物語の概要
■ 作品概要
後宮の奥深くに住まう「烏妃」こと柳寿雪は、妃でありながら夜伽をせず、不思議な術を用いる特別な存在である。周囲からは不老不死の老婆や恐ろしい幽鬼とも噂されていた。
そんな彼女のもとに、若き帝・夏高峻が訪れ、翡翠の耳飾りの持ち主を調べるよう依頼したことが物語の起点となる。
寿雪は術を用いて耳飾りに取り憑いた幽鬼が先代の「班鶯女」であることを特定し、宮女に変装して調査を進める中で、現皇太后による冤罪と殺害の真相に辿り着く。
また、調査の過程で寿雪が隠し持っていた「前王朝の皇族の証である銀髪」が高峻に露見する。しかし、高峻は自身の母を救えなかった過去の悔恨から寿雪に共鳴し、彼女を殺さぬと誓う。
後半では、二の妃・花娘からの依頼を契機に、前王朝の皇族で巫術師の幽鬼・欒氷月と対峙する。氷月が奪った魂を奪還し、高峻が過去の罪を暴いて皇太后を処断したことで、長年の因縁に終止符が打たれる。
孤独を貫いていた寿雪の周囲に九九や紅翹といった人々が集まり、彼女の閉ざされた日常が変化し始めるところで本巻は幕を閉じる。
■ 主要キャラクター
- 柳寿雪(りゅう じゅせつ)
- 後宮の奥・夜明宮に住む十六歳の烏妃。牡丹の花を媒介に術を行使する。
- 前王朝皇族の生き残り(銀髪)であることを隠すため、薬で髪を黒く染めている。
- 4歳の時に母が処刑される光景を目撃しており、自分だけが生き残ったことに深い罪悪感を抱いている。
- 夏高峻(か こうしゅん)
- 当代の帝。実母・謝妃を皇太后に殺害され、自身も廃太子の憂き目に遭った過去を持つ。
- 寿雪に琥珀の魚を渡すが、これは皇太后に殺害された自身の友であり宦官の丁藍が作ったものである。
- 幼馴染である花娘のために、自ら「花笛」を製作する器用さを併せ持つ。
- 衛青(えい せい)
- 高峻に絶対的な忠誠を誓う美しい容貌の宦官。
- 当初は烏妃を警戒するが、状況の変化に伴い寿雪を保護対象として認識し、温螢を護衛に配置するなど周到な手配を行う。
- 九九(くく)
- 内膳司の宮女。実家は餅屋。飛燕宮で虐げられていた際に寿雪に助けられ、交流を持つ。
- 寿雪に気に入られ、夜明宮の侍女として抜擢される。寿雪の孤独を解消する役割を担う。
- 花娘(かじょう)
- 二の妃(鴦妃)。雲中書令の孫で、高峻の幼馴染。
- 亡き恋人・欧玄有を慕い、鳴らない花笛(高峻作)を所持している。玄有の招魂を寿雪に依頼する。
- 欒氷月(らん hyougetsu)
- 前王朝の皇族で、首を刎ねられて死亡した優れた巫術師の幽鬼。
- 歴州の海商に取り憑いて後宮に侵入し、のちに宮女・葉倩城に憑依する。同族である寿雪への接触と「頼みごと」を目的に行動する。
書籍情報
後宮の烏
著者:白川紺子 氏
イラストレーター:香魚子 氏
出版社:集英社
発売日:2018年4月20日
ISBN:978-4-08-680188-1
あらすじ・内容
後宮の奥深く、妃でありながら夜伽をすることのない、「烏妃」と呼ばれる特別な妃が住んでいる。その姿を見た者は、老婆であると言う者もいれば、少女だったと言う者もいた。彼女は不思議な術を使い、呪殺から失せ物さがしまで、何でも引き受けてくれるという――。時の皇帝・高峻は、ある依頼のために烏妃のもとを訪れる。この巡り合わせが、歴史を覆す「禁忌」になると知らずに。 【目次】翡翠の耳飾り/花笛/雲雀公主/玻璃に祈る
後宮の烏
感想
夜伽をしない謎の妃と、彼女に執着する皇帝
後宮にいながら、夜伽をしない妃。
呪殺、祈祷、失せ物探し。
頼まれれば不思議な力を使って仕事を請け負うが、そのためには代償が必要になる。
呪殺なら生命。
祈祷なら財産。
失せ物探しは応相談。
そんな何とも怪しげな存在が「烏妃」である。
最初は後宮を舞台にした怪異ものなのかと思って読んでいた。
ところが読み進めていくと、烏妃という存在そのものがかなり複雑で面白い。
そして何より、当代の烏妃・柳寿雪がなかなか強烈な人物だった。
烏妃という存在そのものが面白い
そもそも、なぜ後宮にこんな女性がいるのか。
烏妃の始まりを知ると、この設定がかなり興味深かった。
不思議な力を持つ巫女を前の王朝が廟に置き、王朝が変わった後も簡単に外へ出すわけにはいかない。
そこで「烏妃」という地位を与え、後宮の中に置いた。
妃と呼ばれているのに、普通の妃とはまったく違う。
皇帝の寵愛を受けるための存在ではなく、むしろ神に仕える者に近い。
だから夜伽もしない。
そんな特殊な存在を「妃」という形で後宮に閉じ込めているところに、この世界の歪さを感じた。
そして現在、その烏妃となっているのが柳寿雪である。
寿雪がツンケンしているのにも理由がある
寿雪はかなり人を寄せ付けない。
皇帝が来ても普通に追い返そうとするし、言葉遣いも妙に古い。
最初は単純に変わった女の子なのかと思った。
しかし、彼女の過去を知ると印象が変わってくる。
寿雪は、先代の皇太后の命令によって滅ぼされた一族の生き残りだった。
偶然生き残った彼女は、やがて先代の烏妃に才能を見出され、次代の烏妃として育てられることになる。
人と関わらないようにするのも、自分の正体を隠すのも、生き残るためだったのだろう。
さらに、長く後宮に閉ざされて世間を知らない高齢の先代から言葉を教わったため、寿雪自身も古い言葉を使ってしまう。
本人は目立ちたくないはずなのに、やたらと目立つ。
このズレが面白い。
ツンケンしているように見えて、実際にはかなり危うい立場で生きてきた少女なのである。
幼い寿雪を見つけたのは……星星なのか?
