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フィクション(Novel)最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い読書感想

小説「最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い15」感想・ネタバレ

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最強出涸らし皇子の 暗躍帝位争い 15の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

出涸らし14巻 レビュー
出涸らし16巻 レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 藩国の腐敗粛清
    2. 藩国宰相の離任
    3. 兄弟の帝位争い
    4. アルノルトの暗躍
    5. 近衛騎士団の再編
    6. 魔剣使いとの死闘
    7. ノーネームとの決闘
    8. 皇太子暗殺の調査
    9. アルバトロ公国派遣
  6. 登場キャラクター
    1. アードラシア帝国
      1. アルノルト・レークス・アードラー
      2. レオナルト・レークス・アードラー
      3. エリク・レークス・アードラー
      4. ヨハネス・レークス・アードラー
      5. 皇后
      6. 母上
      7. クリスタ・レークス・アードラー
      8. レーア・レークス・アードラー
      9. フランツ
      10. ユルゲン・フォン・ラインフェルト
      11. シャルロッテ・フォン・ツヴァイク
      12. フィーネ
      13. アリーダ・フォン・ヴァイトリング
      14. セオドア・ライルズ
      15. エルナ・フォン・アムスベルグ
      16. 勇爵
      17. フィン・ブロスト
      18. リタ
      19. セバス
      20. エゴール
      21. ヘンリック
      22. ガイ
      23. 店主
    2. 藩国
      1. トラウゴット・レークス・アードラー
      2. マリアンヌ
      3. ブラッド・フォン・オルコット
      4. アーサーズ伯爵
      5. ミア
    3. 冒険者ギルド
      1. ノーネーム
      2. 先代ノーネーム
      3. クロエ
      4. クライド
      5. リナレス
      6. ジャック
      7. ジーク
      8. リンフィア
      9. ギルドの受付嬢
    4. 敵対勢力・その他
      1. ナイジェル
  7. 展開まとめ
    1. 第一章 出涸らしの帰還
    2. 第二章 帝都剣風
    3. 第三章 勇者vsノーネーム
    4. エピローグ
    5. 書き下ろし短編『宴の席』
  8. 最強出涸らし皇子 シリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い15』(角川スニーカー文庫)は、無能を演じる第七皇子アルノルトが、裏ではSS級冒険者「シルバー」として暗躍し、弟のレオナルトを次期皇帝にするために奮闘する本格暗躍ファンタジーである。
アードラシア帝国の帝位争いが膠着状態となる中、藩国の宰相としての役目を終えて帝都へ帰還したアルノルトに、近衛騎士団長アリーダから極秘の依頼が舞い込む。
それは、帝都に侵入した強力な魔剣使いを討伐するというものだった。
アルノルトは、アリーダ、セオドア、エルナという帝国最強の三人を駒として使い、被害を出さずに事態を収拾する緻密な作戦を展開する。
さらに、その事件の背後に潜むSS級冒険者「ノーネーム」と勇爵家の五百年に及ぶ因縁を解決に導くため、歴史的な御前試合を画策するなど、縦横無尽の暗躍を繰り広げる内容となっている。

■ 主要キャラクター

  • アルノルト・レークス・アードラー:アードラシア帝国の第七皇子。表向きは無能な「出涸らし皇子」を演じているが、裏の顔は大陸最強クラスのSS級冒険者「シルバー」である。双子の弟であるレオナルトを皇帝にするため、自ら泥を被りながら影から帝位争いを支配する本作の主人公である。
  • レオナルト・レークス・アードラー:第八皇子であり、アルノルトの双子の弟。兄とは対照的に優秀で人望に厚く、辺境の有力貴族から絶大な支持を集める帝位候補者である。
  • エリク・レークス・アードラー:第二皇子であり、レオナルトの最大のライバル。変化を嫌う帝都の高位貴族や大臣から支持を集める最大勢力である。高い知略を持ち、皇帝への強い執念を秘めている。
  • エルナ・フォン・アムスベルグ:アムスベルグ勇爵家の令嬢にして、近衛騎士団第三騎士隊隊長。聖剣を扱う勇者の再来であり、アルノルトの幼馴染である。本作ではノーネームと激闘を繰り広げる。
  • ノーネーム:大陸に五人しかいないSS級冒険者の一人。五百年前に初代アムスベルグ勇爵に敗れ、歴史から名を消された剣士の末裔であり、一族の悲願として勇者と聖剣を超えることを目指している。
  • アリーダ・フォン・ヴァイトリング / セオドア・ライルズ:帝国近衛騎士団の団長と副団長。アリーダは神速の剣技を誇り、セオドアは絶対防御の剣術を操る。帝都の危機を前にアルノルトに事態の収拾を要請する。

■物語の特徴

本作の最大の魅力は、圧倒的な実力と知略を持つ主人公が、自らの栄達を望まず、ひたすら弟のために「悪役」や「黒子」に徹して暗躍する点である。
第15巻においては、帝位争いの表舞台での権謀術数(近衛騎士団の人事や対王国戦を巡る駆け引き)と、裏社会の脅威(魔剣使いの襲来やSS級冒険者間の因縁)が複雑に交差する。
強大な敵を前にしても主人公が単純な力押しに頼らず、帝国最強の剣士たちを盤上の駒として操り、帝都への被害を最小限に抑えるための知略を巡らせる展開は読者を引き込む。
また、五百年にわたる一族の怨念や、師弟間の愛憎といったキャラクターたちの深いドラマが絡み合い、単なる権力闘争にとどまらない重厚なファンタジー世界が構築されている点も、他作品と一線を画す特徴である。

書籍情報

最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い15 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する
著者:タンバ 氏
イラスト:夕薙 氏
出版社:KADOKAWAスニーカー文庫
発売日 :2025年8月29日
ISBN : 9784041165690

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

次なる暗躍は――帝国最大戦力を操り、魔剣使い討伐を成功させよ!
 アルが藩国の宰相となって一年後。帝都に帰還した彼に近衛騎士団団長アリーダから極秘の依頼が舞い込む――「この場の三人を駒として使って構いません。罠にかけて二対一の状況を作ってほしいのです。有利な状況で制圧します。お得意では?」帝都に侵入した魔剣使いを討伐するという厄介なもので!?
 アリーダ、セオドア、エルナという帝国最強の三人VS大陸最強の魔剣の一本を操る辻斬りという規格外の戦いの指揮を任されたアルであったが、この事態は勇爵家ととある一族の500年にも及ぶ因縁にも繋がっており――勇者VS空滅も勃発してしまう!
 最強皇子の縦横無尽の暗躍ファンタジー、名を取り戻す15巻!

最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い15 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する

感想

藩国の宰相となったアルノルトの約一年にわたる「レンタル移籍」が終了するところから始まる。
彼があえて悪徳貴族を厳しく摘発し、自ら憎まれ役を演じる姿には胸を打たれた。
そして、意図的にトラウゴットに自身を解任させることで彼の王権を盤石にした手腕は見事の一言に尽きる。
自らは悪評を被りながらも、弟の治世に大貢献を果たして帝都への帰還を遂げる主人公の自己犠牲と知略には、ただただ感嘆させられた。

帝都に帰還してからも、彼に平穏は訪れない。残り一人となった皇位継承のライバルであるエリクとの静かな争いが続く中、強大な魔剣を操る危険人物ナイジェルが帝都へ侵入してくる。
アルノルトがエルナや近衛騎士団といった帝国最大の戦力と協力し、緻密な罠を張ってナイジェルを捕縛する戦闘シーンは、手に汗握る迫力であった。
さらに、その背後で勇者を超えるという悲願を持つ先代ノーネームが暗躍しているという多層的な構図が、物語に深い緊張感をもたらしている。
そんな緊迫した状況の中で突然登場したシルバーの弟子・クロエの存在も、人間関係に新たな風を吹き込んでおり、読んでいてとても面白かった。

本作における最大の見どころは、事態を根本から解決するためにアルノルトが皇帝に提案し、実現させたエルナと今代ノーネームによる御前試合である。
大陸屈指の剣士同士が互いの限界まで削り合う激闘は、まさに死闘と呼ぶにふさわしい凄まじさだった。
時間切れによって引き分けで終わる結末は両者の実力と矜持を際立たせており、非常に美しい着地だと感じる。
何より心に残ったのは、試合後に皇帝が歴史から抹消されていたノーネームの祖先の名誉を回復する場面だ。
五百年に及ぶノーネーム一族の長年の悲願が成就した瞬間は、胸が熱くなるほどの感動とカタルシスを与えてくれた。

しかし、騒動が収束したのも束の間、隣国であるペルラン王国との本格的な戦争が避けられない状況へと突入していく。
王国の戦力を削ぐべく、同盟国アルバトロ公国を引き離すための使者に任命されたアルノルトが、フィーネと共に新たな危険な任務へと旅立っていくラストは、次巻への展開を大いに期待させるものだった。権謀術数と熱い人間ドラマ、そして迫力の戦闘が見事に絡み合う本作の魅力を、存分に堪能できる一冊である。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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出涸らし14巻 レビュー
出涸らし16巻 レビュー

考察・解説

藩国の腐敗粛清

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第15巻において、「藩国の腐敗粛清」は単なる不正の取り締まりではなく、アルノルトが自ら憎まれ役を買って出て、新王トラウゴットの王権を盤石にするための緻密な自作自演の暗躍として描かれている。
その具体的な展開と背後にある思惑は以下の通りである。

強硬な腐敗摘発と悪役の引き受け
藩国宰相となったアルノルトは、前王時代に賄賂で出世や領地拡大を行ったアーサーズ伯爵などの悪徳貴族たちを厳格に摘発し、本人だけでなくその家族ごと拘束する強硬手段に出た。
・藩国の貴族から見れば圧政であるが、アルノルトの真の狙いは別にあった
・自分が巨大な敵として暴れ回り、それをトラウゴットが止める(釈放する)ことで、貴族たちにトラウゴットへの恩を感じさせる
・巨大な敵に対して貴族たちを団結させる目的があったのである

ブラッドとの自作自演
アルノルトの強硬策に対し、トラウゴットは捕らえられた貴族を独断で釈放し、前王時代の重臣の息子でありながら藩国改革を目指す内務大臣ブラッドもアルノルトの姿勢を激しく非難した。
・周囲からは深刻な対立に見えたが、実はこれもアルノルトが藩国に来た当初から、トラウゴットとブラッドの3人で示し合わせていた自作自演であった
・いずれ帝国に戻るアルノルトを排除する役目をブラッドに担わせる
・次期宰相としての箔をつける狙いがあったのである

賄賂の受領と計算された失脚
若いブラッドたちの台頭を嫌う旧重臣派の貴族たちは、アルノルトに媚びて大量の金貨を賄賂として贈った。
・アルノルトは国を維持するには強い貴族が必要だと嘯きながらこれを受け取ったが、それすらも罠であった
・最終的に、ブラッドの手引きによってトラウゴットの前に連行されたアルノルトは、不正を許さないと言うなら自分の不正はどうなると賄賂の証拠を突きつけられた
・そしてトラウゴットは、藩国のことは藩国の者が決めると宣言し、アルノルトを宰相から解任した

まとめ
この一連の粛清劇により、アルノルトは不正を働いて追い出された悪徳宰相という汚名を被って帝国へ帰還することになる。しかしその結果、トラウゴットは藩国貴族からの絶対的な信望を集め、アルノルトに賄賂を贈っていた旧重臣派も証拠を握られて沈黙せざるを得なくなり、藩国にとって最も理想的な体制が完成したのである。

藩国宰相の離任

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』における「藩国宰相の離任」は、アルノルトが自ら悪役を演じた「藩国の腐敗粛清」の総仕上げであり、新王トラウゴットの権威を完全に確立させて帝国へ帰還する鮮やかな幕引きとして描かれている。

その具体的な展開とエピソードの詳細は以下の通りである。

トラウゴットによる弾劾と賄賂の露見
内務大臣ブラッドによって玉座の間へ連行されたアルノルトに対し、トラウゴットは藩王として彼の勝手な振る舞いを厳しく批判した。
・トラウゴットは、アードラーの血筋にしか開けられない箱を用意した
・その中に保管されていた、アルノルトが旧重臣派の貴族たちから受け取っていた賄賂の証拠を突きつけた
アルノルトは、清廉潔白なままでは国は統治できないと弁明したが、トラウゴットは、信用がない者に人はついてこないと一蹴したのである。

計算された解任と皇帝の密書
トラウゴットは、この国のことは藩国の者が決めると力強く宣言し、アルノルトを藩国宰相の任から解任した。
・アルノルトは、自分が藩国にいるのは皇帝陛下の意思でもあると反論を試みた
・しかしトラウゴットは、すでに皇帝ヨハネスからすべて一任するという内容の返書を密かに受け取っていた
アルノルトに気付かれずに根回しを済ませていたトラウゴットの周到さに、アルノルトも内心で感心し、王命に従うとして一礼して引き下がった。

悪徳貴族の絶望とブラッドの感謝
玉座の間を後にしたアルノルトは、自身が捕らえた悪徳貴族たちとすれ違った。
・彼らは自分たちが罰せられる一方で、諸悪の根源であるはずのアルノルトが罰せられずに帝国へ送り返されることに不満を爆発させたが、アルノルトは冷たく受け流した
・帝国への出発前、ブラッドはアルノルトのもとへ歩み寄り、生涯この御恩は忘れないと深い感謝を伝えた
アルノルトは、称賛はいらない、欲しいのは結果だと返し、今後のトラウゴットの補佐を彼に託したのである。

帝国への帰還
アルノルトとフィーネが乗り込んだ帰還の馬車には、義賊のミアが弟に会うためと称して同乗していた。
・出発する馬車の中から、アルノルトは城のバルコニーに寄り添って立つトラウゴットとマリアンヌの姿を見上げた
二人の姿に安心したアルノルトは、再び帝位争いの最前線となる帝国へと帰路についた。

まとめ
この離任劇は、アルノルトが悪徳宰相としての汚名をすべて被ることで、トラウゴットを巨大な敵から藩国を救った王として貴族たちに認めさせる完璧なシナリオであった。兄弟の絆と信頼があったからこそ成し遂げられたこの計画により、藩国の未来は盤石なものとなり、アルノルトは次なる戦いの舞台である帝国へと舞い戻ることになるのである。

兄弟の帝位争い

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第15巻における兄弟の帝位争いは、ゴードンやザンドラの反乱が鎮圧されたことで、第二皇子エリクと第八皇子レオナルトによる二者択一の政治戦・情報戦へと移行し、膠着状態となっていることが描かれている。
その具体的な現状と展開は以下の通りである。

