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フィクション(Novel)理想のヒモ生活

小説「理想のヒモ生活 11 巻」【感想文・ネタバレ】

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小説理想のヒモ生活11巻の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

ヒモ生活10巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活12巻レビュー

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  1. どんな本?
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 読んだラノベのタイトル
  3. あらすじ・内容
      1. シリーズ累計80万部突破! 待望の第二子誕生! 善治郎の北大陸行き!? ビー玉量産化も遂に始動? 波乱の第11弾が登場!
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 統治体制の新発足
    2. 第二子の誕生
    3. 北大陸への航海
    4. 魔道具の技術革新
    5. 側室問題の浮上
  6. 登場キャラクター
    1. カープァ王国 王家・王宮
      1. アウラ一世
      2. 善治郎・ビルボ・カープァ
      3. カルロス・善吉・カープァ
      4. フアナ・善乃・カープァ
      5. レガラド子爵フィデル
      6. ファビオ
      7. ミシェル
      8. エスピリディオン
      9. パスクアラ
      10. ルシンダ
      11. マヌエル・マルケス
      12. ラファエロ・マルケス
      13. オクタビア夫人
      14. パントハ男爵
    2. カープァ王国軍・王都警備隊
      1. プジョル・ギジェン
      2. レガラド子爵の長男
    3. 後宮の侍女・護衛
      1. アマンダ
      2. イネス
      3. マルグレーテ
      4. カサンドラ
      5. エスメラルダ
      6. ヴァネッサ
      7. フェー
      8. ドロレス
      9. レテ
      10. ルイサ
      11. ミレーラ
      12. ニルダ・ガジール
      13. ナタリオ・マルドナド
      14. ロベルト
    4. シャロワ・ジルベール双王国
      1. ブルーノ
      2. ジュゼッペ
      3. フランチェスコ
      4. ボナ
      5. ベネディクト
      6. イザベッラ
      7. ルクレツィア・ブロイ
      8. フィリベルト
      9. ヨランダ
      10. マルガリータ
      11. フローラ
      12. タラーイェ
      13. フィクリヤ
      14. シュラ
    5. ウップサーラ王国・『黄金の木の葉号』
      1. フレア・ウップサーラ
      2. スカジ
      3. マグヌス
      4. ニコライ
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ 宰相と元帥と公爵
    2. 第一章 野心と商売と安全策
    3. 第二章 老賢者と魔法研究者と見届け人
    4. 第三章 空間遮断結界と瞬間移動と不動火球
    5. 第四章 第二子誕生と三つの約束と四つの魔道具
    6. 第五章 出産と出張と出航
    7. エピローグ 女王と王子と裏取引
    8. 付録 主と侍女の間接交流
  8. 同シリーズ
    1. 理想のヒモ生活 シリーズ
    2. 小説版
    3. 漫画版
  9. その他フィクション

どんな本?

■ 作品概要

理想のヒモ生活」は、現代日本から異世界に召喚された青年が女王の夫(王配)となり、宮廷の権謀術数や外交交渉に挑む姿を描いた異世界ファンタジー小説である。 本作は、時空魔法や付与魔法などの「血統魔法」が王家の権力の源泉として機能する南大陸のカープァ王国を舞台としている。第11巻では、女王アウラが政務と軍務の負担を減らすために宰相と元帥を新設し、善治郎も独自の権限を持つ「ビルボ公爵」に就任する。一方、双王国の不自然な動きから北大陸発の動乱を予期したアウラの判断により、善治郎はウップサーラ王国との国交樹立のため、木造帆船『黄金の木の葉号』による過酷な大陸間航海へ赴くこととなる。アウラの第二子出産や、双王国で進むビー玉の量産化による魔道具革命の脅威、そして善治郎の側室を巡る各国の思惑が交錯する展開が描かれている。

■ 主要キャラクター

  • 善治郎・カープァ:現代日本から召喚されたカープァ王国の王配。本巻で「ビルボ公爵」の爵位を得る。自身の能力の限界を自覚し、命の危険を伴う大陸間航海を恐れながらも、国益と家族のために北大陸行きを決断する。
  • アウラ一世:カープァ王国の女王であり善治郎の妻。第二子となる長女・フアナを無事出産する。双王国の技術的脅威を見据え、冷徹な王としての判断と愛する夫への情の間で葛藤しつつも、国の未来のために善治郎へ過酷な要求を命じる。
  • フレア・ウップサーラ:ウップサーラ王国の第一王女であり、『黄金の木の葉号』の船長。善治郎の側室となるため、そして両国の交易を実現させる架け橋となるため、善治郎たちを乗せて北大陸への航海に出発する。
  • フランチェスコ:シャロワ王家の王子であり、付与魔法の天才。善治郎の命綱となる『瞬間移動』の魔道具などを作製する。一方で、「魔道具を作製する魔道具」の開発を進めており、ビー玉量産と組み合わせることで将来的に南大陸のパワーバランスを崩壊させかねない脅威となる。
  • ルクレツィア・ブロイ:ブロイ侯爵家の養女で、元シャロワ王族の少女。王族への返り咲きという野心のため善治郎の側室の座を狙っており、自らも過酷な大陸間航海への同行を志願する。
  • プジョル・ギジェン:カープァ王国の元帥に就任した野心家の巨漢。結婚して妻ルシンダという知恵袋を得たことで、自身の野心をより洗練された手腕で実行に移し始めている。

■ 物語の特徴

本作の最大の魅力は、異世界召喚ものにありがちな「主人公が強大な魔法や武力で無双する」展開ではなく、国家間のリアルな外交交渉や権力闘争、そして夫婦間の信頼と葛藤を主軸に置いている点である。 第11巻では、「ビー玉(宝玉)の量産化」と「魔道具を作製する魔道具」の技術が組み合わさることで、高価だった魔道具が使い捨て兵器として大量生産され、戦争やパワーバランスを一変させるという「魔法技術革命の脅威」が緻密に描かれている。魔法を単なるファンタジー要素ではなく、国家の軍事・インフラ技術としてリアルに扱う設定が、読者の知的好奇心を強く刺激する。 また、国益を優先せざるを得ない女王としての冷徹な判断と、夫を愛する妻としての心情の間で揺れ動くアウラや、不本意な要求(過酷な航海や新たな側室の受け入れ)に苦悩しつつも家族のためにそれを受け入れる善治郎の姿など、為政者の義務と人間らしい感情のせめぎ合いが深く描かれている点が、他作品との大きな差別化要素となっている。

読んだラノベのタイトル

理想のヒモ生活 11
著者:渡辺恒彦 氏 イラスト: 文倉 十 氏

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あらすじ・内容

シリーズ累計80万部突破! 待望の第二子誕生! 善治郎の北大陸行き!? ビー玉量産化も遂に始動? 波乱の第11弾が登場!

アウラはかねてから検討していた「宰相」と「元帥」の役職を置き、宰相にレガラド子爵フィデルを、そして元帥にプジョルを任命した。アウラの国務の負担が減ることは喜ばしくもあったが、それは同時に、望まない方向に国が進みかねない危険性も孕んでいた。更に、双王国の対応から北大陸への懸念を抱いたアウラは、フレア姫の出立に合わせて、ウップサーラ王国を訪問してほしいと善治郎に告げる。しかし、木造帆船で数ヶ月にも及ぶ危険な航海に出ることは、善治郎にとって受け入れがたい話。そこでアウラは、少しでも安全な航海にするために、なんと『瞬間移動』の魔道具を造ってもらおうと提案するのだった。

理想のヒモ生活11

感想

女王の第二子懐妊によって政務を軽減させるため宰相と元帥を任命する。
宰相は問題無かったが、元帥はあの餓狼将軍。

そして、元帥に就任した途端に徴兵令を出すという暴挙に出た。
前の大戦で男手が足りないのに徴兵をする。
それによって男手が足りない辺境の方面の生産が崩壊する可能性が大きくなる。

それを考慮せずに兵力の増強。
自己中な餓狼元帥の行動に頭が痛くなる女王様。

それを掣肘しようと女王が呼び出したら、、
王都の元孤児達に限定にする修正案を携えて来た。
それを提案したのは餓狼元帥の嫁。。

今のところは制御する事に成功しているが、より大きな力を求めて王位簒奪の可能性、、、は無いらしい。

王家の血統魔法が使えないと王族とは見られない。
だが、傀儡にさせられる可能性はある。
そこには注意が必要だが、餓狼元帥と女王の鍔迫り合いはまだまだ続きそうだ。

権力闘争はそんな感じで、今度は技術面。

宮廷魔術師と双王国の公爵家令嬢が、魔術での討論をしてた時に、公爵家の秘術「精霊乙女召喚」を目の前で実演してくれたのだが、善治郎から見たら遠隔操作のゴーレムだった。

欠陥は魔術行使の継続時間の短さだが、魔道具化したらそれは解決する。

フランチェスコ王子の魔道具を作る「魔道具」、魔道具作成時間を大幅に短縮する「ビー玉」。
そして、公爵家の「ゴーレムとその操作」。

それが全て組み合わさったら、ゴーレム兵が大量生産出来る。。

そんな想像をした善治郎は、妻の女王アウラにその懸念を言うが、アウラは楽観視していた。

外交面では、北大陸を警戒している双王国は北大陸の何を警戒しているのか知りたいアウラは、フレア姫の母国への帰還に善治郎を随伴させる事を決定する。

そうする事により、フレア姫の母国へ瞬間移動出来るようになるのだが、、

木造帆船での大航海の難易度はそう簡単な事では無い。
そのリスクを少しでも下げる為に、フランチェスコ王子に、瞬間移動と空間遮断の魔道具の作成を依頼する。
勿論、作成短縮のため地球産のビー玉を使用して、、

更にフランチェスコ王子の研究のために量産化途中のビー玉を譲渡して、そのうちの一つに上位魔術の爆裂の魔法の使い捨ての魔道具化を依頼するのだが、、
1日で出来るとフランチェスコ王子は言う。

それを聞いたアウラは善治郎の懸念は間違っていないと確信する。。

もしかすると、魔法具による産業革命が起こるのかもしれない。
北大陸の教会勢力の侵略に対抗するための布石は善治郎を中心に周り初めている。

善治郎、、
理想のヒモ生活から完璧に外れちゃったね。

可愛い盛りの息子と、産まれたばかりの娘から離れて北の大陸へ単身赴任。
あれ?なんか泣けて来たぞ。。
善治郎、強く生きろよ!

