- バウマイスター辺境伯家
- ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
- エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
- イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
- ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
- ヴィルマエトル・フォン・アスガハン
- カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル
- テレーゼ・フォン・フィリップ
- カチヤ・フォン・アスガハン
- リサ・プレンツェル
- アマーリエ・フォン・マインバッハ
- フィリーネ・フォン・ブライヒレーダー
- アグネス・フュルスト
- シンディ
- ベッティ
- アーシャ・フォン・ザンス
- エルヴィン・フォン・アルニム
- ハルカ・フォン・アウババ
- フリードリヒ・フォン・ベンノ・バウマイスター
- アンナ
- レオン
- 藤子
- ルル
- マーガレット
- ローデリヒ
- アルテリオ
- 秋津洲涼子
- 細川雪
- 松永唯
- ヘルムート王国(王宮・地方貴族・軍)
- ザンス子爵家(ガトル大陸・エルフ族)
- アーカート神聖帝国
- ゾヌターク王国(魔族)
- 古代魔法文明
- 登場集団
物語の概要
■ 作品概要
本巻は、ガトル大陸の魔物の領域解放が一時停止し、主人公ヴェンデリン(ヴェル)がノースランドのバウマイスター特区において「育休」と「領地開発」を両立させる平穏な日常から幕を開ける。
しかし、この個人的な休息は、世界構造を根底から覆す歴史的発見によって無残に中断されることとなる。
物語の中核を成すのは、ヘルムート王国・アーカート神聖帝国の連合船団が「東」から、そしてゾヌターク王国(魔王エリーら)が「西」から未知の東大陸(イースト大陸)へと到達し、同一地点で遭遇した事実である。
これにより世界が球体であることが数学的・地理的に証明された。ヴェンデリンは三勢力の調停役として不本意ながら「東の大陸総督」に任命されるが、功績を焦ったサーフェス侯爵らによる内陸部への無断侵入が、未知の防衛機構を起動させてしまう。
出現したのは、従来の魔物とは一線を画す「兵器型の魔物」であった。
甚大な損害を被った人類側は、暫定的な分割条約を締結した状態で大陸からの全軍撤退を余儀なくされる。本作は、個人の平穏を願う主人公が、国家間の政争とロストテクノロジーの脅威というマクロな渦中へと強制的に引きずり込まれる「世界観拡張の架け橋」となる一巻である。
■ 主要キャラクター
- ヴェンデリン(ヴェル): バウマイスター辺境伯。育休を謳歌する予定が、特区開発の成功とイースト大陸発見に伴い、三ヵ国の利害を調整する「イースト大陸総督」という重職を押し付けられる。
- アーシャ: ザンス子爵の娘。ヴェンの新たな妻。先祖は世界樹を研究していた「学者」であり、その血統ゆえに高い魔法適性を持つ。帝都での激辛料理挑戦を完食するほどの激辛好き。特区では看板娘として射的屋を切り盛りする。
- ヴァルド殿下: ヘルムート王国太子兼ガトル大陸総督。目立たない自覚があるが、ヴェンの開発能力を「親友」として公私ともに頼りにしている。特区の急成長による他地区との格差に頭を悩ませる。
- エリー(魔王): ゾヌターク王国の指導者。西方探索中にイースト大陸を発見し、世界球体説を証明する立役者となる。外交交渉においてはヴェンと「個人所有地」案を通じて協力関係を築く。
- サーフェス侯爵: 王国の貴族。軍務卿への返り咲きを狙う野心家。イースト大陸独占を企てて内陸部に無断進出するが、覚醒した防衛用魔物の襲撃を受け死亡する。
- 導師(アームストロング): 王宮筆頭魔導師。青い竜の討伐や、撤退戦における「兵器型魔物」の死体回収など、一貫して物理・魔法両面での主力として活躍する。
書籍情報
八男って、それはないでしょう! 31
著者:Y.A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
出版社:KADOKAWA(MFブックス)
発売日:2025年11月25日
ISBN:9784046854674
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あらすじ・内容
開拓の合間に新婚旅行!
ヴァルドがガトル大陸の総督となり、ノースランド中央を開拓の立役者であるヴェルに与えバウマイスター特区と定めた。
ヴェルはアーシャとの新婚旅行から戻るや開発に従事し著しい成功を収めていく。だが成功の裏で、それにあやかろうとする他の貴族たちが連日ヴェルの屋敷を訪れるという弊害が発生する。
そこでヴェルは空き倉庫に高級かき氷店兼子供の遊び場、つまりは隠れ家を作りそれらをやり過ごす日々を送るのだった。
一方、世界は新天地獲得の動きを強める。王国と帝国は東に新大陸を求め、エリーたちゾヌターク王国の面々は西へと探索に出た。そしてこの三者が一つの大陸で交わったことで、世界は球状であることが判明する。そしてこの三国に顔が利くとして、自然とヴェルが東の大陸の総督に任じられてしまうのであった……。
感想
アーシャという新しい嫁が増え、結婚式も新婚旅行も無事に終了。
今度こそヴェルは育休へ戻れる。
……はずだった。
ノースランドのバウマイスター特区で子供たちと暮らし、多少仕事をしながらも育児優先。写真館やスーパー銭湯、飲み屋街まで作っているので、育休とは何なのか少し怪しくなっているが、本人としてはまだ許容範囲らしい。
ところが、東方探索中の巨大魔導飛行船リンガイアが未知の大陸を発見。
その前に、とんでもなく強い青い竜が立ちはだかった。
そこで呼ばれるのが、
ヴェル。
導師。
ブランターク。
いつもの野郎3人組。
しかも呼び出したのが、あのベッケンバウアー。
新開発の簡易移動魔法陣板で送るという。
人間で試すのは今回が初めて。
マッドな人に呼ばれて、実験台みたいな扱いで新大陸へ単身赴任。
育休とは。
アーシャと結婚して育休再開……と思ったら、ベッケンバウアーから緊急招集
前半はかなり平和だった。
アーシャを正式に家族へ紹介。
ノースランドで結婚式。
王都、帝都、ミズホへ新婚旅行。
その後はバウマイスター特区で子供たちと生活する。
ヴェル自身も、
完全な育休が無理なら、仕事を減らしながら育児すればいい。
くらいに妥協している。
ところがこの人、仕事を減らしているはずなのに特区を発展させすぎる。
写真館。
総合体育館。
射的。
スーパー銭湯。
飲み屋街。
さらには隠れ家のような高級かき氷店まで作る。
普通に働いてるじゃん。
しかもヴァルド王太子からは、ガトル大陸開拓でもどんどん頼られる。
ヴェルが仕事から逃げようとするほど、
「こいつ便利だな」
と周囲からの評価が上がっていくのが酷い。
そんな中、ようやく子供たちと積み木で遊んでいたところへベッケンバウアーから連絡。
リンガイアが東の大陸を発見したが、青い竜が邪魔して上陸できない。
だから、
ヴェル。
導師。
ブランターク。
行ってこい。
となる。
またこの3人か。
そして簡易移動魔法陣板で転送されたら、
リンガイアの船内ではなく空中。
しかも目の前には青い竜。
いきなり実戦。
ベッケンバウアー、やっぱりマッドだな。
青い竜を倒したら帰れない。いつもの野郎3人組で新大陸に単身赴任
青い竜もかなり厄介だった。
吐き出す謎の液体は魔法障壁だけでなく、岩や武器まで溶かしてしまう。
しかも自分の傷に使えば回復する。
便利すぎるだろ。
そこでヴェルたちは、液体にも限りがあると考えて、魔法の袋に入っている不要品をひたすら投げつける。
岩。
古い武器。
その他いろいろ。
新大陸最初のボス戦なのに、
相手の回復アイテムを使い切らせるためのゴミ投げ大会みたいになっている。
最終的には導師が残った液体を魔法障壁で耐えながら突破し、オリハルコンの槍を頭へ突き刺して討伐。
やっぱり最後はマッスルだった。
これで任務完了。
帰ろう。
……帰れない。
ヴェルは大陸の正確な位置を知らないので《瞬間移動》できない。
簡易移動魔法陣板は、人間を送ると転送位置がズレる不具合がある。
再使用禁止。
その結果、
育休中のヴェル。
ブライヒレーダー辺境伯家所属のブランターク。
そして導師。
3人揃って新大陸に取り残される。
単身赴任開始。
導師だけは楽しそうなのが腹立つなw
しかもヴェルは現地で建物を作り、物資を運び、帝国側との交渉にまで参加する。
正式な調査団長は別にいるのに、相手側の代表が伯爵なので、
「辺境伯のヴェルが交渉した方がいい」
となる。
気がつけば実質的な責任者。
いつものパターンじゃないか。
現地には来ないのに利権は欲しい。全部取ると恨まれるから分けるしかない
今回印象に残ったのは、新大陸の利権を巡る貴族社会の面倒くささである。
王国と帝国は同じ大陸へほぼ同時に到着した。
普通に考えれば、
先に全部取った方が勝ち。
となりそうなものだ。
実際、本国にいるサーフェス侯爵は、
帝国を追い出せ。
東の大陸を全部王国領にしろ。
と騒いでいる。
じゃあ自分で来いよ。
現場では青い竜が出た。
内陸には大量の魔物反応。
補給にも時間と金がかかる。
なのに安全な王都から、
「気合で帝国を追い出せ!」
無茶言うな。
ヴェルが通信を切りたくなるのも分かる。
一方でヴェルも、
帝国を追い出して王国が総取り。
という選択はしない。
王国はすでにガトル大陸の開拓だけでも人手不足。
東の大陸まで独占しても管理できない。
そして何より、全部自分たちで取ってしまえば後から揉める。
これはヴェル自身の商売でも同じだった。
王都ではすでに多くの利権を得ているため、これ以上新しい商売を独占すると他の貴族との軋轢が強くなる。だから現在は南部や自領、新大陸へ軸足を移している。
取れるから全部取る。
ではない。
取れるけど、後が怖いから分ける。
世知辛いな。
現場に来ない貴族たちにも、ある程度は利益が回るようにする。
そうしないと今度は妨害される。
強くなっても金を持っても、大貴族になっても自由にはならないんだな。
世界一周して魔王様と再会。気づけばイースト大陸総督って、仕事増えてるじゃん
さらに面白かったのが、東へ向かった王国と帝国だけでは終わらなかったこと。
ゾヌターク王国を作ろうとしているエリーたちは、共和国から西へ向かって新天地を探していた。
そして彼女たちも新大陸を発見。
探索中に導師と遭遇する。
え?
東へ進んだヴェルたち。
西へ進んだエリーたち。
同じ大陸に着いた。
つまり、
世界は球体だった。
ここで一気に世界地図がつながるのは面白かった。
ただ、ヴェルにとっては面白がっている場合ではない。
ヘルムート王国。
アーカート神聖帝国。
将来のゾヌターク王国。
三勢力が同じ大陸へ来てしまった。
そして三者すべてと話ができる人物は誰か。
ヴェル。
はい。
イースト大陸総督就任。
育休中だぞ。
本人も辞めたがっているのに、国王だけでなくペーターとエリーまで、
「ヴェルが適任」
で一致。
逃げ道を塞ぐなw
しかも現地に来ずに大陸独占を叫んでいたサーフェス侯爵は、自分で勝手に内陸へ進出した結果、火球を撃つ巨大ナメクジや狼型の魔物に襲われて全滅する。
さらにその行動が引き金になり、大量の兵器のような魔物が沿岸部へ押し寄せ、せっかく結んだ分割協定直後に全軍撤退となってしまった。
ヴェルも、
これで総督を辞められる。
と思う。
甘かった。
青い竜を倒した。
帝国と揉めずに交渉した。
三勢力の分割案をまとめた。
墜落した帝国船の生存者まで救助した。
「十分働いているから続投」
ですよね。
結局31巻も、
嫁が増える。
育休を取る。
マッドな研究者に呼ばれる。
野郎3人で新大陸へ飛ばされる。
帰れなくなる。
外交をやらされる。
総督になる。
という流れだった。
ヴェルは仕事を減らすために育休を取っているのに、育休に入るたび仕事の規模が大きくなってないか?
