物語の概要
■ 作品概要
本作は、異世界ファンタジーおよび帝位継承戦を巡る暗躍を描いたライトノベルシリーズ『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』の第14巻である。 物語の世界観は強大なアードラシア帝国を舞台としており、無能を演じる第七皇子アルノルトが、優秀な双子の弟を皇帝にするために裏で暗躍する物語が基本となっている。 第14巻では、亡命してきた藩国の王女マリアンヌの帝都入城を巡るドラマが展開される。皇太子ヴィルヘルムの死によって帝国側に激しい怨嗟が渦巻く中、マリアンヌの入城に反対する民が帝都正門前に集結する事態が発生する。アルノルトが対応を模索する中、皇太子の実弟であるトラウゴットが演説を行い、民の怨嗟を鎮めてマリアンヌを歓迎のムードで出迎えるという、帝国の表舞台における新たな政治的動乱と情勢の変化が描かれている。
■ 主要キャラクター
- アルノルト・レークス・アードラー: アードラシア帝国の第七皇子 。帝都到着を前にマリアンヌの覚悟を確認し、彼女に直接の責任がないことを理解しつつもその覚悟を尊重する 。帝都正門前で民が抗議活動を行った際には、強制排除ではなく対話による解決を模索するなど、冷静で思慮深い立ち位置を見せる 。
- マリアンヌ: 帝国に亡命してきた藩国の王女 。帝国の怨嗟を受け止める責任があると蒼白な顔をしながらも語り、民のために国を捨てた覚悟を持つ 。帝都の民から花びらを撒かれて歓迎された際には、帝国を素晴らしい国だと感じて涙を流す 。
- トラウゴット・レークス・アードラー: 亡き皇太子ヴィルヘルムの実弟である皇族 。帝都全体に響く演説を行い、兄の死を理由にマリアンヌを責めるべきではないと宣言する 。民の非難を称賛へと変え、マリアンヌを丁重に出迎えることで、抗議の事態を収束させる決定的な役割を果たす 。
■ あらすじ
藩国のマリアンヌ王女が帝都へ到着し、民衆の反発はトラウゴットの演説で鎮められた。
皇帝はアルノルトに王女との政略結婚を命じようとするが、トラウゴットが自ら求婚して藩王に就き、アルノルトを宰相とする案で事態を収束させる。 一方、反乱に加担したヘンリックは自らの命を懸けて姪の保護を皇帝に嘆願し、アルノルトの手で密かに救出されて暗躍の協力者となった。
その頃、魔奥公団の拠点を襲撃したアルノルトは人間を依り代とする悪魔と交戦し、新たな魔法でこれを撃破する。
事態を重く見た冒険者ギルドは賢王会議を開き、王国との一時停戦とSS級冒険者による討伐作戦の決定に至った。
王国に潜む悪魔たちはSS級冒険者らの手で討ち取られるが、魔奥公団を率いる大公は逃亡を図る。
背後でうごめく王太子の陰謀や残存する悪魔の脅威を抱えたまま、トラウゴットとマリアンヌの結婚式は盛大に執り行われた。
そして、アルノルトもまた藩国の宰相として新たな地へ旅立っていくのである。
書籍情報
最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 14 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する
著者:タンバ 氏
イラスト:夕薙 氏
出版社:KADOKAWA(スニーカー文庫)
発売日 :2025年3月1日
ISBN : 9784041159941
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あらすじ・内容
次なる暗躍は――アルの結婚話とSS級悪魔討伐、帝国の表裏を掌握せよ! 藩国王女の亡命で帝国との同盟が進行。皇族とマリアンヌ王女の結婚話が浮上し、相手はまさかのアル!? 悩むアルへ手を差し伸べる意外な人物とは……「自分が助けるでありますよ」
結婚という表の問題が発生する一方、裏の問題“魔奥公団”の拠点を壊滅してまわるシルバーが邂逅した悪魔ハーゲンティ。SS級冒険者にも匹敵する力を見せつけた悪魔の出現に危機を覚えた冒険者ギルドは各国の王たちを招集する賢王会議を開催! 各自協力のもと、SS級冒険者再集結という大規模な魔奥公団討伐作戦が王国各所で決行され――複数の悪魔と激闘が開始する!
最強皇子による縦横無尽の暗躍ファンタジー、殲滅の14巻!
最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い14 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する
感想
主人公アルノルトを巡る表の政略結婚話と、裏で進行する凄惨な悪魔との戦いが実に見事なコントラストを描いており、終始ページをめくる手が止まらなかった。これまでの布石が一気に動き出し、帝国の未来を大きく揺るがすターニングポイントとなる、非常に密度の濃い1冊である。
何よりも印象的だったのは、アルノルトの婚姻を巡るスリリングな人間関係のドラマだ。藩国から亡命してきたマリアンヌ王女との縁談が急浮上したかと思えば、エルナやフィーネの陣営からも婿入りの打診が重なり、ついに長年の関係に決着がつくのかと大いに胸が躍った。しかし、この複雑極まる難題を、予想外の形で収束させたトラウゴットの存在感が素晴らしい。自ら藩王に立候補し、民衆の反発を演説で鎮める姿には胸が熱くなった。
それに続く、皇太子を殺した国への憎しみを募らせる皇后ブリュンヒルトと、亡き皇太子の妻テレーゼによる説得のシーンは、本作屈指の人間ドラマとして深く心に残っている。遺された者たちの深い葛藤が解消され、最終的にアルノルトがトラウゴットの宰相として「期限付き移籍」のような形で藩国へ同行する着地は、政治的にも物語の展開としても非常に小気味が良い。
一方で、作品のもう一つの魅力である「裏の暗躍」と戦闘シーンのクオリティも凄まじい。人間を依り代とする狡猾な悪魔に対し、アルノルトが放った新たな銀滅魔法《シルヴァリー・フォース》の圧倒的な威力にはカタルシスを覚えた。事態の重さから冒険者ギルドが賢王会議を招集し、SS級冒険者たちが再集結して大規模な討伐作戦を繰り広げる展開は、まさにファンタジー戦記の醍醐味である。
また、ただ戦うだけでなく、反乱に加担したヘンリックが自らの命を懸けて姪を守ろうとする家族愛の描写も切ない。アルノルトが彼を密かに救出し、新たな暗躍の協力者として迎え入れる一連の流れからは、主人公の冷徹さと優しさが同居した深い魅力が伝わってきた。
魔奥公団を率いる大公の逃亡や、背後でうごめく王太子の陰謀など、依然として不穏な脅威は残されている。それでも、トラウゴットとマリアンヌの盛大な結婚式を見届け、新たな任地へと旅立つアルノルトの姿を見届けて、読後は心地よい高揚感に包まれた。藩国という新しい舞台で、最強の皇子がどのような縦横無尽の暗躍を見せてくれるのか、次巻への期待がどこまでも膨らむ傑作である。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
政略結婚
『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第14巻において、「皇族の政略結婚」は単なる国家間の取引や権力闘争の道具としてだけでなく、個人の覚悟や過去の遺恨を乗り越えるためのドラマとして深く描かれている。
その具体的な展開と、政略結婚にまつわる各キャラクターの思惑は以下の通りである。
同盟の証としての政略結婚とアルノルトの葛藤
皇帝ヨハネスは、制圧したコルニクス藩国を属国ではなく強固な同盟国とするため、マリアンヌ王女と皇族の誰かを結婚させて藩王に据える計画を立て、アルノルトをその筆頭候補とした。
・手柄を立てすぎたアルノルトが帝位争いに担ぎ出されることを危惧した勇爵家やクライネルト公爵家からも、彼を婿として迎える(帝位継承権を放棄させる)政略結婚の提案が次々と舞い込んだ。
・皇族にとって政略結婚はつきものであるが、アルノルトは弟レオナルトを支える現状から逃げることを嫌い、これらの縁談をすべて断る決意をした。
・皇帝に対して、今は誰かを幸せにする自信がない、愛は綺麗なものであってほしいと率直な結婚観を語り、政略結婚の道具となることを回避した。
トラウゴットの決断とマリアンヌの覚悟
アルノルトが藩国へ追いやられる事態を防ぎ、家族を助けるために立ち上がったのが第四皇子トラウゴットである。
・普段は政治に関わらない彼であるが、自らが藩王となり、アルノルトを宰相として迎えるという計画を立て、マリアンヌへ求婚した。
・トラウゴットは政略結婚であり個人の感情は関係ないと語ったが、マリアンヌは喜んでその求婚を受け入れた。
・彼女自身、帝国に亡命した時点で政略結婚の道具となる覚悟を決めており、家族のために動くトラウゴットの優しさならば、きっと自分を大事にしてくれると信じたからである。
過去の遺恨と新たな愛の誓い
この政略結婚における最大の障壁は、マリアンヌがかつて皇太子ヴィルヘルムを死に追いやった敵国の王女であるという事実であった。
・トラウゴットの実母である皇后ブリュンヒルトは、残された最後の息子を憎き藩国へ渡すことに猛反対し、話し合いは平行線を辿った。
・この状況を打破したのは、亡き皇太子の妻であったテレーゼである。彼女は、ヴィルヘルムならば自分を理由に弟の結婚が妨げられることを望まないはずだと皇后を説得した。
・さらに、皇后から愛のない結婚かと問われたトラウゴットは、愛は育むものであり、生涯側室を持たず自分の隣に立つのはマリアンヌだけだと力強く誓った。
この確固たる覚悟を受け、ついに皇后も二人の結婚を承認した。
まとめ
本作における「皇族の政略結婚」は、皇帝や貴族たちが自らの勢力を有利にするための盤上の一手として描かれている。しかし同時に、愛のない政略結婚から始まりながらも、相手を思いやり真心を込めて関係を築こうとするトラウゴットとマリアンヌの姿は、血みどろの帝位争いの中で一筋の温かい希望として描かれているのである。
藩国統治への出発
『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第14巻の終盤において描かれる「藩国統治への出発」は、アルノルトとレオナルトの兄弟にとって大きな転機となると同時に、新たな舞台でのアルノルトの活躍(暗躍)とフィーネとの絆を描く重要なエピソードである。その詳細な展開は以下の通りである。
盛大な結婚式と双子、初めての別れ
トラウゴットとマリアンヌの結婚式は帝都で盛大に執り行われ、三日間にわたる祝祭の後、二人は藩国へと出発した。藩国の宰相に就任するアルノルトも、その旅に同行することになった。
・産まれた時から常に一緒にいたアルノルトとレオナルトにとって、これは初めての長期的な別れであった
・馬車の上から民衆に手を振る幸せそうなトラウゴットたちを見送りながら、二人はいつか自分たちもあのような結婚式ができる日が来ることを願った
・互いに離れた場所(藩国と帝国)でそれぞれの戦いを戦い抜くことを誓い合って別れを告げた
敵対勢力の潜伏と不穏な気配
一方、ペルラン王国の王太子リュシアンと魔奥公団の大公は、双子の皇子が離れ離れになったことを確認した。
・厄介な双子が別れたことで脅威は薄れたと考えた
・彼らの背後にいる底知れない力を持つシルバーの存在を警戒した
・当面は直接手を出さず闇に潜んで力を蓄える方針を取った
藩国への道中とシルバーとしての密かな人助け
エピローグでは、藩国へ向かう道中でのアルノルトの密かな暗躍が描かれている。厳重な護衛を伴う一行は、道中でモンスター被害に苦しむ村人たちから討伐を懇願された。
・アルノルトは藩国への到着予定を遅らせるわけにはいかないため、表向きは非情にその嘆願を無視し、冒険者ギルドに頼れと突き放して先を急いだ
・しかし、目的地の街に到着して自室に入った直後、こっそりシルバーに変装して村へ転移した
・魔法でモンスターを瞬時に撃破し、村人にシルバーが助けてくれたと認識させてから素早く帰還した
このように、アルノルトとしての立場を守りながら民を救う、彼らしいやり方であった。
藩国宰相としての重圧とフィーネとの絆
