ヒモ生活12巻レビュー
【理想のヒモ生活】あらすじ・ネタバレ・まとめ
ヒモ生活14巻レビュー
どんな本?
■ 作品概要
「理想のヒモ生活」は、異世界における国家間の外交、文化摩擦、そして政治的駆け引きを描いたファンタジー小説である。
物語は、現代日本から召喚され、南大陸カープァ王国の王配となった主人公の善治郎が、大陸間貿易の確立とウップサーラ王国第一王女フレアの側室入りを実現するため、北大陸のウップサーラ王国を訪れるところから始まる。ウップサーラ王国の国王グスタフ五世は貿易に前向きだが、尚武の気風が強い第一王子エリクや戦士たちは、戦士ではない善治郎を「臆病者」と見下し、婚姻に猛反発する。善治郎はフレア姫への求婚の資格を得るため、厳しい自然の中で自力で獲物を仕留める伝統儀式『成人の証』に挑むことになる。
本作の世界は、特定の王家が世襲する血統魔法が支配的な力を持つ南大陸と、大型帆船や水車送風式高炉といった科学技術が発展し、強い武の気風や『教会』という宗教組織の影響力が混在する北大陸に分かれており、両大陸間の技術的・文化的な交流が大きなテーマとなっている。
■ 主要キャラクター
- 善治郎・ビルボ・カープァ:現代日本から召喚されたカープァ王国王配。争いごとを好まない小市民的な性格だが、妻と国益のために命がけの『成人の証』の試練に挑む。血統魔法『瞬間移動』と現代のデジタルカメラを駆使した規格外の狩猟方法で、北大陸の戦士たちの凝り固まった価値観を揺さぶる。
- アウラ・カープァ:カープァ王国の女王であり、善治郎の正妻。国家の莫大な利益となる大陸間貿易を成立させるため、カープァ王国を訪れたエリク王子の応対や、ウップサーラ王国との外交交渉を冷徹かつ巧みに進める。
- フレア・ウップサーラ:ウップサーラ王国第一王女。行動力と未知への探求心に溢れ、自国とカープァ王国を結ぶため、自ら善治郎への側室入りを強く望む。
- グスタフ五世:ウップサーラ王国国王であり、フレア姫の父。国の未来を見据え、大陸間貿易の成立を熱望する老獪な為政者。善治郎に『成人の証』を通じて、自国の戦士たちの偏った価値観を壊すことを期待する。
- エリク・エストリゼン・ウップサーラ:ウップサーラ王国第一王子。フレア姫の異母兄。戦士としての誇りが高く、当初は善治郎を臆病者と蔑み婚姻に激しく反対する。しかし、カープァ王国を訪問し、アウラ女王やプジョル元帥と交流する中で見識を広げていく。
- ユングヴィ・ウップサーラ:ウップサーラ王国第二王子。フレア姫の双子の弟。野心家で先見の明があり、姉の婚姻と大陸間貿易が国にもたらす計り知れない利益を深く理解している。
- ヴィクトル:エリク王子の腹心であり、熟練の猟師。善治郎の『成人の証』の護衛兼案内役を務めるが、善治郎の『瞬間移動』を用いた日帰り狩猟に翻弄されることになる。
■ 物語の特徴
本作は、魔法の力で敵を圧倒するのではなく、国家間の外交交渉や文化の違いによる摩擦、政治的駆け引きを主題としている点が大きな特徴である。第13巻では、武力を持たない善治郎が、尚武の気風が強く「勇気」を絶対視するウップサーラ王国の戦士たちに、知恵と交渉術、そして魔法を組み合わせた絡め手で立ち向かう姿が描かれる。
特に、厳しい雪山での野営を強要される熟練の護衛たちを尻目に、善治郎だけが『瞬間移動』で王宮へ帰り、温かい食事と風呂を満喫するというコミカルかつ規格外な試練の突破方法は、読者にとって非常に興味深いポイントである。異文化同士の衝突と相互理解、そして国家の未来を懸けた重厚な外交ドラマが、他作品にはない本作ならではの魅力となっている。
読んだラノベのタイトル
理想のヒモ生活 13
著者:渡辺恒彦 氏 イラスト: 文倉 十 氏
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あらすじ・内容
シリーズ累計180万部突破! 「娘さんをください」!? ヒモ男は王女と結婚できるのか!?
長旅を終え、ついにフレア姫の祖国、ウップサーラ王国に到着した善治郎。グスタフ王との会談の場で、善治郎は大陸間貿易と、両国友好の懸け橋としてフレア姫の側室入りを提案する。しかし、第一王女の側室入りなど当然受け入れられるはずもなく、その場に居合わせた人々から大きな反発を受ける。中でもフレア姫の兄、エリク王子は善治郎に強い敵愾心を抱き、『成人の証』も立てていない男に妹はやれないと主張する。フレア姫に婚姻を申し込むため、善治郎は『成人の証』を立てるべく、雪の残る山へと獲物を仕留めに向かうのだった――。
理想のヒモ生活13
感想
シリーズ累計ってコミックも含めて?
それともラノベだけ?
でも、180万部とは凄いな、、
その内の10冊以上は俺が貢献してるんだろうな。

タイトルだけだと確実に敬遠してた。
「小説家になろう」に掲載されてたらしいけどあえて読まなかったくらい楽しみにしてた作品だったけどそれが180万部とは、、
いやはや凄い。
アニメ化とかは、、、
無理そうww
話は善治郎がフレア姫の父親に「娘さんを下さい!側室だけどね。」と言ったら、異母兄が異議を唱えた。
先祖が海賊で、力こそ正義を地で行くフレア姫の国の男達。
その傾向が1番強い異母兄が善治郎を認めないと宣った。
ヴィンランドサガの海賊のような連中。
そんな奴等には善治郎は認められない。
認めて貰いたいなら単独で獲物を狩って周りを認めさせる「成人の証」を受けろと言う。。
護衛は異母兄が選んだ連中と山に行って獲物を狩れと、、
山歩きもほとんどしたことが無い善治郎は歩くだけで疲労困憊になってしまう。
それを護衛の連中は呆れ、遂には馬鹿にするのだが、、
日が傾いたら護衛を山に置いて行って自身だけ瞬間移動で王宮に帰還する。
護衛の連中は山から帰れず、善治郎は帰ってからサウナに入り身体を温めて柔らかいベットで就寝して、朝食を食べ、昼食の弁当を持参して山へ瞬間移動して、山を歩く、日が傾いたら王宮に瞬間移動する。
それを十数日ほど続けてたら、馬鹿にしてた護衛の1人は卑怯者だと憤慨していた。
それを護衛隊の隊長が、善治郎が本気で嫌がらせをするのなら3日目の地点に明日の朝は戻って其処からスタートだと言われたら彼等は夜通しでも其処に行かないといけない。
それを教えられて護衛達は魔法の理不尽さを実感し始める。
更に獲物を狩る時に、善治郎には扱える武器が無いのだが、双王国で貰った風の腕輪で獲物を吹き飛ばすのを見て、善治郎が非力な男だと思う事を止めた。
そして、肉体の力以外にも強さがあると視野が広がった。
それはフレア姫の父親の狙いでもあった。
そんなこんなで善治郎は「成人の証」を得てフレア姫との婚姻が認められる。。
その後は、フレア姫の母国で結婚式を挙げて瞬間移動で必要な人員を送ってアウラの居る善治郎の母国に瞬間移動で帰還する。
それで新しい生活が始まるのだが、、、
北の大陸では鉄の大量生産が可能になり、航海技術も向上しており、いつ南大陸に侵略してくるか解らない状態。
侵略では無いににしても、交易は確実にして来る。
それによって植民地化されてしまうかもしれない。
それを防ぐには、経済的、軍事的にも対抗できる様にしないといけないが、既得権益が大きすぎてなかなか上手くいかない状態。
さて、今後どうなる事やら。
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ヒモ生活14巻レビュー
考察・解説
ウップサーラ王国
『理想のヒモ生活』における「ウップサーラ王国」は、北大陸の最北に位置する海洋国家であり、優れた技術力と独自の文化を持ちながらも、時代の変化に伴う数々の課題に直面している国として描かれている。
ウップサーラ王国について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 北大陸屈指の技術力と森林資源の枯渇
ウップサーラ王国は、北大陸でもトップクラスの製鉄技術と造船技術を誇る技術先進国である。
・四本マストの最新鋭大型帆船である黄金の木の葉号や死せる戦士の爪号を自国で建造できる高い技術力を持つ。
・しかし、その一方で長年にわたり製鉄のための木炭や造船用の木材を大量に消費してきた。
・その結果、国内の森林資源が枯渇し始めており、大型船の竜骨に使えるような大木は辺境の山岳地帯にしか残っていないという深刻な資源不足に悩まされている。
2. 尚武の気風と戦士・船乗りの古い価値観
元は海賊の国をルーツに持つため、戦士や船乗りの地位が非常に高く、勇気ある行動が美徳とされる尚武の気風が強い国である。
・しかし、それが災いして避けるべき危険を回避することすら臆したと見なして蔑む、という融通の利かない古い価値観が根付いている。
・国王であるグスタフ五世は、この硬直化した価値観が、急速に発展する時代の潮流において国の成長を妨げる要因になりかねないと危惧している。
3. 精霊信仰と教会勢力からの自立
北大陸の多くの国が古代竜を信仰する宗教組織である教会の強い影響下にある中、ウップサーラ王国は例外的に教会の影響をほとんど受けていない精霊信仰国である。
・教会は南大陸を流刑地と蔑み、竜の革や骨を用いた武具の使用を禁じている。
・ウップサーラ王国はその教義に縛られていないため、南大陸特有の竜素材を大々的に輸入することにも全く抵抗がない。
・しかし、周囲の教会勢力からは異端視されており、外交的には難しい舵取りを迫られている。
4. 大陸間貿易による国家の生き残り戦略
資源の枯渇と周辺大国の発展という危機感から、グスタフ王は国の未来を海に見出し、独自の「大陸間貿易」の確立を国家の至上命題としている。
・王族に血統魔法を持たず、国力としては中堅国規模にとどまるウップサーラ王国にとって、南大陸の大国カープァ王国との直接貿易は、莫大な財政負担を背負って挑む乾坤一擲の大勝負である。
・そのため、第一王女であるフレア姫自らが黄金の木の葉号の船長として海を渡る。
・王家の威信を懸けてカープァ王国王配である善治郎の側室入りを目指すなど、なりふり構わぬ外交交渉を展開している。
まとめ
ウップサーラ王国は、高い技術力を持ちながらも、古い価値観や資源不足という矛盾を抱えた北の海洋国家である。迫り来る時代の変化と大国の脅威を乗り越えるため、グスタフ王やフレア姫が国家の命運を懸けて南大陸との大陸間貿易に挑む姿は、本作の外交・政治ドラマにおける重要な要素となっている。
大陸間貿易
『理想のヒモ生活』における「大陸間貿易」は、南大陸と北大陸を広大な海を越えて結ぶ極めて危険な交易であると同時に、成功すれば国家を劇的に発展させる莫大な利益をもたらす重要な要素として描かれている。
大陸間貿易について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 莫大な利益を生む特産品の交換
北大陸と南大陸では、気候や生態系が大きく異なるため、互いの特産品に非常に高い価値が付けられる。
・南大陸からは砂糖や香辛料、そして北大陸には存在しない大型竜種の竜革や竜骨が輸出される。
・一方、北大陸からは、南大陸にはいない羊や山羊から作られる毛織物や毛皮、そして先進的な技術で作られた鉄器がもたらされる。
・片道100日近くかかる命がけの航海であり、船が沈むリスクも高いが、仕入れ値と売値の差が桁外れである。
・そのため、数隻に一隻が帰還するだけでも十分に莫大な利益が見込める事業とされている。
2. 既存の貿易ルートの課題と直接貿易の構想
これまで大陸間貿易の主役を担ってきたのは、距離が比較的近い北大陸の南部諸国と南大陸の北部諸国であった。
・南大陸中西部のカープァ王国や、北大陸北部のウップサーラ王国は、これらの国を経由する中継貿易に頼らざるを得なかった。
・しかし、両国が既存の国々を飛び越えて直接貿易を結ぶことができれば、中継国に利益を搾取されることがなくなる。
・既存の貿易国との摩擦(パイの奪い合い)も最小限に抑えつつ、互いに大きな富を独占することが可能になる。
3. 教会の干渉回避と魔道具による航路開拓
ウップサーラ王国がカープァ王国との直接貿易を強く望む背景には、北大陸で絶大な影響力を持つ宗教組織である教会の存在がある。
・ウップサーラ王国は北大陸では少数派の精霊信仰国であり、大陸間貿易の途中で教会勢力圏である北大陸南部諸国へ寄港することは、政治的なリスクを伴う。
・そこでフレア姫は、双王国から入手した真水化などの魔道具を搭載し、カープァ王国に新たな造船所を作って超大型船を建造する計画を立てた。
・これにより、途中の港に一切立ち寄らない無寄港の直通航路を開拓するという遠大な計画を構想している。
4. 貿易成立の鍵となる技術提供と政略結婚
カープァ王国(女王アウラ)にとって大陸間貿易の最大の狙いは、ウップサーラ王国が持つ大型帆船の製造技術と、高性能な炉を含む最先端の製鉄技術を獲得することにある。
・一方、フレア姫はこれらの技術と人材をカープァ王国へ提供する見返りとして、独自の港湾領地の確保を求める。
・さらに、両国の関係を強固にするための善治郎への側室入りを強硬に求めている。
・大陸間貿易の成立は、単なる経済活動にとどまらず、両国の未来と善治郎の結婚問題を巻き込んだ国家レベルの重大な政治交渉となっている。
まとめ
本作における「大陸間貿易」は、異なる文明圏が交わることで生まれる莫大な富と、それに伴う国家間の思惑や駆け引きの象徴である。未開의 航路を切り開こうとするウップサーラ王国の野心と、技術吸収を狙うカープァ王国の思惑、部署して善治郎という特異な存在が複雑に絡み合うことで、物語のスケールを大陸規模へと広げる重要なテーマとなっている。
成人の証.
