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どんな本?
■ 作品概要
『アラフォー賢者の異世界生活日記 8』は、オンラインゲームの能力を持ったまま異世界に転生したアラフォー男の成り上がりファンタジーおよびスローライフを描いた作品である。 本作の世界は、剣と魔法が存在するだけでなく、かつての高度な魔導科学文明の遺物が残る過酷なファンタジー世界となっている。 第8巻では、アルトム皇国を訪れたゼロスが、知人の神官ルーセリスの出生の秘密と、彼女の母が謂れなき罪で追放された悲劇的な過去を知ることになる。一方、メーティス聖法神国を襲った巨大昆虫型魔物【グレート・ギヴリオン】の大群(ヘルズ・レギオン)が、悪意ある異端審問官の手によってソリステア魔法王国へと誘導されてしまう。ゼロスは国境付近の城塞都市スライストで偶然、かつてのゲーム仲間である転生者・アドと再会する。【魔王】クラスに進化しようとする超巨大魔物を前に、ゼロスはアドを巻き込んで絶望的な防衛戦(レイドイベント)に挑むことになる。また、ゼロスの飼い鳥であるコッコ達が「神獣」へと変異進化し、悪党を成敗する痛快なエピソードも描かれている。
■ 主要キャラクター
・ゼロス・マーリン:平穏を望むアラフォーの魔導士であり、規格外の力を持つ転生者である。自作の空飛ぶバイク「サイドワインダー号」で移動中に魔物の大暴走に遭遇し、偶然再会したアドを弱みにつけこんで討伐に巻き込むなど、相変わらず大人げない行動をとる。
・アド(安藤俊之):ゼロスのゲーム時代の知人である転生者の青年。重度の方向音痴が災いして道に迷い、スライストの街でゼロスと再会してしまう。ゼロスに妻の居場所を人質に取られる形で、魔王討伐という無謀な戦いに強制参加させられる不憫な立ち位置である。
・ルーセリス:サントールの街で孤児を育てる見習い神官の少女。実はアルトム皇国の皇族(ルーフェイル族)の血筋であり、人族の姿で生まれた「先祖返り(隔世遺伝)」であることが判明する。ゼロスに対して明確な恋心を抱き始めている。
・ルセイ・イマーラ:アルトム皇国の「黒天将軍」であり、ルーセリスの実の姉である。仮面をつけている時は勇ましい武人だが、素顔は極度の人見知り(はわあわ将軍)というギャップを持つ。
・メルラーサ:酒と博打を愛する破天荒な「放蕩司祭」。ルーセリスの育ての親のような存在であり、ルーセリスの母・メイアの悲劇的な最期を看取った人物として過去の真実を語る。
・コッコ達(ウーケイ、ザンケイ、センケイ):異常進化を遂げたゼロスの使い魔。悪を憎む強い信念を持ち、非道な異端審問官たちを成敗するため、強大な力を持つ「コカトリス」へと変身する。
■ 物語の特徴
本作の特徴は、凄惨な過去の因縁や、都市を滅ぼすほどの魔物の大群(ヘルズ・レギオン)の襲来といったシリアスで絶望的な世界観の中で、転生者たちがオンラインゲーム時代の「ノリ」や「黒歴史」を平然と持ち込み、カオスなドタバタ劇を展開するギャグとの激しい落差にある。 特に、魔王クラスへの進化を目前にした絶望的な巨大魔物との戦いにおいて、主人公が「一人で戦うのは不公平だ」という個人的な理由から、再会したゲーム仲間(アド)を弱みにつけ込んで巻き込む展開は、英雄的な主人公像とは一線を画しており非常にユニークである。 また、ヒロイン(ルーセリス)との関係においても、よくある安易なハーレム展開にはならず、アラフォーのおっさんゆえに年齢差や一夫多妻という異世界の常識に対してリアルな躊躇いや戸惑いを見せる点も、読者にとって人間味を感じさせる興味深い差別化要素となっている。
読んだ本のタイトル
アラフォー賢者の異世界生活日記 8
著者:寿安清 氏
イラスト:ジョンディー 氏
出版社:KADOKAWA(MFブックス)
発売日:2018年12月25日
ISBN:9784040653907
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あらすじ・内容
【大賢者】は人助けがお好き!?
イルマナス地下街道の開通工事に無理やり参加させられたゼロスは、工事の途中で発見したイーサ・ランテ古代遺跡にて本物の悪魔とガチバトルしたり、遺跡の最終攻撃兵器【セラフィム・バースト】を意図せずに発動させたりと、怒涛の作業ライフを過ごす。
ゼロスはほどなくして街道工事を終えると、休む暇もなく今度はソリステア魔法王国の外交官をアルトム皇国まで護衛することに。そんなゼロスは、道中に潜伏していた勇者一行の襲撃を受けるも、皇国側の護衛担当・ルセイとの活躍によって、見事勇者達を取り押さえることに成功する。
こうしてゼロス達は捕虜の勇者達を連れ、皇都アスーラーを目指すのだが、
「僕は王宮に着いたらお役御免ですね。観光でもして帰るかな~」
厄介事センサーに何か反応したのか、おっさんは早くも帰りたいオーラを解放し……!?
前巻からのあらすじ
ドワーフ達に拉致られたオッサンは、地下街道の開通工事に従事させらる。
そんな時に地下都市が発見されるが、、
そこは高位なスケルトンの巣窟だった。
さらにそこには悪魔が発生しておりオッサンがアッサリ討伐。
そして、地下の管理システムをオッサンが掌握したら世界の魔力を不自然に集めていた聖法神国の勇者召喚システムを古代の人工衛星の兵器で殲滅。
そして、聖法神国に攻略されていた獣人達は転生者のケモ・ブロスに率いられて反撃に出る。
その聖法神国に召喚された勇者の1人、風間は聖法神国の教えに当初から疑問に思って調べ回り。
彼の職業が神官が最も忌み嫌う魔道士だったのが祟り、聖法神国の上層部から疎んじられ、最前線送りにされてしまった。
そして風間は、一部の勇者がやらかして撤退せざるを得なくなった時。
殿を務め仲間の撤退を助けて、幼馴染の姫島の目の前でアルトム皇国の騎士に討たれて散った。
そんな風間を思っていた姫島は、幼馴染を亡くして復讐の鬼となっていた。
周りの勇者達の心に風間の死は後悔の象徴になる。
なのに、、
オッサンからは傍迷惑な園児に振り回される子と被ると言われ。
実際は重傷を負っただけで、捕虜として保護されており。
風間くんは生き残っていた。
しかも、アルトム皇国のお姫様とハッピーな状態となって、、
シリアスだと思ってたら、最後のこのオチw
その彼(性的嗜好のため)にフラれた姫島は暗殺者を拷問するオッサンのファンになってしまうwww
殲滅者のファンがまたふえたw
感想
読んでまず感じたのは、本作らしいシリアスとギャグの落差が存分に発揮された巻だったということである。
出生の秘密や国家間の陰謀といった重い出来事が描かれる一方で、登場人物たちの行動がことごとく予想を裏切ってくる。その絶妙なバランスが本巻でも健在だった。
まず印象に残ったのは、風間を巡る騒動である。
前巻では死亡したと思われていた彼だが、実際にはしっかり生存していた。
その事実だけでも驚きだったのだが、さらに衝撃だったのは復讐に燃えていた姫島の反応である。
命懸けで仇を討とうとしていたにもかかわらず、当の本人が元気に生きていたうえ、想像とは違う一面まで明らかになる。
読んでいて思わず笑ってしまった。
特に姫島とアルトム皇国の姫が奇妙な友情を築いていく流れは、本作らしいカオスな人間関係の象徴だと感じる。
一方で、本巻の中心となるのはルーセリスの過去である。
普段は子供たちに振り回されながらも逞しく生きている彼女だが、その出生には想像以上に重い事情が隠されていた。
アルトム皇国の公爵家に生まれながら、羽が生えていなかったという理由だけで母親ごと追放されてしまう。
その結果として家族を失い、孤児として生きることになった過去には胸が痛んだ。
だからこそ、今さら皇国から迎えに来られても簡単には受け入れられないという彼女の考えには強く共感できる。
特に印象的だったのは、ゼロスが感情論ではなく隔世遺伝の可能性を指摘する場面である。
周囲が血統や伝統に振り回されている中で、転生者らしい現代的な視点から問題を切り込む姿には思わず納得させられた。
そして後半では、ゼロスの姉が関わる騒動によって魔獣のスタンピードが発生する。
聖法神国の異端審問官たちによる陰湿な工作は読んでいて不快感を覚えるほどだった。
だからこそ、彼らが怒ったコッコたちによって蹂躙される展開には大きな爽快感があった。
本作を読んでいると時々忘れそうになるが、コッコたちは見た目こそ可愛らしいものの、実際には作中屈指の危険生物である。
村人たちを救い、後に聖獣として扱われる流れも実にこの作品らしい。
また、巨大なゴキブリ型魔獣との戦いも印象深かった。
ただでさえ嫌悪感を抱く見た目なのに、魔王級寸前まで成長しているという設定には思わず顔をしかめてしまう。
しかし、そんな危機的状況でありながら、ゼロスがアドを半ば強引に巻き込んで討伐へ向かう流れには笑ってしまった。
嫁の情報を餌に協力させるあたりは実にゼロスらしい。
二人が協力してスタンピードを鎮圧する展開は迫力がありながらも、どこかコミカルで本作らしい締め方だったように思う。
読んでいて感じたのは、本巻は登場人物たちの過去や背景が大きく掘り下げられた巻だったということである。
ルーセリスの出生、風間と姫島の関係、アドやゼロスたち転生者の思惑。
それぞれが抱える事情は決して軽くない。
しかし、どれほど重い話になっても最後にはギャグや騒動へ転がっていく。
その独特の空気感こそが本作最大の魅力なのだろう。
シリアスな人間ドラマと破天荒なコメディが絶妙なバランスで描かれており、最後まで楽しく読み進めることができた一冊だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ルーセリスの出自
『アラフォー賢者の異世界生活日記』に登場する見習い神官・ルーセリスの出自と、彼女が孤児として育つことになった悲劇的な背景について解説する。
一見すると普通の人間である彼女の正体は、翼を持つ亜人の国であるアルトム皇国(ルーフェイル族)の皇族の血を引く娘であり、同国の将軍ルセイ・イマーラの実の妹である。その数奇な運命の全容は以下の通りである。
1. 翼を持たずに生まれた先祖返り
アルトム皇国の民であるルーフェイル族は背中に翼を持っているが、ルーセリスは翼を持たずに人族の姿で生まれた。
・これは母・メイアが不義を働いたわけではない。
・ルーフェイル族の祖先である人族の血が突然現れた隔世遺伝(先祖返り)によるものであった。
2. 母・メイアの追放と逃亡
翼のない子供が生まれたことで、周囲はチェンジリング(妖精の子供の取り替え)や不倫を疑った。
・母・メイアは謂れのない罪で国から追放されることとなる。
・メイアは追放が実行される前に、幼いルーセリスを連れて密かに国を後にした。
3. 真相究明の旅と母の死
メイアは、なぜ翼のない子が生まれたのかという原因を究明し、胸を張って家族の元へ戻るために、ソリステア魔法王国にあるイストール魔法学院の大図書館を目指していた。
・山脈を越える過酷な旅の途中で魔物に襲われて重傷を負うが、偶然通りかかったメルラーサ(後の司祭長)に助けられる。
・メルラーサの手助けもあり、ついにルーセリスが先祖返りであるという真相を突き止めたが、メイアは流行病に倒れてしまう。
・死の間際、メイアは、皇族の血はあの子の重荷になる、一人で生きていける強さを身につけるまで出生の秘密にしてほしい、とメルラーサにルーセリスを託して息を引き取った。
4. 真実を知ったルーセリスの決断
こうして孤児となったルーセリスは、メルラーサ達の愛情を受けて養護院で育った。
・成長後、ルセイの素顔を見たゼロスが推測したことで、ついに自身がアルトム皇国の血筋であるという真実を知ることとなる。
・自分が生まれたせいで母が謂れなき罪を着せられたことにショックを受けるが、それでも彼女は、街での暮らしが性に合っている、と今さら皇族に戻ることは拒否した。
・自分と同じ境遇の孤児たちを救うため、現在の神官としての生活を続けることを選んだ。
まとめ
ルーセリスの出自は、アルトム皇国の皇族という高貴なものでありながら、先祖返りという特異な体質ゆえに母子ともに国を追われるという悲劇に見舞われた。しかし、母の命がけの逃亡とメルラーサの庇護によって、彼女は血筋の呪縛から守られて育つことができた。真実を知った後も、過去の地位に固執することなく神官として孤児たちのために生きる道を選んだ彼女の姿勢は、血統よりも現在の絆や信仰を重んじる強い意志を示している。
邪神と勇者
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における「邪神の正体」と「勇者召喚の真実」、および両者がもたらす世界滅亡の危機について解説する。
世界の創造主と四神の無責任な行動に端を発するこれらの問題は、世界のシステムを根底から揺るがす破滅的な構造を孕んでいる。その残酷な真実と歴史の全容は以下の通りである。
邪神の正体と四神の誕生
邪神の正体は、創造主によって生み出された次元管理生命体であり、本来はこの世界を管理する正当な権限を与えられた神である。
・創造主が自分好みのグラマラスな女神を作ろうとして失敗した。
・結果として臓物で構成された化け物のような醜悪な姿となったため、落胆した創造主によって封印されてしまう。
・創造主は急遽、妖精王をベースにして四神を生み出し、管理権限を分割して与えた。
・しかし、享楽的な妖精をベースとする四神が世界をまともに管理することはなかった。
邪神戦争と本来の勇者
封印から千年ほど経って自我を得て目覚めた邪神は、自分の代わりである四神の存在を察知し、管理権限を取り戻そうと活動を開始した。これが、現代地球以上の科学力を持っていた当時の高度魔導科学文明と衝突した邪神戦争である。
・邪神は戦車や戦闘機、衛星軌道からの攻撃すら通じない圧倒的な力で人類の軍勢を蹂躙した。
・人類が窮地に陥った際、三次元防衛システムが起動し、異分子を排除するための抗体として異世界から召喚されたのが本来の勇者である。
・システム上、抗体である勇者は神器を用いて邪神を封印する役目を終えれば、元の世界へ送還される対の仕様になっていた。
ゲーム世界への不法投棄と転生者の誕生
かつての勇者たちによって封印された邪神であるが、近年になって封印が弱まり復活しかける事態となる。
・そこで四神は、地球のVRゲーム『ソード・アンド・ソーサリス』の世界へ邪神を不法投棄(再封印)するという暴挙に出た。
・ゲーム内でゼロスらトッププレイヤーがこれを倒すが、邪神の自爆テロに巻き込まれて死亡する。
・この四神の不始末の尻拭いをさせられた地球側の神々は、四神への当てつけとして、死亡したトッププレイヤーたちにゲームのチート能力を与えてこの世界へ転生させた。
・ゼロスのインベントリに邪神魂魄が入れられていたのも、地球側の神々による四神への嫌がらせと推測される。
現代の勇者召喚の嘘と使い捨ての駒
