ヒモ生活9巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活11巻レビュー
どんな本?
■ 作品概要
「理想のヒモ生活」とは、現代日本から異世界に召喚された青年が女王の夫(王配)となり、宮廷の権謀術数や外交交渉に挑む異世界ファンタジー小説である。 本作の世界は、時空魔法や付与魔法などの「血統魔法」が王家の権力の源泉として機能する南大陸を舞台としている。第10巻では、第二子を妊娠中の女王アウラを支援するため、善治郎がシャロワ・ジルベール双王国へ「治癒術士」を要請すべく赴く。また、北大陸のウップサーラ王国から来たフレア姫も、危険な大陸間航行を助ける魔道具を求めて同行する。双王国では、魔道具の量産化の鍵となる「宝玉(ビー玉)」を巡る思惑や、北大陸の技術発展という将来の脅威を見据えた大国間の複雑な外交交渉が展開される。
■ 主要キャラクター
- 善治郎・カープァ:現代日本から召喚されたカープァ王国の王配。政治的野心を持たず家族を最優先にする性格だが、アウラと生まれてくる子を守るため、自ら双王国での治癒術士派遣交渉や外交の矢面に立つ。
- アウラ一世:カープァ王国の女王であり善治郎の妻。現在第二子を妊娠中。優れた政治的嗅覚を持ち、他国に付け入る隙を与えないよう善治郎を支援しつつ、国の未来を見据えた戦略を冷静に練る。
- フレア・ウップサーラ:北大陸ウップサーラ王国の第一王女であり、善治郎の側室候補。自国の命運を懸けた大陸間航行の安全性を高めるため、双王国で魔道具の買い付け交渉に自ら挑む。
- ブルーノ三世:シャロワ・ジルベール双王国の現国王。老獪な政治家であり、カープァ王国がもたらす宝玉の量産化技術や、北大陸からの将来的な脅威を見据え、善治郎たちを自陣営に引き込もうと画策する。
- ジュゼッペ:双王国の王太子。父であるブルーノ王と共に双王国の長期的な国力向上を目指しており、フレア姫の魔道具購入に特例で便宜を図るなど、狡猾な外交手腕を見せる。
- フランチェスコ:双王国の王子。付与魔法の天才だが自由奔放な性格。特定の魔道具を誰でも作れるようにする「魔道具を作製する魔道具」の開発を目論んでおり、善治郎に協力を求める。
■ 物語の特徴
本作の最大の魅力は、異世界召喚ものにありがちな「主人公が魔法や力で無双する」展開ではなく、現代日本の知識や価値観を用いた地道な交渉と、国家間のリアルな政治的駆け引きに重きが置かれている点である。 魔法が単なる戦闘スキルではなく、国家のインフラや既得権益(魔道具の生産独占や治癒術など)として緻密に設定されており、その利権を巡る王族たちの思惑が物語に深い緊張感を与えている。 また、権力闘争が渦巻く中にあっても、善治郎とアウラがお互いを深く信頼し、王族としての義務と家族への愛情の間で葛藤しながらも、夫婦で補い合って難局を乗り越えようとする姿が、読者に強い共感と興味を抱かせる差別化要素となっている。
読んだラノベのタイトル
理想のヒモ生活 10
著者:渡辺恒彦 氏 イラスト: 文倉 十 氏
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あらすじ・内容
善治郎が王の懐柔策に? 焦る女王アウラが出した結論とは? 姫がヒモ男のアプローチ法を伝授?待望の大人気シリーズ第10弾!
妊娠中の女王アウラに『治癒術士』を呼ぶため、再び双王国へ『瞬間移動』する善治郎。さらに、フレア姫も長期航行を補助する魔道具を求め、双王国へやってくる。双王国に到着した善治郎を最初に待っていたのは、フランチェスコ王子だった。カープァ王国で量産された『ビー玉』を渡され、驚愕するフランチェスコ王子。だが、同時にフランチェスコ王子も、ある構想を打ち明け、善治郎を驚愕させた。その後、聖白宮でのベネディクト法王との面談は問題なく終わり、約束通り『治癒術士』であるイザベッラ王女がカープァ王国に来ることが決定。数日後、フレア姫と一緒に善治郎は、魔道具購入の交渉に赴く。交渉相手はジュゼッペ王太子。『真水化』の魔道具購入にこぎ着けるフレア姫。さらにジュゼッペ王太子は、各貴族家と個別交渉して各家所有の魔道具を買い取ることも許可するのだった。
理想のヒモ生活10
感想
南国の暑さに夏バテでノックダウンしたフレア姫。
側室として来てもコレじゃ無理かもしれない。
それを気の毒に思った善治郎は、双王国で使われてる空調の魔道具を手に入れようとする。
その魔道具注文のついでに、海水を真水にする魔道具を求めてフレア姫も双王国に行くことになる。
双王国からは女王アウラのために治癒術師を派遣され。
その移動は全て善治郎の瞬間移動で行われるのだが、、、
凄く便利だな瞬間移動。
最初は辿々しかった善治郎の瞬間移動も数十回もやってたら凄く上手くなってる。
さらに、アウラ女王の指揮の下、ビー玉作りも順調に行っておりフランチェスコ王子からはもうちょっとと言われる処まで来ている。
そのビー玉が喉から手が出るほど欲しい双王国だが、、、
その全てに善治郎が関わっており、そんな善治郎にカルロス善吉を政治利用した事で思いっきり嫌われたジュゼッペ王太子は善治郎を懐柔するため色々と手を尽くすが、善治郎からの反応は芳しくない。
北大陸の教会を心底恐れているジュゼッペ王太子は善治郎の心象を悪くした事を焦っている。
北大陸から大挙して船団が迫っ来るまでまだ時間はあるが、それほど長くはない。
北大陸で教会の影響が薄いフレア姫の国にも良い顔したいジュゼッペ王太子は、迂遠だが王家が代々大切にしていた魔道具を渡して、なるべく安全に大型帆船が北大陸に帰れるように便宜を図る。
そして最後には、、
善治郎も北大陸に行ってくれと女王アウラに言われる。。。
善治郎働きすぎ!!!www
まぁ、奥さんが妊娠中だからお父さんが頑張ってるだもんな、、、
あと、最後にフランチェスコ王子が作りたがっている、魔道具を作る魔道具は北大陸との技術格差を逆転する一手になるかもな。。
その中心には善治郎が、、、
後宮で引きこもってられなくなっていくな。。
タイトル変えたら?w
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【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活11巻レビュー
考察・解説
善治郎の双王国再訪
『理想のヒモ生活10』における「善治郎の双王国再訪」は、妻アウラの出産に向けた治癒術士の確保という最大の目的を達成するとともに、魔道具の量産化や北大陸の脅威を見据えた双王国との複雑な外交戦の幕開けとなる重要なエピソードとして描かれている。
善治郎の双王国再訪について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 再訪の目的とビー玉(宝玉)の試作品持参
善治郎は、後宮用の涼を取る魔道具の購入や、フレア姫が望む航海用魔道具の購入交渉、そして治癒術士の派遣交渉のために再び双王国へ瞬間移動で向かう。
・アウラから両王への書状とともに、カープァ王国で試作されたビー玉(宝玉)を持参するよう託された。
・アウラは宝玉の量産化によるシャロワ王家との将来的な協力を視野に入れつつも、製造技術の流出だけは絶対に防ぐよう善治郎に厳命した。
・同時に、何らかの危険を感じた時には、他の全てを投げ捨ててでも身一つで帰ってこい、と身の安全を最優先するよう強く言い含めた。
2. ブルーノ王への「攻勢の情」のアピール
紫卵宮に到着した善治郎は、世話役のルクレツィアに対し、アウラからの書状のうちベネディクト法王宛てのものは自ら手渡しし、ブルーノ王宛てのものはルクレツィアに預けて間接的に渡すよう命じる。
・これはアウラの助言に従い、愛息カルロスを政争の道具にしようとしたブルーノ王たちへ、あえて利益度外視の不快感と敵意を示す攻勢の情のパフォーマンスであった。
・さらに、善治郎が側室候補であるフレア姫を双王国へ招きたいと伝えた。
・これにより、ライバルであるルクレツィアの闘志を強く刺激することになる。
3. フランチェスコ王子との価値観の相違
善治郎からビー玉の試作品を見せられたフランチェスコ王子は、形状の歪さから媒体としては不合格としつつも、完成が近いことに歓喜する。
・王子は自らが研究する「付与魔法の魔道具(魔道具を作製する魔道具)」を完成させるために、ビー玉を個人的に求めた。
・善治郎は、その魔道具が完成すれば魔道具が世界に爆発的に普及し、既存の価値観を根底から破壊すると予想した。
・しかし王子は、魔道具が広まればシャロワ王家の財政が悪化するから父や祖父に反対されている、としか捉えていなかった。
・これにより、二人の間に根本的な認識のズレが浮き彫りになった。
4. ベネディクト法王との謁見と最大の目的達成
善治郎はジルベール法王家の本拠地である聖白宮を訪れ、ベネディクト法王と謁見する。
・老獪なブルーノ王とは異なり、ベネディクト法王はアウラの書状を受け取ると、善治郎が求めていた治癒術士の派遣をあっさりと承諾した。
・規定の報酬と移動費の負担という極めて常識的な条件で、南大陸でも五指に入る治癒術士であるイザベッラ王女の長期派遣が決定した。
・これにより、善治郎はアウラの出産に備えるという双王国訪問の最大の目的を早々に達成することができた。
まとめ
善治郎の双王国再訪は、アウラの的確な助言のもとでブルーノ王への政治的牽制を行い、無事に治癒術士を確保するという大きな成果を上げた。一方で、宝玉の量産化や魔道具を作製する魔道具の存在が明らかになり、双王国の首脳陣が善治郎(およびカルロス)を取り込ようと画策し始めるなど、両国間の駆け引きがさらに一段階深く進行していく契機となっている。
治癒術士の派遣交渉
『理想のヒモ生活10』における「治癒術士の派遣交渉」は、妻アウラの出産に備えるという善治郎の双王国再訪における最大の目的であり、ジルベール法王家のベネディクト法王との間で非常にスムーズに決着したエピソードとして描かれている。
治癒術士の派遣交渉について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 派遣交渉の目的とアウラの健康維持
善治郎が双王国を訪れた最大の目的は、第二子を妊娠中の女王アウラのために、ジルベール法王家の治癒術士をカープァ王国へ長期派遣してもらうことであった。
・治癒魔法は妊婦の体調不良にも即座に対応できる反則的な力を持っている。
・治癒術士が側に控えていれば、アウラがある程度の無理もきくようになる。
・それにより、はるかにリラックスした生活を送れるようになると期待されたためである。
2. 聖白宮での謁見と書状の直接手渡し
善治郎はジルベール法王家の本拠地である聖白宮を訪れ、ベネディクト法王との謁見に臨んだ。
・善治郎はブルーノ王宛ての書状を世話役のルクレツィアに間接的に渡したのとは対照的に、ベネディクト法王宛てのアウラからの書状は自らの手で直接手渡した。
・これはブルーノ王への不快感を示す政治的なパフォーマンスである。
・同時に、法王への敬意と誠意を示す行動でもあった。
3. ベネディクト法王の承諾と常識的な条件
善治郎が治癒術士の派遣を切り出すと、ベネディクト法王はブルーノ王が迷惑をかけたことを詫びつつ、あっさりとその要請を承諾した。
・提示された条件も、派遣期間に応じた規定通りの報酬の支払いという内容であった。
・さらに、治癒術士や護衛、側仕えの移動費をカープァ王国側が負担するという、極めて常識的なものであった。
・無理難題を押し付けられるかもしれないと緊張していた善治郎は、この条件に即座に同意し、交渉は無事に成立する。
4. イザベッラ王女の任命と最大の目的達成
ベネディクト法王は、妊婦であるアウラへの配慮として、女性の治癒術士を派遣することを約束し、イザベッラ王女を指名した。
・イザベッラ王女はかつて善治郎が「森の祝福」を患った際に見舞ってくれた人物である。
・ジルベール法王家の中でも五指に入る優秀な治癒術士である。
・彼女の長期派遣が決定したことで、善治郎はアウラの安全を確保するという双王国訪問の最大の目的を早々に達成し、心からの感謝を述べた。
まとめ
『理想のヒモ生活10』における治癒術士の派遣交渉は、前巻での複雑な政治的駆け引きとは対照的に、ベネディクト法王の良識ある対応により極めて順調に進展した。愛する妻と生まれてくる子供を守るための任務を無事に完遂したことで、善治郎が夫としての役割をしっかりと果たしたことが示される重要なエピソードとなっている。
魔道具の買い付け
『理想のヒモ生活10』における「魔道具の買い付け」は、善治郎が妻アウラから頼まれた後宮用の備品調達と、フレア姫が大陸間航行の安全を確保するための交渉が交差する、重要な政治的駆け引きのエピソードとして描かれている。
