物語の概要
■ 作品概要
違法都市センディアでの激闘を終えたフランと師匠は、ギルドの伝令として拠点都市ノクタへと帰還した。昏睡を続けるナディアの無事を確認した直後、ノクタへシラード聖国とハガネ将国という北の二大国が到着する。
抗魔に包囲された東の都市ブルトーリの救援を目的に、二大国とギルドによる共同依頼が発足した。
他に実力者が不在という事情から、フランは冒険者部隊の隊長に推挙される。
そしてS級冒険者イザリオや聖国の神剣騎士アドル・ヤレスフェイムらと共に、ブルトーリへの遠征を開始した。
行軍の最中、大陸中央部を震源とする巨大な地殻変動が発生し、胎児のような形状で魔力を強制吸収する規格外の「巨人型抗魔」が各地へ同時多発的に出現する。ブルトーリでの決戦において、フランは新技の制御に失敗して窮地に陥った。だがそこへ、黒猫族の進化系統「黒天虎」に至った少女ティルディアが乱入を果たす。進化した同族の圧倒的な武威によって巨体は沈められた。
本巻は、この未曾有の脅威に対し、国家の枠組みを超えた全大陸規模の反攻作戦が始動する重要な転換点を描く。最終的にフランは次なる作戦への布石として、シラード聖国との交渉任務を帯び、再びセンディアへと向かう運びとなった。
■ 主要キャラクター
フラン & 師匠
- ノクタへの帰還後、ギルドからブルトーリ救援部隊の隊長に任命された。ナディアの守護を目的としつつも、巨人型抗魔という新種の脅威に直面していく。
イザリオ(才無しのイザリオ)
- ランクS冒険者にして、神剣『煌炎剣・イグニス』の使い手を務める。膨大な修行を積んでも「剣術」スキルが向上しなかった過去から自らを「才無し」と称するが、その結果として防御や受け流しに特化した独自の戦闘スタイルを確立させた。ウルマー製神剣の代償を伴い、使用時には1〜2程度のレベル低下が生じる。
アドル・ヤレスフェイム
- シラード聖国の神剣騎士であり、神剣『始神剣・アルファ』を操る。能力解放時には「半神化」状態へと移行し、全てのスキルが最高位のLv10に達した上で「剣王術」などの上位スキルが付与される仕組みだ。その代償として10分ごとに1レベルが減少し、解放後には肉体に激しい反動を受ける。
アジサイ & マツユキ
- ハガネ将国の特殊部隊「月下美人」に身を置く少女たち。神剣『狂神剣・ベルセルク』の潜在的な使い手として生み出されたホムンクルスに該当し、ひとたび行使すれば確実に命を落とす過酷な宿命を背負う。
ティルディア
- ナディアに拾われて育った黒猫族の養女。安全を期したナディアにより大陸外へ送られていたものの、「ランクC到達」という帰還条件を自力で満たし、進化系統「黒天虎」へ至って舞い戻った。フランを「ナディアに恩がある先駆者」として尊敬しながらも、強い対抗意識を燃やす。
銀の女
- 神級鍛冶師ゼックスの手によるゴーレム。オーバーグロウスの消滅に伴って役目を終えたが、フランを「自身を解放した恩人」と見なして力を貸す。シラード聖国による高レベル治癒術師や特異個体といった有益な人材の収集に警鐘を鳴らし、鑑定遮断の魔道具や神剣に関する秘匿情報を提供した。
書籍情報
転生したら剣でした 20
著者:棚架ユウ 氏
イラスト:るろお 氏
出版社:マイクロマガジン社(GCノベルズ)
発売日:2025年10月30日
ISBN:9784867168561
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あらすじ・内容
猫耳少女と共に剣としてその銘を異世界に刻み込め!
ネット小説大賞受賞の無機物転生ファンタジー!
違法都市センディアでソフィを救ったフランと師匠は、ギルドの依頼で新たな戦場へ。
町を狙う抗魔を殲滅するため、S級冒険者イザリオや神剣騎士アドルといった神剣使いと共闘することになるのだが――。
そんな中、過去に例がないほどの巨大抗魔が同時多発的に出現し、ゴルディシア大陸中の都市を襲い始めた。
突然の強敵に劣勢となるフランの前に、謎の黒猫族が現れる――その身に黒雷をまとった黒猫族が。
『進化って、まじかよ……!』
2026年のアニメ2期放送に向けてますます盛り上がる大人気ファンタジー、大台の20巻!
感想
神剣がどれも代償重すぎ。二人目の黒天虎・ティルディア登場が嬉しい
20巻は、ゴルディシア大陸での戦いがさらに大規模になった巻である。
巨人型抗魔が各地で同時多発的に出現し、それに対抗するため神剣使いたちまで次々と参戦する。
『煌炎剣・イグニス』
『始神剣・アルファ』
『狂神剣・ベルセルク』
こうして名前だけ並べると、とんでもなく豪華である。
実際、その力も凄まじい。
ところが詳しい事情を知っていくと、
「まともな神剣が無い!」
と言いたくなった。
イグニスは使えばレベルが下がる。
アルファも使えばレベルが下がる。
ベルセルクに至っては使用者が死ぬ。
強力なのは間違いない。
しかし、どれも気軽に使っていい代物ではない。
そんな神剣たちが鎬を削る一方で、フランは冒険者部隊の隊長となり、戦場を駆け回る。
さらに「銀の女」との再会、シラード聖国の不穏な動き、そして二人目の黒天虎となったティルディアの登場。
20巻という節目にふさわしく、これまで積み上げてきたものが一気につながってきた印象の巻だった。
神剣アルファ、強いけど使用者の育て方まで怖い
シラード聖国の神剣騎士アドルが使うのが『始神剣・アルファ』である。
神剣を開放すると、ステータスが大幅に上昇し、持っているスキルまで最高レベルへ引き上げられる。
その結果、それまでフランたちから見てもそこまで強く感じなかったアドルが、一気に化け物のような強さになる。
一人で大量の抗魔を薙ぎ払っていく姿は、さすが神剣というしかない。
ただ、興味深かったのはアドル本人の育てられ方である。
普段から最強の戦士として育てるのではない。
アルファを使った時に最大限強くなるよう、多くのスキルを覚えさせている。
神剣ありきで人間を作っているような印象を受けた。
しかもアルファを使用すると、時間に応じてレベルそのものが低下する。
強くなるために積み重ねてきたレベルを、神剣を使うたびに失う。
いくら強くても、これは嫌だなと思ってしまう。
イグニスもレベルを持っていく。神剣とは何なのか
ランクS冒険者イザリオが使う『煌炎剣・イグニス』も強烈だった。
フランが興味を持つのも当然である。
普段のイザリオは酒好きのくたびれたおじさんにしか見えない。
それなのに戦えば異常に強い。
さらにイグニスを開放すると、広大な範囲を神炎で焼き尽くす。
神剣らしい圧倒的な攻撃である。
だが、こちらも代償はレベル低下。
イザリオは神剣の使用時間を考えながら、できるだけレベルを失わないように戦っている。
強力な必殺技を使うためにMPを大量消費する、という程度ではない。
使った後に回復すればいいものでもない。
積み上げたレベルそのものが消える。
神剣は確かに最強クラスの武器なのだが、
「使えば使うほど使用者が削られていく」
という構造なのが怖かった。
ベルセルクはさらに酷い。使用者死亡って……
そして一番酷いのが、ハガネ将国の『狂神剣・ベルセルク』である。
使い手となるのは「月下美人」と呼ばれる少女たち。
アジサイやマツユキたちは、ベルセルクを扱うために生み出されたホムンクルスだった。
しかも使用すれば、命を落とす。
レベルが下がるどころではない。
使用者死亡。
いや、まともな神剣が一つもない。
ベルセルクそのものが強烈な力を持っているのは分かる。
実際、巨人型抗魔や抗魔竜人を相手に、その力が必要になるほど戦況は酷くなっていく。
それでも、
「強敵が出たから神剣を使おう」
では済まない。
使えば、その少女の人生が終わる。
それを知った状態で戦闘を見るので、単純に神剣の強さを楽しめなくなってくる。
強い。
でも使ってほしくない。
フランがベルセルクの発動を見たくないと思うのもよく分かる。
フランが冒険者部隊の隊長になっている
その一方で、フランの立場も随分変わった。
今回、ブルトーリ救援に向かう冒険者部隊の隊長を任される。
昔のフランを考えると、ここもかなり感慨深い。
本人は相変わらず戦いたがっているし、強敵を見れば目を輝かせる。
でも周囲から見ると、もう一人で好き勝手に戦う冒険者ではない。
「黒雷姫」として名前を知られ、他の冒険者を率いる側になっている。
冒険者たちもフランの強さを知っているので、大きな反発はない。
本人が意識している以上に、立場が上がっているのだと思う。
神剣使いという規格外の怪物たちが並ぶ巻なので少し霞んでしまうが、フラン自身も十分とんでもない存在になっている。
銀の女がナディアを守ってくれるのはありがたい
今回かなり助かったのが「銀の女」である。
ナディアとも深く関係していた存在であり、フランに対しても恩を感じている。
そして今回、フランへかなり重要な情報を教えてくれる。
特に危険なのがシラード聖国。
有用な能力を持つ人間や魔道具を見つけ、確保しようとする部隊が存在する。
フランなんて、どう考えても目を付けられる。
強い。
高位の回復能力もある。
さらに師匠という普通ではあり得ない存在まで一緒にいる。
全部知られたら面倒どころではない。
そこで銀の女が渡してくれたのが、高位の鑑定を防ぐ腕輪である。
実際、シラード側から能力を探られても遮断できている。
これはかなり重要な装備になったと思う。
ナディアの護衛まで引き受けてくれるのがありがたい
さらに銀の女は、眠ったままのナディアの護衛まで引き受けてくれる。
