物語の概要
■ 作品概要
教え子の卒業式や導師の昔語りを終えたバウマイスター伯爵家に、空前のベビーラッシュが到来する。
正妻のエリーゼをはじめとする妻たちが次々と出産を迎え、ヴェンデリンは男児二人、女児六人の父親となる。
生まれた子供たちは全員が光り輝く現象を見せ、生まれながらにして優れた魔力の素養を持っていた。
この血統を囲い込むため、王家や有力貴族、教会幹部が動き、生まれたばかりの子供たちの婚約が次々と決定される。
その後、ヴェンデリンは育児参加に失敗して挫折する。
領内では、美少女姿の男性アキラが乾物店を開き、その商才によって居酒屋やスーパーマーケット風の総合商店へと店を発展させていく。
後半では、ヴィルマの恩人である老舗フォン料理店の危機を救うため、ヴェンデリンがアキラやベッティの兄らと協力する。
彼は、複数の店舗を一箇所に集める「麺料理ストリート」を王都に開業し、大成功を収める。
しかし、王都でのプロデュースに二週間没頭したため領地開発を遅らせたとして、ヴェンデリンは家宰のローデリヒから休みなしの労働を宣告され、領地開発に専念する状況にいたる。
■ 主要キャラクター
ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
- 立場・所属:バウマイスター伯爵家当主。
- 主人公との関係:主人公自身。
- この巻での主な役割:エリーゼたちの出産に立ち会い、八人の子供の父親となる。出産祝いの礼状書きに追われた後、育児参加を試みるが周囲の反対に遭う。ヴィルマの頼みを受けて老舗フォン料理店の再建に乗り出し、瑕疵物件の除霊を行いながら「麺料理ストリート」をプロデュースして大繁盛に導く。
- この巻で起きた重要な変化や行動:一度に八人の子供の父親となる。子供たちの特殊な発光現象から、自身が古代の人工魔法使いの先祖返りであることを知る。血統の価値ゆえに、生まれたばかりの子供たち全員の婚約を王家や大貴族に勝手に決められてしまう。さらに、王都での再建劇に二週間没頭したツケとして、ローデリヒからお休み返上を宣告される。
エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
- 立場・所属:バウマイスター伯爵家の正妻。
- 主人公との関係:ヴェンデリンの正妻。
- この巻での主な役割:バウマイスター伯爵家の長男フリードリヒを出産する。治癒魔法を用いて、他の妻たちの安産をサポートした。
- この巻で起きた重要な変化や行動:長男フリードリヒを無事に出産する。祖父のホーエンハイム枢機卿から、フリードリヒの安全対策や総司教選挙、シュテファーニエとの婚約などの密談を伝えられる。王都の視察に同行し、アキラとモツ煮込みの改良など料理の話題で盛り上がる。
アキラ
- 立場・所属:フジバヤシ家の親戚で、アキラの祖父が平民となり商人となった「フジバヤシ乾物店」の店長。
- 主人公との関係:ハルカの又従兄弟。
- この巻での主な役割:バウルブルクにミズホ産の食材を扱う店をオープンさせる。見た目は可憐な美少女だが、喉仏があり声変わりもしている純然たる男性である。アキラ本人は屈強なミズホ男子を目指しているが、筋肉がつかず日に焼けない童顔に悩んでいる。
- この巻で起きた重要な変化や行動:卓越した商才とお茶の試飲、乾物の試食によって男性客を中心に大繁盛を収め、立ち飲み居酒屋、惣菜店などを次々と併設する。取引先の鮮魚店の女性デリア(二十一歳)と親しくなり、結婚を発表する(アキラは実は二十三歳で年上)。最終的に、複数の専門店を一箇所に集めた「総合スーパー」をバウルブルクに立ち上げ、大成功を収める。王都の麺料理ストリート計画にも加わり、蕎麦とうどんの店を二店舗オープンさせる。
キャンディー(血まみれキャンディー/バルスト)
- 立場・所属:心は乙女、体は長身で筋肉質な女装男性の元凄腕冒険者。王都の洋品店店長。
- 主人公との関係:ブランタークの古い知り合いで、導師の昔の冒険者仲間。
- この巻での主な役割:エリーゼの洋服を見立て、若い女性に絡むならず者を一瞬で両肩を外して制裁し、威圧して追い払う実力者。アキラと意気投合し、フジバヤシ乾物店の仕入れ交渉や料理・接客の研修を手伝う。
- この巻で起きた重要な変化や行動:アキラとともに店を繁盛させ、男性客にはアキラ、女性客にはキャンディーが対応する凸凹コンビとして活躍する。のちに王都の麺料理ストリートに大盛りラーメンの店を出すダットマン(元冒険者)の開業支援を開始し、エル用に注文されたゴスロリ服を女性たちの間で流行させる。
ヴィルマエトル・フォン・アスガハン(ヴィルマ)
- 立場・所属:バウマイスター伯爵家の妻。
- 主人公との関係:ヴェンデリンの妻。
- この巻での主な役割:四女イレーネを出産する。
- この巻で起きた重要な変化や行動:かつて自分が貧しく食べ物に困っていた頃、一杯の料金で十杯もフォンを食べさせて世話をしてくれた老舗フォン料理店の危機を知り、涙ながらにヴェンデリンに救済を頼み込む。ベッティがヴェンデリンに抱きつこうとした際には、妻としての独占権を主張して阻止した。
ホーエンハイム枢機卿(エクムント)
- 立場・所属:カソリック教会の枢機卿。
- 主人公との関係:エリーゼの祖父。
- この巻での主な役割:エリーゼのひ孫(フリードリヒ)の誕生を喜び、魔力を持つ子供たちの安全のため、信頼できる身内だけで非公開の本洗礼を執り行う。
- この巻で起きた重要な変化や行動:バウマイスター伯爵家と王家が結びつくことで自分が力を持ちすぎると周囲から警戒されるのを防ぐため、悲願だった総司教選挙への立候補を辞退する。代わりに幼馴染のエミリー・ケンプフェルト枢機卿を支持し、二代にわたって教会に強い影響力を持つ談合を成功させ、教会の裏の支配者となる。ヴェンデリンの男色疑惑が王都に広まった際には、魔導通信で厳しく注意した。
ベッティの兄(ローザの夫)
- 立場・所属:王都で飲食店を経営する料理人。
- 主人公との関係:ヴェンデリンの弟子ベッティの兄。
- この巻での主な役割:かつてヴェンデリンの助言で店を立ち飲み屋に改装し繁盛させていたが、妻ローザの指示のもとで新店舗も開店する。
- この巻で起きた重要な変化や行動:ヴェンデリンのヒントをもとに、猪、豚、魔物の骨を煮込んで臭みのないスープを完成させ、醤油トンコツラーメンを開発して「らーめん」店を大繁盛させる。妹ベッティにようやく仕事を褒められ、涙を流して喜んだ。
老舗フォン料理店の店主
- 立場・所属:王都にある老舗のフォン(伝統的な塩味の太麺料理)専門店の店主。
- 主人公との関係:ヴィルマの恩人。
- この巻での主な役割:周囲が新しい麺料理で競争するなか、伝統的な塩味のフォンしか作れずに客を全て奪われ、廃業寸前の状態にあった。
- この巻で起きた重要な変化や行動:ヴェンデリンの助言を受け、他店に麺を卸す「製麺所」とフォン店を兼業する決意を固める。木灰水を用いた太麺を開発し、塩味フォンにエビ風味の香味油や燻製塩、ラー油を加え、角煮を載せる「新フォン(油そば風)」として劇的に改良し、店を大繁盛させる。
ローデリヒ
- 立場・所属:バウマイスター伯爵家の家宰。
- 主人公との関係:ヴェンデリンの家臣。
- この巻での主な役割:出産ラッシュの際、落ち着かないヴェンデリンに仕事を与え、誕生時に瞬間移動で戻る過密スケジュールを組む。子供たちの「魔力吸着装置」に蓄えられた魔力を、街灯のエネルギーとして活用しようと画策する。
- この巻で起きた重要な変化や行動:二週間も王都に入り浸って麺料理ストリートのプロデュースに没頭していたヴェンデリンを厳しく追及し、計画の遅れ(十日分)を取り戻すため、お休み返上での領地開発工事労働を科す。
書籍情報
八男って、それはないでしょう! 17
著者:Y.A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
出版社:KADOKAWA(MFブックス)
発売日:2019年7月25日
ISBN:9784040659077
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あらすじ・内容
教え子の卒業式、そして導師の昔話を経てからすぐ、エリーゼが産気づく。
だが、この世界では男性が出産に立ち会うことはできず、今か今かと部屋の外で終始落ち着かない感じで待つヴェル。やがてついにその時が訪れ、部屋に踏み込むヴェルが目にしたものは……光り輝く我が子であった。
「さすがは、俺の子供。もう輝いているぜ。いや、俺に似ずに素晴らしいカリスマだ」
以降出産ラッシュが続き、我が子の寝顔を見て心が安らぐ反面、お祝い品への御礼状の発送作業や、生まれて早々に婚約の話が出てきたりと、様々な面倒事がヴェルの心を折りにくるのだった。
幸福感と同時に子をもうけた貴族家の大変さを思い知る第十七幕!
八男って、それはないでしょう! 17
感想
赤ん坊だらけの領地は平和……と思ったら、もう婚約が決まっていた
前巻ではアームストロング導師のかなり重い過去が描かれたが、17巻は一転してバウマイスター伯爵領の出産ラッシュから始まる。
まずエリーゼが長男フリードリヒを出産。
その後もイーナ、ルイーゼ、カタリーナ、テレーゼ、ヴィルマ、カチヤ、リサと続き、ヴェンデリンはわずか数か月で八人の父親になってしまう。さらに家臣たちの家庭でも次々と子供が生まれ、屋敷の育児室には二十以上のベビーベッドが並ぶ。
赤ん坊の声があちこちから聞こえてくる新興領地。
なんとも平和な光景である。
……と思っていたら、生まれた子供たち全員が魔法使いの素養持ち。
しかも王家や大貴族たちがそれを知った途端、まだ赤ん坊なのに将来の結婚相手までどんどん決まっていく。
何気に怖いぞ、貴族社会。
後半では、ミズホから来た少女にしか見えない男性店主アキラが商売で大暴れ。
さらに前巻で強烈な存在感を残したキャンディーさんまで普通に再登場しており、どうやらこの人、本当にレギュラーになりそうである。
当主だけじゃない。領地全体が赤ちゃんだらけになっている
まず印象に残ったのは、とにかく子供が多いことだった。
ヴェンデリンだけでも男児二人、女児六人。
さらにエルとハルカの息子レオンをはじめ、家臣たちにも次々と子供が生まれている。
大きな育児室へ当主と家臣の子供をまとめ、母親や乳母たちが一緒に育てていく。
単純に育児を効率化するだけではなく、幼い頃から一緒に育てて将来の主君と家臣のつながりを作る意味もあるらしい。
なるほど。
赤ん坊の頃から人脈作りが始まっている。
ここでも貴族社会だな……。
とはいえ、赤ん坊が並んで寝ている場面そのものはかなり微笑ましい。
ヴェンデリンも完全に親バカになっており、前抱きの抱っこ紐まで作って育児に参加しようとする。
ところがローデリヒだけでなく、エリーゼたち女性陣からも「育児は女性の仕事」と止められてしまう。
異世界でイクメンを始めようとしたら、妻たちから拒否された。
これはこれで時代の違いを感じて面白かった。
しかもヴェンデリンが作った抱っこ紐だけは便利なので採用され、王国中へ広まっていく。
本人の育児参加は却下されたのに道具だけ残るのか。
八人全員が魔法使い。隠した結果、生まれた直後から政略結婚へ
そして最大の問題が、ヴェンデリンの子供たちである。
全員、生まれた直後に光る。
さらに魔力まで持っている。
アーネストが以前から予想していた、ヴェンデリンが古代魔法文明の「人工魔法使い」の性質を受け継いでいる可能性が、かなり現実味を帯びてきた。
しかも赤ん坊なのにフリードリヒが火の玉を撃つ。
続いて他の子供たちまで、水弾、カマイタチ、氷弾、竜巻などを一斉に放つ。
赤ん坊の集団が魔法をぶっ放す育児室。
怖すぎる。
最終的には魔力を少しずつ吸収する魔道具を装着し、ようやく落ち着くのだが、その余った魔力を見たローデリヒが街灯用のエネルギーとして利用しようとする。
赤ん坊まで領地開発の戦力なのか。
さらに怖いのが政治の方だった。
子供たち全員に魔法の素養がある事実は、王家や有力貴族、ホーエンハイム枢機卿たちによって極力伏せられる。
しかし秘密を守ってくれる代わりというわけではないものの、有力者たちはヴェンデリンの子供との婚姻を猛烈な勢いで押さえていく。
長男フリードリヒは王太子の娘。
長女アンナは将来の国王となる王太子の長男。
エルザ、カイエン、イレーネ、ヒルデ、ラウラも、それぞれ大貴族の家と婚約が決まる。
テレーゼの娘フローラにも帝国側から縁談が殺到する。
まだ「だぁ」とか「あう」しか言えないんですが。
十分ほどの話し合いで子供たちの将来が決まっていく場面は、ちょっと怖かった。
王家からすれば、魔法使いを高確率で生む可能性のある血統を放置する理由がない。
理屈は分かる。
でも親のヴェンデリンからすればたまったものではない。
娘が嫁ぎ先で嫌な目に遭った時のために、魔法で旦那を吹き飛ばせるよう鍛えようと考えるのも分からなくはない。
方向性はかなり物騒だけど。
少女にしか見えないアキラ、見た目に反してかなりの商売人だった
後半になると雰囲気が変わり、ミズホ公爵領からアキラという新キャラクターが登場する。
小柄で華奢。
黒髪で肌も綺麗。
見た目だけなら完全に美少女。
だが男性である。
しかも本人は可愛く見られたいわけではなく、むしろ屈強で男らしい男になりたい。
なのに筋肉がつかない。
何とも本人の希望と外見が噛み合っていないキャラクターだった。
しかし商売の腕はかなりのもの。
フジバヤシ乾物店を任されると、ミズホ茶、海苔、乾物だけでは終わらない。
地元で安く手に入るパライソウ、キノコ、小ブナ、ドジョウなどを使って佃煮を商品化。
鮮魚店とも組んで魚の味噌漬け、一夜干し、塩辛、練りウニなどを開発する。
さらに立ち飲み居酒屋まで始め、最終的には精肉店、鮮魚店、青果店、乾物店、総菜店、食堂、居酒屋などを集めた総合商店へ発展させてしまう。
かなりのやり手だった。
ヴェンデリンが料理の知識を持ち込むことは多かったが、アキラはそれを「どう安く作って、どう売るか」まで考える。
この商人としての視点が面白い。
佃煮なんてまさにそうで、安価な地元食材へ保存性と付加価値を付けて商品にしてしまう。
後のフジバヤシ屋につながる店を作ってしまうのだから、見た目で侮れない人物である。
キャンディーさん、普通に再登場。もう準レギュラーなのでは?