魔道具の買い付けについて、以下の4つのポイントから解説する。
1. 善治郎とフレア姫の合同交渉と涼を取る魔道具の確保
善治郎の目的は、将来フレア姫が入る予定の後宮別棟に設置する「涼を取る魔道具」の購入であった。
・ジュゼッペ王太子との合同面談において、善治郎の希望はあっさりと了承される。
・ジュゼッペ王太子は代価としてカープァ王国で試作された宝玉(ビー玉)での支払いを求めた。
・善治郎はそれを検討すると返答した。
2. 難航するフレア姫の交渉とマルガリータ王女の助け船
一方、フレア姫は大陸間航海を支援する「真水化」「水操作」「風制御」などの魔道具を希望したが、双王国内での需要の高さや在庫不足を理由にジュゼッペ王太子から難色を示される。
・唯一可能性がある真水化もアニミーヤム公爵家が買い占めている状況であった。
・同席していたマルガリータ王女が、自分が新たに真水化の魔道具を作る代わりに現在の在庫をフレア姫に譲る、と提案する。
・マルガリータ王女は交換条件として、北大陸の優れた製鉄技術で作られたスカジの剣を要求した。
・善治郎の許可を得たフレア姫はこれに同意した。
3. 特例による貴族からの買い付け許可とシャロワ王家の誘導
ジュゼッペ王太子はさらに支援として、通常は禁じられている国内貴族が所有する魔道具の国外売買を特例として許可する書状を発行した。
・その書状をあえてルクレツィアを通じてフレア姫に渡させる。
・これにより、フレア姫をルクレツィアの養家であるブロイ侯爵家での交渉へと巧妙に誘導した。
・これはルクレツィアに実績を作らせ、彼女を善治郎の側室候補として後押しするためのシャロワ王家の思惑であった。
4. ブロイ侯爵家での交渉と国宝級魔道具である凪の海の譲渡
ブロイ侯爵邸を訪れたフレア姫は、風や水を完全に静めることができる魔道具「凪の海」を提示される。
・嵐や高波の被害を防ぐことができるこの魔道具は、航海において絶大な価値を持つものであった。
・ブロイ侯爵は代金を求めず、双王国からウップサーラ王国に対する友好の証としてこれを無償で譲渡すると申し出る。
・フレア姫は、これが一貴族の判断ではなくシャロワ王家主導の動きであることを察しつつ、その申し出を受け入れた。
まとめ
魔道具の買い付けは、善治郎が後宮の環境整備という夫としての役目を果たす一方で、北大陸の強大な技術力と将来的な脅威を見据えた双王国がウップサーラ王国との関係強化を急ぐ、国家間の思惑が強く反映されたエピソードである。双王国の周到な外交戦略によって優れた魔道具が譲渡され、結果としてフレア姫の航海の安全性が飛躍的に高まる展開となっている。
フレア姫の同行
『理想のヒモ生活10』における「フレア姫の同行」は、酷暑対策から始まった双王国への同行志願が、彼女を事実上のカープァ王家の一員として対外的に強く印象づける重要な政治的エピソードへと発展する様子が描かれている。
フレア姫の同行について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 救援要請から魔道具購入のための同行志願へ
フレア姫は酷暑に耐えかねて後宮への避難を要請するが、アウラは寝室の移動と善治郎による「涼を取る魔道具」の購入で対応する。
・体調を回復したフレア姫は、善治郎の双王国再訪に合わせて自らも同行したいと申し出た。
・その目的は、「黄金の木の葉号」による危険な大陸間航行を支援する「真水化」「水操作」「風制御」などの魔道具を購入することであった。
2. 将来の航海への決意と赤いドレスの贈呈
アウラは魔道具が買える保証はないと忠告するが、フレア姫は今回の航海に間に合わなくても予約だけは済ませたいと、側室入り後も航海を続ける強い決意を示す。
・これを受けたアウラは、双王国で善治郎のパートナーとなるフレア姫へ、カープァ王国の象徴色である「赤を基調としたドレス」を贈った。
・これは彼女をカープァ王家の一員として対外的に認める強いメッセージであり、フレア姫は大きな歓喜をもって受け入れた。
3. 双王国への瞬間移動と赤いドレスの衝撃
善治郎が事前に手配した通り、後日フレア姫と護衛の女戦士スカジは瞬間移動で双王国の紫卵宮へと到着する。
・そこでアウラ公認の赤いドレスを身にまとい、善治郎にエスコートされて現れたフレア姫の姿は、同じく側室入りを狙う世話役のルクレツィアに強い衝撃を与えた。
・これにより、事実上の側室候補としての確固たる立場を見せつけることになった。
4. 異例の世話役任命と双王国の思惑
双王国に到着したフレア姫の世話役には、ブルーノ王の直接の命により、名高い付与魔法使いであるマルガリータ王女が就くことになる。
・第一線の魔道具制作者である王族が他国の姫の世話係を務めるのは極めて異例な厚遇であった。
・これは双王国側が北大陸の技術先進国であるウップサーラ王国との関係構築を強く欲しているという、政治的な思惑の表れとなっていた。
まとめ
第10巻におけるフレア姫の双王国への同行は、彼女の目的遂行に向けた行動力の高さだけでなく、アウラの公認を得て善治郎のパートナーとしての立場を固める重要な転機となっている。また、北大陸の技術を警戒する双王国から異例の厚遇を引き出すなど、国家間の外交に大きな影響を与える出来事となった。
善治郎の公爵就任
『理想のヒモ生活10』における「善治郎の公爵就任」は、女王アウラの妊娠に伴う国政の体制変化に合わせて、善治郎が単なる「女王の名代」から一歩進み、独自の立場で公務に関わるための重要な政治的転機として描かれている。
善治郎の公爵就任について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 公爵就任の政治的背景と目的
双王国の四公令嬢の来訪などにより外交対応が増加する中、第二子を妊娠中の女王アウラは、政務の負担を軽減するために軍のトップである「元帥(プジョル将軍)」と政治のトップである「宰相(レガラド子爵)」を新設することを決定した。
・これによる王家の権力低下を防ぐため、善治郎に正式な公爵位を与える。
・彼が女王の名代としてだけでなく、独自の立場で公式な場に顔を出せるようにすることが就任の最大の目的である。
2. 「ビルボ公爵」の創設と役割
善治郎に与えられたのは「ビルボ公爵」という爵位である。
・これは領地や領民を持たない名誉だけの爵位であるが、王家に連なる分家王家の当主としての格式を持つことになる。
・善治郎本人は権力欲がなく、厄介事が増えただけ、と感じている。
・しかし、愛する妻の負担を減らすためにこの重責を引き受けた。
3. 独自の兵力と財源に対する善治郎の警戒
公爵就任に伴い、善治郎には王宮の一部が「ビルボ公爵邸」として与えられ、王家の予算から独自の財源が割り当てられることになる。
・さらに、専属の騎士約十名と兵士約百名を抱えることになった。
・しかし善治郎は、女王の伴侶が独自の兵力と財源を持つことの政治的な危険性を正しく理解している。
・アウラに対して、信頼することと盲信することは違う、と述べ、自らの資金や人員의 動きを厳格に監視・管理するよう求めた。
4. ナタリオの抜擢と騎士団の編成
善治郎は、自らの専属騎士のまとめ役として、気心の知れた直衛騎士であるナタリオ・マルドナドを指名した。
・マルドナド家は爵位を持たない騎士貴族であるため、配下に高位貴族の嫡男などがいると家格の問題でやりづらくなるという懸念があった。
・しかしアウラは、新たに雇う騎士の人選にナタリオの意見を十分に反映させることでその問題を解決した。
・さらに、補佐役兼見張り役として第二秘書のアレハンドロが付けられることになった。
まとめ
善治郎の公爵就任は、アウラの妊娠による国の体制変化(元帥・宰相の新設)に伴う王権の補強策である。名誉爵位とはいえ、独自の財源と兵力を持つ公爵家当主となることで、善治郎は「女王のヒモ」から一歩踏み出し、カープァ王国の国政においてより自立した立場で公務に関わっていく重要な転機となっている。
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【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活11巻レビュー
登場キャラクター
カープァ王国 王家・王宮
アウラ一世
カープァ王国の女王であり、善治郎の妻である。第二子を妊娠しており、夫と国を気遣う冷静な判断力を持つ。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国女王。
・物語内での具体的な行動や成果
フレア姫へ赤いドレスを贈り、カープァ王家の一員として公認した。自身の負担を減らすため、レガラド子爵を宰相に、プジョルを元帥に任命した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
双王国との将来的な交渉を見据え、善治郎の立ち回りを指導している。
善治郎・ビルボ・カープァ
現代日本から召喚されたカープァ王国の王配である。家族の安全を最優先に行動する。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国王配。ビルボ公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
双王国へ瞬間移動で赴き、イザベッラ王女の派遣を取り付けた。魔道具の購入交渉や、双王国首脳陣との会談を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正式にビルボ公爵に任命され、独自の財源と兵力を持つことになった。
カルロス・善吉・カープァ
アウラと善治郎の間に生まれた第一王子である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎に溺愛されており、後宮の寝室で抱かれてあやされている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ミシェル
カープァ王国の医師である。
・所属組織、地位や役職
宮廷医師。
・物語内での具体的な行動や成果
フレア姫の夏バテによる体調不良を診察した。アウラの妊娠の経過を順調と診断している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
レガラド子爵
歴史ある名家の出身である。能力が高く、プジョルとは距離を置いている。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国の宰相。
・物語内での具体的な行動や成果
アウラによって宰相に任命された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宰相に就任し、国政における実務を担うことになった。
ファビオ
アウラに仕える秘書官である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国の第一秘書。
・物語内での具体的な行動や成果
多忙を極めていると言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
アレハンドロ
カープァ王国の第二秘書である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国の第二秘書。
・物語内での具体的な行動や成果
新たに設立されたビルボ公爵騎士団の補佐役兼見張り役として付けられることになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
エスピリディオン
カープァ王国の宮廷筆頭魔法使いである。希代の大魔法使いとして知られる。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国宮廷筆頭魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
フィクリヤが対談と研究成果の確認を求めている相手として名前が挙がっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
パスクアラ
エスピリディオンの妻である。優れた魔法使いとして言及される。
・所属組織、地位や役職
魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
具体的な行動の記述はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
マルケス伯爵
カープァ王国の地方領主貴族である。