その頃、後宮では侍女達に問題児汚染が確実に拡がっていた、、
特に侍女長の縁者であり、辺境伯の次女ニルダは手遅れかもしれないww

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ヒモ生活10巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活12巻レビュー

考察・解説

統治体制の新発足

『理想のヒモ生活11』における「統治体制の新発足」は、女王アウラの妊娠に伴う負担軽減を目的として宰相と元帥、さらにビルボ公爵が新設された出来事であり、カープァ王国の権力構造が大きく変化した重要なエピソードとして描かれている。

統治体制の新発足について、以下の4つのポイントから解説する。

1. 宰相と元帥の任命による完全自動運転化

就任の儀において、レガラド子爵が政治の最高責任者である「宰相」に、プジョル将軍が軍事の全権代理人である「元帥」に任命された。

・これにより、女王アウラが直接指示しなくとも国政と軍事が回る「完全自動運転」のような体制が整う。
・第二子を妊娠中のアウラの負担は劇的に軽減された。
・しかし同時に、アウラが油断すれば国が望まない方向へ進みかねない危険性も孕むことになった。

2. 善治郎のビルボ公爵就任と王位継承権の付与

統治体制の変化に伴い、善治郎には独自の爵位である「ビルボ公爵」と「カープァ王国王位継承権第二位」が与えられた。

・これは宰相や元帥を設けたことで相対的に縮小された女王の権力を、外から増強するための措置である。
・名誉称号に近いものではあるが、これにより善治郎は「女王の夫」としてだけでなく、王族として独自の立場で公式な場に出ることが可能となった。

3. プジョル元帥の野心と知恵者ルシンダの存在

就任直後、野心家であるプジョル元帥は国軍の兵士募集を発表した。

・当初は農村の労働力不足を招くような大規模な増員を企図していたと推測されるが、最終的には王都の孤児たちを取り込んで治安向上に寄与する、小規模な募集へと軌道修正した。
・アウラは、この裏にプジョルの妻となった知恵者ルシンダの存在があると確信した。
・プジョルの暴走が抑えられたことを歓迎しつつも、二人が結託してさらなる権力拡大を狙う可能性を警戒し、監視を強める決断を下した。

4. 貴族たちの思惑と善治郎の立ち回り

独自の地位を得た善治郎は、連日のように夜会へ招かれ、鵜の目鷹の目の貴族たちから接近されるようになった。

・過去の数々の実績から、善治郎はすでに「無能なお飾り」ではなく、有能な王族として評価されていた。
・女であるアウラよりも与しやすいと考え、善治郎を担ぎ上げようとする貴族の存在も懸念される。
・その中で、善治郎はあくまで「女王の夫」という立場を強調し、野心がないことをアピールしながら慎重に振る舞い続けている。

まとめ

「統治体制の新発足」は、アウラの出産に向けた国政の合理化であると同時に、カープァ王国における新たな権力闘争の幕開けを予感させる出来事である。強大な権限を得た臣下たちと、独自の爵位を得て存在感を増す善治郎の間にさまざまな思惑が交錯する中、盤石に見える王国の体制に生じたわずかな隙と、それを巧みにコントロールしようとする女王アウラの采配が光るエピソードとなっている。

第二子の誕生

『理想のヒモ生活11』における「第二子の誕生」は、善治郎が王族としての重責を果たしながらも父親としての愛情を募らせる姿や、大役を終えたアウラとの夫婦の絆が描かれる、本巻における重要なエピソードとして描かれている。

第二子の誕生について、以下の4つのポイントから解説する。

1. アウラ不在の新年祭と善治郎の責任

第二子出産を控え、女王アウラが後宮で安静にしていたため、善治郎はアウラに代わって新年祭を主催することになった。

・新年祭の最終日の夜、儀式の前にアウラの陣痛が始まったとの報告を受ける。
・善治郎は今すぐ駆けつけたい気持ちを必死に抑え、自分にしかできない役目として新年祭を最後まで笑顔で務め上げた。

2. 後宮への全力疾走と安産

・新年祭を無事に終えた善治郎は、恥も外聞もなく後宮のリビングルームへと全力疾走で駆け込んだ。
・そこで侍女たちから、無事に第二子が出産され、母子ともに健康であると知らされる。
・寝室に向かうと、前回よりも短時間で安産だったことに加え、イザベッラ王女の治癒魔法の助けもあり、健康そうな笑顔を浮かべるアウラが出迎えてくれた。

3. 長女フアナ・善乃の誕生

生まれた第二子は女の子であった。

・善治郎はアマンダ侍女長に抱かれてスヤスヤと眠る赤子を見つめ、起こさないように気をつけながらも、父親としての愛おしさを噛み締める。
・名前はアウラが事前に考えていた「フアナ」となった。
・後に善治郎からは日本風の名前として「善乃(よしの)」という名が贈られ、「フアナ・善乃・カープァ」と名付けられた。

4. イザベッラ王女への感謝と帰国

アウラの体調が安定していることを確認したイザベッラ王女は、三日ほど様子を見た後に帰国する意向を伝えた。

・善治郎は新生児であるフアナの健康についても尋ねたが、生まれたばかりの子供に回復魔法を施すのはかえって身体を弱くする可能性があるため行われないこと、そして現状問題はないことが説明される。
・善治郎とアウラは、何の憂いもなく無事に出産を終えられたことに対し、イザベッラ王女へ心からの感謝を伝えた。

まとめ

第二子の誕生は、善治郎がカープァ王国の王配としての公務を立派にやり遂げた直後に訪れた、家族としての大きな喜びの瞬間である。間近に迫る過酷な大陸間航海を前にして、愛する妻の無事と新たな家族の誕生を確認できたことは、善治郎にとって何よりの救いであり、彼が北大陸へ向かうための強い原動力となる心温まるエピソードとなっている。

北大陸への航海

『理想のヒモ生活11』における「北大陸への航海」は、善治郎がカープァ王国の国益とフレア姫との婚姻交渉のために、未知の危険が伴う大陸間航行に挑む重大なエピソードとして描かれている。

北大陸への航海について、以下の4つのポイントから解説する。

1. アウラの提案と航海の目的

・アウラは、双王国の不自然な動きから北大陸発の動乱を警戒し、情報収集とウップサーラ王国との国交樹立のために善治郎を北大陸へ派遣することを決断した。
・善治郎が自ら赴くことで、フレア姫の側室入りについてウップサーラ国王から直接許可を得やすくなるという利点があった。
・一度北大陸を訪れることで瞬間移動による今後の往来を可能にし、直通のラインを構築するという重要な外交目的も含まれていた。

2. 善治郎の恐怖と万全の安全対策

・木造帆船による百日近い大陸間航海に対し、善治郎は命の危険を感じて強く恐れ、難色を示していた。
・アウラは、凪の海や真水化の魔道具で航海の安全性が飛躍的に高まっていると説得した。
・さらにフランチェスコ王子に緊急脱出用の使い捨て瞬間移動の魔道具や、船上で安全に火を使える不動火球の魔道具などを作らせることで、善治郎の安全確保に万全を期した。

3. 同乗者の人選とルクレツィアの志願

・カープァ王国からの同乗者は、護衛のナタリオら4名、侍女のイネスや北大陸に馴染みやすい容姿のマルグレーテら3名が選出された。
・さらに、王族への返り咲きという野心から善治郎の側室の座を狙う双王国のルクレツィアも同行を強く志願する。
・アウラは、彼女の同行が北大陸の情報を欲する双王国の思惑とも合致するため断ることはできないと判断し、乗船が決定した。

4. 船上生活の始まりと覚悟

・ワレンティア港から黄金の木の葉号に乗り込んだ善治郎は、船上では命を守ることが最優先であるとし、船員達の指示には絶対に従い、言葉遣いなどの無礼も一切問わないと宣言した。
・港を出て外海に出ると船は大きく揺れ、内陸育ちの護衛騎士達は早々に足を取られて転倒するなど、過酷な船上生活の洗礼を受ける。
・善治郎は、百日間続く過酷な航海と、その後に控える未知の大陸での外交交渉に向けた覚悟を固めた。

まとめ

「北大陸への航海」は、善治郎が愛する家族や国のために自らの恐怖を乗り越え、未知の世界へと踏み出す大きな転換点となるエピソードである。魔道具による安全確保や同行者たちの複雑な政治的思惑が入り交じる中、南大陸の常識が通用しない過酷な船旅と新たな外交の幕開けが描かれている。

魔道具の技術革新

『理想のヒモ生活』における「魔道具の技術革新」は、善治郎が持ち込んだ現代知識とシャロワ王家の天才的な魔法技術が結びつくことで生み出された、南大陸の常識やパワーバランスを根底から覆す極めて重要なテーマとして描かれている。

魔道具の技術革新について、以下の4つのポイントから解説する。

1. ビー玉(宝玉)量産化による作製時間の大幅短縮

魔道具の媒体として最適なのは無色透明な球体であるが、この世界では水晶を真球に磨き上げるのは極めて困難であり、それが魔道具作製に年単位の時間を要する最大の原因であった。

・善治郎が地球から持ち込んだビー玉がその条件を満たすと判明し、カープァ王国は職人を集めて自国でのガラス製造とビー玉の量産化に乗り出した。
・第11巻においてついに実用に耐えるビー玉の生産に成功する。
・これにより、これまで一品物であった魔道具の作製期間を数日単位へと劇的に短縮させる道が開かれた。

2. フランチェスコ王子による魔道具を作製する魔道具の開発

もう一つの革新は、シャロワ王家の天才付与術士であるフランチェスコ王子が極秘に開発を進めている「付与魔法の魔道具(魔道具を作製する魔道具)」である。

・これは特定の魔道具を自動で作製できる、現代で言うところのマザーマシンに相当する装置である。
・ブルーノ王やジュゼッペ王太子からは、王家最大の既得権益である血統魔法の優位性を手放す行為として猛反対されていた。
・しかし、王子はカープァ王国から報酬として得たビー玉を利用して、着々と開発を進めている。

3. 使い捨て魔道具の普及と戦術の一変

善治郎は、ビー玉の量産技術と魔道具を作製する魔道具が組み合わさることで、作り手の制約を受けない真の大量生産体制が実現すると予想する。

・これにより、魔道具は王侯貴族の高級品からあって当たり前のインフラへと価値観が一変する。
・さらにアウラは、安価で量産可能になることで、爆炎や大岩作製といった強力な魔法を込めた「使い捨ての魔道具」が戦場に兵器として大量投入される未来を予見した。
・戦争のあり方が根本から変わるという強い危機感を抱くことになる。

4. 北大陸の脅威への対抗策と国家間戦略

シャロワ・ジルベール双王国のブルーノ王やジュゼッペ王太子は、北大陸で急速に発展する大型帆船などの技術力に対抗するためには、南大陸独自の強みである魔法技術(魔道具)を進化させるしかないと考えている。

・そのため、魔道具の大量生産を可能にするビー玉の安定供給を何としても確保しようと、カープァ王国に歩み寄る。
・一方のアウラは、この技術革新が進めば付与魔法を持つ双王国の国力が圧倒的に突出すると理解しつつも、技術流出を永遠に防ぐことは不可能だと悟った。
・将来の同盟関係強化のために、善治郎に双王国からの側室を受け入れさせる決断へと至る。

まとめ

「魔道具の技術革新」は、ファンタジー世界における魔法を単なる神秘の力ではなく、国家の経済・軍事力を左右する産業としてリアルに描く本作の真骨頂である。善治郎の現代知識と異世界の魔法が融合した結果が、意図せず世界規模の軍事革命を引き起こす可能性を生み出し、各国の王族たちによる生き残りを懸けた冷徹な政治的駆け引きを加速させる最大の要因となっている。

側室問題の浮上

『理想のヒモ生活』における「側室問題の浮上」は、単なる夫婦間の貞操観念にとどまらず、国内貴族の権力闘争と他国との重大な外交問題が複雑に絡み合う政治課題として描かれている。

血統の継承という王国の至上命題に対し、それぞれの陣営がどのような思惑を持って動き、王家がいかにしてその難局を切り抜けているのか、4つのポイントから解説する。

1. 貴族たちの野心と側室制度の合理性

善治郎は王家の秘術である「時空魔法」を継承可能なほど濃い血を引いているため、王国にとって王族(分家)を増やす側室制度は極めて合理的な選択である。

・国内の有力貴族たちは自らの娘や妹を側室に送り込み、王家とのパイプを築こうと画策した。
・特に女王アウラの妊娠が確定すると、アウラが夜の営みを行えなくなる。
・これを側室を押し付ける絶好の機会として、貴族たちからの圧力は一層強まった。

