新約 とある魔術の禁書目録(13)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(15)レビュー
物語の概要
■ 作品概要
『新約 とある魔術の禁書目録(14)』は、科学と魔術が交差する世界を描いたSFファンタジーバトル作品である。本作では、上条当麻の右手に宿る『幻想殺し』と表裏一体の力であり、魔神をも一瞬で消し去る『理想送り(ワールドリジェクター)』を持つ少年・上里翔流が登場する。魔神によって日常を奪われたと怒る上里との激突が描かれる中、南極由来の寄生生命体「サンプル=ショゴス」に蝕まれた妹パトリシアを救うため、自らの命を懸けるレイヴィニア=バードウェイの姉妹のドラマが交差する。上条は、自己犠牲によって解決しようとする姉妹の両方を救うべく、第三の道を模索して奔走する。
■ 主要キャラクター
- 上条当麻:右手に異能を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を持つ少年。自己犠牲を強いる選択を拒絶し、バードウェイ姉妹を両方救い出すために、上里翔流や過酷な運命に立ち向かう。
- 上里翔流:右手に魔神を別世界へ追放する「理想送り」を宿す少年。魔神によって自分の周囲の日常を歪められたと復讐心に駆られており、パトリシアを救う目的で上条たちと対立する。
- レイヴィニア=バードウェイ:魔術結社『明け色の陽射し』のボス。妹パトリシアを蝕む寄生生命体を排除するため、自らの命と引き換えに魔術的な臓器「果実」を体内で育てている。
- パトリシア=バードウェイ:レイヴィニアの妹。南極由来の寄生生命体に寄生されており、自分を救うために姉が死ぬことを拒み、自ら命を絶つことで姉を止めようとする。
- ネフテュス:褐色の肌に包帯を巻いた魔神。上里の襲撃から逃れて上条のもとへ身を寄せる。物語の終盤、パトリシアを救うために自らの身を犠牲にして奇跡を起こす。
- 木原脳幹:高い知性を持つゴールデンレトリバーの姿をした存在。アレイスターの意思を受け、対魔術式駆動鎧(A.A.A.)を操って上里翔流を止めるために絶望的な戦いに挑む。
■ 物語の特徴
本作の最大の魅力は、上条当麻の『幻想殺し』と同格、あるいはそれを凌駕する極大のイレギュラー『理想送り』を持つ上里翔流の登場と、二人の少年の激突にある。同じ「平凡な高校生」でありながら、右手を得たことで正反対の道を歩む二人の対比が深く描かれている。また、互いに自己犠牲を払って相手を助けようとするバードウェイ姉妹の悲壮な決意と、それを許さずに「全員を救う」という理不尽なまでの理想を掲げて奔走する上条当麻のヒーロー性が読者の胸を強く打つ。魔術や科学の論理を超えた、人間の意地や感情がぶつかり合う熱い展開が見どころである。
書籍情報
新約 とある魔術の禁書目録(14)
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2015年11月10日
ISBN:9784048655071
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あらすじ・内容
科学と魔術が交差するとき、物語は始まる――!
異能の力を全て打ち消す右手『幻想殺し(イマジンブレイカー)』
VS負の想念で全てを消し去る『理想送り(ワールドリジェクター)』!
「やあ、幻想殺し」
「だとすると、アンタは理想送りか?」
世界を意のままに、何万回でも塵にすることができる真性の『魔神』達。そんな無敵の存在らを、一瞬で消し去る少年がいた。
少年は『どこにでもいる平凡な高校生』にして、しかし同時に最大最悪の『理想送り』を右手に宿す存在。それは『新たな天地を望むもの』を全て消し去る、恐るべき力だった。そして、もう一人の『どこにでもいる平凡な男子高校生』上条当麻の右手に宿る『幻想殺し』と、表裏一体の存在でもあった。
「幻想殺し。ぼくは『魔神』に用がある。ぼくをこんな風にした『魔神』達に」
「それはお前の事情だろ。俺達には関係ない」
少年二人は、学園都市の暗闇で対峙した。
互いに譲ることができないもののために。
この勝負の鍵を握るのは、レイヴィニアとパトリシア、二人のバードウェイ姉妹で……!?
極大のイレギュラー同士が、ついに激突する……!
感想
上里翔流という新たな存在の登場によって、これまでとは違う緊張感が生まれた一冊である。
「幻想殺し」と対をなす右手、「理想送り(ワールドリジェクター)」を持つ少年。
上里も上条当麻と同じように、自分を平凡な高校生だと考えている。しかし、特殊な力を得た後に選んだ道は、上条とは大きく異なっていた。
似た立場にいるからこそ、二人の違いがより鮮明に見える。
困っている人がいれば、自分が傷つくことも構わず手を伸ばす上条。
一方で、自分の力によって周囲の人間が変わってしまったと考え、その状況そのものを強く拒絶する上里。
どちらにも譲れない考えがあり、単純な正義と悪の対立ではないところが興味深かった。
特に心に残ったのは、レイヴィニアとパトリシアのバードウェイ姉妹をめぐる物語である。
姉は自分の命を差し出してでも妹を助けようとする。
妹は姉が犠牲になることを拒み、自ら死ぬことで問題を終わらせようとする。
互いを大切に思っているからこそ、どちらも自分を犠牲にしようとする。その姿は美しくも見えるが、読んでいてあまりにも苦しかった。
そんな二人に対して、上条はどちらの犠牲も認めない。
姉か妹のどちらかを選ぶのではなく、二人とも助ける方法を探し続ける。
現実的ではないと笑われても、他に手がないと言われても、最後まで第三の道を諦めない。その姿には、やはり上条らしい強さを感じた。
上条は万能ではない。
何でも一人で解決できるわけでもない。
それでも、目の前の誰かが犠牲になる結末を簡単に受け入れない。その姿勢こそが、彼をヒーローにしているのだと思う。
上里勢力の暮亞が協力する展開も印象的だった。
敵対する立場にいる者まで巻き込みながら、少しずつ救いへの道が開かれていく。
さらに、魔神ネフテュスが身を挺して奇跡を起こし、パトリシアを救う場面には胸を打たれた。
ネフテュスの行動には悲しさが残る。
それでも、誰かを救うために力を使ったという事実には、魔神という言葉だけでは片付けられない優しさを感じた。
姉妹が共に生き残ることができた結末には、素直にほっとした。
物語が重いからこそ、合間に入る日常の場面にも救われる。
今巻ではインデックスが強制詠唱を使い、戦闘でもしっかり活躍していた。久しぶりに頼もしい姿を見られた気がする。
しかし、その直後には空腹や鍋をめぐって騒動を起こす。
シリアスな場面では知識を生かして活躍し、日常へ戻ればいつもの調子に戻る。この落差には思わず笑ってしまった。
一方で、終盤の木原脳幹をめぐる展開は、読んでいて非常につらかった。
上条との戦いに敗れ、満身創痍となった上里が木原脳幹と交戦する。
理屈では、木原脳幹が普通の犬ではないことは分かっている。
木原一族の一員であり、危険な力と知識を持つ存在である。
それでも、見た目はゴールデンレトリバーである。
その姿をした相手が何度も殴られ、傷つけられていく描写は、どうしても冷静には読めなかった。
木原脳幹だと知らずに近づけば危険なのだろうし、気軽にモフモフできる存在ではない。
それでも、「犬の姿をしたものが死ぬまで殴られる」という光景に強い嫌悪感を覚えた。
上里という人物にも事情や苦しみがある。
しかし、この場面を読んだ後では、簡単に共感することが難しくなった。
そして、瀕死の木原脳幹を前にした木原唯一の姿も忘れられない。
師を失いかけた悲しみと怒りから、彼女は上里への復讐を誓う。
その感情は危うい。
だが、大切な存在を傷つけられた者としての苦しみは伝わってきた。
ここから木原唯一がどこまで変わってしまうのか、不安を感じずにはいられない。
さらに不気味だったのは、すべてを見ながら計画の進行を喜ぶアレイスターである。
登場人物たちが命を懸け、傷つき、苦しんでいる裏側で、それさえも自分の計画の一部として受け止めている。
彼の狂気が強調されるほど、上条たちが戦っている相手の大きさを改めて感じさせられた。
今巻を読んで強く感じたのは、同じような力を持っていても、何を信じるかによって人はまったく違う存在になるということだ。
上条と上里。
どちらも平凡な高校生を名乗りながら、その右手と向き合う方法は正反対である。
二人の対立はまだ始まったばかりに見える。
木原唯一の復讐、アレイスターの計画、そして上里勢力の今後。
多くの火種を残したまま、物語はさらに危険な方向へ進み始めた。
次巻で誰が敵となり、誰が救いを求めることになるのか。続きが気になって仕方のない一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
幻想殺しと理想送り
上条当麻の右手に宿る「幻想殺し(イマジンブレイカー)」と、上里翔流の右手に宿る「理想送り(ワールドリジェクター)」は、魔術師たちの相反する願いから生まれた、表裏一体ともいえる極大のイレギュラーである。ここでは、世界を元に戻すための基準点としての力、異世界へ追放する「新たな天地」の力、二人の少年の思想的な対立、そして直接対決の結末を解説する。
世界の基準点として働く「幻想殺し」――復元機能と魔術師たちの無意識の願い
上条当麻の「幻想殺し」は、あらゆる異能の力を容赦なく打ち消す性質を持つ。
・その正体は、魔術師たちが世界を好き勝手に改変し、破綻させてしまった場合に備えるための機能である。
・いつでも元の世界へ復元(レストア)できるよう、無意識に求められた「世界の基準点」であり、「修復点」ともいえる。
・つまり、現在の世界を守り、修復し、どうにか維持しようとする理想の集合体なのだ。
・全世界の魔術師たちが抱く夢が、上条当麻という個人の魂の輝き(神浄の討魔)に引き寄せられ、その結果として右手に宿った。
現実世界の放棄と異世界への追放――願望の重複を条件とする「理想送り」
これと完全に対をなすのが、上里翔流の「理想送り」である。これは、「幻想殺し」にすがり続けても安心は得られないのではないか、という疑問から生まれた。
・「幻想殺し」に頼り続けても救われないのではないかと疑問を抱いた魔術師、すなわち魔神たちの願望が凝縮されて生まれた力である。
・現在の世界を捨て、諦め、どこか別の異世界へ旅立とうとする幻想の集合体でもある。
・対象を殺すのではなく、「新たな天地」と呼ばれる未知の別世界へ追放し、この世界から抹消するほどの絶大な力を持つ。
・無敵とされる魔神たちでさえ、一瞬で消し去ることができる。
・発動には、自身の腕が作る「影」を起点とするという特性に加え、「願望の重複」という大きな条件がある。
・相反する願いを同時に抱く者には有効だが、「この世界で姉を救う」という目的が一つに定まり、揺らぎのない人間には効果を発揮しない。
「平凡な高校生」同士の思想的衝突――魔神への復讐と打算のない救済
「幻想殺し」を持つ上条と「理想送り」を持つ上里は、どちらもどこにでもいる平凡な高校生を自称している。しかし、二人は対極にある思想を抱え、激しく衝突する。
・上里は、魔神たちにこの力を押し付けられたせいで、自分の日常が壊されたと考えている。
