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フィクション(Novel)理想のヒモ生活

小説「理想のヒモ生活 12 巻」北大陸に到着!【感想・ネタバレ】

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小説理想のヒモ生活13巻の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

ヒモ生活11巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活13巻レビュー

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  1. どんな本?
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■物語の特徴
  2. 読んだラノベのタイトル
  3. あらすじ・内容
      1. ドラマCDつき豪華特装版が登場! あの侍女三人組が音声に! ついに北大陸に到着。異国の地で一人、ヒモ男が奮闘する!
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 帆船での航海
    2. 無人島への上陸
    3. 北大陸への入国
    4. ヤン司祭との対面
    5. 騎士団の侵攻阻止
    6. アンナ王女の野望
  6. 登場キャラクター
    1. カープァ王国
      1. アウラ一世
      2. 善治郎・カープァ
      3. アマンダ
      4. イネス
      5. マルグレーテ
      6. ドロレス
      7. フェー
      8. レテ
      9. ヴァネッサ
      10. ナタリオ
    2. シャロワ・ジルベール双王国
      1. ルクレツィア・ブロイ
      2. フローラ
      3. フィクリヤ・アニミーヤム
    3. ウップサーラ王国・『黄金の木の葉号』
      1. グスタフ五世
      2. フレア・ウップサーラ
      3. スカジ
      4. マグヌス
      5. ボリス
      6. ラルフ
      7. トマス
    4. ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国
      1. アンナ・クラクフ
      2. ウーカシュ・グダニスキ
      3. ツェザリ
      4. エウゲニウシュ
      5. テレサ
      6. ドルヌイ
    5. テイラナ公国
      1. ジェルジ二世
    6. 『教会』・傭兵・民間人
      1. ヤン司祭
      2. ヤン(隻眼の傭兵)
      3. ヤン(孤児の少年)
      4. ヤーノシュ
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ 山羊島
    2. 第一章 三人のヤン
    3. 第二章 訴える者、訴えを聞く者
    4. 第三章 有翼騎兵
    5. 幕間 隻眼の傭兵の戦い
    6. 第四章 勝利を待つ時間
    7. 第五章 戦勝パーティー
    8. エピローグ 出航
    9. 付録 主と侍女の間接交流
  8. 同シリーズ
    1. 理想のヒモ生活 シリーズ
    2. 小説版
    3. 漫画版
  9. その他フィクション

どんな本?

■ 作品概要

理想のヒモ生活」は、異世界における国家間の外交や政治闘争を描いたファンタジー小説である。

現代日本から召喚され、南大陸カープァ王国の王配となった善治郎は、北大陸のウップサーラ王国第一王女フレアとの婚姻交渉および大陸間貿易の確立のため、木造帆船『黄金の木の葉号』で北大陸へ渡る。長く危険な航海の末、北大陸のズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の港湾都市ポモージエに到着する。しかし到着直後、孤児の少年がもたらした「『騎士団』が奇襲を仕掛けてくる」という情報により、善治郎は他国の軍事紛争や王族の権力闘争に巻き込まれていく。

本作の世界は、血統魔法が支配的な力を持つ南大陸と、大型帆船や火薬といった技術が発展し、『教会』という宗教組織が強い影響力を持つ北大陸に分かれている。

■ 主要キャラクター

  • 善治郎・ビルボ・カープァ:現代日本から召喚されたカープァ王国の王配である。政治的野心を持たないが、北大陸の技術力や政治制度に直面し、祖国に対する強い危機感を抱く。
  • フレア・ウップサーラ:ウップサーラ王国の第一王女であり、『黄金の木の葉号』の船長を務める。善治郎の側室となることを目指しており、祖国の国益のために政治的交渉に臨む。
  • アンナ・クラクフ:ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の王女である。次期国王の座を狙う野心家であり、自らの実績作りのために善治郎やフレアを利用する。
  • ヤン司祭:『教会』の司祭である。特定の派閥に属さず、生まれつき魔力を持たない体質だが、柔軟な思考で身分の低い者の声にも耳を傾ける。
  • 隻眼の傭兵ヤン:ヤン司祭の護衛を務める傭兵隊長である。アンナ王女に雇われ、新兵器である火薬武器『笛』を用いて『騎士団』を迎撃する。
  • 孤児ヤン:『騎士団』に故郷を滅ぼされた孤児の少年である。騎士団の奇襲計画を偶然耳にし、ヤン司祭を頼ってポモージエまで情報を届ける。

■物語の特徴

本作は、魔法の力だけでなく、国家間の外交交渉や技術格差、政治的駆け引きを主題としている点が特徴である。第12巻では、魔法が優位とされる世界において、火薬兵器の登場と量産化が戦術や国家間の力関係を根本から変える可能性を描いている。主人公が圧倒的な力で敵を倒すのではなく、他国の政治的制約の中で情報収集に徹し、状況を分析して立ち回る姿が物語の中心となっている。

読んだラノベのタイトル

理想のヒモ生活 12
著者:渡辺恒彦 氏 イラスト: 文倉 十 氏

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

ドラマCDつき豪華特装版が登場! あの侍女三人組が音声に! ついに北大陸に到着。異国の地で一人、ヒモ男が奮闘する!

木造帆船での長く危険な航海の末、遂に『黄金の木の葉号』は北大陸に到着する。フレア姫の判断で、一行は『教会』の影響が比較的弱いという、ポモージエ港へ停泊することとなった。久しぶりの陸での生活に羽を伸ばしていると、買い物に出かけていた侍女のマルグレーテが、路地裏で孤児の少年に声をかけられる。 なんでも、善治郎たちと同じ宿に泊まっている、ヤン司祭に言伝を頼みたいのだという。 「放っておいたら大変なことになる」という少年の言葉を聞いた善治郎は、 ヤン司祭に事の顛末を伝え、宿で共に話を聞くことになる。 そこで少年が口にしたのは、なんと「『騎士団』がこの国を攻めてくる」という内容だった。

理想のヒモ生活12

感想

プロローグでいきなり「島が見えたぞー!」だもんな。
もう到着かと思ったら出航から40日、遭難せずに以前、黄金の木葉号が接岸した無人島に着いたみたいだ。

その名も山羊島!!
自然破壊上等に、無人島に山羊を放って繁殖させてたらしい。
山羊は順調に増えてたようだ。
緑を食い尽くしたらどうなるんだ?

久しぶりの陸を堪能して、更に43日後に北大陸中部のポモージエ港に寄港した。

南部は教会の勢力が強くて、余程のことが無ければ寄りたくなかったらしい。
南大陸からしたら結構ヤバイ宗教勢力図じゃないか?
反対に言えば、挟まれてる訳か、、
でも、宗教の自由を旗頭にすれば?
いや、弱いな。。


そして、今回の舞台になる街は地理的に北部のフレア姫の母国に1番近い国際港だそうな。。

政治形態は貴族制共和国で宗教の自由を認める珍しい国でもある。

その港の宿に滞在するのだが、、
司祭のヤン、傭兵のヤン、そして侍女兼密偵のマルグレーテが連れて来た浮浪児のヤンの話からキナ臭くなって来た。

宗教的に他宗教を赦さない北方騎士団が攻めて来るそうな。
それだけを聞いたらいつもの事なのだが、国境線ではなく、国境から離れた舞台の港街に攻めて来るとなると話が違って来る。

フレア姫の王族の地位を利用して領主に直接話をして、傭兵のヤンの指揮の下、傭兵をかき集めていたら共和国の王女がししゃり出て来た。

そして、傭兵と騎士団の騎兵の対決は30丁鉄砲の一斉射で騎兵の馬が大混乱。

そのおかげで騎兵を撃退。

それを知った善治郎は、北大陸と南大陸の技術格差に愕然とする。
その対抗手段として、魔道具の大量生産の構想を練るのだが、、

その前にフレア姫の父親に挨拶するという大仕事に頭を痛める。

北大陸が銃を大量生産出来たら、農民がいきなり銃兵になれるわけだからな、、
北大陸は兵士の動員数も桁違いに有利になる。

それに対抗するのはそう簡単な事じゃないぞ、、

更に今回の騎士団の攻めて来た理由も宗教の違いという、他国を侵略する大義名分も凄く緩い。

そして、フレア姫の母国もこの争いに巻き込まれてしまう。
宗教派閥の戦争、、
南大陸からしたら、内輪揉めしてくれてた方が良いけど、、
ドンドンきな臭くなって来たなぁ、、

善治郎が当初想定していたヒモ生活から物凄く遠のいてる。
善治郎!
強く生きろよ!w

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ヒモ生活11巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活13巻レビュー

考察・解説

帆船での航海

『理想のヒモ生活』における「帆船での航海」は、ウップサーラ王国とカープァ王国を結ぶ大陸間貿易を成立させるための命がけの挑戦であり、北大陸の進んだ造船技術と南大陸の魔法技術が融合していく重要なエピソードとして描かれている。

帆船での航海について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 大陸間航行の過酷さと危険性

北大陸と南大陸を隔てる大海を越える大陸間航行は、片道で百日近く、あるいはそれ以上を要する命がけの過酷な旅である。

・未知の大嵐や高波によって船が破損・沈没するリスクが常に伴う。
・南大陸近海には巨大な海竜が生息しており、縄張りに入ると襲撃される危険性も存在する。
・そのため、一般的な商人や船乗りすら容易には手を出せない、極めて危険な冒険とされている。

2. 最新鋭の四本マスト帆船である黄金の木の葉号

航海に使用される黄金の木の葉号は、技術先進国であるウップサーラ王国が誇る最新鋭の四本マストの大型木造帆船である。

・海上でも風向きに応じて縦帆と横帆を張り替えることが可能である。
・北大陸でも大型船にしか導入されていない「操舵輪(輪形の舵)」を備える。
・南大陸の造船技術を遥かに凌駕する構造を持っている。

3. 魔道具導入による安全性の劇的向上

本来は遭難の危険が高い大陸間航行であるが、フレア姫が双王国で国宝級の魔道具「凪の海」と「真水化」を入手したことで状況は一変した。

・凪の海によって大嵐の中でも風や波を一時的に完全に鎮めることが可能となり、安全に船の修繕や休息が行えるようになった。
・さらに真水化の魔道具により海水から飲料水と塩を安定して確保できるようになった。
・これにより、航海の危険性は万に一つのレベルまで激減した。

4. 過酷な船上生活と善治郎の対策

魔道具によって安全性は高まったものの、船上生活の不便さは変わらない。

・長期間続く激しい揺れに加え、海が穏やかな時しか火を使えないため、食事は干し肉や乾燥豆、堅パンなどの保存食ばかりとなる。
・善治郎はこの過酷な環境を少しでも改善するため、船上でも安全に火を扱ってお茶やスープを作れる「不動火球」の魔道具を特注して持ち込んだ。
・激しい揺れの中で箱型ベッドに寝る苦痛を和らげるため、ハンモックの導入を考案するなど、独自の視点で快適な航海を目指した。

まとめ

帆船での航海は、北大陸の圧倒的な造船・航海技術に南大陸の魔道具という技術が合わさることで、不可能に近かった安全な大陸間貿易の道が開かれる過程を示している。同時に、現代日本の価値観を持つ善治郎が、過酷な異世界の船旅においてもいかに生活の質を向上させようと奮闘するかが描かれる、本作ならではの興味深いエピソードとなっている。

無人島への上陸

『理想のヒモ生活』における「無人島への上陸」は、過酷な大陸間航海の中で訪れた貴重な休息のひとときであり、善治郎の瞬間移動が船員たちに思わぬオアシスをもたらすエピソードとして描かれている。

