新約 とある魔術の禁書目録(12)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(14)レビュー
物語の概要
■ 作品概要
『新約 とある魔術の禁書目録(13)』は、科学と魔術が交差する世界を描いたSFファンタジーバトル作品である。本作では、真なる魔神「僧正」が上条当麻に「採点者」となるよう持ちかけるが、上条はそれを拒絶する。
交渉が決裂した結果、上条当麻は御坂美琴を後部シートに乗せ、ハイテク自転車「アクロバイク」で学園都市を逃げ回る壮絶なチェイスバトルを繰り広げることとなる。
彼らは第二三学区のマスドライバーを利用して僧正を宇宙へ射出するが、僧正はアローヘッド彗星と融合して地球への落下を企てる。
そこに木原脳幹の駆る兵器「対魔術式駆動鎧(A.A.A.)」が現れて僧正を迎撃する。時を同じくして、他の魔神ネフテュスと娘々の前には「理想送り(ワールドリジェクター)」を右手に宿す少年、上里翔流が現れ、絶大な力を持つ魔神たちを次々と未知の新天地へ追放していく。
■ 主要キャラクター
- 上条当麻:右手に異能を打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を持つ少年。本作では魔神「僧正」から世界の運命論を支配する「採点者」の座を提案されるが断固として拒絶し、美琴と共にアクロバイクで逃走劇を繰り広げる。
- 御坂美琴:学園都市第三位の超能力者。上条と背中を預け合いながら戦う中で、彼との圧倒的な距離感や自身の無力さに打ちひしがれるが、それでも上条に追いつこうと決意を固める。
- 僧正:即身仏から真の「魔神」へと至った老人。土や泥を操って街を破壊しながら上条達を執拗に追い詰める。最終的にアローヘッド彗星と融合して巨大な凶星となる。
- 上里翔流:どこにでもいる平凡な高校生を自称する少年。右手に魔術師達の願望の集積体である「理想送り(ワールドリジェクター)」を宿しており、魔神たちを次々と「新天地」へ追放する。
- 木原脳幹:高い知性を持つゴールデンレトリバーで、木原唯一から「先生」と呼ばれる。巨大なドリルを備えた対魔術式駆動鎧(A.A.A.)を起動し、彗星と融合した僧正を迎撃する。
- ネフテュス:チョコレート色の肌を包帯で覆うエジプト神話由来の魔神。上里の圧倒的な力の前に敗北し消滅しかけるが、主要な臓器だけを残して上条の元へ逃げ込み、オティヌスにも危機が迫っていると警告する。
- 娘々:血色の悪いミニチャイナの少女で、魔神の一人。上里の「理想送り」を受け、恐怖ではなく安らぎを覚えながら新天地へと消え去っていく。
■ 物語の特徴
本作の魅力は、真の魔神「僧正」という規格外の怪物から、主人公の上条当麻と御坂美琴がアクロバイクで逃げ回る、地球滅亡をかけた絶望的なチェイスバトルにある。超能力や魔術すら歯が立たない理不尽な強敵に対し、街の施設や地形を駆使して立ち向かうスケールの大きな攻防が見どころである。
また、上条が抱える過酷な戦いの世界を間近で目の当たりにした美琴が、自身の無力さに苦悩し、葛藤しながらも彼に追いつこうと決意する心情描写は読者の胸を強く打つ。さらに物語の終盤では、幻想殺しと対をなす右手「理想送り(ワールドリジェクター)」を持つ新キャラクター・上里翔流が登場し、無敵と思われた魔神たちを次々と退場させる衝撃的な展開が描かれ、今後のシリーズにおける大きな転換点となっている。
書籍情報
新約 とある魔術の禁書目録 13
(A Certain Magical Index)
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA(電撃文庫)
発売日:2015年7月10日
ISBN:9784048652445
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あらすじ・内容
地球滅亡をかけた、上条と美琴のチェイスバトルが幕を開ける――!
地球滅亡をかけた、上条当麻と御坂美琴のチェイスバトルが幕を開ける――!
上条当麻は、疾走していた。
ハイテク自転車『アクロバイク』で、学園都市を逃げ回る。背中には、彼の腰にしっかりと手を回し、振り落とされないようにしがみつく御坂美琴の姿があった。
――二人の背後から、『巨大な闇』が迫る。
その『闇』は、次元すら超越するほどの圧倒的な破壊の力で、上条を追う。
今度はオティヌスのように和解はできない。
サンジェルマンのような『紛い物』でもない。真の魔神、真のグレムリンが迫り来る。
もはや上条や美琴では太刀打ちできない。万策尽きた二人だが、しかしそこに意外な人物が救いの手を差し伸べ……!
同じ時。背中を預けながら戦う美琴の胸中にはどこか穏やかでない『上条への想い』がくすぶり始めていた……。
地球滅亡をかけたチェイスバトル! 『グレムリン:魔神襲来』編、登場!
科学と魔術が交差するとき、物語は始まる!
感想
日常の空気を残しながらも、シリーズでも屈指のスケールを誇る戦いが描かれた一冊だった。表紙では上条当麻と御坂美琴がアクロバイクで駆け抜ける爽やかな雰囲気だが、本編では街を破壊する真の魔神・僧正から必死に逃げ回るという、とんでもない状況になっている。そのギャップに思わず笑ってしまった。
今巻で最も印象に残ったのは、やはり僧正との戦いである。
魔神である彼は、とにかく規格外だった。上条に「採点者」となって自分を管理しろと迫るが、それは相手の人生を犠牲にする身勝手な願いでしかない。そんな理不尽な要求を、上条が迷わず拒絶する姿が実に彼らしかった。
戦いも最後まで予想がつかない展開だった。フィアンマの援護でも止められず、美琴の能力を利用したマスドライバーで僧正を宇宙へ撃ち出した時は、「さすがに決着か」と思った。しかし、それでも終わらないのが魔神の恐ろしいところだ。彗星と融合して地球へ落下してくる展開には、スケールの大きさに圧倒された。
最後は木原脳幹が操る「A.A.A.」によって撃破されるが、ここまで壮大な戦いなのに、読んでいて置いていかれないのはシリーズならではの魅力だと感じた。
一方で、戦い以上に心に残ったのは御坂美琴の心情だった。
上条と一緒に命懸けで戦い続けてきた。それでも、自分が知らない世界で彼が戦い続けていたことを知り、大きな隔たりを感じてしまう。
「隣に立ちたい」と願っていたからこそ、その距離に気づいてしまった時の美琴の表情は切なかった。ただ戦力不足を嘆くのではなく、精神的な距離まで描かれていたことが印象的だった。
だからこそ、この先の彼女がどう変わっていくのかにも興味が湧いてくる。
終盤では、新たな存在である上里翔流が登場し、物語の空気が一変する。
右手に宿る「理想送り(ワールドリジェクター)」で魔神たちを次々と消し去る姿は、これまでの敵とはまったく違う不気味さがあった。圧倒的だった魔神たちが追い詰められる光景は衝撃的で、「次は何が起こるのか」とページをめくる手が止まらなかった。
最後にネフテュスが上条のもとへ逃げ込み、オティヌスにも危険が迫っていると告げる場面も続きが気になる締め方だった。
今巻は、規格外のバトルだけではなく、美琴の葛藤や新たな脅威の登場など、今後のシリーズを大きく動かす転換点だったように思う。読後は次巻をすぐに手に取りたくなる、引きの強い一冊だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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考察・解説
魔神僧正の襲来
『新約 とある魔術の禁書目録 13』における魔神「僧正」の襲来は、真なる魔神の一柱が自らの目的のために上条当麻を執拗に追い詰め、学園都市から宇宙空間にまで至る規格外の死闘を繰り広げた末に、科学サイドの最高峰の暴力装置によって迎撃された大規模な事件である。その正体と目的、無差別破壊の開始、アクロバイクによる逃走劇、宇宙への射出、そして対魔術兵器による撃破の全容は以下の通りである。
即身仏の儀式完遂と迷い仏変転に伴う運命支配の採点者迎え入れ渇望
僧正は真なる魔神(グレムリン)の一柱であり、かつて衆生を救うために即身仏の儀式を完遂したものの、権力者たちの思惑によって仏としての座を与えられず、迷い仏から魔神へと変じてしまった存在である。
・魔神同士の衝突が引き起こす世界の歪みを制御する目的を有する。
・上条当麻を運命論を支配する採点者(鞘)として迎え入れようとした。
・これにより、魔神たちにとっての形のない安心を得ようと画策した。
恐怖政治拒絶に対する泥巨腕の校舎圧砕と失う前後の気づき宣告破壊
採点者になれば悲劇を未然に防ぐことができると僧正は持ちかけたが、上条はそれを拒絶した。
・自分の定義を他人に押し付ける恐怖政治であり、放火魔の消防士と変わらないとして断固として拒絶する。
・すると僧正は、失う前に気づくか、失ってから気づくかの違い、と告げた。
・土や泥を操って巨大な腕を生み出し、上条の通う学校の校舎を押し潰すなど無差別な破壊を開始した。
御坂美琴同乗アクロバイク学園都市逃走とビル振回地下土砂圧砕地盤崩落
上条は周囲の人々を巻き込まないようにするため、御坂美琴を後部シートに乗せ、電動補助付き自転車であるアクロバイクで学園都市を逃走した。
・僧正はビルを引っこ抜いて振り回し二人を追撃する。
・地下トンネルごと土砂で押し潰そうとした。
・さらには地盤を崩落させたりと、魔神としての規格外の力で二人を執拗に追い詰めた。
第二三学区地下サイロプラズマ流宇宙射出とアローヘッド彗星氷塵融合凶星化
上条たちは第二三学区の地下サイロ式マスドライバーの施設へと逃げ込み、反撃を試みた。
・プラズマ流を用いて僧正を施設ごと宇宙へと射出する。
・しかし、僧正は宇宙空間で地球に最接近していたアローヘッド彗星の氷と塵を操って融合した。
・巨大な凶星と化して再び地球への落下を企てた。
アレイスター命の木原脳幹AAA起動とタングステン鋼ドリル内側崩壊
地球への落着が迫る中、アレイスター=クロウリーの命を受けたゴールデンレトリバーの木原脳幹が対魔術式駆動鎧(A.A.A.)を起動し、迎撃に向かった。
・巨大なタングステン鋼のドリルが彗星と一体化した僧正の中心を貫く。
・アレイスターの亡き娘に対する意思を波形として伝えながら僧正を内側から崩壊させた。
・これにより、僧正による地球滅亡の危機は回避された。
まとめ
魔神「僧正」の襲来を巡る一連の顛末は、自らの存在を安定させるための採点者を求めた魔神の非合理な執着が、学園都市の都市機能を破壊し尽くす圧倒的な暴力として現出されながらも、最終的には科学と魔術が交錯する緻密な戦略によって完全に撃滅された冷徹な現実の記録である。ビルを振り回し地盤を崩落させる魔神の猛威に対し、アクロバイクでの逃走やマスドライバーを用いた宇宙への射出を経て、アローヘッド彗星と融合した凶星としての再来を許したプロセスは、人知を超えた魔神の圧倒的な強大さを示している。
