経験と重なるものを感じていた。ゲーム内で殴った血統魔導士の感触が現実と変わらなかったことを思い出し、あれは本当にNPCだったのかという疑問を抱いた。この世界とゲームの境界が分からなくなるような違和感が、彼の中に残っていた。
傭兵に聞ける盲点
ゼロスは、セレスティーナたちがテント設営に苦労していることに気付き、構造を見て手伝おうとした。セレスティーナは他の学院生に聞いてはいけない決まりを思い出して止めようとしたが、ゼロスは傭兵に聞いてはいけないとは言われていないと指摘した。そこでセレスティーナは、この訓練が傭兵との交流や連携を学ぶ意味も持つことを理解した。
確保された寝床
ゼロスは、旧式で部品数が多く、女子三人には重いテントの設営を手伝った。貴族の子と獣人族という組み合わせでは、こうした作業に向かないと見ていたからである。セレスティーナたちはようやく寝床を確保できた。一方で、ゼロスの自前のテントは投げると展開する型であり、苦労していた学院生たちから白い目で見られることになった。
実戦訓練前の朝食
翌朝、学院生たちはいよいよラーマフの森での実戦訓練に入ることになった。初めての実戦に緊張する者も多く、まずは朝食で英気を養う必要があった。馬車には調理器具を備えた屋台型のものがあり、傭兵ギルドが用意した料理人たちが食事を作っていた。
戦場のような厨房
ゼロスとイリスは、料理人たちの動きに注目した。彼らはコック姿でありながら軍人のように鍛えられ、大小の包丁やスパイス容器を装備していた。料理の現場はまるで戦場であり、料理人たちは腹をすかせた学院生や傭兵を敵に見立て、補給や援護のような言葉を交わしながら次々と料理を仕上げていた。
料理戦士たちの勝利
料理人たちは驚異的な手際で客の胃袋を満たしていった。香ばしい匂いに誘われたゼロスとイリスも列に並び、料理人たちの真剣勝負を見守った。一時間後、満腹で動けなくなった学院生や傭兵たちを前に、料理人たちはやり遂げた表情を浮かべ、すぐに昼食の下ごしらえへ取りかかった。
班編成のクジ引き
朝食後、学院生たちは班編成を行った。学院生は友人や同級生で気楽に班を組んだが、問題はゼロスたちの護衛配置だった。ツヴェイトの護衛担当を引き当てなければならなかったが、結果としてゼロスたちは誰もツヴェイトの護衛につけなかった。
外れた護衛配置
ゼロスは通常の学院生班を担当することになり、イリスとジャーネはツヴェイトではなくセレスティーナの方を担当することになった。レナはクロイサスの護衛担当になり、可愛い少年が大勢いるのにお預けを食らうと絶望した。ゼロスたちは護衛の目的を忘れていないかとレナを心配した。
コッコへの依頼
ゼロスは仕方なく、ウーケイたちにツヴェイトの護衛を頼むことにした。三羽は過剰戦力ではあるものの、相手が犯罪者なら問題ないと判断したのである。だが、ゼロスたち全員が護衛対象の近くにいられない状況は大きな不安要素だった。
前途多難な始まり
イリスは、森の奥へ行かないようにしてもらうしかないと考え、ジャーネも人の多い場所なら襲撃者は避けるだろうと見た。ゼロスは、その理屈が通じる相手ならよいが例外もあると警戒していた。護衛任務は開始時点から問題を抱え、四日間の実戦訓練は不安な幕開けとなった。
第十話 おっさん、少年達の護衛につく
護衛交代の不安と初めての実戦
コッコへの護衛依頼
ゼロスたちは予想通りツヴェイトの護衛につけず、担当は本命と関係のない学院生たちになった。ゼロスは、頼れる戦力がウーケイ、ザンケイ、センケイしかいないことを不安に思いながら、ツヴェイトのもとへ向かった。三羽は強者を求める好戦的な性質が強く、戦闘に熱中して護衛を忘れる可能性があったからである。
三羽を見たツヴェイトの反応
ゼロスはツヴェイトに悪い知らせとして、自分が護衛につけないことを伝え、代わりに三羽のコッコを護衛に置くと話した。ツヴェイトは、盗賊を殲滅した強さを知っていたため完全には否定しなかったが、見た目がニワトリであることに戸惑った。ゼロスは、三羽がそれぞれ【グラップラー・コッコ】【スラッシュ・コッコ】【スナイパー・コッコ】という別種のような存在であり、見た目に騙されると酷い目に遭うと説明した。
ディーオの受け入れ
ディーオは、コッコを連れて歩く姿をセレスティーナに見られたら笑われないかと心配した。しかし、ツヴェイトがセレスティーナならコッコを可愛いと言うかもしれないと話すと、ディーオはあっさり受け入れた。彼はセレスティーナの気を引けるなら悪にでもなるとまで言い、ゼロスはその無謀さに驚いた。
ディーオの恋の危険性
ツヴェイトは、ディーオが以前からセレスティーナにぞっこんであることをゼロスに明かした。ゼロスは、クレストンがそれを知らないはずがないと考え、ディーオが命を落としかねないと危ぶんだ。ツヴェイトも何度も止めようとしたが、ディーオの思いが本物であるため止めきれず、親友の行く末に苦しんでいた。
傭兵二人の反発
ゼロスがウーケイたちを護衛につけようとすると、ツヴェイトたちを担当する傭兵二人が怒って割り込んできた。彼らは自分たちを無視してコッコを護衛につけるのかと食ってかかったが、ゼロスは三羽の方が遥かに強いと言い切った。傭兵たちはコッコを最弱の魔物と侮り、ゼロスを脅した。
強者の洗礼
傭兵たちが傲慢に振る舞った瞬間、ウーケイたちは動いた。傭兵二人は一瞬で地面に叩き伏せられ、コッコたちの足元にひれ伏すことになった。ゼロスは、三羽は人間の言葉を理解しているため、舐めたことを言わない方がいいと忠告した。傭兵たちは青ざめ、以後ウーケイたちに逆らわなくなった。
ゼロスの担当班
ゼロスはウーケイ、ザンケイ、センケイにツヴェイトの護衛を任せ、自分はクジで決まった学院生のもとへ向かった。ツヴェイトはゼロスたちを一万の軍勢より頼りにしていると告げたが、ゼロスはプレッシャーを感じていた。傭兵として参加している以上、ギルドの決定に従わなければならず、護衛対象から外れたことは大きな問題だった。
生意気な貴族少年
ゼロスが護衛する学院生の中には、ゴージャスな装備をまとった貴族出身の少年がいた。少年は自分を馬鹿にしているのかと怒り、パンティスキー伯爵の長男カーブルノ・カシラ・パンティスキーだと名乗った。ゼロスとラーサスはその名前に思わず噴き出し、カーブルノは自分の名を変に解釈されたと察して怒りを募らせた。
