アラフォー賢者16巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者18巻レビュー
どんな本?
■ 作品概要
本作は、異世界に転生したアラフォーの大賢者・ゼロスが、自由気ままに生きる姿を描いたファンタジー作品の第17巻である。獣人族の長となったケモ・ブロスの要請を受け、ルーダ・イルルゥ平原を訪れたゼロスとアドは、武器修繕を手伝う傍ら、メーティス聖法神国の北方防衛拠点「カルマール要塞」や「アンフォラ関門」の攻略戦に関わっていく。ゼロスが芋粥に混入させた魔法薬によって最強生物(ガチムチ)と化した獣人たちが要塞を蹂躙し、ゼロス自身も自作の八十八ミリ砲搭載ハーフトラックで遠距離から城壁を砲撃破壊するなど、戦局を圧倒する。一方、メーティス聖法神国の聖都マハ・ルタートには、過去に国に利用され暗殺された勇者たちの亡霊が結集した「滅魔龍ジャバウォック」が復讐のために襲来。四神の降臨と邪神の出現により、聖法神国はかつてない滅亡の危機に立たされる。
■ 主要キャラクター
- ゼロス:【大賢者】の職業を持つ転生者のアラフォー。獣人族に協力するが、強すぎる魔法薬で彼らを筋肉ダルマに変貌させたり、趣味で作ったハーフトラックで城門を砲撃破壊したりと、戦場に多大な混乱と破壊をもたらす。
- ケモ・ブロス:獣人族の長を務める転生者の少年。同胞を愛するがゆえに聖法神国への復讐に燃えるが、ゼロスのせいで野生化・脳筋化した獣人たちの暴走に頭を抱える苦労人。
- アド:ゼロスと同郷の転生者。極度の方向音痴。ゼロスと共にアンフォラ関門への砲撃支援を行い、使い魔による上空からの着弾観測を担当する。
- 滅魔龍ジャバウォック:岩田定満ら、過去に神国に暗殺された歴代勇者たちの怨念が結集した五つ首の巨大なドラゴン。聖都に降臨し、圧倒的な力で国家と四神への復讐を遂げようとする。
- 佐々木学、川本龍臣、笹木大地:聖法神国に召喚された生き残りの勇者たち。ドラゴンの正体が自分たちと同類のなれの果てだと気づき、圧倒的な力の前に聖都からの脱出を図る。
- ガルドア・カーバイン:聖法神国の将軍。ブロスの異常な強さを直感で察知し、無駄な犠牲を避けるためにカルマール要塞を放棄して兵と民を撤退させる冷静な判断力を持つ歴戦の老将。
- フレイレス、アクイラータ:火と水を司る女神(四神)。ジャバウォックを討伐するために聖都に降臨するが、その直後に現れた邪神に本能的な畏怖を抱く。
■ 物語の特徴
本作の特徴は、おっさんたち転生者の無自覚で規格外な「趣味(兵器開発や魔法薬調合)」が、シリアスな戦争を一方的な蹂躙へと変貌させてしまうコミカルな無双劇と、怨念に満ちた死せる勇者たちによる聖法神国への凄惨な復讐劇という、相反する展開のコントラストである。特に、神国がこれまで隠蔽してきた勇者召喚の非道な闇が暴露され、四神と邪神の直接対決へと繋がる展開は、世界の核心に迫るものであり読者に強い衝撃を与える。腐敗し慢心していた権力者たちが自業自得の破滅を迎える様が容赦なく描かれている点も、本作の大きな魅力となっている。
読んだ本のタイトル
アラフォー賢者の異世界生活日記 17
著者:寿安清 氏
イラスト:ジョンディー 氏
出版社:KADOKAWA(MFブックス)
発売日:2022年9月25日
ISBN:9784046817440
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あらすじ・内容
自己中でわがままな偽神、メーティス聖法神国の危機に立ち上がる!
アラフォー賢者の異世界生活日記 17
獣人族の応援要請を受けてルーダ・イルルゥ平原へとやってきたゼロス、アド、ザザの三人。彼らはそこで、転生者であり獣人族の長であるケモ・ブロスから武器修繕の手伝いを頼まれる。しかし、当然ながらそれだけでは終わるはずもなく、ゼロス達はメーティス聖法神国の北方防衛の要であるカルマール要塞の攻略にも同行することになる。
当初、要塞攻略は困難を極めると予想されていたが、ゼロス秘蔵の魔法薬によってハイパーマッスル化した獣人達が怒涛の勢いで攻め込み、カルマール要塞はあっさり制圧されるのだった。しかも獣人族はこの勝利を勢いにして、もう一つの重要拠点であるアンフォラ関門をも攻め落とそうと考えており……!?
ついに発動された獣人連合軍による一大反攻作戦! それに呼応するように謎のドラゴンも新たな動きをみせ、四神も参戦!! メーティス聖法神国本土を舞台に壮絶な戦いが始まる!
感想
オッサンとアドが獣人族達の武器を直すために転生者仲間のブロスくんの下に行く。
その時にオッサンはアドと造った大砲装備のトラックで訪問。(見せびらかすために)
そして、ブロスくんに何で単独で聖法神国の要塞に突っ込まないの?と聞くと。
力を重んじる獣人達は他人の力を借りて物事を達成すると、、、拗ねるらしい。
ナニソレ?メンドクサイ。
マッチョが拗ねるから、、キモ以下自粛。
そんなブロスくんの悩みをオッサンが1発解決。
相手側の聖法神国が嫌がらせに放逐した、餓死寸前の奴隷獣人にオッサンが調理中の芋粥に秘薬を入れるとガリガリで瀕死だった奴隷獣人達がマッチョマンなグラップラーに変貌。
その秘薬とは、、
白の殲滅者のカノン作の栄養剤。
その名もマキシマム・オーバードライブEX!
どんなに痩せた身体も飲んだ瞬間肉体美!
欠点は、、
・曲がれない
・止まれない
・制御できない
実際に城壁を素手で登り、防備をしていた傭兵達を今迄の怨みを込めてブン殴り。
弓矢にハミネズミにされてもチョット刺さって痛い程度に済ませてしまうくらいの無双状態。
ただ、やっぱり彼等に重大な欠点があった。
他人の話を全く聞かない。
ブロスくんの指示を拡大解釈して突っ走ってしまう。
それについてオッサンに、クレームを言うブロスくんだったが、、
オッサンはヘラヘラとして取り合わない。
それに号泣するブロスくんが何気に、、
いや、獣人族ってグラップラーだから正常だな。
うん、普通じゃないけど基本的な行動は変わってない。
そして第二の目標、アンフォラ関門の攻略で、犠牲を出さずに攻略したいブロスくんは。。
オッサンの持ってきたトラックに装備されてる大砲に目を付けた。
その砲撃で関門の二重構造の門を破壊して、本奴隷だった獣人達がヒャッハー!!と突貫して関門は陥落。
そして同時刻。
聖法神国の首都では、聖法神国に召喚されて殺された勇者達の魂の塊”ジャバウォック”が暴れていた。
そして、怨みを晴らすために首都を蹂躙。
でも聖法神国は四神のお気に入りの国。
滅亡は許容出来ないと邪神ちゃんに封印されていないニ神が降臨する。
そして、ジャバウォックを殲滅してしまうが、、
それをさらに高みの見物をしている者がいた。
邪神ちゃん降臨。
どうなるんだ?
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
マキシマム・オーバードライブEX
『アラフォー賢者の異世界生活日記 17』において、「マキシマム・オーバードライブEX」は、獣人族のカルマール要塞攻略戦で戦局を決定づけた、極めて危険かつ強烈な魔法薬として描かれている。
ゲーム時代における直線攻撃しかできなくなる欠陥品としての扱い、衰弱した同胞を救うためにゼロスが施した芋粥への混入、常時闘獣化したような最強生物への変貌と防壁を素手で登る蹂躙劇、そして元の姿に戻らずケモミミを愛する指導者ケモ・ブロスが絶望した顛末にいたる全容は以下の通りである。
白の殲滅者カノンが製作した超高濃縮エナジーポーションの異常なステータス上昇効果
マキシマム・オーバードライブEXは、白の殲滅者カノンが製作した特製の超高濃縮エナジーポーションである。
・ソード・アンド・ソーサリスのゲーム内では、効果が強すぎるあまり強制ブーストされたステータスに異常が発生した。
・止まれない、曲がれない、制御できない、という直線攻撃しかできなくなる欠陥品であった。
・レイド戦などで使用すると崖から転落するなどの自爆者が続出し、多くの離脱者を出した使えないアイテムとして知られていた。
奴隷使役により衰弱した獣人たちを一刻の猶予もない判断から救うための少量混入
現実の異世界においては、瀕死状態にまで弱りきった肉体を瞬く間に超人レベルに引き上げる、超強力な栄養剤として機能した。
・メーティス聖法神国によって奴隷として使役され、食料攻めのために衰弱した状態で解放された獣人たちがいた。
・彼らを救うため、ゼロスが一刻の猶予もないと判断し、与える芋粥にこの薬を少量混入させた。
老若男女を問わないはち切れんばかりの筋肉化と復讐ドーパミンによる精神暴走
薬入りの芋粥を口にした獣人たちは、老若男女問わず、瞬く間にはち切れんばかりの筋肉を持つ最強生物へと変貌を遂げた。
・さらに精神面でも、かつての虐げられた苦しみから復讐ドーパミンとアドレナリンが過剰に分泌され、殺意と憎悪に満ちた修羅へと落ちていった。
・彼らは種族特性である闘獣化が常時発動した状態となり、凄まじい戦闘力と闘争心でカルマール要塞の防壁を素手で駆け上がる。
・これにより、傭兵や奴隷商人たちを一方的に蹂躙した。
パンプアップ予測の裏切りとケモミミ消滅に嘘つきと泣き叫んだ抗議の結末
ゼロスは、処理しきれない栄養を摂取してパンプアップしているだけで、時間が経てば元に戻る、と予測していた。
・しかし、要塞攻略後も獣人たちが元の姿に戻る気配は全くなかった。
・ケモミミをこよなく愛する指導者のケモ・ブロスは、変わり果てた獣人たちの姿に絶望し、ゼロスに嘘つきと泣き叫んで抗議した。
・しかし当の獣人たちは、悲願の復讐を果たせるだけの圧倒的な力を手に入れたことを喜ぶ。
・結果として、他の同胞たちからも英雄として受け入れられ称賛されることとなった Lights。
まとめ
マキシマム・オーバードライブEXがもたらした効果と騒動は、ゲーム時代の欠陥アイテムが現実の異世界において軍事バランスを塗り替える破壊兵器へと変貌したプロセスを象徴している。ゼロスの軽い予測を超えて常時闘獣化状態となった獣人族は、圧倒的な筋力と復讐心でカルマール要塞をわずか数時間で蹂躙した。薬効が消えずガチムチ化した同胞の姿に指導者ケモ・ブロスがケモミミの喪失を嘆いて絶望するコミカルな結末を迎えつつも、力による復讐を遂げた獣人たちがそれを英雄の証として受け入れた事実は、この魔法薬が種族の運命を決定づける強烈な変革をもたらしたことを物語っている。
獣人族の要塞攻略
『アラフォー賢者の異世界生活日記 17』における「獣人族の要塞攻略」は、メーティス聖法神国の北方防衛拠点であるカルマール要塞とアンフォラ関門を巡る戦いとして描かれている。しかし、ゼロスの持ち込んだ規格外の魔法薬や現代兵器もどきが投入されたことで、悲壮な攻城戦は一方的な蹂躙劇へと変貌した。
敵の兵糧攻めに対抗した超高濃縮エナジーポーションの投入、筋肉質の最強生物と化した獣人達によるカルマール要塞の制圧、八十八ミリ砲搭載ハーフトラックを用いた遠距離隠密砲撃、そしてダネルMGLによる関門防衛線の一掃にいたる全容は以下の通りである。
奴隷解放による食料枯渇を狙うガルドア将軍の策と芋粥へのポーション混入
カルマール要塞から撤退するガルドア将軍は、獣人族を足止めするために奴隷を解放し、彼らの食料を枯渇させる策に出た。
・衰弱した同胞を助けるため、ゼロスが動く。
・ゼロスは消化の良い芋粥に、カノン特製の超高濃縮エナジーポーションであるマキシマム・オーバードライブEXをこっそり混入させた。
常時闘獣化した復讐の鬼による防壁登攀とわずか八時間での要塞制圧
魔法薬を口にした獣人達は、瞬く間に筋肉質の最強生物へと変貌し、復讐の鬼と化す。
・常時闘獣化したような彼らは、ブロスの作戦すら無視して突撃した。
・防壁を素手で登って傭兵や奴隷商人を一方的に虐殺する。
・結果として要塞はわずか八時間で制圧され、その後ブロスによって焼き払われた。
断崖に挟まれた二重城壁を粉砕するグラビティ・バースト封入の特殊弾
次なる目標であるアンフォラ関門は、左右を断崖に挟まれた二重城壁の難所であった。
・ゼロスとアドは獣人側の被害を抑えるため、自作の八十八ミリ砲搭載ハーフトラックで遠距離から隠密砲撃を行う。
・グラビティ・バーストや暴食なる深淵などを封入した特殊弾(魔封管の劣化版)を撃ち込んだ。
・これにより、不落を誇った第一城壁と第二城壁を粉砕した。
火縄銃の的を防ぐダネルMGLの掃射と裏切りによるクズイ伯の死亡
城壁が壊れたことで獣人達の戦意は限界を突破し、ブロスの命令を無視してアンフォラ関門への猛進を始めた。
・ブロスは彼らが火縄銃の的になるのを防ぐため先陣を切る。
・ゼロスから借りたダネルMGL(エクスプロード封入)を城壁の狙撃手やバリケードへ撃ち込み一掃した。
・防衛線を完全に失った関門へ獣人族が雪崩れ込む。
・指揮官のクルカルトは錯乱の末に討たれ、逃亡を図ったクズイ伯も部下に裏切られて死亡し、アンフォラ関門は陥落した。