・所属組織、地位や役職
マルケス伯爵家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
ミレーラの養父として彼女を本家で育てたことが語られている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ガジール辺境伯
カープァ王国の地方領主貴族である。ニルダの父親に当たる。
・所属組織、地位や役職
ガジール辺境伯。
・物語内での具体的な行動や成果
具体的な行動の記述はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
カープァ王国軍
プジョル・ギジェン
カープァ王国軍の将軍である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国軍元帥。
・物語内での具体的な行動や成果
アウラによって元帥に任命された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将軍から元帥へ昇進し、軍の全権代理人となった。
エラディオ
カープァ王国軍の若い部隊長である。
・所属組織、地位や役職
竜弓騎士団第三大隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
双王国へ到着した善治郎を出迎えた。善治郎から護衛部隊の駐在期間延長の書状を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
後宮の侍女・護衛・王宮関係者
カサンドラ
カルロス王子の乳母である。
・所属組織、地位や役職
カルロス王子の乳母。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎にカルロスを寝台へ戻すよう促した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
イネス
後宮の清掃担当責任者である。善治郎の秘書的な役割を果たす。
・所属組織、地位や役職
後宮清掃担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の双王国訪問に同行し、来訪者の予定管理や情報収集を行った。最後に瞬間移動でカープァ王国へ帰還した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
アマンダ
後宮の侍女長である。規律に厳しい性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮侍女長。
・物語内での具体的な行動や成果
後宮での作業員受け入れについて侍女たちへ注意を与えた。問題児三人組に水くみの罰を命じ、蒸気風呂で倒れたフェーを看病した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ナタリオ・マルドナド
王軍の騎士であり、善治郎の直衛騎士を務める。
・所属組織、地位や役職
善治郎の護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
双王国に同行し、善治郎の護衛を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
新たに設立されるビルボ公爵騎士団のまとめ役に推薦された。
マルグレーテ
金髪の侍女である。
・所属組織、地位や役職
アウラ付きの侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
北大陸へ調査役として送り込まれる方針がアウラによって決定された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
フェー
問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
水風呂の水くみ作業を命じられた。アイスクリームを賭けた我慢大会で蒸気風呂に留まり、意識を失って倒れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ドロレス
問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。冷静な判断力を持つ。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
水くみ作業に従事した。蒸気風呂の我慢大会において最初に限界を認め、脱落した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
レテ
問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。食べ物に執着がある。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
水くみ作業で疲労困憊した。我慢大会でフェーと共に最後まで蒸気風呂に残り続けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ルイサ
黒髪黒眼の後輩侍女である。真面目な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
訓練の経験があるため、蒸気風呂の暑さに耐え、比較的平然としていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ミレーラ
上級貴族の家系出身の侍女である。礼法に優れる。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
蒸気風呂の暑さに苦しみ、息も絶え絶えになっていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ニルダ・ガジール
ガジール辺境伯の次女である。人徳があり、無邪気な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
蒸気風呂の暑さを楽しみ、限界を感じると真っ先に水風呂へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ミラグロス
糸目が特徴的な後輩侍女である。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
我慢大会中のフェーたちの異様な雰囲気に戸惑い、退出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
マノラ
小柄な後輩侍女である。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
ミラグロスと共に蒸気風呂から退出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
モニカ
美味しいもの好きの後輩侍女である。
・所属組織、地位や役職
後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
ミラグロスらと一緒に蒸気風呂の部屋から出て行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
老職人
王室付きの土木職人である。知識と技術が豊富である。
・所属組織、地位や役職
後宮蒸気風呂建設の総責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
後宮の給排水設備の仕組みを説明した。侍女を見て騒いだ若い職人たちを一喝し、拳骨を落とした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
シャロワ・ジルベール双王国
ブルーノ三世
シャロワ・ジルベール双王国の国王である。老獪な政治家としての顔を持つ。
・所属組織、地位や役職
シャロワ・ジルベール双王国の国王。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎との昼食会で関係改善を試みた。将来的に自らカープァ王国へ赴く可能性を考慮している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ジュゼッペに王位を譲ることが予定されている。
ジュゼッペ
双王国の王太子である。双王国の長期的な国力向上を目指す。
・所属組織、地位や役職
双王国第一王子。王太子。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎やフレア姫との魔道具購入交渉に応じた。ルクレツィアの実績作りのため、意図的に彼女へ許可証を運ばせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
近日中に王位を継承する予定である。
フランチェスコ
シャロワ王家の王子である。自由奔放な性格をしている。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の王子。付与魔法の使い手。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎が持ち込んだ宝玉の試作品を評価した。「魔道具を作製する魔道具」の開発を進めており、個人的な宝玉の購入を打診した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ボナ
シャロワ王家の王女である。真面目な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の王女。
・物語内での具体的な行動や成果
マルガリータ王女から付与魔法の指導を受けた。善治郎の瞬間移動でカープァ王国へ帰還した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
フィリベルト
シャロワ王家の第二王子である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
ルクレツィアとマルガリータ王女の実の父親として言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ヨランダ
フィリベルトの正妻である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の王族。
・物語内での具体的な行動や成果
ルクレツィアとマルガリータ王女の実の母親として言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
マルガリータ・シャロワ
シャロワ王家の王女である。高名な魔道具制作者として知られる。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の王女。フレア姫および善治郎の世話役。
・物語内での具体的な行動や成果
自身が『真水化』の魔道具を作る代わりに、スカジの剣を譲るよう提案した。善治郎の帰国前に護身用の『風の鉄槌』を贈った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ヴェットール
ジュゼッペの次男である。活発で聡明な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の王子。
・物語内での具体的な行動や成果
送別夜会で善治郎と交流し、船旅への憧れを語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ラルゴ
シャロワ王家の王子である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ王家の王子。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎と比較的良好な関係を築いており、善治郎が怒っている原因を調査し報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ベネディクト一世
ジルベール法王家の法王である。穏やかな態度で接する。
・所属組織、地位や役職
ジルベール法王家法王。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎との謁見で治癒術士の派遣を承諾し、イザベッラ王女を任命した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