親の権威への依存
カーブルノは、父の権威を使えば傭兵などどうにでもなると威張った。ゼロスは、自分の力ではなく親の権威に縋るから坊やなのだと指摘し、貴族の生まれというだけでは本人に責務も権威もないと突き放した。さらに、少しは立場を考えて発言や行動をしなければいつか死ぬと冷たく告げ、カーブルノに初めて殺意に近い恐怖を味わわせた。
森を進む学院生たち
学院生たちはゼロスとラーサスに護衛されながら森の奥へ進んだ。カーブルノが先頭に立っていたが、明確な目的や考えはなく、ただ歩き続けていた。周囲では魔法や剣戟の音が聞こえるものの、なぜか魔物に出くわさず、学院生たちの警戒心は次第に薄れていった。
レッサーオーガとの遭遇
魔物が出ないと不満を漏らした直後、ゼロスはオークではなくレッサーオーガが現れたと告げた。学院生たちは一斉に無理だと叫び、逃げ腰になった。レッサーオーガはオークやゴブリンより強く、未熟な魔導士では苦戦必至の魔物であり、ゼロスは三体のうち一体をラーサスに任せ、残り二体を自分で倒すことにした。
ラーサスの戦斧
ラーサスは戦斧を構えてレッサーオーガへ走り、棍棒の一撃を受け止めた。彼は力で押し返して隙を作り、鋭い一撃を急所へ叩き込んだ。重量武器を軽々と扱う膂力と、瞬時に急所を狙う技量を見せつけ、並の傭兵ではない実力を示した。
ゼロスの近接戦闘
ゼロスはレッサーオーガの横を風のようにすり抜け、頸動脈を斬り裂いて一体を仕留めた。三体目の棍棒も影のようにかわし、背後へ回り込んで左右から首にコンバットナイフを突き刺した。二人があっさりレッサーオーガを倒す姿を見て、学院生たちは強い憧れを抱いた。
素材と囮の利用
ゼロスとラーサスは、レッサーオーガから胆と皮を剥ぎ取り、使わない肉を囮にしてゴブリンやフォレストウルフを呼び寄せることにした。少年たちの鍛錬が目的であるため、ゼロスは開けた場所に【ガイア・コントロール】で土を集め、隠れて攻撃できるトーチカを作った。
常識外の防衛拠点
学院生たちは、ゼロスが魔法で防衛拠点を作ったことに驚いた。通常の地属性魔法で作る土壁は魔力拡散で崩れるはずだが、ゼロスの魔法は地面の土を利用して圧力で固定しているため、形状が維持されていた。少年たちはその原理を理解できず、ゼロスが一流の魔導士なのではないかと考え始めた。
カーブルノへの現実
ゼロスは、トーチカで休息しながら魔物を待ち伏せるのが無難だと判断した。だがカーブルノは自分がリーダーだと主張し、傲慢に反発した。ゼロスは、ここは安全な学院ではなく、独断専行すれば痛い目を見ると諭し、死ねばただの肉になるだけだと、レッサーオーガの死肉を啄む鳥を指して現実を突きつけた。
見捨てられる貴族
カーブルノは自分を他の者と一緒にするなと反論したが、その発言は周囲の侮蔑を招いた。ゼロスは、ここでは貴族という肩書に効力はなく、生きるか死ぬかだけだと告げた。仲間の足を引っ張る者は見捨てることも視野に入れるべきであり、カーブルノが勝手に危険へ飛び込んで死んでも、護衛側に責任はないと突き放した。
ゴブリンの接近
やがてラーサスがゴブリンの接近を知らせた。学院生たちは初めての実戦に緊張し、ゴブリンには素材価値もないと不満を漏らす者もいた。カーブルノは大物を狙うべきだと威勢よく語ったが、ゼロスは自分の力量を過信して他人を巻き込むのは無謀だと釘を刺した。
補助魔法の威力
ゴブリンが十匹現れると、ゼロスは【インテリジェンス・ブースト】を学院生たちにかけた。少年の一人が放った【ファイアーボール】は威力を大きく増し、ゴブリン二匹を焼き払った。学院生たちは自分たちの初歩魔法が強化されたことに驚いたが、ゼロスは驚いている暇はなく、魔法効果が続くうちに迎撃するよう促した。
初歩魔法での迎撃
学院生たちは、【アイス・ブリット】【ストーン・ブリット】【エア・カッター】などの初歩魔法をトーチカの中から放った。強化された魔法は襲いかかるゴブリンを各個撃破し、少年たちは実戦の中で攻撃を続けた。ゴブリンは森の奥から増援を出したため、学院生たちは気を休める暇もなく魔法を撃ち続けた。
中級魔法への制止
カーブルノは、自分にも補助魔法をかけない理由を問うた。ゼロスは、彼が中級魔法を使えば増幅後の威力が過剰になり、詠唱時間も長いため、その間にゴブリンが接近すると指摘した。魔導士は魔法の効力を熟知し、状況に応じて即座に使う魔法を選ばなければならないと教えた。
ゼロスの初級魔法
逃げようとするゴブリンを見つけたゼロスは、【ファイアー】を無造作に放ち、一瞬で消し炭にした。初級魔法であるはずの【ファイアー】がゴブリンを焼き尽くしたことで、学院生たちはゼロスとの力量差を思い知った。戦闘が片付くと、ゼロスは魔力が回復するまで待とうとし、ラーサスに茶を出すため、平然と湯を沸かし始めた。
驚愕で始まった訓練
学院生たちは、レッサーオーガ討伐、トーチカの構築、補助魔法による威力強化、初級魔法でゴブリンを消し炭にするゼロスの姿に圧倒された。実戦訓練は、彼らにとって魔物との戦いだけでなく、自分たちの常識を覆される経験として始まったのである。
第十一話 おっさん、またまたあの頃にリターンす
ラーマフの森の実戦訓練と地獄の夜戦
不安な護衛代行
ゼロスたちはツヴェイトの護衛担当から外れ、ツヴェイトの安全はウーケイ、ザンケイ、センケイに任せるしかなくなった。三羽は強者を求める好戦的な性質を持ち、戦闘に熱中して護衛を忘れる恐れがあったため、ゼロスは不安を抱えながらツヴェイトのもとへ向かった。
ニワトリに託された護衛
ゼロスはツヴェイトに、自分が護衛につけないことと、代わりに三羽を護衛にすることを伝えた。ツヴェイトは盗賊を殲滅した三羽の強さを知っていたため、見た目がニワトリであることに戸惑いながらも受け入れた。ゼロスは、三羽がそれぞれ【グラップラー・コッコ】【スラッシュ・コッコ】【スナイパー・コッコ】であり、見た目で侮ると酷い目に遭うと告げた。
ディーオの恋心
ディーオは、コッコを連れて歩く姿をセレスティーナに見られたら笑われるのではないかと気にした。だがツヴェイトが、セレスティーナならコッコを可愛いと言うかもしれないと話すと、ディーオは即座に受け入れた。彼はセレスティーナの気を引けるなら悪にでもなるとまで言い、ゼロスはその恋心の無謀さに驚いた。