・周囲にいた普通の少女たちが、異形の力を持つ存在へと歪められたことから、魔神たちへの復讐として彼女たちを追放し続けている。
・一方の上条は、上里が自分の心の弱さや他者の善意への不信を魔神のせいにしているだけだと見抜いた。
・上条は、目の前にいる人々を打算なく救うという姿勢を貫き、上里と真正面から対立する。
右手の消失と未知の力の反撃――上里の敗走
二人の右手の力が直接ぶつかり合った結果、能力同士には明確な相性差があることが示された。
・「幻想殺し」の力そのものは、「理想送り」の圧倒的な性質によって容易に消し飛ばされてしまう。
・ただし「理想送り」は、対象を表層から深層へと順番に消していくため、わずかな時間差が生じる。
・そのため、上条の右手が消え去った直後、「幻想殺し」の奥に潜む未知の力が外へ飛び出した。
・上里はこの未知の力による猛烈な反撃を受けて重傷を負い、敗走を余儀なくされた。
まとめ
「幻想殺し」と「理想送り」の対立は、世界を守り維持しようとする「基準点」の力と、現在の世界を捨てて「新たな天地」へ向かわせようとする力の衝突である。同時にそれは、魔神たちの相反する願望を背負った上条と上里による、思想的なぶつかり合いでもある。
直接対決では、「理想送り」によって「幻想殺し」が消し飛ばされる。しかし、右手の奥にあった未知の力が現れ、上里に重傷を負わせて退ける結果となった。
この一連の展開が描いているのは、単なる能力の優劣だけではない。二人が守ろうとする日常や生き方の違いそのものが、ここには表れている。魔神の思惑や右手に課された理不尽な運命に抗いながら、上条たちは自らの信念と他者とのつながりを力に、未来を切り拓こうとしている。
魔神の居候生活
『新約 とある魔術の禁書目録』では、上条当麻の学生寮を舞台に、魔神たちとの奇妙な共同生活が繰り広げられる。にぎやかでコミカルな日常の裏側では、彼らを取り巻く状況が少しずつ深刻さを増していく。居候の増加による生活苦、小さくなったオティヌスの受難、ドールハウスをめぐる騒動、そして上里翔流の登場がもたらす新たな脅威まで――その流れを以下にまとめる。
魔神ネフテュスの宅配便乱入と、冷蔵庫に味噌と醤油のみが残る食糧事情の悪化
身長15センチの姿となった魔神オティヌスが居候する上条の部屋に、さらに新たな同居人が加わることになる。
・魔神ネフテュスは、宅配便の段ボール箱を突き破るようにして転がり込んできた。
・その結果、インデックスや三毛猫のスフィンクスも含め、上条の部屋はますます過酷な大所帯となった。
・もともと生活に余裕のない上条にとって、居候の増加は大きな痛手だった。食糧事情も悪化の一途をたどる。
・ついには冷蔵庫に味噌と醤油しか残っていないという、切実な状況にまで追い込まれた。
地獄の獣と化した三毛猫スフィンクスの追跡と、肉球攻撃に晒されるオティヌスの受難
かつて世界を破壊しかねない力を持っていた魔神オティヌスも、今の小さな姿では日常のあらゆるものが脅威となる。
・身長15センチの彼女にとって、三毛猫のスフィンクスはケルベロスやオルトロスにも等しい、まさに地獄の獣だった。
・猫に追い回され、容赦ない肉球攻撃を必死でかわす日々を送ることになる。
・ときには口にくわえられて連れ去られるなど、かつての全能の威厳からは想像もつかない苦労を重ねていた。
第十五学区ダイヤノイドでの買い出しと、魔術師サンジェルマン事件への誘因
スフィンクスから身を守るため、オティヌスは上条に防衛拠点を用意するよう求めた。
・猫に侵入されない「自分だけの居場所」として、本格的なドールハウスを避難場所にしたいと望んだ。
・テレビで紹介された第十五学区の巨大複合施設・ダイヤノイドにある商品を指定する。
・上条は、セレブ御用達のおしゃれな場所へ行くことに強い気後れを感じていた。
・しかし、このドールハウスを買いに行くことが、ダイヤノイドで起きる魔術師サンジェルマンの凄惨な事件へ巻き込まれる決定的なきっかけとなる。
上里翔流の理想送りによる魔神娘々追放と、オティヌスに迫る世界廃棄の警告
こうした騒がしい共同生活のさなか、合流したネフテュスは上条たちに深刻な危機を告げる。
・右手に「理想送り(ワールドリジェクター)」を宿す少年・上里翔流によって、娘々をはじめとする魔神たちが次々と「新たな天地」へ追放されたのだと明かす。
・上里が、すべての魔神を容赦なく追放しようとしているという脅威が示される。
・上条のそばで暮らすオティヌスにも、その手が迫っていると警告される。平和に見えた日常の裏には、最大級の危機が潜んでいた。
まとめ
魔神たちの居候生活を巡る一連の顛末は、ネフテュスの乱入による極限の食糧難や、地獄の獣さながらのスフィンクスに脅かされるオティヌスの避難場所としてダイヤノイドでのドールハウス購入を試みるなかでサンジェルマン事件の渦中に投じられながらも、上里翔流の「理想送り」によって娘々らが新天地へと追放されたネフテュスの警告を受け止め、魔神の生存権を脅かす最大の刺客に立ち向かい、騒がしくもかけがえのない居候たちとの日常と平穏な暮らしを取り戻すに至る、不条理な日常と世界の存亡が交錯する激闘の記録である。
コミカルな困窮から、生存の危機、魔術的事件への遭遇、そして世界規模の脅威の認知へと繋げたプロセスは、どれほど強大な力を持った存在であっても日常の細微な温もりに適応し、それを守るために知的な結束を固めていく人間ドラマを示している。
最終的に、破滅的な家計の危機や上里がもたらす理不尽な追放のルールを、上条の打算なき救済の意志と確固たる生命力によって打破し、自らの未来と小さき居候の笑顔を完璧に守り抜いた結末は、どれほど苛烈な魔術的脅威や運命の変更によって生の平穏が脅かされようとも、本質を突いた人間の意志と確固たる連帯によって打破され、新たな日常を切り拓く未来が示されている。
バードウェイ姉妹の救済
『新約 とある魔術の禁書目録 14』で描かれるバードウェイ姉妹の救済は、自己犠牲という絶望的な選択から始まる。しかし上条当麻が「どちらも救う」という第三の道を探し出し、最後には魔神ネフテュスの介入も重なることで、誰一人として命を落とさない結末へとたどり着く。ここでは、新種の寄生生物がもたらした危機、姉妹それぞれの覚悟と葛藤、上里翔流への依頼、上条が組み立てた治療作戦、そしてネフテュスによる肉体同化までの流れを整理する。
サンプル=ショゴスの寄生による脂肪の溶解と、自らの胸で果実を育てる姉の自己犠牲
妹のパトリシア=バードウェイは南極調査中、新種の寄生生命体であるサンプル=ショゴスに寄生されてしまう。
・この寄生生物は人間の全身の脂肪を溶かして空いたスペースに潜り込み、栄養の蓄積・分配を支配する。
・無理に取り除けばパトリシアは即座に衰弱死してしまうという絶望的な状態であった。
・科学サイドの医療では治癒不可能とされた妹を救うため、姉のレイヴィニア=バードウェイは自らの命を対価とした魔術的な治療法を選択した。
・彼女はアフリカの伝承などを応用し、妹に食べさせるための人工臓器「果実」を自身の胸の中で育てていた。
・しかし、この果実が成長すればレイヴィニア自身の心臓や肺を圧迫し、彼女は内側から破裂して確実に死亡する運命にあった。
姉の計画への気づきと自らの死を決意、および理想送りを持つ上里翔流への接近
パトリシアは姉の計画のリスクに気づいており、自分を助けるために姉が死ぬことを断固として拒絶した。
・彼女は姉の動機である「自分」を消滅させることで、姉が果実を抱え続ける理由を奪おうと、自らの死を決意した。
・しかし自力では踏み切れなかったパトリシアは、対象を別世界へ追放・消去する右手「理想送り」を持つ上里翔流に接触し、自分を消し去るよう求めた。
・上里は、自らを犠牲にしてでも姉を救おうとするパトリシアのブレない意思に敬意を表した。
・彼女を助けるため、レイヴィニアの果実を破壊して姉を止めることを約束した。
自己犠牲の全面否定と、暮亞の協力による植物性脂肪生成の治療作戦
上条当麻は、姉妹のどちらかが命を落とす自己犠牲の結末を「どちらも救済ではない」と真っ向から否定した。
・上条は、両方を救う「第三の道」を模索して奔走した。
・パトリシアの体からサンプル=ショゴスを追い出すには、失われた脂肪の代わりを補えば良いと気づいた。
・彼は、上里勢力の一員であり植物に近い体質を持つ少女・暮亞の協力を得る。
・パトリシアの体に馴染む植物性脂肪を生成して体内に注ぎ込むという治療作戦を実行した。
サンプル=ショゴスの暴走と、魔神ネフテュスによるミクロ分解肉体同化
暮亞の協力で処置は順調に進むかと思われたが、追い詰められたサンプル=ショゴスが暮亞の爪を宿主の一部と誤認し、背後から暴走して襲いかかってきた。
・上条が右手で迎撃すれば急激なショックでパトリシアが死に、放置すれば全員がやられるという究極の二択を迫られた。
・そこへ、かつて上里に追放されかけて僅かな臓器だけを残していた魔神ネフテュスが介入した。
・ネフテュスは「神様は奇跡を起こす側の存在であるべき」と言い残し、自らの残された肉体をミクロ単位で分解した。
・その肉体をパトリシアに必要な脂肪分へと組み替えて完全に同化させた。
まとめ
バードウェイ姉妹の救済をめぐる出来事は、サンプル=ショゴスに寄生されて脂肪を失ったパトリシアと、妹を救うために自分の命を代価として人工臓器を育てるレイヴィニアという、あまりにも過酷な状況から始まる。パトリシアは姉を救うために自らの消滅を望み、上里はその願いを引き受けようとする。一方の上条は、誰か一人が犠牲になる結末を救済とは認めず、暮亜と協力して植物性脂肪による代替治療を試みた。
だが、追い詰められたサンプル=ショゴスが暴走し、事態は再び破綻寸前まで追い込まれる。そこでネフテュスが自らの肉体をミクロ単位で分解し、パトリシアに必要な脂肪へと組み替えて同化させるという奇跡を起こした。その結果、パトリシアの肉体は完全に回復し、サンプル=ショゴスも排除される。役目を終えた果実を処分したレイヴィニアも含め、姉妹は誰一人欠けることなく生き残った。
この結末が示しているのは、理不尽な運命や「誰かが死ぬしかない」という二択に、上条の諦めない救済への執念と人々の結びつきが抗ったということだ。寄生という残酷な事実、姉妹の衝突、理詰めの治療作戦、そしてネフテュスの献身が重なり合い、絶望的な状況でも未来を選び取れることが描かれている。どれほど不条理な魔術的危機に生の自由を脅かされても、本質を見失わず、確かな絆を持ち続ければ、それを乗り越えて新たな幸福へ進める――この救済は、そうした希望を象徴する結末である。
魔神ネフテュスの自己犠牲
『新約 とある魔術の禁書目録 14』における魔神ネフテュスの自己犠牲は、上里翔流の「理想送り」によって肉体の大半を失った高位存在が、絶望的な状況に置かれた少女を救うため、自らの命を捧げて神としての役割を果たす物語である。ここでは、ネフテュスの本質と生い立ち、パトリシア=バードウェイに迫った死の危機、そして奇跡を起こす側として迎えた消滅と同化について解説する。
生き埋めにされた数万の召使いの思念の集合体と、神として生きることへの未練
ネフテュスは、エジプト神話において王の副葬のため、ピラミッドに生き埋めにされた数千〜数万の召使いたちの思念が集まって生まれた魔神である。