まとめ
カルマール要塞とアンフォラ関門の攻略は、ゼロスがもたらした規格外の超常技術と現代兵器によって、従来の戦争の常識が完全に崩壊していく過程を冷徹に描き出している。敵の兵糧攻めに対して投入されたマキシマム・オーバードライブEXは、獣人族を制御不能な最強生物へと変貌させてカルマール要塞をわずか八時間で肉体的に蹂躙し、八十八ミリ砲搭載ハーフトラックから放たれた特殊弾は不落の二重城壁を一瞬で瓦解させた。ブロスがダネルMGLを駆使して関門の防衛線を完全に無力化した一連の戦闘は、圧倒的な技術格差がもたらす一方向の破壊劇であり、メーティス聖法神国の防衛体制を根本から瓦解させる決定的な契機となっている。
ゼロスの兵器支援
『アラフォー賢者の異世界生活日記 17』における「ゼロスの兵器支援」は、メーティス聖法神国のカルマール要塞およびアンフォラ関門を攻略する獣人族に対し、ゼロスが表立った参戦を避けつつも裏方として提供した、過剰かつ規格外な軍事援助として描かれている。
魔導錬成を用いた徹夜の大量武器強化、試作弾の混入によって凄まじい大爆発を引き起こしたダネルMGLの貸与、そしてグラビティ・バーストや暴食なる深淵を封じた特殊弾による二重城壁の遠距離砲撃にいたる全容は以下の通りである。
紋様による脆弱性の克服と強度アップおよび斬撃強化の付与
獣人族の武器は金属板に木を挟んで獣皮と膠で固めたうえ、部族特有の紋様を彫り込むため非常に脆く、そのままでは要塞攻略に耐えられない品質であった。
・ブロスから依頼を受けたゼロスとアドは、魔導錬成を用いて金属同士を結合、強化する手法をとる。
・徹夜の単調作業をこなしながら大量の武器を修繕した。
・武器の整備を担う者がいないことを考慮し、付与効果は強度アップや斬撃強化といった単純なものにとどめている。
エクスプロード封入の魔封管劣化版と試作弾誤渡しによる城門バリケードの一掃
城門の突破時における獣人族の犠牲を減らすため、ゼロスはブロスに対し後で返すようにと念押ししつつ、密かにダネルMGLを二丁貸与した。
・この武器の薬莢には魔封管の劣化版が使われており、内部にエクスプロードなどの魔法が封入されていた。
・アンフォラ関門の戦いでブロスがこれを使用した際、ゼロスが威力を抑えた弾と通常威力の試作弾を間違えて渡していたため、凄まじい大爆発を引き起こす。
・結果として、城門前のバリケードや城壁上の火縄銃部隊、さらには第二城壁の上部や門までも一掃することとなった。
隠蔽結界を用いた丘陵からの夜間隠密砲撃と超重力崩壊魔法による防壁の消滅
アンフォラ関門は左右が断崖絶壁で二重城壁を持つ難所であったため、ゼロスは自作した八十八ミリ砲搭載のハーフトラックによる遠距離からの砲撃支援を提案した。
・ソリステア魔法王国などの関与を疑われないよう、関門から少し離れた丘陵に隠蔽結界と偽装を施して夜間砲撃を実行する。
・第1射(観測射撃):通常弾を使用し、外壁下方に着弾して大きな窪みを作る。
・第2射(特殊弾):範囲魔法グラビティ・バーストを封じた魔封弾を使用し、外壁に大穴を開けた。
・第3射(特殊弾):ゼロス謹製の超重力崩壊魔法「暴食なる深淵」を使用し、第一城壁を中央から完全に消し飛ばし、内側の第二城壁にも甚大なダメージを与えた。
・その後もエクスプロードを封じた弾で追撃を行い、アンフォラ関門の防壁を完全に瓦礫へと変えた。
まとめ
ゼロスによる兵器支援は、犠牲を減らすための裏方やただの趣味という本人の弁明とは裏腹に、中世レベルの文明圏へ現代の軍事技術と規格外の魔導破壊力を持ち込む圧倒的なオーバーキルであった。魔導錬成による迅速な武器補強から始まり、手違いの試作弾が甚大な面制圧力を発揮したダネルMGLの提供、そして八十八ミリ砲トラックによるグラビティ・バーストや暴食なる深淵の砲撃は、不落を誇ったメーティス聖法神国の防衛設備を一瞬で瓦礫へと変貌させた。この非対称な技術支援が関門の防御網を完全に無力化し、獣人族の一方的な蹂躙劇をお膳立てする決定的な要因となっている。
アンフォラ関門の崩壊
『アラフォー賢者の異世界生活日記 17』におけるアンフォラ関門の崩壊は、獣人族の怒涛の進軍と、ゼロス達転生者が持ち込んだ規格外の現代兵器が組み合わさることで、難攻不落とされた要衝があっけなく蹂躙される過程として描かれている。
左右を断崖に挟まれた二重防壁に対する隠密夜間砲撃、試作弾の混入によるダネルMGLの暴発的破壊、守りを失った関門への獣人族の突入、そして徹底抗戦を主張していた責任者たちの悲惨な末路にいたる全容は以下の通りである。
隠蔽結界を用いた二キロ先からの夜間砲撃と超重力魔法による第一城壁の消滅
アンフォラ関門は左右を断崖に挟まれた二重防壁(第一城壁、第二城壁)の拠点である。
・獣人族の攻城戦における犠牲を減らすため、ゼロスとアドは関門から約二キロ離れた丘に隠蔽結界を張った。
・自作した八十八ミリ砲搭載ハーフトラックで夜間砲撃を行う。
・魔法を封じた魔封弾を使用し、第二射のグラビティ・バーストで第一城壁に大穴を開けた。
・続く第三射の暴食なる深淵で第一城壁を中央から完全に消滅させる。
・さらにエクスプロードを封じた砲撃で、残った第二城壁にも甚大なダメージを与え、関門の防衛力を大きく削ぎ落とした。
制止を無視した獣人族の突撃と通常威力試作弾による第二城壁上部の吹き飛び
防壁が破壊されたことで獣人族の戦意は爆発し、ブロスの制止も聞かずに一斉に突撃を開始した。
・ブロスは仲間の犠牲を防ぐため先陣を切る。
・ゼロスから借りていたダネルMGLを用いて、城門前のバリケードや城壁上の火縄銃部隊を一掃しようとした。
・しかし、ゼロスが誤って威力を抑えていない試作弾を混ぜていたため、連続した大爆発が引き起こされる。
・これにより、ダメージを受けていた第二城壁の上部や門までもが完全に吹き飛んでしまった。
火縄銃を過信する傭兵らの戦意喪失とガチムチの最強生物による蹂躙
門と防壁という物理的な守りを完全に失った関門へ、復讐に燃える獣人族が雪崩れ込んだ。
・この中には、魔法薬でガチムチの最強生物と化した者たちも含まれている。
・最新兵器の火縄銃や強固な城壁を頼りに獣人族を見下していた傭兵や聖騎士たちがいた。
・彼らは常識外れの破壊力と獣人族の圧倒的な暴力の前に戦意を喪失し、次々と逃げ出した。
錯乱したクルカルトの敗死と財宝に執着したクズイ伯の部下による刺殺
ガルドア将軍のカルマール要塞放棄や撤退勧告を、臆病風に吹かれた、と嘲笑し、徹底抗戦を主張していた関門の責任者たちもそれぞれ悲惨な末路を辿る。
・クルカルト:血連同盟に所属する野心家で、火縄銃と槍兵で迎撃を試みた。しかし、ブロスの攻撃と城壁の崩壊を目の当たりにして現実を受け入れられず完全に錯乱し、獣人に頭を砕かれて死亡した。
・クズイ伯:私財を持って隠し通路から逃亡を図ったが、重い荷物(悪趣味な絵画や黄金像など)に執着して逃走を遅らせる。その結果、彼を見限った護衛の部下たちに裏切られて背後から刺され、宝石を奪われて命を落とした。
まとめ
アンフォラ関門の崩壊は、中世レベルの防衛拠点に対して現代兵器と超越魔法を容赦なく投入したことによる、必然的な非対称戦の結末である。ゼロスらが隠密裏に放った八十八ミリ砲の重力魔法や、威力を誤ったダネルMGLの猛威は、難攻不落の二重城壁と最新鋭の火縄銃部隊を一瞬で瓦礫へと変えた。物理的な拠り所を失って錯乱したクルカルトや、強欲さゆえに部下に刺殺されたクズイ伯の末路が示す通り、慢心していた神国側の指揮系統は完全に崩壊し、関門は獣人族の圧倒的な暴力によって一息に蹂躙されることとなった。
勇者の亡霊レギオン
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における「勇者の亡霊レギオン」は、メーティス聖法神国の身勝手な都合により使い捨てにされた勇者たちの無念と復讐心が具現化した存在として描かれている。
用済みとなり暗殺された魂の結合、シャランラの遺灰を媒体とした巨大ムカデ女への変貌、元邪神アルフィアとの契約による滅魔龍ジャバウォックの誕生、聖都マハ・ルタートの蹂躙と法皇らの吹き飛ばし、そして二柱の女神との死闘と邪神による魂の救済にいたる全容は以下の通りである。
三十年に一度のペースで召喚され用済み後に暗殺・処分された魂の結合
メーティス聖法神国は、四神の権威を高めるため、あるいは他国へ侵攻する戦力として、三十年に一度のペースで異世界から勇者を召喚していた。
・しかし、用済みとなった勇者や、不都合な真実に気付いた勇者たちは裏で暗殺、処分されていた。
・不都合な真実とは、勇者召喚が世界の魔力を枯渇させ滅亡の危機を招いていることなどである。
・異界の理に属する彼らの魂は死しても輪廻転生の円環に還ることができず、神国と四神への強い憎悪を抱いたまま現世に留まる。
・やがて同類と結合して強大な群霊(レギオン)へと変化した。
シャランラの遺灰を媒体とした肉体構築と邪悪な魂による主導権の強奪
実体を持たない彼らは、討伐された指名手配犯シャランラ(大迫麗美)の遺灰を媒体にして肉体を構築した。
・当初は悪党だけを襲って力を蓄えるつもりであったが、シャランラや盗賊たちの邪悪な魂に主導権を乗っ取られてしまう。
・その結果、欲望と未練が歪んだ巨大ムカデ女(人型肉塊)へと変貌した。
・無関係な民間人まで無差別に捕食する醜悪な化け物となってしまった。
四神をおびき出す囮の代償としての元の世界への帰還契約
シャランラから分離し、空も飛べないほど太りすぎた黒き獣と化していた勇者たちの魂の前に、元邪神であるアルフィア・メーガスが現れる。
・アルフィアは、四神をおびき出す囮になる代わりに元の世界へ還す、という契約を彼らに持ちかけた。
・利害が一致した勇者たちはこれを受け入れる。
・アルフィアの力によって五つの首と二対の翼を持つ漆黒の魔龍「滅魔龍ジャバウォック」としての強靭な肉体と力を得た。
四神教の施設を標的とした神聖魔法の無効化と法皇らの大罪暴露と消滅
力を得たジャバウォックは、一般市民を極力巻き込まず、四神教の神殿や教会、神官だけを標的にして進軍した。
・聖都マハ・ルタートに降臨すると、神聖魔法や大砲も全く通じない圧倒的な力で防衛線を蹂躙する。
・旧大神殿に追い詰めたミハロウフ法皇や神官たちの前で、岩田定満ら死んだ勇者たちが姿を現した。
・神国が犯してきた大罪と自らが暗殺された真実を、魔力波に乗せて国中に暴露、拡散した。
・その後、全属性ブレスと全方位レーザーで旧大神殿ごと彼らを吹き飛ばし、長年の復讐を完遂する。
火と水の女神への手傷と極大火炎球による消滅および邪神への取り込み
復讐を果たした直後、降臨した火の女神フレイレスと水の女神アクイラータと交戦になる。
・神々の圧倒的な力の前に追い詰められながらも、ジャバウォックは刺し違える覚悟で全属性を重ねた拡散ブレスを放ち、二柱に手傷を負わせた。
・最後は極大火炎球によって塵と化した。
・しかし直後に、真の姿を取り戻した邪神(次世代の観測者)が降臨する。
・彼女は長きにわたり苦しんだ勇者たちの魂を慈しむように呼び寄せ、その身に取り込むことで魂の救済を約束した。
まとめ
勇者の亡霊レギオンの軌跡は、国家の闇に葬られた被害者たちが、最高峰の破壊力を持つ滅魔龍ジャバウォックへと昇華して神国への復讐を果たす壮絶な因果応報のドラマである。世界の魔力を削る召喚システムの口封じとして暗殺され、輪廻からも外れた勇者たちの怨念は、元邪神アルフィアとの契約により漆黒の魔龍となり、聖都マハ・ルタートの防衛線を完全に無力化した。法皇らの大罪を国中に暴露した上で旧大神殿ごと容赦なく消滅させた一連の進軍は、長年の無念を晴らす完璧な復讐劇であり、最終的に女神との死闘を経て塵と化しながらも、次世代の観測者たる邪神にその魂を回収され救済を得たことは、彼らの長い苦難の旅路に切なくも確かな終止符を打っている。
邪神の聖都降臨
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における「邪神の聖都降臨」は、メーティス聖法神国の聖都マハ・ルタートで繰り広げられた滅魔龍ジャバウォックと四神の死闘の直後に起きる、絶望的かつ荘厳なクライマックスとして描かれている。
光を呑み込む深い闇と竜巻が聖都を覆った異常な前兆、神聖さと邪悪さを同時に内包する絶対者の顕現、悪霊と化していた勇者たちの魂への慈しみと回収、そして二柱の女神と人々へ向けた滅びの宣告にいたる全容は以下の通りである。
極大魔法によるジャバウォック消滅直後の深い闇と荒れ狂う竜巻の結界
神国に暗殺された元勇者たちの怨念の集合体であるジャバウォックが、火の女神フレイレスと水の女神アクイラータの極大魔法によってついに塵と化した直後、突如として世界は光すら呑み込む深い闇に包まれた。
・天候は荒れ狂い、幾重にも竜巻が発生して雷鳴が轟く。
・豪雨が降り注ぐという、大規模な結界が聖都を覆い尽くした。
輝く王冠と銀色の角に金色の翼を持つ唯一の絶対者がもたらした本能的恐怖