寿雪の過去で妙に気になったところがある。
幼い頃、人買いに捕まっていた寿雪。
そんな彼女を見つけ出した存在を考えると……。
星星なのか?
あの丸っこいのが??
現在では皇帝の使いすら追い返しかねない門番のようになっている星星。
見た目との落差が激しい。
閑話休題。
こういう少し不思議で、どこか可愛らしい存在が混ざっているおかげで、後宮の権力争いや幽鬼の話が続いても重苦しくなりすぎないところも好きだった。
それにしても高峻は寿雪に構いすぎでは?
そんな寿雪のところへやって来たのが、新しく皇帝となった高峻である。
高峻は、翡翠の耳飾りに取り憑いた幽鬼の正体を調べてほしいと寿雪に頼む。
ここから二人の関係が始まるのだが……。
高峻。
寿雪に構いすぎでは?
烏妃は夜伽をしない。
普通の妃とは違う。
むしろ神に仕える者として扱われている。
それなのに高峻は何度も寿雪のもとを訪れる。
しかも寿雪の過去にも少しずつ近づいていく。
彼女の本当の髪の色が銀色であること。
その意味するところまで知りながら、寿雪との関係を切ろうとはしない。
寿雪は人を遠ざけようとしている。
高峻は逆に近づいてくる。
この関係が1巻で一番印象に残った。
恋愛だけでは説明できない、妙な距離感である。
高峻自身もかなり重いものを抱えている
一方、高峻もただ寿雪に執着している皇帝ではない。
表の世界ではかなり激しい権力争いを続けている。
自分の母親を死に追いやった皇太后を幽閉し、最終的には政治的な決着をつけて処刑する。
これで終わったのかと思ったら、終わらない。
皇太后は幽鬼となってまで悪さをする。
生きている人間の権力争いだけでも十分ドロドロしているのに、死者まで絡んでくる。
この作品では幽鬼が単なる怪物ではなく、生きていた頃の執着や後悔を残した存在として描かれているのが印象的だった。
死んだから終わりではない。
むしろ死んだからこそ、生前に残したものが浮き彫りになってくる。
寿雪が解き明かしているのは怪異でありながら、人間の感情なのかもしれない。
寿雪の周囲に少しずつ人が増えていく
寿雪は人との交流を避けてきた。
ところが高峻が現れたことで、その閉じた世界が少しずつ変わっていく。
雲花娘もその一人だった。
妃の一人として登場しながら、高峻に保護されている彼女もまた事情を抱えている。
いろいろなことに決着がついた後、寿雪を妹のように可愛がるようになるのが微笑ましい。
そして九九。
寿雪が侍女のふりをして殿舎から出た際に偶然出会った少女が、後には寿雪付きの侍女になる。
人を遠ざけていた寿雪の周りに、一人、また一人と人が増えていく。
寿雪本人からすれば迷惑なのかもしれない。
だが読んでいる側からすると、ずっと一人だった少女の世界が少しずつ広がっているように見える。
そこが良かった。
ただし、この後宮は誰を信用していいのかわからない
そして1巻を読み終えて感じたことがある。
この作品。
登場人物がみんな怪しく見える。
常に高峻のそばにいる衛青。
寿雪の周囲に集まってくる人々。
後宮にいる妃たち。
皇帝を取り巻く者たち。
雲花娘や九九のように寿雪との関係が見えてきた人物はともかく、それ以外は少し警戒して読んだほうがいいのではないか。
そんな気がしてならない。
後宮という場所自体が、誰かの思惑や過去が何重にも積み重なっている。
表では普通に振る舞っている人物が、裏では何かを抱えていてもおかしくない。
怪異より人間のほうが怖いのでは?
1巻を読んだ時点では、そんな印象も残った。
この予感は当たっているのだろうか。
まとめ|怪異を解決しながら、孤独だった寿雪の世界が広がっていく
『後宮の烏』1巻を読んで印象に残ったのは、怪異そのものよりも寿雪という少女だった。
滅ぼされた一族の生き残り。
偶然助かり、烏妃として育てられ、人との関係を避けながら後宮の奥で暮らしてきた。
そんな寿雪のところへ、皇帝・高峻がやって来る。
烏妃は夜伽をしない。
普通の妃ではない。
それなのに高峻は寿雪に関わり続ける。
その結果、九九や雲花娘をはじめとして、寿雪の周囲には少しずつ人が増えていく。
閉じていた寿雪の世界が、高峻との出会いをきっかけに少しずつ開いていく物語なのかもしれない。
同時に、高峻自身の過去や皇太后との因縁、烏妃が生まれた理由など、まだまだ気になることが多い。
そして何より気になるのが周囲の人々である。
誰が味方で、誰が何を隠しているのか。
1巻を読み終えた段階では、どうにも怪しい。
果たしてこの予感は当たっているのだろうか。
2巻を読んでみよう。
最後までお読み頂きありがとうございます。
考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:夜明宮の邂逅と耳飾りの依頼
帝・高峻は、不老不死の噂がある烏妃・寿雪を訪ね、翡翠の耳飾りの持ち主の調査を依頼する。寿雪は当初拒絶するが、好物の包子を対価として提示され、これを受諾する。寿雪が術を用いて耳飾りを確認すると、そこには首を絞められ顔が紫に腫れ上がった、口のきけない妃嬪の幽鬼が現れる。幽鬼の手首には現王朝の妃嬪を示す「三ツ星」の印があり、先代の帝の時代に不幸な死を遂げた者であることが示される。
第2幕:潜入調査と班鶯女の真実
寿雪は高峻が用意した宮女の衣を着て潜入調査を開始する。宮女の九九や阿繍から情報を収集し、幽鬼の正体が先代の「班鶯女」であることを特定する。班鶯女は当時の鵲妃を毒殺した疑いをかけられ、自害したとされていた。寿雪は班鶯女の元侍女で、舌を切られて洗穢寮に送られていた蘇紅翹を見つけ出す。紅翹の筆談により、班鶯女は皇太后(当時は皇后)による冤罪で殺害されたという真実が判明する。
第3幕:銀髪の露見と帝の誓い
ある夜、寿雪が夜明宮の池で髪の染料を洗い落としていた際、本来の銀髪を高峻に見られてしまう。銀髪は前王朝皇族の証であり、現王朝にとっては粛清対象である。しかし、高峻は「今夜は何も見なかった」と告げ、自身の母を見殺しにした後悔を寿雪に共有する。高峻は寿雪に「殺さない」という約束の証として、亡き友・丁藍の遺作である琥珀の魚を渡す。この出来事により、両者の間には孤独な過去を共有する者同士の信頼関係が構築される。
第4幕:花笛の依頼と招魂の失敗