・生まれながらにして「個人」という概念を持たない、特異な存在だった。
・上里翔流の「理想送り(ワールドリジェクター)」によって肉体の99%以上を奪われ、別世界へ追放されかけたとき、「死にたくない」と強く願った。
・しかし、その感情は単なる消滅や苦痛への恐怖ではない。
・「もっと神様らしいことをしてみたかった」という、神としての役割を果たせないまま終わることへの、純粋な未練だった。
サンプル=ショゴスの急激な消滅が招いた衰弱死の危機と、インデックスにも止められない状況への介入
物語の終盤、寄生生命体であるサンプル=ショゴスに肉体を蝕まれていたパトリシア=バードウェイを救出する作戦の最中、予想外の事態が起こる。
・上条当麻の右手がパトリシアの体内に入り込んだことで、寄生生命体が急激に消滅した。
・その結果、もともと脂肪分を失っていたパトリシアの肉体は、急速な衰弱死の危機に陥る。
・十万三〇〇〇冊の魔道書の知識を持つインデックスでさえ、この生命の崩壊を止められない状況だった。
・逃げ場のない絶望的な局面で、ネフテュスは自らパトリシアのもとへ向かい、介入を決意する。
ミクロ単位での風化・分解による脂肪分への組み替えと、存在そのものの完全な上書き
ネフテュスは、かつて消滅していった他の魔神たちの最期を思い返し、自分が進むべき道を決めた。
・神様とは奇跡にすがる者ではなく、最後まで奇跡を起こす側であるべきだ――その揺るぎない信念に至る。
・彼女は残された肉体をミクロ単位で風化・分解させることを選んだ。
・そして、パトリシアの命をつなぐために必要な脂肪分へと自らの構成要素を組み替え、完全に同化する道を選ぶ。
・それはネフテュスという存在のデータを完全に上書きし、二度と修復できない形で消し去る、完全な消滅を意味していた。
「何も成し遂げられない」恐怖からの脱却と、生死の狭間に残した神様の言葉
自身が完全に消えていく過酷な過程にあっても、ネフテュスの心に恐怖はなかった。
・上里に一方的に追放されかけたときに抱いた、「何も成し遂げる前に消えてしまう」恐怖からは、すでに解放されていた。
・顔が残っていたなら笑っていたはずだと思えるほど、彼女は深い充足感に満たされていた。
・ネフテュスの尊い自己犠牲によって、パトリシアの肉体は奇跡的に完全な回復を遂げた。
・生死の狭間で「あなたは誰か」と問いかけるパトリシアに、ネフテュスは「強いて答えるなら、神様かしら」とだけ言葉を残す。
・その残滓さえ世界から完全に消し去り、ネフテュスは自らの目的を果たした。
まとめ
ネフテュスの自己犠牲をめぐる一連の出来事は、数万の思念から生まれた魔神が、「理想送り」による不完全な消滅への恐怖を乗り越え、ひとりの少女を救うために自らを捧げるまでの物語である。
上条の右手による寄生生物の排除はパトリシアを救うどころか、脂肪分を失った彼女に急激な衰弱死という危機をもたらした。そこでネフテュスは、残された肉体をミクロ単位で分解し、必要な脂肪分へと組み替えてパトリシアに同化する。これは、自身の存在データを完全に消去する、修復不可能な死を受け入れる行為だった。
それでもネフテュスは、神とは「奇跡を起こす側」であるべきだという信念を貫いた。自らの未来を差し出すことでパトリシアを完全に回復させ、「強いて答えるなら、神様かしら」という言葉だけを残して消滅する。その結末は、どれほど理不尽な世界や苛烈な運命に直面しても、自分の意志で存在の価値を示し、誰かを救うことができるという彼女の強さを際立たせている。
寄生生命体ショゴス
『新約 とある魔術の禁書目録 14』に登場する寄生生命体「サンプル=ショゴス」は、ひとたび宿主に寄生すると生存が極めて難しくなる危険な新種の生命体である。本項では、宿主の脂肪を溶かして体内に入り込む生態、科学と魔術の両面から試みられた治療、そして事件の背後にある可能性について解説する。
南極調査で発見された新種と、その不気味な外見
サンプル=ショゴスは、極地の環境変化を調査していた最中に、突如として人類の前に現れた。
・南極の氷の変動に伴う海流の変化を調べる調査中、パトリシア=バードウェイのチームによって発見された。
・感染力は高くないものの、いったん寄生されると致死率は非常に高い。
・外見は真っ黒な不定形の塊で、泡立つように、目玉とも吸盤ともつかない器官を明滅させている。
・その姿は深海のタコや切り分けられた脂肪、内側から炙られたたるんだゴム膜などにたとえられるほど、不気味なものだった。
全身の脂肪を溶かして潜み、排除すれば命を奪う性質
この寄生生命体は、宿主の生命維持機能を人質に取るような形で体内に定着する。
・宿主であるパトリシアの全身の脂肪を溶かし、その空いた空間に入り込むことで、人間らしい輪郭をかろうじて保たせている。
・脂肪が担っていた栄養の蓄積・分配機能まで、サンプル=ショゴスに支配されてしまう。
・無理に引き剥がそうとするとショゴスが暴れ、宿主の身体組織は大きく損傷する。
・たとえ吸引して取り除けたとしても、栄養を蓄える機能を失っているため、宿主は回復を待たずに衰弱死してしまう。
科学による治療の限界と、魔術・植物性脂肪を用いた作戦
この絶望的な状況に対し、科学・魔術・上条当麻の三者が、それぞれ異なる方法で治療を試みた。
・科学サイドでは各地の医療機関を回り、最終的には学園都市の技術にも頼ったが、安全な除去はほぼ不可能と判断された。
・魔術サイドでは、姉のレイヴィニア=バードウェイが、アフリカの伝承を応用したカニバリゼーションの理論を用いる。彼女は命を削り、内臓破裂の危険まで負いながら、妹に食べさせてショゴスを安全に追い出すための人工臓器「果実」を、自らの体内で育てていた。
・上条当麻は、ショゴスを追い出した後に脂肪不足で衰弱死するのなら、代わりの脂肪を補えばよいと考えた。植物に近い体質を持つ上里勢力の少女・暮亞の協力を得て、パトリシアの身体になじむ植物性脂肪を生成・注入し、ショゴスを押し出す治療作戦を実行した。
爪の誤認による暴走と、ネフテュスの自己犠牲
上条たちの作戦は順調に進んでいるように見えた。しかし、追い詰められたサンプル=ショゴスが最後の反撃に出たことで、状況は一変する。
・追い詰められたサンプル=ショゴスは、暮亞の爪を宿主の一部だと誤認し、暴走した。
・上条がとっさに右手の幻想殺しで迎撃した結果、ショゴスは急速に消滅し、パトリシアは深刻な衰弱死の危機に陥った。
・そこへ現れた魔神ネフテュスは、残された自らの肉体をミクロ単位で分解するという手段を選んだ。
・そして、それをパトリシアに必要な脂肪分へ組み替えて同化させるという、自己犠牲による奇跡を起こした。
・これによりパトリシアの身体は完全に回復し、サンプル=ショゴスも完全に排除された。
学園都市の関与と、「未元物質」をめぐる罠の可能性
事件の終盤、上里翔流は、サンプル=ショゴスが単なる自然発生の生物ではない可能性にたどり着く。
・サンプル=ショゴスは自然の産物ではなく、異能の力が関与して生まれた存在だと推測した。
・南極調査には学園都市が後援として関わっていた事実も指摘された。
・この寄生生命体は、上里自身を不意打ちするために、あらかじめ仕掛けられた罠ではないかと考えられる。
・その素材には、変色した「未元物質(ダークマター)」が組み込まれていたのではないかと、上里は分析している。
まとめ
サンプル=ショゴスを巡る一連の事件は、南極で発見された危険な寄生生命体が、パトリシアの全身の脂肪を溶かし、栄養機能まで支配するという深刻な危機から始まった。科学では安全な除去が困難とされ、レイヴィニアも命を懸けて魔術的な「果実」を育成するほど、状況は切迫していた。
最終的には、暮亞の植物性脂肪を用いた上条の治療作戦によってショゴスを体外へ押し出すことに成功する。しかし、暴走したショゴスを幻想殺しで消滅させたことで、今度はパトリシアが脂肪不足による死の危機にさらされた。その窮地を救ったのが、自らの肉体を必要な脂肪分へと組み替え、パトリシアに同化させたネフテュスの自己犠牲だった。
また、この事件は単なる未知の生物災害ではなく、学園都市の思惑や未元物質の悪用、上里翔流を狙った罠の可能性も示している。過酷な状況の中で上条たちがパトリシアを救い出した結末は、個々の力だけでなく、仲間同士の協力と覚悟が危機を乗り越える鍵となったことを描いている。
木原脳幹と木原唯一
『新約 とある魔術の禁書目録』に登場する木原脳幹と木原唯一は、高い知性を持つゴールデンレトリバーの「師」と、彼を強く慕う「弟子」という、少し変わった師弟関係で結ばれている。本稿では、二人が共有する独自の美学、上里翔流との戦いで脳幹が敗れた後に起きた出来事、そして唯一が絶望の中で新たな決意を抱くまでの流れを整理する。
対魔術式駆動鎧を操るゴールデンレトリバーの師と、手料理で支える白衣の弟子
木原脳幹と木原唯一は、「木原」一族の中でも特に深い信頼で結ばれた師弟である。
・脳幹は高い知性を備えたゴールデンレトリバーで、アレイスター=クロウリーの切り札である対魔術式駆動鎧(A.A.A.)を操る。
・唯一はリクルートスーツに白衣を羽織った女性で、脳幹を「先生」と呼び、深く慕っている。
・塩分や油分を控えた手料理やわんこケーキを作るなど、唯一は日頃から脳幹の世話をしている。
・脳幹が出撃する際には、唯一が折り目正しく彼を見送る。こうしたやり取りからも、二人の強い精神的な結びつきがうかがえる。
ロマンを解する男の好悪による美学と、唯一の敬愛
科学の徒でありながら、木原脳幹は独自の美学を貫いている。唯一は、その姿勢に強く惹かれている。
・脳幹は自らを「ロマンを解する男」と称し、善悪ではなく、自らの好悪を基準に行動する。
・必要な破壊にはためらいなく手を染める一方、不要な破壊をよしとする者は気に入らない。そこには揺るぎないポリシーがある。
・唯一は「先生のこだわりはよく分かりません」と子供っぽく唇を尖らせることもあるが、心の底では彼の美学を深く敬愛している。
・脳幹が無邪気にロマンを語る姿に惚れ込み、彼の理解者であり続けることを誇りに思っている。
「理想送り」による武装の消滅と、脳幹の選択
『新約』14巻で、木原脳幹は右手に「理想送り(ワールドリジェクター)」を宿す少年・上里翔流と激突する。
・対魔術式駆動鎧の圧倒的な火力をもってしても、魔神さえ葬り去る「理想送り」の前では、武装を次々と消し飛ばされていった。
・すべての兵装を失い、ただの犬の姿に戻された脳幹に対し、上里は逃げるなら見逃すと告げる。
・それでも脳幹は、上里から「新たな天地」を望むかと問われても、断固として拒絶した。
・七人の始祖から受け継いだ知性を誇り、この世界で生き、死に、「木原の答え」を確かめる。そのロマンに従い、脳幹は最後まで立ち向かったのである。
瀕死の師を眠らせ、唯一が抱いた決意
戦いの後、現場に駆けつけた木原唯一は、あまりにも凄惨な光景を目の当たりにする。
・脳幹は血だまりの中に倒れ、全身の骨折や臓器破裂によって瀕死の状態にあった。
・通常の治療では脳細胞の破壊に間に合わず、知性が二度と戻らないことを、唯一は瞬時に悟る。
・木原として目的を果たすため、唯一は自らの手で最愛の師をコールドスリープ(氷の棺)に収める決断を下した。
