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フィクション(Novel)理想のヒモ生活

小説「理想のヒモ生活 1巻」シガラミが多い 感想・ネタバレ

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小説理想のヒモ生活1巻の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

ヒモ生活2巻レビュー

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  1. どんな本?
  2. 読んだラノベのタイトル
  3. あらすじ・内容
      1. 「小説家になろう」No.1作品が満を持して書籍化。書籍用に大幅改稿、書籍でしか読めない新章もプラス! さぁ、あなたも会社の奴隷から爆乳女王のヒモへ!?
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 理想のヒモ生活
    2. カープァ王国の血統
    3. 理想のヒモ生活
    4. 現代技術の持ち込み
    5. 女王アウラの統治
    6. 異世界の言語法則
    7. 後宮の私生活
  6. 登場キャラクター
    1. 現代日本
      1. 山井善治郎
      2. 山井忠士
      3. 叔母
      4. 早苗
      5. 勇作
      6. 課長
      7. 吉永
    2. カープァ王国 王家・側近
      1. アウラ・カープァ
      2. 王子
      3. ファビオ・デウバジェ
      4. エスピリディオン
      5. パスクアラ
      6. ミシェル
    3. カープァ王国 貴族・軍関係者
      1. プジョル・ギジェン
      2. ファティマ
      3. ナタリオ
      4. マヌエル・マルケス
      5. ラファエロ・マルケス
      6. オクタビア
      7. ベルビデス辺境伯
      8. コルンガ男爵
      9. ダビーノ領主騎士
      10. ガメス領主騎士
      11. アウベニス伯爵
      12. ボニーヤ子爵
    4. カープァ王国 後宮・王宮使用人
      1. アマンダ
      2. イネス
      3. ヴァネッサ
      4. エミリア
      5. オラジャ
      6. フェー
      7. ドロレス
      8. レテ
      9. カリナ
      10. キーシャ
      11. クリステル
      12. ケイト
    5. シャロワ・ジルベール双王国
      1. イザベッラ
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ 半年ぶりの二連休は異世界で
    2. 幕間一 女王の密談
    3. 第一章 一時帰還
    4. 第二章準備から転移へ
    5. 第三章 結婚、そして始まる新婚生活
    6. 第四章 言霊の不思議
    7. 第五章 穏やかに時間は流れ
    8. 付録 主と侍女の間接交流
  8. 同シリーズ
    1. 理想のヒモ生活 シリーズ
    2. 小説版
    3. 漫画版
  9. その他フィクション

どんな本?

理想のヒモ生活」とは、渡辺恒彦 氏によるライトノベル。

日本でブラック労働をしていた善治郎は久しぶりの休みの日に異世界に召喚された。
その召喚主は善治郎の好みドストライクの美女だった。
そんな彼女は大国の女王で、善治郎に婿に来て欲しいと言う。
善治郎は躊躇なく「はい」と返事をして地球で婿に行く準備をしていざ異世界へ、、

後宮に引き篭もるヒモ生活を享受出来ると思っだが、、
女王が妊娠したら悪阻が酷く、彼女の代理として政治の表舞台へと行くと、世間が彼を後宮に引きこもる事を許してくれなくなった。

さらに彼の持ち物のビー玉が隣国双王国の付与魔術の媒体として最高品であると判ると、、
さらに善治郎の血統も、、

そんなタイトル詐欺と言いたくなるほど大忙しな善治郎のヒモ生活。

読んだラノベのタイトル

理想のヒモ生活 1
著者:渡辺恒彦 氏 イラスト: 文倉 十 氏

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

「小説家になろう」No.1作品が満を持して書籍化。書籍用に大幅改稿、書籍でしか読めない新章もプラス! さぁ、あなたも会社の奴隷から爆乳女王のヒモへ!?

山井善治郎は、現代日本を生きる若きサラリーマン。 ある日の朝。善治郎は突然、恐竜が闊歩する亜熱帯の異世界――カープァ王国に召喚されてしまう。召喚したのは、カープァ王国女王、アウラ一世。善治郎を召喚した女王アウラは、善治郎に「自分と結婚して、こちらの世界で暮らして欲しい」と申し出る。理由は、善治郎が『百五十年前、異世界に愛の逃避行を計ったカープァ王族の末裔』だから。国内の貴族にも、王家の血を引く婚約者候補はいるのだが、彼等を婿に迎えれば、『男尊女卑』の毛色が強いカープァ王国では、女王と王配の間で権力闘争が起きる可能性が高い。 そのため、善治郎に求められることは「できるだけ、何もやらないこと」。その条件は、月平均百五十時間残業の日常に疲れきっていた善治郎には、非常に魅力的な申し出に聞こえた。しかも、アウラは善治郎の好みのタイプそのものの美女。半ば衝動的に結婚の申し出を受諾する善治郎。仕事もせず、爆乳美女と楽しく暮らす「理想のヒモ生活」がいざ始まる!?

理想のヒモ生活1

感想

田舎から都会に出て来て、ブラック企業に勤めている善治郎が突然異世界に呼ばれて、ストライクゾーンど真ん中の女王アウラから求婚されてしまうw

その後、日本に戻り1ヶ月で異世界に行く準備をする。

発電機、冷蔵庫、クーラー、PCなどを購入して異世界でも快適な生活を出来るようにする。

異世界に行き、王配としての新生活になんとか順応しようと奮闘するのだが、、
女王アウラの政治的不安定さ。
弱体化した王家に変わり、自身の利権を増大させたい武人肌、文官肌の貴族達。

なかなかの波瀾万丈の予感がする異世界生活。
ヒモ生活とは程遠くね?w

巻末のメイド達との交流が清涼剤になってるw

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ヒモ生活2巻レビュー

考察・解説

理想のヒモ生活

カープァ王国における「異世界召喚」は、女王アウラ・カープァの「婚姻」という、血統的かつ政治的な至上命題を解決するための手段として用いられている。異世界召喚とそれに伴う婚姻について、以下の3つの観点から解説する。

1. 王家の血筋と「時空魔法」の継承
カープァ王国の血筋と魔法の継承に関する背景は以下の通りである。

  • 長きにわたる戦乱により直系の王族が女王アウラ一人となっており、王家の血を次代に残すための結婚が絶対的な義務であった。
  • カープァ王家は「時空魔法」という特別な血統魔法を継承しており、その魔法を残すためには、可能な限り王家の血を濃く引く伴侶が必要とされていた。
  • アウラは「一定より濃く、カープァ王家の血を引く男」という条件で召喚魔法を行い、現代日本のサラリーマンである山井善治郎を召喚した。
  • 善治郎は、約150年前に身分違いの恋の末に異世界(地球)へと駆け落ちした、カープァ王国の第一王子の子孫であった。
  • 善治郎の生まれ育った村が閉鎖的であったため、王家の血が拡散せずに色濃く保たれており、アウラにとっては嬉しい誤算と言えるほど豊かな魔力と血の濃さを持っていた。

2. なぜ国内貴族ではなく「異世界人」だったのか(アウラの真意)
国内の貴族ではなく、あえて異世界人を夫に選んだアウラの真意は以下の通りである。

  • 国内にも、王家の血を薄く引く有力な貴族(プジョル卿やラファエロ卿など)は存在していた。
  • カープァ王国は歴史的に男性優位社会であり、家庭では夫が家長となる文化を持っているため、野心を持つ有力貴族を王配(女王の夫)に迎えれば、女王と王配による二重権力構造が生まれ、外戚が権力を振るって国が内乱で分裂する危険性があった。
  • アウラが夫に求めていたのは、政治的野心を持たず、実家の紐付きにもならない「権力争いに関わらない男」であった。
  • 善治郎はこのアウラの真意を正確に見抜き、後宮に引きこもり、外部との接触を断って遊び呆ける日々を過ごしたらどう思うかと問いかけた。アウラが大歓迎だと即答したことで、善治郎は地球での過酷な労働生活を捨て、ヒモとして異世界で結婚生活を送ることを決断した。

3. 召喚の制約と、異文化が交わる婚姻の儀式
異世界召喚の制約や、二人の婚姻の儀式における特徴は以下の通りである。

  • 召喚や送還の魔法は星の並びに左右されるため、いつでも使えるわけではない。善治郎は一旦地球へ送還され、次の好機である1ヶ月後(これを逃せば次は30年後)に、水力発電機などの現代文明の婿入り道具と共に再召喚された。
  • 結婚式は、有力貴族たちが自分の娘を善治郎の側室として送り込むなどの横やりを入れる前に既成事実を作るため、王族としては異例となるわずか1ヶ月半の準備期間で強行されるなど、非常に政治的な配慮の下で行われた。
  • 結婚式での善治郎の衣装には、地球の冠婚葬祭用の黒の礼服が選ばれた。これは、女王より威厳のある格好をして王権を揺るがすことも、逆に威厳のない格好で伝統を蔑ろにすることも避けるため、新郎の故郷の風習に合わせたという絶妙な折衷案であった。
  • 初夜を迎えた際、善治郎は地球の風習である結婚指輪(ペアリング)での指輪交換を行い、永遠の愛を誓い合った。アウラもこの未知の風習を面白がって受け入れ、二人は異なる世界と文化を超えて、夫婦としての絆を深めていくことになった。

まとめ
このように、カープァ王国における異世界召喚と婚姻は、単なる男女の結びつきにとどまらず、王家の血統存続と国家の権力安定を両立させるための高度な政治的戦略であった。異なる世界から迎えられた善治郎とアウラは、互いの真意と文化を尊重し合うことで独自の夫婦の絆を築き上げ、新たな王国の未来を切り開いていくことになる。

カープァ王国の血統

カープァ王国において、王家の血統は国家の存亡や権力構造に直結する極めて重要な意味を持っている。特に王家のみに宿る秘術「時空魔法」の継承は絶対的な義務であるが、直系の王族が女王アウラ一人となったことで血統の存続が危ぶまれていた。この危機を脱するために行われた異世界召喚と、それに伴う王家の婚姻戦略について解説する。

王家の血統が持つ重要性と直系存続の危機

  • カープァ王国の血統は国家の存亡に関わるものであり、王家の血筋にのみ宿る時空魔法の使い手の数がそのまま国力となる。
  • 時空魔法を次代に正しく継承させることが王家の絶対的な義務とされているが、長きにわたる戦乱の結果、現在の直系王族は女王アウラただ一人となっていた。

異世界からの召喚と山井善治郎の血統

  • 血統の危機を解決するため、アウラは一定より濃く王家の血を引く男を異世界から召喚した。それが現代日本人の山井善治郎である。
  • 善治郎は約150年前に身分違いの恋の末に地球へと駆け落ちしたカープァ王国第一王子の子孫であり、生まれ育った日本の村が非常に閉鎖的であったため、王家の血が拡散せずに保たれていた。
  • 結果として善治郎は、分家筆頭クラス(準王家クラス)の豊かな魔力量と濃い血統を有しており、修練次第では彼自身も時空魔法を使えるようになるほどの素質を秘めている。

国内貴族ではなく異世界人が選ばれた理由

  • 国内にも王家の血を薄く引く有力貴族は存在していたが、彼らの血の濃さは曾祖父の祖父や曾祖父の母親が王族といった程度にすぎなかった。
  • カープァ王国は歴史的に男性優位の社会であり、有力貴族を王配(女王の夫)として迎えれば、外戚が権力を振るって女王派と王配派で国が二分する内乱の危険性があった。
  • そのため、血の濃さに加えて、政治的野心を持たず権力争いに関わらないという条件を満たす善治郎が選ばれた。

濃すぎる血統がもたらす新たな政治的火種と側室問題

  • 善治郎が想像以上に濃い王家の血を引いていたことは嬉しい誤算であったが、同時に新たな政治的火種にもなった。
  • 善治郎の血の濃さであれば、アウラ以外の女性との間にも時空魔法を継承可能な子をもうけることが期待できるため、貴族たちが自らの娘を側室に送り込もうとする動きが生じている。
  • 王家の血の存続において側室制度は極めて合理的であるが、将来的に血の近い異母兄弟姉妹ばかりになれば、次々代の婚姻政策において近親婚の問題が生じる危険性がある。
  • そのため、王家の分家を作るにあたっては、他系統の貴族女性や女魔法使いを側室に迎えるべきだという冷静な分析もアウラの側近からなされています。

まとめ
山井善治郎という存在は、カープァ王国の時空魔法と血統を存続させるための最大の希望となった。しかし同時に、その血の濃さは国内貴族たちの野心を刺激し、複雑な婚姻戦略や権力闘争の要ともなっている。女王アウラとその側近たちは、国家の安定と血統の維持という二つの至上命題を果たすため、今後も慎重な舵取りを迫られることになる。

理想のヒモ生活

『理想のヒモ生活』は、過酷な労働環境(ブラック企業)で消耗していた現代日本のサラリーマン・山井善治郎が、異世界のカープァ王国に召喚され、女王アウラ・カープァの夫としてヒモ生活を送る物語である。本作の重要なテーマや見どころについて、4つのポイントから解説する。

完璧なヒモ生活が求められる政治的背景

  • カープァ王国は長きにわたる戦乱によって王族が激減し、直系王族は女王アウラ一人という状況であった。
  • 王家特有の時空魔法を次代に残すため、アウラは王家の血を色濃く引く伴侶を必要としていたが、歴史的に男性優位社会であるため、国内の有力貴族を王配(女王の夫)として迎えれば、外戚が権力を振るい国が分裂する危険性があった。
  • そのためアウラは、政治的野心を持たず、権力争いに関わらない男を求めて、約150年前に異世界(地球)へ駆け落ちした王族の子孫である善治郎を召喚した。
  • 善治郎はアウラの真意を正確に見抜き、後宮に引きこもり遊び暮らすというヒモ生活を提案し、アウラから大歓迎を受けることで、両者の利害が完全に一致した異色の政略結婚が成立した。

現代文明の婿入り道具による生活改善

  • 星の並びの都合上、次の召喚の好機が30年後になるため、善治郎は一度地球へ帰還し、異世界での生活を快適にするための婿入り道具を買い込んだ。
  • 電力が存在しない異世界の過酷な熱帯夜を乗り切るため、なけなしの貯金をはたいて家庭用のマイクロ水力発電機を購入し、冷蔵庫や扇風機、LED照明やパソコンなどと共に異世界へ持ち込んだ。
  • 後宮の中庭に苦労して発電機を設置した善治郎は、氷を浮かべた冷たい酒や扇風機の風を楽しむという、異世界の王侯貴族すら味わえない快適な文明生活を実現した。

言語・知識のギャップと「言霊」
異世界ならではの文化や知識のギャップも本作の魅力である。

  • 言霊による自動翻訳:この世界では、魔力を持つ者同士であれば言葉が自動翻訳される言霊という法則が存在する。善治郎が持ち込んだデジカメでアウラの言葉を録画した際、魔力を持たない機械を通した音声には言霊が宿らず、未知の外国語として聞こえたことでこの事実が発覚した。
  • 算用数字の不在:カープァ王国には数字という専用の記号が存在せず、文字の組み合わせで数を表現していた。善治郎がアラビア数字の利便性をアウラに教え、さらにパソコンの表計算ソフトを使って貴族の納税書の再計算(脱税の洗い出し)をあっという間に行ってしまったため、ヒモであるはずの彼の極めて高い事務能力が露呈することとなった。
  • 娯楽の布教:善治郎が暇を持て余した侍女たち(フェー、ドロレス、レテの問題児三人組)に携帯ゲーム機を与えた結果、彼女たちが落ち物系ゲームに大熱中し、ハイスコアを競い合うコミカルな日常も描かれている。

