物語の概要
■ 作品概要
本作は、知性を持つ魔剣「師匠」と、黒猫族の少女「フラン」の冒険を描く無機物転生ファンタジーの第12巻である。
神剣ファナティクスの刀身を破壊したのも束の間、残された欠片が半水竜人のベルメリアを「神竜化」および「狂信」状態へと洗脳し、再び王都は混沌に陥ってしまう。
フランたちは幽閉された名誉鍛冶師ガルスを救い出すため、盗賊ギルドや癖の強い元ランクA冒険者エイワースと手を組み、旧アルサンド子爵邸の地下拠点へ潜入する。さらに、最強の敵となったベルメリアとファナティクスを止めるため、アースラースやフォールンドたち超越者と共闘し、命を賭した決戦へ挑むこととなる。
■ 主要キャラクター
- 師匠:元人間の魂を宿すインテリジェンス・ユニーク・ウェポンである。フォールンドと共闘し、宿敵ファナティクスの完全破壊と共食いを遂げた。
- フラン:黒猫族の少女で、異名は「黒雷姫」である。人々を献身的に救護したことで「黒猫聖女」と称えられ、最年少でランクB冒険者へと昇格する。
- ベルメリア・ベイルリーズ:半水竜人の女性である。ファナティクスの意思に精神を侵食され、ハイエルフ級の戦闘力を誇る「神竜化」状態で暴走する。
- アースラース:鬼人のランクS冒険者で、異名は「同士討ち」である。神剣「大地剣ガイア」を神剣開放し、ベルメリアと規格外の激戦を繰り広げた。
- フォールンド:ランクA冒険者で、異名は「百剣」である。師匠の秘密を知って共闘を承諾し、魔剣「魔狼の号」を用いて勝利に大きく貢献した。
- エイワース:元ランクA冒険者で、異名は「竜縛り」である。極めて自己中心的かつ不気味な老人だが、多重魔術や独自の薬品を操る一級の魔術師である。
- ガルス:クランゼル王国名誉鍛冶師のドワーフである。魔薬と魔剣によって操られ、旧アルサンド子爵邸の地下に幽閉されていたが、フランたちに救出される。
■ 物語の特徴
本作の最大の魅力は、王都の運命を左右する凄絶な最終決戦である。神剣ガイアを神剣開放したランクS冒険者アースラースと、神竜化したベルメリアによる「超越者同士」の激突は、大地や王城をも崩壊させる圧倒的なスケールで描かれる。
また、師匠とフォールンドが互いの秘密(インテリジェンス・ウェポンの正体、複製を可能とする剣神の寵愛)を明かし、信頼を寄せて共闘するドラマも非常に熱い。
さらに、ファナティクスを共食いしたことで、師匠のルーツ(混沌、銀月、冥界の三柱の女神のシンボル)や、始まりの地である「魔狼の平原」に潜む大いなる秘密が浮き彫りとなり、物語が次の段階へ進むための極めて重要な一冊となっている。
書籍情報
転生したら剣でした 12
著者:棚架ユウ 氏
イラスト:るろお 氏
出版社:マイクロマガジン社(GCノベルズ)
発売日:2021年9月24日
ISBN:9784867161890
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
猫耳少女と共に剣としてその銘を異世界に刻み込め!ネット小説大賞受賞の無機物転生ファンタジー!
街を混乱に陥れた神剣ファナティクスの刀身を破壊した師匠とフラン。
事件も一段落ついたと安心したのもつかの間、残されたファナティクスの欠片が
ベルメリアを暴走状態へと洗脳してしまい、再び街は混沌と化してしまう。
師匠とフランはベルメリアを救うため、再度ファナティクスへ挑むのだが……。
感想
前巻から続く王都騒乱の後半戦。
今回もっとも印象に残ったのは、やはりベルメリアとアースラースの戦いだった。
アシュトナー侯爵側に捕らえられたベルメリアは、狂信剣ファナティクスによって利用され、普段とはまるで別人のような状態になってしまう。
全身を水色の鱗で覆われ、剣王術や大海魔術、瞬間再生など大量の高位スキルを持ち、さらに《神竜化》まで発動。
能力だけ見れば、すでに普通のランクA冒険者を大きく超えている。
そんな化け物を止めるために現れたのが、ランクS冒険者アースラースだった。
そして彼の手には、神剣《大地剣ガイア》。
ここから始まる戦いを見ていると、
フランたちも強くなったけど、まだまだ上がいるんだな……
と改めて思わされた。
魔改造されたベルメリアが完全に別物になっている
ベルメリア本人にとっては、本当に酷い話である。
誘拐される。
魔薬を使われる。
ファナティクスに精神を侵食される。
さらに竜巫女の血筋に目を付けられ、《神竜化》を利用するための器にされる。
本人の意思とは関係なく、王都を襲う怪物へ変えられてしまった。
父親であるベイルリーズ伯爵の前で、騎士や冒険者を次々と蹴散らしていくのも辛い。
外見は娘なのに、中から聞こえてくるのはベルメリアとは思えない声。
伯爵も娘を助けたいだろうに、後ろには王城と民衆がいる。
だから、
「娘だから攻撃できない」
では済まされない。
それでも騎士たちではまったく歯が立たない。
フォールンド級の戦力まで必要だと考えられるほどの状態になっている。
前巻までのベルメリアを知っているだけに、
「なんでこんなことになってるんだよ……」
という気持ちの方が強かった。
本人が望んで手に入れた強さではないところが、余計にキツい。
そこへ神剣ガイアを持ったアースラースが乱入する
そこへ現れるのがアースラース。
以前から《同士討ち》という危険な異名で知られているランクS冒険者である。
しかも今回は神剣《大地剣ガイア》まで神剣開放する。
ベルメリア側もファナティクスの力を開放。
つまり、
神剣持ちと神剣持ちのガチバトル。
もう戦っている場所が王都であることを忘れそうになる。
巨大な魔術。
超重力。
疑似太陽。
巨大な水蛇。
カンナカムイ。
体を破壊されても再生して、また殴り合う。
戦闘というより災害では?
王都のど真ん中でやっていい規模じゃない。
しかもアースラース自身も、余裕で圧倒しているわけではない。
戦闘経験とガイアの性能で少しずつ優位にはなるものの、ベルメリアも普通にアースラースを傷つけている。
さらに戦闘が長引けば、今度はアースラース側に《狂鬼化》の危険が出てくる。
ベルメリアを止めるために来たランクSが、長引けばもう一体の災害になりかねない。
味方にいても安心できない。
この辺がアースラースの怖いところだと思う。
フランは強い。でもランクSにはまだ届かない
ここまでフランは本当に強くなった。
ウルムットの武闘大会。
獣人国での戦い。
キアラやメアとの共闘。
王都ではアシュトナー侯爵とも死闘を繰り広げた。
すでにランクA級の戦力を持っていると言ってもいい。
実際、本巻では王都での活躍を経て正式にランクBへ昇格することになる。
それでもアースラースとベルメリアの戦いを見ると、
まだ違う。
というのがよく分かる。
師匠だって普通の魔剣ではない。
元となったのは神剣《智慧剣ケルビム》。
そこへ様々なものが組み合わされ、今の師匠になっている。
それでも完成された神剣《ガイア》を開放して戦うランクS冒険者の領域には、まだ届いていない。
ここが面白かった。
フランはこれだけ強くなったのに、
「もう最強」にはならない。
上にはまだ上がいる。
ランクAのさらに向こう。
ランクS。
神剣。
神竜化。
世界にはまだ、自分たちとは明確に違う領域で戦う化け物が存在している。
強くなったからこそ、その差が見えるようになってきた気がする。
化け物同士の戦いのギリギリで機会を待つフォールンド
そして、この超越者同士の戦いでもう一人印象に残ったのがフォールンドだった。
ベルメリアとアースラースが、
ドカン!
ドカン!
と王都を破壊しながら戦っている。
その戦闘範囲ギリギリの場所に、フォールンドは潜んでいる。
正面から割って入ったところで勝てない。
ベルメリアを倒し切れるほどの攻撃力もない。
だから何もしないのではなく、
一瞬の隙を狙って待つ。
ここが格好よかった。
強さの種類が違うんだよな。
アースラースのように圧倒的な力で真正面から戦うのではない。
自分にできることを理解したうえで、最大限有効な一撃を狙う。
そこへ師匠が合流する。
師匠が狙ったのもベルメリア本人ではない。
彼女を操っているファナティクスだった。
ベルメリアごと倒すのではなく、ファナティクスだけを破壊すればいい。
そこでフォールンドと師匠が組むことになる。
フォールンドが複数の魔剣を操って師匠を加速。
さらにフェンリルの牙から作られた《魔狼の号》でファナティクスを押さえ込む。
そして師匠自身も、
転移。
加速魔術。
重力。
属性剣。
魔力放出。
使えるものを全部重ねて突っ込む。
結果、フォールンドの腕まで巻き込みながらファナティクスを貫いて破壊する。
正面ではランクSと神剣が殴り合い。
その隙を突いてランクA級と師匠が一点突破。
この役割分担がかなり熱かった。
師匠の中もだんだんヤバくなってない?
ただし、ファナティクスを倒して終わりではない。
師匠の《共食い》が発動し、ファナティクスの膨大な力を取り込む。
そこでまた師匠の内部から、
「全部喰え」
と訴える黒い存在が出てくる。
しかも対象にはフランまで含まれている。
師匠が激怒して押し込めるものの、
……お前の中、まだ何かいるよね?
となる。
ただでさえ師匠の中には、
ケルビムの残滓であるアナウンスさん。
謎の魂。
さらに深部の巨大な存在。
と、いろいろ入っている。
そこへ共食いまで加わった。
剣一本の中とは思えないほどゴチャゴチャしてきた。
最後には白い空間の謎の男から、
二十日以内に魔狼の平原の祭壇へ来い
とまで言われる。
王都騒乱が終わったと思ったら、今度は師匠自身が危ないのか?
