新約 とある魔術の禁書目録(16)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(18)レビュー
物語の概要
■ 作品概要
『新約 とある魔術の禁書目録 (17)』は、科学と魔術が交差する学園都市を舞台にしたSFファンタジーバトル作品である。大熱波と「エレメント」の脅威が去った直後の学園都市は、通信インフラが寸断され、治安維持を名目にした「営巣部隊(ユースフルスパイダー)」の過剰な武力行使や、悪意あるデマの拡散により無法地帯と化していた。一方、「理想送り(ワールドリジェクター)」を失って辺獄へ追放された上里翔流を救うため、上条当麻は彼を慕う少女たちの暴走から逃れつつ、UFO少女の烏丸府蘭や海賊少女の豊山琉華を味方に引き入れる。木原唯一の呪縛から少女たちを解放し、消えた上里を現実世界へ引き戻すための決死の反撃と救出劇が描かれる。
■ 主要キャラクター
- 上条当麻:右手に「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を持つ少年。上里翔流を救出し、木原唯一に操られる少女たちの哀しい暴走を止めるため、府蘭と共に灰色に冷え切った街を奔走する。
- 烏丸府蘭:UFO少女を自称しているが、正体はイギリス清教から送り込まれた黄金系の魔術師。旧上里勢力からただ一人上条につき、上里への純粋な恋心を胸に情報戦や魔術儀式に身を投じる。
- 豊山琉華:眼帯に海賊帽子を被る海賊少女であり、時間制御を扱うブードゥーの魔術師。上条の真っ直ぐな言葉に心を動かされて共闘を選び、上里救出の魔術儀式で中心的な役割を担う。
- 上里翔流:「理想送り」を失って辺獄へ追放された少年。異世界で娘々やネフテュスら「魔神」たちから報復の危機に遭うが、彼自身の本音を吐露したことで魔神の心を動かし、帰還への支援を得る。
- 木原唯一:上里の右手を自らの腕に縫合し、それを盾にして上里勢力の少女たちを服従させ、上条当麻の抹殺を命じた狂気の研究者。
- 御坂美琴:常盤台中学の超能力者(レベル5)。上条を助けるために「A.A.A.」の残骸を提供するが、アレイスターの放った呪詛を受けて血を吐いて倒れてしまう。
- アレイスター:学園都市の統括理事長。美琴を呪詛で攻撃し、さらに府蘭を利用しようとするが、土御門元春に銃撃される。
■ 物語の特徴
本作の魅力は、通信インフラが崩壊した閉鎖空間において、デマやフェイクニュースが大衆をパニックに陥れるという「悪意の情報戦」がリアルに描かれている点である。ネットを駆使する幽霊少女・冥亞によって流布された氷河期到来の嘘を打ち破るのが、高度なハッキングではなく、府蘭の学園都市全域に向けた「一世一代の告白」であるという展開は、非常にエモーショナルで大きなカタルシスを生んでいる。また、上里が魔神たちの前で「ありふれた世界の中で輝ける自分に何度でも挑戦したい」とみっともなくも偽りない本音を叫ぶシーンや、結末において土御門元春が上条を盾にして逃亡を図るという予測不能なクリフハンガーも、読者を強く惹きつけるポイントとなっている。
書籍情報
新約 とある魔術の禁書目録(17)
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2016年11月10日
ISBN:9784048924863
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あらすじ・内容
圧倒 的劣勢の中、上条当麻の反撃が始まる――!
大熱波が去り、復旧モードの学園都市。そこは、通信インフラが寸断された混乱の影響で、『警備員(アンチスキル)』達さえ手綱の握れぬ無法地帯となっていた。
そんな学園都市を、上里翔流帰還を信じる『上里勢力』の少女たちが、自由気ままに暴れ回る!
追跡のエキスパート『辿り屋』絵恋、直接戦力を得意とする変幻自在の海賊少女の琉華、ネットを駆使して大衆を操る幽霊少女の冥亞……。木原唯一に『右手』を盾にされ、上条当麻抹殺を命じられた彼女達だが、その芯は変わらない。想い人を取り戻す。その信念ゆえに突き進む。
全てを賭して襲い来る少女達から逃走する上条。彼の味方は、『上里勢力』からたった一人ついてきたUFO少女・府蘭だけだった。
しかし、間違ってはいけない。
この劣勢状況下こそ、上条当麻の真髄が発揮される時。
さあ、上里翔流を救え。
彼女達の哀しい暴走を止め、この争いに終止符を打つために。
感想
大熱波が去った後も混乱が続く学園都市を舞台に、人の想いが善にも悪にも変わってしまう怖さを強く感じさせる一冊だった。
通信網は寸断され、街は混乱したまま。
そんな状況で物語の中心となるのは、消えてしまった上里翔流を救おうとする少女たちの行動である。
しかし、今巻で最も印象に残ったのは、その行動があまりにも危ういものだった。
少女たちは「上里を助けたい」という一心で動いている。
その気持ち自体は理解できる。
けれども、そのためなら木原唯一に頭を下げることも、関係のない人々を巻き込むこともためらわない。
そこまで来ると、もはや「理想送り」の影響だけでは説明できない。
上里という一人の存在だけを見続けた結果、周囲がまったく見えなくなってしまった集団の怖さを感じた。
だからこそ、そんな空気に一人で立ち向かった烏丸府蘭の姿が印象深い。
誰も逆らえない状況で、「それは違う」と声を上げる。
簡単なことではない。
相手は大勢で、自分は孤立している。
それでも譲れない一線を守ろうとする彼女には、静かな強さがあった。
そして、その府蘭の背中を押したのが上条当麻である。
上条は敵か味方かでは人を判断しない。
困っている人がいれば助けるし、間違っていると思えば相手が誰でも止めようとする。
今巻でも、その姿勢は変わらなかった。
特に豊山琉華を説得する場面が良かった。
戦って倒すのではなく、言葉で相手の迷いに向き合う。
それによって敵だった人物が少しずつ考えを変えていく流れには、『禁書目録』らしい人間ドラマを感じた。
一方で、別の世界へ飛ばされた上里の物語も興味深い。
かつて敵として戦った娘々やネフテュスたちと協力しながら現実世界への帰還を目指す。
以前なら考えられなかった組み合わせであり、敵味方という立場が絶対ではないことを改めて感じさせられた。
互いを完全に信頼しているわけではない。
それでも共通の目的のために力を貸し合う姿には、不思議な面白さがあった。
上里を救い出すための儀式も最後まで緊張感が続く。
二つの世界をつなぐ共通項として、美琴の「A.A.A.」を利用しようとする発想には驚かされた。
しかし、それもアレイスターの呪詛によって崩され、さらに冥亞の妨害でA.A.A.まで破壊されてしまう。
希望が見えた直後に叩き落とされる展開は、本当に容赦がない。
それでも諦めず、新たな方法を探し続ける姿勢が良かった。
パトリシアの体内に残るネフテュスの存在へたどり着き、そこから状況を覆していく流れには思わず引き込まれた。
絶望の中でも最後まで道を探し続けるところが、このシリーズらしい。
そして、府蘭と琉華の力によって儀式が成功し、上里が帰還した場面には素直に安心した。
ここまで多くの人が傷つき、遠回りを重ねてきたからこそ、その再会には大きな意味があったように思う。
ただ、物語はそれで終わらない。
イギリス清教のスパイだったことが明らかになった府蘭は、学園都市を離れなければならなくなる。
ようやく信頼関係を築けたと思った矢先の別れは切なかった。
その場面で土御門元春が姿を現した時には思わず声が出そうになった。
長らく姿を見せなかった彼が、上条を巻き込みながら府蘭を逃がそうとする展開は非常に熱い。
土御門らしい飄々とした雰囲気は変わらないものの、その裏ではしっかり仲間を助けようとしている。
次巻でこの三人がどのような行動を取るのか、期待が膨らんだ。
一方で、少し気になったのはインデックスである。
最後にはヒロインらしく登場するものの、今巻全体を振り返ると出番はかなり少ない。
近年はインデックス以外にも魅力的なキャラクターが増えているだけに、どうしても影が薄くなってしまっている印象を受けた。
それでも、上里の帰還という大きな目標に向かって、多くの人物がそれぞれの立場で動き続けた今巻は、人間同士のつながりの強さを改めて感じさせてくれる一冊だった。次巻では土御門を中心とした新たな物語が始まりそうで、続きがますます楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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新約 とある魔術の禁書目録(16)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(18)レビュー
考察・解説
上里翔流の消滅
上里翔流の消滅と辺獄からの帰還劇
『新約 とある魔術の禁書目録』の第16巻から第17巻にかけて描かれる上里翔流の「消滅」は、彼の悲壮な自己犠牲から始まり、異世界での魔神たちとの邂逅、 shadow そして上条当麻たちによる決死の救出劇へと繋がる非常に重要な展開である。消滅の引き金となった自己犠牲、追放先の辺獄における魔神たちとの邂逅、現実世界における呪縛と上条当麻の決意、および二つの世界を繋ぐ帰還の儀式についての解説は以下の通りである。
地下空間のロケットブースター起動に対する右手奪還と、理想送りによる追放
「窓のないビル」の直下にある巨大な地下空間において、木原唯一との死闘が繰り広げられた。
・敗北を悟った唯一は、地下に設置された無数の巨大ロケットブースターを点火し、全員を道連れにして焼き殺そうとした。
・上里は自分を慕う少女たちを守るため、唯一の腕に縫合されていた自らの右手(理想送り)を切り落として強引に取り戻した。
・その力を使ってブースターを消し飛ばしたが、代償として上里自身も理想送りの力によって新たな天地へと追放された。
・結果として手首から先だけを現実世界に残し、この世界から完全に消滅した。
娘々やネフテュスら魔神との対峙と、ありふれた世界への挑戦を望む本音の吐露
消滅した上里が辿り着いた先は、天国でも地獄でもなく、理想送りによって吹き飛ばされた者たちが漂う「辺獄」のような場所であった。
・そこには、彼がかつて消し飛ばしてきた娘々やネフテュス、ヌァダ、テスカトリポカといった魔神たちが集結していた。
・一部の魔神は報復として上里に襲いかかり、娘々とネフテュスが上里を庇ったことで、地球規模や宇宙空間に及ぶ魔神同士の超絶的な闘争が展開された。
・極限状態の中で娘々から、このまま異形の世界で輝くか、人間の世界へ戻って埋没するか、という問いを突きつけられた。
・上里は、魔神を殺す生き方ではなくありふれた世界の中で輝ける自分に何度でも挑戦したい、という偽りない本音を吐露し、魔神たちの心を強く動かした。
右手首を盾にした木原唯一による少女たちの脅迫と、自己犠牲を否定する上条の激怒
一方、現実世界では上里が最も恐れていた最悪の事態が発生していた。
・木原唯一が現場に残された上里の右手首を再び自らの腕に縫合した。
・上里を連れ戻す鍵はこの右手にあると盾に取ることで、彼を救いたい上里勢力の少女たちを脅迫し、強制的に従属させた。
・この誰も幸せにしない自己犠牲の結末に対し、上条当麻は激しく怒りを燃やした。
・上里は本当は消えたくなどなく、仲間たちと一緒にいたかったはずだと代弁した。
・不可能を可能にしてでもお前を地獄の底から引きずり上げてやる、と消滅した彼を必ず連れ戻すという強烈な決意を固めた。
烏丸府蘭および豊山琉華による類感魔術の実行と、ネフテュスの比率を利用した生還
上里を現実世界へ引き戻すため、上条当麻は上里勢力から引き抜いたUFO少女の烏丸府蘭、海賊少女の豊山琉華と共に奔走した。
・琉華の魔術知識により、こちらの世界と辺獄に存在する共通の目印を利用してトンネルを開く、類感魔術の儀式が必要だと判明した。
・当初はオリジナルのA.A.A.(対魔術式駆動鎧)の残骸を共通項にする予定であったが、旧上里勢力の少女たちによる激しい妨害で破壊された。
・万策尽きたかに見えたが、上条はもう一つの共通項として魔神ネフテュスの存在に気づいた。
・こちらの世界にはパトリシア=バードウェイの体内に再構築された1割のネフテュスがおり、辺獄には9割のネフテュスが存在していたため、これが強力な魔術的記号となった。
・この繋がりを利用し、第七学区の病院にて琉華と府蘭による魔術儀式が実行された。
・儀式は見事に成功し、上里翔流は現実世界への生還を果たし、少女たちを木原唯一の呪縛から解き放つことに成功した。
まとめ
上里翔流の消滅と帰還を巡る一連の顛末は、木原唯一の自爆を阻止するための理想送りによる別世界への追放から始まり、辺獄にて魔神たちの闘争に巻き込まれながらも人間の世界へ戻る本音を示し、現実世界で右手首を人質にされた少女たちの隷属を打ち破るべく、上条当麻がネフテュスの存在比率を共通項とした類感魔術の儀式を府蘭や琉華と共に成功させ、上里を現実世界へ生還させることで、理不尽な追放の檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還するに至る、歪んだ自己犠牲の超克と日常奪還の記録である。
過酷な消失から、異世界での対話、現実の脅迫、そして魔術的生還へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な宿命や空間の隔絶によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の意志と確固たる連帯によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
木原唯一の復讐
木原唯一が引き起こした凄惨な復讐劇と相互犯行社会の実験
『新約 とある魔術の禁書目録』において、木原唯一が引き起こした凄惨な復讐劇は、単なる敵討ちの枠を超え、世界そのものを巻き込む狂気の実験へと発展していった。恩師の敗北から始まった狂気、異常な手段を用いた右手の強奪、復讐対象の全人類への拡大、そして残酷な支配の終焉と敗北にいたるプロセスについての解説は以下の通りである。
心酔する恩師木原脳幹のコールドスリープと、金字塔を打ち立てる決意
木原唯一が復讐鬼と化した最大の理由は、彼女が心底から尊敬し、心酔していた恩師・木原脳幹が、上里翔流との戦いで瀕死の重傷を負ったことである。
・唯一は脳幹の命と脳細胞を守るため、自らの手で彼をコールドスリープさせるという苦渋の決断を下した。
・意識を失う直前の恩師から、私を超える木原になりなさい、という遺志を託された。
・この言葉を受けた彼女は、ただの復讐にとどまらず、恩師でさえ成し遂げられなかった金字塔を打ち立てる「唯一の存在」になることを決意した。
化生院明日香へのなりすましと理想送りの強奪、およびエレメント捕食による駆動鎧化
唯一の復讐の流儀は、奪うだけ奪って、殺すだけ殺して、大切にしているもん全部取り上げてからトドメを刺す、という徹底的に残酷なものであった。
・生徒会長・化生院明日香になりすまして上里に接近し、上里の「理想送り(ワールドリジェクター)」の右手を手首から切断して強奪した。
・弱毒性サンジェルマンウィルスで自らの脳を書き換え、サンプル=ショゴスを用いて奪った右腕を自身の体に縫合するという、異常な三つの技術を組み合わせた。
・さらに唯一は、恩師と同じ道は歩まないという自身のロマンを追求した。
・エレメントを生きたまま捕食して、自らの肉体を異形の「A.A.A.(対魔術式駆動鎧)」へと作り替える暴挙に出た。
アレイスターへの憎悪と、原形制御を無効化する地球人類全員の木原化計画
唯一の憎悪は、直接の敵である上里翔流やその周囲の少女たち、さらには上条当麻だけにとどまらなかった。
・先生に役割を与えて死地へ向かわせた元凶である統括理事長アレイスターや、残酷な街を作った学園都市の住人すべてを標的に定めた。
・彼女の復讐は、地球人類全員を、木原に脅えて木原を組み込んだ誰か、に作り替えるという相互犯行社会を構築する実験へと発展した。
・これにより、アレイスターの「原形制御(アーキタイプコントローラ)」を無効化し、誰も切り捨てられない最悪の社会を完成させることが目的となった。
右手首を用いた上里勢力の従属と、上里の帰還に伴う包囲網の逆転結末
