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フィクション(Novel)理想のヒモ生活

小説「理想のヒモ生活 8巻」善治郎魔法使いになる30歳前に。。【感想・ネタバレ】

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小説理想のヒモ生活8巻の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

ヒモ生活7巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活9巻レビュー

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  1. どんな本?
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 読んだラノベのタイトル
  3. あらすじ・内容
      1. アウラの懐妊? 瞬間移動成功? ビー玉量産? 新たな側室候補登場? ……と、大人気シリーズ第8弾は見どころ満載!!
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 善治郎の王都帰還
    2. ニルダの名簿登録
    3. ニルダの後宮入り
    4. 第二子の懐妊
    5. 瞬間移動の習得
    6. ガラス研究の進展
    7. ガラス研究の進展
  6. 登場キャラクター
    1. カープァ王国 王家・王宮
      1. アウラ一世
      2. 善治郎・カープァ
      3. カルロス・善吉
      4. ファビオ
      5. エスピリディオン
      6. ミシェル
      7. サンチョ一世
      8. ダミアン
    2. 後宮の侍女・護衛・王宮関係者
      1. アマンダ
      2. イネス
      3. マルグレーテ
      4. ナタリオ・マルドナド
      5. ケイト・マルドナド
      6. カサンドラ
      7. エミリア
      8. オラジャ
      9. ヴァネッサ
      10. フェー
      11. ドロレス
      12. レテ
      13. ミレーラ
      14. ルイサ
      15. イシドラ
      16. ロレンシャ
      17. ハスミン
      18. キーシャ
    3. ギジェン家・王軍
      1. プジョル・ギジェン
      2. ルシンダ・ギジェン
    4. ガジール辺境伯家
      1. ミゲル・ガジール
      2. ニルダ・ガジール
      3. セベロ
    5. その他カープァ王国の貴族
      1. オクタビア
      2. ラファエロ・マルケス
      3. アウベニス伯爵夫人
      4. ララ侯爵夫人
    6. ウップサーラ王国
      1. フレア・ウップサーラ
      2. ヴィクトリア・クロンクヴィスト
      3. ニコライ
    7. シャロワ・ジルベール双王国
      1. フランチェスコ
      2. ボナ
      3. イザベッラ
      4. フィリベルト
      5. ヨランダ
      6. ルクレツィア・ブロイ
      7. フローラ
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ 善治郎の帰還
    2. 第一章 ニルダ・ガジールー
    3. 幕間 アマンダの助言
    4. 第二章 ニルダ・ガジール2
    5. 第三章 フレア・ウップサーラー
    6. 幕間 ニ ルシンダの影
    7. 第四章 フレア・ウップサーラ2
    8. 第五章 アウラ・カープァ
    9. エピローグ ルクレツィア・ブロイ
    10. 付録 主と侍女の間接交流
  8. 同シリーズ
    1. 理想のヒモ生活 シリーズ
    2. 小説版
    3. 漫画版
  9. その他フィクション

どんな本?

■ 作品概要

『理想のヒモ生活 8』は、現代日本から異世界(カープァ王国)に召喚された主人公・善治郎が、女王アウラと結婚し「理想のヒモ生活」を送りながらも、様々な政治的課題や外交問題に向き合っていく異世界ファンタジーである。 第8巻では、王都へ帰還した善治郎を待っていた女王アウラの「第二子妊娠」の可能性を中心に物語が展開する。アウラの出産時の危険に備え、シャロワ・ジルベール双王国の治癒術士を呼ぶため、善治郎は時空魔法『瞬間移動』の習得に励み、ついに成功を収める。一方で、ガラスやビー玉、蒸留酒といった現代知識を活かした量産計画の進展、ガジール辺境伯家の次女ニルダの「名簿欠落問題」の解決と後宮入り、北大陸のフレア姫の側室問題などが描かれる。そしてついに善治郎自身が『瞬間移動』を用い、単身で双王国へと赴く新たな局面が描かれている。

■ 主要キャラクター

  • 善治郎・カープァ:現代日本から召喚されたカープァ王国王配。政治的野心を持たず平穏を望むが、アウラを深く愛しており、彼女の第二子出産時の危険に備えるため、必死の努力で『瞬間移動』の魔法を習得する。ビー玉や蒸留酒の製造など現代の知識で国に貢献している。
  • アウラ一世:カープァ王国の女王であり、善治郎の妻。第二子妊娠の可能性が高まり、政務と母体の安全の狭間で元帥・宰相の設置を検討するなど国政に奔走する。善治郎を深く愛しており、彼の献身に感謝している。
  • フレア・ウップサーラ:北大陸ウップサーラ王国の第一王女。「黄金の木の葉号」の船長。南大陸特有の「酷暑期」の気候に苦しみつつも、善治郎への側室入りを強く望み、帰国後に再びカープァ王国へ戻ることを善治郎に誓う。
  • ニルダ・ガジール:ガジール辺境伯の次女。王家側の事務的ミスで貴族の「名簿」から名前が欠落していたが、アウラと善治郎の働きにより特例で再登録される。その後、教育の箔付けとして後宮侍女となる。素直で純真な性格の持ち主。
  • プジョル・ギジェン:カープァ王国軍の大将軍。善治郎の双王国行きにあたり、護衛隊の責任者に立候補する。その行動の裏には「元帥位」を狙う野心があり、妻ルシンダの助言によって洗練された交渉術を見せるようになる。
  • ルクレツィア・ブロイ:シャロワ・ジルベール双王国のブロイ侯爵家の少女。元々はシャロワ王家の生まれだが、付与魔法の才能がなく養女に出されていた。王族の地位に返り咲くため、双王国を訪れた善治郎を籠絡しようと企む。

■ 物語の特徴

主人公が強力な戦闘能力で敵を圧倒するのではなく、現代の知識や大人の政治的駆け引き、人間関係の機微を用いて問題を解決していく点が本作の大きな特徴である。 特に第8巻では、これまで受動的な立場にいた善治郎が『瞬間移動』という強力な魔法を習得し、愛する妻と子を守るために自ら他国(双王国)へ赴いて交渉を行うという、主体的な成長が描かれている。また、魔法の制約や貴族社会のしがらみ、「雨期」や「酷暑期」といった過酷な気候条件など、異世界ならではのリアリティある世界観が緻密に構築されている点も魅力である。各国の思惑や側室問題に加え、善治郎を狙う双王国のルクレツィアのような新キャラクターの登場により、次巻以降の外交・政治ドラマへの期待を強く引きつける展開となっている。

読んだラノベのタイトル

理想のヒモ生活 8
著者:渡辺恒彦 氏 イラスト: 文倉 十 氏

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あらすじ・内容

アウラの懐妊? 瞬間移動成功? ビー玉量産? 新たな側室候補登場? ……と、大人気シリーズ第8弾は見どころ満載!!

ガジール辺境伯領から無事、王都に帰還を果たした善治郎を待っていたのは、妻アウラの『妊娠の可能性大』という吉報であった。『雨期』が始まり、雨の日が続く中、善治郎は今まで以上に『瞬間移動』の練習に励む。理由は、妻アウラの第二子出産時に、治癒術士を連れてくるためだった。また、王都にやってきたガジール辺境伯とその娘ニルダは、改めて『名簿』にニルダの名前を登録し直す。同時に、先の結婚式で善治郎がニルダを守るために動いていたことを知ったガジール辺境伯とニルダは、善治郎に深い感謝を告げる。その頃女王アウラの元には、後宮侍女の第二次募集用紙が到着。その中には、ニルダ・ガジールの名前もあった。物作りも順調に進み、ビー玉の量産計画もついにスタート。他にも方位磁針、蒸留酒の量産も本格開始。そして、善治郎はついに『瞬間移動』の発動に成功するのだが―――。

理想のヒモ生活8

感想

やっとの思いで帰って来たら、妻の懐妊を聞かされる善治郎。
善吉が産まれる時は何も出来なかった善治郎は今回、子供が産まれる時は治癒魔術を使える双王国の王族を瞬間移動で連れて来れるようにしようと魔術習得に邁進する。

側室候補に決まったフレア姫を放置するほどに、、
でも、雨季に入った際にフレア姫が乗って来た大型帆船の修繕の進捗が遅れてる事に危惧を伝える事は忘れないのは流石。

まぁ、元社畜時代の苦い経験による助言だったのだが、予想は的中して船員と船大工達は無理をしていた。

更に、酷暑期の工程の遅れも予想されてたが北大陸の船員達はそれを念頭に入れずに工程を組んでたのが発覚するなど問題は山積み。

月日は流れ、善治郎が瞬間移動魔法を成功させ遂に双王国に旅立つ時、フレア姫の大型帆船も修繕が終わりいつでも出航出来るようになったが、、
北大陸が厳寒期に入るため少し後に出航する事が決まる。
その間に善治郎は双王国に訪問して治療魔術師を呼べるようするが、、

双王国の貴族達も善治郎の側室になるために、虎視眈々と彼を籠絡しようと狙いを定めている、、

その急先鋒は双王国の王族の血を引きながらも固有魔法が使えずに貴族に養子に出された姫君だが、、、
善治郎のストライクゾーンから大幅に外れている少女だった。。

何故だ涙が、、、
強く生きてくれよ。

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ヒモ生活7巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活9巻レビュー

考察・解説

善治郎の王都帰還

『理想のヒモ生活8』のプロローグにおいて、ガジール辺境伯領でのプジョル将軍の結婚式から王都へ帰還した善治郎の様子は、王族としての公的な立場と、アウラを愛する一人の夫としての私的な感情の対比を交えて描かれている。

善治郎の王都帰還について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 主役を立てた目立たない帰還と長旅の疲労

ガジール辺境伯領への遠征から王都に戻った善治郎であるが、今回の結婚式の主役はあくまで新郎新婦であるプジョル将軍とルシンダであったため、その帰還は歓声の上がるような王族の行進ではなく、目立たない形で行われた。

・未舗装の塩の街道をサスペンションのない竜車で走破してきた善治郎はひどく疲労していた。
・そのため、笑顔で国民に手を振る必要がなく、竜車の中で深く座っていられる状況をむしろありがたく感じていた。

2. フレア姫の同乗とアウラへ向かう心

帰還の竜車の中では、北大陸のフレア姫と足がくっつきそうなほどの距離で隣り合って座り、談笑を交わしていた。

・庶民上がりの善治郎は、年若い美少女の王族であるフレア姫の魅力に警戒心を維持しきれていなかった。
・それでも彼の心は常に、愛する妻アウラの待つ王宮(後宮)へと向いていた。
・善治郎の視線が自分に向いていないことを悟ったフレア姫は、彼を落とすことの難しさに内心で溜息をつくことになった。

3. 公的な報告と後宮での「本当の帰還」

王都に到着した善治郎は、まず王宮の謁見の間で玉座に座る女王アウラに帰還を報告し、労いの言葉を受けるという公的な手続きをこなさなければならなかった。

・しかし、彼が心から帰ってきたと実感できたのは、そうした形式的な挨拶を終えて後宮へ戻った時であった。
・二人きりの空間でアウラと抱き合い、「ただいま」「お帰り」と頬を寄せ合った瞬間、善治郎はようやく安堵した。
・それと同時に、それまで張り詰めていた緊張の糸が切れて強い疲労と眠気に襲われた。

4. 夫婦の近況報告と外交的功績の確認

疲労困憊の善治郎をアウラが気遣ってソファーで休ませ、二人は眠気覚ましの果実水を飲みながら大まかな情報交換を行った。

・その中で、アウラからニルダが王家の貴族名簿に登録されていないという事実を知らされた。
・善治郎は自分の推測が当たっていたことに冷や汗を流しつつも、ナバラ王国の騎士とのトラブルでニルダを矢面に立たせなかった。
・問題を穏便に収束させた自身の行動が、重大な外交問題を回避する最良の一手であったことを確認し、アウラからもその多大な功績を褒め称えられた。