・意識を失う直前、脳幹は唯一に「私を超える木原になりなさい。遠慮することなくその先へ進むんだ」と言葉を託す。
・師を冷凍処理しながら子供のように泣きじゃくる唯一の瞳には、異様な光が宿っていた。
・唯一は、先生を超える木原になること、ただの木原には留まらないこと、そして「木原」という言葉だけでは説明できない唯一になってみせることを誓う。そこには、上里への復讐と師を超えるための強烈な決意があった。
まとめ
木原脳幹と木原唯一の物語は、独自のロマンを共有する良好な師弟関係から始まる。上里翔流の「理想送り」によって脳幹は武装を失いながらも、世界からの拒絶に屈することなく戦い抜いた。そして瀕死となった師を救うため、唯一はコールドスリープという苦渋の選択をする。
脳幹が遺した「私を超えろ」という言葉は、唯一の絶望を執念へと変えた。彼女は上里への復讐を胸に、師を超え、「唯一」という存在そのものを超越するという決意を抱いて歩き出す。これは、不条理な敗北に屈せず、受け継いだ知性と意志によって自らを更新し続ける木原の強さを描いた記録である。
新約 とある魔術の禁書目録(13)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(15)レビュー
登場キャラクター
学園都市
上条当麻
右手に異能を打ち消す力を持つ少年である。理不尽な犠牲を強いる選択を嫌う性格をしている。魔神や上里翔流と対立する立場にある。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
魔神僧正による採点者の提案を拒絶し、アクロバイクで逃走劇を繰り広げた。その後、パトリシアを救うために奔走し、上里翔流と激突する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
右手の奥にある未知の力によって上里に深手を負わせた。
インデックス
十万三〇〇〇冊の魔道書を記憶する少女である。上条当麻の部屋に居候している。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教。魔道書図書館。
・物語内での具体的な行動や成果
魔術の知識を用いてレイヴィニアの術式を解析した。上里勢力との戦闘では強制詠唱によって敵の魔術を妨害する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔神の脅威に対して上条をサポートする重要な役割を担っている。
土御門元春
上条当麻のクラスメイトである。義理の妹を大切にしている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。陰陽博士。多重スパイ。
・物語内での具体的な行動や成果
防犯オリエンテーションに暴漢役として参加し、校内を逃げ回った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
土御門舞夏
土御門元春の義理の妹である。メイド服を着て活動している。
・所属組織、地位や役職
繚乱家政女学校の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
夜の学園都市をドラム缶型清掃ロボットに正座して移動していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
御坂美琴
学園都市第三位の能力を持つ少女である。上条当麻を気にかけている。自身の無力さに葛藤する場面が多い。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
防犯オリエンテーションの治安役として参加した。上条と共にアクロバイクへ同乗し、魔神の襲撃から逃走する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上条が抱える戦いの次元の違いを痛感し、彼に追いつこうと決意を固めた。
雲川鞠亜
メイド服を着た少女である。自身のプライドを傷つけて強度を上げるという思考を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
かつての恩師である木原加群を追ってバゲージシティへ潜入した。木原円周と交戦し、これを撃破している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
木原加群の最期を看取り、残された世界で生きる決意を新たにした。
学園都市(統括理事会・木原)
アレイスター=クロウリー
学園都市を統治する魔術師である。過去に娘を失った経験を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市統括理事長。
・物語内での具体的な行動や成果
木原脳幹を通じて自身の意思を僧正へ伝播させた。窓のないビルから計画の進行を管理する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
計画の成功を確認しながらも、狂気の咆哮を上げる複雑な内面を見せている。
木原脳幹
高い知性を持つゴールデンレトリバーである。ロマンを解する男を自称している。
・所属組織、地位や役職
木原の一族。
・物語内での具体的な行動や成果
対魔術式駆動鎧を操り、彗星と融合した僧正を迎撃して撃破した。その後、上里翔流と交戦して敗北する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
瀕死の重傷を負い、木原唯一によってコールドスリープ処置を受けた。
木原唯一
リクルートスーツに白衣を着た女性である。木原脳幹を先生と呼び慕っている。
・所属組織、地位や役職
木原の一族。
・物語内での具体的な行動や成果
木原脳幹の出撃をサポートし、民間人の避難調整などを担当した。瀕死となった脳幹をコールドスリープさせる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
師を超える存在になるため、復讐とさらなる進化を誓った。
木原加群
臨死体験の研究を行っていた元研究者である。かつて小学校の教師をしていた。
・所属組織、地位や役職
木原の一族。後にグレムリンへ合流。
・物語内での具体的な行動や成果
バゲージシティにて木原病理と交戦した。致命傷を避ける術式を用いて彼女を撃破する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦闘による出血多量で命を落とした。魔術サイドではベルシと名乗っていた。
木原病理
人を諦めさせることを専門とする研究者である。車椅子に乗った柔和な女性を装う。
・所属組織、地位や役職
木原の一族。
・物語内での具体的な行動や成果
バゲージシティにてマリアンや木原円周を圧倒した。その後、木原加群と激突する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
未元物質を利用して肉体を改造していたが、木原加群に敗れて死亡した。
上里勢力
上里翔流
平凡な高校生を自称する少年である。魔神たちへの復讐を行っている。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
右手に宿る理想送りを用いて魔神たちを次々と新天地へ追放した。パトリシアを救う過程で上条当麻と対立する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上条の右手の奥にある未知の力によって敗走し、その後に木原脳幹を打ち倒した。
絵恋
ぶかぶかの白衣を着た小柄な少女である。非公式科学捜査の専門家である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。辿り屋。
・物語内での具体的な行動や成果
現場から採取したサンプルの解析を行った。上里たちを銭湯や食事へ誘導し、勢力の交通整理役を担う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
暮亞
分厚いメガネを掛けた園芸部員の少女である。植物に近い体質を持つ。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
植物の蔦で網を作り、落下する上条とパトリシアを受け止めた。パトリシアの体内へ植物性脂肪を送り込む治療をサポートする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
獲冴
不良っぽい雰囲気を持つ少女である。憑依魔術を扱う。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
一〇円玉を詰めたペットボトルを抱えて行動した。上里勢力の中で料理役を引き受けようとしたが失敗に終わる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔術サイド(魔神・魔術師・関係者)
レイヴィニア=バードウェイ
金髪の少女である。上条当麻たちを事案に巻き込むことが多い。
・所属組織、地位や役職
魔術結社「明け色の陽射し」のボス。
・物語内での具体的な行動や成果
妹のパトリシアを救うため、自らの命を対価とする人工臓器を体内で育てていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
パトリシアが別の方法で救われたため、人工臓器を破棄して生存した。
パトリシア=バードウェイ
レイヴィニアの妹である。科学寄りの研究者として活動している。
・所属組織、地位や役職
大学主導プロジェクトの研究員。
・物語内での具体的な行動や成果
南極調査中に寄生生命体へ寄生された。自分を救うために姉が死ぬことを拒み、上里翔流に接触して自らの消去を依頼する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔神ネフテュスの自己犠牲と上条たちの治療によって無事に救出された。
オティヌス
かつて世界を破壊した存在である。現在は一五センチのサイズになっている。
・所属組織、地位や役職
元魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻の肩に乗って行動を共にし、魔術に関する助言を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上条の良き理解者としての立場を保っている。
ネフテュス
褐色の肌を包帯で覆った女性である。エジプト神話を由来とする。
・所属組織、地位や役職
真なるグレムリン。魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
上里翔流から逃れて上条の元へ身を寄せた。衰弱するパトリシアを救うため、自らの肉体を分解して脂肪分へ組み替える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
パトリシアを救うための自己犠牲により、完全に消滅した。
僧正