休む暇がない。
読後の感想
『転生したら剣でした 12』で一番感じたのは、やはり、
「上には上がいる」
ということだった。
フランは弱くない。
むしろ、普通の冒険者から見れば完全に化け物側である。
それでもランクSのアースラースと、神竜化したベルメリアの戦いを前にすると、そのさらに上が見えてくる。
神剣ガイアを開放したアースラース。
ファナティクスによって神竜化したベルメリア。
その二人が本気でぶつかれば、王都そのものが巻き添えになる。
フランと師匠が目指している場所は、まだまだ遠いんだなと思った。
だからこそ面白い。
ここでフランが全部解決してしまったら、世界が急に小さく見えてしまう。
自分より強い相手がいる。
正面からでは敵わない相手がいる。
そんな戦いを目の前で見たからこそ、フランも師匠も、
もっと強くなりたい
と思う。
そして次の目的地は、師匠にとって始まりの場所でもある《魔狼の平原》。
最初に目覚めた場所へ、今度は強くなるために戻っていく。
王都でランクSと神剣の領域を見せつけられた直後だからこそ、この「原点へ戻って修行する」という流れがかなり楽しみになった。
それにしても……。
ランクS同士が本気で戦うなら、せめて王都の外でやってくれ。
周囲からしたら本当にたまったものではない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
考察・解説
狂信剣の脅威
狂信剣ファナティクスと疑似狂信剣の全貌
『転生したら剣でした』において、王都を未曾有の危機に陥れた神剣狂信剣ファナティクスおよびその模造品である疑似狂信剣について、神剣ファナティクス本来の脅威、疑似狂信剣による量産型兵器の脅威、最終局面に起きた神剣開放の悪夢、および竜巫女の血筋神竜化ベルメリアの乗っ取りの各点から解説する。
神剣「狂信剣ファナティクス」本来の脅威
神級鍛冶師ディオニスによって作られたファナティクスは、人の精神と肉体を支配し、統合する能力を持つ。
・精神の強制統合と食害:ファナティクスは斬った相手の精神を強制的に所有者の精神へ統合する。斬られた側の精神は斬った側に食われ、所有者は相手の記憶、経験、感情のすべてを自らのものとして取り込む。
・多にして個、一にして全の肉体使役:ファナティクスは他者の精神を統合しつつも、元の肉体との繋がりを維持できる。そのため、肉体は個々に動く別個の生物に見えても、中身は所有者の分け身となり、一人の所有者が複数の肉体を同時に、距離に関係なく動かすことができる。
・所有者の精神肥大と自滅:何十人、何百人もの記憶と人格を取り込み続けた結果、所有者の精神は肥大化し、最後は確実に暴走してまともではいられなくなる。過去にはこの暴走を憂えた神級鍛冶師ウルマーにより、対ファナティクス特化神剣「聖霊剣ホーリー・オーダー」が作られ、死闘の末に双方が破壊された。
「疑似狂信剣」による量産型兵器の脅威
アシュトナー侯爵家が開発していた失敗作の魔力吸収・放出用魔道具に、ファナティクスが自らの欠片を混ぜて分身を宿らせる依り代として改造したものが疑似狂信剣(エストック型)である。
・狂信と潜在能力解放による肉体変貌:宿主の背骨に沿うように突き刺すことで、宿主を強制的に狂信および潜在能力解放の状態に固定する。これにより、異常な身体能力と痛覚遮断、切断された手足すら数秒で修復する異常再生能力が与えられる。
・スキルのリアルタイム遠隔付与:背後にいるファナティクス本体と精神が繋がっているため、宿主自身の才能や適性に関係なく、リアルタイムで剣聖術や高位魔術などのスキルを遠隔で強制付与・移植される。これにより、戦闘経験の乏しい文官や一般の騎士であっても、一瞬にして高ランクの戦闘員へと変貌させられる。
・最悪の異能「魔力打ち消し」:宿主の魔力を消費・放出させることで、周囲の魔術、放出系スキル、回復、自己修復、身代わりの腕輪の効力、転移、従魔の影潜りなどを完全に打ち消して封殺する。
・宿主に課される死の呪い:一度突き刺されると、引き抜いた瞬間に宿主は即死する。また、引き抜かずに放置したとしても、潜在能力解放による反動でいずれ生命力が尽きて確実に自滅する。アシュトナー侯爵家は、実力者たちを捕らえて大量の魔薬を投与し、思考力を奪うことでこの剣による精神支配を受けやすくしていた。
最終局面に起きた「神剣開放」の悪夢
王都の各地に放たれた100人近い狂信兵たちの疑似狂信剣は、ファナティクス domesticの意思によって一斉に神剣開放を実行された。
・数分間の超人化と自爆:神剣開放した宿主は、潜在能力解放前のアシュトナー侯爵に匹敵する凄まじい力を一時的に得る。しかし、生命力と魔力を極限まで前倒しして消費するため、約3分間しか維持できず、思考能力を失ったまま無差別に魔法や剣技を放ち続ける。
・制御不能の大爆発:残り数分の寿命が尽きた瞬間、疑似狂信剣の魔力が制御を失い、周囲数十軒の家屋を完全に吹き飛ばして巨大なクレーターを作るほどの大爆発を引き起こす。これが王都の各地で一斉に発生したため、王都は壊滅的な被害を受けた。
竜巫女の血筋「神竜化ベルメリア」の乗っ取り
ファナティクス本体が竜の巫女の末裔である半竜人ベルメリアの精神を蝕み、その肉体を直接操った際、最大級の脅威が具現化した。
・神竜化の暴威:エルフにおけるハイエルフに相当する、一万年に数人しか確認されていない竜人の超進化存在神竜化のスキルを使用。さらに剣王術、大海魔術、瞬間再生、韋駄天など100近い高位スキルを同時に機能させた。
・ハイエルフ級の戦闘力:その戦闘能力はランクA冒険者さえも遙かに霞み、神剣「大地剣ガイア」を神剣開放したランクS冒険者のアースラースと正面から殺し合いを演じるほどの、まさに神話級の化け物として暴走を遂げた。
まとめ
狂信剣ファナティクスと疑似狂信剣の全貌を巡る一連の全貌は、精神の強制統合と分け身の使役という神剣本来の恐るべき支配能力から始まり、疑似狂信剣の刺突に伴う狂信・潜在能力解放と遠隔スキル移植、魔力打ち消しによる異能封殺、100人超の狂信兵による神剣開放と自爆大爆発テロ、そして神竜化ベルメリアの肉体乗っ取りによる神話級の暴走に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
他者の支配や広範な破壊テロという不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、能力特性の解明と無差別暴走テロへの対峙の記録である。
精神の食害から、疑似狂信剣の量産、魔力の封殺、神剣開放の爆発、そして神竜化の激突へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
ガルス救出作戦
ガルス救出作戦の全貌
『転生したら剣でした』第12巻において、王都を脅かすクーデターの混乱の真っ只中で敢行された「ガルス救出作戦」について、幽閉先の特定と盗賊ギルドの協力、規格外の助っ人エイワースの参戦、旧子爵邸での強行突破、地下空間での死闘、ガルスの発見と救出、および冒険者ギルドへの保護依頼の各点から解説する。
幽閉先の特定と「盗賊ギルド」の協力
移送されたガルスと新たな拠点の詳細は以下の通りである。
・移送されたガルス:当初、ガルスは「オルメス伯爵別邸」に幽閉されていたが、王都での激戦が勃発した直後、アシュトナー侯爵家によって別の場所へと身柄を移されていた。
・旧アルサンド子爵邸の地下:新たな移送先を特定したのは、王都の「盗賊ギルド」であった。ギルドは過去に召喚魔道具の暴走をガルスに止めてもらった恩があり、ガルスから託された「師匠の鞘」をオークションに出品してフランに暗号を届けた仲介者でもある。彼らの情報により、ガルスは現在は無人となっている旧アルサンド子爵邸の地下空間に閉じ込められていることが判明した。そこは外部からの侵入路が一切見当たらない、非常に厳重に隠蔽された地下拠点であった。
・狂信兵の集積地:その地下空間には、疑似狂信剣を背中に刺された大量の狂信兵(かつて全滅扱いとされていた傭兵たちなど)が潜んでおり、敵の戦力集積拠点として機能していた。
規格外の助っ人「竜縛りのエイワース」の参戦
盗賊ギルドは、この強固な秘密拠点へ突入するにあたり、最強の助っ人として元ランクA冒険者である「竜縛りのエイワース」をフランたちに引き合わせた。
・人物像:ディアスやガムド、フェルムスとかつて伝説的なパーティ「竜殺団」を組んでいた、極めて腕の立つ複数属性魔術師である。しかし、研究のためなら人間を平気で実験台にするような不気味でフリーダムな老人であり、今回の同行も疑似狂信剣や魔薬への飽くなき好奇心が理由であった。
旧子爵邸での「強行突破」とエイワースの奇策
隠し通路の入り口が一切見つからない中、エイワースは隠密行動という前提を無視した暴挙と、合理的な薬品攻撃を仕掛けた。
・土魔術での強引な縦穴穿孔:エイワースは土魔術を使用し、中庭の地面から地下空間へ直接つながる巨大な縦穴を一瞬にして掘り抜いた。
・不気味な薬品の散布:縦穴を開けた直後、エイワースは地下に向けて「痺れ薬」「金属腐食薬」「魔力を枯渇させる薬」の3種を勝手に大量に投げ込んだ。
・これは、中に入れられているガルスは頑丈な牢屋にいるため殺さず、その周囲を守る疑似狂信剣の兵士たちの能力と魔力、再生力を一気に奪うという、極めて合理的かつ非道な先制攻撃であった。
地下空間での死闘と「魔力打ち消し」の攻略
縦穴からフランとエイワースが突入した時、地下の広間ではすでに20名ほどの狂信兵がエイワースの毒薬によって倒れ伏していた。生き残って立っていたのは、毒耐性や防御魔術で生き残ったわずか4人だけであったが、彼らは依然として脅威であった。
・物理投擲「念動カタパルト」:敵の疑似狂信剣が発する「魔力打ち消し」効果により、魔術やスキルが打ち消されるため、フランは物理的な手段を選択した。次元収納から取り出した槍や師匠を、魔術による加速が及ばない「魔力打ち消しの効果範囲外」から念動で一気に投擲する戦法を用い、敵を疑似狂信剣ごと叩き潰した。
・魔術による魔力枯渇ゴリ押し:生き残った敵に対し、師匠は新たな戦術を編み出した。相手の魔力打ち消し能力は「装着者の魔力を消費・放出させて周囲の魔力を霧散させる」ものであるため、師匠が圧倒的な魔力量に任せて十発の魔術を同時起動し、ゴリ押しで相手の魔力を完全に枯渇させるという荒業を実行した。
・狙い通り魔力を枯渇させられた敵は身体強化や異常再生を発動できなくなり、フランの空気抜刀術によって一瞬で首を斬り飛ばされた。
ガルスの発見と救出
金属腐食薬でボロボロになった巨大な扉を越えた先には牢獄があり、その中でガルスが倒れていた。
・仮死状態のガルス:ガルスは外傷こそないものの、魔薬の長期投与による精神と肉体の消耗が原因で、体温と心拍が低下した仮死状態に近い極めて危険な昏睡状態にあった。
・格子の切断:頑丈な特殊金属(魔鋼系の合金)で作られた牢獄の鉄格子を、フランは魔力打ち消しのなくなった師匠を構えて一瞬で切り裂き、ガルスを牢から救い出した。
・エイワースの隔離:エイワースはガルスを「魔薬に侵されたドワーフの貴重な検体」として自ら治療したがったが、実験台にされることを恐れたフランと師匠はこれを拒否。フランがその小さな体でガルスを担ぎ上げ、地上への脱出を急いだ。
冒険者ギルドへの保護依頼
地上に戻ったフランたちは、混乱する王都を駆け抜けて冒険者ギルドへと帰還した。
・ステリアへの託送:ギルドの受付であり、元ランクB冒険者、かつエイワースの熱狂的な追っかけ(推し)であるステリアへガルスを預けた。エイワースの頼みということもあり、ステリアは自分の持つ影の権力を握っている高ランク冒険者や治癒術師を即座に動員し、ガルスの徹底的な治療と保護を約束した。
・国家の介入からの防衛:アシュトナー侯爵家が滅び、ガルスが救出されたとしても、国が彼の高い鍛冶技術(疑似狂信剣の製造技術)を求め、罪を着せるなどして強制的な奴隷化を企む危険性があった。これを防ぐため、フランはギルドカウンターに100万ゴルドの金貨を叩きつけ、「ガルスの身柄の安全確保と治療、および国への引き渡しの防止」を正式な冒険者ギルドへの依頼として登録した。
・ギルドが正式に受託したことで、国家も手出しができなくなり、最終的にガルスは罪を問われることなく自由の身となった。
まとめ
ガルス救出作戦を巡る一連の全貌は、盗賊ギルドによる旧アルサンド子爵邸地下拠点の特定から始まり、元ランクA冒険者エイワースの参戦、土魔術による縦穴穿孔と3種薬物の散布、念動カタパルトおよび十重同時起動による魔力枯渇ゴリ押しでの狂信兵撃破、牢獄からの昏睡ガルス救出、そして冒険者ギルドへの100万ゴルド正式依頼による国家介入防止と自由獲得に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
国家の謀略や敵の厳重な防備という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的な突入作戦と法的防壁の構築の記録である。