討伐を終えて部屋に戻ったアルノルトは、モンスター討伐自体は疲れないが、正体がバレないように立ち回るほうが疲れると本音をこぼした。
・これから藩国の宰相として常に人目に晒される立場となる
・これまで以上に暗躍が難しくなることに対して憂鬱な気分を抱えていた
そんな彼を支えるのが、同行しているフィーネである。
まとめ
フィーネが、私もできる範囲で協力するから頑張りましょうと明るく励ましたことでアルノルトは毒気を抜かれた。そして二人は互いに笑い合いながら、新たな舞台である藩国での任務へ向けて覚悟を決めるのであった。
魔奥公団と悪魔
『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第14巻における「魔奥公団と悪魔」は、これまで帝国の裏で起きていた数々の事件の点と点が繋がり、大陸規模の脅威が本格的に姿を現す重要なテーマとして描かれている。その具体的な展開と詳細は以下の通りである。
魔奥公団の真の目的と悪魔の召喚
魔奥公団は探求心に取り憑かれた魔導師の集団であり、その真の目的は人を依り代にして悪魔を召喚することであった。
・過去の聖女レティシア誘拐事件(聖女を依り代にするための実験)
・虹彩異色の子供を使った実験
・クリューガー公爵の反乱(人を怪物に変える薬や吸血鬼の血の提供)
これら帝国で起きた数々の事件の裏で暗躍していた。そして、死体よりも質の高い生きた人間を依り代として召喚された強力な悪魔たちが、魔奥公団の幹部として人間社会に紛れ込んでいたのである。
シルバーの暗躍と新たな銀滅魔法
アルノルトことシルバーは帝国内の魔奥公団拠点を襲撃し、幹部である水の悪魔ハーゲンティと交戦した。古代の化け物である悪魔に対し、アルノルトは新たな銀滅魔法であるシルヴァリー・フォースを発動する。
・身体能力や魔力操作を大幅に強化する
・放つ攻撃すべてを銀滅魔法に変える
この圧倒的な力でハーゲンティを完全消滅させた。また、この襲撃で魔奥公団のリーダーである大公と、殿下と呼ばれる謎の王族が協力関係にあることを示す資料も発見している。
賢王会議とSS級冒険者の討伐作戦
事態を重く見たシルバーと冒険者ギルド長クライドは賢王会議を開催し、各国の王たちに悪魔の脅威を共有した。王国の関与を疑うシルバーの強硬な主張もあり、帝国とペルラン王国は一時停戦し、魔奥公団が拠点を移した王国へSS級冒険者による討伐隊が派遣されることになった。
王国の拠点では、SS級冒険者たちが以下の悪魔を圧倒的な力で討伐している。
・放浪の弓神ジャックが未来予知を持つ悪魔イペスを討伐した
・両極の拳仙リナレスが超回復の権能を持つ悪魔マルバスを討伐した
・迷子の剣聖エゴールが毒を操る悪魔カーシモラルを討伐した
偽装された壊滅と大公の謀略
SS級冒険者たちは逃亡する魔奥公団のリーダーを名乗る悪魔ボティスを追撃し、三つの街に甚大な被害を出しながらも討伐に成功した。しかし、シルバーとエゴールはこの結末に違和感を覚える。
・魔奥公団があまりにもあっさり壊滅した
・殿下に関する証拠が隠滅されていた
これらのことから、討伐された悪魔たちはすべて本命を逃がすための囮だったと推察した。実際、本物の大公(かつての魔王軍幹部ダンタリオンと推測される)は、協力者であるペルラン王国の王太子リュシアンと共に各国の警戒を解かせるために都合の良い情報を残し、再び闇に潜んでいたのである。
まとめ
第14巻において、魔奥公団が単なる犯罪組織ではなく、悪魔を人間社会に呼び込む恐るべき組織であることが明らかになった。シルバーやSS級冒険者たちの活躍によって表面上の脅威は排除されたものの、真の黒幕である大公とリュシアン王太子は健在である。帝位争いと並行して大陸全体を巻き込む、対悪魔との全面戦争の足音が近づいていることを予感させる展開となっている。
賢王会議の開催
『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第14巻において描かれる賢王会議の開催は、帝国の裏で暗躍していた魔奥公団の脅威が大陸規模の危機(悪魔の復活)へと発展したことを受け、各国が協調して事態に対処するための重要なターニングポイントである。その具体的な展開と各キャラクターの思惑は以下の通りである。
賢王会議の開催と事前の根回し
アルノルトことシルバーは魔奥公団の拠点を襲撃した際、彼らが生きた人間を依り代にして悪魔を召喚する術を確立しており、すでに人間社会に強力な悪魔が紛れ込んでいる事実を突き止めた。
・この報告を受けた冒険者ギルド長クライドは、五百年前の悪魔の脅威が再来したと判断し、ギルドの秘匿技術を用いて各国王を招集する賢王会議の開催を決定した
・会議に先立ち、シルバーとクライドはまず帝国皇帝ヨハネスと極秘に通信した
・シルバーは王国と魔奥公団が繋がっている可能性を指摘し、王国への調査を円滑に行うための一時停戦を要請した
皇帝は本来、王国に一撃を与えてから講和する予定であったが、大陸の危機という大義名分のもとにこれを受け入れた。
各国首脳の集結と舌戦
ギルド本部の地下にある遠話室を通じて、大陸三強の国家元首や代理が次々と姿を現した。集結したメンバーは以下の通りである。
・ソーカル皇国の皇王ミハイル
・ミヅホ仙国の仙姫オリヒメ
・ペルラン王国の実質的トップである王太子リュシアン
・連合王国からは秘密裏に帝国へ向かっている国王ウィリアムの代理として、黒竜騎士隊隊長ロジャー
会議では、王太子リュシアンが皇帝や皇王に対して挑発的な発言を繰り返した。しかし、皇帝ヨハネスが本気の殺気を込めて睨みつけると、さすがのリュシアンも引き下がるなど、各国のトップ同士の激しい牽制が繰り広げられた。
シルバーの強硬な追及と王国の妥協
シルバーは、討伐した悪魔の報告を行い、魔奥公団が現在ペルラン王国に拠点を移していることから、王国内での徹底的な調査を要求した。
・リュシアンは標的が帝国ならば冒険者ギルドで帝国を守ればいいと協力を渋り、自国への干渉を避けようとした
・しかしシルバーは、帝国が弱体化して利を得るのは王国であり、反乱に乗じて攻め込んだ王国が魔奥公団と手を組んでいると考えるのは飛躍しすぎではないと強硬に追及した
・さらに皇帝ヨハネスが、大陸のためならば軍を退くと停戦を宣言したことで、リュシアンは逃げ道を塞がれた
これ以上調査を拒めば悪魔に与していると見なされる状況に追い込まれた結果、リュシアンは停戦と冒険者ギルドによる王国内での捜査を許可した。
SS級冒険者による討伐作戦の決定
各国の合意が得られたことで、クライドは討伐作戦の陣容を発表した。
・王国内での魔奥公団拠点の捜査には、SS級冒険者のジャック、リナレス、エゴールの三名が中心となって派遣される
・東方の皇国にはノーネームが待機する
・中央には転移能力を持つシルバーが控える
このように、万全の布陣が敷かれることが決定した。
まとめ
賢王会議の開催は、水面下で進んでいた魔奥公団による悪魔召喚という脅威を大陸全土に共有し、国家間の戦争を一時停戦させてでも解決すべき最優先課題として位置づける重要なエピソードである。シルバーの強硬な交渉術と皇帝の巧みなアシストにより、人類の希望の象徴である冒険者ギルドが本格的に動き出すことになったのである。
皇族の絆と別れ
『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第14巻において、皇族の絆と別れは、血みどろの帝位争いや過酷な戦争といった状況下にあっても失われない家族への愛と、未来を切り開くための決断として深く描かれている。その具体的な展開と各キャラクターのドラマは以下の通りである。
アルノルトとヘンリックの絆と偽装の死
反乱に加担して連合王国へ逃れていた第九皇子ヘンリックは、亡き兄ゴードンの幼い娘(姪)を反乱者の遺児として帝国で苦しませないため、自らの命を懸けて連合王国で匿う許可を皇帝ヨハネスに嘆願した。すでに猛毒である凍毒を飲んでおり、皇帝がその願いを聞き入れた直後にヘンリックは死の淵に立たされる。
しかし、アルノルトはこれ以上家族が死ぬのは見たくないと考え、以下の行動をとった。
・セバスに命じてヘンリックを仮死状態にし、秘密裏に救出した
・表向きには弟の死を大声で嘆き悲しんで死別を偽装した
・ヘンリックに対しては死んだ者の方が暗躍しやすいと諭し、過去の自分と決別して新たな生き方をするよう促した
こうして表舞台からの別れと引き換えに、兄弟の新たな絆が構築されたのである。
亡き皇太子を巡るテレーゼと皇后の絆
トラウゴットが藩国王女マリアンヌと結婚し藩王になるという決断に対し、かつて皇太子ヴィルヘルムを死に追いやった藩国を憎む皇后ブリュンヒルトは猛反対した。
この膠着状態を動かしたのは、ヴィルヘルムの妻であったテレーゼである。
・愛する夫を失った深い絶望の中にいたが、ヴィルヘルムが誰よりも家族を大切にしていたことを思い出し、義弟の門出を応援するために立ち上がった
・自分が理由で弟の結婚が反対されるなどヴィルは決して望まないと皇后を説得した
この説得により、同じ悲しみを背負う皇后の心もついに動き、トラウゴットの結婚と藩国への旅立ちという別れを承認した。
双子の皇子、初めての長期的な別れ
トラウゴットとマリアンヌの結婚に伴い、アルノルトもまた藩国の宰相として帝国を離れることになった。
・産まれた時から常に一緒にいたアルノルトとレオナルトの双子の兄弟にとって、初めての長期的な別れであった
・互いが共にいると敵の標的になりやすいという実情も理解しつつ、離れ離れの間もそれぞれの戦場(アルノルトは藩国の統治、レオナルトは帝国での皇位争いや王国との戦争)で戦い抜くことを約束した
馬車で出発する直前、二人は玉座は一緒に取ろうと固く誓い合い、物理的な距離に負けない強固な絆を示して別れを告げた。
まとめ
第14巻において、皇族たちは死(あるいは偽装死)や物理的な距離といった様々な別れを経験する。しかし、それらの別れは関係の断絶ではなく、残された家族を守るため、あるいは新たな未来を築くための前向きな決断として描かれている。帝位争いという残酷な運命の中にあっても、彼らを根底で繋いでいる家族の絆の強さが浮き彫りになるエピソードとなっているのである。
登場キャラクター
アードラシア帝国
ヨハネス・レークス・アードラー
アードラシア帝国の皇帝である。大陸の危機に対し、他国との停戦を決断する。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
賢王会議に先立ちシルバーから報告を受け、大陸の危機に対処するために王国との一時停戦を受け入れた。トラウゴットとマリアンヌの結婚を承認し、連合王国に逃れていたヘンリックの帰還に際しては厳しい態度で接した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
帝国の最高権力者として、情に流されず国益を第一に考えた決断を下す。
ブリュンヒルト
皇帝ヨハネスの皇后である。トラウゴットの母親である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・皇后。
・物語内での具体的な行動や成果
かつて皇太子ヴィルヘルムを死に追いやった藩国を憎み、トラウゴットとマリアンヌの結婚に猛反対した。テレーゼの説得とトラウゴットの覚悟を受けて、最終的に二人の結婚を承認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミツバ
皇帝ヨハネスの妃である。アルノルトとレオナルトの母親である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・妃。
・物語内での具体的な行動や成果
藩国へ旅立つ子供たちの身を案じつつも、母親としてその不安を表に出さずに見送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルノルト・レークス・アードラー(シルバー)