2. 善治郎の拒絶と女王アウラの政治的ジレンマ

当の善治郎自身はアウラを一途に愛しており、妊娠中の妻がいるのに他の女に目が向く甲斐性はない、と側室の受け入れを明確に拒絶する。

・歴史的に男性優位の社会であるカープァ王国において、王族が側室を持たないのは異例のことであった。
・もし側室をはねのけ続ければ、嫉妬深い女王が自らの権力を守るために夫の自由を不当に束縛している、という悪評が立つ。
・これにより、アウラの権力基盤や統治能力そのものに疑問符が付けられるという致命的な政治的ジレンマを抱えていた。

3. 双王国の介入と付与魔法流出の危機

この側室問題に決定的な制約をもたらしたのが、大国シャロワ・ジルベール双王国からの外交的圧力である。

・善治郎の祖先である異世界へ駆け落ちした人物が、実は双王国の王女であった可能性が浮上する。
・善治郎はカープァ王家の時空魔法だけでなく、双王国の秘術である「付与魔法」の血も引いている可能性が高くなった。
・もし善治郎が他の側室との間に子をなして付与魔法が発現し、魔法の独占が崩れることになれば、それを恐れる双王国との間に戦争が勃発する危険性があった。

4. 悪名を被る善治郎の防衛策

この最悪の事態を防ぐため、アウラと双王国の間で、善治郎はアウラ以外の女性と子をなさない、という密約が結ばれる。

・善治郎が双王国の血を引いていることは極秘事項であり、国内貴族に側室を断るための表向きの理由にはできない。
・そこで善治郎は、アウラの政治的立場を守りつつ側室を回避するため、自ら進んで泥を被る決断を下した。
・公的な場で、アウラに首ったけで他の女は目に入らない、仕事嫌いの怠け者、という女王の色香に溺れた駄目男を意図的に演じる。
・側室拒否の理由を善治郎自身の我が儘(色ボケ)として周囲に印象づけ、国内の反発をかわす防衛策をとった。

まとめ

側室問題の浮上は、血統の継承、国内貴族の野心、大国の外交戦略が絡み合う複雑な構造を持っている。女王アウラが老獪な手腕で貴族を牽制する一方、王配である善治郎もあえて無力を装い悪評を引き受けることで、女王派と王配派の対立や国際紛争の危機を未然に防いでいる。二人の深い信頼関係と巧みな立ち回りこそが、王国の平和と王権の安定を維持する最大の要となっているのである。

ヒモ生活10巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活12巻レビュー

登場キャラクター

カープァ王国 王家・王宮

アウラ一世

カープァ王国の女王であり、善治郎の妻である。第二子を妊娠しており、夫と国を気遣う冷静な判断力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国女王。
・物語内での具体的な行動や成果
 自身の負担を減らすため、レガラド子爵を宰相に、プジョルを元帥に任命した。善治郎をビルボ公爵に叙爵し、北大陸への航海を提案した。長女のフアナを出産した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 宰相と元帥の任命により、自身が直接指示しなくても国政と軍事が回る体制を整えた。

善治郎・ビルボ・カープァ

現代日本から召喚されたカープァ王国の王配である。家族の安全を最優先に行動する。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国王配。ビルボ公爵。王位継承権第二位。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラの負担を減らすため、ビルボ公爵に就任した。アウラの出産時には新年祭を主催した。フレア姫との婚姻と国交樹立のため、『黄金の木の葉号』で北大陸へ向かう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 正式にビルボ公爵に任命され、独自の爵位と王位継承権第二位を得た。

カルロス・善吉・カープァ

アウラと善治郎の間に生まれた第一王子である。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 後宮の寝室でカサンドラと共に過ごしている。善治郎が北大陸へ向かう間、フェーによって写真撮影される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

フアナ・善乃・カープァ

アウラと善治郎の間に生まれた第一王女である。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国第一王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラの第二子として誕生した。善治郎が北大陸へ向かう間、写真撮影の対象となる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 カープァ王家における新たな王族として誕生した。

レガラド子爵フィデル

小柄な体格で褐色の肌を持つ中年の男である。俊敏そうで凄味のある雰囲気を持つ。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国の宰相。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラから宰相に任命され、宰相印とインク壺を受け取った。宰相の側近となる高官を募集している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 政治の最高責任者である宰相に就任し、強大な権限を得た。

ファビオ

女王アウラの第一秘書である。細面で、感情を交えずに淡々と報告を行う。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国の第一秘書。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラに対して、新米宰相や新米元帥の動向を報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ミシェル

カープァ王国の宮廷医師である。厳格な性格で、王族の健康管理を最優先する。

・所属組織、地位や役職
 宮廷医師。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラの妊娠の経過を診察し、順調であると診断した。出産にも立ち会った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

エスピリディオン

カープァ王国の筆頭宮廷魔法使いである。豊富な知識と高い魔力を持つ老賢者である。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国筆頭宮廷魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 フィクリヤの魔法研究論文を添削し、直接指導を行った。彼女の簡易版『精霊乙女召喚』の発動を見届け、検証した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

パスクアラ

エスピリディオンの妻である。四大魔法を使える魔法使いとして言及される。

・所属組織、地位や役職
 魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 具体的な行動の記述はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ルシンダ

プジョル元帥の妻である。控えめで聡明な性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ギジェン侯爵夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 プジョルの野心を的確にフォローし、軌道修正させているとアウラから推測されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 プジョルの知恵袋として影響力を持っている。

マヌエル・マルケス

マルケス伯爵家の現当主である。ミレーラの養父に当たる。

・所属組織、地位や役職
 マルケス伯爵家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 具体的な行動の記述はないが、ミレーラを本家令嬢として育てたことが言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ラファエロ・マルケス

マルケス伯爵家の関係者である。

・所属組織、地位や役職
 記述なし。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎の北大陸行きにおける副外交官の候補として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

オクタビア夫人

マヌエル・マルケスの後妻である。万人に愛情を注ぐ性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 マルケス伯爵家当主夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 具体的な行動の記述はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

パントハ男爵

カープァ王国の中年貴族である。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国の男爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 夜会を主催し、善治郎に公爵就任の祝いの言葉を述べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

カープァ王国軍・王都警備隊

プジョル・ギジェン

カープァ王国軍の将軍から元帥となった巨漢の男である。強い野心と上昇志向を持つ。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国軍元帥。ギジェン侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 アウラから元帥に任命され、元帥杖を受け取った。就任の第一声として国軍の兵士募集を発表した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 軍事の全権代理人である元帥に就任した。

レガラド子爵の長男

レガラド子爵の息子である。若く経験不足であるが、やる気を持っている。

・所属組織、地位や役職
 王都警備隊の司令官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルクレツィア一行の王都受け入れにおいて警備を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 父の後を継いで王都警備隊の司令官に就任した。

後宮の侍女・護衛

アマンダ

後宮の侍女長である。規律に厳しく、後宮全体の管理を行う。

・所属組織、地位や役職
 カープァ王国後宮侍女長。
・物語内での具体的な行動や成果
 誕生したばかりのフアナ王女を抱いて世話をした。若い侍女たちに新たな四人一組の業務体制を指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

イネス

後宮の清掃担当責任者である。善治郎の世話役として的確な助言を行う。

・所属組織、地位や役職
 後宮清掃担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎の北大陸行きに同行し、『黄金の木の葉号』に乗船する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

マルグレーテ

アウラ付きの侍女である。金髪緑眼で白い肌を持つ。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 容姿が北大陸に馴染みやすいため、善治郎の北大陸行きに同行することになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

カサンドラ

カルロス王子の乳母である。

・所属組織、地位や役職
 カルロス王子の乳母。
・物語内での具体的な行動や成果
 カルロス王子の世話を行い、写真を撮りに来たフェーにジェスチャーで応対した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

エスメラルダ

フアナ王女の乳母である。

・所属組織、地位や役職
 フアナ王女の乳母。
・物語内での具体的な行動や成果
 具体的な行動の記述はないが、フアナ王女の世話をしていることが言及されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ヴァネッサ

後宮の調理責任者である。でっぷりとした中年の女性である。

・所属組織、地位や役職
 後宮付き調理責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
 バタークッキーを焼き上げ、若い侍女たちに振る舞った。ミレーラにクッキーのレシピを指導することを約束した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

フェー

問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。短い黒髪を持つ。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 携帯ゲーム機を使用してカルロス王子とフアナ王女の写真を撮影した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ドロレス

問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 携帯電話を預かり、善治郎の北大陸行きに同行している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

レテ

問題児三人組の一人と呼ばれる若い侍女である。豊かな胸元を持つ。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 厨房でフェーたちと一緒に王族用の果物を食べた。ヴァネッサが焼いたクッキーを食べて喜んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ルイサ

後宮の侍女である。真面目な性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 陣痛の知らせを受けて走る善治郎の前をランタンで照らしながら先導した。マルグレーテの代わりにアウラ付きの臨時侍女を務めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ミレーラ

後宮の侍女である。マルケス伯爵家の分家筋のお嬢様育ちである。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴァネッサからバタークッキーのレシピを学ぶことを志願した。ニルダに貴族社会の厳しさを教えようとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ニルダ・ガジール

後宮の侍女である。ガジール辺境伯の次女で、純真で無防備な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 後宮の侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 厨房で果物やクッキーを食べた。貴族社会の怖さを理解できず、ミレーラたちを絶句させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ナタリオ・マルドナド

善治郎の直衛騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ビルボ公爵直属騎士団のまとめ役。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎の北大陸行きに護衛として同行する。揺れる船上で転倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ビルボ公爵直属の即席騎士団長に就任した。

ロベルト

カープァ王国の騎士である。

・所属組織、地位や役職
 ビルボ公爵直属騎士団の騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎の北大陸行きに同行し、揺れる船上で兵士に助けられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

シャロワ・ジルベール双王国

ブルーノ

シャロワ・ジルベール双王国の前国王である。老獪な政治家である。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ・ジルベール双王国の前国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジュゼッペに王位を譲り退位した。アウラ宛てに双燃紙を送り、将来的にカープァ王国を訪問する意思を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 国王の座を退き、前王となった。

ジュゼッペ

シャロワ王家の新国王である。双王国の長期的な国力向上を目指している。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ・ジルベール双王国の国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブルーノから王位を継承した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王太子から国王へと即位した。

フランチェスコ

シャロワ王家の王子である。付与魔法の天才だが自由奔放な性格である。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ王家の王子。
・物語内での具体的な行動や成果
 カープァ王国で生産された宝玉の鑑定を行った。アウラの依頼で『瞬間移動』『空間遮断結界』『不動火球』の魔道具を作製することを引き受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ボナ

シャロワ王家の王女である。真面目で責任感が強い。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ王家の王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 タラーイェの依頼による『空間遮断結界』の魔道具化を担当することに立候補した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ベネディクト

ジルベール法王家の法王である。

・所属組織、地位や役職
 ジルベール法王家法王。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎が持ち込んだ書状の宛名として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

イザベッラ

ジルベール法王家の王女である。双王国でも優秀な治癒術士である。

・所属組織、地位や役職
 ジルベール法王家王女。治癒術士。
・物語内での具体的な行動や成果
 カープァ王国へ派遣され、アウラの出産に立ち会った。役目を終えて帰国した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ルクレツィア・ブロイ