これでフランは前線へ出やすくなった。
ナディアを残して戦いに行く以上、どうしても心配は残る。
しかもシラード聖国のような怪しい勢力まで周辺をうろついている。
そんな状況で、信用できる強者がナディアのそばに残ってくれる。
これは大きい。
銀の女自身には残された活動時間があまり多くないようだが、それでも最後にナディアを守る役目を引き受けてくれるのが印象に残った。
以前の出来事が、ここでフランを助ける形になって返ってきている。
そして二人目の黒天虎・ティルディアが登場
今回、一番嬉しかったのはティルディアの登場かもしれない。
黒猫族。
しかもナディアの養女。
そして、
進化している。
黒天虎である。
フラン以外の進化した黒猫族が、ついに出てきた。
これはかなり大きい。
フランが黒天虎になっただけなら、
「フランが特殊だったから」
で終わる可能性があった。
師匠という普通ではあり得ない相棒もいる。
神様にも関係している。
フランだから進化できただけではないかと思われても仕方がない。
しかしティルディアは違う。
フランが広めた進化方法を知り、それを目標に鍛え、自分自身で進化条件を達成している。
これで二例目。
黒猫族は本当に進化できる。
フランの進化が偶然ではなかったことが、実際の結果として証明された。
フランが進化方法を広めた意味が、ここで形になった
これまでフランは、自分だけ強くなればいいとは考えてこなかった。
黒猫族が虐げられてきた原因の一つが、
「進化できない種族」
と思われていたことにある。
だから、自分が見つけた進化条件を秘密にしなかった。
冒険者ギルドを通して広めた。
その結果がティルディアである。
一人が進化方法を見つける。
その情報を他の黒猫族へ伝える。
別の黒猫族が実際に進化する。
これで、
「本当にできるんだ」
という証明になった。
ここは20巻まで続いてきた物語の中でも、かなり大きな出来事だと思う。
フラン自身が強くなっただけではない。
フランが歩いた道を、後ろから別の黒猫族が歩き始めている。
ようやく黒猫族全体の未来が変わり始めたように感じた。
しかもティルディアが普通に強い
そしてティルディアは、
「進化した黒猫族がもう一人いました」
だけのキャラクターではない。
普通に強い。
フランが巨人型抗魔を仕留め切れずに苦戦しているところへ現れ、黒天虎の力を使って戦う。
同じ黒天虎でも、フランとは戦い方が違うのが面白かった。
フランは師匠と共に剣士として戦ってきた。
対してティルディアは変則的な双剣を使い、黒雷転動まで積極的に攻撃へ利用する。
フランもその戦い方を見て学んでいく。
つまりフランにとって初めて、
「同じ黒天虎だからこそ参考にできる相手」
が現れたのである。
これまで黒天虎としては完全に一人だった。
教えてくれる先輩もいない。
比較できる相手もいない。
そこへティルディアが来た。
これは今後のフランの成長にもかなり影響しそうである。
ナディアからすると、養女が二人とも黒天虎みたいな状態になっている
しかもティルディアはナディアの養女である。
フランもナディアとはかなり深い関係になっている。
その二人が両方とも黒天虎。
ナディアからすれば何とも不思議な状況である。
そしてナディア自身も、最後には再び鍛えて進化を目指そうと考える。
ここも良かった。
フランが道を切り開く。
ティルディアが二人目として証明する。
それを見て、ナディアまで、
「自分も目指してみよう」
と思えるようになる。
進化できないと思われ続けてきた黒猫族の常識が、本当に崩れ始めている。
20巻は神剣よりも、二人目の黒天虎が一番大きかった気がする
神剣同士の戦い。
巨人型抗魔の同時多発。
シラード聖国の怪しい動き。
ベルセルクと月下美人。
どれも規模が大きく、かなり濃い巻だった。
特に神剣については、
イグニスはレベル低下。
アルファもレベル低下。
ベルセルクは使用者死亡。
本当にまともなのがない。
強力な力には代償があるということなのだろうが、それにしても重すぎる。
そんな中で、一番先につながる出来事だと感じたのはティルディアの進化だった。
フラン一人なら奇跡。
二人目が現れれば再現性が生まれる。
フランが世界へ広めた黒猫族の進化方法が、実際に別の黒猫族を黒天虎へ導いた。
これは単なる新キャラクターの登場ではない。
長年「進化できない」とされてきた黒猫族にとって、歴史が変わり始めた瞬間なのだと思う。
神剣のような借り物の圧倒的な力ではなく、自分たちで条件を満たし、進化して強くなる。
そう考えると、重い代償を背負う神剣使いたちが集まる20巻で、ティルディアという二人目の黒天虎が登場したことが、余計に印象に残った。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
ストーリー・プロット
ノクタへの帰還から大規模な抗魔討伐、そして新たな脅威の出現に至る一連の動向をまとめる。各勢力の思惑と神剣の力、さらには黒猫族の進化に関わる重要な局面が連続して展開する。
第1幕:ノクタへの帰還とS級との邂逅
- センディアから強行軍でノクタへ帰還したフランは、昏睡中のナディアを見舞い、ギルドへ戦況を報告する。
- ギルドの宴席で才無しのイザリオと接触したフランは、彼が神剣イグニスの使い手であると見抜いて模擬戦を申し込む。
- イザリオは万全の状態で任務に臨むことや酒を楽しむことを理由に受け流し、自らを神剣に選ばれただけの凡人と称する。
第2幕:北の二大国と合同依頼の受諾
- ノクタにシラード聖国の聖騎士団とハガネ将国の黒歩兵連隊が到着する。
- ブルトーリへ一〇万の抗魔が襲撃するという予測に基づき、二大国とギルドによる合同救援依頼が発足する。
- 実力と知名度を兼ね備えるフランが冒険者部隊の隊長に就任し、各国の神剣使いとともに遠征を開始する。
第3幕:ブルトーリ遠征とアルファの威力
- ブルトーリ到着後、優先権を持つシラードのアドルが神剣アルファを解放する。
- 半神化による圧倒的なステータスと剣王術を駆使し、単騎で一〇万の抗魔を殲滅する。
- 解放終了後、アドルは自力歩行が危ういほどに消耗し、ウルマー製神剣特有のレベル低下という代償が浮き彫りとなる。
第4幕:ハガネの戦術とイザリオの語り
- 続けて出現した抗魔に対し、ハガネ将国の老兵部隊は自爆魔術をも辞さない精密な連携戦術を展開する。
- 自らの命を勝利のための駒として扱う冷徹な戦法に、フランは強い衝撃を受ける。
- イザリオはフランに対し、剣の才能が皆無だった時代から神剣と出会いS級に至った過去を明かし、凡人としての執念と覚醒の意義を説く。
第5幕:イグニスの真価と銀の女の忠告
- 三度目の抗魔襲撃に際し、イザリオが神剣イグニスを解放して戦場ごと敵を焼き尽くす。
- 戦闘直後、ゴーレムの銀の女が現れ、フランの治癒能力や血統を狙うシラード聖国の人材発掘部隊への警戒を促す。
- 銀の女はナディアの密かな護衛任務を引き受け、フランへ高位の鑑定遮断の腕輪を譲渡する。
第6幕:神剣の知識と巨人型抗魔の出現
- 銀の女から、大陸で観測された10本の神剣(アルファ、ベルセルク、チャリオット、エルドラド、ガイア、イグニス、クリスタロス、サンクチュアリ、テンペスト、ウィズダム)の能力と、レベル低下や寿命消費といった過酷な代償に関する情報がもたらされる。
- 直後に大陸規模の地揺れが発生し、魔力を吸収して自己成長を遂げる巨人型抗魔が各地に出現する。
第7幕:進化の雷鳴と黒天虎の少女
- ブルトーリ近郊に出現した巨人型抗魔に対し、フランは狼式抜刀術・黒雷神爪を試みる。
- 超高速移動中に黒雷を剣身へ集束させる制御が定まらず、決定打を与えられずに窮地へ陥る。
- 乱入した黒猫族の少女ティルディアが、黒天虎の固有技である黒雷転動による超高速戦闘を展開し、標的を完全に粉砕する。
第8幕:再会と次なる戦場への動線
- ノクタへ帰還した一行は、ナディアを介した関係性を整理する。
- ティルディアがナディアの養女であり、その生存を願うナディアの手で外海へ送り出されていた事実が判明する。
- 全大陸に巨人型の脅威が広がる中、管理委員会から緊急要請が下り、フランはシラード聖国との連合軍交渉役として再びセンディアへ赴くことになる。
二大国の介入と神剣の解放により目下の抗魔は退けられたものの、代償の重さや巨人型抗魔の発生によって戦局はより過酷な段階へ進む。黒天虎の技を持つティルディアの合流とシラード聖国との交渉は、今後の大陸の命運を左右する契機となる。
主要な転換点
大陸を揺るがす未曾有の戦乱の中、戦局や登場人物の認識を大きく変える契機となった主要な転換点について整理する。個人の内面的な成長から勢力図を塗り替える事象まで、多角的な視点からその変化と影響を記録する。
イザリオとの接触
- 以前の状況
- フランは神剣使いに対して、生まれ持った天賦の才に恵まれた無敵の強者という認識を抱いていた。
- 出来事
- 剣術スキルが上がらないという致命的な欠陥を抱えながらも、神剣を制御し続ける凡人としての矜持を持つイザリオの存在を知る。
- 変化と影響
- 才能の有無に関わらず、誠実に剣と向き合う姿勢の重みを理解する。その結果、自身が目指すべき強者としての在り方を再考する契機となる。
巨人型抗魔の同時出現
- 以前の状況
- 周期的に発生する抗魔の襲来は重大な脅威であったものの、各国の従来の軍事力によって対処可能な範囲にとどまっていた。
- 出来事
- 周囲の魔力を吸収して爆発的に巨大化・成長する規格外の巨人型抗魔が、大陸規模の地揺れに伴い各地で同時多発的に発生する。