側室問題と育まれる夫婦愛

  • 当初は完全に政略的な契約結婚であったが、善治郎の優しさや誠実さに触れるうち、アウラは彼に深く惹かれていく。
  • しかし、善治郎は時空魔法を継承可能なほど極めて濃い王家の血を引いていたため、有力貴族(プジョル将軍など)が自分の妹や娘を側室として送り込もうとする政治的圧力が強まる。
  • 善治郎自身は他の女性に全く目もくれない一途な男であるが、アウラは女王としての王家の血統を増やす義務と、一人の女性としての他の女を近づけたくない独占欲の間で揺れ動くこととなる。

まとめ
本作は単なる異世界転生ものではなく、現代知識を駆使して快適な引きこもり生活を守ろうとする主人公と、彼を守りつつ国家を運営する女王との、高度な政治的駆け引きと徐々に深まっていく夫婦の愛情を描いた作品である。政略結婚から始まった二人の関係が、異世界と現代地球の文化ギャップを乗り越えながらどのように変化していくのかが最大の見どころと言える。

現代技術の持ち込み

異世界での快適な「ヒモ生活」を維持するためのインフラ構築として、山井善治郎は現代技術を大量に持ち込んだ。次の召喚の好機が30年後になるため、善治郎は一度地球へ帰還し、なけなしの貯金をはたいて「婿入り道具」を買い揃え、アウラから預かった時空魔法の結界が込められた絨毯型の魔道具を利用して異世界へ運び込んだ。現代技術の持ち込みがもたらした影響と見どころについて、以下の4つのポイントから解説する。

マイクロ水力発電機と家電による生活改善

  • 電力が存在しない異世界において、最大の課題は電力確保であった。
  • 善治郎は、夜間利用ができないソーラー発電や安定しない風力発電を避け、24時間稼働できる家庭用マイクロ水力発電機を選択した。
  • これを後宮の中庭に設置したことで、5ドア冷蔵庫や扇風機、LEDフロアスタンドライトなどが稼働可能になった。
  • カープァ王国は日本の真夏以上の過酷な熱帯夜が続く環境であるが、冷蔵庫で作った氷と扇風機の組み合わせによる冷風や、夜間を明るく照らすLED照明は、異世界の王侯貴族すら味わえない劇的な快適さを生み出した。

パソコンと「アラビア数字」による事務革命

  • 持ち込まれた技術は物理的な機械にとどまらない。カープァ王国には数字という専用の記号が存在せず、文字の組み合わせで数を表現していた。
  • 善治郎がパソコンの表計算ソフトを活用し、大量の地方別納税書類の再計算をわずか数日で終わらせたことで、これまで見過ごされていた貴族たちの脱税(数値のごまかし)が一気に可視化された。
  • さらに善治郎からアラビア数字を教わったアウラは、10個の記号だけであらゆる数を表現できる合理性に感嘆し、王家の事務効率を劇的に向上させるために関連部署への導入を決定した。

異世界文化とのギャップと誤解
現代技術の持ち込みは、異世界人との間に様々な文化的ギャップや勘違いを引き起こした。

  • 道具の誤解:エアコン設置のために持ち込んだドライバーやハンマードリルなどの工具、そしてかき氷機は、王国の兵士たちから武器や拷問器具ではないかと疑われた。
  • ガラスの価値:善治郎は万が一の漂流に備え、換金用としてビー玉やビーズを持ち込んだ。しかし、ガラス製造技術が存在しないこの世界では、これらは単なる玩具ではなく宝玉として扱われるほどの価値を持っており、アウラを驚愕させた。
  • 「言霊」の不在とデジカメ:この世界では、魔力を持つ者同士であれば言葉が自動翻訳される言霊という法則がある。善治郎がデジカメの動画機能でアウラの言葉を録画した際、魔力を持たない機械を通した音声には言霊が宿らないため、全く意味不明な未知の外国語として再生されるという事実が発覚した。

娯楽機器による影響

  • 善治郎が持ち込んだ携帯ゲーム機やテレビゲームも、後宮に新たな風を吹き込んだ。
  • 善治郎とアウラがテレビの画面で風景写真の間違い探しゲームを楽しんで夫婦の仲を深めた。
  • 暇を持て余していた後宮の侍女たち(フェー、ドロレス、レテ)に携帯ゲーム機を貸し出した結果、彼女たちが落ち物系パズルゲームに大熱中し、マーブルチョコレートの賞品を懸けてハイスコアの更新を巡って白熱した競争を繰り広げるコミカルな事態も起きている。

まとめ
このように、善治郎が持ち込んだ現代技術は、単なる生活水準の向上にとどまらず、王国の政治的効率化や新たな娯楽の誕生、そして異文化交流の象徴として物語に深く関わっている。現代の利便性を異世界の環境に適応させていく善治郎の工夫と、それによって生じる文化的な摩擦や驚きは、本作の大きな魅力と言える。

女王アウラの統治

カープァ王国女王アウラ・カープァは、長きにわたる戦乱を生き抜いた国家を牽引する、非常に聡明で現実主義的な名君である。彼女の統治スタイルや為政者としての姿勢、そして激務を極める執務の様子について、4つのポイントから解説する。

宰相と元帥を置かない「直接統治」と多忙なスケジュール

  • カープァ王国は歴史的に男性優位の社会であり、アウラは同国の歴史上わずか3人目の女王である。
  • 現在の王国には政治のトップである宰相や軍のトップである元帥が存在せず、アウラ自らが政府と軍の直接指揮を執っている。
  • 日中のアウラは、数多くの会議や面談、大量の竜皮紙による書類の決済に追われている。
  • 時計が存在しない世界でありながら、王宮内での公務は一時間の四分の一(15分)刻みで計られるほど時間に対する精度が高く、現代日本の政治家にも匹敵する激務をこなしている。
  • これに加え、直系王族が自分一人しかおらず、王家の血統(時空魔法)を次代に残さなければならないという国家の存亡に関わる重圧も背負っている。

右腕であるファビオ秘書官との連携と部下の直言を受け入れる度量

  • アウラが宰相や元帥を置いていない関係で、王の秘書官であるファビオ・デウバジェの権限は極めて大きくなっており、女王の右腕と称されている。
  • ファビオは常に無表情で、アウラに対して冷徹で耳の痛い意見(直言)を容赦なくぶつける。
  • 善治郎に対する警戒を解かない姿勢や、王家の血統を残すために善治郎に側室を持たせるべきという非情な政治的進言に対しても、アウラは怒ることはなく、彼の冷静な判断を深く信頼して重用している。
  • 善治郎からアラビア数字の合理性を教わった際も、現場の反発や混乱を招くというファビオ秘書官の進言を聞き入れ、全面導入を見送った。まずは王室の関連部署に数字の読み方一覧表を配布し、既存の文字表記と数字表記を併記させるという段階的な導入にとどめるなど、自身の感情的な反発を素直に飲み込んで急激な改革を避ける賢明さを持っている。

内乱を未然に防ぐ婚姻戦略と貴族との老獪な駆け引き

  • アウラの統治において最大の懸念は、国内の有力貴族(プジョル将軍やラファエロ卿など)が過剰な力を持つことによる国家の分裂であった。
  • 有力貴族を王配(女王の夫)に迎えれば、外戚が権力を振るい、国が内乱状態に陥る危険性があったため、政治的基盤も野心も持たない異世界人の善治郎を夫に迎えるという、大胆かつ計算された戦略をとった。
  • かつての婿候補であったプジョル将軍が自身の妹を善治郎の側室にしてほしいとあからさまな要求をしてきた際や、貴族たちが娘を側室に送り込もうとする政治的圧力に対しても、女王としての威厳を保ちつつ巧みに拒絶している。世論や貴族の牽制に配慮しながら、女王が夫の自由を奪っているという不評を買わないよう慎重に対処している。
  • 善治郎が持ち込んだパソコンの表計算ソフトにより有力貴族の脱税が発覚した際も、いきなり強硬に処罰する愚行は犯さない。彼らが先の大戦の英雄であり、その税が自領の軍備強化に使われている複雑な事情を理解しているため、不正発覚を内々に匂わせることで自主的な譲歩を引き出すという、非常にバランス感覚に優れた柔軟な交渉材料として利用している。

激務の合間の休息と夫への気遣い

  • 厳しい政務に追われるアウラにとって、夫である善治郎と過ごす私生活の時間が最大の癒やしであり安らぎの場となっている。
  • 酷暑の時期には正午から3時間の休息時間が設けられており、アウラはその時間を後宮で過ごす。
  • 善治郎が持ち込んだ冷蔵庫で作った氷と扇風機の冷風にあたり、冷えた酒や果実水を飲みながら、二人でテレビ画面の間違い探しゲームを楽しむなど、公務中には見せないリラックスした表情を見せている。
  • 夜の自由時間にも、善治郎にカープァ王国の礼儀作法を教えるなど、自身の休息時間を削ってでも夫をサポートしようとする姿勢が見られる。

まとめ
女王アウラは、強大な王権を持ちながらも決して独裁的に振る舞うことはない。国内のパワーバランスや人心の動きを冷静に分析し、時に妥協を交えながら国家の安定と血統の維持を第一に図る、極めて優れた統治者である。同時に、夫との穏やかな時間を糧に激務を乗り切る一人の女性としての姿も持ち合わせており、その公私のバランスが彼女の確かな統治を支えていると言える。

異世界の言語法則

異世界のカープァ王国やその周辺では、国や民族が異なる言語体系を持っていても会話に支障をきたさない、言霊という言語法則が存在する。これは、魔力を持つ者同士であれば言葉が自動的に翻訳されて互いの意思疎通が可能になるという仕組みである。この言霊の法則には、以下のような重要な発動条件と特徴がある。

数千人規模の共通認識の必要性

  • 言霊は、個人の勝手な思い込みや赤ん坊の言葉では発動しない。
  • 最低でも数千人単位の人間がその音に対してその意味を共通認識している、正しい音にのみ宿る特性を持つ。
  • 発動に本人の意思は関係なく、条件を満たす音であれば自動的に翻訳効果が表れる。

話し手と聞き手双方に求められる魔力

  • 言霊の力は微弱な魔力を介して働いているため、会話をする双方が魔力を持っていることが前提条件となる。
  • 魔力を持たないデジカメやパソコンなどの機械を通して録音・再生された音声には、言霊が宿らない。
  • 善治郎がデジカメの動画機能でアウラの言葉を録画・再生した際、全く意味不明な未知の外国語として聞こえたことで、善治郎はこの法則の存在を初めて知ることになった。

音声のみに作用する制限

  • 言霊はあくまで音声にのみ作用するため、文字には自動翻訳の効果が存在しない。
  • 異国の書物を読むためには、自動翻訳に頼らずその国の文字や言語を一から学習する必要がある。

熟練した魔法使いによる外国語学習

  • 日常会話のレベルでは自動翻訳が機能してしまうため、この世界で複数の言語を正確に聞き取り、習得できるのはごく一部の魔法使いに限られる。
  • 異国の書物を読むなどの理由で外国語の生の音声を聞き取る必要がある場合、熟練した魔法使いは意図的に自身の魔力放出を制御して言霊の効果を遮断し、生の言語音として学習を行っている。

まとめ
このように、異世界では言霊によって日常会話における言語の壁は存在しない。その一方で、現代機器を通した音声のやり取りや、異国の書物の解読においては、魔力の有無や媒体の性質に応じた特有の制限と法則が存在している。

後宮の私生活

カープァ王国の後宮は原則として男子禁制のプライベート空間であり、重い荷物を運び込むなどの例外を除き、他の男性が立ち入ることはない。山井善治郎はここで政治的権力から意図的に距離を置き、文字通りのヒモ生活を満喫している。その後宮における私生活について、主に4つの要素から解説する。

現代家電による劇的な生活改善と暑さ対策

  • カープァ王国は、昼間の最高気温が40度を超える過酷な熱帯気候である。
  • 善治郎は中庭に設置したマイクロ水力発電機を活用し、持ち込んだ5ドア冷蔵庫や扇風機、LEDフロアスタンドライトなどを稼働させている。
  • 扇風機の前に氷を置いた冷風や、かき氷機で作ったイチゴシロップ掛けのかき氷、よく冷えたお酒などは、異世界の王侯貴族すら味わえない劇的な快適さを生み出し、日々の生活の質を大きく向上させている。

女王アウラとの夫婦水入らずのひと時

  • 多忙なアウラと過ごせるのは、主に夜間と、猛暑を避けるために設けられた昼間の3時間の休息時間である。
  • LEDライトで明るく照らされた室内で、よく冷えた白ワインやブランデーを傾けながら、二人でテレビ画面の間違い探しゲームに興じるなど、夫婦水入らずの穏やかな時間を育んでいる。
  • 過酷な政務をこなすアウラにとっても、善治郎との私生活は大きな安らぎの場となっている。

侍女たちとの良好な関係と新たな娯楽の流行

  • 後宮には侍女長アマンダをはじめとする13名の侍女が配属されているが、善治郎は滅多に我が儘を言わず、掃除の際は邪魔にならないよう自ら別室に移動するなど気を遣うため、使用人たちから手間のかからない理想の主人として非常に高く評価されている。
  • 善治郎が暇を持て余したフェー、ドロレス、レテの問題児三人組に携帯ゲーム機を貸し出したことがきっかけで、彼女たちが落ち物系パズルゲームに大熱中し、未知のお菓子であるマーブルチョコレートの賞品を懸けてハイスコアを激しく競い合うというコミカルな日常も生まれている。

ヒモでありながらも勤勉な自己研鑽

  • 怠惰な娯楽を楽しむ一方で、善治郎は持ち前の生真面目さから自己研鑽も怠っていない。
  • パソコンの表計算ソフトにこの世界の文字をドット絵のように登録し、昨年度の地方別納税書類を入力して文字の読み書きを一人で勉強している。
  • マルケス伯爵夫人オクタビアを家庭教師として招き、王族としてのマナーや一般常識、魔法の基礎を学んでおり、少しでもアウラの足を引っ張らないよう隙間時間を活用して密かに努力を重ねている。

まとめ
善治郎の後宮生活は、現代文明の利器によって圧倒的な快適さを実現しつつ、多忙な女王アウラにとっての貴重な安らぎの空間を提供している。周囲の侍女たちとの関係も良好であり、ただ怠惰に過ごすだけでなく、王族の伴侶としての責任を果たすために陰で努力を続ける誠実さが、彼の充実したヒモ生活を支えている。

ヒモ生活2巻レビュー

登場キャラクター

現代日本

山井善治郎

過酷な労働環境で働く日本のサラリーマンである。カープァ王国の女王アウラに見初められ、異世界へ召喚される。アウラと婚姻関係を結ぶ。

・所属組織、地位や役職  現代日本の会社員。後にカープァ王国の王配となる。

・物語内での具体的な行動や成果  水力発電機や家電などの現代技術を異世界に持ち込む。パソコンの表計算ソフトを利用して地方貴族の脱税を発見する。公的な場では色ボケの駄目男を演じて権力闘争を回避する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  時空魔法を継承可能な濃い王家の血を引いている。王子の誕生後は王配としての自覚を持ち、アウラの公務を代行するようになる。

山井忠士

善治郎の叔父である。眼鏡をかけた細面の男性だ。両親を亡くした善治郎の世話をした過去を持つ。

・所属組織、地位や役職  専業農家。

・物語内での具体的な行動や成果  海外へ行くと嘘をついた善治郎を温かく送り出す。当初は善治郎の車の受け取りを遠慮する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  善治郎の説得を受け、最終的に車を譲り受ける。