最終的に、アレイスターの意思を帯びた木原脳幹が対魔術式駆動鎧を起動し、タングステン鋼のドリルでその中心を貫いて内側から結晶構造を崩壊させた顛末は、世界を滅ぼしかねない絶対的な宗教的・魔術的脅威であっても、計算された科学の暴力装置と執念の前には打倒され、世界の破滅が瀬戸際で回避されることを厳密に証明している。
採点者と幻想殺し
『新約 とある魔術の禁書目録 13』における「採点者」と「幻想殺し」の関連、および魔神僧正による解釈は、世界を再構築するほどの絶大な力を持つ魔神たちが求める役割と、上条当麻の本質、そしてそれに対抗する新たな力の出現を巡る重要な局面である。魔神が求める制御の鞘としての採点者構想、幻想殺しに対する僧正の特異な定義、上条による拒絶の論理、そして対をなす理想送りの登場にいたる全容は以下の通りである。
魔神が求める採点者の役割と運命論支配の誘い
真なるグレムリンに属する魔神たちは、世界を破壊してゼロから作り直すほどの絶大な力を持て余していた。
・彼らが自儘に振る舞うだけで無自覚に世界の運命論を歪めてしまうという問題を抱えていた。
・そのため彼らは、自らの行いが正しいかどうかを測る天秤やコンパス、強大な力を安全に収める鞘を欲していた。
・僧正は上条当麻に対し、この採点者の座に就くよう提案する。
・それは、魔神たちの力を制御して自らの望むままに悲劇を未然に取り除き、無尽蔵の成功を現実世界へ呼び込むという、世界の運命論を支配する誘いであった。
僧正が解釈する幻想殺しと上条当麻の本質
僧正は、上条の右手に宿る幻想殺しが世界の基準点にして世界の修復点であると認めつつも、力そのものよりもそれに選ばれた少年の方が特異であると指摘する。
・僧正の解釈によれば、上条が数々の世界規模の事件を解決したから魔神に目をつけられたのではない。
・最初から世界を見渡す採点者であり、魔神を想定した存在だったからこそ、難局を解決できたのだと語る。
・そして幻想殺しは上条の付属物に過ぎず、全世界の魔術師の願いが彷徨う内に、上条の魂魄という本質に吸い寄せられた結果に過ぎないとした。
・神浄の討魔とは右手の力ではなく上条自身につけられた名であると結論づけている。
恐怖政治の批判に伴う採点者祭壇の拒絶
上条は、魔神の力を借りて悲劇を先んじて防ぐという採点者の祭壇を断固として拒絶した。
・彼はその提案を、自分の定義を他人に押し付ける恐怖政治であり、衣食住の揃った監獄に全人類を詰め込むようなものだと批判する。
・不穏な芽に見えただけで一方的に人間を踏み外す行為は放火魔の消防士と変わらないとした。
・そのような力で管理される歪なしあわせを上条は許せなかったのである。
対をなす右手の力である理想送りの登場
物語の終盤では、幻想殺しと対をなす力である理想送りを右手に宿す少年・上里翔流が登場する。
・幻想殺しが今ある世界を修復する、直す、しがみつく理想の集積であるのに対し、理想送りは幻想殺しが受け止めきれずに溢れた今ある世界を見捨てる、旅立つ、放り出す幻想が凝縮されたものである。
・上里の理想送りは、新天地を望んでしまった魔神たちを次々と未知の世界へと追放した。
・これにより、上条の幻想殺しとは全く異なるアプローチで世界に激震をもたらすことになる。
まとめ
本作における「採点者」の概念と「幻想殺し」の解釈を巡る一連の顛末は、無尽蔵の力を持つ魔神たちの独善的な救済の論理が、上条当麻の本質的な意志によって拒絶され、さらにそれを強制的に追放する新たな力によって世界が再変革していくプロセスの記録である。自らの付属物に過ぎない右手の力を超え、恐怖政治による歪なしあわせを拒んだ上条の決断は、個人の尊厳を守るための強いレーゾンデートルを示している。
最終的に、今ある世界にしがみつく幻想殺しに対し、世界を見捨てる理想送りを持つ上里翔流が魔神たちを次々と未知の世界へ追放した顛末は、絶対的な存在であった魔神たちの思惑を根底から狂わせ、世界の運命が新たな局面へと引きずり込まれていく冷徹な現実を厳密に証明している。
御坂美琴の葛藤
『新約 とある魔術の禁書目録 13』における御坂美琴の葛藤は、魔神「僧正」との絶望的なチェイスバトルを通じて、上条当麻との距離感や自身の無力感と直面する形で深く描かれている。学園都市第三位の超能力者という肩書きが通用しない世界におけるアイデンティティの揺らぎから、絶望的な追いつきへの決意、そして人知を超えた右手の力を前にした打ちひしがれにいたる全容は以下の通りである。
上条負担背負い込み察知とインデックスら比較に伴うお荷物指摘のアイデンティティ揺らぎ
僧正との逃走劇の中、美琴は上条がいつもらしいがむしゃらで勝利を掴みに行く戦い方をしていないことに気づく。
・上条が無理をして逃走に徹し、負担を背負い込んでいる理由は、自分を配慮して守ろうとしているからではないかと感じ始める。
・そこへ僧正は、美琴が上条の足を引っ張っているだけだと言い放った。
・魔道書図書館であるインデックスや同格の魔神であるオティヌスであればもっと役に立ったはずだと突きつける。
・この言葉は美琴の心を鋭く抉り、学園都市第三位の超能力者という肩書きが通じない世界でお荷物にしかなり得ていないと自覚させられる。
・これにより自身のアイデンティティが揺らぎ、激しく思い悩むことになった。
守られるべき存在への不満と周回遅れ脱却を狙う一刻も早い再加速決意
しかし上条は、僧正の言葉を真っ向から否定した。
・インデックスやオティヌスがいれば別の道を選べたという話ではなく、傍にいたのが御坂だったからここまでやってこられたんだ、と叫ぶ。
・美琴がいたからこそ心を支えられ冗談を言える状況を保てたのだと彼女の存在を強く肯定した。
・美琴はその言葉に救われつつも、上条から守られるべき存在として扱われていることに不満を抱く。
・自分が彼から周回遅れの場所にいるのなら、その分だけ再加速して一刻も早く追いついてやると決意を固めた。
彗星融合落下への迎撃手段喪失と右腕不気味亀裂音に伴う距離埋不能の打ちひしがれ
物語の終盤、アローヘッド彗星と融合した僧正が地球へ落下してくるという事態に対し、美琴にはそれを迎撃する手段がなく、為す術がなかった。
・しかし上条は、ふらつく身体のまま右手を空へ伸ばそうとする。
・その際、彼の右腕からは不気味な亀裂のような音が響いていた。
・最終的に木原脳幹による迎撃が間に合うが、もしそれがなければ上条の右手が何を起こしていたのか、美琴にはまったく想像がつかなかった。
・美琴は、上条に自分の存在を肯定されたことで一度は立ち上がれたものの、彼の中に自分の超能力を遥かに超える何かが眠っていることを痛感させられる。
・大覇星祭や第三次世界大戦の記憶を思い返しても、彼との距離はどうしても埋まらないことを悟る。
・顔を覆って、あいつが、遠い……、と一人打ちひしがれ、深い葛藤を抱えることになった。
まとめ
御坂美琴の葛藤を巡る一連の歩みは、科学サイドの頂点に近い超能力者という自負が、魔術の絶対的な体現者である魔神や上条当麻の秘めたる不気味な力によって打ち砕かれ、圧倒的な世界の広さに直面させられた不条理な内面の記録である。上条の足を引っ張っているという僧正の酷評に対し、上条の肯定によって一度は周回遅れの場所からの再加速を誓ったプロセスは、彼女の強い精神性と対等でありたいという願いを示している。
最終的に、地球滅亡の危機において何もできない無力さを味わい、右腕から亀裂音を響かせて異界の力を覗かせる上条の背中を見送るしかなく、あいつが遠いと絶望を吐露せざるを得なくなった顛末は、この葛藤が単なる男女の距離感にとどまらず、自らの誇る超能力を遥かに超えた世界の深淵と埋めがたい断絶に直面し、終わりのない激動の中で美琴がさらなる苦悩へと縛り付けられていく絶対的なパラドックスを厳密に証明している。
木原脳幹の迎撃
『新約 とある魔術の禁書目録 13』における木原脳幹の魔神「僧正」に対する迎撃は、アローヘッド彗星と融合して巨大な凶星と化し地球へ迫る魔神に対し、統括理事長アレイスター=クロウリーの意を受けた科学サイドの暴力装置が投入され、人知を超えた絶技によって滅亡の危機を瀬戸際で回避した壮絶な防衛戦の記録である。迎撃の背景、投入された特殊兵器の概要、激突の瞬間と伝言の伝播、そして魔神の最期と都市への余波にいたる全容は以下の通りである。
アローヘッド彗星氷塵融合凶星の落下と状況D発令に伴う木原脳幹の出撃
魔神「僧正」は上条当麻らを追いつめる中で、マスドライバーによって宇宙空間へと射出された。
・しかし僧正は、地球に最接近していたアローヘッド彗星の氷と塵を操って融合する。
・巨大な凶星と化して学園都市への落下を企て、絶体絶命の危機を引き起こした。
・この事態に対し、アレイスター=クロウリー側と接続したゴールデンレトリバーの木原脳幹が、状況Dとして迎撃に出撃した。
総重量二〇トン対魔術式駆動鎧の起動と戦術徹甲切削錐電磁加速ドリル破壊力
木原脳幹は第二三学区の武器庫から、最高峰の技術が投入された装備を起動して空へ飛び立った。
・総重量二〇トンを超える対魔術式駆動鎧(アンチアートアタッチメント)を起動する。
・この兵器の主武装は、戦術徹甲切削錐と呼ばれる数十メートル規模の長大なドリルである。
・電磁加速によって壮絶な速度で突き出され、膨大な回転で地下サイロや軍事拠点をも貫徹する破壊力を誇る。
落下速度マッハ二〇突入とタングステン鋼一撃貫通によるアレイスター娘名波形伝播
マッハ二〇を超える速度で落下してくる彗星に対し、木原脳幹は地上から同速度で突っ込み、彗星の中心をタングステン鋼の巨大ドリルで一撃で貫いた。
・このドリルの回転にはわざと一律ではない癖が設けられていた。
・超高速かつ規則的な揺らぎが言語化された波形を生み出し、僧正の体内を直接伝播する。
・これによりアレイスターの意思を伝えるメカニズムとして機能した。
・伝えられたのは、運命論に命を奪われたアレイスターの娘の名を覚えているか、という亡霊からの伝言であった。
人間の矛盾情想起に伴う済まなかったな呟きとツングースカ級空中分解衝撃波
アレイスターの意思の伝播は、僧正を内側から崩壊させる決定的な要因となった。
・僧正はアレイスターという人間の矛盾や家族に対する情を思い出し、済まなかったなと呟こうとする。
・しかしその前に閃光が走り、木原脳幹によって完全に撃破された。
・彗星は空中分解したため、ツングースカ大爆発に匹敵する衝撃波がばら撒かれる。
・学園都市中のガラスが吹き飛び、高層ビル群が激しく揺れたが、直撃による壊滅という最悪の事態は防がれた。
まとめ
