新約 とある魔術の禁書目録(11)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(13)レビュー
物語の概要
■ 作品概要
『新約 とある魔術の禁書目録(12)』は、科学と魔術が交差する世界を描いた大人気ライトノベルシリーズの一作である。
前巻で全世界を敵に回した逃避行の果てに魔神オティヌスを救い出した上条当麻は、15センチの妖精サイズとなった彼女やインデックスと共に、学園都市での日常を取り戻しつつあった。しかし、オティヌス用のドールハウスを求めて第一五学区の巨大複合施設「ダイヤノイド」を訪れたところ、突如として建物全体が何者かによって封鎖されてしまう。
事件の首謀者は、不老不死や時間跳躍の伝説を持つ「サンジェルマン」を名乗る正体不明の魔術師だった。ダイヤノイドに閉じ込められた上条当麻、暗部組織『アイテム』の面々と浜面仕上、そして学園都市第六位『藍花悦』の身分を偽造した少年は、炭素を操り人々に感染して増殖するサンジェルマンの脅威に立ち向かうこととなる。
■ 主要キャラクター
- 上条当麻:右手に異能を打ち消す力「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を持つ少年。オティヌスを守り抜いた後、彼女の仮住まいを探しにダイヤノイドを訪れ、サンジェルマンの襲撃に巻き込まれる。
- 加納神華(かのうしんか):消えた友人フレンダ=セイヴェルンの行方を捜すため、学園都市第六位「藍花悦」を名乗ってダイヤノイドに潜入した小柄な少年。サンジェルマンにそそのかされて復讐に駆られそうになるが、最後に本来の自分を取り戻し、事件の決着をつける重要な役割を果たす。
- 浜面仕上(はまづらしあげ):元スキルアウトの無能力者。仕事で特殊重機「運搬着(パワーリフター)」に乗ってダイヤノイドを訪れており、同じ建物にいる恋人の滝壺理后ら『アイテム』の面々を守るために奔走し、時には上条とも激突する。
- 麦野沈利(むぎのしずり)、絹旗最愛(きぬはたさいあい)、滝壺理后(たきつぼりこう):暗部組織『アイテム』の少女たち。ダイヤノイドでの休息中に事件に巻き込まれ、圧倒的な超能力でサンジェルマンの群れを迎撃する。
- サンジェルマン:不老不死などの伝説を持つ稀代の詐欺師。魔術師でも魔神でもない「第三の分類」を自称し、ダイヤノイドの炭素系建材を操って無数の槍「シャンボール」を生み出す。人々に同期・感染してネットワークを形成し、上条らを追い詰める。
- オティヌス:元魔神の少女。力を失い15センチのサイズとなって上条の肩に乗っている。サンジェルマンの正体や魔術の構造を冷静に分析し、事態打開の糸口を掴む。
■ 物語の特徴
本作の魅力は、閉鎖空間となった超巨大ビル「ダイヤノイド」を舞台に、複数の勢力と思惑が交差するパニックアクションが展開される点にある。
上条当麻だけでなく、浜面仕上や『アイテム』の面々、そして偽の第六位である加納神華それぞれの視点から物語が進行し、最終的に一つの事件へ収束していく群像劇としての面白さが際立っている。特に、亡き友人への想いからサンジェルマンの甘言に揺れる加納神華が、特別な才能や伝説の武器などに頼らず「ただの少年」として立ち上がり、真の敵へ立ち向かう展開は読者の胸を熱くさせる。
また、物語の裏側では僧正、娘々、ネフテュスといった真の『魔神』たちが現世に降り立ち、学園都市の暗部である木原脳幹が最新兵器を起動して宣戦布告するなど、シリーズ全体の壮大な戦いへと繋がる重要な布石が打たれている点も見逃せない。
書籍情報
新約 とある魔術の禁書目録 12
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2015年3月10日
ISBN:9784048693332
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あらすじ・内容
科学と魔術が交差するとき、物語は始まる――!
上条当麻は、全世界からオティヌスを守った。『魔神』の力を失った彼女は、小さな妖精さんとなり上条家の居候となる。そして、インデックスは相変わらず幸せそうにご飯を食べていた。そう、上条は望んでいた日常を取り戻したのだ。 しかし。新たな脅威は、すぐに来た。 ――『魔神』が動くぞ。 ――長い旅路の果てに、ついに見つけたぞ。 ――サンジェルマン。それが全てを手に入れる者の名だ。 戦場の舞台となった『ダイヤノイド』は魔神によって封鎖された。最悪の状況に巻き込まれたのは、ショッピング中の『アイテム』の面々、その荷物持ち予定だった浜面仕上、そして学園都市第六位の超能力者・藍花悦――の紛い物。 激突が、始まる。
感想
平和な日常と激しい戦いの落差が印象的な一冊だった。笑える場面が続いたかと思えば、一気にシリアスな展開へ切り替わる。その緩急のおかげで、最後まで飽きることなく読み進められた。
まず印象に残ったのは、オティヌスとの日常である。
十五センチほどの小さな姿になったオティヌスが、飼い猫のスフィンクスに狙われ続ける様子には思わず笑ってしまった。彼女を守るために、上条がドールハウスを買いに行こうとする発想も実に彼らしい。
男子高校生が一人でドールハウスを買いに行くのはかなり勇気がいる気もするが、隣にインデックスがいるおかげで少し安心した。大事件を乗り越えた後だからこそ描ける、こうした何気ない日常が心地よい。
一方で、物語の中心となる加納神華のエピソードは非常に印象深かった。
最初は学園都市第六位「藍花悦」を名乗る不思議な人物という印象だったが、読み進めるほどに彼の抱えているものが見えてくる。
亡くなったフレンダの存在は、今も多くの人の人生に影響を与え続けていた。その想いを利用され、復讐へと誘導されてしまう加納の姿は見ていて苦しかった。
だからこそ、最後にフレンダが本当に残したかった想いへたどり着き、自分の意志で立ち上がる場面は胸を打たれた。ただ敵を倒して終わるのではなく、一人の少年が前を向けるようになる物語だったことが、とても印象に残っている。
戦闘シーンも見応え十分だった。
サンジェルマンが炭素を操り、ダイヤノイドや無数の槍、植物の怪物を生み出していく光景は絶望感がある。
そんな状況でも、上条だけでなく浜面や麦野たち「アイテム」がそれぞれの立場で戦う展開は熱かった。
特に、普段なら交わることの少ないキャラクター同士が同じ事件に巻き込まれ、それぞれの信念で戦っている姿にはシリーズならではの面白さを感じる。
そして、最後に加納自身が敵へ一撃を放ち、サンジェルマンが崩壊していく流れは爽快だった。誰かに救われるだけではなく、自分の意志で決着をつけたところが良かった。
終盤では、事件が解決した安心感に浸る間もなく、アレイスターと魔神たちの戦いが本格的に動き始める。
これまで積み重ねてきた出来事が、さらに大きな物語へつながっていく気配があり、続きが気になって仕方がない。
今巻は派手なバトルだけではなく、残された人の想いや前へ進もうとする決意が丁寧に描かれていた一冊だった。日常の温かさと戦いの激しさ、その両方を楽しめる『新約』らしい巻だったと感じた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
魔神の学園都市来襲
『新約 とある魔術の禁書目録 12』における「魔神の学園都市来襲と三柱の魔神」は、学園都市統括理事長のアレイスター=クロウリーによって居場所である隠世を破壊され、現世の盤上へと引きずり出された真の魔神たちと、これを迎撃する科学サイドの本格的な潰し合いの記録である。現世への降臨プロセス、三柱の特異な容姿、上条当麻への渇望、そして仕掛けられた科学の罠の全容は以下の通りである。
隠世破壊に伴う第十一学区コンテナ群降臨と世界砕破回避のための無限等分弱体化
真の魔神たちは、アレイスターの策によって現世へと引きずり出され、学園都市の陸路の物流拠点である第十一学区のコンテナ群の頂点に姿を現した。
・本来、完全な魔神が一歩でも現世に踏み出せば、その絶大な力によって世界はステンドグラスのように粉々に砕け散ってしまう。
・そのため彼らは、ブードゥーの魔神であるゾンビの術式(合わせ鏡の理屈)を利用する。
・無限とも呼べる自分たちの力を無限に等分することで、世界が許容できるギリギリのレベルまで意図的に弱体化させる調整を経て降臨した。
即身仏の老人と尸解仙の少女およびエジプト泣き女を軸とする三柱の特異容姿
現世に姿を現した三柱は、それぞれが究極の魔術を極めた特異な存在であり、その容姿は以下の通りである。
・僧正は、即身仏として自らの意志で餓死し仏となった高僧であり、枯れた古木のような皺だらけの肉体に紫の法衣を纏い、杖のように剣を突き、黄金の絡子を身につけた老人である。
・娘々は、古代中国の尸解仙に由来する少女であり、丈の短い白のチャイナドレスとぶかぶかの両袖を纏い、額には特異な符を貼り付けている。
・ネフテュスは、エジプト神話における葬儀の泣き女を軸に作られたとされる銀髪の麗人であり、チョコレート色の裸身を真っ白な包帯で覆い尽くし、まぶたの下には涙滴型の刺青がある。
オティヌスへの強い嫉妬と上条当麻への渇望およびサンジェルマン静観
隠世を失ったことで現世の盤上に立たざるを得なくなった彼らは、アレイスターや原石、そして上条当麻など、対応すべき事柄を山積みに抱えていた。
・中でも彼らが最も激しく渇望していたのが上条当麻という存在である。
・魔神たちは、オティヌスが単独で実存世界を好き放題に捻じ曲げ、上条当麻を独占したことに対して強い嫉妬を抱いていた。
・一方で、ダイヤノイドで暴れ回るサンジェルマンについては、どこかで必ず湧いて出てくるウィルスに近い存在と見下している。
・自分たちの強すぎる力で世界を吹き飛ばすのを避けるため、直接介入せずに静観する態度を取った。
ゾンビ肉体投下パラメータ書き込みの罠とタングステン鋼杭打墜落による宣戦布告
魔神たちが薄氷のような世界を歩くために、自らの肉体へ共通の術式であるゾンビの術式を投じた隙を突き、アレイスターは彼らの内部構造へ新たなパラメータを書き込むという罠を仕掛けていた。
・僧正は、大元であるゾンビを倒して入れ替わらねば不可能なはずだと術式の構造から反論する。
・しかしその直後、全身にタングステン鋼の杭を打ち込まれ、有刺鉄線で十字架に縛り付けられたゾンビ本人が夜空から墜落してきた。
・これは木原脳幹が電磁カタパルトを用いて投下したものである。
・この一撃は、現世へ来襲した絶対的な魔神たちに対する、科学サイドからの明確な宣戦布告と本格的な潰し合いの始まりを告げる絶望的な幕開けとなった。
まとめ
魔神の学園都市来襲と三柱の魔神を巡る一連の顛末は、世界の砕破を防ぐために自らの力を無限に分割して現世へ降り立った絶対的な魔術の体現者たちが、科学サイドの冷徹な計算と奇襲によって迎撃された不条理な開戦の記録である。
オティヌスへの嫉妬から上条当麻を激しく渇望し、サンジェルマンをウィルスと見下しながら降臨したプロセスは、魔神たちの強大さと偏った執着を示している。
最終的に、共通の移動術式を逆手に取ったアレイスターのパラメータ書き込みと、木原脳幹による大元のゾンビへの杭打ち投下という科学の罠によって足元を掬われた顛末は、この来襲が単なる魔神による世界蹂躙にとどまらず、絶対的存在であったはずの彼らが学園都市の緻密な管理体系と暴力装置の前で引きずり降ろされ、互いの命運を懸けた凄惨な抗争へと突入していく絶対的な引き金となったことを厳密に証明している。
偽の藍花悦
『新約 とある魔術の禁書目録 12』において、学園都市第六位の超能力者である「藍花悦」の名を騙る「偽の藍花悦」は、単なる一人のなりすましではなく、学園都市の暗部における特異な救済システムや現象として描かれている。オリジナルが一切不明という匿名性を利用した偽物の横行から、その名がもたらす名義貸しの仕組み、そして偽りの仮面を脱ぎ捨てて真のヒーローへと覚醒した加納神華の顛末にいたる全容は以下の通りである。
年齢性別容姿一切不明に伴う本偽区別不能と顔写真以外同一の偽造ID突きつけ合い
学園都市第六位の超能力者(レベル5)である藍花悦は、年齢や性別、その姿など一切が不明の存在である。
・誰もオリジナルを知らないため、誰がどんな風に化けても本物か偽物かの区別がつかないという特異性を持つ。
・作中ではこの匿名性を利用し、複数の人物が精巧に偽造した学生ID証を用いて藍花悦を名乗っている。
・ダイヤノイドへ向かう道中、加納神華は道の角で頭の悪そうな女と鉢合わせ、互いにぼくは藍花悦だ!と叫びながら学生ID証を突きつけ合う事態が発生した。
・そのカードは顔写真以外は全く同じものであり、二人は瞬時に相手も自分と同じ偽物であると悟る。
・身元をきちんと管理していない本物の第六位への文句を心の中でこぼしながら、別々の方向へ逃げ出す事態となった。
不完全ID意図的破損再発行の裏技と行方不明フレンダ救出のための高級エリア潜入
本作の舞台となるダイヤノイドへ潜入した藍花悦は、実際には小柄な少年であった。
・彼は、暗部の抗争に巻き込まれて行方不明となった友人、フレンダ=セイヴェルンを助け出す目的を有していた。
・彼女の秘密基地があるダイヤノイドの高級マンションエリアへ向かうため、無能力者のような力のない少年は大胆な裏技を駆使する。
・不完全な偽造ID証を意図的に破損させ、本物の藍花悦の在学校へ送りつけて再発行させるという手段を用いた。
・これにより本物の学生証を持った偽の藍花悦として、単身でダイヤノイドへ乗り込むことに成功した。
アンの盾遺伝配列照合に伴う盾の王傅きとフレンダ凄惨最期映像による復讐心煽り
ダイヤノイド内で、少年は魔術師サンジェルマンと遭遇することとなる。
・サンジェルマンは、アーサー王伝説における王の双子の妹クイーンアンの遺産とされるアンの盾を起動できる遺伝配列を探していた。
・学園都市のDNAマップ照合の結果、偶然にもその少年に目をつけ、彼を盾の王として傅く。
・さらに、フレンダが凄惨な最期を遂げた事実を映像で突きつけた。
・上条当麻が間に合っていればフレンダは死ななかった、と少年の心を揺さぶり、悲劇を生んだシステムそのものを裁くべきだと復讐心を煽る。
・絶望した少年は、友人への復讐のためにアンの盾を受け取ってしまった。
誕生日プレゼントの懐中時計カード触発と藍花悦仮面脱却に伴う加納神華の対峙決意
復讐鬼と化した少年は、フレンダと同じアイテムのメンバーだった浜面仕上や上条当麻と対峙し、盾を使って彼らを殺そうとする。
・しかし、上条当麻が投げたフレンダからの誕生日プレゼントによって事態は一変した。
・箱の中に入っていた懐中時計とメッセージカードには、加納ちゃんへ向けたフレンダからの言葉が記されていた。
・彼女は、少年が泣き虫でありながらも理不尽の前に道を踏み外さない強さを誇りに思っていた。