もうこの人の場合、
「育休を取る」
が次の大事件のフラグに見えてきたw
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ストーリー・プロット
ガトル大陸の暫定統治と平穏な日常から始まった事態は、新大陸の発見と三勢力の利害衝突、そして未知の防衛機構の暴走を経て、決死の撤退作戦へと発展した。各幕における出来事の推移と因果関係について以下に記述する。
第1幕:ガトル大陸の統治と平穏な日常
- 原因:ガトル大陸の領域解放が開発速度の限界により一時停止したことである。
- 行動:ヴェンがアーシャを家族に紹介し、王太子ヴァルドがガトル大陸総督に就任した。
- 結果:ヴェンはバウマイスター特区の開発指揮を任され、理想の育休生活を開始した。
- 次の展開:特区の急速な発展が周辺地区との経済格差を生み出すこととなった。
第2幕:バウマイスター特区の急成長と隠れ家
- 原因:ヴェンの魔法と現代知識によるインフラ整備が成功し、特区に富が集中したことである。
- 行動:ヴァルドの不満と他貴族の陳情を回避するため、空き倉庫で高級かき氷店を試験営業した。
- 結果:特区は商業都市として大成功を収めるが、ヴェンの多忙化は加速した。
- 次の展開:王国の巨大飛行船リンガイアが東方で未知の大陸に到達した。
第3幕:東の大陸発見と青い竜の討伐
- 原因:リンガイアが東の大陸を発見するも、強力な青い竜に上陸を阻まれたことである。
- 行動:王国が主導権を握るため、ベッケンバウアーの簡易移動魔法陣板でヴェンらを強制転送した。
- 結果:導師らの活躍で竜を撃退し上陸に成功するが、ヴェンらは現地に足止めされた。
- 次の展開:西から現れたゾヌターク王国船団と合流し、世界の真実が判明した。
第4幕:三勢力集結とイースト大陸総督就任
- 原因:ゾヌターク王国が西方から到着し、王国や帝国と遭遇して世界が球体であることを証明したことである。
- 行動:三ヵ国の調整役としてヴェンがイースト大陸総督に任命され、領土分割交渉を開始した。
- 結果:暫定的な分割案で合意するが、現地を知らない本国貴族の強硬論が火種となった。
- 次の展開:サーフェス侯爵が開拓団を率い、内陸部への独断進出を強行した。
第5幕:サーフェス侯爵の暴走と魔物の覚醒
- 原因:独占を狙う侯爵らが内陸へ侵入し、防衛機構であるユウの作品を刺激したことである。
- 行動:火球を放つ兵器型魔物が覚醒し、開拓団を全滅させた。
- 結果:大陸全体が戦闘地帯と化し、三ヵ国連合軍に甚大な被害が出た。
- 次の展開:帝国の飛行船が墜落し、ヴェンらによる決死の撤退および救助作戦が展開された。
第6幕:決死の撤退作戦と救助
- 原因:火球攻撃で墜落した帝国船の生存者が海上に孤立したことである。
- 行動:ヴェンと導師が陽動となり火球を引きつけ、子供用大型カートで生存者を救助した。
- 結果:魔物の死体を回収しつつ全勢力がイースト大陸から撤退し、ヴェンはノースランドへ帰還した。
特区の開発成功と平穏な生活は、新大陸の発見と本国貴族の独断専行によって一変し、三ヵ国を巻き込む大規模な戦闘と撤退作戦へと至った。未知の技術による防衛機構の存在が露呈したことで、大陸進出を巡る情勢は新たな警戒と課題を残す結果となった。
主要な転換点
ガトル大陸および新大陸を巡る情勢において、権限の委譲から新技術の実戦投入、世界構造の解明、そして防衛兵器の暴走に至るまで、物語の展開を決定づける重大な転換点が存在する。各事象の具体的内容と、それが引き起こした影響について以下に整理する。
転換点1:ヴァルド殿下の総督就任
- 内容:王太子ヴァルドがガトル大陸総督に就任したことである。
- 影響:ヴェンに特区開発の全権が与えられ、独自の経済圏が誕生した。
転換点2:簡易移動魔法陣板の試用
- 内容:開発中の簡易移動魔法陣板が試用されたことである。
- 影響:ヴェン、導師、ブランタークが新大陸へ強制転送され、直接的な軍事介入が不可避となった。
転換点3:西方からのゾヌターク合流
- 内容:西側から航行してきたゾヌターク王国の船団が合流したことである。
- 影響:世界が球体である事実が証明され、イースト大陸の帰属を巡る問題が三ヵ国による国際的な外交問題へと発展した。
転換点4:侯爵による内陸部侵入
- 内容:利権の独占を目論む侯爵らが内陸部への侵入を強行したことである。
- 影響:未知の防衛兵器の覚醒を招き、甚大な被害とともにイースト大陸の開拓計画が一時的に頓挫した。
これら4つの転換点は、地方の開発事業を国家規模、さらには世界規模の外交・軍事問題へと急拡大させた。主人公たちの意図を超えて加速する情勢の変化は、今後の国際秩序や領地経営の方向性に決定的な影響を与える要因となっている。
主人公を中心とした人物関係の変化
ガトル大陸の特区開発や新大陸を巡る動向を通じて、主人公ヴェンデリンを取り巻く主要人物との関係性は実務面および私生活の両面で大きな深化を見せている。それぞれの人物との関係の推移と結末について以下に整理する。
アーシャ
- 開始時:新婚旅行を楽しむ初々しい夫婦関係であった。
- 出来事:特区での共同生活を通じ、アーシャが射的屋の看板娘としてヴェンの休息や隠れ家を支える活動に従事した。
- 巻末時:私生活と事業の両面において支え合う、盤石なパートナー関係へと発展した。
ヴァルド殿下
- 開始時:特区の開発指揮者と総督という、主従関係に近い公的な協力体制であった。
- 出来事:特区の急速な成功への依存が進むとともに、イースト大陸における重大な問題を共有した。
- 巻末時:目立たない立場にある自身を支えてくれる唯一無二の親友として、ヴァルドがヴェンデリンへより深く依存する関係へと変化した。
エリー
- 開始時:共通の知人を持つ有力な探索者同士としての間柄であった。
- 出来事:イースト大陸の領土分割交渉において、エリー個人会社名義の所有地とする案をヴェンデリンが通した。
- 巻末時:実利を伴う高度な外交的信頼関係を強固に構築するに至った。
家庭環境の安定から王族との個人的な信頼の深化、さらには他勢力の有力者との実利的な協力関係の確立に至るまで、各方面との結びつきはより強固なものとなっている。これらの関係性の進展は、今後の領地運営や多国間における外交交渉を進める上で重要な基盤として機能している。
主人公の認識と周囲の評価
主人公であるヴェンデリンが抱く自己認識と、国家首脳をはじめとする周囲からの評価との間には決定的な乖離が存在する。個人の平穏と早期の隠居を望む本人の思惑に反し、国際秩序を維持するための絶対的な要として周囲から囲い込まれていく構造について以下に整理する。
主人公自身の認識
- 自身を育休中の大貴族と定義している。
- 激務を回避して仕事を減らし、将来的な楽隠居を果たすことを目指している。
- イースト大陸総督の地位についても、一時的に押し付けられた厄介事にすぎないと捉えている。
周囲からの評価
- 王国、帝国、魔王領の各国首脳は、魔法戦力、高位の爵位、高度な外交能力を兼ね備えた存在として評価している。
- 三ヵ国すべてと対等に渡り合える唯一無二の重要人物であり、イースト大陸における絶対的な統治者であると見なしている。
認識の差が現れた場面(辞任拒否の顛末)
- イースト大陸からの撤退後、ヴェンデリンは作戦失敗の責任を取る形で総督の辞任を申し出た。
- ヘルムート国王、アーカート皇帝、魔王エリーの三首脳が結託してこれを包囲した。
- 墜落した帝国船の救助や難航を極めた領土分割条約の締結を代替不可能な大功績として過剰に賞賛した。
- 辞任を認めないどころか、将来的な再進出を見据えた三ヵ国連合の要という強固な枠組みの中に主人公を完全に囲い込む結果となった。
私生活の平穏と責任からの解放を望む本人の意図とは裏腹に、その卓越した実力と実績は国際政治において不可欠な存在として扱われ続けている。この認識のズレは、主人公が望む隠居生活を遠ざけ、より巨大な国家戦略の中心へと縛り付ける要因として機能している。
クライマックス
イースト大陸における分割条約締結直後、祝祭的な空気に包まれる中で想定外の危機が発生した。本稿では、その際に展開された大規模な魔物襲撃からの撤退戦、および生存者救出作戦の経緯について報告する。
発生原因と初期状況
- サーフェス侯爵をはじめとする人間側が、内陸防衛境界線を不用意に突破したことが直接の引き金となった。
- 分割条約締結直後の祝宴ムードであったものの、ヴェンの広域探知により膨大な数の魔物の接近を察知し、即座に警戒態勢へと移行する。
主要な作戦行動
- 陽動部隊としてヴェン、導師、ブランタークが前線に立ち、広域魔法を行使して火球を放つ水牛型魔物(ユウの作品)の注意を引きつける囮役を務めた。
- 救助活動においては、墜落した帝国船の生存者をヴェンが用意した水上浮遊式の子供用大型カートで回収し、エリーが魔法障壁を展開して対象を保護していく。
- 後発の分析を見据え、導師がサンプルとして水牛型魔物の死体を袋に詰め込み、強引に回収することにも成功した。
予定外の事態と決着
- 孤立した生存者を救助すべくエリーがライラの防御圏を離れた結果、大量の火球の標的となる不測の事態に見舞われる。
- ヴェンがエリーの目前に現れてすべての火球を物理的・魔法的に遮断し、そのままエリーを抱きかかえて救出を完了した。
- 最終的に巨大飛行船リンガイアの防御結界内へ全軍を収容し、直後に大陸からの離脱を果たしている。
一部の独断専行が未知の防衛機構の起動を招き、甚大な被害をもたらす結果となった。しかし、最前線での的確な陽動と連携行動により、致命的な危機を回避しながら生存者の保護と有用なサンプルの回収を完遂し、無事に撤退作戦を成功させた事例といえる。
巻末時点の状況
イースト大陸における戦闘と撤退戦を経て、事態は新たな局面へと移行した。主人公の現在の立場をはじめ、解決された事項や判明した敵性体の実態、そして今後の課題と不穏な予兆について以下に整理する。
現在の立場と身辺の動向
- ノースランドへ帰還を果たした。
- 三ヵ国首脳からの要請を受け、イースト大陸総督の地位に留任することとなった。
- 私生活においては、アグネスおよびベッティの妊娠が判明した。
解決した事項
- 三ヵ国による暫定的な領土分割案についての合意が成立した。
- 墜落した帝国船を含む生存者の救出活動を完了した。
判明した謎と敵性体の実態
- 襲撃を行った魔物の体内には、天然の魔石ではなく魔晶石が存在することが確認された。
- ベッケンバウアーの分析により、これら魔物が自動工房(自動工場)によって製造・補充される生物兵器である事実が判明した。
継続する課題
- 生物兵器型魔物の有効な排除方法の確立が求められている。
- 敵の放つ火球への対抗策として、黒硬石を用いた防護装備の開発が急務となっている。
不穏な予兆
- 大陸内部において、創造主ユウが人間側の再進出を阻止すべく、さらなる新作兵器の投入に向けた準備を進めている。
生存者の救出と国際的な領土交渉が一段落した一方で、敵の正体が人工的な生物兵器であることが明らかとなった。防衛装備の開発や新たな兵器の投入予告など、イースト大陸の再進出と開拓を巡る情勢は依然として重大な懸念を抱えたまま推移している。
登場キャラクター
バウマイスター辺境伯家
ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
本作の主人公であり、バウマイスター辺境伯家の当主である。平穏な生活と育児を望んでいる。周囲の思惑や政治的要請により多忙を極めている。妻たちや子供たちへの配慮を怠らない。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家当主、上級魔法使い、イースト大陸総督である。
・物語内での具体的な行動や成果
アーシャとの新婚旅行を実施した。ノースランド中央にバウマイスター特区を建設する。高級かき氷店を開設して来客を避けた。東方調査団に参加して新大陸を探索する。三国会談を主導して共同統治体制を構築した。生物兵器の魔物を魔法で迎撃して味方を撤退させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特区の開発成功により莫大な利益を上げた。三国から信任を受け、イースト大陸総督に就任した。
エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
ヴェンデリンの正妻であり、聖女と称される治癒魔法使いである。温厚かつ理知的な性格を持つ。夫の立場を理解し、家庭と教会関係の調整役を務める。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家正妻、神官である。
・物語内での具体的な行動や成果
夫の育休生活を支えつつ子供たちの養育に励んだ。新婚旅行から帰還した夫とアーシャを温かく迎える。屋敷の来客対応に配慮を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正妻としての地位を保ち、大家族の統括役を果たしている。
イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