木原脳幹による魔神「僧正」への迎撃を巡る一連の顛末は、世界を再構築できるほどの絶対的な魔術的脅威が、人間の執念と科学のテクノロジーが融合した対魔術兵器によって内側から瓦解させられた凄惨な防衛の記録である。
マッハ二〇の超高速激突の中で、ドリルの変則回転による言語波形を用いてアレイスターの過去の怨念を魔神の脳裏へ叩き込み、神のごとき存在に謝罪の念を抱かせたまま閃光で消滅させたプロセスは、木原脳幹の冷徹な戦闘能力と機材の圧倒的な性能を示している。
最終的に、ツングースカ大爆発級の空中分解衝撃波によって都市の広範囲に硝子大破の被害を出しながらも、彗星の直撃という人類滅亡のパラドックスを未然に防ぎ止めた顛末は、どれほど規格外の神格や絶望的な落下災害であっても、計算された最高峰の暴力装置と過去からの伝言の前には打破され、世界の均衡が瀬戸際で維持されることを厳密に証明している。
上里翔流と理想送り
『新約 とある魔術の禁書目録 13』に登場する「上里翔流」と彼の右手に宿る力「理想送り(ワールドリジェクター)」は、上条当麻の幻想殺しと対をなし、圧倒的な力を持つ魔神たちを次々と未知の世界へ追放する形で物語に衝撃をもたらした特異な存在である。どこにでもいる平凡な高校生を自称する少年の概要、その能力の正体、魔神に対する劇的な効果、そして上条当麻らに迫る脅威の全容は以下の通りである。
平凡な高校生の自称と魔神たちを次々と新天地へ追放する衝撃的活躍
上里翔流は、どこにでもいる平凡な高校生を自称する少年である。
・しかしその右腕には、上条当麻の幻想殺しと対をなす極めて特異な力である理想送りを宿している。
・物語の終盤に突如として現れ、圧倒的な力を持つ魔神たちを次々と葬り去るという衝撃的な活躍を見せた。
今ある世界を見捨てる旅立つ放り出す幻想の凝縮と未知の別世界移送
理想送りは、魔術を扱う者達の願望(夢)の集積体である。
・上条の幻想殺しが今ある世界を修復する、直す、しがみつく理想の集積であるのに対し、理想送りは幻想殺しが受け止めきれずに溢れ出た、今ある世界を見捨てる、旅立つ、放り出す幻想が凝縮されたものである。
・そのため、対象を世界から消滅させるのではなく、新天地という未知の別世界へと追放する力を持っている。
娘々ネフテュスらの新天地消去とキメラやテスカトリポカ等の端から処理
上里の理想送りは、究極の存在であるはずの魔神たちに対して劇的な効果を発揮する。
・作中では、魔神である娘々やネフテュスをいとも容易く新天地へ追放し消し去った。
・娘々が追放される際、恐怖ではなく、煩わしい俗世を捨て去って羽を伸ばせる新天地に行ける、という安らぎと喜びを感じながら消えていった。
・また上里自身はネフテュスや娘々以外にも、キメラ、テスカトリポカ、ヌアダ、プロセルピナといった魔神らしき存在を、目についた端から処理(追放)してきたと語っている。
主要臓器段ボール箱残存逃げ込みと元魔神オティヌスへの最大脅威示唆
ネフテュスは完全に消滅する直前、辛うじて主要な臓器だけを段ボール箱に残して上条当麻の元へ逃げ込んだ。
・彼女は上条に対し、上里翔流がすべての魔神を追放しようとしているのであれば、上条の傍にいる元・魔神のオティヌスも危険であると警告を発している。
・これにより、理想送りを持つ上里翔流は、上条とオティヌスにとって次なる最大の脅威となることが示唆されている。
まとめ
上里翔流と「理想送り」を巡る一連の顛末は、世界をしがみつき修復しようとする「幻想殺し」の限界から零れ落ちた、世界を見捨てて旅立ちたいという多重の願いが凝縮された絶対的な追放の記録である。究極の神格であるはずの魔神たちが新天地への安らぎを感じながら次々と処理され、ネフテュスが残存臓器のみで逃げ延びてオティヌスへの危機を警告せざるを得なくなったプロセスは、この右手の力が持つ規格外の干渉能力を示している。
最終的に、世界規模の難局を解決してきた上条当麻の本質に対し、全く異なる幻想のベクトルを持つ上里翔流が正面から立ち塞がる予兆を示した顛末は、これまでの世界の基準点が揺らぎ、魔神すら抗えない新たな理不尽な抗争へと物語が引きずり込まれていく冷徹な現実を厳密に証明している。
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登場キャラクター
学園都市(学生・一般)
上条当麻
右手に異能を打ち消す力を持つ少年である。理不尽な犠牲を強いる選択を嫌う性格をしている。御坂美琴と共に逃走劇を繰り広げる。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
防犯オリエンテーションの暴漢役として参加中、僧正の襲撃を受けた。アクロバイクに乗って僧正の追跡を振り切ろうと奮闘した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
僧正から世界の運命を支配する採点者の座を提案されるが、断固として拒絶している。
御坂美琴
学園都市第三位の超能力者である。上条当麻を気にかけている。魔神の圧倒的な力を前に自身の無力さに葛藤する。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。学園都市第三位の超能力者。
・物語内での具体的な行動や成果
防犯オリエンテーションの治安役として参加していた。上条と共にアクロバイクへ同乗し、磁力を駆使して僧正の足止めに貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上条が抱える次元の違う戦いを目の当たりにし、自分がお荷物になっていると思い悩むが、彼に追いつこうと決意を固める。
月詠小萌
上条当麻のクラスの担任教師である。生徒の進級を心配している。
・所属組織、地位や役職
学園都市の教師。
・物語内での具体的な行動や成果
出席日数が足りない上条に進級のための点数稼ぎを命じた。防犯オリエンテーションの暴漢役をやらせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上条の逃走用としてアクロバイクを調達している。
土御門元春
上条当麻のクラスメイトである。防犯オリエンテーションに暴漢役として参加している。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。陰陽博士。多重スパイ。
・物語内での具体的な行動や成果
肌色タイツに白ブリーフ姿で校内を逃げ回った。吹寄制理にサスマタで追撃された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
青髪ピアス
上条当麻のクラスメイトである。暴漢役として参加している。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
頭に女性用下着を被って廊下を逃げていた。吹寄制理の投げたサスマタを受けて壁に拘束された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
吹寄制理
上条当麻のクラスメイトである。不正や迷惑行為を許さない性格をしている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
防犯オリエンテーションにおいてサスマタを用いて暴漢役の生徒たちを追い回した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
白井黒子
常盤台中学の生徒である。御坂美琴のルームメイトである。
・所属組織、地位や役職
常盤台中学の生徒。風紀委員。
・物語内での具体的な行動や成果
事件の最終盤で寮へ戻ってきた美琴に対し、ガラスの雨による怪我の心配をしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
雲川芹亜
肩まである黒髪の先輩系女子である。マイペースな性格をしている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
防犯オリエンテーションで人質役として参加し、空き教室に秘密基地を作ってくつろいでいた。窓から落ちそうになった上条当麻を救出し、一時的に匿った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
浜面仕上
初見で悪人顔と誤解されやすい少年である。フレメアに振り回される立場にある。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
防犯オリエンテーションで人質役だったが、フレメアに犯人役と間違われて連れ回された。携帯電話の画面に気を取られている間に、僧正と上条の逃走劇の余波を回避している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フレメア=セイヴェルン
金髪碧眼の八歳児である。亡きフレンダの妹である。
・所属組織、地位や役職
学園都市の児童。
・物語内での具体的な行動や成果
防犯オリエンテーションのスタンプ制覇を目指して行動した。浜面仕上を犯人役と誤解して捕まえた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
秋川未絵
黒髪でやや肌の焼けた女子中学生である。両親を大切に思っている。
・所属組織、地位や役職
学園都市の学生。
・物語内での具体的な行動や成果
商業ビル内で事件に巻き込まれ、父親の作った大金庫から液体ダイヤを持ち出した。強盗グループから追われるが、上条当麻らの介入に助けられながら母親の会社まで逃げ延びた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
乾山庄治
大学生の青年である。金銭に対する執着が強い。
・所属組織、地位や役職
大学生。
・物語内での具体的な行動や成果
警備員の装備から通信機と拳銃を盗み出した。混乱に乗じて液体ダイヤを奪おうとし、秋川未絵を追い詰めるが、仲間の干潟に背後から殴り倒された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
岡田歩
乾山庄治の仲間である。気弱な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
大学生。
・物語内での具体的な行動や成果
乾山とともに液体ダイヤを追跡した。逃走中の上条当麻のアクロバイクにはねられて負傷し、倒れ込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
干潟彰夫
乾山庄治の仲間である。友人を犯罪者にさせまいと苦悩する。
・所属組織、地位や役職
大学生。
・物語内での具体的な行動や成果