・その真の友人の言葉に触れた少年は、他人の名を騙る藍花悦という偽りの仮面を脱ぎ捨て、自らの本当の名前が加納神華であることを思い出す。
・加納神華は盾を手放し、フレンダの死を利用し尊厳を踏みにじった真の敵・サンジェルマンへと自分の足で立ち向かう決意を固めた。
デスゲーム窮地少女への身分資料封筒送付と何十番目かの裏世界逃走支援役待機
物語の終盤では、藍花悦という名前の貸し出しが、理不尽な状況に陥って自力ではどうにもならなくなった者を救済するためのシステムとして機能している実態が示される。
・三日おきに続くデスゲームに追い詰められ、友人たちを失い次回で処分される危機にあった中学生くらいの少女の元へ、突然一つの封筒が届けられる。
・その中には身分を書き換えるための資料と、新たに学園都市第六位・藍花悦の名が記されたカードが入っていた。
・少女にカードが届けられた外の路上では、不良少年が携帯電話で、藍花悦がよそへ移った、と事後報告を行っていた。
・彼は、第六位の力があれば回りくどい事をせずに直接救済できるはずだ、と本来の第六位への不満をこぼす。
・しかし、素人である次の藍花悦がバレた時の逃走支援役として待機していた。
・学生寮を振り返り、ようこそ何十番目かの藍花悦世界の裏側へ、と呟き、新たな偽の藍花悦を迎え入れている。
まとめ
本作における「偽の藍花悦」とは、単なる肩書きの悪用やなりすましにとどまらず、本物の第六位やその協力者たちによって、理不尽なシステムに追い詰められた弱者に一時的な力と身分を与えて世界の裏側へ逃がすための精緻な仕組みである。
オリジナルが不明という匿名性を逆手にとり、加納神華のような少年や処分寸前の少女へカードを移譲していくプロセスは、暗部における独特な救済の在り方を示している。
最終的に、復讐心からアンの盾を受け取った少年が、フレンダからの誕生日プレゼントに遺された真の友情の言葉によって加納神華としての自己を取り戻し、偽りの仮面を脱ぎ捨ててサンジェルマンへ立ち向かった顛末は、他者の名による偽りの救済を超えて、一個の人間が自らの意志と名前で理不尽に抗う尊厳を厳密に証明している。
巨大複合施設ダイヤノイド
『新約 とある魔術の禁書目録 12』の主要な舞台となる「ダイヤノイド」は、学園都市第一五学区にそびえ立つセレブ御用達の巨大複合施設である。魔術師サンジェルマンによって建物全体が密室と化し、大規模な封鎖事件の舞台となったこの超高層ビルの基本構造、内部フロア構成、封鎖のメカニズム、そして最下層に秘められた危機の全容は以下の通りである。
七〇階建て六角柱の炭素系素材構造に伴う高強度靱性とダンプカー最高速衝突打破
ダイヤノイドは、七〇階建ての巨大な六角柱の超高層ビルであり、建物の周囲には地上へ向けて斜めに太いワイヤーが何本も張り巡らされている。
・地下鉄の駅ビルとしての機能も兼ね備えている。
・世間では、壁も柱も窓もドアもすべてダイヤモンドでできている、と噂されているが、実際にはカーボンファイバーやカーボンナノチューブなどのカーボン系素材で構築されており、その中に人工ダイヤが一部含まれている。
・これにより、ダンプカーが最高速度で突っ込んでもびくともしないほどの極めて高い強度と靱性を誇る。
蜂の巣状高級ブランド商業エリアとテレビ局およびフレンダ秘密基地内包の貸金庫実態
内部は大きく下層、中層、上層の三つに分かれており、それぞれの構成は以下の通りである。
・下層は商業エリアであり、中央の巨大な吹き抜けの周囲に、超高級ブランドショップなどが蜂の巣のように立ち並ぶ。
・中層はテレビ局・屋内サービスフロアであり、大手テレビ局テレビオービットの社屋が丸ごと入っている。一般客と芸能人の動線が交差しないよう分けられた形で、アクアパレスと呼ばれる展望台や屋内プール、フィットネスジムなどが併設され、巨大な噴水や水槽など水を意識した造りになっている。
・上層はマンション・ホテルエリアであるが、実態は上流階級の人間たちが自身の秘密を隠すための巨大な貸金庫として機能している。亡きフレンダ=セイヴェルンも、ここに誰にも内緒の秘密基地(隠れ家)を所有していた。
炭素系建材癒着によるクリスマス密室パニックと原子崩し自動修復に伴う正面突破断念
建物のすべてが炭素系建材でできているため、炭素(有機物)を自在に操る魔術師サンジェルマンにとって、ダイヤノイドは建物全体が己の武器庫となった。
・事件が発生した日はクリスマスシーズンであり、出入口の回転扉やエレベーター、非常階段の扉の蝶番やレール、鍵などを溶かして完全に癒着させることで物理的な封鎖を実行した。
・下層の商業エリアや中層のテレビ局、展望台などに大勢の一般客やスタッフが閉じ込められ、内部はパニックに陥る。
・脱出のため、麦野沈利は原子崩しを放って非常扉と壁を丸ごと融解させ大穴を開けたが、即座に建材が染み出して壁を自動修復してしまったため、正面からの突破を断念した。
・浜面仕上とステファニー=ゴージャスパレスは、特殊重機である運搬着(パワーリフター)を用いてエレベーターの扉をこじ開け、エレベーターシャフトを直接登って移動するという危険な手段を取らざるを得なかった。
・建材を変質させて無数の槍シャンボールを生み出し人々を襲撃した。
アンの盾回収等の多目的牽制と盾の王加納神華に対する例外的一部的制約解除
サンジェルマンがダイヤノイドを封鎖した目的は、アンの盾の回収やフレンダ=セイヴェルンの遺産の確保、そして上条当麻や現世に降臨した魔神たちへの牽制のためであった。
・ただし、サンジェルマンが盾の王として見定めていた藍花悦(加納神華)に対してのみ、自己の目的のために好きなフロアへ渡れるよう、例外的に封鎖の制約を解除していた。
人工重力制御装置浮遊免震構造の掌握暴走に伴う地球月握り拳サイズ圧縮矮星爆弾化
ダイヤノイドの最下層(基部)には、グラビトン式人工重力制御装置を用いた特殊な免震構造が採用されている。
・総重量一二万トンを超える超巨大建築物が地表から一〇センチほど浮遊している。
・この仕組みは人工ダイヤの量産などにも応用されるが、サンジェルマン達に掌握され暴走した場合、地球と月をまとめて握り拳サイズに圧縮し、一万度から二万度の熱を帯びる矮星爆弾(重力爆弾)と化す恐るべき危険性を秘めていた。
丸薬設定ファイル喪失によるサンジェルマン撃破と少年少女一斉外殺到の封鎖解除
最終的に、上条当麻や浜面仕上らの介入、そして加納神華自身がサンジェルマンに立ち向かった。
・ネットワークの要である丸薬(設定ファイル)を喪失させたことでサンジェルマンは撃破された。
・サンジェルマンの消滅と同時にダイヤノイドの封鎖は解け、閉じ込められていた大量の少年少女達は一斉に外へと殺到し、解放された。
まとめ
ダイヤノイドの構造と封鎖を巡る一連の顛末は、先進的な科学技術によって構築された超高層ビルが、その素材特性を魔術師によって完璧に逆用され、都市規模の閉鎖空間へと変貌した不条理な事件の記録である。
最高速度のダンプカーの衝突に耐え、原子崩しによる破壊をも即座に自動修復するカーボン系素材の強固さが、皮肉にも一般客の脱出を阻む絶対的な障壁となり、最下層の重力制御装置が世界を滅ぼしかねない矮星爆弾への転用リスクを孕むプロセスは、学園都市の科学的資産が持つ危険性を示している。
最終的に、上条当麻や浜面仕上、そして自らの名前を取り戻した加納神華の共闘によって丸薬が破壊され、サンジェルマンの消滅とともに封鎖が解除されて少年少女たちが解放された顛末は、強固な閉鎖システムや魔術的脅威であっても、人間の意志と連携によって打破され、理不尽な籠城戦に終止符が打たれることを厳密に証明している。
魔術師サンジェルマン
『新約 とある魔術の禁書目録 12』に登場する「サンジェルマン」は、第一五学区の巨大複合施設ダイヤノイドを封鎖した正体不明の魔術師であり、本作の最大の脅威として描かれている。不老不死の怪人物としての虚構、人々の頭脳へ同期感染する巨大な結晶構造ネットワーク、そして仕掛けられた弱点の全容は以下の通りである。
稀代の詐欺師伝説の演出と因果位相超越を豪語する第三の分類としての自称
サンジェルマンは、不老不死や時間跳躍、宝石修復などの伝説を持つ歴史上の怪人物である。
・オティヌスによればその実態は名前だけの存在から始まった稀代 of 詐欺師であり、不老長寿の伝説なども噂や演出、アリバイ工作によって作られた虚構に過ぎない。
・それでも本人は、自身を魔術師でも魔神でもない第三の分類と称している。
・因果や位相を超越して存在する者だと豪語する性質を有する。
思想の同期感染による無尽蔵増殖と炭素系建材シャンボール植物質猛獣変質攻撃
彼の最大の厄介さは、その思想が人々の頭に同期・感染し、全員が司令塔であり末端でもある巨大なネットワーク(結晶構造)を形成して無尽蔵に増職する点にある。
・戦闘においては、ダイヤノイドの炭素系建材や有機物(生命)を自在に操る。
・無数の槍シャンボールを全方位から一斉に放つ。
・さらにシャンボールはただの根に過ぎず、より強靭な枝や幹として、蜘蛛、カマキリ、蠍、ガラガラヘビといった植物質の装甲を持つ猛獣へと姿を変えさせ、多彩で苛烈な攻撃を繰り出す。
欲望の海泳ぎの真王探索目的とアーサー王伝説剣対比アンの盾適合照合
彼が長年、王侯貴族の欲望の海を泳ぎ回っていたのは、富や名声のためではなく真に仕えるべき王を探し求めるためであった。
・魔術を極めた彼は自らが王になるのではなく、伝説の頂点の傍らに立つことでサンジェルマンという孤高になることを悲願としていた。
・そのためにアーサー王伝説の剣の対になるとされるアンの盾(クイーンアンの盾)を追い求める。
・学園都市のDNA照合から偶然にも盾の適合者である藍花悦(加納神華)を発見し、彼を盾の王として傅こうとした。
不純物安定化丸薬設定ファイルの構造解明と加納神華の一撃に伴う結晶崩壊
無敵に見えるサンジェルマンのネットワークであるが、彼が常に口にしていた黒々とした丸薬が致命的な弱点であった。
・この丸薬は、乾燥状態で活動を止め水分を得て復活する微生物の束であり、純度の高い結晶構造(サンジェルマンの集団)の暴走を防ぎ安定させるための不純物(設定ファイルやコントローラ)として機能していた。
・インデックスとオティヌスがその構造を解き明かし、上条当麻の機転によって丸薬の存在が暴かれる。
・最後は、サンジェルマンに友人の死を利用され尊厳を踏みにじられた加納神華が放った怒りの一撃と、設定ファイルたる丸薬の喪失に見舞われる。
・これによりネットワークに致命的なエラーが拡大し、サンジェルマンという巨大な結晶構造は完全に崩壊・壊滅した。
まとめ
魔術師サンジェルマンを巡る一連の顛末は、歴史上の噂や演出を肥大化させた詐欺師的虚構から出発しながらも、人間の精神へ同期感染する強固な結晶構造ネットワークへと昇華した、絶対的な思想侵蝕の記録である。炭素系建材を植物質猛獣に変質させる多彩な術式を用い、アンの盾の王として加納神華を傅こうと画策したプロセスは、彼の強大さと孤高への執念を示している。
最終的に、インデックスらの分析によるコントローラとしての丸薬の露呈と、上条当麻の機転、そして仮面を脱ぎ捨てた加納神華の怒りの一撃によって設定ファイルを喪失した顛末は、どれほど無尽蔵に増殖する巨大な思想システムであっても、制御の要たる不純物を破壊されることでエラーを起こし、完全に崩壊へと追い込まれる冷徹な現実を厳密に証明している。
運搬着と浜面仕上
『新約 とある魔術の禁書目録 12』において、特殊重機「運搬着(パワーリフター)」は、浜面仕上が巨大複合施設ダイヤノイドでの過酷な状況を生き抜き、仲間を救うための重要な力として描かれている。民間用の特殊重機でありながら、魔術的脅威や科学的危機に対して圧倒的な質量と剛腕で立ち向かったその概要、導入の経緯、そして劇中での活躍の全容は以下の通りである。
四本腕構造の民間用特殊重機とアネリによる操縦支援空間投影サポート
運搬着は、航空貨物レベルの巨大なコンテナなどを屋内で移動させるために用いられる民間用の特殊重機である。
・本体は背中に負うユニットで、そこから三メートル大の巨大な鋼鉄の腕が二本伸びており、生身の腕と合わせて四本腕になるような構造を持つ。
・姿勢制御用の一回り小さな脚部も備えている。
・軍用の駆動鎧とは異なり全身を装甲板で覆っておらず、左右二本の有線操縦桿と足裏のフットペダルで操作する、ややアナクロな乗り物といった印象の機体である。
・操縦に免許は不要であり、浜面は5時間ほどの猛勉強で基礎を習得した。
・操縦支援ソフトであるアネリが搭載されており、空間の異常屈折を利用したAUD技術によって視界に情報を投影し、未熟な操縦を的確にサポートする。
テストドライバーからの搬入業務斡旋とデコトラ移動によるダイヤノイド向行
浜面仕上がこの重機を扱うことになったのは、第二学区での業務がきっかけであった。
・第二学区でドラゴンライダーの量産試作機のテストドライバーを務めていた際、ステファニー=ゴージャスパレスから第一五学区の巨大複合施設ダイヤノイドへの搬入の仕事を斡旋される。
・テレビ局テレビオービットへ美術品仕様のコンテナを届けるため、浜面はステファニーと共に運搬着を装着してデコトラに乗り込み、ダイヤノイドへと向かった。
リニアシャフト登坂脱出と上条当麻質量圧倒激突および重力制御装置暴走ホース圧着
ダイヤノイド到着後、魔術師サンジェルマンの暗躍によって建物全体が封鎖されたことで、運搬着は実戦の舞台へと投入されることとなる。
・業務用エレベーター内に閉じ込められた際、浜面とステファニーは運搬着の鋼の剛腕と脚部を駆使し、リニアエレベーターのシャフトを強引によじ登り、分厚い扉を蹴破って中層への脱出を果たした。
・サンジェルマンの操る無数の槍シャンボールの群れに襲われる上条当麻を救うため、運搬着の巨腕で槍を掴み潰して加勢する。
・しかし、仲間を早く救い出したいと焦る浜面と上条との間で作戦が対立し、運搬着の圧倒的な質量と剛腕で上条を追い詰める激突へと発展した。上条の機転によって機体の関節部にダメージを受け、最後は運搬着ごと倒されて生身の殴り合いとなった。
・その後、単身で最下層へ向かい、サンジェルマンの群れと対峙する学園都市第六位(偽の藍花悦)の前に加納神華の復讐劇に付き合う覚悟を決めて加勢に現れる。
・ダイヤノイド最下層にあるグラビトン式人工重力制御装置が暴走して巨大な重力爆弾と化す危機に際しては、運搬着の巨大な掌を使って蒸気の噴き出すホースの継ぎ目を強引に押さえ込み、事態の悪化を防ぐ重要な役割を果たした。
まとめ
特殊重機「運搬着」を巡る一連の描写は、軍用兵器ではない民間の物流機材が、操縦支援ソフトであるアネリのサポートと浜面の執念によって、魔術師の脅威や都市崩壊の危機を食い止める強力な防壁へと昇華した不条理な活躍の記録である。