そして前巻から続いて登場するのがキャンディーさん。
まさかこんなに出てくるとは思わなかった。
前巻では若き日の導師とブルーノを鍛えた《血まみれキャンディー》として登場したが、現在は冒険者を引退して洋品店を経営している。
裁縫が得意。
料理も得意。
接客も上手い。
冒険者としても超一流。
エリーゼたちの服まで見立てる。
さらにエルの体を軽く突いただけで、左右の筋力差まで見抜いて鍛錬方法を教える。
何でもできるな、この人。
アキラの店でも料理と接客を手伝い、アキラが男性客を、キャンディーが女性客を担当して店を繁盛させている。
そして何より面白いのが導師との関係である。
あの導師がキャンディーさんの前だと大人しい。
若い頃の喧嘩や女性関係まで全部知られているので、「ロンちゃん」と呼ばれるだけで昔の失敗談を暴露されそうになる。
前巻を読んだ後なので余計に笑ってしまった。
マッチョ導師を黙らせられる人材が貴重すぎる。
しかも巻末でも元冒険者の飲食店開業を手伝っており、完全に一回限りのキャラクターではなくなっている。
このままバウマイスター領周辺の面倒見のいい姉御として定着しそうである。
17巻は大きな戦争や強敵との死闘よりも、子供、婚姻、商売、料理といった日常寄りの話が中心だった。
だが、赤ん坊が生まれれば即座に王家や大貴族が動き、才能があれば将来の結婚相手まで決められる。
その一方で、新しい店ができ、新しい料理が広まり、キャンディーさんのような人物が自然と領地へ関わってくる。
赤ん坊の泣き声が響く平和な領地なのに、その裏では血統と婚姻を巡って大人たちがもの凄い勢いで動いている。
微笑ましいのか怖いのか分からない。
そこが妙に『八男』らしい一冊だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
主要な転換点
八人の子供たちの誕生と「発光現象」の判明
- それ以前の状況:バウマイスター伯爵家にはまだ子供がおらず、妻たちが妊娠し、アグネスたちの予備校卒業式や導師の昔語りを経て、出産を待ちわびていた。
- 出来事:エリーゼを筆頭にイーナ、ルイーゼ、カタリーナ、テレーゼ、ヴィルマ、カチヤ、リサが次々と出産を迎え、生まれた子供たち全員が生まれた直後に約一分間まばゆい光を放ち、生まれながらにして優れた魔力の素養(魔力)を持っていることが判明した。
- 変化:魔族のアーネストにより、この発光が古代魔法文明の「人工魔法使い」の血を継いだ先祖返りであることが明らかとなり、子供たち全員が将来優秀な魔法使いになることが確定した。
- 次への影響:この強力な魔法使いの血統を囲い込み、他家への情報漏洩を防ぐため、王家や大貴族たちが急遽バウルブルクを訪れ、子供たちの婚約(政略結婚)が生まれて早々に決定されるというしがらみに繋がった。
国王による子供たちの早期婚約の決定
- それ以前の状況:生まれた子供たちは魔法使いの素質を持っていたものの、まだ生まれたばかりで、ヴェンデリン自身は大量の出産祝いに対する手書きの礼状書きに忙殺されていた。
- 出来事:国王、王太子、導師、ルックナー財務卿、エドガー軍務卿、ブライヒレーダー辺境伯が突如バウルブルクを訪れ、生まれたばかりの八人の子供たち全員の婚約を一方的に決定した。
- 変化:長男フリードリヒは王太子の娘、長女アンナは将来の王となる王太子の長男の正妻、次女エルザはブライヒレーダー辺境伯の跡取りといったように、子供たちの将来の配偶者がすべて国家の上層部や有力貴族に決定された。
- 次への影響:望まない婚姻や嫁いびりを防ぐため、ヴェンデリンが「子供たちを一日でも早く魔法で鍛え、嫌な夫なら吹き飛ばせるようにしよう」と決意するきっかけとなり、またヴェンデリン自身がさらに多くの子作りを王家から要求されることとなった。
アキラの「フジバヤシ乾物店」オープンと総合商店化
- それ以前の状況:バウルブルクは新興都市として人口が増加し活気にあふれていたが、ミズホ産の珍しい食材をいつでも手軽に購入できる環境はまだ整っていなかった。
- 出来事:ハルカの親戚アキラが「フジバヤシ乾物店」を開き、その卓越した接客能力(お茶の試飲、海苔の試食)で客を増やし、立ち飲み居酒屋や惣菜販売をオープンさせ、のちに各種ギルドの影響力が弱いバウルブルクの強みを活かして「スーパーマーケット風総合食品店」へ拡張させた。
- 変化:アキラは取引先鮮魚店のデリアと結婚し、店をフランチャイズ化して円満に独立。のちに「フジバヤシ屋」として大陸規模へ成長する礎が領内に築かれた。
- 次への影響:アキラが王都の飲食店市場調査を行うことを望み、これにヴェンデリンが同行して王都視察を行うきっかけとなり、後の「老舗フォン料理店の再建劇」に繋がった。
ヴィルマの懇願と老舗フォン料理店再建への決定
- それ以前の状況:ヴェンデリンたちはアキラの依頼で王都の飲食店を視察し、モツ料理店やベッティの兄の店を回っていた。
- 出来事:ヴィルマが昔食べ物に困っていた時に一杯の料金で十杯も出してお世話をしてくれた老舗のフォン(塩味太麺料理)専門店を訪れた際、周囲の新興麺料理ブームに押されて客が一人もいない閑古鳥の状況を目にし、廃業の危機を知ったヴィルマが涙ながらにヴェンデリンに店を助けてほしいと頼み込んだ。
- 変化:当初の三日間の王都視察計画は中止され、ヴェンデリンは本腰を入れて老舗フォン料理店の再建、および新店舗を営むベッティの兄の店との共存共栄を目指してアドバイスを行う決意を固めた。
- 次への影響:瑕疵物件の除霊や、周囲に麺料理店を一箇所に集める「麺料理ストリート」構想の立案・実行に繋がり、二週間王都に入り浸る結果を招いた。
麺料理ストリートの開業と新フォン・ラーメンの開発
- それ以前の状況:老舗フォン料理店がある地区は住宅地と工房街の中間に位置する中途半端な立地であり、多くの飲食店が潰れて悪霊付きの瑕疵物件と化していた。
- 出来事:麺料理店を集中させることで客を呼び込む計画のもと、悪霊を退治して十店舗を改装し、ベッティの兄が「醤油トンコツラーメン」、老舗店主が「製麺所」と「新フォン(香味油・角煮を加えた油そば風)」を開発・改良し、このエリア一帯を『麺料理ストリート』として開業させた。
- 変化:初日から大勢の客が詰めかけ、寂れた地区は王都でも屈指の繁盛街として劇的に変化を遂げた。
- 次への影響:計画に十日以上の遅れを生じさせ、休暇を超過したヴェンデリンがバウルブルクで家宰ローデリヒから叱責を受け、お休み返上での厳しい開発工事労働を科されるという結果を招いた。
ヴェンデリンを中心とした人物関係の変化
アグネス、シンディ、ベッティ
- 開始時:予備校の臨時講師として指導していた優秀な愛弟子たち(女子三人娘)であった。
- 主な出来事:土木工事での修練を共に行い、赤ん坊を見にヴェンデリンの屋敷を訪れる。
そこで子供全員に魔力があるという「機密」に気づく。
老舗フォン料理店の再建劇では、ベッティが自身の兄への影響を心配してヴェンデリンに抗議し、ヴェンデリンが両店への支援を約束すると、感謝からヴェンデリンに抱きつこうとアグネスやシンディとともに「飛翔」などを用いてアプローチを仕掛ける。 - 巻末時:カチヤやルイーゼ、エリーゼのガードによって抱きつきは阻止され、未熟さを自覚するものの、いずれ「お館様の妻(嫁)になる」ことが既定路線(周りの妻たちやキャンディー談、ローデリヒの『様』呼びへの変化など)とされ、ヴェンデリン自身も外堀が埋められていくのを感じるようになる。
アキラ
- 開始時:家臣ハルカの親戚として紹介された、見た目は可憐な美少女だが実際は男性の店員だった。
- 主な出来事:バウルブルクの「フジバヤシ乾物店」で、新茶やフリカケの大人買いを通して深く関わる。
アキラがお茶を淹れる姿や可憐な仕草に、ヴェンデリンは男性と分かっていても何度もドキドキさせられる。
アキラの依頼で王都視察に同行し、アキラが蕎麦やうどんの店を開業するのを領主としてサポートした。 - 巻末時:アキラがデリアと結婚したことで、アキラの可憐な姿に惹かれていた領内の男性客と同じく、ヴェンデリン自身がアキラに執心して「男色関係」にあるという凄まじいデマが王都に流れ、ホーエンハイム枢機卿から誤解を解くために長時間の説明を要する関係となった。
ヴェンデリンの認識と周囲の評価
ヴェンデリン自身の認識
- 自分はあくまで新興貴族であり、ただ美味しいものを食べ、自由に冒険者をしながら楽に隠棲生活を送りたいと考えている。
- 父親として、また先進的な領主として、男でも赤ん坊の面倒を積極的に見る「イクメン」の姿(新しい常識)を世間に示したいと抱っこ紐を特注してあやそうとする。
- アキラの乾物店に通っているのは、前世を思い出させる美味しい食材や佃煮、乾物そのものが目的(商品に惹かれただけ)であり、アキラが男性であることも理解した上で、決してアキラの見た目(色香)に惑わされているわけではないと思っている。
周りからの評価
- エリーゼら妻たち・ローデリヒ:貴族の当主たる者が赤ん坊の世話をするなどあってはならないことであり、「真の貴族は赤ん坊の面倒など見ない」「育児は女性の仕事」として、ヴェンデリンの育児参加を全員で全否定する。
- アグネスたち三人娘:ヴェンデリンの子供たちが全員生まれながらにして光り、魔力を持っていることに絶句し、ヴェンデリンの「血統の特異性(人工魔法使いの先祖返り)」に深い畏怖と、自分たちがその秘密に関わることの重大さを認識する。
- 王都の貴族・教会(ホーエンハイム枢機卿):生まれた子供全員が魔法使いであるというヴェンデリンの規格外の血統・魔力の遺伝力に驚愕し、バウマイスター伯爵家との婚姻関係を結んでその血を絶対に取り込もうと、生まれたばかりの子供たち全員の婚約を一方的に急ぎ決定する。同時に、ヴェンデリンが乾物店に頻繁に通い詰める姿を見て、「バウマイスター伯爵は乾物店の美少女店長(実はアキラは男)に執心している」、のちにアキラが男だと判明すると「お館様は男色(男の娘好き)である」という凄まじいデマが広がり、ホーエンハイム枢機卿から「男性への執心は駄目だ」と強く注意・誤解される。
認識の差が現れた場面
- 特注の前抱き抱っこ紐でフリードリヒをあやすヴェンデリンを見たエルは「不思議な生き物を見るように」凝視し、ローデリヒは「古い慣習に反する」と厳しく説教した。育児室でエリーゼたちから「子供の面倒は私たちで見ます」と子供を取り上げられ、カチヤに「そんなに男が育児をする習慣はない」と全員に拒否された場面。
- フジバヤシ乾物店で、高級なウージの新茶やフリカケ、小豆などを嬉しそうに大量購入するヴェンデリンを見たルイーゼやヴィルマは「アキラ店長(美少女姿)に釣られている」と疑い、王都では「美少女に執着して愛人にしようとしている」、さらに男と判明すると「男色家(男の娘好き)である」とデマが広がり、ホーエンハイム枢機卿から長時間にわたり説教の魔導通信を入れられた場面。
クライマックス
- 発生原因:周囲の新興麺料理ブーム(ヴェンデリンが普及させた味噌や醤油)に対抗できず、伝統的な塩味フォンしか作れない老舗フォン料理店が客をすべて奪われ廃業寸前に陥る。かつてお世話になったヴィルマから涙ながらの頼みを受け、ヴェンデリンは店の再建を決意した。同時に、近くに新店をオープンさせたベッティの兄夫婦の店と競合しない共存の仕組みを模索する。
- 当初の状況:対象の地区は住宅地と工房街の中間にあり、立地が中途半端なために多くの飲食店が潰れ、悪霊付きの瑕疵物件として放置されていた。老舗店主も意欲を失っていた。
- 登場人物それぞれの行動:
- ヴェンデリン:客を呼び寄せるために複数の麺料理店をこのエリア一箇所に集中させる「麺料理ストリート」を立案。リネンハイムを雇って瑕疵物件を買い叩かせ、店主を侮辱して悪霊(店主の親戚)をおびき寄せて除霊し、十店舗を改装する。
- ベッティの兄:ヴェンデリンのヒント(猪、豚、魔物の骨、下処理の重要性)をもとに寸胴でスープを煮込み、醤油トンコツラーメンの試作に全力を注ぐ。
- 老舗店の店主と五人の息子:これまでのフォン打ちの技術を活かし、ラーメン用の麺や他の麺を製造・卸売りする「製麺所」としての役割を兼業しつつ、自身の塩味フォンの改良に励む。
- アキラ:富裕層向けのミズホ割烹店と、庶民向けの立ち食い蕎麦・うどん店を隣接してオープンさせる。
- アルテリオ:周辺に地図と価格を載せたチラシ(ビラ)を配り、傘下の商人に軽食や菓子を出す店舗を出店させる。
- 予定外の出来事と危機:
- ベッティの兄はスープを完成させたものの、自分でラーメン用の麺を打つ技術や経験が全くなく、完成に至らない危機を迎える。
- 老舗フォン店の店主は、自慢の塩味フォンの改良を試みるが、他店がすでに醤油味や味噌味を始めているため二番煎じとなり、客が戻らないという袋小路に直面する。
- 対応:
- ベッティの兄には、老舗フォン店の店主に麺の製造を委託(製麺所からの仕入れ)させる。かん水の代わりに、木灰水を使用した中太麺を開発して合わせ、ここに「醤油トンコツラーメン」を完成させた。
- 老舗フォン店の塩味フォンには、ヴェンデリンが「燻製塩」と、エビやトウガラシを用いた「香味油」を提案。タレと油を極太麺に絡めて角煮を載せる「新フォン(油そば風)」として劇的な改良を加えた。さらに店の前面をガラス張りにし、店主の実演での「手打ちパフォーマンス」を見せて客を呼び込む仕掛けを施した。
- 決着:
- 開業初日、チラシの効果も手伝って地区には工房の労働者や家族連れが殺到した。ラーメン、蕎麦、うどん、そして実演販売の「新フォン」や焼きそばが飛ぶように売れ、閑古鳥が鳴いていた老舗店やローザさん(ベッティの兄)の店は大繁盛を記録した。
- その直後の結果:
- 寂れていた地区は『麺料理ストリート』として劇的な大繁栄を遂げ、老舗店主は伝統を守るだけでなく研究と改良を重ねる重要性を学んだ。一方で、この再建劇が非常に楽しかったため二週間近く王都に入り浸ってしまったヴェンデリンは、バウルブルクに戻った際、家臣のローデリヒから領地開発(大規模工事)を十日以上遅らせた罪で叱責され、お休み返上での厳しい開発工事労働を科されるというオチに繋がった。
巻末時点の状況
- 主人公がいる場所と立場:
- 場所:バウマイスター伯爵領(バウルブルク)。
- 立場:バウマイスター伯爵家の当主、生まれた八人の子供たちの父親。
- 主要人物との関係:
- エリーゼら妻たち:育児に関しては一切の手出しを拒否され、子供たちは母親と家臣の妻たち(ハルカ等)が子供部屋で集団で面倒を見ることになった。二週間の王都滞在については「正妻以外の女性に気を付けるように」とエリーゼらから釘を刺される。
- ローデリヒ:領地開発の遅れ(十日分の残業)により、笑顔で「お休みなし」を宣告され、お館様を領地発展のためにこき使う厳しい主従関係となっている。
- アグネスたち三人娘:お館様への好意をアピールして外堀を埋めていくが、カチヤやルイーゼらに阻止される。しかし今後も個人指導やインフラ整備を通じて深く関わり続ける。
- アキラ・デリア夫妻:アキラは結婚して独立を果たし、バウルブルクに大繁盛のスーパーマーケット「フジバヤシ屋」を確立。ヴェンデリンの男色疑惑は晴れたものの、今後も美味しい食品の提供者としての信頼関係が継続する。