火事場泥棒の流れに困惑しながらも乾山に追従した。秋川未絵に拳銃を向けた乾山を、背後から鉄パイプで殴って止めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
半蔵
黒系の衣装に身を包んだ少年である。郭と行動を共にしている。
・所属組織、地位や役職
忍者。
・物語内での具体的な行動や成果
地下鉄の車内で急停車に巻き込まれた。液体ダイヤを巡る騒動を静観し、出番がないまま雑踏へ姿を消した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
郭
黄色いミニ浴衣を着た少女である。半蔵と行動を共にしている。
・所属組織、地位や役職
くノ一。
・物語内での具体的な行動や成果
地下鉄の車内で半蔵と会話を交わした。干潟が乾山を倒したのを見届け、暗器をしまって立ち去った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
学園都市(暗部・統括理事会)
アレイスター=クロウリー
学園都市の統括理事長である。過去に娘を失った経験を持つ。
・所属組織、地位や役職
学園都市統括理事長。
・物語内での具体的な行動や成果
木原脳幹を通じて、僧正へ「亡霊からの伝言」として自身の意思を波形で伝播させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
僧正の崩壊を促す決定的な要因を作り出した。
木原脳幹
高い知性を持つゴールデンレトリバーである。アレイスターと接続して行動する。
・所属組織、地位や役職
木原の一族。
・物語内での具体的な行動や成果
対魔術式駆動鎧を起動し、アローヘッド彗星と融合した僧正を迎撃した。タングステン鋼のドリルで彗星を貫き、アレイスターの意思を伝えて僧正を撃破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地球滅亡の危機を回避する大きな成果を上げた。
木原唯一
リクルートスーツに白衣を着た女性である。木原脳幹を先生と呼び慕っている。
・所属組織、地位や役職
木原の一族。
・物語内での具体的な行動や成果
木原脳幹の出撃をサポートし、民間人の避難や被害軽減のための事前調整を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
番外個体(ミサカワースト)
アオザイを着た少女である。損得勘定で動く傾向がある。
・所属組織、地位や役職
御坂美琴のクローン。
・物語内での具体的な行動や成果
地下減災構造に潜り込み、黒夜海鳥とともに施設の揺れを吸収するサポートを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
恩を売る目的で街の被害軽減に貢献している。
黒夜海鳥
パーカーを着たサイボーグの少女である。番外個体と行動を共にしている。
・所属組織、地位や役職
暗部組織のメンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
番外個体の人助けを珍しがりながら、彼女の行動に付き合っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
警備員(アンチスキル)
潮騒
警備員の一人である。魔神の規格外の力を前に一度は絶望する。
・所属組織、地位や役職
警備員(アンチスキル)。
・物語内での具体的な行動や成果
僧正の暴走により部隊が壊滅的な被害を受けるのを目撃した。その後、秋川未絵を襲った乾山を確保し、手錠をかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
桔梗
女性警備員である。潮騒の同僚である。
・所属組織、地位や役職
警備員(アンチスキル)。
・物語内での具体的な行動や成果
民間人へ協力を仰いだことを申し訳なく思いつつ、街の混乱を収めるための状況確認を行っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔神・魔術サイド
僧正
真なる魔神の一柱である。即身仏を由来とするミイラの老人である。
・所属組織、地位や役職
真なるグレムリン。魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻に採点者の座を提案したが拒絶された。土や泥で巨大な腕を作り、街を破壊しながら上条たちを執拗に追い回した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アローヘッド彗星と融合して地球への落下を企てるが、木原脳幹に撃破された。
ネフテュス
真なる魔神の一柱である。褐色の肌を包帯で覆った女性である。
・所属組織、地位や役職
真なるグレムリン。魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻の前に現れ、僧正の素性や魔神の状況について説明した。上里翔流の理想送りによって消滅させられたが、主要な臓器を残して上条の元へ逃げ込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
肉体の大半を失い、弱体化した状態で上条に助けを求めている。
娘々
真なる魔神の一柱である。血色の悪いミニチャイナの少女である。
・所属組織、地位や役職
真なるグレムリン。魔神。
・物語内での具体的な行動や成果
ネフテュスとともに上条当麻の前に現れた。僧正の敗北を知って学園都市を破壊しようとしたが、上里翔流に妨害された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
上里翔流の理想送りによって、安らぎを感じながら新天地へ追放された。
右方のフィアンマ
赤い衣装を着た隻腕の男である。かつて第三次世界大戦を引き起こした。
・所属組織、地位や役職
元・神の右席。
・物語内での具体的な行動や成果
上条当麻に通信を送り、セントラルパークへ僧正を誘導させた。僧正に対して変異型の妖精化を放ったが、通用せずに敗北した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ローラ=スチュアート
イギリス清教の最大主教である。アレイスターを嘲笑う存在である。
・所属組織、地位や役職
イギリス清教・最大主教。
・物語内での具体的な行動や成果
聖ジョージ大聖堂で、理想送りの出現とアレイスターの計画の破綻を笑い飛ばした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
その他
上里翔流
平凡な高校生を自称する少年である。幻想殺しと対をなす力を持つ。
・所属組織、地位や役職
高校生。
・物語内での具体的な行動や成果
右手に宿る理想送りを用いて、娘々やネフテュスといった魔神たちを次々と新天地へ追放した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
すべての魔神を追放する存在として、新たな脅威となっている。
アネリ
プログラムの存在である。浜面仕上をサポートする。
・所属組織、地位や役職
操縦支援ソフト。
・物語内での具体的な行動や成果
浜面仕上の携帯電話に文字化けしたメールを送り、彼が僧正の暴走に巻き込まれるのを間接的に防いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
集団
魔神(真なるグレムリン)
強大な力を持つ神々の集団である。世界を作り直すほどの力を持て余している。
・所属組織、地位や役職
魔神の集まり。
・物語内での具体的な行動や成果
力の衝突による運命の歪みを抑えるため、上条当麻を採点者として迎え入れようと画策した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アレイスターの罠による弱体化や、上里翔流の理想送りによって次々と排除されている。
警備員(アンチスキル)
学園都市の治安を維持する部隊である。最新の兵器を用いて事態に対処する。
・所属組織、地位や役職
治安維持組織。
・物語内での具体的な行動や成果
僧正の暴走を止めるため、無人攻撃ヘリや装甲車を投入して交戦したが、なす術もなく壊滅的な被害を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
風紀委員(ジャッジメント)
学園都市の学生による治安維持組織である。民間人の誘導を行う。
・所属組織、地位や役職
治安維持組織。
・物語内での具体的な行動や成果
僧正が引き起こした地盤沈下やビルの倒壊の危機に対し、住民を安全な場所へ避難させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
新約 とある魔術の禁書目録(12)レビュー
新約 とある魔術の禁書目録まとめ
新約 とある魔術の禁書目録(14)レビュー
展開まとめ
第一章 魔神はいつでもそこに Sword_and_Sheath.
アクロバイクの逃走
上条当麻は第七学区をアクロバイクで疾走していた。電動補助やジャイロ機能を備えた自転車を使い、障害物や踏切をサイクルアーツで突破しながら、背後から迫る追跡を振り切ろうとしていた。彼は貨物列車の下をスライディングで潜り抜けたが、すぐに別の四駆に追われる状況へ移った。
防犯オリエンテーションの暴漢役
上条は、小萌先生から進級の危機を告げられ、防犯オリエンテーションの暴漢役として点数を稼ぐよう命じられていた。その結果、肌色の全身タイツに白ブリーフ、トレンチコートという格好で校内を歩くことになった。上条は平凡な高校生として乗り切るつもりだったが、すでに状況は平凡から大きく外れていた。
吹寄制理の制裁
廊下では、同じ暴漢役の土御門元春と青髪ピアスが逃げ込んできた。青髪ピアスは余計な真似をしたらしく、吹寄制理にサスマタを投げつけられて壁へ拘束された。吹寄は怒りに燃え、上条と土御門も巻き込まれそうになったため、上条は窓から雨どいを伝って逃げようとした。
御坂美琴の覚悟
御坂美琴は治安役として防犯オリエンテーションに参加していた。彼女は、東京湾やデンマークでの一件の後、上条が何を抱えていたのかを直接聞く覚悟を決めていた。上条の弱さや汚い部分が見えたとしても受け止めるつもりだったが、彼女が学校で見たのは、壁に張りついた白ブリーフ姿の上条だった。
超電磁砲の怒り
美琴は、どんな答えでも受け止めるつもりだったが、目の前の上条の姿だけは限度を超えていた。怒りに任せてゲームセンターのコインを宙へ弾き、超電磁砲を放とうとした。上条は音速の三倍で尻を貫かれそうになったが、寸前で雲川芹亜に救われた。