エレベーターシャフトの強行登坂や、上条当麻との質量を活かした激突において発揮された剛腕の威力は、学園都市の科学的重機の持つ高い基本性能を示している。
最終的に、仮面を脱ぎ捨てる前の藍花悦への加勢や、崩壊寸前となった重力制御装置のホースを力任せに押さえ込んで矮星爆弾化の危機を瀬戸際で防ぎ止めた顛末は、特別な超能力や魔術を持たない浜面仕上という少年が、無骨な鉄の腕を借りて理不尽な世界の危機に爪痕を残し、仲間のために戦い抜くための絶対的な暴力装置として機能したことを厳密に証明している。
新約 とある魔術の禁書目録(11)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(13)レビュー
登場キャラクター
学園都市
上条当麻
右手に異能を打ち消す力を持つ少年である。目の前で苦しむ者を放っておけない性格をしている。魔神オティヌスを守り抜いた過去を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
ダイヤノイドでサンジェルマンの襲撃に遭遇し、オティヌスらと共に対抗策を練った。加納神華を救うために前線へ立ち、サンジェルマンのネットワーク崩壊に貢献している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔神たちからその存在を強く求められている。
加納神華
小柄で泣き虫な少年である。消えた友人であるフレンダを助けたいと強く願っている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
学園都市第六位である藍花悦の身分を偽造し、ダイヤノイドへ潜入した。サンジェルマンからアンの盾を渡されて復讐をそそのかされた。しかし、最終的に本来の自分を取り戻し、サンジェルマンを打ち倒すことに成功した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
他者の名を騙ることをやめ、一人の人間として真の敵に立ち向かう強さを得ている。
御坂美琴
常盤台中学に通う少女である。上条当麻を気にかけている。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。学園都市第三位の超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
クリスマスの外出禁止令を突破するため、食蜂操祈と一時的な協力関係を結んだ。上条当麻がダイヤノイドへ向かうことを知り、彼を追う準備を始める姿が描かれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
食蜂操祈
他者の精神を操る能力を持つ少女である。御坂美琴とは反発し合いながらも目的のために協力する。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。学園都市第五位の超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
他者を操ってミニスカサンタの姿で御坂美琴に接触し、寮の外出禁止令を破るための共闘を持ちかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
浜面仕上
無能力者でありながら、大切な者を守るために行動する少年である。滝壺理后やアイテムのメンバーを救うことを第一に考えている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
ダイヤノイドへコンテナを搬入する仕事中に事件に巻き込まれた。特殊重機の運搬着を操り、サンジェルマンの攻撃から仲間や上条当麻を守るために立ち向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
重力制御装置の暴走を防ぐための応急処置に尽力している。
滝壺理后
ピンク色のジャージを着た少女である。浜面仕上と行動を共にすることが多い。
・所属組織、地位や役職
アイテムのメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
ダイヤノイド中層のカフェで浜面を待つ間に事件に遭遇した。逃げ回るオティヌスを偶然確保している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
絹旗最愛
窒素を操る能力を持つ少女である。麦野沈利とともに行動し、戦闘の最前線に立つ。
・所属組織、地位や役職
アイテムのメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
窒素装甲を用いてサンジェルマンの放つ槍を防ぎ、反撃に転じた。ステファニーらと連携してサンジェルマンの群れを制圧する活躍を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
麦野沈利
電子を操る能力を持つ少女である。好戦的であり、障害となるものを力で排除しようとする。
・所属組織、地位や役職
アイテムのメンバー。学園都市第四位の超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
ダイヤノイドからの脱出ルートを作るため、壁や扉を破壊しようと試みた。その後、サンジェルマンの群れと交戦し、敵を圧倒する実力を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ステファニー=ゴージャスパレス
金髪のショートヘアを持つ女性である。浜面仕上とともに仕事にあたっている。
・所属組織、地位や役職
元警備員。傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
トラックの運転や運搬着の操作を担当し、ダイヤノイドへ荷物を搬入した。戦闘では模擬弾を用いる銃器でサンジェルマンの無力化に成功している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フレンダ=セイヴェルン
かつてアイテムに所属していた金髪の少女である。すでに命を落としている。加納神華の友人であった。
・所属組織、地位や役職
元アイテムのメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
ダイヤノイド上層に秘密の部屋を所有しており、多数の知人へ贈る誕生日プレゼントを用意していた。録画された映像の中で加納神華へメッセージを残した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼女の死が加納神華の行動の動機となった。
青髪ピアス
上条当麻のクラスメイトである。オタクを自称しつつ、幅広い属性を肯定している。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
昼休みの教室で、上条や土御門と投扇興に興じる様子が描かれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
土御門元春
上条当麻のクラスメイトである。義理の妹を大切にしている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
昼休みに教室で投扇興の勝負に参加している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔神・魔術サイド
僧正
即身仏の姿をした老人である。魔神の一柱として現世に降り立った。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
アレイスターの罠により、ゾンビの術式を利用していたところに新たなパラメータを書き込まれてしまう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
科学サイドからの宣戦布告を受けた。
娘々
尸解仙に由来する少女である。額に符を貼り付けている。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
現世に現れ、アレイスターの行動に不満を漏らす場面がある。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アレイスターによって内部構造にパラメータを書き込まれた。
ネフテュス
包帯で身を包んだ銀髪の美女である。泣き女に由来する存在とされる。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
他の魔神とともに学園都市へ姿を現し、アレイスターに捕捉される危険性を指摘する描写がある。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アレイスターの罠にかかっている。
ゾンビ
縫い目だらけの少女だ。魔神の一人である。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
魔神たちが現世を歩くための術式を提供した。木原脳幹によってタングステン鋼の杭を打ち込まれ、空から投下されるに至った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
科学サイドからの攻撃により拘束状態に陥っている。
オティヌス
小さな妖精の姿になった元魔神の少女である。上条当麻とともに行動している。
・所属組織、地位や役職
上条家の居候。
・物語内での具体的な行動や成果
猫から身を守るためにドールハウスを求め、ダイヤノイドへ向かった。サンジェルマンの魔術構造を分析し、インデックスと協力して対抗策を練ることに貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつての強大な力は失っているが、魔神の知識を用いて上条を支援している。
サンジェルマン
炭素を操る魔術師である。不老不死や時間跳躍の伝説を持つ詐欺師としての側面を持つ。
・所属組織、地位や役職
魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
ダイヤノイドを封鎖し、加納神華を盾の王として迎え入れようとした。ネットワークを通じて無数に増殖し、上条当麻らと交戦を繰り広げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
加納神華の一撃と設定ファイルの喪失により、ネットワークが崩壊した。
インデックス
完全記憶能力を持つシスターである。上条当麻と同居している。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教のシスター。
・物語内での具体的な行動や成果
魔道書の知識を活用し、サンジェルマンの支配構造を解き明かすための詠唱を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ローラ=スチュアート
イギリス清教の最大主教である。学園都市や魔神たちの動向を注視している。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教・最大主教。
・物語内での具体的な行動や成果
聖ジョージ大聖堂で盤上の駒を見つめ、上条当麻の動きが戦局を左右すると分析する様子が描かれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
統括理事会・暗部
アレイスター=クロウリー
学園都市の統括理事長である。魔神たちの現世への降臨を予測し、罠を仕掛けた。
・所属組織、地位や役職
学園都市統括理事長。
・物語内での具体的な行動や成果
魔神たちが共通の術式を用いた隙を突き、彼らの内部構造へ新たなパラメータを書き込むことに成功した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔神たちへ直接的な干渉を開始している。
木原脳幹
高い知性を持つゴールデンレトリバーである。木原の始祖たちの遺志を受け継いで行動する。
・所属組織、地位や役職
木原の一員。研究者。
・物語内での具体的な行動や成果
第二三学区の武器庫から対魔術式駆動鎧を展開した。電磁カタパルトを用いて魔神ゾンビを投下し、宣戦布告を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔術サイドとの本格的な戦闘を開始した。
その他
スフィンクス
上条当麻の部屋で飼われている三毛猫である。
・所属組織、地位や役職
上条家の飼い猫。
・物語内での具体的な行動や成果
小さくなったオティヌスを追い回し、ダイヤノイドでも彼女を捕まえてインデックスのもとへ運ぶ活躍を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アネリ
特殊重機に搭載された操縦支援ソフトである。浜面仕上の操縦を補助する。
・所属組織、地位や役職
操縦支援プログラム。
・物語内での具体的な行動や成果
空間の異常屈折を利用して視界に情報を投影し、浜面の戦闘や情報収集を支援している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
集団
アイテム
学園都市の暗部組織の一つである。麦野沈利を中心に活動している。
・所属組織、地位や役職
暗部組織。
・物語内での具体的な行動や成果
ダイヤノイドでサンジェルマンの襲撃に巻き込まれ、メンバーが協力して敵の群れを迎撃して見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつてのメンバーであるフレンダの過去が物語に影響を与えた。
魔神
究極の魔術を極め、世界を意のままに作り替える力を持つ存在の総称である。
・所属組織、地位や役職
魔術の神々。
・物語内での具体的な行動や成果
隠世を失ったことで現世へ降臨し、上条当麻を標的として動き出すことになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アレイスターの罠と木原脳幹の攻撃により、科学サイドとの争いに引きずり込まれている。
新約 とある魔術の禁書目録(11)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(13)レビュー
展開まとめ
序章 世界の許容その限界 Foreign_GODs,or_Evil_KINGs.