まとめ

善治郎の王都帰還は、彼が異世界の過酷な長旅や他国との外交的なトラブルを無事に乗り越え、安らげる我が家へと戻ってきた安堵感を描くエピソードである。疲労困憊になりながらも愛するアウラとの再会に喜びを噛み締める姿は、彼の行動の原動力が常に家族への愛であることを示しており、続く瞬間移動の習得や第二子の懐妊という物語の大きな展開へ向けた重要な助走となっている。

ニルダの名簿登録

『理想のヒモ生活8』におけるニルダの名簿登録は、前巻から持ち越された身分問題を公式に解決し、王家の責任を明確にする重要なエピソードとして描かれている。

ニルダの名簿登録について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 臨時謁見での公表と「名簿の写し」の提示

王都で開催された臨時謁見の場で、女王アウラは集まった貴族たちに対し、王家が管理する名簿にニルダ・ガジールの名前が存在しないことを公表した。

・ガジール辺境伯は直ちに先々代王サンチョ一世の署名が入った「名簿の写し」を証拠として提示した。
・これは、事前にアウラと辺境伯が非公式の会談ですり合わせを行っていた、対外アピール用の芝居であった。

2. 特例による無条件の再登録と王家の責任

アウラは提示された写しが本物であると確認し、名簿の欠落はサンチョ一世が戦死した際の混乱による不慮の事故であると認定した。

・特例として6年前の日付を流用し、無条件での再登録を行った。
・アウラ自らが名簿と写しに書き込みを行うことで、ニルダが6年前から正式な貴族であったことを公に保証した。
・今回の問題は王家側に非があったことを認める形で事態を収拾した。

3. 他の潜在的な名簿欠落者への救済措置

サンチョ一世の在位中に名簿登録を行った者が他にもいる可能性を考慮し、アウラは1年以内に写しを持参すれば無条件で再登録を認めると宣言した。

・不正な偽造を防ぐため期限の延長は認めない方針とした。
・対象者が雨期の悪天候や土砂崩れによる通行不能で不利益を被らないよう、道路整備の優先順位を引き上げた。
・必要であれば宮廷筆頭魔法使いエスピリディオンを派遣するという配慮も行った。

4. ガジール親子の深い感謝と善治郎の配慮

名簿登録を終えた翌日、ガジール辺境伯とニルダは善治郎を訪問し、平伏して深く感謝した。

・辺境伯は、先の結婚式で善治郎がニルダの身分欠落に気付き、彼女を矢面に立たせないよう守ってくれた意図を正確に理解していた。
・辺境伯は個人的な恩義から忠誠を誓おうとしたが、善治郎は将来の危険な芽を摘むため、その忠誠は自分個人ではなくカープァ王家へ向けるよう釘を刺した。
・ニルダはそうした政治的な裏事情を理解しておらず、純粋な好意と感謝だけを善治郎に伝えた。

まとめ

ニルダの名簿登録は、アウラの堂々とした対応により、ガジール辺境伯家の名誉を守りつつ王家の失態を公に清算する見事な政治的パフォーマンスとなった。また、この一件を通じて、辺境伯から善治郎への強い信頼が生まれると同時に、善治郎が自らの立場と権力関係を冷静にコントロールする姿も描かれている。

ニルダの後宮入り

『理想のヒモ生活8』におけるニルダの後宮入りは、前巻から続く彼女の身分問題の事後処理や、村育ちゆえの教育不足を補うための親心から生じた、政治的配慮と人間関係が交錯するエピソードとして描かれている。

ニルダの後宮入りについて、以下の4つのポイントから解説する。

1. ガジール辺境伯の悩みとアマンダ侍女長の提案

長女ルシンダが嫁いだことで、ガジール辺境伯家には村育ちのニルダの教育を引き継げる人材が不在となっていた。

・ガジール辺境伯はアマンダ侍女長に教育係の推薦を相談したが、厳しすぎる貴族や借りを作りたくない相手を避けた結果、適任者探しは難航した。
・そこでアマンダは、自らが直接指導する環境を作るため、ニルダを後宮侍女としてアウラに推薦することを提案した。

2. 箔付けの意図とアウラの採用決断

後宮侍女第二次募集の書類の中でニルダの推薦状を見つけたアウラは、ファビオ秘書官の分析により、ガジール辺境伯の狙いが娘への箔付けであると理解する。

・妾腹で村育ち、さらに名簿問題という曰く付きの立場になってしまったニルダに、より良い縁談を見つけるための経歴を与えようとする親心であった。
・アウラ自身も、公の場でニルダの身分問題を晒し者にしてしまった負い目があったため、その埋め合わせとして採用を決定した。

3. 善治郎の驚きとアウラからの忠告

自分が外で知り合った少女が後宮に入ってくると知った善治郎は驚きを隠せなかった。

・しかし、アウラから特別扱いは不要と念を押され、箔付けというガジール辺境伯の事情を聞いて納得した。
・一方でアウラは、ニルダに政治的な下心はないと判断しつつも、彼女が善治郎に対して純粋な好意を抱いているのは事実であるため、距離感には十分に注意するよう善治郎へ忠告した。

4. 新人侍女としての奮闘と先輩たちとの交流

晴れて後宮入りしたニルダは、ミレーラやルイサと共に新人侍女として働き始めた。

・村育ちの経験から魚やカエルなどの扱いには抵抗がなく、たくましい一面を見せた。
・その一方で礼儀作法には強い不安を抱いており、夜の厨房での交流の際に先輩侍女たちへ相談を持ちかけた。
・要領の良いドロレスから、善治郎は悪意のない失敗には寛容だから誠実に謝れば大丈夫と助言されたが、ニルダは失敗しない方法を知りたいと真面目な姿勢を示し、怒られながらも学んでいく決意を固めた。

まとめ

ニルダの後宮入りは、ガジール辺境伯の不器用な親心と、王家側の罪悪感が合致して実現した配置転換であった。権謀術数が渦巻く王宮周辺にあって、裏表のない純真なニルダが後宮の温かな人間関係の中に迎え入れられ、周囲の助けを借りながら貴族の令嬢として成長していく姿を描く、微笑ましいエピソードとなっている。

第二子の懐妊

『理想のヒモ生活8』における「第二子の懐妊」は、夫婦にとっての大きな喜びであると同時に、善治郎を魔法習得へと駆り立てる強力な原動力となり、さらには国の統治体制をも大きく変える政治的転機として描かれている。

第二子の懐妊について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 妊娠の発覚と治癒術士招致への決意

ガジール辺境伯領からの遠征を終え王都へ帰還した善治郎は、アウラから第二子妊娠の可能性が高いと告げられた。

・これは夫婦にとって喜ばしい知らせであったが、善治郎にとっては第一子出産時に何もできずただ祈るしかなかった無力感と恐怖を呼び起こすものでもあった。
・愛する妻と生まれてくる子を確実に守るため、善治郎は万が一の事態に備えて双王国から治癒術士を呼べる態勢を整えようと決意した。
・この決意を機に、かつてない必死さで瞬間移動の魔法習得に没頭するようになる。

2. 貴族たちによる乳母・側室攻勢の激化

アウラの懐妊の噂が王宮内に広まると、有力貴族たちはこぞって第二子の乳母の座や、善治郎の側室の座を狙って動き出した。

・アウラは、フレア姫という事実上の側室候補の存在が他の貴族への牽制になると期待していたが、事態は逆の方向へ動いた。
・貴族たちは十代の美少女でも許容されると解釈して新たな側室候補を揃えるようになった。
・その結果、善治郎への側室攻勢は前回の妊娠時以上に圧を増して激化することになった。

3. 政務停滞への懸念と「元帥」「宰相」の設置

妊娠が進めば、悪阻や体調の変化によってアウラの政務処理効率が低下することは避けられない。

・これまでアウラは権力の分散を嫌い、軍事のトップである元帥と政治のトップである宰相を空位にして自ら軍政の両輪を回してきた。
・しかし、妊娠中に一人で全てを抱え込むことは将来的な破綻を招くと判断する。
・苦渋の決断として、アウラは自身の権限縮小を承知の上で元帥と宰相を設置する覚悟を固めた。

4. 権限低下を補うための善治郎への「名誉爵位」授与

元帥と宰相を設置すれば、会議等におけるアウラの発言力や権限が低下することは容易に想像できた。

・その事態に備えるため、アウラは善治郎に領地を伴わない名誉爵位を与えることを決意した。
・一介の王族に過ぎない善治郎は女王の名代という肩書きがなければ実務レベルの会議に出席できないが、名誉爵位を持てば自身の権限で公的な会議に出席できるようになる。
・それはアウラにとって、会議で無条件に自分を支えてくれる貴重な一票を確保するための政治的な布石であった。

まとめ

第二子の懐妊は、愛する家族を守るために善治郎が瞬間移動を習得し、単身で双王国へ赴くという大きな成長のきっかけとなった。一方で、アウラにとっては政務の遅滞を見越した統治体制の根本的な見直しや、善治郎への爵位授与といった、国家の未来を左右する重大な政治的決断を迫られる契機にもなっている。

瞬間移動の習得

『理想のヒモ生活8』における「瞬間移動の習得」は、愛する妻と生まれてくる子どもを守るという善治郎の強い決意と、現代日本の道具を用いた機転による成長のエピソードとして描かれている。

瞬間移動の習得について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 第二子妊娠に伴う習得の切迫感

女王アウラの第二子妊娠の可能性が高まったことが、善治郎に瞬間移動の習得を急がせる最大の動機となった。

・善治郎は第一子カルロスの出産時に、何もできずただ妻の無事を祈るしかなかった自らの無力感を痛感していた。
・その恐怖を二度と味わわないため、万が一の出産時の危険に備えてシャロワ・ジルベール双王国の治癒術士を呼べる態勢を整えるべく、これまでになく必死に練習に励んだ。

2. 魔法発動の三要素と立ちはだかる壁

瞬間移動の発動には、正しい発音、正しい魔力量、正しい認識(イメージ)の三要素が不可欠である。

・善治郎は反復練習によって発音と魔力量の調整をクリアしたが、最後の正しい認識に苦戦した。
・瞬間移動は季節や時間帯の時差によって生じる景色の差異が発動を妨げる。
・そのため、アウラの助言により、まずは天候や時間帯の影響を受けない窓のない石室を正確に脳裏に描く訓練を行うことになった。

3. デジタルカメラを用いた機転と成功

正しい認識を定着させるため、善治郎は現代日本から持ち込んだデジタルカメラを活用するという機転を利かせた。

・移動先の石室をデジカメで撮影し、その静止画を見ながら空間のイメージを脳裏に固めることで認識のズレをなくした。
・この現代人ならではの工夫により、善治郎はついに自力での瞬間移動に成功し、時空魔法の使い手として大きな一歩を踏み出した。

4. 行動範囲の拡大と双王国への単身赴任の実現

瞬間移動の習得により、善治郎の活動範囲は飛躍的に拡大した。

・フレア姫の要望に応えて即座にワレンティアへ移動するなど、長距離移動の制約から解放された。
・最も重要な成果として、自力で帰国できるという条件が満たされた。
・これにより、善治郎は治癒術士派遣の事前交渉を行うべく、アウラの魔法で単身双王国へと旅立つことが可能になり、自ら外交の舞台へと赴くことになった。