四神は邪神封印後も、異世界の娯楽や文化を求める身勝手な目的で30年おきに勇者召喚を繰り返している。宗教国家であるメーティス聖法神国も、自国の権力と軍事力を維持するためにこれを利用していた。
・現在の大神殿の召喚魔法陣には送還機能が備わっておらず、召喚された勇者は絶対に元の世界へ帰ることはできない。
・そのため、騙して洗脳しやすい未成年の学生ばかりが意図的に選ばれていた。
・真実に気付く可能性のある大人は召喚直後に事故に見せかけて暗殺されるという、完全な使い捨ての駒として扱われていた。
召喚魔法陣の欠陥と無意味な生贄の人災
マルトハンデル大神殿の地下にある勇者召喚魔法陣は、30年かけて自然に魔力を蓄え、自動で召喚を行うシステムである。
・本来は魔導士が管理すべきシステムであったが、四神教が権威拡大の過程で魔導士を異端として排除し研究資料も廃棄したため、現在の神官たちはその仕組みを全く理解していなかった。
・そのため、魔力の蓄積が不安定になるシステムの欠陥を補うためだと勘違いし、生贄の儀式が必要だと思い込む。
・結果として、多くの獣人族や無実の罪人を無為に殺戮し続けるという恐ろしい人災を引き起こしていた。
次元崩壊(ラグナロク)と世界滅亡の危機
勇者召喚が引き起こす最大の危機は、世界の枯渇とシステムの歪みの二点に集約される。
・一つは、時空に穴を開けて異世界と繋ぐために、この世界の莫大な魔力を消費・搾取してしまうことである。これにより世界の魔力は枯渇寸前となり、生態系が崩壊する滅亡の危機に瀕していた。
・もう一つは、送還されない勇者たちの魂(異界の理)がこの世界で殺され、理の中に滞留し続けることで世界のシステムに歪みが生じることである。この歪みが増幅されれば、森羅万象の理が侵食され、最終的には次元崩壊を引き起こす危険性があった。
神命の勘違いと邪神のその後
これらのおぞましい真実を遺跡のシステムや邪神との対話で知ったゼロスは、古代兵器セラフィム・バーストをうっかり誤射して大神殿ごと召喚魔法陣を消し飛ばし、結果的に世界を滅亡の危機から救うこととなった。
・ゼロスが誤って起動したセラフィム・バーストによるクレーターを、メーティス聖法神国は邪神の攻撃だと勘違いする。
・これを受けて法皇は現代の勇者たちに、邪神を探し出して討伐せよ、という新たな神命を下した。
・しかし、ゼロスから見せられた古代の戦闘記録映像で、邪神が高度兵器を一撃で消し飛ばす圧倒的な存在であることを知った勇者たちは、絶対に勝てるわけがないと絶望し、自分たちが都合のいい捨て駒にすぎないことを完全に悟る。
・なお、ゼロスはホムンクルスの培養槽と邪神魂魄を用いて邪神を復活させるが、因子抽出の際に別の因子が混ざってしまったため、本来の姿ではなくケモ耳や翼、角が生えた幼女の姿で復活することとなった。
まとめ
『アラフォー賢者の異世界生活日記』における邪神と勇者を巡る構造は、神々の怠慢と人間側の無知が重ね合わさった絶望的なシステムである。本来の世界管理神であった邪神は容姿ゆえに封印され、世界の魔力を搾取し時空を歪める偽りの勇者召喚は、世界の寿命を縮めるだけの儀式へと形骸化していた。ゼロスの偶発的な行動によって召喚陣が破壊されたことで次元崩壊の危機は回避され、邪神自身もまた、世界の脅威ではなく規格外の転生者の手によって幼女の姿で再誕するという、皮肉に満ちた結末を迎えるにいたった。
アルトム皇国
『アラフォー賢者の異世界生活日記』シリーズにおいて、物語の政治的・軍事的な勢力図に大きな影響を与える重要な国家であるアルトム皇国の特徴と歴史的背景について解説する。
過酷な山岳地帯に位置する強国であり、圧倒的な個人の武力と地理的優位性を誇る同国の全容は以下の通りである。
1. 翼を持つ最強の民であるルーフェイル族
アルトム皇国の国民は、背中に翼を持つ亜人種であるルーフェイル族である。
・彼らは創世神によって最初に生み出された種族であり、のちに天使とも呼ばれた純粋な古代種である。
・戦闘において非常に優れた能力を持ち、国民の大半が並の騎士よりも強い戦士である。
・国民の平均レベルはLV400、最高でLV600以上とも言われ、この世界で唯一LV1000を超える可能性を秘めた種族とされる。
・空中からの攻撃や魔法を駆使し、ドラゴンとまともに集団戦を行える唯一の種族でもある。
2. 皇都アスーラーと独特の文化
皇都であるアスーラーは、西洋風の建築技術と東洋風の文化が混ざり合った不可思議で美しい街並みを持っている。
・城壁の上に唐風建築を思わせる赤い煉瓦の建物が並び、街の構造は碁盤の目状に整備されている。
・街では将棋や囲碁などが販売されており、過去に召喚された勇者や転生者が文化を持ち込んだ可能性が示唆されている。
・政治形態としては、王族が政務を親族で行う一方で、一般の民は商売や農耕など比較的自由に暮らしている。
3. メーティス聖法神国との戦争
アルトム皇国は、四神教の総本山であるメーティス聖法神国から魔族や邪教と認定され、侵攻を受けていた。しかし、アルトム皇国は地の利を活かした防衛戦を展開する。
・最終防衛ラインである大渓谷、邪神の爪痕、に神聖騎士団や勇者たちを巧みに誘い込んだ。
・ファーフラン大深緑地帯から現れた魔物の大群を利用して戦況を攪乱させる。
・結果として、最強と信じられていた勇者の半数を討ち取り、神聖騎士団に壊滅的な大敗を味わわせるという圧倒的な軍事力を見せつけた。
・この戦いで生死不明となった勇者・風間卓実は、アルトム皇国に救出されて第二皇女ラシャラと恋に落ちている。
4. ソリステア、イサラスとの三国同盟と地下街道
アルトム皇国は、慢性的な食糧難に苦しんでいた隣国のイサラス王国に食料援助を行っており、強い恩義を持たれている。
・ソリステア魔法王国とは三十年以上の歳月をかけ、極秘裏にイルマナス地下大遺跡を経由する地下街道の整備を進めていた。
・この地下交易路が開通したことで、メーティス聖法神国の妨害を受けずに三国間(アルトム皇国、イサラス王国、ソリステア魔法王国)で安全に物資を行き来させることが可能となった。
・これにより、強固な対メーティス包囲網が完成したのである。
5. 旧時代の悲劇と回復魔法の失伝
実はアルトム皇国(ルーフェイル族)も、旧時代にはイーサ・ランテと同様の高度な未来都市に住んでいたが、邪神戦争において邪神の攻撃を受け都市が壊滅した過去を持つ。
・その際、機械によるインストール形式であった回復魔法のデータ術式を取り出せなくなり、回復魔法の技術が失伝してしまった。
・そのため、現代では攻撃魔法や補助魔法に優れる一方で、怪我の治療においてはメーティス聖法神国の神聖魔法に対して不利な状況を強いられてきた。
・しかし、ソリステア魔法王国から回復魔法のスクロールが無償提供されたことで、その弱点も克服しつつある。
まとめ
アルトム皇国は、古代種ルーフェイル族としての圧倒的な戦闘能力と、大渓谷などの険しい地勢を武器に、宗教国家の不当な侵略を幾度も退けてきた。旧時代の邪神戦争によって回復魔法を失伝するという技術的弱点を抱えていたが、ソリステア魔法王国との協力によってこれを補うことに成功している。さらに、イサラス王国を含めた三国による地下交易路の開通は、経済的・軍事的な自立を確固たるものとし、横暴な外交を繰り返してきたメーティス聖法神国を包囲・凋落させる決定的な原動力となったと言える。
聖法神国の魔物誘導作戦
『アラフォー賢者の異世界生活日記』シリーズにおいて描かれる、メーティス聖法神国の魔物誘導作戦の顛末と、それに付随する災害級魔獣を巡る防衛戦の実態について解説する。
大地震などの災害により復興が遅れ、最大戦力である勇者召喚も不可能となったメーティス聖法神国は、他国に災厄を押し付ける卑劣な作戦を立案したが、数々の誤算により凄惨な自滅の顛末を迎えることとなった。その全容は以下の通りである。
背景と作戦の立案
メーティス聖法神国に、数万の眷属を従えた巨大昆虫型魔物グレート・ギヴリオン率いるヘルズ・レギオンが襲来した。
・この魔物の群れにより、国境近くの城塞都市やシュトーマル要塞が次々と地図から消え去っていった。
・要塞の防衛戦において、神聖騎士団の火縄銃は魔物の硬い外骨格に弾かれ、巨大なギヴリオンの羽音による振動で防壁は破壊されてしまった。
・ヘルズ・レギオンは要塞を餌場と認識し、常駐していた聖騎士たちをすべて捕食して壊滅させた。
・迎撃戦力を用意できないミハロウフ法皇は、異端審問神官長ジョスフォークに対応を丸投げする。
・人間をいたぶることにしか喜びを感じない異端審問官達にとって、昆虫型魔物の相手は全く気乗りのしない仕事であった。
・そこで新入りの女異端審問官であるシャランラ(大迫麗美)が、魔物を引き寄せる禁断の秘薬である邪香水を使い、魔物の群れを敵国であるソリステア魔法王国へ誘導する案を提案した。
狂信者の利用と村の占拠
この作戦の実行には、四神教血連同盟と呼ばれる妄信者達が利用された。
・異端審問官達は神敵であるソリステア魔法王国に罰を下すという偽の神託を与え、彼らに邪香水を撒き散らしながら魔物の餌食となる殉教の役目を負わせた。
・一方で、異端審問官達自身は安全地帯を確保するため、魔避香を使ってある村を外部から隔離し占拠した。
・逃げ場を失った村人達を拘束し、彼らは安全な場所で猟奇的な快楽殺人を満喫しようと企んでいたのである。
アルトム皇国の対応とスライストの防衛戦
この魔物の移動に対し、周辺諸国もそれぞれの対応を迫られることとなった。
・アルトム皇国の特務戦士団の将であるルセイのもとに、邪神の爪痕から災害級の魔獣が高速で移動したという緊急連絡が入る。
・しかし、ルーフェイル族は普段からこの防衛陣地で強大な魔物を相手にしているため大きく動揺することはなく、ルセイは前線に警戒態勢だけを取らせてゼロスたちの護衛任務を優先した。
・メーティス聖法神国を襲ったグレート・ギヴリオンは、その後ソリステア魔法王国側へ誘導され、国境の城塞都市スライストへと迫っていた。
・さらにこの個体は、人間サイズになり高い知能と学習能力を持つ魔王クラスへの進化を目前にしていた。
・スライストの傭兵ギルドにおいて、ゼロス、特務遊撃騎士隊の大隊長アーレフ、ギルドマスターのドンサークによる防衛会議が開かれた。
・会議の結果、スライストの騎士団と傭兵たちは暴走して押し寄せる魔物の群れから街を守る防衛戦に専念することが決まった。
・スライスト全体を脅かす魔王級グレート・ギヴリオンの討伐については、ゼロスと、偶然街で再会した転生者のアド(ゼロスに妻の居場所を交渉材料にされ巻き込まれた)の二人で引き受けることとなった。
数々の誤算と作戦の失敗
完璧に思えたメーティス聖法神国の作戦は、主に三つの大きな誤算によって破綻することになる。
・第一の誤算(魔物の拡散):邪香水の誘引効果には範囲の限界があった。誘導された魔物もいたが、範囲から外れた多くの眷属(チャバネコックローチやヤマトギヴリなど)はソリステアへ向かわず、メーティス聖法神国内に残り拡散していったため、結果的に自国への災厄をさらに広げてしまった。
・第二の誤算(ソリステアの騎士達の強さ):ソリステア魔法王国に流れ込んだ魔物の群れは、ファーフラン大深緑地帯での過酷なサバイバルを経て異常な強さを身につけたアーレフ率いる特務遊撃騎士隊によって迎撃された。騎士達は民の避難を護衛しながら、押し寄せる魔物を余裕をもって次々と討伐していく。その圧倒的な凶悪さを森の陰から監視していたシャランラは戦慄し、思い通りに混乱が広がらないことに苛立ちながら撤退を余儀なくされた。
・第三の誤算(神獣コカトリスによる断罪):異端審問官達が占拠していた村に、偶然ゼロスの使い魔である三羽の黒いコッコ(ウーケイ、ザンケイ、センケイ)が入り込んでいた。快楽のために弱者をいたぶり命を奪う彼らの無意味な殺戮に激しい怒りを抱いた三羽は、炎、雷、闇の力を纏う巨大な神獣コカトリスへと変身を遂げる。逃げ場を失った異端審問官達は完全に狩られる側となり、神獣達による一方的で徹底的な断罪を受けた。
古代魔導科学文明の第三防衛戦線(参考)
なお、こうした人類と災害級の存在との戦いは、旧時代にも絶望的な規模で記録されている。
・地下都市イーサ・ランテに残されていた古代の戦闘記録映像では、人類の生存を脅かす最大の災害である邪神に対する防衛戦(第三防衛戦線)が描かれている。
・多種族連合軍は数万の魔導戦車、戦闘機、衛星軌道からの光の矢(核弾頭に匹敵する兵器)などで迎撃を試みたが、邪神には一切通用しなかった。
・防衛戦はわずか三時間で敗北に終わり、軍勢だけでなく都市や背後の山脈ごと消滅させられるという絶望的な蹂躙であった。
まとめ
メーティス聖法神国が立案した魔物誘導作戦は、自国の国難を敵国であるソリステア魔法王国へなすりつけようとした卑劣なものであったが、その結果は完全な破滅と自滅であった。邪香水の限界による国内への魔物の拡散、ソリステア側の特務遊撃騎士隊やゼロスらの強力な防衛網、そして占拠した村での神獣コカトリスによる異端審問官の粛清という誤算が重なり、陰謀は無惨に潰えた。古代の邪神戦争ほどではないにせよ、災害級の脅威を前に保身と他国への加害のみに終始した狂信的な宗教国家の姿勢は、結果として自国の要塞を壊滅させ、実行犯たちを神獣の怒りによって徹底的に断罪されるという因果応報の結末を招くこととなった。
転生者の動向
『アラフォー賢者の異世界生活日記』シリーズにおいて、地球のVRゲーム『ソード・アンド・ソーサリス』のプレイ中に邪神の自爆に巻き込まれて死亡し、異世界へと転生(または転移・召喚)したプレイヤーたちの動向と、彼らが各地で果たした合流・協力の形について解説する。
彼らの行動は偶然やそれぞれの思惑によるものであるが、チート能力やゲーム時代の絆を武器に、世界の勢力図や巨大宗教国家「メーティス聖法神国」の権威に多大な影響を与えている。主要な転生者たちの動向と協力関係の全容は以下の通りである。
ゼロス・マーリン(大迫聡)と周囲の合流者たち
本作の主人公であり、ゲーム時代はトッププレイヤーの一人である殲滅者として知られた存在である。転生後は平穏な農家生活(スローライフ)を望んでいるが、圧倒的なチート能力ゆえに様々な厄介事に巻き込まれ、多くの転生者たちとも関わりを持つこととなる。
・ドワーフたちに拉致されて地下街道の土木作業に従事させられたり、学院生の実戦訓練の護衛を請け負ったりと多忙な日々を送る。
・地下都市の探索中に古代の防衛システムをうっかり起動させ、宇宙からの衛星兵器でメーティス聖法神国の大神殿(勇者召喚施設)を消し飛ばすという大事件を引き起こした。
・イリス(入江澄香):駆け出しの傭兵として活動していた中学生の少女である。盗賊に捕まっていたところをゼロスたちに救出され、後に彼が憧れの殲滅者であることを知る。以降は異世界の常識や戦い方を学ぶためゼロスと行動を共にし、ゼロスの使い魔であるコッコ(メイケイ)から厳しい格闘訓練を受けながら活動をサポートしている。