イザベッラ・ジルベール
ジルベール法王家の王女である。双王国でも優秀な治癒術士である。
・所属組織、地位や役職
ジルベール法王家王女。治癒術士。
・物語内での具体的な行動や成果
アウラの健康管理のため、カープァ王国へ派遣されて診察を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ルクレツィア・ブロイ
ブロイ侯爵家の養女である。血縁上はシャロワ王家の王女であり、王族への復籍を望んでいる。
・所属組織、地位や役職
ブロイ侯爵家の養女。善治郎の世話役。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の側室入りを目指し、フレア姫と接触を図った。『凪の海』の輸送責任者としてカープァ王国へ向かうことが決定した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ルキーノ
ブロイ侯爵家の当主である。温和な紳士の態度を持つ。
・所属組織、地位や役職
ブロイ侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
フレア姫と交渉し、家宝として預かっていた『凪の海』を無償で譲渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
フローラ
ルクレツィアの侍女である。主に対して現実的な助言を行う。
・所属組織、地位や役職
ルクレツィアの侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
ルクレツィアの側室入り計画について助言し、カープァ王国への同行も覚悟した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
タラーイェ
エレメンタカト公爵家の令嬢である。商売を重視する性格である。
・所属組織、地位や役職
エレメンタカト公爵家の令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
金鉱山の安全確保のため『空間遮断結界』の魔道具を求め、カープァ王国へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
フィクリヤ
アニミーヤム公爵家の令嬢である。魔法語の研究に情熱を注ぐ。
・所属組織、地位や役職
アニミーヤム公爵家の令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
賢者エスピリディオンとの面会を求め、自らの研究資料を持参してカープァ王国へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
モレノ・ミリテッロ
双王国の外交官である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国駐在外交官。騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
シャロワ王家にとって貴重な駒であると言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ピサーニ侯爵夫人
ヴェットール王子の乳母である。
・所属組織、地位や役職
ヴェットール王子の乳母。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴェットール王子の活発な言動をやんわりとたしなめた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ウップサーラ王国・『黄金の木の葉号』
フレア・ウップサーラ
ウップサーラ王国の第一王女である。決断力があり、自ら交渉に臨む。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国第一王女。
・物語内での具体的な行動や成果
航海支援の魔道具を求めて双王国へ向かい、『真水化』や『凪の海』を獲得した。善治郎から将来の航海を認められた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アウラから赤いドレスを贈られ、カープァ王家の一員として公認された。
ヴィクトリア・クロンクヴィスト
通称スカジと呼ばれるフレア姫の護衛である。大柄で忠誠心が強い。
・所属組織、地位や役職
フレア姫の護衛。女戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
フレア姫と共に双王国へ同行した。『凪の海』の効果を自ら試し、マルガリータ王女と剣を交換した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ニコライ
ウップサーラ王国の船員である。
・所属組織、地位や役職
『黄金の木の葉号』の船員。
・物語内での具体的な行動や成果
山羊の飼育を担当し、乳製品作りに貢献していると善治郎から言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
地位に関する大きな変化の記述はない。
ヒモ生活9巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
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展開まとめ
プロローグ 愛息との時間
善吉との再会
善治郎はカルロス・善吉を抱き上げ、愛情いっぱいにあやしていた。言霊による自動翻訳の影響で、善吉が母国語を正しく覚えられるよう配慮していたため、善治郎が南大陸西方語で話せる言葉は、パパだよと大きくなったなあの二つだけであった。
善治郎はその限られた言葉を繰り返しながら息子への愛情を注いだ。しかし暑さの中で長時間抱かれていた善吉は次第に機嫌を崩し始め、乳母のカサンドラに促された善治郎は善吉を寝台へ戻し、後を託して部屋を後にした。
暑さから逃れて寝室へ戻る
善治郎は酷暑期の熱気に辟易しながら後宮を歩き、リビングを抜けて寝室へ向かった。
エアコンが稼働する寝室へ入ると、善治郎は涼しい空気に安堵した。そこで書類仕事をしていたアウラは善治郎を労い、カルロスの様子を尋ねた。
善治郎は少し抱っこしただけで嫌がられたと話したが、実際には長時間抱き続けていたことをアウラは理解していた。アウラは苦笑しながらも、今は体調管理を優先してカルロスの世話に同席しなかった判断は正しかったと語った。
第二子の順調な成長
善治郎はアウラの腹に手を添え、第二子の様子を尋ねた。
アウラはミシェル医師から極めて順調だと言われていることを明かし、悪阻も軽いためかえって不安になると語った。
善治郎は双王国から治癒術士を招く計画を説明し、治癒魔法によって出産までをより安心して過ごせるようになると話した。アウラもその言葉を喜んだ。
妊娠中の酒への未練
治癒術士の話から、アウラは解毒魔法を利用すれば酒を飲めるのではないかと思いついた。
しかし善治郎はその考えをたしなめ、最終的にはミシェル医師に判断を委ねることになった。アウラは不満そうな様子を見せたが、医師が許可するはずがないことも理解していた。
アウラは今回の妊娠では悪阻や味覚の変化が少なく、以前よりも酒を断つ苦しさを感じていると打ち明けた。一方で、エアコンのある環境のおかげで食欲は維持できており、大きな問題にはなっていないとも語った。
新しい食べ物の提案
酒の代わりに美味しいものを楽しもうという話になり、アウラは善治郎へ新しい料理について尋ねた。
善治郎は山羊乳から作られた生クリームやバター、フレッシュチーズなどを紹介した。しかしアウラは味覚の問題ではなく、本能的な忌避感から乳製品を受け入れられないと答えた。
家畜の乳を利用する文化がない南大陸の人間にとって、その反応は自然なものであった。善治郎は残念に思いながらも無理に勧めることはしなかった。
かき氷と酒への執着
新しい料理が難しいため、アウラは暑い日のかき氷が欲しくなると語った。
善治郎が味付けについて尋ねると、アウラは平然とブランデーやウィスキーが好きだと答え、まだ残っている善治郎の酒を使いたいとほのめかした。
しかし妊娠中にもかかわらず酒への未練を見せるアウラに対し、善治郎は再び厳しく注意したのであった。
第一章 フレア姫の危機
フレア姫からの救援要請
善治郎が双王国行きの日程調整を進めていた頃、アウラはフレア姫から救援要請が届いたことを伝えた。氷の提供によって一時的に体調を回復したフレア姫は、後宮内に氷を作れる場所が存在すると知り、その場所へ避難させてほしいと願い出ていたのである。
善治郎は後宮への受け入れを考えたが、アウラは他国の王女を後宮へ入れることは問題が大きすぎるとして否定した。
暑さ対策の提案
アウラは代案として二つの対策を示した。
一つ目は、フレア姫の居室を後宮近くの狭い部屋へ移し、氷を効率的に運び込めるようにすることであった。フレア姫は深刻な夏バテ状態にあり、最悪の場合は命に関わる可能性もあると医師から報告されていたため、善治郎もこの案に同意した。
二つ目は、双王国で作られている涼を取る魔道具を購入することであった。善治郎は紫卵宮でその効果を体験しており、双王国へ向かう際に購入を引き受けた。
魔道具購入の準備
善治郎は、これほど便利な魔道具がなぜカープァ王国で普及していないのか疑問に思った。
アウラは、魔道具が非常に高価であり、カープァ王国の人々は酷暑を日常として受け入れているため、多くの者が我慢を選ぶのだと説明した。また、購入する魔道具はフレア姫個人のためではなく、将来フレア姫が入る予定の後宮別棟の備品として扱うつもりだと明かした。
善治郎はその説明に納得し、購入を引き受けた。
フレア姫との面会
居室を移して数日後、善治郎とアウラはフレア姫の部屋へ招かれた。
氷によって冷やされた部屋で、フレア姫は体調が回復したことを報告し、氷を提供してくれたことへの感謝を伝えた。そして本題として、善治郎が双王国へ向かう際、自分も同行したいと申し出た。
航海用魔道具への願い
善治郎は涼を取る魔道具が目的だと思ったが、フレア姫の望みはそれだけではなかった。
フレア姫は『黄金の木の葉号』の航海を支援するため、『真水化』『水操作』『風制御』などの魔道具を求めていた。大陸間航海には多くの危険が伴うため、航海の安全性を高めたいのである。
アウラは事情を理解し、双王国へ事前に許可を求めるよう善治郎へ命じた。善治郎も了承し、正式な返答を得てから対応することになった。
将来の航海への決意
アウラは双王国訪問自体は認められる可能性が高いと説明したが、魔道具の購入が保証されるわけではないとも告げた。
それでもフレア姫は、今回の航海に間に合わなくても予約だけは済ませたいと語った。その言葉は、将来善治郎の側室となった後も航海を続ける意思を示すものであった。
善治郎はその考えを支持し、フレア姫は喜びをあらわにした。
赤いドレスの贈り物
双王国訪問の話がまとまると、アウラはフレア姫へ赤を基調としたドレスを贈る予定だと明かした。
赤はカープァ王国の象徴色であり、そのドレスを着て善治郎と共に公の場へ出ることは、フレア姫をカープァ王家の一員として認める意味を持っていた。
フレア姫は感激し、その期待に応えられるよう振る舞うと約束した。
アウラの厚意への喜び
善治郎とアウラが帰った後も、フレア姫は興奮を抑えられなかった。
スカジも、今回のドレスはアウラからの歓迎の意思表示であると説明した。フレア姫はその厚意を素直に受け取ることにし、赤いドレスに合わせる装身具について相談を始めた。
魔道具獲得への展望
話題は再び双王国での魔道具購入へ移った。
フレア姫は特に『真水化』の魔道具を帰路の航海に間に合わせたいと考えていた。スカジは、砂漠の国である双王国には水関連の魔道具が存在する可能性が高いと指摘し、交渉次第では入手できるかもしれないと述べた。
その後の航海用の魔道具についても話し合いながら、フレア姫は善治郎から将来の航海を認められたことを改めて喜び、自分たちの冒険はまだ続くのだと宣言した。
スカジはその決意を受け止め、どこまでも付き従うことを誓ったのであった。
双王国への再訪準備
数日後、善治郎は双王国へ向かうため後宮のリビングルームで出発の準備を整えていた。背負ったリュックサックには大量の大判銀貨が詰められており、アウラからはブルーノ王とベネディクト法王宛ての書状を託された。
さらにアウラは、国産化に成功した試作品の宝玉を善治郎へ渡し、双王国でフランチェスコ王子に評価を求めるよう依頼した。