まとめ

瞬間移動の習得は、善治郎が単なる庇護される王配から、国家の切り札とも言える時空魔法の使い手へと覚醒する重要な転機である。その根底には愛する家族を自らの手で守るという強い意志があり、デジカメという現代の道具と異世界の魔法が融合することで、彼らしい独自のアプローチによる課題解決が描かれている。

ガラス研究の進展

『理想のヒモ生活8』における「ガラス研究の進展」は、善治郎の現代知識と異世界の職人たちの努力が結実し、確かな成果を上げ始めたエピソードとして描かれている。また、その技術がもたらす将来の魔道具開発や政治的影響についても、重要な話し合いが行われた。

ガラス研究の進展について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 貝殻と白砂による品質の劇的な向上と量産の壁

善治郎がワレンティアから持ち帰った貝殻と白砂を用いることで、ガラスから色が抜け、透明度と粘度が劇的に向上した。

・実験的な宝玉(ビー玉)作りを始められる段階にまで研究が進展した。
・しかし、ガラス製造に必要な高温に現在の窯が耐えきれず、窯を焼き潰しながら生産している状況である。
・窯の改良が進まないため量産体制の確立には至っていない。
・現在は職人の数が少ないため、窯の再建による作業の休みが適度な休息になっているという側面もある。

2. ガラスの「花瓶」の完成と職人の成長

研究の成果として、ラムネの瓶よりも透明に近く、水も漏れないガラスの花瓶が完成し、アウラから善治郎に披露された。

・形は歪で底も平らではないが、一目でガラスと分かる器の完成は大きな前進であった。
・元鍛冶職人の若手たちにとって、この世界にガラス職人という新たな職業と自身の将来を確立するための、重要な第一歩となった。

3. ビー玉製造法の提案と実用化への試行錯誤

ガラスの品質向上を受け、アウラは次の段階であるビー玉作りに着手した。

・善治郎は図を描き、螺旋状の坂を溶けたガラスが転がる方法と、回転するローラーを使う方法の2つの案を提案した。
・より複雑なローラー式は将来の努力目標とした。
・まずは構造が単純で鍛冶職人にも作りやすい螺旋型の道具から製作を試し、ビー玉の実用化を目指すことになった。

4. ビー玉の権利問題と善治郎の決断

フランチェスコ王子が付与魔法による新たな魔道具作成を企図しており、それに善治郎のビー玉が利用される可能性が浮上した。

・これに伴いビー玉製造の権利が問題となった。
・善治郎は将来の権力闘争や傍系王族への権力集中を防ぐため、魔道具の媒体となる技術は王の管理下に置くべきだと主張した。
・自らの権利への執着をあっさりと捨て去り、ビー玉製造の権利を完全にアウラ(王家)に帰属させることで合意した。

まとめ

ガラス研究の進展は、職人たちの試行錯誤によりガラス器の完成という明確な成果を上げるに至った。さらに、善治郎が提案したビー玉製造法と、国家の未来を見据えた権利放棄の決断は、魔道具の量産というカープァ王国の国家戦略に直結する重要なステップとなっている。

ガラス研究の進展

『理想のヒモ生活8』における「ガラス研究の進展」は、善治郎の現代知識と異世界の職人たちの努力が結実し、確かな成果を上げ始めたエピソードとして描かれている。また、その技術がもたらす将来の魔道具開発や政治的影響についても、重要な話し合いが行われた。

ガラス研究の進展について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 貝殻と白砂による品質の劇的な向上と量産の壁

善治郎がワレンティアから持ち帰った貝殻と白砂を用いることで、ガラスから色が抜け、透明度と粘度が劇的に向上した。

・実験的な宝玉(ビー玉)作りを始められる段階にまで研究が進展した。
・しかし、ガラス製造に必要な高温に現在の窯が耐えきれず、窯を焼き潰しながら生産している状況である。
・窯の改良が進まないため量産体制の確立には至っていない。
・現在は職人の数が少ないため、窯の再建による作業の休みが適度な休息になっているという側面もある。

2. ガラスの「花瓶」の完成と職人の成長

研究의 成果として、ラムネの瓶よりも透明に近く、水も漏れないと期待できるガラスの花瓶が完成し、アウラから善治郎に披露された。

・形は歪で底も平らではないが、一目でガラスと分かる器の完成は大きな前進であった。
・元鍛冶職人の若手たちにとって、この世界にガラス職人という新たな職業と自身の将来を確立するための、重要な第一歩となった。

3. ビー玉製造法の提案と実用化への試行錯誤

ガラスの品質向上を受け、アウラは次の段階であるビー玉作りに着手した。

・善治郎は図を描き、螺旋状の坂を溶けたガラスが転がる方法と、回転するローラーを使う方法の2つの案を提案した。
・より複雑なローラー式は将来の努力目標とした。
・まずは構造が単純で鍛冶職人にも作りやすい螺旋型の道具から製作を試し、ビー玉の実用化を目指すことになった。

4. ビー玉の権利問題と善治郎の決断

フランチェスコ王子が付与魔法による新たな魔道具作成を企図しており、それに善治郎のビー玉が利用される可能性が浮上した。

・これに伴いビー玉製造の権利が問題となった。
・善治郎は将来の権力闘争や傍系王族への権力集中を防ぐため、魔道具の媒体となる技術は王の管理下に置くべきだと主張した。
・自らの権利への執着をあっさりと捨て去り、ビー玉製造의 権利を完全にアウラ(王家)に帰属させることで合意した。

まとめ

ガラス研究の進展は、職人たちの試行錯誤によりガラス器の完成という明確な成果を上げるに至った。さらに、善治郎が提案したビー玉製造法と、国家の未来を見据えた権利放棄の決断は、魔道具の量産というカープァ王国の国家戦略に直結する重要なステップとなっている。

ヒモ生活7巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活9巻レビュー

登場キャラクター

カープァ王国 王家・王宮

アウラ一世

カープァ王国の女王である。直系王族の唯一の生き残りとして国家を統治する。善治郎を異世界から召喚して夫とした。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国女王。ワレンティア公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 第一子カルロスを出産し、さらに第二子の妊娠が判明した。善治郎との間に密約を結んだ双王国との外交交渉を指揮した。名簿欠落問題では特例による再登録を実施した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 時空魔法の唯一の使い手として強大な影響力を保持する。

善治郎・カープァ

現代日本から召喚されたアウラの夫である。平和主義者であり政治的な野心を持たない。アウラを深く愛している。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国王配。ワレンティア公爵全権代理。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラやカルロスのために時空魔法「瞬間移動」の習得に取り組み、成功を収めた。双王国へ赴きルクレツィアから歓迎を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 カープァ王家とシャロワ王家の血を引いている。

カルロス・善吉

アウラと善治郎の間に生まれた第一王子である。両親から愛情を受けて育っている。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 赤斑熱という病に感染した。フランチェスコ王子の治癒魔法によって命を救われた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 時空魔法と付与魔法の両方の素質を持つ可能性がある。

ファビオ

アウラの第一秘書官である。無表情で冷徹な意見を述べる現実主義者として描かれる。王家に強い忠誠を誓う。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国第一秘書官。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラに対して数多くの進言や報告を行った。善治郎の行動を観察してアウラに伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 女王の右腕として国政に大きな権限を持つ。

エスピリディオン

宮廷筆頭魔法使いである。アウラの腹心の一人として助言を行う。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国筆頭宮廷魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 双王国に関する知識をアウラへ提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王国随一の魔法使いとして頼りにされている。

ミシェル

王室付きの初老の医師である。落ち着いた態度で職務を全うする。

・所属組織、地位や役職
 王室付き医師。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラの懐妊を診断した。カルロス王子の赤斑熱を診察した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 カープァ王国における医師の最高位に就いている。

サンチョ一世

アウラの弟であり、先々代の国王である。戦場で戦死した復讐王と呼ばれる。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国国王(先々代)。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の在位期間中に貴族名簿の登録を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦死時の混乱により名簿の一部が欠落したと推測されている。

ダミアン

ワレンティア公爵領代官である。職務に熱心で責任感が強い。

・所属組織、地位や役職
 ワレンティア公爵領代官。
・物語内での具体的な行動や成果
 襲撃を告げる鐘の音が鳴った際に防衛部隊を現場に急行させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 一時的に善治郎の指揮下に入った。

後宮の侍女・護衛・王宮関係者

アマンダ

後宮の侍女長である。規則に厳格であり後宮の秩序維持に尽力している。セベロの妻である。

・所属組織、地位や役職
 後宮侍女長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ガジール辺境伯からの相談を受けニルダを後宮侍女に推薦した。退職予定の侍女へ腕飾りを手渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 後宮の人員を統括する責任者である。

イネス

後宮の清掃担当責任者である。上品で落ち着いた雰囲気を持つ中年の侍女として描かれる。

・所属組織、地位や役職
 後宮清掃担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎の遠出に同行して身の回りの世話を行った。双王国の王都へ瞬間移動で送られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 過去にはカルロス二世に仕えていた。

マルグレーテ

アウラ直属の侍女である。密偵としての訓練を受けている。

・所属組織、地位や役職
 アウラ直属の後宮侍女。密偵の統括。
・物語内での具体的な行動や成果
 カルロス王子の看病に立ち会った。名簿欠落問題で貴族たちの反応をアウラへ報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アウラの腹心の一人として情報網を担う。

ナタリオ・マルドナド

王家に忠誠を誓う若い騎士である。実直で生真面目な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 竜弓騎兵団所属の騎士。善治郎の直衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎に対して忠誠の儀式を行った。双王国へ向かうための瞬間移動の対象に選ばれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 善治郎の直臣としての役職を担うことになった。

ケイト・マルドナド

後宮の侍女である。ナタリオの妹として言及される。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 双王国へ瞬間移動で送られていたことがアウラの口から語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

カサンドラ

カルロス王子の乳母である。三人の子の母として赤子の世話に精通している。

・所属組織、地位や役職
 カルロス王子の乳母。
・物語内での具体的な行動や成果
 カルロス王子の夜泣きから異変を察知しアウラと医師を呼んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

エミリア

庭園担当責任者である。仕事中は厳しいが休憩時間は優しく接する。

・所属組織、地位や役職
 後宮庭園担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
 雨期に問題児三人組へ発電機の簡易整備を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

オラジャ

浴室担当責任者である。

・所属組織、地位や役職
 後宮浴室担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
 雨天作業後の侍女たちの入浴準備や着替えを一式用意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ヴァネッサ

調理責任者である。豪快な性格で料理の腕前が高い。

・所属組織、地位や役職
 後宮付き調理責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
 問題児三人組にカステラ作りの指導を行った。余った油を侍女たちの料理練習に使用することを許可した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 事実上の料理長として厨房を取り仕切る。

フェー

問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。小柄で短髪であり楽観的な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 誤って携帯ゲーム機を自室へ持ち帰りゲームで遊んだ。雨期の庭園作業に従事した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ドロレス

問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。長身で要領が良い。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 フェーが持ち帰ったゲーム機の配線を繋いだ。新人侍女たちに後宮の生活について助言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

レテ

問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。料理が得意な少女である。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 カステラ作りでメレンゲを担当した。厨房でカエルやワニの揚げ物を作った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ミレーラ

新人後宮侍女である。マルケス伯爵の姪として紹介される。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 厨房での見学時にカエルやヘビの調理に驚愕した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ルイサ

新人後宮侍女である。平民出身で騎士のような身のこなしを持つ。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘビやワニの調理を危なげなく手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

イシドラ

後宮侍女の候補者である。ベルビデス辺境伯の子として推薦された。

・所属組織、地位や役職
 後宮侍女候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラの書類確認時に名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ロレンシャ

後宮侍女の候補者である。マッサーナ男爵の子として推薦された。

・所属組織、地位や役職
 後宮侍女候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラの書類確認時にキーシャの妹として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ハスミン