アードラシア帝国の第七皇子である。裏ではSS級冒険者シルバーとして暗躍している。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第七皇子。コルニクス藩国・宰相。冒険者ギルド・SS級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
魔奥公団の拠点を襲撃し、彼らが悪魔を召喚している事実を突き止めた。賢王会議を主導して各国の王に悪魔の脅威を共有し、討伐作戦の布陣を敷いた。表向きはトラウゴットを補佐するため、コルニクス藩国の宰相に就任して帝国を離れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
藩国宰相に就任したことで、帝位争いからは一時的に距離を置く形となった。
トラウゴット・レークス・アードラー
アードラシア帝国の第四皇子である。アルノルトの状況を察し、自ら藩王となる決断を下す。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第四皇子。コルニクス藩国・藩王。
・物語内での具体的な行動や成果
アルノルトが藩国へ追いやられるのを防ぐため、マリアンヌ王女へ求婚した。皇后の反対を押し切り、生涯側室を持たずマリアンヌだけを妻にすると誓い、結婚を認めさせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マリアンヌと結婚し、コルニクス藩国の藩王となった。
レオナルト・レークス・アードラー
アードラシア帝国の第八皇子である。アルノルトの双子の弟である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第八皇子。西部国境守備軍・総大将。
・物語内での具体的な行動や成果
西部国境で王国軍を圧倒し、敵将軍を三名捕らえる戦果を挙げた。トラウゴットとマリアンヌの結婚式の後、藩国へ旅立つアルノルトを見送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦場での活躍により、次期皇帝の有力候補としての地位を確固たるものにしている。
ヘンリック・レークス・アードラー
アードラシア帝国の第九皇子である。ゴードンの反乱に加担した過去を持つ。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第九皇子。
・物語内での具体的な行動や成果
ウィリアムと共に連合王国から帝国へ戻り、ゴードンの娘の保護を皇帝に嘆願した。その際に凍毒を飲んで死の淵に立つが、アルノルトに救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
表向きは死亡したことになり、グスタフの指導の下で修行を始める。
クリスタ・レークス・アードラー
アードラシア帝国の第三皇女である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第三皇女。
・物語内での具体的な行動や成果
帝都に帰還したレオナルトに抱きついて再会を喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
テレーゼ
亡き皇太子ヴィルヘルムの妻である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・元皇太子妃。
・物語内での具体的な行動や成果
トラウゴットとマリアンヌの結婚に反対する皇后を説得した。ヴィルヘルムならば弟の結婚が妨げられることを望まないと伝え、状況を打開した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
グスタフ・レークス・アードラー
かつてのアードラシア帝国皇帝であり、乱帝と呼ばれた人物である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・元皇帝。アルノルトの魔法の師匠。
・物語内での具体的な行動や成果
精神を本に封じられた状態で生きながらえている。アルノルトが救出したヘンリックに剣の指導を行うことになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
悪魔が本格的に動き出したと聞き、アルノルトの活動に協力的になっている。
フランツ
アードラシア帝国の宰相である。皇帝の右腕として国政を担う。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・宰相。
・物語内での具体的な行動や成果
皇帝と共に賢王会議に向けた事前の調整や、各国の情報収集を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
セバス
アルノルトに仕える老執事である。元暗殺者という経歴を持つ。
・所属組織、地位や役職
アルノルト陣営・執事。
・物語内での具体的な行動や成果
魔奥公団の拠点から資料を回収し、情報の整理を行った。アルノルトの指示でヘンリックの救出を補佐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アンナ
アムスベルグ勇爵家の当主の妻であり、エルナの母親である。
・所属組織、地位や役職
アムスベルグ勇爵家・夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
アルノルトの部屋を訪れ、エルナと結婚して勇爵家に婿入りするよう提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エルナ・フォン・アムスベルグ
アムスベルグ勇爵家の令嬢である。アルノルトの幼馴染である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第三近衛騎士隊隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
西部国境で聖女レティシアの護衛任務に就いていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フィーネ・フォン・クライネルト
クライネルト公爵の令嬢である。蒼鴎姫の異名を持つ。
・所属組織、地位や役職
クライネルト公爵家・令嬢。帝国大使。
・物語内での具体的な行動や成果
帝国大使として賢王会議に参加し、評議会の上層部へ帝国の主張を伝えた。アルノルトに同行してコルニクス藩国へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
その対応力で他国の要人や冒険者ギルドの面々からも一目置かれている。
アリーダ
近衛騎士団を率いる女性騎士である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第一近衛騎士隊隊長。近衛騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
特になし。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マリー
レオナルトに見出された有能なメイドである。
・所属組織、地位や役職
ミツバ付きのメイド。
・物語内での具体的な行動や成果
城の門に殺到する旅の劇団から嘆願書を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レオナルト付きのメイドから、ミツバ付きのメイドへ役割を変えている。
ベルツ伯爵
工務大臣を務める貴族である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・工務大臣。
・物語内での具体的な行動や成果
各地の復興のために飛び回っている。レオナルト陣営の支持者として活動している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ランベルト・フォン・マイアー
第六近衛騎士隊の隊長である。天隼に騎乗する航空戦力である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第六近衛騎士隊隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
西部国境から撤退する部隊の指揮に関わった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ラース・ヴァイグル
ネルベ・リッターの隊長である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国軍・ネルベ・リッター大佐。
・物語内での具体的な行動や成果
藩国へ向かうアルノルトの護衛を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
コルニクス藩国
マリアンヌ・フォン・コルニクス
コルニクス藩国の王女である。
・所属組織、地位や役職
コルニクス藩国・王女。
・物語内での具体的な行動や成果
帝国へ亡命し、トラウゴットと結婚した。帝都で結婚式を挙げた後、藩国へ帰還した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
トラウゴットとの結婚により、藩王の妻として国を治める立場となった。
ミア(ヴァーミリオン)
朱月の騎士と呼ばれる義賊である。ジャックの娘である。
・所属組織、地位や役職
義賊。
・物語内での具体的な行動や成果
藩国へ戻り、アルノルトに協力する予定となっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ペルラン王国
リュシアン・ド・ペルラン
ペルラン王国の王太子である。反帝国派の実質的トップである。
・所属組織、地位や役職
ペルラン王国・王太子。
・物語内での具体的な行動や成果
賢王会議でシルバーから魔奥公団との関与を追及され、停戦とギルドによる国内捜査を許可した。魔奥公団の大公と内通しており、自らは動かず闇に潜む方針を取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
病床の国王に代わり、国の実権を握っている。
レティシア
ペルラン王国の聖女である。
・所属組織、地位や役職
ペルラン王国・聖女。
・物語内での具体的な行動や成果
西部国境で王国軍に対し、自らの生存と王国には侵攻の大義がないことを説いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イーグレット連合王国
ウィリアム・ヴァン・ドラモンド
イーグレット連合王国の国王である。竜王子の異名を持つ。
・所属組織、地位や役職
イーグレット連合王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
国内を安定させた後、関係改善のために秘密裏に帝国を訪れた。ゴードンの遺児を保護し、その件で皇帝ヨハネスと交渉した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
前王と第一王子から実権を奪い、連合王国を統一して竜王となった。
ロジャー
黒竜騎士隊の隊長である。
・所属組織、地位や役職
イーグレット連合王国・黒竜騎士隊隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
賢王会議にウィリアムの代理として出席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ソーカル皇国
ミハイル・アーラ・ソーカル
ソーカル皇国を統べる皇王である。
・所属組織、地位や役職
ソーカル皇国・皇王。
・物語内での具体的な行動や成果
賢王会議に出席し、各国の代表と議論を交わした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
齢八十を超える最高齢の国王である。
ミヅホ仙国
オリヒメ