丸焼きの未来
ツヴェイトは、ディーオが以前からセレスティーナにぞっこんであることをゼロスに打ち明けた。ゼロスは、クレストンがそれを知らないはずがなく、ディーオが本当に死ぬ可能性を危惧した。ツヴェイトも親友を止めようとしてきたが、ディーオの思いが本物であるため止めきれず、二人の脳裏には丸焼きにされるディーオの姿が浮かんでいた。
傭兵たちの反発
ゼロスが三羽をツヴェイトの護衛につけようとすると、担当傭兵の二人が割り込んできた。彼らは自分たちよりコッコが役に立つのかと怒ったが、ゼロスはその通りだと言い切った。傭兵たちはコッコを最弱の魔物だと侮り、ゼロスを脅した。
強者の洗礼
傭兵たちが傲慢に振る舞った瞬間、三羽は一瞬で彼らを地面に叩き伏せた。傭兵たちはコッコの足元にひれ伏し、ゼロスは三羽が人間の言葉を理解しているため、下手なことを言えば人知れず消えるかもしれないと忠告した。傭兵二人は青ざめ、それ以後三羽に逆らわなくなった。
ツヴェイトとの別れ
ゼロスは三羽にツヴェイトの護衛を任せ、戦いに夢中にならないよう言い聞かせた。ツヴェイトはゼロスたちを一万の軍勢より頼りにしていると告げたが、ゼロスはその期待を重く感じた。担当から外れた以上、ゼロスはギルドの決定に従い、別の学院生の護衛へ向かわなければならなかった。
カーブルノとの出会い
ゼロスが護衛する学院生の中には、派手な装備の貴族少年がいた。彼は自分を馬鹿にしているのかと怒り、パンティスキー伯爵家の長男カーブルノ・カシラ・パンティスキーと名乗った。ゼロスとラーサスは名前の響きに思わず噴き出し、カーブルノは変な解釈をされたと察して怒りを募らせた。
親の権威に縋る少年
カーブルノは父の権威を盾に傭兵を見下した。ゼロスは、自分の力ではなく親の権威に縋るから坊やなのだと指摘し、貴族の生まれというだけでは本人に何の責務も権威もないと突き放した。さらに、少しは立場を考えて発言しなければいつか死ぬと冷たく告げ、カーブルノに初めて殺意のような恐怖を味わわせた。
森の奥へ進む少年たち
ゼロスとラーサスに護衛された学院生たちは、森の奥へ進んだ。先頭に立つカーブルノには明確な目的もなく、ただ歩き続けるだけだった。周囲から魔法や剣戟の音が聞こえる一方で魔物に出くわさず、学院生たちは次第に警戒心を薄れさせていった。
レッサーオーガの出現
魔物が出ないと少年たちが不満を漏らしたところに、レッサーオーガ三体が現れた。学院生たちは一斉に無理だと叫んで逃げ腰になった。ゼロスは一体をラーサスに任せ、残り二体を自分が倒すことにした。
ラーサスの力
ラーサスは戦斧を構え、レッサーオーガの棍棒を受け止めた。彼は力で押し返して隙を作り、急所へ鋭い一撃を叩き込んだ。重量武器を軽々と扱う力と、急所を逃さない技量により、ラーサスが並の傭兵ではないことが示された。
ゼロスの斬撃
ゼロスはレッサーオーガの横を風のようにすり抜け、首の頸動脈を斬り裂いた。さらに別の個体の棍棒を影のようにかわし、背後から首へコンバットナイフを突き刺した。二人の無駄のない戦いは、少年たちに強さへの憧れを刻みつけた。
素材回収と囮作戦
ゼロスとラーサスは、レッサーオーガから胆と皮を回収し、不要な肉を囮にしてゴブリンやフォレストウルフを誘うことにした。少年たちの鍛錬を目的とし、ゼロスは【ガイア・コントロール】で地面の土を操り、近くの開けた場所にトーチカを作った。
常識外れの土魔法
学院生たちは、ゼロスが魔法で防衛拠点を作ったことに驚いた。通常の地属性魔法で作った土壁は魔力拡散で崩れるはずだが、ゼロスは地面の土を圧力で固定していたため、形状が維持されていた。少年たちは原理を理解できず、彼が一流の魔導士ではないかと考え始めた。
貴族の肩書が通じない場所
カーブルノは自分がリーダーだと主張して反発したが、ゼロスはここが安全な学院ではないと諭した。独断専行すれば死に、死ねば肉になるだけだと、レッサーオーガの死肉を啄む鳥を示して現実を突きつけた。それでもカーブルノが自分は貴族だと威張ったため、周囲の視線は侮蔑に変わった。
見捨てられる覚悟
ゼロスは、ここでは貴族という肩書に意味はなく、生きるか死ぬかだけだと告げた。仲間の足を引っ張る者は見捨てることもあると話し、勝手に危険へ飛び込んだ者の死に護衛は責任を負わないと突き放した。カーブルノは、自分の行動次第では置き去りにされると知り、言葉に詰まった。
ゴブリンとの初戦
やがてラーサスがゴブリンの接近を知らせた。初めて魔物と戦う少年たちは緊張していたが、ゼロスは十匹ならちょうどよいと見て【インテリジェンス・ブースト】をかけた。少年の一人が放った【ファイアーボール】は威力を増し、ゴブリン二匹を焼き払った。
強化された初歩魔法
少年たちは、驚きながらも【アイス・ブリット】【ストーン・ブリット】【エア・カッター】を放ち、トーチカの中からゴブリンを迎撃した。補助魔法の効果で初歩魔法の威力は大きく上がり、襲いかかるゴブリンを次々と倒していった。だが森の奥から増援が現れ、彼らは気を休める暇なく攻撃を続けることになった。
中級魔法への釘刺し
カーブルノは自分にも補助魔法をかけない理由を問うた。ゼロスは、彼が中級魔法を使えば威力が過剰になり、詠唱時間の長さからゴブリンに接近される危険があると指摘した。魔導士は魔法の威力だけでなく、状況に応じて即座に使う魔法を選ぶべきだと教えた。
初級魔法の格差
逃げようとしたゴブリンを見つけたゼロスは、無造作に【ファイアー】を放ち、一瞬で消し炭にした。初級魔法であるはずの【ファイアー】がその威力を持つことに、少年たちは力量差を思い知った。戦闘後、ゼロスは茶の準備を始め、ラーサスもそれを受け入れた。
セレスティーナたちの森歩き
同じ頃、セレスティーナたちはイリスとジャーネに護衛されながら森の奥へ進んでいた。目的はウルナとキャロスティーの格上げであったが、魔導士三人、獣人一人、剣士一人という構成で、回復役がいない不安定なパーティーだった。索敵面ではウルナに頼る必要があり、戦闘のバランスはよくなかった。
殲滅者への評価