勢力の拮抗と膠着状態
帝位争いは実質的にエリクとレオナルトの一騎打ちとなっている。
・エリクは、変化を嫌い現状維持を求める帝都周辺の高位貴族や大半の大臣から絶大な支持を集めている
・レオナルトは、明確な実績を残し変化を求める西部筆頭クライネルト公爵、北部筆頭ツヴァイク侯爵、南部筆頭ジンメル侯爵など、辺境の有力貴族から支持されている
このように、名のエリクと実のレオナルトで勢力が二分され、帝位争いは膠着状態に陥っている。

エリクの固い決意と牽制
これまで最大勢力を維持して静観していたエリクだが、アルノルトの帰還や情勢の変化を受け、本格的に動き始めている。
・療養中の妻レーアに対し、家族が離れ離れになっても退く気はなく、平和で誰もが愛する人と穏やかに暮らせる国を築くために皇帝になると固い決意を語った
・アルノルトが帝都へ帰還する際、先手を打って足止めを画策した
・ペルラン王国の軍備増強を利用し、アルノルトやレオナルトを帝都から遠ざけようと誘導するような駆け引きを見せている

対王国戦を巡る駆け引き
王国の脅威が迫る中、対王国戦の主導権を巡る争いが起きている。
・東部国境のリーゼロッテから、エリクを前線に復帰させ、レオナルトと共同で王国攻略に当たらせるという案が提示された
・しかしエリクは、自分が補佐するのはヴィルヘルムのみだとしてこれを拒絶した
・結果として対王国戦の主軸はレオナルトが担うことになったが、エリクはレオナルトが失敗した場合は自分が前線に出るという確約を取り付け、次善の策を確保した
・一方アルノルトは、レオナルトに確実な戦果を挙げさせるため、王国と同盟関係にあるアルバトロ公国を引き離す使者として、自ら人質になる危険を冒して交渉へ赴くことを決意する

皇太子暗殺の再調査と悪魔の影
帝位争いの発端であるヴィルヘルム皇太子の暗殺についても、皇帝、フランツ、勇爵、アルノルトらによる再調査が行われた。
・辺境貴族を調べても証拠は見つからず、監視下にあったエリクにも不審な動きはなかった
・帝位争いの勝者が再び暗殺される事態を防ぐため、証拠を残さず暗殺を実行できる悪魔の関与が強く疑われた
・これにより皇帝は冒険者ギルドと全面的に協力し、自身の専用兵器である皇剣の使用も辞さず、大陸から悪魔を駆逐するという決意を固めた

まとめ
第15巻において、兄弟の帝位争いは正面からの高度な政治戦へと突入している。エリクが皇帝への執念を明確にして動き出す中、アルノルトとレオナルトの双子は、次なる決戦の舞台となる対王国戦で圧倒的な手柄を立ててエリクを追い抜くため、それぞれ新たな過酷な任務へと身を投じていく展開となっている。

アルノルトの暗躍

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第15巻におけるアルノルトの暗躍は、藩国の基盤固めから帝都での魔剣使い捕縛、さらにはSS級冒険者の因縁の解決まで、多岐にわたる緻密な策略として描かれている。
その具体的な暗躍の展開と目的は以下の通りである。

藩国での自作自演による王権強化
アルノルトは藩国の宰相として悪徳貴族を厳しく摘発し、自ら憎まれ役を買って出た。
・これはトラウゴットと内務大臣ブラッドと、藩国に来た当初から示し合わせていた自作自演の計画であった
・あえてアルノルトが旧重臣派から賄賂を受け取る罠を張り、最終的に証拠を突きつけられて解任されるという粛清劇を演じきった
これにより、トラウゴットを巨大な敵を追い払った王として印象付け、その王権を盤石にして帝国へと帰還したのである。

帝都での魔剣使いナイジェル捕縛作戦
帝都へ帰還後、強力な魔剣である炎神を持つロスアークの弟弟子ナイジェルが、帝都に侵入していることを知る。
・アルノルトは帝都に被害を出さずに事態を収拾するため、エルナを美しいドレス姿で囮にしてナイジェルを食事の席へと誘き出した
・そして戦闘の隙を突いてジークに転移の腕輪を装着させ、待ち構えていたアリーダとセオドアのもとへ強制転移させるという緻密な罠を成功させた

ノーネームの帝都招致と御前試合の実現
ナイジェルの背後にSS級冒険者である先代ノーネームが暗躍していることを見抜いたアルノルトは、先代の影響下にある今代ノーネームを自立させるため、以下の行動をとった。
・自身の弟子であるクロエを帝都へ呼び寄せつつ、ノーネームを帝都へ招致する策をギルドや皇帝に認めさせた
・さらに初代勇爵が遺した歴史書を利用してノーネームを説得し、エルナとの御前試合を提案して実現させた
これにより、五百年にわたるノーネーム一族の悲願を、帝都を巻き込むような殺し合いではなく、名誉ある一騎打ちという形で解決へと導いたのである。

対王国戦へ向けた危険な使者任務
隣国ペルラン王国との全面戦争が避けられない情勢となる中、アルノルトはレオナルトを対王国戦の主軸として活躍させるため、王国の強力な同盟国であるアルバトロ公国を引き離す使者に選ばれた。
・公国が王国側につけば自分が絶好の人質になるという危険な任務であった
・しかしその危険を冒してでもフィーネと共に公国へ赴き、帝位争いの次なる決戦に向けた布石を打ったのである

まとめ
第15巻におけるアルノルトの暗躍は、トラウゴットやレオナルトといった弟たちの地位を確固たるものにするための自己犠牲的な策略と、エルナやノーネームといった人類の重要戦力を守るための知略が光る内容となっている。幼馴染を守りたいという私情を原動力としつつも、最終的には関係者全員を救い出す彼の手腕が存分に発揮されたエピソードと言えるのである。

近衛騎士団の再編

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第15巻における近衛騎士団の再編は、欠員となっていた部隊の再建であると同時に、帝位争いが膠着状態となる中で各陣営が強力な武力を中枢に配置し合う水面下の政治戦として描かれている。
その具体的な再編の内容と、帝位争いにもたらす影響は以下の通りである。

第八近衛騎士隊の再建とフィンの抜擢
北部で活躍していた白い飛竜に乗る騎士フィン・ブロストが、新たに第八近衛騎士隊の隊長に任命された。
・フィンは単独で近衛騎士隊クラスの活躍ができる実力者であるため、異例となる部下を持たない近衛騎士隊長としての特例抜擢となった
・これは皇帝ヨハネスが近衛騎士団の再編を急いだ結果であり、アルノルトが帝都へ帰還する際やアルバトロ公国へ向かう際の護衛も務めている

第十近衛騎士隊の再建とエリクの隠し玉
もう一つの再建部隊である第十近衛騎士隊の隊長には、ブルクハルトという男が就任した。
・彼は隊長選抜試験において、エルナ以来となる第一次試験での即決合格(ライバル全員を即座にノックダウンさせる)を果たすほどの圧倒的な実力者である
・その本名はブルクハルト・フォン・アルテンブルクであり、第二皇子エリクが推薦したアルテンブルク公爵家の庶子であった

再編がもたらす帝位争いへの影響と脅威
近衛騎士隊長は本来、皇帝の命令でしか動かない立場である。
・しかし、エリクが自らの息がかかったアルテンブルク家の猛者を近衛騎士団に送り込んだことは、アルノルトたちにとって無視できない脅威となる
・エルナはブルクハルトの実力について、自分なら勝てるが、自分以外の者(アルノルトの周囲の実力者たち)ではどうなるかわからないと高く評価している
・帝位争いがさらに激化して実力行使による衝突が避けられなくなった場合、彼がエリク陣営の強力な手駒として立ち塞がる可能性が示唆されている

まとめ
第15巻における近衛騎士団の再編は、単なる皇帝直属戦力の強化に留まらず、水面下で進むエリク陣営とレオナルト陣営の高度な盤外戦を浮き彫りにしている。特に、これまで静観を貫いていたエリクが自陣営から強力な剣士を中枢へ送り込んだことは、彼が皇帝となるための本気度を示すものであり、次なる激闘への重要な布石となっているのである。

魔剣使いとの死闘

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第15巻において描かれる魔剣使いとの死闘は、帝都に侵入した強力な剣士ナイジェルと、帝国が誇る最強の戦力との間で繰り広げられた激闘である。
その展開の詳細は以下の通りである。

囮作戦と帝都外への強制転移
ナイジェルはロスアークの弟弟子であり、古代の炎竜を素材に作られた最高位の魔剣である炎神を所持する危険な剣士であった。アルノルトは帝都への被害を防ぐため、以下のような緻密な作戦を実行した。
・エルナを美しいドレス姿で囮として食事の席へ誘き出し、ナイジェルの襲撃を誘った
・ナイジェルがアルノルトを狙って襲撃してきた隙を突き、屋根の上で待機していたジークが転移の腕輪を装着させた
・この転移魔導具の発動により、ナイジェルは待ち構えていた帝都近郊の平原へと強制転移させられた

近衛騎士団幹部との激闘
転移先では近衛騎士団長アリーダと副団長セオドアが待機しており、帝都最強の二人と魔剣使いによる二対一の戦闘が開始された。
・ナイジェルは炎の型による猛攻を仕掛けたが、セオドアは風の剣を用いた防御剣術でこれを受け流し続けた
・アリーダが気配を消して背後から心臓を貫き確実な討伐を図ったが、ナイジェルは炎神の力によって傷と切断された右腕を再生させた
・ナイジェルが纏う炎は青から蒼、さらには白い炎へと変化し、再生能力にとどまらない蘇生能力を見せつけた
・ナイジェルが巨大な炎の竜である獄炎竜を放つと、セオドアの風の剣とアリーダの七種類の魔法を複合した奥義である虹滅剣が激突し、凄まじい爆発を引き起こした
疲弊した状況でも近衛騎士の信念を貫く二人の反撃により、ナイジェルは徐々に追い詰められていったのである。

黒衣の人物の乱入と結末
決着が近づいた時、黒いローブの人物が戦場に乱入してナイジェルを援護した。
・事態を重く見たアルノルトは戦場へ急行し、皇帝の代理権限を用いてエルナに聖剣の解放を命じた
・聖剣を召喚したエルナと炎神を持つナイジェルは空中戦へと移行したが、聖剣を前提とした勇者の剣技は人間の剣術を凌駕しており、ナイジェルは完全に圧倒されて立ち上がれなくなった
・すると黒衣の人物は魔導具を用いてナイジェルから炎神を回収し、疲弊したアリーダかセオドアに致命傷を与えると脅迫してアルノルトと取引を行った
アルノルトは近衛騎士団幹部の命と帝都の安全を優先して取引に応じ、ローブの人物の逃亡を許したが、ナイジェルを捕縛して帝都の脅威を排除することには成功したのである。

まとめ
魔剣使いナイジェルとの死闘は、強大な魔剣の脅威に対し、近衛騎士団幹部の意地とエルナの圧倒的な力が示された戦いであった。被害を最小限に抑えようとするアルノルトの知略が光る一方で、さらなる強敵の存在が浮き彫りとなり、物語は次なる展開へと進んでいくのである。

ノーネームとの決闘

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第15巻におけるノーネームとの決闘は、五百年にわたるノーネーム一族の怨恨と悲願を清算するためにアルノルトが仕組んだ、エルナとノーネームによる御前試合である。
その詳細な展開と結末は以下の通りである。

決闘の背景とルール
ノーネームの祖先であるアーヴァイン・ノックスは、五百年前に初代アムスベルグ勇爵と聖剣を賭けて戦い敗れたことで人類の敵とされ、歴史から名を消された。その雪辱を果たすため、一族は代々聖剣と勇者を超えることを悲願としてきた。アルノルトは事態の悪化を防ぐべく、初代勇爵が遺した本を提示して魔剣や聖剣に頼らない一騎打ちを提案し、皇帝ヨハネスもこれを皇后の誕生日祭の目玉として承認した。
・制限時間は十分とし、聖剣と魔剣の使用は禁止された
・武器は公平を期すため、シルバーの提案によりクロエが所有するミヅホ仙国の仙医トウイ作の双剣を一本ずつ使用することになった

剣と拳が交錯する死闘
試合が始まると、序盤は互いに一歩も動かずに剣を交える高度な剣技の応酬となった。
・剣技は互角であったが、一撃の重さで勝るエルナが徐々にノーネームを押し始めた
・エルナの強さを痛感したノーネームは敗北をよぎらせたが、エルナが聖剣を召喚した理由などを聞いて迷いを吹っ切り、仮面を外して本性を現した
・ノーネームは師匠リナレスから受け継いだ体術を解禁し、剣術と強力な拳打を組み合わせた猛攻でエルナを壁際まで追い詰めた
・しかしエルナも打撃の威力を巧みに逃がしながら反撃の機会を窺い、ノーネームの腹部を切り裂くカウンターを決め、両者は満身創痍のまま互いの命を削り合う戦闘へと突入していった

奥義の激突と引き分け
制限時間が迫る中、両者は一撃で決着をつけるべく同時に奥義の構えに入った。
・奇しくも二人が放ったのは、五百年前に初代勇爵とノーネームの祖先が用いた同じ奥義の星刻であった
・二つの奥義が闘技場の中央で激突し、凄まじい光とエネルギーがシルバーの結界を突き破って空へと上った
・時間切れを告げる角笛が鳴り響き光が収まると、エルナの剣先はノーネームの喉元に、ノーネームの剣先はエルナの胸元に向けられていた
・互いに致命傷を与えうる距離であったため、皇帝ヨハネスが引き分けを宣言し、死闘は幕を閉じた

五百年の悲願成就と名誉回復
試合後、皇帝ヨハネスは大陸中のギルド支部へ繋がる魔導具を用い、五百年前の真実を大陸全土へ公表した。
・歴史から名を消された剣士が人類のために戦い続けた英雄であったことを語り、その名がアーヴァイン・ノックスであることを明かした
・帝国皇帝として五百年前の過ちを謝罪し、エルナと互角に戦い抜いたノーネームが勇者の一族に並んだことを認めた
・これにより一族の悲願は成就したが、ノーネームは引き分けでは名乗る資格がないとして個人の真名は明かさず、エルナとの再戦を約束して闘技場を去っていった

まとめ
この決闘は、五百年にわたるノーネーム一族の呪縛を解き放ち、人類の最高戦力同士が不毛な殺し合いをする事態を回避させた歴史的な出来事である。アルノルトの知略とエルナの圧倒的な実力、そしてノーネームの矜持が交差することで、大陸に新たな伝説が刻まれると同時に、来るべき悪魔との戦いに向けた重要な布石となったのである。