叔母

善治郎の叔母である。働き者の農家の女性だ。善治郎を家族として温かく迎える。

・所属組織、地位や役職  専業農家。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎の帰省時に夕食を用意する。車の受け取りをためらう夫に助言を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  海外へ行く善治郎に自家製の梅干しを持たせる。

早苗

忠士の長女である。高校三年生で下宿生活を送っている。

・所属組織、地位や役職  高校生。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  来年から大学生になる予定であり、善治郎から譲られた車を使用することになる。

勇作

忠士の長男である。中学三年生だ。

・所属組織、地位や役職  中学生。

・物語内での具体的な行動や成果  姉の早苗が善治郎の車を使う話を聞いて喜ぶ。姉に車に乗せてもらおうと携帯電話で連絡を取る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  来年からは高校で下宿生活を始める予定となっている。

課長

善治郎の直属の上司である。中年太りでサンダル履きの男性だ。実労働力として激務をこなす。

・所属組織、地位や役職  現代日本の会社における課長。

・物語内での具体的な行動や成果  退職を申し出た善治郎に仕事の引き継ぎを指示する。新人用の業務手引書の作成を命じる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  退社する善治郎に短い挨拶を返す。

吉永

善治郎の職場の先輩である。三十歳前後の痩せた男性だ。

・所属組織、地位や役職  現代日本の会社員。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎に頼まれた過去の契約資料を探す。善治郎の退社による仕事のしわ寄せを懸念する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  記述なし。

カープァ王国 王家・側近

アウラ・カープァ

カープァ王国の女王である。赤い髪と小麦色の肌を持つ。戦乱を生き抜いた現実主義的な統治者だ。

・所属組織、地位や役職  カープァ王国女王。

・物語内での具体的な行動や成果  王家の血統を残すため、異世界から善治郎を召喚する。有力貴族の権力拡大を防ぐため、善治郎と婚姻を結ぶ。地方貴族の脱税に対して柔軟な交渉を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  同国の歴史上三人目の女王である。時空魔法を継承している。後に善治郎との間に第一子となる王子を出産する。

王子

アウラと善治郎の間に生まれた第一子である。

・所属組織、地位や役職  カープァ王国王子。

・物語内での具体的な行動や成果  酷暑の時期に誕生する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  生まれた直後からアウラを上回るほどの魔力を放っている。

ファビオ・デウバジェ

王の秘書官である。細面の中年男性だ。常に無表情で冷徹な意見を述べる。

・所属組織、地位や役職  カープァ王国の秘書官。

・物語内での具体的な行動や成果  アウラに対して耳の痛い意見を容赦なくぶつける。善治郎に側室を持たせるべきだと進言する。アラビア数字の全面導入を見送るよう提案する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  宰相や元帥が存在しない王国において、女王の右腕として極めて大きな権限を持つ。

エスピリディオン

カープァ王国の魔法使いである。紫のローブをまとった初老の男性だ。

・所属組織、地位や役職  筆頭宮廷魔法使い。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎の召喚に立ち会う。善治郎との婚姻に裏がある可能性を指摘し、再召喚を取りやめる案を出す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  大魔力を持ちながらもささやかな魔法を扱える例外的な存在となっている。

パスクアラ

エスピリディオンの妻である。七十歳を超える老女だ。

・所属組織、地位や役職  筆頭魔術師の妻。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  善治郎の家庭教師の適切な候補がいない場合、アウラが彼女に依頼するつもりでいた。

ミシェル

王家のかかりつけ医である。

・所属組織、地位や役職  カープァ王国の医師。

・物語内での具体的な行動や成果  アウラを診察する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  診察の結果、アウラの懐妊の可能性が高いと診断する。

カープァ王国 貴族・軍関係者

プジョル・ギジェン

カープァ王国の将軍である。「餓狼」の異名を持つ。野心家で強引な性格だ。

・所属組織、地位や役職  カープァ王国軍将軍。竜弓騎兵団を率いる。

・物語内での具体的な行動や成果  立食会で善治郎に貴重な武器である竜弓を進呈する。自身の妹ファティマを側室として善治郎に売り込む。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  かつてはアウラの有力な婿候補の一人であった。

ファティマ

プジョル・ギジェンの妹である。長身の少女だ。

・所属組織、地位や役職  ギジェン家。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  兄であるプジョルによって善治郎の側室候補として紹介される。

ナタリオ

カープァ王国の騎士である。

・所属組織、地位や役職  カープァ王国の騎士。後に直衛騎士となる。

・物語内での具体的な行動や成果  プジョルから善治郎に贈られた竜弓を、善治郎の命令で貸与される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  善治郎によって直衛騎士任命の儀式が行われる。また、プジョルによって竜弓騎兵団に引き抜かれる。

マヌエル・マルケス

カープァ王国の大貴族である。老獪な立ち回りを得意とする。

・所属組織、地位や役職  マルケス伯爵。

・物語内での具体的な行動や成果  立食会でプジョルの側室売り込みに対して助け船を出し、善治郎とアウラに恩を売る。後妻のオクタビアを善治郎の家庭教師として推薦する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  息子のラファエロはアウラの元婿候補である。

ラファエロ・マルケス

マヌエル・マルケス伯爵の息子である。政治に関わる文官だ。

・所属組織、地位や役職  マルケス家。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  かつてアウラの元婿候補であったが、親の意向に逆らえないため選ばれなかった。

オクタビア

マヌエル・マルケス伯爵の後妻である。知識、教養、魔法技術を持つ。

・所属組織、地位や役職  マルケス伯爵夫人。善治郎の家庭教師。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎に王族としてのマナーや一般常識、魔法の基礎を教える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  貴族女性のかがみと呼ばれている。

ベルビデス辺境伯

カープァ王国の地方貴族である。

・所属組織、地位や役職  辺境伯。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過去の脱税が発覚する。

コルンガ男爵

カープァ王国の地方貴族である。

・所属組織、地位や役職  男爵。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過去の脱税が発覚する。

ダビーノ領主騎士

カープァ王国の地方貴族である。

・所属組織、地位や役職  領主騎士。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過去の脱税が発覚する。

ガメス領主騎士

カープァ王国の地方貴族である。

・所属組織、地位や役職  領主騎士。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  過去の脱税が発覚する。

アウベニス伯爵

カープァ王国の地方貴族である。

・所属組織、地位や役職  伯爵。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  善治郎が確認した納税書類に名前が記載されている。

ボニーヤ子爵

カープァ王国の地方貴族である。

・所属組織、地位や役職  子爵。

・物語内での具体的な行動や成果  本編に直接登場する描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  アウラが善治郎の書類の発音を訂正する場面で名前が登場する。

カープァ王国 後宮・王宮使用人

アマンダ

後宮の侍女長である。四十歳前後の細身の女性だ。生真面目で厳しい性格を持つ。

・所属組織、地位や役職  後宮の侍女長。

・物語内での具体的な行動や成果  後宮にやってきた善治郎に侍女たちを紹介する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  後宮の人員を統括する責任者である。

イネス

後宮の清掃責任者である。中年の侍女だ。口うるさいが部下思いな面を持つ。

・所属組織、地位や役職  清掃担当責任者。

・物語内での具体的な行動や成果  サボる若い侍女たちを叱責する。携帯ゲーム機を持ち出したフェーに説教を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  フェーの失態に対して善治郎への取りなしを約束する。

ヴァネッサ

後宮の調理責任者である。中年太りの女性だ。

・所属組織、地位や役職  調理責任者。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎が持ち込んだカステラのレシピを独自に改良し、菓子を完成させる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  現地の素材を活かして現代知識をローカライズする能力を持つ。

エミリア

後宮の庭園担当責任者である。中年太りの女性だ。

・所属組織、地位や役職  庭園担当責任者。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎に挨拶を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  記述なし。

オラジャ

後宮の浴室担当責任者である。中年太りの女性だ。

・所属組織、地位や役職  浴室担当責任者。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎に挨拶を行う。疲労困憊した善治郎の一人での入浴を許可しなかった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  記述なし。

フェー

問題児三人組の一人である。黒髪の小柄な侍女だ。お調子者で物欲に弱い。

・所属組織、地位や役職  後宮の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果  掃除中に誤って善治郎の携帯ゲーム機を自室に持ち帰る。携帯ゲームに熱中し、ハイスコアの更新を目指す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  未知の菓子であるマーブルチョコレートを初めて噛み砕いて味わう。

ドロレス

問題児三人組の一人である。長身で切れ長な瞳の侍女だ。冷静な性格をしている。

・所属組織、地位や役職  後宮の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果  携帯ゲーム機の持ち出しについてイネスに相談するよう促す。ゲームで善治郎の記録を上回るハイスコアを出す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  ゲームの賞品であるマーブルチョコレートを獲得する。

レテ

問題児三人組の一人である。巨乳で垂れ眼の少女だ。好奇心旺盛で緊張感に欠ける。

・所属組織、地位や役職  後宮の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果  フェーが持ち帰った携帯ゲーム機を開いて起動させる。挟まっていた取扱説明書を発見する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  携帯ゲームをきっかけにフェーやドロレスと共にゲーマーとなる。

カリナ

後宮の下働きをする若い侍女である。

・所属組織、地位や役職  後宮の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎に自己紹介を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  記述なし。

キーシャ

後宮の下働きをする若い侍女である。

・所属組織、地位や役職  後宮の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎に自己紹介を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  記述なし。

クリステル

後宮の下働きをする若い侍女である。

・所属組織、地位や役職  後宮の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎に自己紹介を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  記述なし。

ケイト

プジョル・ギジェン将軍の妹である。後宮で侍女として働いている。

・所属組織、地位や役職  後宮の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果  善治郎に自己紹介を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  プジョルから善治郎とのパイプ役として利用されようとしている。

シャロワ・ジルベール双王国

イザベッラ

シャロワ・ジルベール双王国の王女である。治癒魔法の使い手だ。

・所属組織、地位や役職  シャロワ・ジルベール双王国王女。

・物語内での具体的な行動や成果  アウラに善治郎の血統に関する噂話の書状を送る。風土病にかかった善治郎を見舞い、体力回復と精神疲労除去の補助魔法を施す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  記述なし。

ヒモ生活2巻レビュー

展開まとめ

プロローグ 半年ぶりの二連休は異世界で

異世界への召喚

山井善治郎は、休日の朝にコンビニへ向かっていた最中、突然見知らぬ石造りの部屋へ転移させられた。目の前には、赤い髪と小麦色の肌を持つ美女が立っており、自らを「婿殿」と呼び謝罪を述べた。

善治郎は、自転車や買ったばかりの弁当がそのままであることから、夢でも誘拐でもないと判断しつつも状況を理解できずにいた。美女の圧倒的な存在感に圧倒される中、周囲には武装した兵士や老魔導士も控えていた。

女王アウラとの対話

善治郎は美女に導かれ、王宮内の部屋へ移動した。そこで美女は、自らをカープァ王国女王アウラ・カープァと名乗った。善治郎も自己紹介を行い、アウラは自分が善治郎を無断で異世界へ召喚したことを説明し始めた。

アウラは、この世界が善治郎のいた世界とは異なる「異世界」であり、カープァ王家に伝わる時空魔法によって善治郎を召喚したと語った。善治郎は当初信じられなかったが、巨大な走竜を目撃し、その存在を肌で感じたことで、ここが本当に異世界であると認めざるを得なくなった。

婿としての召喚理由

善治郎は、自分のような一般人を召喚した理由を尋ねた。するとアウラは、自分と結婚し王家の血を残してほしいと頼んだ。

アウラによれば、カープァ王国は長い戦乱によって王族がほぼ滅び、自身以外に直系王族が残っていなかった。王家には時空魔法という特別な血統魔法が存在するため、伴侶にも王家の血が求められていた。そして善治郎は、異世界へ渡った王族の子孫であり、王家の血を色濃く受け継いでいる人物だと説明された。

善治郎は最初こそ否定したものの、自身の故郷が非常に閉鎖的な農村であり、赤みがかった髪や浅黒い肌を持つ人間が多かったことを思い出した。そのため、自分が異世界由来の血を受け継いでいる可能性を徐々に受け入れていった。

結婚条件と送還の保証

善治郎は、結婚を拒否した場合どうなるのかを恐る恐る尋ねた。アウラは、その場合は送還魔法で元の世界へ返すと約束した。さらに、結婚を受け入れる場合でも、一度元の世界へ戻り、別れを済ませてから改めて召喚するつもりだと説明した。

善治郎は、帰還不能ではないと知って冷静さを取り戻した。そして、自分の現実世界での生活を思い返した。長時間労働のブラック企業勤めで、恋人も家族もなく、仕事以外に人生の余裕がない日々だったため、異世界での生活に次第に魅力を感じ始めていた。

王配の立場への疑念

しかし善治郎は、女王の婿となる以上、何らかの政治的義務や責任が存在するのではないかと疑問を抱いた。アウラは、カープァ王国では女王が極めて珍しく、歴史上「王配」という存在自体が存在しなかったため、王配の権利や義務は明文化されていないと説明した。

さらにアウラは、この国が男性優位社会であり、家庭では夫が家長となる文化を持つため、自分は可能な限り善治郎を立てるつもりだと語った。善治郎は、その条件があまりにも好待遇であることに強い違和感を覚えた。

善治郎による真意の推察

善治郎は会話を重ねる中で、アウラの真意を推測し始めた。国内には自分より血の濃い王家の血筋を持つ貴族が存在するにもかかわらず、アウラは異世界の自分を召喚したのである。

さらに、アウラは善治郎に対し、子作り以外には特に何も求めず、後宮で自由に暮らして構わないとまで言い切った。善治郎は、その態度から、アウラが本当に欲しているのは「政治的野心を持たず、権力争いに関わらない王配」であると理解した。

国内貴族を婿に迎えれば、王配やその実家が権力を持ち、最悪の場合は女王の権力を奪いかねない。しかし異世界出身の善治郎ならば、この世界に政治的基盤も外戚勢力も存在しないため、その危険がないのである。

善治郎の決断

アウラは、明日の朝までに返答を決めてほしいと告げた。善治郎は、自立した生活を捨てて女王に養われる立場になることへ葛藤を抱いた。だが一方で、元の世界には過酷な労働しか待っておらず、未練らしい未練も少ないことを自覚していた。

最終的に善治郎は、自分の「男としての矜持」が想像以上に軽いものであったことを認め、結論を出した。そしてアウラへ向き直り、力強く結婚を承諾したのであった。

幕間一 女王の密談

腹心たちとの非公式会合

山井善治郎を召喚した夜、カープァ王国女王アウラ一世は私室へ腹心たちを集め、非公式の会合を開いていた。燭台の灯りが薄暗く室内を照らす中、アウラは侍女へ善治郎の様子を尋ねた。侍女は、善治郎がようやく眠ったと報告した。

アウラは、善治郎が夜更かしに強いと感想を漏らした。この世界では夜は早く休むのが当然であり、深夜まで働く現代日本の感覚とは大きく異なっていた。善治郎は侍女たちへ気を遣って早めに床へ入っただけであったが、アウラたちにとっては遅い就寝時間だったのである。

善治郎への評価

秘書官ファビオ・デウバジェは、婚約成立を祝福した上で、善治郎をどう評価しているのかを尋ねた。アウラは、善治郎は予想以上に頭が切れ、冷静で度胸もある人物だと評価した。しかしそれを「悪い誤算」と断じた。