その闇と嵐の中、一本の光の柱からその存在が姿を現した。
・頭部には神の存在を示す輝く王冠と左右の銀色の角を持つ。
・背には輝く金色の翼を羽ばたかせ、金の瞳を持つという、神聖さと邪悪さを同時に内包する異形の姿であった。
・その圧倒的な気配と存在感の前に、アクイラータとフレイレスの二柱の女神すら本能的な恐怖を抱く。
・地上の人々は思考を停止させ絶望感に苛まれた。
・人々は本能で、それがこの世界の最大の禁忌であり唯一の絶対者である「邪神」だと悟り、震える声でその名を呟いた。
湧き出した無数の光への語りかけと身に取り込むことによる長き無念の解放
降臨した邪神は、我が元に来るがよい、と静かに呼びかけた。
・聖都の地面から無数の光、すなわち神国に使い捨てにされ悪霊と化していた勇者たちの魂が湧き出す。
・それらの魂が邪神のもとへ集まっていった。
・邪神は、長きにわたる苦しみの中を、よくぞ耐え抜いたのう。もう休むがよい…汝らの無念は我が代わりに晴らしてやろうぞ、と慈しむような言葉をかける。
・魂たちを自身の中に取り込み、長きにわたり苦しんできた彼らに救済を与えた。
侮蔑の視線が放つ愚か者共への冷酷な滅びと罪深き者たちへの裁きの開始
勇者の魂を回収した後、邪神の金の瞳は二柱の女神や人々に侮蔑の視線を向けた。
・残りの羽虫と、それを妄信する愚か者共よ。終焉の時は来た……。罪深き汝らに、更なる絶望と断罪を我自らが贈ろうぞ。光栄に思うがよい、と言い放つ。
・四神とその信徒たちに対して冷酷な滅びと断罪を宣告した。
まとめ
邪神の聖都降臨は、メーティス聖法神国と四神の傲慢、および勇者召喚という罪に対する究極の裁きが執行される瞬間として描かれている。二柱の女神の勝利に沸く聖都を一瞬で闇と嵐の絶望へと突き落とし、神々すら恐怖する圧倒的な威容で顕現した邪神は、まず虐げられてきた元勇者たちの魂を慈悲深く回収して長い苦難から救済した。その上で、神国を妄信する人々や欺瞞に満ちた四神に向け、冷酷に終焉と断罪を宣告した一連のプロセスは、世界の歪みに対する因果応報の帰結であり、物語が真の破滅と再生へと向かう決定的な転換点となっている。
ブロスの人間不信
『アラフォー賢者の異世界生活日記』において、獣人族の指導者となった転生者の少年ケモ・ブロス(二つ名:野蛮人)が抱える「人間不信」は、彼の行動原理の根幹をなす極めて深い闇として描かれている。
前世の過酷な家庭環境がもたらした人間不信の根源、強欲な人間を駆除すべき害虫とみなす激しい憎悪、裏表のない獣人族への深い愛情と家族としての保護欲、そして大切な存在を守るための冷徹な刃への昇華にいたる全容は以下の通りである。
両親の他界に伴う親戚からの苛烈な虐待とネットゲームへの逃避
ブロスの人間不信の根本的な原因は、地球(前世)で育った過酷な家庭環境にある。
・彼は元々裕福な家庭に生まれたが、両親が事故で他界したことで状況が一変した。
・遺産目的で彼を引き取った親戚は、財産を全て奪い取ったうえで彼に苛烈な虐待を加えた。
・隙を突いて警察に逃げ込んだことで親戚は逮捕され、遺産を取り戻して一人暮らしを始めたが、この経験から極度の人間不信に陥った。
・以降は学校にも行かずに引きこもりとなり、ネットゲームの世界に逃避してもなお、心の底では他人を信用しきれない孤独感に苛まれ続けていた。
奴隷商人や聖法神国の人間に重なる親戚の影と慈悲なき害虫駆除の信念
彼の人間嫌いは極めて重度であり、ゲーム時代から過激な思想を抱くほど精神的に追い詰められていた。
・法律で守られてなければ人間を皆殺しにしたい、人間なんて絶滅してしまえばいいのに、と語っていたほど病んでいた。
・異世界に転生した現在でも、金のためなら他人の命すら売り払う強欲な人間を見ると、かつて自分を虐待した親戚を嫌でも思い出し、激しい憎悪を燃やす。
・彼にとってそうした人間は駆除すべき害虫やダニでしかない。
・そのため、同じ人間だからといって命乞いを聞き入れる慈悲は一切持ち合わせていない。
騙し討ちをしない義理堅い種族との出会いと救われた純朴な心
人間を憎む一方で、ブロスは異世界で出会った獣人族を家族として深く愛している。
・獣人族は騙し討ちや他者を貶めるようなことをせず、欲が薄い。
・さらに、力を示せば素直に受け入れてくれるおおらかさと義理堅さを持っている。
・ブロスは彼らの裏表のない純朴さに心を救われた。
・そのため、自分の大切な家族である獣人族を獣と蔑み、攫って奴隷にする人間たちを絶対に許すことができない。
守るべきものの存在に伴うゼロスへの殺意宣言と悪意を粉砕する物理的武力
ルーダ・イルルゥ平原でゼロスと再会した際、ブロスは自らの覚悟を明確に示した。
・守りたいものができた、それを壊すような奴にはたとえ相手がゼロスさんだろうと容赦しない、と明確な殺意を込めて宣言した。
・彼の人間不信は決して克服されたわけではない。
・愛する獣人族を守るために、人間社会の悪意を容赦なく物理的に粉砕する冷徹な刃として研ぎ澄まされる結果となっている。
まとめ
ケモ・ブロスが抱える人間不信は、前世での親戚による凄惨な裏切りと虐待というトラウマに端を発し、異世界の醜悪な人間社会と対峙することでさらに強固となった絶対的な行動原理である。欲深く他者を虐げる人間を、慈悲なく駆除すべき害虫として冷酷に切り捨てる一方で、裏表のない純朴な獣人族を唯一の家族として愛し、その保護に全精力を傾けている。かつての恩人であるゼロスに対してさえ、家族を脅かす者には容赦しないと殺意を向けた姿勢が示す通り、彼の人間嫌いは克服されることなく、愛する同胞の盾となり悪意を粉砕する圧倒的な武力へと昇華されている。
ガルドア将軍の撤退
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における「ガルドア将軍の撤退」は、メーティス聖法神国の歴戦の将ガルドア・カーバインが、獣人族の圧倒的な脅威を的確に見抜き、無能な上層部や欲深い者たちと対立しながらも、部下と民の命を守るために下した苦渋かつ冷徹な決断の過程として描かれている。
常識の範疇を超えた化け物と評する頭目への恐怖、中央神官の死守命令を無視したカルマール要塞の放棄、進軍遅延を狙った奴隷解放と強欲な者を囮とする冷徹さ、第六感による撤退スケエジュールの前倒し、そしてアンフォラ関門での最新兵器譲渡とさらなる後退にいたる全容は以下の通りである。
単独で防壁を破壊し騎士を蹂躙したブロスの目撃と常識外れの戦力分析
ガルドア将軍は過去に36砦が陥落した際、獣人族の頭目であるケモ・ブロスが単独で防壁を破壊し、逃げ惑う騎士たちを嬉々として蹂躙する凄惨な光景を目撃していた。
・彼はブロスを、常識の範疇を超えた化け物、と認識していた。
・彼が相手では難攻不落を誇るカルマール要塞であっても容易に陥落させられると確信していた。
騎士の練度低下に伴う四面楚歌の把握と本国命令に背いた住民全軍撤退
中央議会から派遣された神官は、要塞を死守せよ、と強要し、撤退を裏切り行為だと非難した。
・しかしガルドアは、勇者敗北による騎士の練度低下や、周辺国の不穏な動きによる四面楚歌の状況を冷静に把握していた。
・彼は本国の命令を無視し、無駄な犠牲を避けるためにカルマール要塞の放棄を決定する。
・住民および全軍の撤退を断行した。
同胞を保護させる食料枯渇の時間稼ぎと財産に執着する傭兵らの囮利用
撤退の際、ガルドアは獣人族の奴隷を解放させた。
・これは獣人族が同胞を見捨てない習性を利用し、彼らに衰弱した同胞を保護させることで食料を枯渇させ、進軍を遅らせるための時間稼ぎの策であった。
・同時に、撤退命令に従わず奴隷獲得や財産に執着して要塞に居座ろうとする奴隷商人や傭兵たちに対しては、強制的に連れ出すことはせず容赦なく見捨てた。
・ガルドアは彼らを、自分たちが安全に逃げるための囮として合理的に利用する冷徹さも持ち合わせていた。
怒涛の進軍に呑み込まれる悪夢の経験と闘気の直感による関門避難成功
ある夜、ガルドアは獣人族の怒涛の進軍に呑み込まれる悪夢を見る。
・目を覚ました彼は、平原の空気から戦場の肌を刺すような闘気を感じ取り、獣人族の襲撃が予想以上に早く迫っていると直感した。
・この長年の経験に裏打ちされた第六感により、彼はさらに撤退のスケジュールを早める。
・全軍を間一間髪でアンフォラ関門へと逃がすことに成功した。
クズイ伯の副官からの嘲笑の受け流しと通行料代わりの火縄銃譲渡による再後退
アンフォラ関門に到着した後も、関門の防衛を預かるクズイ伯の副官クルカルトから、臆病風に吹かれた、と嘲笑される。
・クルカルトや関門の奴隷商人たちは、防衛拠点と新兵器があれば獣人族に勝てると過信していた。
・ガルドアは彼らの妄信や野心を呆れつつ受け流し、通行料の代わりとして最新兵器の火縄銃をあっさりと譲渡する。
・そして、アンフォラ関門も安全ではないと見切りをつけ、自分を信じてついてくる民と部下だけを連れた。
・関門が血の海と化す前に本国へ向けたさらなる撤退を開始した。
まとめ
ガルドア将軍の撤退劇は、狂信と過信に染まったメーティス聖法神国において、ただ一人現実的な戦力分析と冷徹な状況判断を下した歴戦の将の生存戦略である。ブロスの規格外の武力を正しく恐れ、中央の無能な死守命令を排して要塞を放棄しただけでなく、奴隷解放による兵糧攻めや欲深い傭兵たちの囮利用など、勝つためではなく生き残るための合理主義を徹底した。悪夢を機とした迅速な旅程前倒しや、過信に狂うアンフォラ関門の責任者たちに火縄銃を突きつけて即座に再撤退した判断は、結果として自分を信じる部下と避難民の命を虐殺の惨劇から完全に救う唯一の正解となっている。
アラフォー賢者16巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者18巻レビュー
登場キャラクター
転生者・地球の人物
ゼロス
自由を好む大賢者の転生者である。アドと共に獣人族の要塞攻略を裏から支援する立場をとっている。
・所属組織、地位や役職
無職の魔導士である。
・物語内での具体的な行動や成果
獣人族の武器修繕を手伝い、魔法薬を混入させた芋粥で獣人たちをガチムチ化させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自作の八十八ミリ砲搭載ハーフトラックで遠距離から城壁を砲撃破壊し、戦局に多大な影響を与えた。
アド
ゼロスと同郷の転生者である。極度の方向音痴を自覚している。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の嘱託魔導士である。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスと共にルーダ・イルルゥ平原を訪れ、獣人族の武器修繕作業に従事した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
佐々木学
メーティス聖法神国に召喚された生き残りの勇者である。戦闘を激しく嫌がっている。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国に召喚された勇者である。
・物語内での具体的な行動や成果
火縄銃の増産のため工房を仕切る役目を担っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
愛称はサマっちと呼ばれている。
八坂学
メーティス聖法神国に召喚された生き残りの勇者である。長いものに巻かれる性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国に召喚された勇者である。
・物語内での具体的な行動や成果
川本龍臣と共に盗賊などの犯罪者討伐任務に従事していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
面倒な事務仕事を他者から押し付けられがちである。
笹木大地
メーティス聖法神国に召喚された生き残りの勇者である。他者の功績を奪う小心者として行動する。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国に召喚された勇者である。
・物語内での具体的な行動や成果
火縄銃製作の功績を佐々木学から奪い取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上層部には媚びへつらい、同格以下には傲慢な態度を取る傾向がある。
川本龍臣
メーティス聖法神国に召喚された生き残りの勇者である。聖女リリスを恋人に持っている。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国に召喚された勇者である。
・物語内での具体的な行動や成果