皇太子暗殺の調査

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第15巻における皇太子暗殺の調査は、帝位争いの発端となった第一皇子ヴィルヘルムの不審な死の真相に迫るため、皇帝ヨハネス、宰相フランツ、勇爵、そしてアルノルトの四者によって極秘裏に進められた協議として描かれている。
その詳細な背景や展開は以下の通りである。

調査の目的と囮作戦
この再調査には、単なる犯人探しにとどまらない重要な目的があった。
・帝位争いがエリクとレオナルトの二者択一となった今、勝者が決まった後に再び後継者が暗殺されるような事態になれば、帝国そのものが崩壊してしまうからである
・また、アルノルトに調査を命じた理由の一つには、彼に注目を集めさせてレオナルトから目を逸らさせる囮としての役割も含まれていた

調査結果とエリクへの監視
一年にわたる水面下での調査が行われたが、犯人に直結する事実は掴めなかった。
・辺境の貴族たちを取り調べたものの、四年前の事件であるため有益な証拠は見つからなかった
・また、静観を貫いていた第二皇子エリクを一年間監視したが、彼に怪しい動きはなく、ゴードンやザンドラのように妃からの呪い(影響)を受けて変質している様子も見られなかった
しかし、証拠がないからといってエリクの疑いが完全に晴れたわけではなく、皇帝や勇爵は引き続き警戒を解いていないのである。

悪魔の関与の疑い
人間を対象とした調査で一切の証拠が出なかったことから、協議の場では悪魔の関与が強く疑われることとなった。
・悪魔は魔法とは異なる生まれ持った権能を有しており、暗殺に向いた権能を用いれば、証拠を残さずに皇太子を殺害することが可能であるためである
・皇族たちを狂わせた妃を介した呪いについても、悪魔の仕業であるとすれば筋が通ると結論付けられた

皇帝の決意と皇剣の解放
相手が悪魔であるならば、アルノルトを囮にする作戦は意味をなさず(目障りであれば両方殺されるだけのため)、ただ彼を危険に晒すだけとなってしまう。
この事態を受け、皇帝ヨハネスは方針の転換と大きな決断を下した。
・冒険者ギルドの調査を支持して全面的に協力し、大陸から悪魔の残党を徹底的に駆逐する方針を固めた
・さらに、必要とあらば皇帝自身が戦場に出向くことを宣言し、その際には、あまりの危険性ゆえに聖剣と同様に封印されてきた皇帝専用の殲滅兵器である皇剣の使用も厭わないという強い覚悟を示した

まとめ
皇太子暗殺の再調査は、明確な犯人の特定には至らなかったものの、その背後に潜む悪魔の権能という真の脅威を浮き彫りにした。これにより、帝位争いの裏で進行する陰謀の底知れなさが示されるとともに、帝国そのものを守るために皇帝自らが最前線に立つ覚悟を決めるという、重要な転換点となっているのである。

アルバトロ公国派遣

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い』第15巻におけるアルバトロ公国派遣は、迫り来るペルラン王国との全面戦争に向けた最大の布石であり、次なる帝位争いの行方を左右する極めて危険な外交任務として描かれている。
その背景と詳細な展開は以下の通りである。

派遣の背景と目的
ペルラン王国が軍備を急速に増強し、帝国との戦争が避けられない情勢となった。
・過去の戦争において帝国軍が王国の要塞を突破できず泥沼の膠着状態に陥ったのは、王国の同盟国であるアルバトロ公国からの海上支援があったためである
・対王国戦で勝利するにはこの支援を断ち切ることが不可欠であり、対王国戦の主軸をレオナルトが担うことになったため、アルノルトがアルバトロ公国への使者として赴くことになった

武力誇示の回避と対話の重視
皇帝ヨハネスと宰相フランツは、近衛騎士団による厳重な警護は公国を刺激し威圧することになるとして却下した。
・代わりに護衛を最小限に絞り、帝国寄りの立場をとる公子との対話を重視する方針をとった
・アルノルトの言葉よりも、公子の言葉の方が公国内で受け入れられやすいという判断からである

計算された人質としての圧力
護衛を絞ることは、交渉が決裂して公国が王国側についた場合、アルノルトが絶好の人質になるという危険を伴う。
・そこでフランツは、あえて人質になり得る人物をもう一人増やす策を提案した
・それに伴いフィーネが同行することになり、もし二人に危害を加えれば帝国が本気で動くという無言の圧力を相手にかける狙いがあった

皇帝の親心と兄弟の約束
出発前、皇帝ヨハネスはアルノルトに対し、恥よりも命だと忠告し、万が一の際は生き延びることを最優先するよう命じた。
・見送りに来たレオナルトは、人質になったら僕が助けに行くと約束した
・アルノルトは、自分が戻ってきたら始まる王国との本格的な戦争で手柄を立ててエリクを追い抜くよう、レオナルトに覚悟を求めた

まとめ
このアルバトロ公国派遣は、アルノルトが自らとフィーネの命を懸けた人質外交の側面を持つ。しかし、護衛としてセバスや上空のフィンが控える中、二人は強い信頼と絆を確かめ合いながら公国へと旅立った。これはレオナルトを次期皇帝にするための決定的な戦いとなる対王国戦を有利に導くための、アルノルトの自己犠牲と知略に満ちた重要な行動となっているのである。

出涸らし14巻 レビュー
出涸らし16巻 レビュー

登場キャラクター

アードラシア帝国

アルノルト・レークス・アードラー

アードラシア帝国の第七皇子である。表向きは無能な出涸らし皇子を演じているが、裏の顔は大陸最強クラスのSS級冒険者シルバーとなっている。双子の弟であるレオナルトを次期皇帝にするため、自ら憎まれ役を買って出て暗躍する。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国第七皇子。北部全権代官。藩国宰相。SS級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 藩国で悪徳貴族を厳しく摘発し、自作自演でトラウゴットに解任されることで新王の権威を確立させた。帝都ではエルナたちを駒として使い、魔剣使いナイジェルを捕縛する作戦を成功させている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 無能な皇子として軽んじられていたが、数々の戦功を経て周囲からの評価を高めた。皇帝ヨハネスからもその能力を認められており、帝位争いの裏で絶大な影響力を発揮する存在に位置づけられている。

レオナルト・レークス・アードラー

アードラシア帝国の第八皇子である。アルノルトの双子の弟であり、誠実で正義感が強く、高いカリスマ性を備える。次期皇帝の有力候補として、兄の支援を受けながら成長していく。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国第八皇子。帝都守備隊名誉将軍。

・物語内での具体的な行動や成果
 南部辺境での流民問題解決や、ゴードンの反乱鎮圧など、数々の戦場で大きな功績を挙げた。西部戦線ではペルラン王国軍を圧倒し、停戦へと導いている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 帝位争いにおいて、第二皇子エリクに並ぶ有力候補へと昇り詰めた。民や辺境貴族からの厚い支持を集めており、次期皇帝としての地位を固めつつある。

エリク・レークス・アードラー

アードラシア帝国の第二皇子である。文官や帝都の高位貴族から支持を集める最大勢力の中心人物となっている。冷徹で知略に優れ、皇帝への強い執念を秘める。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国第二皇子。外務大臣。

・物語内での具体的な行動や成果
 帝位争いにおいて静観を貫きつつ、水面下で他国との外交交渉を有利に進めた。アルテンブルク家の庶子ブルクハルトを近衛騎士団へ送り込むなど、自陣営の武力強化も図っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 無傷のまま最大勢力を維持しており、帝位争いにおける最強の対抗馬として君臨する。療養中の妻レーアのために平和な国を築くという目的を持っている。

ヨハネス・レークス・アードラー

アードラシア帝国の第三十一代皇帝である。帝位は自ら勝ち取るものという信念を持ち、子供たちによる帝位争いを容認している。国益を最優先に考える冷徹な指導者としての側面を見せる。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国皇帝。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトを北部全権代官や藩国宰相に任命し、その能力を最大限に活用した。皇太子暗殺の裏に悪魔の関与を疑い、専用兵器である皇剣の使用も辞さない覚悟を示す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 絶対的な権力者として君臨している。かつての自分に似たアルノルトの行動を高く評価しており、彼への信頼を深めている。

皇后

アードラシア帝国の皇后であり、トラウゴットの母である。本名はブリュンヒルト・レークス・アードラーとなっている。亡き皇太子ヴィルヘルムの死を巡って、皇帝ヨハネスとの間に深い確執を抱える。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国皇后。

・物語内での具体的な行動や成果
 各国の王族と親密に連絡を取り合い、外交面で帝国に貢献した。トラウゴットが藩国の王となることに猛反発し、皇帝と激しく対立している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 後宮の主として絶大な権力を持つ。皇太子の死後、一時は活力を失っていたが、トラウゴットを守るために再び強い意志を示すようになった。

母上

アードラシア帝国の第六妃であり、アルノルト、レオナルト、クリスタの母である。本名はミツバとなっている。元踊り子で諸外国を巡った経験から、非常に深い見識を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国第六妃。

・物語内での具体的な行動や成果
 皇帝と皇后の対立の場に現れ、妥協案を提示して事態を収拾に導いた。子供たちの自主性を重んじ、アルノルトの暗躍を影から見守り続けている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 皇帝ヨハネスに対して辛辣な意見を率直に述べることができる数少ない存在である。その冷静な判断力で、皇帝やアルノルトの支えとして機能する。

クリスタ・レークス・アードラー

アードラシア帝国の皇女であり、アルノルトたちの異母妹にあたる。重大な事件を予知する未来視の能力を持つ。無表情だが、アルノルトやレオナルトによく懐いている。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国第三皇女。

・物語内での具体的な行動や成果
 ゴードンの反乱時に人質として狙われたが、アルノルトやトラウゴットたちによって無事に救出された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その特殊な能力ゆえに各勢力から狙われやすい立場にある。アルノルトたちによって秘匿され、厳重に保護されている。

レーア・レークス・アードラー

第二皇子エリクの妻である。名門アルテンブルク公爵家の出身であり、エリクとは幼馴染の関係となっている。原因不明の奇病に侵され、療養生活を送る。

・所属組織、地位や役職
 第二皇子夫人。アルテンブルク公爵家出身。

・物語内での具体的な行動や成果
 病床にありながらも、帝位争いを続けるエリクの身を案じている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エリクが皇帝を目指す最大の理由の一つである。彼女と穏やかに暮らせる国を作るという彼の行動原理に直結している。

フランツ

アードラシア帝国の宰相である。平民出身でありながら、その才覚のみで帝国の最高位にまで上り詰めた傑物として知られる。皇帝ヨハネスの皇子時代からの参謀でもある。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国宰相。

・物語内での具体的な行動や成果
 皇帝を補佐し、帝位争いや各国の動向に対して的確な助言を行う。アルノルトの行動の裏にある意図を素早く見抜くなど、鋭い洞察力を発揮している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 文官のトップとして帝国政治を完全に掌握している。皇帝からの信頼は厚く、帝国の運営に欠かせない存在となっている。

ユルゲン・フォン・ラインフェルト

ラインフェルト公爵家の当主である。武芸の才能はないが、類まれな商才と人望を持つ。第一皇女リーゼロッテに一途な求婚を続けている情熱的な男となっている。

・所属組織、地位や役職
 ラインフェルト公爵家当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 レオナルト陣営の有力な支援者として、東部や北部での軍への物資支援を取り仕切った。帝都での反乱時にも迅速に対応し、アルノルトたちをサポートしている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その商才と誠実な人柄から、多くの貴族に影響力を持つ。アルノルトからは将来の義兄として深く信頼されている。

シャルロッテ・フォン・ツヴァイク

ツヴァイク侯爵の孫娘であり、雷神と恐れられたローエンシュタイン公爵の血を引く少女である。優れた雷魔法の使い手であり、北部貴族をまとめる重要な役割を担う。

・所属組織、地位や役職
 ツヴァイク侯爵家(のちにローエンシュタイン公爵家)。

・物語内での具体的な行動や成果
 北部でのゴードン反乱時、アルノルトの呼びかけに応じ、北部諸侯連合の結成に大きく貢献した。アルノルトの北部全権代官としての業務を補佐している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 北部の新たな雷神として名を馳せている。皇族嫌いであったが、アルノルトの真意に触れて彼を友人と認め、協力関係を築いた。

フィーネ

クライネルト公爵家の令嬢である。蒼鴎姫の異名を持ち、美貌と純真な心で帝国中から高い人気を集める。アルノルトを深く信頼し、彼を支え続ける。

・所属組織、地位や役職
 クライネルト公爵令嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 皇帝の勅使として危険な任務に赴くなど、レオナルト陣営の支持基盤拡大に尽力した。アルバトロ公国への使者任務では、自ら人質役としてアルノルトに同行している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その人気ゆえに多数の若手貴族から求婚されている。アルノルトが道を踏み外さないための重要な指針としての役割を果たす。

アリーダ・フォン・ヴァイトリング

帝国近衛騎士団の団長である。神速の剣技を誇り、皇帝への絶対的な忠誠を誓う。職務に忠実で冷徹な一面を見せる。

・所属組織、地位や役職
 帝国近衛騎士団団長。第一騎士隊隊長。

・物語内での具体的な行動や成果
 帝都反乱時には単身で玉座の間を守り抜き、多数の反乱兵を圧倒した。魔剣使いナイジェルの捕縛作戦では、セオドアと共に前線で戦った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 近衛騎士団のトップとして、帝都の防衛において欠かせない戦力となっている。アルノルトの知略を高く評価している。

セオドア・ライルズ

帝国近衛騎士団の副団長である。ロスアーク流剣術の後継者であり、風の魔法と剣術を組み合わせた風剣領域という絶対防御の剣術を操る。

・所属組織、地位や役職
 帝国近衛騎士団副団長。第二騎士隊隊長。

・物語内での具体的な行動や成果
 自身の弟弟子である魔剣使いナイジェルが帝都に侵入した際、彼を討伐するためアルノルトに協力を要請した。アリーダと共にナイジェルと激闘を繰り広げている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 孤児から近衛騎士団の副団長にまで上り詰めた実力者である。防御剣術においては帝国随一の達人とされる。

エルナ・フォン・アムスベルグ

アムスベルグ勇爵家の令嬢である。聖剣を扱う勇者の再来として神童と呼ばれる。アルノルトの幼馴染であり、彼に深い恩義と信頼を寄せる。

・所属組織、地位や役職
 帝国近衛騎士団第三騎士隊隊長。

・物語内での具体的な行動や成果
 北部での反乱鎮圧や魔剣使い討伐で作戦の主戦力として活躍した。先代ノーネームとの御前試合では、互角の死闘を演じて引き分けに持ち込んでいる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 帝国最強の剣士として他国からも恐れられる存在となっている。アルノルトの立てる緻密な作戦における最強の矛として機能する。