即身仏を由来とする老人のミイラである。上条当麻へ接触を試みる。
・所属組織、地位や役職
真なるグレムリン。魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻に採点者の座を提案したが拒絶された。土や泥を操り、学園都市を破壊しながら上条を追い詰める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アローヘッド彗星と融合して地球への落下を企てたが、木原脳幹によって撃破された。
娘々
血色の悪いミニチャイナの少女である。尸解仙を由来とする。
・所属組織、地位や役職
真なるグレムリン。魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
僧正の敗北を知って学園都市を破壊しようと暴れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上里翔流の理想送りによって、新天地へ追放された。
ゾンビ
少女の姿をした魔術師である。魔神たちの弱体化に関与した。
・所属組織、地位や役職
真なるグレムリン。魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
アレイスターの介入前に木原脳幹によって拘束され、空から落とされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔神たちの力を無限に分割する術式を提供した。
オッレルス
魔神になるはずだった男である。妖精化の術式を用いる。
・所属組織、地位や役職
魔術サイドの魔術師。
・物語内での具体的な行動や成果
二人の聖人の間に割って入り、両腕を破壊されながらも同士討ちを誘発させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
オティヌスを弱体化させるため、上条当麻との関係性を維持する行動をとった。
アニェーゼ
修道女の少女である。上条当麻と関わりを持つ。
・所属組織、地位や役職
ローマ正教。アニェーゼ部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
オールボーの街で上条当麻とオティヌスを包囲する部隊の指揮をとった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
床下から現れた上条の説得を受け、彼の逃走を黙認した。
マーク
黒服の男である。レイヴィニアの部下として活動する。
・所属組織、地位や役職
明け色の陽射し。
・物語内での具体的な行動や成果
上条の部屋でレイヴィニアの指示を受け、特製激辛シンデレラを提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
集団
魔神
絶大な力を持つ神々の集団である。世界を作り直すほどの力を持っている。
・所属組織、地位や役職
なし。
・物語内での具体的な行動や成果
力の衝突による運命の歪みを抑えるため、上条当麻を採点者として迎え入れようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アレイスターの罠や上里の理想送りによって次々と排除されている。
真なるグレムリン
魔神たちが形成する組織である。世界を自らの望むままに歪める力を持つ。
・所属組織、地位や役職
なし。
・物語内での具体的な行動や成果
学園都市に現れて活動を開始したが、様々な要因で弱体化を余儀なくされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
上里勢力
上里翔流を中心とする少女たちの集団である。彼を強く慕っている。
・所属組織、地位や役職
なし。
・物語内での具体的な行動や成果
各々の特異な能力を活かして上里翔流の戦闘や日常生活をサポートする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
明け色の陽射し
レイヴィニア=バードウェイが率いる組織である。イギリスの黄金系魔術結社とされる。
・所属組織、地位や役職
なし。
・物語内での具体的な行動や成果
ハワイ諸島での作戦などに関与し、暗躍する敵対勢力に対処した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
木原
学園都市の科学の一分野を極めた者たちの総称である。独自の倫理観で動く。
・所属組織、地位や役職
なし。
・物語内での具体的な行動や成果
それぞれの専門分野の技術を用いて事態に介入し、敵対勢力を排除する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
血筋ではなく、科学の発展に伴って自然発生する性質を持つ。
新約 とある魔術の禁書目録(13)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(15)レビュー
展開まとめ
序章 魔神が身近になりました Home_Party?
学生寮のネフテュス
僧正との戦いを終えて学生寮へ戻った上条当麻は、小さな段ボール箱から現れたネフテュスのせいで、インデックスとオティヌスに詰め寄られていた。割れた窓には応急処置のビニールシートが張られ、寒い室内で、上条は居候を増やした責任を問われる形になった。
理想送りの警告
ネフテュスは、上里翔流と理想送りの出現を告げた。理想送りが全ての魔神を撃滅する力を持つなら、上条のそばにいるオティヌスも無事では済まないという話だった。だがネフテュスの姿勢や格好のせいで、インデックスの怒りは上条へ向かい、場は緊迫とは別方向に荒れた。
夕食問題
インデックスの本音は、居候が増えたことで夕食のおかずが減るのではないかという不満だった。上条は、人数が増えた時は鍋に頼ればよいと考え、寒さ対策も兼ねてあり合わせの材料で鍋を作ろうとした。ネフテュスの事情を放置すればろくなことにならないため、鍋を囲んで話を進めるつもりだった。
空の冷蔵庫
上条は冷蔵庫を開け、三日前に買い出しを済ませたはずの食材が消えていることに気づいた。中に残っていたのは醤油と味噌だけだった。インデックスが目を逸らして咳払いしたことで、上条は彼女が食材を食べ尽くしたと察し、鍋どころではない怒りを爆発させた。
第一章 幻想殺しと理想送り One_Night_Encount.
理想送りの説明
冷蔵庫が空になっていたため、上条当麻達は鍋の話を脇に置き、コタツでネフテュスの話を聞いた。ネフテュスは、上里翔流の理想送りによって娘々や他の魔神達が新たな天地へ追放されたと語った。理想送りは、幻想殺しと対になるように、今ある世界を捨てて別の世界へ旅立とうとする願望の集合体だった。
魔神達の疑念
ネフテュスは、魔神達が幻想殺しだけでは安心を得られないと疑ったため、その力が漏れて理想送りが生まれたのだと説明した。オティヌスは、それは魔神達が上条に失望した結果であり、自分達で作った力に喰われているようなものだと嘲った。ネフテュスは、上条が魔神全体ではなくオティヌス個人の理解者になったことが原因だと返し、二人は険悪な空気になった。
ジョーカー同士の衝突
オティヌスは、上里翔流が幻想殺しと同格のイレギュラーを持つ存在であり、今後上条と激突する可能性があると告げた。上条は、オティヌスやネフテュスを外へ放り出してトラブルを避けることなどできないと即答した。オティヌスは、これまでのように幻想殺しというジョーカーで格上を崩す戦い方は通じず、相手も同格のジョーカーを持つため、経験則では読めない戦いになると警告した。
木原脳幹の食卓
一方、木原唯一は高級マンションで木原脳幹のために食事を用意していた。木原脳幹は、唯一の料理に感謝し、素直に美味しそうに食べた。食後、彼はアローヘッド彗星の件だけで終わりではなく、学園都市に潜んでいた魔神達の一斉消失に嫌な流れを感じていた。
買い出しの決断
上条は、世界の終わりのような話を聞きながらも、冷蔵庫が空である以上は食料を確保しなければならないと判断した。インデックス達を留守番させ、上里翔流と遭遇する危険を承知で、鍋の具材を買いに外へ出た。日没後の学園都市には、僧正の破壊の痕跡があちこちに残っていた。
オティヌスの忠告
買い出しの途中、オティヌスは上条のポケットから顔を出し、僧正を自分で倒せなかったからといって新しい力を求めるなと忠告した。上条の強さは殺しの技ではなく、悪とされた者さえ奈落から救い上げる繋がる力にあるという。上条は、僧正を救う道を途中で放り投げてしまったからこそ、彼を悪にしてしまったのかもしれないと感じた。
鍋の買い物
上条とオティヌスは、スーパーで鍋の具材を選んだ。上条は傷んだ野菜や安い肉、豆腐、しらたき、ブイヨンなどを買い込み、水炊きを少し洋風に寄せようとした。オティヌスは北欧の食文化やニシンについて語りながら、上条の貧乏学生らしい選択に呆れつつも付き合った。
夜道の邂逅
買い物を終えた上条は、普通に営業しているスーパーを見て、世界は思ったより頑丈にできていると感じた。オティヌスは、世界を支える柱は一本ではなく、皆が必死に生きているのだと語った。その直後、夜道に足音が響き、上条とオティヌスは異質な気配を察知した。
上里翔流
暗がりの向こうに立っていたのは、理想送りを持つ上里翔流だった。彼は魔神に用があり、上条の事情に留意する必要はないと告げた。車のヘッドライトが一瞬だけ二人を照らし、どちらも凡庸な顔立ちの平凡な高校生であることが示された。
二つの右手
上条当麻はレジ袋を地面に落とし、上里翔流と同時に右拳を握った。幻想殺しと理想送りという極大のイレギュラーが、ついに正面からぶつかろうとしていた。鍋の具材は置き去りになり、生死を懸けた戦いが夜道で始まった。
行間 1
ネフテュスの曖昧な神格
ネフテュスはエジプト神話に登場する女神だったが、その成り立ちには大きな疑問があった。彼女はオシリスの葬儀で泣き叫ぶ女神として現れる程度で、他の資料は乏しかった。そのため、オシリスを際立たせるために人為的に作られた神格ではないかという説もあった。
王墓に閉じ込められた者達
エジプトの王墓では、死後の王に仕えるため、大量の召使いを生きたまま墓に閉じ込める考え方があった。表向きは志願とされていても、実際に断れたかは定かではなかった。埋める側にとっては入口を塞げば終わりだったが、閉じ込められた者達にとっては長い苦しみの始まりだった。
終わらない最後の時間
水も食料もない墓の中で、人々はわずかな湿気や副葬品にすがり、少しでも生き延びようとした。その長すぎる最後の時間の中で、誰かが自分達の生を無駄にしないでほしいと願った。まだ終わっていない命を、なかったことにしないでほしいという思いが生まれた。
骸の中心の女神
数百、数千の人々は、知識や秘奥の欠片、副葬されたパピルスの情報まで持ち寄り、それらを統合した。その果てに、褐色の女神はピラミッドの最奥、無数の骸の中心で産声を上げた。死の山がネフテュス自身の原型だったのか、卵の殻のようなものだったのかは、彼女自身にも分からなかった。
第二章 居候とは増えるもの Cannibalization.