- 解決した問題:
- 生まれた赤ん坊たちの魔力暴走(無意識の魔法暴発)は、魔導ギルドから借りた「魔力吸着装置」により完全に解決され、回収した魔力はバウルブルクの街灯エネルギーとして領地発展に活用される。
- ヴィルマの恩人である老舗フォン料理店の廃業危機は、除霊と「麺料理ストリート」構想による店舗集中、および醤油トンコツラーメンや新フォン(油そば風)の開発・改良によって完全に解決し、大繁盛を収めた。
- ベッティの兄夫婦の店の経営(新店と老舗店の競合)も、製麺所を通じたWINWINな関係と、メニューの差別化によって解決した。
- 継続している問題:
- 生まれたばかりの子供たち全員が、王家や大貴族たちの都合によって一方的に早期の婚約者を決められてしまい、将来のしがらみが固定化している。
- ヴェンデリンは、二週間王都で麺料理プロデュースに没頭したツケ(遅れ)を取り戻すため、休みなしで領地開発の土木工事・整地作業にひたすら専念させられている。
- 今後につながる要素:
- 領地開発のために工事現場の作業員たちに簡単な麺料理が振る舞われ、彼らが故郷や居住地に戻って麺料理店を始めることで、今後王国中にさらなる麺料理が普及していく兆しが示されている。
- アキラの総合食品店は「フジバヤシ屋」の礎として今後さらなる大陸展開を予感させ、大盛り麺料理(おまけの洗面器ラーメン)はバウルブルクにも支店が開業し、アルテリオも含めて人々を虜にしていく予兆がある。
登場キャラクタ
バウマイスター伯爵家(現代の家族・子供たち・関係者)
ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
前世の記憶を持つバウマイスター伯爵家の当主である 。多くの妻や子供たちに囲まれて領地経営や土木工事に従事している 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
長男にフリードリヒと命名した 。大量の出産祝いに対する礼状の執筆や土木工事を行った 。王都の老舗フォン料理店の再建や瑕疵物件の除霊に尽力した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
短期間で男児二人と女児六人の父親となった 。王都の麺料理ストリートのプロデュースを主導した 。
エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
ヴェンデリンの正妻であり、優れた治癒魔法の使い手である 。教会や貴族社会の礼儀作法にも通じている 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・正妻 。
・物語内での具体的な行動や成果
嫡男であるフリードリヒを出産した 。他の妻たちの出産やハルカの産後において治癒魔法を用いて支援した 。王都の瑕疵物件の除霊を魔法で補助した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
バウマイスター伯爵家の後継者の母となった 。
イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
ヴェンデリンの妻の一人である 。真面目な性格で、家の継承問題などに配慮している 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・側室 。
・物語内での具体的な行動や成果
長女アンナを出産した 。ヴェンデリンの留守中にはハルカとともに子守りを担当した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
産んだ長女アンナが王太子の長男の正妻となることが内定した 。
ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
ヴェンデリンの妻の一人であり、優れた魔力制御技術を持つ冒険者出身の女性である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・側室 。
・物語内での具体的な行動や成果
次女エルザを出産した 。王都視察に同行し、エリーゼたちの護衛を務めた 。魔力の流れを見てアキラが男性であることを見抜いた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
産んだ次女エルザがブライヒレーダー辺境伯の跡取り息子の正妻となることが内定した 。
ヴィルマエトル・フォン・アスガハン
ヴェンデリンの妻の一人であり、並外れた怪力と食欲を持つ 。恩義を重んじる性格である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・側室 。
・物語内での具体的な行動や成果
四女イレーネを出産した 。過去にお世話になった老舗フォン料理店の窮状を知り、ヴェンデリンに再建を依頼した 。王都の飲食店視察にも同行した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
産んだ四女イレーネがエドガー軍務卿の嫡孫の正妻となることが内定した 。
カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル
ヴェンデリンの妻の一人であり、風系魔法を得意とする名門の当主である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・側室 。ヴァイゲル家当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
次男カイエンを出産した 。王都の麺料理地区の試食調査に同行した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
産んだ次男カイエンが次期ヴァイゲル準男爵となることが定まっている 。
テレーゼ・ジークリット・フォン・フィリップ
ヴェンデリンの非公式な愛人であり、元帝国選帝侯の女性である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・愛人 。
・物語内での具体的な行動や成果
三女フローラを出産した 。ヴェンデリンの王都不在時には、リサとともに魔法を用いて土木工事を担当した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
伯爵邸で他の妻たちとともに円満に生活している 。
カチヤ・フランク・フォン・オイレンベルク
ヴェンデリンの妻の一人であり、実直な元冒険者である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・側室 。
・物語内での具体的な行動や成果
五女ヒルデを出産した 。クジ引きで権利を得て王都の視察に同行し、護衛役を務めた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
産んだ五女ヒルデがアームストロング伯爵家の嫡孫の正妻となることが内定した 。
リサ・クレメンテ・ウルリーケ・エクスラー
ヴェンデリンの妻の一人であり、高い魔法技術を持つ魔導師である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・側室 。
・物語内での具体的な行動や成果
六女ラウラを出産した 。ヴェンデリンの留守中に領地の土木開発作業を魔法で進めた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
産んだ六女ラウラが導師の嫡孫の正妻となることが内定した 。
アマーリエ・フォン・マインバッハ
ヴェンデリンの亡き兄クルトの元妻であり、現在はヴェンデリンの身の回りを支えている 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・居候 。
・物語内での具体的な行動や成果
王都の飲食店視察に同行し、フォンの改良料理などを知見として提供した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
伯爵邸の家族関係の中で安定した立場を保っている 。
フリードリヒ・フォン・ペンノ・バウマイスター
ヴェンデリンとエリーゼの間に生まれた長男である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・嫡男 。
・物語内での具体的な行動や成果
誕生時に強い光を放つ現象を示した 。本洗礼を受けた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
次代のバウマイスター伯爵後継者として決定された 。エミリーのひ孫シュテファーニエ等との将来の縁談が持ち上がっている 。
アンナ
ヴェンデリンとイーナの間に生まれた長女である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・長女 。
・物語内での具体的な行動や成果
誕生時に魔力の光を発した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王太子の長男(次々代国王)の正妻となることが内定した 。
エルザ
ヴェンデリンとルイーゼの間に生まれた次女である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・次女 。
・物語内での具体的な行動や成果
誕生時に魔力の光を発した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ブライヒレーダー辺境伯の跡取り息子の正妻となることが内定した 。
カイエン
ヴェンデリンとカタリーナの間に生まれた次男である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・次男 。次期ヴァイゲル家当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
魔力の素養を持って誕生した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴァイゲル準男爵家を継ぐことになり、ルックナー財務卿の一族から正妻を迎えることが決定した 。
フローラ
ヴェンデリンとテレーゼの間に生まれた三女である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・三女 。
・物語内での具体的な行動や成果
誕生時に魔力の光を発した 。育児室で他の子供たちとともに育てられている 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
イレーネ
ヴェンデリンとヴィルマの間に生まれた四女である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・四女 。
・物語内での具体的な行動や成果
誕生時に魔力の光を発した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エドガー軍務卿の嫡孫の正妻となることが内定した 。
ヒルデ
ヴェンデリンとカチヤの間に生まれた五女である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・五女 。
・物語内での具体的な行動や成果
誕生時に魔力の光を発した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アームストロング伯爵家の嫡孫の正妻となることが内定した 。
ラウラ
ヴェンデリンとリサの間に生まれた六女である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・六女 。
・物語内での具体的な行動や成果
誕生時に魔力の光を発した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
導師の嫡孫の正妻となることが内定した 。
アーネスト・ブリッツ
魔力や発光現象について解説を行った人物である 。
・所属組織、地位や役職
研究者・魔法関係者 。
・物語内での具体的な行動や成果
赤ん坊の発光現象に関する事前の説明を行った 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
バウマイスター伯爵家・家臣および元予備校生
エルヴィン・フォン・アルニム
ヴェンデリンの筆頭従騎士であり親友である 。軽快な性格だが父親としての自覚も芽生えている 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・家臣(護衛役) 。アルニム家当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンの護衛として土木現場や王都視察に同行した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妻ハルカとの間に嫡男レオンが誕生し、父親となった 。
ハルカ・フォン・アルニム
エルの妻であり、ミズホ出身の優れた剣士である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・乳母兼護衛 。
・物語内での具体的な行動や成果
長男レオンを出産した 。フリードリヒをはじめとする赤ん坊たちのオシメ交換や授乳の世話を行った 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
伯爵家の奥向きを任される信頼を得ている 。
レオン・フォン・アルニム
エルとハルカの間に生まれた長男である 。
・所属組織、地位や役職
アルニム家・嫡男 。
・物語内での具体的な行動や成果
伯爵家の育児室でフリードリヒたちとともに育てられている 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フリードリヒたちの乳兄弟となった 。
ローデリヒ
バウマイスター伯爵家の筆頭家老であり、政務を取り仕切る有能な腹心である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・筆頭家老 。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンの出産立ち会い時の混乱を防ぐため過密な土木日程を管理した 。贈答品やお礼状の処理体制を構築した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
伯爵領の運営と発展を一手に支えている 。
アグネス・フュルスト
ヴェンデリンの魔法の弟子である 。
・所属組織、地位や役職
魔法使い・弟子 。
・物語内での具体的な行動や成果