『理想のヒモ生活』における「成人の証」は、北大陸のウップサーラ王国などで行われている伝統的な風習であり、善治郎がフレア姫との婚姻を認めさせるための最大の試練として描かれている。
「成人の証」について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 成人の証の概要と厳しいルール
成人の証とは、北大陸の厳しい自然の中で、山や海に向かい一定以上の大物(鹿、イノシシ、熊、海獣など)を自力で仕留めることで、一人前の成人と認められる風習である。
・かつては未成年だけで行われていたが、現在では熟練の猟師などの同行が認められている。
・ただし、同行者は助言をすることはできても、直接的な助力(罠の設置や獲物への攻撃など)を行うことは禁じられている。
・少しでも手助けを受ければその時点で失敗とみなされる厳しいルールが存在する。
・一方で、挑戦の回数や制限時間は設けられておらず、何度失敗しても最後に成功すればよいとされている。
2. エリク王子への反撃と挑戦の決意
善治郎がこの試練に挑むことになったのは、フレア姫の側室入りを猛反対する第一王子エリクとの会談がきっかけである。
・エリク王子から成人の証も立てられない臆病者と侮蔑された善治郎は、あえてその言葉を逆手に取り、自ら成人の証を立ててみせると宣言した。
・この命がけの宣言により、それまで善治郎を見下していたウップサーラ王国の戦士たちは彼の勇気を認める。
・これにより、エリク王子もカープァ王国を訪問する条件を受け入れることになった。
3. 瞬間移動を利用した規格外の狩り
戦闘や狩猟の素人である善治郎は、弓や槍といった武器の使用を諦め、餌で獲物をおびき寄せる作戦を選択した。
・さらに善治郎は血統魔法である瞬間移動を駆使し、日帰りで王宮と森を往復するという規格外の手段で試練に臨む。
・時間制限がないルールを利用し、自分は何百日でも日帰りで通えるが、同行する護衛たちは森で野営し続けなければならないという状況を作り出した。
・これにより、自分を見下していた護衛たちに危機感を持たせ、彼らから真剣な協力を引き出すことに成功した。
4. 大イノシシの討伐と試練の達成
森での探索の末、善治郎はあらかじめ用意していた魔道具「風の鉄槌」を使用し、突進してくる大イノシシを崖の底へと突き落とすことに成功する。
・しかし試練はそれだけでは終わらず、自力で命綱を結んで谷底へ降り、解体作業を行って食用肉や換金部位(牙と脚)を持ち帰らなければならなかった。
・血と獣の臭いにまみれながらも自力でイノシシの牙と脚を回収した善治郎は、護衛の戦士たちから心からの称賛を受け、見事に成人の証を達成した。
・この成果により、フレア姫との正式な婚姻がグスタフ王から認められることとなった。
まとめ
「成人の証」は、魔法や現代知識だけでなく、善治郎自身が文字通り身体を張り、異世界の厳しい戦士の価値観に正面から向き合った象徴的なエピソードである。この過酷な試練を乗り越えたことで、善治郎はウップサーラ王国の戦士たちからの敬意を勝ち取り、フレア姫との婚姻や大陸間貿易の成立という大きな政治的・個人的な目的を見事に達成することとなった。
瞬間移動の活用
『理想のヒモ生活』における「瞬間移動の活用」は、主人公の善治郎が過酷な異世界での生活や外交交渉を乗り切るための最大の切り札であり、現代機器との組み合わせによって規格外の効果を発揮する重要な要素として描かれている。
瞬間移動の活用について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 瞬間移動の特性とデジカメによるイメージ補完
瞬間移動は、カープァ王家の血統魔法である「時空魔法」を代表する魔法であり、移動先の風景を脳裏に鮮明に思い描くことで、距離に関係なく瞬時に対象を転送できる。
・しかし、時間帯や季節による景色の変化があると認識が難しくなる。
・そのため、通常は景色の変わらない窓のない専用の「石室」などが転移の拠点として使われる。
・善治郎はデジタルカメラで撮影した画像やプリントアウトした写真を見ることでこのイメージ形成を補った。
・これにより、経験の浅さをカバーして様々な場所への確実な転移を可能にしている。
2. 過酷な環境を覆す規格外の活用
善治郎がこの魔法を習得したことで、本来ならば過酷な旅路が日帰り感覚へと劇的に変化した。
・北大陸での成人の証の試練では、雪山から毎日王宮へ帰還して蒸気風呂と温かい食事を満喫した。
・付き添いの護衛たちだけを森で何日も野営させて精神的に疲弊させるという活用法を見せる。
・また、過酷な大陸間航海中も、立ち寄った無人島から王都へ一時帰国した。
・船員たちのために大量の麦酒や新鮮な肉を差し入れるなど、常識外れの物資調達で周囲を驚嘆させている。
3. 国家間を結ぶ物流・外交のインフラ
瞬間移動は、数ヶ月かかる他国との距離を一瞬でゼロにするため、外交において絶大な価値を持つ。
・善治郎は自身の一日の使用回数制限(最大二回)の範囲内で動く。
・フレア姫や護衛のスカジ、さらには北大陸から招聘した凄腕の鍛冶師ヴェルンドや職人、侍女たちを、毎日一人ずつ地道に送り届ける役割を担った。
・これにより、善治郎自身がカープァ王国と他国を結ぶ事実上の拠点として機能し、大陸間貿易や外交交渉を迅速に進めるための要となっている。
4. 善治郎の命を守るための魔道具化の決断
瞬間移動は極めて強力であるが、発動には極度の集中が必要であり、命の危機に瀕した緊急時に素人が唱えるのは不可能に近かった。
・そこで女王アウラは、北大陸へ向かう善治郎の絶対的な安全を確保するため、カープァ王家の秘匿魔法を他国の王族であるフランチェスコ王子に魔道具化させるという、これまでの歴史ではあり得なかったタブーを破る決断を下した。
・これにより使い切り型の魔道具が作製される。
・善治郎は恐怖や緊張状態にあっても魔道具を使用するだけで緊急脱出が可能となった。
まとめ
「瞬間移動の活用」は、単なる移動手段にとどまらず、デジカメという現代機器との融合によって独自の進化を遂げた魔法技術の象徴である。それは過酷な異世界の旅を劇的に快適なものに変え、国家間の距離を縮める外交の切り札となる一方で、魔道具化という大きな政治的決断をアウラに迫るなど、物語の展開と国家間の連携を深める極めて重要な要素となっている。
鍛冶師の移住
『理想のヒモ生活』における「瞬間移動の活用」は、主人公の善治郎が過酷な異世界での生活や外交交渉を乗り切るための最大の切り札であり、現代機器との組み合わせによって規格外の効果を発揮する重要な要素として描かれている。
瞬間移動の活用について、以下の4つのポイントから解説する。
1. 瞬間移動の特性とデジカメによるイメージ補完
瞬間移動は、カープァ王家の血統魔法である「時空魔法」を代表する魔法であり、移動先の風景を脳裏に鮮明に思い描くことで、距離に関係なく瞬時に対象を転送できる。
・しかし、時間帯や季節による景色の変化があると認識が難しくなる。
・そのため、通常は景色の変わらない窓のない専用の「石室」などが転移の拠点として使われる。
・善治郎はデジタルカメラで撮影した画像やプリントアウトした写真を見ることでこのイメージ形成を補った。
・これにより、経験の浅さをカバーして様々な場所への確実な転移を可能にしている。
2. 過酷な環境を覆す規格外の活用
善治郎がこの魔法を習得したことで、本来ならば過酷な旅路が日帰り感覚へと劇的に変化した。
・北大陸での成人の証の試練では、雪山から毎日王宮へ帰還して蒸気風呂と温かい食事を満喫した。
・付き添いの護衛たちだけを森で何日も野営させて精神的に疲弊させるという活用法を見せる。
・また、過酷な大陸間航海中も、立ち寄った無人島から王都へ一時帰国した。
・船員たちのために大量の麦酒や新鮮な肉を差し入れるなど、常識外れの物資調達で周囲を驚嘆させている。
3. 国家間を結ぶ物流・外交のインフラ
瞬間移動は、数ヶ月かかる他国との距離を一瞬でゼロにするため、外交において絶大な価値を持つ。
・善治郎は自身の一日の使用回数制限(最大二回)の範囲内で動く。
・フレア姫や護衛のスカジ、さらには北大陸から招聘した凄腕の鍛冶師ヴェルンドや職人、侍女たちを、毎日一人ずつ地道に送り届ける役割を担った。
・これにより、善治郎自身がカープァ王国と他国を結ぶ事実上の拠点として機能し、大陸間貿易や外交交渉を迅速に進めるための要となっている。
4. 善治郎の命を守るための魔道具化の決断
瞬間移動は極めて強力であるが、発動には極度の集中が必要であり、命の危機に瀕した緊急時に素人が唱えるのは不可能に近かった。
・そこで女王アウラは、北大陸へ向かう善治郎の絶対的な安全を確保するため、カープァ王家の秘匿魔法を他国の王族であるフランチェスコ王子に魔道具化させるという、これまでの歴史ではあり得なかったタブーを破る決断を下した。
・これにより使い切り型の魔道具が作製される。
・善治郎は恐怖や緊張状態にあっても魔道具を使用するだけで緊急脱出が可能となった。
まとめ
「瞬間移動の活用」は、単なる移動手段にとどまらず、デジカメという現代機器との融合によって独自の進化を遂げた魔法技術の象徴である。それは過酷な異世界の旅を劇的に快適なものに変え、国家間の距離を縮める外交の切り札となる一方で、魔道具化という大きな政治的決断をアウラに迫るなど、物語の展開と国家間の連携を深める極めて重要な要素となっている。
ヒモ生活12巻レビュー
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登場キャラクター
カープァ王国
アウラ・カープァ
カープァ王国の女王であり、善治郎の正妻である。大陸間貿易の成立を国益のために最優先としている。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・女王。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎が北大陸で活動する間、カープァ王国にてエリク王子を歓待し、彼との会談を通じて大陸間貿易の道筋を固めた。善治郎とフレア姫の婚姻を承認し、後宮別棟の整備を指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
広輝宮別棟に密かに『瞬間移動』で訪れ、ウップサーラ王国への移動拠点を確保した。
善治郎・ビルボ・カープァ
現代日本から召喚されたカープァ王国の王配である。アウラを最愛の妻とし、争い事を好まない温和な性格を持つ。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・王配。
・物語内での具体的な行動や成果
フレア姫の側室入りの許可を得るため、ウップサーラ王国で『成人の証』に挑戦し、魔道具『風の鉄槌』を用いてイノシシを討伐した。北大陸と南大陸を『瞬間移動』で往復し、外交交渉や人員の移送を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
『成人の証』を立てたことでウップサーラ王国の戦士達から勇気を認められ、フレア姫と正式に結婚した。
カルロス・善吉・カープァ
アウラと善治郎の間に生まれた第一王子である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
一時帰国した善治郎との再会を果たし、構われすぎて泣かされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フアナ・善乃・カープァ
アウラと善治郎の間に生まれた第一王女である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・第一王女。
・物語内での具体的な行動や成果
一時帰国した善治郎との再会を果たし、構われすぎて泣かされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
プジョル・ギジェン
カープァ王国の元帥である。巨漢の武人であり、エリク王子から高い評価を受ける。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・元帥。
・物語内での具体的な行動や成果
カープァ王国を訪れたエリク王子と木槍による手合わせを行い、彼を指導した。走竜の騎乗体験も提供し、エリク王子と意気投合した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エリク王子からウップサーラ王国に生まれていれば『トール』の銘を授けられていたと称賛された。
エスピリディオン
カープァ王国の宮廷筆頭魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・宮廷筆頭魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
プジョル元帥がアウラにエリク王子の様子を報告する場に同席していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヴェルンドの価値を推し量る際、カープァ王国におけるエスピリディオンに匹敵するとアウラから評価された。
ファビオ
カープァ王国の秘書官である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・秘書官。
・物語内での具体的な行動や成果