「窓のないビル」地下での死闘の末、上里翔流が自らを犠牲にして世界から消滅すると、唯一はさらなる悪意で周囲を支配した。
・現場に残された上里の右手首を再び自らに縫合した。
・上里を連れ戻す鍵はこの右手にある、と少女たちを脅迫し、上里が最も恐れていた、右手の所有者が王となり少女たちを操るという悪夢を実現させて彼女たちを強制的に服従させた。
・しかし、上条当麻や府蘭、琉華らの決死の魔術儀式によって上里翔流の帰還への道が開かれると、唯一が握っていた鍵としての価値が失われた。
・少女たちが唯一に従う義理はなくなり、唯一を守るための直衛として置かれていた無数の少女たちが、一転して唯一を取り囲む刃となった。
・捕食者の顎の中に立たされながらも、木原唯一は、これでゲームセット、か、と笑い、自らの敗北と実験の終局を受け入れる結末を迎えた。
まとめ
木原唯一の復讐劇を巡る一連の顛末は、恩師木原脳幹の敗北を契機に理想送りの右手を強奪し、エレメントを捕食して自らを異形の対魔術式駆動鎧(A.A.A.)へと変質させ、全人類を巻き込む相互犯行社会の構築という狂気の実験へ突き進みながらも、上里の右手首を人質に取った少女たちの強制服従が上条当麻らの魔術儀式による上里の帰還によって瓦解し、守護者であった少女たちに逆に包囲されて自らの敗北を認めるにいたる、理不尽な復讐システムの超克と因果応報の記録である。
恩師の遺志から、右手の強奪、世界規模の実験、そして支配権の喪失へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な科学の暴走や冷酷な脅迫によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の意志と確固たる絆によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
理想送りの呪縛
理想送りの呪縛がもたらした悪夢と真の絆による打破
『新約 とある魔術の禁書目録』における「理想送り(ワールドリジェクター)」の呪縛は、魔神から与えられた右手にまつわる上里翔流自身の精神的な恐れと、木原唯一がその右手を盾にして上里勢力の少女たちを支配した残酷な状況の二つを指す。上里が抱いていた疑念、木原唯一による支配の完成、少女たちの絶望、そして呪縛の打破と絆の証明についての解説は以下の通りである。
少女たちの好意に対する右手由来の疑念と、所有者の交代に伴うスライドへの恐怖
上里翔流はどこにでもいる平凡な高校生を自称しており、自分の周りに100人以上もの強烈な個性を持つ少女たちが集まり付き従っている状況に、ずっと違和感と恐れを抱いていた。
・少女たちが自分を慕うのは自身の魅力ではなく、理想送りという特異な右手の力に操られているだけではないかと疑っていた。
・彼にとっての最悪の悪夢は、右手の所有者が少女たちの王となる、という事態であった。
・もし別の誰かに右手を奪われれば、少女たちはあっさりと新しい持ち主にスライドしてしまうのではないかと脅えていた。
自己犠牲の消滅後に残された右手首の回収と、連れ戻す鍵を人質にした強制服従
「窓のないビル」の地下での戦いで、上里翔流は暴走するブースターから少女たちを守るため、自ら右手を切り落として理想送りを発動させ、自らを異世界(辺獄)へと吹き飛ばして消滅した。
・生き残った木原唯一は、現場に残された上里の右手を自身の腕に縫合した。
・少女たちに対し、上里を連れ戻す鍵はこの右手にある、彼を諦めたくなければ私に逆らうな、と宣告した。
・これにより、上里が最も恐れていた、右手を簒奪した者が少女たちの王になる、という悪夢が現実のものとなった。
・上里を慕う少女たちの心を縛る、安易極まりない呪いが完成してしまった。
右手損壊の脅迫に伴う屈辱と、上条当麻を標的にした人間狩りへの強制従事
木原唯一に右手を握られたことで、上里勢力の少女たちの心は見えない鎖で雁字搦めに縛り付けられることとなった。
・彼女たちは木原唯一に強い屈辱と憎悪を抱いていたが、この右手が腐ってしまえば上里は二度と帰ってこない、と脅され抵抗の術を失った。
・上里が戻ってくるかもしれないというわずかな希望を盾に取られ、心の中で涙を流し逡巡することとなった。
・結果として、木原唯一の命令に従って上条当麻を殺すための人間狩りに駆り出されるという地獄を味わうこととなった。
理想送りに頼らない魔術儀式による生還と、右手を失った上里への変わらぬ態度
この誰も幸せにしない絶望的な状況を打破するため、上条当麻は木原唯一が持つ理想送りに頼らずに、自分たちの手で上里翔流を現実世界へ連れ戻す決断を下した。
・それしか少女たちを呪縛から解き放ち、上里の恐れていた悪夢を終わらせる方法はないと考え行動した。
・上条や府蘭、琉華たちの決死の魔術儀式によって、上里は現実世界への生還を果たした。
・右手を完全に失った状態で帰還した上里に対し、絵恋や獲冴といった少女たちは以前と変わらず彼を心配し、和気藹々と接した。
・この光景を通して上里は、少女たちは右手の力に操られていたのではなく、上里翔流という本人を認めて一緒にいてくれた、という真実をようやく実感した。
・これにより木原唯一の呪縛が物理的に無効化されただけでなく、上里自身が心に抱え続けていた精神的な呪縛も完全に解き放たれる結末を迎えた。
まとめ
理想送りの呪縛を巡る一連の顛末は、右手の力による傀儡ではないかという上里の疑念が、彼の消失後に右手首を奪った木原唯一の脅迫によって最悪の支配として具現化し、少女たちが人間狩りへ駆り出される絶望に陥りながらも、上条当麻らが右手に頼らない独自の魔術儀式によって上里を現世へ帰還させ、右手を失った彼への少女たちの変わらぬ愛着によって上里自身の心の不信をも霧散させることで、理不尽な精神支配の檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還するに至る、偽りの呪いの超克と真実の絆の記録である。
自己の不信から、敵による簒奪、少女たちの隷属、そして右手を介さない救出へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な魔神の力や冷酷な脅迫によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の意志と確固たる連帯によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
烏丸府蘭の告白
『新約 とある魔術の禁書目録』第17巻において、烏丸府蘭が行った学園都市全域への「一世一代の告白」は、彼女自身の罪と絶望を乗り越え、上里翔流への純粋な想いを貫く非常に感動的な名シーンとして描かれている。暴かれた正体と絶望、上条当麻の叱咤による覚醒、学園都市全域への告白、そして告白がもたらした奇跡とUFO少女からの卒業についての解説は以下の通りである。
イギリス清教のスパイという真実の暴露と、絵恋による糾弾に伴う生気の喪失
烏丸府蘭はUFO少女を自称して上里勢力に潜り込んでいたが、その裏には隠された役割が存在していた。
・その正体は星や光を扱う黄金系の魔術師であり、イギリス清教から上里翔流の動向を監視・誘導するために送り込まれたスパイであった。
・情報戦の最中、辿り屋の絵恋にその正体と目的を完全に見破られることとなった。
・府蘭の裏切りが上里を殺し、幸せな時代を打ち砕いた、と激しく責め立てられた。
・自身の罪を突きつけられた府蘭は反論できず、生きる気力さえ失った抜け殻のようにうなだれてしまった。
共に逃亡していた上条による行動の肯定と、自分の運命を決定する精神的再起
そんな絶望の淵にいた彼女の背中を力強く押したのは、共に逃亡していた上条当麻であった。
・上条は、書類上の所属や発端がどうであれ、府蘭が最初の最初から最後の最後まで上里翔流のことしか考えてこなかったという事実を肯定した。
・私はこの世の誰よりも上里翔流を取り返したかったと言える資格があるはずだ、という上条の熱い叱咤を受けた。
・この言葉によって覚醒した府蘭は、自分の運命くらい自分で決める、と決意し再び立ち上がった。
広域ネットワークスフィアを通じた大熱波の謝罪と、成就せぬ恋心を晒す悲痛な叫び
覚醒した府蘭は、自らの手で温めてきた広域ネットワークのスフィアを通じて、学園都市全域に向けてメッセージを発信した。
・彼女はまず、学園都市を襲った大熱波の責任が自分にあることを率直に謝罪した。
・事態が終わった後には、しかるべき罰を受ける義務があることを潔く認めた。
・その上で、私には好きな人がいます、と切り出し、自身の本心を包み隠さず吐露した。
・その人はもう絶対に戻ってこないと言われたけれどどうしても助けたい、という強い意思を表明した。
・この恋は成就しないし咎を抱えた自分が幸せを掴むことはありえないが、それでももう一度彼の笑顔が見たい、というひたむきで悲痛な恋心を打ち明けた。
冥亞の流した氷河期到来デマの払拭と、気象台への通信ステーション落下によるドローン破壊
この素直な告白は、情報操作による混乱に陥っていた学園都市の人々の心理を大きく動かすこととなった。
・幽霊少女・冥亞がスフィアを通じて拡散させていた、氷河期到来のデマや悪意ある暴動の火種を完全に吹き飛ばした。
・どんな複雑な情報操作よりも、一人の少女の捨て身の告白が避難所にいる人々の心を打ち、各避難所の王たちも彼女の放送に耳を傾けた。
・その後、府蘭は上里の運命を他人に委ねようとする冥亞の香炉(ドローン)を破壊する行動に出た。
・自らの銀河間通信ステーションを気象台へ落下させるという、豪快な一撃を放ってこれを粉砕した。
・星空を眺めて虚空を漂うだけのUFO少女を卒業し、地に足を着けて上里翔流の未来を取り戻すための戦いへと身を投じていった。
まとめ
烏丸府蘭の告白を巡る一連の顛末は、スパイとしての正体が暴かれ罪悪感から絶望に沈みながらも、上条当麻の打算なき叱咤によって自らの上里への想いを肯定されて再起し、広域ネットワークを通じて自らの罪の謝罪と成就せぬ恋心を学園都市全域へ発信することで、冥亞の流したデマによる暴動の危機を沈静化させ、自らの通信ステーションを落下させて敵のドローンを破壊し、虚空を漂うだけのUFO少女を卒業して日常を奪還するための闘争へ赴くことで、理不尽な宿命の檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還するに至る、罪の超克と純愛の証明の記録である。
正体の露見から、上条の激励、全域への放送、そして武力による決着へと繋げたプロセスは、どれほど不条理なスパイの過去や過酷な環境の激変によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の意志と確固たる愛によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
営巣部隊の支配
学園都市災害復旧委員会「営巣部隊」による力と情報の支配
『新約 とある魔術の禁書目録』第17巻において、大熱波とエレメントの脅威が去った後の学園都市を力と情報で支配しようとしたのが、学園都市災害復旧委員会に所属する「営巣部隊(ユースフルスパイダー)」である。過剰な武力による制圧、スフィアを通じた情報統制、旧上里勢力との衝突、そして支配の根底にあった彼らの正義についての解説は以下の通りである。
秩序回復の48時間宣言と、巨大送風機や輸送ヘリを用いた容赦のない群衆制圧
営巣部隊は、エレメントの活動停止を確認したことを機に「秩序回復の48時間」を宣言し、学園都市の治安維持とインフラ復旧に乗り出した。
・復旧の妨げとなる銃刀類や危険物の回収を名目に、市民を圧倒的な力で制圧した。
・表向きは非殺傷制圧と謳いながらも、その手法は極めて強圧的であった。
・建物を吹き飛ばすほどの巨大送風機を使用し、生活環境を顧みない強制排除を行った。
・輸送ヘリから巨大な水の塊を投下し、高圧放水で群衆を将棋倒しにするなどの暴挙に出た。
・人命の安全確保よりも事態の早期終息を最優先した、容赦のない暴力によって街の秩序を強引に支配した。
通信インフラ基地の占有と、上条当麻および烏丸府蘭の人権凍結を伴う指名手配
武力と並んで彼らの支配の要となったのが、各避難所に設置された災害時用の通信インフラ基地「スフィア」の完全な掌握であった。
・携帯電話やインターネットが機能しない状況下において、人々がスフィアからの情報に依存せざるを得ない環境を利用した。
・大熱波を発生させた烏丸府蘭と、彼女と行動を共にする上条当麻を重要参考人として一方的に指定した。
・二人の基本的人権の一時凍結を宣言し、避難所の住民たちに対して通報を促した。
・流れる情報を完全にコントロールすることで民意を操り、自分たちの都合の良い形での事態収拾を目論んだ。
幽霊少女・冥亞による氷河期デマの拡散と、第二一学区気象台での全面衝突
営巣部隊が構築したスフィアによる避難所単位の情報支配は、上里翔流の行方を追う旧上里勢力の幽霊少女・冥亞に乗っ取られる結果となった。
・冥亞によってスフィアのネットワークが利用され、氷河期が来るというデマが拡散される事態に陥った。
・この虚偽情報により、学園都市全域でさらなる暴動と致命的な混乱が誘発された。
・営巣部隊は対抗措置としてスフィアを物理的に破壊して回る強硬策に出た。
・しかし、その破壊行動が上条と府蘭の捜索を妨害したと見なされ、旧上里勢力の逆鱗に触れることとなった。
・結果として、営巣部隊の本拠地である第二一学区の気象台において、異能を持つ少女たちとの激しい全面衝突へと発展した。
一刻も早い日常への帰還を狙う汚れ役の受任と、ヘリによる上条らの目的地輸送
非情で無慈悲な支配者として立ち回った営巣部隊であったが、その行動の根底には明確な目的が存在していた。
・一刻も早く学園都市を元の形に戻す、という強烈な目的意識を共有していた。
・避難生活を続ける少年少女たちを一日でも早く日常に帰すため、あらゆる汚れ役を自ら進んで引き受けていた。
・そのため、上里翔流の生還こそが街の混乱収束に直結すると理解した瞬間に、これまでの態度を一変させた。
・それまで敵として追跡していた上条たちを自軍の輸送ヘリに乗せ、目的地へ送り届ける柔軟な協力姿勢を見せた。
まとめ
営巣部隊による学園都市の支配と管理を巡る一連の顛末は、秩序回復を名目とした過剰な暴力制圧とスフィアを介した情報統制から始まり、そのインフラを冥亞に悪用されてデマの拡散を許した上に旧上里勢力との全面衝突を招きながらも、都市の早期復旧という真の目的のために汚れ役を辞さない信念を貫き、最終的には上里の帰還を支援するために上条らをヘリで輸送することで、理不尽な混乱の檻を打ち破り、自分たちの都市の尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還するに至る、苛烈な復興への執念の記録である。強圧的な制圧から、情報の支配、勢力間の決裂、そして目的のための反転へと繋げたプロセスは、どれほど都市のインフラが麻痺し絶望的な環境激変に晒されようとも、本質を突いた機能的な知性と確固たる意志によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
理想送りと魔神
理想送りの正体と魔神たちとの因果関係
『新約 とある魔術の禁書目録』において、「理想送り(ワールドリジェクター)」と「魔神」たちの関係は、単なる能力者と標的という枠を超え、願いの発生源とその結末という非常に皮肉で複雑な構図を持っている。理想送りの正体と誕生の経緯、上里翔流の魔神に対する憎悪、魔神たちにとっての追放の真意、そして辺獄での再会と和解についての解説は以下の通りである。
今ある世界を捨て去る逃避の幻想の集積と、魔神の失望から漏れ出したアポトーシス
上条当麻の右手に宿る幻想殺し(イマジンブレイカー)が今ある世界を守り修復する願いの集積体であるのに対し、上里翔流の理想送りは全く正反対の性質を持っている。
・今ある世界を捨てて諦め、新たな天地へ旅立ちたい、という逃避や放棄の幻想の集合体である。
・この力が上里に宿った原因は、魔神オティヌスが世界を何度も作り替えた事件に端を発している。
・真なる魔神たちが、幻想殺しにすがり続けても安心は得られない、と無意識下に疑念と失望を抱いた結果として誕生した。