二の妃・花娘が「鳴らない花笛」の件で夜明宮を訪れ、三年前の暴動で死んだ恋人・欧玄有の招魂を依頼する。この花笛は高峻が自ら製作したものである。寿雪は術を試みるが、玄有の魂が楽土にいないため招魂に失敗する。調査の結果、玄有が死んだ歴州で活動していた「月真教」の教祖・月下翁が、優れた巫術師の幽鬼(欒氷月)に取り憑かれていた可能性が浮上する。
第5幕:欒氷月の出現と魂の奪還
後宮に納品された銅の壺と宮女・葉倩城が消える事件が発生する。寿雪が術で追跡すると、宮女に憑依した欒氷月が現れる。氷月は壺の中に欧玄有を含む複数の魂を封じていた。氷月は寿雪に「後宮に甘んじるな」と告げ、同族としての接触を試みる。衛青が事前に配置していた護衛の温螢が石を投げて宮女の手から刃物を叩き落とし、その隙に寿雪が術を行使して封印を破壊する。魂は蛍火のような光の玉となって解放され、一度も鳴らなかった花笛が清らかに鳴り響く。
第6幕:因縁の決着と新たな日常
高峻は、耳飾りの事件や今回の魂封印事件の背後に皇太后の影があることを確信していた。郭皓の証言や内偵の結果、皇太后による帝毒殺計画の証拠を掴む。高峻はこの好機を逃さず、過去の謝妃殺害や班鶯女の冤罪を含めて皇太后を正式に処断する。因縁に終止符を打った高峻は寿雪の元を訪れ、安らぎを得る。寿雪の周囲には九九や紅翹が定着し、孤独だった夜明宮に新しい日常が形成される。
主要な転換点
- 転換点:翡翠の耳飾りの調査依頼
- 以前の状況 :寿雪は烏妃として夜明宮に引きこもり、他者との関わりを断っていた。
- 出来事 :高峻が夜明宮を訪れ、耳飾りの調査を依頼する。
- 変化 :寿雪が外部(高峻や九九)との接触を開始し、後宮内の事件解決に動き出す。
- 次への影響 :皇太后の過去の罪を暴く導線となり、物語の縦軸が始動する。
- 転換点:銀髪の秘密の露見
- 以前の状況 :寿雪は前王朝の生き残りであることを秘匿し、処刑の恐怖を抱えながら生活していた。
- 出来事 :高峻に銀髪を見られるが、高峻は見逃しと保護を約束する。
- 変化 :二人の間に「秘密の共有」と「共通の孤独」に基づく信頼が芽生える。
- 次への影響 :寿雪が高峻を受け入れ、孤立した立場から脱する心理的転換点となる。
- 転換点:欒氷月による魂封印の判明
- 以前の状況 :欧玄有の招魂が失敗に終わり、その原因が不明であった。
- 出来事 :巫術師の幽鬼・欒氷月が魂を壺に封じ、寿雪に同族として接触する。
- 変化 :単なる事件解決から、寿雪の出自や「烏妃」の存在意義を問う事態へと拡大する。
- 次への影響 :氷月との対峙を通じて、寿雪の巫術師としての能力と因縁が浮き彫りになる。
- 転換点:皇太后の処刑
- 以前の状況 :皇太后は権力を保持し続け、高峻を脅かす最大の障壁であった。
- 出来事 :毒殺計画を逆手に取った高峻が、過去の全犯罪を網羅した上で皇太后を処断する。
- 変化 :高峻の母や班鶯女の無念が晴らされ、現王朝における最大の懸案が解消される。
- 次への影響 :高峻の治世が安定し、寿雪もまた一つの大きな因縁から解放される。
主人公を中心とした人物関係の変化
- 寿雪 ⇔ 高峻
- 当初は警戒し合う関係であったが、耳飾りの事件解決や銀髪の露見を経て、互いの「親を失い、見捨てた」という共通の孤独(不憫さ)を知る。高峻が丁藍の形見である琥珀の魚を渡したことで、秘密を共有する唯一無二の理解者へと変化した。
- 寿雪 ⇔ 九九
- 当初は無関係であったが、寿雪が九九を救ったことで交流が始まる。寿雪は九九の明るさに徐々に心を許し、孤独な生活から、他者に世話を焼かれる人間的な関係へと移行した。
主人公の認識と周囲の評価
- 寿雪自身の認識 :自身を母の死を傍観した「罪人」であり、前王朝の血を引く「死ぬべき存在」と認識している。この罪悪感は、4歳の時に母が晒し首にされた記憶に根ざしており、孤独を受容する論理的根拠となっている。
- 周囲からの評価 :一般の宮女らからは「不老不死の老婆」「恐ろしい幽鬼」と畏怖されているが、実際に関わった者(高峻、九九)からは聡明で若々しい女性として高く評価されている。
- 認識の差が現れた場面 :高峻が寿雪に対し、幽鬼のために奔走する姿を「不憫であろう」と評した際、寿雪は自身の善性を指摘されたことに戸惑いを見せている。
クライマックス
欧玄有の魂の解放と皇太后の決着は、以下の時系列で進行する。
- 発生原因 :欒氷月が歴州の海商に憑依して後宮に侵入。欧玄有の魂を壺に封じ、寿雪へ接触を試みる。
- 対峙と配置 :寿雪が氷月を松林に追い詰める。氷月は宮女・葉倩城を盾にするが、衛青による周到な護衛配置の結果、温螢が石を投じて宮女の手から刃物を叩き落とす。
- 術の行使 :寿雪は牡丹の花を粉砕し、壺に施された「封嘴」の封印を破壊。光の玉が蛍火のように飛び交う視覚的描写とともに、複数の魂が解放される。
- 因縁の決着 :解放された玄有の魂は花娘のもとを訪れ、花笛を鳴らして楽土へ去る。高峻は毒殺計画の証拠を突きつけ、皇太后を処刑。班鶯女らの冤罪を正式に晴らす。
巻末時点の状況
- 寿雪の居場所と立場 :夜明宮に在住。依然として夜伽をしない「烏妃」という特異な立場。
- 解決した問題 :耳飾りの幽鬼(班鶯女)の救済、欧玄有の魂の解放、宿敵である皇太后の処刑。
- 継続・残存している問題 :烏妃としての孤独の宿命。高峻以外には秘匿し続けなければならない銀髪の秘密。逃亡した欒氷月との将来的な再接触。
この巻のプロット構造
- 開始地点 :夜明宮で孤立して生きる、正体不明の烏妃・寿雪。
- 発端 :帝・高峻による翡翠の耳飾りの調査依頼。
- 展開 :変装潜入による班鶯女の冤罪解明と、皇太后という共通の敵の浮上。
- 中盤の転換 :銀髪の露見と帝との「琥珀の魚」による約束。
- クライマックスへの導線 :花笛の依頼から巫術師の幽鬼・欒氷月との対峙。
- クライマックス :温螢の援護による魂の解放と、宿敵・皇太后の処刑。
- 到達地点 :孤独から脱しつつあるが、依然として銀髪の秘密を抱え続ける危うい均衡状態。
登場キャラクター
夜明宮
柳寿雪(欒寿雪)
夜明宮に住む十六歳の烏妃を務める。夜伽をせず不思議な術で呪殺や招魂を引き受ける。前王朝の皇族の生き残りであり銀色の髪を抱く。