プジョル元帥がアウラにエリク王子の様子を報告する場に同席していた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
アマンダ
後宮の侍女長である。中年の女性で、後宮全体の管理と運営を担う。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女長。
・物語内での具体的な行動や成果
フレア姫の後宮入りに伴う人員不足を解消するため、清掃や庭園管理に下女を導入する案をヴァネッサと共に立案し、アウラへ提言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヴァネッサ
後宮の調理担当責任者である。恰幅の良い中年の女性である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・調理担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
アマンダ侍女長と後宮の人員不足対策について相談し、下女を導入する案に賛成した。ただし、厨房への立ち入りは認めないよう条件を付けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
イネス
善治郎の身の回りの世話をする侍女である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・清掃担当責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
ウップサーラ王国で善治郎の世話や入浴の手配を行った。最後の人員として善治郎に『瞬間移動』でカープァ王国へ送り返された後、休むことなく業務に就いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ナタリオ
善治郎の護衛を務める騎士である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国・騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の『成人の証』挑戦に同行できないと知り、強く異を唱えた。後に善治郎の『瞬間移動』でカープァ王国へ帰還した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
マルグレーテ
善治郎に同行して北大陸へ渡った侍女である。金髪緑眼の容姿を持つ。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
ウップサーラ王国の結婚式にドレス姿で出席した。オフス王国のケヴィンからその素性について執拗な質問を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フェー
小柄で童顔な若い侍女である。問題児三人組の一人とされる。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。善治郎付き。
・物語内での具体的な行動や成果
下女が導入され、後輩ができることに大喜びした。北大陸からの侍女に関する噂話に花を咲かせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ドロレス
長身長髪の若い侍女である。問題児三人組の一人とされる。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。善治郎付き。
・物語内での具体的な行動や成果
下女の監督には責任が伴うことをフェーに忠告した。北大陸からの侍女の酷暑対策として、アウラや善治郎へ魔道具の追加購入を申請することを約束した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
レテ
豊かな胸元を持つ若い侍女である。問題児三人組の一人とされる。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。善治郎付き。
・物語内での具体的な行動や成果
下働きを監督することへの苦手意識を口にした。北大陸の蜂蜜酒やメイプルシロップに興味を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ルイサ
後宮の侍女である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
フレア姫の別棟勤務にはならず、現状のまま本棟勤務を続けることになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ミレーラ
後宮の侍女である。マルケス伯爵の姪で養女である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
ユングヴィ王子がカープァ王国から側室を迎える計画があることを養父から知らされ、将来の北大陸行きを密かに見据えていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ニルダ・ガジール
ガジール辺境伯家の次女で、小柄な後宮の侍女である。純真で人懐っこい性格である。
・所属組織、地位や役職
カープァ王国後宮・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
以前から親交のあったフレア姫から名指しで指名され、別棟勤務の侍女となった。スカジや北大陸からの侍女たちに別棟を案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フレア姫付きのカープァ王国側侍女の代表的な立場となった。
ウップサーラ王国
グスタフ五世
ウップサーラ王国の国王である。国の成長と大陸間貿易の確立を第一に考える為政者である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎と会談し、彼に『成人の証』を立てさせることで戦士たちの価値観を揺さぶることを期待した。ヴェルンドの出国を許可し、フレア姫の側室入りを承認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
将来的にユングヴィ王子への王位継承を早め、自身は退位後に旧来の外交や技術を支える構想を抱いた。
フレア・アルカト・カープァ(フレア・ウップサーラ)
ウップサーラ王国の第一王女である。未知への探求心が強く、自ら行動を起こす性格である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第一王女。カープァ王国・アルカト公爵。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の側室となるため父王を説得した。ウップサーラ王国で結婚式を挙げ、善治郎と共に肉の切り分けを行った。その後、『瞬間移動』でカープァ王国の後宮別棟へ移住した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
善治郎の正式な側室となり、カープァ王国におけるアルカト公爵位を授与された。
エリク・エストリゼン・ウップサーラ
ウップサーラ王国の第一王子である。尚武の気風を重んじ、妹のフレア姫を大切に思っている。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の婚姻に激しく反対したが、善治郎の『瞬間移動』でカープァ王国を訪問した。そこでプジョル元帥と手合わせを行い、アウラ女王からフレア姫の行動の真相を聞かされ、最終的に婚姻に同意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ウップサーラ王国ではなく、将来的に隣国オフス王国の国王となることが内定している。
ユングヴィ・ウップサーラ
ウップサーラ王国の第二王子である。フレア姫の双子の弟であり、野心家で先見の明を持つ。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第二王子。
・物語内での具体的な行動や成果
共和国と『騎士団』の対立を警戒し、海軍の対応に当たった。フレア姫にエリク王子のオフス王国行きを教えた。自身もカープァ王国から側室を迎えたいと善治郎に語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
次期ウップサーラ国王の最有力候補とされている。
カール
ウップサーラ王国の第三王子である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第三王子。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の結婚式に出席し、善治郎から肉を切り分けられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
イェルダ
ウップサーラ王国の第二王女である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第二王女。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の結婚式に出席し、フレア姫から肉を切り分けられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヒルダ
ウップサーラ王国の第三王女である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第三王女。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の結婚式に出席し、フレア姫から肉を切り分けられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フェリシア
ウップサーラ王国の第二王妃である。フレア姫の実の母親である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第二王妃。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の結婚式に出席し、善治郎に結婚式場では義母と呼ぶよう約束させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
亡き第一王妃への配慮から、公式の場に出ることに制限を受けている。
マティルダ
ウップサーラ王国の第三王妃である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・第三王妃。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の結婚式に出席し、善治郎と初めて顔を合わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
亡き第一王妃への配慮から、公式の場に出ることに制限を受けている。
グンネル
ウップサーラ王国の王太后である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・王太后。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の結婚式に出席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヴィクトリア・クロンクヴィスト
フレア姫の護衛を務める長身の女戦士であり、「スカジ」の銘を持つ。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・女戦士。フレア姫の護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
『瞬間移動』でカープァ王国の後宮に移動し、侍女たちに丁寧に挨拶した。ウップサーラ王国からの侍女が酷暑を乗り切るため、霧の魔道具の追加を要請した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヴィクトル
エリク王子の腹心であり、グスタフ王の意向も受けて動く熟練の猟師である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・戦士、猟師。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎の『成人の証』挑戦に護衛の代表として同行した。善治郎の『瞬間移動』による日帰り行動に翻弄されたが、助言を行ってイノシシ討伐と解体を支援した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ヴェルンド
ウップサーラ王国の国一番の鍛冶師の称号を持つ老職人である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・鍛冶師。
・物語内での具体的な行動や成果
新型高炉への移行を促すため、竜殺しの武器を作ることを理由に、自らカープァ王国へ移住することをグスタフ王に直訴した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
グスタフ王から事実上の出国許可を得た。