・彼らから漏れ出した別の願望が集縮し、上里の右手に宿る結果となった。
・オティヌスはこの現象を、魔神たちが自分で作り出したアポトーシス(細胞死)に喰われているようなもの、と皮肉っている。
日常を崩壊させた特異な右手への違和感と、少女たちの仇を討つための個人的な復讐
上里翔流は自らをどこにでもいる平凡な高校生だと認識していたが、この特異な右手が宿ったことで日常が崩壊することとなった。
・彼の周囲の少女たちが次々と異形の力を得て、自分の意思を失ったかのように盲目的に彼に従う上里勢力を形成したことに苦悩した。
・少女たちの自由な意志や日常の人間関係を理不尽に歪め、ご都合主義のハーレムのような状態に作り替えた元凶として、右手を与えた魔神たちを激しく憎悪した。
・世界を救うためではなく、身近な少女たちの日常を取り戻すという個人的な復讐のために行動した。
・魔神たちを理想送りの力によって新たな天地へ片っ端から追放し、事実上の抹消を行う決意を固めた。
全能ゆえの閉塞感の打破と、娘々やネフテュスが歓喜した究極の救済
圧倒的な力を持つ魔神たちは一見すると無敵であるが、世界の全てを知り尽くしてしまい、もう新しいものが何もないという退屈や閉塞感を抱えていた。
・煩わしい俗世の全てを捨て去って、誰も知らない新天地で羽を伸ばしてみたい、という全能ゆえに叶うはずのない願望を密かに持っていた。
・そのため、上里が理想送りを使って娘々やネフテュスといった魔神を追放する際、彼女たちは恐怖や苦痛を感じなかった。
・むしろ、やっと終われる、すんごい安心、と歓喜しながら世界から消滅していった。
・理想送りによる消滅は、魔神たちにとって自身の隠された願いを満たしてくれる究極の救済として機能していた。
理想送りによる自身への追放と、ありふれた世界への挑戦を望む本音による奇妙な共闘
木原唯一との死闘の末、上里翔流自身も理想送りの力で追放され、魔神たちが漂う辺獄(新たな天地)へと送られることとなった。
・そこで彼は、かつて自分が理想送りによって消し飛ばした魔神たちと再会することになった。
・一部の魔神は報復として上里に襲いかかったが、娘々とネフテュスは彼を庇う行動をとった。
・極限状態の中で上里が、魔神を殺すのではなくありふれた世界の中で輝ける自分に何度でも挑戦したい、という偽りない本音を吐露した。
・このみっともなくも真っ直ぐな言葉が魔神たちの心を強く打つ結果となった。
・最終的に、魔神たちは上里の現実世界への帰還をサポートすることに同意した。
・復讐者と標的という血みどろの関係は、異世界での奇妙な共闘と和解という形で幕を下ろした。
まとめ
理想送りと魔神の関係を巡る一連の因果は、魔神たちの絶望から生まれた世界放棄の力が上里の右手に宿り、日常を壊された上里が復讐として魔神たちを追放するも、それが全能の魔神たちにとっては退屈からの救済として歓喜をもって受け入れられ、最終的には上里自身も辺獄へ追放されて魔神たちと再会しながらも、ありふれた世界へ戻るという本音を示して和解し、現実世界への生還に向けて共闘することで、理不尽な宿命の檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還するに至る、願望の循環と相互理解の記録である。力の発生から、復讐の遂行、救済の真実、そして異界での和解へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な超常の力や過酷な環境の激変によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の意志と確固たる対話によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
悪意の情報戦
通信インフラ崩壊下における悪意の情報戦と心理誘導の全貌
『新約 とある魔術の禁書目録』第17巻において展開された「悪意の情報戦」は、通信インフラが完全に崩壊した学園都市を舞台に、人々の恐怖と集団心理を巧みに操ることで引き起こされた極めて危険なテロリズムである。閉鎖空間における情報源の偏り、幽霊少女・冥亞によるデマの波状攻撃、デマがもたらした現実の暴動、そして悪意を打ち破った一世一代の告白にいたるプロセスについての解説は以下の通りである。
災害時用通信インフラ基地の受動的視聴と、検証不可能な密室が生んだ同調圧力
大熱波とエレメントの襲来により、インターネットや携帯電話といった個人の通信インフラが完全に機能停止した学園都市では、情報の流通が極限まで制限されていた。
・各避難所に設置された災害時用の通信インフラ基地「スフィア」が、住民たちの唯一の情報源となっていた。
・スフィアは基本的に避難所の代表である「王」だけが情報を発信できる極端な一方通行のシステムであった。
・一般の少年少女たちは送られてくるニュースをただ受動的に眺めることしかできない状態に置かれた。
・疑問があっても個人で反論や検証を行う術がなく、周囲の大多数が信じているものに流されてしまう環境が形成された。
・これにより、開かれた密室特有の強力な同調圧力が生まれ、デマが急速に浸透する土壌となった。
氷河期到来説と仮想現実説の多方向発信による、上条当麻らの炙り出しを狙う心理操作
このシステムの脆弱性を突き、悪意の情報戦を仕掛けたのが、旧上里勢力の一員である幽霊少女・冥亞である。
・冥亞は複数の避難所のスフィアを乗っ取り、悪質なデマを同時多発的に流布した。
・大熱波が終わった後に気温の低下に歯止めが効かず、氷点下50度以下の氷河期がやってくるという「氷河期到来説」を流した。
・大熱波もエレメントも全ては上層部のバーチャルリアリティ実験であり、目を覚ませば元通りになるという「仮想現実説」を流した。
・相反するデマであっても時間差を空けて多方向から肯定意見を連発することで、複数の情報源から裏付けられた確定情報であるかのように錯覚させた。
・人間は多方向からの肯定意見に弱く、恐怖や不安が重複しても矛盾を持たずに受け入れてしまうという集団心理を悪用した。
・彼女の真の目的は、デマによってパニックを起こし、学園都市に潜伏している上条当麻と烏丸府蘭、そして行方をくらませた豊山琉華を炙り出すための撒き餌にすることであった。
芸能避難所の防寒具強奪暴動と、営巣部隊の過剰な高圧放水による将棋倒し惨劇
この悪意の情報戦は、不確かな情報に踊らされた住民たちを動かし、現実の学園都市に深刻な被害をもたらすこととなった。
・間もなく氷河期が来ると信じ込んだ「芸能」の避難所の少年少女たちが、防寒具を求めて暴徒化した。
・物資を強奪するために大型店舗へ侵入しようと、高架道路から次々と飛び降りる凄惨な事態へと発展した。
・この暴動を鎮圧しようとした営巣部隊(ユースフルスパイダー)が、高圧放水やヘリからのゼリー爆撃といった過剰な武力行使に出た。
・これにより群衆が将棋倒しとなり、怪我人が続出する避難所発の地獄絵図が現実のものとなってしまった。
ネットワーク介入による大熱波の謝罪と、純粋な恋心によるデマの一瞬の払拭
この制御不能な情報戦を終わらせたのは、複雑なハッキングや情報操作ではなく、烏丸府蘭による捨て身の告白であった。
・府蘭は自らの通信ステーションを用いて学園都市全域のネットワークに介入した。
・大熱波の責任が自分にあることを率直に謝罪したうえで、終わった後にはしかるべき罰を受ける義務があることを認めた。
・もう絶対に戻ってこないと言われた好きな人をどうしても助けたい、という強い意思を表明した。
・この恋を終わらせるために一世一代の告白に付き合ってほしい、と上里翔流への純粋で悲痛な想いを全域へ配信した。
・一人の少女の血の通った真実の言葉は、どんなに巧妙に作られたデマよりも避難所の人々の心を強く打った。
・冥亞が育てていた氷河期や仮想現実のデマは一瞬で時代遅れとしてかき消され、スフィアのネットワークは府蘭の話題で持ちきりとなった。
・結果として、冥亞の仕掛けた悪意の情報戦は完全に瓦解する結末を迎えた。
まとめ
悪意の情報戦を巡る一連の顛末は、通信途絶下のスフィアがもたらす受動的な密室環境において、冥亞が仕掛けた多方向からのデマ攻撃により人々がパニックに陥り、現実の暴動と営巣部隊の過剰制圧という地獄絵図を招きながらも、烏丸府蘭が全域へ行った捨て身の謝罪と上里翔流への一世一代の告白が人々の心を打つことでデマを完全に駆逐し、理不尽な情報操作の檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を完璧に奪還するに至る、集団心理の暴走と実存的な真実の言葉による勝利の記録である。インフラの掌握から、偽情報の浸透、現実の破綻、そして感情の共鳴による反転へと繋げたプロセスは、どれほど不条理なデマや過酷な環境の激変によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる愛の意志によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
新約 とある魔術の禁書目録(16)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(18)レビュー
登場キャラクター
上条勢力・学園都市の生徒・関係者
上条当麻
右手に「幻想殺し」を持つ少年である。他者を救うために身を投じる性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
上里翔流を救出するために烏丸府蘭たちと協力した。木原唯一の支配から少女たちを解放しようと奔走する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
御坂美琴
学園都市の第三位に位置する超能力者である。上条当麻を追いかけ、彼と同じステージに立つことを望んでいる。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。学園都市第三位の超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
対魔術式駆動鎧を操ってエレメントを掃討した。常盤台中学を拠点として人々を守る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アレイスターの放った呪詛を受けて血を吐いて倒れた。
インデックス
10万3000冊の魔道書を記憶する少女である。上条当麻の部屋に居候している。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教のシスター。
・物語内での具体的な行動や成果
上条からのメッセージを受け取り、第七学区の駅前広場へ向かった。上里救出の魔術儀式に協力しようとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
オティヌス
魔神と呼ばれる存在である。上条当麻の理解者として行動を共にしている。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
上条の肩に乗り、インデックスとともに駅前広場へ駆けつけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妖精化の術式によって身長15センチほどに縮んでいる。
三毛猫
上条当麻の部屋で飼われている猫である。
・所属組織、地位や役職
上条当麻の飼い猫。
・物語内での具体的な行動や成果
オティヌスを追い回したり、キャットフードを食べたりしていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
吹寄制理
上条当麻のクラスメイトである。真面目で責任感が強い性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
大熱波とエレメントの脅威の中、水源を求めて行動した。水着姿で上条たちとともに奔走する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
青髪ピアス
上条当麻のクラスメイトである。友人たちと騒動を起こすことが多い。
・所属組織、地位や役職
学園都市の高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
水着姿で上条や吹寄とともに水を確保するために活動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
秋川未絵
女子中学生である。化生院明日香を慕っており、彼女の世話を焼いている。
・所属組織、地位や役職
中高一貫校・中等部生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
避難所の水不足を解決するため、プールの水を浄化する提案を行った。上条たちに状況を説明する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ビクビクウサギ
小柄な女子生徒である。他薦で生徒会長に選ばれたことを負担に感じている。
・所属組織、地位や役職
中高一貫校・高等部生徒会長。
・物語内での具体的な行動や成果
避難先の学校で上条たちに水を配るなど、生徒会長としての責務を果たそうとしていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
本名は化生院明日香である。
土御門元春
イギリス清教から送り込まれたスパイである。同時に学園都市にも情報を売っている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の多重スパイ。
・物語内での具体的な行動や成果
妹の舞夏を助けるために行動を起こした。アレイスターを銃撃する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
パトリシア=バードウェイ
レイヴィニア=バードウェイの妹である。
・所属組織、地位や役職
ゲスト研究員。
・物語内での具体的な行動や成果
サンプル=ショゴスに体を蝕まれていたが、ネフテュスの力で命を救われた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
体内にネフテュスの1割を残しており、上里救出の儀式における共通項として利用された。
カエル顔の医者
上条当麻をよく治療している医師である。
・所属組織、地位や役職
学園都市の医師。
・物語内での具体的な行動や成果
倒れた御坂美琴を受け入れた。上条にスフィアの鍵を貸し与える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
生徒会室の面々
化生院明日香の周囲にいる生徒たちである。
・所属組織、地位や役職
中高一貫校・生徒会役員。
・物語内での具体的な行動や成果
避難所で生徒たちをまとめ、水や物資の管理を行っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
常盤台中学のお嬢様達
御坂美琴と同じ学校に通う生徒たちである。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
美琴を支援し、病院の駐車場で段ボールの家屋を作って避難生活を送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
避難所で固まっていた生徒達
学園都市の様々な避難所に集まっていた少年少女たちである。
・所属組織、地位や役職
学園都市の生徒たち。
・物語内での具体的な行動や成果
大熱波やエレメントの恐怖に怯え、スフィアから流れる情報に振り回されていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
上里勢力
上里翔流
右手に「理想送り」を宿す少年である。どこにでもいる平凡な高校生を自称している。
・所属組織、地位や役職
上里勢力の中心人物。
・物語内での具体的な行動や成果
木原唯一との戦いで右手を失い、辺獄へ追放された。上条たちの儀式によって現実世界へ生還する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