移送の捕捉から、強行穿孔、薬物散布、魔力枯渇の打破、牢格子の切断、そしてギルド保護の受託へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
アースラースの激闘
アースラースの激闘と凄絶な宿命の全貌
『転生したら剣でした』において、ランクS冒険者であるアースラースが繰り広げた激闘について、境界山脈・ダンジョン最深部でのゼロスリード戦、クランゼル王都・王城前での神竜化ベルメリア戦、および同士討ちの宿命とアースラースの孤独の各点から解説する。
境界山脈・ダンジョン最深部での「ゼロスリード」戦
ミューレリア(邪神人)との戦いの直後、彼女の力を共食いスキルで喰らって急激に変貌・強大化した宿敵ゼロスリードが、アースラースの前に立ちふさがった。
・大剣同士の正面衝突:ゼロスリードが構える邪神石の大剣と、アースラースの地剣ガイアが真っ向から激突した。ただ剣を打ち合わせただけで、広間の頑丈な壁に亀裂が走り、フランたちを吹き飛ばすほどの衝撃波が吹き荒れた。
・狂鬼化の発動と神剣開放:戦闘を重ねるごとに、アースラースの額の角が赤く染まり、戦闘力と引き換えに理性を失う固有スキル「狂鬼化」が発動し始めた。アースラースは完全に理性を奪われる寸前にエクストラスキル「神剣開放」を絶叫した。
・「大地剣ガイア」の真の姿:解放されたガイアは、本来の大剣の形から、曲刀のように反り返り、刀身の先端にドラム缶の倍近くある巨大な鉄槌があしらわれた攻城兵器のような異形へと姿を変えた。
・圧倒的な破壊と決着:神剣の真の力を得たアースラースは、回避したはずのゼロスリードの肉体の半分を、超重力による見えない力だけで一瞬にして押し潰し、粉砕した。その後、完全に暴走したアースラースを止めるため、フランがスキルテイカーで狂鬼化スキルを奪取したことで、ようやく激闘は幕を閉じえた。
クランゼル王都・王城前での「神竜化ベルメリア」戦
王都のクーデター最終局面、神剣「狂信剣ファナティクス」に精神を侵食され、一万年に数人しか現れない超進化形態「神竜化」を遂げた半竜人のベルメリアと、アースラースが正面から激突した。
・天変地異のぶつかり合い:ベルメリアはハイエルフ級の戦闘力を発揮し、巨大な水蛇、地に堕ちた太陽の如き火炎極大魔術「疑似太陽」、そして本来の威力を誇る極大雷鳴魔術「カンナカムイ」を次々とアースラースへ浴びせかけた。
・超重力による魔術の「圧縮・蒸発」:アースラースは神剣開放したガイアを振るい、超重力の檻(グラビティ・プリズン)でベルメリアの疑似太陽を真球状にギュウギュウに圧縮し、大地ごと綺麗に蒸発させて打ち消した。
・小山のごとき超巨大岩塊での拘束:さらに、アースラースは超重力で周囲の瓦礫や大地をすべて吸い寄せ、ベルメリアを上空で小山のような巨大な岩塊の中に呑み込んで圧殺・拘束しようとした。しかし、ベルメリアはその岩塊を内側から爆破して脱出。互いに身体を破壊されては瞬時に超再生する、神話のような殺し合いが王都のど真ん中で展開された。
・再びの暴走危機と結末:この激戦により王城は半壊、貴族街の半分が更地と化す甚大な被害が出た。アースラースの角も再び赤く光り出し狂鬼化の完全暴走寸前まで追い詰められるが、師匠とフォールンドの命懸けの介入によってファナティクス本体が完全破壊されたことで、ベルメリアは解放され、アースラースも最悪の自滅を免れた。
「同士討ち」の宿命と、アースラースの孤独
アースラースがこれほど圧倒的な強さを持ち、国を何度も救う激闘を繰り広げながらも、なぜ常に一人で放浪し続けているのか。そこには彼の抱える悲痛な宿命がある。
・狂鬼化という名の呪い:彼が禍ツ鬼に変異した際に得たこの固有スキルは、戦闘を繰り返すと自動で発動し、敵味方の区別をなくして周囲を虐殺するまで止まらない。一度発動すれば神剣すら使って見境なく暴れるため、アースラースは自分が自分でなくなる恐怖と常に戦っている。
・国に迷惑をかけないための自主退去:王都での死闘を終えたアースラースは、再び狂鬼化の進行が進んだため、フランが目を覚ます前に静かに立ち去った。神剣を持つランクS冒険者は、国にとって処刑も奴隷化もできず、かといって国に取り込めば他国からクランゼル王国が野心を抱いていると外交上の大問題に発展しかねない、手に余る超兵器のような存在である。アースラース自身がその政治的リスクを誰よりも理解しているからこそ、国に余計な罪や問題を残さないため、そっと姿を消したのである。
・自らの意思を持ったまま満足して戦場で死ぬことさえも、狂鬼化を抱える彼にとっては決して叶わない「贅沢な望み」であった。
まとめ
アースラースの激闘と凄絶な宿命の全貌を巡る一連の全貌は、境界山脈最深部での神剣開放ガイア超重力行使によるゼロスリード粉砕から始まり、王都王城前での神竜化ベルメリアとの疑似太陽圧縮・蒸発を伴う神話級激突、そして狂鬼化の暴走リスクや国際政治上の懸念を背景とした静かな自主退去と「戦場での死」という叶わぬ切望に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
制御不能な呪いや国家規模の政治的摩擦という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的破壊力の行使と孤高の自律の記録である。
宿敵の対峙から、超重力の解放、王都の破壊、ファナティクス破砕による生還、そして孤独な放浪への旅立ちへと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
師匠の異変
意思を持つ魔剣「師匠」に発生した異常と多重構造の全貌
『転生したら剣でした』において、主人公である「師匠」に生じた様々な異変について、剣の身体を襲った謎の痛み、神級鍛冶師アリステアが暴いた痛みの真実、なぜ剣でありながら痛むのか、魔石吸収時の異様な快感の正体、および最深部の封印とどす黒い魔力の暴走の各点から解説する。
剣の身体を襲った「謎の痛み」
魔剣として順調に性能を伸ばしていた師匠であったが、ある時期から剣の身体に極めて不気味な異変が生じるようになった。
・本来は痛覚を持たないはずの刀身や意識に、精神を直接削り取られるような凄まじい痛みを感じる異常な現象が発生した。
・この異変は、特に魔術の多重起動を試みた際や、自身の刀身の形を変える形態変形を過度に使用した時に激しく発生した。
・やがてその痛みは、会話のための念話を起動しようとするだけでも、鋭い苦痛となって師匠を苛むまでに悪化していった。
神級鍛冶師アリステアが暴いた「痛みの真実」
この致命的な不具合の全貌を解析し、治療を施したのが神級鍛冶師のアリステアである。彼女の精密な解析により、異変の裏には「アナウンスさんの機能停止」と「度を越したスキル過多」という、師匠の多重構造ゆえの致命的なシステムエラーが潜んでいることが突き止められた。
・演算の要「アナウンスさん」の破損:本来、師匠が獲得した膨大なスキルの管理や、魔術発動時の演算補助は、師匠のベースとなった廃棄神剣「智慧剣ケルビム」の残滓であるアナウンスさんがすべて肩代わりしていた。しかし、リッチとの死闘において潜在能力解放を限界を超えて行使した代償により、アナウンスさんの情報処理領域が激しく損壊し、機能停止に陥ってしまった。
・処理能力のキャパシティオーバー:管理者を失った結果、師匠の意識は150を超える膨大な数のスキルを自力で直接処理せねばならない状況に立たされた。一般的な神剣であっても、付与されるスキルは多くて30程度が限界であり、100を超えればいつ暴走や自壊を起こしてもおかしくない。それを遙かに超える負荷が師匠の処理能力に直接のしかかったことで、システムの悲鳴が痛みとして顕在化した。
なぜ「剣」でありながら痛むのか
アリステアは、師匠がこれほどの激痛に苛まれた精神的理由についても、明快な答えを提示している。
・師匠がもし人造の魂であれば、そもそも痛みという概念を知らないため、このような現象は起きない。
・しかし、師匠の根幹にあるのは元人間の魂である。そのため、無意識の奥底に無理を重ねれば肉体は痛むものだという人間時代の感覚や思い込みが根強く残っていた。
・その精神の自衛本能が、システム限界の警告として、あり得ない痛みを疑似的に再現していたのである。
・ただ、この痛みがブレーキとなっていたからこそ、師匠は限界を超えて完全に自滅する手前で踏みとどまることができていた。
魔石吸収時の「異様な快感」の正体
師匠がこれまでに感じていた魔石を吸収した際のトランス状態に近い快感もまた、魂の多重構造がもたらした奇妙なバグ(異変)の一つであった。
・解析により、魔石を貫いて吸収した魔力やスキルは、直接師匠に流れ込んでいるわけではないことが判明した。
・吸収された力は、師匠の最深部に封印され、深く傷ついた謎の魂(大魔獣フェンリルと推測される存在)へと一度すべて流れ込んでいた。
・そして、魔石を喰らうことでその魂が狂喜・回復し、その魂の歓喜をシステムを介して師匠が受け取ることで、あの異様な快感を得ていたのが真相であった。
最深部の封印と「どす黒い魔力」の暴走
師匠の身体には、神級鍛冶師の解析さえ完全に拒絶する最深部の封印が施されている。
・ここには、魔術による封印を無視して力を奪う魔剣や、アースラースの狂鬼化などを共食いで取り込んだ際に、連動して揺らぎ始めるどす黒い魔力を放つナニかが封じられている。
・実際に、ソウルドレイン戦やアースラースから狂鬼化スキルを奪い取った瞬間には、この封印が破られかけ、師匠の刀身から禍々しい黒い魔力が噴出して、自我を失った鋼の狼へと変貌して暴れ回る最悪の暴走を引き起こした。
・幸い、師匠の内なる謎の声(銀髪の男性の精神)が直前で封印を再強化してくれたため、完全な破滅は免れたが、この封印の綻びは、師匠が他者の邪悪な力を喰らい続ける限り、常に隣り合わせにある極めて危険な異変である。
まとめ
意思を持つ魔剣「師匠」に発生した異常と多重構造の全貌を巡る一連の全貌は、多重起動に伴う「謎の痛み」の発現から始まり、アリステアの解析によるアナウンスさん破損と150超スキル過多の露呈、元人間魂の自衛本能が生んだ疑似的痛みのカラクリ、最深部の謎の魂(フェンリル)経由で生じる魔石吸収時の快感、そして狂鬼化等の共食いが招く「どす黒い魔力」の暴走と封印の揺らぎに至るまで、その歩みを明瞭に示している。
システムの限界破綻や不可解な呪縛という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、スキルの統廃合と自己の根源追究の記録である。
苦痛の発生から、原因の解明、魂の構造の暴露、暴走の回避、そして「魔狼の平原の祭壇」を目指す旅路への接続へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
王都の復興
クランゼル王王都の復興と「黒猫聖女」の誕生
クランゼル王国の王都を襲った、疑似狂信剣の自爆テロおよび超越者同士の激突は、王都に壊滅的な爪痕を残した。しかし、その混乱が収束した直後から、国を挙げた王都の復興が進められることとなった。王都の復興期における物理的・政治的な課題、国家の対応、およびフランたちの貢献の各点から解説する。
激戦がもたらした甚大な被害状況
王都での戦い、とりわけ神竜化したベルメリアと神剣ガイアを神剣開放したアースラースによる激突は、天変地異にも等しい物理的破壊をもたらした。
・貴族街の壊滅と王城の半壊:貴族街の半分ほどが完全に更地と化し、被害を免れた建物は一つとしてなかった。また、国の象徴である王城も、防壁が崩れ落ちて半壊した。
・市街地のクレーター:王都の各地に展開していた狂信兵たちが一斉に神剣開放を行い、数分後に自爆した。この自爆によって周辺の民家が吹き飛び、王都内には無数の巨大なクレーターが出現した。
復興期における深刻な課題と「平民・貴族」の対立
激戦から二日後、アシュトナー侯爵側の抵抗勢力は排除されたものの、王都では深刻な物資・住居不足が発生した。この極限状態において、平民と貴族の対立が浮き彫りとなった。
・居住スペース(避難テント)の奪い合い:住居を失った人々のために仮設テントが設営されたが、その数は圧倒的に不足していた。それにも関わらず、一部の貴族たちは面子にこだわり、本来20人近く収容できる大テントを、わずか数人で占有した。さらに、権力を背景に平民から家を徴発しようとする貴族まで現れ、両者の対立は深まる一方となった。
・荒れ地からの砂塵被害:更地と化した貴族街から強烈な砂塵が舞い上がり、避難民を苦しめた。フランは風の結界を張ることでこれを防ぎ、避難所の人々から大いに感謝された。この際、傲慢な態度で結界を要求する貴族は無視し、丁寧に頼んできた貴族のテントにのみ結界を張った。
国王の合理的・現実的な復興方針
クランゼル王国の国王ウィソーラ・ブレド・クランゼルは、個人の感情よりも国家の利益を最優先する優秀な政治家であった。国力と国威が大きく低下した今、これ以上のダメージを避けるために、極めて合理的で現実的な復興方針をとった。