・タカ・ガトー(加藤貴仁):イルマナス地下大遺跡のトンネル工事現場で働くハンバ土木工業の現場監督である。タカが労働基準法という言葉を口にしたことから、ゼロスは彼が異世界人であることを見抜いた。その正体は33年前の召喚儀式で呼び出された元勇者であり、四神教に使い捨てにされかけた過去を持つ。ゼロスも四神教を敵視していたため二人は意気投合し、勇者召喚の真実や狂信的な暗殺部隊四神教血連同盟の存在など、重要な情報を共有する協力体制を築いている。
アド(安藤俊之)一派の動向とユイ(船橋唯香)の存在
山岳地帯の小国に転生したアド、リサ、シャクティの3人は、岩石芋ポルタで村の飢餓を救った功績からイサラス王国の重鎮として迎えられ、武器開発などを手伝っていた。彼らは四神への復讐を目的としており、イストール魔法学院の大図書館で世界の歴史や四神についての情報収集を行っている。
・ユイ(船橋唯香):アドの婚約者である。妊娠した状態のまま異世界に転移しており、アドとはぐれてモブの村の村長宅で保護されていた。偶然村を訪れたゼロスから、転生者にしか分からない質問(サ○ヤ人といえば?)を投げかけられたことで同郷と判明し、アドの生存を信じて待っている。
・アドとケモ・ブロスの軍事同盟:メーティス聖法神国に対抗するため、アドは獣人族を束ねる英雄の元へ向かった。そこで出会ったのが、かつてのゲーム仲間でありモブモブを愛する野蛮人ことケモ・ブロスであった。彼らは同郷のプレイヤーであることを確認し、相互不干渉を条件に軍事同盟を締結する。獣人族の領地に侵攻してきた勇者・岩田定満率いる神聖騎士団を、アドの魔法支援とケモ・ブロスのトラップ要塞(ヤーバン城)を用いて共同で迎撃し、壊滅させるという大きな戦果を挙げた。
・ゼロスとアドの再会と強制的な共闘:城塞都市スライストにおいて、ゼロスは偶然にもアドと再会を果たす。スライストには魔王クラスへの進化を目前にした巨大昆虫型魔物グレート・ギヴリオンが迫っており、ゼロスは自分一人で戦うのは不公平だという個人的な理由からアドを討伐に巻き込むことを企む。ゼロスはユイの居場所を教えることを交渉材料(弱み)にしてアドを脅し、半ば強制的に魔王討伐への協力を約束させた。
シャランラ(大迫麗美)の暗躍と離反した転生者たち
シャランラはゼロスの実の姉であり、他人に寄生して身勝手に生きる人物である。ゲーム時代からゼロスたちに返り討ちにされており、異世界でも再会早々にゼロスのバイクで轢き飛ばされている。回春の秘薬を使用した副作用で寿命が極端に縮んでおり、その解決策をゼロスが持っていると一方的に逆恨みして彼を探している。異端審問官のジョスフォークらと結託し、巨大な昆虫型魔物の大群(ヘルズ・レギオン)をソリステア魔法王国へ誘導しようと悪巧みをするが、彼女の部下からも離反者が出ることとなった。
・エロムラ君(榎村樹 / ラインハルト十三世):奴隷ハーレムを作るという欲望のために行動していたが、合法奴隷に手を出して衛兵を返り討ちにしたため重犯罪奴隷に身を落とす。シャランラの手駒としてツヴェイトの暗殺任務に同行させられていたが、暗殺という犯罪行為を嫌い、ツヴェイト側へと寝返った。その後は恩赦によって奴隷から解放され、ツヴェイトの専属護衛として雇われている。
・アンズ(名無しちゃん / 桃忍):凄腕の暗殺者パーティー影六人の一人である。シャランラと共にツヴェイトの暗殺任務に同行していたが、シャランラに利用されているだけだと見抜いていたため寝返る。その後はツヴェイトらの寮に居座りつつ、女性用の下着などを販売して学院の女子生徒たちから人気を集める神出鬼没の商人・協力者として活動している。
まとめ
地球からの転生・転移者たちは、それぞれが抱える復讐心やスローライフへの憧れ、あるいは個人的な欲望に従って異世界を行動している。しかし、メーティス聖法神国という狂信的な共通の敵を前に、ゲーム時代の繋がりや偶然の再会をきっかけとして、強固な軍事同盟から情報共有、さらには弱みを握られての共闘にいたるまで、多様な協力関係が構築されている。彼らの規格外の能力と連携は、宗教国家の軍勢を敗退させ、神殿を崩壊させるなど、異世界の既存の権力構造を根底から揺るがす大きな原動力となっている。
アラフォー賢者7巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者9巻レビュー
登場キャラクター
転生者・地球の人物
ゼロス・マーリン(大迫聡)
アラフォーの魔導士であり、元の世界で事故死した後に転生した存在である。平穏な生活を望んでいる。
・所属組織、地位や役職
無職。大賢者。傭兵(Sランク)。
・物語内での具体的な行動や成果
ツヴェイトの護衛任務やイルマナス地下大遺跡の工事に参加した。古代兵器を誤って起動させ、大神殿を崩壊させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
四神教から強く警戒される存在となった。
アド(安藤俊之)
イサラス王国で行動する転生者の青年である。四神への復讐を目的としている。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の重鎮。魔導士。
・物語内での具体的な行動や成果
大図書館で歴史を調査し、世界の摂理に違和感を抱いた。ケモ・ブロスと同盟を結び、神聖騎士団を迎撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゼロスと再会し、魔王討伐に強制参加させられることになった。
リサ
ポニーテールの転生者の女性である。アドと行動を共にしている。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の重鎮。魔導士。
・物語内での具体的な行動や成果
アド達と共に大図書館で宗教関連の歴史を調査した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
シャクティ
弁護士を目指していた転生者の女性である。アドと行動を共にしている。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の重鎮。魔導士。
・物語内での具体的な行動や成果
アド達と共に大図書館で歴史書を調査した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イリス(入江澄香)
駆け出しの傭兵であり、ゼロスに憧れる転生者の少女である。
・所属組織、地位や役職
傭兵。魔導士。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスと共に護衛任務やダンジョン探索に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
大迫麗美(シャランラ)
ゼロスの実の姉であり、他人に寄生して生きる転生者である。
・所属組織、地位や役職
異端審問官。暗殺者。
・物語内での具体的な行動や成果
ツヴェイトの暗殺を目論んだが、ゼロスに轢き飛ばされて失敗した。魔物をソリステア魔法王国へ誘導する作戦を提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
回春の秘薬の副作用で寿命が縮んでいる。
エロムラ(榎村樹)
奴隷ハーレムを作る欲望を持つ転生者の少年である。
・所属組織、地位や役職
犯罪奴隷。ツヴェイトの専属護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
シャランラを裏切り、ツヴェイト側についた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
恩赦によって奴隷から解放された。
アンズ(桃忍)
忍び装束を着た転生者の少女である。
・所属組織、地位や役職
暗殺者。
・物語内での具体的な行動や成果
シャランラを裏切り、ツヴェイトの部屋に居座るようになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メーティス聖法神国に召喚された勇者
風間卓実
異世界から召喚された勇者の一人である。唯一の魔導士である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の勇者。
・物語内での具体的な行動や成果
アルトム皇国との戦いで仲間を逃がすために囮となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アルトム皇国に救出され、第二皇女のラシャラと恋に落ちた。
姫島佳乃
異世界から召喚された勇者の一人である。風間卓実の幼馴染である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の勇者。前線指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
風間卓実の仇を討つためにルセイとの交戦に臨んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
風間卓実の生存と性癖を知り、戦意を喪失した。
神薙悟
異世界から召喚された勇者の一人である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の勇者。
・物語内での具体的な行動や成果
街道破壊工作から要人暗殺へと作戦の変更を提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
坂本康太
異世界から召喚された勇者の一人である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の勇者。
・物語内での具体的な行動や成果
神薙の暗殺作戦に対し、元の世界に帰りたいだけだと発言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
山崎ゆかり
異世界から召喚された勇者の一人である。田代淳と恋人同士である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の勇者。
・物語内での具体的な行動や成果
田代淳と共に二人だけの世界に入っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
田代淳
異世界から召喚された勇者の一人である。山崎ゆかりと恋人同士である。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国の勇者。
・物語内での具体的な行動や成果
山崎ゆかりと共に二人だけの世界に入っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルトム皇国
ルセイ・イマーラ
アルトム皇国の将軍である。ルーセリスの実の姉である。
・所属組織、地位や役職
アルトム皇国特務戦士団の将。黒天将軍。
・物語内での具体的な行動や成果
ソリステア魔法王国の使節団を迎え、佳乃と交戦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
母親の足跡を辿る命を受けた。
ラーフォン・イマーラ
ルセイとルーセリスの父親である。
・所属組織、地位や役職
政武大官長。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスから隔世遺伝の話を聞き、後悔の念に駆られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メイア・イマーラ
ルセイとルーセリスの母親である。
・所属組織、地位や役職
アルトム皇国の皇族。
・物語内での具体的な行動や成果
不義を疑われて国を追放され、旅の途中で命を落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラシャラ・イール・アスーラー・アルトム
アルトム皇国の王族である。風間卓実と恋に落ちた。
・所属組織、地位や役職
アルトム皇国の第二皇女。
・物語内での具体的な行動や成果
風間卓実を戦斧で追いかけ回した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ソリステア魔法王国
アルハント・ルド・クラウソラス・ソリステア
ソリステア魔法王国の指導者である。
・所属組織、地位や役職
ソリステア魔法王国の国王。
・物語内での具体的な行動や成果
重臣達と古代都市イーサ・ランテの扱いを協議した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
デルサシス・ヴァン・ソリステア
ソリステア公爵領の領主であり、辣腕の政治家である。
・所属組織、地位や役職
ソリステア公爵領領主。
・物語内での具体的な行動や成果
小国家の大使達に回復魔法のスクロールを提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
裏社会から沈黙の領主と恐れられている。
クレストン
ソリステア公爵家の前当主である。セレスティーナを溺愛している。
・所属組織、地位や役職
元ソリステア公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
ゼロスと共に古代兵器を誤って起動させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イルハンス伯爵
ソリステア魔法王国の外交特務官である。仕事一筋の人物である。
・所属組織、地位や役職
外交特務官。伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
アルトム皇国への外交任務に向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クロイサス
ソリステア公爵家の次男である。魔法研究に没頭している。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
魔法式の解読に関する研究成果を発表した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ツヴェイト
ソリステア公爵家の長男である。ゼロスの弟子である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
実戦訓練でシャランラの暗殺から逃れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
セレスティーナ
ソリステア公爵家の娘であり、ゼロスの弟子である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