烏丸府蘭
UFO少女を自称しているが、正体は黄金系の魔術師である。イギリス清教から送り込まれたスパイとして行動していた。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。イギリス清教のスパイ。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻と共闘し、学園都市全域に告白を配信して氷河期のデマを打ち破った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正体が露見し、学園都市からの逃走を余儀なくされた。
有村絵恋
上里勢力の少女である。「辿り屋」の異名を持つ。
・所属組織、地位や役職
上里勢力・情報要員。
・物語内での具体的な行動や成果
汗や匂いなどの痕跡から上条当麻と烏丸府蘭を追跡し、追い詰めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
豊山琉華
眼帯に海賊帽子を被る海賊少女である。時間制御を扱うブードゥーの魔術師として行動する。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻の言葉に心を動かされて共闘を選んだ。上里救出の魔術儀式を完遂させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
御霊冥亞
死に装束を着た幽霊少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
スフィアのネットワークを乗っ取り、氷河期到来などのデマを拡散して情報戦を仕掛けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
田妻暮亞
植物の特性を持つ原石の少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
ハリボテのA.A.A.を纏って陽動を行った。上里救出を阻止しようとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
沢井織雛
コスプレ少女を自称する少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
ジェットブースターを組み込んだステッキで空を飛んだ。上条たちの乗るヘリを魔法の光弾で追撃する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
去鳴
上里翔流の義理の妹である。絶滅犯と自称する狂人として行動する。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
木原唯一との戦闘で片腕を失いながらも、上里を守るために唯一へ飛びかかっていった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
獲冴
不良のような外見の少女である。ペットボトルに硬貨を詰めて持ち歩く。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
こっくりさんのような憑依の魔術を用いて戦闘や支援を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
精錬
避難所の王の座を奪った少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
避難所である博愛に食い込んだ。冥亞のアシスト役を務める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔鈴
上里勢力に所属している少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
他の少女たちとともに上条を取り囲む集団の中にいた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
好楽
上里勢力の一員である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
他のメンバーとともに姿を現した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
診華
上里勢力の少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
第一五学区の放送局を制圧した。木原唯一の居場所を割り出す手がかりを探る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
牧納
上里勢力に所属している。水着にエプロンを着たキッチンドランカーの幼な妻である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
第四学区のビーフンストリートを制圧した。巨大送風機を空へ上げられる前に落とす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
芽李
狼に育てられた少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
人間の6000倍とも言われる鋭敏な嗅覚で上条当麻と烏丸府蘭を捜索した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
出洞
上里勢力の一員である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
巨大なトレーラーを使ってコンテナを引きずり回した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
雷矛
上里勢力の少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
他の少女たちとともに上条を取り囲む集団の中にいた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
愛燐
現代兵器マニアの少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
本丸を攻めるにあたって図上で駒を動かした。周りの少女たちを追従させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
燦泥
微生物博士の少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
実働部隊の戦闘要員として上条を取り囲んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
姪龍
暗器使いの少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
実働部隊の戦闘要員として上条を取り囲んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
瑛魅
捕食女王と呼ばれる少女である。
・所属組織、地位や役職
上里勢力。
・物語内での具体的な行動や成果
実働部隊の戦闘要員として上条を取り囲んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
木原一族・統括理事会
木原唯一
リクルートスーツに白衣を着た女性である。恩師である木原脳幹の復讐を目論んでいる。
・所属組織、地位や役職
木原一族の研究者。
・物語内での具体的な行動や成果
上里の右手を自らに縫合し、少女たちを服従させた。上条当麻の抹殺を命じる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アレイスター=クロウリー
学園都市の統括理事長である。
・所属組織、地位や役職
学園都市統括理事長。
・物語内での具体的な行動や成果
御坂美琴に呪詛を放ち、さらに府蘭を利用しようとした。土御門元春に銃撃される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔神
娘々
青ざめた顔にチャイナドレスを着た魔神である。指をさまざまな武具に変化させる力を持つ。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
辺獄へ追放された上里翔流に襲いかかった。彼の本音を聞いて元の世界への帰還を支援する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ネフテュス
包帯を巻いた褐色の肌の魔神である。人間の情熱に興味を持っている。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
辺獄で上里翔流の帰還をサポートした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
パトリシアの体内に自らの1割を残している。
ヌァダ
上半身裸で全身にタトゥーを入れた隻腕の魔神である。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
辺獄に追放された上里翔流に報復として襲いかかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
プロセルピナ
ヴェールで素顔を隠す黒い西洋喪服の魔神である。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
人工氷河期発生魔術を用いて辺獄の上里翔流に襲いかかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
テスカトリポカ
魔神の一柱である。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
辺獄で上里翔流と対峙する魔神の群れの中に存在していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
忘れられた神(キメラ)
クレヨンで描かれた棒人間のような不気味な姿を持つ魔神である。
・所属組織、地位や役職
魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
辺獄の闇の中から上里翔流に突撃してきた。娘々に弾き飛ばされる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
営巣部隊・各避難所の人々
ガンナー
営巣部隊のヘリコプターに搭乗している人員である。
・所属組織、地位や役職
営巣部隊の兵士。
・物語内での具体的な行動や成果
側面のカーゴドアから身を乗り出して重機関銃を操った。織雛などの目標を迎撃する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
パイロット
営巣部隊のヘリコプターを操縦する人員である。
・所属組織、地位や役職
営巣部隊の操縦士。
・物語内での具体的な行動や成果
上条たちを乗せたヘリコプターを操縦した。第七学区南部の病院へ向かう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
避難所【裁判】の『王』(作業服の男)
くたびれた作業服を纏う薄っぺらな男である。
・所属組織、地位や役職
避難所【裁判】の『王』。
・物語内での具体的な行動や成果
群衆に暴行を受けていたがアレイスターと対峙した。凡人の一滴が偉人の野望を砕くと宣告する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
避難所【芸能】の『王』(男装の麗人)
金刺繍の海軍コートを纏う長身の美女である。男女どちらの支持も集めて避難所のトップに立っている。
・所属組織、地位や役職
避難所【芸能】の『王』。
・物語内での具体的な行動や成果
群衆を扇動していたが御坂美琴の紫電の威圧を受けた。スフィアの鍵を上条たちに差し出す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フィギュア衣装の少女
フィギュアスケートのような衣装を纏う少女である。
・所属組織、地位や役職
避難所【芸能】の避難民。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻に低い位置から体当たりされて取り押さえられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
正義感の塊の少年
避難所【芸能】にいる少年である。
・所属組織、地位や役職
避難所【芸能】の避難民。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻の肩を掴んで進行を妨害した。拳を振るう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
二丁水鉄砲の少年
オイルやアルコールを詰めた水鉄砲を持つ少年である。
・所属組織、地位や役職
避難所の戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
喘息持ちの妹を守るために戦っていた。上条当麻に説得されて撤退する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
営巣部隊(ユースフルスパイダー)
学園都市災害復旧委員会に所属する部隊である。
・所属組織、地位や役職
学園都市の治安維持部隊。
・物語内での具体的な行動や成果
巨大送風機や輸送ヘリからの高圧放水を用いた。過剰な武力行使で群衆を鎮圧する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
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新約 とある魔術の禁書目録(16)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(18)レビュー
展開まとめ
序章 あるいは前提こそ結論を含む to_the_Girl’s_ABYSS.
灰色の学園都市
上里翔流は、理想送りによって世界から消えた後、灰色に冷え切った学園都市で目を覚ました。大熱波は止まり、真冬の寒さが戻っていたが、そこには人の姿がなかった。彼は自分が同じ世界の余ったコマのような場所へずらされ、通常の人間とは触れ合えない状態に置かれたのだと理解した。
失われた右手
上里は、自分の手首から先がなく、ボロ布で止血されていることに気づいた。理想送りが自分の手首以外の全身を吹き飛ばした以上、右手がついてこないのは当然だった。しかし出血が止められていることから、そこに自分以外の第三者がいる可能性を感じた。
奈落の先客
周囲には、これまで理想送りで吹き飛ばされてきた兵器の残骸やロケットブースターの成れの果て、土砂や泡の残滓が転がっていた。物品だけでなく、以前に吹き飛ばされた者達もこの場所へ来ているはずだった。上里は、自分より先にここへ辿り着いた存在がいることを察した。
娘々の出現
上里の前に、黒髪に短いチャイナドレスをまとった娘々が現れた。さっきまで誰もいなかったはずの場所に、彼女は当然のように立っていた。さらに周囲には複数の気配があり、上里がこれまで理想送りで消してきた魔神達が集まっていることが示された。
魔神達の報復
上里にはもう理想送りも、周囲を守る一〇〇人の少女達もいなかった。娘々は、ギフトを与えた自分達を一方的に倒してきたことについて言いたいことがあると笑った。止血してまで上里を生かした理由は、魔神総出で叩きのめすためだった。
辺獄の上里翔流
その場所は、天国でも地獄でも異世界でもなく、理想送りに飛ばされた者達が漂う辺獄のような場所だった。持たざる者となった上里翔流は、かつて自分が消し飛ばしてきた魔神達に囲まれ、逃げ場のない報復へ巻き込まれていった。