・責任追及の最小化と人材の活用:反乱の端緒となった名誉鍛冶師ガルスや、防衛に失敗したベイルリーズ伯爵に対し、国王は重罰を下さなかった。ガルスを罰して冒険者ギルドを敵に回す愚を避け、その高い鍛冶技術を復興に生かす方がメリットが大きいと判断したからである。すべての罪はアシュトナー侯爵とファナティクスに集中させ、現存する貴重な人材をそのまま復興の労働力として動員する方針を選択した。
・周辺都市からの支援と治安維持の回復:近隣の町などから速やかに食料支援や警備兵の増員が手配された。王宮の機能は一時的に貴族の別邸に移され、騎士団が治安維持を回復する一方で、応援に駆けつけた冒険者たちが瓦礫の撤去作業などに駆り出された。
フランの献身的な救命活動と「黒猫聖女」への推戴
フランと師匠は、王都の復興に多大な物理的・経済的貢献を果たした。
・500人以上の重傷者救護:ファナティクスを共食いしたことで魔力量が増大した師匠の魔力を使い、フランは各地の救護所を飛び回った。宮廷医師たちが驚愕するほどの速度で、瓦礫から救出された人々など500人以上の命をグレーターヒールで救った。
・孤児院・救護所への巨額の寄付:フランは、国から得た特別報酬や売却金などの大半を、孤児院や救護所の再建のために惜しみなく寄付した。このため、懐は一時的に完全な赤字となった。
・仮設住宅提案の却下と代替活動:フランは大地魔術を使い仮設住宅を建てようと提案したが、城壁外の魔獣の脅威や、本再建時の取り壊しの手間から却下された。そのため、負傷者の救護と砂塵対策の風の結界設置に注力した。
・黒猫聖女としての旅立ち:これらの献身的な活動により、フランは王都において黒雷姫ではなく黒猫聖女として広く知られるようになった。王都を出発する際には、エリアンテやベイルリーズ伯爵、ガルス、そして王都の冒険者や市民たちから万雷の拍手と最大級の感謝を浴び、祝福されながら新たな修行の旅へと出発した。
まとめ
クランゼル王王都の復興と「黒猫聖女」の誕生を巡る一連の全貌は、神竜化と神剣開放の衝突による貴族街壊滅および無数のクレーター発生という凄惨な被害から始まり、避難テントの争奪戦や砂塵被害に見る平民と貴族の対立、国王ウィソーラによる合理的責任追及の最小化と人材動員、そして500人超への救護と寄付を経た「黒猫聖女」としての歓送と新たな修行の旅立ちに至るまで、その歩みを明瞭に示している。
大規模テロの爪痕や不条理な階級対立という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、現実的政治判断と無償の献身による再生の記録である。
惨禍の発生から、混乱の直面、王権の采配、救護の展開、そして「黒猫聖女」への推戴へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
登場キャラクター
主人公一行
師匠
人間の魂を宿した知性ある魔剣である。フランを娘のように愛おしく思っている。彼女の成長と自立を支える存在だ。
・所属組織、地位や役職
インテリジェンス・ユニーク・ウェポン。
・物語内での具体的な行動や成果
神剣ファナティクスの破壊に貢献した。
「共食い」によってその力を吸収する。
魔狼の平原の台座で記憶の再封印とシステムの修復に入った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
改修と共食いを経て、魔力と耐久値が大きく向上した。
フラン
黒猫族の少女である。自身の種族を進化させたいと願う。彼女は師匠を深く信頼していた。
・所属組織、地位や役職
王都冒険者ギルド・ランクB冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
王都の救護活動で五百人以上の負傷者を治療した。
師匠が修復のために眠る間、アマンダと共に過酷な修行を重ねる。
自力で剣聖術や剣聖技を発動できるまでに成長した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「黒猫聖女」として王都の人々から敬愛された。
最年少でランクB冒険者への昇格を果たす。
ウルシ
フランの従魔である。影を操る能力を備えた魔狼だ。彼女の隣で戦いたいと強く願う。
・所属組織、地位や役職
フランの従魔。
・物語内での具体的な行動や成果
強さを求める焦りから、格上の魔竜に挑んで敗北した。
その戦闘の傷により、右後脚と右目を失う。
フェンリルから力を受け取り、孤独な進化を受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界の理に存在しない新種「ラグナロク・ウルフ」に進化した。
進化の代償として「同族嫌悪」と「同族威圧」のスキルを得る。
ベイルリーズ伯爵家関係者
ベルメリア・ベイルリーズ
半水竜人の女性である。ベイルリーズ伯爵がゴルディシア大陸で得た娘だ。父親に認められたいと願う。
・所属組織、地位や役職
ベイルリーズ伯爵家・密偵。
・物語内での具体的な行動や成果
アシュトナー侯爵邸でファナティクスに精神を支配された。
「神竜化」を遂げて暴走し、王都で破壊行為を行う。
アースラースとの激戦ののち、ガイアの癒やしで救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アースラースに伴われ、ゴルディシア大陸へと旅立つ。
フレデリック
半邪竜人の男性である。ベルメリアの母の代からベイルリーズ家に仕える。彼女の身を案じていた。
・所属組織、地位や役職
ベルメリアの守役。
・物語内での具体的な行動や成果
アシュトナー侯爵邸を偵察し、戦力を集めるための情報を伝えた。
ベルメリアを救出するため、アースラースの戦場を注意深く監視する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
シードラン・ベイルリーズ
筋肉質の体格を持つ伯爵だ。クランゼル王国の西門騎士団長を務める。娘と任務の間で葛藤していた。
・所属組織、地位や役職
ベイルリーズ伯爵。西門騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
アシュトナー侯爵家の国家反逆罪について内偵を進めていた。
暴走した娘を止めるため、王城と市民の防衛を最優先に指揮する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王都に甚大な被害が出た責任を取り、騎士団長を解任された。
スターグ
ベイルリーズ家に仕える騎士である。
・所属組織、地位や役職
シードラン・ベイルリーズ伯爵の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
高位の鑑定能力を持ち、暴走するベルメリアのステータスを観察した。
彼女の能力値がアースラース級の規格外である事実を報告する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
王都・冒険者ギルド関係者
エリアンテ
半蟲人の女性だ。アシュトナー侯爵家を非常に嫌悪している。フランへは大きな信頼を寄せた。
・所属組織、地位や役職
王都冒険者ギルド・ギルドマスター。
・物語内での具体的な行動や成果
ガルス救出のため、仲の良くない盗賊ギルドへの接触を決定した。
コルベルトに傭兵団「触角と甲殻」の応援要請を指示する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王都ギルドの長として、冒険者たちをまとめ上げた。
ステリア
元ランクB冒険者の大柄な女性である。
・所属組織、地位や役職
王都冒険者ギルド・受付。
・物語内での具体的な行動や成果
フランの保護依頼を承諾し、ガルスをギルドの奥で預かった。
エイワースの元ファンとして、彼の言葉を快く承諾する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
多くの冒険者の弱みを握る、陰の権力者として知られている。
コルベルト
自力での修行に励む真面目な男性である。
・所属組織、地位や役職
ランクB冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
エリアンテの指示に従い、傭兵団「触角と甲殻」を交渉で引き入れた。
師匠が消滅したと誤解し、涙ながらに形見として師匠を扱う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
デミトリス流武術の技術を身につけている。
盗賊ギルド関係者
フェイス
身軽な動きを得意とする優男だ。本名は別に存在する。
・所属組織、地位や役職
冒険者。盗賊ギルド・連絡員。
・物語内での具体的な行動や成果
フランを盗賊ギルドの隠し地下室へと案内した。
戦闘を避けながら旧アルサンド子爵邸への案内を務める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
両ギルドの繋ぎ役として、高い隠密能力と情報収集力を備えている。
フィスト
禿頭で傷だらけの男性である。
・所属組織、地位や役職
盗賊ギルド・幹部(荒事担当)。
・物語内での具体的な行動や成果
自身の危機察知能力によって、フランの圧倒的な強さを見抜いた。
暴挙に出たオネストを殴り飛ばし、フランに深く謝罪する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
オネスト
整った容姿を持つ男性である。
・所属組織、地位や役職
盗賊ギルド・幹部。元女衒。
・物語内での具体的な行動や成果
異性誘引スキルを使い、フランとの交渉を有利に進めようとした。
怒ったフランに剣を突きつけられ、パニックに陥る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フィストに殴り飛ばされ、壁に激突して気絶した。
ピンク
落ち着いた態度を見せる女性である。
・所属組織、地位や役職
盗賊ギルド・幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
他の男性幹部が取り乱す中、冷静にフランとの交渉を引き継いだ。
ガルスがアシュトナー侯爵家によって移送された事実を明かす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
盗賊ギルドとフランたちの共同戦線を成立させた。
竜縛りのエイワース
気難しく仏頂面の老人だ。魔術への異常な探究心を持っている。
・所属組織、地位や役職
元ランクA冒険者。盗賊ギルドの用心棒。
・物語内での具体的な行動や成果
旧アルサンド子爵邸の地面を土魔術で穿ち、毒薬を投げ込んだ。
魔法薬を巧みに使い、疑似狂信剣の兵士たちの魔力を枯渇させる。
死霊象人の弱点を見抜くための戦闘を繰り広げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつてガムドやフェルムスと伝説的なパーティを組んでいた。
傭兵団「触角と甲殻」
ロビン
堅海老の半蟲人だ。傭兵団のサブリーダーを務める。
・所属組織、地位や役職
傭兵団「触角と甲殻」・サブリーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
自身の甲殻を使い、死霊象人の激しい打撃受け流した。
ホップスとの合体技「城門崩し」で死霊象人の頭部を粉砕する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
攻撃の反動で全身骨折の大怪我を負ったが、生き延びた。
ホップス
飛蝗の半蟲人だ。細身の美少年の姿をしている。
・所属組織、地位や役職
傭兵団「触角と甲殻」・団員。
・物語内での具体的な行動や成果
自身の足を肥大化させ、跳躍力を生かした脚技で死霊象人を翻弄した。
「城門崩し」を放つため、ロビンを急降下キックで蹴り落とす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
エフィ
蜉蝣の半蟲人だ。物静かで眠たげな目をしている。
・所属組織、地位や役職
傭兵団「触角と甲殻」・団員。
・物語内での具体的な行動や成果
高い隠密能力を使い、死霊象人の背後から槍を突き刺した。
背中の細い翅を使い、トリッキーな動きで相手を翻弄する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アン
牙蟻の半蟲人だ。元気が有り余る少女である。
・所属組織、地位や役職
傭兵団「触角と甲殻」・団員。
・物語内での具体的な行動や成果
魔力を込めた大斧を両手に持ち、死霊象人の足元へ連続攻撃を加えた。
口から強力な毒液を吐き、相手の目潰しを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし.