実戦訓練に参加し、ウルナと親交を深めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミスカ
セレスティーナの世話係であり、クールなメイドである。
・所属組織、地位や役職
ソリステア公爵家のメイド長。
・物語内での具体的な行動や成果
護衛任務において情報収集を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつては氷の女帝と呼ばれた超越魔導士であった。
ウルナ
獣人寄りの混血種の少女である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
セレスティーナと共に実戦訓練に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
キャロスティー
サンジェルマン侯爵の娘である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の学院生。
・物語内での具体的な行動や成果
セレスティーナと共に実戦訓練に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
サマス教諭
イストール魔法学院の教師である。
・所属組織、地位や役職
イストール魔法学院の教諭。
・物語内での具体的な行動や成果
クロイサスの研究発表に対して反発した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アーレフ
ソリステア魔法王国の騎士である。
・所属組織、地位や役職
特務遊撃騎士隊の大隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
魔物の大群から避難民を守りながら討伐を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
蒼鬼のアーレフと呼ばれる将となった。
イサラス王国
ルーイダット・ファルナンンド・イサラス
イサラス王国の指導者である。賢王として慕われている。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の国王。
・物語内での具体的な行動や成果
アドの報告を受け、内政の相談を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
大臣
イサラス王国の重臣である。
・所属組織、地位や役職
イサラス王国の大臣。
・物語内での具体的な行動や成果
ルーイダット王と共に会議に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メーティス聖法神国・四神教
ミハロウフ法皇
メーティス聖法神国の指導者である。権力に固執している。
・所属組織、地位や役職
メーティス聖法神国法皇。
・物語内での具体的な行動や成果
勇者達に邪神討伐の神命を下した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大神殿崩壊により、権威の失墜を恐れている。
ジョスフォーク
メーティス聖法神国の暗部組織を束ねる人物である。快楽殺人者である。
・所属組織、地位や役職
異端審問神官長。
・物語内での具体的な行動や成果
魔物をソリステア魔法王国へ誘導する作戦を承認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
サドラ
異端審問官の一人である。
・所属組織、地位や役職
異端審問官。
・物語内での具体的な行動や成果
占拠した村で猟奇的な殺戮を楽しんだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
サントールの街・教会の関係者
ルーセリス
養護院の見習い神官である。アルトム皇国の血を引いている。
・所属組織、地位や役職
養護院の見習い神官。
・物語内での具体的な行動や成果
子供達の狩猟訓練に引率として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メルラーサ
サントールの街の司祭長である。豪快な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
南の養護院の責任者。司祭統括官。
・物語内での具体的な行動や成果
ルーセリスの出生の秘密をゼロス達に語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ジャーネ
赤髪の女性傭兵である。ルーセリスの幼馴染である。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
地下都市の探索や護衛任務に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
レナ
甘栗色の髪の女性傭兵である。少年を好む性格である。
・所属組織、地位や役職
傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
地下都市の探索や護衛任務に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ジョニー
養護院で育つ少年である。子供達のリーダー格である。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
狩猟訓練で魔物を討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アンジェ
養護院で育つ赤毛の少女である。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
狩猟訓練に参加し、ゼロスから魔法を教わることを望んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラディ
養護院で育つ角刈りの少年である。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
狩猟訓練で弓を用いて魔物を攻撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カイ
養護院で育つぽっちゃり体型の少年である。
・所属組織、地位や役職
養護院の子供。
・物語内での具体的な行動や成果
狩猟訓練に参加し、大物を狙う意欲を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
スライスト・傭兵ギルド関係者
ドンサーク
傭兵ギルドの責任者である。
・所属組織、地位や役職
スライストの傭兵ギルドマスター。
・物語内での具体的な行動や成果
魔物の暴走に対する防衛会議を開いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔物・神・その他
邪神
創造主によって作り出された次元管理生命体である。
・所属組織、地位や役職
次元管理生命体。
・物語内での具体的な行動や成果
かつて高度魔法文明を滅ぼし、四神によって封印された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゼロスによって復活の準備が進められている。
ウーケイ
異常進化を遂げたワイルド・コッコである。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの使い魔。グラップルマスター・コッコ。
・物語内での具体的な行動や成果
異端審問官を襲撃し、圧倒的な力で成敗した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ザンケイ
異常進化を遂げたワイルド・コッコである。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの使い魔。サムライマスター・コッコ。
・物語内での具体的な行動や成果
性犯罪者を成敗し、被害者の女性を治療した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
センケイ
異常進化を遂げたワイルド・コッコである。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの使い魔。ニンジャマスター・コッコ。
・物語内での具体的な行動や成果
名無しちゃんに飛びつかれて悶絶した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
コッコ達
ゼロスに飼われている魔物である。
・所属組織、地位や役職
ゼロスの使い魔。
・物語内での具体的な行動や成果
子供達の狩猟訓練に護衛として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
グレート・ギヴリオン
巨大な昆虫型の魔物である。
・所属組織、地位や役職
魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
シュトーマル要塞を壊滅させ、スライストへ迫った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔王クラスへの進化を目前にしている。
オーク
豚の頭を持つ魔物である。
・所属組織、地位や役職
魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
ファーフラン大深緑地帯などで騎士団を襲った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ゴブリン
小柄な魔物である。
・所属組織、地位や役職
魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
村や廃坑で傭兵達と交戦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アラフォー賢者7巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者9巻レビュー
展開まとめ
プロローグ ルセイの記憶
ルセイの過去と邪神の爪痕の報せ
姉になる日
幼いルセイは、弟妹が生まれる日を誰よりも楽しみにしていた。侍女から姉になると聞かされて以来、物語や歌、お気に入りの場所を教えてあげようと心を弾ませていた。彼女は小さな翼を動かしながら母の部屋へ急ぎ、何度も転びながらようやく扉の前へ辿り着いた。
翼のない赤子
ルセイが部屋に入ると、父ラーフォンは険しい顔で頭を抱え、周囲の者達も深刻な様子だった。ルセイは大人達の会話を理解できなかったが、生まれた弟妹にルーフェイル族の翼がないことを見て、異変の理由を悟った。父も母も翼を持つ以上、それは周囲を戸惑わせるには十分な出来事だった。
メイアの失踪
翼のない子が生まれたことで、イマーラ家には皇族の姫メイアが不義を働いたという噂が広まった。だがメイアは護衛や侍女に囲まれており、外で人族と関係を持つことなど現実的には不可能だった。それでも世間の疑いを逸らすため、彼女には追放刑が決まり、実行前にメイアは忽然と姿を消した。
ルセイの恐れ
夢から覚めたルセイは、母の行方を調べる権限を持つ立場になっていながら、それをしていない自分を思った。真実を知ることが怖く、母が既にこの世にいない可能性を考えると踏み出せなかった。過去は今さら意味のないものだと思いながらも、ルセイの心には重く残っていた。
災害級の魔獣
部下が緊急連絡を持ち込み、ルセイは邪神の爪痕から災害級の魔獣が高速で移動していることを知った。邪神の爪痕は、旧時代に邪神の攻撃で山脈を貫かれてできた地形であり、ファーフラン大深緑地帯の魔物が通る道にもなっていた。報告を受けたルセイは、その魔獣が何であるかを察した。
ルーフェイル族の平静
災害級の魔物が動いたにもかかわらず、ルセイ達は大きく動揺しなかった。彼らは普段から邪神の爪痕の防衛陣地で強大な魔物を相手にしており、この程度で取り乱す民族ではなかった。ルセイは警戒態勢だけを取らせ、敵国の砦は神の使徒達が何とかするだろうと判断した。
客人の護衛
ルセイは、今もっとも優先すべきことはソリステア魔法王国の客人を無事に皇都へ運ぶことだと考えた。これから近しい隣人となる相手を守ることが先決であり、魔物への対応は前線に任せることにした。彼女は勇者達の馬車を監視するため、休憩を終えて再び任務へ戻った。
第一話 おっさん、皇都アスーラーに着く
邪神戦争の記録とシュトーマル要塞の壊滅
邪神戦争の記録
古代の記録映像には、邪神と呼ばれる巨大な肉塊が、高度な魔導科学文明の軍勢を一方的に蹂躙する光景が映されていた。魔導戦車、戦闘機、衛星軌道からの攻撃すら通じず、邪神は都市や山脈、勇者召喚魔法陣を備えた軍事施設まで消し飛ばした。この戦いは第三防衛戦線と呼ばれ、多種族連合軍はわずか三時間で敗北していた。
勇者達の絶望
ゼロスはイーサ・ランテから持ち出した記録映像を馬車内で勇者達に見せた。神薙悟、坂本康太、山崎ゆかり、田代淳達は、邪神が勇者に倒せる相手ではないことを悟り、戦わされる前に捕虜になってよかったと本音を漏らした。ゼロスも、邪神は倒すのではなく封印するしかなかったのだろうと考えた。
燃え尽きた佳乃
一方、姫島佳乃は風間卓実が生きていたことに加え、敵国の姫と恋仲になっていたことを知り、精神的に燃え尽きていた。ゼロスは、初恋の幼馴染がロリ好きだったという衝撃が彼女に大打撃を与えたと見ていた。佳乃は復讐心を支えに生きてきたため、その支柱を奇妙な形で失い、深い絶望に沈んでいた。
恋愛症候群と嫉妬
ゼロスは、この世界では一夫多妻や一妻多夫が珍しくないと勇者達に説明した。田代と山崎は互いを想い合って安心したが、その様子は神薙、坂本、ゼロスの嫉妬を買った。佳乃もまた幸せそうな山崎に暗い感情を向け、馬車内には妙な緊張と嫉妬が漂っていた。
皇都アスーラー
馬車はアルトム皇国の皇都アスーラーへ到着した。そこは西洋風と東洋風が混ざったような街で、城壁や門、兵士の装備にも独特の意匠があった。勇者達は唐風建築や碁盤の目状の街並みを連想し、ゼロスは囲碁や将棋の存在から、過去の勇者達が文化を持ち込んだ可能性を考えた。
卓実の魔法習得
ゼロスは、魔法スクロールが禁じられているはずのメーティス聖法神国で、風間卓実がどうやって魔法を覚えたのか疑問を抱いた。勇者達はレベルアップで魔法を覚えると思っていたが、ゼロスはスクロールで記憶するものだと説明した。卓実は隠された魔法スクロールを探し出し、自力で力をつけていた可能性が高かった。
勇者と転生者の差