アウラにとって理想の夫とは、贅沢や享楽に満足し、政治権力へ関心を持たない男であった。そのため、善治郎が自分の真意を見抜いていたことは、女王にとって警戒すべき点だったのである。

さらにアウラは、善治郎が最後に「後宮へ引きこもり遊び暮らした場合どう思うか」と尋ねたことを振り返り、自分が求めているのは「何もしない夫」であると善治郎が理解していたのだろうと語った。

異世界人への誤解

アウラたちは、善治郎の聡明さから、彼が異世界の貴族階級ではないかと推測した。一般庶民にしては知識や思考力が高すぎると感じていたのである。

しかしそれは、この世界において教育が特権階級のみに許されたものであることから生じた誤解だった。国民全体へ義務教育を施す現代日本の常識は、アウラたちの想像の外にあった。

国内婿候補への不信

宮廷魔法使いエスピリディオンは、善治郎との婚姻には裏がある可能性もあるとして、再召喚を取りやめる選択肢を示唆した。しかしアウラは即座に否定した。

アウラは、国内候補であるギジェン家のプジョル卿や、マルケス家のラファエロ卿を酷評した。前者は野心家、後者は実家に逆らえない人物であり、王配にすれば王国が内乱に巻き込まれる危険があると判断していたのである。

エスピリディオンは両者の能力を認めつつも擁護したが、アウラは有能さよりも政治的危険性を問題視していた。

善治郎との結婚を選ぶ理由

アウラは、善治郎には知恵が回る点など気になる部分もあるが、それでも国内候補よりは遥かに適任だと断言した。善治郎は十分な王家の血を持ち、将来的には時空魔法の使用も期待できるため、貴族たちも表立って反対できないと考えていた。

また、アウラは、善治郎との結婚生活については自ら誠意を尽くすつもりであり、国政に影響しない限り善治郎の要望を受け入れる覚悟を示した。善治郎は一方的に巻き込まれた立場であり、夫婦として対立するのではなく寄り添って生きるべきだと考えていたのである。

王家存続を巡る懸念

ファビオは、善治郎との間に子ができなかった場合に備え、王家の血を引く他の女性との婚姻も選択肢に入ると進言した。

現在では、善治郎自身が強い王家の血を持つ存在となったため、女王が独身のまま王位を維持し、善治郎と王家の血を引く貴族女性との子を後継者にする案すら成立しうる状況になっていた。

そのため、王家の血を持つ娘を抱える貴族たちが、アウラとの婚約破棄を要求する可能性も存在した。善治郎の出現は、王家にとって希望であると同時に、大きな政治的火種でもあったのである。

アウラの確信

しかしアウラは、その懸念をあまり問題視していなかった。善治郎との子作りは上手くいくと断言したのである。

その理由としてアウラは、夕食中に善治郎の視線が何度も自分の胸元へ向けられていたことを挙げた。善治郎は隠しているつもりだったが、アウラには明らかな欲情の視線として伝わっていたのである。

アウラは、自らの肉体が善治郎の情欲を十分刺激していると自信を見せ、誇るように胸を張るのだった。

第一章 一時帰還

異世界での目覚めと不便な生活

翌朝、善治郎は王宮の客室で目を覚ました。豪華なベッドや広い部屋を前に、自分が異世界へ来た現実を改めて実感した。

しかし善治郎は、異世界生活の不便さにも直面していた。身体中を虫に刺され、ぬるい酒や暑い気候に苦しめられ、窓ガラスも存在しない環境へ閉口していたのである。

さらに、電灯のない夜の不自由さは善治郎に強い衝撃を与えた。夜になれば読書すら難しく、文明レベルの差を痛感していた。王宮で最高級の待遇を受けていても、現代日本の一般生活には到底及ばないと理解したのである。

アウラへの未練と婿入り準備

それでも善治郎の心を強く引きつけていたのは、婚約者アウラの存在だった。夕食時の大胆なドレス姿や官能的な肢体を思い出し、善治郎は現代日本を捨てる価値すら感じていた。

そして善治郎は、自転車を異世界へ持ち込めた事実から、一ヶ月後の再召喚時にも荷物を運び込める可能性へ気づいた。そこで、異世界生活に必要な「婿入り道具」を準備しようと決意する。

朝食での相談

朝食では、アウラと二人きりで食卓を囲んだ。アウラは、送還魔法の準備は整っており、帰還する時間は善治郎次第だと説明した。

善治郎は、召喚時にどれだけ荷物を持ち込めるのか尋ねた。アウラは、人が持てる範囲が限界であり、自転車程度が最大級だろうと答えたため、善治郎は落胆した。

しかしアウラは、時空魔法の結界を込めた絨毯型の魔道具を利用すれば、結界内部の荷物ごと召喚できる可能性があると思い至った。善治郎は大喜びし、アウラへ感謝を述べた。

この絨毯は、付与魔法と時空魔法が組み合わされた国宝級の魔道具だったが、善治郎はその価値を知らず、アウラの誠意だけを素直に受け取っていた。

結婚指輪の約束

食後、アウラは他に望みがないか尋ねた。そこで善治郎は、アウラの左薬指に合う指輪を貸してほしいと頼んだ。

善治郎は、結婚指輪を用意しようと考えていたのである。アウラは指輪の意味を理解しきれなかったものの、善治郎の意図を察し、楽しみにしていると意味深に微笑んだ。

現代日本への帰還

送還された善治郎は、軽い酩酊感を覚えながらも、日本へ帰還したことを確認した。手には絨毯があり、左手の小指にはアウラから預かった金の指輪が残っていたため、異世界での体験が夢ではないと理解した。

善治郎は、自宅へ戻って時間の経過を確認し、異世界と現代日本の時間の流れがほぼ同期していることを知って安堵した。もし時間差があれば、再召喚の予定が不安定になるところだったのである。

異世界生活改善計画

自宅へ戻った善治郎は、すぐにパソコンを起動し、異世界へ持ち込む文明機器を調べ始めた。

善治郎が最も必要だと感じたのは、エアコンや冷蔵庫、照明などの電気製品だった。しかし、異世界には電力供給が存在しないため、まず発電装置を確保する必要があった。

ガソリン式発電機は燃料供給が問題となり、ソーラー発電は夜間利用に弱く、風力発電も安定性に欠けていた。善治郎は検討を重ねた末、水力発電機へ強く惹かれていった。

家庭用小型水力発電機は、一般家庭並みの電力供給が可能であり、異世界生活を大きく改善できる可能性を持っていた。しかし問題は、王宮近辺に適切な水源があるか分からない点だった。

さらに、発電機自体も高価であり、ハイブリッド発電機は約五十万円、水力発電機は百五十万円もした。善治郎は、限られた三百万円ほどの貯金をどう使うか頭を悩ませる。

故郷の山小屋への着想

調査を進める中で、善治郎は水力発電機の購入には現地調査が必要であり、単純購入は難しいことを知った。

そこで善治郎は、自分の故郷にある山小屋を思い出した。山奥の小川近くにあるその小屋なら、水力発電設備を試験的に設置しても不自然ではないと考えたのである。

善治郎は、すぐに水力発電会社へ連絡しようとした。しかし日曜日だったため電話は繋がらず、善治郎はメールで購入希望を送信することにした。

辞表提出と退職準備

翌日の月曜日、山井善治郎は会社へ出社し、上司へ辞表を提出した。退職理由には「実家へ帰って家を継ぐ」と記していたが、それは異世界への婿入りを隠すための嘘だった。

上司は、かつて田舎暮らしを嫌っていた善治郎が退職を申し出たことへ疑問を抱きつつも、無理に引き止めても意味はないと判断した。だがその代わり、担当中の仕事を最後まで終わらせ、新人向けの業務手引書も作成するよう命じた。

善治郎は、異世界行きの準備に時間を割きたい本音を抱えながらも、円満退社を優先し、要求を受け入れるしかなかった。

結婚指輪探し

昼休みになると、善治郎は牛丼屋で食事を済ませた後、そのまま宝飾店へ向かった。目的は、アウラへ贈る結婚指輪の購入であった。

店員は、善治郎が持ち込んだアウラの指輪サイズを測り、女性としてはやや大きめだと説明した。善治郎は、アウラが自分より背の高い女性だと思い込んでいたため、その説明に納得した。

しかし実際には、善治郎の方がわずかに身長が高く、アウラの圧倒的な存在感によって錯覚していただけだった。

アウラを思い浮かべる善治郎

指輪選びの最中、善治郎は自然とアウラの姿を思い浮かべていた。大柄で官能的な身体、小麦色の肌、炎のような赤髪、強い存在感。その魅力に似合う指輪とは何かを真剣に考えていたのである。

店員は、肌色の濃い相手にはイエローゴールドが似合うと助言し、さらに髪や瞳の色に合わせた宝石選びを提案した。善治郎は、異世界の女王を「外国人」として曖昧に説明しながら話を合わせていた。

慣れない宝飾店で、善治郎は終始店員の説明へ押され気味になっていた。

退職前最後の業務

午後になると、善治郎は会社へ戻り、着崩したワイシャツ姿で業務へ取り掛かった。

善治郎が勤める会社は中小企業であり、部署分担も曖昧だった。そのため、本来は社内勤務中心の善治郎も営業へ駆り出されることが多く、結局スーツ勤務を続けていたのである。

善治郎は、課長から命じられた新人向け業務手引書の作成へ着手した。自分が新人だった頃には存在しなかった資料を、自分自身が苦労して作らされていることへ理不尽さを感じつつも、仕事として割り切って進めていった。

同僚との会話

作業を進める中で、善治郎は過去資料を探すため先輩社員の吉永へ声を掛けた。吉永は資料提供を約束すると同時に、善治郎の退職話を聞きつけていたことを口にした。

吉永は、善治郎が既に戦力となっているため、退職によって仕事のしわ寄せが来ることをぼやいた。善治郎は恐縮しながら、できる限り区切りの良いところまで仕事を終わらせると頭を下げた。

善治郎は、自分の退職理由が決して褒められたものではないと自覚していたため、同僚たちへ後ろめたさを感じていたのである。

第二章準備から転移へ

水力発電機の問題

退社準備に追われながら帰宅した善治郎は、深夜にもかかわらずパソコンへ向かい、水力発電機メーカーから届いた返信メールを確認していた。

メーカー側は、発電機の設置には専門資格が必要であり、保守管理も業者へ任せるべきだと説明した。さらに、稼働保証期間はわずか三年だと告げられた。

善治郎は、設置や整備が難しいこと以上に、三年しか保証されない点へ大きな衝撃を受けた。電化製品そのものの寿命は十年前後であるため、善治郎は異世界生活へ慣れるまでの「補助輪」として家電を利用しようと考えていたのである。

異世界での文明生活への執着

善治郎は、異世界の暑さ対策として、かつてインドのマハラジャが用いた「壁から水を流す冷房構造」を思い浮かべた。しかし、それには莫大な建築費用が必要となるため、戦後復興中のカープァ王国では実現困難だと考えた。

さらに問題となっていたのは、発電機内部のバッテリーだった。バッテリー寿命は約三年であり、予備を大量に購入しても長期保存による劣化は避けられなかった。

それでも善治郎は、少しでも長く文明的な生活を維持したいと願っていた。社会人になってから見る時間もなく溜め続けていたサッカー中継や録画番組を、異世界でのんびり鑑賞する生活へ強い憧れを抱いていたのである。

そのため善治郎は、発電機や家電の寿命問題を理解しながらも、電力の持ち込みを諦めず、異世界向け家電の調査を続けていった。

過酷な退職前業務

退職を決めた後の善治郎の日々は、以前以上に忙しくなっていた。通常業務に加え、後任への引き継ぎ、取引先への挨拶回り、新人用手引書の作成など、膨大な仕事を終電直前まで続けていたのである。

さらに善治郎は、異世界行き前に少しでも資金を残すため、会社近くのビジネスホテル宿泊を避け、始発出勤と深夜残業を繰り返していた。

その努力の末、辞表提出から三週間後、善治郎は三年間勤めた会社を無事円満退社した。

課長への敬意

退社前最後の挨拶で、課長は短く「元気でな」とだけ告げ、すぐ仕事へ戻った。

善治郎は、その素っ気ない態度に悪意を感じなかった。課長自身が、管理職でありながら現場労働まで背負わされる過酷な立場にあり、それでも仕事へ向き合い続けていることを知っていたからである。

平社員の過酷な労働から逃れようとしている善治郎は、そんな課長へ複雑な敬意を抱きつつ会社を後にした。

故郷への帰省

その後、善治郎は愛車を運転し、数年ぶりに故郷の村へ帰省した。そこには叔父一家が暮らしており、善治郎の部屋も当時のまま残されていた。

夕食では、善治郎が海外へ行くと聞かされた叔父一家が、温かく送り出そうとしていた。しかし善治郎は、本当は異世界へ旅立つことも、三十年間帰れないことも説明できず、強い罪悪感を抱いていた。

愛車の譲渡

善治郎は、自分のハイブリッドカーを叔父へ譲りたいと申し出た。長期間日本へ戻れないため、車を処分するより家族に使ってほしいと考えたのである。

叔父は売却を提案して遠慮したが、善治郎は、大学進学予定の従妹・早苗が使えば役立つと説得した。さらに従弟の勇作まで喜び始めたことで、叔父一家は最終的に善治郎の申し出を受け入れた。

善治郎は、叔父一家の変わらない優しさへ触れるたび、自分が異世界を選んだことへの後ろめたさを強めていた。

帰る場所への葛藤

夜になり、善治郎は昔使っていた六畳間で一人横になった。部屋は当時のまま維持されており、叔父一家が今でも自分の帰る場所を残してくれていることを実感した。

しかし一方で、布団から自分の匂いが消えていることに気付き、もうここは完全には自分の居場所ではないとも感じていた。

善治郎は、十日後には異世界へ渡れば三十年間帰れないことを改めて思い返した。それでも決意は既に固まっていた。

指輪とアウラへの想い

善治郎は、枕元に置いたペアリングの箱を手に取った。幅広のイエローゴールドへ三つのダイヤを埋め込んだ指輪は、派手さこそないが、アウラに似合う品だった。

指輪を眺めながらアウラの姿を思い浮かべた善治郎は、自分が抱いている感情が、一目惚れに近いものなのかもしれないと自覚する。

そして善治郎は、こちらの世界への未練を静かに整理しながら、部屋の明かりを消すのだった。

山小屋への到着

翌朝、善治郎は叔母の朝食を食べた後、愛車で山奥へ向かい、自身が所有する古い山小屋へ到着した。

その小屋は、山井家の始まりとも言われる由緒ある建物だったが、実際には昭和以降に建て直された粗末なボロ小屋であった。大学卒業時、善治郎は相続した家や畑を叔父へ譲っていたが、この山小屋だけは叔父が受け取らなかったのである。

善治郎は、異世界人であった先祖たちが百五十年前にこの土地へ流れ着いた可能性を思い浮かべ、当時は村でかなり目立った存在だったのではないかと想像した。しかし現在まで差別的な言い伝えが残っていないことから、意外と早く村へ溶け込めたのかもしれないとも考えていた。

水力発電機設置業者の到着

そこへ、発電機設置業者のトラックが到着した。善治郎は、事前に依頼していたマイクロ水力発電機の設置作業を確認するため、業者たちを迎えた。

善治郎は、自分でも最低限の整備ができるようにしたいという理由で、作業工程をハンディカムで撮影したいと申し出た。本当は異世界で再設置するための記録だったが、その事情は伏せていた。