第一章 あるいは遮断こそ拡散へ至る Gray_City.
氷点下の逃走
一二月九日午前五時前、学園都市には真冬の寒さが戻っていた。上条当麻は水着一丁のまま寒さに削られながら、木原唯一に縛られた旧上里勢力の少女達から逃げていた。上里翔流に託された少女達を解放するためには、理想送りに頼らず上里を救えると証明する必要があった。
辿り屋の追跡
府蘭は、逃げ切るのは難しいと告げた。旧上里勢力には、汗や唾液、毛髪や靴痕などから足跡を辿る絵恋がいるため、地上を走ればいずれ必ず追いつかれるからだった。そこで府蘭は、足跡を残さないために自作のUFOバルーンで飛ぶことを選んだ。
陸橋下の潜伏
絵恋達は、上空の冥亞に府蘭のバルーンを落とさせるつもりで、地上側の追跡に集中していた。上条と府蘭は陸橋の真下にバルーンで張り付き、直線距離一メートルもない位置でやり過ごした。府蘭は冥亞が空だけを見ている隙を突き、陸橋下から地下鉄トンネルへ低空で滑り込んだ。
府蘭の条件
地下鉄トンネルに逃れた府蘭は、上条の脇腹にツールナイフを当て、自分は上里翔流の仲間であって上条当麻の仲間ではないと告げた。彼女は、上条が上里のために動く限り力を貸すが、一度でも上里より上条自身を優先すれば切り捨てると宣言した。上条は迷わず、上里救出に命を懸けると答えた。
木原唯一の椅子
窓のないビル直下では、木原唯一が去鳴を椅子代わりにしてくつろいでいた。彼女は上里翔流の右手を縫い付けたまま爪の手入れをし、去鳴の背中に痛みを与えて楽しんでいた。唯一は、上条を殺させること自体に大きな戦略的意味はなく、上里が大切にした少女達の手を汚すことで、すでにいない上里への復讐を続けていた。
地下鉄トンネルの砂
上条と府蘭は地下鉄トンネルを進み、白い砂の山を見つけた。上条は、それがエレメントの残骸ではないかと考え、府蘭は外から壊されたのではなく、木原唯一の命令で内側から自壊した時の反応かもしれないと推測した。二人はさらに進み、暗い地下鉄ホームへ辿り着いた。
蕎麦屋の朝食
ホーム沿いの蕎麦屋には人の気配がなく、真空パックの鴨肉やお茶が残っていた。上条は無断で食材を使う以上、代金をきちんと残すべきだとこだわり、府蘭と値段をめぐって言い合った。上里救出という大きな目的の前であっても、生きるための食事を確保することは欠かせなかった。
府蘭の着替え騒動
府蘭は鴨の煮汁で水着を汚し、上条の前で無頓着に染み抜きを始めた。上条は慌てながらも、乾いた布巾やお茶を使って汚れを落とす方法を教えた。緊迫した逃亡中でありながら、二人はどこか噛み合わないやり取りを続けていた。
冬物の必要
食事を終えると、府蘭は寒さでくしゃみをした。上条は大熱波が急に止まったせいで、今は真冬の学園都市だと改めて認識した。府蘭は、大熱波を細かく調整することはできず、衛星軌道上の装置も本来はマイクロ波攻撃用ではないと説明した。
知人への危険
上条は、学生寮へ冬物を取りに戻れるかを府蘭に尋ねた。府蘭は、絵恋達が上条の生活圏や学校関係を監視しているはずだと答えた。ただし、学園都市の住人は外から見ればどんな能力を持つか分からないため、知人を無差別に人質に取る可能性は低いとも分析した。
地上の車音
府蘭は、上条が知人と合流しようとした場合は、その場で短期決戦を仕掛けられる危険が高いと警告した。上条が判断に迷っていると、地下鉄トンネルの上から分厚いゴムが地面を噛むような音が響いた。電気も交通も止まったはずの地上で、車が走っているらしいことに、上条と府蘭は怪訝な顔を見合わせた。
営巣部隊の放送
上条当麻と府蘭は地下鉄駅から地上へ出て、蟲の脚と履帯を備えたハーフトラックのような車両を見つけた。車両は学園都市災害復旧委員会所属の営巣部隊を名乗り、エレメントの活動停止を確認したため秩序回復の四八時間に入ると放送していた。上条はようやく復旧が始まったのだと安堵しかけたが、府蘭はなぜ彼らが終息を断言できるのかを疑った。
重要参考人の指定
府蘭は、木原唯一と直接戦った者以外にエレメント停止の事情は分からないはずだと指摘した。その直後、営巣部隊の放送は、上条当麻と烏丸府蘭を重要参考人とし、一時的に基本的人権を凍結したと告げた。上条はまた追われる立場になったことを悟り、声の大きい大人達に世論を握られれば、二三〇万人全員を敵に回しかねないと危機感を抱いた。
府蘭の本名
府蘭は、自分の本名である烏丸府蘭を知る者が限られていることに違和感を覚えた。木原唯一を通さずとも、その情報を知る誰かが営巣部隊へ伝えた可能性があった。しかしネットや携帯が機能していない状況で、どうやって情報が渡ったのかは分からなかった。
避難所への調査
府蘭は、危険を冒してでも調べる必要があると判断した。目的地は最寄りの避難所であり、確認すべきは人々が今どんな情報媒体を使っているかだった。上条と府蘭は、営巣部隊の背後にある情報の流れを探るため、再び危険な街へ踏み出そうとしていた。
公園避難所
上条当麻と府蘭は、情報収集のため大きな公園の避難所へ向かった。そこは着ぐるみロックフェスの準備中に災害へ巻き込まれた場所で、豊富な水源や屋台用資材、食材が避難生活を支えていた。上条は顔を隠し寒さをしのぐため、宇宙人のようなウサギの着ぐるみを身につけた。
ウサギグレイ
府蘭は、上条が着たウサギグレイの着ぐるみに強く反応し、思わず抱きついた。すぐに我に返って突き飛ばしたが、その後も落ち着きを失い、上条に警戒されながら避難所の中へ進んだ。二人は公園中央の湖を回り、避難者達が水や噴霧器、木陰を利用してエレメントから見つかりにくい環境を作っていたことを知った。
公園の王
避難所の奥では、首にワイヤーを巻かれた作業服の男が群衆に処刑されかけていた。彼は災害中に避難所をまとめる王のような立場だったらしく、大熱波とエレメントが消えた途端、今まで抑えられていた不満を一身に浴びていた。上条は、災害が終わっても人々の恐怖や鬱憤が消えたわけではないと目の当たりにした。
府蘭の制止
府蘭は、上里翔流救出に関係ない問題へ踏み込むべきではないと上条を止めた。彼女は、上里より上条を優先するなら協力を打ち切ると警告し、ツールナイフを着ぐるみに浅く刺した。それでも上条は、上里なら自分が助かった裏で人死にが出ることを望まないはずだと答え、処刑を止める決意を曲げなかった。
偽りのエレメント騒ぎ
上条はガスボンベを利用して湖に大きな爆発と水柱を起こし、エレメントが来たと群衆へ叫んだ。避難所の人々は、大熱波とエレメントへの恐怖が抜けておらず、怒りで結束していた群衆は一気に四散した。上条は、彼らの凶暴さの土台にある恐怖を利用し、処刑場を崩壊させた。
救われた王
上条と府蘭は、混乱の隙に作業服の男の首からワイヤーを外した。男は、自分は望んで王になったわけではなく、周囲が勝手に持ち上げたのだと吐き捨てた。そして営巣部隊から預かったというスフィアの鍵を上条達に渡し、避難所から離れていった。
スフィア
上条と府蘭は、人々が頼りにしているスフィアを見つけた。スフィアは災害時用の通信インフラ基地で、避難所の状況、天気、道路、インフラ復旧、配給情報などを表示していた。人々はネットや携帯を失った中で、スフィアから一方的に流れる情報に強く依存していた。
避難所単位の情報支配
上条は、スフィアの仕組みが個人ではなく避難所単位で情報を出し入れするものだと気づいた。一つのアカウントを握る王の判断が、数十人から数百人の意思決定を左右する構造だった。府蘭は、それが理想送りを巡る状況にも似ていると感じ、不快感を示した。
悪意ある誤報
王から渡された鍵でスフィアへアクセスすると、上条と府蘭の指名手配に関する情報が表示された。そこには、府蘭が大熱波を起こした事実や上条が逃走を支援していることは書かれていたが、エレメントを抑えるためだったという肝心な理由は抜け落ちていた。完全な嘘ではないため否定しにくい、悪意ある誤報だった。
旧上里勢力の情報戦
上条と府蘭は、営巣部隊だけでは府蘭の本名や二人が一緒に逃げている事実を集められないと見抜いた。旧上里勢力の少女達がどこかのスフィアの鍵を握り、都合の良い情報を流して住人や営巣部隊を巻き込み、二人を孤立させようとしている可能性が高かった。
インデックスへの連絡
上条は、スフィアの鍵を使えば避難所同士で通信できるかもしれないと考えた。上里翔流を救うには、魔術側の知識を持つインデックスやオティヌスの協力が必要だったからである。実働部隊が迫る危険はあったが、上条は上里から目を背けられないとして、連絡を試みることを決めた。
駅前広場への連絡
上条当麻は、スフィアを使ってインデックスとオティヌスへ理想送りの件で助力を求めた。第七学区の駅前広場で正午に落ち合うよう伝え、同時に一〇〇人の少女達から追われている危険な状況も知らせた。さらに、メッセージを受け取った者には秋川未絵かビクビクウサギを通して二人へ繋いでほしいと頼んだ。
公園へ来た追っ手
避難所で起きた爆発騒ぎを受け、獲冴と海賊少女の琉華が公園へ到着した。二人は湖のほとりの人だかりを確認し、爆発がエレメントではないと見て、スフィアへ向かった。上条当麻と府蘭が避難所に用があるなら、求めているのは水や食料ではなく情報だと判断していた。
右手のための従属
獲冴達は、今は木原唯一に従っているふりでよいと考えていた。木原唯一が持つ理想送りさえ残っていれば、上里翔流を引きずり上げられるかもしれないからだった。彼女達は上条達がスフィアを使う前に捕らえるつもりだったが、到着した時には標的の姿は見当たらなかった。
着ぐるみの偽装
実際の上条と府蘭は、スフィアからわずか一〇メートルほどの人だかりの中にいた。上条はウサギグレイの着ぐるみで姿を隠し、素顔の府蘭を抱き締めるようにして追っ手の視界から隠していた。薄紙一枚でも見つからない状況を作れば命を繋げるという、エレメント相手の経験がここでも生きていた。
遠隔送信の仕込み
府蘭はスフィアの権限を書き換え、自分の通信機器と繋げていた。彼女は衛星軌道上のステーションとも連絡できる通信能力を持っているため、スフィア本体のそばにいなくても情報を送り続けられるようにした。上条が学校へ送ったメッセージは、その間も投げ続けられていた。
人間達の時間
上条と府蘭は、追っ手から一定の距離が開いたところで、人混みを離れて全力で公園を脱出した。メッセージはすでに送られており、次の目的はインデックスとオティヌスに会うことだった。時計と通信が戻り、待ち合わせができるほど文明が回復した学園都市では、大熱波でもエレメントでもない、人間同士の時間が始まっていた。
行間 一
奈落の上里翔流
上里翔流は、魔神達に徹底的に痛めつけられ、自力では起き上がれないほど消耗していた。娘々はそれを遊びだと言い、もし本気で殺すつもりなら最初の一撃で粉々にしていたと語った。上里は、この奈落でも痛みや出血は本物であり、死ぬ可能性があることを感じていた。
魔神達の安寧
娘々は、魔神達が上里に大きな恨みを抱いているわけではないと告げた。誰にも迷惑をかけず、孤独な世界で自由に生きられる今の状況は、彼女達にとって悪い選択ではなかったからである。ネフテュスも、第一志望ではないが第二、第三くらいには落ち着いた場所だと受け止めていた。
九割のネフテュス
上里は、そこにいるネフテュスを見て戸惑った。だが、A.A.A.だけが飛ばされ、ゴールデンレトリバーがいないことから、パトリシアを救った一割ではなく、理想送りで消された九割のネフテュスなのだと気づいた。彼女は傲岸で不遜な魔神そのものだった。
集う魔神達
上里の周囲には、娘々やネフテュスだけでなく、プロセルピナ、ヌァダ、無数の眼球や影のような魔神達がいた。実在しているのか、強すぎる存在感で上里の知覚が歪んでいるのかさえ分からないほどだった。理想送りも少女達も失った上里は、魔神達の圧に囲まれていた。
二つの末路
娘々は、魔神達が今の神域を受け入れている以上、上里翔流は不穏な台風の目だと告げた。彼がいる限り、この安寧が再びひっくり返される恐れがあるからだった。そのため、上里に残された道は、ここから立ち去るか、この場で死ぬかの二つだけだった。
神の提案
娘々は楽しげに、どちらが良いかと上里へ問いかけた。魔神達は、安寧を守るためなら上里に手を貸してもよいという態度を示していた。上里は、かつて自分が追放した魔神達の世界で、思いもよらない形の選択を突きつけられていた。
第二章 あるいは逃走こそ逆襲を得る Social_Network_Slayer.
公園からの離脱
上条当麻は、公園を出る前にウサギグレイの着ぐるみを脱ぎ捨てた。府蘭は名残惜しそうに反応したが、二人はスタッフ用の防寒コートや靴を拝借し、寒さをしのぎながら大通りへ出た。街には水着に防寒具を重ねた人々が少しずつ現れ、大熱波とエレメントが終わったかどうかを確かめようとしていた。
第五学区の学会
第五学区の大学構内には、避難所【学会】があった。そこでは掲示板に匿名の学説を貼り出し、優れたものを多数決で選んで方針を決めていたが、実際には見栄えの良い意見を書く常連が舵を握っていた。そのため、府蘭の宇宙ステーションと大熱波の真実は、極めて強い発言力を持つ情報として利用されていた。
冥亞の情報戦
避難所【学会】では、幽霊少女の冥亞がスフィアのマスターキーを使い、BOTによる連続投稿を仕込んでいた。彼女は府蘭を悪役に仕立て、避難所ごとの王を取り込んで発言力を広げようとしていた。織雛は早く標的を炙り出すよう求めたが、冥亞は反論してくる相手の癖を分析し、府蘭側の所在を探ろうとしていた。
織雛の焦燥
織雛は、何かに集中していないと頭がおかしくなりそうだと語った。府蘭に状況を引っかき回されることは許せず、上里翔流の命運は自分達が預かるべきだと考えていた。彼女達は、木原唯一の右手なしで事態が好転するとは思えず、その考えに縛られたまま動いていた。
府蘭の失敗
昼前、府蘭は波状攻撃に場当たり的に反論したことで、利用していたスフィアの位置を特定されたと気づいた。直接自分達の位置が割れたわけではなかったが、キー局となるスフィアを破壊されれば通信網から締め出され、さらに一時キャッシュからこれまでのメッセージを盗まれる危険があった。上条は、待ち合わせの情報が漏れる可能性に焦った。
正午の賭け
上条達は、スフィアを奪われる前にインデックスとオティヌスに会える可能性へ賭けるしかなかった。府蘭は失敗を認めて動揺し、上条とのやり取りで一時的に混乱したが、状況はすでに動いてしまっていた。二人は、昼の一二時に第七学区駅前広場へ向かうしかなかった。
木原唯一の食事
窓のないビル直下では、木原唯一が空腹を口にし、避難所【博愛】へ向かった。そこは人に施しを与えるほど発言力が高まる避難所で、逆に親切を受ける側になると立場が下がる歪んだ仕組みを持っていた。唯一はその構造を面白がり、去鳴達を従えて食事を求めた。
去鳴への嫌がらせ
木原唯一は、煮えたぎる寸胴鍋に上里翔流の右手を突っ込もうとし、去鳴に止めさせた。その結果、去鳴は鍋ごと倒れ、熱いシチューを浴びて苦しむことになった。唯一は去鳴の頭を踏みつけ、群衆の怒りを誘うように避難所の料理を侮辱した。
番犬の去鳴
怒った避難所の人々が武器を持って迫ると、木原唯一は自分を守らなければ理想送りの右手ごと失われるかもしれないと去鳴を脅した。去鳴は上里を救う糸を守るため、群衆の中へ飛び込んだ。木原唯一はその背中を見て笑い、命令の半分は嫌がらせだが、もう半分には別の目的があると語った。
芽吹く極彩色
木原唯一は、上条当麻を殺せという命令も単なる嫌がらせだけではないと考えていた。少女達の中にある感情や混乱をさらに育て、毒々しいほど極彩色の花を咲かせることを望んでいた。去鳴は、上里勢力の仲間や敵である上条と府蘭さえ信じながら、木原唯一の悪意に利用され続けていた。
駅前広場の包囲
上条当麻と府蘭は、第七学区駅前広場へ向かったが、待ち合わせ時刻の五分前にはすでに旧上里勢力の少女達が配置されていた。中央には辿り屋の絵恋と狼少女の芽李がおり、外周には琉華や織雛、愛燐、燦泥、姪龍、瑛魅などの戦闘要員がいた。上条は強行突破を避け、インデックス達との直接合流を断念した。
専門家の引き抜き
インデックスとオティヌスは予定より早く広場に到着したが、旧上里勢力の包囲のため声をかけられなかった。上条は、彼女達と合流する代わりに、上里勢力の中から魔術に詳しい者を引き抜くことを決めた。府蘭は、海賊少女の琉華を候補として示した。
白い砂のかまくら