勇者達はゼロスの強さに興味を示したが、ゼロスは自分が最初から高レベルでこの世界に来たと明かした。勇者は召喚時にレベル一から始まり、技能スキルを育てなければ本当の強さを発揮できない。ゼロスは、神国が勇者達に十分な成長機会を与えず、使い潰す前提で運用していたのではないかと考えた。
終わらない護衛任務
ゼロスは王宮に着けば護衛任務は終わると思っていたが、ルセイは襲撃状況や勇者達の処遇について説明してもらう必要があると告げた。観光して帰るつもりだったゼロスは、またしても厄介事に巻き込まれたことを悟った。
血連同盟の実態
【四神教血連同盟】は、四神を絶対視する妄信者の裏組織だった。表向きは異端者を正道に導く異端審問部に紛れていたが、実態は邪魔者に濡れ衣を着せて処刑する始末屋であり、免罪符によって罪を許されていた。彼らは転生者を邪神の先兵と見なし、強い敵意を抱いていた。
シュトーマル要塞の報告
シュトーマル要塞では、血連同盟の者達が勇者の捕縛と姫島佳乃の暗殺失敗、そして転生者らしき魔導士ゼロスの存在を報告していた。彼らは、ゼロスが高性能の銃のような武器を持ち、ルセイと佳乃の戦いに割って入ったことから、極めて危険な存在だと判断した。
ヘルズ・レギオン
その最中、シュトーマル要塞は昆虫型魔物の群れに襲われた。火縄銃は硬い外骨格に弾かれ、巨大な【グレート・ギヴリオン】は羽音による振動で防壁を破壊した。数万の眷属を従えた【ヘルズ・レギオン】は要塞を餌場と認識し、聖騎士達を全て捕食して壊滅させた。
第二話 おっさん、なぜか城に行く
ソリステアの会議とシューラス城の騒動
白翼城の会議
ソリステア魔法王国の王都フォートラーンでは、国王アルハントと重臣達が古代都市イーサ・ランテの扱いを協議していた。イーサ・ランテは魔導研究と交易の要となる重要拠点であったが、メーティス聖法神国が権利を主張してくる可能性も懸念されていた。
デルサシスの情報
デルサシスは、メーティス聖法神国が今は動けないと見ていた。彼の資料には、勇者召喚が世界を滅亡寸前に追い込んでいたこと、召喚陣が失われたこと、震災で聖法神国が大打撃を受けていることが記されていた。さらに四神が正当な主神ではなく、世界をまともに管理していない存在である可能性も示されていた。
四神教の失墜材料
会議の出席者達は、勇者召喚や回復魔法の真実が四神教の権威を揺るがす材料になると理解した。神官だけが回復魔法を使えるという建前が崩れれば、メーティス聖法神国の優位性は大きく失われる。勇者召喚も不可能となったため、残る脅威は軍事力だけになっていた。
同盟国との方針
イサラス王国とアルトム皇国との外交や援助、鉱石取引も議題となった。イサラス王国は食料不足が侵攻計画の原因であったため、援助と交易で安定させられると見られていた。一方で、追い詰められたメーティス聖法神国が何をするか分からず、慎重な対応が必要だった。
転生者への見立て
デルサシスは、転生者と思しき者達が四神に強い怒りを抱いており、ソリステアに敵対する可能性は低いと見ていた。彼はすでに心当たりのある人物を想定しており、直接話を聞くつもりでいた。内心ではゼロスが転生者である可能性を考え、好みの酒を手土産にして情報を得ようとしていた。
危ない本の規制
会議では、メーティス聖法神国から流入する危ない本の規制も話し合われた。教育への悪影響を懸念する声が強く、有害指定の本には年齢制限を設け、通常の書籍と売り場を分ける法案が可決された。この規制は後に他国にも広がり、結果的にメーティス聖法神国の出版収益を圧迫することになった。
シューラス城の案内
一方、アルトム皇国のシューラス城では、ゼロスが勇者達と共にルセイに案内されていた。イルハンス伯爵は交渉に向かい、ゼロスは自分が城内に招かれたことに戸惑っていた。火縄銃で負傷した戦士達を治療したことで、アルトム皇国側から大きな恩を感じられていたためである。
風間卓実の帰還
回廊を進む一行の前に、死んだと思われていた風間卓実が現れた。彼は第二皇女ラシャラに追い回されており、二人は夫婦のような関係になっていた。勇者達は、卓実が生きていたことだけでなく、幼い外見のラシャラと深い関係になっていることに強い衝撃を受けた。
ラシャラと卓実
ラシャラは見た目こそ幼い少女のようだったが、実際には成人した皇女だった。彼女は嫉妬深く、卓実を戦斧で追いかけ回していた。周囲は命懸けの痴話喧嘩に呆れ、勇者達は卓実のそういう趣味に白い目を向けた。
佳乃のお仕置き
佳乃は卓実を助けるのではなく、自分もラシャラのお仕置きに加わりたいと申し出た。卓実の過去のアレな趣味や、自分だけが深く傷ついていたことへの怒りがあったためである。ラシャラと佳乃は、卓実に厳しいお仕置きを加え、周囲はその異様な流れに困惑した。
卓実の危険な変化
卓実はお仕置きを受けるうち、危険な方向に目覚めかけていた。ゼロスはこれ以上続けると本人へのご褒美になりかねないと判断し、佳乃達を止めた。神薙と坂本は、卓実の変化と妙なモテ方に納得できず、彼を別の場所へ引きずっていった。
ルセイへのからかい
ラシャラはルセイに、ゼロスがかつてルセイの語った結婚条件に合う相手ではないかとからかった。ルセイは激しく動揺し、ラシャラはさらに彼女の仮面を奪った。素顔を晒されたルセイは真っ赤になり、武人としての威厳を失って混乱した。
ルーセリスの面影
ゼロスは、仮面を外されたルセイの顔を見て愕然とした。彼女の素顔が、ゼロスのよく知るルーセリスと瓜二つだったからである。ゼロスは思わずルーセリスの名を呟き、その反応にラシャラは怪訝な表情を浮かべた。
第三話 おっさん、ルーセリスの生い立ちを知る
ルーセリスの血筋とソリステアへの帰路
ルセイとルーセリスの類似
ゼロスは、仮面を外したルセイの素顔がルーセリスに瓜二つであることに驚いた。ラシャラはルーセリスの素性に関心を示し、彼女に親族がいるのかを尋ねた。ゼロスは、ルーセリスが養護院の前に捨てられていたと聞いており、親の顔も知らないはずだと答えた。
メイアの過去
ゼロスはラシャラとルセイの血縁関係を確認し、二人の母が姉妹であることを知った。そこから、翼のない子が生まれたことで母親が疑われ、追放されたのではないかと推測した。ラシャラはその推測がメイアの過去と一致していることに動揺し、ルーセリスがその子である可能性が浮かび上がった。
隔世遺伝の可能性
ラシャラは妖精の悪戯による子の入れ替わりを考えていたが、ゼロスは隔世遺伝の可能性を示した。ルーフェイル族の長い歴史の中で人族の血が混じっていれば、翼のない子が生まれても不思議ではないという説明だった。ラシャラとルセイは、その理屈が成り立つならメイアは謂れのない罪で追放されたことになると衝撃を受けた。
混乱するルセイ
ルセイは、母メイアと翼のない妹の真相を知る手がかりを得たことで大きく動揺した。ラシャラも証明する手段がないことに悩んだが、ゼロスは自分が工学専門であり、医学的な証明はできないと告げた。周囲では勇者達の騒動も続いており、場は混沌としていた。
客間のゼロス
ゼロスはようやく客間に通されたが、精神的に疲れ切っていた。部屋で休みながら、ルーセリスがアルトム皇国の皇族血統かもしれないことを考え、ジャーネやルーセリスに会いたい気持ちを自覚していた。しかし年齢差や一夫多妻への感覚が壁となり、彼は自分の感情を持て余していた。
政武殿への呼び出し
ゼロスは女官に案内され、政武殿へ向かった。そこにはルセイの父であるラーフォン・イマーラ政武大官長が待っていた。ラーフォンは、ルーセリスをアルトム皇国へ連れてきてほしいとゼロスに依頼したが、ゼロスは即座に断った。
父親の権利
ラーフォンは、ルーセリスが自分の娘である可能性が高いなら会う権利があると訴えた。だがゼロスは、母子を追い出した側が今さら血のつながりだけで会えると思うのは都合がよすぎると指摘した。ルーセリスは孤児として自立し、自分と同じ境遇の子供達を救うために神官の道を選んでいるため、判断するのは彼女自身だと告げた。
真実を調べる筋道
ゼロスは、まず血縁関係やメイアの足取りを調べるべきだと説いた。メイアが危険を承知でソリステアへ向かったのなら、イストール魔法学院の大図書館で翼のない子が生まれた理由を調べようとしていた可能性があった。ルーセリスを育てた司祭なら何かを知っているかもしれないが、調査にはルーセリス本人の許可が必要だった。
ルセイの同行
ルセイは、母と妹の真実を知るためにソリステアへ行く決意を固めた。ラーフォンもそれを正式な命として認め、メイア・イマーラの足跡を辿るよう命じた。ゼロスは職権乱用ではないかと感じながらも、翌日に帰る予定だったため、ルセイと共にソリステアへ向かうことになった。
ラーフォンの後悔
ラーフォンは、メイアを愛していたが、人族の子が生まれた現実を受け止めきれず、周囲の騒ぎを止められなかったと語った。ゼロスは、隔世遺伝が今後も起こる可能性を示し、法律を変えなければ同じ悲劇が繰り返されると忠告した。ラーフォンは無知から招いた過ちに苦しみ、ゼロスは酒を飲みながらその悔恨を聞くことになった。
メルラーサ司祭長
その頃、サントールの養護院では、メルラーサ司祭長が書類を確認していた。彼女はメーティス聖法神国から派遣された上級司祭だったが、今の神国に不満を持つ者達と共に、ソリステアで孤児や路上生活者の支援を続けていた。薬草栽培によって教会の運営は少しずつ安定し、神官達は人の役に立つ実感を得ていた。
銀の首飾り
メルラーサは机の奥から銀の首飾りを見つけ、悲しげに見つめた。それはルーセリスの母に関わる品であり、彼女はそろそろルーセリスに母親のことを教えるべきかと考えた。酒を静かに飲み干しながら、メルラーサはかつてルーセリスを託された過去に思いを馳せていた。
第四話 おっさん、爆走中
ハーリー・サンダース十三世とイサラス王国の転機
山岳街道の疾走
ゼロスは魔導バイク【ハーリー・サンダース十三世】で、険しい山岳街道を猛スピードで走り抜けていた。後部座席のルセイは、普段は空を飛べるルーフェイル族でありながら、未知の速度と荒い運転に耐えきれず悲鳴をあげていた。ゼロスは魔物を弾き飛ばしながら走り続け、二人はリサグルの町へ到着した。
イサラス王国の歴史
イサラス王国は、かつて【イスカラス帝国】と呼ばれた統一国家だった。だが、貴族達の権力争いによって内乱に陥り、獣人種やエルフ達は帝国を見限った。豊かな土地を失った王族は山岳地帯に小国を築いたが、鉱物資源はあっても食料に乏しく、メーティス聖法神国には資源を安く買い叩かれて困窮していた。
三つの街道
デルサシス公爵の働きかけにより、イサラス王国、アルトム皇国、ソリステア魔法王国を結ぶ街道計画が進められた。【天翼街道】、【イルマナス地下街道】、【イーサ・ランテ地下街道】がつながったことで、新たな交易路が生まれた。イサラス王国は鉱物資源を正当な価格で売れる見込みが立ち、財政回復への希望を得た。
ルーイダット王の方針
イサラス王国のルーイダット王は、メーティス聖法神国が大地震で混乱している間に、国力と軍備を整える必要があると考えていた。かつて敵であったソリステア魔法王国とも、今は同盟国として友好関係を築くべきだと判断した。回復魔法のスクロールも提供され、医療魔導士の育成も課題となっていた。
アドの外交成果
黒衣の魔導士アドは、獣人族との交渉を終え、相互不可侵とメーティス聖法神国攻撃時の協力を取り付けていた。獣人族も聖法神国に家族を奪われた恨みを抱いており、戦う理由は十分にあった。ただしアドは、勇者がまだ残っていることや小国が各個撃破される危険を考え、楽観はできないと見ていた。
ポルタと古いワイン
アドは、食料不足に悩むイサラス王国に【ポルタ】の活用や古いワインの輸出を提案した。王は古いワインに価値があるとは思っていなかったが、アドは百年もののワインが高値で取引されると見ていた。後にこの提案は大きな成功を生み、イサラス王国の古いワインは【女神の涙】と呼ばれる最高級品となり、国の財政を潤すきっかけとなった。
疲れ果てたアド
王との長い相談を終えたアドは、部屋に戻って疲れ切っていた。彼は政治家ではないにもかかわらず、内政や王の個人的な悩みまで聞かされていた。リサとシャクティは同情しつつも手伝う気はなく、アドは自分だけが厄介事を背負っていると感じていた。
黒の殲滅者の噂
アドは、ソリステア魔法王国で山が消し飛んだという噂から、ゼロスがこの世界にいる可能性を考えた。ゼロスは【黒の殲滅者】と呼ばれ、ゲーム時代から魔法開発を得意とする危険な魔導士だった。アドは、他の殲滅者達よりはゼロスの方が自重する分だけまともだと説明したが、リサとシャクティはその話に怯えていた。
殲滅者達の危険性
アドは、かつての殲滅者達が各分野で極端な研究や製作を行い、周囲を巻き込む騒動を起こしていたと語った。ゼロスはその中では比較的常識人だったが、それでも国家規模の影響を及ぼせる力を持っていた。アドは、もし他の殲滅者達がこの世界に来ていれば、もっと大きな騒ぎになっているはずだと考えた。
ソリステアへの出発
アドは、四神への復讐を果たすためにもゼロスの協力が必要だと判断した。ゼロスは最強の魔導士であり、最高品質の装備や薬を作れる生産職でもあった。リサとシャクティは不安を抱いたが、仲間は多い方がよいと考え、三人は再びソリステア魔法王国を目指すことになった。
第五話 クロイサスの研究発表
魔法式解読の発表と学院改革の兆し
大講堂の発表
イストール魔法学院の大講堂で、サンジェルマン派のクロイサスが【魔法式の解読】に関する研究成果を発表した。彼は、魔法文字を一つずつ意味を持つ記号ではなく、言葉を作るための文字として解釈した。風魔法の構造を例に、魔法とは文字による事象変換であると示し、旧時代の繁栄を取り戻すには正しい解読法が必要だと訴えた。
否定できない真実
サマス教諭は、これまで学んできた魔法文字の解釈が誤りだったとは認められないと反発した。だが、クロイサスは結果を示したうえで、誤りを受け入れなければ先に進めないと返した。講師達も否定的な反応を見せたが、クロイサスの研究を完全に否定できず、学院内には古い常識が崩れる衝撃が広がった。
古き因習の否定
クロイサスは、戦乱の時代に魔法の威力ばかりが求められ、魔法の本質を探る研究が停滞したと説明した。派閥対立も解読の進展を妨げ、古い方針は魔法発展の枷となっていた。発表後、サンジェルマン派は多くの支援を得て権威を高め、好意的に接したソリステア派も発言力を増した。
ウィースラー派の苛立ち
サンジェルマン派の台頭により、ウィースラー派の権威は揺らぎ始めた。その不満は末端の学院生に向けられ、卒院生のドマルト二級魔導士官は講義室で長々と説教を始めた。彼は自分が学院にいれば遅れは取らなかったと語ったが、学院生達は内心で強い反発を抱いていた。
ツヴェイトの反論
ツヴェイトは、ドマルトが本当に優秀なら自分で魔法式の解読を発表すればよかったと正面から反論した。さらに、ウィースラー派は本来、戦術研究と実戦を担う軍事派閥であり、魔法研究でサンジェルマン派と張り合う必要はないと指摘した。学院生達は、ツヴェイトの言葉に自分達の思いを重ねた。