・所属組織、地位や役職
夜明宮・烏妃。冬の王。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻の依頼を受けて翡翠の耳飾りに憑く幽鬼の正体を調べる。班鶯女と小翠の無実を明かした。欧玄有や明珠公主の魂を楽土へ送る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
人買いに売られて楊家の婢女となった過去を持つ。金鶏に選ばれて六歳で夜明宮へ入る。前王朝の捕殺令を夏高峻に廃止された。
麗娘
先代の烏妃を務めた人物を指す。寿雪を夜明宮で育て上げた。
・所属組織、地位や役職
夜明宮・先代烏妃。
・物語内での具体的な行動や成果
幼い寿雪の髪を黒く染めた。寿雪に読み書きや言葉遣いや術を教授する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
名家の出身に該当する。二年前に亡くなった。
九九
内膳司から夜明宮へ配属された宮女を指す。市井の餅屋の娘に該当する。明るくおしゃべりな性格を見せる。
・所属組織、地位や役職
内膳司宮女。夜明宮・寿雪専属の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
飛燕宮の裏手で寿雪と出会った。寿雪の調査を手伝う。夜明宮で寿雪の身の回りの世話を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
一年前に入宮した。寿雪の推薦により夜明宮の侍女へ昇格する。
温螢
衛青の命令で寿雪の護衛を務める若い宦官を指す。一重の美しい目と頬の傷を持つ。
・所属組織、地位や役職
宦官。寿雪の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
洗穢寮へ向かう途中で襲われた寿雪と九九を救出した。蘇紅翹を夜明宮へ搬送する。葉倩城の手から刀子を打ち落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
衛青の部下として隠密に行動する。優れた武芸を見せる。
蘇紅翹
班鶯女の元侍女を務めた女性を指す。皇太后側の陰謀により舌を切られた。
・所属組織、地位や役職
班鶯女の元侍女。洗穢寮の女官。夜明宮の厨手伝い。
・物語内での具体的な行動や成果
洗穢寮で寿雪と出会った。文字を書いて鵲妃毒殺事件の真相を寿雪に伝える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
舌を切られて言葉を失った。寿雪により夜明宮へ引き取られる。
星星
夜明宮で飼われている金色の鳥を指す。丸々と太った姿を見せる。
・所属組織、地位や役職
夜明宮の化鳥。
・物語内での具体的な行動や成果
夜明宮を訪れた夏高峻や衛青を威嚇した。来客が近づくと羽をばたつかせて騒ぐ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
次代の烏妃となる人物を金色の羽根で知らせる役割を持つ。寿雪の指示に従わない場面が多い。
皇室・凝光殿
夏高峻
霄の若き皇帝を務める。廃太子の過去を持ち穏やかで老成した雰囲気を漂わせる。
・所属組織、地位や役職
霄国・皇帝。凝光殿の主。夏の王。
・物語内での具体的な行動や成果
翡翠の耳飾りの持ち主を探すため夜明宮を訪ねた。寿雪の助力を受けて皇太后の罪を暴く。前王朝の捕殺令を廃止した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十三歳で廃太子となる。十八歳で復位して即位に至った。
衛青
夏高峻に忠実な側仕えの宦官を務める。澄んだ高い声と美しい容貌を持つ。
・所属組織、地位や役職
内侍省・衛内常侍。夏高峻の側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻の夜明宮訪問に同行した。内僕寮の帳簿を調べる。間諜を配置して後宮の動きを監視した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
夏高峻が十歳の頃に出会う。夏高峻から深い信頼を得た。
謝氏(謝妃)
夏高峻の生母を指す。泊鶴宮に住んでいた四の妃に該当する。
・所属組織、地位や役職
先帝の妃(四の妃・鶴妃)。
・物語内での具体的な行動や成果
皇太后から嫌がらせを受けながら耐え続けた。雲雀公主へ食事を届けるよう羊十娘に命じる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇太后の企みにより毒殺された。死後に幽鬼となって夏高峻を守る。
丁藍
幼少期の夏高峻に仕えていた宦官を指す。口がきけないが手先が器用な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
主殿寮宦官。東宮府の世話係。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻に木彫りを教えた。夏高峻のために葵を取りに向かう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇太后の宦官に濡れ衣を着せられて殺害された。死後に幽鬼となって謝氏とともに夏高峻を守る。
羽衣
凝光殿の宝物庫を管理する老宦官を務める。消炭色の袍と雪雁の羽をさした樸頭を着用する。
・所属組織、地位や役職
凝光殿・宝物庫管理宦官(羽衣)。
・物語内での具体的な行動や成果
宝物庫を案内した。明珠公主の玉珮や小刀や屏風を寿雪に見せる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
前王朝の時代から宝物庫の管理を務める。暗記憶に優れる。
後宮(妃嬪・宮女・宦官)
雲花娘(花娘)
鴛鴦宮に住む二の妃を務める。夏高峻の幼なじみであり涼やかで落ち着いた佇まいを見せる。
・所属組織、地位や役職
鴛鴦宮・二の妃(鴦妃)。
・物語内での具体的な行動や成果