雲川芹亜の秘密基地
雲川芹亜は上条を空き教室へ引き込み、自分の秘密基地へ匿った。そこには菓子や飲み物、漫画雑誌、小型テレビ、毛布などが揃っており、彼女の休憩場所になっていた。上条は新発売の菓子に興味を示しつつも、学校で勝手に食べることに抵抗を覚える小市民ぶりを見せた。
毛布の中の避難
廊下から足音が近づくと、雲川は上条を毛布の中へ隠した。上条は毛布の中で不自然な硬さを感じ、女の子は思ったほど柔らかくないのかと勘違いしかけたが、実際には雲川が隠した漫画雑誌の感触だった。騒ぎが去った後、上条は雲川に礼を言い、校外へ逃げるため昇降口へ向かった。
下駄箱の封筒
昇降口で上条は、自分の下駄箱に入っていた雅な封筒を見つけた。彼はそれをラブレターだと判断し、屋上で待っているという文面を読み取って大喜びした。雲川芹亜と御坂美琴はそれぞれ怒りを覚えたが、上条は女の子から手紙をもらったという事実だけで舞い上がっていた。
屋上への期待
上条は、差出人をお嬢様学校の人物だと思い込み、末尾に書かれていた僧正の名を女性の名前か学校名のように解釈した。彼は屋上で大人の階段が待っていると信じ、勢いよく走り出した。残された雲川は、普通は名前の末尾に学校名など書かないと呟いた。
屋上の僧正
上条当麻はラブレターだと思い込んだ手紙に従い、屋上へ向かった。そこにいたのは少女ではなく、ミイラのような老人であり、彼は自分を真なる魔神の一柱である僧正だと名乗った。上条は期待を裏切られた怒りもあって即座に戦おうとしたが、僧正はまず自分の正体を知るべきだと軽く受け流した。
魔神への拒絶
僧正が魔神だと知った上条は、オティヌスとの地獄やデンマークでの逃避行を思い出し、同じ経験は二度と無理だと拒絶した。僧正は自分と同列の魔神としてネフテュスや娘々の名を挙げ、上条は真なる魔神が複数いる可能性に戦慄した。
肌色タイツの脱衣
僧正が重大な話を始めようとしたため、上条はその前に肌色タイツと白ブリーフ姿をどうにかしたいと訴えた。僧正は妙な解釈をして絡んだが、上条は変な方向に話を広げるなと突っ込んだ。肌色タイツの下には学ランがあり、上条はようやく普段の姿に戻って僧正と向き合った。
僧正という異形
上条は、僧正が明らかに死体のようでありながら自然に動いていることに違和感を覚えた。大天使やフロイライン、垣根帝督のような常識外れの存在とも異なり、僧正はミイラであることに無理がなく、その状態を自然体として成立させていた。上条は、魔神という言葉を肯定も否定もできなかった。
世界の中心
僧正は、世界を揺るがす事件がなぜいつも上条の手の届く範囲で起こるのかと問いかけた。さらに、幻想殺しが世界の基準点や修復点に近いものだとして、それがなぜ上条の右手に宿っているのかを問題にした。上条は、世界が自分を中心に回っているという考えを否定し、自分が死んでも世界は続くと反論した。
記録員の話
僧正は、上条の近くには常に記録員がいると語った。それは上条のすぐそばで全てを見て、情報を編纂する存在だという。僧正は、教室や行事の場に自然に溶け込みながら名前も声も分からない人物を思い出せと促し、上条は茶髪のショートヘアにカチューシャの少女を連想して動揺した。
ナンチャッテ
僧正は、その記録員の主観と読心能力によって世界が物語として紡がれていると告げ、上条を混乱させた。しかし直後に、僧正は冗談だったと明かした。上条は本気と冗談の距離が分かりにくい僧正に振り回されながらも、なんとか自分を落ち着かせた。
真なるグレムリン
僧正は、上条が世界の中心近くにいるという認識自体は誤りではないと続けた。それは偶然や上条自身の行動だけではなく、誰かがそうなるように仕向けた可能性もあるという。僧正は、その誰かこそ自分達、真なるグレムリンであると告げた。
真なるグレムリン
学校の屋上で、僧正はグレムリンの正体について語った。真なる魔神達は世界支配や敵の殲滅に興味がなく、必要なものは世界ごと作れるため、そもそも人間と争う理由がなかった。彼らに残っていた問題は、複数の魔神が同じ一つの世界をどう扱うかという、内輪のリソース争いだった。
持て余された力
僧正は、魔神達が世界を作り直せるほどの力を持て余していると説明した。一〇人の画家が一枚のキャンバスを奪い合うように、それぞれの幸せを上書きすれば衝突が起きるため、すり合わせの協議会として真なるグレムリンがあるという。彼らは人間を害する意思を持たないが、その行動が外界の運命を歪ませることは避けられなかった。
七番目の道
僧正は、六道の中には魔神を収める枠がないと語った。人間でも畜生でも天人でもなく、浄土や天国にも属せない魔神達は、既存の六つに収まらない七番目の道を求めていた。それは強大な力を安全に収める鞘であり、神の行いを測る天秤やコンパスのようなものだった。
採点者としての上条当麻
僧正は、上条当麻こそ魔神達にとっての採点者になり得る存在だと告げた。魔神達は世界へ影響を与えてしまうが、それが本当に誰も踏み潰していないか、皆を幸せにしているかを、地を這う人間の視点で確認したがっていた。上条が採点者となれば、魔神達の力の歪みを制御し、神頼みのように現実へ成功を呼び込めるという話だった。
神浄の討魔
僧正は、上条がこれまで事件を解決してきたから選ばれたのではなく、最初から世界を見渡す採点者だったからこそ、幻想殺しが彼に引き寄せられたのだと語った。神浄の討魔とは右手の力ではなく、上条自身につけられた名であり、彼の本質こそが事象の中心だという説明だった。僧正は、上条なら魔神達の採点と調整もこなせると誘った。
拒絶された祭壇
僧正は、採点者となれば悲劇を未然に防ぎ、誰も死なない世界を作れると上条に提案した。だが上条は、それはオティヌスのしあわせな世界と同じで、自分の定義を他人に押しつける恐怖政治に過ぎないと拒絶した。人が放っておけば争うという前提で監視し、不穏に見える芽を一方的に潰すことは、新たな火種にしかならないと断じた。
放火魔の消防士
上条は、僧正の方法を人間を藁のように燃やし、その火を踏み潰す放火魔の消防士と変わらないと批判した。僧正は、それでも事件は起こり、上条は解決に向かうのだから、犠牲を減らすために魔神の手を取るべきだと説いた。しかし上条は、命以外のすべてを奪って人を操り人形にする世界を許せなかった。
僧正への敵意
上条は、僧正達が世界を支配する力を他者へ貸し出す存在である以上、黙って見過ごせないと告げた。願掛けも神頼みもいらず、大切なものを守る方法は他にあると考えたのである。僧正はその答えを理解できない様子で、失ってから気づくか失う前に気づくかの違いでしかないと返した。
校舎を潰す腕
僧正の背後から土か泥でできた巨大な腕が現れ、校舎の半分を押し潰した。上条は、防犯オリエンテーションで生徒達の位置が偏っていたため、まだ全員が死んだわけではないと考えたが、僧正は残る半分も潰せば奇跡は二度起きないと告げた。上条は激昂し、幻想殺しではなく体当たりで僧正を屋上から突き落とした。
壊されることを楽しむ魔神
上条は銀杏の木を折りながら落下し、地面へ叩きつけられた。僧正も落下したが、首が折れたまま笑い、乾いた手で無造作に首を戻した。僧正は、力を失い不完全になった状態さえ新鮮だと楽しんでおり、上条はこの相手が右拳だけで倒せる存在ではないと直感した。
アクロバイクの逃走
上条は学校の人々を巻き込ませないため、僧正を引き離す決断をした。駐輪場にあったアクロバイクの鍵を壊して乗り込み、そこへ居合わせた御坂美琴も後ろに乗せた。彼は説明する暇もなく、僧正から逃げるためにアクロバイクで学校の正門を飛び越えた。
即身仏の構造
即身仏は、高僧自身の修行だけで完成するのではなく、死後に周囲の僧達が遺体を検分し、認めることで初めて成立するものだった。もし高僧が即身仏として完成していても、周囲がそれを認めなければ、ただの失敗した遺体として扱われる。そこには、力を得ながら仏になることを許されなかった者が何に変じるのかという問いが残っていた。
第二章 走れ、 さもなくば死ね Chase_With_the_Girl.
アクロバイクの脱出
上条当麻は御坂美琴を後部シートに乗せ、アクロバイクで学校の正門へ向かった。正門をジャンパーで飛び越え、フレイルターンで急旋回した直後、僧正は門を吹き飛ばして追ってきた。木乃伊の身体とは思えない速度で車を薙ぎ払いながら迫る僧正に、上条は徹底的に遊ばれているような恐怖を覚えた。
美琴の混乱
美琴は突然の二人乗りに動揺しつつも、背後から迫る僧正を敵と判断した。上条は、僧正に捕まればろくなことにならないとだけ説明し、細い路地を何度も曲がって振り切ろうとした。だが僧正は無理をしている様子もなく正確に追ってきたため、上条は自滅を誘うだけでは通用しないと悟った。
洗剤の罠
上条はアクロバイクのジャンプ機能で清掃ゴンドラまで跳び、作業員のバケツから洗剤を薄めた水を歩道へ撒いた。そこへ飛び出した僧正は足を滑らせ、車道を猛烈な勢いで転がり、違法駐車のスポーツカーへ激突した。だが上条は、その程度で魔神が倒れるはずがないと分かっていた。
投げられた車
僧正は泥の巨腕でスポーツカーを持ち上げ、上条達へ投げつけた。上条はアクロバイクを必死に操って回避したが、僧正は泥の腕を原始的なカタパルトのように使い、一瞬で距離を詰めた。そしてアクロバイクのハンドルの上に降り立ち、上条を捕らえようとした。
電飾看板の直撃
絶体絶命の中、上条はさらにペダルを踏み込んだ。その結果、雑居ビルから突き出した電飾看板が僧正の後頭部を直撃し、僧正はアクロバイクから落ちた。上条は今度こそ倒したかとは考えず、全力で逃走を続けた。
警備員の介入
逃走中、上条と美琴は複数の警備員の特殊車両とすれ違った。警備員達は僧正を制圧しようとしたが、上からは即時撤退命令が出ていた。僧正は特殊車両や警備員達を玩具のように吹き飛ばし、無人攻撃ヘリや装甲車まで投入されたが、それらも泥の巨腕によって次々に潰された。
戦争の時代
警備員の潮騒は、僧正の理不尽な力を目の当たりにして、第三次世界大戦で見た科学の公式が通用しない光景を思い出した。学園都市が本当に戦争の時代へ突入したのではないかと感じ、力が抜けた。その諦めを切り裂くように、上条のアクロバイクが僧正へ向かって駆け抜けた。
ヘリのローター
上条は美琴の磁力で暴走する攻撃ヘリの軌道を逸らさせ、負傷した警備員を救った。さらに装甲車から拝借したワイヤーを僧正の首へ巻きつけ、攻撃ヘリのローターに絡ませた。僧正の身体は高速回転するローターによって何度もアスファルトへ叩きつけられたが、上条はそれでも魔神が死ぬはずはないと警備員達に退避を促した。
終わらない逃走
僧正はワイヤーを千切り、なおも上条達を追い始めた。摩擦、電飾看板、警備員の砲火、ヘリのローターまで通用せず、上条は魔神と同じ領域に立つ方法が見えないまま焦った。そこへ美琴が、自分も規格外の怪物だと告げ、逃げるだけではなく戦うと決めた。