ミヅホ仙国の仙姫である。
・所属組織、地位や役職
ミヅホ仙国・仙姫。
・物語内での具体的な行動や成果
賢王会議に出席し、魔奥公団討伐への協力を申し出た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルバトロ公国
アルバトロ公王
アルバトロ公国を治める公王である。
・所属組織、地位や役職
アルバトロ公国・公王。
・物語内での具体的な行動や成果
賢王会議に出席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ロンディネ公国
ロンディネ公王
ロンディネ公国を治める公王である。
・所属組織、地位や役職
ロンディネ公国・公王。
・物語内での具体的な行動や成果
賢王会議に出席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
冒険者ギルド・冒険者
クライド
冒険者ギルド本部の副ギルド長である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド本部・副ギルド長(次期ギルド長候補)。
・物語内での具体的な行動や成果
シルバーからの報告を受け、賢王会議を開催した。会議を取り仕切り、魔奥公団討伐作戦の陣容を発表した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
冒険者たちの厚い信望を集めており、次期ギルド長としての影響力を持つ。
ジャック
放浪の弓神の異名を持つSS級冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・SS級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
王国での魔奥公団討伐隊の指揮を執った。未来予知を持つ悪魔イペスを討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エゴール
迷子の剣聖の異名を持つ最古のSS級冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・SS級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
王国での討伐作戦に参加し、毒を操る悪魔カーシモラルを討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
リナレス
両極の拳仙の異名を持つSS級冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・SS級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
王国での討伐作戦に参加し、超回復の権能を持つ悪魔マルバスを討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ノーネーム
空滅の魔剣士の異名を持つSS級冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・SS級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
皇国を拠点としており、魔奥公団討伐作戦に際しては東方の有事に備えて待機した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブルース・ターラント
氷結の貴公子の異名を持つS級冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・S級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
王国での討伐作戦に参加し、ジャックの補佐として雑兵を氷漬けにして倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エマ
冒険者ギルド帝都支部所属の受付嬢である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド帝都支部・受付嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
シルバーに各地の状況や討伐作戦の経過を報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
シルバーの専属担当として厚い信頼を得ている。
魔奥公団・悪魔
大公
魔奥公団のリーダーである。
・所属組織、地位や役職
魔奥公団・リーダー。悪魔。
・物語内での具体的な行動や成果
ボティスと名乗って囮の悪魔たちを残し、王国から逃亡した。リュシアンと結託し、都合の良い情報を残して闇に潜伏した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつての魔王軍幹部ダンタリオンであると推測されている。
ハーゲンティ
魔奥公団の幹部である水の悪魔である。
・所属組織、地位や役職
魔奥公団・幹部。悪魔。
・物語内での具体的な行動や成果
帝国内の魔奥公団拠点を襲撃してきたシルバーと交戦した。新たな銀滅魔法の前に完全消滅させられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イペス
未来予知の権能を持つ悪魔である。
・所属組織、地位や役職
魔奥公団・幹部。悪魔。
・物語内での具体的な行動や成果
王国での討伐作戦において、ジャックによって討伐された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大公を逃がすための囮として利用されていた。
マルバス
超回復の権能を持つ悪魔である。
・所属組織、地位や役職
魔奥公団・幹部。悪魔。
・物語内での具体的な行動や成果
王国での討伐作戦において、リナレスによって討伐された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大公を逃がすための囮として利用されていた。
カーシモラル
毒を操る悪魔である。
・所属組織、地位や役職
魔奥公団・幹部。悪魔。
・物語内での具体的な行動や成果
王国での討伐作戦において、エゴールによって討伐された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大公を逃がすための囮として利用されていた。
影
リュシアンや大公に仕える者である。
・所属組織、地位や役職
ペルラン王国・諜報員。
・物語内での具体的な行動や成果
魔奥公団の幹部が悪魔討伐隊に敗れたことをリュシアンに報告した。また、大公の命令に従って情報収集を続けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
黒いローブを纏った魔導師
魔奥公団の拠点にいた残党である。
・所属組織、地位や役職
魔奥公団・魔導師。
・物語内での具体的な行動や成果
帝国内の地下施設を襲撃したシルバーに抵抗したが、結界で潰された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
展開まとめ
第一章 婚姻
マリアンヌの覚悟
アルノルトは帝都到着を前に、藩国王女マリアンヌへ覚悟を確認した。
マリアンヌは蒼白な顔をしながらも、藩国の王女として帝国の怨嗟を受け止める責任があると答えた。アルノルトは彼女に直接の責任がないことを理解しながらも、その覚悟を尊重するしかなかった。
帝都正門での抗議
帝都の正門前には、マリアンヌの入城に反対する民が集まっていた。
彼らは藩国の王女を処刑すべきだと叫び、帝都守備隊も解散させられずにいた。アルノルトは強制排除では根本的な解決にならないと考え、民と話そうとした。
トラウゴットの演説
その時、帝都全体にトラウゴットの声が響いた。
トラウゴットは皇太子ヴィルヘルムの実弟として、藩国への怨嗟を理解しつつも、兄の死を理由にマリアンヌを責めることは許さないと宣言した。さらに、民のために国を捨てた王女にふさわしいのは非難ではなく称賛だと語った。
帝都の歓迎
トラウゴットの演説によって抗議の勢いは失われ、正門は開かれた。
馬車が帝都へ入ると、多くの民が花びらを撒いてマリアンヌを歓迎した。マリアンヌは帝国を素晴らしい国だと感じ、涙を流した。
トラウゴットの丁重な出迎え
帝都ではトラウゴットがマリアンヌを賓客として迎えた。
普段とは異なる完璧な対応に、近衛騎士たちは驚いた。マリアンヌは休息よりも皇帝との面会を望み、トラウゴットはその調整を引き受けた。
ヨハネスからの称賛と勲章
アルノルトは玉座の間で皇帝ヨハネスに挨拶した。
ヨハネスは説教をするつもりだったが、北部をまとめ、戦功を挙げ、北部を安定させた手腕を称賛した。そしてアルノルトへ帝国銀十字勲章を授けた。
藩国統治と結婚話
ヨハネスは、藩国を属国ではなく同盟国にしたいと考えていた。
そのため、マリアンヌと皇族の誰かを結婚させる必要があり、筆頭候補はアルノルトだと告げた。アルノルトは即答を避け、考える時間を求めた。
皇太子の死の再調査
アルノルトは藩国制圧後、ヴィルヘルムの死を再調査すべきだと進言した。
ヨハネスは今さら掘り下げてどうなるのかと問うたが、アルノルトは真実が必要だと答えた。ヨハネスは考えておくとだけ返した。
藩国王となる可能性
アルノルトはセバスと、マリアンヌとの結婚が持つ政治的意味を整理した。
マリアンヌと共に藩国を統治すれば、帝国は北に強固な同盟国を持つことになる。また、手柄を立てすぎたアルノルトを帝位争いから遠ざける意味もあった。
アンナからの縁談
翌日、アンナがアルノルトを訪ねてきた。
アンナは、アルノルトを勇爵家の婿に迎え、エルナと結婚させる案を示した。それによりアルノルトを巡る政治的問題は解決できると語った。
相次ぐ婚姻案への困惑
アルノルトは即答を避け、考える時間を求めた。
さらにクライネルト公爵からも、藩国へ行かず婿に来るよう求める手紙が届いていた。アルノルトは政略結婚の相手が変わるだけであり、どの選択も難題であると感じ、答えを出せずに机へ突っ伏した。
マリアンヌへの抗議とトラウゴットの演説
アルノルトたちは帝都へ到着したが、正門前にはマリアンヌの処刑を求める民衆が集まり、入城を阻止していた。マリアンヌは王女として責任を受け止める覚悟を示したが、アルノルトは民衆の怒りが彼女の命に関わることを危惧していた。
強制排除では問題は解決しないと考えたアルノルトが対応を模索していると、トラウゴットが魔法による拡声で帝都中へ語りかけた。トラウゴットは皇太子の死への悲しみを認めながらも、その恨みに囚われ続けるべきではないと訴えた。そして亡き皇太子を理由に藩国やマリアンヌを責めることを否定し、民のために国を捨てた王女を歓迎すべきだと呼びかけた。
その演説によって民衆の勢いは失われ、正門前の抗議は自然と解消された。帝都へ入ったマリアンヌは、多くの民から歓迎を受け、その光景に涙を流した。
トラウゴットの歓迎と皇帝からの評価
帝都へ入ったマリアンヌを、トラウゴットは賓客として丁重に出迎えた。そして皇帝への謁見を望むマリアンヌを案内し、自ら支援することを約束した。
その後、アルノルトは皇帝へ帰還の挨拶を行った。独断行動への叱責を覚悟していたが、皇帝は北部の安定化や戦功を高く評価し、帝国銀十字勲章を授与した。
さらに皇帝は藩国を属国ではなく同盟国とするため、マリアンヌと皇族を結婚させる構想を明かした。その筆頭候補としてアルノルトの名が挙げられたが、アルノルトは返答を保留した。また、アルノルトは皇太子の死について再調査を行うよう進言した。
政略結婚を巡る葛藤
アルノルトはセバスと共に縁談について話し合った。マリアンヌとの結婚は帝国と藩国の結びつきを強めるだけでなく、帝位争いからアルノルトを遠ざける意味も持っていた。