土木魔法を用いて領地開発に従事した 。王都視察に同行した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来的にヴェンデリンの妻となることが取り決められている 。
シンディ
ヴェンデリンの魔法の弟子の一人である 。
・所属組織、地位や役職
魔法使い・弟子 。
・物語内での具体的な行動や成果
領地開発の土木作業を手伝った 。ベッティやアグネスとともに王都視察に同行した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来の妻候補として扱われている 。
ベッティ
ヴェンデリンの弟子であり、兄思いの一面を持つ 。
・所属組織、地位や役職
魔法使い・弟子 。
・物語内での具体的な行動や成果
土木工事の支援を行った 。兄の飲食店経営と老舗店再建の競合についてヴェンデリンに相談した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来の妻候補として扱われている 。
フジバヤシ乾物店・スーパー関係者
タケオミ・フジバヤシ
ハルカの兄であり、ミズホ公爵領のサムライである 。極度の妹思いである 。
・所属組織、地位や役職
ミズホ公爵領・次期フジバヤシ家当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
甥のレオンの誕生祝いとして名刀カネサダを贈った 。バウルブルク支店の開設のためアキラを連れて来訪した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
乾物などの副業を大成功させている 。
アキラ
フジバヤシ家の縁戚であり、商才に極めて優れた人物である 。外見が美少女に見える美男子である 。
・所属組織、地位や役職
フジバヤシ乾物店・バウルブルク支店長兼商人 。
・物語内での具体的な行動や成果
バウルブルクで乾物店を経営し、総合商店や麺料理店への発展を計画した 。王都での新メニュー開発や視察に同行した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
デリアと結婚した 。後に店舗をフランチャイズ化して独立した 。
デリア
アキラの妻であり、王都の鮮魚店出身の女性である 。
・所属組織、地位や役職
鮮魚店関係者・アキラの妻 。
・物語内での具体的な行動や成果
アキラとともに新婚旅行を兼ねて王都視察に同行した 。モツ料理などの知識を披露した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
バウルブルクでアキラとともに店舗を運営している 。
バルスト(キャンディー)
服飾関係の店を営む商人である 。
・所属組織、地位や役職
衣料商人 。
・物語内での具体的な行動や成果
ゴスロリ系統の衣服を商品化し、貴族令嬢や若い妻たちに向けて販売を展開した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
カチヤやハルカたちを通じて王都の女性層に流行を広めた 。
王都の店舗・不動産関係者
ベッティの兄
料理の腕は立つが経営や経理が苦手な調理人である 。
・所属組織、地位や役職
飲食店店主 。
・物語内での具体的な行動や成果
王都で汁なし麺の新店舗を開店した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェンデリンやローザの支援を受けて経営の改善を図っている 。
ローザ
ベッティの義姉であり、実務や経営判断に長けた女性である 。
・所属組織、地位や役職
麺料理店・経営者 。
・物語内での具体的な行動や成果
夫の店の経営を支えつつ、老舗フォン料理店の新メニュー開発に参加した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王都の麺料理事業の現場において中心的な役割を果たした 。
老舗フォン料理店の店主
ヴィルマが昔世話になったフォン料理店の店主である 。
・所属組織、地位や役職
老舗フォン料理店・店主 。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンたちに一族の歴史や瑕疵物件となった事情を説明し、新メニューの開発に取り組んだ 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
店舗の再建支援を受けた 。
老舗フォン料理店の店主の五人の息子たち
老舗フォン料理店の運営や調理を支える家族である 。
・所属組織、地位や役職
老舗フォン料理店・調理補助・後継者候補 。
・物語内での具体的な行動や成果
休業中の店内でローザたちとともに新メニューの試作を行った 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ダットマン
王都で新店舗の開店に関わった人物である 。
・所属組織、地位や役職
飲食店関係者 。
・物語内での具体的な行動や成果
新店舗の開店準備および営業に携わった 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
アルテリオ
ヴェンデリンと親しい王都の有力な御用商人である 。
・所属組織、地位や役職
御用商人・商会当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
バウマイスター伯爵家に届いた大量の出産祝いの鑑定を引き受けた 。王都麺料理ストリートの事業展開に協力した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
商業面でヴェンデリンと強い協力関係を維持している 。
リネンハイム
瑕疵物件の扱いや不動産取引に長けた老練な商人である 。
・所属組織、地位や役職
不動産商人 。
・物語内での具体的な行動や成果
悪霊の出る地区の瑕疵物件を格安で買い集め、改装業者を手配した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
事業を通じてバウマイスター伯爵家との取引を拡大した 。
ゴッチ・リネンハイム
リネンハイムの息子であり、バウルブルクで堅実な不動産業を営んでいる 。
・所属組織、地位や役職
バウルブルク不動産商会・代表 。
・物語内での具体的な行動や成果
父リネンハイムとともにバウマイスター伯爵家に出産祝いを贈った 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新興都市バウルブルクの不動産需要を支えている 。
ヘルムート王国(王宮・貴族・臣下)
国王
ヘルムート王国の君主である 。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・国王 。
・物語内での具体的な行動や成果
貴族たちを伴って赤ん坊を見るためにバウルブルクを訪問した 。ヴェンデリンの子供たちの婚約先を決定した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王家とバウマイスター伯爵家の血縁関係を強化した 。
王太子
ヘルムート王国の次期国王である 。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・王太子 。
・物語内での具体的な行動や成果
国王とともにバウルブルクを訪れた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身の長男とヴェンデリンの長女アンナとの婚約が成立した 。
クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング
王国筆頭魔導師であり、豪快な性格の持ち主である 。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・王宮筆頭魔導師(導師) 。アームストロング伯爵家 。
・物語内での具体的な行動や成果
王都のモツ料理店や試食調査に同行し、大量の料理を平らげた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
嫡孫がヴェンデリンの娘ヒルデおよびラウラの嫁ぎ先として関連付けられた 。
ブライヒレーダー辺境伯
南部を統括する大貴族であり、ヴェンデリンの主筋にあたる人物である 。
・所属組織、地位や役職
ブライヒレーダー辺境伯家・当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
バウルブルクを訪問し、次女エルザを自身の跡取り息子の正妻として迎えることを決めた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
バウマイスター伯爵家との姻戚関係を結ぶことになった 。
エドガー軍務卿
王国の軍事を統括する重臣である 。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・軍務卿 。
・物語内での具体的な行動や成果
バウルブルクを訪問し、自身の嫡孫とヴィルマの娘イレーネの婚約を取りまとめた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
軍部有力貴族としてバウマイスター伯爵家との血縁関係を確保した 。
ルックナー財務卿
王国の財政を取り仕切る重臣である 。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国・財務卿 。
・物語内での具体的な行動や成果
バウルブルクを訪れ、自身の一族からカタリーナの息子カイエンの正妻を出すことを決定した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴァイゲル家およびバウマイスター伯爵家との繋がりを強化した 。
フロート・ロゲール・フォン・ベネケン
ベネケン男爵家の嫡男であり、思い込みの激しい青年である 。
・所属組織、地位や役職
ベネケン男爵家・元嫡男 。
・物語内での具体的な行動や成果
アポなしでバウマイスター伯爵邸に乱入し、生まれたばかりの娘への求婚を申し出て吹き飛ばされた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
騒動の責任を問われ、父親により嫡男の座を廃された 。
ベネケン男爵
フロートの父親である地方貴族である 。
・所属組織、地位や役職
ベネケン男爵家・当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
牢に入れられた息子フロートを顔面蒼白で引き取りに来た 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王国有力者を敵に回した息子の廃嫡を余儀なくされた 。
トリスタン
王国の貴族関係者である 。
・所属組織、地位や役職
貴族関係者 。
・物語内での具体的な行動や成果
王宮および貴族社会の動向に関与した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
モーリッツ
王国の貴族関係者である 。
・所属組織、地位や役職
貴族関係者 。
・物語内での具体的な行動や成果
王宮関係の行事に関与した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
トーマス
王国の貴族関係者である 。
・所属組織、地位や役職
貴族関係者 。
・物語内での具体的な行動や成果
貴族間の折衝に関わった 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
教会(正教徒派カソリック教会)
ホーエンハイム枢機卿(エクムント)
エリーゼの祖父であり、教会内きっての有力者である 。
・所属組織、地位や役職
教会・枢機卿。ホーエンハイム子爵家当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
優秀な助産師を派遣し、ひ孫たちの本洗礼を主導した 。総司教選挙でケンプフェルト枢機卿を支援した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自らは総司教出馬を辞退し、陰の実力者として影響力を確立した 。
フリッツ・フォン・ホーエンハイム
エリーゼの父親であり、高位の神官である 。
・所属組織、地位や役職
教会・高位司祭(将来の枢機卿候補) 。
・物語内での具体的な行動や成果
フリードリヒたちの本洗礼の担当司祭を務めた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
教会の中心幹部としての地位を固めている 。
ザームエル・フォン・ホーエンハイム
エリーゼの兄であり、将来を嘱望される若手神官である 。
・所属組織、地位や役職
教会・若手神官。次々代ホーエンハイム子爵家当主 。
・物語内での具体的な行動や成果
フリードリヒの本洗礼において補佐役を務めた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
次代を担う神官として活動している 。
エミリー・ケンプフェルト
ホーエンハイム枢機卿の長年の知己であり、豪商の出である老練な女性神官である 。
・所属組織、地位や役職
教会・枢機卿 。ケンプフェルト商会一族 。
・物語内での具体的な行動や成果
ひ孫シュテファーニエとフリードリヒの将来の婚姻を取りまとめ、総司教選挙に出馬した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
選挙に勝利し、新総司教に就任した 。
総司教
教会の最高指導者である 。
・所属組織、地位や役職
教会・総司教 。
・物語内での具体的な行動や成果
高齢により体調を崩し、施薬院で静養に入った 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
次代への権力委譲が行われる契機となった 。
ポーツァル
教会関係者の一人である 。
・所属組織、地位や役職
教会・神官 。
・物語内での具体的な行動や成果
総司教選挙をめぐる動きに関与した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
ラングヤール枢機卿
総司教選挙に名乗りを上げた枢機卿の一人である 。
・所属組織、地位や役職
教会・枢機卿 。
・物語内での具体的な行動や成果
総司教の座を目指して立候補した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
選挙でケンプフェルト枢機卿に敗れた 。
ブュヒャー枢機卿
出版や印刷事業に太いパイプを持つ文教派の枢機卿である 。
・所属組織、地位や役職
教会・枢機卿(七十三歳・貴族出身) 。
・物語内での具体的な行動や成果