超電磁砲の無力化
美琴はアクロバイクから降り、僧正を迎え撃つために超電磁砲を放った。だが僧正は乾いた腕を軽く振るだけで、その一撃を真横へ弾いた。弾かれた超電磁砲はビルを根元から折り、僧正はさらに泥の巨腕でその二〇階建てのビルを掴み、木の枝のように振り下ろした。
ビルの棍棒
僧正は二〇階建てのビルを振り下ろしたが、ビルは形を保っていた。御坂美琴が磁力で支え、中の人間が潰れないように力を分散していたためだった。僧正はその手際を面白がり、次々にビルを引き抜いて投げつけ、美琴に人命救助を強いた。
地下鉄への落とし穴
美琴はビル内部の人間を守るため、磁力で建物を受け止め続けた。しかし僧正が容赦なくビルを積み重ねたため、このままでは押し潰されると判断した。彼女は砂鉄の剣で僧正の足元を切り裂き、地下鉄のトンネルへ落として時間を稼いだ。
再び逃走
上条当麻はアクロバイクで戻り、美琴を後部シートへ強引に乗せた。真正面から戦っても魔神には通じないと叫び、すぐに逃走を再開した。だが僧正は地下から地面を割って現れ、泥の巨腕と共に上条達へ突進してきた。
逆さの秋川未絵
秋川未絵は、ビルが逆さに突き刺さった現場で上下逆さの状態になっていた。防犯オリエンテーションには興味がなく、父親へ弁当を届ける途中で巻き込まれたのである。彼女は怪我こそなかったが、父親は会社から叱責され、状況を説明しても信じてもらえずにいた。
液体ダイヤの話
未絵は母親に電話し、父親の頼りなさをこぼした。母親は、父親が作る金庫こそ宝石より美しいと語り、液体ダイヤも実際には加工された海水に付加価値をつけたものだと説明した。未絵は母親の父親への評価に納得しきれないまま、宝飾店の大金庫へ目を向けた。
歪んだ大金庫
逆さになったビルの中で、父親が作った大金庫の扉は自重に耐えきれず歪み始めていた。そこへ若い男達が液体ダイヤを狙って近づいてくる声が聞こえた。未絵は、父親の金庫と母親のプロジェクトを守るため、自ら金庫内へ入り、ハート形の容器に入った液体ダイヤを持ち出した。
液体ダイヤの逃走劇
未絵は液体ダイヤを抱えて宝飾店から飛び出した。若い男達は彼女が持っているものに気づき、追いかけてきた。防犯オリエンテーションの予行では済まない、もう一つの逃亡劇が始まった。
フレメアの捕獲
浜面仕上は、フレメア=セイヴェルンに犯人役と誤解され、首根っこを掴まれていた。浜面は自分が人質役だと説明したが、フレメアはスタンプと裏メニューに夢中で聞かなかった。二人は防犯オリエンテーションの集計係へ向かうことになった。
アローヘッド彗星
家電量販店のテレビでは、アローヘッド彗星から七番目のエイコンドライトが見つかるかもしれないというニュースが流れていた。浜面はフレメアに彗星の話をしたが、フレメアは浜面が世界を滅亡させる悪党だと誤解した。浜面は自分が彗星を落とすわけではないと否定した。
アネリの警告
浜面の携帯電話にアネリから文字化けしたメールが届いた。浜面が画面に気を取られて立ち止まった直後、全速力のアクロバイクと僧正が目の前を横切った。もしメールが届かず、そのまま横断歩道を渡っていれば、浜面とフレメアは巻き込まれていた。真実を知るアネリだけが、防犯カメラ越しに二人を見守っていた。
僧正の持続力
上条当麻はアクロバイクで細い路地や階段を駆け抜け、僧正を振り切ろうとした。僧正は聖人のような瞬発的な速さとは違い、無理なく追跡を続ける持続力を持っていた。上条はフライングDで上下の障害物を越え、美琴と共にようやく僧正の姿を見失いかけた。
逆転の条件
上条と美琴は、僧正を野放しにできないと考えた。美琴は人の少ない場所で戦う案を出したが、上条は僧正に一〇〇%勝てる手段がなければ正面からぶつかるべきではないと判断した。二人は魔神を倒す具体策を見つけられず、逃げ続けるしかない状況に追い込まれていた。
赤い紙飛行機
上条達のアクロバイクに、赤い紙飛行機のようなものが並走した。その正体はフィアンマからの通信であり、彼は妖精化の術式をさらに先鋭化すれば魔神を滅ぼす手段になると語った。上条は第五学区のセントラルパークへ誘導すれば、フィアンマが僧正を引き受けると聞き、わずかな安堵を覚えた。
潰された連絡手段
上条が一瞬気を緩めた直後、地面から泥の巨腕が現れ、フィアンマの紙飛行機を握り潰した。僧正はすぐ近くまで迫っており、上条は美琴を乗せたままテイクオフで跳躍し、必死に逃走を再開した。僧正は街路樹や風力発電のプロペラを巻き込みながら、街全体を削るように上条達を追い詰めた。
フィアンマへの頼み
美琴は、僧正が一対一の戦闘ではなく、風景ごと獲物を狩り出していることに憤った。上条は、今はフィアンマに頼るしかないと答えた。妖精化という言葉をデンマークの攻防で聞いていた上条は、対魔神の手段に最も詳しいのはフィアンマかもしれないと考えた。
液体ダイヤの重荷
秋川未絵は、液体ダイヤの保護容器をスポーツバッグに入れ、母親へ電話していた。母親は、盗まれても売れず、特許や個体識別で取り戻せるから捨てるよう訴えた。しかし未絵は、盗まれたという事実だけで父と母が積み上げてきた道が傷つくと考え、容器を手放せなかった。
地下鉄への逃避
未絵は母親の会社へ向かうため、液体ダイヤを持ったまま地下鉄へ入った。保護容器には1.5V22MHzという英数字が刻まれており、未絵は発信機の存在を疑った。近くにいた少女達の会話にも怯え、彼女は何を信じればよいか分からないまま、到着した列車へ飛び乗った。
追跡する大学生達
乾山庄治は、警備員のスクラップから入手したPフォンで液体ダイヤの位置を追っていた。彼は混乱の中なら奪えると考え、警備員の拳銃まで持ち出していた。岡田歩は危険を恐れたが、乾山は時価六兆円という額に目が眩み、銃を頼みに強引に進もうとした。
転がり落ちる狂気
干潟彰夫は、火事場泥棒の冗談が本物の強盗へ変わっていく流れに困惑していた。液体ダイヤを持ち出したのが中学生くらいの少女だと分かっていても、拳銃を持つ乾山に逆らう覚悟は持てなかった。誰か一人が中心になったわけではなく、狂気は仲間内で感染し、全員を転落へ引きずり込んでいった。
セントラルパークへの最短路
上条当麻と御坂美琴は、右方のフィアンマと合流するため、第五学区のセントラルパークを目指した。美琴は携帯電話で位置情報を確認し、上条はインデックスやオティヌスへの連絡を思いついたが、妨害のような通信障害で通話はできなかった。直線では僧正の方が速く、二人は追いつかれる危機に陥った。
美琴の時間稼ぎ
美琴は、アクロバイクをこれ以上速くできないなら、僧正の足を遅らせればよいと提案した。超電磁砲が通じなかった悔しさを抱えながらも、真正面から勝つのではなく時間稼ぎに徹すると決めた。僧正が泥の巨腕を伸ばした瞬間、美琴は砂鉄を混ぜて巨腕同士を絡ませ、内部に真空を作る罠を仕掛けた。
真空の突風
僧正が巨腕の制御を取り戻して掌を引き剥がしたことで、真空空間が一気に開かれた。美琴は、風洞実験の理屈を応用し、真空タンクのような仕組みで超音速の突風を発生させたのである。僧正はその暴風に吸い込まれ、上条達は十数秒の時間を稼いでセントラルパークの入口へ向かった。
右方のフィアンマ
セントラルパークでは、右方のフィアンマが存在感を消して待っていた。彼はオッレルスとの接触で妖精化の術式を修得しており、それを僧正撃滅用に変異させていた。オティヌスに妖精化を打ち込んだ過去への贖罪として、フィアンマは魔神を砕くための巨大な光の杭を用意した。
光の杭
上条達のアクロバイクがフィアンマの横を通過し、僧正が追ってきた。フィアンマは挨拶も交わさず、五〇〇メートルを超える変異型妖精化の光の杭を僧正へ向けて放とうとした。彼の狙いは、僧正の肉体に妖精化を二〇七万回連続で叩き込み、魔神の構造を一気に崩すことだった。
砕かれた切り札
上条は急停止し、決着を見届けようとした。しかし光の杭はガラス細工のように砕け散り、フィアンマの体は猛烈な勢いで回転しながら芝生へ叩きつけられた。右方のフィアンマでも、妖精化でも、僧正を止めることはできなかった。
再開する逃避行
美琴は、最後の切り札が破られた以上どうするのかと上条に問うた。上条はフィアンマの負傷を気にしながらも、今ここで立ち止まればさらに被害が広がると判断した。美琴に救急車を呼ぶよう頼み、これ以上倒れる人を増やさないため、僧正を倒す方法を探しながら逃走を再開した。
行間 二
救済を願った高僧
その高僧は、衆生を救うためには人の身では足りず、仏に成る必要があると信じていた。彼は立場や財産を全て捨て、狭い地下室へ自ら入り、決められた手順を完璧に終えた。輪廻を超え、一代で仏へ至ったはずだった。
認められなかった即身仏
しかし、高僧は即身仏として認められなかった。寺院同士の争いや政治との結びつきによって、彼が民衆の支持を集めることを恐れた者達が、悟りに至れず苦しんで死んだ未熟者として扱ったのである。彼の木乃伊は祀られず、他の墓から切り離された場所へ埋められることになった。
笑う公家と貴族
若い僧達が乾いた遺体を運び出す傍らで、公家や貴族達は笑っていた。彼らは、貴賤なく衆生を救おうとした高僧を危険視し、民が政治にすがるためには混乱が必要だと考えていた。だが彼らは、高僧がすでに必要な手順を終え、救済のための装置として再起動していることに気づいていなかった。
再起動した木乃伊
木乃伊は全てを蒐集し、分析し、理解した。そして、衆生の救済には新たな仏に座を与える必要すらなかったと結論づけた。若い僧が驚いて手を離しても、その乾いた身体は床へ落ちず、自らの足で立ち上がった。
迷い仏としての僧正
木乃伊は、自分が未熟者として死に絶えた破戒僧であり、仏となっても座も役割も与えられない存在になると宣言した。周囲の者達は斬れと叫び、媚び、許しを乞うたが、全て無駄だった。善悪も役割も失った僧正は、誰にも方向性を読ませないまま自儘に爪牙を振るう存在となった。
魔神の産声
僧正は、人々が望んだ通りのただの迷い仏となった。その誕生は、救済を願った高僧が役割を奪われ、莫大な力だけを持って彷徨う存在へ変じた瞬間だった。これこそが、新たな魔神の産声だった。
第三章 千切れた蜘蛛の糸の先 Nightmare_to_Ray_of_Hope.
地下鉄の急停車
秋川未絵は、電車に乗れば液体ダイヤを連想する人間は減り、安全になると思っていた。しかし列車は突然急停車し、乗客達は車内で揉みくちゃになった。さらに停電が起き、車掌からセントラルパーク付近の変電施設故障によって非常口へ向かうよう案内が流れたため、未絵は何も信用できなくなり、液体ダイヤを抱えて線路へ飛び降りた。
美琴の焦燥
御坂美琴は、上条当麻の背中にしがみつきながら強い焦りを抱いていた。それは街が壊される恐怖だけではなく、もっと個人的で言葉にしにくい感情だった。上条が美琴を守って元の場所へ帰すと言ったことで、その言葉はかえって彼女の胸を鋭く刺した。