後宮侍女の候補者である。ボニーヤ子爵の子として推薦された。

・所属組織、地位や役職
 後宮侍女候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラの書類確認時に名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

キーシャ

元後宮侍女である。マッサーナ男爵家の次女として派手な美貌を持つ。

・所属組織、地位や役職
 マッサーナ男爵家の令嬢。ラファエロの婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ラファエロの婚約者として結婚式に出席し善治郎に挨拶した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 後宮侍女を退職してマルケス伯爵家の次期当主夫人となる予定である。

ギジェン家・王軍

プジョル・ギジェン

王国軍の大将軍である。野心家であり自らの権力拡大を狙っている。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国竜弓騎兵団総団長。将軍。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎の双王国行きにあたり護衛隊の責任者に立候補した。ルシンダと結婚した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ルシンダと結婚してガジール辺境伯家と縁戚になった。

ルシンダ・ギジェン

プジョル将軍の妻である。元ガジール辺境伯家長女として実務能力が高い。

・所属組織、地位や役職
 プジョル将軍の正妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 結婚式前に領地の運営や来客対応を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ガジール辺境伯家からギジェン家へと嫁いだ。

ガジール辺境伯家

ミゲル・ガジール

ガジール辺境伯家の当主である。実直な老将として描かれる。

・所属組織、地位や役職
 ガジール辺境伯。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルシンダの結婚をアウラに承認された。ニルダの名簿欠落問題で王都に赴きアウラと面会した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ニルダ・ガジール

ガジール辺境伯の次女である。妾腹で村育ちの純真な少女として描かれる。

・所属組織、地位や役職
 ガジール辺境伯家次女。後に後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 名簿に名前が登録されていなかったが特例で再登録された。後宮の新人侍女として配属された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 教育の箔付けとして後宮侍女に採用された。

セベロ

ガジール辺境伯家に仕える陪臣貴族である。アマンダの夫である。

・所属組織、地位や役職
 ガジール辺境伯家の陪臣貴族。王都屋敷の管理者。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラに呼び出されニルダの身分について名簿の写しがあると答えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

その他カープァ王国の貴族

オクタビア

マルケス伯爵の後妻である。教養と魔法技術に優れている。

・所属組織、地位や役職
 マルケス伯爵夫人。善治郎の家庭教師。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎に王国の歴史や礼儀作法を教えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 家庭教師として善治郎に接している。

ラファエロ・マルケス

マルケス伯爵家の次期当主である。有能な文官として描かれる。

・所属組織、地位や役職
 マルケス伯爵家次期当主。善治郎の臨時私設補佐官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ワレンティアで善治郎の補佐官を務めた。キーシャを婚約者として迎えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アウラの元婿候補であった。

アウベニス伯爵夫人

アマンダがニルダの教育係として推薦した人物である。

・所属組織、地位や役職
 アウベニス伯爵夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アマンダとガジール辺境伯の会話に名前が登場した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 子女の指導に定評がある。

ララ侯爵夫人

アマンダがニルダの教育係として推薦した人物である。

・所属組織、地位や役職
 ララ侯爵夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アマンダとガジール辺境伯の会話に名前が登場した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アウラの乳母であった人物である。

ウップサーラ王国

フレア・ウップサーラ

ウップサーラ王国の第一王女である。男装の船長として行動力がある。

・所属組織、地位や役職
 ウップサーラ王国第一王女。黄金の木の葉号船長。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎への側室入りを強く望み大陸間貿易を交渉した。善治郎に山羊を贈った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 善治郎の結婚式のパートナーを務めた。

ヴィクトリア・クロンクヴィスト

フレア姫の護衛を務める長身の女戦士である。スカジの称号を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ウップサーラ王国の女戦士。フレア姫の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 巨大群竜を一騎打ちで討ち取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ニコライ

ウップサーラ王国の人間である。家畜の世話を担当する。

・所属組織、地位や役職
 黄金の木の葉号の家畜世話担当。
・物語内での具体的な行動や成果
 カープァ王国へ贈られた山羊の世話役としてフレア姫に紹介された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

シャロワ・ジルベール双王国

フランチェスコ

シャロワ王家の王子である。付与魔法と治癒魔法の両方を使える特異な存在である。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ王家第一王子ジュゼッペの第一男子。
・物語内での具体的な行動や成果
 カルロス王子の赤斑熱を治癒魔法で治療した。未来代償の魔道具を作製した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 正式な王位継承権を持たない。

ボナ

シャロワ王家の王女である。下級貴族出身で真面目な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ王家の王女。宝飾職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 フランチェスコ王子のお目付役としてカープァ王国を訪問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王位継承権は下位にある。

イザベッラ

ジルベール法王家の王女である。治癒魔法の使い手である。

・所属組織、地位や役職
 ジルベール法王家の王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 コブラゴ王国前王の治療のために派遣された。アウラの瞬間移動を利用した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 法王家の中でも五指に入る治癒魔法の使い手である。

フィリベルト

シャロワ王家第二王子である。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ王家第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルクレツィアの血縁上の父として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ヨランダ

シャロワ王家第二王子の正妻である。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ王家第二王子の正妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルクレツィアの生みの母として言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ルクレツィア・ブロイ

ブロイ侯爵家の養女である。シャロワ王家生まれだが付与魔法の才能を持たない。

・所属組織、地位や役職
 ブロイ侯爵家の少女。
・物語内での具体的な行動や成果
 双王国を訪れた善治郎を歓迎し王族への返り咲きを狙って誘惑を企てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

フローラ

ルクレツィアの側近である。

・所属組織、地位や役職
 ルクレツィアの側仕え。
・物語内での具体的な行動や成果
 大きすぎるドレスを着たルクレツィアが転びかけた際に腕を掴んで助けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ブロイ侯爵に雇われている立場である。

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展開まとめ

プロローグ 善治郎の帰還

王都への帰還

ガジール辺境伯領から戻った善治郎一行は、護衛に囲まれた竜車で王都へ帰還した。今回の結婚式の主役はプジョル将軍とルシンダであったため、善治郎の帰還は目立たない形で行われた。

長旅による疲労を抱えた善治郎は竜車の中で休んでいた。隣に座るフレア姫は善治郎を気遣いながら会話を交わしたが、善治郎の心はすでに王宮とアウラの待つ後宮へ向いていた。フレア姫はその様子を見て、善治郎の想いの強さを改めて実感していた。

公的な帰還報告

王都へ到着した善治郎は、まず王宮で女王アウラに帰還を報告した。結婚式への参列は公的な行事であったため、正式な手続きを経て遠征を終える必要があった。

しかし善治郎にとって本当の意味で帰還を実感できたのは、その後に後宮へ戻った時であった。

夫婦の再会

後宮へ戻った善治郎は、アウラと再会し、お互いに帰還の挨拶を交わした。

善治郎はアウラを強く抱きしめ、その温もりによってようやく帰宅した実感を得た。同時に緊張が解け、疲労と眠気が一気に押し寄せたため、アウラは夫をソファーへ導いて休ませた。

眠気を覚ますため、二人は果実水を飲みながら近況を語り合うことにした。

ニルダに関する情報交換

アウラは、ニルダ・ガジールの名が現時点で名簿に記されていないことを伝えた。

善治郎はその事実から、自身の判断が正しかった可能性を確認した。続く会話の中で、ガジール辺境伯領で起こっていた出来事が共有され、ニルダが貴族ではない状態でナバラ王国の騎士と揉めていたことが判明した。

善治郎が問題を穏便に収束させたことで、大きな外交問題を回避できたことをアウラは高く評価した。

ガジール辺境伯家への対応

アウラは、ガジール辺境伯家の王都屋敷を預かる陪臣貴族セベロへ連絡し、辺境伯とニルダを王都へ呼び戻すつもりであると説明した。

善治郎はセベロの人物像を尋ねたが、セベロがアマンダ侍女長の夫であると知り、信頼できそうだと感じた。

二人は、ガジール辺境伯とニルダが王都へ到着してから正式に対応する方針を確認した。

ガラス研究の進展

アウラは、善治郎が持ち帰った貝殻と白砂によってガラス研究が大きく進展したと報告した。

ガラスの透明度や粘度は向上し、宝玉作りの実験段階にまで到達していた。しかし窯の耐久性には問題が残っており、量産体制の確立には至っていなかった。

善治郎は、昔見たビー玉の製造法を思い出しながら球体形成の案を説明したが、うまく伝えられなかったため、後日図を書いて説明することになった。

魔道具開発への懸念

アウラは、フランチェスコ王子が付与魔法を利用した魔道具の開発を考えていることをほのめかした。

詳細は約束によって語れなかったが、善治郎の宝玉が関係していることだけは伝えた。善治郎も大まかな方向性を察し、今後の展開に備えることにした。

ビー玉の権利問題

話題はビー玉製造技術の権利へと移った。

善治郎は、自身が持ち込んだビー玉は自分のものでも、今後職人達が作るビー玉はアウラのものと考えるべきだと主張した。魔道具の媒体となる重要技術を王権の管理下に置くべきだと判断したためである。

アウラは善治郎のあまりに執着のない態度に戸惑ったが、善治郎は権利や利権そのものに興味がなく、それらを面倒事と考えている本心を率直に語った。

報酬としての爵位

善治郎の貢献に対して何らかの報酬を与える必要を感じていたアウラは、領地を伴わない名誉爵位を授与する案を提示した。

善治郎もそれならば受け入れやすいと考え、領地経営の責任が伴わないのであれば問題ないと応じた。

その後、善治郎は本当の報酬としてアウラとの時間を望むような態度を見せた。

第二子の可能性

しかしアウラは言いづらそうに話を切り出した。

まだ確定ではないものの、自身が第二子を妊娠している可能性があると告げたのである。

善治郎はその言葉に硬直した。第二子の存在は心から喜ばしいことであり、自身にとっても大きな幸せであった。しかし同時に、妊娠が事実であれば夫婦の営みをしばらく控えなければならないことも理解した。

長い沈黙の末、善治郎は喜びと複雑な感情を同時に抱えながら、とても喜ばしいことだとアウラへ伝えるのであった。

第一章 ニルダ・ガジールー

雨期の到来とガジール辺境伯の帰還

善治郎が王都へ帰還してから十日ほどが経ち、カープァ王国は雨期を迎えていた。激しい雨によって街道は荒れ、飲料水の確保や野営も困難になるため、この季節の長距離移動は避けるのが常識であった。

そのような状況の中、ガジール辺境伯とニルダは雨期直前という絶妙な時期に王都へ到着していた。

瞬間移動習得への前進

善治郎は後宮のリビングでパソコンを使いながら時空魔法の練習を続けていた。

その日、善治郎は瞬間移動の呪文を十回連続で正確に発音することに成功し、大きな喜びを爆発させた。まだ魔力量や認識の習得という課題は残されていたが、長期間の努力が実を結んだことで大きな達成感を味わっていた。

第二子のための決意

善治郎のもとへ現れたアウラは、魔法習得の進展を喜んだ。

善治郎が瞬間移動の習得に全力を注いでいる理由は、アウラの第二子妊娠の可能性が高まっていたためであった。再診したミシェル医師からも妊娠の可能性が高いと告げられ、王宮内にもその情報が広まっていた。

善治郎は第一子カルロス・善吉の出産時に、妊娠と出産が命に関わる出来事であることを痛感していた。そのため第二子誕生までに瞬間移動を習得し、万一の場合に備えてシャロワ・ジルベール双王国の治癒術士を招けるようにすると誓っていたのである。