軍務掌握への疑念
ドマルトは、サンジェルマン派の権威が高まれば軍務掌握が難しくなると訴えた。だがツヴェイトは、騎士団と協力して民を守るべき魔導士団が、軍事権限の掌握に固執すること自体がおかしいと批判した。魔導士は後方で魔法を撃つだけではなく、戦況に応じた柔軟な戦術を学ぶべきだと述べた。
戦える魔導士達
ツヴェイト達は、ラーマフの森で魔物に囲まれた実戦経験を持ち、近接戦闘の必要性も理解していた。ドマルトは、自分よりも学院生達の方が実戦経験も意識も上であることを知って動揺した。彼らは旧来の魔導士団に不信感を抱き、民を守る組織として改革が必要だと考えていた。
改革案の提出
学院生達はすでに、魔導士団の組織改革案、防衛戦略、訓練法、雇用案などを学院議会へ提出していた。ドマルトは、それらが国王に届けば魔導士団の改革に直結すると悟り、青ざめた。自分が過去に学院生の案を流用していたこともあり、改革によって自分の立場が失われる危険を感じた。
魔導士団改革の始まり
ドマルトは急用を理由に逃げるように去ったが、ツヴェイト達は気にせず戦略研究へ戻った。後に彼らの改革案は採用され、不適格な魔導士達は排除され、騎士団との和解も進んだ。ツヴェイト達は幹部候補として期待されるようになり、ソリステア魔法王国の国土防衛は強化されていった。
大図書館の混雑
クロイサスの論文発表から一週間後、イストール魔法学院の大図書館は魔法式研究に取り組む学院生や講師達で埋め尽くされていた。セレスティーナ、ウルナ、キャロスティーも研究のために訪れたが、席はどこにもなかった。魔法式解読は、停滞していた研究を進める大きな鍵となっていた。
ミスカの危ない本
そこへミスカが現れ、セレスティーナが読んでいると称して危ない本をウルナ達に渡した。セレスティーナは、ミスカが勝手に部屋へ置いていったものだと慌てて否定したが、ミスカは彼女の秘密のノートまで持ち出してからかった。ウルナとキャロスティーもその本に興味を示し、セレスティーナはさらに追い詰められた。
クロイサスの部屋
研究場所に困ったセレスティーナ達に、ミスカはクロイサスの部屋を提案した。そこは学院の危険地帯、未知と神秘に満ちた謎の空間として噂されていた。キャロスティーは強く拒んだが、好奇心に燃えるセレスティーナは真理の探究者として挑むことを決めた。
セレスティーナ探検隊
セレスティーナは、当初の研究場所探しから大きく脱線しながらも、兄の部屋という学院最大の秘境へ向かう決意を固めた。ミスカは平然と同行し、ウルナも興味を示した。キャロスティーは嫌がったが、結局引きずられる形で、セレスティーナ探検隊は危険を承知でクロイサスの部屋へ向かった。
第六話 デンジャーワールド、再び
イーサ・ランテ調査要請とクロイサスの怪異部屋
調査団参加の通知
ツヴェイトは護衛のエロムラと共に、クロイサスのいる学院生寮を訪れていた。学院から、生きた古代都市イーサ・ランテの調査団に参加するよう通知が届いたためである。成績上位者としてツヴェイトとクロイサスは強制参加の対象となっていたが、戦略研究を専門とするツヴェイトは、古代遺跡調査に自分が行く意味を見出せずにいた。
イーサ・ランテの名
ツヴェイトは、イーサ・ランテが地下深くに存在する難攻不落の都市であり、防衛面ではすでに完成された施設だと考えていた。エロムラはその名を聞き、【ソード・アンド・ソーサリス】に登場した地下都市と同じ名であることに動揺した。この世界がゲームに近い存在である可能性を、改めて意識することになった。
セレスティーナ探検隊
一方、セレスティーナ達はクロイサスの部屋へ向かっていた。大図書館が混雑していたため、魔法式研究の場所を求めて訪れたのである。クロイサスの部屋は学院の危険地帯と噂され、両隣の部屋は板で塞がれていたが、セレスティーナは好奇心から未知の空間に挑もうとしていた。
怪異の痕跡
クロイサスの部屋の中からは、意味不明な叫び声や大きな破砕音が聞こえてきた。しばらくして扉を開けると、クロイサス、ツヴェイト、エロムラが満足げな表情で倒れていた。三人は何か大きな戦いを終えたようだったが、怪異に巻き込まれた記憶は残っていなかった。
記録できない現象
クロイサスは、この部屋で起きる怪異に強い興味を抱いていた。記録用の魔導具を置いても、怪異の最中は映像が残らず、巻き込まれた者は一瞬消えたように見えるだけだった。原因は分からないままだったが、クロイサスは妹達まで被検体にする気でおり、周囲を不安にさせた。
ミスカの正体
会話の中で、ミスカがハーフエルフであることが明かされた。彼女は若々しい姿のままだったが、実際にはデルサシス公爵と同世代の伝説的な魔導士であり、【氷の女帝】と呼ばれていた。過去や年齢に触れられることを嫌うミスカは、強烈な圧を放ち、周囲を黙らせた。
エロムラの暴走
エロムラはミスカがハーフエルフだと知ると、いつもの調子で好意を暴走させた。だが、ミスカの制裁を受け、さらに余計な一言を残したことで、ツヴェイトまで巻き添えになった。ミスカの武闘派ぶりは改めて示され、婚期に関する話題も危険なものとして扱われた。
イーサ・ランテ調査の裏事情
クロイサスは、イーサ・ランテ調査団への参加には派閥上層部の思惑があると見ていた。研究成果を出し過ぎたサンジェルマン派と、改革案で存在感を増すツヴェイト達を、一時的に学院から遠ざけたい者達がいるという推測だった。古代都市への実地研修は名誉ある話ではあるが、同時に厄介払いの意味も含まれていた。
ゼロスの関与
クロイサスは、イーサ・ランテの発見時に灰色ローブの魔導士が関わっていたという情報を得ていた。大量のアンデッドを単身で殲滅し、都市の一部を大きく破壊したらしいその人物に、ツヴェイトとエロムラはゼロスを連想した。エロムラにとっては師匠にあたる人物であり、その行動なら十分あり得ると納得していた。
護衛の意味
エロムラは遺跡調査で活躍の場がないことを惜しんだが、ツヴェイトは護衛に戦闘が起きないことは良いことだと諭した。護衛対象に死傷者が出れば依頼失敗となり、評価や報酬にも響くからである。エロムラはまだ冒険気分が抜けておらず、護衛を仕事として考える必要があった。
アンズの商売
部屋の隅では、いつの間にか現れたアンズが女性陣に衣類を売っていた。獣人用の品や可愛らしいデザインが好評で、セレスティーナ達は興味深そうに選んでいた。アンズは忍者らしく侵入経路を明かさず、クロイサスはその謎に強い関心を抱いた。
男達への制裁
女性陣が品を選んでいる様子を見ていたツヴェイトとエロムラは、その視線に気付かれてしまった。二人は強烈な制裁を受け、クロイサスは彼らよりも部屋の魔導具が壊れることを心配していた。セレスティーナ達も研究どころではなくなり、顔を赤くしながら部屋を出ていった。
再びの怪異
女性陣が去った後、部屋に残った者達は再び怪異に巻き込まれた。外には激しい銃撃戦のような音と、聞き覚えのない人物名を呼ぶ声が響いた。クロイサスの部屋は最後まで謎に満ちたまま、学院最大の危険地帯としての存在感を増していた。
第七話 聖法神国の災難
ヘルズ・レギオンの進行とシャランラの悪意
傭兵ギルドの報告
メーティス聖法神国の国境近くにある街の傭兵ギルドへ、憔悴した傭兵が現れた。彼は【ヘルズ・レギオン】が街へ迫っていると告げ、ギルド内は一瞬で静まり返った。さらに、その中心にいる魔物が【グレート・ギヴリオン】だと判明し、最悪の災厄が始まった。
止められない群れ
グレート・ギヴリオンは巨大な昆虫型の魔物であり、卵から大量の同系統魔物を発生させる厄介な存在だった。群れは街や村を襲いながら数を増やし、壁や門による防衛も意味をなさなかった。傭兵ギルドは避難と防衛を急いだが、群れの進行は止まらず、街は次々と地図から消えていった。
聖法神国の連続災厄
報告が聖都マハ・ルタートへ届くまでに、すでに五つの城塞都市が壊滅していた。メーティス聖法神国は地震からの復興も進まず、神聖騎士団の戦力もアルトム皇国侵攻やルーダ・イルルゥ戦役で大きく失われていた。勇者召喚も不可能となった今、国はさらに追い詰められていた。
ミハロウフの焦燥
ミハロウフ法皇は、短期間に続いた敗戦、震災、勇者召喚陣の喪失、そしてヘルズ・レギオンの発生に苦しめられていた。国内復興に人員を割いているため、迎撃戦力を集める余裕もなかった。民を見捨てれば歴史に汚名を残すため、彼は身動きの取れない状況に追い込まれていた。
アルトム皇国への気付き
司祭達は、かつてアルトム皇国侵攻で神聖騎士団を壊滅させた魔物の群れが、本当に偶然現れたのか疑い始めた。アルトム皇国が邪神の爪痕から現れる魔物を抑えていた可能性に思い至り、自分達が守り手に戦争を仕掛けたのではないかと考えた。もしそうなら、異種族を魔族として敵視してきた四神教の正当性は大きく揺らぐことになった。
救援の困難
他国へ救援を求める案も出たが、周辺国はすでにメーティス聖法神国に不信感を抱いていた。回復魔法の流通によって神聖魔法の価値も下がり、他国へ送られた神官達も神国に不満を持っていた。救援を求めても政治介入を招く恐れがあり、国が滅ぶ前に助けが来る保証もなかった。
異端審問官への依存
ミハロウフは、被害拡大を抑えるために異端審問神官長ジョスフォークを呼ぶことを決めた。ジョスフォークは表向き敬虔な信者に見えるが、実際は危険な行為を好む異常者であり、血連同盟や異端審問官を統率する人物だった。国難を前に、聖法神国は危険な者達に頼らざるを得なくなった。
ジョスフォークの本音
ジョスフォーク達は、人間相手の残虐な仕事には喜びを覚えるが、昆虫型魔物の相手にはまったく乗り気ではなかった。彼らは免罪符の契約で縛られており、命令を放棄することも逃げることもできなかった。自分達が使い捨てにされると理解しながら、打開策を探すしかなかった。
邪香水の提案
新入りの女異端審問官は、【邪香水】を使ってヘルズ・レギオンを他国へ誘導する案を出した。血連同盟を神託で動かせば、彼らは喜んで危険な役目を引き受けると見込んだのである。さらに【魔避香】を使って安全地帯を作れば、自分達は混乱に紛れて好き勝手に動けると考えていた。
動き出す悪意
ジョスフォーク達は、ヘルズ・レギオンをソリステア魔法王国へ向ける案に乗った。魔物が勝手に攻めたように見せれば、聖法神国には不都合がないと考えたのである。こうして、国難を利用した悪意が動き出したが、ソリステア魔法王国はまだその企みに気付いていなかった。
大迫麗美の現状
一方、大迫麗美ことシャランラは、転生者としてこの世界に放り出された後、ソリステア魔法王国で指名手配され、メーティス聖法神国へ逃れていた。彼女は借金や追手から逃げ回ってきた人物であり、ゲーム時代にも他者から奪うことで装備や道具を得ていた。ゼロスとは現実でもゲームでも因縁があった。
ゼロスへの逆恨み
シャランラは若返りの薬の副作用で寿命が縮んでおり、その解決手段をゼロスが持っていると一方的に決めつけていた。彼女はゼロスに過去の仕返しを受けたことも含めて逆恨みし、復讐を誓っていた。しかしゼロスとの実力差や、彼が自分の性質をよく理解していることを知らないまま、無謀な復讐劇を始めようとしていた。
第八話 おっさん、誤解される
サントール帰還とルーセリスの嫉妬
宿のない夕暮れ
ゼロスとルセイはサントールの街の手前で魔導バイクを降り、徒歩で街へ入った。しかし到着時には夕暮れで、宿は商人や傭兵に埋まっていた。そのためルセイはゼロスの家に泊まることになったが、客用の寝具がないため、ゼロスは自分の寝具をルセイに使わせ、自分はソファーで寝ようとした。
はわあわ将軍
ルセイは、出会って間もない男女が一つ屋根の下にいる状況に過剰に動揺した。彼女は黒天将軍として知られる武人でありながら、素顔では極度の人見知りで、男女交際にも慣れていなかった。ゼロスは、仮面がなければまともに他人と話せない彼女の性格に呆れつつも、悪意なく現実的に対応しようとしていた。
近所の養護院
ゼロスは客用のシーツや枕を借りるため、隣の養護院へ向かうことにした。そこにはルーセリスがいるため、ルセイにとっては妹かもしれない人物との対面が近いことになる。ルセイはまだ心の準備ができておらず動揺したが、血縁の可能性を確かめるためには避けて通れない状況だった。
ルーセリスの心配
その頃、ルーセリスは教会の窓からゼロスの家を眺めていた。ゼロスは一ヶ月以上音信不通で、地下街道工事現場で古代遺跡を発見し、大量の魔物と戦ったと聞かされていた。無事だと分かっていても、彼女は連絡がなかったことを気にしていた。
子供達のからかい
養護院の子供達は、ルーセリスがゼロスを心配していることを見抜き、恋心だとからかった。ルーセリスは自分の気持ちを整理していたが、初恋であることや年齢差、ジャーネの気持ちもあって踏み出せずにいた。ゼロスが他の女性を連れてくる可能性を言われると、彼女は大きく動揺した。
ゼロスの帰宅
教会の扉を開けたルーセリスは、灰色ローブのゼロスを見て喜んだ。ゼロスは帰還を告げ、イーサ・ランテでの出来事を軽く話したが、うっかり機密に触れる内容を口にしたため、ルーセリスを慌てさせた。その後、彼は客人のために寝具を借りたいと頼んだ。
ルセイへの警戒
ルーセリスは、ゼロスの背後にいる黒い翼の仮面の女性が客人だと知ると、強い警戒を示した。夫婦でもない男女が一つ屋根の下で過ごすのはよくないと主張し、嫉妬と不安を隠せなかった。ゼロスは国の要人に手を出すわけがないと説明したが、ルセリスとルセイはそれぞれ違う方向に反応し、話はこじれていった。
風呂をめぐる混乱
さらにルーセリスは、ゼロスの家の風呂を誰が先に使うのかまで気にし始めた。彼女は司祭から聞かされた偏った教えを持ち出し、ゼロスが危ない方向へ進むのを止めなければならないと考えた。ゼロスは濡れ衣だと困惑しつつも、結局はルーセリスの監視付きで家へ帰ることになった。
夕食の準備
最終的に風呂はゼロスが先に入り、夕食の準備はルーセリスが引き受けることになった。ゼロスはようやく自宅に戻ったものの、ルセイの宿泊、ルーセリスの嫉妬、寝具と風呂をめぐる騒動に巻き込まれ、帰宅早々から気疲れすることになった。
第九話 おっさん、ルーセリスに生い立ちを説明す
サントール帰還とヘルズ・レギオン誘導作戦
夕食後の緊張
夕食を終えたゼロスとルセイは、ルーセリスの無言の圧に怯えていた。ルーセリスは聖女のような笑みを浮かべていたが、ゼロスとルセイには異様な威圧感として伝わっていた。本人に自覚はなかったが、それはルセイへの嫉妬によるものだった。
ルーセリスの詰問
ルーセリスは、ルセイがなぜゼロスの家に泊まることになったのかを丁寧な口調で問いただした。ゼロスとルセイは、その静かな迫力に押されながら、街道工事の後にアルトム皇国で別の依頼を受け、ルセイの一族に関わる問題でソリステアまで同行していると説明した。
姉妹の可能性
ゼロスは覚悟を決め、ルーセリスにも関わる話だと切り出した。ルセイがルーセリスの実の姉かもしれず、過去を知るメルラーサ司祭に会う必要があると告げた。ルーセリスは戸惑ったが、自分の過去に関わることなら逃げたくないとして、話を聞くことを選んだ。