総司教選挙に立候補して支持集めを行った 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
選挙で敗北した 。
ゾルガー枢機卿
聖堂騎士団出身の筋肉質な枢機卿である 。
・所属組織、地位や役職
教会・枢機卿・聖堂騎士団トップ(六十八歳・平民出身) 。
・物語内での具体的な行動や成果
最年少候補として総司教選挙に出馬した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
選挙で敗北した 。
シュテファーニエ
エミリー・ケンプフェルトのひ孫にあたる女児である 。
・所属組織、地位や役職
ケンプフェルト商会一族 。
・物語内での具体的な行動や成果
誕生後、エミリーによってフリードリヒの婚約者候補として提示された 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来的なバウマイスター伯爵家との婚姻が内定した 。
リーファ・ケンプフェルト
エミリーの孫娘であり、教会で手伝いをしている若い女性である 。
・所属組織、地位や役職
ケンプフェルト商会一族・女性神官 。
・物語内での具体的な行動や成果
選挙パーティーでお菓子の話題などを通じてヴェンデリンに挨拶した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
マルガレータ・テンツラー
食料を扱う豪商テンツラー商会の娘である 。
・所属組織、地位や役職
テンツラー商会・令嬢 。
・物語内での具体的な行動や成果
ケンプフェルト枢機卿の支援者としてお茶会でヴェンデリンに自己紹介した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
フリーダ・フォン・ロッシュ
ロッシュ騎士爵家の令嬢である 。
・所属組織、地位や役職
ロッシュ騎士爵家・令嬢 。
・物語内での具体的な行動や成果
お茶会に参加し、ヴェンデリンやエルヴィンに給仕を行った 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
バウマイスター伯爵家・メイド
ドミニク
バウマイスター伯爵家に仕えるメイドであり、レーアの上司である 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・メイド(人妻) 。
・物語内での具体的な行動や成果
客観的な評価役として王都の麺料理視察に同行した 。失言の多いレーアに拳骨を落として指導した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
信頼される使用人として活動している 。
レーア
エルヴィンの婚約者となったバウマイスター伯爵家のメイドである 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・メイド 。
・物語内での具体的な行動や成果
試食調査に同行し、ドミニクから度々小言を受けた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エルの婚約者としての立場を得ている 。
登場集団
工事の作業者たち
バウマイスター伯爵領の開拓に従事する人員である 。
・所属組織、地位や役職
領地開発作業員 。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェンデリンの魔法支援を受けながら宅地や農地の基礎工事を進めた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
衛兵たち
バウマイスター伯爵邸の警備を担当する兵士たちである 。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター伯爵家・警備兵 。
・物語内での具体的な行動や成果
アポなしで侵入を試みたフロート一行を押し留めた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
屋敷の防衛任務を適切に遂行した 。
助産師たち
ホーエンハイム枢機卿が手配した王都最高峰の出産補助専門集団である 。
・所属組織、地位や役職
王都・専門助産師 。
・物語内での具体的な行動や成果
エリーゼをはじめとする妻たちの出産を安全に介助した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
赤ん坊の発光現象に対しても守秘義務を遵守した 。
神官たち
出産支援や本洗礼の執行を担当した教会の関係者たちである 。
・所属組織、地位や役職
教会・神官団 。
・物語内での具体的な行動や成果
治癒魔法で出産を助け、本洗礼の儀式を円滑に進めた 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
下級貴族や商会の娘たち
ケンプフェルト枢機卿の支持基盤を形成する若い女性たちである 。
・所属組織、地位や役職
教会ボランティア・商会・下級貴族令嬢 。
・物語内での具体的な行動や成果
選挙支援のパーティーやお茶会でヴェンデリンたちをもてなした 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
貧民街の住民たち
王都の治安の悪い地区に住む住民たちである 。
・所属組織、地位や役職
王都貧民街・住人 。
・物語内での具体的な行動や成果
視察で通りかかったアキラや女性陣を遠巻きに観察した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
蕎麦打ち職人たち
ミズホ公爵領から招聘された職人たちである 。
・所属組織、地位や役職
ミズホ蕎麦職人 。
・物語内での具体的な行動や成果
バウルブルクで臨時の蕎麦店を開き、伯爵邸で打ち立ての蕎麦を振る舞った 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王国への蕎麦文化の普及に寄与した 。
新店(ダットマンの店)の二名の男性店員たち
新店舗で調理や接客に従事する従業員たちである 。
・所属組織、地位や役職
新店舗・店員 。
・物語内での具体的な行動や成果
ローザたちの指示のもとで店舗の運営を担当した 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
不良債権化した三名の元店主(悪霊)たち
過去の激しい後継者争いに敗れて店を失い、未練から悪霊と化した元店主たちである 。
・所属組織、地位や役職
瑕疵物件・悪霊(老舗フォン料理店店主の大叔父たち) 。
・物語内での具体的な行動や成果
店舗跡地を占拠して営業不能にしていたが、ヴェンデリンたちに誘い出された 。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エリーゼの聖光によって浄化され成仏した 。
展開まとめ
第一話 ヴェンデリン、父親になる
エリーゼの出産
アグネスたちの卒業と導師の昔語りの直後、エリーゼが産気づいた。男性は分娩室に入れないため、ヴェンデリンはエルと外で待つしかなく、落ち着かないまま魔法の練習や読書を繰り返した。
数時間後、赤ん坊の泣き声が響き、ヴェンデリンが分娩室へ入ると、生まれたばかりの男児が眩く光っていた。光は一分ほどで消えたが、すでに初級魔法使い並みの魔力を持っていた。エリーゼは初産ながら安産で、ヴェンデリンは治癒魔法をかけながら無事を喜んだ。
人工魔法使いの血
アーネストは、生まれた子供に魔力があることから、ヴェンデリンが古代魔法文明の人工魔法使いの性質を受け継いでいるという以前の推論が正しかったと説明した。
古代魔法文明では、人間にも魔法の才能を子孫へ受け継がせようとする研究が行われ、恒久的な遺伝には失敗したものの、遠い子孫まで影響を残す方法が存在したという。ヴェンデリンはその先祖返りであり、その性質が子供にも現れた可能性が高かった。
一方、ヴェンデリン自身が生まれた時に光った記録はなく、魔法の才能を自覚したのも五、六歳頃であったため、その理由まではわからなかった。
フリードリヒの命名
ヴェンデリンは子供の名前をなかなか決められず、人名辞典を読み続けた。エルは男ならレオン、女ならエマと即座に決めており、その迷いのなさにヴェンデリンは感心した。
実家へ連絡して命名の伝統を父に尋ねると、数代前の当主の名前を使う慣習はあるものの、初代となるヴェンデリンには自分で決める必要があるとわかった。
最後は王国人名辞典を適当に開き、目に留まったフリードリヒを選んだ。エリーゼも賛成し、赤ん坊はフリードリヒ・フォン・ペンノ・バウマイスターと名付けられ、次代のバウマイスター伯爵となることが決まった。
続く出産ラッシュ
半月後から、今度はイーナたちが次々と出産を迎えた。ヴェンデリンが待っていると落ち着かないため、ローデリヒは出産直前まで仕事を組み、誕生の連絡が入れば瞬間移動で戻る方式にした。
イーナはエリーゼの治癒魔法を受けながら女児を出産し、その子も生まれた直後に光った。続いてルイーゼ、カタリーナ、テレーゼ、ヴィルマ、カチヤ、リサも出産し、数ヵ月のうちにヴェンデリンは男児二人、女児六人の父親となった。
カタリーナの男児はカイエンと名付けられ、フリードリヒと共に少数の男児となった。
乳母と子供部屋
生まれた子供たちは大きな子供部屋に集められ、人数分のベビーベッドが並べられた。母親たちは自分で授乳しつつ、家臣の妻たちが乳母として世話を補助した。
エルの妻ハルカも乳母となり、自分が産んだレオンと共に子供たちの面倒を見た。ハルカは幼少期から親戚の子供を世話していたため、赤ん坊の扱いにも慣れていた。
当主と家臣の子供を一緒に育てることで、世話の効率を上げるだけでなく、幼い頃から連帯感を育てる狙いもあった。レオンをはじめ、年齢の近い家臣の子供たちも加わる予定となった。
全員に現れた魔法の素養
ヴェンデリンの八人の子供は、全員が生まれた直後に光り、魔法使いとしての素養を持っていた。助産師や神官たちはすでに慣れていたものの、情報は教会にも伝わっていると考えられた。
カタリーナは、次期ヴァイゲル家当主となるカイエンが魔法使いなのは喜ばしい一方、これほど多くの魔法使いの子供が生まれれば、ヴェンデリンへ新たな縁談を押しつけようとする動きが増えるのではないかと心配した。
出産ラッシュは八人で一段落したが、ローデリヒは貴族家では子供が生まれてからも様々な対応が必要だと告げた。バウマイスター伯爵家では、その後もしばらく子供たちを巡る騒動が続くことになった。
第二話 ヴェンデリン、挫折する
大量の出産祝い
バウマイスター伯爵家の育児室には二十以上のベビーベッドが並び、フリードリヒ、アンナ、エルザ、カイエン、フローラ、イレーネ、ヒルデ、ラウラをはじめとする赤ん坊たちを、エリーゼたちと乳母役の家臣の妻たちが世話していた。ヴェンデリンはその光景に心を和ませたが、同時に大量の出産祝いへの対応に追われた。
祝いを贈った貴族ごとに礼状を書き、将来相手に子供が生まれれば同程度の品を返す必要があった。贈り物の価値はアルテリオが調べ、文面は専門の家臣が用意したものの、礼状自体はヴェンデリンが手書きしなければならなかった。
礼状と贈り物
ヴェンデリンは午前中に礼状を書き、午後は土木工事を行う生活を一週間ほど続けた。貴族ごとに文面を変える必要があり、代筆も許されないため、手紙を書く仕事に辟易した。
テレーゼやリサにも相談したが、魔法で完全に同じ筆跡と文章を複製する摸写では礼状には使えなかった。大量の祝いの中では、カチヤの実家から届いたマロイモと、ミズホ公爵からの旬の素材詰め合わせが特に好評であった。
国王たちの来訪
出産祝いが一段落すると、今度は赤ん坊を見たいという者たちが現れた。国王は王太子、導師、ルックナー財務卿、エドガー軍務卿、ブライヒレーダー辺境伯を連れ、突然バウルブルクを訪れた。
本来なら跡取りを王へ披露するため当主側が王城へ赴くため、ヴェンデリンは彼らの来訪に別の目的があると察した。国王は赤ん坊たちを見たあと、ヴェンデリンに頼みを告げ、その内容によって子供たちの婚姻が次々と決まった。
フリードリヒとアンナの婚約
エリーゼが産んだ長男フリードリヒは、王太子の娘を正妻に迎えることになった。王家は、フリードリヒの子供にも魔法使いの素養が受け継がれる可能性を重視していた。
さらにイーナが産んだ長女アンナは、王太子の長男である将来の国王の正妻に決まった。平民出身のイーナを母に持つアンナが王家へ嫁ぐのは通常なら考えにくかったが、ヴェンデリンの子供であることが身分以上に重視された。
娘たちの嫁ぎ先
ルイーゼが産んだエルザはブライヒレーダー辺境伯の跡取りの正妻となり、カタリーナの息子カイエンはルックナー財務卿一族から正妻を迎えることになった。
ヴィルマの娘イレーネはエドガー軍務卿の嫡孫、カチヤの娘ヒルデはアームストロング伯爵家の嫡孫、リサの娘ラウラは導師の嫡孫の正妻に決まった。ヴェンデリンが口を挟む間もなく、国王たちは短時間で婚姻を決定した。
ヴェンデリンは、生まれたばかりの娘たちの将来が勝手に決められたことを嘆き、嫌な夫なら魔法で吹き飛ばせるよう早く鍛えようと考えたが、カタリーナとリサに呆れられた。
フローラへの帝国貴族の求婚
テレーゼの娘フローラには、王国ではなく帝国から大量の縁談が届いた。フィリップ公爵家やミズホ公爵家、バーデン公爵家をはじめ、多くの帝国貴族が婚姻を望んでいた。
テレーゼは、フローラが魔法使いである情報が漏れたのではなく、王国の有力貴族であるヴェンデリンとの繋がりや、今後の交易上の利益を求めているのだろうと考えた。一方で、子供たち全員が魔法使いである事実はいずれ隠し切れなくなるとも見ていた。
子沢山への期待
国王はエリーゼたちに、二人や三人ではなく五人でも十人でもヴェンデリンの子を産むよう求めていた。ブライヒレーダー辺境伯は、それでも今の国王は温情がある方であり、別の王なら王族の女性を次々とヴェンデリンのもとへ送り込み、子供を産ませようとしても不思議ではないと説明した。
ヴェンデリンは、自分が魔法使いの血統を広げるための存在として扱われることに複雑な思いを抱いたが、すでに決まった婚約を悩み続けても仕方がないと気持ちを切り替えた。
父親としての育児
ヴェンデリンは領地開発やアグネスたちへの指導、当主としての仕事を続けながら、可能な範囲で育児にも参加しようとした。前抱き式の抱っこ紐とでんでん太鼓を職人に作らせ、庭でフリードリヒを抱いてあやした。
しかし、この世界では育児は女性の仕事という考えが強く、ローデリヒは伯爵当主が赤ん坊の世話をするべきではないと反対した。ヴェンデリンは新しい貴族の姿を示そうとしたが、エリーゼをはじめイーナ、ルイーゼ、ヴィルマ、カタリーナ、カチヤ、テレーゼ、リサ、アマーリエからも揃って反対された。
ヴェンデリンは、男性の育児参加を女性側からまで否定されたことに驚いた。一方、彼が考案した前抱き式の抱っこ紐はローデリヒから高く評価され、量産されて王国中へ広まることになった。
第三話 ヴェンデリン、浮かれる?