夜明宮を訪問して寿雪と交流した。恋人である欧玄有の魂の招魂を寿雪に依頼する。寿雪に美しい衣を贈った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
雲宰相の孫娘に該当する。後宮の取り仕切りを担当した。
班鶯女(小翠)
先帝の時代に鵲巣宮へ間借りしていた下位の妃を指す。別名を小翠と呼ぶ。
・所属組織、地位や役職
先帝の妃(班鶯女)。
・物語内での具体的な行動や成果
郭皓と翡翠の耳飾りを片方ずつ分け合った。皇太后の陰謀により鵲妃殺害の罪を着せられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇太后の配下に首を絞められて殺害された。幽鬼となって翡翠の耳飾りに留まるが郭皓との再会により成仏する。
鵲妃
先帝の時代に鵲巣宮に住んでいた三の妃を指す。重臣の娘に該当する。
・所属組織、地位や役職
先帝の妃(三の妃・鵲妃)。
・物語内での具体的な行動や成果
身篭っていた時期に羹に入った毒で死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇太后の指示を受けた配下により毒殺される。
皇太后
先帝の皇后を務めた人物を指す。先帝の没後に権力を握り私腹を肥やす。
・所属組織、地位や役職
先帝の皇后。皇太后。
・物語内での具体的な行動や成果
謝氏や丁藍を殺害した。夏高峻を廃太子へ追い込む。鵲妃を毒殺して班鶯女に罪を着せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
夏高峻の決起により汀泪宮へ幽閉された。暗殺計画と過去の罪が判明して処刑に至る。
阿繍
内染司の洗い場に勤める四十前後の宮女を務める。
・所属組織、地位や役職
内染司宮女。
・物語内での具体的な行動や成果
洗い場で寿雪や九九に布をもみ洗いさせた。班鶯女事件の噂を寿雪に話す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後宮の古参宮女として過去の出来事を記憶する。
李十四娘(李秋容)
内書司の宮女を務める。太府寺丞の娘に該当する。
・所属組織、地位や役職
内書司宮女。
・物語内での具体的な行動や成果
九九に衣の修繕を押し付けた。辛氏と張易の間で手紙のやり取りを仲介する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
侍女への登用を口実に辛氏に利用された。
張易
飛燕宮に仕える宦官を務める。
・所属組織、地位や役職
飛燕宮宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
辛氏から頼まれて毒薬の冶葛の包みを部屋に隠した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
毒薬の存在を知らずに保管し事件発覚後に捕縛される。
辛氏
皇太后の元侍女を務めた宮女を指す。薬の行商人を実家に持つ。
・所属組織、地位や役職
皇太后の元侍女。内書司宮女。
・物語内での具体的な行動や成果
実家から入手した冶葛を所持した。顧玄と共謀して夏高峻の暗殺を企てる。李秋容を利用して張易へ冶葛を預けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇太后の幽閉後に閑職へ回される。暗殺未遂の発覚により捕縛された。
顧玄
皇太后に仕えていた元宦官を指す。
・所属組織、地位や役職
内府局宦官。
・物語内での具体的な行動や成果
皇太后から買収された。辛氏とともに夏高峻の暗殺計画を立てる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
暗殺計画の発覚により捕縛されて白状した。
雲雀公主
先帝の異母妹である公主を指す。母が一介の宮女であったため後宮で孤立する。
・所属組織、地位や役職
先帝の異母妹(公主)。
・物語内での具体的な行動や成果
滄浪殿で自炊や園芸を行い静かに暮らした。羊十娘の咳を案じて貝母を採ろうと試みる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十三歳で池に落ちて死亡した。
羊十娘(羊氏)
鶴妃に仕える侍女を務める。華奢で青白い肌を持つ。
・所属組織、地位や役職
泊鶴宮・鶴妃の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
十二歳の頃に雲雀公主と知り合った。滄浪殿の池のほとりに玫瑰の花を供える。寿雪に雲雀公主の思い出を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
季節の変わり目に咳を出す体質を持つ。謝氏の命で雲雀公主に食事を運ぶ役割を務めた。
鶴妃
泊鶴宮に住む妃を務める。実家が富戸に該当する。
・所属組織、地位や役職
泊鶴宮の妃(鶴妃)。
・物語内での具体的な行動や成果
反物やアクセサリーを部屋に並べて選んだ。不要になった品を侍女たちへ下賜する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
気前が良い性格として侍女たちから評価された。
葉倩城
内縫司の宮女を務める。
・所属組織、地位や役職
内縫司宮女。
・物語内での具体的な行動や成果
欒冰月の幽鬼に取り憑かれた。封印の銅壺をかかえて松林へ移動する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
温螢に手を打たれて倒れた。幽鬼の離脱後に無事に救出される。
朝廷・官吏
雲中書令(雲宰相)
中書省の長官を務める。見事な白髭を蓄える。
・所属組織、地位や役職
中書令(宰相)。元東宮太師。
・物語内での具体的な行動や成果
幼少期から夏高峻の側近を務めた。汀泪宮や皇太后側の資金移動を監視する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
雲花娘の祖父に該当する。朝廷で夏高峻を支えた。
何洵(明允)
学士承旨を務める。字を明允と呼ぶ。
・所属組織、地位や役職
学士承旨。戸部侍郎。