勇爵

アムスベルグ勇爵家の当主であり、エルナの父親である。本名はテオバルトとなっている。帝国最高の武力を誇り、皇帝直属の切り札として暗躍する組織や反乱を鎮圧する。

・所属組織、地位や役職
 アムスベルグ勇爵家当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 エルナを鍛え直すために模擬戦を行い、聖剣を召喚させるほどの激闘を見せた。皇族への呪いの疑念についてアルノルトに情報を伝え、囮役を依頼している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 政治には表立って関与しないが、皇帝からの信頼は絶大である。帝都防衛や悪魔対策において重要な役割を担う。

フィン・ブロスト

白い飛竜ノーヴァに騎乗する竜騎士である。アルノルトに見出され、最新鋭の魔導杖を託されて空戦の常識を変える活躍を見せる。

・所属組織、地位や役職
 第八近衛騎士隊隊長。

・物語内での具体的な行動や成果
 北部戦線でアルノルトの護衛や連絡役として働き、大きな戦功を挙げた。アルバトロ公国への使者任務でもアルノルトの護衛を務めている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 かつては戦場に出られない後方支援要員であったが、特例抜擢によって部下を持たない近衛騎士隊長へ昇進した。

リタ

クリスタの専属護衛を務める騎士見習いの少女である。遠慮のない明るい性格で、皇族相手でも物怖じしない姿勢を持つ。

・所属組織、地位や役職
 騎士見習い。クリスタの護衛。

・物語内での具体的な行動や成果
 クリスタと共に誘拐事件に巻き込まれた際、身を呈して彼女を守ろうとし、毒刃によって負傷した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 迷子になっていたところをレオナルトに助けられた過去を持つ。アルノルトやレオナルトからも親しく接されている。

セバス

アルノルトに仕える老執事である。かつては伝説の暗殺者として恐れられた人物であり、現在もその実力は衰えていない。

・所属組織、地位や役職
 アルノルト専属の執事。

・物語内での具体的な行動や成果
 情報収集から暗殺者の始末まで、アルノルトの暗躍を実務面で完璧にサポートしている。ゴードンの反乱時にも暗殺者ギュンターを討ち取った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルトの指示なしには動かないが、陣営にとって欠かせない最大の脅威として敵から警戒されている。

エゴール

大陸に五人しかいないSS級冒険者の一人である。迷子の剣聖という異名を持ち、放浪癖がある老剣士となっている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド所属。SS級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 帝位争いや悪魔討伐においてシルバーと共闘し、巨大なモンスターを圧倒する実力を見せた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 手柄に固執しない性格で、他のSS級冒険者からも一目置かれる存在として描かれている。

ヘンリック

アードラシア帝国の第九皇子である。かつてはザンドラやゴードンの陣営に属していたが、内乱の末に連合王国へ逃亡し、その後アルノルトの弟子となった。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国第九皇子。アルノルトの弟子。

・物語内での具体的な行動や成果
 毒に侵されて死にかけていたところをアルノルトに救われた。その後は黒いマントで顔を隠し、諜報員やシルバーの影武者として暗躍している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 以前は気弱な性格だったが、アルノルトやその祖父のもとで鍛えられ、心身ともに大きく成長した。

ガイ

帝都の道場主であり、冒険者でもある。アルノルトの幼馴染であり、彼の本当の性格を理解している数少ない友人の一人として描かれている。

・所属組織、地位や役職
 道場主。冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトと共に街のゴロツキや悪徳貴族を成敗した過去を持つ。帝都での反乱時には、フィーネの呼びかけに応じて治安維持に協力した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 身分に関係なくアルノルトにフランクに接する。彼が危険な状況に飛び込むことを常に心配している。

店主

ギルド帝都支部の受付嬢である。本名はエマとなっており、シルバーを尊敬して彼への対応を丁寧に行う。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド受付嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトが素顔でギルドを訪れた際、彼が皇子であることにいち早く気づいて周囲の冒険者を制止した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 皇族の顔を正確に覚えているなど、受付嬢として優秀な能力を備えている。

藩国

トラウゴット・レークス・アードラー

アードラシア帝国の第四皇子であり、亡き皇太子ヴィルヘルムの実弟である。藩国の王女と結婚し、藩王として国を治めることとなる。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国第四皇子。藩王。

・物語内での具体的な行動や成果
 マリアンヌ王女と結婚し、藩国での腐敗一掃を目指した。アルノルトと示し合わせて彼を解任する芝居を打ち、自らの王権を盤石なものにした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 普段は芸術を好む気分屋だが、有事の際には皇太子の元側近たちを動かすほどの優れた統率力を発揮する。

マリアンヌ

藩国の王女である。連合王国で人質として暮らしていた期間が長く、自国の腐敗した現状を変えるために帝国への亡命を試みる。

・所属組織、地位や役職
 藩国王女(のちに藩国王妃)。

・物語内での具体的な行動や成果
 義賊のミアたちの協力を得て亡命を図り、アルノルトたちに保護された。その後トラウゴットと結婚し、共に藩国を統治する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 民を救いたいという強い意志を持ち、帝国との同盟関係を築く重要な架け橋となった。

ブラッド・フォン・オルコット

藩国の内務大臣である。アルノルトと対立しているように見せかけていたが、実際には彼と結託して悪徳貴族を追い詰める計画を進めていた。

・所属組織、地位や役職
 藩国内務大臣(のちの宰相予定)。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトの解任劇に協力し、彼が旧重臣派から賄賂を受け取っていた証拠をトラウゴットに提示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルト離任後、トラウゴットを支える新たな宰相としての役割を担うこととなる。

アーサーズ伯爵

藩国のごく平凡な初老の貴族である。前王時代の腐敗に関与し、息子を出世させるなどの不正を行っていた。

・所属組織、地位や役職
 藩国貴族。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトによって屋敷に隠し財産があることを暴かれ、家族とともに逮捕・拘束された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルトが悪役を演じて粛清した数多くの悪徳貴族の一人である。

ミア

藩国の義賊であり、朱月の騎士を名乗る少女である。本名はヴァーミリオンとなっている。SS級冒険者ジャックの娘であり、高い弓の腕前を持つ。

・所属組織、地位や役職
 義賊。

・物語内での具体的な行動や成果
 マリアンヌ王女の亡命を支援し、追っ手と戦って重傷を負うがアルノルトに救出された。帝都での反乱時にもフィーネを護衛して活躍している。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルトと協力関係を結び、帝国側へ貴重な情報をもたらす存在に位置づけられている。

冒険者ギルド

ノーネーム

大陸に五人しかいないSS級冒険者の一人である。黒い仮面をつけた空滅の魔剣士であり、五百年前に歴史から名を消されたアーヴァイン・ノックスの末裔となっている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド所属。SS級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 先代の指示に縛られつつも、帝都に招致されてエルナと御前試合を行った。互角の死闘の末に引き分けとなり、一族の悲願を達成する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 皇帝によって祖先の名誉が回復され、勇者の一族と並ぶ存在として公に認められた。

先代ノーネーム

現在のノーネームの先代にあたるSS級冒険者である。黒いローブで身を隠し、裏で暗躍を続けていた。

・所属組織、地位や役職
 元SS級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 ナイジェルを利用して帝都を混乱させようとしたが、アルノルトや近衛騎士団の連携によって作戦を阻まれ、逃亡した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 勇者を超えるという一族の怨念に囚われており、弟子である今代ノーネームを縛り付けていた。

クロエ

アルノルトの弟子である少女となっている。古代魔法の才能を見出され、S級冒険者にまで昇格した。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド所属。S級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 ノーネームが帝都へ招致された際、万が一の事態に備えた戦力としてアルノルトによって帝都へ呼び寄せられた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 帝国魔導学院を落第した過去を持つが、現在ではSS級に匹敵する戦力としてアルノルトから全幅の信頼を寄せられている。

クライド

冒険者ギルド本部の副ギルド長である。シルバーの正体を知る数少ない人物の一人であり、彼とギルドの板挟みに苦労している。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド副ギルド長。

・物語内での具体的な行動や成果
 魔奥公団の討伐作戦においてSS級冒険者たちを招集し、各国の要人たちへの説明を行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 組織内の派閥争いに悩まされつつも、大陸の危機に対して柔軟な対応を図ろうとしている。

リナレス

大陸最強の武術家と称されるSS級冒険者である。両極の拳仙という異名を持ち、筋骨隆々とした大男だが女性のような振る舞いをする。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド所属。SS級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 緊急招集に応じてギルド本部の会議に参加し、悪魔討伐作戦のメンバーとして活動を開始した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 普段は魔力が集まる特異点の防衛を専門としており、一般的な依頼はほとんど引き受けない。

ジャック

放浪の弓神と呼ばれるSS級冒険者である。ミアの父親であり、娘を陰ながら見守り続けている。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド所属。SS級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 王国での魔奥公団討伐隊の指揮を志願した。過去にはミアの亡命作戦を裏から支援し、藩国の守備隊を壊滅させている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 普段は身なりに無頓着だが、本部の会議には見違えるほど整った姿で現れ周囲を驚かせた。

ジーク

大陸最強の槍使いと称されるS級冒険者である。女好きで軽薄な性格だが、その実力は極めて高い。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド所属。S級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトの護衛や作戦のサポート役として奔走する。ナイジェル捕縛作戦では、屋根の上から転移の腕輪を装着する役割を果たした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 子熊のぬいぐるみに変装させられるなど、アルノルトに良いように使われることが多い。

リンフィア

南部辺境にある流民の村出身の優秀な狩人の少女である。人攫い組織に妹を奪われた過去を持つ。

・所属組織、地位や役職
 狩人。レオナルトの護衛。

・物語内での具体的な行動や成果
 帝都での反乱時など、幾度もレオナルトやフィーネの護衛として活躍した。強力な魔導具である槍を巧みに操り、敵を眠らせる戦法を得意とする。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルトやレオナルトへの深い恩義から彼らに絶対の忠誠を誓っており、陣営の重要な戦力となっている。

ギルドの受付嬢

冒険者ギルド帝都支部の受付嬢である。本名はエマとなっており、シルバーを尊敬して彼への対応を丁寧に行う。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド受付嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトが素顔でギルドを訪れた際、彼が皇子であることにいち早く気づいて周囲の冒険者を制止した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 皇族の顔を正確に覚えているなど、受付嬢として優秀な能力を備えている。

敵対勢力・その他

ナイジェル

ロスアークの弟弟子であり、古代の炎竜を素材に作られた最高位の魔剣炎神を所持する危険な剣士である。

・所属組織、地位や役職
 辻斬り。魔剣使い。

・物語内での具体的な行動や成果
 帝都に侵入し騒動を起こしたが、アルノルトの罠に掛かり帝都近郊へ強制転移させられた。その後、近衛騎士団幹部やエルナと死闘を演じた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 先代ノーネームに利用される形で動いていた。炎神の力による驚異的な再生能力で近衛騎士たちを苦しめた。

出涸らし14巻 レビュー
出涸らし16巻 レビュー

展開まとめ

第一章 出涸らしの帰還

一年後の藩国

帝国と王国の停戦から一年が経ち、大陸は一時の平穏を得ていた。藩国でも内政が進められており、アルノルトは宰相として各地の貴族を取り締まっていた。

アーサーズ伯爵の逮捕

アルノルトはアーサーズ伯爵の屋敷へ兵を連れて押しかけ、前王時代の賄賂や領地拡大を理由に伯爵とその家族を拘束した。伯爵は前王時代にはそれが普通だったと弁明したが、アルノルトは腐敗を正すことが自分の仕事だとして聞き入れなかった。

釈放をめぐる対立

アルノルトは複数の貴族を王都へ送ったが、トラウゴットは彼らを釈放していた。アルノルトは玉座の間でトラウゴットとブラッドに抗議し、生ぬるい対応では藩国貴族がつけあがると主張した。

しかしトラウゴットは藩王として貴族たちを信じる立場にあると答え、ブラッドも藩国貴族を軽んじる発言に反発した。アルノルトは藩国の防衛や再建を帝国に頼っている現状を突きつけ、膿は出せる時に出すべきだと告げて去った。

旧重臣派への接近

玉座の間を出たアルノルトに、前王時代の重臣一族たちが声をかけてきた。彼らは若い力の台頭を嫌い、ブラッドたちと対立するアルノルトへ媚びを売っていた。

アルノルトは彼らの宴に参加し、賄賂として金貨を受け取った。彼は自分が清廉潔白ではなく、国を維持するには強い貴族も必要だと語り、彼らを安心させた。

悪役を引き受ける策

城へ戻ったアルノルトは、セバスに対して自分が巨大な敵となることで、トラウゴットが貴族たちの信望を得る流れを作っていると明かした。藩国の貴族たちは帝国の皇子であるアルノルトを直接排除できないため、最終的にはトラウゴットに頼るしかなくなるのである。

アルノルトは、自分が藩国で問題を起こして帝国へ帰される形が、早く戻るためにも王権を固めるためにも都合がよいと考えていた。

ミアによる偵察

ミアは、トラウゴットを認めていない貴族たちの不正や隠し財産のリストを持ってきた。ミアは多くの貴族が仕方なく不正をしていたと気にしていたが、アルノルトは彼らにトラウゴットへの恩を感じさせ、藩国のために団結させる必要があると説明した。

アルノルトは、本当に領民を考えている貴族や能力のある貴族を選び、将来トラウゴットを支える存在にするつもりだった。

襲撃未遂と辺境貴族の逮捕

アルノルトは辺境貴族のもとへ向かう途中、自分への襲撃を計画していた者たちをセバスに無力化させた。大事にすればブラッドたちへの攻撃材料になるため、彼らは軟禁するだけに留めた。

その後、アルノルトはさらに辺境貴族を逮捕して王都へ戻った。今回はすぐ釈放されず、不満がさらに高まっていった。

フィーネの教室

藩国に同行したフィーネは、令嬢たちに各国の歴史や礼儀作法を教えるようになっていた。藩国の令嬢たちは外部との交流経験が乏しく、教養面に課題があったため、フィーネの教室は今後の藩国にとって重要な役割を持っていた。