三柱の魔神
濃密な闇の中に、僧正、娘々、ネフテュスの三つの気配があった。彼らはゾンビの理屈を用いて自分達の力を無限に分割し、世界を壊さずに現世へ出る方法を試そうとしていた。娘々は理論だけでは信用できないと笑い、三柱は学園都市へ踏み出すため、闇の中に方向と空間を生み出した。
学園都市への到来
ネフテュスの声とともに扉が開き、三柱の魔神は学園都市第一一学区のコンテナ群の頂点から現世へ現れた。僧正は即身仏めいた高僧、娘々は尸解仙めいた少女、ネフテュスは包帯に包まれた銀髪の麗人として姿を見せた。僧正は、世界に異常が起きていないことを確認し、現世への実在が成功したと見なした。
隠世の喪失
ネフテュスは、自分達が現世に実存した以上、アレイスターに捕捉されてもおかしくないと告げた。娘々は、アレイスターが隠世を壊したことに不満を漏らし、僧正は彼らがオティヌスとは違うとたしなめた。しかし僧正自身も感情で正義の定義を変えていると娘々に指摘され、三柱は隠世を失った以上、現世の盤上で動かざるを得なくなったと認識した。
盤上の立ち位置
僧正は、アレイスター、原石、上条当麻など、対応すべき事柄が山積していると語った。三柱は強力すぎる駒であるため、無意味に見える一手でも局面全体を狂わせる可能性があった。僧正は、可能な限り自分達から手を指したいと考えたが、相手が引っ掻き回し役を放棄して条件を呑むとは限らないとも見ていた。
クイーンアン
ネフテュスは、敵という概念が希薄な魔神にとっても、明確に切り分けるべき名前としてクイーンアンを口にした。そして、キングアーサーには双子の妹と、剣の対となる盾があったと呟いた。
第一章 饅頭とダイヤモンド to_the_DIANOID.
藍花悦とダイヤノイド
裏路地の少年
小柄な少年は、裏路地のゴミ袋の上で大の字になりながら、不良に言われた言葉を思い返していた。暗部へ消えた友人フレンダを助けようとしていた少年は、力不足のまま踏み込めば死ぬと忠告されていた。それでも少年は、学園都市第六位の超能力者である藍花悦になれば道が開けるかもしれないと考え、どんな方法を使っても藍花悦になると決意した。
上条家の朝
上条当麻の部屋では、身長一五センチのオティヌスが三毛猫に追い回されていた。オティヌスはユニットバスへ逃げ込んだが、猫はドアノブに飛びついて開けようとし、彼女をさらに追い詰めた。助けを求めた上条は眠ったままで、結局オティヌスは猫にくわえられて連れ去られた。
オティヌスの避難所
朝食の席で、オティヌスは猫から身を守るための待避所を要求した。上条は段ボールやブロックを提案したが、オティヌスはすぐ壊されるものでは意味がないと反発した。テレビで第一五学区のダイヤノイドにある本格的なドールハウスが紹介されると、オティヌスはそれを自分の安全な家にしようと考えた。
ダイヤノイドへの恐怖
上条は、ドールハウスがあるダイヤノイドへ行くことに強い抵抗を覚えた。第一五学区は学園都市最大の繁華街であり、ダイヤノイドはセレブや芸能人が集まる中心地だった。クリスマスムードで恋人だらけの場所に自分が踏み込めば、場違いさで精神的に押し潰されると感じていた。
クリスマスの街
一二月一日、学園都市はクリスマス一色に変わっていた。御坂美琴は街を歩きながら、常盤台中学では不純異性間交友禁止の名目でクリスマスに外出禁止令が出るだろうと考えていた。黒子の空間移動を使えば外へ出られるかもしれないが、なぜか上条の顔が浮かび、自分の思考に動揺していた。
食蜂操祈の相談
美琴の前に、食蜂操祈に操られたミニスカサンタが現れた。食蜂は、常盤台の外出禁止令を破るため、第三位と第五位が協力すれば寮監達の防衛網を突破できるのではないかと持ちかけた。美琴は警戒しながらも利害が一致していると判断し、二人は互いに最後は裏切るつもりで協力を結んだ。
上条当麻の相談
そこへ上条当麻が現れ、美琴は彼が落ち込んでいることに気づいた。上条は、女の子と一緒に第一五学区のダイヤノイドへ行くことになったが、クリスマスのオシャレなデートスポットに自分が行くのが怖いと打ち明けた。美琴はその内容に激しく反応し、食蜂も隣で同じ結論に至った。
常盤台アルカトラズ攻略
美琴と食蜂は、上条のダイヤノイド行きを知ったことで、改めて強い握手を交わした。二人はクリスマスイヴまでに常盤台女子寮の外出禁止令を突破するため、互いの力を利用する長い戦いを始めることになった。
浜面仕上のテスト走行
浜面仕上は第二学区のサーキットで、ジェットエンジン搭載の大型バイクのテスト走行をしていた。機体はドラゴンライダーの系譜を引く量産試作機であり、浜面は実戦で同系統の機体を扱った経験からテストドライバーを任されていた。彼は麦野沈利、絹旗最愛、滝壺理后に暗部以外の居場所を示すため、自分にできる仕事を探して第二学区へ辿り着いていた。
第一五学区への搬入依頼
テスト後、ステファニー=ゴージャスパレスは浜面に、第一五学区のダイヤノイドへ荷物を搬入する仕事を持ちかけた。大型テレビ局からの要請で、航空貨物級のコンテナを屋内移動させるには運搬着が必要だった。浜面は未経験のパワーリフター操作に不安を覚えたが、ステファニーは夕方までに覚えれば人死には出ないと軽く言った。
昼休みの投扇興
昼休みの教室では、上条当麻、青髪ピアス、土御門元春が投扇興で遊んでいた。上条は第一五学区のダイヤノイドへ行くことを恐れており、青髪ピアスや土御門もその場違いな華やかさを怖がっていた。三人は雑談と煽り合いの末、誰も的に当てられず、勝負は共倒れに終わった。
ダイヤノイドへの出発
放課後、上条はインデックスとオティヌスを連れて第一五学区へ向かった。目的はダイヤノイドでオティヌス用のドールハウスを買うことだった。地下鉄の広告には、ダイヤノイドの高級ブランドやテレビ局、最上層マンションの情報が並び、上条は自分の生活感とあまりに違う世界に気後れしていた。
駅ビルとしてのダイヤノイド
上条達は地下鉄で第一五学区へ到着した。インデックスはダイヤノイドの巨大さに圧倒されることを期待していたが、上条はダイヤノイドが駅ビルも兼ねているため、列車が着いた時点ですでに中にいると説明した。地下の景色は普通の駅と大差なく、インデックスは肩透かしを食らった。
フレンダを探す少年
一方、小柄な少年は、消えた友人フレンダ=セイヴェルンを助けるため、藍花悦を名乗る準備を進めていた。フレンダがダイヤノイド上層階に秘密基地を持っていたと知っていたため、そこに彼女の行方を知る手がかりがあると考えた。少年は偽造した学生ID証を破損した本物のように再発行させ、学園都市第六位の超能力者という肩書きを手に入れていた。
偽りの藍花悦
少年は、以前自分を痛めつけた者達と同類の不良達に囲まれたが、藍花悦のID証を突きつけて相手の疑いを恐怖へ変えた。第六位の超能力者を名乗るだけで男達は逃げ出し、少年は最初の関門を越えた。彼は自分が藍花悦になれたと実感し、ダイヤノイドへ向かった。
二人の藍花悦
藍花悦を名乗る少年は、道の角で同じように藍花悦を名乗る女と鉢合わせた。互いに学生ID証を突きつけ合い、相手も自分と同じ偽物だと瞬時に悟った。二人は本物の第六位が自分の身元を管理していないことに内心で文句を言いながら、それぞれ別方向へ逃げ出した。
デコトラの搬入
浜面仕上はステファニー=ゴージャスパレスの運転する大型トラックに乗り、第一五学区のダイヤノイドへ向かっていた。トラックは場違いなデコトラ仕様で、二人はクリスマスムードの街や仕事の予定を軽口で言い合いながら、テレビオービットへの搬入品である美術品用コンテナと運搬着を運んでいた。
業務用搬入口
ダイヤノイドは七〇階建ての巨大な六角柱で、上層、中層、下層に分かれていた。浜面達の配送先は中層のテレビオービットであり、業務用搬入口から作業用エレベーターで向かう予定だった。浜面は中層で知り合いを待たせており、仕事後に合流して遊ぶつもりだった。
運搬着の起動
浜面とステファニーは屋内駐車場に入り、トラックからコンテナと二機の運搬着を降ろそうとした。浜面は五時間で覚えた操作に不安を抱きながら運搬着に乗り込み、視界に重なるAUDの表示に戸惑いつつも、ステファニーと協力してコンテナを持ち上げた。
藍花悦との遭遇
作業中、浜面は車の陰を進む小柄な子供を見つけた。ステファニーが大声で叱ると、その子供は怯えながら学園都市第六位の藍花悦だと名乗った。浜面は一瞬恐怖したが、相手が震えている様子を見て子供だと判断し、暴走気味のステファニーを止めた。その間に藍花悦を名乗る子供は姿を消した。
ダイヤノイド下層
上条当麻はインデックスとオティヌスを連れて、地下鉄駅からダイヤノイド下層の商業エリアへ入った。そこは巨大な吹き抜けを備え、和風建築を思わせる内装で統一されていた。上条は薄型モニタに映るテレビオービットのメイキング中継を説明し、五階にあるドールハウス職人の店へ向かおうとした。
オティヌスの暴走
五階付近はニュースを見て集まった客で混雑していた。オティヌスはドールハウスを買い逃す危機を感じ、上条の肩から降りて人混みの中を走り出した。インデックスは三毛猫を追跡役として放ち、上条はさらに混乱が広がることを恐れながら、オティヌスを踏まないよう注意して捜し始めた。
アイテムの待ち時間
中層のカフェでは、滝壺理后、絹旗最愛、麦野沈利が浜面を待っていた。滝壺はマッサージチェアでくつろぎ、絹旗は大量の買い物袋に呆れ、麦野はカード払いで高級品を買い込んでいた。三人の会話は靴や映画を巡って混乱し、浜面がアイテムの潤滑油になっていることがうかがえた。
サンジェルマンの伝播
ダイヤノイドの人混みの中では、別の意思が静かに広がっていた。複数の人々が互いに囁くように、サンジェルマンが動くこと、長い旅路の果てに全てを手に入れることを伝えていた。その意思は一点へ集まり、誰かの計画を粉砕するための嫌がらせを始めようとしていた。
上条当麻と藍花悦
上条は人混みではぐれ、柱にもたれて息を切らす小柄な人物を見つけた。彼はその相手を休ませ、水を買い与えた。相手は自分を藍花悦だと名乗ったが、上条は本物か偽物かに怯まず、逃げ回っている事情を気にした。さらに上条が名乗ると、藍花悦は彼の悪名めいた噂に怯えて逃げ出した。
奇術師の男
藍花悦が逃げた直後、杖の音とともに奇術師めいた中年男が現れた。男は自分を人を超えた者、魔術師の先にいる存在だと語り、オティヌスの先にいる者だと告げた。上条は相手が魔神である可能性に戦慄し、状況を理解する前に周囲の景色が歪み始めた。
シャンボールの攻撃
男はシャンボールと口にし、床を変形させて上条を攻撃した。上条は右手で最初の錐を砕いたが、それは目眩ましであり、壁や床や天井から一〇〇本以上の錐が三六〇度から迫った。周囲の人々の身体には錐の通り道のような穴が開き、上条はその異常な光景の中で叫び、認識を途絶えさせた。
行間
閉ざされたダイヤノイド
学園都市第一五学区のランドマークであるダイヤノイドでは、回転ドアや窓が開かず、列車も止まる騒ぎが起きていた。高強度のカーボン系素材で作られた建物は、普通のガラスのように壊して脱出できるものではなく、群衆の間には空調まで悪用されれば内部の人間が危険にさらされるのではないかという不安が広がっていた。
サンジェルマンの始動
騒ぎを撮影しようとしていた少年の隣に、ネフテュスが現れた。彼女は、事態は単なるシステム障害ではなく、サンジェルマンが動き出したため内部の危険性はそれ以上かもしれないと語った。少年は包帯姿の銀髪の美女に驚き、さらに反対側に現れた僧正を見て悲鳴を上げた。
消えた魔神たち
僧正は、サンジェルマンのやり方にはオティヌスほど無秩序な破壊はなく、明確な区分があると評した。だが少年が携帯電話を向けようとした時には、ネフテュスも僧正も姿を消していた。周囲の人々には少年の悲鳴だけが残り、彼は好奇の視線を浴びることになった。
第二章 魔神と嘘つきの邂逅 St.Germain,and_LIAR.