ランヒルド
ウップサーラ王国からフレア姫の付き人として派遣されたベテラン侍女である。
・所属組織、地位や役職
ウップサーラ王国・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
カープァ王国の後宮に到着し、厳格な態度で挨拶を行った。酷暑に疲弊していたが、霧の魔道具が追加された部屋を与えられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
シャロワ・ジルベール双王国
ルクレツィア・ブロイ
シャロワ・ジルベール双王国の高位貴族である。
・所属組織、地位や役職
シャロワ・ジルベール双王国・高位貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の結婚式に出席した。その後、善治郎の『瞬間移動』でカープァ王国へ移送された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
フローラ
ルクレツィアの侍女である。
・所属組織、地位や役職
侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
ルクレツィアと共に善治郎の『瞬間移動』でカープァ王国へ移送された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国
エウゲニウシュ・ホルショフスキ
共和国の有翼騎兵である。
・所属組織、地位や役職
ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国・有翼騎兵。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の結婚式に妻のテレサと共に出席した。タンネンヴァルトの戦いに参戦して武功を立てたことを善治郎に語り、後日詳しい話をする約束をした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
テレサ
エウゲニウシュの妻である。
・所属組織、地位や役職
エウゲニウシュの妻。
・物語内での具体的な行動や成果
夫と共に善治郎とフレア姫の結婚式に出席し、善治郎たちに祝福の言葉を述べた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
オフス王国
ケヴィン
オフス王国の初老の戦士である。
・所属組織、地位や役職
オフス王国・戦士。使節団の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
善治郎とフレア姫の結婚式に出席した。カープァ王国の席にいたマルグレーテの素性について執拗に質問し、周囲からたしなめられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき事項の記載はない。
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展開まとめ
プロローグ 広輝 宮
ウップサーラ王国の迎え入れ準備
『黄金の木の葉号』の帰還報告
ウップサーラ王国の王都ウップサーラは、巨大なメーター湖の北岸にあり、湖は運河整備によって湾のような役割を果たしていた。王宮である広輝宮では、国王グスタフ五世が配下から『黄金の木の葉号』がログフォートに無事到着したという報告を受け、安堵していた。
大型船である『黄金の木の葉号』はログフォートに停泊し、フレア姫達はそこで一泊した後、小型船に乗り換えて王都へ向かう予定であった。グスタフ王は、フレア姫だけでなく南大陸からの客人も同行していることを確認した。
南大陸の客人への警戒
グスタフ王は、ポモージエ港を経由した『黄金の木の葉号』の動向について、断片的ながら情報を得ていた。南大陸からの客人は王族らしく、ポモージエ侯爵やアンナ王女が王族としてもてなしたという話も伝わっていた。
そのためグスタフ王は、フレア姫が南大陸の国と友好的な関係を結び、貿易を成功させた可能性が高いと考えた。ただし、客人が商品や戦利品ではなく王族であるため、対応は単純ではないとも感じていた。
フレア姫への父王の複雑な思い
グスタフ王は、フレア姫の行動について、育て方を間違えたのではないかと愚痴をこぼした。部下は、フレア姫は芯の強い人物であり、育て方ではなく本人の本質によるものだと返した。
グスタフ王は、フレア姫が男であればまだよかったかもしれないと口にしたが、部下は、大陸間航行という危険に王族が乗り出すこと自体、性別にかかわらず諫めるべき行動であると指摘した。グスタフ王もその指摘を認めた。
ウップサーラ王国の気質と課題
ウップサーラ王国は戦士と船乗りの国であり、勇気ある行動が尊ばれていた。しかしその反面、避けるべき危険を避けることまで臆病と見なされる気質があり、グスタフ王はそれが国の成長を妨げていると感じていた。
グスタフ王は、技術や経済活動が急速に成長する時代において、不得意な分野にも最低限ついていき、得意分野である海では絶対に後れを取ってはならないと考えていた。そのため、大陸間貿易への参入は避けられず、同時に周辺情勢を荒らす立場になることも覚悟していた。
『騎士団』への備え
グスタフ王は、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国が『騎士団』に宣戦布告したという噂について確認した。配下は確証こそないものの、ポモージエへの奇襲の噂は複数の筋から入っており、その報復として共和国が動く可能性は高いと報告した。
情報は商船の乗組員達によってもたらされたため錯綜していたが、『騎士団』がポモージエに奇襲を仕掛けたこと自体は確度が高いと判断された。さらに『騎士団』領とウップサーラ王国は地理上隣国であるため、グスタフ王は無視できない問題として受け止めた。
三つの歓迎の準備
グスタフ王は、大陸間航行を成功させたフレア姫、南大陸からの客人、そして招かれざる『騎士団』のそれぞれに対し、歓迎の準備が必要だと判断した。
フレア姫には愛情をもって迎え、南大陸の客人には礼儀と打算を込めて迎え、『騎士団』には矢玉をもって迎える必要があった。グスタフ王は配下に手配を命じ、配下はそれを了承した。
第一章 対面
ウップサーラ王宮での歓迎
善治郎はフレア姫達と共にウップサーラ王国の王都へ到着した。ログフォート港で船を乗り換え、運河とメーター湖を経由して王都へ入り、そのまま王宮である広輝宮へ向かった。
善治郎はフレア姫をエスコートしながら謁見の間へ向かい、その途中でスカジから、戦士の価値観が強く支配する王宮では柔和さよりも強さが重んじられると忠告を受けた。善治郎は不安を抱えながらも、その助言を胸に刻んで歩みを進めた。
謁見の間での公式対面
謁見の間では、大陸間航行を成功させた『黄金の木の葉号』の乗組員達を称える儀式が行われた。主役はフレア姫達であり、善治郎達は南大陸からの客人として紹介されるに留まった。
儀式の後、善治郎達は客室へ案内された。武装解除も求められず、王族に準じる賓客として扱われていることが確認できた。善治郎は謁見の間の雰囲気が想像より穏やかだったと感じたが、イネスから本番はこれからだと釘を刺された。
フレア姫による婚姻交渉
一方フレア姫は父グスタフ王の私室に呼ばれ、善治郎の側室となるための説得を行っていた。フレア姫はカープァ王国との婚姻外交によって大陸間貿易を発展させる必要性を訴えた。
グスタフ王は交易の利益を認めながらも、第一王女が他国の王配の側室となれば国の面子に傷が付くと反対した。さらに婚姻外交そのものには賛成でありながら、フレア姫本人が嫁ぐ必要はないと主張した。
交易条件による説得
フレア姫は、自らが嫁ぐことを条件にアウラ女王から提示された内容を説明した。公爵位や港湾領地、ウップサーラ王国専用の貿易港、大型船建造計画など、多大な利益をもたらす条件であった。
その内容を聞いたグスタフ王は興味を示した。条約の規模から考えても、高位貴族の娘では釣り合わず、王族級の婚姻でなければ成立しないことを理解したためである。
善治郎への審査決定
最終的にグスタフ王は即断を避け、まず善治郎の人物像を見極めると決定した。善治郎との私的な会談を設け、その受け答えによって婚姻に相応しい人物か判断すると告げた。
フレア姫は、自分の望みのために善治郎へ余計な負担を背負わせていることに罪悪感を抱きながらも、その決定を受け入れた。
会談での交易提案
翌日、善治郎とグスタフ王の会談が開かれた。善治郎はまず、カープァ王国がウップサーラ王国との直接貿易を受け入れる準備があると表明した。
その上で、両国友好の象徴としてフレア姫を伴侶として迎えたいと申し出た。この発言に対し、多くの王族や貴族、戦士達は怒りや嫌悪を示した。
エリク王子との対立
特に第一王子エリクは激しく反発した。妹であるフレア姫を側室に差し出すことなど認められないと主張し、善治郎を弱く臆病な男だと非難した。
善治郎は、エリクがフレア姫本人の望みを理解していないと反論した。フレア姫は守られることよりも、自ら冒険し挑戦することを望む人物であり、その価値観を無視していると指摘したのである。
戦士の価値観との衝突
エリクはウップサーラ王国の男として、『成人の証』を立てていない者に婚姻の資格はないと断言した。さらに戦士ではない善治郎を臆病者と蔑んだ。
善治郎は文化の違いを認めながらも、全ての男が戦士である必要はないと主張した。しかし周囲の戦士達はエリクの考えに同調し、善治郎に歩み寄りを求めた。
エリク王子への逆提案
善治郎は話の流れを利用し、エリク王子をカープァ王国へ招待すると提案した。瞬間移動の魔法によって短期間で往復可能であることも説明した。
だがエリクは拒絶したため、善治郎は異国へ赴くことを恐れているのではないかと指摘した。すると周囲の戦士達の価値観によって、逆にエリク自身が臆病者と見なされかねない立場に追い込まれた。
成人の証への挑戦宣言
善治郎は、自分が臆病者であることを認めつつも、フレア姫に婚姻を申し込むために『成人の証』へ挑戦すると宣言した。
ただし一方的な譲歩はせず、エリク王子もカープァ王国を訪れることを条件とした。この宣言により、戦士達は善治郎の勇気を認め始めた。
交渉成立への前進
グスタフ王は、『成人の証』を立てても婚姻が成立するわけではなく、あくまで婚姻を申し込む資格を得るだけであることを確認した。
その後エリク王子は、カープァ王国を自らの目で確かめることを受け入れた。戦士達はその決断を称賛し、善治郎の挑戦も評価した。
善治郎はウップサーラ王国の戦士達が、激しく対立した相手であっても勇気を示せば称賛する気質を持つことを実感した。一方でグスタフ王とユングヴィ王子だけは、善治郎の発言の裏にある打算を見抜いていた。
最後にグスタフ王は、将来王となるエリクを無事に返してほしいと善治郎へ念押しした。善治郎はその意図を理解しながら、必ずそうすると約束した。
エリク王子への任務説明
会談後、エリク王子はグスタフ王の執務室へ呼ばれた。エリク王子はカープァ王国と南大陸を自らの目で見極める意欲を示し、グスタフ王もその役目を任せた。
グスタフ王は、エリク王子の戦士としての眼力を高く評価していた。感情的な面や視野の狭さはあるものの、戦力や人物を見抜く力は確かであり、将来的には優れた王になると考えていた。
成人の証に潜む問題
続いてグスタフ王は、善治郎の『成人の証』について話を切り出した。『成人の証』とは山や海で一定以上の獲物を仕留めることで成人と認められる北方諸国の風習であり、同行者の選定が重要になると説明した。
当初エリク王子は、善治郎を危険な若者達と同行させるわけにはいかないという意味だと理解していた。しかしグスタフ王は、善治郎には無事に帰還してもらわなければならないと強調した。
瞬間移動とエリク王子の帰還問題
グスタフ王は、善治郎が成人の証に挑戦するのはエリク王子をカープァ王国へ送った後だと指摘した。つまり善治郎が戻らなければ、北大陸へ来たことのある瞬間移動の使い手が存在しないため、エリク王子も帰国できなくなるのである。
その事実に気付いたエリク王子は言葉を失った。善治郎への意趣返しを行えば、自身の帰還も危うくなり、両国が王族を失う最悪の結果になりかねないことを理解した。
戦争の気配と帰国の必要性
さらにグスタフ王は、『騎士団』と共和国の間で大規模な戦争が起こる可能性が高いと説明した。隣国同士の争いであり、自国へ直接飛び火する可能性は低いものの、備えは必要であった。
そのため、将来王となるエリク王子が長期間国外に留まることは望ましくなく、善治郎には可能な限り早く成人の証を達成してもらう必要があると語った。
善治郎の力量への評価
グスタフ王から同行者の推薦を求められたエリク王子は、優秀な戦士や猟師を集めることは可能だと答えた。しかし善治郎自身には成人の証を達成できるだけの能力がないと断言した。
善治郎は完全な素人であり、どれほど優秀な護衛がいても、最後は本人が獲物を仕留めなければならない以上、試練の達成は難しいと考えていた。
婚姻への考え方の違い
エリク王子は改めて、フレア姫を善治郎の側室とすることへの反対を表明した。第一王女が南大陸の王配の側室になることは外聞が悪く、フレア姫にはもっと幸せな未来があるはずだと主張した。
グスタフ王もその感覚自体は理解していた。しかし父である前に王であるグスタフ王は、大陸間貿易の締結を優先して考えていた。婚姻に反対することは許すが、それによって国家利益を損なうことは認めないと告げた。
体面を保つための条件