ブロイ侯爵家の養女である。血縁上はシャロワ王家の王女であり、王族への返り咲きという野心を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ブロイ侯爵家の養女。
・物語内での具体的な行動や成果
 『凪の海』の輸送責任としてカープァ王国へ赴き、善治郎の北大陸行きへの同行を志願した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 北大陸行きに同行することが決定した。

フィリベルト

シャロワ王家の王弟である。ルクレツィアの実の父親に当たる。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ王家の王弟。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルクレツィアの過去の回想で言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 第二王子から王弟となったとルクレツィアから語られた。

ヨランダ

フィリベルトの正妻である。ルクレツィアの実の母親に当たる。

・所属組織、地位や役職
 フィリベルトの正妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルクレツィアの過去の回想で言及された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

マルガリータ

シャロワ王家の王女である。ルクレツィアの実姉であり、高名な付与魔法使いである。

・所属組織、地位や役職
 シャロワ王家の王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎に魔道具『風の鉄槌』を贈り、ルクレツィアを気遣ったことが回想で語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

フローラ

ルクレツィアの侍女である。

・所属組織、地位や役職
 ルクレツィアの侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルクレツィアと共に北大陸への航海に同行する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

タラーイェ

エレメンタカト公爵家の令嬢である。商売に熱心で行動力がある。

・所属組織、地位や役職
 エレメンタカト公爵家の令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
 金鉱山の安全確保のため『空間遮断結界』の魔道具の作製を依頼し、カープァ王国でアウラやボナと交渉した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

フィクリヤ

アニミーヤム公爵家の養女である。魔法語の研究に熱心な学者肌の人物である。

・所属組織、地位や役職
 アニミーヤム公爵家の養女。
・物語内での具体的な行動や成果
 エスピリディオンに自身の研究論文を読んでもらい、簡易版『精霊乙女召喚』の魔法を披露して指導を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

シュラ

エレハリューコ公爵家の娘である。

・所属組織、地位や役職
 エレハリューコ公爵家の娘。
・物語内での具体的な行動や成果
 『精霊乙女召喚』の儀式の復活に向けて尽力していることがフィクリヤから語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ウップサーラ王国・『黄金の木の葉号』

フレア・ウップサーラ

ウップサーラ王国の第一王女である。決断力があり、対等な扱いをする善治郎に好意を抱いている。

・所属組織、地位や役職
 ウップサーラ王国第一王女。『黄金の木の葉号』船長。
・物語内での具体的な行動や成果
 『黄金の木の葉号』で善治郎たちを北大陸への航海に乗船させることを受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 善治郎の側室となることが事実上決定している。

スカジ

フレア姫の護衛を務める女戦士である。忠誠心が強い。

・所属組織、地位や役職
 フレア姫の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 フレア姫の船長室での会談に同席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

マグヌス

『黄金の木の葉号』の副長である。実質的な船の指揮を執る海の男である。

・所属組織、地位や役職
 『黄金の木の葉号』の副長。
・物語内での具体的な行動や成果
 善治郎の挨拶に応じ、船上での厳しい指導を予告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ニコライ

ウップサーラ王国の船員である。熱烈な山羊愛好家である。

・所属組織、地位や役職
 『黄金の木の葉号』の船員。
・物語内での具体的な行動や成果
 カープァ王宮に滞在を延長し、家畜の世話や乳製品の作り方を指導している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 地位に関する大きな変化の記述はない。

ヒモ生活10巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
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展開まとめ

プロローグ 宰相と元帥と公爵

就任の儀

宰相・元帥・公爵の就任式開始

活動期に入って二十日ほどが経過し、暑さもやや和らいだ頃、カープァ王国王宮の謁見の間では重要な就任の儀が執り行われた。

会場には王都の貴族達が集まり、主役となるのはレガラド子爵フィデル、プジョル将軍、そして善治郎の三人であった。存在感の強いレガラド子爵と圧倒的な威圧感を放つプジョル将軍に挟まれた善治郎は、自らの迫力不足を自覚しながらも王族として威厳を保とうと努めていた。

レガラド子爵の宰相就任

最初に呼ばれたレガラド子爵は玉座の前で跪き、女王アウラから宰相任命書を授かった。

さらに宰相印と専用の朱色インクの入った銀製のインク壺も与えられた。宰相は法の範囲内で国家運営を代行できる強大な権限を持つ地位であり、レガラド子爵は興奮を隠せない様子でその重責を受け入れた。

プジョル将軍の元帥就任

続いてプジョル将軍が壇上へ進み、元帥に任命された。

女王アウラから任命書とともに授けられたのは、黄金と宝石で飾られた元帥杖であった。元帥は軍事における全権代理人であり、その権限は軍事分野における王の代理ともいえるものであった。

善治郎のビルボ公爵就任

最後に善治郎が呼ばれた。

善治郎は玉座の前で片膝をつき、女王アウラからビルボ公爵への叙爵と、カープァ王国王位継承権第二位の地位を与えられた。

善治郎は期待に応えることを誓い、公爵としての名簿の写しと純金製の飾りピンを受け取った。その飾りは本来ターバン留めとして使われるものであったが、北大陸由来の衣装にも対応できるよう工夫されていた。

新たな統治体制の成立

こうして宰相、元帥、ビルボ公爵の就任の儀は滞りなく終了した。

宰相となったレガラド子爵と元帥となったプジョル将軍によって、政治と軍事は王が直接指示しなくとも運営できる体制となった。一方で、それは女王アウラの負担を軽減すると同時に、国が王の意図しない方向へ進む可能性も抱えることを意味していた。

大国カープァ王国の権力構造に大きな変化が生じたことで、王国の貴族達はそれぞれの思惑を抱きながら新たな情勢へ対応し始めるのであった。

第一章 野心と商売と安全策

妊娠中のアウラの診察

宰相、元帥、ビルボ公爵の誕生から数日後、第二子を妊娠中のアウラはミシェル医師とイザベッラ王女による診察を受けていた。

診察の結果、母子ともに健康で経過は順調であり、出産予定日もあと二か月余りと見込まれていた。今回の妊娠は前回よりも症状が軽く、イザベッラ王女の治癒魔法によって精神的疲労も取り除かれていたため、アウラはむしろ以前より体調が良いと感じていた。

診察後、イザベッラ王女は精神疲労除去の施術を施し、体調の変化があればすぐに呼ぶよう伝えて退出した。

治癒魔法とアウラの負担軽減

施術後の体調の良さから、アウラは冗談交じりに宰相や元帥を任命する必要もなかったかもしれないと漏らした。

しかしミシェル医師は、現在の仕事量ですら妊婦には推奨できないと強く諫めた。アウラも自身と胎児の健康が最優先であることを認め、無理はしないと約束した。

宰相と元帥の任命はすでに終わっているため、アウラは今後の運営状況を確認することにした。

レガラド宰相の穏当な動き

アウラの問いに対し、第一秘書ファビオはレガラド宰相の動向を報告した。

レガラド宰相は現在のところ大きな動きを見せておらず、宰相直属の高官を数名募集している程度であった。それは宰相として当然の権限の範囲内であり、アウラも許容できるものと判断した。

能力が高く危険な野心も少ない人物であるため、引き続き監視は行うものの、当面は様子を見る方針となった。

プジョル元帥の兵士募集命令

続いて話題はプジョル元帥へ移った。

ファビオは、プジョル元帥が就任後最初の命令として国軍兵士の募集を発表したと報告した。アウラは即座にプジョル元帥を呼び出すよう命じたが、ファビオはすでに手配済みであると答えた。

国軍は戦争による損耗で兵力不足となっており、予算にも余裕があったため、兵士募集自体は元帥の権限として問題はなかった。しかしアウラは、地方の若者が軍へ流出し、農村の労働力不足が深刻化することを懸念していた。

プジョル元帥との対話

呼び出されたプジョル元帥は、兵士募集命令について説明した。

当初の命令書は不十分な内容だったとして、新たに募集人数と募集期間を限定した詳細な書類を提出した。その内容は王都周辺のみを対象とする規模であり、地方への影響を最小限に抑えるものだった。

さらにプジョル元帥は、この募集の目的は実際の兵力増強よりも、元帥就任に伴う国軍再建の意思を国内外へ示すことであると説明した。また、王都で増加している元孤児の若者達を国軍に取り込み、治安維持にも役立てる考えを示した。

王都治安への効果と承認

アウラはプジョル元帥の説明を聞き、その意図に理解を示した。

戦争で親を失った孤児達の多くは成長後に治安を乱す存在となっており、その予備軍を国軍へ吸収することは王都警備の助けになると認めた。また、レガラド宰相の後任として若い長男が王都警備隊司令官となるため、その負担軽減にもつながると判断した。

その結果、アウラはプジョル元帥の計画を認め、自身からは何も口を出さず実行を許可した。

ルシンダへの警戒

プジョル元帥が退室した後、アウラは今回の一件を振り返った。

アウラは、プジョル元帥が当初は大規模な兵士増員を考えていたものの、誰かの助言によって計画を修正したと確信していた。そしてその知恵者こそ、ギジェン侯爵夫人ルシンダであると見ていた。

ルシンダは現在のところ王家や王国に害となる行動を取ってはいないが、優れた才覚を持つ人物であることは間違いなかった。アウラは、彼女がプジョルの暴走を抑える存在であることを期待しつつも、その才能が野心を後押しする可能性も警戒し、ファビオに監視強化を命じるのであった。

ビルボ公爵となった善治郎の立場

善治郎はビルボ公爵の爵位を授かったが、それは宰相や元帥のような職務上の地位ではなく、貴族としての爵位であった。そのため権限は増えたものの義務は少なく、比較的自由な立場にあった。

その結果、貴族達は善治郎に接近しようとし、善治郎は連日のように夜会や立食会へ招かれていた。善治郎は公爵として扱われながらも、自身は公爵である前に女王アウラの夫であるという立場を強調し続けていた。

貴族達の思惑への警戒

夜会では公爵府や直属騎士団の人事について探りを入れる者も多かったが、善治郎は必要最小限の体制を整える方針を説明していた。

善治郎はこれまでの実績によって、もはや無能なお飾りとは見なされていなかった。王族として十分な能力を持つ人物と評価されており、そのため一部には善治郎を担ぎ上げようと考える者が現れる可能性もあった。

そのため善治郎は、以前にも増して自身の言動に注意を払っていた。

タラーイェとの商談

善治郎は夜会でシャロワ・ジルベール双王国から来訪しているタラーイェのもとを訪れた。

タラーイェは空間遮断結界の魔道具入手を目的としていたが、交渉相手であるアウラが多忙なため、代わりに社交界で積極的に活動していた。彼女は大量の金細工を持ち込み、それを宣伝しながら販路を広げていたため、多くの貴族達の注目を集めていた。

善治郎はタラーイェの商売人としての姿勢に親しみを感じながら会話を交わした。

木工品と資源の価値の違い

タラーイェは、双王国では木材が希少であるため、カープァ王国の木工品に大きな価値があると語った。

善治郎はその話から、双王国における燃料事情に関心を持った。タラーイェは、貴族や王宮では魔道具を使うが、庶民は家畜の糞や不要な部位を乾燥させて燃料としていると説明した。