第二三学区への案
上条と美琴は、僧正を周囲へ被害が少ない場所へ誘導するため、航空宇宙関連の施設がある第二三学区を候補にした。発射場なら広く、消火設備も整っていると考えたのである。しかし最短で向かえば僧正に直線で追いつかれ、遠回りすれば別の学区を巻き込むため、上条は必要なのは距離ではなく考える時間だと感じていた。
生コンと放水
僧正が横へ並び、泥の巨腕で襲いかかると、上条はその腕をミキサー車へ誘導した。溢れた生コンで僧正の視界を塞ぎ、さらに消火栓の蓋を蹴って放水を浴びせた。美琴の雷撃の槍も重ねたが、僧正は軽く笑うだけで倒れず、上条はなおも逃走を続けるしかなかった。
液体ダイヤの強奪
逃走中、上条は液体ダイヤを持つ女子中学生が大学生風の集団に絡まれている場面を見つけた。僧正が迫る状況でも、上条はその子を見捨てられないと美琴に告げた。美琴も同意し、二人はアクロバイクで横から突っ込み、液体ダイヤを奪っていた男を吹き飛ばした。
秋川未絵の救出
上条は秋川未絵に、液体ダイヤを持って伏せるよう叫び、そのまま走り去った。直後に僧正が追突するように通過し、大学生達は巻き込まれて吹き飛ばされたり、腰を抜かしたりした。未絵は状況を理解しきれないまま、助けられたことを感じて頭を下げ、再び液体ダイヤを抱えて逃げ出した。
開かずの踏切と工事現場
上条達はさらに逃げ続けたが、僧正との距離は縮まっていた。美琴の地図案内で左折した先には工事現場があり、アクロバイクは都合四階分ほどの深さの大穴へ飛び込んだ。上条は壁面へタイヤを押し付け、ジャイロの力で滑るように落下して、何とか地底へ着地した。
追ってこない僧正
大穴の底へ降りた上条達は、僧正がすぐには追ってこないことに気づいた。しかし理由は分からず、安心はできなかった。さらにアクロバイクのバッテリー残量が危うくなり、上条は工事現場の電源で充電しようとした。
岩盤を砕く魔神
上条達が充電しようとした直後、僧正は岩盤を砕いて地底へ突っ込んできた。大量の土砂と岩塊が上条達を呑み込もうとし、上条は美琴を乗せて再び走り出した。満足に充電できないまま、アクロバイクは崩れる地形と迫る僧正から逃げることになった。
土砂の追撃
上条当麻と御坂美琴は、工事中のトンネル内で僧正が操る土砂に追われていた。市販の地図では地下の構造が分からず、アクロバイクのバッテリーも尽きかけていた。美琴は僧正の無茶苦茶な力に混乱したが、上条は僧正がなぜ自分達の位置を把握できるのかに注目した。
土による索敵
上条は、僧正が学校や霊装通信の直後、そして地下で足を着けた直後に襲ってきたことを思い出した。僧正は土や地面を通じて上条の位置を探知している可能性が高かった。上条は、地面から足を離し続ければ僧正の探知から逃れられると考え、トンネル出口へ向かって全力で走った。
作業船の隠れ場所
アクロバイクはトンネル出口から飛び出し、川を進む作業船の甲板へ着地した。上条と美琴は船縁に身を隠し、僧正からわずか一五メートルほどの距離でやり過ごした。僧正は反応を見失い、上条は自分の推測が正しいと判断した。
考える時間
作業船の上で、上条はようやく僧正から追われ続ける状態を脱した。船員に頼んでアクロバイクの充電も始め、反撃のために考える時間を得た。上条は、僧正の破壊力は脅威だが、オティヌスの時のように魂そのものを引き剥がされる恐怖は感じないと結論づけた。
現れた二人の魔神
美琴が今後の方針を話そうとした時、上条の両隣に褐色の包帯女と血色の悪いミニチャイナの少女が現れた。二人はネフテュスと娘々であり、幻想殺しで自分達の弱体化が戻るかを勝手に試していた。美琴が怒ると、娘々は袖から大量の武具を出し、美琴の身体を貫いた。
宝貝の脅威
美琴に出血や痛みはなかったが、刺された事実だけが恐怖として突きつけられた。上条は右手で娘々の武具をまとめて砕き、美琴を庇った。娘々は、自分の宝貝は一つ一つ効果が異なるため、束ねて放たれれば解析などできないと軽く語った。
ネフテュスと娘々
ネフテュスと娘々は、自分達を僧正の同類だと説明した。つまり、真なるグレムリンに属する魔神であり、オティヌスや僧正と同格の存在だった。上条は、僧正だけでも手一杯なのに、さらに二人の魔神が現れた状況に圧倒された。
学園都市への好意
ネフテュスは、自分達は学園都市や人間世界と争うつもりはないと語った。彼女は、彗星へ探査機を着陸させようとする学園都市の情熱に興味を持っており、人間が非合理な夢へ熱を注げることを羨ましく感じていた。ただし、その態度はあくまで神の視点からのものであり、上条や美琴との間には大きな隔たりがあった。
弱体化した魔神達
二人は、自分達が何者かのせいで弱体化していると語った。幻想殺しでそれを戻せるか試したが、不発だったという。娘々は、今の状態では世界を砕けても修復する力は残っていないと軽く口にし、上条のオティヌスの記憶を刺激した。
暴走した僧正
ネフテュスは、当面の問題は僧正だと告げた。僧正は暴走しており、真なるグレムリン全体の総意を代表しているわけではないという。しかし二人は、魔神同士が直接戦えば学園都市どころか列島ごと沈みかねないため、上条に僧正を止めてもらいたいと要求した。
無視された美琴
美琴は、僧正の知り合いなら自分達で止めればよいと訴えた。だがネフテュスと娘々は、美琴が存在しないかのように振る舞い、上条だけへ話を続けた。その扱いは美琴を深く打ちのめし、上条はそれに怒ってネフテュスの胸ぐらを掴んだ。
ネフテュスへの怒り
上条は、魔神相手に手を出す危険も忘れ、ネフテュスを睨みつけた。ネフテュスは顔色一つ変えず、上条の周囲には得体の知れない圧が広がった。僧正に続く新たな魔神達との対峙が、作業船の上で始まった。
魔神からの神託
娘々は、僧正の基幹構造も分からないまま自力で戦えるのかと上条当麻達に問うた。御坂美琴は、今は使えるものを利用し、最後に彼女達の鼻を明かせばよいと判断した。上条は納得しきれないままネフテュスから手を離し、僧正についての情報を聞くことにした。
僧正の散策
僧正は魔神であることも、ミイラの肉体であることも隠さず、川沿いを歩いていた。彼には急いで上条と決着をつける理由はなく、最終的に丸く収まればよいと考えている節があった。しかし、彼は悠長に待つよりも力任せに状況を動かす存在であり、やがて何か面白そうな気配に気づいて笑った。
即身仏の成り立ち
ネフテュスは、僧正が日本独自の仏教に由来する即身仏の魔神だと説明した。即身仏とは、一代で仏になるため、高僧が自ら地下の暗室に入り、生き埋めのまま読経を続けて木乃伊となる儀式だった。僧正が土と結びついているのは、その遺体から染み出たものが周囲の土と絡み合ったためだった。
役割のない仏
僧正は衆生の救済を目的に仏となろうとしたが、死後に権力者達の小細工によって即身仏として認められなかった。紫の法衣や黄金の装飾、純金の剣は、彼が欲を捨てられなかったと見せかけるための副葬品だった。僧正は仏としての肉体を持ちながら仏の座を与えられず、役割のない迷い仏となった。
説得不能の僧正
ネフテュスは、僧正が今も衆生を救う気でいるため、説得は通用しないと語った。彼は自分に押しつけられた未熟者という姿を受け入れ、その在り方こそが救済につながると信じていた。上条は、僧正がこれまで出会った魔術師達よりも、さらに深く終わりの向こう側にいるような存在だと感じた。
魔神の誘惑
ネフテュスは、力が足りないなら自分達の名を呼べば、相応の犠牲と引き換えに魔神同士の直接対決で僧正を抑えると提案した。それは、魔神の力を使えば簡単に皆を救えるという誘惑でもあった。上条がその手を取れば、真面目に足掻くことが馬鹿馬鹿しくなるほどの力を知ることになる。
美琴の制止
美琴は、上条が魔神達と手を結ぶことを危険だと感じ、彼の腕にすがりついた。魔術や魔神の話にはついていけず、自分が役に立たないことを突きつけられても、上条が遠くへ行ってしまうことだけは絶対に止めたかった。彼女は当たり前の女の子としてネフテュスを睨みつけた。
美琴への興味
ネフテュスは、初めて美琴を一人の少女として意識した。美琴の行動を見て、人間は手に入れる価値の薄いものにも情熱を注げる存在だと面白がった。ネフテュスは手を引っ込め、最後の神託として、僧正を力でねじ伏せるなら破壊のプロセスを精査するべきだと告げた。
六道交差
ネフテュスは、僧正が何代もかけて磨くべき魂を一代で仏へ昇華させた特殊な存在であり、六道交差を自在に操ると説明した。そのため、原因、過程、結果が正しく並ぶとは限らないという。上条が瞬きした時には、ネフテュスと娘々はすでに姿を消していた。
第二三学区への方針
上条と美琴は、僧正に見つかる前に次の行動を決める必要があった。地面を踏まなければ捕捉されにくいが、僧正が安全地帯を潰してくる可能性はあった。上条は僧正を倒せなくても解決する方法を考え、行き先を第二三学区に定めた。
乾山の狂気
乾山は意識を取り戻し、液体ダイヤと秋川未絵が消えていることに気づいた。岡田が負傷して動けない中、干潟は救急車を呼ぼうとしたが、乾山は六兆円を逃すわけにはいかないと拳銃を向けた。干潟は乾山が本当に狂っていると感じながらも、逆らえず立ち上がった。
僧正の反応
僧正はゲームセンターでぬいぐるみを受け取っていたが、上条が第二三学区の滑走路か発射場で土を踏んだ反応を察知した。それが罠であることは明らかだったが、僧正は深く考えなかった。彼にとって、人が積み重ねた策を踏み倒すことこそ諸行無常であり、盛者必衰だった。
手に入れたものへの無関心
僧正は、手に入れたぬいぐるみを店員へ押し返し、自分にはもう必要ないと告げた。彼は手に入れたものには興味を失う性分だった。その性質は上条にも向けられており、もし上条が屈した瞬間、僧正はあっけなくその首を切り飛ばすだろうと示唆されていた。
行間 三
パラサテライト01のスポンサー募集
財団は、アローヘッド彗星を調査するマスドライバー発射式無人天体探査機パラサテライト01のスポンサー募集を行っていた。参加方法は専用ホームページやコンビニの端末から可能で、一口一〇〇円から申し込めるものだった。
七番目のエイコンドライト
アローヘッド彗星には、既存の六種に収まらない七番目のエイコンドライトが存在する可能性が囁かれていた。パラサテライト01が採取した地質資料によって仮説が証明された場合、新たな宝石の命名権はスポンサー達に与えられる仕組みだった。
命名権の呼びかけ
エイコンドライトは太陽系誕生の秘密に迫る物質として注目されており、新発見があれば七番目の名も世界へ広まるとされていた。財団は、店名や平和への願い、故郷、自分の名前、恋人への贈り物など、思い出作りの一環として命名権公募への参加を呼びかけていた。
第四章 勝利なき戦いの終わり A.A.A.