マリアンヌもその教室に参加するようになり、フィーネが去った後は彼女が引き継ぐ流れになっていた。

ブラッドとの自作自演

ミアは、ブラッドが最初から計画を知っていたことを知らされて驚いた。アルノルトは藩国に来た当初から、トラウゴットとブラッドに今回の構想を話していたのである。

ブラッドは反宰相派の中心人物として振る舞っていたが、実際にはアルノルト排除の流れを作るための協力者だった。アルノルトは、信頼できる有能な敵がいない以上、味方に敵役を任せるしかなかったと説明した。

アルノルトの連行

そこへブラッドが兵士を連れて現れ、トラウゴットが呼んでいると伝えた。帝国皇帝から手紙が返ってきたことが理由だと告げられ、アルノルトは状況を察した。

ブラッドは部屋の捜索を命じ、アルノルトに証拠隠滅もさせないまま同行を求めた。アルノルトは両手を上げて従い、ブラッドに連行されていった。

トラウゴットによる解任宣言

玉座の間へ連れてこられたアルノルトは、トラウゴットと対面した。トラウゴットは藩王として国に寄り添わなければならないと語り、貴族だけでなく家族まで逮捕したアルノルトのやり方を問題視した。

さらに、貴族たちから受け取った賄賂の証拠を提示し、不正を糾弾するなら自身の不正も問われるべきだと指摘した。アルノルトは国を統治するためには必要だったと弁明したが、トラウゴットは藩国を見下し、貴族の信頼を軽視する姿勢を批判し、藩国宰相の任を解くと宣言した。

皇帝の承認と役目の終わり

アルノルトは皇帝の意思で藩国へ来ている以上、勝手な解任はできないと反論した。しかしトラウゴットは、皇帝から自分に一任するという返書を受け取っていた。

計画通りに事が進んだことを理解したアルノルトは、すべてがトラウゴットのためだったと告げた。トラウゴットもその真意を理解しており、アルノルトを罰するつもりはないと返した。藩王として自国のことは藩国の者が決めると宣言するトラウゴットを見て、アルノルトは王命に従うことを受け入れた。

逮捕された貴族たちとの別れ

玉座の間を後にしたアルノルトは、拘束されている貴族たちとすれ違った。貴族たちは助けを求めたが、すでに宰相ではなくなったアルノルトには何もできなかった。

自分たちは罰せられるのに、アルノルトが帝国へ帰るだけで済むことに貴族たちは不満を爆発させた。しかしアルノルトはそれを受け流し、その場を去った。

ブラッドとの最後の会話

数日後、帝国への帰還準備が整った。藩国での失敗は報告されたものの罪には問われず、フィーネにも影響は及ばなかった。

出発前、ブラッドはアルノルトとすれ違いざまに、生涯この恩を忘れないと伝えた。アルノルトは称賛ではなく結果を求め、トラウゴットを支えてほしいと告げた。ブラッドはその意思を受け継ぎ、藩王を支える決意を示した。

ミアとの帰路

馬車にはミアが先に乗り込んでいた。ミアは弟に会いに行くため同行すると説明し、フィーネはそれを歓迎した。

出発した馬車の中からアルノルトは城を見上げた。そこには寄り添うトラウゴットとマリアンヌの姿があった。二人ならば困難を乗り越えられると確信し、アルノルトは帝国への帰還を決意した。

エリクとレーアの対話

一方、帝国北部のアルテンブルク公爵家では、エリクが療養中の妻レーアを見舞っていた。原因不明の病に苦しむレーアは、家族が離れ離れになっていく現状を憂い、帝位争いを続ける理由を尋ねた。

エリクは良き帝国を築くために皇帝になると語り、自ら決めた道を引き返すつもりはないと答えた。レーアは無茶をしないよう願い、眠りについた。その姿を見届けたエリクは、レオナルトやアルノルトに退く気はないと改めて決意した。

ツヴァイク侯爵領への立ち寄り

帰還途中のアルノルトは、予定ルートの橋が落とされていることを知り、警戒してツヴァイク侯爵領へ立ち寄った。

シャルロッテとの会話の中で、アルノルトは帝位争いに対するエリクの本気を確認できたことに安堵した一方、能力と勢力を兼ね備えたエリクが動き始めたことへの警戒も口にした。また、王国が軍備を増強している現状から、帝国との再戦を視野に入れていると分析した。

フィンとの合流

翌日、アルノルトは近衛第八騎士隊隊長となったフィンと合流した。フィンは単独で近衛騎士隊長に任命された特異な存在であり、アルノルトの護衛として迎えに来ていた。

アルノルトはこれで妨害の心配はないと考え、帝都への移動を再開した。

帝都への帰還

帝都へ到着したアルノルトを出迎える者はいなかった。しかし帝都は一年の間に復興が進み、活気を取り戻していた。

フィーネは藩国と帝国の復興速度の違いを語り、藩国には藩国の歩み方があると話した。アルノルトもそれに同意しながら城へ向かった。

近衛剣礼による歓迎

城へ着くと、アルノルトはすぐ皇帝に呼び出された。玉座の間へ向かう途中、一本道には十三人の近衛騎士隊長たちが並んでいた。

彼らは一斉に剣を抜いて膝をつき、英雄にのみ許される最上位の儀式である近衛剣礼を行った。驚くアルノルトに対し、アリーダは藩王トラウゴットから親書が届き、アルノルトが藩国で成し遂げた功績に対して最上位の出迎えを求められたと説明した。

皇帝との再会

玉座の間へ入ると、皇帝とフランツ、そして二人の皇子が待っていた。

皇帝はアルノルトへ任務ご苦労、よく帰ったと声をかけた。アルノルトは藩国での役目を終え、正式に帝国へ帰還したのであった。

皇帝との戦略会議

帝都へ戻ったアルノルトは、皇帝、レオナルト、エリク、フランツと共に王国の軍備増強について話し合った。ペルラン王国はレチュサ同盟の支援を受けて急速な軍拡を進めており、帝国内では王国を討つべきだという声が高まっていた。

アルノルトは、いずれ王国との決着は避けられないとしつつも、まずは王国を海上から支援してきたアルバトロ公国との関係を整理すべきだと提案した。その意見はエリクの考えとも一致していた。

リーゼロッテからの提案

そこへラインフェルト公爵ユルゲンが現れ、リーゼロッテからの親書を届けた。リーゼロッテは王国攻略のため、自ら出陣したいと提案し、さらに東部国境軍の主力を西部へ移す案を示した。

しかしエリクは、皇国への抑止力となっている東部国境軍を動かすべきではないと反対した。するとユルゲンは代案として、皇太子時代に軍師として活躍したエリクを前線へ復帰させ、レオナルトと共に王国攻略へ当たらせる案を提示した。

エリクの拒絶とレオナルトの抜擢

エリクは、自分が補佐するのはヴィルヘルムだけであり、他の者の補佐はしないと明言した。そのため、レオナルトとの共同出陣案は消滅した。

結果として、対王国戦の主軸はレオナルトが担うことになった。エリクは異論を唱えなかったが、万が一レオナルトが失敗した場合には自ら前線へ出ると申し出た。皇帝はそれを認め、レオナルト中心の方針が固められた。

アルバトロ公国への派遣決定

対王国戦の方針が決まったことで、アルバトロ公国との交渉役にはアルノルトが選ばれた。

ただし皇帝は、王国側に帝国の動きを察知されることを避けるため、しばらく帝都で休養してから出発するよう命じた。こうして対王国戦へ向けた準備が進み始めた。

母との再会とクリスタの成長

後宮を訪れたアルノルトは、母と再会した。母の体調が大きく悪化していないことに安堵する中、クリスタと再会した。

クリスタは少し成長した姿を見せ、リタも同席していた。リタは近衛騎士見習いとなり、現在はクリスタの専属護衛を務めていた。アルノルトは以前と変わらぬ二人の様子を見て安心し、その場を後にした。

ガイから聞く帝国の現状

続いてアルノルトはガイの道場を訪ねた。ガイは帝位争いの現状について、帝都周辺の有力貴族や大臣たちはエリクを支持し、辺境の有力貴族たちはレオナルトを支持していると説明した。

さらに冒険者ギルドが王国を警戒し、高ランク冒険者を各地へ配置し始めていることや、帝国にも新たなS級冒険者が派遣される予定であることを語った。アルノルトはそれらの情報を聞きながら、帝国の情勢を把握していった。

皇太子暗殺の再調査

その夜、アルノルトは皇帝、フランツ、勇爵と共に皇太子暗殺事件について協議した。

藩国の貴族たちを調べたものの有力な証拠は発見できず、エリクにも不審な動きは見られなかった。しかし皇帝と勇爵は、疑いが完全に晴れたわけではないと考えていた。

勇爵は、調査の目的が犯人探しだけではなく、再び後継者が暗殺された場合に備えて手口を把握することにもあったと説明した。

悪魔への全面対決方針

協議の結果、皇太子暗殺に悪魔が関与している可能性が改めて意識された。悪魔の権能であれば証拠を残さず暗殺を行うことも可能であり、これまで証拠が出なかった理由としても説明がついた。

囮としてアルノルトへ注目を集める作戦は意味が薄いと判断され、皇帝は方針転換を決断した。冒険者ギルドと全面的に協力し、大陸に潜む悪魔を徹底的に駆逐する方針を打ち出した。

さらに皇帝は、必要であれば自ら戦場に立ち、封印されてきた皇帝専用の殲滅兵器である皇剣の使用も辞さないと宣言した。その言葉には、悪魔を絶対に許さないという強い決意が込められていた。

惰眠を決意するアルノルト

帝剣城では皇帝が早朝から政務を行うため、城全体が早く動き始めていた。しかし藩国で宰相として規則正しい生活を続けてきたアルノルトは、帰還後くらいは思う存分眠ろうと決意していた。

起床を促しに来たセバスにも、自分が起きた時に起こせばよいと告げ、再び眠りについた。

エルナによる強制起床

深い眠りの中にいたアルノルトだったが、カーテンを開けられたことで目を覚ました。そこにいたのはセバスではなくエルナだった。

すでに昼になっていたにもかかわらず、アルノルトはまだ寝るつもりでいた。しかしエルナは容赦なく布団を剥ぎ取り、水魔法で顔を濡らして無理やり目を覚まさせた。

さらに二度寝したら毎日起こしに来ると脅しを残し、着替えを促して部屋を出ていった。

近衛騎士団再編の報告

着替えを終えたアルノルトのもとへ、エルナとフィーネが訪れた。フィーネが用意した軽食を食べながら、アルノルトはエルナから近衛騎士団再編の報告を受けた。

第八近衛騎士隊はフィンが一人で率い、新たに第十近衛騎士隊隊長としてブルクハルトが就任したという。

ブルクハルトは選抜試験を圧倒的な実力で突破した人物であり、本名はブルクハルト・フォン・アルテンブルク、アルテンブルク公爵家の庶子だった。

エルナは、自分なら勝てるが他の実力者相手ではどうなるかわからないほどの強者だと評価した。

新たな来訪者の予告

アルテンブルク家が新たな実力者を近衛騎士団へ送り込んだことに、アルノルトは警戒を覚えた。

するとエルナは、本題はそれではなく仲介役として来たのだと明かした。そしてアルノルトと個人的に会いたい人物がおり、その仲介を頼まれていると説明した。

エルナほどの立場の人物に仲介を依頼できる相手であることから、アルノルトは厄介事の予感を抱きつつも、エルナが信用できない人物を紹介するはずはないと判断し、静かに了承したのであった。

第二章 帝都剣風

近衛騎士団幹部との対面

アルノルトはエルナに指定された貸し切りの宿を訪れた。周囲には勇爵家の騎士たちが配置されていたが、警備というより人目を避けるための監視だった。

部屋へ入ったアルノルトは、エルナに加え、近衛騎士団長アリーダと副団長セオドアが待っていたことに驚いた。三人は白いマントを外しており、近衛騎士隊長としてではなく個人として会っていることを示していた。

ロスアークの弟弟子の存在

セオドアは、自身の師であるロスアークにはもう一人弟子がいたと明かした。その弟弟子ナイジェルは十年以上前にロスアークを殺害し、秘蔵されていた奥義書と魔剣を奪って失踪していた。

最近になって帝都で名のある剣士が殺害され、その傷跡からナイジェルの仕業と判断された。セオドアは、これは自分への挑戦状だと考えていた。

さらにナイジェルは、大陸最強クラスの魔剣を所有しており、大規模な戦闘になれば帝都へ甚大な被害をもたらしかねない状況だった。

アルノルトへの協力要請

皇帝や宰相は表立って動けず、アリーダやセオドアも帝位争いの当事者であるエリクやレオナルトへ借りを作ることを避けたかった。そのため、帝位争いの中心にはいないアルノルトへ協力を求めたのである。

三人は自分たちを駒として使い、ナイジェルを有利な状況へ追い込んで捕縛してほしいと依頼した。失敗した場合の責任や不利益は大きいにもかかわらず、見返りらしい見返りも提示できなかった。

それでもアルノルトは、長年皇帝を守ってきた近衛騎士たちへの恩義を理由に協力を引き受けた。

ロスアーク流剣術の真実

その後、セオドアはロスアーク流剣術について説明した。

現在知られているロスアーク流は防御主体の剣術だったが、若き日のロスアークは攻撃的な剣術を極めていた。ロスアークはかつて剣聖エゴールとの決闘で圧倒され、その経験を経て防御剣術へ転向したのである。

ナイジェルが奪った奥義書には攻撃主体の「炎の型」が記されていた。一方、セオドアが継承したのは防御主体の「風の型」であった。

セオドアは、自身とナイジェルが戦えば長期戦の膠着状態になると説明し、そのためアリーダやエルナの協力が必要だと語った。

セオドアとエルナの稽古

宿での会談後、一行は城へ戻った。怪しまれないよう、アリーダは警護任務に戻り、セオドアとエルナは稽古を行った。

アルノルトはその様子を見学し、セオドアの防御能力の高さを改めて認識した。エルナの猛攻を、セオドアは風の魔法と防御剣術を組み合わせた「風剣領域」によって完全に受け切ったのである。

戦いを見たアルノルトは、ナイジェルも同様の技術を身につけている可能性を考慮しながら作戦を練り始めた。

慎重な包囲網の構築

アルノルトが指揮を執り始めてから一週間が経過したが、帝都に新たな事件は起きていなかった。

焦るエルナに対し、アルノルトはナイジェルがわざと死体を残したのはセオドアを引きずり出すためだと説明した。その意図を読んだからこそ、あえて動かず準備に時間を費やしていたのである。