しかしアルノルトは決断できずにいた。その翌日にはアンナ・アムスベルグが訪れ、エルナとの結婚によって勇爵家へ婿入りするよう提案した。さらにクライネルト公爵からも同様の申し出が届いており、アルノルトを巡る政略結婚の話はさらに複雑化していった。
エルナとの過去とアルノルトの決意
悩み続けるアルノルトのもとへエルナが現れ、自身の母が縁談を持ち込んだことを謝罪した。二人はこれまでの関係を振り返る中で、エルナが幼い頃に宝玉を壊した張本人であり、その罪をアルノルトが背負っていた事実を明かした。
しかしアルノルトはその事実に驚かず、二人の信頼関係は一つの出来事ではなく長年の絆によって築かれたものだと語った。
この会話を通じて、アルノルトは自分が今の立場を気に入っていることに気付いた。そして誰とも結婚せず、レオナルトを支え続けるという答えに辿り着いた。
ミツバとトラウゴットへの報告
アルノルトはミツバとトラウゴットへ決断を報告した。帝都に残れば争いへ巻き込まれる危険があると指摘されても、アルノルトはレオナルトを支える立場を変えるつもりはないと断言した。
するとトラウゴットは、アルノルトの結婚には反対であると明かした。そしてレオナルトを支えるため、自らがマリアンヌと結婚し藩王になる意思を示した。
さらにアルノルトには藩国の宰相となって支えてほしいと提案した。皇族たちが次々と帝都を離れていく中、自分が兄として役目を果たすべきだと考えていたのである。
しかし最大の問題は、マリアンヌ本人がその提案を受け入れるかどうかであった。
トラウゴットの求婚
翌日、トラウゴットはマリアンヌの部屋を訪れた。エルナの協力で護衛を遠ざけると、家族を助けるために自分が藩王となり、アルノルトを宰相として迎えたいという計画を説明した。
そのうえで、自分を夫として迎えてほしいと率直に求婚した。トラウゴットは断られることを覚悟していたが、マリアンヌは快く受け入れた。
マリアンヌは亡命した時点で政略結婚を覚悟しており、その中で勇気を出して申し込んでくれた相手を選びたいと考えていた。また、家族のために行動できるトラウゴットなら自分を大切にしてくれると信じていた。
こうしてトラウゴットは改めて求婚し、マリアンヌも喜んで受け入れた。二人は互いに照れながらも婚約を成立させたのであった。
藩国攻略完了とトラウゴットの提案
リーゼロッテからの伝令が帝都へ到着し、帝国軍が藩国王都を包囲して勝利を収め、藩王を含む重鎮たちを捕縛したことが報告された。皇帝と宰相はリーゼロッテの功績を高く評価し、藩国攻略の成功を喜んだ。
その報告を受けた皇帝は、改めてアルノルトへマリアンヌとの結婚と藩国統治を求めた。しかしアルノルトが返答を保留している最中、トラウゴットが玉座の間へ駆け込み、自らマリアンヌへ求婚し了承を得たことを明かした。
さらにトラウゴットは、自身が藩王となり、アルノルトを藩国の宰相として迎えたいと提案した。皇帝と宰相はその案を検討し、藩国統治と帝国内の政治的均衡を考慮した結果、その結婚と人事を認めることにした。
皇后説得という新たな問題
結婚を認めた皇帝だったが、トラウゴットはまだ皇后へ話していないことを告白した。藩国を深く憎む皇后が反対することは明白であり、皇帝も頭を抱えた。
皇帝と宰相は皇后の説得を避けられないと判断し、協力者としてミツバを呼ぼうと考えた。しかしトラウゴットは勢いで許可を取り付けたに過ぎず、最大の難関はこれからであることが明らかになった。
皇后とテレーゼへの懸念
玉座の間を出たアルノルトはセバスと共に状況を整理した。二人は、息子を失った皇后と夫を失ったテレーゼの抱える恨みは、一般の民衆とは比べものにならないほど深いものであると考えた。
一方で、フィーネは帝都へ戻ってからテレーゼのもとに身を寄せていた。アルノルトは、テレーゼがトラウゴットの結婚を支持すれば皇后の説得材料になると考えた。
しかし皇后と皇帝の間には、皇太子の死への向き合い方の違いから生じた溝も存在していた。アルノルトは今後さらに波乱が起こることを予感した。
ミツバの拒否
アルノルトはミツバのもとを訪れ、皇帝が呼んでいることを伝えた。しかしミツバは介入を拒否した。
ミツバは、当事者はトラウゴットであり、自ら親を説得できなければ藩国を任せることはできないと語った。また、フィーネやテレーゼへの働きかけなど必要な支援は既に行っていると説明し、これ以上は関与しない姿勢を示した。
アルノルトは説得を試みたが受け入れられず、その場を後にした。
皇后との対立
皇帝は仕方なく皇后ブリュンヒルトを玉座の間へ呼び出した。そこでトラウゴットは、自らマリアンヌへ求婚し、藩王として藩国へ赴く意思を伝えた。
それを聞いた皇后は激怒した。皇太子ヴィルヘルムを死に追いやった藩国を深く憎んでおり、最後に残った実子であるトラウゴットをその国へ送り出すことなど認められないと主張した。
皇帝は藩国との同盟や帝国の未来を理由に必要な決断だと説得したが、皇后は母親として受け入れられないと反論した。皇帝が皇族としての責務を説いても、皇后は息子を守りたいという感情を優先したため、議論は平行線を辿った。
アルノルトへの非難と深まる対立
議論の最中、皇后は矛先をアルノルトへ向けた。アルノルトが素直に藩国行きを受け入れていれば、トラウゴットが結婚を申し出ることもなかったと責め立てた。
さらに、過去にレオナルトと入れ替わって周囲を欺いた件を持ち出し、今回も裏でトラウゴットを動かしたのではないかと疑った。
それに対して皇帝は強く反発し、アルノルトは関係ないと擁護した。しかし皇后は、皇帝が皇太子の死を軽視しているように見えると非難し続けた。
皇帝は国家と未来のために前を向くべきだと主張し、皇后は母として息子を守るべきだと譲らなかった。互いの立場が異なるため対立は解消されず、アルノルトは状況を打開できる人物の到着を待ちながら、重苦しい空気の中で事態の推移を見守るしかなかった。
フィーネの相談とミツバの見立て
アルノルトの縁談問題が持ち上がった頃、フィーネはミツバを訪ねて助言を求めた。ミツバは、アルノルトが功績を重ねすぎたために政争へ巻き込まれる危険が高まり、皇帝が藩王として藩国へ送ろうとしていると説明した。
フィーネが知恵を貸してほしいと願うと、ミツバはアルノルト自身の選択には干渉しないことを条件に助言した。そして、アルノルトは結婚を選ばず、問題は誰が藩国へ行くかになるだろうと分析した。
さらにミツバは、トラウゴットが自ら動くはずだと語り、フィーネが説得すべき相手は皇后ではなく、皇后に影響を与えられる人物だと示唆した。
テレーゼへの働きかけ
ミツバは、皇后を説得できる可能性がある人物としてテレーゼの名を挙げた。フィーネは弟の件で負い目を感じながらも、説得を引き受ける決意を固めた。
そこへ近衛騎士団長アリーダが現れ、フィーネをテレーゼのもとへ案内することになった。アリーダはアルノルトを高く評価しており、弟の死についても家族の責任だと受け止めていた。
フィーネを送り出した後、ミツバは激しく咳き込みながらも、自らの体調を押して行動を続けようとしていた。
テレーゼとの対面
東宮を訪れたフィーネは、テレーゼと向き合った。フィーネが淹れた紅茶をテレーゼは美味しいと評価し、二人は静かな時間を共有した。
その後、フィーネは藩国の王女マリアンヌとアルノルトの結婚話や、自身との縁談の話、そしてアルノルトが結婚を望んでいないことを説明した。
テレーゼは話を聞きながら、フィーネとアルノルトが単なる恋愛関係ではなく、互いを深く理解し尊重し合う関係であることを感じ取り、亡き弟に勝ち目はなかったと悟った。
皇后説得への依頼
フィーネは、アルノルトを藩国へ送ることを危険視する者が多く、トラウゴットが藩王となる可能性が高いことを説明した。そして最大の障害が皇后であるため、説得に協力してほしいとテレーゼへ頼み込んだ。
テレーゼは、亡き皇太子ヴィルヘルムとの思い出を振り返った。藩国への怒りや悲しみは今も残っていたが、ヴィルヘルムなら家族のために行動したはずだと思い至った。
さらにフィーネから、アルノルトの幸せを守りたいという強い思いを聞き、自らの過去やヴィルヘルムとの出会いを重ね合わせながら、その覚悟に心を動かされた。
テレーゼの決断
テレーゼは、トラウゴットが自らマリアンヌへ求婚し、マリアンヌも受け入れたのであれば、義姉として応援すると約束した。ただし、皇帝による一方的な政略結婚であれば支持しないと条件を付けた。
そして、自分の中に残る怒りと悲しみを認めながらも、それを抑え込み、ヴィルヘルムの妻として皇后の説得に協力すると決意した。
フィーネへ感謝されたテレーゼは、久しぶりに誰かと話したくなったと告げた。フィーネもそれに応じ、テレーゼは涙を流しながら穏やかな笑みを浮かべたのだった。
テレーゼによる説得と結婚の承認
皇帝と皇后の議論は平行線をたどり続けていたが、その場にテレーゼが現れた。皇后は味方を得たと思い、トラウゴットの結婚に反対するよう求めた。
テレーゼはまず、母親へ相談せず話を進めたことをトラウゴットに反省させたうえで、それでも結婚の意思が変わらないかを確認した。トラウゴットは、自らの意思で求婚し、母親の反対程度で取り下げる気はないと断言した。
その覚悟を聞いたテレーゼは、亡き皇太子ヴィルヘルムの妻として来たと宣言し、トラウゴットの結婚に賛成すると表明した。
ヴィルヘルムの想いを語るテレーゼ
テレーゼは、ヴィルヘルムなら自分を理由に弟の結婚が妨げられることを望まないと語った。また、トラウゴットだけを特別に反対するのであれば、藩国へ皇族を送ること自体に反対すべきだと指摘した。
さらに、トラウゴットはヴィルヘルムが愛した弟であり、皇后の息子でもあるのだから、藩国程度なら立派に治められると説得した。
同じ悲しみを背負う者として語りかけられた皇后は、自らも藩国を許せないと認めながらも、ヴィルヘルムが望む未来について考え始めた。
皇后の譲歩と結婚の許可
テレーゼの言葉で冷静さを取り戻した皇后は、トラウゴットへ改めて意思を問いかけた。トラウゴットは、愛は育むものであり、生涯マリアンヌだけを伴侶とすると誓った。
皇后は、その誓いを破るなら決して許さず、藩国を滅ぼす覚悟すらあると警告したが、トラウゴットは決意を曲げなかった。
最終的に皇后は結婚を認め、藩国へ向かえば皇帝と皇后の息子ではなく藩王として生きるのだと告げた。こうしてトラウゴットとマリアンヌの結婚は正式に承認された。
藩国行きの準備と城の混乱
トラウゴットの結婚と藩王就任が決まると、藩国への引っ越し準備が始まり、城は慌ただしい状況となった。祝い品や調度品の選定、各種手続きが重なり、多くの者が対応に追われていた。
一方、アルノルトは必要な仕事をセバスへ任せ、自らは街の様子を視察することにした。また、帝位争いから外れた立場となったことで、貴族たちへの対応を引き受けているフィーネを後で労う必要があると考えていた。
劇団の嘆願とアルノルトの対応
視察から戻ったアルノルトは、城門前で旅の劇団が嘆願書を持ち込み騒いでいる場面に遭遇した。トラウゴットの藩国行きに伴う警備強化の影響で、王国への渡航許可が取り消されていたのである。
事情を確認したアルノルトは、海路でアルバトロ公国へ向かわせる代替案を提示し、公国滞在中の費用も負担すると約束した。その代わり、公国でレオナルトを題材にした劇を上演するよう求めた。
劇団はその提案を受け入れ、問題は円満に解決した。
祝い品選定の騒動
その後アルノルトは、祝い品として選ぶ剣を巡り鍛冶屋同士が対立している現場へ向かった。双方とも優れた剣を持ち込んでいたが、祝い品としては実用的すぎる品だった。
アルノルトはどちらか一方を否定して評判を傷つけることを避けるため、両方の剣を買い取り、リーゼロッテへ贈ることにした。鍛冶屋たちは、自分たちの剣が帝国元帥の手に渡ると知り、大いに喜んだ。
こうして騒動は収まり、双方の面目も保たれた。
マリーとの対話
帰路でマリーは、劇団の件をなぜ自分の手柄にしないのかと尋ねた。アルノルトは、評判や功績には興味がなく、帝位も望んでいないと答えた。
さらに、自ら無能を装っている理由について問われると、脚光や評価はレオナルトへ向ければよく、自分はそれで十分だと語った。