ヴェンデリンの側室であり、槍術を得意とする女性である。真面目な気質で家庭の秩序を守る。夫の過密日程を心配している。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室である。
・物語内での具体的な行動や成果
本領の屋敷で子供たちの育児に専念した。特区での事業展開を見守る。家族とともに平穏な生活を送った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
側室の一角として家庭の安定に寄与している。
ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
ヴェンデリンの側室であり、魔力打撃を極めた格闘家である。快活な性格で周囲を明るくする。夫の新しい事業や食べ物に興味を示す。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室である。
・物語内での具体的な行動や成果
高級かき氷店の試食に参加した。子供たちの遊び相手を務める。家族の団欒を盛り上げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
家庭内の雰囲気を和ませる役割を担っている。
ヴィルマエトル・フォン・アスガハン
ヴェンデリンの側室であり、怪力と狩猟能力を持つ武人である。寡黙だが家族への愛情は深い。美味しい食事に強い執着を示す。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室である。
・物語内での具体的な行動や成果
特区の商業施設で振る舞われた甘味を堪能した。育児に従事しつつ屋敷の警戒に当たる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
武勇と存在感で家庭の安心を支えている。
カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル
ヴェンデリンの側室であり、上級魔法使いである。誇り高く几帳面な性格を持つ。本領や特区の開発事業に深く関与する。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室、ヴァイゲル準男爵夫人である。
・物語内での具体的な行動や成果
特区の区画整理や商業街の立ち上げを補佐した。領内の魔法土木工事を指揮する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実家の準男爵家の発展を進めつつ、主家の財政に貢献している。
テレーゼ・フォン・フィリップ
ヴェンデリンの側室であり、帝国の元筆頭公爵である。優れた政治的洞察力と統治経験を持つ。夫の立場や社会動向を大局的に分析する。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室である。
・物語内での具体的な行動や成果
ガトル大陸や東の大陸の情勢について助言を与えた。夫の隠れ家作戦に理解を示す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
政治顧問的な立ち位置で主家の安定を補佐している。
カチヤ・フォン・アスガハン
ヴェンデリンの側室であり、冒険者出身の女戦士である。気さくで行動的な性格をしている。実利的な判断を好む。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室である。
・物語内での具体的な行動や成果
家庭内での家事や育児を分担した。特区での新しい店舗展開を歓迎する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
気兼ねのない振る舞いで家庭の円滑化を支えている。
リサ・プレンツェル
ヴェンデリンの側室であり、風や氷の魔法を操る上級魔法使いである。面倒見が良く、実務能力に長けている。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室、上級魔法使いである。
・物語内での具体的な行動や成果
本領の防衛体制を維持した。かき氷用の氷の調達や保存に協力する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔法戦力として主家の安全を保障している。
アマーリエ・フォン・マインバッハ
ヴェンデリンの側室であり、実子たちとともに主家に身を寄せる女性である。穏やかで細やかな気配りを得意とする。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室である。
・物語内での具体的な行動や成果
大勢の子供たちの育児を総括した。家庭内の調和を保つために尽力する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
母親たちのまとめ役として確固たる地位を築いている。
フィリーネ・フォン・ブライヒレーダー
ヴェンデリンの側室であり、ブライヒレーダー辺境伯の血筋である。控えめで従順な態度を崩さない。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室である。
・物語内での具体的な行動や成果
実家との連絡役を務めた。育児や家事を丁寧にこなす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実家と主家の良好な同盟関係を維持する絆となっている。
アグネス・フュルスト
ヴェンデリンの側室候補であり、上級魔法使いである。忠実かつ勤勉に主君を支える。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室候補、上級魔法使いである。
・物語内での具体的な行動や成果
遠征中の本領で開発業務を代行した。特区の土木作業にも参加する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
領内の実務を担う主力魔法使いとして評価を高めている。
シンディ
ヴェンデリンの側室候補であり、魔法使いである。明るい気質で周囲に接する。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室候補、魔法使いである。
・物語内での具体的な行動や成果
本領の開発工事に従事した。主君の不在時にも責任を持って業務を果たす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
着実に土木魔法の経験を蓄積している。
ベッティ
ヴェンデリンの側室候補であり、魔法使いである。真面目に業務へ取り組む姿勢を持つ。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室候補、魔法使いである。
・物語内での具体的な行動や成果
アグネスらと協力して領内整備を進めた。新しい拠点の設営を補佐する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実務要員としての信頼を確実なものとした。
アーシャ・フォン・ザンス
ヴェンデリンの新たな妻であり、世界樹出身のエルフ族の女性である。弓を用いた魔法を得意とする。純朴で夫を一途に慕っている。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家側室、ザンス子爵家令嬢、上級魔法使いである。
・物語内での具体的な行動や成果
夫と新婚旅行へ出かけた。外の世界の文化や食事を学ぶ。特区の開発を夫の傍で見守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正式にヴェンデリンの妻となり、ザンス子爵家とバウマイスター家の結びつきを確立させた。
エルヴィン・フォン・アルニム
ヴェンデリンの筆頭従士であり、親友の騎士である。軽口を叩きつつも主君の安全を最優先に動く。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家筆頭従士、騎士である。
・物語内での具体的な行動や成果
主君の護衛として東方調査団に同行した。新大陸の探索活動に参加する。狼型の魔物との接近戦で剣を振るった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
常に主君の側近として行動を共にし、厚い信頼を得ている。
ハルカ・フォン・アウババ
エルヴィンの妻であり、アキツシマ島出身の武芸者である。礼節を重んじ、夫を立てる姿勢を貫く。
・所属組織、地位や役職
エルヴィンの妻、バウマイスター辺境伯家家臣である。
・物語内での具体的な行動や成果
本領で子供たちの世話や家政を取り仕切った。主家の慶事を祝福する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
屋敷の秩序と家臣団の結束を支えている。
フリードリヒ・フォン・ベンノ・バウマイスター
ヴェンデリンとエリーゼの長男である。家族から深い慈しみを受けて育っている。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家嫡男である。
・物語内での具体的な行動や成果
父親が作った特製プールや遊び場で遊んだ。高級かき氷を喜んで食べる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来の後継者として順調に成長している。
アンナ
ヴェンデリンの娘である。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家子女である。
・物語内での具体的な行動や成果
兄弟姉妹とともに屋敷で元気に過ごした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
家族に見守られて穏やかに暮らしている。
レオン
アマーリエの連れ子であり、ヴェンデリンの甥にあたる少年である。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家親族である。
・物語内での具体的な行動や成果
年少の子供たちの面倒を見た。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
主家の家族として教育を受けている。
藤子
バウマイスター辺境伯領で暮らす年少の魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家臣、魔法使いである。
・物語内での具体的な行動や成果
領内の日常業務を補佐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来の領地戦力として育成されている。
ルル
南海の島出身の年少の魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家臣、魔法使いである。
・物語内での具体的な行動や成果
領地の生活に馴染み、訓練に励んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
健やかに暮らしつつ魔法の鍛錬を重ねている。
マーガレット
北方のビンス村出身であり、ヴェンデリンの専属メイドである。素直で献身的な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家専属メイドである。
・物語内での具体的な行動や成果
子供たちの世話や写真撮影を担当した。隠れ家となったかき氷店の運営を補助する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
主君の私的生活を支える身の回り役として定着している。
ローデリヒ
バウマイスター辺境伯家の首席家宰である。卓越した行政手腕を振るい、領内経営を統括する。
・所属組織、地位や役職
バウマイスター辺境伯家首席家宰である。
・物語内での具体的な行動や成果
バウマイスター特区の開発計画を策定した。殺到する陳情者や利権要求の対応に追われる。主君の東方遠征に伴う兵站を確保した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
領地行政の最高責任者として不可欠な役割を果たしている。
アルテリオ
バウマイスター辺境伯家の御用商人を務める豪商である。機敏な商才で利権を的確に活かす。
・所属組織、地位や役職
アルテリオ商会代表、バウマイスター辺境伯家御用商人である。
・物語内での具体的な行動や成果
特区における商業街の店舗開発を推進した。猿酒やかき氷の流通網を整える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新天地での商業利権を主家とともに拡大させた。
秋津洲涼子