赤ん坊への求婚騒動
ヴェンデリンが仕事前に子供たちへ話しかけていると、屋敷の正門でベネケン男爵家の嫡男フロートが衛兵と揉めていた。フロートは約束もなく押し入り、ヴェンデリンの生まれたばかりの娘を成人後に妻として迎えたいと申し出た。
怒ったヴェンデリンは、フロートを従者ごと爆発魔法で門外へ吹き飛ばし、父親が迎えに来るまで牢へ入れた。後にフロートは嫡男の座を廃されたが、ヴェンデリンはその処分には関与しなかった。
アグネスたちの育児室訪問
土木工事ではアグネス、シンディ、ベッティが魔法の修練を兼ねて手伝っていた。仕事を終えた三人が赤ん坊を見たいと願ったため、ヴェンデリンは屋敷へ連れて帰った。
エリーゼたちは三人を歓迎し、出産後の体形や年齢、魔力量などを話題にした。アグネスたちはヴェンデリンの子供全員に魔力があることに気づき、驚いた。ヴィルマやカタリーナは、それが国王や大貴族たちによって伏せられている機密だと示し、ヴェンデリンにも軽率に他人へ見せるべきではないと注意した。
赤ん坊たちの魔法
アグネスたちが赤ん坊を抱いていると、フリードリヒが突然指先から小さな火の玉を放ち、壁を焦がした。ヴェンデリンは息子の才能を喜んだが、エルやリサは、無意識に魔法を使う赤ん坊を世話する危険性を指摘した。
さらにアンナやエルザを含む他の子供たちも一斉に魔法を放ち、水弾、カマイタチ、念力、火柱、氷弾、竜巻などが育児室に飛び交った。威力はまだ小さかったが、今後成長とともに強くなる可能性があり、ヴェンデリンたちは根本的な対策が必要だと認識した。
魔力吸着装置
リサは、幼い頃から魔力が多すぎて制御できない子供に使う魔道具があると説明し、ヴェンデリンたちは王都の魔導ギルドへ向かった。同行したのはリサ、テレーゼ、アグネス、シンディ、ベッティであった。
ベッケンバウアーは、魔力吸着装置が子供から少しずつ余分な魔力を吸収し、空の魔晶石へ蓄える装置だと説明した。魔力が満タンになった幼児は不快感から眠れなくなり、それを解消するため無意識に魔法を放つ場合があるため、適量を継続的に吸収すれば魔法の暴発を防げる仕組みであった。
ヴェンデリンは必要数を借り、子供たちの服に装着した。フリードリヒたちは魔力が落ち着くと、安心したように眠るようになった。
赤ん坊たちの魔力活用
魔力吸着装置に蓄えられた魔力は、魔道具の動力として再利用できた。ローデリヒはこれに目をつけ、バウルブルクの街灯へ魔力を補充する用途に使えると喜んだ。
街灯には空気中の魔力を吸収する装置が使われていたが、再現品は性能が低く、魔晶石による補充も必要であった。そのためローデリヒは、ヴェンデリンの子供たちが幼い頃から領地へ魔力を供給できることを歓迎し、さらに多くの子供を望んだ。
さらにローデリヒはアグネスたちにも今後の活躍を期待し、三人もヴェンデリンの弟子として力になると応じた。ヴェンデリンは、ローデリヒが赤ん坊まで領地発展へ活用しようとしていることに呆れ、彼の方が自分より貴族に向いていると感じた。
第四話 葬儀と総司教選挙
ホーエンハイム枢機卿のひ孫訪問
子供たちの首が据わる頃、ホーエンハイム枢機卿が屋敷を訪れ、フリードリヒを抱いて成長を喜んだ。エリーゼの体調も気遣い、跡取りとなる男児が無事に生まれたことに安堵していた。
さらに子供たちの本洗礼を、エリーゼの父フリッツと兄ザームエルに担当させると決めた。子供全員が魔力を持つ事実を隠すため、信頼できる身内だけで儀式を行う意図があった。
総司教就任の辞退
ホーエンハイム枢機卿は、自身が総司教になると、王家と婚姻関係を結ぶバウマイスター伯爵家の義祖父という立場も重なり、力を持ちすぎると警戒されるため、総司教を目指さないと明かした。
エリーゼはホーエンハイム子爵家の悲願を諦めることに驚いたが、ホーエンハイム枢機卿はひ孫たちの安全を優先し、総司教という地位そのものにも未練を見せなかった。
非公開の本洗礼
一週間後、ヴェンデリンは妻たちと子供たちを連れて王都へ向かった。ホーエンハイム子爵邸ではセバスチャンが出迎え、他の教会関係者と接触しないよう裏道から教会本部へ案内した。
総司教が重病で王都郊外の施薬院に滞在し、多くの教会幹部が次期総司教を巡ってそちらへ集まっていたため、本部には人が少なかった。ホーエンハイム枢機卿、フリッツ、ザームエル、セバスチャンだけが立ち会い、子供たちの本洗礼は短時間で無事に終わった。
エミリー・ケンプフェルト
洗礼後、ヴェンデリンはホーエンハイム枢機卿に連れられ、女性枢機卿エミリー・ケンプフェルトと対面した。彼女は王国最大の材木商であるケンプフェルト商会の一族で、女性としては異例の影響力を持つ枢機卿であった。
総司教が重篤となり、次期総司教選挙が迫る中、ホーエンハイム枢機卿が出馬しないことで多数の候補者が動き始めていた。力の弱い総司教が誕生すれば、影響力を得るためヴェンデリンやエリーゼに接近し、子供たちの秘密を探る危険があった。
次期総司教を巡る密談
ホーエンハイム枢機卿はケンプフェルト枢機卿に総司教選挙への出馬を求め、自分の派閥で支持すると約束した。その代わり、彼女には五年だけ総司教を務めてもらい、次は腹心のポーツァルへ地位を譲る構想であった。
ケンプフェルト枢機卿は条件を受け入れ、ヴェンデリンは二人による次期総司教を巡る密談を最初から最後まで聞くこととなった。
幼馴染の二人
ホーエンハイム子爵邸へ戻ると、ホーエンハイム枢機卿とケンプフェルト枢機卿が幼馴染だったことが明らかになった。二人にはかつて結婚話もあったが、ケンプフェルト枢機卿の姉が急死したため、彼女が家を継ぐ必要が生じて実現しなかった。
彼女は結婚して子供を育て、商会を支えた後、四十歳を過ぎてから本格的に教会へ入り、枢機卿まで上り詰めていた。
シュテファーニエとの婚約
ケンプフェルト枢機卿はフリードリヒを抱き、その将来性を認めると、自分のひ孫シュテファーニエを将来の側室候補として迎えてほしいと持ちかけた。
見返りとして、ケンプフェルト商会が持つ材木取引や盗伐対策の知識をバウマイスター伯爵領へ提供すると申し出た。ヴェンデリンはローデリヒと相談し、条件を受け入れたため、フリードリヒには二人目の婚約者が決まった。
その直後、総司教の死去が伝えられ、次期総司教を巡る選挙が本格的に始まった。
総司教の葬儀
一週間後、ヴェンデリンはエリーゼ、エルと共に総司教の葬儀へ出席した。他の妻たちは教会行事の堅苦しさなどを理由に辞退し、途中でブライヒレーダー辺境伯とブランタークも合流した。
葬儀には王族や大貴族、教会幹部が集まり、多額の香典が納められた。枢機卿たちによる長い説話の後、棺は火葬されることとなった。
導師による火葬
総司教の火葬役を任された導師は、強力な火魔法を放った。火力が強すぎたため、火葬後には骨がほとんど残らず、神官たちがわずかな遺骨を探すこととなった。
葬儀後、ヴェンデリンたちは導師と合流し、次期総司教を選ぶ選挙について話した。導師には王宮筆頭魔導師として投票権があったものの、候補者についてほとんど知らず、エリーゼの意見に従うつもりであった。
総司教選挙の候補者
葬儀から三日後、ヴェンデリンとエリーゼは総司教選挙の立候補宣言を見届けた。候補者はケンプフェルト枢機卿、ラングヤール枢機卿、ブュヒャー枢機卿、ゾルガー枢機卿の四名であった。
候補者たちはそれぞれ教会建築、書籍、聖堂騎士団などに強い支持基盤を持っていた。過半数を必要としない選挙であるため、当選だけでなく得票数そのものが今後の影響力を示す意味を持っていた。
ケンプフェルト枢機卿の支援パーティー
立候補宣言後、ヴェンデリンとエリーゼは、ケンプフェルト枢機卿を支援するパーティーに参加した。ホーエンハイム枢機卿との関係を示すため、ヴェンデリンも参加者たちに挨拶して回った。
ケンプフェルト枢機卿の周囲には多くの女性神官や一族の娘たちが集まり、ヴェンデリンにも積極的に話しかけた。ヴェンデリンは社交辞令の範囲で応対し、エリーゼも正妻として表面上は穏やかに振る舞った。
ホーエンハイム枢機卿は、この支援によってケンプフェルト枢機卿の勝利はほぼ確実になったと見ていた。パーティーを終えたヴェンデリンは、女性たちに囲まれたことで内心穏やかではないエリーゼを気遣い、屋敷へ戻る前に王都で二人きりの時間を過ごすことにした。
第五話 キャンディーさん、マジキャンディーさん!