宝玉とシャロワ王家の協力構想
善治郎は、試作品を双王国へ持ち込めばシャロワ王家にも存在が知られることになると懸念した。
しかしアウラは、宝玉を付与魔法の媒体として活用する以上、将来的にシャロワ王家との協力は避けられないと説明した。付与魔法の技術と人材を持つシャロワ王家と、宝玉の量産技術を持つカープァ王家が協力することが最も効率的だと考えていたのである。
一方で、宝玉製造技術の流出だけは絶対に避けなければならないと強く警告し、善治郎に対しても製法については何を聞かれても知らぬ存ぜぬを貫くよう命じた。善治郎はその重要性を理解し、真剣に了承した。
アウラとの別れと瞬間移動
出発の時が訪れると、アウラは善治郎に身の安全を最優先するよう改めて言い聞かせた。治癒術士派遣や外交交渉よりも善治郎自身の命が重要であり、危険を感じた場合は全てを捨てて帰還するよう命じたのである。
善治郎はそれを受け入れ、自らの力で瞬間移動を発動した。四度目の詠唱で転移は成功し、善治郎は双王国へ姿を消した。
残されたアウラは安堵しながらも、かつて瞬間移動で戦場へ向かい帰らなかった多くの親族を思い出した。しかし感傷を振り払い、元帥と宰相の就任式に向けた準備へと向かっていった。
双王国への到着
善治郎は紫卵宮に無事到着し、竜弓騎士団第三大隊長エラディオをはじめとする面々に出迎えられた。
案内された客間で一息ついた善治郎は、侍女イネスからエレメンタカト公爵家のタラーイェとアニミーヤム公爵家のフィクリヤが面会を希望していることを知らされた。善治郎は面会を了承したが、法王との会談後に予定を組むよう指示した。
ルクレツィアとの再会
続いて世話役のルクレツィアが訪問した。
善治郎はまずアウラからブルーノ王へ宛てた書状を託し、ベネディクト法王宛ての書状は自ら手渡す予定であると告げた。その対応から、善治郎がブルーノ王に対して強い不快感を抱いていることが周囲にも伝わった。
善治郎はアウラから受けた助言を思い出し、カルロス・善吉を政争の材料にされたことへの怒りを意識的に表へ出していた。
フレア姫訪問の準備
善治郎はさらに、カープァ王国に滞在中のフレア姫を双王国へ招きたいと申し出た。
ルクレツィアは善治郎が保証人となるなら入国許可は問題ないと答えたが、魔道具購入については保証できないと説明した。それでも善治郎は交渉の場を整えてほしいと依頼した。
招かれる客人が北大陸ウップサーラ王国の王女フレアであると知ったルクレツィアは、表面上は平静を保ちながらも、見ぬ相手に対して競争心を燃やしていた。
フランチェスコ王子の来訪
その後、フランチェスコ王子が善治郎を訪ねてきた。
フランチェスコ王子は相変わらず自由奔放な態度で、双王国では説教ばかり受けるため早くカープァ王国へ行きたいと愚痴をこぼした。
雑談の後、善治郎はアウラから預かった宝玉の箱を差し出し、評価を求めた。
宝玉への評価
宝玉を見たフランチェスコ王子は大きな驚きと歓喜を示した。
それが善治郎の私物ではなくアウラのものであると確認したことで、カープァ王国が宝玉の自国生産に成功しつつあることを理解したのである。
しかし評価としては厳しく、透明度よりも球体としての形状が重要であり、今回の四粒は全て媒体としては不合格だと判断した。ただし一粒は完成にかなり近いと評価した。
付与魔法の魔道具計画
周囲に聞こえない環境を作った後、フランチェスコ王子は完成した宝玉を個人的に購入したいと申し出た。
善治郎が理由を尋ねると、フランチェスコ王子は現在禁止されている魔道具研究を進めるためだと打ち明けた。そして自分が開発したいのは、付与魔法そのものを魔道具化した装置であると明かした。
その魔道具は、特定の魔道具を誰でも作れるようにするものであった。
価値観の相違
善治郎は、それが完成すれば世界中へ魔道具が爆発的に広がり、双王国が圧倒的な影響力を持つと考えた。
しかしフランチェスコ王子は逆に、魔道具が広まれば王家の独占利益が失われるため、父や祖父から反対されているのだと説明した。
二人は同じ事実を見ながら全く異なる未来像を描いていることに気づいた。善治郎は危険な発想をこれ以上語ることを避け、話をはぐらかした。
その一方で、この問題については帰国後にアウラと改めて相談する必要があると強く認識したのであった。
第二章 聖白宮の契約
聖白宮での謁見
善治郎は双王国到着から三日後、ジルベール法王家の王宮である聖白宮を訪れた。白を基調とした北大陸風の建築の中を進み、謁見の間でベネディクト法王と対面した。
ベネディクト法王は穏やかな態度で善治郎を歓迎し、ブルーノ王のように客人を困らせるつもりはないと冗談を交えて語った。善治郎はアウラから託された書状を渡し、ベネディクト法王は内容を確認すると、正式な返答は後日書面で送ると約束した。また、アウラの身を案じていることも伝えてほしいと頼んだ。
治癒術士派遣の承諾
雑談の後、ベネディクト法王は本題に入り、アウラのために治癒術士を派遣してほしいという要望について確認した。
善治郎が改めて依頼すると、ベネディクト法王はブルーノ王から事情を聞いているとして、あっさりと派遣を承諾した。報酬は規定通り支払うこと、治癒術士や随員の移動はカープァ王国側が負担することを条件として提示したが、それは善治郎にとって受け入れやすい内容であった。
さらに派遣する治癒術士は女性にすると説明し、善治郎はその配慮に感謝した。
イザベッラ王女の任命
ベネディクト法王はイザベッラ王女を呼び出し、カープァ王国へ赴いてアウラの健康維持に努めるよう命じた。
イザベッラ王女は命令を受け入れ、善治郎へ挨拶した。善治郎は、かつて自身が森の祝福を患った際に見舞いを受けた記憶を思い出しながら応じた。
イザベッラ王女は治癒術士として高い評価を受けており、善治郎は彼女が派遣されることを心強く感じた。そしてベネディクト法王とイザベッラ王女に心から感謝を伝えた。
ブルーノ王とジュゼッペ王太子の協議
同じ日の夜、紫卵宮ではブルーノ王とジュゼッペ王太子がアウラから届いた書状について協議していた。
書状には、今後の国外訪問は善治郎が担当すること、善治郎の国外での発言は基本的にアウラが承認したものと見なすこと、そしてアウラと直接交渉したいならカープァ王国駐在外交官の権限を強化するか交代させてほしいことが記されていた。
二人は、この書状と善治郎の態度から、善治郎がブルーノ王に不快感を抱いているだけでなく、その行動をアウラが認めていると理解した。
善治郎との関係悪化への懸念
ブルーノ王とジュゼッペ王太子は、瞬間移動を使える善治郎が今後のカープァ王国との重要な窓口になると認識していた。しかし当の善治郎は二人に対して隔意を示している。
一方でラルゴ王子には比較的好意的であり、このままではカープァ王国との交渉窓口がラルゴ王子になってしまう可能性が高かった。それは二人にとって望ましい状況ではなかった。
また、アウラと直接交渉するにはジルベール法王家側の外交官を介さなければならず、これもシャロワ王家にとって都合の良い話ではなかった。
宝玉量産を巡る危機感
協議の場では、フランチェスコ王子経由で入手した試作品の宝玉も話題となった。
二人は現状の宝玉がまだ実用品ではないと認識しながらも、完成が近づいていることを理解していた。宝玉が量産されれば付与魔法の媒体を安定して確保できるようになり、その価値は計り知れないものになる。
製造技術の入手も望ましいが、無理に動けばカープァ王国との関係が破綻するため、まずは貿易関係を強化して宝玉を継続的に購入できる体制を築くべきだと考えた。
アウラの狙いの分析
ブルーノ王とジュゼッペ王太子は、アウラが二つの交渉ルートを提示していると分析した。
一つは善治郎を窓口とする方法、もう一つは権限を持つ外交官を通じてアウラと直接交渉する方法である。しかし前者ではラルゴ王子が、後者ではジルベール法王家が関与することになり、どちらもシャロワ王家にとって好ましくなかった。
そのため二人は、善治郎との関係を修復し、ラルゴ王子やジルベール法王家を介さず直接交渉することが最善だと結論づけた。
さらに、ビー玉の価値を最大限に活かすには付与魔法を持つシャロワ王家との協力が不可欠であり、アウラもその交渉を望んでいると判断した。そして、善治郎の立場を強化しながら交渉を進めようとする意図も読み取った。
善治郎の怒りの調査決定
二人は善治郎が本当に怒っているのか、それとも外交上の駆け引きとして怒りを演出しているのかを見極める必要があると考えた。
また、仮に善治郎個人の感情が原因であったとしても、その感情表現を許可したのはアウラであり、背後には利益計算が存在すると判断した。
最終的にブルーノ王とジュゼッペ王太子は、フランチェスコ王子、ボナ王女、ラルゴ王子、ルクレツィアら善治郎と近しい者たちから話を聞き、善治郎の感情や考えを詳しく調査する方針を決定した。
フレア姫来訪の準備
数日後、善治郎は紫卵宮の別棟でフレア姫の到着を待っていた。フレア姫の入国許可が下りたため、善治郎は事前に手紙を送っており、その返答としてアウラとフレア姫からの手紙が届けられていた。
本日はフレア姫と側近の女戦士スカジが『瞬間移動』で到着する予定であり、善治郎はルクレツィアの案内で転移用の部屋へ向かった。ルクレツィアは善治郎の側室候補であるフレア姫への対抗心と好奇心を抱いており、緊張した様子を見せていた。
スカジとフレア姫の到着
転移の時刻になると、最初にスカジが姿を現した。スカジは反射的に警戒態勢を取ったが、周囲を確認するとすぐに落ち着き、善治郎へ挨拶した。
続いてフレア姫が到着した。善治郎は笑顔で手を差し伸べて迎え、フレア姫も嬉しそうに応じた。
ルクレツィアはフレア姫を歓迎したが、フレア姫がカープァ王国の象徴色である赤いドレスをまとい、善治郎にエスコートされる姿に強い衝撃を受けていた。
赤いドレスが示す立場
ルクレツィアはフレア姫に、その赤いドレスがアウラの許可を得たものなのか尋ねた。
フレア姫は、ドレスそのものがアウラから贈られたものであり、善治郎のパートナーとして相応しい衣装として与えられたと説明した。
それを聞いたルクレツィアは、フレア姫が事実上善治郎の側室として扱われていることを改めて認識した。そしてフレア姫と末永く仲良くしたいと申し出たが、フレア姫はそれを善治郎の判断に委ねる姿勢を見せた。
善治郎はルクレツィアの意図を察しながらも、話題を変えようとしていた。
マルガリータ王女の登場
そこへフレア姫の世話係が到着したとの知らせが入り、部屋に通されたのはマルガリータ王女だった。
善治郎は彼女の登場に驚いた。マルガリータ王女はブルーノ王の命令でフレア姫の世話役を務めることになったと説明した。
マルガリータ王女は、フランチェスコ王子と並ぶほどの高名な魔道具制作者であり、そのような人物が世話役を務めることは異例であった。
ルクレツィアは突然の登場に動揺し、思わずマルガリータを姉様と呼んでしまった。その後慌てて言い直したが、善治郎はその反応に強い違和感を覚えた。
マルガリータ王女の技術者気質
話題は魔道具制作と治癒術士へ移った。
マルガリータ王女は優秀な治癒術士への敬意を隠さず、自身もたびたび治癒術士の世話になっていると語った。武器や防具の魔道具制作に打ち込むあまり、視力や内臓を傷めたり怪我を負ったりしており、その治療費が大きな負担になっていることも明かされた。
善治郎はその様子から、マルガリータ王女もフランチェスコ王子やボナ王女と同じく、本質的には技術者気質の人物だと感じていた。
フレア姫の滞在先決定
マルガリータ王女は、準備の都合でフレア姫の部屋が善治郎とは別棟になると説明した。
善治郎とフレア姫はそれを受け入れ、フレア姫は世話係の案内で部屋へ向かうことになった。
ルクレツィアとマルガリータの関係調査
フレア姫を送り届けた後、善治郎は部屋に戻り、イネスへルクレツィアとマルガリータ王女の関係を調べるよう命じた。
ルクレツィアがマルガリータ王女を見た際の態度が不自然だったためである。
その後、善治郎はマルガリータ王女が世話役を務める理由について尋ねた。イネスは、マルガリータ王女は有名な魔道具制作者ではあるものの、女性で既婚者であり、王位継承権も低いため、王族の中では比較的自由な立場にあると説明した。
善治郎はそれを聞き、異例ではあるが不自然な人選ではないと理解した。
帰国計画の再検討
善治郎は帰国に向けた人員整理を始めた。
フランチェスコ王子、ボナ王女、フレア姫、スカジ、イザベッラ王女とその側近達、侍女達や騎士など、多くの人物を『瞬間移動』で送り届ける必要があり、自身が最後に帰国しなければならない状況だった。
そのため善治郎は途中で一度帰国する案を口にし、イネスも受け入れ態勢の確認という意味で有効だと賛同した。
タラーイェとフィクリヤの依頼