グスタフ王は、婚姻による体面の問題を解決するためには、善治郎にも相応の負担を負ってもらう必要があると考えていた。その一つが成人の証であり、善治郎が身を張る姿を示すことで外聞を補う狙いがあった。
エリク王子は善治郎が自ら婚姻を諦めるよう仕向けると意気込んだが、グスタフ王はやり過ぎないよう釘を刺した。
ユングヴィ王子との対話
その後、グスタフ王は第二王子ユングヴィを呼び出した。フレア姫と親しいユングヴィならば、フレア姫の本心を理解していると考えたためである。
ユングヴィはフレア姫本人とはまだ話していなかったものの、側室入りについては肯定的だった。ウップサーラ王家、カープァ王家、そしてフレア姫本人の全てに利益がある婚姻だと評価した。
フレア姫の価値観への理解
グスタフ王がフレア姫の判断は一時の気の迷いではないのかと問うと、ユングヴィは否定しなかった。しかしフレア姫の価値観は子供の頃から一貫しており、今回の婚姻は彼女にとって望外の幸運だと断言した。
父や兄が考える幸福な結婚は、フレア姫にとっては王族として果たす義務に過ぎないとも語り、家族との価値観の違いを明確にした。
大陸間貿易への期待
続いて国威の低下について問われたユングヴィは、それを些細な問題だと切り捨てた。むしろ南大陸との直接貿易によって、教会諸国への依存から脱却する好機だと主張した。
大型帆船、瞬間移動、巨大港湾を持ちながら北大陸との直接貿易を行っていないカープァ王国は理想的な交易相手であり、その機会を逃す方が愚かだと熱弁した。
次代への評価
グスタフ王はユングヴィの先見性を認めながらも、国の成長を急ぎすぎる危うさも感じていた。王位を望むユングヴィに対し、まだ早いと告げ、さらに経験を積むよう諭した。
二人の息子を見送った後、グスタフ王はエリクの視野の狭さとユングヴィの強すぎる野心を思い浮かべながらも、どちらも見どころのある人物だと評価した。
善治郎との個別会談の決意
グスタフ王は側近を呼び、翌日に善治郎と二人きりで会談したいと伝えさせた。
そして善治郎について考えた。戦士達の価値観から見れば頼りない男だったが、会談ではエリク王子を巧みに誘導し、交渉を成立させていた。さらにエリク王子の闘争心を刺激し、対等な相手として認識させることにも成功していた。
グスタフ王は、善治郎にはエリク王子だけでなく周囲の戦士達にも一撃を与え、価値観を揺さぶってほしいと期待しながら、翌日の会談に備えるのだった。
第二章 成人の証
エリク王子出発の日
数日後、善治郎が『瞬間移動』でエリク王子をカープァ王国へ送る日が訪れた。すでに侍女を通じて先触れの書状は送られており、カープァ王国側にも事情は伝わっているはずであった。
エリク王子が南大陸へ向かった翌日には、善治郎自身が『成人の証』に挑むため山へ向かう予定となっていた。
フレア姫とスカジの心配
エリク王子の待つ場所へ向かう途中、フレア姫は善治郎にスカジを同行させなくて本当に良いのかと尋ねた。
フレア姫は能力と人格の両面からスカジを推薦していたが、善治郎は人選を全てエリク王子に委ねると決めていた。騎士ナタリオも反対したが、善治郎は考えを変えなかった。
善治郎は純粋な味方を同行させない方が都合が良いと説明したが、その理由については明かさなかった。
グスタフ王との密談
フレア姫が善治郎の考えにグスタフ王との会談が関係しているのか尋ねると、善治郎は答えなかった。
実際には、前日にグスタフ王と二人だけで密談を行っていた。そこでグスタフ王は頼み事を持ちかけ、それを成し遂げた場合にはフレア姫の側室入りを認めてもよいと提案していた。
善治郎はその頼み事の難しさに悩んだものの、一晩考えた末に実行可能な作戦を思いついていた。
成人の証への準備
スカジは善治郎の荷物が少なすぎることを心配した。だが善治郎には、スカジが必要と判断した装備を全て持ち運ぶ体力も、それらを使いこなす技量もなかった。
特に弓や槍については扱えないと判断し、持参を断っていた。その代わりに罠を選んだが、スカジは罠猟も熟練を要する技術であると指摘した。
善治郎は失敗を覚悟しながらも、自分にできる方法として挑戦する考えを示した。
フレア姫の決意
善治郎が『成人の証』に失敗すれば、フレア姫の側室入りも実現しない。しかしフレア姫は、自らの願いのために善治郎へさらに負担を強いるつもりはなかった。
その一方で夢を諦めるつもりもなく、スカジにユングヴィとの面会を早急に手配するよう密かに命じた。
エリク王子との再会
待ち合わせ場所に到着すると、すでにエリク王子一行が待っていた。
善治郎は改めてエリク王子の姿を観察した。王子は豪華でありながら実戦向きの武装を身にまとい、さらに土産と思われる青い布に包まれた宝剣を携えていた。
善治郎は賓客として迎えられることを約束し、エリク王子もその言葉を受け入れた。
成人の証に同行する戦士達
出発前に、エリク王子は善治郎へ同行者を紹介した。
現れたのは五人の屈強な戦士達であり、その代表であるヴィクトルは、制限の範囲内で善治郎を支援すると誓った。
善治郎は彼らがエリク王子の腹心であると同時に、グスタフ王の意向を受けて動く存在であることを思い出した。また、若い戦士を中心に善治郎への敵意や侮りが隠されていないことにも気付いていた。
善治郎の確認と駆け引き
善治郎は『成人の証』の規則について確認した。同行者の助力を受ければ失敗と見なされるが、挑戦回数に制限はなく、最後に成功すればよいことも確認した。
その上で、自分が失敗した場合には体調を整えて再挑戦し、その間はヴィクトル達に何度も世話になる可能性があると述べた。
これに対しエリク王子は、一度も失敗せず成功した場合に比べれば交渉は難しくなるとし、一度失敗した時点で自分を帰国させることを条件として提示した。
善治郎の新たな条件
善治郎は条件を受け入れた上で、新たな懸念を示した。
山中で自分ではなく同行者側の事情によって行動を中断した場合、それは失敗として扱われるのかと問いかけたのである。
最初エリク王子は意味を理解できなかったが、善治郎は同行者が病気や怪我で進めなくなったり、自分についてこられなくなった場合を例に挙げた。
戦士達への挑発
善治郎の発言は、選りすぐりの戦士であり猟師でもあるヴィクトル達が自分についていけなくなる可能性を示唆するものであった。
エリク王子にとっては到底あり得ない話であり、不快感を隠せなかった。それでも善治郎は念押しを続け、同行者側の都合で行動を止める可能性は一切考慮しなくてよいのかと確認した。
最終的にエリク王子は、自分は彼らを全面的に信頼していると断言し、そのような事態は起こり得ないと明言した。
善治郎はその返答を得ると、それ以上は追及しなかった。
瞬間移動による出発
話が終わると、善治郎は『瞬間移動』を行う準備に入った。
エリク王子はヴィクトルへ善治郎のことを任せるよう命じ、ヴィクトルもそれに応えた。
そして善治郎が呪文を唱え、『瞬間移動』を発動したことで、エリク王子は南大陸のカープァ王国へと送り出されたのであった。
山での成人の証の開始
翌日、善治郎は全ての準備を整え、王宮から馬車で一時間ほど進んだ山の麓へ到着した。
標高はそれほど高くなかったが、木々が鬱蒼と茂り、残雪も多く残る厳しい環境であった。善治郎は計画実行に必要な地形を確認するため、ヴィクトルに断崖絶壁の有無を尋ねた。
ヴィクトルが案内可能だと答えると、善治郎は獲物を崖へ追い込むつもりだと説明した。ヴィクトルはその発想に感心し、善治郎以外の戦士達は護衛を利用する発想に不快感を示した。
少ない装備への疑問
善治郎の服装自体は山での狩猟に適したものであったが、背負う荷物は護衛達に比べて極端に少なかった。
ヴィクトルは、目的地となる断崖絶壁まで猟師の足でも六日かかると説明し、その水と食料では危険だと忠告した。しかし善治郎は必要ないと答えた。
さらに善治郎は、自分ではなく護衛達が食料や水に困るような事態になれば、エリク王子の評価を傷つけることになると指摘した。その言葉に若い戦士達は怒りをあらわにしたが、ヴィクトルが制止した。
険しい山道と善治郎の苦戦
山へ入って四時間が経つ頃には、戦士達の怒りは消え失せていた。
善治郎は雪や落ち葉に覆われた不安定な地面を慎重に進み続け、疲労困憊していた。整備された道など存在せず、一歩ごとに転倒や怪我の危険が伴う環境であった。
若い猟師はそんな善治郎を揶揄したが、善治郎には反論する余裕もなかった。
休憩と猟師達の野営技術
善治郎の状態を見たヴィクトルは休憩を提案した。善治郎はそれを受け入れ、一時間かけて休憩場所へ到着した。
戦士達は役割分担をしながら手際よく薪を集め、火を起こし、鍋で温かいスープを作り始めた。一方の善治郎は、白パンやソーセージ、酢漬けキャベツを簡素な昼食として食べた。
休息によって体力を回復させた善治郎は、改めて目的地までの距離を尋ねた。
護衛達から引き出した言質
ヴィクトルは、このまま進めば十日ほどで目的地に着くと答えた。しかし野営が続けば疲労が蓄積し、さらに善治郎の持つ食料と水では往復は不可能だとも説明した。
それに対して善治郎は、護衛達も同じ状況ではないかと問い返した。
するとヴィクトルは、自分達であれば雪を溶かして水を確保でき、狩猟や山菜採取、場合によっては虫を食べることもできるため、長期間生き延びられると説明した。
善治郎は残る四人にも確認を取り、全員から自分達の都合を考慮する必要はないという言葉を引き出した。その中には、善治郎の移動が遅すぎることの方が問題だという若い猟師の挑発も含まれていた。
初日の行程終了
昼食後に再出発した一行はさらに三時間ほど進んだ。
しかし善治郎は体力の限界を迎え、まだ日没まで余裕があったにもかかわらず、その日の行動終了を宣言した。
護衛達は善治郎の体力不足に呆れながらも従った。若い猟師は野営準備に時間がかかる素人として善治郎を評したが、善治郎は自分より護衛達の心配をするべきだと返した。
善治郎の真の計画
善治郎は周囲の景色を観察し、特徴的な木や岩、遠くの山並みをデジタルカメラで撮影した。
その後、自身の宿泊している広輝宮のゲストルームの画像を表示し、翌朝の朝食後にこの場所から再出発すると護衛達へ告げた。
そしてデジタルカメラの画像を補助として利用し、『瞬間移動』の魔法を発動した。
次の瞬間、善治郎は護衛達の目の前から姿を消した。戦士達は何が起きたのか理解できず、ましてその事態が自分達にどのような影響を与えるのかも把握できなかった。
王宮への帰還
善治郎は無事に広輝宮のゲストルームへ帰還した。
出迎えた侍女イネスから、グスタフ王、ユングヴィ王子、フレア姫、そしてヴェルンドという人物から面会希望が届いていることを聞かされた。
善治郎はまずフレア姫と会い、面会希望者について話を聞くことを決めた。その後の予定を整えるよう依頼し、蒸気風呂と夕食を済ませると早めに休息を取った。
翌朝の再合流
翌朝、善治郎は朝食を終えると、前日に撮影した森の景色をデジタルカメラに表示し、その映像を頼りに再び『瞬間移動』を発動した。
すると前日別れた森の中へ正確に戻ることができた。
そこには善治郎の指示通り、五人の護衛兼猟師達が全員揃って待っていた。善治郎は彼らを確認すると、ヴィクトルに先導を命じ、再び山中への行軍を開始したのであった。
三日後の朝
善治郎の瞬間移動が護衛達を追い詰める
三日目の朝になると、ヴィクトル達は自分達の置かれた状況を理解していた。善治郎は毎朝、広輝宮で朝食を済ませてから『瞬間移動』で前日の到達地点へ戻り、日中だけ歩いて夕方にはまた王宮へ帰っていた。
一方、護衛の戦士達は森に泊まり込み、善治郎を待ち続けなければならなかった。善治郎は二日目からさらに歩く速度を落としていたため、目的地まで十日以上かかる見込みとなり、経験豊富な戦士達ほど先の苦労を想像できていた。
善治郎が長期戦を宣言する
ヴィクトルは目的地に着いても獲物が見つからなかった場合を尋ねた。善治郎は、時間制限はないため百日でも二百日でも成功するまで続けると答えた。
善治郎にとっては『瞬間移動』で王宮に帰れるため大きな問題ではなかったが、森に残される護衛達にとっては深刻な話であった。若い猟師は一度下山して態勢を立て直すべきだと助言した。
善治郎が護衛達の退路を塞ぐ
善治郎は、自分は困らないと答えた上で、護衛達の都合で引き返すことになれば、エリク王子の言葉が嘘になると指摘した。そして、それは臆したということかと挑発した。
若い猟師は悔しさをこらえながら否定した。ヴィクトルは状況をまずいと見て、助言以上のことはできないが出来る限り協力すると申し出た。
利害が一致する
ヴィクトル達は、善治郎が『成人の証』を立てない限り森から解放されず、エリク王子も南大陸から戻れない状況に置かれていた。
そのため、善治郎への感情は別として、護衛達は善治郎の成功に協力せざるを得なくなった。善治郎も彼らによろしく頼むと応じ、表面上の利害は一致したのであった。
幕間一 エリク王子のカープァ王国訪問
エリク王子とプジョル元帥の手合わせ
善治郎が北大陸で『成人の証』に挑んでいる頃、エリク王子はカープァ王国の訓練場でプジョル元帥と木槍による手合わせを行っていた。
エリク王子の攻撃はことごとく受け流され、最初は苛立ちと怒りを覚えた。しかし、プジョル元帥が自分を翻弄しているのではなく、攻撃の良し悪しに応じて導いていることに気づくと、その感情は歓喜へと変わった。
全力で挑み続けた末に手合わせは終了し、エリク王子はプジョル元帥の技量を心から称賛した。プジョル元帥もまたエリク王子の実力を高く評価し、互いに敬意を深めたのであった。
走竜への強い興味
手合わせの後、プジョル元帥は南大陸の乗用動物である走竜について説明した。
