新約 とある魔術の禁書目録(15)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(17)レビュー
物語の概要
■ 作品概要
『新約 とある魔術の禁書目録(16)』は、科学と魔術が交差する学園都市を舞台にしたSFファンタジーバトル作品である。一二月であるにもかかわらず、気温が摂氏五五度を超える原因不明の「大熱波」が学園都市を襲い、インフラが完全に機能停止してしまう。さらに、灼熱地獄の地上や暗闇には「エレメント」と呼ばれる異形の化け物が徘徊し、生徒たちは水と日陰を巡る過酷なサバイバルを強いられることになる。上条当麻は避難先の学校の飲料水を確保するために決死の「水狩り」へと向かい、やがて御坂美琴や食蜂操祈ら常盤台中学の面々と合流する。そして、エレメントの襲来と事態の黒幕である木原唯一の真の目的に迫っていく物語である。
■ 主要キャラクター
- 上条当麻:右手に異能を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を持つ少年。大熱波とエレメントの脅威から仲間を守り、プールの水を飲料水化するための泥を求めて奔走する。
- 御坂美琴:学園都市第三位の超能力者(レベル5)。謎の「対魔術式駆動鎧(A.A.A.)」を身に纏い、空からエレメントを一方的に撃破して常盤台中学の「聖域」を防衛している。
- 食蜂操祈:常盤台中学の超能力者で、「心理掌握(メンタルアウト)」を持つ少女。物理攻撃が有効なエレメント戦では裏方に回り、学校組織が破綻しないよう見張る委員長ポジションを務めている。
- 上里翔流:「理想送り(ワールドリジェクター)」を持っていた少年。木原唯一の打倒を目指し、特異な少女たちを率いて激戦を繰り広げる。最後は少女たちを守るため、自らの存在を懸けた悲壮な決断を下す。
- 木原唯一:上里から右手を奪い、自らの腕に縫合した研究者。大熱波とエレメントの混乱を利用して凄惨な復讐を目論み、自らの体を異形の「A.A.A.」へと作り替える狂気を見せる。
- 府蘭(ふらん):上里勢力の一員である自称UFO少女。手製の宇宙ステーションから強力なマイクロ波を照射し、学園都市に大熱波を引き起こした張本人である。
■ 物語の特徴
本作の最大の特徴は、水と資源を巡る極限のサバイバル状態が描かれている点である。大熱波とエレメントという二重の脅威に対し、泥臭く足掻き続ける上条たちと、圧倒的な武力と資源の余裕を持つ常盤台中学のお嬢様たちとの激しい対比が非常に興味深い。また、終盤における人間ドラマも大きな魅力である。恩師の復讐のために暴走する木原唯一に対し、上里翔流は自らを慕う少女たちを守るために自らが世界から消失する自己犠牲の道を選ぶが、上条当麻はその「誰も幸せにしない幻想」を真っ向から否定し、不可能を可能にしてでも彼を取り戻すという熱い決意を固める展開が読者を強く引き込む。
書籍情報
新約 とある魔術の禁書目録(16)
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2016年4月9日
ISBN:9784048658843
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あらすじ・内容
科学と魔術が交差するとき、物語は始まる――!
今度は(お嬢様)学校の生徒総動員?
『エレメント』から、『聖域』を守れ!
上里翔流が消えてから三日。
次なる戦いに身をうつした上条だったが、その先に待ち受けていたのは、水着姿の食蜂操祈や御坂美琴をはじめとする、お嬢様だらけの常盤台中学(てんごく)だった……?
季節は冬。12月の学園都市――にもかかわらず、気温は摂氏50度を超えていた。原因不明の大熱波により、学園都市のインフラ全てが機能停止する中、その『予測不能な脅威』はやってきた。
エレメント。
灼熱地獄を這う異形の化け物。『暗闇』を好み、停電中の学園都市で次々と生徒を襲う凶暴性を持つ。ヤツらに唯一対抗できる『右手』でもって、上条は吹寄やインデックスの手を借りて激戦地へ向かうも多勢に無勢。そんな窮地に現れたのは、異形の機械『対魔術式駆動鎧(アンチアートアタッチメント)』に包まれたあの少女で……?
食蜂操祈を参謀にお嬢様学校総動員で挑む中、上条は『大熱波』と『エレメント』を仕掛けた黒幕の正体に迫っていく!
感想
灼熱の学園都市を舞台にした過酷なサバイバルと、あまりにも絶望的な結末が強く心に残る一冊だった。
12月にもかかわらず、学園都市の気温は50度を超える。
電気や水道などのインフラは止まり、街には「エレメント」と呼ばれる異形の怪物が徘徊している。
これまでにも学園都市は何度も危機に見舞われてきたが、今巻では普段の生活そのものが完全に崩壊している点が恐ろしかった。
能力や魔術以前に、水がなければ人間は生きていけない。
当たり前に使っていたものが失われるだけで、これほど簡単に社会が崩れてしまうのかと考えさせられた。
そんな極限状態でも、上条当麻は相変わらず人のために動いている。
他校へ一時的に避難している上条たちは、居候のような立場に置かれている。肩身の狭い状況で、水を確保するために危険な街へ出ていく彼の姿は、格好良いというより泥臭い。
誰かに命令されたからではなく、目の前で困っている人がいるから動く。
特別な力を持っていても、上条がやっていることは水を運ぶために走り回ることである。その地道さに、彼らしい強さを感じた。
水道局で危機に陥った上条を救ったのは、御坂美琴だった。
未知の兵器「A.A.A.」を操り、エレメントを一方的に倒していく姿は非常に頼もしい。これまで魔術側の強敵を前に苦戦することも多かっただけに、美琴が圧倒的な火力を見せる場面には爽快感があった。
しかし、素直に喜ぶことはできなかった。
美琴は上条の隣に立つため、さらに強い力を求めている。
その気持ちは分かるものの、A.A.A.がどのような兵器なのか、本人もすべてを理解しているわけではない。危険性を顧みずに力へ手を伸ばす姿からは、焦りや追い詰められた感情が伝わってきた。
上条を助けたいという思いが、美琴自身を危険な方向へ進ませているように見える。
頼もしくなったというより、取り返しのつかない場所へ近づいているようで不安になった。
物語が進むと、エレメントを生み出している木原唯一と、それに対抗する上里勢力の争いが、学園都市の異常気象に関係していることが明らかになる。
多くの一般人が苦しんでいるにもかかわらず、その原因が一部の者たちの抗争にあるという事実には腹立たしさも覚えた。
上条と美琴がエレメントを誘導する「水晶の塔」を破壊する展開も緊張感があった。
ようやく事態が好転するのかと思ったところで、それすらも木原唯一が仕掛けた罠だったと判明する。
二人を常盤台中学から引き離すことが目的だったという展開には、完全に出し抜かれたような気分になった。
終盤の「窓のないビル」地下での戦いは、今巻でも特に印象に残っている。
木原唯一はエレメントを生きたまま取り込み、人間とは思えない異形の姿へ変わっていく。
恩師である木原脳幹を失った悲しみが出発点だったとしても、すでに彼女の行動は復讐という言葉だけでは説明できないところまで暴走している。
自分自身まで怪物へ変えながら上里を追い詰める姿には、木原という存在の底知れない狂気を感じた。
それに対し、上里翔流は自分を慕う少女たちと共に戦う。
これまで上里は、少女たちが自分の右手の力によって集まったのではないかと疑っていた。
しかし、右手を失っても彼女たちは離れなかった。
自分たちの意思で上里のそばに立ち、一緒に戦う。
その姿を見て、上里と少女たちの絆が本物だったことが改めて伝わってきた。
ようやく木原唯一を追い詰めたかと思った直後、地下のブースターを点火し、全員を道連れにしようとする展開には息を呑んだ。
少女たちを守るため、上里は取り戻した「理想送り」を使う。
しかし、それは敵だけを消す都合のよい力ではない。
上里自身も別の世界へ消えてしまう。
自分を慕う少女たちを助けるために、自ら犠牲になる道を選んだ上里の姿は悲壮だった。
けれども、物語はその自己犠牲を美しい別れとして終わらせてはくれない。
残された上里の右手を木原唯一が利用し、上里を救いたいと願う少女たちを支配する。
彼女たちの純粋な思いを人質に取り、強制的に従わせる展開はあまりにも悪辣である。
上里は少女たちを守るために消えた。
その結果、少女たちは上里を取り戻すために木原唯一へ服従しなければならなくなった。
誰かを救うための行動が、さらに残酷な状況を生み出してしまう結末には、強い理不尽さを感じた。
だからこそ、最後に立ち上がる上条の姿が熱かった。
上里の選択を仕方のない犠牲として受け入れない。
本人が納得して消えたとしても、そんな結末を認めない。
地獄のような場所へ追いやられたのなら、そこまで行って引きずり戻す。
これまで敵対してきた相手であっても、助けを求める声があるなら手を伸ばす。その迷いのなさこそが、上条当麻の最大の強さなのだと思う。
今巻は、上里が自分を慕う少女たちとの絆を確かめる物語であると同時に、美琴が危険な力へ踏み込んでいく物語でもあった。
上里を救う方法は本当に存在するのか。
木原唯一に従わされた少女たちはどうなるのか。
そして、A.A.A.を手にした美琴はどこへ向かってしまうのか。
絶望的な状況で終わりながらも、上条ならこの結末を壊してくれるのではないかと思わせてくれる。
次巻でどのように上里を取り戻すのか、続きが気になって仕方のない一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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新約 とある魔術の禁書目録(15)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(17)レビュー
考察・解説
学園都市の大熱波
学園都市を襲った大熱波の脅威と隠された真実
12月の学園都市を襲った「大熱波」は、気温が摂氏55度から60度近くにまで達する異常な環境を生み出した現象である。この猛烈な熱により電気や水道などのインフラは完全に機能停止し、車両のバッテリーや電子機器も熱で破壊されるなど、街は一夜にして崩壊の危機に直面した。大熱波がもたらした過酷な生存競争、その発生原因、隠された残酷な目的、そして上条当麻の拒絶についての解説は以下の通りである。
価値基準の崩壊に伴う水と日陰の奪い合いと、異形の怪物エレメントの出現
大熱波によって学園都市のこれまでの価値基準は崩壊し、生存に直結する資源を巡る世紀末のようなサバイバルへと変貌した。
・「水」と「日陰」が札束や金塊のように奪い合われる世界となった。
・生徒たちは熱が籠るのを防ぐために真冬にもかかわらず水着姿での生活を余儀なくされ、熱中症や脱水症状で倒れる者が続出する。
・暗所や冷所を好む異形の怪物「エレメント」が同時に出現したため、生徒たちは灼熱の太陽の下で熱に耐えるか、危険な日陰で怪物に襲われるかという究極の選択を迫られる。
・生きるために泥水の浄化を試みるなど、命懸けで水を確保する「水狩り」が行われる過酷な状況へと発展した。
宇宙からの膨大なマイクロ波照射と、上里勢力の府蘭による宇宙ステーションの運用
この熱波は太陽光や異常気象といった自然現象によるものではなく、人為的に引き起こされたものである。
・原因は宇宙から学園都市全体に降り注ぐ膨大な「マイクロ波」であり、街全体が巨大な電子レンジのような状態にされていた。
・これを引き起こしていたのはエレメントを操る木原唯一ではなく、上里勢力の一員である「UFO少女」の府蘭であった。
・府蘭は手製の宇宙ステーションを使用し、意図的にこの過酷な熱環境を学園都市へ向けて仕掛けていた。
摂氏42度を超える環境での活動減退と、街の即死制圧を防ぐための防衛策
最も衝撃的な事実は、この大熱波が仕掛けられた真の理由と、それが有していた防衛機能にある。
・エレメントは「摂氏42度を超える環境では活動が減退する」という決定的な弱点を持っていた。
・上里勢力はこの弱点を突き、木原唯一が放った大量のエレメントの動きを押さえ込むための防衛策として、街を大熱波で包み込んでいた。
・もし大熱波がなければエレメントの勢いは50倍から60倍に膨れ上がり、学園都市は半日も保たずに血の海と化して制圧されていた。
・生徒たちを熱中症や水不足で極限まで苦しめていた灼熱こそが、皮肉にも彼らをエレメントの即死攻撃から守り続けていた盾であった。
合理的な犠牲の容赦に対する怒りと、真実の隠蔽を打破する日常奪還の叫び
しかし、上条当麻はこの冷酷な真実と、それに伴う人々の苦痛を激しく拒絶する。
・上里たちは犠牲を許容してでも木原唯一を仕留めるための合理的な作戦として実行していたが、上条はこれを受け入れなかった。
・何も知らされずに水や食糧を巡る争奪戦に身を投じ、恐怖と苦痛の中で命を散らしそうになっていた人々の想いを踏みにじる行為であるとみなした。
・上条は、効率や合理性なんかどうでもいい、と上里のやり方を真っ向から否定する。
・訳知り顔の少数の者たちだけで真実をブラックボックスに隠し、不毛な膠着状態を維持する姿勢を拒絶した。
・皆に「もう悪夢は終わった」と報告して当たり前の日常を取り戻すことこそが真の解決であると叫び、自らの手で事態の根本的な打破へと動くこととなる。
まとめ
学園都市の大熱波を巡る一連の顛末は、インフラを麻痺させ水と日陰の争奪戦を引き起こした摂氏60度近い異常環境が、実は上里勢力の府蘭が木原唯一のエレメントを足止めするために放ったマイクロ波による防衛策という冷酷な合理性に基づいていたものの、その犠牲と苦痛を強いるルールを上条当麻が激しく拒絶し、真実を隠蔽するブラックボックスを打ち破って全員で当たり前の日常へと帰還するための根本的打破へ動き出すことで、理不尽な環境の檻を乗り越え、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還するに至る、不条理な防衛策の超克と実存的サバイバルの記録である。
極限の環境構造から、発生原因の特定、残酷な防衛機能の露呈、そして上条の信念の爆発へと繋げたプロセスは、どれほど大義名分や合理的な計算によって生の自由が脅かされようとも、無辜の人々の苦痛を看過せず、本質を突いた知性と確固たる意志によって新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