アキツシマ島の有力者の一族である女性である。
・所属組織、地位や役職
アキツシマ島名家出身者、魔法使いである。
・物語内での具体的な行動や成果
現地の統治と警備を維持した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アキツシマ島の有力者として主家との連携を保っている。
細川雪
アキツシマ島関係者の女性である。
・所属組織、地位や役職
アキツシマ島関係者である。
・物語内での具体的な行動や成果
島内の管理と連絡業務に当たった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
現地の秩序維持に寄与している。
松永唯
アキツシマ島関係者の女性である。
・所属組織、地位や役職
アキツシマ島関係者である。
・物語内での具体的な行動や成果
島内の日常業務を補佐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
平穏な領地運営の一翼を担っている。
ヘルムート王国(王宮・地方貴族・軍)
ヘルムート王国の国王(ヘルムート三十七世)
ヘルムート王国の君主である。国家の利益と均衡を巧みに保つ統治者として君臨する。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国国王を務める。
・物語内での具体的な行動や成果
ガトル大陸の総督にヴァルドを任命した。東方の大陸調査を命じる。三国会談の合意を受け入れ、ヴェンデリンを総督に据えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新大陸の開拓を通じて王国の国力を飛躍的に高めている。
ヴァルド・フォン・ヘルムート
王国の王太子であり、代王を務めた実力者である。決断力に富み、ヴェンデリンに全幅の信頼を置く。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国王太子、ガトル大陸総督である。
・物語内での具体的な行動や成果
ガトル大陸総督に就任して現地入りした。ノースランド中央の特区をヴェンデリンに与える。新婚旅行の手配を斡旋した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新大陸の統治責任者として指導力を発揮している。
クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング
王宮筆頭魔導師を務める豪傑である。通称は導師である。圧倒的な武力と豪快な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
王宮筆頭魔導師、伯爵である。
・物語内での具体的な行動や成果
東方調査団に加わり新大陸へ赴いた。遭遇した魔物たちを徒手空拳で打ち倒す。未知の青い竜を威圧して退散させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
探索隊の主戦力として驚異的な突破力を示した。
ブランターク・リングスタット
ブライヒレーダー辺境伯家の筆頭魔導師であり、老練な魔法使いである。経験に基づいた的確な助言を与える。
・所属組織、地位や役職
ブライヒレーダー辺境伯家筆頭魔導師である。
・物語内での具体的な行動や成果
東方調査団に参謀格として参加した。新大陸の魔物の異常性をいち早く見抜く。撤退戦において支援魔法を展開した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
冷静な情勢判断で部隊の危機を回避させた。
アームストロング侯爵
王国の軍務卿であり、導師の実兄である。軍事と組織運営に長けている。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国軍務卿、侯爵である。
・物語内での具体的な行動や成果
ガトル大陸の警備体制を統制した。東方調査団の編制を後方から支援する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
軍部の最高責任者として国防を盤石にしている。
エドガー侯爵
前軍務卿であり、王宮軍部の長老格である。政治的駆け引きに精通している。
・所属組織、地位や役職
前軍務卿、侯爵である。
・物語内での具体的な行動や成果
開拓利権をめぐる貴族社会の動きを注視した。義理の息子であるヴェンデリンの権益を守るため助言する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
貴族社会における重鎮としての発言力を維持している。
アッシュ男爵
工兵部隊や陣地構築を統括する専門家である。堅実な作業を重んじる。
・所属組織、地位や役職
王国軍工兵部隊長、男爵である。
・物語内での具体的な行動や成果
ノースランドの都市基盤の拡充を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
技術面から開拓の推進を支えている。
ブライヒレーダー辺境伯
南部を統べる有力諸侯であり、ヴェンデリンの寄親である。思慮深く情勢を見極める。
・所属組織、地位や役職
ブライヒレーダー辺境伯家当主である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸調査に伴う物資輸送を補佐した。領内の経済発展に努める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王国南部の大名として強固な基盤を誇っている。
ホーエンハイム枢機卿
教会勢力の頂点に立つ大物宗教家である。政治手腕に長けている。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国枢機卿である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸における布教権や教会の利権調整に当たった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
教会組織を通じて開拓事業に強い影響力を保持している。
ユーバシャール外務卿
王国の外交政策を一手に担う大臣である。実利を重視した交渉を行う。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国外務卿である。
・物語内での具体的な行動や成果
帝国や魔族との間で三国協定の調整を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
三国間の均衡外交を成立させる重責を担っている。
リリエンタール財務卿
王国の財政管理を担当する文官閣僚である。無駄な支出を厳しく抑制する。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国財務卿である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸開発にかかる予算の精査と配分を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
国家財政の健全化を維持する役割を果たしている。
ドライゼ農務卿
王国内の農業政策や食糧供給を統括する閣僚である。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国農務卿である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸から得られる農作物や開拓地の営農計画を検討した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
開拓地の食糧自給体制の確立を目指している。
ホーウッド商務卿
流通や通商政策を管理する閣僚である。商業の振興に力を注ぐ。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国商務卿である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸との交易ルートや特産品の流通調整に関与した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
商業規模の拡大に寄与している。
サーフェス侯爵
東の大陸への入植を志願した王国の有力貴族である。積極的な領地拡大を狙っている。
・所属組織、地位や役職
サーフェス侯爵家当主、イースト大陸開拓団長である。
・物語内での具体的な行動や成果
私兵や領民を率いて新大陸へ乗り込んだ。生物兵器の魔物による襲撃を受けて部隊が大打撃を被る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
入植事業の失敗により一時的な撤退を余儀なくされた。
ベッケンバウアー
魔導ギルドの幹部技術者である。実用的な魔導機器の開発に情熱を注ぐ。
・所属組織、地位や役職
魔導ギルド上席技師である。
・物語内での具体的な行動や成果
かき氷器や温水循環装置などの生活魔道具を製作した。東方調査船の魔導機関を点検する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
技術開発の第一人者として多大な貢献を続けている。
レンブラント子爵
王国の法衣貴族である。
・所属組織、地位や役職
王国法衣貴族、子爵である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸の開拓利権を求めて動向を探った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
中央貴族の一人として発言権を持つ。
コムゾ・フルガ
王国の役人である。
・所属組織、地位や役職
王国行政官である。
・物語内での具体的な行動や成果
現地での事務手続きを処理した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実務官僚として開拓団を補佐している。
レオポルド・ベキム
王国の官吏である。
・所属組織、地位や役職
王国官吏である。
・物語内での具体的な行動や成果
調査記録の編纂作業に従事した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
記録保持の任務を果たしている。
キャンディー
王都の腕利き仕立屋である。
・所属組織、地位や役職
王都服飾店店主である。
・物語内での具体的な行動や成果
新婚旅行用の衣服や特注品を仕立てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
服飾面から貴族たちの活動を支援している。
ウィンドランド
王国の地方貴族である。
・所属組織、地位や役職
地方領主貴族である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸の動向に関心を寄せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
領地経営の安定を図っている。
ベン男爵
王国の下級貴族である。
・所属組織、地位や役職
王国男爵である。
・物語内での具体的な行動や成果
開拓事業への参画を模索した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新たな立身の機会をうかがっている。
ヨシュア
王国の若手官僚である。
・所属組織、地位や役職
王国行政官補である。
・物語内での具体的な行動や成果
現地調査の資材管理を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
後方支援の現場で経験を積んでいる。
ザンス子爵家(ガトル大陸・エルフ族)
ラーベナール・ザンス
世界樹に暮らすエルフ族の族長である。現実的な思考で外部との協調を選ぶ。
・所属組織、地位や役職
ザンス子爵家当主、エルフ族族長である。
・物語内での具体的な行動や成果
娘のアーシャとヴェンデリンの婚姻を正式に認めた。猿酒の安定供給と生産体制を維持する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
バウマイスター辺境伯家との姻戚関係を築き、領地の安泰を勝ち取った。
ミスマ
ザンス子爵の妻であり、アーシャの母である。猿酒造りの熟練職人として知られる。
・所属組織、地位や役職
ザンス子爵夫人、主席醸造家を務める。
・物語内での具体的な行動や成果
娘の新生活を見送り、激励した。古酒の品質管理を厳格に継続する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
一族の伝統産業を守り続けている。
アーカート神聖帝国
ペーター・アウグスト・フォン・ニュルンベルク
神聖帝国の若き皇帝である。合理的で近代的な改革を進める為政者として辣腕を振るう。ヴェンデリンとは気安い間柄を結んでいる。