さらにナイジェルが所有する魔剣「炎神」は、古代の炎竜を素材に作られた最高位の魔剣であり、その気になれば帝都を火の海にできる危険な代物だった。

アルノルトは、決着を望んで姿を現した以上、ナイジェルは戦わずに逃げることはないと考え、確実に仕留めるため慎重な対応を続けた。

ジャックからもたらされた情報

ある夜、SS級冒険者ジャックが密かにアルノルトのもとを訪れた。

ジャックはロスアークと自身の師が知り合いだったことから、ナイジェルについてある程度知っていた。ナイジェルは戦災孤児であり、帝国に恨みを抱いていても不思議ではないという情報を伝えた。

また、皇族が狙われる可能性についても警告したが、アルノルトはその可能性を念頭に置きながらも、王国の監視を続けるようジャックへ依頼した。

ジャックは冒険者ギルドも同様の方針で動いていると答え、その場を去った。アルノルトは静まり返った部屋から帝都を見下ろしながら、来るべき決戦に備え続けたのであった。

三人の助っ人の到着

翌日、アルノルトのもとへミア、リンフィア、ジークの三人が集められた。ミアは弟との再会を中断させられ、リンフィアとジークも西部国境での任務から呼び戻されていた。

アルノルトは三人に、相手は近衛騎士団副団長セオドアと同格の実力を持つ魔剣使いであると説明した。そして三人にはナイジェルとの直接戦闘ではなく、エルナの支援を担当させる方針を伝えた。

転移魔導具を利用した捕縛計画

アルノルトは宝物庫から持ち出した腕輪型の魔導具を披露した。それは片方を装着した者のもとへ、もう片方を装着した者を転移させる使い捨ての魔導具だった。

帝都で戦闘を続ければ被害が拡大するため、ナイジェルを帝都近郊へ転移させることが目的だった。問題は戦闘中に腕輪を装着させることであり、そのための役割が三人に与えられた。

エルナを囮にした誘き出し

作戦当日、アルノルトは勇爵家の屋敷前でエルナを待っていた。エルナは警戒心を抱かせないため、近衛騎士の制服ではなく大胆な赤いドレス姿で現れた。

アルノルトはエルナを伴い、帝都中層の人気店へ向かった。勇爵家の令嬢として着飾ったエルナの姿は街の人々の注目を集め、近衛騎士としての姿しか知らない者たちを驚かせた。

実際にはその行動自体が囮であり、ナイジェルを誘き出すための仕掛けだった。

仕込みを終えた食事会

店には従業員に扮したリンフィアが潜んでいた。店主はかつてアルノルトに不味い料理を出した料理人だったが、更生して再起していた。

アルノルトとエルナは周囲の監視を確認しながら食事を楽しんだ。エルナは当初こそ注目を浴びる状況に戸惑っていたが、次第に落ち着きを取り戻していった。

ナイジェルの襲撃

食事を終えて立ち上がった瞬間、ナイジェルがアルノルトを狙って襲撃した。

エルナは隠していた剣で攻撃を防ぎ、ナイジェルの正体を確認した。ナイジェルは皇族を贄と呼び、アルノルトを標的としていた。

そこへミアとセバスが加わり、さらに店内から飛来したエルナの愛剣によって戦闘態勢が整った。

三対一の戦闘開始

ナイジェルは炎神の力による炎の結界を展開し、ミアとセバスの攻撃を無力化した。さらに結界を攻撃にも利用し、ミアを後退させた。

エルナはナイジェルと正面から打ち合ったが、アルノルトを守る必要があるため機動力を活かせず、不利な状況で戦うことになった。

それでもエルナは粘り強く応戦し、ナイジェルとの鍔迫り合いへ持ち込んだ。

転移作戦の成功

戦闘が続く中、従業員に扮していたリンフィアが槍の特殊効果による睡魔を与え、ナイジェルの意識を乱した。

その隙を突き、屋根の上で待機していたジークが飛び込み、転移用の腕輪をナイジェルへ装着した。

ナイジェルは抵抗しようとしたが間に合わず、転移魔導具が発動したことで帝都近郊の平原へ送られた。

決戦前のセオドアとアリーダ

転移先ではセオドアとアリーダが待機していた。

セオドアは兄弟子として自らの手でナイジェルと決着をつけたいと願ったが、アリーダは帝都の安全を最優先すべきだとして却下した。

アリーダは、この作戦は多くの者の協力によって成立しており、個人的感情を優先してはならないと説いた。セオドアもその言葉を受け入れ、自らの考えを改めた。

帝都最強の二人との対峙

平原へ転移したナイジェルの前には、近衛騎士団長アリーダと副団長セオドアが立っていた。

二人はそれぞれ名乗りを上げ、ナイジェルは剣士として二人の危険性を瞬時に察した。それでも退くことなく剣を構えた。

アリーダは感情ではなく命令によってナイジェルを討つと宣言し、アルノルトの命令に基づく討伐を開始したのであった。

アリーダの神速と連携攻撃

アリーダは緩急を極めた剣技を用い、ゆっくりと接近したかと思えば瞬時にナイジェルの背後へ回り込んだ。首を狙う一撃を放ったが、ナイジェルは防御剣術の経験を活かしてそれを受け止めた。

しかし、その対応によって正面に隙が生まれ、そこへセオドアが攻撃を仕掛けた。ナイジェルは炎を爆発させて二人を退かせたが、アリーダとセオドアは広範囲攻撃を何度も使わせればよいと判断し、数的優位を活かして攻め続ける方針を固めた。

青い炎と炎の型の猛攻

炎が収まると、ナイジェルの周囲を包む炎は赤から青へと変化していた。ナイジェルは青い炎を纏った斬撃を放ち、アリーダを後退させたうえでセオドアへ猛攻を加えた。

ナイジェルは炎の型による激しい連続攻撃で圧倒しようとしたが、セオドアは防御剣術を駆使して耐え続けた。攻撃主体の剣術こそ最強だと語るナイジェルに対し、セオドアは冷静に受け流し続けた。

兄弟子と弟弟子の対話

鍔迫り合いの中で、セオドアはなぜロスアークを殺したのか問いかけた。ナイジェルは理由などなく憎かったから殺したと答えた。

その言葉を聞いたセオドアは、長年抱いていた期待を捨て、弟のように思っていたナイジェルを近衛騎士団副団長として討つ決意を固めた。二人は再び激しく剣を交えた。

アリーダによる不意打ち

一方でアリーダは、アルノルトの命令に従い気配を完全に消していた。ナイジェルが剣技による優劣に執着している間に仕留めるためであった。

セオドアとナイジェルが膠着状態に陥る中、攻撃に集中したナイジェルの背後からアリーダが心臓を貫いた。さらに首を突き、炎神を持つ右腕も切断して確実な討伐を図った。

炎神による蘇生

致命傷を受けたナイジェルだったが、その身体は青い蒼炎に包まれた。アリーダとセオドアが炎神を破壊しようとしたものの間に合わず、ナイジェルは傷も右腕も再生した状態で立ち上がった。

さらに纏う炎は白く変化し、再生能力どころか蘇生能力とも呼べる異常な力を見せた。二人は再び討伐を試みるが、ナイジェルはさらに強力な力を解放し始めた。

炎神の真価と総力戦

ナイジェルは炎神へ膨大な炎を集め、巨大な炎の奔流を放った。セオドアは風の刃による防御壁で受け止め、アリーダも後方から支援した。

二人は攻勢へ転じ、アリーダは何度もナイジェルの心臓を貫いたが、そのたびに再生された。再生速度は徐々に落ちていたものの、二人の消耗も激しくなっていった。

獄炎竜と虹滅剣の激突

ナイジェルは最後の切り札として巨大な炎の竜を生み出し、獄炎竜を放った。

セオドアは全魔力を注いで巨大な風の剣を形成し、アリーダは七種類の魔法を複合した奥義・虹滅剣を発動した。二つの力は炎の竜と激突し、凄まじい爆発を引き起こした。

爆発後、三者とも深く消耗していたが、戦闘はなお継続した。

近衛騎士の信念

疲弊したアリーダとセオドアに対し、ナイジェルは何がそこまで戦わせるのかと問いかけた。

アリーダは、近衛騎士は守るべき存在がいるからこそ強くなれると語った。帝国や皇族、先人たちの意志を背負う近衛騎士の力を説き、その言葉と共に二人はナイジェルを押し込み、深い傷を与えた。

再生能力も限界に近づき、ナイジェルは徐々に追い詰められていった。

黒衣の人物の介入

決着が近づいた時、黒いローブの人物が戦場へ現れた。その人物はナイジェルを援護し、アリーダとセオドアの前に立ちはだかった。

アリーダは以前ラファエル捕縛を妨害した人物ではないかと問いかけたが、相手は肯定も否定もしなかった。戦況は二対二となり、再び膠着する危険が生まれた。

アルノルトの介入と聖剣解放

爆発を確認したアルノルトは、待機していた馬車から戦場へ急行した。エルナを伴い、皇帝から託された権限を用いて聖剣の使用許可を出した。

戦場へ到着したアルノルトは正式に聖剣解放を命じ、エルナは聖剣を召喚した。ローブの人物はアルノルトの準備の良さを認めながらも退く意思を示さなかった。

聖剣と炎神の激突

エルナはローブの人物へ向かったが、ナイジェルが立ちはだかった。二人は空中へ飛び上がり、聖剣と炎神による激しい戦いを始めた。

一方でローブの人物は疲弊したアリーダとセオドアを相手に互角以上の剣技を見せた。エルナがかつてラファエルを逃した原因だけあり、その実力は尋常ではなかった。

エルナ優勢への変化

当初は互角だった空中戦だったが、次第にエルナが押し始めた。勇者の剣技は聖剣を前提として磨かれたものであり、人間の剣術であるロスアーク流を上回っていた。

ナイジェルは押し負け始め、防御剣術まで使うようになった。かつて見下していた防御剣術を用いなければならない状況となり、徐々に劣勢へ追い込まれていった。

ローブの人物への対処命令

戦況を見極めたアルノルトは、ナイジェルはエルナに任せられると判断した。

そして万が一を防ぐため、セバスとジークにローブの人物の動きを止めるよう命じたのであった。

エルナによる圧倒

エルナとナイジェルの戦いは、エルナが攻撃し続け、ナイジェルが防御に徹する展開となった。ロスアークがかつて規格外の相手に対して防御剣術へ辿り着いたように、ナイジェルも防御で活路を見出そうとしたが、消耗した状態では限界があった。

エルナの強烈な一撃によってナイジェルは再び吹き飛ばされ、ついに立ち上がれなくなった。

黒衣の人物の包囲

ナイジェルを援護するため、黒いローブの人物が動いた。しかし、その周囲にはすでにジークとセバスが回り込んでいた。

ジークの奇襲を辛うじて避けたものの、セバスの投げた特殊な短剣を防ぎきれず、爆発によって体勢を崩された。その隙にアリーダ、セオドアを含めた四人が包囲し、追い詰められた状況となった。

炎神を用いた取引

追い詰められたように見えたローブの人物だったが、突然炎神を手にした。魔導具を利用してナイジェルから炎神を回収したのである。

ローブの人物は、疲弊したアリーダかセオドアのどちらかに致命傷を与えることは可能だと告げ、その損失によってアルノルトの立場にも大きな打撃が及ぶと示唆した。

アルノルトの決断

エルナは逃亡を阻止しようとしたが、アルノルトは取引に応じる判断を下した。

近衛騎士団長と副団長を無事に皇帝のもとへ帰すことを優先し、危険な賭けを避けたのである。近衛騎士団の戦力が失われれば、王国との緊張状態の中で帝国全体に深刻な影響が出ると考えたためであった。

ローブの人物の逃亡

アルノルトがアリーダたちを下がらせた直後、ローブの人物は転移の魔導具を使用して姿を消した。

エルナはラファエルを逃がした人物まで取り逃がしたことに強い不満を示したが、アルノルトは今回の目的は帝都の脅威を排除することであり、さらなる危険を冒すべきではないと説明した。

戦後処理と追跡準備

アルノルトはナイジェルの護送と周辺の警戒を命じ、自身は先に帝都へ戻ることにした。

馬車の中でセバスと話しながら、ローブの人物がアルノルトの立場や帝国内部の事情を把握していたことを確認し、相手が十分な情報網を持っていると推測した。また、ナイジェルは最初から利用される駒に過ぎなかったと考えた。

正体を暴くための追跡

セバスが使用した短剣には、爆発だけでなく特殊な魔力反応を残す仕掛けが施されていた。その痕跡を辿れば、転移先の追跡が可能だった。

アルノルトは後の処理をセバスに任せると、シルバーの仮面を身につけた。そして二度も相手を逃がすつもりはないと決意し、ローブの人物の正体を暴くため、自ら転移して追跡を開始したのであった。

第三章 勇者vsノーネーム

追跡先での遭遇

アルノルトが転移先を追跡した結果、たどり着いたのは皇国西部の森にある小屋だった。そこには黒いローブの人物と、黒い魔剣を持つノーネームがいた。

アルノルトはローブの人物とノーネームが共に行動している事実から、今回の帝都騒乱の黒幕がそこにいると確信した。さらに、ローブの人物が炎神を冥神の強化に利用しようとしていることを見抜き、その計画を非難した。

先代ノーネームの正体

アルノルトはローブの人物を先代ノーネームだと看破した。過去のノーネームと現在のノーネームの特徴が一致しないことや、異常な若さへの違和感から、その結論に至ったのである。

先代ノーネームは正体を隠すことをやめ、銀髪と赤い瞳を持つ老婆の姿を現した。そしてアルノルトを危険視し、この場で口封じするべきだと告げた。

戦闘開始とリナレスの介入

アルノルトと先代ノーネームは互いに戦う意思を示し、先代ノーネームは炎神を構えた。アルノルトも光弾を展開し、大魔法を用いた決着を視野に入れていた。

しかし戦闘が本格化する直前、SS級冒険者リナレスが現れた。特異点からほとんど動かない彼女の突然の介入は異例だった。

リナレスとノーネームの関係

リナレスは今代ノーネームの師匠であり、この森が修行の場であったことを明かした。一方で、民の安全より武器の強化を優先するような教えはしていないと断言し、先代ノーネームたちの行動を擁護しなかった。

その上で、SS級冒険者同士の戦闘は皇国内に甚大な被害をもたらすため、仲裁に入ったのである。

炎神の回収と停戦

リナレスは先代ノーネームに炎神の引き渡しを求めた。先代ノーネームはリナレスへの義理を理由に要求を受け入れ、炎神を手放した。

その後、先代ノーネームは今代ノーネームを連れて立ち去った。アルノルトもリナレスが戦う意思を見せていたため、追撃を断念した。

ギルド本部での説明

アルノルトはリナレスと共に冒険者ギルド本部へ向かった。そこでギルド長クライドも交え、ノーネーム一族の真相が語られた。

ノーネームの祖先は五百年前、初代アムスベルグ勇爵と並ぶ剣士だった。しかし勇者へ挑んだことで人類の敵とされ、その名を歴史から消された。その雪辱を果たすため、一族は代々聖剣を超えることを悲願としていた。