巨大エレメントの襲来
学園都市を襲ったエレメントの脅威と木原唯一の狂気
『新約 とある魔術の禁書目録』第16巻において、大熱波の学園都市を襲った「エレメント」は、人々の生活圏を奪う恐るべき脅威として描かれ、その規模は絶望的なレベルへとエスカレートしていった。エレメントの生態、宇宙からの飛来方法、規格外の巨大個体の出現、そして木原唯一が目論んだ恐るべき真の目的についての解説は以下の通りである。
水晶のような半透明の肉体と、人魂のような光のコアを宿す異形の怪物
エレメントは、大熱波に喘ぐ学園都市の暗所や冷所を好んで出現する不気味な生態を持っている。
・水晶のように半透明な炭素ベースの肉体を持ち、周囲の風景に溶け込む擬態を好む。
・胸の中央には、火・水・風・土のいずれかの属性を示すコアと呼ばれる人魂のような光を宿している。
・比較的小型のものでも全長3メートル級のハナカマキリであるクラス1、6メートル級のヒシガニやクモであるクラス2といった巨体を誇る。
・超高水圧のレーザーを放つ12メートル級のタコであるクラス3などが、避難した生徒たちを容赦なく襲撃した。
第七学区のドーム球場を突き破る全長200メートルの水晶の塔と、誘導ビーコン
エレメントたちは学園都市内で自然発生したわけではなく、外部から供給されるシステムが構築されていた。
・宇宙で待機している個体が、星の雨のように地上へと降り注ぐ形で飛来していた。
・それらをピンポイントで学園都市に誘導するためのビーコンの役割を果たす巨大構造物が存在した。
・第七学区のドーム球場を内側から突き破ってそびえ立つ、全長200メートルの巨大な「水晶の塔」がその供給源となっていた。
最大想定クラス4を凌駕するクラス6・100メートル規模の怪物の集結
宇宙からの増援を止めるため水晶の塔の破壊に向かった上条当麻や御坂美琴の前に、規格外の巨大個体が立ち塞がった。
・これまでの最大想定であったクラス4(24メートル)すら遥かに凌駕する「クラス6(100メートル規模)」の怪物が集結した。
・水のコアを持つ地竜(トカゲ)、風のコアを持つ巨大なワニ、火のダイオウサソリ、土のコノハカマキリといった怪物たちが圧倒的な質量で襲いかかる。
・対魔術式駆動鎧(A.A.A.)を装備した御坂美琴でさえ、一撃で撃ち落とされかけるほどの猛威を振るった。
巨大個体を生きたまま捕食する左腕変異と、異形なる対魔術式駆動鎧への作り替え
上条たちの死闘や上里勢力の猛攻によって巨大エレメントは撃破され、水晶の塔も折れて事態は収束したかに見えたが、真の絶望はその後に待っていた。
・窓のないビルの地下施設にて、木原唯一は再びクラス6の巨大エレメントの群れを引き連れて上条・上里たちの前に姿を現した。
・木原唯一にとって、巨大エレメントは戦わせるための手駒ではなかった。
・彼女は自身の左腕や身体を醜悪に変異させ、周囲の巨大エレメントたちを自らの肉体や兵器に取り込むための「エサ」として生きたまま捕食し始めた。
・エレメントの装甲や兵器の特性を抽出し、自らの体を異形の「A.A.A.」へと作り替えるという、底知れぬ狂気を見せつけた。
まとめ
エレメントの襲来を巡る一連の顛末は、属性コアを持つ半透明の怪物が全長200メートルの水晶の塔をビーコンとして宇宙から飛来し、最大100メートル級のクラス6へと規模を拡大させて防衛線を圧倒しながらも、その本質は木原唯一が自らの肉体を異形の「A.A.A.」へと作り替えるためのエサに過ぎず、巨大個体を生きながら捕食して力を取り込むという最悪の狂気に上条らが直面しながらも、理不尽な捕食システムの檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還しようとする、極限の闘争の記録である。
異形の生態から、宇宙規模の誘導、規格外の戦闘、そして黒幕による同化へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な科学の暴走や圧倒的な怪物の質量によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の意志と確固たる連帯によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
水と資源の確保
『新約 とある魔術の禁書目録』第16巻における大熱波の襲来は、学園都市のインフラを完全に機能停止させ、生徒たちを水と資源を巡る過酷なサバイバルへと追い込んだ。摂氏55度を超える異常環境下での価値基準の崩壊、詐欺の横行や生存の工夫、プールの水の浄化作戦、および名門・常盤台中学の資源管理と他校の悲劇についての解説は以下の通りである。
階層分けの崩壊と、ビルの屋上を渡る命懸けのウォーターサーバーボトル回収
大熱波によって電気や水道が失われた結果、これまでの学力や収入による階層分けは完全に崩壊し、生存に直結する資源を巡る世紀末のような世界へと変貌した。
・「水」と「日陰」が札束や金塊のように奪い合われる世界となった。
・生徒たちは、熱中症や脱水症状の危機にさらされながら生活することを余儀なくされた。
・灼熱の地上や暗所に潜むエレメントの脅威を避けるため、ビルの屋上に手製の綱渡りを張り巡らせて移動する手段をとった。
・残されたウォーターサーバーの予備ボトルなどを命懸けで回収する「水狩り」が横行した。
偽の浄水器による物資の詐取と、温水暖房配管の残留水を用いた士気向上
極限状態の中では、わずかな資源を巡るトラブルや詐欺が発生する一方で、知恵を絞った生存戦略も試みられた。
・砂を詰めただけのペットボトルを「泥水も奇麗な飲み水になる浄水器」と偽って貴重な水と交換しようとする詐欺師が現れた。
・効果のない水集めのビニールシートで他人を騙す者などが現れ、秩序の乱れが顕著となった。
・一方で雲川芹亜のように、温水暖房の配管に残っていた水をポンプで吸い出す工夫をする者もいた。
・飲料水としては怪しくとも「体を洗うためのご褒美」として利用することで、水狩りに志願する者の士気を上げる組織運営が行われた。
避難所での不公平感の蔓延と、水道局から持ち帰った特殊な泥による飲料水化
上条当麻たちは他校の校舎を間借りして避難所生活を送っていたが、元からいた生徒たちとの間に不公平感が蔓延し、立場が非常に弱くなっていた。
・このままでは追い出されかねない危機にあり、その状況を打破するため、学校の屋外プールの水を飲料水に変える作戦を立てた。
・プールの水は耐性菌などが繁殖しておりそのままでは飲めない状態であった。
・近くの水道局にある「有機微生物槽の培地(特殊な泥)」を入手して菌を喰わせることで、安全な水へと浄化する計画を実行した。
・上条たちは夜の街を空から滑空して水道局へ潜入し、エレメントの襲撃に遭いながらも泥を持ち帰ることに成功した。
地下水脈探査能力による花壇への散水と、極限状態の小学校における支援物資争奪戦
御坂美琴や食蜂操祈が所属する常盤台中学(学舎の園)は、他校とは全く異なる次元で資源を確保し、高度なストレス管理を行っていた。
・地下水脈を探査できる能力者を利用して水を汲み上げ、花壇や噴水にまで惜しみなく水を使っていた。
・これは単なる贅沢ではなく、水は精神衛生を保ちストレスを管理するためにも必要である、という合理的な判断によるものであった。
・余裕を失えば人々は暴動を起こし、かえって資源の消費が早まってしまうという計算があった。
・しかし、常盤台側が自力で基盤を構築できない小学校などへ水や食糧を分け与えようとした際、悲劇が起きた。
・極限状態に追い詰められていた他校の生徒たちは、支援物資を巡って武器や能力を使った激しい争奪戦を始めてしまった。
・結果的に、彼女たちからの支援を拒絶して逃げ出してしまうという不条理な結末を迎えた。
まとめ
学園都市の大熱波を巡る一連の顛末は、水狩りや詐欺が横行する極限の環境において、上条当麻らが避難所での立場を確保するために水道局から特殊な泥を持ち帰ってプールの水を浄化する一方で、常盤台中学が地下水脈から平穏な維持のための水を供給しながらも他校の狂気的な物資争奪戦によって支援が拒絶されるという悲劇に直面し、しかし不条理な生存競争の檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還するに至る、絶望的な熱波のなかでの実存的サバイバルの記録である。
価値の崩壊から、詐欺の頻発、技術的な水確保、そして格差がもたらす決裂へと繋げたプロセスは、どれほど苛烈な環境の激変や資源の枯渇によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた知性と確固たる意志によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
水道局の泥の回収
『新約 とある魔術の禁書目録』第16巻において描かれる「水道局の泥の回収」は、大熱波とエレメントの襲来によって極限の水不足に陥った避難所を救うため、上条当麻たちが挑んだ決死の作戦である。プールの水を飲料水に変えるという作戦の目的、ハンググライダーを用いた深夜の滑空出撃、浄水微生物を含む泥の回収、および帰路でのエレメントの襲撃と御坂美琴による救出についての解説は以下の通りである。
苔や虫の死骸と耐性菌が繁殖する屋外プールの水を、有機微生物槽の培地で浄化する目的
上条たちが間借りしていた中高一貫校の避難所では、水不足による不公平感から生徒間の対立が起きかけていた。
・この状況を打破するため、学校の屋外プールに溜まった水を飲料水に変える作戦が立案された。
・12月の屋外プールには苔や虫の死骸が浮き、さらに除菌スプレーの弊害で生まれた耐性菌が繁殖していた。
・そのため、単なる煮沸やろ過、塩素消毒だけでは食中毒のリスクを完全に消し去ることはできなかった。
・しかし、近くの学区単位の水道局にある「有機微生物槽の培地(特殊な泥)」を入手する解決策が見出された。
・その泥に含まれる微生物に耐性菌を喰わせることで、安全な水へと浄化することが可能であった。
エレメントの徘徊する地上を避けたワイヤー移動と、上昇気流を利用したハンググライダー滑空
上条当麻、吹寄制理、青髪ピアスらクラスの代表者たちは、深夜2時に水道局を目指して出撃した。
・エレメントが徘徊する危険な地上を避け、ビルとビルの間に張られた手製のワイヤー「綱渡り」を使って高所を移動していった。
・しかし、目的地である水道局へ直接繋がるワイヤーは張られていないという問題に直面した。
・そこで吹寄は、金属パイプと合成繊維の布を組み合わせた組み立て式のハンググライダーを展開した。
・大熱波によって熱せられたアスファルトから発生する「上昇気流」を利用する戦術をとった。
・これにより小さな翼でも空を滑空することが可能となり、彼らは無事に水道局の屋上へ着地した。
深さ5メートルの水槽の底に眠る茶色い泥の発見と、空き容器への流し込み
屋上の扉を蹴破って水道局の浄水棟へ侵入した一行は、目的の物資の入手に成功する。
・深さ5メートル、一辺40メートルほどの広大な水槽の底に、茶色い泥の層が残っているのを発見した。
・泥はまだ湿っており、内部の浄水微生物は生存している状態であった。
・上条たちは歓喜しながら、ウォーターサーバーの予備ボトルやペットボトルなどの空き容器に泥を流し込んだ。
・重たくなる容器を背負いながらも、これで避難所の仲間たちを救い、居場所を守ることができるという安堵感と達成感に包まれた。
マネキグモ型およびコモンオクトパス型との遭遇と、対魔術式駆動鎧を纏った美琴の爆撃救出
しかし、目的を果たして帰路につこうとした渡り廊下において、想定外の敵に強襲されることとなった。
・クラス2の風のエレメントであるマネキグモ型と、クラス3の水のエレメントであるコモンオクトパス型に遭遇した。
・超高水圧のレーザーと水蒸気爆発による猛攻を受ける中、上条は泥を持ち帰らせるためにクラスメイトたちを先に行かせた。
・自ら囮となって巨大なタコ型エレメントに立ち向かったが、触腕に捕らえられ絶体絶命の危機に陥った。
・間一髪のところで、対魔術式駆動鎧(A.A.A.)を装着した御坂美琴の強力な爆撃が空から降り注いだ。
・これによりエレメントは完全に撃破され、上条は救出された。
まとめ
水道局の泥の回収を巡る一連の顛末は、耐性菌で汚染されたプールの水を飲料水化するために水道局の特殊な泥を求める作戦から始まり、深夜の地上に潜む危険を避けて上昇気流を突いたハンググライダーによる潜入を成功させ、水槽の底から微生物の生きた泥を回収したものの、帰路で遭遇したクモ型やタコ型のエレメントによる高水圧レーザーの猛攻に対し上条が身代わりとなって捕らえられながらも対魔術式駆動鎧を纏った御坂美琴の爆撃によって救われ、命懸けで持ち帰った泥によって避難所の水不足を解消し、自分たちの居場所と平穏な生の主権を完璧に奪還するに至る、不条理な環境激変と知的な生存闘争の記録である。
極限の汚染問題から、気流を読んだ出撃、泥の確保、そして駆動鎧の援護へと繋げたプロセスは、どれほど都市のインフラが麻痺し絶望的な包囲網に晒されようとも、本質を突いた知性と確固たる意志によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
御坂美琴と常盤台
『新約 とある魔術の禁書目録』第16巻において、大熱波とエレメントの襲来という未曾有の危機に直面した名門・常盤台中学(学舎の園)は、他校を圧倒する強固な防衛体制を敷いていたが、黒幕である木原唯一の狡猾な罠によってその聖域を破られることとなる。常盤台中学が構築した合理的な防衛線、御坂美琴による対魔術式駆動鎧の運用、外部支援が招いた残酷な現実、そして本陣強襲による聖域崩壊の結末についての解説は以下の通りである。
学舎の園の要塞化と、地下水脈探査能力によるストレス管理のための豊富な水利用
大熱波によって学園都市の多くの学校が水と日陰を巡る凄惨な生存競争に陥る中、常盤台中学は次元の異なる圧倒的な余裕を保っていた。
・学舎の園の高い外壁を利用し、出入口のゲートを完全に封鎖して等間隔に見張り台を設置する要塞化を完了した。
・地下水脈を探査できる能力者を活用し、地中深くから豊富な水を安定して汲み上げるシステムを構築した。
・確保した水を飲料水としてだけでなく、敷地内の花壇や噴水にまで惜しみなく使用した。
・これは単なる贅沢ではなく、極限状態における精神衛生を維持し、ストレスによる暴動を防ぐという高度に合理的な判断による防衛策であった。