マリーはその考えを理解し、自らの認識が誤っていたことを認めたうえで、今後もレオナルトやミツバと共にアルノルトへ仕えたいと申し出た。アルノルトはそれを受け入れ、二人はそのまま城へ戻ったのだった。
第二章 水の悪魔
フィーネへの感謝と藩国行きの準備
トラウゴットとマリアンヌの結婚が認められて数日が経ち、城の混乱も少し落ち着きを見せていた。アルノルトは貴族対応を引き受けていたフィーネを労い、テレーゼの説得が成功した経緯を聞いた。
また、自身が藩国の宰相として赴任することになった現状を整理し、トラウゴットへ権力を集中させる土台を整えた後に帝国へ戻るつもりであると語った。
さらにアルノルトは、フィーネも藩国へ連れて行くと決めていた。藩国では自分への注目が避けられず、暗躍するためには信頼できる協力者が必要だと判断したためであった。
魔奥公団への報復を決意
アルノルトはセバスから魔奥公団の帝国内拠点の情報を受け取った。ザンドラの手記には拠点や幹部に関する情報が記されており、魔奥公団が依然として帝国内で活動を続けていることが判明していた。
勇爵の指摘やザンドラの証言から、皇族が何者かに狙われている可能性を考えていたアルノルトは、第五妃ズーザンやザンドラの変化にも魔奥公団が関与していると推測した。
ゴードンやザンドラの最期を思い出したアルノルトは、弟として魔奥公団を許せないと考えた。しかし感情だけで動けば取り逃がす恐れがあるため、各地からの伝令で状況を確認してから一気に潰す方針を固めた。
西部戦線の戦果
翌日、各地から皇帝のもとへ伝令が届いた。西部戦線ではレオナルト率いる軍が王国軍を圧倒し、将軍を三名捕虜にしていた。
さらに新設された魔導師団も大きな成果を挙げており、西部戦線の主力として機能していた。皇帝や宰相たちはその戦果を高く評価し、王国軍の侵攻能力は大きく削がれたと判断した。
一方で王国との講和交渉は難航しており、王国側は要塞を頼みに強気の姿勢を崩していなかった。皇帝はアルバトロ公国の動向を見極めたうえで、必要なら王国へ攻勢をかける方針を示した。
シルバーとしての暗躍開始
会議を終えたアルノルトは自室へ戻り、フィーネとセバスへ計画通りに動くよう指示した。そして銀の仮面を身につけ、シルバーとして活動を開始した。
最初に襲撃した南部の地下施設では、レティシアに関する研究資料を発見した。施設の生き残りを排除し、資料を回収したアルノルトは、魔奥公団の真の目的を探るため次の拠点へ向かった。
ハーゲンティとの遭遇
次にアルノルトが向かったのは、西部辺境の廃城地下に存在する重要拠点だった。厳重な結界と防御を確認したアルノルトは、大量の魔力弾で施設上部を破壊しながら侵入した。
地下深くの実験室で待っていたのは、魔奥公団幹部ハーゲンティだった。研究者然とした女性だったが、アルノルトは本能的に危険な存在だと察した。
ハーゲンティは水の檻でアルノルトを拘束しようとしたが、アルノルトは結界で強引に突破した。その力を見たハーゲンティはアルノルトを研究対象として確保しようとし、両者は激突することになった。
悪魔の正体と魔奥公団の秘密
アルノルトはハーゲンティとの戦いの中で、相手が悪魔である可能性に辿り着いた。詠唱なしで古代魔法級の攻撃を相殺したことが決定的な根拠だった。
さらに追及を受けたハーゲンティは、自らが悪魔であることを認めた。魔奥公団は悪魔を人間へ憑依させる研究を行っており、ハーゲンティ自身も人間を依り代として現界した存在だった。
また、死体ではなく生きた人間を依り代にした悪魔の方が強力であり、自身以外にも同様の存在がいることを明かした。
その事実からアルノルトは、クリューガー公爵の事件やレティシア誘拐事件、魔奥公団の活動がすべて繋がっていたことを理解した。悪魔が人間社会へ紛れ込んでいる現実は、大陸全体を揺るがす重大な脅威だった。
本格的な戦闘の開始
ハーゲンティは大量の水の槍を空へ展開し、生きた人間を依り代とした悪魔の力を見せつけた。
しかしアルノルトは、それによって相手が全力で戦う価値のある存在だと判断した。相手の実力を認めたアルノルトは、本気で戦う決意を固める。
そして銀の理を冠する詠唱を開始し、ハーゲンティとの本格的な戦闘へ突入したのだった。
銀滅魔法の完成とハーゲンティ撃破
アルノルトは悪魔との戦いを通じて、自らが考案した新たな銀滅魔法の発動に成功した。長大な詠唱の末に発動した《シルヴァリー・フォース》は、自身の身体能力や感覚、魔力操作能力を大幅に強化し、放つあらゆる攻撃を銀滅魔法へ変える力を持っていた。
発動直後にハーゲンティの猛攻を受けたものの、銀光の力によって無傷で防ぎ切った。さらに放った銀色の魔力弾は巨大な水鷲を容易く貫通し、そのままハーゲンティの右腕を吹き飛ばした。
圧倒的優位に立つアルノルト
ハーゲンティはさらに巨大な翼を持つ水牛を生み出して反撃したが、《シルヴァリー・フォース》によって強化されたアルノルトは高速移動で翻弄した。
続けて放たれた《シルヴァリー・ライトニング》は、水牛を構成していた水を消し飛ばし、核となっていたハーゲンティへ直接ダメージを与えた。
人類の規格外と評したハーゲンティに対し、アルノルトは今の自分はSSS級だと告げ、最後は銀滅魔法を纏った拳でハーゲンティを完全に消滅させた。
悪魔との戦いにおける課題
戦闘後、アルノルトは《シルヴァリー・フォース》の実戦投入に成功したことを確認した。
一方で、強力な悪魔を相手にする場合は発動までの時間が課題になると認識した。そのため、今後はSS級冒険者との共闘も視野に入れながら戦う必要があると判断した。
その後、アルノルトはハーゲンティの拠点へ戻り、残された資料の調査を開始した。
魔奥公団の犯罪の全貌
実験室には吸血鬼の血液や人を怪物化させる薬品、さらには虹彩異色の子供たちを用いた実験記録などが残されていた。
資料にはザンドラやゴードンの名前も記されており、魔奥公団が人攫い組織やクリューガーと繋がりながら各地の事件へ関与していたことが判明した。
アルノルトは、東部の吸血鬼事件から皇族たちの暴走に至るまで、多くの事件の背後に魔奥公団が存在していた事実を知り、怒りを募らせた。
謎の『殿下』の存在
資料の中には、大公と呼ばれる魔奥公団の指導者と『殿下』が協力関係にあることを示す計画書も残されていた。
しかし肝心の続きは処分されており、詳細は不明だった。アルノルトは『殿下』がどこかの王族だと推測したが、単純に帝国の皇族へ結び付けることには違和感を覚えた。
決定的な証拠が不足していたため、この問題は保留し、残る拠点の制圧を優先することにした。
帝国内拠点の壊滅と新たな方針
その後の掃討作戦は順調に進み、判明していた帝国内の魔奥公団拠点はすべて壊滅した。
ただし、悪魔として確認できたのはハーゲンティのみであり、大公をはじめとする上位存在の所在は掴めなかった。
アルノルトは回収した資料をセバスと祖父へ渡し、今後は個人ではなく組織として戦う必要があると考えた。そして悪魔の脅威を共有するため、冒険者ギルド本部へ向かう決意を固めた。
冒険者ギルドへの報告
ギルド本部へ転移したアルノルトは、クライドへ回収した資料を提示した。
さらに魔奥公団が人間を依り代に悪魔を召喚する技術を確立していることや、実際に戦った悪魔がSS級冒険者級の脅威であったことを報告した。
事態の重大さを理解したクライドは、大陸規模の危機と判断し、各国王を招集する賢王会議の開催を決定した。
賢王会議開催への準備
賢王会議の開始に先立ち、クライドは帝国皇帝を最初に招いた。
アルノルトは皇帝へ、魔奥公団の拠点壊滅と悪魔の存在、そして帝国で起きた数々の事件との関連性を説明した。
さらに、皇太子の死や帝位争いすら悪魔たちの思惑に利用された可能性があると指摘し、皇帝へ王国との停戦協力を求めた。
皇帝は強い怒りを抱きながらも、大陸全体の危機を優先し、停戦へ協力することを了承した。
各国招集と新たな局面
皇帝との協議がまとまった直後、連合王国の国王が極秘裏に帝国へ向かっていることも判明した。
その報告を受けたクライドは、代理出席も認める形で各国へ招集をかける方針を決めた。
こうして悪魔という大陸全体の脅威に対処するため、賢王会議の開催準備が本格的に進められることになった。
賢王会議への各国首脳の集結
賢王会議には各国の代表者が次々と姿を現した。最初に現れたのはソーカル皇国の皇王ミハイルであり、皇帝と再会した両者は軽口を交わしながらも互いを牽制していた。
続いてペルラン王国の王太子リュシアンが代理として出席した。リュシアンは帝国を挑発する発言を繰り返したが、皇王からも反論され、さらに皇帝から本気の怒りを向けられると謝罪して引き下がった。
その後も各国の王や代表者が集まり、ミヅホ仙国からは仙姫オリヒメが出席した。オリヒメは相変わらず自由奔放な態度で各国の王たちに接し、場の空気を乱しながらも会議へ参加した。
連合王国代理の出席
連合王国からは国王ではなく、黒竜騎士隊隊長ロジャーが代理として出席した。
ロジャーは代理出席を詫びながらも、皇王から最強の竜騎士と認められた。自身はすでにその座を帝国で失ったと語り、フィンの実力を認める姿勢を見せた。
こうして各国の代表者が揃い、賢王会議が正式に始まった。
悪魔出現の報告
会議が始まると、アルノルトは魔奥公団の拠点壊滅の際に、人間を依り代とした悪魔と遭遇した事実を報告した。
さらに、悪魔は一体ではなく複数存在する可能性が高く、帝国内で発生した数々の事件にも魔奥公団が関与していたと説明した。
皇帝も帝国内で悪魔が現れたのは三度目であり偶然ではないと補足し、悪魔が帝国を狙って活動している可能性を示した。
クライドは、五百年前の大戦を引き起こした悪魔が再び活動を始めていると説明し、大陸全体の危機であると各国へ訴えた。
各国の反応と協力への温度差
オリヒメは敵を倒せばよいだけだと豪快に語り、自らの協力を申し出た。
一方で各国の王たちは、自国が直接被害を受けていない現状から慎重な姿勢を見せた。特にリュシアンは、標的が帝国であるなら冒険者ギルドが帝国を支援すれば十分ではないかと主張した。
アルノルトは、それでは被害が広がってから対応することになると反論し、危険の芽を早期に摘み取る必要性を説いた。
王国への疑惑と捜査要求
アルノルトは魔奥公団が王国へ拠点を移している事実を明かし、王国への本格的な調査を要求した。
さらに帝国の弱体化によって利益を得るのは王国や皇国であり、帝国の混乱に合わせて王国が侵攻したことから、王国と魔奥公団の関係を疑うのは自然だと指摘した。
リュシアンは敵国の弱体化に乗じるのは当然の戦略であり、魔奥公団との関係を示す証拠はないと反論した。しかしアルノルトは、王国が潔白ならば調査に協力できるはずだと追及した。
最終的にリュシアンは停戦を受け入れ、冒険者ギルドによる王国内での捜査を許可した。
停戦成立と討伐作戦の決定
皇帝も停戦に同意し、帝国と王国は一時的に戦闘を停止することになった。
クライドは冒険者ギルドがSS級冒険者三名を中心とした討伐隊を派遣すると発表した。東方の警戒はノーネームが担当し、中央には転移能力を持つシルバーを配置する方針が決定された。
こうして悪魔と魔奥公団への本格的な掃討作戦が開始されることになり、賢王会議は終了した。
深夜の帝都と連合王国の来訪者
会議後、アルノルトは帝都へ戻った。フィーネから城内に特別な変化はないと報告を受けたが、正門に近衛騎士隊が集まっていることに気付いた。
それは極秘裏に帝国を訪問する連合王国国王ウィリアム一行を迎えるためだった。帝国との関係改善を急ぐため、公にはできない訪問だったのである。
アルノルトはその目的を察し、玉座の間へ向かう途中で来訪者を待ち受けた。
ヘンリックとの再会
現れたのは連合王国国王ウィリアムと、その背後にいた第九皇子ヘンリックだった。
アルノルトはウィリアムへ正式な挨拶を交わした後、ヘンリックへ向き直った。ヘンリックはかつてゴードン側につき、帝国を離れて連合王国へ渡った人物だった。
アルノルトは、このまま皇帝の前へ出れば待っているのは死であると警告し、自ら命を絶つよう迫った。しかしヘンリックは、自らの行いの責任を背負うためにも逃げるつもりはないと答えた。
アルノルトは父にこれ以上子供を殺させたくないと訴えたが、ヘンリックの決意は揺るがなかった。