西の大国グラナドス帝国国境方面で任務に就いていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
岩田定満
メーティス聖法神国に召喚された勇者である。粗暴な性格でクラスメイトから嫌われていた。
・所属組織、地位や役職
元勇者である。
・物語内での具体的な行動や成果
死亡後に怨霊化し、ジャバウォックの意識の主導権を握って神国の大罪を国中に暴露した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
神国への強い復讐心を抱いている。
前園
メーティス聖法神国に召喚された勇者である。
・所属組織、地位や役職
元勇者である。
・物語内での具体的な行動や成果
ジャバウォックを形成する怨霊として姿を現した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
中山
メーティス聖法神国に召喚された勇者である。
・所属組織、地位や役職
元勇者である。
・物語内での具体的な行動や成果
ジャバウォックを形成する怨霊として姿を現した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
倉橋
メーティス聖法神国に召喚された勇者である。
・所属組織、地位や役職
元勇者である。
・物語内での具体的な行動や成果
ジャバウォックを形成する怨霊として姿を現した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
ソリステア魔法王国
クロイサス・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵家の次男である。魔法研究に没頭する性質を持つ。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生である。サンジェルマン派に属する。
・物語内での具体的な行動や成果
後輩の指導と同時に自身の研究である魔法構築を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
マカロフ
クロイサスと同じ派閥の学院生である。クロイサスの奇行に振り回されることが多い。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生である。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスの講義を手伝い、彼の非常識な言動に内心で突っ込みを入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
下級生達
イストール魔法学院で学ぶ生徒達である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生である。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスの講義を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
ツヴェイト・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵家の長男である。真面目な性格である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生である。ウィースラー派に属する。
・物語内での具体的な行動や成果
近接戦闘訓練を受けた後、汗臭いまま講義に出ることを避けるため清浄の魔法をこっそり使った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
ディーオ
ツヴェイトの友人である。セレスティーナに想いを寄せている。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生である。
・物語内での具体的な行動や成果
講義前に汗臭さを気にして、女子生徒に嫌われることを恐れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
イワン
ツヴェイトの友人である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生である。
・物語内での具体的な行動や成果
講義前に汗臭さを落とす手段をツヴェイトに求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
ウィースラー派の学院生達
ツヴェイトが属する派閥の生徒達である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院生である。
・物語内での具体的な行動や成果
近衛騎士から実戦的な近接戦闘訓練を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
獣人族
ケモ・ブロス
獣人族の指導者である。同胞を愛するがゆえに人間を憎悪している。
・所属組織、地位や役職
獣人族の長である。転生者として認識されている。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロス達に武器修繕を依頼し、獣人族を率いて要塞攻略を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔法薬でガチムチ化した獣人達の姿に絶望を覚えた。
獅子の獣人
獣人族の戦士である。
・所属組織、地位や役職
獣人族の戦士である。
・物語内での具体的な行動や成果
ブロスの要塞攻略戦に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
獣人族の猛者達
ブロスに付き従う戦士達である。
・所属組織、地位や役職
獣人族の戦士である。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスの魔法薬で肉体強化され、要塞攻略で圧倒的な戦闘力を発揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
奥さん達
ブロスの妻達である。
・所属組織、地位や役職
ケモ・ブロスの妻である。
・物語内での具体的な行動や成果
地下で採掘作業をしていたブロスのもとに押しかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
解放された獣人族達
カルマール要塞で奴隷にされていた獣人達である。
・所属組織、地位や役職
獣人族である。
・物語内での具体的な行動や成果
衰弱しきっていたが、魔法薬入りの芋粥を食べて最強生物へと変貌した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
ガチムチ獣人達
魔法薬によって異常な筋肉と力を得た獣人達である。
・所属組織、地位や役職
獣人族の戦士である。
・物語内での具体的な行動や成果
城壁を素手で登り、防衛する傭兵や聖騎士たちを一方的に蹂躙した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
元の姿に戻る気配がなく、同胞からは英雄として称えられている。
兎耳の青年達
獣人族の若者達である。
・所属組織、地位や役職
獣人族である。
・物語内での具体的な行動や成果
要塞攻略戦などに加わった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
ジ・チュー
強化された獣人達の様子をブロスに報告する獣人である。
・所属組織、地位や役職
獣人族である。
・物語内での具体的な行動や成果
ガチムチ化した獣人達が元に戻らないことをブロスに伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
クム・ヤ・グルゥ
ジ・チューと共に報告を行う獣人である。
・所属組織、地位や役職
獣人族である。
・物語内での具体的な行動や成果
強化された獣人達が元に戻らないことをブロスに伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
イサラス王国
ザザ
イサラス王国の諜報員である。ゼロス達の監視役を務めている。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国諜報部の騎士である。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスとアドの護衛兼監視としてルーダ・イルルゥ平原へ同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
メーティス聖法神国
ガルドア・カーバイン
メーティス聖法神国の将軍である。冷静な状況判断力を持つ老将として行動する。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国・将軍である。
・物語内での具体的な行動や成果
無駄な犠牲を避けるため、カルマール要塞を放棄して兵と民を撤退させる決断を下した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
奴隷商人達
カルマール要塞やアンフォラ関門で獣人族を奴隷にしようとする者達である。
・所属組織、地位や役職
奴隷商人である。
・物語内での具体的な行動や成果
撤退勧告を無視して要塞に残り、獣人達の虐殺の犠牲となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
避難民
カルマール要塞などから逃れる人々である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の民である。
・物語内での具体的な行動や成果
ガルドアの指示に従い、アンフォラ関門を経て本国へと撤退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
ロクス
ガルドアの副官である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の副官である。
・物語内での具体的な行動や成果
ガルドアの命を受け、住民の避難と撤退準備を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
クズイ伯爵
アンフォラ関門の総責任者である。強欲で傲慢な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
アンフォラ関門の責任者である。
・物語内での具体的な行動や成果
獣人族の襲撃時に財産を持ち出して逃亡を図ったが、部下に裏切られ死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
クルカルト
クズイ伯の副官である。野心家で過信が強い。
・所属組織、地位や役職
アンフォラ関門の副官である。血連同盟に所属する。
・物語内での具体的な行動や成果
ガルドアの撤退を嘲笑して徹底抗戦を主張したが、獣人族の力に錯乱し殺害された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
聖騎士団
メーティス聖法神国の軍事組織である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の騎士である。
・物語内での具体的な行動や成果
カルマール要塞などで獣人族と交戦したが、一方的に蹂躙され敗走した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
血連同盟
四神を妄信する過激派組織である。
・所属組織、地位や役職
四神教の裏組織である。
・物語内での具体的な行動や成果
神の教えに反する者を排除するため暗躍を続けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
ミハロウフ法皇
メーティス聖法神国の最高指導者である。名声に固執する権力者として描かれている。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国・法皇である。
・物語内での具体的な行動や成果
ジャバウォックの襲撃に直面し、神国が隠蔽してきた大罪を暴露された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
勇者達の魂
神国に暗殺された勇者達の怨念の集合体である。
・所属組織、地位や役職
元勇者である。
・物語内での具体的な行動や成果