専用整備場での駆動鎧メンテナンスと、上空爆撃および地上のお嬢様による殲滅
御坂美琴は、手に入れた未知の兵器である対魔術式駆動鎧(A.A.A.)を組織的に運用するための基盤を整えていた。
・機体の維持管理を行うため、新たに部活申請を出して常盤台の敷地内に専用の整備場(ガレージ)を設置した。
・機体の整備や弾薬の補給などを周囲の生徒たちに任せ、安定的かつ組織的な運用体制を確立した。
・戦闘においては美琴が鎧を装着して上空からエレメントを爆撃し、地上の撃ち漏らしを高火力のお嬢様たちが殲滅するという一方的で安全な掃討戦を展開した。
・倒したエレメントを回収して解剖し、体構造や感覚器官を調べることで弱点や敵のコミュニケーション方法を探るなど、冷静な分析を進めていた。
小学校への物資補給の試みと、極限状態の争奪戦に伴う威嚇射撃の拒絶悲劇
水や食糧の備蓄に余裕のあった常盤台中学は、自力で生活基盤を構築できない近隣の小学校などへ向けて人道的な支援を試みた。
・物資を分け与えようと行動を起こしたが、極限状態に追い詰められていた他校の生徒たちは支援物資を前にして武器や能力を用いた激しい争奪戦を始めてしまった。
・美琴は暴動を鎮圧するために上空から威嚇射撃を行い、小学生たちへの直接の危害は防いだ。
・しかし、その圧倒的な武力が原因で小学生たちから恐怖の対象として見なされる結果となった。
・補給物資は誰にも受け取られず、支援対象が全員逃げ出してしまうという残酷な現実を突きつけられることとなった。
水晶の塔の破壊出撃を狙った主力誘き寄せと、食蜂操祈の重傷および整備場集中破壊
事態の根本的な解決を目指す美琴と上条当麻は、宇宙からエレメントを誘導しているビーコンである水晶の塔を破壊するため、常盤台の主力戦力を率いて外部へと出撃した。
・しかし、全長200メートルの巨大な水晶の塔は、常盤台の主力戦力を外へおびき出すために木原唯一が用意した罠であった。
・主力が出払った隙を突き、黒幕である木原唯一が大量のエレメントを引き連れて常盤台中学を直接襲撃した。
・学校組織の維持を担って居残っていた食蜂操祈も、木原唯一の襲撃によって血だまりの中で重傷を負わされた。
・対魔術式駆動鎧の補給線を完全に断つため、美琴の専用整備場も集中的に破壊された。
・これにより、鉄壁と思われていた聖域の防衛線は内部から崩壊し、常盤台中学もまた甚大な被害を受ける結末を迎えた。
まとめ
常盤台中学の防衛体制とその崩壊を巡る一連の顛末は、地下水脈の活用や美琴の対魔術式駆動鎧の運用によって鉄壁の聖域を維持し、他校への物資支援を試みながらも極限の争奪戦によって拒絶される残酷な現実に直面し、さらに水晶の塔という主力誘き寄せの罠にはめられて本陣を留守にした隙に木原唯一の直接襲撃を受け、食蜂操祈の重傷や整備場の破壊という壊滅的な被害を被りながらも、理不尽な黒幕の謀略の檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還するための新たなる闘争へと赴く、絶対的聖域の陥落と実存的危機の記録である。
合理的な防衛構造から、駆動鎧の組織運用、支援の破綻、そして本陣の崩壊へと繋げたプロセスは、どれほど完璧に見える科学的な要塞や優位性を持った環境であっても、黒幕の執念深い陰謀と理不尽なシステムの襲撃によって一瞬で崩れ去る過酷さを示している。
最終的に、絶対的な余裕の喪失や木原唯一が仕掛けた冷酷な強襲のルールを、美琴や上条の打算なき反撃の意志と確固たる絆によって打破し、自らの未来と傷ついた仲間たちの価値を完璧にプロテクトしようとする結末は、どれほど不条理な宿命や過酷な環境の激変によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の意志と確固たる歩みによって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
上里翔流の消失
『新約 とある魔術の禁書目録』第16巻における上里翔流の「消失」は、木原唯一の暴挙から自らを慕う少女たちを守るための、悲壮な自己犠牲として描かれている。消失の経緯と決断、自己犠牲による別世界への追放、右手の新たな悪用が招いた最悪の悪夢、そして上条当麻の悔恨と決意についての解説は以下の通りである。
地下空間の灼熱地獄化を阻止するための、奪われた右手と能力の奪還
「窓のないビル」の地下空間での死闘の末、上里翔流に敗北した木原唯一は、凄惨な最終手段に出た。
・復讐のために無数のロケットブースターを起動させ、地下空間全体を火葬場を超える灼熱地獄にして全員を道連れにしようとした。
・ブースターを止めるには「理想送り(ワールドリジェクター)」の力で消し飛ばすしか道はなかった。
・しかし、当時の上里は右手を唯一に奪われており、自らの力を失っている状態であった。
・上里は少女たちの命を守るため、唯一の腕から自らの右手を取り戻し、その力を再び行使する決断を下した。
去鳴の無力化と理想送りの接触に伴う、新たな天地への追放と消失
かつて上里は、現在の自分が理想送りと接触すれば、それだけで吹き飛ばされかねないと警告されていたが、それを承知で行動を起こした。
・必死に止めようとする義妹の去鳴を炭酸ガススプレーで気絶させ、上条当麻にこの子達を頼むと言い残した。
・自らの腕に理想送りの力を強引に押し当て、発動させる手段を選択した。
・その結果、膨大なブースターは片っ端から消し飛ばされ、少女たちは迫る炎から救われた。
・しかし同時に、上里翔流自身も理想送りの力によって新たな天地へと追放されることとなった。
・手首から先だけを冷たい床に残し、この世界から完全に姿を消してしまった。
残された右手首の再縫合と、奪還の鍵を人質にした上里勢力の隷属化
上里の消失後、生き残った木原唯一は、さらなる悪意をもって生存者たちを支配し始める。
・木原唯一は、床に残された上里の右手を回収し、再び自分の腕へと縫合した。
・上里勢力の少女たちに対し、上里翔流を連れ戻す鍵はこの右手にあると告げた。
・彼を諦めたくなければ自分に従うよう、少女たちを冷酷に脅迫した。
・これにより、上里が最も恐れていた、右手の所有者が王となり少女たちを意のままに操るという最悪の事態が、唯一の悪意によって完全に実現してしまった。
見送った選択への深い絶望と、自己犠牲の幻想を壊す上里引き揚げの誓い
この悲劇的な結末に対し、上条当麻は自らの行動を省みて激しい悔恨の念に駆られることとなる。
・上里が消失すると分かっていながら、少女たちが丸焼けになる被害を防ぐために、彼を黙って見送ってしまった自らの選択を激しく悔やんだ。
・上里は本当は消えたくなどなく、仲間たちと一緒に当たり前の日常にいたかったはずだと、彼の本当の心の叫びを代弁した。
・自己犠牲という、誰も幸せにしない幻想をぶち壊すことを強く誓った。
・不可能な理想を現実のものとしてでも、上里を地獄の底から引きずり上げ、少女たちの元へ必ず連れ戻すという強烈な決意を固めることとなった。
まとめ
上里翔流の消失を巡る一連の顛末は、木原唯一の道連れ自爆策から仲間を救うために理想送りを受け入れて自ら「新たな天地」へ追放されるという悲壮な自己犠牲から始まり、その右手首を強奪した唯一によって上里勢力の少女たちが従属させられるという最悪の悪夢が具現化しながらも、その光景を目の当たりにした上条当麻が自らの見送りの選択を激しく悔恨し、自己犠牲という偽りの救済を完全に粉砕して上里を必ず現世へと連れ戻す新たなる闘争の意志を固めることで、理不尽な追放のルールを打ち破り、自分たちの尊厳と平慣な生の主権を完璧に奪還するに至る、宿命の超克と日常奪還へ向けた新たな幕開けの記録である。
過酷な決断から、別世界への消失、敵による人質化、そして上条の決意へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な宿命や自己犠牲のシステムによって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の意志と確固たる歩みによって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
新約 とある魔術の禁書目録(15)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(17)レビュー
登場キャラクター
学園都市(高校生)
上条当麻
右手に「幻想殺し」を宿す高校生である。大熱波とエレメントの脅威から避難所を守るため、危険を顧みず行動する。仲間への責任感が強く、自ら過酷な役目を引き受ける。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。無能力者(レベル0)。
・物語内での具体的な行動や成果
避難所の水を確保するため水道局へ向かい、浄水微生物の泥を入手した。御坂美琴と協力して「水晶の塔」へ進軍し、根元へ右手を叩き込んで構造物を完全に崩壊させた。上里翔流と共闘して窓のないビルの地下へ突入し、木原唯一を追いつめた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「水晶の塔」を破壊してエレメントの増援を断ち切った。世界から消え去った上里翔流を取り戻す決意を固める。
吹寄制理
上条当麻のクラスメイトである。真面目な優等生であり、避難所全体の状況を冷静に分析する。厳しい口調を用いながらも仲間への配慮を怠らない。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。クラス委員。
・物語内での具体的な行動や成果
熱波の中で高所の移動ルートを構築し、脚立や綱渡りを用いて隊を先導した。上昇気流を利用する小型ハンググライダーを設計し、水道局への侵入を成功させた。負傷した上条の蘇生処置や介護を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
水道局への危険な遠征において、的確なルート選定と道具の活用で移動を支えた。
青髪ピアス
上条当麻のクラスメイトである。軽口を叩きながら過酷な状況を乗り切ろうとする。友人の危機には体を張って支援を行う。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
水を運ぶ危険な屋上移動をこなした。上条がエレメントに襲われた際には、屋上からコンクリートブロックを投げて時間を稼いだ。キャンプ用品を提供して食事の調理を助けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
避難生活において資材の提供や防衛の補助を行い、仲間の生存を支えた。
学園都市(避難先生徒会)
秋川未絵
避難先となった学校の生徒会を実質的に切り盛りする女子中学生である。避難所内の秩序維持と問題解決のために現実的な判断を下す。
・所属組織、地位や役職
避難先学校の生徒会役員(女子中学生)。
・物語内での具体的な行動や成果
学校プールの水を飲料水化するため、水道局にある浄水微生物の培地を入手する計画を提案した。図書室の書籍を調べて浄水手順の確立に尽力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
避難者間の対立を防ぎ、長期的な水源確保への道筋を提示した。
常盤台中学
御坂美琴
学園都市第三位の超能力者である。自ら組み立てた機械兵装「A.A.A.」を身に纏い、エレメントの駆逐に奔走する。周囲を守るため前線で戦い続ける。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。超能力者(レベル5)第三位、「超電磁砲」。
・物語内での具体的な行動や成果
水道局で上条当麻を救出し、常盤台中学へ搬送した。A.A.A.を駆使した空爆により多数のエレメントを殲滅した。上条とともに「水晶の塔」へ進軍し、上空からの迎撃で上条の突入を援護した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
単独で広域の掃討戦を行い、避難拠点全体の防衛に大きく貢献した。
食蜂操祈
常盤台中学最大の派閥を率いる超能力者である。洞察力に優れ、拠点内部の統制や組織管理を担当する。上条当麻に対して深い情を抱いている。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。超能力者(レベル5)第五位、「心理掌握」。
・物語内での具体的な行動や成果
熱中症で倒れかけた上条を介抱し、保健室へ案内した。木原唯一の強襲から常盤台を守るため学校に残留した。重傷を負いながらも、水晶の塔が敵の罠であった事実を上条へ伝達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
木原唯一の襲撃を受けて負傷するが、重要な敵情報を上条へ託した。
白井黒子
常盤台中学の生徒であり、風紀委員を務める少女である。規律と治安の維持を重視し、職務に忠実に行動する。御坂美琴へ強い憧れを抱く。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。風紀委員(ジャッジメント)。大能力者(レベル4)。
・物語内での具体的な行動や成果
校内に入り込んだ上条当麻を保護し、混乱を防ぐため自習室へ隔離した。エレメントの構造や調査状況を上条へ解説した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
疲労と熱気により一時熱中症で倒れたが、校内の秩序維持に努めた。
婚后光子
常盤台中学の生徒であり、誇り高いお嬢様である。有事においても優雅さを失わない。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。大能力者(レベル4)。
・物語内での具体的な行動や成果
大熱波下の校庭テニスコートにおいてダブルスの試合を行っていた。木原唯一の襲撃時には迎撃を試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
泡浮万彬
常盤台中学の生徒であり、礼儀正しい性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻に話しかけられた際、恥ずかしさから逃走した。水晶の塔への進軍部隊に加わった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