決意を貫くヘンリック
ヘンリックは自分の命の使い道は自分で決めると告げ、アルノルトの制止を振り払った。
その腕は異様な冷たさを帯びており、ヘンリックは最期まで迷惑をかけることを謝罪したうえで玉座の間へ向かった。
ウィリアムもまた説得を尽くしたが止められなかったことを認め、ヘンリックの後を追った。
アルノルトは何もできないまま、その背中を見送るしかなかったのである。
ウィリアムの謝罪と新たな協力関係の提案
玉座の間でヨハネスとウィリアムは再会した。ウィリアムは連合王国による内乱介入を謝罪し、今後は帝国と協力関係を築きたいと申し出た。王国との同盟は既に意味を失ったと説明し、将来再び王国と戦争になった際には竜騎士たちで帝国軍を支援すると約束した。ヨハネスは過ちを償う機会を与えるかどうかは連合王国次第だと答えた。
ヘンリックへの叱責
ヨハネスは前に進み出たヘンリックに対し、反乱後の一連の出来事で多くの血が流れたことを指摘し、皇族として国を守るべき立場でありながらゴードンに従ったことを厳しく非難した。さらに帝都や戦場から逃げ続けたことを責め、なぜ今になって姿を現したのか問いただした。
ゴードンの娘を巡る対立
ヨハネスはゴードンの娘を帝国へ連れ戻す考えを示した。皇族の血は帝国の宝であり、初めての孫を他国に任せることはできないと考えていたためである。しかしウィリアムは、ゴードンの娘は連合王国で静かに育てるべきだと主張した。
ヘンリックの命を懸けた嘆願
ヘンリックは自らの命と引き換えに、ゴードンの娘を連合王国で育てることを認めてほしいと願い出た。反乱者の娘として帝国で生きれば苦しむことになり、命を狙われる危険もあると訴えた。そして既に自ら毒を飲んでいることを明かし、自分の命が尽きるまでその場を動かないと宣言した。
家族を守りたいという願い
ヘンリックは、戦場で家族を失った痛みや、自分が多くの人々を見捨てた罪を語った。そしてせめてゴードンの娘だけは守りたいと願い、自分の命を代償にしてでもその未来を守ろうとした。ウィリアムも友のために戦争へ参加したことを語り、自分を信じてほしいと頭を下げた。
ヨハネスの決断とヘンリックの最期
ヘンリックの覚悟と願いを聞いたヨハネスは、ゴードンに娘はおらず妻も死亡したものとして扱うことを認めた。ヘンリックは感謝と謝罪を伝え、自分は父の誇りにはなれなかったが、他に誇りとなる息子がいると告げた後、静かに意識を失った。
ヘンリック救出の決断
その後、アルノルトはヘンリックが凍毒を飲んでいたことを知った。通常では助からない状態だったが、アルノルトはセバスに救出の可能性を尋ねた。セバスは仮死状態にすることで毒から逃れられる可能性を示し、アルノルトは危険を承知で実行を命じた。
仮死化作業の実施
医務室でアルノルトは近衛騎士たちを退室させ、セバスと共にヘンリックの仮死化作業を行った。セバスは薬と針を用いて処置を施し、ヘンリックは完全に力を失った。成功したと判断した後、セバスは部屋を去った。
ヘンリックの死を演出
アルノルトは涙を流しながらヘンリックの死を嘆く演技を行った。駆けつけた近衛騎士たちもヘンリックが死亡したと思い込み、アルノルトはそのまま玉座の間へ向かってヨハネスにヘンリックの死を告げた。
ヘンリックの願いの真相
アルノルトに問い詰められたヨハネスは、ヘンリックがゴードンの娘の存在を秘匿してほしいと命を懸けて願い出たことを明かした。本来は娘を帝国へ迎えるつもりだったが、ヘンリックの言葉を受けて考えを改めたのである。
血筋を分散させる決意
ヨハネスは、帝国の皇族が明確に狙われている現状を踏まえ、血筋を帝国外にも残すことが必要だと判断した。ゴードンの娘を連合王国に残すことで、万一に備える選択を取ったのである。そしてその秘密を今後どう扱うかをアルノルトに託した。
父と息子の別れ
アルノルトはヘンリックの葬儀ができないことを理解したうえで、弔いだけは自分に任せてほしいと願い出た。ヨハネスはそれを認め、アルノルトに死ぬなと告げて去っていった。父が多くの家族を失った現実を痛感したアルノルトは、これ以上家族を失わせないと心に誓い、玉座の間を後にした。
第12話
ヘンリックの救出と真実の告白
目を覚ましたヘンリックは、自分がアルノルトの修行場にいることを知った。アルノルトは、ヘンリックを仮死状態にして毒を除去し、死亡したことにして連れ出したと説明した。そして仮面を外して自らがシルバーであることを明かした。さらに本の中から現れたグスタフを紹介し、乱帝の真相や自身との関係について説明したため、ヘンリックは立て続けに明かされる事実に混乱した。
新たな役目の提示
アルノルトは帝都を離れるため、自分の目と耳となる協力者が必要だと語り、ヘンリックに協力を求めた。しかしヘンリックは、自分は皇族の落ちこぼれで何の価値もないと拒絶した。アルノルトは、死んだことになっているヘンリックは敵の監視から外れて自由に動ける存在だと説明し、それこそが自分にはない強みだと告げた。
生きる理由の再獲得
ヘンリックは、自分に期待しても失望するだけだと弱気な言葉を口にした。しかしアルノルトは、ヘンリックが二つの国の未来を左右し、家族を守った功績を評価した。そして過去の自分と決別し、新しい自分として生きろと励ました。その言葉を受けたヘンリックは、最終的に協力を受け入れた。
グスタフの弟子入りと後遺症
アルノルトはヘンリックをグスタフの下で鍛えることを決めた。しかし凍毒による後遺症は深刻で、体温は異常に低く、内臓も大きな損傷を受けていた。今後は魔導具と秘薬に頼らなければ生きられない状態であることを知らされたが、ヘンリックは現実を受け止め、グスタフへ弟子入りを申し出た。グスタフもそれを受け入れた。
アルノルトの出発
ヘンリックをグスタフへ託したアルノルトは、小屋を後にした。修行場から城へ戻った後、セバスと共に今後について話しながら部屋を出ていった。
第13話
停戦命令の到着
帝国西部国境では、レオが帝都からの伝令を迎えていた。賢王会議の決定によって停戦が成立し、前線部隊の撤退命令が下された。王国が応じなければ冒険者ギルドが介入するという説明を受けたレオは命令を受諾した。
王国への不信感
レオはレティシアと共に王国の動向について話し合った。レティシアは王国も賢王会議の決定には逆らえないと考えていたが、レオはこれまでの王国の強気な態度に違和感を覚えていた。藩国や連合王国が戦線を離脱しても揺るがなかった王国の自信に、不穏なものを感じていた。
束の間の安らぎ
停戦によって帝都へ戻る可能性が高まったことで、レオはレティシアとの別れを惜しんだ。互いに立場があるため離れられない現実を嘆きながらも、二人は短い時間を共に過ごした。レティシアは戦争はいずれ終わると励まし、レオもその言葉に支えられた。
前線撤退の命令
レオは前線部隊へ撤退命令を出した。ランベルトもその命令を受けて行動を開始し、帝国軍は停戦に向けて動き始めた。
リュシアンの新たな判断
一方、王国ではリュシアンが賢王会議の結果を受けて計画変更を決断していた。SS級冒険者たちによる調査が始まるため、自らは動かず配下へ全てを任せる方針を取った。影から現れた配下へ指示を与えた後、リュシアンは帝国の方角を見つめながら、アードラーとの勝負は先送りだと呟いた。
第三章 魔奧公団討伐作戦
SS級冒険者会議の招集
シルバーは冒険者ギルド帝都支部の遠話室に赴き、クライド主導の重要な会議へ参加した。会議にはリナレス、ノーネーム、エゴール、そして最後にジャックが集まり、それぞれ近況や任務状況を報告した。
ジャックはクライドから依頼されていた偵察を終えており、その後、王国で行われる魔奥公団討伐隊の指揮を自ら執ると宣言した。参加者たちはこれを了承し、討伐作戦の指揮官がジャックに決定した。
魔奥公団討伐作戦の役割分担
クライドは作戦の概要を説明した。ジャック、エゴール、リナレスの三名が討伐隊に参加し、シルバーは帝国、ノーネームは皇国で有事に備えて待機することとなった。
討伐隊には多数の高位冒険者や支援要員が配属され、各地の拠点捜索が進められることになった。クライドは悪魔への対抗こそが冒険者ギルド設立の根幹であると語り、この作戦が組織の真価を問う戦いであると強調した。
新人冒険者との交流
会議後、シルバーは受付嬢エマと話し、溜まっていた高ランク依頼を引き受けることにした。
その後、新人歓迎会を開いていた冒険者たちに呼び止められたシルバーは、新人たちと顔を合わせた。シルバーに憧れて帝都へ来た少年少女たちは感激し、一人の少年は将来シルバーを超える冒険者になると宣言した。
シルバーは、その覚悟を貫くなら実力を磨いて先輩たちを追い抜けと励まし、新人たちの成長を促した。
暇を持て余すアルノルト
王国での冒険者ギルド捜査が終わるまで藩国行きが延期され、アルノルトには時間ができていた。
セバスとの会話の中で、報告すべき案件もなく、今は無理に動かないほうが良いとの結論に至った。その直後、工務大臣ベルツ伯爵が訪ねてきた。
ベルツ伯爵のお見合い相談
ベルツ伯爵は、プライセル侯爵家の令嬢との見合いを控えていた。しかし侯爵夫人から、レオナルト派の中枢に食い込んでいる証拠を示さなければ縁談を認めないと言われていた。
困り果てたベルツ伯爵はアルノルトに同行を依頼した。アルノルトは呆れながらも協力することを決め、見合いの席へ赴いた。
アルノルトによる保証
プライセル侯爵夫妻はアルノルトの来訪に驚愕した。アルノルトはベルツ伯爵が真っ先にレオナルト支持を表明した重要人物であり、自分たちと運命を共にする存在であると説明した。
その言葉を受けて侯爵夫人はベルツ伯爵への評価を改め、縁談を認めた。役目を終えたアルノルトは、あとは当人同士で話すべきだとして席を立ち、ベルツ伯爵へ自力で頑張るよう言い残してその場を後にした。
貴族たちの縁談攻勢
アルノルトのもとには、ベルツ伯爵の見合いに同行したという話を聞きつけた貴族たちが押しかけていた。彼らは自分の娘との縁談を持ち込み、競うように家へ招こうとした。
アルノルトは結婚する意思がないと断ったが、貴族たちは聞き入れなかった。ついには功績も接点もない者たちが自分を軽く見ていると怒りをあらわにし、ベルツ伯爵は帝位争いの初期から支えてきた功労者であり、お前たちとは違うと一喝して追い返した。
ミアとの再会と感謝
騒動の最中、ミアが訪ねてきた。アルノルトは貴族たちを追い払い、客室でミアと会談した。
ミアは帝都での功績に対し、藩国の民を守ってくれたことへの感謝を伝えた。アルノルトも帝国側の不手際を詫びたが、ミアは帝国が最善を尽くしてくれたとして不満はないと答えた。
テッドの将来への支援
ミアは弟テッドをラインフェルト公爵のもとで学ばせたいと相談した。アルノルトは即座に承諾し、ユルゲンへ手紙を書くことを約束した。
さらに子供たちへの土産や馬車、弓の新調などの要望にも応じた。最後には生活資金として財布ごと渡し、その代わり藩国で働いてもらうと告げたため、ミアは再びアルノルトに協力することになった。
縁談騒動の拡大
ミアが帰った後も、アルノルトのもとには縁談話が大量に届き続けた。ミアへの対応を見た貴族たちは、素朴な村娘が好みだと勘違いし、似た雰囲気の女性の似顔絵を送りつけていた。
セバスは、アルノルトが勇爵家や公爵家との縁談を断ったことで、中立派の貴族たちが自分たちにも可能性があると思い込んだのだと説明した。アルノルトはこの状況を利用できると考え、あえて放置することにした。
フィーネ同行の口実作り
エルナは縁談話を放置しているアルノルトを問い詰めた。アルノルトは縁談を利用し、フィーネを再び自分の傍へ置いて藩国へ連れていく口実にするつもりだと説明した。
フィーネが傍にいれば、帝国や藩国の貴族は安易に縁談を持ち込めなくなる。さらに帝都へ残せば危険であることも理由に挙げた。エルナは不満を漏らしながらも、その説明に納得した。
ヨハネスへの要望
その後アルノルトはヨハネスに会い、フィーネを再び自分の傍へ置き、藩国へ同行させたいと申し出た。
ヨハネスは狙いを見抜いていたが了承した。会話の中でアルノルトは、自分には誰かを幸せにする自信がなく、今は結婚する気がないと本心を明かした。また、レオナルトの即位や悪魔問題の解決など、先に果たすべき責任があるとも語った。