- 変化と影響
- 従来の局所的な防衛体制が破綻する。国家間の利害対立を一時的に棚上げし、大陸規模での連合軍結成および全戦力の投入が、人類生存のための絶対条件となる。
ティルディアの覚醒と参戦
- 以前の状況
- 進化を果たした黒猫族である黒天虎は、世界中でフランただ一人のみの極めて例外的な事例と見なされていた。
- 出来事
- 黒猫族の少女ティルディアが独力で過酷な進化条件を満たし、黒雷を操る黒天虎として圧倒的な武威を示して戦場へ介入する。
- 変化と影響
- フランにとって並び立つ同族の好敵手が出現する。同時に、黒猫族の進化が個人の偶然や幸運によるものではなく、明確な条件を満たせば再現可能な種としての構造変化である事実が立証される。
銀の女による神剣データ提供
- 以前の状況
- 神剣使用に伴う具体的な制約や反動、ならびにシラード聖国が特殊な資質を持つ人材を秘密裏に収集する真意は判明していなかった。
- 出来事
- 観測された10本の神剣が持つ特性や過酷な代償に関する情報と、シラード聖国による人材発掘部隊の動向に関する警告を受領する。
- 変化と影響
- シラード聖国に対する具体的な軍事技術面および政治的警戒が生じ、今後の連合交渉や行動方針を策定する上での判断材料が確立される。
これら一連の転換点は、単なる武力行使の結果にとどまらず、個人の認識の変容や組織構造の刷新を促す決定打となった。常識を覆す新たな戦力や情報の獲得は、混沌を極める大陸の情勢を大きく転換させる原動力となる。
主人公を中心とした人物関係の変化
激化する戦乱の中で描かれた登場人物たちの関係性は、過酷な戦闘や劇的な邂逅を経て大きく進展した。互いの実力や内面を理解することで生まれた新たな結びつきは、今後の戦局や個人の成長に大きな影響を与える重要な要素となる。主要な人物間における関係性の推移と変化を整理する。
フランとイザリオの関係性
- 当初における認識
- 未知の強者に対する警戒心を抱くと同時に、神剣使いとしての実力に対して強い関心を向けていた。
- 接触を経た変化
- 互いが持つ実力や剣に向き合う精神性を認め合う関係へと変化した。最終的には、過酷な戦場をともに駆ける戦友としての確固たる信頼関係へ発展した。
フランとティルディアの関係性
- 当初における認識
- 戦場へ突如として現れた正体不明の同族に対し、その圧倒的な武威を目の当たりにして強い驚愕を覚えた。
- 接触を経た変化
- ナディアを母として共有する家族に近い絆を結ぶに至った。さらに、同じ黒天虎として互いを高め合う同族の好敵手という関係性を確立した。
一連の交戦や対話を通じて築かれた関係性は、単なる共闘関係にとどまらず、個々の精神的な成長を支える基盤となった。強者としての矜持を共有する戦友や、互いに競い合える同族の存在は、これからの戦いにおいて極めて大きな推進力となる。
主人公の認識と周囲の評価
巨人型抗魔との死闘を経て、フランは自身の戦闘能力に対する明確な課題を自覚するに至った。同時に、大陸を揺るがす戦乱の中で急速に高まる彼女の存在感は、味方冒険者と外部勢力の間で全く異なる評価を生み出している。
フラン自身の認識
- 巨人型抗魔との交戦において、決定打となる一撃を与えられなかった未熟さを深く痛感している。
- 高速移動を行いながら剣身へ黒雷を集束・制御する技術の精度不足を自覚している。
- 黒天虎としての実戦経験の浅さを克服すべき最優先の修練課題と位置付けている。
周囲からの客観的評価
- 冒険者たちの間では、卓越した武威を誇る黒雷姫として英雄視され、絶大な信望を集めている。
- シラード聖国などの外部勢力からは、高位の治癒能力と強大な戦闘力を併せ持つ極めて利用価値の高い駒として認識されている。
- その希少な能力と血統に目をつけられ、秘密裏に鑑定や接触の対象として監視を強められている。
圧倒的な武功を立てながらも自身の技術的限界を冷静に見つめ直す姿勢は、フランのさらなる成長を促す基盤となっている。しかし、その突出した力は味方からの賞賛を集めるだけでなく、政治的な思惑を持つ国家勢力からの標的となる契機をも生み出している。
クライマックス:ブルトーリ巨人型抗魔戦
都市ブルトーリにおいて発生した巨人型抗魔との交戦は、防衛戦の枠を超えて大陸規模の戦乱へと局面を変化させる契機となった。未曾有の危機に際して展開された戦闘の推移と、その後の影響について以下に整理する。
発生原因と事態の推移
- 発生原因
- 都市ブルトーリの目前に突如として巨人型抗魔が出現した。広範囲に及ぶ強制的な魔力吸収能力により、住民や冒険者が次々と衰弱死する危機的状況に陥った。
- 当初の状況
- 事態を打開するため、イザリオが自らの魔力を大量放出して標的の注意を引きつけた。その間、フランは城壁内を駆け巡り、倒れ込んだ負傷者たちの回復と救護に奔走した。
- 主人公たちの迎撃行動
- 負傷者の救護を終えたフランはウルシと連携を取り、空中から強襲を仕掛けた。高高度からの落下運動を乗せ、必殺の一撃である狼式抜刀術・黒雷神爪を放った。
予期せぬ破綻と決着
- 予定外の事態
- 超高速移動によって生じた過度な肉体負荷により、剣身への黒雷の集束制御が乱れた。斬撃は標的を完全に両断するには至らず、致命打を免れた巨人型抗魔の急速な肉体再生を許す結果となった。
- 戦闘の決着
- 窮地に陥った戦場へ、黒猫族の少女ティルディアが乱入した。彼女は黒天虎の固有技である黒雷転動を駆使した超高速機動を展開し、双剣の連続攻撃クロス・デッドによって巨大抗魔を粉砕し、再生の核を完全に消滅させた。
戦闘の結末と影響
辛くも都市の防衛には成功したものの、安堵する時間は残されていなかった。ブルトーリに現れた個体と同様の巨人型抗魔が、世界各地で同時多発的に発生している事実が即座に判明した。局所的な防衛戦の時代は終わりを告げ、全大陸規模での反攻作戦へと戦局は新たな段階へ移行した。
巻末時点の状況
- フラン、ティルディア、イザリオがノクタで合流し、戦後処理と作戦会議を実施。
- 大陸管理委員会が「巨人型抗魔討伐」の緊急要請を発令し、各勢力がこれに応じる。
- フランとイザリオに対し、シラード聖国を連合軍へ繋ぎ止めるための交渉任務が下される。
- 銀の女がナディアの護衛として屋敷に潜伏し、安全確保が図られている状況。
巨人型抗魔の出現
『転生したら剣でした 20』において、ゴルディシア大陸を揺るがす最大の脅威として描かれるのが、規格外の超大型抗魔「巨人型抗魔」の出現である。従来の局所的な抗魔の襲来とは一線を画す異質な生態、同時多発的な発生の謎、そしてフランたちが対峙した死闘の様相について構造的に整理し解説する。
巨人型抗魔の出現と異質な生態
大陸中央部を震源とする巨大な地揺れを契機に、各地で大地を突き破るように出現した。その姿と能力には、通常の抗魔にはない極めて異様な特徴が見られる。
- 胎児のような外観:出現当初の巨体は数十メートルから100メートルを超え、膝を抱え込んで座り込む姿勢をとる。粘性のある液体に包まれており、未完成の形態を留めている。
- 強制的な魔力吸収:周囲の広範囲から大地や人間の魔力を強制的に吸収して自己成長を遂げる。周辺の人間は急激な魔力枯渇や濃密な邪気による悪影響を併発し、身動きが取れなくなって衰弱死する危険に晒される。
- 魔術の減衰と防御障壁:魔力吸収効果が常に働いているため、放たれた魔術の威力は到達前に大幅に減衰する。さらに独自の魔力障壁を纏っており、並大抵の攻撃では傷一つつかない高い防御力を誇る。
- 覚醒の条件:初期段階では休眠状態にあるが、周囲の液体が一定以上失われるか、魔力吸収量が基準を超えると活動を開始し、都市を蹂躙し始める。
同時多発発生の裏に潜む人為的な陰謀
巨人型抗魔は、ブルトーリ、ノクタ、センディアなど、大陸各地の複数の都市周辺へ同時に突如出現した。調査の過程で、この異常発生には明確な人為的仕掛けが関わっている事実が判明する。
- 邪水晶と魔法陣の存在:崩壊した地下施設などを調査した際、地下に隠された巨大な邪水晶を中心とする魔法陣が発見された。この魔法陣は抗魔を引き寄せる効果を持ち、取り外そうとすると邪人が出現する罠が施されていた。
- 竜人王ゲオルグの暗躍:竜人王の配下である竜人たちが、抗魔を引き付ける効果を持つ邪水晶のペンダントを所持していた。これにより巨人型抗魔を各地へ呼び寄せ、大陸中央部を封鎖して社会を混乱に陥れようとする明確な陰謀が浮き彫りとなった。
個体差による成長と超巨人型への融合
巨人型抗魔は、出現した地域に存在する人口や環境によって成長度合いや形状に個体差が生じる。
- 環境による個体差:サーテの町に出現した個体は細身の体型であったのに対し、人口の多いショルツの町に出現した個体は、棘付きの鎧を纏ったような体格で、パワーとサイズの両面で先行個体を凌駕していた。
- 複数体の合流と融合:巨人型抗魔は複数体が合流すると黒い霧のようになって一塊になり、合体する性質を持つ。ショルツで2体の巨人型が合流した際は、通常の1.5倍以上の身長、倍以上の体積を誇り、内包する魔力と邪気が跳ね上がった超巨人型へと変貌を遂げた。
- 高い戦闘知能:力任せの投擲にとどまらず、標的の防御行動を観察して小さく砕いた岩石を時間差で投げ分ける戦術を見せた。さらに全身の反発力と魔力放出を利用した跳躍攻撃や、眼球から放つ極大の魔力光線など、高度な戦闘学習能力を発揮した。
巨人型抗魔を巡る三つの死闘