・物語内での具体的な行動や成果
戸部の財政管理を担当した。洪濤院で夏高峻や寿雪を郭皓のもとへ案内する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
理知的な四十代の官吏として朝政に携わった。
郭皓(十郎)
秘書省の校書郎を務める。小翠(班鶯女)の許婚に該当する。
・所属組織、地位や役職
秘書省校書郎。
・物語内での具体的な行動や成果
小翠の死の真相を探るため泥さらいに紛れて後宮へ忍び込んだ。襲われた寿雪と九九を助ける。夏高峻へ皇太后側の暗殺計画を証言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
貢挙を首席で及第する。後宮侵入の罪を夏高峻により不問とされた。
欧玄有(欧宵)
歴州参軍を務めた。字を宵と呼ぶ。雲花娘の恋人に該当する。
・所属組織、地位や役職
歴州参軍。
・物語内での具体的な行動や成果
月真教の調査のため歴州へ赴任した。暴動に巻き込まれて石の打撃で死亡する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
進士からのたたき上げ官吏を指す。死後に魂を欒冰月により壺へ封じられたが寿雪の手で開放された。
楊氏
下級役人を務める。かつて寿雪を婢女として買い取った人物に該当する。
・所属組織、地位や役職
流外官。楊家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
四歳の寿雪を買い取り家婢として働かせた。門に金色の矢が刺さったことで宮城の使者に寿雪を引き渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
使用人を荒く扱う噂が存在する。賄賂や私塩の密売疑惑を持たれた。
前王朝(欒氏)
欒夕
前王朝の初代皇帝を務める。銀将軍と称される。
・所属組織、地位や役職
前王朝(欒朝)・初代皇帝。夏の王。
・物語内での具体的な行動や成果
行軍中に香薔を見出だして救出した。冬の王の力を借りて戦乱を制する。香薔を夜明宮へ閉じ込めて烏妃と名付けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ふたりの王の歴史を隠蔽した偽の史書を作成させる。
香薔
前王朝の最初の烏妃を務める。元は奴隷の少女に該当する。
・所属組織、地位や役職
前王朝・初代烏妃。冬の王。
・物語内での具体的な行動や成果
欒夕のために術を行使して勝利をもたらした。夜明宮に留まり烏漣娘娘の番人となる誓約を受け入れる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
欒夕を深く愛した。歴代烏妃の始祖となる。
欒冰月
前王朝の皇族を務めた。術に長けた巫術師に該当する。
・所属組織、地位や役職
前王朝・皇孫。巫術師。
・物語内での具体的な行動や成果
明珠公主との結婚のために離籍を試みた。処刑後に幽鬼となり明珠公主の魂を探し続ける。月下翁や宮女に取り憑いて行動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
炎帝の即位時に首を撥ねられて死亡する。寿雪により明珠公主の魂と引き合わされて消滅した。
明珠公主
前王朝の二番目の公主を務めた。美しい容貌を持つ。
・所属組織、地位や役職
前王朝・第二公主。
・物語内での具体的な行動や成果
欒冰月から求婚の品として玻璃の櫛を受け取った。敵の手にかかるのを避けるため柳の下で小刀を用いて自殺する。玻璃の櫛を柳の根元に埋めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
二十四歳で死亡する。幽鬼となって柳の下に留まったが玻璃の櫛の発見により救われた。
寿雪の母
前王朝の皇族の血を引く女性を指す。
・所属組織、地位や役職
前王朝皇族の末裔。遊里の妓女。
・物語内での具体的な行動や成果
銀髪を隠して寿雪を密かに育てた。追手から逃れるため幼い寿雪を坊門の陰に隠して囮となる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
兵士に捕らえられて反逆の罪で処刑された。
淞
古代の夏の王を務めた。
・所属組織、地位や役職
古代の夏の王。
・物語内での具体的な行動や成果
冬の王である綏を殺害した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
綏への執着や愛憎から殺害に至る。
綏
古代の冬の王を務めた。
・所属組織、地位や役職
古代の冬の王(巫女王)。
・物語内での具体的な行動や成果
清らかな美しさを持ち神託を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
夏の王である淞により殺害される。
冬官府・神祇
薛魚泳
冬官府の長官を務める。長い白眉と白髭を持つ姿を見せる。
・所属組織、地位や役職
冬官府・冬官。
・物語内での具体的な行動や成果
星烏廟で夏高峻の訪問を受けた。烏妃と冬の王の歴史や史書の秘密を夏高峻に明かす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
長年冬官の職を務めた。先代烏妃と交流を持つ。
烏漣娘娘
夜と万物の生命を司る女神を指す。
・所属組織、地位や役職
神(夜と生命の女神)。
・物語内での具体的な行動や成果
海の向こうから飛来して島に根を下ろした。夏と冬の二人王を選ぶ。夜明宮の下に留まり夜遊神として徘徊した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
烏妃の選定と命を握る存在として君臨する。
その他の人物
炎帝
夏高峻の祖父を務める。現王朝の興始者に該当する。
・所属組織、地位や役職
現王朝・初代皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
前王朝からの禅譲を受けて即位した。前王朝の皇族を徹底的に粛清する。幽鬼に悩まされて先代烏妃に祓わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