第一三学区(博覧百科)
フレメア=セイヴェルン
第一三学区の小学生である。素直で好奇心が旺盛な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
第一三学区の小学生。
・物語内での具体的な行動や成果
博覧百科へ避難し、気化熱を利用した暑さ対策を行っていた。外の見回りから戻ったフロイラインを出迎えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
博覧百科の豊かな資源と仲間の護衛によって安全を維持した。
アズミ
フレメアのクラスメイトであり、恥ずかしがり屋な少女である。
・所属組織、地位や役職
第一三学区の小学生。
・物語内での具体的な行動や成果
プールタオルで体を隠しながら暑さをしのいだ。通路を走り回る白い鶏を捕獲しようと試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フロイライン=クロイトゥーネ
不死の肉体を持つ少女である。大熱波やエレメントの影響を受けずに行動できる。
・所属組織、地位や役職
博覧百科滞在者。
・物語内での具体的な行動や成果
博覧百科の周囲を見回り、遭遇したエレメントを単独で撃破した。無人となった学校や学生寮から物資を調達して運んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
不死性を活かした囮役や物資調達を担当し、避難所の安全を確保した。
イギリス清教
インデックス
イギリス清教のシスターである。十万三千冊の魔道書を記憶する完全記憶能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教「必要悪の教会」所属の修道女。
・物語内での具体的な行動や成果
学校の屋上で工具を使い、吹寄制理が設計した小型ハンググライダーを組み立てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
完全記憶能力を発揮して道具を正確に組み上げ、遠征部隊の移動手段を提供した。
魔神
オティヌス
かつて世界を意のままに改変した魔神である。現在は十五センチほどのサイズとなり、上条当麻の理解者として助言を与える。
・所属組織、地位や役職
魔神(現在は力を喪失)。上条当麻の同居人。
・物語内での具体的な行動や成果
避難所の屋上で三毛猫の看病を行った。上条に対して的確な助言を与え、精神的な支えとなった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
上里勢力
上里翔流
「理想送り」の右手を宿していたどこにでもいる平凡な高校生である。少女たちを守るために自ら矢面に立つ。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の中心人物。高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
木原唯一の右手を自らの手首に縫い付け、日用品や化学薬品を工夫して巨大エレメントを撃破した。上条当麻と共闘して窓のないビルの地下へ突入し、木原唯一を倒した。地下のロケットブースターによる惨劇を防ぐため、理想送りを取り戻して消滅させ、自らも世界から消失した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
理想送りの力を使って仲間たちを救い、世界から姿を消した。
去鳴
上里翔流に付き従う魔術師の少女である。上里への忠誠心が極めて厚い。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の一員。魔術師(エルザの絶滅犯)。
・物語内での具体的な行動や成果
巨大エレメントの解体戦闘に参加した。木原唯一との戦闘で左腕を失う重傷を負った。上里の消失後、木原唯一に右手を奪われて呪縛された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
重傷を負い、上里の消失に伴い木原唯一の支配下に置かれた。
府蘭
上里勢力に所属する小柄な少女である。衛星を操作して学園都市に大熱波を発生させていた。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
巨大風船に乗って上空から戦況を観測した。上里の消失後、唯一支配に染まらず、マイクロ波を照射して暮亞を攻撃し上条当麻を連れて脱出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上里勢力の中で孤立し、上条とともに上里翔流を取り戻す行動を開始した。
暮亞
上里勢力の一員である少女である。植物に近い特異な性質を持つ。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
A.A.A.の残骸を取り込んで偽の飛行影を作り、木原唯一を誘い出す陽動を担当した。上里の消失後は木原唯一に従い、府蘭の攻撃を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
木原唯一の支配下に下った。
絵恋
上里勢力に所属する少女である。冷静かつ残酷な観察眼を持つ。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
地下鉄でナナフシ型エレメントに様々な熱源を当て、エレメントが高温に弱い性質を突き止めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
獲冴
上里勢力に所属する少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
フードコートで待機し、木原唯一との戦闘では彼女の精神を揺さぶる陽動を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
琉華
上里勢力の一員である少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
ショッピングセンターを拠点として活動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
冥亞
上里勢力に所属する少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
地下空間での戦闘において、木原唯一の背後を突く攻撃に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
織雛
上里勢力に所属する少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
木原唯一の包囲攻撃に加わり、A.A.A.の解体に貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
木原一族
木原唯一
木原脳幹に強い敬愛を抱く科学者である。目的のためにはあらゆる手段を平然と用いる。
・所属組織、地位や役職
木原一族の科学者。学園都市仮想崩壊計画演算担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
エレメントを学園都市全域に放ち、大混乱を引き起こした。常盤台中学を強襲して食蜂操祈に重傷を負わせ、A.A.A.の施設を破壊した。地下の決戦で敗北後、上里の消失を利用して理想送りの右手を再装着し、上里勢力の少女たちを支配した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上里勢力を掌握し、上条当麻への人間狩りを指示した。
集団
常盤台中学の生徒たち(お嬢様たち)
学舎の園に籠城する能力者集団である。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒たち。
・物語内での具体的な行動や成果
交代で見張り台に立ち、侵入するエレメントを高い火力で迎撃した。水晶の塔への遠征に部隊として同行し、露払いを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
木原唯一の奇襲によって拠点を破壊され、多数の負傷者を出した。
上里勢力の少女たち
上里翔流を強く慕う約百名の少女集団である。
・所属組織、地位や役職
上里翔流に付き従う少女たち。
・物語内での具体的な行動や成果
ショッピングセンターを拠点として占拠した。第七学区南部の進軍において、卓越した機動力と攻撃力で巨大エレメントを次々と解体した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上里翔流の消失後、木原唯一の言葉に縛られて彼女の支配下に置かれた。
第一三学区の避難者たち(小学生と教師たち)
博覧百科に避難した民間人の集団である。
・所属組織、地位や役職
第一三学区の小学生および教員。
・物語内での具体的な行動や成果
水族館や屋内プールの水と備蓄物資を利用し、熱波の中で共同生活を送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フロイラインらの保護を受け、安定した生活環境を保ち続けた。
エレメントの群れ
学園都市全域を徘徊する半透明の人工生命群である。
・所属組織、地位や役職
木原唯一が放った還元生命体。
・物語内での具体的な行動や成果
冷所や暗所に潜み、避難する人間たちを襲撃して都市機能を麻痺させた。火水風土のコアに応じた属性攻撃を放った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「水晶の塔」の破壊によって宇宙からの新規落着が停止した。
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新約 とある魔術の禁書目録(15)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(17)レビュー
展開まとめ
序章 水着で始める学校籠城 Melt_the_Asphalt.
灼熱の第七学区
一二月七日、学園都市第七学区は摂氏五五度を超える異常な熱波に包まれていた。電気や水道は止まり、地上は触れれば命に関わる死の領域となっていた。上条当麻達は水着姿で熱を逃がしながら、避難先の学校へ水を運ぶため、ビルの屋上を伝って移動していた。
水と日陰の価値
上条はウォーターサーバー用の水を背負っていたが、それでも学校全体を潤すには到底足りなかった。三日で街の価値基準は崩れ、水と日陰が最重要資源になっていた。車や電子機器は熱で使えず、上条達は危険な屋上ルートを選ぶしかなかった。
脚立の谷越え
吹寄制理達は手袋やマフラーを使い、熱くなった脚立を運んでビルとビルの間に渡した。上条達は水を背負ったまま、四つん這いで脚立を渡っていった。眼下には灼熱のアスファルトが広がり、落ちれば即死しかねない状況だったが、上条と青髪ピアスは恐怖を軽口で紛らわせながら渡り切った。
綱渡りルート
次の移動には、ビル間に張られたワイヤーを滑車で滑る綱渡りが必要だった。街のあちこちには同じような手製の綱渡りが作られていたが、どれも安全基準などない危険なものだった。上条達の学校へ向かうルートも合成繊維ロープを無理に張っただけで、帰り道すら用意されていなかった。
切れたロープ
上条と吹寄が綱渡りを始めた直後、熱で弱っていた合成繊維のロープが千切れた。二人は振り子のように落下し、乾いた花壇へ叩きつけられたことで、かろうじて墜落死を免れた。しかしそこは死の地上であり、すぐ近くには半透明の巨大なハナカマキリ型エレメントが潜んでいた。
火のハナカマキリ
ハナカマキリ型エレメントは火のコアを持ち、大鎌から重油のような炎を噴き出した。上条は幻想殺しで炎を消し去り、屋上の青髪ピアス達がレンガやブロックを投げて時間を稼いだ。上条は吹寄を連れて脱出するため、目の前のエレメントだけを倒そうと決めた。
隠れていたヒシガニ
上条がハナカマキリへ突っ込んだ瞬間、さらに大きなヒシガニ型エレメントが擬態を解いて現れた。六メートル規模のクラス二であるそのエレメントは、巨大なハサミを上条の腹へ叩き込んだ。上条は血を吐きながら吹き飛ばされ、意識が断片的になっていった。
屋上への救出
上条は吹寄の悲鳴、屋上から投げ込まれる閃光弾や煙幕、誰かに頬を叩かれる感触を断片的に認識した。滑車式のエレベーターで屋上へ引き上げられ、吹寄が無事だったことだけを理解して安堵した。しかし意識は遠のき、上条は今の状況が現実ではなく、直近の出来事を反芻している時間なのではないかと気づきかけていた。
行間 一
早朝の異常熱波
浜面仕上は早朝のジョギング中、五〇〇メートルも走れないほどの異常な暑さに襲われた。一二月の朝にもかかわらず、ビルの壁は焼けたフライパンのように熱く、携帯電話もまともに動かなかった。彼は、いつもの散歩中の男性と犬に出会い、この暑さでは地上を歩かせるのも危険だと感じた。
地下道からの悲鳴
浜面は男性に地下道を使えば遠くまで移動できると教えたが、その直後、地下道からサラリーマン達が悲鳴を上げて逃げ出してきた。最初は通り魔かと思われたが、叫びの内容は巨大な虫が追ってくるというものだった。人波が弾けるように割れ、半透明の巨大なカマキリのような異形が姿を現した。
水晶のカマキリ
現れたものは三メートルほどの水晶のような半透明のカマキリであり、昆虫のような感情の読めない目を浜面達へ向けた。浜面が後ずさった先にも同じような一匹がいて、巨大な大鎌が振るわれた。浜面は叫びながら地面へ飛び込み、焼けたアスファルトの熱を気にする余裕もなく転がって距離を取った。
犬に救われた男性
散歩中の男性は危機に巻き込まれかけたが、犬にリードを引かれて別方向へ逃げ出す形になった。浜面はその光景を見て、あの男性はまだまだ生きるだろうと呟いた。だが自分も安全ではなく、水晶カマキリと逃げ惑う人波の両方から離れるため、全力で走り出した。
浜面仕上への追跡
浜面の背後からは、奇怪な金属音のような足音が追ってきた。振り返る余裕もないまま、彼はなぜ自分ばかり狙われるのかと叫んだ。異常な熱波の朝は、巨大な水晶カマキリから逃げる最悪の事態へと変わっていた。
第一章 灼熱で続ける安全確保 Water_Hunt.