シンゲン
蜃の半蟲人だ。朴訥とした大男である。
・所属組織、地位や役職
傭兵団「触角と甲殻」・団員。幻影術師。
・物語内での具体的な行動や成果
幻影魔術により、アンの姿を隠して奇襲を支援した。
背中を覆う殻で死霊象人の一撃を受け止め、囮となって味方を庇う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
クランゼル王国関係者
ウィソーラ・ブレド・クランゼル
クランゼル王国の国王だ。現実的な判断を下す優秀な政治家である。
・所属組織、地位や役職
クランゼル王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
クーデターの混乱収束後、フランとフォールンドを召喚した。
救国の働きを称え、二人に一級特爵の爵位を与えようとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
国家の利益を最優先する姿勢を崩さない。
ルガムフル
銀髪の美しい男性騎士だ。常に無駄のない身のこなしをする。
・所属組織、地位や役職
親衛隊長。「王の騎士」。
・物語内での具体的な行動や成果
国王の側近として、謁見室に同席した。
フランの実力が自身と互角以上であると王に告げる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
クランゼル王国内でも屈指の強者である。
魔術学院関係者
アリステア
ハーフエルフの女性である。世界にただ一人の神級鍛冶師だ。固有スキルで若さを保っている。
・所属組織、地位や役職
神級鍛冶師。魔術学院・臨時鍛冶講師(元)。
・物語内での具体的な行動や成果
王都での神剣同士の戦いを感知し、魔狼の平原でフランたちに接触した。
フランのために、重魔鋼を用いた極めて頑丈な魔剣を製作する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
固有スキル「肉体最盛」により、若々しい容姿を保ち続けている。
ウィーナレーン
最強種族とされるハイエルフの女性である。
・所属組織、地位や役職
ベリオス王国魔術学院・学長。七賢者の一人。
・物語内での具体的な行動や成果
アリステアに「五年以内に優秀な冒険者を紹介すること」を条件に出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界最高の大海魔術師として、世界中から崇められている。
宿場町冒険者ギルド関係者
デスラ
小太りの男性である。
・所属組織、地位や役職
宿場町冒険者ギルド・ギルドマスター。
・物語内での具体的な行動や成果
王都冒険者ギルドへ現れ、クーデターの責任をエリアンテに押し付けた。
彼女を罷免させ、自分が王都ギルドマスターの座を奪おうとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
他の支部のギルドマスターからも嫌われており、後に罷免される見込みとなった。
ギャレス
デスラに雇われて行動していた男性である。
・所属組織、地位や役職
冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
デスラと共に王都ギルドを訪れた。
エリアンテに辞任を迫るため、脅しの片棒を担ぐ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実力はランクC相応である。
冒険者・その他
アースラース
鬼人の男性である。戦闘時に理性を失う呪いを抱えている。フランの実力を認めた。
・所属組織、地位や役職
ランクS冒険者。地剣ガイア(大地剣ガイア)の所有者。
・物語内での具体的な行動や成果
神竜化したベルメリアを止めるため、ガイアを神剣開放した。
激戦の末にベルメリアを拘束し、傷を癒やす。
国に外交上の問題を起こさないため、王都を去った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ベルメリアを伴ってゴルディシア大陸へと旅立つ。
フォールンド
無表情の男性である。
・所属組織、地位や役職
ランクA冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
師匠の秘密を知り、共闘してファナティクスに挑んだ。
魔狼の号を使い、ファナティクスの耐久値を削る。
アシュトナーとファナティクスが倒れたことをベイルリーズ伯爵に報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
神剣に最も近いとされる実力者である。
ガルス
ドワーフの男性である。
・所属組織、地位や役職
魔法鍛冶師。クランゼル王国名誉鍛冶師。
・物語内での具体的な行動や成果
アシュトナー侯爵家に極秘招聘されたのち、消息を絶った。
オルメス伯爵別邸に幽閉され、ファナティクスに操られる。
旧アルサンド子爵邸の地下からフランたちに救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
神級鍛冶師に最も近いと言われている。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
展開まとめ
第一章 盗賊ギルドとフラン
ベルメリアの痕跡
フレデリックはアシュトナー侯爵邸への突入前、ウルシと別行動を取り、ベルメリアの救出に向かった。ウルシの嗅覚を頼りに小貴族の屋敷へ潜入すると、隠し通路の先に魔法陣や怪しい薬、狂信の剣が置かれた実験室を発見した。ベルメリアは直前までそこにいたらしく、ウルシは棚から強い魔力を放つ折れた剣先を見つけたため、フレデリックは証拠として回収させた。
変貌したベルメリア
突然の攻撃からフレデリックを庇ったウルシが負傷し、二人の前にベルメリアが現れた。しかし彼女は粗暴な言動と異様な声を発し、自分が誰なのかさえ分からない様子で狂笑していた。圧倒的な魔力を解放したベルメリアを前に、フレデリックは勝てないと悟り、ウルシを逃がすため一人で残った。半邪竜人として魔力の法則を歪めて攻撃を消す力で時間を稼ごうとしたが、ベルメリアは回収されたホーリー・オーダーの欠片を求め、フレデリックを痛めつけて居場所を吐かせようとした。
狂信の剣士との遭遇
一方、アシュトナー侯爵家を脱出した一行は、背中に疑似狂信剣を刺した剣士が王都を破壊する現場に遭遇した。剣士は神剣開放状態となり、無詠唱で多数の高威力魔術を操っていた。エリアンテが住民を逃がすため立ち向かったものの一撃で吹き飛ばされ、続く火炎魔術から師匠が彼女を救った。
カレー師匠の時間稼ぎ
師匠は分体を作り、自らをフランの師匠であるカレー師匠としてエリアンテたちの前に現した。剣士とまともに戦えば瞬殺されると告げ、自分が時間を稼ぐ間にフランを逃がすよう頼んだ。師匠はディメンジョン・シフトで攻撃を無効化しながら空中へ誘導し、剣士の注意を引きつけ続けた。神剣開放によって生命力と魔力を急速に消耗する相手が自滅するまで、約三分間耐え抜いた。
王都を襲う魔力爆発
剣士の生命力が尽きた直後、疑似狂信剣の魔力が制御を失って大爆発を起こした。周囲には巨大なクレーターが生まれ、数十軒の家屋が倒壊した。さらに王都各地でも同様の爆発が相次ぎ、五十本以上の魔力の柱が立ち昇った。貴族街だけでなく住民区画や商業区画にも被害が広がり、とりわけ王城周辺で爆発が集中していた。
フランとの再会
師匠は魔力の繋がりからフランの生存を確認し、冒険者ギルドへ転移した。疲労で眠るフランの枕元に剣の姿で戻ったところ、コルベルトたちは分体がいないことからカレー師匠が死亡し、剣だけが形見として戻ったと勘違いした。目を覚ましたフランは師匠を見つけて安堵し、そのまま胸元へ抱き寄せた。
ガルスとベルメリアの捜索
エリアンテから、王都中心部が狂信の剣士の自爆で甚大な被害を受け、外縁部ではアシュトナー侯爵側の兵士や傭兵も暴れていると報告された。ガルスとベルメリアはまだ救出されておらず、所在も不明であった。疲労が残るフランは、それでも二人を捜しに行くと譲らなかったため、エリアンテは情報を持つ盗賊ギルドへ協力を求めることにした。
盗賊ギルドへの接触
冒険者であり盗賊ギルドとの連絡役でもあるフェイスが呼ばれ、フランを幹部会へ案内することになった。一方、コルベルトにはエリアンテの旧知である半蟲人の傭兵団、触角と甲殻との交渉が任された。エリアンテ自身は冒険者を集め、フランは情報、コルベルトは戦力をそれぞれ確保する役割を担った。
盗賊ギルドの幹部
フェイスの案内で隠し階段の先にある地下室へ入ったフランは、フィスト、オネスト、ピンクの三人と対面した。荒事担当のフィストはフランの強さを即座に察して恐れたが、オネストは異性誘引のスキルを使って交渉を有利に進めようとした。スキル使用を察知したフランが刃を首元へ突きつけると、なおも威圧しようとしたオネストをフィストが殴り飛ばして謝罪し、敵対を回避した。
ガルスの移送先
交渉を引き継いだピンクは、ガルスがすでにオルメス伯爵邸から移されたと明かした。盗賊ギルドは過去に召喚魔道具の暴走をガルスに止めてもらった恩があり、軟禁中も密かに接触していた。フランが手にした鞘も、ガルスが盗賊ギルドを介して複数のオークションへ出品し、暗号として届けようとしたものであった。
旧アルサンド子爵邸
ガルスは微量の魔薬を投与され、折れた魔剣によって意思に反して鍛冶をさせられていた。その後、旧アルサンド子爵邸の地下へ移された可能性が高かった。地下には外部から侵入路を確認できない広大な空間があり、使役したネズミによる調査などから百人以上の人間がいると推測された。さらに、過去に全滅扱いとなった傭兵たちが疑似狂信剣の兵士として現れており、そこが戦力の集積地である可能性が高かった。
盗賊ギルドとの共同戦線
盗賊ギルドは王都を自分たちの生存基盤としており、アシュトナー侯爵によってそれを失うことを望んでいなかった。そのためフランたちと共同戦線を組み、表立った戦力以外の情報面で支援すると申し出た。フランは完全には信用せずとも協力は可能だと判断し、提案を受け入れた。
竜縛りのエイワース
盗賊ギルドは助っ人として、元ランクA冒険者である竜縛りのエイワースを同行させた。エイワースはディアスやフェルムス、ガムドの元仲間で、高位の複数属性魔術を操る強者だった。一方で研究のため盗賊を人体実験に使う危険な人物でもあり、盗賊ギルドから実験台を提供される代わりに用心棒を務めていた。敵が魔術を封じる力を持つと聞いても、危険より好奇心を優先し、同行を望んだ。
旧アルサンド子爵邸への出発
フェイスを道案内として、フランとエイワースは旧アルサンド子爵邸へ向かった。王都では疑似狂信剣の兵士に騎士団が苦戦していたが、冒険者や各地の騎士も集まりつつあった。一方、旧アルサンド子爵邸からは敵兵が出ておらず、重要な何かを守るため戦力を温存している可能性が高まった。一行は戦闘を避けながら裏道を進み、目的地へ到着した。
Side 伯爵