無人島への上陸について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 40日ぶりの陸地発見と上陸

・ワレンティア港を出港して40日以上が経過し、船員たちも善治郎も陸地を恋しく思っていた頃、黄金の木の葉号の見張りが島を発見する。
・フレア姫によると、それは往路でも立ち寄った小島である可能性が高いとのことであった。
・一行は小舟で島へと渡るが、外海の荒々しい波を間近で見た善治郎やルクレツィアは、上陸するまでに相当な恐怖を味わうことになる。

2. フレア姫의 補給計画と生態系の変化

島に上陸した船員たちは、すぐに野営や水源の確保に動く。

・実はフレア姫は、往路でこの島に雄雌の山羊を放ち、成長の早い作物の種を蒔いていた。
・その結果、島には山羊が定着して繁殖しており、彼らは若い山羊を捕らえて新鮮な食料を得ることに成功する。
・現代日本の価値観を持つ善治郎は、外来種の持ち込みによる生態系破壊だと内心で戦慄するが、命がけの航海をする彼らにとっては、船員たちの英気を養うための当然の処置であった。

3. 善治郎の瞬間移動による一時帰国と差し入れ

・島に2、3泊の猶予があると知った善治郎は、島の特徴的な場所をデジタルカメラで撮影し、それをイメージの補助として瞬間移動を発動させる。
・一人でカープァ王国の王都へ一時帰国した。
・翌日、善治郎は大量の麦酒が入った大樽や、新鮮な肉などを背負って島に帰還する。
・長旅に疲弊していた船員たちはこの思いがけない差し入れに大歓声を上げ、その日の夜は無人島で盛大な酒盛りが開かれることになった。

4. ルクレツィアへの贈り物と休息のひととき

・王都に一時帰国した際、善治郎は自身の入浴や散髪を済ませてリフレッシュしていた。
・一方で、荒れた海の影響で何日も体を拭けず、身だしなみを気にしていたルクレツィアに対し、善治郎は王都から持ち帰った髪用の洗浄液、香油、そしてアウラのお墨付きである青銅製のヘアピンを贈る。
・翌日から再び過酷な船上生活に戻ることに憂鬱さを感じ合いながらも、二人は陽気な宴会の雰囲気の中で休息の時間を楽しんだ。

まとめ

「無人島への上陸」は、過酷な大陸間航海における心身の回復を描いたエピソードである。フレア姫の先を見据えた補給計画の成果と、善治郎の瞬間移動による規格外の物資調達が組み合わさることで、過酷な船旅を乗り切るための活力を船員たちに与える、本作ならではのファンタジーと現実的な航海の苦労が入り交じる展開となっている。

北大陸への入国

『理想のヒモ生活』における「北大陸への入国」は、過酷な大陸間航海を乗り越えた善治郎たちが、北大陸の進んだ技術と独自の文化に触れ、新たな外交とトラブルに巻き込まれていく重要なエピソードとして描かれている。

北大陸への入国について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 目的地「ポモージエ港」の選択と発展ぶり

黄金の木の葉号は無人島を出立してから43日後、北大陸の「ポモージエ港」に到着した。

・北大陸南部は教会の勢力が強いため寄港を避け、信仰の自由を認めている「ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国」の港が選ばれた。
・ポモージエ港は、カープァ王国最大のワレンティア港を大きく上回る規模を誇る。
・3本マストや4本マストの大型帆船が複数停泊しているなど、北大陸の圧倒的な造船技術と国力を見せつけた。

2. 善治郎の非公式な立場とフレア姫の配慮

入国にあたり、フレア姫はウップサーラ王国の第一王女として堂々と身分を明かして高級宿「古の森亭」に滞在し、入港手続きや領主との調整に奔走した。

・善治郎は北大陸の国々と国交がないため、表向きは自称王族という不安定な立場であった。
・しかし、フレア姫が常に善治郎を自らより上位の王族として敬う態度を示した。
・これにより、ポモージエ侯爵からも非公式ながら他国の王族として扱うという確約を引き出すことに成功した。

3. 現地通貨の調達と部下への休息

久しぶりの揺れないベッドや北大陸の食事を満喫した善治郎であったが、現地通貨を持っていなかった。

・公式な交換レートがないため正式な両替は断られたが、宿の支配人にカープァ王国の大判銀貨を個人的なコレクターアイテムとして買い取らせるという機転で、現地通貨の調達に成功する。
・善治郎はこの資金を護衛や侍女たちに配り、過酷な船旅の疲れを癒やすための特別休暇を与えた。

4. 隻眼の傭兵およびヤン司祭との遭遇

宿の食堂で、善治郎は隻眼の傭兵ヤンから声をかけられる。

・彼は雇い主であるヤン司祭の護衛として、見慣れない南大陸人の善治郎を観察しに来たのであった。
・ヤン司祭は教会の司祭でありながら、特定の派閥に属さない柔軟な思考の持ち主であった。
・善治郎は彼と面会して北大陸の宗教や文化について教えを受けるが、この出会いが直後に判明する「北方竜爪騎士修道会(騎士団)」によるポモージエ侵攻という大事件に、善治郎たちを巻き込んでいくきっかけとなる。

まとめ

北大陸への入国は、長きにわたる航海の終着点であると同時に、カープァ王国と北大陸の国力・文化の決定的な違いを善治郎が肌で感じるエピソードである。国交のないアウェーの地で慎重に立ち回る善治郎であったが、持ち前の気配りや機転で状況を乗り切りつつも、到着早々に北大陸特有 of 宗教的・軍事的なトラブルの渦中へと足を踏み入れていくこととなる。

ヤン司祭との対面

『理想のヒモ生活12』における「ヤン司祭との対面」は、善治郎が北大陸の宗教事情や独自の価値観に触れ、同時にポモージエの街を揺るがす重大な危機が明らかになる、物語が急展開を迎える重要なエピソードとして描かれている。

ヤン司祭との対面について、以下の4つのポイントから解説する。

1. ポモージエ侯による紹介と初対面

ポモージエ侯爵が主催する歓迎の夜会にて、善治郎はついにヤン司祭との初対面を果たす。

・緑色の簡素な祭服をまとったヤン司祭は、細い目元が特徴的な穏やかな中年男性であった。
・傭兵ヤンや孤児ヤンから強い信頼を寄せられていたため、強いオーラを放つ人物を想像していた善治郎は少し戸惑う。
・また、彼の身体から魔力を全く感じないことに不思議な違和感を抱いた。

2. 教会におけるヤン司祭の柔軟な立場

善治郎が北大陸で強い影響力を持つ「教会」について尋ねると、ヤン司祭は使徒派(牙派)と勇者派(爪派)という二大宗派の成り立ちを説明する。

・自身は形式上は爪派の司祭でありながら、状況に応じて両方の教えを用いる「異端」的な立場であると明かした。
・普段は大学の竜学部長として活動しており、自らの信じる教えを絶対としない、柔軟で客観的な思考を持つ人物であることが示される。

3. 孤児ヤンとの面会と侵攻計画の発覚

善治郎から孤児ヤンが訪ねてきていることを聞いたヤン司祭は、即座に面会を決断し、善治郎も立会人として同席することになる。

・再会した孤児ヤンから、騎士団がポモージエを攻めるつもりだ、という警告を聞く。
・ヤン司祭は、ポモージエの歴史的背景と、農村出身の少年が知るはずのない情報が一致していることから、その奇襲計画に高い信憑性があると判断した。
・これにより、早急な対応に乗り出すこととなる。

4. 魔力を持たない体質と言霊の例外

後日、善治郎がヤン司祭が周囲から侮られる理由について尋ねると、異端であることに加え「生まれつき魔力が全くない」体質であることが原因だと語られる。

・通常、魔力がない者には善治郎の翻訳魔法である「言霊」は機能しないため、本来であれば二人の言葉が通じることはない。
・しかし、ヤン司祭は胸元のものを握り、司祭としての何らかの恩恵を利用した。
・これにより、例外的に善治郎との会話を成り立たせていたことが判明する。

まとめ

「ヤン司祭との対面」は、魔力を持たないという北大陸では大きなハンデを負いながらも、柔軟な思考と深い慈悲で人々に寄り添うヤン司祭の特異な人物像が描かれるエピソードである。また、彼を通じて孤児ヤンの警告が真実として受け止められ、善治郎やフレア姫が騎士団のポモージエ侵攻という国家間の軍事的な争いに巻き込まれていく最大の契機となっている。

騎士団の侵攻阻止

『理想のヒモ生活12』における「騎士団の侵攻阻止」は、孤児の少年の命がけの情報提供から始まり、王女の政治的野心、そして凄腕の傭兵の戦術と未知の新兵器によって成し遂げられた、本巻のクライマックスとなる重要エピソードとして描かれている。

騎士団の侵攻阻止について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 孤児ヤンによる奇襲計画の報告

事の発端は、故郷の村を騎士団に滅ぼされた孤児の少年ヤンが、彼らのポモージエ奇襲計画を偶然耳にしたことであった。

・騎士団は船の手配や内部の根回しによる実効支配を目論んでいた。
・ヤンは恩人であるヤン司祭に伝えるため、遠路はるばるポモージエまでやってくる。
・彼の必死の訴えは、善治郎やフレア姫の仲介によってポモージエ侯爵とアンナ王女に届けられ、街は間一髪で危機を察知することに成功した。

2. アンナ王女の野心と迎撃の決定

報告を受けたアンナ王女は、奇襲が露見した時点でポモージエの防衛自体は事実上成功したと判断しながらも、あえてこちらから打って出て迎撃する決断を下す。

・その最大の目的は、ポモージエを戦火に巻き込まずに騎士団を撃退したという実績を作ることいであった。
・彼女自身が次期国王を決める「国王自由選挙」を勝ち抜くための布石とするためである。
・そのために、彼女はヤン司祭の護衛であった隻眼の傭兵ヤンを一時的に自らの軍事顧問兼指揮官として雇い入れ、ポモージエ侯爵が雇っていた傭兵たちの指揮を任せた。

3. 傭兵ヤンの戦術と布陣

アンナ王女から千二百の傭兵を預けられた傭兵ヤンは、騎士団が魔法による港の防衛を警戒して離れた地点から上陸し、陸路で奇襲をかけてくると予測する。

・彼は練度の低い傭兵隊の弱点を補うため、あえて森を背にした見晴らしの良い平地に陣を構えた。
・地面に穴を掘り障害物を設置して騎兵の足を鈍らせる。
・これは、被害を最小限に抑えつつ敵に奇襲の失敗を悟らせるための布陣であった。

4. 新兵器である笛による劇的な勝利

陣形を整えて突撃してきた騎士団の騎兵千に対し、傭兵ヤンは弓兵の射撃後に、切り札である「笛」隊を投入した。

・この笛とは黒色火薬を用いた銃と思われる新兵器であり、三十人による一斉射撃が放たれた。
・実際の殺傷力以上に、未経験のすさまじい爆音と白煙、そして匂いによって騎士団の軍馬がパニックに陥り、隊列は完全に崩壊する。
・そこへ傭兵たちが突撃をかけることで勝敗は決し、騎士団はポモージエを攻めることなく敗走を余儀なくされた。

まとめ

「騎士団の侵攻阻止」は、一人の孤児の勇気ある行動が、王族の野心や傭兵の戦術と結びつき、結果的に大都市ポモージエを救うという劇的な展開を描いている。同時に、戦の決定打となった新兵器(火薬兵器)の存在は、北大陸の技術的進歩が今後の魔法文明や国家間のパワーバランスにどのような影響を与えるかという、善治郎に新たな危機感を抱かせる重要な転換点となっている。

『理想のヒモ生活12』における「新兵器火薬の発見」は、北大陸の進んだ技術がもたらす新たな戦争の形と、それが魔法文明の南大陸に及ぼすであろう脅威を善治郎が察知する、今後の展開において極めて重要なエピソードとして描かれている。