保健室の蘇生
上条当麻は保健室で意識を取り戻した。吹寄制理達は熱で膨らんだ車のバッテリーを使い、上条へ電気ショックを与えて蘇生させていた。上条は黒ビキニの吹寄や青髪ピアスの顔を見て、自分も吹寄も生き残ったことを確認し、まず水がどうなったかを尋ねた。
届いた水
生徒会長とメガネ男子は、全員に水が行き渡ったと報告し、上条達の分として少し多めのペットボトルを持ってきた。上条は自分だけ保健室で寝ているのを申し訳なく思い、熱中症の生徒達が体育館で雑魚寝していることを知ってベッドを降りた。校舎内は窓を塞いだ即席バリケードだらけで、避難所は野戦病院のようになっていた。
水不足の相談
上条は吹寄に肩を借り、生徒会室で秋川未絵達と話し合った。未絵は水が足りないと切り出し、上条達が危険を冒していることを理解しながらも、今のままでは避難所の空気を変えられないと説明した。後から来た上条達が避難所で平等に扱われるには、水を確保して必要な存在だと示す必要があった。
プールの水
未絵は、学校のプールの水を飲料水に変えられれば状況は大きく変わると考えていた。冬の屋外プールには苔や虫の死骸、耐性菌があるため、そのまま飲むのは危険だった。そこで彼女は、水道局の浄水設備から雑菌を食べる有機微生物槽の培地を入手し、ろ過や煮沸、塩素消毒と組み合わせれば使える水にできると提案した。
吹寄制理の警戒
吹寄は、生徒会が上条達を都合よく死地へ送り込もうとしている可能性を疑った。上条は、未絵は情に負けてそんな判断はできないと見ていたが、自分はインデックスやオティヌス、三毛猫の分まで避難所に世話になっているため逃げられないと語った。吹寄は納得しきれないままも、今回ばかりは上条に付き合うと決めた。
半日の準備
上条達は、水道局へのルート構築と浄水微生物の知識確認、参加者募集の準備に半日かけることにした。吹寄は、命を懸ける作戦だからこそ勝算を示さなければならないと考えた。生徒会長は、自分達は外に出られず助けにも行けないため、それまでに必要なことは何でも協力すると約束した。
屋上の作業場
上条は心残りを潰すため、屋上で作業しているインデックス達の様子を見に行った。インデックスは白いワンピース型の水着を着て、工具を使いながら秘密兵器を作っていた。オティヌスは三毛猫の面倒を見ており、普段通りの不遜さを見せていたため、上条は少し安心した。
秘密兵器
インデックスが作っていたのは、金属パイプと合成繊維の布を組み合わせた用途不明の道具だった。吹寄が設計したものらしく、完全記憶能力を持つインデックスは一度教えられた作業をきちんと覚えていた。上条は、インデックスが役に立てる場所を得て誇らしげにしていることに意味を感じた。
守るべき場所
上条は、避難所にいる者同士がいがみ合ったり序列を作ったりしている場合ではないと考えた。水道局で浄水微生物の泥を手に入れ、プールの水を飲めるようにすれば、居場所を巡る不安を減らせるはずだった。怖くても外へ出て、最悪の状況を少しずつ改善する必要があった。
重荷ではないもの
インデックスやオティヌスと話した上条は、久しぶりに胃の重圧から解放されたように感じた。絶対に守らなければならないものは重荷ではなく、むしろ大きな力を与えてくれるものだった。屋内へ戻ろうとした上条は、水着姿の青髪ピアスと軽口を交わし、守る理由への共感が一瞬で崩れた。
夕暮れの調理
夕暮れ、上条当麻と青髪ピアスは、職員用駐車場の近くでインスタントラーメンを作っていた。校舎内は一酸化炭素中毒の危険があるため、料理はエレメントの危険を承知で屋外で行うしかなかった。限られた水を使って特価品のラーメンを食べるだけでも、上条達にとっては生きる喜びになっていた。
ソーラークッカーの試作
生徒会のメガネ男子は、アルミホイルを貼った傘で太陽光を集め、ソーラークッカーを作ろうとしていた。成果は出ていなかったが、上条と青髪ピアスも加わり、試行錯誤する時間そのものが行き詰まった空気を和らげていた。最終的にメガネのレトルトカレーと青髪ピアスのキャンプ用品が交換され、カレーラーメンが成立した。
世紀末の校内
校舎へ戻った上条は、暑さと不安で時間感覚が壊れそうになる中、砂を詰めたペットボトルを浄水器として売り込む男子を見かけた。校庭にも効果の怪しい水集めの仕掛けが残されており、異常事態につけ込むデマが広がっていることが分かった。さらに別の学校の生徒らしき少年達が、学校になりすますための水着売買を笑い話にしていた。
雲川芹亜の温水暖房
上条は空き教室で雲川芹亜を見つけた。彼女は水着にエプロン姿で手押しポンプを持ち、温水暖房の中に残った水を吸い出していた。その水は飲用には向かない可能性が高かったが、出撃前に体を洗えるご褒美として使えば、水狩に志願する者を増やせると雲川は考えていた。
出撃前の贅沢
雲川は自分も水を見つけた者としてご褒美を受ける権利があると言い、二リットルの水を頭からかぶった。上条は濡れたエプロン越しの水着に動揺し、雲川の行動そのものが色っぽく見える理由を真剣に分析しようとした。雲川は呆れながら、男の子の生態は謎だと受け止めていた。
深夜の水狩
深夜二時、上条達は水道局へ向かうため、中等部の屋上に集まった。秋川未絵は装備もなく見送りに来て、上条達へ深く頭を下げた。上条、吹寄、青髪ピアス達は松明を頼りに、綱渡りを使って暗い街の高所ルートを進み始めた。
遠くの炎
移動中、上条達は遠方に揺れる炎を見つけた。吹寄は、それが松明ではなく地上から噴き出す火炎のようだと見て、火のエレメントが戦闘状態にある可能性を指摘した。上条は気になったが、吹寄は人間を誘い出す罠かもしれないと警戒し、目的地へ向かうことを優先した。
途切れた綱渡り
水道局の近くまで来た上条達は、そこへ続く綱渡りが一本もないことに気づいた。水道局は低い建物と浄水棟だけで、どの方向からもワイヤーが繋がっていなかった。脚立も持っていないため行き詰まったように見えたが、吹寄はインデックスと作った秘密兵器を取り出した。
熱を利用する翼
吹寄が広げた道具は、小型のハンググライダーだった。通常なら人間を浮かせるには翼が足りないが、摂氏五五度の大熱波で街中に上昇気流が発生しているため、折り畳み式の小さな翼でも滑空できる仕組みだった。上条はその発想に驚きながらも、吹寄と一緒に夜空へ飛び出した。
巨大凧の着陸
ハンググライダーは確かに飛んだが、上昇気流のせいで下りる手段が限られていた。吹寄はワイヤー付きのフックを地上へ下ろし、車止めなどに引っ掛けて強引に機体を止めた。さらに翼を畳んで失速させ、水道局の屋上へ不安定に着地した。
水道局への侵入
上条達は屋上の金属扉を蹴破り、水道局へ入った。中は外より涼しく、スプリンクラーの誤作動で床が濡れていた。上条達は平たい建物から浄水棟へ進み、そこで巨大な水槽のような空間と、底に残る茶色い泥の層を見つけた。
浄水微生物の泥
泥はまだ湿っており、秋川未絵達が調べた浄水微生物の培地そのものだった。上条達は歓喜し、空き容器に泥を詰め込んだ。上条は、これでプールの水を飲めるようにでき、避難所の居場所を守れると確信した。
風のマネキグモ
帰ろうとした上条達の前に、渡り廊下を塞ぐ六メートル級のマネキグモ型エレメントが現れた。黄色いコアを持つ風のエレメントであり、暴風の壁を放って上条達を吹き飛ばした。上条は泥の容器に守られて命を拾ったが、タンクは破れ、さらにエレメントは泥を運ぶ仲間達を狙える位置にいた。
水のコモンオクトパス
そこへ一二メートル級のコモンオクトパス型エレメントも現れた。青いコアを持つ水のエレメントは、超高水圧の一撃で渡り廊下を切断し、さらに水蒸気を広げて視界と体力を奪った。上条は風のエレメントを幻想殺しで倒し、水のエレメントを自分へ引きつけて仲間達を逃がそうとした。
空からの砲撃
コモンオクトパスに捕らえられ、上条が追い詰められた瞬間、真上から大量の光弾が降り注いだ。精密な爆撃はエレメントだけを貫き、周囲の建物を崩さずに敵を砕いた。上条は夜空を横切る人型の影を見上げ、そこに競泳水着と兵装をまとった御坂美琴の姿を見た。
翼の生えた悪魔
美琴は手足に装甲をまとい、背中から無数の砲を伸ばし、青白い火花を散らしながら夜空を飛んでいた。彼女はエレメントを正面から駆逐し、周辺の安全を取り戻そうとしていた。しかしその姿は上条には救いの主ではなく、翼の生えた悪魔のように見えた。水蒸気と脱水で限界を迎えた上条は、その印象を最後に意識を失った。
行間 二
第一三学区の避難先
第一三学区では、多くの小学生と教師が早い段階で学術施設の集合体である博覧百科へ避難していた。動物園や水族館、屋内プールなどを備えた施設には頑丈な建物と備蓄があり、特に水族館と屋内プールの水が生存を支えていた。フレメア=セイヴェルン達も学校の水着で過ごし、塩水に漬けたプールタオルをあおいで暑さをしのいでいた。
アズミとの暑さ対策
フレメアは、教科書に書かれていたという気化熱の方法で本当に涼しくなるのかをアズミに尋ねた。お下げでメガネのアズミは、水着姿をプールタオルで隠しながら、教科書通りなら涼しくなるはずだと答えた。第一三学区の子供達は、過酷な熱波の中でも比較的落ち着いた状態を保っていた。
不死の見回り役
フレメアの友達であるフロイライン=クロイトゥーネは、外の見回りから戻ってきた。不死の少女である彼女には、大熱波もエレメントも大きな障害にならず、博覧百科からエレメントを遠ざけたり、無人化した小学校や学生寮から物資を集めたりする役目を担っていた。彼女は見回り中に三体のエレメントを倒してきたと淡々と報告した。
外に出たいフレメア
フレメアは自分も外に出たいと訴えたが、フロイラインは勉強しなければならないと返した。フレメアは、フロイラインも勉強しなくてよいわけではないと反発した。二人は言い合いながら、止まったエスカレーターを上っていった。
白い鶏と白いカブトムシ
通路では白い鶏が走り回り、アズミが捕まえようとしていたが、最終的に鶏はフロイラインの足元にまとわりついた。フロイラインは、外で大きな白いカブトムシを見たと話した。その相手はエレメントを六体倒し、迷惑そうにハナカマキリやアリグモを撃っていたという。フレメアは、その存在も外へ出ていることを知り、またずるいと感じた。
第二章 お嬢と進める拠点攻略 Tower_of_the_Crystal.