出現した巨人型抗魔に対し、フランたちと各国の神剣使いによる過酷な戦闘が展開された。
- 大陸中央の個体(イザリオ単独戦):中央部への調査中に、出現直後の休眠状態にある個体と遭遇した。イザリオが囮となって周囲の抗魔を引き付けつつ、神剣煌炎剣イグニスを完全開放した。極大の熱量を放つ100メートル超の炎の刃を一上段から振り下ろし、巨体を両断して完全消滅させた。
- ブルトーリ近郊の個体(フランとティルディアの共闘戦):都市ブルトーリの目前に現れた巨人型を排除するため、フランが空中から急襲を仕掛けた。必殺の狼式抜刀術・黒雷神爪を放ったが、高速移動に伴う肉体負荷により黒雷の集束制御が乱れ、完全な両断に至らなかった。再生を始めた標的に対し、黒天虎へ進化したティルディアが乱入した。固有技である黒雷転動を駆使した超高速戦闘から、変則双剣による連続攻撃クロス・デッドを放ち、再生の核を粉砕して消滅させた。
- ショルツの超巨人型戦(第二部隊総力戦):2体の個体が合流・融合した超巨人型との決戦において、敵が放った広範囲の極大魔力弾に対し、ハガネ将国のマツユキが狂神剣ベルセルクの能力を行使した。自身の生命力と引き換えに超巨人型の右足を枯らし、へし折ることで再生を阻害した。機動力を奪われた標的に対し、ウルシの影縛り、フランの超高速剣技による左足破壊、ティルディアの雷撃による顎の跳ね上げが連続して決まり、最後はイザリオが極大の火炎球を直撃させて上半身を消滅させ、完全勝利を収めた。
巨人型抗魔の同時多発出現は、従来の防衛戦闘の常識を根底から覆す事態となった。周囲の魔力を強制的に奪われる極限の戦場において、神剣使いを含む各国の精鋭や黒天虎の戦士たちが連携し、いかにして規格外の巨体を切り崩したかを示す象徴的な戦闘記録である。
神剣の能力と代償
『転生したら剣でした 20』において、物語の根幹に関わる重大な情報として明かされたのが神剣の能力と代償に関する真実である。神剣は地形を変貌させ、単騎で十万の軍勢を殲滅するほどの破壊力を秘める兵器であるが、その力を私利私欲で乱用させないため、神と製作者によって極めて厳重な制限と過酷な代償が組み込まれている。神級鍛冶師の技術を継ぐ銀の女から提供された情報を交え、その構造と実態を整理する。
始神剣アルファ:完璧なる半神化とレベル低下の罠
聖国シラードが管理する最古の神剣アルファは、神剣騎士アドルの手によって開放され、圧倒的な威力を示した。
- 全ステータスが10倍に上昇し、万里を見通す五感を獲得する。
- 使用者が所持する全スキルが強制的に最高レベル(Lv10)へ引き上げられ、剣王術、状態異常完全無効、瞬間再生といった最高位スキルが自動付与される。
- アドルが平時において低位の能力にとどまっていたのは、アルファ開放時のスキル最大化を見越し、低レベルスキルを大量に習得する育成方針が採られていたためである。
- 解放中は経験値を獲得できないだけでなく、時間経過に応じて使用者のレベルが永続的に低下する。
- レベル低下が進んだ状態で開放を解くと、神力行使に伴う反動に耐えきれず命を落とすため、歴代の神剣騎士は短期間で死亡し代替わりを余儀なくされている。
狂神剣ベルセルク:使用者の死と老兵の献身
ハガネ将国が保有するベルセルクは、最強の一角でありながら悲劇的な宿命を背負った神剣である。
- アルファを上回るステータス強化に加え、使用者の潜在能力を極限まで引き出す特性を持つ。
- 発現する能力は使用者ごとに異なり、石化、爆発、氷雪、即死など多岐にわたる。
- 初代使用者とその血筋にしか扱えない制約があり、血統が途絶えた後は初代の血を引く短命なホムンクルス(月下美人)を製造して運用している。
- ホムンクルスが使用した場合は制約の歪みにより確実に死亡する代償を負う。
- 本来は使用と同時に暴走するが、老兵部隊ドクダミが進んで盾となり命を散らすことで、白い鞘がその想いと魔力を吸収し、使い手の理性を一時的に維持させる。
- マツユキはこの仕組みによって理性を保ち、即死能力を行使して抗魔竜人を一掃した後に命を落とした。
ウルマー製四属性神剣:属性支配と代償の抑制
神級鍛冶師ウルマーが製作した神剣は、自然属性を掌握する万能の能力を誇る。
- 煌炎剣イグニス:開放時に炎の塊へと姿を変え、極大な神炎で戦場を灰燼に帰す。
- 大地剣ガイア:大地と重力を完全に掌握する権能を使い手に付与する。
- 水霊剣クリスタロスおよび颱嵐剣テンペスト:それぞれ水と風を支配し、テンペストは無数に分離した刃が風の鞭となって広範囲を制圧する。
- ウルマー製神剣の代償もアルファと同様にレベルの永続低下である。
- イザリオやアースラースは使用時間を感覚的に制御し、修練の結晶であるレベルの低下を最小限に抑え込んでいる。
その他の特異な神剣群
戦場には用途や制約が大きく異なる複数の神剣が存在する。
- 金竜剣エルドラド:光の竜を召喚・使役する能力を持つが、代償として使用者の寿命を急激に奪う。
- 戦騎剣チャリオット:指揮杖の形状をとり、12種類の金属ゴーレム兵団を召喚して操る。代償として肉体の非人間化が伴うとされる。
- 聖域剣サンクチュアリおよび英知剣ウィズダム:盾型のサンクチュアリは聖域展開による味方強化と敵弱体化、オーブ型のウィズダムは複数魔術の同時並行発動を担う。
- サンクチュアリとウィズダムは対峙する敵の邪気に応じて能力が変動し、通常の敵に対しては魔道具程度に弱体化する対邪神用の防衛兵器である。
フランと師匠の選択
過酷な代償を伴う神剣の真実を知ったフランは、自身を支え続ける師匠への絶対的な信頼を再認識した。師匠自身も神剣の活性化に伴い新たな銘が提示された際、自我を失って機械的な神剣となる道を拒絶し、意思を持った相棒として歩む道を選んだ。魂や命を削って強大な力を得る神剣の論理に対し、両者が絆と地道な鍛錬によって限界を越えていく姿は、数ある神剣使いの生き様の中でも特異な輝きを放っている。
黒猫族の進化
『転生したら剣でした 20』において、物語の根幹をなすテーマの一つである黒猫族の進化は、これまでの極めて稀な例外という位置づけから、再現性のある種としての明確な希望へと劇的な転換を迎えた。フランが切り開いた黒猫族の進化系統である黒天虎が、他の同族にとっても到達可能な境地であることが証明されたプロセスと、その戦闘技術的な面白さ、そして一族の未来に与えた影響について論じる。
再現性の立証とティルディアの出現
これまで黒天虎への進化は、世界中でフランただ一人であり、師匠という規格外の存在がいたからこそ成し得た奇跡的な偶然と見なされがちであった。しかし、ナディアの養女である黒猫族の少女ティルディアの登場が、その固定観念を根底から覆す。
- 独力での進化達成
- ティルディアは、ナディアの手で外海のカプル大陸へと避難させられ、単独の冒険者として過酷な修行を重ねていた。彼女が急激な成長を遂げて黒天虎へと進化できた最大の契機は、フランが冒険者ギルドを通じて世界にもたらした、黒猫族の進化条件の情報である。
- 種としての構造変化の証明
- ティルディアが独力で進化を遂げ、黒雷を纏ってゴルディシア大陸へ舞い戻ったことで、黒猫族の進化は例外的な個人の幸運ではなく、明確な条件を満たせばどの黒猫族でも再現可能な種としての構造変化である事実が歴史的に立証された。これは長年虐げられてきた黒猫族全体にとって、揺るぎない希望の礎となる。
黒天虎の技と戦闘スタイルの対比
同じ黒天虎でありながら、フランとティルディアは戦闘スタイルや固有スキルの運用において、明確な差異と相乗効果を示している。
- ティルディアの超高速変則戦闘
- 柄頭が魔力で伸縮する紐で繋がった特徴的な変則双剣を操る。紐の長短を自在に変え、ヌンチャクや鞭のように双剣を振り回しつつ瞬時に手元へ回収する、極めてトリッキーな近接戦闘を展開する。
- 肉体を黒雷と化して超高速移動する黒天虎の固有技である黒雷転動を、単なる移動ではなく突進の推進力として能動的に利用する。この高速突進から繰り出される双剣技クロス・デッドやブレイドダンスは、巨大抗魔の核を打ち砕くほどの破壊力を誇る。
- フランの技術的吸収
- フランは、高速移動中に黒雷を剣身に集束・制御する黒雷神爪の精度不足に課題を抱えていた。しかし、ブルトーリ戦やその後の戦闘においてティルディアの黒雷転動の運用を観察したことで、黒雷転動の突進力をそのまま斬撃の威力へ乗せる技術を即座に自身のスタイルへ取り入れた。互いの優れた技術を視覚的に捉え、好敵手として高め合う関係性が戦闘描写を通じて克明に表現されている。
不器用な憧れと誤解の解消
初対面時、ティルディアは常に険しい視線でフランを睨みつけており、一見すると強い敵意や同族嫌悪を抱いているように見えた。しかし、そこには人間関係における不器用な行き違いが存在した。
- 視線に隠された真相
- 緊張すると目つきが鋭くなってしまう極度の癖を抱えていた事実が周囲から明かされる。過去の事情に対する複雑な想いは抱えつつも、それ以上に進化の方法を世界に広めて自身を救い、病床の母であるナディアを救出したフランに対し、心の底から敬意を抱いていた。
- 態度に表れる敬意
- フランの仕事を奪うようにして代わりに重労働や雑用を引き受けていた行動は、彼女なりの敬意と感謝の表れであった。この真相が明らかになって以降、二人の間には言葉を多く交わさずとも通じ合う、姉妹のような強い絆が形成される。
ナディアの覚醒と一族の未来