新兵器火薬の発見について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 傭兵ヤンの匂いと新兵器である笛の正体

善治郎は、宿で接触してきた隻眼の傭兵ヤンの身体から花火の匂い(火薬の匂い)を感じ取り、彼が戦場で火薬兵器を使用するのではないかと推測した。

・その予感を確かめるため、フレア姫の協力を得て黄金の木の葉号の戦闘員を観察役としてヤン傭兵隊へ送り込む。
・結果として、ヤンの子飼いの部隊である笛隊が、黒く長い棒状の武器(銃)から爆音と白煙を放った。
・これにより騎士団の軍馬を恐慌状態に陥らせて勝利したことが報告され、善治郎の推測が裏付けられた。

2. 北大陸における火薬兵器の歴史と弱点

フレア姫によると、北大陸において火薬の存在自体は知られており、過去にも戦場で利用しようとする試みは何度もあった。

・これまでに登場した火薬兵器は城攻めなどに使われる大きく重い大砲のようなものが主流であった。
・火薬の保管場所を敵の魔法使いに遠距離から着火され、自軍に甚大な被害をもたらしてしまうという致命的な弱点を抱えていた。
・その弱点ゆえに、これまでの実用化は頓挫していたと語られる。

3. 歩兵携行による費用対効果の逆転

過去の失敗とは異なり、今回ヤン傭兵隊が用いたのは、歩兵三十人が個別に携行できるサイズの武器であった。

・フレア姫と善治郎の分析により、広範囲に分散した歩兵数十人の火薬を爆発させるためだけに、育成が困難で国家にとって貴重な大魔法使いを前線の危険に晒すのは費用対効果が低すぎる、という事実が浮き彫りになる。
・これにより、魔法使いによる着火という火薬最大の弱点が、戦術と運用規模の変化によって克服されたことが示唆された。

4. 製鉄技術の進歩と善治郎の危機感

善治郎は、個人用の銃が実戦配備できる数を揃えられるようになった背景には、北大陸における製鉄・鉄器の生産量増大という技術的な進歩があるのではないかと推測する。

・この大量生産される新兵器に対抗する手段として、善治郎は双王国の精霊乙女召喚で作る火のゴーレムと、カープァ王国のビー玉による魔道具量産化を組み合わせるという対抗策にまで思考を飛躍させた。
・北大陸における技術や制度の急速な発展が、いずれ海を越えて南大陸の魔法的優位性やパワーバランスを脅かす可能性に、善治郎は王族としての強い危機感を抱くことになった。

まとめ

「新兵器火薬の発見」は、単に目新しい武器が登場したというだけでなく、魔法という絶対的な優位性を持つファンタジー世界において、技術の進歩と費用対効果という現実的な概念が魔法の壁を乗り越える瞬間を描いている。これは善治郎に北大陸の真の脅威を自覚させ、今後の南大陸・北大陸間の外交や技術競争がさらに激化していくことを予感させる決定的な出来事となっている。

アンナ王女の野望

『理想のヒモ生活12』における「アンナ王女の野望」は、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の王女であるアンナが次期国王の座を勝ち取り、国家体制の弱点を克服して強大な海軍を構築するという遠大な国家構想と、そのためのしたたかな政治的策略を描いた重要なテーマである。

アンナ王女の野望について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 国王自由選挙への挑戦と実績作り

アンナ王女の最大の目的は、貴族の投票によって次の王を決める「国王自由選挙」を勝ち抜き、次期国王になることである。

・共和国では王族であっても女性が王になることへの固定観念が根強いため、彼女はそれを打破するための明確な実績を必要としていた。
・そのため、騎士団によるポモージエ奇襲の情報を得ると、防衛の実績を自らの手柄とするべく動く。
・有翼騎兵として自ら最前線に駆けつけるという大胆な行動に出た。

2. 即応性の獲得と王家直属海軍の創設

王位を目指す根本的な理由は、多数の貴族が国政に関わる現在の政治体制が抱える「想定外の事態に対する即応性の欠如」という弱点を危惧しているためである。

・急速に進歩する造船・航海技術などの海洋事情に国として迅速に対応できる体制を目指す。
・そのために海軍力を増強し、その一部を王家の直轄戦力として組み込むことを構想している。

3. 大貴族ポモージエ侯爵の支持獲得

海軍強化の構想を実現するには、立法府で独自の派閥を形成し、共和国最大の港と海軍力を有する大貴族・ポモージエ侯爵の支持が不可欠であった。

・今回のポモージエ防衛の成功は、侯爵を騎士団の脅威から救って恩を売る絶好の機会となった。
・彼を自らの王位選出への強力な後ろ盾にするための重要な布石でもあった。

4. 他国の王族すら利用するしたたかな政治手腕

野望の実現のため、彼女はたまたまポモージエに滞在していた他国の王族をも巧みに利用した。

・善治郎を「実権を持つ女王の伴侶」として自国の貴族たちにアピールすることで、女性国王誕生への心理的ハードルを下げようと画策する。
・さらに、ウップサーラ王国のフレア姫を戦勝パーティーに同席させ、盛大に見送ることで、騎士団に対してウップサーラ王国が参戦する可能性を意識させる牽制材料として利用した。

まとめ

「アンナ王女の野望」は、祖国の未来を憂う強い意志と、目的達成のためには南大陸の王配や他国の王女すらも自らの盤面に組み込む、冷徹で老獪な政治家としての顔を浮き彫りにしている。彼女のしたたかな駆け引きと遠大な構想は、北大陸の先進的な政治制度や発展する海洋技術の脅威とともに、善治郎に強い警戒心を抱かせることになった。

ヒモ生活11巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活13巻レビュー

登場キャラクター

カープァ王国

アウラ一世

カープァ王国の女王であり、善治郎の妻である。国を統治する実権を持つ女王として、各国の王族から注目を集めている。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国・女王。
・物語内での具体的な行動や成果
 本編での直接的な登場はないが、善治郎に北大陸の撮影を命じていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アンナ王女から、実権を持つ女王が存在する生きた証拠として政治的に利用される。

善治郎・カープァ

現代日本から召喚されたカープァ王国の王配である。争い事を好まない小市民的な性格だが、王族としての自覚と危機感を持っている。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国・王配。
・物語内での具体的な行動や成果
 『黄金の木の葉号』でポモージエ港に到着し、情報収集を実施する。孤児ヤンとヤン司祭の面会を仲介し、アンナ王女の真の目的を見抜いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 非公式ながら南大陸の王族として遇され、北大陸の進んだ技術に対して強い危機感を抱くことになった。

アマンダ

後宮の侍女長である。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国後宮・侍女長。
・物語内での具体的な行動や成果
 直接の登場はないが、ドロレスの回想の中で言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

イネス

後宮の清掃担当責任者であり、善治郎の世話役である。常に穏やかで落ち着いた佇まいを崩さない。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国後宮・清掃担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎に同行して北大陸へ渡った。過酷な船旅でも取り乱さず、ドロレスにハーブティーを振る舞っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

マルグレーテ

善治郎に同行した侍女である。北大陸人に似た容姿を持ち、密偵を兼ねている。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 休暇中にポモージエの街で孤児ヤンと接触した。少年の真剣な訴えを聞き、ヤン司祭との仲介を引き受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 下手な騎士よりも高い戦闘技術を有している。

ドロレス

後宮に勤める若い侍女である。長身でスタイルが良く、自身を幸運な人間だと自覚している。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 休暇を利用してポモージエの街で買い物を楽しみ、レース編みを習った。女王アウラの命を受け、携帯音楽プレーヤーで港や街並みを撮影する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 実家は歴史ある騎士貴族である。

フェー

後宮の侍女である。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 本編に直接の登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ドロレスから次の同行者候補として推薦された。

レテ

後宮の侍女である。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 本編に直接の登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ドロレスから次の同行者候補として名前が挙げられた。

ヴァネッサ

後宮の調理担当責任者である。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国後宮・調理担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
 本編に直接登場はしていない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 後宮で乳製品を問題なく口にする人物として回想された。

ナタリオ

善治郎の護衛を務める騎士である。褐色肌を持つ。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国・騎士。護衛部隊のまとめ役。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎に同行し、ポモージエで護衛任務を遂行した。ドロレスの護衛として優秀な兵士を選抜する役割を担う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

シャロワ・ジルベール双王国

ルクレツィア・ブロイ

ブロイ侯爵家の養女である。善治郎の側室入りを目指しており、社交の場では天真爛漫な振る舞いを見せる。

・所属組織、地位や役職
 ブロイ侯爵家・養女。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎と共にポモージエ港に到着し、戦勝パーティーに出席した。ドルヌイ侯爵のエスコートを受け、彼からガラス鏡を贈られる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白の帝国の付与魔法に関する話題が出た際、密かに顔色を悪くした。

フローラ

ルクレツィアの侍女である。

・所属組織、地位や役職
 ルクレツィアの侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 直接的な行動の描写はないが、ルクレツィアに同行して北大陸へ渡った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過酷な航海で疲労していることが示唆された。

フィクリヤ・アニミーヤム

アニミーヤム公爵家の養女である。

・所属組織、地位や役職
 アニミーヤム公爵家・養女。
・物語内での具体的な行動や成果
 本編に直接の登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 善治郎の回想の中で、精霊乙女召喚の魔法を使う人物として言及された。

ウップサーラ王国・『黄金の木の葉号』

グスタフ五世

ウップサーラ王国の現国王である。フレア姫の父親であり、為政者として国益を重視する。

・所属組織、地位や役職
 ウップサーラ王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 本編に直接の登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 善治郎がフレア姫の側室入りを打診する相手として言及された。

フレア・ウップサーラ

ウップサーラ王国の第一王女である。決断力があり、善治郎の側室となることを目指している。

・所属組織、地位や役職
 ウップサーラ王国・第一王女。『黄金の木の葉号』船長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ポモージエ港への入港手続きを行い、ポモージエ侯爵との緊急面会を取り付けた。アンナ王女に利用され、他国を牽制する材料とされる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

スカジ

フレア姫の側近を務める長身の女戦士である。

・所属組織、地位や役職
 ウップサーラ王国・フレア姫の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 ポモージエ領主館との調整を行い、結果を善治郎に報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白兵戦の最中に魔法が使える人物として言及された。

マグヌス

『黄金の木の葉号』の副長である。実質的な船長として船の指揮を執る。

・所属組織、地位や役職
 『黄金の木の葉号』・副長。
・物語内での具体的な行動や成果
 無人島への接近や停泊の指揮を行った。緊急の出航準備に遅れた船員達に対して激怒する姿を見せる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 威嚇する熊のような凶相を持っている。

ボリス

『黄金の木の葉号』の船員である。

・所属組織、地位や役職
 『黄金の木の葉号』・船員。見張り担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 見張り台から無人島を発見し、船全体に知らせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 見間違いであれば罰を受けると他の船員からからかわれた。

ラルフ

『黄金の木の葉号』の船員である。

・所属組織、地位や役職
 『黄金の木の葉号』・船員。
・物語内での具体的な行動や成果
 海面の色が変わったら知らせるよう、マグヌス副長から命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

トマス

『黄金の木の葉号』の船員である。

・所属組織、地位や役職
 『黄金の木の葉号』・船員。
・物語内での具体的な行動や成果
 海面の色が変わったら知らせるよう、マグヌス副長から命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国

アンナ・クラクフ

ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の王女である。次期国王の座を狙う野心家であり、高い政治手腕を持つ。

・所属組織、地位や役職
 クラクフ王家・王女。有翼騎兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 騎士団の侵攻を察知してポモージエに駆けつけ、傭兵ヤンを指揮官として雇い入れた。戦勝パーティーを主催し、見事な演説で貴族達の熱狂を引き出す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 飛行魔法の使い手であり、他国の王族を政治的に利用するしたたかさを見せた。