翼のない子の悲劇
ゼロスは、ルーセリスが生まれたことで母メイアが疑われ、周囲から責められた末に追放処分となり、実行前に子供と共に姿を消した経緯を説明した。さらに、それが不義ではなく隔世遺伝によるものだった可能性を伝えた。ルーセリスは、自分の出生が母の悲劇につながったかもしれないことに疲れた表情を見せた。
ルーセリスの覚悟
ルセイは、母を探したい父ラーフォンの思いと、自分達が犯したかもしれない過ちを語った。ルーセリスは、家族について実感は薄いものの、自分がなぜ孤児になったのかはずっと知りたかったと答えた。彼女はメルラーサ司祭に会い、真実を確かめるために協力することを決めた。
守るという言葉
ルーセリスを教会へ送る途中、ゼロスは彼女が自分の出生を罪のように受け止めていることを否定した。生まれてきた命そのものに罪はなく、問題は無知と偏見で人を裁いた環境にあると語った。さらに、もし彼女が今の生き方を望むなら守ると言い、その言葉にルーセリスは衝動的にゼロスへ抱きついた。
覗き見の子供達
ゼロスがルーセリスを抱きしめて落ち着かせていると、養護院の子供達が隠れて様子を覗いていた。子供達は二人の関係をはやし立てたが、ゼロスに見つかると素早く逃げ出した。ルーセリスは羞恥に耐えきれず悲鳴を上げて走り去り、ゼロスは彼女とルセイの気質に血縁の濃さを感じた。
羨むルセイ
一部始終を二階から見ていたルセイは、ルーセリスがゼロスに抱きしめられたことを羨ましがっていた。結婚願望がありながら異性との関係に進めない彼女は、自分だけ春が来ないことを嘆いていた。妹かもしれない相手への複雑な感情も含め、ルセイの悩みはさらに深まっていた。
四神教の派閥
四神教には複数の派閥があり、その中でも権力派が勢力を伸ばしていた。一方、派閥として認められていない妄信派、すなわち四神教血連同盟は、権力派にとって汚れ仕事を任せる都合のよい駒だった。異端審問部は血連同盟を監視しつつ、同時に利用する闇の部署でもあった。
邪香水の散布
異端審問官達は、森の中で血連同盟の妄信者達が【邪香水】をまく様子を監視していた。邪香水は魔物を引き寄せる禁断の薬であり、彼らはヘルズ・レギオンをソリステア魔法王国へ誘導するために利用されていた。表向きは神敵への罰とされていたが、実際には聖法神国側の被害を減らし、敵国を巻き込むための作戦だった。
妄信者達の殉教
異端審問官達は血連同盟の者達を使い捨てるつもりで、危険が迫るとすぐに撤退した。その直後、誘導されたギヴリオン系の魔物が妄信者達を襲い、森には悲鳴が響いた。妄信者達は殉教の名のもとに犠牲となり、群れはソリステア魔法王国へ向かって進んでいった。
作戦の誤算
邪香水の効果は強力だったが範囲には限界があり、全ての群れを意図通りに誘導することはできなかった。ヘルズ・レギオンの一部はソリステアへ向かったものの、眷属の多くはメーティス聖法神国の国内に残って拡散していった。悪巧みは完全には成功せず、聖法神国にもさらなる災厄が広がることになった。
第十話 おっさん、メルラーサ司祭長と対面する
メルラーサ司祭長の来訪と母の行方
放蕩司祭メルラーサ
早朝、サントールの教会にメルラーサ司祭長が現れた。彼女は元孤児であり、若い頃は路地裏で生き抜きながら神官の道へ進み、やがて司祭統括官にまで上り詰めた人物であった。権力争いでソリステア魔法王国へ戻された後は、孤児や路上生活者のために養護院を運営し、豪快な性格と幅広い交友関係で司祭長と呼ばれるようになっていた。
ルーセリスの変調
教会では、ジャーネ達が朝から様子のおかしいルーセリスを心配していた。ルーセリスはゼロスのことで心ここにあらずとなり、赤面したり溜息をついたりしていた。レナは恋の病だと見抜き、ジャーネ達は相手がゼロスであることに気づいて動揺した。
ゼロスとの噂
レナは、養護院の子供達からルーセリスとゼロスが昨夜抱き合っていたと聞いていた。ジャーネとイリスは、ルーセリスがゼロスと結婚する可能性を考え、教会の今後や自分達の宿泊先まで心配した。さらに、ジャーネ自身もゼロスを意識していることを指摘され、強く否定しながらも動揺していた。
乱暴な来客
そこへ教会の扉が激しく叩かれ、ジャーネはその乱暴なノックからメルラーサだと察した。メルラーサは扉を壊しかねない勢いで待っており、ジャーネが慌てて出迎えた。彼女は相変わらず豪快で、ジャーネ達に遠慮のない言葉を投げかけ、周囲を呆れさせた。
自由すぎる司祭長
メルラーサは司祭でありながら、神国や法皇の裏事情まで平然と語り、ジャーネ達を引かせた。だが彼女は、異端審問官を返り討ちにした過去を持つ実力者でもあり、裏社会からも一目置かれていた。彼女の発言は乱暴だったが、孤児や弱者を守るために動いてきた筋の通った人物でもあった。
メルラーサ探しの相談
一方、ゼロス、ルセイ、ルーセリスは、メルラーサに会うための相談をしていた。ルーセリスは、メルラーサが神出鬼没で、会うのは簡単ではないと説明した。ゼロスとルセイは、その無責任にも見える行動力に困惑しながら、どう接触するかを考えていた。
本人の登場
そこへメルラーサ本人が突然現れた。彼女は薬草栽培の話を軽く済ませたあと、ルセイの黒い翼を見て事情を察した。さらにゼロスとルーセリスの関係をからかい、ジャーネにも遠慮のない言葉を投げかけたため、場は一気に騒がしくなった。
ジャーネの退場
ジャーネはメルラーサにからかわれながらも、傭兵ギルドへ向かう時間が迫っていた。メルラーサが子供や孫の存在を明かすと、ジャーネ達は驚いたが、依頼を逃すわけにはいかず、レナとイリスに引きずられるように出ていった。
姉妹の確定
メルラーサはルセイをメイアの娘だと見抜き、ルーセリスを自分が直接託されたと明かした。そして、ルーセリスとルセイが血のつながった姉妹であると断言した。ただし彼女は、今さら血縁を理由にルーセリスをアルトム皇国へ戻そうとするなら傲慢だと厳しく告げた。
母の行方
ルセイは、自分達の過ちを認めたうえで、どうしても母メイアの行方を知りたいと訴えた。メルラーサは、壊れたものは元には戻らないと突き放したが、ルセイの覚悟を見て案内することを決めた。ゼロスも同行することになり、三人はメイアの真実へ向かうことになった。
留守番の子供達
ゼロスは出発前に、ジョニー達へ留守番を頼んだ。子供達は頼もしく返事をし、土産に肉を求めた。ゼロスは少し心配しながらも小遣いを渡し、メルラーサの後を追って教会を出た。
第十一話 おっさん、ルーセリス達に同行する
メイアの墓と邪神の目覚め
ソラスへの道
ゼロス達はメルラーサに案内され、サントール近くの街ソラスへ向かった。整備されていない道を三時間歩いたため、ルーセリスとルセイは疲れ切っていたが、メルラーサは軽快に歩いていた。ゼロスは、養護院の子供達の逞しさが彼女の教育方針によるものだと知り、遠慮のいらない人物だと理解した。
街外れの墓
ソラスの街に着いた一行は、街外れの小さな墓地へ案内された。そこには、木のそばに礫石を置いただけの簡素な墓があった。ルセイは母メイアがすでに亡くなっていることを悟り、仮面の奥で涙を流した。一方、ルーセリスは孤児として育った経験から、母が生きていない可能性を薄々覚悟していた。
メルラーサとメイア
ゼロスがメイアとの出会いを尋ねると、メルラーサは十八年前の出来事を語り始めた。借金取りに追われて森へ逃げ込んでいたメルラーサは、血の匂いと赤子の泣き声に気づき、深手を負ったメイアを見つけた。彼女はメイアを治療し、赤子を抱えて街まで運んだ。
傷ついた母
メルラーサはメイアを一ヶ月近く看病したが、傷は塞げても神経までは治せず、メイアは体を自由に動かせない状態になった。メイアは、翼のないルーセリスが生まれた理由を調べるため、イストール魔法学院の大図書館を目指していた。彼女は家族のもとへ胸を張って戻るために、無理をして山脈を越えようとしていた。
先祖返りの真実
メルラーサは知人達に調査を頼み、やがてルーセリスが先祖返りであるという情報を得た。メイアは不義を働いたのではなく、祖先の血が表に出たために人族の子を産んだ可能性が高かった。ルセイは、母が希望を捨てずに真実を探していたことを知り、一族の無知と偏見に怒りを覚えた。
メイアの最期
真実が判明した頃、メイアは病に倒れていた。メルラーサは急いで駆けつけ、ルーセリスが先祖返りだったことを伝えたが、メイアの体はすでに限界だった。メイアは、ルーセリスが一人で生きられる強さを身につけるまで出生のことを秘密にしてほしいと頼み、ラーフォン、ルセイ、ルーセリスへの想いを残して亡くなった。
メルラーサの怒り
メルラーサは、調べもせずメイアを追放したアルトム皇国の皇族達に激しい怒りを抱いていた。彼女は、メイアが家族を愛し、真実を得て戻ろうとしていたことを知っていたからこそ、一族の体面を優先した者達を許せなかった。ルーセリスは、自分が皇族に戻るつもりはなく、街での暮らしが合っていると答えた。
ゼロスへの警告
ゼロスは、ルーセリスを無理に連れ戻そうとするなら自分も黙っていないと語った。メルラーサはその肝の据わった態度を面白がりつつ、ルーセリスを不幸にしたら許さないと小声で警告した。ゼロスは、メルラーサの迫力に本気で恐怖を覚えた。
ルセイの沈黙
サントールへ戻った後、ルセイは大きな衝撃を受けて部屋にこもった。ゼロスは、ルーセリスが今の生活や養護院の子供達を捨てて皇族に戻ることはないだろうと考えた。ルーセリスの信念は、メルラーサの生き方に影響を受けて育まれたものだった。
エア・ライダーの修理
ゼロスは考え事をしながら、古代の乗り物【エア・ライダー】の修理に取りかかっていた。中央のブラックボックスは解析できなかったが、外部の機械部品は修理できそうだった。作業中、ゼロスの脳裏に奇妙な声のような感覚が届いた。
培養槽の幼子
ゼロスは地下倉庫へ向かい、邪神を再生させる培養槽を確認した。そこには三歳児ほどの幼子が液体の中に浮かんでいた。しかも、その体には獣人のような耳や尻尾、さらに翼や角まであり、ゼロスは体の構築に失敗したのではないかと考えた。
邪神との対話
目覚めた邪神は、自分が創造主によって作られた次元管理生命体であり、人間から見れば神にあたる存在だと語った。四神は邪神の代わりに世界を管理する代行者だったが、まともに管理していなかった。邪神は世界を滅ぼすつもりではなく、管理権限を取り戻そうとしていたのだった。
勇者召喚の歪み
邪神は、本来なら勇者にあたる存在は召喚後に送還されるべき抗体のようなものだと説明した。だが四神は何度も召喚を行い、送還せずにこの世界で死なせ続けていた。その結果、異界の理が世界に滞留し、歪みが蓄積され、次元崩壊を招く危険が生じていた。
創世神の失敗
ゼロスは邪神の話から、創世神が邪神の姿を失敗作と見なして封印し、代わりに妖精王を元に四神を作ったのではないかと推測した。四神は管理者として不適格で、世界を乱し続けていた。邪神戦争や勇者召喚の真相も、創世神と四神の杜撰な対応が引き起こしたものだった。
新たな切り札
邪神はまだ弱く、四神と戦うには体が安定するまで培養槽にいる必要があった。ゼロスは、時が来たら邪神に新しい名前をつける必要があると考えた。世界の問題が創世神の無責任さに端を発していると理解し、ゼロスは呆れながら煙草に火をつけた。
第十二話 おっさん、またも気軽に依頼を受ける
サイドワインダー号の修理と神酒の波紋
サイドワインダー号
ゼロスは【エア・ライダー】の修理を続けていた。戦闘用ではないため武装の追加に悩み、手持ちの連射武器や魔導砲の搭載を検討したが、重量やバランスの問題で難航した。最終的に乗り物は【サイドワインダー号】と名付けられ、多少の改造を経て修理が完了した。
姉妹の相談
ルセイとルーセリスは、母メイアの冤罪と死、そしてルーセリスの今後について話し合っていた。ルーセリスは今の生活を望み、皇族に戻る気はないと明言した。ルセイも、アルトム皇国に戻れば父ラーフォンがルーセリスを手元に置こうとする可能性を考え、簡単には帰れないと感じていた。
ゼロスの家の会議
二人はなぜかゼロスの家で相談を続けていた。ゼロスは力になれることは少ないとしながらも、四神教に属するルーセリスの立場が問題になり得ると考えた。彼は四神そのものを信用しておらず、改宗も選択肢に入るかもしれないと見ていた。
オムライス作り
ゼロスは台所でオムライスを作りながら、二人の話に加わっていた。ルーセリスとルセイは律儀に料理が揃うのを待ち、ゼロスは申し訳なさを覚えながら手を動かした。会話の中では、養護院の子供達が傭兵になるために情報収集や資金稼ぎをしていることも話題になった。
子供達のしたたかさ
ゼロスは、養護院の子供達が無知な子供を装いながら、傭兵達から狩場や魔物との交戦情報を引き出していると説明した。彼らは孤児として生き抜く中で、相手を油断させる術を身につけていた。ルセイは、情報の鮮度が戦や生存に重要であることを理解し、子供達の要領の良さに感心した。
自家製ワイン
ゼロスは食前酒として、自作の白ワインを出した。ルーセリスとルセイはその香りと味に衝撃を受け、ただの酒ではなく国が揺らぎかねないほどの最高級品だと感じた。ゼロスはポーション素材として作っただけだと軽く考えていたが、実際には【ソーマ】に近い危険な神酒だった。
危険な価値
そのワインは、魔力回復や浄化に関わる伝説級の効果を持つ素材に近いものだった。一般に出回れば、各国が奪い合いかねないほど危険な存在である。ゼロスは二人の反応を見て、売ったり不用意に配ったりするのは避けるべきだと理解した。
ドワーフへの懸念
ゼロスはナグリ達への酒の差し入れも考えたが、ルセイはドワーフに飲ませるくらいなら自分がもらうと主張した。ドワーフ達は酒なら何でも豪快に飲み干すため、ゼロスも貴重な酒を渡すのはもったいないと考え直した。そこへ窓に張りつく子供達を見つけ、結局ゼロスは彼らの分のオムライスも作ることになった。
クレストンの依頼
クレストンは、リバルト辺境伯領で魔物の出没が増えていることを相談した。ゼロスは、魔物の暴走には食料不足、繁殖、強力な魔物からの逃避などの理由があると説明したが、この地域では自然に起こりにくいと見ていた。クレストンは嫌な予感を抱き、ゼロスに原因調査を依頼した。
傭兵としての調査
ゼロスは、場合によってはメーティス聖法神国へ入る必要があると考えた。クレストンは、傭兵ギルドの依頼なら他国にも動きやすいと説明した。ゼロスは頼まれ事が続くことに疲れを見せたが、魔物の暴走は自分の生活にも関わるため、依頼を引き受けることにした。
軽ワゴンの旅
一方、アドは自作の軽ワゴンで、リサとシャクティを乗せてアルトム皇国の街道を走っていた。三人はソリステアへ向かっており、途中の温泉の話題で少し盛り上がった。アドは街道工事のおかげで移動が楽になったと感じていた。
百年ものワインへの不安
会話の中で、アドがイサラス王国に百年もののワインを同盟国へ贈るよう進言したことが明らかになった。リサとシャクティは、地球の感覚で古いワインが飲めるのか疑い、同盟関係が壊れるのではないかと不安になった。アドも自分の判断に自信を失い、激しく動揺した。