黒猫族の進化がもたらした影響は、エピローグにおけるナディアの決意に集約される。廃棄神剣オーバーグロウスを失い、完全に抗魔化していた肉体から、奇跡的に通常の黒猫族の肉体へと戻ったナディアは、死地から遠ざけたティルディアと、自身を救ったフランの二人が、共に黒天虎として並び立つ姿を目の当たりにする。
自らを縛っていた呪縛から解放され、かつて諦めていた未来を再び見据えられるようになったナディアは、静かに、しかし力強く誓いを立てる。
「あたしも改めて鍛え直し、進化(黒天虎)を目指そう」
かつて絶対に進化できない呪われた種族と絶望の中に置かれていた黒猫族において、フランが灯した進化の火種はティルディアへと受け継がれ、かつて歩みを止めた上の世代の心にまで、再び立ち上がるための意志を呼び起こした。
まとめ
20巻における黒猫族の進化を巡る描写は、単なる戦闘力の向上にとどまらない。一人の少女が諦めずに切り開いた道が、世界中の同族に自己変革の可能性を示し、不変とされてきた種族の宿命を歴史の根底から塗り替え始めた転換点として位置づけられる。
シラード聖国の思惑
『転生したら剣でした 20』において、北方の大国として登場するシラード聖国は、白銀の鎧を纏った高潔な聖騎士団を従える一方で、その内情は極めて利己的かつ非人道的な国益の独占と徹底的な管理・隠蔽体制に支配されている。銀の女から提供された秘匿情報や、フランたちが実際に遭遇した出来事から明らかになったシラード聖国の実態について、構造的に整理して論じる。
有益な人材と魔道具の強制的略奪
シラード聖国は、自国の軍事力と技術力を底上げするため、他国や外部から有益なリソースを秘密裏に、かつ強制的に収集する専門部署を設けている。
- 高い治癒能力を持つ人材、血統的に継承可能な特殊スキルを持つ者、そして装備者に強力なスキルを付与できる魔道具を重点的に収集対象としている。
- 高レベルの回復魔術を操り圧倒的な戦闘力を有するフラン、および装備者に複数のスキルを共有できる師匠は、シラード聖国にとって格好の標的となる。
- 遠征部隊には鑑定持ちの選別員が同行しており、フランの実力を盗み見て強制的に連れ去ろうと画策していた。
- 銀の女がゼックス製の鑑定遮断の腕輪をフランに授けていなければ、真の利用価値を見破られ、拉致や魔道具の強奪を狙われていた危険性が高い。
神剣騎士アドルを巡る使い捨てと監視システム
シラード聖国が誇る始神剣アルファの使い手である当代の神剣騎士アドル・ヤレスフェイムは、国の英雄として君臨する一方で、実態は国の操り人形として徹底的に情報を遮断され、命を削られている犠牲者である。
- アルファには、乱用を防ぐため使用者と選定者である王家が血縁関係にないことという制限が課されている。
- シラード王家はこの制限を回避するため、貴族ではなく幼少期から洗脳教育を施した平民の子供を神剣騎士アドルとして仕立て上げる手法を採る。
- アルファの代償は使用中の永続的なレベル低下と、使用後に生じる肉体への凄まじい反動である。
- アドルが5年から10年という短期間で代替わりするのは、レベル低下が進んだ状態で反動に耐えきれずに命を落とすためであり、国家もそれを前提に使い潰している。
- アルファ開放時の神剣騎士は千里を見通す知覚力を得るため、アドルに鑑定スキルを与えると王家の非道や国家の暗部を知られ、革命を招くリスクが生じる。
- 反乱を防ぐ目的からアドルには鑑定スキルを与えず、部隊の最高指揮権も背後に控える監視役の鑑定士たちが掌握している。
名声の自作自演と聖女ソフィーリアの拉致計画
シラード聖国は、大国としての体面とさらなる戦力の獲得を最優先に行動している。
- 違法都市センディアにおける巨人型抗魔の襲来時、聖騎士たちは目の前に現れた敵に巻き込まれて交戦していたに過ぎない。
- 迎撃後、シラードの騎士たちが無法者を救済したと恩を売り、自国の威信を高める政治的道具として宣伝した。
- センディアを防衛するために多大な貢献を果たした聖女ソフィーリアの高い治癒能力に目をつけ、本人の意思を無視して力ずくで連行しようと企てた。
- 実力者を一方的に国家の所有物にしようとする姿勢から、大国特有の独善的な思惑が露呈している。
威信の保持と緊急要請における不本意な参戦
ブルトーリ遠征においてアドルがアルファを使用して消耗した際、聖騎士たちは弱体化したアドルが暗殺される事態を極度に警戒し、一般市民を力ずくで排除した。彼ら自身、アドルが極めて不安定な状態にある事実を自覚している。
大陸管理委員会から全大陸規模の巨人型抗魔討伐に関する緊急要請が下った際、シラード聖国の鑑定士たちは、アドルを喪失するリスクを避けるため要請を拒否し、戦線から離脱を図った。しかし、宿敵であるハガネ将国が即座に参戦を決定したこと、そしてイザリオから逃走は大国の失墜を意味すると痛烈に挑発されたことにより、国家の面目を保つため不本意ながら参戦を余儀なくされた。
まとめ
シラード聖国がゴルディシア大陸で見せる行動の核心は、世界最強の大国としての地位を誇示するため、アルファという兵器とアドルという消耗品を管理しつつ、外部から新たな能力や魔道具を略奪し、虚飾の威信を維持することにある。アドルが疲弊しようとも鑑定士たちが決定権を握り、本人には戦う以外の選択肢を与えない構造は、ハガネ将国がホムンクルスの姫を尊び、老兵たちが命を賭して守ろうとする姿勢とは対照的な支配体制を示している。
狂神剣ベルセルクの行使
『転生したら剣でした 20』において、最も読者の胸を打ち、世界観の奥深さを決定づけたエピソードが、ハガネ将国の誇る神剣である狂神剣ベルセルクの行使、そしてそれを取り巻くホムンクルスと老兵たちの絆である。
このベルセルクの行使は単なる強力な兵器の起動にとどまらず、死を以てしか抗えない宿命と、それを支える歪みながらも美しい無数の愛の結晶として描かれる。その能力の全貌、過酷な代償、そして作中で描かれたマツユキとアジサイの悲痛な戦いについて詳細に解説する。
狂神剣ベルセルクの特異な能力と宿命
神級鍛冶師ディオニスによって生み出されたベルセルクは、数ある神剣の中でも一際異質で凶悪な性質を持つ。
- 使用者の潜在能力を形にする力:ベルセルクの能力は、使用者の才能や潜在能力を極限まで引き出して発現させるため、使用者によって発動する属性や効果が全く異なる特徴を持つ。過去には広範囲の敵味方を無差別に石化させる能力、斬った相手を爆発させる能力、あるいは氷雪を操る能力などが発現した。敵からすれば使い手が変わるたびに完全に異なる未知の脅威と対峙することになり、事前の対策が不可能である。
- 確実な死という呪われた代償:本来、ベルセルクには初代使用者とその血筋の者しか扱えない厳格な血の制約が存在する。しかし初代の血筋が途絶えたため、ハガネ将国は初代の血を引くホムンクルスである月下美人を人為的に製造し、使い手としている。この不完全な適性のまま神剣を使用するため、制約の歪みが生じ、ベルセルクを行使したホムンクルスはその後に確実に死亡し25歳まで生きられないという過酷な代償が課されている。
白い鞘の奇跡と老兵たちの誓い
ベルセルクは本来、開放した瞬間に使用者の理性を奪い、敵味方の区別なく殺戮を繰り返す暴走を引き起こす。これを制御するため、ハガネ将国には後世に作られた白い鞘が存在する。
- 老兵たちの想いの蓄積:ハガネ将国において、60歳を超えた老兵で構成される部隊はドクダミと呼ばれる。彼らは自分たちが弱く神剣に頼らざるを得ないために若い姫たちが生贄として命を落とすという深い罪悪感を背負い、自ら進んで戦場の肉盾となって命を散らす。
- 狂気を抑える理性の維持:老兵たちが戦場で命を落とす間際、姫たちを守りたいと願った強い魔力と魂の想いは白い鞘に吸収・蓄積される。神剣開放時、鞘に蓄えられた約300人分もの老兵たちの想いが使用者に流れ込み、ベルセルクの狂気や悪意を相殺する。これにより最大で約2分間だけ理性を保ったまま神剣を制御することが可能となる。
ショルツの死闘におけるベルセルクの行使
作中終盤、2体の巨人型抗魔が融合・急成長した超巨人型、そしてトリスメギストスの居城方面から現れた脅威度AからBクラスの怪物である抗魔竜人20体以上という、第二部隊を壊滅させかねない大群が迫る。ここでハガネ将国は、マツユキによるベルセルクの投入を決断した。
- 通常状態での行使:マツユキは神剣を開放しない通常状態でベルセルクを地面に突き刺し、「死んで」と言葉を紡いだ。この時発現した能力は、相手の魔力や再生力を強制的に減衰・消滅させる概念であった。これにより迫り来る球型抗魔竜人の大爆発の威力を大きく相殺し、超巨人型の右足をどす黒く枯らしてへし折り、その後の再生を完全に阻害した。しかし開放せずともこの力を行使しただけで生命力と精気は急激に奪われ、マツユキは顔面蒼白となり片膝を突くほどの激しい反動に襲われた。
- 乾坤一擲の神剣開放:防壁を突破して迫る残り8体の凶悪な抗魔竜人に対し、マツユキは神剣の開放を決断した。アジサイが持つ白い鞘から純白の魔力が噴き上がり、ベルセルクからは太陽光さえ吸い込むような漆黒の魔力が溢れ出す。マツユキは老兵たちの想いに精神を守られ、理性を維持したまま超高速の獣のような機動で戦場を駆けた。「死になさい」という宣告とともに広範囲へ放たれた漆黒の魔力の津波は抗魔竜人たちを包み込み、再生する隙を与えずに一撃で完全に消滅させ、周囲の生命反応を完全に絶ち切った。
マツユキの最期と受け継がれる宿命
敵をすべて消滅させた後、アジサイの手によってベルセルクは再び鞘へと納められた。力を使い果たしたマツユキは、アジサイに寄り添われながら安らかな表情を浮かべ、1短い生涯を閉じた。