巫術師の追放や粛清を断行した。
先帝
夏高峻の父を務める。
・所属組織、地位や役職
現王朝・第二代皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
皇后(皇太后)の権勢を恐れて謝氏の放置を決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
事なかれ主義の性格を持つ。政治的混乱の中で治世を行った。
月下翁
歴州で崇められた自称生き神を指す。
・所属組織、地位や役職
歴州の占術師。月真教の象徴。
・物語内での具体的な行動や成果
欒冰月の幽鬼に取り憑かれた。予言や幻術を披露して信者と財を集める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
官府に捕らえられて杖打刑の末に死亡した。
集団・組織
北衙禁軍
皇帝直属の親衛軍を指す。
・所属組織、地位や役職
軍隊(皇帝直属禁軍)。
・物語内での具体的な行動や成果
夏高峻の決起に応じて皇后の宮へ踏み込んだ。朝廷の要所を抑えて即位を支える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
夏高峻の強い武力基盤として機能した。
内僕寮
宮中の名簿や記録を保管する役所を指す。
・所属組織、地位や役職
後宮管理役所。
・物語内での具体的な行動や成果
妃嬪や宮女の女官帳簿を管理した。過去の班鶯女の侍女の行方を保持する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後宮の人的記録の統合管理を担った。
内膳司
宮中の食事や調理を担当する部署を指す。
・所属組織、地位や役職
後宮・調理部署。
・物語内での具体的な行動や成果
朝餉や晩餐の下ごしらえを行った。九九が臼でわらびの根を搗く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
多くの宮女と婢女が所属して稼働した。
内書司
後宮の蔵書楼を管理する部署を指す。
・所属組織、地位や役職
後宮・図書管理部署。
・物語内での具体的な行動や成果
蔵書楼で書籍の管理を行った。辛氏や李秋容が所属して密談の舞台となる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後宮の奥に位置する閑職として機能した。
内掃司
後宮の清掃を担当する部署を指す。
・所属組織、地位や役職
後宮・清掃部署。
・物語内での具体的な行動や成果
薄い珊瑚色のシンプルな襦裙を制服とした。寿雪が調査の際に変装用衣装として借り受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後宮全域の清掃作業を管轄した。
内染司
布地や糸の染色・洗濯を担当する部署を指す。
・所属組織、地位や役職
後宮・洗濯染色部署。
・物語内での具体的な行動や成果
物干し場で宮女たちが盥で布を洗った。阿繍が所属して作業を指導する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後宮の衣類管理と洗浄を支えた。
内縫司
後宮の裁縫や衣装仕立てを担当する部署を指す。
・所属組織、地位や役職
後宮・裁縫部署。
・物語内での具体的な行動や成果
妃嬪の衣服の縫製を行った。葉倩城が所属して作業に携わる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後宮の衣装制作の中核を担った。
洗穢寮
年老いた女官や罪を犯した女官が集められる施設を指す。
・所属組織、地位や役職
後宮・最下層収容施設。
・物語内での具体的な行動や成果
水はけの悪い湿地で雑用や洗濯を行った。舌を切られた蘇紅翹が収容される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宮女の墓場と称される過酷な環境を持った。
太府寺
市場や貿易を管理する行政機関を指す。
・所属組織、地位や役職
朝廷・市場貿易管理役所。
・物語内での具体的な行動や成果
市井の店舗の取締りを行った。太府寺丞が李秋容の父親として権力を振るう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
市場管理の権限により強い影響力を持った。
冬官府(放下郎)
神祇や儀式を司る部署を指す。
・所属組織、地位や役職
神祇管理機関。
・物語内での具体的な行動や成果
星烏廟の維持管理を行った。薛魚泳の補佐として放下郎が行動する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
時代とともに信仰が薄れて閑職化した。
鳧軍
後宮で水路清掃や肉体労働を行う下級宦官の集団を指す。
・所属組織、地位や役職
後宮・肉体労働下級宦官組織。
・物語内での具体的な行動や成果
後宮の溝の泥さらい作業を実施した。郭皓が紛れ込み用の変装として利用する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
人数の変動が激しく出入りが容易な特徴を持った。
月真教
歴州で流行した新興宗教を指す。
・所属組織、地位や役職
宗教組織(新興信仰)。
・物語内での具体的な行動や成果
月下翁を生き神として崇めた。官府に対して信者が暴動を起こす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
暴動の鎮圧後に組織が消滅した。
展開まとめ
翠の耳飾り
烏妃と皇帝の出会い
後宮の奥にある夜明宮には、夜伽をせず、不思議な術で呪殺や招魂、失せ物探しなどを請け負う特別な妃・烏妃が暮らしていた。若き皇帝・夏高峻は宦官の衛青を伴って夜明宮を訪れ、十六歳の烏妃・柳寿雪と対面した。高峻は拾った翡翠の耳飾りの持ち主を探すよう頼んだが、寿雪は面倒事を嫌って断った。