停止した業務用エレベーター
浜面仕上とステファニー=ゴージャスパレスは、運搬着を装着し、コンテナを抱えたまま業務用エレベーターに閉じ込められた。エレベーターの表示は二九階で止まり、テレビオービットへの連絡もつながらなかった。浜面は滝壺理后達が同じ建物にいることを気にしながらも、搬入の仕事を続ける方針を確認した。
エレベーターシャフト
二人は床の点検口を開き、リニアエレベーターのシャフトへ出る道を見つけた。ステファニーは、運搬着の巨腕と脚部を使えば、コンテナを抱えたまま脱出できると判断した。浜面は高所への恐怖を覚えながらも、仕事を完遂するためにシャフトを使って中層へ向かうことになった。
魔神の攻撃
上条当麻は、奇術師めいた男が放った攻撃を目の当たりにしていた。周囲の人々の身体に不自然な穴が開き、その通り道を錐のような凶器が通っていた。上条は魔神オティヌスとの経験を思い出し、目の前の相手が本物の魔神なら勝てないと恐怖した。
差し込まれた位相
燕尾服の男が声を漏らした直後、歪んでいた景色は元に戻った。人々の身体に穴はなく、凶器も消えていたが、上条は幻覚ではなく、確かに世界が変わった上で平和な位相が差し込まれたのだと理解した。男は本命を失うのは面白くないと呟き、上条を置いて姿を消した。
世界への不安
上条は恐怖でへたり込み、戻ってきたインデックスとオティヌスに声をかけられた。彼はオティヌスに、ここはまだ自分達の世界なのかと尋ねた。オティヌスが取り戻した世界にいるのか、それとも再び終わりのない迷宮へ迷い込んだのか、上条は確信を持てなくなっていた。
藍花悦の恐怖
柱の裏では、藍花悦を名乗る少年も魔神の攻撃を目撃していた。彼はあまりの異常さに押し潰されそうになり、フレンダ=セイヴェルンを探すために進む勇気を失いかけた。だが、泣き虫な自分を認めてくれた友人の言葉を思い出し、こんな所で流す涙ではないと自分を奮い立たせた。
再び現れた燕尾服
藍花悦は、張子の虎でも藍花悦として進むしかないと決意し、立ち上がった。だが、その目の前に燕尾服の男が現れた。藍花悦は思考を保つこともできず、現実を放棄するように意識を失った。
採点する声
閉ざされたダイヤノイドの低層では、人々が正面玄関に殺到していた。その裏で、何者か達が藍花悦を手に入れたこと、コンテナが放送局へ入ったことを確認していた。彼らはサンジェルマンに関わる目的のため、見えないレールを切り替えるように状況を採点していた。
中層への到着
浜面とステファニーは、エレベーターの扉を破って中層へ出た。そこはテレビオービット側のフロアで、下層とは異なり広く開放的で、水槽や水路を備えた水を意識した空間だった。二人はコンテナを無事に引き渡し、搬入の仕事を完了させた。
封鎖された非常口
テレビ局の制作系の女性から、建物全体で出口や非常階段が塞がっていると聞かされ、浜面達は運搬着で非常扉をこじ開けようとした。しかしカーボン系建材で作られた扉はびくともせず、運搬着でも破れなかった。浜面は、これは単なる事故ではなく、誰かが短時間で目的を達成するために仕組んだ封鎖ではないかと考えた。
ステファニーの後押し
浜面は滝壺達と合流したいと思いながらも、業務用の運搬着を私用に使うことを言い出せずにいた。ステファニーはそれを察し、安全確認のための寄り道として安否確認を認めた。だが彼女は運搬着の力加減を忘れて浜面の背中を叩き、浜面はエレベーターシャフトへ落ちていった。
封鎖された中層
ダイヤノイド中層では、エレベーターも階段も封鎖され、人々が非常扉の前へ殺到していた。滝壺理后の前では、麦野沈利と絹旗最愛が扉の結合部を調べ、隙間が溶けて一枚の壁のようになっていると確認していた。麦野は浜面仕上との合流か脱出ルートの構築を選択肢に挙げた。
原子崩しの突破
麦野は原子崩しで非常扉と周囲の壁に大穴を開けた。しかし穴の縁から格子が飛び出し、さらに建材が染み出して壁を修復し始めた。麦野は続けて何度も攻撃を放ったが、壁は再生し、絹旗は周囲の人々が引いていることも含めて彼女を止めようとした。
脱出の断念
麦野は飽和量の限界を探るつもりでさらに攻撃を重ね、壁一面を蜂の巣にした。それでも封鎖が破れないため、彼女達は脱出を一度諦め、浜面との合流や抜け道の探索、事態を起こした相手の確認へ方針を移すことになった。
屋上の藍花悦
藍花悦はダイヤノイドの屋上庭園で目を覚ました。そこには燕尾服の男が座っており、藍花悦は先ほど見た異常な攻撃を思い出して恐怖した。男は藍花悦に会うために来たと告げ、彼が抱える何かを気にしている様子を見せた。
サンジェルマン
燕尾服の男は、藍花悦ではなく少年自身に用があると語った。さらにポジティブな空隙を生む盾を優先して回収すると言い、テレビ局へ移されたそれを追うつもりでいた。彼はフレンダ=セイヴェルンの遺産に触れ、藍花悦に急がなければ秘密を掴む機会を失うと告げた。
一度だけの協力
燕尾服の男は、自分の名をサンジェルマンと明かした。彼は、放送局へ送られた盾の回収を最優先としつつ、藍花悦が秘密を掴む前にダイヤノイドが崩壊するのを防ぐと約束した。また、封鎖された扉やエレベーターの制約を藍花悦だけ解除し、後で自分の話を聞くよう求めた。
魔神への恐怖
上条当麻は、インデックスとオティヌスの前で、魔神が出たと告げた。オティヌスは理論上、魔神は複数存在し得るが、自分が世界を作り替えた時に同格の魔神がいたなら介入していたはずだと述べた。それでも上条は、燕尾服の男が見せた地獄をただの錯覚として片づけることに強い抵抗を覚えていた。
倒す方法
上条は、世界を壊させずに魔神を倒す具体的な方法をオティヌスに尋ねた。オティヌスは妖精化のような術式の応用には可能性があると述べたが、それでは世界の破壊を避けられない可能性が高かった。上条は、相手が本物なら一瞬で世界が終わると考え、慎重に調査する必要を感じた。
分析の決意
上条はインデックスに知識を借り、オティヌスには相手の真贋を見抜くため同行を頼んだ。彼は魔神に気づかれない位置から術式や霊装を観察し、幻想殺しが通じる局面や壊すべきものがあるかを探ろうと考えた。
モニタの映像
下層の薄型モニタでは、テレビオービットのメイキング中継が続いていた。中層の混乱や展望台側の様子も映し出される中、上条は画面の中で何かを目撃した。彼はそれがまずいと叫び、インデックスの問いにも答えず走り出した。
エレベーターシャフトの浜面仕上
浜面仕上は、ステファニーに突き落とされた後、運搬着の鋼の巨腕でエレベーターシャフト内の出っ張りを掴んでいた。そこへ燕尾服と片眼鏡の男が槍を担いで通りかかり、浜面はその槍がダイヤノイドの封鎖と同じ技術で作られたものではないかと考えた。さらに大きな衝撃から麦野沈利達の存在を察し、男が彼女達を黙らせに向かっていると判断した。
サンジェルマンへの不意打ち
浜面は、麦野達に危険が迫るなら強さの問題ではなく放置できないと考え、運搬着で燕尾服の男に不意打ちを仕掛けようとした。しかしその直前、上条当麻が真上から落下して浜面の運搬着へ飛び蹴りを放ち、浜面は出っ張りから引き剥がされてしまった。
水道管からの突入
少し前、上条当麻は薄型モニタの映像から、浜面と魔神らしき男が接触しそうな状況を把握していた。階段もエレベーターも使えないため、上条は中層のアクアパレスへ水を送る巨大な配管を利用することを思いついた。スポーツショップで潜水マスクを買い、ポンプ室から配管に入り、流れに飲まれながら中層へ辿り着いた。
エレベーターシャフトへの跳躍
上条は屋内プールから放送局側へ出て、破られたエレベーター扉の奥に浜面の姿を見つけた。浜面が魔神と不用意に接触すれば世界そのものが危ういと考えた上条は、命綱もないまま深いシャフトへ飛び込み、浜面の運搬着に体当たりするように衝突した。
落下後の対話
上条と浜面はエレベーターの籠へ落下し、かろうじて停止した。上条は、魔神には一度の失敗で全てが終わる危険があるため、手を出すなら一緒にやり、せめてタイミングを合わせてほしいと訴えた。だが浜面は、相手が今すぐ滝壺理后達と接触しそうなら、準備を待っていては間に合わないと返した。
譲れない浜面仕上
浜面は、上条が自分を守るために無茶をしたことを理解していた。それでも上条にも明確な解決策がなく、その方法では自分の大切な者達を救えないと感じた。浜面は、無様に敗れることになっても麦野達を逃がすために動くと決め、上条にどけと告げた。
二人のヒーロー
上条は、それが世界ごと壊す結果になっても進むのかと問いかけた。浜面は、たとえ無謀でも愚かでも、大切な者達を敵に回してでも彼女達のために動きたいのだと答えた。その言葉に上条はかつての自分を重ね、二人は悪人ではなく立場が違うだけのまま、再び激突を始めた。
運搬着との格闘
上条当麻は、浜面仕上の運搬着が持つ圧倒的な質量と速度に苦戦した。浜面は巨大な脚部や剛腕で上条を追い詰め、上条は掴まれながらも潜水マスク用の酸素缶を関節部に押し込み、内部衝撃で片腕を停止させた。さらに上着を肘の可動部に噛ませ、もう片方の腕も封じることに成功した。
殴り合う二人
運搬着を倒した上条は浜面の意識を奪おうとしたが、浜面は生身で抵抗し、二人は床を転がりながら殴り合った。上条は、浜面が魔神に触れれば自分と同じ地獄に落ちると考え、止めようとした。一方の浜面は、滝壺理后達を救うためなら他はどうでもよいと叫び、上条の制止を受け入れなかった。
浜面仕上の勝利
上条は浜面を思って拳を振るったが、浜面は運搬着の部品らしき金属パーツで上条の太股を突き、形勢を逆転した。最後に上を取った浜面は、自分の惚れた女をサンジェルマンから助けるのは自分の仕事だと笑い、上条を殴り倒した。浜面は運搬着を立て直し、知り合いを助けに向かった。
弱さの自覚
上条は大の字に倒れたまま、自分は弱いと呟いた。そこへオティヌスが現れ、上条が自分を救えたのは極限まで強かったからではなく、強さだけではない価値を持っていたからだと告げた。上条は自分にも譲れないものがあることを思い出し、弱さは立ち止まる理由にならないと受け止めた。
方針の変更
上条は、浜面を止められなかった以上、サンジェルマンの分析に浜面達の動きも組み込む必要があると判断した。まずは浜面の大切な少女達を安全に逃がし、そのためなら自分が囮になると決めた。だが、上条がサンジェルマンの名を口にすると、オティヌスは強く反応した。
サンジェルマンの伝説
サンジェルマンは、不老不死、時間跳躍、宝石修復などの伝説を持つ謎の人物だった。正確な出生記録も死亡記録もなく、時代や地域をまたいで現れるため、人そのものがオーパーツのような存在とされていた。だが、その真実を確かめるには、彼と同種の秘奥に届くしかないとされていた。
アイテムの前のサンジェルマン
サンジェルマンは奇怪な槍シャンボールを担ぎ、アイテムの少女達の前に現れた。彼は放送局へ運ばれた盾を回収した時点で中層は用済みだが、小さな約束のために大人しくしてほしいと告げた。麦野沈利は絹旗最愛に滝壺を守らせ、自分がサンジェルマンを相手取ると決めた。
原子崩しと爆発
麦野はサンジェルマンの腕をシャンボールごと原子崩しで蒸発させた。しかしサンジェルマンは腕の喪失を気にせず、腹に巻いた爆発物を見せた。彼は、個人としてのサンジェルマンが死んでも思想は潰えないと告げ、直後に凄まじい爆発がアイテムを襲った。
藍花悦の判断
屋上の藍花悦は、サンジェルマンを利用することに恐怖を覚えていた。彼は未知数すぎる相手に頼り切る危うさを理解し、自分の手でフレンダ=セイヴェルンの秘密を追うべきだと考えた。藍花悦は屋上の扉を開け、小石で閉まらないように固定し、外部へ救助の手がかりを送る準備をした。
屋上からの合図
藍花悦は、屋上から地上へ直接連絡するのは難しいと考え、ダイヤノイド外壁のワイヤーを利用した。携帯電話のGPS防犯ブザーを作動させ、メモを挟んだうえで、針金でワイヤーに固定して滑り落とした。警備員が反応を拾い、屋上の扉が開いていることを知る可能性に賭けた後、彼は自分の目的のために屋内へ戻った。
サンジェルマンの正体
上条は、サンジェルマンが魔神ではないとオティヌスから知らされた。サンジェルマンは名だけの存在から始まった稀代の詐欺師であり、不老不死や時間跳躍も噂と演出によって作られたものだった。ダイヤノイドの炭素系建材や人間の身体を操った現象も、全位相を歪める魔神の力ではなく、炭素を操る魔術で説明できるものだった。
感染する思想
オティヌスは、サンジェルマンの厄介さは魔神のような一極集中の力ではなく、思想が人の頭に同期して感染する点にあると説明した。直後、エレベーターホールの複数の出入口から、燕尾服のサンジェルマン達が現れた。全員が司令塔であり末端でもあるかのように上条を囲み、槍の雨となった暴虐が全方位から襲いかかった。
行間 二
サンジェルマンという第三の分類
サンジェルマンは、自分を魔術師にも魔神にも分類できない第三の存在であると考えていた。彼は、嘘つきや魔神未満と呼ばれることに慣れており、周囲が自分を理解できないのは、彼らが概念の段階で及ばないからだと見なしていた。
社交界に求めた可能性
サンジェルマンは富や名声を求めて社交界に入り浸っていたのではなく、自分が望むものが貴族社会の中にあったため、必要な財産や肩書きを整えていただけだった。腐敗した社交界の中に残る本来の枠を探し、欲望にまみれた人々の中で、ただ一つの可能性を追い求めていた。
少年の本当の価値
サンジェルマンは、少年が他人に自分を重ねて仮の力を得ようとしていることを見抜いていた。しかし彼は、少年自身が本来持つ名と力に気づいていないだけで、すでに誰も持っていないものを手にしていると考えていた。既存の道を登るより、新たな道を切り開く方が価値ある行為だと捉えていた。
学園都市での発見
サンジェルマンは、パリやベルリン、モスクワを探しても見つからなかったものが学園都市にあったことを予想外と感じていた。イギリス清教と学園都市の間に繋がりがあることを考慮すべきだったと認めつつ、ようやく目当ての少年に出会えたことを収穫と見なしていた。
剣の対となる盾
サンジェルマンが求めていたのは、剣の対となる盾だった。古代ブリテンの魔術師が特異な剣によってただ一つの魂を選別したように、自分は魔神達に足りないものを先に確保すると考えていた。彼はただ一つの真実を得るためなら、無限の虚構を撒き散らすことも厭わなかった。
第三章 消え入る少女の遺産 Hard MEMORY.