一方でカープァ王国では草木が豊富すぎて邪魔者扱いされ、焼却処分されることもあると知り、両国の資源事情の違いが浮き彫りになった。

輸送と商機の限界

善治郎は不要な木材を双王国へ輸出する案を考えたが、輸送距離と輸送費の問題から現実的ではないと判断した。

その後、木材を炭に加工すれば商品価値が生まれる可能性について話し合ったが、距離の壁は依然として大きかった。

タラーイェは今度は成長の早い草木の種を譲ってほしいと提案したが、善治郎は外来種による環境への影響を理由に断った。

多忙な王族夫婦の情報交換

夜会を終えた善治郎は後宮へ戻り、アウラとその日の出来事について情報交換を行った。

善治郎はアウラの体調を確認し、アウラは問題なく過ごしていることを伝えた。その後、プジョル元帥やタラーイェについて互いの見聞を共有した。

アウラは、ルシンダの存在によってプジョルの行動が洗練されつつあることを警戒していた。一方の善治郎は、暴走を抑える存在が現れたことを前向きに捉えていたが、アウラは野心そのものが消えたわけではないと指摘した。

王位簒奪が起こり得ない理由

善治郎はプジョルの野心が王位簒奪に至る可能性を尋ねた。

しかしアウラは、南大陸では血統魔法を持たない者は王として認められないため、それは不可能であると説明した。仮に実権を握ることはあっても、王家そのものに取って代わることはできないと語った。

善治郎は、血統魔法が王家の正統性の根拠となっている南大陸独特の価値観を改めて理解した。

タラーイェの評判と贈り物の相談

話題は再びタラーイェへ移った。

タラーイェは男性だけでなく女性貴族からも高い評価を得ており、その理由として高品質な金細工と巧みな立ち回りが挙げられた。

その流れで善治郎は、アウラへの贈り物としてタラーイェの宝飾品を購入すべきか相談した。アウラは王族として夫婦仲を示す意味でも必要だと認めたが、同時にフレアにも贈る必要があると説明した。

善治郎はその複雑な配慮に頭を抱えながらも、タラーイェに選定を任せる方針を確認した。

空間遮断結界の交渉と北大陸行き

タラーイェの本来の目的である空間遮断結界の魔道具についても話し合われた。

アウラは魔道具化の担当は自分が引き受けると述べ、その流れで善治郎の北大陸行きについて話題が移った。

善治郎がウップサーラ王国へ赴けば、フレアとの婚姻交渉を円滑に進められるだけでなく、北大陸の情報収集や瞬間移動を利用した外交面でも大きな利益があるとアウラは説明した。

善治郎は必要性を理解しつつも、大陸間航海への恐怖を率直に語った。

安全対策と決意

アウラは黄金の木の葉号に搭載される真水化と凪の海の魔道具によって航海の安全性が高まることを説明した。

さらに善治郎専用の瞬間移動の魔道具や、空間遮断結界の魔道具を用意する案も示した。善治郎はそれらの対策を聞き、自身の安全が十分確保されると判断した。

最終的に善治郎は北大陸行きを受け入れ、フレアの父に直接許しを請うことも自分の責任であると認めた。

フィクリヤの近況

善治郎はもう一人の来訪者であるフィクリヤについても尋ねた。

フィクリヤは社交活動にはほとんど参加せず、魔法研究だけに集中していた。彼女の論文はすでにエスピリディオンによって読まれており、未熟な部分は多いものの興味深い発見も含まれていると評価されていた。

アウラは近いうちに面談が実現するだろうと語り、初回だけは善治郎にも同席を頼んだ。

生まれてくる子供への思い

一通りの話し合いを終えた後、善治郎はアウラの隣へ移り、膨らんだ腹に手を添えた。

二人はお腹の子が大人しいことを話題にしながら、生まれてくる子供の名前や将来について語り合った。

善治郎とアウラは穏やかな時間を過ごしながら、明るい未来への思いを共有するのであった。

第二章 老賢者と魔法研究者と見届け人

ルクレツィアの到着と歓迎式典

シャロワ・ジルベール双王国から、ルクレツィア・ブロイを責任者とする交代要員一行がカープァ王国の王都へ到着した。事前に情報が伝えられていたため受け入れは概ね円滑に進み、到着後は旅の疲れを癒やすため二日間の休養が与えられた。

その後の歓迎式典でルクレツィアはアウラ女王と善治郎に挨拶し、フレア姫に魔道具『凪の海』を正式に引き渡した。所有権の移譲が滞りなく完了したことで、夜会の開催が宣言され、ルクレツィアは主賓として歓迎を受けた。

フレア姫の出立希望

歓迎式典後、アウラと善治郎はフレア姫を呼び出した。フレア姫は『凪の海』を一刻も早く実戦配備するため、翌日にでもワレンティアへ向かいたいと申し出た。

『凪の海』は航海の安全を大きく向上させる魔道具である一方、その運用時間や再使用間隔、船内での設置場所や固定方法など、多くの検証が必要であった。そのためフレア姫は『黄金の木の葉号』出航前に十分な試験期間を確保したいと考えていた。

善治郎の北大陸渡航決意

フレア姫の申し出を受けたアウラは、帰路の『黄金の木の葉号』に何人まで追加乗船できるかを尋ねた。フレア姫は十人程度なら可能だと答えた。

そこで善治郎は、自らがその船に乗り北大陸へ渡航する意思を明かした。フレア姫は大陸間航海の危険性を指摘し、本当に覚悟があるのか確認したが、善治郎とアウラは危険を理解した上での決断だと説明した。

フレア姫は善治郎の覚悟を認め、乗船を受け入れた。ただし長期航海の厳しさを重ねて警告し、善治郎もその覚悟を新たにした。

フレア姫とルクレツィアの王都出発

翌日、フレア姫は『凪の海』と共にワレンティアへ向かった。善治郎は『瞬間移動』による移送も提案したが、フレア姫は貴重な魔道具を自ら運搬したいとして断った。

さらにルクレツィアも同行を申し出た。ブロイ侯爵家秘蔵の魔道具であるため操作説明に協力できるという理由であり、フレア姫もこれを受け入れた。こうして二人は共に王都を後にした。

フィクリヤとエスピリディオンの対面

王都ではフィクリヤとエスピリディオンの面談が行われた。フィクリヤは魔法研究者として助言を求め、エスピリディオンも率直な意見を述べることを約束した。

フィクリヤが提出した研究論文を読んだエスピリディオンは、複数の理論的誤りを厳しく指摘した。しかし同時に、水魔法に関する新たな法則については高く評価した。

落胆したフィクリヤであったが、自らの誤りを認めつつ議論を深め、やがて二人は魔法語研究について活発な意見交換を行うようになった。

魔法語研究と善治郎の提案

議論の中で、魔法語研究の難しさと重要性が語られた。フィクリヤの理論には誤りがあったものの、一部では有効な法則として機能しており、新たな魔法の開発にも役立っていた。

それを聞いた善治郎は、局所的に成立する法則であっても公開し、多くの魔法使いに利用させれば研究材料が増え、結果的に魔法語研究が発展するのではないかと提案した。

エスピリディオンとフィクリヤは当初戸惑ったものの、その考えの有益性を認めた。ただし秘匿魔法との関係もあり、フィクリヤは一部の研究成果のみ公開する意向を示した。

精霊乙女召喚の真相

話題はアニミーヤム公爵家に伝わる秘匿魔法『精霊乙女召喚』へと移った。フィクリヤは四部族長家の創立伝説を調査した結果、『精霊乙女』伝説は権威付けのために利用された可能性が高いと説明した。

さらに『精霊乙女召喚』は本当に精霊乙女を呼び出す魔法ではなく、水や土などの元素で人型を作り出す高度な魔法であったという考察を語った。表向きの儀式の裏で、本来の魔法語による呪文が唱えられていたのだと推測していた。

また現在でも四公爵家には伝統的な儀式を信じる者が多く、フィクリヤの研究内容は公然とは語りにくい事情があることも明かされた。

簡易版精霊乙女召喚の実演

フィクリヤは自ら開発した簡易版『精霊乙女召喚』を実演した。水を入れたコップを用意し、呪文を唱えると、水は三頭身の小さな人形へと変化した。

その水人形は命令に従って歩行したが、できる行動は極めて単純であり、持続時間も短かった。それでも善治郎とエスピリディオンは大きな興味を示した。

エスピリディオンによる検証

エスピリディオンは簡易版『精霊乙女召喚』を詳細に分析し、自ら呪文を改変したり追加命令を与えたりして挙動を観察した。

その結果、水人形は停止などの単純命令には従うものの、複雑な命令には対応できないことが判明した。また呪文構成のわずかな変更でも発動しなくなるなど、魔法語の繊細さも確認された。

二人は師弟のような関係で議論を重ね、さらなる研究の可能性を探った。

ビー玉量産成功の報告

善治郎は議論を見守りながら、将来的に『精霊乙女召喚』が発展した場合の影響について考えていた。量産技術や命令性能が向上すれば、大きな価値を持つ可能性があると感じたのである。

その日の夜、善治郎のもとには、魔道具化に使用できる品質のビー玉の量産に成功したという報告が届けられた。

第三章 空間遮断結界と瞬間移動と不動火球

空間遮断結界の魔道具化計画

数日後、カープァ王国と双王国の重鎮たちが集まり、エレメンタカト公爵家から依頼された『空間遮断結界』の魔道具化について話し合いが行われた。

依頼主であるタラーイェは、金山で働く鉱夫たちの安全確保を目的として『空間遮断結界』の魔道具を求めていた。アウラは依頼自体は了承済みだが、細かな条件次第では破談の可能性もあると念を押した。

魔道具作製担当者の決定

ボナ王女は『空間遮断結界』がカープァ王家の血統魔法であるため、カープァ王家とシャロワ王家の共同作業になることを確認した。

アウラは自らが時空魔法の担当になると答えた。これに対しフランチェスコ王子とボナ王女は、完成までおよそ二年を要すると見積もった。

さらにシャロワ王家側の担当者について話し合われた結果、強い意欲を示したボナ王女が担当を引き受けることになった。フランチェスコ王子もそれを認め、ボナ王女は責任感を示しつつも魔道具作製への意欲を優先した。

タラーイェの今後の方針

魔道具完成まで二年を要するため、アウラはタラーイェ自身がその間どうするつもりなのかを尋ねた。

タラーイェは双王国へ帰国し、必要に応じて進捗確認のため再訪したいと述べた。アウラは迎えの『瞬間移動』には高い対価が必要だと説明したが、タラーイェは交易による利益で十分に回収できると自信を見せた。

その後、『空間遮断結界』の具体的な仕様についてはボナ王女とタラーイェが別室で話し合うこととなった。

ビー玉第二陣の鑑定

ボナ王女とタラーイェが退室すると、アウラは本来の目的であるビー玉の鑑定をフランチェスコ王子に依頼した。

秘書官が持ち込んだ木箱には十粒のビー玉が収められていた。フランチェスコ王子は一粒ずつ慎重に鑑定し、十粒中六粒を合格と判定した。

合格品はまだ善治郎の持つ日本製ビー玉には及ばないものの、付与魔法の媒体として十分な価値があると評価された。

製造現場への改善提案

善治郎は不合格となった四粒について、具体的な欠点を文書化してほしいと提案した。また合格品の一部も見本として製造現場へ返却し、不良品との比較ができるようにすべきだと主張した。

アウラはその意見を採用し、合格品三粒を見本として現場へ戻すことを決定した。

一方、フランチェスコ王子は鑑定だけでなく詳細な評価まで求められるのであれば報酬が欲しいと主張した。アウラは残る合格品三粒を与える代わりに、別件の依頼を引き受けてもらうことを提案した。