上条は白い砂の山を利用し、巡回中の琉華を背後から押さえ込んだ。琉華は外見年齢を変えて逃れようとしたが、上条は腰のカトラスを奪い、府蘭と連携して砂の中に作った小さな空間へ引きずり込んだ。白い砂は姿や匂いを隠す役割を果たし、芽李の嗅覚からも逃れられる可能性があった。
琉華の魔術
府蘭は、琉華がカリブ海の海賊とブードゥーの結びつきから成る魔術師だと説明した。琉華は門の神レグバ=アティボンを軸に、時間制御へ手を伸ばしており、外見年齢の変更や大魔術の準備時間を圧縮することができた。上条は、その時間に関わる力が理想送りの救出に繋がるかもしれないと考えた。
右手への依存
琉華は、木原唯一に従うことで上里翔流を助けているのだと主張した。理想送りの右手を守れば、いつか上里を呼び戻せるかもしれないと信じていたからである。上条は、上里が理想送りで誰かを取り戻せるとは一度も語っていないと指摘し、右手を守ることと上里を助けることは繋がっていないと断じた。
停滞の否定
上条は、木原唯一に従っていればこれ以上悪化しないという考えも否定した。待っていれば状況が良くなるわけではなく、木原唯一は少女達の弱点を把握し、さらに足場を固めていく可能性があった。府蘭も、疲弊の度合いと実際の成果は同じではないと告げ、琉華の停滞を揺さぶった。
琉華の海
それでも琉華は、上条を信じる理由がないと拒んだ。上条は、自分達には何もできないからこそ、琉華自身の魔術で上里を助けるのだと訴えた。追い詰められた琉華は、灰色の街とは違い、水平線の向こうに誰かが待っている海が好きだったと語った。彼女の絵に込めた魂を見抜いたのは、上里だけだった。
豊山琉華の選択
琉華は、本当に自分の手で上里を連れ戻せるのかと尋ねた。具体的な方法はまだなかったが、上条は琉華が本気で望むなら必ずできると断言した。琉華はカトラスを受け取り、自分を豊山琉華と名乗り直した。そして上条と握手を交わし、吐いた唾を呑めば殺すという条件だけを示して、共闘を選んだ。
白い砂の拠点
上条当麻達は駅前広場を離れ、白い砂の山を掘ったかまくらの中に身を潜めていた。絵恋の辿りや芽季の嗅覚は、白い砂を使うことで誤魔化せているようだった。琉華は安全な隠れ場所に驚きつつも、上里翔流を救うには自分一人の知識だけでは足りないと前置きした。
類感の概念
琉華は、別の世界へ干渉するには類感の概念が必要だと説明した。魔術では、似た形の物品同士が互いに影響を及ぼすと考えられており、こっちの世界とあっちの世界に似た目印を用意すれば、そこを軸にトンネルを開ける可能性があるのだった。ただし、あっち側へ目印を送る手段がないため、車内に鍵を閉じ込めたような難題でもあった。
A.A.A.の目印
府蘭は、木原唯一の右手を使えば片道で物品を送れる可能性を示したが、琉華はそれが現実的ではないと否定した。そこで上条は、理想送りで飛ばされたオリジナルのA.A.A.に注目した。ゴールデンレトリバーが持っていたA.A.A.があっち側にあるなら、こっち側に残るA.A.A.の残骸や部品を目印にできるかもしれないと考えた。
常盤台中学への方針
上条は、御坂美琴がオリジナルのA.A.A.の残骸やスペアパーツを保管している可能性に賭け、常盤台中学へ向かうことを提案した。常盤台中学は木原唯一が引き入れたエレメントに壊滅させられていたが、御坂達の行方やA.A.A.の手がかりが残っているかもしれなかった。三人は高架下を通り、冥亞の上空監視を避けながら進むことにした。
白い砂の不快感
高架下を進む途中、府蘭と琉華は水着の中に白い砂が入り込んでいることに耐えられなくなった。水道はまだ使えず、二人は清掃業者のワゴンから道具を拝借し、粘着ローラーや消毒用アルコールで砂を取ろうとした。しかし強いアルコールを浴びるように使ったため、二人は酔ったような状態になり、上条は介護する羽目になった。
高架から降る人々
酔った府蘭と琉華を支えながら進んでいた上条の目の前に、高架の上から人が次々と落ちてきた。上条は二人を高架下へ引き込み、最初に落ちてきた少女を助けた。その少女はバックダンサーだと断片的に語り、高架上では人々が大型ディスカウントストアへワイヤーで飛び込もうとしていた。
氷河期のデマ
高架上の人々は、スフィアに流れた情報を信じ、間もなく氷河期が来ると思い込んで防寒具を奪おうとしていた。大熱波の後に急激な寒さが来たことを、太陽活動の異常や氷河期の前兆と結びつけられていたのである。上条は、情報によって人々が命を危険にさらしている現実を知った。
冥亞の波状攻撃
第五学区の避難所【学会】では、冥亞がスフィアを使って太陽風と氷河期のデマを拡散していた。府蘭への疑惑と氷河期への恐怖は矛盾せず並び立つと考え、複数の避難所を巻き込んで同じ情報を別々の発信源から届くように見せていた。冥亞は、人々が多方向から肯定される情報に弱いことを利用していた。
撒き餌の火種
冥亞の目的は、情報網の支配そのものではなかった。二三の学区全てに火種を撒き、上条当麻と烏丸府蘭を炙り出すこと、そして姿を消した豊山琉華の真意を見極めることが狙いだった。府蘭が混乱を渡るために得意技を使えば、その目撃情報を拾えると見越し、冥亞はさらに網を広げていた。
高架下の救助
高架から次々に人が落ちてくる中、上条当麻は全員を救えないと分かっていても、可能な限り高架下へ引きずり込んだ。彼らは避難所【芸能】の人間であり、氷河期のデマを信じて防寒具を求め、大型店へ無理に侵入しようとしていた。府蘭の通信は断線しており、上条は新たなスフィアを奪ってデマを止めるしかないと判断した。
営巣部隊の緊急措置
営巣部隊のハーフトラックは氷河期の情報に科学的根拠はないと放送したが、直後に緊急措置へ移行した。高圧放水とヘリから落とされる水の塊によって、高架上の【芸能】の少年少女達は次々に吹き飛ばされていった。上条は、秩序回復を名目に人命を軽視するやり方を見過ごせず、高架上へ向かった。
王への接近
高架上は放水と空からの攻撃で混乱しており、上条はその中を進んで【芸能】の王を探した。氷河期のデマを叫ぶフィギュア衣装の少女を押さえ込み、彼女が王ではないと知ると、本当の王の位置を指差させた。示された先には、金刺繍の海軍コートをまとった男装の麗人がいた。
放水と能力
上条は男装の麗人へ向かったが、正義感に駆られた少年に妨害され、さらに高圧放水に巻き込まれた。男装の麗人は風か衝撃波のような能力で上条を浮かせ、そこへ放水が直撃した。上条は中央分離帯に叩きつけられ、満身創痍になりながらも、鍵を手に入れてデマを打ち消さなければならないと手を伸ばした。
御坂美琴の放電
その直後、青白い紫電が炸裂し、ヘリやハーフトラックが次々に沈黙した。上条は電撃の正体を御坂美琴だと察し、濡れた路面に右手を押しつけて高圧電流を幻想殺しで逃れた。放電は高架全体を走り、【芸能】の少年少女達を一撃で昏倒させた。
壊される高架
美琴は混乱を止めた後も、さらに超電磁砲で高架道路を砕き始めた。昏倒した少年少女を巻き込む危険があるにもかかわらず攻撃を続ける美琴に、上条は違和感を覚えた。上条は高架から白い砂の山へ飛び降り、紫電を纏う美琴へ近づいた。
常盤台の傷
上条は美琴を抱き止めて攻撃を止めようとした。美琴は、上条がいなかった間に常盤台中学で起きた出来事を語った。木原唯一とエレメントを退けた後、助けを待つ常盤台の生徒達をよそに、一般市民が崩れた学舎の園を宝の山だと言って物資を奪いに来たのだった。
形のない怪物
美琴は、自分が常盤台を守り、外まで巡回して人を助けてきたにもかかわらず、顔も名前も知らない人々から怠慢だと責められたことに傷ついていた。彼女が憎んでいたのは特定の個人ではなく、災害時に膨れ上がる群衆の際限ない欲望と悪意だった。上条は、その怪物には形がなくても、秩序が戻れば必ず倒せると告げた。
御坂への協力要請
上条は、旧上里勢力がスフィアを使って街の悪意を操り、上条達を炙り出そうとしていることを理解した。上里翔流の救出、木原唯一に縛られた少女達、街を覆う悪意は別々ではなく繋がっていた。上条は美琴に協力を求め、全てを元に戻すと誓った。
芸能のスフィア
上条当麻達は【芸能】の王から鍵を借り、避難所となっていた大型フィットネスジムへ向かった。府蘭はスフィアを新たなキー局として中継できるように設定し、冥亞が大熱波の原因と氷河期のデマを併走させている状況を確認した。美琴は府蘭が大熱波を起こした本人だと知って激昂したが、上条は木原唯一のエレメントを抑えるためだったと説明し、どうにか落ち着かせた。
病院の地方局
府蘭は冥亞に対抗するため、もう一つスフィアの権限が必要だと考えた。美琴の案内で上条達は病院へ向かい、そこが常盤台中学の生徒達の避難先になっていることを知った。病院の駐車場ではお嬢様達が段ボールやビニールシートで家屋を作り、温かい食事を用意していた。
カエル顔の医者
上条達はカエル顔の医者にスフィアについて尋ねた。医者はスフィアを重要視しておらず、病院ではほとんど使っていなかったため、鍵をあっさり貸してくれた。府蘭は中庭に置かれたスフィアへアクセスし、病院を地方局として確保した。
悪意への反撃準備
府蘭は、これで二ヵ所同時にスフィアを動かせるようになったと説明した。ただし冥亞側は少なく見積もっても一五以上のスフィアを掌握しており、数では圧倒的に不利だった。それでも上条達は、氷河期のデマを少しずつ別の話へねじり、拡散の勢いを削る準備を進めた。
A.A.A.の所在
上条は、スフィアへの対抗だけでなく上里翔流救出の本題に戻る必要があると判断した。美琴にオリジナルのA.A.A.の所在を尋ねると、美琴は第一一学区の物流基地にある廃棄用コンテナに隠していると答えた。木原唯一との戦いの夜、冷凍倉庫に偽装された火薬庫で見つけたサンプルパーツだった。
第一一学区のコンテナ
夜八時を過ぎてから、上条達は第一一学区へ向かった。そこは物流基地で、再利用できない廃棄物を外部の処分場へ送るためのコンテナが山積みになっていた。美琴は磁力を使ってコンテナの山を登り、偽装して保管していた扉を開けた。
禍々しい機械群
コンテナの中には、分解されたオリジナルA.A.A.の部品が収められていた。上条はそれを見ただけで、人殺しの兵器が持つ独特の忌避感を覚えた。美琴がこれを参考に自分のA.A.A.を作ったことに、上条は助けられた事実を認めながらも、危うい匂いを感じていた。
魔術の核
琉華はA.A.A.を調べ、科学の皮を被っているが中核は魔術だと見抜いた。そこには遠方から力を導くエネルギー転送装置のような性質があり、上里を引きずり出すためのトンネル作りに必要な仕組みが半分以上そろっていると判断した。美琴はブラックボックス部分を理解せず複製しただけだと戸惑った。
美琴への負荷
上条は、A.A.A.の核が魔術なら、能力者である美琴が使ってきたことで副作用が出ていたのではないかと気づいた。琉華は、すでに受け入れられている美琴が起動するのが安全だと考えたが、上条は危険を知ったうえで美琴に任せてよいのか迷った。美琴は何も知らないままA.A.A.へ手を伸ばした。
落雷のような反応
上条は止めようとしたが間に合わなかった。美琴が部品に触れた直後、彼女の全身は落雷を浴びたように大きく跳ねた。上里翔流を救うための手がかりは見え始めたが、その代償として美琴自身に危険が及び始めていた。
A.A.A.の反応
美琴がA.A.A.に触れた瞬間、上条当麻の感覚は引き延ばされ、彼女の口から血が溢れた。美琴は何が起きたのか分からないまま倒れ、体を大きく痙攣させた。上条は右手で助けようとしたが、琉華はそれを止め、美琴自身も右手で触れるなと制止していた。
外からの呪詛
琉華は、美琴を襲っているのはA.A.A.そのものではなく、外から打ち込まれた呪詛だと見抜いた。A.A.A.の組成と呪詛の組成はよく似ており、同じ作者によるものだと考えられた。琉華は二つを照らし合わせれば、A.A.A.を紐解く答えが見つかるかもしれないと判断した。
アブラ・クアタブラ
銀髪に緑の手術衣をまとったアレイスターは、この瞬間を待っていた。木原唯一が上里翔流を仕留めた以上、計画成就のためにもう片方へ手を下すだけだった。アレイスターは、呪詛返しの護符に使われるアブラ・クアタブラを湾曲させ、世界中に漂う呪詛を利用して美琴へ向け直した。
雷光を与える呪い
アレイスターは自ら魔力を練る必要すらなく、飛び交う呪詛の向きを変えるだけで攻撃を成立させていた。その呪詛返しの陣には、汝の死に雷光を与えよ、という意味が込められていた。最強の発電能力者である美琴に対して、あまりにも皮肉な攻撃だった。
美琴の制止
上条は、美琴を犠牲にしてA.A.A.を解析するやり方を認められず、すべてを壊そうとした。しかし倒れた美琴は、残る力で自分の右手を抑え込み、上条を制止した。彼女は、形のない悪意の塊を倒すと上条が言ったなら、自分を踏み台にして先へ進めと告げた。
約束の重さ
美琴は、自分だけでなく他の少女達にも呪縛が残っていると訴えた。上条に解いてもらった自分のように、表面では笑っていても心の奥で苦しむ子達がいるはずだった。だから美琴は、上条に悪意の塊を倒し、学園都市にいて良かったと思える何かを示してほしいと願った。
踏み越えられない拳
上条は、美琴の努力を感情で否定して台無しにすることはできなかった。だが、彼女が再び体の制御を失い、弱っていくのを見ていることしかできなかった。琉華は全力で呪詛を解析し、上条は待つしかない時間に歯を食いしばった。
届かない幻想殺し
やがて琉華の腕の力が緩み、上条は美琴の腹へ右手を押し当てた。しかし反応はなく、呪詛が切れたかどうかも分からなかった。上条は、上里を見送った時と同じように、最善という言葉に押し潰されて何もできなかったことを痛感し、動かない美琴を抱き寄せて叫んだ。
行間 二
片手の不便
上里翔流は、右手を失ったことで食事や着替えのような日常動作にも不便を感じていた。隔絶された世界では物を壊すことはできたが、向こうの世界には影響せず、午前〇時を基準に向こうの状態へ作り直される仕組みだった。積み重ねが残らない世界で、上里はこれから腐るほど考える時間があるのだと受け止めていた。
娘々の指摘
娘々は、元の世界へ戻ることを上里が本気で望んでいないように見抜いた。彼は自分の物語がすでに終わったと考え、帰還の可能性にも食いつこうとしていなかった。娘々は、人は死んでも影響を残すと告げ、上里が綺麗に去ったつもりでも、向こうの世界では大きな混乱が起きているかもしれないと示唆した。
ヌァダの第二ラウンド
そこへ魔神ヌァダが現れ、第二ラウンドを始めたいと告げた。ヌァダは、娘々とネフテュスが上里にわずかな中身を与えたことで、今なら潰し甲斐があると考えていた。報復や罰を望む魔神達の視線が集まる中、娘々とネフテュスは、上里の命運を握らされると神様は張り切ると笑い、ヌァダに立ち向かった。
魔神達の戦場
ヌァダは巨大な賽や円盤を放ち、それらは無数の白い蟲で構成されていた。娘々はチェーンソーや武具を展開し、爆炎と斬撃で蟲の海を焼き払い、切り裂いた。上里は、神同士の戦いが人間の理解を超えた規模で進んでいく様を見せつけられた。
人工氷河期の神罰
さらにプロセルピナによる神罰として、世界全土をマイナス六〇度の雪と氷で覆う人工氷河期が迫った。人間である上里には到底耐えられない災厄だったが、娘々とネフテュスは窓のないビルを利用することを選んだ。上里がロケットブースターを消した代わりに、娘々は自らの爆炎で窓のないビルを押し上げ、地表の破滅から逃れた。
窓のないビルの発射
娘々とネフテュスは、上里を抱えたまま窓のないビルの側面に立ち、重力を無視して発射させた。上里は空気摩擦や慣性に潰されることなく、魔神の加護によって普通に呼吸しながら宇宙へ向かっていた。ネフテュスは、理想送りを失ったからこそ自分達の支援を受けられる場合もあると語った。
テスカトリポカの狙撃
宇宙へ向かう途中、軌道上から閃光の槍が落ちてきた。娘々はそれをテスカトリポカの攻撃だと見抜き、次々に降る閃光をロケットの軌道をうねらせて避け続けた。上里が地上を見ると、青い惑星は一面白く凍りつき、天の槍による爆発で世界地図さえ変わりかねない有り様になっていた。
神々の規模
上里は、魔神達の戦いが惑星一つで済んでいることすら幸運と見るべき規模なのだと理解した。理想送りで隔絶された時系列でなければ、人類は何度滅んでいたか分からなかった。上里は、こんなものをどうするのかと呆然とし、娘々は急いで進めていると返した。
第三章 あるいは孤独こそ集団に勝る Engage_U.F.O.