理想送りとの初戦
上条当麻と上里翔流は、暗い通りで互いを認識し、幻想殺しと理想送りをぶつけようとした。しかし上里の最初の一撃は上条ではなく、背後から迫っていた別の存在を狙ったものだった。上条もまた上里の背後を狙う別の攻撃を幻想殺しで消し、二人は背中合わせになった。
赤と黒の襲撃者
上条と上里を囲んでいたのは、腐った赤い絨毯のような怪物と、黒い脂肪の塊のような怪物だった。二つの怪物は互いに絡み合い、喰い合いながらも、上条達を包囲していた。やがて無数の槍や刃のような器官を伸ばし、二人へ襲いかかった。
包囲網からの逃走
上条は幻想殺しで応戦したが、右手首から先しか効果範囲がないため、複数同時攻撃には弱かった。上里の理想送りの助力もあって包囲を突破できたが、逃走に夢中で二人ははぐれた。上条は裏通りで足を止め、赤と黒の襲撃者の正体を考えた。
上里の安否確認
オティヌスは、襲撃者が上里の仕込みである可能性を指摘したが、上条は上里が無事か確かめずにはいられなかった。来た道を戻ると、上里はおらず、上条が落としたレジ袋だけがあった。しかし袋から野良猫が現れ、子猫達と共に食材を持ち去ってしまった。
赤の残骸
上条は、現場に残った腐った赤い絨毯のような残骸に気づいた。右手で触れると残骸は消え、その下から気を失った少女が現れた。金髪に白い肌を持つその少女は、上条の知るレイヴィニア=バードウェイだった。
黒の残骸
一方、上里翔流も別の場所で黒い襲撃者の残骸を調べていた。彼は電話で辿り屋の少女に解析を頼み、学園都市内での追跡や傍受の危険を理解しながらも、理想送りの力を前提に行動していた。黒い塊を理想送りで消すと、その中からパトリシア=バードウェイらしき少女が現れた。
学生寮のバードウェイ
上条はバードウェイを学生寮へ連れ帰り、インデックス、オティヌス、ネフテュスと共に調べることになった。オティヌスは、上条がまた女を拾ってきたと呆れつつも、赤と黒の襲撃者の片割れである可能性を示した。インデックス達は、バードウェイに付着していた赤い残骸を分析し始めた。
アフリカ系伝承の混合
インデックスは、赤い残骸がアフリカ版シンデレラに近い要素を含んでいると見た。オティヌスとネフテュスは、近代西洋魔術が自分達の文化で行き詰まると、チベットやアトランティス、アフリカなど外部文化へ解決策を求める傾向があると説明した。バードウェイには、ヨーロッパの魔術とは別系統のアフリカ系神話や伝承が複数植え付けられているようだった。
捕食の理論
インデックスは、バードウェイに刻まれた要素を読み取り、小麦やトウモロコシ、人形、果実、儀礼の簡略化、贄、患部に対応した部位の取り込みといった断片を拾った。そして、病んだ部分に対応するものを取り込んで治癒を目指す捕食の理論に至り、カニバリゼーションという言葉へ辿り着いた。
目覚めたバードウェイ
インデックスがさらに調べようとした瞬間、レイヴィニア=バードウェイが彼女の手首を掴んで制止した。バードウェイは青ざめたまま起き上がれない状態だったが、冗談を交えてインデックスを挑発した。深刻な分析は、胸の大小をめぐる不毛な口論へと逸れていった。
絵恋の到着
カトンボのような無人機が安全を確認した後、白衣の少女絵恋が第七学区のボロアパートへ入った。そこでは、目覚めたパトリシア=バードウェイが警戒心をあらわにし、上里翔流に爪を立てていた。絵恋は上里を傷つけたパトリシアに悪意を向けて挑発したが、上里はそれを制止した。
サンプル=ショゴス
パトリシアの体内から黒い異物が槍のように飛び出し、絵恋を襲った。上里が理想送りでそれを抉ると、異物はパトリシアの体内へ逃げ込んだ。パトリシアは、南極調査中に新種の寄生生命体を発見し、それをサンプル=ショゴスと呼んでいたことを話した。
パトリシアの願い
パトリシアは、医療機関をたらい回しにされた末に学園都市へ辿り着いたが、安全な摘出は難しかったと語った。問題は、自分を助けようとする姉のレイヴィニア=バードウェイが、危険な方法に自分の身を差し出そうとしていることだった。パトリシアは、その方法を破棄させるために動いていた。
バードウェイの妹
学生寮で目覚めたバードウェイは、妹パトリシアについて説明した。パトリシアは魔術師ではなく、科学寄りの天才研究者であり、南極調査中に寄生生命体に取り憑かれて変質したという。科学サイドの治療では解決できず、バードウェイは魔術で妹を救うために一人で動いていた。
黒い寄生生命体
バードウェイによれば、黒い寄生生命体はパトリシアの脂肪を溶かし、その空間に潜り込んで人の形を保たせていた。栄養の蓄積や分配も寄生生命体が担っているため、無理に摘出すればパトリシアの体は壊れ、仮に取り出せても衰弱死する可能性が高かった。普通の方法では救えない状態だった。
カニバリゼーションの果実
バードウェイは、アフリカ由来の伝承を応用し、自分の体内でパトリシアに食べさせるための臓器を育てていた。患部に対応するものを食べることで治癒を目指すカニバリゼーションの理論を使い、医療素材や穀物の身代わりの考えを組み合わせたものだった。彼女はそれを果実と呼び、収穫の時期を逃せば腐って使えなくなると語った。
説得不能の問題
バードウェイは、パトリシアに魔術の存在を正しく知らせたくなかった。パトリシアから見れば、姉が体内で得体の知れない腫瘍を育て、それを自分に食べさせようとしているようにしか見えないためである。さらに寄生生命体も、追い出される展開を嫌って暴れる可能性があった。
上里への懸念
バードウェイは、自分が気を失っている間にパトリシアがどこへ行ったのかを尋ねた。上条達は、少なくとも現場にはいなかったと答えた。バードウェイは、もしパトリシアが上里翔流に回収されているなら厄介だと判断した。上里の右手は、幻想殺しと同格のジョーカーのような力だったからである。
理想送り後の空腹会議
上里翔流達は、銭湯を終えた後もパトリシアの問題にすぐ戻れなかった。絵恋や獲冴達は食事の話を優先し、上里は本題から外れていく流れに疲弊した。パトリシアだけは彼に同情し、上里が折れたら常識を保つ者がいなくなると訴えた。
ご当地グルメの迷走
上里は、事件を抱えた少女を前に食事を優先する理由が分からなかった。だが獲冴達は、新しい土地へ来たならまず食事で気分を整えるべきだと考えていた。学園都市に明確な名物は少なかったが、クローン食肉や農業ビルの野菜という独自性に獲冴が食いつき、スーパーで食材を探すことになった。
ピーマン克服宣言
スーパーでは閉店間際の残り物を見ながら、獲冴が作れる料理を考えていた。ピーマンの話題でパトリシアが反応すると、彼女は好き嫌いではないと必死に否定した。獲冴はその様子を見て、今日パトリシアの苦手を一つ克服させると宣言した。パトリシアは、いつの間にか自分が彼女達の会話の輪に入っていることに気づいた。
月光浴のバードウェイ
一方、レイヴィニア=バードウェイは学生寮のベランダで月を眺めていた。上条当麻は寒さを理由に彼女を室内へ戻し、部屋ではネフテュスがテレビをつけようとしていた。上条は平日夜の番組には食べ物の映像が出ると止めようとしたが、画面には丸ごと揚げた鶏が映し出されてしまった。
空腹の限界
テレビの食レポを見たインデックスは泣き崩れ、オティヌスやネフテュスも食事不足を意識した。バードウェイは、自律神経の制御で空腹くらい抑えられるだろうと呆れたが、上条はポケットの中にあるものを思い出して葛藤した。状況を打破できる可能性を黙っているのは自分の流儀に反すると考えたのである。
一本の魚肉ソーセージ
上条は、早弁のおかず交換会で手に入れた真空パックの魚肉ソーセージが一本だけあると切り出そうとした。だが最後まで言い切る前に、少女達が一斉にその魚肉ソーセージへ襲いかかった。空腹と食欲が、深刻な事件の空気を一気に押し流した。
失敗した手料理
獲冴は手慣れた様子で料理を始めたが、絵恋が隠し味を入れたことでロールキャベツの鍋は異臭を放つ危険物になってしまった。暮亞も耐えきれず、上里翔流は住人達へ謝罪して回った。小柄な女教師の助けもあり、大騒ぎにはならずに済んだが、部屋はしばらく使えなくなり、外食することになった。
日本のラーメン
外食先を決める中で、パトリシアは日本のラーメンを食べてみたいと申し出た。獲冴達は、男の子が一緒なら女の子だけでは入りにくいラーメン屋にも入りやすいと判断した。上里達は、彗星の被害を免れた路地裏のラーメン屋へ入り、それぞれ好みの味を注文した。
ラーメン屋の賑わい
絵恋、暮亞、獲冴は塩、魚介醤油、味噌をめぐって騒ぎ、上里とパトリシアだけがトンコツで一致した。少女達は好みの違いをきっかけに、食べ比べや小皿の共有を巡ってさらに騒ぎ出した。パトリシアはその様子を眺めるうち、楽しそうに見える上里の笑みが、どこか苦痛に歪んでいるように感じた。
木原脳幹の夜回り
木原脳幹は、夜の街を歩き、小学校近くのコンビニへ向かった。店主は彼を自然に迎え、子供達の様子に問題がなかったことを報告した。この見守りは木原加群が築いたネットワークの名残であり、木原脳幹は彼のことをもっと知りたかったと感じていた。
先生への言葉
コンビニ店主は、木原脳幹に、木原という枠組みではなく胸の中にある願いに嘘をつくなと告げた。木原加群が子供達の笑顔を守ったように、大切なのは所属や生まれではないという言葉だった。木原脳幹はそれを受け止め、店を出た後、夜空の月に不吉な輝きを感じた。