イリスはゼロスが五人いた【殲滅者】の一人だと語った。大量繁殖したオークや龍王級のドラゴン、ベヒーモス、殺し屋たちを殲滅した話を聞き、キャロスティーは危険人物だと反発した。イリスは、彼らが独自に魔法や魔導具を作り、弱者には親切だったことに憧れていると語ったが、ジャーネはそれがフォローになっていないと感じていた。
自由への憧れ
イリスは、【殲滅者】たちが他人の中傷を気にせず、自分たちの思うままに自由に生きていたことが格好よかったと話した。ウルナは強いことは正義だと共感したが、キャロスティーやジャーネには理解しがたい話だった。セレスティーナも、師であるゼロスの有能さを認めつつ、その非常識な行動をどう受け止めるべきか迷っていた。
クラッシャー・ラビットとの遭遇
ウルナが獣の匂いを感じ取り、キャロスティーは格上げの好機だと意気込んだ。だが茂みから現れたのは、白くモコモコした体毛に覆われた巨大なウサギだった。セレスティーナたちは可愛らしさに気を取られたが、ウルナだけは美味しそうだと見ていた。
可愛い悪魔の突進
巨大ウサギは愛らしく跳ねていたが、突然高速回転しながらセレスティーナたちへ突っ込んできた。全員は辛うじて避けたが、ウサギは大木に激突し、その木を倒すほどの威力を見せた。イリスは、その魔物が武器破壊効果と暴食スキルを持つ【クラッシャー・ラビット】だと思い出した。
弱点を突いた音魔法
イリスは、クラッシャー・ラビットがファイアーグリズリーと同等の強さを持ち、耳が良く大きな音に弱いと説明した。セレスティーナは【サウンド・ボム】を使い、森に大音響を響かせた。その効果でクラッシャー・ラビットはふらつき、イリスは【シャドウ・バインド】で動きを封じた。
連携攻撃
キャロスティーは【アイス・ランス】を撃ち込み、ウルナは【闘獣化】で肉薄した。イリスは【パワーブースト】【ウィンド・エンチャント】【インテリジェンス・ブースト】を重ね、ウルナの打撃とキャロスティーの魔法を強化した。攻撃は厚い外皮を貫き、凍傷の追加効果で確実にダメージを蓄積させていった。
ウルナの危機
クラッシャー・ラビットは体毛を逆立て、イリスの拘束魔法を振りほどいた。ウルナは【闘獣化】の魔力消費で動きが鈍り、前足の爪を振り下ろされそうになった。ジャーネが咄嗟に間に入り剣で受け止めたが、勢いを殺しきれずウルナごと吹き飛ばされた。
決定打への時間稼ぎ
イリスは【スタン・ブリット】でクラッシャー・ラビットを麻痺させ、キャロスティーが大きな魔法を詠唱する時間を稼いだ。キャロスティーは【アイス・ストーム】を放ち、イリスの補助効果で威力を高め、クラッシャー・ラビットを風の刃で切り裂きながら全身を凍らせた。
セレスティーナの止め
クラッシャー・ラビットは氷を砕き、なおも動こうとした。ジャーネが不吉な言い方をしてしまい、イリスはそれを死亡フラグだと指摘した。最後にセレスティーナが駆けつけ、メイスで殴りつけて止めを刺した。クラッシャー・ラビットは倒れ、動かなくなった。
格上げの副作用
戦闘後、ウルナとキャロスティーは倦怠感と眩暈で座り込んだ。格が大きく上がったことによる副作用であり、今日はこれ以上の戦闘は難しい状態だった。ジャーネも格が上がったが、二人ほどではなかった。キャロスティーは嬉しさと残念さを同時に感じ、ウルナは魔力切れに苦しんだ。
回収班への連絡
大物を倒したものの、動けるのはセレスティーナ、イリス、ジャーネだけであり、クラッシャー・ラビットを運ぶ方法が問題になった。セレスティーナは発煙筒で回収班を呼ぶことにしたが、使い方が分からなかった。イリスが火を点けたものの、すぐに煙に包まれてしまい、使ったらすぐ投げるべきものだと学んだ。
イリスへの驚き
セレスティーナとキャロスティーは、イリスが同い年でありながら魔法の多重展開を無詠唱でこなすことに驚いた。彼女の実力は学院の成績上位者を大きく上回っており、セレスティーナはゼロスの知り合いである魔導士も規格外なのだと感じた。一行は回収班が来るまで、魔物の接近を警戒して待つことになった。
クロイサスの採取優先
別の場所では、クロイサスが【ファイアーボール】で【アーマー・ボア】を倒していた。彼は獲物を一瞥しただけで、すぐに薬草探しへ移った。魔物の解体はできないため、空いた時間を素材採取に使うべきだと考えており、格上げによる倦怠感があっても研究素材を探し続けた。
毒草と沈黙
クロイサスは【デッドリリー】という毒草を見つけ、根や茎に猛毒があると説明した。マカロフは完全犯罪に使えそうだと評したが、クロイサスは症状が目立つためすぐ毒が分かると返した。マカロフは実験に人を使っていないか問い詰めたが、クロイサスは答えず、薬草採取を優先した。
暗いレナ
マカロフは、護衛についているレナがほとんど無言で不気味な独り言を漏らしていることを気にした。レナは、可愛い少年たちがゼロスの護衛対象になり、自分だけ男ばかりの班になったことを嘆き、神は自分の愛を阻む悪魔だと恨めしく呟いていた。普段とは程遠い暗い情念に囚われた姿は、不気味そのものだった。
ヴェノムラプターの群れ
ツヴェイトたちは、森の奥で【ヴェノムラプター】の群れと戦っていた。ヴェノムラプターは紫色の鱗を持つ二足歩行の恐竜のような魔物で、素早く狡猾なため魔導士とは相性が悪かった。魔法を避け、鳴き声に反応して陣形を整える群れに、学院生たちは翻弄されていた。
親玉への指示
ツヴェイトは、どこかに指示を出す親玉がいると判断し、ウーケイたちにその親玉を探して倒すよう頼んだ。三羽は了承し、木の枝へ飛び移りながら森の奥へ消えた。ツヴェイトは残った学院生たちに密集陣形を取らせ、魔力を温存しつつ近接戦闘で粘るよう指示した。
密集陣形の粘り
ツヴェイトたちは、近接戦闘の訓練を受けていたため、未熟ながらも互いを守りながら戦った。ヴェノムラプターの群れは多く、長期戦になれば不利だったが、彼らは持ち場を守って代わる代わる攻撃を加えた。魔導士でありながら半ば傭兵のように戦い、近接戦闘の重要性を肌で感じていた。
三羽が倒した親玉
森の奥から突然、巨大な肉食魔獣【ヴェノムポイス】が空へ吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。さらに別の個体は斬り裂かれて出血し、もう一体は麻痺して倒れた。親玉が三匹もいたことに学院生たちは青ざめたが、三羽のコッコが全て倒したことで、ヴェノムラプターの群れは統制を失った。