アルフィアの力で滅魔龍ジャバウォックとなり、聖都を襲撃して復讐を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
傭兵
ジャーネ
傭兵の女性である。ゼロスと婚約している。
・所属組織、地位や役職
傭兵である。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスとの婚約後、恋愛症候群を自覚しながらも旅行の誘いに戸惑った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
レナ
少年を愛好する女性傭兵である。
・所属組織、地位や役職
傭兵である。
・物語内での具体的な行動や成果
ジャーネをからかい、刺激的な本を見せてイリスの好奇心を煽った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
イリス
転生者の少女である。
・所属組織、地位や役職
傭兵である。
・物語内での具体的な行動や成果
ジャーネの婚約を勘違いして騒ぎ立て、将来の不安からゼロスへの弟子入りを考えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
神・観測者
アルフィア・メーガス
次世代の観測者である。元邪神としての記憶を持つ。
・所属組織、地位や役職
次世代の観測者である。
・物語内での具体的な行動や成果
勇者の魂に力を与えてジャバウォックを生み出し、四神への復讐を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
アクイラータ
水を司る女神である。自己中心的な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
四神の一柱である。
・物語内での具体的な行動や成果
聖都でジャバウォックを迎撃したが、その後に降臨した邪神の気配に恐怖を抱いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
フレイレス
火を司る女神である。直情的な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
四神の一柱である。
・物語内での具体的な行動や成果
聖都でジャバウォックを迎撃したが、その後に降臨した邪神の気配に恐怖を抱いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
邪神
ジャバウォック討伐後に聖都に降臨した絶対者である。
・所属組織、地位や役職
邪神である。
・物語内での具体的な行動や成果
勇者達の魂を救済し、四神と神国に対して終焉と断罪を宣告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
魔物・使い魔
コボルトの群れ
廃坑ダンジョン等に出現する魔物である。
・所属組織、地位や役職
魔物である。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョン内で探索者たちの前に姿を現した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
使い魔
ゼロスやアドが使役する魔力生物である。
・所属組織、地位や役職
使い魔である。
・物語内での具体的な行動や成果
戦場の状況を上空から監視し、ゼロス達に情報を伝達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
滅魔龍ジャバウォック
勇者達の怨念が実体化した五つ首のドラゴンである。
・所属組織、地位や役職
魔物である。
・物語内での具体的な行動や成果
アルフィアと契約して力を得て、聖都マハ・ルタートを襲撃し復讐を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項はない。
アラフォー賢者16巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者18巻レビュー
展開まとめ
プロローグ おっさん、ブロス君を泣かす
解放奴隷への策とクロイサスの錬金講義
カルマール要塞の総撤退
カルマール要塞では、ガルドア将軍の命令で本国への総撤退が進められていた。商人や住民は不満を抱きながらも退去を始め、奴隷商人達も報復を恐れて獣人奴隷を解放していた。しかし一部の奴隷商人は命令に反発し、撤退準備をわざと遅らせるなど、子供じみた妨害をしていた。
囮となる奴隷商人
ガルドアは、撤退を拒む奴隷商人達を見捨てるつもりでいた。彼らが残れば獣人族の囮となり、その間に避難者や聖騎士団がアンフォラ関門へ逃げる時間を稼げるからである。彼は奴隷商人達の命が自軍の生存率を高めるなら、それも因果応報だと考えていた。
解放された獣人達
ブロス率いる獣人族の軍勢は進軍中に、衰弱した同胞達が逃げ出してきたという報告を受けた。解放された者達は痩せ細り、子供まで骨のように弱っていた。ブロスは、敵が獣人族の仲間意識を利用し、食料を消耗させて進軍を遅らせるつもりだと見抜いた。
食料不足の危機
ブロスは、解放奴隷を見捨てることができない一方で、保護すれば連合軍の食料が足りなくなると判断した。これまで蓄えてきた物資だけでは、増え続ける衰弱者を抱えて進軍を続けることは難しかった。敵の策を厄介だと認めたブロスは、ゼロス達に助けを求めることにした。
ゼロスへの相談
ブロスはゼロスに、インベントリー内の食料を分けてほしいと頼んだ。ゼロスは状況を確認するため、保護された獣人達の元へ向かった。彼らは栄養失調で、昏睡している者までおり、ただの芋粥では助けきれないほど衰弱していた。
芋粥への栄養剤
ゼロスは、獣人達を救うために、芋粥の鍋へカノン製の栄養剤を少量混ぜ込んだ。その芋粥を口にした衰弱者達は、瞬く間に筋肉質の肉体へ変貌した。瀕死だった者達が次々と超人的な肉体を取り戻し、周囲の獣人達は驚愕した。
マキシマム・オーバードライブEX
ゼロスが使ったのは、カノン特製の超高濃縮エナジーポーションであるマキシマム・オーバードライブEXだった。ゲーム時代には、強すぎる効果で制御不能になる使えないアイテムだったが、現実では瀕死の肉体を一気に超人レベルへ引き上げる栄養剤になっていた。ブロスは、獣人達が野獣のように変貌したことに涙目で抗議した。
復讐の獣達
回復した獣人達は、肉体の強化と復讐心によって、殺意に満ちた存在へ変わっていた。家族や仲間を奪われた恨みを晴らそうと、武器すら不要だと拳を握る者もいた。食料問題は、ゼロスがブリザード・カイザードラゴンの肉を提供することで一応の解決を見たが、強化された獣人達が元に戻るかは不明だった。
クロイサスの錬金講義
イストール魔法学院では、クロイサスが渋々ながら錬金学の臨時講師を務めていた。生徒達にはブーステッド・ポーションの基本調合法を教え、独断で余計な素材を混ぜないよう注意した。監視役のマカロフは、その注意が特大のブーメランだと思いつつ、クロイサスが真面目に指導していることを見守っていた。
無自覚の並列思考
クロイサスは講義をしながら、同時に自分の魔法構築について考えていた。彼は無自覚に思考を分割し、後輩の指導と研究を並行して行っていた。これは二つの魔法を同時に扱える可能性を示す高度な才能だったが、本人も周囲もその異質さに気づいていなかった。
調合ミスの解析
生徒の一班が作った魔法薬が茶色に変色すると、クロイサスは作業工程と素材の減り具合から原因を即座に突き止めた。ファラリの根が誤って混入され、本来使うべきオルカ樹の実の種子が不足していたのである。生徒達はクロイサスの推理力に感心し、彼への信頼を高めたが、その裏で行われた高度な思考処理には誰も気づかなかった。
第一話 ブロス、カルマール要塞を襲撃す
カルマール要塞の陥落と清浄の魔法
最後の撤退
早朝のカルマール要塞では、ガルドア将軍の命令により、アンフォラ関門へ向けた最後の撤退準備が整っていた。要塞に残るのは奴隷商や傭兵、撤退を拒んだ住民達だけであり、ガルドアは彼らを見捨てて部下を守る決断をしていた。戦場の空気から今夜には獣人族が来ると読み、彼は南門を開かせて総員を出立させた。
残された傭兵達
撤退する聖騎士達を見送った傭兵達は、獣人族を恐れて逃げる腰抜けだと嘲笑していた。彼らは情報統制のため戦況を知らず、難攻不落の要塞なら獣人族を相手に稼げると慢心していた。獣人族を獣と蔑む神国の常識に染まり、自分達が狩られる側になるとは思ってもいなかった。
夜襲の暴走
夜、カルマール要塞近くに獣人族連合軍が到着した。魔法薬入り芋粥で強化された獣人達は復讐心と戦意に満ち、今にも突撃しそうな状態だった。ゼロスは彼らの憎悪は正当なものだとしつつも、ブロスは変わり果てた獣人達を見て頭を抱えていた。
防衛陣地への突撃
ゼロスが防衛陣地を先に落とす案を出すと、耳の良い獣人達はそれを聞きつけ、作戦説明が終わる前に走り出した。強化された獣人達は三角形の防衛陣地へ向かい、他の獣人達もそれに続いた。ブロスも北門を突破することを決め、もはや作戦とは呼べない力押しの夜襲が始まった。
狩られる傭兵達
防衛陣地では、酒に酔った傭兵達が背後から現れた獣人族に襲われた。首を刎ねられ、殴られ、蹴り飛ばされ、逃げようとした者も投石で肉片に変えられた。矢を浴びせても強化された獣人にはかすり傷程度しか与えられず、傭兵達は自分達が狩る者ではなく狩られる者になったと理解した。
門を斬るブロス
ブロスは防壁の制圧速度が異様に速いことに戸惑いながらも、北門の前に立った。大剣に魔力を込めた一撃は鋼鉄の門と奥の鉄格子をまとめて両断し、獣人族は一気に要塞内へ雪崩れ込んだ。だが要塞内には騎士の姿が見当たらず、ブロスは聖騎士団が要塞を放棄した可能性に気づいた。
奴隷商人の末路
獣人達は逃げようとしていた奴隷商人達を捕らえ、ブロスの前へ引きずってきた。奴隷商人は権威やコネを盾に命乞いをしたが、ブロスは同族だから助けるという考えを切り捨て、無造作に斬首した。以後、傭兵や奴隷商人だけでなく、要塞に残った者達にも慈悲は与えられず、悲鳴が止むまで虐殺が続いた。
朝の野営
夜が明ける頃、ゼロスとアドは遠くのカルマール要塞を眺めながら朝食を作っていた。要塞から漂う血の臭いに二人は食欲を失いかけたが、ザザにはそこまで強く感じられなかった。ゼロスとアドは、自分達の五感が常人より鋭く、戦場の環境でさらに活性化していることに気づいた。
野宿を選ぶ二人
カルマール要塞を拠点にすれば血や腐敗の臭いに悩まされると考え、ゼロスとアドはしばらく野宿でよいと判断した。清浄の魔法があれば風呂に入れなくても困らないためである。ザザはその魔法が失われた生活魔法であり、神官や遺跡のスクロールに限られる貴重なものだと驚いた。
希少な清浄魔法
ゼロスとアドにとって清浄は簡単な生活魔法だったが、この世界では神聖魔法扱いの希少な魔法だった。ゼロスは、すでにツヴェイト達にも気軽に教えてしまったことを思い出し、面倒なことにならないか不安になった。戦場の血の臭いと今後の行軍を思い、ゼロスは早く帰りたいと重い息を吐いた。
第二話 おっさん、傍観中
学院の近接訓練とブロスの復讐
訓練場の武術指導
イストール魔法学院では教育方針の刷新後、魔導士の卵達も近接戦闘や武器の扱いを学ぶようになっていた。ツヴェイト達ウィースラー派の学院生も、特別講師として招かれた近衛騎士から実戦的な訓練を受けていた。近衛騎士は彼らの体力と鍛錬ぶりを評価したが、ツヴェイトは過酷な戦場で通用するにはまだ足りないと考えていた。
講義前の汗臭さ
訓練後、ツヴェイト達は臨時講師として講義に向かわねばならなかった。シャワーを浴びる時間がなく、ディーオとイワンは女子生徒に嫌われることを気にしていた。ツヴェイトは清浄の魔法を使えるが、神聖魔法扱いの珍しい魔法で騒ぎになる可能性があるため、こっそり自分だけ使って更衣室を出た。
嫌われた二人
ツヴェイトは素早く着替えて講義室へ向かったが、ディーオとイワンは汗臭いまま講義に出ることになった。ディーオはセレスティーナに嫌われる妄想から妙な性癖を開きかけ、ツヴェイトに本気で心配された。結局、二人は講義中に女子生徒から嫌そうな視線を向けられた。
逃げる奴隷商人
カルマール要塞では、夜襲から明け方にかけて獣人族による残敵掃討が続いていた。小太りの奴隷商人は路地裏を必死に逃げ回り、ガルドアの撤退命令を聞かなかったことを後悔していた。獣人族を商品としか見ていなかった彼は、今になって自分が取り返しのつかない失敗をしたと悟った。
ブロスの人間嫌い
奴隷商人の前に、龍の頭骨を被ったブロスが現れた。ブロスは、自分が人間嫌いであり、獣人族を家族として受け入れていることを語った。彼は過去に親族から財産を奪われ虐待された経験により人間不信になっており、金のために他者を売り払う奴隷商人を、かつての親戚と重ねて憎んでいた。