翌日、高峻は寿雪の好物である蓮餡の包子を持参し、耳飾りに紅い襦裙を着た女の幽鬼が取り憑いていると明かした。寿雪が術を使うと、首を吊った女の姿が現れた。高峻は不幸な死を遂げた幽鬼を救いたいと望み、寿雪はその依頼を引き受けた。
班鶯女の過去
寿雪は宮女に変装して後宮を調べ、内膳司の宮女・九九と知り合った。九九や古参宮女の阿繍から、先帝の時代に鵲妃を毒殺した疑いをかけられ、首を吊って死んだ班鶯女の話を聞いた。班鶯女の侍女だった蘇紅翹が洗穢寮にいると判明し、寿雪は彼女を訪ねた。
舌を切られて話せない紅翹は文字で、鵲妃を殺したのは班鶯女ではなく皇太后だったと告白した。身籠った鵲妃を邪魔に思った皇太后は、班鶯女の櫃へ毒草の狼毒を仕込ませ、罪を着せたのである。真相を知る小間使いは殺され、紅翹も家族を人質に取られて沈黙を強いられた末、口封じのため舌を切られていた。
しかし翡翠の耳飾りは班鶯女のものではなかった。班鶯女は同じ耳飾りを持っていたが、泣いていた誰かに譲っていたのである。
小翠と郭皓
調査の結果、耳飾りの幽鬼は班鶯女ではなく小翠という宮女だと判明した。小翠には郭皓という許婚がおり、二人は翡翠の耳飾りを一つずつ持っていた。後宮へ入った小翠は郭皓を想い続けていたが、命を落として幽鬼となっていた。
寿雪は郭皓に小翠の姿を見せ、二人を最後に対面させた。郭皓の声は当初、小翠に届かなかったが、寿雪は彼女の心残りを解き、小翠を楽土へ送った。事件を通して寿雪と高峻の距離は縮まり、高峻は夜明宮で安らかに眠るようになった。寿雪も一夜だけ彼に良い夢を授けた。
寿雪の銀髪
寿雪には、高峻に知られてはならない秘密があった。本来の髪は黒ではなく、前王朝の皇族の証である銀色だったのである。前王朝の皇族は高峻の祖父・炎帝によって徹底的に粛清されており、寿雪の母も反逆の罪で処刑されていた。
四歳で母を失った寿雪は人買いに捕まり、楊家の婢女となった。その後、金鶏によって次代の烏妃に選ばれ、六歳で夜明宮へ連れてこられた。先代烏妃の麗娘は寿雪の正体を守るため髪を黒く染め、読み書きや術を教えて育てた。
寿雪が池で髪を染め直していた夜、高峻と衛青に銀髪を見られてしまった。処刑を覚悟した寿雪に対し、高峻は何も見なかったと告げ、秘密を守った。
花笛
皇太后の処断
班鶯女の事件で得られた証言は、高峻が長年追い求めていた皇太后の罪を裏づけるものとなった。皇太后は高峻の生母・謝氏を殺した疑いもあり、高峻自身を廃太子へ追い込んだ人物だった。しかし高峻は憎悪だけで処刑すれば皇太后と同じになると考え、確かな証拠を求め続けていた。
紅翹の証言などによって罪を明らかにした高峻は、ついに皇太后を処断した。寿雪が呪殺したとの噂も流れたが、皇太后は自身の罪によって罰を受けたのであった。
花娘の依頼
後宮を取り仕切る妃・花娘が夜明宮を訪れ、寿雪へ密かに相談を持ちかけた。花娘の身辺では花笛にまつわる不可解な出来事が起きており、寿雪は新たな怪異に関わることになった。
高峻も寿雪の存在に疑問を抱き、烏妃と烏漣娘娘の関係を調べ始めた。烏妃は単なる巫婆の末裔ではなく、夜明宮そのものにも隠された意味があることが浮かび上がった。
雲雀公主
池に残る雲雀
寿雪は後宮の池にまつわる怪異を調べ、かつてそこで亡くなった雲雀公主の存在を知った。池では雲雀の鳴き声が聞こえ、寿雪は公主の死と怪異の関係を探った。
寿雪は残された痕跡や関係者の話をたどり、死者が現世に残る理由を探した。怪異の背後には、生前の思いと死後も消えない執着があり、寿雪はそれを解くことで幽鬼を救おうとした。
烏妃への疑問
一方、高峻は冬官府を訪ね、烏妃について調査した。前王朝を倒した炎帝は巫術を嫌っていたにもかかわらず、烏妃だけは廃さなかった。炎帝自身が殺した前王朝の皇族たちの幽鬼に悩まされ、烏妃の力を必要としたためであった。
さらに高峻は、夜明宮が皇帝の住む凝光殿と対になる位置にあることにも気づき、烏妃が単なる妃ではないと考えるようになった。
玻璃に祈る
前王朝の幽鬼
寿雪の前に、前王朝の皇族で高名な巫術師だった冰月の幽鬼が現れた。冰月は炎帝による皇族粛清を生き延びられず幽鬼となり、同じく殺された明珠公主を救うため、長い間後宮をさまよっていた。
明珠も幽鬼として残っていたが、冰月が何度呼びかけても声が届かなかった。冰月は明珠を楽土へ送る方法を求めて巫術師を探し続け、やがて烏妃である寿雪に望みを託した。
寿雪は宝物庫で前王朝の皇族を描いた屏風を調べ、明珠が生前、玻璃の櫛を持っていたことを知った。明珠の心を占めているものを突き止めようとし、冰月や高峻とともに彼女のもとへ向かった。
冬の王
烏妃の真実
高峻が烏妃の正体を追究する中、寿雪はついにその成り立ちを明かした。かつて国には夏の王と冬の王という二人の王が存在し、冬の王は烏漣娘娘によって選ばれていた。
戦乱の末、夏の王となった欒夕は冬の王・香薔を夜明宮へ閉じ込め、烏妃という妃の地位を与えた。香薔は欒夕を愛していたためその境遇を受け入れ、烏漣娘娘を夜明宮の下にとどめる番人となった。以後、歴代の烏妃は冬の王でありながら王の名を奪われ、夏の王を王たらしめるために存在してきたのである。
正史から二人の王の歴史は消され、烏妃は烏漣娘娘に仕える巫婆の末裔とされていた。高峻は、自分が帝でいられる背景に冬の王の存在があることを知った。
寿雪と高峻
高峻は寿雪に、王の名を奪われて夜明宮に閉じ込められる人生を受け入れてよいのかと問いかけた。寿雪も好きで烏妃を続けているわけではなかったが、烏妃を選ぶのは烏漣娘娘であり、自分の意思だけではその役目から逃れられなかった。
当初、寿雪は帝である高峻との関わりを避けようとしていた。しかし高峻は寿雪の銀髪を見ても前王朝の生き残りとして処断せず、その秘密を守り、寿雪もまた高峻が抱える過去や苦しみに触れていった。
幽鬼たちの未練を解いていく中で、孤独だった寿雪の周囲には九九や高峻たちが集まり始めた。夜明宮に閉じこもって生きてきた烏妃・寿雪の日常は、高峻との出会いを境に少しずつ変わり始めたのであった。
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後宮の鳥




同著者のシリーズ
花菱夫妻の退魔帖


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