ウーカシュ・グダニスキ

ポモージエの領主を務める大貴族である。中年太りが始まっているが、品の良い紳士として描かれている。

・所属組織、地位や役職
 ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国・ポモージエ侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎を他国の王族として遇し、歓迎の夜会を開いた。フレア姫から危機を知らされ、港と城門の封鎖などの防衛体制を迅速に整える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 共和国最大の海軍と港を保有し、強い影響力を持つ。

ツェザリ

ツァプレスキ家当主の初老の貴族である。かつてウップサーラ王国で大使を務めていた。

・所属組織、地位や役職
 ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国・ツァプレ子爵。元外交官。
・物語内での具体的な行動や成果
 歓迎の夜会でフレア姫や善治郎と会話を交わした。共和国の政治制度をカープァ王国へ導入するよう勧める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 巧みな話術で、善治郎から情報を引き出すことに成功した。

エウゲニウシュ

共和国の古参貴族であるホルショフスキ家当主である。有翼騎兵として活躍している。

・所属組織、地位や役職
 ホルショフスキ家当主。有翼騎兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 妻のテレサと共に天馬に乗って戦勝パーティーへ駆けつけた。善治郎に天馬を利用した移動の利点について語る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 紅衣貴族として、公式の場で王家と同じ赤い衣装をまとう特権を持っている。

テレサ

エウゲニウシュの妻である。夫の操縦する天馬に同乗するほどの度胸を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ホルショフスキ家当主夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 夫と共に天馬に乗って戦勝パーティーに出席し、善治郎達と会話を交わした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

ドルヌイ

ポモージエ侯爵の叔父にあたる初老の紳士である。好々爺とした雰囲気を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国・侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦勝パーティーでルクレツィアのエスコート役を務めた。彼女に高価なガラス鏡を贈り、善治郎に共和国の建国神話を語る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

テイラナ公国

ジェルジ二世

テイラナ公国の新たな公王である。

・所属組織、地位や役職
 テイラナ公国・公王。
・物語内での具体的な行動や成果
 本編に直接の登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エウゲニウシュの会話の中で、即位時の出来事が語られた。

『教会』・傭兵・民間人

ヤン司祭

『教会』の司祭であり、特定の派閥に属さない柔軟な思考の持ち主である。細い目元で穏やかな笑みを浮かべている。

・所属組織、地位や役職
 『教会』・司祭。大学の竜学部長。
・物語内での具体的な行動や成果
 孤児ヤンと再会し、その警告を聞いてポモージエ侯爵への連絡を図った。孤児ヤンに知識や技術を身につけるよう助言し、善治郎にガラス工房の紹介状を渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 生まれつき魔力を持たないが、司祭としての恩恵で翻訳魔法を介さずに会話を成立させている。

ヤン(隻眼の傭兵)

ヤン司祭の護衛を務める隻眼の傭兵隊長である。貴族の出身であり、礼法を身につけている。

・所属組織、地位や役職
 傭兵隊長。アンナ王女の軍事顧問兼指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
 情報収集のため善治郎に接触した。アンナ王女に雇われ、新兵器である『笛』を用いて『騎士団』を迎撃し、見事に勝利を収める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヤン司祭に深く心酔しており、彼に迷惑をかけないようアンナ王女と一時的な契約を結んだ。

ヤン(孤児の少年)

故郷の村を『騎士団』に滅ぼされた孤児の少年である。年齢不相応な観察眼と度胸を備えている。

・所属組織、地位や役職
 孤児。
・物語内での具体的な行動や成果
 『騎士団』の奇襲計画を偶然耳にし、遠路はるばるポモージエまでやってきた。ヤン司祭の助言を受け、王女への褒美として知識や技術を求めることを決意する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 マルグレーテの歩き方から、彼女が護衛役であることを見抜いた。

ヤーノシュ

無名の名指揮官として名が挙げられた人物である。

・所属組織、地位や役職
 不明。
・物語内での具体的な行動や成果
 本編に直接の登場はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 傭兵ヤンの会話の中で、過去の苦い記憶とともに言及された。

ヒモ生活11巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活13巻レビュー

展開まとめ

プロローグ 山羊島

小島への上陸と一時帰国

島の発見に船員達が沸き立った

『黄金の木の葉号』の見張りが島を発見し、船員達は長い航海の末に陸へ上がれる可能性に沸き立った。ワレンティア出港から四十日以上が経っていたため、船員達だけでなく善治郎も上陸を強く望んでいた。

船上生活に慣れた善治郎とルクレツィア

善治郎は揺れる船内や縄梯子の移動にある程度慣れていたが、甲板ではまだ手すりが必要だった。ルクレツィアは船上でルーシーと呼ばれるようになり、善治郎との距離も少し縮まっていたが、身だしなみを整えられないことを気にして距離を取っていた。

小島への接近と上陸

フレアは発見された島が往路にも立ち寄った小島である可能性が高いと告げた。マグヌス副長の指示で『黄金の木の葉号』は慎重に島へ近づき、船底を傷つけないよう注意しながら停泊した。善治郎達は小舟で島へ渡ったが、外洋の波に強い恐怖を覚えた。

無人島での補給準備

上陸後、船員達は野営場所や水源の確保に動いた。フレアは、往路で山羊や作物の種を島に残していたことを説明し、その成果として山羊が定着していたため補給に役立つと語った。船員達は若い山羊を捕まえ、船の山羊を潰して食事にする予定だった。

善治郎の一時帰国

二泊か三泊の余裕があると知った善治郎は、『瞬間移動』で一泊二日の一時帰宅を申し出た。善治郎は島の特徴的な場所をデジタルカメラで撮影し、それを手がかりにカープァ王国王都へ転移した。

善治郎の帰還と酒の持ち込み

翌日、善治郎は大量の荷物を抱えて無人島へ戻った。背負ってきた大樽には麦酒が入っており、善治郎が酒を持ってきたと告げると、船員達は大歓声を上げた。

無人島での酒盛り

その夜、船員達は焚き火を囲んで酒盛りを始めた。船員達は歌や笑い話、過去の色恋話で盛り上がり、下品ながらも楽しげな時間を過ごした。ルクレツィアはその雰囲気に赤面し、フレアは船員達と共に笑っていた。

善治郎がルクレツィアに土産を渡した

善治郎はルクレツィアに、髪用の洗浄液、香油、青銅製のヘアピンを渡した。ルクレツィアはイネスに髪を整えてもらっており、善治郎の贈り物を喜んだ。善治郎も一時帰国中に入浴や散髪を済ませていた。

再出航への憂鬱

善治郎とルクレツィアは、翌日には再び『黄金の木の葉号』へ戻ることを思い、船内生活や小舟での移動を憂鬱に感じていた。それでも二人は肉や酒を受け取り、無人島での宴会は陽気に続いていった。

第一章 三人のヤン

ポモージエ港への到着

北大陸最大級の港へ入港した

無人島を出立してから四十三日後、『黄金の木の葉号』は第一の目的地であるポモージエ港へ到着した。北大陸そのものは十日以上前に発見していたが、教会勢力の強い南方諸国への寄港を避けるため、そのまま航海を続けていた。

善治郎は早期の上陸を望んでいたものの、専門家であるフレアの判断を尊重していた。

フレアから北大陸情勢を聞いた

入港を前に、フレアはポモージエ港がズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の港であることを説明した。この国は北大陸では珍しく信仰の自由が認められており、『黄金の木の葉号』にとって利用しやすい港だった。

善治郎は港の規模や停泊している大型船の数を見て、カープァ王国最大の港であるワレンティア港を大きく上回る発展ぶりに感心していた。

善治郎は久々の休息を満喫した

入港後、善治郎達は高級宿へ宿泊した。船員達が街へ繰り出す一方で、善治郎は真っ先に入浴して旅の汚れを落とし、四十三日ぶりとなる揺れない広いベッドで昼寝を楽しんだ。

その後、北大陸風の服に着替えた善治郎は夕食へ向かった。フレアは領主館で手続きを行っており、ルクレツィアも休んでいたため、善治郎は単独で食堂を利用した。

北大陸の料理を味わった

豪華な食堂で夕食を取った善治郎は、カープァ王国では珍しいソーセージやハムなどの加工肉を堪能した。塩気は強かったものの、久しぶりの味を楽しみながら食事を進めた。

隻眼の傭兵ヤンと出会った

食後、宿の従業員を通じて同席を求める男が現れた。善治郎が了承すると、その男は小規模な傭兵部隊を率いるヤンと名乗った。

ヤンは南大陸から来た善治郎に興味を持ち、情報収集のため話しかけたと説明した。善治郎もまた、高級宿に宿泊できるほど信頼されている人物であることを評価し、会話を続けた。

傭兵の真の目的が明らかになった

会話の中でヤンは、自分が現在ある人物に雇われており、その護衛任務の一環として善治郎を観察していたことを明かした。善治郎が危険な人物ではないと判断したため、雇い主へ報告する必要はなさそうだと語った。

さらに雇い主は、自分と同じヤンという名の教会司祭であることも説明した。ヤンはその司祭が柔軟な考えを持つ人物であり、この共和国へ友好訪問に来ているのだと話した。

花火の匂いから新たな疑問を抱いた

別れ際、善治郎はヤンから漂う匂いに覚えを感じた。記憶をたどった結果、それが花火の匂いであることを思い出した。

その瞬間、善治郎は北大陸に火薬や火薬兵器が存在している可能性を意識した。南大陸や『黄金の木の葉号』では見かけなかった技術であるため、善治郎はフレアに火薬と火薬兵器の普及状況を確認する必要があると考えるのだった。

ポモージエでの自由時間

善治郎が部下達の休暇を考えた

翌朝になってもフレア姫は戻らなかった。善治郎は北大陸で目立つ外見であることや、フレア姫との連絡を考慮し、自身は宿で待機することを選んだ。

その代わり、長旅の疲れを癒やしてもらうため、部下達へ休暇を与えることを考えた。

現地通貨の調達に成功した

善治郎は宿の支配人を呼び、この国で使える通貨への両替を相談した。

カープァ王国の大判銀貨は高く評価されたものの、両国間に公式な交換レートが存在しないため、宿としての両替は難しいと説明された。

そこで支配人は、個人の収集品として銀貨を買い取る形を提案した。善治郎はその提案を受け入れ、十分な現地通貨を手に入れた。

部下達へ休暇と小遣いを与えた

善治郎は手に入れた通貨の一部を騎士や兵士、侍女達へ配り、交代で休暇を取るよう命じた。

善治郎から離れて過ごせる時間そのものが良い気分転換になると考えていたためであり、休暇を与えられた者達は喜びを見せた。

マルグレーテが街へ出た

休暇を得たマルグレーテは宿で服を購入し、侍女服から上品なワンピースへ着替えて街へ出た。

街並みや治安の良さに感心しながら歩いていたが、その途中で薄汚れた浮浪児らしき少年が自分の後をつけていることに気づいた。

洋服店で買い物を楽しんだ

マルグレーテは高級洋服店へ入り、店員の勧めを受けながら布地を見て回った。

最終的に後宮の侍女達への土産としてハンカチを人数分購入し、自分用にも赤い亜麻布と白い絹布を買った。

満足して店を出たが、少年はまだ近くで様子をうかがっていた。

少年を誘い出した

少年に明確な目的があると判断したマルグレーテは、人気の少ない路地へ向かった。

すると少年はすぐに追いかけてきて声をかけた。少年は善治郎達が宿泊している古の森亭に滞在していることを確認すると、ヤン司祭にどうしても伝えたいことがあるため、取り次いでほしいと必死に頼み込んだ。