第二三学区の対峙
第二三学区の広大な滑走路で、上条当麻は一人で僧正を待ち受けていた。御坂美琴の電子的な支援により警備用無人機には検知されず、僧正は罠を警戒する様子もなく歩み寄った。僧正は再び採点者の座を提示したが、上条は迷わず拒絶した。
街を崩す導火線
僧正は、泥の巨腕を作るために地中の土を抜いた場所がどうなるかを上条に示した。第七学区から第二三学区まで、僧正が追跡中に土を乱雑に奪った経路で地盤が崩れ、粉塵が入道雲のように立ち上った。僧正は、その被害も上条が早く自分の提案を受け入れなかったせいだと突きつけた。
崩落する滑走路
破壊の導火線は第二三学区の滑走路まで到達し、上条と僧正の足元をまとめて崩落させた。二人は直径二〇メートル、深さ三〇〇メートル以上の地下施設へ落ちた。僧正は砕けた身体をすぐに戻し、上条は無数の電源ケーブルに絡まることで墜落死を免れていた。
被害なしの仕掛け
僧正は、美琴の助力によって上条が落下を織り込み済みだったと見抜いた。だが上条は、街に被害はなかったと告げた。彼は僧正が質量保存の法則を利用して地下を空洞化させることを警戒し、美琴の人脈を通じて風紀委員や警備員、街の人々を動かしていた。
街を支える人々
風紀委員は危険な建物から人々を避難させ、交通管制も人の流れを最適化していた。番外個体と黒夜海鳥は地下減災構造を支え、秋川未絵の父は液体建材を流し込んで地盤を補強していた。上条は、僧正が格下と見なした人々の行動が被害を防いだのだと突きつけた。
秋川未絵の到着
秋川未絵は液体ダイヤを持って母親の会社へ辿り着き、母親と再会した。周囲では避難が進み、地面は揺れたがビルは倒れなかった。母親は、この街は父親が守ってくれるから大丈夫だと告げ、未絵は自分の父が本当に大切なものを守るために動いていることを知った。
乾山の凶行
未絵が安心しかけた時、乾山が拳銃を向けて液体ダイヤを要求した。母親を突き飛ばすのが未絵の限界だったが、銃声は鳴らず、干潟が背後から鉄パイプで乾山を殴った。続いて潮騒と未絵の父が乾山を殴り倒し、潮騒は手錠をかけた。
友人を止める手
干潟は、乾山を人殺しにするくらいなら止める方がよいと答えた。彼にとって乾山はまだ友人だったのである。近くには半蔵と郭もいたが、彼らは出番がない方がいいと判断し、暗器をしまって人混みに消えた。悲劇を防ごうとする者は、一人の少年だけではなかった。
人の命の重さ
上条は、街の人々がそれぞれ自分の一番を目指して動いた結果、僧正の破壊が人命を奪えなかったのだと告げた。善悪に分かれることがあっても、人は自分達で時代の流れを選び取っていく存在だった。僧正がどれだけ建物を崩しても、人の命はそんなに軽くないと上条は断じた。
高圧ボンベの罠
僧正が再び土の巨腕を作ると、その腕には第二三学区に配置された高圧ボンベが混ざっていた。上条は、僧正が土や泥は操れても加工物までは直接操れず、異物も正確には検知できないと見抜いていた。ボンベの爆発は僧正を倒すためではなく、爆圧の中心核を作るためのものだった。
溶ける巨腕
美琴の知識を元に、高圧ボンベを規則的に配置することで莫大な圧力を生み出し、土の巨腕を内部から加熱・崩壊させた。僧正が見上げる中、巨大な拳は内側から溶け、オレンジ色に輝く滝となって木乃伊の僧正へ殺到した。
溶岩化した巨腕
高圧ボンベによって生まれた圧力は、土の巨腕の一点をマグマ化させた。マグマは周囲の土や泥を溶かしながら増え、僧正を呑み込んだ。上条当麻は作戦の成功を確信しかけたが、その直後、溶岩の山から僧正の声が響いた。
溶岩から現れた僧正
僧正は紫の法衣も黄金の剣も焼かれ、全身を高温の溶岩に包まれながらも平然と現れた。彼は、魔神が外傷や窒息程度で命を奪われる存在だと思っていたのかと上条を嘲った。上条は、僧正の六道交差が単なる破壊力ではなく、原因や過程や結果の優先順位を操るようなものではないかと考えたが、まだ掴みきれなかった。
僧正の失望
僧正は、上条の戦い方がつまらないと告げた。逃走や被害軽減、ボンベを使った作戦は上条らしくなく、御坂美琴の思考に引きずられているのではないかと指摘した。僧正は、上条が幻想殺し一つで立ち向かう姿を期待していたと語り、美琴が出てきてから上条は丸く小さくなったと断じた。
お荷物という痛み
その言葉を聞いていた美琴は、細いキャットウォークに身を潜めながら深く傷ついていた。僧正は、美琴が上条の足を引っ張っているだけだと語り、インデックスやオティヌスならもっと役に立ったはずだと突きつけた。美琴自身も、上条が本来の戦い方を抑えている理由が自分にあるのではないかと感じ、自分はお荷物にしかなっていないと認めかけた。
上条当麻の否定
だが上条は、僧正の言葉を真っ向から否定した。インデックスやオティヌスなら別の道を選べたという話ではなく、美琴が隣にいたからこそここまで来られたのだと叫んだ。美琴がいたから心を支え、冗談を言える状況を保てたのであり、彼女は邪魔ではなく命の恩人だと断言した。
守るべきもの
僧正は、美琴が役に立たないことは変わらないとなおも挑発した。しかし上条は、役に立つかどうかなど問題ではないと返した。彼は、守るべきものを背負わずに命を投げ出すことを英傑のように扱う僧正を否定し、自分はそんな存在にはならないと告げた。
右手を捨てる覚悟
上条は、僧正が美琴を悪く言い続けるなら、たとえ溶岩まみれの体を殴って右手が焼け落ちても構わないと宣言した。幻想殺しが通じるかどうかではなく、僧正の口を黙らせるために何度でも殴ると告げたのである。その言葉は、美琴の胸に突き刺さり、彼女の中に新たな決意を呼び起こした。
追いつく決意
美琴は、上条が自分を守るべき存在として扱っていることに不満を抱いた。それでも、周回遅れならその分だけ加速して追いつけばよいと考えた。東京湾からデンマークまでの真実を聞き出し、どんな不都合なものでも受け止めると決めていた美琴は、上条に必ず追いつくと心に決めた。
瓦礫の時間稼ぎ
上条当麻が溶岩化した僧正へ殴りかかろうとした瞬間、御坂美琴が制止した。僧正を倒すことではなく、無事に今日を乗り越えることが勝敗条件だと告げ、大量の瓦礫を上から落として僧正を呑み込ませた。上条は思考を撃滅から生還へ切り替え、美琴と共にアクロバイクで鉄扉の向こうへ逃げ込んだ。
マスドライバーの射出
瓦礫から抜け出した僧正が追おうとした時、円柱状の空間が青白く輝き始めた。そこは地下サイロ式マスドライバーであり、プラズマ流によって内部の全てを宇宙へ射出する施設だった。溶けた瓦礫と金属をまとった僧正は、砲弾のように空へ打ち上げられた。
生還への作戦
爆音と閃光の余波で上条と美琴は床へ投げ出されたが、二人は生き延びた。上条は、僧正が土を操るなら星から切り離せば手出しできなくなると考え、マスドライバーを使う発想と実行には美琴が不可欠だったと感謝した。美琴は自分は何もしていないと感じていたが、上条は誰も欠けずに終わらせられたことが全てだと語った。
暗い空
二人が地上へ戻ると、昼下がりのはずの空は夕暮れのように暗くなっていた。美琴は太陽の周りの光の輪をビショップ環と呼び、宇宙塵が増えた時に現れる現象だと説明した。原因として彗星の接近を口にした時、二人はアローヘッド彗星の異変に気づいた。
凶星と化した僧正
僧正は宇宙へ放り出されても終わっていなかった。彼はアローヘッド彗星の氷と塵を操り、彗星そのものを掌握して地球へ戻ろうとしていた。僧正は彗星と融合し、巨大な木乃伊のような凶星となって、上条当麻と地球人類へ最後の難題を突きつけた。
届かない右手
美琴には、落下してくる彗星へ手を出す手段がなかった。だが上条は、ふらつく身体のまま右手を空へ伸ばそうとした。彼の右腕から不気味な亀裂のような音が響き、美琴は上条が何をしようとしているのか分からないまま、強い恐怖を覚えた。
木原脳幹の出撃
木原唯一は、木原脳幹を先生と呼び、出撃を見送った。木原脳幹は対魔術式駆動鎧を起動し、巨大なドリルを備えた二〇トン超のユニットで空へ飛び立った。彼は、アレイスター側との接続を確認し、状況Dとして僧正の迎撃へ向かった。
亡霊からの伝言
木原脳幹は、彗星と一体化した僧正の中心をタングステン鋼の巨大ドリルで貫いた。ドリルの特殊な回転は僧正を内側から崩すだけでなく、アレイスターからの意思を直接伝えた。その内容は、運命論に命を奪われたアレイスターの娘の名を覚えているかという問いだった。
僧正の最期
僧正は、アレイスターという人間の矛盾と情を思い出した。魔神になることを拒み、人の王として家族と同じ領域に立ち続けた存在を思い、僧正は済まなかったと告げようとした。だがその言葉が届く前に閃光が走り、木原脳幹は彗星の落着を許さず、僧正を撃破した。
学園都市の余波
高空での激突は、学園都市中のガラスを吹き飛ばし、高層ビル群を激しく揺らした。木原脳幹は空中で減速し、葉巻を咥えながら僧正の撃破を報告した。しかしアレイスターは、他のグレムリンも片付いたように語り、木原脳幹はネフテュスや娘々に何が起きたのか疑問を抱いた。
終章 あるいはこんな開幕も The_End_is_Named……
魔神殺しの衝撃
僧正が撃破されたことで、避難していた人々は屋内へ逃げ込み、結果的に命を守られた。一方、娘々とネフテュスは僧正の敗北を目の当たりにし、神が死ぬという現実を受け入れられずにいた。僧正を仕留めたのが魔神でも上条当麻でもない別の何かだったため、娘々は激昂し、学園都市そのものを破壊しようとした。
理想送りの出現
娘々が大量の宝貝で学園都市を更地にしようとした瞬間、茶髪の平凡な少年が現れた。彼は右手の指を娘々の胸へ突き刺し、魔神である娘々を取り込むのではなく、新天地へ送る救いだと語った。娘々は恐怖ではなく安らぎを浮かべ、理想送りによって消えていった。
上里翔流
少年は自分を上里翔流と名乗り、どこにでもいる平凡な高校生だと言った。彼の右手、理想送りは、今ある世界を見捨てて新天地へ旅立ちたいという魔術を扱う者達の願望の集積体だった。幻想殺しとは異なり、世界を修復するのではなく、別の可能性へ追放する力だった。
追放される魔神達
ネフテュスは、上里が他の魔神達も片っ端から喰ったと聞き、絶句した。彼はキメラやテスカトリポカ、ヌアダ、プロセルピナの名にも興味を示さず、魔神らしき存在を目についた限り処理しただけだと語った。ネフテュスは全力で位相を差し替えようとしたが、その位相ごと握り潰された。
ネフテュスの消滅
上里は右手を振るだけで、ネフテュスの体を次々と新天地へ消していった。ネフテュスは恐怖と歓喜の混じった感覚に抗おうとしたが、最後には顔まで喰われ、銀髪の一本すら残さず消滅した。魔神の脅威すら立ち入れない完全な静寂が、その場を支配した。
ローラの笑み
聖ジョージ大聖堂では、ローラ=スチュアートが理想送りの出現を笑っていた。彼女は、幻想殺しが受け止めきれず横から溢れた魔術師達の別の夢が理想送りとなったことを知っていた。ローラは、アレイスターが望むものを手に入れられない存在だと嘲り、闇の頂点よりも別の呼び名が似合うと告げた。
段ボールのネフテュス
上条当麻が学生寮へ戻ると、宅配便で届いた小さな段ボール箱からネフテュスが現れた。彼女は主要な臓器を残していたことで辛うじて復活しており、消耗しながら上条に協力を求めた。ネフテュスは、上里翔流が全ての魔神を追放しようとしているなら、上条の傍にいるオティヌスも危ないと告げた。
美琴の遠さ
御坂美琴は常盤台中学の寮へ戻った後、バスルームで一人混乱していた。彼女が恐れていたのは僧正の強さでも、彗星迎撃の衝撃でもなく、最後に上条の右腕から聞こえた亀裂のような音だった。もし学園都市の迎撃がなければ、上条の右手が何を起こしていたのか分からなかったのである。
届かない少年
美琴は、上条に自分の存在を肯定されたことで立ち上がれた一方、彼の中に自分の力を超える何かが眠っていることを痛感した。大霸星祭や第三次世界大戦の記憶を思い返しても、彼との距離は埋まらなかった。美琴は顔を覆い、上条が遠いと絞り出した。
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