・所属組織、地位や役職
アーカート神聖帝国皇帝を務める。
・物語内での具体的な行動や成果
帝国東方調査団を派遣した。新大陸での三国会談に臨む。ヴェンデリンに東の大陸の総督就任を強く要請した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
柔軟な外交を展開し、三国協定の成立に寄与した。
フランドル伯爵
帝国の軍事貴族である。
・所属組織、地位や役職
神聖帝国軍司令官、伯爵である。
・物語内での具体的な行動や成果
帝国の先遣部隊を率いて新大陸へ進出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
現地部隊の指揮官として実戦を統率した。
エメラ
ミズホの優れた女性武芸者である。冷静沈着に任務をこなす。
・所属組織、地位や役職
ミズホ上級士官である。
・物語内での具体的な行動や成果
調査団の護衛として新大陸へ赴いた。魔物との交戦において部隊を援護する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
高い戦闘力で味方の生還に貢献した。
ミズホ公爵
帝国北東部を治める強大な諸侯である。高度な技術力を誇るミズホを統べる。
・所属組織、地位や役職
ミズホ公爵家当主である。
・物語内での具体的な行動や成果
最新の魔銃や資材を調査隊に提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
技術供与を通じて帝国の遠征を支えている。
ゾヌターク王国(魔族)
エリザベート・ホワイル・ゾヌターク九百九十九世
魔族の伝統を守る新ゾヌターク王国の可憐な女王である。通称はエリーである。ヴェンデリンに深い好意を寄せている。
・所属組織、地位や役職
ゾヌターク王国国王である。
・物語内での具体的な行動や成果
西方へ調査船を派遣して世界を一周した。新大陸でヴェンデリンと再会を果たす。三国協定において彼を総督に推薦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界が球体であることを実証し、歴史的偉業を成し遂げた。
ライラ・ミール・ライラ
ゾヌターク王国の宰相を務める有能な女性魔族である。実務と経営に長けている。
・所属組織、地位や役職
ゾヌターク王国宰相である。
・物語内での具体的な行動や成果
女王の遠征計画を立案し、西方調査団を指揮した。新大陸での資源管理交渉を進める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
魔族政権の重鎮として外交手腕を遺憾なく発揮した。
ラムウ
ゾヌターク王国の学者である。
・所属組織、地位や役職
魔導天文学者である。
・物語内での具体的な行動や成果
航路の測定を行い、地球球体説を理論的に裏付けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地理学の発展に決定的な功績を刻んだ。
サイラス
魔族の若手官吏である。
・所属組織、地位や役職
ゾヌターク王国書記官である。
・物語内での具体的な行動や成果
三国会談の議事進行と条約草案の記録を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実務面から国際協調の成立を支えた。
ルミ
魔族の有力新聞社に所属する敏腕記者である。
・所属組織、地位や役職
エブリディジャーナル特派記者である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸発見と世界一周の快挙をスクープ報道した。ヴェンデリンへの独占取材を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世論を喚起し、三国協約の意義を魔族社会へ広く伝えた。
シュークリーム
魔王エリーが飼育している珍しい小動物である。愛嬌のある姿をしている。
・所属組織、地位や役職
魔王のペットである。
・物語内での具体的な行動や成果
長旅の航海に同行し、一行を癒やした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マスコットとして周囲から可愛がられている。
古代魔法文明
ユウ
古代魔法文明の遺産を研究・管理する謎の人物である。飄々とした態度を崩さない。
・所属組織、地位や役職
古代魔導技師、管理者である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸に配置された防衛機構の稼働を遠巻きに観察した。人間たちの進出を興味深そうに見守る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新大陸に眠る謎の鍵を握る存在として暗躍している。
登場集団
ヘルムート王国東方調査団
王国が東方の新大陸を探索するために派遣した遠征部隊である。
・所属組織、地位や役職
ヘルムート王国公式調査団である。
・物語内での具体的な行動や成果
魔導飛行船を駆使して東方の未踏領域を調査した。新大陸へ上陸して拠点を設営する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新大陸の発見と情報収集に成功した。
アーカート神聖帝国東方調査団
帝国が新天地を求めて東方へ派遣した精鋭部隊である。
・所属組織、地位や役職
アーカート神聖帝国公式調査部隊である。
・物語内での具体的な行動や成果
東方海域を進出して新大陸の北東部に到達した。王国部隊と合流して共同警備に就く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
帝国の領土的権益を確保する足がかりを築いた。
ゾヌターク王国西方調査団
魔王エリーが率いて西方へ向かった探検隊である。
・所属組織、地位や役職
ゾヌターク王国直属調査船団である。
・物語内での具体的な行動や成果
西方航路を走破して東の大陸の西岸に到達した。世界が球体であることを実証する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
歴史的な世界一周を達成し、国際秩序を一変させた。
サーフェス侯爵率いるイースト大陸開拓団
王国のサーフェス侯爵が私財と兵力を投じて結成した入植集団である。
・所属組織、地位や役職
王国貴族私設開拓団である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸の海岸部に入植地を設営した。生物兵器の魔物による急襲を受けて大損害を被る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
過酷な被害により一時的な事業凍結に追い込まれた。
帝国貴族によるイースト大陸開拓団
帝国の諸侯が功名と富を求めて組織した開拓部隊である。
・所属組織、地位や役職
帝国領主連合開拓団である。
・物語内での具体的な行動や成果
内陸部への進出を試みた。強力な魔物群に阻まれて防衛戦を強いられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
開拓の困難さを身をもって知ることとなった。
エルフ族(世界樹の住民たち)
ガトル大陸の世界樹で数万年にわたり独自の生活を営んできた人間の一族である。
・所属組織、地位や役職
ザンス子爵領領民、世界樹先住部族である。
・物語内での具体的な行動や成果
世界樹の恵みや猿酒を外部へ提供した。樹上から地上への生活領域の拡大を始める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王国の一員として新たな社会経済活動に参画している。
魔導ギルド
魔法使いや魔導技術者を束ねる職能団体である。
・所属組織、地位や役職
王国公認技術機関である。
・物語内での具体的な行動や成果
新大陸探索用の魔導機器を製造した。現地拠点の通信や設備保全を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
国家規模の遠征事業を技術面で全面的に支えた。
アルテリオ商会
パウマイスター辺境伯家の御用達を務める総合商会である。
・所属組織、地位や役職
民間商業組織である。
・物語内での具体的な行動や成果
特区における商業施設の設営と運営を担った。新大陸の特産品を独占的に仕入れて販売する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新大陸の経済基盤を確立し、莫大な富を主家にもたらした。
水牛型の魔物(生物兵器群)
額に魔晶石を埋め込まれた古代の生物兵器である。
・所属組織、地位や役職
古代防衛魔物群である。
・物語内での具体的な行動や成果
角から高威力の火球を連射して開拓団を襲撃した。突進攻撃で陣地を粉砕する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
入植者たちに壊滅的な打撃を与え、開拓を阻止した。
狼型の魔物(生物兵器群)
群れで行動する俊敏な改造魔物である。
・所属組織、地位や役職
古代防衛尖兵群である。
・物語内での具体的な行動や成果
高い跳躍力と鋭い爪で調査隊を奇襲した。包囲網を敷いて人間を追い詰める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
前線部隊の警戒網を破る脅威となった。
巨大ナメクジ型の魔物(生物兵器群)
強酸性の粘液を分泌する巨大な軟体魔物である。
・所属組織、地位や役職
古代環境維持魔物群である。
・物語内での具体的な行動や成果
森林地帯で防衛行動を取り、侵入者の装備を溶かした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
進軍ルートの遮断に大きな役割を果たした。
青い竜(東の大陸を守る属性竜)
東の大陸の奥地に君臨する強大な古代竜である。
・所属組織、地位や役職
東の大陸の守護竜、魔物の長である。
・物語内での具体的な行動や成果
上空から侵入者を威嚇した。導師との対峙を経て、奥地へと飛び去る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新大陸の過酷さと神秘を象徴する存在として恐れられた。
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展開まとめ
第一話 ガトル大陸総督
アーシャの正式な紹介
ヴェンデリンはアーシャをエリーゼたちに正式に紹介するため、導師とともにバウマイスター辺境伯邸へ戻った。アームストロング軍務卿は、ザンス子爵とミスマから婚約を後押しした礼として猿酒を受け取っており、古酒を家臣や兵士への褒美にも使おうとしていた。
屋敷ではエリーゼがアーシャを温かく迎え、ヴェンデリンを助けたことに感謝した。一方、前日に暴飲暴食で寝込んだ導師には厳しく接し、薄い茶とわずかな菓子しか与えなかった。
辺境伯家での歓迎
ルイーゼたちはアーシャの白く綺麗な肌に興味を示し、世界樹や猿酒との関係を想像した。アーシャ自身は猿酒をほとんど飲んでおらず、世界樹で長く暮らしてきたエルフ族の特徴ではないかと考えられた。
アーシャについては、突然婚約が決まったこともあり、しばらくは旅行で滞在する程度の気持ちで屋敷に慣れてもらうことになった。夕食ではアーシャを迎えて豪華な料理が用意されたが、エリーゼは導師の腹の状態を考え、彼にだけ粥と梅干しを出した。
バウマイスター辺境伯家の一員
アーシャは無事にバウマイスター辺境伯家へ迎え入れられた。その後、彼女が産んだ男子が次代のザンス子爵となり、ザンス子爵家もバウマイスター辺境伯家の一門として扱われるようになった。
アーシャ自身もエリーゼたちから料理を学び、猿酒に漬けた赤い実を使った菓子を作るようになった。
ガトル大陸開拓の一時停止
ガトル大陸では解放した土地の開発が追いつかなくなり、新たな魔物の領域の解放は一時停止された。王国軍は魔族の技術者の指導を受けながらインフラ整備を進め、ベッケンバウアーも建設用魔道具の試験と開発に関わっていた。
ヴェンデリンたちも日常へ戻り、アーシャは料理や魔法の修練を続けていた。
ガトル大陸総督への就任
そんな中、王太子からヴェンデリンへ連絡が入り、ガトル大陸総督に自分が任命されたと告げられた。王太子を総督に据えることで、王国がガトル大陸開拓に本腰を入れる姿勢を示す人事であった。
しかし陛下は儀式より実務を優先し、就任式も簡素に済ませてすぐ仕事に就くよう命じていた。その結果、王太子が現地へ着任しても出迎えすらなく、アームストロング軍務卿の経費削減の方針も重なって、歓迎行事は何も行われなかった。
急造の着任祝い
王太子は豪華な式典を求めていたわけではなかったが、誰にも歓迎されなかったことには不満を抱いていた。ヴェンデリンはその愚痴を聞き、急遽ノースランドでささやかな着任祝いを開くことにした。