少年がヤン司祭への思いを語った

少年は、かつて自分の村に来たヤン司祭から、困ったことがあれば話を聞くと言われたことを語った。

マルグレーテは少年の言葉や態度から嘘は感じ取れず、善治郎達の北大陸での情報収集にもつながる可能性を考えた。

そこで、自分は主人へ伝言を届けるだけであり、その後は主人や司祭次第だと条件を説明したうえで、話を預かることを約束した。

少年がマルグレーテの正体を見抜いた

話の途中、マルグレーテは少年が最初に自分を見て驚いた理由を尋ねた。

すると少年は、マルグレーテの歩き方や立ち居振る舞いが普通の女性ではなく、騎士や傭兵のようだと見抜いたため、護衛役なのだと気づいたと答えた。

その洞察力にマルグレーテは驚き、少年に特別な才能を感じ取った。

少年ヤンとの別れ

最後に名前を尋ねられた少年は、自分もヤンという名だと誇らしげに名乗った。

司祭と同じ名前であることを話した少年は、そのまま軽快な足取りで去っていき、マルグレーテはその姿を見送った。

休暇中の報告と港の情報

その夜、善治郎は休暇を与えた騎士や兵士、侍女達から簡単な報告を受けた。多くは特筆すべき内容がなかったが、携帯音楽プレーヤーを預けられていた侍女が、高台からポモージエ港や街並みを撮影していた。

善治郎はその画像から、ワレンティア港を上回る港の規模や広大な街並み、堅牢な城壁、そして住民達の豊かさを読み取り、その功績を称えて褒美を約束した。

マルグレーテの報告を善治郎が受け止めた

続いてマルグレーテは、孤児の少年ヤンと接触した経緯を詳しく報告した。

善治郎は職務の範囲を超えた行動であることを認めつつも、孤児の少年が司祭へ伝えようとしている内容には気になる点が多いとして、今回は不問とした。

さらに少年の話や、近隣にその少年の故郷と思われる村が存在しないことから、少年は遠方からやって来た可能性が高いと推測した。そして危険を承知で司祭に会おうとしている以上、何らかの重大な問題を抱えているのだろうと考えた。

善治郎がヤン司祭への仲介を決めた

善治郎は自分に直接の責任はないと理解しながらも、助けを求める声を聞いて何もしないことに後ろめたさを感じた。

そのため翌日、傭兵ヤンを通じてヤン司祭へ話を伝えることを決めた。マルグレーテはその判断に安堵した様子を見せた。

傭兵ヤンとの再会

翌朝、善治郎は宿で傭兵ヤンと会い、孤児の少年の件を説明した。

しかしヤン司祭はまだ領主館で歓待を受けており、宿には戻っていなかった。善治郎は事情を説明し、少年の言葉をヤン司祭へ伝えてほしいと頼んだ。

傭兵ヤンは快く了承し、ヤン司祭は普段から身分の低い者の訴えにも耳を傾ける人物であると語った。

ヤン司祭への警戒と興味

善治郎は、孤児の少年が一度会っただけで深く信頼していることや、傭兵ヤンが短期間で強く心酔していることから、ヤン司祭には人を惹きつける特別な力があるのだろうと考えた。

同時に、その影響力の大きさに警戒心も抱いた。

領主館からの招待

その後、フレア姫の側近であるスカジが宿へ戻り、ポモージエ領主との調整が完了したことを報告した。

善治郎は南大陸の王族として非公式に認められ、領主館への招待を受けることとなった。また、歓迎の夜会にはヤン司祭も出席する予定だと知らされ、善治郎はそこで直接会う機会を得られると判断した。

夜会への準備とルクレツィアへの配慮

歓迎会では善治郎がフレア姫のパートナーとして振る舞う必要があるため、ルクレツィアは別行動となることが説明された。

ルクレツィアは不満を表に出さず理解を示した。善治郎も宿に残る彼女のために護衛や侍女を配置し、自身は最小限の供を連れて領主館へ向かうことを決めた。

フレア姫との再会

領主館へ到着した善治郎は、数日ぶりにフレア姫と再会した。

フレア姫は善治郎の立場が非公式ながら王族として扱われることになった経緯を説明し、夜会ではポモージエ侯が善治郎を自分より高位の人物として紹介するため、善治郎は普段通りに振る舞えばよいと伝えた。

善治郎はその説明に納得し、夜会への参加を了承した。

ポモージエ侯との面会

その後、ポモージエ侯ウーカシュ・グダニスキが自ら待合室を訪れ、善治郎へ挨拶した。

善治郎も礼を返し、室内の暖かさや北大陸の暮らしについて当たり障りのない会話を交わした。

ヤン司祭について尋ねる

会話の中で善治郎はヤン司祭について尋ねた。

ポモージエ侯は、ヤン司祭が現在も館に滞在しており、夜会にも出席予定であると答えた。

さらにヤン司祭の人物像を問われると、一言では語れない人物だと前置きしたうえで、良くも悪くも山のようであり、同時に嵐のような人物であると評した。

その評価には複雑な感情が込められており、善治郎はヤン司祭への関心をさらに強めたのであった。

夜会の開催と善治郎の立場

その夜、予定通り夜会が開かれた。メインゲストとしてフレア姫が紹介され、そのエスコート役として善治郎も名前のみ紹介された。

ポモージエ侯はフレア姫を王族として敬いながら、善治郎をそれ以上の貴人として扱った。その意図を理解した出席者達も、善治郎をフレア姫以上の高位者として遇した。

善治郎が見た共和国の豊かさ

善治郎は会場を見渡し、この国の豊かさを実感した。

魚や肉だけでなく多種多様な野菜や果物が並び、香辛料も使われていたため、この国が高い農業生産力と広範な交易網を持つことを理解した。

さらに銀製食器や色ガラスのグラス、精巧な磁器なども目に入り、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の国力と交流範囲の広さを改めて認識した。

フレア姫と旧知の貴族の再会

会場では、かつてウップサーラ王国で大使を務めていたツァプレ子爵ツェザリがフレア姫に声をかけた。

フレア姫は曖昧に知ったかぶりをせず、正直に覚えていないと答えたうえで名前を尋ねた。ツェザリの説明を受けると、大使時代の特徴から記憶をたどり、再会を喜んだ。

善治郎とツェザリの政治談義

フレア姫から紹介を受けた善治郎は、ツェザリと会話を交わした。

ツェザリは共和国の政治制度に理解を示す善治郎を評価し、自国への導入を勧めた。しかし善治郎は、議会政治や選挙君主制は高度な人材と知的水準を必要とするため、現状のカープァ王国には適さないと考えを述べた。

二人の会話は軽妙に続いたが、善治郎はいつの間にか相手の話術に引き込まれ、想定以上に話してしまったことに気付いた。

外交官の話術に感心する善治郎

ツェザリは善治郎が警戒を取り戻したことを察すると、自然な形で会話を切り上げて去っていった。

善治郎は情報を引き出されながらも不快感を抱かず、高度な会話術と外交手腕に感心した。

夜会の料理を楽しむ

その後、善治郎とフレア姫は料理や飲み物を楽しんだ。

フレア姫は北大陸の食材が善治郎の口に合うか気遣ったが、善治郎は苦手な食べ物がほとんどないと答えた。

また、給仕から酒や飲み物を勧められた善治郎は、酔うことを避けるため白葡萄酒ではなくライム風味の炭酸水を選んだ。

ポモージエ侯による紹介

食事を楽しんでいた善治郎達のもとへ、ポモージエ侯が再び姿を見せた。

侯爵は夜会を楽しめているか確認した後、紹介したい人物がいると告げた。善治郎はその人物の正体を察し、紹介を受けることを了承した。

ヤン司祭との初対面

ポモージエ侯が後ろに控えていた男を前へ導き、その人物をヤン司祭として紹介した。

緑色の簡素な祭服をまとったヤン司祭は、穏やかな笑みを浮かべながら善治郎へ挨拶した。

こうして善治郎は、以前から関心を抱いていたヤン司祭とついに対面を果たしたのであった。

第二章 訴える者、訴えを聞く者

ヤン司祭との対話

ヤン司祭は細い目元が特徴的な穏やかな中年男性であった。善治郎は、傭兵ヤンや孤児ヤンが強く慕う人物という印象との違いに戸惑いながらも、不思議な違和感を覚えていた。

二人は互いの身の上について語り合い、ヤン司祭は首都カレルの貧民街出身であることを明かした。善治郎はその経歴に敬意を示し、和やかな雰囲気の中で会話を続けた。

『教会』の教えについての説明

善治郎は北大陸との交易を見据え、『教会』について知りたいとヤン司祭に頼んだ。

ヤン司祭は、真竜を信仰対象とすることが『教会』の根本であると説明した。また、精霊信仰で使われる古代竜族という呼称ではなく、真竜と呼ぶ方が望ましいと語った。

さらに北東部の聖地の森や、真竜にまつわる伝承についても説明し、伝承や教えは人から人へ、あるいは時代を経る中で変化していくものだと語った。

『牙派』と『爪派』の成り立ち

ヤン司祭は『教会』が『使徒派(牙派)』と『勇者派(爪派)』の二派に分かれていると説明した。

真竜が旅立つ際、人類を導くために牙から使徒を、爪から勇者の武具を生み出したという教えがあり、使徒の言葉を重視する者が牙派、勇者の行いを重視する者が爪派となったのである。

両者は同じ教えを共有しながらも、伝承の解釈の違いによって別々の宗派として成立していた。

ヤン司祭の立場

善治郎がどちらの派閥に属するのか尋ねると、ヤン司祭はどちらにも与しないと答えた。

使徒の言葉も勇者の行いも、人々を導くためのものである以上、状況に応じて両方を用いるべきだというのが彼の考えであった。

形式上は爪派の司祭でありながら、普段は大学の竜学部長として活動していることも明かした。そのため、自身の見解はあくまで知識として受け取ってほしいと語った。

孤児ヤンの話題

善治郎は本題として、孤児ヤンについて尋ねた。

最初は思い当たらなかったヤン司祭だったが、滅びた村の出身であるという情報から、シヒイェンテ・ラス村の少年である可能性に思い至った。

その村は共和国北部の騎士団領との国境近くにあり、聖地の森にも近い場所だった。さらに孤児ヤンが遠く離れたポモージエまで自分に会いに来たと知り、ヤン司祭は真剣な表情になった。