双王国訪問への準備

善治郎は、雨期の間に瞬間移動を習得しなければならないと決意を語った。

妊娠が確定すればアウラの業務を代行する機会も増え、魔法の練習時間も減る可能性があった。また、瞬間移動を習得した後には双王国を訪れ、将来の治癒術士派遣について事前交渉を行う必要もあった。

アウラは無理をしないよう諭したが、善治郎は時間の余裕があるうちにできる限り準備を進める考えを示した。

臨時謁見の開催

雨期の中でも王都の貴族社会は活動を続けていた。

その日、王宮の謁見の間ではアウラの招集による臨時謁見が開かれた。集まった貴族達は、ガジール辺境伯と見知らぬ少女ニルダの姿に注目していた。

アウラはニルダがガジール辺境伯の実子であることを確認した上で、王家の管理する名簿にニルダの名前が存在しないことを公表した。

名簿欠落問題の公表

アウラの発言に貴族達は大きく動揺した。

しかしガジール辺境伯は、ニルダがかつてサンチョ一世によって正式に名簿登録されていた証拠として、名簿の写しを提示した。

そのやり取りによって、ニルダ側ではなく王家側の名簿に欠落が存在することが明らかとなった。

ニルダの再登録

アウラは写しが本物であることを確認した上で、名簿の欠落は不慮の事故によるものと判断した。

そのため特例措置として、六年前の登録日をそのまま適用した再登録を実施した。アウラは名簿と写しの双方に記載を行い、ニルダ・ガジールが六年前から正式な貴族であったことを保証すると宣言した。

これによってガジール辺境伯家がこれまでニルダを貴族として扱ってきたことの正当性も公的に認められた。

同様の事例への救済措置

アウラはさらに、サンチョ一世時代に登録された者の中に同様の被害者が存在する可能性を指摘した。

サンチョ一世の署名入り写しを持つ者については、一年以内であれば同様の条件で再登録を認めると宣言し、保証人がいない場合でも事情を説明すれば本人のみで申請できると定めた。

集まった貴族達は、その発表を受けて今後の対応について思案し始めた。

ガジール親子の感謝

翌日、善治郎は雨の降る王宮の一室でガジール辺境伯とニルダの訪問を受けた。

二人は善治郎に深く感謝し、絨毯の上で平伏した。善治郎は慌てて二人をソファーへ座らせたが、辺境伯は結婚式での善治郎の行動がニルダを守るためのものだったと理解していた。

ニルダが貴族として登録されていない可能性を察知した善治郎は、フレア姫を前面に立たせながら問題を処理し、最終的に騒動そのものをなかったことにする形で決着へ導いていたのである。

忠誠の向け先

ガジール辺境伯は大きな恩義を感じ、自身にできることがあれば何でも申し付けてほしいと申し出た。

しかし善治郎は、その忠誠を自分個人ではなくカープァ王家へ向け続けてほしいと求めた。辺境伯もその意図を理解し、素直に了承した。

独自の基盤を持つ有力貴族から個人的な忠誠を受けることを避けたいという善治郎の考えが示された場面であった。

ニルダの純粋な感謝

一方のニルダは、そうした政治的な配慮や裏事情を理解していなかった。

自分を助けてくれた善治郎への感謝だけを素直に抱いており、純粋な笑顔で礼を述べた。

善治郎もまた、その曇りのない感謝に自然と笑顔を返すのであった。

内々の打ち合わせ

名簿欠落問題の優先確認

アウラは王宮の一室で、ファビオ秘書官、宮廷筆頭魔法使いエスピリディオン、侍女マルグレーテを相手に内々の打ち合わせを行っていた。

アウラは体調に大きな問題はないとしつつ、まず名簿欠落の件を優先すると告げた。マルグレーテは、謁見後の貴族達の中に少なくとも四人、名簿欠落に心当たりがありそうな者がいたと報告した。

潜在的な名簿欠落者への懸念

アウラ達は、王都に関係者がいる者よりも、一族が誰も事情を知らない潜在的な名簿欠落者の方が問題だと考えた。

王都勤めを免除されている貴族家や陪臣貴族家に欠落者がいる場合、王家が主家を飛び越えて直接知らせると関係をこじらせる恐れがあった。そのため、王家が動ける範囲には限界があった。

期限延長を認めない判断

ファビオは情報が遅れた家に限って期限延長を認める案を出したが、アウラは即座に却下した。

一年以上の猶予を与えれば、名簿の写しを偽造して不正に貴族を増やす者や、貧しい貴族家の子を誘惑する者が出る危険があったためである。

道路整備とエスピリディオンの役割

アウラは、取りこぼしを防ぐため、雨期後の道の整備では名簿欠落者が通る道かどうかを優先順位に加える考えを示した。

王家の失態で起きた問題である以上、通行不能を理由に再登録できない事態は避けなければならなかった。最悪の場合は、エスピリディオンに魔法で道を通れるようにしてもらう必要があると伝え、エスピリディオンもそれを了承した。

懐妊に伴う貴族達の動き

続いてアウラは、自身の妊娠の可能性が王宮内に広まったことへの反応を確認した。

マルグレーテは、前回と同じく善治郎の側室を狙う動きと、第二子の乳母を狙う動きが出ており、有力貴族はその両方を同時に進めていると報告した。

フレア姫の存在が側室攻勢を強める

アウラは、フレア姫の存在が他の側室希望者への牽制になると期待していた。

しかしマルグレーテは、フレア姫が善治郎の許容範囲に入ったことで、むしろ貴族達の側室攻勢は前回より強まっていると説明した。貴族達は、結婚適齢期の魅力的な少女を用意すればよいと考えるようになっていた。

善治郎の魔法習得と社交回避

アウラは、善治郎が第二子出産までに瞬間移動を習得し、双王国から治癒術士を呼べる態勢を整えようとしていることを語った。

その忙しさは善治郎の負担である一方、側室攻勢を避けるための正当な理由にもなると考えられた。だがファビオは、善治郎が魔法習得を優先すれば政務の人手が足りなくなると懸念した。

元帥と宰相を置く決断

アウラは、自身の妊娠によって政務が滞る未来を見据え、軍事の最高位である元帥と政治の最高位である宰相を置く覚悟を固めた。

これまでは権力の分散を嫌って空位にしていたが、妊娠中に軍政すべてを一人で回すのは難しいと判断したのである。

善治郎に爵位を与える狙い

アウラは、善治郎に爵位を与えることで、自分の名代でなくとも実務の会議に出席できるようにする考えを示した。

元帥と宰相を置けばアウラの権限は分散するが、善治郎が爵位を持てば会議でアウラを支える一票になれるためである。

善治郎への負担とアウラの自戒

ファビオは、善治郎がアウラの役に立つなら不利益も受け入れる人物だと認めつつ、人には器の限界があると忠告した。

アウラはその苦言を受け止めた。善治郎にとって爵位による面倒事は苦痛ではあるが、アウラのために我慢できる範囲のものに過ぎない。アウラは、その献身を当たり前だと思ってはならないと自分に言い聞かせた。

幕間 アマンダの助言

ガジール辺境伯の相談

雨期に入った王都で、ガジール辺境伯ミゲルは王宮の一室にてアマンダ侍女長と面会した。

二人は親族であり、久々の再会の中でアマンダは夫セベロの近況を尋ねた。ミゲルは名簿の件で心労をかけたものの元気にしていると伝え、アマンダは安心した。

ニルダの教育問題

名簿の問題が解決した後、ミゲルはニルダの教育について相談した。

ルシンダが嫁いだことで、これまでニルダを教育してきた人物がいなくなり、辺境伯家にその役割を引き継げる者も不在となっていた。ニルダは最低限の礼法は身につけていたが、村育ちであるため教育が完全とは言えず、ミゲルは将来を不安視していた。

教育係候補の検討

アマンダは高位貴族の令嬢に相応しい教育ができる人物を挙げた。

最初にマルケス伯爵夫人オクタビアを推薦したが、ミゲルはマルケス伯爵との交渉を嫌って難色を示した。その後も複数の候補が挙げられたが、厳しすぎる者や王都を離れる必要がある者は条件に合わず、ルシンダに任せ続ける案も退けられた。

ニルダを後宮侍女にする提案

アマンダは条件を整理した上で、自らが教育係になる案を提示した。

しかしそれは侍女長を辞するという意味ではなく、ニルダを後宮侍女として送り込み、自分が直接指導するという提案であった。

ミゲルはニルダが王族の前で失態を犯さないか不安を抱いたが、アマンダは善治郎ほど悪意のない失礼を許容し、人当たりの良い人物はいないと断言した。その言葉を受けたミゲルは、アウラに推薦状を送る決意を固めた。

採用の可否と保険

アマンダは、後宮入りはあくまでアウラの判断次第であり、不採用の場合はオクタビアへ依頼するべきだと釘を刺した。

ミゲルは苦々しい表情を浮かべながらも、その案を受け入れた。

王都屋敷への帰還

王宮を後にしたミゲルは、雨の降る王都を竜車で移動し、自身の王都屋敷へ戻った。

玄関では屋敷の責任者であるセベロが出迎えた。ミゲルはアマンダがセベロを気にかけていたことを伝え、二人はいつものように軽口を交わした。

ニルダの手紙

そこへニルダが現れ、善治郎へ送る手紙を書き終えたと報告した。

王宮を案内するという善治郎との約束が社交辞令ではなかったかを確認するための手紙であり、ミゲルは内容を確認した。手紙は礼法にかなっており、善治郎へ送っても問題ない出来であったため、ミゲルは娘を褒めた。

ニルダの未熟さへの気付き

手紙を取りに自室へ走っていったニルダの様子を見て、ミゲルは成長を感じた。

しかしセベロは、辺境伯家の令嬢が自ら手紙を取りに行くこと自体が問題であり、本来なら使用人に持って来させるべきだと指摘した。ミゲルは、自身の気軽な性格がニルダにも影響していることを自覚した。

王宮への憧れ

改めて手紙を評価されたニルダは大喜びした。

ミゲルは、善治郎との縁を利用して王族との関係を深めたいのではないかと少し疑っていたが、ニルダが楽しみにしていたのは王宮の噴水や池の金色の魚を見ることだった。

その無邪気な答えを聞いたミゲルは苦笑しながら、娘の純粋な喜びを温かく見守った。

第二章 ニルダ・ガジール2

王宮中庭の案内

雨期の晴れ間の日、善治郎はニルダとフレア姫を連れて王宮の中庭を案内していた。

初めて中庭を訪れたニルダは噴水を見て歓声を上げたが、足元がおろそかになっていたため、フレア姫に注意されて姿勢を正した。善治郎は無邪気なニルダと接していると緊張感が緩みがちになることを自覚し、自らを戒めた。

溜め池の金色の魚

善治郎は二人を金色の魚が泳ぐ溜め池へ案内した。

ニルダは魚の群れが輝く光景に感嘆し、フレア姫も興味深そうに池を眺めた。話題は魚へと移り、フレア姫は北大陸では冬に水面が凍るため観賞魚を飼う文化がないことを説明した。

善治郎は海の魚を懐かしく思いながら話を聞き、ニルダは村に住んでいた頃、水路で小魚を捕って食べていた思い出を語った。

村の水路と危険生物の話

善治郎は水路の規模に疑問を抱き、なぜもっと広げなかったのか尋ねた。

ニルダは、水路を広げると雨期の増水時にワニや肉食の水竜が村へ入り込む危険があるためだと説明した。善治郎はその話から、この世界ならではの事情を改めて認識し、王宮の水源管理についても興味を抱いた。

山羊小屋への関心

その後、ニルダは中庭の奥にある無骨な建物を見つけて質問した。

善治郎はそれが山羊小屋であり、環境に慣れるまで山羊へ余計な刺激を与えないため立ち入りはできないと説明した。さらに、フレア姫から譲り受けた山羊であり、現在は繁殖も順調に進んでいることを明かした。