秘密裏の魔道具作製依頼

アウラは日本製ビー玉を二粒取り出し、『瞬間移動』と『空間遮断結界』の魔道具を秘密裏に作製してほしいと依頼した。

特に『瞬間移動』の魔道具は、緊急時に即座に使用できる使い切り型であることが条件だった。

フランチェスコ王子は日本製ビー玉の品質を確認すると、どちらの魔道具も短期間で完成可能だと答えた。ただし、時空魔法の使い手であるカープァ王家の協力が不可欠であることも説明した。

アウラは自らが魔法の担当になると宣言し、善治郎も自分では失敗の可能性が高いとしてそれに同意した。

善治郎の新たな依頼

余裕があるならばという条件付きで、善治郎はさらに『不動火球』の魔道具作製を依頼した。

善治郎が用意した設計図には、船内に固定できる金属製の器具と、その中に『不動火球』を収める構造が描かれていた。目的は大陸間航海中でも安全に火を利用できる環境を整えることであった。

航海中は火の使用が大きく制限されるため、お茶や簡単なスープを作れる環境を確保したいと考えていたのである。

設計図を見たフランチェスコ王子は強い興味を示し、『瞬間移動』『空間遮断結界』『不動火球』の三つすべてを引き受けると約束した。

その返答を受けた善治郎は安堵し、計画が前進したことに胸をなで下ろした。

ビー玉量産成功後の夫婦の対話

ガラス職人への報酬と機密保持の問題

その日の夜、善治郎とアウラは後宮のリビングルームで、ビー玉製造や魔道具計画の進捗について話し合っていた。

カープァ王国製ビー玉の第二陣は十粒中六粒が合格となり、アウラはガラス職人たちへの特別報酬や休暇を検討していた。善治郎は機密保持や職人たちの安全を心配したが、アウラは職人を過度に拘束すれば成果も人材も得られなくなると説明した。

ガラス製造成功の事実そのものは将来的に隠し通せないため、機密保持と人材確保の両立を図る必要があるとアウラは語った。

魔道具作製と情報開示の方針

善治郎はアウラが担当することになった魔道具作製について確認した。アウラは作業自体の負担は少ないが、『瞬間移動』だけは消費魔力量が大きいため注意が必要だと説明した。

続いて善治郎は、北大陸航海に持参する魔道具についてフレア姫へどこまで説明すべきか相談した。

アウラは『瞬間移動』の魔道具については存在そのものを秘匿すべきだと断言した。一方で『不動火球』については安全確認のためにもフレア姫へ説明し、実際に使用してもらった上で許可を得るべきだと提案した。

さらに『空間遮断結界』については秘匿を勧めたが、善治郎は別の利用法を考えていた。

空間遮断結界を錨として利用する発想

善治郎は『空間遮断結界』が空間そのものを固定する性質を持つならば、船をその場に固定する超強力な錨として利用できるのではないかと考えていた。

説明を受けたアウラは興味を示したが、善治郎はコピー用紙を使って問題点を説明した。

波に揺れる船の一部分だけを固定した場合、固定箇所に負荷が集中し、船体そのものが破損する危険があると示したのである。紙の中央を押さえながら両端を揺らす実演の結果、紙は破れてしまった。

アウラは使い道がないと判断したが、善治郎は沈没が避けられない状況であれば最後の手段として利用価値があると考えていた。

北大陸行きの人員構成の検討

話題は北大陸遠征の人選へ移った。

フレア姫からの連絡によれば、乗船できる人数は十人で、個室は二部屋のみであった。善治郎とアウラは人員構成を検討し、善治郎、護衛騎士ナタリオ、侍女イネス、侍女マルグレーテの四人をまず確定させた。

護衛は最低四人、侍女は最低三人必要と判断され、人選はそれぞれナタリオとイネスに一任する方針となった。

外交交渉を補佐する専門家の同行案も出たが、有能な副外交官がいることで善治郎がお飾りに見られる危険性や、船室の男女比の問題が指摘されたため、保留となった。

ビー玉量産がもたらす技術革命への懸念

話題は再びビー玉へ戻った。

善治郎は、ビー玉量産に成功したことで技術革新の流れが止められなくなったと実感していた。アウラもそれを認め、成功率は低いものの量産体制そのものが確立された事実は重いと語った。

さらに善治郎は、フランチェスコ王子が構想している『魔道具を作製する魔道具』が完成すれば、ビー玉量産と組み合わさることで、作り手に依存せず短時間で大量生産できる魔道具の時代が訪れると警戒した。

アウラもフランチェスコ王子ならば実現しかねないと認め、その危険性と可能性を理解していた。

精霊乙女召喚を巡る危険性

善治郎は話題を変え、フィクリヤとエスピリディオンによる『精霊乙女召喚』研究について触れた。

善治郎は、もしこの魔法が復活し魔道具化されれば大きな影響力を持つと考えていた。しかしアウラは、実際にはその可能性は低いと説明した。

四公爵家の多くは精霊乙女を祖先として信仰しているため、『精霊乙女召喚』を魔道具化した場合、祖先を魔道具に封じて利用していると受け取られかねず、内戦に発展する危険すらあるからである。

一方でアウラは、フィクリヤよりもエスピリディオンの方を警戒していた。四公爵家と無関係なカープァ王国人であるエスピリディオンがその魔法を使えるようになれば、伝説との整合性が崩れ、さらに大きな問題になりかねないためであった。

そのため、人目のある場所での使用を避けるよう注意すべきだという結論になった。

双王国への協力とアウラの真意

沈黙の後、善治郎は本題に踏み込んだ。

ビー玉量産や『魔道具を作製する魔道具』の開発支援は、以前アウラが語っていた不穏な情勢への備えが理由ではないかと問いかけた。

アウラはそれを認め、双王国の不自然な態度や北大陸情報への執着から、北大陸発の大動乱が起こる可能性を疑っていると説明した。そのため、善治郎を北大陸へ派遣し、情報収集を行わせようとしていたのである。

しかし善治郎はさらに追及した。ビー玉を供給し続ければ、双王国の国力がカープァ王国を上回ることになるはずであり、アウラがそれを看過するとは思えなかったのである。

側室受け入れという政治的選択

善治郎の指摘を受け、アウラは本音を明かした。

北大陸の脅威が現実であり、双王国との協調が不可欠だと判断した場合、両国の結びつきを強固にするため、善治郎の第二側室として双王国の姫を迎えるつもりだと告げた。

候補はボナ王女かルクレツィアであり、カープァ王国としては付与魔法の使い手であるボナ王女を望むが、双王国側はルクレツィアを推すだろうとアウラは分析した。

ただし、それは北大陸の情勢調査の結果、本当に両国が歩調を合わせなければならない大きな危機が存在すると判断した場合に限ると説明した。

そして最後にアウラは、必要と判断したならば双王国の姫を娶るよう善治郎へ命じた。

それは妻としての願いではなく、国王としての命令であり、善治郎は重い気持ちを抱えながら受け入れるのだった。

第四章 第二子誕生と三つの約束と四つの魔道具

ワレンティア訪問と乗船準備の確認

ワレンティアへの到着とナタリオの苦労

およそ一か月後、善治郎はワレンティアからの小飛竜便を受け、『瞬間移動』で港町ワレンティアを訪れた。同行者は侍女イネスと代官所所属の兵士たちだけであり、騎士ナタリオは騎士団の人選作業に追われていた。

ナタリオはビルボ公爵直属騎士団の人員選抜に苦慮していた。縁故や実力を考慮すると候補者が多すぎる上、騎士団の規模が小さいため全員を採用することもできず、騎士団長代行として難しい判断を迫られていた。

黄金の木の葉号への乗船

善治郎はワレンティア港へ向かい、『黄金の木の葉号』に到着した。そこでは船長フレア姫をはじめ、副長や主要船員たちが待機しており、ルクレツィアも同席していた。

歓迎を受けた善治郎は進捗確認のため乗船した。船に乗ると独特の揺れに襲われたが、しばらく歩くうちに感覚を掴み、問題なく船内を移動できるようになった。

凪の海の設置確認

フレア姫は最初に『凪の海』の魔道具を案内した。

魔道具は船体中央付近に設置されており、厳重な固定措置が施されていた。船の安定性と緊急時の操作性を両立させるため、試行錯誤の末に現在の位置へ落ち着いたことをフレア姫は説明した。

善治郎は魔道具に触れ、その堅牢な作りを確認した。

凪の海の実演

フレア姫はその場で『凪の海』を発動した。

発動と同時に風が止み、船の揺れも完全に消失した。海上とは思えない静寂と安定が生まれ、善治郎は大きな驚きを覚えた。

フレア姫は、この魔道具によって『黄金の木の葉号』は大海原を征服したと言えるほどの価値を得たと語った。善治郎もその効果が航海に与える恩恵の大きさを実感していた。

船員との関係についての確認

副長の高い評価について話す中で、善治郎は航海中の礼儀作法について自らの考えを示した。

緊急時に形式的な敬語や礼節を優先されるよりも、率直な言葉で危険を知らせてもらう方が重要だと考えた善治郎は、自分に対しても普段通り接するよう船員たちへ伝えてほしいとフレア姫へ依頼した。

フレア姫はその考えを理解し、了承した。

真水化の魔道具の実演

続いてフレア姫は『真水化』の魔道具を紹介した。

海水の入った大樽を用意し、まず善治郎に海水を味見させた後、『真水化』を発動した。魔道具が作動すると、海水から塩分が分離され、小さな石を入れた袋へ塩が集められていった。

処理後の水を飲んだ善治郎は、普通の飲料水と変わらない品質であることを確認した。また、分離された塩も実際に存在していた。

ルクレツィアによる補足説明

善治郎の質問に対し、ルクレツィアは『凪の海』の制御下でも『真水化』や『水作製』は問題なく発動することを説明した。

さらに、シャロワ王家では魔道具化の過程で魔法性能を向上させる研究が進められており、『真水化』の魔道具も通常の魔法より高性能になっていると語った。

善治郎はルクレツィアの知識量と教養に感心した。

長期航海への安心感

『真水化』の魔道具によって、全船員が必要とする飲料水を確保できることが判明した。

『凪の海』による安全性向上と『真水化』による飲料水問題の解決により、善治郎は大陸間航海に対する不安が大きく軽減されたことを実感した。

善治郎の魔道具の検分

善治郎は自身が持参した『不動火球』と『空間遮断結界』の魔道具についても確認を依頼した。

船長室へ移動し、それぞれの機能と想定用途を説明すると、フレア姫は驚きながらも慎重に評価を行った。

まず『不動火球』については有用性を認めたものの、火災の危険性が完全には排除できないため、副長の確認を経た上で条件付きの使用許可になるだろうと判断した。

空間遮断結界の危険性

一方で『空間遮断結界』については全く異なる判断が下された。

フレア姫は航海中、この魔道具を善治郎に持たせることを認めず、船側で預かると宣言した。

その理由は、この魔道具が発動すれば船を強制的に急停止させることが可能であり、船体への重大な損傷や船員の転落事故を引き起こしかねないためであった。

説明を受けた善治郎はその危険性を理解し、航海中は船側で保管してもらうことを了承した。

凪の海の効果時間確認

船長室で話している間に『凪の海』の効果が終了し、船は再び揺れ始めた。

善治郎は腕時計で時間を確認し、発動から停止まで五十二分であったことを記録した。これは今後の参考になる重要な情報であった。

ルクレツィアの突然の願い

視察を終えた善治郎は下船し、フレア姫と別れの挨拶を交わそうとしていた。

その時、ルクレツィアが真剣な表情でフレア姫へ願いを申し出た。善治郎の許可を得た後、ルクレツィアは緊張しながらもはっきりと自分の意思を口にした。

ルクレツィアは、自分も『黄金の木の葉号』に乗せてほしいと強く願い出た。

その言葉を聞いた善治郎は、最悪の予想が的中したことを悟り、思わず空を見上げて溜息をつくのだった。

ルクレツィアの同行問題と側室を巡る対話

ルクレツィアの北大陸行きが既定路線となる

数日後の夜、善治郎はルクレツィアの突然の北大陸行き宣言によって生じた問題への対応を終え、アウラと今後について話し合っていた。

善治郎はルクレツィアを『瞬間移動』で双王国へ送り、現在は返答待ちの状態であると報告した。しかしアウラは、双王国がその申し出を拒否する理由は存在しないと断言した。双王国にとってルクレツィアは失っても大きな損失にならない立場であり、北大陸の情報収集という利益を考えれば、むしろ歓迎される提案だと判断していた。