反撃と撤収
親玉を失ったヴェノムラプターは混乱し、弱い個体は逃げ、好戦的な個体はツヴェイトたちに返り討ちにされた。戦闘はほどなく終わり、ツヴェイトたちは格上げによる倦怠感もあったため、これ以上進まず回収班を呼んで撤収することにした。傭兵二人は、学院生の集団戦と三羽の強さを見せつけられ、自分たちの存在意義に虚しさを感じていた。
魔物に囲まれた少年班
一方、ゼロスが護衛する少年班は、トーチカから魔物を狙い撃ちにし続けて格上げしていたが、血の匂いに誘われた魔物が集まりすぎ、帰れない状況になっていた。魔力が尽きれば休み、回復するとまた攻撃する繰り返しで、周囲には魔物が溢れていた。カーブルノは、このままでは食事にも戻れないと不満を爆発させた。
目覚めた獣
ゼロスは、一日食事を抜いても死なず、戦場で孤立した時の訓練だと冷たく告げた。カーブルノが穴倉で一晩過ごすなど考えられないと騒ぐと、ゼロスはその甘さを笑い、本当の弱肉強食を知るべきだと言い放った。森という過酷な環境は、ゼロスの中に眠る戦士としての本能を呼び戻した。
地獄の開始
ゼロスはマスクを外し、邪悪な笑みを浮かべながら、少年たちに地獄を見せると宣言した。泣き言も弱音も諦めも許さず、最後まで戦って生き延びろと告げたのである。少年たちは青ざめ、これが始まりだと悟った。その日、少年班は野営地に戻れず、一晩中戦い続けることになった。
空しく響く救援の声
少年たちは助けを求めて叫んだが、その声はラーマフの森に空しく響いた。ラーサスは危険な時だけ助けに入り、基本的には見守るだけだった。こうして少年たちは、覚醒したゼロスに背後から監視されながら、地獄の戦いへ身を投じた。
第十二話 おっさん、少年達に自然の恐ろしさを伝える
格上げ症と少年達の変貌
動けないツヴェイトの仲間達
実戦訓練二日目、ツヴェイトの仲間達はディーオを含め、前日に倒したヴェノムラプターの影響で格上げ症に苦しんでいた。元気なのはツヴェイトだけであり、仲間達は激しい倦怠感のため実戦訓練に出られなかった。ディーオは明日には楽になると謝ったが、ツヴェイトは今日一日は休ませるしかないと判断した。
格上げ症の仕組み
格上げは、強い魔物を倒すことで魂や肉体、技能が強化される現象と考えられていた。だが、格の低い者が強者を倒したり、多くの魔物を倒したりすると、肉体が急激な変化に適応できず、倦怠感、関節痛、頭痛、吐き気、麻痺などを起こすことがあった。この症状は格上げ症と呼ばれ、強くなるための過程である一方、戦場では無防備になる危険な状態でもあった。
暇になったツヴェイト
仲間全員が動けなくなったため、ツヴェイトは一日空いてしまった。彼は戦闘経験を積み、仲間との連携を実戦で試すつもりで参加していたため、何もできない状況に居心地の悪さを覚えた。そこで同じように暇になっているだろうセレスティーナのもとへ向かうことにした。
有名になったコッコ達
ツヴェイトが野営地を歩くと、三羽のコッコも後をついてきた。前日に暴れた三羽の噂はすでに広まっており、周囲からは恐れを含んだ視線が向けられていた。コッコ達は知らないうちに野営地で有名な存在になっていた。
震えながら調合するクロイサス
セレスティーナのテント付近では、クロイサスがマカロフと共に魔法薬の調合をしていた。クロイサスは格上げ症で体が震えていたが、良い素材が手に入ったため寝ていられないと調合を続けていた。ツヴェイトとマカロフは、そんな状態で成功するはずがないと止めようとしたが、クロイサスに研究をやめる選択肢はなかった。
危険な調合ミス
クロイサスは毒草の毒を中和して薬効成分の高い素材にしようとしていたが、魔石の粉末と間違えて火花草の根を入れてしまった。その結果、薬品から刺激臭が広がり、マカロフをはじめ周囲の学院生や傭兵が巻き込まれた。ツヴェイトは風上へ逃げて難を逃れたが、クロイサスの危険な実験にひどい目に遭わされた。
マカロフの名前を覚えない兄妹
ツヴェイトはセレスティーナのテント近くへ逃げ、クロイサスの危険な調合について話した。セレスティーナはマカロフの名前を正しく覚えておらず、ツヴェイトも別の名前で呼んでいた。二人は相変わらずマカロフの名前を覚えていないままだった。
戻らないゼロス
セレスティーナは、ゼロスが野営地に昨日から戻っていないことをイリスから聞いたと話した。レナも、ゼロスが護衛していた少年達が戻らないことを気にしていた。ツヴェイトとセレスティーナは、ゼロスが森に入ると野性が表に出ることを知っており、彼が後輩達に現実を叩き込んでいるのではないかと考えた。
イリスの実力への衝撃
セレスティーナは、クラッシャー・ラビットとの戦いでイリスの実力を見たことをツヴェイトに話した。イリスは同年代でありながら魔法の多重展開と無詠唱を使いこなし、宮廷魔導士並みかそれ以上の力を持っていた。ツヴェイトは、ゼロスの知り合いであるイリスも規格外だと感じ、師と同類ではないかと考えた。
増えすぎた護衛
セレスティーナは、一パーティーにつく護衛は一人のはずなのに、自分達には二人以上の傭兵がついていることを不思議に思った。ツヴェイトは、サムトロールたちが消えたことや、過保護な貴族の親が別口で護衛依頼を出したことにより、傭兵の数が余ったのだと説明した。学院は派閥上層部の魔法貴族に逆らえず、毎年のように赤字を抱えている状況だった。
元気なウルナ
ツヴェイトは、クラッシャー・ラビットを倒したはずのウルナが元気なことに驚いた。セレスティーナは、獣人族は環境適応が早いため、すでに肉体の最適化が終わったのではないかと話した。ウルナはウーケイと組み手をしており、その背後ではクロイサスの実験に巻き込まれた者達が倒れていた。
森から戻る少年達
ゼロスに連れられた少年達は、疲れ切った体を引きずりながら野営地へ戻ってきた。彼らは一晩中魔物と戦い続け、精も根も尽き果てていたが、目つきは獰猛な獣のように変わっていた。わずかな物音にも反応して戦闘陣形を取るほど警戒心が鋭くなり、昨日までの少年らしさは消えていた。
戦士へ変わった少年達
ゼロスは、少年達が現実を知り、戦士として覚醒したと満足していた。ラーサスは、彼らの姿が子供には見えず危険ではないかと疑ったが、ゼロスは教育だと答えた。少年達は、弱いなら戦い、生き延びてこそ強くなれるという過酷な価値観を身につけていた。