アームストロング軍務卿も王太子の着任を忘れていたため、ヴェンデリンとエリーゼたちが急いで準備を整えた。参加者の移動にはヴェンデリンの瞬間移動を使い、どうにか王太子の機嫌を損ねずに済んだ。
王太子との親友関係
着任祝いを終えた王太子は、今後もヴェンデリンに自分を支えてほしいと頼み、二人は親友同士だと口にした。ヴェンデリンは否定できずに受け入れたため、今後もガトル大陸開拓へ度々動員されることになった。
第二話 アーシャとの結婚式
ノースランドでの結婚式
ヴェンデリンは完全な育休を続ける代わりに、ノースランドのバウマイスター特別区開発を指揮しながら子供たちと暮らすことになった。その最初の仕事として、住民に特別区開発への姿勢を示す意味も込め、政庁前でアーシャとの結婚式を挙げた。
式には多くの住民や冒険者が集まり、フリードリヒたちは飴やクッキーを配った。ヴェンデリンは、跡取りだからと経験を限定せず、様々な人と接することも教育だと考えていた。ザンス子爵とミスマも参列し、二人はアーシャが産む子を次代のザンス子爵とすることを期待していた。
披露パーティーと新しい家族
結婚式後には政庁内で披露パーティーが開かれ、ザンス子爵家から提供された猿酒も振る舞われた。アーシャは賑やかなバウマイスター辺境伯家での生活を楽しみにしており、世界樹の外へ出たいという以前からの願いが叶ったことも喜んでいた。
ヴェンデリンも、夫婦としてこれから互いを理解していけばいいと考え、二人は正式に夫婦となった。その後は再びエリーゼたちや子供たちとの生活に戻り、ヴェンデリンは育児と特別区開発を両立させるつもりでいた。
ヴァルド殿下の不満
翌朝、ガトル大陸総督となったヴァルド殿下が政庁を訪れ、披露パーティーに招待されなかったことへの不満を口にした。王太子を呼べば警備や格式の問題が生じるため招待しなかったのだが、実際には準備に追われて忘れていた面もあった。
ヴェンデリンは急遽、極めて親しい者だけの披露パーティーを改めて開くと説明した。数日後、家族とヴァルド殿下だけで再度パーティーを開くと、殿下は終始上機嫌で過ごした。
アーシャとの新婚旅行
二度目の披露パーティーを終えたヴェンデリンとアーシャは、新婚旅行へ出かけた。自然に囲まれた世界樹で育ったアーシャは都会を希望し、まず王都で名所や商業街を巡り、買い物や外食を楽しんだ。
ノースランドの開発が進めば、ザンス子爵領の人々も同じガトル大陸内で気軽に遊びに来られるようになるため、アーシャも街の発展に協力したいと考えた。
帝都での激辛料理
翌日にはアーカート神聖帝国の帝都バルデッシュを訪れた。多様な文化の建物や料理に触れたアーシャは観光を楽しみ、そこで初めて自分が辛い物を好むことを知った。
店で誰も完食できなかった激辛料理に挑戦したアーシャは、平然と食べきって賞金を獲得した。一方、ヴェンデリンも試したが、一口で耐えられなくなった。アーシャは賞金を新婚旅行に使おうとヴェンデリンへ渡した。
ミズホの温泉宿
最後に二人はミズホ公爵領の温泉宿を訪れた。ミズホ公爵から子宝の湯だと聞かされたアーシャは照れながらも、温泉や宿の雰囲気を楽しんだ。
食事では初めて刺身を口にし、その味を気に入ったほか、ミズホ料理や文化も好みに合った。三日間の新婚旅行は短かったが、ヴェンデリンとアーシャは穏やかな時間を過ごし、またいつか旅行しようと考えながらノースランドへ戻ることになった。
第三話 バウマイスター特区の発展
バウマイスター特区の急成長
アーシャとの新婚旅行を終えたヴェンデリンは、ノースランドのバウマイスター特区で家族と暮らしながら育児と開発を進めていた。東方探索に巨大飛行船リンガイアが回され、ガトル大陸への資材や食料が減ったためノースランド全体の開発は遅れていたが、瞬間移動と魔法の袋を使えるヴェンデリンの特区だけは計画以上の速さで発展していた。
ヴェンデリンは子供たちが暮らしやすい環境を優先し、飲食店やサービス業だけでなく書店などの文化施設も整えた。その結果、他地区との差が目立ち、担当者を抜擢したヴァルド殿下は不機嫌になっていた。しかしヴェンデリンは他地区へ介入せず、特区の開発に専念した。
フリードリヒたちの記念撮影
二歳になったフリードリヒたちは、特区に開店した写真館で記念撮影を行った。店主は元新聞記者のルミで、衣装の貸し出しや化粧、髪のセットまで組み合わせた写真館を経営し、開拓者や家族連れから人気を集めていた。
ルミは魔族の国を離れて起業し、写真技術を生かして成功していた。マーガレットもその腕前に感心したが、ヴェンデリンへの忠誠と現在の仕事への満足から転職するつもりはなかった。
総合体育館の成功
ヴェンデリンは、限られた土地で複数の武術を学べるよう大小十八の道場を備えた総合体育館を作らせていた。時間単位で道場を貸す方式により、仕事帰りに武術を試す者や複数の流派を学ぶ者が増え、資金の乏しい小規模な流派にも利用されていた。
ルイーゼとイーナはこの方式を気に入り、バウルブルクの道場も改築して、空いている時間を他流派へ貸し出す計画を進めていた。維持費を補えるうえ、門下生の増加にもつながるためであった。
アーシャの射的屋
アーシャは特区の射的屋で臨時の店番をしていた。玩具の弓矢で的を狙い、得点に応じて特製の玩具を景品として受け取れる店で、子供だけでなく大人にも人気があった。
アーシャは慣れない玩具の矢でも的の中央に命中させ、客を驚かせた。初めての接客も楽しんでおり、美貌と弓の腕前から看板娘のような存在にもなっていた。また、射的に使われていたマジックテープを見たキャンディーが、衣服への利用を始めた。
温泉を利用したスーパー銭湯
ヴァイゲル家は特区にスーパー銭湯を開いていた。ヴェンデリンと魔族の技術者たちが地下千メートル以上を掘って温泉を掘り当て、元スーパー銭湯勤務の魔族たちの知識を生かして施設を整えたのである。
ジェットバスや薬草風呂、電気風呂に加え、別料金でサウナや岩盤浴、砂風呂も用意され、開拓者や冒険者の疲労回復の場として繁盛した。温泉から採れる湯の花や子供向けの風呂玩具も土産として人気を集めていた。
賑わう飲み屋街
スーパー銭湯の隣には、様々な酒や料理を楽しめる屋台横丁が整備されていた。テレーゼ、リサ、アマーリエも臨時店長として店に立ち、住民や休暇中の開拓者、冒険者たちを迎えていた。
他地区では住居や宿の整備が優先され、娯楽や飲食店が不足していたため、人々は自然とバウマイスター特区へ集まっていた。ヴェンデリンは他地区への支援も考えたが、担当貴族たちの立場を損ねるため介入できず、それぞれに任せるしかなかった。
終わらない仕事と育休策
特区の成功によりヴァルド殿下からの評価がさらに高まり、テレーゼたちは将来ヴェンデリンが王宮筆頭魔導師に任じられる可能性まで口にした。ヴェンデリンは楽隠居を望んでいたため、仕事を減らす手段として、今後も子供が生まれるたび育休を取る案を思いついた。
妻たちも次の子供について前向きな反応を示し、ヴェンデリンは仕事が減っても育児は増えると気づいたが、育児で忙しくなることには不満を感じなかった。
陸小竜料理の食べ放題
次に訪れたのは、ヴィルマが臨時店長を務める陸小竜料理の食べ放題店であった。唐揚げや照り焼きを様々な味付けで提供し、冒険者や開拓者、軍人だけでなく、普段は体面を気にする貴族たちからも人気を集めていた。
ただし大量に食べる導師だけは採算が取れないため出入り禁止にされていた。店はエドガー侯爵家の経営で、軍人が戦場でも手軽に食べられる料理の研究も兼ねていた。
家族との時間
ヴェンデリンはその後も特区内の店を視察し、順調な売り上げを確認した。仕事を終えると屋敷へ戻り、フリードリヒたちとの家族団らんを楽しんだ。
翌日からは領地の留守を守っていたアグネスたちも合流する予定であり、ヴェンデリンは彼女たちへの労いも兼ねて、家族で過ごす準備を進めることにした。
第四話 一時避難と、隠れ家的なお店
永久氷の採取
ヴェンデリンは、超高級カキ氷を作るため、エルを連れて標高八千メートルを超えるスフィンランド山へ向かった。魔法障壁で気温や気圧、酸素濃度を保ちながら、八千年以上溶けずに残った永久氷を大量に採取した。
帰還後、自動カキ氷機を試したが、永久氷を十分薄く削れなかった。ヴェンデリンは職人たちに改良を任せ、自身の風魔法で氷を極薄に削る方法を使うことにした。
多彩な高級カキ氷
ヴェンデリンはミルクや果物、チョコ、抹茶、焙じ茶などを使った多彩なカキ氷を作り、フリードリヒたちや妻たちに振る舞った。氷自体に味をつけたり、餡子や白玉、生クリームなどを組み合わせたりしたカキ氷は好評であり、ヴェンデリンはノースランドでも高級カキ氷を商品化できると考えた。
永久氷は希少価値を生かした大人向けの商品とし、魔法で作った氷を使う安価な商品とは価格帯を分ける方針を立てた。
空き倉庫の隠れ家店舗
ヴェンデリンは、貴族や商人たちの陳情から逃れながら家族と過ごすため、バウマイスター特区の空き倉庫を利用して試験的なカキ氷店を開いた。倉庫内には子供用の遊具も設置し、フリードリヒたちを遊ばせながら営業できるようにした。
涼子、雪、唯たちはアキツシマ風の装飾を施し、看板を出さず、入口に一輪の花だけを飾った店に仕上げた。アグネス、シンディ、ベッティ、カチヤらは和風の制服を着て接客を担当した。
最初の食通
初日に訪れた客は一人だけであったが、その商人は永久氷を砂糖水だけで味わうスイを注文した。極薄に削られた永久氷の口溶けと味を高く評価し、満足して帰っていった。
翌日にはその商人から話を聞いた者たちが訪れ、永久氷とミズホやアキツシマの食材を組み合わせた高級カキ氷を次々と注文した。最初の客は食通として知られるウィンドランドという商人であり、彼の口コミによって店の存在が広まっていた。
看板のない店の大繁盛
三日目には開店前から客が並び、ヴェンデリンは急遽席を増やした。永久氷だけでなく普通の氷を使った商品も売れ、店は想定以上に繁盛した。
四日目からはミルクイチゴ、チョコミント、黒蜜きな粉、抹茶ミルクなど種類をさらに増やし、看板のない高級カキ氷店は満席が続いた。ヴェンデリンは価格帯や客数、商品の反応について有益なデータを得ながら、空いた時間には子供たちと遊んでいた。
ヴァルド殿下の危機感
一方、ヴァルド殿下は、バウマイスター特区ばかりが発展し、他地区が住宅地に留まっている状況を問題視していた。ただしヴェンデリンは多額の資金を投入し、正式に認められた特区だけを開発していたため、その権利を取り上げることはできなかった。
ヴァルド殿下は、自ら抜擢した若手貴族たちがヴェンデリンに頼ろうとすることも問題だと考えた。彼らには自力で商人を育て、将来王都の大貴族たちに対抗できる基盤を築いてもらう必要があった。
隠れ家を訪れたヴァルド殿下
ヴァルド殿下は若手貴族たちと共に平民姿で高級カキ氷店を訪れた。そこで店員がヴェンデリンの妻たちだと気づき、ヴェンデリンが陳情を避けるため空き倉庫に身を潜めていたことも知った。
閉店後、ヴェンデリンは若手貴族たちに、自分たちの地区にはまず日用品や食料を扱う普通の商店を整えるべきだと助言した。彼らには商人との人脈が乏しかったため、零細商人を支援して自ら御用商人に育てる必要があると説明した。
若手貴族と商人の育成
ヴァルド殿下から協力を求められたヴェンデリンは、王都へ赴き、若手貴族たちと付き合いのある零細商人を説得した。移転費用や開業資金を貴族側が援助し、ノースランドではアルテリオ商会とバウマイスター辺境伯家が共同経営する倉庫群から商品を仕入れられる仕組みを用意した。
この倉庫群は問屋、物流拠点、非常時の備蓄施設を兼ねており、特定の大貴族に属さなくても利用できた。商人たちはガトル大陸への移転を決断し、各地区に食料品や生活雑貨を扱う店が次々と開店した。
ノースランドの生活改善
新しい商店が増えたことで、特区以外の住民も日常の買い物を近所で済ませられるようになった。商品価格も王都と大差なく、一部はより安かったため住民たちから歓迎された。
ヴェンデリンは表立って自分の功績とせず、ノースランドの問題を解決した。ローデリヒも物流拠点と流通網の重要性を認め、同様の倉庫群を領内各地へ広げる方針を進めた。
育休への帰還
空き倉庫が本来の物流施設として使われ始めたため、ヴェンデリンは屋敷近くの別の倉庫を改装し、フリードリヒたち専用の室内遊戯施設を作った。
そこで家族と穏やかに過ごす中、アグネスとベッティの妊娠も判明した。ヴェンデリンはさらに増える家族を喜びながら、今度こそ育休を続けて家族との時間を過ごそうと考えた。
第五話 東の大陸
ゾヌターク王国の西方探索
ゾヌターク王国は、ゾヌターク共和国から距離を置いた新天地での建国を目指し、秘密造船所で超高速探索船を完成させた。最高時速三百キロを出せる小型船であり、魔力量の多い乗組員を選抜して西方へ出発した。
六時間の飛行と休憩を繰り返した三日目、ゾヌターク共和国から約五千キロ西方で広大な未知の大陸を発見した。一行は海岸にベースキャンプを設営し、測量と周辺探索を開始した。魔王は自身の瞬間移動で人員や物資を運び、ゾヌターク王国建国を本格的に進める方針を固めた。
リンガイアと帝国船団の競争
一方、ヘルムート王国の超大型魔導飛行船リンガイアは、東の未知の大陸を目指して航行していた。帝国も大型船団を送り、リンガイアに追いついて並走する形となった。