家族を奪う者への憎悪
ブロスは、奴隷商人が獣人族を獣扱いし、自分の家族を攫ってきたことを許さなかった。奴隷商人は金や権威で命乞いをしたが、ブロスは同じ人族だから助けるという考えを完全に否定した。彼は奴隷商人を害虫のように見なし、因果応報として死ぬべきだと断じた。
悪魔の哄笑
奴隷商人がブロスを悪魔と罵ると、ブロスは悪魔を生み出したのは人間だと笑った。さらに四神への信仰を吐き捨てるように否定し、神すら殺すと告げた。大剣を振り下ろしたブロスは奴隷商人を粉砕し、周囲の建物ごと抉り取るほどの一撃で路地にクレーターを作った。
要塞の焼却
ブロスは血塗れになった自分を不快に感じ、カルマール要塞を再利用せず焼き払うことを決めた。残党を炙り出し、病気の蔓延を防ぎ、獣人族の無念を葬送の劫火で送るためだった。やがて要塞の各所から火の手が上がり、建物も遺体も炎に包まれて灰へ変わっていった。
ザザの困惑
平原で待機していたザザは、カルマール要塞から立ち上る煙を見て、獣人族が要塞を利用する気がないと察した。補給拠点として使える要塞を焼くことは、イサラス王国側から見ればもったいない行為だったが、獣人族の文化や感情を考えると止めることはできなかった。
アニメ談義の二人
ザザがゼロスとアドに近づくと、二人は空を見上げながらアニメ化作品の改変や炎上について語り合っていた。要塞が焼かれている状況とは不釣り合いな会話に、ザザは理解できず困惑した。二人はブロスが要塞を血の臭いごと熱消毒したのだろうと、淡々と受け止めていた。
ゼロスへの警戒
ザザは、ゼロスとアドが何者なのかを尋ねた。アドはゼロスを危険な魔導士だと示し、ゼロスは公爵家の依頼で来ている以上、これ以上の詮索は干渉とみなすと釘を刺した。ザザはゼロスをソリステア王家やデルサシス公爵が秘匿していた魔導士かもしれないと深読みした。
戦争の行方
ゼロス、アド、ザザは、ブロスがアンフォラ関門で止まるのか、メーティス聖法神国へ一気に攻め込むのかを考えた。獣人族の進撃は、イサラス王国、アルトム皇国、グラナドス帝国、ソリステア魔法王国を含む周辺国の動きにも影響する可能性があった。三人は未来が明るいものではないと理解しつつも、メーティス聖法神国には滅んでほしいという思いを共有していた。
第三話 ブロス君は悲しみ、おっさんは暇を持て余す
カルマール要塞後の獣人族と世界樹の変化
灰になったカルマール要塞
カルマール要塞での戦闘後、城塞都市は瓦礫と灰に変わり、焼け残った傭兵や奴隷商人の死体が転がっていた。ブロスは冷淡にその光景を見つめ、獣人族を食い物にする者は敵として潰すと決めていた。そこに正義はなく、ブロス自身も罪悪感を抱いていなかった。
戻らない獣人達
ジ・チューとクム・ヤ・グルゥは、強化された獣人達の様子をブロスに知らせた。ゼロスは時間が経てば戻るかもしれないと言っていたが、マキシマム・オーバードライブEXでガチビースト化した獣人達は元に戻っていなかった。現実を見たブロスは、ゼロスに騙されたと泣きながら走り出した。
暇を持て余すゼロス達
平原では、役目を終えたゼロスとアドが茶を飲みながら暇を潰していた。二人は戦争に参加する気はなく、獣人族が自分達の手で自由を勝ち取ることに意味があると考えていた。ザザはそんな二人の老人ごっこを胡乱な目で見ていたが、獣人達が戻ってきたことで会話は中断された。
ブロスの抗議
ブロスは、強化された獣人達が元に戻らないことをゼロスに抗議した。ゼロスは、彼らが力を得て喜び、同胞からも英雄として称えられているため、問題はブロスだけではないかと指摘した。ブロスはゼロスが責任逃れをしていると見抜いたが、獣人達自身が力を望んでいたことも否定できなかった。
獣人族の本質
ゼロスは、純粋な獣人族は文明圏に慣れた獣人とは異なり、野生の本能と実力主義が強い種族だと語った。ブロスは、自分が理想とする獣人像に偏りを持っていたのではないかと衝撃を受けた。常時闘獣化したような姿になった獣人達は、他の獣人達から羨望され、受け入れられていた。
危険な精力剤
ゼロスは冗談交じりに、ブロスへ強力精力剤ファイティング・ナイトフィーバーを勧めた。三十人以上の妻を持つブロスには必要にも思えたが、知られればさらに搾り取られる危険があった。ブロスは本気で死ぬと訴え、ゼロスとアドも彼の夜事情の過酷さを察していた。
アンフォラ関門の方針
ブロスは、アンフォラ関門を落として獣人族の拠点にしたいと考えていた。カルマール要塞は遊牧している部族の居留地に使うつもりで、死者は獣人族の習わしに従い自然に還すと説明した。獣人族には鳥葬や土葬など部族ごとの差はあっても、死者を自然へ返す考えが共通していた。
神国侵攻の見通し
ゼロス達は、アンフォラ関門が落ちればイサラス王国、アルトム皇国、場合によってはグラナドス帝国も動くと見ていた。メーティス聖法神国は経済も軍事も混乱しており、勇者を動かしても全方面に対応する力はないとゼロスは考えた。ブロスは関門を落とした後は小休止する方針に傾いたが、獣人族が暇を持て余して喧嘩祭りを始める問題に頭を抱えた。
世界樹の再生
ファーフラン大深緑地帯では、アルフィアが世界樹の成長と魔力の蓄積を確認していた。世界樹の周囲では雨雲が生まれ、大地が急速に緑地帯へ変わり、魔力を受けた生物達が異常な進化を始めていた。これは勇者召喚陣によって乱れた魔力循環を正常化するための現象だった。
混沌を生む結界
アルフィアは、結界が破れれば世界に魔力が満ち、龍脈の流れも正常化すると見ていた。しかし結界内では進化した生物達が増え続けており、解放されれば一時的に生態系が混乱する危険があった。アルフィアにとっては些細な問題だったが、人間にとっては生存を脅かしかねない状況だった。
第四話 おっさん達は、一路アンフォラ関門へ
アンフォラ関門への撤退と火縄銃の接収
アンフォラ関門への到着
カルマール要塞から撤退したガルドア将軍率いる聖騎士団は、強行軍の末にアンフォラ関門へ到着した。騎士達は休息不足で疲弊していたが、関門の扉が開き、避難民と共にようやく一息つける状況になった。ガルドアは、関門を守るクズイ伯爵との対立を覚悟しながらも、部下を守るためなら強行突破も辞さないと考えていた。
クズイ伯爵との確執
ガルドアとクズイ伯爵は以前から意見が合わず、国境守備を任される伯爵側は物資供給を遅らせるなどの嫌がらせもしていた。ガルドアは、勝てない戦いに部下を投入しない姿勢から人望を集める一方で、本国の腹に一物ある者達からは嫌われていた。彼は疲労を押して、報告のため関門の執務室へ向かった。
アンフォラ関門の難所
カルマール要塞を落としたブロス率いる獣人軍団は、休息を挟んだ後、アンフォラ関門へ向けて進軍を始めた。関門は左右を断崖絶壁に挟まれ、前後を巨大な防壁と門に遮られた防衛拠点であり、カルマール要塞以上に攻めにくい構造だった。ブロスは地図を広げ、ゼロス達に攻略の助言を求めた。
使い魔と旧時代の遺物
ブロスは使い魔の魔法符で上空から偵察していたが、在庫が尽きたためゼロスに補充を求めた。交換品として、地下採掘で見つけた旧時代のパワードスーツらしき装備を提示した。ゼロスとアドは興味を示したが、白骨死体や液体金属の話から、呪いやリビングアーマー化の可能性も疑った。
浮遊大陸の仮説
ゼロスとアドは、ルーダ・イルルゥ平原に残る朽ちたビル群や地形から、かつて浮遊大陸が墜落した可能性を考えた。ゼロスは、勇者召喚による魔力低下で反重力力場が維持できなくなり、災害と気候変動で旧文明の劣化が早まったのではないかと推測した。ブロスは処刑要塞の地が実際に浮遊島の落下地点だと知っていたが、その事実を明かすつもりはなかった。
パワードスーツの取引
ゼロスは魔法符の束と引き換えに、ブロスからパワードスーツを受け取った。それは軍用装備のような外見で、人工筋肉や探知機能らしき部品を備えていたが、修復はゼロスにも難しいものだった。ゼロスは劣化版なら作れるかもしれないと思いつつも、実用性や制御の難しさから、本格的な再現は不可能だと判断した。
火縄銃への警戒
ゼロス達は、カルマール要塞で火縄銃を見なかったことから、アンフォラ関門に撤収された可能性を考えた。ブロスは闘獣化した獣人なら耐えられると見ていたが、ゼロスは全員が長時間耐えられるわけではないと指摘し、盾の装備を勧めた。だが獣人達は守りを嫌い、盾を持つのは子供だけだったため、ブロスは強いストレスを抱えていた。
八十八ミリ砲の出番
アンフォラ関門の地形では奇襲が難しく、正面突破には大きな被害が予想された。ゼロスは支援のため、八十八ミリ砲を搭載したハーフトラックを使うことを考えた。試射もしておらず命中精度も不明だったが、城門を砲撃で破壊する方針となり、ブロスはその支援を歓迎した。
現代兵器の危険
ハーフトラックやダネルMGLは、この世界の軍事常識を大きく変えかねない危険な兵器だった。ゼロスは趣味で作っただけだと弁明したが、アドとブロスは将来の混乱を懸念した。結局、ゼロス達は表に出ない支援攻撃として砲撃を行う方向で話を進めた。
クルカルトとの対立
アンフォラ関門では、クズイ伯の副官クルカルトがガルドアを責めていた。彼はガルドアが獣人族と戦わずカルマール要塞を放棄したことを非難したが、ガルドアは獣人族の頭目が勇者を超える転生者であり、部下を無駄死にさせる気はないと答えた。信仰を盾に責めるクルカルトに対し、ガルドアは戦場に神はいないと断じた。
火縄銃の譲渡
クルカルトは、通行許可と引き換えにガルドア隊の火縄銃を接収しようとした。ガルドアにとっても、火縄銃や火薬は荷物であり、関門の時間稼ぎに使われるなら好都合だったため、彼はあっさり受け入れた。さらに彼は、獣人族側にもう一人の強大な魔導士がいる可能性を警告し、関門を守るなら注意するよう伝えた。
血連同盟の野心
ガルドアが去った後、クルカルトはクズイ伯に、避難民へガルドアが任務を放棄したと吹き込む策を提案した。傭兵や奴隷商人を戦力に取り込み、ガルドアを追い落とすつもりだった。さらにクルカルトはクズイ伯すら利用して排除する機会と見ており、四神の名のもとに自分こそが神国を正す存在だと信じていた。
第五話 ジャーネさん達はお仕事中
アンフォラ関門の分岐と護衛依頼のコボルト襲撃
ガルドアの疲労
クルカルトとの面会を終えたガルドアは、部隊の待つ隊舎に戻り、疲れた様子で椅子に座った。彼はクルカルトが野心に溺れ、現状を冷静に見られていないことに呆れていた。アンフォラ関門も安全ではないと判断し、明後日には民と部隊を連れて本国へ向かうつもりだった。
見捨てる決断
アンフォラ関門には、カルマール要塞から避難した民がまだ残っていた。中には撤退に不満を持つ者や、獣人族を甘く見て関門に残ろうとする奴隷商人や傭兵もいた。ガルドアは全ての者を救うことはできないと悟り、自分を信じてついてくる者だけを優先する決断を下した。
平和な護衛依頼
ソリステア魔法王国では、ジャーネ、レナ、イリスが商人キャラバンの護衛依頼を受けていた。道中は盗賊にも魔物にも襲われず、傭兵達が欠伸をするほど平和だった。暇を持て余した三人は、レナの少年趣味やジャーネとゼロスの婚約後の呼び方を話題にしていた。
恋愛症候群と病の話
ジャーネは、ゼロスへの本能的な衝動を避けるため、あまり会わないようにしていると話した。レナは衝動に身を任せるのも楽だと語ったが、ジャーネ達からは犯罪的な欲望だと見なされた。話題は梅毒やペニシリンに移り、ゼロスなら気まぐれで抗生物質を作っていそうだと三人は考えた。
コボルトの襲撃
油断していたところへ、イリスの探知魔法が敵の接近を捉えた。周囲から現れたのは、多数のコボルトだった。彼らは弓で牽制し、近接部隊が二匹一組で傭兵に仕掛けるなど、魔物とは思えないほど組織的な戦い方をしてきた。
連携する傭兵達
ジャーネは大剣ではなくロングソードで応戦し、レナは盾で攻撃を受け流して急所を突いた。イリスは杖と体術で距離を保ち、パラライズやサンド・カーテンで傭兵達を補助した。コボルト達は弓兵を盾役で守るなど手慣れた動きを見せ、傭兵側も連携を整えるまで苦戦した。
引き際の良い群れ
不利を悟ったコボルト達は、遠吠えを合図に撤退した。個体としては強くなかったが、群れとしての統制と判断力は高く、ジャーネ達は危険な群れだと判断した。護衛依頼後、三人は傭兵ギルドに報告し、ギルドは一時的に警戒令を出したが、大きな被害は出ないまま解除された。
ブロスの不安
一方、ブロス率いる獣人族連合軍はアンフォラ関門近くまで進んでいた。ブロスは高まる戦意を抑えるため一度進軍を止め、関門の攻略方法を考えた。火縄銃や二重門、左右の施設からの挟撃を考えると犠牲は避けられず、ゼロス達の砲撃支援にも誤射や欠陥の不安が膨らんでいった。
殲滅者への不信
ブロスは、ゼロスとアドに砲撃支援を頼んだことを急に後悔し始めた。ゼロスは大事な場面で何かをやらかす人物であり、マッスルズの件もすでに問題を生んでいたからである。急いで確認に向かおうとしたが、ブロスは奥方達に捕まり、二日ほど軟禁されることになった。