冥神計画の起源

冥神による聖剣超越計画を考案したのは、勇者パーティーの魔導師であり冒険者ギルド中興の祖でもあるアナクレト・リナレスだった。

アナクレトは将来の悪魔再侵攻に備え、聖剣以外の切り札を必要と考えた。そして迫害されていたノーネームの祖先へ冥神を与え、聖剣を超える魔剣を生み出す使命を課したのである。

ノーネーム一族の悲劇

長い年月の中で、ノーネーム一族は冥神強化のため血統強化にも手を染めた。今代ノーネームがリナレスのもとへ送られたのも、その一環だった。

さらに六年前、十二歳で聖剣を召喚したエルナの存在が先代ノーネームを焦らせた。今代ノーネームの両親は自らを冥神の餌とし、それ以降、一族は悲願達成のため手段を選ばなくなっていた。

ギルドの方針とアルノルトの反発

リナレスとクライドは、ノーネーム一族が危険な存在であっても、人類側の重要戦力である以上、現状では積極的な排除はできないと説明した。

またリナレスは四宝聖具の一つである聖輪・陽炎を差し出し、今回の件を黙認してほしいと求めた。しかしアルノルトは、問題の先送りでは何も解決しないとして拒否した。

今代ノーネームを帝都へ招く提案

アルノルトは、今代ノーネームを帝都へ招くという案を提示した。先代ノーネームから引き離し、人々や社会に触れさせることで、自立を促そうと考えたのである。

さらにノーネームの標的であるエルナと向き合わせることで、五百年続く怨恨や妄執を清算できる可能性もあると語った。

正体の公開と決意

リナレスから帝都の民を危険に晒す無責任な策だと批判されると、アルノルトは仮面を外し、自らが帝国第七皇子アルノルト・レークス・アードラーであることを明かした。

そして皇子として帝都を守る覚悟を示し、自身の命を懸けることを宣言した上で、今代ノーネームを帝都へ招く計画への協力を求めた。

最後にアルノルトは、帝都へ配置予定のS級冒険者を変更し、自らの弟子を呼び寄せるよう提案したのだった。

皇帝への説明

帝都へ戻ったアルノルトは玉座の間を訪れ、皇帝とフランツにノーネームを帝都へ迎え入れる計画を説明した。

アルノルトは悪魔への備えとして魔奥公団の残党調査を行うため帝都を離れると告げ、その間だけノーネームを帝都に滞在させたいと申し出た。しかし皇帝とフランツは、SS級冒険者の移動だけでも大きな混乱を招くとして難色を示した。

条件付きでの了承

アルノルトは自らが定期的に転移魔法で帝都へ戻り、監視と対応を行うことを約束した。

さらに、自身の弟子であるS級冒険者クロエを帝都へ配置すると明かした。クロエは帝国魔導学院を落第したものの、古代魔法の才能を見出されてアルノルトの弟子となり、現在はS級冒険者へ昇格していた。

皇帝とフランツは驚きながらも、シルバーとクロエが帝都に関与するならば受け入れられると判断し、ノーネームの受け入れを認めた。

クロエとの再会への期待

玉座の間を後にしたアルノルトは、三年前に別れたクロエとの再会を思い返した。

病気の母を大切にする姿勢や古代魔法の才能を見込んで弟子にしたクロエに対し、アルノルトはS級冒険者になるという宿題を与えていた。クロエはその課題を達成し、帝都へ戻ってくることになったのである。

聖輪と準備の開始

その後、アルノルトは帝剣城の隠し部屋で爺さんとヘンリックに会い、四宝聖具の一つである聖輪について話し合った。

聖輪は魔力回復能力を持ち、魔力消費の激しいアルノルトにとって極めて有用な道具だった。爺さんはアルノルトがノーネームの件に深入りする理由を問い、ヘンリックも感情が先行していると指摘したが、アルノルトは助けられる者がいるなら助けたいという考えを変えなかった。

先代ノーネーム対策

アルノルトは、今代ノーネームが帝都へ来る際に先代ノーネームが裏から干渉する可能性を警戒していた。

そのため、ヘンリックと爺さんには連絡員の監視と排除を任せ、自身は今代ノーネームが変われる可能性に賭けると語った。爺さんは五百年という年月が人を縛る重さを指摘したが、アルノルトは人は変われると信じ続けた。

ギルド本部での合流

数日後、ノーネームとクロエがギルド本部へ到着したとの連絡を受け、アルノルトはギルド本部へ転移した。

クライドはSS級冒険者の配置換えという前例のない事態に疲弊していたが、アルノルトはノーネームが変わる可能性に賭ける考えを改めて示した。

その後、ノーネームが現れ、先代ノーネームによる一件について謝罪した。アルノルトは責任追及を避けつつ、帝都滞在中は聖剣や勇者との衝突を起こさないよう念を押した。

クロエとの再会

続いてクロエがギルド長室へ入ってきた。

クロエは三年ぶりの再会を喜び、アルノルトに抱きついた。アルノルトも成長した弟子の姿を見て喜び、S級昇格を祝福した。

その後、アルノルトはクロエとノーネームを互いに紹介したが、クロエはSS級冒険者であるノーネームにも臆することなく接し、冥神や仮面に興味を示したため、ノーネームは戸惑いを隠せなかった。

帝都支部での騒動

三人は冒険者ギルド帝都支部へ移動した。

支部ではSS級冒険者二人とS級冒険者一人の来訪に備え、冒険者たちがテーブルで即席のバリケードを築いていた。クロエはその様子に物怖じせず近づき、自分がシルバーの弟子であることを明かした。

冒険者たちはシルバーに弟子がいたことに驚き、さらに礼儀正しく快活なクロエの姿を見て、シルバーとのあまりの違いに困惑した。

帝都案内の開始

アルノルトは帝都支部でノーネームとクロエの登録を済ませ、二人へ宿を用意していることを伝えた。

そのまま立ち去ろうとしたが、クロエは帝都の地理に不慣れな自分たちのために案内をしてほしいと頼み込んだ。ノーネームは断ろうとしたものの、クロエの勢いに押されてしまう。

結局アルノルトは二人を連れて帝都の主要施設を案内することになり、三人は共に帝都の街へ向かったのだった。

クロエの母の近況

帝都を案内する中で、クロエは母親がすでに回復し、ミヅホ仙国にいる名医トウイのもとで過ごしていると語った。

アルノルトはトウイとの過去の確執を思い出しつつも、機会があれば挨拶へ行かなければならないと考えた。

帝都散策と誤認の結界

クロエは帝都の建物や景色に興味を示し、観光気分で質問を繰り返した。一方のノーネームは周囲を冷静に観察し、アルノルトたちが誤認の結界によって一般人として認識されていることを見抜いた。

アルノルトはその推察を認め、街中で目立たないための措置であると説明した。

クロエとノーネームの距離

クロエは気軽にノーネームへ話しかけ、腕を組みながら友達だと宣言した。

ノーネームは戸惑いながらも拒絶できず、クロエに連れ回される形となった。アルノルトは、打算のないクロエの接し方がノーネームに良い影響を与えていると感じていた。

勇爵家前での対面

案内の途中、アルノルトはアムスベルグ勇爵家の屋敷へ二人を連れて行った。

そこで偶然エルナと遭遇し、ノーネームはその場で一騎打ちを申し込んだ。しかしエルナは、冒険者ギルドとの問題や互いの立場を理由に勝負を断った。

ノーネームはそれ以上食い下がらず、その場を離れた。アルノルトはその態度から、今代ノーネームにとって勇爵家との対決が個人的な執着ではなく、一族の悲願として背負わされたものであることを改めて感じた。

宿泊先を巡るやり取り

その後、アルノルトは二人の宿泊先について説明した。

ノーネームは王族並みの待遇を受けてきたため不満を示したが、帝都支部近くの一般的な宿を利用するよう命じられた。クロエは特に気にしておらず、その反応にノーネームは抗議を諦めた。

フィーネとの相談

夜になり、アルノルトは城でフィーネと話していた。

アルノルトはノーネームの問題を帝都へ持ち込んだことに葛藤を抱いていたが、その根底にはエルナへ向けられるかもしれない敵意を放置できないという私情があった。

フィーネは、五百年続いた悲願を終わらせるには勇爵家との決着が必要であり、すべてを一人で解決することはできないと諭した。

エルナへの提案

翌日、アルノルトはエルナを呼び出し、皇族に伝わる古い記録について話した。

そこには五百年前、初代勇爵とノーネームの祖先が聖剣を賭け、普通の剣だけで一騎打ちを行ったことが記されていた。敗者は歴史から名を消されたが、初代勇爵はその人物を戦友と評していた。

アルノルトはこの因縁を終わらせる切っ掛けとして、エルナとノーネームによる一騎打ちを提案した。エルナは迷うことなく承諾し、アムスベルグの名にかけて勝利すると宣言した。

皇帝への計画説明

アルノルトは皇帝へ計画を報告し、ノーネーム一族の背景や先代ノーネームの存在も含めて事情を説明した。

皇帝はその経緯を理解したうえで、一騎打ちを認めた。両者とも人類に必要な戦力であるため命を懸けた戦いにはさせず、多くの制約を設けた御前試合として実施する方針を示した。

さらに皇帝は、大陸屈指の剣士同士の戦いに相応しい褒美も用意すると決めた。

ノーネームへの説得

アルノルトはシルバーとしてノーネームの宿を訪れ、一騎打ちの提案を伝えた。

当初ノーネームは観客の前での勝負を拒否したが、アルノルトは初代勇爵と祖先の戦いが記された本を渡した。そして聖剣や魔剣に頼らず戦うことこそ、本当の意味で勇者を超える道ではないかと問いかけた。

ノーネームは強く動揺し、その本を読むことになった。

連絡員の排除

宿を出たアルノルトは、路地裏でヘンリックと合流した。

ヘンリックは先代ノーネームの連絡員と思われる三人を排除しており、今後も接触を試みる者たちを阻止すると告げた。

アルノルトはその報告を受け、外部からの干渉を遮断し続ければ、今代ノーネームは自らの意思で判断を下せるはずだと考えながら城へ戻っていった。

クロエによる討伐任務

帝都近郊でノーネームとクロエは冒険者ギルドの依頼をこなしていた。相手はA級モンスター相当のブラッドハウンド五体であり、クロエは双剣を駆使して見事に討伐した。

今回の依頼は複数の村で発生していたモンスター討伐であり、難易度が一定でないため引き受け手が見つからず、帝都支部から二人へ回されていた。

シルバーの評判と依頼事情

依頼を終えた帰路で、ノーネームはシルバーが頻繁にこのような依頼を引き受けていることに驚いた。

さらに、高難度依頼を帝都支部へ持ち込めばシルバーが対応するという状況が定着しており、依頼人が高額な個人依頼を避ける手段になっていると指摘した。クロエはシルバーがそれを理解したうえで困っている人を助けているのだろうと語った。

クロエの冒険者としての原点

ノーネームに冒険者を続ける理由を尋ねられたクロエは、シルバーへの憧れが原動力であると答えた。

どんな窮地でも現れて問題を解決するシルバーの姿に憧れ、自分も誰かを助けられる存在になりたいと思ったことが冒険者として歩み続ける理由だった。

ノーネームの劣等感

話題は師匠へと移り、ノーネームは自身の師匠がSS級冒険者リナレスであることを明かした。

しかしノーネームは、自らの力は冥神によるものであり、自身の実力ではないと考えていた。リナレスのように己の力だけで頂点へ至った者と肩を並べたとは思えず、自分を過小評価していた。

クロエの言葉による気付き

そんなノーネームに対し、クロエは武器の価値は使い手によって決まると語った。

シルバーも魔法がなければ強くないが、その魔法は努力の結果であり本人の力であるように、冥神を使いこなすこともまたノーネーム自身の力だと伝えた。

根拠のない励ましだったが、その素直な言葉はノーネームの心に響き、自身の考えを見つめ直すきっかけとなった。

勇者への挑戦を決意

ノーネームはクロエに、自分がエルナ・フォン・アムスベルグへ勝てると思うかと尋ねた。

クロエは実力差が大きすぎて判断できないとしながらも、勝負は勝てると思うことから始まると語った。負けるかもしれないと考えていては立ち向かうことすらできないという言葉は、五百年分の重圧に縛られていたノーネームの迷いを断ち切った。

その直後、ノーネームは巨大な鳥型モンスターを冥神を使わずに放った一撃で両断し、帝都へ戻る決意を固めた。

御前試合への参加表明

二日後、ノーネームはアルノルトへ御前試合を受ける意思を伝えた。

アルノルトはその決断を認め、ノーネームが退くような人物ではないと評価した。ノーネームもまた、自身の実力を証明すると告げ、クロエとの稽古へ向かった。

ヘンリックによる妨害工作の排除

その頃、ヘンリックは帝都で暗躍する連絡員の排除を続けていた。

捕らえた男への尋問から、冒険者ギルド関係者を通じて動いていたことを突き止める。アルノルトはノーネームへ余計な迷いを与えないため、引き続き接触者を排除するようヘンリックへ依頼した。

エルナへの絶対的な信頼

ヘンリックは、アルノルトがエルナを危険に晒すことを恐れていないのかと問いかけた。

しかしアルノルトは、一騎打ちでエルナ以上の剣士はいないと断言し、敗北の可能性を全く疑っていなかった。

失われた名前の捜索

城へ戻ったアルノルトは、セバスから図書館での調査が難航していると報告を受けた。

彼らは五百年前に歴史から消されたノーネームの祖先の名前を探していた。初代勇爵が当時の戦いを記録に残していた以上、その名前もどこかに残されているはずだと考え、アルノルトは帝国の責任として真実を見つけ出そうと決意した。