業者側は、水槽掃除など簡単な整備なら可能だが、発電装置本体へ素人が手を出すべきではないと忠告しつつも、撮影自体は許可した。

予想以上に大掛かりな設置作業

数時間にわたり作業を撮影した善治郎は、水力発電機の設置が想像以上に大変であることを痛感していた。専門技師三人がかりでも長時間かかる作業を、異世界で一人で再現しなければならないのである。

水力発電機は、水槽パーツ、発電機パーツ、制御システムパーツの三種類で構成されていた。

川から取水した水を水槽で濾過し、高低差を利用して発電機内部の水車を回す。そして発電した電力は、小屋内部の制御システムへ送られ、バッテリーを介して安定供給される仕組みだった。

この山小屋には通常の配線設備がないため、善治郎は制御システムへ直接コンセント差込口を増設してもらっていた。これにより、家電を直接接続できるようにしていたのである。

発電成功

最終確認の段階になると、技師たちは発電機を起動した。水車が回転し、制御システムのランプが緑色に点灯する。

続いて電気スタンドのコンセントを接続すると、暗い山小屋へ明かりが灯った。善治郎は、自分の計画が現実に動き始めたことへ感嘆の声を漏らした。

異世界生活のシミュレーション

業者が帰った後、善治郎は発電機の取扱説明書を確認しながら、異世界での利用方法を検討していた。

この発電機の理論最大出力は一キロワットだったが、実際の発電量は六百ワット程度だった。そのため、異世界で再設置した場合は、さらに発電量が下がる可能性を考慮しなければならなかった。

善治郎は、どの家電なら同時使用可能かを試すため、貸倉庫へ預けている家電を山小屋へ運び込み、実験することを決意する。

さらに、異世界へ持ち込む際は、この山小屋を転移拠点にすることも考えていた。七十五キロある発電機本体を再設置するより、小屋ごと荷物集積地点として使う方が効率的だと判断したのである。

出発準備の本格化

善治郎は、異世界へ持ち込む荷物を早めに山小屋へ集め、人里離れた環境でどのような生活が必要になるかを試行する方針を固めた。

その後、引っ越し業者や貸倉庫管理人へ連絡を取るため携帯電話を使おうとしたが、山奥では圏外だったため、国道近くまで移動しなければならなかった。

異世界再召喚への不安

アウラとの約束から一ヶ月後、善治郎は山奥のボロ小屋で再召喚の時を待っていた。魔方陣の絨毯の中央へ座り、左手小指から血を流し続けながら、召喚の発動を待機していたのである。

しかし善治郎は、この段階になっても強い不安に襲われていた。すでに会社は退職し、アパートも引き払い、ライフライン契約も解除済みであり、現代日本での生活基盤は完全に失われていたのである。

もし召喚が失敗すれば、善治郎は大量の異世界用設備だけを抱えて現実世界へ取り残されることになる。その恐怖から、善治郎は極度の緊張状態に陥っていた。

発電機搬入の苦労

善治郎は、不安を紛らわせるように、絨毯上へ積み上げた荷物を一つずつ確認していった。特に重要なのは、マイクロ水力発電機一式だった。

発電機本体は七十五キロもあり、善治郎は前日に一人で小屋へ運び込んでいた。ホームセンターで購入した大型台車を利用し、汗だくになりながら河原から搬送してきたのである。

その苦労の末、水槽、発電パーツ、制御システムなど発電機一式は、無事に魔方陣絨毯の上へ積み込まれていた。

アウラへの贈り物

絨毯の片隅には、アウラへの土産として大量の酒類が並べられていた。ブランデー、ウイスキー、日本酒、ワインなど、高価な酒が多数用意されていたのである。

善治郎は、アウラが酒好きだったことを思い出し、自宅用蒸留器まで購入していた。異世界で蒸留酒を作る計画だったのである。

また、発泡酒や国産ウイスキーも箱単位で買い込んでおり、しばらく酒には困らない状態を整えていた。

善治郎の装備

善治郎自身は、一張羅の灰色スーツを着込み、その背中には大型登山用リュックを背負っていた。

リュックの中には、着替え、山岳ブーツ、ソーラー充電器、乾電池、保存食、ライター、LEDライト、毛布など、遭難対策を意識した非常用品がぎっしり詰め込まれていた。

善治郎は、召喚地点や持ち込み範囲に異常が発生する可能性を想定しており、万一絨毯ごと転移できなかった場合に備えて、最低限の装備を常に身につけていたのである。

さらに、アウラへ贈るペアリングも、スーツの内ポケットへ大切にしまわれていた。

二度目の召喚成功

そして善治郎が不安の中で待ち続けていた時、突然、前回と同じ軽い酩酊感が身体を襲った。

善治郎は反射的にカッターナイフを放り出し、絨毯へ両手をついた。その直後、頭上から一ヶ月ぶりにアウラの声が響く。

アウラは、今度こそ正式に善治郎を生涯の伴侶として歓迎すると宣言した。

絨毯ごとの転移に成功した善治郎は、立ち上がることも忘れ、両手と両膝をついたまま、両腕を広げて迎えるアウラを見上げるのだった。

第三章 結婚、そして始まる新婚生活

後宮への移動と荷物検査

山井善治郎が異世界へ再召喚されてから数十分後、善治郎は後宮へ案内されていた。善治郎が持ち込んだ大量の荷物は、兵士たちが後から運搬することになり、一旦全て預ける形となった。

善治郎は、その対応が危険物検査を兼ねていることを理解していたため、特に反発はしなかった。ただし、水力発電機や冷蔵庫、エアコンなどの電化製品については、壊れ物であることを何度も強調し、慎重な扱いを要求した。

また善治郎は、自分が持ち込んだ物資に危険物や政治的誤解を招くものは含めていないと考えていたため、多少の検査なら問題ないと楽観視していた。

異世界の暑さへの苦悩

荷物を預けた善治郎は、後宮の部屋でスーツを脱ぎ、ネクタイを緩めて暑さへ耐えていた。

カープァ王国の気候は、日本の初夏よりさらに暑く、真夏並みの気温に感じられた。善治郎は、この程度ならまだ耐えられるとしつつも、本格的な暑季に入れば我慢できないだろうと考え、改めて暑さ対策の必要性を痛感していた。

侍女たちとの初対面

そこへ、後宮の侍女たちを紹介したいという申し出が届いた。善治郎は暇を持て余していたこともあり、すぐに了承した。

部屋へ入ってきたのは十人以上の侍女たちだった。彼女たちは、インドや中東風を思わせる民族衣装風の侍女服を着用しており、整然と三列に並んだ。

最前列には、後宮全体を統括する侍女長アマンダが立っていた。アマンダは、後宮運営全般へ責任を負う立場であり、全身から有能さを漂わせる女性だった。

善治郎は、アマンダへ丁寧に挨拶を返した。しかしアマンダや他の侍女たちは、その言葉遣いへ微妙な違和感を示した。

善治郎は、自分が異世界では王族側の立場にあり、使用人へ過剰に丁寧な態度を取ることが逆に不自然なのだと気付き始める。

各部門責任者の紹介

続いて、各部門責任者が紹介された。清掃責任者イネス、調理責任者ヴァネッサ、庭園担当エミリア、浴室担当オラジャである。

善治郎は、再び丁寧語を使いそうになりながらも、必死に王族らしい話し方へ修正し、どうにか威厳を保とうとした。侍女たちは、その対応に安心した様子を見せた。

その反応を見た善治郎は、この世界では王族と使用人の距離が非常に遠く、下手に対等な態度を取る方が混乱を招くのだと理解し、後でアウラへ相談しようと考えるのだった。

若い侍女たち

さらに、九人の若い侍女たちが紹介された。彼女たちは、今後善治郎の身近で直接世話を担当する侍女たちだった。

しかし善治郎は、一度に十三人もの名前と顔を覚えきれず、侍女長と部門責任者以外は後で覚えるしかないと早々に諦めていた。

その一方で善治郎は、侍女たちが明確に二種類へ分かれていることに気付く。侍女長や責任者たちは年齢を重ねた実務型の女性たちであり、若い侍女たちは全員が若く美しい容姿を持っていたのである。

さらに若い侍女たちは、長身で胸の大きな女性が多数を占めていた。善治郎は、それをこの国の女性的特徴なのだろうと考えていた。

しかし実際には、アウラが善治郎の好みを考慮し、「将来的に手を出しても問題ない侍女」を意図的に選抜していたのである。善治郎が以前アウラの胸元を頻繁に見ていたことも、選抜基準へ強く影響していた。

だが善治郎本人は、異世界生活への緊張で頭がいっぱいだったため、侍女たちを観賞する余裕すらなかった。

善治郎の決意

善治郎は、ひとまずこの場を無難に切り抜けることだけを優先し、侍女たちへ「働きに期待する」と告げるのだった。

婿入り道具の検査開始

善治郎が後宮で侍女たちと顔合わせをしていた頃、別室では女王アウラ一世が、善治郎の持ち込んだ大量の荷物を部下たちへ検査させていた。

アウラは、無理に開封せず、危険物や不審物があれば全て自分へ報告するよう命じた。兵士や侍女たちは、冷蔵庫やエアコン、衣装ケースなどを慎重に確認していく。

善治郎の荷物は、女王の伴侶となる人物の私物であるため、破損や汚損を避けるべく、極めて慎重に扱われていた。そのため十数人がかりでも作業はなかなか進まなかった。

酒瓶とガラス製品への驚き

やがて兵士たちは、透明な容器に入った酒類を発見した。しかし転移の衝撃で、日本酒とワインの瓶が割れていた。

アウラは残った酒を酒蔵へ運ばせ、割れた瓶を確認した。ガラス製酒瓶を光へ透かしたアウラは、それを水晶細工のようだと驚嘆する。

カープァ王国にはガラス製造技術が存在しないため、地球のガラス瓶やグラスは、この世界の人間にとって芸術品同然だったのである。

さらに善治郎が持ち込んだ陶器やガラス製食器も確認された。善治郎は、木製や金属製ばかりの食器へ違和感を抱いていたため、自分用に現代の食器を持ち込んでいたのである。

アウラは、透明なワイングラスを見て、美術品収集家の貴族へ贈れば喜ばれるだろうと考えるほど、その価値を高く評価していた。

工具類への誤解

続いて兵士たちは、ドライバーセットやネジ、パイプカッターなどを発見し、それらを武器ではないかと疑った。

しかしアウラは、それらが攻撃には不向きであり、何らかの道具だろうと判断した。これらは、善治郎がエアコン設置のため持ち込んだ工具一式だった。

善治郎は、異世界でもエアコンを設置することを完全には諦めておらず、設置方法を解説した資料まで大量に持ち込んでいた。

さらに兵士たちは、かき氷機を兵器や拷問器具ではないかと疑ったが、アウラは用途不明ながら攻撃用ではないと判断し、元へ戻させた。

非常用装備の意図

リュックサックを調べていた侍女は、水、保存食、毛布、着替えなどが大量に入っていることを報告した。

アウラはそこで初めて、善治郎が召喚失敗時の漂流生活まで想定していたことへ気付く。実際には召喚失敗なら魔法自体が発動しないため、その備えは無意味だったが、説明不足だった自分の責任だと反省していた。

ビー玉とビーズの誤算

その後、侍女がリュックの横ポケットから、ビー玉とビーズの入った巾着袋を発見した。

善治郎は、異世界で路頭に迷った際の換金用として、ガラス製品なら多少価値があるだろうと考えて持ち込んでいた。しかしガラス技術のないこの世界では、それらは単なる玩具ではなく、宝玉として扱われる代物だったのである。

アウラは、その価値を即座に理解し、厳重保管を命じた。侍女は爆発物でも扱うような慎重さで、巾着袋を元へ戻した。

ネグリジェ騒動

検査終盤、アウラは衣装ケースを調べていた兵士の不自然な動きへ気付く。兵士は慌てて何かを隠そうとしていたため、アウラは裏切りや毒物混入すら疑い、厳しく追及した。

周囲の兵士たちまで武器を構える緊迫した空気の中、兵士が差し出したのは、薄手で透ける赤いネグリジェだった。

それが善治郎の荷物から出てきたと知ったアウラは、一瞬沈黙した後、耐え切れず笑い出した。

兵士は、女王へ隠そうとした軽率な行動を謝罪したが、アウラは自分の早合点だったと認める。そして、善治郎も結局は男なのだなと、愉快そうに笑い続けるのだった。

荷物搬入と水力発電計画

異世界へ再召喚された当日の夕刻、善治郎は後宮の一室でアウラと再び向かい合っていた。アウラは、荷物検査を終えた品々を順次後宮へ搬入すると説明し、酒類だけは地下酒蔵へ保管したと伝えた。

善治郎は、後宮が男子禁制であるにもかかわらず、大型家電や発電機を誰が運ぶのか疑問に思った。アウラは、後宮への一時的な立ち入りなら近衛兵を使うこともあると説明し、石工や大工のような力仕事まで女性だけでは成り立たないと笑って答えた。

その説明を聞いた善治郎は、水力発電機を庭へ設置したいと頼み込み、近衛兵の人手を借りたいと申し出た。善治郎にとって、電力確保は異世界生活の最重要課題だったのである。

急ぎで進められる結婚式

善治郎とアウラの結婚式は、十五日後から五日間にわたって行われる予定だった。しかし、その準備期間はわずか一ヶ月半しかなく、王族の婚姻としては異常な短さだった。

本来なら、王族の婚礼は最低一年以上準備を行い、国内外の有力者を招いて国威を示す外交行事となる。しかし今回は、国外貴族を呼ぶ余裕もなく、小規模な式へ縮小されていた。

その理由は、善治郎を巡る政治的混乱を避けるためだった。善治郎は極めて濃い王家の血を引いており、場合によってはアウラ以外の女性との子にも時空魔法を継承できる可能性があったのである。

もし準備期間を長く取れば、有力貴族たちが善治郎と自分の娘を結婚させ、王位継承へ利用しようと動き出す危険があった。アウラは、それを未然に防ぐため、一気に婚姻まで押し切ろうとしていた。

着せ替え人形状態の善治郎

結婚準備期間中、善治郎は侍女たちによる衣装選定へ延々付き合わされていた。特に頭へ巻くターバンと飾りピンの組み合わせには、一時間以上も費やされていたのである。

善治郎は、異世界の衣装知識が全くなかったため、全て侍女たちへ任せるしかなかった。その結果、侍女たちは使命感を燃やし、全力で善治郎を着飾り始めていた。

本当は水力発電機設置を急ぎたかった善治郎だったが、熱意に満ちた侍女たちを前に、適当に済ませてほしいとは言い出せなかった。

一方で、アウラから「後宮では楽な話し方で良い」と許可を得ていたため、善治郎は無理に偉そうな口調を作らず、自然な話し方で過ごせるようになっていた。

ガラス鏡への驚き

ターバン装着後、侍女たちは善治郎が持ち込んだ大型ガラス鏡へ興味津々だった。

この世界では金属鏡しか存在せず、鮮明な反射を持つガラス鏡は、まるで別世界を映しているかのような衝撃を与えていた。若い侍女たちは好奇心を抑えきれず鏡を覗き込み、年配侍女に肘鉄を食らっていた。