孤児ヤンとの面会決定

善治郎は、孤児ヤンが放っておくと大変なことになると訴えていたことを伝えた。

ヤン司祭は迷うことなく会うと決断し、その場を去ろうとした。しかし善治郎は、自分も話の場に同席すると申し出た。

その後一行は領主館で一夜を過ごし、翌朝『古の森亭』へ戻った。

孤児ヤンの来訪

善治郎はマルグレーテに命じ、孤児ヤンを宿へ連れて来させた。

マルグレーテは少年を入浴させ、新しい服と靴を用意したため、孤児ヤンは高級宿に入れる身なりになっていた。

善治郎は孤児ヤンに事情を説明し、ヤン司祭との会話に同席する条件を伝えた。少年は渋りながらも了承した。

ヤン司祭と孤児ヤンの再会

やがてヤン司祭が訪れ、孤児ヤンと再会した。

ヤン司祭は、かつてラズベリーをくれた少年として孤児ヤンを覚えていた。孤児ヤンは自分を覚えていてくれたことを喜び、二人は再会を果たした。

その後、応接室へ移動し、善治郎は立会人として同席することになった。

孤児ヤンが伝えた警告

孤児ヤンは、自分が騎士団による侵攻計画を耳にしたと語った。

しかし最初に語られた内容は、騎士団が共和国へ攻め込むというものであり、それ自体は国境地帯では珍しい話ではなかった。

故郷を騎士団によって滅ぼされた孤児ヤンは、自分の命がけの旅が無意味だったと落胆した。

ポモージエ侵攻計画の発覚

ところが孤児ヤンが、騎士団がポモージエを攻めるつもりだと口にしたことで空気が一変した。

さらに、船の手配や立法府への根回し、旧領復活という言葉を聞いたと説明すると、ヤン司祭と傭兵ヤンは重大な事態だと判断した。

孤児ヤンは、廃村で身を隠していた際に騎士達の会話を聞いたのだと語った。

情報の信憑性の確認

ヤン司祭は、ポモージエがかつて騎士団の支配下にあり、現在でも親騎士団派の貴族が存在する歴史的背景を説明した。

そのうえで、農村出身の孤児ヤンが知るはずのない内容と一致していることから、話には十分な信憑性があると判断した。

善治郎は一度、偽情報や間諜の可能性を指摘したが、ヤン司祭はその可能性を否定した。説明を聞いた善治郎は自らの疑念を撤回し、孤児ヤンも納得した。

緊急対応の検討

情報が真実であれば一刻の猶予もないと判断され、ヤン司祭はポモージエ侯へ知らせる必要があると考えた。

しかし正規の手順では時間がかかり、途中で情報が握り潰される危険もあった。

そこでヤン司祭は、王族として遇されている善治郎の名で謁見を申し出てほしいと頼んだ。

フレア姫への協力要請

善治郎は自ら動く代わりに、より適任であるフレア姫を呼び寄せた。

事情を聞いたフレア姫は、ウップサーラ王国の立場上、この問題を見過ごせないと判断した。

彼女は自らポモージエ侯への緊急面会を申し込み、ヤン司祭、孤児ヤン、傭兵ヤンを同席させることを決めた。

一方の善治郎は中立的立場を維持するため同行せず、非常時に備えて『黄金の木の葉号』を動かせるよう準備を進める方針を示した。

ヤン司祭の秘密

フレア姫が去った後、善治郎はヤン司祭が軽んじられる理由について尋ねた。

ヤン司祭は、自身が牙派でも爪派でもない立場であることに加え、生まれつき魔力を持たないことを明かした。

善治郎はそこで、初対面から感じていた違和感の正体に気付いた。

さらにヤン司祭は、魔力がないため『言霊』の翻訳が働かず、本来なら善治郎の言葉を理解できないはずだと説明した。そのうえで、自身が司祭として得ている恩恵によって会話が成立していることを示し、穏やかな笑みを浮かべた。

フレア姫による緊急報告

フレア姫は護衛のスカジとともにポモージエ領主館を訪れ、半ば強引にポモージエ侯爵との面談を取り付けた。

孤児ヤンからもたらされた情報の内容を聞いたポモージエ侯爵は顔色を変えたが、すぐに冷静さを取り戻し、その話は辺境の村育ちの少年が作り上げられるものではなく、十分に筋が通っていると判断した。

情報提供への感謝と立場の確認

ポモージエ侯爵は貴重な情報によって危機を察知できたことに感謝を示した。

フレア姫も、ポモージエがどの勢力に属するかはウップサーラ王国にとっても無関係ではないと答えた。

ポモージエ侯爵は、その言葉から自国が掲げる信仰の自由という政策が正しかったことを実感した。

一方でフレア姫は、ウップサーラ王国の王族としてこれ以上直接介入することはできず、出航準備が整い次第『黄金の木の葉号』で出立すると伝えた。

ヤン司祭と孤児ヤンの招集

ポモージエ侯爵は、防衛のため港を封鎖する可能性があることを説明したうえで、情報提供への礼を述べた。

フレア姫は、さらに詳しい話を聞くのであればヤン司祭を呼ぶべきだと勧め、情報源である孤児ヤンも同行していることを伝えた。

侯爵は直ちに二人を呼ぶことを決め、フレア姫は侯爵の健闘を祈る言葉を残して領主館を後にした。

ポモージエ侯爵の緊急対応

フレア姫が去った後、ポモージエ侯爵は気持ちを落ち着かせると、ただちに行動を開始した。

まず『古の森亭』へ使者を送り、ヤン司祭一行を身分を問わず丁重に領主館へ招くよう命じた。

さらに王都への急報も指示し、最悪の場合には港と城門を閉鎖して籠城態勢を取ること、その際には国王に立法府を緊急招集してもらい援軍派遣の許可を得る必要があると伝えた。

こうしてポモージエ領主館は、迫る危機に備えるため慌ただしく動き始めたのであった。

第三章 有翼騎兵

ポモージエ防衛会議

船員不在で出航が遅れる

善治郎はマグヌス副長に早急にポモージエを発つ可能性を伝えたが、翌日になっても『黄金の木の葉号』の船員は全員揃わなかった。百日近い航海後の休暇で船員達が街に散っていたためであり、その結果、善治郎とフレア姫は戦場になりかねない港に足止めされていた。

有翼騎兵の到着

善治郎達が宿で待機していると、領主館上空に天馬に乗った騎兵が現れた。フレア姫はそれを有翼騎兵団だと見抜き、さらに先頭の騎兵が飛行魔法で降下したことで、クラクフ王家の血統魔法を使う王族が来たと理解した。

直後、領主館から使者が訪れ、善治郎とフレア姫は再び領主館へ招かれた。

アンナ王女との対面

領主館では、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国王女アンナ・クラクフが二人を迎えた。アンナ王女は、事態が収まるまで善治郎とフレア姫に不自由を強いると告げた。

善治郎とフレア姫は、港が閉鎖されれば『黄金の木の葉号』で出航できないため、実質的に拘束されることを理解したが、拒否できる状況ではなかった。

ヤン司祭一行との再会

客間には、ヤン司祭、隻眼の傭兵ヤン、孤児ヤンが待機していた。善治郎はアンナ王女について知るため、ヤン司祭から共和国の王族の立場とアンナ王女の概要を聞いた。

その後、アンナ王女は一同に協力を求め、ポモージエに迫る危機について説明した。

騎士団の侵攻計画

ポモージエ侯爵は、北から来た快速商船が複数の大型船を追い抜いたという証言を得たと報告した。船は重く遅かったが、ポモージエを目指しているなら三日以内に到着する見込みだった。

アンナ王女は、『騎士団』が旧領奪還を掲げてポモージエを狙っていると判断し、一時的な実効支配を許せば共和国にとって重大な損失になると語った。

傭兵ヤンの作戦判断

隻眼の傭兵ヤンは、『騎士団』が港へ直接船で乗り付ける可能性は低く、ポモージエから離れた地点に上陸して陸路で奇襲する可能性が高いと判断した。

地図を確認した傭兵ヤンは上陸地点の候補を絞り込み、敵が騎兵千ほどで来る可能性を示した。その見立てを受け、アンナ王女は傭兵ヤンを一時的に自分の軍事顧問兼指揮官として雇った。

アンナ王女の真意

善治郎は会議の流れに違和感を覚え、アンナ王女の目的を問いただした。アンナ王女はポモージエ防衛を目的だと答えたが、善治郎は、奇襲が露見した時点で最低限の防衛は成功しており、アンナ王女が求めているのは防衛そのものではなく実績だと指摘した。

追及を受けたアンナ王女は、自分の目的が次の王になることだと認めた。彼女は国王自由選挙に立候補するため、ポモージエ防衛の実績と、実権を持つ女王が存在する国の証人として善治郎を利用しようとしていた。

有翼騎兵を使わない理由

善治郎は、有翼騎兵を偵察に出せばよいのではないかと尋ねた。アンナ王女は、有翼騎兵は敵を発見する能力に優れる一方、敵にも発見されやすいため、こちらが奇襲を察知していることを知られてしまうと説明した。

アンナ王女は、できれば有翼騎兵を最後の手段にしたいと語り、傭兵ヤンが逆奇襲を成功させることを待つしかないと強気に笑った。

戦況への不安と外交上の立場

アンナ王女が退室した後、善治郎とフレア姫は応接室に残された。善治郎は戦場になるかもしれない場所にいる現状に強い精神的疲労を感じていたが、フレア姫の気遣いに感謝を示した。

フレア姫は戦勝パーティーまで引き留められることが善治郎にとって不都合ではないかと尋ねた。善治郎は、自身に与えられた外交権限はウップサーラ王国との友好関係に限られるものの、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国と『騎士団』を比較すれば立場は明白であり、個人的な友好の範囲であれば大きな問題にはならないと説明した。

戦勝パーティーでの立場の確認

フレア姫は、前回の夜会と同様に自分が主賓となり、善治郎は偶然居合わせた国交のない国の王族という立場でよいかを確認した。善治郎はそれに同意した。

また、善治郎は、もしヤン傭兵隊長の作戦が失敗して『騎士団』がポモージエまで迫った場合でも、海上封鎖がなければ『黄金の木の葉号』で脱出できるため、自分達にとっては作戦の成否が決定的な問題ではないと考えていた。

ヤン傭兵隊長への評価

善治郎がヤン傭兵隊長の作戦成功の可能性について尋ねると、フレア姫は確実なことは言えないとしながらも、ヤン傭兵隊長は名高い傭兵であり、アンナ王女が初対面にもかかわらず傭兵達の指揮を任せたことからも、その実力と名声は本物だろうと語った。

善治郎はその説明を聞き、ヤン傭兵隊長が高く評価されている人物であることを理解した。

戦闘の観察者を送り込む提案

善治郎はフレア姫に、『黄金の木の葉号』の戦闘員の中から何人かをヤン傭兵隊長の迎撃部隊へ参加させられるかと尋ねた。フレア姫は、自身の部下であるため問題ないと答えた。

カープァ王国の人間を他国同士の争いに参加させることは政治的に問題があるが、ウップサーラ王国の船員であれば、休暇中に傭兵として参加したという形を取れるためであった。

善治郎の真意

フレア姫は、素性を隠して送り込むのかと確認したが、善治郎はそうではなく、信用できる人物に『騎士団』とヤン傭兵隊の戦いを観察し、後で報告してもらいたいのだと説明した。

戦闘を嫌う善治郎らしくない提案にフレア姫が理由を尋ねると、善治郎は真剣な表情で、火薬というものを知っているかと問いかけた。

幕間 隻眼の傭兵の戦い

騎士団迎撃への出陣

翌日、隻眼の傭兵ヤンは千二百の兵を率いてポモージエを出発した。街道を北上し、一度野営を挟んだ後も行軍を続けた。

ヤンは情報不足と準備時間の短さを嘆きながらも、自身の予測を頼りに作戦を進めていた。また、三頭の駿馬と馬術に優れた傭兵を後方に待機させ、敗北時や敵との接触に失敗した際に、速やかにポモージエへ報告を届けられる体制を整えていた。

迎撃地点の選定と防御準備

ヤンは森を抜けた先の草原で、街道を背にする形で陣を構えた。森での伏兵戦は傭兵達の練度では統制が取れず危険だと判断したためである。

さらに丘の上への布陣案も退けた。敵が無視して通過した場合に追撃が困難となり、逆に正面から突撃された際には対応できないと考えたからであった。

代わりに地面へ小さな穴を掘り、杭を打ち込んでロープを張るなど、騎兵の足を鈍らせるための最低限の工作を施した。傭兵達の不安に対しても、ヤンは冗談を交えながら応じ、緊張を和らげていた。