善治郎もその説明を受け、ルクレツィアの同行はほぼ確定だと理解した。

双王国が大使を送らなかった理由

善治郎は、双王国がなぜもっと早く公式な人員の乗船を求めなかったのか疑問を口にした。

それに対しアウラは、双王国が北大陸の勢力を警戒している可能性を指摘した。表立った外交行動は避けたい一方で情報は欲しているため、ルクレツィア個人の行動という形ならば都合が良いのだと説明した。

ルクレツィアがブロイ侯爵家の娘として振る舞えば、善治郎という王配の存在の陰に隠れながら行動できるため、双王国としても都合が良かったのである。

フレア姫にとっての利益

善治郎は同行を断る選択肢がないことを嘆いたが、アウラはフレア姫にとっても利益が大きいと指摘した。

ルクレツィアは『凪の海』や『真水化』の魔道具に詳しく、長期航海中の技術的支援が期待できる。また将来的に双王国とウップサーラ王国の交易が実現する可能性を考えれば、ルクレツィアが直接ウップサーラ王国と関係を築くことにも価値があった。

そのため、ルクレツィアの同行は双方に利益がある話であった。

ルクレツィアへの警戒

善治郎は、百日近い船旅の中でルクレツィアが男女関係の意味で行動を起こす可能性を懸念した。

しかしアウラは、ルクレツィアが目標に対して真面目であることを挙げ、善治郎に嫌われるような軽率な行動は避けるかもしれないと語った。

それでも善治郎は、フレア姫との婚姻交渉という重要な目的を抱えている以上、ルクレツィアには大人しくしていてほしいと本音を漏らした。

マルガリータとの約束

善治郎は右手首にはめた『風の鉄槌』を見つめながら、マルガリータ王女との約束を思い出していた。

マルガリータは魔道具を贈る代わりに、妹であるルクレツィアからの誘いを三度までは無下に断らないよう求めていた。

その約束がある以上、善治郎はルクレツィアを完全に拒絶することもできず、今回の件も一回分として数えたいと愚痴をこぼした。

側室についての本音

その後アウラは、ルクレツィアの側室入りについて率直な考えを尋ねた。

善治郎は、ルクレツィアだから嫌なのではなく、そもそも側室そのものが嫌だと即答した。しかしアウラは、それでも善治郎がフレア姫を側室として受け入れることには同意していると指摘した。

そこで善治郎は、フレア姫に対して好意を抱いていることを認めた。フレア姫の容姿や人柄だけでなく、男社会の中で船長となり大陸間航行を成し遂げた意志や功績に深い敬意を抱いていたのである。

ボナ王女との比較

アウラは、善治郎がルクレツィアにはあまり好意を抱いていないように見えると指摘し、もし双王国から側室を迎える必要が生じた場合、ボナ王女の方が良いのかと尋ねた。

国策として双王国との結びつきを強化する必要が生じた場合、善治郎と候補者との相性は無視できない問題であった。そのためアウラは善治郎の本音を確認しようとしていた。

アウラの不安

善治郎との会話を続けながら、アウラは内心で不安を抱いていた。

これまで国益を理由として、善治郎には何度も譲歩を求めてきた。善治郎はそれを受け入れてきたが、その結果として善治郎が自分の希望は叶わないものだと諦め始めていることに、アウラは気づいていた。

善治郎本人はまだその変化を自覚していなかったが、アウラはその事実に恐れを感じていた。

出産後の決意

アウラは、出産後は本格的に双王国との交渉へ動くつもりであると語った。

王位継承が終わった後のブルーノ王と直接話し合い、同盟や交易など今後の関係を決着させる考えであった。

善治郎は無理をしないよう気遣いの言葉をかけ、アウラも感謝を返した。しかしアウラは、自分を優しく見つめる善治郎の視線が、将来変わってしまうかもしれないという恐怖を密かに抱いていた。

第五章 出産と出張と出航

新年祭と第二子の誕生

アウラ不在の新年祭

年が改まり、カープァ王国では新年祭が執り行われた。善治郎にとって三度目の新年祭であったが、今回はアウラが出産を控えて後宮で安静にしていたため、善治郎が代わって新年祭を主催することになった。

儀式そのものは決められた役割を果たすだけであったが、貴族達の視線には以前より強い関心が向けられていた。女王が出産によって公務を行えない状況となり、一部貴族が抱いていた懸念が現実となったためである。善治郎はこれまで以上に「ゼンジロウ陛下」と呼ばれる機会が増えていた。

陣痛の報せを受けながらの務め

新年祭最終日の夜、王宮前庭には蝋燭を手にした市民達が集まり、美しい光景が広がっていた。

しかし善治郎はその景色を楽しむ余裕がなかった。儀式の前にアウラの陣痛が始まったという報告を受けていたからである。

今すぐ後宮へ向かいたい気持ちを抱えながらも、自分にしか果たせない役目として新年祭の締めくくりを務めることを選び、笑顔を保ちながら儀式を続けた。

後宮への全力疾走

新年祭を無事終えた善治郎は、後宮へ向かって全力で駆け出した。

侍女ルイサは危険を案じて忠告しながらも、LEDランタンで足元を照えし、善治郎を先導した。

ようやくリビングルームへ辿り着いた善治郎は侍女達にアウラの様子を尋ねた。すると、アウラはすでに無事第二子を出産しており、母子ともに健康であると知らされた。

安産だったアウラとの再会

善治郎はすぐに寝室へ向かった。

そこには健康そうな笑顔を浮かべるアウラがいた。アウラは前回よりも短時間で出産を終え、イザベッラ王女の治癒魔法も受けたため体調に問題はないと説明した。

善治郎はイザベッラ王女へ深く感謝を伝えた。イザベッラ王女は、今回はアウラ自身の力で無事に出産を成し遂げたのだと答えた。

一方で、元気な様子を見せるアウラに対して、ミシェル医師とイザベッラ王女は安静を保つよう釘を刺していた。

娘との初対面

善治郎はアマンダ侍女長に抱かれて眠る赤子へ目を向けた。

第二子は女の子であり、善治郎は眠る我が子を見つめながら愛おしさを感じていた。しかし起こしてしまうことを恐れ、触れることは控えた。

その後、アウラは女児の名前をフアナにすると告げた。善治郎はその名前を何度も口にしながら受け入れていた。

一方で、自分が贈る日本風の名前についてはまだ決められていないことを打ち明けた。

イザベッラ王女との別れの話

アウラの体調が安定していることを確認したイザベッラ王女は、三日ほど様子を見た後に帰国する意向を伝えた。

善治郎は生まれたばかりのフアナについて尋ねたが、イザベッラ王女は現在のところ問題は見当たらないと答えた。ただし、自身との契約はアウラの出産までであり、新生児の管理は担当外であると説明した。

また、生まれたばかりの子供に回復魔法を施すことは好ましくなく、かえって身体を弱くしてしまう場合があるとも語った。

感謝の言葉

説明を受けた善治郎は納得し、これまでの尽力に対してイザベッラ王女へ感謝を伝えた。

アウラもまた、安心して出産に臨めたのはイザベッラ王女がそばにいてくれたおかげだと礼を述べた。

イザベッラ王女は二人の感謝を穏やかに受け止めるのであった。

双王国での再会と渡航準備

ルクレツィアの渡航許可確認

善治郎は『瞬間移動』でシャロワ・ジルベール双王国を訪れ、紫卵宮でルクレツィアと面会した。

善治郎はブルーノ前王とベネディクト法王への書状を託した後、本題としてルクレツィアの北大陸行きについて確認した。ルクレツィアはブルーノ前王から正式な許可を得たと答えた。

善治郎は、その許可が双王国の公式派遣ではなく個人の渡航を認める形であり、さらに新王ではなく前王の許可のままであることから、双王国首脳部が慎重な姿勢を取っていることを察した。

ワレンティア行きの日程調整

善治郎は『黄金の木の葉号』出航までの日程を説明し、ルクレツィアと侍女フローラの二人が乗船することを確認した。

ルクレツィアはワレンティアへ向かう前にカープァ王国王都へ立ち寄り、アウラとの面会を希望した。善治郎は実現の保証はできないと前置きしながらも、話を通すことを約束した。

ルクレツィアの本心

会話の中で善治郎は、ルクレツィアが危険な大陸間航海を志願した理由を尋ねた。

ルクレツィアは、自身が本来シャロワ王家の血を引きながら、血統魔法の欠落によって王族としての立場を失い、ブロイ侯爵家の養女として育った経緯を語った。

血縁上の家族も養家も誠実に愛情を注いだが、その結果としてルクレツィアは常に王族と侯爵家の間で揺れ動く立場に置かれていた。彼女は王族へ返り咲くことを人生の目標とし、そのために功績を立てる手段として北大陸行きを志願したのだと明かした。

善治郎はその事情を理解しながらも、複雑な思いを抱いていた。

出発前の忠告

話を終えた善治郎は、船上は命に関わる危険な環境であるため、ルクレツィアにもっと動きやすい服装を心掛けるよう助言した。

ルクレツィアは恥ずかしそうに了承した。

アウラとの情勢確認

翌夜、善治郎はカープァ王国へ戻り、アウラと情報交換を行った。

二人は双王国で王位継承が行われ、ブルーノ前王からジュゼッペ新王へと王位が移ったことについて話し合った。

特にフランチェスコ王子が即位関連の場に姿を見せなかったことから、双王国内部で大きな方針転換が起きている可能性を考察した。また、双王国が何を警戒しているのかを探る必要性も確認した。