リンガイアのコムゾ船長とベキム副長は、船の魔力消費や帰還に必要な余力を考え、帝国との無理な速度競争を避けた。両国とも魔法使いや熟練船員が不足しており、船や人員を失わないことを優先しながら東進を続けた。
東の大陸を守る青い竜
前方に巨大な生物が発見され、魔導望遠鏡による確認で、大きな翼を持つ青い竜だと判明した。その後方には広大な陸地も確認され、リンガイア一行はついに東の大陸へ到達したと考えた。
しかし青い竜は大陸への接近を阻むように滞空しており、帝国船団も危険を察して停止した。両国とも搭乗している魔法使いだけで竜と戦うことを避け、リンガイア側は王城へ救援を求め、簡易移動魔法陣板で強力な魔法使いを呼び寄せることにした。
育休中の緊急招集
その頃ヴェンデリンは、育休を再開してフリードリヒたちと積み木で遊んでいた。導師もブランタークと共に遊びに来ており、念力による積み木積みで魔法の精密操作を鍛えていたが、導師は不器用さを見せていた。
家族でパンケーキのおやつを楽しんでいる最中、ベッケンバウアーから緊急連絡が入った。ヴェンデリンは導師とブランタークを連れ、王都の魔導ギルドへ瞬間移動した。
簡易移動魔法陣板
ベッケンバウアーは、二枚一組で人や物を瞬間移動させる簡易移動魔法陣板を完成させていた。対になる一枚はリンガイアに搭載されており、本来は東の大陸発見後の補給や人員輸送に利用する予定であった。
しかし青い竜によってリンガイアが上陸できなくなったため、王国政府はヴェンデリン、導師、ブランタークを送り込み、竜を討伐させることにした。ベッケンバウアーは物資やカナリアの転送には成功していたものの、人間を転送するのは三人が初めてだと明かした。
青い竜の目前への転送
簡易移動魔法陣板が発動すると、三人はリンガイアではなく、遥か上空へ放り出された。落下中に飛翔で体勢を立て直した直後、青い竜から粘着性の液体を浴びせられた。
その液体は魔法障壁を溶かしたため、三人は高速飛翔で回避した。後方にはリンガイアと帝国船団、青い竜の背後には東の大陸が見え、三人は意図せず竜の目前へ転送されたと理解した。
すべてを溶かす液体
青い竜の液体は導師の火蛇まで溶かした。ヴェンデリンが熊の死骸や巨大な岩を投げて試すと、それらも白煙を上げて消滅したため、液体は魔力だけでなく物質そのものを溶かす性質を持っていると判明した。
三人は水系統の属性竜を想定して土魔法を浴びせたが、青い竜は液体を霧状にして攻撃を溶かした。全方向から攻撃すると傷を負わせられたものの、青い竜は同じ液体を自身に浴びせて傷を完全に治癒した。
液体の消耗作戦
ヴェンデリンは、青い竜が無限に液体を作れるとは考えず、魔法の袋に保管していた岩や古い武器を念力で次々と投げつけた。導師とブランタークも不要品を投げ、時折魔法を交えて、青い竜に液体を使わせ続けた。
やがて青い竜は液体を吐けなくなり、三人の攻撃で全身に傷を負った。しかし竜は突然リンガイアと帝国船団へ向けて突進し、船を破壊して三人を孤立させようとした。
導師の決死の一撃
三人は高速飛翔で追いつき、青い竜の翼を土魔法で破壊した。導師が接近すると、青い竜は最後に残していた液体を吐いたが、導師は厚い魔法障壁を追加し続けながら液体の中を突破した。
導師は青い竜の頭部にしがみつき、アームストロング軍務卿から貰ったオリハルコンの槍を頭頂部へ突き刺した。青い竜は脳を破壊されて海へ落下し、導師は死骸を魔法の袋に収納した直後、魔力切れで墜落したため、ヴェンデリンとブランタークに回収された。
東の大陸への上陸
青い竜を倒したことで、リンガイアと帝国船団は東の大陸への上陸を開始した。王国と帝国は離れた場所にそれぞれベースキャンプを設営し、直接争うことなく探索競争を始めた。
ブランタークの探知では内陸部に多数の魔物らしき反応があり、青い竜は沿岸部への侵入を阻む領域のボスだった可能性が考えられた。ヴェンデリンたちは青い竜との戦いだけでも、この大陸の探索と植民が容易ではないと感じた。
東の大陸での足止め
三人は帰還しようとしたが、ヴェンデリンは東の大陸の正確な位置を把握していないため瞬間移動を使えなかった。簡易移動魔法陣板も人間をどこへ飛ばすかわからず、コムゾ船長によって人間の使用が禁止された。
物資だけは魔法陣板で補給できるものの、人員の移動は当面魔導飛行船に頼るしかなかった。育休中だったヴェンデリンと、ブライヒレーダー辺境伯家所属のブランタークは、思いがけず東の大陸に取り残される形となった。一方、導師だけは新たな未知の大陸での活動に胸を躍らせていた。
第六話 東の大陸獲得競争開始
東の大陸での足止め
青い竜を倒したヴェンデリンたちはすぐに帰還しようとしたが、簡易移動魔法陣板には人間を転送すると位置がずれる欠陥があり、修正には王都から職員を派遣する必要があった。リンガイアも調査団の帰還手段として動かせず、中小型船での帰還も難しかったため、ヴェンデリン、ブランターク、導師は東の大陸に残ることになった。
物資の転送には問題がなかったため生活には困らなかったが、ヴェンデリンは育休中にもかかわらず遠方で単身赴任する形となった。導師が沿岸部の測量へ出る一方、ヴェンデリンとブランタークは簡易移動魔法陣板の近くに留まり、ベースキャンプの整備を手伝った。
ベースキャンプの建設
ヴェンデリンは土木魔法で土地を整地し、念力で資材を運び、調査団の仮設司令部、住居、食堂、倉庫、診療所などの建設を支援した。施設にはゾヌターク共和国軍の払い下げ品が使われ、王国軍は予算を抑えながら居住性を確保していた。
沿岸部の測量も始まり、王国は上陸地点の大河から南側、帝国は北側を暫定的に担当した。導師は王国軍の測量部隊と小型高速魔導飛行船に乗り、南方沿岸の地図作りを進めていた。
サーフェス侯爵の横槍
調査団には王都からサーフェス侯爵が魔導携帯通信機で度々口を出していた。平民出身のコムゾ団長とベキム副団長を軽視し、帝国調査団を追い出して東の大陸を王国だけで独占するよう命じてきたのである。
ヴェンデリンは、現在の兵力では帝国との争いを避け、大河を境に探索を進める方が合理的だと反論した。それでも気合で帝国を追い出せと主張するサーフェス侯爵に対し、命令権はないとして通信を打ち切った。
軍務卿への報告
ヴェンデリンはアームストロング軍務卿へ事情を報告した。サーフェス侯爵は、自分が軍務卿ではない時期に新大陸の発見や大事件が続いたことを不満に思い、功績を欲して口を出していると説明された。
アームストロング軍務卿もサーフェス侯爵を問題視しており、陛下から釘を刺してもらうと約束した。ヴェンデリンは、今後も無茶な要求をしてくる貴族の通信は切って構わないと調査団へ伝え、自分が矢面に立つことにした。
帝国調査団との懇親会
帝国調査団から懇親会の申し出があり、コムゾ団長はヴェンデリンに参加を求めた。帝国側の団長がフランドル伯爵であるため、平民のコムゾたちだけでは立場の釣り合いが悪かったからである。
ヴェンデリンはアームストロング軍務卿に事前報告し、現場同士の関係を良好にしておくことへの了承を得た。帝国のベースキャンプを訪ねてフランドル伯爵と打ち合わせを行い、双方とも未開地で無理に豪華な料理を用意せず、持ち寄り形式の懇親会にすることで一致した。
懇親会の料理
ヴェンデリンは陸小竜の肉を使った各種唐揚げ、ポテトフライ、オニオンフライ、おにぎり、海産物料理などを大量に用意した。味付けやソースにも多くの種類を揃え、ブランタークが持つ猿酒や、自身が保存していた菓子や果物も提供した。
会場では人手不足を補うため、料理や飲み物を各自で取るセルフビュッフェ方式を採用した。好きな料理を好きな量だけ食べられる形式は両国の軍人たちに好評で、久々の料理と酒を楽しみながら交流が進んだ。
東の大陸の共同測量
懇親会の席で、王国と帝国の今後の探索方針が話し合われた。王国は南側、帝国は北側の沿岸を測量していたが、両者の地図と情報を交換すれば東の大陸全体を早く把握できると考えられた。
ヴェンデリンは帝国の皇帝ペーターに連絡し、両国共同で測量と地図作りを進め、その結果を基に領土を分割する案を提案した。ペーターは独占を狙って戦争になるより合理的だとして賛同した。
続いてヘルムート王国国王にも同様の報告を行った。王国はガトル大陸開拓を優先しており、東の大陸をすべて開拓する余力はなかったため、国王も共同測量と将来の分割交渉を認めた。
広大な東の大陸
王国と帝国の測量部隊は一週間経っても戻らず、互いに遭遇したという報告もなかった。そのことから、東の大陸はリンガイア大陸を上回る可能性があるほど広大だと考えられた。
青い竜が沿岸を守っていたことや、内陸部から魔物の気配があることから、本格的な開拓には大きな危険が伴うと予想された。両国はまず沿岸部の全容を把握し、その後に領土分割を協議する方針となった。
実質的な調査団のトップ
懇親会の翌日、ヴェンデリンはベースキャンプのさらなる整備に加え、三日に一度開かれる帝国との情報交換会議への出席も求められた。コムゾ団長とベキム副団長が平民であるため、伯爵であるフランドルと対等に交渉するには辺境伯であるヴェンデリンの存在が必要だった。
さらに王国軍上層部への報告役まで頼まれ、ヴェンデリンは正式な役職を持たないまま、なし崩し的に調査団の実質的なトップとなっていった。
一方、簡易移動魔法陣板は犬より大きな生物を転送すると位置がずれる問題が解決せず、ベッケンバウアーによる改良は続いていた。ヴェンデリンは家族の元へ戻るため、その完成を待ちながら東の大陸で仕事を続けるしかなかった。
第七話 魔王様との再会
ゾヌターク王国の新大陸発見
エリーたちはゾヌターク王国建国の新天地を求め、リストラされた魔導飛行船技術者たちが造った超高速探索船でゾヌターク共和国の西方を探索していた。その結果、広大な新大陸を発見し、測量中だった導師と遭遇して王国のベースキャンプまでやってきた。
これにより、王国と帝国が東方から到達した大陸と、エリーたちが西方から発見した大陸が同一だと判明した。世界が球体であることも証明されたが、同時に大陸獲得競争へゾヌターク王国まで加わることになった。
イースト大陸総督への任命
魔族まで加わったことで平民のコムゾでは政治的な対応が難しくなり、現地で最も爵位の高いヴェンデリンが王国側の交渉を担うことになった。ヴェンデリンは国王や軍務卿、外務卿らへ状況を報告したが、国王は正式な立場が必要だとして、東の大陸をイースト大陸と名付け、ヴェンデリンを初代総督に任命した。
育休中だったヴェンデリンは仕事がさらに増えたことを嘆いたが、王国には能力と爵位を兼ね備えた代役がいなかった。ゾヌターク王国の存在についても、共和国とは別の国家を目指していることを王国上層部へ説明する必要が生じた。
三勢力の領域確認
ヴェンデリンはフランドル伯爵を呼び、エリーたちをゾヌターク王国の勢力として紹介した。王国と帝国が作成した地図を合わせると、イースト大陸は非常に広大で、両国が上陸した場所は西岸中央部よりやや南、ゾヌターク王国は南東部の半島へ上陸していた。
現場では、ベーン河を境に北を帝国、南を王国とする案が現実的だと考えられた。一方、エリーはゾヌターク王国について、上陸した半島と周辺の島だけを求めた。人口の少ない魔族では広すぎる土地を管理できず、防衛上も負担になるためであった。
その結果、帝国が最も広い領域を得る見込みとなり、ガトル大陸を王国に先行された帝国側の不満を和らげる材料にもなり得た。
ゾヌターク王国の事情
エリーたちがゾヌターク共和国の未開地ではなく遠方の新大陸を求めたのは、共和国の近くで王国を建てれば対立が避けられないためであった。遠隔地なら共和国政府がすぐに介入する可能性は低く、独自の国家建設を進めやすかった。
ヴェンデリンは王国と帝国に対し、ゾヌターク共和国とゾヌターク王国は別物だと説明し、新たな領土を求める理由を理解させようとした。
エリーの瞬間移動
領土問題への対応を続ける中、エリーは自分ならイースト大陸からノースランドまで瞬間移動できるとヴェンデリンに告げた。彼女は超高速魔導飛行船で実際に大陸間を移動しており、位置関係を把握していたためである。
ヴェンデリンはようやく家族の元へ戻れると喜んだが、エリーは代わりにゾヌターク王国の領地を正式に認めてほしいと求めた。
正式承認の難しさ
ヴェンデリンは、ゾヌターク王国をいきなり正式承認すれば、ゾヌターク共和国から分断工作と見なされる危険があると考えた。共和国が王国や帝国を敵視し、国外で働く魔族の強制送還に動けば、大きな外交問題や戦争に発展する可能性もあった。
そのためヴェンデリンは、まずエリー個人がイースト大陸で確保した土地の所有権を王国と帝国に認めさせることを提案した。エリーとライラも、それが正式なゾヌターク王国承認への現実的な第一歩だと受け入れた。
こうしてヴェンデリンは、エリーの瞬間移動によってノースランドの家族の元へ戻れるようになった。
第八話 根回し
ノースランドへの帰還
ヴェンデリンとブランタークはエリーの瞬間移動でノースランドへ戻り、エリーゼたちと子供たちに再会した。フリードリヒたちの成長を喜ぶ一方、ヴェンデリンは育休中にもかかわらずイースト大陸総督の仕事まで増えたことを嘆き、早く別の貴族に引き継がせたいと考えた。
分割交渉への根回し