カーブルノの変貌
カーブルノの世話係であるズロースは、無事に戻った彼に泣きながら駆け寄った。カーブルノは自分が愚かだったと認め、伯爵家の地位に慢心していたことを悔いた。彼はパンティスキー家を歴史に名が残る名家にすると決意し、父を近いうちに隠居させ、領内の腐敗を改革すると宣言した。
怪しいズロース
ズロースは、成長したカーブルノの姿に感激し、どこか怪しい反応を見せていた。ゼロスとラーサスは、その様子に関わると碌な目に遭わないと判断した。周囲の講師や同年代の少年達も、地獄から帰還した少年達の迫力に言葉を失い、迂闊に声をかけられなかった。
レナの抗議
レナは、変わり果てた少年達を見てゼロスに詰め寄った。彼女は、自分の可愛い少年達を死線から生き延びた戦士のように変えたことを責めた。ゼロスは、彼らが死と隣り合わせの世界から生還しただけだと答え、強くなることが訓練の目的だと主張した。
一晩中の地獄
ゼロスは、少年達が魔物の群れに囲まれたトーチカの中で、魔力が尽きても杖で殴りながら戦い続けたことを語った。少年達は助けを求めたが、ゼロスとラーサスは本当に危険な時以外は手を出さなかった。彼らは生き延びるために魔物を倒し、武器を奪い、連携を覚え、精神と肉体を極限まで追い込まれていった。
純粋さを壊した教育
レナは、ゼロスが少年達の純朴な心を壊し、凶悪な戦士に洗脳したと叫んだ。ゼロスは、世界は優しくなく、生きるか死ぬかの現実を早く知る方がよいと返した。ソリステア魔法王国は危険地帯に接しているため、強くならなければ有事に生き残れないというのがゼロスの考えだった。
過激化する少年達
少年達は、平穏を守るためには脅威を殺すしかないと語り、敵は魔物でも人でも区別しないという過激な思想へ傾き始めていた。ゼロスは、魔物相手の生存術を教えたつもりだったが、少年達が武闘派組織のような方向へ進んでいることに気付き、やり過ぎたかもしれないと感じた。
同族嫌悪の視線
ゼロスは、カーブルノに熱を上げるズロースが気になった。レナは、ズロースに自分と同じ匂いを感じるが認めたくないと語った。ゼロスは、少年を狙う点ではレナもズロースも同じだと考えたが、レナは同性を対象とするズロースと一緒にされることを不本意に感じていた。
止まらない誓い
ゼロスは徹夜明けで眠いため、少年達を元に戻してほしいというレナの要求を断った。少年達は、一人は皆のために、皆は一人のためにと誓いを立てており、優秀な人材になるか、過激思想へ進むかは彼ら次第となっていた。ズロースがカーブルノに向けて奇妙な叫びを上げる中、ゼロスは嫌なものを忘れるようにその場を去り、食事を済ませてから自分のテントで爆睡した。
第十三話 おっさん、仕事を忘れ趣味に没頭す
邪香水の罠と採掘に夢中なゼロス
森に潜む血統主義派
血統主義派の青少年達は、ラーマフの森へ向かう途中で道を外れ、学院の野営地とは反対側に拠点を作っていた。彼らは【ヒュドラ】の暗殺者を手引きする役目だったが、食料や野営道具をろくに持ち込んでおらず、計画性のなさが露呈していた。彼らが深く考えずサムトロールに従っていたのは、ブレマイトの魔法による暗示がまだ効いていたためであった。
派手な暗殺者たち
合流地点に現れたのは、黒いイブニングドレスのシャランラ、鎧姿のラインハルト、桃色の東方衣装を着た名無しの少女だった。三人は暗殺者とは思えないほど派手な姿で、血統主義派の面々は不安を覚えた。しかしシャランラは、自分たちは彼らを皆殺しにできるほど強いと笑い、場の主導権を握った。
無計画を見抜かれたサムトロール
シャランラは、標的であるツヴェイトの護衛体制を尋ねた。だがサムトロール達は言葉を詰まらせ、護衛は傭兵二人だけだが、周囲に恐ろしく強いワイルド・コッコがいると説明した。ラインハルトは彼らがニワトリに勝てないのかと呆れたが、血統主義派の面々は、あれは普通のコッコではなく異常な化け物だと口々に訴えた。
時封じの宝珠が映した惨劇
サムトロールは【時封じの宝珠】を使い、三羽のコッコが盗賊達を殲滅した光景を投影した。映像では、三羽が圧倒的な速度と多彩な技で盗賊を次々と倒していた。シャランラとラインハルトは、その強さがワイルド・コッコの範疇を超えていることを認め、隠密遠距離、打撃、剣技が揃った厄介な敵だと判断した。
孤立させる策
シャランラは、コッコ達を正面から相手にするのではなく、標的を孤立させるしかないと判断した。標的自体はサムトロール達と同程度の強さだと見て、一撃で仕留めればよいと考えた。ラインハルトも、時間を稼げれば楽勝だと受け止めたが、コッコの飼い主が近くにいる可能性があり、不確定要素は多かった。
欲を出すサムトロール
サムトロールは、ツヴェイト以外の者も窮地に陥れ、自分達が救出することで評価を高めたいと要求した。シャランラは、そんなに上手くいくのかと疑問を呈し、自分でやればいいと突き放した。サムトロールは怒鳴ったが、シャランラは彼に何の義理もなく、ここで殺しても問題ないと冷たく告げた。サムトロールは、自分がすでに手遅れの状況にいることを理解していなかった。
眠りから覚めたゼロス
一方、ゼロスは徹夜の疲れから長く眠り、翌朝ようやく起きた。少年魔導士達は前日の地獄の戦闘で動けなくなっており、ゼロスは手が空いたことでツヴェイトの護衛に回れるかもしれないと考えた。ツヴェイトは、ゼロスが少年達を鍛え直したのは護衛につくためだったのかと疑ったが、ゼロスは生意気な少年に身の程を教えただけだと答えた。
襲撃の可能性
ツヴェイトは、一度襲撃が失敗しているなら相手は引くのではないかと考えた。ゼロスは、実戦訓練中に動くなら今日か明日であり、野営地を襲うのは自殺行為であるため、裏の人間なら今日動く可能性が高いと見た。学院や寮は人目が多く、警報用の魔導具も仕込まれているため、暗殺場所としては森の方が成功率が高かった。
救難信号と殲滅宣言
ゼロスは、危険に遭遇したら指輪の魔力を解放して救難信号を出すようツヴェイトに伝えた。逃げられないなら時間稼ぎに集中し、後は自分が始末をつけると冷たく語った。ゼロスは悪党を生きて帰す気がなく、かつて使用した厄介な魔導具を試すことも考えていた。
呪われた試作品