先送りされた本題
風呂と食事を終えた上里達はボロアパートへ戻ったが、獲冴は疲れたから今日は休もうと言い出した。上里は本題に入れない状況に苛立ったが、少女達の多数決には逆らえなかった。四畳半に五人分の布団を敷くため、風車のような配置になり、上里は中央の狭いスペースで眠ることになった。
パトリシアの脱出
深夜、パトリシアは一睡もできず、上里達に気づかれないように部屋を抜け出した。彼らが悪い人ではないと分かっていても、姉を助けるためには時間がないと考えたのである。パトリシアは、姉の体内で膨らむ異物が明日の朝までもたないと見て、当てもなく夜の学園都市を探し始めた。
弱さとの対峙
パトリシアは足で姉を探し回ったが、広大な学園都市の中で手がかりは見つからなかった。疲労と痛みの中で、自分は本当に姉を助けたいのか、それとも頑張ったふりをしてかわいそうな被害者になりたいだけなのかと疑い始めた。彼女は自分の弱さに耐えきれず、柱の根元に崩れ落ちた。
上里翔流の追跡
そこへ上里翔流が現れた。彼は、パトリシアが話さなければ自分達が勝手に調べると告げ、自分の足でレールを外れた彼女の焦りを見抜いていた。パトリシアは、姉の方法が成功すれば自分は助かるかもしれないが、姉はほぼ確実に死ぬと明かした。
自殺という選択肢
上里は、パトリシアが姉の爆弾を取り除く方法を持たず、自分が消えることで姉が命を投げ出す理由を奪おうとしていたと見抜いた。彼は理想送りを示し、痛みも死体も残さず新天地へ送ることができると説明した。そして、それがパトリシアにとっての救いなのかと問いかけた。
拒絶された新天地
パトリシアは、死ぬことは姉を助けることにならないと泣きながら否定した。自分が死ねば姉は家族を切り捨てて生き延びたという重荷を背負うことになるため、自分が死ぬか姉が死ぬかの二択ではなく、第三の道を作らなければならないと叫んだ。彼女は新天地ではなく、この世界で最後まで足掻く道を選んだ。
理想送りの条件
上里は、理想送りには願望の重複という大きな発動条件があり、目的が一本化されてブレない人間には効きにくいと説明した。パトリシアに理想送りが働かなかったことは、彼女がこの世界で一本の道を見出した証だった。上里は彼女の強さを認め、手を差し出した。
握手の契約
パトリシアは上里の右手を取り、姉を助けるために力を貸してほしいと頼んだ。上里は、彼女を助けるのではなく、彼女の伝説の一部に組み込ませてほしいと応じた。少女の選んだ辛い道を尊敬し、自分の全てを使って世界と戦うと約束した。
上里勢力の結集
少し離れた屋上では、絵恋、暮亞、獲冴達がその流れを見届けていた。彼女達は、上里がいつものように一人で突っ走ると分かっていたため、支える側へ回るつもりだった。闇の中には他の上里勢力の気配もあり、彼女達は邪魔するものを壊してでも進むと決めていた。
行間 二
風化した儀式
かつての王国や文明が滅びても、儀式だけは残っていた。保護されないまま秘密主義と先鋭化が進み、飢饉や疫病、穀物被害への恐怖と結びつくことで、残酷な行為だけが特別な意味を持つように解釈されていった。
天国の証明
ある一派は、エジプト神話の復活思想をもとに、肉体と魂を管理できるか証明しようとしていた。彼らは純粋に育てた乙女を儀式に従って殺害し、内臓や心臓に手を加えることで、肉体から抜けた何かがどこを通るのか観測しようとしていた。
罪人の系譜の少女
犠牲となる少女は罪人の系譜と呼ばれ、一派の価値観では命を差し出すのが当然とされていた。少女自身も肩の荷を降ろせると信じ、不満を抱いていなかった。しかし彼女は笑い、泣き、花を育て、好き嫌いを示す一人の人間でもあった。
叫びを上げた男
男は、少女が人形ではなく自分を持つ人間であると知っていた。だが儀式は止まらず、彼はこんなのは間違っていると誰かに一緒に泣いてほしいと願った。作業が始まれば、少女の命は魂の観測にも届かないまま無為に散るはずだった。
涙を流すネフテュス
その直前、包帯を巻いた褐色の女神ネフテュスが現れた。彼女は、必要な犠牲として扱われた死の伝承に異を唱える女神だと名乗り、死を否定できなかった全てを糾弾するために涙を流すと語った。直後、彼女の絶叫はあらゆる物質を超速振動させ、一派の全てを灰燼に帰した。
第三章 少女願望、 その交差 Winner’s “APPLE
二つの姉妹と二つの右手
レイヴィニア=バードウェイは自分を犠牲にしてパトリシアを助けようとし、パトリシアは自分を諦めてでもレイヴィニアを助けようとしていた。上条当麻はレイヴィニア側に関わり、上里翔流はパトリシアに手を貸そうとしていた。事件の骨格は、姉妹のすれ違いと、幻想殺しと理想送りの激突へ向かう構図にあった。
空腹の学生寮
上条は食事を確保しようと焦っていたが、夜の学園都市を歩けば上里と再遭遇する危険があった。テレビをつけても料理映像が映り、空腹の一同には苦痛でしかなかった。ネフテュスはドラマの感情に引きずられて号泣し、オティヌスは彼女の涙もろさが神格の由来に関わると説明した。
隣室への期待
上条は外へ出ずに食材を得るため、隣室の土御門元春から食材を借りようと考えた。土御門自身は料理に期待できなくても、舞夏が冷蔵庫に何かを入れている可能性があったからである。しかし隣室の扉は不自然に開き、上条は植物の蔦のようなものに足首を絡め取られた。
上里翔流の待ち伏せ
上条は隣室へ引きずり込まれ、そこにいた上里翔流と再会した。上里は土御門を消してはいないが黙らせたと告げ、上条を七階から外へ放り出した。上条は蔦の網で衝撃を和らげられながら落下し、地上で上里と向き合うことになった。
暮亞と獲冴
上里は、植物に近い原石である暮亞と、こっくりさんのような憑依魔術を扱う獲冴を紹介した。上条は上里だけでも厄介なのに、さらに周囲へ戦力を配置されていると理解した。自室には負傷や弱体化した仲間が残っており、逃げることも戦うことも難しい八方塞がりの状況だった。
理想送りの由来
上里は、理想送りを得たのはごく最近であり、魔神達を狩ったのが初陣のようなものだったと語った。彼は元々学園都市とも魔術結社とも無縁の、どこにでもいる平凡な高校生だった。しかし理想送りによって、自分の周囲の普通だった少女達が異形の力を持つ存在へ変わってしまったと感じていた。
救いへの憎悪
上里は、救われた者は救った相手に依存し、やがて普通の枠から外れていくのだと考えていた。暮亞や獲冴、パトリシアまでもが、自分と出会ったことで本来の大切なものを上書きされかけたと見ていたのである。そのため、彼は理想送りを与えた魔神達を、自分の周囲を歪めた元凶として憎んでいた。
上条当麻の反論
上条は、上里の周囲の少女達が本当に魔神の力で歪められたのかは証明できないと返した。彼女達は元々上里と話したかったのかもしれず、感謝や好意は上里自身に向けられたものだったかもしれないと指摘した。上条は、平凡な高校生が誰かに尊敬されてはいけないという決まりはないと告げた。
決裂する二人
上里は、上条が魔神からの贈り物に毒され、周囲に女の子が集まることを当然と思っていると断じた。上条は逆に、上里が他人の心を自分の都合で決めつけているだけだと切り返した。二人の視線はぶつかり合い、上里は魔神を引き渡すなら見逃すつもりだったが、応じないなら戦争だと宣言した。
バードウェイ姉妹の対立軸
上条は、上里がパトリシアとバードウェイの名を知っていることから、もう一つの対立軸を理解した。上里は、目の前の誰かを見捨てることはできないと語り、レイヴィニアにも詳しく話を聞くよう上条に促した。その後、上里は暮亞や多くの少女達と共に闇の奥へ消えていった。
もう一人のヒーロー
上条は、上里の周囲に集まった少女達を見て、ネフテュスの言葉を思い出した。理想送りが上里に宿ったのも、彼自身にそれを惹きつける何かがあったからかもしれない。上条は、上里もまた多くの人に好かれるヒーローなのではないかと感じたが、上里自身はそのことに気づいていなかった。
行間 三
身近な異国の神秘
エジプト神話は歴史の中で埋没した宗教だったが、資料は多く残り、神々や儀式、命や魂に関する考え方も体系化されていた。西欧から見れば地中海を挟んだ近場の神秘であり、石碑や副葬品も欧州各地に運ばれていたため、行き詰まった魔術師にとっては手の届きやすい突破口となっていた。
砂漠へ渡った男
世界をイシス、オシリス、ホルスの時代に分けた男も、いつか海を渡って砂漠へ辿り着いていた。彼は誰も聞いたことのない大悪魔の召喚実験に着手したが、その経緯の中で、ネフテュスは三柱の名が出たことに珍しく反応した。
蠱惑的な笑み
ネフテュスは、創作された神格として関わった身だからこそ、男の知る伝承が元の形から歪んでいないことを祈ると語った。その笑みは懐かしさよりも蠱惑に近く、棘と毒を含んでいた。彼女には成功も失敗も、幸運も不幸も、平穏も騒乱もなかった。
泣きたいという本質
ネフテュスは、目の前の誰かが挫折すれば、その人のために泣きたいと思う存在だった。感情は軽く、すぐに生まれてすぐに流れていくもののようだったが、それがいつもの彼女であった。しかし最後には、それで本当に良いのかという問いが残された。
第四章 上条当麻と上里翔流 Attack_the_Fist.