ヴェンデリンは、現地を知らない貴族たちの強硬論によって判断を誤らないよう、イースト大陸の分割交渉を現地で行う方針を固めた。王国と帝国が南北で領域を分け、エリーたちが拠点を築いた南東部の半島も認めることで、将来の不法占拠や争いを避けようとした。
そのためヴェンデリンはエリー、ライラ、アーシャ、ヴィルマ、カチヤ、シンディらと各地を回り、王国と帝国の要人に現状と分割案を説明することにした。
ペーターとの協議
ヴェンデリンは帝国でペーターに最新の情勢を説明した。ペーターは王国と帝国の分割案には理解を示したが、ゾヌターク王国の領地を認めれば、ゾヌターク共和国から魔族分断の工作と見なされる危険を指摘した。
そこでヴェンデリンは、ゾヌターク王国をすぐ正式承認するのではなく、まずエリーが経営する会社の所有地として半島を認める案を示した。表向きは共和国企業の土地とし、実際にはゾヌターク王国の拠点として開発を進め、十分な力を蓄えてから独立を宣言するという考えであった。
ペーターは、魔族の国が複数存在することは人間側にとっても外交上の危険分散になるとして、この案を受け入れた。
王国上層部の賛同
続いてヴェンデリンは王都で国王、ヴァルド、閣僚、ホーエンハイム枢機卿らに同じ説明を行った。ユーバシャール外務卿をはじめ多くの要人は、王国がガトル大陸開拓を優先している現状から、帝国と争わずイースト大陸を分割する案を現実的だと認めた。
一方、サーフェス侯爵は帝国調査団を追い出して王国が大陸を独占すべきだと主張し、王城の貴族たちを集めて騒いでいた。しかし戦争になればガトル大陸への予算や兵力を削らざるを得ず、農務、商務、財務、軍務の各方面から強く反対された。
三ヵ国交渉の決定
国王とヴァルドもヴェンデリンの案を支持し、ゾヌターク王国についても、まずエリー個人の所有地として拠点を認める方向で理解を示した。エリーは将来ゾヌターク王国の建国を宣言すると国王に伝え、国王もそれを受け入れた。
さらに、ベッケンバウアーによる簡易移動魔法陣板の改良がまもなく終わるという報告も入り、三ヵ国のトップがイースト大陸に集まり、現地で正式な分割交渉を行うことが決まった。
エリーとの慰労
根回しを終えたエリーは、ヴェンデリンの働きに感謝し、彼なら人間でもゾヌターク王国の貴族として迎えたいと持ちかけた。ヴェンデリンはヘルムート王国の貴族であるとして断ったが、エリーは気が変わればいつでも歓迎すると伝えた。
大きな仕事が一区切りしたため、ヴェンデリンはエリーとライラと王都のカフェへ向かい、季節限定のフルーツタルトを楽しんだ。王としての自覚を強めていたエリーも、その場では年相応の少女らしい姿を見せていた。
第九話 分割交渉
サーフェス侯爵への誘導
サーフェス侯爵は、ヴェンデリンが進めるイースト大陸の分割交渉を売国的だと非難し、大陸全土を王国が得るべきだと主張していた。そこへ魔族の商人を装った者が高速魔導飛行船の提供を持ちかけ、先に北部へ進出して実効支配すれば分割交渉を潰せると唆した。功績を欲するサーフェス侯爵はその提案に乗り、同志を集めてイースト大陸へ向かうことを決めた。
その裏では、ユウの作品と呼ばれる存在を刺激して人間と魔族をイースト大陸から追い出す計画が進められていた。サーフェス侯爵たちだけでなく帝国側の貴族も内陸部へ誘導し、彼らの侵入によって大陸内部の生物たちの防衛本能を刺激しようとしていた。
北部内陸への上陸
サーフェス侯爵率いる開拓団は高速魔導飛行船十隻でイースト大陸北部の内陸草原に上陸した。周囲に魔物の気配がなかったため、彼らはこの土地を先に開発して実効支配すれば、帝国領とする分割案を覆せると考えた。
サーフェス侯爵は広大な領地を得て勢力を伸ばし、将来軍務卿となって他の大貴族を凌ぐことを夢見ながら、ベースキャンプの建設を進めた。
巨大ナメクジの襲撃
夜になると、突然巨大な魔物が現れ、開拓団の魔導飛行船を次々と炎上させた。その正体は背中に複数の管を持つ巨大なナメクジのような生物で、管から火球を発射していた。
さらに背中に同じような管を備えた赤い狼たちも現れ、魔法使いたちを火球で圧倒した。逃げることもできなくなったサーフェス侯爵は巨大ナメクジの火球を受けて死亡し、開拓団は全滅した。帝国側で内陸部へ送り込まれた開拓団も同様に全滅し、ユウの作品たちは侵入者を排除するため活動を始めた。
イースト大陸分割条約
一方、改良された簡易移動魔法陣板によって王国、帝国、ゾヌターク王国の首脳がイースト大陸に集まり、領地分割交渉が行われた。ベーン河より北を帝国、南を王国、南東部の半島をゾヌターク側の土地とするヴェンデリンの案で合意し、条約が締結された。
しかし交渉直後、ヴェンデリンは内陸部から膨大な数の魔物が接近していることを探知した。各国の首脳を簡易移動魔法陣板で退避させ、王国と帝国の調査団も急いで撤収を開始した。
火球を放つ水牛の大群
両国のベースキャンプには、背中に二本の管を持つ巨大な水牛型の魔物が大量に押し寄せた。水牛たちは建物を破壊した後、背中の管から火球を連射して離陸した飛行船を攻撃した。
ヴェンデリンとブランタークはリンガイアを魔法障壁で守ることに成功したが、帝国の飛行船二隻は防御が間に合わず、火災を起こして海へ墜落した。ヴェンデリンは、水牛たちの異様な構造から、生物兵器のような存在ではないかと考えた。
イースト大陸からの撤退
飛行船は空中で停止し続けられず、飛行を続ければ魔力を消耗するため、このまま大陸付近に留まることはできなかった。ヴェンデリンは調査団員の安全を優先し、帝国側と合流してイースト大陸から撤退する方針を固めた。
ゾヌターク王国側の拠点はまだ襲われていなかったが、エリーは危険に備えて開拓団へ撤収準備を命じていた。
墜落船の生存者
エリーは、帝国の墜落船から海に投げ出された生存者を救助するべきだと主張した。ヴェンデリンは危険と帰還に必要な魔力を考えて一度は躊躇したが、目の前の命を救うべきだというエリーの言葉を聞き、彼女が王として成長していることを認めた。
問題は救助した多数の人間を運ぶ手段だったが、ヴェンデリンは水上でも浮く子供用大型カートを思い出した。水牛を引きつける陽動組と、大型カートで生存者を回収する救助組に分かれる作戦が決まり、王国と帝国の魔法使いたちが協力して救助に向かった。
水牛への陽動攻撃
ヴェンデリン、導師、ブランタークは、水牛たちの注意を救助隊から逸らすため、高威力の広域魔法で攻撃した。水牛たちは仲間を倒されたことで激昂し、三人へ大量の火球を浴びせた。
水牛は火球を放つ一方で火魔法への特別な耐性はなく、導師の火蛇でも倒すことができた。しかし内陸部から次々と増援が押し寄せ、その数はほとんど減らなかったため、ヴェンデリンたちはイースト大陸の本格的な開拓は現状では困難だと考えた。
エリーとライラの防衛
エリーとライラは海上で救助隊と生存者を守り、水牛から飛んでくる火球を魔法障壁で防いだ。予想以上に生存者が多く、一度では運びきれなかったため、救助隊は船へ人員を運んだあと再び戻る必要があった。
長時間の防御で魔力を消耗しながらも、エリーは海上の生存者たちを励まし続けた。二度目の救助隊が到着した後、エリーは探知で一人だけ取り残された生存者を見つけ、自分で救おうとした。
ヴェンデリンの救援
エリーは最後の生存者へ向かう際にライラから離れてしまい、大量の火球に狙われた。動揺して魔法障壁を発動できず死を覚悟したところへヴェンデリンが現れ、すべての火球を防いだ。
ヴェンデリンはエリーにライラと協力して最後の生存者を運ぶよう指示し、自身は撤退の殿を務めようとした。
水牛の死体回収
撤退直前、導師は水牛の正体と弱点を調べるため、死体を持ち帰るべきだと主張した。ヴェンデリンは導師に連れられて海岸へ突入し、強力なエリアスタンで多数の水牛を感電死させた。
導師が魔法障壁で火球を防ぐ間にヴェンデリンは死体を魔法の袋へ回収し、二人は大量の火球を振り切ってリンガイアへ戻った。
リンガイア大陸への帰還
帝国の生存者たちはリンガイアに収容され、治療と食事を受けた。ゾヌターク王国の開拓団も撤退直後に水牛の襲撃を受けており、間一髪で難を逃れていた。
火球を放つ水牛の死体はベッケンバウアーに解析させることとなり、その正体と弱点が判明するまでイースト大陸への植民は難しい状況となった。エリーとライラは今回の戦いで実戦経験の不足を痛感し、帰路の半月を利用してヴェンデリンやブランターク、導師から魔法を教わった。
ヴェンデリンは初代総督として担当したイースト大陸が人間にも魔族にも手に余る土地だったことを受け入れ、今回の失敗で総督を罷免されれば育休へ戻れると考えながら帰還した。
第十話 解任?
サーフェス侯爵たちの捜索
リンガイアで王都へ戻ったヴェンデリンは、サーフェス侯爵と賛同する貴族たちが魔族の商人から得た船で姿を消したと知らされた。彼らがイースト大陸へ向かった可能性が高いため、ヴェンデリンは導師、ブランターク、エリー、ライラたちと瞬間移動で現地へ戻り、内陸部を捜索した。
草原では火球を吐く水牛たちが静かに過ごしており、上空を飛ぶ一行には攻撃してこなかった。そのためヴェンデリンたちは、水牛が大地へ侵入した者を排除する役割を持つ可能性や、他の地形には別種の魔物が存在する可能性を考えながら捜索を続けた。
焼け落ちた船団
内陸部の草原で、ヴェンデリンたちは焼け落ちた魔導飛行船の残骸を約十隻分発見した。サーフェス侯爵たちの船団も十隻だったことから、彼らがここへ上陸してベースキャンプを築き、水牛たちを刺激した可能性が高まった。
死体は見つからなかったが、導師は落ちていた宝石の指輪を回収した。さらに背中に管を持つ赤い狼の群れと巨大ナメクジが現れ、管から大量の火球を放ってきたため、水牛以外にも同様の能力を持つ魔物が存在することが判明した。
狼型魔物の回収
ヴェンデリンたちは船の残骸を撮影し、一部を証拠として回収した。目的を果たして撤退しようとしたところ、導師が狼型魔物のサンプルも必要だと主張したため、ヴェンデリンは火球の中へ突入して数頭をウィンドカッターで倒し、その死体を魔法の袋へ収めた。
巨大ナメクジの回収は断念し、一行は火球を防ぎながら集合して瞬間移動で王城へ帰還した。
体内の魔晶石
ヴェンデリンたちは回収した狼型魔物を持って魔導ギルド地下研究所を訪れた。そこでベッケンバウアーは、以前回収した水牛型魔物の体内から魔石ではなく魔晶石が見つかったと説明した。
水牛は明らかに生物でありながら、加工されなければ存在しない魔晶石を最初から体内に備えていた。このことからベッケンバウアーは、水牛が生物の形をした魔道具であり、侵入者を排除する兵器のような存在である可能性を示した。
新たに持ち帰った狼型魔物を解剖すると、こちらにも魔晶石が内蔵されていた。既知の古代魔法文明の技術とは異なるため、別系統のロストテクノロジーによって作られた可能性が浮上した。
イースト大陸の脅威
王城ではヘルムート王国と帝国、ゾヌターク王国の関係者が集まり、今後のイースト大陸について協議した。帝国側でも独断で内陸部へ向かった貴族たちが全滅しており、サーフェス侯爵たちと同じく分割交渉を覆して自国の領土を増やそうとしていたことが明らかになった。
確認された火球を吐く魔物は水牛、狼、巨大ナメクジであり、さらに別種が存在する可能性もあった。しかもそれらは生物であると同時に兵器の性質を持ち、イースト大陸開拓はガトル大陸以上に困難になると考えられた。
再進出の困難
三ヵ国はいずれもイースト大陸を得たいものの、大軍を遠距離輸送する負担と、普通の兵士では火球に対抗できない問題を抱えていた。簡易移動魔法陣板も少人数や物資の輸送には使えるが、大軍を送るには膨大な魔力を必要とした。
そのためヴェンデリンは、魔法使いに頼らず火球を吐く魔物へ対抗できる戦力が整うまで、イースト大陸への再進出を控えるべきだと提案した。
総督辞任の申し出
ヴェンデリンは恒久的な拠点を維持できず撤退した責任を取るとして、イースト大陸総督を辞任すると申し出た。総督職を離れれば育休へ戻れると期待していたが、陛下は辞任を認めなかった。
陛下は、青い竜の討伐、ベースキャンプ建設、測量部隊の支援、帝国との折衝、分割交渉の準備、墜落船生存者の救助など、ヴェンデリンの功績は撤退の失敗を補って余りあると評価した。さらにペーターとエリーも、三ヵ国との関係を持つヴェンデリンが総督に最適だとして続投を求めた。
三ヵ国連合軍
ヘルムート王国、帝国、ゾヌターク王国は、十分な準備を整えた後に連合軍を組織し、火球を吐く魔物たちを排除してイースト大陸への再進出を目指す方針で一致した。
ヴェンデリンは総督を辞められなかったものの、再進出までには時間が必要だと考え、その間は育休を取ることにした。王国では火球対策となる装備の開発も進められ、黒硬石がその材料として利用されることになった。
再開された育児
ヴェンデリンは涼子、雪、唯や、妊娠したアグネスとベッティたちと過ごしながら、再び家族との生活に戻った。イースト大陸奪還の準備が整うまでの時間を、育児に充てるつもりでいた。
一方、イースト大陸側では、破壊された魔物たちは自動工房から補充可能であり、さらに新たな存在を投入して人間たちの再進出を阻止しようとする動きが進められていた。
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