その後、ティルディアが捧げた鎮魂の歌の魔力に引かれるように、フランたちへハガネ将国の過去の情景が流れ込む。外見上は少女を使い捨てる生贄システムや老人を肉壁にする過酷な体制に見える仕組みが、その内実においては、自らのために命を散らす姫を国民全体が国の守り神として敬い、老兵たちも余生と命を喜んで姫に捧げ、死後もその心を鞘に託して狂気から救おうとする強固な愛と信頼の絆で成立していた事実が明かされた。
まとめ
マツユキの壮絶な戦いと最期を見届けたフランは、激しい悲しみと悔しさに涙を流した。そして遺志を継ぎ、次にベルセルクを抜く役割を担う妹アジサイと静かに視線を交わし、互いに通じ合う思いを確かめ合った。
過酷な代償を伴う神剣の現実を目の当たりにしたからこそ、外部の強大な力に依存せず、師匠との確固たる絆と日々の鍛錬を信じて進むフランたちの在り方は、作中において一層際立つ意味を持つ。
登場キャラクター
主人公一行
師匠
知性を持つ武器としての剣である。装備者であり相棒のフランを深く信頼している。彼女を様々なスキルで補佐する役割を果たす。
・所属組織、地位や役職
主人公一行の武器
・物語内での具体的な行動や成果
魔術や念動のスキルを駆使して前線で戦闘を支援した。銀の女から神剣に関する隠された情報を聞き出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身より格上の神剣たちと出会いさらなる修行の必要性を自覚した。
フラン
黒猫族の少女である。相棒である師匠を唯一無二の存在として信頼している。強くなるための修行に非常に熱心な性格だ。
・所属組織、地位や役職
主人公一行。ランクB冒険者。「黒雷姫」などの異名を持つ。
・物語内での具体的な行動や成果
ブルトーリ救援部隊の隊長に任命されて冒険者たちを率いた。巨人型抗魔との戦いで主力の一角として奮闘した。回復魔術を連発して多くの負傷した冒険者を救った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
進化した黒猫族として周囲から絶大な信頼と敬意を寄せられている。新技の精度不足を自覚してさらなる鍛錬を誓った。
ウルシ
フランの従魔である。装備者であるフランに対する忠誠心が非常に強い。強敵に対しても臆せず戦う誇り高い性質を持つ。
・所属組織、地位や役職
主人公一行の従魔
・物語内での具体的な行動や成果
フランを背に乗せて超高速での移動を担当した。影に潜む能力で敵の隙を突く奇襲を行った。大怪我を負いながらも人型抗魔竜人を引きつける役割を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
限界を超える過酷な戦闘により部隊の生存に大きく貢献した。
冒険者ギルド
ディギンズ
熊人の冒険者である。かつてカステルでフランと共に戦った。義理堅い性格の持ち主だ。
・所属組織、地位や役職
ランクB冒険者
・物語内での具体的な行動や成果
ナディアの護衛を引き受けてノクタに残っていた。フランが部隊長を務めた救援部隊の副長を担当した。不満を漏らす周囲の冒険者を威圧して静めさせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フランの力量を完全に認めて彼女を全面的にサポートしている。
リプレア
ノクタの冒険者ギルドを統べる人物である。独特な喋り方をする女性だ。状況判断が非常に早い。
・所属組織、地位や役職
ノクタのギルドマスター
・物語内での具体的な行動や成果
抗魔の季節における異常な個体の多さを察知した。フランたちに対して大陸中央部の威力偵察依頼を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大陸管理委員会の緊急要請に基づいてノクタでの戦力の手配を主導した。
サブマス
ノクタのギルドのサブマスターである。落ち着いた態度を持つダンディな人物だ。ギルマスの実務を支える。
・所属組織、地位や役職
ノクタ冒険者ギルド・サブマスター
・物語内での具体的な行動や成果
ギルマスの執務室で各国の代表をフランに紹介した。ブルトーリへの救援行軍の段取りを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
しがないサブマスターを自称するが実質的な実務を仕切る。
ゼーハルド
ムルサニの屋敷を守る護衛の冒険者である。フランと顔馴染みだ。周囲の状況を冷静に観察している。
・所属組織、地位や役職
ムルサニの護衛冒険者
・物語内での具体的な行動や成果
ノクタに帰還したフランに街の無事を伝えた。ナディアがまだ目覚めていない事実を教えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ナディアの最新の状況をフランに報告する役割を果たした。
イザリオ
ランクSの冒険者である。酒を非常に好む。普段はだらしない態度を見せるがその本質は強者だ。
・所属組織、地位や役職
ランクS冒険者。煌炎剣・イグニスの使い手。「才無し(紅蓮刃)」を自称する。
・物語内での具体的な行動や成果
武器を抜かずに襲撃者をいなして見せた。神剣イグニスを開放して抗魔の大群を一瞬で消滅させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フランにとって剣士としての心構えを教える偉大な大先輩となった。自身の「進軍の戦乙女」の効果を自分の魔道具のせいにする形でフランを庇った。
ズバルブ
斧を操る冒険者である。功名心が非常に高い。実力をわきまえない行動をとる。
・所属組織、地位や役職
ランクC冒険者
・物語内での具体的な行動や成果
名を上げるために酔った状態のイザリオに襲いかかった。必殺の武技を神剣の柄で完全に受け止められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
格上のイザリオに手も足も出ずに敗北して体力を枯渇させた。
モーリー
ズバルブの仲間の冒険者である。ズバルブと共に行動する。
・所属組織、地位や役職
ランクDクラスの冒険者
・物語内での具体的な行動や成果
ズバルブと一緒にイザリオに挑んだ。圧倒的な力量差を理解して戦闘を途中で諦めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イザリオの強さに圧倒されて降伏した。
ワズクレン
ズバルブの仲間の冒険者である。ズバルブの襲撃に同行した。
・所属組織、地位や役職
ランクDクラスの冒険者
・物語内での具体的な行動や成果
ズバルブとモーリーと共にイザリオを襲撃した。圧倒的な力量差を見て戦意を喪失した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イザリオに謝罪してその場を撤退した。
シラード聖国
アドル・ヤレスフェイム
シラード聖国の神剣騎士である。洗脳された平民出身だ。国に使い潰される傀儡のような立場にある。
・所属組織、地位や役職
始神剣・アルファの使い手。神剣騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
アルファを開放して「半神化」を起動した。たった一人で10万の抗魔を殲滅した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
使用時の代償であるレベル低下と肉体への反動により激しく消耗した。国から「鑑定」スキルを与えられていない。
ハガネ将国
アジサイ
ハガネ将国の特殊部隊に所属する少女である。感情が読めない無表情な顔だ。フランと良く似ている。
・所属組織、地位や役職
特殊部隊「月下美人」のホムンクルス
・物語内での具体的な行動や成果
戦闘の様子を観察していた。マツユキの最期を看取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フランとの間で言葉を超えた強い友情を育んだ。
マツユキ
ハガネ将国の神剣使いである。アジサイの姉のような立場だ。微笑を常に浮かべている。
・所属組織、地位や役職
特殊部隊「月下美人」の神剣使い(ホムンクルス)
・物語内での具体的な行動や成果
超巨人型抗魔の右足をベルセルクの力で破壊した。抗魔竜人の急襲に対して神剣ベルセルクを完全開放した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
完全開放の代償としてすべての生命力を使い果たし永眠した。
シキミ
ハガネ将国の部隊指揮官である。中性的な外見をしている。高い統率力を持つ。
・所属組織、地位や役職
遠征部隊の指揮官
・物語内での具体的な行動や成果
老兵たちを指揮して戦闘を率いた。大地魔術を駆使して巨人型抗魔の足を止めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
部隊の防衛戦や討伐連合での前線指揮を担当した。
サカキ
シキミにそっくりな女性である。アジサイたちの護衛を担当する。
・所属組織、地位や役職
アジサイたちの護衛
・物語内での具体的な行動や成果
馬車の近くに控えていた。疲弊したマツユキを抱き起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マツユキを気遣う行動をとった。