雨期による山羊への影響

山羊小屋の話題から、フレア姫は長雨による影響を心配していると語った。

ニルダが理由を尋ねると、フレア姫は山羊が乾燥した高地を原産とするため、雨や湿気に弱いと説明した。善治郎は山羊乳を気に入っていたこともあり、その話を聞いて不安を覚えた。

そこで善治郎は、山羊の管理を担当するニコライの状況を確認してほしいとフレア姫へ依頼した。ニコライとの信頼関係や立場を考慮した上での頼みであり、フレア姫は快く引き受けた。

東屋での休憩

善治郎は話し込んでしまったことに気付き、ニルダを気遣って東屋で休憩することを提案した。

ニルダは礼を述べながら、人懐っこい笑顔でその申し出を受け入れた。

アウラによる後宮侍女選考

同じ頃、アウラは王宮の執務室で後宮侍女第二次募集の書類に目を通していた。

妊娠が確定し、今後悪阻によって政務効率が落ちる可能性を考慮しながら、新たな侍女候補を選別していた。推薦状には候補者の基本情報と推薦者の名前が記されており、アウラは採用候補と保留候補を振り分けていった。

ニルダの推薦状

最後に目を通した推薦状には、ニルダ・ガジールの名前が記されていた。

推薦者は父であるガジール辺境伯であり、後宮侍女候補として推薦されていたことにアウラは驚いた。理由を問われたファビオは、王家との関係強化ではなく、複雑な出生や名簿問題によって傷ついた立場に箔を付ける意図が強いのではないかと分析した。

アウラの決断

ファビオの説明を聞いたアウラは、ニルダの境遇を思い返した。

名簿の件でニルダを公の場で晒す結果になったこともあり、自身にも責任の一端があると考えたアウラは、その埋め合わせをするべきだと判断した。

そしてニルダの推薦状を採用候補の側へ置き、後宮侍女として迎える方向で検討することを決めたのであった。

第二次後宮侍女募集の報告

その日の夜、善治郎とアウラは後宮のリビングルームで互いの近況を報告し合っていた。

第二子妊娠が確実となったアウラは安全を考慮し、侍女たちを側に控えさせていた。アウラはまず、第二次後宮侍女募集の最終候補を決定し、近日中に新たな侍女が入る予定であることを伝えた。

ニルダの後宮入り

アウラは新たな後宮侍女の中にニルダが含まれていることを明かした。

善治郎は驚いたものの、アウラから特別扱いは不要であり、むしろ他の侍女と同様に接してほしいと説明を受けた。さらにガジール辺境伯が娘に後宮勤務という経歴を与え、将来の縁談に役立てたいと考えていると聞き、善治郎も納得した。

ニルダへの評価と注意

善治郎は昼間の案内について報告し、ニルダもフレア姫も王宮見物を純粋に楽しんでいたと語った。

また、ニルダには自分に対する下心はなく、王宮を見たかっただけだとの印象を伝えた。アウラもその見方に理解を示したが、好意的な感情を持つ相手だからこそ距離感には注意してほしいと忠告した。善治郎はその指摘を素直に受け入れた。

ガラス花瓶の完成

続いてアウラは侍女に命じ、布に包まれた品を持ってこさせた。

中から現れたのは職人たちが製作したガラスの花瓶であった。完成度は高くなかったものの、誰が見てもガラスと分かる出来栄えであり、善治郎は大きな感動を覚えた。

アウラは職人たちが将来を懸けて努力していることを語り、善治郎も短期間でここまで到達した成果を称賛した。

ビー玉製造法の提案

ガラス製造が軌道に乗り始めたことで、アウラは次にビー玉作りへ挑戦したいと話した。

善治郎は紙と筆記具を取りに行き、自ら図を描きながら二つの製造案を説明した。一つは螺旋状の坂を転がして球形に整える方法であり、もう一つは回転するローラーを利用する方法であった。

アウラは構造が比較的単純な螺旋型を先に試す方針を決め、職人たちへ伝えることにした。

蒸留酒と方位磁針の成果

アウラはさらに蒸留酒と方位磁針の試作品を善治郎に見せた。

蒸留酒はすでに量産と販売の段階に入っていたが、設備投資や材料費、燃料費の問題から採算はまだ取れていなかった。善治郎とアウラは製造時期による費用の違いについて意見を交わしたが、人件費の問題もあり簡単な解決策は見つからなかった。

続いて方位磁針を確認した善治郎は、構造上の問題がないことを確かめた。今後は針を磁化し、完成品として仕上げる段階へ進むことになった。

夜更かしを避ける夫婦

様々な報告を終える頃には、すでに遅い時間となっていた。

アウラは妊娠中であるため夜更かしを避ける必要があり、善治郎はまずカルロス・善吉に挨拶した後、さらに瞬間移動の練習を続けるつもりだと語った。

アウラは無理をしないよう念を押し、善治郎もそれを約束した。そして二人は自然に腕を組みながら、眠る我が子におやすみを告げるため、リビングルームを後にしたのであった。

第三章 フレア・ウップサーラー

瞬間移動習得への最終段階

魔法の発動には正しい発音、正しい魔力量、そして正しい認識が必要であった。

正しい発音と魔力量を安定して扱えるようになった善治郎は、最後の課題である正しい認識の習得に取り組んでいた。アウラは善治郎を、かつて異世界召喚が行われた窓のない石造りの部屋へ案内し、ここが時空魔法使いが瞬間移動の練習に用いる専用の部屋であると説明した。

瞬間移動の認識条件

アウラは、瞬間移動には移動先を正確に認識することが重要であり、そのため見た目がほとんど変化しないこの部屋が練習に適していると語った。

善治郎は生活空間の方がイメージしやすいのではないかと疑問を呈したが、アウラは季節や時間帯による変化、さらには時差の存在によって認識が難しくなると説明した。また、多少の変化は問題ないものの、移動先の認識には一定の正確さが求められることも明かした。

各地への転移についての議論

善治郎は地方の王領にも同様の部屋を作れば便利ではないかと提案した。

しかしアウラは、似た部屋が複数存在すると認識が混乱する危険があると答えた。また、国外への瞬間移動が可能なのは、実際に訪れた経験のある場所に限られることも説明した。その話題から、かつて多くの王族が存在していた時代には各国との往来が容易だったことや、現在はアウラ一人しか生き残っていない現状にも触れられた。

双王国訪問への決意

善治郎は、双王国へ向かうためにも瞬間移動の習得が必要であることを再確認した。

アウラは、善治郎自身が瞬間移動を使えなければ双王国訪問に意味がないと告げた。善治郎は習得への意欲を新たにし、部屋の様子を記憶しようと集中した。

デジタルカメラの活用

その最中、善治郎は移動先を撮影した写真を見ながら認識を固めればよいことに気付いた。

自分がその発想を思いつかなかったことに落胆したものの、アウラに励まされ、今からでも十分間に合うと考え直した。善治郎はデジタルカメラで石室の写真や動画を撮影し、その日の訓練を終えた。

瞬間移動の成功

五日後、善治郎は後宮のリビングルームで最後の訓練を行っていた。

デジタルカメラの静止画を見ながら石室の情景を鮮明に思い描き、自らの位置を移動させるイメージを重ねて呪文を唱えた。そして目を開けると、そこはリビングルームではなく石室であった。

瞬間移動の成功を確認した善治郎は歓喜し、その場で飛び跳ねながら成功を喜んだ。

家族を守るための力

後宮へ戻った善治郎は、自身が双王国へ行けるようになったことを強く実感した。

前回のアウラの出産時、自分には何もできなかった無力感を思い返しながら、今回は治癒術士を呼べる可能性が生まれたことに安堵した。そして今度こそ妻と生まれてくる子を守ると固く決意した。

アウラからの祝福

その日の夕刻、仕事を終えたアウラは善治郎の成功を知った状態で後宮へ戻ってきた。

アウラは短期間で瞬間移動を習得した善治郎の努力を称賛し、自分のために頑張ってくれたことへの感謝を伝えた。善治郎もまた、アウラのために努力したことを認め、双王国へ行けるようになったことで安心して出産してほしいと告げた。

二人は互いへの感謝を言葉にしながら抱き合い、静かに体温を分かち合った。

フレア姫からの緊急面談

翌日、フレア姫は善治郎に緊急の面談を申し込んだ。

面会した善治郎は、フレア姫が落ち着いている様子から深刻な事態ではないと感じつつも、用件を尋ねた。

黄金の木の葉号の問題

フレア姫はワレンティアへ戻りたいと申し出た。

理由は、修復中の黄金の木の葉号に問題が発生したためであった。ただし船そのものの致命的な損傷ではなく、南大陸の雨期を想定しきれなかったことで修復作業が大幅に遅れているという内容であった。

フレア姫は現場を直接確認し、今後必要となる支援や期間延長についてアウラと交渉するため、自らワレンティアへ赴く必要があると説明した。

善治郎の提案

事情を理解した善治郎は、許可は問題なく下りるだろうと答えた。

さらに同行者について確認すると、フレア姫は自身とスカジ、それに護衛の一部が必要であると説明した。その話を聞いた善治郎は、移動方法について何らかの考えを巡らせながら、近いうちに良い返事ができるだろうと告げた。

フレア姫はその言葉に感謝し、面談を終えるのであった。

フレア姫のワレンティア行き要請

後宮へ戻った善治郎は、アウラに提出するための公式書類を自ら作成していた。

そこへ仕事を終えたアウラが戻ってくると、善治郎はフレア姫とスカジを対象とした瞬間移動の使用要請書を手渡し、事情の説明を始めた。

瞬間移動による移送の決定

善治郎から事情を聞いたアウラは、雨期の移動が危険であることや、黄金の木の葉号の修復状況がカープァ王国にとっても重要であることを踏まえ、フレア姫達を瞬間移動でワレンティアへ送る意義を認めた。

善治郎は、現場だけが遠隔地にあり作業が予定より遅れている状況では、現場の人々が焦って無理をする危険があると説明した。さらに、自身も瞬間移動を使えるようになったことで、将来的には移動や連絡の幅が大きく広がることを改めて実感した。

瞬間移動の価値と王族の役割

アウラは、瞬間移動の真価は複数の使い手を国内外に配置した時に発揮されると説明した。

大戦以前には各地に使い手が配置されていたことも語られたが、善治郎は自分や子供達を長期間王都から離したくないと本音を漏らした。アウラは、当面は王都に王族を集中させる必要があるため、その心配は不要だと答えた。

一方で、善治郎とフレア姫の間に生まれるかもしれない子供について思いを巡らせたアウラは、将来への複雑な感情を抱きながらも、今は先のことを考えすぎても意味はないと考えるのであった。

フレア姫への提案

翌日、アウラはフレア姫と面会し、瞬間移動でワレンティアへ送る提案を伝えた。

アウラは、雨期の移動の危険性に加え、現場が進捗の遅れを深刻に受け止めて無理な作業を続けている可能性があると説明した。フレア姫はしばらく考えた後、アウラの理性と判断力、さらに瞬間移動が王家の重要な収入源であることも踏まえ、その提案を受け入れた。