ベルメリアの暴走
ベイルリーズ伯爵の前では、全身を水色の鱗で覆われたベルメリアが騎士や冒険者を蹂躙していた。巨大な水弾や折れた魔剣から放つ衝撃波で次々と兵を倒し、攻撃をすべて回避するか魔力で弾いていた。外見はベルメリアでも人格は別物のように変貌しており、男とも女ともつかない声で殺戮を楽しんでいた。
神竜化したベルメリア
高位の鑑定を持つスターグによれば、ベルメリアの能力値はランクA冒険者を上回り、剣王術、大海魔術、瞬間再生など百近い高位スキルに加え、神竜化を含む複数の希少能力を備えていた。状態には狂信と神竜化が表示されており、ベイルリーズ伯爵は狂信剣の力によってベルメリアが神話級の存在へ変貌させられた可能性を悟った。
王城防衛への決意
ベイルリーズ伯爵は自軍では勝てないと判断し、王を避難させるよう伝令を送った。それでも自分たちは王城と民を守るためベルメリアを引き留め、援軍が来るまで捨て石となる覚悟を固めた。勝利には天壁のゼフィルド、百剣のフォールンド、黒雷姫フラン、竜縛りのエイワース、親衛総隊長ルガムフル級の戦力を複数揃える必要があると考えた。
鬼族の援軍
ベイルリーズ伯爵が前線へ出ようとした時、気配もなく大柄な鬼族の男が現れた。男は加勢を申し出ると、巨大な大剣からグラビティ・ブロウを放ち、空中にいたベルメリアを地面へ叩き落とした。それはこの戦いで初めてベルメリアに明確なダメージを与えた攻撃であったが、男自身も自分がどこまで持ちこたえられるか分からない様子であった。
第二章 ガルス救出
旧アルサンド子爵邸の地下
フランたちはフェイスに案内され、荒れ果てた旧アルサンド子爵邸へ到着した。地下には多数の生命反応と疑似狂信剣の気配があったものの、入口は見つからなかった。エイワースは隠密行動を無視して土魔術で地下まで穴を開け、痺れ薬、金属腐食薬、魔力を枯渇させる薬を投げ込んだ。いずれもガルスを殺さず、疑似狂信剣の能力だけを消耗させる狙いであった。
エイワースの強行突入
薬の効果を待つ間に屋敷を調べたものの、隠し通路は発見できなかった。エイワースは再び勝手に穴を開け、そのまま地下へ降りてしまったため、フランも後を追った。地下は砦のような構造で、内部から魔力を流すことで地上への階段を出現させる仕組みも見つかった。
疑似狂信剣の自滅
地下の武具庫では、エイワースの金属腐食薬によって武器や防具が黒い粉へ変わり、疑似狂信剣を刺された二人の男も死亡していた。魔力枯渇薬への対抗で魔力打ち消しと潜在能力解放を使い続けた結果、再生も働かず自滅したと考えられた。さらに奥の広間でも多数の兵士が倒れ、生き残っていたのは毒への耐性や防御手段を持つ数人だけであった。
魔力打ち消しの攻略
フランと師匠は念動カタパルトを利用し、疑似狂信剣ごと敵を破壊した。エイワースは残った兵士を実験台にして、魔法によらない薬品反応は消せないこと、魔力打ち消しには使用者自身の魔力を消費すること、一定範囲をまとめて無効化する性質があることを突き止めた。さらに魔法薬をわざと打ち消させて相手の魔力を枯渇させた後、氷魔術で倒した。その戦法から師匠も、魔術を連続して打ち消させれば疑似狂信剣を容易に攻略できると理解した。
牢獄のガルス
金属腐食薬で崩れた巨大な扉の先には牢獄があり、その中でガルスが倒れていた。特殊な格子をフランが切断して救出したものの、ガルスは体温と心拍が低下した仮死状態に近く、治癒魔術でも目を覚まさなかった。エイワースは長期間の魔薬による精神と肉体の消耗が原因だと診断し、最上位の治癒魔術や解毒で回復可能だと告げた。フランはエイワースへの治療依頼を拒み、ガルスを冒険者ギルドへ運ぶことにした。
冒険者ギルドへの帰還
地上へ戻ったフランたちはフェイスと合流し、混乱が広がる王都を冒険者ギルドへ急いだ。途中でも疑似狂信剣の兵士と遭遇したが、エイワースは身体強化薬、体術、魔法薬を組み合わせ、相手の魔力を枯渇させて倒した。フランと師匠は、その多彩な戦法と予測不能な行動から、エイワースを警戒すべき相手として見ていた。
冒険者ギルド前の戦場
冒険者ギルド前では、疑似狂信剣を刺された兵士と死体から作られたフレッシュ・グレーター・ゴーレムが、冒険者たちと激戦を繰り広げていた。コルベルト、エリアンテに加え、半蟲人の傭兵団も参戦していた。フランは疑似狂信剣の魔力を魔術で消耗させてから敵を次々と撃破し、ステリアへガルスを預けた。
疑似狂信剣の掃討
フランは覚醒のみを使い、仲間が注意を引いている隙に疑似狂信剣を狙って撃破した。師匠は最後の敵にカンナカムイを放ち、強力すぎる魔術までは完全に打ち消せないことも確認した。疑似狂信剣を十五分ほどで掃討すると、残るフレッシュ・グレーター・ゴーレムとの戦いに移った。
触角と甲殻
戦場では、半蟲人の傭兵団が高い連携力を見せた。堅海老の男は巨大な拳と水魔術、飛蝗の少年は強烈な脚技、蜉蝣の女性は翅を利用した変則的な槍術、牙蟻の少女は怪力と双斧、蜃の男は堅い殻と幻影魔術を用いて戦った。エリアンテも蜘蛛の糸と巨大な大剣で暴れ、フランも制限から解放されたようにゴーレムを次々と破壊した。
エイワースの毒霧
エイワースは敵味方を巻き込む麻痺毒を広範囲に放ち、ゴーレムと冒険者をまとめて動けなくした。後で解毒できるとして、無事だった者たちにゴーレムを仕留めるよう指示した。周囲は怒ったものの、その戦法が合理的であることも事実であり、フランまで感心したため、師匠はエイワースの真似をしないよう警戒した。
Side アースラース
ジルバード大陸への旅
アースラースは固有スキル暗鬼による直感に従い、ミューレリアが救おうとしていたロミオと、彼を連れ去ったゼロスリードの行方を追ってジルバード大陸へ渡っていた。バルボラの孤児院ではロミオを見つけられず、ゼロスリードが犯罪歴を問われず生きられるゴルディシア大陸を目指したと推測し、その途中でクランゼル王国の王都へ立ち寄った。
王都の騒乱
王都で情報を集めていたアースラースは、突然の爆発と戦闘に遭遇した。背中に剣を刺した異様な兵士たちから襲われ、その魔力打ち消し能力と理性のなさを知った。冒険者ギルドでアシュトナー侯爵のクーデターだと聞き、王都にいるフランの安否を確かめるため王城へ向かった。
ベルメリアとの対峙
王城前では、水色の鱗を持つベルメリアが騎士団を圧倒していた。その魔力はアースラースに匹敵し、本気になれば王都を壊滅させかねないほどであった。アースラースは自ら名乗って周辺の避難を命じ、ベイルリーズ伯爵も即座に王城と住民の退避を開始した。
大地剣ガイアの神剣開放
アースラースは大地剣ガイアを神剣開放し、極大級の大地魔術と神剣固有の力を解放した。ベルメリアを操る存在はガイアが本物の神剣だと見抜き、それを奪おうとしてアースラースへ攻撃を集中させた。アースラースは周囲の避難が進むまで会話を続け、その後は互いに身体を破壊しては再生する激戦へ入った。
神剣と壊れた魔剣
ベルメリアは剣術や再生力で優れていたが、アースラースは戦闘経験と神剣ガイアの性能で徐々に優位に立った。ガイアの攻撃は見えない部分にも確実な損耗を与え、ベルメリアの動きは少しずつ鈍った。アースラースは広範囲の重力でベルメリアを地面へ引きずり落とし、さらに重力の檻で完全に拘束した。
狂信剣ファナティクス
追い詰められたベルメリアは神剣開放を叫び、折れた剣からガイアに匹敵する魔力を解放した。剣そのものが意思を持って喋り始め、四十年かけて疑似狂信剣を作り、神竜化を扱える竜巫女の血筋であるベルメリアを準備してきたと明かした。さらに王都と王を掌握してフィリアースを侵略し、神剣ディアボロスを奪って自らを修復する計画だったと語った。
ファナティクスの最期の抵抗
アースラースは、その剣がホーリー・オーダーに破壊された狂信剣ファナティクスの成れの果てだと理解した。ファナティクスはガイアやディアボロスのオレイカルコスを取り込み、自らを元の姿へ戻そうとしていた。しかし計画が崩壊したことで、神剣開放によって自壊しながらも、アースラースと王都の人間すべてを道連れにすると叫び、最後の戦いを挑んだ。
第三章 ギルド前の死闘
死霊象人の出現
冒険者ギルド前では敵の掃討後も混乱が続いていた。フランの極大魔術に興味を示すエイワースが質問を重ねる中、倒されたフレッシュ・グレーター・ゴーレムから魔力が流れ出し、巨大な召喚陣が形成された。そこから石棺が現れ、内部から皮膚のない巨大な象人のアンデッドが姿を現した。
紫風象のアンデッド
死霊象人は疑似狂信剣による魔力打ち消し能力を持ち、フランやエイワースの魔術を無効化した。さらに風を自在に操り、巨体に似合わぬ高速移動や鼻から放つ圧縮した風弾で周囲を破壊した。その特徴から、師匠たちは死霊象人が十始族の紫風象を基に作られた可能性に気づいた。
触角と甲殻の連係
フランが消耗しているため、半蟲人の傭兵団が前衛となった。堅海老のロビンが正面で攻撃を受け流し、飛蝗のホップス、蜉蝣のエフィ、牙蟻のアン、蜃のシンゲンが役割を分担して同じ箇所へ攻撃を集中させた。死霊象人は傷を再生するたびに魔力を消耗しており、師匠は再生を繰り返させることが攻略につながると見抜いた。
エイワースの複合魔術
エイワースは極大魔術なら魔力打ち消しを完全には受けないというフランたちの戦いを参考にし、ブリザードとジャイアンツベインを同時に発動した。毒と吹雪を組み合わせた複合魔術は死霊象人を傷つけたものの、強力な風と再生によって決定打にはならなかった。
師匠の突撃
フランは上空からの突撃を選び、師匠とともに青い光を纏って死霊象人へ急降下した。風の防壁に阻まれると、師匠は刀身を螺旋状に変形させ、高速回転と魔力放出によって強引に突破した。フランは反動で吹き飛ばされたが、師匠は死霊象人の右肩へ突き刺さり、その体内から疑似狂信剣を探し始めた。
城門崩し
師匠が体内から攻撃を続ける間、半蟲人たちは乾坤一擲の攻勢に出た。最後にロビンとホップスが仲間の補助で高空へ跳び、城門崩しを放った。ホップスに蹴り落とされたロビンは軌道を修正しながら死霊象人の頭部へ激突し、首から上を完全に粉砕した。ロビン自身も重傷を負ったが、死霊象人はなお再生を始めた。
紫風怒濤
追い詰められた死霊象人は、紫風象の固有スキル紫風怒濤を発動した。紫色の暴風は半蟲人たちを吹き飛ばし、家屋を消滅させるほどの風弾を放った。さらに師匠を体内から引き抜こうとしたが、紫風怒濤自体も大きな魔力を消耗していた。
疑似狂信剣の位置
師匠は死霊象人の胴体中央で、疑似狂信剣と魔石が連結されていることを察知した。疑似狂信剣は別の魔力タンクを使って魔力打ち消しを行っていたため、本体の魔力消耗が表面化していなかったのである。師匠は限界を超えて形態変形を続け、疑似狂信剣へ迫った。
黒雷の一撃
吹き飛ばされていたフランは再び戦場へ戻った。エイワースから渡された生命力を一時的に増幅する薬を使い、覚醒と閃華迅雷を発動したのである。エイワースの支援で死霊象人の風弾を防ぎながら接近し、師匠の飾り紐を掴んだフランは黒雷をその体内へ流し込んだ。
死霊象人の撃破