奴隷商人達の反発
三日目の朝、ガルドアがアンフォラ関門から撤退しようとした時、一部の奴隷商人達が不満を訴えた。彼らは防衛拠点なら獣人族に勝てると考え、クズイ伯やクルカルトに協力すると言い出した。ガルドアは血連同盟の入れ知恵を察しつつ、残りたい者は残ればよいと突き放した。
半数の避難民
ガルドアは、金や奴隷売買に執着する者達を救うことを諦めた。奴隷商人達は闇組織との関係から、奴隷を仕入れられなければ本国に戻っても危険な立場だった。結果として避難民は半数に減ったが、ガルドアは身軽になったと受け止め、ロクスに出立を急がせた。
明暗の分かれ道
ガルドアは、自分を信じる民と部隊を連れてアンフォラ関門を出立した。残った奴隷商人や傭兵達は、撤退する彼らの背中を嘲笑していた。だがその選択こそが人生の明暗を分ける瞬間であり、彼らは絶望が迫っていることにまだ気づいていなかった。
第六話 ブロスの不安と先行するおっさん達
アンフォラ関門砲撃前の不安と隠密準備
ブロスの確認
奥様方から解放されたブロスは、アンフォラ関門到着前にゼロスの元へ向かった。彼は、ゼロスとアドに砲撃支援の経験があるのかを問いただしたが、二人とも訓練経験はなかった。ブロスは、味方への誤射が大惨事を招く可能性に気づき、不安を強めた。
殲滅者の過去
ゼロスは適当に撃てばよいと考えていたが、ブロスとアドは過去の殲滅者達の騒動を思い出し、信用しきれなかった。ゲーム時代の殲滅者達は、危険な魔法薬や呪術アイテム、自爆武器で多くの仲間や無関係な者を巻き込んできた。ゼロスも在庫処分として危険物を売り捌いており、二人から責任を問われていた。
砲撃支援の方針
ゼロスは、乱戦になる前に砲撃で敵の出鼻をくじく方針を示した。ブロスは木製の盾で火縄銃を防ぐつもりだったが、獣人族が命令を聞くかは不安だった。ゼロスはダネルMGLを迫撃砲代わりに使えると考え、城壁上の兵を一掃してから突撃させる案を出した。
隠蔽結界の案
砲撃地点を一キロ以上離したいゼロス達は、平原でハーフトラックを隠す方法に悩んでいた。そこでブロスは、魔法で結界を張り、光の屈折で車体を隠せばよいと提案した。ゼロス達は現代兵器に意識を取られ、魔法で隠す発想を忘れていたことに気づいた。
先行砲撃の決定
砲撃練習の時間はなく、食料も限られていたため、アドは獣人族より先に進んで城門を直接破壊する案を出した。ゼロスは移動中に発見される危険を指摘したが、アドは街道を外れて遠回りすればよいと返した。結局、二人は先行してアンフォラ関門へ向かうことになった。
ハーフトラックの登場
ゼロスはインベントリーから八十八ミリ砲を搭載したハーフトラックを取り出した。濃い緑色の車体と荷台の砲を見たブロスは、世界に戦争を吹っかけるつもりなのかと呆れた。ゼロスは趣味だと軽く流したが、ブロスは各国が同様の兵器研究に乗り出す危険を感じていた。
爆走する車両
ゼロスはアドを完全に乗せる前にハーフトラックを急発進させた。初めて運転する大型車両は想定以上に加速し、アドはドアにぶら下がりながら何とか助手席に乗り込んだ。獣人族達は見慣れない大型車両に驚き、ブロスはアンフォラ関門が跡形もなくなる前に後を追うよう命じた。
八十八ミリ砲の不安
ゼロスとアドは、使い魔でアンフォラ関門を偵察しながら砲撃地点を探した。搭載砲は魔力で弾頭を飛ばす異世界製であり、射程や精度は未知数だった。通常弾は二十三発、特殊弾は五発しかなく、二人は無駄撃ちできない状況でぶっつけ本番の砲撃を行うことになった。
特殊弾の正体
ゼロスは、特殊弾が魔封管の劣化版であり、広範囲殲滅魔法を封入できる砲弾だと説明した。ブロスに貸したダネルMGLの薬莢にも、エクスプロードを封入していた。特殊弾はその場で魔法を込めて撃つ仕様で、暴発前に着弾する前提だったため、アドは別の意味で命の危険を感じた。
アドの方向音痴
使い魔で偵察しながら、アドは自分が異世界では道標がないと迷いやすいことを認めた。ゼロスはそれを決定的な弱点だと見たが、アドはリサやシャクティと出会えたから生き延びられたと話した。戦力は高くても方向感覚に難があるアドは、ゼロスと離れれば迷子になる自信があった。
関門の構造
アドは上空から、アンフォラ関門が二重の壁と門を持ち、目の字を横にしたような構造だと確認した。内壁には障壁や強化魔法の術式らしきものがあり、発動されれば砲撃で崩すことが難しくなる可能性があった。ゼロスは初弾で射角を決め、特殊弾で両壁を一気に破壊する必要があると判断した。
政治的な偽装
ゼロスは、ハーフトラックを見られればソリステア魔法王国の関与を疑われ、メーティス聖法神国に戦争の口実を与えかねないと考えた。そのため、砲撃は強力な魔導士の仕業に見せかける必要があった。二人は丘の裏側を砲撃地点に選び、夜間攻撃に向けて準備を始めた。
第七話 おっさんは砲声を轟かせる
アンフォラ関門への隠密砲撃と崩れた不落神話
丘陵の砲撃拠点
ゼロスとアドは、土木魔法で丘陵を掘ってハーフトラックを隠す窪地を作った。アドは光の屈折を利用した結界と雑草で車体を偽装し、八十八ミリ砲の操作と固定脚の調整を確認した。二人は夜間砲撃に備えながら、使い魔で着弾地点を観測する方針を決めた。
暇潰しの倫理談義
夜が更けるまで、ゼロスとアドはゲームや創作における恋愛、倫理観、ハーレム展開などについて脱線気味に語り合っていた。話に夢中になったゼロスは砲撃の目的を忘れかけていたが、アドに指摘されてようやく本来の任務を思い出した。
神国の技術停滞
ゼロス達は、アンフォラ関門側が近距離の砲撃拠点に気づかない理由を考えた。メーティス聖法神国は魔導士や亜人種を迫害し、錬金術や技術研究を抑圧してきたため、望遠鏡などの品質も低い可能性があった。さらに神官達の支配は国民の知識水準を意図的に抑え、技術発展を妨げていた。
初弾の観測射撃
ゼロスとアドは通常弾を装填し、使い魔による観測を行いながら第一射を放った。砲弾はアンフォラ関門の外壁下方に着弾し、大きな窪みを作ったが、貫通には至らなかった。二人は射角と着弾位置を修正し、次は魔封弾を使うことにした。
城壁の大穴
第二射ではグラビティ・バーストを封じた魔封弾を撃ち込んだ。砲弾は外壁に大穴を開け、内壁を視認できる状態にしたが、城壁全体は崩れなかった。ゼロスはさらに強力な魔法を使う必要があると判断した。
暴食なる深淵
第三射には、ゼロス謹製の暴食なる深淵が封じられた。砲弾は城門右側に着弾し、重力球が外壁と城門を呑み込み、第一城壁を中央から消滅させた。内壁は激しく損傷したものの、城壁に刻まれた強化魔法と障壁魔法が威力を軽減し、完全崩壊は免れていた。
内壁への追撃
ゼロス達は、獣人族の出番を奪いすぎない範囲で内壁を破壊することにした。外壁が消えたことで内壁は攻撃しやすくなり、エクスプロードを封じた砲撃で次々に破壊されていった。アンフォラ関門の防壁は、栄華の落日を示すように瓦礫へ変わっていった。
怠慢な守備隊
アンフォラ関門の聖騎士達は、獣人族の襲撃が予想されていたにもかかわらず、酒に溺れ警備を怠っていた。クズイ伯の方針で賭場や娼館が充実した結果、騎士達の緊張感と戦意は失われていた。彼らは獣人族を弱い存在と決めつけ、ガルドア将軍の撤退を笑い話にしていた。
理解できない攻撃
砲撃を受けた聖騎士達は、城壁に何が起きたのか理解できず混乱した。グラビティ・バーストで外壁に大穴が開き、続く暴食なる深淵によって闇と光の障壁がぶつかり合う光景が広がった。人々はそれを神の救いのように見たが、重力崩壊の衝撃は障壁ごと彼らを呑み込み、第一城壁と門を吹き飛ばした。
クズイ伯の混乱
爆風は渓谷沿いの建物まで蹂躙し、寝室にいたクズイ伯は娼婦と共に吹き飛ばされた。目覚めた彼は、廃墟のように荒れた官邸と、外に広がる惨状を見て混乱した。衛兵から魔法攻撃らしいと聞かされ、勇者イワタを倒した転生者の魔導士を思い浮かべた。
防衛優先の命令
クズイ伯は、第一城壁が破壊され、第二城壁の門も失われたと知って恐慌に近い状態になった。彼は瓦礫の下の負傷者救助を後回しにし、内門前に防御柵とバリケードを作るよう命じた。保身を最優先する彼は、救援要請を考えながらも、ガルドアを笑える立場ではなくなったことを悟った。
第八話 アンフォラ関門の災難
アンフォラ関門の崩壊と獣人族の突撃
クルカルトの絶望
クルカルトは城壁の上からアンフォラ関門の惨状を見下ろし、第一城壁の消滅と第二城壁の損傷に青ざめていた。ガルドアの忠告を軽視した判断ミスにより、自身の立場が危うくなったと悟った。彼はガルドアを失脚させる計画が崩れたことで追い詰められ、転生者と獣人族を滅ぼす以外に道はないと考えた。
砲撃後の観察
ゼロスとアドは、砲撃後もすぐに撤退せず、アンフォラ関門の様子を確認していた。土煙で視界は悪かったが、アドは使い魔を飛ばして内部の状況を探った。爆風で建物が崩壊していたものの、生存者はまだ残っており、獣人族の怒りをすべて奪う事態は避けられていた。
神国への軽蔑
ゼロスとアドは、メーティス聖法神国の奴隷売買や獣人族差別に強い嫌悪感を抱いていた。神国が勇者召喚や獣人族迫害によって世界に害を及ぼしてきた以上、聖騎士達が痛い目を見るのも自業自得だと考えていた。二人はこの場で獣人族を待つことにし、関門側が徹底抗戦を選べば皆殺しになるだろうと見ていた。
迫る獣人族
ゼロスとアドは、北東方面から強い気配が近づいていることに気づいた。使い魔で確認すると、獣人族が凄まじい勢いでアンフォラ関門へ向かっていた。ブロスは荷馬車の上で頭を抱えており、戦意が高まりすぎた獣人達を止められていなかった。
獣人族の暴走
獣人族は、ゼロス達が城壁を破壊しに向かったと知り、門や城壁がなくなるなら勝てると一気に興奮していた。カルマール要塞で自分達の手による勝利を味わったことで、自信と闘争心が爆発していたのである。ブロスは説得しようとしたが、もはや彼らの勢いを抑えることはできなかった。
ブロスの先陣
アンフォラ関門が近づくにつれ、ブロスは冷静に状況を分析した。壊れた門の前にはバリケードが築かれ、城壁上から弓や火縄銃で狙われる危険があった。仲間を的にさせないため、ブロスは荷馬車から飛び降り、先頭集団を追い抜いて単独で門へ向かった。
ダネルMGLの炸裂
ブロスは、ゼロスから預かったダネルMGLを両手に持ち、火縄銃を構える兵士達を前に跳躍した。放たれた弾はバリケードと城壁上の狙撃手達に命中し、連続した爆発で第二城壁の上部や門を吹き飛ばした。ゼロスが封入していたエクスプロードの威力は想像以上で、撃ったブロス自身も驚いていた。
復讐の号令
バリケードと弓兵を排除したブロスは、邪魔者は消えたと叫び、獣人族へ復讐の号令をかけた。獣人達は咆哮を上げ、一斉にアンフォラ関門へ雪崩れ込んだ。不落の門と呼ばれた関門は、防衛機能を失い、血なまぐさい殺戮の場へ変わっていった。
クルカルトの崩壊
クルカルトは火縄銃と槍兵で門を守ろうとしたが、ブロスの武器を見て転生者だと察し、即座に射殺を命じた。だが火縄銃は止められず、ブロスの放った爆発で城壁はさらに崩壊した。自分達が獣人族と転生者を甘く見すぎていたことを悟ったクルカルトは、現実を受け入れられず、精神を壊していった。
傍観する二人
遠方で見ていたゼロスとアドは、ブロスがダネルMGLを使ったことに気づいた。爆発の威力から、ゼロスが威力を抑えた弾ではなく試作弾を混ぜていたことが判明し、アドはいつものやらかしだと呆れた。二人はアンフォラ関門の防衛力が完全に失われたことを見届けながら、獣人族の総攻撃を傍観していた。
第九話 獣人達の復讐は猛威の暴風となり、患者の懺悔は天に届かず
アンフォラ関門の虐殺と戦後の花札
崩れた守備隊
アンフォラ関門は、雪崩れ込んだ獣人族によってカルマール要塞と同じ惨劇の場に変わっていた。傭兵達は獣人族を侮っていたが、大軍に対処できず次々と逃げ出した。兵士達も彼らを繋ぎ止められず、南門へ下がって迎え撃つしかなかった。
狩られる人々
アンフォラ関門は渓谷を利用した防衛拠点だったが、北門を突破されたことで商人、娼婦、傭兵達は一斉に南門へ殺到した。身体能力で勝る獣人族は逃げる者達に追いつき、問答無用で狩っていった。冷静に立て直そうとした者もいたが、中途半端な判断が災いし、真っ先に殺されていった。
ガチムチ獣人の蹂躙
建物の上にいた弓兵に対して、肉体改造された獣人達が壁を駆け上がって襲いかかった。彼らは素手の一撃で壁すら貫くほどの力を見せ、弓兵達を無残に倒した。統率された集団戦闘を得意とする聖騎士達も、原始的な暴力の前に戦術を発揮できなかった。
クルカルトの最期
クルカルトは城壁を失った階段の上で、錯乱しながら惨状を眺めていた。火縄銃や槍兵による防衛策は、ブロスのダネルMGLとゼロス達の砲撃によって覆されていた。正気を失った彼は逃げることもできず、獣人に頭を砕かれてあっけなく命を落とした。
逃げ出したクズイ伯