出発準備

フレア姫は対価の支払いを申し出たが、アウラは黄金の木の葉号の修復はカープァ王国にとっても重要な案件であるため不要だと答えた。

フレア姫はその厚意に感謝し、最短での移送を希望した。スカジも翌日の出発に問題ないと答え、アウラから瞬間移動で運べる荷物には制限があるとの説明を受けた。

ワレンティア到着と現場確認

翌日、フレア姫とスカジは瞬間移動によってワレンティアへ到着した。

事前にイネスが先触れとして派遣されていたため受け入れ準備は整っており、二人は歓迎を受けた後すぐ港へ向かった。

大雨の中、港へ向かう道中でフレア姫とスカジは瞬間移動の利便性と影響力を改めて実感し、その力の大きさに驚嘆した。

修復作業の強行発覚

港へ到着したフレア姫達は、大雨の中でも黄金の木の葉号の修復作業が続けられている光景を目にした。

善治郎の懸念が的中していたことを理解したフレア姫は、作業の中止を命じるため、スカジに全員を呼び集めるよう指示した。スカジは大声で作業員達へ指示変更を通達した。

善治郎のワレンティア訪問

数日後、善治郎はワレンティアへ瞬間移動で訪れた。

善治郎はまず、自室をデジタルカメラで撮影し、今後の瞬間移動に利用するための記録を残した。まだ写真による補助が必要な段階ではあったが、それでも貴重な戦力として行動していた。

その後、善治郎はナタリオとイネスを伴い、フレア姫達との面談に向かった。

現場との認識のずれ

面談の席でフレア姫は、善治郎の助言によって大事に至る前に問題へ対処できたことへの感謝を述べた。

善治郎が修復作業の強行を予想できた理由を説明すると、フレア姫は自らの認識不足を認めた。善治郎は、現場の人間は一度交わした約束を簡単に変更できず、無理をしてでも守ろうとする傾向があると語った。

フレア姫はその指摘に納得し、現場の立場を十分に理解できていなかったことを反省した。

酷暑期への懸念

修復計画は雨期による遅れを反映して修正されたが、フレア姫は今度は酷暑期の影響を心配していた。

善治郎は、酷暑期には気温が体温を上回る日があり、昼間の活動は命に関わるため、多くの人々が昼寝によって体力消耗を避けていると説明した。

その話を聞いたフレア姫とスカジは驚愕した。

ワレンティア残留の決定

フレア姫は、現地の職人達とも改めて話し合い、酷暑期を考慮した修復計画を立て直す必要があると判断した。

そのため黄金の木の葉号の修復が完了するまで、自らワレンティアに残る意向を示した。善治郎もそれが最善だと認め、王都への帰還は自身が瞬間移動で支援すると約束した。

フレア姫は改めて感謝を伝え、今後の方針を固めるのであった。

幕間 ニ ルシンダの影

プジョル将軍の面談申し込み

善治郎がワレンティアで黄金の木の葉号の修復状況を確認していた頃、アウラのもとへプジョル将軍から面談の申し込みが届いた。

将軍や大臣には王への謁見を求める権利があったが、大貴族である彼らが自ら積極的に動くことは珍しかった。アウラはファビオ秘書官と軽口を交わした後、プジョル将軍を迎え入れた。

瞬間移動習得への祝辞

面談の席でプジョル将軍は、アウラの懐妊ではなく、善治郎が瞬間移動を習得したことへの祝意を述べた。

善治郎の瞬間移動習得はまだ公式発表前であったため、アウラはその情報を掴んでいたプジョル将軍の耳の早さに内心警戒した。だがプジョル将軍は、善治郎の瞬間移動は善治郎自身の望みを優先して使うべきだと述べ、まず双王国へ向かうべきだと語った。

善治郎の双王国行きへの理解

プジョル将軍は、善治郎が双王国行きを急ぐ理由はアウラの身を案じているからだと説明した。

善治郎が瞬間移動で双王国へ行けるようになれば、いざという時にジルベール法王家の治癒術士を呼び寄せることが可能になるためである。しかしアウラは、現在は雨期であり、その後には酷暑期が控えているため、活動期まで待つ必要があると答えた。

酷暑期での移動案

それでもプジョル将軍は、酷暑期の初期であれば選抜した兵士を双王国へ送り込むことは可能ではないかと提案した。

アウラは危険性の高さを理由に難色を示したが、プジョル将軍はさらに、双王国から来ているフランチェスコ王子とボナ王女の護衛兵士を半数帰国させ、その帰還隊と同行する形を提案した。

最近その道を踏破してきた彼らが同行すれば、道中の危険や補給の問題を大きく軽減できると説明した。

護衛隊長への立候補

アウラはその案を現実的だと評価しつつも、護衛隊の主導権を握るためには相応の立場の人間を指揮官に据える必要があると指摘した。

するとプジョル将軍は、自らが護衛部隊の責任者を務めたいと申し出た。しかし同時に、善治郎が双王国へ到着した後は若い大隊長へ指揮権を譲り、自身は善治郎の瞬間移動で帰国する考えも示した。

その発言は、これまで常に利益を最大限追求してきたプジョル将軍らしくないものであり、アウラは強い違和感を覚えた。

元帥位を狙う意図の察知

プジョル将軍は、自らを正式な国軍の要として長く務めるために最善の行動を選んだと語った。

その言葉を聞いたアウラは、彼の真の狙いが元帥位であることを理解した。元帥と宰相を設置する構想はまだ公にはなっていなかったが、プジョル将軍はすでにその動きを察知し、自らの適性を示すための行動を取っていたのである。

アウラは提案を前向きに検討すると伝え、面談を終えた。

プジョル将軍の変化への疑念

プジョル将軍が退室した後、アウラはファビオ秘書官に感想を求めた。

二人は、プジョル将軍の狙いが元帥位であることを確認したうえで、今回の行動には従来の彼らしからぬ点が多いことを問題視した。

以前のプジョル将軍であれば、自分の要求を真っ先に押し出していたはずだが、今回はまず相手に利益のある提案を行い、自らの野心を最後まで直接口にしなかったのである。

背後にいる人物への推測

アウラとファビオは、プジョル将軍の情報収集力や交渉力が急に向上した理由について考察した。

本人の能力が急激に変化したとは考えにくく、有能な人物が助言を与えている可能性が高いという結論に至った。さらに、その人物が情報収集、交渉の助言、そしてプジョル将軍の野心の制御を同時に行っている可能性も高いと判断した。

ルシンダへの調査命令

議論の末、アウラは最近プジョル将軍の側に加わった人物に思い当たった。

そして、プジョル・ギジェンの正妻であるルシンダ・ギジェンについて、能力だけでなく人柄も含めて改めて調査するようファビオ秘書官へ命じた。

ファビオはその命令を受け、調査に着手することとなった。

第四章 フレア・ウップサーラ2

酷暑期の到来と護衛隊の出発

雨期が終わり実際に酷暑期へ入った頃、プジョル・ギジェン率いる善治郎護衛隊は双王国への出立を前に王宮で壮行を受けた。

善治郎は兵士たちに対し、何よりも命を守ることを優先するよう命じ、自分が双王国へ到着した時には全員と再会したいと語った。兵士たちはその言葉に応え、出発への決意を示した。

双王国兵士への感謝

善治郎は、道案内役として護衛兵を貸し出してくれたフランチェスコ王子とボナ王女へ改めて礼を述べた。

フランチェスコ王子は帰国できる兵士たちにとっても有益な提案だったと語り、ボナ王女も感謝の意を示した。やがてアウラが出発を促し、プジョル将軍率いる護衛隊と双王国兵士たちは旅立った。

酷暑に苦しむフレア姫

その頃ワレンティアでは、フレア姫が酷暑に苦しんでいた。

薄着でぐったりと横たわるフレア姫は、南大陸の暑さを嘆き、将来この地で暮らすことへの不安まで漏らした。スカジも暑さを我慢していたが、フレア姫に追及されてつい本音を明かしてしまった。

黄金の木の葉号の修理完了

そんな酷暑期の最中、黄金の木の葉号の修理完了の知らせが王都へ届いた。

知らせを受けた善治郎は、アウラと協力してナタリオとイネスを先にワレンティアへ送り、自らも瞬間移動で現地へ向かった。自分自身で瞬間移動を使えるようになった善治郎は、世界が広がったような不思議な感覚を覚えていた。

最終試運転への招待

善治郎はワレンティアでフレア姫と面会し、黄金の木の葉号の修理が完了したことを報告された。

港内での試運転も終わり、残るのは港外での最終試運転だけであると説明を受けた善治郎は、その試運転への同乗を快諾した。フレア姫は、自国が誇る大型帆船を善治郎に見せられることを嬉しく思っていた。

黄金の木の葉号への乗船

善治郎は桟橋から巨大な黄金の木の葉号を見上げ、その迫力に感嘆した。

階段状のタラップを上って乗船した善治郎は、船の揺れに戸惑いながらも船上へ到着した。船上ではワレンティア公爵領の兵士たちが警備を固めており、フレア姫は船長として善治郎を歓迎した。

試運転の開始

フレア姫は善治郎とイネスを手すりの近くへ案内し、安全を確保したうえで出港を命じた。

黄金の木の葉号は港を離れ、海上で最終試運転を開始した。副長の指示のもとで水夫たちは見事な連携を見せ、巨大な帆船を自在に操っていた。

船乗りたちの技術

善治郎は揺れる船上でも自在に動く水夫たちの技量に感心した。

フレア姫は船乗りの訓練は船上で立つことから始まると説明し、さらに操舵長の技量が航海の安全を左右する重要な技術であることを語った。善治郎はその話を聞き、船乗りが高度な専門職であることを理解した。

善治郎への新たな認識

操舵輪について自然に理解を示す善治郎の言動を見たフレア姫は、改めて彼の特異性を意識した。

カープァ王国の造船職人たちですら知らなかった大型船の技術を善治郎が当然のように理解していたため、フレア姫は善治郎が他のカープァ王国人とは異なる知識と価値観を持つ人物であることを再認識した。

試運転の成功

黄金の木の葉号は港外を大きく回りながら順調に試運転を進めた。

やがて船はワレンティア港へ向きを変え、無事帰港した。善治郎は港が近づくにつれて安堵を覚え、瞬間移動にはない旅の風情を感じていた。

帰国計画の説明

試運転終了後、フレア姫は黄金の木の葉号の修理完了により帰国の準備を進める必要があると善治郎へ告げた。

理想としては酷暑期終了後に出航したいが、船員たちの体調次第では出発が遅れる可能性もあると説明した。また、活動期初期に出航すると帰国時期が北大陸の厳冬期に重なるため、安全を考慮すると出航時期は慎重に選ばなければならなかった。

再会の約束

フレア姫は本国へ戻った後、国王と王太子を説得し、再びカープァ王国へ戻りたいと語った。

その上で、自分を歓迎してくれるかと善治郎へ問いかけた。善治郎は、その言葉が側室入りの意思確認であることを理解しながらも、フレア姫の再来をアウラと共に待っていると答えた。

その返答を受けたフレア姫は、必ず戻ってくると告げ、喜びに満ちた笑顔を見せるのだった。

第五章 アウラ・カープァ

双王国到着の報告

プジョル将軍率いる先遣部隊が王都を出発してから約一か月後、王宮に双王国到着を知らせる小飛竜便が届いた。

報告には護衛隊全員が無事に双王国王都へ到着し、受け入れ準備も完了したことが記されていた。アウラは内容を確認する一方で、十匹飛ばした小飛竜のうち二匹しか戻らなかったことを惜しみ、小飛竜による長距離通信の困難さに思いを巡らせた。

双王国への派遣準備

報告を受けたアウラは、善治郎を双王国へ送り出すための準備を進めた。

善治郎の護衛であるナタリオと侍女イネスの派遣は不可欠であり、さらに善治郎が快適に過ごせるよう複数の侍女を送り込む必要があると考えた。また、双王国の侍女たちが過酷な旅路を無事に終えていたことから、双王国が長距離移動への備えに優れていることを改めて認識した。