上里翔流の接近
上条当麻は学生寮へ戻り、上里翔流がすぐに来ると告げた。上里の第一目標はオティヌスとネフテュスであり、バードウェイも第二の対立軸に入っていた。上条が隠し事を問い詰めると、バードウェイはカニバリゼーションの果実が完成すれば自分の身体が内側から破裂すると明かした。
果実の代償
バードウェイは、果実が大き過ぎることを設計段階から分かっていた。自分の死が確定している計画を部下に知られれば、妹を諦めて組織維持を優先しろと迫られるため、誰にも頼れなかったのである。上条は、パトリシアが果実を拒んでいた理由も、その完成で姉が死ぬと察していたからではないかと考えた。
停電と襲撃
部屋の明かりが突然落ち、上里勢力の襲撃が始まった。上条達が逃げようとした直後、キッチンのダクトから黒い不定形の塊が落ちてきた。それはパトリシアを蝕むサンプル=ショゴスであり、バードウェイは腐った赤い絨毯のような毛皮をまとって妹と対峙した。
分断された脱出
バードウェイは妹と話をつけるために残り、上条はインデックスにネフテュスを預けて部屋を飛び出した。通路には上里勢力の少女達が多数潜んでおり、懐中電灯やスマホの光を向けていた。上条は獲冴を魔術師だと見抜き、インデックスの強制詠唱で彼女の憑依魔術を乱させた。
王将狙い
上条は、上里勢力の全員を倒すのではなく、中心である上里本人を狙うことにした。上里が危機に陥れば、少女達は予定を捨てて彼を助けに入ると見たのである。上条は理想送りの一撃をかがんで避け、上里へ体当たりして手すりの外へともつれ込んだ。
理想送りの影
落下しながら、上条は理想送りの発動条件を見抜いた。上里は自分の腕が作る影を起点に効果範囲を決めていたため、襲撃時に電気を落として光源を限定したのだった。上条と上里は六階、五階と落ちながら互いに体勢を立て直し、非常階段の踊り場で再び激突した。
殴り合う二人
上条は上里の右手首を封じ、頭突きや蹴りで追い詰めた。だが上里もボールペンを上条の足に突き刺し、平凡な高校生でありながら無力ではないことを示した。二人は掴み合いながら、レイヴィニアとパトリシアのどちらを救うべきかで激しく衝突した。
上里の選択
上里は、パトリシアがすぐ死ぬという前提を疑い、まずレイヴィニアの果実を破壊すべきだと考えていた。パトリシアはサンプル=ショゴスと共生し、栄養を外部から補う方法を探ればよいという考えだった。彼は、姉妹のどちらかを死なせる天秤から解放する道として、それを選ぼうとしていた。
上条の反論
上条は、パトリシアが寄生生命体と一生付き合う苦痛を背負わされることを否定した。命だけあっても、機械やチューブに繋がれ、枯れ枝のような体で生きるなら、それを救いとは呼べないと考えたのである。上里はパトリシアの覚悟を尊重すると主張したが、上条は涙をこぼす少女を崖っぷちまで追い込んで勇気だけを褒めるのは違うと叫んだ。
植物性脂肪の答え
上条は、パトリシアからサンプル=ショゴスを追い出すには、失われた脂肪の代わりを入れればよいと気づいた。上里の仲間である暮亞は植物に近い体質を持ち、植物性脂肪を人の体に馴染む形で作れる可能性があった。上条は、上里が一声かけていれば姉妹はどちらも死なずに済んだはずだと突きつけた。
ヒーローへの挑発
上条の提案に上里は反論できなくなった。その時、隣の建物の壁に赤い毛皮と黒い寄生生命体が張り付き、姉妹が互いを救うために衝突し始めた。上条は上里に、まだ好きでやっている訳ではないと言うなら這いつくばっていろと告げ、困っている者を見た平凡な高校生は、それだけでヒーローになれるのだと叫んだ。
姉妹の衝突
レイヴィニアは果実を完成させて妹を救おうとし、パトリシアは果実を破壊して姉を救おうとしていた。どちらも善意ゆえに止まれず、赤と黒の怪物となって壁の上で貪り合った。上条はその悲劇を止めるため、屋上から命綱なしで飛び降り、上里の理想送りで作られた隙間を通ってパトリシアへ手を伸ばした。
サンプル=ショゴスの摘出
上条は幻想殺しで黒い塊を弾き飛ばし、落下するパトリシアを抱きしめた。暮亞は植物の蔦で網を作って二人を受け止め、パトリシアの体内へ植物性脂肪を送り込みながら寄生生命体を追い詰めた。上条は表に出てきた黒い塊を幻想殺しで消していき、処置は順調に進んでいるように見えた。
死を招く迎撃
サンプル=ショゴスは暮亞の爪を宿主の一部と誤認して捕らえ、背中側からも黒い触腕を伸ばした。上条は反射的に右手で迎撃しようとしたが、それは処置中のパトリシアに急激なショックを与える危険があった。止まれないまま右手が黒い塊に叩き込まれ、パトリシアの命は危機に陥った。
ネフテュスの奇跡
その時、ネフテュスは自分の存在が消えかけていることを悟った。彼女は元々死んでおり、残留体温のように動いていただけだとインデックスへ伝えるよう頼んだ。だが最後に、神様は奇跡を願うのではなく起こす側であるべきだと思い直し、自らの肉体を組み替えてパトリシアに必要な脂肪分へ変えた。
消えた女神
ネフテュスは、パトリシアの一部となることで自分という存在を消していった。サンプル=ショゴスの急激な消滅でミイラのように痩せかけたパトリシアの体は、内側から満たされるように回復した。パトリシアは朦朧としながら、見えない声にあなたは誰かと問い、神様かしらという答えを聞いた。
残された魔神
パトリシアの救出によって、レイヴィニアの果実も不要になった。バードウェイは妹の無事を確認し、胸の中の人工臓器を取り出して捨てた。だがネフテュスは消え、上条はまた犠牲を許容してしまった苦さを抱えたまま、最後に残った魔神オティヌスを巡って上里と向き合うことになった。
幻想殺しと理想送り
上里は、魔神達が自分達の右手や異常な環境の原因であり、復讐する権利があるのではないかと問うた。上条は、ネフテュスの最期を見てもなお彼女を悪だけの存在だと言うなら、上里は自分の敵だと返した。やがて二人は周囲から離れ、幻想殺しと理想送りを正面からぶつけるために向かい合った。
終章 揺りかごの時間の終わり More_Purely,More_Bloody.
上里翔流の敗走
上里翔流は夜の第七学区を歩きながら、絵恋と電話していた。彼は幻想殺しそのものは大したことがなかったが、その奥に別の何かがあったと語った。上条当麻との激突によって上里は全身を血に染め、片腕もまともに動かない状態になっていた。
木原脳幹の立ちはだかり
上里の前に、ゴールデンレトリバーの姿をした木原脳幹が現れた。木原脳幹は、上里が学園都市を引っかき回し過ぎたため、好悪で言えば悪に当たると告げた。対魔術式駆動鎧の武装が展開されたが、上里は理想送りでその半分以上を一撃で消し飛ばした。
サンプル=ショゴスの正体
上里は、サンプル=ショゴスが単なる寄生生命体ではなく、異能の力に関わるものだと見抜いていた。南極調査を後援していた学園都市が、上里を不意打ちするためにパトリシアを罠として使ったのではないかと推測した。そして、そこに変色した未元物質が埋め込まれていた可能性を口にした。
理想送りと対魔術式駆動鎧
木原脳幹は、対魔術式駆動鎧を通じてアレイスターの力を送り届けていた。だが理想送りは、作り手であるアレイスターの願望の揺らぎに反応し、木原脳幹の武装を次々に消し飛ばした。木原脳幹は丸裸にされ、ただの犬に戻された。
木原脳幹の抵抗
上里は木原脳幹に新たな天地を望むかと問いかけた。木原脳幹は、自分には七人の始祖から受け継いだ知性があり、この世界で生きて死に、木原の答えを確かめると断言した。彼は最後まで退かず、上里と決着をつけた。
木原唯一の絶叫
木原唯一が現場に駆けつけると、木原脳幹は血だまりの中に倒れていた。彼は上里に噛みついて抵抗したらしく、牙には自分以外の血がこびりついていた。しかし全身は激しく殴打され、臓器破裂や骨折、出血によって命も知性も失われかけていた。
氷の棺
唯一は、通常の治療では間に合わないと判断し、木原脳幹をコールドスリープにかけた。これは損傷の進行を止める代わりに、再び会話できる時がいつ来るかも分からない選択だった。木原脳幹は最後に、唯一へ自分を超える木原になり、その先へ進めと告げた。
唯一の決意
木原脳幹の処理を自らの手で進めながら、唯一は泣き崩れた。だが彼女の瞳には異様な光が宿り、師を超える木原になってみせると誓った。理想送りや幻想殺し、魔神達の思惑とは別に、新たな対立軸が世界へ産声を上げようとしていた。
アレイスターの咆哮
窓のないビルでは、アレイスター=クロウリーが計画の成功を確認していた。どんなイレギュラーも本線に戻せるはずであり、結果だけを見れば全ては計画通りだった。だが彼は、幼い娘の死を知った日のように、最善しか導けない計画そのものを呪い、世界を引き裂くように咆哮した。
神のルールとの戦い
幼い頃のアレイスターは、嘘つき達を裁けない半端な世界を作った神を軽んじ、自分が正しいルールを見つけようとした。やがて彼は黄金の門を叩き、多くの術式や霊装を開発したが、結社の内紛、子供の死、妻との別れなどの挫折を重ねた。それでも彼は、神にも出せなかった答えを求め、今も神のルールと戦い続けていた。
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