アンフォラ関門の総責任者であるクズイ伯は、獣人族による被害を知ると徹底抗戦を選ばず、少数の兵を連れて逃げ出した。だが彼はお気に入りの家具や美術品まで持ち出そうとし、重い荷物が逃走を遅らせた。兵士達は、彼の財産への執着と傲慢さに内心で呆れていた。
裏切る兵士達
クズイ伯に同行していた兵士達は、彼が足手まといになったと判断した。彼らは貴金属だけを奪って逃げるため、宝飾品をわざと散らばらせ、拾い集めるクズイ伯を背後から刺した。クズイ伯はガルドアの忠告を聞かなかったことを後悔しながら命を落とし、集めた品々は小悪党達の懐を潤すだけのものとなった。
消化試合の戦場
獣人族による虐殺は続いていたが、戦況はすでに消化試合に近かった。防衛側の統率は失われ、逃げる者を背後から斬るだけの状態になっていた。ブロスは、城壁と火縄銃を失った聖騎士達が思った以上に弱いことを感じつつ、南門に立て籠もられる可能性だけは警戒していた。
戻らない獣人達
興奮状態だった獣人達の中には冷静さを取り戻す者も出ていたが、肉体改造された獣人達はなお激しく暴れ続けていた。ブロスは、彼らが元の姿に戻る気配がないことを気にしていた。彼は未練がましく元に戻る時を待っていたが、その願いが叶わないと悟るにはまだ時間が必要だった。
花札の二人
一方、ゼロスとアドは戦闘が終わるまで合流を避け、花札をして暇を潰していた。アドはカードゲームに弱く、幼馴染のテッドに財力で負け続けた過去を語った。ゼロスは、テッドの自己中心的な性格や、もしこの世界に来ていた場合の危険性をアドと話し合った。
テッドへの警戒
アドは、テッドがこの世界に来ていないことを強く願っていた。ゼロスも、彼が来ていれば死霊術や呪いで終末のような事件を起こす可能性が高いと考えた。二人は、テッドが自己陶酔の強い人物であり、目的と手段が入れ替わる危険な性格だったと振り返った。
戦争の行方
使い魔で戦場を覗いたゼロスとアドは、獣人族の勝利がほぼ決まったことを確認した。二人は、メーティス聖法神国が獣人族反抗の原因を認めない限り戦いは終わらず、やがて宗教国家としての地位は失われると考えた。ゼロスは、大国の崩壊後に群雄割拠の時代が来る可能性を見ていた。
四神と邪神ちゃん
ゼロスは、四神が自分達の駒である神国を失うなら姿を現す可能性があると考えた。その場合、邪神ちゃんも動くはずだと見ていた。アドは彼女の手加減を期待したが、ゼロスは邪神ちゃんが人間の命に関心を持たず、目的のためなら惑星規模の被害も気にしない存在だと語った。
勝利の朝
ゼロスとアドは、邪神ちゃんの本質や神という存在について話しながら、獣人族の戦いが終わったことを確認した。朝日がルーダ・イルルゥ平原を照らす中、アンフォラ関門での戦いは獣人族の圧勝で幕を閉じた。しかしこの大事件は、同日に起きた別の緊急事態によって国内に広まることはなかった。
第十話 舞い降りる復讐者
聖都マハ・ルタート襲撃と勇者の亡霊
聖都に現れた滅魔龍
メーティス聖法神国の聖都マハ・ルタートに、五つの首と巨大な翼を持つ滅魔龍ジャバウォックが舞い降りた。背鰭から雷を放ちながら城壁へ近づく姿に、兵士達は恐怖しつつもバリスタや投石機で迎撃した。だが攻撃の大半は雷の障壁に阻まれ、勇者佐々木学はその防御力を見て愕然とした。
勇者達の復讐心
ジャバウォックの内側では、過去に召喚されて殺された多くの勇者達の魂が対話していた。彼らはメーティス聖法神国に利用され、戦死、暗殺、毒殺などで無念の死を遂げていた。古い魂ほどこの世界そのものへの憎悪が深く、関係のない民を巻き込むことに迷う新しい魂達を押し切り、聖都への復讐を始めた。
城壁を貫く閃光
ジャバウォックは背鰭からエネルギーを集め、青白い閃光を城壁へ放った。神聖魔法の障壁はあっさり貫かれ、城壁は高熱で溶かされ、さらに奥の城壁まで爆発を起こした。街では火災が発生し、神聖魔法以外を認めない聖法神国は、巨大魔獣に対抗する手段を失っていた。
旧大神殿の会議
旧大神殿では、ミハロウフ法皇と勇者達がドラゴン襲撃への対応に追われていた。八坂学は、ブレスの熱量が城壁を貫き街に火災を起こすほど異常であり、近接戦闘も聖剣も意味をなさないと判断した。笹木大地との口論を挟みつつ、川本龍臣はドラゴンの目的に疑問を抱いた。
レギオンの推測
八坂学は、ジャバウォックが神殿や教会を執拗に襲う理由から、ただのドラゴンではなく亡霊の集合体である可能性を示した。彼は勇者達の魂だという核心を避け、メーティス聖法神国に殺された者達の亡霊が結集したレギオンだと説明した。川本龍臣も、ムカデ女を取り込んだ件を踏まえ、その推測に納得した。
無意味な大砲
亡霊の集合体なら物理攻撃が通じないと気づいた直後、城壁の大砲が火を噴いた。砲弾はジャバウォックに直撃したが、水面に石を投げたように飲み込まれ、すぐに再生してしまった。佐々木学は、急造したアームストロング砲が兵器としては機能していても、相手が異常すぎて効果を持たないことを思い知らされた。
聖都の炎上
ジャバウォックは背鰭から無数の光線を放ち、家屋や城壁を薙ぎ払い、火薬の誘爆まで引き起こした。復興しかけていた街並みは一瞬で炎に包まれ、聖騎士や兵士達は迎撃ではなく避難誘導を優先せざるを得なくなった。もはや聖都を守ることは不可能であり、放棄するしかない状況に追い込まれていた。
旧大神殿への到達
ドラゴンは行政地区へ迫り、旧大神殿にまで到達した。巨大な前脚によって四柱の女神像が踏み砕かれ、その場の者達は恐怖で動けなくなった。ジャバウォックから放たれる怨嗟の魔力は聖都中へ響き、人々の魂に呪詛として絡みつき、嘔吐や失神、即死を引き起こした。
勇者の魂の暴露
ジャバウォックは、自分達が強制的に召喚され、利用された末に始末され、この世界の理に縛られたまま還れなくなったと告げた。ミハロウフ法皇は勇者は元の世界に帰されるはずだと否定したが、ドラゴンの身体から死んだはずの勇者達の姿が現れた。川本達は、前園や中山、倉橋といったクラスメイトの姿を見て衝撃を受けた。
岩田定満の告発
五つの首の頭頂部には、ルーダ・イルルゥ平原で戦死したはずの岩田定満の姿があった。彼は法皇に殺されて下水へ捨てられたと語り、メーティス聖法神国の罪を魔力波で広範囲に暴露した。ただしレギオンの中では記憶の同化が起きており、岩田自身の死の記憶も別の魂の記憶に上書きされている可能性があった。
終焉の引き金
レギオンは悪霊の集合体であり、互いの記憶が混ざり合い、強い感情に上書きされる危うい存在だった。比較的まともな魂達はその事実に気づいて戦慄したが、すでに事態は止められない段階に入っていた。聖都マハ・ルタートで、メーティス聖法神国の終焉につながる引き金が引かれた。
第十一話 暴かれた罪と降臨する二神
邪神の降臨と勇者達の魂
暴露された大罪
メーティス聖法神国が勇者達を利用し、不要になれば始末していた真実が暴露され、場は静まり返っていた。岩田定満は、ルーダ・イルルゥ平原から戻った直後に真相を口にしたため殺されたと語った。八坂学も以前から真実を予想し、上層部に消される危険を避けるため黙っていたと明かした。
使い捨ての勇者達
岩田は、勇者達が使い捨ての駒であり、勇者召喚が世界の魔力を枯渇させ、惑星そのものを滅ぼしかけていると告げた。川本龍臣達は、自分達も邪魔になれば始末される立場だったと知った。さらに岩田達は、転生者は勇者とは別格の化け物であり、敵対すべきではないと語った。
邪神の推測
岩田達は、自分達に力を与えた存在が四神ではない正真正銘の神だと示した。ミハロウフ法皇は四神以外の神を否定したが、勇者達は四神が恐れる存在がいると返した。八坂学は、邪神こそがこの世界の正当な神であり、四神は簒奪者なのではないかと推測した。
法皇の弁明
ミハロウフ法皇は、勇者達を始末した理由として、強大な力と異界の知識を持つ者達を放置すれば世界の秩序を壊す危険があったと弁明した。だが元勇者達は、ならば召喚をやめるべきだったと反論した。勇者達は、自分達を誘拐して利用し、世界を滅ぼしかけた四神教を滅ぼす資格があると断じた。
拡散された本音
追い詰められた神官達は、異界人は利用されるための奴隷であり、使い捨ての駒だという本音を曝け出した。ジャバウォック内の勇者達は、盗聴、伝播、拡散のスキルで会話を国中に広げていた。四神教の重鎮達は、自分達の悪行と本心を自ら世間に晒す結果となった。
旧大神殿の消滅
怒りを爆発させたジャバウォックは、火、風、水、土、闇の属性ブレスと全方位レーザーで旧大神殿と行政施設を吹き飛ばした。川本、八坂、笹木はとっさに真下へ逃げ込み、辛うじて生き延びた。三人は地下水路へ逃げ込んだが、爆発で入口が塞がれ、しばらく脱出できなくなった。
二柱の女神
聖都を蹂躙するジャバウォックを、上空から水の女神アクイラータと火の女神フレイレスが見ていた。二柱は、ジャバウォックを自然の理から外れた異形と見なし、制約なく力を振るえる相手だと判断した。ガイラネスとウィンディアが不在のため、二柱だけで討伐に動いた。
神々の戦い
フレイレスの炎とアクイラータの水槍がジャバウォックを襲った。ジャバウォックは属性ブレスやプラズマレーザーで応戦したが、二柱には熱も冷気も通じず、翼を奪われ地上へ落とされた。人々はその戦いを神話の再現のように見つめ、女神達への信仰を強めていった。
ジャバウォックの消滅
二柱は巨大な火球と高密度の氷塊を同時に叩き込み、大爆発を起こしてジャバウォックを追い詰めた。ジャバウォックは最後に全属性を重ねた拡散ブレスを放ち、二柱に手傷を負わせたが、フレイレスの極大火炎球によって塵と化した。女神達は人間の被害にも罪悪感を抱かず、すぐに興味を失った。
闇と嵐の結界
ジャバウォックが滅びた直後、世界は闇に包まれ、竜巻、雷鳴、豪雨が聖都を襲った。アクイラータとフレイレスは、理解できない大規模な結界と圧倒的な気配に本能的な恐怖を抱いた。人々もまた、その存在感に思考を止められ、ただ絶望に苛まれた。
勇者達の魂
光の柱から現れた存在は、聖都に残る勇者達の魂を呼び寄せた。彼女は長く苦しんだ魂達を労い、自らが無念を晴らすと告げて取り込んだ。その姿と言葉には慈しみがあったが、人々は本能で、その存在が慈愛だけの神ではないと理解していた。
邪神の宣告
その存在は、四神とその信徒達に終焉と断罪を贈ると静かに告げた。輝く王冠、銀の角、金の翼、金の瞳を持つ姿は、神聖さと邪悪さを同時に宿していた。人々はそれがこの世界の禁忌であり、唯一の絶対者であると悟り、誰かが震えながら邪神と呟いた。
短編 ブロス君の日常
処刑要塞の日常とブロス争奪戦
ブロスの朝
ケモ・ブロスはゲルの中で目覚め、三十人以上の妻達が眠る光景を見渡した。ハーレムのように見える生活だったが、実際は毎夜の争奪戦に巻き込まれる命懸けの日々だった。ブロスは妻達の好意を幸せに思いながらも、せめて順番を決めてほしいと切実に願っていた。
獣人族の夜事情
ゲルには防音性がなく、夜の営みの声も外に漏れていたが、獣人族は性に関して大らかで気にしていなかった。しかも一夫多妻の家庭では、妻達が武器を持って旦那を奪い合うことが日常だった。ブロスの家庭だけでなく、獣人族全体で同じような争奪戦が起きていた。
武器と信仰
ブロスは金属回収のため、獣人達とともに道具や武器の修繕について話した。獣人族にとって武器は道具であり、精霊や先祖への感謝を示すため、装飾や紋様を彫り込む文化があった。しかし模様が細かいほど武器が脆くなるため、実戦を重視するブロスには悩ましい習慣だった。
地下の古代都市
処刑要塞の地下には鉱床ではなく、逆さまになった古代都市の廃墟が広がっていた。邪神戦争期に浮遊島が攻撃を受け、湖に蓋をするように落下したものだった。ブロスは稼働中の動力部があることを危険視し、この事実を秘匿していた。
使えない特殊合金
地下には旧時代の特殊合金が多く残っていたが、鉄の道具では削れず、鍛冶の技術でも加工できなかった。銅や錫も見つかったものの、武器に使うには弱すぎた。ブロス達は、今ある技術で扱える金属を探すしかなく、面倒な選別作業に追われていた。
夜の奥様達
日が暮れてブロスが戻ると、奥様達はあられもない姿で彼に迫った。彼女達は誰が最初に相手をするかで譲らず、ブロスはローテーションを提案したが聞き入れられなかった。夜の営みは子作りであり、第一子を得ることは獣人族の次代に関わるため、奥様達は本気だった。
子作り武力衝突
隣のゲルから戦斧が飛び込んできたことで、ブロスの奥様達も触発され、武器を手に取った。各家庭で同じように争奪戦が行われるため、拠点の夜は内戦のような騒ぎになっていた。慣れた男達は酒を飲みながら見守っていたが、ブロスはまだその文化に慣れていなかった。
逃げられない旦那様
ブロスは数名の妻に促されて逃げようとしたが、それは彼を独占するための抜け駆けでもあった。しかし片付けを終えた他の妻達に見つかり、逃亡は失敗した。結果としてその夜の相手が決まり、ブロスは翌朝も搾り尽くされた体で太陽を拝むことになった。
アラフォー賢者16巻レビュー
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