北大陸渡航の最終確認

続いて二人は出航準備について確認した。

人員や荷物はすでにワレンティアへ送られており、船には贈答品や交易交渉のための品々も積み込まれていた。

善治郎は外交交渉への不安を口にしたが、アウラは具体的な交渉には踏み込まず、実務者会談の許可だけを得るよう指示した。

また、『瞬間移動』の利用許可についても、フレアとの婚姻が成立すれば自然と認められるだろうと説明した。

ルクレツィアへの対応方針

善治郎は、フレアとの婚姻許可を得るための航海にルクレツィアが同行することへの不安を漏らした。

アウラはルクレツィアと面談し、フレアの側室入りが決まるまでは自分の側室入りを公言しないよう釘を刺すと約束した。

その後、善治郎は善吉と善乃に会うことを楽しみにしながら席を立った。

アウラとルクレツィアの面談

翌日、アウラはルクレツィアと直接面会した。

ルクレツィアは善治郎のもとへ嫁ぐために必要な条件を尋ねた。アウラは、国益、貴族達の理解、自身の利益、そして善治郎本人の感情、その全てを満たす必要があると答えた。

さらに、双王国との取引による国益は双王国側に委ねるとした上で、貴族達の理解と善治郎からの好感はルクレツィア自身が獲得しなければならないと告げた。

加えて、善治郎は好感を積み上げるよりも嫌悪感を抱かせないことを重視する人間であると助言し、軽率な行動を慎むよう忠告した。

ルクレツィアは真剣な態度でその助言を受け止めた。

黄金の木の葉号の出航

八日後、善治郎はワレンティア港で『黄金の木の葉号』へ乗船した。

甲板では護衛騎士や侍女達、ルクレツィア主従、そして船員達が出迎えた。善治郎はフレア船長へ正式な乗船許可を求め、歓迎を受けた。

続いて善治郎は、船上では命を守るために船員達の指示を最優先とし、言葉遣いなどを問題にしないことを宣言した。

船員達もそれを受け入れ、副長マグヌスと挨拶を交わした。

大海原への旅立ち

出航命令が下されると、『黄金の木の葉号』は帆を広げて港を離れた。

外海へ出ると船は大きく揺れ、護衛騎士達は足を取られて転倒した。一方で漁師出身の兵士達は難なく対応し、騎士達を助けた。

善治郎は百日以上続く航海の中で慣れていけばよいと励ました。

船上生活の始まり

陸地が見えなくなった後、善治郎はルクレツィアに客室の事情を説明した。

客室は限られており、ルクレツィアは善治郎の侍女達と同室になることになっていた。ルクレツィアは不安を抱えながらも受け入れた。

そこへフレアが現れ、船長室への滞在も提案したが、船員が頻繁に出入りする環境と聞いたルクレツィアは辞退した。

さらに善治郎は、耐えられなくなった場合は『瞬間移動』で帰還させると申し出たが、ルクレツィアは最後まで同行する意思を示した。

その後、フレアの案内で客室へ向かいながら、善治郎はこれから百日間続く船上生活に思いを巡らせるのであった。

エピローグ 女王と王子と裏取引

出産後の政務復帰

善治郎が北大陸へ向かった頃、アウラはすでに通常業務へ復帰していた。

宰相と元帥を設置したことで、アウラの仕事は主に報告書の確認や監督となり、以前よりも時間に余裕が生まれていた。仕事を終えたアウラは後宮へ戻ろうとしたが、その直前にフランチェスコから面会の申し出が届き、予定を変更することになった。

双燃紙の受け渡し

アウラと面会したフランチェスコは、ブルーノ前王から預かった双燃紙を差し出した。

対となるもう一枚はブルーノ前王が保有しており、本来はブルーノ前王自身がカープァ王国を訪れて直接会談する予定だった。しかし善治郎が北大陸へ向かったことで『瞬間移動』が使えなくなり、その代替手段として双燃紙が送られてきたのである。

アウラは事情を理解しつつも、双燃紙による連絡では情報量や信頼性に限界があることを指摘した。フランチェスコも最終的には善治郎の帰還後にブルーノ前王が来訪する予定だと説明した。

善治郎への苦手意識

フランチェスコは、ブルーノ前王とジュゼッペ新王が善治郎に苦手意識を抱いていると語った。

その言葉を聞いたアウラは、善治郎に多くの我慢を強いている自分自身も似た問題を抱えていることを自覚した。善治郎はこれまで国益のために数々の不本意な要求を受け入れてきたが、それは納得したからではなく、アウラのために耐えているだけであると改めて認識した。

アウラは、ブルーノ前王達が善治郎との関係修復に成功したなら、自分にとっても参考になるだろうと考えた。

宝玉の追加取引

用件が終わった後、フランチェスコは宝玉の追加提供を求めた。

以前渡した宝玉は全て魔道具開発の過程で破壊してしまったという。意図しない効果を持つ危険な魔道具は処分しなければならないためだった。

フランチェスコは宝玉四個と引き換えに、アウラが望む魔道具を一つ製作すると提案した。アウラは条件付きで了承し、代わりに『爆炎』の魔道具製作を依頼した。

フランチェスコはアウラの協力があれば、一回限りの使い捨てなら一日で完成すると答えた。

魔道具量産の脅威

フランチェスコが去った後、アウラは『爆炎』の魔道具を一日で製作できるという事実について考え込んだ。

これまで魔道具は高価で製作にも長期間を要したため、基本的には繰り返し使用することが前提だった。しかし宝玉の量産によって、安価かつ短期間で使い捨て魔道具を作れる時代が近づいていた。

もし『爆炎』や『大岩作製』のような強力な魔法を込めた使い捨て魔道具が大量生産されれば、戦争のあり方そのものが変わる。さらにフランチェスコが研究している『魔道具を作製する魔道具』が完成すれば、自動的に魔道具を量産できるようになる。

アウラは、その技術を持つ国と持たない国が戦場で対峙した場合、対抗する術が見えないと感じた。

側室問題への結論

宝玉の製造技術は可能な限り秘匿するべきだと考えながらも、永遠に隠し続けることは不可能だとアウラは理解していた。

技術が流出した未来を見据えた時、シャロワ・ジルベール双王国との結び付きを強める必要性はますます大きくなる。

その結果として、善治郎によるシャロワ王家からの側室迎え入れは避けられないという結論に再び行き着いたアウラは、大きな溜息をつくのであった。

付録 主と侍女の間接交流

後宮侍女達の日常

善治郎不在中の果物の楽しみ

善治郎は普段から生の果物を好んでおり、そのため後宮では質の良い果物が頻繁に用意されていた。

しかし善治郎は北大陸への長期航海に出ており、アウラも加工した果物を好むため、善治郎向けに用意されていた果物は後宮侍女達に回されていた。フェーとレテは厨房でその果物を味わいながら、善治郎向けの品は特に美味しいと喜んでいた。

侍女達の人手不足

そこへニルダとミレーラが加わり、四人で休憩を過ごした。

善治郎とアウラが後宮にいないため仕事は比較的楽だったが、ルイサがアウラ付き侍女として抜擢されていたため、ニルダとミレーラも少人数で仕事を回していた。ミレーラは人手不足への不安を漏らしたが、後宮は安全確保のため信頼できる人材しか採用できず、人員増強が難しい事情が語られた。

新たな勤務体制の決定

休憩中の四人のもとに、調理担当責任者ヴァネッサとアマンダ侍女長が現れた。

アマンダは現在の人員では仕事を回しきれないと判断し、フェーとレテ、ニルダとミレーラを一組にするのではなく、四人で二つの持ち場を担当する体制へ変更すると告げた。また、新しい侍女の採用も進めているため、それまで協力して乗り切るよう命じた。

四人は戸惑いながらも、その決定を受け入れた。

善治郎から託された特別任務

勤務体制変更後、四人はカルロス王子とフアナ王女の部屋へ向かった。

その目的は乳母の手伝いではなく、善治郎から託された特別任務を果たすためだった。善治郎は長期航海中に子供達の成長を見ることができないため、定期的に写真を撮影して記録しておくようフェーとレテに依頼していたのである。

フェーは携帯用ゲーム機を使い、眠っているカルロス王子とフアナ王女を起こさないよう慎重に撮影を行った。任務を無事終えた四人は安堵しながらリビングへ戻った。

子供達の成長を見守る侍女達

撮影した写真を確認しながら、四人はカルロス王子とフアナ王女の成長について語り合った。

ニルダとミレーラは、姿をそのまま保存できる善治郎の故郷の道具に改めて感嘆した。カルロス王子の成長や、生まれたばかりのフアナ王女の小ささを見比べながら、善治郎が子供達を深く愛していることにも話題が及んだ。

ニルダの価値観

ミレーラは、王族や高位貴族が必ずしも我が子を純粋な愛情だけで育てるとは限らないと語った。

自身の経験から、貴族社会では血縁よりも家の事情や利益が優先されることもあると説明したが、ニルダには実感が湧かなかった。王都へ来てから多くの人々に貴族社会の危険さを教えられてきたものの、実際に出会った貴族達は皆親切で、自分を気遣ってくれていたからである。

ニルダは、貴族社会には悪い人が多いと皆が言うのに、その忠告をしてくれる貴族達自身は優しい人ばかりだと疑問を口にした。

無邪気さが生む特殊な力

ニルダの言葉に、フェー達は返答できずに絶句した。

無邪気で無防備なニルダは、貴族社会の警戒心や打算を理解していなかった。しかし、その純粋さゆえに相手の毒気を抜き、警戒や悪意を向けにくくさせる独特の性質を持っていた。

貴族社会では致命的とも言える欠点を抱えながらも、その欠点の組み合わせが、結果としてニルダ自身を守る特異な力になっていたのであった。

後宮に残されたニコライ

ニコライの滞在延長

善治郎が『黄金の木の葉号』に乗船したことで、船員のニコライの運命も変化していた。

山羊の飼育や乳製品作りに精通するニコライは、本来であれば船と共にウップサーラ王国へ帰国する予定だった。しかし善治郎が『瞬間移動』を使えるため、後から帰国できる環境が整ったことで、カープァ王国に残り畜産技術を教えるよう依頼された。アウラや善治郎、さらにフレアからも頼まれた結果、ニコライは滞在を延長し、山羊乳や乳製品を後宮へ届け続けていた。

乳製品がもたらした新たな菓子

乳製品の安定供給によって、善治郎が持ち込んだ多くのレシピが再現可能となった。

山羊乳そのものは南大陸の人々には不評だったが、バターや生クリームを使った菓子は好評だった。その夜もヴァネッサが焼いたバタークッキーをフェー、レテ、ニルダ、ミレーラが試食し、その美味しさに喜んでいた。

ヴァネッサは侍女達の反応から、この菓子が善治郎専用ではなく一般にも受け入れられると判断していた。

ミレーラの計算

クッキーを味わったミレーラは、その価値にいち早く着目した。

後宮で覚えたレシピを退職後にも使えるか確認したミレーラは、乳製品が今後も希少価値を持つと見込み、マルケス伯爵家の財力を利用して乳製品を確保し、自家の価値向上に役立てる構想を描いた。

王宮でしか味わえない菓子を提供できれば、王家との結び付きの証明にもなり、自身の立場強化にも繋がると考えたのである。そのためミレーラは熱心に製法を学ぶ決意を示し、ヴァネッサも指導を約束した。

夜の侍女部屋

仕事と入浴を終えた後、フェーとレテは自室へ戻った。

二人は善治郎から貸与された携帯ゲーム機で遊ぼうとしたが、フェーはいつもほど集中できなかった。ゲーム機を巡って争う相手だったドロレスが不在であることが、その原因だった。

ドロレスを思う二人

暗闇の中でフェーとレテは、北大陸へ向かったドロレスの話を始めた。

レテは航海中の事故や北大陸での生活を心配し、フェーも強がりながら同じ不安を抱えていた。善治郎が同行している以上、簡単に危険な目には遭わないと考えていたが、異なる文化圏への不安までは消せなかった。

二人は北大陸の寒さや、山羊をはじめとする見慣れない動物、未知の食べ物について想像しながら会話を続けた。

募る寂しさ

明るい話題を探そうとしても、不在の友人への心配は消えなかった。

最後にレテがドロレスを心配だと漏らすと、フェーも小さな声で同意した。強気な態度を取っていても、二人ともドロレスの不在を寂しく感じ、無事を案じていたのであった。

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理想のヒモ生活 15

漫画版

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理想のヒモ生活 17巻
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