屋上の目覚め
上条当麻は屋上で意識を取り戻した。御坂美琴は熱中症で倒れた上条の体を冷やすため、貴重な水を惜しみなく使っていた。上条は水の使い方に動揺したが、美琴は競泳水着に鋼翼のような兵装をまとい、深夜の街へ砲撃を放ってエレメントを撃破していた。
御坂美琴の掃討戦
美琴は、支援要請があればできる限りエレメントを倒していると説明した。上条が吹寄制理や青髪ピアス達の安否を尋ねると、美琴は名前までは分からないが、水道局周辺のエレメントは全滅させたため危険は少ないはずだと答えた。上条は、仲間達が浄水微生物の泥を持ち帰れた可能性に安堵した。
行き違いの学校
上条は自分の学校へ戻りたいと訴えたが、美琴は途中で見た校舎は崩れていて籠城できる状態ではなかったと告げた。上条は、美琴が見たのは僧正に半壊させられた元の学校であり、今の避難先とは別だと気づいた。しかし美琴は、上条の熱中症が深刻だと判断し、まず治療できる場所へ連れて行くと決めた。
空から見た第七学区
美琴は上条を抱えて夜空へ飛び上がった。上条は水着姿の美琴に密着した状態に動揺したが、同時に街のあちこちに人々の火が灯っていることを見た。美琴は青い光点を支援要請として捉え、空中から砲弾や光条を正確に撃ち込み、エレメントだけを撃滅していった。
常盤台中学への帰還
美琴が向かった先は、学舎の園の中にある常盤台中学だった。高い壁に囲まれた敷地は要塞化され、見張りの高レベル能力者達が交代で守っていた。校庭には枯れていない花壇や噴水まであり、上条は水に追い詰められていた自分達の避難所との違いに愕然とした。
余裕のための水
美琴は、地下水脈を探せる能力者がいれば水の確保は不可能ではないと話した。さらに、水は飲むためだけでなく精神衛生を保つためにも必要であり、花壇や噴水の維持は長期的には節約にもつながると説明した。上条は、自分達が水のことしか考えられなくなり、それがかえって対立の芽を生んでいた可能性に気づいた。
常盤台の迎え
常盤台の生徒達は、美琴の帰還を迎え、彼女の装甲や兵装を慣れた様子で外していった。美琴は、それらを新しい部活のような形で整備していると説明した。上条は、水着姿の少女達ばかりの環境に圧倒され、男子禁制の学校へ紛れ込んだ異物として周囲の注目を集めた。
白井黒子と食蜂操祈
白井黒子は、美琴が上条を連れてきたことに激しく動揺した。そこへ食蜂操祈が現れ、白井に囁いて美琴を独占する口実を与えたため、白井は美琴へ突撃して転がっていった。上条はその騒ぎに呆気に取られたが、体調はまだ戻らず、その場で崩れそうになった。
食蜂操祈の介助
倒れかけた上条を、食蜂操祈が支えた。上条は彼女を知っているようで知らないような感覚を覚え、食蜂の笑みに懐かしさを感じた。食蜂は、どうせ覚えていられないから気にしなくてよいと言いながら、上条を保健室へ連れて行こうとした。
運ばれるエレメント
その途中、撃破済みのエレメントが台車で運ばれていった。常盤台の生徒達にとって、エレメントは恐怖の対象というより倒して分析する対象になっていた。上条は、上位能力者が集まるだけで世界の見え方がここまで変わるのかと感じ、自分達との格差を思い知らされた。
挑戦への言葉
食蜂は、何も言わない上条の思考を見抜くように、適性がないことは挑戦してはいけない理由にはならないと告げた。上条は彼女が何者なのか分からなかったが、その言葉には近しい誰かのような響きがあった。食蜂は、どうせ覚えていられないとしても挑戦してはいけない理由にはならないと笑った。
水枕の誘惑
上条当麻は常盤台中学の保健室で目を覚まし、昼近くまで眠ってしまったことに気づいた。インデックスやオティヌスへの連絡、吹寄制理や青髪ピアスの安否確認、浄水微生物の泥の行方など確かめるべきことは多かったが、冷たい水枕の心地よさに抗えなかったのである。そばにいた食蜂操祈は、原始的な欲求には抗いにくいものだと笑っていた。
御坂美琴の兵装
上条は食蜂に、御坂美琴が操る正体不明の兵装について尋ねた。食蜂は、あれは大熱波やエレメントに対抗するため急造されたものではなく、エレメント発生前から美琴が突然部活申請を出し、機械工作にのめり込んで作り始めたものだと説明した。上条は、平時からあれほどの戦力を組み上げていた美琴の目的に疑問を抱いた。
エレメント研究
食蜂は、エレメントには心理掌握が通じず、物理攻撃の方が有効だと語った。そのため自分は学校組織の維持を担い、美琴は外回りでエレメントを撃破しているという。倒したエレメントは回収され、体構造や感覚器官を調べることで弱点や混乱させる方法を探していた。
生き延びた価値
上条は、自分達が水や浄水微生物を求める中で、ほとんど盗賊のような行為に近づいていたと打ち明けた。しかし食蜂は、それでも上条達は最後の一線を越えなかったと返した。窮地にあっても一線を守り続けたことは尊く、生き延びた努力は報われるべきだと告げた。
終わりの兆し
食蜂は、この騒動はあと数日で片がつくかもしれないと話した。上条が食いつくと、彼女は大熱波は厳しいが、エレメントについては根本的に壊滅できる可能性があると説明した。詳しい話は、外回りを担当している御坂美琴に聞くよう促した。
A.A.A.の整備場
上条は常盤台中学の敷地を歩き、部活棟のような現代的な建物へ向かった。そこには戦車砲、レーザー砲、火炎放射器、要塞攻略用大口径レールガンなど、多数の兵器が並んでいた。中央にいた美琴は、それをA.A.A.と呼び、自分なりに改良したものだと説明した。
水晶の塔
美琴は、エレメントは宇宙から流れ星のように降ってきており、それを学園都市へ誘導する地上側の目印が水晶の塔だと語った。塔は第七学区中央のドーム球場から生えたように立ち、全長二〇〇メートル、基部直径三〇メートルほどの巨大な構造物だった。これを壊せば、エレメントの落着を止められる可能性があった。
幻想殺しの役割
美琴のA.A.A.でも水晶の塔ほどの質量を完全破壊するのは難しいと考えられていた。しかし上条の幻想殺しなら、エレメントを一撃で止めたように塔を壊せる可能性がある。美琴は、自分達の役目は上条を塔の根元まで連れていくことだと考え、上条もエレメントを止めるために協力を決めた。
電子レンジ化した街
美琴は、大熱波の原因は太陽ではなく、宇宙から降り注ぐ膨大なマイクロ波だと明かした。学園都市全体が巨大な電子レンジのようになっており、夜になっても気温が下がらない理由もそこにあった。美琴が電磁波を逸らすと一時的に一二月の冷気が戻ったが、能力を割き続けると消耗が激しいため、普段はA.A.A.の運用を優先していた。
同じ根の問題
エレメントは空から誘導され、大熱波も宇宙からのマイクロ波によるものだった。上条は、どちらも水晶の塔を倒せば一気に動くかもしれないと考え、美琴と共に向かうことを承諾した。その直後、美琴は鼻血を出し、直前のデモンストレーションが負担になっていた可能性が示された。
不幸な体質への警戒
上条が美琴を介抱していると、食蜂がそっと警告した。話が順調に進みすぎているため、上条の不幸な体質を考えれば逆に怪しいと見た方がよいというのである。上条にとって、水晶の塔攻略は希望であると同時に、まだ見えない危険を孕んだ話でもあった。
常盤台の余裕
上条当麻は常盤台中学の庭園を見ながら、元の避難所との格差を思い返していた。花壇や噴水に水を使える常盤台には明確な余裕があり、上条はインデックスや吹寄制理達が浄水微生物の泥で水問題から抜け出せていることを願った。灼熱地獄は続いていたが、水晶の塔を倒す方針が決まったことで、精神的な重圧は少し軽くなっていた。
お嬢様達の殿方騒動
常盤台の女子生徒達は、校内にいる上条へ興味と恐怖を向けていた。彼女達は殿方に触れたことを大騒ぎし、上条は自分が観光名所の像のように触られ続けるのではないかと危機感を覚えた。そこへ白井黒子が現れ、校内の混乱を抑えるために上条を自習室へ連れ込んだ。
白井黒子の注意
白井は、上条が常盤台の中で台風の目になっていると告げ、風紀委員として校内の治安維持を優先していた。上条は、常盤台における男性の珍しさと反応の大きさに戸惑った。白井は上条を防音の自習室へ入れ、彼が不用意に騒ぎを広げないよう隔離した。
エレメントの分析
上条は白井に、常盤台で行われているエレメントの分解について尋ねた。白井は、機械部品ではなく、生物の構造を非効率的に真似ているらしいこと、金属やケイ素ではなく炭素ベースの素材を使っていること程度しか分かっていないと説明した。ただし、それを生き物と断定できるわけではなく、成果を急ぐ派閥の発表は誇張が多いとも見ていた。
熱中症の白井黒子
白井は上条に常盤台のルールを教えようとしたが、寝不足と暑さ、密室の熱気で熱中症を起こした。上条は水を飲ませようとしたがうまくいかず、保健室へ運ぶ必要があると判断した。運び方に悩んだ末、白井をお姫様抱っこすることになった。
御坂美琴の誤解
上条が白井を抱えているところを御坂美琴に見られ、美琴は激しく取り乱した。上条は白井が熱中症だと説明したが、美琴は別の敗北感に襲われ、雷撃の槍を放った。上条は、白井を助けようとしただけなのに新たな騒動へ巻き込まれた。
水晶の塔への出撃
夕暮れ時、美琴は水晶の塔攻略の話し合いが終わったと上条へ告げた。A.A.A.の整備と状態確認が済み次第、今夜にも出撃するという。上条は美琴の鼻血を気にしたが、美琴は熱中症や脱水ではないから問題ないと答えた。
常盤台の総力戦
校庭には、美琴と五〇人以上のお嬢様達が集まっていた。水晶の塔へ向かう間、美琴が上空からA.A.A.で主なエレメントを撃破し、撃ち漏らしは高火力の能力者達が処理する作戦だった。食蜂操祈は、防衛が手薄になる常盤台側を守るために残り、白井も戦力配分の都合で同行を止められた。
地上を歩く進軍
上条達は、これまで死の領域だった地上を歩いて水晶の塔へ向かった。美琴は空からエレメントを正確に撃破し、常盤台の少女達も爆炎や氷の槍で残敵を処理した。上条は、上条達なら命懸けだった相手が一方的に狩られていく光景を見て、能力者の力と自分達の常識の違いを痛感した。
小学校支援の失敗
美琴は、初日の終わり頃には常盤台が水や食糧に余裕を持ち、ほかの学校へ支援物資を届けようとしたと話した。しかし複数の学校が争奪戦を始め、美琴が威嚇射撃で追い払ったことで小学生達は無事だったものの、補給物資は怖がられて受け取られなかった。上条は、自分達も同じような一線の近くにいたことを思い知らされた。
水晶の塔と巨大な竜
一行は夕暮れから夜へ変わる空の下、水晶の塔を視界に捉えた。塔はドーム球場を突き破る二〇〇メートル級の巨大構造物で、その根元には竜のような全長一〇〇メートル級の巨大エレメントが絡みついていた。上条はこれまでのクラス分類を超えた異常な規模だと警戒した。
水の竜の一撃
巨大エレメントの胸には青い人魂のような光があり、水の性質を示していた。上条が危険を叫んだ直後、その竜のようなエレメントは超高水圧の噴射を放った。水道局で見たコモンオクトパスと同系統ながら桁違いの一撃が、空中の御坂美琴へ直撃した。
水晶の塔の罠
上条当麻達は水晶の塔を破壊し、エレメントの増援を止めたはずだった。しかし常盤台中学へ戻る途中、学舎の園から黒煙が上がっているのを見つけた。分厚い壁と見張り台で守られていたはずのゲートは破壊され、常盤台の防衛線は崩されていた。
負傷した見張り
上条達は鉄骨に足を挟まれた少女を見つけ、御坂美琴のA.A.A.を使って救出した。少女は、エレメントがあの野郎に引き連れられて来たとだけ告げ、意識を失った。上条は、エレメントを統率する存在が人間なのか特別な個体なのか分からず、不吉な想像を振り払おうとした。
破壊された学舎の園
上条と美琴は、負傷者の手当てを他の少女達に任せ、常盤台中学へ戻った。ヨーロッパ風の街並みは壊されていたが、無秩序な破壊ではなく、何かがエレメントを率いて進軍したような跡だった。周囲の生徒達は恐怖で口を閉ざし、窓の奥へ逃げるように姿を消していった。
倒れた食蜂操祈
常盤台中学の正門裏で、食蜂操祈が血まみれで倒れていた。競泳水着は裂け、額から流れた血で片目も開かない状態だった。彼女は、自分が上条を美琴に託した時点で奇跡を預けたのだから、これは自分の選択であり、上条が胸を痛める必要はないと告げた。
エサだった水晶の塔
食蜂は、水晶の塔はエサだったと明かした。あれは塔に辿り着ける者を見つけ、逆に辿って殲滅するための罠であり、宇宙から来るエレメントや目立つ塔は目撃しやすい環境を整えるための飾りだった。あの野郎は笑いながらエレメントに命じ、主力が出払った常盤台を破壊したのだった。
真なる脅威
食蜂は、あの野郎は補給線を断つために先にホームを襲い、今も立ち去らず上条達を狙っていると警告した。上条がその正体を問い詰めると、食蜂は無理に目を見開き、背後を示そうとした。上条と美琴は同時に振り返ったが、音もなく忍び寄っていた本当の脅威に間に合わなかった。
行間 三
仮想崩壊ファイル
学園都市危機的防災マニュアル第一一〇九号では、仮想崩壊ファイル名オペレーション ブラックアウトとして、都市機能が電力に依存する危険性が整理されていた。大都市では完全な電源喪失が暴動へ発展する可能性があり、学園都市はその特殊な環境ゆえに特に脆弱だとされていた。
学園都市の脆弱性
学園都市の住人の八割は学生であり、精神性や社会性は成長途中と見なされていた。さらに未成年であるため、自力の収入が少なく、誰かの金で生かされているという無自覚な息苦しさを抱えていると分析されていた。その独立志向は、スキルアウトからお嬢様まで、多くの学生に共通するとされていた。
能力者という武器
学園都市の子供達は、無能力者から超能力者まで能力を持つか、持つと詐称できる存在であり、最初から武器を持っているに等しい状態だった。また高度な科学技術も、大人が管理できなければ悪用可能な道具になった。これらの要素から、学園都市はブラックアウトをきっかけに大規模暴動へ発展しやすい危険な都市だと結論づけられていた。
電源喪失の落とし穴
統括理事会は風力発電などで発電装置を分散化し、ブラックアウトの危険を減らそうとしていた。しかし停電は発電装置の有無だけでは決まらず、電磁パルスで電子機器そのものが破壊されれば、予備発電機があっても機材が使えず、実質的なブラックアウトになると指摘されていた。
大人の戦力の維持
ブラックアウト下で能力者が暴動に加われば、警備員を中心とした大人側の鎮圧は難しくなると考えられていた。大人側の兵器は次世代技術に依存しているため、使用可能な状態をどれだけ保てるか不明だった。その参考として、超電磁砲との仮想戦闘データも別紙に示されていると記されていた。
研究機関の危険物
完全なブラックアウトでは、研究機関に保管された細菌や薬品類の管理も問題になるとされた。これらが無秩序に漏出すれば、暴動どころではなく、学園都市は半日以内に死の街になると警告されていた。特に冷却管理に依存する危険物への対策が重要視されていた。
ハイとローの備え
対策として、危険物には電気に頼らない化学冷媒系の冷却装置を併設することが求められていた。警備員の次世代兵器にも、ハイテク照準装置だけでなく昔ながらのアイアンサイトを取り付けるべきだとされた。コールドスリープ装置には魔法瓶化や化学冷媒の封入が提案されたが、気化時の爆発を防ぐための栓も必要だと注意されていた。
木原唯一の手書き
文書の責任者は、学園都市仮想崩壊計画演算担当責任者の木原唯一だった。本文の末尾には手書きで、締め切り通りに仕上げたので褒めてほしいこと、採点が終わったら先生と食事にしたいことが記されていた。そこには、正式な危機管理文書とは異なる、木原唯一の木原脳幹への親しげな感情がにじんでいた。
第三章 宿敵と交わす協力要請 Double_Enemy.