黒雷によって拘束が弱まった隙に、師匠は体内を一気に進み、疑似狂信剣を切り裂いた。共食いも発動し、死霊象人は断末魔を上げて崩れ落ちた。戦いの後、フランは師匠の魔力に黒い靄のようなものが混じっていたと伝えたが、原因は分からなかった。
エイワースの好奇心
エイワースはフランの実力と剣を操る能力に強い興味を抱き、所属やアレッサとの関係を尋ねた。さらに、ランクB以上の冒険者には貴族から激しい勧誘が押し寄せると語り、フランが低いランクのままでいる背景を推測した。クリムトが災厄の異名を持つ高位の精霊使いで、戦い方次第ではランクSとも渡り合えるほどだとも説明した。その後、フランへ解剖を持ちかけたが、当然拒否された。
王都の戦力不足
エリアンテはフランに王城方面へ向かうよう頼む一方、エイワースには魔術師部隊への指導を命じた。王都では四年に一度の魔境の間引きが行われており、騎士団と魔術師団の半数が蝗型魔獣の討伐に出ていた。アシュトナー侯爵は、その戦力不足の時期を狙って反乱を起こしていたのである。
ガルスの保護
フランは冒険者ギルドで眠り続けるガルスを確認し、治療と身柄の保護を正式に依頼した。国へ勝手に引き渡さないことも条件とし、百万円の報酬を支払った。エイワースも依頼に名を連ね、ステリアはガルスを必ず守ると約束した。
フランの眠り
戦況を聞いていたフランは、エイワースの薬の副作用とそれまでの疲労によって眠りに落ちた。ステリアはフランを休ませることにし、エイワースも戦力にならない以上は寝かせておくべきだと認めた。師匠はフランの傍に残り、ファナティクスへの激しい敵愾心を感じながらも、彼女の安全を優先した。
傷ついたウルシ
そこへ負傷したウルシが転移してきた。ウルシの記憶から、ベルメリアがファナティクスに操られ、フレデリックが足止めのため残ったことが判明した。さらにウルシは、ベルメリアがいた場所で拾った剣の切っ先を取り出した。
ホーリー・オーダーの欠片
その金属片を鑑定すると、ファナティクスと相打ちになった神剣ホーリー・オーダーの欠片であった。師匠は共食いで欠片を吸収し、新たな能力こそ得られなかったものの、消耗していた魔力を大きく回復させた。同時に疑似狂信剣の気配を以前より鋭く感知できるようになり、王城前にファナティクスと思われる強大な反応を捉えた。
王城前の怪物同士
ステリアから、王城周辺ではベルメリアが騎士団を圧倒し、百剣フォールンドさえ短時間で退けたと知らされた。そこへ同士討ちのアースラースが現れ、ベルメリアとの戦闘を開始していた。師匠はアースラースが戦い続ければ暴走する危険があると理解し、放置すれば王都だけでなくフランやガルスまで危険になると考えた。
ファナティクス討伐への出発
師匠は眠るフランだけを連れて逃げることも考えたが、それでは仲間を見捨てたことをフラン自身が許さないと判断した。そこでウルシにフランの護衛を任せ、危険になれば彼女を連れて逃げるよう命じた。師匠自身はホーリー・オーダーの欠片で回復した力と隠密性を生かし、アースラースを援護してファナティクスを倒すため、王城前へ向かう決意を固めた。
第四章 超越者対超越者
王城前の超越者同士
王城前では、ベルメリアとアースラースが人の領域を超えた攻撃をぶつけ合っていた。ベルメリアは全身を水色の鱗で覆い、火炎、水、雷などの強大な魔術を連発した。対するアースラースも大地剣ガイアの重力と大地の力で応戦し、周囲の貴族街や王城まで破壊されていた。
ベルメリアの極大魔術
ベルメリアは疑似太陽や巨大な水蛇、カンナカムイを繰り出した。その威力は師匠が扱う同名魔術を遥かに上回り、アースラースでさえ傷を負った。一方のアースラースも超重力で巨大な岩塊を作り、ベルメリアを押し潰そうとしたが、彼女は内側から破壊して脱出した。
アースラースの暴走の兆候
戦闘が長引くにつれ、アースラースの角と周囲の気配に狂鬼化の兆候が現れ始めた。師匠は、このまま決着がつかなければベルメリアだけでなく暴走したアースラースまで王都を破壊すると危惧した。そこでベルメリア本人ではなく、彼女を操るファナティクスを狙うことにした。
百剣フォールンドとの共闘
師匠は戦場近くに潜んでいた百剣フォールンドを発見した。念話で接触すると、フォールンドもベルメリアを倒せるほどの攻撃力はないと認めたが、剣を自在に操る能力を持っていた。師匠は自らがインテリジェンス・ウェポンであることを明かし、フォールンドの力を借りてファナティクスを破壊する作戦を立てた。
魔狼の号
フォールンドは複数の魔剣を生み出し、狙撃や念動、風の能力で師匠の射出を補助した。さらに奥の手として、フェンリルの牙から作られた魔剣・魔狼の号を用意した。その剣には障壁を弱め、接触した武具の耐久値を奪う能力があり、ファナティクスへの対抗手段となった。
ホーリー・オーダーの反応
攻撃準備の中で師匠の形態変形が勝手に進み、刀身の後端に天使を思わせる模様を持つ十字架が現れた。それは取り込んだホーリー・オーダーの力がファナティクスに反応した結果であった。師匠はその力も利用して一撃にすべてを懸けた。
ファナティクスへの一撃
アースラースが超重力でベルメリアを地面へ縛りつけた瞬間、師匠とフォールンドは作戦を実行した。フォールンドが師匠を射出し、師匠はディメンジョン・ゲートや複数の加速魔術、重力、属性剣、魔力放出を重ねて超高速まで加速した。同時にフォールンド自身もベルメリアへ接近し、魔狼の号でファナティクスを固定した。
砕けた狂信剣
師匠はフォールンドの腕や魔狼の号ごとファナティクスを貫いた。魔狼の号による弱体化とホーリー・オーダーの力が重なり、強固だったファナティクスは砕け散った。しかしフォールンドも攻撃に巻き込まれ、重傷を負った。
共食いと黒い存在
ファナティクスを破壊したことで共食いが発動し、膨大な魔力と精神が師匠へ流れ込んだ。その苦痛の中、師匠の内側から黒く邪悪な存在が現れ、すべてを喰らえと訴えた。師匠は、その対象にフランまで含まれることへ激怒し、声を拒絶したことで黒い存在を再び奥へ押し込めた。
ファナティクスの消滅
続いて師匠の中に取り込まれたファナティクスの意識が現れ、剣の体に人間の精神を持つ師匠もいつか狂うと嘲笑した。しかし、アナウンスさんにあたるケルビムの残滓がホーリー・オーダーの力とともにファナティクスを取り込み、その意識を完全に消滅させた。師匠はアナウンスさんの存在感がわずかに強まったことを感じた。
ベルメリアの解放
ファナティクスが消滅すると、ベルメリアは元の人間に近い姿へ戻った。右腕を失い瀕死であったが、再生能力によって命は繋がっていた。アースラースも狂鬼化せずに戦闘を終え、最悪の事態は回避された。
フォールンドの重傷
師匠は自らの攻撃で胸部と左腕を大きく失ったフォールンドへ回復魔術を使った。フォールンドは瀕死ながら生き残り、回復能力を持つ魔剣を生み出して自らの傷を補った。彼は死んだ友人と会話するほど危険な状態だったと語った。
大地の微笑
アースラースはガイアの大地の微笑を使い、瀕死のベルメリアを治療した。ベルメリアは一度意識を取り戻したものの記憶が混乱しており、すぐに再び眠った。長期間魔薬を投与されていたガルスと違い、ベルメリアは投与期間が短かったため意識を取り戻せた可能性が考えられた。
アースラースの退去
アースラースは今回の戦闘で王都へ甚大な被害を出したため、自ら国を去ることを決めた。ランクS冒険者で神剣を持つ彼は、処刑も奴隷化も戦争利用も現実的ではなく、罪に問えば冒険者ギルドや周辺国との問題に発展する存在であった。そのため自主退去と国外追放が最も無難な処置であると説明された。
ベルメリアの亡命
ベルメリアも王都破壊の当事者として処罰される危険があったため、アースラースは彼女を連れて去ることにした。向かう先はゴルディシア大陸であり、過去を問わず強者を受け入れる土地で、竜人や半竜人も多く暮らしていた。師匠はベルメリアを託し、アースラースは彼女を悪いようにはしないと約束した。
神剣の気配
一方、神級鍛冶師アリステアは遠方で二本の神剣が開放された気配を察知した。一つはガイアと判断できたが、もう一つは未知であり、しかも歪んだ気配を放っていたため、クランゼル王国へ向かおうとした。
ウィーナレーンの条件
アリステアを引き止めたのは、魔術学院長を務めるハイエルフのウィーナレーンであった。アリステアは学院で臨時鍛冶講師を務め、魔法武具や魔道具の整備を引き受けていたため、仕事を残して出発しようとしていたのである。ウィーナレーンは神剣の調査を認める代わりに、ランクB以上で一分野がランクA級に達する強者を模擬戦の講師として五年以内に連れてくるよう条件を出した。アリステアは渋々それを受け入れ、神剣のもとへ急ぐことにした。
第五章 黒猫聖女爆誕
アースラースの退去理由
アースラースを見送った後、師匠はフォールンドに背負われながら、国が彼を救援者として扱う方法はなかったのかと尋ねた。フォールンドは、大量破壊に特化した神剣所有者であるアースラースを優遇すれば、弱体化したクランゼル王国が野心を抱いていると周辺国に警戒される危険があると説明した。アースラース自身もその事情を理解し、国に余計な問題を残さないため黙って立ち去ったのであった。
共食いによる強化
師匠がファナティクスを共食いした成果を確認すると、魔力は五千、耐久値は三千以上も増加していた。さらに使用者へ効率よく魔力を渡せる魔力供給スキルを獲得し、フランとの戦闘能力をさらに高められるようになった。
ベイルリーズ伯爵への報告
避難する民衆を指揮していたベイルリーズ伯爵たちと合流したフォールンドは、アシュトナー侯爵とファナティクスが倒れ、アースラースが去ったことを報告した。ベルメリアについては人目が多いため詳しく語らず、後始末を伯爵やエリアンテたちへ任せてフランのもとへ向かった。
カレー師匠死亡説
フォールンドが師匠を背負っている姿を見たコルベルトとエリアンテは、カレー師匠がフランを守って命を落とし、剣だけが残ったのだと誤解した。師匠は訂正できないまま、再び死亡した人物として扱われることになった。
剣神の寵愛が見た記憶
移動中、師匠はフォールンドに剣神の寵愛で見えた光景を尋ねた。そこには黒髪黒目の男性だった師匠が、三柱の女性らしき存在と謎の空間で話し、自ら納得したように神剣ケルビムへ封じられる姿があった。また、師匠の過去と思われる断片的な記憶も映し出されていた。
三柱の女神
フォールンドが見た三者は、混沌の女神、銀月の女神、冥界の女神を示す紋章を身につけていた。神剣でも通常は一柱の力しか関わらないため、三柱もの存在が師匠の誕生に関係していることは異例であった。師匠は自分が何者で、何の目的で作られたのかという新たな疑問を抱いた。
カレーで目覚めたフラン
フランとガルスが避難先で眠っている場所へ到着すると、師匠は護衛を務めたウルシへ激辛カレーを与えた。その匂いに反応したフランは、本来ならエイワースの薬で数日眠るはずだったにもかかわらず目を覚ました。フランだけでなくエイワースやフォールンドもカレーを食べ、エイワースは香辛料や材料まで言い当てた。
フランの不安