翌日、善治郎はエレメンタカト公爵家のタラーイェとアニミーヤム公爵家のフィクリヤに面会した。
二人は善治郎の『瞬間移動』でカープァ王国へ行きたいと依頼した。
タラーイェは金鉱山の安全確保に必要な『空間遮断結界』の魔道具を求めており、その交渉のためにカープァ王国へ渡りたいと説明した。
善治郎は協力しないことを前提に認めたが、交渉の成功は保証しないと釘を刺した。それでもタラーイェは自信を見せた。
フィクリヤの研究目的
続いてフィクリヤは、自身が魔法語の研究者であり、研究が行き詰まっているため、賢者エスピリディオンの知恵を借りたいと説明した。
そのために自らの研究成果をまとめた資料を持参し、エスピリディオンへ渡してほしいと善治郎へ託した。
善治郎は資料を預かり、協力を約束したが、面会や成果を保証することはできないと念を押した。
それでもフィクリヤは、国外へ出る経験自体に価値があるとして希望を撤回しなかった。
増え続ける転移希望者への対応
善治郎はタラーイェ、フィクリヤ、人足一名の計三名を転移候補として受け入れることにした。
面会後、善治郎は予定が大きく変わったことを認識し、一度帰国してアウラへ直接説明する必要があると判断した。
イネスも同意し、善治郎は今後の転移計画を整理した。さらに、これ以上の飛び込み依頼は断る方針を決めた。
『瞬間移動』の便利さゆえに希望者が際限なく現れることを理解した善治郎は、自分の予定を優先する決意を固めた。
その上で、涼を取る魔道具の購入とフレア姫の魔道具買い付け交渉を効率よく進めるため、双方の用件をまとめて処理する方針を定め、イネスへ手配を指示した。
幕間 ルクレツィアの決意
ルクレツィアの焦りと危機感
タラーイェとフィクリヤがカープァ王国へ向かうことになったと知り、ルクレツィアは大きな焦りを覚えていた。自室へ戻った彼女は、自分が完全に出遅れたと嘆きながら、善治郎に近づこうとする二人への対抗心をあらわにした。
侍女フローラは、二人の目的は商談や研究であり、善治郎を巡る争いだと考えるのは思い込みではないかと指摘した。しかしルクレツィアは、善治郎が王配であり時空魔法の使い手である以上、タラーイェやフィクリヤ本人だけでなく、その背後にいる公爵家も善治郎に関心を持たないはずがないと主張した。
限られた時間への焦燥
身支度を整えられながら、ルクレツィアは善治郎の今後の予定がすでに決まってしまったことに危機感を抱いていた。
善治郎の再度の一時帰国と最終帰国の日程が決まり、残された時間は二十日ほどしかない。その短期間で善治郎の心を射止めるのは難しいと認めながらも、ルクレツィアは諦めなかった。
カープァ王国行きの決意
ルクレツィアは善治郎と共にいる機会を増やすため、自らもカープァ王国へ向かうことを決意した。
フローラは、善治郎の転移計画には空きがなく、自分達が『瞬間移動』を受ける余地はないと現実を示した。しかしルクレツィアは、活動期になれば陸路で交代要員や公爵家の人員がカープァ王国へ向かうため、自分達もその一団に加わればよいと考えていた。
善治郎への恋愛感情はまだ存在しなかったが、側室入りを目指す意志そのものは本物であり、そのためなら長い陸路の旅も厭わない覚悟を固めていた。
フレア姫との関係構築を模索
フローラは、現時点のルクレツィアにはカープァ王国へ向かう理由がないと指摘した。
それに対しルクレツィアは、フレア姫と友人になれば、その友人を訪ねるという名目でカープァ王国へ行けると考えていた。しかしフローラは、フレア姫にとってルクレツィアの側室入りを手助けする理由は存在しないと冷静に指摘した。
その言葉に言い返せなくなったルクレツィアだったが、フローラは続けて、近く予定されている魔道具購入の交渉の場でフレア姫と距離を縮める機会があると助言した。
その助言を受けたルクレツィアは、フレア姫の要望に応えながら親しくなろうと決意し、再び意欲を取り戻した。
マルガリータ王女への複雑な感情
しかしフローラは、その交渉の場にはフレア姫の世話係であるマルガリータ王女も同席する可能性が高いと付け加えた。
その名前を聞いた瞬間、ルクレツィアの表情は凍り付いた。
マルガリータ王女はルクレツィアと同じ両親を持つ実姉であり、王家でも指折りの付与魔法の使い手として高い評価を受けていた。一方のルクレツィアは、その才能を開花させることができなかった。
ルクレツィアは私的には姉として慕っていたが、自分が人生を懸けて求める地位を、生まれ持った才能によって当然のように手にしている存在として複雑な感情も抱いていた。
それでもルクレツィアは、自分に言い聞かせるように必ずやり遂げると決意し、強く唇を噛み締めた。
第三章 複雑な交渉
魔道具購入交渉の開始
善治郎は数日間、意外にも余裕のある日々を過ごしていた。毎日一人ずつイザベッラ王女の側近を『瞬間移動』でカープァ王国へ送り続けていたが、それ自体は短時間で終わる作業であり、それ以外の時間は自由に使えた。
そんな中、善治郎はフレア姫と共に魔道具購入の交渉に赴いた。交渉の席には善治郎とフレア姫、その世話役であるルクレツィアとマルガリータ王女、そして対面にはジュゼッペ王太子が座っていた。
善治郎は、自身との関係が悪化しているにもかかわらずジュゼッペ王太子が直接対応したことに驚きつつも、交渉に臨んだ。
善治郎の要望と涼を取る魔道具の取引
善治郎は酷暑期の暑さを和らげる魔道具を希望し、フレア姫は大陸間航海を支援する魔道具を求めていると説明した。
それを聞いたジュゼッペ王太子は、善治郎の希望については問題なく対応可能だと答えた。ただし、双王国で大きな効果を発揮する涼を取る魔道具も、湿度の高いカープァ王国では同等の効果を期待できないと説明した。
善治郎はその条件を受け入れた。さらにジュゼッペ王太子は、代価として宝玉での支払いを望むと伝え、善治郎は検討すると返答した。
フレア姫の希望と魔道具不足の現実
続いてフレア姫は航海支援のため、『水作製』『真水化』『風制御』『水操作』の魔道具を希望した。
しかしジュゼッペ王太子は、『水作製』の魔道具は国内需要が極めて高く、他国へ売却する余裕がないと説明した。双王国では水資源が不足しており、魔道具の生産量も需要に追いついていないためであった。
フレア姫は『真水化』の魔道具について尋ねたが、それもアニミーヤム公爵家が継続的に買い占めている状況だと知らされた。また、『風制御』と『水操作』の魔道具については、そもそも現在シャロワ王家の手元に現物が存在しないことが明かされた。
善治郎の助け船
交渉を続けるフレア姫に対し、善治郎は横から助け船を出した。
本来の納入先が納得できる理由があれば譲渡の余地があるのではないかと問いかけると、ジュゼッペ王太子は『水作製』は難しいが、『真水化』であれば交渉の余地があると認めた。
フレア姫はなおも交渉の糸口を探ろうとしたが、アニミーヤム公爵家について十分な知識がないことを打ち明けた。
マルガリータ王女の提案
そこで発言したのがマルガリータ王女であった。
彼女は、自ら半年以内に新たな『真水化』の魔道具を製作するので、現在存在する魔道具をフレア姫へ譲ってほしいと提案した。その代わりとして、スカジが帯びている剣を譲ってほしいと申し出た。
マルガリータ王女は、北大陸でも先進国であるウップサーラ王国の製鉄技術に強い興味を抱いていた。南大陸の製鉄技術より優れているその技術を研究するため、剣を求めたのである。
善治郎の判断
フレア姫は、自国の優れた製鉄技術を他国へ渡すことの是非について善治郎に判断を求めた。
善治郎は、双王国への技術流出によってカープァ王国の優位性が多少損なわれる可能性と、フレア姫の航海の安全性向上を天秤にかけた。
熟考の末、女王アウラとの約束を破らない限りはフレア姫自身の判断に任せると答えた。フレア姫はその許可に感謝し、マルガリータ王女の提案を受け入れた。
マルガリータ王女も、代わりに自身が鍛えた剣をスカジへ譲ることを約束した。
ジュゼッペ王太子の追加支援
交渉の様子を見ていたジュゼッペ王太子は、さらに支援を申し出た。
シャロワ王家が直接売却できる魔道具には限界があるが、国内貴族が所有している魔道具については、特例として国外売買を認めると宣言したのである。
通常、貴族は所有する魔道具を国外へ売却できない。しかし今回に限り、フレア姫が各貴族と直接交渉して買い取ることを許可した。
ジュゼッペ王太子はその許可証を作成し、あえてルクレツィアを通じてフレア姫へ渡させた。
ルクレツィアの協力申し出
書状を受け取ったルクレツィアは、その機会を利用してフレア姫へ協力を申し出た。
ブロイ侯爵家へ話を通しておくため、最初の交渉相手として自家を選んでほしいと提案したのである。
フレア姫はその申し出を歓迎し、協力を依頼した。
交渉は順調にまとまっていったが、善治郎は終始友好的な態度を崩さないジュゼッペ王太子に対し、かえって不信感を強めるのだった。
ブロイ侯爵家での交渉
数日後、フレア姫は双王国王都にあるブロイ侯爵邸を訪れた。王都への移動中に酷暑期の乾燥した暑さに苦しめられたものの、侯爵邸は魔道具によって快適な温度に保たれていた。
今回の訪問はウップサーラ王国第一王女としての正式な交渉であり、善治郎は同席していなかった。フレア姫はルクレツィアの紹介を受け、ブロイ侯爵ルキーノと対面した。
北大陸と大陸間貿易についての対話
フレア姫とブロイ侯爵は互いの文化や歴史について会話を交わし、その後本題へと移った。
ブロイ侯爵は、なぜフレア姫が魔道具を求めているのかを尋ねた。フレア姫は、『黄金の木の葉号』でも大陸間航行は命懸けであり、その安全性を高めるためには魔法の力が必要だと説明した。
さらにブロイ侯爵は、北大陸と南大陸を往来する他国の船について質問した。フレア姫は、多くの国が船の損失を前提として数で補っていると語り、国力の限られるウップサーラ王国にはその方法が取れないため、安全で確実な大陸間貿易を確立する必要があると説明した。
その話を聞いたブロイ侯爵は状況を理解し、魔道具を譲る意向を示した。
家宝の魔道具『凪の海』
ブロイ侯爵は、代償が必要なほど価値の高い家宝の魔道具があると説明し、使用人たちに運ばせた。
現れたのは巨大な球体を備えた魔道具『凪の海』であった。
ブロイ侯爵は窓を開けて熱風を吹き込ませた後、魔道具を起動した。すると部屋に吹き込んでいた風が止まり、水を張った盆の水面も瞬時に静まった。
フレア姫とスカジは実際に試し、その効果を確かめた。風や水の動きが極めて小さく制限される一方で、呼吸や飲水には支障がないことが分かった。
航海に最適な性能
ブロイ侯爵は、『凪の海』の効果範囲が屋敷全体を覆うほど広く、『黄金の木の葉号』も十分に収まると説明した。
フレア姫は、この魔道具が嵐や高波に遭遇した際、船の修理や帆の操作を安全に行うための時間を確保できることを理解した。また、長期間の悪天候に対しても船員の負担を大幅に軽減できると判断した。
その性能から、フレア姫はこの魔道具を強く欲するようになった。
『遺産』の正体
フレア姫は、なぜこれほど都合の良い魔道具が存在するのか疑問を抱いた。
それに対しブロイ侯爵は、『凪の海』はシャロワ・ジルベール双王国の先祖が北大陸にいた時代に作られた『遺産』であると説明した。
双王国の先祖もかつて大陸間航行を経験しており、その過程で必要となった魔道具が現在まで残されていたのである。
その説明を受けたフレア姫は、この魔道具が極めて貴重な品であることを理解した。
友好の証としての譲渡
フレア姫は代価を尋ねたが、ブロイ侯爵は代金は不要だと答えた。
『凪の海』は、双王国からウップサーラ王国への友好の証として贈られるものであり、第三者への譲渡や売却だけを禁じると説明した。
フレア姫は、この一件の背後にシャロワ王家の意向があることを察した。善治郎が同席していない今の立場だからこそ、ウップサーラ王国との友好関係を築こうとしているのだと理解したのである。
その上でフレア姫は申し出を受け入れた。
ルクレツィアへの助言
代価の代わりとして、ブロイ侯爵はルクレツィアへの助言を求めた。
ブロイ侯爵は、ルクレツィアが善治郎に特別な感情を抱いていると語った。フレア姫は、善治郎の思いが向けられているのはアウラだけであり、その感情が報われることはないと断言した。
一方で、善治郎の側に仕える立場を望むのであれば助言できると続けた。
フレア姫は、善治郎本人ではなく女王アウラの評価こそが重要であり、カープァ王国の国益に資する存在であることを示さなければならないと説明した。
ルクレツィアはその話を熱心に聞き入った。
ルクレツィアのカープァ王国行き
交渉の締めくくりとして、ブロイ侯爵は『凪の海』の輸送責任者にルクレツィアを任命した。
ルクレツィアは即座に引き受け、その役目を果たすことを誓った。
こうしてルクレツィアのカープァ王国行きが正式に決定した。