双王国王族との確認

アウラはフランチェスコ王子とボナ王女を招き、到着報告の確認を行った。

ボナ王女へは贈られた飾り燭台を中庭へ設置することを伝え、完成後の夜会へ招待することを約束した。その後、プジョル将軍から届いた報告と、双燃紙による双王国側の報告を照合し、護衛隊の無事到着と受け入れ態勢の整備を確認した。

一時帰国の提案

善治郎が双王国へ渡れば、両国の王都に瞬間移動の使い手が存在することになるため、アウラはフランチェスコ王子とボナ王女へ一時帰国を提案した。

フランチェスコ王子はすでに了承していたが、ボナ王女は初耳だったため驚きを見せた。それでも帰国の意思を示し、瞬間移動の対価について尋ねたところ、フランチェスコ王子が自身の魔道具で支払う契約を結んでいることが判明した。これを聞いたボナ王女は王子の軽率さを厳しく叱責した。

善治郎の出発前の確認

数日後、善治郎は第三正装をまとい、双王国への出発に備えていた。

アウラは最後の確認として、双王国滞在中の目的を忘れないよう念を押した。善治郎の目的はジルベール法王家との関係を築き、将来アウラの出産時に治癒術士を招ける体制を整えることであった。しかし、善治郎に強い関心を抱いているのはシャロワ王家であり、交渉は容易ではないと説明した。

ナタリオの先行転移

アウラは善治郎に先立ち、騎士ナタリオを双王国へ転移させた。

ナタリオには善治郎の唯一の護衛としての役目を託し、すでに双王国へ派遣されている妹ケイトとの再会も許可した。ナタリオは感謝を示し、任務への決意を新たにした後、瞬間移動によって双王国へ送り出された。

夫婦の別れの時間

ナタリオが去った後、善治郎とアウラは二人だけの時間を過ごした。

互いに抱き寄せ合い口づけを交わした後、善治郎は定期的に帰国して報告することを約束した。また、アウラの腹の子やカルロスの話を交わしながら、離れて暮らすことへの寂しさを分かち合った。

互いを思う言葉

アウラは善治郎に対し、無理をせず危険を感じたらすぐ帰還するよう強く求めた。

しかし善治郎は、アウラの出産に備えて治癒術士を招ける環境を整えることは自分にとっても重要であり、できる限り交渉に尽力したいと伝えた。アウラはその思いを理解しつつも、無理をしないことを条件に了承した。

フレア姫の話題

その後、アウラは善治郎がフレア姫の申し出を受け入れた件について触れた。

善治郎は返事をしたことを認め、フレア姫とも良好な関係を築く努力をするつもりだと語った。一方で、アウラと過ごす時間が特別であることも率直に伝えた。アウラはその言葉を受け、自分が善治郎にとって特別な存在であることを実感し、フレア姫が後宮で穏やかに暮らせるよう配慮する意思を示した。

双王国への旅立ち

やがて出発の時が訪れた。

善治郎は未知の土地への不安を抱きながらも、アウラのために治癒術士を招く準備を整えるという決意を改めて固めた。そしてアウラに出発を願い、アウラは瞬間移動の魔法を発動して善治郎をシャロワ・ジルベール双王国へ送り出した。

エピローグ ルクレツィア・ブロイ

双王国への到着

善治郎がアウラの『瞬間移動』によって双王国へ到着すると、そこには多数の人々が整列して待機していた。一瞬警戒した善治郎だったが、プジョル将軍やナタリオ、イネスたち見知った顔を確認し、安堵した。

善治郎は出迎えたプジョル将軍から歓迎の言葉を受け、王族として応対した。その後、護衛兵たちが酷暑期の長旅を無事に終えていたことを知り、後で労おうと考えた。

異国の雰囲気への驚き

善治郎は双王国の建物や調度品、乾燥した空気に触れ、カープァ王国とは異なる文化圏であることを強く実感した。

王族として好奇心を表に出すことは控えながらも、異国の雰囲気に強い興味を抱いていた。

ルクレツィアとの初対面

善治郎の前に現れたのは、ブロイ侯爵家の少女ルクレツィアであった。

ルクレツィアは双王国を代表して歓迎の挨拶を述べ、善治郎を滞在先へ案内すると申し出た。善治郎は王族ではなく侯爵家の娘が出迎え役であることに少し拍子抜けしながらも、案内を受け入れた。

案内中の失態と違和感

ルクレツィアは善治郎を案内する途中、自分のドレスの裾を踏んで転びかけた。

善治郎は彼女の服装が身体に合っていないことを指摘し、ルクレツィアは成長する予定だから問題ないと反論した。しかし側仕えのフローラがそれを否定し、主従のやり取りは周囲の緊張を和らげる結果となった。

善治郎もその様子に自然と警戒を緩め、和やかな気持ちになっていた。

王宮の離れへの到着

案内された善治郎は、シャロワ王家の王宮『紫卵宮』の離れに通された。

そこは王宮のかなり奥に位置する建物であり、近くにはシャロワ王家の後宮も存在していた。善治郎は、自分が意図的に王宮深部へ招き入れられていることを察し、シャロワ王家が自分を容易にジルベール法王家へ接触させるつもりはないと理解した。

双王国での立場への警戒

善治郎はジルベール法王家との交渉が目的であり、そのためにはシャロワ王家とも向き合わなければならないと考えていた。

イネスからは、賓客の立場である以上、自由に『瞬間移動』で帰国することは難しいと説明された。善治郎は一定の譲歩はするつもりであったが、目的を無視して相手の都合だけを押し付けられるつもりはないと明言した。

ルクレツィアへの疑念

ナタリオは、ルクレツィアが転びかけた一連の行動は演技ではないかと善治郎へ進言した。

イネスもまた、フローラが絶妙なタイミングで支えたことに違和感を覚えていた。善治郎は、あの出来事によって自分の警戒心が和らいでいたことを認め、ルクレツィアに対する警戒を強めることにした。

ルクレツィアの本心

一方その頃、ルクレツィアは自室で窮屈なドレスを脱ぎ捨て、フローラと会話していた。

ルクレツィアは、小柄で幼い外見と天然な振る舞いを武器にして善治郎へ好印象を与えようとしていた。フローラからは、その作戦が女性達から反感を買っていると指摘されたが、ルクレツィアは意に介さなかった。

王族への執着

ルクレツィアは善治郎を手に入れることこそ、自分の人生を左右する目標だと語った。

彼女は本来シャロワ王家第二王子フィリベルトとその正妻ヨランダの娘であったが、『付与魔法』の才能を持たなかったため、幼い頃にブロイ侯爵家へ養女に出されていた。

そのため善治郎と結ばれ、自らあるいはその子が王族となることで、再び王族として認められる立場を取り戻したいと強く願っていた。ルクレツィアはその願いを叶えるためなら何でもすると決意を固めていた。

付録 主と侍女の間接交流

雨天の発電機整備

雨期の庭園担当は普段であれば比較的楽な部署であったが、この日は長雨によって発電機用の水槽がひどく濁っていたため、エミリアは問題児三人組のフェー、ドロレス、レテに小型水力発電機の簡易整備を命じた。

三人は大雨の中で作業を開始し、水の流入を止めた後、水槽内の泥水をバケツで汲み出していった。雨が降り続く中での作業に徒労感を覚えながらも、三人は手を止めることなく作業を続けた。

水槽清掃と生き物の回収

泥水を十分に減らした後、エミリアの指示で水槽を横倒しにし、底に溜まった泥や砂利を取り除く作業へ移った。

発電機を保護するために堆積した泥や砂利を除去する必要があり、フェーは小さなシャベルで泥をかき出した。その過程で小魚や川エビ、川ヘビ、カエル、さらには子ワニまで発見された。

フェーはそれらを回収したいと申し出て許可を得ると、生き物をバケツへ移した。子ワニの存在を確認したエミリアは、溜め池や噴水の安全確認が必要だと判断した。

作業後の入浴

大仕事を終えた三人は浴室へ向かい、泥と雨でずぶ濡れになった身体を洗い流した。

普段は水風呂を好むフェーも、この日ばかりは温かい湯を心から喜び、三人は身体を温めながら疲労を癒やした。入浴を終える頃には、すっかり元気を取り戻していた。

新人侍女達との交流

休憩中の三人のもとへ、新人侍女のミレーラ、ルイサ、ニルダが見学のために訪れた。

ミレーラは上品な雰囲気を持つ少女であり、ルイサは兵士のような身のこなしを見せる少女であった。ニルダは人懐っこく素直な性格をしていた。

三人は新人達に果実水を振る舞いながら後宮の生活について話し、後宮では家柄を表立って語らない方がよいことなどを助言した。

生き物への反応の違い

フェーが発電機の整備中に捕まえた生き物の話をすると、ミレーラはヘビやワニを処理するという話に強い衝撃を受けた。

一方で、村育ちのニルダや平民出身のルイサは、そのような生き物に慣れていると語った。ドロレスは後宮で自らの出自を積極的に語るべきではないと注意し、二人は素直にそれを受け入れた。

夜の厨房での調理会

数日後、問題児三人組は厨房で発電機整備の際に捕まえた生き物を調理することになった。

泥抜きを終えた魚やエビ、カエル、ヘビ、子ワニを前に、フェーは慣れた手つきで下処理を始めた。ドロレスは嫌悪感を示しながらも魚やエビの処理を担当し、レテは調理の準備を進めた。

子ワニの脱走とルイサの活躍

調理の途中、子ワニが桶から脱走し、厨房から廊下へ逃げ出してしまった。

三人が慌てて追いかける中、ルイサが暗い廊下で子ワニを捕獲して戻ってきた。明かりもない状況で素手で捕まえたことに三人は感心し、ルイサは鍛えているからだと淡々と答えた。

その後、ルイサも調理に加わり、慣れた手つきでワニやカエルの下処理を行った。

新人達との夜食会

調理が終わると、フェー達はルイサに加えニルダも呼び、一緒に夜食を楽しんだ。ミレーラは眠いという理由で参加を辞退した。

揚げた魚やエビ、ワニ肉を食べたルイサとニルダは、その味に感心した。特にレテが作った特製ソースは高く評価され、フェーは誇らしげに説明していた。

後宮生活への助言

食事をしながら、先輩侍女達は新人達の後宮生活について話を聞いた。

ニルダは礼儀作法に不安を抱いていると打ち明けたが、フェーはうまく答えられなかった。その代わりドロレスが、善治郎は悪意のない失敗には寛容であるため、失敗した際は誠実に謝ることが大切だと助言した。

しかしニルダは失敗した時の対処ではなく失敗しない方法を知りたいと答え、ドロレスは最終的に経験を積みながら覚えるしかないと説明した。ニルダはその言葉を受けて前向きに努力を誓った。

後宮の未来への期待

会話は今後の仕事や雨期明けの大規模整備へと移った。

フェーは本格整備の大変さを語り、ニルダとルイサは覚悟を示した。さらに新人が加わったことで仕事が楽になるのではないかという話題になり、侍女達は将来の体制について思い思いの予想を語った。

やがて時間となり、一同は後片付けを始めた。ドロレスの指示に従い、それぞれが役割を分担しながら作業を進め、新人侍女達も素直に仕事へ取りかかるのであった。

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理想のヒモ生活 シリーズ

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理想のヒモ生活 10巻
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理想のヒモ生活 11巻
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理想のヒモ生活 12巻
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理想のヒモ生活 13巻
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理想のヒモ生活 14
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理想のヒモ生活 15

漫画版

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理想のヒモ生活 17巻
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理想のヒモ生活 18巻
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理想のヒモ生活 19巻
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理想のヒモ生活 20巻
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理想のヒモ生活 21巻
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理想のヒモ生活 22巻
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理想のヒモ生活 23巻
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理想のヒモ生活 24巻

その他フィクション

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