ゼロスは、捕縛した相手に身体能力を大幅に上げる魔導具を装備させ、戦い続けると封じられた魔法が発動して自爆する仕組みの試作品を使うことを考えていた。その魔導具は魔物を引き寄せ、着脱も不可能であり、昔仲間と面白半分で作った玩具だった。ツヴェイトは、それが呪われた装備ではないかと引き、ゼロスが楽しそうに話すことに恐怖した。
戻りつつある殲滅者
ゼロスは、相手を殺さず無力化し、回復させたうえで試作品を装備させることまで考えていた。ツヴェイトは、ゼロスが襲撃者を待ち望んでいるのではないかと指摘した。ゼロスは否定しきれず、内心では襲撃者を待っている自分に気付いていた。彼は【あの頃】の【殲滅者】へ戻りつつあった。
学院の実戦訓練の歪み
ツヴェイト達は再び森へ入った。学院では、成績優秀者と劣等生が実戦訓練へ参加するが、講師陣の多くは元中間成績クラスであり、上位生徒を十分に教えられない事情があった。派閥や貴族からの要請に挟まれた結果、学院は傭兵を雇って護衛させれば大丈夫という無難な方針に逃げており、学生の安全は傭兵ギルドへ丸投げされていた。
血統主義派への嫌悪
ツヴェイトは、サムトロールが何をするか分からないと警戒していた。血統主義派は遺伝的に固有魔法を使えるだけでエリート意識が強く、実際に成果を出した血統魔導士の功績まで自分達のもののように扱っていた。努力して成功した者達は彼らから距離を置いていたが、勝手に名を利用され、苦情を出す者もいた。
反乱を繰り返す血統魔導士
ツヴェイト達は、血統魔法の起源や血統主義派の妄信について話した。古い文献では旧魔法文明は民主国家だったとされるが、血統主義派はそれを認めず、旧時代の貴族の血統だと主張していた。さらに四神の一柱が血統魔法の使い手へ神託を与えたことが増長の原因となり、血統魔導士による反乱が百年に一度の割合で起きてきたのだった。
甘い匂いへの違和感
会話中、ディーオが風に乗る甘い匂いに気付いた。仲間達は匂いくらいで神経質になるなと軽く見たが、ツヴェイトは以前ゼロスから聞いた知識を思い出した。甘い香りには獲物を引き寄せたり、魅了したりする効果があるものが多く、マンイーター系の魔物が関わる可能性があった。
邪香水の危険
ツヴェイトは、甘い匂いが【邪香水】かもしれないと判断した。【邪香水】は【リリス・マンイーター】の花弁から作られ、ほとんどの魔物を強力に引き寄せ、興奮状態にする危険な魔法薬だった。無断使用は大罪であり、各国で厳重に管理されている代物であった。ツヴェイト達は、その場から急いで逃げることにした。
結界に閉じ込められたツヴェイト
仲間達が走り出す中、ツヴェイトだけは突然体が重くなり、前のめりに倒れた。ディーオが振り返ると、白い靄のような結界がツヴェイトを隔てていた。ツヴェイトは、自分の周囲に結界があるなら逆に安全でもあると考え、ディーオには魔物が迫っているから逃げろと命じた。ディーオは必ず助けに戻ると告げ、苦渋の思いでその場を離れた。
発動した指輪
ディーオが離れた後、ツヴェイトはゼロスから渡された指輪の魔力を解放した。これにより自分の居場所がゼロスに伝わるはずだった。ツヴェイトは背中に何かが乗ったような重みを感じ、振り返ると、薄く透明だったものが次第に色を持ち、東方風の衣装を着た少女の姿になった。
忍法子泣き爺
ツヴェイトの背に乗っていた少女は、無言の後、忍法子泣き爺と名乗るようなことを言った。ツヴェイトは、駄目かと言われても意味が分からず、妙な空気に困惑した。ゼロスから渡されたアミュレットは、起動していなければ効果を発揮できないため、ツヴェイトは奇襲を許していたが、それ以上にこの不可解な状況をどうにかしたいと思っていた。
迷子になったゼロス
その少し前、ゼロスはツヴェイト達の後ろを歩いていたはずが、薬草を採取しているうちに迷っていた。辺りには岩場があり、自分の位置も分からない状態だった。指輪の効力が解放されなければマスクで位置を特定できないため、ゼロスはどうするか考えていた。
鉱石の発見
ゼロスは岩場で光る鉱石を見つけ、ツルハシを取り出して採掘を始めた。掘り出した鉱石には【マナダイト鉱石】や【フレア・サファイア】があり、魔導具や魔宝石の材料として利用できるものだった。生産職としての血が騒いだゼロスは、ツルハシを振るう速度を上げ、岩場を削岩機のように掘り進めた。
採掘に沈む意識
ゼロスは、鉄鉱石のほか、宝石や【マナ結晶】などの希少鉱物を見つけた。マナ結晶を【精霊水】に浸して圧縮すれば【人工精霊結晶】ができ、【エーテル培養液】にも使えると考えた。さらにカエデの髪から精霊因子を抽出するためには天然の精霊結晶が必要だと判断し、素材集めへの意欲を強めた。
迫る魔の手に気付かず
ゼロスは、素材は多い方がよいと上機嫌になり、アニメソングを大熱唱しながら採掘を続けた。傭兵ギルドに報告すべき発見であることも気にせず、密かに企んでいた嫌がらせ計画に必要な素材集めへ没頭した。採掘に夢中になったゼロスは、ツヴェイトに魔の手が迫っていることに気付いていなかった。
短編 夢追う子供達
孤児達の夢とコッコ修行の始まり
地下物置の相談
古い教会の地下にある物置で、ジョニー、ラディ、アンジェ、カイ、カエデの五人が今後について話し合っていた。ジョニーは、仕事で小遣いも貯まってきたため、そろそろ次の段階に進みたいと語った。彼らは傭兵になる夢を抱いていたが、剣術以外の戦い方や魔法を学ぶ必要があると考えていた。
傭兵になるための不足
ラディやアンジェ、カイは、装備を整えても実力がなければ傭兵として上には行けないと考えていた。彼らにできることは財布をスる程度であり、戦闘技術はカエデから教わる剣術に偏っていた。カエデも自分がもっと手練れならよかったと悔やみ、魔法スクロールの購入にも金がかかることを指摘した。
ダンジョンへの野望
ジョニー達が傭兵を目指す理由は、一攫千金を狙ってダンジョンへ行くためであった。しかし、ダンジョンに入るにはランクと信用が必要であり、底辺から始める彼らには簡単ではなかった。装備や交通費、回復薬、食費、宿代、夜営道具などにも金がかかるため、まずは独り立ちできる地力をつけることが必要だった。
ゼロスへの期待と不安