北大陸では伝説的な存在である竜種に騎乗できると知ったエリク王子は強い興味を示し、実際に走竜へ乗る機会を得ると大いに喜んだ。さらに、この生き物を輸入できないのかと熱心に尋ねるほど魅了されていた。
女王アウラによるエリク王子の評価
その夜、女王アウラはプジョル元帥からエリク王子の様子を報告された。
プジョル元帥は、エリク王子が武人として非常に素直であり、自分との手合わせや走竜の体験を心から楽しんでいたと伝えた。女王アウラはその話から、エリク王子が第一印象通りの武骨な武人であると判断した。
また、善治郎からの書状で両者の関係が険悪になったことを知っていたため、エリク王子への理解を深める必要性も感じていた。
宝剣が示したウップサーラ王国の技術力
女王アウラはエリク王子から贈られた宝剣をプジョル元帥に見せ、その評価を求めた。
宝剣は豪華な装飾を施されながらも実戦向きに作られており、プジョル元帥は武器として極めて高く評価した。自身の愛用の槍と交換してもよいと思うほど惚れ込んだのである。
その評価を聞いた女王アウラは、フレア姫が語っていたウップサーラ王国の製鉄技術の高さを実感し、大陸間貿易を何としてでも成立させるべきだと考えを強めた。
女王アウラとエリク王子の会談
翌日、女王アウラとエリク王子は私的な会談を行った。
エリク王子は善治郎について、知恵は認めるが好感は持てないと率直に語った。また、妹であるフレア姫の幸せを願う兄として、善治郎との婚姻には賛同しかねると明言した。
一方で、グスタフ王は大陸間貿易に大きな期待を寄せているとも語り、女王アウラはその発言から、グスタフ王自身は婚姻を認める方向に傾いていると理解した。
婚姻観の食い違い
女王アウラは大陸間貿易と婚姻の双方について説得を試みた。
エリク王子はカープァ王国の国力を認めながらも、フレア姫には第一王女にふさわしい男から求婚され、祝福の中で結婚してほしいと考えていた。
これに対し女王アウラは、フレア姫は自ら善治郎に結婚式のパートナー役を願い出た人物であり、一般的な女性像には当てはまらないと指摘した。
フレア姫の行動を知ったエリク王子の衝撃
女王アウラから、フレア姫が歓迎の夜会の場で善治郎に結婚式のパートナー役を申し出た経緯を聞かされたエリク王子は大きな衝撃を受けた。
しかもその場には女王アウラやスカジも同席しており、この出来事を隠し通すことは不可能であると知った。エリク王子の価値観では、その行動は極めて非常識であり、今後まともな縁談を望むことは難しいと考えざるを得なかった。
エリク王子の折伏
フレア姫の行動が公になっている以上、善治郎と女王アウラが受け入れてくれたこと自体が大きな温情であるとエリク王子は理解した。
さらに、フレア姫自身が善治郎との婚姻を強く望み、その願いを受け入れられる以上の未来を見出せなかった。
熟考の末、エリク王子はついに考えを改め、フレア姫を受け入れてくれた善治郎と女王アウラへ最大限の感謝を伝えることで、この問題に一区切りをつけたのであった。
第三章 探索のち密談の日々
面会再開とグスタフ王との対談
『成人の証』への挑戦を続ける中で生活のリズムをつかんだ善治郎は、夜の時間に面会希望者との対談を行える余裕を得ていた。
最初の面会相手となったのはグスタフ王であった。二人は酒を交えながら会話を始め、善治郎はポモージエ侯爵から贈られた銘酒を振る舞った。話題は自然とポモージエ侯爵領での出来事へ移り、善治郎は自身の功績ではなく、フレア姫の判断と尽力を称賛した。
フレア姫との婚姻に対する本音
グスタフ王は率直に、善治郎が本当にフレア姫を妻として迎えたいのかと問いかけた。
善治郎はフレア姫を人として尊敬しており、縁を結べるなら栄誉であり相応の待遇を約束すると答えた。しかし、愛情や結婚への積極的な意思については言及しなかった。
グスタフ王もその意図を理解していたが、カープァ王国との大陸間貿易の価値を認識していたため、婚姻そのものを否定するつもりはなかった。
グスタフ王による婚姻承認
グスタフ王は、近いうちに善治郎が自分を義父と呼ぶことになるだろうと語り、フレア姫の側室入りを認めた。
その理由として、善治郎が『成人の証』への挑戦を通じて、護衛の戦士達の価値観を揺さぶるという条件を実質的に果たしたと判断したことを明かした。
戦士達の価値観が国の発展を妨げる可能性を危惧していたグスタフ王にとって、善治郎の存在は大きな意味を持っていたのである。
婚姻に伴う体面への配慮
グスタフ王は、ウップサーラ王国第一王女が王配の側室となることは外聞が良くないため、国の体面への配慮を求めた。
善治郎が『成人の証』に挑んでいることもその一環であり、結婚までの過程は可能な限りウップサーラ王国の慣習に従ってほしいと要望した。
結婚式もウップサーラ王国で、その衣装と作法に従って行うことを望み、善治郎はそれを快諾した。最後にグスタフ王は父としてフレア姫を託し、善治郎も誠意を込めて応じた。
双子の姉弟の再会
同じ頃、別室ではフレア姫と双子の弟ユングヴィ王子が再会していた。
ユングヴィ王子は、共和国と『騎士団』の対立を警戒して海軍の対応に追われていたため、面会が遅れたと説明した。また、北方諸国の動向や国際情勢について語り、アンナ王女の行動が国内政治を意識したものであったと分析した。
フレア姫は、国政や外交の中枢に関わる弟を羨ましく思いながら話を聞いていた。
フレア姫の功績と婚姻への祝福
ユングヴィ王子は、『黄金の木の葉号』の船長として大陸間航行を成功させたフレア姫を称賛した。
さらに、未知への探求心が強いフレア姫らしく、南大陸への婚姻も納得できると語った。二人は軽口を交わしながらも、互いの努力と成果を認め合っていた。
婚姻の真相発覚
ユングヴィ王子は、フレア姫の側室入りを提案したのは女王アウラだと推測した。しかし、フレア姫の反応からその推理が誤りであることを察する。
追及されたフレア姫は、最初に善治郎へ結婚を申し込んだのは自分だと白状した。
その後の長い説明によって経緯を知ったユングヴィ王子は衝撃を受け、善治郎がその事実を利用せず、反対意見を正面から受け止めながら『成人の証』に挑み続けていることに強い驚きを覚えた。
善治郎への感謝と血統魔法への関心
二人は善治郎の配慮と人柄について語り合った。
さらに、善治郎が森と広輝宮を日帰りで往復している現状から、カープァ王家の血統魔法『瞬間移動』の価値について話題が移った。
ユングヴィ王子はその価値を高く評価し、将来的な王家同士の血縁関係について冗談交じりに語ったが、フレア姫はそれを強く牽制した。
エリク王子の将来が明かされる
会話の中でユングヴィ王子は、エリク王子が将来ウップサーラ王国ではなくオフス王国の王になることが内々に決まっていると明かした。
オフス王国では後継者問題が長年続いており、『教会』の影響を避けるためにもエリク王子が継承者となる方向で話が進んでいたのである。
フレア姫はその事実を聞き、過去の会談でグスタフ王がエリク王子を次期国王であるかのように扱っていた理由について考え始めた。
グスタフ王の思惑への気付き
フレア姫は、グスタフ王がエリク王子を交渉の場に同席させ、側室入り反対派の意見を代弁させていた可能性に思い至った。
エリク王子が反発役を担うことで国内の不満を表面化させ、その役割を終えた後はオフス王国へ移るため、カープァ王国との関係悪化の影響も最小限に抑えられるという構図である。
その推測を聞いたユングヴィ王子は否定せず、むしろ善治郎には事情を正直に伝えた方が良いと語った。
善治郎への評価
ユングヴィ王子は、善治郎は策謀よりも誠実な説明を好む人物であり、事情を包み隠さず伝えた方が信頼を得られる相手だと断言した。
直接会ったこともない善治郎についてそこまで見抜く弟の洞察力に、フレア姫は改めて驚きを覚えるのであった。
断崖絶壁への到達
十数日をかけて森を進んだ善治郎一行は、ついに目的地である断崖絶壁へ到着した。
善治郎は命綱を使いながら崖を確認し、その高さと危険さに恐怖を覚えた。落下すれば命はないとヴィクトルも認める中、善治郎は慎重にその場を離れた。その後、崖が緩やかに曲がっている地形を見て、獲物を追い込むには都合が良いと判断した。
狩猟方法の相談
善治郎は獲物を崖へ追い込む方法についてヴィクトルへ助言を求めた。
ヴィクトルは、善治郎には追い込み猟よりも餌でおびき寄せる方法の方が向いていると説明した。追い込みには高度な技術と長い時間が必要であり、獲物を先に発見することも難しいためである。一方で善治郎は『瞬間移動』によって容易に餌を補充できるため、おびき寄せる方が現実的だった。
善治郎は罠の併用も考えたが、ヴィクトルから罠を見破られれば周辺そのものを警戒される危険があると指摘され、その案を取り下げた。
狙う獲物の選定
善治郎はどの獲物を狙うべきか相談した。
ヴィクトルは、鹿やトナカイは比較的安全だが逃げ足が速く、熊やイノシシは危険だが逃げずに向かってくる場合が多いと説明した。また狼は群れで行動するため、護衛が介入せざるを得なくなり、『成人の証』の条件に抵触するため避けるべきだと助言した。
善治郎は悩みながらも狼を候補から外し、他の獲物について検討することにした。
護衛達による積極的な協力
以前とは異なり、護衛の戦士達は真剣に善治郎へ助言を行った。
餌をまく場所や待ち伏せの位置、足跡や匂いを消す工夫などを次々と提案した。善治郎が『成人の証』を達成しなければ彼らは森から帰れないため、今や誰よりも善治郎の成功を望んでいたのである。
善治郎は準備のため翌日は森へ来ないことを告げ、『瞬間移動』で帰還した。
若い戦士の不満
善治郎が去った後、護衛達は野営の準備を始めた。
若い戦士は、善治郎のせいで自分達が苦労していると不満を漏らした。ヴィクトルはその発言を厳しく戒め、善治郎への無礼を咎めた。
しかし若い戦士は納得できず、不満を募らせていた。
善治郎の温情の真意
ヴィクトルは戦士達に、善治郎はすでに『成人の証』を達成する必要すらなくなっていると説明した。
善治郎は『瞬間移動』を使えるため、これまで訪れたどの地点からでも再開できる。もし善治郎が三日目の地点から始めると言い出せば、護衛達は一晩でそこへ移動できず、契約の前提そのものが崩壊することになる。
その場合、エリク王子が交わした約束は破綻し、護衛達は責任を負う立場に追い込まれる。善治郎はその方法を取らず、彼らに合わせて行動していたのである。
護衛達の覚醒
ヴィクトルの説明によって、護衛達はようやく自分達の立場を理解した。
善治郎の行動が温情によるものであることを知り、若い戦士を含めた全員が顔色を変えた。ヴィクトルは、その恩義に報いるため全力で善治郎を成功へ導くべきだと説いた。
若い戦士は危機感を抱きながら返事をし、すぐに行動へ移った。ヴィクトルは、それが感謝よりも危機感によるものだと理解しながらも、結果として善治郎への協力につながるなら問題ないと考えるのであった。
幕間 二 一時帰国
一時帰国と後宮への帰還
『瞬間移動』で森を離れた善治郎は、カープァ王国王宮の石室へ帰還した。
善治郎は今回も非公式の一時帰国であることを伝え、後宮へ向かった。後宮に戻ると、森での防寒装備を脱ぎ捨て、南大陸の暑さを改めて実感した。十日以上続いた森歩きと会談による精神的疲労を感じながらも、休む前に片付けるべき用事に取りかかった。
魔道具の充電
善治郎は背嚢からデジタルカメラと携帯音楽プレーヤーを取り出し、充電を行った。
どちらも充電残量が少なく、特にデジタルカメラは警告が出るほどだった。善治郎は石室以外への『瞬間移動』に画像データを必要としており、デジタルカメラは旅を続ける上で欠かせない存在となっていた。充電が始まったことを確認し、善治郎はようやく安堵した。
入浴と子供達との再会
アマンダ侍女長の勧めを受けた善治郎は、風呂に入って冷え切った身体を温めた。
森歩きで蓄積した疲労を癒やし、身体を洗い流した後、カルロス・善吉とフアナ・善乃との久しぶりの再会を果たした。嬉しさのあまり構いすぎて二人を泣かせてしまい乳母達に叱られたが、それも気にならないほど充実した時間を過ごした。
アウラとの再会
その後、アウラが後宮へ戻り、善治郎と再会した。
二人は互いの無事を喜び合い、抱擁を交わした。離れていた時間の長さを埋めるように触れ合い、善治郎は後宮に帰ってきた実感を得た。だが私情だけを優先することはできず、二人はソファーに向かい合って座り、情報交換を始めた。
エリク王子とフレア姫の婚姻問題
善治郎とアウラは北大陸での出来事について話し合った。
エリク王子がプジョル元帥と良好な関係を築き、フレア姫の側室入りにも賛同したことを聞いた善治郎は安堵した。また、フレア姫が公衆の面前で善治郎へ結婚を申し込んだ事実を早く伝えていれば、婚姻交渉はもっと容易だっただろうと話し合った。
さらにアウラは、エリク王子が次期ウップサーラ国王ではなく、将来オフス王国の王となる予定だったことを知り、一杯食わされた気分になったと語った。
北大陸情勢の共有
善治郎は共和国と『騎士団』の対立について説明した。
共和国と『北方竜爪騎士修道会』が大規模な戦争へ向かっている可能性を伝えたが、ウップサーラ王国は険しい山脈によって隔てられており、戦火が直接及ぶ可能性は低いと説明した。距離や地理的条件を聞いたアウラも、それが当面は対岸の火事であると判断した。
それでもアウラは危険を感じたらすぐに逃げるよう善治郎へ念を押し、善治郎もそれを約束した。
ユングヴィ王子の婚姻構想
善治郎は、ユングヴィ王子がカープァ王国から側室を迎えることを考えていると報告した。
アウラは、ウップサーラ王国第一王女を迎える以上、こちらから側室を送ることも十分検討に値すると判断した。ただし婚姻政策は血統や家格だけでなく、本人の能力や適性、意欲が重要であると指摘した。