騎士団との遭遇

準備を終えた直後、地平線の彼方から騎士団が姿を現した。千を超える重装騎兵が迫る光景は圧倒的であった。

しかし騎士団は傭兵隊を発見すると進軍を止めた。ヤンは、奇襲が露見したことに敵が気付いたのだと判断し、このまま撤退してくれることを期待した。

だが騎士団は退かず、陣形を整えて攻撃準備を始めた。ヤンは敵指揮官が愚かではなく、奇襲失敗を理解した上で攻撃を決断したと見抜き、迎撃態勢を整えた。

騎兵突撃と弓兵の迎撃

騎士団が突撃を開始すると、ヤンは傭兵達を叱咤しながら弓兵へ射撃を命じた。

練度不足から射撃は統一されず散発的なものとなったが、それでも数騎の騎士や軍馬に損害を与えた。しかし騎士団の進撃を止めるには至らなかった。

その直後、ヤンは伝令役として温存していた三騎の騎兵を離脱させ、万一の場合に備えてポモージエへの報告を託した。

切り札『笛』の投入

騎士団が仕掛けられた障害地帯へ差しかかり速度を落とした瞬間、ヤンは切り札である『笛』隊に命令を下した。

三十人の子飼いの傭兵達が一斉に笛を鳴らすと、爆発音のような轟音と白煙が前線を包み込んだ。同時に先頭の騎兵数騎が倒れ伏した。

実際の被害は大きくなかったが、聞き慣れない爆音に軍馬が激しく動揺し、多くの騎士が馬の制御に追われた。原因不明の攻撃による混乱も重なり、騎士団の隊列は大きく乱れた。

傭兵隊の反撃と勝敗の決定

敵が混乱した隙を逃さず、ヤンは総攻撃を命じ、自ら先頭に立って突撃した。続いて笛隊や他の傭兵達も煙の中へ雪崩れ込んだ。

騎士達は暴れる馬への対処で精一杯となり、十分な戦闘態勢を取れなかった。一方、傭兵達は混乱した敵へ勢いよく襲いかかり、優勢を確立した。

こうして騎士団の突撃は完全に頓挫し、この時点で勝敗はほぼ決したのであった。

第四章 勝利を待つ時間

火薬への疑問

時間を数日遡り、ポモージエ領主館で善治郎はフレア姫に火薬について尋ねた。フレア姫は火薬の存在自体は知られていると答え、善治郎は隻眼の傭兵ヤンの身体から火薬の匂いがしたことを明かした。

フレア姫は、過去にも火薬を戦争で利用しようとする試みはあったが、火薬の保管場所を魔法で狙われる危険があるため、いずれも失敗に終わったと説明した。善治郎はその理由に納得した。

迎撃隊への見届け人派遣の決定

善治郎は当初、火薬の推測だけで戦場へ人を送るべきか迷っていた。しかしフレア姫は、奇襲に対する奇襲という状況では騎士団が火薬対策を取っていない可能性が高く、ヤンの策が大成功するか、大失敗するかのどちらかになり得ると指摘した。

そのため独自に戦況を確認する人員を送り込むべきだと主張し、善治郎も最終的に同意した。フレア姫は船員の中から適任者を派遣することを引き受けた。

アンナ王女の分析

同じ頃、アンナ王女は二人の有翼騎兵と共に善治郎について話し合っていた。

アンナ王女は、善治郎が共和国の統治制度を理解し、『君臨すれども統治せず』という最近提唱された表現まで知っていたことに驚いていた。そしてカープァ王国が以前から共和国について情報収集を行い、将来的な寄港地や貿易相手として共和国に注目しているのではないかと推測した。

さらに、ウップサーラ王国とカープァ王国が大陸間貿易を成功させれば、自国の商業にも影響が及ぶ可能性があると分析した。

アンナ王女の野望と国家構想

アンナ王女は有翼騎兵達に対し、自らが王位を目指している理由を語った。

現在の政治体制には多くの利点がある一方で、急速に変化する海洋事情への対応が遅れる危険性を感じていた。海軍力を強化し、その一部を王家直属の戦力として運用できる体制を築くためには、自らが王にならなければならないと考えていた。

そのため今回のポモージエ防衛で実績を作り、ポモージエ侯爵の支持を得ることを狙っていた。

緊張に包まれるポモージエ

隻眼の傭兵ヤン率いる迎撃隊が出発してから数日間、ポモージエは不穏な空気に包まれていた。

港や城門の警備は大幅に強化され、出入りも厳しく制限された。公式には国家指名手配犯の捜索と発表されていたが、完全武装した傭兵達の出陣や防衛準備の様子から、多くの住民は何らかの侵攻が迫っていると感じ取っていた。

孤児ヤンの居場所のなさ

孤児ヤンは領主館で客人として遇されていたが、その環境に居心地の悪さを感じていた。

使用人達の態度から自分が場違いな存在であることを痛感し、自然とヤン司祭のもとへ足を運ぶようになっていた。将来への不安を漏らす孤児ヤンに対し、ヤン司祭は褒美として知識や技術を求めることを勧めた。

知識と技術の価値

ヤン司祭は、金や高価な品は奪われても、知識や技術は誰にも奪えないと語った。

馬術や読み書き、計算能力があれば人生の可能性が広がることを具体例を交えて説明し、技術や知識を身につけた者はより良い未来を引き寄せやすくなると諭した。

その言葉を受けた孤児ヤンは、自分も将来は戦える人間になりたいと考え始め、王女への褒美として技術や知識を望むことを決意した。

勝利を告げる歓声

孤児ヤンとヤン司祭が将来について語り合っている最中、館全体を揺らすような大きな声が響いた。

最初は襲撃かと身構えた孤児ヤンだったが、ヤン司祭はそれが歓声であると見抜いた。そして、その歓声は隻眼の傭兵ヤン達が吉報を携えて帰還したことを示しているのだろうと語った。

傭兵隊の凱旋と英雄としての歓迎

隻眼の傭兵ヤン率いる傭兵隊は、『騎士団』撃退という大きな戦果を携えてポモージエへ帰還した。報告を受けた領主館は迅速に対応し、傭兵達はポモージエ侯爵とアンナ王女によって英雄として迎えられた。

傭兵隊は街中を一周してから領主館へ向かい、その様子を見た住民達や野次馬も後に続いた。数日間続いていた不穏な空気の中での帰還だったため、人々の関心は大きく集まった。

アンナ王女の演説

領主館前庭でアンナ王女は領民に向けて演説を行った。

『騎士団』がポモージエへの奇襲を企んでいたこと、その情報を勇敢な少年の証言によって察知したこと、証拠不足のため公表できなかったこと、そして秘密裏に派遣した傭兵隊によって奇襲部隊の撃退に成功したことを説明した。

さらに傭兵達こそ街を守った英雄であると宣言し、集まった領民達は歓声と拍手で彼らを称えた。

演説技術への感心

善治郎とフレア姫は領主館の中から演説を見守っていた。

善治郎はアンナ王女の話術や演説技術の巧みさに感心し、その背景には共和国の政治制度や教育水準の高さが関係しているのではないかと考えた。多くの教養ある人々に訴えかける必要があるため、説得力ある演説が重要な技能として発達したのではないかと推測した。

傭兵達への特別報酬

戦闘の詳細がまだ確認されていないため正式な恩賞は後日となったが、アンナ王女は戦闘参加者全員に木札を配布した。

その木札は二日間に限り、酒場や料理店、宿屋、娼館などでアンナ王女の名義によるツケを利用できる特別な報酬であった。資金を持たずに駆け付けたアンナ王女が、自身の財力を用いて用意したものであった。

戦闘員達からの報告

迎撃隊に参加していた『黄金の木の葉号』の戦闘員三人は、無事帰還した後、善治郎とフレア姫に戦闘の詳細を報告した。

三人は後方の弓兵として行動していたため直接戦果はなかったが、『騎士団』撃退の決定打となったのは、爆音と白煙を発する新兵器だったと証言した。

謎の兵器の正体

戦闘員達によれば、その兵器はヤンの子飼いの傭兵達が使用していた。爆音と煙によって軍馬が混乱し、多くの騎兵が制御不能に陥ったという。

傭兵達も『騎士団』の騎士達もその兵器に見覚えがある様子はなく、誰もが驚いていた。また、その部隊は『笛』隊と呼ばれており、兵器自体は黒く長い棒のような形状だったと語られた。

善治郎はその報告から、これが極めて重要な新兵器であると確信を深めた。

報酬の支払いと労い

報告を終えた三人の戦闘員に対し、善治郎は木札の買い取り代を含めた褒賞を支払った。

戦闘員達は大量の銀貨に歓喜し、礼を述べながら退出した。フレア姫は彼らに傭兵達との無用な争いを避けるよう忠告し、三人は元気よく去っていった。

新兵器の脅威についての考察

戦闘員達が退出した後、善治郎とフレア姫は新兵器について議論した。

フレア姫は、その兵器は騎兵戦の価値を変える可能性があるほど危険な存在だと評価した。善治郎は初見ゆえの効果も大きかったのではないかと指摘したが、フレア姫は馬の性質を考えれば今後も一定の効果は期待できると考えていた。

また、従来の火薬兵器と異なり、歩兵が個別に携行できる規模で多数運用されるため、魔法による対処も容易ではないとの見解を示した。

善治郎の危機感

議論を通じて善治郎は、銃のような兵器が量産される背景には製鉄技術の発達があるのではないかと推測した。

さらに、大量生産された銃と、それに対抗するための魔法や魔道具の可能性について思考を巡らせた。しかし推測が飛躍しすぎていると自制し、まずは帰国後に女王アウラへ報告する必要があると考えた。

北大陸では制度だけでなく技術も発展を続けており、その変化が海を越えて南大陸にも影響を及ぼす可能性を感じた善治郎は、王族としての危機感を新たにしていた。

第五章 戦勝パーティー

戦勝パーティーへの出席

善治郎達はアンナ王女の勧めを断り切れず、戦勝パーティーへ出席することになった。

パーティーは『騎士団』撃退から五日後の夜にポモージエ領主館で開かれ、多くの貴族が遠方から集まった。有翼騎兵による迅速な招待状の配達と、港町であるポモージエの立地がその実現を支えていた。

ルクレツィアの参加

善治郎一行は領主館へ移り、ルクレツィアもそこで過ごしていた。

ルクレツィアは街での買い物を楽しんでおり、善治郎はその様子に安堵した。そして戦勝パーティーについて説明すると、ポモージエ侯爵の叔父であるドルヌイ侯爵がエスコート役を務めることになり、ルクレツィアは喜んで出席を決めた。

戦勝パーティーの様子

戦勝パーティーではアンナ王女と隻眼の傭兵ヤンが主役として迎えられていた。

善治郎は会場で王家と同じ赤色の衣装を着た者が多いことに気づき、その理由を尋ねた。そこでホルショフスキ家当主エウゲニウシュ夫妻と知り合い、彼らから建国以来の古参貴族にのみ許された紅衣貴族という特権について説明を受けた。

さらに有翼騎兵であるエウゲニウシュから、天馬を利用した移動や外交にまつわる話を聞き、善治郎は興味深く耳を傾けた。

ルクレツィアとの再会

善治郎は会場でルクレツィアと再会した。

ルクレツィアはドルヌイ侯爵に伴われ、多くの貴族達と自然に交流していた。彼女は侯爵から贈られたガラス鏡を見せ、その貴重さを知ってさらに喜んだ。

善治郎はその贈り物への礼を述べ、ドルヌイ侯爵はルクレツィアとの交流を楽しんでいると語った。

共和国の繁栄と建国神話

善治郎とドルヌイ侯爵は共和国の豊かさについて語り合った。

ドルヌイ侯爵は、多様な国家や宗教との交易こそが共和国繁栄の源であると説明した。善治郎はその寛容さと繁栄を維持してきた為政者達への敬意を示した。

話題はやがて共和国の前身であるポズーナン王国の建国神話へ移り、白の帝国に支配されていた民が反乱を繰り返した末、真竜による白の帝国滅亡後に建国したという伝承が語られた。