子供達は、ゼロスに頼めば魔法を教えてもらえるかもしれないと考えた。だがラディは、修行と称して大深緑地帯へ連れて行かれるのではないかと怖がった。カエデは、ゼロスが魔法以外にも手練れであり、圧倒的に強いため、下手をすれば死ぬことになりかねないと警戒していた。
コッコ修行の案
カエデは、ゼロスが飼い始めたワイルド・コッコを使った訓練を思いついた。ウーケイ、ザンケイ、センケイは強すぎるが、それ以外のコッコなら訓練相手としてちょうどよいと考えたのである。コッコ達には斬る、打つ、射るという基本が揃っており、剣だけに偏らない戦い方を学べる可能性があった。
恥を捨てる決意
ジョニー達は、ニワトリに戦い方を教わることへ抵抗を覚えた。アンジェやカイは恥ずかしがったが、カエデは、弱い者が教えを請うのに恥じる必要はなく、強くなる好機を逃せば死ぬだけだと説いた。ジョニーはその言葉を受け入れ、たとえニワトリであっても強い相手なら訓練になると判断した。
路地裏の記憶
ジョニー達の心には、路地裏で飢えに苦しんだ空虚な記憶が残っていた。彼らはもう二度とあの場所へ戻りたくないと考え、今以上に幸せになるために強くなろうとしていた。その思いは、親のいない彼らの深い傷から生まれたものだった。
盗みで生きた日々
四年ほど前、ジョニーはアンジェやラディ、同じ境遇の孤児達と路地裏で暮らしていた。彼らはボスの下でパシリをさせられ、露店や通行人を狙って盗みを働いていた。捕まれば殴られ、牢に入れられる世界であり、食べ物を確保するために盗むしかなかった。
神への不信
ジョニーは、神官が語る救済を信じていなかった。今も苦しんでいる自分達を救えない神に力などないと考えていたからである。普通に食事をし、苦しみもなく街を歩く同年代の子供達を見て、彼は羨望と憎しみを抱いていた。
籠を奪うジョニー
ある日、ジョニーは人だかりの露店で厳つい男が置いた籠を狙った。合図を出してアンジェ達と連携し、籠を掴んで路地裏へ逃げ込んだ。籠には少しの食べ物と財布が入っており、ジョニーは財布を仲間に投げ渡し、自分は追っ手を撒くために入り組んだ路地を走り抜けた。
ボスへの上納
ジョニー達は、盗んだ揚げパンを分け合い、財布の中身を少しだけくすねてから、船着き場外れの倉庫へ向かった。そこではボスのジャギラと取り巻き達が食事をしており、空腹の子供達に分け与えることもなかった。ジョニーは財布と籠を渡したが、財布の中にあった怪しい指輪だけは危険だと判断し、ボスに渡すことにした。
泥臭い魚の夕食
ジョニー、アンジェ、ラディはボスの寝静まるまで、オーラス大河のほとりで釣りをしていた。彼らはボスに金を横領していることを気付かれないようにしながら、泥臭いボーボラを焼いて食べた。ジョニーは嫌な予感を覚えていたが、その予感は正しかった。
捕まった孤児達
その夜、倉庫に衛兵が突入し、ジョニー達は捕まった。財布に入っていた指輪は魔導具であり、頻発する窃盗犯を捕まえるための罠だった。ジョニー達は自分達の不運を呪ったが、結果として養護施設へ送られることになった。
養護施設と神官への反発
衛兵の詰め所で食事を与えられた後、ジョニー達は南街の養護施設へ預けられた。そこには清潔な建物と遊具、無邪気に遊ぶ子供達があり、ジョニーは今までの苦しみを否定されたように感じた。神などいないと否定してきた彼にとって、救済を掲げる神官達の存在は腹立たしいものだった。
酒瓶を持つ神官
ジョニー達の前に現れた施設の上に立つ人物は、酒瓶と干し肉を手にした神官らしからぬ老婆だった。彼女は、この世に神はいない、人を救えるのは人だけだと言い切った。さらに、苦しみを知っているからといって他人に同じ苦しみを味わわせる大人になるなと語り、ジョニー達を教育すると宣言した。
信用できた老婆
老婆は口が悪かったが、ジョニー達を侮蔑せず、きちんと見ていた。ジョニーが神官なのにそんなことを言っていいのかと問うと、老婆は神様に救われた者などいないと豪快に笑った。ジョニーにとって、綺麗事を並べる神官より、その老婆の方がよほど信用できる存在に見えた。
五人の願い
一年後にカイが加わり、その半年後にカエデも仲間になった。五人の夢はそれぞれ違っていたが、飢えた生活には戻りたくないという思いは共通していた。彼らはダンジョンで一攫千金を果たし、幸せな家庭を夢見るようになった。それは、何も持たなかった孤児達のささやかな願いであった。
非常識な朝の稽古
早朝、畑仕事を終えたジョニー達はゼロスの家へ向かった。そこで彼らが目にしたのは、ゼロスとウーケイが拳と翼で凄まじい打撃を交わす非常識な稽古だった。衝撃波が飛ぶほどの訓練は、子供達には命の危険を感じさせる光景であった。
ゼロスへの依頼
ゼロスは爽やかに挨拶したが、子供達はあまりの光景に怖気づいていた。カイは頼みごとより先に肉を求め、他の子供達に突っ込まれた。カエデは、ジョニー達がゼロスに鍛錬をつけてほしいことを説明し、ゼロスはルーセリスの許可を気にしながらも、基礎なら教えられると了承した。
地味で厳しい基礎訓練
ゼロスが始めた訓練は、激しい殴り合いではなく、太極拳のようにゆっくり体を動かす基礎訓練だった。腕や足の位置、踏み込み、バランスを意識する動きは見た目以上に厳しく、子供達はすぐに苦しみ始めた。これは【受け】【打撃】【捌き】【蹴り】【投げ】の要素を含む、格闘戦の基礎を覚えるための訓練だった。
陰陽崩山流拳法
カエデは、その訓練が【陰陽崩山流拳法】であり、母もよく行っていたと説明した。ゼロスは、いきなり殴り合いを教えるのは危険なため、まず基礎と呼吸法を叩き込む必要があると考えていた。カエデはすでに基礎ができているため、自主訓練に入った。
夢への第一歩
ジョニー達は、こんな訓練で本当に強くなれるのかと不安を漏らした。ゼロスは、彼らには訓練以前に基礎がなく、生兵法は大怪我のもとだと諭した。孤児だった子供達は、厳しい基礎訓練を通じて、夢へ向けた最初の一歩を踏み出したのである。
アラフォー賢者3巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者5巻レビュー
同シリーズ
アラフォー賢者の異世界生活日記シリーズ
小説
























その他フィクション

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