ヨハネスは穏やかな人生を与えられなかったことを詫びたが、アルノルトは帝位争いは避けられないものであり、自分にしかできない役目がある以上、それを果たすべきだと答えた。
迫る悪魔との戦い
ヨハネスは今後について語り、悪魔問題が収束すれば王国との戦争、収束しなければ悪魔との全面戦争になると説明した。
その最中、近衛騎士が玉座の間へ駆け込み、王国へ派遣された冒険者ギルドの調査隊が魔奥公団の拠点で悪魔と遭遇したとの報告をもたらした。これにより、事態が大きく動き始めたのであった。
悪魔との遭遇
王国内へ侵入した冒険者ギルドの調査隊は三手に分かれて行動していた。その中でジャック隊は最少人数で行動しており、補佐としてS級冒険者ブルース・ターラントだけを同行させていた。
魔奥公団の地下拠点へ突入したジャックたちは、そこで少女の姿をした悪魔イペスと遭遇した。ブルースは悪魔に挑んだが、氷魔法による攻撃は全て見切られ、逆に命を奪われかけた。しかしジャックが介入してイペスを蹴り飛ばし、ブルースに調査員の退避と悪魔発見の報告を命じた。
その後、ジャックは冒険者ギルド所属SS級冒険者として名乗りを上げ、魔奥公団幹部イペスとの戦いを開始した。
リナレスとマルバスの対峙
別の拠点へ突入したリナレスは、人間を依り代にした悪魔マルバスと対峙した。
マルバスは武術家としてリナレスとの戦いを望んでいたが、リナレスは嫌悪感を隠さず、別荘を壊したくないため外へ出るよう求めた。しかしマルバスは拠点を守る使命があるとして拒否したため、両者はそのまま拳を交えることになった。
エゴールと町を襲う悪魔
エゴールは本来の拠点襲撃とは別に、自らを呼ぶ気配を感じて町へ向かった。
そこでは町が炎に包まれ、人々が逃げ惑う惨状が広がっていた。エゴールは少女を安心させると、杖を打ち付けて町を覆う炎を吹き消した。
空中で人々を襲っていた少年の姿をした悪魔に対し、エゴールは鬼ごっこだと告げ、自らの刀を抜いて戦いを始めた。
再生能力を持つマルバス
リナレスとマルバスの戦いは激化していった。リナレスは圧倒的な技量で何度もマルバスの体を貫いたが、その傷は瞬時に再生した。
マルバスは自身の権能が治癒であることを明かし、どれほど優れた武術でも再生する悪魔には勝てないと語った。リナレスは連続攻撃によって再生を上回ろうとしたが、それでもマルバスを倒し切ることはできなかった。
マルバスは勝利を確信し、決着をつけようと全力の突きを放った。
リナレスの本気
マルバスの攻撃を受けた後も、リナレスは平然としていた。
それまで力を抑えて戦っていたリナレスは本気を解放し、突きを弾いただけでマルバスの腕を消し飛ばした。さらに衝撃波すら軽く払いのけ、マルバスに圧倒的な力の差を見せつけた。
リナレスは技は力を活かすためのものであり、力こそ全てだという持論を語った。そして正面から放った単純な正拳突きによって、マルバスを再生ごと粉砕し消滅させた。
悪魔を討伐したものの、その余波で別荘周辺の地形は大きく変化してしまった。リナレスは服や肌が傷んだことを嘆きながら、調査隊のもとへ戻っていった。
未来予知の悪魔イペス
ジャックとイペスの戦いも続いていた。
イペスは未来予知の権能によってジャックの矢を全て回避していた。ジャックは戦いの中でその能力を見抜いたが、イペスは未来予知に加えて魔力を吸収する攻撃も操っており、両者の相性は極めて悪かった。
イペスはジャックが弓に特化した戦闘能力しか持たないことを指摘し、自分には勝てないと語った。しかしジャックは否定せず、自分にとって魔弓こそ全てであり、弓使いの誇りを背負って戦っているのだと告げた。
弓神ジャックの勝利
ジャックは無数の矢を放ってイペスの動きを誘導した。
未来予知によって安全な場所へ移動したつもりのイペスだったが、それこそがジャックの狙いだった。ジャックは接近戦へ持ち込み、事前に仕込んでいた矢でイペスの四肢を拘束した。
未来が見えていても負ける未来しか存在しない状況へ追い込まれたイペスは逃れられなくなった。
ジャックは魔弓奥義・集束空天光滅弓を放ち、巨大な光の矢でイペスを消滅させた。その威力は地下施設を完全に崩壊させ、大地に巨大な穴を穿つほどだった。
地上へ現れたジャックは、自分の攻撃によって調査が不可能になったことを認め、またシルバーに小言を言われそうだとため息をついたのであった。
エゴールとカーシモラルの対峙
逃亡を続けていたカーシモラルは、追跡してくるエゴールへ強毒を放ったが、エゴールはそれを斬り払って追い詰めた。逃げ切れないと判断したカーシモラルは地上へ降り、エゴールと対峙した。
SS級冒険者の在り方を語るエゴール
カーシモラルは、規格外の力を持つエゴールが人類から恐れられない理由を問いかけた。これに対しエゴールは、悪魔という脅威があったからこそ人類はSS級冒険者を必要としてきたと説明した。さらに、自ら責任を背負い人類の守護者として振る舞ってきたからこそ、SS級冒険者は希望の象徴になったのだと語った。
毒と剣の激突
カーシモラルは周囲に漂わせていた毒を一斉に放出し、エゴールを毒で包囲した。しかしエゴールは刀を高速で振るい、自身へ近づく毒をすべて斬り落として防ぎ切った。その光景にカーシモラルは愕然とした。
剣聖流北の型による討伐
追い詰められたカーシモラルは全身へ毒を蓄積し、斬られても相打ちに持ち込もうとした。しかしエゴールは剣聖流北の型・斬界を放ち、全方位からの斬撃によってカーシモラルを毒ごと完全に消滅させた。
迷子になったエゴール
悪魔を討伐したエゴールは、かつて人類を脅かした悪魔に比べて手応えが薄いことに疑問を抱いた。しかし答えは出ず、元の場所へ戻ろうとして初めて自分が見知らぬ場所まで来ていたことに気付いた。エゴールは残る大きな気配を目指して走り出した。
帝都支部に届いた報告
帝都支部で待機していたシルバーは、王国からの続報が途絶えていることを懸念していた。やがて報告が届き、各地で遭遇した三体の悪魔がSS級冒険者によって討伐されたことが判明した。
四体目の悪魔と甚大な被害
続いて、四体目の悪魔が逃亡し、その追撃の過程で三つの街が壊滅的被害を受けたとの報告が入った。シルバーはジャックから正式な協力要請を受け、王国へ転移した。
被災地での治療と状況説明
王国へ到着したシルバーは、多数の負傷者があふれる惨状を目の当たりにした。街全体へ治癒結界を展開して負傷者を治療した後、ジャックから事情を聞いた。
ジャックは、最初に遭遇した悪魔たちは囮であり、本命の悪魔が逃亡していたこと、その追跡中に三つの街が被害を受けたこと、そして最終的には三人のSS級冒険者で討伐したことを説明した。逃げた悪魔は魔奥公団の首魁である大公ボティスを名乗っていた。
エゴールとの推察
シルバーは瞑想していたエゴールを訪ね、今回の事件について意見を求めた。エゴールは自らの勘として、まだ終わっていないと語った。
シルバーもまた、魔奥公団があまりにも簡単に壊滅したことへ違和感を抱いていた。そして討伐された悪魔たちは囮であり、本物の大公は既に姿を消している可能性が高いと推察した。大公はSS級冒険者との直接対決を避けるため、悪魔たちを犠牲にしたのではないかと考えたのである。
レオの凱旋と帝位争い
帝都ではレオが英雄として歓迎を受けていた。アルは、帝位争いが実質的にエリクとレオの一騎打ちになったことを語った。エリクは政務で、レオは戦功で実績を積み上げており、今後は王国との戦争が大きな焦点になると見ていた。
レオとの再会
帰還したレオはクリスタやアルと再会した。レティシアを国境へ残してきた理由や、帝位争いの状況について語り合った後、夜にはアルの部屋で今後について話し合った。
二人は魔奥公団が本当に壊滅したとは考えにくいという認識で一致した。そしてアルは藩国へ、レオは帝国へと分かれ、それぞれの立場で備え続けることを確認し合った。
トラウゴットとマリアンヌの結婚式
帝都ではトラウゴットとマリアンヌの結婚式が盛大に執り行われた。三日間にわたる祝祭の後、二人は藩国へ向けて出発した。
その旅にはアルも同行することになっていた。レオとアルは初めて長期間離れることになったが、いつか自分たちも幸せな未来を築こうと語り合い、別れを告げた。
リュシアンと大公の暗躍
ペルラン王国では、リュシアンが影から報告を受けていた。魔奥公団は幹部二人を失ったものの、世間には壊滅したように見せかけることに成功していた。
大公もまた、自らの計画が順調に進んでいることを確認していた。拠点には都合の良い情報だけを残しており、各国が協調を解けば再び動きやすくなると考えていた。また、離れ離れになったアルとレオを警戒しつつも、シルバーの存在を危険視して直接手を出さない方針を示した。
ヨハネスとミツバの懸念
アルの旅立ちを見送ったヨハネスとミツバは、子供たちの成長を感慨深く見守っていた。一方で帝位争いについても語り合い、エリクが表立って動かないことにミツバは強い違和感を抱いていた。
ミツバは、エリクが何らかの切り札を隠している可能性を指摘し、ヨハネスへ警戒を促した。ヨハネスもその可能性を認めながら、子供たちの時代を見届けたいという思いを共有した。
エピローグ
藩国への移動と住民の嘆願
藩国へ向かう道中、アルノルトたちはモンスター被害に苦しむ村人から討伐を依頼された。しかしアルノルトは予定を優先し、冒険者ギルドへ依頼するよう伝えて先を急いだ。フィーネは住民を助けられないかと案じたが、アルノルトは今日中に目的地へ到着しなければ予定が狂うと説明した。
シルバーとしての秘密の討伐
目的地の街へ到着したアルノルトは部屋へ入ると、シルバーへ変装して村へ転移した。結界でモンスターの位置を特定し、魔法で討伐した後、自らの姿を村人たちへ見せた。村人たちはシルバーの来訪に歓声を上げ、その活躍を認識した。
正体を隠す苦労
討伐を終えたアルノルトは街へ戻り、再び元の姿へ戻った。モンスター討伐そのものよりも、正体が知られないよう立ち回ることのほうが疲れると漏らした。
藩国での新たな責務への覚悟
厳重な護衛の下で藩国へ向かうアルノルトは、これから藩国の宰相として多忙になることを思い、気が重くなっていた。フィーネは自分もできる限り協力すると励まし、二人は互いに笑みを浮かべながら、藩国での今後について話し合った。
書き下ろし短編『真心料理』
マリアンヌの相談
アルノルトが自室で資料に目を通していたところ、マリアンヌが訪ねてきた。結婚準備や藩国移住に関する多忙な日々の中で時間を作ったマリアンヌは、トラウゴットの食事の好みについて教えてほしいと頼んだ。
試食係の依頼
マリアンヌは料理の経験があり、ミツバからアルノルトとトラウゴットの味覚が似ていると聞いたため、試食係になってほしいと申し出た。アルノルトは了承し、味について助言してもらうためフィーネも呼び寄せた。
スープ作りの挑戦
マリアンヌとフィーネは調理場で芋のスープ作りに取り組んだ。最初のスープを試食したアルノルトは、美味しいものの城で出される料理に比べると味が薄いと感想を伝えた。マリアンヌは素直に助言を受け入れ、再び調理に取り掛かった。
ザンドラとの思い出
料理に励むマリアンヌの姿を見たアルノルトは、幼い頃の出来事を思い出した。かつてザンドラが父へ料理を振る舞おうとして、アルノルトとトラウゴットを味見役にしたことがあった。当初の料理は未熟だったが、試行錯誤を重ねるうちに真心のこもった料理となり、二人はその変化を感じ取っていた。
真心のこもった料理
再び差し出されたスープを口にしたアルノルトは、その味に満足した。最高級の料理ではなかったが、トラウゴットのことを考えながら作られた真心が込められていると感じた。アルノルトはトラウゴットも満足するだろうと太鼓判を押し、マリアンヌは喜びながら帰っていった。
フィーネの申し出
マリアンヌを見送った後、フィーネは自分も夕食を作りたいと申し出た。マリアンヌが料理に励む姿を見て、自分も作りたくなったのである。アルノルトは快く承諾し、夕食を楽しみに待つことにした。
最強出涸らし皇子 シリーズ















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