キャンディーの洋品店
総司教選挙の支援パーティーを終えたヴェンデリンは、出産や育児で忙しいエリーゼの息抜きを兼ねて買い物に出かけた。訪れた洋品店の店主キャンディーは、ブランタークの旧知であり、かつて導師が所属した暁の夕暮れのリーダー、血まみれキャンディー本人であった。
キャンディーは筋肉質な男性の姿ながら自らを乙女と称し、冒険者時代から裁縫を得意としていた。引退後に洋品店を開き、客に似合う服を見立てる商売を始めていた。
エリーゼの新しい装い
当初はキャンディーの迫力に戸惑っていたエリーゼも、服選びを任せるうちに打ち解けた。キャンディーはエリーゼの髪色や体形に合わせ、これまでとは違う明るい色や大人びた服装を勧めた。
ヴェンデリンは勧められた服を購入し、エリーゼも喜んだ。キャンディーは他の妻たちの服も見立てると約束した。
ならず者への制裁
店の外では、ならず者が若い女性にわざとぶつかり、肩を外されたと因縁をつけて金を要求していた。キャンディーは女性を逃がし、元冒険者として肩が外れていないことを見抜いた。
それでも騒ぐならず者に対し、キャンディーは実際に両肩を一瞬で外してみせ、求められるとすぐに元へ戻した。さらに店を壊すと脅されたことで激怒し、ならず者を片手で吊り上げ、自分の店や周囲に手を出せば許さないと威圧した。ならず者は泣きながら逃げ去り、ヴェンデリンとエリーゼはキャンディーを怒らせてはいけないと痛感した。
ブランタークの旧友
屋敷へ戻ったヴェンデリンが一件をブランタークに話すと、彼はキャンディーが昔から女性に優しく、女性冒険者の面倒をよく見ていたと語った。裁縫や料理、接客にも優れ、魔法を使わない冒険者としては最強クラスの実力者でもあった。
エリーゼがキャンディーに選んでもらった服は妻たちにも好評で、ルイーゼたちも店に興味を示した。その一方、普段着に無頓着なカチヤは、次に服を見立ててもらうこととなった。
総司教選挙の投票
総司教選挙の投票日、ヴェンデリンはエリーゼとカチヤを連れて教会本部へ向かった。導師も投票権を持っていたが、候補者には興味がなく、エリーゼが選ぶ人物を聞くと即座に投票し、そのまま狩りへ出かけた。
教会本部では、ルックナー財務卿がラングヤール枢機卿を、エドガー軍務卿がゾルガー枢機卿を応援していた。二人とも当選を本気で狙うというより、過去の縁や組織間の関係から支援する姿勢を示すために動いていた。
ケンプフェルト陣営の茶会
投票を終えたケンプフェルト枢機卿は、ヴェンデリンたちを茶会へ誘った。そこには選挙運動を支えた若い女性神官や商家、下級貴族の娘たちが大勢集められていた。
ケンプフェルト枢機卿は、彼女たちをヴェンデリンやエルに引き合わせることで、その実家からの支持や援助を固めていた。ヴェンデリンとエルは若い女性たちに囲まれ、次第に楽しみ始めたが、エリーゼとカチヤの冷たい視線を感じたヴェンデリンは踏みとどまった。
一方のエルは複数の女性と連絡先を交換し、後で商取引に利用できると言い訳したものの、エリーゼからハルカへ報告すると告げられて肩を落とした。
カチヤとキャンディーの再会
投票後、一行はキャンディーの洋品店へ向かった。カチヤが店を嫌がった理由は、駆け出し冒険者時代からキャンディーに服装を注意されていたからであった。
キャンディーは、可愛いのに服へ無関心なカチヤを以前から気にかけていた。カチヤは冒険者としての助言なら受け入れるものの、私服まで口を出されることには抵抗していた。
エルへの服装と鍛錬指導
初対面のエルを気に入ったキャンディーは、護衛中であるという抵抗を無視して店の奥へ連れ込み、男性用の服を試着させた。選ばれた服はエルによく似合い、バウマイスター伯爵家の重臣として相応しい装いとなった。
さらにキャンディーは、エルの胸を軽く突いただけで姿勢を崩させ、剣を持つ右側に比べ左側が弱いことを見抜いた。剣士として左右の筋力差を小さくするよう助言し、エルもその指摘には素直に耳を傾けた。
カチヤのゴスロリ服
本来の目的に戻ったキャンディーは、カチヤのために自作した黒を基調とする華やかな服を用意した。細かな刺繍や装飾を施したその服はカチヤによく似合い、ヴェンデリンとエリーゼも高く評価した。
キャンディーはこの服を商品化し、貴族令嬢や若い妻を対象に販売する計画を立てていた。カチヤはその後も多数の服を試着させられ、まとめて購入することとなった。
その後、イーナたちもキャンディーの店の常連となり、エルもハルカ用に同系統の服を注文したため、その服装は女性たちの間で広まっていった。
ケンプフェルト総司教の誕生
総司教選挙は事前の予想どおり、ケンプフェルト枢機卿が当選した。ホーエンハイム枢機卿は総司教にならなかったものの、教会を陰から動かす人物と見られるようになった。
その影響力によってバウマイスター伯爵家への余計な干渉も抑えられ、ヴェンデリンたちは皮肉ながら平穏を得ることとなった。
第六話 フジバヤシ家の副業と、謎じゃないけど美少女店長
タケオミの来訪
ハルカの兄で次期フジバヤシ家当主のタケオミが、甥レオンへの出産祝いと、バウルブルクに開く支店の下見を兼ねて訪れた。フジバヤシ家はミズホ茶や海苔、昆布、ワカメなどの販売で成功し、副業として始めた商売を拡大していた。
タケオミはレオンのためにカネサダ作の刀を贈り、ハルカの無事を喜んだ。一方、ゴスロリ服姿のハルカを見て、いまだ彼女を奪った相手としてエルに敵意を向けた。
支店長アキラ
タケオミは、バウルブルク支店を任せる親戚のアキラを紹介した。小柄で華奢な黒髪のアキラは少女のように見えたため、ヴェンデリンたちは女性だと思い込んだが、実際には男性であった。
アキラは刀術と古戦術を修めた実力者で、商売の腕も高かった。しかし本人は屈強で男らしい男性を目指している一方、肌も髪も美しく、筋肉もつきにくいため、周囲からは女性以上に可憐だと評された。
フジバヤシ乾物店の繁盛
アキラが店長を務めるフジバヤシ乾物店は、ミズホ茶や海苔、乾物の販売で早々に賑わった。アキラは試飲や試食を積極的に行い、男性客を中心に多くの固定客を集めた。
ヴェンデリンも新茶や高級海苔、フリカケ、餅、小豆などを大量に購入した。本人は商品目当てだと主張したが、ルイーゼやヴィルマからはアキラに釣られているのではないかと疑われた。
佃煮の商品化
アキラは乾物だけでなく、ミズホ産や地元産の食材を使った佃煮も販売し始めた。パライソウの新芽やキノコ、小ブナ、ドジョウなどを使った商品を開発し、保存食として冒険者たちにも人気を得た。
研修に訪れたキャンディーも料理や接客を手伝い、男性客にはアキラ、女性客にはキャンディーが対応する形となった。二人の接客と料理の腕によって、店はさらに繁盛した。
キャンディーとの再会
ヴェンデリンが導師、ブランターク、エルと魔の森で狩りをした帰りに店へ寄ると、導師とブランタークはキャンディーと再会した。
キャンディーは導師をロンちゃんと呼び、若い頃は女性にすぐ惚れたり、冒険者と喧嘩して警備隊の世話になったりしていた過去を語り始めた。導師は珍しく大人しくなり、これ以上話されないよう慌てて話題を変えた。
新商品の開発
アキラは鮮魚店を営むデリアとも協力し、魚の味噌漬けや一夜干し、塩辛、練りウニなどを試作した。ブランタークと導師は味噌漬けや干物を肴に酒盛りを始めたが、キャンディーに飲みすぎを注意されると素直に従った。
さらにアキラは、ヴェンデリンの要望から簡易的な味噌汁も試作した。魔法の袋を持たない冒険者には保存や持ち運びに課題が残ったものの、湯を注ぐだけで食べられる点は便利であった。
立ち飲み居酒屋
店先で導師とブランタークが酒と肴を楽しむ姿から着想を得たアキラは、乾物店の隣に立ち飲み居酒屋を開いた。
水菜のお浸し、ヒジキの煮物、キンピラ、魚料理、天ぷら、酒蒸しなど、ミズホ風の料理を多数揃え、持ち帰りにも対応した。キャンディーも料理を担当し、店は労働者を中心に繁盛した。
男色疑惑
アキラ目当てで通う男性客が増え、ヴェンデリン自身も頻繁に店へ足を運んでいたため、王都ではヴェンデリンがアキラに執心しているという噂が広がった。
当初はアキラを女性だと思った者も多かったが、彼が男性だと知られると今度は男色疑惑へ変化した。ホーエンハイム枢機卿から直接確認され、ヴェンデリンは美味しい商品が目的で通っているのだと長時間説明する羽目になった。
アキラとデリアの結婚
フジバヤシ乾物店が総菜や魚料理まで扱うようになった頃、アキラはデリアとの結婚を発表した。毎日の取引を通して親しくなり、そのまま結婚することになったのである。
さらに、少女のような外見から若く見られていたアキラが二十三歳目前で、二十一歳のデリアより年上だと判明し、ヴェンデリンたちは驚いた。
披露宴の料理
ヴェンデリンはアキラとデリアの披露宴に出席したがったが、伯爵本人が現れると主役を食ってしまうため断念した。代わりにハルカが披露宴の料理を取り置くよう頼み、屋敷へ届けてもらうことになった。
刺身、鯛の塩焼き、天ぷら、カニ、鯛飯、ケーキなど豪華な料理が届き、ヴェンデリンたちは二人の結婚を祝いながら心ゆくまで味わった。
アキラの独立
結婚後もアキラとデリアは仕事を続け、アキラはフジバヤシ乾物店のフランチャイズ化を進めた。これによってフジバヤシ家はミズホ産食材の卸売りで利益を得続け、アキラも円満に独立できる形となった。
デリアの鮮魚店も王都から人員を補充し、夫婦それぞれの店を維持する体制が整えられた。
総合商店への発展
アキラは最後の拡張として、精肉店、鮮魚店、青果店、乾物店、総菜店、食堂、居酒屋、生活雑貨店などを一ヵ所に集める計画を立てた。
各種ギルドの影響がまだ弱い新興都市バウルブルクだからこそ可能な形であり、一ヵ所で必要な物が揃う利便性から大盛況となった。フジバヤシ乾物店は家賃収入も得るようになり、後に大陸各地へ展開する総合食料品店フジバヤシ屋の礎となった。
一方、オーナーのタケオミは事業拡大にほとんど口を出さず、アキラに任せ続けていた。
第七話 人類は麺類(前編)
新蕎麦の振る舞い
新蕎麦の季節を迎え、フジバヤシ乾物店はミズホから蕎麦職人を呼んで臨時の蕎麦店を開いた。定休日にはアキラが職人たちをバウマイスター伯爵邸へ連れ、ヴェンデリンたちに打ち立ての蕎麦や天ぷら、惣菜を振る舞った。
導師とヴィルマは大量に蕎麦を食べ続け、職人たちを忙しくさせた。アキラは乾麺や出汁入りのツユも販売すると宣伝し、将来的には蕎麦を王国各地へ普及させる構想も語った。
蕎麦とミズホ食材の商売
アキラは王都の生パスタ職人に蕎麦打ちを教える予定であり、ミズホ式の蕎麦が広まれば、ツユに必要な醤油、昆布、カツオブシなどの需要も増えると考えていた。
さらにミズホ風の具材を使ったパスタや、乾麺を利用した立ち食い店や屋台まで視野に入れ、将来的には王国内で乾麺を製造して価格を抑える構想も持っていた。ヴェンデリンは、技術を広めながら自らの商売にも繋げるアキラの手腕に感心した。
王都飲食店の視察
アキラは王都で急速に変化している飲食店事情を調べたいと考え、ヴェンデリンに瞬間移動で連れていってほしいと頼んだ。ヴェンデリンも興味を持ち、領内の飲食産業発展を名目に三日間の視察を行うことにした。
同行者にはエリーゼ、エル、ヴィルマ、カチヤ、アマーリエ、ルイーゼ、アグネスたちが選ばれ、アキラは新婚のデリアも連れていった。留守中の領地開発や育児は、残った妻たちやリサ、テレーゼが担当することになった。
導師とキャンディーの同行
王都では庶民的な飲食店に詳しい導師が案内役となった。そこへ事業の参考にしたいキャンディーも合流すると、導師は昔から頭が上がらない相手を前に急に大人しくなった。
キャンディーはエリーゼたちともすでに親しくなっており、導師は若い頃の失敗談を知られているため、彼女が同行することに警戒していた。
貧民街のモツ料理店
導師が最初に案内したのは、貧民街にあるモツ料理店であった。安価なモツを丁寧に下処理しているため臭みがなく、煮込みは塩味だけでなく味噌味や醤油味も用意されていた。