二人は、未知の南大陸へ自ら進んで嫁ごうとしたフレア姫の胆力と行動力の大きさについて改めて認識した。
ヴェルンド来訪の報告
善治郎は、ヴェルンドの名を持つ高名な鍛冶師から南大陸へ連れて行ってほしいと頼まれた件も報告した。
アウラは喜ぶべき話だとしながらも、相応の対価や思惑が伴う可能性を指摘した。そして重要なのは本人の技量だけでなく、技術を後進へ伝える能力であり、もし優れた指導者であれば是非とも迎え入れたいと語った。
帰還延期への理解
善治郎は、フレア姫との結婚式をウップサーラ王国で行うことになったため、帰国が当初の予定より遅れる見込みだと説明した。
アウラは胸の内に複雑な感情を抱きながらも、それを表には出さなかった。側室迎娶のために苦労を重ねている善治郎へ不満を見せることはできないと考え、静かに待っていると伝えたのであった。
第四章 風の鉄槌
ヴェルンドの出国宣言
グスタフ王は、ヴェルンドがカープァ王国行きを望んでいるとの報告を受け、急ぎ本人を呼び出した。
現れたヴェルンドは、希望しているのではなく、すでにカープァ王国へ行くと決めたのだと断言した。国の宝とも言える最高の鍛冶師の突然の決断に、グスタフ王は強く反対したが、ヴェルンドは長年王国へ尽くしてきた自分への借りを理由に認めるよう求めた。
二人きりで語られた真意
周囲の側近達を退室させた後、ヴェルンドは本当の考えを語り始めた。
ヴェルンドは、自分が王国の発展にとって邪魔な存在になりつつあると指摘した。水車送風式高炉による大量製鉄が始まろうとしている中、自分の名声と影響力が新技術の普及を妨げる存在になると考えていたのである。
新旧技術への見解
ヴェルンドは新型高炉の鉄を高く評価していなかったが、その価値そのものは認めていた。
剣や鎧に適した鉄を用途ごとに作り分ける従来の鍛冶技術に強い誇りを持っていたため、大量生産される鉄を武具に使うことには反発していた。しかし同時に、膨大な鉄の需要を満たすには新型高炉が不可欠であり、その生産力には勝てないことも理解していた。
王国の限られた人材と資金では、従来技術と新技術を同時に維持することは困難であり、自分の存在が改革の障害になると考えていたのであった。
王国の未来を見据えた決断
ヴェルンドは、自分を含む古い技術にこだわる鍛冶師達を王家の庇護から外し、新型高炉へ人材を集中させるべきだと主張した。
そのためには、自らが率先して王国を去る必要があると考えていた。グスタフ王は、ヴェルンドが単なる頑固な職人ではなく、時代の流れと王国の未来を理解した上で覚悟を決めていることを悟った。
本当の出国理由
グスタフ王は最後に、一番の理由を正直に話すよう求めた。
観念したヴェルンドは、南大陸には多くの竜が存在すると聞いていることを明かした。そして竜がいて戦士がいるならば、自分の手で竜殺しの武具を作りたい、それが人生最後の目標なのだと語った。
その言葉を聞いたグスタフ王は呆れながらも納得し、事実上の出国許可を与えた。
イノシシとの遭遇
数日後、善治郎は森で仕掛けた餌場に現れた大きなイノシシを発見した。
ドングリで獲物をおびき寄せる作戦は成功したが、狙っていた鹿やトナカイではなく、攻撃的で危険なイノシシが現れたのである。善治郎は危険を承知の上で挑戦することを決意した。
風の鉄槌による狩り
善治郎は『風の鉄槌』の魔道具を使い、突進してくるイノシシに立ち向かった。
魔法語で退けと唱えるたびに強烈な突風が発生し、イノシシの巨体を吹き飛ばした。三度目の発動でイノシシは崖下へ落下し、善治郎は見事に獲物を仕留めることに成功した。
その光景を目撃した護衛戦士達は、善治郎の力に衝撃を受け、これまでとは全く異なる目で彼を見るようになった。
谷底への降下
しかし『成人の証』は獣を倒しただけでは終わらなかった。
善治郎は獲物から換金可能な部位や食料を持ち帰る必要があり、自らの手で命綱を準備して谷底へ降りなければならなかった。護衛達の助言を受けながら慎重に準備を進め、恐怖と戦いながら崖を下った。
補助具や結び目付きのロープを利用したことで、善治郎は無事に谷底へ到達した。
イノシシの解体作業
谷底で善治郎は、死んだイノシシの解体に取りかかった。
毛皮の回収は諦め、後ろ脚一本と牙二本の確保に目標を絞った。強烈な獣臭と血臭に耐えながら、ヴィクトルの指示に従って作業を続けた。
長時間の格闘の末、善治郎は後ろ脚一本と牙二本の切り出しに成功した。
成人の証の達成
ヴィクトルは、その牙なら間違いなく『成人の証』として認められると祝福した。
護衛戦士達も善治郎の成果を心から称賛した。当初は善治郎に反発していた者達も、恐怖に打ち勝ち、自らの力で試練を乗り越えた善治郎を認めるようになっていた。
善治郎も護衛達へ感謝を伝え、自分が持ち帰れないイノシシの残りを自由に使うよう申し出た。
護衛達との別れ
帰還の準備を整えた善治郎は、護衛達へ改めて礼を述べた。
そして彼らの働きを高く評価していることをエリク王子へ必ず伝えると約束した。その言葉に護衛戦士達は大いに喜び、感謝の言葉を返した。
善治郎は祝福と見送りを受けながら、『瞬間移動』によって広輝宮へ帰還したのであった。
共和国と騎士団の戦争報告
善治郎が『成人の証』を立てていた頃、グスタフ王は次々と舞い込む問題への対応に追われていた。
その中で最も大きな報告は、共和国と『騎士団』の戦争が始まり、予想より早く共和国の勝利で終結したというものであった。報告によれば、タンネンヴァルトで共和国約二万八千と『騎士団』約二万五千が激突したという。
グスタフ王は詳細な被害状況が不明なため慎重に判断しつつも、『騎士団』の大勝という最悪の事態が避けられたことに安堵した。そして戦況の裏にフレア姫の行動が影響している可能性を考え、『騎士団』領の湾岸部への追加偵察を命じた。
付与魔法の魔道具への懸念
戦争報告を終えたグスタフ王は、『真水化』と『不動火球』の魔道具へ視線を向けた。
さらに『黄金の木の葉号』には『凪の海』の魔道具も搭載されていることを知っており、これらが付与魔法によって作られた魔道具であることに頭を悩ませていた。
ウップサーラ王家に伝わる『白の帝国』の口伝を知るグスタフ王は、シャロワ・ジルベール双王国の血統魔法が『白の帝国』の王家と符合していることに強い関心を抱いていた。しかし確証はなく、軽々しく判断できない状況であった。
双王国との関係を巡る思案
グスタフ王はフレア姫の判断を振り返った。
『白の帝国』の伝承を利用して『教会』が干渉してくる危険はあるものの、それでも双王国との交易は魅力的であるというフレア姫の考えは、極めて現実的なものだった。
『真水化』や『不動火球』の魔道具は長距離航海に大きな利益をもたらす。またカープァ王国との大陸間貿易は既定路線となっており、そのカープァ王国と親しい双王国との関係も無視できなかった。
そのため、ウップサーラ王国が『教会』勢力と距離を置き続けることは難しくなるだろうと考えた。
王位継承と国政転換の構想
グスタフ王は、今後の変化に対応するためにはユングヴィ第二王子への王位継承を早める選択肢もあると考えた。
大陸間貿易の開始、外交方針の変更、水車送風式大型高炉への移行といった大きな改革を、新王の時代にまとめて実施すれば混乱を抑えられる可能性があった。
そして自らは退位後に旧来の外交関係や古い技術を細々と支える立場に回ることもできると考えた。
その一方で、善治郎が意図せずして大きな変化を次々ともたらしていることに苦笑するのであった。
善治郎の帰還と朗報
その頃、善治郎は『成人の証』を成し遂げて広輝宮へ帰還していた。
普段より早い時間に帰還した善治郎が、イノシシの牙二本と脚一本を背負って現れたことで、彼がついに『成人の証』を立てたという知らせは瞬く間に宮殿中へ広がった。
善治郎は証となる品を預けた後、蒸気風呂で身体を温め、汚れを落とした。達成感を味わう一方で、張り詰めていた緊張が解けたことで強い疲労も感じていた。
休息への願い
部屋で休んでいた善治郎は、ゆっくり休みたいという本音を漏らした。
侍女イネスは、『成人の証』を立てた以上、エリク王子を迎えるためにカープァ王国へ戻るのだから、その前に数日休んではどうかと勧めた。
善治郎も疲労の深さを自覚しており、その提案を受け入れようと考えた。
フレア姫からの感謝
そこへフレア姫から面会の申し込みが届いた。
フレア姫とスカジは、『成人の証』達成と長期間にわたる尽力への感謝を述べた。善治郎は、自らの意思で行ったことだと答えながらも、その感謝を素直に受け取った。
二人が向かい合って座ると、フレア姫はグスタフ王から正式な許可が下り、自身の側室入りが認められたことを伝えた。
婚姻成立と未来への約束
善治郎とフレア姫の婚姻は、正式な結婚式を挙げる段階まで話が進んでいた。
善治郎がよろしく頼むと告げると、フレア姫は自分は結婚後も落ち着くまで時間がかかるだろうと率直に語った。
それに対し善治郎は、フレア姫の行動力こそ魅力であり、カープァ王国や王家、そしてアウラ女王に不利益をもたらさない限り、その自由を認めると伝えた。
その言葉は、自身の功績と人格を尊重されることを望みながらも半ば諦めていたフレア姫の心を強く打った。フレア姫は感謝を述べ、その瞳を潤ませるのであった。
第五章 二度目の結婚式
結婚式に向けた準備
善治郎が『成人の証』を立ててから約一か月後、善治郎とフレア姫の結婚式が執り行われることになった。
その間、善治郎は『瞬間移動』を使って北大陸と南大陸を何度も往復し、エリク王子や両国の外交官の移送を担っていた。大陸間貿易や結婚条件の調整が進む中、善治郎は気温差や過密な移動によって体調を崩しながらも、自分にしかできない役割を果たし続けていた。
花嫁姿のフレア姫との対面
結婚式当日、控室で善治郎は花嫁姿のフレア姫と初めて顔を合わせた。
フレア姫は白いウェディングドレスに身を包み、かつて切った自分の髪を使った長い銀髪の髪型を整えていた。善治郎はその姿を素直に褒める一方で、普段の髪型も同じように魅力的だと伝えた。
フレア姫もまた、鎧姿の善治郎をからかいながら称賛し、二人は和やかな雰囲気の中で式場へ向かった。
精霊に誓いを立てる結婚式
中庭で開かれた結婚式では、善治郎がフレア姫を伴って入場した。
壇上に立った善治郎は剣を掲げ、フレア姫を幸福と豊かさと愛情で満たすことを精霊に誓った。続いてフレア姫も善治郎への愛情と敬意を誓い、自らをフレア・アルカト・カープァと名乗った。
二人の誓いが終わると、出席者たちは拍手や足踏みで結婚を祝福した。
エリク王子による破邪の儀式
誓いの後、本来はグスタフ王が行う予定だった破邪の儀式を、エリク王子が担当した。
エリク王子は黄金の槌でフレア姫と善治郎の肩を打ち、二人の人生から災いが去るよう祈った。善治郎に対してはやや強めに槌を当てたが、その後は義弟としてフレア姫を託す言葉をかけた。
善治郎もウップサーラ王家の理解と協力への感謝を述べた。
王家との交流
善治郎はウップサーラ王家の面々へ目を向けた。
グスタフ王をはじめ、フェリシア第二王妃やマティルダ第三王妃、王子王女たち、そしてグンネル王太后が列席していた。善治郎はフェリシア第二王妃とは以前から面識があり、マティルダ第三王妃とはこの場で初めて顔を合わせた。
夫婦で行う肉の切り分け
宴が始まると、善治郎とフレア姫は肉の切り分け役を務めた。
善治郎は通常一本である新郎用の剣を二本用意し、そのうち一本をフレア姫に渡した。これは肉を振る舞う役割を夫婦で共有するためであり、二人の関係が一般的な男女の役割分担とは異なることを示すためでもあった。
善治郎は不慣れな手つきで肉を切り分け、フレア姫は見事な剣さばきで肉を切り取った。家族から小言を言われながらも、フレア姫は誇らしげにその役目を果たしていた。
グスタフ王との会話
善治郎がグスタフ王へ肉を振る舞うと、グスタフ王は娘の結婚式に出席できた喜びを語った。
善治郎は広輝宮にカープァ王国の拠点が設けられることや、自らの『瞬間移動』によってフレア姫を定期的に帰国させるつもりであることを伝えた。
その言葉を聞いたグスタフ王は、移動時間の面では両国が非常に近い存在になったことを実感していた。
エリク王子との武人論
エリク王子は善治郎の剣技の未熟さを指摘しながらも、武術修行を行わない理由を尋ねた。
善治郎は今から武力を身につけても大きな意味はなく、中途半端に戦えるようになることで判断を誤る危険が増すと考えていることを説明した。
武を重んじるエリク王子には理解しがたい考え方であったが、善治郎は自らの立場に即した考えを貫いた。
ユングヴィ王子との会話
ユングヴィ王子は善治郎が短期間で礼法を習得したことを高く評価した。
さらに、自らも将来的にカープァ王国の高位貴族から側室を迎えたいという考えを示した。善治郎は実現した際には協力すると応じたが、異文化圏で暮らすことの難しさも考え、その場では慎重な姿勢を崩さなかった。
各国来賓への挨拶
善治郎とフレア姫は各国の来賓席を回り、祝福を受けた。
ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の席では、エウゲニウシュとテレサの夫妻と再会した。善治郎は共和国が『騎士団』との戦いに勝利したことを祝福し、戦場に参加したエウゲニウシュから後日詳しい話を聞く約束を取り付けた。
オフス王国使節団との交流
オフス王国の使節団は、結婚の祝福よりもエリク王子への関心を強く示していた。
エリク王子が将来的にオフス王国の王位継承権を持つ存在であるため、歓迎と警戒の両方を抱いている様子がうかがえた。
その中で戦士ケヴィンは、カープァ王国の席にいた金髪の女性たちに強い関心を示した。