『凪の海』の真相
交渉終了後、部屋に残ったブロイ侯爵の前に、ジュゼッペ王太子が姿を現した。
二人の会話により、『凪の海』はブロイ侯爵家の家宝ではなく、シャロワ王家が保有していた国宝級の『遺産』であることが明かされた。
ブロイ侯爵家を経由させたのは、ルクレツィアの価値を高め、善治郎の側室候補として後押しするためでもあった。
双王国の長期戦略
ジュゼッペ王太子は、『凪の海』を友好の証としてウップサーラ王国へ渡したことに大きな意味があると語った。
彼は将来、北大陸の強大な諸国が大船団を率いて南大陸へ進出してくる可能性を強く警戒していた。その時に備え、ウップサーラ王国との友好関係を築き、カープァ王国とも協力体制を整える必要があると考えていたのである。
そして将来の脅威に対抗するためには、南大陸全体の国力向上と、宝珠による魔道具大量生産体制の確立が不可欠であると語り、未来を見据えるのだった。
ボナ王女の帰還準備
フレア姫がブロイ侯爵邸で交渉を行っていた頃、善治郎は『瞬間移動』による移送の役目を果たしていた。
この日の移送相手はボナ王女であった。善治郎は忘れ物がないか確認し、ボナ王女は工具や両親から贈られた品々まで丁寧に確認した上で、帰還の準備を整えた。
マルガリータ王女との師弟関係
帰還前の会話の中で、ボナ王女は今回の帰省が充実したものであったと語った。
その理由として、家族との再会に加え、付与魔法の師であるマルガリータ王女から指導を受けたことを挙げた。王族でありながら付与魔法を発現できなかったルクレツィアとは異なり、ボナ王女は下級貴族の家に生まれながら付与魔法の素養を持っていたため、王家の者から直接教えを受ける必要があったのである。
しかしボナ王女は、武具作りに没頭するマルガリータ王女の姿勢には到底ついていけず、むしろ反面教師だったと苦笑しながら語った。
アウラへの伝言と瞬間移動
善治郎はボナ王女に、翌日自分が一度カープァ王国へ戻る予定であることをアウラへ伝えてほしいと頼んだ。
善治郎は前日にフランチェスコ王子にも同じ伝言を託していたが、伝達を忘れる可能性を危惧していたため、真面目なボナ王女にも依頼したのであった。
ボナ王女は快く引き受け、善治郎は『瞬間移動』を発動させた。繰り返し使用してきたことで、善治郎は写真の補助なしでも目的地へ転移できるようになっていた。
ルクレツィアの出自を知る
移送を終えた善治郎は自室へ戻り、侍女イネスから集めさせていた情報を聞いた。
イネスによれば、ルクレツィアはブロイ侯爵家の養女であり、実の両親はフィリベルト第二王子とその正妻ヨランダであった。つまり血縁上はシャロワ王家の王女であり、マルガリータ王女の実妹でもあった。
しかしルクレツィアは付与魔法を発現できなかったため、王族としての資格を失い、貴族家へ養子に出されていたのである。
側室入りを目指す理由
さらにイネスは、ルクレツィアが善治郎の側室になれば、シャロワ王家へ復籍できるという話を伝えた。
双王国では血統魔法を発現できなくても、その血統を次代へ伝える能力は失われていないと考えられていた。そのためルクレツィアのような人物も結婚相手として価値を持っていた。
そして養子に出された王族が生家へ戻る唯一の方法が、王族との婚姻であった。
善治郎はその事情を知り、ルクレツィアが必死に側室入りを目指している理由を理解した。苦手意識は和らいだものの、だからといって側室に迎える気持ちにはなれなかった。
シャロワ王家の後押し
イネスは、ルクレツィアが諦めることはなく、何らかの理由を付けてカープァ王国へ来るだろうと断言した。
その根拠として、以前の魔道具交渉の場で、ジュゼッペ王太子が意図的にルクレツィアへ許可証を運ばせ、ブロイ侯爵家との交渉へ誘導していたことを挙げた。
さらにイネスは前夜、紫卵宮から大きな荷物が運び出される様子を目撃しており、その行き先がブロイ侯爵邸であったことも突き止めていた。
善治郎は、フレア姫との魔道具交渉そのものがシャロワ王家の筋書きであり、譲渡される魔道具も紫卵宮の宝物庫から持ち出された可能性が高いと理解した。
強まる善治郎の疲労感
ルクレツィアを善治郎の世話役に任命したのはブルーノ王であり、その背後にシャロワ王家の意向があることは明らかであった。
善治郎は、シャロワ王家が想像以上に本気で側室入りを後押ししている現実を改めて認識した。
王族として政治的思惑から逃れられないことは理解していたが、それでも愛する妻アウラの出産までは、少しでも平穏な日々が続いてほしいと願うのだった。
第四章 予定外の一時帰国
善治郎の一時帰国
翌日、善治郎は予定通り『瞬間移動』を用いてカープァ王国へ一時帰国した。
到着後、善治郎は兵士からアウラが後宮で待っていると聞き、そのまま後宮へ向かった。蒸し暑い王宮内を足早に進み、冷却された寝室で待つアウラと再会した善治郎は、久しぶりに夫婦の時間を味わった。
双王国の来訪希望者についての報告
善治郎は帰国の目的として、双王国四公家の令嬢であるタラーイェとフィクリヤの来訪希望を報告した。
タラーイェは『空間遮断結界』の魔道具を求めており、フィクリヤはエスピリディオンとの対談を希望していた。さらに善治郎はフィクリヤから預かった研究資料をアウラへ渡した。
アウラは来訪自体を認めたが、部屋の準備が必要なため、二人の移送はできるだけ後の日程にしてほしいと依頼した。
イザベッラ王女による診察
善治郎はイザベッラ王女による診察について尋ねた。
アウラはすでに診察と治癒魔法を受けており、現在のところ問題はないと説明した。善治郎はその報告に安心し、自身の帰国目的の一つが無事達成されたことを喜んだ。
魔道具購入結果の報告
続いて善治郎は魔道具交渉の結果を報告した。
自身が求めていた涼を取る魔道具は問題なく購入できたが、フレア姫の交渉は予想以上に大きな話へ発展していた。『真水化』の魔道具に加え、『凪の海』という強力な魔道具が双王国から譲渡された経緯と効果を説明すると、アウラは強い関心を示した。
双王国の真意を探るアウラ
善治郎の説明を聞いたアウラは、双王国がウップサーラ王国との友好を異常なほど重視していることに疑問を抱いた。
さらに善治郎がブルーノ王やジュゼッペ王太子に対して意図的に距離を取ったにもかかわらず、相手側が友好的な態度を崩していないことを確認すると、その裏に何らかの焦りがあるのではないかと考え始めた。
宝玉開発の進捗確認
話題は宝玉の開発状況へ移った。
善治郎はフランチェスコ王子から、試作品は全て失敗だったものの、最も出来の良いものは完成にかなり近づいていたと聞いていた。
アウラは、量産化が目前まで迫っているからこそ、双王国が友好関係の構築を急いでいる可能性を考えた。
魔道具を作製する魔道具への見解
善治郎はフランチェスコ王子が開発を目指している『魔道具を作製する魔道具』について、自身の考えを語った。
ブルーノ王やジュゼッペ王太子は、その存在が王家の特権を崩壊させる危険な発明だと考えていたが、善治郎は逆に世界規模の変革をもたらす可能性を秘めていると考えていた。
善治郎は、魔道具の大量生産が可能になれば、魔道具は王侯貴族だけの高級品ではなく一般人にとっても当たり前の存在となり、その製造手段を握る国が圧倒的な優位を築くと説明した。
大量生産が生む支配力
善治郎はさらに、自国だけが『魔道具を作製する魔道具』を製造できる状態になれば、他国はその供給に依存せざるを得なくなると語った。
特に軍事用魔道具を例に挙げ、各国が魔道具武器に依存するようになれば、製造手段を持つ双王国に逆らえなくなると指摘した。
アウラは途中まで半信半疑だったが、軍事力を例にした説明を受け、その危険性の一端を理解した。
ビー玉量産との組み合わせへの懸念
善治郎は問題の本質が『魔道具を作製する魔道具』単体ではなく、現在カープァ王国が量産を進めている宝玉と組み合わさることにあると説明した。
魔道具製作時間を短縮する宝玉と製造魔道具が組み合わされば、本格的な大量生産体制が実現するためである。
そのため善治郎は、研究の継続自体には反対しないものの、完成後に無制限に双王国へ供給することには反対の意向を示した。
アウラの危機感と今後の判断
善治郎の話を聞いたアウラは、技術面の問題以上に双王国の態度そのものに不穏さを感じていた。
善治郎への過度な譲歩、フレア姫への大盤振る舞い、そして友好関係の構築を急ぐ姿勢から、双王国が何らかの動乱の兆候を察知している可能性を疑ったのである。
そのためアウラは、状況次第では善治郎にブルーノ王やジュゼッペ王太子との和解を求めるかもしれないと伝えた。
善治郎は個人的な感情を抑え、その可能性を受け入れた。
最終的にアウラは、善治郎の帰国時に届くブルーノ王とベネディクト法王からの返書を確認した上で、今後の方針を決定すると語り、善治郎もその判断に同意した。
善治郎の再出発
緊急の一時帰国を終えた翌朝、善治郎は双王国へ戻るため『瞬間移動』の準備を進めていた。
移動先をデジカメの画像で確認しながら準備を整える善治郎に対し、アウラはいつものように気を付けるよう声をかけた。そして善治郎に、ブルーノ王宛てとエラディオ宛ての二通の書状を託した。
護衛部隊駐在延長の決定
アウラが渡した書状の内容は、双王国に駐在するカープァ王国護衛部隊の任務延長に関するものであった。
善治郎は内容を理解し、自身の双王国訪問が今後も続くことを悟って落胆した。しかしアウラは、今後も双王国との連携を密に保つ必要があり、『瞬間移動』を使える自分と善治郎が中心になる以上、現在の体制は長く続くと説明した。
善治郎は将来も自分が奔走し続ける現実を受け入れ、アウラへ別れを告げた。
瞬間移動による双王国帰還
善治郎は移動先の映像を脳裏に焼き付け、『瞬間移動』の呪文を唱えた。
短期間に繰り返し実践していた成果もあり、魔法は一度で成功した。善治郎の姿はアウラの前から消え、無事に双王国へ帰還した。
アウラの北大陸への警戒
善治郎を見送った後、アウラは双王国の行動について改めて考察した。
フレア姫への厚遇や『真水化』の魔道具の売却、さらに国宝級の『凪の海』の譲渡まで行った双王国の態度から、何らかの重大な事情が存在すると確信した。
そのためアウラは北大陸の情勢調査を決意し、北大陸出身で現地に溶け込みやすい侍女マルグレーテを調査役として送り込む方針を固めた。
善治郎を北大陸へ送る構想
アウラはさらに、善治郎自身を北大陸へ派遣する案についても考えた。
フレア姫との婚姻問題をウップサーラ王国王家と直接交渉する必要があることに加え、一度でも善治郎が北大陸へ行けば、『瞬間移動』による往来が可能になるためである。
『真水化』や『凪の海』によって航海の危険が減少していることもあり、使い捨ての『瞬間移動』魔道具を持たせれば安全性も確保できると判断した。
同盟と婚姻外交への懸念
アウラは双王国が異常なまでに友好関係を求めている理由について考え続けた。
もし双王国が何らかの危機を察知し、カープァ王国やウップサーラ王国との連携を急いでいるのであれば、将来的により強固な条約や同盟を求めてくる可能性が高いと考えた。
その場合、友好の証としてルクレツィアやボナ王女、あるいは四公家の娘達を善治郎の側室として送り込む提案がなされるだろうと予測した。
そして最近の問題解決策が善治郎への負担を前提とするものばかりであることに気付き、アウラは複雑な思いを抱きながら溜息をついた。
エラディオへの任務変更通達
一方、双王国へ到着した善治郎は、まず護衛部隊責任者であるエラディオを呼び出した。
善治郎はアウラからの書状を渡し、護衛部隊の双王国駐在期間が延長されることを伝えた。双王国側が二、三年ごとに人員交代を行う方針であることから、カープァ王国側も同様に運用すると説明した。
途中帰国者への対応
説明を受けたエラディオは、一部の兵士については外国生活への適応が難しく、早期帰国が望ましいと報告した。
ただし途中帰国者に何の処分も与えなければ、仮病による帰国希望者が増える恐れがあるため、帰国後に一定の処罰を与えるべきだと提案した。
善治郎は当初反発したものの、その理屈に納得し、アウラと相談の上で対応すると約束した。
ブルーノ王への書状の扱い
エラディオを送り出した後、善治郎はブルーノ王宛ての書状を見つめながら考え込んだ。
アウラからは将来的な和解の可能性も考慮するよう言われていたが、今回の書状は護衛部隊の駐在延長という緊急性の高い内容である。
善治郎は最終的に、今回もルクレツィアを通じて届けるのが最善だと判断した。ただし、その判断には個人的な感情も少なからず含まれていたのであった。
第五章 和解と帰国
ルクレツィアの出発と世話役交代
活動期の到来により、『瞬間移動』以外の移動手段も利用できるようになった頃、ルクレツィアは善治郎の世話役を辞し、後任としてマルガリータ王女が就任した。