センジュ
ハガネ将国のかつての神剣使いである。マツユキの姉に当たる。
・所属組織、地位や役職
かつての「月下美人」の神剣使い
・物語内での具体的な行動や成果
過去の戦いでベルセルクを振るった。マツユキに見守られながら命を落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マツユキの記憶(幻像)の中で過去の最期が描かれた。
ベリオス王国
ブルネン
ベリオス王国の海軍提督である。会議に国の代表として参加した。
・所属組織、地位や役職
ベリオス王国海軍提督
・物語内での具体的な行動や成果
会議にフランとともに出席した。フランにベリオスの代表として振る舞うよう依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
国の威信を高めるためにフランの実力を活用した。
ウィリアム
ベリオス王国の魔術顧問である。筋肉質なエルフだ。
・所属組織、地位や役職
ベリオス王国魔術顧問
・物語内での具体的な行動や成果
ゴルディシア管理委員会の会議に出席した。ヴィーナレーンの弟子として前線にいた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
高い地位を持ち今回の会議で発言権を有していた。
他国の支配者・女王
ジェイン・ドゥービー
魔族の女王である。カステルでフランの世話をした。陽気な性格である。
・所属組織、地位や役職
魔族の女王
・物語内での具体的な行動や成果
ナディアの護衛としてノクタに残っていた。フランに「神獣化」の伝承を教えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大規模儀式魔術を用いてノクタ近郊の巨大抗魔を討伐した。
オーファルヴ・ファルニィス
ドワーフの女王である。ジェインと仲が良い。威厳ある態度を持つ。
・所属組織、地位や役職
ドワーフの女王
・物語内での具体的な行動や成果
ナディアが目覚めるまでノクタに同行することを約束した。鉄壁の布陣を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
巨大抗魔の討伐に大きく貢献した。
レイドス王国
バルフォン
レイドス王国の高位貴族である。痩せこけた不健康な外見だ。実験に執念を燃やす。
・所属組織、地位や役職
東征公
・物語内での具体的な行動や成果
シギュラルドを自室に招いて会談した。ゴルディシアの廃棄神剣の状況を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
非人道的な研究や暗躍を続けている。
シギュラルド
レイドス王国の高位貴族である。巨体を持つ。戦士としての実力を備える。
・所属組織、地位や役職
南征公
・物語内での具体的な行動や成果
バルフォンの部屋で対談した。アンデッドの契約術式や廃棄神剣について議論した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
バルフォンと結託して今後の世界情勢に混乱を企んでいる。
竜人族
フレデリック
ベルメリアに従う竜人である。ベルメリアを助けるために命を懸けている。
・所属組織、地位や役職
ベルメリアの従者。半邪竜人。
・物語内での具体的な行動や成果
「竜神の秘跡」を使用して自らを大幅に強化した。ベルメリアが竜人王に捕らえられたことを伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
邪気で暴走する限界ギリギリの状態でフランたちに救援を求めた。
レザルヴァ
北の居留地の竜人の長老である。高い戦闘力を有する。ゲオルグに忠誠を誓っている。
・所属組織、地位や役職
長老
・物語内での具体的な行動や成果
第二部隊の進路に立ち塞がった。フランと激しい一騎打ちを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「竜神の秘跡」の影響で精神に乱れが生じていた。フランの高速斬撃により両断された。
ボーズン
北の居留地の竜人の戦士長である。武術に非常に優れる。
・所属組織、地位や役職
戦士長
・物語内での具体的な行動や成果
レザルヴァの副官として前線に立った。槍を操りティルディアと交戦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ティルディアの変則双剣技「ブレイドダンス」に敗北した。
その他
ナディア
黒猫族の女性である。フランの故郷で墓守をしていた。フランとティルディアの母親(義母)に当たる。
・所属組織、地位や役職
元・金喰剣オーバーグロウスの使い手
・物語内での具体的な行動や成果
魔剣から解放されノクタのムルサニの屋敷で眠り続けた。エピローグにて遂に目覚めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
普通の肉体に戻った。自身も進化(黒天虎)を目指すと誓った。
ティルディア
黒猫族の少女である。ナディアの養女。不器用で極度に緊張すると目つきが怖くなる癖がある。
・所属組織、地位や役職
ランクC冒険者。進化した「黒天虎」。
・物語内での具体的な行動や成果
ブルトーリに現れて巨大抗魔にトドメを刺した。ナディアを救ったフランに深く感謝した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フランと実の姉妹のような絆を結んだ。再現可能な進化の証明となった。
ムルサニ
ノクタの豪商である。ナディアを深く心配している。
・所属組織、地位や役職
ノクタの商人
・物語内での具体的な行動や成果
目覚めたナディアに水を差し出した。ナディアの不在時の状況を説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ナディアとティルディアの関係性をフランに伝えた。
銀の女
神級鍛冶師ゼックスが作ったゴーレムである。役目から解放されたことに感謝している。感情を一部持つ。
・所属組織、地位や役職
ゼックス製ゴーレム
・物語内での具体的な行動や成果
シラードの強奪部署について警告した。「鑑定遮断の腕輪」をフランに贈った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
1ヶ月程度で活動を停止する。ナディアの秘密護衛を引き受けた。
登場集団
聖国シラード聖騎士団
白銀の鎧を纏うシラードの軍勢である。選民意識が非常に高く傲慢な態度を取る。
・所属組織、地位や役職
シラード聖国騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
ノクタに到着した。消耗したアドルを守るため周囲を過剰に警戒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
イザリオに強引に要請を受諾させられた。
ハガネ将国老兵部隊
ハガネ将国の老槍兵の集団である。死を恐れずに戦う。
・所属組織、地位や役職
特殊部隊「ドクダミ」
・物語内での具体的な行動や成果
高い連携で抗魔を攻撃した。自爆攻撃をも使って敵指揮官を倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マツユキの完全開放をサポートして多大な被害を出した。
ノクタの冒険者たち
ノクタを拠点とする荒くれ者たちである。食い気と戦意に満ちている。
・所属組織、地位や役職
ノクタ所属の冒険者たち
・物語内での具体的な行動や成果
フランの卸した肉で大宴会を開いた。抗魔の襲撃の際には必死に戦った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フランを「肉の嬢ちゃん」などと呼び絶大な信頼を寄せた。
聖国シラードの人材発掘部隊
シラードが有益な人材や魔道具を強奪するための秘密部署である。
・所属組織、地位や役職
シラード聖国の部署
・物語内での具体的な行動や成果
アドルに同行して鑑定能力を発動した。フランと師匠のステータスを見極めようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
腕輪の効果によりフランの実力を見誤り興味を失った。
北の居留地の竜人たち
竜人王ゲオルグに忠誠を誓う若い竜人の軍勢である。好戦的な態度を取る。
・所属組織、地位や役職
ゲオルグの配下
・物語内での具体的な行動や成果
各地の封鎖任務に就いていた。イザリオを「才無し」と見抜けずに襲撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「竜神の秘跡」の影響で戦いの中で息絶えた。
サーテの避難民たち
壊滅した違法都市サーテから逃げ出した一般市民である。精神的に消耗している。
・所属組織、地位や役職
サーテの住人たち
・物語内での具体的な行動や成果
第二部隊に保護されてショルツ、バーハルへと移動した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
別の救援部隊に無事引き渡された。
抗魔竜人
体の一部が抗魔と化した竜人の姿をした怪異である。極めて高い戦闘力を誇る。
・所属組織、地位や役職
ゲオルグが操る戦力
・物語内での具体的な行動や成果