さらに卓上で焼くモツ焼きも人気で、導師は調味料ごとに焼き分けながら酒と一緒に楽しんだ。キャンディーは飲みすぎないよう監視し、導師は素直に従った。
ヴェンデリンは、味噌や醤油が王都の庶民向け店舗にまで普及し、それぞれの店が新しい味を作って競争していることを実感した。
新たなモツ煮込み
店を出たあと、エリーゼとアキラは料理の改良について話し合った。アキラは味噌仕立てにして、サトイモ、大根、ニンジン、コンニャク、豆腐、キノコ、ショウガなどを加えて煮込む案を出した。
ヴェンデリンは七味とネギも加えるよう提案し、完成する料理を楽しみにした。
ベッティの兄の繁盛店
続いて一行は、以前ヴェンデリンが助言したベッティの兄の店を訪れた。店は以前より繁盛し、借金返済も順調で、従業員も増えていた。
モツやスジ肉を使った料理に加え、味噌や醤油を使ったパスタなど新しいメニューも増えていた。ただし価格設定や販売方法の工夫は妻ローザの助言によるものが大きく、ベッティも兄より義姉を信用していた。
ローザの新店舗
ローザはすでに二店舗目を開き、夫が考案した汁なし麺料理を中心に販売していた。少量サイズも用意し、手軽に食べられる庶民料理フォンと競合する形で客を集めていた。
ローザは、王都では新しい麺料理が次々と登場しており、古くからのフォン専門店が客を奪われて閉店する例も出ていると説明した。新参店が生き残るには、常に新しい味を出す必要があると考えていた。
衰退するフォン料理店
一行は、かつて導師やルイーゼ、ヴィルマが通った老舗フォン料理店にも足を運んだ。以前は繁盛していた店内には客がほとんどおらず、味そのものは変わっていなかった。
ヴィルマは、味が落ちたのではなく周囲の料理が美味しくなったため、相対的に魅力が薄れたのだと指摘した。店主も危機感を抱いていたが、フォンしか作れず、新しい味を始める決断が遅れていた。
店主の苦境
店主は味噌味や醤油味のフォンも考えたが、他店がすでに始めていたため、今さら真似ても客は戻らないと悩んでいた。導師は未完成でも早く新しい味を出すべきだったと厳しく指摘し、店主はさらに落ち込んだ。
それでも導師は、このまま何も言わなければ店が潰れるだけだと主張した。
ヴィルマの頼み
かつて食べ物に困っていた頃、この店に世話になったヴィルマは、閉店の可能性を聞いて涙を浮かべた。彼女はヴェンデリンに店を助けてほしいと頼んだ。
ヴェンデリンは麺料理の立て直しに自信がなかったが、キャンディーとアキラも協力できると申し出たため、再び店の再建に助言することになった。
第八話 人類は麺類(後編)
フォン料理店再建への協力
ヴィルマが昔世話になった老舗フォン料理店を助けてほしいと頼んだため、ヴェンデリンは三日間の王都飲食店巡りを中止し、店の再建に取り組むことにした。ローデリヒは事情を理解して認めたが、近くで店を営むベッティの兄への影響も問題となった。
ベッティたちは兄の店まで苦しくなると訴えたため、ヴェンデリンは両方の店を支援し、競合しても共存できる仕組みを作ることにした。
飲食店街の構想
ヴェンデリンはアキラ、ローザ、アルテリオ、リネンハイムらを集め、老舗フォン料理店周辺の地図を調べた。この地区は住宅地と工房街の中間にあり、立地が中途半端なため多くの飲食店が潰れていた。
そこでヴェンデリンは、空き店舗や瑕疵物件をまとめて確保し、様々な麺料理店を同じ地区に集中させることで、店そのものを目的に客を呼び込む計画を立てた。リネンハイムには物件の確保と管理、アルテリオには食材供給や出店者の手配を任せた。
瑕疵物件の除霊
地区には悪霊のため利用できない物件もあり、老舗フォン料理店の店主も三軒所有していた。それらは曽祖父が四人の息子を競わせた結果、店を潰した三人が未練を残して悪霊となったものであった。
ヴェンデリンは店を侮辱して悪霊を誘い出し、エリーゼの聖壁で弱らせたあと聖光で浄化した。他の瑕疵物件も同様に祓い、リネンハイムが中古設備や職人を手配して、十店舗ほどを営業可能な状態へ改装していった。
麺料理ストリート
ヴェンデリンは、複数の麺料理店を集中させることで地区全体に客を呼び、各店同士を競争させる構想をアルテリオに説明した。軽食、菓子、喫茶店なども加え、家族連れやデート客も呼び込む計画であった。
多くの店舗は賃貸とし、繁盛しない店は契約を更新せず入れ替えることで地区全体の質を保つ方針となった。成功すれば王都の別地区でも同様の形態を展開できると考えていた。
アキラの二店舗
アキラは隣接する二店舗を借り、一方を富裕層向けのミズホ料理店、もう一方を庶民向けの蕎麦とうどんの店にすることにした。庶民向け店舗には立ち食いスペースも設け、近隣工房で働く者を主な客として想定していた。
第一号店を成功させることで後続の出店を呼び込み、地区全体を発展させようとしていた。
ラーメンの開発
ベッティの兄には、ヴェンデリンがラーメンの基本的な考え方を伝えていた。彼は猪、豚、魔物の骨を使い、臭みを消しながら安定したスープを完成させた。醤油ダレや猪肉のチャーシューも作り、残る課題は麺となった。
ラーメン用の麺は老舗フォン料理店に任せた。店主と五人の息子は長年フォンの麺を打っており、さらに蕎麦やうどん職人から学びながら製麺技術を高めていた。
製麺所への転換
老舗フォン料理店は、自店だけでなく地区内の各麺料理店へ麺を卸す製麺所も兼ねることになった。店主と息子たちは複数の店舗に分かれ、フォン料理店と製麺所を運営する計画を立てた。
かん水は存在しなかったが、ミズホの一地方で使われていた木灰水を利用して中太麺を作った。これをベッティの兄が作ったスープと合わせ、醤油トンコツ風のラーメンが完成した。
完成したラーメン
ヴェンデリンが試食すると、完成したラーメンは前世で親しんだ醤油トンコツに近い味となっていた。ベッティも兄の仕事を初めて素直に褒め、兄は涙を流して喜んだ。
ベッティの兄はさらに改良を続けることになり、ローザが経営面を支えることで新しいラーメン店を任されることになった。
麺料理街の開業
三日後、麺料理店を集中させた地区が開業した。アルテリオが周辺に地図や価格を載せたチラシを配り、初日から工房の労働者や家族連れが大勢訪れた。
蕎麦、うどん、ラーメン、パスタのほか、喫茶店や焼き鳥、から揚げ、サンドウィッチ、ハンバーガーなどの軽食店も並んだ。老舗フォン料理店では製麺の実演を見せ、それに興味を持った客が店内にも入るようになった。
新フォン
老舗フォン料理店では、従来の塩味に醤油味と味噌味を加えた新フォンを販売した。麺は木灰水を使った太麺となり、汁なし麺のようにタレと油を絡め、野菜や猪肉の角煮を載せる料理へ変わっていた。
ヴィルマは昔ながらの塩味を選び、十分に改良されていることを確認した。店主は塩味を主力として残したいと悩んでいたため、ヴェンデリンは燻製塩や香味油を利用する方法を提案した。
塩味フォンの改良
ヴェンデリンは塩を燻製し、エビやトウガラシなどを使って香味油を作り、塩味の新フォンに加えた。完成した料理は香りと味に変化が生まれ、店主やエル、ヴィルマから好評を得た。
店主は、伝統を守るだけではなく、同じ料理でも研究と改良を続けなければならないと痛感した。息子たちの店舗では焼きそばも販売され、アキラも対抗して焼きうどんを始めた。
麺料理ストリートの繁栄
各店舗には徐々に常連客が増え、新しい店も参入するようになった。客が増えることでさらに店が増え、それがまた客を呼ぶ好循環が生まれた。
寂れていた地区は麺料理ストリートとして定着し、同じ形態の地区は後に王国だけでなく帝国の都市にも広がっていった。
屋敷での新麺料理
王都から戻ったヴェンデリンは、同行できなかった妻たちに新しい麺料理を振る舞った。アマーリエが作った濃いめのシチューとラザーニェ型のパスタ、チーズを組み合わせて焼き上げた料理を作り、好評を得た。
さらに揚げパスタ、揚げ蕎麦、冷製パスタ、冷たい蕎麦とうどん、蕎麦がきなども試食した。これらも将来、麺料理ストリートの新メニューとして利用することを考えていた。
ローデリヒの追及
ヴェンデリンが麺料理の再建に夢中になっているところへ、ローデリヒが現れた。本来三日間の休暇だったはずが、ヴェンデリンは二週間近く王都に滞在し、大規模な商業地区まで作り上げていた。
他の魔法使いたちが代わりに土木工事を進めていたものの、ヴェンデリンにしかできない大規模工事は止まっていた。ローデリヒは遅れを取り戻すため、当分休みはないと告げた。
ヴェンデリンは反発したが聞き入れられず、王都へ麺を食べに行くことまで制限された。その結果、しばらく領地開発に専念することになったが、工事現場でも麺料理が振る舞われるようになり、それをきっかけに王国各地へ新しい麺料理が広まっていった。
巻末おまけ 世界が違っても、同じような料理を考える人がいる with メイドたち
新たな麺料理の試食
ヴェンデリンは、王都の麺料理地区に新しく開店する店の試食へ、導師、ヴィルマ、カタリーナ、ドミニク、レーアを連れて出かけた。大量の料理を平然と食べる導師とヴィルマだけでは一般客の評価にならないため、他の三人にも率直な感想を求めるためであった。
店は、父の急死を機に冒険者を引退したダットマンが継いだものであった。現役時代にキャンディーから料理を教わっており、後輩の元冒険者たちにも技術を教え、将来は暖簾分けするつもりであった。
ダットマンとキャンディー
店にはキャンディーも手伝いに来ていた。レーアは以前から彼女と親しく、ドミニクは初対面の姿に戸惑った。導師は若い頃にキャンディーと同じパーティで活動し、酒や喧嘩の後始末までしてもらっていたため、彼女の前では珍しく大人しくしていた。
ダットマンは父に反発して冒険者となったものの、父の死を機に自分が料理を一番好きだったと悟り、店を成功させようと決意していた。
洗面器のような一杯
ダットマンが出した新料理は、ラーメンを基にした極端な大盛り麺であった。洗面器ほどの器に太麺が三人前ほど入り、大量のスープ、山盛りの茹で野菜、分厚いチャーシューが載せられ、刻みニンニクも自由に追加できた。
ヴィルマと導師は喜んだが、カタリーナ、ドミニク、レーアは量に圧倒された。ヴェンデリンは、麺が伸びないように下の麺と上の野菜を入れ替える天地返しを行い、他の者たちも真似した。
大盛りとの格闘
ヴェンデリンは完食したものの満腹となり、ヴィルマと導師は平然とおかわりを求めた。レーアも意外な食欲を見せて完食し、さらに神から与えられた食事を残せないと苦しむドミニクの残りまで食べきった。
カタリーナも一度完食すると宣言した意地から食べきったが、満腹で歩けなくなり、帰りは飛翔魔法で地面から浮いて移動することになった。
女性と子供向けの量
ダットマンから改善点を聞かれたヴェンデリンは、女性や子供向けに半分ほどの量を用意するよう提案した。ダットマンも、すべての客が通常量を完食できるわけではないと納得した。
レーアたちは、試食前にそれを言ってほしかったと内心で思うことになった。
バウルブルクへの出店
その後、大盛り麺料理の店は人気を集め、王都で支店や類似店が増えていった。キャンディーもダットマンと組み、引退した冒険者が店を開けるよう支援を始め、自身もアキラと協力してミズホ食材や惣菜を扱う店を王都で展開した。
やがてバウルブルクにも大盛り麺料理の店が開店することになった。カタリーナは以前の苦しさを理由に懸念を示したが、実際には再び食べたい気持ちを隠しきれなかった。
再び求める味
ドミニクもレーアに付き合うという形を取りながら、再び店を訪れようとした。二人とも最初に食べた直後は二度といらないと思ったものの、時間が経つと再び食べたくなっていた。
バウルブルクの店は多くのリピーターを集めて繁盛しており、ヴェンデリンもアルテリオと店を訪れていた。アルテリオは料理の魅力に半信半疑だったが、レーアは、ドミニクさえ再び求めた味なのだから、いずれ彼も虜になると考えていた。
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