冥亞の深夜作業
午前〇時を過ぎても、冥亞は第五学区の避難所【学会】でスフィアから離れず、情報戦を続けていた。上条当麻と烏丸府蘭を追い詰めるため、複数の避難所を使ってデマを流し、二人が特殊な手段で切り抜けようとした痕跡を探していた。冥亞は噂が変化していく様子に執着し、自分の手で育てるように操作していた。
仮想現実説
冥亞は、大熱波もエレメントも学園都市上層部による大規模な仮想現実プロジェクトだったという噂に注目した。その説は、被害を現実として受け止めずに済む点や、学園都市ならやりかねないという空気と結びつき、根強く残っていた。冥亞は、それが府蘭側の一手かもしれないと考えながらも、悪玉化させれば炙り出しに使えると見た。
営巣部隊の武器回収
冥亞が次の手を打とうとした直後、営巣部隊が【学会】へ現れた。彼らは秩序回復の一環として銃刀類や危険物の回収を宣言し、巨大送風機で大学校舎をめくり上げるように破壊した。冥亞は香炉ごと上空へ吹き飛ばされ、キー局として使っていたスフィアも空中へ舞い上がって落下していった。
冥亞の敵意
巨大送風機は風洞実験用の装置に近く、【学会】の手製の防衛兵器では対抗できなかった。冥亞は、自分の王国が瓦解するのを上空から見下ろしながら、営巣部隊が他のスフィアも破壊して回っている可能性を考えた。上里翔流に捧げる行為を妨げられたと判断した冥亞は、営巣部隊を敵として見据えた。
美琴を抱えた上条
一方、上条当麻は意識を失った美琴を抱え、府蘭と琉華と共に第一一学区を出ようとしていた。美琴の犠牲で上里救出の目途は立ったが、彼女を病院へ運ぶ必要があった。そこへ営巣部隊の巨大送風機による突風が近くの避難所を襲い、上条達も巻き込まれる危険にさらされた。
能力避難所の抵抗
襲われていた避難所の者達は、オイルやアルコールを詰めた水鉄砲と発火能力を組み合わせて抵抗していた。上条は、風を使う営巣部隊に対して火炎放射は逆効果になりかねないと見抜いた。彼は避難所の少年を止め、妹を守りたいなら仲間を助けるために今は逃げろと促した。
きれいな敗北
上条は、避難所を勝たせるのではなく、きれいに負けさせて撤退させる方が命を守れると考えた。営巣部隊が武器を狩っているなら、琉華の火薬を使って銃声のような囮を作り、注意をそちらへ引けると判断した。琉華も火種が周囲にあるなら可能だと応じ、方針が決まった。
A.A.A.の危機
その時、複数の輸送ヘリが巨大な円筒機材を吊り下げ、第一学区の方へ向かうのが見えた。営巣部隊が過剰な武器の回収を進めている以上、A.A.A.も没収され、破壊される可能性が高かった。上条は、放っておけば上里救出の鍵まで失われると悟った。
顔なき誰かの対話
凍える月夜の屋上で、作業服の男が統括理事長と向き合っていた。男は、自分を顔なき民意の代表と位置づけ、学園都市の災害を予測しながら見逃した統括理事長の怠慢を罪だと告げた。災害を見送らない指導者を求めるだけだと語り、凡人の一滴が偉人の作る世界に亀裂を入れるのだと示した。
ブレスオブブレッシング
男は、大型送風機ブレスオブブレッシングを、災害時の防災研究を名目にした過剰な備品だと見ていた。災害下では武装せざるを得ないという迷信を手放すために、アレイスターのような存在と戦っているのだと語った。言い終えた男はアレイスターに始末され、顔なき誰かとして倒れた。
能力避難所の脱出
上条当麻達は、琉華の黒色火薬を使った囮で営巣部隊の注意を引き、【能力】の避難所の人々を逃がすことに成功した。ただし大型送風機は第一一学区へ運ばれてしまい、A.A.A.のあるコンテナヤードは封鎖される可能性が高まった。上条は、営巣部隊の本拠地を叩いて守備を引き下がらせるしかないと考えた。
病院への帰還
上条達は、意識を失った美琴を抱えて病院へ戻った。道中では営巣部隊による武器回収が各地で続き、住民達の拠点が巨大送風機で壊されていく光景を何度も目にした。上条は全てを救えないと分かりながらも、逃げ道を示す程度の手助けを続けた。
本拠地の特定
病院で美琴をカエル顔の医者に預けた後、府蘭は各避難所から集めた輸送ヘリの目撃情報を地図上にまとめた。線の中心は第二一学区の山岳地帯にある気象台であり、そこが営巣部隊の本拠地だと分かった。上条達は、そこへ時限爆弾を仕掛け、第一一学区の戦力を引き戻す作戦を立てた。
カートでの移動
朝になると、営巣部隊は復旧支援として五〇ccのカートを市民に貸し出していた。上条達は敵の用意した交通手段を利用し、三人で窮屈に乗り込んで第二一学区へ向かった。復旧の兆しは見え始めていたが、上里救出の鍵であるA.A.A.を放置できないため、戦いは避けられなかった。
山岳地帯の気象台
上条達は途中から徒歩に切り替え、山頂近くの気象台へ向かった。府蘭をおぶりながら山道を進み、巨大なレーダードームを備えた施設を確認した。琉華は敷地外周の小屋やタンクに狙いをつけ、人がいない場所を爆破して敵襲と誤認させる方針を決めた。
プロパン基地の罠
府蘭のUFOバルーンで運んでいた手製爆弾を使い、琉華はプロパンボンベの小屋へ爆弾を仕掛けようとした。しかし外の警備が急に慌ただしくなり、三人は小屋に閉じ込められたうえ、爆弾が側溝へ落ちて回収不能になった。残り時間は二時間半ほどで、外へ出れば営巣部隊に見つかる状況だった。
見えないガスの賭け
上条は、プロパンが空気より重いことを利用し、ボンベのガスを扉の隙間から外へ流して敵のいる方へ送り込む案を出した。散布状況は見えず、自爆の危険もあったが、このままなら確実に爆死するだけだった。三人はボンベを扉近くへ動かし、一定時間ガスを流した後、琉華のマスケット銃で火花を起こす準備をした。
冥亞の襲撃
琉華が撃つ直前、別の爆発が起き、三人は小屋の中で吹き飛ばされた。爆発の原因はプロパンではなく、施設の奥の建物が攻撃されたことだった。外では冥亞らしき未確認飛行物体が構造物を破壊しており、上条達が隠れていたプロパン基地にも塊が落ちた。大量のガスボンベと爆弾が誘爆し、上条は爆風で大きく吹き飛ばされた。
旧上里勢力の襲撃
絵恋や冥亞達は、最初から第二一学区の気象台を狙っていたわけではなかった。学園都市各地の営巣部隊の拠点を襲い、撤退する部隊を追跡することで本拠地を突き止めていた。空中戦力、砲撃役、突撃役が連動し、気象台周辺の防衛を一気に崩していった。
営巣部隊との全面衝突
旧上里勢力は、営巣部隊がスフィアを破壊し、上条当麻と烏丸府蘭の捜索を妨げたことを敵対行為と見なしていた。冥亞はスフィアを情報戦に使うため、営巣部隊を排除すべき相手と判断した。気象台では旧上里勢力と営巣部隊が衝突し、巨大送風機やヘリ、重火器まで動員される激戦になった。
地下格納庫への落下
爆発の衝撃で地面が崩れ、上条達は気象台地下の巨大な格納庫へ落ちた。そこにはハーフトラック、輸送ヘリ、大型送風機など、営巣部隊の兵器が並んでいた。上条は爆発を警告して男達の注意を逸らし、琉華は肉体年齢を変えながらカトラスとマスケット銃を鈍器のように使い、男達を倒した。
絵恋の疑念
地下を移動する上条達のもとへ、絵恋の通信が入った。絵恋は、府蘭が最初から上里翔流の呪縛に囚われず、琉華を的確に引き抜けた理由に疑問を持っていた。さらに府蘭がUFO少女ではなく、星や光を扱う黄金系の魔術師であり、イギリス清教から上里を監視するために送り込まれたのではないかと突きつけた。
府蘭への告発
絵恋は、府蘭が上里を学園都市へ導き、鎖仁や恋因を動かし、結果として上里を失わせた破壊因子だと責めた。府蘭は反論できず、生気を失ったようにうなだれた。琉華も、その告発が府蘭の言動と妙に噛み合っていることに衝撃を受けた。
上条の叱咤
上条は府蘭に、言いたいことがあるなら自分の口で言えと叱咤した。書類上の所属や役職ではなく、実際に上里と出会い、絵恋や去鳴と笑い合った中で府蘭が何を感じたかこそが本物だと告げた。府蘭がずっと上里を取り戻すために命を張ってきた事実は、誰も裏切っていない証明だった。
府蘭の告白
府蘭は自分の運命は自分で決めると立ち上がり、スフィアの広域ネットワークに接続した。そして大熱波が自分の責任であること、罰を受ける義務があること、それでも好きな人を助けたいことを学園都市中へ告白した。彼女は、上里への恋が成就しないと分かっていても、もう一度彼の笑顔が見たいと語った。
全域を染める真実
府蘭の告白は、各地の避難所に届いた。王達も横槍を入れず、スフィアは次々と彼女の放送を流した。冥亞が育てていた噂は一気に時代遅れとなり、学園都市全域が府蘭の言葉で染め替えられていった。
UFO少女の卒業
冥亞は自分の情報戦が崩れたことを悟り、府蘭への怒りを露わにした。しかし府蘭は、銀河間通信ステーションを使い、冥亞の存在を支える香炉を狙った。全長三六〇メートルの鉄槌のような一撃が気象台へ落ち、府蘭は星空を眺めるだけのUFO少女を卒業し、地に足を着けて戦う者となった。
行間 三
白い惑星
上里翔流は、窓のないビルで大気圏を抜けた後、テスカトリポカと軌道速度を合わせるまで地球を一周していた。地球はプロセルピナの人工氷河期で白い惑星となり、さらにヌァダの蟲が巨大なルーレット盤のように渦を巻いていた。娘々は、闇に覆われた地球を戻すため、太陽神でもあるテスカトリポカを新たな光として地表へ叩き落とした。
希望の光
テスカトリポカは流星のように地球へ落ち、白熱電球のような光で惑星全体を照らした。極端な寒暖が混ざり、地球は青い姿を取り戻し始めたが、上里は魔神達が何度でも地球を壊すような戦いを続けることに恐怖を覚えた。娘々達にとっては、周囲を気にせず全力を出せる世界も理想郷の一つだった。
キメラの美
地上へ戻った上里達の前に、キメラが現れた。人間には直視するだけで魂を焼かれるほどの美を持つ魔神であり、声や匂いでさえ発狂を招きかねない存在だった。上里は極彩色の視界と吐き気に苦しみ、娘々とネフテュスに引かれて地下鉄トンネルへ逃げ込んだ。
A.A.A.の残骸
崩れかけた地下鉄トンネルで、上里はA.A.A.の残骸を見つけた。娘々は、A.A.A.が現場の機体に弾を収めるのではなく、遠方から破壊力を転送して残弾を維持する仕組みだと説明した。木原脳幹は現場で戦っていたが、実際の火力を供給していたのは後方支援の誰かでもあった。
忘れられた神
トンネルの闇から、忘れられた神が襲いかかってきた。娘々は無数の刃で迎撃し、上里には見えない攻防の中で火花だけが散った。魔神達は次々と集まっており、娘々とネフテュスは、自分達だけでは上里を救えないため、向こう側から引き上げてもらうしかないと告げた。
理想送りの適合者
娘々は、魔神達から洩れた願望が理想送りとなり、上里翔流を選んだ理由を語った。上条当麻が理想送りを持つ可能性はなく、上里には誰かを応援したくなる心や、現実に押し潰される夢を許せない心があった。娘々は、どこにでもいる平凡な高校生など本当はどこにもいないことを、上里自身が誰より知っていたのではないかと突きつけた。
輝かない才能
上里は、特別な自分など学校で少し自慢できる程度で良かったと吐露した。彼が望んだのは、誰かと共有できる小さな話題や、穏やかな日常の中で役に立つ個性だった。だが実際には、魔神を殺すような血みどろの場面でしか輝かない力であり、その偉業を誰にも話せないことに意味を見いだせず苦しんでいた。
罪悪感のない殺害
上里は、魔神達を殺してきたことに罪悪感を抱けなかったと告白した。求められるままに手を振るい、周囲に褒められるほど距離を感じ、去鳴に糾弾された時には心臓が縮む思いだった。娘々は、それだけ聞ければ殺される価値はあったと満足し、上里にこのまま異形の世界で輝くか、人間の世界へ戻って埋没するかを問うた。
ありふれた世界への挑戦
上里は、何もない人生になり、人を羨んで生きることになると分かっていた。それでも、ありふれた世界の中で輝ける自分に何度でも挑戦したいと答えた。娘々とネフテュスは、その不完全でみっともない本音にこそ心を動かされ、本気で泣けると受け止めた。
第四章 あるいは禁忌こそ安寧を掴む Salvage_XXX.