善治郎は、その光景を見て吹き出しそうになりながらも、何とか平静を装っていた。

結婚式当日

異世界へ来て十五日後、ついに結婚式当日を迎えた。式場となる『竜王の間』には、王族婚礼専用の巨大な赤い絨毯が敷き詰められ、多数の貴族たちが集まっていた。

貴族たちは、異世界から現れた新郎ゼンジロウについて噂話を交わしていた。特に、善治郎が持つ王家の血の濃さや、将来的に後宮へ他の女性を迎える可能性などへ強い関心を示していた。

そして銅鑼の音と共に、アウラと善治郎の入場が宣言された。

緊張する善治郎

眩しい日差しが差し込む花道を、アウラと善治郎は腕を組んで進んでいった。アウラは白いウェディングドレス姿であり、善治郎は黒い礼服に飾り帯と装飾剣を身につけていた。

二人は、どちらかが前へ出ないよう細心の注意を払って歩いていた。アウラが前へ出れば「男の前に立つ女」と批判され、善治郎が前へ出れば「女王を従わせた男」と受け取られてしまうからである。

善治郎は、会場中の貴族から注がれる視線へ耐え切れず、極度の緊張状態へ陥っていた。さらに香油で固められた髪の不快感も重なり、精神的余裕はほとんど残っていなかった。

やがて善治郎は、緊張のあまり転びそうになる。しかしアウラがさりげなく腕を支え、転倒を防いだ。

善治郎は、自分が平凡な会社員だったことを改めて痛感しつつ、現役女王として衆目へ慣れ切ったアウラとの差を思い知らされていた。

婚姻の儀開始

壇上へ到着した二人は、初老の神官の前へ立った。カープァ王国では精霊信仰が主流であり、神官たちは主に冠婚葬祭を司っていた。

神官は、夫婦の未来へ精霊の加護があるよう長い祝詞を読み上げていく。しかし善治郎は緊張のあまり内容をほとんど聞き取れず、婚姻の儀はそのまま粛々と進行していくのだった。

結婚式後の疲労

結婚式当日の夜、善治郎とアウラは後宮の一室で向かい合い、互いの疲労を労っていた。三時間に及ぶ結婚式に加え、その後さらに二時間以上、中下級貴族へ向けた『お披露目の儀』へ参加していたのである。

善治郎は、慣れない儀式の連続で完全に疲弊していた。侍女による入浴補助すら断る気力がなく、浴室責任者の判断で半ば強制的に世話を受けるほどだった。

入浴後、二人は正装を脱ぎ、アウラは赤いナイトドレス姿、善治郎は日本から持ち込んだパジャマ姿でソファーへ身を沈めていた。

電化製品による文明生活

善治郎は緊張を誤魔化すように冷蔵庫へ向かい、冷えた白ワインを取り出した。

異世界へ来てから十五日間、善治郎は水力発電機の設置へ全力を注いでいた。その結果、後宮では冷蔵庫、テレビ、LEDフロアスタンドライトなどの電化製品が問題なく稼働していた。

アウラは、その明るさや冷却性能へ感嘆し、魔道具大国シャロワ・ジルベール双王国の王宮にいるようだと語った。

善治郎は、三十五度を超える酷暑の中で発電設備設置へ苦闘したことを思い返しながら、自分の努力を少し誇らしく感じていた。

アウラの接近

アウラは、善治郎の右腕を自らの胸元へ抱き込み、その肩へ頭を預けた。

柔らかな感触と、善治郎が持ち込んだシャンプーの香りに包まれた善治郎は、緊張と興奮で頭が真っ白になっていた。

善治郎は焦って話題を探し、シャロワ・ジルベール双王国について質問する。アウラは、その国が『付与魔法』と『治癒魔法』を持つ二王家体制の大国であり、魔道具によって光や冷暖房を実現していると説明した。

呼び方の変更

その後アウラは、善治郎へ他人行儀な話し方と呼び方を改めるよう求めた。すでに夫婦となった以上、もっと自然に接したいと考えていたのである。

善治郎も、アウラが「ゼンジロウ殿」と呼ぶのは少し距離を感じると認め、互いに呼び捨てへ変えることを了承した。

二人は至近距離で互いの名を呼び合い、そのまま自然に唇を重ねた。

長く情熱的な口づけの後、アウラは善治郎へ百数えてから寝室へ来るよう告げ、一足先に部屋を後にする。

動揺するアウラ

寝室へ入ったアウラは、善治郎との接吻を思い返し、一人赤面していた。

女王として常に余裕ある態度を保ってきたアウラだったが、実際には異性経験皆無の生娘だったのである。

アウラは、自分が初夜へ期待していることを善治郎へ見抜かれたのではないかと動揺しながらも、必死に平静を装おうとしていた。

やがてアウラはナイトドレスを脱ぎ、小さなショーツだけを残した半裸姿となる。そしてLEDライトの光が明るすぎると感じ、脱いだ赤い夜着をライトへ被せ、部屋全体を妖艶な赤色へ染め上げた。

初夜への誘い

その後、ベッドへ横たわったアウラは、深呼吸しながら鼓動を整え、善治郎を待っていた。

やがて善治郎が扉越しに声をかけると、アウラは平静を装って中へ招き入れる。

恐る恐る寝室へ入った善治郎は、オレンジ色のLED光に照らされたアウラの半裸姿を目にし、思わず息を呑んだ。

アウラは、妖艶な笑みを浮かべながら、自分の隣へ来るよう善治郎を誘うのだった。

初夜後の余韻

初夜を終えた善治郎は、全身へ汗をにじませながらベッドへ横たわっていた。体力は大きく消耗していたが、精神はむしろ高揚しており、身体さえ回復すれば再びアウラを抱きたいと思うほど、彼女との情交は強烈な魅力を持っていた。

一方アウラは、善治郎の隣で荒い呼吸を繰り返し、まだ視線を向ける余裕すらなかった。戦場や政争を潜り抜けてきた女王でありながら、初体験の緊張は想像以上に大きかったのである。

善治郎による気遣い

落ち着きを取り戻した善治郎は、事前に用意していたガーゼとタオルを手に取り、自分の身体を軽く拭った後、アウラの汗を優しく拭き始めた。

アウラは、善治郎に身体を拭われるたび、敏感になった身体を刺激され、甘い声を漏らしていた。

善治郎は、自分の欲望が再び高まり始めていることを自覚しながらも、初体験直後のアウラへ無理をさせるべきではないと理性で抑え込んでいた。

アウラの感想

やがて落ち着きを取り戻したアウラは、今回の経験を「未知の感覚」だったと語った。そして、これまで人生で幾度も修羅場を潜ってきたにもかかわらず、初めて「降伏」という選択肢が頭をよぎったと苦笑混じりに告げる。

善治郎は、自分が少々夢中になりすぎていたことを自覚し、慌てて謝罪した。アウラは怒ってはいなかったが、自分は経験がないのだから、もう少し手加減してほしいと率直に伝える。

しかし善治郎自身、次も理性を保てる自信はあまりなかった。

さらにアウラは、善治郎へ「意外とねちっこい」と率直な感想を述べた。善治郎は、それを否定できず、羞恥のあまりシーツへ顔を埋めて悶えることしかできなかった。

結婚指輪の贈呈

やがて善治郎は、重要な用事を思い出し、慌ててリビングルームへ駆け出した。

戻ってきた善治郎の手には、青いビロードの小箱が握られていた。アウラは、それが以前自分の指輪サイズを測るため貸した件と関係していることを思い出す。

善治郎は、LEDライトの明るさを戻した後、アウラへベッドから降りて自分の前へ立つよう求めた。

小箱の中には、イエローゴールドへ三連ダイヤをあしらった結婚指輪が収められていた。善治郎は、自分の世界では夫婦が互いに左手薬指へ指輪をはめ合い、永遠の愛を誓うのだと説明する。

そして善治郎は、健やかな時も病める時も、生涯愛し支えることを誓う宣誓の言葉を口にしながら、アウラの左薬指へ指輪をはめた。

続いてアウラも、同じデザインの指輪を善治郎の左薬指へはめ返した。

善治郎は、異世界式の婚礼よりも、この指輪交換によって初めて「結婚した」という実感を得ていた。

アウラもまた、この風習は面白く、上手く広めればこの世界でも流行るかもしれないと笑う。

寄り添う夫婦

二人は裸のまま自然にベッドへ戻った。アウラは、これ以上続ければ翌日の行事へ支障が出ると釘を刺し、善治郎も名残惜しさを感じながら就寝を受け入れた。

善治郎がLEDライトを消すと、寝室は完全な暗闇に包まれる。

その暗闇の中、二人は自然と手を探り合い、裸のまま寄り添って眠りについた。暑い夜だったにもかかわらず、互いの体温だけは不思議なほど心地よく感じられていたのである。

第四章 言霊の不思議

夫婦として迎える朝

初夜から十日後の早朝、善治郎は携帯電話のアラーム音で目を覚ました。現代日本の感覚では早朝だったが、この世界では既に遅い時間帯であり、人々は日の出と共に活動を始めていた。

善治郎がわざわざ早起きしている理由は、妻アウラとすれ違いにならないためだった。目覚めた時には既に妻が仕事へ出ている状況を寂しく感じていたのである。

善治郎が身体を横へ向けると、隣では裸のアウラが無防備な寝顔を晒して眠っていた。結婚以来、二人は毎晩同じ寝室で過ごしており、昨夜も激しく愛し合った後、そのまま眠りについていた。

善治郎は半ば無意識にアウラを抱き寄せ、その背中を優しく叩きながら愛おしさを噛み締める。自分が確かにこの女王と夫婦になったのだという実感が、日ごとに強まっていたのである。

甘えるアウラ

善治郎に抱き寄せられたアウラは目を覚ますと、素直に身体を密着させ、猫のように首元へ顔を擦り寄せた。

しかし善治郎は、その迫力ある存在感から、アウラを普通の猫ではなく、雌ライオンや雌虎のような大型肉食獣を手懐けている気分だと感じていた。

しばらく抱き合った後、アウラはベッドを下り、水桶へ浸したタオルで汗を拭き始める。熱帯夜の蒸し暑さの中、裸で寄り添って眠れば汗だくになるのは当然だった。

善治郎も裸のまま近づき、タオルを借りて身体を拭こうとした。するとアウラは、いたずらっぽく笑いながら、自分が拭いてやろうかと誘惑する。

善治郎は、その誘いへ飛びつきそうになりながらも、朝から最後まで付き合う余裕があるならと冗談交じりに返した。アウラもまた、この十日間で夜の営みに慣れ始めており、軽口を返せるほど余裕を見せていた。

王宮へ行かない判断

身体を拭き終えた後、善治郎は今日の予定をアウラへ尋ねた。アウラは、朝食と昼食を後宮で共に取る余裕はなく、夕食なら戻れる可能性があると説明する。そして、望むなら王宮で一緒に食事することも可能だと提案した。

しかし善治郎は、その提案を即座には受け入れなかった。王宮では貴族たちと鉢合わせする可能性が高く、自分が不用意な発言をすれば、アウラの政治的立場へ悪影響を及ぼしかねないと考えたのである。

男系社会であるこの国において、女王アウラの権力は決して絶対ではない。善治郎は、自分が余計な火種になることを避けようとしていた。

そのため善治郎は、今日は後宮で大人しく過ごすと答えた上で、この国の常識やマナーを学びたいと申し出る。それは、アウラの足を引っ張らないようにしたいという、善治郎なりの配慮だった。

善治郎の意図を理解したアウラは、愛おしそうに微笑み、可能な限り早く仕事を終えて戻ると約束した。そして、常識や礼儀作法を教える人間を用意すると請け負う。

二人は軽く口づけを交わし、善治郎は仕事へ向かう妻を笑顔で見送った。

善治郎の怠惰な休日

一人になった善治郎は、リビングのソファーでくつろぎながら、今日から本格的に始まる「何もしない生活」へ思いを馳せていた。

サラリーマン時代、忙しさのせいで見られなかった録画番組や、未開封のゲームソフト、聴けていなかった音楽データなど、消化したい娯楽は山ほどあったのである。

一方で善治郎は、この世界では食事時間を勝手にずらすことすら、下働きの人々へ大きな負担を与えることを理解していた。電子レンジもガスコンロもない世界では、料理の再加熱など簡単にはできないからである。

そのため、自分は後宮の主人ではあっても、入り婿の立場として侍女たちの不評を買う行動は避けるべきだと考えていた。

文明生活への未練

善治郎は冷蔵庫を開き、日本から持ち込んだ食料を確認した。中には非常食の他、叔母が持たせてくれた梅干しや、叔父に勧められた信州蕎麦なども入っていた。

さらに善治郎は、この世界にカカオ文化が存在しない可能性へ気付き、持ち込んだチョコレートを貴重品として扱い始めていた。

しかし異世界生活を始めたことで、善治郎は準備不足も痛感していた。その代表例が窓ガラスだった。

窓ガラスが存在せず木戸だけの構造では、せっかく持ち込んだエアコンも効率よく使えない。善治郎は、自分が現代日本の密閉空間を当然視していたことへ気付き、大きく落胆する。

結局善治郎は、エアコン問題を一旦棚上げし、不便さも含めて異世界生活を楽しむしかないと割り切った。

そして善治郎は、DVD収納バッグを取り出し、録り溜めしていた番組をどこから見ようか悩み始めるのだった。

多忙な女王アウラ

善治郎が後宮でDVD鑑賞を楽しんでいた頃、アウラは執務室で大量の会議と面談をこなしていた。現在のカープァ王国には宰相も元帥も存在しないため、女王であるアウラ自身が政治と軍事の双方を直接統括していたのである。

会議の合間には、提出された報告書へ目を通し続けており、休む暇はほとんどなかった。

そんな中、秘書官ファビオは、次の面会相手がプジョル・ギジェン将軍であると報告する。

その名を聞いたアウラは、露骨に顔をしかめた。プジョルは、善治郎が現れる以前、女王の婿候補として最有力視されていた男だったのである。

野心家プジョルの要求

執務室へ現れたプジョルは、まず表向きはアウラの結婚を祝福した。

しかしその直後、自分の妹を善治郎の側室へ迎えてほしいと単刀直入に要求する。妹は王家の血を引き、魔力や教養も十分だと売り込んだのである。

プジョルは、有能な軍人であり英雄でもあったが、その野心は極めて露骨だった。もし彼が女王の夫となっていれば、女王派と王配派の対立によって、国内分裂すら起こり得たとアウラは考えていた。

アウラは、妹本人の意思を確認するよう問い返した。しかしプジョルは、家長である自分が決めることであり、妹の意志確認など不要だと当然のように答える。

その反応に、アウラは改めてこの国の男中心社会を痛感していた。

善治郎への接触要求

アウラは、善治郎はまだ異世界生活に慣れておらず、自分だけで手一杯だと説明し、側室話を拒絶した。

しかしプジョルは、その言葉が本当に善治郎自身の意思なのかと疑問を投げかける。

さらに彼は、自分は新たな主君である善治郎へ「直接」挨拶したいのだと強調し、その意志を必ず本人へ伝えるよう要求した。

アウラは不快感を抱きながらも、その言葉を伝えると約束するしかなかった。

貴族社会の現実

プジョルが去った後、アウラは露骨すぎる野心へ呆れを漏らした。しかしファビオは、彼のように欲望へ正直な人間だからこそ、貴族全体の動向予測には役立つと冷静に分析する。

ファビオは、今後同様の側室要求が貴族たちから殺到すると予測していた。そしてそれを拒否し続ければ、「アウラが権力維持のため夫の自由を束縛している」という噂が広がる危険を指摘する。