食肉加工場の目覚め
上条当麻は、ショッピングセンター裏手の食肉加工場で目を覚ました。常盤台中学で真なる脅威に襲われた後の記憶は途切れており、御坂美琴や食蜂操祈の安否も思い出せなかった。そこへ上里翔流が現れ、上条は木原唯一にやられかけたところを、去鳴や府蘭に助けられたのだと知った。
女の右手
上里翔流の右手には、切り取られたはずの手首の代わりに、女性の手が縫い付けられていた。彼は理想送りを取り戻すためではなく、木原唯一の持ち物になっていることが気に食わないために奪い返すつもりだった。上条は、右手を交換したように向き合う上里と木原唯一の異常さを改めて感じた。
電気のある売り場
上条は上里に連れられ、ショッピングセンターの生鮮食品売り場へ移動した。そこには電気が通っており、野菜や肉、魚、惣菜も並んでいたが、生鮮食品は腐り始める危険を抱えていた。大量の物資がありながら持て余すという状況は、水も食糧も足りなかった上条達の避難所とはまったく違う悩みだった。
大熱波の真相
上里は、大熱波とエレメントの出どころは同じではないと告げた。木原唯一がばら撒いているのはエレメントだけであり、マイクロ波による大熱波は上里側の府蘭が宇宙ステーションを使って起こしていた。しかもそれは、木原唯一のエレメントの活動を抑えるための対抗策だった。
フードコートの上里勢力
上条はフードコートへ案内され、獲冴、絵恋、暮亞、去鳴達と顔を合わせた。彼女達はショッピングセンターの設備や食材を使って過ごしており、暮亞は大熱波との相性が悪く、体を冷やされていた。去鳴は新しい体を得ていたが、暑さや水着姿に振り回されながらも、上条に常盤台襲撃後の状況を話す役目を担っていた。
常盤台襲撃の読み
去鳴は、上条達が水晶の塔を壊しに行けば、木原唯一が常盤台を狙うのは見えていたと明かした。木原唯一が常盤台に集中すれば横から襲えると考えていたが、現実は甘くなく、木原唯一には逃げられたという。上条は、常盤台の少女達が危険にさらされると知りながら見送った上里達に怒りをぶつけた。
常盤台の生存
去鳴は、常盤台にいた少女達は無事であり、御坂美琴もまだ戦える状態だったと説明した。木原唯一は整備場を破壊し、A.A.A.に関わるものは一通り失われたため、常盤台へ再び近づく可能性は低いと見られていた。上条は、少なくとも自分だけが瓦礫の中から救い出されたわけではないと知り、わずかに力を抜いた。
大熱波への怒り
上条は、上里達がマイクロ波で大熱波を起こしているなら、今すぐ止めるべきだと迫った。上里は、熱波を止めれば木原唯一のエレメントが学園都市全域を埋め尽くすと返した。エレメントは摂氏四二度を超える環境で活動が減退するため、大熱波は人を苦しめながらも、エレメントの勢いを抑えていたのだった。
守っていた灼熱
上条は、粗雑なバリケードしかなかった自分達の学校が今まで持ちこたえていた理由を理解した。エレメントは暑さを避けて冷所暗所に潜んでいただけで、大熱波がなければ五〇倍から六〇倍の勢いで活動し、学園都市は半日も保たなかったという。上条は、死神のように思っていた灼熱が自分達を守っていた可能性に強い拒否感を抱いた。
大人達の不在
上里は、木原唯一は制御できる相手ではなく、学園都市の上層部すら手を焼いているかもしれないと語った。上条は、問題を大人達が解決してくれるという前提が崩れたことを思い知らされた。救済の手は上から差し伸べられず、大人達もまた同じ危機の中で干からびかけているのだった。
終わらせる覚悟
上条当麻は、大熱波を止めればエレメントが溢れ、止めなくても人々が高温で倒れていくという状況を受け入れざるを得なかった。上里翔流と去鳴が犠牲を許容してでも木原唯一を仕留めようとしていたのは、誰かが地獄に終止符を打たなければならないと分かっていたからだった。上条は謝罪し、みんなを助けるために自分が何をすればよいかを尋ねた。
高温に弱いエレメント
上里は、絵恋がエレメントは高温に弱いと見つけたことが幸運だったと語った。写真には、地下鉄のような場所でナナフシ型エレメントに火炎放射器や火炎瓶、熱湯、石油ストーブを使い、どの程度の熱で動きが止まるかを調べる絵恋の姿が写っていた。上条は、生きたまま脚や羽をもがれる虫を見るような異様な冷静さを感じた。
木原唯一の居場所
上里は、木原唯一がどこにいるかを探るため、水晶の塔という目立つ罠に注目していた。常盤台中学がその罠に食いついたことで、木原唯一は姿を現し、その出現場所や逃走方向から潜伏先の候補を絞れるようになった。上里は、最も強固で安全な場所として、窓のないビルの直下が怪しいと見ていた。
扉を開けさせる策
窓のないビルの地下へ入る方法は分からなかったが、木原唯一が巨大エレメントを出入りさせている以上、何らかの通路はあるはずだった。上里は、木原唯一に敗北の恐怖をちらつかせれば、彼女は一ヵ所に留まれず、逃げるために内側から扉を開けると考えていた。作戦は朝四時に決行されることになり、上条にも覚悟が求められた。
上里勢力の夜
決行までの短い時間、上条はショッピングモールに集まる上里勢力の規模を見ていた。約一〇〇人の少女達が深夜でも騒ぎ、食品売り場やブティック、CDショップを遊び場のように使っていた。そこは上里翔流を中心に集まった極彩色の世界であり、一人の少年にこれほど多くの人間が従っていること自体が圧力を生んでいた。
府蘭との遭遇
上条はスポットクーラーの前にある子供用ビニールプールで涼む、ピンクパーカーとビキニ姿の小柄な少女を見つけた。リュックの名札から彼女が府蘭だと気づき、学園都市全域を大熱波にしている宇宙ステーションの持ち主なのかと問い詰めた。しかし府蘭は、上里に注目されていることばかり気にして、まともな返事をしなかった。
理解されたい少女
上条は、府蘭がインデックスや吹寄制理達を苦しめた大熱波の原因でありながら、同時にエレメントの暴走を抑えた命の恩人でもあることに複雑な感情を抱いた。府蘭は上条の目線に不満を見せ、自分は上里にだけ理解されればよいと拗ねた。上条は、上里勢力の少女達が互いに横で深くつながるのではなく、上里を中心とした縦の関係で集まっていることを感じた。
ビニールプールへの転落
上条は府蘭の足元の水で滑り、子供用ビニールプールへ顔から突っ込んだ。そこには、ほぼ大の字で横たわっていた府蘭がいた。大熱波とエレメントを巡る緊迫した状況の中で、上条はまたしても上里勢力の異様で危うい空気に巻き込まれていった。
物資を詰める上里翔流
上里翔流は錆止めスプレー、パチンコ玉、災害用ライト、釘抜き、ロープ、缶詰などをトートバッグへ詰め込んでいた。上条当麻が丸腰でいることを問われると、変に武器を持つと自分を傷つけそうだと答えた。上里は、敵対者さえ取り込もうとする上条の戦い方には、強い殺傷力が邪魔になるのかもしれないと見ていた。
理想送りの行方
上里は、木原唯一の右手を仮の蓋として縫い付けたまま、理想送りにはもう興味がないと語った。ただし、理想送りが人や物を渡り歩く力なら、木原唯一を倒して終わりにはできないとも考えていた。あの極大の力が次に誰へ渡るか分からない以上、上里は理想送りそのものを消滅させたいと思っていた。
右手の責任
上里の言葉を聞き、上条は自分の幻想殺しについても考え始めた。幻想殺しも使い方次第では科学と魔術の双方に大きな影響を及ぼすかもしれず、次の持ち主が悪意ある者だった場合の責任を、今まで深く考えていなかったのである。上里は、自分の右手がなくても少女達がそばに残ったことで、上条の言ったことが証明されたと受け止めていた。
府蘭の観測
夜明け、府蘭はUFOのような巨大風船でショッピングセンター屋上から浮かび上がった。彼女は上空から観測を担当し、上里達は木原唯一を揺さぶるために派手に動くことになった。上条は、一〇〇人近い上里勢力が第七学区南部へ進軍していく光景に、異世界のような圧を感じていた。
クラス0の監視網
上里は、米粒ほどの小さなエレメントを捕まえた。それは羽と脚を持つ極小の個体で、上里はクラス0と呼べる存在だと見ていた。木原唯一はそれを街中に潜ませ、超音波や小型アンテナ、有線の神経網を使って情報を集めていた可能性があった。
首長竜のエレメント
上里が情報網の推測を進めた直後、全長一〇〇メートル級の首長竜のようなエレメントが現れた。上里は、それが恐竜ではなくハワイ諸島の肉食尺取虫を拡大したものだと説明した。火のコアを持つその怪物は、炎を撒けば地上を焼き尽くせる脅威だった。
上里勢力の猛攻
上里勢力の少女達は、御坂美琴の空爆とは対照的に、圧倒的な速度と機動性でエレメントへ肉薄した。去鳴や海賊帽の少女、全身甲冑の少女達は、地面やビルやエレメント自身を足場にして攻め込み、刃を通して巨体を解体していった。上条は、人間臭い仕草を見せる少女達と凄惨な結果の差に呆然とした。
潜んでいた巨体
一体を倒した直後、同じ一〇〇メートル級のエレメントが数十体も風景から浮かび上がった。巨大な肉食尺取虫達は最初からそこに潜んでおり、木原唯一の命令まで擬態して待っていたのだった。上条は、自分達が安全だと思って屋上ルートを使っていた頃、すぐそばにこの怪物達が潜んでいたかもしれないと考え、背筋を凍らせた。
平凡な高校生の戦い
上里は、理想送りを持たないまま前へ出た。錆止めスプレーを足元へ投げ、巨体の重心を崩して転倒させ、さらにロープと缶詰を使って別のエレメントの脚力で倒れた個体の首をもぎ取った。彼は、どれだけ大きくても物理法則から逃れられないと見抜き、エレメント自身の力を利用して切り倒していった。
即席の無力化
上里は、瞬間接着剤を塗った下敷きを巨大な蛾の羽へ貼り付け、揚力を乱して墜落させた。その落下で群がる小型エレメントをまとめて押し潰し、さらに業務用洗剤を濃縮した液体で巨大エレメントの爪先を腐食させ、体勢を崩させた。上里は、考えるだけなら誰でもできるが、それを形にできるかどうかが問題だと語った。
夢を掴む力
上里は、自分にはたまたま夢を掴む力があったと語った。かつては、何でも頷いてくれる少女達の笑顔が怖く、いつか自分の力でも止められない責任を負わされる日が来ると恐れていた。しかし今は逃げず、少女達の陰に隠れるのではなく、彼女達を守る盾として前に立っていた。
平凡という異常
上条は、クラス6のエレメントを即席の道具と発想だけで崩していく上里を見て、これがどこにでもいる平凡な高校生なのかと呟いた。上里は釘抜きを肩に担ぎ、何の気なしに、それが何かと返した。上条は、理想送りを失ってなお異様な自由度を持つ上里翔流の姿を目の当たりにした。
木原唯一への揺さぶり
上里翔流と少女達は、遠距離攻撃や近接戦を組み合わせて規格外のエレメントを撃破しながら前進した。上条当麻は、その火力が常盤台中学の精鋭すら上回っているように見え、上里勢力の異様な強さに圧倒された。上里は、エレメントの外殻は還元生命と呼ばれるもので、既存の動植物の構造を借りているだけだから、関節や筋肉の法則を読めば対処できると説明した。
還元生命とコア
上里は、エレメントは石油から動植物へ分化させる異端の学問の産物であり、火水風土のコアに魔術的な要素を頼っていると見ていた。コアの光が攻撃属性を示しているため、予告ホームランのように分かりやすいとも語った。上条は、常盤台やインデックスでも届かなかった領域まで、上里が踏み込んでいることに驚いた。