師匠から最終決戦の経緯を聞いたフランは、自分が最後まで戦えず、代わりにフォールンドが師匠と共闘したことを悔しがった。師匠はフォールンドの力を認めつつも、自分を最も理解し、力を引き出せる相手はフランだけだと伝えた。二人はさらに強くなることを決意し、騒動が収まった後に魔狼の平原で修行することを決めた。
王都の救護活動
フランは最終決戦で戦えなかった思いもあり、負傷者の救助を申し出た。ガルスを冒険者ギルドへ預けると、宮廷医師の指示を受けながら各地の救護所を回り、師匠の増大した魔力を使って五百人以上を治療した。救われた人々から感謝され、フラン自身も人々を助けられたことを喜んだ。
男爵の勧誘
夜になってギルドへ戻ったフランは、癒しの力を金儲けに利用しようとする男爵から家臣になるよう迫られた。男爵が治療費を払えない者は死んでも構わないと口にしたことで、フランは激怒した。しかしコルベルトがベイルリーズ伯爵家との契約を持ち出して男爵を退け、伯爵からは今後も他の貴族を断る際に家名を使ってよいと伝えられた。
解けない死亡の誤解
コルベルトは依然としてカレー師匠が死んだと思い込んでいた。フランが師匠は死んでいないと伝えても、コルベルトは遺志を継ぐ者がいる限り死なないという意味だと受け取り、誤解は解けなかった。
エリアンテへの挑戦
冒険者ギルドでは、近隣支部のギルドマスターであるデスラがエリアンテの失脚を狙って騒ぎを起こしていた。彼は女性であるエリアンテを侮り、ランクC冒険者まで使って脅したが、逆に叩きのめされた。エリアンテは緊急事態を利用した行為を問題視しつつも、いずれ罷免されるとして追い払った。
戦闘色の髪
フランは戦闘時にエリアンテの髪が青から紫へ変わる理由を尋ねた。エリアンテは半蟲人の一部に見られる戦闘色であり、好戦的な精神状態になると変色すると説明した。半蟲人は同じ系統でも個体差が大きく、戦闘時に姿が変わる者と変わらない者がいることも語った。
北部国境の勝利
そこへアレッサから伝書鷹が届き、レイドス王国の威力偵察部隊が北部国境を越えようとしたことが判明した。しかし騎士団と同行していたジャン・ドゥービーが死霊の軍勢を使って敵部隊を殲滅していた。王都が混乱する中で届いた勝利の報告に冒険者たちは沸き、エリアンテは国王や各地へ知らせるため動き出した。
ベルメリアの記憶
アースラースとフレデリックに運ばれていたベルメリアは、一度意識を取り戻した。最初は何が起きたのか分からなかったが、アシュトナー側にさらわれ、ファナティクスに操られて王都を襲った記憶が戻ると激しく取り乱した。
神竜化の暴走
ベルメリアは自分が大勢を傷つけたことに耐えられず、精神の動揺から再び神竜化しかけた。アースラースは暴走を警戒し、フレデリックに彼女を鎮めるよう指示した。フレデリックが鎮静薬を使うとベルメリアは再び眠り、二人はしばらく王都での出来事を思い出させない方針を取った。
第六章 クランゼル王
王都復興の混乱
激戦から二日が経ち、侯爵側の組織的抵抗は消えていたが、王都では住居や食料、医薬品の不足が続いていた。特に避難用テントは貴族が少人数で占有したため不足し、平民との対立も深まっていた。フランは避難所へ砂塵を防ぐ風の結界を張るなど、復興を手伝っていた。
ガルスの処分
フランとフォールンドはベイルリーズ伯爵に呼ばれ、事件後の処分について説明を受けた。ガルスは魔薬とファナティクスに操られていたことに加え、多くの冒険者から恩人として慕われていたため、罪を問われないことになった。国としても、高い鍛冶技術を持つガルスを処罰するより、復興に力を借りる方が利益になると判断していた。
ベイルリーズ伯爵の処分
ベイルリーズ伯爵も騎士団長職を解かれるものの、領地召し上げなどの重罰は免れた。国王は細かな責任追及で混乱を広げるより、罪をアシュトナー侯爵とファナティクスへ集中させ、残った人材を復興に使うことを優先していた。一方、王城を直接破壊したベルメリアは被害が大きすぎるため、不問にはできないとされた。
国王からの召喚
王都での戦いや救護活動によって、フォールンドだけでなくフランの名声も急上昇していた。さらに師匠が命を懸けて王都を救ったという誤解まで広まっていたため、二人は国王ウィソーラ・ブレド・クランゼルから召喚された。
国王との謁見
臨時の謁見室で、フランとフォールンドは国王から王都救援への感謝を受けた。フランは宮廷作法スキルによって問題なく礼儀をこなし、謁見は爵位や仕官の話も出ないまま簡潔に終了した。
非公式の面会
謁見後、二人は別室へ案内され、国王と親衛隊長ルガムフルとの非公式な面会に臨んだ。ルガムフルはフランを自分と互角以上と評価しており、国王も二人を重要な戦力として認識していた。
一級特爵の辞退
国王はフランとフォールンドを、領地経営を必要としない一級特爵に叙そうとした。しかし二人は自由な冒険者であり続けるため辞退した。国王は不快な態度を見せたものの、拒否されることは予想しており、面会そのものをなかったこととして処理した。フランたちと敵対することが国家の利益にならないと理解していたのである。
ランクBへの昇格
冒険者ギルドへ戻ったフランは、エリアンテからランクBへの昇格を告げられた。王都での戦闘、数百人の治療、復興への貢献、獣人国からの勲章、国王との謁見によって、実力、実績、礼儀、後ろ盾という昇格上の問題がすべて解消されていた。フランは昇格を受け入れ、最年少のランクB冒険者となった。
ガルスの覚醒
数日後、フランはフォールンドに呼ばれ、目を覚ましたガルスと再会した。ガルスはエイワースの治療によって回復し、王都で起きた事件や自分が関わったこともすべて知らされていた。フランたちは国外へ逃げるなら協力すると申し出たが、ガルスは王都に残り、復興に力を尽くすことで自分なりの贖罪をすると決めた。
疑似狂信剣の正体
ガルスとエイワースの説明から、疑似狂信剣は侯爵家の錬金術師が作った魔力吸収・放出用魔道具を、ファナティクスが自らの欠片を混ぜて改造した物だと判明した。疑似狂信剣に宿っていた精神もファナティクスから分かれたものであり、本体が消滅した現在は同じ物を量産できなくなっていた。
ファナティクスの四十年計画
ファナティクスは四十年前、侯爵領の古い砦跡から発掘され、アシュトナー侯爵を支配していた。その最終目的はクーデターで国王と軍を掌握し、レイドス王国と協力してフィリアース王国へ侵攻することであった。狙いは神剣ディアボロスを奪い、その素材で自らを修復することであり、ガルスもその修復に利用するつもりだった。
ベルメリアの選定
ハムルスたちはファナティクスの新たな宿主を探す過程でフランと師匠を発見し、オレイカルコス製の師匠を狙っていた。その途中で、神竜化を扱える可能性を持つ特殊な竜人の血筋であるベルメリアを見つけ、最強の素体として利用したのであった。
レイドス侵攻への懸念
ファナティクスの計画にレイドス王国が関与していたことから、現在の北方侵攻も事前に準備されたものだと考えられた。ジャン・ドゥービーの存在を知りながら攻めてきた以上、レイドス側にも彼への対策がある可能性が高かった。
災厄のクリムト
エリアンテは、アレッサのギルドマスターであるクリムトの異名、災厄の真相を明かした。かつて北方の小国で風の大精霊が暴走し、国土の半分以上を破壊した際、クリムトは敵国へ入り、その大精霊と契約して惨事を止めていた。しかし外部からは彼が大精霊を召喚して国を滅ぼしたように見えたため、災厄という異名が定着していた。
封じられた大精霊
クリムトは現在も大精霊を自らの中に封じており、その制御に魔力や生命力を奪われて弱体化していた。それでも必要なら大精霊の力を解放でき、その破壊力は極めて大きかった。冒険者ギルドはレイドス王国への最後の切り札としてクリムトをアレッサに置き、アマンダやジャンを配置して彼が戦わずに済むよう備えていた。
ガルスとアリステアの装備
二人きりになった後、ガルスはフランの装備が自分の黒猫シリーズを基に改修された物だと気づいた。師匠から神級鍛冶師アリステアが手を加えたと聞くと、ガルスは怒るどころかその技術に感動し、機会があれば弟子入りを願いたいとまで語った。師匠自身についても以前より格が上がったと見抜き、その成長を評価した。
アレッサへの旅立ち
王都での仕事とガルスの進退が決まり、フランは修行のためアレッサへ向かうことを決めた。目的地は師匠にとって始まりの場所でもあるA級魔境・魔狼の平原であり、ランクBとなったことで探索許可も得やすくなっていた。また、レイドス王国の侵攻後のアレッサやジャンの状況を確かめる目的もあった。
黒猫聖女の名声
フランは報酬の多くを孤児院や救護所の再建へ寄付していた。戦いだけでなく治療と寄付でも人々を助けたため、王都では黒雷姫より黒猫聖女という異名の方が広く知られるようになっていた。
触角と甲殻との再会
出発前にエリアンテへ挨拶に行くと、事件で共闘した傭兵団・触角と甲殻のロビン、ホップス、エフィ、アン、シンゲンがいた。彼らはフランへの感謝を伝え、エリアンテとの古い友情も見せた。
王都からの出発
フランがアレッサへ向かうと告げると、エリアンテは仕事を頼みたいと強く引き止めた。しかしフランの決意は変わらず、ロビンたちが代わりにしばらく王都で仕事を受けると申し出た。エリアンテは即座に彼らを戦力として確保し、フランは王都を離れる準備を進めることになった。
エピローグ
白い空間の男
師匠は再び白い空間で銀髪の男と対面した。男は正体を明かすことを避けたものの、師匠の内部で複数の異常が起き、危険な状態にあると警告した。そして二十日以内に魔狼の平原の祭壇へ来るよう告げ、その時こそ自分の正体や師匠に起きていることを説明すると約束した。
魔狼の平原への決意
目覚めた師匠から事情を聞いたフランは、すぐに魔狼の平原へ向かおうとした。師匠は二十日の猶予があり、アレッサまでも数日で到着できるため焦る必要はないと諭した。しかしフランの不安は強く、予定されていた宮廷医師たちとの食事も早々に切り上げ、出発を急いだ。
王都からの見送り
大手門へ向かったフランを、エリアンテ、コルベルト、ガルス、ベイルリーズ伯爵らが追ってきた。エリアンテは王都の冒険者を代表して今回の働きへの感謝を伝え、再訪を願った。
その様子を見ていた兵士や冒険者、市民たちも拍手を始め、やがて王都中からフランを送る大きな歓声が響いた。人々は聖女としてフランに感謝を伝えたが、フラン自身は自分がそれほど多くの人を救ったという実感を持っていなかった。
人々からの感謝
師匠は、敵を倒し、負傷者を癒し、復興を助けたことが多くの人々を救ったのだとフランへ伝えた。促されてフランが人々へ手を振ると、さらに大きな歓声が上がった。フランは素っ気ない態度を見せながらも、微かに笑みを浮かべていた。
アレッサへの出発
フランは王都の早い復興を願いながら、ウルシと共にアレッサへ向けて旅立った。目的は魔狼の平原での修行だけでなく、二十日以内に祭壇へ到達し、師匠の内部で起きている異変と白い空間の男の正体を確かめることであった。フランはウルシに全速力を求め、師匠が無理をするなと制止する中、懐かしいアレッサを目指して走り出した。
転生したら剣でした 一覧




















その他フィクション

Share this content:


コメント