マルグレーテを巡る疑問
ケヴィンはマルグレーテの名前や容姿、出自について執拗に質問した。
善治郎がマルグレーテはカープァ王国の人間であると答えると、ケヴィンは激しく動揺した。周囲の者たちに制止されたケヴィンは謝罪したが、善治郎はその反応に強い違和感を覚えた。
そこで善治郎は、後日改めて詳しい話を聞く約束を取り付け、マルグレーテ本人は同席させないことを明言した。
宴の続行と善治郎の退却
その後は大きな問題もなく宴が進行した。
出席者たちは酒を飲み、歌い、踊り、剣を交えながら祝いの席を楽しんだ。善治郎も新郎として最低限の役目を果たした後、剣を交える慣習からは早々に退散するのであった。
結婚式後の情報収集とアウラの来訪
善治郎とフレア姫の結婚式が終わって数日が経過したが、善治郎は依然として多忙な日々を送っていた。
結婚式で約束したエウゲニウシュや戦士ケヴィンと面会し、得られた情報を携えてカープァ王国へ戻った。特にケヴィンの情報は信憑性に乏しい一方で完全には否定できず、影響力を考えれば無視もできない厄介な内容であった。
そのため北大陸の情報収集を継続する必要があると判断し、女王アウラは広輝宮内のカープァ王国大使館へ密かに訪れていた。
アウラによる移動拠点の確保
アウラは善治郎の『瞬間移動』によって大使館へ到着した。
これはウップサーラ王国側には秘密の行動であり、本来であれば問題となる行為であったが、それだけの価値があった。アウラ自身が広輝宮を転移先として記録したことで、今後はアウラもカープァ王国から大使館へ人員を送れるようになったのである。
善治郎はこれまで北大陸と南大陸の往復を一人で担っていたが、今後はアウラの協力によって移動の負担が軽減されることになった。
結婚後の受け入れ準備
善治郎はフレア姫やその従者たちの受け入れ準備について確認した。
アウラは後宮の別棟をフレア姫のために整備済みであると説明した。また、今後送られてくる造船関係者や鍛冶師ヴェルンドについても受け入れる方針を示した。
善治郎はヴェルンドが国でも特別な存在の鍛冶師であることを説明し、アウラはその価値を宮廷筆頭魔法使いエスピリディオンに匹敵するものと理解した。
ヴェルンド移住の真意を推測
善治郎はヴェルンドが自らの夢である竜殺しの武器作りを理由に移住を望んでいると伝えた。
しかしアウラは、それだけではない裏の事情があると考えた。善治郎は間諜としての役割を疑ったが、アウラは職人一筋の人物には見えないとして否定した。
結局真意は分からなかったものの、カープァ王国にとって貴重な人材であることは間違いなく、まずは受け入れることになった。
ガラス製造への期待
ヴェルンドが炉そのものにも強いこだわりを持つ職人であると知ったアウラは、ガラス製造への活用を期待した。
現在はビー玉の製造には成功しているものの、高温によって炉が損傷する問題が続いていた。高性能な炉が完成すれば、さらなる技術発展につながる可能性があると考えられた。
双王国との今後の交渉
話題はシャロワ・ジルベール双王国へ移った。
アウラは、善治郎が落ち着いた後にブルーノ前王を呼び寄せる必要があると話した。善治郎はその名前を聞いて露骨に嫌そうな表情を見せたが、必要性自体は理解していたため反対はしなかった。
タンネンヴァルトの戦いの報告
続いて善治郎はエウゲニウシュから聞いた情報を説明した。
共和国はタンネンヴァルトの戦いに勝利し、大きな名声を得たのは傭兵ヤンとアンナ王女であった。アンナ王女は次回の国王選挙への出馬を正式に表明しており、その人気は急上昇していた。
善治郎は、アンナ王女であればさらに大きな行動を起こしかねないと自身の見解を述べた。
共和国への警戒
アンナ王女の動向を聞いたアウラは、共和国が南大陸へ進出してくる可能性を考えた。
共和国は北大陸屈指の大国であり、大戦の勝利によって勢いを増している。善治郎もその国力の大きさを知っているため、不安を隠せなかった。
アウラは可能性を断定しなかったが、最悪の事態を想定して備えるべきだと判断した。
ケヴィンの情報に関する相談
最後に善治郎は、戦士ケヴィンから聞いた話について切り出した。
その内容はマルグレーテの素性に関わるものであり、善治郎自身も荒唐無稽だと感じていた。しかし無視できない内容でもあったため、アウラに確認を取ろうとした。
善治郎が長い説明を始めると、アウラはこの日最も真剣な表情でその話に耳を傾けるのであった。
エピローグ 後宮、二人目
北大陸からの帰還
それから約一ヶ月の間、善治郎は毎日一人ずつ『瞬間移動』を用いて、ウップサーラ王国からカープァ王国へ人員を送り続けた。
フレア姫やスカジ、侍女達、ヴェルンドら職人達、さらにルクレツィアとフローラなどが優先的に移送され、それ以外の者達は『黄金の木の葉号』で帰国することになった。
最後に侍女イネスを送り届けた後、善治郎自身も『瞬間移動』で帰国し、長く続いた北大陸での生活に終止符を打った。
アウラとの再会
帰還した善治郎は後宮で待っていた女王アウラと再会した。
善治郎は今後も一ヶ月に一度は広輝宮のカープァ王国大使館へ赴き、情報収集を続けることで合意したと報告した。アウラはその働きを王として労い、その後は妻として無事の帰還を喜んだ。
善治郎もまた、自分の帰る場所がこの後宮であることを改めて実感していた。
フレア側への人員配置
善治郎は後宮の人員配置について確認した。
アウラは、フレアの希望と本人の意思を尊重してニルダを含む六人の侍女をフレア付きとして送り出したと説明した。また、新たに採用した侍女達も配置し、忠誠心を重視して選抜したことを明かした。
異国から嫁いできたフレアとその周囲を支えるための体制が整えられていたのである。
アウラに背中を押される
善治郎はソファーでくつろぎながらも落ち着かない様子を見せていた。
そんな夫の心情を理解していたアウラは、フレアが待つ別棟へ向かうよう促した。善治郎は複雑な感情を抱えていたが、アウラからこの結婚を最も望んだのはフレアであり、自分も受け入れたのだと改めて告げられた。
善治郎は覚悟を決め、フレアの待つ後宮別棟へ向かった。
フレアの新しい住まい
別棟ではフレアが笑顔で善治郎を迎えた。
室内には善治郎が持ち込んだ電化製品はなく、代わりに霧を発生させる魔道具で暑さを和らげていた。善治郎は生活に不自由がないか尋ね、フレアは毎晩届けられる氷を今後も続けてほしいと頼んだ。
また、故郷との手紙のやり取りを続けたいという願いも伝えられ、善治郎は快く引き受けた。
スカジの武装相談
続いてスカジは武装について相談したいと申し出た。
北大陸の武技は分厚い防具を活用する戦い方が前提となっており、南大陸の装備では本来の実力を発揮しにくいという。そこでヴェルンドと相談し、南大陸の気候でも使える防具を作りたいと考えていた。
善治郎は王宮でヴェルンドと会えるよう手配すると約束し、フレアもそれを認めた。
二人きりの会話
その後、フレアはスカジや侍女達を下がらせ、善治郎と二人きりになった。
フレアは、善治郎が自分に対して丁寧すぎる口調を使い続けていることを寂しく思っていると打ち明け、本来の話し方で接してほしいと願った。
善治郎はすぐには難しいと認めながらも努力すると約束し、少しずつ素の口調で話し始めた。
夫婦としての距離を縮める
二人は互いの呼び方についても話し合った。
善治郎はフレア達に自分を陛下ではなくゼンジロウ様と呼ぶよう頼み、フレアもまた殿下ではなく名前で呼んでほしいと願った。
善治郎は意を決してフレアと呼び、フレアも嬉しそうに応じた。
そして二人は互いにこれからをよろしくと告げ合い、フレアは善治郎の手を握ってその胸に身を預けた。善治郎はそっとフレアの背に腕を回し、二人の距離を静かに縮めるのであった。
付録 主と侍女の間接交流
後宮に訪れた大きな変化
善治郎とフレア姫の結婚が北大陸で無事に成立したという知らせを受け、カープァ王国の後宮侍女達は喜びに包まれた。
しかしその喜びは長く続かず、フレア姫の後宮入りが正式に決まったことで、侍女達は大量の準備作業に追われることとなった。食料や寝具の手配、別棟の清掃、侍女達の居住空間の確保など、後宮全体が慌ただしい空気に包まれた。
人員不足への危機感
若い侍女達が忙しく働く様子を見ながら、アマンダ侍女長は現在の体制を恒常的に続けることは不可能だと判断していた。
そこへ調理担当責任者のヴァネッサが現れ、二人は後宮運営について話し合った。側室を迎えることで管理すべき空間が増え、必要な人員も大幅に増加する一方、後宮という性質上、侍女を無制限に増やすことはできなかった。
下女導入の提案
アマンダ侍女長は、清掃や庭園管理、浴室清掃などの業務に下女を導入する案を示した。
下女達は身元を厳しく調査した上で選抜し、担当期間中は王宮住み込みとし、後宮へは作業時間だけ立ち入らせる方針であった。情報流出の危険を最小限に抑えながら人手不足を解消するための策であった。
ヴァネッサは厨房への立ち入りだけは認めないよう求め、アマンダもその意見に同意した。
問題児三人組の反応
その日の夜、フェー、ドロレス、レテの三人も下女導入の噂について語り合った。
フェーは部下ができることに大喜びし、指導する立場になることを楽しみにしていた。一方でレテは、人を監督する仕事に不安を抱いていた。ドロレスは監督には責任も伴うと指摘し、フェーをたしなめた。
三人はそれぞれ異なる反応を見せながらも、後宮の仕事が大きく変わることを理解していた。
フレア姫来訪への複雑な心境
会話はやがてフレア姫の後宮入りへと移った。
善治郎とアウラ、そして侍女達だけで成り立っていた後宮は、彼女達にとって居心地の良い空間であった。そのため、新たな側室であるフレア姫の到来によって何が変わるのか、侍女達は不安を抱いていた。
現状に大きな不満がないからこそ、その変化が状況の悪化につながるのではないかと恐れていたのである。
別棟勤務への予想
三人は誰がフレア姫付きとして別棟勤務になるのかを話し合った。
新人侍女達が中心になるのではないかという予想が出され、本棟勤務の快適さを知る者ほど別棟への異動は大変だろうと語った。
もっとも、善治郎付きに任命されているフェー達三人は、自分達が別棟勤務になることはないと考えており、そのため比較的気楽な立場から話を続けるのであった。
別棟勤務者の決定
数日後、フレア姫付きとして別棟勤務になる人員が発表された。大半は新人侍女だったが、既存の後宮侍女からはニルダが選ばれた。
昼休みの食堂で、問題児三人組やルイサ、ミレーラに事情を尋ねられたニルダは、フレア姫から名指しで希望されたことを明かした。姉の結婚式や王宮での交流を通じてフレア姫と親しくなっていたため、その指名を光栄に思い、自ら受け入れたのだった。
ニルダの前向きな決意
別棟勤務になれば本棟の設備を利用しにくくなると心配されても、ニルダは携帯ゲーム機の貸し借りや充電のために本棟へ来ることがあると明るく答えた。
問題児三人組はその発言に呆れながらも、自分達も同じようにゲーム機で遊んでいるため、それ以上追及できなかった。
ミレーラの思惑
話題はやがてルームメイト達の今後へ移った。
ルイサはこれまで通り本棟勤務を続けることになったが、ミレーラは将来的に別棟勤務となる可能性を示唆した。ミレーラは、ユングヴィ王子がカープァ王国の高位貴族から側室を迎えたがっているという情報を養父から聞いていた。
もし自分がその候補になるならば、フレア姫の近くで働くことは将来に役立つと考えていた。しかし現時点では未確定な話であり、その思惑を表に出すことはなかった。
スカジの到着
十日ほど後、フレア姫一行の第一陣として女戦士スカジが後宮に到着した。
後宮侍女達は武装した女戦士という存在に緊張していたが、スカジは穏やかで礼儀正しい態度を見せ、自分達が異国の人間である以上、間違いがあれば遠慮なく指摘してほしいと伝えた。
その誠実な態度により、侍女達の警戒心は和らいでいった。
別棟の案内と暑さへの懸念
スカジはニルダと問題児三人組の案内で別棟を見学した。
霧の魔道具によって冷やされた部屋に感心しながらも、スカジは自分達の侍女が酷暑期を乗り切れるかを深く心配していた。北大陸から来る侍女達にとって、カープァ王国の暑さは命に関わる問題だったのである。
そのため、スカジは霧の魔道具を追加で二つから三つ用意してほしいと要望した。ドロレスは事情を説明した上で、アウラや善治郎へ申請することを約束した。
北大陸からの侍女達の到着
さらに十日ほど後、別棟勤務の新人侍女達とともに、ウップサーラ王国から三人の侍女が到着した。
その中でもランヒルドというベテラン侍女は強い存在感を放っており、若い侍女達はアマンダ侍女長を前にした時と同じような緊張を覚えた。一方で、ウップサーラ側の若い侍女達もアマンダ侍女長に同じ反応を示しており、その様子を見た双方の若い侍女達は自然と親近感を抱いた。
夜の噂話
その夜、問題児三人組は新たな同僚達について語り合った。
北大陸の侍女達は皆背が高く、特にランヒルドには思わず敬称を付けてしまうほどの威圧感があった。また、酷暑によって彼女達が疲弊していることや、霧の魔道具が追加されたことで生活環境が改善されたことも話題になった。
さらに、ユングヴィ王子がカープァ王国から側室を迎えるかもしれないという噂にも話が及んだ。北大陸への興味を語り合う中、ドロレスは将来善治郎が北大陸へ滞在する際、後宮侍女が同行する可能性があると明かした。
フェーとレテは喜びを見せたが、実際に誰が選ばれるかは分からない。ドロレスは自分が二人を推薦していた事実を隠したまま、楽しそうに話を続けるのだった。
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