右手を失った世界
上里は、かつて自分の周囲に少女達が集まったのは理想送りのせいだと思い込み、その光景を恐れていたと明かした。しかし右手を失っても彼女達は離れず、自分の意志で残っていた。その事実により、上里は自分の世界が特殊な右手だけで成り立っていたわけではないと理解していた。
三つの疑念
上里は、木原唯一を誘い出すための材料を三つ挙げた。一つは、常盤台襲撃で木原唯一が御坂美琴の整備場を執拗に破壊したこと。二つ目は、常盤台から上条を拾い上げたことで、研究情報のバトンを受け取ったように見せられること。三つ目は、上里勢力に府蘭や去鳴のような異端が集まっており、木原唯一に未知の可能性を疑わせられることだった。
暮亞の張子の虎
上空にはA.A.A.に似た鋼翼の影が浮かび上がったが、それは御坂美琴ではなく暮亞だった。暮亞は植物に近い性質で金属などを取り込み、A.A.A.の残骸からそれらしい影を作って飛んでいた。実際には本物ではなく、夜明け前の暗さを利用した張子の虎だったが、木原唯一には完全な偽物だと断言できないはずだった。
第三の選択肢
上里は、木原唯一に留まるか逃げるかだけでなく、今すぐ戦わなければ取り返しがつかないという第三の選択肢を突き付けた。A.A.A.の粗雑な亜種が外の世界へ拡散するかもしれないという疑念を与え、木原唯一の判断基準を揺さぶったのである。その直後、窓のないビルの周囲に正方形の穴が開き、地下へ通じる入口が現れた。
復讐者としての適性
上条は、上里が相手を救うためではなく、退路を断って誤った選択をさせるために迂回路を提示していると感じた。そして、上里翔流が魔神への復讐者であることを改めて意識した。特殊な右手が人を決めるのではなく、人の行いが人を決めるのだとすれば、上里は自分で選んで魔神達を撃滅してきたことになる。
平凡な笑み
上条は、上里が本当に大丈夫なのかと尋ねた。上里は、それが自分で分かれば苦労しないと、どこにでもいる平凡な高校生のように笑って答えた。上条は、理想送りを失ってなお復讐者としての危うさを抱える上里翔流の姿を見ていた。
行間 四
上里翔流の独白
上里翔流は、昔から何を考えているか分からないと言われてきた自分を振り返っていた。彼は将来の夢よりも、今ある日常が続くことを望んでいたが、魔神は理想送りという右手を与えることでそれを壊したのだった。だが右手を失っても少女達がついてきたことで、彼は自分の周囲に人が集まった理由が右手だけではなかったと知った。
放置できない理想送り
上里は、理想送りを欲してはいなかったが、その破壊力を誰よりも理解していたため放置できなかった。木原唯一は、復讐のために二三〇万人を巻き込んでエレメントを放つような人間であり、理想送りを躊躇なく使う危険があった。上里にとって、それは平凡な日々を取り戻すために魔神達を敵に回した自分とは理解の届かない相手だった。
しゃべる犬とA.A.A.
木原唯一を突き動かす発端は、しゃべる犬とA.A.A.にあると上里は考えていた。上里にとってそれは倒すべき敵の一つに過ぎなかったが、木原唯一にとっては人生の全てに関わるものだった。誰にとって何が大切かは違うため、上里は木原唯一の復讐に付き合う義務があると受け止めていた。
仇討ちの流儀
上里は、自分が木原唯一に黙って殺されるつもりはないと決めていた。仇討ちはただ一方的に殺されるものではなく、返り討ちも許される全力の戦いであると考えていた。だからこそ、木原唯一が恨みをぶつけるなら、上里も全力で応じるつもりだった。
失われつつある理由
上里は、自分の理由が揺らぎ始めていることも自覚していた。少女達を元のクラスの風景へ戻すために動いてきたが、歪みの原因が右手ではないなら、自分の有無は関係なかった可能性があった。絵恋、暮亞、獲冴、去鳴達は、すでに自分の意志で進める存在になっていた。
少女達との別れも辞さない覚悟
上里は、少女達と共にありたいと願っていたが、自分の存在が彼女達を縛るなら別の道を選ぶ覚悟も持っていた。彼にとって最優先なのは自分の幸せではなく、彼女達の背中を押すことだった。だから、自分にかかった仇は自分一人で呑み込み、少女達へ悪縁を繋げないと決意していた。
返り討ちの刃
上里は、木原唯一の狂気に付き合うことを躊躇わないと決めた。自分はここで死ぬかもしれないが、最高に活きの良い仇討ちを見せ、逆に木原唯一が命を落としても恨みっこなしだと考えていた。仇討ちの刃に対し、返り討ちの刃もすでに揃っているのだった。
第四章 破滅を伝える急転直下 Operation_Right_Hand.
窓のないビルの地下
上条当麻と上里翔流達は、窓のないビルの周囲に開いた四つの穴から地下へ入った。内部には広大な空間があり、天井にはロケットエンジンのような巨大な円筒が無数にぶら下がっていた。上条は、窓のないビルそのものが地球を脱出するために作られている可能性に気づき、学園都市の根本的な目的に疑問を抱いた。
木原唯一との対峙
地下空間の中央では、木原唯一が待っていた。彼女は上里翔流の理想送りを縫い付けており、上条当麻には興味がないとして見逃す提案をした。しかし上条は、青髪ピアスや吹寄制理、御坂美琴や常盤台の生徒達が受けた被害を思い、これほどの悲劇を起こせる可能性を残したまま引き下がることはできないと拒絶した。
捕食する木原唯一
木原唯一の周囲にいたクラス6のエレメント達は、上条達ではなく木原唯一自身へ殺到した。彼女は左手でエレメントを捕食し、背中や両足に半透明の装甲と翼のような兵装を生やしていった。エレメントは攻撃用の駒ではなく、木原唯一自身を強化するためのエサだったのである。
木原唯一のA.A.A.
木原唯一は、アレイスターの手を借りず、自分の力で構築したA.A.A.を顕現させた。赤いビキニに白衣を羽織った彼女の全身は、エレメント由来の装甲と兵器に覆われ、御坂美琴のA.A.A.とは別系統の悪魔のような姿となった。彼女は、理想送りのない上里翔流がどこまで足掻けるかを楽しもうとしていた。
去鳴の負傷
去鳴と海賊少女が真っ先に接近戦を仕掛けたが、木原唯一は砲撃で動きを誘導し、巨大なチェーンソーで迎え撃った。去鳴は海賊少女を蹴って軌道を逸らし、自分が攻撃を受ける形になった。上条と上里は液体糊を使ってチェーンソーの切れ味を鈍らせたが、木原唯一はそのまま去鳴を叩き潰し、片腕を失わせた。
幻想殺しと理想送り
木原唯一は半透明に擬態し、上里へ迫った。上条は割り込み、幻想殺しでチェーンソーを破断させたが、木原唯一は理想送りを宿す右手の影で上条を狙った。そこへ上里が折り畳み傘を差し出し、影を傘へ移すことで理想送りの照準を逸らした。上条は、理想送りを知り尽くした上里の対処に驚いた。
A.A.A.の解体
上里は冥亞、織雛、去鳴を動かし、木原唯一の背後を突かせた。去鳴は、自分が破壊した武器を神に捧げる魔術師でもあるとして、A.A.A.の兵装を奪い取ろうとした。木原唯一は全砲門を乱射して去鳴を吹き飛ばしたが、その隙に上里は自ら前へ出た。
木原唯一の右手
上里は、木原唯一の体に縫い付けられている自分の右手を傷つけることで、彼女の精神を揺さぶった。木原唯一は自分の体が壊れていく光景にわずかに怯み、去鳴への追撃の機会を失った。上里は、獲冴の力を利用してしゃべる犬の可能性をちらつかせ、木原唯一の復讐心をさらに乱した。
復讐者の敗北
上里勢力の少女達は木原唯一へ殺到し、A.A.A.の装甲や砲、翼を次々に毟り取った。上里は血まみれの借り物の右拳で木原唯一の顎を打ち抜き、彼女を倒した。そして木原唯一は、上里が復讐だけで動く存在ではなくなったことを見抜き、自分には復讐しかないと笑いながら、地下のロケットブースターを起動させた。
上里翔流の消失
ブースターが点火すれば地下空間は灼熱地獄となるため、上里は理想送りを取り戻して全てを消すしかないと判断した。去鳴は必死に止めようとしたが、上里は彼女を炭酸ガスで気絶させ、自ら木原唯一の右手を切り落として自分に接合しようとした。上条は止める言葉を呑み込み、去鳴から上里を殴って止めてほしいと頼まれたが、上里は上条に少女達を託し、理想送りによって世界から消失した。
終章 災厄を超える模範解答 Nightmare_by_Lost_Boy.
府蘭の観測
府蘭は巨大な風船で窓のないビル周辺の上空を回り、木原唯一が秘密の出入口を開く場所を観測していた。暮亞はハリボテのA.A.A.で陽動役を続けていたが、地下に敵味方が集まったなら大熱波を止めてもよいのではないかと不満を漏らした。そこへ、四角い穴から上条当麻だけが慌てた様子で飛び出してきた。
上里勢力の寝返り
上条は府蘭がまだまともかを確認し、逃げるよう訴えた。地下では上里翔流が理想送りでブースターを消し、自分も世界から消失していた。しかし木原唯一は落ちていた右手を再び自分へ縫合し、上里を連れ戻す最後の鍵を握っていると示して、上里勢力の少女達を従わせたのだった。
絶滅犯の慟哭
去鳴は兄の右手を返せと叫んだが、木原唯一を倒せば上里を戻す鍵も失うかもしれないと言われ、手を出せなくなった。他の少女達も同じ言葉に縛られ、右手を持つ者が少女達を支配するという、上里が恐れていた悪夢が現実になった。木原唯一はその状況を復讐の延長として嗤っていた。
地獄の逃避行
木原唯一は上里勢力の少女達に、上条を殺せと命じた。少女達は迷いながらも、上里が戻る可能性を盾にされて攻撃を止められず、上条は極彩色の人間狩りから逃げ続けた。上条は彼女達を責められず、上里を見送った自分の言葉や選択が、最後に彼を消失へ追い込んだのだと痛感した。
残された府蘭
上空にいた暮亞は、上里のために何ができるかを考えるべきだと口にした。その直後、府蘭はマイクロ波を一点に集めて暮亞を攻撃し、上条を連れて逃げた。府蘭は地下の出来事を直接受けておらず、木原唯一の支配にまだ染まっていなかったため、上条に状況を確認した。
上里翔流を戻す道
上条は、木原唯一が上里勢力を従わせている理由は、理想送りが上里翔流を連れ戻す鍵かもしれないと思わせているからだと説明した。だから少女達を呪縛から解くには、上里翔流を自分達の手で連れ戻すしかないと結論づけた。具体的な方法は分からなくても、世界中の全てを集めて帳尻を合わせるしかないと決めた。
見送った罪
上条は府蘭に、上里が消えると分かっていながら黙って見送ったことを告白した。上里が少女達を守るために決めた役割を、自分は止めずに任せてしまったのだと責めた。上条は、上里は本当は消えたくなかったはずで、仲間達と一緒にいたかったはずだと、呑み込んだ言葉をようやく吐き出した。
幻想を壊す決意
上条は、上里の自己犠牲を最高の結末として終わらせるつもりはなかった。どれだけ格好をつけても、上里を地獄の底から引きずり上げ、少女達の前へ気まずそうに戻らせると誓った。上条は、誰も幸せにしない幻想を残さず壊すため、上里翔流を取り戻す戦いへ踏み出した。
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