サンジェルマンの包囲
上条当麻は、サンジェルマン達に囲まれた瞬間、妹達や食蜂操祈、C文書、レーシー、人的資源計画など、人を同期・並列化して動かす存在を思い浮かべていた。無数のサンジェルマンは、壁や床や天井から大量のシャンボールを生み出し、上条へ槍の雨を放った。上条は消火器を投げて煙幕を作り、その隙に包囲を抜け出した。
炭素制御の制約
上条は、サンジェルマンが本当にダイヤノイド全体を自在に操れるなら、本人が姿を現す必要はないと考えた。彼は、サンジェルマンの炭素制御には視覚や聴覚などの照準が必要であり、建物内のどこにも逃げ場がないように見えたのは、多数のサンジェルマンが紛れていたからだと推測した。相手が魔神ではなく制約を持つ魔術師なら、同期感染の根を断てば元に戻せる可能性があると考えた。
照明器具のオティヌス
上条が逃走した後、オティヌスは行灯の中から姿を現した。彼女は、上条が注意を引くために自分をそこへ隠したのだと理解していた。オティヌスは、サンジェルマンが全体で一つの結晶構造のように振る舞うなら、ダイヤの不純物のように全体の性質を左右する制御要素があるはずだと分析した。
分析役の役割
オティヌスは、上条が前衛として攻撃を誘発し、その間に自分が術式の構成や弱点を探る流れは正しいと判断した。さらに、一五センチの体なら通常の索敵をかいくぐれると考え、まずインデックスと合流し、それから上条とサンジェルマンの位置を捕捉して、結晶構造のような集団を砕く方法を探る方針を立てた。
藍花悦の救出
サンジェルマン達から逃げる上条は、フィットネスジムの受付裏へ引き込まれた。そこにいたのは藍花悦であり、彼はサンジェルマンが自分には執着しているため、あえて自分が表に出れば戦闘を難しくできると語った。上条は危険だと止めようとしたが、藍花悦は自分にしかできない役目だと判断していた。
藍花悦の願い
藍花悦は、もし戻れなかった場合、フレンダ=セイヴェルンの部屋を調べてほしいと上条に頼んだ。そこにはフレンダが消息を絶った理由に関わる何かがあるかもしれなかった。藍花悦は恐怖に震えながらも、自分は藍花悦だから大丈夫だと言い聞かせ、上条を逃がすためにサンジェルマン達の前へ出ていった。
サンジェルマンとの交渉
藍花悦は、サンジェルマン達に囲まれながらも、相手の状況が順調ではないことを指摘した。彼はサンジェルマンの目的を探るため、あえて会話に乗った。サンジェルマン達は彼を上層マンションエリアではなく、以前会話した屋上庭園へ案内した。
金髪のサンジェルマン
屋上で藍花悦を待っていたのは、金髪の女性の姿をしたサンジェルマンだった。その姿にはフレンダが成長したかのような面影があり、サンジェルマンは藍花悦と円滑に話すため、その輝きを選んだと語った。藍花悦は、その女性にも本来の人生や尊厳があったはずだと感じながらも、状況を突破する手段を見いだせなかった。
危害を加えない誓い
藍花悦は、上条に手を出さないことを会話の最低条件として求めた。サンジェルマンはそれを受け入れ、藍花悦が会話に応じる限り、ダイヤノイド内の全ての人間に危害を加えないと誓った。藍花悦は敵の前で安堵を見せてしまい、サンジェルマンはただ一つの真実以外なら、どれほどの嘘も笑顔で許容する存在だった。
浜面仕上の嗅覚
浜面仕上は運搬着でダイヤノイド中層を探し回る中、爆発音と震動よりも先に、花火のような匂いと鉄錆臭さを感じ取った。アネリは窒素酸化物反応を示し、浜面は爆発の可能性を思い浮かべた。彼は麦野沈利、絹旗最愛、滝壺理后の安否を案じながら、人の流れに逆らって爆心地へ向かった。
槍の雨と上条当麻
浜面は逃げ惑う人混みの先で上条当麻を見つけた。直後、床や壁が波打ち、大量の槍が群衆の体に穴を開けながら上条へ襲いかかった。浜面はその邪悪な光景に絶叫し、アネリの支援を受けて運搬着の剛腕で槍を掴み潰し、上条が逃げるための空白を作った。
役割分担
浜面は上条のもとへ駆けつけ、迫るサンジェルマン達を見た。上条は、浜面には自分のやるべき事をやらせ、サンジェルマン達は自分が押さえると告げた。浜面は滝壺達を優先したい一方で、上条を見捨てるような人間であれば滝壺達に受け入れられないと考え、上条を運搬着で掴んで一緒に逃走した。
劇場への逃走
浜面は運搬着で壁や天井を足場にしながら、上条を抱えたままサンジェルマンの汚染が進んでいない場所へ向かった。しかし劇場へ逃げ込むと、広い空間では動きが単調になり、サンジェルマンの槍に狙われる危機に陥った。その直前、別の運搬着に乗ったステファニーが飛び蹴りで槍をへし折り、二人を逃がした。
ステファニーの選択
ステファニー=ゴージャスパレスは、薄型モニタ越しに浜面の危機を見ていた。彼女は見捨てて自分の安全を確保する選択もできたが、かつて教師であり警備員だった自分を思い出した。浜面を子供の枠に入れて守るべき対象と見なし、運搬着でサンジェルマン達の前へ飛び込んだ。
麦野沈利の介入
ステファニーは槍の群れに運搬着を破壊されながらも、浜面が逃げる時間を稼いだ。そこへ麦野沈利が現れ、原子崩しで槍を一瞬にして蒸発させた。麦野は、サンジェルマンの爆弾は絹旗最愛と共に処理済みで、誰も死ななかったと告げた。
アイテムの反撃
麦野、絹旗、滝壺理后は戦場に現れ、サンジェルマン達と対峙した。麦野は義手で槍を掴み潰し、超能力者を能力だけで判断するなと吐き捨てた。麦野と絹旗は、敵を殺すか無力化するかで言い合いながらも、サンジェルマンの群れへ突っ込んでいった。
援軍不要
三階席で麦野の閃光を見た浜面は、彼女達が無事であることを悟った。浜面は泣き笑いしながら、無能力者の自分が大能力者や超能力者を助けようとしていたことを自嘲した。これにより、浜面には上条の方を優先する余裕が生まれた。
藍花悦の救出方針
上条は、藍花悦が自分を逃がすためにサンジェルマン達の中へ飛び込んだと説明した。さらに、サンジェルマンが藍花悦に執着しているようでいて、ダイヤノイド封鎖や上条達への襲撃など行動に一貫性がないと指摘した。藍花悦は利用されており、何かをさせられようとしている可能性があると上条は考えた。
フレンダの秘密
上条は、藍花悦がフレンダ=セイヴェルンの秘密を探していたことを浜面に伝えた。浜面はフレンダの末路を思い出し、強く反応した。上条は、フレンダの秘密が藍花悦を呪縛から解く鍵になるかもしれず、上層マンションエリアを調べる必要があると説明した。
上層マンションエリア
浜面は、フレンダが今回の件に関わるなら自分にも結末を追う理由があると受け入れた。運搬着を使えば階層間の移動は可能であり、二人はエレベーターシャフトを通って上層へ向かうことになった。ダイヤノイド上層の高級マンションエリアに、彼らの求める真実が待っていた。
サンジェルマンの目的
藍花悦は、月下のダイヤノイド屋上庭園で、金髪の女性の姿をしたサンジェルマンと並んで座っていた。サンジェルマンは、自分が西暦五〇〇年前後から活動していたこと、そして同じ個体ではなく無尽蔵に増殖する存在であることを語った。彼女は長く社交界に潜り込み、キングアーサー伝説に隠された盾を追い求めていた。
ガラハッドと盾
サンジェルマンは、アーサー王伝説における最強の騎士は王ではなく、聖なる剣と聖なる盾を持ち、聖杯に至ったガラハッドであると説明した。そこから、王にも剣と対になる盾が存在したのではないかという疑問が生まれた。サンジェルマンは、エクスカリバーに匹敵する盾と、それに選ばれる人間を探していた。
クイーンアンの可能性
サンジェルマンは、アーサー王に双子の妹クイーンアンがいたという噂を語った。クイーンアンの存在は証明されなかったが、王の血筋や盾の伝説に抜け道が残っているという事実こそが重要だった。彼女は、王の伝説が終わっていない可能性を追い、剣の対となる盾を求め続けていた。
アンの盾
サンジェルマンは、ダイヤノイドに隠されていた黄金の巨大な盾を藍花悦に示した。彼女はそれを、存在しない者の暗喩であるクイーンアンにちなんでアンの盾と呼んでいた。盾は放送局への貨物コンテナに偽装されて運び込まれる予定だったが、サンジェルマンは麦野沈利達が別のサンジェルマンに気を取られている間に回収していた。
盾の鍵
アンの盾には血液を利用したセーフティロックがあり、合致する遺伝情報がなければ起動できなかった。サンジェルマンは、アーサー王の遺品に残る血痕と近似する遺伝配列を持つ人物を探すため、能力開発で生徒達のDNAマップが保存されている学園都市に目をつけた。その照合の結果、盾を起動できる人物として藍花悦に辿り着いた。
盾の王
藍花悦は、伝説の武具を起動できる人物がいるなら、自分とは違う特別な人間だろうと考えていた。だがサンジェルマンは、その人物こそ藍花悦であると告げた。藍花悦は、ただの偶然によってアンの盾に選ばれた盾の王だと示された。
上層への移動
一方、浜面仕上は運搬着でエレベーターシャフトをよじ登り、上条当麻はその背部機関ユニットにしがみついていた。上条は、サンジェルマンが藍花悦に魔術を使わせようとしている可能性を語った。魔術は能力者でも使えるが、学園都市の能力者が使えば超能力と競合し、血管や神経に深刻な損傷を受ける危険があった。
藍花悦の危機
上条は、藍花悦が魔術を使わせられれば、自分達の敵になるだけでなく、本人も命を落とす危険があると説明した。浜面はその悪趣味さに怒り、フレンダ=セイヴェルンの本当の秘密を掴む必要があると理解した。二人は、藍花悦を呪縛から解く鍵を探すため、上層マンションエリアへ向かった。
秘密の金庫
上層マンションエリアは、人が住む場所というより、VIP達が秘密を隠す巨大な金庫のような場所だった。両開きの扉が並ぶその空間では、どの部屋も不正に開けられてはならない価値を持っていた。浜面は、それでもフレンダの部屋を探し出すため、錠前破りなら任せろと告げた。
盾の王への跪拝
藍花悦は、サンジェルマンからアンの盾に選ばれた盾の王だと告げられ、意味を理解できずにうろたえた。金髪の女性の姿をしたサンジェルマンは騎士のように膝を折り、藍花悦を格子内のポジティブな空隙と呼んだ。彼女は、自分が信じてきたものが報われたのだと熱を帯びて語った。
サンジェルマンの悲願
藍花悦は、自分を知らないはずのサンジェルマンがなぜ夢を預けられるのかと問うた。サンジェルマンは、自分が王になるのではなく、伝説の頂点の傍らに立つことこそ悲願だったと答えた。魔術師にも魔神にもならず、サンジェルマンという第三の存在であり続けるため、仕えるに足る真の王を探していたのである。
偽薬の時間割り
サンジェルマンは、藍花悦の能力開発にそっくりな偽薬が使われていたため、彼が無能力者と判定されるのは当然だったと語った。英国は稀少な魔術の才を学園都市へ預けており、全てはこの一度の羽化のためだったという説明だった。藍花悦は、これまでの失敗や屈辱が盾へ繋がるものだったかのように感じ始めた。
拒まれた王の力
サンジェルマンは、藍花悦が指定すれば世界の理不尽や不快なものを魔術で吹き飛ばすと約束した。だが藍花悦は、隠された才能や本当の力に憧れがあったことを認めながらも、人を傷つけることを前提にした力は望んでいないと拒んだ。力は守るためにあるものであり、傷つけて自分を証明するのは違うと考えたのである。
フレンダの遺産
サンジェルマンは、藍花悦の拒絶に対し、フレンダ=セイヴェルンの遺産を忘れたのかと囁いた。遺産という言葉の意味を考えれば、フレンダの死を避けて通れないと示したのである。さらに、人の死には理由があり、その理由とかち合った時でも他を傷つける力を不要と言い切れるのかと問いかけた。
フレンダの部屋
上条当麻と浜面仕上は、上層マンションエリアでフレンダの隠れ家を探していた。無数の部屋が並ぶ中、浜面はフレンダのパスワードの癖から部屋を絞り込んだ。彼は非常用の開錠手段を突き、厳重な両開きの戸を開けた。
秘密の隠れ家
フレンダの部屋は住居というより、高級な貸金庫に近い空間だった。浜面は爆薬や自爆装置などを警戒し、床板や襖、スイッチ、赤外線、ワイヤー、鉢植えまで注意するよう上条に告げた。二人は、藍花悦が求める何かを探すため、最初の襖を開けた。
データの遺産
屋上でサンジェルマンは、フレンダの部屋を直接見たわけではなく、ダイヤノイドに保管されたDNAコンピュータ内のデータから秘密を知ったと語った。藍花悦がフレンダの遺産の正体を問い詰めると、サンジェルマンはタブレット端末を差し出し、それは藍花悦自身が選択した後悔だと告げた。
友人の最期