蛇行する軽ワゴン
三人は互いの知識不足から混乱し、アドは運転中にもかかわらずパニックに陥った。リサとシャクティは前方の馬車に気づいて叫び、軽ワゴンは街道を蛇行しながら進んでいった。ワインの価値をめぐる誤解が、別の危険を招くことになった。
第十三話 おっさん、エア・ライダーを楽しむ
サイドワインダー号の出発と暴走する魔物
早朝のサントール
早朝のサントールでは、市場へ向かう人々が忙しく動いていた。ゼロスは魔物の暴走の原因を考えながら、調査へ向かう準備をしていた。そこへ三羽の黒いコッコ達が同行を申し出たため、ゼロスは彼らを戦力として連れていくことにした。
進化したコッコ達
ウーケイ、ザンケイ、センケイはさらに進化し、それぞれ異なる戦闘型のコッコとなっていた。下手な傭兵より頼れる存在になっており、ゼロスは彼らの成長に不安を覚えながらも、考えることをやめた。自分が危険な存在を育てているように感じたためである。
サイドワインダー号の試運転
ゼロスは、修理したばかりの【サイドワインダー号】を試すことにした。旧時代のシステムが起動し、機体は反重力の力場とエアロスラスターによって浮上した。ゼロスは方角を確認し、北西へ向けてサントールを後にした。
アーレフの部隊
ソリステア魔法王国では、アーレフが特務遊撃騎士隊を率いていた。彼はファーフラン大深緑地帯での地獄のような経験を経て実力を高め、部下達にも厳しい訓練を課していた。その結果、部隊の損耗率は低く、彼は騎士団を代表する将の一人となっていた。
魔物出没への疑念
アーレフ達は、頻発する魔物の出没がただの暴走ではないと見ていた。背後にはメーティス聖法神国の関与や、何らかの強力な魔物の存在がある可能性があった。ソリステア魔法王国と聖法神国は、回復魔法や魔法技術をめぐって対立しており、嫌がらせを受けても不思議ではない状況だった。
聖法神国の孤立
メーティス聖法神国は、ソリステア魔法王国への経済制裁のつもりで交易を断ったが、地下街道の完成によって逆に周辺国との連携を強められてしまった。イサラス王国、アルトム皇国、ソリステア魔法王国が結びついたことで、聖法神国は経済的にも外交的にも苦しい立場に追い込まれていた。
避難民の救援
アーレフは、避難民の馬車が魔物に襲われているとの報告を受け、ただちに救援部隊を向かわせた。彼は騎士達に民を守る盾であり剣であることを忘れるなと命じた。騎士団の戦力には限りがあるため、全てを救うことは難しいが、犠牲を少しでも減らすために動いていた。
異様に強い騎士達
避難民を襲う魔物に対し、アーレフ配下の騎士達は圧倒的な力で応戦していた。彼らにとって、この程度の魔物は訓練と成長のための相手に近く、民を守りながら余裕を持って討伐していた。ファーフラン大深緑地帯で鍛えられた彼らは、通常の騎士とは別物になっていた。
シャランラの戦慄
森の陰からその様子を見ていたシャランラは、ソリステアの騎士達の強さに戦慄した。彼女は、ヘルズ・レギオンを押しつけ、混乱に乗じて利益を得るつもりだったが、騎士達は予想以上に迅速かつ強力だった。真正面から戦えば勝ち目がないと判断し、姿を見られる前に撤退した。
異端審問官の拠点
シャランラは異端審問官達の拠点へ戻り、前線の状況が悪いことをジョスフォークに報告した。暴走させた魔物は片端から討伐され、グレート・ギヴリオンの眷属も分散し始めていた。異端審問官達は、思い通りに混乱を広げられていないことに苛立っていた。
さらなる暴走拡大
ジョスフォークは、暴走の範囲をさらに広げることを考えた。彼らは、血連同盟の妄信者だけでなく、他国で布教している神官達にも罪をかぶせるつもりだった。真面目な神官達は聖法神国に不満を持つ者として扱われ、権力者達にとっては消えても都合のよい存在だった。
シャランラの企み
シャランラは、妄信者達を利用してさらに魔物を誘導するつもりだった。表向きは神のためと涙ながらに訴えれば、彼らは命を差し出すと見ていた。彼女自身は金と寿命のために動いており、ゼロスを見つけ出すことを諦めていなかった。
懲りない女
シャランラは、若返りの薬の副作用で寿命が限られているため、ゼロスが解決手段を持っていると決めつけていた。だが彼女は、自分に都合のよい未来しか見ておらず、最悪の結果を想定していなかった。この世界が自分にとって極めて相性の悪い場所であることにも気づかないままだった。
第十四話 コッコ、天誅す
サイドワインダー号の欠点と神獣コッコの断罪
燃費の悪い飛行
ゼロスは【サイドワインダー号】で空を飛びながら、想定以上に魔力を消費する欠点に気づいた。交換したエアロジェットが旧時代の純正部品に及ばず、稼働時間や熱の発生にも問題があった。ゼロスは性能確認のため、魔力補充を挟みながらリバルト辺境伯領へ向かった。
魔物の逃走
ゼロスは上空から魔物の動きを観察し、魔物達が何かに怯えて逃げていることを察した。強大な魔力波動が遠方から伝わっており、かなりの大物が迫っていると見た。さらに魔物の流れの中で、一つの村だけが不自然に避けられていることに気づいた。
魔避香の村
その村には魔物の姿がなく、周囲だけが避けられていたため、ゼロスは【魔避香】が使われていると推測した。小さな村が広範囲に魔避香を用意するのは不自然であり、暴走を事前に予測していたようにも見えた。ゼロスはウーケイ、ザンケイ、センケイに村の様子を探らせ、自分は暴走の原因を確認するため先へ進んだ。
村の異変
地上に降りた三羽のコッコ達は、村から魔避香の臭いと血の臭いを感じ取った。彼らは普通のコッコに見える外見を利用し、村の中を別々に調べることにした。悪党がいれば始末してよいという判断で、三羽は行動を開始した。
異端審問官の占拠
村は異端審問官達によって占拠されていた。彼らは布教を装って村に入り、邪香水と魔避香を使って村を外部から隔離していた。さらに村人達を動けなくし、弱者を相手におぞましい行為を繰り返していた。
ザンケイの成敗
ザンケイは、村人を傷つけていた異端審問官を斬り伏せ、被害者の女性を【命気】で治療した。その後、同じ身なりの者達を見つけると、迷わず首を刎ねた。助けられた女性は、黒いコッコに神の姿を見て涙を流した。
ウーケイの一撃
ウーケイもまた、少女達を苦しめていた異端審問官を背後から一撃で倒した。拘束されていた少女達を解放し、次の獲物を探して堂々と歩き出した。彼は村人を助けながら、悪党だけを確実に狩っていった。
センケイの暗殺
センケイは梁の上から音もなく現れ、異端審問官を体毛で吊り上げて処断した。異常な執着を持つ男は、何が起きたか分からないまま闇へ落ちた。残された家族は、突然現れた黒いコッコに救われたことを知り、呆然とした。
逆転する立場
村の各所で異端審問官達の悲鳴が上がり、ジョスフォークは敵が内部に入り込んでいると気づいた。村の外は魔物に囲まれ、村人達も武器を手に反撃を始めていた。異端審問官達は、逃げ場を失い、自分達が狩られる側になった。
三羽の変身
ウーケイ、ザンケイ、センケイは、快楽のために命を奪う異端審問官達を許さなかった。彼らは弱肉強食の理とは異なる、無意味な殺戮を嫌悪し、強い怒りを抱いた。その怒りによって三羽は巨大なコカトリスへ変身し、炎、雷、闇の力をまとった。
神獣の誕生
コカトリスとなった三羽は、異端審問官達に一方的な断罪を下した。罪人達は恐怖に震え、村人達は彼らを神の使い、神獣として崇め始めた。三羽は異端審問官達を徹底的に打ちのめした後、さらに魔物がいる森へ突入していった。
潜伏するシャランラ
金品を探していたシャランラは、ウーケイ達の姿を見て即座に隠れた。ゼロス本人はいないようだったが、彼のコッコ達が現れたことで身動きが取れなくなった。彼女は秘薬の副作用を消すためにゼロスを探し続けており、逆恨みを募らせながら命懸けの潜伏を続けることになった。
第十五話 おっさん、アドと再会す
迷子のアド達とスライストの危機
道に迷った軽ワゴン
アド達は軽ワゴンでサントールへ向かっていたが、四日走っても目的地に着かず、完全に道に迷っていた。原因は、アドが信じていた地図が非常に不正確だったことと、街道標識も古い情報のまま放置されていたことだった。さらにアドが重度の方向音痴であることも明らかになり、リサとシャクティから厳しく責められた。
増え続ける魔物
道に迷った一行は、森の周囲に小型の魔物が増えていることに気づいた。軽ワゴンの魔力タンクも尽きかけており、引き返すことも難しかったため、先へ進むしかなかった。やがて車両は無人の町を越えた先で止まり、一行は徒歩で進むことになった。
避難民と狂戦士の騎士達
丘を下りた先では、避難民の馬車が魔物に襲われていた。しかし騎士達と傭兵達は苦戦どころか、魔物を倒して自らを鍛えるかのように戦っていた。異様な迫力を放つ騎士達にアド達は怯えたが、避難民を守るために協力することを決めた。
城塞都市スライスト
アド達の協力もあり、避難民は三時間後に城塞都市スライストへ到着した。戦闘時には危険な雰囲気を放っていた騎士達だったが、普段は礼儀正しく紳士的だった。アドはその落差に強い疲労を覚えつつ、リサとシャクティのもとへ戻った。
軍事改革の成果
今回の避難が比較的円滑に進んだのは、軍事改革による民衆退避訓練が行われていたためだった。戦時を想定した段取りが功を奏し、魔物の被害は最小限に抑えられていた。アド達は、レベルや訓練が現実に大きな差を生むこの世界の異様さを改めて感じた。
空飛ぶエア・ライダー
その時、リサが空を飛ぶ乗り物を見つけた。アドはそれが【エア・ライダー】だと気づき、強い興味を抱いた。彼は喉から手が出るほど欲しがったが、それに乗っている人物が自分の知る非常識な知人であることにはまだ気づいていなかった。
国境の黒い群れ
ゼロスは【サイドワインダー号】でスライストを通過し、国境付近へ向かっていた。そこで彼は、草原一面を覆う大量のG型魔物と、後方にいる【グレート・ギヴリオン】を確認した。その個体は大深緑地帯から来たもので、しかも魔王クラスへ進化しかけていた。
煉獄の炎と撤退
ゼロスは襲いかかるG型魔物に対し、広範囲の炎魔法を放って退けた。だが数はあまりにも多く、サイドワインダー号の魔力も急速に減っていた。ゼロスは危機を知らせるためスライストへ撤退し、傭兵ギルドへ向かった。
傭兵ギルドの混乱
スライストの傭兵ギルドでは、アド達が宿を探していた。ギルドは避難民や騎士、傭兵で混雑しており、臨時対策本部としても使われていた。アドは情報を集めようとし、アーレフとギルド関係者の会話から、籠城戦が避けられない状況だと知った。
突入するゼロス
そこへ甲高い音と共に、ゼロスのサイドワインダー号が傭兵ギルドへ突っ込んできた。ゼロスはアーレフに、三十メートル級のグレート・ギヴリオンが接近しており、魔王クラスへ進化中だと報告した。その場にいた者達は、未曽有の大災害が迫っていることを知り、激しく動揺した。
殲滅者と豚骨チャーシュー
混乱の中、アドはゼロスの名を聞いて【殲滅者】だと気づいた。ゼロスもアドの名とプレイヤー名を聞き、かつての知人だと理解した。こうして二人は、絶望的な状況の真っただ中で再会を果たした。
第十六話 おっさん、アドを巻き込む
スライスト防衛会議と少風亭の夜
魔王進化の危機
スライストの傭兵ギルド奥の応接室で、ゼロス、アーレフ、ギルドマスターのドンサークは、接近するグレート・ギヴリオンへの対策を話し合っていた。通常でも手に負えない相手が魔王クラスへ進化しかけており、住民の退避も魔物の暴走で難しいため、スライストは極めて危険な状況に置かれていた。
人型の魔王
ゼロスは、進化後のギヴリオンが人間サイズになり、魔力を保ったまま知能と学習能力を高めると説明した。倒すには常識外の戦力が必要で、メーティス聖法神国の勇者では勝てないと見られた。アーレフ達は、その絶望的な戦力差を理解し、正面からの撃破がほぼ不可能であると悟った。
聖法神国への疑い
ゼロスは、グレート・ギヴリオンがメーティス聖法神国側から誘導された可能性を指摘した。邪香水を使えば魔物を誘導でき、聖法神国の現状を考えれば動機も十分にあった。アーレフとドンサークは、それが事実なら宣戦布告に等しい行為だと受け止めた。
防衛方針
ゼロスは、スライスト全体では暴走した魔物への防衛を優先し、グレート・ギヴリオンは少数精鋭で相手をするべきだと提案した。倒せる人材がいないと問われると、ゼロスは自分ともう一人で請け負うと答えた。そのもう一人として、偶然再会したアドを巻き込むことを決めていた。
アドへの取引
ゼロスはアドに、グレート・ギヴリオン戦への協力を求めた。アドは当然渋ったが、ゼロスはユイの居場所を知っていることを交渉材料にした。さらにユイが子供を身ごもったままこの世界へ来たことを明かし、アドは自分が父親になる事実に強く動揺した。
現実のレイド
ゼロスとアドは、ゲーム時代に経験したグレート・ギヴリオンのレイドイベントを思い出した。魔王化したギヴリオンは悪夢のような相手であり、今回はゲームではなく現実であることが重くのしかかった。二人は雑魚の殲滅と本体への対処を考えつつ、聖法神国の妄信者達が利用された可能性にも触れた。
巻き込まれた二人
ゼロスとアドの会話は、いつの間にか宗教国家の腐敗や権力構造の話にまで広がっていた。リサとシャクティは、魔王級の魔物が迫る中で話が脱線していく二人についていけなかった。しかも、彼女達自身も防衛戦に参加する流れから逃れられないことに、まだ気づいていなかった。
少風亭への道
宿を探すアド達に、ゼロスもついてきた。紹介された宿は西地区の【少風亭】で、周囲には柄の悪そうな者達が集まっていた。ゼロスは平然としていたが、リサとシャクティは夜中に襲われる可能性を意識し、警戒を強めた。
ユイへの恐怖
宿へ入る前、ゼロスはアド達の部屋割りをからかい、女性二人と同室になったことをユイに報告すると脅した。アドはユイの嫉妬深さを恐れ、必死に止めようとした。ゼロスは冗談めかしながらも、アドの新婚家庭事情が想像以上に壮絶であることを知り、深追いをやめた。
筋肉の宿
少風亭の中は、体格の良い男達が集まる酒場であり、カウンターには筋肉質なマスターが立っていた。宿泊を頼むと、マスターはなぜかプロテインやトレーニング器具を勧めてきた。部屋の鍵にまでハンドグリップがついており、ゼロス達は宿の濃すぎる雰囲気に圧倒された。
夜の情報交換
リサとシャクティは疲れて部屋へ向かい、ゼロスとアドは酒を飲みながら話すことにした。二人は転生後の出来事や集めた情報を語り合うため、カウンター席に座った。筋肉マスターがポージングする妙な空間の中で、スライストの夜は更けていった。
アラフォー賢者7巻レビュー
アラフォー賢者まとめ
アラフォー賢者9巻レビュー
同シリーズ
アラフォー賢者の異世界生活日記シリーズ
小説
























その他フィクション

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