さらに白の帝国は十二王家による超魔法文明を築いていたとされ、その中には契約魔法や付与魔法を操る王家も存在したという説が紹介された。

付与魔法の話とルクレツィアの異変

付与魔法という言葉を聞いた善治郎は、シャロワ・ジルベール双王国との関連を思い浮かべた。

その時、善治郎はルクレツィアの顔色が悪くなっていることに気づいた。周囲には酒に酔ったためと説明し、善治郎はルクレツィアを休ませるため壁際へ連れて行った。

そこで善治郎が事情を尋ねると、ルクレツィアは南大陸へ戻った後なら話せるとだけ答えた。その反応から、善治郎は双王国と白の帝国に何らかの関係があることを察した。

アンナ王女の演説

その後、アンナ王女が会場で演説を始めた。

アンナ王女は『騎士団』撃退を称えた後、新たな侵略の兆候を掴んだと発表した。『騎士団』が国境付近に一万を超える兵力を集結させており、最終的には二万から三万規模になる可能性があると説明した。

さらに決戦の地はタンネンヴァルトになると予測し、近隣諸国を含めた協力を呼びかけた。

その呼びかけに応じるように、集まった貴族達はタンネンヴァルトへの出陣を唱和し、会場は熱狂に包まれた。

アンナ王女の策略への気付き

演説後、フレア姫は自身の失策に気づいたことを善治郎へ明かした。

アンナ王女は演説で近隣諸国への協力を呼びかけ、その場にウップサーラ王国の第一王女であるフレア姫を同席させていた。さらに帰国時には盛大な見送りを行うことで、『騎士団』にウップサーラ王国参戦の可能性を意識させる狙いがあった。

善治郎はその説明を聞き、アンナ王女が巧みに他国を牽制材料として利用したことを理解した。

アンナ王女への依頼

やがてアンナ王女と隻眼の傭兵ヤンが善治郎達のもとへやって来た。

アンナ王女はこれまでの協力への礼として望みを尋ねた。善治郎はルクレツィアが持つガラス鏡に注目し、その製作者や工房を紹介してほしいと頼んだ。

アンナ王女は工房が隣国にあると説明しつつ、紹介状と王家所有のガラス鏡を贈ることを約束した。

善治郎はそれに感謝し、アンナ王女も今後良好な関係を築きたいと語った。互いに異なる思惑を抱えながらも、その場では笑顔で同意を交わしたのであった。

エピローグ 出航

出航前の盛大な見送り

『黄金の木の葉号』は、アンナ王女をはじめとする人々の盛大な見送りを受けながら出航しようとしていた。

桟橋には善治郎、フレア姫、護衛達、ポモージエ侯爵、ヤン司祭、隻眼の傭兵ヤン、孤児のヤンが集まっていた。一方アンナ王女は有翼騎兵達とともに上空を旋回し、赤・白・黄の布をなびかせていた。その光景は街中から見えるほど目立ち、ウップサーラ王国の船が共和国の有翼騎兵に盛大に見送られたという噂を各地へ広めることになる状況であった。

アンナ王女との別れ

アンナ王女は飛行魔法で善治郎達の前へ降り立ち、感謝の言葉を述べた。

善治郎は礼を受け入れたが、アンナ王女に振り回された意識があり、以前のような謙遜は見せなかった。フレア姫も表面上は笑顔を保ちながら沈黙していた。

それでもアンナ王女は心からの感謝を伝え、別れの挨拶を交わした。

ポモージエ侯爵の感謝

続いてポモージエ侯爵が前に進み出て、善治郎とフレア姫へ深く感謝を述べた。

孤児ヤンの証言から始まり、善治郎やフレア姫の行動が重なったことで、『騎士団』の奇襲を事前に察知することができたのである。もし一つでも欠けていれば、ポモージエが陥落していた可能性もあった。

善治郎とフレア姫は、自らの行動が街の平和を守る一助となったことを誇らしく思い、その言葉を受け止めた。

ヤン司祭からの紹介状

ヤン司祭もまた善治郎へ感謝を伝えた。

そして礼として、ガラス鏡を製造する工房への紹介状を手渡した。教会や大学との関わりを通じて工房との繋がりを持っていたためである。

善治郎はその厚意に感謝し、紹介状を受け取った。

帰路の航海開始

見送りを終えた『黄金の木の葉号』は無事にポモージエ港を出航した。

北大陸内の慣れた航路であったため航海自体は順調であったが、船員達は異常なほど緊張感を持って働いていた。それは緊急招集時に消息不明となった者がいたことで、マグヌス副長が厳しい処分を示唆していたためであった。

船員達は罰の軽減を願いながら全力で任務に励んでいた。

善治郎の不安

善治郎は航海中も落ち着かなかった。

目的地であるウップサーラ王国にはフレア姫の父である国王グスタフ五世がいる。善治郎は既に女王アウラの夫でありながら、フレア姫を側室として迎える許可を求めなければならなかった。

その状況を考えるたびに気が重くなり、強い不安を抱いていた。

フレア姫との会話

善治郎の様子に気づいたフレア姫は、不安なのかと尋ねた。

善治郎は率直に認め、父王がフレア姫の価値観を理解しているのかを確認した。しかしフレア姫は、父王は娘への愛情こそ持っていたが、自分の考え方については全く理解していなかったと答えた。

その返答に善治郎は落胆したが、フレア姫は父王が為政者として国益を重視する人物であることを説明した。

婚姻交渉への決意

フレア姫は、大陸間貿易による利益や国家の将来を考えれば、王族の婚姻も重要な投資として判断されるはずだと語った。

善治郎もまた、交渉の糸口はそこにあると理解した。そして北大陸の発展を目の当たりにした今、定期航路開設の重要性は極めて大きいと改めて認識した。

不安を抱えながらも、善治郎はどうにかしてみせると決意を固め、フレア姫もその言葉に安堵するのであった。

付録 主と侍女の間接交流

ドロレスの北大陸到着

後宮侍女のドロレスは、自身を幸運な人間だと考えていた。善治郎という優しい主に仕えられたこともその一つであったが、北大陸への同行を命じられた時だけは不運を疑った。

実際、大陸間航行は過酷であり、船酔いや不自由な生活に苦しめられた。しかし約九十日の航海を経て『黄金の木の葉号』はポモージエ港へ到着し、善治郎から労いとして一時金が与えられた。十分に休息を取ったドロレスは、自由時間を利用して異国の街へ繰り出した。

ポモージエの街の散策

ドロレスは護衛の若い兵士を伴い、ポモージエの街を歩いた。

街は国際港らしく様々な人々が行き交っており、褐色肌のドロレス達も過度に目立つことはなかった。事前に宿でおすすめの店を記した地図を入手していたドロレスは、その案内を頼りに買い物を楽しむことにした。

レース編みとの出会い

最初に訪れた店で、ドロレスは美しいレース編みに心を奪われた。

店員から用途や縫い付け方の説明を受けた後、レース編み用の道具や糸、自作方法について教えられた。さらに簡単な編み方を実演付きで学ぶ機会も得たため、ドロレスはその場で講習を受けることを決めた。

その結果、後宮の侍女達への土産用のレースや編み針、糸、見本品などを購入し、大きな成果を得た。

北大陸の品々との交流

その後ドロレスは飾り蝋燭やハーブティーを扱う店を訪れた。

蝋燭店では海竜から採取される竜蝋を知り、その特徴や価値について説明を受けた。竜蝋は香りや性能に優れており、ドロレスは興味を持って購入した。

一方、ハーブティー店では白磁のティーセットやメイプルシロップを見た。高価な白磁は購入を断念したが、珍しいメイプルシロップには関心を示した。

買い物後の休憩

多くの買い物を終えたドロレスは、一度『古の森亭』へ戻って荷物を置き、若い兵士と軽食を取った。

二人はピエロギという料理を注文したが、兵士は中に入っていたチーズが苦手で食べられなかった。南大陸では乳製品を食べる習慣が薄いためである。

代わりに出されたソーセージと塩漬けキャベツの煮込みは兵士の口に合い、土産として購入したいと語った。ドロレスはその素直な反応を微笑ましく見守った。

高台から見たポモージエ

軽食の後、ドロレスはポモージエ全体を見渡せる場所へ向かった。

若い兵士は港町には避難用の高台があると説明し、その知識を誇らしげに披露した。二人が辿り着いた高台は、市民の憩いの場として利用されており、穏やかな光景が広がっていた。

そこから見下ろしたポモージエ港は壮大であり、若い兵士は故郷ワレンティアよりも優れていることを認めながらも悔しさを隠せなかった。

女王の命令による撮影任務

ドロレスは周囲の安全を確認させた後、『携帯音楽プレーヤー』を取り出した。

女王アウラから命じられていた北大陸の記録撮影を行うためである。港や造船所、街並み、城壁、領主館、市民達の様子などを短時間で撮影し、記録を残した。

本命は今後訪れるウップサーラ王国であったため、バッテリーを温存しながら必要な写真だけを撮影した。

兵士からの賞賛

撮影を終えたドロレスに、若い兵士は尊敬の言葉を向けた。

善治郎から預けられた魔道具を扱いこなし、長い航海の疲労を乗り越えながら任務を遂行している姿を称賛したのである。

実際には遊び感覚で使い方を覚え、追加の褒賞を期待する気持ちもあったため、ドロレスはその評価に照れと後ろめたさを覚えた。

やがて自由時間の終わりが近づき、二人は『古の森亭』へ戻るため歩き始めるのだった。

ドロレスとイネスの談話

ドロレスが撮影した静止画を確認した善治郎は大いに喜び、女王アウラからの報酬とは別に、個人的な褒美を与えることを約束した。ドロレスは改めて、自分の主の理解の深さと気前の良さを実感していた。

その後、ロイヤルスイートに隣接する使用人用の控室で、ドロレスは上司であるイネスと二人きりで過ごしていた。イネスはドロレスの働きを評価し、アマンダ侍女長にも報告すると伝えた。ドロレスはさらに善治郎の役に立つ人材であることを強調してほしいと頼み、イネスを苦笑させた。

後宮勤務への執着

イネスは、ドロレス達が今後も善治郎付きのままだろうと語った。

しかしドロレスは安心できなかった。フレア姫の輿入れや、ルクレツィアの側室入りの噂によって後宮の体制が変わる可能性があったからである。

ドロレスは、電化製品が整い、侍女に対して非常に甘い善治郎のもとで働ける現在の環境を失いたくないと考えていた。今回の航海でフレア姫やルクレツィアの人柄を知ったからこそ、二人が善治郎ほど侍女に甘くないことも理解していた。

交易の可能性と勘違い

話題は北大陸との交易へ移った。

イネスは、今後の国交次第ではウップサーラ王国だけでなく、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国とも交易が始まる可能性があると語った。そして善治郎が再び北大陸を訪れる際には、後宮侍女も同行することになるだろうと続けた。

それを聞いたドロレスは、自分だけが苦労するのは不公平だと考え、次はフェーとレテを推薦してほしいと訴えた。だがイネスは、善治郎は血統魔法の『瞬間移動』を使えるため、再び大陸間航行を行う必要はないと説明した。大使館への直接移動や、ウップサーラ王国から数日で到着できる航路の利用が可能であり、長い航海は不要になるというのである。

その説明を聞いたドロレスは、自分が善治郎の能力を失念していたことに気づき、間の抜けた反応をしてしまった。

幸運な者たちへの複雑な思い

イネスは、そこまで言うならフェーとレテを推薦しておくと冗談めかして返し、珍しく笑みを見せた。

ドロレスは抗議したものの相手にされず、自分の失敗をからかわれる形となった。

ドロレスは、自分が十分に幸運な人間であることを理解していた。大陸間航行という苦労はあったものの、それに見合う報酬や経験も得られたからである。しかし同時に、自分以上に幸運な人間がいることも認めざるを得ず、その事実に複雑な思いを抱くのだった。

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