藍花悦は画面に映ったフレンダの凄惨な最期を見て絶叫した。彼は、真実を知れば不安が消え、また友人と笑えると思ってここまで来たが、そこにあったのは受け入れがたい死の光景だった。藍花悦は、人の死には終わりの後にも尊厳を守られるか踏みにじられるかの続きがあると知り、涙を止められなくなった。
上条当麻の不在
サンジェルマンは、フレンダの悲劇に足りなかったものは上条当麻だったと語った。上条がそこにいれば誰かを救っていただろうと断言し、麦野沈利だけを裁くのではなく、悲劇を生んだシステムを裁くべきだと誘導した。藍花悦は、なぜ誰も間に合わなかったのかという思いを強めていった。
アンの盾の受領
サンジェルマンは、フレンダの遺産が悪用されれば死後の名誉まで傷つくと告げ、藍花悦へアンの盾を差し出した。藍花悦は全てを明らかにすると決め、まず上条当麻が何に関わり、何に関われなかったのかを確かめようとした。同時に、もし上条の不在が罪なら、同じく間に合わなかった自分も裁かれるべきだと考えていた。
アンの盾の力
藍花悦はアンの盾に何ができるのかを尋ねた。サンジェルマンは、それは盾そのものではなく、盾を通して整えられた藍花悦自身の力だと説明した。アンの盾は、相手を極小の光で穿つ究極の防御用霊装であり、最大で二〇〇万の騎兵を同時に射抜く効率を持つ、横殴りの死の雨を放てるものだった。
誕生日プレゼントの部屋
浜面仕上と上条当麻が襖を開けると、そこには爆弾や製造設備ではなく、色とりどりの包装紙とリボンで飾られた箱が大量に置かれていた。壁のカレンダーには多くの誕生日が書き込まれており、フレンダ=セイヴェルンが多数の知人へ贈る誕生日プレゼントを準備していた場所だと分かった。
フレンダの柔らかい顔
浜面は、そこがフレンダにとって表の顔でも裏の顔でもない、最も無防備な部分をしまっていた場所だと感じた。フレンダは悪に属する少女だったかもしれないが、それだけでこの部屋に残された優しい一面まで否定できるわけではなかった。誕生会の余興を練習する映像を見た浜面は、それを麦野沈利には見せないと決めた。
防犯カメラの特権
部屋の壁には、ダイヤノイド全体の防犯カメラ映像を確認できる端末があった。上条と浜面は、それがVIPに安心を売るための特権であり、他の客のプライバシーを差し出す仕組みだと気づいた。フレンダはその機能に気づきながらも、この部屋では現実を思い出させるものとして封印していたらしかった。
屋上の藍花悦
防犯カメラには、屋上庭園でサンジェルマン達に囲まれる藍花悦が映っていた。アネリは断片的に会話を読み取り、サンジェルマンが藍花悦を盾の王と呼び、上条当麻への復讐や盾の使用を促していることを示した。浜面は、自分が運んだコンテナは盾ではなく番組用の柱時計のはずだと叫び、状況の矛盾に混乱した。
弱い幻想
浜面は、学園都市の冷酷な序列の中で無能力者が秘められた才能や抜け道にすがりたくなる気持ちを理解した。藍花悦は強い人間ではなかったかもしれないが、そこを突かれたことを笑う資格は誰にもなかった。上条もまた、フレンダの死を自分が間に合わなかったせいだと藍花悦が思い込んでいる可能性を認めた。
否定された努力
浜面は、上条がいればフレンダを救えたというサンジェルマンの理屈に怒った。それは、あの最悪の状況で血みどろになりながら生き残ろうとした者達の努力を、上条一人の有無で全否定するようなものだった。上条は、自分は世界を都合よく回しているわけではなく、ただ自分の見たい未来のために戦ってきただけだと語った。
サンジェルマンの狙い
上条は、サンジェルマンが藍花悦を使って自分を単純に殺そうとしているのではないと考えた。能力者である藍花悦に魔術を使わせ、上条とぶつけたうえで藍花悦を死なせ、自分に人殺しの咎を背負わせることが狙いではないかと推測した。上条は、藍花悦を弱い存在として利用しようとするサンジェルマンに怒りを覚えた。
藍花悦を助ける決意
浜面は、藍花悦が上条を殺そうとしているのだとしても助けに行くのかと問うた。上条は、それでも関係ないと答え、藍花悦が救いを求めていなくても無理やり引きずり上げると決めた。浜面は、上条のわがままの中身が誰かの笑顔を守ることなのだと理解した。
盾を奪う作戦
上条は、まず奇襲で藍花悦の手からアンの盾を落とし、魔術の副作用が起きないようにすると考えた。その後は、藍花悦の復讐心が満たされれば戦う理由を失うため、自分が標的として殴られればよいと語った。浜面はその考えに戦慄しながらも、藍花悦を連れ出すためには運搬着が必要だと理解した。
新たな異常表示
二人が作戦を考えていると、ダイヤノイド全景を映すワイヤフレームの根元付近に新しい赤い光点が点滅した。フレンダの部屋の玄関が破られた時と同じ異常表示であり、別の場所でも何かが起きたことを示していた。上条はその光点に触れ、表示された映像を確認しようとした。
地下のサンジェルマン
サンジェルマン達はダイヤノイドの地下を進み、建物の基部に隠された人工重力制御装置を確認した。ダイヤノイドは地表からわずかに浮いており、その仕組みは人工ダイヤの量産だけでなく、悪用すれば矮星爆弾に近い破壊力を生む可能性があった。サンジェルマンは、上条当麻や藍花悦そのものではなく、魔神達に対して挑むための舞台を整えていた。
最下層の藍花悦
藍花悦はアンの盾を持って最下層へ現れた。サンジェルマンは、ここが最後の舞台であり、上条当麻は必ず異変に気づいて駆けつけると告げた。藍花悦は、なぜフレンダ=セイヴェルンの時には誰も間に合わなかったのかを考え、それが自分自身への問いでもあると感じていた。
アイテムの迎撃
絹旗最愛と麦野沈利は、サンジェルマン達の槍を相手に戦っていた。絹旗は窒素装甲で槍を防ぎ、槍の先端にある細い部分が対象に穴を開ける仕組みを見抜いた。麦野は義眼と義手を使って槍をへし折り、二人はサンジェルマン達が勝利ではなく時間稼ぎを目的にしていると察した。
重力装置の開示
サンジェルマン達が退くと、薄型モニタにダイヤノイド最下層の異常情報が表示された。麦野達は、そこにあるグラビトン式免震構造が悪用されれば、星を圧縮するほどの危険があると理解した。情報が開示されたのは、誰かを誘い込むためであり、麦野と絹旗は介入することを選んだ。
オティヌスの移動
滝壺理后は逃げ回るオティヌスを一度捕まえたが、オティヌスは噛みついて逃げ出し、ダクトの中を進んだ。オティヌスは、サンジェルマンが上条を最下層へ誘い込んでいると判断し、インデックスと合流してサンジェルマンの魔術構造を解明する必要があると考えた。途中で三毛猫に捕まりながらも、インデックスのもとへ辿り着いた。
本命への疑問
上条当麻と浜面仕上は、フレンダの部屋から重力爆弾の情報を他の仲間に共有した。浜面は藍花悦が囮で、重力爆弾こそ本命だと考えたが、上条は藍花悦を経由しなければこの情報に辿り着けなかった点から、その見方に疑問を示した。上条は、サンジェルマンの本当の目的は藍花悦でも重力爆弾でもないと考え始めた。
ネットワークの攻略
上条は、サンジェルマン達が無線などを使わずに意思を共有していることから、全員が中心であり末端でもあるネットワークのような存在だと推測した。そのため、どの個体を攻撃しても全体へ介入できる可能性があると考えた。上条は、インデックスなら魔道書の知識を使って、サンジェルマン全体を冒す手段を組めるかもしれないと判断した。
浜面仕上の選択
上条は、自分が藍花悦を引き受け、浜面には重力爆弾を止めてほしいと頼んだ。しかし浜面は、フレンダが死んだ時にその場へいたのは自分であり、自分が間に合わなかったからフレンダは死んだのだと告げた。浜面は藍花悦の復讐に付き合う筋があるのは自分だと考え、上条を部屋に閉じ込めて一人で最下層へ向かった。
上条当麻の脱出
上条は浜面を止めようとしたが、カーボン素材の襖は破れなかった。そこで彼は、誕生日プレゼントの山の中から何かに気づき、食事用ワゴンに重い調度品を積んで襖へ叩きつけた。襖を破って脱出した上条は、浜面を追うためにエレベーターシャフトへ飛び込んだ。
重力装置への接近
麦野沈利は原子崩しで階段の扉を焼き切り、滝壺理后と絹旗最愛を伴って重力装置の近くへ向かった。彼女達は、フレンダが何かを仕込んでいれば重力爆弾になっている可能性があると考えた。麦野は、問題を解決して帰るだけだと簡単に言い切った。
クイーンアンの盾
インデックスとオティヌスは、藍花悦の持つ盾をクイーンアンの盾だと見抜いた。しかしそれは本来存在しない伝承に近いものであり、現物を見せられればそうだと判断できるが、根拠は曖昧な存在だった。インデックスは、サンジェルマンが自ら証拠を作って歴史を与えた紛い物だと見なしつつ、それでも魔術である以上、能力者が使えば副作用で危険だと判断した。
浜面仕上の名乗り
最下層で藍花悦の前に現れたのは、上条ではなく浜面仕上だった。浜面は、自分がアイテムの一員であり、フレンダの名で誰かが死ぬなら止めるのが自分の仕事だと告げた。藍花悦は上条ではなく浜面を相手にすることを受け入れ、サンジェルマンは望んだ流れが崩れたことでわずかに焦りを見せた。
藍花悦の復讐
藍花悦は、復讐とは相手を傷つけることではなく、自分自身を削り殺していく行為だと気づいていた。それでも、フレンダを捨てて前に進むことだけはできず、報復の装置になることを選ぼうとしていた。彼は黄金色の盾を構え、浜面を殺した後に上条も殺し、すべてを明らかにすると告げた。
上条当麻の切り札
上条は柱の陰から藍花悦と浜面を見ていた。彼は、藍花悦が本当に友人のために動いているなら止まれるはずだと考え、最後の切り札を使うことにした。上条が滑らせたのは、フレンダが藍花悦の本当の名前である加納神華へ贈った誕生日プレゼントだった。
加納神華の名前
プレゼントから流れたフレンダの声は、加納神華の誕生日を祝うものだった。フレンダは、彼が泣き虫でありながら理不尽の前で道を踏み外さない強さを持つことを認め、誇ってよいと語っていた。その言葉によって藍花悦の仮面は砕け、彼は自分の本当の名前が加納神華であることを思い出した。
友人の尊厳
加納神華は、フレンダの死を復讐の燃料にしていた自分の過ちを認めた。そして、フレンダの死を利用し、踏みにじり、殺しの道具として使い倒したサンジェルマンを認めないと告げた。彼はフレンダから贈られた懐中時計とメッセージカードを手に取り、どういたしまして、フレンダと応じた。
サンジェルマンへの宣言
サンジェルマン達が加納神華を処分しようとした瞬間、上条当麻と浜面仕上が割り込み、槍の雨を切り崩した。さらに麦野沈利、インデックス、オティヌス、ステファニー、滝壺理后も現れた。加納神華は二人のヒーローを左右に従え、サンジェルマンに対し、踏みにじった友人の尊厳を一つ残らず返せと宣言した。
行間 三
第二三学区の武器庫
木原脳幹は、第二三学区にある航空機用整備場のような巨大な武器庫へ足を運んだ。そこには射出用コンテナや大型トレーラーが並び、彼にとっては状況に応じた装備を選ぶウォークインクローゼットのような場所だった。彼の目的は、物理法則で安定した世界に対するイレギュラーである魔術を撃滅することであり、目下の仮想敵は動き出した魔神達だった。
木原の始祖
木原脳幹は、魔術師や魔神に恨みを持っているわけではなかった。彼は、自分を今の姿にした木原の始祖達を知っていた。木原という概念は近世に集束されたものであり、始祖達は最初から完成された怪物ではなく、科学へ進む己を止められずに苦悩するただの人間だった。
知性を与えた手
木原脳幹に知性を与えた誰かは、彼の頭を撫でながら謝っていた。常識人としては苦しみ、研究者としては実験成功を喜んでしまう複雑な人々だった。世の全てを科学で説明できれば絶望が生まれる一方で、理不尽が人を殺す機会を奪う優しい世界にもつながるかもしれないと考えていた。
遺された木原
始祖達はすでに世を去っていたが、彼らは木原という存在を定義し、人の知性で世の理不尽と戦い続けた。その結果が現在の木原達へ繋がっていた。木原脳幹は魔術サイドへの恨みも、始祖達が願った世界への強い関心も持たなかったが、それでも彼らが遺した木原がここにいると心の中で告げた。
対魔術式駆動鎧
木原脳幹が命令を飛ばすと、射出用コンテナを載せた大型トレーラーが一斉に起動した。対魔術式駆動鎧の外装群を従えたゴールデンレトリバーは、闇の向こうを見据えた。彼は、自分を心持つ存在に昇華させた人々のため、ただひたすら木原らしくあろうとしていた。
第四章 ただ一つ突き抜ける Hand_Made_ROUTE.