アウラは、善治郎が後宮へ引きこもっているのは本人の意思だと反論した。しかしファビオは、貴族社会では実態より外聞が重要であり、後宮から出てこない以上、善治郎の真意など誰も信じないと断言する。

そのため、いずれ善治郎自身が表へ出て、夫婦関係が良好であることを貴族たちへ示す必要があると結論づけた。

側室問題と王家の未来

さらにファビオは、側室制度自体は王家の血統維持という観点から見れば、極めて合理的な案だと説明した。

しかし一方で、王家の血を濃く引く者たちが全員善治郎の子になると、次世代以降の婚姻政策が極端に難しくなるとも指摘する。異母兄弟姉妹ばかりになれば、近親婚問題が発生するからである。

そのためファビオは、プジョルの妹は別の有力貴族へ嫁がせ、善治郎には別系統の貴族女性や女魔法使いを側室として迎えさせ、王家の分家を作らせる方が理想的だと提案した。

アウラは、その発想がまるで走竜の交配計画のようだと皮肉ったが、理屈自体は理解していた。

家庭教師選び

やがてアウラは、善治郎自身がこの世界の礼儀や常識を学びたがっていることを思い出し、家庭教師を付けることを決定する。

ただし後宮は男子禁制であるため、候補は女性限定だった。さらに魔法の基礎も教えさせたいことから、高い魔力を持つ女性が望ましい条件となる。

しかしアウラは、もし適切な人物がいなければ、高齢の老女パスクアラを家庭教師にするつもりだと釘を刺した。これは、善治郎へ若い未婚女性を近づけようとする野心家貴族を炙り出す意図でもあった。

ファビオは、あまり露骨に臣下を試せば人心が離れると忠告したが、アウラは危険な側室候補を早期に見極める必要があると考えていた。

そしてアウラは、本当なら少しくらい水入らずの新婚生活を楽しみたいのだと、不満げに肩をすくめるのだった。

夫婦の夜時間

その日の夜、アウラと善治郎は夕食を終えた後、ソファーへ並んで座り、くつろぎの時間を過ごしていた。室内は六台のLEDスタンドライトによって明るく照らされており、アウラは、夜でも十分な明かりがあることで生活の質が大きく向上すると感心していた。

善治郎にとっては、日本では当たり前だった夜更かし生活であり、特別な感慨は薄かった。しかし、アウラにとっては、夜を有意義に過ごせること自体が新鮮な体験だったのである。

昼間は激務に追われるアウラだったが、夜は比較的自由時間を確保できるため、二人はこうして夫婦水入らずの時間を持てるようになっていた。

家庭教師の話

アウラは、善治郎へ礼儀作法や常識を教える家庭教師を公募することを伝えた。決定までは時間がかかるため、それまでは自分が直接教えるつもりだとも説明する。

善治郎は、自分が失礼な発言をしてしまわないか不安を漏らした。しかしアウラは、善治郎の日頃の言動なら大丈夫だと笑い飛ばし、最低限のマナーは先に叩き込むと約束した。

夫婦での入浴

その時、侍女が浴室準備完了を知らせに来る。善治郎は、日本から持ち込んだLEDランタンを手に取り、浴室へ向かおうとした。

この世界の浴室は暗すぎるため、善治郎はホームセンターで購入したLEDランタンを使っていたのである。

するとアウラは、ごく自然に善治郎の腕へ自分の腕を絡め、一緒に入浴すると誘った。

善治郎は、その大胆な申し出に動揺しつつも、断る理由などないと即答する。アウラは妖艶に微笑み返し、二人は仲良く腕を組んだまま浴室へ向かうのだった。

氷扇風機と冷えた酒

入浴後、二人は氷扇風機で火照った身体を冷やしながら酒を楽しんでいた。善治郎は発泡酒、アウラは冷えた白ワインを飲んでいる。

氷越しに送られる冷風と、冷蔵庫で冷やした酒によって、熱帯夜とは思えない快適さが生まれていた。アウラは、その贅沢さに感嘆し、この快適さへ慣れすぎると後宮へ入り浸りになりそうだと冗談めかして語る。

善治郎も、いつでも歓迎すると笑顔で応じた。するとアウラは、今後は可能な限り昼食も後宮で取ると宣言する。善治郎は、それなら昼に合わせて氷を準備しておくと請け負った。

しかし善治郎は、氷を大量消費しなければならない状況へ改めて不便さを感じ、エアコンの必要性を痛感していた。

夜の講義開始

やがてアウラは、善治郎へ礼儀作法の講義を始めると宣言した。善治郎は、せっかくの夫婦時間が勉強へ消えることを残念がる。

その率直な言葉に、アウラは思わず照れた表情を見せたが、すぐに平静を装い、夜の時間を有効活用すべきだと話を戻した。

善治郎は、一度立ち上がると、荷物置き場から銀色の小型機械を持ち出してくる。それはデジタルカメラだった。

善治郎は、この機械で映像と音声を記録できると説明した。しかしアウラには、静止画や動画という概念自体が存在しないため、全く理解できなかった。

デジカメによる記録

結局、善治郎は説明を諦め、実際に撮影して見せることにした。

アウラは半信半疑ながらも、ソファーから立ち上がり、王族としての基本的な礼儀作法について説明を始める。善治郎は、その様子をデジカメの動画機能で撮影していった。

撮影後、善治郎はパソコンを起動し、SDカード内の動画データを再生する。すると画面には、先ほどのアウラ自身がそのまま映し出され、声まで再現されていた。

生まれて初めて動画再生を見たアウラは、自分の姿と声が完全に記録されていることへ衝撃を受け、魔道具大国シャロワ・ジルベール双王国でも見たことがないと驚嘆した。

言語認識の異変

しかし、その時さらに大きな衝撃を受けていたのは善治郎だった。

これまで善治郎は、アウラたちの言葉を普通に日本語として理解していた。しかし動画内から聞こえてきたアウラの声は、全く意味不明な未知の言語にしか聞こえなかったのである。

動画再生から始まる異世界常識の発覚

録画した動画内のアウラの言葉を理解できなくなった善治郎は、大きな衝撃を受けていた。

アウラは、その反応を見て逆に不思議そうな表情を浮かべ、「言霊」が宿っていないからではないかと説明する。しかし善治郎には、「言霊」という概念自体が初耳だった。

そこでアウラは、根本から順を追って説明を始める。この世界では、異なる言語同士でも普通に会話が成立するのが常識だったのである。

善治郎は、異世界なのに日本語が普通に通じていた事実そのものを、今まで疑問に思っていなかったことへ気付かされていた。

『言霊』という世界法則

アウラによれば、この世界では複数の人間が共通認識を持つ「正しい音」へ「言霊」が宿り、その魔力によって異言語間でも意味が自動変換されるのだという。

ただし、適当な音へ勝手な意味を持たせても効果は発動しない。数千人規模で共通認識されて初めて言霊として成立するのである。

さらに言霊は、話し手と聞き手双方が魔力を持っていることが前提条件だった。

そのため、魔力を持たない機械――つまりデジカメやパソコンを通した音声には言霊が宿らず、善治郎には未知の外国語としてしか聞こえなかったのである。

複数言語習得の困難さ

善治郎は、自動翻訳状態なら複数言語を覚える意味が薄いのではないかと疑問を口にした。

アウラは、その予想は正しいと認めた。この世界で複数言語を扱える者は極めて少なく、高度な魔法使いに限られているのである。

熟練した魔法使いは、自らの魔力放出を制御し、意図的に言霊効果を遮断できる。その状態で初めて、生の言語音を学習可能になるのだとアウラは説明した。

実際にアウラが魔力制御を行うと、善治郎には彼女の言葉が完全な未知言語として聞こえた。

善治郎は、地球そのものが魔力を遮断する特殊空間なのか、あるいは地球人が魔力を持たない種族なのかもしれないと推測する。そして百五十年前に地球へ逃れた先祖が、言葉の通じない世界で生き延びた苦労へ思いを馳せていた。

文字文化の違い

アウラは、この世界で外国語を学ぶ最大の理由は「文字」を読むためだと説明する。言霊は音声へしか作用しないため、文字には翻訳効果が存在しないのである。

興味を持った善治郎は、コピー用紙とボールペンをアウラへ渡し、この世界の文字を書いてもらうことにした。

アウラは、ボールペンと紙の使い心地へ感嘆しながら、南大陸西部で使われる三十文字を書き出していく。

善治郎は、それがアルファベットに近い表音文字体系だと理解した。RとLの区別が存在しないなど細かな違いはあるが、構造自体はかなり近かったのである。

数字概念の不存在

続いて善治郎は、この世界の数字表記を教えてほしいと頼んだ。しかしアウラは、「数字」という概念そのものを理解できなかった。

アウラは、「一」「二」「三」を、それぞれ単語として文字列で書き始める。つまりこの世界には、算用数字に相当する概念が存在していなかったのである。

善治郎は強い衝撃を受ける。数学自体は存在していても、専用数字記号がないことで、一般人の計算能力や教育効率は大きく制限されていると直感したのである。

そして善治郎は、十個の数字記号と四則演算記号だけで、誰でも短期間に高度な計算が可能になると熱弁し始める。

その瞬間善治郎は、自分へ課していた「目立つ成果は極力出さない」という自戒を、完全に忘れてしまっていたのだった。

第五章 穏やかに時間は流れ

灼熱の季節と後宮生活

善治郎が『言霊』の存在を知ってから数日後、カープァ王国は一年で最も暑い季節へ突入していた。昼間の気温は四十度を超え、善治郎は精神衛生上の理由から温度計を見ることすらやめていた。

善治郎は熱気を遮断するため、昼間から後宮の木戸を全て閉め切り、LEDスタンドライトを灯した薄暗い室内で生活していた。

一方、この猛暑によって王宮では正午から三時間ほどの休息時間が設けられるようになり、善治郎とアウラは昼間も二人で過ごせるようになっていた。

かき氷と異世界食文化

昼休みに後宮へ戻ってきたアウラは、真っ先に冷蔵庫へ向かい、自ら氷を削ってかき氷を作り始める。

そしてイチゴシロップを大量にかけるアウラへ、善治郎は慌てて「かけすぎだ」と抗議した。

アウラは、城の料理人に似たシロップを作らせているから問題ないと胸を張る。しかし実際には再現に失敗しており、最終的に素直に白状していた。

善治郎は、イチゴ・メロン・ブルーハワイのシロップが一本ずつしかない貴重品だと説明するが、結局アウラへ譲歩する。

その様子からも、二人の夫婦関係が良好であることがうかがえた。

互いを気遣う夫婦

善治郎は冷蔵庫から冷えた濡れタオルを取り出し、汗だくのアウラへ渡した。

アウラは、善治郎が持ち込んだ冷蔵庫や氷、LED照明などの恩恵を受け続けていることへ感謝しつつ、自分ばかりが利益を得ている気がすると本音を漏らす。

しかし善治郎は、自分も異世界へ来る以上、その国の常識や文化を学ぶ必要があると最初から覚悟していたと答えた。

さらに、深夜帰宅が当たり前だった元サラリーマン生活と比べれば、この世界での生活は十分楽だとも感じていた。

一方アウラは、善治郎が自分の立場を理解した上で、必要以上に欲求を抑えていることへ既に気付いていた。侍女たちからの評判も極めて良好であり、手間のかからない理想的な主人だと認識されていたのである。

押し倒し未遂と夫の悲哀

その後、善治郎はアウラへ抱きつき、そのままソファーへ押し倒そうと試みた。

しかし、戦士として鍛えられたアウラは、その突撃を正面から難なく受け止めてしまう。しかも本人は、押し倒されそうになっていたことにすら気付いていなかった。

善治郎は大きな精神的ダメージを受け、部屋の隅で落ち込む。

アウラは、自分が夫の男としての自尊心を傷付けたことへ気付き、慌ててわざとらしくソファーへ倒れ込み、今さら悲鳴を上げて「押し倒された」演技を始めた。

そのあまりに不自然なフォローへ善治郎は全力で突っ込むが、最終的にはその流れに乗り、改めてアウラへ覆い被さっていった。

納税書による文字学習

その後、二人は半裸姿のまま勉強会へ移行する。

アウラは、昨年の地方別納税書類を教材として持ち込み、地名・個人名・数値が多いこうした資料こそ、文字習得に適していると説明した。

善治郎は、数日前に外字登録したこの世界の文字をパソコンへ入力し、表計算ソフトを利用して、原文・読み仮名・アラビア数字を併記した学習資料を作成していた。

さらにプリンターを用いて大量印刷し、発音練習も兼ねてアウラと読み合わせを行う。

こうして善治郎は、この世界の文字や貴族名を急速に学習していった。

表計算ソフトによる脱税発覚

読み合わせの最中、アウラは納税書内の数字が赤や青で色分けされていることへ気付く。

善治郎は、それが納税書の数値と表計算ソフトによる再計算結果との差異を示していると説明した。赤字は少なく申告された数値、青字は多く記載された数値だったのである。

王宮では、膨大な納税書を完全再計算などしておらず、抜き打ち確認程度しか行われていなかった。そこへ善治郎の表計算技術が加わったことで、大量の不正が一気に可視化されたのである。

アウラは凄みを帯びた笑顔を浮かべ、その資料を借り受けた。

数字導入と政治利用

午後、アウラはファビオ秘書官へその資料を見せ、善治郎が数日で納税書の再計算を完了させたことを伝える。

ファビオは、善治郎の知性と教養を高く評価しつつ、その野心のなさが逆に不自然だとして警戒を緩めなかった。

一方アウラは、善治郎から教わったアラビア数字へ強い関心を示す。十個の記号だけであらゆる数を表現できる合理性と、事務効率の劇的向上を実感していたのである。

ファビオは全面導入には慎重だったが、まずは王家関連部署へ限定導入し、既存表記と併記する案へ落ち着いた。

さらにアウラは、納税不正が見つかった有力貴族たちへの対応も検討する。

ただし彼らは先の大戦で功績を立てた者ばかりであり、強硬な摘発は国内不安を招きかねないため、アウラは「不備発覚」を匂わせつつ自主的譲歩を引き出す穏便策を選択した。

家庭教師候補オクタビア夫人

最後に話題は、善治郎の家庭教師選びへ移る。

推薦者の大半は若い未婚女性であり、露骨な側室候補ばかりだった。

その中で唯一無視できない人物として挙がったのが、マルケス伯爵夫人オクタビアだった。

オクタビアは若く美しく、知識・教養・魔法技術を兼ね備えた理想的な貴族女性であり、既婚者でもあった。

しかしファビオは、マルケス伯爵がオクタビアを利用し、善治郎へ男としての自信と政治的積極性を植え付けようとしているのではないかと推測する。

アウラは警戒しつつも、オクタビア本人に悪意はなく、善治郎にとって有益な人選でもあると判断し、家庭教師として受け入れる決断を下すのだった。

家庭教師オクタビアの来訪

その日、後宮には初めて部外者が訪れることになり、善治郎は緊張していた。相手はマルケス伯爵夫人オクタビアであり、善治郎の常識・礼儀・魔法を教える家庭教師として招かれていた。

善治郎は、アウラから教えられた通り、敬語を避け、王族として相手より上の立場で対応しようと努めた。しかし、初対面の相手を迎える際に立ち上がってしまい、早速オクタビアから、王族としては丁寧すぎて軽く見られる恐れがあると指摘された。

指導方針の確認

オクタビアは、歴史や魔法を教える中で、善治郎の態度に礼儀や常識から外れた点があれば、その都度指摘する方針を示した。さらに、昼食を共に取ることで、会食の場に凝縮された礼儀作法を実践的に学ばせるつもりだった。