トリスメギストスの居城の方向から現れた。球型になって自爆攻撃を仕掛けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
マツユキの完全開放によって跡形もなく消滅した。
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展開まとめ
プロローグ
黒雷姫を探す黒猫族
抗魔とフィルリアの襲撃から復興中のセンディアで、フードを被った黒猫族の少女が、黒猫族を侮辱して絡んできた男を叩きのめした。騒ぎを止めに入った鹿獣人の女性から黒雷姫の名を聞くと、少女は居場所を尋ねた。しかし女性はセンディアを救った恩人の情報を渡すことを拒み、少女は強引に聞き出そうとした。
第一章 北の神剣たち
ノクタへの帰還とイザリオ
センディアからの伝令を請け負ったフランはノクタへ戻り、ディギンズから町が抗魔の襲撃を退けたことと、ナディアがまだ目覚めていないことを聞いた。ムルサニの屋敷で眠るナディアを見舞った後、冒険者ギルドへセンディアの状況や竜人王が闇奴隷売買に関与している可能性を報告した。
その後の宴会で、フランは炎の神剣イグニスを持つランクS冒険者イザリオと出会った。普段のイザリオは酒好きで飄々としていたが、挑んできた冒険者を武器も抜かずに翻弄し、高度な回避や防御技術を見せた。フランは模擬戦を望んだものの、イザリオは依頼を理由に先送りした。
二大国の神剣
ノクタには北方の大国である聖国シラードとハガネ将国の軍勢も到着した。シラードには始神剣アルファを持つ神剣騎士アドルが同行し、ハガネ将国には千人を超える老兵とアジサイ、マツユキらがいた。フランはアジサイたちが狂神剣ベルセルクに関係していると感じた。
ブルトーリへ十万を超える抗魔が迫ると、フランたちは両国と共に救援へ向かった。シラードの番ではアドルがアルファを開放し、身体能力と技量を飛躍的に高め、一人で抗魔の大軍を壊滅させた。普段は突出して見えなかったアドルが神剣開放時には圧倒的な剣士となる姿を見て、フランはいつか超えると決意した。しかし戦闘後のアドルは激しく消耗しており、神剣の力には大きな負担があることも分かった。
続く抗魔にはハガネ将国が対応した。老兵たちは高い練度で連携し、自らの命すら戦力として扱い、最後には数人の犠牲を伴う攻撃で指揮官個体を倒した。フランはシラードとは異なる形でハガネ将国の強さを目の当たりにした。
第二章 イザリオと神剣
イグニスと銀の女
第三波の抗魔が出現すると、イザリオが単独で迎撃した。彼が一人で戦うことには、神剣使いがこの大陸を守っている姿を人々へ示し、ゴルディシアで生きる者たちに希望を与える意味もあった。
イザリオは抗魔の攻撃を防ぎながら敵を周囲へ集め、内部から徐々に焼いた後、イグニスを開放した。炎そのものへ変じた神剣から広大な神炎が放たれ、大地ごと抗魔の群れを焼き尽くした。その直前、フランの前に銀の女が現れ、攻撃範囲から離れるよう警告した。
神剣の代償
銀の女は、聖国シラードが高位の治癒能力や特殊なスキル、装備者へ技能を与える魔道具を集めているため、フランと師匠の能力を知られれば狙われる可能性があると忠告した。そして神級鍛冶師ゼックス製の鑑定遮断の腕輪をフランへ渡した。
オーバーグロウスを失ったことで銀の女は存在意義から解放され、一か月ほどで活動を停止する見込みであった。長く役目を続けてきた彼女自身は、ようやく終われることに安堵しており、そのきっかけを作ったフランへ感謝していた。
さらに銀の女は神剣について説明した。神剣には存在数や使用者の条件、使用時の代償が設定されていた。アルファは使用中に経験値を得られず、時間とともにレベルが低下し、弱った肉体が反動に耐えられなければ使用者が死亡した。ベルセルクは初代使用者の血筋しか扱えず、その血筋が絶えた後、ハガネ将国は初代の血を利用したホムンクルスを作って使用者としていた。しかし彼女たちはベルセルクを使えば命を落とす運命にあった。
ガイア、イグニス、クリスタロス、テンペストはそれぞれ地、炎、水、風の力を操り、エルドラドは光竜を召喚する代わりに寿命を消費した。チャリオットは多数のゴーレムを操り、サンクチュアリとウィズダムは邪気を持つ相手ほど強い力を発揮する神剣であった。
フランは銀の女へ、ノクタで眠るナディアを守ってほしいと頼んだ。銀の女は最後のオーバーグロウス使用者を守る役目を引き受け、ノクタへ向かった。
中央部への調査依頼
その後、シラードの者たちがフランへ接触し、同行していた鑑定役が能力を探ろうとしたが、銀の腕輪によって見抜かれることはなかった。フランは彼らを警戒し、距離を置くことにした。
一方、今回の抗魔の季節には通常と異なる現象が多発していたため、フランはイザリオと共に大陸中央部を調査する指名依頼を受けた。道中、フランがトリスメギストスに会うことも目的だと話すと、イザリオは彼を能力ではなく精神と在り方が化け物であると評し、決して気を許さないよう忠告した。
第三章 黒天虎
ティルディアとの出会い
調査を続ける中、巨大な抗魔が各地に出現し、フランたちは町の防衛に追われた。フランは巨人型へ新たな技を試して大きな傷を与えたものの、完全には仕留められず、さらなる修練の必要性を感じた。
そこへ黒雷を操る黒猫族の少女が現れた。少女はナディアの養女ティルディアであり、自ら進化を果たした黒猫族であった。フランは同族の進化者と出会い、ティルディアもまたナディアを救った黒雷姫がフランであることを知った。
巨人型と邪水晶
違法都市サーテ周辺でも巨人型による壊滅的被害が広がっていた。フランたちが崩壊した地下施設を調べると、巨大な邪水晶を中心にした魔法陣を発見した。魔法陣は抗魔を引き寄せる働きを持つ可能性があり、邪水晶を外すと罠が発動して強力な邪人まで出現した。
この人為的な仕掛けによって、今回の抗魔の異常行動には何者かが関与している疑いが強まった。闇奴隷商人の元締めでもある竜人王が邪水晶を利用している可能性が浮上し、フランは彼を明確に倒すべき相手と認識した。
第四章 抗魔と竜人
崩壊する町々
サーテを脱出した住民たちと合流したフランたちは、避難民を守りながら移動した。しかし辿り着いたショルツも巨人型に襲われており、より成長した個体が町を破壊していた。
フランは囮となって巨人型を町外へ誘導し、イザリオやシキミ、ティルディア、兵士たちと協力して攻撃した。その後、複数の巨人型が融合してさらに巨大な個体となり、部隊にも多数の死傷者が出た。フランとティルディアが動きを封じ、最後はイザリオが大規模な炎を制御して上半身を焼き尽くし、撃破した。
抗魔と竜人の異変
さらに調査を進めると、異常な強さを持つ竜人たちが現れた。彼らは命を惜しまず戦い、通常の兵士とは思えないほど強化されていた。やがて抗魔と竜人の性質を併せ持つ「抗魔竜人」まで出現し、その数は二十体を超えていた。
抗魔竜人はナディアがオーバーグロウスによって抗魔化した状態に似ていたが、より戦闘用に作られた存在であった。しかも彼らはトリスメギストスの城がある方向から現れており、竜人王の工作と抗魔の異常発生がさらに深く結びついていった。
第五章 黒き神剣
狂神剣ベルセルク
強力な抗魔竜人を前に、ハガネ将国はついに狂神剣ベルセルクを投入した。使用者となったのはマツユキであった。ベルセルクを収める鞘には暴走を短時間抑える力があり、その間だけマツユキは理性を保ったまま神剣を振るうことができた。
開放されたベルセルクは圧倒的な死の力を発揮し、抗魔竜人を次々と消滅させた。最後には広範囲を黒い力で呑み込み、戦場の敵を一掃した。しかし代償から逃れることはできず、マツユキは戦いを終えると命を落とした。
月下美人の宿命
ティルディアが鎮魂の歌を捧げる中、フランたちは月下美人の過去に触れた。ベルセルクの使用者たちは初代の血から作られた短命なホムンクルスであり、神剣を使って死ぬ役目を背負っていた。それでも彼女たちは単なる道具として扱われていたのではなく、ハガネ将国の者たちから姫として敬われ、自らも役目を受け入れていた。
かつてマツユキがセンジュの最期を見送ったように、今度はアジサイがマツユキを見送った。フランはアジサイの思いを察し、ベルセルクや月下美人についてそれ以上踏み込まなかった。
レイドスの公爵たち
一方、レイドス王国では東征公バルフォンや南征公シギュラルドらが暗躍を続けていた。彼らは廃棄神剣やアンデッド、人体を利用した研究を進め、それぞれの思惑で戦力を増強していた。各地で強者たちが動く中でも野望を捨てず、さらなる混乱を引き起こそうとしていた。
エピローグ
目覚めたナディア
長い昏睡の末、ナディアはムルサニの屋敷で目を覚ました。フランがカステルへ戻り、仲間たちと共に自分を抗魔の群れから救い、人間の体へ戻してノクタまで運んだと聞き、無茶をしたフランへの怒りと感謝を同時に抱いた。再会した時には抱きしめた後で叱ろうと考えた。
さらに養女ティルディアもゴルディシアへ戻り、ナディアが課していたランクC到達を果たしていた。フランが黒猫族の進化方法を切り開いたことで、ティルディアも進化していたのである。
オーバーグロウスを失い普通の肉体へ戻ったナディアは、自分も改めて鍛え直し、進化を目指そうと決めた。再び未来を考えられることへの喜びと不安を抱きながら、フランとティルディアが無事に戻ることを願った。
シリーズ 一覧
その他フィクション

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