府蘭の一撃
府蘭のステーション落着は、地表へどれほどの被害を与えたか上条当麻には分からないほどの規模だった。上条はやり過ぎだと叫び、琉華も想定していた胸を貸すとは違うと震えていた。三人は崩れた地下格納庫から出口を探し、歪んだ扉と鋼鉄の階段を通って地上へ戻った。
峠道の逃走
地上はすでに暗くなっており、山頂周辺には天文台やステーションの残骸が散らばっていた。琉華は瓦礫の中から営巣部隊の小型カートを見つけ、三人はそれに乗って峠道を下り始めた。だが山頂から追跡が始まり、上条達は激しく加速するカートで逃げることになった。
芽李の襲撃
真っ赤なドレスをまとった人狼少女の芽李が、斜面を滑り降りてカートに襲いかかった。府蘭はリュックから抜いたアンテナロッドで芽李の横っ面を叩き、上条への直撃を防いだ。芽李は路上を転がってもすぐに起き上がり、四肢で地を蹴って再び追いかけてきた。
巨大化した冥亞
さらに冥亞が見上げるほど巨大な姿で現れ、山の斜面を蹴り砕いた。府蘭は香炉を潰したはずだと驚いたが、琉華は冥亞が食事や匂いを調整し、自分の体臭そのものを香炉の代わりにしていると説明した。冥亞は弱点不在の怨霊のような状態になっており、岩盤を砕いて上条達へ大量の岩を降らせた。
街中の百鬼夜行
上条達は山を下り、学園都市の街中へ突入した。追ってくる旧上里勢力は、人狼、魔法少女、甲冑少女、氷を滑る幼な妻、一〇円玉の群れ、巨大な怨霊などが入り乱れ、ほとんど百鬼夜行のようだった。中でも辿り屋の絵恋は、追跡と照準補助の要となる危険な存在だった。
上条の分断
府蘭と琉華が上里救出に集中できるよう、上条は絵恋を引き受ける覚悟を決めた。横から突っ込んできた巨大なスクールバスに自ら飛び移り、運転手を押さえてハンドルを乱し、車体を横転させた。その混乱で甲冑少女や芽李の動きを乱し、上条はさらにリカンベント自転車を奪って絵恋へ迫った。
辿り屋への接近
上条は競技用のリカンベントで、カラクリ細工の大トカゲに相乗りする絵恋を追った。府蘭は妨害電波で絵恋と冥亞の連携を乱し、上条は大トカゲの尻尾に弾き飛ばされながらも、右手の幻想殺しでその機械を分解した。上条と絵恋は白い砂の山へ投げ出され、互いに傷だらけで立ち上がった。
府蘭の償い
絵恋は、府蘭が上里翔流を誘導しなければ今の事態は起きなかったと責めた。上条は、それならなおさら府蘭には償う機会が必要だと返した。府蘭は仲間になりたくてもなれなかったが、旧上里勢力と笑い合い、上里を取り戻すために本気で戦ってきたのだと上条は言い切った。
有村絵恋
絵恋は、上条が上里に似ているようで中身は違うと告げた。戦闘向きではないはずの彼女も、上里への想いを振り切れず、一歩も退かなかった。絵恋は有村絵恋として推して参ると名乗り、上条も手加減を捨てて一撃で応じた。
絵恋の排除
上条当麻は倒れた絵恋を見つめていたが、府蘭と琉華のカートが戻ってきたため再び乗り込んだ。絵恋を排除しても危機は終わらず、冥亞を中心とした旧上里勢力はなお追跡していた。琉華は、追っ手を完全に振り切るのではなく、街中を走り回る間に儀式そのものを完成させる準備を進めていたのだった。
火薬の軌跡
絵恋は琉華の黒色火薬の匂いを追っていたが、それが偶然漏れたものではなく、意図的に撒かれていたことには気づいていなかった。琉華は第一一学区のコンテナヤードに入ると、マスケット銃の火花で地面の火薬へ着火した。炎は街中に描かれた線を走り、変則的な六芒星を浮かび上がらせた。
魔術儀式の開始
琉華と府蘭は、海賊とブードゥー、妖星と凶星の知識を重ね合わせ、コンテナヤード全体を儀式場へ変えていった。火薬で描いた魔法陣とA.A.A.を対応させ、二つの世界を結ぶ共振を起こそうとしていた。上条には全体像は見えなかったが、何かが変わり、世界に上里翔流の名を刻み直していく感覚だけは伝わっていた。
上里への願い
その場にいた誰もが、上里翔流に帰ってきてほしいと願っていた。しかし冥亞や織雛達は、信頼できない相手に一度きりの機会を使わせることを認められなかった。織雛は冥亞に指示し、儀式の中で最も目立っていたA.A.A.を破壊させようとした。
砕かれたA.A.A.
巨大化した冥亞の拳が振り抜かれ、A.A.A.を収めたコンテナの山は吹き飛ばされた。共振の要となる記号は砕け散り、落下するコンテナの中でカートも横転した。上条達は投げ出され、府蘭も琉華も倒れ、儀式は失敗したように見えた。
失われた希望
上条は、上里の姿がどこにも現れていないことから、儀式が成功していないと悟った。A.A.A.は唯一の共通項であり、これを失えば上里を取り戻す手がかりはもうないように思えた。誰も上里を嫌っておらず、誰もが彼のために戦ったのに、結果だけが最悪の形で残った。
もう一つの共通項
絶望の中で、上条は自分が関わった出来事を思い返した。二つの世界にまたがる共通物質は、オリジナルのA.A.A.だけではなかった。消えた上里を追い求めるなら、同じように消えた存在も思考に戻してよいはずだった。
ネフテュスの存在
上条は、まだ希望は断たれていないと府蘭に告げた。魔神ネフテュスは、事前に消された九割と、パトリシア=バードウェイの体を再構築した一割に分かれていた。つまりネフテュスこそが、こっちと向こうの両方にまたがる強力な魔術的記号になり得る存在だった。
ネフテュスの希望
上条当麻がネフテュスの存在を示したことで、府蘭と琉華は再び立ち上がった。A.A.A.とは異なる記号であっても、葬送にまつわるネフテュスなら六芒星との共振を狙える可能性があった。上条達は、第七学区の病院にいるパトリシアのもとへ向かう必要があると判断した。
営巣部隊のヘリ
移動手段を失った上条達の前に、営巣部隊の輸送ヘリが現れた。彼らは上条達の残した、本気で解決する気があるなら協力しろというメモと、府蘭の告白を受けて行動していた。営巣部隊は学園都市の復旧を最優先し、上里翔流の生還が混乱収束に繋がるなら協力すると決めていた。
府蘭の宣戦布告
府蘭は、上里の未来を諦めないと冥亞へ言い返した。たとえ自分の想いが実らず、もう二度と上里と交われないとしても、彼のためになることはできると貫いた。上条も、追っ手を振り切って黙らせなければ街の混乱は終わらないと覚悟を固めた。
空の追撃
輸送ヘリは第七学区の病院へ向かったが、織雛や暮亞が空から追撃してきた。織雛はジェットエンジン付きのステッキで飛び、暮亞は植物で作った偽装A.A.A.をまとってヘリを貫こうとした。上条は高度を下げてビルの壁際を飛ばせ、建物や高架を盾にして二人の突撃を乱した。
巨大な冥亞
低空飛行で逃げる上条達の前に、冥亞が巨大な人魂のように回り込み、死に装束の少女の姿へ変わった。府蘭は、上里の呪縛を引き千切り、自分達が自分の意思で離れたり近づいたりできることを彼に教えるのだと叫んだ。彼女は、自分の恋の終わりだけは冥亞に邪魔させないと宣言した。
ミントの農業ビル
上条は、冥亞が匂いで自分の姿を維持していることに着目した。彼は窓のない農業ビルの表記から、そこがミント系の作物を扱う建物だと見抜いた。重機関銃で壁を撃ち抜かせ、枯れていても濃密なミントの匂いを外へ散らすことで、冥亞の整えた匂いのバランスを崩そうとした。
崩れる怨霊
ミントの匂いを吸い込んだ冥亞は、自分の存在を維持できなくなった。彼女は輪郭を崩しながらも、上里の運命を他人に委ねることを拒み、最後まで蹴りを放とうとした。しかし体は保たず、巨大な脚を失いながら倒れ込んだ。織雛と暮亞もその崩壊に巻き込まれ、追撃は止まった。
病院への突入
追っ手を振り切った輸送ヘリは、第七学区の病院へ向かった。上条は、かつてパトリシアが見えた窓の位置を思い出し、八階の右から一三番目だと示した。着陸する時間も惜しく、上条は府蘭と琉華へ、そのまま飛べと叫んだ。
病室への突入
外の騒ぎに気づいた金髪の少女が窓へ目を向けた直後、輸送ヘリが病院の窓ぎりぎりで急旋回した。命綱のない府蘭と琉華は慣性で投げ出され、二人そろって窓を突き破って病室へ転がり込んだ。
空の病室
起き上がった琉華は、そこに誰もいないことに戸惑った。だが府蘭は、上条当麻が部屋を間違えたのではなく、あえて隣室を選んだのだと考えた。パトリシアはすでに神秘と切り離せない存在になっていたが、それでも率先して巻き込む必要はないという配慮だった。
薄壁一枚の儀式場
府蘭と琉華は、薄い壁一枚越しなら隣室も儀式場に含められると判断した。A.A.A.ではなくネフテュスの残滓を扱う以上、細部の修正は必要だったが、儀式の大枠はすでに経験していた。二人はできると確信し、府蘭は琉華に礼を告げたうえで、この恋を終わらせようと宣言した。
木原唯一の終局
その知らせによって、窓のないビルの直下にいた木原唯一の運命も決まった。彼女を直衛していた少女達は、もはや命令に従う義理を失っていた。守りとして置かれていたはずの無数の異形と異能が、今度は木原唯一を取り囲む刃となった。
去鳴達の包囲
片腕の去鳴が木原唯一の前に立ち、同じような力を持つ少女達も距離を詰めた。木原唯一は捕食者の顎の中に立たされながらも、実験を終えたような顔で状況を受け入れた。彼女はこれでゲームセットだと呟いた。
行間 四
終わらない戦い
どこかの誰かは、もう行くのかと声をかけ、こちらは気にしなくてよいと告げた。残された者達は永劫に終わらない戦いを続けることになりそうだったが、それも楽しめるものだと受け入れていた。
呼ぶ声
別の誰かは、みんなが呼んでいると答えた。終わりのない世界に留まるのではなく、自分を待つ者達のもとへ向かう意思を示した。
終章 あるいは疑念こそ真理は宿る Bet_Time,Red_or_Black.
秩序回復の宣言
明け方、営巣部隊は秩序回復の四八時間を達成し、学園都市が戻ったと宣言した。避難所へ戻った上条当麻は、説明不足のままインデックスやオティヌスを振り回したことで噛みつかれていた。避難所の生徒達も外へ踏み出し、街は少しずつ日常へ戻り始めていた。
美琴との再会
上条は病院から出てきた常盤台中学の生徒達の中に御坂美琴を見つけた。彼は呪詛を受けた美琴の体調を心配し、近づいて熱を確かめようとしたが、美琴は動揺して電撃を放ってしまった。美琴は常盤台の復旧にA.A.A.の土木用アタッチメントを考えかけ、上条はそこに関連する違和感を思い出しかけた。
上里翔流の帰還
同じ頃、上里翔流も営巣部隊の宣言を聞いていた。街に電気が戻り、人々の歓声が広がる中、彼は自分以外の人間の息吹を感じていた。戻った直後は少女達に激しく迎えられ、殺されかけるほどだったが、今は彼女達が笑顔でそばにいた。
右手の扱い
上里は失った右手をどうするか考えていた。去鳴はクーラーボックスに右手を保管しており、上里は自分に縫い戻せばまた消し飛ばされるため、力を消す方法を探すしかないと考えた。それは、魔神への復讐だけを見ていた過去から離れようとする意思でもあった。
木原唯一の実験
木原唯一は、全人類を木原に近い思考へ変え、アレイスターの原形制御を無効化する偉業を目指していた。上里の少女達を恐怖で縛り、恐怖から生まれる行動パターンを広げることも、その実験の一部だった。勝利も敗北もなく、少女達の残虐性を引き出すこと自体が彼女の目的に繋がっていた。
上里の忠告
上里は別れ際、少女達が理想送りに操られていたわけではないと認めつつ、彼女達の異形や異能には右手の歪みも関係しているのではないかと語っていた。上条の周囲にも同じような歪みがあるのかもしれないが、それは上里とは異なり、周囲へ伝染するものではないはずだった。見えない歪みについて真剣に考えるべきだと、上里は上条に告げていた。
一人の府蘭
烏丸府蘭は、息を取り戻し始めた街を一人で歩いていた。上里を取り戻すために戦い抜いたが、その結果として彼と共に歩く未来は永遠に失われていた。イギリス清教の魔術師として皆を騙してきた罪も、大熱波を起こした責任も逃れられないと考え、彼女は自分の物語が終わったものとして受け入れようとしていた。
アレイスターとの遭遇
府蘭の前にアレイスターが現れた。彼は、上里翔流や御坂美琴を追う流れの裏で、ローラ=スチュアートと繋がる府蘭という因子を炙り出したのだと語った。学園都市に甚大な被害が出た代わりに、イギリス清教の最大主教と直接繋がる間諜を手に入れたことは大きいと判断していた。
土御門元春の銃撃
アレイスターが府蘭を利用しようとした時、土御門元春が現れて銃撃した。彼は、妹の舞夏を守るという契約をアレイスターが果たさなかったことを理由に、ここが潮時だと告げた。魔術サイドと科学サイドの両方に籍を置く多重スパイであるため、原形制御では完全に封じられないと突きつけた。
交換殺人の協力
土御門は、自分と舞夏が学園都市から逃れるためにイギリス清教の支援を必要としていた。府蘭はローラと直接繋がる存在であり、土御門にとって命綱だった。彼は、府蘭を助ける代わりに府蘭が土御門を助ける、交換殺人のような協力関係だと説明した。
上条当麻という盾
土御門は、アレイスターが簡単に死ぬはずがないと見て、府蘭に急いで離れるよう促した。正攻法では逃げ切れないため、アレイスターが絶対に壊したくないものを盾にするしかないと語った。その対象は、計画の根幹に関わる極大の特異点である上条当麻だった。
五秒後の不幸
上条は何も知らず、インデックス達と共にようやく帰ってきたところだった。今日くらいは臨時休校で眠れると思っていたが、土御門と府蘭の事情が彼のもとへ迫っていた。上条当麻は、まだ五秒後に待つ新たな不幸を知らなかった。
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