善治郎は、今後の昼食が気楽な時間ではなくなることに内心うんざりしつつも、効率的な教育方法だと理解し、オクタビアの方針を受け入れた。

魔法の基礎説明

オクタビアは、魔法には万人が扱える四大魔法と、特定の血筋だけが使える血統魔法があると説明した。時空魔法も血統魔法に含まれるが、発動の基礎は四大魔法と変わらないものだった。

魔法の発動には、正しい発音、正しい認識、正しい魔力量の三つが必要だった。オクタビアは水球を作る魔法を実演し、善治郎に魔法語の性質を見せた。

魔法語の衝撃

オクタビアが魔法語を唱えると、善治郎の耳には短い発声から大量の意味が一気に流れ込んだ。魔法語は、わずかな音に多くの情報を込められる特殊な言語であり、初めて聞いた者には不快感や衝撃を与えることがあった。

オクタビアは説明不足を謝罪したが、善治郎は魔法を学ぶ以上避けられない経験だったと受け止め、説明を続けるよう命じた。

三条件を外した実演

オクタビアは、発音を少し間違えた場合、認識を別の魔法へ向けた場合、そして魔力量を意図的にずらした場合を順に実演した。いずれも魔法は発動しなかった。

善治郎は、魔力量が多すぎても失敗することに驚いた。オクタビアは、小さな魔法ほど必要な魔力量が厳密であり、大魔力を持つ者ほど細かな魔法を苦手としやすいと説明した。

魔法習得への現実

善治郎は、自分が魔法を使えるようになるまでの期間を尋ねた。オクタビアは、まず魔力を自覚するまでに二年、そこから操作を習得するまでに一年ほどかかるのが一般的だと答えた。

善治郎は想像以上に長い習得期間に落胆したが、自分が魔法を急いで覚える必要はないと考え直した。最終的に、焦らず学んでいくことを決め、オクタビアへ指導を任せた。

家庭教師初日を終えた夫婦の時間

オクタビアとの最初の講義を終えた夜、善治郎はアウラと共に後宮でくつろいでいた。善治郎は発泡酒を飲み、アウラは冷やしたブランデーをストレートで味わっていた。

アウラは、この世界では珍しい蒸留酒であるブランデーを非常に気に入り、その濃厚な香りと味わいを楽しんでいた。一方善治郎は、ブランデーとウィスキーの違いもよく分からず、冷えた発泡酒で満足していた。

講義初日の感想

アウラに感想を求められた善治郎は、マナー指導による緊張で非常に疲れたと率直に語った。昼食中も作法を気にし続けていたため、何を食べたか覚えていないほどだった。

しかし同時に、魔法の講義そのものは非常に面白かったとも話す。ただし、魔法習得には三年以上かかると知った時は流石に落ち込んだとも漏らした。

アウラは、魔法に近道はないが、時間をかければ必ず身につく技術だと励まし、善治郎の腕を自分の胸へ抱き込んだ。

オクタビアへの評価

その流れで、アウラはオクタビアをどう思ったかと善治郎へ問いかける。

善治郎は、オクタビアが美人で人当たりも良く、この国で人気がある理由がよく分かったと素直に認めた。

しかし機嫌を探るようなアウラの追及を受け、善治郎は最終的に、自分がこの世界へ残ったのは、召喚者がアウラだったからだと答えた。もし最初に会った相手がオクタビアだったなら、この世界には残っていなかったと告げたのである。

その言葉を聞いたアウラは心から嬉しそうに笑い、自分にとっても善治郎と出会えたことが幸運だったと返し、熱い口づけを贈った。

深夜の密かな抜け出し

深夜、善治郎が眠った後、アウラは彼を起こさないよう静かにベッドを抜け出した。

暗闇の中で衣服を探す最中、アウラは以前善治郎へ見せた赤い透けるネグリジェを思い出す。その夜着姿を見た善治郎が、顔を真っ赤にして硬直していた反応を思い返し、思わず笑みを漏らしていた。

その結果、夜の営みもいつも以上に激しく長くなっていたのである。

侍女からの報告

アウラはリビングへ移動すると、側仕えだった金髪の侍女を呼び出し、オクタビアの様子について報告を受けた。

侍女は、オクタビアに不審な動きはなく、誠実に家庭教師役を務めていたと報告する。アウラも、オクタビアは本格的な策士というより、マルケス伯爵側の観察役程度だろうと判断した。

続いてアウラは、善治郎が侍女たちへ手を出していないか確認する。しかし侍女は、善治郎は女性へ色目を使うどころか、侍女たちが部屋へ入ること自体を遠慮する傾向があると説明した。掃除中は自分から別室へ移動するほどだった。

アウラは、善治郎が欲求を口に出すことを悪徳のように考える節があるため、侍女たちへ積極的に意図を汲み取るよう命じた。

独占欲の芽生え

侍女が去った後、アウラは冷水を飲みながら、善治郎がオクタビアにも侍女たちにも目を向けていない事実を改めて思い返していた。

善治郎がどれほど情熱的に女性を求める男かを、アウラは既に身体で理解している。それにもかかわらず、その情熱が自分だけへ向けられていることに、アウラは強い優越感と幸福感を覚えていた。

その感情は、王としての達成感とも戦場での勝利とも違う、自分だけが女として選ばれている喜びだった。

やがてアウラは、自分の中に独占欲が芽生え始めていることを自覚する。将来側室問題が起きた時、感情的に反対してしまうかもしれないと考えつつも、その感情自体を心地良いものとして受け入れていた。

そして寝室へ戻ったアウラは、裸のまま善治郎の背中へ抱きつき、その温もりへ安心感を覚えながら、穏やかに眠りへ落ちていくのだった。

教養講座と善治郎の勤勉さ

オクタビアの講義を受け始めて数日後、善治郎は授業までの空き時間を利用し、パソコンで教養やマナーの復習を行っていた。

動画には、アウラが現地語で説明した内容を、その場で善治郎が日本語へ訳して復唱した音声が収録されていた。録音された音声には『言霊』が働かないため、日本語で補足することで復習教材として成立させていたのである。

善治郎は講義内容を前倒しで習得しようと、空き時間を細かく活用し、昼休みにはアウラと共に魔法の予習復習まで行う計画を立てていた。元々はヒモ生活を望んでいたにもかかわらず、与えられた役目を効率的に果たそうとする性格が自然と表れていた。

侍女たちの掃除と後宮の空気

善治郎が講義へ向かう間、侍女たちは後宮の掃除を行っていた。

しかし、善治郎が持ち込んだ扇風機や氷塊のある部屋は快適であり、若い侍女たちは掃除を口実に涼を取っていた。中年の侍女長は、彼女たちが仕事を口実に氷を楽しんでいる様子を厳しく叱責し、木戸を開け放って熱気を入れることで怠け癖を戒めた。

後宮へ配属された当初、侍女たちは異世界から来た善治郎へ強い緊張を抱いていた。しかし実際の善治郎は、我が儘を言わず、ミスにも寛容で、侍女を滅多に呼びつけない非常に扱いやすい主人だった。そのため、侍女たちは短期間で気が緩み始めていたのである。

夫婦仲を感じ取る侍女たち

寝室の掃除へ移った侍女たちは、ベッドや夜着から漂う気配に苦笑を浮かべていた。そこには、昨夜も善治郎とアウラが熱く愛し合っていた痕跡が色濃く残っていたのである。

侍女たちは、これほど仲睦まじい様子なら、早ければ来年には世継ぎが誕生するかもしれないと噂していた。

昼休みの穏やかな時間

昼休み、善治郎とアウラはリビングで並んで座り、テレビゲームを楽しんでいた。

二人が遊んでいたのは、風景写真の一部が変化する場所を見抜くゲームだった。アウラは初めてのゲームにもかかわらず観察力に優れ、善治郎より高い勝率を見せていた。さらに答えを匂わせるような発言で善治郎を翻弄し、彼を悔しがらせていた。

ゲームを楽しむ二人の表情には、公務中には見せない穏やかな安堵が浮かんでいた。

講義の進展とアウラの懸念

ゲーム後、アウラは講義の進み具合を尋ねた。善治郎は、一般常識とマナーについて最低限の合格点を得たと報告する。これにより、善治郎が公務や社交の場へ出る準備が整いつつあることが示されていた。

しかしアウラは、善治郎の勤勉さへ改めて危うさを感じていた。彼は努力を惜しまない一方、自ら限界を訴えることが苦手であり、無理を抱え込みやすい性格だったのである。

善治郎は休憩中にも魔法の予習を始めようとしたが、アウラは、今隣にいるのは教師ではなく妻だと優しくたしなめた。

寄り添いながら眠る夫婦

アウラに身体を寄せられた善治郎は、次第に緊張を解き、彼女の肩を抱き寄せた。

互いの体温を感じながら静かな時間を過ごすうち、善治郎はそのまま眠りへ落ちていく。アウラもまた、夫の腰へ腕を回し、寄り添ったまま目を閉じた。

こうして二人は、不足していた夜の睡眠を補うように、穏やかな昼寝の時間を共に過ごしたのだった。

付録 主と侍女の間接交流

問題児三人組

カープァ王国の後宮には、「問題児三人組」と呼ばれる三人の侍女がいた。彼女たちは後宮侍女として十分な能力と忠誠心を備えていたが、他の侍女より少しだけ欲求に素直で、少しだけ調子に乗りやすい性格だった。

侍女長アマンダはたびたび頭を抱えていたが、重大な失敗を犯すほどではなく、主である善治郎自身もあまり気にしていなかったため、現状は黙認されていた。

携帯ゲーム機の持ち出し発覚

昼休み、自室へ戻った小柄な侍女フェーは、自分のエプロンのポケットに善治郎の携帯ゲーム機が入ったままだと気づき、青ざめた。

フェーは掃除中、テーブルを拭く際に一時的にゲーム機をポケットへ入れていたが、そのまま持ち帰ってしまっていたのである。

ルームメイトである長身のドロレスと巨乳のレテも事態の重大さを理解し、動揺する。後宮では、主の私物を勝手に持ち出す行為は窃盗と見なされてもおかしくなかった。

返却のタイミングに悩む侍女たち

ドロレスはすぐ返却すべきだと主張したが、現在善治郎はアウラと昼食中であり、不要な立ち入りを避けるよう事前に伝えられていた。

そのためフェーは、今返しに行けばかえって機嫌を損ねるのではないかと怯える。最悪の場合、自分が窃盗犯として扱われ、後宮を追放される未来まで想像してしまっていた。

そこでレテは、清掃担当責任者イネスへ相談するよう提案した。厳格な人物ではあるが、部下思いでもあるため、事情を説明すれば弁護してくれるだろうと考えたのである。

イネスの説教

フェーたちはイネスへ事情を打ち明けた。結果として、予想通り長時間の説教を受けることになったが、イネスは善治郎への取りなしも約束してくれた。

説教を終えて部屋へ戻ったフェーは、安心しきった様子でベッドへ倒れ込む。ドロレスも疲労から昼寝を考え始めていた。

レテの暴走

しかし、その直後、突然部屋に異世界の音楽が鳴り響いた。

音の正体は、レテが何気なく開いてしまった携帯ゲーム機だった。善治郎はゲーム機をスリープ状態にしていたため、開いた瞬間に起動してしまったのである。

フェーとドロレスは、せっかく収まりかけた問題がさらに悪化したと悲鳴を上げる。しかしレテ本人は、あまり深刻さを理解していなかった。

取扱説明書の発見

さらにレテは、ゲーム機の間に挟まっていた紙を見つける。それは善治郎が書いた、この世界の文字による「取扱説明書」だった。

三人は、善治郎が既にこの国の文字を書けるようになっていることへ驚きつつ、好奇心から説明書を読み始める。先ほどまで怯えていたはずの三人は、いつの間にか夢中になって説明書へ目を通していた。

携帯ゲームへの熱中

フェー、ドロレス、レテの三人は、昼休みの間に善治郎の携帯ゲーム機へ完全に夢中になっていた。

三人が遊んでいたのは、落ちてくるブロックを並べて消す「落ち物系」のゲームであり、文字を読めなくても遊べる単純明快な内容だった。そのため、異世界の侍女達でも直感的に理解でき、次第に熱中していった。

フェー達は互いに指示を飛ばし合いながら騒ぎ、骸骨を倒した、連鎖が決まったなどと一喜一憂していた。偶然の連鎖によって始まった遊びだったが、三人は完全にゲーム文化へ取り込まれていたのである。

善治郎からの挑戦状

翌日、携帯ゲーム機には「持ち出し自由」と書かれた付箋が貼られていた。さらに、取扱説明書には算用数字の読み方や、三人の名前のアルファベット表記まで追加されていた。

そして、ゲーム内のハイスコア欄には「zenjiro」という名前が記録されていた。それは明らかに、善治郎から三人への挑戦状だった。

フェーは真っ先に対抗心を燃やし、ドロレスも興味を示す。レテも純粋に楽しそうに笑い、こうして三人の新米ゲーマー生活が本格化していった。

ドロレスの勝利

数日後、ついにドロレスが善治郎のハイスコアを上回ることに成功した。

ドロレスは得意満面でゲーム機を掲げ、フェーは悔しがりながらも対抗心を燃やす。レテは素直に祝福し、三人は完全にゲームの競争へ熱中していた。

その翌日には、フェーも負けじと朝から異様なやる気を見せ、仕事を急いで終わらせようと奮闘する。イネスは呆れつつも、ゲーム熱が仕事の効率向上へ繋がっている現状を黙認していた。

謎の賞品

その日、フェーはゲーム機の横に置かれた見慣れない袋を発見した。袋には「賞品。最高得点更新者へ」と書かれた付箋が貼られていた。

昼休み、三人はその賞品を開封する。中に入っていたのは、色とりどりのマーブルチョコレートだった。カープァ王国には存在しない菓子であり、三人は最初、飴だと思い込む。

しかし、フェーが真っ先に噛み砕いたことで、中に別の甘い菓子が入っていることへ気づく。三人は未知の味へ感動し、その美味しさに興奮した。

新たな競争

マーブルチョコレートを巡り、フェーとドロレスは言い争いを始めるが、レテがイネスの存在を持ち出したことで、騒ぎは収まった。

その後、フェーは「次は自分がトップを取って賞品をもらう」と意気込み、ゲームへ本気で挑み始める。昨日まで否定していた連鎖狙いまで取り入れ、勝利のために手段を選ばなくなっていた。

しかし、ハイスコア一覧を確認した三人は愕然とする。善治郎が昨夜のうちに再びプレイし、ドロレスの記録を大幅に更新していたのである。

フェーは善治郎を大人げないと非難し、ドロレスは善治郎が以前は手加減していたのだと悟る。レテは気の遠くなる得点差に呆然とし、三人は再び騒がしく盛り上がるのだった。

ヒモ生活2巻レビュー

同シリーズ

理想のヒモ生活 シリーズ

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理想のヒモ生活 5巻
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理想のヒモ生活 6巻
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理想のヒモ生活 10巻
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理想のヒモ生活 11巻
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理想のヒモ生活 13巻
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理想のヒモ生活 14
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理想のヒモ生活 15

漫画版

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理想のヒモ生活 17巻
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理想のヒモ生活 18巻
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理想のヒモ生活 19巻
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理想のヒモ生活 20巻
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理想のヒモ生活 21巻
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理想のヒモ生活 22巻
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理想のヒモ生活 23巻
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理想のヒモ生活 24巻

その他フィクション

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