結晶構造との対峙
最下層では、金髪の女性の姿をしたサンジェルマンが中心に立ち、加納神華達を迎え撃った。サンジェルマンは、自分が魔術師でも魔神でもない第三の分類であり、個が集まった程度で強固な結晶構造を倒せるはずがないと語った。加納神華はその言葉を退け、戦うなら来いと真正面から挑発した。
四人の防衛線
サンジェルマンは、全周から五〇〇〇以上のシャンボールを加納神華へ殺到させた。だが上条当麻の幻想殺し、浜面仕上の運搬着、麦野沈利の原子崩し、絹旗最愛の窒素装甲が同時に動き、加納神華を囲む形で槍の束を破壊した。狙いが加納神華一人に集中していたため、四人の規格外の力で防衛線が成立した。
シャンボールの根
麦野は金髪のサンジェルマンへ原子崩しを放ったが、サンジェルマンはシャンボールで受け止めた。彼女は、これまで槍と呼ばれていたものはシャンボールの根に過ぎず、枝や幹はさらに耐久性が高いと語った。サンジェルマンは、有機物と炭素と生命を統べる秘法の真髄を見せると告げた。
植物質の猛獣
サンジェルマンは、植物質を分解・再構成した異形の猛獣を生み出した。蠍のような巨虫は、植物の根や捕食嚢を備え、尾の先にサンジェルマンの上半身を持っていた。麦野の原子崩し、浜面の運搬着、絹旗の窒素装甲、上条の幻想殺しで進軍は止まったが、怪物はさらに分裂し、鰐や蛸のような形へ変化した。
一酸化炭素の罠
蛸のようになった植物質の怪物は、一酸化炭素を撒き散らした。浜面はアネリの分析で危険を察知し、麦野に空気を焼くよう叫んだ。麦野の閃光により、一酸化炭素は比較的安全な二酸化炭素へ変換され、毒素のもやは消えた。だが金髪のサンジェルマンは、さらに蜘蛛、カマキリ、ガラガラヘビのような植物質の装甲を持つサンジェルマン達を出現させた。
第三の分類への挑発
サンジェルマンは、個人の枠を超えなければ自分とは相対できないと告げた。植物質の装甲をまとったサンジェルマン達は、槍の雨と共に一斉に襲いかかった。攻撃は、引火、ダイヤモンドカッター、粉塵爆発、植物質の乗り換えなど多彩で苛烈になっていった。
上条当麻への渇望
上条と金髪のサンジェルマンは至近距離でぶつかり合った。サンジェルマンは、魔神達が求めているのは上条当麻であり、オティヌスが彼を独占したことに嫉妬したのだと語った。さらに自分は因果や位相を超えてどこかに必ず発生する存在であり、魔神に劣るものではないと主張した。
ロールプレイの正体
上条は、サンジェルマンの行動には合理性がなく、すべてが支離滅裂だと指摘した。藍花悦を利用すること、重力爆弾、アンの盾、上条への襲撃はどれも目的が噛み合っていなかった。彼は、サンジェルマンが一〇年越しの恨みや長年の悲願のような設定を五秒で作り出し、自分の記憶を上書きしているだけだと見抜いた。
普通の魔術師
上条は、サンジェルマンは第三の分類でも魔神でもなく、ただ普通の魔術師だと断じた。最初の襲撃時に彼が立ち去ったのは、インデックスやオティヌスのように真実を知る相手と顔を合わせ、嘘を暴かれるのが怖かったからだと指摘した。さらに、本当にサンジェルマンなのか、それともそう名乗ることで楽になれる別人なのかと問い詰めた。
逃げられない始まり
サンジェルマンは、自分は本物だと早口で言い訳を重ねたが、その額には汗が浮かんでいた。上条は、彼がどれだけ嘘や記憶を上書きしても、魔術師になった始まりからは逃げられないと告げた。受け入れられない現実を覆すために魔術師になった以上、その嘘の始まりは免罪符にならず、自分自身だけは騙せないと突きつけた。
ペテン師への宣告
上条は、サンジェルマンに対し、自分の心に自分で語れと告げた。金髪のサンジェルマンは怒りを露わにし、再びシャンボールの槍を放ったが、浜面が植物質の蜘蛛を盾にして防いだ。上条は、それでもサンジェルマンが自分自身から逃げられないことを重ねて指摘し、再び激突が始まった。
放送局の切断指示
ダイヤノイド中層のテレビオービット制作局では、放送を悪用されることを恐れた局員達が回線やケーブルの切断を急いでいた。放送局が占拠された場合、誤情報の拡散は人命に直結するためである。しかし彼らは、背後から迫る足音が示す事態までは想定していなかった。
ステファニーの撃墜
最下層では、麦野沈利や絹旗最愛が槍や植物質のケモノを抑え、ステファニーがPDWでサンジェルマン達を横から撃ち倒していた。彼女の銃撃は高圧ガス式の模擬弾でありながら屋内戦では十分な威力を持ち、サンジェルマン達を脳震盪で無力化していた。サンジェルマンの数が減るにつれ、全体の攻撃パターンも崩れ始めた。
サンジェルマン解除の糸口
麦野、絹旗、ステファニーが前線を抑える一方、インデックスとオティヌスは倒れたサンジェルマンを調べていた。サンジェルマンは演技性のトランスによって人格を書き換え、結晶化に適した状態へ純化されていると分かった。インデックス達は、魔道書の原典の毒を使うまでもなく、儀式中の気付けに似た技術で支配を解除できると判断した。
放送による拡散
金髪のサンジェルマンは、ダイヤノイド内に閉じ込めた人々とテレビオービットの放送局を利用し、サンジェルマンをさらに拡張しようとしているかのように振る舞った。全館のモニタにはノイズ混じりの映像が流れ、浜面仕上はそれが外部へ放送されているのではないかと動揺した。だが上条当麻は、映像だけで人類全体をサンジェルマン化できるなら、すでにそうしているはずだと見抜いた。
丸薬というトリガー
上条は、サンジェルマンが焦って嘘をついた理由を突き詰めた。そこへ加納神華が、サンジェルマンが常に口にしていた丸薬こそが鍵だと指摘した。サンジェルマンの本領が炭素を利用した方法論にあるなら、情報的な刷り込みだけでなく、丸薬に含まれる何かが最後のトリガーになっているはずだった。
微生物の正体
丸薬は、乾燥状態で生命活動を止め、水分を得ると活動を再開して人体を冒す微生物を束ねたものだった。それはサンジェルマンという結晶全体の性質を左右する不純物であり、コントローラや設定ファイルに相当するものだった。新参者や不安定な者を安定化させるために使われるその存在が、サンジェルマンをサンジェルマンたらしめていた。
好奇心の罠
インデックスは倒れたサンジェルマンの断片的な反応から、丸薬の仕組みや製法に関わる情報へ踏み込みかけた。しかしオティヌスは、そこで騙されるなと遮った。サンジェルマンが人を騙すために使うのは信憑性ではなく好奇心であり、重要なのは余計な神秘の奥へ進むことではなく、目の前の支配構造を解除することだった。
ネットワークの崩壊
インデックスとオティヌスの介入により、サンジェルマンの内部構造はネットワークごと崩され始めた。金髪のサンジェルマンは全身を震わせ、植物質の獅子をまとって抵抗しようとしたが、上条の右拳でその動きは崩れた。上条は、サンジェルマンの最大の間違いは敵の名を見誤ったことだと告げた。
加納神華の拳
サンジェルマンの本当の天敵は、最初から隣にいた加納神華だった。上条は、加納神華が迷っていただけであり、歯車が正常に回れば彼が負ける理由はないと見ていた。加納神華は、踏みにじられた友人の尊厳を返してもらうため、生まれて初めて本気でサンジェルマンを殴りつけた。
サンジェルマンの壊滅
加納神華の一撃と、丸薬という設定ファイルの喪失によって、サンジェルマンのネットワークには致命的なエラーが広がった。純度の高いダイヤがわずかな不純物で曇るように、サンジェルマンという巨大な結晶構造は崩壊へ向かっていった。
終章 狂熱の胎動の終わり CRAZY_1st_cry.
重力装置の応急処置
浜面仕上は、ダイヤノイド最下層のキャットウォークで、異音を立てるグラビトン式人工重力制御装置の応急処置に追われていた。麦野沈利と絹旗最愛は軽い調子で浜面に対応を押しつけ、最下層から離れていった。浜面は泣き言を言いながらも、運搬着の剛腕で蒸気の噴き出す継ぎ目を押さえ込んだ。
滝壺理后との再会
浜面のもとへ滝壺理后が現れ、地上の出入口が開放され、じきに警備員も来ると伝えた。滝壺は浜面に寄り添おうとしたが、運搬着の行動補助プログラムであるアネリが勝手に回避したため、浜面は慌てて弁解した。さらにアネリが滝壺へ足払いをかけようとし、浜面は修羅場めいた状況に陥った。
解放されたダイヤノイド
サンジェルマン撃破によってダイヤノイドの封鎖は解け、閉じ込められていた少年少女達は一斉に外へ殺到した。加納神華も人波に呑まれかけたが、上条当麻がその手を掴んだ。二人は夜の第一五学区に放り出され、しばらく仲間との合流は難しいと判断した。
加納神華の選択
上条は警備員へ事情を話すつもりだったが、加納神華も隠すことはないとして同行を選んだ。彼は、自分の一人称がすぐには変わらないことを苦笑しつつ、フレンダ=セイヴェルンの真実に届けたことに満足していた。助けることはできなかったが、彼女が確かに存在したと認められたことが、加納神華にとって意味を持っていた。
主役としての加納神華
加納神華は、最後にサンジェルマンへとどめを刺す役をなぜ譲ったのかと上条に尋ねた。上条は、主役は加納神華だったからだと答えた。超能力者の肩書きも、存在しない伝説の盾も必要なく、一人の少年はただそれだけで世界を救う資格を持っていたのである。
次の藍花悦
別の学生寮の一室では、中学生くらいの少女が、三日おきに続くデスゲームに追い詰められて泣いていた。友人達はロストし、次回ゲームで処分される危機にあり、少女には状況を打開する手段がなかった。そこへ届けられた封筒には、身分を書き換えるための資料と、学園都市第六位・藍花悦の名が記されたカードが入っていた。
世界の裏側への招待
外では、不良少年が電話で、藍花悦の名が別の者へ移ったことを報告していた。彼は第六位の力があれば直接救えるはずだと相手を罵りながらも、次の藍花悦の逃走支援役を引き受けた。少年は学生寮を振り返り、新たな藍花悦を世界の裏側へ迎え入れた。
魔神達の歩行術
ダイヤノイドから少し離れた公園では、僧正、ネフテュス、娘々がサンジェルマン撃破を確認していた。彼らは、ゾンビの術式を利用して無限の力を無限に等分し、世界を壊さずに歩ける状態へ自分達を調整していた。これにより、魔神達は薄氷のような世界を順当に歩く術を手に入れ、上条当麻を次の目的として見据えた。
アレイスターの罠
公園のスピーカーからアレイスターの声が響き、魔神達へ干渉が始まった。アレイスターは、魔神達が共通の術式を自らに投じる瞬間を利用し、内部構造へ新たなパラメータを書き込んでいた。僧正は、ゾンビの術式を先に奪えなければ不可能だと反論したが、その直後に術式の主であるゾンビが拘束された状態で空から落とされた。
木原脳幹の宣戦布告
ゾンビを投下したのは木原脳幹だった。彼は電磁カタパルトを畳みながら、始祖達の遺した心をどう使うかという生き様の問題として、魔術との戦いへ踏み出した。宣戦布告は終わり、ここからは科学と魔術の本格的な潰し合いが始まると受け止めていた。
ローラの盤上
聖ジョージ大聖堂では、ローラ=スチュアートが学園都市、魔神達、イギリス清教の動きを盤上で思案していた。常道なら敵同士をぶつけて疲弊させるが、彼女が最も恐れていたのは、まだ役割の決まっていない存在だった。ローラは、既存の陣営に収まらない少年の名を思い浮かべ、状況はその駒がどう動くかに左右されると考えていた。
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