ルクレツィアはブロイ侯爵家代表として魔道具輸送の責任者に任命されたことを報告し、善治郎から労いの言葉を受けた。さらにカープァ王国での再会を望むルクレツィアに対し、善治郎は都合が合えば相手をすると答えたため、ルクレツィアは大きな喜びを見せながら去っていった。
マルガリータ王女との新たな関係
世話役を引き継いだマルガリータ王女は、自身が現在『真水化』の魔道具製作に専念しているため問題ないと説明した。
善治郎は付与魔法の名手である彼女に世話役を任せることへ恐縮したが、マルガリータ王女は気にする様子もなく、残り数日の務めを引き受けた。
タラーイェの転送
その日の『瞬間移動』の対象はタラーイェであった。
巨大な荷物を背負うタラーイェに善治郎が尋ねると、荷物は商売道具であり、先に送った人足の荷物も商品や通貨であると説明した。善治郎は彼女の目的が純粋な商売であることを理解し、成功を願う言葉を送った。
その後、『瞬間移動』を試みた善治郎は、普段なら一度で成功する魔法を三回目でようやく成功させ、タラーイェをカープァ王国へ送り届けた。
別れが近づく寂しさ
善治郎は次第に周囲の人々が減っていくことに寂しさを覚えていた。
後宮侍女達や騎士ナタリオ、フレア姫、スカジら気心の知れた面々はすでに帰国しており、身近な存在として残っているのは侍女イネスだけとなっていた。そのため、人数以上の孤独感を感じていた。
ブルーノ王とジュゼッペ王太子との昼食会
善治郎はマルガリータ王女に案内され、ブルーノ王とジュゼッペ王太子との昼食会に出席した。
二人は善治郎との関係改善を試み、今後も双王国へ来訪する予定があるかを尋ねた。善治郎は明言を避けつつも、今後も訪れる可能性を認めた。
すると二人は善治郎の滞在用として紫卵宮の別棟を提供する提案を行い、さらに『瞬間移動』の協力体制についても話を進めようとした。しかし善治郎は全てアウラの判断に委ねる姿勢を崩さず、その場での約束を避けた。
善治郎への評価と懐柔策の検討
善治郎が退席した後、ブルーノ王とジュゼッペ王太子は彼について語り合った。
二人は善治郎が金や権力、名誉や女性にも執着せず、現状に満足しているため極めて懐柔しにくい人物だと評価した。その上で、本人ではなくカルロス王子の利益になるものを提供することで善治郎との関係改善を図る方針を確認した。
また、アウラとは利害関係による交渉が可能であるため、今後も並行して関係構築を続けることを決めた。
北大陸への危機感
ブルーノ王とジュゼッペ王太子は、フレア姫から得た情報をもとに北大陸の技術発展について議論した。
北大陸では大型船をはじめとする技術が急速に進歩しており、このままでは南大陸が後れを取る危険があると認識していた。そのため、南大陸独自の強みである魔法と付与魔法を活用し、魔道具による発展を推進する必要があると結論づけた。
その実現には宝玉の量産化と継続的な確保が不可欠であり、時空魔法や宝玉製造技術の獲得も視野に入れていた。
ブルーノ王の決意
北大陸への対抗とカープァ王国との連携強化のため、ブルーノ王は将来的に自らカープァ王国へ赴く可能性を示した。
王位を譲った後ならば立場上の制約も少なくなり、アウラと直接交渉することも可能になるためである。ジュゼッペ王太子もその判断を支持した。
送別夜会
善治郎の送別会となる最後の夜会は盛大に開催された。
シャロワ王家とジルベール法王家の関係者が多数参加し、善治郎のパートナーはマルガリータ王女が務めた。善治郎は彼女の温厚な夫とも打ち解け、またジュゼッペ王太子の次男ヴェットール王子とも交流した。
夜会の終盤にはブルーノ王とベネディクト法王も姿を見せ、善治郎は二人と正式な別れの挨拶を交わした。
帰国準備とイネスとの別れ
翌朝、善治郎は侍女イネスを先にカープァ王国へ『瞬間移動』で送り出した。
長期間にわたり常に側にいたイネスが去ると、善治郎はこれまでで最も大きな喪失感を覚えた。
マルガリータ王女からの贈り物
帰国直前、マルガリータ王女は善治郎へ『風の鉄槌』という魔道具の腕輪を贈った。
それは魔導語を唱えることで強烈な風を発生させる護身用の魔道具であった。善治郎は受け取りをためらったが、マルガリータ王女は代わりにルクレツィアへ三度だけ会う機会を与えてほしいと頼んだ。
善治郎はその条件を受け入れ、魔道具を受け取った。
カープァ王国への帰還
最後の別れを終えた善治郎は、自らに『瞬間移動』を施してカープァ王国へ帰還した。
到着した先にはアウラとイネスが待っており、アウラは安堵した様子で善治郎を迎えた。善治郎も人前であることを意識しながら、正式な言葉で帰国の挨拶を返したのであった。
エピローグ 次の用意
双王国訪問の成果と新たな課題
善治郎の双王国行きは当初の目的をすべて達成していた。イザベッラ王女の長期滞在が決まり、涼を取る魔道具も購入できたことで、フレア姫はその恩恵を受けながら快適に過ごしていた。
しかし同時に、タラーイェとフィクリヤが来訪し、さらに一か月後にはルクレツィアも到着する予定となったため、カープァ王国の対応業務は大幅に増加していた。アウラもイザベッラ王女の支援で以前より活動できるようになったものの、人手不足は避けられない状況であった。
善治郎の公爵就任と王国体制の再編
善治郎が帰国した夜、アウラは宰相と元帥を新設し、自身の権力低下を補うため善治郎にも正式な公爵位を与えると告げた。
元帥にはプジョル将軍、宰相にはレガラド子爵が任命され、善治郎はビルボ公爵となることが決定した。ビルボ公爵家は名誉爵位でありながら正式な公爵家として扱われ、善治郎は王家の名代だけでなく公爵家当主としても公務に参加する立場となった。
ビルボ公爵家の創設
公爵就任に伴い、善治郎には独自の公爵邸、専属騎士十名ほどと兵士百名ほど、さらに独立した予算が与えられることになった。
善治郎は独自の兵力や財源を持つことに不安を示し、人員や資金の管理を厳格に行うようアウラへ求めた。アウラもその意見を受け入れた。
また後宮は引き続き王家の管轄下に置かれ、後宮関係の予算はこれまで通り王家から支出されることも確認された。
ナタリオの抜擢
善治郎は新たな騎士団の指揮役として、信頼するナタリオを推薦した。
アウラは家格の問題を認めつつも善治郎の希望を受け入れ、その代わり新たに採用する騎士についてはナタリオの意見を尊重するよう求めた。善治郎も了承し、補佐役として第二秘書アレハンドロを付けることになった。
宰相人事の説明
善治郎がレガラド子爵について尋ねると、アウラは歴史ある名家の出身で能力や人格にも問題がなく、プジョルとも距離を置いた中立的な人物だと説明した。
また、王宮の重職は基本的に王宮貴族が担うという慣習があり、地方領主であるマルケス伯爵やガジール辺境伯は候補になりにくかったことも明かされた。
北大陸への渡航提案
人事の話を終えたアウラは、本題としてフレア姫の帰国について切り出した。
『真水化』と『凪の海』の魔道具によって大陸間航海の危険性は大きく低下したとフレア姫から報告を受けており、善治郎自身も危険が大幅に減ったことには同意した。
その確認を終えたアウラは、フレア姫と共に『黄金の木の葉号』へ乗り込み、北大陸へ赴いてほしいと善治郎へ提案した。
突然の提案に、善治郎は言葉を失い、その意味を理解できずに戸惑うのであった。
付録 主と侍女の間接交流
後宮への作業員受け入れ
後宮では蒸気風呂の建設が決まり、アマンダ侍女長は侍女達に対し、しばらくの間作業員が出入りすると説明した。侍女達には身だしなみを整え、男達の前に不用意に姿を現さないよう厳しく言い渡した。
侍女達は返事をしたものの、男達と接触しないなら身綺麗にする意味がないと漏らした者もおり、アマンダ侍女長はすぐにそれを咎めた。
蒸気風呂建設と北大陸の船員
翌日、後宮には大工や石工、鍛冶師など十人以上の男達が入った。その中には『黄金の木の葉号』の船員もおり、彼は実家の家業を通じて蒸気風呂を建設する技術を持っていた。
職人達は設置場所や水源について相談し、水風呂や給排水設備の必要性を確認した。蒸気風呂の建設は北大陸由来の文化を後宮へ取り入れる工事でもあった。
侍女達を見て騒ぐ若い職人達
作業中の若い職人達は、偶然近くを通りかかったフェー達三人の侍女を見つけた。侍女達が小さく手を振ると、若い職人達は歓声を上げて大騒ぎになった。
しかし後宮は本来男子禁制の場所であり、その態度は許されるものではなかった。老職人に厳しく叱責された若い職人達は、揃って拳骨を受けることになった。
問題児三人組への罰
一方でフェー、ドロレス、レテも、職人達を避けるよう命じられていたにもかかわらず近道をして姿を見せたため、アマンダ侍女長から説教を受けていた。
三人が表面上は反省している様子を見せる中、アマンダ侍女長は反省を行動で示すよう命じ、新たな仕事を与えた。
水風呂用浴槽への水汲み
三人に与えられた仕事は、巨大な簡易浴槽へ井戸から水を運んで満たす作業だった。
蒸気風呂に併設する水風呂の試験のためだったが、非力な少女達には過酷すぎる重労働であり、三人は疲労困憊しながらも作業を続けた。特にレテは途中でほとんど動けなくなるほど消耗していた。
工事短縮のための確認作業
作業後に現れたアマンダ侍女長は、この作業によって上水道を省略できる可能性を確認したかったと説明した。
しかし実際には少女達だけで浴槽を満たすのは非現実的であり、工事期間を短縮するために上水道を省く案は不可能だと判明した。同時に、侍女達へ軽率な行動を戒める目的も果たされ、三人は二度と同じ失敗をしないと誓った。
蒸気風呂と水風呂の完成
約一か月後、魔法使い達も投入された突貫工事によって蒸気風呂と水風呂は完成した。
水風呂には給排水設備が整えられ、蒸気風呂も熱を逃がさない構造となっていた。完成後は安全確認のため、後宮侍女達が実際に使用して試験を行うことになった。
侍女達による蒸気風呂の試験
フェー、ドロレス、レテ、ルイサ、ミレーラ、ニルダらは、蒸気風呂の中で大量の汗を流した。
高温多湿の環境に苦しむ者が多い中、訓練経験のあるルイサは比較的平然としていた。一方でミレーラは特に苦しそうな様子を見せ、ニルダは暑さを楽しむような反応をしていた。
水風呂の効果と失敗
限界を迎えた侍女達は蒸気風呂を出て水風呂へ飛び込み、その爽快感に歓声を上げた。
しかし初めての体験だったため、水風呂に長く入り過ぎてしまい、今度は身体が冷え切ってしまった。そこで侍女達は再び蒸気風呂へ戻り、適切な時間配分を学びながら使用を続けるのだった。
蒸気風呂の定着と新たな楽しみ
蒸気風呂が後宮に完成して数日が経ち、若い侍女達の間ではすっかり日常の施設として定着していた。蒸気風呂で汗を流し、水風呂で冷やし、再び蒸気風呂で温まるという利用法が広まる中、最初に水風呂へ入ってから蒸気風呂へ向かう者も現れた。
酷暑期のカープァ王国では夜でも暑さが厳しく、先に身体を冷やす方法は理にかなっていた。またフェー達は、蒸気風呂の後に氷入り果汁水やかき氷、アイスクリームを食べると格別に美味しいことを発見していた。
アイスクリームを巡る我慢大会
しかし冷蔵庫の容量には限りがあり、侍女達が自由に使える氷やアイスクリームの量は少なかった。そのためフェー、ドロレス、レテは三人分のアイスクリームを一人で獲得しようと考え、蒸気風呂我慢大会を始めた。
三人は蒸気風呂に籠もり続け、途中で入ってきた後輩侍女達にもほとんど反応しなかった。その異様な雰囲気に後輩達は戸惑いながら退室していった。
ドロレスの脱落
長時間の我慢比べが続く中、最初に限界を認めたのはドロレスだった。
ドロレスはこれ以上無理をすれば生活に支障が出ると判断し、適当なところで切り上げるよう二人へ忠告して水風呂へ向かった。しかしフェーとレテは、それぞれの意地と食欲から勝負を続けた。
アマンダ侍女長の来訪とフェーの昏倒
勝負が続く中、蒸気風呂へアマンダ侍女長が入ってきた。フェーとレテは慌てて誤魔化そうとしたが、その直後、フェーは立ち上がろうとして意識を失った。
蒸気風呂に長時間入り続けた結果、フェーはその場で昏倒してしまったのである。
誤解されたフェーの行動
意識を取り戻したフェーは、後宮のリビングルームでアマンダ侍女長に膝枕をされていた。
アマンダ侍女長は、フェーが蒸気風呂の安全性を確かめるために真面目に試用して倒れたのだと思い込み、その働きを労った。そして蒸気風呂は長居すると危険であることが分かったため、しばらくはアウラや善治郎の利用も控えた方がよいかもしれないと考えた。
フェーの後ろめたさ
アマンダ侍女長は氷入りの果汁水を用意し、優しく看病した。
しかし実際にはアイスクリームを巡る我慢大会が原因で倒れただけであるため、フェーは真相が知られた時のことを思いながら、アマンダ侍女長の優しさに複雑な思いを抱いていた。
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