皇后誕生日祭と御前試合

皇后の誕生日当日、帝都では大規模な祭りが開かれ、その目玉としてノーネームとエルナの御前試合が行われることになった。

貴賓席では勝敗予想が交わされ、多くの者がエルナ優勢と考えていた。アリーダやセオドアも、一騎打ちで本気になったエルナには誰も勝てないと断言した。

一方でシルバーはノーネームの勝利を予想し、両者への期待が高まっていった。

試合開始前の準備

闘技場には収容人数を超える観客が集まり、会場全体が熱気に包まれていた。

エルナとノーネームが入場すると、その圧倒的な気迫によって観客たちは沈黙した。二人は武器を持たずに現れ、帝国側が用意した剣を選ぶことになった。

しかしシルバーの提案により、公平性を保つためクロエの双剣が使用されることになった。二人はその剣を試し斬りし、問題がないことを確認した。

御前試合の開幕

最後に宰相フランツがルールを説明した。

制限時間は十分、聖剣と魔剣の使用は禁止、不可抗力による死亡は不問という内容だった。

すべての準備が整うと、皇帝ヨハネスが開始を宣言した。その瞬間、エルナとノーネームは同時に剣を構え、互いの刃を激突させて御前試合の幕が上がったのである。

互角の剣技による攻防

エルナとノーネームが剣をぶつけ合った瞬間、その衝撃で闘技場全体が揺れた。これは単なる初撃に過ぎなかったが、観客たちはシルバーの結界によって守られていたため、安心して戦いを見守った。

戦いが本格化すると、両者はほとんど動かずに剣を交え続けた。互いの攻撃を受け流し、防ぎ合いながら速度と威力を徐々に高めていったが、防御を崩す決定打は生まれなかった。

エルナの優勢とノーネームの危機感

激しい打ち合いの末、エルナの強烈な一撃によってノーネームは吹き飛ばされた。観客はエルナ優勢と沸き立ったが、ノーネームは想像以上の強敵を前にしても冷静だった。

エルナが勇者の再来ではなく自分自身であると語ると、ノーネームはその言葉を受け止めながら戦いを続けた。しかし剣技は互角でも、一撃の重さではエルナが上回っており、ノーネームの脳裏には敗北の可能性がよぎっていた。

仲間たちの声と迷いの解消

観戦していたSS級冒険者たちは、ノーネームへ激励の言葉を送った。勝てると思って舞台に立ったのなら最後までそう信じろという言葉を受け、ノーネームは笑みを浮かべた。

その後、ノーネームはエルナへ聖剣の意味を問いかけた。エルナは聖剣そのものではなく、それを扱う自分自身に誇りを持っていると答えた。さらに聖剣を召喚した理由も幼馴染に認められたかったからだと明かした。

その答えを聞いたノーネームは、自らの悩みが解決したと告げた。

拳士としての本領発揮

エルナの攻撃を受け止めたノーネームは、剣だけではなく掌底による打撃を繰り出して反撃した。エルナは危険を察知して距離を取ったものの、大きく吹き飛ばされた。

続いてノーネームは仮面を外し、自身がリナレスの弟子であることを明かした。剣に加えて拳術を駆使する本来の戦闘スタイルを解放し、戦いは新たな局面へ入った。

剣と拳による互角の戦い

エルナは剣技で優位に立ち、ノーネームは近距離での打撃で優位に立った。互いに攻撃を受けながらも反撃を返し、一進一退の攻防が続いた。

ノーネームは勇者を超えるために多くの剣術とリナレスの体術を取り込んできた。その努力は確かな成果となって現れ、エルナを追い詰めていった。

エルナへの猛攻

ノーネームは傷ついた体を無理やり動かし、勝利を宣言して猛攻を仕掛けた。剣による連撃と拳打を組み合わせ、エルナを壁際へ追い込み続けた。

観客からは悲鳴が上がり、皇帝も試合を止めるべきか迷った。しかしアルノルトは、エルナが剣を手放していないことから反撃を狙っていると見抜いていた。

エルナの反撃

ノーネームは打撃の威力が十分に通っていないことに違和感を覚えながらも、渾身の正拳を放った。

その瞬間、エルナの斬撃がノーネームの腹部を切り裂いた。エルナは打撃の衝撃を受け流しながら耐え続け、最大の反撃機会を待っていたのである。

互いに重傷を負いながらも戦意を失わず、再び激突した。

限界を超えた消耗戦

戦いはもはや剣術の試合ではなく、意地と執念のぶつかり合いとなっていた。

エルナの剣はノーネームの体を傷つけ、ノーネームの拳はエルナの内臓へダメージを与え続けた。満身創痍になりながらも二人は冗談を交わし、互いに余裕があると強がり続けた。

やがて両者は最後の力を振り絞り、中央で激突した結果、発生した衝撃によって再び吹き飛ばされた。

奥義「星刻」の激突

制限時間が迫る中、エルナとノーネームは同時に決着を狙った。

二人はそれぞれ剣へ魔力を込め、同じ奥義である星刻を発動した。これは五百年前に初代勇爵とノーネームの祖先が用いた技であり、両者に受け継がれていた秘技だった。

二つの星刻が正面から衝突すると、その余波はシルバーの結界を破壊し、空へと噴き上がった。

引き分けによる決着

砂時計の砂が落ち切り、制限時間終了を告げる角笛が鳴り響いた。

光が収まると、エルナの剣先はノーネームの喉元へ向き、ノーネームの剣先はエルナの胸元へ向いていた。どちらも致命打を与えられる位置にあり、勝敗を決められない状況だった。

それを見た皇帝ヨハネスは、帝国皇帝の名において引き分けを宣言した。

皇帝からの称賛と褒賞

皇帝は二人の戦いを称賛し、後世に語り継がれるべき一騎打ちだと評価した。

その後、大陸中の冒険者ギルド支部と接続された魔導具が持ち込まれ、皇帝は大陸全体へ向けて演説を始めた。

五百年前の真実の公開

皇帝は、五百年前に初代勇爵と並び立ちながら歴史から名を消された剣士について語った。

その剣士は魔王との決戦前に勇爵へ挑戦したことで人類の敵と見なされ、名を抹消されていた。しかし実際には人類のために戦い続けた英雄だったと説明した。

そして、その名がアーヴァイン・ノックスであることを公表し、帝国皇帝として五百年前の過ちを謝罪した。

ノーネーム一族の悲願成就

皇帝はノーネームがアーヴァイン・ノックスの末裔であることを明かし、一族の名誉を回復した。

さらに、エルナと互角に戦い抜いたことで勇者の一族に並んだと認めた。これにより、ノーネーム一族が五百年間追い続けてきた悲願は果たされた。

ノーネームは皇帝へ感謝を述べ、静かに膝をついた。

ノーネームの矜持

皇帝はノーネーム個人の名前を尋ねたが、ノーネームは引き分けでは名乗る資格がないと答えた。

本当の名は明かさなかったものの、SS級冒険者としてのノーネームという名をこれからも背負い続ける意思を示した。

その後、エルナと再戦の約束を交わし、借りていたクロエの剣を返して闘技場を後にした。

クロエとの帰路

控室へ向かう途中、クロエはノーネームの様子を見て涙を流しているのではないかと尋ねた。

ノーネームは否定したが、クロエが優しかったと語ると、それに同意した。やがて極度の疲労によって倒れかけたノーネームをクロエが支え、二人はゆっくりと歩いていった。

SS級冒険者たちの後始末

一騎打ちの後、シルバーたちは先代ノーネームから奪った冒険者ギルドへの絶対命令権を破壊した。

シルバーは先代を討つことはせず、今後の問題は現在を生きるノーネーム自身が決着をつけるべきだと判断した。

こうしてノーネーム一族の長年の因縁は終わりを迎え、シルバーたちは次なる脅威である悪魔の調査へ目を向けるのだった。

引き分けへの不満

一騎打ちの後、エルナはアルの部屋で腹部の痛みに苦しみながらも、自分のほうが勝利に近かったと主張していた。ノーネームは試合後ほとんど動けない状態だったため、あと五秒あれば自分が勝っていたと考えていたのである。

しかしアルは結果は引き分けだと諭し続けた。エルナは勝利以外を認められず、引き分けという結果に強い悔しさを抱いていた。

幼少期と変わらない負けず嫌い

アルは、かつてエルナが騎士たちに敗れるたびに落ち込んでいた頃を思い出していた。当時は敗北から得るものがあれば勝ちだと教えていたが、今回ばかりはエルナ自身が納得できなかった。

アルは、勇爵家を研究し尽くしたSS級冒険者を相手に互角以上に戦ったことを誇るべきだと伝えた。また、自分との約束を気にしているのなら、次の再戦まで取っておけばよいと励ました。

その言葉を聞いたエルナは多少気持ちを整理し、皇帝への褒美の願いとして再戦を求めることを思いついた。

皇帝からの呼び出し

その後、レオが部屋を訪れ、皇帝がエルナを労いたいと探していることを伝えた。

アルは、褒美として再戦の機会を願えばよいと勧めた。エルナはそれを妙案だと喜び、無理を押して部屋を出て行った。

アルとレオは、昔から変わらないエルナの性格について語り合った。

王国の第三王子の復帰

エルナが去った後、レオは重要な報告を切り出した。

王国の第三王子が全軍の指揮官に就任したのである。その王子はかつて武王になると期待された戦争の天才だったが、薬物による暗殺未遂で長く寝たきりとなっていた人物だった。

誰が薬を盛ったのかは明白であり、その結果として現王太子リュシアンの地位は確立されていた。

戦争再燃への危機感

レオは、第三王子の復帰によって王太子に従わなかった古参の将軍たちまで戦列へ戻る可能性を指摘した。

アルは、それが過去の大規模戦争の再現につながると理解した。かつて帝国軍は王国の要塞を突破できず、膠着状態のまま多くの血が流れたからである。

その再来を避けるためには、王国を支援するアルバトロ公国との関係を断ち切る必要があると二人は判断した。

避けられない対立

アルは、王国の人材が王太子の下へ集結した以上、以前と同じ状況が再び訪れる可能性が高いと考えた。

レオは戦争を回避できないことを悲しんだが、アルは相手が戦いを望んでいる以上、ただ蹂躙されるわけにはいかないと答えた。

さらにアルは、現在の王国には何か異常なものを感じると語った。二人は西方の王国へ視線を向けながら、迫りつつある危機を見据えるのだった。

エピローグ

皇帝との作戦会議

翌日、アルノルトは皇帝ヨハネスのもとへ呼び出され、アルバトロ公国への派遣について協議した。

ヨハネスは、王国との戦争で重要なのはアルバトロ公国を王国から引き離すことだと説明した。王国が予想以上に早く動き始めており、すでに公国へ接触している可能性もあるため、アルノルトの派遣は中止できないと判断した。

護衛方針の決定

フランツは、近衛騎士団による大規模な護衛案を提示したが、それは公国への威圧になるとして否定された。

代わりに護衛を最小限に抑え、公子との対話を重視する方針が示された。公子はこれまで一貫して帝国寄りの立場を取っており、アルノルトよりも公子自身の言葉のほうが公国内で受け入れられやすいと考えられたからである。

人質対策の策定

アルノルトは、公国が王国側についた場合、自分が人質にされる可能性を指摘した。

それに対してフランツは、人質になり得る人物を増やし、帝国への牽制とする策を提案した。何かあれば帝国が本気で動くと相手に意識させることで、軽率な行動を防ぐ狙いだった。

アルノルトは自分とフィーネが同行する案を示し、ヨハネスは不満を抱きながらも、フィーネ本人が了承するなら認めることにした。

父からの忠告

退出する直前、ヨハネスはアルノルトへ声をかけた。

人質になったとしても命を優先しろと忠告し、恥よりも生き延びることが重要だと伝えた。アルノルトはその言葉を受け止めて会議の場を後にした。

帝都からの出発

数日後、アルノルトとフィーネはアルバトロ公国へ向けて出発した。

見送りに来たレオは、人質になった場合は自分が助けに行くと約束した。アルノルトもそれを受け入れ、互いに軽口を交わしながら別れた。

エルナの見送り

出発直前にはエルナも駆けつけた。

本来なら自分が同行したいと不満を漏らしながらも、フィーネの身を案じていた。フィーネはセバスやフィンが護衛に付いていることを説明したが、エルナの心配は消えなかった。

アルノルトは勝算があると告げ、帰還後には王国との本格的な戦争が始まると語った。そして、その戦いで功績を挙げてエリクを追い抜き、玉座へ近づく覚悟をレオへ確認した。

レオはその覚悟を示し、アルノルトたちは帝都を後にした。

旅路での安らぎ

馬車の中でフィーネは公国へ行くことを楽しみにしていると語った。

アルノルトは、王国の手が伸びていれば危険な旅になると説明したが、フィーネは危険の先に得られるものもあると前向きに答えた。

その言葉に励まされたアルノルトは、フィーネと共にいることへの安心感を覚えた。やがてフィーネは自分の手を重ね、アルノルトも静かにその手を握り返した。

上空では護衛のフィンが飛竜に乗って警戒を続けていた。アルノルトはこれから待ち受ける出来事を思いながらも、束の間の安らぎの中で目を閉じるのだった。

書き下ろし短編『宴の席』

宴席での縁談工作

藩国の宰相となったアルノルトは、汚職貴族たちとの宴席に参加していた。

その場では貴族たちが親類だという若い娘たちを集め、アルノルトへ紹介していた。娘たちは皆美しく着飾っていたが、アルノルトは彼女たちが自分自身ではなく、帝国皇子や藩国宰相という肩書や血筋に惹かれていることを理解していた。

貴族たちは酒を勧めながら娘たちとの縁談を持ちかけ続けた。アルノルトは表面上は美人だと評価しつつも、今後の政治的な駆け引きを考えて相手に付け入る隙があると思わせる態度を取っていた。

フィーネの登場

娘たちがアルノルトのもとへ呼ばれようとした時、フィーネが宴席に現れた。

その圧倒的な美貌に貴族たちも娘たちも息を呑み、娘たちは自然と道を譲った。フィーネはアルノルトの隣へ座り、遅れたことを詫びながら酒を注いだ。

アルノルトは突然の訪問に驚きながらも助けられたと感じていた。フィーネの存在感は他の娘たちを完全に霞ませ、貴族たちも勝ち目がないと悟って娘たちを下がらせた。

その結果、宴は大きな問題もなく終わった。

帰路での忠告

帰りの馬車の中で、フィーネはアルノルトへ注意を促した。

女性たちに気を取られている隙に酒へ薬を盛られる危険性があると指摘し、もっと用心するべきだと忠告した。

アルノルトは隙を見せるつもりはなく、仮に薬を盛られても対処できると答えたが、フィーネは万が一を軽視するべきではないと諭した。

アルノルトは忠告を受け入れつつ、自分は女性たちに気を取られていなかったと説明した。しかしフィーネは疑わしそうな態度を崩さなかった。

その様子を見たアルノルトは、フィーネが怒っているのではないかと感じ、今後は貴族たちの誘いをきっぱり断ろうと考えるのだった。

出涸らし14巻 レビュー
出涸らし16巻 レビュー

最強出涸らし皇子 シリーズ

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最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い
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最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 2
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最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 9
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最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 10
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